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特表2023-534198高い高度の面及び低い高度の面を有する低屈折率基板と、低い高度の面に配置された高屈折率材料とを含む、鏡面反射を低減するテクスチャ領域
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  • 特表-高い高度の面及び低い高度の面を有する低屈折率基板と、低い高度の面に配置された高屈折率材料とを含む、鏡面反射を低減するテクスチャ領域 図1
  • 特表-高い高度の面及び低い高度の面を有する低屈折率基板と、低い高度の面に配置された高屈折率材料とを含む、鏡面反射を低減するテクスチャ領域 図2
  • 特表-高い高度の面及び低い高度の面を有する低屈折率基板と、低い高度の面に配置された高屈折率材料とを含む、鏡面反射を低減するテクスチャ領域 図3A
  • 特表-高い高度の面及び低い高度の面を有する低屈折率基板と、低い高度の面に配置された高屈折率材料とを含む、鏡面反射を低減するテクスチャ領域 図3B
  • 特表-高い高度の面及び低い高度の面を有する低屈折率基板と、低い高度の面に配置された高屈折率材料とを含む、鏡面反射を低減するテクスチャ領域 図4
  • 特表-高い高度の面及び低い高度の面を有する低屈折率基板と、低い高度の面に配置された高屈折率材料とを含む、鏡面反射を低減するテクスチャ領域 図5
  • 特表-高い高度の面及び低い高度の面を有する低屈折率基板と、低い高度の面に配置された高屈折率材料とを含む、鏡面反射を低減するテクスチャ領域 図6A
  • 特表-高い高度の面及び低い高度の面を有する低屈折率基板と、低い高度の面に配置された高屈折率材料とを含む、鏡面反射を低減するテクスチャ領域 図6B
  • 特表-高い高度の面及び低い高度の面を有する低屈折率基板と、低い高度の面に配置された高屈折率材料とを含む、鏡面反射を低減するテクスチャ領域 図7A
  • 特表-高い高度の面及び低い高度の面を有する低屈折率基板と、低い高度の面に配置された高屈折率材料とを含む、鏡面反射を低減するテクスチャ領域 図7B
  • 特表-高い高度の面及び低い高度の面を有する低屈折率基板と、低い高度の面に配置された高屈折率材料とを含む、鏡面反射を低減するテクスチャ領域 図7C
  • 特表-高い高度の面及び低い高度の面を有する低屈折率基板と、低い高度の面に配置された高屈折率材料とを含む、鏡面反射を低減するテクスチャ領域 図7D
  • 特表-高い高度の面及び低い高度の面を有する低屈折率基板と、低い高度の面に配置された高屈折率材料とを含む、鏡面反射を低減するテクスチャ領域 図7E
  • 特表-高い高度の面及び低い高度の面を有する低屈折率基板と、低い高度の面に配置された高屈折率材料とを含む、鏡面反射を低減するテクスチャ領域 図7F
  • 特表-高い高度の面及び低い高度の面を有する低屈折率基板と、低い高度の面に配置された高屈折率材料とを含む、鏡面反射を低減するテクスチャ領域 図8
  • 特表-高い高度の面及び低い高度の面を有する低屈折率基板と、低い高度の面に配置された高屈折率材料とを含む、鏡面反射を低減するテクスチャ領域 図9
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-08
(54)【発明の名称】高い高度の面及び低い高度の面を有する低屈折率基板と、低い高度の面に配置された高屈折率材料とを含む、鏡面反射を低減するテクスチャ領域
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/245 20060101AFI20230801BHJP
   C03C 15/00 20060101ALI20230801BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
C03C17/245 A
C03C15/00 D
G02B5/02 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501444
(86)(22)【出願日】2021-07-08
(85)【翻訳文提出日】2023-03-09
(86)【国際出願番号】 US2021040772
(87)【国際公開番号】W WO2022011070
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】63/049,843
(32)【優先日】2020-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ハート,シャンドン ディー
(72)【発明者】
【氏名】コッホ,カール ウィリアム ザ サード
(72)【発明者】
【氏名】セナーラットヌ,ワギーシャ
(72)【発明者】
【氏名】ウッド,ウィリアム アレン
【テーマコード(参考)】
2H042
4G059
【Fターム(参考)】
2H042BA04
2H042BA11
2H042BA13
2H042BA20
4G059AA01
4G059AB11
4G059AC02
4G059BB12
4G059BB14
4G059EA04
4G059EA12
4G059EA13
4G059EB04
(57)【要約】
ディスプレイ物品用基板は、(a)主面と、(b)主面の少なくとも一部に設けられたテクスチャ領域であって、(i)テクスチャ領域の下方に基板を通過して延びるように設けられる基準平面に平行な高位平均高度に位置する1つ以上の高位面と、(ii)高位平均高度よりも低い、基準平面に平行な低位平均高度に位置する1つ以上の低位面と、(iii)低位平均高度に位置する1つ以上の低位面のそれぞれに配置されて、低位平均高度より高く高位平均高度より低い、基準平面に平行な中位平均高度に位置する1つ以上の中位面を形成する高屈折率材料であって、基板の屈折率より高い屈折率を有する高屈折率材料と、を含むテクスチャ領域と、を備える基板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイ物品用基板であって、
主面と、
前記主面の少なくとも一部に設けられたテクスチャ領域であって、
前記テクスチャ領域の下方に設けられる基準平面に平行な高位平均高度に位置する1つ以上の高位面、及び
前記高位平均高度より低い、前記基準平面に平行な中位平均高度に位置する1つ以上の中位面を形成する高屈折率材料であって、前記基板又は前記1つ以上の高位面をなす低屈折率材料の屈折率より高い屈折率を有する高屈折率材料
を含むテクスチャ領域と、
を備える基板。
【請求項2】
前記基板又は前記低屈折率材料の前記屈折率が、1.4~1.6の範囲内にあり、
前記高屈折率材料の前記屈折率が、前記基板又は前記低屈折率材料の前記屈折率より高い、請求項1に記載の基板。
【請求項3】
前記高屈折率材料の前記中位平均高度は、前記1つ以上の高位面の前記高位平均高度より、130nm~180nmの範囲内の距離だけ低い、請求項1又は2に記載の基板。
【請求項4】
前記高屈折率材料が、(i)前記基準平面に平行、且つ(ii)前記高屈折率材料を通過して延びる平面上のエリアであって、前記テクスチャ領域によって範囲を画定されるエリアの22%~49%を占める、請求項1~3のいずれか1項に記載の基板。
【請求項5】
前記テクスチャ領域が、
0.5~1.75%の範囲の鏡面反射率、又は
0.85%未満の鏡面反射率
を示す、請求項1~4のいずれか1項に記載の基板。
【請求項6】
前記テクスチャ領域が、
1.2%~2.1%の範囲内の画素パワー偏差、
1.5%未満の画素パワー偏差、
25%~85%の範囲内の像鮮明度、
50%未満の像鮮明度、
2.5%未満の透過ヘイズ、及び
92%超の透過率
のうちの1つ以上を示す、請求項1~5のいずれか1項に記載の基板。
【請求項7】
前記高位平均高度よりも低い、前記基準平面に平行な低位平均高度に位置する1つ以上の低位面をさらに含み、
前記中位平均高度は、前記低位平均高度より高く前記高位平均高度より低い高度であり、
前記高屈折率材料の前記中位平均高度は、前記1つ以上の低位面の前記低位平均高度より、100nm~200nmの範囲内の距離だけ高い、請求項1~6のいずれか1項に記載の基板。
【請求項8】
ディスプレイ物品用基板のテクスチャ領域を形成する方法であって、
各表面特徴部の所定の位置決めに従って、基板の主面に、周辺部から突出する又は該周辺部より凹む表面特徴部を形成することにより、テクスチャ領域を形成するステップであって、前記テクスチャ領域の1つ以上の高位面が、前記テクスチャ領域の下方に前記基板を通過して延びるように設けられる基準平面に平行な高位平均高度に位置する、表面特徴部を形成するステップと、
高屈折率材料を堆積させて、前記高位平均高度より低い、前記基準平面に平行な中位平均高度に位置する1つ以上の中位面を形成するステップと、を含み、
前記高屈折率材料が、前記基板又は前記1つ以上の高位面をなす低屈折率材料の屈折率より高い屈折率を有している、方法。
【請求項9】
ディスプレイ物品用基板であって、
主面と、
前記主面の少なくとも一部に設けられたテクスチャ領域であって、
前記テクスチャ領域の下方に前記基板を通過して延びるように設けられる基準平面に平行な高位平均高度に位置する1つ以上の高位面、
前記高位平均高度よりも低い、前記基準平面に平行な低位平均高度に位置する1つ以上の低位面、及び
前記低位平均高度に位置する前記1つ以上の低位面のそれぞれに配置されて、前記低位平均高度より高く前記高位平均高度より低い、前記基準平面に平行な中位平均高度に位置する1つ以上の中位面を形成する高屈折率材料であって、前記基板又は前記1つ以上の高位面をなす低屈折率材料の屈折率より高い屈折率を有する高屈折率材料
を含むテクスチャ領域と、
を備える基板。
【請求項10】
ディスプレイ物品用基板であって、
主面と、
前記主面の少なくとも一部に設けられたテクスチャ領域であって、
前記テクスチャ領域の下方に前記基板を通過して延びるように設けられる基準平面に平行な高位平均高度に位置する1つ以上の高位面、
前記高位平均高度よりも低い、前記基準平面に平行な低位平均高度に位置する1つ以上の低位面、
前記主面における周辺部から突出するか、又は該周辺部より凹むように設けられる表面特徴部であって、(i)前記表面特徴部が、前記1つ以上の高位面及び前記1つ以上の低位面のうちのいずれか一方の面をなし、(ii)前記周辺部が、前記1つ以上の高位面及び前記1つ以上の低位面のうちの、前記表面特徴部がなす方とは異なるもう一方の面をなす、表面特徴部、及び
前記低位平均高度に位置する前記1つ以上の低位面に配置された高屈折率材料であって、(i)前記基板又は前記1つ以上の高位面をなす低屈折率材料の屈折率より高い屈折率、及び(ii)前記高位平均高度と前記低位平均高度の間にある、前記基準平面に平行な中位平均高度に位置する1つ以上の中位面を有する高屈折率材料
を含むテクスチャ領域と、
を備える基板。
【発明の詳細な説明】
【優先権主張】
【0001】
本出願は、2021年7月9日を出願日とする米国仮特許出願第63/049843号の優先権の利益を主張するものであり、この仮出願のすべての内容は、参照することにより本明細書の一部をなすものとする。
【関連出願の相互参照】
【0002】
本出願は、同一譲受人が所有する、米国特許出願第__________号(D31038/32632)(発明の名称「ANTI-GLARE SUBSTRATE FOR A DISPLAY ARTICLE INCLUDING A TEXTURED REGION WITH PRIMARY SURFACE FEATURES AND SECONDARY SURFACE FEATURES IMPARTING A SURFACE ROUGHNESS THAT INCREASES SURFACE SCATTERING」、出願日______________)、米国特許出願第__________号(D32630/32632)(発明の名称「TEXTURED REGION OF A SUBSTRATE TO REDUCE SPECULAR REFLECTANCE INCORPORATING SURFACE FEATURES WITH AN ELLIPTICAL PERIMETER OR SEGMENTS THEREOF, AND METHOD OF MAKING THE SAME」、出願日______________)、米国特許出願第__________号(D32647)(発明の名称「DISPLAY ARTICLES WITH DIFFRACTIVE, ANTIGLARE SURFACES AND THIN, DURABLE ANTIREFLECTION COATINGS」、出願日______________)、及び米国特許出願第__________号(D32623)(発明の名称「DISPLAY ARTICLES WITH DIFFRACTIVE, ANTIGLARE SURFACES AND THIN, DURABLE ANTIREFLECTION COATINGS」、出願日______________)に関するものであるが、その優先権を主張するものではない。上記米国特許出願明細書、刊行物及び特許文献のすべての開示内容は参照することにより本明細書の一部をなすものとする。
【技術分野】
【0003】
本開示は、高い高度の面及び低い高度の面を有する低屈折率基板と、低い高度の面に配置された高屈折率材料とを含む、鏡面反射を低減するテクスチャ領域を有するディスプレイ物品用基板に関するものである。
【背景技術】
【0004】
ディスプレイ物品のディスプレイを覆う目的で、可視光に対して透明な基板が利用されている。このようなディスプレイ物品としては、スマートフォン、タブレット端末、テレビ、コンピュータモニタなどが挙げられる。また、ディスプレイとしては、特に、液晶ディスプレイ、有機発光ダイオードディスプレイがよく用いられている。この基板は、ディスプレイを保護すると同時に、基板が持つ透明性により、デバイスユーザによるディスプレイの視認を可能にするものである。
【0005】
基板が、外光を反射、特に鏡面反射すると、その基板を通したディスプレイのユーザ視認性が低下する。ここでいう鏡面反射とは、基板により鏡のように外光を反射することを指す。例えば、基板は、デバイスの周囲環境にある物体から反射又は放射された可視光を反射する恐れがある。基板が可視光を反射すると、ディスプレイから基板を透過してユーザの目に入る光のコントラストが低下してしまう。また、見る角度によっては、ディスプレイが発する可視光ではなく、鏡面反射した像がユーザに見えてしまう場合もある。そのため、基板による可視外光の鏡面反射を低減する試みが行われてきた。
【0006】
基板の鏡面反射を低減する試みは、基板の反射面にテクスチャを付与することにより行われてきた。これにより得られる面を、「防眩面(antiglare surface)」と呼ぶ場合がある。例えば、基板の表面に対してサンドブラストや液体エッチングを行うことにより、当該表面にテクスチャを付与することができ、これにより、通常、当該表面は、外光を鏡面反射よりも拡散反射で反射するようになる。拡散反射とは、一般に、反射面が反射する外光の強度は変化しないが、反射面のテクスチャにより散乱光として反射させることを指す。拡散反射が多いほど、ディスプレイが発する可視光に対するユーザ視認性を阻害することは抑えられる。
【0007】
しかし、上記のようなテクスチャ付与方法(すなわち、サンドブラスト及び液体エッチング)は、表面上に、不明確で再現できないジオメトリを有する特徴部(これらの特徴部によりテクスチャが得られる)を生成するものである。サンドブラストや液体エッチングにより形成した或る基板のテクスチャ面のジオメトリが、サンドブラストや液体エッチングにより形成した他の基板のテクスチャ面のジオメトリと完全に一致することはあり得ない。一般に、このテクスチャ付与処理において再現可能な目標は、基板のテクスチャ面の表面粗さを定量化したもの(すなわちR)に限られていた。
【0008】
「防眩(antiglare)」面の品質を評価するために、様々な評価基準が用いられている。かかる評価基準には、(1)像鮮明度(distinctness-of-image)、(2)画素パワー偏差(pixel power deviation)、(3)目に見えるモアレ干渉縞、(4)透過ヘイズ、(5)鏡面反射低減、(6)反射色アーチファクト、が挙げられる。像鮮明度は、反射像鮮明度(distinctness-of-reflected-image)と呼ぶ方が適切かもしれないが、表面を反射した像がどの程度鮮明に見えるかを示す指標である。像鮮明度が低いテクスチャ面ほど、鏡面反射より拡散反射の度合いが高い。また、表面特徴部は、ディスプレイの種々の画素を大きく見せ、歪んだ像をユーザに視認させる可能性がある。画素パワー偏差は、「ぎらつき(sparkle)」とも呼ばれ、その効果を定量化したものである。画素パワー偏差は低いほど良い。モアレ干渉縞とは、大型の干渉模様のことであり、モアレ干渉縞が見えると、ユーザの目に入る像が歪んでしまう。テクスチャ面は、目に見えるモアレ干渉縞を発生させないことが好ましい。透過ヘイズとは、ディスプレイが発した可視光が基板を透過する際に、テクスチャ面でどの程度拡散するかを示す指標である。透過ヘイズが大きくなると、ディスプレイのシャープネスが低下する(すなわち、見かけの解像度が低下する)。鏡面反射低減とは、ベースラインとなる非防眩ガラス基板と比べて、防眩面が外光の鏡面反射をどの程度低減できるかを示す指標である。ベースラインからの鏡面反射低減は、大きい方が良い。反射色アーチファクトとは、テクスチャ面で反射した光が波長の関数として回折することで、反射光は比較的拡散しているが、色ごとに分かれて見えてしまう一種の色収差のことである。テクスチャ面に生じる反射色アーチファクトは、弱いほど良い。これらの特性のうちいくつかについては、詳細を後述する。
【0009】
しかし、特定の表面粗さ度を目標とするだけでは、上記の指標をすべて同時に最適化することはできなかった。サンドブラストや液体エッチングにより表面粗さを比較的大きくすれば、適切に鏡面反射を拡散反射に変化させることはできるかもしれない。だが、表面粗さが大きくなると、透過ヘイズや画素パワー偏差がその分大きくなる恐れがある。一方、表面粗さが比較的小さいと、透過ヘイズは低下するものの、鏡面反射を拡散反射に十分に変化させることができず、テクスチャ付与の目的である「防眩」が達成できない恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、基板にテクスチャ領域を設けるための新たな手法、すなわち、基板間で再現可能であり、テクスチャ面が「防眩」(例えば、低像鮮明度、低鏡面反射)面となるように、外光を鏡面反射よりも十分に拡散反射で反射すると同時に、低画素パワー偏差、低透過ヘイズ及び低反射色アーチファクトを実現する手法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、多くの所望の防眩性能指標を同時に実現する新たな手法を提供するものである。テクスチャ領域は、基板の主面に形成され、テクスチャ領域では、エッチングなどの方法で表面特徴部を基板に形成するなどにより、基板には2つの異なる平均高度に複数の面が設けられる。そして、2つの異なる平均高度のうち低い高度に位置する基板面に、高屈折率材料を堆積させる。このとき、堆積させる高屈折率材料の量を、2つの異なる平均高度のうち高い高度に位置する基板面には到達させない量とする。表面特徴部は、ランダムでありながら特定の位置に配置することができ、これにより、基板間の再現性を実現している。表面特徴部は、所望の光学的結果が得られるように調整可能な特性寸法を有することができる。一般に、高屈折率材料が存在することにより画素パワー偏差が低下し、表面特徴部が存在することにより、反射した光を散乱させて鏡面反射を低減する効果が得られる。
【0012】
本開示の第1の態様によれば、ディスプレイ物品用基板であって、(a)主面と、(b)主面の少なくとも一部に設けられたテクスチャ領域であって、(i)テクスチャ領域の下方に基板を通過して延びるように設けられる基準平面に平行な高位平均高度に位置する1つ以上の高位面、(ii)高位平均高度よりも低い、基準平面に平行な低位平均高度に位置する1つ以上の低位面、及び(iii)低位平均高度に位置する1つ以上の低位面のそれぞれに配置されて、低位平均高度より高く高位平均高度より低い、基準平面に平行な中位平均高度に位置する1つ以上の中位面を形成する高屈折率材料であって、基板又は1つ以上の高位面をなす低屈折率材料の屈折率より高い屈折率を有する高屈折率材料、を含むテクスチャ領域と、を備える基板が提供される。
【0013】
本開示の第2の態様によれば、第1の態様に記載の基板において、(i)高屈折率材料の中位平均高度は、1つ以上の高位面の高位平均高度より、100nm~190nmの範囲内の距離だけ低く、(ii)1つ以上の低位面の低位平均高度は、1つ以上の高位面の高位平均高度より、220nm~370nmの範囲内の距離だけ低く、(iii)高屈折率材料の中位平均高度は、1つ以上の低位面の低位平均高度より、100nm~200nmの範囲内の距離だけ高い。
【0014】
本開示の第3の態様によれば、第1又は第2の態様に記載の基板において、(i)基板又は低屈折率材料の屈折率は、1.4~1.6の範囲内にあり、(ii)高屈折率材料の屈折率は、1.6~2.3の範囲内にある。
【0015】
本開示の第4の態様によれば、第1~第3の態様のいずれか1つに記載の基板において、高屈折率材料は、(i)基準平面に平行、且つ(ii)高屈折率材料を通過して延びる平面上のエリアであって、テクスチャ領域によって範囲を画定されるエリアの22%~49%を占める。
【0016】
本開示の第5の態様によれば、第1~第4の態様のいずれか1つに記載の基板において、基板は、ガラス基板又はガラスセラミック基板を含む。
【0017】
本開示の第6の態様によれば、ディスプレイ物品用基板であって、(i)主面と、(ii)主面の少なくとも一部に設けられたテクスチャ領域であって、(a)テクスチャ領域の下方に基板を通過して延びるように設けられる基準平面に平行な高位平均高度に位置する1つ以上の高位面、(b)高位平均高度よりも低い、基準平面に平行な低位平均高度に位置する1つ以上の低位面、(c)主面における周辺部から突出するか、又は該周辺部より凹むように設けられる表面特徴部であって、(i)表面特徴部が、1つ以上の高位面及び1つ以上の低位面のうちのいずれか一方の面をなし、(ii)周辺部が、1つ以上の高位面及び1つ以上の低位面のうちの、表面特徴部がなす方とは異なるもう一方の面をなす、表面特徴部、及び(d)低位平均高度に位置する1つ以上の低位面に配置された高屈折率材料であって、(i)基板又は1つ以上の高位面をなす低屈折率材料の屈折率より高い屈折率、及び(ii)高位平均高度と低位平均高度の間にある、基準平面に平行な中位平均高度に位置する1つ以上の中位面を有する高屈折率材料を含むテクスチャ領域と、を備える基板が提供される。
【0018】
本開示の第7の態様によれば、第6の態様に記載の基板において、(i)表面特徴部は、周辺部より凹むように設けられ、(ii)高屈折率材料は、各表面特徴部内の、表面特徴部がなす低位平均高度に位置する1つ以上の低位面上に配置される。
【0019】
本開示の第8の態様によれば、第6又は第7の態様に記載の基板において、高屈折率材料の中位平均高度は、1つ以上の高位面の高位平均高度より、120nm~190nmの範囲内の距離だけ低い。
【0020】
本開示の第9の態様によれば、第6~第8の態様のいずれか1つに記載の基板において、低位平均高度は、高位平均高度より、220nm~370nmの範囲内の距離だけ低い。
【0021】
本開示の第10の態様によれば、第6~第9の態様のいずれか1つに記載の基板において、高屈折率材料の中位平均高度は、1つ以上の低位面の低位平均高度より、100nm~200nmの範囲内の距離だけ高い。
【0022】
本開示の第11の態様によれば、第6~第10の態様のいずれか1つに記載の基板において、基板又は低屈折率材料の屈折率は、1.4~1.6の範囲内にある。
【0023】
本開示の第12の態様によれば、第6~第11の態様のいずれか1つに記載の基板において、高屈折率材料の屈折率は、1.6~2.3の範囲内にある。
【0024】
本開示の第13の態様によれば、第6~第12の態様のいずれか1つに記載の基板において、(i)各表面特徴部は、基準平面に平行な外周を有しており、(ii)各表面特徴部の外周は、円形又は楕円形である。
【0025】
本開示の第14の態様によれば、第6~第12の態様のいずれか1つに記載の基板において、(i)各表面特徴部は、基準平面に平行な外周を有しており、(ii)各表面特徴部の外周は、5μm~200μmの範囲の最長寸法を有している。
【0026】
本開示の第15の態様によれば、第6~第14の態様のいずれか1つに記載の基板において、表面特徴部の配置は、反復配列ではなく、ランダムな分布を反映した配置である。
【0027】
本開示の第16の態様によれば、第6~第14の態様のいずれか1つに記載の基板において、表面特徴部は、表面特徴部同士の離間距離が最小中心間距離を満たすようなランダムな分布で配置される。
【0028】
本開示の第17の態様によれば、第6~第16の態様のいずれか1つに記載の基板において、高屈折率材料は、AlN、SiO、又はSiNを含む。
【0029】
本開示の第18の態様によれば、第6~第17の態様のいずれか1つに記載の基板において、高屈折率材料は、(i)基準平面に平行、且つ(ii)高屈折率材料を通過して延びる平面上のエリアであって、テクスチャ領域によって範囲を画定されるエリアの22%~49%を占める。
【0030】
本開示の第19の態様によれば、第6~第18の態様のいずれか1つに記載の基板において、基板は、ガラス基板又はガラスセラミック基板を含む。
【0031】
本開示の第20の態様によれば、第6~第19の態様のいずれか1つに記載の基板において、(i)テクスチャ領域は、1.2%~2.1%の範囲内の画素パワー偏差を示し、(ii)テクスチャ領域は、1.5%~2.5%の範囲内の透過ヘイズを示し、(iii)テクスチャ領域は、0.5%~1.75%の範囲内の鏡面反射率を示し、(iv)テクスチャ領域は、25%~85%の範囲内の像鮮明度を示す。
【0032】
本開示の第21の態様によれば、ディスプレイ物品用基板のテクスチャ領域を形成する方法であって、(a)各表面特徴部の所定の位置決めに従って、基板の主面に、周辺部から突出する又は該周辺部より凹む表面特徴部を形成することにより、テクスチャ領域を形成するステップであって、(i)テクスチャ領域の1つ以上の高位面が、テクスチャ領域の下方に基板を通過して延びるように設けられる基準平面に平行な高位平均高度に位置し、(ii)テクスチャ領域の1つ以上の低位面が、高位平均高度よりも低い、基準平面に平行な低位平均高度に位置し、(iii)表面特徴部が、1つ以上の高位面及び1つ以上の低位面のうちのいずれか一方の面をなし、(iv)周辺部が、1つ以上の高位面及び1つ以上の低位面のうちの、表面特徴部がなす方とは異なるもう一方の面をなす、表面特徴部を形成するステップと、(b)表面特徴部及び周辺部のうち、低位平均高度に位置する1つ以上の低位面をなす方に、高屈折率材料を堆積させるステップと、を含み、高屈折率材料が、(i)基板の屈折率より高い屈折率、及び(ii)高位平均高度と低位平均高度の間にある、基準平面に平行な中位平均高度に位置する1つ以上の中位面を有している、方法が提供される。
【0033】
本開示の第22の態様によれば、第21の態様に記載の方法は、間隔分布アルゴリズムを利用して各表面特徴部の位置決めを定めることにより、各表面特徴部の所定の位置決めを確立するステップをさらに含む。
【0034】
本開示の第23の態様によれば、第22の態様に記載の方法は、(i)表面特徴部の所定の位置決めに従って表面特徴部を形成する箇所におけるエッチングを阻止するエッチングマスク、又は(ii)表面特徴部の所定の位置決めに従って表面特徴部を形成する箇所においてのみエッチングを許容するエッチングマスクを、主面上に配置するステップ、をさらに含み、表面特徴部を形成するステップは、エッチングマスクを基板の主面上に配置した状態で、少なくとも基板の主面をエッチング液に接触させるステップを含む。
【0035】
本開示の第24の態様によれば、第23の態様に記載の方法において、高屈折率材料を堆積させるステップを、表面特徴部を形成した後に、エッチングマスクを主面上に配置した状態で行う。
【0036】
本開示の第25の態様によれば、第24の態様に記載の方法は、高屈折率材料を堆積した後に、エッチングマスクを除去するステップをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】外部環境から放出される光の鏡面反射率を低減するためのテクスチャ領域を有する基板を示す、本開示のディスプレイ物品の斜視図
図2】実施例2A~2Gに係る光学式プロフィロメータのスキャン像を示すとともに、基準平面から高位の平均高度に位置する1つ以上の表面と、表面特徴部内に堆積されて、基準平面から中位の平均高度に位置する表面を形成する高屈折率材料と、を含むテクスチャ領域の実施形態を概括的に示す図
図3A】高位平均高度に位置する表面と、基準平面から低位の平均高度に位置する表面と、低位平均高度に位置する表面上に配置されて、高位平均高度と低位平均高度の間の中位平均高度に位置する表面をなす高屈折率材料と、を設けた基板を示す、図2のIII-III線断面の立面図
図3B図3Aと同様の図ではあるが、表面特徴部が(図3Aのように)基板の周辺部より凹むのではなく周辺部から突出しており、高屈折率材料の配置を周辺部上に行う場合を示す図
図4】六角形度の計算に関連する説明図
図5図1に示すテクスチャ領域の実施形態を形成する方法の、表面特徴部の位置を決定するステップと、決定された位置に表面特徴部を形成できるように基板上にエッチングマスクを配置するステップと、エッチングマスクが基板上にある状態で基板上に高屈折率材料を堆積するステップと、その後エッチングマスクを除去するステップとを示す模式図
図6A】比較例1Aに係る、基板のテクスチャ領域を透過する光の回折効率をトレンチ深さ(すなわち、高位平均高度と低位平均高度との距離)の関数として示すグラフ
図6B】比較例1Aに係る、基板のテクスチャ領域から反射する光の回折効率をトレンチ深さの関数として示すグラフ
図7A】実施例1Bに係る、基板のテクスチャ領域を透過する光の回折効率をトレンチ深さの関数として示すグラフ
図7B】実施例1Bに係る、基板のテクスチャ領域から反射する光の回折効率をトレンチ深さの関数として示すグラフ
図7C】実施例1Bに係る、基板のテクスチャ領域を透過する光の回折効率を基板の充填率(すなわち、テクスチャ領域の高屈折率材料を通過する平面において基板が占める割合)の関数として示すグラフ
図7D】実施例1Bに係る、基板のテクスチャ領域から反射する光の回折効率を基板の充填率(すなわち、テクスチャ領域の高屈折率材料を通過する平面において基板が占める割合)の関数として示すグラフ
図7E】実施例1Bに係る、基板のテクスチャ領域から反射する光の回折効率を入射光角度の関数として示すグラフ
図7F】実施例1Bに係る、基板のテクスチャ領域を透過する光の回折効率を入射光角度の関数として示すグラフ
図8】実施例2A~2Gに係る、(後続の工程で形成するテクスチャ領域の表面特徴部の配置を定めておくために)間隔分布アルゴリズムによりエリア内にランダム配置したオブジェクトの中心間距離を示すヒストグラム
図9】実施例3A~3Dに係る、(後続の工程で形成するテクスチャ領域の表面特徴部の配置を定めておくために)他の間隔分布アルゴリズムによりエリア内にランダム配置したオブジェクトの中心間距離を示すヒストグラム
【発明を実施するための形態】
【0038】
ここで図1を参照すると、ディスプレイ物品10は、基板12を備えている。また、複数の実施形態において、ディスプレイ物品10は、基板12が結合された筐体14と、筐体14内のディスプレイ16とをさらに備えている。かかる実施形態では、ディスプレイ16から発する光が基板12を透過するように、基板12はディスプレイ16の少なくとも一部を覆っている。
【0039】
基板12は、主面18と、主面18上に画定されたテクスチャ領域20と、主面18により範囲の一部が画定される厚さ22と、を有している。通常、主面18は、ディスプレイ物品10を取り囲む外部環境24の方向、且つディスプレイ16の遠位側を向いている。ディスプレイ16は、基板12の厚さ22を透過して、主面18から外部環境24に出る可視光を発する。
【0040】
ここで図2図3Bを参照すると、複数の実施形態において、テクスチャ領域20は、1つ以上の高位面(higher surface)26を有している。高位面26は、外部環境24に面し、且つ高位平均高度(higher mean elevation)28に位置している。基準平面(base-plane)30は、テクスチャ領域20の下方を、基板12を通過して延びている。高位平均高度28は、基準平面30に平行である。なお、基準平面30は、概念上の基準位置を与えるものであり、構造的な特徴ではない。1つ以上の高位面26はいずれも、製造能力の範囲内でこの高位平均高度28付近に位置する。
【0041】
テクスチャ領域は、1つ以上の低位面(lower surface)32を有している。低位面32は、外部環境24に面し、且つ低位平均高度(lower mean elevation)34に位置している。低位平均高度34は、基準平面30に平行であり、高位平均高度28よりも低い。したがって、「高位(higher)」、「低位(lower)」は、基準平面30からの相互相対的な高度を示す用語である。1つ以上の低位面32はいずれも、製造能力の範囲内でこの低位平均高度34付近に位置する。
【0042】
テクスチャ領域20の1つ以上の高位面26は、基板12又は基板12上に配置された低屈折率材料により得られる。かかる実施形態では、基板12及び低屈折率材料のうち、1つ以上の高位面26をなす方は、1.4、1.5、1.6の屈折率、又は1.4~1.6の範囲内の屈折率を有している。複数の実施形態において、基板12が1つ以上の高位面26をなしているか否かにかかわらず、基板12は、1.4、1.5、1.6の屈折率、又は1.4~1.6の範囲内の屈折率を有している。なお、本発明の目的上、具体的な屈折率値はいずれも、波長589nm及び温度25℃での屈折率値である。
【0043】
また、テクスチャ領域20は、高屈折率材料36をさらに含んでいる。複数の実施形態において、高屈折率材料36は、基板12の組成とは異なる組成を有している。高屈折率材料36は、低位平均高度34に位置するテクスチャ領域20の1つ以上の低位面32の上にそれぞれ配置されている。高屈折率材料36は、1つ以上の中位面(intermediate surface)38を形成している。中位面38は、外部環境24に面し、且つ基準平面30に平行な中位平均高度(intermediate mean elevation)40に位置している。1つ以上の中位面38はいずれも、製造能力の範囲内でこの中位平均高度40付近に位置する。
【0044】
高屈折率材料36は、屈折率を有している。高屈折率材料36の屈折率は、基板12の屈折率よりも高い。複数の実施形態において、高屈折率材料36の屈折率は、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.01、2.02、2.03、2.04、2.05、2.06、2.07、2.08、2.09、2.1、2.2、2.3、又はこれらの値のうちのいずれか2つの値を上下限値とする任意の範囲内(例えば、1.6~2.3、1.8~2.2、1.9~2.1など)である。複数の実施形態において、高屈折率材料は、SiAl、Ta、Nb、AlN、Si、AlO、SiO、SiN、SiN:H、HfO、TiO、ZrO、Y、Al、MoO、及びダイヤモンドライクカーボンであるか、又はこれを含む。複数の実施形態において、高屈折率材料は、AlN、SiO、又はSiNであるか、又はこれを含む。複数の実施形態において、高屈折率材料は、AlNであるか、又はこれを含む。なお、当業者であれば、本開示における材料「AlN」、「AlO」、「SiO」、及び「SiN」を、下付き添え字に特定の値を指定することなく、材料の部類として参照することができる。また、日常的な実験を通して酸素と窒素の比率を調節することにより、高屈折率材料の屈折率を調整することができる。膜の屈折率を高く(例えば、1.8、1.9又はそれ以上に)することが望まれる実施形態では、Siに近い組成を有するSiNが好ましい場合がある。また、AlNに近い組成を有するAlNも同様の高屈折率を有する膜として好ましい場合がある。また、同様の高屈折率範囲を達成しながら、これらの材料に少量(例えば、0~20原子%)の酸素又は水素を組み入れることもできる。
【0045】
高屈折率材料36の1つ以上の中位面38の中位平均高度40は、テクスチャ領域20の1つ以上の低位面32の低位平均高度34より高いが、テクスチャ領域20の1つ以上の高位面26の高位平均高度28より低い。要するに、中位平均高度40は、高位平均高度28と低位平均高度34の間の高度である。
【0046】
テクスチャ領域20の1つ以上の高位面26の高位平均高度28は、テクスチャ領域20の1つ以上の低位面32の低位平均高度34より、距離42だけ高い。本開示において、距離42を「トレンチ深さ(trench depth)」と呼ぶ場合がある(ただし、後述の「エアトレンチ深さ(air trench depth)」と混同すべきではない)。複数の実施形態において、距離42は、220nm、230nm、240nm、250nm、260nm、270nm、280nm、290nm、300nm、310nm、320nm、330nm、340nm、350nm、360nm、又は370nm、又はこれらの値のうちのいずれか2つの値を上下限値とする任意の範囲(例えば、250nm~350nm、270nm~330nm、220nm~370nmなど)である。
【0047】
高屈折率材料36の中位平均高度40は、テクスチャ領域20の1つ以上の低位面32の低位平均高度34より、距離44だけ高い。距離44は、1つ以上の低位面32上に堆積した高屈折率材料36の「高さ(height)」又は「厚さ(thickness)」と呼ぶこともできる。複数の実施形態において、距離44は、100nm、110nm、120nm、130nm、140nm、150nm、160nm、170nm、180nm、190nm、又は200nm、又はこれらの値のうちのいずれか2つの値を上下限値とする任意の範囲内(例えば、100nm~200nm、120nm~180nmなど)である。
【0048】
高屈折率材料36の中位平均高度40は、テクスチャ領域20の1つ以上の高位面26の高位平均高度28より、距離46だけ低い。本開示において、この距離46を「エアトレンチ深さ」と呼ぶ場合がある。複数の実施形態において、距離46は、100nm、110nm、120nm、125nm、130nm、140nm、150nm、160nm、170nm、180nm、又は190nm、又はこれらの値のうちのいずれか2つの値を上下限値とする任意の範囲内(例えば、120nm~190nm、125nm~190nm、130nm~180nm、100nm~190nmなど)である。なお、図3A及び図3Bは縮尺通りの図ではない。
【0049】
高屈折率材料36は、(i)基準平面30に平行、且つ(ii)高屈折率材料36を通過して延びる平面(plane)50上のエリア48の一部を占めている。エリア48の範囲は、テクスチャ領域20によって画定される。換言すれば、エリア48が、テクスチャ領域20を越えて沿面方向に広がることはない。本明細書において、平面50上のエリア48に占める高屈折率材料36の割合を、高屈折率材料36の「充填率(fill-fraction)」と呼ぶ場合がある。複数の実施形態において、高屈折率材料36の充填率は、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、又は49%、又はこれらの値のうちのいずれか2つの値を上下限値とする任意の範囲内(例えば、44%~45%、22%~49%など)である。そして、100%から高屈折率材料36の充填率を引いた差が、高屈折率材料36よりも低い屈折率を有する基板12(又は基板12上に堆積した低屈折率材料)の充填率となる。
【0050】
高屈折率材料の充填率が22%~49%のときに、鏡面反射率及び1次回折ピーク強度が最小となると考えられている。高屈折率材料36は、基板12又は低屈折率材料の屈折率よりも高い屈折率を有しているため、高屈折率材料36の方が反射率が高い。したがって、反射時の相殺的干渉を最大化するためには、外光を反射する主面18のテクスチャ領域20に占める高屈折率材料36の割合を半分未満とするべきである。そして、このより反射率の高い高屈折率材料36とのバランスを取るため、外光を反射する主面18のテクスチャ領域20の半分超を、より屈折率の低い基板12又は低屈折率材料とする必要がある。
【0051】
複数の実施形態において、テクスチャ領域20は、表面特徴部52を有している。複数の実施形態において、表面特徴部52は、主面18のテクスチャ領域20における周辺部54から突出している。かかる表面特徴部52は、柱、畝などの形態をとる。また、複数の実施形態において、表面特徴部52は、周辺部54より凹むように(すなわち、沈めて)設けられる。かかる表面特徴部52は、周辺部54から基板12又は低屈折率材料の厚さ22方向に延びるブラインドホール、溝、又はメサの形態をとる。複数の実施形態において、表面特徴部52の一部を周辺部54より凹むように設け、表面特徴部52の一部を周辺部54から突出させることもできる。複数の実施形態において、表面特徴部52は、切れ目なく連続する周辺部54で取り囲まれている。
【0052】
表面特徴部52と周辺部54のうちのいずれか一方により、高位平均高度28に位置する1つ以上の高位面26が得られ、表面特徴部52と周辺部54のうちのもう一方により、低位平均高度34に位置する1つ以上の低位面32が得られる。表面特徴部52が周辺部54から突出している場合(図3B参照)、高位平均高度28に位置する1つ以上の高位面26は、表面特徴部52により得られる。そして、かかる例では、低位平均高度34に位置する1つ以上の低位面32は、周辺部54により得られる。表面特徴部52が周辺部54より凹むように設けられている場合(図3A参照)、高位平均高度28に位置する1つ以上の高位面26は、周辺部54により得られる。そして、かかる例では、低位平均高度34に位置する1つ以上の低位面32は、表面特徴部52により得られる。
【0053】
高屈折率材料36は、表面特徴部52と周辺部54のうち、低位平均高度34に位置する1つ以上の低位面32をなす方に設けられる。表面特徴部52が周辺部54より凹むように設けられる実施形態では、高屈折率材料36は、表面特徴部52内の、表面特徴部52がなす低位平均高度34に位置する1つ以上の低位面32上に設けられる。表面特徴部52が周辺部54から突出する実施形態では、高屈折率材料36は、表面特徴部52と表面特徴部52の間の、周辺部54がなす低位平均高度34に位置する1つ以上の低位面32上に設けられる。高屈折率材料36が周辺部54に配置され、周辺部54が切れ目なく連続する実施形態では、高屈折率材料36は、外部環境24に向かって高屈折率材料36を貫通して突出する表面特徴部52の周囲を切れ目なく連続する1つの中位面38を形成することができる。
【0054】
複数の実施形態において、高位平均高度28に位置する1つ以上の高位面26は、平面状である。複数の実施形態において、低位平均高度34に位置する1つ以上の低位面32は、平面状である。他の実施形態では、1つ以上の低位面32は、凸状又は凹状である。複数の実施形態において、1つ以上の低位面32の一部を凹状、他を凸状とすることができる。
【0055】
高位平均高度28に位置する1つ以上の高位面26と、低位平均高度34に位置する1つ以上の低位面32とを備えるテクスチャ領域20は、外光の反射光の散乱を制御した形で生じさせる回折構造体である。外光の反射光を散乱させることにより、鏡面反射率及び像鮮明度が低減する。また、詳細は後述するが、基板12(又は基板12上の低屈折率材料)の屈折率よりも高い屈折率を有する高屈折率材料36により、(ディスプレイ16から発する光などの)テクスチャ領域20を通過する光の透過が向上するため、高屈折率材料36を含まないテクスチャ領域20のみを利用する場合と比べて透過ヘイズ及び画素パワー偏差が低減する。
【0056】
複数の実施形態において、表面特徴部52は、ランダムな分布で配置される。換言すれば、かかる実施形態では、表面特徴部52をパターン配置しない。ただし、他の実施形態では、表面特徴部52を、六角形などのパターンで配置する。表面特徴部52をパターン配置すると、外光の反射によりテクスチャ領域20がモアレ干渉模様を生成してしまう恐れがある。また、表面特徴部52をパターン配置しないことで、外光の散乱光の波長依存性を低減することができる。したがって、いくつかの用途において、表面特徴部52をパターン配置しない方が有益な場合がある。
【0057】
図4を参照すると、ランダム度の指標として、表面特徴部52の六角形度((degree of) hexagonality)を示している。六角形度とは、あるエリア内の物体(オブジェクト)の配置が六角形格子配置にいかに近似しているかを局所的に定量化するための指標である。エリア内のオブジェクトは、それぞれ中心点を有している。そして、エリア内のこれら中心点の各々における六角形度Hを、その中心点に最も近接する6点の、任意の軸に対する角度を用いて、以下の式により計算する。
【0058】
【数1】
【0059】
変数αは、最も近接する6点の角度を示す。六角形格子では、この6つの角度の差が60度(π/3ラジアン)ずつとなるため、6つの加数の指数の差は2πラジアンずつとなり、この和における6つの複素数がすべて等しくなる。その場合が、H=1、つまり正六角形格子である。エリア内の各中心点が、それぞれ一意のH値を有している。そして、エリア内のすべてのH値の平均が、六角形格子配置からの乖離度を表す。すべてのH値の平均が1から離れるほど、ランダム性の高い配置である。
【0060】
各表面特徴部52は、基準平面30に平行な外周56を有している。複数の実施形態において、各表面特徴部52の外周56は、同一形状を有している。例えば、図2に示す実施形態などの複数の実施形態において、各表面特徴部52の外周56は円形である。複数の実施形態において、各表面特徴部52の外周56は楕円形である。複数の実施形態において、各表面特徴部52の外周56は、六角形又は多角形である。複数の実施形態において、表面特徴部52の外周56は、2つ以上の形状のうちのいずれかである(例えば、一部が楕円形、一部が円形である)。
【0061】
各表面特徴部52の外周56は、最長寸法58を有している。外周56が円形の場合、最長寸法58は外周56の直径である。外周56が六角形の場合、最長寸法58は長軸(長対角線)である。その他の場合も同様である。複数の実施形態において、各表面特徴部52の外周56の最長寸法58は、5μm、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、110μm、120μm、130μm、140μm、150μm、160μm、170μm、180μm、190μm、又は200μm、又はこれらの値のうちのいずれか2つの値を上下限値とする任意の範囲内(例えば、5μm~200μm、20μm~100μm、80μm~120μm、30μm~70μm、25μm~75μmなど)である。
【0062】
複数の実施形態において、表面特徴部52同士は、少なくとも最小中心間距離60だけ離間している。例えば、最小中心間距離60が100μmである場合、1つの表面特徴部52の中心から隣接する他の表面特徴部52の中心までの離間距離は、100μm又は100μm以上の場合はあるが、100μmを下回ることはない。複数の実施形態において、最小中心間距離60は、5μm、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、110μm、120μm、又は130μm、又はこれらの値のうちのいずれか2つの値を上下限値とする任意の範囲内(例えば、30μm~70μm、40μm~80μm、5μm~100μm、20μm~90μm、30μm~80μmなど)である。
【0063】
基板12(又は基板12上の低屈折率材料)の屈折率よりも高い屈折率を有する高屈折率材料36は、テクスチャ領域20が生成する画素パワー偏差を低減させるものである。したがって、高屈折率材料36を組み入れない場合に比べて、最小中心間距離60を大きくとることが可能となる。さらに、高屈折率材料36を組み入れることにより、高屈折率材料36を組み入れない場合に比べて、表面特徴部52の最長寸法58を長くすることも可能となる。これは、いくつかの理由から有益である。第1に、表面特徴部52の最長寸法58が長いほど、表面特徴部52、ひいてはテクスチャ領域20の作製が容易となる。よって、高屈折率材料36を組み入れることにより、インクジェット印刷、スクリーン印刷、グラビアオフセット印刷などの低コストな方法で、テクスチャ領域20を作製することが可能となる。第2に、表面特徴部52の外周56の最長寸法58が長いほど、テクスチャ領域20から生じる透過ヘイズが低下する。ただし、表面特徴部52の最長寸法58には実用上の制限がある。というのは、最長寸法58がある程度長くなると、表面特徴部52が人間の目に見えるようになり、望ましくない場合があるためである。
【0064】
第3に、表面特徴部52の外周56の最長寸法58が十分に長い場合、表面特徴部52は、鏡面反射角(specular angle)から0.3度付近の角度を含む狭い角度範囲における反射光の散乱強度が大きくなる。この結果、テクスチャ領域20で生じる画素パワー偏差は高くなる。また、この反射光の散乱は、ヒトの目で色の識別ができるほど広い角度範囲にはわたっていないため、反射色アーチファクトは低減される。例えば、450nmの波長部分の光のピーク散乱角と650nmの波長部分の光のピーク散乱角の間の角度差を、0.4度未満、又は0.3度未満、さらには0.2未満とすることができる。異なる波長間の散乱角の差は小さい方が好ましい。これは、ヒトの目では、極めて小さい散乱角の差を解像することが困難であるため、波長間の散乱角の差が小さい場合には、視聴者には散乱光の色があまり見えないためである。
【0065】
複数の実施形態において、基板12は、ガラス又はガラスセラミックを含む。複数の実施形態において、基板12は、約40モル%~80モル%のシリカに、1つ以上の他の成分(例えば、アルミナ、酸化カルシウム、酸化ナトリウム、酸化ホウ素など)をバランスよく配合した多成分ガラス組成物である。いくつかの実施態様では、基板12のバルク組成は、アルミノケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、及びリンケイ酸塩ガラスからなる群から選択される。他の実施態様では、基板12のバルク組成は、アルミノケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、リンケイ酸塩ガラス、ソーダ石灰ガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、及びアルカリアルミノホウケイ酸塩ガラスからなる群から選択される。さらなる実施態様では、基板12はガラス系基板であり、約90質量%以上のガラス成分と、セラミック成分を含むガラスセラミック材料を含むが、これに限定されない。ディスプレイ物品10の他の実施態様では、基板12は、テクスチャ領域20の成長と保持に適した耐久性と機械的特性とを有する高分子材料とすることができる。他の実施形態では、基板12は、サファイアなどの単結晶構造体であるか、又は単結晶構造体を含む。
【0066】
複数の実施形態において、基板12のバルク組成は、アルミナと、少なくとも1つのアルカリ金属と、SiOとを含むアルカリアルミノケイ酸塩ガラスを含む。このガラスは、いくつかの実施形態では、50モル%超のSiO、他の実施形態では、少なくとも58モル%のSiO、さらに他の実施形態では、少なくとも60モル%のSiOを含み、比(Al(モル%)+B(モル%))/Σアルカリ金属修飾物質(モル%)>1であり、式中のアルカリ金属修飾物質は、アルカリ金属酸化物である。特定の実施形態では、このガラスは、約58モル%~約72モル%のSiO、約9モル%~約17モル%のAl、約2モル%~約12モル%のB、約8モル%~約16モル%のNaO、及び0モル%~約4モル%のKOを含み(又は、から本質的になり、又は、からなり)、比(Al(モル%)+B(モル%))/Σアルカリ金属修飾物質(モル%)>1であり、式中のアルカリ金属修飾物質は、アルカリ金属酸化物である。
【0067】
複数の実施形態において、基板12のバルク組成は、約61モル%~約75モル%のSiO、約7モル%~約15モル%のAl、0モル%~約12モル%のB、約9モル%~約21モル%のNaO、0モル%~約4モル%のKO、0モル%~約7モル%のMgO、及び0モル%~約3モル%のCaOを含む(又は、から本質的になる、又は、からなる)アルカリアルミノケイ酸塩ガラスを含む。
【0068】
複数の実施形態において、基板12のバルク組成は、約60モル%~約70モル%のSiO、約6モル%~約14モル%のAl、0モル%~約15モル%のB、0モル%~約15モル%のLiO、0モル%~約20モル%のNaO、0モル%~約10モル%のKO、0モル%~約8モル%のMgO、0モル%~約10モル%のCaO、0モル%~約5モル%のZrO、0モル%~約1モル%のSnO、0モル%~約1モル%のCeO、約50ppm未満のAs、及び約50ppm未満のSbを含み(又は、から本質的になり、又は、からなり)、12モル%≦LiO+NaO+KO≦20モル%、及び0モル%≦MgO+Ca≦10モル%である、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスを含む。
【0069】
複数の実施形態において、基板12のバルク組成は、約64モル%~約68モル%のSiO、約12モル%~約16モル%のNaO、約8モル%~約12モル%のAl、0モル%~約3モル%のB、約2モル%~約5モル%のKO、約4モル%~約6モル%のMgO、及び0モル%~約5モル%のCaOを含み(又は、から本質的になり、又は、からなり)、66モル%≦SiO+B+CaO≦69モル%、NaO+KO+B+MgO+CaO+SrO>10モル%、5モル%≦MgO+CaO+SrO≦8モル%、(NaO+B)-Al≦2モル%、2モル%≦NaO-Al≦6モル%、及び4モル%≦(NaO+KO)-Al≦10モル%であるアルカリアルミノケイ酸塩ガラスを含む。
【0070】
複数の実施形態において、基板12のバルク組成は、SiO、Al、P、及び少なくとも1つのアルカリ金属酸化物(RO)を含み、0.75>[(P(モル%)+RO(モル%))/M(モル%)]≦1.2であり、M=Al+Bである。複数の実施形態において、[(P5(モル%)+RO(モル%))/M3(モル%)]=1であり、複数の実施形態において、ガラスはBを含まず、M=Alである。複数の実施形態において、基板12は、約40~約70モル%のSiO、0~約28モル%のB、約0~約28モル%のAl、約1~約14モル%のP、及び約12~約16モル%のROを含む。いくつかの実施形態では、ガラス基板は、約40~約64モル%のSiO、0~約8モル%のB、約16~約28モル%のAl、約2~約12モル%のP、及び約12~約16モル%のROを含む。また、基板12は、少なくとも1つのアルカリ土類金属酸化物をさらに含むこともできる。アルカリ土類金属酸化物としては、例えば、MgO又はCaOが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0071】
いくつかの実施形態では、基板12は、実質的にリチウムを含まないバルク組成を有している。すなわち、ガラスが含むLiOは1モル%未満であり、他の実施形態では、ガラスが含むLiOは0.1モル%未満、他の実施形態では、ガラスが含むLiOは0.01モル%、さらに他の実施形態では、ガラスが含むLiOは0モル%である。いくつかの実施形態では、かかるガラスは、ヒ素、アンチモン、及びバリウムのうち少なくとも1つを含まない。すなわち、ガラスが含むAs、Sb、及び/又はBaOは、1モル%未満であり、他の実施形態では、0.1モル%未満、さらに他の実施形態では、0モル%である。
【0072】
複数の実施形態において、基板12のバルク組成は、Corning(登録商標)Eagle XG(登録商標)ガラス、「Corning」Gorilla(登録商標)ガラス、「Corning」「Gorilla」ガラス2、「Corning」「Gorilla」ガラス3、「Corning」「Gorilla」ガラス4、又は「Corning」「Gorilla」ガラス5を含む(又は、から本質的になる、又は、からなる)。
【0073】
複数の実施形態において、基板12は、当技術分野で公知の化学的手段又は熱的手段のいずれかにより強化したイオン交換性ガラス組成を有している。複数の実施形態において、基板12は、イオン交換により化学的に強化される。このプロセスでは、基板12の主面18又はその近傍の金属イオンを、基板12中のこの金属イオンと価数の等しいより大きな金属イオンと交換する。一般に、イオン交換は、大きな金属イオンを含有するイオン交換媒体(例えば、溶融塩浴など)に基板12を接触させることにより行う。この金属イオンは、通常、一価の金属イオンであり、例えば、アルカリ金属イオンである。限定されるものではないが、一例を挙げれば、ナトリウムイオンを含有する基板12をイオン交換で化学強化する場合、基板12の強化は、硝酸カリウム(KNO)などの溶融カリウム塩を含むイオン交換浴に基板12を浸漬することにより行われる。ある特定の実施形態では、基板12の主面18に隣接する表層部のイオン、及びこれより大きなイオンは、Li(ガラス中に位置する場合)や、Na、K、Rb、Csなどの一価のアルカリ金属カチオンである。あるいは、基板12の表層部中の一価のカチオンを、Agなどの、アルカリ金属カチオンとは異なる一価のカチオンに置換することもできる。
【0074】
かかる実施形態では、イオン交換プロセスで小さな金属イオンをより大きな金属イオンに置換することにより、基板12内に、主面18から圧縮応力を受ける深さ(「層深さ(depth of layer)」と呼ぶ)まで延びる圧縮応力領域が形成される。この基板12の圧縮応力は、基板12の内部における引張応力(別称「中心張力(central tension)」)と釣り合っている。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の基板12の主面18は、イオン交換による強化を受けて、少なくとも350MPaの圧縮応力を有しており、圧縮応力を受ける領域は、主面18下の厚さ22の内部に少なくとも15μmの深さ(すなわち層深さ)まで延びる。
【0075】
イオン交換プロセスは、通常、ガラス中の小さいイオンと置換されることになる大きいイオンを含有する溶融塩浴に基板12を浸漬することにより行われる。イオン交換プロセスのパラメータとしては、浴の組成と温度、浸漬時間、(1つ以上の)塩浴へのガラスの浸漬回数、複数の塩浴の使用、アニール工程や洗浄工程などの追加工程が挙げられるが、これらに限定されない。そして、当業者であれば、かかるイオン交換プロセスのパラメータは、通常、ガラスの組成、並びに強化処理の結果として望まれるガラスの層深さ及び圧縮応力によって定められることが理解されよう。一例を挙げれば、アルカリ金属を含有するガラスのイオン交換は、大きなアルカリ金属イオンの塩(例えば、硝酸塩、硫酸塩、塩化物などが挙げられるが、これらに限定されない)を含有する少なくとも1つの溶融浴に浸漬することにより行うことができる。溶融塩浴の温度は通常、約380℃~約450℃の範囲であり、浸漬時間は約15分~約16時間の範囲である。ただし、上記とは異なる温度や浸漬時間を用いることもできる。かかるイオン交換処理を、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成を有する基板12に対して行った場合、約10μm~少なくとも50μmの範囲の深さ(層深さ)と、約200MPa~約800MPaの範囲の圧縮応力及び約100MPa未満の中心張力を有する圧縮応力領域が得られる。
【0076】
なお、基板12のテクスチャ領域20は、エッチングプロセスを用いて形成することができるが、エッチングプロセスにより、イオン交換プロセス時に大きなアルカリ金属イオンで置換するはずであった基板12中のアルカリ金属イオンを除去してしまう恐れがある。このため、テクスチャ領域20を形成、成長させた後にディスプレイ物品10に圧縮応力領域を成長させることが好まれる。
【0077】
複数の実施形態において、テクスチャ領域20は、画素パワー偏差(「PPD」)を示す。PPD値を取得するために使用する測定システム及び画像処理計算の詳細については、米国特許第9411180号明細書(発明の名称「Apparatus and Method for Determining Sparkle(ぎらつき測定装置及び方法)」)に記載されている。なお、本特許明細書の特にPPD測定に関連する箇所のすべての内容は参照することにより本明細書の一部をなすものとする。さらに、特に断りのない限り、本開示のPPD測定値の生成と評価は、SMS-1000システム(Display-Messtechnik & Systeme GmbH & Co. KG)を使用して行った。PPD測定システムは、画素化源と撮像システムとを備える。画素化源(例えば、140ppiのノートパソコンLenovo Z50)は、複数の画素を備えており、複数の画素の各々が参照インデックスi及びjを有する。撮像システムは、画素化源が発する光路に沿って光学的に配置される。撮像システムは、撮像デバイスとダイアフラムとを備えている。撮像デバイスは、光路に沿って配置され、第2の複数の画素を備える画素化感知エリアを有しており、この第2の複数の画素の各々がインデックスm及びnで参照される。ダイアフラムは、画素化源と撮像デバイスの間の光路上に配置され、画素化源が発する画像に対して調節可能な集束角を有している。また、画像処理計算は、透明な試料の画素化画像であって、複数の画素を備える画素化画像を取得するステップと、画素化画像において隣接する画素間の境界を特定するステップと、境界内で積分を行うことにより、画素化画像内の元の画素それぞれの積分エネルギーを求めるステップと、元の画素それぞれの積分エネルギーの標準偏差を求め、求めた標準偏差を画素当たりのパワーの偏差とするステップと、を含む。本明細書において、PPDの値、特性、及び上下限値については、そのすべての計算、評価を、1インチ(約25.4mm)当たりの画素数140(140PPI)の画素密度を有するディスプレイデバイスを使用した実験構成で行っている。複数の実施形態において、ディスプレイ物品10は、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、又はこれらの値のうちのいずれか2つの値を上下限値とする任意の範囲内(例えば、1.2%~2.1%など)のPPDを示す。複数の実施形態において、テクスチャ領域20は、4%未満、3%未満、2.5%未満、2.1%未満、2.0%未満、又は1.75%未満、さらには1.5%未満のPPDを示す。
【0078】
そして、本開示のテクスチャ領域20が生成する画素パワー偏差値がこのように低いため、ディスプレイ物品10のディスプレイ16は、通常よりも高い解像度を有することができる。先の段落で述べたように、画素パワー偏差値の測定は、業界標準である、1インチ(約25.4mm)当たりの画素数が140(140ppi)の解像度のディスプレイを用いて行っている。本開示のテクスチャ領域20は、かかる解像度を、画素パワー偏差を抑えて伝送することができる。従って、ディスプレイ16の解像度を上げることが可能となる。複数の実施形態において、ディスプレイ物品10のディスプレイ16は、140ppiを上回る解像度、例えば140ppi~300ppiの範囲内の解像度を有している。
【0079】
複数の実施形態において、テクスチャ領域20は、像鮮明度(「DOI」)を示す。本明細書において、テクスチャ領域20に(法線から20゜の角度で)入射する光で測定した鏡面反射束をR、同一の入射光で測定した、鏡面反射束Rから0.3゜の方向の反射束をR0.3゜とすると、「DOI」は、100*(R-R0.3゜)/Rで示される。特に断りのない限り、本開示に記載のDOIの値及び測定値は、ASTM規格D5767-18「光沢・ヘイズ・像鮮明度(DOI)メーターRhopoint(ローポイント)IQ(Rhopoint Instruments社)を用いた、被膜面のDOI光沢の計器測定に関する標準試験法(Standard Test Method for Instrumental Measurement of Distinctness-of-Image (DOI) Gloss of Coated Surfaces using a Rhopoint IQ Gloss Haze & DOI Meter)」に従い得たものである。さらに、DOI測定は、基板12の背面(主面18とは反対側の面)を吸収体と結合して、背面からの反射を排除した状態で行った。したがって、本明細書におけるDOI値は「結合状態の」値つまり「第1の面の」値である。複数の実施形態において、テクスチャ領域20が示す像鮮明度(「DOI」)は、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、又は85%、又はこれらの値のうちのいずれか2つの値を上下限値とする任意の範囲内(例えば、25%~85%など)である。複数の実施形態において、テクスチャ領域20が示す像鮮明度は、90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、又は35%未満、さらには30%未満である。
【0080】
複数の実施形態において、テクスチャ領域20は、透過ヘイズを示す。本明細書において、「透過ヘイズ(transmission haze)」という用語は、ASTM規格D1003「透明プラスチックのヘイズ及び光透過率の標準試験法(Standard Test Method for Haze and Luminous Transmittance of Transparent Plastics)」に従い、約±2.5°の角度錐体(angular cone)外に散乱した透過光の割合を指す。なお、本記載のすべての内容は参照することにより本明細書の一部をなすものとする。実施例では、透過ヘイズの測定は、垂直入射(0度)の入射光を用いて、積分球検出システムを用いたBYK Gardner社のヘーズガードPlus(Haze-Gard Plus)で行った。なお、ASTM規格D1003の名称にはプラスチックと記載されているが、本規格は、ガラス材料を含む基板にも適用されているものである。通常、光学的に平滑な面の透過ヘイズはゼロに近い。複数の実施形態において、テクスチャ領域20は、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、又は2.5%、又はこれらの値のうちのいずれか2つの値を上下限値とする任意の範囲内(例えば、1.5%~2.5%など)の透過ヘイズを示す。複数の実施形態において、テクスチャ領域20は、20%未満、10%未満、5%未満、3%未満、2.5%未満、又は2.0%未満の透過ヘイズを示す。
【0081】
複数の実施形態において、テクスチャ領域20は、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.75%、又はこれらの値のうちのいずれか2つの値を上下限値とする任意の範囲内(例えば、0.5%~1.75%など)の鏡面反射率を示す。本明細書における鏡面反射率の測定は、光沢・ヘイズ・DOIメーターRhopoint IQ(Rhopoint Instruments社)を使用し、20度の反射入射角で、基板12の背面を吸収体に結合して背面の反射率を排除した状態で行った。本計器の指示値(単位:GU(gloss unit,光沢単位))は、屈折率が1.567、且つ入射角20度の場合の既知の主面反射率が4.91%である黒ガラスを管理試料とし、当該管理試料の値である100GUを基準に正規化した値である。したがって、本明細書における鏡面反射率値は、計器の生成値に0.0491を乗じる式に従い、計器の生成値を第1の面の絶対鏡面反射率(%)に変換した値を示している。
【0082】
複数の実施形態において、約400nm~約800nmの範囲の光波長域にわたり、テクスチャ領域20は、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、又は95%、又はこれらの値のうちのいずれか2つの値を上下限値とする任意の範囲内(例えば、85%~95%、90%~92%など)の透過率を示す。本明細書において、「透過率(transmittance)」という用語は、所定の波長域内の波長の入射光が基板12を透過してテクスチャ領域20から外に出る光パワーの割合として定義される。実施例における透過率の測定は、垂直入射(0度)の入射光を用いて、積分球検出システムを用いたBYK Gardner社のヘーズガードPlusで行った。本明細書に記載の透過率は、すべての出力角での合計透過率である。
【0083】
複数の実施形態において、テクスチャ領域20は、(i)1.2%~2.1%の範囲内の画素パワー偏差と、(ii)1.5%~2.5%の範囲内の透過ヘイズと、(iii)0.5%~1.75%の鏡面反射率と、(iv)25%~85%の像鮮明度と、を同時に示す。
【0084】
ここで図5を参照すると、テクスチャ領域20を形成する方法100が説明されている。方法100は、各表面特徴部52の所定の位置決めに従って、基板12の主面18に、周辺部から突出する又は周辺部より凹む表面特徴部52を形成するステップ102を含む。方法100は、高屈折率材料36を表面特徴部52又は周辺部54のいずれかに堆積させて、低位平均高度34に位置する1つ以上の低位面32を設けるステップ104をさらに含む。ステップ102と104については、さらに後述する。
【0085】
複数の実施形態において、方法100は、間隔分布アルゴリズムを利用して各表面特徴部52の位置決めを定めるステップ106をさらに含む。その結果、上述した各表面特徴部52の所定の位置決めが行われる。このステップ106は、表面特徴部52を基板12に形成するステップ102の前に実行される。間隔分布アルゴリズムの例としては、ポアソンディスクサンプリング(Poisson disk sampling)アルゴリズム、マクシミンスペーシング(maxi-min spacing)アルゴリズム、剛体球分布(hard-sphere distribution)アルゴリズムが挙げられる。間隔分布アルゴリズムでは、(表面特徴部52を表す、又は表面特徴部52の配置の導出元となる)オブジェクト108同士を隔てる最小中心間距離112に従って、オブジェクト108をエリア110上に配置する。なお、最小中心間距離112は、所望の表面特徴部52の最小中心間距離60に一致させることができる。
【0086】
ポアソンディスクサンプリングアルゴリズムによれば、(表面特徴部52に望ましい最長寸法58に合致する直径を有する円形の)第1のオブジェクト108をエリア48に挿入する。次に、本アルゴリズムでは、エリア48内に第2のオブジェクト108を挿入し、その中心をエリア48内のランダムな位置に配置する。第2のオブジェクト108の配置が第1のオブジェクト108からの最小中心間距離112を満たす場合、第2のオブジェクト108はエリア48に留まる。そして、本アルゴリズムでは、エリア110内に、最小中心間距離112を満たすオブジェクト108を配置できなくなるまで、この処理を繰り返す。これにより、オブジェクト108を、ランダム分布でしかも特定の位置に配置する。
【0087】
マクシミンスペーシングアルゴリズムは、その名の通り、点分布の最小最近接中心間距離112を最大化するべく試行を行うものである(すなわち、本アルゴリズムでは、エリアにおけるオブジェクトは点である)。このアルゴリズムは、各オブジェクト108を、今よりも自身の任意の隣接オブジェクトから遠い他の場所に移動させるステップを繰り返すことで進められるため、通常、正六角形格子配置を生成することはない。マクシミンスペーシングアルゴリズムによれば、平均六角形度が比較的高い(90%を超えることも珍しくない)ランダムな分布が生成される。
【0088】
剛体球分布アルゴリズムは、有限温度で行う分子動力学シミュレーションである。特定的には、分子動力学シミュレータLAMMPS(URL:https://www.lammps.org/、最終閲覧日:2021年6月26日)である。このアルゴリズムによれば、エリア110にオブジェクト108を、ランダム分布で、しかも特定の、六角形格子とは異なる位置に配置する。ただし、やはり、このアルゴリズムも、ポアソンディスクアルゴリズムに比べれば、得られる配置の六角形度は高くなる。
【0089】
いずれの場合も、エリア110におけるオブジェクト108の位置決めが、後続の工程で基板12に形成する各表面特徴部52の所定の位置決めとなるか、又は、エリア110におけるオブジェクト108の位置決めから、各表面特徴部52の所定の位置が導出される。
【0090】
複数の実施形態において、方法100は、基板12の主面18上にエッチングマスク116を配置するステップ114をさらに含む。そして、後続のステップである表面特徴部52を形成するステップ102は、エッチングマスク116を基板12の主面18上に配置した状態で、基板12をエッチング液118に接触させるステップを含む。
【0091】
複数の実施形態において、エッチングマスク116は、間隔分布アルゴリズムによりオブジェクト108が配置されたエリア110のポジ型又はネガ型マスクとして基板12上に重ねて形成される。換言すれば、複数の実施形態において、エッチングマスク116は、基板12の主面18上のオブジェクト108の配置に合わせて形成され、この場合、エッチングマスク116は、表面特徴部52の所定の位置決めに従って表面特徴部52を形成する箇所において、後続のエッチングを阻止する。かかる例では、エッチングステップ102により、周辺部54から突出した表面特徴部52が得られる。(図5に示す実施形態などの)他の実施形態では、エッチングマスク116は、エリア110上のオブジェクト108の配置のネガ型マスクとして形成され、周辺部54となる箇所におけるエッチングを阻止し、表面特徴部52となる箇所(すなわち、エリアにおいてオブジェクトが配置された箇所)のエッチングのみを許容する。
【0092】
複数の実施形態において、エッチング液118は、フッ酸及び硝酸のうちの1つ以上を含む。複数の実施形態において、エッチング液118は、フッ酸及び硝酸の両方を含む。エッチング液118は、エッチングマスク116を基板12上に置いた状態で、基板12に吹き付けることができる。エッチングマスク116を付けた状態の基板12を、エッチング液118を入れた槽120に浸漬することもできる。複数の実施形態において、エッチング液118の基板12への接触時間は、10秒、20秒、30秒、40秒、50秒、又は60秒、又はこれらの値のうちのいずれか2つの値を上下限値とする任意の範囲内(例えば、10秒~60秒など)である。この接触時間の終了後、基板12を脱イオン水でリンス洗浄し、乾燥させる。エッチング液118が基板12に接触する時間が長いほど、エッチング液118による基板12のエッチングが深くまで行われ、よって、高位平均高度28に位置する基板12の1つ以上の高位面26と低位平均高度34に位置する基板12の1つ以上の低位面32との距離42は大きくなる。
【0093】
そして、上述したように、方法100は、高屈折率材料36を表面特徴部52又は周辺部54のいずれかに堆積させるステップ104を含む。複数の実施形態において、高屈折率材料36の堆積は、ステップ102で表面特徴部52を形成した後、エッチングマスク116を基板12上に配置したままの状態で行う。基板12上にエッチングマスク116を保持したまま、高屈折率材料36を堆積することにより、高屈折率材料36を所望の場所にのみ確実に堆積することが可能となる。例えば、低位平均高度34に位置する基板12の1つ以上の低位面32が、表面特徴部52と周辺部54のうちのいずれにより得られるかにかかわらず、高屈折率材料36を当該1つ以上の低位面32上にのみ堆積させて、高位平均高度28に位置する1つ以上の高位面26には堆積させないということが可能となる。高屈折率材料36を堆積させる方法としては、例えば、化学気相成長法(例えば、プラズマ化学気相成長法、低圧化学気相成長法、大気圧化学気相成長法、及び大気圧プラズマ化学気相成長法)、物理気相成長法(例えば、反応性又は非反応性スパッタリング又はレーザアブレーション)、熱蒸着又は電子ビーム蒸着法、及び/又は原子層堆積法のような真空蒸着技術などの様々な成膜法を利用することができる。複数の実施形態では、反応性スパッタリングにより高屈折率材料36を堆積させる。
【0094】
複数の実施形態において、方法100は、ステップ104で高屈折率材料36を堆積した後、エッチングマスク116を除去するステップ122をさらに含む。エッチングマスク116の組成に応じて、アセトンやイソプロピルアルコールなどの有機溶媒により、基板12からエッチングマスク116を除去することができる。
【0095】
変形例では、ステップ114の前に、基板12の主面18上に低屈折率材料の膜を堆積する。その後、低屈折率材料を覆うように、基板12上にエッチングマスク116を配置する。次に、ステップ102で、エッチングマスク116を低屈折率材料上に配置した状態で、低屈折率材料をエッチング液118に接触させることにより、表面特徴部52を形成する。これ以降は、上記で説明したように、方法100の残りの部分を進める。
【実施例
【0096】
比較例1A
比較例1Aとして、市販のソフトウェアパッケージ、Gsolver(米国ユタ州サラトガ・スプリングスGrating Solver Development Company)を利用して、本開示のテクスチャ領域の実施形態を回折格子としてモデリングした。モデリングした基板は、周辺部が高位平均高度の面をなし、周辺部より凹むように設けられた(表面特徴部としての)線状溝が高位平均高度より低い低位平均高度の面をなす基板である。線状溝の中心間間隔(格子周期)は20μmとした。モデルでは、外光を550nmの単一波長の光と想定した。基板は屈折率1.518のガラスとした。そして、低位平均高度に位置する線状溝面に、屈折率が1.892と高い高屈折率材料(特にSiO)を充填率50%で追加した。その結果、高屈折率材料がなす面はすべて、基板の高位平均高度と低位平均高度の間の中位平均高度の面となった。エアトレンチ深さ(基板の高位平均高度と線状溝内に堆積した高屈折率材料の中位平均高度との距離)は220nmに設定した。そして、トレンチ深さ(基板の高位平均高度と低位平均高度との距離)を約220nmから700nm超まで変化させるとともに、溝内に堆積する高屈折率材料の高さを適宜調節して、エアトレンチ深さを220nmに保った。次に、モデリングしたテクスチャ領域を透過する光(図6A)と、モデリングしたテクスチャ領域から反射する光(図6B)の両方について、トレンチ深さの関数(したがって、220nmのエアトレンチ深さを保つように追加した高屈折率材料の高さの関数でもある)として0次~5次の回折効率を計算した。透過光のモデリング結果を再現したものを図6Aに、反射光のモデリング結果を再現したものを図6Bに示す。
【0097】
図6Aに再現したモデリング結果から、基板を通過してテクスチャ領域から外に出る透過率を最大にするには、基板のトレンチ深さを520nm(0.52μm)にする必要があることがわかる。したがって、エアトレンチ深さを220nmに保つためには、線状溝に追加する高屈折率材料SiOの高さを300nmにする必要がある。しかし、図6Bに再現したモデリング結果が示すように、基板のトレンチ深さを520nmとした場合、鏡面反射率(0次が鏡面に対応)を十分に最小化できない。
【0098】
実施例1B
実施例1Bは、比較例1Aと同様のモデリング例である。ただし、実施例1Bでは、エアトレンチ深さを固定して基板のトレンチ深さを変化させることは行っていない点で比較例1Aと異なる。これに代えて、実施例1Bでは、基板のトレンチ深さ:高屈折率材料SiOの高さ:エアトレンチ深さの比を、3:1.6:1.4に固定した。このモデルでは、透過光(図7A)と反射光(図7B)の両方について、基板のトレンチ深さを変数とする関数として回折効率を求めた。実施例1Bのモデルのその他のパラメータは、高屈折率材料SiOの充填率50%を含め、比較例1Aと同一とした。
【0099】
図7Aのグラフから、基板のトレンチ深さに関係なく、基板を通過してテクスチャ領域から外に出る0次の(回折ではなく鏡面)透過率は高いままであることがわかる。一方、回折透過率(1次以上)はゼロに非常に近い。これは、上記の比率3:1.6:1.4が、透明拡散材としてほぼ理想的な比であることによる。図7Bのグラフから、基板のトレンチ深さを変化させると、鏡面反射率(0次)と散乱反射率(1次以上)が大きく変化することがわかる。基板のトレンチ深さが約0.10μmと約0.50μmのときに鏡面反射率がピークとなるため、これらのトレンチ深さの基板は好ましくない。一方、基板のトレンチ深さが0.22μm~0.37μmとした場合に、鏡面反射率は最小となる。さらに、1次回折反射率は約0.30μmのときに最小となる。上記の比率を採用した場合、基板のトレンチ深さを0.22μm~0.37μmとすると、高屈折率材料SiOの高さは0.12μm~0.20μm、エアトレンチ深さは0.10μm~0.20μmとなる。よって、このモデルを用いた目標値は、例えば、基板のトレンチ深さ0.32μm、表面特徴部より凹むように設けた高屈折率材料SiOの高さ0.17μm、エアトレンチ深さ0.15μmとなる。さらに、このモデルから、本明細書に開示のテクスチャ領域を適切に設計することにより、テクスチャを付与していない平板ガラスと比べて、鏡面反射率を、5倍、さらには10倍以上抑制することができることが説明される。
【0100】
ここで、図7C及び図7Dを参照すると、モデルを使って、透過(図7C)と反射(図7D)の両方について、高屈折率材料SiOの充填率(100%から低屈折率基板の充填率を引いて求めた比率)を変数とする関数として、回折効率を求めた。このモデルでは、基板のトレンチ深さを0.32μm、表面特徴部より凹むように設けた高屈折率材料SiOの高さを0.17μm、エアトレンチ深さを0.15μmと想定した。このモデルでも、中心間距離は20μm、波長を550nmと想定した。図7Cのグラフから、このモデルによれば、検討した充填率のいずれにおいても、鏡面透過率は高くなり、透過散乱率は低くなることがわかる。これは、基板のトレンチ深さと、表面特徴部より凹むように設けた高屈折率材料SiOの高さ、及びエアトレンチ深さの比率が、透明拡散材基準に従ってすでに最適化されていたためである。図7Dのグラフから、このモデルから、基板(低屈折率)の充填率を52%~62%の範囲とした場合に、鏡面反射(0次)を最小化できることがわかる。これは、高屈折率材料SiOの充填率を38%~48%の範囲とすることに相当する。用途によっては、最適設計の目指すものが、鏡面反射(0次)のみの抑制ではなく、鏡面反射強度の最小化と1つ以上の高次(1次、2次など)回折反射強度の最小化とを同時に実現することである場合もある。すべての回折次数で回折反射強度を最小化することが望まれる用途においては、低屈折率基板又は低屈折率材料の充填率を、75%程度、又は約55%~約78%とすることができる。これは、高屈折率材料(例えばSiO)の充填率25%、又は約22%~約45%に相当する。
【0101】
ここで図7E及び図7Fを参照すると、高屈折率材料SiOの充填率45%、基板のトレンチ深さ0.32μm、高屈折率材料SiOの高さ0.17μm、及びエアトレンチ深さ0.15μmという最適パラメータでモデリングを行い、得られたモデルに対する入射光角度の関数として、反射率(図7E)と透過率(図7F)を求めた。図7Eのグラフからわかるように、このようにモデリングされたテクスチャ領域は、0~約40度の光入射角度のいずれに対しても、鏡面反射率(第1の面)が1%未満となる。また、図7Fのグラフからわかるように、このようにモデリングされたテクスチャ領域は、0~約40度の光入射角度のいずれに対しても、入射光の90%以上を透過する。
【0102】
実施例2A~2G
実施例2A~2Gでは、剛体球間隔分布アルゴリズム(LAMMPS)を利用して、基板の主面18上に配置する各表面特徴部の位置決めを定めた。剛体球間隔分布アルゴリズムでは、割り当てられたエリアの50%をオブジェクト(円形)が占めるまで当該エリアにオブジェクトを配置することを目標に定めた。この目標は、充填率が50%になるまで基板上に高屈折率材料を堆積すること、と言い換えることもできよう。オブジェクトの円の直径を50μm、最小中心間間隔を60μmとした。具体的には、ソフトウェアを用いて、オブジェクト(つまり所望の表面特徴部)を表す「分子(molecule)」の気体を2次元の六角形格子上に、充填率を50%に固定して初期配置した。その後、ガスを加熱し、これにより2次元ランダム化を行った。なお、分子の最小中心間間隔を60μmに保つように、分子には反発性剛体球ポテンシャルを付与した。その結果、エリア内のオブジェクトは、図2のグラフに示すように配置された。得られたオブジェクト配置の平均六角形度は0.49となり、これは、六角形格子から大きく乖離していること、ひいては、高いランダム度を有しながら特定の位置への配置となっていることを示している。図8に再現したグラフは、最近接オブジェクトとの中心間間隔の関数として、エリア内に配置した全オブジェクトの比率を示すヒストグラムである。
【0103】
次に、7つのガラス基板試料に対して、剛体球間隔分布アルゴリズムに従ったオブジェクト配置を重ね合わせるようにエッチングマスクを形成した。各試料のエッチングマスクは、剛体球間隔分布アルゴリズムによりエリア内にオブジェクトを配置した箇所では基板へのエッチングを許容するとともに、オブジェクトを配置した箇所以外では基板へのエッチングを阻止するように構成した。その後、エッチングマスクを取り付けた7つすべての基板試料をエッチング液に接触させた。試料ごとに接触時間を変えて、エッチング液に接触させることにより、トレンチ深さの異なる表面特徴部を生成することができた。エッチング液により、テクスチャ領域全域にわたり、アルゴリズムでエリア内にオブジェクトを配置した箇所において、周辺部より凹む形状の表面特徴部が形成された。そして、これら試料のうちの2つを、比較例としての実施例2F及び2Gとして分けた。
【0104】
エッチング後、残る実施例2A~2Eの基板試料上ではエッチングマスクを取り付けたままとした。そして、基板の屈折率(~1.51)よりも高い屈折率(~2.1)を持つ高屈折率材料、具体的にはAlNを、各表面特徴部の表面上に堆積させた。一部の試料では堆積時間を変化させたため、堆積した高屈折率材料の高さが異なっている。その後、各基板試料からエッチングマスクを除去した。製造プロセス工程による影響と堆積の際にわずかに生じた影(shadow)のため、高屈折率材料AlNの充填率は40~49%の範囲となった。
【0105】
次に、実施例2A~2Gの試料すべてを、各種光学測定に付した。具体的には、画素パワー偏差(「PPD」)、透過率、透過ヘイズ(「ヘイズ」)、像鮮明度(「DOI」)、及び鏡面反射率の測定を行った。以下の表1に、各試料の測定結果を、エアトレンチ深さ及び各表面特徴部内に堆積させた高屈折率材料AlNの高さ(「AlN高さ」)とともに示す。実施例2F及び2Gは、比較例であり、表面特徴部に高屈折率材料AlNを堆積させていないため、実施例2F及び2Gの「エアトレンチ深さ」の数値は、表面特徴部の基板と周辺部の基板との高度差を示している。なお、図2は、高屈折率材料AlNを表面特徴部内に配置した後の実施例2Cを光学式プロフィロメータでスキャンした様子を再現した図である。
【0106】
【表1】
【0107】
表1に記載したデータを分析することにより、実施例2A~2Eでは、表面特徴部内に高屈折率材料を組み入れることにより、他の光学特性測定値に大きな悪影響を及ぼすことなく、実施例2F及び2Gのいずれに比べても画素パワー偏差を大きく低下させることができたことが明らかになった。特に、実施例2B及び2Cでは、有利な光学特性を示す測定値の組み合わせ、具体的には、1.5%未満の画素パワー偏差、92%超の透過率、2%未満の透過ヘイズ、50%未満の像鮮明度、及び0.85%未満の鏡面反射率、を示している。このような値の組み合わせは、他の方法では実現が難しい又は実現できないものであった。特に、最長寸法が約50μmより小さい場合よりも製造が容易な、約50μmの最長寸法を有する表面特徴部では、実現が難しいものであった。
【0108】
実施例3A~3D
実施例3A~3Dでは、ポアソンディスクサンプリング法を実装した間隔分布アルゴリズムを利用して、基板の主面上に配置する各表面特徴部の位置決めを定めた。このアルゴリズムでは、割り当てられたエリアの36%をオブジェクト(円形)が占めるまで当該エリアにオブジェクトを配置することを目標に定めた。この目標は、充填率が36%になるまで表面特徴部内に高屈折率材料を堆積すること、と言い換えることもできよう。オブジェクトの円の直径を50μm、最小中心間間隔を60μmとした。アルゴリズムによりエリア内に配置した各円の六角形度Hは0.41となった。この六角形度は低いため、ランダム度は高いと考えられる。図9に再現したグラフは、最近接オブジェクトとの中心間間隔の関数として、エリア内に配置した全オブジェクトの比率を示すヒストグラムである。
【0109】
次に、4つのガラス基板試料に対して、本アルゴリズムに従ったオブジェクト配置を重ね合わせるようにエッチングマスクを形成した。各試料のエッチングマスクは、本アルゴリズムによりエリア内にオブジェクトを配置した箇所では基板へのエッチングを許容するとともに、オブジェクトを配置した箇所以外では基板へのエッチングを阻止するように構成した。その後、エッチングマスクを取り付けた4つすべての基板試料をエッチング液に接触させた。エッチング液により、テクスチャ領域全域にわたり、アルゴリズムでエリア内にオブジェクトを配置した箇所において、周辺部より凹む形状の表面特徴部が形成された。そして、これら試料のうちの2つを、比較例としての実施例3C及び3Dとして分けた。
【0110】
エッチング後、残る実施例3A及び3Bの基板試料上ではエッチングマスクを取り付けたままとした。そして、基板の屈折率(~1.51)よりも高い屈折率(~2.1)を持つ高屈折率材料、具体的にはAlNを、反応性スパッタリングで各表面特徴部内に堆積させた。その後、各基板試料からエッチングマスクを除去した。製造プロセス工程による影響と堆積の際にわずかに生じた影のため、高屈折率材料AlNの充填率は30~35%の範囲となった。
【0111】
次に、実施例3A~3Dの試料すべてを、各種光学測定に付した。具体的には、画素パワー偏差(「PPD」)、透過率、透過ヘイズ(「ヘイズ」)、像鮮明度(「DOI」)、及び鏡面反射率の測定を行った。以下の表2に、各試料の測定結果を、エアトレンチ深さ及び各表面特徴部内に堆積させた高屈折率材料AlNの高さ(「AlN高さ」)とともに示す。実施例3C及び3Dの「エアトレンチ深さ」の数値は、周辺部に対する表面特徴部の深さを示している(実施例3C及び3DではAlNを追加していないため)。
【0112】
【表2】
【0113】
表2に記載したデータを分析することにより、実施例3A及び3Bでは、表面特徴部内に高屈折率材料を組み入れることにより、他の光学特性測定値に大きな悪影響を及ぼすことなく、実施例3C及び3Dのいずれに比べても画素パワー偏差を大きく低下させることができたことが明らかになった。実施例3A及び3Bでは、像鮮明度値が85%未満であることから、鏡面反射が抑制されていることがわかる。
【0114】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0115】
実施形態1
ディスプレイ物品用基板であって、
主面と、
前記主面の少なくとも一部に設けられたテクスチャ領域であって、
前記テクスチャ領域の下方に前記基板を通過して延びるように設けられる基準平面に平行な高位平均高度に位置する1つ以上の高位面、
前記高位平均高度よりも低い、前記基準平面に平行な低位平均高度に位置する1つ以上の低位面、及び
前記低位平均高度に位置する前記1つ以上の低位面のそれぞれに配置されて、前記低位平均高度より高く前記高位平均高度より低い、前記基準平面に平行な中位平均高度に位置する1つ以上の中位面を形成する高屈折率材料であって、前記基板又は前記1つ以上の高位面をなす低屈折率材料の屈折率より高い屈折率を有する高屈折率材料
を含むテクスチャ領域と、
を備える基板。
【0116】
実施形態2
前記高屈折率材料の前記中位平均高度は、前記1つ以上の高位面の前記高位平均高度より、100nm~190nmの範囲内の距離だけ低く、
前記1つ以上の低位面の前記低位平均高度は、前記1つ以上の高位面の前記高位平均高度より、220nm~370nmの範囲内の距離だけ低く、
前記高屈折率材料の前記中位平均高度は、前記1つ以上の低位面の前記低位平均高度より、100nm~200nmの範囲内の距離だけ高い、実施形態1に記載の基板。
【0117】
実施形態3
前記基板又は前記低屈折率材料の前記屈折率が、1.4~1.6の範囲内にあり、
前記高屈折率材料の前記屈折率が、1.6~2.3の範囲内にある、実施形態1又は2に記載の基板。
【0118】
実施形態4
前記高屈折率材料が、(i)前記基準平面に平行、且つ(ii)前記高屈折率材料を通過して延びる平面上のエリアであって、前記テクスチャ領域によって範囲を画定されるエリアの22%~49%を占める、実施形態1~3のいずれか1つに記載の基板。
【0119】
実施形態5
前記基板が、ガラス基板又はガラスセラミック基板を含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の基板。
【0120】
実施形態6
ディスプレイ物品用基板であって、
主面と、
前記主面の少なくとも一部に設けられたテクスチャ領域であって、
前記テクスチャ領域の下方に前記基板を通過して延びるように設けられる基準平面に平行な高位平均高度に位置する1つ以上の高位面、
前記高位平均高度よりも低い、前記基準平面に平行な低位平均高度に位置する1つ以上の低位面、
前記主面における周辺部から突出するか、又は該周辺部より凹むように設けられる表面特徴部であって、(i)前記表面特徴部が、前記1つ以上の高位面及び前記1つ以上の低位面のうちのいずれか一方の面をなし、(ii)前記周辺部が、前記1つ以上の高位面及び前記1つ以上の低位面のうちの、前記表面特徴部がなす方とは異なるもう一方の面をなす、表面特徴部、及び
前記低位平均高度に位置する前記1つ以上の低位面に配置された高屈折率材料であって、(i)前記基板又は前記1つ以上の高位面をなす低屈折率材料の屈折率より高い屈折率、及び(ii)前記高位平均高度と前記低位平均高度の間にある、前記基準平面に平行な中位平均高度に位置する1つ以上の中位面を有する高屈折率材料
を含むテクスチャ領域と、
を備える基板。
【0121】
実施形態7
前記表面特徴部は、前記周辺部より凹むように設けられ、
前記高屈折率材料は、各表面特徴部内の、前記表面特徴部がなす前記低位平均高度に位置する前記1つ以上の低位面上に配置される、実施形態6に記載の基板。
【0122】
実施形態8
前記高屈折率材料の前記中位平均高度は、前記1つ以上の高位面の前記高位平均高度より、120nm~190nmの範囲内の距離だけ低い、実施形態6又は7に記載の基板。
【0123】
実施形態9
前記低位平均高度は、前記高位平均高度より、220nm~370nmの範囲内の距離だけ低い、実施形態6~8のいずれか1つに記載の基板。
【0124】
実施形態10
前記高屈折率材料の前記中位平均高度は、前記1つ以上の低位面の前記低位平均高度より、100nm~200nmの範囲内の距離だけ高い、実施形態6~9のいずれか1つに記載の基板。
【0125】
実施形態11
前記基板又は前記低屈折率材料の前記屈折率が、1.4~1.6の範囲内にある、実施形態6~10のいずれか1つに記載の基板。
【0126】
実施形態12
前記高屈折率材料の前記屈折率が、1.6~2.3の範囲内にある、実施形態6~11のいずれか1つに記載の基板。
【0127】
実施形態13
各表面特徴部は、前記基準平面に平行な外周を有しており、
各表面特徴部の前記外周が、円形又は楕円形である、実施形態6~12のいずれか1つに記載の基板。
【0128】
実施形態14
各表面特徴部は、前記基準平面に平行な外周を有しており、
各表面特徴部の前記外周が、5μm~200μmの範囲の最長寸法を有している、実施形態6~12のいずれか1つに記載の基板。
【0129】
実施形態15
前記表面特徴部の配置が、反復配列ではなく、ランダムな分布を反映した配置である、実施形態6~14のいずれか1つに記載の基板。
【0130】
実施形態16
前記表面特徴部は、前記表面特徴部同士の離間距離が最小中心間距離を満たすようなランダムな分布で配置される、実施形態6~14のいずれか1つに記載の基板。
【0131】
実施形態17
前記高屈折率材料が、AlN、SiO、又はSiNを含む、実施形態6~16のいずれか1つに記載の基板。
【0132】
実施形態18
前記高屈折率材料が、(i)前記基準平面に平行、且つ(ii)前記高屈折率材料を通過して延びる平面上のエリアであって、前記テクスチャ領域によって範囲を画定されるエリアの22%~49%を占める、実施形態6~17のいずれか1つに記載の基板。
【0133】
実施形態19
前記基板が、ガラス基板又はガラスセラミック基板を含む、実施形態6~18のいずれか1つに記載の基板。
【0134】
実施形態20
前記テクスチャ領域は、1.2%~2.1%の範囲内の画素パワー偏差を示し、
前記テクスチャ領域は、1.5%~2.5%の範囲内の透過ヘイズを示し、
前記テクスチャ領域は、0.5%~1.75%の範囲内の鏡面反射率を示し、
前記テクスチャ領域は、25%~85%の範囲内の像鮮明度を示す、実施形態6~19のいずれか1つに記載の基板。
【0135】
実施形態21
ディスプレイ物品用基板のテクスチャ領域を形成する方法であって、
各表面特徴部の所定の位置決めに従って、基板の主面に、周辺部から突出する又は該周辺部より凹む表面特徴部を形成することにより、テクスチャ領域を形成するステップであって、
(i)前記テクスチャ領域の1つ以上の高位面が、前記テクスチャ領域の下方に前記基板を通過して延びるように設けられる基準平面に平行な高位平均高度に位置し、
(ii)前記テクスチャ領域の1つ以上の低位面が、前記高位平均高度よりも低い、前記基準平面に平行な低位平均高度に位置し、
(iii)前記表面特徴部が、前記1つ以上の高位面及び前記1つ以上の低位面のうちのいずれか一方の面をなし、
(iv)前記周辺部が、前記1つ以上の高位面及び前記1つ以上の低位面のうちの、前記表面特徴部がなす方とは異なるもう一方の面をなす、表面特徴部を形成するステップと、
前記表面特徴部及び前記周辺部のうち、前記低位平均高度に位置する前記1つ以上の低位面をなす方に、高屈折率材料を堆積させるステップと、を含み、
前記高屈折率材料が、(i)前記基板の屈折率より高い屈折率、及び(ii)前記高位平均高度と前記低位平均高度の間にある、前記基準平面に平行な中位平均高度に位置する1つ以上の中位面を有している、方法。
【0136】
実施形態22
間隔分布アルゴリズムを利用して各表面特徴部の位置決めを定めることにより、各表面特徴部の前記所定の位置決めを確立するステップをさらに含む、実施形態21に記載の方法。
【0137】
実施形態23
前記方法が、(i)前記表面特徴部の前記所定の位置決めに従って前記表面特徴部を形成する箇所におけるエッチングを阻止するエッチングマスク、又は(ii)前記表面特徴部の前記所定の位置決めに従って前記表面特徴部を形成する箇所においてのみエッチングを許容するエッチングマスクを、前記主面上に配置するステップ、をさらに含み、
前記表面特徴部を形成するステップが、前記エッチングマスクを前記基板の前記主面上に配置した状態で、少なくとも前記基板の前記主面をエッチング液に接触させるステップを含む、実施形態22に記載の方法。
【0138】
実施形態24
前記高屈折率材料を堆積させるステップを、前記表面特徴部を形成した後に、前記エッチングマスクを前記主面上に配置した状態で行う、実施形態23に記載の方法。
【0139】
実施形態25
前記高屈折率材料を堆積した後に、エッチングマスクを除去するステップをさらに含む、実施形態24に記載の方法。
【符号の説明】
【0140】
10 ディスプレイ物品
12 基板
14 筐体
16 ディスプレイ
18 主面
20 テクスチャ領域
22 厚さ
24 外部環境
26 高位面
28 高位平均高度
30 基準平面
32 低位面
34 低位平均高度
36 高屈折率材料
38 中位面
40 中位平均高度
42 距離(トレンチ深さ)
44 距離(高屈折率材料の高さ)
46 距離(エアトレンチ深さ)
48 エリア
50 平面
52 表面特徴部
54 周辺部
56 外周
58 最長寸法
60 最小中心間距離
108 オブジェクト
110 エリア
112 最小中心間距離
116 エッチングマスク
118 エッチング液
120 槽
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8
図9
【国際調査報告】