(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-08
(54)【発明の名称】G12D変異を有するRASに対するHLAクラスII拘束性DRB T細胞受容体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20230801BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20230801BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20230801BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20230801BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230801BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20230801BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20230801BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20230801BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20230801BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230801BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20230801BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230801BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230801BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230801BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20230801BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
C12N15/12
C07K14/725 ZNA
C12N15/867 Z
C12N15/86 Z
C12N5/10
C12N5/0783
C12P21/02 C
C12Q1/04
C12N15/62 Z
C07K19/00
A61K35/76
A61K35/17
A61P37/04
A61P35/00
G01N33/68
G01N33/50 P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023502572
(86)(22)【出願日】2021-07-13
(85)【翻訳文提出日】2023-03-10
(86)【国際出願番号】 US2021041375
(87)【国際公開番号】W WO2022015694
(87)【国際公開日】2022-01-20
(32)【優先日】2020-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510002280
【氏名又は名称】アメリカ合衆国
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】レヴィン、ノーム
(72)【発明者】
【氏名】ヨセフ、ラミ
(72)【発明者】
【氏名】カフリ、ガル
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンバーグ、スティーヴン エー.
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4B064
4B065
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA26
2G045CB02
2G045DA13
2G045DA14
2G045DA36
2G045FB02
2G045FB03
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ08
4B063QX01
4B064AG20
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA05
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZB09
4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA42
4H045DA50
4H045EA20
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
12位のグリシンがアスパラギン酸で置換されている変異型ヒトRASアミノ酸配列に対して抗原特異性を有する、単離又は精製されたT細胞受容体(TCR)が開示される。TCRは、HLA-DRヘテロ二量体によって提示されたG12D RASを認識し得る。関連するポリペプチド及びタンパク質、並びに関連する核酸、組み換え発現ベクター、宿主細胞、細胞の集団、及び医薬組成物も提供される。また、哺乳類におけるがんの存在を検出する方法及び哺乳類におけるがんを治療又は予防する方法も開示される。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号1~3の全て、
(b)配列番号4~6の全て、
(c)配列番号1~6の全て、
(d)配列番号11~13の全て、
(e)配列番号14~16の全て、
(f)配列番号11~16の全て、
(g)配列番号21~23の全て、
(h)配列番号24~26の全て、
(i)配列番号21~26の全て、
(j)配列番号31~33の全て、
(k)配列番号34~36の全て、又は
(l)配列番号31~36の全て
のアミノ酸配列を含む、単離又は精製されたT細胞受容体(TCR)であって、
前記TCRが、12位のグリシンがアスパラギン酸で置換されている変異型ヒトRASアミノ酸配列に対して抗原特異性を有し、
前記変異型ヒトRASアミノ酸配列が、変異型ヒトKirstenラット肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログ(KRAS)、変異型ヒトHarveyラット肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログ(HRAS)、又は変異型ヒト神経芽細胞腫ラット肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログ(NRAS)のアミノ酸配列であり、
12位が、それぞれ、野生型ヒトKRAS、野生型ヒトHRAS、又は野生型ヒトNRASのタンパク質を参照することによって定義されるTCR。
【請求項2】
前記変異型ヒトRASアミノ酸配列が、MTEYKLVVVGA
DGVGKSALTIQLI(配列番号88)である、請求項1に記載のTCR。
【請求項3】
MTEYKLVVVGAG
GVGKSALTIQLI(配列番号89)の野生型ヒトRASアミノ酸配列に対して抗原特異性を有しない、請求項1又は2に記載のTCR。
【請求項4】
前記変異型ヒトRASアミノ酸配列が、ヒト白血球抗原(HLA)クラスII分子によって提示される、請求項1~3のいずれか一項に記載のTCR。
【請求項5】
前記HLAクラスII分子が、HLA-DRヘテロ二量体である、請求項4に記載のTCR。
【請求項6】
前記HLAクラスII分子が、HLA-DRα鎖を、HLA-DRB1遺伝子、HLA-DRB3遺伝子、又はHLA-DRB4遺伝子のうちのいずれか1つによってコードされているHLA-DRβ鎖と組み合わせて含む、請求項4に記載のTCR。
【請求項7】
前記HLAクラスII分子が、HLA-DRB1*03:HLA-DRA*01ヘテロ二量体、HLA-DRB1*11:HLA-DRA*01ヘテロ二量体、HLA-DRB3*01:HLA-DRA*01ヘテロ二量体、HLA-DRB3*03:HLA-DRA*01ヘテロ二量体、HLA-DRB4*03:HLA-DRA*01ヘテロ二量体、又はHLA-DRB4*01:HLA-DRA*01ヘテロ二量体である、請求項4に記載のTCR。
【請求項8】
(i)配列番号7、
(ii)配列番号8、
(iii)配列番号9、
(iv)配列番号10、
(v)配列番号17、
(vi)配列番号18、
(vii)配列番号19、
(viii)配列番号20、
(ix)配列番号27、
(x)配列番号28、
(xi)配列番号29、
(xii)配列番号30、
(xiii)配列番号37、
(xiv)配列番号38、
(xv)配列番号39、
(xvi)配列番号40、
(xvii)配列番号7及び8の両方、
(xviii)配列番号9及び10の両方、
(xix)配列番号17及び18の両方、
(xx)配列番号19及び20の両方、
(xxi)配列番号27及び28の両方、
(xxii)配列番号29及び30の両方、
(xxiii)配列番号37及び38の両方、又は
(xxiv)配列番号39及び40の両方
のアミノ酸配列を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のTCR。
【請求項9】
(a)
(i)配列番号49の48位のXが、Thr若しくはCysであり;
(ii)配列番号49の112位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;
(iii)配列番号49の114位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ
(iv)配列番号49の115位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号49のアミノ酸配列を含むα鎖定常領域;
(b)配列番号50の57位のXが、Ser若しくはCysである、配列番号50のアミノ酸配列を含むβ鎖定常領域;又は
(c)(a)及び(b)の両方
を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のTCR。
【請求項10】
(a)
(i)配列番号55の184位のXが、Thr若しくはCysであり;
(ii)配列番号55の248位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;
(iii)配列番号55の250位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ
(iv)配列番号55の251位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号55のアミノ酸配列を含むα鎖;
(b)配列番号56の199位のXが、Ser若しくはCysである、配列番号56のアミノ酸配列を含むβ鎖;
(c)(a)及び(b)の両方;
(d)
(i)配列番号57の165位のXが、Thr若しくはCysであり;
(ii)配列番号57の229位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;
(iii)配列番号57の231位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ
(iv)配列番号57の232位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号57のアミノ酸配列を含むα鎖;
(e)配列番号58の175位のXが、Ser若しくはCysである、配列番号58のアミノ酸配列を含むβ鎖;
(f)(d)及び(e)の両方;
(g)配列番号59;
(h)配列番号60;
(i)配列番号61;
(j)配列番号62;
(k)(g)及び(h)の両方;
(l)(i)及び(j)の両方;
(m)
(i)配列番号63の182位のXが、Thr若しくはCysであり;
(ii)配列番号63の246位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;
(iii)配列番号63の248位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ
(iv)配列番号63の249位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号63のアミノ酸配列を含むα鎖;
(n)配列番号64の197位のXが、Ser若しくはCysである、配列番号64のアミノ酸配列を含むβ鎖;
(o)(m)及び(n)の両方;
(p)
(i)配列番号65の164位のXが、Thr若しくはCysであり;
(ii)配列番号65の228位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;
(iii)配列番号65の230位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ
(iv)配列番号65の231位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号65のアミノ酸配列を含むα鎖;
(q)配列番号66の173位のXが、Ser若しくはCysである、配列番号66のアミノ酸配列を含むβ鎖;
(r)(p)及び(q)の両方;
(s)配列番号67;
(t)配列番号68;
(u)配列番号69;
(v)配列番号70;
(w)(s)及び(t)の両方;
(x)(u)及び(v)の両方;
(y)
(i)配列番号71の187位のXが、Thr若しくはCysであり;
(ii)配列番号71の251位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;
(iii)配列番号71の253位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ
(iv)配列番号71の254位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号71のアミノ酸配列を含むα鎖;
(z)配列番号72の191位のXが、Ser若しくはCysである、配列番号72のアミノ酸配列を含むβ鎖;
(aa)(y)及び(z)の両方;
(bb)
(i)配列番号73の168位のXが、Thr若しくはCysであり;
(ii)配列番号73の232位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;
(iii)配列番号73の234位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ
(iv)配列番号73の235位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号73のアミノ酸配列を含むα鎖;
(cc)配列番号74の173位のXが、Ser若しくはCysである、配列番号74のアミノ酸配列を含むβ鎖;
(dd)(bb)及び(cc)の両方;
(ee)配列番号75;
(ff)配列番号76;
(gg)配列番号77;
(hh)配列番号78;
(ii)(ee)及び(ff)の両方;
(jj)(gg)及び(hh)の両方;
(kk)
(i)配列番号79の175位のXが、Thr若しくはCysであり;
(ii)配列番号79の239位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;
(iii)配列番号79の241位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ
(iv)配列番号79の242位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号79のアミノ酸配列を含むα鎖;
(ll)配列番号80の190位のXが、Ser若しくはCysである、配列番号80のアミノ酸配列を含むβ鎖;
(mm)(kk)及び(ll)の両方;
(nn)
(i)配列番号81の159位のXが、Thr若しくはCysであり;
(ii)配列番号81の223位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;
(iii)配列番号81の225位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ
(iv)配列番号81の226位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号81のアミノ酸配列を含むα鎖;
(oo)配列番号82の172位のXが、Ser若しくはCysである、配列番号82のアミノ酸配列を含むβ鎖;
(pp)(nn)及び(oo)の両方;
(qq)配列番号83;
(rr)配列番号84;
(ss)配列番号85;
(tt)配列番号86;
(uu)(qq)及び(rr)の両方;又は
(vv)(ss)及び(tt)の両方
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の単離又は精製されたTCR。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のTCRの機能的部分を含む、単離又は精製されたポリペプチドであって、前記機能的部分が、
(a)配列番号1~3の全て、
(b)配列番号4~6の全て、
(c)配列番号1~6の全て、
(d)配列番号11~13の全て、
(e)配列番号14~16の全て、
(f)配列番号11~16の全て、
(g)配列番号21~23の全て、
(h)配列番号24~26の全て、
(i)配列番号21~26の全て、
(j)配列番号31~33の全て、
(k)配列番号34~36の全て、又は
(l)配列番号31~36の全て
のアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【請求項12】
前記機能的部分が、
(i)配列番号7、
(ii)配列番号8、
(iii)配列番号9、
(iv)配列番号10、
(v)配列番号17、
(vi)配列番号18、
(vii)配列番号19、
(viii)配列番号20、
(ix)配列番号27、
(x)配列番号28、
(xi)配列番号29、
(xii)配列番号30、
(xiii)配列番号37、
(xiv)配列番号38、
(xv)配列番号39、
(xvi)配列番号40、
(xvii)配列番号7及び8の両方、
(xviii)配列番号9及び10の両方、
(xix)配列番号17及び18の両方、
(xx)配列番号19及び20の両方、
(xxi)配列番号27及び28の両方、
(xxii)配列番号29及び30の両方、
(xxiii)配列番号37及び38の両方、又は
(xxiv)配列番号39及び40の両方
のアミノ酸配列(複数可)を含む、請求項11に記載の単離又は精製されたポリペプチド。
【請求項13】
(a)
(i)配列番号49の48位のXが、Thr若しくはCysであり;
(ii)配列番号49の112位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;
(iii)配列番号49の114位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ
(iv)配列番号49の115位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号49のアミノ酸配列;
(b)配列番号50の57位のXが、Ser若しくはCysである、配列番号50のアミノ酸配列;又は
(c)(a)及び(b)の両方
を更に含む、請求項11又は12に記載の単離又は精製されたポリペプチド。
【請求項14】
(a)
(i)配列番号55の184位のXが、Thr若しくはCysであり;
(ii)配列番号55の248位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;
(iii)配列番号55の250位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ
(iv)配列番号55の251位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号55のアミノ酸配列を含むα鎖;
(b)配列番号56の199位のXが、Ser若しくはCysである、配列番号56のアミノ酸配列を含むβ鎖;
(c)(a)及び(b)の両方;
(d)
(i)配列番号57の165位のXが、Thr若しくはCysであり;
(ii)配列番号57の229位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;
(iii)配列番号57の231位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ
(iv)配列番号57の232位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号57のアミノ酸配列を含むα鎖;
(e)配列番号58の175位のXが、Ser若しくはCysである、配列番号58のアミノ酸配列を含むβ鎖;
(f)(d)及び(e)の両方;
(g)配列番号59;
(h)配列番号60;
(i)配列番号61;
(j)配列番号62;
(k)(g)及び(h)の両方;
(l)(i)及び(j)の両方;
(m)
(i)配列番号63の182位のXが、Thr若しくはCysであり;
(ii)配列番号63の246位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;
(iii)配列番号63の248位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ
(iv)配列番号63の249位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号63のアミノ酸配列を含むα鎖;
(n)配列番号64の197位のXが、Ser若しくはCysである、配列番号64のアミノ酸配列を含むβ鎖;
(o)(m)及び(n)の両方;
(p)
(i)配列番号65の164位のXが、Thr若しくはCysであり;
(ii)配列番号65の228位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;
(iii)配列番号65の230位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ
(iv)配列番号65の231位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号65のアミノ酸配列を含むα鎖;
(q)配列番号66の173位のXが、Ser若しくはCysである、配列番号66のアミノ酸配列を含むβ鎖;
(r)(p)及び(q)の両方;
(s)配列番号67;
(t)配列番号68;
(u)配列番号69;
(v)配列番号70;
(w)(s)及び(t)の両方;
(x)(u)及び(v)の両方;
(y)
(i)配列番号71の187位のXが、Thr若しくはCysであり;
(ii)配列番号71の251位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;
(iii)配列番号71の253位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ
(iv)配列番号71の254位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号71のアミノ酸配列を含むα鎖;
(z)配列番号72の191位のXが、Ser若しくはCysである、配列番号72のアミノ酸配列を含むβ鎖;
(aa)(y)及び(z)の両方;
(bb)
(i)配列番号73の168位のXが、Thr若しくはCysであり;
(ii)配列番号73の232位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;
(iii)配列番号73の234位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ
(iv)配列番号73の235位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号73のアミノ酸配列を含むα鎖;
(cc)配列番号74の173位のXが、Ser若しくはCysである、配列番号74のアミノ酸配列を含むβ鎖;
(dd)(bb)及び(cc)の両方;
(ee)配列番号75;
(ff)配列番号76;
(gg)配列番号77;
(hh)配列番号78;
(ii)(ee)及び(ff)の両方;
(jj)(gg)及び(hh)の両方;
(kk)
(i)配列番号79の175位のXが、Thr若しくはCysであり;
(ii)配列番号79の239位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;
(iii)配列番号79の241位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ
(iv)配列番号79の242位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号79のアミノ酸配列を含むα鎖;
(ll)配列番号80の190位のXが、Ser若しくはCysである、配列番号80のアミノ酸配列を含むβ鎖;
(mm)(kk)及び(ll)の両方;
(nn)
(i)配列番号81の159位のXが、Thr若しくはCysであり;
(ii)配列番号81の223位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;
(iii)配列番号81の225位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ
(iv)配列番号81の226位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号81のアミノ酸配列を含むα鎖;
(oo)配列番号82の172位のXが、Ser若しくはCysである、配列番号82のアミノ酸配列を含むβ鎖;
(pp)(nn)及び(oo)の両方;
(qq)配列番号83;
(rr)配列番号84;
(ss)配列番号85;
(tt)配列番号86;
(uu)(qq)及び(rr)の両方;又は
(vv)(ss)及び(tt)の両方
を含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の単離又は精製されたポリペプチド。
【請求項15】
(a)配列番号1~3のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号4~6のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;
(b)配列番号11~13のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号14~16のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖
(c)配列番号21~23のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号24~26のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;又は
(d)配列番号31~33のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号34~36のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;
を含む、単離又は精製されたタンパク質。
【請求項16】
(i)第1のポリペプチド鎖が、配列番号7のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が、配列番号8のアミノ酸配列を含む;
(ii)第1のポリペプチド鎖が、配列番号9のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が、配列番号10のアミノ酸配列を含む;
(iii)第1のポリペプチド鎖が、配列番号17のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が、配列番号18のアミノ酸配列を含む;
(iv)第1のポリペプチド鎖が、配列番号19のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が、配列番号20のアミノ酸配列を含む;
(v)第1のポリペプチド鎖が、配列番号27のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が、配列番号28のアミノ酸配列を含む;
(vi)第1のポリペプチド鎖が、配列番号29のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が、配列番号30のアミノ酸配列を含む;
(vii)第1のポリペプチド鎖が、配列番号37のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が、配列番号38のアミノ酸配列を含む;又は
(viii)第1のポリペプチド鎖が、配列番号39のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖が、配列番号40のアミノ酸配列を含む
請求項15に記載の単離又は精製されたタンパク質。
【請求項17】
(a)第1のポリペプチド鎖が、
(i)配列番号49の48位のXが、Thr若しくはCysであり;
(ii)配列番号49の112位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;
(iii)配列番号49の114位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ
(iv)配列番号49の115位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号49のアミノ酸配列を更に含む;
(b)第2のポリペプチド鎖が、配列番号50の57位のXがSer若しくはCysである、配列番号50のアミノ酸配列を更に含む;又は
(c)(a)及び(b)の両方である、請求項15又は16に記載の単離又は精製されたタンパク質。
【請求項18】
(a)第1のポリペプチド鎖が、
(i)配列番号55の184位のXが、Thr若しくはCysであり;
(ii)配列番号55の248位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;
(iii)配列番号55の250位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ
(iv)配列番号55の251位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号55のアミノ酸配列を含む;
(b)第2のポリペプチド鎖が、配列番号56の199位のXがSer若しくはCysである配列番号56のアミノ酸配列を含む;
(c)(a)及び(b)の両方である;
(d)第1のポリペプチド鎖が、
(i)配列番号57の165位のXが、Thr若しくはCysであり;
(ii)配列番号57の229位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;
(iii)配列番号57の231位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ
(iv)配列番号57の232位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号57のアミノ酸配列を含む;
(e)第2のポリペプチド鎖が、配列番号58の175位のXがSer若しくはCysである配列番号58のアミノ酸配列を含む;
(f)(d)及び(e)の両方である;
(g)第1のポリペプチド鎖が、配列番号59のアミノ酸配列を含む;
(h)第2のポリペプチド鎖が、配列番号60のアミノ酸配列を含む;
(i)第1のポリペプチド鎖が、配列番号61のアミノ酸配列を含む;
(j)第2のポリペプチド鎖が、配列番号62のアミノ酸配列を含む;
(k)(g)及び(h)の両方である;
(l)(i)及び(j)の両方である;
(m)第1のポリペプチド鎖が、
(i)配列番号63の182位のXが、Thr若しくはCysであり;
(ii)配列番号63の246位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;
(iii)配列番号63の248位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ
(iv)配列番号63の249位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号63のアミノ酸配列を含む;
(n)第2のポリペプチド鎖が、配列番号64の197位のXがSer若しくはCysである配列番号64のアミノ酸配列を含む;
(o)(m)及び(n)の両方である;
(p)第1のポリペプチド鎖が、
(i)配列番号65の164位のXが、Thr若しくはCysであり;
(ii)配列番号65の228位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;
(iii)配列番号65の230位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ
(iv)配列番号65の231位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号65のアミノ酸配列を含む;
(q)第2のポリペプチド鎖が、配列番号66の173位のXがSer若しくはCysである配列番号66のアミノ酸配列を含む;
(r)(p)及び(q)の両方である;
(s)第1のポリペプチド鎖が、配列番号67のアミノ酸配列を含む;
(t)第2のポリペプチド鎖が、配列番号68のアミノ酸配列を含む;
(u)第1のポリペプチド鎖が、配列番号69のアミノ酸配列を含む;
(v)第2のポリペプチド鎖が、配列番号70のアミノ酸配列を含む;
(w)(s)及び(t)の両方;
(x)(u)及び(v)の両方;
(y)第1のポリペプチド鎖が、
(i)配列番号71の187位のXが、Thr若しくはCysであり;
(ii)配列番号71の251位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;
(iii)配列番号71の253位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ
(iv)配列番号71の254位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号71のアミノ酸配列を含む;
(z)第2のポリペプチド鎖が、配列番号72の191位のXがSer若しくはCysである配列番号72のアミノ酸配列を含む;
(aa)(y)及び(z)の両方である;
(bb)第1のポリペプチド鎖が、
(i)配列番号73の168位のXが、Thr若しくはCysであり;
(ii)配列番号73の232位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;
(iii)配列番号73の234位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ
(iv)配列番号73の235位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号73のアミノ酸配列を含む;
(cc)第2のポリペプチド鎖が、配列番号74の173位のXがSer若しくはCysである配列番号74のアミノ酸配列を含む;
(dd)(bb)及び(cc)の両方である;
(ee)第1のポリペプチド鎖が、配列番号75のアミノ酸配列を含む;
(ff)第2のポリペプチド鎖が、配列番号76のアミノ酸配列を含む;
(gg)第1のポリペプチド鎖が、配列番号77のアミノ酸配列を含む;
(hh)第2のポリペプチド鎖が、配列番号78のアミノ酸配列を含む;
(ii)(ee)及び(ff)の両方である;
(jj)(gg)及び(hh)の両方である;
(kk)第1のポリペプチド鎖が、
(i)配列番号79の175位のXが、Thr若しくはCysであり;
(ii)配列番号79の239位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;
(iii)配列番号79の241位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ
(iv)配列番号79の242位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号79のアミノ酸配列を含む;
(ll)第2のポリペプチド鎖が、配列番号80の190位のXがSer若しくはCysである配列番号80のアミノ酸配列を含む;
(mm)(kk)及び(ll)の両方である;
(nn)第1のポリペプチド鎖が、
(i)配列番号81の159位のXが、Thr若しくはCysであり;
(ii)配列番号81の223位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;
(iii)配列番号81の225位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ
(iv)配列番号81の226位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号81のアミノ酸配列を含む;
(oo)第2のポリペプチド鎖が、配列番号82の172位のXがSer若しくはCysである配列番号82のアミノ酸配列を含む;
(pp)(nn)及び(oo)の両方である;
(qq)第1のポリペプチド鎖が、配列番号83のアミノ酸配列を含む;
(rr)第2のポリペプチド鎖が、配列番号84のアミノ酸配列を含む;
(ss)第1のポリペプチド鎖が、配列番号85のアミノ酸配列を含む;
(tt)第2のポリペプチド鎖が、配列番号86のアミノ酸配列を含む;
(uu)(qq)及び(rr)の両方である;又は
(vv)(ss)及び(tt)の両方である、請求項15~17のいずれか一項に記載の単離又は精製されたタンパク質。
【請求項19】
請求項1~10のいずれか一項に記載のTCR、請求項11~14のいずれか一項に記載のポリペプチド、又は請求項15~18のいずれか一項に記載のタンパク質をコードしているヌクレオチド配列を含む、単離又は精製された核酸。
【請求項20】
5’から3’に向かって、第1の核酸配列及び第2のヌクレオチド配列を含む、単離又は精製された核酸であって、前記第1及び第2のヌクレオチド配列が、それぞれ、配列番号7及び8;8及び7;9及び10;10及び9;17及び18;18及び17;19及び20;20及び19;27及び28;28及び27;29及び30;30及び29;37及び38;38及び37;39及び40;40及び39;55及び56;56及び55;57及び58;58及び57;59及び60;60及び59;61及び62;62及び61;63及び64;64及び63;65及び66;66及び65;67及び68;68及び67;69及び70;70及び69;71及び72;72及び71;73及び74;74及び73;75及び76;76及び75;77及び78;78及び77;79及び80;80及び79;81及び82;82及び81;83及び84;84及び83;85及び86;又は86及び85のアミノ配列をコードしている核酸。
【請求項21】
第1のヌクレオチド配列と第2のヌクレオチド配列との間に介在する第3のヌクレオチド配列を更に含み、前記第3のヌクレオチド配列が、切断可能なリンカーペプチドをコードしている、請求項20に記載の単離又は精製された核酸。
【請求項22】
前記切断可能なリンカーペプチドが、RAKRSGSGATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号87)のアミノ酸配列を含む、請求項21に記載の単離又は精製された核酸。
【請求項23】
請求項19~22のいずれか一項に記載の核酸を含む、組み換え発現ベクター。
【請求項24】
トランスポゾン又はレンチウイルスベクターである、請求項23に記載の組換え発現ベクター。
【請求項25】
請求項19~22のいずれか一項に記載の核酸又は請求項23若しくは24に記載のベクターによってコードされている、単離又は精製されたTCR、ポリペプチド、又はタンパク質。
【請求項26】
請求項19~22のいずれか一項に記載の核酸又は請求項23若しくは24に記載のベクターが細胞内で発現した結果得られる、単離又は精製されたTCR、ポリペプチド、又はタンパク質。
【請求項27】
MTEYKLVVVGA
DGVGKSALTIQLI(配列番号88)のペプチドに対して抗原特異性を有するTCRを発現する宿主細胞を生成する方法であって、請求項23又は24に記載のベクターの細胞への導入を可能にする条件下で前記細胞を前記ベクターと接触させることを含む方法。
【請求項28】
請求項19~22のいずれか一項に記載の核酸又は請求項23若しくは24に記載の組換え発現ベクターを含む、単離又は精製された宿主細胞。
【請求項29】
前記細胞が、ヒトリンパ球である、請求項28記載の宿主細胞。
【請求項30】
T細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、インバリアントナチュラルキラーT(iNKT)細胞、及びナチュラルキラー(NK)細胞からなる群から選択される、請求項28又は29に記載の宿主細胞。
【請求項31】
請求項28~30のいずれか一項に記載の宿主細胞を含む、単離又は精製された細胞の集団。
【請求項32】
請求項1~10、25、若しくは26のいずれか一項に記載のTCR、請求項11~14、25、若しくは26のいずれか一項に記載のポリペプチド、又は請求項15~18、25、若しくは26のいずれか一項に記載のタンパク質を生成する方法であって、前記TCR、ポリペプチド、又はタンパク質が生成されるように、請求項28~30のいずれか一項に記載の宿主細胞又は請求項31に記載の宿主細胞の集団を培養することを含む方法。
【請求項33】
(a)請求項1~10、25、若しくは26のいずれか一項に記載のTCR、請求項11~14、25、若しくは26のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項15~18、25、若しくは26のいずれか一項に記載のタンパク質、請求項19~22のいずれか一項に記載の核酸、請求項23若しくは24に記載の組み換え発現ベクター、請求項28~30のいずれか一項に記載の宿主細胞、又は請求項31に記載の細胞の集団と、(b)薬学的に許容し得る担体と、を含む医薬組成物。
【請求項34】
哺乳類におけるがんの存在を検出する方法であって、
(a)前記がんの細胞を含むサンプルを、請求項1~10、25、若しくは26のいずれか一項に記載のTCR、請求項11~14、25、若しくは26のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項15~18、25、若しくは26のいずれか一項に記載のタンパク質、請求項19~22のいずれか一項に記載の核酸、請求項23若しくは24に記載の組み換え発現ベクター、請求項28~30のいずれか一項に記載の宿主細胞、請求項31に記載の細胞の集団、又は請求項33に記載の医薬組成物と接触させ、それによって、複合体を形成させることと;
(b)前記複合体を検出することと、
を含み、
前記複合体の検出が、前記哺乳類におけるがんの存在を示す方法。
【請求項35】
哺乳類におけるがんに対する免疫応答の誘導において使用するための、請求項1~10、25、若しくは26のいずれか一項に記載のTCR、請求項11~14、25、若しくは26のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項15~18、25、若しくは26のいずれか一項に記載のタンパク質、請求項19~22のいずれか一項に記載の核酸、請求項23若しくは24に記載の組み換え発現ベクター、請求項28~30のいずれか一項に記載の宿主細胞、請求項31に記載の細胞の集団、又は請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項36】
哺乳類におけるがんの治療又は予防において使用するための、請求項1~10、25、若しくは26のいずれか一項に記載のTCR、請求項11~14、25、若しくは26のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項15~18、25、若しくは26のいずれか一項に記載のタンパク質、請求項19~22のいずれか一項に記載の核酸、請求項23若しくは24に記載の組み換え発現ベクター、請求項28~30のいずれか一項に記載の宿主細胞、請求項31に記載の細胞の集団、又は請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項37】
前記がんが、12位のグリシンがアスパラギン酸で置換されている変異型ヒトRASアミノ酸配列を発現し、
前記変異型ヒトRASアミノ酸配列が、変異型ヒトKirstenラット肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログ(KRAS)、変異型ヒトHarveyラット肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログ(HRAS)、又は変異型ヒト神経芽細胞腫ラット肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログ(NRAS)のアミノ酸配列であり、
12位が、それぞれ、野生型ヒトKRAS、野生型ヒトHRAS、又は野生型ヒトNRASのタンパク質を参照することによって定義される、請求項34に記載の方法、又は請求項35若しくは36に記載の使用のためのTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞の集団、若しくは医薬組成物。
【請求項38】
前記変異型ヒトRASアミノ酸配列が、変異型ヒトKirstenラット肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログ(KRAS)アミノ酸配列である、請求項37に記載の方法、又は請求項37に従って使用するためのTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組み換え発現ベクター、宿主細胞、細胞の集団、若しくは医薬組成物。
【請求項39】
前記変異型ヒトRASアミノ酸配列が、変異型ヒト神経芽細胞腫ラット肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログ(NRAS)アミノ酸配列である、請求項37に記載の方法、又は請求項37に従って使用するためのTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組み換え発現ベクター、宿主細胞、細胞の集団、若しくは医薬組成物。
【請求項40】
前記変異型ヒトRASアミノ酸配列が、変異型ヒトHarveyラット肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログ(HRAS)アミノ酸配列である、請求項37に記載の方法、又は請求項37に従って使用するためのTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組み換え発現ベクター、宿主細胞、細胞の集団、若しくは医薬組成物。
【請求項41】
前記がんが、膵臓、結腸直腸、肺、子宮内膜、卵巣、又は前立腺のがんである、請求項34及び37~40のいずれか一項に記載の方法、又は請求項35~40のいずれか一項に従って使用するためのTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組み換え発現ベクター、宿主細胞、細胞の集団、若しくは医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、2020年7月13日出願の米国仮特許出願第63/050,931号の利益を主張する。
【0002】
連邦支援の研究又は開発に関する記述
本発明は、米国国立衛生研究所、国立がん研究所によって、プロジェクト番号ZIABC010984の下、政府の支援を受けて成された。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
電子的に提出された文献の参照による援用
本明細書と同時に提出され、以下の通り特定されるコンピュータ可読ヌクレオチド/アミノ酸配列表は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる:2021年7月13日付の「754395_ST25.txt」という名称の160,788バイトのASCII(テキスト)ファイル。
【背景技術】
【0004】
幾つかのがんは、特に該がんが転移性かつ切除不能になったとき、非常に限られた治療法の選択肢しか有しない場合がある。例えば、外科手術、化学療法、及び放射線療法等の治療法の進歩にもかかわらず、多くのがん、例えば、膵臓、結腸直腸、肺、子宮内膜、卵巣、及び前立腺のがんの予後は不良である場合がある。従って、がんの更なる治療法に対するアンメットニーズが存在する。
【発明の概要】
【0005】
本発明の実施形態は、(a)配列番号1~3の全て、(b)配列番号4~6の全て、(c)配列番号1~6の全て、(d)配列番号11~13の全て、(e)配列番号14~16の全て、(f)配列番号11~16の全て、(g)配列番号21~23の全て、(h)配列番号24~26の全て、(i)配列番号21~26の全て、(j)配列番号31~33の全て、(k)配列34~36の全て、又は(l)配列31~36の全てのアミノ酸配列を含む単離又は精製されたT細胞受容体(TCR)であって、該TCRが、12位のグリシンがアスパラギン酸で置換されている変異型ヒトRASアミノ酸配列に対して抗原特異性を有し、該変異型ヒトRASアミノ酸配列が、変異型ヒトKirstenラット肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログ(KRAS)、変異型ヒトHarveyラット肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログ(HRAS)、又は変異型ヒト神経芽細胞腫ラット肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログ(NRAS)のアミノ酸配列であり、12位が、それぞれ、野生型ヒトKRAS、野生型ヒトHRAS、又は野生型ヒトNRASのタンパク質を参照することによって定義されるTCRを提供する。
【0006】
本発明の別の実施形態は、本発明のTCRの機能的部分を含む単離又は精製されたポリペプチドであって、該機能的部分が、(a)配列番号1~3の全て、(b)配列番号4~6の全て、(c)配列番号1~6の全て、(d)配列番号11~13の全て、(e)配列番号14~16の全て、(f)配列番号11~16の全て、(g)配列番号21~23の全て、(h)配列番号24~26の全て、(i)配列番号21~26の全て、(j)配列番号31~33の全て、(k)配列34~36の全て、又は(l)配列31~36の全てのアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する。
【0007】
本発明の更に別の実施形態は、(a)配列番号1~3のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号4~6のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(b)配列番号11~13のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号14~16のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(c)配列番号21~23のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号24~26のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;又は(d)配列番号31~33のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号34~36のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖を含む、単離又は精製されたタンパク質を提供する。
【0008】
本発明の実施形態は、更に、本発明のTCR、ポリペプチド、及びタンパク質に関連する核酸、組み換え発現ベクター、宿主細胞、細胞の集団、及び医薬組成物を提供する。
【0009】
本発明の実施形態は、5’から3’に向かって、第1の核酸配列及び第2のヌクレオチド配列を含む、単離又は精製された核酸であって、該第1及び第2のヌクレオチド配列が、それぞれ、配列番号7及び8;8及び7;9及び10;10及び9;17及び18;18及び17;19及び20;20及び19;27及び28;28及び27;29及び30;30及び29;37及び38;38及び37;39及び40;40及び39;55及び56;56及び55;57及び58;58及び57;59及び60;60及び59;61及び62;62及び61;63及び64;64及び63;65及び66;66及び65;67及び68;68及び67;69及び70;70及び69;71及び72;72及び71;73及び74;74及び73;75及び76;76及び75;77及び78;78及び77;79及び80;80及び79;81及び82;82及び81;83及び84;84及び83;85及び86;又は86及び85のアミノ配列をコードしている核酸を提供する。
【0010】
哺乳類におけるがんの存在を検出する方法、哺乳類におけるがんを治療又は予防する方法、哺乳類においてがんに対する免疫応答を誘導する方法、MTEYKLVVVGADGVGKSALTIQLI(配列番号88)のペプチドに対して抗原特異性を有するTCRを発現する宿主細胞を生成する方法、並びに本発明のTCR、ポリペプチド、及びタンパク質を生成する方法が、本発明の実施形態によって更に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A-1B】
図1A~1Bは、G12D 24-merペプチド(G12D LP)をパルスしたDCでインビトロ刺激(IVS)した後の結腸直腸がん患者4271由来のPBLの反応性の結果を示す。G12D 24-merペプチド(星形)又は対応するWT 24-merペプチド(菱形)をパルスしたDCと共培養することによって、これら細胞を試験した。DMSOで処理したDCとの共培養(四角)及びDC単独との共培養(▲)を、ネガティブコントロールとした。PMAの存在下で培養したPBL(▼)を、ポジティブコントロールとした。
図1Aは、IFN-γ ELISPOTアッセイによって測定したときの反応性を示すグラフである(スポット/2.5e4細胞)。
図1Bは、フローサイトメトリーアッセイ(FACS)において検出された4-1BB
+及び/又はOX40
+細胞の割合によって測定したときの反応性を示すグラフである。
【
図1C】
図1Cは、G12D 24merペプチド又は対応するWT 24merペプチドをパルスした自己DCと共培養することによって試験した、G12D 24merペプチドをパルスしたDCで結腸直腸がん患者4271由来のPBLをIVSした後の4-1BB及び/又はOX40の発現についてのFACS分析の結果を示す。矢印は、G12D 24-merペプチドでIVSし、G12D 24-merで再刺激した後に4-1BB及び/又はOX40の発現がアップレギュレートされた細胞が、TCR配列を決定するための単一細胞ポリメラーゼ連鎖反応(scPCR)を受けたことを示す。
【
図2A-2D】
図2A~2Dは、エフェクター細胞を標的細胞と共培養した後に測定した4-1BB
+及び/又はOX40
+細胞の割合を示すグラフである。エフェクター細胞は、独立して4271 TCR1(2A)、4271 TCR2(2B)、4271 TCR3(2C)、又は4271 TCR4(2D)で形質導入された自己PBLであった。標的細胞は、指定濃度(ng/mL)のG12D 24-merペプチド(星形)又は対応するWT 24-merペプチド(円形)をパルスした自己DCであった。
【
図3A】
図3Aは、標的細胞をエフェクター細胞と共培養した後に測定したIFN-γ ELISPOTアッセイ(スポット数/3e4細胞)によって測定したときの反応性を示すグラフである。エフェクター細胞は、独立して4271 TCR1、4271 TCR2、4271 TCR3、又は4271 TCR4で形質導入されたT細胞であった。エフェクター細胞は、抗HLA DP(四角)、抗HLA DQ(▲)、若しくは抗HLA DR(星形)のブロッキング抗体で、又は抗体なしで(円形)MHCブロッキングした後にG12D 24-merペプチドをパルスした自己のDCと共培養した。DMSO処理したDCと共培養したエフェクター導入細胞(菱形)をネガティブコントロールとした。抗CD3/抗CD28 Dynabeadsの存在下で培養したエフェクター細胞(▼)をポジティブコントロールとした。
【
図3B】
図3Bは、標的細胞をエフェクター細胞と共培養した後に測定したCD3
+/CD4
+集団における4-1BB
+及び/又はOX40
+細胞の割合を示すグラフである。エフェクター細胞は、独立して4271 TCR1、4271 TCR2、4271 TCR3、又は4271 TCR4で形質導入されたT細胞であった。エフェクター細胞は、抗HLA DP(四角)、抗HLA DQ(▲)、若しくは抗HLA DR(星形)のブロッキング抗体で、又はブロッキング抗体なしで(円形)MHCブロッキングした後にG12D 24-merペプチドをパルスした自己のDCと共培養した。DMSO処理したDC(菱形)と共培養したエフェクター細胞をネガティブコントロールとした。抗CD3/抗CD28 Dynabeadsの存在下で培養したエフェクター細胞(▼)をポジティブコントロールとした。
【発明を実施するための形態】
【0012】
RASファミリーのタンパク質は、低分子GTPaseの大きなファミリーに属する。特定の理論又は機序に縛られるものではないが、変異したとき、RASタンパク質は、多くのヒトのがんの発がん初期におけるシグナル伝達に関与する可能性があると考えられる。単一のアミノ酸置換によって、タンパク質が活性化され得る。変異型RASタンパク質産物は、構成的に活性化され得る。変異型RASタンパク質は、例えば、膵臓がん(例えば、膵がん)、結腸直腸がん、肺がん(例えば、肺腺がん)、子宮内膜がん、卵巣がん(例えば、上皮性卵巣がん)、及び前立腺がん等の様々なヒトのがんのいずれかで発現し得る。ヒトRASファミリーのタンパク質としては、KRAS、HRAS、及びNRASが挙げられる。
【0013】
KRASは、GTPase KRas、V-Ki-Ras2 Kirstenラット肉腫ウイルスがん遺伝子、又はKRAS2とも称される。KRASには、KRASバリアントA及びKRASバリアントBの2つの転写物バリアントが存在する。野生型(WT)KRASバリアントAは、配列番号41のアミノ酸配列を有する。WT KRASバリアントBは、配列番号42のアミノ酸配列を有する。以後、「KRAS」(変異型又は非変異型(WT))に対する言及は、特に規定のない限り、バリアントA及びバリアントBの両方を指す。活性化されたとき、変異型KRASは、グアノシン-5’-三リン酸(GTP)に結合し、そして、GTPをグアノシン5’-二リン酸(GDP)に変換する。
【0014】
HRASは、RASタンパク質ファミリーの別のメンバーである。HRASは、Harveyラット肉腫ウイルスがんタンパク質、V-Ha-Ras Harveyラット肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログ、又はRasファミリー低分子GTP結合タンパク質H-Rasとも称される。WT HRASは、配列番号43のアミノ酸配列を有する。
【0015】
NRASは、RASタンパク質ファミリーの更に別のメンバーである。NRASは、GTPase NRas、V-Ras神経芽細胞腫RASウイルスがん遺伝子ホモログ、又はNRAS1とも称される。WT NRASは、配列番号44のアミノ酸配列を有する。
【0016】
本発明の実施形態は、12位のグリシンがアスパラギン酸で置換されている変異型ヒトRASのアミノ酸配列に対して抗原特異性を有する、単離又は精製されたTCRであって、該変異型ヒトRASのアミノ酸配列が、変異型ヒトKRAS、変異型ヒトHRAS、又は変異型ヒトNRASのアミノ酸配列であり、12位が、それぞれ、WTヒトKRAS、WTヒトHRAS、又はWTヒトNRASのタンパク質を参照することによって定義されるTCRを提供する。以後、「TCR」に対する言及は、特に規定のない限り、TCRの機能的部分及び機能的バリアントも指す。
【0017】
変異型ヒトRASアミノ酸配列は、変異型ヒトKRASアミノ酸配列、変異型ヒトHRASアミノ酸配列、又は変異型ヒトNRASアミノ酸配列であり得る。WTヒトのKRAS、NRAS、及びHRASのタンパク質のアミノ酸配列は、それぞれ、188~189アミノ酸残基長を有し、互いに対して高度の同一性を有する。例えば、WTヒトNRASタンパク質のアミノ酸配列は、WTヒトKRASタンパク質のアミノ酸配列と86.8%同一である。WTヒトNRASタンパク質及びWTヒトKRASタンパク質のアミノ酸残基1~86は、100%同一である。WTヒトHRASタンパク質のアミノ酸配列は、WTヒトKRASタンパク質のアミノ酸配列と86.3%同一である。WTヒトHRASタンパク質及びWTヒトKRASタンパク質のアミノ酸残基1~94は、100%同一である。以後、「RAS」(変異型又は非変異型(WT))に対する言及は、特に規定のない限り、まとめてKRAS、HRAS、及びNRASを指す。
【0018】
本発明の実施形態では、変異型ヒトRASアミノ酸配列は、12位のグリシンがアスパラギン酸で置換されているヒトRASアミノ酸配列を含み、12位は、対応するWT RASタンパク質を参照して定義される。WT RASタンパク質は、WT KRASタンパク質(配列番号41又は42)、WT HRASタンパク質(配列番号43)、又はWT NRASタンパク質(配列番号44)のいずれか1つであってよいが、その理由は、上に説明した通り、WTヒトNRASタンパク質及びWTヒトKRASタンパク質のアミノ酸残基1~86が100%同一であり、WTヒトHRASタンパク質及びWTヒトKRASタンパク質のアミノ酸残基1~94も100%同一であるためである。従って、WT KRAS、WT HRAS、及びWT NRASのタンパク質のそれぞれの12位におけるアミノ酸残基は同じである、すなわち、グリシンである。
【0019】
変異型ヒトRASアミノ酸配列は、12位のグリシンのアスパラギン酸による置換を有する。これに関して、本発明の実施形態は、G12D変異を有する任意のヒトRASのタンパク質、ポリペプチド、又はペプチドのアミノ酸配列に対して抗原特異性を有するTCRを提供する。
【0020】
RASの変異及び置換は、本明細書では、対応するWT RASタンパク質のアミノ酸配列を参照して定義される。従って、RASの変異及び置換は、本明細書では、WT RASタンパク質の特定の位置に存在するアミノ酸残基(すなわち、12位)、続いて、位置番号、続いて、検討中の特定の変異又は置換においてその残基に置き換わったアミノ酸残基を参照して記載される。RASアミノ酸配列(例えば、RASペプチド)は、完全長のWT RASタンパク質の全アミノ酸残基よりも少ないアミノ酸残基を含む場合がある。従って、RASアミノ酸配列の特定の例では対応する残基の実際の位置が異なる場合もあるという理解の下、本明細書では、12位は、WT完全長RASタンパク質(すなわち、配列番号41~44のいずれか1つ)を参照して定義される。位置が配列番号41~44のいずれか1つによって定義される通りである場合、用語「G12」とは、配列番号41~44のいずれか1つの12位には通常グリシンが存在することを指し、「G12D」は、配列番号41~44のいずれか1つの12位に通常存在するグリシンがアスパラギン酸に置き換わっていることを示す。例えば、RASアミノ酸配列の特定の例が、例えばTEYKLVVVGAGGVGKSALTIQLI(配列番号90)(配列番号41の連続アミノ酸残基2~24に対応する例示的なWT KRASペプチド)である場合、「G12V」とは、たとえ配列番号90における下線付きグリシンの実際の位置が11であったとしても、配列番号90における下線付きグリシンのアスパラギン酸による置換を指す。以下、G12D変異を有するヒトRASアミノ酸配列を「G12D RAS」と称する。
【0021】
G12D変異を有する完全長RASタンパク質の例を、以下の表1に記載する。
【0022】
【0023】
本発明の実施形態では、TCRは、上記G12D変異を有するRASペプチドに対して抗原特異性を有し、該G12D RASペプチドは、任意の長さを有する。本発明の実施形態では、G12D RASペプチドは、本明細書に記載のHLAクラスII分子のいずれかに結合するのに好適な任意の長さを有する。例えば、TCRは、G12D変異を有するRASペプチドであって、約11~約30アミノ酸残基、約12~約24アミノ酸残基、又は約18~約20アミノ酸残基の長さを有するRASペプチドに対して抗原特異性を有し得る。G12D RASペプチドは、G12D変異を含む変異型RASタンパク質の任意の連続アミノ酸残基を含み得る。本発明の実施形態では、TCRは、G12D変異を有するRASペプチドであって、約30アミノ酸残基、約29アミノ酸残基、約28アミノ酸残基、約27アミノ酸残基、約26アミノ酸残基、約25アミノ酸残基、約24アミノ酸残基、約23アミノ酸残基、約22アミノ酸残基、約21アミノ酸残基、約20アミノ酸残基、約19アミノ酸残基、約18アミノ酸残基、約17アミノ酸残基、約16アミノ酸残基、約15アミノ酸残基、約14アミノ酸残基、約13アミノ酸残基、約12アミノ酸残基、約11アミノ酸残基、又は上記値のうちのいずれか2つの範囲の長さを有する変異型RASペプチドに対して抗原特異性を有し得る。本発明のTCRによって認識され得る、G12D変異を有する特異的ペプチドの例は、MTEYKLVVVGADGVGKSALTIQLI(配列番号88)である。本発明の実施形態では、TCRは、配列番号88の変異型ヒトRASアミノ酸配列に対する抗原特異性を有する。本発明の実施形態では、TCRは、MTEYKLVVVGAGGVGKSALTIQLI(配列番号89)の野生型ヒトRASアミノ酸配列に対して抗原特異性を有しない。
【0024】
本発明の実施形態では、本発明のTCRは、HLAクラスII分子によって提示されるG12D RASを認識することができる。これに関して、TCRは、HLAクラスII分子の枠内でG12D RASに結合した際に免疫応答を惹起し得る。本発明のTCRは、HLAクラスII分子によって提示されるG12D RASを認識することができ、G12D RASに加えてHLAクラスII分子にも結合することができる。
【0025】
本発明の実施形態では、HLAクラスII分子は、HLA-DRヘテロ二量体である。HLA-DRヘテロ二量体は、α鎖及びβ鎖を含む細胞表面受容体である。HLA-DRのα鎖は、HLA-DRA遺伝子によってコードされている。HLA-DRのβ鎖は、HLA-DRB1遺伝子、HLA-DRB3遺伝子、HLA-DRB4遺伝子、又はHLA-DRB5遺伝子によってコードされている。HLA-DRB1によってコードされている分子の例としては、HLA-DR1、HLA-DR2、HLA-DR3、HLA-DR4、HLA-DR5、HLA-DR6、HLA-DR7、HLA-DR8、HLA-DR9、HLA-DR10、HLA-DR11、HLA-DR12、HLA-DR13、HLA-DR14、HLA-DR15、HLA-DR16、及びHLA-DR17を挙げることができるが、これらに限定されない。HLA-DRB3遺伝子は、HLA-DR52をコードしている。HLA-DRB4遺伝子は、HLA-DR53をコードしている。HLA-DRB5遺伝子は、HLA-DR51をコードしている。本発明の実施形態では、HLAクラスII分子は、HLA-DRα鎖を、HLA-DRB1遺伝子、HLA-DRB3遺伝子、又はHLA-DRB4遺伝子のうちのいずれか1つによってコードされているHLA-DRβ鎖と組み合わせて含む。特に好ましい実施形態では、HLAクラスII分子は、HLA-DRB1*03:HLA-DRA*01ヘテロ二量体、HLA-DRB1*11:HLA-DRA*01ヘテロ二量体、HLA-DRB3*01:HLA-DRA*01ヘテロ二量体、HLA-DRB3*03:HLA-DRA*01ヘテロ二量体、HLA-DRB4*03:HLA-DRA*01ヘテロ二量体、又はHLA-DRB4*01:HLA-DRA*01ヘテロ二量体である(すなわち、HLA-DRB1*03:HLA-DRA*01、HLA-DRB1*11:HLA-DRA*01、HLA-DRB3*01:HLA-DRA*01、HLA-DRB3*03:HLA-DRA*01、HLA-DRB4*03:HLA-DRA*01、又はHLA-DRB4*01:HLA-DRA*01のアレルによって発現される)。実施形態では、HLA-DRのβ鎖は、HLA-DRB1*03:01、HLA-DRB1*11:01、HLA-DRB3*01:01:02、HLA-DRB3*03:01:01、HLA-DRB4*01:01、又はHLA-DRB4*03:01のアレルによってコードされている。
【0026】
本発明のTCRは、養子細胞移入に使用される細胞によって発現された場合を含む、様々な利点のうちのいずれか1つ以上を提供し得る。G12D RASは、がん細胞で発現し、正常な非がん細胞では発現しない。特定の理論又は機序に縛られるものではないが、本発明のTCRは、有利なことに、がん細胞の破壊を標的とするが、一方、例えば毒性を最小化又は排除することによって、正常な非がん細胞の破壊を最小化又は排除し、それによって、低減すると考えられる。更に、G12D変異は、腫瘍形成の初期段階で発生する可能性が高いため、G12D RAS変異は、患者のがん細胞の実質的に全てで発現している可能性がある。本発明のTCRは、有利なことに、例えば化学療法、外科手術、又は放射線照射等の他の種類の治療には応答しないG12D RAS陽性がんを成功裏に治療又は予防することができる。更に、本発明のTCRは、操作されていない腫瘍細胞(例えば、インターフェロン(IFN)-γで処理されていない、G12D RAS及び本明細書に記載のHLA-DRヘテロ二量体のいずれかのうちの一方又は両方をコードしているベクターでトランスフェクトされていない、G12D RASペプチドをパルスしていない、又はこれらの組み合わせの腫瘍細胞)を認識する能力を提供し得る、G12D RASの高い結合活性での(highly avid)認識を提供することができる。KRASの変異は、膵臓がんの約70%、結腸直腸がんの約36%、及び肺がんの約20%でみられる。最も一般的には、コドン12(グリシン、Gをコードしている)に変異が生じる。G12D RAS変異は、膵臓及び結腸直腸のがんの患者のそれぞれ約40%及び約12%でみられる。更に、HLA-DRB1*03、HLA-DRB1*11、HLA-DRB3*01、HLA-DRB3*03、HLA-DRB4*01、及びHLA-DRB4*03のアリルが一般的である。これらのアリルは、米国における白人の民族性を有するヒトの10%超で発現しており、他の民族のヒトでも一般的に発現している。従って、本発明のTCRは、他のMHC分子によって提示されるRASを認識するTCRを使用する免疫療法に適格ではない場合があるHLA-DRB1*03、HLA-DRB1*11、HLA-DRB3*01、HLA-DRB3*03、HLA-DRB4*01、又はHLA-DRB4*03のアリルを発現する患者が含まれるように、免疫療法適格がん患者の数を増加させることができる。更に、本発明のTCR、ポリペプチド、及びタンパク質は、ヒトのCDR及び可変領域のアミノ酸配列を含み、これによって、例えばマウスのCDR及び可変領域のアミノ酸配列を含むTCR、ポリペプチド、及びタンパク質と比べてヒト免疫系によって拒絶されるリスクを低減することができる。
【0027】
語句「抗原特異性」とは、本明細書で使用するとき、TCRが、高い結合活性でG12D RASに特異的に結合し、免疫学的に認識できることを意味する。例えば、TCRは、(a)低濃度のG12D RASペプチド(例えば、約0.05ng/mL~約10ng/mL、1ng/mL、2ng/mL、5ng/mL、8ng/mL、10ng/mL、又は上記値のうちのいずれか2つによって規定される範囲)をパルスした抗原陰性HLAクラスII分子陽性標的細胞又は(b)標的細胞がG12D RASを発現するようにG12D RASをコードしているヌクレオチド配列が導入された抗原陰性HLAクラスII分子陽性標的細胞と共培養した際に、該TCRを発現している約1×104~約1×105個のT細胞が少なくとも約200pg/mL以上(例えば、200pg/mL以上、300pg/mL以上、400pg/mL以上、500pg/mL以上、600pg/mL以上、700pg/mL以上、1000pg/mL以上、5,000pg/mL以上、7,000pg/mL以上、10,000pg/mL以上、20,000pg/mL以上、又は上記値のうちのいずれか2つによって規定される範囲)のIFN-γを分泌した場合、G12D RASについて「抗原特異性」を有するとみなしてよい。本発明のTCRを発現している細胞は、より高濃度のG12D RASペプチドをパルスした抗原陰性HLAクラスII分子陽性標的細胞と共培養した際にもIFN-γを分泌することができる。HLAクラスII分子は、本明細書に記載のHLAクラスII分子のいずれかであってよい。
【0028】
あるいは又は更に、TCRは、ネガティブコントロールが発現するIFN-γの量と比較して、(a)低濃度のG12D RASペプチドをパルスした抗原陰性HLAクラスII分子陽性標的細胞又は(b)標的細胞がG12D RASを発現するようにG12D RASをコードしているヌクレオチド配列が導入された抗原陰性HLAクラスII分子陽性標的細胞と共培養した際に、該TCRを発現しているT細胞が少なくとも2倍(例えば、5倍)多いIFN-γを分泌した場合、G12D RASについて「抗原特異性」を有するとみなしてよい。ネガティブコントロールは、例えば、(i)(a)同濃度の無関係のペプチド(例えば、G12D RASペプチドとは異なる配列を有する幾つかの他のペプチド)若しくは(b)標的細胞が無関係のペプチドを発現するように該無関係のペプチドをコードしているヌクレオチド配列が導入された抗原陰性HLAクラスII分子陽性標的細胞と共培養した、該TCRを発現しているT細胞、又は(ii)(a)同濃度のG12D RASペプチドをパルスした抗原陰性HLAクラスII分子陽性標的細胞若しくは(b)標的細胞がG12D RASを発現するようにG12D RASをコードしているヌクレオチド配列が導入された抗原陰性HLAクラスII分子陽性標的細胞と共培養した、形質導入されていないTCR細胞(例えば、該TCRを発現しないPBMC由来)であってよい。ネガティブコントロールの標的細胞が発現するHLAクラスII分子は、試験するT細胞と共培養した標的細胞が発現するのと同じHLAクラスII分子である。HLAクラスII分子は、本明細書に記載のHLAクラスII分子のいずれかであってよい。IFN-γ分泌は、当技術分野において公知の方法、例えば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって測定することができる。
【0029】
あるいは又は更に、TCRは、IFN-γを分泌するネガティブコントロールT細胞の数と比較して、(a)低濃度のG12D RASペプチドをパルスした抗原陰性HLAクラスII分子陽性標的細胞又は(b)標的細胞がG12D RASを発現するようにG12D RASをコードしているヌクレオチド配列が導入された抗原陰性HLAクラスII分子陽性標的細胞と共培養した際に、少なくとも2倍(例えば、5倍)多い数の該TCRを発現しているT細胞がIFN-γを分泌した場合、G12D RASについて「抗原特異性」を有するとみなしてよい。HLAクラスII分子、ペプチドの濃度、及びネガティブコントロールは、本発明の他の態様に関して本明細書に記載する通りであってよい。IFN-γを分泌する細胞の数は、当技術分野において公知の方法、例えば、ELISPOTによって測定することができる。
【0030】
あるいは又は更に、TCRは、G12D RASを発現している標的細胞で刺激した後に例えばフローサイトメトリーによって測定したとき、該TCRを発現しているT細胞が1つ以上のT細胞活性化マーカーの発現をアップレギュレートした場合、G12D RASについて「抗原特異性」を有するとみなしてよい。T細胞活性化マーカーの例としては、4-1BB、OX40、CD107a、CD69、及び抗原刺激した際にアップレギュレートされるサイトカイン(例えば、腫瘍壊死因子(TNF)、インターロイキン(IL)-2等)が挙げられる。
【0031】
本発明の実施形態は、例えば、TCRのアルファ(α)鎖、TCRのベータ(β)鎖、TCRのガンマ(γ)鎖、TCRのデルタ(δ)鎖、又はこれらの組み合わせ等の2つのポリペプチド(すなわち、ポリペプチド鎖)を含むTCRを提供する。本発明のTCRのポリペプチドは、TCRがG12D RASに対して抗原特異性を有する限り、任意のアミノ酸配列を含んでいてよい。幾つかの実施形態では、TCRは、天然には存在しない。
【0032】
本発明の実施形態では、TCRは、TCRの相補性決定領域(CDR)1、CDR2、及びCDR3を含む可変領域をそれぞれ含む、2本のポリペプチド鎖を含む。本発明の実施形態では、TCRは、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR1(4271 TCR1のα鎖のCDR1)、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR2(4271 TCR1のα鎖のCDR2)、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3(4271 TCR1のα鎖のCDR3)を含む第1のポリペプチド鎖と、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR1(4271 TCR1のβ鎖のCDR1)、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2(4271 TCR1のβ鎖のCDR2)、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR3(4271 TCR1のβ鎖のCDR3)を含む第2のポリペプチド鎖と、を含む。
【0033】
本発明の別の実施形態では、TCRは、配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR1(4271 TCR2のα鎖のCDR1)、配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR2(4271 TCR2のα鎖のCDR2)、及び配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR3(4271 TCR2のα鎖のCDR3)を含む第1のポリペプチド鎖と、配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR1(4271 TCR2のβ鎖のCDR1)、配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR2(4271 TCR2のβ鎖のCDR2)、及び配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR3(4271 TCR2のβ鎖のCDR3)を含む第2のポリペプチド鎖と、を含む。
【0034】
本発明の別の実施形態では、TCRは、配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR1(4271 TCR3のα鎖のCDR1)、配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR2(4271 TCR3のα鎖のCDR2)、及び配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR3(4271 TCR3のα鎖のCDR3)を含む第1のポリペプチド鎖と、配列番号24のアミノ酸配列を含むCDR1(4271 TCR3のβ鎖のCDR1)、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR2(4271 TCR3のβ鎖のCDR2)、及び配列番号26のアミノ酸配列を含むCDR3(4271 TCR3のβ鎖のCDR3)を含む第2のポリペプチド鎖と、を含む。
【0035】
本発明の別の実施形態では、TCRは、配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR1(4271 TCR4のα鎖のCDR1)、配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR2(4271 TCR4のα鎖のCDR2)、及び配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR3(4271 TCR4のα鎖のCDR3)を含む第1のポリペプチド鎖と、配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR1(4271 TCR4のβ鎖のCDR1)、配列番号35のアミノ酸配列を含むCDR2(4271 TCR4のβ鎖のCDR2)、及び配列番号36のアミノ酸配列を含むCDR3(4271 TCR4のβ鎖のCDR3)を含む第2のポリペプチド鎖と、を含む。
【0036】
これに関して、本発明のTCRは、配列番号1~6、11~16、21~26、及び31~36からなる群から選択されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つ以上を含み得る。本発明の実施形態では、TCRは、(a)配列番号1~3の全て、(b)配列番号4~6の全て、(c)配列番号1~6の全て、(d)配列番号11~13の全て、(e)配列番号14~16の全て、(f)配列番号11~16の全て、(g)配列番号21~23の全て、(h)配列番号24~26の全て、(i)配列番号21~26の全て、(j)配列番号31~33の全て、(k)配列34~36の全て、又は(l)配列31~36の全てのアミノ酸配列を含む。特に好ましい実施形態では、TCRは、(a)配列番号1~6の全て、(b)配列番号11~16の全て、(c)配列番号21~26の全て、又は(d)配列31~36の全てのアミノ酸配列を含む。
【0037】
本発明の実施形態では、TCRは、上記CDRを含むTCRの可変領域のアミノ酸配列を含む。これに関して、TCRは、(i)配列番号7(N末端シグナルペプチドを有しない4271 TCR1のα鎖の可変領域の予測配列);(ii)配列番号8(N末端シグナルペプチドを有しない4271 TCR1のβ鎖の可変領域の予測配列);(iii)配列番号9(N末端シグナルペプチドを有する4271 TCR1のα鎖の可変領域);(iv)配列番号10(N末端シグナルペプチドを有する4271 TCR1のβ鎖の可変領域);(v)配列番号17(N末端シグナルペプチドを有しない4271 TCR2のα鎖の可変領域の予測配列);(vi)配列番号18(N末端シグナルペプチドを有しない4271 TCR2のβ鎖の可変領域の予測配列);(vii)配列番号19(N末端シグナルペプチドを有する4271 TCR2のα鎖の可変領域);(viii)配列番号20(N末端シグナルペプチドを有する4271 TCR2のβ鎖の可変領域);(ix)配列番号27(N末端シグナルペプチドを有しない4271 TCR3のα鎖の可変領域の予測配列);(x)配列番号28(N末端シグナルペプチドを有しない4271 TCR3のβ鎖の可変領域の予測配列);(xi)配列番号29(N末端シグナルペプチドを有する4271 TCR3のα鎖の可変領域);(xii)配列番号30(N末端シグナルペプチドを有する4271 TCR3のβ鎖の可変領域);(xiii)配列番号37(N末端シグナルペプチドを有しない4271 TCR4のα鎖の可変領域の予測配列);(xiv)配列番号38(N末端シグナルペプチドを有しない4271 TCR4のβ鎖の可変領域の予測配列);(xv)配列番号39(N末端シグナルペプチドを有する4271 TCR4のα鎖の可変領域);(xvi)配列番号40(N末端シグナルペプチドを有する4271 TCR4のβ鎖の可変領域);(xvii)配列番号7及び8の両方;(xviii)配列番号9及び10の両方;(xix)配列番号17及び18の両方;(xx)配列番号19及び20の両方;(xxi)配列番号27及び28の両方;(xxii)配列番号29及び30の両方;(xxiii)配列番号37及び38の両方;又は(xxiv)配列番号39及び40の両方のアミノ酸配列を含む。好ましくは、TCRは、(i)配列番号7及び8の両方、(ii)配列番号9及び10の両方、(iii)配列番号17及び18の両方、(iv)配列番号19及び20の両方、(v)配列番号27及び28の両方、(vi)配列番号29及び30の両方、(vii)配列番号37及び38の両方、又は(viii)配列番号39及び40の両方のアミノ酸配列を含む。
【0038】
本発明のTCRは、α鎖定常領域及びβ鎖定常領域を更に含み得る。定常領域は、例えばヒト又はマウス等の任意の好適な種に由来していてよい。本発明の実施形態では、TCRは、マウスのα及びβ鎖の定常領域又はヒトのα及びβ鎖の定常領域を更に含む。本明細書で使用するとき、用語「マウス」又は「ヒト」は、本明細書に記載のTCR又はTCRの任意の構成要素(例えば、CDR、可変領域、定常領域、α鎖、及び/又はβ鎖)に言及するとき、それぞれマウス又はヒト由来のTCR(又はその構成要素)、すなわち、それぞれマウスT細胞又はヒトT細胞を起源とするか又は該細胞によってかつて発現されたTCR(又はその構成要素)を意味する。
【0039】
本発明の実施形態は、ヒト可変領域及びマウス定常領域を含むキメラTCRであって、12位のグリシンがアスパラギン酸で置換されている変異型ヒトRASアミノ酸配列に対して抗原特異性を有するTCRを提供する。マウス定常領域は、任意の1つ以上の利点を提供し得る。例えば、マウス定常領域は、本発明のTCRが導入される宿主細胞の内因性TCRと本発明のTCRとの誤対合を減少させることができる。あるいは又は更に、マウス定常領域は、ヒト定常領域を有する同じTCRと比較して、本発明のTCRの発現を増加させることができる。キメラTCRは、配列番号53(WTマウスα鎖定常領域)、配列番号54(WTマウスβ鎖定常領域)、又は配列番号53及び54の両方のアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、本発明のTCRは、配列番号53及び54の両方のアミノ酸配列を含む。キメラTCRは、本発明の他の態様に関して本明細書に記載するCDR領域のいずれかと組み合わせて、本明細書に記載のマウス定常領域のいずれかを含み得る。これに関して、TCRは、(a)配列番号1~3及び53の全て、(b)配列番号4~6及び54の全て、(c)配列番号1~6及び53~54の全て、(d)配列番号11~13及び53の全て、(e)配列番号14~16及び54の全て、(f)配列番号11~16及び53~54の全て、(g)配列番号21~23及び53の全て、(h)配列番号24~26及び54の全て、(i)配列番号21~26及び53~54の全て、(j)配列番号31~33及び53の全て、(k)配列番号34~36及び54の全て、又は(l)配列番号31~36及び53~54の全てのアミノ酸配列を含み得る。本発明の別の実施形態では、キメラTCRは、本発明の他の態様に関して本明細書に記載する可変領域のいずれかと組み合わせて、本明細書に記載のマウス定常領域のいずれかを含み得る。これに関して、TCRは、(i)配列番号7及び53の両方、(ii)配列番号8及び54の両方、(iii)配列番号9及び53の両方、(iv)配列番号10及び54の両方、(v)配列番号17及び53の両方、(vi)配列番号18及び54の両方、(vii)配列番号19及び53の両方、(viii)配列番号20及び54の両方、(ix)配列番号27及び53の両方、(x)配列番号28及び54の両方、(xi)配列番号29及び53の両方、(xii)配列番号30及び54の両方、(xiii)配列番号37及び53の両方、(xiv)配列番号38及び54の両方、(xv)配列番号39及び53の両方、(xvi)配列番号40及び54の両方、(xvii)配列番号7~8及び53~54の全て、(xviii)配列番号9~10及び53~54の全て、(xix)配列番号17~18及び53~54の全て、(xx)配列番号19~20及び53~54の全て、(xxi)配列番号27~28及び53~54の全て、(xxii)配列番号29~30及び53~54の全て、(xxiii)配列番号37~38及び53~54の全て、又は(xxiv)配列番号39~40及び53~54の全てのアミノ酸配列を含み得る。
【0040】
本発明の実施形態では、TCRは、置換定常領域を含む。これに関して、TCRは、α鎖及びβ鎖の一方又は両方の定常領域に1つ、2つ、3つ、又は4つのアミノ酸置換(複数可)を有する、本明細書に記載のTCRのいずれかのアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、TCRは、α鎖及びβ鎖の一方又は両方のマウス定常領域に1つ、2つ、3つ、又は4つのアミノ酸置換(複数可)を有するマウス定常領域を含む。特に好ましい実施形態では、TCRは、α鎖のマウス定常領域に1つ、2つ、3つ、又は4つのアミノ酸置換(複数可)を有し、β鎖のマウス定常領域に1つのアミノ酸置換を有するマウス定常領域を含む。幾つかの実施形態では、置換定常領域を含むTCRは、有利なことに、非置換(野生型)定常領域を含む親TCRと比較して、G12D RAS+標的の認識の増大、宿主細胞による発現の増加、内因性TCRとの誤対合の減少、及び抗腫瘍活性の増大のうちの1つ以上を提供する。一般に、TCRのα鎖及びβ鎖のマウス定常領域の置換アミノ酸配列、それぞれ配列番号49及び50は、非置換マウス定常領域アミノ酸配列、それぞれ配列番号53及び54の全部又は一部に対応し、配列番号49は、配列番号53と比較して1つ、2つ、3つ、又は4つのアミノ酸置換(複数可)を有し、配列番号50は、配列番号54と比較して1つのアミノ酸置換を有する。これに関して、本発明の実施形態は、(a)(i)48位のXが、Thr若しくはCysであり;(ii)112位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;(iii)114位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ(iv)115位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである配列番号49(α鎖の定常領域);(b)57位のXがSer若しくはCysである配列番号50(β鎖の定常領域);又は(c)配列番号49及び50の両方のアミノ酸配列を含むTCRを提供する。本発明の実施形態では、配列番号49を含むTCRは、配列番号53(α鎖の非置換マウス定常領域)を含まない。本発明の実施形態では、配列番号50を含むTCRは、配列番号54(β鎖の非置換マウス定常領域)を含まない。
【0041】
本発明の実施形態では、TCRは、可変領域及び定常領域を含むα鎖と、可変領域及び定常領域を含むβ鎖とを含む。これに関して、TCRは、(a)(i)配列番号55の184位のXが、Thr若しくはCysであり;(ii)配列番号55の248位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;(iii)配列番号55の250位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ(iv)配列番号55の251位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号55のアミノ酸配列を含むα鎖(N末端シグナルペプチドを有する4271 TCR1のα鎖);(b)配列番号56の199位のXが、Ser若しくはCysである、配列番号56のアミノ酸配列を含むβ鎖(N末端シグナルペプチドを有する4271 TCR1のβ鎖);(c)配列番号55及び56の両方;(d)(i)配列番号57の165位のXが、Thr若しくはCysであり;(ii)配列番号57の229位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;(iii)配列番号57の231位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ(iv)配列番号57の232位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号57のアミノ酸配列を含むα鎖(N末端シグナルペプチドを有しない4271 TCR1のα鎖の予測配列);(e)配列番号58の175位のXが、Ser若しくはCysである、配列番号58のアミノ酸配列を含むβ鎖(N末端シグナルペプチドを有しない4271 TCR1のβ鎖の予測配列);(f)配列番号57及び58の両方;(g)配列番号59(N末端シグナル配列を有するシステイン置換LVL修飾4271 TCR1のα鎖);(h)配列番号60(N末端シグナル配列を有するシステイン置換LVL修飾4271 TCR1のβ鎖);(i)配列番号61(N末端シグナル配列を有しないシステイン置換LVL修飾4271 TCR1のα鎖の予測配列);(j)配列番号62(N末端シグナル配列を有しないシステイン置換LVL修飾4271 TCR1のβ鎖の予測配列);(k)配列番号59及び60の両方;(l)配列番号61及び62の両方;(m)(i)配列番号63の182位のXが、Thr若しくはCysであり;(ii)配列番号63の246位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;(iii)配列番号63の248位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ(iv)配列番号63の249位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号63のアミノ酸配列を含むα鎖(N末端シグナルペプチドを有する4271 TCR2のα鎖);(n)配列番号64の197位のXが、Ser若しくはCysである、配列番号64のアミノ酸配列を含むβ鎖(N末端シグナルペプチドを有する4271 TCR2のβ鎖);(o)配列番号63及び64の両方;(p)(i)配列番号65の164位のXが、Thr若しくはCysであり;(ii)配列番号65の228位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;(iii)配列番号65の230位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ(iv)配列番号65の231位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号65のアミノ酸配列を含むα鎖(N末端シグナルペプチドを有しない4271 TCR2のα鎖の予測配列);(q)配列番号66の173位のXが、Ser若しくはCysである、配列番号66のアミノ酸配列を含むβ鎖(N末端シグナルペプチドを有しない4271 TCR2のβ鎖の予測配列);(r)配列番号65及び66の両方;(s)配列番号67(N末端シグナル配列を有するシステイン置換LVL修飾4271 TCR2のα鎖);(t)配列番号68(N末端シグナル配列を有するシステイン置換LVL修飾4271 TCR2のβ鎖);(u)配列番号69(N末端シグナル配列を有しないシステイン置換LVL修飾4271 TCR2のα鎖の予測配列);(v)配列番号70(N末端シグナル配列を有しないシステイン置換LVL修飾4271 TCR2のβ鎖の予測配列);(w)配列番号67及び68の両方;(x)配列番号69及び70の両方;(y)(i)配列番号71の187位のXが、Thr若しくはCysであり;(ii)配列番号71の251位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;(iii)配列番号71の253位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ(iv)配列番号71の254位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号71のアミノ酸配列を含むα鎖(N末端シグナルペプチドを有する4271 TCR3のα鎖);(z)配列番号72の191位のXが、Ser若しくはCysである、配列番号72のアミノ酸配列を含むβ鎖(N末端シグナルペプチドを有する4271 TCR3のβ鎖);(aa)配列番号71及び72の両方;(bb)(i)配列番号73の168位のXが、Thr若しくはCysであり;(ii)配列番号73の232位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;(iii)配列番号73の234位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ(iv)配列番号73の235位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号73のアミノ酸配列を含むα鎖(N末端シグナルペプチドを有しない4271 TCR3のα鎖の予測配列);(cc)配列番号74の173位のXが、Ser若しくはCysである、配列番号74のアミノ酸配列を含むβ鎖(N末端シグナルペプチドを有しない4271 TCR3のβ鎖の予測配列);(dd)配列番号73及び74の両方;(ee)配列番号75(N末端シグナル配列を有するシステイン置換LVL修飾4271 TCR3のα鎖);(ff)配列番号76(N末端シグナル配列を有するシステイン置換LVL修飾4271 TCR3のβ鎖);(gg)配列番号77(N末端シグナル配列を有しないシステイン置換LVL修飾4271 TCR3のα鎖の予測配列);(hh)配列番号78(N末端シグナル配列を有しないシステイン置換LVL修飾4271 TCR3のβ鎖の予測配列);(ii)配列番号75及び76の両方;(jj)配列番号77及び78の両方;(kk)(i)配列番号79の175位のXが、Thr若しくはCysであり;(ii)配列番号79の239位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;(iii)配列番号79の241位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ(iv)配列番号79の242位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号79のアミノ酸配列を含むα鎖(N末端シグナルペプチドを有する4271 TCR4のα鎖);(ll)配列番号80の190位のXが、Ser若しくはCysである、配列番号80のアミノ酸配列を含むβ鎖(N末端シグナルペプチドを有する4271 TCR4のβ鎖);(mm)配列番号79及び80の両方;(nn)(i)配列番号81の159位のXが、Thr若しくはCysであり;(ii)配列番号81の223位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;(iii)配列番号81の225位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ(iv)配列番号81の226位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号81のアミノ酸配列を含むα鎖(N末端シグナルペプチドを有しない4271 TCR4のα鎖の予測配列);(oo)配列番号82の172位のXが、Ser若しくはCysである、配列番号82のアミノ酸配列を含むβ鎖(N末端シグナルペプチドを有しない4271 TCR4のβ鎖の予測配列);(pp)配列番号81及び82の両方;(qq)配列番号83(N末端シグナル配列を有するシステイン置換LVL修飾4271 TCR4のα鎖);(rr)配列番号84(N末端シグナル配列を有するシステイン置換LVL修飾4271 TCR4のβ鎖);(ss)配列番号85(N末端シグナル配列を有しないシステイン置換LVL修飾4271 TCR4のα鎖の予測配列);(tt)配列番号86(N末端シグナル配列を有しないシステイン置換LVL修飾4271 TCR4のβ鎖の予測配列);(uu)配列番号83及び84の両方;又は(vv)配列番号85及び86の両方を含む。
【0042】
本発明の実施形態では、置換定常領域は、システイン置換TCRを提供するために、α鎖及びβ鎖の一方又は両方の定常領域にシステイン置換を含む。α鎖及びβ鎖における対向するシステインは、置換されたTCRのα鎖及びβ鎖の定常領域を互いに連結させ、かつ非置換マウス定常領域を含むTCRには存在しないジスルフィド結合を提供する。これに関して、TCRは、配列番号53の48位のネイティブなThr(Thr48)及び配列番号54の57位のネイティブなSer(Ser57)の一方又は両方がCysで置換されていてよいシステイン置換TCRであり得る。好ましくは、配列番号53のネイティブなThr48及び配列番号54のネイティブなSer57の両方がCysで置換される。システイン置換TCRの定常領域配列の例を表2に記載する。本発明の実施形態では、システイン置換TCRは、(i)配列番号49、(ii)配列番号50、又は(iii)配列番号49及び50の両方を含み、配列番号49及び50はいずれも表2に定義される通りである。本発明のシステイン置換TCRは、本明細書に記載のCDR又は可変領域のいずれかに加えて、置換定常領域を含み得る。
【0043】
本発明の実施形態では、システイン置換キメラTCRは、完全長α鎖及び完全長β鎖を含む。システイン置換キメラTCRのα鎖及びβ鎖の配列の例を表2に記載する。本発明の実施形態では、TCRは、(i)配列番号49、(ii)配列番号50、(iii)配列番号55、(iv)配列番号56、(v)配列番号57、(vi)配列番号58、(vii)配列番号63、(viii)配列番号64、(ix)配列番号65、(x)配列番号66、(xi)配列番号71、(xii)配列番号72、(xiii)配列番号73、(xiv)配列番号74、(xv)配列番号79、(xvi)配列番号80、(xvii)配列番号81、(xviii)配列番号82、(xix)配列番号49及び50の両方、(xx)配列番号55及び56の両方、(xxi)配列番号57及び58の両方、(xxii)配列番号63及び64の両方、(xxiii)配列番号65及び66の両方、(xxiv)配列番号71及び72の両方、(xxv)配列番号73及び74の両方、(xxvi)配列番号79及び80の両方、又は(xxvii)配列番号81及び82の両方を含み、配列番号49~50、55~58、63~66、71~74、及び79~82は全て表2に定義される通りである。
【0044】
【0045】
【0046】
本発明の実施形態では、置換アミノ酸配列は、疎水性アミノ酸で置換されたTCR(本明細書では「LVL修飾TCR」とも称される)を提供するために、α鎖の定常領域の膜貫通(TM)ドメインにおける1つ、2つ、又は3つのアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換を含む。TCRのTMドメインにおける疎水性アミノ酸置換(複数可)は、TMドメインに疎水性アミノ酸置換(複数可)を有しないTCRと比較して、TCRのTMドメインの疎水性を増大させることができる。これに関して、TCRは、配列番号53のネイティブなSer112、Met114、及びGly115のうちの1つ、2つ、又は3つが、独立して、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、又はTrp;好ましくはLeu、Ile、又はValで置換されていてよい、LVL修飾TCRである。好ましくは、配列番号53のネイティブなSer112、Met114、及びGly115の3つ全てが、独立して、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、又はTrp;好ましくはLeu、Ile、又はValで置換されていてよい。本発明の実施形態では、LVL修飾TCRは、(i)配列番号49、(ii)配列番号50、又は(iii)配列番号49及び50の両方を含み、配列番号49及び50はいずれも表3に定義される通りである。本発明のLVL修飾TCRは、本明細書に記載のCDR又は可変領域のいずれかに加えて、置換定常領域を含み得る。
【0047】
本発明の実施形態では、LVL修飾TCRは、完全長α鎖及び完全長β鎖を含む。LVL修飾TCRのα鎖及びβ鎖の配列の例を表3に記載する。本発明の実施形態では、TCRは、(i)配列番号49、(ii)配列番号50、(iii)配列番号55、(iv)配列番号56、(v)配列番号57、(vi)配列番号58、(vii)配列番号63、(viii)配列番号64、(ix)配列番号65、(x)配列番号66、(xi)配列番号71、(xii)配列番号72、(xiii)配列番号73、(xiv)配列番号74、(xv)配列番号79、(xvi)配列番号80、(xvii)配列番号81、(xviii)配列番号82、(xix)配列番号49及び50の両方、(xx)配列番号55及び56の両方、(xxi)配列番号57及び58の両方、(xxii)配列番号63及び64の両方、(xxiii)配列番号65及び66の両方、(xxiv)配列番号71及び72の両方、(xxv)配列番号73及び74の両方、(xxvi)配列番号79及び80の両方、(xxvii)配列番号81及び82の両方を含み、配列番号49~50、55~58、63~66、71~74、及び79~82は全て表3で定義される通りである。
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
本発明の実施形態では、置換アミノ酸配列は、α鎖の定常領域の膜貫通(TM)ドメインにおける1つ、2つ、又は3つのアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換(複数可)と組み合わせて、α鎖及びβ鎖の一方又は両方の定常領域にシステイン置換を含む(本明細書では、「システイン置換LVL修飾TCR」とも称される)。これに関して、TCRは、配列番号53のネイティブなThr48がCysで置換されており;配列番号53のネイティブなSer112、Met114、及びGly115のうちの1つ、2つ、又は3つが、独立して、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、又はTrp;好ましくはLeu、Ile、又はValで置換されており;配列番号54のネイティブなSer57がCysで置換されている、システイン置換LVL修飾キメラTCRである。好ましくは、配列番号53のネイティブなSer112、Met114、及びGly115の3つ全てが、独立して、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、又はTrp;好ましくはLeu、Ile、又はValで置換されていてよい。本発明の実施形態では、システイン置換LVL修飾TCRは、(i)配列番号49、(ii)配列番号50、又は(iii)配列番号49及び50の両方を含み、配列番号49及び50はいずれも表4に定義される通りである。本発明のシステイン置換LVL修飾TCRは、本明細書に記載のCDR又は可変領域のいずれかに加えて、置換定常領域を含み得る。
【0053】
実施形態では、システイン置換LVL修飾TCRは、完全長α鎖及び完全長β鎖を含む。システイン置換LVL修飾TCRのα鎖及びβ鎖の配列の例を表4及び7に記載する。本発明の実施形態では、TCRは、(1)配列番号49、(2)配列番号50、(3)配列番号55、(4)配列番号56、(5)配列番号57、(6)配列番号58、(7)配列番号63、(8)配列番号64、(9)配列番号65、(10)配列番号66、(11)配列番号71、(12)配列番号72、(13)配列番号73、(14)配列番号74、(15)配列番号79、(16)配列番号80、(17)配列番号81、(18)配列番号82、(19)配列番号49及び50の両方、(20)配列番号55及び56の両方、(21)配列番号57及び58の両方、(22)配列番号63及び64の両方、(23)配列番号65及び66の両方、(24)配列番号71及び72の両方、(25)配列番号73及び74の両方、(26)配列番号79及び80の両方、(27)配列番号81及び82の両方、(28)配列番号59;(29)配列番号60;(30)配列番号59及び60の両方;(31)配列番号61;(32)配列番号62;(33)配列番号61及び62の両方;(34)配列番号67;(35)配列番号68;(36)配列番号67及び68の両方;(37)配列番号69;(38)配列番号70;(39)配列番号69及び70の両方;(40)配列番号75;(41)配列番号76;(42)配列番号75及び76の両方;(43)配列番号77;(44)配列番号78;(45)配列番号77及び78の両方;(46)配列番号83;(47)配列番号84;(48)配列番号83及び84の両方;(49)配列番号85;(50)配列番号86;又は(51)配列番号85及び86の両方を含み、配列番号49~50、55~58、63~66、71~74、及び79~82は全て表4に定義される通りである。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
本発明の実施形態では、システイン置換LVL修飾TCRは、(a)配列番号51(システイン置換LVL修飾TCRのα鎖定常領域);(b)配列番号52(システイン置換LVL修飾TCRのβ鎖定常領域);又は(c)(a)及び(b)の両方を含む。
【0059】
また、本明細書に記載のTCRのいずれかの機能的部分を含むポリペプチドが本発明によって提供される。用語「ポリペプチド」は、本明細書で使用するとき、オリゴペプチドを含み、そして、1つ以上のペプチド結合によって連結された一本鎖のアミノ酸を指す。
【0060】
本発明のポリペプチドに関して、機能的部分は、G12D RASに特異的に結合する限り、該機能的部分がその一部であるTCRの連続アミノ酸を含む任意の部分であってよい。用語「機能的部分」は、TCRに関して使用されるとき、本発明のTCRの任意の部分又は断片であって、該部分又は断片がその一部であるTCR(親TCR)の生物活性を保持している部分又は断片を指す。機能的部分は、例えば、親TCRと同様の程度、同一程度、又はより高程度、(例えば、本明細書に記載のHLAクラスII分子のいずれかの枠内で)G12D RASに特異的に結合するか又はがんを検出、治療、若しくは予防する能力を保持しているTCRの部分を包含する。親TCRに関して、機能的部分は、例えば、親TCRの約10%、約25%、約30%、約50%、約70%、約80%、約90%、約95%、又はそれ以上を構成し得る。
【0061】
機能的部分は、該部分のアミノ若しくはカルボキシ末端又は両末端に、親TCRのアミノ酸配列にはみられない追加のアミノ酸を含んでいてもよい。望ましくは、追加のアミノ酸は、例えば、G12D RASに特異的に結合する及び/又はがんを検出する、がんを治療若しくは予防する能力を有する等の機能的部分の生物学的機能に干渉しない。より望ましくは、追加のアミノ酸は、親TCRの生物活性と比較して、生物活性を増強する。
【0062】
ポリペプチドは、本発明のTCRのα鎖及びβ鎖のいずれか又は両方の機能的部分、例えば、本発明のTCRのα鎖及び/又はβ鎖の可変領域(複数可)のCDR1、CDR2、及びCDR3のうちの1つ以上を含む機能的部分を含み得る。本発明の実施形態において、ポリペプチドは、配列番号1(4271 TCR1のα鎖のCDR1)、配列番号2(4271 TCR1のα鎖のCDR2)、配列番号3(4271 TCR1のα鎖のCDR3)、配列番号4(4271 TCR1のβ鎖のCDR1)、配列番号5(4271 TCR1のβ鎖のCDR2)、配列番号6(4271 TCR1のβ鎖のCDR3)、配列番号11(4271 TCR2のα鎖のCDR1)、配列番号12(4271 TCR2のα鎖のCDR2)、配列番号13(4271 TCR2のα鎖のCDR3)、配列番号14(4271 TCR2のβ鎖のCDR1)、配列番号15(4271 TCR2のβ鎖のCDR2)、配列番号16(4271 TCR2のβ鎖のCDR3)、配列番号21(4271 TCR3のα鎖のCDR1)、配列番号22(4271 TCR3のα鎖のCDR2)、配列番号23(4271 TCR3のα鎖のCDR3)、配列番号24(4271 TCR3のβ鎖のCDR1)、配列番号25(4271 TCR3のβ鎖のCDR2)、配列番号26(4271 TCR3のβ鎖のCDR3)、配列番号31(4271 TCR4のα鎖のCDR1)、配列番号32(4271 TCR4のα鎖のCDR2)、配列番号33(4271 TCR4のα鎖のCDR3)、配列番号34(4271 TCR4のβ鎖のCDR1)、配列番号35(4271 TCR4のβ鎖のCDR2)、配列番号36(4271 TCR4のβ鎖のCDR3)、又はそれらの組み合わせのアミノ酸配列を含み得る。これに関して、本発明のポリペプチドは、配列番号1~6、11~16、21~26、及び31~36からなる群から選択されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つ以上を含み得る。本発明の実施形態では、TCRは、(a)配列番号1~3の全て、(b)配列番号4~6の全て、(c)配列番号1~6の全て、(d)配列番号11~13の全て、(e)配列番号14~16の全て、(f)配列番号11~16の全て、(g)配列番号21~23の全て、(h)配列番号24~26の全て、(i)配列番号21~26の全て、(j)配列番号31~33の全て、(k)配列34~36の全て、又は(l)配列31~36の全てのアミノ酸配列を含む。好ましくは、ポリペプチドは、(i)配列番号1~6、(ii)配列番号11~16、(iii)配列番号21~26、又は(iv)配列番号31~36の全てのアミノ酸配列を含む。
【0063】
本発明の実施形態では、本発明のポリペプチドは、例えば、上記CDR領域の組み合わせを含む本発明のTCRの可変領域を含み得る。これに関して、ポリペプチドは、(i)配列番号7(N末端シグナルペプチドを有しない4271 TCR1のα鎖の可変領域の予測配列);(ii)配列番号8(N末端シグナルペプチドを有しない4271 TCR1のβ鎖の可変領域の予測配列);(iii)配列番号9(N末端シグナルペプチドを有する4271 TCR1のα鎖の可変領域);(iv)配列番号10(N末端シグナルペプチドを有する4271 TCR1のβ鎖の可変領域);(v)配列番号17(N末端シグナルペプチドを有しない4271 TCR2のα鎖の可変領域の予測配列);(vi)配列番号18(N末端シグナルペプチドを有しない4271 TCR2のβ鎖の可変領域の予測配列);(vii)配列番号19(N末端シグナルペプチドを有する4271 TCR2のα鎖の可変領域);(viii)配列番号20(N末端シグナルペプチドを有する4271 TCR2のβ鎖の可変領域);(ix)配列番号27(N末端シグナルペプチドを有しない4271 TCR3のα鎖の可変領域の予測配列);(x)配列番号28(N末端シグナルペプチドを有しない4271 TCR3のβ鎖の可変領域の予測配列);(xi)配列番号29(N末端シグナルペプチドを有する4271 TCR3のα鎖の可変領域);(xii)配列番号30(N末端シグナルペプチドを有する4271 TCR3のβ鎖の可変領域);(xiii)配列番号37(N末端シグナルペプチドを有しない4271 TCR4のα鎖の可変領域の予測配列);(xiv)配列番号38(N末端シグナルペプチドを有しない4271 TCR4のβ鎖の可変領域の予測配列);(xv)配列番号39(N末端シグナルペプチドを有する4271 TCR4のα鎖の可変領域);(xvi)配列番号40(N末端シグナルペプチドを有する4271 TCR4のβ鎖の可変領域);(xvii)配列番号7及び8の両方;(xviii)配列番号9及び10の両方;(xix)配列番号17及び18の両方;(xx)配列番号19及び20の両方;(xxi)配列番号27及び28の両方;(xxii)配列番号29及び30の両方;(xxiii)配列番号37及び38の両方;又は(xxiv)配列番号39及び40の両方のアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、ポリペプチドは、(i)配列番号7及び8の両方、(ii)配列番号9及び10の両方、(iii)配列番号17及び18の両方、(iv)配列番号19及び20の両方、(v)配列番号27及び28の両方、(vi)配列番号29及び30の両方、(vii)配列番号37及び38の両方、又は(viii)配列番号39及び40の両方のアミノ酸配列を含む。
【0064】
本発明の実施形態では、本発明のポリペプチドは、上記本発明のTCRの定常領域を更に含み得る。これに関して、ポリペプチドは、配列番号53(α鎖のWTマウス定常領域)、配列番号54(β鎖のWTマウス定常領域)、配列番号49(α鎖の置換マウス定常領域)、配列番号50(β鎖の置換マウス定常領域)、配列番号51(システイン置換LVL修飾TCRのα鎖定常領域)、配列番号52(システイン置換LVL修飾TCRのβ鎖定常領域)、配列番号49及び50の両方、配列番号51及び52の両方、又は配列番号53及び54の両方のアミノ酸配列を更に含み得る。好ましくは、ポリペプチドは、本発明の他の態様に関して本明細書に記載するCDR領域又は可変領域のいずれかと組み合わせて、配列番号49及び50の両方、配列番号51及び52の両方、又は配列番号53及び54の両方のアミノ酸配列を更に含む。本発明の実施形態では、ポリペプチドの配列番号49及び50の一方又は両方は、表2~4のいずれか1つに定義される通りである。
【0065】
本発明の実施形態では、本発明のポリペプチドは、本明細書に記載のTCRのα鎖又はβ鎖の全長を含み得る。これに関して、本発明のポリペプチドは、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、又は配列番号86のアミノ酸配列を含み得る。あるいは、本発明のポリペプチドは、本明細書に記載のTCRの両鎖を含んでいてもよい。例えば、ポリペプチドは、配列番号55~56の両方、配列番号57~58の両方、配列番号59~60、配列番号61~62の両方、配列番号63~64の両方、配列番号65~66の両方、配列番号67~68の両方、配列番号69~70の両方、配列番号71~72の両方、配列番号73~74の両方、配列番号75~76の両方、配列番号77~78の両方、配列番号79~80の両方、配列番号81~82の両方、配列番号83~84の両方、又は配列番号85~86の両方を含み得る。
【0066】
例えば、本発明のポリペプチドは、(a)(i)配列番号55の184位のXが、Thr若しくはCysであり;(ii)配列番号55の248位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;(iii)配列番号55の250位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ(iv)配列番号55の251位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号55のアミノ酸配列(N末端シグナルペプチドを有する4271 TCR1のα鎖);(b)配列番号56の199位のXが、Ser若しくはCysである、配列番号56のアミノ酸配列(N末端シグナルペプチドを有する4271 TCR1のβ鎖);(c)配列番号55及び56の両方;(d)(i)配列番号57の165位のXが、Thr若しくはCysであり;(ii)配列番号57の229位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;(iii)配列番号57の231位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ(iv)配列番号57の232位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号57のアミノ酸配列(N末端シグナルペプチドを有しない4271 TCR1のα鎖の予測配列);(e)配列番号58の175位のXが、Ser若しくはCysである、配列番号58のアミノ酸配列(N末端シグナルペプチドを有しない4271 TCR1のβ鎖の予測配列);(f)配列番号57及び58の両方;(g)配列番号59(N末端シグナル配列を有するシステイン置換LVL修飾4271 TCR1のα鎖);(h)配列番号60(N末端シグナル配列を有するシステイン置換LVL修飾4271 TCR1のβ鎖);(i)配列番号61(N末端シグナル配列を有しないシステイン置換LVL修飾4271 TCR1のα鎖の予測配列);(j)配列番号62(N末端シグナル配列を有しないシステイン置換LVL修飾4271 TCR1のβ鎖の予測配列);(k)配列番号59及び60の両方;(l)配列番号61及び62の両方;(m)(i)配列番号63の182位のXが、Thr若しくはCysであり;(ii)配列番号63の246位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;(iii)配列番号63の248位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ(iv)配列番号63の249位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号63のアミノ酸配列(N末端シグナルペプチドを有する4271 TCR2のα鎖);(n)配列番号64の197位のXが、Ser若しくはCysである、配列番号64のアミノ酸配列(N末端シグナルペプチドを有する4271 TCR2のβ鎖);(o)配列番号63及び64の両方;(p)(i)配列番号65の164位のXが、Thr若しくはCysであり;(ii)配列番号65の228位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;(iii)配列番号65の230位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ(iv)配列番号65の231位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号65のアミノ酸配列(N末端シグナルペプチドを有しない4271 TCR2のα鎖の予測配列);(q)配列番号66の173位のXが、Ser若しくはCysである、配列番号66のアミノ酸配列(N末端シグナルペプチドを有しない4271 TCR2のβ鎖の予測配列);(r)配列番号65及び66の両方;(s)配列番号67(N末端シグナル配列を有するシステイン置換LVL修飾4271 TCR2のα鎖);(t)配列番号68(N末端シグナル配列を有するシステイン置換LVL修飾4271 TCR2のβ鎖);(u)配列番号69(N末端シグナル配列を有しないシステイン置換LVL修飾4271 TCR2のα鎖の予測配列);(v)配列番号70(N末端シグナル配列を有しないシステイン置換LVL修飾4271 TCR2のβ鎖の予測配列);(w)配列番号67及び68の両方;(x)配列番号69及び70の両方;(y)(i)配列番号71の187位のXが、Thr若しくはCysであり;(ii)配列番号71の251位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;(iii)配列番号71の253位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ(iv)配列番号71の254位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号71のアミノ酸配列(N末端シグナルペプチドを有する4271 TCR3のα鎖);(z)配列番号72の191位のXが、Ser若しくはCysである、配列番号72のアミノ酸配列(N末端シグナルペプチドを有する4271 TCR3のβ鎖);(aa)配列番号71及び72の両方;(bb)(i)配列番号73の168位のXが、Thr若しくはCysであり;(ii)配列番号73の232位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;(iii)配列番号73の234位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ(iv)配列番号73の235位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号73のアミノ酸配列(N末端シグナルペプチドを有しない4271 TCR3のα鎖の予測配列);(cc)配列番号74の173位のXが、Ser若しくはCysである、配列番号74のアミノ酸配列(N末端シグナルペプチドを有しない4271 TCR3のβ鎖の予測配列);(dd)配列番号73及び74の両方;(ee)配列番号75(N末端シグナル配列を有するシステイン置換LVL修飾4271 TCR3のα鎖);(ff)配列番号76(N末端シグナル配列を有するシステイン置換LVL修飾4271 TCR3のβ鎖);(gg)配列番号77(N末端シグナル配列を有しないシステイン置換LVL修飾4271 TCR3のα鎖の予測配列);(hh)配列番号78(N末端シグナル配列を有しないシステイン置換LVL修飾4271 TCR3のβ鎖の予測配列);(ii)配列番号75及び76の両方;(jj)配列番号77及び78の両方;(kk)(i)配列番号79の175位のXが、Thr若しくはCysであり;(ii)配列番号79の239位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;(iii)配列番号79の241位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ(iv)配列番号79の242位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号79のアミノ酸配列(N末端シグナルペプチドを有する4271 TCR4のα鎖);(ll)配列番号80の190位のXが、Ser若しくはCysである、配列番号80のアミノ酸配列(N末端シグナルペプチドを有する4271 TCR4のβ鎖);(mm)配列番号79及び80の両方;(nn)(i)配列番号81の159位のXが、Thr若しくはCysであり;(ii)配列番号81の223位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;(iii)配列番号81の225位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ(iv)配列番号81の226位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号81のアミノ酸配列(N末端シグナルペプチドを有しない4271 TCR4のα鎖の予測配列);(oo)配列番号82の172位のXが、Ser若しくはCysである、配列番号82のアミノ酸配列(N末端シグナルペプチドを有しない4271 TCR4のβ鎖の予測配列);(pp)配列番号81及び82の両方;(qq)配列番号83(N末端シグナル配列を有するシステイン置換LVL修飾4271 TCR4のα鎖);(rr)配列番号84(N末端シグナル配列を有するシステイン置換LVL修飾4271 TCR4のβ鎖);(ss)配列番号85(N末端シグナル配列を有しないシステイン置換LVL修飾4271 TCR4のα鎖の予測配列);(tt)配列番号86(N末端シグナル配列を有しないシステイン置換LVL修飾4271 TCR4のβ鎖の予測配列);(uu)配列番号83及び84の両方;又は(vv)配列番号85及び86の両方のアミノ酸配列を含み得る。本発明の実施形態では、ポリペプチドの配列番号55~58、63~66、71~74、及び79~82のうちのいずれか1つ以上は、表2~4のいずれか1つに定義される通りである。
【0067】
本発明は更に、本明細書に記載のポリペプチドのうちの少なくとも1つを含むタンパク質を提供する。「タンパク質」とは、1本以上のポリペプチド鎖を含む分子を意味する。
【0068】
実施形態では、本発明のタンパク質は、(a)配列番号1~3のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号4~6のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(b)配列番号11~13のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号14~16のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(c)配列番号21~23のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号24~26のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;又は(d)配列番号31~33のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号34~36のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖を含み得る。
【0069】
本発明の別の実施形態では、(i)第1のポリペプチド鎖は、配列番号7のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号8のアミノ酸配列を含む;(ii)第1のポリペプチド鎖は、配列番号9のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号10のアミノ酸配列を含む;(iii)第1のポリペプチド鎖は、配列番号17のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号18のアミノ酸配列を含む;(iv)第1のポリペプチド鎖は、配列番号19のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号20のアミノ酸配列を含む;(v)第1のポリペプチド鎖は、配列番号27のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号28のアミノ酸配列を含む;(vi)第1のポリペプチド鎖は、配列番号29のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号30のアミノ酸配列を含む;(vii)第1のポリペプチド鎖は、配列番号37のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号38のアミノ酸配列を含む;又は(viii)第1のポリペプチド鎖は、配列番号39のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号40のアミノ酸配列を含む。
【0070】
本発明のタンパク質は、本発明の他の態様に関して本明細書に記載する定常領域のいずれかを更に含み得る。これに関して、本発明の実施形態では、(i)第1のポリペプチド鎖は、配列番号49のアミノ酸配列を更に含み得、第2のポリペプチド鎖は、配列番号50のアミノ酸配列を更に含み得る;(ii)第1のポリペプチド鎖は、配列番号51のアミノ酸配列を更に含み得、第2のポリペプチド鎖は、配列番号52のアミノ酸配列を更に含み得る;又は(ii)第1のポリペプチド鎖は、配列番号53のアミノ酸配列を更に含み得、第2のポリペプチド鎖は、配列番号54のアミノ酸配列を更に含み得る。本発明の実施形態では、タンパク質の配列番号49及び50の一方又は両方は、表2~4のいずれか1つに定義される通りである。
【0071】
本発明のタンパク質は、本発明の他の態様に関して本明細書に記載する完全長のα又はβ鎖を含み得る。これに関して、本発明の実施形態では、(a)第1のポリペプチド鎖は、(i)配列番号55の184位のXが、Thr若しくはCysであり;(ii)配列番号55の248位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;(iii)配列番号55の250位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ(iv)配列番号55の251位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号55のアミノ酸配列を含む;(b)第2のポリペプチド鎖は、配列番号56の199位のXがSer若しくはCysである、配列番号56のアミノ酸配列を含む;(c)第1のポリペプチド鎖は、配列番号55のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、56のアミノ酸配列を含む;(d)第1のポリペプチド鎖は、(i)配列番号57の165位のXが、Thr若しくはCysであり;(ii)配列番号57の229位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;(iii)配列番号57の231位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ(iv)配列番号57の232位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号57のアミノ酸配列を含む;(e)第2のポリペプチド鎖は、配列番号58の175位のXがSer若しくはCysである、配列番号58のアミノ酸配列を含む;(f)第1のポリペプチド鎖は、配列番号57のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、58のアミノ酸配列を含む;(g)第1のポリペプチド鎖は、配列番号59のアミノ酸配列を含む;(h)第2のポリペプチド鎖は、配列番号60のアミノ酸配列を含む;(i)第1のポリペプチド鎖は、配列番号61のアミノ酸配列を含む;(j)第2のポリペプチド鎖は、配列番号62のアミノ酸配列を含む;(k)第1のポリペプチド鎖は、配列番号59のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、60のアミノ酸配列を含む;(l)第1のポリペプチド鎖は、配列番号61のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、62のアミノ酸配列を含む;(m)第1のポリペプチド鎖は、(i)配列番号63の182位のXが、Thr若しくはCysであり;(ii)配列番号63の246位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;(iii)配列番号63の248位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ(iv)配列番号63の249位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号63のアミノ酸配列を含む;(n)第2のポリペプチド鎖は、配列番号64の197位のXがSer若しくはCysである、配列番号64のアミノ酸配列を含む;(o)第1のポリペプチド鎖は、配列番号63のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、64のアミノ酸配列を含む;(p)第1のポリペプチド鎖は、(i)配列番号65の164位のXが、Thr若しくはCysであり;(ii)配列番号65の228位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;(iii)配列番号65の230位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ(iv)配列番号65の231位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号65のアミノ酸配列を含む;(q)第2のポリペプチド鎖は、配列番号66の173位のXがSer若しくはCysである、配列番号66のアミノ酸配列を含む;(r)第1のポリペプチド鎖は、配列番号65のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、66のアミノ酸配列を含む;(s)第1のポリペプチド鎖は、配列番号67のアミノ酸配列を含む;(t)第2のポリペプチド鎖は、配列番号68のアミノ酸配列を含む;(u)第1のポリペプチド鎖は、配列番号69のアミノ酸配列を含む;(v)第2のポリペプチド鎖は、配列番号70のアミノ酸配列を含む;(w)第1のポリペプチド鎖は、配列番号67のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、68のアミノ酸配列を含む;(x)第1のポリペプチド鎖は、配列番号69のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、70のアミノ酸配列を含む;(y)第1のポリペプチド鎖は、(i)配列番号71の187位のXが、Thr若しくはCysであり;(ii)配列番号71の251位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;(iii)配列番号71の253位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ(iv)配列番号71の254位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号71のアミノ酸配列を含む;(z)第2のポリペプチド鎖は、配列番号72の191位のXがSer若しくはCysである、配列番号72のアミノ酸配列を含む;(aa)第1のポリペプチド鎖は、配列番号71のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、72のアミノ酸配列を含む;(bb)第1のポリペプチド鎖は、(i)配列番号73の168位のXが、Thr若しくはCysであり;(ii)配列番号73の232位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;(iii)配列番号73の234位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ(iv)配列番号73の235位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号73のアミノ酸配列を含む;(cc)第2のポリペプチド鎖は、配列番号74の173位のXがSer若しくはCysである、配列番号74のアミノ酸配列を含む;(dd)第1のポリペプチド鎖は、配列番号73のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、74のアミノ酸配列を含む;(ee)第1のポリペプチド鎖は、配列番号75のアミノ酸配列を含む;(ff)第2のポリペプチド鎖は、配列番号76のアミノ酸配列を含む;(gg)第1のポリペプチド鎖は、配列番号77のアミノ酸配列を含む;(hh)第2のポリペプチド鎖は、配列番号78のアミノ酸配列を含む;(ii)第1のポリペプチド鎖は、配列番号75のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、76のアミノ酸配列を含む;(jj)第1のポリペプチド鎖は、配列番号77のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、78のアミノ酸配列を含む;(kk)第1のポリペプチド鎖は、(i)配列番号79の175位のXが、Thr若しくはCysであり;(ii)配列番号79の239位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;(iii)配列番号79の241位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ(iv)配列番号79の242位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号79のアミノ酸配列を含む;(ll)第2のポリペプチド鎖は、配列番号80の190位のXがSer若しくはCysである、配列番号80のアミノ酸配列を含む;(mm)第1のポリペプチド鎖は、配列番号79のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、80のアミノ酸配列を含む;(nn)第1のポリペプチド鎖は、(i)配列番号81の159位のXが、Thr若しくはCysであり;(ii)配列番号81の223位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpであり;(iii)配列番号81の225位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、若しくはTrpであり;かつ(iv)配列番号81の226位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、若しくはTrpである、配列番号81のアミノ酸配列を含む;(oo)第2のポリペプチド鎖は、配列番号82の172位のXがSer若しくはCysである、配列番号82のアミノ酸配列を含む;(pp)第1のポリペプチド鎖は、配列番号81のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、82のアミノ酸配列を含む;(qq)第1のポリペプチド鎖は、配列番号83のアミノ酸配列を含む;(rr)第2のポリペプチド鎖は、配列番号84のアミノ酸配列を含む;(ss)第1のポリペプチド鎖は、配列番号85のアミノ酸配列を含む;(tt)第2のポリペプチド鎖は、配列番号86のアミノ酸配列を含む;(uu)第1のポリペプチド鎖は、配列番号83のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、84のアミノ酸配列を含む;又は(vv)第1のポリペプチド鎖は、配列番号85のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、86のアミノ酸配列を含む。本発明の実施形態では、配列番号55~58、63~66、71~74、及び79~82のうちの1つ以上は、表2~4のいずれか1つに定義される通りである。
【0072】
本発明のタンパク質は、TCRであってよい。あるいは、例えばタンパク質がTCRのα鎖及びβ鎖の両方のアミノ酸配列を含む1本のポリペプチド鎖を含む場合、又はタンパク質の第1の及び/若しくは第2のポリペプチド鎖(複数可)が他のアミノ酸配列、例えば免疫グロブリン若しくはその一部をコードしているアミノ酸配列を更に含む場合、本発明のタンパク質は、融合タンパク質であってもよい。これに関して、本発明はまた、少なくとも1つの他のポリペプチドと共に、本明細書に記載の本発明のポリペプチドのうちの少なくとも1つを含む融合タンパク質を提供する。他のポリペプチドは、融合タンパク質の別々のタンパク質として存在してもよく、又は本明細書に記載の本発明のポリペプチドのうちの1つとインフレームで(タンデムに)発現するポリペプチドとして存在してもよい。他のポリペプチドは、免疫グロブリン、CD3、CD4、CD8、MHC分子、CD1分子、例えば、CD1a、CD1b、CD1c、CD1d等が挙げられるがこれらに限定されない任意のペプチド性若しくはタンパク質性の分子又はこれらの一部をコードしていてよい。
【0073】
融合タンパク質は、1コピー以上の本発明のポリペプチド及び/又は1コピー以上の他のポリペプチドを含み得る。例えば、融合タンパク質は、1、2、3、4、5、又はそれ以上のコピーの本発明のポリペプチド及び/又は他のポリペプチドを含み得る。融合タンパク質を作製する好適な方法は、当技術分野において公知であり、例えば、組み換え法が挙げられる。
【0074】
本発明の幾つかの実施形態では、本発明のTCR、ポリペプチド、及びタンパク質は、α鎖及びβ鎖を連結するリンカーペプチドを含む単一のタンパク質として発現し得る。これに関して、本発明のTCR、ポリペプチド、及びタンパク質は、リンカーペプチドを更に含み得る。リンカーペプチドは、有利なことに、宿主細胞における組み換え体のTCR、ポリペプチド、及び/又はタンパク質の発現を促進し得る。リンカーペプチドは、任意の好適なアミノ酸配列を含み得る。リンカーペプチドは、切断可能なリンカーペプチドであってもよい。例えば、リンカーペプチドは、RAKRSGSGATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号87)のアミノ酸配列を含むフリン-SGSG-P2Aリンカーペプチドであってよい。リンカーペプチドを含むコンストラクトが宿主細胞によって発現されたら、リンカーペプチドを切断してもよく、その結果、分離されたα鎖及びβ鎖が得られる。本発明の実施形態では、TCR、ポリペプチド、又はタンパク質は、完全長α鎖、完全長β鎖、及びα鎖とβ鎖との間に位置するリンカーペプチドを含むアミノ酸配列を含み得る。
【0075】
本発明のタンパク質は、本明細書に記載の本発明のポリペプチドのうちの少なくとも1つを含む、組み換え抗体又はその抗原結合部分であってよい。本明細書で使用するとき、「組み換え抗体」とは、本発明のポリペプチドのうちの少なくとも1つ、及び抗体のポリペプチド鎖又はその抗原結合部分を含む組み換え(例えば、遺伝的に操作された)タンパク質を指す。抗体のポリペプチド又はその抗原結合部分は、抗体の重鎖、軽鎖、重鎖若しくは軽鎖の可変領域若しくは定常領域、単鎖可変領域(scFv)、又はFc、Fab、若しくはF(ab)2’の断片等であってよい。抗体のポリペプチド鎖又はその抗原結合部分は、組み換え抗体の別々のポリペプチドとして存在してよい。あるいは、抗体のポリペプチド鎖又はその抗原結合部分は、本発明のポリペプチドとインフレームで(タンデムに)発現するポリペプチドとして存在してもよい。抗体のポリペプチド又はその抗原結合部分は、本明細書に記載の抗体及び抗体断片のいずれかを含む、任意の抗体又は任意の抗体断片のポリペプチドであってよい。
【0076】
本明細書に記載の本発明のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質の機能的バリアントは、本発明の範囲に含まれる。用語「機能的バリアント」とは、本明細書で使用するとき、親のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質に対して実質的な又は著しい配列の同一性又は類似性を有するTCR、ポリペプチド、又はタンパク質を指し、該機能的バリアントは、該機能的バリアントがそのバリアントであるTCR、ポリペプチド、又はタンパク質の生物活性を保持している。機能的バリアントは、例えば、親のTCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質と同様の程度、同一程度、又はより高程度、親TCRが抗原特異性を有するか又は親のポリペプチド若しくはタンパク質が特異的に結合するG12D RASに特異的に結合する能力を保持している、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質(親のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質)のバリアントを包含する。親のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質に関して、機能的バリアントは、例えば、それぞれ親のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質に対してアミノ酸配列が少なくとも約30%、約50%、約75%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又はそれ以上同一であってよい。
【0077】
機能的バリアントは、例えば、少なくとも1つの保存的アミノ酸置換を有する親のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質のアミノ酸配列を含み得る。保存的アミノ酸置換は、当技術分野において公知であり、特定の物理的及び/又は化学的特性を有するあるアミノ酸が、同じ化学的又は物理的特性を有する別のアミノ酸に交換されるアミノ酸置換を含む。例えば、保存的アミノ酸置換は、酸性アミノ酸の別の酸性アミノ酸(例えば、Asp又はGlu)による置換、非極性側鎖を有するアミノ酸の、非極性側鎖を有する別のアミノ酸(例えば、Ala、Gly、Val、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Val等)による置換、塩基性アミノ酸の別の塩基性アミノ酸(Lys、Arg等)による置換、極性側鎖を有するアミノ酸の、極性側鎖を有する別のアミノ酸(Asn、Cys、Gln、Ser、Thr、Tyr等)による置換等であってよい。
【0078】
あるいは又は更に、機能的バリアントは、少なくとも1つの非保存的アミノ酸置換を有する親のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質のアミノ酸配列を含み得る。この場合、非保存的アミノ酸置換が機能的バリアントの生物活性に干渉もせず、阻害もしないことが好ましい。好ましくは、非保存的アミノ酸置換は機能的バリアントの生物活性を増強し、その結果、機能的バリアントの生物活性は、親のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質と比べて増大する。
【0079】
TCR、ポリペプチド、又はタンパク質は、本明細書に記載の指定のアミノ酸配列(複数可)から本質的になっていてよく、その結果、該TCR、ポリペプチド、又はタンパク質の他の構成要素、例えば他のアミノ酸が、該TCR、ポリペプチド、又はタンパク質の生物活性を実質的に変化させることがない。この点に関して、本発明のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質は、例えば、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号86、配列番号55及び56の両方、配列番号57及び58の両方、配列番号59及び60の両方、配列番号61及び62の両方、配列番号63及び64の両方、配列番号65及び66の両方、配列番号67及び68の両方、配列番号69及び70の両方、配列番号71及び72の両方、配列番号73及び74の両方、配列番号75及び76の両方、配列番号77及び78の両方、配列番号79及び80の両方、配列番号81及び82の両方、配列番号83及び84の両方、又は配列番号85及び86の両方のアミノ酸配列から本質的になっていてよい。また、例えば、本発明のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質は、(i)配列番号7、(ii)配列番号8、(iii)配列番号9、(iv)配列番号10、(v)配列番号17、(vi)配列番号18、(vii)配列番号19、(viii)配列番号20、(ix)配列番号27、(x)配列番号28、(xi)配列番号29、(xii)配列番号30、(xiii)配列番号37、(xiv)配列番号38、(xv)配列番号39、(xvi)配列番号40、(xvii)配列番号7及び8の両方、(xviii)配列番号9及び10の両方、(xix)配列番号17及び18の両方、(xx)配列番号19及び20の両方、(xxi)配列番号27及び28の両方、(xxii)配列番号29及び30の両方、(xxiii)配列番号37及び38の両方、又は(xxiv)配列番号39及び40の両方のアミノ酸配列(複数可)から本質的になっていてよい。更に、発明のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質は、(a)配列番号1~3の全て、(b)配列番号4~6の全て、(c)配列番号1~6の全て、(d)配列番号11~13の全て、(e)配列番号14~16の全て、(f)配列番号11~16の全て、(g)配列番号21~23の全て、(h)配列番号24~26の全て、(i)配列番号21~26の全て、(j)配列番号31~33の全て、(k)配列34~36の全て、又は(l)配列31~36の全てのアミノ酸配列から本質的になっていてよい。
【0080】
本発明のTCR、ポリペプチド、及びタンパク質は、任意の長さであってよい、すなわち、該TCR、ポリペプチド、又はタンパク質が、その生物活性、例えば、G12D RASに特異的に結合する;哺乳類におけるがんを検出する;又は哺乳類におけるがんを治療若しくは予防する能力等を保持している限り、任意の数のアミノ酸を含んでいてよい。例えば、ポリペプチドは、約50~約5000アミノ酸長の範囲、例えば、約50、約70、約75、約100、約125、約150、約175、約200、約300、約400、約500、約600、約700、約800、約900、約1000又はそれ以上のアミノ酸長であってよい。これに関して、本発明のポリペプチドは、オリゴペプチドも含む。
【0081】
本発明のTCR、ポリペプチド、及びタンパク質は、1つ以上の天然に存在するアミノ酸の代わりに合成アミノ酸を含んでいてもよい。このような合成アミノ酸は、当技術分野において公知であり、例えば、アミノシクロヘキサンカルボン酸、ノルロイシン、α-アミノn-デカン酸、ホモセリン、S-アセチルアミノメチル-システイン、トランス-3-及びトランス-4-ヒドロキシプロリン、4-アミノフェニルアラニン、4-ニトロフェニルアラニン、4-クロロフェニルアラニン、4-カルボキシフェニルアラニン、β-フェニルセリンβ-ヒドロキシフェニルアラニン、フェニルグリシン、α-ナフチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、インドリン-2-カルボン酸、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、アミノマロン酸、アミノマロン酸モノアミド、N’-ベンジル-N’-メチル-リジン、N’,N’-ジベンジル-リジン、6-ヒドロキシリジン、オルニチン、α-アミノシクロペンタンカルボン酸、α-アミノシクロヘキサンカルボン酸、α-アミノシクロヘプタンカルボン酸、α-(2-アミノ-2-ノルボルナン)-カルボン酸、α,γ-ジアミノ酪酸、α,β-ジアミノプロピオン酸、ホモフェニルアラニン、及びα-tert-ブチルグリシンが挙げられる。
【0082】
本発明のTCR、ポリペプチド、及びタンパク質を、グリコシル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化、エステル化、N-アシル化、例えばジスルフィド架橋を介して環化、又は酸付加塩に変換、及び/又は任意で二量体化若しくは多量体化、又はコンジュゲートしてもよい。
【0083】
本発明のTCR、ポリペプチド、及び/又はタンパク質は、当技術分野において公知の方法、例えば、デノボ合成によって得ることができる。また、ポリペプチド及びタンパク質は、標準的な組み換え法を使用し、本明細書に記載の核酸を使用して組み換え的に生成することができる。例えば、Green and Sambrook,Molecular Cloning: A Laboratory Manual,4th ed.,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(2012)を参照。あるいは、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、及び/又はタンパク質は、様々な商業実体のいずれかによって合成されてもよい。これに関して、本発明のTCR、ポリペプチド、及びタンパク質は、合成であってもよく、組み換え体であってもよく、単離されていてもよく、及び/又は精製されていてもよい。本発明の実施形態は、本発明の他の態様に関して本明細書に記載する核酸又はベクターのいずれかによってコードされている単離又は精製されたTCR、ポリペプチド、又はタンパク質を提供する。本発明の別の実施形態は、本発明の他の態様に関して本明細書に記載する核酸又はベクターのいずれかが細胞内で発現した結果得られる、単離又は精製されたTCR、ポリペプチド、又はタンパク質を提供する。本発明の更に別の実施形態は、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質のいずれかを生成する方法であって、該TCR、ポリペプチド、又はタンパク質が生成されるように、本明細書に記載の宿主細胞又は宿主細胞の集団のいずれかを培養することを含む方法を提供する。
【0084】
本発明のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質(これらの機能的部分又はバリアントのいずれかを含む)、核酸、組み換え発現ベクター、宿主細胞、宿主細胞の集団、又は抗体若しくはその抗原結合部分のいずれかを含むコンジュゲート、例えばバイオコンジュゲートも本発明の範囲に含まれる。コンジュゲート、及び一般にコンジュゲートを合成する方法は、当技術分野において公知である。
【0085】
本発明の実施形態は、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質のいずれかをコードしているヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。「核酸」は、本明細書で使用するとき、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、及び「核酸分子」を含み、一般的に、DNA又はRNAのポリマーを意味し、これらは、一本鎖であっても二本鎖であってもよく、天然の、非天然の、又は改変されたヌクレオチドを含有していてもよく、そして、改変されていないオリゴヌクレオチドのヌクレオチド間にみられるホスホジエステルの代わりに天然の、非天然の、又は改変されたヌクレオチド間結合、例えばホスホロアミデート結合又はホスホロチオエート結合を含有していてもよい。実施形態では、核酸は、相補的DNA(cDNA)を含む。核酸は、任意の挿入、欠失、逆位、及び/又は置換を含まないことが一般に好ましい。しかし、幾つかの例では、本明細書で論じた通り、核酸が1つ以上の挿入、欠失、逆位、及び/又は置換を含むことが好適である場合もある。
【0086】
好ましくは、本発明の核酸は、組み換え体である。本明細書で使用するとき、用語「組み換え体」とは、(i)天然若しくは合成の核酸セグメントを生細胞で複製可能な核酸分子に連結させることによって生細胞の外部で構築される分子、又は(ii)上記(i)に記載されているものの複製によって得られる分子を指す。本明細書における目的のために、複製は、インビトロ複製であってもインビボ複製であってもよい。
【0087】
本発明の実施形態では、核酸は、配列番号95(切断可能なリンカーペプチドによって分離された4271 TCR1のα鎖及びβ鎖の両方をコードしている)、配列番号96(切断可能なリンカーペプチドによって分離された4271 TCR2のα鎖及びβ鎖の両方をコードしている)、配列番号97(切断可能なリンカーペプチドによって分離された4271 TCR3のα鎖及びβ鎖の両方をコードしている)、又は配列番号98(切断可能なリンカーペプチドによって分離された4271 TCR4のα鎖及びβ鎖の両方をコードしている)のヌクレオチド配列を含む。
【0088】
核酸は、当技術分野において公知の手順を使用して、化学合成及び/又は酵素ライゲーション反応に基づいて構築され得る。例えば、Green及びSambrookら、上掲を参照。例えば、核酸は、天然に存在するヌクレオチド、又は分子の生物学的安定性を増大させるか若しくはハイブリダイゼーションの際に形成される二本鎖の物理的安定性を増大させるために設計された様々に改変されたヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート誘導体及びアクリジン置換ヌクレオチド)を使用して、化学的に合成することができる。核酸を作製するために使用することができる改変ヌクレオチドの例としては、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β-D-ガラクトシルキュェオシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-置換アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルキュェオシン、5’-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、プソイドウラシル、キュェオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、及び2,6-ジアミノプリンが挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、本発明の核酸のうちの1つ以上は、様々な商業実体のいずれかから購入することもできる。
【0089】
核酸は、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質のいずれかをコードしている任意のヌクレオチド配列を含み得る。本発明の実施形態では、核酸は、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質のいずれかをコードしている、コドン最適化されたヌクレオチド配列を含む。任意の特定の理論又は機序に縛られるものではないが、ヌクレオチド配列のコドン最適化は、mRNA転写物の翻訳効率を増大させると考えられる。ヌクレオチド配列のコドン最適化は、ネイティブなコドンを、同じアミノ酸をコードしているが細胞内でより容易に利用可能なtRNAによって翻訳され得る別のコドンで置換し、それによって、翻訳効率を増大させることを伴い得る。また、ヌクレオチド配列の最適化は、翻訳に干渉するmRNAの二次構造を低減し、それによって、翻訳効率を増大させることもできる。
【0090】
また、本発明は、本明細書に記載の核酸のいずれかのヌクレオチド配列に対して相補的なヌクレオチド配列、又は本明細書に記載の核酸のいずれかのヌクレオチド配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。
【0091】
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列は、好ましくは、高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする。「高ストリンジェントな条件」とは、ヌクレオチド配列が、非特異的ハイブリダイゼーションよりも検出可能に多い量で標的配列(本明細書に記載の核酸のいずれかのヌクレオチド配列)に特異的にハイブリダイズすることを意味する。高ストリンジェントな条件は、正確な相補的配列を有するポリヌクレオチド又は幾つかの散在している不一致しか含有していないものを、該ヌクレオチド配列に一致している幾つかの小さな領域(例えば、3~10塩基)を偶然有するランダム配列と識別する条件を含む。このような相補的な小さな領域は、14~17塩基又はそれ以上の完全長相補体よりも容易に融解するので、高ストリンジェントなハイブリダイゼーションによって容易に識別可能になる。比較的高ストリンジェントな条件は、例えば、約0.02~0.1M NaCl又は等価物、約50~70℃の温度によって提供されるもの等の低塩及び/又は高温条件を含む。このような高ストリンジェントな条件は、ヌクレオチド配列とテンプレート又は標的鎖との間の(もし存在するとしても)わずかな不一致しか許容せず、本発明のTCRのいずれかの発現を検出するのに特に好適である。一般的に、漸増量のホルムアミドを添加することによって、条件をよりストリンジェントにすることができると理解される。
【0092】
本発明の実施形態は、本明細書に記載の核酸のいずれかと少なくとも約70%以上、例えば、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。これに関して、核酸は、本明細書に記載のヌクレオチド配列のいずれかから本質的になっていてよい。
【0093】
本発明の実施形態はまた、5’から3’に向かって、第1の核酸配列及び第2のヌクレオチド配列を含む、単離又は精製された核酸であって、該第1及び第2のヌクレオチド配列が、それぞれ、配列番号7及び8;8及び7;9及び10;10及び9;17及び18;18及び17;19及び20;20及び19;27及び28;28及び27;29及び30;30及び29;37及び38;38及び37;39及び40;40及び39;55及び56;56及び55;57及び58;58及び57;59及び60;60及び59;61及び62;62及び61;63及び64;64及び63;65及び66;66及び65;67及び68;68及び67;69及び70;70及び69;71及び72;72及び71;73及び74;74及び73;75及び76;76及び75;77及び78;78及び77;79及び80;80及び79;81及び82;82及び81;83及び84;84及び83;85及び86;又は86及び85のアミノ配列をコードしている核酸を提供する。
【0094】
本発明の実施形態では、単離又は精製された核酸は、第1のヌクレオチド配列と第2のヌクレオチド配列との間に介在する第3のヌクレオチド配列を更に含み、該第3のヌクレオチド配列は、切断可能なリンカーペプチドをコードしている。本発明の実施形態では、切断可能なリンカーペプチドは、RAKRSGSGATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号87)のアミノ酸配列を含む。
【0095】
本発明の核酸は、組み換え発現ベクターに組み込むことができる。これに関して、本発明は、本発明の核酸のいずれかを含む組み換え発現ベクターを提供する。本発明の実施形態では、組み換え発現ベクターは、α鎖、β鎖、及びリンカーペプチドをコードしているヌクレオチド配列を含む。
【0096】
本明細書における目的のために、用語「組み換え発現ベクター」は、mRNA、タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドをコードしているヌクレオチド配列を含み、宿主細胞内で該mRNA、タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドを発現させるのに十分な条件下でベクターを該細胞と接触させたときに該細胞が該mRNA、タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドを発現できるようになる、遺伝的に改変されたオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドのコンストラクトを意味する。本発明のベクターは、全体としては天然には存在しない。しかし、ベクターの一部が天然に存在していてもよい。本発明の組み換え発現ベクターは、DNA及びRNAが挙げられるがこれらに限定されない任意の種類のヌクレオチドを含んでいてよく、該DNA及びRNAは、一本鎖であっても二本鎖であってもよく、合成されても天然源から部分的に入手されてもよく、天然の、非天然の、又は改変されたヌクレオチドを含有していてもよい。組み換え発現ベクターは、天然に存在するヌクレオチド間結合、天然には存在しないヌクレオチド間結合、又は両方の種類の結合を含んでいてよい。好ましくは、天然には存在しないか又は改変されたヌクレオチド又はヌクレオチド間結合は、ベクターの転写も複製も妨げない。
【0097】
本発明の組み換え発現ベクターは、任意の好適な組み換え発現ベクターであってよく、任意の好適な宿主細胞を形質転換又はトランスフェクトするために使用することができる。好適なベクターとしては、プラスミド及びウイルス等、伝播及び増殖用、若しくは発現用、又は両方のために設計されたものが挙げられる。ベクターは、pUCシリーズ(Fermentas Life Sciences)、pBluescriptシリーズ(Stratagene,LaJolla,CA)、pETシリーズ(Novagen,Madison,WI)、pGEXシリーズ(Pharmacia Biotech,Uppsala,Sweden)、及びpEXシリーズ(Clontech,Palo Alto,CA)からなる群から選択され得る。λGT10、λGT11、λZapII(Stratagene)、λEMBL4、及びλNM1149等のバクテリオファージベクターを使用してもよい。植物発現ベクターの例としては、pBI01、pBI101.2、pBI101.3、pBI121、及びpBIN19(Clontech)が挙げられる。動物発現ベクターの例としては、pEUK-Cl、pMAM、及びpMAMneo(Clontech)が挙げられる。好ましくは、組み換え発現ベクターは、ウイルスベクター、例えば、レトロウイルスベクターである。特に好ましい実施形態では、組み換え発現ベクターは、MSGV1ベクターである。本発明の実施形態では、組換え発現ベクターは、トランスポゾン又はレンチウイルスベクターである。
【0098】
本発明の組み換え発現ベクターは、例えば、Green及びSambrookら、上掲に記載されている標準的な組み換えDNA技術を使用して調製することができる。環状又は線状である発現ベクターのコンストラクトは、原核又は真核の宿主細胞において機能する複製系を含有するように調製することができる。複製系は、例えば、ColEl、2μプラスミド、λ、SV40、ウシパピローマウイルス等に由来していてよい。
【0099】
望ましくは、組み換え発現ベクターは、調節配列、例えば、必要に応じて、そして、ベクターがDNAベースであるかRNAベースであるかを考慮して、ベクターが導入される宿主細胞の種類(例えば、細菌、真菌、植物、又は動物)に特異的な転写及び翻訳の開始及び終止のコドンを含む。
【0100】
組み換え発現ベクターは、形質転換又はトランスフェクトされた宿主細胞の選別を可能にする1つ以上のマーカー遺伝子を含んでいてよい。マーカー遺伝子は、殺生物剤耐性、例えば抗生物質、重金属等に対する耐性、原栄養性を与えるための栄養要求性宿主における補完等を含む。本発明の発現ベクターに好適なマーカー遺伝子は、例えば、ネオマイシン/G418耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ヒスチジノール耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、及びアンピシリン耐性遺伝子を含む。
【0101】
組み換え発現ベクターは、TCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質をコードしているヌクレオチド配列に、又はTCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質をコードしているヌクレオチド配列に相補的であるか若しくはハイブリダイズするヌクレオチド配列に動作可能に連結しているネイティブ又は非ネイティブのプロモータを含んでいてよい。例えば、強い、弱い、誘導性、組織特異的、及び発生段階特異的なプロモータの選別は、当業者の技能の範囲内である。同様に、ヌクレオチド配列とプロモータとの組み合わせも当業者の技能の範囲内である。プロモータは、非ウイルスプロモータであってもよく、ウイルスプロモータ、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモータ、SV40プロモータ、RSVプロモータ、及びマウス幹細胞ウイルスの末端反復配列にみられるプロモータであってもよい。
【0102】
本発明の組み換え発現ベクターは、一過的発現用、安定的発現用、又は両方のために設計することができる。また、組み換え発現ベクターは、構成的発現用又は誘導性発現用に作製することができる。
【0103】
更に、組み換え発現ベクターは、自殺遺伝子を含むように作製してもよい。本明細書で使用するとき、用語「自殺遺伝子」とは、自殺遺伝子を発現している細胞を死に至らしめる遺伝子を指す。自殺遺伝子は、該遺伝子が発現する細胞に対して剤、例えば薬物に対する感受性を付与し、そして、該細胞が該剤と接触したとき又は該剤に曝露されたときに該細胞を死に至らしめる遺伝子であってよい。自殺遺伝子は、当技術分野において公知であり、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、シトシンデアミナーゼ、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、ニトロレダクターゼ、及び誘導性カスパーゼ9遺伝子系を含む。
【0104】
本発明の別の実施形態は、更に、本明細書に記載の核酸又は組み換え発現ベクターのいずれかを含む宿主細胞を提供する。本明細書で使用するとき、用語「宿主細胞」とは、本発明の組み換え発現ベクターを含有し得る任意の種類の細胞を指す。宿主細胞は、真核細胞、例えば、植物、動物、真菌、又は藻類であってもよく、原核細胞、例えば、細菌又は原生動物であってもよい。宿主細胞は、培養細胞であってもよく、初代細胞、すなわち、生物、例えばヒトから直接単離された細胞であってもよい。宿主細胞は、接着細胞であってもよく、懸濁細胞、すなわち、懸濁液中で成長する細胞であってもよい。好適な宿主細胞は、当技術分野において公知であり、例えば、DH5α大腸菌細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、サルVERO細胞、COS細胞、HEK293細胞等が挙げられる。組み換え発現ベクターを増幅又は複製する目的のために、宿主細胞は、好ましくは、原核細胞、例えばDH5α細胞である。組み換え体のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質を生成する目的のために、宿主細胞は、好ましくは、哺乳類細胞である。最も好ましくは、宿主細胞は、ヒト細胞である。宿主細胞は、任意の細胞型であってよく、任意の種類の組織を起源としていてよく、任意の発生段階であってよいが、宿主細胞は、好ましくは、末梢血リンパ球(PBL)又は末梢血単核細胞(PBMC)である。より好ましくは、宿主細胞は、T細胞である。本発明の実施形態では、宿主細胞は、ヒトリンパ球である。本発明の別の実施形態では、宿主細胞は、T細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、インバリアントナチュラルキラーT(iNKT)細胞、及びナチュラルキラー(NK)細胞からなる群から選択される。本発明の更に別の実施形態は、MTEYKLVVVGADGVGKSALTIQLI(配列番号88)のペプチドに対して抗原特異性を有するTCRを発現する宿主細胞を生成する方法であって、本明細書に記載のベクターのいずれかの該細胞への導入を可能にする条件下で、該細胞を該ベクターと接触させることを含む方法を提供する。
【0105】
本明細書における目的のために、T細胞は、培養T細胞、例えば初代T細胞、又は培養T細胞株由来のT細胞、例えばJurkat、SupT1等、又は哺乳類から得られたT細胞等の任意のT細胞であってよい。哺乳類から得られる場合、T細胞は、血液、骨髄、リンパ節、胸腺、又は他の組織若しくは流体を含むがこれらに限定されない多数の供給源から得ることができる。また、T細胞は、濃縮又は精製されていてもよい。好ましくは、T細胞は、ヒトT細胞である。T細胞は、任意の種類のT細胞であってよく、任意の発生段階であってよく、CD4+/CD8+二重陽性T細胞、CD4+ヘルパーT細胞、例えばTh1及びTh2細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、メモリT細胞(例えば、セントラルメモリT細胞及びエフェクタメモリT細胞)、ナイーブT細胞等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
また、本明細書に記載の少なくとも1つの宿主細胞を含む細胞の集団が本発明によって提供される。細胞の集団は、組み換え発現ベクターのいずれも含まない少なくとも1つの他の細胞、例えば宿主細胞(例えば、T細胞)、又はT細胞以外の細胞、例えばB細胞、マクロファージ、好中球、赤血球、肝細胞、内皮細胞、上皮細胞、筋肉細胞、脳細胞等に加えて、記載される組み換え発現ベクターのいずれかを含む宿主細胞を含む不均質な集団であってよい。あるいは、細胞の集団は、組み換え発現ベクターを含む(例えば、から本質的になる)宿主細胞を主に含む、実質的に均質な集団であってもよい。また、集団は、該集団の全ての細胞が、組み換え発現ベクターを含む1つの宿主細胞のクローンであり、その結果、該集団の全ての細胞が組み換え発現ベクターを含む、細胞のクローン集団であってもよい。本発明の一実施形態では、細胞の集団は、本明細書に記載の組み換え発現ベクターを含む宿主細胞を含むクローン集団である。
【0107】
本発明の実施形態では、集団内の細胞数を急速に拡大させることができる。T細胞数の拡大は、例えば、米国特許第8,034,334号、同第8,383,099号、米国特許出願公開第2012/0244133号、Dudley et al.,J.Immunother.,26:332-42(2003)、及びRiddell et al.,J.Immunol.Methods,128:189-201(1990)に記載されている通り、当技術分野において公知の多数の方法のいずれかによって実現することができる。実施形態では、T細胞数の拡大は、該T細胞をOKT3抗体、IL-2、及びフィーダーPBMC(例えば、放射線照射された同種PBMC)と共に培養することによって実行される。
【0108】
本発明のTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組み換え発現ベクター、及び宿主細胞(その集団を含む)は、単離及び/又は精製されてもよい。用語「単離された」は、本明細書で使用するとき、その天然環境から取り出されていることを意味する。用語「精製された」は、本明細書で使用するとき、純度が増大していることを意味し、「純度」は相対的な用語であり、必ずしも絶対純度と解釈される訳ではない。例えば、純度は、少なくとも約50%であってよく、約60%超、約70%超、約80%超、約90%超、約95%超であってもよく、約100%であってもよい。
【0109】
本発明のTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組み換え発現ベクター、及び宿主細胞(その集団を含む)(以後、これらを全てまとめて「本発明のTCR材料」と称する)は、医薬組成物等の組成物に製剤化してもよい。これに関して、本発明は、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、及び宿主細胞(その集団を含む)のいずれかと、薬学的に許容し得る担体とを含む医薬組成物を提供する。本発明のTCR材料のいずれかを含有する本発明の医薬組成物は、1つを超える本発明のTCR材料、例えば、ポリペプチド及び核酸又は2つ以上の異なるTCRを含んでいてもよい。あるいは、医薬組成物は、別の薬学的活性剤(複数可)又は薬物(複数可)、例えば、化学療法剤、例えば、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン等と組み合わせて、本発明のTCR材料を含み得る。
【0110】
好ましくは、担体は、薬学的に許容し得る担体である。医薬組成物に関して、担体は、検討中の特定の本発明のTCR材料に従来使用されているもののいずれかであってよい。投与可能な組成物を調製する方法は、当業者に公知であるか又は明らかであり、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,22nd Ed.,Pharmaceutical Press(2012)により詳細に記載されている。薬学的に許容し得る担体は、使用条件下で有害な副作用も毒性も有しないものであることが好ましい。
【0111】
担体の選択は、具体的な本発明のTCR材料によって、並びに本発明のTCR材料を投与するために使用される具体的な方法によって部分的に決定される。従って、本発明の医薬組成物の様々な好適な製剤が存在する。好適な製剤は、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、腫瘍内、又は腹腔内に投与するもののいずれかを含み得る。1つを超える経路を使用して本発明のTCR材料を投与してよく、特定の例では、特定の経路が別の経路よりも即時かつより有効な応答を提供し得る。
【0112】
好ましくは、本発明のTCR材料は、例えば静脈内に注射することによって投与される。本発明のTCR材料が、本発明のTCRを発現している宿主細胞(又はその集団)である場合、注射用の細胞のための薬学的に許容し得る担体は、任意の等張担体、例えば、通常生理食塩水(水中約0.90%w/v NaCl、水中約300mOsm/L NaCl、又は水1リットルあたり約9.0g NaCl)、NORMOSOL R電解質溶液(Abbott,Chicago,IL)、PLASMA-LYTE A(Baxter,Deerfield,IL)、水中約5%デキストロース、又は乳酸リンゲル液等を含んでいてよい。実施形態では、薬学的に許容し得る担体にヒト血清アルブメン(albumen)を補給する。
【0113】
本発明の目的のために、投与される本発明のTCR材料の量又は用量(例えば、本発明のTCR材料が1つ以上の細胞である場合は細胞数)は、適切な時間枠にわたって対象又は動物において効果、例えば治療的又は予防的応答をもたらすのに十分でなければならない。例えば、本発明のTCR材料の用量は、投与時点から約2時間以上、例えば、12~24時間又はそれ以上の期間、がん抗原(例えば、G12D RAS)に結合するか又はがんを検出、治療、若しくは予防するのに十分でなければならない。特定の実施形態では、期間は更に長くてもよい。用量は、具体的な本発明のTCR材料の有効性及び動物(例えば、ヒト)の状態、並びに治療される動物(例えば、ヒト)の体重によって決定される。
【0114】
投与される用量を決定するための多くのアッセイが、当技術分野において公知である。本発明の目的のために、例えば、それぞれ異なる用量のT細胞を与えた哺乳類のセットの中で、所与の用量の本発明のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質を発現しているT細胞を哺乳類に投与した際にこのようなT細胞によって標的細胞が溶解する又はIFN-γが分泌される程度を比較することを含むアッセイを使用して、哺乳類に投与する開始用量を決定することができる。特定の用量を投与した際に標的細胞が溶解する又はIFN-γが分泌される程度は、当技術分野において公知の方法によってアッセイすることができる。
【0115】
本発明のTCR材料の用量は、具体的な本発明のTCR材料の投与に付随し得る任意の有害な副作用の存在、性質、及び程度によっても決定される。典型的には、主治医は、様々な要因、例えば、年齢、体重、全体的な健康状態、食生活、性別、投与される本発明のTCR材料、投与経路、及び治療されるがんの重症度を考慮して、各個々の患者を治療するための本発明のTCR材料の投与量を決定する。本発明のTCR材料が細胞の集団である実施形態では、注入1回あたりの投与される細胞数は、例えば、約1×106~約1×1012個又はそれ以上の細胞で変動し得る。特定の実施形態では、1×106個未満の細胞を投与してもよい。
【0116】
当業者であれば、本発明のTCR材料を任意の数の方法で修飾してよく、その結果、該修飾を通して本発明のTCR材料の治療又は予防の有効性が増大することを容易に理解するであろう。例えば、本発明のTCR材料を、直接又は架橋を介して間接的に化学療法剤にコンジュゲートしてもよい。化合物の化学療法剤へのコンジュゲートの実施は、当技術分野において公知である。当業者は、架橋及び/又は化学療法剤が本発明のTCR材料に結合しても本発明のTCR材料の機能、すなわち、G12D RASに結合する能力にもがんを検出、治療、若しくは予防する能力にも干渉しない限り、本発明のTCR材料の機能に必須ではない本発明のTCR材料の部位が、架橋及び/又は化学療法剤を結合させるのに好適な部位であることを認識する。
【0117】
本発明の医薬組成物、TCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組み換え発現ベクター、宿主細胞、及び細胞の集団は、がんを治療又は予防する方法において使用できることが企図される。特定の理論に縛られるものではないが、本発明のTCRは、G12D RASに特異的に結合し、その結果、TCR(又は関連する本発明のポリペプチド若しくはタンパク質)は、細胞によって発現されたとき、G12D RASを発現している標的細胞に対する免疫応答を媒介することができると考えられる。これに関して、本発明の実施形態は、哺乳類におけるがんを治療又は予防する方法であって、本明細書に記載の医薬組成物、TCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質のいずれか、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、タンパク質のいずれかをコードしているヌクレオチド配列を含む任意の核酸若しくは組み換え発現ベクター、又は本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質のいずれかをコードしている組み換えベクターを含む任意の宿主細胞若しくは細胞の集団を、哺乳類におけるがんを治療又は予防するのに有効な量、該哺乳類に投与することを含む方法を提供する。
【0118】
本発明の実施形態は、哺乳類においてがんに対する免疫応答を誘導する方法であって、本明細書に記載の医薬組成物、TCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質のいずれかをコードしているヌクレオチド配列を含む任意の核酸若しくは組み換え発現ベクター、又は本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質のいずれかをコードしている組み換えベクターを含む任意の宿主細胞若しくは細胞の集団のいずれかを、哺乳類においてがんに対する免疫応答を誘導するのに有効な量、該哺乳類に投与することを含む方法を提供する。
【0119】
本発明の実施形態は、哺乳類におけるがんの治療又は予防において使用するための、本明細書に記載の医薬組成物、TCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、タンパク質のいずれかをコードしているヌクレオチド配列を含む任意の核酸若しくは組み換え発現ベクター、又は本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質のいずれかをコードしている組み換えベクターを含む任意の宿主細胞若しくは細胞の集団のいずれかを提供する。
【0120】
本発明の実施形態は、哺乳類におけるがんに対する免疫応答の誘導において使用するための、本明細書に記載の医薬組成物、TCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質のいずれかをコードしているヌクレオチド配列を含む任意の核酸若しくは組み換え発現ベクター、又は本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質のいずれかをコードしている組み換えベクターを含む任意の宿主細胞若しくは細胞の集団のいずれかを提供する。
【0121】
用語「治療する」及び「予防する」、並びにそれから派生する語は、本明細書で使用するとき、必ずしも100%、すなわち、完全な治療又は予防を意味するものではない。どちらかといえば、当業者が潜在的な利点又は治療効果を有すると認識する、様々な程度の治療又は予防が存在する。これに関して、本発明の方法は、哺乳類におけるがんの任意の量の任意のレベルの治療又は予防を提供することができる。更に、本発明の方法によって提供される治療又は予防は、治療又は予防されるがんの1つ以上の病態又は症状の治療又は予防を含み得る。例えば、治療又は予防は、腫瘍の退縮を促進することを含み得る。また、本明細書における目的のために、「予防」は、がん又はその症状若しくは病態の発生を遅らせることを包含し得る。あるいは又は更に、「予防」は、がん又はその症状若しくは病態の再発を防ぐ又は遅らせることを包含し得る。
【0122】
また、哺乳類におけるがんの存在を検出する方法も提供される。方法は、(i)本明細書に記載の本発明のTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組み換え発現ベクター、宿主細胞、細胞の集団、又は医薬組成物のいずれかを、哺乳類由来の1つ以上の細胞を含むサンプルと接触させ、それによって、複合体を形成させることと、(ii)該複合体を検出することとを含み、該複合体の検出が、哺乳類におけるがんの存在を示す。
【0123】
哺乳類におけるがんを検出する本発明の方法に関して、細胞のサンプルは、全細胞、その溶解物、又は全細胞溶解物の画分、例えば、核若しくは細胞質の画分、全タンパク質画分、又は核酸画分を含むサンプルであってよい。
【0124】
がんを検出する本発明の方法の目的のために、接触は、哺乳類に対してインビトロ又はインビボで行ってよい。好ましくは、インビトロで接触させる。
【0125】
また、複合体の検出は、当技術分野において公知の任意の数の方法を通して行うことができる。例えば、本明細書に記載の本発明のTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組み換え発現ベクター、宿主細胞、又は細胞の集団を、検出可能な標識、例えば、放射性同位体、フルオロフォア(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE))、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ)、及び元素粒子(例えば、金粒子)等で標識してよい。
【0126】
宿主細胞又は細胞の集団が投与される本発明の方法の目的のために、細胞は、哺乳類に対して同種又は自己である細胞であってよい。好ましくは、細胞は、哺乳類に対して自己である。
【0127】
本発明の方法に関して、がんは、急性リンパ球性がん、急性骨髄性白血病、胞巣状横紋筋肉腫、骨がん、脳がん、乳がん、肛門、肛門管、又は肛門直腸のがん、眼のがん、肝内胆管のがん、関節のがん、頸部、胆嚢、又は胸膜のがん、鼻、鼻腔、又は中耳のがん、口腔のがん、膣のがん、外陰部のがん、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、食道がん、子宮頸がん、消化管カルチノイド腫瘍、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、腎臓がん、喉頭がん、肝臓がん、肺がん、悪性中皮腫、黒色腫、多発性骨髄腫、上咽頭がん、非ホジキンリンパ腫、中咽頭のがん、卵巣がん、陰茎のがん、膵臓がん、腹膜、網、及び腸間膜のがん、咽頭がん、前立腺がん、直腸がん、腎がん、皮膚がん、小腸がん、軟組織がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、子宮のがん、尿管がん、及び膀胱がんのいずれかを含む任意のがんであってよい。好ましいがんは、膵臓、結腸直腸、肺、子宮内膜、卵巣、又は前立腺のがんである。好ましくは、肺がんは肺腺がんであり、卵巣がんは上皮性卵巣がんであり、膵臓がんは膵臓腺がんである。本発明の実施形態では、がんは、12位のグリシンがアスパラギン酸で置換されている変異型ヒトRASアミノ酸配列を発現し、該変異型ヒトRASアミノ酸配列は、変異型ヒトKRAS、変異型ヒトHRAS、又は変異型ヒトNRASのアミノ酸配列であり、12位は、それぞれWTヒトKRAS、WTヒトHRAS、又はWTヒトNRASタンパク質を参照することによって定義される。がんが発現する変異型ヒトKRAS、変異型ヒトHRAS、及び変異型ヒトNRASは、本発明の他の態様に関して本明細書に記載する通りであってよい。
【0128】
本発明の方法において言及される哺乳類は、任意の哺乳類であってよい。本明細書で使用するとき、用語「哺乳類」とは、げっ歯目の哺乳類、例えばマウス及びハムスター、並びにウサギ目の哺乳類、例えばウサギを含むがこれらに限定されない任意の哺乳類を指す。哺乳類は、ネコ及びイヌを含む食肉目の哺乳類であることが好ましい。哺乳類は、ウシ及びブタを含む偶蹄目、又はウマを含む奇蹄目の哺乳類であることがより好ましい。哺乳類は、霊長目、サル目(Ceboids又はSimoids)(サル)、又は真猿亜目(ヒト及び類人猿)の哺乳類であることが最も好ましい。特に好ましい哺乳類は、ヒトである。
【実施例】
【0129】
以下の実施例は本発明を更に説明するが、無論、いかなる方法でもその範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0130】
実施例1
この実施例は、結腸直腸がん患者4271の末梢血リンパ球(PBL)からの抗G12D RAS TCRの単離を示す。
【0131】
結腸直腸がん患者4271由来のPBLを自己樹状細胞(DC)でインビトロ(IVS)刺激した。DCに、G12D 24-merペプチドMTEYKLVVVGA
DGVGKSALTIQLI(配列番号88)をパルスした。G12D 24merペプチド又は対応するWT 24merペプチドMTEYKLVVVGA
GGVGKSALTIQLI(配列番号89)をパルスした自己DCと共培養することによって、細胞を試験した。DMSOで処理したDCとの共培養及びDC単独との共培養をネガティブコントロールとした。PMAの存在下で培養したPBLをポジティブコントロールとした。酵素結合免疫スポット(ELISpot)アッセイを用いて、IFNγの分泌によって反応性を試験した。結果を
図1Aに示す。
図1Aに示すように、G12D 24-merペプチドをパルスしたDCと共培養した後に反応性細胞が観察された。
【0132】
フローサイトメトリーアッセイによる4-1BB及び/又はOX40の発現のアップレギュレーションを測定することによっても、反応性を試験した。結果を
図1B~1Cに示す。
図1B~1Cに示すように、G12D 24-merペプチドをパルスしたDCと共培養した後に反応性細胞が観察された。
【0133】
陽性細胞を再刺激し、単一細胞T細胞受容体(TCR)シーケンシングのために4-1BBのアップレギュレーションによってソートして96ウェルプレートに入れた。4つのTCR、すなわち、4271 TCR1、4271 TCR2、4271 TCR3、及び4271 TCR4がみられた(表5)。
【0134】
【0135】
TCRのアルファ鎖及びベータ鎖の可変領域の配列を、単一細胞TCRシーケンシングによって同定した。アルファ鎖及びベータ鎖の可変領域のアミノ酸配列を表6に示す。CDRには下線を引いてある。N末端シグナルペプチドは太字フォントである。
【0136】
【0137】
【0138】
実施例2
この実施例は、実施例1のそれぞれのTCRをコードしているレトロウイルスベクターの構築を示す。
【0139】
表6の4271 TCR1、4271 TCR2、4271 TCR3、又は4271 TCR4のα鎖及びβ鎖の可変領域をコードしているヌクレオチド配列を取得し、コドンを最適化した。TCRβのVDJ領域をマウスTCRβ定常鎖に融合させた。TCRαのVJ領域をマウスTCRα定常鎖に融合させた。特定の理論又は機序に縛られるものではないが、ヒトのTCRα鎖及びTCRβ鎖の定常領域を対応するマウス定常領域で置換すると、TCRの発現及び機能性が改善すると考えられる(Cohen et al.,Cancer Res.,66(17):8878-86(2006))。
【0140】
更に、マウスのTCRα及びTCRβの定常鎖をシステインで修飾した。マウスTCRα定常鎖に膜貫通型疎水性変異を導入した。特定の理論又は機序に縛られるものではないが、これら修飾は、導入されたTCR鎖を優先的に対合させ、TCRの表面発現及び機能性を高めると考えられる(Cohen et al.,Cancer Res.,67(8):3898-903(2007);Haga-Friedman et al.,J.Immu.,188:5538-5546(2012))。定常領域へのこれら修飾を含む、4つのTCRのそれぞれの完全長のα鎖及びβ鎖を表7に示す。表7中、CDRには下線を引き、定常領域の修飾アミノ酸残基には下線を引き、かつ太字で示す。
【0141】
【0142】
【0143】
表7の4271 TCR1、4271 TCR2、4271 TCR3、又は4271 TCR4のα鎖及びβ鎖の可変領域をコードしているヌクレオチド配列を、独立して、以下の発現カセット構成を有するMSGV1ベースのレトロウイルスベクターにクローニングした:5’NcoI-VDJβ-mCβ-フリン/SerGly/P2A-VJα-mCα-EcoRI3’。MSGV1ベクターの5’NcoIサイトへのTCR発現カセットのクローニングを促進するために、TCRVβ鎖のN末端シグナルペプチドにおける2番目のアミノ酸をアラニン(A)に変更した。
【0144】
TCRβ鎖及びTCRα鎖は、フリンSer/Gly P2Aリンカーペプチド(配列番号87)によって分離されていた。特定の理論又は機序に縛られるものではないが、リンカーペプチドは、2本の鎖の発現効率を同等にすると考えられる(Szymczak et al.,Nat.Biotechnol.,22(5):589-94(2004))。
【0145】
レトロウイルスベクターのTCR発現カセットは、5’から3’に向かって、リンカーペプチドによって分離されたTCRβ鎖及びTCRα鎖をコードしていた。各それぞれのTCRについてのTCR発現カセットがコードしているアミノ酸配列を表8に示す。表8中、CDRには下線を引き、定常領域はイタリック体で表記し、リンカーペプチドは太字で示す。
【0146】
【0147】
実施例3
この実施例は、実施例2のレトロウイルスベクターによって発現されるTCRの結合活性を示す。
【0148】
自己PBLに、独立して、実施例2の4271 TCR1、4271 TCR2、4271 TCR3、又は4271 TCR4をコードしているレトロウイルスベクターを形質導入した。
【0149】
自己DCに、
図2A~2Dに示す種々の濃度のうちの1つの実施例1のG12D 24-merペプチド又は対応するWT 24-merペプチドを負荷した。この細胞を2回洗浄し、6e4 DC:5e4 T細胞の比で形質導入されたT細胞と一晩共培養した。蛍光活性化細胞選別(FACS)によって、4-1BB及び/又はOX40のアップレギュレーションを評価した。結果を
図2A~2Dに示す。
【0150】
実施例4
この実施例は、実施例2のレトロウイルスベクターによって発現されたTCRが、HLA-DR分子によって提示されるG12D RASを認識することを示す。
【0151】
エクソーム及びmRNAシーケンシングを用いて、患者4271が発現したMHCクラスII分子を決定した。発現したMHCクラスII分子を表9に示す。
【0152】
【0153】
自己DC(標的細胞)を抗HLA DP、抗HLA DQ、若しくは抗HLA DRの抗体で又はブロッキング抗体なしで処理した後、標的細胞にG12D 24-merペプチドをパルスした。次いで、標的細胞をエフェクター細胞と共培養した。エフェクター細胞は、独立して、実施例2の4271 TCR1、4271 TCR2、4271 TCR3、又は4271 TCR4をコードしているレトロウイルスベクターを形質導入した自己T細胞であった。抗CD3/抗CD28 Dynabeadsの存在下で培養したエフェクター細胞をポジティブコントロールとした。抗CD3/抗CD28 Dynabeadsは、エフェクター細胞を非特異的に刺激する。DMSOの存在下で培養したエフェクター細胞をネガティブコントロールとした。
【0154】
ELISPOTによってIFN-γ分泌を測定した。FACSによってOX40及び/又は4-1BBのアップレギュレーションを測定した。結果を
図3A~3Bに示す。
【0155】
図3A~3Bに示すように、OX40及び/又は4-1BBのアップレギュレーション並びにIFN-γの分泌は、抗HLA DR抗体の存在下でブロックされた。
【0156】
本明細書に引用した刊行物、特許出願、及び特許を含む全ての参照文献は、各参照文献が個々にかつ具体的に参照によって組み入れられると示されており、その全体が本明細書に記載されているかのように、参照によって本明細書に組み入れられる。
【0157】
本発明の説明に関連して(特に以下の特許請求の範囲に関連して)用語「a」及び「an」及び「the」及び「少なくとも1つ」、並びに類似の参照対象の使用は、本明細書において他の指定がない限り又は文脈から明らかに矛盾していない限り、単数形及び複数形の両方を網羅すると解釈されるべきである。1つ以上の項目のリストの後の用語「少なくとも1つ」の使用(例えば、「A及びBのうちの少なくとも1つ」)は、本明細書において他の指定がない限り又は文脈から明らかに矛盾していない限り、列挙される項目から選択される1つの項目(A又はB)又は列挙される項目のうちの2つ以上の任意の組み合わせ(A及びB)を意味すると解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含有する(containing)」は、特に断らない限り、オープンエンドな用語である(すなわち、「含むがこれらに限定されない」を意味する)と解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書において他の指定がない限り、単に、範囲内の各別個の値を個々に参照する省略法として機能することを意図し、各別個の値が、本明細書に個々に列挙されているかのように明細書に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書において他の指定がない限り又は文脈から明らかに矛盾していない限り、任意の好適な順序で実施することができる。本明細書に提供される任意の及び全ての例又は例示的な表現(例えば、「等」)の使用は、特に主張しない限り、単に本発明をより深く解明することを意図し、本発明の範囲の限定を提起するものではない。明細書中の表現はいずれも、任意の請求されていない要素が本発明の実施に必須であることを示すと解釈されるべきではない。
【0158】
本発明を実施するための本発明者らに公知の最良の形態を含む、本発明の好ましい実施形態が、本明細書に記載される。好ましい実施形態の変形は、前述の記載を読んだときに当業者に明らかになり得る。本発明者らは、当業者がこのような変形を適宜使用すると予想し、そして、本発明者らは、本明細書に具体的に記載されているのとは別の方法で本発明が実施されることを意図している。従って、本発明は、準拠法によって認められている通り、本明細書に添付される特許請求の範囲に列挙される発明主題の全ての変形及び等価物を含む。更に、その全ての可能な変形における上記要素の任意の組み合わせは、本明細書において他の指定がない限り又は文脈から明らかに矛盾していない限り、本発明によって包含される。
【配列表】
【国際調査報告】