(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-08
(54)【発明の名称】白斑の治療のための医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/08 20190101AFI20230801BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20230801BHJP
A61K 35/618 20150101ALI20230801BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20230801BHJP
A61K 9/50 20060101ALI20230801BHJP
A61K 47/52 20170101ALI20230801BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20230801BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230801BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230801BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20230801BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20230801BHJP
A61K 8/98 20060101ALI20230801BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230801BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230801BHJP
C07K 7/06 20060101ALN20230801BHJP
C07K 7/08 20060101ALN20230801BHJP
【FI】
A61K38/08
A61K38/10
A61K35/618
A61K9/51
A61K9/50
A61K47/52
A61K9/06
A61P17/00
A61K45/00
A61K47/64
A61K8/64
A61K8/98
A61Q19/00
A61P43/00 121
C07K7/06 ZNA
C07K7/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501430
(86)(22)【出願日】2021-06-23
(85)【翻訳文提出日】2023-03-03
(86)【国際出願番号】 EP2021067203
(87)【国際公開番号】W WO2022008251
(87)【国際公開日】2022-01-13
(32)【優先日】2020-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522103801
【氏名又は名称】ベッラ オーロラ ラボス,エセ.アー.
(71)【出願人】
【識別番号】523008392
【氏名又は名称】ボルディニョン,マッテオ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ボルディニョン,マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】エルナンデス ナヴァッロ,セルジ
(72)【発明者】
【氏名】セグラ テヘドール,ヨルディ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA07
4C076AA09
4C076AA61
4C076AA65
4C076BB31
4C076CC18
4C076CC41
4C076DD21
4C076EE41
4C076EE59
4C083AA071
4C083AA072
4C083AA082
4C083AA122
4C083AC012
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4C083AC122
4C083AC152
4C083AC172
4C083AC352
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC532
4C083AC712
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4C083AD092
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4C083AD412
4C083AD662
4C083BB47
4C083BB51
4C083CC03
4C083DD14
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4C083DD31
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4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA14
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA50
4H045EA20
4H045FA10
(57)【要約】
本発明は、黒色腫阻害活性(MIA)タンパク質の阻害剤であるペプチドとカタツムリ分泌物との組み合わせを含む、白斑の治療のための医薬組成物に関する。本発明はまた、本組成物と、抗酸化剤を含む栄養補助食品とを含むキットに関する。本発明はまた、白斑の予防および/または治療のための、本組成物の使用、または、そのような組成物を含むキットの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬組成物であって、
(a) ペプチドがN末端でアセチル化され、および/またはC末端でアミド化されていることを誘導体が意味する場合に、配列番号12~20および27~49から選択される配列を有するかまたはその誘導体である黒色腫阻害活性タンパク質(MIA)阻害剤ペプチド;
(b) カタツムリ分泌物;および、
(c) 少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤
を含むことを特徴とする、医薬組成物。
【請求項2】
前記配列が配列番号34、38、40および41から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記配列が配列番号40であることを特徴とする、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
C末端アミド化が、式-CONH
2、-CONHRまたは-CONR
2(式中、RはC
1-C
4アルキル基である)の末端アミド基の形成からなることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記MIA阻害剤ペプチドが、担体ナノ粒子にカプセル化されるか、またはコンジュゲートされることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記MIA阻害剤ペプチドが、メラノコルチン1(MC1)受容体アゴニストである特異的ペプチドが外面に付着したマイクロカプセルまたはナノカプセル内にカプセル化されていることを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記MIA阻害剤ペプチドが、金ナノ粒子とコンジュゲートされていることを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記組成物中のMIA阻害剤ペプチドの量は、前記組成物の総重量に対するMIA阻害剤の重量として表される場合に、0.0001%~1%であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記組成物中のMIA阻害剤ペプチドの量は、前記組成物の総重量に対するMIA阻害剤の重量として表される場合に、0.0005%~0.1%であることを特徴とする、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記組成物中のカタツムリ分泌物の量は、前記組成物の総重量に対するカタツムリ分泌物の重量として表される場合に、0.5%~15%であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
局所使用のためのものであることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
クリームおよびゲルから選択されることを特徴とする、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物と、抗酸化剤を含む栄養補助食品とを含むことを特徴とする、キット。
【請求項14】
白斑の予防および/または治療に使用するための、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物または請求項13に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白斑の治療および/または予防のための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
白斑は色素減少(低色素化)または色素脱失(脱色素化)領域を特徴とする後天性皮膚障害であり、世界中の人口の約0.5~2%の有病率を有する。
【0003】
非分節性白斑(NSV)は疾患の最も一般的な臨床形態であり、色素脱失のパッチは通常、両側性であり、何らかの形態の対称性を有する。
【0004】
白斑は、最も一般的には顔、指、背側手、屈筋手首、肘、膝、脛、背側足首、腋窩、鼠径部、肛門性器部、臍、および乳頭を含む。
【0005】
表皮メラニン細胞の喪失は白斑の病理学的特徴であるが、この疾患の病因は多因子性であり、依然として十分に理解されていない。例えば、非分節性白斑に寄与し得る因子の中には、免疫学的因子、酸化ストレス、または交感神経性神経原性障害がある。一方で、この疾患に対するいくつかの遺伝的素因も存在すると考えられる(Taieb et al., Vitiligo, N. Engl. J. Med., 2009, 360, 160-169)。
【0006】
これまでに提案された薬理学的治療の中には、例えば、局所コルチコステロイド、局所マクロライド免疫調節剤、すなわちカルシニューリン阻害剤であるタクロリムスおよびピメクロリムス、ならびにビタミンD3類縁体および抗酸化剤がある。一方、最も使用される非薬理学的治療は、UVAおよびUVBの両方の領域における紫外線放射である(Guerra et al., Vitiligo: pathogenetic hypotheses and targets for current therapies, Current Drug Metabolism, 2010, 11, 451-467)。
【0007】
これらの利用可能な治療はほとんど有効ではなく、それらのうちのいくつかは有害作用のいくつかのリスクを伴い得る。
【0008】
より最近では、正常なメラニン細胞とは異なり、MIAタンパク質が白斑皮膚で発現され、そのアルファ5ベータ1インテグリンとの相互作用によりメラニン細胞の剥離(メラニン細胞漏出)を引き起こし、それによりメラニン細胞の基底膜への正常な付着を乱す可能性があるという知見に基づく非分節性白斑の病因におけるタンパク質MIA(「黒色腫阻害活性」)の関与も示唆されている(Bordignon et al., Role of alpha5beta1 integrin and MIA (melanoma inhibitory activity) in the pathogenesis of vitiligo, J. Dermatol. Sci., 2013, 71(2), 142-5)。In vivoマウスモデルにおいて、動物の尾部におけるMIAの注射は注射領域における白斑様色素脱失を誘導することが確認された(Bordignon et al., MIA (melanoma inhibitory activity) is able to induce vitiligo in an in-vivo mice model by direct injection in the tail, Vitiligo International Symposium 2016, Meeting Abstracts)。
【0009】
したがって、MIAは白斑治療のための対象として示唆されており、国際特許出願WO-A-2012/127352において、MIAに対する阻害剤の結合を含む機構およびそれによってMIAとメラニン細胞ラルハギーの要因であるアルファ5ベータ1インテグリンとの相互作用を回避することにより、MIA阻害剤である多数のペプチドおよびペプチド誘導体が白斑の予防および治療のために提案されている。
【0010】
しかしながら、文献WO-A-2012/127352は白斑治療のためのそれらの物質の有効性を示すいかなる実施例も提供しておらず、実際には白斑を効果的に治療するためにそれらのMIA阻害剤を使用するための好適な方法または組成物について何らヒントを与えていないことは注目に値する。
【0011】
したがって、白斑の治療および予防のための効果的かつ安全な組成物を提供する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0012】
〔発明の目的〕
本発明の目的は、MIA阻害剤およびカタツムリ分泌物を含む医薬組成物である。
【0013】
本発明の別の局面は、本発明の医薬組成物と、抗酸化剤を含む栄養補助食品とを含むキットである。
【0014】
本発明の別の局面は、白斑の予防および/または治療に使用するための、そのような組成物またはキットである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】比較のために、一人の患者における3種類の組成物の有効性を試験するための3つの実施例を示している。
【
図2】実施例4に記載された試験に組み入れられた患者のうち、治療前後の患者の1例を示し、顔面の左側を組成物Aで治療し、顔面の右側を組成物Bで治療した。
【
図3】実施例4に記載された試験に組み入れられた患者のうち、組成物Cによる治療を受けた治療前後の患者の1例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔発明の詳細な説明〕
本発明の目的は、以下を構成する医薬組成物である:
(a) 配列番号1~配列番号49から選択される配列を有するMIA阻害剤ペプチド、またはその誘導体;
(b) カタツムリ分泌物;および、
(c) 少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤。
【0017】
本発明の著者らは、驚くべきことに、従来技術においてこれまで利用可能な治療とは異なり、白斑を治療するのに際立って効果的である、MIA阻害剤ペプチドとカタツムリ分泌物との組み合わせを含む医薬組成物を開発した。
【0018】
本明細書に加えて、特許請求の範囲において、単数形の発現は、文脈が明らかに沿わないことを示さない限り、一般に冠詞「a」、「an」または「the」が先行するが、複数形も含むことを意味する。特に明記しない限り、全ての割合は重量で表される。用語「約」が先行する数値は、そのような値の周りの特定の変動、すなわち、記載された量の±5%の変動も含むことを意味する。下端点および上端点によって定義される数値範囲は前記述べられた端点も含むことを意味し、また、任意のより狭い下位範囲も含む。
【0019】
アミノ酸は本明細書において、当業者に周知であるように、本Biochemical Nomenclature and Related Documents, 2nd edition, Portland Press, 1992, London [ISBN 1-85578-005-4]に記載のように、IUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclatureに従い、1文字コードを用いて表している。
【0020】
〔MIA阻害剤ペプチド〕
本発明の組成物の成分の一つは、ヒト黒色腫阻害活性(MIA)タンパク質の阻害剤としての活性を有する物質、特に国際特許出願WO-A-2012/127352に開示されているもの、すなわち配列番号1~配列番号49から選択される配列を有するペプチドである:
- 配列番号01 VPHIPPN
- 配列番号02 MPPTQVS
- 配列番号03 QMHPWPP
- 配列番号04 QPPFWQF
- 配列番号05 TPPQGLA
- 配列番号06 IPPYNTL
- 配列番号07 AVRPAPL
- 配列番号08 GAKPHPQ
- 配列番号09 QQLSPLP
- 配列番号10 GPPPSPV
- 配列番号11 LPLTPLP
- 配列番号12 QLNVNHQARADQ
- 配列番号13 TSASTRPELHYP
- 配列番号14 TFLPHQMHPWPP
- 配列番号15 VPHIPPNSMALT
- 配列番号16 RLTLLVLIMPAP
- 配列番号17 YNLPKVSSNLSP
- 配列番号18 MPPTQVSKFRLI
- 配列番号19 ANIDATPLFLRA
- 配列番号20 LLRTTETLPMFL
- 配列番号21 SALEPLV
- 配列番号22 GSPTPNA
- 配列番号23 APSHATH
- 配列番号24 TTVGHSD
- 配列番号25 THFSTFT
- 配列番号26 SLLLDTS
- 配列番号27 SVAMKAHKPLLP
- 配列番号28 NTIPGFASKSLD
- 配列番号29 VSNYKFYSTTSS
- 配列番号30 VSRHQSWHPHDL
- 配列番号31 HLNILSTLWKYR
- 配列番号32 HNASPSWGSPVM
- 配列番号33 SHPWNAQRELSV
- 配列番号34 HHWPFWRTLPLS
- 配列番号35 WHTKFLPRYLPS
- 配列番号36 NNTSFTVVPSVP
- 配列番号37 SHLSTWKWWQNR
- 配列番号38 FHWHPRLWPLPS
- 配列番号39 WHWTYGWRPPAM
- 配列番号40 FHWRYPLPLPGQ
- 配列番号41 WHWPLFIPNTTA
- 配列番号42 WHNGIWWHYGVR
- 配列番号43 HHLNYLWPWTRV
- 配列番号44 FWHRWSTFPEQP
- 配列番号45 WHMSYFWTRPPQ
- 配列番号46 FHLNWPSRADYL
- 配列番号47 WHKNTNWPWRTL
- 配列番号48 ALSPSQSHPVRS
- 配列番号49 GTQSTAIPAPTD
またはその誘導体である。
【0021】
一実施形態では、MIA阻害剤ペプチドは、配列番号12~20および27~49から選択される、好ましくは配列番号34、37、39~43および45~47から選択される配列を有する。
【0022】
一実施形態では、MIA阻害剤ペプチドは、配列番号34、38、40および41から選択される配列を有する。
【0023】
好ましくは、MIA阻害剤ペプチドは、配列番号40の配列を有するか;またはその誘導体である。
【0024】
配列番号1~配列番号49から選択される配列を有するペプチドの誘導体は、これらの配列の周りにいくつかの小さな変動を有するペプチドを意味し、依然としてMIA阻害活性を保持する。適切なバリエーションの例を以下に記載する。
【0025】
1つの適切な誘導体は、上記配列の1つを有するペプチドであり、1つのさらなるアミノ酸が存在するか、または配列の1つのアミノ酸が欠失している。
【0026】
別の適切な誘導体は、配列の1個以上のアミノ酸が別の天然または非天然アミノ酸で置換されている、好ましくは配列の3個以下のアミノ酸が置換されている、好ましくは2個以下のアミノ酸が置換されている、より好ましくは1個のみのアミノ酸が別の天然または非天然アミノ酸で置換されているペプチドである。
【0027】
天然アミノ酸は、当技術分野において周知であるように、天然タンパク質およびペプチド中に通常存在する20個のアミノ酸である。
【0028】
また、当技術分野において周知であるように、非天然(または不自然または異常)アミノ酸は、天然アミノ酸に基づくが、1個または複数の原子がC、H、N、S、N、S、O、P、F、F、Cl、Br、IおよびSeから選択される官能基で置換されている。このような非天然アミノ酸の好適な非限定的な例は、トランス-3-メチルプロリン、2,4-メタノプロリン、シス-4-ヒドロキシプロリン、トランス-4-ヒドロキシプロリン、N-メチルグリシン、アロ-トレオニン、N-メチルトレオニン、ヒドロキシエチルシステイン、ヒドロキシエチルホモシステイン、ニトログルタミン、ホモグルタミン、ピペコリン酸、tert-ロイシン、ノルバリン、2-アザフェニルアラニン、3-アザフェニルアラニン、4-アザフェニルアラニン、および4-フルオロフェニルアラニンである。非天然アミノ酸残基をペプチドまたはタンパク質に組み込むためのいくつかの方法が当技術分野で公知である。
【0029】
他の適切な誘導体は配列1~49のペプチドであり、上記のように、アミノ酸付加/欠失または置換を有するものも含まれ、少なくとも1つのアミノ酸が修飾され、すなわち、追加の部分または官能基がそこに付加される。このような修飾は、ペプチドの安定性、溶解性および/または皮膚浸透性を改善するためのものであり得る。適切な修飾は、グリコシル化、アセチル化(例えばN末端)、アミド化(例えばC末端)、ヒドロキシル化(例えばヒドロキシプロリン)、カルボキシル化(例えばガンマ-カルボキシグルタメート)、リン酸化、アルキル化、N末端脂質化(すなわち、アミド結合を介してN末端にミリスチンまたはパルミチンなどの飽和または不飽和C12-C18脂肪酸を付加する)、またはプレニル化から選択することができる。ペプチド配列の一般的な修飾は、N末端のアセチル化およびC末端のアミド化である。C末端アミド化は、式-CONH2、-CONHRまたは-CONR2の末端アミド基の形成を含み、式中、Rは、典型的には短鎖(例えばC1-C4)アルキル基である。最も単純で最も一般的なC末端アミド基は-CO-NH2である。
【0030】
一実施形態では、MIA阻害剤ペプチド誘導体は、N末端がアセチル化され、および/またはC末端がアミド化され、好ましくはN末端がアセチル化され、C末端がアミド化されたペプチドである。
【0031】
特に好適な具体例では、MIA阻害剤は、
- 配列番号1~配列番号49から選択され、好ましくは配列番号12~20および27~49から選択され、より好ましくは配列番号34、37、39~43および45~47から選択されるか、または配列番号34、38、40および41から選択され、さらにより好ましくは配列番号40のペプチドであり、随意的に、
- 配列の少なくとも1つのアミノ酸は修飾されており、修飾は、グリコシル化、アセチル化、アミド化(C末端)、ヒドロキシル化(ヒドロキシプロリン)、カルボキシル化(ガンマ-カルボキシグルタメート)、リン酸化、アルキル化、N末端脂質化およびプレニル化から選択され、好ましくは配列はN末端でアセチル化され、および/またはC末端でアミド化され、より好ましくはN末端でアセチル化され、C末端でアミド化される。
【0032】
「MIA阻害剤ペプチド」または「MIA阻害剤」という用語は、本明細書で互換的に使用される場合、それが厳密にペプチド配列であっても上記で開示された修飾配列であっても、本組成物で使用されるMIA阻害剤物質を広く指す。
【0033】
一実施形態では、MIA阻害剤ペプチドは、上記で定義した配列を有し、修飾されていない。
【0034】
これらのペプチドおよびその誘導体は、ペプチド合成における標準的な方法に従って、典型的には固相合成によって調製することができ、またはいくつかの供給源から商業的に得ることができる。
【0035】
本組成物は、1種以上のMIA阻害剤ペプチド、すなわち、1種のMIA阻害剤物質、または2種以上のMIA阻害剤の組み合わせを含んでもよい。2種以上のMIA阻害剤が使用される場合、それらは任意の割合で使用され得、したがって、本明細書に記載されるMIA阻害剤の量は、組成物中に含有されるMIA阻害剤物質の総量を意味する。
【0036】
国際特許出願WO-A-2012/127352または国際特許出願WO-A-03/064457または論文Stoll et al., The extracellular human melanoma inhibitory activity (MIA) protein adopts an SH3 domain-like fold, EMBO J., 2001, 20(3), 340-349に開示されているように、組み換えヒトMIAを使用するファージディスプレイスクリーニング検定法において配列1~49のペプチドのMIA阻害剤としての活性を決定した。
【0037】
配列1~49のペプチドの誘導体は、上記のように、それらのMIA阻害活性について、標準的な方法、例えば、Stoll et al.前掲、または、Schmidt et al., Targeting melanoma metastasis and immunosuppression with a new mode of melanoma inhibitory activity (MIA) protein inhibition, 2012, PLoS ONE 7(5): e37941に開示されているように、組み換えヒトMIAを使用するリガンド結合検定法を用いて、試験することができる。
【0038】
MIA阻害剤ペプチドはそのまま組成物に添加することができ、または、表皮の下層、基底層に位置し、基底膜に付着した白斑性メラニン細胞中の対象MIAタンパク質に到達するように、角質層を通じたその経皮送達を改善するために、異なるポリマー材料内にカプセル化(封入)するか、または異なる担体物質にコンジュゲート(結合、抱合、複合)(conjugate)してもよい。
【0039】
カプセル化技術は、活性成分の送達のための当技術分野において周知である。
【0040】
一実施形態では、MIA阻害剤ペプチドは、リポソーム技術を使用してマイクロカプセル化される。
【0041】
リポソームは、皮膚層中への活性物質の浸透を改善するために、皮膚製剤において一般的に使用される。当技術分野で周知のように、リポソームは一般に約60nm~300nmの大きさを有する球形小胞であり、少なくとも一つのリン脂質二重層を形成するリン脂質から構成されることが最も多いが、他の脂質を含んでもよい。リポソームは親水性活性がカプセル化され得る親水性コアを含み、一方、疎水性活性が二重層に組み込まれるので、リポソームは、親水性活性および親油性活性の両方のための好適な担体である(Knoth et al., Nanocarrier-Based Formulations: Production and Cosmeceutic Applications, in: Cosmetic Formulation. Principles and Practice, Benson H.A.E., Roberts M.S., Rodrigues Leite-Silva V. and Walters K.A., editors, CRC Press, 2019)。リポソームは周知の技術によって調製することができ、一般に、調製方法は、膜形成脂質を有機相中で混合すること、乾燥すること、その後脂質を水和すること、および、超音波処理、押出または均質化などの異なる機械的処理によるさらなるサイズの低減を含む。
【0042】
別の実施形態では、MIA阻害剤は、例えば、ポリエステル、ポリアミノ酸、ポリアルキルシアノアクリレート、ポリホスファゼン、またはポリエチレンオキシドを含む配列1~49のペプチドの送達のために開示されたもの(WO-A-03/064457、前掲)のように、当技術分野で周知のように、生分解性ポリマーで作製されたマイクロカプセルまたはナノカプセル内にカプセル化される。カプセル化に使用される一般的なポリマーは、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、または、それらの、ポリ(酸化エチレン)もしくはポリ(エチレングリコール)とのブロックコポリマーである。他の好適な生分解性重合体は、ポリ(プロピレンフマレート-コ-エチレングリコール)[P(PF-コ-EG)]ブロックコポリマー、ポリ無水物ポリ(フマル酸-コ-セバシン酸)無水物、アルギン酸塩、デキストラン、キトサン、ヒドロキシアパタイト、コラーゲン、フィブリン、ヒアルロン酸、カルボマー、およびこれらの混合物である。
【0043】
特定の実施形態では、MIA阻害剤は、メラノコルチン1(MC1)受容体アゴニストである特定のペプチドが外表面に結合しているマイクロカプセルまたはナノカプセル内にカプセル化され、これらのマイクロカプセルまたはナノカプセルは、カプセル化されたMIA阻害剤をメラニン細胞に標的化送達するために設計される。前記標的化カプセルは、特許出願WO-A-2015/075116に開示されている。
【0044】
これらの標的化されたマイクロカプセルまたはナノカプセルは、上記WO-A-2015/075116(前掲)に開示されているように、典型的には10nm~10000nm、好ましくは50nm~5000nm、より好ましくは100nm~1000nm、さらにより好ましくは150nm~450nm、さらにより好ましくは180nm~400nmのサイズ分布を有する。マイクロカプセルのサイズは、走査電子顕微鏡(SEM)によって決定することができる。
【0045】
マイクロカプセルは好ましくはポリマーであり、一般に、例えば、上に開示されたもののような、1つ以上の生分解性ポリマーから作製される。標的化マイクロカプセルを形成するポリマーの少なくとも1つは、そのポリマーのカルボキシル基を受容体アゴニストペプチド中のアミン末端基と結合させることによってMC1受容体アゴニストペプチドをカプセルの外表面に結合させるための、カルボキシル基を有することが必要である。
【0046】
マイクロカプセルは、随意的に、コアポリマー(または「内層ポリマー」)および外殻ポリマー(または「外層ポリマー」)を含む二層ポリマーマイクロカプセルであってもよい。例えば、前記コアポリマーはポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)であり、前記外殻ポリマーはポリビニルアルコール(PVA)であり得る。
【0047】
前記標的化されたマイクロカプセルまたはナノカプセルの調製は、WO-A-2015/075116(前掲)に開示されており、一般に、適切な溶媒中で、活性成分(この場合、MIA阻害剤ペプチド)と、カプセルを形成するポリマーとを混合する工程、および、メラノソームに対する親和性を付与するMC1受容体アゴニストペプチドを、マイクロカプセルまたはナノカプセルの外面に結合させるさらなる工程を含む。このさらなる工程は、カプセルを形成する前または後、好ましくはカプセルを形成した後に行うことができる。
【0048】
マイクロカプセルまたはナノカプセルの外面に結合されたMC1受容体アゴニストは、次式のペプチドである:
R2-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-DPhe-Arg-(AA)-Gly-Lys-DPro-Val-R1
またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、式中:
- R1は、nが1~10の整数である基-NH-(CH2)3-O-(CH2CH2O)n-(CH2)3-NH2であり;例えば、nは1であり、R1はエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル(CAS番号2997-01-5)から誘導され;別の例において、nは2であり、R1は、4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミン(CAS番号4246-51-9)とも呼ばれるジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテルから誘導され;
- R2は、(C1-24アルキル)-CO-、(C2-24アルケニル)-CO-および(C6-10アリール)-CO-から選択され;例えば、R2はアセチル、プロパノイル、ペンタデカノイル、ヘキサデカノイルおよびヘプタデカノイル(パルミトイル)から選択され;および、
- AAは、芳香族基を含むアミノ酸であり;例えば、AAは、トリプトファン、3-(2-ナフチル)-D-アラニン、3-アミノ-3-(1-ナフチル)-プロピオン酸、3-アミノ-3-(ビフェニル)-プロピオン酸、フェニルアラニン、チロシン、ヒスチジン、5-ヒドロキシトリプトファンおよびL-3,4-ジヒドロキシ-フェニルアラニンから選択され得る。
【0049】
別の実施形態では、MIA阻害剤ペプチドは、ナノ粒子、すなわち、脂質ナノ粒子、ポリマーナノ粒子、磁性ナノ粒子、または金属ナノ粒子とコンジュゲートされ、これはMIA阻害剤の角質層への浸透を促進する担体として作用し得る。
【0050】
1つの特定の実施形態では、MIA阻害剤ペプチドは、皮膚を通る浸透を改善することが記載されている金ナノ粒子とコンジュゲートされる(Gupta et al., J. Phys. Chem. B, 2016, 7133-7142)。これらのナノ粒子は、MIA阻害剤ペプチドでコーティングされた金コアを有する。MIA阻害剤ペプチドは、典型的には、ナノ粒子の金表面の負電荷と、側鎖にアミノ基を有するペプチド(リシン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギンまたはグルタミン)のアミノ酸の正電荷との間の静電イオン結合によって、金ナノ粒子にコンジュゲートされる。金ナノ粒子は、1000nm未満、好ましくは50~200nmのサイズを有する。結合体(抱合体、複合体、コンジュゲート)(conjugate)は、例えば、国際特許出願WO-A-2019/185696に開示されているように、Au(III)をAu(0)に還元剤で還元し、MIA阻害剤ペプチドで得られた金ナノ粒子を処理することによって調製することができる。
【0051】
割合が、組成物の総重量に対するMIA阻害剤の重量として表される場合に、本組成物中のMIA阻害剤ペプチドの量は、遊離形態であっても、またはカプセル化されていても、または担体とコンジュゲートされていても、上記に開示されているように、典型的には0.0001%~1%、好ましくは0.0005%~0.1%、より好ましくは0.001%~0.05%である。
【0052】
〔カタツムリ分泌物〕
カタツムリ粘液としても知られるカタツムリ分泌物は、カタツムリ(腹足類)によって、腹足類の足に位置する腺によって産生される粘液または身体分泌物の一種である。この粘液は、水と、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、糖蛋白酵素、ヒアルロン酸、銅ペプチド、抗菌ペプチド、および金属イオンを含む物質の複合混合物とからなり、主な成分は、アラントイン、コラーゲン、エラスチン、およびグリコール酸である(Cillia et al., Antimicrobial properties of terrestrial snail and slug mucus, J. Complement. Integr. Med., 2018, 15(3))。
【0053】
この分泌物は、例えば特許US5538740または米国特許出願US-A-2018/0064635に開示されている、生きたカタツムリから収集され回収され得る。一般に、腹足類を特定のストレス条件に供した後、分泌物を回収し、濾過する。
【0054】
カタツムリ分泌物は、一般に液体の形態であり、pHは一般に5~8の範囲であり、密度は典型的には約1.0~約1.1g/mlであり、乾燥残渣は一般に0.1%~3%、好ましくは0.2%~2%、より好ましくは0.25%~1%、さらにより好ましくは0.3%~0.7%である。タンパク質含量は、典型的には0.1~3mg/mlである。
【0055】
カタツムリ分泌物は、いくつかの供給源から市販されており、例えば、スペインの企業Cobiosa(製品Poly-Hexilan PFとして販売されている)、あるいはイタリアの企業CENTISIA Laboratorio di Fitocosmesi di Bruno Dott.ssa Laura Francesca & C. s.a.s.(Prodotto 580038として販売されている)などがある。
【0056】
この分泌物を得るために、種々の種の腹足類が用いられ得、とりわけ、Achatina fulica、Cornu aspersum(またはHelix aspersaまたはCryptomphalus aspersaまたはCantareus aspersus)、Helix pomatia、Helix hortensis、Helix nemoralis、Helix cardidula、Helix tchthyomma、Helix fructicicola、Helix strigella、Helix fruticum、Helix bidens、Helix arbostorum、Helix rotundata、Helix aculeata、Helix pulchella、Helix personata、Helix holoserica、Helix aperta、Helix parnassia、Helix alonensis、Helix candidissima、Helix pisana、またはHelix gualtevianaを含む。特定の実施形態では、カタツムリ分泌物は、Helix aspersa、Cryptomphalus aspersaまたはCantareus aspersusとしても知られるCornu aspersumから得られる。
【0057】
カタツムリ分泌物の医薬的および美容的使用は従来技術において、他の使用の中でも、例えば、抗菌剤として、創傷修復のために、皮膚保護のために、または抗老化剤として、開示されている。
【0058】
本発明の著者らは驚くべきことに、MIA阻害剤物質とカタツムリ分泌物との組み合わせが白斑の治療において顕著な成果を提供することを発見した。
【0059】
実際に、比較例3に開示されるように、カタツムリ分泌物のみを含む組成物は白斑脱色素皮膚に対して何らの効果も示さなかったが、この物質とMIA阻害剤との組み合わせは最も良好な抗白斑効果をもたらし、罹患領域の顕著な再色素沈着をもたらすことが見出された。
【0060】
割合が、組成物の総重量に対するカタツムリ分泌物の重量として表される場合に、本組成物中のカタツムリ分泌物の量は、典型的には0.5%~15%、好ましくは1%~10%、より好ましくは2%~8%、さらにより好ましくは約5%である。
【0061】
〔本発明の組成物〕
本発明の組成物は、MIA阻害剤ペプチド、カタツムリ分泌物、および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0062】
「賦形剤」または「薬学的に許容される賦形剤」という語は、活性成分ではなく、薬学的組成物を調製するのに役立ち、一般にヒトの薬学的使用のために安全かつ非毒性である、薬学的組成物の成分を意味する。特に、本組成物は、典型的には外的に使用され、患部皮膚領域に局所的に適用されることが意図され、そのため、薬学的に許容される賦形剤は特に「皮膚科学的に許容される」、すなわち、ヒト皮膚組織と接する使用に適しており、非毒性である。
【0063】
一実施形態では、本組成物は、局所投与用であり、すなわち、治療される領域、すなわち、白斑性色素脱失を示すか、または白斑性色素脱失を示す傾向がある領域に皮膚にわたって広がる。局所、皮膚、または皮膚投与は、本明細書において互換的に使用される。
【0064】
局所投与に適した任意の種類の製剤を使用することができる。典型的には、本組成物は、クリーム、ゲル、クリーミゲル、ローション、ペースト、フォーム、液剤、懸濁液、エマルジョン、ミルク、または棒状調製物の形態であり、例えば、当技術分野で周知である。例えば、クリーミゲルは、クリームとゲルの中間に位置する製剤の一種で、クリームとは違って、クリームゲルは、ゲル化した水溶液またはゲル化した油であるが、クリームとして不透明に見え、通常は白色に見える。
【0065】
適当な担体は、例えば、脂肪、ワックス、動物および植物油、ならびに固体および液状の炭化水素の混合物としての無水物であり得る。または、担体は、水または親水性物質の水溶液であってもよい。適切には、担体は、エマルジョンの形態であってもよい。エマルジョンは、典型的には、水中油型エマルジョン、油中水型エマルジョン、水中油中水型エマルジョン、油中水中油型エマルジョン、またはシリコーン樹脂中水型エマルジョンであり得る。エマルジョンは一般に、連続水相(水中油および水中油中水)または連続油相(油中水および油中水中油)を有すると記載され得る。油相は、シリコーン油、非シリコーン油、例えばパラフィン炭化水素、脂肪アルコール(例えばステアリルアルコール、セチルアルコールまたはセトステアリルアルコール)、脂肪酸(例えばステアリン酸、オレイン酸)、脂肪酸エステル(ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル)、蝋(ろう)(ワックス)または植物油(例えばヒマシ油、キャノーラ油、綿実油、ホホバ油またはラッカセイ油)、またはこれらの混合物を含むことができる。水相は、水または親水性物質の水溶液、例えばアルコール(例えば:エタノール、イソプロピルアルコール)、ポリオール(例えば:グリセロール、ソルビトール)、アルファ-ヒドロキシ酸、アミノ酸、タンパク質加水分解物、単糖、または多糖類を含み得る。
【0066】
エマルジョンの一般的な成分である乳化剤は界面活性剤(界面活性剤)であり、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤を含む。非イオン性界面活性剤としては、とりわけ、エトキシル化脂肪アルコール、エトキシル化脂肪酸エステル、アルキルグルコシドまたはアルキルオリゴグルコシド、エトキシル化ソルビタン脂肪酸エステル、モノグリセロール/ポリグリセロール脂肪酸エステル、エトキシル化グリセリンモネスター、エトキシル化ポリグリセリルエステル、アルキルジメチルアミンオキシド、またはポロキサマーが挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、とりわけ、アルカリ性石鹸、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸塩、アシルサルコシネートまたはアシルイセチオネートが挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、とりわけ、第四級アンモニウム塩、またはピリジン塩が挙げられる。両性界面活性剤としては、イミダゾリン誘導体、ベタイン、アミドベタインおよびスルホベタインが挙げられる。
【0067】
製剤物中の他の一般的な成分は、例えば、皮膚軟化剤、保湿剤、防腐剤、粘性制御剤、抗酸化剤、pH調節剤、紫外線フィルター、キレート剤、香料および着色剤である。一般的な皮膚軟化剤は例えば、パラフィン炭化水素、シリコーン樹脂、脂肪アルコール、脂肪酸、アルコールとの脂肪酸のエステル、トリグリセリド、セラミド、リン脂質および蝋である。保湿剤としては、ポリヒドロキシアルコール、タンパク質およびヒドロキシル酸が挙げられる。一般的な防腐剤としては、とりわけ、ソルビン酸およびその塩、安息香酸およびその塩、パラベン、イミダゾリジニル尿素、ジアゾリジニル尿素、DMDMヒダントイン、ヒドロキシメチルグリシン酸ナトリウム、メチルクロロイソチアゾリノン/メチルイソチアゾリノン、ベンジルアルコールおよび2-フェノキシエタノールが挙げられる。製剤物の粘性を制御するために、他の添加剤、例えば、キサンタンガム、ジェランガム、アカシア、カラギーナン、キトサン、コラーゲン、トラガント、ペクチン、デンプン誘導体、カルボマー、セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、またはカルボキシメチルセルロース)、ポリアミド、グルタミド、コロイド状シリカまたはワックス(蜜蝋または植物蝋用)を添加することもできる。
【0068】
本組成物のいくつかの成分は、角質層全体にわたる活性成分の浸透を促進するための浸透促進剤として作用し得る。一般的な浸透促進剤は例えば、エタノールまたはイソプロピルアルコールなどの短鎖アルコール;デカノール、ヘキサノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オクタノール、オクチルドデカノールまたはオレイルアルコールなどの長鎖アルコール;アゾンのような環状アミド;酢酸オクチルサリチル酸エチル、パジメートO、オレイン酸エチル、モノレアートグリセリル、モノカプリン酸グリセリル、トリカプリラートグリセリル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、モノラウリン酸プロピレングリコール、モノカプリラートプロピレングリコールなどのエステル;Transcutol(登録商標)などのエーテルアルコール;ラウリン酸、リノール酸、リノレイン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸またはイソステアリン酸などの脂肪酸;ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコールまたは1,3ブチレングリコールなどのグリコール;N-メチル-2-ピロリドンまたは2-ピロリドンなどのピロリドン;デシルメチルスルホキシドまたはジメチルスルホキシドなどのスルホキシド;アニオン性界面活性剤;カチオン性界面活性剤;非イオン性界面活性剤;オイゲノールD-リモネン、メントール、メントーン、メントーン、ファルネソール、またはネリドールなどのテルペン(例えば、Lane M.E., Skin penetration enhancers, Int. J. Pharm., 2013, 447, 12-21;またはHaque et al., Chemical enhancer: a simplistic way to modulate barrier function of the stratum corneum, Adv. Pharm. Bull., 2018, 8(2), 169-179に開示されている)である。
【0069】
本発明の組成物は、典型的には、皮膚の生理学的pHに近いわずかに酸性のpHを有する。一般的な酸性度調節剤は、ヒドロキシ酸および脂肪酸を含む有機酸である。化粧用エマルジョン中の最も一般的なpH調節剤のいくつかは、乳酸またはクエン酸などのヒドロキシ酸である。
【0070】
1つの賦形剤は、複数の機能を実行できる。上記の成分、ならびに多くの他の適切な皮膚科学的製剤賦形剤は、局所組成物の製剤の当業者に周知である。このような成分は、数ある会社、例えば、とりわけ、Comercial Quimica Masso, SA, Evonik, DuPontまたはDow Corningから市販されている。
【0071】
局所用組成物の調製は、皮膚科学的組成物の製剤の当業者に周知の手順に従って行われ、一般に、成分を混合し、随意的に加熱する簡単な工程を含む。
【0072】
例えば、典型的には、油相と水相を別々に約60~80℃に加温した後、攪拌しながら混合してエマルジョンを調製することによって、クリームを調製することができる。
【0073】
本組成物の主成分およびそれらを調製するための方法は局所化粧用製剤物の調製に使用されるものと完全に類似しており、例えば、本:Cosmetic Formulation. Principles and Practice, Benson H.A.E., Roberts M.S., Rodrigues Leite-Silva V. and Walters K.A., editors, CRC Press, 2019または他の同様の参考文献に記載されている。また、規制された化粧品成分および成分は、欧州委員会データベース「CosIng」(https://ec.europa.eu/growth/tools-databases/cosing)に開示されている。
【0074】
典型的には、例えば、クリーム、ゲル、またはローション基剤製剤物を、最初に、当技術分野で周知の標準的な成分および手順を用いて調製し、次いで、カタツムリ分泌物およびMIA阻害剤ペプチド(遊離形態またはカプセル化されている)を添加し、十分に混合し、組成物のpHを最終的に調整する。
【0075】
〔組成物の使用〕
実施例3および4に記載された前向き臨床試験に示されるように、本発明の組成物は白斑を治療するのに顕著に効果的であり、治療された色素脱失領域の明白な再色素沈着を伴う。
【0076】
したがって、本発明の別の局面は、白斑の予防および/または治療に使用するための本発明の組成物である。
【0077】
本発明の別の局面は、治療有効量の本発明の組成物を投与する工程を含む、それを必要とする患者における白斑の予防および/または治療法である。
【0078】
白斑の治療は、白斑症状を改善すること、すなわち、色素脱失または色素減少皮膚パッチの正常な色素沈着を部分的または完全に回復することを目的とする手順と理解される。
【0079】
一実施形態では、白斑の予防および/または治療は、非分節性白斑の予防および/または治療に関する。
【0080】
白斑の予防は、白斑症状の発症を予防することを目的とし、例えばメラニン細胞におけるMIAタンパク質の存在を検出することによって、症状の出現以前に早期診断されたか、または、この病気に罹患するいくつかの既知の遺伝的素因を有するか、のいずれかで、白斑に罹患しやすいことが知られている対象に対して、対処する。白斑の予防はまた、白斑を以前に患っており、病気から回復した患者、すなわち、白斑性脱色皮膚の再色素沈着を達成した患者の、白斑を再度患うことを予防するための治療を含む。
【0081】
典型的には、本発明の組成物は、局所的に投与され、すなわち、白斑性皮膚パッチに広がる。
【0082】
一実施形態では、本組成物は、経皮的に、例えば、イオン導入、超音波またはマイクロニードルを用いて送達され得る(Escobar-Chavez et al. Microneedles: a valuable physical enhancer to increase transdermal drug delivery, J. Clin. Pharmacol., 2011, 51(7), 964-977)。
【0083】
「治療的に効果的」であると考えられる、使用される組成物の量は、多くの因子、例えば、疾病の重症度および進行段階、または、使用される具体的な製剤に応じて、広く変動し得る。この量は、それぞれの場合において、当業者によって容易に調節することができる。概して、罹患皮膚に適用される局所組成物の量は、皮膚表面積の1cm2(mg/cm2)当たり約0.1mgの組成物から約100mg/cm2、好ましくは約5mg/cm2から約10mg/cm2に及び得る。
【0084】
本発明の組成物は、1日1回または複数回、例えば、1日2回、3回または4回、局所的に適用され得る。本組成物は、典型的には、それを皮膚上に、一般には、影響を受けた皮膚領域上にのみ広げることによって適用される。治療の持続時間は、患者の進展に従って調整され得る。典型的には、治療は、白斑症状の重症度および病気の進行に応じて、数週間、例えば1、2、3または4週間、または数ヶ月、例えば、1~12ヶ月、またはそれ以上、維持され得る。治療の期間は、当業者によって容易に調節され得る。
【0085】
有利には、本発明の組成物による治療は、例えば簡単な日光曝露によるかまたは日光床の使用による光線療法と組み合わせて、メラニン細胞の生成およびマイグレーション(移動)(migration)を刺激し、したがって、リカバリーを促進し得る。実際、実施例4に示されるように、本発明の組成物は、日光曝露と組み合わせて、ほぼ完全な回復、すなわち、皮膚の完全な再色素沈着をもたらす。
【0086】
したがって、本発明の別の局面は、治療有効量の本発明の組成物を適用する工程と、治療された皮膚領域を光線療法に曝露する工程とを含む、白斑の予防および/または治療を必要とする患者における白斑の予防および/または治療法である。
【0087】
本明細書で使用するとき、「光線療法」または「光療法」という語は例えば、日光または、UVAおよびUVB放射を含むUV放射のような特定の波長の放射への曝露を含む。したがって、「光線療法」は、太陽光への単純な曝露によって、または日光床を使用して、または発光装置、特にUV放出装置を使用して、実施することができる。
【0088】
光線療法の持続期間は決定的ではなく、他の好適な選択肢の中でも、例えば、毎日約10分~約2時間、または隔日、または週に2回もしくは3回にわたり得る。
【0089】
白斑は皮膚の任意の領域に影響を及ぼし得るので、組成物は影響を受けた(色素脱失した)皮膚の任意の領域に適用され得る。白斑に最も一般的に罹患し、したがって、より治療を必要とする皮膚の領域は、手および顔面、身体の開口部(目、鼻孔、口、臍および生殖器領域)の周囲、ならびに腕の下および鼠径部などの身体の折り畳み部内である。
【0090】
一実施形態では、白斑を治療するための本発明の組成物の使用は、特にこの療法を光線療法と併用する場合に、放射曝露の起こり得る悪影響を低減するために、抗酸化剤の使用と併用することができる。
【0091】
抗酸化剤は、典型的には経口使用のためのものである。適切な抗酸化剤はとりわけ、ビタミンE、ビタミンC、カロチノイド(例えば、リコペン)、ベータ-カロテン、アルファ-カロテン、緑茶抽出物、亜鉛、セレニウム、ポリポジウムロイコトモス抽出物、とりわけ、またはそれらの組み合わせである。
【0092】
それらは、当技術分野で知られている通常の賦形剤および調製プロセスを用いて、例えば、典型的には錠剤、散剤またはカプセル剤として、食事性経口サプリメントとして製剤化することができる。
【0093】
一実施形態では、本発明は、本発明の組成物と、抗酸化剤を含む栄養補助食品とを含むキットに関する。
【0094】
別の実施形態において、本発明は、白斑の予防および/または治療に使用するための、本発明の組成物と、抗酸化剤を含む栄養補助食品とを含むキットに関する。
【0095】
本発明の別の局面は、治療有効量の本発明の組成物を適用する工程、治療された皮膚領域を光線療法に曝露する工程、および患者に抗酸化剤を投与する工程を含む、それを必要とする患者における白斑の予防および/または治療法でもある。
【0096】
本発明は、以下の実施態様に従って定義することができる。
【0097】
1. 医薬組成物であって、
(a) 配列番号1~配列番号49から選択される配列を有するMIA阻害剤ペプチドまたはその誘導体;
(b) カタツムリ分泌物;および、
(c) 少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含むことを特徴とする、医薬組成物。
【0098】
2. 配列が配列番号12~20および27~49から選択され、好ましくは配列番号34、37、39~43および45~47から選択されるか、または配列番号34、38、40および41から選択されることを特徴とする、実施態様1に記載の医薬組成物。
【0099】
3. 配列が配列番号40であることを特徴とする、実施態様2に記載の医薬組成物。
【0100】
4. 誘導体が、
(i) 1つの追加のアミノ酸が付加されるか、または1つのアミノ酸が欠失される配列;
(ii) 1個以上のアミノ酸、好ましくは3個以下のアミノ酸、より好ましくは2個以下のアミノ酸、より好ましくは1個のみのアミノ酸が、別の天然または非天然アミノ酸によって置換されている配列;および、
(iii) (i)または(ii)による配列番号1~49の配列またはその誘導体であって、少なくとも1つのアミノ酸が修飾されており、修飾が、グリコシル化、アセチル化、アミド化(C末端)、ヒドロキシル化(ヒドロキシプロリン)、カルボキシル化(ガンマ-カルボキシグルタメート)、リン酸化、アルキル化、N末端脂質化およびプレニル化から選択され;好ましくは配列がN末端でアセチル化され、および/またはC末端でアミド化され;より好ましくは配列がN末端でアセチル化され、N末端でアミド化される、配列
から選択されることを特徴とする、実施態様1から3のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0101】
5. 誘導体が、配列の少なくとも1つのアミノ酸が修飾されていることからなり、修飾が、グリコシル化、アセチル化、アミド化(C末端)、ヒドロキシル化(ヒドロキシプロリン)、カルボキシル化(ガンマ-カルボキシグルタメート)、リン酸化、アルキル化、N末端脂質化およびプレニル化から選択され;好ましくは配列がN末端でアセチル化され、および/またはC末端でアミド化され;より好ましくは配列がN末端でアセチル化され、N末端でアミド化されていることを特徴とする、実施態様1~3のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0102】
6. MIA阻害剤ペプチドが、担体ナノ粒子にカプセル化されているか、またはコンジュゲートされていることを特徴とする、実施態様1~5のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0103】
7. MIA阻害剤ペプチドが、メラノコルチン1(MC1)受容体アゴニストである特異的ペプチドを外面に付着させたマイクロカプセルまたはナノカプセル内にカプセル化されていることを特徴とする、実施態様6に記載の医薬組成物。
【0104】
8. MC1受容体アゴニストが、次式のペプチドであることを特徴とする、実施態様7に記載の医薬組成物:
R2-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-DPhe-Arg-(AA)-Gly-Lys-DPro-Val-R1
またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、式中:
- R1は、nが1~10の整数である基-NH-(CH2)3-O-(CH2CH2O)n-(CH2)3-NH2であり;例えば、nは1であり、R1はエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル(CAS番号2997-01-5)から誘導され;別の例において、nは2であり、R1は、4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミン(CAS番号4246-51-9)とも呼ばれるジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテルから誘導され;
- R2は、(C1-24アルキル)-CO-、(C2-24アルケニル)-CO-および(C6-10アリール)-CO-から選択され;例えば、R2はアセチル、プロパノイル、ペンタデカノイル、ヘキサデカノイルおよびヘプタデカノイル(パルミトイル)から選択され;および、
- AAは、芳香族基を含むアミノ酸であり;例えば、AAは、トリプトファン、3-(2-ナフチル)-D-アラニン、3-アミノ-3-(1-ナフチル)-プロピオン酸、3-アミノ-3-(ビフェニル)-プロピオン酸、フェニルアラニン、チロシン、ヒスチジン、5-ヒドロキシトリプトファンおよびL-3,4-ジヒドロキシ-フェニルアラニンから選択され得る。
【0105】
9. 前記MIA阻害剤ペプチドが、金ナノ粒子とコンジュゲートしていることを特徴とする、実施態様6に記載の医薬組成物。
【0106】
10. 割合が、組成物の総重量に対するMIA阻害剤の重量として表される場合に、組成物中のMIA阻害剤ペプチドの量は、0.0001%~1%、好ましくは0.0005%~0.1%、より好ましくは0.001%~0.05%であることを特徴とする、実施態様1~9のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0107】
11. 割合が、組成物の総重量に対するカタツムリ分泌物の重量として表される場合に、組成物中のカタツムリ分泌物の量は、0.5%~15%、好ましくは1%~10%、より好ましくは2%~8%、さらにより好ましくは約5%であることを特徴とする、実施態様1~10のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0108】
12. 局所使用のためのものであることを特徴とする、実施態様1~11のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0109】
13. クリーム、ゲル、クリーミゲル、ローション、ペースト、フォーム、液剤、懸濁液、エマルジョン、ミルク、およびスティックから選択され、好ましくはクリーム、ゲル、およびクリーミゲルから選択され、より好ましくはクリームおよびゲルから選択されることを特徴とする、実施態様12に記載の医薬組成物。
【0110】
14. 実施態様1~13のいずれか1つに記載の医薬組成物と、抗酸化剤を含む栄養補助食品とを含むことを特徴とする、キット。
【0111】
15. 白斑の予防および/または治療に使用するための、実施態様1~13のいずれか1つに記載の医薬組成物または実施態様14に記載のキット。
【0112】
16. 白斑が非分節性白斑であることを特徴とする、実施態様15に記載の医薬組成物または使用のためのキット。
【0113】
17. それを必要とする患者における白斑の予防および/または治療のための方法であって、治療上有効量の実施態様1~13の組成物を適用する工程を含むことを特徴とする、方法。
【0114】
18. 白斑の予防および/または治療を必要とする患者における白斑の予防および/または治療のための方法であって、実施態様1~13の組成物の治療的有効量を適用する工程と、治療された皮膚領域を光線療法に曝露する工程とを含むことを特徴とする、方法。
【0115】
19. 光線療法が、日光または特定の波長の放射線、例えばUVAおよびUVB放射線を含むUV放射線への曝露を含むことを特徴とする、実施態様18に記載の使用。
【0116】
20. 前記方法が、前記患者に抗酸化剤を投与する追加のステップを含むことを特徴とする、実施態様18または19に記載の方法。
【0117】
21. 白斑が非分節性白斑であることを特徴とする、実施態様17~20のいずれか1つに記載の方法。
【実施例】
【0118】
〔実施例1 血症阻害剤ペプチド〕
配列番号40のMIA阻害剤を、実施例2の組成物を調製するために使用した。
【0119】
〔調製実施例1: カプセル化されたMIA阻害剤ペプチド〕
MIA血症阻害剤ペプチドの標的化マイクロカプセルを、内部ポリマーが(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)であり、外部ポリマーがポリビニルアルコール(PVA)である二層マイクロカプセルとして調製し、前記カプセルは、メラノコルチン1(MC1)受容体アゴニストペプチドパルミトイル-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-DPhe-Arg-Trp-Gly-Lys-DPro-Val-NH-(CH2)3-(OCH2CH2)2-CH2-NH2(配列番号50)を表面に付着させ、これを、ペプチドのアミノ末端基とPLGAからのカプセルの表面上で利用可能なカルボキシル基との間のアミド結合によってカプセルに結合させた。前記マイクロカプセルは、国際特許出願WO-A-2015/075116の実施例1に開示されているものと類似の方法を用いて調製された。
【0120】
得られたカプセル中のMIA阻害剤ペプチドの割合は、カプセルの総重量に対して約35重量%であった。
【0121】
これらの標的カプセルを、約0.1重量%のカプセルを含む水溶液の形態で本発明の組成物(実施例2参照)に組み込んだ(この溶液はキサンタンガム、フェノキシエタノール、カプリリルグリコール、グリセリン、カプリル酸グリセリルおよびフェニルプロパノールも含んでいた)。
【0122】
〔調製実施例2: 金-抗MIAペプチドコンジュゲート〕
国際特許出願2019/185696の実施例1および2に開示された手順と類似の手順に従って、まず、クエン酸ナトリウムで金塩(HAuCl4)を還元することによって金ナノ粒子を調製し、次いで、MIA阻害剤ペプチドを添加することによって、MIA阻害剤ペプチド(配列番号40)を金ナノ粒子とコンジュゲートさせた。
【0123】
金コンジュゲート中のMIA阻害剤ペプチドの割合は、金-MIA阻害剤コンジュゲートの総重量に対して約25重量%であった。
【0124】
このコンジュゲートを、約0.5重量%のコンジュゲートを含む水性分散液の形態で本発明の組成物(実施例2参照)に組み込んだ(この分散液はキサンタンガムおよびフェノキシエタノールも含んでいた)。
【0125】
〔実施例2: 本発明による組成物の調製〕
本発明に従った組成物を、以下の表に列挙された成分を用いて調製した。
【0126】
【0127】
組成物を調製するために、配列番号40のMIA阻害剤(「抗MIA」)ペプチドを使用した。実施例1に開示されているように、それは:
- メラニン細胞標的カプセル(成分D2a)内に封入して、
- 金ナノ粒子(成分D2b)とのコンジュゲートとして、
- 遊離ペプチド(成分D2c)として、
のいずれかで添加した。
【0128】
実施例1に開示されているように、成分D2aおよびD2bを溶液/分散液として添加した。成分D2c(遊離MIA阻害剤ペプチド)を水溶液(0.1wt%)として添加した。
【0129】
したがって、組成物A、B、CおよびD中のMIA阻害剤ペプチドの割合は、それぞれ約0.0035%(35ppm)、0.0025%(25ppm)、0.005%(50ppm)および0.01%(100ppm)であった。
【0130】
組成物を調製するために、第1の成分A1~A6を約70℃~75℃に加熱し、完全に混合して第1の液相(「相A」)を得た。成分B1~B8を別々に混合して溶液を形成し、これを約70℃~75℃に加熱した。相Aをこの溶液に加え、高剪断Ultra-Turraxミキサー中で8000rpmにて約3分間乳化し、次いでエマルジョンをブレードミキサー中で300rpmにて約15分間撹拌した。成分C1~C3を60℃で添加し、混合物を室温まで冷却し、成分D1、D2a/D2b/D2cおよびD3の1つを最後に添加した。組成物の最終pHは、5.5~6.5であることが確認された(または、そうでなければ10%クエン酸または10%水酸化ナトリウムで調整した)。
【0131】
〔実施例3 MIA阻害剤ペプチド-カタツムリ分泌物の組み合わせの有効性を評価するための比較試験〕
実施された検定法では、白斑を患っている患者において、3つまでの組成物が比較試験された。信頼性のある比較データを得るために、3つの組成物すべてを、それぞれの患者において、それらを様々な色素脱失領域で使用することによって試験した。
図1は、例えば3つの仮想的な試験組成物(1、2、および3)のための、無作為化(ランダム化)された治療部位のいくつかの例を示す。
【0132】
MIA阻害剤ペプチドとカタツムリ分泌物を組み合わせることの影響を評価するために、以下の組成物を比較した。
【0133】
【0134】
比較-Iおよび比較-II組成物は、実施例1に開示されたものと同じ賦形剤A1~A5、B1~B8、C1~C3およびD3を同じ量で使用し、水量を調整して調製した。比較I製剤は5%のカタツムリ分泌物(D1)を含むが、MIA阻害剤を含まず、比較II製剤は5%のMIA阻害剤ペプチド0.1%溶液(すなわち、50ppm)を含むが、カタツムリ分泌物は含まなかった。製剤Cは、カタツムリ分泌物の5%およびMIA阻害剤ペプチドの50ppmの両方を含んでいた。比較製剤の調製は、実施例2に開示されたものと類似していた。
【0135】
試験では、白斑を患う3人の患者(女性2人および男性1人)を3人の製剤で治療した。顔面、胸、腋窩、腕、肘、前腕、手首、手、腹部、背中、臀部、大腿部、膝および脚を含む異なる解剖学的部位を治療した。
【0136】
治療は、3ヶ月間、1日2回、治療領域にクリームを適用することからなった。
【0137】
治療が完了した後、0~10のスケールを用いて、治療領域の再色素沈着の割合を評価することによって有効性を評価し、0は影響がなかったことを意味し、10は、罹患領域の100%の再色素沈着を意味する。
【0138】
結果を以下の表に示す。
【0139】
【0140】
したがって、カタツムリ分泌物のみを含む組成物は、いかなる改良ももたらさなかった。MIA阻害剤のみを含む組成物は、白斑パッチの中等度の再色素沈着(約20%)のみを提供した。カタツムリ分泌物およびMIA阻害剤の両方を含む本発明の組成物(組成物C)は、罹患した皮膚領域のほぼ60%の再色素沈着を有する最良の成果を提供した。
【0141】
〔実施例4 本発明の組成物の有効性を評価するための試験〕
製剤A、BおよびC(実施例2)の有効性を評価するために、前向き臨床試験を実施した。
【0142】
非分節性白斑に罹患している11人の患者(女性7例および男性4例、18~60歳)を登録した。16の異なった解剖学的部位、すなわち、目の周囲、口の周囲、頸部、胸、腋窩、腕、肘、前腕、手首、手、腹部、背中、臀部、大腿部、膝および脚を治療した。
【0143】
異なる色素脱失領域で製剤を用いて、全例で3つの製剤を試験した。例えば、
図1に示すように、治療部位を無作為化した。
【0144】
治療は、5ヶ月間、1日2回、治療領域にクリームを適用することからなった。治療中、患者は、ある程度の日光曝露を受けるか、または日光床を使用するように要求された。また、経口抗酸化組成物(ポリポディウムロイコトモス抽出物、緑茶抽出物、およびビタミンEを含む)を摂取して、日光曝露に起因するあらゆる有害作用を中和するように求めた。
【0145】
9人の患者(すなわち、患者の82%)は、分析された3つの治療全てで少なくとも部分的な再色素沈着を示し、一方、患者のうちの2人は非応答であった。大部分の応答者は白斑性色素脱失領域の顕著な再色素沈着を示し、再色素沈着の程度は90%以上であった。
【0146】
試験した3つの組成物(A、BおよびC)の間に有意差は見られなかった。
【0147】
例えば、左側に組成物A、右側に組成物Bを投与した1例の治療前後の顔面を
図2に示す。組成物Cの治療前後の別の患者の顔面を
図3に示す。
【配列表】
【国際調査報告】