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特表2023-534282製造プロセスの間に細胞の品質を評価する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-08
(54)【発明の名称】製造プロセスの間に細胞の品質を評価する方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6869 20180101AFI20230801BHJP
   C12Q 1/6837 20180101ALI20230801BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20230801BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230801BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230801BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20230801BHJP
   C12N 15/85 20060101ALN20230801BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20230801BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20230801BHJP
   C12N 5/0789 20100101ALN20230801BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6837 Z
A61K35/12
A61P35/00
C12N15/12
C12N15/09 100
C12N15/85 Z
C12N5/10
C12N5/0783
C12N5/0789
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023502965
(86)(22)【出願日】2021-07-16
(85)【翻訳文提出日】2023-03-15
(86)【国際出願番号】 US2021041982
(87)【国際公開番号】W WO2022016057
(87)【国際公開日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】63/052,803
(32)【優先日】2020-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/064,794
(32)【優先日】2020-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522413386
【氏名又は名称】ライフボールト バイオ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ハミルトン, ジョナソン ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ヴィスコミ, サルバトーレ ジー.
(72)【発明者】
【氏名】アールチェ ベイネン, ウーシャ エッセリン
(72)【発明者】
【氏名】ペリー, トレバー ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA17
4B063QQ08
4B063QQ13
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR55
4B063QR62
4B063QR84
4B063QS05
4B063QS10
4B063QS14
4B063QS25
4B063QS34
4B063QS38
4B063QS39
4B063QX02
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065BA01
4B065BA21
4B065CA23
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C087AA01
4C087AA03
4C087BB64
4C087CA04
4C087NA06
4C087ZB26
4C087ZB27
(57)【要約】
細胞製造プロセスの様々な段階で受け取った細胞の品質を評価する方法、および細胞製造プロセスを改善または最適化する関連方法が本明細書で開示される。本明細書では、製造プロセス中、例えば製造プロセスの複数の段階で細胞の品質を評価する方法が記載される。本方法は、一般に、製造プロセス中の1つ以上の時点で細胞のサンプルを受け取ることと、1つ以上の時点で受け取った1つ以上の細胞のゲノムの少なくとも一部を配列決定することと、受け取った細胞において、1つ以上の遺伝子、例えばDNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群から選択される1つ以上の遺伝子における不具合を特定することとを含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、製造工程中の細胞の品質評価方法。
a.製造工程中の1つまたは複数の時点で、細胞のサンプルを受け取ること。
b.前記1つまたは複数の時点で受け取った1つまたは複数の細胞のゲノムの少なくとも一部を配列決定すること;および
c.受け取った細胞において、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群から選択される1つまたは複数の遺伝子における欠損を特定する。
【請求項2】
細胞のサンプルが、スターター細胞の受領、細胞の操作の1つ以上の段階の完了、および使用前の製造された細胞の受領からなる群から選択される製造工程中の1つ以上の時点で受領される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
細胞の操作の1つ以上の段階が、細胞のリプログラミング、培養および拡大、遺伝子操作、分化、収穫、異質性/亜型化、凍結保存、解凍、分離、濃縮、単一細胞クローニング、および精製からなる群から選択される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
細胞のリプログラミングが、単離された体性初代細胞を人工多能性幹細胞に変換することを含んでいる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
細胞の操作が、T細胞をCAR T細胞に操作することを含んでいる、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
CAR T細胞が、癌細胞上の目的の抗原を標的とするように操作される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
CAR T細胞が、腫瘍細胞上の目的の抗原を標的とするように操作される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
遺伝子操作が、CRISPR、TALEN、Zn-Finger、およびベクターデリバリーシステムのうちの1つまたは複数を用いて細胞を操作することを含む、請求項3に記載の方法であって。
【請求項9】
遺伝子編集システムが、ベクターデリバリーシステムを介して細胞に送達される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ベクター送達システムが、RNA、DNA、またはウイルスベクター送達システムである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
遺伝子操作が、1つ以上の遺伝的欠陥の修正、1つ以上の遺伝子の発現の減少、および1つ以上の遺伝子の発現の増加からなる群から選択される、請求項3記載の方法。
【請求項12】
前記遺伝子操作は、TET2を不活性化することを含んでいる、請求項3に記載の方法。
【請求項13】
分化が、スターター細胞を治療用細胞型に変換することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項14】
前記スターター細胞が多能性細胞である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
治療用細胞タイプが、β細胞、心筋細胞、衛星細胞、網膜細胞、NK細胞、および神経細胞からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
製造工程における1つ以上の細胞が、スターター細胞の集団から製造される、請求項1に記載の方法であって、製造工程における1つ以上の細胞が、スターター細胞の集団から製造される。
【請求項17】
前記スターター細胞が幹細胞である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
スターター細胞が多能性細胞または体細胞である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
スターター細胞が、人工多能性幹細胞(iPSC)または胚性幹細胞(ESC)である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
スターター細胞が、造血幹細胞(HSC)またはT細胞である、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記スターター細胞の集団が血液サンプルから得られる、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
スターター細胞の集団が、被験者から得られる、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
対象が、それを必要とする対象である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
対象がドナー対象である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
欠陥が配列に基づく変異である、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
配列に基づく変異が、ミスセンス変異、サイレント変異、フレームシフト変異、ナンセンス変異、挿入変異、欠失変異、またはスプライスサイト破壊である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
欠陥が体細胞配列に基づく変異または生殖細胞配列に基づく変異である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記欠損が、エクソン7~23のDNMT3Aである、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
欠陥が、G543C、S714C、F732C、Y735C、R736C、R749C、F751C、W753C、およびL889Cからなる群より選択されるDNMT3Aのミスセンス変異である、請求項1記載の方法。
【請求項30】
欠陥がJAK2のV617F変異である、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
欠陥がTET2の破壊的変異である、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
欠陥がPPM1Dの破壊的変異である、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
欠陥が、R175H、G245S、R248W、R273G、P151S、R181H、H193R、M237I、G245C、R248Q、R267W、およびR273Lからなる群から選択されるTP53のミスセンス変異である、請求項1記載の方法。
【請求項34】
前記1つ以上の遺伝子は、腫瘍形成に関連するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
前記1つ以上の遺伝子が、TP53、KRAS、ASXL1、JAK2、SFSR2、およびSFSB1からなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記1つ以上の遺伝子が、TP53およびKRASからなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記1つ以上の遺伝子は、癌に関連するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
前記1つ以上の遺伝子が、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、SF3B1、SRSF2、およびTP53からなる群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記1つ以上の遺伝子が、DNMT3A、TET2、およびASXL1からなる群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記1つ以上の遺伝子は、血液癌に関連するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
前記1つ以上の遺伝子が、TET2およびDNMT3Aからなる群から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
受け取った細胞において、PCM1、HIF1A、およびAPCからなる群から選択される1つまたは複数の遺伝子の欠損を同定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
欠陥が配列に基づく変異である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
受け取った細胞において、TERTおよびCHEK2からなる群から選択される1つまたは複数の遺伝子の欠損を同定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項45】
受け取った細胞において、CBL、KMT2C、ATM、CHEK2、KDR、MGA、DNMT3B、ARID2、SH2B3、MPL、RAD21、SRSF2、およびCCND2からなる群から選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥を特定することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項46】
受け取った細胞において、HPRT、JAK1、JAK3、SLAMF6、IRF1、PLRG1、STAT3、およびNotch1からなる群から選択される1つまたは複数の遺伝子の欠損を特定することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項47】
受け取った細胞において、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群から選択される1以上の遺伝子における構造ベースの変異を同定することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項48】
構造ベースの変異が、重複、欠失、コピー数変異、逆位、または転座である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
構造ベースの変異が、Ch2、Ch4、Ch9、Ch12、Ch17、およびCh20からなる群から選択される1つまたは複数の染色体上で生じる、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
構造ベースの変異が、Ch2p23、Ch4q24、Ch20q11、Ch17q23、Ch9p24、Ch17p23、Ch17q25、Ch2q33、およびCh12p12からなる群から選択される1つまたは複数の染色体上に生じる、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
受け取った細胞において、Ch1、Ch12、Ch17q、Ch20q11、およびX染色体からなる群から選択される1つまたは複数の染色体上で生じる構造に基づく変異を同定することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項52】
受け取った細胞において、Ch3、Ch4、Ch5、Ch7、Ch8、Ch9、Ch11、Ch12、Ch13、Ch14、およびCh18からなる群から選択される1つまたは複数の染色体上で生じる構造に基づく変異を同定することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項53】
細胞のサンプルが、治療を必要とする被験者の血液サンプルに由来するiPSCを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項54】
細胞のサンプルが、ドナー被験者の血液サンプルに由来するiPSCを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項55】
細胞のサンプルが、治療を必要とする被験者の血液サンプルに由来する造血幹細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項56】
細胞の試料が、ドナー被験者の血液試料に由来する造血幹細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項57】
細胞のサンプルが、治療を必要とする被験者の血液サンプルに由来するT細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項58】
細胞のサンプルが、ドナー被験者の血液サンプルに由来するT細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項59】
前記1つ以上の遺伝子の欠陥が特定される、製造工程中の1つ以上の時点を特定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項60】
前記1つまたは複数の遺伝子において同定された欠陥を示さない、受け取った細胞の亜集団を単離することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項61】
受信した細胞の単離された亜集団に細胞療法製造工程を施すことをさらに含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
請求項1に記載の方法であって、1つまたは複数の遺伝子における欠陥を示す、受け取った細胞の亜集団を単離することをさらに含む。
【請求項63】
前記1つまたは複数の遺伝子における欠陥を修正することをさらに含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
受信した細胞の補正された分離された亜集団に、細胞療法製造工程を施すことをさらに含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
細胞の試料が製造された細胞の試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項66】
以下を含む、製造工程中の細胞の品質を維持する方法。
a)被験者の1つまたは複数のiPSCドナー細胞のゲノムの少なくとも一部を配列決定すること
b)ドナー細胞において、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群から選択される1以上の遺伝子における欠損を特定する。
c)1つ以上の遺伝子に同定された欠陥を示さないドナー細胞を単離すること。
d)単離されたドナー細胞を細胞療法製造工程に供し、1つまたは複数の製造細胞を製造すること。
e)前記1つ以上の製造された細胞のゲノムの少なくとも一部を配列決定すること
f)製造された細胞において、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群から選択される1以上の遺伝子における欠陥を特定し;そして
g)前記1つ以上の遺伝子において同定された欠陥を示さない製造された細胞を単離すること。
【請求項67】
細胞療法製造工程の1つ以上の段階において、単離されたドナー細胞のゲノムの少なくとも一部を配列決定する工程と、製造工程における細胞において、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群から選択される1つ以上の遺伝子における欠陥を特定し、製造工程における細胞のうち、1つ以上の遺伝子において特定した欠陥を示さないものを単離する工程とをさらに有する、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
単離された細胞が、細胞療法製造工程の1つ以上の追加の段階に供される、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記1つまたは複数の遺伝子において同定された欠陥を示さない単離された製造細胞を被験者に投与する工程をさらに含む、請求項66に記載の方法。
【請求項70】
単離された製造された細胞が、疾患または障害を治療するために被験者に投与される、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
疾患または障害が、血液、免疫、代謝、神経、または心臓血管の障害である、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
以下を含む、製造工程中の細胞の品質を維持する方法。
a)被験者の1つまたは複数のHSCまたはT細胞ドナー細胞のゲノムの少なくとも一部を配列決定すること。
b)ドナー細胞において、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群から選択される1以上の遺伝子における欠損を特定する。
c)1つ以上の遺伝子に同定された欠陥を示さないドナー細胞を単離すること。
d)単離されたドナー細胞を細胞療法製造工程に供し、1つまたは複数の製造細胞を製造すること。
e)前記1つ以上の製造された細胞のゲノムの少なくとも一部を配列決定すること
f)製造された細胞において、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群から選択される1以上の遺伝子における欠陥を特定し;そして
g)前記1つ以上の遺伝子において同定された欠陥を示さない製造された細胞を単離すること。
【請求項73】
細胞療法製造工程の1つ以上の段階において、単離されたドナー細胞のゲノムの少なくとも一部を配列決定する工程と、製造工程における細胞において、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群から選択される1つ以上の遺伝子における欠陥を特定し、製造工程における細胞のうち、1つ以上の遺伝子において特定した欠陥を示さないものを単離する工程とをさらに有する請求項72に記載の方法。
【請求項74】
単離された細胞が、細胞療法製造工程の1つ以上の追加の段階に供される、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記1つまたは複数の遺伝子において同定された欠陥を示さない単離された製造細胞を被験者に投与するステップをさらに含む、請求項72に記載の方法。
【請求項76】
単離された製造された細胞が、疾患または障害を治療するために被験者に投与される、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
疾患または障害が癌である、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
疾患または障害が、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性新生物、胚細胞腫瘍、神経芽腫、ユーイング肉腫、および髄芽腫からなる群から選択される、請求項76に記載の方法。
【請求項79】
疾患または障害が固形腫瘍である、請求項76に記載の方法。
【請求項80】
固形腫瘍が非悪性腫瘍である、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
固形腫瘍が悪性腫瘍である、請求項79に記載の方法。
【請求項82】
以下を含む、細胞の品質を評価する方法。
a)製造工程に先立ち、体細胞または多能性細胞のサンプルを受け取ること。
b)体細胞または多能性細胞のゲノムの少なくとも一部を配列決定すること;および
c)体細胞または多能性細胞において、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群から選択される1以上の遺伝子における欠損を特定する。
【請求項83】
多能性細胞が、誘導多能性幹細胞または胚性幹細胞である、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
多能性細胞が、治療を必要とする被験者の血液サンプルに由来するiPS細胞である、請求項82に記載の方法。
【請求項85】
多能性細胞が、ドナー被験者の血液サンプルに由来するiPS細胞である、請求項82に記載の方法。
【請求項86】
欠陥が配列に基づく変異である、請求項82に記載の方法。
【請求項87】
配列に基づく変異が、ミスセンス変異、サイレント変異、フレームシフト変異、ナンセンス変異、挿入変異、欠失変異、またはスプライスサイト破壊である、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記欠損が、エクソン7~23のDNMT3Aである、請求項82に記載の方法。
【請求項89】
欠陥が、G543C、S714C、F732C、Y735C、R736C、R749C、F751C、W753C、およびL889Cからなる群から選択されるDNMT3Aのミスセンス変異である、請求項82に記載の方法。
【請求項90】
欠陥がJAK2のV617F変異である、請求項82に記載の方法。
【請求項91】
欠陥がTET2の破壊的変異である、請求項82に記載の方法。
【請求項92】
欠陥がPPM1Dの破壊的変異である、請求項82に記載の方法。
【請求項93】
欠陥が、R175H、G245S、R248W、R273G、P151S、R181H、H193R、M237I、G245C、R248Q、R267W、およびR273Lからなる群より選択されるTP53のミスセンス変異である、請求項82に記載の方法。
【請求項94】
前記1つまたは複数の遺伝子が腫瘍形成に関連する、請求項82に記載の方法。
【請求項95】
前記1つ以上の遺伝子が、TP53、KRAS、ASXL1、JAK2、SFSR2、およびSFSB1からなる群から選択される、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記1つ以上の遺伝子が、TP53およびKRASからなる群から選択される、請求項94に記載の方法。
【請求項97】
前記1つ以上の遺伝子は、血液癌に関連するものである、請求項82に記載の方法。
【請求項98】
前記1つ以上の遺伝子が、TET2およびDNMT3Aからなる群から選択される、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
多能性細胞において、PCM1、HIF1A、およびAPCからなる群から選択される1つまたは複数の遺伝子における配列に基づく変異を同定することをさらに含む、請求項82に記載の方法。
【請求項100】
DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群から選択される1つまたは複数の遺伝子における構造に基づく変異を多能性細胞において特定することをさらに含む、請求項82に記載の方法。
【請求項101】
構造ベースの変異が、重複、欠失、コピー数変異、逆位、または転座である、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
構造ベースの変異が、Ch2、Ch4、Ch9、Ch12、Ch17、およびCh20からなる群から選択される1つまたは複数の染色体上で起こる、請求項100に記載の方法。
【請求項103】
構造に基づく変異が、Ch2p23、Ch4q24、Ch20q11、Ch17q23、Ch9p24、Ch17p23、Ch17q25、Ch2q33、およびCh12p12 からなる群から選択される1つまたは複数の染色体上で生じる、請求項100に記載の方法である。
【請求項104】
Ch1、Ch12、Ch17q、CH20q11、およびX染色体からなる群から選択される1つまたは複数の染色体上に生じる構造に基づく変異を多能性細胞において同定することをさらに含む、請求項82に記載の方法。
【請求項105】
受け取った細胞において、Ch3、Ch4、Ch5、Ch7、Ch8、Ch9、Ch11、Ch12、Ch13、Ch14、およびCh18からなる群から選択される1つまたは複数の染色体上で起こる構造ベースの突然変異を同定することをさらに含む、請求項82に記載の方法。
【請求項106】
以下を含む、細胞の品質を評価する方法。
a)製造工程の前にスターター細胞のサンプルを受け取ることであり、スターター細胞は造血幹細胞またはT細胞である。
b)前記スターター細胞のゲノムの少なくとも一部を配列決定すること;および
c)スターター細胞において、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群から選択される1以上の遺伝子における欠損を特定する。
【請求項107】
スターター細胞が血液試料から得られる、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
スターター細胞が被験者から得られる、請求項106に記載の方法。
【請求項109】
スターター細胞が、治療を必要とする被験者の血液サンプルに由来する造血幹細胞である、請求項106に記載の方法。
【請求項110】
スターター細胞が、ドナー被験者の血液サンプルに由来する造血幹細胞である、請求項106に記載の方法。
【請求項111】
スターター細胞が、治療を必要とする被験者の血液サンプルに由来するT細胞である、請求項106に記載の方法。
【請求項112】
スターター細胞が、ドナー被験者の血液サンプルに由来するT細胞である、請求項106に記載の方法。
【請求項113】
欠陥が配列に基づく変異である、請求項106に記載の方法。
【請求項114】
配列に基づく変異が、ミスセンス変異、サイレント変異、フレームシフト変異、ナンセンス変異、挿入変異、欠失変異、またはスプライスサイト破壊である、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
欠陥が、エクソン7から23のDNMT3Aである、請求項106に記載の方法。
【請求項116】
欠陥が、G543C、S714C、F732C、Y735C、R736C、R749C、F751C、W753C、およびL889Cからなる群から選択されるDNMT3Aのミスセンス変異である、請求項106に記載の方法。
【請求項117】
欠陥がJAK2のV617F変異である、請求項106に記載の方法。
【請求項118】
欠陥がTET2の破壊的変異である、請求項106に記載の方法。
【請求項119】
欠陥がPPM1Dの破壊的変異である、請求項106に記載の方法。
【請求項120】
欠陥が、R175H、G245S、R248W、R273G、P151S、R181H、H193R、M237I、G245C、R248Q、R267W、およびR273Lからなる群から選択されるTP53のミスセンス変異である、請求項106に記載の方法。
【請求項121】
前記1つまたは複数の遺伝子は、癌と関連している、請求項106に記載の方法。
【請求項122】
前記1つ以上の遺伝子が、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、SF3B1、SRSF2、およびTP53からなる群から選択される、請求項121に記載の方法。
【請求項123】
前記1つ以上の遺伝子が、DNMT3A、TET2、およびASXL1からなる群から選択される、請求項121に記載の方法。
【請求項124】
TERTおよびCHEK2からなる群から選択される1つまたは複数の遺伝子における配列に基づく変異をスターター細胞において同定することをさらに含む、請求項106に記載の方法。
【請求項125】
CBL、KMT2C、ATM、CHEK2、KDR、MGA、DNMT3B、ARID2、SH2B3、MPL、RAD21、SRSF2、およびCCND2からなる群から選択される1以上の遺伝子における欠陥をスターター細胞において特定することをさらに含む、請求項106に記載の方法。
【請求項126】
HPRT、JAK1、JAK3、SLAMF6、IRF1、PLRG1、STAT3、およびNotch1からなる群から選択される1つまたは複数の遺伝子の欠損をスターター細胞において同定することをさらに含む、請求項106に記載の方法。
【請求項127】
DNMT3A、TET2、AXXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群から選択される1以上の遺伝子における構造ベースの変異をスターター細胞において特定することをさらに含む、請求項106に記載の方法。
【請求項128】
構造ベースの変異が、重複、欠失、コピー数変異、逆位、または転座である、請求項127に記載の方法。
【請求項129】
構造ベースの変異が、Ch2、Ch4、Ch9、Ch12、Ch17、およびCh20からなる群から選択される1つまたは複数の染色体上で生じる、請求項127に記載の方法。
【請求項130】
構造ベースの突然変異が、Ch2p23、Ch4q24、Ch20q11、Ch17q23、Ch9p24、Ch17p23、Ch17q25、Ch2q33、およびCh12p12からなる群から選択される1つまたは複数の染色体上で起こる、請求項127に記載の方法。
【請求項131】
以下を含む、製造された細胞の品質を評価する方法。
a)製造工程終了時に得られる製造細胞のサンプルを受け取るステップと
b)製造された細胞のゲノムの少なくとも一部を配列決定すること;および
c)製造された細胞において、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群から選択される1以上の遺伝子における欠損を特定する。
【請求項132】
製造された細胞が、多能性細胞または体細胞の集団から製造される、請求項131に記載の方法。
【請求項133】
製造された細胞が、造血幹細胞(HSC)またはT細胞の集団から製造される、請求項131に記載の方法。
【請求項134】
欠陥が配列に基づく変異である、請求項131に記載の方法。
【請求項135】
配列に基づく変異が、ミスセンス変異、サイレント変異、フレームシフト変異、ナンセンス変異、挿入変異、欠失変異、またはスプライスサイト破壊である、請求項134に記載の方法。
【請求項136】
欠陥が、エクソン7から23のDNMT3Aである、請求項131に記載の方法。
【請求項137】
欠陥が、G543C、S714C、F732C、Y735C、R736C、R749C、F751C、W753C、およびL889Cからなる群から選択されるDNMT3Aのミスセンス変異である、請求項131に記載の方法。
【請求項138】
欠陥がJAK2のV617F変異である、請求項131に記載の方法。
【請求項139】
欠陥がTET2の破壊的変異である、請求項131に記載の方法。
【請求項140】
欠陥がPPM1Dの破壊的変異である、請求項131に記載の方法。
【請求項141】
欠陥が、R175H、G245S、R248W、R273G、P151S、R181H、H193R、M237I、G245C、R248Q、R267W、およびR273Lからなる群から選択されるTP53のミスセンス変異である、請求項131に記載の方法。
【請求項142】
前記1つまたは複数の遺伝子は、癌と関連している、請求項131に記載の方法。
【請求項143】
前記1つ以上の遺伝子が、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、SF3B1、SRSF2、およびTP53からなる群から選択される、請求項142に記載の方法。
【請求項144】
前記1つ以上の遺伝子が、DNMT3A、TET2、およびASXL1からなる群から選択される、請求項142に記載の方法。
【請求項145】
前記1つまたは複数の遺伝子が腫瘍形成に関連する、請求項131に記載の方法。
【請求項146】
前記1つ以上の遺伝子が、TP53、KRAS、ASXL1、JAK2、SFSR2、およびSFSB1からなる群から選択される、請求項145に記載の方法。
【請求項147】
前記1つ以上の遺伝子が、TP53およびKRASからなる群から選択される、請求項145に記載の方法。
【請求項148】
前記1つまたは複数の遺伝子は、血液癌と関連している、請求項131に記載の方法。
【請求項149】
前記1つ以上の遺伝子が、TET2およびDNMT3Aからなる群から選択される、請求項148に記載の方法。
【請求項150】
製造された細胞において、PCM1、HIF1A、およびAPCからなる群から選択される1つまたは複数の遺伝子の欠損を同定することをさらに含む、請求項131に記載の方法。
【請求項151】
欠陥が配列に基づく変異である、請求項150に記載の方法。
【請求項152】
製造された細胞において、TERTおよびCHEK2からなる群から選択される1つまたは複数の遺伝子における配列ベースの変異を同定することをさらに含む、請求項131に記載の方法。
【請求項153】
製造された細胞において、CBL、KMT2C、ATM、CHEK2、KDR、MGA、DNMT3B、ARID2、SH2B3、MPL、RAD21、SRSF2、およびCCND2からなる群から選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥を特定することをさらに含む、請求項131に記載の方法。
【請求項154】
製造された細胞において、HPRT、JAK1、JAK3、SLAMF6、IRF1、PLRG1、STAT3、およびNotch1からなる群から選択される1つまたは複数の遺伝子における欠損を同定することをさらに含む、請求項131に記載の方法。
【請求項155】
DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群から選択される1以上の遺伝子における構造に基づく変異を多能性細胞において同定することをさらに含む、請求項131に記載の方法。
【請求項156】
構造ベースの変異が、重複、欠失、コピー数変異、逆位、または転座である、請求項155に記載の方法。
【請求項157】
構造ベースの変異が、Ch2、Ch4、Ch9、Ch12、Ch17、およびCh20からなる群から選択される1つまたは複数の染色体上で生じる、請求項155に記載の方法。
【請求項158】
構造ベースの突然変異が、Ch2p23、Ch4q24、Ch20q11、Ch17q23、Ch9p24、Ch17p23、Ch17q25、Ch2q33、およびCh12p12からなる群から選択される1つまたは複数の染色体上で生じる、請求項155に記載の方法。
【請求項159】
Ch1、Ch12、Ch17q、CH20q11、およびX染色体からなる群から選択される1つまたは複数の染色体上に生じる構造に基づく変異を多能性細胞において同定することをさらに含む、請求項155に記載の方法。
【請求項160】
受け取った細胞において、Ch3、Ch4、Ch5、Ch7、Ch8、Ch9、Ch11、Ch12、Ch13、Ch14、およびCh18からなる群から選択される1つまたは複数の染色体上に生じる構造ベースの突然変異を同定することをさらに含む、請求項155に記載の方法。
【請求項161】
前記1つまたは複数の遺伝子において同定された欠陥を示さない製造された細胞の亜集団を単離することをさらに含む、請求項131に記載の方法。
【請求項162】
前記1つまたは複数の遺伝子において同定された欠陥を示さない単離製造された細胞を対象に投与することをさらに含む、請求項161に記載の方法。
【請求項163】
単離された製造された細胞が、疾患または障害を治療するために対象に投与される、請求項162に記載の方法。
【請求項164】
疾患または障害が、血液、免疫、代謝、神経、または心臓血管の障害である、請求項163に記載の方法。
【請求項165】
疾患または障害が癌である、請求項163に記載の方法。
【請求項166】
疾患または障害が、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性新生物、胚細胞腫瘍、神経芽腫、ユーイング肉腫、および髄芽腫から成る群から選択される、請求項163に記載の方法。
【請求項167】
疾患または障害が固形腫瘍である、請求項163に記載の方法。
【請求項168】
固形腫瘍が非悪性腫瘍である、請求項163に記載の方法。
【請求項169】
固形腫瘍が悪性腫瘍である、請求項163に記載の方法。
【請求項170】
前記1つまたは複数の遺伝子の欠陥を示す製造された細胞の亜集団を単離することをさらに含む、請求項131に記載の方法。
【請求項171】
前記1つまたは複数の遺伝子における欠陥を修正することをさらに含む、請求項170に記載の方法。
【請求項172】
補正された製造された細胞を被験者に投与することをさらに含む、請求項171に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連アプリケーション
本出願は、2020年7月16日に出願された米国仮出願第63/052,803号および2020年8月12日に出願された米国仮出願第63/064,794号の利益を主張し、これらの教示全体は、参照により本書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
病気の治療を成功させる方法としての細胞療法は何十年も前から存在し、特に血液幹細胞移植という形で、様々な血液悪性腫瘍や免疫疾患を治療している。その例はdana-farber.org/stem-cell-transplantation-programに記載されている。 骨髄、動員末梢血、臍帯血に由来する患者固有の血液幹細胞は、これらの疾患を治療するための血液幹細胞の供給源として成功裏に使用されています。 様々な疾患の治療に対する有用性は証明されているが、血液幹細胞移植は、移植に必要な血液幹細胞や前駆細胞の量が不十分であること、より少ない毒性で長期の有効性をサポートする強度の低い条件付けレジメン、慢性GVHD、そしてもちろん再発など、治療をより広く適用するための多くの課題を依然として抱えている(Granot et al. Haematologica, 2020; 105(12):2716-2729).移植用細胞の供給不足に対処するため、一部の企業は、新規の動員剤と生体外拡張プロトコルに焦点を当てて開発を進めています。
【0003】
2017年、最初のCAR-T細胞療法であるKYMRIAHは、B細胞性急性リンパ芽球性白血病(ALL)の小児および若年成人患者への使用について米国食品医薬品局から承認されました。 その後、この自己細胞治療法を用いたいくつかの治療法と適応症が追加承認されています。 これらの治療法の製造プロセスは、ドナーT細胞の分離、がんを標的とするT細胞の遺伝子工学とT細胞集団の持続、およびT細胞の活性化と拡張を含む、集中的で高価なものです(Vormittag et a., Curr Opin Biotechnol. 2018; 53:164-181).CAR-T細胞療法の同種/既製品の開発が治療費を削減するはずですが、製造プロセスは依然として、分離、工学、活性化、および拡張のコアステップに依存することになるでしょう。CAR-Tと血液幹細胞移植の両方は、血液に由来する疾患の治療において成功を収めている(Goldsmithら、Frontiers in Oncology、2020;10:2904)が、その発達の可能性が一般的に血球型に制限されているため、血液に由来しない、または血液内に存在する疾患の治療において特に限界がある。
【0004】
1998年、ウィスコンシン大学マディソン校のJames Thomsonの研究室で、最初のヒト胚性幹細胞(hESC)が分離された(Thomson et al. Science, 1998; 282:861-872; Takahashi et al. Cell, 2007; 131:861-872 )。 これらの細胞は、胚発生の5日目の着床前胚盤胞の段階から得られたもので、人体に存在する様々な種類の細胞を生み出す可能性が制限されていないことが特徴である。 この多能性と呼ばれる発生可能性の状態と、hESC特有の自己複製能力(同一の遺伝子構成と多能性を持つ細胞をさらに生成する持続的な能力)の組み合わせにより、人体のあらゆる細胞種と組織の病気を治療する道が開かれた。
【0005】
hESCは、このように無限の治療可能性を秘める一方で、その分離がヒト胚の破壊につながることから、道徳的・倫理的な反対意見もありました。このような反対意見があるため、資金援助も限られ、治療への発展が遅れていました。2007年、山中伸弥とJames Thomsonの研究室は、胚細胞の状態に関連する遺伝子の組み合わせを外来投与することにより、ヒトの成人・体表皮膚細胞を多能性幹細胞に変換する能力を独自に開発し、これらの反対意見を一掃しました(Takahashi et al. Cell, 2007; 131:861-872; Yu et al. Science, 2007; 318:1917-1920 )。 細胞再プログラミングと呼ばれるこのプロセスは、新しい治療法を開発するためにhESCを使用することに関連する道徳的・倫理的問題を回避するだけでなく、各個人から多能性幹細胞(PSC)を作成することを可能にしたのです。これにより、血液だけでなく、人体のあらゆる組織に影響を及ぼす疾患の自己治療への道が開かれたのです。
【0006】
この能力を手にした当分野は、iPSC由来の細胞治療の開発において、将来的に想定される使用方法との互換性を確保するためのベストシステムとプラクティスの開発に注力した。そのため、プライマリー体細胞材料、細胞初期化システム、細胞培養/拡大システムおよび環境、遺伝子編集技術、分化プロトコルが、製造プロセスにおける一貫性/再現性、完全性、品質、スケーラビリティに向けて評価・開発されました。 特に、細胞初期化プロトコルの開発では、臨床現場での入手のしやすさやバイオバンクの存在から、血液由来の細胞種を主要な体細胞出発材料として使用することに焦点を当てた。さらに、血液由来の細胞は、DNA配列や染色体構造における遺伝的変異の蓄積につながる紫外線などの環境変異原から保護されやすいという利点もある。
【0007】
Clonal Hematopoiesis of Indeterminant Potential(CHIP)とは、血液中の他の幹細胞や前駆細胞と比較して、造血幹細胞や前駆細胞の異なる亜集団に成長優位性を与える体性遺伝的変異(複数可)の加齢による蓄積のことである。これらの体細胞遺伝的変異のいくつかは、血液由来がん(Genovese et al. N Engl J Med, 2014; 371(26):2477-2487) および大動脈弁狭窄症、静脈血栓症、心不全などの心血管疾患を含む疾患と関連している(Jaiswal et al.N Engl J Med, 2014; 371:2488-2498; Mas-Peiro et al. Eur Heart J, 2019; 41:933-939; Sano et al. Jacc Basic Transl Sci, 2019; 4:684-697; Bazeley et al. Curr Hear Fail Reports, 2020; 17:271-276).
細胞や細胞・遺伝子治療製品の大半が血液に由来する細胞種(例えば造血幹細胞、T細胞、iPSC生成用初代細胞)、および/または疾患の治療のために血液区画に送達され、CHIPに関連する遺伝子変異が、細胞および遺伝子治療製品の製造中に、本明細書にさらに記載するように、血液細胞のDNAに特異的に蓄積および拡大することを考えると、製造プロセスに入る、または製造プロセスから生じる細胞材料とプロセス自体の両方で、これらの遺伝子変異の蓄積を特定し排除する決定的な必要性が存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Genovese et al. N Engl J Med, 2014; 371(26):2477-2487
【非特許文献2】Jaiswal et al.N Engl J Med, 2014; 371:2488-2498
【非特許文献3】Mas-Peiro et al. Eur Heart J, 2019; 41:933-939
【非特許文献4】Sano et al. Jacc Basic Transl Sci, 2019; 4:684-697
【非特許文献5】Bazeley et al. Curr Hear Fail Reports, 2020; 17:271-276
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
細胞療法の製造工程とそこから生じる材料から遺伝的変異を特定し除去することで、疾患に関連する遺伝的変異が療法を受ける個人の健康に与えるリスクと未知の影響を本質的に低減することが決定的に必要である。
【0010】
本明細書では、製造プロセス中、例えば製造プロセスの複数の段階で細胞の品質を評価する方法が記載される。 方法は、一般に、製造プロセス中の1つ以上の時点で細胞のサンプルを受け取ることと、1つ以上の時点で受け取った1つ以上の細胞のゲノムの少なくとも一部を配列決定することと、受け取った細胞において、1つ以上の遺伝子、例えばDNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群から選択される1つ以上の遺伝子における不具合を特定することとを含み得る。
【0011】
また、本明細書では、細胞の品質を評価する方法について説明する。 方法は、製造工程の前に多能性細胞または体細胞のサンプルを受け取ること;多能性細胞または体細胞のゲノムの少なくとも一部を配列決定すること;および多能性細胞または体細胞において、例えばDNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群から選ばれる1または複数の遺伝子における欠損を特定することを含む。
【0012】
本明細書ではさらに、細胞の品質を評価する方法が記載され、ここで、方法は、製造工程の前にスターター細胞のサンプルを受け取ること、ここで、スターター細胞は、造血幹細胞またはT細胞からなる、または構成されている。スターター細胞のゲノムの少なくとも一部を配列決定すること;およびスターター細胞において、1つまたは複数の遺伝子、例えば、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群から選択される1つまたは複数の遺伝子における欠損を特定すること。
【0013】
また、本明細書では、製造された細胞、例えば、多能性細胞、体細胞、造血幹細胞(HSC)、又はT細胞の集団から製造された細胞の品質を評価する方法について説明する。 本方法は、製造プロセスの完了時に得られる製造細胞のサンプルを受け取ること;製造細胞のゲノムの少なくとも一部を配列決定すること;および製造細胞において、1つまたは複数の遺伝子、例えばDNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群から選択される1つまたは複数の遺伝子における欠損を特定することを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、細胞のサンプルは、スターター細胞の受領、細胞の操作の1つ以上の段階の完了(例えば、培養及び拡大、遺伝子操作、分化、異種/亜種化、収穫、冷凍保存、解凍、分離、濃縮、単一細胞クローニング、及び精製)、並びに使用前の製造細胞の受領からなる群から選択される製造工程中の1以上の時点において受領する。
【0015】
一実施形態において、細胞のリプログラミングは、単離された体細胞初代細胞を人工多能性幹細胞に変換することを含んでいる。 一実施形態では、細胞の操作は、T細胞をCAR T細胞に操作することを含んでなる。 CAR T細胞は、癌細胞上または腫瘍細胞上の目的の抗原を標的とするように操作され得る。
【0016】
いくつかの実施形態において、遺伝子操作は、CRISPR、TALEN、Zn-Finger、およびベクター送達システムのうちの1つまたは複数を用いて細胞を操作することを含む。 遺伝子編集システムは、ベクター送達システム(RNA、DNA、またはウイルスベクター送達システムなど)を介して細胞に送達され得る。 いくつかの実施形態では、遺伝子操作は、1つまたは複数の遺伝子欠陥を修正すること、1つまたは複数の遺伝子の発現を低減すること、および1つまたは複数の遺伝子の発現を増大することからなる群から選択される。 一実施形態では、遺伝子操作は、TET2を不活性化またはノックアウトすることを含んでいる。
【0017】
いくつかの実施形態において、分化は、スターター細胞(例えば、造血幹細胞)を治療用細胞型に変換することを含む。 いくつかの実施形態では、スターター細胞は多能性細胞からなり、及び/又は治療細胞型は、β細胞、心筋細胞、衛星細胞、網膜細胞、NK細胞、及び神経細胞からなる群から選択される。 いくつかの実施形態において、分化は、多能性細胞を治療用細胞タイプ(例えば、β細胞、運動ニューロン細胞、心筋細胞、衛星細胞、NK細胞、神経細胞など)に転換することを含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、製造プロセスにおける1つ以上の細胞は、スターター細胞の集団から製造される。 スターター細胞は、幹細胞であってもよい。 いくつかの実施形態では、スターター細胞は、多能性細胞(例えば、人工多能性幹細胞(iPSC)及び/又は胚性幹細胞(ESCs))又は体細胞である。 他の実施形態では、スターター細胞は、造血幹細胞(HSC)又はT細胞である。 いくつかの実施形態では、スターター細胞は、血液サンプルから得られる。 例えば、スターター細胞の集団は、それを必要とする対象又はドナー対象(例えば、健康なドナー)のような対象から取得される。
【0019】
いくつかの実施形態では、欠損は、配列ベースの変異、例えば、ミスセンス変異、サイレント変異、フレームシフト変異、ナンセンス変異、挿入変異、欠失変異、またはスプライスサイト破壊である。 いくつかの実施形態では、欠損は、体細胞配列に基づく変異または生殖細胞配列に基づく変異である。 一実施形態では、欠損は、エクソン7~23におけるDNMT3Aにおけるものである。 一実施形態では、欠損は、G543C、S714C、F732C、Y735C、R736C、R749C、F751C、W753C、及びL889Cからなる群から選択されるDNMT3Aにおけるミスセンス変異である。 一実施形態では、欠陥は、JAK2におけるV617F変異である。 一実施形態では、欠陥は、TET2における破壊的変異である。 一実施形態では、欠損は、PPM1Dにおける破壊的変異である。 一実施形態では、欠陥は、R175H、G245S、R248W、R273G、P151S、R181H、H193R、M237I、G245C、R248Q、R267W、およびR273Lからなる群から選択されるTP53のミスセンス変異である。
【0020】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の遺伝子は、腫瘍形成に関連する。 つまたは複数の遺伝子は、TP53、KRAS、ASXL1、JAK2、SFSR2、およびSFSB1からなる群から選択されてよく、より具体的には、TP53およびKRASからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の遺伝子は、がんに関連する。 つまたは複数の遺伝子は、DNMT3A、TET2、AXXL1、PPM1D、JAK2、SF3B1、SRSF2、およびTP53からなる群から選択されてよく、より具体的にはDNMT3A、TET2、およびASXL1からなる群から選択される。 いくつかの実施形態において、1つまたは複数の遺伝子は、血液癌と関連しており、TET2およびDNMT3Aからなる群から選択され得る。
【0021】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、PCM1、HIF1A、およびAPCからなる群から選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥(例えば、配列ベースの変異)を、受け取った細胞において同定することを含む。 いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、受け取った細胞において、TERTおよびCHEK2からなる群から選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥を同定することをさらに含む。 いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、受け取った細胞において、CBL、KMT2C、ATM、CHEK2、KDR、MGA、DNMT3B、ARID2、SH2B3、MPL、RAD21、SRSF2、およびCCND2からなる群から選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥を同定することをさらに含む。 いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、受け取った細胞において、HPRT、JAK1、JAK3、SLAMF6、IRF1、PLRG1、STAT3、およびNotch1からなる群から選択される1つまたは複数の遺伝子における欠損を特定することをさらに含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、受け取った細胞において、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群から選択される1つまたは複数の遺伝子における構造ベースの変異を同定することを含む。 いくつかの実施形態では、構造ベースの変異は重複、欠失、コピー数変異、逆転、または転位である。 いくつかの実施形態では、構造に基づく変異は、Ch2、Ch4、Ch9、Ch12、Ch17、およびCh20からなる群から選択される1つまたは複数の染色体上、より具体的には、Ch2p23、Ch4q24、Ch20q11、Ch17q23、Ch9p24、Ch17p23、Ch17q25、Ch2q33、およびCh12p12からなる群から選択される1つまたは複数の染色体上である。
【0023】
一実施形態では、DNMT3Aの構造に基づく変異は、染色体2p23上で発生する。 一実施形態では、TET2の構造に基づく変異は、染色体4q24上に生じる。 一実施形態では、ASXL1の構造に基づく変異は、染色体20q11上に生じる。 一実施形態では、PPMD1の構造に基づく変異は、染色体17q23上に生じる。 一実施形態では、JAK2の構造に基づく変異は、染色体9p24上に生じる。 一実施形態では、TP53の構造に基づく変異は、染色体17p13上に生じる。 一実施形態において、SRSF2の構造に基づく変異は、染色体17q25上に生じる。 一実施形態では、SF3B1の構造に基づく変異は、染色体2q33上に生じる。
【0024】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、受け取った細胞において、Ch1、Ch12、Ch17q、Ch20q11、およびX染色体からなる群から選択される1つまたは複数の染色体上に生じる構造ベースの変異を同定することをさらに含む。 いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、受け取った細胞において、Ch3、Ch4、Ch5、Ch7、Ch8、Ch9、Ch11、Ch12、Ch13、Ch14、およびCh18からなる群より選択される1つまたは複数の染色体上に生じる構造ベースの変異を同定することをさらに含む。
【0025】
一実施形態では、細胞のサンプルは、治療を必要とする被験者の血液サンプルに由来するiPSCを含む。 代替的な実施形態では、細胞のサンプルは、ドナー対象(例えば、健康なドナー対象)の血液サンプルに由来するiPSCからなる。 いくつかの実施形態では、細胞のサンプルは、治療を必要とする被験者の血液サンプルに由来する造血幹細胞からなる。 一実施形態では、細胞のサンプルは、ドナー被験者の血液サンプルに由来する造血幹細胞を含んでなる。 一実施形態では、細胞のサンプルは、治療を必要とする被験者の血液サンプルまたはドナー被験者の血液サンプルに由来するT細胞を含む。 いくつかの実施形態では、細胞のサンプルは、製造された細胞のサンプルである。
【0026】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、1つまたは複数の遺伝子における欠陥が同定される製造工程中の1つまたは複数の時点を同定することをさらに含む。 いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、1つまたは複数の遺伝子における識別された欠陥を示さない、受け取った細胞の部分集団を単離することをさらに含む。 いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、受け取った細胞の単離された亜集団に、細胞療法製造工程を施すことをさらに含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、1つまたは複数の遺伝子の欠陥を示す、受け取った細胞の亜集団を単離することをさらに含む。 いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、1つまたは複数の遺伝子の欠陥を補正することをさらに含む。 いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、受け取った細胞の補正された単離された亜集団に、細胞療法製造プロセスを適用することをさらに含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、1つまたは複数の遺伝子において同定された欠陥を示さない製造細胞の亜集団を単離することをさらに含む。 いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、1つまたは複数の遺伝子において同定された欠陥を示さない単離された製造細胞を対象に投与することをさらに含む。 いくつかの実施形態では、単離された製造細胞は、疾患又は障害を治療するために対象に投与される。 いくつかの実施形態では、疾患又は障害は、血液、免疫、代謝、神経、又は心臓血管の障害である。 いくつかの実施形態では、疾患又は障害は、癌である。 いくつかの実施形態では、疾患または障害は、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性新生物、胚細胞腫瘍、神経芽腫、ユーイング肉腫、および髄芽腫からなる群から選択される。 いくつかの実施形態において、疾患または障害は、固形腫瘍(例えば、非悪性腫瘍または悪性腫瘍)である。
【0029】
他の実施形態では、本明細書に記載の方法は、1つまたは複数の遺伝子の欠陥を示す製造細胞の亜集団を単離することをさらに含む。 いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、1つまたは複数の遺伝子の欠陥を修正することをさらに含む。 いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、補正された単離された製造細胞を被験者に投与することをさらに含む。
【0030】
また、本明細書には、製造工程中の細胞の品質を維持する方法が記載されている。 方法は、対象からの1つ以上のiPSCドナー細胞のゲノムの少なくとも一部を配列決定すること;ドナー細胞において、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRAS及びSF3B1からなる群から選択される1つ以上の遺伝子における欠陥を特定すること;1つ以上の遺伝子における欠陥が特定されないドナー細胞を分離することが挙げられる。単離されたドナー細胞を細胞療法製造工程に供し、1つまたは複数の製造細胞を製造する工程;1つまたは複数の製造細胞のゲノムの少なくとも一部を配列決定する工程;製造細胞において、DNMT3A、TET2、AXXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群より選ばれる1つまたは複数の遺伝子における欠陥を特定し、1つまたは複数の遺伝子における欠陥の存在が確認できない製造細胞を単離する。
【0031】
本明細書でさらに開示されるのは、製造工程中の細胞の品質を維持する方法である。 方法は、対象からの1つ以上の造血幹細胞またはT細胞ドナー細胞のゲノムの少なくとも一部を配列決定すること;ドナー細胞において、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群から選択される1つ以上の遺伝子における欠陥を特定すること;1つ以上の遺伝子における欠陥が特定されないドナー細胞を分離すること。単離されたドナー細胞を細胞療法製造工程に供し、1つまたは複数の製造細胞を製造する工程;1つまたは複数の製造細胞のゲノムの少なくとも一部を配列決定する工程;製造細胞において、DNMT3A、TET2、AXXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群より選ばれる1つまたは複数の遺伝子における欠陥を特定し、1つまたは複数の遺伝子における欠陥の存在が確認できない製造細胞を単離する。
【0032】
方法は、細胞療法製造工程の1つ以上の段階において、単離されたドナー細胞のゲノムの少なくとも一部を配列決定する工程と、製造工程における細胞において、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRAS及びSF3B1からなる群から選択される1つ以上の遺伝子における欠陥を特定し、製造工程における細胞のうち1つ以上の遺伝子における特定した欠陥を呈しないものを単離する工程とをさらに含み得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、単離された細胞は、細胞療法製造プロセスの1つ又は複数の追加の段階に供される。 いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、1つ又は複数の遺伝子において同定された欠陥を示さない単離製造細胞を対象に投与する段階をさらに含む。 いくつかの実施形態では、単離された製造された細胞は、疾患又は障害を治療するために対象に投与される。 いくつかの実施形態では、疾患又は障害は、血液、免疫、代謝、神経、又は心血管障害である。 いくつかの実施形態では、疾患又は障害は、癌である。 いくつかの実施形態では、疾患または障害は、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性新生物、胚細胞腫瘍、神経芽腫、ユーイング肉腫、および髄芽腫からなる群から選択される。 いくつかの実施形態において、疾患または障害は、固形腫瘍、例えば、非悪性腫瘍または悪性腫瘍である。
【0034】
上述した、および本発明の他の多くの特徴および付随する利点は、以下の発明の詳細な説明を参照することにより、よりよく理解されるであろう。
略図
【0035】
特許又は出願のファイルには,少なくとも1枚のカラー図面が含まれている。 カラー図面を含むこの特許又は特許出願公開の写しは,請求及び必要な手数料の支払により,国内官庁から提供される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、iPSCを用いた細胞治療のための細胞製造ワークフローのフローチャートである。
【0037】
図2図2は、CAR-T細胞療法の細胞製造ワークフローのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
発明の詳細な説明
細胞治療は、癌などの疾患や障害を治療する目的で、患者に細胞を投与する必要があります。 変異や欠損を含む細胞を投与することを最小限にするために、投与前に細胞を評価することは有益である。 さらに、治療用細胞を製造するための製造工程における細胞の操作は、多くの工程を含むことができ、それぞれの工程は、配列及び/又は構造上の損傷又は変異を含むDNA損傷及び/又は変異の蓄積をもたらすことがある。 細胞を操作する前、あるいは患者に細胞を投与する前に、細胞中のDNA損傷を特定することは有益であろう。 さらに、製造工程中のどの時点で細胞にDNA損傷が蓄積されたかを特定し、可能であれば、操作の進行に伴い、結果として生じる細胞が蓄積された損傷を示さないように、損傷した細胞を分離して除去または修復することが有益であろう。
【0039】
本明細書では、細胞、例えば、多能性細胞、造血幹細胞、又はT細胞の品質を評価するための方法が記載されている。 例えば、細胞の品質は、対象からの取り出し時、対象への投与前、又は製造工程中に評価することができる。 また、本明細書には、製造プロセス中に細胞の品質を維持する方法が記載されている。 特定の実施形態において、本明細書に開示されるのは、細胞、例えば、製造プロセスの開始時の細胞、製造プロセス中の1つ又は複数の時点で除去された細胞、及び/又は製造プロセスから得られる細胞の品質を評価する方法である。 いくつかの実施形態では、細胞のサンプルを受け取り、1つ又は複数の細胞のゲノムの少なくとも一部を配列決定する。 いくつかの実施形態では、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる遺伝子の群から選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥が、受け取った細胞において特定される。
【0040】
いくつかの態様において、欠陥は、体細胞配列変異及び/又は生殖細胞系列配列変異である。 いくつかの実施形態において、1つまたは複数の遺伝子における体細胞配列変異が、細胞のサンプルにおいて同定される。 いくつかの実施形態において、生殖細胞系列配列変異は、細胞のサンプルにおいて同定される。 いくつかの実施形態では、細胞のサンプルは、マイクロアレイ解析などによる、構造に基づく変異(例えば、体細胞構造染色体変異)についてさらに評価される。 いくつかの態様において、体細胞構造染色体変異は、細胞のサンプルにおいて同定される。
【0041】
DNAの塩基配列決定は、組織または細胞に対して実施することができる。特定の細胞型の配列決定により、特定の予測値を提供する特定の細胞型の変異を同定することができる。一部の細胞型は、他の細胞型よりも高い予測値を提供することができる。 シーケンシングは、適切なシングルセルシーケンス戦略を用いて、単一細胞で実施することもできる。シングルセル解析は、同じ細胞内で共起する変異の高リスクな組み合わせを特定するために使用することができる。共起は、変異が同じ細胞クローンで発生していることを意味し、異なる個々の細胞で同じ変異が発生するよりもリスクが高く、したがって予測値も高くなる。
【0042】
いくつかの実施形態では、サンプル中の1つまたは複数の細胞のゲノムの少なくとも一部が配列決定される。 いくつかの実施形態では、配列決定されるゲノムの一部は、特定の遺伝子、全エクソーム、またはエキソームの一部に限定される。 例えば、特定の局面では、配列決定は、全エクソーム配列決定(WES)であってもよい。 配列決定は、任意の好適な技術に従って実施され得る。 多くの独自の配列決定システムが商業的に入手可能であり、例えば、米国Illuminaからのような、本発明の文脈で使用することができる。 例示的な単細胞配列決定方法は、例えば、Eberwineら、Nature Methods 11, 25-27 (2014) doi:10.1038/nmeth.2769 Published online 30 Dec. 2013;および特にマイクロ流体液滴における単細胞配列決定(Nature 510, 363-369 (2014) doi:10.1038/nature13437 )により記載されるものを含み得、その内容全体は参照によりここに組み込まれる。
【0043】
配列決定は、特定の遺伝子のみ、ゲノムの特定の部分、または全ゲノムについて実施することができる。 いくつかの態様では、遺伝子の特定の部分を配列決定することができ、例えば、DNMT3Aでは、エクソン7から23を配列決定することができる。 ゲノムの一部が配列決定される場合、その部分はエクソームとすることができる。エクソームとは、ゲノムのうちエクソンで形成された部分のことで、エクソン配列決定法は、ゲノム中の発現配列を配列化するものである。ヒトゲノムには18万個のエクソンがあり、ゲノムの約1%、約3000万塩基対を構成しています。エクソンシークエンシングでは、エクソン配列のシークエンシングターゲットを濃縮する必要があり、PCR、分子反転プローブ、ターゲットのハイブリッド捕捉、ターゲットの溶液捕捉など、いくつかの技術を用いることができる。ターゲットのシーケンシングは、任意の適切な技術によって実施することができる。
【0044】
細胞試料中の構造変異(例えば、体細胞構造染色体変異)及び生殖細胞系列配列変異を同定する方法は、当業者に既知である。 例示的な方法は、WO 2019/079493およびUS 2017/0321284に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0045】
いくつかの実施形態では、欠陥又は変異(例えば、DNMT3A、TET2、AXXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRAS及びSF3B1からなる群から選択される1又は複数の遺伝子における欠陥)が、細胞のサンプル(例えば、ドナーから提供されるか、細胞療法製造プロセスの1又は複数の目立たない時点から提供される細胞のサンプル)において特定される。 いくつかの態様では、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、及びSF3B1からなる群から選択される1つ又は複数の遺伝子において欠陥又は変異が特定される。
【0046】
いくつかの態様において、欠陥または変異は、腫瘍形成に関連する1つまたは複数の遺伝子(例えば、TP53、KRAS、ASXL1、JAK2、SFSR2、および/またはSFSB1からなる遺伝子の群から選択される1つまたは複数の遺伝子)において特定される。 一態様において、欠陥または変異は、TP53および/またはKRASにおいて同定される。 いくつかの態様において、欠陥または変異は、血液癌に関連する1つまたは複数の遺伝子(例えば、TET2および/またはDNMT3A)において同定される。
【0047】
いくつかの態様において、特定の遺伝子は、高影響遺伝子(例えば、DNMT3A、TET2および/またはASXL1)または低影響遺伝子(例えば、PPM1D、JAK2、SF3B1、SRSF2および/またはTP53)として指定され得る。 高影響遺伝子は、低影響遺伝子よりも、欠陥を示す場合に、より大きな影響を与えるものである。 一態様において、欠陥または変異は、DNMT3A、TET2、および/またはASXL1において同定される。
【0048】
特定の実施形態において、TP53の欠陥が同定される(例えば、細胞のサンプルにおいて)。 特定の実施形態において、KRASにおける欠陥が同定される(例えば、細胞のサンプルにおいて)。 特定の実施形態において、TET2における欠陥が同定される(例えば、細胞のサンプルにおいて)。 特定の実施形態において、DNMT3Aの欠陥が同定される(例えば、細胞のサンプルにおいて)。 特定の実施形態において、ASXL1における欠陥が同定される(例えば、細胞のサンプルにおいて)。
【0049】
DNMT3AはDNAサイトシン-5-1-メチルトランスフェラーゼ3アルファで、第2染色体にコードされています(HGMC 2978)。 ASXL1 は、additional sex combs like transcriptional regulator 1 で、第 20 染色体にコードされている (HGNC 18318). TET2 は tet methylcytosine dioxygenase 2 であり、第4染色体にコードされている (HGNC 25941)。 PPM1D は protein phosphatase, Mg2+/Mn2+ dependent, 1D であり、17番染色体にコードされている (HGNC 9277)。 JAK2は、ヤヌスキナーゼ2であり、第9染色体にコードされている(HGNC 6192)。 TP53 は腫瘍タンパク質 p53 であり、17 番染色体にコードされている (HGNC 11998)。 SRSF2 はセリンとアルギニンに富むスプライシングファクター2で、17番染色体にコードされている(HGNC 10783). KRASはKRAS proto-oncogene で、12番染色体にコードされている(HGNC 6407)。 SF3B1 はスプライシングファクター3bサブユニット1であり、第2染色体にコードされている(HGNC 10768).
【0050】
いくつかの実施形態では、PCM1、HIF1A、およびAPCからなる群から選択される1つまたは複数の遺伝子において、欠陥または変異がさらに同定される。 いくつかの実施形態において、欠陥または変異は、TERTおよびCHEK2からなる群から選択される1つまたは複数の遺伝子においてさらに同定される。
【0051】
いくつかの実施形態において、欠陥または変異は、1つまたは複数の癌ドライバー遺伝子においてさらに同定される。 ある実施形態では、欠陥または変異は、CBL、KMT2C、ATM、CHEK2、KDR、MGA、DNMT3B、ARID2、SH2B3、MPL、RAD21、SRSF2、およびCCND2からなる群から選択される1つまたは複数の遺伝子において、さらに同定される。 いくつかの実施形態において、欠陥または変異は、T細胞クローン拡大中の悪性腫瘍に関連する1つまたは複数の遺伝子においてさらに同定される。 ある実施形態では、欠陥または変異は、HPRT、JAK1、JAK3、SLAMF6、IRF1、PLRG1、STAT3、およびNotch1からなる群から選択される1つまたは複数の遺伝子において、さらに同定される。
【0052】
PCM1はpericentriolar material 1で、第8染色体にコードされている(HGNC 8727)。 HIF1AはHypoxia inducible factor 1 subunit alphaで、第14染色体にコードされている(HGNC 4910)。 APCは、WNTシグナル伝達経路のAPC制御因子であり、第5染色体にコードされている(HGNC 583)。 TERTはテロメラーゼ逆転写酵素で、5番染色体にコードされている(HGNC 11730)。 CHEK2はチェックポイントキナーゼ2であり、22番染色体にコードされている(HGNC 16627)。 CBL は Cbl proto-oncogene であり、11 番染色体にコードされている (HGNC 1541)。 KMT2C はリジン・メチルトランスフェラーゼ 2C であり、7 番染色体にコードされている (HGNC 13726)。 ATMはATMセリン・スレオニンキナーゼで、11番染色体にコードされている(HGNC 795)。 KDRはkinase insert domain receptorで、第4染色体にコードされている(HGNC 6307)。 MGAはMAX二量化タンパク質MGAで、第15染色体にコードされている(HGNC 14010)。 DNMT3BはDNAメチルトランスフェラーゼ3βであり、第20染色体にコードされている(HGNC 2979)。 ARID2はAT-rich interaction domain 2で、第12染色体にコードされている(HGNC 18037)。 SH2B3 は SH2B adaptor protein 3 であり、12 番染色体にコードされている (HGNC 29605)。 MPL は、MPL proto-oncogene, thrombopoietin receptor であり、第1染色体にコードされている(HGNC 7217)。 RAD21 は、RAD21 コヒーシン複合体成分であり、第8染色体にコードされている(HGNC 9811)。 CCND2 はサイクリン D2 であり、12 番染色体にコードされている (HGNC 1583)。 HPRTは、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼで、X染色体上にコードされている(HGNC 5157)。 JAK1はJanus kinase 1であり、第1染色体にコードされている(HGNC 6190)。 JAK3はJanus kinase 3であり、19番染色体にコードされている(HGNC 6193)。 SLAMF6 は SLAM family member 6 であり、第1染色体にコードされている(HGNC 21392)。 IRF1 はインターフェロン制御因子 1 で、5 番染色体にコードされています (HGNC 6116)。 PLRG1はpleiotropic regulator 1で、第4染色体にコードされている(HGNC 9089)。 STAT3は、Signal Transducer and Activator of Transcription 3で、17番染色体にコードされている(HGNC 11364)。 Notch1は、ノッチ受容体1で、第9染色体にコードされている(HGNC 7881)。
【0053】
遺伝子の変異は、破壊的なもの(例えば、タンパク質の機能に観察または予測される影響を及ぼすもの)と非破壊的なものがある。 非破壊的変異は、典型的にはミスセンス変異であり、コドンが異なるアミノ酸をコードするように変更されるが、コードされたタンパク質は依然として発現される。いくつかの実施形態では、体細胞変異は、ミスセンス変異または破壊的変異(例えば、フレームシフト、ナンセンス、またはスプライスサイト破壊)であってもよい。
【0054】
推定体細胞変異には、非サイレント/破壊的ヌクレオチド変化、インデル、ミスセンス変異、フレームシフト、ストップ変異(付加または欠失)、リードスルー変異、スプライス変異、および配列決定エラーまたは検査システムのアーチファクトによらない確定した変化の少なくとも一つを含む対立遺伝子が含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
いくつかの実施形態において、DNMT3Aにおける変異は、優勢にミスセンス変異である。 いくつかの側面において、DNMT3Aにおける変異(例えば、ミスセンス変異)は、エクソン7から23に局在する。 いくつかの側面において、DNMT3Aにおける変異は、システイン形成変異に富んでいる。 体細胞変異体における共通の塩基対変化は、シトシンからチミンへの転移である。 いくつかの実施形態では、DNMT3Aの変異は、G543C、S714C、F732C、Y735C、R736C、R749C、F751C、W753C、及びL889Cからなる群から選択されるミスセンス変異である。 いくつかの実施形態において、TET2および/またはPPM1Dにおける変異は、破壊的変異である。 いくつかの実施形態では、JAK2における変異は、V617F変異である。 いくつかの実施形態では、TP53における突然変異は、ミスセンス突然変異である。 いくつかの態様において、TP53における変異は、R175H、G245S、R248W、R273G、P151S、R181H、H193R、M237I、G245C、R248Q、R267W、及びR273Lからなる群から選択されるミスセンス変異である。 DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1に見られる変異の追加の非限定的な例は、以下に記載されている。Merkleら、Nature、2017、545(7653):229-233;Aviorら、Cell Stem Cell、2019、25(4):456-461;Goreら、Nature、2011、471(7336):63-67;Assouら、Stem Cell Reports、2020、14(1):1-8;Laurentら、Cell Stem Cell、2011、8(1):106-118;Mandaiら,N Engl J Med, 2017, 376(11):1038-1046; Martincorena, et al., Science, 2015, 349(6255):1483-1489 (correction published Science, 2016, 351(6277)); US 2017/0321284; and WO 2019/079493, all incorporated here by reference. HPRT、JAK1、JAK3、SLAMF6、IRF1、PLRG1、STAT3、およびNotch1における変異の非限定的な例は、Finetら、Leukemia、2001、15(12):1898-1905;Bellangerら、J.Leukemia, 2014, 28(2):417-419; Savola et al., Nat Commun., 2017, 8:15869; およびBlackburn, et al., Leukemia, 2012, 26:2069-2078, これらはすべて参照により本明細書に組み込まれる。
【0056】
構造に基づく変異(例えば、構造的な染色体変異)には、例えば、重複、欠失、コピー数変異、逆位、及び/又は転座が含まれ得る。 いくつかの実施形態において、1つ以上の構造ベースの変異は、細胞サンプル(例えば、細胞療法製造プロセスから提供又はサンプリングされた1つ以上の細胞)中の1つ以上の細胞で同定される。 いくつかの実施形態では、構造に基づく変異は、Ch2、Ch4、Ch9、Ch12、Ch17、及びCh20からなる群から選択される1つ又は複数の染色体上で生じる。 特定の実施形態では、構造に基づく変異は、Ch2p23、Ch4q24、Ch20q11、Ch17q23、Ch9p24、Ch17p23、Ch17q25、Ch2q33、およびCh12p12からなる群より選択される1つまたは複数の染色体上で起こる。 いくつかの実施形態では、構造に基づく変異は、Ch1、Ch4、Ch5、Ch7、Ch8、Ch9、Ch11、Ch12、Ch15、Ch17、Ch19、Ch20、Ch22、およびChXからなる群から選択される1つまたは複数の染色体上でさらに同定される。 いくつかの実施形態では、構造に基づく変異は、Ch1、Ch12、Ch17q、Ch20q11、およびChXからなる群から選択される1つまたは複数の染色体上でさらに同定される。 いくつかの実施形態では、構造に基づく変異は、Ch3、Ch4、Ch5、Ch7、Ch8、Ch9、Ch11、Ch12、Ch13、Ch14、およびCh18からなる群から選択される1つまたは複数の染色体上でさらに同定される(Loh et al., ”Monogenic and polygenic inheritance become instruments for clonal selection” Nature, 2020, available at doi.org/10.1038/s41586-020-2430-6 incorporated here by reference)。 一実施形態では、構造に基づく変異は、9p、12、13q、および14qからなる群から選択される1つまたは複数の染色体上でさらに同定される。
【0057】
一実施形態では、DNMT3Aの構造に基づく変異は、染色体2p23上で発生する。 一実施形態では、TET2の構造に基づく変異は、染色体4q24上に生じる。 一実施形態では、ASXL1の構造に基づく変異は、染色体20q11上に生じる。 一実施形態では、PPMD1の構造に基づく変異は、染色体17q23上に生じる。 一実施形態では、JAK2の構造に基づく変異は、染色体9p24上に生じる。 一実施形態では、TP53の構造に基づく変異は、染色体17p13上に生じる。 一実施形態において、SRSF2の構造に基づく変異は、染色体17q25上に生じる。 一実施形態では、SF3B1の構造に基づく変異は、染色体2q33上に生じる。
【0058】
構造に基づく変異の非限定的な例は、Assouら、Stem Cell Reports、2020、14(1):1-8;Laurentら、Cell Stem Cell、2011、8(1):106-118;Lefortら、Nat Biotechnol、2008、26:1364-1366; International Stem Cell Initiativeら、.Nat Biotechnol, 2011, 29:1132-1144; Varelaら, J Clin Invest, 2012, 122:569-574; Averyら, Stem Cell Reports, 2013, 1:379-386; およびNguyenら, Mol Hum Reprod, 2014, 20, 168-177 は、すべて参照により本明細書に組み込まれる。
【0059】
いくつかの実施形態において、細胞のサンプルは、例えば、配列決定及び/又はマイクロアレイ解析による評価のための1つ又は複数の細胞を含む。 細胞のサンプルは、1つ又は複数の体細胞又は1つ又は複数の造血幹細胞のサンプルであってもよい。 いくつかの実施形態では、細胞のサンプルは、1つ以上の多能性細胞、例えば、多能性幹細胞からなる。 いくつかの実施形態では、細胞のサンプルは、1つまたは複数の人工多能性幹細胞(iPSC)または胚性幹細胞(ESC)からなる。 いくつかの実施形態では、細胞のサンプルは、1つ以上の造血細胞、例えば、造血幹細胞、又はT細胞から成る。 いくつかの実施形態では、細胞のサンプルは、1つまたは複数の造血幹細胞(HSC)を含んでなる。 いくつかの実施形態では、細胞のサンプルは、1つまたは複数のT細胞、例えば、CAR T細胞を含んでなる。
【0060】
いくつかの実施形態では、細胞のサンプルは、上皮細胞、線維芽細胞、ケラチノサイト、メラノサイト、内皮細胞、筋肉細胞、造血幹細胞、及び間葉系幹細胞などの初代細胞の集団を含んでいる。 いくつかの実施形態では、細胞のサンプルは、組織サンプル(例えば、ヒトなどの被験体から)から得られる。 いくつかの実施形態では、細胞のサンプルは、血液サンプル(例えば、ヒトなどの被験体から)から得られる。 血液サンプルは、例えば、骨髄、末梢血、又は臍帯血からなど、対象から得られる任意のタイプの血液を含んでよい。 特定の実施形態では、血液サンプルは、臍帯血からなる。 特定の実施形態では、細胞のサンプルは、治療を必要としている被験者の血液サンプルから得られる。 例えば、細胞のサンプルは、多能性細胞、造血幹細胞、又はT細胞(例えば、治療を必要とするヒト被験者の血液サンプル由来のiPSC、造血幹細胞、又はT細胞)から構成され得る。 他の実施形態では、細胞のサンプルは、ドナー対象者(例えば、治療を必要とする対象者に送達するために細胞を提供する対象者)の血液サンプルから取得される。例えば、細胞のサンプルは、多能性細胞(例えば、ドナー被験者の血液サンプル由来のiPSC)、造血幹細胞(例えば、ドナー被験者の血液サンプル由来の造血幹細胞)、又はT細胞(例えば、ドナー被験者の血液サンプル由来のT細胞)を含んでよい。
【0061】
いくつかの実施形態において、細胞のサンプルは、多能性細胞を操作した後に得られる1つまたは複数の細胞を含む。 いくつかの実施形態では、細胞のサンプルは、造血幹細胞又はT細胞を操作した後に得られる1つ又は複数の細胞を含む。 例えば、細胞のサンプルは、製造プロセスの開始時、製造プロセス中、及び/又は製造プロセスの完了時に得られる1つ又は複数の細胞を含み得る。 いくつかの実施形態では、細胞のサンプルは、細胞製造プロセス中の1つ以上の目立たない時点(例えば、細胞療法製造プロセスの開始時及び/又は終了時、又はかかる製造プロセス中の1つ以上の中間時点)からサンプリング又は提供される。
【0062】
いくつかの実施形態において、細胞のサンプルは、製造又は操作プロセス中の1つ又は複数の時点又は段階で受け取られる。 いくつかの実施形態では、細胞のサンプルは、製造プロセスの開始前、製造プロセス中の1つ以上の時点、及び/又は製造プロセスの完了時(例えば、使用前)に受領される。 一態様において、細胞のサンプルは、製造プロセスの前に受け取られる(例えば、スターター細胞又は一次細胞である)。 例えば、スターター細胞は体細胞であってもよい。いくつかの態様において、スターター細胞は、一次細胞、例えば、線維芽細胞である。 他の側面では、スターター細胞は多能性細胞(例えば、iPSC又はESCs)である。 他の側面では、スターター細胞は、造血幹細胞(HSC)又はT細胞であってもよい。
【0063】
特定の実施形態では、1つ以上の変異又は欠陥(例えば、1つ以上の推定配列ベース又は構造ベース変異)を保有すると同定された試料からの細胞は、単離され、さらなる製造又は操作の対象とされない。 特定の実施形態では、1つまたは複数の変異または欠陥(例えば、1つまたは複数の推定配列ベースまたは構造ベース変異)を保有すると同定された試料からの細胞は、単離され、それを必要とする被験者に投与されない。 同様に、特定の局面において、1つ以上の変異または欠損(例えば、1つ以上の配列ベースまたは構造ベースの変異)を保有していないと同定された試料からの細胞は、さらなる製造または操作に付される。 特定の態様において、1つ以上の変異又は欠陥(例えば、1つ以上の配列ベース又は構造ベースの変異)を保有していないと同定された試料からの細胞は、それを必要とする被験者に投与される。 例えば、1つ以上の変異または欠陥を保有していないと同定された初代細胞またはスターター細胞は、同定、単離および細胞療法製造工程に供され、または特定の実施形態では細胞療法製造に関連してさらなる処理に供され得る。 いくつかの態様において、試料からの細胞(例えば、CAR T細胞)の1つ又は複数の遺伝子において同定された欠陥は、疾患、例えば、サイトカイン放出症候群のマーカー又は指標となり得る。
【0064】
いくつかの実施形態において、製造プロセスは、細胞の集団の操作の1つまたは複数の段階を含む。 いくつかの態様において、1つ以上の段階は、細胞再プログラミング、培養及び拡大、遺伝子操作、分化、異種性/亜型化、収穫、冷凍保存、解凍、分離、濃縮、単一細胞クローニング、及び精製を含む。 Magnussonら、PLoS One、2013、8(1):e53912;Choiら、Biotechnol J.、2015、10(10):1529-1545;Kumarら、Trends Mol Med., 2017、23(9):799-819;Naldiniら、EMBO Mol Med., 2019、11(3):e9958;Eavesら,,Blood, 2015, 125(17):2605-2613; Almeida et al., Pathobiology, 2014, 81(5-6):261-275; Crisan et al., Development, 2016, 143(24):4571-4581; Park et al., Blood Res., 2015, 50(4):194-203, これらはそれぞれ参照により本書に組み込まれるものとする。
【0065】
細胞初期化は、体細胞(例えば、単離された体細胞初代細胞)を多能性幹細胞(例えば、iPSC)に変換することを含み得る。 いくつかの態様において、iPSCは被験者の血液に由来する。iPSCは、内皮前駆細胞(EPC)、B細胞、T細胞、または一般にCD34+細胞に由来し得る。
【0066】
細胞、例えば、多能性幹細胞(PSC)、造血幹細胞(HSC)又はT細胞の培養及び拡張は、セルバンキング用、遺伝子操作への参入用、分化への参入用、又はそれを必要とする対象への投与用に大量の細胞を生成し得る。 例えば、大量のHSCは、造血幹細胞移植のために生成されることがある。
【0067】
遺伝子操作は、クラスタード・レギュラー・インタースペース・ショート・パリンドロミック・リピート(CRISPR)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、およびジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を含む1以上の遺伝子編集系を用いて行われ得る。 遺伝子編集システムは、RNA、DNA、またはウイルスベクター送達システムなどの1つまたは複数のベクター送達システムを使用して、細胞に送達され得る。 レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスおよび単純ヘルペスウイルスを含むウイルスベクター送達システムの非限定的な例。 いくつかの態様において、1つまたは複数の細胞の遺伝子操作は、1つまたは複数の遺伝子欠陥を修正すること(例えば、体細胞または生殖細胞系列の変異を修復することによって)、1つまたは複数の遺伝子の発現を低減すること(例えば、1つまたは複数の遺伝子の不活性化または削除によって)、または1つまたは複数の遺伝子の発現を増大すること(例えば、1つまたは複数の遺伝子の活性化または挿入によって)、を含む。
【0068】
分化は、多能性細胞、例えばiPSC又はESCを治療用細胞に変換することを含み得る。 分化した治療用細胞の非限定的な例としては、β細胞、心筋細胞、衛星細胞、網膜細胞、NK細胞、及び神経細胞が挙げられる。 分化のための治療細胞タイプは、細胞の所望の最終用途に基づいて選択され得る。 他の側面において、分化は、造血幹細胞又はT細胞を治療用細胞に変換することを含み得る。 いくつかの態様において、T細胞は、CAR T細胞を形成するように操作される。
【0069】
ある実施形態では、細胞の集団は、細胞の出発集団から操作又は製造される。 細胞のサンプルは、細胞の出発集団から取得又は受信されてもよく、1つ又は複数の細胞のゲノムは配列決定されてもよく、1つ又は複数の遺伝子において欠陥が同定されてもよい。 加えて、又は代替的に、細胞のサンプルは、細胞の操作の間の1つ又は複数の時点で受け取られ、1つ又は複数の細胞のゲノムが配列決定され、1つ又は複数の遺伝子において欠陥が同定されることがある。 最後に、細胞のサンプルは、操作された細胞の最終集団から得られてもよく、1つまたは複数の細胞のゲノムが配列決定され、1つまたは複数の遺伝子において欠陥が同定されてもよい。 特定の局面において、細胞のサンプルは、1つまたは複数の遺伝子における構造に基づく欠陥を同定するためにさらに評価され得る。
【0070】
いくつかの側面において、1つまたは複数の細胞における1つまたは複数の遺伝子における欠陥(例えば、配列ベースまたは構造ベース)の同定に際して、欠陥を示す細胞の亜集団が分離され得る。 特定の局面において、細胞の亜集団における配列ベースの欠陥は、例えば、CRISPR、TALEN、またはZFNを使用するなどの遺伝子編集によって、修正される。 いくつかの態様において、1つまたは複数の細胞における1つまたは複数の遺伝子の欠陥が同定されると、欠陥を示さない細胞の亜集団が分離され得る。 修正された細胞の亜集団および/または欠陥を示さない細胞の亜集団は、製造プロセス中にさらに操作され得る。 あるいは、修正された細胞の亜集団及び/又は欠陥を示さない細胞の亜集団、例えば、欠陥のない細胞は、それを必要とする被験者に投与されてもよい。
【0071】
一実施形態では、体細胞の集団は、iPSCの集団に再プログラムされる。 細胞のサンプルは、体細胞の最初の集団から取得または受信されてもよく、1つまたは複数の細胞のゲノムは配列決定されてもよく、1つまたは複数の遺伝子において欠陥が同定されてもよい。 加えて、又は代替的に、細胞のサンプルは、体細胞のiPSCへの初期化の間の1つ又は複数の時点で受け取られ、1つ又は複数の細胞のゲノムが配列決定され、1つ又は複数の遺伝子において欠陥が同定されることがあり得る。 最後に、派生したiPSCから細胞のサンプルを受け取り、1つまたは複数の細胞のゲノムを配列決定し、1つまたは複数の遺伝子において欠陥を同定することができる。 細胞の亜集団は、任意の段階で単離することができる。 細胞の亜集団は、1つまたは複数の遺伝子の欠陥を示す1つまたは複数の細胞を含んでいてもよい。 いくつかの態様において、単離された細胞の亜集団の欠陥は修正される。 あるいは、細胞の亜集団は、1つまたは複数の遺伝子における欠陥を示さない1つまたは複数の細胞から構成されてもよい。 いくつかの局面において、欠陥を示さない(例えば、欠陥が修正された、または欠陥がなかった)リプログラミングプロセス中に得られた細胞の単離サブ集団は、リプログラミングプロセスにさらに付される。 いくつかの側面において、欠陥を示さない由来iPSCから得られた細胞の単離された集団は、iPSCの治療用細胞型への分化などの製造工程にさらに供される。
【0072】
別の実施形態では、T細胞の集団は、CAR T細胞の集団を形成するように操作される。 いくつかの態様において、CAR T細胞は、第1世代、第2世代、第3世代、又は第4世代のCAR T細胞である。 T細胞の初期集団から細胞のサンプルが得られるか、または受け取られ、1つまたは複数の細胞のゲノムが配列決定され、1つまたは複数の遺伝子において欠陥が同定されることがある。 加えて、又は代替的に、細胞のサンプルは、T細胞をCAR T細胞に操作する間の1つ又は複数の時点で受け取ることができ、1つ又は複数の細胞のゲノムが配列決定され、1つ又は複数の遺伝子において欠陥が同定されることがある。 最後に、CAR T細胞から細胞のサンプルを受け取り、1つまたは複数の細胞のゲノムを配列決定し、1つまたは複数の遺伝子において欠陥を同定することができる。 細胞の亜集団は、任意の段階で単離することができる。 いくつかの実施形態では、CAR T細胞を操作してTET2を改変し、それによりCAR T細胞の免疫療法的利益を向上させる。例えば、TET2を破壊するように操作されたCAR T細胞、例えばTET2をノックダウンすることにより、改善された治療効果を発揮する。 TET2は、当業者に公知の任意の方法(例えば、CRISPR、TALEN、ZFN)により不活性化され得る。 いくつかの実施形態では、CAR T細胞のエピゲノムは、CAR T細胞の有効性及び持続性を改善するために改変される。 細胞の亜集団は、1つまたは複数の遺伝子における欠陥を示す1つまたは複数の細胞を含んでよい。 いくつかの態様において、単離された細胞の亜集団の欠陥は修正される。 あるいは、細胞の亜集団は、1つまたは複数の遺伝子における欠陥を示さない1つまたは複数の細胞から構成されてもよい。 いくつかの局面において、操作工程中に得られた、欠陥を示さない(例えば、欠陥が修正された、または欠陥がなかった)細胞の単離された亜集団は、操作工程にさらに供される。 いくつかの局面において、欠陥を示さないCAR T細胞から得られた細胞の単離された集団は、細胞を培養および拡大するなどの製造工程にさらに供される。
【0073】
いくつかの実施形態では、製造された細胞又は操作された細胞は、それを必要とする被験者に投与される。 いくつかの実施形態では、製造された細胞は、治療用細胞であり、1つ又は複数の疾患を治療するために、それを必要とする被験者に投与される。 いくつかの実施形態では、製造された細胞は、糖尿病、神経変性疾患(例えば、パーキンソン病)、黄斑変性症、脊髄損傷、筋肉損傷、又は心臓修復を治療するために、それを必要とする被験者に投与される。 いくつかの実施形態では、製造された細胞は、治療用細胞、例えば、CAR T細胞であり、1つ又は複数の疾患を治療するために、それを必要とする被験者に投与される。 いくつかの実施形態では、製造された細胞は、がん、例えば、血液悪性腫瘍を治療するために、それを必要とする被験者に投与される。 いくつかの実施形態では、製造された細胞は、腫瘍、例えば、悪性腫瘍又は非悪性腫瘍を治療するために、それを必要とする被験者に投与される。 いくつかの実施形態では、ドナーから得られた細胞の集団、例えば、造血幹細胞が、それを必要とする被験者に投与される。 いくつかの実施形態では、造血幹細胞の集団、例えば、1つまたは複数の遺伝子における推定欠陥を発現しない造血幹細胞が、それを必要とする被験体に投与される。 造血幹細胞は、造血幹細胞移植(HSCT)を介して投与され得る。 いくつかの態様において、それを必要とする対象は、投与前に化学療法または放射線療法を受けている。いくつかの実施形態において、対象は、癌に罹患している。 いくつかの側面において、対象は、多発性骨髄腫、リンパ腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、骨髄異形成症候群、および骨髄増殖性新生物に罹患している。 いくつかの態様において、対象は、胚細胞腫瘍、神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、または髄芽腫などの固形腫瘍に罹患している。 一実施形態では、造血幹細胞の集団は、それを必要とする対象から得られる(すなわち、自己由来)。 代替の実施形態では、造血幹細胞の集団は、ドナー対象から得られる(すなわち、同種異系)。
【0074】
本明細書で使用する場合、用語「治療する」、「処置する」、「治療する」などは、個人に対して医学的または外科的な注意、ケア、または管理を提供することを意味する。例えば、個体は、通常、病気または怪我をしているか、または人口の平均的なメンバーに比べて病気になるリスクが高まっており、そのような注意、ケア、または管理が必要な状態である。 治療することは、治療を受けない場合に予想される生存と比較して、生存を延長することを指すことができる。したがって、当業者は、治療が疾患を改善することはあっても、疾患の完全な治癒とはなり得ないことを認識する。あるいは、治療は、疾患の進行が低減または停止される場合、”有効”である。 ”治療”はまた、治療を受けない場合に予想される生存期間と比較して生存期間を延長することを意味し得る。
【0075】
いくつかの態様において、本明細書に記載の方法は、細胞(例えば、細胞療法製造プロセスなどの製造プロセス中に製造される治療用細胞)の品質を評価するために使用される。 特定の実施形態において、治療用細胞は、既知の予想される用途のために製造される。 いくつかの実施形態では、受け取った細胞の1つ以上の遺伝子において同定された欠陥は、製造された治療用細胞の予想される用途に特有の疾患を引き起こす変異を蓄積するリスクにほとんど影響を及ぼさない。 他の実施形態では、受け取った細胞の1つ以上の遺伝子において同定された欠陥は、製造された治療用細胞の予想される使用に特有の疾患を引き起こす突然変異の蓄積のリスクに対して増大した影響を有する。 いくつかの態様において、受け取った細胞の1つまたは複数の遺伝子において同定された欠陥は、心血管疾患、血液がん、または死亡率の低下に関連する疾患原因変異の蓄積のリスクに対して増大した影響を有する。
【0076】
いくつかの側面において、受け取った細胞の1つ以上の遺伝子において同定された欠陥は、製造された治療用細胞の予想される用途に特有の疾患を引き起こす変異を蓄積するリスクにはほとんど影響を及ぼさないが、固形組織において腫瘍形成性を有するリスクの増加を有することがある。 例えば、腎臓又は膵臓機能の治療のために製造された治療細胞におけるTP53の欠陥は、標的組織への疾患特異的変異の蓄積に対するリスクの増加は最小限であるが、そのような欠陥は腎臓及び膵臓において高い腫瘍形成性を有する。 他の実施形態では、受け取った細胞の1つ以上の遺伝子において同定された欠陥は、製造された治療用細胞の予想される用途に特有の疾患を引き起こす変異を蓄積するリスクに対して増大した影響を有するが、固形組織における腫瘍形成に対して低いリスクを示す。 例えば、血液疾患または免疫疾患の治療のためのiPSC由来の血液幹細胞におけるASXL1、JAK2、KRAS、SFSR2、およびSF3B1のうちの1つまたは複数において同定された欠陥は、血液がんおよび/または心血管疾患のリスクの増加と関連し得るが、固体組織における腫瘍形成のリスクは低いことを示す。
【0077】
特定の実施形態では、対象は、哺乳類、例えば、霊長類、例えば、ヒトである。用語、「患者」および「被験者」は、本明細書において互換的に使用される。好ましくは、被験体は、哺乳類である。哺乳類は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシであり得るが、これらの例に限定されない。特定の実施形態では、対象は、ヒトである。
【0078】
本明細書に開示される方法は、細胞の製造又は操作プロセス(例えば、細胞療法製造プロセス)を改善するためにさらに使用され得る。 特定の局面において、本明細書に開示される方法は、細胞製造プロセスを通じて進行する細胞の集団を監視して、そのような細胞における遺伝的欠陥の蓄積を引き起こすか、さもなければその一因となるようなプロセスにおけるステップを特定する手段を提供する。 対象細胞における遺伝的欠陥の蓄積を引き起こすか、さもなければその一因となる細胞製造中の特定のステップまたはプロセスを特定することにより、本明細書に開示する発明は、このような製造プロセスに介入して最適化するために使用され得る。 例えば、細胞の集団が、製造プロセスのステップ中に1つ以上の遺伝的欠陥を蓄積することが判明した場合(例えば、細胞の収穫、凍結保存、解凍、分離、濃縮、単一細胞クローニング及び/又は精製の1つ以上の間に細胞が遺伝的欠陥を蓄積)、製造プロセスは、当該ステップを排除するか又は当該ステップを、細胞に遺伝的欠陥を蓄積させない代替ステップと置き換えるように修正することができる。 このように、本明細書に開示された方法は、細胞製造を最適化し、それによって細胞製造に関連するコストを低減する貴重な機会を提供する。
【0079】
本発明は、その適用において、本明細書に記載された内容または例示された内容に限定されないことが理解されよう。 本発明は、他の実施形態を包含し、様々な方法で実践または実施することが可能である。 また、本明細書で採用された言い回しや用語は、説明のためのものであり、限定的なものと見なすべきではないことを理解されたい。
【0080】
本発明の特定の化合物、組成物および方法を特定の実施形態に従って具体的に説明したが、以下の実施例は、本発明の方法および組成物を説明するためにのみ役立ち、これを限定することを意図するものではない。
【0081】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される冠詞「a」及び「an」は、明確に反対の指示がない限り、複数の参照語を含むと理解されるべきである。 グループの1つまたは複数のメンバーの間に「または」を含む請求項または説明は、反対を示すか、または文脈から明らかでない限り、グループのメンバーの1つ、複数、またはすべてが所定の製品またはプロセスに存在、採用、または他の方法で関連している場合、満足すると見なされる。 本発明は、グループのちょうど1つのメンバーが、所定の製品またはプロセスに存在し、採用され、または他の方法で関連している実施形態を含む。本発明はまた、1つより多い、またはグループメンバー全体が、所定の製品またはプロセスに存在する、採用される、または他の方法で関連する実施形態を含む。 さらに、本発明は、別途指示されない限り、または矛盾や不整合が生じることが当業者に明らかでない限り、列挙された請求項の1つまたは複数からの1つまたは複数の制限、要素、節、記述用語などが、同じ基本請求項に従属する別の請求項(または、関連として任意の他の請求項)に導入されるすべての変形、組み合わせ、および順列を包含すると理解されるであろう。 要素がリストとして提示される場合(例えば、Markush群または同様の形式)、要素の各サブグループも開示され、任意の要素(複数可)をグループから取り除くことができると理解されるべきである。 一般に、本発明または本発明の態様が特定の要素、特徴などから構成されると言及される場合、本発明または本発明の態様の特定の実施形態は、そのような要素、特徴などから構成されるか、または本質的に構成されることを理解されたい。 簡略化の目的で、それらの実施形態は、あらゆる場合において、本明細書において非常に多くの言葉で具体的に規定されていない。 また、本発明の任意の実施形態または態様は、特定の除外が明細書に記載されているかどうかにかかわらず、特許請求の範囲から明示的に除外することができることを理解されたい。 本発明の背景を説明し、その実施に関する追加の詳細を提供するために本明細書で参照した刊行物および他の参考資料は、参照によりここに組み込まれる。
模範解答
【実施例
【0082】
実施例1A:体細胞からiPSCを作製する(セルラーリプログラミング)。
iPSCクローンは、体細胞からの細胞初期化プロセスの結果として得られる。 DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRAS、SF3B1における配列ベースまたは構造ベースの欠陥を同定するためにiPSCクローンの一次スクリーニングが行われる。 スクリーニング終了後、体細胞変異などの配列ベースまたは構造ベースの欠陥がないiPSCクローンが選択される。 選択されたiPSCクローンは、その後、遺伝子編集または分化プロセスなど、さらに操作されることがある。 しかしながら、一次スクリーニングの完了時に、配列ベースまたは構造ベースの欠陥を示さない、すなわち、少なくとも1つの欠陥を示すiPSCクローンが同定されない場合、二次スクリーニングを実施することができる。 二次スクリーニングを実施するために、1つ以上のiPSCクローンを選択し、培養ウェルで単一細胞を分離し、完全なクローンコロニーを生成するために拡張する。 次に、完全なクローンコロニーを、体細胞変異などの配列に基づく欠陥または構造に基づく欠陥についてスクリーニングする。 二次スクリーニングの完了後、配列ベースまたは構造ベースの欠陥を含まない最良のクローンを選択し、分化または遺伝子編集処理などのさらなる操作に供し、その後、そのような欠陥がないことを確認するためにさらなるスクリーニングに供されることがある。
例1B:製造した細胞の評価とその細胞の使用(細胞品質管理リリース)
【0083】
製造工程で製造された細胞は、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよび/またはSF3B1の配列ベースまたは構造ベースの欠陥を特定するためにスクリーニングされ得る。 スクリーニングの終了後、体細胞変異などの配列ベースまたは構造ベースの欠陥を示さない製造細胞が選択される。 そして、選択された製造細胞は、それを必要とする患者に投与され得る。 しかし、スクリーンの完了時に、配列ベース又は構造ベースの欠陥を示さない、すなわち、少なくとも1つの欠陥を示す製造細胞が特定されない場合、それらの細胞は患者に送達されないであろう。 製造された細胞の種類や治療される疾患に応じて、製造された細胞クローンの欠陥は、あらかじめ決められた失敗の閾値を通過するかどうかを決定するために評価され得る。 失敗の閾値を設定するための考慮事項としては、疾患の重篤度、患者へのリスク、代替治療法の利用可能性などが挙げられる。 例えば、特定の遺伝子の欠陥は腫瘍形成効果を有する場合があり、他の遺伝子の欠陥は、疾患を引き起こす変異の蓄積のリスクに対して増大した影響を示す場合がある。
例1C:細胞の遺伝子操作により、欠陥が生じる可能性がある。
【0084】
体細胞は、PSCへのリプログラミングの前など、使用前に遺伝子工学的に操作される場合がある。 遺伝子操作の完了後、1つまたは複数のクローンを選択し、培養ウェルで単離し、完全なクローンコロニーを生成するために拡大し、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよび/またはSF3B1の配列ベースまたは構造ベースの欠陥についてスクリーニングを行い得る。 スクリーニングが完了したら、細胞リプログラミングなどのさらなる操作に向けて、いかなる配列ベースまたは構造ベースの欠陥を示さなかった最善のクローン(複数)を選択する。 配列ベースまたは構造ベースの欠陥が確認された場合、体細胞の遺伝子編集の後のラウンドは、欠陥を制限し、プロセスを最適化するように変更することができる。 例えば、異なる遺伝子編集技術を使用する、クローニング培養および/または環境を変更する、などである。
【0085】
さらに、PSC細胞は、例えば、製造工程(例えば、分化)における使用前など、使用前に、疾患を引き起こす遺伝子欠損を修正するため、または遺伝子の機能的コピーを追加するために、遺伝子工学的に操作される場合がある。 他の例では、治療を必要とする対象から得られたPSC細胞は、疾患を引き起こす変異を修正するために遺伝子工学的に操作され得る。 遺伝子工学の完了後、1つまたは複数のクローンを選択し、培養ウェルで単離し、完全なクローンコロニーを生成するために拡大し、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよび/またはSF3B1の配列ベースまたは構造ベースの欠陥についてスクリーニングを行い得る。 スクリーニングが完了したら、治療細胞への分化などのさらなる操作に向けて、いかなる配列ベースまたは構造ベースの欠陥を示さなかった最善のクローン(複数)を選択する。 配列ベースまたは構造ベースの欠陥が確認された場合、PSCsの遺伝子編集の後のラウンドは、欠陥を制限し、プロセスを最適化するように変更され得る。 例えば、異なる遺伝子編集技術を使用する、クローニング培養および/または環境を変更する、などである。
【0086】
さらに、分化した細胞は、それを必要とする被験者に投与する前など、使用前に遺伝子工学的に操作することができる。 遺伝子工学の完了後、1つまたは複数の細胞を選択し、培養ウェルで単離し、完全なクローンコロニーを生成するために拡大し、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよび/またはSF3B1の配列ベースまたは構造ベースの欠陥についてスクリーニングを行い、スクリーニング完了後に、配列ベースまたは構造ベースの欠陥を示さない最善の細胞(複数)をさらなる操作またはそれらを必要とする患者への投与用に選択することがある。 配列ベースまたは構造ベースの欠陥が確認された場合、分化した細胞の遺伝子編集の後のラウンドは、欠陥を制限し、プロセスを最適化するように変更することができる。 例えば、異なる遺伝子編集技術を使用する、クローニング培養および/または環境を変更する、などである。
例1D:製造工程の個々の段階が欠陥につながる可能性がある。
【0087】
体細胞をiPSCに初期化した後、治療用細胞への分化など、さらなる操作に利用できるiPSCの数を増やす必要があるのが普通である。 iPSCの数を増やすために、細胞培養をスケールアップすることができる。 培養スケールアップの間または完了時に、1つまたは複数の細胞を選択し、培養ウェルで単離し、完全なクローンコロニーを生成するために拡大し、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよび/またはSF3B1の配列ベースまたは構造ベースの欠陥についてスクリーニングしてもよい。 スクリーニングが完了すると、いかなる配列ベースまたは構造ベースの欠陥をも示さない最善の細胞(複数)を選択して治療細胞への分化のためなどにさらなる操作をする。 もし、配列に基づく欠陥や構造に基づく欠陥が確認された場合、欠陥の制限やプロセスの最適化のために、細胞培養条件を変更することができる。
【0088】
iPSCの
スケールアップ後、細胞はさらなる操作のために収穫されることがある。 iPSCの収穫が完了したら、1つまたは複数の細胞を選択し、培養ウェルで単離し、完全なクローンコロニーを生成するために拡大し、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよび/またはSF3B1の配列ベースまたは構造ベースの欠陥についてスクリーニングを行う。 スクリーニング完了後、いかなる配列ベースまたは構造ベースの欠陥を示さなかった最善の細胞(複数)を治療細胞への分化などのさらなる操作に選択する。 配列上または構造上の欠陥が確認された場合、収穫条件を変更することで、欠陥を制限し、プロセスを最適化することができる。
【0089】
iPSC細胞の操作および/または治療用細胞の製造の追加段階において、1つまたは複数の細胞を選択し、培養ウェルで単離し、完全なクローンコロニーを生成するために展開し、DNMT3A、TET2、AXXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよび/またはSF3B1の配列ベースのまたは構造ベースの欠陥についてスクリーニングしてもよい。 スクリーニングが完了すると、配列ベースまたは構造ベースの欠陥を示さない最良の細胞(複数可)が、治療細胞への分化など、さらなる操作のために選択される。 配列や構造に基づく欠陥が確認された場合、欠陥の制限やプロセスの最適化のために条件を変更することができる。
実施例2A:CAR T細胞の製造と欠陥の評価
【0090】
CAR T細胞は、ドナーから得た血液細胞から製造されます。 血液細胞(すなわち、血液単核細胞)は、ドナーから収集され、T細胞を分離するために処理される。 次に、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRAS、SF3B1における配列ベースまたは構造ベースの欠損を特定するためにスクリーニングを行い、体細胞変異などの配列ベースまたは構造ベースの欠損を示さないT細胞を選択します。 次いで、選択されたT細胞は、Wang, et al., ”Clinical manufacturing of CAR T cells: Foundation of a promising therapy,” Molecular Therapy - Concolytics (2016) 3, 16015 (incorporated by reference in its entirety)
に記載のものを含む当業者に既知の方法を用いて活性化及び拡大される。 T細胞が活性化され、拡大された後、それらは、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRAS及び/又はSF3B1の任意の配列ベース又は構造ベースの欠陥について再度スクリーニングされ得る。 任意の配列ベース又は構造ベースの欠陥を示していないT細胞は、遺伝子改変のために選択される。 選択されたT細胞は、キメラ抗原受容体を発現するように、ウイルスまたは非ウイルス遺伝子導入システムを用いて遺伝子改変される。 ウイルス系は、γ-レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、又はトランスポゾン/トランスポザーゼ系の使用を含むことができる。 非ウイルス系には、mRNA転写を介した遺伝子発現が含まれる場合がある。 製造されたCAR T細胞は、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRAS及び/又はSF3B1の配列ベース又は構造ベースの任意の欠陥についてスクリーニングされる。
【0091】
いくつかの実施態様において、製造されたCAR T細胞は、特定の遺伝子(例えば、TET2)を不活性化又はノックアウトするため、又は疾患を引き起こす遺伝子欠陥を修正するために、さらに遺伝的に修飾される。 特定の遺伝子修飾は、製造されたCAR T細胞の所望の最終用途、例えば、血液がん、腫瘍、又は他の何らかの疾患若しくは障害の治療、同種CAR T細胞の生成等に基づいて選択され得る。 遺伝子改変の各インスタンスは、1つ以上の遺伝子に追加の欠陥を導入する可能性があり、したがって、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRAS及び/又はSF3B1の配列ベース又は構造ベースの欠陥を特定するために細胞を1又は複数回スクリーニングすることがある。
例2B:製造した細胞の評価とその細胞の使用(細胞品質管理リリース)
【0092】
製造プロセスによって製造された細胞は、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRAS及び/又はSF3B1の
配列ベース又は構造ベースの欠陥を特定するためにスクリーニングされ得る。 スクリーニングの完了時に、細胞のいずれもが体細胞変異などの配列ベース又は構造ベースの欠陥を示さなければ、製造細胞はそれを必要としている患者に投与され得る。 しかし、スクリーニングの完了時に、配列ベース又は構造ベースの欠陥を示す、すなわち、少なくとも1つの欠陥を示す製造細胞が同定された場合、それらの細胞は患者に送達されないであろう。 ある実施態様では、細胞は、欠陥が特定される前に、製造工程中のより早い時点から再製造されることがある。 製造された細胞の種類や治療される疾患に応じて、製造された細胞クローンの欠陥は、あらかじめ決められた故障の閾値に合格するかどうかを判定するために評価されることがある。 失敗の閾値を設定するための考慮事項としては、疾患の重篤度、患者へのリスク、代替治療法の利用可能性などが挙げられる。 例えば、特定の遺伝子の欠陥は腫瘍形成効果を有する場合があり、他の遺伝子の欠陥は、疾患を引き起こす変異の蓄積のリスクに対して増大した影響を示す場合がある。
実施例2C:自家療法(造血幹細胞療法)
【0093】
造血幹細胞(HSC)は、それを必要とする患者、例えば、造血幹細胞移植(HSCT)を必要とする患者から除去され得る。 受け取った細胞は、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよび/またはSF3B1の
配列ベースまたは構造ベースの欠陥を識別するためにスクリーニングされる。 スクリーニングの完了後、体細胞変異などの配列ベースまたは構造ベースの欠陥を示さない造血幹細胞を選択する。 選択された造血幹細胞は、その後、拡大され、さらなるスクリーニングの後にも欠陥がない場合、それを必要とする患者に投与することができる。
【0094】
しかしながら、スクリーンの完了時に、配列ベースまたは構造ベースの欠陥を示さない、すなわち少なくとも1つの欠陥を示す造血幹細胞が同定されない場合、それらの細胞はさらに評価され得る。 例えば、造血幹細胞は、1つまたは複数の遺伝子における欠陥に対処するために遺伝子改変されてもよい。 あるいは、欠陥を含む造血幹細胞を評価して、患者自身の細胞を投与することの利益が、特定された欠陥のリスクを上回るかどうかを判断することもできる。 例えば、欠陥が疾患を引き起こす変異を蓄積するリスクに対して増大した影響を示す場合、造血幹細胞をドナーに戻して投与することはできず、代わりに同種ドナーから造血幹細胞を得ることができる。
例3
【0095】
病気の治療を成功させる方法としての細胞療法は何十年も前から存在し、特に血液幹細胞移植という形で、様々な血液悪性腫瘍や免疫疾患を治療している。その例はdana-farber.org/stem-cell-transplantation-programに記載されている。 骨髄、動員末梢血、臍帯血に由来する患者固有の血液幹細胞は、これらの疾患を治療するための血液幹細胞の供給源として成功裏に使用されています。 しかし、血液幹細胞移植は、移植に必要な血液幹細胞や前駆細胞の量が十分でないこと、毒性を抑えて長期的な有効性を確保するための強度の低い条件付け、慢性GVHD、そしてもちろん再発など、この治療をより広く適用するための多くの課題に直面しています(1)。移植に必要な細胞供給量の不足に対処するため、いくつかの企業は、新規の動員剤と生体外拡張プロトコルに焦点を当てて開発を進めてきた。
【0096】
例えば、この分野の努力の焦点は、iPSC由来の細胞治療法の開発における将来の使用目的との互換性を確保するためのベストシステムとプラクティスの開発であった。そのため、初代体細胞材料、細胞初期化システム、細胞培養/拡大システムおよび環境、遺伝子補正技術、分化プロトコルは、製造プロセスにおける一貫性/再現性、完全性、品質および拡張性を目指して評価および開発されてきた。 特に、細胞初期化プロトコルの開発では、臨床現場での入手のしやすさやバイオバンクの存在から、血液由来の細胞種を初代体細胞の出発材料として使用することに焦点が当てられている。さらに、血液由来の細胞は、DNA配列や染色体構造における遺伝的変異や突然変異の蓄積につながる紫外線などの環境変異原から保護されやすいという利点もある。
【0097】
CHIP(Clonal Hematopoiesis of Indeterminant Potential)とは、加齢に伴う体細胞遺伝子の変異の蓄積のことで、血液中の他の幹細胞や前駆細胞と比較して、造血幹細胞や前駆細胞の異なる亜集団に成長優位性を付与する。これらの体細胞遺伝子の変異の一部は、血液を媒介とする癌(6)や大動脈弁狭窄症、静脈血栓症、心不全などの心血管疾患(7-10)などの病気と関連しています。 複数のグループが、様々な集団におけるCHIPに関連する配列変異の有病率をより理解するために、大規模なゲノムワイド関連研究に登録された数千人の患者さんのDNA配列結果を解析しました。22のGWASコホートで17,182人から得られた全エクソーム配列データセットを利用した研究(7)では、CHIPの体細胞配列変異/突然変異は40歳未満の患者では非常にまれでしたが、その後の人生の各10年で頻度が増加しました。CHIPに関連する配列変異は、60歳から69歳の5.6%、70歳から79歳の9.5%、80歳から89歳の11.7%、90歳以上の18.4%に認められました。
【0098】
また、がんや血液の表現型について選択されていない12,380人の末梢血細胞のDNAを全エクソーム配列で解析した別の研究では、CHIPの体細胞配列変異は50歳未満の参加者の0.9%に、65歳以上の参加者の10.4%に認められました。(6).超高感度シーケンスアッセイ(全エクソームシーケンスより~100倍)を実施すると、CHIP体細胞配列変異は、これまで評価されていたよりもはるかに一般的です(11)。この手法では、7%の人がVAF(variant allele frequency)>10%、39%の人がVAF>1%、ほぼ全ての患者(92%)がVAF>0.1%のCHIP関連配列変異を持っていました。さらに、エラー訂正ターゲットシーケンスにより検出されたVAF下限値0.03%を用いた健康なボランティアの研究では、50歳から70歳までの個人の95%がCHIP体細胞配列変異を保有していることがわかりました(12)。
【0099】
CHIPに関連するDNA構造の変化や体性構造変異、染色体の変化はあまり研究されていませんが、疾患リスクの増加とも関連しています(13-14)。また、2020年に発表された論文では、年齢が上がるにつれて罹患者の割合が増加すること、また、男性と女性でこの形態のCHIPの割合がわずかに増加することが指摘されています。 UK BioBankのデータセットを利用した研究では、45歳以下では1.8%未満が体細胞構造変異を有しており、65歳以上では男性で6%、女性で4.9%まで増加することが指摘されています(14)。 日本ブラッドバンク(BBJ)のサンプルを用いた同様の研究では、30歳未満の人の体細胞構造変異は4%未満であり、60~69歳の男性および女性ではそれぞれ24.7%と17.6%に増加し、最終的に90歳以上では男性の40.7%と女性の31.5%に体細胞構造変異があることが判明した(15)。
【0100】
ということを踏まえて。
1)細胞や細胞・遺伝子治療製品の大部分は、血液由来の細胞(造血幹細胞、T細胞、iPS細胞作製用の初代細胞など)から開発され、病気の治療のために血液区画に送り込まれます。
2)CHIPに関連する遺伝子変異は、加齢に伴い血液細胞のDNAに蓄積・拡大し、血液がん、心血管疾患(CVD)、全死亡のリスク上昇と関連します(6-7)。
3)CHIPに関連するTP53およびKRAS遺伝子の遺伝子変異は、他の組織での固形腫瘍形成にも関連しています(16)。
4)CHIPに関連する遺伝子変異は、幹細胞移植の際に伝達されることが証明されています(17-19)。
5)iPSC由来の治療用細胞製品の作製に必要な製造工程で遺伝的変異が蓄積される(20~24)、および
6)細胞・遺伝子治療製品の遺伝的品質と完全性を評価する現在の共通基準は、核型検査やFISHによる遺伝子異常の高分子評価に依存しており、配列や構造に基づく小さな遺伝子変化を検出することはできません(25)。
そのため、細胞治療の製造工程とそこから生じる材料からこれらの遺伝的変異を特定・除去する必要があり、それによって、病気に関連する遺伝的変異が治療を受ける個人の健康に与えるリスクや未知の影響を本質的に低減することができます。
【0101】
本研究では、ヒトに投与する細胞治療製品の製造に必要なプロセスやプロトコルが、伝達性で病気の原因となる体細胞遺伝子の変異(配列および構造ベース)の蓄積と拡大に与える影響を評価した。iPSC関連の製造工程や材料の影響を評価するため、完全な製造ワークフロー(プライマリーiPSCから治療用NK細胞製品まで、図1)と、iPSC由来の細胞治療を提供するために必要な独立した工程/段階(iPSCへの細胞初期化およびiPSC拡張)の両方を評価した。 さらに、現在市販されているiPS細胞は、製造プロトコルの開発に使用されることが多いため、これらの遺伝子変異の有無についても評価しました。血液幹細胞の製造プロセスと材料の影響を評価するために、一次CD34(+)の生体外拡張プロトコルを評価しました。 また、CAR-Tの製造工程と材料への影響を評価するために、遺伝子操作のステップを除いた標準的なT細胞ワークフロー(図2)を評価しました。
メソッド
iPSC研究用細胞サンプル
【0102】
サンプルは、積極的な共同研究およびATCC、Alstem、Applied StemCellなどの商業ベンダーを通じた調達の両方を通じて収集された(表1)。 細胞製造ワークフローの評価用細胞サンプル(iPSC iPSC由来NK細胞)は、凍結保存細胞状態(10%DMSO)で納入された。 本試験に含まれるサンプルは、共通のプロトコルのもと、それぞれ異なるプライマリーiPS細胞株の出発材料を用いて、独立した3つの製造工程から得られたものです。 サンプルは、製造工程における5つの異なる時点で採取されました(図1)。(1) プライマリーiPSC-出発材料、(2) Expanded iPSCs-従来の2D細胞培養、(3) Expanded iPSCs-3D/バイオリアクター細胞培養、(4) iPSC-derived HPCs-3D/バイオリアクター細胞培養、および (5) iPSC-derived NK cell-最終細胞生成物。
【0103】
市販のヒトiPSC株を評価するために、サンプルは市販のベンダーから調達し、凍結保存状態(10%DMSO)で納品した。細胞初期化プロセス(PBMC + iPSC)およびiPSC拡張(初代iPSC vs 拡張iPSC)の影響を評価するために共同研究者から受け取った細胞サンプルは、凍結保存した細胞サンプルまたは細胞ペレットとして届けられ、-80℃で保存された。
表1 iPSC試験サンプル
【表1-1】
【表1-2】
【0104】
CD34(+) Expansion Studyのための細胞サンプル
一次動員CD34(+)サンプルは、HemaCare社およびBioIVT社から調達した。 すべてのサンプルは、凍結保存細胞状態(10%DMSO)で受領した。Mob Cryo CD34(+)/GCSF(HemaCare)またはHLA型CD34(+)細胞(BioIVT)サンプル(表2)の各1バイアルは、CD34(+)拡張前の分析用に保持した。 並行して、各動員CD34(+)細胞サンプルのマッチドバイアルを、StemSpan(商標) CD34+ Expansion Supplement (10x) (Stem Cell Technologies Cat#2691) を添加したStemSpan(商標) SFEM II細胞培養液(Stem Cell Technologies Cat#9655)で7日間拡張しました。 7日目に500万個の細胞を10%DMSOで凍結保存し、その後のCD34(+)拡張後の解析に使用した。全細胞数、細胞生存率、CD34マーカー発現を解凍後および7日目に評価した。
表2:CD34(+)試験サンプル
【表2】
【0105】
T細胞研究のための細胞サンプル
CAR-T製造ワークフロー(T細胞の分離、活性化、拡大)を評価するために、BioIVTから8個のHLA型PBMCサンプルを調達した(図2)。 8つのサンプルはすべて、凍結保存された細胞状態(10%DMSO)で受け取られました。 8つのPBMCサンプル(表3)それぞれについて、1つのバイアルを分離前、活性化および拡大分析用に保持しました。 並行して、8つのPBMC細胞サンプルのそれぞれについて、一致するバイアルを解凍し、EasySep(商標) Human T Cell Enrichment Kit(Stem Cell Technologies Cat#19051)を用いてCD3(+)T細胞を濃縮しました。 その後、各独立したサンプルを、ImmunoCult(商標) Human CD3/CD28/CD2 T Cell Activator (Stem Cell Technologies Cat#10970) で活性化し、Human Recombinant IL-2 (Stem Cell Technologies Cat# 78036.3) を添加した ImmunoCult -XF T Cell Expansion Medium (Stem Cell Technologies Cat#10981) で8日間拡張するためにプレーティングした。 8日目に500万個の細胞を10%DMSOで凍結保存し、その後の分離、活性化、拡大解析に使用した。全細胞数、細胞生存率、CD3、CD4、CD8、HLA DR T細胞マーカー発現は、解凍後と8日目に評価した。 他の市販のT細胞(CD4およびCD8)およびPBMC(分離、活性化および拡大プロトコルに従わない)の相加的評価のために、サンプルはBioIVTから調達し、冷凍保存状態(10%DMSO)で提供した。
表3:T細胞試験サンプル
【表3-1】
【表3-2】
【0106】
分子生物学的解析
ゲノムDNA(gDNA)は、PerkinElmer Chemagic 360 B5K自動抽出プラットフォームを使用して、凍結保存されたPBMCおよび凍結細胞ペレットから抽出されました。ターゲットシーケンス用に、抽出したgDNAを正規化し、25ng/ulになるように25ulの総容量に分注した。Agilent SureSelectケミストリーを用いて、カスタムDNAターゲットシーケンスライブラリーを構築しました。得られたライブラリーをAgilent 4200 TapeStation Systemで分析し、KAPA qPCRで定量化した。ライブラリーは、Illumina MiSeqプラットフォームを使用して、アンプリコン全体の平均シーケンスカバレッジ>1000xでシーケンスした。シーケンスリードはbwaでアライメントし、シーケンスバリアントを含むVCFファイルは、ベストプラクティスに従って、容易に入手できるGATKパイプラインを使用してMutect2を使用してコールした。バリアントはGenBankの遺伝子モデルおよびClinVarデータベースに対してアノテーションされました。遺伝子DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SF3B1、SRSF2、KRASの体細胞および生殖細胞系列のコーディングバリアントは、注釈付きVCFから抽出されました。
【0107】

ターゲットシーケンスパネルは、CHIPに関連する9つのコーディング遺伝子ターゲットで構成されており、以下の領域をカバーしています。DNMT3A、TET2、TP53、ASXL1、JAK2、KRAS、PPM1D、SF3B1、およびSFRS2です。 また、129の標的領域が同定された。SRSF2の3アンプリコン、PPM1Dの8アンプリコン、KRASの13アンプリコン、TP53の13アンプリコン、ASXL1の14アンプリコン、TET2の20アンプリコン、SF3B1の23アンプリコン、DNMT3Aの26アンプリコン、JAK2の27アンプリコン。
【0108】
マイクロアレイ解析のために、抽出したgDNAを正規化し、50ulの総容量で25ng/ulになるように分注しました。正規化および分注したgDNAサンプルは、Diagnomics社(米国カリフォルニア州サンディエゴ)のラボでIllumina Infinium(商標) Global Screening Array (GSA) - 24 v2.0 BeadChipで実行した。得られた強度IDATファイルは、まずIllumina Array Analysis Platformを使用してGTCファイルに変換し、gtc2vcf BCFtoolsプラグインを使用して遺伝子型と強度情報を含むVCFファイルを作成した。ハプロタイプ情報は、自社でジェノタイピングした547サンプルと1000 Genomesプロジェクトからの3,202サンプルに適用したSHAPEIT4ソフトウェアを用いてジェノタイプから推論したものである。モザイク染色体変化は、MoChAパイプラインのデフォルト設定に従い、MoChA BCFtoolsプラグインを使用してフェーズドプローブ強度から推論された。低品質サンプルおよび汚染の痕跡があるサンプルは最終報告から除外された。
結果
iPS細胞解析
【0109】
iPSC研究は、iPSC由来の細胞治療製品の製造に必要な手順・方法および細胞材料が、CHIPおよび疾患リスクに関連する体細胞遺伝子の変異(配列および構造)の蓄積と拡大に与える影響を評価するために設計されました。この研究では、3つの異なるサンプルセットを評価しました。
1)細胞治療製造ワークフローにおける主要なステップ/ステージの細胞製品(Primary iPSC iPSC-derived therapeutic cell type)。
2)現在市販されているiPSC株、および
3)iPS細胞由来の細胞治療製品を製造するために必要な主要なコアメソッドである細胞初期化法およびiPS細胞増殖法の前後に細胞材料を使用します。
【0110】
各サンプルセットの結果の概要は以下の通りです。
iPSC由来NK細胞製造ワークフロー
【0111】
14のサンプルについて、染色体構造(表4)とDNA配列(表5)の両方
において体細胞遺伝子の変異があるかどうかを、評価した3つの独立した製造ワークフローで確認した。 クローン#1(線維芽細胞+mRNA iPSC)では、体細胞配列や構造に基づく変異はワークフローを通じてエンドポイントのiPSC由来NK細胞製品まで持続しなかったが、蓄積され、その後消失した顕著な構造変異があった。この中には、iPSC状態への変換に関連する全細胞分率の8.7%における1q染色体増が含まれていた。 しかし、クローン#2および#3は、プロセス中に蓄積され、エンドポイントのiPSC由来NK細胞製品までユニークな体細胞遺伝的変異を有していた。特に、クローン#2は、3D細胞培養の拡大後、約4300万ヌクレオチドのCh.18q CN-LOHイベントを蓄積し、培養物が造血前駆細胞(HPC)およびエンドポイントNK細胞産物に分化するにつれ、全細胞画分の約2%から約11%に拡大しました。このCh.18q遺伝子座には、胚発生(SALL3)、細胞増殖とアポトーシス(BCL2、SMADs 2、4、7)、T細胞活性化と細胞傷害(NFATC1、CD226)、細胞接着(CDH7、19、20)に関連する遺伝子が含まれています。また、クローン#2で検出されたCh.20qの有意なゲインイベントは、アッセイしたすべての細胞サンプルで全細胞分率が100%に近い状態で検出されたことから、体質的なものである可能性があります。この有意な構造変異は、細胞の生存と増殖の亢進に関連するBCL2L1遺伝子を含み、腫瘍形成の可能性を示唆しており(26-31)、クローン#2(CD34+細胞+エピソームiPSC)の初期化プロセス中に生じた可能性がある。注目すべきは、20%以上のiPSC株で検出されることである(24)。クローン#3(PBMC + 仙台iPSC)は、Primary iPSCから3D Expanded iPSCまで、体細胞構造のCh.12q欠損を保持していたが消失した。 クローン#3にとって最も重要なことは、Li-Fraumeni症候群に関連する病原性TP53配列ベースの変異の蓄積とその後の拡大です。 この変異は、3D Expanded iPSCの段階で全細胞分画の約80%に存在し、HPCおよびiPSC由来のNKエンドポイント細胞産物の段階では90%以上に拡大しました。 TP53の遺伝子変異/変異は、複数の組織型において腫瘍形成に関連している(16)。
表4:iPSCを用いた細胞治療製造ワークフローにおける蓄積された構造的ばらつき
【表4】
表5:iPSCを用いた細胞治療製造ワークフローにおける累積塩基配列のばらつきの有病率
【表5】
市販のiPSCライン
【0112】
複数の細胞種から複数の初期化システムを用いて作製された18の市販のiPSC株について、染色体構造およびDNA配列の両方における体細胞遺伝的変異の存在を確認した(表6)。18系統中4系統に体細胞配列変異が認められ、特にASXL1、DNMT3A、TET2(2x)には、血球DNAに存在するとCHIPに関連し、CVDのリスク上昇を引き起こすとされています。そのため、血液への導入を目指して開発された細胞療法に使用する前に、これらの評価を行う必要があります。18系統中8系統が体細胞構造変異を有しており、そのうちの1系統(ACS-1029)はTET2ミスセンス変異を併発していました。 特に、iPS15(PBMC+エピソームiPSC)とACS-1030(BM+センダイiPSC)の2つのiPSC株では、前述のCh.20qゲインをそれぞれ3.9%と45.1%の総細胞分率で有していた。増殖、生存、腫瘍形成の促進との関連性を考えると、長期培養により、これらのiPSC株において、より高い細胞分率で20qゲインイベントが検出される可能性が非常に高い(27-32)。さらに、ASE-9215(PBMC由来)iPSC株では、2つの独立した、しかしどちらも有意なCh.14q欠損事象が全細胞分率95.1%と76.2%で検出されました。Ch.14q欠損イベントは、慢性リンパ性白血病(CLL)のリスク増加(OR = 115)と関連しています(14)。 体細胞構造変異を有する上記の両株は、がんリスクの上昇をもたらすため、細胞治療製品の製造のための出発材料としては許容/使用できない。特に、治療薬を血液区画に投与する場合はCLLのリスクが高まる。さらに、3つの株は12q、16p、16qにそれぞれTMEM132D、RBFOX1、WWOXを欠損する局所的な欠失を有していた。後者は、共通の染色体脆弱部位にまたがり、癌抑制遺伝子として機能するようである(33)。 合計すると、11/18(~61%)の市販のiPSC株は、細胞治療薬の製造における下流での使用を検討するのに値する遺伝子変異を全細胞分画で有しており、腫瘍形成や癌に関連する構造変異が4株、CHIPに関連する配列変異が4株である。
表6:遺伝的変異が蓄積された市販のiPSCライン
【表6-1】
【表6-2】
細胞のリプログラミングとiPSCの展開
【0113】
細胞初期化の影響を評価するための3組の一致したPBMCプライマリーサンプルとその後に得られたiPSC株、およびiPSC拡張の影響を評価するためのサンプルの両方の配列解析の初期結果は、体細胞配列変異を認めませんでした。市販のiPSC株の解析では体細胞構造変異の頻度が高く、iPSC-NK細胞ワークフローのデータから明らかなように、製造工程のさまざまな段階でこの種の変異が蓄積される可能性があることから、現在解析中の細胞初期化およびiPSC拡張サンプルの両方から新しい体細胞構造変異がピックアップされることが予想されます。

CD34+細胞の増設
【0114】
拡大前のCD34+細胞6サンプルの配列解析の初期結果、CHIPに関連する生殖細胞系列のASXL1配列変異を持つMob Cryo CD34+/GCSF細胞サンプル1つが同定されました。 CD34+細胞拡大試験に含まれる6検体のドナーの年齢が45歳以上であること、CHIPに関連する体細胞遺伝子の変異が年齢とともに増加することを考慮すると、一部の検体が体細胞構造変異を有することが予想されます。この6つのサンプルの拡大後の解析から得られる保留データは、生体外拡大プロトコルが新たな体細胞遺伝的変異の蓄積や既存の変異の拡大に与える影響について重要な知見を与えることになります。
T細胞の単離、活性化、拡大
【0115】
分離前、活性化、拡大した8つのPBMCサンプルの配列解析の初期結果、ドナーID 84124のサンプルにおいて、CHIPと急性骨髄性白血病(AML)のリスク上昇に顕著に関連する総細胞率2.6%の新規病原性DNMT3A体細胞配列変異が特定されました。興味深いことに、体細胞遺伝的変異の持続性を調べるために、このドナーのPBMCサンプルと並行して分離したマッチングCD8+T細胞サンプルは、全細胞分画2.8%に同じDNMT3A病因変異を有していました。さらに、ドナーID CC00152の分離・活性化・拡大前のPBMCサンプルには体細胞配列の変異がなかったが、並行して分離したCD8+T細胞サンプルには、CHIPに関連するTET2ミスセンス変異が全細胞分画の3.9%に認められ、これらの変異はin vivoでT細胞集団に転換する際に蓄積することがあることが示されました。これらの8つのサンプルの分離、活性化、拡大後の解析から得られた保留データは、CAR-T細胞療法に必要な製造プロトコルが、新しい体細胞遺伝子の変異の蓄積や既存の遺伝子の拡張に与える影響について重要な洞察を与えるでしょう。

ディスカッション
【0116】

産業としての細胞・遺伝子治療は急速に発展しており、例えば2020年には世界で1,000社以上の企業が治療法を開発し、1,000以上の臨床試験が進行中で、150億ドル以上の資金がこの産業を支えています(17alliancerm.org/wp-content/uploads/2020/08/ARM_1H-Report_-FINAL.pdf )。特筆すべきは、パーキンソン病、糖尿病、黄斑変性症などの疾患や、BCL、CLL、AML、多発性骨髄腫などの血液がんを治療するための多能性幹細胞(PSC)由来の治療法の進歩が著しいことである。 これらのPSC由来治療薬の製造には、治療に有用なエンドポイント細胞製品を得るために、PSCの生成、拡大、遺伝子操作、分化が必要な場合が多く、これらのすべてのステップがDNA配列や染色体構造に変化を蓄積させることにつながります。 もちろん、このような変化は、しばしば病気のリスクを高めることになります。 特に、iPS細胞由来の治療薬の製造工程では、血液由来の細胞が使用され、その後、生成された治療薬は再び血液に戻される。 同様に、血液幹細胞移植やCAR-T療法は、血液から材料を蓄積し、生体外で操作(例えば、拡大、工学、分化)し、治療介入のために血液区画に戻すことに依存しています。CHIP自体は、DNA配列や染色体構造における疾患リスクに関連する変化が、血液細胞のDNAに特異的に蓄積・拡大する加齢に伴う現象である。これらの細胞や細胞・遺伝子治療の製造工程では、病気の治療に血液細胞の種類を利用し、移植時にレシピエントに伝達される病気のリスクに関連した体細胞遺伝子の変化が蓄積され、遺伝的完全性や遺伝的変異を評価するために使用される現在の基準は、しばしば測定された細胞の小さな断片に蓄積された遺伝的変化を拾い上げられないことを考えると、これらの製造ワークフローから得られる主要出発材料や治療細胞製品を、構造ベースの変化と同様に体配列をピックアップできる高感度遺伝アセスで選別する必要がある。
【0117】
iPSC研究の結果は、これらのPSCベースの細胞療法を生み出すために必要な製造プロセスと細胞材料が、細胞ドナーの年齢、主要な細胞の種類、iPSCを生成するために使用される再プログラミングシステムにかかわらず、疾患に関連する重要な遺伝子変異を持ち、蓄積することを実証しています。本研究で採用した遺伝子アッセイと解析パイプラインは、疾患リスクに関連する配列および構造ベースの遺伝子変異の両方を検出した。 特に、3つの異なるiPSC株を用いた一貫した製造ワークフローの解析により、3つのワークフローのうち2つのワークフローで最終的な細胞製品に含まれる、腫瘍形成の可能性に関連する固有の変異(TP53およびCh.20q gain)が確認されました。さらに、クローン#3のTP53配列変異とクローン#2の18q CN-LOH構造変異は、いずれも3D拡張ステップで発生し、最終的な細胞製品まで持続していました。一方、腫瘍形成の可能性のない治療用細胞を最終的に得ることができなかった2つのワークフローは、血液細胞に由来するiPS細胞を利用していました。同様に、市販されている18種類のiPSCのうち8種類は遺伝子変異に関連した重大な疾患リスクを有しており、そのうち5種類は血液細胞型由来、5種類はCHIPに関連した体細胞変異を有していました。このように、iPSCを作製するための初代細胞材料(例えば、iPSCそのものやエンドポイントのPSC由来の治療用細胞製品)の体細胞配列や構造ベースの変異を特定することは、患者に提供する前に細胞治療製品にこれらの変異や関連リスクがないことを確認するために必要であると考えられています。 また、細胞製造のワークフローにおいて、これらの体細胞遺伝子の変異を検出し、モニタリングすることで、より一貫した、より高い遺伝的品質、結果として、より費用対効果の高い細胞治療製品の開発につながると考えられています。CD34+細胞の膨張前後の解析や、初代PBMC細胞集団からのT細胞の分離・活性化・膨張前後の解析から得られた保留データが、この種のモニタリングの必要性を、細胞治療製品の血液幹細胞やCAR-T製造工程、特に細胞膨張プロトコルに追加する支持と拡張になると予想されます。
【0118】
参考資料
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
図1
図2
【誤訳訂正書】
【提出日】2023-06-09
【誤訳訂正1】
【訂正対象書類名】特許請求の範囲
【訂正対象項目名】全文
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造プロセスの間に細胞の品質を評価する方法であって、
a.製造プロセスの間の1つまたは複数の時点で、細胞の試料を受け取るステップ、
b.前記1つまたは複数の時点で受け取った1つまたは複数の細胞のゲノムの少なくとも一部分を配列決定するステップ、ならびに
c.前記受け取った細胞において、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥を特定するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記細胞の試料を、スターター細胞の受領、前記細胞の操作の1つまたは複数の段階の完了、および使用前の製造された細胞の受領からなる群より選択される前記製造プロセスの間の1つまたは複数の時点で受け取る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞の操作の前記1つまたは複数の段階が、細胞初期化、培養および拡大増殖、遺伝子操作、分化、採取、不均質性/細分類、凍結保存、解凍、単離、富化、単一細胞クローニング、ならびに精製からなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞の細胞初期化が、単離された初代体細胞を誘導多能性幹細胞に変換することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞の前記操作が、T細胞をCAR T細胞に操作することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記CAR T細胞が、がん細胞上の目的の抗原を標的にするように工学的操作されている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記CAR T細胞が、腫瘍細胞上の目的の抗原を標的にするように工学的操作されている、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記遺伝子操作が、CRISPR、TALEN、Znフィンガー、およびベクター送達システムの1つまたは複数を使用して細胞を操作することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記遺伝子編集システムが、ベクター送達システムを介して、細胞に送達される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ベクター送達システムが、RNA、DNA、またはウイルスベクター送達システムである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記遺伝子操作が、1つまたは複数の遺伝的欠陥を修正すること、1つまたは複数の遺伝子の発現を低減すること、および1つまたは複数の遺伝子の発現を増加させることからなる群より選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
前記遺伝子操作が、TET2を不活性化することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項13】
分化が、スターター細胞を治療用細胞型に変換することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項14】
前記スターター細胞が、多能性細胞である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記治療用細胞型が、ベータ細胞、心筋細胞、衛星細胞、網膜細胞、NK細胞、および神経細胞からなる群より選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記製造プロセスにおける1つまたは複数の細胞が、スターター細胞の集団から製造される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記スターター細胞が、幹細胞である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記スターター細胞が、多能性細胞または体細胞である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記スターター細胞が、誘導多能性幹細胞(iPSC)または胚性幹細胞(ESC)である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記スターター細胞が、造血幹細胞(HSC)またはT細胞である、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記スターター細胞の集団が、血液試料から得られる、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記スターター細胞の集団が、対象から得られる、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記対象が、それを必要とする対象である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記対象が、ドナー対象である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記欠陥が、配列に基づく変異である、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記配列に基づく変異が、ミスセンス変異、サイレント変異、フレームシフト変異、ナンセンス変異、挿入変異、欠失変異、またはスプライス部位破壊である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記欠陥が、体細胞配列に基づく変異または生殖細胞系列配列に基づく変異である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記欠陥が、DNMT3Aのエクソン7~23にある、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記欠陥が、G543C、S714C、F732C、Y735C、R736C、R749C、F751C、W753C、およびL889Cからなる群より選択されるDNMT3Aにおけるミスセンス変異である、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記欠陥が、JAK2におけるV617F変異である、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記欠陥が、TET2における破壊変異である、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記欠陥が、PPM1Dにおける破壊変異である、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記欠陥が、R175H、G245S、R248W、R273G、P151S、R181H、H193R、M237I、G245C、R248Q、R267W、およびR273Lからなる群より選択されるTP53におけるミスセンス変異である、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記1つまたは複数の遺伝子が、腫瘍形成に関連している、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
前記1つまたは複数の遺伝子が、TP53、KRAS、ASXL1、JAK2、SFSR2、およびSFSB1からなる群より選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記1つまたは複数の遺伝子が、TP53およびKRASからなる群より選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記1つまたは複数の遺伝子が、がんに関連している、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
前記1つまたは複数の遺伝子が、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、SF3B1、SRSF2、およびTP53からなる群より選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記1つまたは複数の遺伝子が、DNMT3A、TET2、およびASXL1からなる群より選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記1つまたは複数の遺伝子が、血液がんに関連している、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
前記1つまたは複数の遺伝子が、TET2およびDNMT3Aからなる群より選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記受け取った細胞において、PCM1、HIF1A、およびAPCからなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥を特定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
前記欠陥が、配列に基づく変異である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記受け取った細胞において、TERTおよびCHEK2からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥を特定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項45】
前記受け取った細胞において、CBL、KMT2C、ATM、CHEK2、KDR、MGA、DNMT3B、ARID2、SH2B3、MPL、RAD21、SRSF2、およびCCND2からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥を特定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項46】
前記受け取った細胞において、HPRT、JAK1、JAK3、SLAMF6、IRF1、PLRG1、STAT3、およびNotch1からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥を特定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項47】
前記受け取った細胞において、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における構造に基づく変異を特定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項48】
前記構造に基づく変異が、重複、欠失、コピー数変動、逆位、または転座である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記構造に基づく変異が、Ch2、Ch4、Ch9、Ch12、Ch17、およびCh20からなる群より選択される1つまたは複数の染色体上に存在する、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記構造に基づく変異が、Ch2p23、Ch4q24、Ch20q11、Ch17q23、Ch9p24、Ch17p23、Ch17q25、Ch2q33、およびCh12p12からなる群より選択される1つまたは複数の染色体上に存在する、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記受け取った細胞において、Ch1、Ch12、Ch17q、Ch20q11、およびX染色体からなる群より選択される1つまたは複数の染色体上に存在する構造に基づく変異を特定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項52】
前記受け取った細胞において、Ch3、Ch4、Ch5、Ch7、Ch8、Ch9、Ch11、Ch12、Ch13、Ch14、およびCh18からなる群より選択される1つまたは複数の染色体上に存在する構造に基づく変異を特定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項53】
前記細胞の試料が、処置を必要とする対象の血液試料に由来するiPSCを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項54】
前記細胞の試料が、ドナー対象の血液試料に由来するiPSCを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項55】
前記細胞の試料が、処置を必要とする対象の血液試料に由来する造血幹細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項56】
前記細胞の試料が、ドナー対象の血液試料に由来する造血幹細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項57】
前記細胞の試料が、処置を必要とする対象の血液試料に由来するT細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項58】
前記細胞の試料が、ドナー対象の血液試料に由来するT細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項59】
前記1つまたは複数の遺伝子における欠陥が特定される前記製造プロセスの間の1つまたは複数の時点を特定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項60】
前記1つまたは複数の遺伝子における特定された欠陥を示さない受け取った細胞の亜集団を単離するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項61】
受け取った細胞の前記単離された亜集団を細胞療法製造プロセスに付すステップをさらに含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記1つまたは複数の遺伝子における欠陥を示す受け取った細胞の亜集団を単離するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項63】
前記1つまたは複数の遺伝子における前記欠陥を修正するステップをさらに含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
受け取った細胞の前記修正された単離された亜集団を細胞療法製造プロセスに付すステップをさらに含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記細胞の試料が、製造された細胞の試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項66】
製造プロセスの間に細胞の品質を維持する方法であって、
a.対象からの1つまたは複数のiPSCドナー細胞のゲノムの少なくとも一部分を配列決定するステップ、
b.前記ドナー細胞において、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥を特定するステップ、
c.前記1つまたは複数の遺伝子において特定された欠陥を示さない前記ドナー細胞を単離するステップ、
d.前記単離されたドナー細胞を細胞療法製造プロセスに付して、1つまたは複数の製造された細胞を生成するステップ、
e.前記1つまたは複数の製造された細胞のゲノムの少なくとも一部分を配列決定するステップ、
f.前記製造された細胞において、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥を特定するステップ、ならびに
g.前記1つまたは複数の遺伝子における特定された欠陥を示さない前記製造された細胞を単離するステップ
を含む、方法。
【請求項67】
前記細胞療法製造プロセスの1つまたは複数の段階の間に、前記単離されたドナー細胞のゲノムの少なくとも一部分を配列決定するステップ、前記製造プロセスにおける前記細胞において、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥を特定するステップ、ならびに前記製造プロセスにおいて、前記1つまたは複数の遺伝子における特定された欠陥を示さない前記細胞を単離するステップをさらに含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記単離された細胞が、前記細胞療法製造プロセスの1つまたは複数の追加段階に付される、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記1つまたは複数の遺伝子における特定された欠陥を示さない前記単離された製造された細胞を前記対象に投与するステップをさらに含む、請求項66に記載の方法。
【請求項70】
前記単離された製造された細胞が、疾患または障害を処置するために前記対象に投与される、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記疾患または障害が、血液障害、免疫障害、代謝障害、神経性障害、または心血管障害である、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
製造プロセスの間に細胞の品質を維持する方法であって、
a.対象からの1つまたは複数のHSCまたはT細胞ドナー細胞のゲノムの少なくとも一部分を配列決定するステップ、
b.前記ドナー細胞において、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥を特定するステップ、
c.前記1つまたは複数の遺伝子において特定された欠陥を示さない前記ドナー細胞を単離するステップ、
d.前記単離されたドナー細胞を細胞療法製造プロセスに付して、1つまたは複数の製造された細胞を生成するステップ、
e.前記1つまたは複数の製造された細胞のゲノムの少なくとも一部分を配列決定するステップ、
f.前記製造された細胞において、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥を特定するステップ、ならびに
g.前記1つまたは複数の遺伝子における特定された欠陥を示さない前記製造された細胞を単離するステップ
を含む、方法。
【請求項73】
前記細胞療法製造プロセスの1つまたは複数の段階の間に、前記単離されたドナー細胞のゲノムの少なくとも一部分を配列決定するステップ、前記製造プロセスにおける前記細胞において、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥を特定するステップ、ならびに前記製造プロセスにおいて、前記1つまたは複数の遺伝子における特定された欠陥を示さない前記細胞を単離するステップをさらに含む、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記単離された細胞が、前記細胞療法製造プロセスの1つまたは複数の追加段階に付される、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記1つまたは複数の遺伝子における特定された欠陥を示さない前記単離された製造された細胞を前記対象に投与するステップをさらに含む、請求項72に記載の方法。
【請求項76】
前記単離された製造された細胞が、疾患または障害を処置するために前記対象に投与される、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記疾患または障害が、がんである、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記疾患または障害が、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性新生物、胚細胞腫瘍、神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、および髄芽腫からなる群より選択される、請求項76に記載の方法。
【請求項79】
前記疾患または障害が、固形腫瘍である、請求項76に記載の方法。
【請求項80】
前記固形腫瘍が、非悪性腫瘍である、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記固形腫瘍が、悪性腫瘍である、請求項79に記載の方法。
【請求項82】
細胞の品質を評価する方法であって、
a.製造プロセスの前に、体細胞または多能性細胞の試料を受け取るステップ、
b.前記体細胞または多能性細胞のゲノムの少なくとも一部分を配列決定するステップ、ならびに
c.前記体細胞または多能性細胞において、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥を特定するステップ
を含む、方法。
【請求項83】
前記多能性細胞が、誘導多能性幹細胞または胚性幹細胞である、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記多能性細胞が、処置を必要とする対象の血液試料に由来するiPSCである、請求項82に記載の方法。
【請求項85】
前記多能性細胞が、ドナー対象の血液試料に由来するiPSCである、請求項82に記載の方法。
【請求項86】
前記欠陥が、配列に基づく変異である、請求項82に記載の方法。
【請求項87】
前記配列に基づく変異が、ミスセンス変異、サイレント変異、フレームシフト変異、ナンセンス変異、挿入変異、欠失変異、またはスプライス部位破壊である、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記欠陥が、DNMT3Aのエクソン7~23にある、請求項82に記載の方法。
【請求項89】
前記欠陥が、G543C、S714C、F732C、Y735C、R736C、R749C、F751C、W753C、およびL889Cからなる群より選択されるDNMT3Aにおけるミスセンス変異である、請求項82に記載の方法。
【請求項90】
前記欠陥が、JAK2におけるV617F変異である、請求項82に記載の方法。
【請求項91】
前記欠陥が、TET2における破壊変異である、請求項82に記載の方法。
【請求項92】
前記欠陥が、PPM1Dにおける破壊変異である、請求項82に記載の方法。
【請求項93】
前記欠陥が、R175H、G245S、R248W、R273G、P151S、R181H、H193R、M237I、G245C、R248Q、R267W、およびR273Lからなる群より選択されるTP53におけるミスセンス変異である、請求項82に記載の方法。
【請求項94】
前記1つまたは複数の遺伝子が、腫瘍形成に関連している、請求項82に記載の方法。
【請求項95】
前記1つまたは複数の遺伝子が、TP53、KRAS、ASXL1、JAK2、SFSR2、およびSFSB1からなる群より選択される、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記1つまたは複数の遺伝子が、TP53およびKRASからなる群より選択される、請求項94に記載の方法。
【請求項97】
前記1つまたは複数の遺伝子が、血液がんに関連している、請求項82に記載の方法。
【請求項98】
前記1つまたは複数の遺伝子が、TET2およびDNMT3Aからなる群より選択される、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記多能性細胞において、PCM1、HIF1A、およびAPCからなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における配列に基づく変異を特定するステップをさらに含む、請求項82に記載の方法。
【請求項100】
前記多能性細胞において、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における構造に基づく変異を特定するステップをさらに含む、請求項82に記載の方法。
【請求項101】
前記構造に基づく変異が、重複、欠失、コピー数変動、逆位、または転座である、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記構造に基づく変異が、Ch2、Ch4、Ch9、Ch12、Ch17、およびCh20からなる群より選択される1つまたは複数の染色体上に存在する、請求項100に記載の方法。
【請求項103】
前記構造に基づく変異が、Ch2p23、Ch4q24、Ch20q11、Ch17q23、Ch9p24、Ch17p23、Ch17q25、Ch2q33、およびCh12p12からなる群より選択される1つまたは複数の染色体上に存在する、請求項100に記載の方法。
【請求項104】
前記多能性細胞において、Ch1、Ch12、Ch17q、CH20q11、およびX染色体からなる群より選択される1つまたは複数の染色体上に存在する構造に基づく変異を特定するステップをさらに含む、請求項82に記載の方法。
【請求項105】
受け取った細胞において、Ch3、Ch4、Ch5、Ch7、Ch8、Ch9、Ch11、Ch12、Ch13、Ch14、およびCh18からなる群より選択される1つまたは複数の染色体上に存在する構造に基づく変異を特定するステップをさらに含む、請求項82に記載の方法。
【請求項106】
細胞の品質を評価する方法であって、
a.製造プロセスの前に、スターター細胞の試料を受け取るステップであって、前記スターター細胞が、HSCまたはT細胞である、ステップ、
b.前記スターター細胞のゲノムの少なくとも一部分を配列決定するステップ、ならびに
c.前記スターター細胞において、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥を特定するステップ
を含む、方法。
【請求項107】
前記スターター細胞が、血液試料から得られる、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
前記スターター細胞が、対象から得られる、請求項106に記載の方法。
【請求項109】
前記スターター細胞が、処置を必要とする対象の血液試料に由来するHSCである、請求項106に記載の方法。
【請求項110】
前記スターター細胞が、ドナー対象の血液試料に由来するHSCである、請求項106に記載の方法。
【請求項111】
前記スターター細胞が、処置を必要とする対象の血液試料に由来するT細胞である、請求項106に記載の方法。
【請求項112】
前記スターター細胞が、ドナー対象の血液試料に由来するT細胞である、請求項106に記載の方法。
【請求項113】
前記欠陥が、配列に基づく変異である、請求項106に記載の方法。
【請求項114】
前記配列に基づく変異が、ミスセンス変異、サイレント変異、フレームシフト変異、ナンセンス変異、挿入変異、欠失変異、またはスプライス部位破壊である、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
前記欠陥が、DNMT3Aのエクソン7~23にある、請求項106に記載の方法。
【請求項116】
前記欠陥が、G543C、S714C、F732C、Y735C、R736C、R749C、F751C、W753C、およびL889Cからなる群より選択されるDNMT3Aにおけるミスセンス変異である、請求項106に記載の方法。
【請求項117】
前記欠陥が、JAK2におけるV617F変異である、請求項106に記載の方法。
【請求項118】
前記欠陥が、TET2における破壊変異である、請求項106に記載の方法。
【請求項119】
前記欠陥が、PPM1Dにおける破壊変異である、請求項106に記載の方法。
【請求項120】
前記欠陥が、R175H、G245S、R248W、R273G、P151S、R181H、H193R、M237I、G245C、R248Q、R267W、およびR273Lからなる群より選択されるTP53におけるミスセンス変異である、請求項106に記載の方法。
【請求項121】
前記1つまたは複数の遺伝子が、がんに関連している、請求項106に記載の方法。
【請求項122】
前記1つまたは複数の遺伝子が、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、SF3B1、SRSF2、およびTP53からなる群より選択される、請求項121に記載の方法。
【請求項123】
前記1つまたは複数の遺伝子が、DNMT3A、TET2、およびASXL1からなる群より選択される、請求項121に記載の方法。
【請求項124】
前記スターター細胞において、TERTおよびCHEK2からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における配列に基づく変異を特定するステップをさらに含む、請求項106に記載の方法。
【請求項125】
前記スターター細胞において、CBL、KMT2C、ATM、CHEK2、KDR、MGA、DNMT3B、ARID2、SH2B3、MPL、RAD21、SRSF2、およびCCND2からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥を特定するステップをさらに含む、請求項106に記載の方法。
【請求項126】
前記スターター細胞において、HPRT、JAK1、JAK3、SLAMF6、IRF1、PLRG1、STAT3、およびNotch1からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥を特定するステップをさらに含む、請求項106に記載の方法。
【請求項127】
前記スターター細胞において、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における構造に基づく変異を特定するステップをさらに含む、請求項106に記載の方法。
【請求項128】
前記構造に基づく変異が、重複、欠失、コピー数変動、逆位、または転座である、請求項127に記載の方法。
【請求項129】
前記構造に基づく変異が、Ch2、Ch4、Ch9、Ch12、Ch17、およびCh20からなる群より選択される1つまたは複数の染色体上に存在する、請求項127に記載の方法。
【請求項130】
前記構造に基づく変異が、Ch2p23、Ch4q24、Ch20q11、Ch17q23、Ch9p24、Ch17p23、Ch17q25、Ch2q33、およびCh12p12からなる群より選択される1つまたは複数の染色体上に存在する、請求項127に記載の方法。
【請求項131】
製造された細胞の品質を評価する方法であって、
a.製造プロセスの完了の際に得られた製造された細胞の試料を受け取るステップ、
b.前記製造された細胞のゲノムの少なくとも一部分を配列決定するステップ、ならびに
c.前記製造された細胞において、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥を特定するステップ
を含む、方法。
【請求項132】
前記製造された細胞が、多能性細胞または体細胞の集団から製造される、請求項131に記載の方法。
【請求項133】
前記製造された細胞が、造血幹細胞(HSC)またはT細胞の集団から製造される、請求項131に記載の方法。
【請求項134】
前記欠陥が、配列に基づく変異である、請求項131に記載の方法。
【請求項135】
前記配列に基づく変異が、ミスセンス変異、サイレント変異、フレームシフト変異、ナンセンス変異、挿入変異、欠失変異、またはスプライス部位破壊である、請求項134に記載の方法。
【請求項136】
前記欠陥が、DNMT3Aのエクソン7~23にある、請求項131に記載の方法。
【請求項137】
前記欠陥が、G543C、S714C、F732C、Y735C、R736C、R749C、F751C、W753C、およびL889Cからなる群より選択されるDNMT3Aにおけるミスセンス変異である、請求項131に記載の方法。
【請求項138】
前記欠陥が、JAK2におけるV617F変異である、請求項131に記載の方法。
【請求項139】
前記欠陥が、TET2における破壊変異である、請求項131に記載の方法。
【請求項140】
前記欠陥が、PPM1Dにおける破壊変異である、請求項131に記載の方法。
【請求項141】
前記欠陥が、R175H、G245S、R248W、R273G、P151S、R181H、H193R、M237I、G245C、R248Q、R267W、およびR273Lからなる群より選択されるTP53におけるミスセンス変異である、請求項131に記載の方法。
【請求項142】
前記1つまたは複数の遺伝子が、がんに関連している、請求項131に記載の方法。
【請求項143】
前記1つまたは複数の遺伝子が、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、SF3B1、SRSF2、およびTP53からなる群より選択される、請求項142に記載の方法。
【請求項144】
前記1つまたは複数の遺伝子が、DNMT3A、TET2、およびASXL1からなる群より選択される、請求項142に記載の方法。
【請求項145】
前記1つまたは複数の遺伝子が、腫瘍形成に関連している、請求項131に記載の方法。
【請求項146】
前記1つまたは複数の遺伝子が、TP53、KRAS、ASXL1、JAK2、SFSR2、およびSFSB1からなる群より選択される、請求項145に記載の方法。
【請求項147】
前記1つまたは複数の遺伝子が、TP53およびKRASからなる群より選択される、請求項145に記載の方法。
【請求項148】
前記1つまたは複数の遺伝子が、血液がんに関連している、請求項131に記載の方法。
【請求項149】
前記1つまたは複数の遺伝子が、TET2およびDNMT3Aからなる群より選択される、請求項148に記載の方法。
【請求項150】
前記製造された細胞において、PCM1、HIF1A、およびAPCからなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥を特定するステップをさらに含む、請求項131に記載の方法。
【請求項151】
前記欠陥が、配列に基づく変異である、請求項150に記載の方法。
【請求項152】
前記製造された細胞において、TERTおよびCHEK2からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における配列に基づく変異を特定するステップをさらに含む、請求項131に記載の方法。
【請求項153】
前記製造された細胞において、CBL、KMT2C、ATM、CHEK2、KDR、MGA、DNMT3B、ARID2、SH2B3、MPL、RAD21、SRSF2、およびCCND2からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥を特定するステップをさらに含む、請求項131に記載の方法。
【請求項154】
前記製造された細胞において、HPRT、JAK1、JAK3、SLAMF6、IRF1、PLRG1、STAT3、およびNotch1からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥を特定するステップをさらに含む、請求項131に記載の方法。
【請求項155】
多能性細胞において、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における構造に基づく変異を特定するステップをさらに含む、請求項131に記載の方法。
【請求項156】
前記構造に基づく変異が、重複、欠失、コピー数変動、逆位、または転座である、請求項155に記載の方法。
【請求項157】
前記構造に基づく変異が、Ch2、Ch4、Ch9、Ch12、Ch17、およびCh20からなる群より選択される1つまたは複数の染色体上に存在する、請求項155に記載の方法。
【請求項158】
前記構造に基づく変異が、Ch2p23、Ch4q24、Ch20q11、Ch17q23、Ch9p24、Ch17p23、Ch17q25、Ch2q33、およびCh12p12からなる群より選択される1つまたは複数の染色体上に存在する、請求項155に記載の方法。
【請求項159】
前記多能性細胞において、Ch1、Ch12、Ch17q、CH20q11、およびX染色体からなる群より選択される1つまたは複数の染色体上に存在する構造に基づく変異を特定するステップをさらに含む、請求項155に記載の方法。
【請求項160】
受け取った細胞において、Ch3、Ch4、Ch5、Ch7、Ch8、Ch9、Ch11、Ch12、Ch13、Ch14、およびCh18からなる群より選択される1つまたは複数の染色体上に存在する構造に基づく変異を特定するステップをさらに含む、請求項155に記載の方法。
【請求項161】
前記1つまたは複数の遺伝子における特定された欠陥を示さない前記製造された細胞の亜集団を単離するステップをさらに含む、請求項131に記載の方法。
【請求項162】
前記1つまたは複数の遺伝子における特定された欠陥を示さない前記単離された製造された細胞を対象に投与するステップをさらに含む、請求項161に記載の方法。
【請求項163】
前記単離された製造された細胞が、疾患または障害を処置するために前記対象に投与される、請求項162に記載の方法。
【請求項164】
前記疾患または障害が、血液障害、免疫障害、代謝障害、神経性障害、または心血管障害である、請求項163に記載の方法。
【請求項165】
前記疾患または障害が、がんである、請求項163に記載の方法。
【請求項166】
前記疾患または障害が、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性新生物、胚細胞腫瘍、神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、および髄芽腫からなる群より選択される、請求項163に記載の方法。
【請求項167】
前記疾患または障害が、固形腫瘍である、請求項163に記載の方法。
【請求項168】
前記固形腫瘍が、非悪性腫瘍である、請求項163に記載の方法。
【請求項169】
前記固形腫瘍が、悪性腫瘍である、請求項163に記載の方法。
【請求項170】
前記1つまたは複数の遺伝子における欠陥を示す製造された細胞の亜集団を単離するステップをさらに含む、請求項131に記載の方法。
【請求項171】
前記1つまたは複数の遺伝子における前記欠陥を修正するステップをさらに含む、請求項170に記載の方法。
【請求項172】
前記修正された単離された製造された細胞を対象に投与するステップをさらに含む、請求項171に記載の方法。
【誤訳訂正2】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】全文
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年7月16日に出願された米国仮出願第63/052,803号、および2020年8月12日に出願された米国仮出願第63/064,794号の利益を主張し、それらの全教示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
疾患の成功裏の処置のためのモダリティとしての細胞療法は、特に、各種の血液学的悪性疾患および免疫学的障害を処置するための血液幹細胞移植の形態で、数十年間存在しており、その例は、dana-farber.org/stem-cell-transplantation-programに記載されている。骨髄、動員された末梢血、および臍帯血に由来する患者特異的血液幹細胞は、これらの疾患を処置するための血液幹細胞のための供給源として成功裏に使用されている。さまざまな疾患を処置するための有用性が証明されながら、血液幹細胞移植は、移植のための血液幹細胞および前駆細胞の不十分な量、毒性が低い長期有効性を支持するあまり強くない前処置レジメン、慢性GVHD、および当然ながら再発を含む、治療をより広く適用可能にする上で多くの課題に依然として直面している(Granot et al. Haematologica, 2020; 105(12):2716-2729)。移植のための不十分な細胞供給に対処する努力において、一部の企業は、新規動員剤およびex vivo拡大増殖プロトコールの開発に注目している。
【0003】
2017年に、最初のCAR-T細胞療法であるKYMRIAHが、B細胞急性リンパ芽球性白血病(ALL)を有する小児および若年成人患者における使用のために米国食品医薬品局によって承認された。それ以来、この自家細胞処置アプローチを利用するいくつかの追加の療法および適応症が承認されている。これらの療法を製造するためのプロセスは、ドナーT細胞の単離、がんを標的にするためのT細胞の遺伝子工学的操作、およびT細胞集団の持続、ならびにT細胞の活性化および拡大増殖を含んで、集約的で費用がかかる(Vormittag et al., Curr Opin Biotechnol. 2018; 53:164-181)。CAR-T細胞療法の同種異系/市販品バージョンの開発は、処置の費用を低減するはずであるが、製造プロセスは、単離、工学的操作、活性化、および拡大増殖のコアステップに依然として依存するであろう。CAR-T細胞および血液幹細胞の移植は両方とも、血液に由来する障害の処置において成功が証明されているが(Goldsmith et al., Frontiers in Oncology, 2020; 10:2904)、それらの発生能が、一般に、血液細胞型に制限されているので、血液に由来しないか、または血液内に存在しない疾患の処置において、特に限定的である。
【0004】
1998年に、最初のヒト胚性幹細胞(hESC)が、University of Wisconsin-MadisonのJames Thomsonの研究室において単離された(Thomson et al. Science, 1998; 282:861-872;Takahashi et al. Cell, 2007; 131:861-872)。固有に、これらの細胞は、胚形成の間の5日目の着床前胚盤胞期に由来し、人体に存在する各種の細胞型を発生させるそれらの可能性に制限がなかった。多能性として公知のこの段階の発生能は、hESCの固有の自己複製能力(例えば、同一の遺伝的構成および多能性のさらなる細胞を発生させる持続能力)と組み合わせて、人体のすべての細胞型および組織における疾患を処置するための扉を開いた。
【0005】
hESCは、この無限の治療可能性を保有しているが、それらの単離がヒト胚の破壊をもたらしたので、道徳的および倫理的な異議も付随した。これらの異議は、限定的な財政的支援をもたらし、そのため、治療的有用性に向けたそれらの開発を遅らせた。2007年に、山中伸弥およびJames Thomsonの研究室が、胚細胞の状態に関連する遺伝子の組合せを外因的に送達することによって、ヒト成人/皮膚体細胞を多能性幹細胞に変換する能力を独立して開発したので、これらの異議は解消された(Takahashi et al. Cell, 2007; 131:861-872;Yu et al. Science, 2007; 318:1917-1920)。細胞初期化として公知のこのプロセスは、新しい処置を開発するためにhESCを使用することに関連する道徳的および倫理的な問題を取り除いただけでなく、それぞれの個体から多能性幹細胞(PSC)を作出することも可能にした。これは、血液だけでなく、人体のすべての組織に影響を及ぼす疾患の自家処置への扉を開いた。
【0006】
この能力を手にして、この分野は、iPSC由来細胞療法の開発における意図される将来の使用との互換性を確保するために、最良のシステムおよび実施の開発に対する努力に集中した。そのため、初代体細胞材料、細胞初期化システム、細胞培養/拡大増殖システムおよび環境、遺伝子編集技術、ならびに分化プロトコールを、製造プロセスにおける一貫性/再現性、完全性、品質、およびスケーラビリティに対して評価および開発を行った。特に、細胞初期化プロトコールの開発は、臨床背景におけるアクセスの容易さおよびバイオバンクの血液材料の先在を考慮して、初代体細胞出発材料としての血液由来細胞型の使用に集中した。追加の利益のうち、血液由来細胞型は、DNA配列および染色体構造における遺伝的変動/変異の蓄積をもたらし得る、UV光などの環境変異原から良好に保護される。
【0007】
未確定の潜在能をもつクローン性造血(clonal hematopoiesis of indeterminant potential)(CHIP)は、血液中の他の幹細胞および前駆細胞と比べて、造血幹細胞および前駆細胞の別個の亜集団に対して競合的な成長の利点を付与する体細胞遺伝的変動の加齢関連の蓄積である。これらの体細胞遺伝的変動の一部は、血液由来がんを含む疾患(Genovese et al. N Engl J Med, 2014; 371(26):2477-2487)、ならびに大動脈弁狭窄症、静脈血栓症、および心不全を含む心血管疾患(Jaiswal et al. N Engl J Med, 2014; 371:2488-2498;Mas-Peiro et al. Eur Heart J, 2019; 41:933-939;Sano et al. Jacc Basic Transl Sci, 2019; 4:684-697;Bazeley et al. Curr Hear Fail Reports, 2020; 17:271-276)に関連している。
大部分の細胞ならびに細胞療法および遺伝子療法製品が、血液に由来する細胞型(例えば、HSC、T細胞およびiPS細胞生成のための初代細胞)から開発され、および/または疾患の処置のために血液コンパートメントに送達されること、ならびにCHIPに関連する遺伝的変動が、本明細書にさらに記載されるように、細胞療法および遺伝子療法製品の製造の間に血液細胞のDNAにおいて固有に蓄積および拡大増殖することを考慮すると、製造プロセスに入るかまたはそこから生じる細胞材料、およびプロセスそれ自体の両方において、これらの遺伝的変動の蓄積を同定および排除する明確な必要性が存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Granot et al. Haematologica, 2020; 105(12):2716-2729
【非特許文献2】Vormittag et al., Curr Opin Biotechnol. 2018; 53:164-181
【非特許文献3】Goldsmith et al., Frontiers in Oncology, 2020; 10:2904
【非特許文献4】Thomson et al. Science, 1998; 282:861-872
【非特許文献5】Takahashi et al. Cell, 2007; 131:861-872
【非特許文献6】Genovese et al. N Engl J Med, 2014; 371(26):2477-2487
【非特許文献7】Jaiswal et al. N Engl J Med, 2014; 371:2488-2498
【非特許文献8】Mas-Peiro et al. Eur Heart J, 2019; 41:933-939
【非特許文献9】Sano et al. Jacc Basic Transl Sci, 2019; 4:684-697
【非特許文献10】Bazeley et al. Curr Hear Fail Reports, 2020; 17:271-276
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
細胞療法製造プロセスおよびそれから得られる材料から遺伝的変動を特定および排除し、それによって、療法を受けている個体の健康に対する疾患関連の遺伝的変動のリスクおよび未知の影響を本質的に低減する明確な必要性が存在する。
【0010】
製造プロセスの間に、例えば、製造プロセスの複数の段階で、細胞の品質を評価する方法を本明細書に記載する。方法は、一般に、製造プロセスの間の1つまたは複数の時点で、細胞の試料を受け取るステップ、1つまたは複数の時点で受け取った1つまたは複数の細胞のゲノムの少なくとも一部分を配列決定するステップ、ならびに受け取った細胞において、1つまたは複数の遺伝子、例えば、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥を特定するステップを含み得る。
【0011】
細胞の品質を評価する方法も本明細書に記載する。方法は、製造プロセスの前に、多能性細胞または体細胞の試料を受け取るステップ、多能性細胞または体細胞のゲノムの少なくとも一部分を配列決定するステップ、ならびに多能性細胞または体細胞において、1つまたは複数の遺伝子、例えば、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥を特定するステップを含む。
【0012】
細胞の品質を評価する方法であって、製造プロセスの前に、スターター細胞の試料を受け取るステップであって、スターター細胞が、HSCまたはT細胞であるか、それらを含むか、またはそれらからなる、ステップ、スターター細胞のゲノムの少なくとも一部分を配列決定するステップ、ならびにスターター細胞において、1つまたは複数の遺伝子、例えば、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥を特定するステップを含む、方法を本明細書にさらに記載する。
【0013】
製造された細胞、例えば、多能性細胞、体細胞、造血幹細胞(HSC)、またはT細胞の集団から製造された細胞の品質を評価する方法も本明細書に記載する。方法は、製造プロセスの完了の際に得られた製造された細胞の試料を受け取るステップ、製造された細胞のゲノムの少なくとも一部分を配列決定するステップ、ならびに製造された細胞において、1つまたは複数の遺伝子、例えば、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥を特定するステップを含む。
【0014】
一部の実施形態では、細胞の試料は、スターター細胞の受領、細胞の操作の1つまたは複数の段階(例えば、培養および拡大増殖、遺伝子操作、分化、不均質性(heterogeneity)/細分類(subtyping)、採取、凍結保存、解凍、単離、富化、単一細胞クローニング、ならびに精製の1つまたは複数)の完了、および使用前の製造された細胞の受領からなる群より選択される製造プロセスの間の1つまたは複数の時点で受け取る。
【0015】
一実施形態では、細胞の細胞初期化は、単離された初代体細胞を誘導多能性幹細胞に変換することを含む。一実施形態では、細胞の操作は、T細胞をCAR T細胞に操作することを含む。CAR T細胞は、がん細胞または腫瘍細胞上の目的の抗原を標的にするように工学的操作されてもよい。
【0016】
一部の実施形態では、遺伝子操作は、CRISPR、TALEN、Znフィンガー、およびベクター送達システムの1つまたは複数を使用して細胞を操作することを含む。遺伝子編集システムは、ベクター送達システム(RNA、DNA、またはウイルスベクター送達システムなど)を介して、細胞に送達されてもよい。一部の実施形態では、遺伝子操作は、1つまたは複数の遺伝的欠陥を修正すること、1つまたは複数の遺伝子の発現を低減すること、および1つまたは複数の遺伝子の発現を増加させることからなる群より選択される。一実施形態では、遺伝子操作は、TET2を不活性化することまたはノックアウトすることを含む。
【0017】
一部の実施形態では、分化は、スターター細胞(例えば、HSC)を治療用細胞型に変換することを含む。一部の実施形態では、スターター細胞は、多能性細胞を含み、ならびに/または治療用細胞型は、ベータ細胞、心筋細胞、衛星細胞、網膜細胞、NK細胞、および神経細胞からなる群より選択される。一部の実施形態では、分化は、多能性細胞を治療用細胞型(例えば、ベータ細胞、運動ニューロン細胞、心筋細胞、衛星細胞、NK細胞、神経細胞など)に変換することを含む。
【0018】
一部の実施形態では、製造プロセスにおける1つまたは複数の細胞は、スターター細胞の集団から製造される。スターター細胞は、幹細胞であってもよい。一部の実施形態では、スターター細胞は、多能性細胞(例えば、誘導多能性幹細胞(iPSC)および/または胚性幹細胞(ESC))または体細胞である。他の実施形態では、スターター細胞は、造血幹細胞(HSC)またはT細胞である。一部の実施形態では、スターター細胞は、血液試料から得られる。例えば、スターター細胞の集団は、対象、例えば、それを必要とする対象またはドナー対象(例えば、健康なドナー)から得られる。
【0019】
一部の実施形態では、欠陥は、配列に基づく変異、例えば、ミスセンス変異、サイレント変異、フレームシフト変異、ナンセンス変異、挿入変異、欠失変異、またはスプライス部位破壊である。一部の実施形態では、欠陥は、体細胞配列に基づく変異または生殖細胞系列配列に基づく変異である。一実施形態では、欠陥は、DNMT3Aのエクソン7~23にある。一実施形態では、欠陥は、G543C、S714C、F732C、Y735C、R736C、R749C、F751C、W753C、およびL889Cからなる群より選択されるDNMT3Aにおけるミスセンス変異である。一実施形態では、欠陥は、JAK2におけるV617F変異である。一実施形態では、欠陥は、TET2における破壊変異である。一実施形態では、欠陥は、PPM1Dにおける破壊変異である。一実施形態では、欠陥は、R175H、G245S、R248W、R273G、P151S、R181H、H193R、M237I、G245C、R248Q、R267W、およびR273Lからなる群より選択されるTP53におけるミスセンス変異である。
【0020】
一部の実施形態では、1つまたは複数の遺伝子は、腫瘍形成に関連している。1つまたは複数の遺伝子は、TP53、KRAS、ASXL1、JAK2、SFSR2、およびSFSB1からなる群より選択されてもよく、より具体的には、TP53およびKRASからなる群より選択される。一部の実施形態では、1つまたは複数の遺伝子は、がんに関連している。1つまたは複数の遺伝子は、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、SF3B1、SRSF2、およびTP53からなる群より選択されてもよく、より具体的には、DNMT3A、TET2、およびASXL1からなる群より選択される。一部の実施形態では、1つまたは複数の遺伝子は、血液がんに関連しており、TET2およびDNMT3Aからなる群より選択されてもよい。
【0021】
一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、受け取った細胞において、PCM1、HIF1A、およびAPCからなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥(例えば、配列に基づく変異)を特定するステップを含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、受け取った細胞において、TERTおよびCHEK2からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥を特定するステップをさらに含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、受け取った細胞において、CBL、KMT2C、ATM、CHEK2、KDR、MGA、DNMT3B、ARID2、SH2B3、MPL、RAD21、SRSF2、およびCCND2からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥を特定するステップをさらに含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、受け取った細胞において、HPRT、JAK1、JAK3、SLAMF6、IRF1、PLRG1、STAT3、およびNotch1からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥を特定するステップをさらに含む。
【0022】
一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、受け取った細胞において、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における構造に基づく変異を特定するステップを含む。一部の実施形態では、構造に基づく変異は、重複、欠失、コピー数変動、逆位、または転座である。一部の実施形態では、構造に基づく変異は、Ch2、Ch4、Ch9、Ch12、Ch17、およびCh20からなる群より選択される1つまたは複数の染色体上に、より具体的には、Ch2p23、Ch4q24、Ch20q11、Ch17q23、Ch9p24、Ch17p23、Ch17q25、Ch2q33、およびCh12p12からなる群より選択される1つまたは複数の染色体上に存在する。
【0023】
一実施形態では、DNMT3Aの構造に基づく変異は、染色体2p23上に存在する。一実施形態では、TET2の構造に基づく変異は、染色体4q24上に存在する。一実施形態では、ASXL1の構造に基づく変異は、染色体20q11上に存在する。一実施形態では、PPMD1の構造に基づく変異は、染色体17q23上に存在する。一実施形態では、JAK2の構造に基づく変異は、染色体9p24上に存在する。一実施形態では、TP53の構造に基づく変異は、染色体17p13上に存在する。一実施形態では、SRSF2の構造に基づく変異は、染色体17q25上に存在する。一実施形態では、SF3B1の構造に基づく変異は、染色体2q33上に存在する。
【0024】
一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、受け取った細胞において、Ch1、Ch12、Ch17q、Ch20q11、およびX染色体からなる群より選択される1つまたは複数の染色体上に存在する構造に基づく変異を特定するステップをさらに含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、受け取った細胞において、Ch3、Ch4、Ch5、Ch7、Ch8、Ch9、Ch11、Ch12、Ch13、Ch14、およびCh18からなる群より選択される1つまたは複数の染色体上に存在する構造に基づく変異を特定するステップをさらに含む。
【0025】
一実施形態では、細胞の試料は、処置を必要とする対象の血液試料に由来するiPSCを含む。代替の実施形態では、細胞の試料は、ドナー対象(例えば、健康なドナー対象)の血液試料に由来するiPSCを含む。一部の実施形態では、細胞の試料は、処置を必要とする対象の血液試料に由来する造血幹細胞を含む。一実施形態では、細胞の試料は、ドナー対象の血液試料に由来する造血幹細胞を含む。一実施形態では、細胞の試料は、処置を必要とする対象の血液試料に由来するか、またはドナー対象に由来するT細胞を含む。一部の実施形態では、細胞の試料は、製造された細胞の試料である。
【0026】
一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、1つまたは複数の遺伝子における欠陥が特定される製造プロセスの間の1つまたは複数の時点を特定するステップをさらに含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、1つまたは複数の遺伝子における特定された欠陥を示さない受け取った細胞の亜集団を単離するステップをさらに含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、受け取った細胞の単離された亜集団を細胞療法製造プロセスに付すステップをさらに含む。
【0027】
一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、1つまたは複数の遺伝子における欠陥を示す受け取った細胞の亜集団を単離するステップをさらに含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、1つまたは複数の遺伝子における欠陥を修正するステップをさらに含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、受け取った細胞の修正された単離された亜集団を細胞療法製造プロセスに付すステップをさらに含む。
【0028】
一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、1つまたは複数の遺伝子における特定された欠陥を示さない製造された細胞の亜集団を単離するステップをさらに含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、1つまたは複数の遺伝子における特定された欠陥を示さない単離された製造された細胞を対象に投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、単離された製造された細胞は、疾患または障害を処置するために対象に投与される。一部の実施形態では、疾患または障害は、血液障害、免疫障害、代謝障害、神経性障害、または心血管障害である。一部の実施形態では、疾患または障害は、がんである。一部の実施形態では、疾患または障害は、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性新生物、胚細胞腫瘍、神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、および髄芽腫からなる群より選択される。一部の実施形態では、疾患または障害は、固形腫瘍(例えば、非悪性腫瘍または悪性腫瘍)である。
【0029】
他の実施形態では、本明細書に記載される方法は、1つまたは複数の遺伝子における欠陥を示す製造された細胞の亜集団を単離するステップをさらに含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、1つまたは複数の遺伝子における欠陥を修正するステップをさらに含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、修正された単離された製造された細胞を対象に投与するステップをさらに含む。
【0030】
製造プロセスの間に細胞の品質を維持する方法も本明細書に記載する。方法は、対象からの1つまたは複数のiPSCドナー細胞のゲノムの少なくとも一部分を配列決定するステップ、ドナー細胞において、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥を特定するステップ、1つまたは複数の遺伝子において特定された欠陥を示さないドナー細胞を単離するステップ、単離されたドナー細胞を細胞療法製造プロセスに付して、1つまたは複数の製造された細胞を生成するステップ、1つまたは複数の製造された細胞のゲノムの少なくとも一部分を配列決定するステップ、製造された細胞において、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥を特定するステップ、ならびに1つまたは複数の遺伝子における特定された欠陥を示さない製造された細胞を単離するステップを含み得る。
【0031】
製造プロセスの間に細胞の品質を維持する方法を本明細書にさらに開示する。方法は、対象からの1つまたは複数のHSCまたはT細胞ドナー細胞のゲノムの少なくとも一部分を配列決定するステップ、ドナー細胞において、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥を特定するステップ、1つまたは複数の遺伝子において特定された欠陥を示さないドナー細胞を単離するステップ、単離されたドナー細胞を細胞療法製造プロセスに付して、1つまたは複数の製造された細胞を生成するステップ、1つまたは複数の製造された細胞のゲノムの少なくとも一部分を配列決定するステップ、製造された細胞において、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥を特定するステップ、ならびに1つまたは複数の遺伝子における特定された欠陥を示さない製造された細胞を単離するステップを含む。
【0032】
方法は、細胞療法製造プロセスの1つまたは複数の段階の間に、単離されたドナー細胞のゲノムの少なくとも一部分を配列決定するステップ、製造プロセスにおける細胞において、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥を特定するステップ、ならびに製造プロセスにおいて、1つまたは複数の遺伝子における特定された欠陥を示さない細胞を単離するステップをさらに含み得る。
【0033】
一部の実施形態では、単離された細胞は、細胞療法製造プロセスの1つまたは複数の追加段階に付される。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、1つまたは複数の遺伝子における特定された欠陥を示さない単離された製造された細胞を対象に投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、単離された製造された細胞は、疾患または障害を処置するために対象に投与される。一部の実施形態では、疾患または障害は、血液障害、免疫障害、代謝障害、神経性障害、または心血管障害である。一部の実施形態では、疾患または障害は、がんである。一部の実施形態では、疾患または障害は、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性新生物、胚細胞腫瘍、神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、および髄芽腫からなる群より選択される。一部の実施形態では、疾患または障害は、固形腫瘍、例えば、非悪性腫瘍または悪性腫瘍である。
【0034】
上記で議論された本発明の多くの他の特徴および付随する利点は、以下の本発明の詳細な説明への参照によって、より良好に理解されるようになるであろう。
【0035】
本特許または本出願ファイルは、カラーで生成された少なくとも1つの図面を含む。カラーの図面を伴う本特許または本特許出願公開の写しは、請求および必要な費用の支払いにより、特許庁によって提供される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、iPSCに基づく細胞療法のための細胞製造ワークフローのフローチャートを提供する。
【0037】
図2図2は、CAR-T細胞療法のための細胞製造ワークフローのフローチャートを 提供する。
【発明を実施するための形態】
【0038】
発明の詳細な説明
細胞療法は、がんなどの疾患または障害を処置する目的のために、患者への細胞の投与を必要とする。変異または欠陥を含有する細胞を投与することを最小化するために、投与前に細胞を評価することは有益である。加えて、治療用細胞を生成するための製造プロセスの間の細胞の操作は、多くのステップを含み得、そのそれぞれは、配列および/もしくは構造の損傷または変異を含むDNAの損傷および/または変異の蓄積をもたらし得る。細胞を操作する前、または細胞を患者に投与する前に、細胞における任意のDNAの損傷を特定することは有益であろう。さらに、細胞がDNAの損傷を蓄積する製造プロセスの間の時点を特定し、可能なら、操作が進行するにつれて、得られた細胞が蓄積された損傷を示さないように、損傷した細胞を単離および除去または修復することは有益であろう。
【0039】
細胞、例えば、多能性細胞、造血幹細胞、またはT細胞の品質を評価するための方法を本明細書に記載する。例えば、細胞の品質は、対象から除去される際、対象の投与の前、または製造プロセスの間に、評価され得る。製造プロセスの間に細胞の品質を維持する方法も本明細書に記載する。ある特定の実施形態では、細胞、例えば、製造プロセスの開始時の細胞、製造プロセスの間の1つまたは複数の時点で除去された細胞、および/または製造プロセスから得られる細胞の品質を評価する方法を本明細書に開示する。一部の実施形態では、細胞の試料を、受け取り、1つまたは複数の細胞のゲノムの少なくとも一部分を配列決定する。一部の実施形態では、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる遺伝子の群から選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥は、受け取った細胞において特定される。
【0040】
一部の態様では、欠陥は、体細胞配列変異および/または生殖細胞系列配列変異である。一部の実施形態では、1つまたは複数の遺伝子における体細胞配列変異は、細胞の試料において特定される。一部の実施形態では、生殖細胞系列配列変異は、細胞の試料において特定される。一部の実施形態では、細胞の試料は、例えば、マイクロアレイ分析によって、構造に基づく変異(例えば、体細胞構造染色体変異)についてさらに評価される。一部の態様では、体細胞構造染色体変異は、細胞の試料において特定される。
【0041】
DNAの配列決定は、組織または細胞において行うことができる。特定の細胞型の配列決定は、特定の予測値を提供する特定の細胞型における変異を特定することができる。一部の細胞型は、他の細胞型よりも高い予測値を提供し得る。配列決定は、単一細胞において、適切な単一細胞配列決定戦略を使用して、実施することもできる。単一細胞分析を使用して、同じ細胞中で同時発生する変異の高リスクの組合せを特定することができる。同時発生(co-occurrence)は、変異が同じ細胞クローンにおいて起こり、より高いリスクを持ち、したがって、異なる個々の細胞における同じ変異の発生よりも高い予測値を有することを意味する。
【0042】
一部の実施形態では、試料における1つまたは複数の細胞のゲノムの少なくとも一部分を配列決定する。一部の実施形態では、配列決定されるゲノムの一部分は、特定の遺伝子、エクソーム全体、またはエクソームの部分に限定される。例えば、ある特定の態様では、配列決定は、全エクソーム配列決定(WES)であってもよい。配列決定は、任意の好適な技法に従って行うことができる。例えば、Illumina、USA製などの多くの独占所有権がある配列決定システムが市販されており、本発明の文脈において使用することができる。例示的な単一細胞配列決定法としては、例えば、Eberwine et al., Nature Methods 11, 25-27 (2014) doi:10.1038/nmeth.2769 Published online 30 Dec. 2013によって記載されるもの;および特にマイクロ流体液滴における単一細胞配列決定(Nature 510, 363-369 (2014) doi:10.1038/nature13437)が挙げられ得、これらの全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0043】
特定の遺伝子のみ、ゲノムの特定の部分、または全ゲノムの配列決定が行われてもよい。一部の態様では、遺伝子の特定の部分を配列決定することができ、例えば、DNMT3Aにおいて、エクソン7~23を配列決定することができる。ゲノムの一部分が配列決定される場合、部分は、エクソームであり得る。エクソームは、エクソンによって形成されるゲノムの一部分であり、したがって、エクソン配列決定法は、ゲノムにおける発現される配列を配列決定する。ヒトゲノムには180,000個のエクソンが存在し、これは、ゲノムの約1%、またはおよそ3000万塩基対を構成する。エクソーム配列決定は、エクソーム配列についての配列決定する標的の富化を必要とし、PCR、分子反転プローブ、標的のハイブリッド捕捉、および標的の溶液捕捉(solution capture)を含むいくつかの技法を使用することができる。標的の配列決定は、任意の好適な技法によって実施することができる。
【0044】
細胞試料における構造変異(例えば、体細胞構造染色体変異)および生殖細胞系列配列変異を特定する方法は、当業者に公知である。例示的な方法は、WO2019/079493号およびUS2017/0321284号に記載されており、それらの内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0045】
一部の実施形態では、欠陥または変異(例えば、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子における欠陥)は、細胞の試料(例えば、ドナーから提供されたか、または細胞療法製造プロセスの1つもしくは複数の別個の時点から提供された細胞の試料)において特定される。一部の態様では、欠陥または変異は、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、およびSF3B1からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子において特定される。
【0046】
一部の態様では、欠陥または変異は、腫瘍形成に関連する1つまたは複数の遺伝子(例えば、TP53、KRAS、ASXL1、JAK2、SFSR2、および/またはSFSB1からなる遺伝子の群から選択される1つまたは複数の遺伝子)において特定される。一態様では、欠陥または変異は、TP53および/またはKRASにおいて特定される。一部の態様では、欠陥または変異は、血液がんに関連する1つまたは複数の遺伝子(例えば、TET2および/またはDNMT3A)において特定される。
【0047】
一部の態様では、ある特定の遺伝子は、高影響遺伝子(例えば、DNMT3A、TET2および/またはASXL1)または低影響遺伝子(例えば、PPM1D、JAK2、SF3B1、SRSF2および/またはTP53)として指定され得る。高影響遺伝子は、低影響遺伝子よりも、欠陥を示す場合により顕著な影響を有するものである。一態様では、欠陥または変異は、DNMT3A、TET2,および/またはASXL1において特定される。
【0048】
ある特定の実施形態では、TP53における欠陥が特定される(例えば、細胞の試料において)。ある特定の実施形態では、KRASにおける欠陥が特定される(例えば、細胞の試料において)。ある特定の実施形態では、TET2における欠陥が特定される(例えば、細胞の試料において)。ある特定の実施形態では、DNMT3Aにおける欠陥が特定される(例えば、細胞の試料において)。ある特定の実施形態では、ASXL1における欠陥が特定される(例えば、細胞の試料において)。
【0049】
DNMT3Aは、DNAシトシン-5-1-メチルトランスフェラーゼ3アルファであり、第2染色体においてコードされる(HGMC 2978)。ASXL1は、追加の性櫛様転写調節因子(additional sex combs like transcriptional regulator)1であり、第20染色体においてコードされる(HGNC 18318)。TET2は、tetメチルシトシンジオキシゲナーゼ2であり、第4染色体においてコードされる(HGNC 25941)。PPM1Dは、Mg2+/Mn2+依存性のプロテインホスファターゼ1Dであり、第17染色体においてコードされる(HGNC 9277)。JAK2は、ヤヌスキナーゼ2であり、第9染色体においてコードされる(HGNC 6192)。TP53は、腫瘍タンパク質p53であり、第17染色体においてコードされる(HGNC 11998)。SRSF2は、セリンおよびアルギニンリッチスプライシング因子2であり、第17染色体においてコードされる(HGNC 10783)。KRASは、KRAS癌原遺伝子であり、第12染色体においてコードされる(HGNC 6407)。SF3B1は、スプライシング因子3bサブユニット1であり、第2染色体においてコードされる(HGNC 10768)。
【0050】
一部の実施形態では、欠陥または変異は、PCM1、HIF1A、およびAPCからなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子においてさらに特定される。一部の実施形態では、欠陥または変異は、TERTおよびCHEK2からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子においてさらに特定される。
【0051】
一部の実施形態では、欠陥または変異は、1つまたは複数のがんドライバー遺伝子においてさらに特定される。一実施形態では、欠陥または変異は、CBL、KMT2C、ATM、CHEK2、KDR、MGA、DNMT3B、ARID2、SH2B3、MPL、RAD21、SRSF2、およびCCND2からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子においてさらに特定される。一部の実施形態では、欠陥または変異は、T細胞クローン拡大増殖の間に、悪性疾患に関連する1つまたは複数の遺伝子においてさらに特定される。一実施形態では、欠陥または変異は、HPRT、JAK1、JAK3、SLAMF6、IRF1、PLRG1、STAT3、およびNotch1からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子においてさらに特定される。
【0052】
PCM1は、中心体周辺物質(pericentriolar material)1であり、第8染色体においてコードされる(HGNC 8727)。HIF1Aは、低酸素誘導因子1サブユニットアルファであり、第14染色体においてコードされる(HGNC 4910)。APCは、WNTシグナル伝達経路のAPC調節因子であり、第5染色体においてコードされる(HGNC 583)。TERTは、テロメラーゼ逆転写酵素であり、第5染色体においてコードされる(HGNC 11730)。CHEK2は、チェックポイントキナーゼ2であり、第22染色体においてコードされる(HGNC 16627)。CBLは、Cbl癌原遺伝子であり、第11染色体においてコードされる(HGNC 1541)。KMT2Cは、リシンメチルトランスフェラーゼ2Cであり、第7染色体においてコードされる(HGNC 13726)。ATMは、ATMセリン/トレオニンキナーゼであり、第11染色体においてコードされる(HGNC 795)。KDRは、キナーゼ挿入ドメイン受容体であり、第4染色体においてコードされる(HGNC 6307)。MGAは、MAX二量体化タンパク質MGAであり、第15染色体においてコードされる(HGNC 14010)。DNMT3Bは、DNAメチルトランスフェラーゼ3ベータであり、第20染色体においてコードされる(HGNC 2979)。ARID2は、ATリッチ相互作用ドメイン2であり、第12染色体においてコードされる(HGNC 18037)。SH2B3は、SH2Bアダプタータンパク質3であり、第12染色体においてコードされる(HGNC 29605)。MPLは、MPL癌原遺伝子トロンボポエチン受容体であり、第1染色体においてコードされる(HGNC 7217)。RAD21は、RAD21コヒーシン複合体構成成分であり、第8染色体においてコードされる(HGNC 9811)。CCND2は、サイクリンD2であり、第12染色体においてコードされる(HGNC 1583)。HPRTは、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼであり、X染色体においてコードされる(HGNC 5157)。JAK1は、ヤヌスキナーゼ1であり、第1染色体においてコードされる(HGNC 6190)。JAK3は、ヤヌスキナーゼ3であり、第19染色体においてコードされる(HGNC 6193)。SLAMF6は、SLAMファミリーメンバー6であり、第1染色体においてコードされる(HGNC 21392)。IRF1は、インターフェロン調節因子1であり、第5染色体においてコードされる(HGNC 6116)。PLRG1は、多面性調節因子(pleiotropic regulator)1であり、第4染色体においてコードされる(HGNC 9089)。STAT3は、シグナル伝達および転写活性化因子3であり、第17染色体においてコードされる(HGNC 11364)。Notch1は、notch受容体1であり、第9染色体においてコードされる(HGNC 7881)。
【0053】
遺伝子における変異は、破壊的(例えば、それらは、タンパク質機能に対して観察または予測される効果を有する)または非破壊的であり得る。非破壊変異は、典型的には、コドンが異なるアミノ酸をコードするように変更されるが、コードされたタンパク質は依然として発現される、ミスセンス変異である。一部の実施形態では、体細胞変異は、ミスセンス変異または破壊変異(例えば、フレームシフト、ナンセンス、またはスプライス部位破壊)であってもよい。
【0054】
推定上の体細胞変異としては、限定されるものではないが、非サイレント/破壊的ヌクレオチド変化、インデル、ミスセンス変異、フレームシフト、停止変異(付加または欠失)、リードスルー変異、スプライス変異、および試験システムの配列決定エラーまたはアーティファクトに起因しない確認された変化の少なくとも1つを含む対立遺伝子が挙げられる。
【0055】
一部の実施形態では、DNMT3Aにおける変異は、主にミスセンス変異である。一部の態様では、DNMT3Aにおける変異(例えば、ミスセンス変異)は、エクソン7~23に局在する。一部の態様では、DNMT3Aにおける変異は、システイン形成変異に関して富化される。体細胞バリアントにおける一般的な塩基対変化は、シトシンからチミンへの遷移である。一部の実施形態では、DNMT3Aにおける変異は、G543C、S714C、F732C、Y735C、R736C、R749C、F751C、W753C、およびL889Cからなる群より選択されるミスセンス変異である。一部の実施形態では、TET2および/またはPPM1Dにおける変異は、破壊変異である。一部の実施形態では、JAK2における変異は、V617F変異である。一部の実施形態では、TP53における変異は、ミスセンス変異である。一部の態様では、TP53における変異は、R175H、G245S、R248W、R273G、P151S、R181H、H193R、M237I、G245C、R248Q、R267W、およびR273Lからなる群より選択されるミスセンス変異である。DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよびSF3B1において見出される変異の追加の非限定的な例は、参照により本明細書にすべて組み込まれる、Merkle, et al., Nature, 2017, 545(7653):229-233;Avior et al., Cell Stem Cell, 2019, 25(4):456-461;Gore et al., Nature, 2011, 471(7336):63-67;Assou et al., Stem Cell Reports, 2020, 14(1):1-8;Laurent et al., Cell Stem Cell, 2011, 8(1):106-118;Mandai et al., N Engl J Med, 2017, 376(11):1038-1046;Martincorena, et al., Science, 2015, 349(6255):1483-1489 (訂正公開Science, 2016, 351(6277));US2017/0321284号;およびWO2019/079493号に記載されている。HPRT、JAK1、JAK3、SLAMF6、IRF1、PLRG1、STAT3、およびNotch1における変異の非限定的な例は、参照により本明細書にすべて組み込まれる、Finette et al., Leukemia, 2001, 15(12):1898-1905;Bellanger et al., Leukemia, 2014, 28(2):417-419;Savola et al., Nat Commun., 2017, 8:15869;およびBlackburn, et al., Leukemia, 2012, 26:2069-2078に記載されている。
【0056】
構造に基づく変異(例えば、構造染色体変異)としては、例えば、重複、欠失、コピー数変動、逆位、および/または転座が挙げられ得る。一部の実施形態では、1つまたは複数の構造に基づく変異は、細胞試料における1つまたは複数の細胞(例えば、細胞療法製造プロセスから提供または試料採取された1つまたは複数の細胞)において特定される。一部の実施形態では、構造に基づく変異は、Ch2、Ch4、Ch9、Ch12、Ch17、およびCh20からなる群より選択される1つまたは複数の染色体上に存在する。ある特定の実施形態では、構造に基づく変異は、Ch2p23、Ch4q24、Ch20q11、Ch17q23、Ch9p24、Ch17p23、Ch17q25、Ch2q33、およびCh12p12からなる群より選択される1つまたは複数の染色体上に存在する。一部の実施形態では、構造に基づく変異は、Ch1、Ch4、Ch5、Ch7、Ch8、Ch9、Ch11、Ch12、Ch15、Ch17、Ch19、Ch20、Ch22、およびChXからなる群より選択される1つまたは複数の染色体においてさらに特定される。一部の実施形態では、構造に基づく変異は、Ch1、Ch12、Ch17q、Ch20q11、およびChXからなる群より選択される1つまたは複数の染色体においてさらに特定される。一部の実施形態では、構造に基づく変異は、Ch3、Ch4、Ch5、Ch7、Ch8、Ch9、Ch11、Ch12、Ch13、Ch14、およびCh18からなる群より選択される1つまたは複数の染色体においてさらに特定される(参照により本明細書に組み込まれるLoh et al., "Monogenic and polygenic inheritance become instruments for clonal selection," Nature, 2020、doi.org/10.1038/s41586-020-2430-6で利用可能)。一実施形態では、構造に基づく変異は、9p、12、13q、および14qからなる群より選択される1つまたは複数の染色体においてさらに特定される。
【0057】
一実施形態では、DNMT3Aの構造に基づく変異は、染色体2p23上に存在する。一実施形態では、TET2の構造に基づく変異は、染色体4q24上に存在する。一実施形態では、ASXL1の構造に基づく変異は、染色体20q11上に存在する。一実施形態では、PPMD1の構造に基づく変異は、染色体17q23に存在する。一実施形態では、JAK2の構造に基づく変異は、染色体9p24上に存在する。一実施形態では、TP53の構造に基づく変異は、染色体17p13上に存在する。一実施形態では、SRSF2の構造に基づく変異は、染色体17q25上に存在する。一実施形態では、SF3B1の構造に基づく変異は、染色体2q33上に存在する。
【0058】
構造に基づく変異の非限定的な例は、参照により本明細書にすべて組み込まれる、Assou et al., Stem Cell Reports, 2020, 14(1):1-8;Laurent et al., Cell Stem Cell, 2011, 8(1):106-118;Lefort et al. Nat Biotechnol, 2008, 26:1364-1366;International Stem Cell Initiative et al., Nat Biotechnol, 2011, 29:1132-1144;Varela et al., J Clin Invest, 2012, 122:569-574;Avery et al., Stem Cell Reports, 2013, 1:379-386;およびNguyen et al., Mol Hum Reprod, 2014, 20, 168-177に記載されている。
【0059】
一部の実施形態では、細胞の試料は、例えば、配列決定および/またはマイクロアレイ分析による、評価のための1つまたは複数の細胞を含む。細胞の試料は、1つもしくは複数の体細胞、または1つもしくは複数の造血幹細胞の試料であってもよい。一部の実施形態では、細胞の試料は、1つまたは複数の多能性細胞、例えば、多能性幹細胞を含む。一部の実施形態では、細胞の試料は、1つまたは複数の誘導多能性幹細胞(iPSC)または胚性幹細胞(ESC)を含む。一部の実施形態では、細胞の試料は、1つまたは複数の造血細胞、例えば、造血幹細胞、またはT細胞を含む。一部の実施形態では、細胞の試料は、1つまたは複数の造血幹細胞(HSC)を含む。一部の実施形態では、細胞の試料は、1つまたは複数のT細胞、例えば、CAR T細胞を含む。
【0060】
一部の実施形態では、細胞の試料は、初代細胞、例えば、上皮細胞、線維芽細胞、ケラチン形成細胞、メラニン形成細胞、内皮細胞、筋細胞、造血幹細胞、および間葉系幹細胞の集団を含む。一部の実施形態では、細胞の試料は、組織試料(例えば、ヒトなどの対象由来)から得られる。一部の実施形態では、細胞の試料は、血液試料(例えば、ヒトなどの対象由来)から得られる。血液試料は、対象から、例えば、骨髄、末梢血、または臍帯血から得られる任意の種類の血液を含み得る。ある特定の実施形態では、血液試料は、臍帯血を含む。ある特定の実施形態では、細胞の試料は、処置を必要とする対象の血液試料から得られる。例えば、細胞の試料は、多能性細胞、HSC、またはT細胞(例えば、処置を必要とするヒト対象の血液試料に由来するiPSC、HSC、またはT細胞)を含んでいてもよい。他の実施形態では、細胞の試料は、ドナー対象(例えば、処置を必要とする対象への送達のために細胞を提供する対象)の血液試料から得られる。例えば、細胞の試料は、多能性細胞(例えば、ドナー対象の血液試料に由来するiPSC)、HSC(例えば、ドナー対象の血液試料に由来するHSC)、またはT細胞(例えば、ドナー対象の血液試料に由来するT細胞)を含んでいてもよい。
【0061】
一部の実施形態では、細胞の試料は、多能性細胞を操作した後に得られる1つまたは複数の細胞を含む。一部の実施形態では、細胞の試料は、HSCまたはT細胞を操作した後に得られる1つまたは複数の細胞を含む。例えば、細胞の試料は、製造プロセスの開始時、製造プロセスの間、および/または製造プロセスの完了の際に得られる1つまたは複数の細胞を含んでいてもよい。一部の実施形態では、細胞の試料は、細胞製造プロセスの間の1つまたは複数の別個の時点(例えば、細胞療法製造プロセスの開始および/もしくは完了時、またはそのような製造プロセスの間の1つもしくは複数の中間時点)から試料採取または提供される。
【0062】
一部の実施形態では、細胞の試料は、製造または操作プロセスの間の1つまたは複数の時点または段階で受け取る。一部の実施形態では、細胞の試料は、製造プロセスを開始する前に、製造プロセスの間の1つもしくは複数の時点で、および/または製造プロセスの完了の際(例えば、使用の前)に受け取る。一態様では、細胞の試料は、製造プロセスの前に受け取る(例えば、スターター細胞または初代細胞である)。例えば、スターター細胞は、体細胞であってもよい。一部の態様では、スターター細胞は、初代細胞、例えば、線維芽細胞である。他の態様では、スターター細胞は、多能性細胞(例えば、iPSCまたはESC)である。他の態様では、スターター細胞は、造血幹細胞(HSC)またはT細胞であってもよい。
【0063】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数の変異または欠陥(例えば、1つまたは複数の推定上の配列に基づく変異または構造に基づく変異)を保有するとして特定される試料からの細胞は、単離され、さらなる製造または操作に付されない。ある特定の実施形態では、1つまたは複数の変異または欠陥(例えば、1つまたは複数の推定上の配列に基づく変異または構造に基づく変異)を保有するとして特定される試料からの細胞は、単離され、それを必要とする対象に投与されない。同様に、ある特定の態様では、1つまたは複数の変異または欠陥(例えば、1つまたは複数の配列に基づく変異または構造に基づく変異)を保有しないとして特定される試料からの細胞は、さらなる製造または操作に付される。ある特定の態様では、1つまたは複数の変異または欠陥(例えば、1つまたは複数の配列に基づく変異または構造に基づく変異)を保有しないとして特定される試料からの細胞は、それを必要とする対象に投与される。例えば、1つまたは複数の変異または欠陥を保有しないとして特定される初代細胞またはスターター細胞は、特定され、単離され、細胞療法製造プロセスに付されてもよく、またはある特定の実施形態では、細胞療法の製造に関連して、さらなる処理に付されてもよい。一部の態様では、試料からの細胞(例えば、CAR T細胞)の1つまたは複数の遺伝子において特定される欠陥は、疾患、例えば、サイトカイン放出症候群のマーカーまたは指標であり得る。
【0064】
一部の実施形態では、製造プロセスは、細胞の集団の操作の1つまたは複数の段階を含む。一部の態様では、1つまたは複数の段階は、細胞初期化、培養および拡大増殖、遺伝子操作、分化、不均質性/細分類、採取、凍結保存、解凍、単離、富化、単一細胞クローニング、ならびに精製を含む。Magnusson et al., PLoS One, 2013, 8(1):e53912;Choi et al. Biotechnol J., 2015, 10(10):1529-1545;Kumar et al., Trends Mol Med., 2017, 23(9):799-819;Naldini et al., EMBO Mol Med., 2019, 11(3):e9958;Eaves et al., Blood, 2015, 125(17):2605-2613;Almeida et al., Pathobiology, 2014, 81(5-6):261-275;Crisan et al., Development, 2016, 143(24):4571-4581;Park et al., Blood Res., 2015, 50(4):194-203を参照されたく、それらのそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0065】
細胞初期化は、体細胞(例えば、単離された初代体細胞)を多能性幹細胞(例えば、iPSC)に変換することを含んでいてもよい。一部の態様では、iPSCは、対象の血液に由来する。iPSCは、内皮前駆細胞(EPC)、B細胞、T細胞、または一般に、CD34+細胞に由来していてもよい。
【0066】
細胞、例えば、多能性幹細胞(PSC)、造血幹細胞(HSC)またはT細胞の培養および拡大増殖は、細胞バンクのため、遺伝子操作へのエントリーのため、分化へのエントリーのため、またはそれを必要とする対象への投与のために、大量の細胞を生成し得る。例えば、大量のHSCは、造血幹細胞移植のために生成され得る。
【0067】
遺伝子操作は、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、およびジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を含む、1つまたは複数の遺伝子編集システムを使用して行われてもよい。遺伝子編集システムは、1つまたは複数のベクター送達システム、例えば、RNA、DNA、またはウイルスベクター送達システムを使用して、細胞に送達されてもよい。ウイルスベクター送達システムの非限定的な例としては、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、および単純ヘルペスウイルスが挙げられる。一部の態様では、1つまたは複数の細胞の遺伝子操作は、1つもしくは複数の遺伝的欠陥を修正すること(例えば、体細胞配列または生殖細胞系列配列における変異を修復することによって)、1つもしくは複数の遺伝子の発現を低減させること(例えば、1つまたは複数の遺伝子を不活性化することまたは欠失させることによって)、または1つもしくは複数の遺伝子の発現を増加させること(例えば、1つまたは複数の遺伝子を活性化することまたは挿入することによって)を含む。
【0068】
分化は、多能性細胞、例えば、iPSCまたはESCを治療用細胞に変換することを含んでいてもよい。分化した治療用細胞の非限定的な例としては、ベータ細胞、心筋細胞、衛星細胞、網膜細胞、NK細胞、および神経細胞が挙げられる。分化のための治療用細胞型は、細胞の所望の最終使用に基づいて選択されてもよい。他の態様では、分化は、造血幹細胞またはT細胞を治療用細胞に変換することを含んでいてもよい。一部の態様では、T細胞は、CAR T細胞を形成するように操作される。
【0069】
一部の実施形態では、細胞の集団は、細胞の出発集団から操作または製造される。細胞の試料は、細胞の出発集団から得られるか、または受け取ってもよく、1つまたは複数の細胞のゲノムは、配列決定されてもよく、欠陥は、1つまたは複数の遺伝子において特定されてもよい。加えて、または代替的に、細胞の試料は、細胞の操作の間の1つまたは複数の時点で受け取ってもよく、1つまたは複数の細胞のゲノムは、配列決定されてもよく、欠陥は、1つまたは複数の遺伝子において特定されてもよい。最後に、細胞の試料は、操作された細胞の最終集団から得られてもよく、1つまたは複数の細胞のゲノムは、配列決定されてもよく、欠陥は、1つまたは複数の遺伝子において特定されてもよい。ある特定の態様では、細胞の試料は、さらに評価されて、1つまたは複数の遺伝子における構造に基づく欠陥を特定してもよい。
【0070】
一部の態様では、1つまたは複数の細胞における1つまたは複数の遺伝子における欠陥(例えば、配列に基づくまたは構造に基づく)の特定の際に、欠陥を示す細胞の亜集団が単離されてもよい。ある特定の態様では、細胞の亜集団における配列に基づく欠陥は、例えば、CRISPR、TALEN、またはZFNを使用することによるなどの遺伝子編集によって、修正される。一部の態様では、1つまたは複数の細胞における1つまたは複数の遺伝子における欠陥の特定の際に、欠陥を示さない細胞の亜集団が単離されてもよい。修正された細胞の亜集団および/または欠陥を示さない細胞の亜集団は、製造プロセスの間にさらに操作されてもよい。あるいは、修正された細胞の亜集団および/または欠陥を示さない細胞、例えば、無欠陥細胞の亜集団は、それを必要とする対象に投与されてもよい。
【0071】
一実施形態では、体細胞の集団は、iPSCの集団に初期化される。細胞の試料は、体細胞の初期集団から得られるか、または受け取ってもよく、1つまたは複数の細胞のゲノムは、配列決定されてもよく、欠陥は、1つまたは複数の遺伝子において特定されてもよい。加えて、または代替的に、細胞の試料は、体細胞のiPSCへの初期化の間の1つまたは複数の時点で受け取ってもよく、1つまたは複数の細胞のゲノムは、配列決定されてもよく、欠陥は、1つまたは複数の遺伝子において特定されてもよい。最後に、細胞の試料は、誘導されたiPSCから受け取ってもよく、1つまたは複数の細胞のゲノムは、配列決定されてもよく、欠陥は、1つまたは複数の遺伝子において特定されてもよい。細胞の亜集団は、任意の段階で単離されてもよい。細胞の亜集団は、1つまたは複数の遺伝子における欠陥を示す1つまたは複数の細胞を含んでいてもよい。一部の態様では、細胞の単離された亜集団における欠陥は、修正される。あるいは細胞の亜集団は、1つまたは複数の遺伝子における欠陥を示さない1つまたは複数の細胞を含んでいてもよい。一部の態様では、欠陥を示さない(例えば、欠陥が修正されたか、または欠陥が存在しなかった)初期化プロセスの間に得られた細胞の単離された亜集団は、初期化プロセスにさらに付される。一部の態様では、欠陥を示さない誘導されたiPSCから得られる細胞の単離された集団は、iPSCの治療用細胞型への分化などの製造プロセスにさらに提出される。
【0072】
別の実施形態では、T細胞の集団は、CAR T細胞の集団を形成するように操作される。一部の態様では、CAR T細胞は、第1世代、第2世代、第3世代、または第4世代のCAR T細胞である。細胞の試料は、T細胞の初期集団から得られるか、または受け取ってもよく、1つまたは複数の細胞のゲノムは、配列決定されてもよく、欠陥は、1つまたは複数の遺伝子において特定されてもよい。加えて、または代替的に、細胞の試料は、T細胞のCAR T細胞への操作の間の1つまたは複数の時点で受け取ってもよく、1つまたは複数の細胞のゲノムは、配列決定されてもよく、欠陥は、1つまたは複数の遺伝子において特定されてもよい。最後に、細胞の試料は、CAR T細胞から受け取ってもよく、1つまたは複数の細胞のゲノムは、配列決定されてもよく、欠陥は、1つまたは複数の遺伝子において特定されてもよい。細胞の亜集団は、任意の段階で単離されてもよい。一部の実施形態では、CAR T細胞は、TET2を改変し、それによって、CAR T細胞の免疫療法上の利益を改善するように操作される。例えば、TET2をノックダウンするなどのTET2を破壊するように操作されたCAR T細胞は、改善された治療有効性を実証する。TET2は、当業者に公知の任意の方法(例えば、CRISPR、TALEN、ZFN)によって不活性化されてもよい。一部の実施形態では、CAR T細胞のエピゲノムは、CAR T細胞の有効性および持続を改善するように改変される。細胞の亜集団は、1つまたは複数の遺伝子における欠陥を示す1つまたは複数の細胞を含んでいてもよい。一部の態様では、細胞の単離された亜集団における欠陥は、修正される。あるいは、細胞の亜集団は、1つまたは複数の遺伝子における欠陥を示さない1つまたは複数の細胞を含んでいてもよい。一部の態様では、欠陥を示さない(例えば、欠陥が修正されたか、または欠陥が存在しなかった)操作プロセスの間に得られた細胞の単離された亜集団は、操作プロセスにさらに付される。一部の態様では、欠陥を示さないCAR T細胞から得られる細胞の単離された集団は、細胞の培養および拡大増殖などの製造プロセスにさらに提出される。
【0073】
一部の実施形態では、製造された細胞または操作された細胞は、それを必要とする対象に投与される。一部の実施形態では、製造された細胞は、治療用細胞であり、1つまたは複数の疾患を処置するために、それを必要とする対象に投与される。一部の実施形態では、製造された細胞は、糖尿病、神経変性疾患(例えば、パーキンソン病)、黄斑変性症、脊椎傷害、筋肉損傷、または心臓修復を処置するために、それを必要とする対象に投与される。一部の実施形態では、製造された細胞は、治療用細胞、例えば、CAR T細胞であり、1つまたは複数の疾患を処置するために、それを必要とする対象に投与される。一部の実施形態では、製造された細胞は、がん、例えば、血液学的悪性疾患を処置するために、それを必要とする対象に投与される。一部の実施形態では、製造された細胞は、腫瘍、例えば、悪性腫瘍または非悪性腫瘍を処置するために、それを必要とする対象に投与される。一部の実施形態では、ドナーから得られた細胞、例えば、HSCの集団は、それを必要とする対象に投与される。一部の実施形態では、HSC、例えば、1つまたは複数の遺伝子における推定上の欠陥を発現しないHSCの集団は、それを必要とする対象に投与される。HSCは、造血幹細胞移植(HSCT)を介して投与されてもよい。一部の態様では、それを必要とする対象は、投与の前に、化学療法または放射線療法を受けている。一部の実施形態では、対象は、がんを患っている。一部の態様では、対象は、多発性骨髄腫、リンパ腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、骨髄異形成症候群、および骨髄増殖性新生物を患っている。一部の態様では、対象は、固形腫瘍、例えば、胚細胞腫瘍、神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、または髄芽腫を患っている。一実施形態では、HSCの集団は、それを必要とする対象から得られる(すなわち、自家)。代替の実施形態では、HSCの集団は、ドナー対象から得られる(すなわち、同種異系)。
【0074】
本明細書で使用される場合、「処置する」、「処置」、「処置された」、「処置すること」などの用語は、個体に医学的または外科的な配慮、ケアまたは管理を提供することを指す。例えば、個体は、通常、病気もしくは負傷しているか、または集団の平均的なメンバーと比べて病気になるリスクの増加があり、そのような配慮、ケアもしくは管理を必要とする。処置することは、処置を受けていない場合の予想される生存と比較して、生存を延長することを指し得る。したがって、当業者は、処置が、疾患を改善し得るが、疾患の完全な治癒でなくてもよいことを理解する。あるいは、疾患の進行が低減または停止する場合、処置は「有効」である。「処置」は、処置を受けていない場合の予想される生存と比較して、生存を延長することも意味し得る。
【0075】
一部の態様では、本明細書に記載される方法を使用して、細胞(例えば、細胞療法製造プロセスなどの製造プロセスの間に生成した治療用細胞)の品質を評価する。ある特定の実施形態では、治療用細胞は、公知の予想される使用のために製造される。一部の実施形態では、受け取った細胞の1つまたは複数の遺伝子において特定された欠陥は、製造された治療用細胞の予想される使用に特異的な疾患を引き起こす変異を蓄積するリスクに対してわずかな影響を有するか、または影響を有さない。他の実施形態では、受け取った細胞の1つまたは複数の遺伝子において特定された欠陥は、製造された治療用細胞の予想される使用に特異的な疾患を引き起こす変異を蓄積するリスクに対して増加した影響を有する。一部の態様では、受け取った細胞の1つまたは複数の遺伝子において特定された欠陥は、心血管疾患、血液がん、または死亡率の減少に関連する疾患を引き起こす変異を蓄積するリスクに対して増加した影響を有する。
【0076】
一部の態様では、受け取った細胞の1つまたは複数の遺伝子において特定された欠陥は、製造された治療用細胞の予想される使用に特異的な疾患を引き起こす変異を蓄積するリスクに対してわずかな影響を有するか、または影響を有さないが、固形組織において腫瘍形成性である増加したリスクを有し得る。例えば、腎臓または膵臓機能の処置のために生成された治療用細胞のTP53における欠陥は、標的組織に疾患特異的変異を蓄積する最小限の増加したリスクを有するが、そのような欠陥は、腎臓および膵臓において高度に腫瘍形成性である。他の実施形態では、受け取った細胞の1つまたは複数の遺伝子において特定された欠陥は、製造された治療用細胞の予想される使用に特異的な疾患を引き起こす変異を蓄積するリスクに対して増加した影響を有するが、固形組織における腫瘍形成についての低いリスクを示す。例えば、血液障害または免疫障害の処置のためのiPSC由来血液幹細胞におけるASXL1、JAK2、KRAS、SFSR2、およびSF3B1の1つまたは複数において特定された欠陥は、血液がんおよび/または心血管疾患についての増加したリスクに関連し得るが、固形組織における腫瘍形成についての低いリスクを示し得る。
【0077】
ある特定の実施形態では、対象は、哺乳動物、例えば、霊長類、例えば、ヒトである。「患者」および「対象」という用語は、本明細書において互換的に使用される。好ましくは、対象は、哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシであり得るが、これらの例に限定されない。ある特定の実施形態では、対象は、ヒトである。
【0078】
本明細書に開示される方法は、細胞製造プロセスまたは操作プロセス(例えば、細胞療法製造プロセス)を改善するためにさらに使用され得る。ある特定の態様では、本明細書に開示される方法は、細胞製造プロセスを通して進行する場合に、細胞の集団をモニタリングして、そのような細胞における遺伝的欠陥の蓄積を引き起こすか、またはそうでなければそれに寄与するそのようなプロセスにおけるステップを特定する手段を提供する。対象細胞における遺伝的欠陥の蓄積を引き起こすか、またはそうでなければそれに寄与する細胞製造の間の特定のステップまたはプロセスを同定することによって、本明細書に開示される発明は、そのような製造プロセスに介入するためおよびそれを最適化するために使用され得る。例えば、細胞の集団が、製造プロセスのステップの間に1つまたは複数の遺伝的欠陥を蓄積することが見出される場合(例えば、細胞が、細胞採取、凍結保存、解凍、単離、富化、単一細胞クローニングおよび/または精製の1つまたは複数の間に遺伝的欠陥を蓄積する)、製造プロセスは、そのようなステップを排除するか、またはそのようなステップを、細胞に遺伝的欠陥を蓄積させない代替ステップで置き換えるように改変されてもよい。そのため、本明細書に開示される方法は、細胞製造を最適化し、それによって、細胞製造に関連する費用を低減する価値のある機会を提供する。
【0079】
本発明が、その適用において、本説明において示されるか、または例示されるような詳細に限定されないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態を包含し、さまざまな方法で実行または行うことができる。また、本明細書で用いられる語句および専門用語が、説明の目的のためであり、限定するものとして見なされるべきではないことが理解されるべきである。
【0080】
本発明のある特定の化合物、組成物および方法は、ある特定の実施形態に従って特異的に記載したが、以下の実施例は、本発明の方法および組成物を説明する役目のみを果たし、それを制限することを意図するものではない。
【0081】
冠詞「a」および「an」は、明細書および特許請求の範囲においてここで使用される場合、反対のことが明確に指示されない限り、複数の指示対象を含むことが理解されるべきである。群の1つまたは複数のメンバー間の「または」を含む特許請求の範囲または説明は、反対のことが指示されない限り、または文脈から他が明白ではない限り、群のメンバーの1つ、1つより多く、またはすべてが、所与の製品またはプロセスに存在するか、そこで用いられるか、またはそうでなければそれに関連する場合に、満たされると考えられる。本発明は、群の正確に1つのメンバーが所与の製品またはプロセスに存在するか、そこで用いられるか、またはそうでなければそれに関連する実施形態を含む。本発明は、1つより多いまたは群全体のメンバーが所与の製品またはプロセスに存在するか、そこで用いられるか、またはそうでなければそれに関連する実施形態も含む。さらにまた、本発明が、他に指示されない限り、または矛盾もしくは不一致が生じることが当業者に明らかでない限り、列挙された請求項の1つまたは複数からの1つまたは複数の限定、要素、節、説明用語などが、同じ基本とする請求項(または、関連する場合に、任意の他の請求項)に従属する別の請求項に導入される、すべての変形形態、組合せ、および変形を包含することが理解されるべきである。要素が一覧として(例えば、マーカッシュ群または類似のフォーマットで)提示される場合、要素のそれぞれの下位群も開示され、任意の要素を、群から除去することができることが理解されるべきである。一般に、本発明または本発明の態様が、特定の要素、特徴などを含むと称される場合、本発明のある特定の実施形態または本発明の態様は、そのような要素、特徴などからなるか、またはそれから本質的になることが理解されるべきである。簡素化の目的のために、それらの実施形態は、あらゆる場合において、本明細書において非常に多くの単語で具体的に示されるわけではない。本発明の任意の実施形態または態様を、特定の除外が本明細書で列挙されているかにかかわらず、特許請求の範囲から明示的に除外することができることも理解されるべきである。本発明の背景を記載し、その実行に関する追加の詳細を提供するために本明細書で参照される刊行物および他の参考試料は、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0082】
例証
(実施例1A)
体細胞からのiPSCの生成(細胞初期化)
iPSCクローンは、体細胞からの細胞初期化プロセスの結果として得られる。iPSCクローンの一次スクリーニングを行って、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよび/またはSF3B1における配列に基づく欠陥または構造に基づく欠陥を特定する。スクリーニングの完了の際に、体細胞変異などの配列に基づく欠陥も構造に基づく欠陥も一切示さないiPSCクローンを選択する。次いで、選択されたiPSCクローンを、例えば、遺伝子編集または分化プロセスにより、さらに操作してもよい。しかしながら、一次スクリーニングの完了の際に、配列に基づく欠陥も構造に基づく欠陥も一切示さないiPSCクローンが特定されない場合、すなわち、それらが、少なくとも1つの欠陥を示す場合、二次スクリーニングを行ってもよい。二次スクリーニングを行うために、1つまたは複数のiPSCクローンを選択し、単一細胞を、培養ウェルにおいて単離し、拡大増殖して、完全なクローンコロニーを生成する。次いで、完全なクローンコロニーを、体細胞変異などの配列に基づく欠陥または構造に基づく欠陥についてスクリーニングする。二次スクリーニングの完了の際に、分化または遺伝子編集プロセスなどのさらなる操作のために選択される、配列に基づく欠陥も構造に基づく欠陥も一切含まない最良のクローンを特定し、その後、それらを、そのような欠陥の非存在を確認するためのさらなるスクリーニングに付してもよい。
【0083】
(実施例1B)
製造された細胞の評価およびそれらの細胞の使用(細胞品質管理リリース)
製造プロセスによって生成した細胞をスクリーニングして、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよび/またはSF3B1における配列に基づく欠陥または構造に基づく欠陥を特定してもよい。スクリーニングの完了の際に、体細胞変異などの配列に基づく欠陥も構造に基づく欠陥も一切示さない製造された細胞を選択する。次いで、選択された製造された細胞を、それを必要とする患者に投与してもよい。しかしながら、スクリーニングの完了の際に、配列に基づく欠陥も構造に基づく欠陥も一切示さない製造された細胞が特定されない場合、すなわち、それらが、少なくとも1つの欠陥を示す場合、それらの細胞を、患者に送達しないであろう。製造された細胞の種類および処置される疾患に応じて、製造された細胞クローンにおける欠陥を評価して、それらが、失敗についての所定の閾値に合格するかどうかを決定してもよい。失敗の閾値レベルを確立するための考慮事項としては、疾患の重症度、患者に対するリスク、および処置の代替形態の利用可能性が挙げられる。例えば、ある特定の遺伝子における欠陥は、腫瘍形成効果を有していてもよく、または他の遺伝子における欠陥は、疾患を引き起こす変異を蓄積するリスクに対して増加した影響を示してもよい。
【0084】
(実施例1C)
細胞の遺伝子工学的操作は欠陥をもたらし得る
体細胞を、使用の前に、例えば、PSCへの初期化の前に、遺伝子工学的操作してもよい。遺伝子工学的操作の完了後、1つまたは複数のクローンを選択してもよく、単一細胞を、培養ウェルにおいて単離し、拡大増殖して、完全なクローンコロニーを生成し、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよび/またはSF3B1における配列に基づく欠陥または構造に基づく欠陥についてスクリーニングしてもよい。スクリーニングの完了の際に、配列に基づく欠陥も構造に基づく欠陥も一切示さない最良のクローンを、さらなる操作、例えば細胞初期化のために選択する。配列に基づく欠陥または構造に基づく欠陥が特定されると、体細胞の遺伝子編集のその後のラウンドを、任意の欠陥を限定し、プロセスを最適化するように改変してもよい。例えば、異なる遺伝子編集技術を使用してもよく、クローニング培養および/または環境などを改変してもよい。
【0085】
加えて、PSC細胞を、使用の前に、例えば、製造プロセス(例えば、分化)における使用の前に、遺伝子工学的操作して、例えば、疾患を引き起こす遺伝的欠陥を修正してもよく、または遺伝子の機能的コピーを付加してもよい。他の例では、処置を必要とする対象から得られたPSC細胞を、遺伝子工学的操作して、疾患を引き起こす変異を修正してもよい。遺伝子工学的操作の完了後、1つまたは複数のクローンを選択してもよく、単一細胞を、培養ウェルにおいて単離し、拡大増殖して、完全なクローンコロニーを生成し、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよび/またはSF3B1における配列に基づく欠陥または構造に基づく欠陥についてスクリーニングしてもよい。スクリーニングの完了の際に、配列に基づく欠陥も構造に基づく欠陥も一切示さない最良のクローンを、さらなる操作、例えば、治療用細胞への分化のために選択する。配列に基づく欠陥または構造に基づく欠陥が特定されると、PSCの遺伝子編集のその後のラウンドを、任意の欠陥を限定し、プロセスを最適化するように改変してもよい。例えば、異なる遺伝子編集技術を使用してもよく、クローニング培養および/または環境などを改変してもよい。
【0086】
さらに、分化した細胞を、使用の前に、例えば、それを必要とする対象への投与の前に、遺伝子工学的操作してもよい。遺伝子工学的操作の完了後、1つまたは複数の細胞を選択してもよく、単一細胞を、培養ウェルにおいて単離し、拡大増殖して、完全なクローンコロニーを生成し、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよび/またはSF3B1における配列に基づく欠陥または構造に基づく欠陥についてスクリーニングしてもよい。スクリーニングの完了の際に、配列に基づく欠陥も構造に基づく欠陥も一切示さない最良の細胞を、さらなる操作のため、またはそれを必要とする患者への投与のために選択する。配列に基づく欠陥または構造に基づく欠陥が特定されると、分化した細胞の遺伝子編集のその後のラウンドを、任意の欠陥を限定し、プロセスを最適化するように改変してもよい。例えば、異なる遺伝子編集技術を使用してもよく、クローニング培養および/または環境などを改変してもよい。
【0087】
(実施例1D)
製造プロセスの個々の段階は欠陥をもたらし得る
体細胞をiPSCに初期化した後、典型的には、さらなる操作のため、例えば、治療用細胞への分化のために利用可能なiPSCの数を増加させることが必要である。iPSCの数を増加させるために、細胞培養をスケールアップし得る。培養のスケールアップの間またはその完了の際に、1つまたは複数の細胞を選択してもよく、単一細胞を、培養ウェルにおいて単離し、拡大増殖して、完全なクローンコロニーを生成し、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよび/またはSF3B1における配列に基づく欠陥または構造に基づく欠陥についてスクリーニングしてもよい。スクリーニングの完了の際に、配列に基づく欠陥も構造に基づく欠陥も一切示さない最良の細胞を、さらなる操作、例えば、治療用細胞への分化のために選択する。配列に基づく欠陥または構造に基づく欠陥が特定されると、細胞培養条件を、任意の欠陥を限定し、プロセスを最適化するように改変してもよい。
【0088】
iPSCのスケールアップ後、細胞を、さらなる操作のために採取してもよい。iPSCの採取の完了の際に、1つまたは複数の細胞を選択してもよく、単一細胞を、培養ウェルにおいて単離し、拡大増殖して、完全なクローンコロニーを生成し、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよび/またはSF3B1における配列に基づく欠陥または構造に基づく欠陥についてスクリーニングしてもよい。スクリーニングの完了の際に、配列に基づく欠陥も構造に基づく欠陥も一切示さない最良の細胞を、さらなる操作、例えば、治療用細胞への分化のために選択する。配列に基づく欠陥または構造に基づく欠陥が特定されると、採取条件を、任意の欠陥を限定し、プロセスを最適化するように改変してもよい。
【0089】
iPSC細胞の操作および/または治療用細胞の製造の追加段階の間に、1つまたは複数の細胞を選択してもよく、単一細胞を、培養ウェルにおいて単離し、拡大増殖して、完全なクローンコロニーを生成し、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよび/またはSF3B1における配列に基づく欠陥または構造に基づく欠陥についてスクリーニングしてもよい。スクリーニングの完了の際に、配列に基づく欠陥も構造に基づく欠陥も一切示さない最良の細胞を、さらなる操作、例えば、治療用細胞への分化のために選択する。配列に基づく欠陥または構造に基づく欠陥が特定されると、条件を、任意の欠陥を限定し、プロセスを最適化するように改変してもよい。
【0090】
(実施例2A)
CAR T細胞の製造および欠陥についての評価
CAR T細胞を、ドナーから得られた血液細胞から製造する。血液細胞(すなわち、血液単核細胞)を、ドナーから収集し、処理して、T細胞を単離する。次いで、細胞をスクリーニングして、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよび/またはSF3B1における任意の配列に基づく欠陥または構造に基づく欠陥を特定する。スクリーニングの完了の際に、体細胞変異などの配列に基づく欠陥も構造に基づく欠陥も一切示さないT細胞を選択する。次いで、選択されたT細胞を、Wang, et al., "Clinical manufacturing of CAR T cells: foundation of a promising therapy," Molecular Therapy - Concolytics (2016) 3, 16015(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載される方法を含む、当業者に公知の方法を使用して、活性化および拡大増殖する。T細胞を活性化および拡大増殖した後、それらを、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよび/またはSF3B1における任意の配列に基づく欠陥または構造に基づく欠陥について、再びスクリーニングすることができる。配列に基づく欠陥も構造に基づく欠陥も一切示さないT細胞を、遺伝子改変のために選択する。選択されたT細胞を、キメラ抗原受容体を発現するように、ウイルスまたは非ウイルス遺伝子移入システムを使用して、遺伝子改変する。ウイルスシステムは、γ-レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、またはトランスポゾン/トランスポザーゼシステムの使用を含み得る。非ウイルスシステムは、mRNA移入媒介遺伝子発現を含み得る。製造されたCAR T細胞を、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよび/またはSF3B1における任意の配列に基づく欠陥または構造に基づく欠陥についてスクリーニングする。
【0091】
一部の例では、製造されたCAR T細胞を、特定の遺伝子(例えば、TET2)を不活性化もしくはノックアウトするか、または疾患を引き起こす遺伝的欠陥を修正するように、さらに遺伝子改変する。特異的遺伝子改変は、製造されたCAR T細胞の所望の最終使用、例えば、血液がん、腫瘍または一部の他の疾患もしくは障害を処置すること、同種異系CAR T細胞を生成することなどに基づいて、選択されてもよい。遺伝子改変のそれぞれの例は、1つまたは複数の遺伝子に追加の欠陥を導入してもよく、そのようにして、細胞を、1回または複数回スクリーニングして、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよび/またはSF3B1における任意の配列に基づく欠陥または構造に基づく欠陥を特定してもよい。
【0092】
(実施例2B)
製造された細胞の評価およびそれらの細胞の使用(細胞品質管理リリース)
製造プロセスによって生成した細胞をスクリーニングして、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよび/またはSF3B1における配列に基づく欠陥または構造に基づく欠陥を特定してもよい。スクリーニングの完了の際に、細胞が、体細胞変異などの配列に基づく欠陥も構造に基づく欠陥も一切示さない場合、製造された細胞は、それを必要とする患者に投与されてもよい。しかしながら、スクリーニングの完了の際に、任意の配列に基づく欠陥または構造に基づく欠陥を示す製造された細胞が特定される場合、すなわち、それらが、少なくとも1つの欠陥を示す場合、それらの細胞を、患者に送達しないであろう。一部の例では、細胞は、任意の欠陥が特定される前に、製造プロセスの間のより早い時点から再度製造されてもよい。製造された細胞の種類および処置される疾患に応じて、製造された細胞クローンにおける欠陥を評価して、それらが、失敗についての所定の閾値に合格するかどうかを決定してもよい。失敗の閾値レベルを確立するための考慮事項としては、疾患の重症度、患者に対するリスク、および処置の代替形態の利用可能性が挙げられる。例えば、ある特定の遺伝子における欠陥は、腫瘍形成効果を有していてもよく、または他の遺伝子における欠陥は、疾患を引き起こす変異を蓄積するリスクに対して増加した影響を示してもよい。
【0093】
(実施例2C)
自家療法(HSC)
造血幹細胞(HSC)を、それを必要とする患者、例えば、造血幹細胞移植(HSCT)を必要とする患者から取り出してもよい。受け取った細胞をスクリーニングして、DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SRSF2、KRASおよび/またはSF3B1における配列に基づく欠陥または構造に基づく欠陥を特定する。スクリーニングの完了の際に、体細胞変異などの配列に基づく欠陥も構造に基づく欠陥も一切示さないHSCを選択する。次いで、選択されたHSCを拡大増殖させてもよく、さらなるスクリーニング後に依然として欠陥がない場合、それを必要とする患者に投与することができる。
【0094】
しかしながら、スクリーニングの完了の際に、配列に基づく欠陥も構造に基づく欠陥も一切示さないHSCが特定されない場合、すなわち、それらが、少なくとも1つの欠陥を示す場合、それらの細胞を、さらに評価してもよい。例えば、HSCを、1つまたは複数の遺伝子における欠陥に対処するように遺伝子改変してもよい。あるいは、欠陥を含有するHSCを、患者自身の細胞を投与する利益が、特定された欠陥のリスクを上回るかを決定するために評価してもよい。例えば、欠陥が、疾患を引き起こす変異を蓄積するリスクに対する増加した影響を示す場合、HSCは、ドナーに戻して投与されなくてもよいが、代わりに、同種異系ドナーからのHSCを得てもよい。
【0095】
(実施例3)
疾患の成功裏の処置のためのモダリティとしての細胞療法は、特に、各種の血液学的悪性疾患および免疫学的障害を処置するための血液幹細胞移植の形態で、数十年間存在しており、その例は、dana-farber.org/stem-cell-transplantation-programに記載されている。骨髄、動員された末梢血、および臍帯血に由来する患者特異的血液幹細胞は、これらの疾患を処置するための血液幹細胞のための供給源として成功裏に使用されている。さまざまな疾患を処置するための有用性が証明されながら、血液幹細胞移植は、移植のための血液幹細胞および前駆細胞の不十分な量、毒性が低い長期有効性を支持するあまり強くない前処置レジメン、慢性GVHD、および当然ながら再発を含む、治療をより広く適用可能にする上で多くの課題に依然として直面している(1)。移植のための不十分な細胞供給に対処する努力において、一部の企業は、新規動員剤およびex vivo拡大増殖プロトコールの開発に注目している。
【0096】
例えば、この分野における努力の焦点は、iPSC由来細胞療法の開発における意図される将来の使用との互換性を確保するために、最良のシステムおよび実施の開発に対してである。そのため、初代体細胞材料、細胞初期化システム、細胞培養/拡大増殖システムおよび環境、遺伝子修正技術、ならびに分化プロトコールを、製造プロセスにおける一貫性/再現性、完全性、品質、およびスケーラビリティに対して評価および開発した。特に、細胞初期化プロトコールの開発は、臨床背景におけるアクセスの容易さおよびバイオバンクの血液材料の先在を考慮して、初代体細胞出発材料のための血液由来細胞型の使用に集中した。追加の利益のうち、血液由来細胞型は、DNA配列および染色体構造における遺伝的変動/変異の蓄積をもたらし得る、UV光などの環境変異原から、良好に保護される。
【0097】
未確定の潜在能をもつクローン性造血(CHIP)は、血液中の他の幹細胞および前駆細胞と比べて、造血幹細胞および前駆細胞の別個の亜集団に対して競合的な成長の利点を付与する体細胞遺伝的変動の加齢関連の蓄積である。これらの体細胞遺伝的変動の一部は、血液由来がん(6)、ならびに大動脈弁狭窄症、静脈血栓症、および心不全を含む心血管疾患(7~10)を含む疾患に関連している。複数のグループが、大規模なゲノム全般の関連研究に登録された数千人の患者からのDNA配列の結果を分析して、さまざまな集団におけるCHIP関連配列変動の普及をより良く理解した。22GWASコホートにおける17,182人に由来する全エクソーム配列決定データセットを利用する研究では(7)、CHIP体細胞配列変動/変異が、40歳よりも若い患者において非常に稀であったが、それぞれのその後の人生の十年で頻度が上昇した。CHIP関連配列変動は、60~69歳の人の5.6%、70~79歳の人の9.5%、80~89歳の人の11.7%、90歳またはそれよりも上の人の18.4%で見られた。
【0098】
がんまたは血液学表現型について未選択の12,380人からの末梢血細胞におけるDNAの全エクソーム配列決定からのデータを分析する別の研究では、CHIP体細胞配列変動が、50歳よりも若い参加者の0.9%において観察されたが、65歳よりも年長の参加者の10.4%において観察された(6)。超高感度配列決定アッセイ(全エクソーム配列決定よりも約100倍高い感度)を行う場合、CHIP体細胞配列変動は、以前に認められたものよりもはるかに一般的である(11)。この技法を用いて、個体の7%がバリアント対立遺伝子頻度(VAF)>10%で、39%がVAF>1%で、およびほぼすべての患者(92%)がVAF>0.1%で、CHIP関連配列変動を有していた。さらにまた、エラー修正標的化配列決定によって検出される0.03%のVAFの下限を使用する健康なボランティアの研究は、50~70歳の個体の95%が、CHIP体細胞配列変動を保有することを見出した(12)。
【0099】
CHIPに関連するDNA構造に対する変化、または染色体に対する体細胞構造変動/変更はあまり十分に研究されていないが、増加した疾患リスクにも関連している(13~14)。加えて、2020年に公開された研究は、両方とも、加齢と罹患した個体のパーセンテージの増加との関係、および女性に対し男性におけるこの形態のCHIPの割合のわずかな増加を指摘する。UK BioBankデータセットを利用する研究は、45歳より年少の者の<1.8%が、体細胞構造変動を有し、65歳を上回る男性について最高で6%、女性について最高で4.9%に増加したことを指摘した(14)。Blood Bank of Japan(BBJ)における試料において行われた同等の研究は、30歳より年少の個体の<4%が、体細胞構造変動を有し、これは、60~69歳の男性および女性について、それぞれ、24.7%および17.6%に増加したことを見出し、最終的に、90歳よりも年長の者について、男性の40.7%および女性の31.5%が体細胞構造変動を有していたことを見出した(15)。
【0100】
1)大部分の細胞ならびに細胞療法および遺伝子療法製品が、血液に由来する細胞型(例えば、HSC、T細胞およびiPSC生成のための初代細胞)から開発され、および/または疾患の処置のために血液コンパートメントに送達される;
2)CHIPに関連する遺伝的変動が、個体が高齢化するにつれて血液細胞のDNAに固有に蓄積および拡大増殖し、血液がん、心血管疾患(CVD)および総死亡率のリスクの増加に関連する(6~7);
3)CHIPに関連するTP53およびKRAS遺伝子における遺伝的変動も、他の組織における固形腫瘍形成に関連する(16);
4)CHIPに関連する遺伝的変動が、幹細胞移植の間に伝達され得ることが証明されている(17~19);
5)iPSC由来治療用細胞製品の生成のために必要な製造プロセスが、遺伝的変動を蓄積する(20~24);ならびに
6)細胞療法および遺伝子療法製品の遺伝的品質および完全性を評価するための現在の共通の標準が、より小さな配列および構造に基づく遺伝子変化を検出することができない核型分析およびFISHを介した遺伝的異常についての高分子の評価に依拠する;
という事実を考慮して、
細胞療法製造プロセスおよびそれから得られる材料からこれらの遺伝的変動を特定および除去し、それによって、療法を受けている個体の健康に対する疾患関連の遺伝的変動のリスクおよび未知の影響を本質的に低減するための明確な必要性が存在する。
【0101】
この研究では、伝達可能な、疾患を引き起こす体細胞遺伝的変動(配列および構造に基づく)の蓄積および拡大増殖に対する、ヒト対象への送達のための細胞療法製品を製造するために必要なプロセスおよびプロトコールの影響を評価した。iPSC関連製造プロセスおよび材料の影響を評価するために、完全な製造ワークフロー(初代iPSCから治療用NK細胞製品まで-図1)、およびiPSC由来細胞療法(iPSCへの細胞初期化およびiPSC拡大増殖)を送達するために必要な独立したステップ/段階の両方を評価した。加えて、現在市販されているiPSCを、これらの細胞系が製造プロトコールを開発するために使用される場合が多いので、これらの遺伝的変動の存在について評価した。血液幹細胞の製造プロセスおよび材料の影響を評価するために、初代CD34(+)ex vivo拡大増殖プロトコールを評価する。そして、CAR-T製造プロセスおよび材料の影響の評価のために、遺伝子工学的操作ステップが存在しない標準的なT細胞ワークフロー(図2)を評価する。
【0102】
方法
iPSC研究のための細胞試料
試料を、活発な共同研究、ならびにATCC、AlstemおよびApplied StemCellなどの商業的供給業者を通した調達の両方により精選した(表1)。細胞製造ワークフローの評価のための細胞試料(iPSC→iPSC由来NK細胞)を、凍結保存された細胞状態(10%のDMSO)で送達した。この研究に含まれる試料は、それぞれ異なる初代iPSC系統出発材料を用いる共通のプロトコール下での3つの独立した製造の試行由来であった。試料を、製造プロセスの5つの異なる点で収集した(図1):(1)初代iPSC-出発材料;(2)拡大増殖されたiPSC-従来の2D細胞培養;(3)拡大増殖されたiPSC-3D/バイオリアクター細胞培養;(4)iPSC由来HPC-3D/バイオリアクター細胞培養;および(5)iPSC由来NK細胞-最終細胞製品。
【0103】
市販のヒトiPSC系統の評価のために、試料を、商業的供給業者を通して調達し、凍結保存状態(10%のDMSO)で送達した。細胞初期化プロセス(PBMC+iPSC)およびiPSC拡大増殖(初代iPSC 対 拡大増殖iPSC)の影響を評価するために共同研究者から受け取った細胞試料を、凍結保存された細胞試料、または凍結されて-80℃で保管された細胞ペレットのいずれかとして送達した。
表1: iPSC研究試料
【表1-1】

【表1-2】
【0104】
CD34(+)拡大増殖研究のための細胞試料
初代動員CD34(+)試料を、HemaCareおよびBioIVTから調達した。すべての試料を、凍結保存された細胞状態(10%のDMSO)で受け取った。Mob Cryo CD34(+)/GCSF(HemaCare)またはHLA型決定済みCD34(+)細胞(BioIVT)試料(表2)のそれぞれ1つのバイアルを、CD34(+)拡大増殖前分析のために保持した。並行して、それぞれの動員CD34(+)細胞試料についてマッチしたバイアルを、StemSpan(商標)CD34+拡大増殖サプリメント(10×)(Stem Cell Technologies カタログ番号2691)で補充されたStemSpan(商標)SFEM II細胞培養培地(Stem Cell Technologies カタログ番号9655)中、7日間、拡大増殖させた。7日目に、500万個の細胞を、その後のCD34(+)拡大増殖後分析のために10%のDMSO中で凍結保存した。総細胞カウント、細胞生存度およびCD34マーカー発現を、解凍後および7日目に評価した。
表2: CD34(+)研究試料
【表2】
【0105】
T細胞研究のための細胞試料
8つのHLA型決定済みPBMC試料を、BioIVTから調達して、CAR-T製造ワークフロー-T細胞の単離、活性化および拡大増殖を評価した(図2)。8試料すべてを、凍結保存された細胞状態(10%のDMSO)で受け取った。8つのPBMC試料(表3)のそれぞれについて1つのバイアルを、単離、活性化および拡大増殖前分析のために保持した。並行して、8つのPBMC細胞試料のそれぞれについてマッチしたバイアルを、解凍し、EasySep(商標)ヒトT細胞富化キット(Stem Cell Technologies カタログ番号19051)を使用して、CD3(+)T細胞について富化した。その後、それぞれ独立した試料を、次いで、ImmunoCult(商標)ヒトCD3/CD28/CD2 T細胞活性化因子(Stem Cell Technologies カタログ番号10970)による活性化、およびヒト組換えIL-2(Stem Cell Technologies カタログ番号78036.3)で補充されたImmunoCult-XF T細胞拡大増殖培地(Stem Cell Technologies カタログ番号10981)中で8日間の拡大増殖のために蒔いた。8日目に、500万個の細胞を、その後の単離、活性化および拡大増殖後分析のために10%のDMSO中で凍結保存した。総細胞カウント、細胞生存度、ならびにCD3、CD4、CD8およびHLA DR T細胞マーカー発現を、解凍後および8日目に評価した。他の市販のT細胞(CD4およびCD8)およびPBMC(単離、活性化および拡大増殖プロトコールに付されていない)の追加評価のために、試料を、BioIVTから調達し、凍結保存された状態(10%のDMSO)で送達した。
表3: T細胞研究試料
【表3】
【0106】
分子分析
ゲノムDNA(gDNA)を、PerkinElmer Chemagic 360 B5K自動抽出プラットフォームを使用して、凍結保存されたPBMCおよび凍結された細胞ペレットから抽出した。標的化配列決定のために、抽出されたgDNAを、正規化し、25ulの総体積中25ng/ulにアリコートに分けた。特別注文のDNA標的配列決定ライブラリーを、Agilent SureSelect chemistryを使用して構築した。得られたライブラリーを、Agilent 4200 TapeStationシステムにおいて分析し、KAPA qPCRによって定量化した。ライブラリーを、アンプリコン全体にわたる平均シーケンシングカバレッジ>1000×で、Illumina MiSeqプラットフォームを使用して配列決定した。配列読み取りデータを、bwaを用いて整列させ、配列バリアントを有するVCFファイルを、ベストプラクティスに従ってすぐに利用可能なGATKパイプラインを使用して、Mutect2を使用してコールした。バリアントを、GenBank遺伝子モデルおよびClinVarデータベースに対してアノテートした。遺伝子DNMT3A、TET2、ASXL1、PPM1D、JAK2、TP53、SF3B1、SRSF2、およびKRASからの体細胞および生殖細胞系列コードバリアントの両方を、アノテートされたVCFから抽出した。
【0107】
標的化配列決定パネルは、以下の領域:DNMT3A、TET2、TP53、ASXL1、JAK2、KRAS、PPM1D、SF3B1、およびSFRS2をカバーするCHIPに関連する9つのコード遺伝子標的からなる。加えて、129の標的化領域が特定された:SRSF2における3アンプリコン;PPM1Dにおける8アンプリコン;KRASにおける13アンプリコン;TP53における13アンプリコン;ASXL1における14アンプリコン;TET2における20アンプリコン;SF3B1における23アンプリコン;DNMT3Aにおける26アンプリコン;およびJAK2における27アンプリコン。
【0108】
マイクロアレイ分析のために、抽出されたgDNAを、正規化し、50ulの総体積中25ng/ulにアリコートに分けた。正規化され、アリコートに分けたgDNA試料を、Diagnomics(San Diego、CA USA)の実験室において、Illumina Infinium(商標)Global Screening Array(GSA)-24 v2.0 BeadChipにおいて試行した。得られた強度IDATファイルを、最初に、Illuminaアレイ分析プラットフォームを使用して、GTCファイルに変換し、次いで、遺伝子型および強度情報を有するVCFファイルを、gtc2vcf BCFtoolsプラグインを使用して作成した。ハプロタイプ情報を、内部で遺伝子型決定された合計で547試料、および1000ゲノムプロジェクトからの3,202試料に適用されるSHAPEIT4ソフトウェアを使用して、遺伝子型から推測した。モザイク染色体変更を、MoChAパイプラインのデフォルト設定に従って、MoChA BCFtoolsプラグインを使用して、段階的なプローブ強度から推測した。低品質の試料および汚染の証拠がある試料を、最終レポートから除外した。
【0109】
結果
iPSC分析
iPSC研究を、CHIPおよび疾患リスクに関連する体細胞遺伝的変動(配列および構造)の蓄積および拡大増殖に対するiPSC由来細胞療法製品を製造するための必要なステップ/方法および必要な細胞材料の影響を評価するために設計した。この研究では、3つの異なる試料のセットを評価した:
1)完全な細胞療法製造ワークフローにおける重要なステップ/段階からの細胞製品(初代iPSC→iPSC由来治療用細胞型);
2)現在市販されているiPSC系統;ならびに
3)iPSC由来の細胞療法製品を製造するために必要な重要なコア方法-細胞初期化およびiPSC拡大増殖-の前後の細胞材料。
【0110】
試料のそれぞれのセットの結果の概要を下記に提供する。
【0111】
iPSC由来NK細胞製造ワークフロー
14の試料を、評価される3つの独立した製造ワークフローにおいて、染色体構造(表4)およびDNA配列(表5)の両方における体細胞遺伝的変動の存在についてアッセイした。体細胞配列または構造に基づく変動は、クローン番号1(線維芽細胞+mRNA iPSC)についてのエンドポイントのiPSC由来NK細胞製品へのワークフローを通じて持続しなかったが、iPSC状態への変換に関連している全細胞画分の8.7%での染色体1qの獲得を含む、蓄積され、その後喪失する顕著な構造変動が存在した。しかしながら、クローン番号2および番号3は両方とも、プロセスの間に蓄積し、エンドポイントのiPSC由来NK細胞製品を通じて固有の体細胞遺伝的変動を有した。具体的には、クローン番号2は、3D細胞培養拡大増殖後、ほぼ4300万ヌクレオチドのCh.18q CN-LOH事象を蓄積し、培養物が、造血前駆細胞(HPC)およびエンドポイントのNK細胞製品に分化するにつれて、総細胞画分の約2%から約11%に拡大増殖した。このCh.18q遺伝子座は、胚発生(SALL3)、細胞増殖およびアポトーシス(BCL2、SMAD2、4および7)、T細胞活性化および細胞傷害(NFATC1およびCD226)、ならびに細胞接着(CDH7、19および20)に関連する遺伝子を含む。また、アッセイされるすべての細胞試料において100%に近い総細胞画分で検出されたことを考えると、本質的に体質的であり得る重要なCh.20q獲得事象が、クローン番号2において検出された。この有意な構造変動は、増強された細胞の生存および増殖に関連するBCL2L1遺伝子を含み、これは、腫瘍形成の可能性を示唆し(26~31)、クローン番号2(CD34+細胞+エピソームiPSC)についての初期化プロセスの間に由来し得る。特に、これは、iPSC系統の20%よりも多くにおいて検出される(24)。クローン番号3(PBMC+センダイiPSC)は、初代iPSCから3D拡大増殖iPSCへの体細胞構造Ch.12q喪失を有したが、喪失した。クローン番号3に対して最も重要なのは、リー-フラウメニ症候群に関連するTP53配列に基づく病原性変動の蓄積およびその後の拡大増殖である。この変動は、3D拡大増殖iPSC段階で、開始する総細胞画分の約80%に存在し、HPCおよびiPSC由来NKエンドポイント細胞製品段階で>90%に拡大増殖した。TP53における遺伝的変異/変動は、複数の組織型における腫瘍形成に関連する(16)。
表4: iPSCに基づく細胞療法製造ワークフローにおける蓄積された構造変動
【表4】

Ch =染色体
CF =細胞画分
表5: iPSCに基づく細胞療法製造ワークフローにおける蓄積された配列変動の普及
【表5】

Ch =染色体
CF =細胞画分
【0112】
市販のiPSC系統
複数の初期化システムを使用して複数の細胞型から作製された18の市販のiPSC系統を、染色体構造およびDNA配列の両方における体細胞遺伝的変動の存在についてアッセイした(表6)。18系統のうち4系統が、特に、CHIP、および血液細胞DNA中に存在する場合、CVDの増加したリスクに関連するASXL1、DNMT3AおよびTET2(2×)において、体細胞配列変動を有した。そのため、これらは、血液への送達のために開発された細胞療法において使用する前に評価する必要があろう。18系統のうち8系統が体細胞構造変動を有し、系統の1つ(ACS-1029)は、TET2ミスセンス変異と組み合わさった。特に、iPS15(PBMC+エピソームiPSC)およびACS-1030(BM+センダイiPSC)の2つのiPSC系統は両方とも、それぞれ、3.9%および45.1%の総細胞画分で、前述のCh.20q獲得を有していた。延長された培養により、その増強された増殖、生存および腫瘍形成との関連を考えると、20q獲得事象がこれらのiPSC系統において非常に高くなる細胞画分で検出される可能性が非常に高い(27~32)。加えて、独立しているが、両方とも有意な2つのCh.14q喪失事象が、それに従ってASE-9215(PBMCに由来する)iPSC系統において、95.1%および76.2%の総細胞画分で検出された。Ch.14q喪失事象は、慢性リンパ球性白血病(CLL)の増加したリスク(OR=115)と関連している(14)。体細胞構造バリアントを有する前述の系統は両方とも、それらが、療法が血液コンパートメントに送達されたら、がんのリスク、特に、CLLについてのリスクの増加を付与するので、細胞療法製品の製造のための許容される/使用可能な出発材料ではないであろう。加えて、3つの系統は、それぞれ、TMEM132D、RBFOX1およびWWOXの喪失について、12q、16p、および16qに限局的な欠失を有していた。後者は、共通の染色体の脆弱な部位に及び、腫瘍抑制遺伝子として機能すると思われる(33)。合計で、11/18(約61%)の評価された市販のiPSC系統が、細胞療法の製造における下流での使用のためのレビューに値する総細胞画分で遺伝的変動を持つ-4つの系統は、腫瘍形成およびがんに関連する構造変動を有し、4つの系統は、CHIPに関連する配列変動を有する。
表6:蓄積された遺伝的変動を有する市販iPSC系統
【表6】

Ch =染色体
CF =細胞画分
【0113】
細胞初期化およびiPSC拡大増殖
PBMC初代試料の3つのマッチしたペアおよびその後に誘導された細胞初期化の影響を評価するためのiPSC系統の両方、ならびにiPSC拡大増殖の影響を評価するための試料の配列分析からの初期の結果は、体細胞配列変動を明らかにしなかった。市販のiPSC系統の分析において存在する体細胞構造変動の高い頻度、およびiPSC-NK細胞のワークフローデータにおいて証明されている製造プロセスにおける異なるステップでのこれらの種類の変動を蓄積する可能性を考えると、現在分析中の細胞初期化およびiPSC拡大増殖試料の両方から新しい体細胞構造バリアントがピックアップされることが予期される。
【0114】
CD34+細胞拡大増殖
6つの拡大増殖前CD34+細胞試料の配列分析からの初期の結果は、CHIPに関連する生殖細胞系列ASXL1配列バリアントを有する1つのMob Cryo CD34+/GCSF細胞試料を特定した。CD34+細胞拡大増殖研究に含まれる6つの試料についてのドナーの年齢が45歳以上であり、CHIPに関連する体細胞遺伝的変動が年齢とともに増加することを考えると、試料の一部が、体細胞構造変動を有すると予想される。拡大増殖後のこれらの6つの試料の分析からの保留中のデータは、新しい体細胞遺伝的変動の蓄積、および既存のものの拡大増殖に対するex vivo拡大増殖プロトコールの影響への重要な洞察を提供する。
【0115】
T細胞の単離、活性化および拡大増殖
8つの単離、活性化および拡大増殖前のPBMC試料の配列分析からの初期の結果は、ドナーID84124からの試料において、特にCHIPに関連する、2.6%の総細胞画分で新規の病原性DNMT3A体細胞配列バリアント、および急性骨髄性白血病(AML)の増加したリスクを特定した。興味深いことに、体細胞遺伝的変動の持続について試験するためのこのドナーについてのPBMC試料と並行して単離されたマッチするCD8+ T細胞試料は、2.8%の総細胞画分で同じDNMT3A病原性バリアントを有していた。加えて、ドナーID CC00152からの単離、活性化および拡大増殖前のPBMC試料は、体細胞配列変動を有していなかったが、並行して単離されたマッチするCD8+ T細胞試料は、全細胞画分の3.9%でCHIPに関連するTET2ミスセンス変異を有しており、これらの変動がin vivoでのT細胞集団への変換の間に蓄積され得ることを実証した。単離、活性化および拡大増殖後のこれらの8つの試料の分析からの保留中のデータは、新しい体細胞遺伝的変動の蓄積、および既存のものの拡大増殖に対するCAR-T細胞療法のために必要な製造プロトコールの影響への重要な洞察を提供する。
【0116】
考察
業界として、細胞療法および遺伝子療法は、急速な歩みで開発されており、例えば、2020年には世界中で療法を開発する1,000社を上回る企業が存在し、1,000を上回る臨床試験が進行中であり、150億ドルを上回る資金が業界を支援している(alliancerm.org/wp-content/uploads/2020/08/ARM_1H-Report_-FINAL.pdf)。注目すべきは、著しい進展が、パーキンソン病、糖尿病、黄斑変性症のような障害、ならびにBCL、CLL、AMLおよび多発性骨髄腫のような血液由来がんを処置するために、多能性幹細胞(PSC)に由来する療法の前進において行われた。これらのPSC由来療法の製造は、療法のための有用なエンドポイント細胞製品を達成するために、PSCの生成、拡大増殖、遺伝子操作および分化を必要とする場合が多く、そのすべてのステップは、DNA配列および染色体構造に対する変化の蓄積をもたらし得る。当然ながら、これらの変化は、疾患に対する増加したリスクが付随する場合も多い。注目すべきは、iPSC由来療法のための製造プロセスは、血液に由来する細胞を利用し、その後生成された療法を、血液に戻して送達する。同様に、血液幹細胞移植およびCAR-T療法は、血液から原料を蓄積して、ex vivoで操作し(例えば、拡大増殖、工学的操作、分化)、治療的介入のために血液コンパートメントに戻すことに依拠する。CHIPそれ自体は、加齢関連の現象であり、それによって、DNA配列および染色体構造の変化に関連する疾患リスクは、血液細胞のDNAにおいて固有に蓄積および拡大増殖する。これらの細胞ならびに細胞療法および遺伝子療法製造プロセスが疾患を処置するために血液細胞型を利用すること、移植の間にレシピエントに対して伝達性の疾患リスクに関連する体細胞遺伝子変化が蓄積すること、ならびに遺伝的完全性および遺伝的変動を評価するために使用される現在の標準が、アッセイされる細胞のごく一部に蓄積された遺伝的変動をピックアップすることができない場合が多いことを考えると、主要な出発物質およびこれらの製造ワークフローから得られる治療用細胞製品を、体細胞配列および構造に基づく変化の両方をピックアップすることができる高感度の遺伝子アッセイを用いてスクリーニングする必要がある。
【0117】
iPSC研究の結果は、これらのPSCに基づく細胞療法を生成するために必要な製造プロセスおよび細胞材料が、細胞ドナーの年齢、初代細胞型、およびiPSCを生成するために使用される初期化システムにかかわらず、疾患に関連する有意な遺伝的変動を持ち、蓄積することを実証する。この研究において用いられた遺伝子アッセイおよび分析パイプラインは、疾患リスクに関連する配列および構造に基づく遺伝的変動の両方を検出した。特に、3つの異なる出発iPSC系統における一貫した製造ワークフローの分析は、最終細胞製品になった3つのワークフローのうち2つで、腫瘍形成の可能性に関連する固有の変動(TP53およびCh.20q獲得)を特定した。加えて、クローン番号3におけるTP3配列バリアントおよびクローン番号2における18q CN-LOH構造バリアントは両方とも、3D拡大増殖ステップの間に発生し、エンドポイント細胞製品まで持続した。注目すべきは、分析されたワークフローは、血液特異的な細胞型の開発のためであったが、最終的に腫瘍形成の可能性がないエンドポイント治療用細胞を送達することができなかった2つのワークフローは、血液細胞型に由来したiPSCを利用した。同様に、市販の18のiPSC系統のうち8つは、遺伝的変動に関連する重要な疾患リスクを有し、そのうち、5つは、血液細胞型に由来し、5つは、CHIPに関連する体細胞変動を有していた。そのため、iPSCの生成のための初代細胞材料(例えば、iPSCそれら自体、およびPSC由来のエンドポイント治療用細胞製品)における体細胞配列および構造に基づく変動の特定は、細胞療法製品が、患者に送達される前にこれらの変動および関連するリスクがないことを確実にするために必要であると考えられる。加えて、細胞製造ワークフローの間のこれらの体細胞遺伝的変動についての検出およびモニタリングは、より一貫した、より高い遺伝子品質、およびその結果として、より費用対効果の高い細胞療法製品の開発をもたらすであろうと考えられる。CD34+細胞の拡大増殖の前後、ならびに初代PBMC細胞集団からのT細胞の単離、活性化および拡大増殖前後の分析からの保留中のデータは、追加のサポートを提供し、この種類のモニタリングの必要性を細胞療法製品のための血液幹細胞およびCAR-T製造プロセス、特に、細胞拡大増殖プロトコールに拡大することが予期される。
【0118】
参考文献:
【化1】

【化2】

【化3】
【化4】

【化5】

【誤訳訂正3】
【訂正対象書類名】図面
【訂正対象項目名】全図
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
図1
図2
【国際調査報告】