(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-08
(54)【発明の名称】徐放性インプラントのための後眼房送出デバイス
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20230801BHJP
【FI】
A61F9/007 130E
A61F9/007 170
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501432
(86)(22)【出願日】2021-07-09
(85)【翻訳文提出日】2023-03-10
(86)【国際出願番号】 US2021041189
(87)【国際公開番号】W WO2022011321
(87)【国際公開日】2022-01-13
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591018268
【氏名又は名称】アラーガン、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ゲブレメスケル アラサール
(72)【発明者】
【氏名】ノヴァコヴィク ゾーラン
(72)【発明者】
【氏名】オーブション デヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンデン ドリース ジョン
(57)【要約】
送出デバイスとカニューレの管腔内で保持プラグに対して近位に位置決めされた眼内インプラントとを含む、患っている患者の眼内圧を低減するためのシステム。送出デバイスは、オペレータによって保持されるようなサイズのハウジングと、アクチュエータとを有する。送出デバイスは、管腔を定めてハウジングに結合された近位端を有するカニューレを有する。カニューレは、近位端から長手軸線に沿って管腔からの鈍頭非斜角遠位開口部を定める丸められた内縁及び外縁を有する遠位端まで延びる。保持プラグは、カニューレに取り付けられて遠位開口部の近くで管腔に張っている。関連の方法、インプラント、及び送出ツールを提供する。
【選択図】
図1H
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患っている患者の眼内圧を低減するためのシステムであって、
オペレータによって保持されるようなサイズを有し、かつアクチュエータを備えるハウジング、
管腔を定めるかつ前記ハウジングに結合された近位端を有するカニューレであって、該カニューレが、長手軸線に沿って該近位端から遠位端まで延び、該遠位端が、該管腔からの鈍頭非斜角遠位開口部を定める丸められた内縁及び外縁を有する前記カニューレ、及び
前記カニューレに接着されて前記遠位開口部の近くで前記管腔に張っている保持プラグ、
を備える送出デバイスと、
前記保持プラグに対して近位に前記カニューレの前記管腔内に位置決めされた眼内インプラントと、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記カニューレは、前記近位端と前記遠位端の間に約12mmと約18mmの間である露出作動長さを有することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記カニューレは、自己密封式角膜切開部又は穿刺部を通って延びるようなサイズの外寸を有することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記カニューレは、約28ゲージよりも大きくないことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記カニューレは、約50μmよりも大きくない壁厚を有することを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記カニューレの外面が、シリコーン処理され、該カニューレの前記管腔は、実質的に非シリコーン処理のものであることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記保持プラグは、前記デバイスの作動の前の前記管腔からの前記インプラントの不用意な放出を防止することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記保持プラグは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の保持器溶液から形成されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記保持器溶液は、約6,000cPと約13,000cPの間の粘性を有することを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記保持器溶液は、約2.5%よりも高くかつ約4%よりも低い濃度を有することを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記保持器溶液は、約100μgよりも大きくかつ約300μgよりも小さい分注質量として前記カニューレの前記管腔内に分注されることを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記保持器溶液は、8,640cP-12,760cPの見かけ粘性を有して125μg-200μg間の分注質量として28ゲージである前記カニューレの中に分注される水中の3%F4M-HPMCであることを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
前記インプラントは、約3.0mmよりも大きくない長さと約0.5mmよりも大きくない最大幅とを有することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記眼内インプラントは、該インプラントの約20重量%の量で存在するビマトプロスト又はその塩と少なくとも1つの生体分解性ポリマーを備える生体分解性ポリマー母材とを備えることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記ハウジング上の前記アクチュエータは、前記カニューレの前記管腔を通してプッシュロッドを移動し、リンケージを通じて該管腔から前記インプラントを押し出すことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記アクチュエータは、前記リンケージを通して前記プッシュロッドに結合され、該プッシュロッドは、該アクチュエータが押し下げられて該リンケージが徐々に平坦になる時に前記長手軸線に沿って移動可能であることを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記プッシュロッドは、前記アクチュエータを用いた前記インプラントの展開時に該プッシュロッドの遠位端が前記カニューレの前記遠位端を越して前進するのに十分な該カニューレの長さに対する長さを有することを特徴とする請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
患っている患者の眼内圧を低減するためのシステムであって、
オペレータによって保持されるようなサイズを有し、かつアクチュエータを備えるハウジング、
前記アクチュエータにリンクされたプッシュロッド、
前記ハウジングに結合された近位端と遠位端との間で長手軸線に沿って延びる管状壁を備えるカニューレであって、該管状壁が、前記プッシュロッドを摺動可能に受け入れるようなサイズを有する管腔を定め、
前記遠位端が、前記管腔の中への鈍頭非斜角遠位開口部を定める丸められた内縁及び外縁を有し、前記近位端と該遠位端の間の前記管状壁が、長さ約12mm及び約18mmであり、該管状壁が、その外面上でシリコーン処理され、該管腔が、非シリコーン処理のものである、
前記カニューレ、及び
前記遠位開口部の近くで前記管腔内に閉じ込められ、かつそれに張っており、約3%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)保持器溶液の分注質量から形成される保持プラグ、
を備える送出デバイスと、
前記保持プラグに対して近位にかつ前記プッシュロッドに対して遠位に前記カニューレの前記管腔内に位置決めされ、20重量%ビマトプロスト又はその塩と少なくとも1つの生体分解性ポリマーを備える生体分解性ポリマー母材とを備える眼内インプラントと、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項19】
それを必要とする患者の眼内圧を低減する際のビマトプロスト含有眼内インプラントの有効性を改善する方法であって、
単一ビマトプロスト含有眼内インプラントを前記患者の眼の後眼房の中に位置決めする段階、
を備え、
前記単一ビマトプロスト含有眼内インプラントは、前記眼の線維柱帯網により近い前記患者の該眼の前眼房の中に位置決めされた同等のビマトプロスト含有眼内インプラントと比較して眼内圧のより大きい低減を引き起こす、
ことを特徴とする方法。
【請求項20】
前記ビマトプロスト含有眼内インプラントは、約6ヶ月までの期間にわたって溶出する6、10、15、又は20μgのビマトプロスト又はその塩を備え、
前記インプラントは、約12ヶ月と約24ヶ月の間の期間にわたって前記患者の前記眼内圧を低減するのに有効である、
ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記インプラントを閉じ込める管腔を有する鈍頭先端カニューレを瞳孔の少なくとも一部分にわたってかつ虹彩の少なくとも一部分の下を前記前眼房を通して前進させる段階と、
前記インプラントを前記管腔に張るように前記カニューレに取り付けられた保持プラグを越してかつ該カニューレの丸められた内縁及び外縁によって定められた遠位開口部から出るように該カニューレの該管腔を通して押す段階と、
前記インプラントを前記虹彩の背後の前記眼の前記後眼房の領域内に放出する段階と、
を更に備えることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2020年7月10日出願の米国仮特許出願第63/050,452号及び2021年7月8日出願の米国仮特許出願第63/219,440号に対する優先権の利益を主張するものである。これらの出願の内容全体は、それらの全体的な引用によって組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
緑内障は、一般的に、関連の視野欠損を有する進行性視神経症によって特徴付けられる眼球の進行性疾患である。緑内障は、更に、眼内圧の増大に関連付けられる場合がある。その病因に基づいて、緑内障は、原発性又は続発性として分類されている。成人での原発緑内障は、開放隅角緑内障又は急性又は慢性閉塞隅角緑内障のいずれかであると考えられる。続発性緑内障は、ぶどう膜炎、眼内腫瘍、又は膨化白内障のような既存眼疾患から生じる。
【0003】
原発性緑内障の根本原因は未だ不明である。危険因子は、高いか又は上昇した眼内圧、高齢、及び家族歴を含む。高いか又は上昇した眼内圧は、房水の流出の閉塞に起因する。原発性開放隅角緑内障では、前眼房及びその解剖学的構造は正常に見えるが、房水の排出が妨げられる。急性又は慢性閉塞隅角緑内障では、前眼房が浅く、濾過隅角が狭く、虹彩がシュレム管の入口で線維柱帯網を閉塞させる場合がある。瞳孔拡張は、虹彩の基部を隅角に対して前方に押圧すると考えられ、瞳孔ブロックを生成し、すなわち、急性発作を引き起こす場合がある。狭い前眼房隅角を有する眼球は、様々な重度の急性閉塞隅角緑内障発作を起こしやすい。
【0004】
続発性緑内障は、後眼房から前眼房の中へのかつそれに続くシュレム管の中への房水の流れとのいずれかの干渉によって引き起こされる。前眼部の炎症性疾患は、膨隆虹彩内に完全な虹彩後癒着を引き起こすことによって房水の流出を妨げる場合があり、瞳孔を通る房水の移動を阻害して眼内圧の増大を招く場合がある。他の一般的な原因は、眼内腫瘍、膨化白内障、網膜中心静脈閉塞症、眼球の外傷、手術手順、及び眼内出血である。全てのタイプを一緒に考慮すると、緑内障は、40歳超の全人口の約2%で発症し、自覚可能な周囲視力喪失及びそれに続く中心視力喪失に進行する前の数年にわたって無症状である場合がある。
【0005】
緑内障は、緑内障治療の臨床目標が、前眼房からの房水流出の閉塞の理由によって増大した眼内圧を低減することだけではなく、眼球の後側での網膜細胞又は視神経細胞(すなわち、神経節細胞)の障害又は喪失に起因する視力の喪失を防止するか又はその発生を低減すること(すなわち、神経防護作用)でもあるとすることができるので、潜在的に前眼部と後眼部の両方の病状と考えられる。IOPを低減することは、緑内障の進行を遅延させるのを助けることができ、かつ一貫したIOP低減は、視神経障害を発症及び進行させるリスクの低減に関連付けられことを臨床治験が示している。
【0006】
局所療法を遵守しない患者は、緑内障に起因する視力喪失を防止する上での主な課題の1つである。薬を服用しない患者は、緑内障からの視力喪失の最も高いリスクがあるが、彼らの薬を断続的に服用する患者も、IOP変動も一部の患者では進行に対する可能なリスク因子として識別されているのでリスクがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US 9,492,316
【特許文献2】WO 2019/094652
【特許文献3】US 8,571,802
【特許文献4】US 2019/01923414
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Lim他、Ophthalmology、2008年5月、115(5)、790~795.e4.
【非特許文献2】USP23;NF18(1995年)1790~1798ページ
【非特許文献3】Liu及びDing著「緑内障実験動物モデルの確立:ヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用する場合と用いない場合とのマイクロビーズ注射の比較(Establishment of an experimental glaucoma animal model: A comparison of microbead injection with or without hydroxypropyl methylcellulose)」、Experimental及びTherap.Med.14、1953~1960、2017年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上を踏まえて、特に眼球の後眼房に治療薬を送出するための新しい薬物送出デバイス、システム、及び方法が有益であると考えられる。角膜障害のリスクを軽減しながらIOPの低減の改善を提供することは特に有利であると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
態様では、患っている患者の眼内圧を低減するためのシステムを提供する。システムは、オペレータによって保持されるようなサイズのハウジングと、アクチュエータとを有する送出デバイスを含む。送出デバイスは、管腔を定めるかつハウジングに結合された近位端を有するカニューレを含む。カニューレは、長手軸線に沿って近位端から遠位端まで延びる。カニューレの遠位端は、管腔からの鈍頭非斜角遠位開口部を定める丸められた内縁及び外縁を有する。保持プラグは、カニューレに接着して遠位開口部の近くで管腔に張っている。眼内インプラントは、保持プラグに対して近位のカニューレの管腔内に位置決めされる。
【0011】
カニューレは、約12mmと約18mm間である近位端と遠位端間の露出作動長さを有することができる。カニューレは、自己密封角膜切開部又は穿刺部を通って延びるようなサイズの外寸を有することができる。カニューレは、約28ゲージよりも大きくないとすることができる。カニューレは、約50μmよりも大きくない壁厚を有することができる。カニューレの外面は、シリコーン処理することができ、カニューレの管腔は、実質的に非シリコーン処理のものとすることができる。保持プラグは、デバイスの作動前に管腔からのインプラントの不用意な放出を防止する。保持プラグは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の保持器溶液から形成することができる。保持器溶液は、約6,000cPと約13,000cP間の粘性を有することができる。保持器溶液は、約2.5%よりも高くかつ約4%よりも低い、好ましくは約3%の濃度を有することができる。保持器溶液は、100μgよりも大きくかつ300μgよりも小さい分注質量としてカニューレの管腔内に分注することができる。保持器溶液は、約8,640cPから約12,760cPの見かけ粘性を有して28ゲージであるカニューレの中に125μg~200μg間の分注質量として分注された水中の3%F4M-HPMCとすることができる。
【0012】
インプラントは、3.0mmよりも大きくない長さと、約0.5mmよりも大きくない最大幅とを有することができる。眼内インプラントは、インプラントの約20重量%の量で存在するビマトプロスト又はその塩と、少なくとも1つの生体分解性ポリマーを備える生体分解性ポリマー母材とを含むことができる。眼内インプラントは、DURYSTA(登録商標)とすることができる。眼内インプラントは、6μg、10μg、15μg、又は20μgのいずれかの投与量のDURYSTA(登録商標)とすることができる。
【0013】
ハウジング上のアクチュエータは、カニューレの管腔を通してプッシュロッドを移動し、リンケージを通じて管腔からインプラントを押し出すことができる。アクチュエータは、リンケージを通してプッシュロッドに結合することができ、プッシュロッドは、アクチュエータが押し下げられる時にリンケージが徐々に平坦になると長手軸線に沿って移動可能である。プッシュロッドは、アクチュエータを使用するインプラントの展開時にプッシュロッドの遠位端がカニューレの遠位端を越して前進するのに十分なカニューレの長さに対する長さを有することができる。
【0014】
相互関連態様では、オペレータによって保持されるようなサイズのハウジングとアクチュエータとを有する送出デバイスを含む、患っている患者の眼内圧を低減するためのシステムを提供する。送出デバイスは、アクチュエータにリンクされたプッシュロッドと、ハウジングに結合された近位端と遠位端との間で長手軸線に沿って延びる管状壁を有するカニューレとを含む。管状壁は、プッシュロッドを摺動可能に受け入れるようなサイズの管腔を定める。カニューレの遠位端は、管腔の中への鈍頭非斜角遠位開口部を定める丸められた内縁及び外縁を有する。近位端と遠位端間の管状壁は、約12mm及び約18mm長である。管状壁は、その外面上でシリコーン処理され、管腔は、非シリコーン処理のものである。保持プラグは、遠位開口部の近くで管腔内に閉じ込められ、かつそれに張っている。保持プラグは、3%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)保持器溶液の分注質量から形成される。眼内インプラントは、保持プラグに対して近位かつプッシュロッドに対して遠位のカニューレの管腔内に位置決めされる。インプラントは、20重量%ビマトプロスト又はその塩と、少なくとも1つの生体分解性ポリマーを有する生体分解性ポリマー母材とを含む。
【0015】
相互関連態様では、ビマトプロスト含有眼内インプラントのそれを必要とする患者の眼内圧を低減する際の有効性を改善する方法を提供する。本方法は、患者の眼球の後眼房の中に単一ビマトプロスト含有眼内インプラントを置く段階を備える。単一ビマトプロスト含有眼内インプラントは、患者の眼球の前眼房内に眼球の線維柱帯網により近く位置決めされた同等のビマトプロスト含有眼内インプラントと比較して眼内圧のより大きい低減を引き起こす。ビマトプロスト含有眼内インプラントは、約6ヶ月までの期間にわたって溶出する6、10、15、又は20μgのビマトプロスト又はその塩を含むことができる。インプラントは、約12ヶ月と約24ヶ月間又はそれよりも長い期間にわたって患者の眼内圧を低減するのに有効とすることができる。本方法は、インプラントを含有する管腔を有する鈍頭先端カニューレを前眼房を通して瞳孔の少なくとも一部分にわたってかつ虹彩の少なくとも一部分の下を前進させる段階と、インプラントを管腔に張るようにカニューレに取り付けられた保持プラグを越えてかつカニューレの丸められた内縁及び外縁によって定められた遠位開口部から出るようにカニューレの管腔を通して押す段階と、インプラントを虹彩の背後の眼球の後眼房の領域内に放出する段階とを更に含むことができる。一部の変形では、以下のうちの1又は2以上は、上述の組成物、方法、デバイス、及びシステムにあらゆる実施可能な組合せで任意的に含めることができる。より詳細な組成物、方法、デバイス、及びシステムは、添付図面及び以下の説明に列挙している。他の特徴及び利点は、その説明及び図面から明らかであろう。
【0016】
ここで、これら及び他の態様を下記の図面を参照して詳細に以下に説明する。一般的に、図は、絶対的な観点又は比較的にも縮尺通りではなく、むしろ例示であるように意図している。同じく、特徴及び要素の相対配置は、例示の明瞭化の目的で修正される場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1B】高精細光干渉断層撮影システム(HD-OCT)によって可視化された哺乳動物の眼を示す図である。
【
図1C】毛様体によって眼球の後眼房から瞳孔を通して前眼房の中に分泌される房水の標準図である。
【
図1D】HD-OCTシステムによって可視化された後眼房内に位置決めされたインプラントを有する哺乳動物の眼を示す図である。
【
図1E】先鋭ツールを使用して角膜に切開部を形成する段階を示す図である。
【
図1F】
図1Eに示す切開部を通じて角膜を通して挿入されているカニューレ内にインプラントを有するアプリケータを示す図である。
【
図1G】後眼房内にインプラントを展開するために瞳孔を通してかつ虹彩の背後に位置決めされているカニューレを示す図である。
【
図1H】アプリケータのカニューレから展開されて毛様溝内に位置決めされたインプラントを示す図である。
【
図2B】インプラント送出装置のハウジング、リンケージ、及び作動レバーの部分分解側面図である。
【
図2D】
図2Aのインプラント送出装置のノーズコーン及びカニューレの拡大側面図である。
【
図2F】保持プラグの存在を示す
図2Eのカニューレの断面図である。
【
図3】
図2Cに示すインプラント送出装置のリンケージの拡大斜視図である。
【
図4A】
図2Cに示すインプラント送出装置の作動レバーの拡大斜視図である。
【
図5】リンケージと係合した安全タブの断面部分図である。
【
図6】異なる投与量の前眼房インプラントの配置後3ヶ月にわたるビーグル犬でのベースラインからのIOPの平均百分率変化を示す図である。
【
図7】1週間後の対照(ハッチング表示バー)と比較したビマトプロストを含有する後眼房インプラント(中塗りバー)によるIOP低減を示す図である。
【
図8】対照(ハッチング表示バー)と比較してビマトプロストを含有するインプラント(中塗りバー)に対する角膜中央内皮細胞数が後眼房インプラントの投与後の1週間後に安定であることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面は、単に例であり、縮尺通りであることを意味しないことを認めなければならない。本明細書に説明するデバイスは、各図に必ずしも描いていない特徴を含む場合があることは理解されるものとする。
【0019】
本明細書に説明するのは、生体分解性眼内インプラントを眼球の後眼房の中に送出するための新しく改善された方法である。本方法は、高い治療効果、低い視力喪失リスク、低い角膜内皮障害誘起リスク、及び/又は低い角膜内皮細胞密度喪失リスクを含むそのようなインプラントを前眼房の中に投与することに優る卓越した利点を与える。好ましくは、本方法は、眼球病状、特に緑内障及び高眼圧、並びに眼内圧増大のような緑内障に関する病状を治療するのに有効な量のビマトプロストのようなプロスタミドの長期放出を可能にする生体分解性インプラントを送出するのに使用することができる。
【0020】
同じく本明細書に説明するのは、生体分解性眼内インプラントを眼球の後眼房の中に投与するためのデバイスである。デバイスは、長いカニューレ長を有し、任意的にシリコーン処理されたカニューレ外面を有する丸められた縁部を有する鈍頭先端カニューレを使用し、毛様溝及び/又は毛様小帯の上部又は隣接部を含む後眼房の中にそのようなインプラントを送出することに特化して設計される。カニューレは、後眼房の中への吐出の前にインプラントを管腔の中に保持するためのプラグを含む。デバイスは、虹彩、水晶体包、及び角膜面への有意に低い偶発的外傷リスクしか与えずに他の挿入デバイスと比較して信頼性が高くかつ安全な後眼房の中への各インプラントの送出を可能にする。
【0021】
インプラントは、眼球の後眼房の中への配置に適するようなサイズであり、かつそのように構成され、後眼房内で緑内障を治療するのに有利なプロスタミドのような治療薬又は他の治療薬を房水の生成及び流出を調整する組織に送出することができる。本明細書に説明する眼内インプラントは、2ヶ月又はそれよりも長くにわたって続く持続期間にわたって眼内圧降下レベルの薬物を患者に与えるように設計される。
【0022】
プロスタミドは、緑内障、眼内圧増大、並びに術後及びレーザ治療後の高眼圧発作のような数々の様々な高眼圧状態の治療で有利な効能を有する高眼圧剤である。プロスタミドは、引用によって本明細書に組み込まれているU.S.9,492,316により詳細に議論されているプロスタグランジンF2αC-1アミド系に属する。
【0023】
市販のプロスタミドは、プロスタグランジン(PG)感度受容体と有意な相互作用を示さないビマトプロストを含む。それにも関わらず、ビマトプロストは、有効な抗高眼圧剤であり、開放隅角緑内障又は高眼圧を有する患者内で増大した眼内圧を低減するのに非常に有効である。一般的に、ビマトプロストは、LUMIGAN(登録商標)という商品名で公知の点眼溶液の形態での患者による使用に向けて調合される。通常の治療過程では、患者は、増大した眼内圧を低減するために毎日1回LUMIGAN(登録商標)溶液の小滴を罹患した眼球の面に適用する。
【0024】
ビマトプロストは、圧力感度(線維柱帯と推定される)流出経路を拡張すること、又は房水生成率に有意な影響を及ぼすことなく圧力に依存しない(ぶどう膜強膜)流出を増大することのいずれかによって房水流出を増大することによって眼内圧(IOP)を低減すると考えられる(Lim他、Ophthalmology、2008年5月、115(5)、790~795.e4.)。
【0025】
これらのぶどう膜強膜流出経路に直接送出を行うために眼球の前眼房隅角内に適合するようなサイズのインプラントが存在する(各々が引用によって本明細書に組み込まれているU.S.9,492,316及びWO 2019/094652を参照されたい)。浸食性ポリマーからの薬物の放出は、いくつかの機構の結果又は機構の組合せの結果である。これらの機構のうちの一部は、インプラント面からの脱離、溶解、水和ポリマーの多孔性チャネルを通る拡散、及び浸食を含む。生体分解性ポリマー母材を含む眼内インプラントからの治療薬剤の放出は、初期バースト放出に続く放出治療薬剤量の漸次増加を含む場合があり、又は治療薬剤放出の初期遅延に続く放出増加を含む場合がある。フィックの拡散の第二法則は、非定常状態の拡散挙動、すなわち、経時的に変化する拡散を説明する。フィックの第二法則は、引用によって本明細書に組み込まれているU.S.8,571,802に議論されているように、薬物の拡散と薬物を含有するインプラントの最適な埋め込み部位とを予想するのに有用である。インプラントに最も近い眼球組織内の薬物濃度が最も高く、インプラントから離れた場所の薬物濃度と比較してより治療効果が高いと考えられる。従って、前眼房からの房水のぶどう膜強膜流出を改善するための既存拡散に基づくインプラントは、フィックの第二法則に基づくと理想的なインプラント位置が治療されている流出経路(すなわち、線維柱帯網)に最も近いので、好ましくは前眼房内に位置決めされていた。従来、フィックの第二法則は、緑内障を治療するためのインプラントがより前眼部(すなわち、前眼房内)に位置決めされる理由、及び黄斑疾患を治療するためのインプラントがより後眼部(すなわち、硝子質内)に位置決めされる理由に関する根拠を与えるものである。しかし、本明細書の他の箇所で説明するように、インプラントを後眼房の中に位置決めすることは、従来の前眼部配置に優るいくつかの利点を有する。
【0026】
図1A~
図1Dは、眼球100の断面図を例示している。眼球100の特定の領域は、角膜102と、虹彩104と、毛様体107と、毛様溝111とを含む。角膜102及び虹彩104は、前眼房106を取り囲む。前眼房内に前眼房隅角112と線維柱帯網114とが存在する。更に、角膜上皮118と、強膜116と、硝子体119と、毛様小帯120と、毛様突起121とが示されている。眼球の硝子体腔は、眼球の背後3分の2であり(水晶体110の背後にある)、硝子体119と、網膜と、視神経とを含む。虹彩104の背後に、後眼房108と水晶体110がある。
【0027】
毛様体107は、血管からの分泌によって後眼房108内に房水を絶えず形成する。房水は、水晶体110及び虹彩104の周りから前眼房106の中に流入し、虹彩角膜角112に位置する線維柱帯網114を通って眼球10から流出する(
図1Cの矢印を参照されたい)。房水の一部は、虹彩基部の近くにある線維柱帯網114を通ってシュレム管113の中に滲み出し、この小さいチャネルは、眼静脈の中に排出する。少なめの分量が毛様体107を通り、最後に強膜116を通った後に静脈循環に再合流する(ぶどう膜強膜流出路)。
【0028】
後眼房108は、眼球100の内側で前眼房106の背後にかつ硝子体腔119の前にある狭い体液充満空間を意味する。後眼房108は、前部チン小帯120と、水晶体前嚢と、前部毛様体107と、虹彩104の背部とによって境界が定められる。後眼房108は、虹彩104の周囲部の後部かつチン小帯120の前部にある空間を含み、更に毛様溝111を含む。毛様溝111の体積は、患者毎に異なる場合があるが、一般的に、虹彩104の後面と毛様体107の前面の間である後眼房108の空間を含む。毛様溝111の最も深い部分は、虹彩基部123の後面と毛様体107の前面との接合部、及びこの深い場所から離れるように毛様突起121の先端に向けて延びる毛様溝111の浅い領域に近い。
【0029】
前眼房インプラントは、典型的には、先鋭斜角カニューレを使用して角膜102を通して挿入され、前眼房106内で、例えば、虹彩104と最も内側の角膜面である角膜内皮との間に吐出される。前眼房インプラントは、虹彩角膜角112とも呼ぶ(
図1Aを参照されたい)前眼房106の隅角(虹彩104の前面と角膜102の裏面の間の接合部)の中に下方に定着する。角膜102の外面は、角膜上皮118によって覆われ、角膜102の内面は、薄く壊れやすい内皮細胞層によって覆われる。前眼房106の虹彩角膜角112内の線維柱帯網114及び毛様筋先端前側は、IOPを降下させるための主な房水流出経路であるので、前眼房インプラントは、これらとの接触状態になるように選択的に位置決めされる。しかし、この場所に位置決めされたインプラントは、角膜内皮を損傷し、視力を阻害する可能性を有する。角膜内皮細胞への接触は、正常では透明な角膜の混濁を招く角膜水腫に寄与する可能性があり、それが角膜中央部まで延びた場合は視力喪失をもたらす場合がある。後眼房の中へのインプラントの配置は、これらの制約を解消する。更に、後眼房の中へのインプラントの配置は、緑内障を治療するのに有用な治療薬を送出する実現可能な代替モードをそのような治療薬が従来の前眼房の場所に位置決めされることに対して特に過敏である可能性がある患者に対して提供し、インプラントを後眼房の中に送出することの改善した安全性プロファイルに起因して複数のインプラントを同時又は順次のいずれかで送出することを潜在的に可能にするという更に別の利益を治療に当たる医師に更に提供する。
【0030】
前房内インプラントを前眼房内に吐出するインプラント送出装置は、針が眼から引き抜かれる時に内皮細胞に障害を与えて角膜の水腫及び炎症を誘起する可能性がある針へのインプラントの付着が起こらないようにインプラントを針の先端から離すように駆動するほど十分な力でインプラントを送出しなければならない。その一方で過度に力強く吐出されたインプラントは、虹彩又は前眼房の他の側に当たる場合があり、それによって出血をもたらし、更に内皮に障害を与える場合がある。更に、前眼房に位置決めされたインプラントは、薬物送出の所要時間にわたるインプラントと角膜の間の接触に起因して内皮に障害を与える恐れもある。
【0031】
本明細書に説明するインプラントは、チン小帯の上部又は毛様溝111の深めの領域内を含む後眼房内に位置決めされ、前眼房内に位置決めされる既存生体分解性眼内インプラントと比較して追加の改善を提供する。
図1C及び
図1Dは、眼球のHD-OCT画像である。
図1Dは、後眼房内に位置決めされたインプラント10を例示している。
図1E~
図1Hは、インプラント10を後眼房の中に、例えば、毛様溝111の中に展開する例示的方法を概略図に示している。眼球の後眼房の中へのインプラントの配置は、治療有効量のビマトプロストを放出して高眼圧からの長期で非一時的な解放を角膜内皮の損傷も回避しながら患者に提供する。驚くべきことに、後眼房インプラントは、IOPを低減するのに前眼房内で房水流出経路の近くに位置決めされた同等のインプラントよりも有効である。フィックの第二法則は、ターゲット流出経路(すなわち、線維柱帯網114)から離れて距離を置いて位置決めされた後眼房108の中に決定されたインプラントは、IOPを低減するのにターゲット流出経路の近くに埋め込まれたインプラントと比較してターゲット組織での薬物濃度の低減に起因してそれほど有効ではないと考えられると予想するであろう。例えば、後眼房108内に位置決めされたインプラントは、前眼房106内に位置決めされたインプラントよりも線維柱帯網114から約3mmから5mmの距離だけ遠く離れている。下記でより詳細に議論するように、フィックの第二法則を使用して計算されるターゲット組織内の薬物濃度は、後眼房インプラントでは前眼房インプラントと比較して低減する。しかし、これらの予想にも関わらず、後眼房の中へのインプラントの投与は、同じインプラントの前眼房投与の後のIOPと比較した時に、驚くべきことに、より低い眼内圧(IOP)への低減をもたらしている。単一ビマトプロスト含有眼内インプラントは、眼球の前眼房内で眼球の線維柱帯網の近くに位置決めされた同等のビマトプロスト含有眼内インプラントと比較してより有意なIOPの低減をもたらした。
【0032】
定義
以下の定義は、本発明の主題を理解する目的及び特許請求の範囲を構成するために含めたものである。本明細書に使用する略語は、化学及び生物技術内の従来の意味を有する。
【0033】
「眼内インプラント」は、例えば、前眼房を含む眼球の眼球領域に位置決めされるようなサイズであり、かつそのように構成された固体又は半固体の薬物送出のシステム又は要素を意味する。眼内インプラントをその中に配置することができる眼球の他の眼球領域は、硝子体、結膜下空間、及びテノン嚢下空間を含む。眼内インプラントは、眼球の視力をそれほど妨害することなく眼球に配置することができる。眼内インプラントの例は、ホットメルト押出成形工程によって生成され、生体分解性ポリマー母材と、このポリマー母材と会合した医薬品的に活性な薬剤とを含み、眼の中への配置に適する長さに切断されたロッド形インプラントのような押出成形生体分解性フィラメントを含む。眼内インプラントは、眼球の生理学的状態と生体適合し、眼内で有害反応を引き起こさない。本発明のある一定の形態では、眼内インプラントは、眼球の前眼房、後眼房、結膜下空間、又は硝子体の中への配置に適するように構成することができる。眼内インプラントは、生体分解性を有することができ、押出成形工程によって生成された円筒形又は非円筒形のロッドの形態に構成することができる。一部の実施形態により、眼内インプラントは、眼球の病態を治療するのに有効な活性薬剤を備えることができる。
【0034】
「前房内」インプラントは、眼球の前眼房の中への配置に適するようなサイズであり、かつそのように構成された眼内インプラントである。前眼房は、眼球の内側で虹彩と最も内側の角膜面(内皮)の間である空間を意味する。前房内インプラントは、角膜内皮に接触することなく、従って、角膜の外傷、炎症、又は水腫、又は虹彩チャフィングをもたらすことなく眼球の前眼房隅角(虹彩角膜角)内に適合することができる眼内インプラントでもある。前房内インプラントの一例は、生体分解性ポリマー母材と、このポリマー母材と会合した活性薬剤とを含み又はそれらを成分とし、哺乳動物の眼(例えば、ヒトの眼)の前眼房の中への配置に適する長さに切断されたホットメルト押出成形生体分解性ロッド形フィラメントである。ロッド形前房内インプラントは、長さが0.5mmから3mm、直径又は非円筒形ロッドの場合は最大幅が0.05mmから0.5mmとすることができる。通常、前房内インプラントは、全重量が20μgと150μgの間であり、角膜内皮に接触することなく、従って、角膜の外傷、炎症、又は水腫、又は虹彩の擦傷をもたらすことなく眼球の前眼房隅角(虹彩角膜角)内に適合することができる。例えば、本発明の装置を使用してヒトの眼球のような哺乳動物の眼球の前眼房内に送出される前房内インプラントは、長さが0.5mmから2.5mm、直径が0.15から0.3mm、全重量が20μgから120μgとすることができる。眼内インプラントは、DURYSTA(登録商標)とすることができる。好ましくは、眼内インプラントは、27ゲージ、28ゲージ、29ゲージ、又は30ゲージのシャフトを通して送出可能である。シャフトの内径は、シャフトが標準の針又は超極薄(極薄)壁の針のいずれであるかに依存して異なる場合がある。インプラントの直径、幅、又は断面積は、インプラントが針の管腔を通って摺動可能に平行移動することができるように針の管腔内に受け入れ可能なものでなければならない。
【0035】
「後眼房」インプラントは、眼球の後眼房に位置決めされるように構造化、サイズ決定、又は他に構成された眼内インプラントである。眼球の後眼房は、眼球の内側で前眼房の背後かつ硝子体腔の前にある狭い体液充満空間を意味する。後眼房は、虹彩の周囲部の背後かつ水晶体のチン小帯の前にある空間を含み、更に毛様溝を含む。後眼房インプラントは、毛様溝領域内、チン小帯、毛様突起、及び毛様筋の中又は周囲に配置することができる。好ましくは、後眼房インプラントは、長さが約3mmよりも大きくなく、直径又は最大幅が約0.5mmよりも大きくない。通常、後眼房インプラントは、全重量が約300μgよりも軽く、眼球の毛様溝内に適合することができる。後眼房インプラントは、隣接組織に対して張力又は有意な力を印加することなく眼球の毛様溝内に適合することができる。後眼房インプラントは、後眼房の自然なサイズ又は形状に影響を及ぼすことなく後眼房の中に存在する。好ましくは、後眼房インプラントは、後眼房内で組織をそれほど変形させず、代わりに薬物を送出するために後眼房内に受動的に存在する。後眼房インプラントは、DURYSTA(登録商標)とすることができる。好ましくは、後眼房インプラントは、27ゲージ、28ゲージ、29ゲージ、又は30ゲージのシャフトを通して送出可能である。シャフトの内径は、シャフトが標準の針又は超極薄(極薄)壁の針のいずれであるかに依存して異なる場合がある。インプラントの直径、幅、又は断面積は、インプラントがシャフトの管腔を通って摺動可能に平行移動することができるようにこの管腔内に受け入れ可能なものでなければならない。
【0036】
「眼内圧」(IOP)は、眼球内の体液圧を意味し、房水の分泌速度と流出速度との差によって決定される。分泌される房水の約90%は、前眼房内の線維柱帯網を通って流出する。流出に対する抵抗は、眼内圧の増大を招く場合がある。正常張力(すなわち、正常眼圧)緑内障を有する患者群の一部の個体群は、約11mmHgから21mmHgのIOPを有する場合がある。増大した眼内圧又は高眼圧を有する一部の患者群又は患者は、眼圧計を使用して測定された20mmHgよりも高い又は21mmHgのIOPを有する場合がある。本発明の開示のインプラントは、正常眼圧と高眼圧の両方の緑内障患者で眼内圧を低減する機能を有することが予想される。
【0037】
「眼球病状」という用語と「眼の医療状態」という用語とは同義であり、本明細書ではこれらの用語を交換可能に用い、これらの用語は、眼球の前眼球領域又は後眼球領域を含む眼球又はその部分又は領域のうちの1つに影響を及ぼす又は関与する疾患、病気、又は状態を意味する。眼は、視界に対する感知器官である。広い意味では、眼は、眼球、並びにそれを含む組織及び体液と、眼周囲筋(斜筋及び直筋のような)と、眼球の中又はそれに隣接する視神経の部分とを含む。本発明の開示での眼球の病態(すなわち、眼球病状)の非限定例は、高眼圧(又は眼内圧増大)、緑内障、ドライアイ、及び年齢関連の黄斑変性を含む。患者の緑内障は、開放隅角緑内障又は閉塞隅角緑内障として更に分類することができる。1つの可能な方法では、本発明の開示による装置を使用して薬物含有インプラントを受け入れる患者は、原発性開放隅角緑内障を有するか又は有すると特定的に診断することができる。開放隅角緑内障を有する所与の患者は、低い、正常、又は増大した眼内圧を有する場合がある。本発明の開示の範囲の他の形態の緑内障は、偽落屑緑内障、発育性緑内障、及び色素性緑内障を含む。
【0038】
「生体分解性ポリマー母材と会合した」は、それと混合した、その中に溶解及び/又は分散した、それによってカプセル化された、それによって囲まれた及び/又は覆われた、又はそれに結合されたことを意味する。
【0039】
「生体分解性ポリマー」又は「生体分解性インプラント」の場合の「生体分解性」という用語は、生体内で分解する要素、インプラント、又は1又は2以上のポリマーを意味し、この場合に、経時的なインプラント又は1又は2以上のポリマーの分解は、治療薬剤の放出と同時に又はそれに続いて発生する。生体分解性ポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、又は2よりも多い異なる構造反復単位を含むポリマーとすることができる。生体分解性という用語と生体浸食性という用語とは同義であり、本明細書ではこれらの用語を交換可能に使用する。
【0040】
本明細書では、投与される患者(治療を必要とするヒト又は非ヒト哺乳動物)に治療効果をもたらし、眼球の病態を治療するのに有効な化学化合物、分子、又は物質を意味するのに「活性薬剤」と、「薬物」と、「治療薬剤」と、「治療活性薬剤」と、「薬学活性薬剤とを交換可能に使用する。
【0041】
「患者」という用語は、眼球の病態の治療を必要とするヒト又は非ヒト哺乳動物を意味することができる。
【0042】
本明細書に使用する「治療する」、「治療している」、又は「治療」という用語は、眼球病状、眼球損傷、又は眼球障害の低減、解決、又は予防、又は損傷又は障害のある眼球組織の治癒を容易にすることを意味する。通常、治療は、眼球病状の少なくとも1つの兆候又は症状又は眼球病状に関するリスク因子を低減するのに有効である。
【0043】
本明細書に使用する時に、眼内インプラントを眼球の中に送出する「自己密封」方法は、針穿孔部位で縫合又は他の類似の閉鎖手段を必要とせずに針を通して患者の眼球の望ましい場所の中にインプラントを導入する方法を意味する。そのような「自己密封」方法は、穿孔部位(針が眼球に貫入する場所)が針の引き抜きの直後に完全に密封することを必要とせず、代わりに外科医又は別の同等の術者が的確な臨床決定で穿孔部位を縫合する場合があるか又はそこに他の類似の閉鎖手段を施さない場合があると考えられるようにいずれかの初期漏液が最小限であり、即座に散逸することを必要とする。一般的に、この状況では約25ゲージよりも大きくなく、約26ゲージ、約27ゲージ、約28ゲージ、約29ゲージ、又は約30ゲージの又はそれよりも小さい挿入デバイスが自己密封と見なされる。一般的に、25ゲージよりも大きい挿入デバイスは、漏液を最小にするように作用する治療薬剤又は他の薬剤、例えば、ゲル化剤又は充填剤が併用されない限り自己密封のものではない。
【0044】
「約」という言葉は、当業者が合理的に指定値と同様であると見なすと考えられる指定値を含む値範囲を意味する。実施形態では、約は、当業技術で一般的に受け入れ可能な測定を用いた場合の標準偏差内にあることを意味する。実施形態では、約は、指定値の±10%の範囲を意味する。実施形態では、約は、指定値を含む。
【0045】
本発明の開示に使用する場合に、移行句又は請求項の要部のいずれでのものであるかに関わらず、「備える」及び「備えている」という用語は、非限定的な意味を有するものとして解釈しなければならない。すなわち、これらの用語は、「少なくとも有する」又は「少なくとも含む」という句と同義に解釈しなければならない。工程の状況に使用する場合に「備えている」という用語は、当該工程が少なくとも列挙する段階を備えるが、追加の段階を備えることができることを意味する。分子、化合物、又は組成物の状況に使用する場合に「備えている」という用語は、化合物又は組成物が少なくとも列挙する特徴又は成分を含むが、追加の特徴又は成分を含むことができることを意味する。
【0046】
本明細書に説明する実施形態の理解を容易にするために、好ましい実施形態に言及し、それらを説明するのに特定の文言を使用する。本明細書に使用する用語法は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本発明の範囲を限定するように意図したものではない。状況が他に明確に定めない限り、本発明の開示を通して使用する「a」、「an」、及び「the」は、単数及び複数の指示物を含む。従って、例えば、「組成物」への言及は、複数のそのような組成物、並びに単一組成物を含み、「治療薬剤」への言及は、1又は2以上の治療薬剤及び/又は医薬薬剤、並びに当業者に公知の均等物への言及であり、その他同様である。本明細書に使用する全ての百分率及び比は、他に示さない限り、重量によるものである。
【0047】
本発明の開示に使用する「より多く」という用語は、無限数の可能性を含まない。本発明の開示に使用する「より多く」という用語は、それを使用する状況で当業者が理解すると考えられるものとして使用される。例えば、「36ヶ月よりも多く」は、インサート内の治療薬剤の効力を失うことなく37ヶ月か、又は36ヶ月よりも長い月数にわたって受療者が眼インサートを使用することができるか又は使用することを示唆するものと当業者によって理解されるであろう。同様に、例えば、「24ヶ月よりも多く」は、インサート内の治療薬剤の効力を失うことなく25ヶ月か、又は36ヶ月よりも長い月数にわたって受療者が眼インサートを使用することができるか又は使用することを示唆するものと当業者によって理解されるであろう。
【0048】
他に定めない限り、本明細書に使用する全ての科学技術用語は、本発明が属する技術の当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。矛盾する場合に、本明細書が優先することになり、本明細書では、状況が他に明確に定めない限り、単数形は、複数形を含む。本発明の実施又は試験では、本明細書に説明するものと同様又は均等な方法及び材料を使用することができるが、下記では適切な方法及び材料を説明する。本明細書で言及する全ての公開文献、特許出願、特許、及び他の参考文献は、引用によって組み込まれている。本明細書で引用のする参考文献は、主張する本発明に対する従来技術であることを容認したものではない。矛盾する場合に、定義を含む本明細書が優先することになる。これに加えて、材料、方法、及び例は、例示的ものに過ぎず、限定的であるように意図したものではない。
【0049】
本発明の開示の眼内インプラントは、眼内圧の増大に関連付けられた眼球病状を含む患者の眼での眼球病状を治療するのに、より具体的には緑内障の少なくとも1つの兆候又は症状又は緑内障に対するリスク因子を低減するのに有効とすることができる。一般的に、本方法は、眼球病状に罹患した患者の眼球の眼球領域内に生体分解性眼内インプラントを置く段階を備える。一実施形態は、患者の眼球の中にプロスタミド含有生体分解性眼内インプラントを配置し、それによって眼内で眼内圧を低減する段階を備える眼内圧増大、高眼圧、又は緑内障を患う患者での眼内圧を低減する方法である。本明細書に説明する眼内プロスタミド含有インプラントのうちの1又は2以上の使用による眼球へのビマトプロストのようなプロスタミドの制御式非一時的投与は、緑内障又は高眼圧を患う患者での眼の中へのインプラントの配置後の4ヶ月、5ヶ月、又は6ヶ月、又はそれよりも長い長期間にわたって眼内圧を低減することによって緑内障治療を改善することができる。患者の眼の中への本発明の開示の1つ又は2つのインプラントの埋め込みは、かつては毎日であった眼球へのビマトプロストの局所投与と比較して眼球内の眼内圧の日間変化を潜在的に約2ヶ月又はそれよりも長く低減することができる。
【0050】
一部の実施では、本明細書に説明する眼内インプラントのうちの1又は2以上の使用による眼球へのビマトプロストの制御式非一時的投与は、IOP低減効果が発生するよりも短い期間にわたって行われる。例えば、ビマトプロストは、インプラント(例えば、約6μg、10μg、15μg、又は20μgのビマトプロストを含有するインプラント)から眼球に1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、又は約6ヶ月までにわたって投与することができ、それに対してビマトプロストのIOP低減効果は、少なくとも12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月、又はそれよりも長くにわたって存在する。ビマトプロストのIOP低減効果は、ビマトプロストがインプラントから溶出するよりも長く持続することができる。
【0051】
上述のように、インプラントは、プロスタミドと、それを長期間にわたって、例えば、60日間又はそれよりも長く放出するように調合された生体分解性ポリマー母材とを備える又はそれらから構成される。インプラント内にPEG 3350のようなポリエチレングリコールを任意的に含めることができる。プロスタミドは、化学式Iを有する化合物を備えることができる。
ここで、破線の結合は、シス構成又はトランス構成にあるとすることができる単結合又は二重結合を表し、Aは、2個から6個の炭素原子を有し、1又は2以上のオキシドラジカルによって隔てることができ、かつ1又は2以上のヒドロキシ基、オキソ基、1個から6個の炭素原子を含むアルキルラジカルであるアルキルオキシ基又はアルキルカルボキシ基によって置換することができるアルキレンラジカル又はアルケニレンラジカルであり、Bは、3つから7つの炭素原子を有するシクロアルキルラジカル、又は4個から10個の炭素原子を有するヒドロカルビルアリールラジカル及びヘテロアリールラジカルであって、ヘテロ原子が窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子から構成される群から選択されたヘテロアリールラジカルから構成される群から選択された上記アリールラジカルであり、Xは、R
4が1個から6個の炭素原子を有する低級アルキルラジカルから構成される群から独立に選択される-N(R
4)
2であり、Zは=Oであり、R
1及びR
2の一方は、-O基、-OH基、又は-O(CO)R
6基であり、他方のものは、-OH又はO(CO)R
6であり、又はR
1は、=Oであり、R
2は、Hであり、この場合のR
6は、1個から約20個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の非環状炭化水素基、又はmが0又は1から10の整数であり、R
7が3個から7個の炭素原子を有するシクロアルキルラジカル又は上記で定めたヒドロカルビルアリール又はヘテロアリールラジカルである-(CH2)mR
7である。
【0052】
より具体的な実施形態では、インプラントによって閉じ込められるプロスタミドは、次式の化学構造を有するビマトプロストである。
【0053】
他の実施形態では、後眼房及び/又は毛様溝の中への送出に適する眼内インプラントは、本明細書に説明する緑内障の治療に適するプロスタグランジン又はプロスタグランジン類似物を含有することができる。プロスタグランジン類似物は、例えば、ラタノプロスト(XALATAN(登録商標))、ビマトプロスト(LUMIGAN(登録商標)又はLATISSE(登録商標))、カルボプロスト、ウノプロストン、プロスタミド、トラバタン、トラボプロスト、又はタフルプロスト、及び抗緑内障薬を含むプロスタグランジン前駆体のような他の治療薬剤のうちの1又は2以上を含むことができる。抗緑内障薬は、チモロール、ベタキソロール、レボベタキソロール、及びカルテオロールのようなβ遮断薬、ピロカルピンのような縮瞳薬、ブリンゾラミド及びドルゾラミドのような炭酸脱水酵素阻害薬、セロトニン作用薬、ムスカリン作用薬、ドーパミン作用薬、並びにアプラクロニジン及びブリモニジンのようなアドレナリン作用薬を含む。
【0054】
眼内インプラントは、治療有効量のプロスタミドを眼球の眼球領域、好ましくは、後眼房の中に2~4ヶ月又はそれよりも長く、例えば、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月、又はそれよりも長く供給するように意図している。従って、インプラントの1回の投与により、治療有効量のプロスタミドがそれを必要とする部位の近くで利用可能になり、この治療効果は、患者に度重なる注射を課すことなく又は自己投与点眼液の場合は毎日の投与の負担を課すことなく長期間にわたって維持されることになる。
【0055】
インプラントは、モノリシックであり、すなわち、ポリマー母材を通して均一に分散された活性薬剤(例えば、ビマトプロスト)を有することができる。これに代えて、活性薬剤は、ポリマー母材内に非均一パターンで分散させることができる。例えば、インプラントは、その第2の部分と比較して高い濃度のプロスタミドを有する部分を含むことができる。
【0056】
インプラントは、眼球内の眼内圧を低いレベル(眼球内の眼内圧に関して前眼房に位置決めされたインプラントと比較して)に少なくとも2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、約24ヶ月までにわたって、かつ一部の場合はそれよりも長く維持するのに有効とすることができる。インプラントを後眼房内に受け入れた後のベースラインにわたるIOPのパーセント相対低減は、インプラントのサイズ(従って、薬物充填量)と患者とに依存して異なる可能性があるが、ベースラインからの少なくとも10%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、約60%までとすることができる。この低減は、ベースラインIOP(インプラントを受け入れる前の眼球内の眼内圧)を10~20%、20~30%、又は10~50%下回ることができ、一部の事例では単一インプラントの埋め込み後にベースラインIOPを20~30%下回ったまま少なくとも2ヶ月、2~3ヶ月、4~6ヶ月又はそれよりも長く、かつ一部の事例では24ヶ月又はそれよりも長くまで留まることができる。
【0057】
一般的に、眼内インプラントは、活性薬剤としてビマトプロストと、生体分解性ポリマー母材とを含み、任意的にポリエチレングリコールを含むことができる。ビマトプロスト(又は他のプロスタミド)は、インプラントの5重量%から90重量%、インプラントの5重量%から30重量%、又はインプラントの18~22重量%とすることができるが、好ましくは、インプラントの20重量%である。一般的に、生体分解性ポリマー母材は、ポリ(D,L-ラクチド)(PLA)ポリマー及びポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)ポリマーから構成される群から独立に選択された少なくとも3つの異なる生体分解性ポリマーの混合物である。例えば、生体分解性ポリマー母材は、反復単位、固有粘性、又は末端基、又はこれらのあらゆる組合せによって互いに異なる第1、第2、及び第3の生体分解性ポリマーを備えることができる。一部の事例では、本発明の開示による生体分解性ポリマー母材は、ポリ(D,L-ラクチド)(PLA)ポリマー及びポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)ポリマーから構成される群から独立に選択された第1、第2、第3、及び第4の生体分解性ポリマーを備えることができ、この場合に、第1、第2、第3、及び第4のポリマーは、反復単位、固有粘性、又は末端基、又はこれらのあらゆる組合せによって互いに異なる。ポリマーの合成中に使用される連鎖停止剤に依存してPLAポリマー又はPLGAポリマーは、遊離カルボン酸末端基又は遊離アルキルエステル末端基を有することができ、本明細書ではこれらのポリマーをそれぞれ酸末端又はエステル末端(又はエステル末端密封)のPLAポリマー又はPLGAポリマーと呼ぶ。
【0058】
眼内インプラント(すなわち、薬物送出システム)の一例は、眼球の後眼房の中への埋め込みに適するようにサイズが決定され、18%から22%(例えば、20%)(w/w)のビマトプロストと、3.5%から6.5%(例えば、5%)のPEG 3350と、0.25~0.35dl/gの固有粘性を有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド)ポリマーである18%から22%(例えば、20%)のR203Sと、0.16~0.24dl/gの固有粘性を有する酸末端ポリ(D,L-ラクチド)ポリマーである13.5%から16.5%(例えば、15%)のR202Hと、約75:25のD,L-ラクチド:グリコリドモル比と0.16~0.24dl/gの固有粘性とを有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)ポリマーである36%から44%(例えば、40%)のRG752Sとを備える又はそれらで構成される押出成形生体分解性眼内インプラントであり、この場合に、各ポリマーの固有粘性は、25℃で0.1%w/vクロロホルム溶液に対して測定したものである。インプラントは、眼の中への治療有効量のビマトプロストの放出を2ヶ月又はそれよりも長く持続することができる。下記の表1は、例示的な調合を例示している。
【0059】
【0060】
一部の実施形態では、眼内インプラントは、眼球の後眼房の中への配置に適するようにサイズ決定及び調合される。眼球の後眼房の中への配置に適するようにサイズが決定され、本発明の開示に従って長期間にわたって哺乳動物の眼球に治療有効量のビマトプロストを送出する機能を有するインプラントは、一般的に、全重量が20μgから200μgであり、長さが0.5mmから約3.0mmであり、直径(又は非円筒形インプラントに適切とすることができる他の最小寸法)が0.1mmから0.5mmである。一部の実施形態では、後眼房の中への配置に適するようなサイズのインプラント(後眼房インプラント)は、約30μgから約150μmの重量があり(従って、そのような全重量を有し)、約6μgから約30μgのビマトプロスト又は他のプロスタミドを含有することができる。好ましい実施形態では、後眼房インプラントは、30μgから150μgの全重量を有し、直径が150μmから300μmであり、長さが0.5mmから2.5mmである。より好ましい実施形態では、本発明の開示による生体分解性後眼房インプラントは、30μgから100μgの全重量を有し、直径が約150μmから約300μmであり、長さが0.5mmから2.5mmである。一部の実施形態では、インプラントは、直径又は幅が約150μmから約300μmであり、長さが約1.0mmから約2.5mmであり、全重量が約30μgから約100μgである。一部の実施形態では、インプラントは、直径又は幅が150μmから約300μmであり、長さが1.0mmから2.5mmであり、全重量が30μgから75μg又は30μgから90μgである。インプラントは、押出成形インプラントとすることができる(すなわち、インプラントは、押出成形工程によって生成することができる)。一部の実施形態では、インプラントは、押出成形工程によって形成することができ、直径又は幅が150μmから300μmであり、長さが0.50mmから2.5mmであり、全重量が30μgから100μgである。
【0061】
すなわち、本発明の開示による後眼房インプラントは、約20~120μg、30~100μg、30~90μg、30~75μg、又は30~50μgの全重量を有することができる。非限定例は、それぞれ、約6μg、10μg、15μg、又は20μg(±5%)のビマトプロストを含有し、約30μg、50μg、75μg、又は100μg(±5%)の全重量を有する押出成形インプラントを含む。ある一定の形態では、押出成形インプラントは、約200μm又は250μm(±5%)の直径を有し(眼球の中又は他の液体環境又は体液環境の中への配置の前に)、約2.3mm、1.5mm、又は1.0mm(±5%)の長さを有することができる。一実施形態では、後眼房インプラントは、直径が約200μmから約300μmであり、長さが約1.0mmから約2.3mmである。本発明の開示及び上述の実施形態のうちのいずれかによる眼球の後眼房での配置に適するようなサイズのインプラントは、20%(w/w)のbimatoprostと、20%(w/w)の82035と、15%(w/w)のR202Hと、40%(w/w)のRG752Sと、5%(w/w)のポリエチレングリコール(PEG)3350とを備えることができる。
【0062】
本明細書に説明するインプラントは、虹彩の背後への配置に起因して角膜内皮との接触を回避し、それによって前眼房内に位置決めされたインプラントと比較して角膜内皮細胞の損失のリスクを低減するという利点を有する。特定のサイズの例えば3.0mm長よりも大きくなく、0.5mm最大幅よりも大きくないインプラントは、虹彩との有意な接触又は虹彩の擦傷なく眼球の後眼房内に適合するという追加の利点を有することができる。
【0063】
一実施形態は、眼球の後眼房の中への配置に適するようなサイズの本発明の開示による押出成形生体分解性眼内インプラントであり、従って、このインプラントは、直径が150μmから300μmであり、長さが0.50mmから3mmであり、全重量が25μgから100μgである。別の実施形態は、眼球の後眼房の中への配置に適するようなサイズの本発明の開示による押出成形生体分解性眼内インプラントであり、従って、このインプラントは、直径が150から250μm(±5%)であり、長さが0.75から2mmであり、全重量が50から75μgである。いずれの実施形態によるインプラントも、通常は、i)エステル末端ポリ(D,L-ラクチド)と、ii)酸末端ポリ(D,L-ラクチド)と、iii)約75:25のD,L-ラクチド:グリコリド比と25℃で0.1%当該ポリマーのクロロホルム溶液で測定した0.16~0.24dl/gの固有粘性とを有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)とを備える又はそれらで構成される生体分解性ポリマー母材との会合状態にある活性薬剤として20重量%ビマトプロストを備えることになる。より具体的な実施形態では、エステル末端ポリ(D,L-ラクチド)は、0.25~0.35dl/gの固有粘性を有し、酸末端ポリ(D,L-ラクチド)は、0.16~0.24dl/gの固有粘性を有する。
【0064】
インプラントのサイズ及び幾何学形状を使用して、埋め込みの部位での放出速度、治療期間、及び薬物濃度を制御することができる。より大きいインプラントは、それに比例してより大きい投与量を送出することになるが、面対質量比に依存してより低い放出速度を有する場合がある。インプラントの特定のサイズ及び形状は、埋め込み部位に適合するように選択され、インプラントを眼球の中に位置決めするのに使用される針のサイズとも整合させることができる。
【0065】
インプラントは、ロッド、シート、フィルム、ウェーハ、又は圧縮タブレットとしてのものを含む様々な形状で生成することができるが、好ましくは、押出成形ロッドの形態にある。押出成形ロッドは、形状が円筒形又は非円筒形とすることができる。インプラントは、モノリシックであり、すなわち、ポリマー母材を通して均一に分散された1又は複数の活性薬剤を有することができる。
【0066】
本発明の開示によるインプラントは、望ましくは、その寿命にわたってインプラントからの実質的に一定のプロスタミド放出速度を与えることができる。例えば、薬物充填量の80~100%が放出されるまで毎日0.01μgと2μgの間の量のプロスタミドを放出することが望ましい場合がある。しかし、放出速度は、生体分解性ポリマー母材の配合に依存して増大又は低下のいずれかであるように変更することができる。これに加えて、プロスタミド成分の放出プロファイルは、1又は2以上の線形部分を含む場合がある。
【0067】
患者の眼球内の眼内圧を低減するためのビマトプロストの治療有効量は、約50ng/日から500ng/日の眼球内のビマトプロスト放出速度に対応することができる。
【0068】
生体分解性ポリマー母材からのプロスタミドの放出は、ポリマーからの拡散、ポリマーの分解、及び/又はポリマーの浸食又は分解を含むいくつかの過程の関数とすることができる。インプラントからの活性薬剤の放出動態に影響を及ぼす一部の因子は、インプラントのサイズ及び形状、活性薬剤粒子のサイズ、活性薬剤の溶解度、ポリマーに対する活性薬剤の比、製造方法、露出面積、及びポリマーの浸食速度を含むことができる。例えば、ポリマーは、加水分解(他の機構の中でも取りわけ)によって分解することができ、従って、インプラントによる水の吸収を容易にするインプラントのいずれの組成変化も加水分解速度を増大させ、それによってポリマーの分解及び浸食の速度を増大させ、従って、活性薬剤の放出速度を増大させる可能性が高くなる。ポリマーの生体分解を制御し、従って、インプラントの長期放出プロファイルを制御するのと同等に重要なことは、インプラント内で使用されるポリマー組成物の相対平均分子重量である。放出プロファイルを調節するために、様々な分子重量の同じか又は異なるポリマーをインプラント内に含めることができる。
【0069】
本明細書に説明するインプラントの放出動態は、部分的にインプラントの面積に依存する可能性がある。より大きい面積は、より多くのポリマー及び活性薬剤を眼液に露出させることができ、より高速のポリマー母材の浸食及び体液中への活性薬剤粒子の溶解をもたらすことができる。従って、インプラントのサイズ及び形状を使用して、埋め込み部位での放出速度、治療期間、及び活性薬剤濃度を制御することができる。本明細書に説明するように、眼内インプラントの母材は、眼の中への埋め込み後に2ヶ月にわたってある量のビマトプロスト又は他のプロスタミドの放出を持続するのに有効な量で分解することができる。
【0070】
インプラントからのビマトプロストのような活性薬剤の放出速度は、様々な方法を使用して経験的に決定することができる。放出速度を測定するために、溶解試験又は放出試験のためのUSP認可の方法(USP23;NF18(1995年)1790~1798ページ)を使用することができる。例えば、無限沈下法を使用して、薬物送出システム(例えば、インプラント)の計量されたサンプルは、0.9%のNaClを含有する測定された体積の水(又はリン酸緩衝生理食塩水のような他の適切な放出媒体)溶液に添加され、この場合に、溶液体積は、放出後の薬物濃度が飽和の20%よりも低く、好ましくは、5%よりも低いようなものになる。この混合物は37℃に維持され、薬物放出を保証するためにゆっくりと撹拌される。媒体中に放出される薬物の時間の関数として量は、例えば、分光測定法、HPLC、質量分光測定のような当業技術で公知の様々な方法によって定量化することができる。
【0071】
本明細書に説明する眼内インプラントは、ポリ(D,L-ラクチド)(PLA)ポリマー及びポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)ポリマーから構成される群から選択された少なくとも3つの異なる生体分解性ポリマーの混合物を含む。これら3つのポリマーの間の違いは、末端基、固有粘性、又は反復単位、又はこれらのあらゆる組合せに関する場合がある。
【0072】
ポリ(D,L-ラクチド)又はPLAは、CAS番号26680-10-4によって識別することができ、次の化学式によって表すことができる。
【0073】
【0074】
ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)又はPLGAは、CAS番号26780-50-7によって識別することができ、次の化学式によって表すことができる。
【0075】
【0076】
すなわち、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)は、D,L-ラクチド反復単位(x)の1又は2以上のブロックと、グリコリド反復単位(y)の1又は2以上のブロックとを含み、この場合に、それぞれのブロックのサイズ及び個数は異なるとすることができる。ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)内の各反復単位のモルパーセントは、独立に0~100%、50~50%、約15~85%、約25~75%、又は約35~65%とすることができる。一部の実施形態では、D,L-ラクチドは、モル基準でPLGAポリマーの約50%から約85%とすることができる。ポリマーの均衡は、基本的にグリコリド反復単位数とすることができる。例えば、グリコリドは、モル基準でPLGAポリマーの約15%から約50%とすることができる。
【0077】
より具体的には、本発明の開示による眼内インプラント内に含まれる少なくとも3つの異なる生体分解性ポリマーは、以下から構成される群から独立に選択される:
【0078】
a)酸末端基と25℃で0.1%クロロホルム溶液で測定された0.16~0.24dl/gの固有粘性とを有するポリ(D,L-ラクチド)(例えば、R202Hのような)、
【0079】
b)エステル末端基と25℃で0.1%クロロホルム溶液で測定された0.25~0.35dl/gの固有粘性とを有するポリ(D,L-ラクチド)(例えば、R203Sのような)、
【0080】
c)酸末端基と0.16~0.24dl/gの固有粘性(25℃で0.1%クロロホルム溶液で測定された)と約50:50のD,L-ラクチド:グリコリドモル比とを有するポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(例えば、RG502Hのような)、
【0081】
d)エステル末端基と0.16~0.24dl/gの固有粘性(25℃で0.1%クロロホルム溶液で測定された)と約50:50のD,L-ラクチド:グリコリドモル比とを有するポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(例えば、RG502のような)、
【0082】
e)エステル末端基と0.16~0.24dl/gの固有粘性(25℃で0.1%クロロホルム溶液で測定された)と約75:25のD,L-ラクチド:グリコリドモル比とを有するポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(例えば、RG752Sのような)、
【0083】
f)エステル末端基と0.50~0.70dl/gの固有粘性(25℃で0.1%クロロホルム溶液で測定された)と約75:25のD,L-ラクチド:グリコリドモル比とを有するポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(例えば、RG755Sのような)、及び
【0084】
g)エステル末端基と1.3~1.7dl/gの固有粘性(25℃で0.1%クロロホルム溶液で測定された)と約85:15のD,L-ラクチド:グリコリドモル比とを有するポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(例えば、RG858Sのような)。
【0085】
他に指定しない限り、本発明の開示で言及するPLAポリマー及びPLGAポリマーの固有粘性は、25℃で0.1%(w/v)ポリマーのクロロホルム(CHCl3)溶液で決定されるものである。
【0086】
RESOMER(登録商標)生体分解性ポリマーR203S、R202H、RG752S、RG755S、及びRG858Sのような生体分解性のPLAポリマー及びPLGAポリマーは、ドイツのEvonik Industries,AG(Evonik Rohm Pharma GmbH)及びSigma-Aldrichのような供給元から市販で入手可能である。
【0087】
ビマトプロスト及び少なくとも3つの異なる生体分解性ポリマーに加えて、本発明の開示による一部のインプラントは、300Daから20,000Daの分子重量を有するポリエチレングリコールを更に含む。例えば、インプラントは、ポリエチレングリコール3350(PEG 3350)又はこれに代えてポリエチレングリコール20,000(PEG 20K)を含むことができる。
【0088】
インプラントのプロスタミド成分は、微粒子又は粉末の形態にあるとすることができ、生体分解性ポリマー母材によって封入する、その中に埋め込む、又はそれを通して均一又は不均一に分散させることができる。本発明の開示のインプラントでは、通常は、プロスタミドは、重量対重量(w/w)基準でインプラントの約20%を備えることになる。言い換えれば、プロスタミドは、インプラントの約20重量%を占めることになる。より一般的には、プロスタミドは、インプラントの18重量%及び22重量%を備える(すなわち、その量で存在するか又はこれらの重量%を占める)ことができる。
【0089】
ビマトプロスト又は他のプロスタミドに加えて、本明細書に開示する眼内インプラント及び他の薬物送出システム(例えば、マイクロスフェア)は、1又は2以上の緩衝剤、保存料、抗酸化剤、又は他の賦形剤、又はその組合せを任意的に含むことができる。適切な水溶性緩衝剤は、アルカリ及びアルカリ土類の炭酸塩、リン酸塩、重炭酸塩、クエン酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、コハク酸塩など、例えば、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウムなどを含む。これらの薬剤は、有利なことに、システムのpHを2から9の間、より好ましくは、4から8の間に維持するほど十分な量で存在する。適切な水溶性保存剤は、重亜硫酸ナトリウム、重硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸塩、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀、ホウ酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、パラベン、メチルパラベン、ポリビニルアルコール、ベンジルアルコール、及びフェニルエタノールなど、及びこれらの混合物を含む。これらの緩衝剤、保存剤、抗酸化剤、及び他の賦形剤は、インプラントの0.001重量%から10重量%の量で存在することができる。
【0090】
抗酸化剤の例は、アスコルビン酸塩、アスコルビン酸、αトコフェロール、マンニトール、還元型グルタチオン、様々なカロチノイド、システイン、尿酸、タウリン、チロシン、スーパーオキシド、ジスムターゼ、ルテイン、ゼアキサンチン、クリプトキサンチン、アスタキサンチン、リコピン、N-アセチル-システイン、カルノシン、γグルタミルシステイン、クェルセチン、ラクトフェリン、ジヒドロリポ酸、クエン酸、ビタミンE又はそのエステル、及びパルミチン酸レチニルを含む。
【0091】
インプラントは、単独の活性薬剤としてプロスタミド化合物(例えば、ビマトプロスト)、プロスタグランジン類似物(例えば、トラボプロスト、ラタノプロスト)、いずれかの一酸化窒素供与プロスタグランジン類似物又は一酸化窒素供与プロスタミドを含むことができ、又は1又は2以上のプロスタミド又はプロスタグランジン類似物を含むことができる。
【0092】
生体分解性インプラントは、ガンマビーム又は電子ビームの放射によって滅菌され、眼球の眼球領域内にインプラントを吐出する機能を有する針装備送出デバイスを含む様々な方法及びデバイスによって眼球の前眼房又は硝子体の中に挿入又は配置することができる。滅菌のための放射線の有効な放射量は、約20~30kGyとすることができる。
【0093】
本発明の開示によるインプラントは、長期間(例えば、60日間又はそれよりも長い3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、約6ヶ月までを含む期間)にわたって治療有効量のビマトプロストを放出する機能に起因して、少なくとも薬物送出が発生するのと同程度の長さの期間にわたって局所療法で必要であると考えられる頻繁な眼内注射又は眼面への定期的な点眼液の点眼を必要とせずに患者での眼内圧を低減する機能を有することが予想される。従って、一部の形態では、本明細書に説明するインプラントは、患者での眼内圧を低減し、それによって本明細書に説明する眼球病状を治療する単独治療として使用される(すなわち、補助的な降圧点眼液を使用することなくIOPを制御するために単独に使用される)。それにも関わらず、本発明の開示によるインプラントは、必要に応じて、局所適用される同じか又は異なる治療薬剤と併用する併用療法に使用することができる。
【0094】
インプラントは、好ましくは、治療的有効投与量のプロスタミドを眼の中への配置後少なくとも2ヶ月にわたって眼球に送出することになり、眼球病状、少なくとも1つの兆候又は症状、又は眼球病状に関連付けられたリスク因子を眼球の後眼房の中へのインプラントの配置に続いて好ましくは少なくとも6ヶ月、12ヶ月、24ヶ月、又はそれよりも長くにわたって低減することになる。必要に応じて、1よりも多いインプラントを眼球の中に位置決めすることができる。例えば、多めの投与量のプロスタミドを送出するために、2つのインプラントを眼球の後眼房に配置することができる。例えば、1つの方法では、単一20μgインプラントを使用する代わりに2つの10μgインプラント(各々が20重量%のビマトプロストを含有する)を眼球の後眼房内に同時に配置することによって眼球に20μgのビマトプロストを投与することができる。別の例では、異なる方法で単一12μgインプラントを使用する代わりに2つの6μgインプラント(各々が20重量%のビマトプロストを含有する)を眼球の後眼房内に同時に配置することによって眼球に12μgのビマトプロストを投与することができる。2つのより小さいインプラントを使用することにより、潜在的に眼球内のインプラントに対する耐容力を改善することができる。一部の実施形態は、例えば、眼球の後眼房、前眼房、及び/又は硝子体のような眼球の眼球領域内に2つのインプラントを置く段階を備える。針の管腔内のインプラントの全体サイズに依存して、複数のインプラントの存在を受け入れるように送出装置の配置を調節することができる。
【0095】
一実施形態は、本発明の開示による生体分解性眼内インプラントを哺乳動物の眼球の中に配置し、それによってインプラントが眼球内の眼内圧を低減するのに有効な量のプロスタミドを眼球に供給する段階を備える哺乳動物の眼球内の眼内圧を低減する方法である。この方法の一部の形態では、哺乳動物は、眼内圧増大、高眼圧、又は緑内障を有するヒト患者であり、インプラントは、患者の罹患した眼球の後眼房に位置決めされる。一部の実施形態により、本方法は、開放隅角緑内障又は高眼圧を有する患者での眼内圧(IOP)を降下させるのに有効である。他の実施形態では、本方法は、開放隅角緑内障を有する患者でのIOPの降下に有効である。一部の実施形態では、本方法は、開放隅角緑内障又は高眼圧を有し、局所IOP降下薬を使用して不十分にしか管理されなかった(例えば、不耐容又は非遵守に起因して)又は局所療法に適さない患者でのIOPの降下に治療的に有効である。一部の実施形態では、本方法は、開放隅角緑内障を有し、局所IOP降下薬を使用して不十分にしか管理されなかった(例えば、不耐容又は非遵守に起因して)又は局所療法に適さない患者でのIOPの降下に治療的に有効である。インプラントは、眼球の後眼房の中への配置後少なくとも2ヶ月にわたって眼球内の眼内圧を低減するのに有効とすることができる。一部の事例では、インプラントは、眼の中へのインプラントの配置後12ヶ月よりも長く眼球内の眼内圧を低減することができる。一部の実施形態では、単一インプラントは、12ヶ月と24ヶ月の間にわたって眼内圧を低減することができる(例えば、2018年11月8日出願のUS 2019/01923414を参照されたい)。
【0096】
インプラントの前眼房送出は、内皮細胞の壊れやすい層によって覆われた角膜の内面との接触のリスクを課す場合がある。角膜内皮との接触は、角膜内皮細胞密度を低減し、眼内で角膜水腫を発症させる場合がある。本明細書に説明するインプラントは、虹彩の背後の眼球の後眼房の中への配置に適するようにサイズが決定され、それによってインプラントと角膜内皮の間の接触によって引き起こされる問題が軽減される。驚くべきことに、インプラントの後眼房配置は、薬物治療によって達成されるIOP低減も前眼房の中への同等のインプラントの配置と比較して改善した。IOP低減の改善は、薬物放出が房水流出経路から遠く離れた場所で発生し、ターゲット組織で薬物濃度が低減する場合であっても発生した。従って、ビマトプロストインプラントの後眼房配置は、ビマトプロストインプラントの従来の前眼房配置と比較してより安全かつより有効なIOP低減をもたらす。
【0097】
本発明の開示はまた、患者の眼球の中に生体分解性眼内インプラントを配置し、それによって眼球内の眼内圧を例えば少なくとも1ヶ月、2ヶ月、又は少なくとも4ヶ月のような長期間にわたって低減する段階を備える患者での眼内圧を低減又は降下させる方法を提供する。一部の事例では、患者は、開放隅角緑内障、又はより具体的には原発性開放隅角緑内障、及び/又は高眼圧を有する場合がある。本方法によって使用されるインプラントは、本明細書に説明するプロスタミド含有インプラントのうちのいずれかとすることができる。好ましい実施形態では、本方法は、ビマトプロストを含む押出成形眼内インプラントを患者の眼球の中に位置決めする段階を備える。インプラントは、眼球の後眼房内、例えば、眼球の毛様溝内、チン小帯の上部等に配置することができる。
【0098】
開放隅角緑内障又は高眼圧を有する患者を治療するための本明細書に説明する眼内インプラントの他の投与計画の場合にも、IOP降下効果の長い持続期間を観察することができる。例えば、患者は、単一インプラントが3ヶ月(約12週間)、4ヶ月(約16週間)、5ヶ月(約20週間)、6(約24週間)、7ヶ月(約28週間)、8ヶ月(約32週間)、9ヶ月(約36週間)、10ヶ月(約40週間)、11ヶ月(約44週間)、又は12ヶ月(約48週間)置きに1回、患者の後眼房の中に注入される合計で1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、又は8個のインプラントを治療所要期間にわたって受け入れ、IOPの低減のための救急薬(例えば、プロスタグランジン類似物、又はラタノプロスト、トラボプロスト、又はビマトプロストのようなプロスタミド含有点眼液)を必要とすることなくIOP降下効果及び/又は時間量の延長を体験することができる。そのような投与計画後の救急薬を必要としないIOP降下効果の持続期間又は時間量は、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、16ヶ月、17ヶ月、18ヶ月、19ヶ月、20ヶ月、21ヶ月、22ヶ月、23ヶ月、24ヶ月、又は24ヶ月よりも長いとすることができる。一部の実施形態では、そのような投与計画後の救急薬を必要としないIOP降下効果の持続期間又は時間量は、12ヶ月から24ヶ月以内であり、12ヶ月から15ヶ月、13ヶ月から24ヶ月、12ヶ月から24ヶ月、12ヶ月から16ヶ月、12ヶ月から20ヶ月,16ヶ月から24ヶ月にわたるとすることができる。一部の実施形態では、そのような投与計画後の救急薬を必要としないIOP降下効果の持続期間又は時間量は、12ヶ月から24ヶ月以内であり、12ヶ月から15ヶ月、13ヶ月から24ヶ月、12ヶ月から24ヶ月、12ヶ月から16ヶ月、12ヶ月から20ヶ月、16ヶ月から24ヶ月にわたるとすることができる。
【0099】
送出デバイス
【0100】
本明細書では、後眼房の中、好ましくは、毛様溝の中にアクセスし、そこにインプラントを送出するように特別に設計されたインプラント送出装置を説明する。一般的に、送出装置は、眼球の外傷を最小にするように適切にサイズが決定されたシャフト(25ゲージ、26ゲージ、27ゲージ、28ゲージ、29ゲージ、又は30ゲージのシャフト)を含む。一部の実施形態では、手持ち式アプリケータは、25ゲージから30ゲージのステンレス鋼カニューレと、レバーと、アクチュエータと、デバイスから眼の中へのインプラントの吐出を推進するためのプッシュロッドとを含む。
【0101】
図2A~
図2Fは、そのようなインプラント送出装置200の実施を示している。送出装置200は、ハウジング220の遠位端領域に取り付けられてそこから延びるノーズコーン230を有するハウジング220を含むことができる。ハウジング220は、オペレータによって片手で保持されるようにサイズが決定される。ハウジング220は、カニューレ240の中に装填されたインプラントを吐出するように構成された吐出ボタン250のようなアクチュエータを含むことができる。カニューレ240は、ノーズコーン230から遠位方向に延び、インプラントを含むようなサイズの内側管腔を有することができる。好ましくは、カニューレ240は、そこからのインプラントの不用意な予定前の放出を防止するために、例えば、遠位開口部の近くでカニューレ240の内側の管腔に張るようにカニューレに取り付けられた保持プラグ280を組み込む(
図2Fを参照されたい)。眼内インプラントは、保持プラグ280の近位でカニューレの管腔の中に位置決めすることができる。カニューレ240は、自己密封する角膜切開部又は角膜穿刺部を通じた患者の眼球の後眼房の中へのインプラントの内部からの展開に適するように特別にサイズが決定された外寸と、この展開に適するような特別の露出作動長さとを有する。一部の事例では、カニューレ240は、28ゲージよりも大きくない。カニューレ240は、その近位端から遠位端の間で長手軸線に沿って延びることができる。遠位端は、カニューレ240の管腔225からの鈍頭非斜角の遠位開口部を定める内縁及び外縁238、239が丸められることに起因して鈍頭先端241を形成する。丸められた縁部238、239を有する鈍頭先端カニューレ240は、虹彩及び水晶体包の偶発的な外傷のリスクを低減することによって後眼房の中への各インプラント10の安全な送出を可能にする。ノーズコーン230よりも大きいカニューレ240の露出作動長さは、他の送出デバイスと比較して長く、カニューレ240の遠位端領域が虹彩の後側に到達する機能を有するように前眼房を通じたより深い挿入を可能にする。カニューレ240は、その遠位端の約1mmから2mmをインプラントの展開に向けて虹彩辺縁の背後に配置することを可能にするようにサイズが決定される。
【0102】
カニューレ240は、ノーズコーン230から遠位先端241の間で装置200の長手軸線Aに沿って曲げ又は湾曲なく実質的に一直線とすることができる。カニューレ240は、好ましくは、0.362mmの公称外径を有する28ゲージまで(カニューレの壁厚に依存する)と約0.184mmの公称内径とで実質的に剛性の材料から形成することができる。カニューレ240は、その管腔の中に含まれる薬物製品と相互作用しないステンレス鋼又は他の医療級材料とすることができる。ゲージは、カニューレ管腔225又は孔の内径が、選択されるインプラントをカニューレ管腔225の中に受け入れて、その後にそこから吐出することができるほど十分な許容範囲を使用してこのインプラントの外径に対応するか又は受け入れるように選択される。カニューレ240は、ハウジング220の端部上に設けられた対応するルアー継ぎ合わせ要素に受け入れて固定することができる標準の手術のためのルアーロック継ぎ合わせ要素をカニューレのハブ上に組み込むことができる。好ましくは、カニューレ240は、先鋭針ではなく、代わりに管腔225からの遠位開口部で終端する鈍頭非外傷性先端241を有する。
図2D~
図2Fは、カニューレ240の管腔225からの遠位開口部を定める丸められた内縁及び外縁238、239を示すカニューレ240の先端241を示す(
図2Fを参照されたい)。丸められた縁部238、239は、前嚢の中に突き刺さる又は虹彩の後面を擦傷することなくカニューレ240を後眼房に挿入することを可能にする。虹彩は、特に直角縁部との接触によって脱落しがちなかなり緩い色素含有層である。丸められた縁部238、239は、前眼房を通って進入する時に角膜間質上でのかぎ裂きも低減する。
【0103】
カニューレは、後眼房の前進中にカニューレ240が屈曲することを防止する座屈強度を有する実質的に剛性かつ非可撓性とすることができる。カニューレ240の外面は、後眼房に向う前進中に角膜間質又は水晶体包のような眼球組織に引っ掛かるか又はそれをかぎ裂きすることがない滑らかで非外傷性の仕上げに向けてタンブリング研磨、電解研磨、又はその均等物を行うことができる。組織を通る摺動を改善するために、従来の皮下針は、シリコーン油のような疎水性材料で被覆することができる。カニューレ240の外面は、シリコーン油コーティング等で被覆することができる。この「シリコーン処理された」外面は、眼の中へのカニューレ挿入点(例えば、角膜)での不慮の外傷のリスクを低減する潤滑性及び非常に低い摩擦係数をカニューレ240の面に与える。この外面は、カニューレ先端の丸められた縁部との組合せで後眼房へのインプラント送出の安全性を有意に改善する。カニューレ240は、その外面が選択的にシリコーン処理され、内面(すなわち、管腔)が実質的に非シリコーン処理のものであるか又は管腔の中への開口部に近い領域内のみ微量にシリコーン処理されるようにシリコーン油でスプレー被覆又は電気スプレー被覆することによってシリコーン処理することができる。スプレー被覆でシリコーン処理されたカニューレは、遠位先端から移動して管腔に進入する少量のシリコーンを含むが、保持プラグを配置することができる管腔面をシリコーンが被覆するほどには含まない。シリコーンを用いた浸漬被覆は、カニューレの外面を被覆するのみならず、シリコーンが毛管力によってカニューレのボアに進入してカニューレの内面を被覆することを許す場合があり、従って、一般的には、シリコーンが管腔に進入することを防止する十分な手法が行われない限り、シリコーンを付加するのに推奨的な方法ではない。この内面コーティングは、より大きい針サイズ(例えば、22G)で特に問題になる場合がある。カニューレ240の管腔225のシリコーン処理は、カニューレ240内の保持プラグ280のロバスト性に悪影響を及ぼし、プラグ不良の可能性又は作動させる前にインプラント10を管腔225の中に保持し損ねる可能性を高める場合がある。スプレー被覆は、孔を実質的にシリコーン処理することを回避し、シリコーンと保持プラグ280とが互いに実質的に接触状態になることのないようにシリコーンを外面に集中させる。保持プラグ280は、シリコーンで被覆された面と比較してカニューレボア225の非シリコーン処理面への優れた接着性を有する。下記では、インプラント保持プラグ280をより詳細に説明する。
【0104】
シリコーンは、カニューレ240の近位端がカニューレ240の遠位先端241にノーズコーン230の外側に延び出る場所の近くでカニューレ240の露出作動長さ全体を覆うことができる。例えば、シリコーンは、カニューレの露出外面全体(例えば、約12mmから約18mm)を覆うことができる。シリコーンは、カニューレ240の全体の露出外面よりも短い露出カニューレ長を覆うことができる。例えば、シリコーンは、カニューレ240の最遠位端から約1.0mm~約5mm離れた場所までを含む長さに沿って遠位端領域を覆うことができる。シリコーンは、開口部を定める丸められた外縁239と丸められた内縁238とを含むカニューレに対して遠位に向く面(
図2Dを参照されたい)を被覆することができる。眼球組織との接触状態になるカニューレ240の面の完全なカバレージは、この組織を通じたカニューレの挿入を改善することができ、例えば、鈍頭先端は、かぎ裂きなく角膜内の開口部を通る。一部の実施では、カニューレ240に対して遠位に向く面及び丸められた外縁239はシリコーンで被覆されるが、丸められた内縁238は、シリコーンで被覆されないか、又はごく僅かと見なされた又はインプラントを管腔の中に保持する保持プラグの機能を妨げないことが示されたレベルのシリコーンを有するかのいずれかである。更に、シリコーンコーティングは、内縁238と外縁239の両方、並びにカニューレ240に対して遠位に向く面を除外することができ、従って、コーティングは、カニューレ240の最遠位端から短い距離だけ近位の場所で始まる。本明細書に説明するカニューレ240は、内面上又は外面上のいずれであるかに関わらず、いずれのシリコーンコーティングも不在とすることができることも理解しなければならない。
【0105】
必要というわけではないが、寸法が21ゲージ又は22ゲージ又はそれよりも小さいシャフトに対応するカニューレ240を使用することが望ましい。カニューレ240は、28Gまで、好ましくは、27Gと28Gの間のゲージを有することができる。小さいカニューレサイズ(例えば、27g、28g、30g)は、本明細書に説明する技術により、自己密封する穿刺部又は切開部を通じて受け入れて、虹彩との有意な接触又はその擦傷なく眼球の後眼房の中に前進させることができるという重要な利点を有する。本発明の用途では、これは、眼の中へのインプラント送出をより大きいゲージを使用する場合に必要と考えられる穿刺部位の縫合を必要とすることなく達成することができる点で有利になる。21ゲージ又は22ゲージ又はそれよりも小さく、好ましくは、27ゲージ又はそれよりも小さいカニューレを使用することにより、眼球内の正常体液圧にも関わらず、眼からの余分な体液漏出なくインプラントを配置し、カニューレ240を配置することができ、穿刺部位を縫い閉じることを回避することができる。マイクロインプラントは、カニューレを容易に押すほど十分な許容範囲を使用して針カニューレの中に受け入れられるような外径を有するように寸法決めされる。例えば、0.018インチの直径を有するマイクロインプラントは、22ゲージの薄壁針を通して容易に送出することができ、0.015インチの直径を有するマイクロインプラントは、23ゲージの薄壁針を通して容易に送出可能であるが、そのように限定されない。0.007インチの直径を有するマイクロインプラントは、50ミクロンの壁を有する28ゲージのカニューレを通して容易に送出可能である。
【0106】
カニューレ240の壁厚は、約50μmまでの約38μmとすることができる。一部の実施では、カニューレ240は、ほぼ50μmよりも大きくない壁厚を有する。鈍頭先端カニューレ240は、一般的に、眼球の中に事前生成された開口部を通して挿入され、従って、座屈なく眼球の領域を突き抜けるように設計されたツールほどには座屈強度を持たない場合がある。従って、カニューレ240は、座屈のリスクなく薄め(すなわち、約38μm)の壁を組み込むことができる。約50μmの壁厚を有する28ゲージのカニューレ240は、曲げのない後眼房への接近に十分な座屈強度を与える。
【0107】
ハウジング220のノーズコーン230と遠位先端241の間のカニューレ240の露出長さは変化することが可能である。カニューレ240は、後眼房内でカニューレ240の最遠位先端からカニューレが最初に眼球に貫入する角膜面までで測定して約12mmから約15mmの間である望ましい深さまで挿入することができる。貫入深さは変化することができ、少なくとも約10mm、少なくとも約11mm、少なくとも約12mm、少なくとも約13mm、少なくとも約18mmまでとすることができる。一部の実施では、近位端と遠位端の間のカニューレ240の露出作動長さは、約12mmから18mmとすることができる。一部の実施では、カニューレ240の長さは、約0.50(12.7mm)である。他の実施では、カニューレ240の長さは、約0.66(16.7mm)又はそれよりも長く、約18mmまでである。インプラント送出のための他のデバイスと比較したカニューレ240の延長長さは、丸められた遠位縁部及びカニューレ240の外面のシリコーン処理との組合せで、後眼房へのインプラントのより安全でより信頼性の高い埋め込みを可能にする。
【0108】
カニューレ240の遠位開口部は、インプラントを後眼房の中、好ましくは、虹彩基部の近くにある毛様溝の深い部分の中に送出することを可能にするようにノーズコーン230の遠位端から離される。カニューレ240の長さは、角膜縁の近くの角膜外面から虹彩を覆う前眼房を横断し、瞳孔を通って後眼房の中に、好ましくは、毛様溝の中に延びるのに十分である。一般的に、カニューレ240からの遠位開口部は、ユーザがインプラントを展開しようと望む場所の近くに位置決めされる。カニューレ240からの遠位開口部は、虹彩辺縁のそばを越えたばかりの(例えば、約1mmから2mm通り過ぎた)場所に配置することができる。インプラントは、開口部の遠位開口部をある距離、すなわち、少なくとも約5mmかつ約15mmを超えない距離だけ通り過ぎるように吐出することができる。従って、カニューレ240の遠位端は、インプラントを毛様溝の中に展開するために、好ましくは、虹彩の少なくとも一部分の背後でターゲット展開場所から約15mmを超えては離れない場所までしか眼を通って延びる必要はない。カニューレの遠位端は、カニューレの外にインプラントを付勢する時にインプラントがチン小帯の上方又は毛様溝の中まで辿り着くことができるように、眼球の6時の位置の近くで虹彩のそばを越えたばかりの場所へ摺動することができる。インプラントが毛様溝の中に定着するようにカニューレの遠位端を毛様溝の中に位置決めする必要はない。
【0109】
再度
図2A~
図2Bに関して、装置200は、容易な保持及び操作に適するように人間工学的に構成され、従来のペン又は他の筆記用具と類似の全般的な形状を有することができる。一般的に、装置は、ユーザによって親指と中指の間に保持されることになり、保持及びユーザの快適さを改善するための1又は2以上の特徴を組み込むことができる。例えば、ハウジング220は、ユーザの親指及び中指が装置と接触状態になる吐出ボタン250の周りのような選択区域内により確実な保持及び感覚をユーザに与える触覚リッジ227を含むことができる。吐出ボタン250自体には、中指(又は好みに応じて親指)が一般的にボタンに接触するボタン面上に触覚溝253を設け、同じくより確実な保持及び感覚をユーザに与えることができる。リッジ227は、快適さに関して更に滑り止め面を設け、それによってデバイスを剛的に把持及び保持するためにゴム引きすることができる。好ましくは、吐出ボタン250は、カニューレの遠位開口部からインプラントが延びる速度及び距離をユーザが完全に制御することができるように格納エネルギを組み込まない。吐出ボタン250をゆっくりと押下するほど、インプラントは低速に前進し、カニューレからのインプラントの吐出がより的確に制御される。
【0110】
ハウジング220は、2つの半セクション221及び222で形成することができる。これらのセクションは、好ましくは、互いにスナップ留めされるように構成されるが、例えば、接着、溶接、溶融などを含む2つの半体を互いに取り付ける他の公知の方法が考えられている。これに代えて、ハウジングは、一体モールド成形することができると考えられる。同じくハウジング上にスナップ留め又はそれに他に固定することができるラベルプレート223を設けることができる。
【0111】
遠位ノーズコーン230は、ハウジング220と一体とするか又はハウジング220に固定された個別の部品とすることができる。具体的には、ノーズコーン230は、ハウジング220のカラー224に固定することができる。ノーズコーン230は、カニューレ240とカニューレハブ244とを含むカニューレアセンブリを受け入れることができる。ハブ244は、ノーズコーン230内にノーズコーン孔232を通って延びるカニューレ240を受け入れること及びそれとの固定に適するように構成される。インプラントをハブ244の内部通路に通し、カニューレ管腔225の中に装填することができるように、カニューレ管腔225は、ハブの内部通路と連通している。インプラント10は管腔225の中に事前に位置決めされるので、装置200を使用してインプラント10を展開するために移送段階は必要ではない。カニューレ管腔225は、プランジャ246の少なくとも一部分を受け入れるようにサイズ決定することができる。プランジャ246は、リンケージ260に対して遠位に延びるプッシュロッド248を含むことができる。プッシュロッド248は、カニューレ管腔225の中への摺動可能な受け入れに適するように構成され、カニューレ管腔225を使用して保持される装填されたインプラントを変位させ、それをカニューレ先端241から吐出するほど十分な長さのものである。カニューレ240は、それがノーズコーンの外側に延びるようにハウジングに結合された近位端と遠位端との間で長手軸線に沿って延びる管状壁を有することができる。カニューレの管状壁は、プッシュロッド248を摺動可能に受け入れるようなサイズの管腔を定める。ハウジング上のアクチュエータは、リンケージを通じてインプラントを管腔から押し出すためにカニューレの管腔を通してプッシュロッドを移動することができる。アクチュエータは、リンケージを通じてプッシュロッドに結合され、プッシュロッドは、アクチュエータが押下される時にリンケージが徐々に平坦になると長手軸線に沿って移動可能である。プッシュロッドは、カニューレの長さに対して、アクチュエータを用いたインプラントの展開時にプッシュロッドの遠位端がカニューレの遠位端を越えて前進するほど十分な長さを有することができる。一部の実施では、プッシュロッド248は、インプラントを鈍頭遠位先端241から展開することを助けるために遠位先端241を超えて突出することができる。プッシュロッド248の遠位端は、遠位先端241を約0.5mmから約1.0mm超えて突出することができる。例えば、プッシュロッド248は、デバイスの作動及びシャフトを通るプッシュロッド248の最大延伸時にプッシュロッド248のうちの少なくとも0.5mmがカニューレ240の最遠位先端に対して遠位に延びるように27.64mmとすることができる。プッシュロッド248の長さは変化することができ、かつインプラントを展開するのに遠位先端241を超えて突出しない場合がある。一部の実施では、プッシュロッド248は、インプラントの吐出速度を遅くするために短縮され、これに関して下記でより詳細に説明する。
【0112】
図2B~
図2Cは、ハウジング220の中に保持することができる作動レバー252及びリンケージ260を示している。作動レバー252は、一端で延びる1又は2以上のピン255と、他端から延びる1又は2以上の吐出ボタン250とを有する細長部材254を含むことができる。ピン255は、カニューレ240の長手軸線Aに対して直角な軸A’に沿って延びることができる。ピン255は、組み立てられた時にレバー252がハウジング220内で制限された運動範囲でピン255の周りにピボット回転することができるように、ハウジングセクション221、222の対応するピボット孔(見ることができない)内に受け入れることができる。
【0113】
図2C並びに
図3は、リンケージ260が前部ブロック及び後部ブロック261及び262をこれらの間を延びる複数の接合セクション263と共に含むことができることを示している。これらのセクション263は、互いに順番に接合される。可撓性接合部264は、セクション263を互いに接続し、更に前部ブロック及び後部ブロック261、262に接続する。リンケージ260は、可撓性を有するが弾力性を有し、好ましくは、連続するモールド成形可能なプラスチック片で形成することができる。比較的薄い材料断面積を有するリンケージ260の部分が可撓性接合部264を形成し、厚めで可撓性の低いセクション263間に位置決めされる。これは、リンケージ260に力が印加された時に接合場所でのリンケージ260の撓みを可能にする。得られるリンケージがその長さに対して直角又は垂直な力が印加された時に長さ方向の延伸の機能を有する限り、例えば、形状記憶合金を含む他の公知の材料もリンケージ260に適切である。組み立てられた時に、後部ブロック262は、ハウジング220の中に固く固定される。前部ブロック261から案内ピン265、266が延び、ハウジング220の案内軌道の中に受け入れることができる。カニューレ240の管腔225からのインプラントの高速の放出を回避するために、リンケージ260は、ユーザがボタン250をゆっくりと押下し、それによってカニューレ240の長手軸線に沿うプッシュロッドの前進がボタン250の押下に合わせて漸変し、それによってリンケージ260がゆっくりと平坦になることを可能にする方式でボタン250と相互作用する。
【0114】
作動レバー252のボタン250の下面は、リンケージ260との接触状態にすることができる(
図2Cを参照されたい)。作動時に、ユーザによるボタン250の押下は、リンケージ260に対する力を装置の長手軸線Aに対してほぼ直角な方向にボタン250の下面を通して伝達する。この力は、リンケージ260を通して伝達され、リンケージ接合部の撓みによって装置200の長手軸線Aに沿う長手方向の力に変換される。リンケージ260の後部ブロック端262は、ハウジング220に固定されたままに留まるので、この作用は、リンケージ260の固定後部ブロック262から離れる方向のリンケージ260の自由な前部ブロック端261の平行運動をもたらす。次に、リンケージ260の前部ブロック261のこの平行移動は、カニューレ240の管腔225を通してプッシュロッド248を押す。インプラントがカニューレ管腔225の中に装填されて保持される場合に、次に、プッシュロッド248の運動は、インプラントをカニューレ先端241から吐出する。
【0115】
図4A~
図4Bは、ボタン250がその下面の平面の下方に延びるタブ257を更に含むことができることを例示している。タブ257は、ハウジング220のタブスロット(図示せず)に係合することができる。タブ257とタブスロットの間の係合は、インプラント10の展開後に作動レバー252をロックされた押下状態に保持することができる。タブ257は、スロット内に係合した時に可聴クリック音を提供することになり、インプラントが装置200から展開されたことをユーザに合図する。他の実施では、ボタン250の作動は、インプラントの展開中に患者による不用意な移動を引き起こすことを回避するために患者に対して聴取不能な又はある程度しか聴取可能ではないいずれかの触覚フィードバックをユーザに与える。タブ257の下面の形状は、丸いとすることができ、タブ257は、それが下方にハウジングを通ってタブスロットの背部に移動する時に屈曲するように移動可能とすることができる。タブ257がタブスロットをある距離だけ通り過ぎると、タブは、その自然な位置に戻り、タブスロットに係合することができる。タブ257の形状及びタブスロットに対する運動は、プッシュロッド248がカニューレ240に対する完全展開構成にあるという少なくともある程度聴取可能な触覚フィードバックを驚かせるほどのスナップ音なく与えるように弱められる。
【0116】
送出装置200のアクチュエータ250は、インプラントを眼球の中に展開させるように構成されたプランジャ、スライダー、プッシュボタン、レバー、又は他のアクチュエータを含む様々なものであることが可能である。アクチュエータ250は、
図2Cに示すように、カニューレ240内でプランジャ、プッシュロッド248、又は他の適切な手段を前方に駆動するレバーを作用させることができるプッシュボタンとすることができる。プッシュロッド248は、前方に移動する時にカニューレ240の管腔225からインプラントをターゲット区域の中に押し出すことができる。他の実施では、送出装置200は、予め決められた位置に留まることができるストッパを含むことができ、カニューレ240は、管腔225の外にインプラントを展開するためにストッパに対して引き抜かれる。更に別の実施では、送出装置200は、外側のカニューレ240と内側ストッパの両方が互いに対して移動可能であるプッシュプル構成を組み込むことができる。
【0117】
インプラントを位置決めするのに使用される埋め込みの方法及びデバイスは、患者が有水晶体眼患者又は偽水晶体患者のいずれであるかに依存して異なる可能性がある。例えば、偽水晶体眼球は、先鋭針先端を有するアプリケータを使用する埋め込みを受けることができ、それに対して必要というわけではないが、生来の水晶体の不用意な障害を回避するために有水晶体眼患者に対しては鈍頭カニューレ先端を使用することが好ましい。
【0118】
本明細書に説明する装置への装填及びそこからの吐出に適合するインプラントは、相分離法、界面法、押出成形法、圧縮法、モールド成形法、射出モールド成形法、熱プレス法、及び類似の方法を含むいくつかの公知の方法によって形成することができる。望ましいインプラントサイズ及び薬物放出特性に基づいて、使用される特定の方法を選択すること及び技術パラメータを変更することができる。22ゲージ又はそれよりも小さいシャフトに対応するカニューレを通して送出することができる本明細書に説明するマイクロインプラントでは、押出成形法が特に有利である。押出成形法、並びに射出モールド成形法、圧縮モールド成形法、及びタブレット成形法は、全てマイクロインプラントに必要とされる小さい断面直径又は断面積を達成することができる。押出成形法は、マイクロインプラントの小さい寸法を考えると重要である場合があるポリマー内の薬物のより均一な分散をもたらすことができる。
【0119】
装置200は、カニューレ240の上を延びてハウジング220に固定される安全キャップ205を含むようにパッケージ化することができる(
図2Bを参照されたい)。安全キャップ205は、装置200の取り扱い中に安全対策を提供することになる。装置200のボタン250又は他の押下機構は、安全キャップ205のリムを受け入れるノッチ又はスロット258を含むことができる。この場合に、この構成では、安全キャップ205は、ボタン250又は他の押下機構の意図しない押下及びインプラント10の吐出を防ぐように作動することにもなる。
【0120】
装置200は、ボタン250の不用意な作動を防止するように構成された安全タブ290を組み込むことができる(
図5を参照されたい)。安全タブ290は、外部把持部分292と内部ポスト294とを含むことができる。内部ポスト294は、ボタン250によるリンケージ260の作動を防止するように構成される。実施では、ポスト294は、前部ブロック261の領域に係合することができる。ポスト294が前部ブロック261と係合されると、前部ブロック261の平行移動が防止される。注入の前に、ユーザは、外部部分292を把持し、それをハウジング220から外向きに引っ張ってポスト294をブロック261から切断することができる。次に、ブロック261は、ボタン250の作動時に平行移動することができる。安全タブ290は、その存在、及びそれをボタン250の作動の前に取り外さなければならないことをユーザに警告する認知可能な色又はマーキングを有することができる。例えば、タブ290は、第1の色を有することができ、ハウジング220は、第2の異なる色を有することができる。タブ290には、それをハウジング220から引き離さなければならない方向にユーザを案内する言葉又は矢印のような記号でラベル付けすることができる。
【0121】
装置がインプラントと共に組み立てられる時に、インプラントは、カニューレ先端にある開口部のすぐ近位に位置決めされる。このようにして、インプラントがカニューレ管腔の中に深めに位置付けられ、カニューレ先端とインプラントの間に気泡又は空気溜りが存在したままになり、インプラントの吐出が気泡又は空気溜りを眼球の中に押進することになる場合に他に発生する可能性があると考えられるインプラントが吐出される時の眼の中への空気の導入を回避することができる。この回避をもたらすための1つの方法は、インプラントをカニューレ240の中に遠位方向に装填し、それにプランジャ246を続け、プッシュロッド248の長さを望ましい作動前位置にインプラントを押すように設計することである。その後に、カニューレアセンブリがハウジング220上に設けられる時に、プッシュロッド248、従って、インプラントが望ましい位置まで前進する。プッシュロッド248は、インプラント10をカニューレ240から駆動するためにカニューレ240を通って延び、インプラント10と接触するほど十分な長さを有することができる。一部の実施では、プッシュロッド248は、インプラント10が孔から完全に吐出されてカニューレ240から離れるように作動中にカニューレ240の遠位先端を少なくとも部分的に超えて延びるほど十分な長さを有することができる。プッシュロッド248は、その最遠位端がカニューレ240の最遠位端を超えて突出するように開口部の外に延びることができる。これは、プッシュロッド248がインプラント10をカニューレ240の先端241から十分に距離を置いて眼球の体液充満媒質(例えば、後眼房、前眼房、又は硝子体)の中に駆動することを可能にし、インプラント10がカニューレ240の端部に付着する可能性は低く、それによってシャフトが取り出される時にインプラントが眼から引きずり出されるか又は組織(例えば、角膜又は脈絡膜)内に滞留することになる可能性は低い。角膜内皮の中へのインプラントの付着は、例えば、有害な弊害をもたらす場合がある。好ましくは、インプラントは、吐出の直後に先端241から分離する。プッシュロッド248は、カニューレの管腔を通してインプラントを駆動することができるだけでなく、カニューレ先端から離れるようにインプラントを駆動することができるので、デバイスは、そこからのインプラントの明確な分離を可能にすることができる。
【0122】
保持プラグ280は、インプラントを展開するのに吐出力をそれほど高めることなく、更にカニューレ240の外寸を変化させることもなくカニューレ240の中にインプラントを実質的に保持することができる。カニューレ240の外径を最小にすることは、眼の中への開口部も最小にされることを意味する。保持プラグ280は、デバイスの通常の取り扱い中にカニューレ240の中にインプラントを保持するほど十分にロバストであるが、依然としてインプラントに障害を与えることなくインプラントをデバイスから吐出することを可能にすることができる。保持プラグ280は、それがカニューレ先端241にある開口部のすぐ近位に位置決めされ、インプラントがプラグ280のすぐ近位に位置決めされるように形成することができる。上記で議論したように、これは、プラグ280の遠位端とカニューレの先端の間の空気溜りの存在が防止される。保持プラグ280は、吐出の前に予定前のインプラント吐出の低いリスクしか伴わずにインプラントを保持する。
【0123】
保持プラグ280を組み込んだカニューレ内のプッシュロッド248の長さは、プラグの存在を受け入れるために短縮することができる。保持プラグ280は、カニューレ240からの開口部のすぐ近位に位置付けることができ、従って、プラグ280は、開口部の背後で完全に孔の内側にあり、インプラント10をプラグ280に対して近位に位置付けることができる。プッシュロッド248が孔を通って延びる距離は、例えば、約1mm~2mmの間であるプラグ280の長さだけ短縮することができる。一部の実施では、インプラント10は、長さが約7mmとすることができ、プッシュロッド248は、インプラント10の近位端に接触してそれを孔からの開口部の外に駆動するほど十分に長くすることができる。他の実施では、プラグ280は、長さが約1mmとすることができ、プッシュロッド248は、約27mmとすることができ、プラグ280のための追加の空間を与える。本明細書に使用する時に、「短縮」プッシュロッドは、孔内のプラグの存在を受け入れるために標準長さのプッシュロッドよりも短い長さを有し、同時に標準長さのプッシュロッドを有するアプリケータの場合と同じくインプラントとプッシュロッドとの相対位置も維持するプッシュロッドである。従って、短縮プッシュロッドは、カニューレの管腔に張るプラグの軸線方向長さだけ長さが短い。プッシュロッドが短縮される程度は、孔の中に分注される保持器溶液の質量と、その得られる孔内のプラグの軸線方向長さとに関する。保持プラグ280を組み込んだアプリケータ内の短縮プッシュロッドは、保持プラグ280のない標準アプリケータのプッシュロッドよりも約1mmから2mm未満まで短くすることができる。
【0124】
インプラント吐出の力及び速度を制御し、それによって潜在的な組織障害を最小にするために、カニューレ240に対するプッシュロッド248の相対長さを変更することができる。一部の実施では、プッシュロッド248は、インプラントの展開時にプッシュロッド248の遠位端がカニューレ240の丸められた内縁及び外縁を越えた場所に位置決めされるようにカニューレ240の遠位端の外に延びるように構成された長さを有する。他の実施では、プッシュロッド248は、インプラントの展開時にカニューレ240の遠位端の近くまで延びるが、カニューレ240の遠位縁部を越えては延びないように構成された長さを有する。一部の実施でのプッシュロッド248は、完全作動時にカニューレ240の最遠位先端を越えるように延びる。他の実施では、プッシュロッド248は、完全作動時にカニューレ240の最遠位先端の前で止まり、カニューレ240の最遠位先端を越えては延びない。例えば、プッシュロッド248は、孔内の保持プラグ280の存在を受け入れる短縮(約2mm未満から約1mmだけ標準プッシュロッドよりも短い)プッシュロッド248とすることができる。この実施では、プッシュロッド248は、その完全作動時に最遠位先端の前で止まることができる。展開の前に、プッシュロッド248は、孔に位置決めされたインプラント10からある距離だけ離れるように分離することができる。プッシュロッド248の遠位端は、インプラントの近位端から約1mmだけ約2mmまで分離することができる。より短いプッシュロッド248、プッシュロッド248とインプラント10の間のより長い距離、及びプラグ280の存在は、より長いプッシュロッド248を組み込み、かつプラグ280を組み込んでいないアプリケータと比較してインプラント吐出性能を改善することができる。プッシュロッド248の長さ及び/又はプラグ280の存在は、眼の中へのインプラントの信頼性の高い安全な展開を可能にするほど十分な眼内吐出距離を維持しながらインプラントの吐出速度を遅くすることができる。プッシュロッドは、デバイスからの作動時に壊れやすい組織に当たることを回避するためにインプラントの吐出速度が遅くなるように短縮してプラグ280を受け入れることができる。
【0125】
保持プラグ280は、単一ポリマー又は2又は3以上のポリマーの混合物で形成することができる。保持プラグ280は、水溶性ポリマーを含有する保持器溶液から形成することができる。水溶性ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース「HPMC」のようなセルロースエーテルとすることができる。HPMCは、例えば、METHOCEL(登録商標)及びWALOCEL(登録商標)という商標名の下にDuPont Pharmaから、更にBENECEL(登録商標)という商標名の下にAshlandから市販で入手可能である。HPMCは、公称上のメトキシ置換体及びヒドロキシプロポキシル置換体に基づいて異なる粘性を有する様々な等級で利用可能である。HPMCは、4,000mPaの粘性等級と、27.0%~30.0%(例えば、29.0%)のメトキシル置換体と、4.0%~7.5%(例えば、6.0%)のヒドロキシプロポキシル置換体とを有するF4M等級HPMCとすることができる。F4M級HPMCは、約20℃の2%水溶液中で2,663cP~4,970cPの粘性を有することができる。HPMCは、4,000cPの粘性等級と28.0%~30.0%のメトキシル置換体とを有するE4M等級とすることができる。E4M等級HPMCは、約20℃の2%水溶液中で2,663~4,970cPの間の見かけ粘性を有することができる。HPMCの他の適切な等級は、Aシリーズ、Eシリーズ、Fシリーズ、Kシリーズ、及びJシリーズ内の他の等級のうちのいずれかを含むA4M、E4M、F4M、K4M、及びJ4Mを含む。保持プラグのポリマーは、上述したHPMC、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリビドン又はポビドン、ヒプロメロース酢酸コハク酸塩(HPMCAS)、コポビドン、クロスポビドン、メチルセルロース(MC)、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、ナトリウムカルボキシメチルセルロース(CMC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピル-y-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、未変性シクロデキストリン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ヒアルロン酸、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、キトサン、アガロース、ポリペプチド、フィコール、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)、ポリオキサゾリン、ポリリン酸塩、ポリホスファゼン、キサンタンガム、ペクチン、デキストラン、天然アルブミナー、及び合成蛋白質を含む様々な水溶性ポリマーのうちのいずれかから形成することができる。保持プラグ280を形成するためのポリマー含有保持器溶液は、好ましくは、約6,000cPと約13,000cPの間の見かけ粘性を有し、非シリコーン処理材料に対する適度の接着性を有し、水溶性であり、有害事象をもたらすことなく眼での使用に適する生体適合性を有する粘性溶液を形成することができる。これらのポリマーの仕様書、データシート、及び試験データの全内容は、引用によって本明細書に組み込まれている。
【0126】
保持プラグは、カニューレに付与される前にポリマー保持器溶液又はポリマー保持ゲルに調合することができる。ポリマー保持器溶液又はポリマー保持ゲルは、ポリマー、並びに適切な目的の追加の賦形剤を含有することができる。一部の実施形態では、ポリマー保持ゲル又はポリマー保持器溶液をインプラント投与デバイスに容易に付加することができるようにこれらの溶液又はゲルの粘性を修正するために、ある一定の賦形剤をこれらのゲル又は溶液に添加することができる。実施形態により、イソプロピルアルコール、水、及び/又は緩衝液を含む、それで本質的に構成される、又はそれで構成される賦形剤をポリマーに添加してポリマー保持器溶液又はポリマー保持ゲルを形成することができる。使用される時に、1又は2以上の賦形剤は、溶液又はゲルの全重量に基づいて溶液又はゲルの0.2重量%から10重量%の範囲、好ましくは約3%の量でこれらの溶液又はゲル中に存在することができる。
【0127】
プラグが針ボア内に形成されるか否かは、HPMC溶液の濃度の関数とすることができる。一部の実施では、ポリマー保持器溶液は、2%w/wと4%w/wの間又は2.5%w/wと3.5%w/wの間であるか又は好ましくは3%w/w前後の様々な液体濃度のHPMC溶液を生成するHPMCの注入のための水溶液(WFI)である。1%程度の低い濃度の溶液は、カニューレ内の管腔を完全に閉鎖し損ね、それに対して高濃度(例えば、6%)溶液の粘性は、好ましい分注時間、分注圧、及び分注針ゲージパラメータ内での分注を妨げる。好ましくは、ポリマー保持器溶液は、2.5%よりも高くかつ約4%よりも低い濃度を有するHPMC(例えば、E4M又はF4M)の溶液である。
【0128】
異なる濃度のHPMC溶液は、異なる見かけ粘性を有する可能性がある。溶液の見かけ粘性は、Brookfield RVDV-II+ Pro Extra粘度計と、SC4-13RPサンプルチャンバを有するBrookfieldスピンドル#7-RVとを用いた回転粘性測定によって決定することができる。25.0±0.1℃に制御された温度で100rpmで測定値を取得することができる。試験前に平衡化するために堅く閉蓋したサンプル及び標準体(15mL)を水浴又は恒温器/インキュベータ内に入れてこの温度で少なくとも3時間安定させることができる。実施では、2.58%F4M-HPMC溶液は、6,780センチポアズ(cP)の見かけ粘性を有し、2.8%F4M-HPMC溶液は、7,880cPの見かけ粘性を有し、3%F4M-HPMC溶液は、10,680cPの見かけ粘性を有し、3.15%F4M-HPMC溶液は、12,780cPの見かけ粘性を有する。HPMC溶液は、カニューレへの付加の前に約6,240cPよりも高く又はそれに等しくかつ約12,870cPよりも低いか又はそれに等しい、約6,780cPよりも高く又はそれに等しくかつ約12,760cPよりも低いか又はそれに等しい、約8,640cPよりも高く又はそれに等しくかつ10,080cPよりも低いか又はそれに等しい見かけ粘性を有することができる。一部の実施では、保持器溶液の粘性は、約7,000cPと約13,000cPの間である。一部の実施では、保持器溶液は、8,640cP~12,760cPの見かけ粘性を有する3%F4M-HPMC溶液であり、28ゲージカニューレの中に125μg~200μgの間の分注質量として分注される。
【0129】
HPMC溶液は、22ゲージ、25ゲージ、27ゲージ、28ゲージ、又は30ゲージを含む異なるゲージを有するカニューレに付加することができる。一般的に、ボアが大きくなるほど、ボア内に閉じ込められて広がるプラグを形成するのに大きいHPMC質量が分注される。28Gのカニューレは、100~300μg、好ましくは約125~275μgの分注質量を受け入れることができ、それに対してより大きいカニューレ(例えば、22G)は、300~1000μg、好ましくは約450~850μgのより大きい分注質量を受け入れることができる。本明細書では、保持プラグを形成するためのポリマー保持器溶液のために他の水溶性生体適合ポリマーを考えていることを認めなければならない。ポリマー保持器溶液の濃度は、本明細書に説明する範囲にある見かけ粘性を有するように選択され、その溶液を特定のカニューレゲージに適するものとして本明細書に説明する分注質量範囲でボア内に分注することができる。
【0130】
カニューレからのインプラントの展開を達成するためにアクチュエータボタンを押下するのにどれほどの力を必要とするかを決定するように作動力を測定することができる。アプリケータの作動力は、アプリケータを固定具によって力測定機器のプローブの下にボタンが上に向く状態で水平位置に配置することによって評価することができる。固定具は、ボタンに対する作動力が正確に測定されるように試験中にアプリケータを変形から守る。機器プローブは、力ゲージに接続することができ、従って、アプリケータのボタンを押下する。ボタンを下方にアプリケータのハウジングの中に移動するのに必要とされる力は、ポンド(lbf)を単位として機器が記録することができる。カニューレ内にプラグを形成するための保持器溶液に関して上述した粘性範囲は、インプラントを吐出するための0.9lbfと1.5lbfの間の同等の作動力をもたらす。一般的に、5.0ポンドの力よりも小さい作動力が好ましい。
【0131】
ポリマー保持器は、カニューレ先端を溶液の中に浸漬すること又はカニューレの先端へのポリマー保持器の直接付加のいずれかによってカニューレに溶液、ゲル、又はホットメルトとして付加することができる。ポリマー保持器がカニューレ先端に溶液又はゲルとして付加される実施形態では、ポリマー保持器を含むカニューレが患者の中に挿入される前に溶液又はゲル溶媒を除去することができる。ポリマー保持器がホットメルトとして付加される実施形態では、カニューレへの付加後であるがポリマー保持器を含むカニューレが患者の中に挿入される前にこのメルトを冷却することができる。
【0132】
好ましくは、カニューレは、ポリマー保持器溶液で浸漬によって被覆されず、代わりに分注質量を達成するように制御される分注システムの分注先端によってある量の溶液がカニューレボア内に分注される。制御式分注システムは、例えば、EFD Ultra 2400 Fluid Dispenserとすることができる。分注先端ID範囲は、約0.00350’’と0.0050’’の間とすることができる。一般的に、分注先端は、閉栓されるカニューレのゲージよりも小さいゲージを有する。例えば、閉栓されるカニューレは、28ゲージとすることができ、分注先端は、32ゲージとすることができる。閉栓されるカニューレは、22ゲージとすることができ、分注先端は27ゲージとすることができる。
【0133】
保持器溶液の分注質量は、カニューレのボアを完全に閉栓する保持プラグを達成するのに適する望ましい分注質量を達成するために例えばポリマー濃度、保持器溶液粘性、分注針ゲージ、アプリケータゲージ、分注時間、分注角度、分注圧のようなパラメータに従って分注針を用いてカニューレの遠位端の中に直接に堆積させることができる。保持器溶液の分注質量は、保持器溶液の濃度及び見かけ粘性、並びに閉栓されるカニューレゲージに依存して変化することが可能である。一部の実施では、8,640cP~12,760cPの間の見かけ粘性を有する28ゲージのカニューレを閉栓するための保持器溶液の分注質量は、100μgよりも大きくかつ300μgよりも小さく、好ましくは約125~275μgの範囲にある質量とすることができる。約10,080cPの見かけ粘性を有する22ゲージのカニューレを閉栓するための保持器溶液の分注質量は、300μgよりも大きくかつ1,000μgよりも小さく、好ましくは約450μgと850μgの範囲にある質量とすることができる。
【0134】
分注パラメータは、閉栓されるカニューレゲージと分注される溶液とに依存して変化することが可能である。質量を送出するのに使用される分注圧は、30psiと75psiの間、好ましくは約50と55psiの間である圧力とすることができる。分注時間は、1.0秒と3.0秒の間、好ましくは約1.4と2.8秒の間である時間とすることができる。分注角度は、約5度と約45度の間である角度とすることができる。鈍頭先端カニューレでは、分注角度を比較的浅く(例えば、水平から約10度よりも小さく)することができ、それに対して斜角を有する針は、より大きい分注角度(例えば、約30度)を有することができる。実施では、28ゲージのカニューレ内への125~275μgの間の分注質量を達成するために、6,780cP~7,880cPの間の保持器溶液粘性範囲及び90~100μmの分注先端ID範囲に対して圧力範囲は、47~51psiの間である範囲とすることができる。
【0135】
分注後の溶液は、ボア内にプラグが形成されるまで放置して乾燥させることができる(例えば、室温で)。一般的に、プラグは、遠位開口部の近位で完全にボアの内側に形成される。閉栓パラメータは、単に壁を被覆するのではなくカニューレのボアを完全に張る完全なプラグが形成されることを保証するように選択される。好ましくは、カニューレは、シリコーンが、外面を被覆して本明細書の他の箇所で議論するように保持プラグが接着又は付着するカニューレの内面をシリコーン処理することを回避するように、電気スプレー被覆シリコーン油でシリコーン処理される。保持プラグは、非シリコーン処理面により十分に付着する。しかし、保持プラグは、過度に十分に付着してアプリケータの機能に悪影響を及ぼす場合がある(例えば、インプラントを展開するための作動力を増大させる)。従って、シリコーン処理工程は、少量のシリコーン油が毛管力によって開口部内に移動することを許す。スプレー被覆は、カニューレの外面を完全にシリコーン処理し、僅かに少量のシリコーン油しか管腔の開口部上に定着しない。スプレー被覆されたカニューレ内の管腔の中に開口部から移動するシリコーン油の量は、浸漬被覆カニューレ内で移動するシリコーン油の量よりも少なく、それによって浸漬被覆カニューレよりも良い壁へのポリマー保持プラグの接着を提供するが、完全な非シリコーン処理針のようなデバイスの有用性に影響を及ぼすほど強くは接着しない。本明細書の他の箇所で説明するように、シリコーンコーティングは、カニューレの露出長さ全体(外面に沿って約6mm)、又はカニューレの露出長さよりも短い長さを覆うことができる。
【0136】
インプラントをカニューレの内側に保持する保持プラグは、作動力に対するその効果が変化する場合がある。アプリケータのための保持システムとして保持プラグの適合性に影響を及ぼす場合があり、ポリマーの分子重量、保持器溶液の濃度、及び粘性と、使用される制御式分注システムの内寸、分注圧、及び分注時間に依存して異なる可能性がある付着保持器溶液の分注質量とを含む関連パラメータ及びカニューレからの作動力に対するこれらのパラメータの影響は変化する場合がある。分注質量は、保持器溶液の濃度及び/又は粘性による影響を受ける場合がある。例えば、より高い濃度の保持器溶液は、同じサイズのカニューレ内でより低い濃度の保持器溶液の同じ分注質量を達成するのに分注圧、分注時間、及び/又は分注針の内寸を修正する必要がある可能性がある粘性を有する場合がある。一部の保持器溶液は、特定のカニューレサイズに対して過度に高い粘性を有し、過度に硬質であり、インプラントを展開するのに必要とされる作動力を高め、それによってデバイスが適切に使用可能ではなくなるプラグを形成する場合がある。他の保持器溶液は、使用されるカニューレサイズに対して十分な粘性を持たず、カニューレの内壁を被覆するだけに留まって開口部が少なくとも部分的に開いたままになる及び/又は搬送及び取り扱い中にインプラントが脱落することを防止し損ねるプラグを形成する。保持器溶液の粘性は、閉栓されるカニューレのサイズに依存して選択することができる様々な機能特性を得られるプラグに与えるように調節することができる。保持器溶液の粘性は、より小さいゲージのカニューレに対しては低めであるが、作動力に影響を及ぼすことなくインプラントを適切に保持するように開口部を閉栓するのに依然として十分である場合はあるが、同じ粘性の保持器溶液は、より大きいゲージのカニューレの開口部を閉栓するには十分ではなく、カニューレの内壁を被覆するだけに留まるか又はインプラントを保持し損ねる場合がある。追加のHPMC溶液は、カニューレの開口部を完全に閉じるほど十分な粘性を有するが、プラグを通してインプラントを押すのに必要とされる作動力が過度に大きいような過度に高い剛性のプラグが形成されるほど粘性が高い場合がある。
【0137】
保持器溶液の粘性は、保持器溶液の濃度及び/又はポリマーの分子重量を変更することによって調節することができる。例えば、かなり高い粘性を有し、より大きいサイズのカニューレに適するHPMC溶液を生成するために、より高い分子重量を有するHPMC出発原料を選択することができるが、このHPMC溶液は、より小さいサイズのカニューレに対しては粘性が高すぎる場合がある。同じ濃度の保持器溶液がより小さいサイズのカニューレに適切であるようにするために、より低い分子重量のHPMCを選択することによって保持器溶液の粘性を低くすることができるが、この保持器溶液は、より大きいカニューレサイズには適さない場合がある。過度に低い粘性は、プラグが例えば搬送及び取り扱い中にカニューレの中にインプラントを実質的に保持することを妨げる。プラグは、インプラントがカニューレから吐出されて眼球に進入する時にインプラントを十分に減速し損ねる可能性もある。カニューレから過度に急激に放出されるインプラントは、眼球の中に過度に深く入り込み、組織障害をもたらす場合がある。従って、好ましくは、プラグは、取り扱い中にインプラントを保持するように特定のカニューレサイズに適する粘性を有し、更にインプラントがカニューレから吐出される時にインプラント及び眼球に障害を与えることを回避するために同じ吐出力の下でもインプラントを減速することを可能にする保持器溶液から形成される。インプラントを閉じ込めるためにカニューレを実質的に閉栓するが、カニューレからインプラントを吐出するのに必要な作動力の量を依然として有利に最小にするのに適切な量のポリマー保持器を使用することができる。本明細書に説明するポリマー保持プラグは、適切な保持及びボアとの接着を可能にすることができるが、インプラントをカニューレから展開するのに必要とされる作動力を有意には高めない。カニューレからインプラントを展開するためのボタンに対する作動力は、プラグがボアに存在しない時にインプラントを展開するためのボタンに対する作動力と類似の約0.5重量ポンドから2.0重量ポンドの範囲、又は約1.0重量ポンドから約1.5重量ポンドの範囲にある力とすることができる。
【0138】
患者での頻繁な眼内注射の必要性は、投与するのにこれらの注射が容易で簡単でなければならないことを意味する。この目標は、時として注射を安全で無痛にする必要性と相反する。ボア内のプラグは、インプラントが埋め込みの前にボアから滑落する恐れなくアプリケータを手軽に取り扱うことができるようにアプリケータをより使いやすくする。しかし、ボア内のプラグは、インプラントがボアから滑落することを防止するのに過度に有効である場合がある。プラグの保持器溶液は、インプラントがカニューレから不用意に脱落することを防止するために、形成されるプラグが単に壁を被覆するのではなくボアを完全に張り、同時に作動及び眼の中への展開時にインプラントがボアを通過することができるほど十分な易壊性を依然として有するように、カニューレのボアサイズに対して較正することができる。
【0139】
HPMCは、緑内障のマウスモデルでより大きいIOP増大を達成するためにポリスチレンマイクロビーズとの組合せで使用されてきた(Liu及びDing著「緑内障実験動物モデルの確立:ヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用する場合と用いない場合とのマイクロビーズ注射の比較(Establishment of an experimental glaucoma animal model: A comparison of microbead injection with or without hydroxypropyl methylcellulose)」、Experimental及びTherap.Med.14、1953~1960、2017年)。喜ばしいことに、Bimatoprost SRインプラントとOzurdexインプラントとを保持するために3%F4M-HPMC溶液で形成された保持プラグは、この目的に使用される時にいずれの検出可能な有害事象も引き起こさなかった。
【0140】
埋め込みの方法
【0141】
本明細書に説明する送出デバイスは、角膜の有害事象、特に内皮細胞の喪失の低いリスクしか伴わずに複数回の投与を可能にするインプラントを眼球内の場所に展開することを可能にする。インプラントを虹彩の背後の後眼房の中に、好ましくは、毛様溝の中に位置決めすることにより、下記でより詳細に説明するように角膜の有害事象の発生を低減し、前房内配置と比較してより有効な薬物送出を可能にすることができる。インプラントを位置決めする埋め込み方法は、患者が有水晶体眼患者又は偽水晶体眼患者のいずれであるかに依存して異なる場合がある。例えば、偽水晶体眼球は、先鋭である従来の斜角針を使用して埋め込みを受けることができ、それに対して必要というわけではないが、有水晶体眼患者での生来の水晶体への不用意な障害を回避するために鈍頭先端を有するカニューレを使用することが好ましい。このカニューレは、後眼房、好ましくは、毛様溝への内部からのアクセスを可能にする丸められた内縁及び外縁、並びに全体的な可撓性を有する鈍頭の非外傷性遠位先端に起因してインプラントを患者の眼球の後眼房の中に展開するように特別に設計することができる。この場所の中に展開されるインプラントは、緑内障を患う患者に眼内圧の長期低減を施しながら角膜内皮細胞の破壊のより低いリスクという際立った利点を有する。
【0142】
この埋め込み方法は、送出装置200を使用して眼球領域内のターゲット区域にアクセスする段階を備えることができる。
図1E~
図1Hは、インプラントを内部から毛様溝に送出する方法を概略で例示している。それを通して鈍頭先端カニューレを挿入する開口部を眼内に生成するために、角膜に貫入するように構成された遠位端を有する先鋭ツールを使用することができる。実施では、皮下針(約35ゲージから28ゲージまで)、ナイフ先端デバイス、手術用メス、又はダイヤモンドナイフのような個別の第1のツール305を使用して最初に前眼房106に進入するための穿刺部又は刺切創を角膜102内に形成し(
図1Eを参照されたい)、その後にこの開口部を通してカニューレ240を挿入することができる(
図1F)。開口部は、約1mm幅とすることができる。開口部は、自己密封角膜切開部、例えば、サイズが約1mmであり、約2.85mmよりも大きくない切開部とすることができる。前眼房106の中への開口部は、上鼻四分の一象限内で手術用顕微鏡を使用して眼内で角膜102の角膜縁のレベルでのように生成することができる。角膜開口部は、上側又は耳側に生成することができる。このアクセス部位は、反対側の後眼房108の中へのカニューレ240の挿入に適切な角度を与える。インプラント10は、眼球の下側半球の中に、好ましくは、6時の位置に配置することができる。インプラントを下側に配置する時は、カニューレ240を瞳孔105が大きく拡張した状態で耳側接近から毛様溝111に向けてタンジェンシャルに挿入することができる。カニューレ240は、角膜開口部を通して前眼房106の中に挿入され、更に瞳孔105を通して虹彩104の少なくとも一部分の下に挿入することができる。瞳孔105は、トロピカミド0.5%から1%のような散瞳薬を使用して拡張させることができる。これに加えて、フェニレフリン2.5%、並びにアトロピン、シクロペントラート、ホマトロピンを含む瞳孔を拡張させる公知の他の薬剤を使用することができる。瞳孔を拡張させることにより、毛様溝領域へのアクセスを改善することができる。粘弾剤を使用して前眼房106、並びに後眼房108、特に虹彩104の裏面と水晶体111の前面の間の空間を深くし、アクセスを改善することができる。
【0143】
カニューレ240の遠位先端を前眼房106を通して少なくとも部分的に後眼房108の中に前進させて(
図1Gを参照されたい)、プッシュロッド248を使用してインプラント10をカニューレ240から毛様溝111の中又はその近くに展開することができる(
図1Hを参照されたい)。管腔からのインプラントの吐出の前に、カニューレ240の先端は、虹彩辺縁のそばを約1~2mm通過させて後眼房の中に誘導することができる。他の実施では、カニューレ240の先端は、後眼房108の中に深く毛様溝111の中まで誘導することができる。他の実施では、カニューレ240は、そこから抜け出たインプラント10がチン小帯の上又は中又は虹彩104の背後にある後眼房108の別の場所にも収まるように十分に前進させることができる。カニューレ240は、インプラント10を後眼房108の中に直接展開する必要はない。例えば、カニューレ240の遠位先端は、眼球の水晶体110を覆う場所まで前進させて水晶体110上に放出することができる。その後に、虹彩へら又は長刃のKelman McPherson鉗子のような鉗子を使用して虹彩104の背後の後眼房108内の望ましい場所にインプラント10を手動で配置することを助けることができる。
【0144】
上記で詳細に議論したように、カニューレ240の遠位端は、特に、デバイスを有水晶体眼患者の後眼房108の中に埋め込み、カニューレ240が瞳孔105を通して水晶体110の前面を覆う場所まで挿入される時に水晶体包に不用意に貫入することを回避するために丸められた縁部を有する鈍頭とすることができる。カニューレ240の遠位開口部が虹彩104の背後の後眼房108の中に、例えば、毛様溝111の近くに又は中に位置決めされると、アクチュエータ250を作動させてカニューレ240の管腔225から後眼房108の毛様溝111の中にインプラントを展開することができる。アクチュエータ250は、ユーザがアクチュエータ250を押下する時に徐々に押し下げることができるリンケージ260に係合する。この徐々の押し下げは、インプラント10を遠位開口部に向けて遠位方向に前進させるためにユーザがカニューレ240の管腔225を通してプッシュロッド248をゆっくりと前進させることを可能にする。インプラント10は、プラグ280とインプラント10とが一緒に眼球の中に放出されるように保持プラグ280を越えるように押圧される。
【0145】
インプラント10の配置及び眼からのカニューレ240の引き抜きの後に、ピロカルピン又は前房内Miochol(アセチルコラミン)又はMiostat(カルバコール)のような局所又は前房内のムスカリン作用薬を使用して瞳孔105を小さくする(収縮させる)ことができる。これは、インプラントを後眼房108の中に固定させ又は「捕捉」し、インプラントが虹彩104の前及び毛様溝111の領域の外に移動する可能性を低減することを助ける。更に、若干下向き方向の眼球の回転又は頭が顎と共に下向きに傾斜された状態は、手術直後の期間でのインプラントの下側配置も改善する。
【0146】
前眼房106が房水を失う場合又は深さが浅い場合に、粘弾性物質又はOVD(眼科用ビスコ手術デバイス)を使用して前眼房深さを深くし又は維持し、後眼房108へのより確実なアクセスを達成することができる。凝集性粘弾剤は、容易に除去することができることで好ましい。角膜切開に続き、前眼房106の深さを維持するためにカニューレ240が挿入される前に、BSSを注射して眼房を深くすることができる。
【0147】
何個のインプラントがカニューレ240内に最初に位置決めされたかに依存して複数のインプラントを1つのカニューレ240を通して配置することができる。手順の終了時に、IOPスパイクを防止するために、後眼房インプラントを変位させないように注意しながら洗浄/吸引手順を使用して眼から粘弾性物質を除去することができる。切開部位は、必要に応じて縫合によって又はBSSによる間質水和を使用して閉じることができる。
【0148】
実験
【実施例】
【0149】
実施例1:前眼房インプラントを用いた眼内圧(IOP)の低減での投与量応答
【0150】
1mm/8μg、1.5mm/15μg、1mm/30μg、及び2mm/60μgのインプラント/投与量という異なるインプラントサイズ及びビマトプロスト投与量を使用して埋め込みが行われた6匹の雄の正常圧のビーグル犬を評価した。これらのインプラントを25ゲージアプリケータデバイスを使用して投与した。動物の右眼球は、8μg、15μg、30μg、及び60μgの投与量で1回のインプラント投与を受けた。未治療左眼を使用して治療眼と他の眼球の間の動物個体内差を評価した。両方の眼を投与量投与の前に点眼麻酔薬(1滴又は2滴の0.5%プロパラカイン)を約5分間適用することによって前房内インプラント投与のために与えた。眼を希薄ヨウ素溶液を使用して2分から3分間濯ぎ洗浄し、眼窩周囲領域を綿先端アプリケータを使用して清浄化した。次に、眼を生理食塩水で洗浄し、局所点眼麻酔薬を各眼球に点眼した。無菌事前装填アプリケータを使用してインプラントを前眼房内に配置し、広ゾーンスペクトル抗生物質を眼球に局所適用した。
【0151】
治療眼と未治療眼でIOP測定値を取得した。ベースライン(未治療左眼に対して補正された)からの治療右眼での平均IOP変化に関する投与量依存IOP降下効果は、インプラントの投与に明らかに追従し、全ての投与量強度が、投与後少なくとも90日間を通してIOPを低減した。右眼及び左眼球に関する平均ベースラインIOP値(調査5日目の値と検査7日目の値とを組み合わせた平均IOP値)は、それぞれ、14.8mmHg及び14.3mmHg(8μg)、14.0mmHg及び13.6mmHg(15μg)、14.9mmHg及び14.6mmHg(30μg)、及び13.0mmHg及び12.3mmHg(60μg)であり、2つの眼球の間のベースラインでの同等のIOP値を例証した。
【0152】
図6は、ビーグル犬でのインプラントの前房内投与後3ヶ月にわたる治療右眼球内の眼内圧(IOP)の平均百分率変化を例示している。誤差バーは、平均値の標準誤差を例示している。IOPは、前眼房インプラントの配置に続いて降下し、明らかな投与量応答が有意に現れた。ベースラインからのIOPの平均百分率低減は、約10%(8μg)、19%(15μg)、24%(30μg)、及び30%(60μg)であった。
【0153】
細隙灯生物顕微鏡を使用して眼科検査が行われた。ぶどう膜炎命名法標準化採点システムを使用して前眼房細胞、前眼房フレア、及び結膜充血を評価した。角膜厚測定(パキメトリー)値をAccuPach V(米国ペンシルベニア州モルバーンのAccutome)を使用して取得した。両眼で角膜内皮を評価するために、非接触スペキュラーマイクロスコープ(日本国東京のTopcon CorporationのTOPCON SP-300)検査が行われた。ビマトプロストインプラントの前房内配置は、全ての投与量で十分に耐容されている。一般的に、埋め込み部位の所見は僅かであり、投与後8日目又は9日目までに解消されている。ビマトプロスト治療眼では、軽度から中度の結膜充血(+1から+2まで)が投与量依存傾向を使用して有意に現れた。全ての群では第1週中に房水フレアが間欠的に及び稀に見られ、全ての群では8日目又は9日目までに解消されている。角膜厚測定値には、左眼と右眼球の間に明らかで堅実な差又は臨床的に有意な異常はなかった。瞳孔径測定値が、ビマトプロスト治療眼内に投与量に関する縮瞳を示し、この縮瞳は、調査の途中で低減した。ビマトプロストインプラントは、埋め込み後4ヶ月又は6ヶ月では評価して4ヶ月での60μgビマトプロストインプラント治療眼及び6ヶ月での別の治療眼では、ビマトプロストではなくインプラントに関するものと考えられる角膜内皮の僅かな衰弱以外には巨視的又は微視的な所見に影響を及ぼさなかった。
【0154】
実施例2:後眼房インプラントを用いた眼内圧(IOP)の低減の前眼房インプラントとの比較
【0155】
緑内障を有する患者を表1に提示した配合の10μgビマトプロスト(20重量%)インプラントを使用して治療した。患者のベースライン眼内圧は24.5mmHgであった。最初に、左眼球の前眼房内にインプラントを配置し、虹彩角膜角の中に定着させた。IOPを両眼で0時では測定し、埋め込み後4週目、6週目、8週目、12週目、及び16週目では測定した。IOPは、4週目で17mmHgであった。前眼房インプラントでは、4週目、6週目、及び8週目での平均IOPが15mmHgであり、この値は、ベースラインからの38.8%のIOP低減であった。このインプラントを8週目と12週目の間に前眼房から後眼房に移した。IOPは、12週目では15mmHgであり、16週目では11.5mmHgであった。後眼房インプラントは、12週目及び16週目で13.3mmHg又はベースラインからの45.7%IOP低減を有した。後眼房インプラントは、前眼房インプラントと比較して有意なIOP低減をもたらした。
【0156】
患者は、局所緑内障薬療法を開始した18ヶ月時点まで後眼房インプラントを使用してIOP制御を受け続けた。前眼房インプラントは、平均で9ヶ月にわたってのみIOPを低減した。上述のように、後眼房インプラントは、ベースラインからの有意なIOP低減を前眼房インプラントと比較して長い期間にわたって有した。
【0157】
インプラントの後眼房配置は、前眼房配置と比較して薬物供給源とターゲット組織の間の距離を増大させた。フィックの拡散第二法則により、薬物供給源とターゲット組織の間の3~5mmの距離は、ターゲット組織内の薬物濃度の約5%(又は7.5%から12.5%まで)の低減を招いたはずである。ターゲット組織から遠く離れた後眼房インプラント及びより低い理論薬物濃度が、ターゲット組織の近くに位置決めされた前眼房インプラント及びより高い理論薬物濃度と比較して高いIOP低減効果を有することは、誰もが予想しなかったと考えられる。後眼房インプラントが前眼房インプラントと比較して長い期間にわたってIOPを低減することも誰も予想しなかったと考えられる。
後眼房インプラントによる眼内圧(IOP)の低減
【0158】
徐放性ビマトプロストインプラントの後眼房配置の効果及びこの配置に対する眼耐容力を調査した。後眼房内に30μgビマトプロストインプラントを埋め込んだ3匹の正常圧ビーグル犬ではIOPを測定した。30μgインプラントは、20%w/wビマトプロストt、45%w/wPLA(Resomer R203S)、20%w/w PLGA(Resomer RG752S)、10%w/wPLA(Resomer R02H)、5%w/wPEG-350を含むものであった。インプラントは、長さが2.3mmであり、直径が250μmであった。25ゲージあアプリケータデバイスを使用してインプラントを投与した。動物の右眼球は、インプラントの1回投与を受け、反対側の眼球は、治療を受けず、治療眼と他眼球の間の動物個体内差を評価するために用いた。
【0159】
これらのイヌにアトロピン(0.022mg/kg、米国カリフォルニア州ポモナのMed-Pharmex Inc.)を麻酔前皮下注射によって投与し、次に、ケタミン(6.25mg/kg、米国メイン州ポートランドのPutney)と、キシラジン(0.625mg/kg、米国イリノイ州ディケーターのAkorn、Inc,)と、アセプロマジン(0.125mg/kg、米国メリーランド州のPhoenix、St.Joseph)との静脈内カクテルを使用して麻酔をかけた。瞼及び眼周囲の部位を5%のポビドン/ヨウ素溶液で3分間術前与え、次に、平衡塩類溶液(BSS)の潅注によって洗い流した。虹彩の背後へのインプラントの配置に向けてより大きいアクセス部位を設けるために、瞳孔を開くための散瞳薬を点眼した。アプリケータは、上鼻四分の一象限内で手術用顕微鏡を使用して透明な角膜を通して部分的に挿入した。インプラントを前眼房内に投与し、水晶体の上に配置した。虹彩へらを使用してインプラントを虹彩の背後で後眼房の中に配置した。この手順の後にZymaxid(登録商標)(ガチフロキサシン点眼溶液、米国カリフォルニア州アーバインのAllergan)を局所適用した。
【0160】
眼内圧は、イヌ設定値を用いた手持ち式リバウンド眼圧計(フィンランド国ヘルシンキのICareのTonoVet)によって測定した。測定値は、午前中に同時に取得した。眼毎に2つの測定値を取得した(各測定値に対して6つの値を平均した)。瞳孔径は、瞳孔ゲージを有するMedimeterルーラー(米国カリフォルニア州ノースリッジのPrestige Medical)によって測定した。両眼では角膜内皮を評価し、角膜中央部内皮細胞密度を測定するために非接触スペキュラーマイクロスコープ検査が行われた。
【0161】
埋め込み前かつ投与後1週目に治療眼及び未治療眼でIOP測定値を取得した。調査眼及び非調査眼での平均ベースラインIOPは、それぞれ15.2mmHg及び16.2mmHgであった。30μgbビマトプロストインプラントを用いた投与後1週目に、IOPは、他眼と比較して30%だけ低下した(
図7)。前眼部炎症を含む有害事象の痕跡はなく、内皮細胞密度の変化はなかった。
図8は、調査眼及び非調査眼では投与後1週目に角膜中央部内皮細胞密度が2377細胞数/mm
2及び2299細胞数/mm
2であったことを例示している。同様に、色素分散も見受けられなかった。
【0162】
上述のように前眼房内に投与した30μgビマトプロストインプラントは、投与後1週目に有害事象(すなわち、有害な耐容力所見)を伴わずにIOPを26%だけ低減した。後眼房の中に投与した30μgビマトプロストインプラントは、投与後1週目に有害事象を伴わずにIOPを30%だけ低減した。後眼房に配置した30μgビマトプロストインプラントを用いたIOP降下は、前眼房に配置した30μgビマトプロストインプラントと比較して大幅であった。
【0163】
様々な実施では、図を参照して説明した。しかし、ある一定の実施は、これらの具体的な詳細のうちの1又は2以上を用いずに又は他の公知の方法及び構成との組合せを使用して実施することができる。説明では、これらの実施の完全な理解をもたらすために具体的な構成、寸法、及び工程のような数々の具体的詳細を陳述した。他の事例では、説明を不要に不明瞭にしないために公知の工程及び製造技術を特に詳細には説明しなかった。本明細書を通じて「一実施形態」、「実施形態」、「一実施」、又は「実施」などへの言及は、説明する特定の特徴、構造、構成、又は特性が少なくとも1つの実施形態又は実施内に含まれることを意味する。従って、本明細書にわたる様々な箇所での「一実施形態」、「実施形態」、「一実施」、又は「実施」などの句の出現は、必ずしも同じ実施形態又は実施に言及しているとは限らない。更に、これらの特定の特徴、構造、構成、又は特性は、1又は2以上の実施であらゆる適切な方式で組み合わせることができる。
【0164】
本明細書は多くの具体的内容を含むが、それらは、主張するもの又は主張することができるものの範囲に対する限定としてではなく、特定の実施形態に独特の特徴の説明として解釈しなければならない。本明細書で個別の実施形態の状況で説明するある一定の特徴は、単一実施形態での組合せで実施することができる。それとは逆に、単一実施形態の状況で説明する様々な特徴は、実施形態で個別に又はあらゆる適切な部分結合で実施することができる。更に、上記では、特徴は、ある一定の組合せで機能するものと説明することができ、最初にそのように主張する場合さえあるが、一部の場合に、主張する組合せからの1又は2以上の特徴は、このような組合せから削除され、主張する組合せを部分結合又はその変形に向けることができる。同様に、図面に作動を特定の順序で示すが、これを望ましい結果を達成するためにそのような作動を示す特定の順序で又は順序通りに実施すること又は図示する全ての作動を実施することを必要とすると理解すべきではい。一部の例及び実施のみを開示している。説明する例及び実施及び他の実施への変更、修正、及び改善は、開示するものに基づいて加えることができる。
【0165】
以上の説明及び特許請求の範囲では、「のうちの少なくとも1つ」又は「のうちの1又は2以上」のような句は、接続詞で結ばれた複数の要素又は特徴の列挙の後に出現する場合がある。「及び/又は」という用語が、2又は3以上の要素又は特徴の列挙中に出現する場合もある。これらの用語を使用する状況が他に示唆的又は明示的に矛盾しない限り、そのような句は、列挙する要素又は特徴のうちのいずれか個々のもの又は列挙する要素又は特徴のうちのいずれかと列挙する他の要素又は特徴のうちのいずれかとの組合せを意味するように意図している。例えば、「A及びBのうちの少なくとも一方」、「A及びBのうちの1又は2以上」、及び「A及び/又はB」という句の各々は、「Aのみ、Bのみ、又はAとBとを併せたもの」を意味するように意図している。3又は4以上の項目を含む列挙に対しても類似の解釈を意図している。例えば、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つ」、「A、B、及びCのうちの1又は2以上」、及び「A、B、及び/又はC」という句の各々は、「Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとBとを併せたもの、AとCとを併せたもの、BとCとを併せたもの、又はAとBとCとを併せたもの」を意味するように意図している。
【0166】
上記及び特許請求の範囲での「に基づいて」という用語の使用は、列挙しない特徴又は要素も許容されるように「に少なくとも部分的に基づいて」を意味するように意図している。
【0167】
本明細書に説明する全ての方法は、本明細書で他に示さない限り又は状況が他に明確に矛盾しない限り、あらゆる適切な順序で実施することができる。本明細書に提供するあらゆる全ての例又は例示的文言(例えば、「のような」)の使用は、本発明をより良くするように意図したものに過ぎず、いずれの特許請求の範囲に対しても制限を課さない。本明細書でのいずれの文言も、本発明の実施に不可欠ないずれかの非請求要素を示すものと解釈すべきではない。
【0168】
本明細書に開示する代替要素、実施形態、又は実施のグループ分けは、限定として解釈すべきではない。各群構成要素は、個々に又は本明細書に見出される群の他の構成要素又は他の要素とのあらゆる組合せで言及する又は主張することができる。群の1又は2以上の構成要素は、便宜上及び/又は特許性の理由から群の中に含めるか又はそこから削除することができると予想されている。いずれかのそのような包含又は削除が発生する時に、本明細書は、修正される群を含み、従って、特許請求の範囲に使用される全てのマーカッシュ群の明細を満足すると見なされる。
【0169】
好ましい実施形態
【0170】
好ましい実施形態1.眼内圧を低減するのへのプロスタミド含有インプラントの効果を改善する方法であって、プロスタミド含有眼内インプラントを患っている患者の眼球の後眼房の中にインプラントを置く段階を含み、プロスタミド含有インプラントが、眼内圧の低減を必要とする患者の眼球の前眼房内に位置決めされた同じプロスタミド含有インプラントと比較してより有意な患者の眼内圧低減をもたらすことを特徴とする方法。
【0171】
好ましい実施形態2.患者が、緑内障又は高眼圧を有することを特徴とする好ましい実施形態1の方法。
【0172】
好ましい実施形態3.プロスタミド含有眼内インプラントが、後眼房の中に存在して少なくとも約12週間、約24ヶ月までの期間にわたってプロスタミドを放出することを特徴とする好ましい実施形態1又は2の方法。
【0173】
好ましい実施形態4.プロスタミド含有眼内インプラントが、その約20重量%の量で存在するビマトプロスト又はその塩を含むことを特徴とする好ましい実施形態1-3のいずれか1つの方法。
【0174】
好ましい実施形態5.プロスタミド含有眼内インプラントが、6μg、10μg、15μg、又は20μgのビマトプロスト又はその塩を含むことを特徴とする好ましい実施形態1-4のいずれか1つの方法。
【0175】
好ましい実施形態6.プロスタミド含有眼内インプラントが、少なくとも1つの生体分解性ポリマーを備える生体分解性ポリマー母材を含むことを特徴とする好ましい実施形態1-5のいずれか1つの方法。
【0176】
好ましい実施形態7.プロスタミド含有眼内インプラントが、生体分解性ポリマー母材と、ポリエチレングリコール3350と、活性薬剤としてプロスタミドとを含み、プロスタミド及びポリエチレングリコール3350が、
【0177】
a)エステル末端ポリ(D,L-ラクチド)と、
【0178】
b)酸末端ポリ(D,L-ラクチド)と、
【0179】
c)約75:25のD,L-ラクチド対グリコリドモル比を有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)と、
を含む生体分解性ポリマー母材と会合し、
【0180】
ビマトプロスト又はその塩が、インプラントの18重量%から22重量%を構成し、エステル末端ポリ(D,L-ラクチド)が、インプラントの18重量%から22重量%を構成し、酸末端ポリ(D,L-ラクチド)が、インプラントの13.5重量%から16.5重量%を構成し、エステル末端ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)が、インプラントの35重量%から45重量%を構成し、ポリエチレングリコール3350が、インプラントの3.5重量%から6.5重量%を構成する、
ことを特徴とする好ましい実施形態1-6のいずれか1つの方法。
【0181】
好ましい実施形態8.プロスタミド含有眼内インプラントが、生体分解性ポリマー母材と、ポリエチレングリコール3350と、活性薬剤としてプロスタミドとを含み、プロスタミド及びポリエチレングリコール3350が、
【0182】
a)0.25~0.35dl/gの固有粘性を有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド)と、
【0183】
b)0.16~0.24dl/gの固有粘性を有する酸末端ポリ(D,L-ラクチド)と、
【0184】
c)0.16~0.24dl/gの固有粘性と、約75:25のD,L-ラクチド対グリコリドモル比とを有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)と、
を含む生体分解性ポリマー母材と会合し、
【0185】
ビマトプロスト又はその塩が、インプラントの18重量%から22重量%を構成し、エステル末端ポリ(D,L-ラクチド)が、インプラントの18重量%から22重量%を構成し、酸末端ポリ(D,L-ラクチド)が、インプラントの13.5重量%から16.5重量%を構成し、エステル末端ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)が、インプラントの36重量%から44重量%を構成し、ポリエチレングリコール3350が、インプラントの3.5重量%から6.5重量%を構成し、ポリ(D,L-ラクチド)ポリマー及びポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)ポリマーの各々の固有粘性が、25℃で0.1%ポリマーのクロロホルム溶液で決定される、
ことを特徴とする好ましい実施形態1-7のいずれか1つの方法。
【0186】
好ましい実施形態9.インプラントが、眼内に眼内送出装置を使用して配置され、装置が、細長ハウジングと、ハウジングから長手方向に延びるカニューレとを含み、カニューレが、近位端と遠位鈍頭端部とを有し、更に近位端から遠位端まで延びる管腔を有し、管腔が、インプラントを受け入れるほど十分な内径を有し、管腔を通って眼球の中に入るインプラントの平行移動を可能にすることを特徴とする好ましい実施形態1-8のいずれか1つの方法。
【0187】
好ましい実施形態10.インプラントが、約150μmから300μmの直径と、約0.5mmから2.5mmの長さとを有するロッド形状を含むことを特徴とする好ましい実施形態1-9のいずれか1つの方法。
【0188】
好ましい実施形態11.カニューレが、25ゲージ、26ゲージ、27ゲージ、28ゲージ、29ゲージ、30ゲージ、及び32ゲージから構成される群から選択されたゲージサイズを有することを特徴とする好ましい実施形態1-10のいずれか1つの方法。
【0189】
好ましい実施形態12.カニューレの遠位鈍頭端部が、眼球の瞳孔を通して挿入されて毛様溝の近くに位置決めされることを特徴とする好ましい実施形態1-11のいずれか1つの方法。
【0190】
好ましい実施形態13.眼内圧(IOP)の低減を患っている患者での眼内圧(IOP)を低減する方法であって、
【0191】
1又は2以上のプロスタミド含有眼内インプラントを患っている患者の眼球の後眼房の中にインプラントを位置決めする段階、
を備え、
【0192】
1又は2以上のプロスタミド含有眼内インプラントが、IOPの低減を必要とする患者の前眼房内に位置決めされた同じ1又は2以上の眼内インプラントと比較して患者のIOPを低減するより有意な効果をある期間にわたって有する、
ことを特徴とする方法。
【0193】
好ましい実施形態14.眼球病状の治療を患っている患者での眼球病状を治療する方法であって、
【0194】
ビマトプロストと生体分解性ポリマーとを備え、患者の少なくとも一方の眼球の後眼房の中に投与される眼内インプラントを患者に投与する段階、
を備え、
【0195】
眼内インプラントが、患者の眼球の前眼房に投与される同じ眼内インプラントよりも有意に患者の眼内圧を低減する、
ことを特徴とする方法。
【0196】
好ましい実施形態15.眼内圧(IOP)を低減するのへのプロスタミド含有インプラントの効果を改善する方法であって、
【0197】
プロスタミド含有眼内インプラントを患っている患者の眼球の後眼房の中にインプラントを埋め込む段階、
を備え、
【0198】
プロスタミド含有インプラントが、患者の前眼房の中へのプロスタミド含有インプラントの埋め込みと比較した時に患者での1又は2以上の有害事象の低減を引き起こす、
ことを特徴とする方法。
【0199】
好ましい実施形態16.1又は2以上の有害事象が、前眼部炎症、角膜内皮細胞密度変化、又は色素分散を備えることを特徴とする好ましい実施形態15の方法。
【0200】
好ましい実施形態17.眼球病状を治療するために眼内インプラントをそれを必要とする患者に埋め込む方法であって、
【0201】
患者の眼球の角膜内に開口部を形成する段階、
【0202】
管腔と遠位先端とを有するアプリケータのカニューレを開口部に通す段階、
【0203】
カニューレの遠位先端を前眼房を通して瞳孔に向けて前進させる段階、
【0204】
眼内インプラントをカニューレの管腔を通して埋め込む段階、及び
【0205】
眼内インプラントを虹彩の背後の眼球の後眼房の領域内に位置決めする段階、
を備える方法。
【0206】
好ましい実施形態18.患者が、有水晶体眼患者であることを特徴とする好ましい実施形態17の方法。
【0207】
好ましい実施形態19.カニューレの遠位先端が、鈍頭であることを特徴とする好ましい実施形態17又は18の方法。
【0208】
好ましい実施形態20.患者が、偽水晶体眼患者であることを特徴とする好ましい実施形態17-19のいずれか1つの方法。
【0209】
好ましい実施形態21.カニューレの遠位先端が、先鋭であることを特徴とする好ましい実施形態17-20のいずれか1つの方法。
【0210】
好ましい実施形態22.カニューレの遠位先端が、27ゲージと32ゲージの間であり、カニューレが、12mmと18mmの間の作動長さを有することを特徴とする好ましい実施形態17-21のいずれか1つの方法。
【0211】
好ましい実施形態23.開口が、針又は手術用メスを使用して形成されることを特徴とする好ましい実施形態17-22のいずれか1つの方法。
【0212】
好ましい実施形態24.開口が、角膜の下側半球の中に形成されることを特徴とする好ましい実施形態17-23のいずれか1つの方法。
【0213】
好ましい実施形態25.開口が、上側又は耳側に作られることを特徴とする好ましい実施形態17-24のいずれか1つの方法。
【0214】
好ましい実施形態26.患者に1又は2以上の散瞳薬を投与することによって眼球の瞳孔を拡張させる段階を更に備える好ましい実施形態17-25のいずれか1つの方法。
【0215】
好ましい実施形態27.1又は2以上の散瞳薬が、トロピカミド及びフェニレフリンから構成される群から選択されることを特徴とする好ましい実施形態17-26のいずれか1つの方法。
【0216】
好ましい実施形態28.インプラントが、眼球の後眼房内の毛様溝内に位置決めされることを特徴とする好ましい実施形態17-27のいずれか1つの方法。
【0217】
好ましい実施形態29.インプラントが、眼球の後眼房内の毛様小帯の上又は中に位置決めされることを特徴とする好ましい実施形態17-28のいずれか1つの方法。
【0218】
好ましい実施形態30.ムスカリン作用薬を投与することによって瞳孔を収縮させる段階を更に備える好ましい実施形態17-29のいずれか1つの方法。
【0219】
好ましい実施形態31.ムスカリン作用薬が、ピロカルピン、アセチルコラミン、及びカルバコールから構成される群から選択されることを特徴とする好ましい実施形態17-30のいずれか1つの方法。
【0220】
好ましい実施形態32.開口を形成した後かつカニューレを挿入する前に粘弾性物質又は生理食塩水を注射することによって前眼房の深さを深くするか又は維持する段階を更に備える好ましい実施形態17-31のいずれか1つの方法。
【0221】
好ましい実施形態33.眼内インプラントが、眼内圧の低減をもたらすプロスタミド含有インプラントであることを特徴とする好ましい実施形態17-32のいずれか1つの方法。
【0222】
好ましい実施形態34.眼内圧の低減が、同じプロスタミド含有インプラントが患者の前眼房内に位置決めされる時よりも大幅であることを特徴とする好ましい実施形態17-33のいずれか1つの方法。
【0223】
好ましい実施形態35.患者が、緑内障又は高眼圧を有することを特徴とする好ましい実施形態17-34のいずれか1つの方法。
【0224】
好ましい実施形態36.プロスタミド含有眼内インプラントが、ビマトプロスト又はその塩を備えることを特徴とする好ましい実施形態17-35のいずれか1つの方法。
【0225】
好ましい実施形態37.ビマトプロストが、インプラントの約20重量%の量で存在することを特徴とする好ましい実施形態17-36のいずれか1つの方法。
【0226】
好ましい実施形態38.眼内圧(IOP)を低減するのへのインプラントの効果を改善する方法であって、
【0227】
患者の前眼房内に位置決めされた同じインプラントと比較して患者の有意なIOP低減をもたらすインプラントをそれを必要とする患者の眼球の後眼房の中に位置決めする段階、
を備える方法。
【0228】
好ましい実施形態39.インプラントが、プロスタミド又はプロスタグランジン類似物を眼球に送出することを特徴とする好ましい実施形態38の方法。
【0229】
好ましい実施形態40.インプラントが、ビマトプロスト、ラタノプロスト、又はトラボプロストから構成される群から選択された化合物を眼球に送出することを特徴とする好ましい実施形態38又は39の方法。
【0230】
好ましい実施形態41.それを必要とする患者内の眼内圧の低減に使用するためのプロスタミド含有インプラントであって、
【0231】
インプラントが、それを必要とする患者の眼球の後眼房に位置決めされるように構成され、
【0232】
インプラントが、患者の眼球の前眼房に位置決めされた同じインプラントよりも有意な眼内圧低減をもたらす、
ことを特徴とするプロスタミド含有インプラント。
【0233】
好ましい実施形態42.プロスタミド含有眼内インプラントが、ビマトプロスト又はその塩を備えることを特徴とする好ましい実施形態41のインプラント。
【0234】
好ましい実施形態43.プロスタミド含有眼内インプラントが、その約20重量%の量で存在するビマトプロスト又はその塩を備えることを特徴とする好ましい実施形態41又は42のインプラント。
【0235】
好ましい実施形態44.プロスタミド含有眼内インプラントが、6μg、10μg、15μg、又は20μgのビマトプロスト又はその塩を備えることを特徴とする好ましい実施形態41-43のいずれか1つのインプラント。
【0236】
好ましい実施形態45.プロスタミド含有眼内インプラントが、生体分解性ポリマー母材と、ポリエチレングリコール3350と、活性薬剤としてプロスタミドとを備え、プロスタミド及びポリエチレングリコール3350が、
【0237】
a)エステル末端ポリ(D,L-ラクチド)、
【0238】
b)酸末端ポリ(D,L-ラクチド)、及び
【0239】
c)約75:25のD,L-ラクチド対グリコリドモル比を有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)、
を備える生体分解性ポリマー母材と会合し、
【0240】
ビマトプロスト又はその塩が、インプラントの18重量%から22重量%を構成し、エステル末端ポリ(D,L-ラクチド)が、インプラントの18重量%から22重量%を構成し、酸末端ポリ(D,L-ラクチド)が、インプラントの13.5重量%から16.5重量%を構成し、エステル末端ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)が、インプラントの35重量%から45重量%を構成し、ポリエチレングリコール3350が、インプラントの3.5重量%から6.5重量%を構成する、
ことを特徴とする好ましい実施形態41-44のいずれか1つのインプラント。
【0241】
好ましい実施形態46.プロスタミド含有眼内インプラントが、生体分解性ポリマー母材と、ポリエチレングリコール3350と、活性薬剤としてプロスタミドとを備え、プロスタミド及びポリエチレングリコール3350が、
【0242】
a)0.25~0.35dl/gの固有粘性を有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド)、
【0243】
b)0.16~0.24dl/gの固有粘性を有する酸末端ポリ(D,L-ラクチド)、及び
【0244】
c)0.16~0.24dl/gの固有粘性と約75:25のD,L-ラクチド対グリコリドモル比とを有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)、
を備える生体分解性ポリマー母材と会合し、
【0245】
ビマトプロスト又はその塩が、インプラントの18重量%から22重量%を構成し、エステル末端ポリ(D,L-ラクチド)が、インプラントの18重量%から22重量%を構成し、酸末端ポリ(D,L-ラクチド)が、インプラントの13.5重量%から16.5重量%を構成し、エステル末端ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)が、インプラントの36重量%から44重量%を構成し、ポリエチレングリコール3350が、インプラントの3.5重量%から6.5重量%を構成し、ポリ(D,L-ラクチド)ポリマー及びポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)ポリマーの各々の固有粘性が、25℃で0.1%ポリマーのクロロホルム溶液に対して決定される、
ことを特徴とする好ましい実施形態41-45のいずれか1つのインプラント。
【0246】
好ましい実施形態47.実質的に本明細書に説明するようなインプラント。
【0247】
好ましい実施形態48.実質的に本明細書に説明するような方法。
【国際調査報告】