(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-08
(54)【発明の名称】FL118薬物が酸感受性リンカーに結合された複合体及びそれを用いた免疫複合体
(51)【国際特許分類】
A61K 47/68 20170101AFI20230801BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20230801BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230801BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230801BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20230801BHJP
【FI】
A61K47/68
A61K31/4745
A61K39/395 C
A61K39/395 L
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61P35/00
A61K47/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023503070
(86)(22)【出願日】2021-07-16
(85)【翻訳文提出日】2023-03-15
(86)【国際出願番号】 KR2021009204
(87)【国際公開番号】W WO2022015110
(87)【国際公開日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】10-2020-0088005
(32)【優先日】2020-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0060721
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522040089
【氏名又は名称】ピノットバイオ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン,トゥヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ,チンス
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ヒョニョン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,シニエ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ビョンソン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076DD60
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF70
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA21
4C085AA26
4C085BB01
4C085CC23
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA13
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、FL118薬物が酸感受性リンカーに結合された複合体およびこれを用いた免疫複合体に関するのである。
本発明は、抗体またはその抗原結合部位を含有する断片に酸感受性リンカーを介して式1のFL118薬物が一つ以上結合されており、癌細胞の抗原を標的化する抗原結合部位により癌細胞として標的化した後、癌周辺の酸性雰囲気(pH≦7)で酸感受性リンカーが分解され、式1のFL118薬物が少なくとも一部遊離され、遊離型の式1のFL118薬物は、細胞膜を貫通して細胞内に移動し、式1のFL118薬物は、排出ポンプ(efflux pump)の作用を阻害し、細胞内に遊離型の式1のFL118薬物を濃縮させることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
[式1のFL118薬物]-[酸感受性(acid-sensitive)リンカー]-[抗体またはその抗原結合部位を含有する断片]を含む免疫複合体またはその薬学的に許容可能な塩であって、
抗体またはその抗原結合部位を含有する断片に酸感受性リンカーを介して式1のFL118薬物が一つ以上結合されており、
癌細胞の抗原を標的とする抗原結合部位によって癌細胞として標的化した後、癌周辺の酸性雰囲気(pH≦7)で酸敏感性リンカーが分解され、式1のFL118薬物が少なくとも一部遊離され、遊離型の式1のFL118薬物は、細胞膜を通過して細胞内に移動し、
式1のFL118薬物は、排出ポンプ(efflux pump)の作用を阻害し、細胞内の遊離型の式1のFL118薬物をエンリッチメント(enrichment)させ、
選択的(optionally)に、式1のFL118薬物が結合されている免疫複合体は、細胞内に内在化(internalization)し、リソソーム(lysosomes)から式1のFL118薬物が遊離されることを特徴とする免疫複合体またはその薬学的に許容される塩:
【化1】
【請求項2】
癌細胞の抗原を標的とする抗原結合部位によって癌細胞として標的化した後、癌周辺の酸性雰囲気(pH≦7)で酸敏感性リンカーが分解され、式1のFL118薬物が少なくとも一部遊離され、遊離型の式1のFL118薬物は、癌組織の奥深くまで浸透しながら、細胞膜を通過して細胞内に移動することを特徴とする請求項1に記載の免疫複合体またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項3】
酸感受性リンカー分解時に、遊離型の式1のFL118薬物が放出されるように、式1のFL118薬物と酸感受性リンカーは、炭酸塩またはエステル結合により連結されることを特徴とする請求項1に記載の免疫複合体またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項4】
遊離型の式1のFL118薬物が、細胞内に移動する細胞は、標的化された癌細胞および/またはその周辺細胞であることを特徴とする請求項1に記載の免疫複合体またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項5】
抗体またはその抗原結合部位は、細胞表面の受容体(Receptor)に結合することを特徴とする請求項1に記載の免疫複合体またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項6】
抗体またはその抗原結合部位は、癌表面に選択的に分布する抗原または正常組織にも少数分布する癌細胞過剰発現抗原を標的抗原とすることを特徴とする請求項1に記載の免疫複合体またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項7】
抗体またはその抗原結合部位は、ヒト上皮成長因子受容体(HER/EGFR/ERBB)の一つであるHER2、FolR、PSMAまたはTrop-2を標的化することを特徴とする請求項1に記載の免疫複合体またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項8】
酸感受性リンカーは、以下の式2の化合物に由来することを特徴とする請求項1に記載の免疫複合体またはその薬学的に許容可能な塩:
【化2】
ここで、X
1およびX
2は、それぞれ独立して、-Hまたは-ハロゲンであり;
Yは、-NH-、-NR
A-、またはヌル(null);
Zは、-C
1-C
4アルキル-、-C
3-C
6シクロアルキル-、-(C
1-C
2アルキル)-(C
3-C
6シクロアルキル)-、-(C
3-C
6シクロアルキル)-(C
1-C
2アルキル)-、または-(C
1-C
2アルキル)-(C
3-C
6シクロアルキル)-(C
1-C
2アルキル)-であり;
Wは、-R
B-、-M- -R
B-M-、-M-R
B-または-R
B-M-R
C-であり;
R
A~R
Cは、それぞれ独立して、C
1-C
4アルキルであり;
Mは、
【化3】
であり;および
nは、5~9の整数である。
【請求項9】
前記式2において、
X
1およびX
2は、それぞれ独立して、-Hまたは-ハロゲンであり;
Yは、-NR
A-、またはヌル(null);
Zは、-C
1-C
4アルキル-、-(C
1-C
2アルキル)-(C
3-C
6シクロアルキル)-、または-(C
3-C
6シクロアルキル)-(C
1-C
2アルキル)-であり;
Wは、-R
B-または-R
B-M-R
C-であり;
R
A~R
Cは、それぞれ独立して、C
1-C
4アルキルであり;
Mは、
【化4】
であり;および
nは、5~9の整数である;
請求項8に記載の免疫複合体またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項10】
式1のFL118薬物のアルコール基部位と式2の酸感受性リンカーのアルコール基部位が連結されたことを特徴とする請求項8に記載の免疫複合体またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項11】
[式1のFL118薬物]-[酸感受性リンカー]は、以下の式3~5で表される化合物からなる群から選択されたいずれかに由来することを特徴とする請求項1に記載の免疫複合体またはその薬学的に許容可能な塩:
【化5】
【化6】
;および
【化7】
(ここで、nは、それぞれ独立して、5~9の整数である)。
【請求項12】
[酸感受性リンカー]-[抗体またはその抗原結合部位を含有する断片]の結合は、前記抗体または前記抗原結合断片に含まれたチオール基が酸感受性リンカーのマレイミド基(maleimide)またはマレイン酸ヒドラジド基(maleic hydrazide)に結合されたことを特徴とする請求項1に記載の免疫複合体またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項13】
抗体またはその抗原結合部位は、以下の式6のSN-38の薬物に耐性のある癌細胞を標的化することができることを特徴とする請求項1に記載の免疫複合体またはその薬学的に許容可能な塩:
【化8】
【請求項14】
前記免疫複合体は、平均薬物/抗体比(Drug-to-antibody ratio、DAR)が2~12であることを特徴とする請求項1に記載の免疫複合体またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の免疫複合体またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、癌の予防または治療用薬学的に組成物。
【請求項16】
以下の式1のFL118薬物が以下の式2の酸感受性リンカーに結合された、薬物-リンカー複合体またはその薬学的に許容可能な塩:
【化9】
【化10】
{ここで、X
1およびX
2は、それぞれ独立して、-Hまたは-ハロゲンであり;
Yは、-NH-、-NR
A-、またはヌル(null);
Zは、-C
1-C
4アルキル-、-C
3-C
6シクロアルキル-、-(C
1-C
2アルキル)-(C
3-C
6シクロアルキル)-、-(C
3-C
6シクロアルキル)-(C
1-C
2アルキル)-、または-(C
1-C
2アルキル)-(C
3-C
6シクロアルキル)-(C
1-C
2アルキル)-であり;
Wは、-R
B-、-M- -R
B-M-、-M-R
B-または-R
B-M-R
C-であり;
R
A~R
Cは、それぞれ独立して、C
1-C
4アルキルであり、
Mは、
【化11】
であり;および
nは、5~9の整数である}。
【請求項17】
前記式2において、
X
1およびX
2は、それぞれ独立して、-Hまたは-ハロゲンであり;
Yは、-NR
A-、またはヌル(null);
Zは、-C
1-C
4アルキル-、-(C
1-C
2アルキル)-(C
3-C
6シクロアルキル)-、または-(C
3-C
6シクロアルキル)-(C
1-C
2アルキル)-であり;
Wは、-R
B-または-R
B-M-R
C-であり;
R
A~R
Cは、それぞれ独立して、C
1-C
4アルキルであり;
Mは、
【化12】
であり;および
nは、5~9の整数である;
請求項16に記載の薬物-リンカー複合体またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項18】
酸感受性リンカー分解時に、遊離型の式1のFL118薬物が放出されるように、式1のFL118薬物と酸感受性リンカーは、炭酸塩またはエステル結合により連結されることを特徴とする請求項16に記載の薬物-リンカー複合体またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項19】
式1のFL118薬物のアルコール基部位と式2の酸感受性リンカーのアルコール基部位が連結されることを特徴とする請求項16に記載の薬物-リンカー複合体またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項20】
前記薬物-リンカー複合体は、以下の式3~5で表される化合物からなる群から選択されたいずれかであることを特徴とする請求項16に記載の薬物-リンカー複合体またはその薬学的に許容可能な塩:
【化13】
【化14】
;および
【化15】
(ここで、nは、それぞれ独立して、5~9の整数である)。
【請求項21】
酸性雰囲気(pH≦7)で式2の酸感受性リンカーが分解され、式1のFL118薬物が遊離されることを特徴とする請求項16~20のいずれかであることを特徴とする薬物-リンカー複合体またはそのその薬学的に許容可能な塩。
【請求項22】
(a)請求項16~20のいずれか一項に記載の薬物-リンカー複合体またはその薬学的に許容可能な塩;および
(b)抗体またはその抗原結合部位を含有する断片
を含むが、
抗体またはその抗原結合部位を含有する断片に式2の酸感受性リンカーを介して式1のFL118薬物が一つ以上連結されていることを特徴とする免疫複合体またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項23】
抗体は、トラスツズマブ(trastzumab)、セツキシマブ(cetuximab)、またはサシツズマブ(sacituzumab)であることを特徴とする請求項22に記載の免疫複合体またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項24】
請求項16~20のいずれか一項に記載の薬物-リンカー複合体またはその薬学的に許容可能な塩を用いて、キャリア(Carrier)に式2の酸感受性リンカーを介して式1のFL118薬物が一つ以上結合されることを特徴とするキャリア-薬物複合体(Carrier-Drug Conjugate)の作製方法。
【請求項25】
キャリアは、抗体、リピボディ、および/またはアプタマーであることを特徴とする請求項24に記載のキャリア-薬物複合体の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FL118薬物が酸感受性リンカーに結合された複合体及びこれを用いた免疫複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
抗体-薬物複合体(ADC)は、抗体の高い組織選択性を用いて強い抗癌効果を有するペイロード(Payload)を癌組織のみに選択的に伝達する新薬プラットフォームである。ADCは、pMレベルの低濃度でも癌細胞を死滅させる強力なペイロードを癌組織のみに選択的に伝達し、全身への薬物曝露は最小化し、抗癌効果と安全性を同時に確保することができる。
【0003】
既存のADCの開発は、細胞レベルでpMレベルのIC50値を有する超有毒なペイロード(ultra-toxic payload)の使用に大きく依存してきたが、このような特性を有する薬物の種類は、マイクロチューブリン阻害剤(microtubulin inhibitor)、DNA損傷剤(DNA damaging agent)およびTop-1阻害剤(Top-1 inhibitor)に限定され、さまざまな問題が現れている。これらの薬物をADCとして使用した際にも十分な治療域(therapeutic window)が確保されない場合が多いが、これらの患者が経験する副作用は、ペイロード自体の副作用と同じであるので、安全性が確保されていないペイロードでは優れたADCを開発することが難しい。また、これらの薬剤を使用すると、さまざまな機序により癌への耐性が発現するが、そのような耐性が発現した時に耐性を克服するための新しいペイロードを使用したADCは現在のところ存在しない。
【0004】
つまり、既存の抗癌剤/ペイロードとは差別化された作用機序を有し、十分な効能、耐性克服の可能性を有し、単独で使用した場合でも十分な安全性を備え、広い治療域(therapeutic window)を確保できるようにする新たなADC開発プラットフォームが強く求められている。
【0005】
1970年代からADCを開発して以来、新たな抗原/抗体の発見、ADC用ペイロードの開発、抗体-ペイロードを結合するためのリンカーの開発、均一な品質のための抗体の改善およびCMCルートの開拓など、多くの取り組みが進められている。その結果、現在のほとんどのADCは、第2世代または第3世代のADCプラットフォームを利用して開発されている。
【0006】
米国のGenetech、Seattle Genetics、韓国のレゴーチェム・バイオ等の企業を中心に、様々な癌の治療、特に固形癌の治療に効果的に使用できるADCの開発に多くの努力を重ねてきてはいるものの、治療域(therapeutic window)および/または耐性発現など、非常に重要な未充足ニーズが依然として存在する。
【0007】
ADC開発の初期工程では、使用可能なペイロード条件識別子、諸特性を有するリンカーの識別、単純な結合方式で様々なADC候補物質の開発等が進められ、これを通じてADCに適したペイロード(Calicheamicin、MMAE、PBD等picomolar IC50値を有するsupertoxin)が確認され、Mylotarg、Kadcylaなど第1世代のADC製品が開発された。
【0008】
それ以来、部位特異的コンジュゲーション(site-specific conjugation)を通じてCMC(Chemical、Manufacturing and Control)を改善し、癌細胞でのみ薬物を放出する安定リンカー(stable linker)等を開発し、種々の第2世代のADCが開発されたが、これらのうちの多くは不十分な治療域(therapeutic window)などの問題によって開発に成功していない。これらの失敗から単に強力なペイロードを使用するのではなく、強力な抗癌作用に加えて、単独で使用することができる水準の安全性を確保したペイロードが必要であるという事実が確立された。
【0009】
その後、イミュノメディクス社(Immunomedics)と第一三共社(Daiichi-Sankyo)を中心に、実際、人体への単回投与抗がん剤として十分な治療域(therapeutic window)を確保したペイロードを用いる第3世代のADC開発が進められ、Trodelvy、Enhertuが固形癌対象のADCとしてFDAの承認を得た。
【0010】
[既存のADC(第2世代ADC)の限界:強力な毒素(Toxin)]
既存の開発されたペイロードの多くは、固形癌に適用すると治療域(Therapeutic Window)を確保できないという問題があり、これを克服するための方法として、ペイロードとして強力な毒素を用いて、細胞内に存在する酵素であるカプテシンB(Cathepsin B)によって選択的に化学結合が破壊され、また薬物が放出される超安定(Ultrastable)リンカーシステムを導入している。
【0011】
代表的な超安定リンカーシステムとして、米国のシアトルジェネティクス(Seattle Genetics)社が開発したバリン-シトルリン(Valine-Citrulllin)(Val-Cit)リンカーを使用する。これを用いた代表的なADCには、Adcetris、Polivy、Padcev等がある(
図13)。
【0012】
Val-Citリンカーと対をなすペイロード等は、ベドチン(Vedotin)及び系薬剤として毒性が非常に大きい。大きな毒性の問題を解決するためにVal-Citのような非常に安定なリンカーシステムを導入したが、強力なペイロードの毒性により、依然として治療域(Therapeutic Window)を確保することに限界がある。
【0013】
[第3世代ADCの限界]
第2世代抗癌剤で主に用いられた強力な毒素の代わりに、薬物単独で治療剤として開発される可能性が高い標的抗癌剤をADCのペイロードに導入した新たなADCの抗癌剤を開発し、これらの標的抗癌剤に基づくペイロードの優れた安全性をもとに固形腫瘍治療剤として成功的に開発が進められている(
図14)。
【0014】
図14には、標的抗癌剤としてトポイソメラーゼI(Topoisomerase I)阻害剤であるカンプトテシン(Camptothecin)系化合物をペイロードとして用いたADC(Enhertu(上)、Trodelvy(下))が例示されている。
【0015】
ただし、これら第3世代ADCの場合、既存の2世代ADCが使用していたペイロードに比べて相対的に効力が制限されるペイロードの使用により抗がん効力が制限されたり、または高用量での使用による不便さ、固形癌患者における耐性発現などの問題が発生するなどといったくつかの限界がある。
【0016】
特に、現在使用中の、または開発される多数のADCは、制限された作用機序のみを有するペイロードの使用に焦点を当てているため、治療の選択肢が限られており、耐性発現
の問題に脆弱なため、新たな作用機序及び耐性癌を克服する可能性を持った新たなADCを開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
これらの第2世代、第3世代ADCプラットフォームには、主にペイロードに関連する毒性、効能の欠如、耐性発現などの様々な問題点がある。
【0018】
新しいADCを開発するために、(1)既存ペイロードに比べて同等以上のレベルの優れた抗癌効果、(2)ペイロード自体を薬物として単独で使用しても、人体で安全なレベルの安全性を確保し、ADCの広い治療域(Therapeutic Window)を確保、(3)既存のペイロードが有する耐性獲得機序を克服するなどの特徴を有する新たなペイロードの開発が切実に要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、既存の抗癌剤/ペイロードとは差別化された作用機序を有し、十分な坑癌効果及び耐性克服の可能性を有し、単独使用時でも十分な安全性を保持し、広い治療域(therapeutic window)を確保できるようにする新たなペイロード-リンカー複合体及びそれを用いた新たなADC開発プラットフォームを提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の免疫複合体は、疎水性低分子薬物であって、細胞膜透過性FL118薬物および酸感受性リンカーを組み合わせて使用することにより、抗原-抗体複合体(complex)による内在化(internalization)過程が非効率的であるので、十分な濃度の薬物が細胞内に入らないという問題点及び癌組織の奥深くまで浸透しにくい抗体の問題点を解決することができ、標的細胞だけでなく、周辺細胞にも入るバイスタンダー(by-stander)効果を極大化することができる。
【0021】
本発明の免疫複合体は、第1~3世代ADCの開発過程で確認された問題のうち、ADCに対する耐性の発現と、第3世代ADCで用いられるペイロードの効能が比較的弱いことにより治療域(therapeutic window)が狭い問題を克服することができる。すなわち、本発明の免疫複合体は、様々な耐性克服の機序を有するFL118薬物と酸感受性リンカーを組み合わせて使用することにより、既存のADCペイロードに比べて強力な抗癌効果とin vivoでの安全性とのバランスを取り、最適化された治療域(therapeutic window)を示すことができる。特に、既存のSN-38に基づくADCに伴う不十分な効能および耐性の問題をFL118特有の強力な効力を通じて克服し、FL118に最もよく応答し得る患者群の識別が可能なバイオマーカーを使用して開発を加速化することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】カンプトテシン(Camptothecin)系抗癌剤である:SN-38(左)、トポテカン(Topotecane)(中)、エキサテカン(Exatecan)(右)
【
図2】本発明の免疫複合体における効率的な薬物放出及び耐性克服の機序を示す模式図である。
【
図3】FL118とSN-38のin vitroでの細胞生存率(cell viability)の比較評価結果である。
【
図4】FL118薬物-酸感受性リンカーを含むキャリア-薬物複合体(Carrier-Drug Conjugate)の一例の模式図である。
【
図5a】SEC、HIC、およびLC-MSを用いたDAR4ADCの作製を確認した結果(5a)およびDAR8ADCの作製を確認した結果(5b)である。
【
図5b】SEC、HIC、およびLC-MSを用いたDAR4ADCの作製を確認した結果(5a)およびDAR8ADCの作製を確認した結果(5b)である。
【
図6】実施例5のトラスツズマブ(Trastuzumab)-CL2A-FL118(DAR 8)のJIMT-1細胞株における評価結果である。
【
図7】実施例6のトラスツズマブ(Trastuzumab)-CL2A-FL118(DAR 4)のJIMT-1細胞株における評価結果である。
【
図8】実施例5のトラスツズマブ(Trastuzumab)-CL2A-FL118(DAR 8)のJIMT-1 Xenograftモデルにおける評価結果である。トラスツズマブ(Trastuzumab)-FL118ADCは、Kadcyla-resistant JIMT-1(Her2 over-expression)In Vivo Xenograftモデルにおいて優れた効能を発揮する。
【
図9】実施例8のセツキシマブ(Cetumximab)-CL2A-FL118(DAR 8)のMDA-MB-468細胞株における評価結果である.
【
図10】実施例8のセツキシマブ(Cetuximab)-CL2A-FL118(DAR 8)のMDA-MB-468 Xenograftモデルにおける評価結果である。セツキシマブ(Cetuximab)-FL118 ADCは、MDA-MB-468(EGFR over-expression) In Vivo Xenograftモデルにおいて優れた効能を発揮する。
【
図11】実施例9のサシツズマブ(sacituzumab)-CL2A-FL118(DAR 8)のMDA-MB-468細胞株における評価である。
【
図12】実施例9のサシツズマブ(sacituzumab)-CL2A-FL118(DAR 8)のMDA-MB-468 XenograftモデルにおいてTrodelvyと比較評価結果である。サシツズマブ(sacituzumab)-FL118 ADCは、MDA-MB-468(TROP2 over-expression)In Vivo Xenograftモデルにおいて承認されたTROP2標的ADC Trodelvyに比べて卓越した効果を発揮する。
【
図13】Val-Citリンカーを使用して開発されたADCである:Adcetris(上)、Polivy(中)、Padcev(下)。
【
図14】標的抗癌剤としてトポイソメラーゼI(Topoisomerase I)阻害剤であるカンプトテシン(Camptothecin)系化合物をペイロードとして用いたADCの模式図である:Enhertu(上)、rodelvy(下)
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の第1態様は、[式1のFL118薬物]-[酸感受性(acid-sensitive)リンカー]-[抗体又はその抗原結合部位を含有する断片]を含む免疫複合体またはその薬学的に許容可能な塩であって、抗体又はその抗原結合部位を含有する断片に酸感受性リンカーを介して式1のFL118薬物が一つ以上結合されており、癌細胞の抗原を標的とする抗原結合部位によって癌細胞として標的化した後、癌周辺の酸性雰囲気(pH≦7)で酸感受性リンカーが分解され、式1のFL118薬物が少なくとも一部が遊離され、遊離型の式1のFL118薬物は、細胞膜を貫通して細胞内に移動し、式1のFL118薬物は、排出ポンプ(efflux pump)の作用を抑制し、細胞内の遊離型の式1のFL118薬物をエンリッチメント(enrichment)させ、選択的(optionally)に式1のFL118薬物が結合されている免疫複合体は、細胞内に内在化(internalization)し、リソソーム(lysosomes)から式1のFL118薬物が遊離されることを特徴とする免疫複合体またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0024】
【0025】
本発明の第2態様は、第1態様の免疫複合体またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、癌の予防または治療用医薬組成物を提供する。
【0026】
本発明の第3態様は、式1のFL118薬物が以下の式2の酸感受性リンカーに結合された、薬物-リンカー複合体またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0027】
本発明の第4態様は、(a)第3態様の薬物-リンカー複合体またはその薬学的に許容される塩;および(b)抗体又はその抗原結合部位を含有する断片を含み、抗体またはその抗原結合部位を含有する断片に式2の酸感受性リンカーを介して式1のFL118薬物が一つ以上結合されていることを特徴とする免疫複合体またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0028】
本発明の第5態様は、第1態様の薬物-リンカー複合体またはその薬学的に許容される塩を使用して、キャリア(carrier)に式2の酸感受性リンカーを介して式1のFL118薬物を1つ以上結合させることを特徴とするキャリア-薬物複合体(Carrier-Drug Conjugate)の作製方法を提供する。
【0029】
以下、本発明を説明する。
本発明は、[式1のFL118薬物]-[酸感受性(acid-sensitive)リンカー]-[抗体又はその抗原結合部位を含有する断片]を含む免疫複合体に関するものであって、
(i)抗体又はその抗原結合部位を含有する断片に酸感受性リンカーを介して式1のFL118薬物が一つ以上結合されており、
(ii)癌細胞の抗原を標的とする抗原結合部位により癌細胞として標的化した後、癌周辺の酸性雰囲気(pH≦7)において、酸感受性リンカーが分解され、式1のFL118薬物が少なくとも一部遊離し、遊離型の式1のFL118薬物は細胞膜を貫通して細胞内に移動し、
(iii)式1のFL118薬物は、排出ポンプ(efflux pump)の作用を阻害し、細胞内の遊離型の式1のFL118薬物をエンリッチメント(enrichment)させ、
(iv)選択的(optionally)に、式1のFL118薬物が結合されている免疫複合体は、細胞内に内在化(internalization)し、リソソーム(lysosomes)から式1のFL118薬物が遊離されることを特徴とする(
図2)。
【0030】
図2に示すように、本発明の免疫複合体は、酸感受性リンカーを用いることにより、抗原結合後に癌細胞内だけでなく、癌組織周辺においても効率的に薬物を放出し、ADC処理に関連する耐性機序を克服することができる。
【0031】
また、本発明の免疫複合体から遊離された式1のFL118薬物は、排出ポンプ(ef
flux pump)であるABCG2により細胞外に排出されず、多様な抗アポトーシスタンパク質(anti-apoptic protein)による耐性を遮断することができる。
【0032】
遊離状態では、式1のFL118薬物は、十分に確立された抗癌標的であるトポイソメラーゼI(Topoisomerase I)を直接標的とし、耐性機序に関与する耐性タンパク質であるサバイビン(Survivin)などBclファミリー(Bcl family)を同時に阻害し、排出ポンプ(efflux pump)の作用を阻害する三重標的抗癌剤である。
【0033】
ADCが効率的に機能するためには、単純にin vitroで細胞対象に対する強力な抗原選択的細胞毒性を最大化するだけでは不十分であり、in vivoないし実際の患者において癌組織にうまく侵入し、効率的に薬物を送達できなければならない。
【0034】
本発明の免疫複合体は、癌細胞の抗原を標的とする抗原結合部位によって癌細胞として標的化した後、癌周辺の酸性雰囲気(pH≦7)で酸敏感性リンカーが分解され、式1のFL118薬物が少なくとも一部遊離され、遊離型の式1のFL118薬物は、疎水性低分子であるため、癌組織の奥深くまで浸透しながら、細胞膜を通過して細胞内に移動することができる。
【0035】
したがって、本発明の免疫複合体は、癌周辺の酸性雰囲気(pH≦7)で分解される酸感受性リンカーを使用することにより、癌周辺の腫瘍微小環境において薬物を迅速に放出することができ、遊離型のFL118薬物は分子量が低く、抗体とは異なり、癌組織への浸透力が高いので、癌組織の奥深くまで抗体が浸透しにくいという既存のADCの問題点を解決することができる。
【0036】
したがって、遊離型の式1のFL118薬物が細胞内へ移動する細胞は、標的化された癌細胞および/または周辺細胞であってもよい。
【0037】
また、式1のFL118薬物は、(a)細胞膜を透過することができる疎水性の低分子であり(b)排出ポンプ(efflux pump)によって細胞外へ排出されないので、癌周辺細胞外リンカー分解によって本発明の免疫複合体から遊離したFL118薬物は、癌組織に速く蓄積し、長時間高濃度を維持することが可能であり、細胞膜を貫通して細胞内で細胞毒性を発揮し、アポトーシスを起こした後、放出され、連続して周辺細胞にも細胞膜を貫通して細胞内へ移動して作用することができる。
【0038】
つまり、本発明の薬物-リンカー複合体は、
(i)酸性雰囲気(pH≦7)である癌周辺の腫瘍微小環境において細胞膜を貫通することができ、細胞内での役割を果たすことができる疎水性低分子薬物を遊離させた後、多量の遊離型疎水性低分子薬物を細胞内に導入および/または組織の奥深くまで浸透させるために、式2のCL2Aリンカーのような酸感受性(acid-sensitive)リンカーを用いる点;および
(ii)酸性雰囲気(pH≦7)である癌周辺の腫瘍微小環境において酸感受性リンカーが分解により遊離された大量の遊離型薬物が細胞膜を貫通して細胞内へ移動し、細胞内高濃縮(enrichment)されたため、細胞膜を貫通することができると同時に排出ポンプ(efflux pump)の作用を阻害する疎水性低分子薬物である式1のFL118薬物を使用した点を特徴としており、
これらの組み合わせの使用によりFL118薬物-酸感受性リンカーの有機的な作用機序を活用すると点がもう一つの特徴である。
【0039】
酸性雰囲気(pH≦7)で分解され、酸感受性リンカー分解時に、遊離型の式1のFL118薬物が放出されるように、式1のFL118薬物と酸感受性リンカーは、炭酸塩またはエステル結合により連結されることが好ましい(
図4)。
【0040】
本発明において、[酸感受性リンカー]-[抗体又はその抗原結合部位を含有する断片]の結合は、前記抗体またはその抗原結合断片に含まれたチオール基が酸感受性(acid-sensitive)リンカーのマレイミド基(maleimide)またはマレイン酸ヒドラジド基(maleic hydrazide)に反応式1の「クリック」反応によって結合されたものであってもよい。
【0041】
【0042】
また、本発明は、FL118薬物が様々な酸感受性リンカーと結合されている薬物-リンカー複合体を提供し、これを用いて多様な酸感受性リンカーを介してFL118薬物が様々なキャリア(carrier)に連結されたキャリア-薬物複合体(Carrier-Drug Conjugate)を提供する。
【0043】
さらに、本発明は、上述した本発明の薬物-リンカー複合体またはその薬学的に許容される塩を用い、キャリア(carrier)に式2の酸感受性リンカーを介して式1のFL118薬物を1つ以上結合させることを特徴とするキャリア-薬物複合体(Carrier-Drug Conjugate)の作製方法も提供する。
【0044】
本発明による薬物-リンカー複合体を用いてキャリア(carrier)に結合されたキャリア-薬物複合体(Carrier-Drug Conjugate)の構造が
図4に例示されている。
【0045】
[酸感受性リンカーを介して連結されるFL118薬物の競争上の優位性]
本発明の免疫複合体は、癌細胞の抗原を標的とする抗原結合部位によって癌細胞として標的化した後、癌周辺の酸性雰囲気(pH≦7)で主におよび/または血中内で一部酸感受性が分解されるので、細胞外で始まる遊離型の式1のFL118薬物の作用機序による抗癌効果および安定性の問題面で、遊離型の式1のFL118薬物の競合上の優位性を検討してみると、以下の通りである。
【0046】
式1のFL118薬物は、強力なトポイソメラーゼI(Topoisomerase I)阻害剤として既存の商用化されたTop1阻害剤であるSN-38、トポテカン(Topotecan)、エキサテカン(Exatecan)等と同様のカンプトテシン(Camptothecin)母核構造を有するが(
図1)、単独で投与した際にも、多様な癌細胞モデルおよび動物モデルにおいてSN-38に比べて差別化された抗癌効果と優れた安定性を備え、広い治療域(therapeutic window)を確保した抗癌
剤である。
【0047】
具体的には、FL118薬物は、癌細胞においてSN-38と同等以上のレベルのTop1阻害効果を有し、様々な癌細胞株において、SN-38に比べて5~20倍強力な、すなわち低レベルのIC
50値で細胞毒性(Cytotoxicity)を示し(
図3)、様々な癌腫に由来する140個の細胞株に対する評価結果においても、大部分の癌細胞に対して<100nMのIC
50を示す非常に強力な抗がん効果を示している。
【0048】
FL118薬物は、SN-38/エキサテカン(Exatecan)のさまざまな耐性作用機序を克服することができる。SN-38などのカンプトテシン系抗がん剤は、ABCG2トランスポーター(ABCG2 Transporter)の過剰発現によって薬物が細胞外に排出される方式の耐性がみられるが、FL118薬物は、ABCG2トランスポーター(ABCG2 Transporter)に影響されないので、これによる耐性の克服が可能である。
【0049】
一方、カンプトテシン(Camptothecin)系抗癌剤の場合、患者に用いると、最初は優れた抗癌反応を示すが、Top1遺伝子のEpigenetic Silencingと癌細胞のTop2 Dependenceにより、これらの薬物に対する強力な耐性が出現する。その反面、FL118薬物は、Top1がEpigenetic SilencingまたはKnock-outによって発現されていない癌細胞株のXenograftモデルにおいて強力な効能を示した。
【0050】
FL118薬物は、抗がん剤耐性のもう一つの主な原因である抗アポトーシスタンパク質(anti-apoptic protein)(Survivin、cIAP2、XIAPなど)の発現を低濃度で強力に阻害することにより、耐性の発現を遮断することができる。
【0051】
FL118薬物は、標的化ドラッグデリバリー(targeted drug delivery)(例えば、キャリア-薬物複合体(Carrier-drug Conjugate))の適用に最適なPK/safety profileを有している。FL118薬物を単独で全身投与した時、血液中に迅速に代謝/排出されて低濃度のみを示すが、癌組織には投与直後から速やかに蓄積され、長時間高濃度を維持する。例えば、ADCの適用時、腫瘍組織と正常組織との間の最大の選択性を保証する。
【0052】
FL118薬物は、ラットおよびビーグル犬でのGLP毒性試験を通じて、優れた安全性が確保され、治療域(Therapeutic Window)を確保したADC用ペイロードに適している。
【0053】
FL118薬物は、種々の癌細胞株Xenograftモデルにおいて、SN-38と比較して優れた効能を示した。
【0054】
FL118薬物は、SN-38と同様の量でin vivo投与時に、大腸癌/頭頸部癌/膵臓癌などにおいて、SN-38に対して強力な腫瘍退縮(tumor regression)効力を示した。
【0055】
FL118薬物は、tumor xenograftにおいてSN-38耐性を誘導した後、FL118を投与した時にも強力な抗癌効果を保有した。FL118薬物のSN-38/エキサテカン(Exatecan)に対する様々な耐性機序を克服する可能性がin vivoで確認された。
【0056】
つまり、[式1のFL118薬物]-[酸感受性(acid-sensitive)リンカー]の複合体において、FL118薬物は以下のような点でペイロードとして競争上の優位を有する:
(i)十分に検証された抗癌剤の標的であるTop1以外に別の抗癌標的であるDDX5、UBE2TおよびUSP2aを選択的に阻害/分解することにより、強力な坑癌効果を生み出し;
(ii)SN-38に対して5~10倍強力な細胞毒性(Cellular Cytotoxicity)を示し、エキサテカン(Exatecan)に対して同等以上の強力な細胞傷害性を示し、ADCおよび/またはその他の薬物複合体として十分な効果を発揮できる強力な薬効を確保することができ;
(iii)SN-38およびエキサテカン(Exatecan)とは異なり、ABCG2及びP-GP基質(Substrate)ではないため、これらのトランスポータータンパク質の過剰発現による耐性機序の回避が可能であり;
(iv)Top 1阻害剤に対する耐性発現の主要な機序であるTop1のEpigenetic Silencing/Top2のOver-expressionが起こった癌の動物モデルにおいて優れた効力を発揮し;
(v)ほとんどの癌に共通の耐性発現の機序である抗アポトーシスタンパク質(anti-apoptic protein)の過剰発現を根本的に遮断することにより、耐性を回避することが可能であり;
(vi)患者における抗癌反応を予測するバイオマーカ(DDX5、K-ras、p53)、コンパニオン診断技術などが既に確立されており、カスタマイズされたバイオマーカーの確保することで、コンパニオン診断による個別化された治療が可能であり、特に、予後不良なp53/K-ras突然変異癌細胞における強力な効力を示す。
【0057】
特に、式1のFL118薬物は、(i)耐性タンパク質であるサバイビン(Survivin)などBclファミリー(Bcl family)を同時に阻害し/阻害したり、(ii)排出ポンプ(efflux pump)の作用を阻害する付加的な作用機序を介して、主な薬物標的modulationの効能を極大化することができる。
【0058】
すなわち、本発明によるキャリアに酸感受性リンカーによって結合されるFL118薬物は、1つの薬物で1つの薬剤標的を標的化し、治療効果が制限される既存の薬物開発方式から脱却し、共に制御が必要な様々な薬物標的を同時に標的化することによって、優れた治療効果を得る多重薬理学(Well-designed polypharmacology)に基づくアプローチ方法に基づいて選定されたものであって、既存の治療剤からは明らかな治療効果が示されなかった難治性疾患を治療することができる。
【0059】
また、再発性/耐性癌は、1つの薬剤標的の活性を調節するだけでは十分な効果が得られず、同時に不特定多数の薬剤標的を標的とする場合、安全性を保証できないという問題があったが、本発明によるキャリアに酸感受性リンカーによって結合されたFL118薬物は、適切に選択された2以上の薬剤標的を活用し、効力面では相乗効果を示し、それと同時に十分な安全性を確保することができる。
【0060】
[FL118薬物が酸感受性リンカーを介して結合された免疫複合体の競争上の優位性]
本発明に係る免疫複合体は、排出ポンプ(efflux pump)の作用を阻害するFL118薬物を酸感受性リンカーにより結合して用いることにより、Enhertu、Trodelvyに使用される構造の類似したカンプトテシン(Camptothecin)系抗がん剤に比べて前述したFL118薬物の競争上の優位性が反映され、現在開発された第3世代ADC(Enhertu、Trodelvy)と差別化される耐性克服及びより広い治療域(therapeutic window)を確保することができる。
【0061】
特に、本発明に係る免疫複合体は、FL118薬物を通じて検証された腫瘍標的(tumor target)であるトポイソメラーゼI(Topoisomerase I)の阻害に加えて、癌耐性誘導タンパク質であるDDX5、UBE2T、USP2aのさらなる阻害によって強力な耐性を克服する効果を示し得る。したがって、本発明に係る免疫複合体は、Trop-2/CEACAM-5など既存のSN-38に基づくADCが成功的に開発される分野において、耐性克服用ADCとして使用されることができる。
【0062】
つまり、Trop-2-SN-38ADCの場合、現在、TNBC、Bladder、Gastric cancerなど、数多くの癌腫において成功的に開発されているが、依然、SN-38の耐性問題(Drug efflux transporter過剰発現、epigenetic silencing of Top1、抗アポトーシスタンパク質の増加(anti-apoptic protein increase等)は残存しており、本発明に係る[式1のFL118薬物]-[酸感受性(acid-sensitive)リンカー]-[抗体又はその抗原結合部位を含有する断片]を含む免疫複合体を活用すれば、前記のような問題を克服することができる。
【0063】
本発明に係る免疫複合体は、DDX5、K-ras、p53など関連バイオマーカーを活用し、Trop-2、CEACAM-5など抗原(antigen)発現患者群の中から最適の応答患者群を識別し、最適の治療反応性を確保することができる。
【0064】
[様々なキャリア-薬物複合体(Carrier-Drug Conjugate)用ペイロード]
FL118薬物が、下記(1)~(5)の特性を全て満たし、本発明は、FL118薬物を様々なキャリア-薬物複合体(Carrier-Drug Conjugate)用ペイロードとして選定したものである:
(1)実際の同系列の薬物のうち、エキサテカン(Exatecan)、SN-38等がADC用ペイロードとして開発されている;
(2)臨床において効能/安全性が検証された抗がん機序であるトポイソメラーゼI(Topoisomerase I)阻害剤(Irinotecan、Topotecanなど)を活用したものであり、トポイソメラーゼI阻害剤は、臨床において大腸癌、肺癌、乳癌、卵巣癌など様々な難治性固形癌において優れた抗癌効果が実証された;
(3)既存のカンプトテシン(Camptothecin)系薬物のうち、ペイロード対象の耐性機序の多くを克服し、耐性/再発性癌における効能を確保する;
(4)単独投与した場合でも抗癌効果および安全性の両方を確保できる広い治療域(Therapeutic window)を確保している薬物である;および
(5)癌細胞では長期的癌組織に留まるが、血中に放出されると急速に排除されるPK
profileを有しているので、ADCのペイロードとして使用する時、より広い治療域(Therapeutic window)を確保することができ、癌細胞の周辺でADCから遊離されても安定である。
【0065】
[効率的薬物送達が可能なリンカー技術]
ADCにおいて一般的に使用されるリンカーとしては、酸に不安定な(acid-labile)ヒドラゾン(hydrazones)、protease-labileなペプチド(peptides)、そして還元剤(reducing agent)に敏感なジスルフィド(disulfides)がある。また切断されない、いわゆる「切断不可能な(non-cleavable)」チオエーテル(thioether)リンカーADCとして使用されている。
【0066】
既存のMMAE、Calicheamicin、PBDなどスーパートキシン(sup
er toxin)を活用したADCの場合、薬物が癌組織に到達する前に血中から分離されることを最小限に抑えることを目標とする安定したリンカー(stable linker)システムを活用(第2世代ADCの特徴)した。
【0067】
ほとんどの第2世代ADCが癌細胞にて機能する原理は、第1工程でADCを構成する抗体部分が癌細胞において過剰発現する抗原に結合し、第2工程で、抗原-抗体反応により癌細胞の表面において抗原に結合されたADCがエンドソームとリソソームを経て、癌細部の内部に輸送され、第三工程で、リソソームにおいて抗原-抗体部分が分解され、酵素(カテプシンB)薬が放出され、最後の工程で、癌細胞内で放出された薬物によって癌細胞が死滅する。
【0068】
様々な固形癌に選択的に使用することができる新規なADCを開発するためには、既存のADCの薬物送達効率を凌駕するリンカーシステムの活用が必須である。既に確立された薬物標的であるTrop-2、Her2、Folate Receptor等を超えて、新しい抗原が対象のADCを開発するためには、CEACAM-5などSlow Internalizing抗原および/またはNY-ESO-1/HLA Complexなど癌特異抗原に対するADCの開発が行われるべきであるが、既存のVal-Cit又はMAC-glucuronide Linkerシステムの制限された薬物送達効率では十分な量の薬物を送達することが困難である。
【0069】
特にCEACAM-5等の抗原に対して効率的な薬物送達をするためには、血中および/または正常組織の周辺環境では抗体-薬物結合が安定性を維持するが、腫瘍微小環境等、癌細胞周辺環境では薬物を速やかに放出する特性が必要である。
【0070】
癌周辺の腫瘍微小環境においても速やかに薬物を放出できる場合には、ADC uptake速度に限界のあるいくつかの抗原(代表的には、CEACAM-5、各種Cancer Specific antigen-HLA Complexなど)の標的化にも有利に使用することができる。
【0071】
さらに、FL118薬物は、単独で使用した時でも優れた治療域(Therapeutic Window)を有しているので、FL118薬物を用いた免疫複合体は、FL118薬物の血中分離を最小化する安定性よりは、一次的に癌組織に達してから迅速で効率的に薬物を送達するRelease Profileがリンカーにより強く求められる。
【0072】
したがって、本発明で使用される酸感受性リンカーは、癌周辺の酸性雰囲気(pH≦7)で分解されるものであって、遊離型の式1のFL118薬物が疎水性低分子であるため、癌組織の奥深くまで浸透しながら細胞膜を貫通して細胞内に移動できるという点を活用して選定されたものである。
【0073】
本発明によれば、酸感受性リンカーを介して式1のFL118薬物が結合された抗体は、第2世代ADCが癌細胞で作動する第一工程と同様に癌細胞の表面に過剰発現された抗原に抗体が結合するが、一部は第2世代ADCと同様に細胞内の処理工程を経て、それ以外の大部分は、癌細胞周辺の低いpHによって薬物を放出することができる。それから、癌組職から放出された薬物は、拡散によって癌細胞の内部に移動し、エンドソーム、リソソームを経ないだけでなく酵素(カプテシンB(Cathepsin B))反応なしに直ちに癌細胞に機能してアポトーシスを誘導する。このため酵素反応によってのみ薬物放出が可能な第2世代ADCと比較すると、癌細胞の抗原選択性は同じであるが、pH感受性リンカーを用いて薬物放出および癌細胞内への伝達効率を極大化させることができることが本発明の免疫複合体の主要特徴である。
【0074】
本発明の[式1のFL118薬物]-[酸感受性リンカー]は、酸感受性リンカーを分解する時に遊離型の式1のFL118薬物が放出されるように、式1のFL118薬物と酸感受性リンカーは、炭酸塩又はエステル結合により連結されることが好ましい。
【0075】
一般に、加水分解に関連してエステルおよび炭酸塩の結合に比べて、カルバメート結合(Carbamate bonds)に優れた薬物リンカーの安定性を提供する。しかし、本発明は、FL118薬物が癌細胞の酸性雰囲気(pH)で癌細胞周辺の細胞外および細胞内の両方で薬物リンカーから分離可能に設計するために、カルバメート結合(Carbamate bonds)の代わり、不安定なエステル結合又は炭酸結合(carbonate bonds)を使用することを特徴とする。
【0076】
血液は、pHが7.3~7.4として一定に保たれる。したがって、血液中で酸感受性リンカーからFL118薬物は切断されず、切断されても血清の中性pHにおいてFL118薬物のADCからの放出速度は、酸性雰囲気の腫瘍組織においてよりも一層低減される。
【0077】
ヒトとは異なり、マウス血漿は、高レベルのエステラーゼ活性(esterase activity)を含み、エステルおよび炭酸塩官能基を容易に切断するため、実施例12のマウスモデル実験では問題となり得るにもかかわらず、FL118薬物含有ADCは、血中FL118が分離放出される時、正常な細胞への攻撃による体重減少などの副作用がないことが確認された(実施例12)。
【0078】
既存のFDAから承認されたADCのTrodelvyに使用されるリンカーのCL2Aは、(i)作製後の保存の安定性、(ii)投与時、血中での安定性(血漿(Plasma)中に遊離ペイロード露出がほとんどない)、(iii)癌組織におけるペイロードの速放性などの特性を全て満たすリンカーである。
【0079】
本発明で使用される酸感受性リンカーは、既にTrodelvyおよびIMMU-130等の成功的な開発により、カンプトテシン(Camptothecin)系化合物のADCの開発に成功的に適用できることが立証されたCL2Aリンカーを活用することができ、FL118薬物を癌組織に選択的、効率的に送達するように下記化学式2のように設計することができる。すなわち、本発明において、酸感受性リンカーは、下記の化学式2の化合物に由来するものであってもよい:
【化3】
ここで、X
1およびX
2は、それぞれ独立して、-Hまたは-ハロゲンであり;
Yは、-NH-、-NR
A-、またはヌル(null);
Zは、-C
1-C
4アルキル-、-C
3-C
6シクロアルキル-、-(C
1-C
2アルキル)-(C
3-C
6シクロアルキル)-、-(C
3-C
6シクロアルキル)-(C
1-C
2アルキル)-、または-(C
1-C
2アルキル)-(C
3-C
6シクロアルキル)-(C
1-C
2アルキル)-であり;
Wは、-R
B-、-M- -R
B-M-、-M-R
B-または-R
B-M-R
C-であり;
R
A~R
Cは、それぞれ独立して、C
1-C
4アルキルであり;
Mは、
【化4】
であり;および
nは、5~9の整数である。
【0080】
本発明において、リンカーの長さ、すなわち、前記式2において、nは5~9の整数であってもよく、具体的にはnは6~8の整数であってもよく、より具体的には、nは7であってもよいが、これらに限定されるものではない。前記範囲を外れる場合であっても、リンカーの長さの変化による格別な効果の差がない場合には、当然、すべて本発明の均等範囲内に含まれる。
【0081】
薬物の溶解度は、薬物とキャリアとの間にポリエチレングリコール(PEG)スペーサーを配置することによって向上させることができるので、式2のリンカーは限られた数(n=5~9)のPEGモノマーを含む低分子量PEG部分を含む。
【0082】
式2の酸感受性リンカーは、ターゲッティング(Targeting)対象、ペイロード(Payload)、キャリア(Carrier)の特性に応じて最適化可能なカスタマイズリンカーである。
【0083】
式1のFL118薬物は、キャリア-薬物複合体を作製するために多様なリンカーと付着しやすい部位(site)を有する。例えば、式1の薬物のアルコール基部位をリンカーとの付着部位(site)として使用することができる。
【0084】
したがって、本発明において、[式1のFL118薬物]-[酸感受性リンカー]は、式1のFL118薬物のアルコール基部位と式2の酸感受性リンカーのアルコール基部位が連結されたものであってもよい。
【0085】
実験により、FL118薬物-酸感受性リンカーの様々な複合体(Conjugate)がpH7.4および/または血漿条件では安定(Stable)しているが、Tumor Lysosome条件下(pH4.5及びタンパク質分解酵素(Proteolytic Enzyme))では薬物を容易に放出することが確認され、現在、FDAから承認されたADCに使用されるリンカーシステムであるCL2Aリンカーを使用して、FL118を様々な抗体に付着することができることが確認された。
【0086】
また、部位特異的コンジュゲーション(site-specific conjugation)を介してDAR2であるFL118ADCを容易に作製することができる方法を確保した。抗体の鎖間S-S結合(Interchain S-S bond)の部分還元およびコンジュゲーション(conjugation)を介してDAR4および8のA
DCを作製することができる方法を確保した(
図5)。
【0087】
得られたADCに対する安定性を評価しており、Re-constitutionが可能な凍結乾燥粉末形態または溶液として保管する際には低温の条件下で安定的に保管できることが確認された。
【0088】
得られたDAR2、4、8のADCの各々は、元の抗体と同様のレベルの抗原結合親和性(Binding Affinity)を保持することが確認された。
【0089】
本発明において、〔式1のFL118薬物]-[酸感受性リンカー]複合体は、以下の式3~5で表される化合物からなる群から選択されたいずれか一つであることができる。
【0090】
【化5】
【化6】
【化7】
(ここで、nは、それぞれ独立して、5~9の整数である)。
【0091】
薬物送達の効率を改善させるために、本発明の酸感受性リンカーは、部位特異的コンジュゲーション(site-specific conjugation)の欠点とされている低いDARの問題を克服できるmultivalent linkerシステムを開発して適用し、1個のattachment siteに2~3個のペイロードを付着する方式で部位特異的コンジュゲーション(site-specific conjugation)時にもDAR4-12のhigh DAR ADCを作製することができる方法を確保することができる。
【0092】
これのために、本発明では、式4および5に例示するようなBridgeable Linkerシステムをリンカーとして使用することができる。
【0093】
このBridgeable Linkerシステムは、CL2Aリンカーシステムの最大の長所である、癌組織でペイロードの速放出特性をそのまま維持しながらDAR4のADCを容易に作製することができるように、CMCの効率を高め、工程を単純化させることができる。別途抗体engineeringを行わず、DAR4のsite-specific抗体-薬物複合体を作製することができる。抗体内に存在するジスルフィド-S-S-(disulfide-S-S-)を還元させると2個のチオール(-SH)(Thiol(-SH))が形成され、このように生成されたチオールは、新しいbridgeable linker-FL118化合物と2:1で複合体(conjugate)を形成するので、一般的な抗体内部の4個のジスルフィドを全部反応させる方法でDAR4の抗体-薬物複合体を単一のproductとして容易に作製することができる。
【0094】
[免疫複合体]
本発明において「免疫複合体」とは、抗体またはその抗原結合断片に細胞毒性薬物-リンカー複合体が結合した複合体を意味する。
【0095】
抗体-薬物複合体(ADC)は、免疫複合体の一例であるので、本発明においてADCに対する説明および免疫複合体についての説明は、互いに混用して使用することができる。
【0096】
本発明において、用語「薬物-リンカー複合体」は、免疫複合体又はキャリア-薬物複
合体(Carrier-Drug Conjugate)を作製するための材料であって、抗体、その抗原結合性部位を含有する断片又はキャリアが連結されていないことを意味し、目的に応じて、任意の抗体、その抗原結合部位を含有する断片、またはキャリアと結合して免疫複合体またはキャリア-薬物複合体(Carrier-Drug Conjugate)として使用することができる。
【0097】
前記免疫複合体は、in vivo投与される場合、その一構成である抗体またはその抗原結合部位を含有する断片が標的とする抗原に結合した後に、薬物を放出することにより標的細胞および/または周辺細胞に薬物が作用するようにし、標的薬物として優れた薬効と減少した副作用が期待される。
【0098】
免疫複合体の効能において重要な影響を与える要素は、特に、(1)薬効(drug potency)、(2)薬物リンカーの安定性(drug linker stability)、(3)効率的な標的薬物放出(efficient on-target drug release)などがある。効果は多様な要素によって複合的に影響されるので、各要素について知られた事実のみに基づいてこれらの組合せである免疫複合体の効果を予測することは非常に困難である。
【0099】
内在化(internalization)された後に薬物を放出するように設計された免疫複合体は、内在化プロセスが非効率的である場合、十分な濃度の活性薬物が細胞内部に伝達されない問題点があり、疎水性薬物を細胞毒性薬として採択しても、周辺細胞に対するバイスタンダー(by-stander) cell-killing現象を期待することは難いという短所を有する。
【0100】
このような問題点を解決するために、本発明の免疫複合体は、
(i)癌周辺の腫瘍微小環境(pH≦7)において細胞膜を貫通することができ、細胞内部で役割を果たすことができる疎水性薬物を遊離させた後、遊離型の多量の疎水性薬物を細胞内に導入させるため、酸感受性リンカー(acid-sensitive)を使用し;
(ii)癌細胞周辺の酸性雰囲気(pH≦7)で酸感受性リンカーが分解されて薬物が遊離され、多量の遊離型の薬物が細胞膜を貫通して細胞内に高エンリッチメントさせるため、細胞膜を貫通できると同時に排出ポンプ(efflux pump)の作用を抑制する疎水性薬物である式1のFL118薬物を使用したことを特徴とする(
図2)。
【0101】
FL118薬物は、トポイソメラーゼI阻害剤であって、癌細胞に対する細胞毒性を示すことができるが、これを用いて免疫複合体を作製した例は、今まで報告されたことがない。
【0102】
式1のFL118薬物は、(a)細胞膜を透過することができる疎水性低分子であり、(b)排出ポンプ(efflux pump)を介して細胞外へ流出されないので、癌組織に速く蓄積され、長時間高濃度を維持することが可能であり、細胞内部で濃縮および細胞毒性を発揮し、アポトーシスを起こした後、排出されて連続して周辺細胞にも細胞膜を貫通して細胞内に移動して作用することができる。
【0103】
本発明の免疫複合体は、癌細胞の抗原を標的とする抗原結合部位によって癌細胞で標的化した後、癌周辺の酸性雰囲気(pH≦7)で主におよび/または、血中内で一部の酸感受性リンカーが分解され、遊離型の式1のFL118薬物の作用機序が主に細胞外から始まるから、前述した優れた抗がん効果および安定性を発揮するのは、実験を通じて結果を確認するまでは予測ができなかったことは驚くべき結果である。
【0104】
式1のFL118薬物は、(4S)-4-エチル-4-ヒドロキシ-8,9-メチレンジオキシ-1H-ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-3,14(4H,12H)-ジオンとも命名(PubChem CID 72403)される。
【0105】
これに制限されるものではないが、前記式1の化合物にC1-3アルキル、ヒドロキシ、ハロゲン、アミン基等の単純な官能基を付加する、またはすでに存在するヒドロキシ、エチル、オキソ官能基を他の官能基に置換または除去しても、本発明の免疫複合体と同等の効力を示す限り、本発明の均等範囲に含まれることは自明である。
【0106】
本発明の免疫複合体は、前述のように、FL118薬物と酸感受性リンカーを使用することに技術的特徴があるので、所望の目的に応じて任意の抗体又はその抗原結合部位を含有する断片を結合して、免疫複合体を設計することができ、これはすべて本発明の範囲内に含まれる。本発明では具体的な一実施例として、本発明のFL118-リンカー複合体にトラスツズマブ、セツキシマブ、およびサシツズマブ(sacituzumab)を結合させて免疫複合体を作製しており、これらの優れた抗癌効果を確認した。
【0107】
本発明において、前記免疫複合体は、平均薬物/抗体比(Drug-to-antibody ratio,DAR)が2~12であってもよく、好ましくはDAR4~12であってもよい。
【0108】
[ADCプラットフォームの設計]
本発明によるADCプラットフォームは、以下のような基本的な設計概念の下、設計されることができる。
(1)正常な細胞に比べて癌細胞に10倍以上多く分布する抗原を標的とする;
(2)癌細胞において効率的な薬物放出が可能な酸感受性リンカー;
(3)単独使用時でも、高い腫瘍退縮(tumor regression)効果を示し、且つ安全性を確保したFL118薬物。
【0109】
上述のような本発明に係るADCプラットフォームを適用すると、多様な抗体を活用することができ、既存の第3世代ADCであるTrodelvyとEnhertuに対する耐性および抵抗性を克服することができる。
【0110】
[FL118薬物-CL2Aリンカー-抗体プラットフォームの作製過程]
<FL118薬物-CL2Aリンカー合成>
FL118薬物-CL2Aリンカー複合体は、2つの主要な工程を経て合成することができる。工程1において中間物質であるN3-PEG8-Lys(MMT)-PABOHを合成し、工程2においてFL118と結合して、最終物質であるFL118-CL2Aを合成する。
【0111】
より具体的には、工程1では、Fmoc-Lys(MMT)-OHと4-Aminobenzyl alcoholをEEDQを用いて、amide couplingにより合成し、保護基であるFmocを除去した後、N3-PEG8-COOHとEEDQを用いて反応させ、次いで分離精製し、中間体であるN3-PEG8-Lys(MMT)-PABOHを合成する。
【0112】
工程2では、前で合成したN3-PEG8-Lys(MMT)-PABOHとFL118を、TriphosgeneとDMAPを用いてN3-PEG8-Lys(MMT)-PABC-FL118を合成し、抗体との結合に必要な部分であるMCC-alkyneを、CuBr、PPh3、DIPEAを用いて、N3-PEG8-Lys(MMT)-PABOHのazideとクリック反応することにより合成する。その後、リジン(Lysine)のアミン(amine)保護基であるMMTを除去し、最終物質であるFL118薬物-CL2Aリンカー複合体を合成する。
【0113】
<抗体とFL118-CL2Aコンジュゲーション(conjugation)>
FL118薬物-CL2Aリンカー複合体に抗体(例えば、Her2標的のモノクローナル抗体であるトラスツズマブ(Trastuzumab)、EGFR標的のモノクローナル抗体であるセツキシマブ(Cetumximab)、Trop-2標的の抗体であるサシツズマブ(sacituzumab)を結合するため、抗体のジスルフィド結合(disulfide bond)を還元して生成するシステイン残基とFL118薬物-CL2Aリンカー複合体のマレイミド(maleimide)官能基間の結合を介してコンジュゲーション(conjugation)する。
【0114】
このとき、DAR4または8のADCを作製するため、反応バッファー(20mMヒスチジン、150mM塩化ナトリウム、pH6.0)において、抗体に比べて2.8または7.5倍(それぞれDAR4、8ADC)のTCEP(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩)を用いて、抗体のジスルフィド結合を還元させ、脱塩カラム(desalting column)を用いて反応させた後、残留TCEPを除去する。
【0115】
反応バッファー中、抗体に比べて10または12倍(それぞれDAR4、8ADC)のFL118-CL2Aを還元された抗体と反応させる。脱塩カラムと反応させた後、残留FL118-CL2Aを除去し、バッファーを18mMMES(pH 6.5)と交換する。
【0116】
作製したADCを0.2μmのPVDF membrane filterを用い、滅菌ろ過(sterile filtration)し、0.07mMのポリソルベート80(PS80)と20mMのトレハロース二水和物(Trehalose dehydrate)を追加して凍結乾燥後、保管した。
【0117】
[標的抗原_薬物標的]
本発明の抗体-薬物複合体(ADC)または免疫複合体(Immunoconjugate)を設計する時、標的化する対象は、癌細胞だけでなく、感染性疾患の有機体および/または自己免疫疾患に関与する細胞まで拡大することが可能である。
【0118】
したがって、抗体又はその抗原結合部位を含有する断片が標的化する細胞は、癌細胞、感染性疾患の有機体および/または自己免疫疾患に関連する細胞であってもよい。
【0119】
標的抗原の非限定的な例として、Her2、FolR、PSMAなどの癌の表面に選択的に分布する抗原およびTrop2などの正常組織にも少数分布する癌細胞と発現抗原がある。
【0120】
癌細胞特異的抗原は、例えば、5T4、ABL、ABCF1、ACVR1、ACVR1B、ACVR2、ACVR2B、ACVRL1、ADORA2A、AFP、Aggrecan、AGR2、AICDA、AIF1、AIGI、AKAP1、AKAP2、ALCAM、ALK、AMH、AMHR2、ANGPT1、ANGPT2、ANGPTL3、ANGPTL4、ANPEP、APC、APOCl、AR、アロマターゼ(aromatase)、ASPH、ATX、AX1、AXL、AZGP1(zinc-a-glycoprotein)、B4GALNT1、B7、B7.1、B7.2、B7-H1、B7-H3、B7-H4、B7-H6、BAD、BAFF、BAG1、BAI1、BCR、BCL2、BCL6、BCMA、BDNF、BLNK、BLR1(MDR15)、BIyS、BMP1、BMP2、BMP3B(GDFIO)、BMP4、BMP6、BMP8、BMP10、BMPR1A、BMPR1B、BMPR2、BPAG1(プレクチン)、BRCA1、C19orflO(IL27w)、C3、C4A、C5、C5R1、CA6、CA9、CANT1、CAPRIN-1、CASP1、CASP4、CAV1、CCBP2(D6/JAB61)、CCL1(1-309)、CCLI1(エオタキシン)、CCL13(MCP-4)、CCL15(MIP-Id)、CCL16(HCC-4)、CCL17(TARC)、CCL18(PARC)、CCL19(MIP-3b)、CCL2(MCP-1)、MCAF、CCL20(MIP-3a)、CCL21(MEP-2)、SLC、exodus-2、CCL22(MDC/STC-I)、CCL23(MPIF-I)、CCL24(MPIF-2/エオタキシン-2)、CCL25(TECK)、CCL26(エオタキシン-3)、CCL27(CTACK/ILC)、CCL28、CCL3(MIP-Ia)、CCL4(MIPIb)、CCL5(RANTES)、CCL7(MCP-3)、CCL8(mcp-2)、CCNA1、CCNA2、CCND1、CCNE1、CCNE2、CCR1(CKR1/HM145)、CCR2(mcp-IRB/RA)、CCR3(CKR3/CMKBR3)、CCR4、CCR5(CMKBR5/ChemR13)、CCR6(CMKBR6/CKR-L3/STRL22/DRY6)、CCR7(CKR7/EBI1)、CCR8またはCDw198(CMKBR8/TERI/CKR-L1)、CCR9(GPR-9-6)、CCRL1(VSHK1)、CCRL2(L-CCR)、CD13、CD164、CD19、CDH6、CDIC、CD2、CD20、CD21、CD200、CD22、CD23、CD24、CD27、CD28、CD29、CD3、CD33、CD35、CD37、CD38、CD3E、CD3G、CD3Z、CD4、CD40、CD40L、CD44、CD45RB、CD47、CD52、CD56、CD69、CD70、CD72、CD74、CD79A、CD79B、CD8、CD80、CD81、CD83、CD86、CD97、CD99、CD117、CD125、CD137、CD147、CD179b、CD223、CD279、CD152、CD274、CDH1(E-カドヘリン)、CDH1O、CDH12、CDH13、CDH18、CDH19、CDH2O、CDH3、CDH5、CDH7、CDH8、CDH9、CDH17、CDK2、CDK3、CDK4、CDK5、CDK6、CDK7、CDK9、CDKN1A(p21Wap1/Cip1)、CDKN1B(p27Kip1)、CDKN1C、CDKN2A(p16INK4a)、CDKN2B、CDKN2C、CDKN3、CEA、CEACAM5、CEACAM6、CEBPB、CERI、CFC1B、CHGA、CHGB、キチナーゼ(Chitinase)、CHST1O、CIK、CKLFSF2、CKLFSF3、CKLFSF4、CKLFSF5、CKLFSF6、CKLFSF7、CKLFSF8、CLDN3、CLDN6、CLDN7(クローディン-7)、CLDN18、CLEC5A、CLEC6A、CLEC11A、CLEC14A、CLN3、CLU(クラステリン)、CMKLR1、CMKOR1(RDC1)、CNR1、C-MET、COL18A1、COLIA1、COL4A3、COL6A1、CR2、Cripto、CRP、CSF1(M-CSF)、CSF2(GM-CSF)、CSF3(GCSF)、CTAG1B(NY-ESO-1)、CTLA4、CTL8、CTNNB1(b-カテニン)、CTSB(カテプシンB)、CX3CL1(SCYD1)、CX3CR1(V28)、CXCL1(GRO1)、CXCL1O(IP-IO)、CXCLI1(1-TAC/IP-9)、CXCL12(SDF1)、CXCL13、CXCL14、CXCL16、CXCL2(GRO2)、CXCL3(GRO3)、CXCL5(ENA-78/LIX)、CXCL6(GCP-2)、CXCL9(MIG)、CXCR3(GPR9/CKR-L2)、CXCR4、CXCR6(TYMSTR/STRL33/Bonzo)、CYB5、CYC1、CYSLTR1、DAB2IP、DES、DKFZp451J0118、DLK1、DNCL1、DPP4、E2F1、Engel、Edge、Fennel、EFNA3、EFNB2、EGF、EGFR、ELAC2、ENG、Enola、ENO2、ENO3、EpCAM、EPHA1、EPHA2、EPHA3、EPHA4、EPHA5、EPHA6、EPHA7、EPHA8、EPHA9、EPHA10、
EPHB1、EPHB2、EPHB3、EPHB4、EPHB5、EPHB6、EPHRIN-A1、EPHRIN-A2、EPHRINA3、EPHRIN-A4、EPHRIN-A5、EPHRIN-A6、EPHRIN-B1、EPHRIN-B2、EPHRIN-B3、EPHB4、EPG、ERBB2(HER-2)、ERBB3、ERBB4、EREG、ERK8、エストロゲン受容体、Earl、ESR2、F3(TF)、FADD、FAP、ファルネシルトランスフェラーゼ、FasL、FASNf、FCER1A、FCER2、FCGR3A、FGF、FGF1(aFGF)、FGF10、FGF1 1、FGF12、FGF12B、FGF13、FGF14、FGF16、FGF17、FGF18、FGF19、FGF2(bFGF)、FGF20、FGF21、FGF22、FGF23、FGF3(int-2)、FGF4(HST)、FGF5、FGF6(HST-2)、FGF7(KGF)、FGF8、FGF9、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、FIGF(VEGFD)、FIL1(EPSILON)、FBL1(ZETA)、FLJ12584、FLJ25530、FLRT1(フィブロネクチン)、FLT1、FLT-3、FOLR1、FOS、FOSL1(FRA-1)、FR-アルファ、FY(DARC)、GABRP(GABAa)、GAGEB1、GAGEC1、GALNAC4S-6ST、GATA3、GD2、GD3、GDF5、GFI1、GFRA1、GGT1、GM-CSF、GNAS1、GNRH1、GPC1、GPC3、GPNB、GPR2(CCR10)、GPR31、GPR44、GPR81(FKSG80)、GRCC1O(C1O)、GRP、GSN(Gelsolin)、GSTP1、GUCY2C、HAVCR1、HAVCR2、HDAC、HDAC4、HDAC5、HDAC7A、HDAC9、Hedgehog、HER3、HGF、HIF1A、HIP1、ヒスタミンおよびヒスタミン受容体、HLA-A、HLA-DR、HLA-DRA、HLA-E、HM74、HMOXI、HSP90、HUMCYT2A、ICEBERG、ICOSL、ID2、IFN-a、IFNA1、IFNA2、IFNA4、IFNA5、EFNA6、BFNA7、IFNB1、IFNガンマ、IFNW1、IGBP1、IGF1、IGFIR、IGF2、IGFBP2、IGFBP3、IGFBP6、DL-1、ILIO、ILIORA、ILIORB、IL-1、IL1R1(CD121a)、IL1R2(CD121b)、IL-IRA、IL-2、IL2RA(CD25)、IL2RB(CD122)、IL2RG(CD132)、IL-4、IL-4R(CD123)、IL-5、IL5RA(CD125)、IL3RB(CD131)、IL-6、IL6RA、(CD126)、IR6RB(CD130)、IL-7、IL7RA(CD127)、IL-8、CXCR1(IL8RA)、CXCR2、(IL8RB/CD128)、IL-9、IL9R(CD129)、IL-10、IL10RA(CD210)、IL10RB(CDW210B)、IL-11、IL11RA、IL-12、IL-12A、IL-12B、IL-12RB1、IL-12RB2、IL-13、IL13RA1、IL13RA2、IL14、IL15、IL15RA、IL16、IL17、IL17A、IL17B、IL17C、IL17R、IL18、IL18BP、IL18R1、IL18RAP、IL19、ILIA、ILIB、ILIF10、ILIF5、IL1F6、ILIF7、IL1F8、DL1F9、ILIHYI、ILIR1、IL1R2、ILIRAP、ILIRAPLI、ILIRAPL2、ILIRL1、IL1RL2、ILIRN、IL2、IL20、IL20RA、IL21R、IL22、IL22R、IL22RA2、IL23、DL24、IL25、IL26、IL27、IL28A、IL28B、IL29、IL2RA、IL2RB、IL2RG、IL3、IL30、IL3RA、IL4、1L4、IL6ST(糖タンパク質130)、ILK、INHA、INHBA、INSL3、INSL4、IRAK1、IRAK2、ITGA1、ITGA2、ITGA3、ITGA6(α6インテグリン)、ITGAV、ITGB3、ITGB4(β4インテグリン)、JAG1、JAK1、JAK3、JTB、JUN、K6HF、KAI1、KDR、KIT、KITLG、KLF5(GC Box BP)、KLF6、KLK10、KLK12、KLK13、KLK14、KLK15、KLK3、KLK4、KLK5、KLK6、KLK9、KRT1、KRT19(ケラチン19)、KRT2A、KRTHB6(ヘア(hair)-特異的II型 ケラチン)、L1CAM、LAG3、LAMA5、LAMP1、LEP(レプチン)、Lewis Y抗原(「LeY」)、LILRB1、Lingo-p75、Lingo-Troy、LGALS3BP、LRRC15、LPS、LTA(TNF-b)、LTB、LTB4R(GPR16)、LTB4R2、LTBR、LY75、LYPD3、MACMARCKS、MAGまたはOMgp、MAGEA3、MAGEA6、MAP2K7(c-Jun)、MCP-1、MDK、MIB1、midkine、MIF、MISRII、MJP-2、MLSN、MK、MKI67(Ki-67)、MMP2、MMP9、MS4A1、MSMB、MT3(メタロチオネクチン-UI)、mTOR、MTSS1、MUC1(mucin)、MUC16、MYC、MYD88、NCK2、NCR3LG1、ニューロカン(neurocan)、NFKBI、NFKB2、NGFB(NGF)、NGFR、NgR-Lingo、NgRNogo66、(Nogo)、NgR-p75、NgR-Troy、NMEI(NM23A)、NOTCH、NOTCH1、NOTCH3、NOX5、NPPB、NROB1、NROB2、NRID1、NR1D2、NR1H2、NR1H3、NR1H4、NR112、NR113、NR2C1、NR2C2、NR2E1、NR2E3、NR2F1、NR2F2、NR2F6、NR3C1、NR3C2、NR4A1、NR4A2、NR4A3、NR5A1、NR5A2、NR6A1、NRP1、NRP2、NT5E、NTN4、NY-ESO1、ODZI、OPRDI、P2RX7、PAP、PART1、PATE、PAWR、P-カドヘリン、PCA3、PCD1、PD-L1、PCDGF、PCNA、PDGFA、PDGFB、PDGFRA、PDGFRB、PECAMI、L1-CAM、peg-アルパラギナーゼ、PF4(CXCL4)、PGF、PGR、ホスファカン(phosphacan)、PIAS2、PI3キナーゼ、PIK3CG、PLAU(uPA)、PLG、PLXDCI、PKC、PKC-ベータ、PPBP(CXCL7)、PPID、PR1、PRAME、PRKCQ、PRKD1、PRL、PROC、PROK2、PSAP、PSCA、PSMA、PTAFR、PTEN、PTHR2、PTGS2(COX-2)、PTN、PVRIG、RAC2(P21Rac2)、RANK、RANKリガンド、RARB、RGS1、RGS13、RGS3、RNFI1O(ZNF144)、Ron、ROBO2、ROR1、RXR、S100A2、SCGB1D2(リポフィリンB)、SCGB2A1(マンマグロビン2)、SCGB2A2(マンマグロビン1)、SCYE1(内皮単球-活性化サイトカイン)、SDF2、SERPENA1、SERPINA3、SERPINB5(マスピン)、SERPINEI(PAI-I)、SERPINFI、SHIP-1、SHIP-2、SHB1、SHB2、SHBG、SfcAZ、SLAMF7、SLC2A2、SLC33A1、SLC43A1、SLC44A4、SLC34A2、SLIT2、SPP1、SPRR1B(Spr1)、ST6GAL1、ST8SIA1、STAB1、STATE、STEAP、STEAP2、TB4R2、TBX21、TCP1O、TDGF1、TEK、TGFA、TGFB1、TGFB1I1、TGFB2、TGFB3、TGFBI、TGFBR1、TGFBR2、TGFBR3、THIL、THBS1(トロンボスポンジン-1)、THBS2、THBS4、THPO、TIE(Tie-1)、TIMP3、組織因子(tissue factor)、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、TLR11、TNF、TNF-a、TNFAIP2(B94)、TNFAIP3、TNFRSFI1A、TNFRSF1A、TNFRSF1B、TNFRSF21、TNFRSF5、TNFRSF6(Fas)、TNFRSF7、TNFRSF8、TNFRSF9、TNFSF1O(TRAIL)、TNFRSF10A、TNFRSF10B、TNFRSF12A、TNFRSF17、TNFSF11(TRANCE)、TNFSF12(APO3L)、TNFSF13(April)、TNFSF13B、TNFSF14(HVEM-L)、TNFRSF14(HVEM)、TNFSF15(VEGI)、TNFSF18、TNFSF4(OX40リガンド)、TNFSF5(CD40リガンド)、TNFSF6(FasL)、TNFSF7(CD27リガンド)、TNFSF8(CD30リガンド)、TNFSF9(4-1BBリガンド)、TOLLIP、Toll-様受容体、TOP2A(トポイソメラーゼIia)、TP53、TPM1、TPM2、TRADD、TRAF1、TRAF2、TRAF3、TRAF4、TRAF5、TRAF6、TRKA、TREM1、TREM2、TROP2、TRPC6、TSLP、TWEAK、チロシナーゼ(Tyrosinase)、uPAR、VEGF、VEGFB、VEGFC、ベルシカン(versican)、VHL C5、VLA-4、WT1、Wnt-1、XCL1(リンフォタクチン)、XCL2(SCM-Ib)、XCRI(GPR5/CCXCR1)、YY1、ZFPM2、
CLEC4C(BDCA-2、DLEC、CD303、CDH6、CLECSF7)、CLEC4D(MCL、CLECSF8)、CLEC4E(Mincle)、CLEC6A(デクチン-2)、CLEC5A(MDL-1、CLECSF5)、CLEC1B(CLEC-2)、CLEC9A(DNGR-1)、CLEC7A(デクチン-1)、CLEC11A、PDGFRa、SLAMF7、GP6(GPVI)、LILRA1(CD85I)、LILRA2(CD85H、ILT1)、LILRA4(CD85G、ILT7)、LILRA5(CD85F、ILT11)、LILRA6(CD85b、ILT8)、LILRB1、NCR1(CD335、LY94、NKp46)、NCR3(CD335、LY94、NKp46)、NCR3(CD337、NKp30)、OSCAR、TARM1、CD30、CD300C、CD300E、CD300LB(CD300B)、CD300LD(CD300D)、KIR2DL4(CD158D)、KIR2DS、KLRC2(CD159C、NKG2C)、KLRK1(CD314、NKG2D)、NCR2(CD336、NKp44)、PILRB、SIGLEC1(CD169、SN)、SIGLEC5、SIGLEC6、SIGLEC7、SIGLEC8、SIGLEC9、SIGLEC10、SIGLEC11、SIGLEC12、SIGLEC14、SIGLEC15(CD33L3)、SIGLEC16、SIRPA、SIRPB1(CD172B)、TREM1(CD354)、TREM2、KLRF1(NKp80)、17-1A、SLAM7、MSLN、CTAG1B/NY-ESO-1、MAGEA3/A6、ATP5I(Q06185)、OAT(P29758)、AIFM1(Q9Z0X1)、AOFA(Q64133)、MTDC(P18155)、CMC1(Q8BH59)、PREP(Q8K411)、YMEL1(O88967)、LPPRC(Q6PB66)、LONM(Q8CGK3)、ACON(Q99KI0)、ODO1(Q60597)、IDHP(P54071)、ALDH2(P47738)、ATPB(P56480)、AATM(P05202)、TMM93(Q9CQW0)、ERGI3(Q9CQE7)、RTN4(Q99P72)、CL041(Q8BQR4)、ERLN2(Q8BFZ9)、TERA(Q01853)、DAD(P61804)、CALX(P35564)、CALU(O35887)、VAPA(Q9WV55)、MOGS(Q80UM7)、GANAB(Q8BHN3)、ERO1A(Q8R180)、UGGG1(Q6P5E4)、P4HA1(Q60715)、HYEP(Q9D379)、CALR(P14211)、AT2A2(O55143)、PDIA4(P08003)、PDIA1(P09103)、PDIA3(P27773)、PDIA6(Q922R8)、CLH(Q68FD5)、PPIB(P24369)、TCPG(P80318)、MOT4(P57787)、NICA(P57716)、BASI(P18572)、VAPA(Q9WV55)、ENV2(P11370)、VAT1(Q62465)、4F2(P10852)、ENOA(P17182)、ILK(O55222)、GPNMB(Q99P91)、ENV1(P10404)、ERO1A(Q8R180)、CLH(Q68FD5)、DSG1A(Q61495)、AT1A1(Q8VDN2)、HYOU1(Q9JKR6)、TRAP1(Q9CQN1)、GRP75(P38647)、ENPL(P08113)、CH60(P63038)、またはCH10(Q64433)であっても良いが、これらに限定されるものではない。
【0121】
標的抗原は、正常細胞に比べて癌細胞に10倍以上多く分布する抗原であってもよい。
【0122】
特に、本発明は、既存のADCの欠点を克服できる新しいペイロードである式1のFL
-118薬物に焦点を合わせた次世代ADCプラットフォームを活用し、固形癌の表面に選択的に過剰発現された抗原である、Trop-2を薬物標的としたBest-in-class ADCと既存に知られた癌関連抗原ではあるものの安全性/効果などの問題により、依然として関連ADCが開発されていないEGFRを標的としたFirst-in-class ADCを提供することができる。
【0123】
[抗体またはその抗原結合部位を含有する断片]
本発明によれば、[式1のFL118薬物]-[酸感受性リンカー(acid-sensitive)]-[抗体又はその抗原結合部位を含有する断片]を含む、免疫複合体は、抗体又はその抗原結合部位を含有する断片が癌細胞の抗原を標的化さえすれば、その種類を問わず、前述の[式1のFL118薬物]-[酸感受性リンカー]の組み合わせの使用に応じた有機的な作用機序を発揮することができる。特に、遊離型FL118薬物が様々な癌細胞株でSN-38に比べて5~20倍強力な、すなわち、低レベルのIC50数値で細胞毒性(Cytotoxicity)を示し、様々な癌腫由来の140個の細胞株に対する評価結果でも、大多数の癌細胞に対して<100nMのIC50を示す非常に強力な抗がん効果を共有するからです。また、FL118薬物が様々な癌細胞株XenograftモデルでSN-38に比べて優れた効能を示し、マウスとビーグル犬でのGLP毒性試験を通じて優れた安全性が確保され、これをペイロードとして用いた免疫複合体でも治療域(Therapeutic Window)を確保できるという利点を共有するからである。さらに、FL118薬物が臨床において効能/安全性が検証された抗がん機序であるトポイソメラーゼI(Topoisomerase I)阻害剤を活用したものであり、トポイソメラーゼI(Topoisomerase I)阻害剤( イリノテカン(Irinotecan)、トポテカン(Topotecan)など)は、臨床において大腸癌、肺癌、乳癌、卵巣癌など 様々な難治性固形癌に優れた抗がん効果が実証されているからである。
【0124】
さらに、実施例11~12では、Her2、EGFR、TROP2をそれぞれ標的抗原とする抗体を用いて、抗体-FL118複合体の抗癌効果を実証した。
【0125】
本明細書において、用語「抗体」とは、免疫学的に特定の抗原と反応性を有する免疫グロブリン分子を含む、抗原を特異的に認識するリガンドの役割をするタンパク質分子を意味し、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、抗体全体(whole)の全部を含む。また、前記用語は、キメラ抗体および二価(bivalent)または二重特異性分子、ダイアボディ、トリアボディ、およびテトラボディを含む。前記用語は、さらに、FcRnに対する結合機能を保有した一本鎖抗体、鎖抗体、抗体定常領域の誘導体及び足場タンパク質に基づく人工抗体を含む。抗体全体は、2本の全長の軽鎖及び2本の全長の重鎖を持つ構造であり、それぞれの軽鎖は、重鎖とジスルフィド結合によって結合されている。前記抗体全体は、IgA、IgD、IgE、IgMおよびIgGを含み、IgGは、亜型(subtype)であって、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む。
【0126】
本明細書において、用語「抗原結合部位を含有する断片」は、抗体の抗原-結合活性を保有する抗体の任意の断片であってもよい。抗体断片の例示としては、一本鎖抗体、Fd、Fab、Fab’、F(ab’)2、dsFvまたはscFvを含むが、これらに限定されない。前記Fdは、Fab断片に含まれている重鎖部分を意味する。前記Fabは、軽鎖及び重鎖の可変領域と軽鎖の不変領域および重鎖の第一の定常領域(CH1ドメイン)を有する構造であって、1個の抗原結合部位を有する。Fab’は、重鎖CH1ドメインのC末端に一つ以上のシステイン残基を含むヒンジ領域(hinge region)を有するという点でFabと差異がある。F(ab’)2抗体は、Fab’のヒンジ領域のシステイン残基がジスルフィド結合を成しながら生成される。Fv(variable fragment)は、重鎖可変部位および軽鎖可変部位のみを有する最小の抗体断片を意味する。二重ジスルフィドFv(dsFv)は、ジスルフィド結合によって重鎖可変部位と軽鎖可変部位とが結合されており、単鎖Fv(scFv)は、一般的にペプチドリンカーを介して重鎖の可変領域と軽鎖の可変領域とが共有結合により結合されている。このような抗体断片は、タンパク質加水分解酵素を用いて得ることができ(例えば、抗体全体をパパインで制限して切断すれば、Fab断片を得ることができ、ペプシンで切断すれば、F(ab’)2断片を得ることができる)、好ましくは遺伝子組み換え技術を通じて作製することができる。
【0127】
[薬学的に許容される塩]
本明細書において、薬学的に許容される塩は、製薬業界で一般に使用される塩を意味し、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リチウム、銅、マンガン、亜鉛、鉄などを含む無機イオンの塩と塩酸、リン酸、硫酸のような無機酸の塩があり、この他にアスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、マレイン酸、マロン酸、フマル酸、グリコール酸、コハク酸、プロピオン酸、酢酸、オロチン酸、アセチルサリチル酸のような有機酸の塩などのリジン、アルギニン、グアニジンなどのアミノ酸塩がある。また、医薬的な反応、精製過程及び単離過程で使用可能なテトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンゼトニウム等の有機イオンの塩である。ただし、列挙されたこれらの塩により本発明にて意味する塩の種類が限定されるものではない。
【0128】
[様々なキャリア-薬物複合体(Carrier-Drug Conjugate)]
本発明による[式1のFL118薬物]-[酸感受性(acid-sensitive)リンカー]複合体は、抗体の他に様々な種類の薬物キャリア(carrier)に適用することが可能であり、抗体とは異なり、癌組織の奥深くまで十分に浸透することが可能であり、CMCが容易な特性を有するキャリアを用いることによって、様々な用途への応用にうまく活用できる。
【0129】
したがって、本発明のキャリア-薬物複合体(Carrier-Drug Conjugate)の作製方法は、
本発明による[式1のFL118薬物]-[式2の酸感受性リンカー]複合体またはその薬学的に許容される塩を使用して、キャリア(carrier)に、式2のリンカーを介して式1の薬物を一つ以上連結させることを特徴とする。
【0130】
この場合、キャリア(carrier)は、抗体、リピボディ、および/またはアプタマーであってもよい。
【0131】
抗体についての説明およびそれらの非限定的な例は、上述した通りである。
【0132】
アプタマー(Aptamer)は、DNA/RNAに基づく生体高分子であって、抗体と同様に数nMレベルの抗原結合親和性(Binding Affinity)を有しているので、薬物の腫瘍組織選択的キャリアとして使用することができる。
【0133】
リピボディ(Repebody)は、魚類で発見された新しいクラスの免疫タンパク質であって、抗体およびナノボディ(ラマなどの哺乳類由来のSingle Chain Antibody)と同様に抗原を認識することができ、抗原に対して数nMレベルの抗原結合親和性(Binding Affinity)を有しており、薬物の癌組織選択的キャリアとして使用することができる。特に、免疫原性がないので、薬物のキャリアとして用いることができ、同時に低分子量で癌細胞の浸透力を高めることができ、均一な品質のリピボディを持続的に生産しやすくし、癌組織の浸透力を高めた薬物複合体の作製に適している。
【0134】
[ADCの場合、抗体治療剤としての役割]
本発明のADCは、過去10年間、癌および自己免疫などの疾患の治療において重要な役割を果たしている、基本的な抗体治療剤(Therapeutic antibody)としての役割も果たすことができる。
【0135】
抗体は、抗原と体内の細胞を区別する能力を有しているため、抗原に対して選択的に作用する優れたスクリーニング機能を有している。抗体のこのような抗原選択的結合特性を疾病の治療剤として活用したものがまさに抗体治療薬である。抗体は、Y字型をしているが、両アームにそれぞれ抗原結合部位(Antigen binding site)が存在し、相補性決定領域(Complementarity determining regions、CDR)により抗体は、標的抗原を選択的に認識するようになる。また、抗体は、大きく5種類(IgM、IgD、IgG、IgAおよびIgE/Immunoglobulin(Ig))があり、主にIgG抗体治療剤に使用されている。
【0136】
抗体治療剤は、抗原に対して選択的に反応しながら抗原を除去することができる。これのために様々な機序を活用することになるが、抗体治療剤として用いる代表的な機序の特徴は、次の通りである。
【0137】
第1の機序は、遮断機能である(Blocking)。抗体は、細胞の標的受容体に選択的に結合し、標的細胞の生理学的機能を遮断する。細胞表面に発現されるリガンド又は受容体に抗体が結合し、標的シグナル伝達経路を遮断し、低減されたシグナル伝達により、細胞活性の喪失、増殖抑制およびアポトーシスなどを引き起こす。
【0138】
細胞表面の受容体(Receptor)を標的とし、抗体が受容体に結合すると受容体の構造を変化させる又は受容体に結合しなければならない因子が結合できないようにし、細胞内シグナル伝達を阻害し、これにより細胞の成長および分化を調節することができるようになる。また、抗体が受容体に結合すると、受容体が細胞内流入機序により細胞内に入り、細胞表面の受容体の数が減少するようになって、細胞の生理学的機序に調節することができる。この機序により優れた効果を示す代表的な抗体治療剤は、ヒト上皮成長因子受容体(Human epidermal growth factor Receptor)(HER/EGFR/ERBB)のうちの1つであるHER2陽性乳癌を標的とするトラスツズマブ(Trastuzumab)(Herceptin(登録商標)がある。
【0139】
第2の機序は、抗体-依存性細胞媒介性細胞毒性機序である(Antibody-Dependent Cellmediated Cytotoxicity、ADCC)。癌細胞の場合、正常細胞とは異なる特異的な受容体又は過剰発現した受容体を有しており、免疫系がこれを認識して抗体を産生し、細胞表面に結合される。NK細胞がFc receptor(FcγRIII)を認識した後、活性化されるとアポトーシス(Apoptosis)が誘導される。
【0140】
第3の機序は、補体-依存性細胞傷害である(Complement-Dependent Cytotoxicity、CDC)。癌細胞の表面に結合し、補体タンパク質(C1q)を活性化させ、古典的経路(classical pathway)を引き起こし、細胞膜を攻撃し、孔(pore)を標的細胞の溶解を引き起こす。この他にも、オプソニン化(Opsonization)、中和作用(Neutralization)、炎症反応などの機序がある。
【0141】
治療用抗体は、一般に特定の治療目的のために複数の観点から抗体を再設計(engi
neering)することにより、最適化された形態で作製される。また、このような治療用モノクローナル抗体の開発に適用されていた抗体工学技術が最適化されたADC開発にも拡張して適用されている。例えば、現在治療抗体や臨床開発中のADCは、ほとんどがIgG1であり、ごくわずかだけIgG2とIgG4を使用している。抗体のアイソタイプ(isotype)の選択は、治療用抗体とADCにとって同様に重要である。その理由は、抗体のアイソタイプ(isotype)が抗体依存性細胞傷害(antibody-dependent cellular cytotoxicity(ADCC))、抗体依存性細胞食作用(antibody-dependent cellular phagocytosis(ADCP))および体依存性細胞傷害(complement-dependent cytotoxicity(CDC))の機能に影響を及ぼすからである。また、IgG4は、in vivoでのFabアーム交換によって機能的(functionally)に一価(monovalent)になる。また、アイソタイプ(isotype)によるADCの効能と抗体のFc-domain engineeringを応用し、ADCのin vivo効能を向上させることができる。
【0142】
[癌の予防または治療用医薬組成物]
本発明は、前述した本発明による免疫複合体またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、癌の予防または治療用医薬組成物を提供する。
【0143】
本発明の免疫複合体は、癌細胞の抗原に特異的に結合し、癌細胞内外で薬物を放出し、細胞毒性を示すので、癌の治療または予防に有用に使用することができる。本発明の免疫複合体が有する抗癌活性は、前述した通りである。
【0144】
本発明において、前記癌は、トポイソメラーゼIの阻害、および/またはサバイビン(survivin)、Mcl-1、XIAPおよびcIAP2からなる群から選択されたいずれか1つ以上の癌-関連性生存遺伝子(cancer-associated survival genes)の阻害により治療可能な全ての癌を含み、固形癌または血液癌であってもよい。例えば、偽粘液腫、肝内胆道がん、肝芽細胞腫、肝臓癌、甲状腺癌、結腸癌、精巣癌、骨髄異形成症候群、神経膠芽腫、口腔癌、口唇癌、菌状息肉腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、基底細胞癌、卵巣上皮癌、卵巣生殖細胞癌、男性乳癌、脳癌、下垂体腺腫、多発性骨髄腫、胆嚢、胆管癌、大腸癌、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、網膜芽腫、脈絡膜黒色腫、ファーター膨大部癌、膀胱癌、腹膜癌、副甲状腺癌、副腎癌、副鼻腔、非小細胞肺癌、舌癌、星状細胞腫、小細胞肺癌、小児脳腫瘍は、小児リンパ腫、小児白血病、小腸癌、髄膜腫、食道癌、神経膠腫、腎盂癌、腎臓がん、心臓癌、十二指腸癌、悪性軟部組織腫瘍、悪性骨癌、悪性リンパ腫、悪性中皮腫、悪性黒色腫、眼癌、外陰癌、尿管癌、尿道癌、原発部位不明癌、胃リンパ腫、胃癌、カルチノイド腫瘍、消化管間質癌、ウィルムス腫瘍、乳癌、肉腫癌、陰茎癌、咽頭癌、妊娠性絨毛性疾患、子宮頸癌、子宮内膜癌、子宮肉腫、前立腺癌、転移性骨癌、転移性脳腫瘍、前縦隔腫瘍、直腸癌、直腸カルチノイド腫瘍、膣癌、脊髄癌、聴神経鞘腫、膵臓癌、唾液腺癌、カポジ肉腫、パジェット病、扁桃腺癌、扁平上皮細胞癌、肺腺癌、肺癌、肺扁平上皮細胞癌、皮膚癌、肛門癌、横紋筋肉腫、喉頭癌、胸膜癌、血液癌、および甲状腺癌からなる群から選ばれる少なくとも1種以上であることができるが、これらに制限されるものでない。また、前記癌には、原発性癌だけでなく、転移性癌も含む。
【0145】
また、本発明の一実施形態によれば、前記免疫複合体の治療学的に有効な量を、これを必要とする対象(subject)に投与する工程を含む、癌の治療または予防する方法を提供する。前記対象(subject)は、ヒトを含む哺乳類であってもよい。
【0146】
本発明で使用される「治療学的に有効な量」という用語は、癌の治療または予防に有効な前記免疫複合体の量を示す。具体的には、「治療学的に有効な量」とは、医学的治療に
適用可能な合理的な利益/リスク比で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量レベルは、個体の種類及び重症度、年齢、性別、疾患の種類、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路および排出速度、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素及び他の医学分野においてよく知られた要因によって決定することができる。本発明の医薬組成物は、個別の治療剤として、投与するまたは他の治療剤と併用して投与することができ、市販の治療剤とは順次または同時に投与することができる。また、単回投与又は複数回投与可能である。前記の要素を全部考慮して、副作用無く、最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、本発明の免疫複合体は、用量依存的な効果を示すため、投与容量は患者の状態、年齢、性別及び合併症などの多様な要因によって当業者によって容易に決定することができる。本発明の薬学的組成物の有効成分は、安全性に優れているため、決定された投与容量以上でも使用することができる。
【0147】
また、本発明の一実施形態によれば、本発明は、癌の治療又は予防に使うための薬剤(medicament)の作製に用いるための、前記免疫複合体の用途(use)を提供する。薬剤を作製するための前記免疫複合体は、許容されるアジュバント、希釈剤、担体等を混合することができ、その他の活性製剤と共に複合製剤として調製され、活性成分の相乗作用を有することができる。
本発明の用途、組成物、治療方法において言及された事項は、互いに矛盾しない限り、同様に適用される。
【実施例】
【0148】
発明を実施するための形態
以下、本発明を実施例を通じてより具体的に説明する。ただし、以下の実施例は、本発明の技術的な特徴を明確に例示するためのものに過ぎず、本発明の保護範囲を限定するものではない。
【0149】
実施例1:FL118-リンカー1複合体の作製
【化8】
【0150】
工程1:(9H-フルオレン-9-イル)メチル(S)-(1-((4-(ヒドロキシ
メチル)フェニル)アミノ)-6-(((4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル)アミノ)-1-オキソヘキサン-2-イル)カルバメートの合成
【化9】
【0151】
ジクロロメタン(10mL)中の4-アミノベンジルアルコール(0.202g、1.639mmol)およびFmoc-Lys(Mmt)-OH(1.00g、1.561mmol)の懸濁液にEEDQ(0.405g、1.623mmol)を添加した。反応混合物を室温で4時間攪拌した。反応混合物をジクロロメタン(10mL)で希釈し、水(2×5mL)で洗浄した。有機層を塩水(brine)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮し、黄色がかった泡状物(yellowish foam)を収得し、これをフラッシュカラムクロマトグラフィー(24gのSi、ヘプタン/エチルアセテート0~100%、ジクロロメタンローディング)により精製した。生成物画分を合わせ、減圧下で濃縮し、標題化合物(928mg、80%)を白色の泡状物として収得した。
LCMS(sc_basic):522[M-Fmoc-H]-
【0152】
工程2:(S)-2-アミノ-N-(4-(ヒドロキシメチル)フェニル)-6-(((4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル)アミノ)ヘキサンアミドの合成
【化10】
【0153】
(9H-フルオレン-9-イル)メチル(S)-(1-((4-(ヒドロキシメチル)フェニル)アミノ)-6-(((4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル)アミノ)-1-オキソヘキサン-2-イル)カルバメート(928mg、1.244mmol)をジエチルアミン(10mL、97mmol)に溶解させ、室温で攪拌した。2時間後、溶媒を減圧下で濃縮し、粘着性の残渣をヘプタン2回洗浄した。次いで、残渣をジクロロメタンに溶解させ、ヘプタンで沈殿させた。溶媒を注ぎ出し、手順を繰り返した。蒸発の結果、白色の泡状物の生成物を収得した(Yd:677mg、純度<90%)。
【0154】
前記生成物を5mLのジクロロメタンに溶解させ、20mLのヘプタンで沈殿させた後、溶媒を注ぎ出した。蒸発乾燥し、627mg、96%の標題化合物を白色の泡状物として得た。
LCMS(sc_acid):522[M-H]-
【0155】
工程3:(S)-2-(32-アジド-5-オキソ-3,9,12,15,18,21,24,27,30-ノナオキサ-6-アザドトリアコンタンアミド)-N-(4-(ヒドロキシメチル)フェニル)-6-(((4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル)アミノ)ヘキサンアミドの合成
【化11】
【0156】
ジクロロメタン(10mL)中のO-(2-アジドエチル)-O’-(N-ジグリコリル-2-アミノエチル)-ヘプタエチレングリコール(662mg、1.193mmol)および(S)-2-アミノ-N-(4-(ヒドロキシメチル)フェニル)-6-(((4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル)アミノ)ヘキサンアミド(625mg、1.193mmol)の淡黄色の溶液にEEDQ(300mg、1.203mmol)を添加した。反応混合物を室温で3時間攪拌した。反応物を減圧下で濃縮した。粗生成物(1.68g)をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、エチルアセテート/メタノール0~10%)により精製し、標題化合物を濃い無色の油状物として収得した。
【0157】
Yd:1.02g
LCMS:purity>95%。m/z1082 M+Na、1058 M-H
1H NMR(d6-DMSO):構造と一致する。残留エチルアセテートを含む。
1H NMR(400 MHz、DMSO)δ 10.06(s、1H)、8.15(d、J=8.0 Hz、1H)、8.08(t、J=5.8 Hz、1H)、7.58-7.49(m、2H)、7.37(m、4H)、7.25(m、8H)、7.15(m、2H)、6.86-6.76(m、2H)、5.11(t、J=5.7 Hz、1H)、4.43(m、3H)、4.00(s、2H)、3.96(d、J=4.4 Hz、2H)、3.70(s、3H)、3.59(m、2H)、3.57-3.44(m、30H)、3.40(m、5H)、3.25(q、J=6.1 Hz、2H)、2.43(m、1H)、1.93(m、2H)、1.64(m、2H)、1.54-1.22(m、4H)
【0158】
真空下でさらに乾燥することにより、0.968gの無色の油状物を得た。
収率:76%。さらなる分析なしで使用される。
【0159】
工程4:4-((2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)メチル)-N-(プロプ-2-イン-1-イル)シクロヘキサン-1-カルボキサミドの合成
【化12】
【0160】
スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキシレート(1
.01g、3.02mmol)をジクロロメタン20mLに溶解させ、プロパルギルアミン(0.213mL、3.32mmol)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.528mL、3.02mmol)を添加した。反応混合物を室温で1時間攪拌した。反応混合物を100mLのジクロロメタンで希釈し、100mL 1N HClで洗浄した後、100mLの塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空で蒸発させた。粗生成物(白色の固形物、950mg)をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、24g、ジクロロメタン/メタノール0~2%)により精製した。生成物画分を合わせ、真空で濃縮し、白色の固形物を生成した後、冷たいジクロロメタンでトリチュレート(trituration)した。濾過して標題化合物を白色の固形物として得た。収率:577mg、73%
【0161】
LCMS(sc_acid):275[M+H]+
1H NMR(400 MHz、DMSO)δ 8.47(s、1H)、8.16(d、J=7.9 Hz、1H)、8.09(t、J=5.8 Hz、1H)、7.58(d、J=8.4 Hz、2H)、7.52(d、J=2.9 Hz、2H)、7.41-7.20(m、12H)、7.14(t、J=7.3 Hz、2H)、6.94(s、1H)、6.81(d、J=8.9 Hz、2H)、6.28(d、J=2.0 Hz、2H)、5.50(s、2H)、5.24(s、2H)、5.17-5.01(m、2H)、4.49-4.40(m、1H)、4.01(s、2H)、3.99-3.91(m、2H)、3.69(s、3H)、3.62-3.45(m、30H)、3.45-3.37(m、4H)、3.28-3.21(m、2H)、2.46-2.40(m、1H)、2.25-2.02(m、2H)、2.01-1.81(m、2H)、1.74-1.54(m、2H)、1.53-1.41(m、2H)、1.40-1.19(m、2H)、0.89(t、J=7.4 Hz、3H)。
【0162】
工程5:4-((S)-35-アジド-2-(4-(((4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル)アミノ)ブチル)-4,8-ジオキソ-6,12,15,18,21,24,27,30,33-ノナオキサ-3,9-ジアザペンタトリアコンタンアミドベンジル((S)-7-エチル-8,11-ジオキソ-7,8,11,13-テトラヒドロ-10H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-7-イル)カーボネートの合成
【化13】
【0163】
FL118(50mg、0.127mmol)と4-ジメチルアミノピリジン(DAMP)(58.4mg、0.478mmol)をジクロロメタン8mLに溶解させ、トリホスゲン(11.4mg、0.038mmol)をジクロロメタン2mLに溶解させ、急速に添加した。黄色の反応混合物を30分間攪拌した。1時間後、(S)-2-(32-アジド-5-オキソ-3,9,12,15,18,21,24,27,30-ノナオキサ-6-ザドトリアコンタンアミド-N-(4-(ヒドロキシメチル)フェニル)-6-(((4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル)アミノ)ヘキサンアミド(81mg、0.076mmol)をジクロロメタン2mLに溶解させて添加し、30分間攪拌した。次いで、反応混合物を真空下で濃縮させた。粗生成物をDMSOに取り込み、塩基性分取用HPLCにより精製した。生成物画分を合わせ、凍結乾燥し、64mg、57%の黄色の固形物の標題化合物を得た。
【0164】
LCMS(sc_base):1206[M-MMT+H]+
1H NMR(400 MHz、DMSO)δ 8.47(s、1H)、8.16(d、J=7.9 Hz、1H)、8.09(t、J=5.8 Hz、1H)、7.58(d、J=8.4 Hz、2H)、7.52(d、J=2.9 Hz、2H)、7.41-7.20(m、12H)、7.14(t、J=7.3 Hz、2H)、6.94(s、1H)、6.81(d、J=8.9 Hz、2H)、6.28(d、J=2.0 Hz、2H)、5.50(s、2H)、5.24(s、2H)、5.17-5.01(m、2H)、4.49-4.40(m、1H)、4.01(s、2H)、3.99-3.91(m、2H)、3.69(s、3H)、3.62-3.45(m、30H)、3.45-3.37(m、4H)、3.28-3.21(m、2H)、2.46-2.40(m、1H)、2.25-2.02(m、2H)、2.01-1.81(m、2H)、1.74-1.54(m、2H)、1.53-1.41(m、2H)、1.40-1.19(m、2H)、0.89(t、J=7.4 Hz、3H)。
【0165】
工程6:4-((S)-35-(4-((4-((2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)メチル)シクロヘキサン-1-カルボキサミド)メチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル)-2-(4-(((4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル)アミノ)ブチル)-4,8-ジオキソ-6,12,15,18,21,24,27,30,33-ノナオキサ-3,9-ジアザペンタトリアコンタンアミド)ベンジル((S)-7-エチル-8,11-ジオキソ-7,8,11,13-テトラヒドロ-10H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-7-イル)カーボネートの合成
【化14】
【0166】
4-((2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)メチル)-N-(プロプ-2-イン-1-イル)シクロヘキサン-1-カルボキサミド(25mg、91μmol)および4-((S)-35-アジド-2-(4-(((4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル)アミノ)ブチル)-4,8-ジオキソ-6,12,15,18,21,24,27,30,33-ノナオキサ-3,9-ジアザペンタトリアコンタンアミド)ベンジル((S)-7-エチル-8,11-ジオキソ-7,8,11,13-テトラヒドロ-10H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-7-イル)カーボネート(65mg、44.0μmol)、銅(I)ブロミド(2.5mg、17.43μmol)およびトリフェニルホスフィン(2.3mg、8.77μmol)をジクロロメタン(2.0mL)に溶解させ、、N,N-ジイソプロピルメチルアミン(0.023mL、132μmol)を添加した。
【0167】
反応混合物が速く淡黄色の懸濁液に変わることを確認し、28時間攪拌した。次いで、反応混合物を真空で濃縮させた。粗生成物をDMSOに取り込み、塩基性分取用HPLCにより精製した。生成物画分を合わせ、凍結乾燥し、62mg、80%の標題化合物を白色の固形物として得た。
LCMS(sc_base):1480[M-MMT+H]+
【0168】
工程7:4-((S)-2-(4-アミノブチル)-35-(4-((4-((2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)メチル)シクロヘキサン-1-カルボキサミド)メチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル)-4,8-ジオキソ-6,12,15,18,21,24,27,30,33-ノナオキサ-3,9-ジアザペンタトリアコンタンアミド)ベンジル((S)-7-エチル-8,11-ジオキソ-7,8,11,13-テトラヒドロ-10H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-7-イル)カーボネートの合成
【化15】
【0169】
4-((S)-35-(4-((4-((2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)メチル)シクロヘキサン-1-カルボキサミド)メチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル)-2-(4-(((4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル)アミノ)ブチル)-4,8-ジオキソ-6,12,15,18,21,24,27,30,33-ノナオキサ-3,9-ジアザペンタトリアコンタンアミド)ベンジル((S)-7-エチル-8,11-ジオキソ-7,8,11,13-テトラヒドロ-10H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-7-イル)カーボネート(65mg、0.037mmol)を0.7mLのジクロロメタンに溶解させた。アニソール(15μl、0.137mmol)およびジクロロ酢酸(32μl、0.387mmol)を滴下した。反応混合物を30分間攪拌した。MTBE(5mL)を添加し、混合物を激しく攪拌した。固体を沈め、溶媒を注ぎ出した。残渣をMTBE中の5%のジクロロメタンで2回およびMTBEで1回洗浄した。次いで、固形物を室温で減圧下で乾燥させた。標題化合物(FL118-リンカー化合物)を淡黄色の固形物として得て、-20℃で保管した。
【0170】
Yd:53mg、97%
LCMS(an_acid):1480[M+H]+
1H NMR(400 MHz、DMSO)δ 10.18(s、1H)、8.48(s、1H)、8.24-8.17(m、2H)、8.09(t、J=5.7 Hz、1H)、7.81(s、1H)、7.68(s、3H)、7.62-7.57(m、2H)、7.53(s、2H)、7.31(d、J=8.6 Hz、2H)、7.01(s、2H)、6.94(s、1H)、6.29(s、2H)、6.01(s、1H)、5.50(s、2H)、5.25(s、2H)、5.17-5.01(m、2H)、4.47(m、3H)、4.25(d、J=5.6 Hz、2H)、4.08-3.95(m、4H)、3.77(t、J=5.2 Hz、2H)、3.54-3.41(m、34H)、3.28-3.20(m、4H)、2.78(s、2H)、2.18-1.99(m、3H)、1.83-1.67(m、4H)、1.65-1.45(m、6H)、1.42-1.19(m、5H)、0.94-0.84(m、5H)。
【0171】
実施例2:FL118-リンカー2複合体の作製
工程1:tert-ブチル((4-(プロプ-2-イン-1-イルカルバモイル)シクロへキシル)メチル)カルバメートの合成
【化16】
【0172】
N,N-ジメチルホルムアミド(10mL)中のBoc-トラネキサム酸(trans)(1.00g、3.89mmol)溶液にHATU(1.77g、4.66mmol)を添加し、10分間攪拌した。プロパルギルアミン(0.25mL、3.90mmol)を添加した後、ジイソプロピルアミン(0.71mL、4.07mmol)を添加した。黄色の溶液に変わった混合物を室温で一晩攪拌した後、減圧下でほとんどのDMFを蒸発させた。次いで、前記混合物をエチルアセテートおよび水で希釈した。水層を分離し、有機層を水と塩水で洗浄した。次いで、前記有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮し、ベージュ色の固形物(1.4g)を収得した。
【0173】
前記固形物をジクロロメタンでトリチュレートした後、濾過し、標題化合物(493mg、43%)をオフホワイトの固形物として収得した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、DCM/メタノール0~5%)により濾液を精製し、別のバッチの標題化合物(315mg、27%)を収得した。
【0174】
SC_ACID:239[M-tBu+H]+
1H NMR(400 MHz、CDCl3)δ 5.57(s、1H)、4.55(s、1H)、4.04(dd、J=5.2、2.6 Hz、2H)、2.98(t、J=6.5 Hz、2H)、2.23(t、J=5.1 Hz、1H)、2.09-1.99(m、1H)、1.98-1.89(m、2H)、1.89-1.80(m、2H)、1.52-1.39(m、12H)、1.02-0.90(m、2H)。
【0175】
工程2:4-(アミノメチル)-N-エチニルシクロヘキサン-1-カルボキサミドの合成
【化17】
【0176】
tert-ブチル((4-(プロプ-2-イン-1-イルカルバモイル)シクロへキシル)メチル)カルバメート(800mg、2.72mmol)を5mLのジオキサンに懸濁させ、HCl(4 N in dioxane)(10mL、40.0mmol)を添加し、透明な溶液を得た。前記反応混合物を室温で30分間攪拌し、固形物が速く沈殿されることを確認した。反応混合物を蒸発乾燥させ、DCMで2回共-蒸発させた。粗生成物を1mLのメタノールに溶解させ、SCX-2(2×5g)にローディングした。カラムを中性までメタノールでフラッシュした後、生成物をメタノール中のNH3(7 N)で溶出させた。生成物画分を乾燥蒸発させ、標題化合物(520mg、98%)を白色の固形物として収得した。
【0177】
SC_ACID:195[M+H]+
1H NMR(400 MHz、D2O)(粗製、HCl塩)δ 3.86(d、J=2.5 Hz、2H)、2.79(d、J=7.1 Hz、2H)、2.51(t、J=2.5 Hz、1H)、2.22-2.11(m、1H)、1.87-1.74(m、4H)、1.65-1.54(m、1H)、1.42-1.28(m、2H)、1.07-0.94(m、2H)。
【0178】
工程3:4-((3,4-ジブロモ-2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)メチル)-N-(プロプ-2-イン-1-イル)シクロヘキサン-1-カルボキサミドの合成
【化18】
【0179】
酢酸(2.5mL)中の2,3-ジブロモマレイン酸(200mg、0.730mmol)溶液を45分間還流攪拌した後、4-(アミノメチル)-N-エチニルシクロヘキサン-1-カルボキサミド(135mg、0.749mmol)を添加し、2時間還流攪拌した。前記反応混合物を乾燥蒸発させ、ジクロロメタンで粉砕し、濾過し、若干の生成物を収得した。濾液をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘプタン/エチルアセテート0~100%)により精製し、また別の若干の生成物を収得した。2つのバッチを合わせて、標題化合物(153mg、48%)を黄色の固形物として収得した。
【0180】
SC_ACID:433[M+H]+、double Br pattern
1H NMR(400 MHz、DMSO)δ 8.14(t、J=5.5 Hz、1H)、3.81(dd、J=5.5、2.5 Hz、2H)、3.29(s、2H)、3.05(t、J=2.5 Hz、1H)、2.08-1.99(m、1H)、1.69(d、J=12.3 Hz、4H)、1.52(s、1H)、1.32-1.20(m、2H)、0.96-0.83(m、2H)。
【0181】
工程4:(S)-2-(32-アジド-5-オキソ-3,9,12,15,18,21,24,27,30-ノナオキサ-6-アザドトリアコンタンアミド)-N-(4-(ヒドロキシメチル)フェニル)-6-(((4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル)アミノ)ヘキサンアミドの合成
【化19】
【0182】
ジクロロメタン(10mL)中のO-(2-アジドエチル)-O′-(N-ジグリコリル-2-アミノエチル)-ヘプタエチレングリコールの淡黄色の溶液(1.06g、1.910mmol)および(S)-2-アミノ-N-(4-(ヒドロキシメチル)フェニル)-6-(((4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル)アミノ)ヘキサンアミド(1.0g、1.910mmol)にEEDQ(0.476g、1.910mmol)を添加した。前記反応混合物を室温で7.5時間攪拌し、減圧下で濃縮した。粗生成物(1.68g)をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、エチルアセテート/メタノール0~10%)により精製し、濃い無色の標題化合物(1.53g、76%収率)を収得した。
SC_ACID_M1200:1082[M+Na]+、1058[M-H]-
【0183】
工程5:4-((S)-35-アジド-2-(4-(((4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル)アミノ)ブチル)-4,8-ジオキソ-6,12,15,18,21,24,27,30,33-ノナオキサ-3,9-ジアザペンタトリアコンタンアミド)ベンジル((S)-7-エチル-8,11-ジオキソ-7,8,11,13-テトラヒドロ-10H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-7-イル)カーボネートの合成
【化20】
【0184】
FL118(60mg、0.153mmol)およびDMAP(70.1mg、0.573mmol)を乾燥ジクロロメタン(8mL)で混合した。乾燥ジクロロメタン(1.75mL)に溶解されたトリホスゲン(20.4mg、0.069mmol)を一度に添加した後、褐色(brownish)の懸濁液を室温で1時間攪拌した。乾燥ジクロロメタン(1.75mL)中の(S)-2-(32-アジド-5-オキソ-3,9,12,15,18,21,24,27,30-ノナオキサ-6-アザドトリアコンタンアミド)-N-(4-(ヒドロキシメチル)フェニル)-6-(((4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル)アミノ)ヘキサンアミド(162mg、0.153mmol)を一度に添加した。反応混合物を真空下で蒸発させ、残渣をDMSO中に溶解させた後、塩基性分取(basic preparative)MPLCにより濾過し、精製した。生成物画分を合わせて、凍結乾燥し、白色の軽く柔らかい固形物(fluffy solid)として標題化合物を収得した(81mg、35%)。
SC_BASE_M700-1900:1206[M-MMT+H]+
【0185】
工程6:4-((S)-35-(4-((4-((3,4-ジブロモ-2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)メチル)シクロヘキサン-1-カルボキサミド)-メチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル)-2-(4-(((4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル)アミノ)ブチル)-4,8-ジオキソ-6,12,15,18,21,24,27,30,33-ノナオキサ-3,9-ジアザペンタトリアコンタンアミド)ベンジル((S)-7-エチル-8,11-ジオキソ-7,8,11,13-テトラヒドロ-10H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-7-イル)カルバメートの合成
【化21】
【0186】
4-((3,4-ジブロモ-2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)メチル)-N-(プロプ-2-イン-1-イル)シクロヘキサン-1-カルボキサミド(105mg、0.243mmol)、4-((S)-35-アジド-2-(4-(((4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル)アミノ)ブチル)-4,8-ジオキソ-6,12,15,18,21,24,27,30,33-ノナオキサ-3,9-ジアザペンタトリアコンタンアミド)ベンジル((S)-7-エチル-8,11-ジオキソ-7,8,11,13-テトラヒドロ-10H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-7-イル)カーボネート(120mg、0.081mmol)、銅(I)ブロミド(4.7mg、0.032mmol)およびトリフェニルホスフィン(4.3mg、0.016mmol)を1.5mLのジクロロメタンに溶解させた後、ジイソプロピルエチルアミン(0.043mL、0.243mmol)を添加し、黄色の懸濁液が速く形成されることを確認した。前記反応混合物を室温で6時間攪拌し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル12g、ジクロロメタン/メタノール0~10%)により精製し、標題化合物(94mg、60%)を黄色の固形物として収得した。
【0187】
SC_ACID:820[M+2H-MMT]2+/2、doubly charged ion
1H NMR(400 MHz、DMSO)δ 10.12(s、1H)、8.47(s、1H)、8.22-8.01(m、4H)、7.81(s、1H)、7.57(d、J=8.4 Hz、2H)、7.52(d、J=2.5 Hz、2H)、7.37(d、J=7.9 Hz、4H)、7.32-7.21(m、9H)、7.19-7.10(m、2H)、6.94(s、1H)、6.81(d、J=8.7 Hz、2H)、6.28(s、2H)、5.49(s、2H)、5.24(s、2H)、5.16-5.01(m、2H)、4.47(t、J=5.2 Hz、3H)、4.25(d、J=5.8 Hz、2H)、4.07-3.94(m、7H)、3.77(t、J=5.3 Hz、2H)、3.69(s、3H)、3.62(s、3H)、3.52-3.44(m、30H)、3.42(t、J=6.0 Hz、3H)、3.26-3.22(m、3H)、3.17-3.11(m、2H)、2.18-2.04(m、3H)、1.96-1.88(m、2H)、1.73-1.64(m、5H)、1.51-1.44(m、2H)、0.90(t、J=7.3 Hz、3H)。
【0188】
工程7:FL118-リンカー2複合体の合成
【化22】
【0189】
4-((S)-35-(4-((4-((3,4-ジブロモ-2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)メチル)シクロヘキサン-1-カルボキサミド)-メチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル)-2-(4-(((4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル)アミノ)ブチル)-4,8-ジオキソ-6,12,15,18,21,24,27,30,33-ノナオキサ-3,9-ジアザペンタトリアコンタンアミド)ベンジル((S)-7-エチル-8,11-ジオキソ-7,8,11,13-テトラヒドロ-10H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-7-イル)カーボネート(94mg、0.049mmol)にアニソール(0.064mL、0.590mmol)、ジクロロメタン(2.5mL)中のジクロロ酢酸(0.049mL、0.590mmol)溶液を添加し、黄色の溶液を室温で45分間攪拌した。次いで、MTBE(8mL)を添加し、混合物を明褐色の固形物が沈殿するまで攪拌した。ほとんどの溶媒を除去し、固形物を8mLのMTBEで5回トリチュレートした後、減圧下で乾燥させ、標題化合物(73mg、91%)を明黄色の固形物として収得した。
【0190】
UPLC_AN_ACID:820[M+2H]2+/2、doubly charged ion
SC_ACID_M700-2000:1640[M+H]+、double Br pattern
1H NMR(400 MHz、DMSO)δ 10.17(s、1H)、8.48(s、1H)、8.25-8.16(m、2H)、8.09(t、J=5.9 Hz、1H)、7.82(s、1H)、7.67-7.56(m、5H)、7.53(s、2H)、7.32(d、J=8.3 Hz、2H)、6.94(s、1H)、6.29(s、2H)、5.50(s、2H)、5.25(s、2H)、5.17-5.02(m、2H)、4.51-4.44(m、3H)、4.25(d、J=5.6 Hz、2H)、4.08-3.95(m、4H)、3.78(t、J=5.2 Hz、2H)、3.54-3.40(m、30H)、3.28(t、J=6.0 Hz、4H)、2.77(d、J=6.0 Hz、2H)、2.21-2.01(m、3H)、1.81-1.63(m、6H)、1.60-1.46(m、3H)、1.41-1.21(m、6H)、0.89(t、J=7.3 Hz、3H)。
【0191】
実施例3:FL118-リンカー3複合体の作製
工程1:(9H-フルオレン-9-イル)メチル(S)-(1-((4-(ヒドロキシメチル)フェニル)アミノ)-6-(((4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル)アミノ)-1-オキソヘキサン-2-イル)カルバメートの合成
【化23】
【0192】
ジクロロメタン(20mL)中の4-アミノベンジルアルコール(0.404g、3.28mmol)およびFmoc-Lys(Mmt)-OH(2g、3.12mmol)の溶液にEEDQ(0.809g、3.25mmol)を添加し、反応混合物を室温で4時間攪拌した。反応混合物をジクロロメタン(20mL)で希釈し、水(20mL)で洗浄した。有機層を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下で濃縮し、黄色がかった(yellowish)泡状物を収得した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(40gのSi、ヘプタン/エチルアセテート0~100%)により精製し、標題化合物(1.77g、76%)を白色の泡状物(foam)として収得した。
【0193】
分析の結果と文献データとが一致することを確認した。
SC_ACID:768[M+Na]+
【0194】
工程2:(S)-2-アミノ-N-(4-(ヒドロキシメチル)フェニル)-6-(((4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル)アミノ)ヘキサンアミドの合成
【化24】
【0195】
(9H-フルオレン-9-イル)メチル(S)-(1-((4-(ヒドロキシメチル)フェニル)アミノ)-6-(((4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル)アミノ)-1-オキソヘキサン-2-イル)カルバメート(1.77g、2.373mmol)をジエチルアミン(19.5mL、189mmol)に溶解させ、室温で1時間攪拌した後、溶媒を減圧下で蒸発させた。残渣をDCM(5mL)に溶解させ、ヘプタン(25mL)で沈殿させた後、溶媒を注ぎ入れた。前記過程を繰り返した後、蒸発させ、標題化合物を白色の泡状物として得た(1.3g)。
【0196】
SC_ACID:522[M-H]-
分析の結果と文献データとが一致することを確認した。
【0197】
工程3:(S)-2-(32-アジド-5-オキソ-3,9,12,15,18,21,24,27,30-ノナオキサ-6-アザドトリアコンタンアミド)-N-(4-(ヒドロキシメチル)フェニル)-6-(((4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル)アミノ)ヘキサンアミドの合成
【化25】
【0198】
ジクロロメタン(10mL)中のO-(2-アジドエチル)-O′-(N-ジグリコリル-2-アミノエチル)-ヘプタエチレングリコール(1.059g、1.910mmol)および(S)-2-アミノ-N-(4-(ヒドロキシメチル)フェニル)-6-(((4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル)アミノ)ヘキサンアミド(1.0g、1.910mmol)の淡黄色の溶液にEEDQ(0.476g、1.910mmol)を添加し、反応混合物を室温で7.5時間攪拌した後、減圧下で濃縮した。次いで、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、エチルアセテート/メタノール0~10%)により精製し、標題化合物を濃い無色油状物として収得した(1.53g、76%)。
SC_ACID_M1200:1082[M+Na]+、1058[M-H]-
【0199】
工程4:4-((S)-35-アジド-2-(4-(((4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル)アミノ)ブチル)-4,8-ジオキソ-6,12,15,18,21,24,27,30,33-ノナオキサ-3,9-ジアザペンタトリアコンタンアミド)ベンジル((S)-7-エチル-8,11-ジオキソ-7,8,11,13-テトラヒドロ-10H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-7-イル)カーボネートの合成
【化26】
【0200】
FL118(70mg、0.178mmol)およびDMAP(82mg、0.669mmol)を乾燥ジクロロメタン(10mL)で混合した後、乾燥ジクロロメタン(2mL)に溶解されたトリホスゲンを一度に添加した。褐色(brownish)の懸濁液を1時間攪拌した。LCMS(sample in MeOH)によりFL118に相応するメチルカーボネートへのほぼ完全な変換を確認した。その後、乾燥ジクロロメタン(2mL)中の(S)-2-(32-アジド-5-オキソ-3,9,12,15,18,21,24,27,30-ノナオキサ-6-アザドトリアコンタンアミド)-N-(4-(ヒドロキシメチル)フェニル)-6-(((4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル)アミノ)ヘキサンアミド(189mg、0.178mmol)を一度に添加した。反応混合物を30分間攪拌した後、真空下で蒸発させた。残渣をDMSOに取り込み、濾過した後、ベーシック分取MPLCにより精製し、標題化合物(178mg、67%)を白色の固形物として収得した。
SC_BASE_M1800:1500[M+Na]+、1206[M-MTT+H]+
【0201】
工程5:4-((S)-35-アミノ-2-(4-(((4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル)アミノ)ブチル)-4,8-ジオキソ-6,12,15,18,21,24,27,30,33-ノナオキサ-3,9-ジアザペンタトリアコンタンアミド)ベンジル((S)-7-エチル-8,11-ジオキソ-7,8,11,13-テトラヒドロ-10H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-7-イル)カーボネートの合成
【化27】
【0202】
テトラヒドロフラン(4.5mL)中の4-((S)-35-アジド-2-(4-(((4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル)アミノ)ブチル)-4,8-ジオキソ-6,12,15,18,21,24,27,30,33-ノナオキサ-3,9-ジアザペンタトリアコンタンアミド)ベンジル((S)-7-エチル-8,11-ジオキソ-7,8,11,13-テトラヒドロ-10H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-7-イル)カーボネート(177mg、0.120mmol)の溶液に水(2.25mL)を添加し、次いでTHF(0.239mL、0.239mmol)中のトリメチルホスフィン(1.0M)の溶液を添加した。混合物を室温で1時間攪拌し、イエロー・ピンク(yellow-pink)色の溶液を収得した。混合物を乾燥し、濃縮し、次の工程で直接使用した。
SC_BASE_M700-1900:1452[M+H]+
【0203】
工程6:3-(4,5-ジブロモ-2-メチル-3,6-ジオキソ-3,6-ジヒドロピリダジン-1(2H)-イル)プロパン酸の合成
【化28】
【0204】
2,3-ジブロモマレイン酸(500mg、1.826mmol)を酢酸(15mL)に溶解し、30分間還流条件で加熱した。前記溶液に酢酸(2mL)中のジ-tert-ブチル1-(3-(tert-ブトキシ)-3-オキソプロピル)-2-メチルヒドラジン-1,2-ジカルボキシレート(615mg、1.643mmol)の溶液を添加し、混合物を還流条件で3時間さらに攪拌した。次いで、混合物を室温で冷却し、トルエン(2x)およびジクロロメタン(2x)と一緒に濃縮し、共-蒸発させ、オレンジ色の油状物を収得した。次いで、フラッシュカラムクロマトグラフィー(24g;50~100%エチルアセテート in n-ヘプタン+1%酢酸)により精製し、標題化合物(408mg)を淡黄色の油状物として収得した。
【0205】
SC_ACID:357[M+H]+、2 Br isotope pattern
1H NMR(400 MHz、DMSO)δ 12.48(s、1H)、4.27(d、J=7.4 Hz、3H)、3.56(s、5H)、2.62(t、J=7.4 Hz、3H)。
【0206】
工程7:4-((S)-39-(4,5-ジブロモ-2-メチル-3,6-ジオキソ-3,6-ジヒドロピリダジン-1(2H)-イル)-2-(4-(((4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル)アミノ)ブチル)-4,8,37-トリオキソ-6,12,15,18,21,24,27,30,33-ノナオキサ-3,9,36-トリアザノナトリアコンタンアミド)ベンジル((S)-7-エチル-8,11-ジオキソ-7,8,11,13-テトラヒドロ-10H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-7-イル)カーボネートの合成
【化29】
【0207】
ペプチドグレードのN,N-ジメチルホルムアミド(4mL)中の3-(4,5-ジブロモ-2-メチル-3,6-ジオキソ-3,6-ジヒドロピリダジン-1(2H)-イル)プロパン酸(128mg、0.360mmol)の溶液にHATU(137mg、0.360mmol)を添加し、前記溶液に4-((S)-35-アミノ-2-(4-(((4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル)アミノ)ブチル)-4,8-ジオキソ-6,12,15,18,21,24,27,30,33-ノナオキサ-3,9-ジアザペンタトリアコンタンアミド)ベンジル((S)-7-エチル-8,11-ジオキソ-7,8,11,13-テトラヒドロ-10H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-7-イル)カーボネート[粗製](174mg、0.120mmol)を添加した後、混合物を15分間攪拌した。次いで、DIPEA(0.063mL、0.360mmol)を添加し、室温で1時間攪拌した。
【0208】
前記反応混合物を酸性分取MPLCによって直接精製し、生成物画分を合わせて、凍結乾燥し、白色の固形物の生成物(120mg)を収得した。分析の結果、前記生成物は、標題化合物およびMMT-脱保護(deprotected)化合物の4/1の混合物であることが確認された。
SC_ACID_M1000-1800:1790[M+H]+、2 Br-isotope pattern
【0209】
工程8:FL118-リンカー3複合体の合成
【化30】
【0210】
ジクロロメタン(3mL)中の4-((S)-39-(4,5-ジブロモ-2-メチル-3,6-ジオキソ-3,6-ジヒドロピリダジン-1(2H)-イル)-2-(4-(((4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル)アミノ)ブチル)-4,8,37-トリオキソ-6,12,15,18,21,24,27,30,33-ノナオキサ-3,9,36-トリアザノナトリアコンタンアミド)ベンジル((S)-7-エチル-8,11-ジオキソ-7,8,11,13-テトラヒドロ-10H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-7-イル)カーボネート(115mg、0.064mmol)の溶液にアニソール(0.028mL、0.257mmol)を添加し、次いで、ジクロロ酢酸(0.064mL、0.771mmol)を添加した。反応混合物が明るいオレンジ色に変わることを確認し、室温で45分間攪拌した。前記反応混合物にMTBE(1.5mL)を添加した後、懸濁液を2~3分間激しく攪拌した。攪拌を止めた後、バイアル(vial)底に沈殿物が形成されることを確認した。ピペットで溶媒を除去した後、MTBE(10mL)を添加し、トリチュレート過程を6回繰り返した。残留懸濁液を減圧下に40℃で乾燥し、標題化合物(90mg、92%)を白色の固形物として収得した。
【0211】
UPLC_AN_ACID_M1600:1518[M+H]+
1H NMR(400 MHz、DMSO)δ 10.18(s、1H)、8.48(s、1H)、8.21(d、J=8.0 Hz、1H)、8.10(dd、J=10.0、5.0 Hz、2H)、7.81-7.56(m、5H)、7.53(s、2H)、7.32(d、J=8.4 Hz、2H)、6.94(s、1H)、6.29(s、2H)、5.82(s、1H)、5.50(s、2H)、5.25(s、2H)、5.19-5.01(m、2H)、4.47(q、J=7.9 Hz、1H)、4.26(t、J=7.0 Hz、2H)、4.11-3.91(m、4H)、3.54(s、3H)、3.51-3.40(m、30H)、3.30-3.24(m、2H)、3.15(q、J=5.8 Hz、2H)、2.83-2.72(m、2H)、2.44(t、J=7.0 Hz、2H)、2.22-2.08(m、2H)、1.83-1.62(m、2H)、1.61-1.48(m、2H)、1.44-1.20(m、3H)、0.89(t、J=7.4 Hz、3H)。
【0212】
実施例4:FL118-リンカー4複合体の作製
工程1:(9H-フルオレン-9-イル)メチル(S)-(1-((4-(ヒドロキシメチル)フェニル)アミノ)-6-(((4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル)アミノ)-1-オキソヘキサン-2-イル)カルバメートの合成
【化31】
【0213】
ジクロロメタン(20mL)中の4-アミノベンジルアルコール(0.404g、3.28mmol)およびFmoc-Lys(Mmt)-OH(2g、3.12mmol)の溶液にEEDQ(0.809g、3.25mmol)を添加し、室温で一晩攪拌した。反応混合物をジクロロメタン(40mL)で希釈し、水(40mL)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮し、黄色がかった泡状物(foam)を収得した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(40gシリカ、Hept/エチルアセテート0~100%)により精製し、標題化合物(1.54g、66%)を白色の泡状物として収得した。
SC_ACID:273[MMT]+、522[M-Fmoc-H]-
【0214】
工程2:(9H-フルオレン-9-イル)メチル((S)-1-((4-((((((S)-7-エチル-8,11-ジオキソ-7,8,11,13-テトラヒドロ-10H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-7-イル)オキシ)カルボニル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)-6-(((4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル)アミノ)-1-オキソヘキサン-2-イル)カルバメートの合成
【化32】
【0215】
FL118(50mg、0.127mmol)およびDMAP(58.4mg、0.478mmol)を乾燥ジクロロメタン(7mL)に混合し、トリホスゲン(17.02mg、0.057mmol)が溶解された乾燥ジクロロメタン(1.5mL)を一度に添加した後、褐色の懸濁液を30分間攪拌した。次いで、乾燥ジクロロメタン(1.5mL)中の(9H-フルオレン-9-イル)メチル(S)-(1-((4-(ヒドロキシメチル)フェニル)アミノ)-6-(((4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル)アミノ)-1-オキソヘキサン-2-イル)カルバメート(95mg、0.127mmol)を一度に添加し、ゆっくりと褐色の溶液を収得した。反応混合物を乾燥蒸発させ、褐色/灰色の泡状物を収得した後、カラムクロマトグラフィー(12g;0~5%メタノールin dichloromethane)により精製し、標題化合物(107mg、72%)をオレンジ色の/褐色の泡状物として収得した。
【0216】
SC_ACID:892[M-MMT+H]+
1H NMR(400 MHz、CDCl3)δ 8.07(s、1H)、7.86(s、1H)、7.71(d、J=7.6 Hz、2H)、7.56-7.27(m、16H)、7.25-7.11(m、10H)、7.09(s、1H)、6.78(d、J=8.8 Hz、2H)、6.12(s、2H)、5.68(d、J=17.1 Hz、1H)、5.37(d、J=17.0 Hz、1H)、5.28-5.04(m、5H)、4.46(d、J=6.6 Hz、2H)、4.15(s、2H)、3.75(s、3H)、3.48-3.38(m、1H)、2.32-2.20(m、1H)、2.19-2.08(m、3H)、1.50(s、3H)、1.40-1.28(m、2H)、0.98(t、J=7.5 Hz、3H)。
【0217】
工程3:4-((S)-2-アミノ-6-(((4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル)アミノ)ヘキサンアミド)ベンジル((S)-7-エチル-8,11-ジオキソ-7,8,11,13-テトラヒドロ-10H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-7-イル)カーボネートの合成
【化33】
【0218】
(9H-フルオレン-9-イル)メチル((S)-1-((4-((((((S)-7-エチル-8,11-ジオキソ-7,8,11,13-テトラヒドロ-10H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-7-イル)オキシ)カルボニル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)-6-(((4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル)アミノ)-1-オキソヘキサン-2-イル)カルバメート(162mg、0.139mmol)を乾燥ジクロロメタン(2.5mL)に溶解させ、ジエチルアミン(1.3mL、12.44mmol)を添加した後、室温で2時間攪拌し、懸濁液が形成されることを確認した。反応混合物を乾燥蒸発し、標題化合物(154mg)を黄色の/ベージュ色の固形物として収得し、次の工程で使用した。
SC_ACID:964 {M+Na]+、670[M-MMT+H]+
【0219】
【0220】
ジクロロメタン(2.5mL)中のDBCO-PEG6-アミンTFA塩(196mg、0.270mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(0.708mL、4.05mmol)の溶液を室温で10分間攪拌した。次いで、無水ジグリコール酸(62.7mg、0.540mmol)を添加し、反応混合物を室温で一晩攪拌した。次いで、水(0.125mL)を添加し、室温で4時間攪拌した。混合物をジクロロメタン(2mL)で希釈し、透明な溶液を収得し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過し、濃縮し、標題化合物および残渣DIPEAを含有する濁った黄色の(yellow turbid)の油状物(340mg)を収得した。これを次の工程で使用した。
SC_ACID:728[M+H]+
【0221】
工程5:ジベンゾシクロオクチン-PEG-Lys(MMT)-PABC-FL118の合成
【化35】
【0222】
ジクロロメタン(10mL)中のDBCO-PEG-酸(296mg、0.244mmol)にHATU(111mg、0.292mmol)を添加し、混合物を室温で20分間攪拌した。4-((S)-2-アミノ-6-(((4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル)アミノ)ヘキサンアミド)ベンジル((S)-7-エチル-8,11-ジオキソ-7,8,11,13-テトラヒドロ-10H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-7-イル)カーボネート(270mg、0.244mmol)を添加し、混合物を室温で攪拌した。前記溶液をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ12g;0~10%メタノールin dichloromethane)により精製し、11~13画分を合わせて、濃縮し、黄白色(off-white)の固形物の化合物(139mg)を収得した。これを塩基性分取MPLCにより精製し、標題化合物(86mg、21%)を白色の固形物として収得した。
【0223】
SC_BASE_M700-2000:1652[M+H]+
1H NMR(400 MHz、DMSO)δ 10.15(s、1H)、8.47(s、1H)、8.15(d、J=8.0 Hz、1H)、8.08(t、J=5.8 Hz、1H)、7.76(t、J=5.6 Hz、1H)、7.70-7.65(m、1H)、7.64-7.49(m、6H)、7.49-7.40(m、3H)、7.39-7.10(m、20H)、6.93(s、1H)、6.81(d、J=8.9 Hz、2H)、6.28(d、J=2.1 Hz、2H)、5.50(s、2H)、5.23(s、2H)、5.15-4.98(m、3H)、4.48-4.40(m、1H)、4.03-3.93(m、4H)、3.69(s、3H)、3.50-3.37(m、23H)、3.30-3.20(m、4H)、3.12-3.03(m、2H)、2.62-2.54(m、1H)、2.45-2.40(m、1H)、2.27-2.09(m、3H)、2.02-1.89(m、3H)、1.79-1.57(m、3H)、1.51-1.44(m、2H)、1.37-1.22(m、3H)、0.89(t、J=7.4 Hz、3H)。
【0224】
工程6:ジベンゾシクロオクチン-FEG-Lys-PABC-FL118(FL118-リンカー4複合体)の合成
【化36】
【0225】
前記工程5で収得した化合物をジクロロメタン(0.5mL)に溶解させ、硫酸ナトリウムで一晩乾燥させた。その後、前記溶液を反応チューブに移し、乾燥蒸発させた。アニソール(0.052mL、0.472mmol)およびジクロロ酢酸(0.039mL、0.472mmol)が溶解されたジクロロメタン(4mL)を添加し、黄色の反応混合物を室温で30分間攪拌した。tert-ブチルメチルエーテル(15mL)を添加し、懸濁液が形成されたが、生成物が十分に沈殿されずに減圧下で室温で溶媒を蒸発させた。tert-ブチルメチルエーテル(5mL)を添加し、懸濁液を収得した後、0℃で攪拌した後、ピペットで溶媒を除去した。MTBE(5mL)で4回繰り返し、トリチュレートし、標題化合物(56mg)を明黄色の固形物として収得した。
【0226】
AN_BASE_M700-2000:1379[M+H]+
1H NMR(400 MHz、DMSO)δ 10.19(s、1H)、8.48(s、1H)、8.21(d、J=8.1 Hz、1H)、8.10(t、J=5.8 Hz、1H)、7.80-7.64(m、4H)、7.64-7.56(m、3H)、7.56-7.16(m、11H)、6.94(s、1H)、6.29(s、2H)、6.14(s、1H)、5.50(s、2H)、5.24(s、2H)、5.19-4.98(m、3H)、4.53-4.43(m、1H)、4.10-3.93(m、4H)、3.53-3.40(m、23H)、3.30-3.27(m、4H)、2.77(s、2H)、2.63-2.54(m、1H)、2.28-2.08(m、3H)、2.04-1.93(m、1H)、1.80-1.66(m、2H)、1.61-1.49(m、2H)、1.44-1.27(m、2H)、0.89(t、J=7.4 Hz、3H)。
【0227】
実施例5:抗-HER2抗体-リンカー1-FL118免疫複合体(DAR 8)の作製
オリジナルバッファー(20mMヒスチジン、150mM塩化ナトリウム、pH6.0)中、抗-HER2抗体(トラスツズマブ)を5mMTCEPで還元させ、反応バイアルを6時間60rpm回転速度で22℃でインキューベータ-シェーカーに置いた。還元後、スピン脱塩カラム(40K、2mL)を介してTCEPを除去した。
【0228】
DMSOおよびFL118-リンカー1化合物溶液(DMSO中10mg/mLストック、抗体に対する12eq.)を最終DMSO濃度が10%である還元された抗体溶液に添加した。反応混合物を適宜混合し、反応バイアルを4℃で2時間放置した。
【0229】
コンジュゲート後、反応混合物をスピン脱塩カラム(40K、5mL)を介して18mMのMES(pH6.5)で交換バッファーに入れた。次いで、生成物を0.2μmのPVDF1回用フィルターを介して滅菌濾過させた。結果物である免疫複合体を特性化し、0.07mMPS80および20mMトレハロース脱水物を添加した後、生成された免疫複合体を凍結乾燥させた。
【0230】
HICおよびMSを用いて実施例5の免疫複合体のDARを決定し、平均MS-DAR
値は、7.14、HIC-DAR値は、8.00により確認された。(表1および
図5b)。
【0231】
【0232】
実施例6:抗-HER2抗体-リンカー1-FL118複合体(DAR4)の作製
オリジナルバッファー(20mMヒスチジン、150mM塩化ナトリウム、pH6.0)中、抗-HER2抗体(トラスツズマブ)を5mMTCEPで還元させ、反応バイアルを3時間60rpm回転速度で22℃でインキューベータ-シェーカーに置いた。還元後、スピン脱塩カラム(40K、2mL)を介してTCEPを除去した。
【0233】
DMSOおよびFL118-リンカー化合物溶液(DMSO中10mg/mLストック、抗体に対する10eq.)を最終DMSO濃度が10%である還元された抗体溶液に添加した。反応混合物を適宜混合し、反応バイアルを4℃で2時間放置した。
【0234】
コンジュゲート後、反応混合物をスピン脱塩カラム(40K、5mL)を介して18mMのMES(pH6.5)で交換バッファーに入れた。次いで、生成物を0.2μmのPVDF1回用フィルターを介して滅菌濾過させた。結果物である免疫複合体を特性化し、0.07mM PS80および20mMトレハロース脱水物を添加した後、生成された免疫複合体を凍結乾燥させた。
【0235】
HICおよびMSを用いて実施例6の免疫複合体のDARを決定し、平均MS-DAR値は、4.02により確認された(表2、および
図5a)。
【0236】
【0237】
実施例7:抗-HER2抗体-リンカー2-FL118複合体および抗-HER2抗体-リンカー3-FL118複合体の作製
オリジナルバッファー(20mMヒスチジン、150mM塩化ナトリウム、pH6.0)中の抗-HER2抗体(トラスツズマブ)を5mMTCEPで還元させるために反応バイアルを3時間25℃で設定された恒温水槽中に置いた。還元後、スピン脱塩カラム(100K、0.5mL)を介してTCEPを除去した。
【0238】
DMSO、およびFL118-リンカー2化合物溶液またはFL118-リンカー3化合物溶液(それぞれDMSO中、5mMストック、抗体に対する20eq.)を最終DMSO濃度が10%である還元された抗体溶液に添加した。反応混合物を適宜混合し、反応バイアルを25℃で設定された恒温水槽中に4時間置いた。反応終了のために混合物にシステイン溶液(蒸留水中10mMストック、抗体に対する40eq.)を反応液に添加した後、同一条件で30分間放置した。
【0239】
当該反応物をリン酸塩緩衝液条件下でSECカラムを介して精製し、SDS PAGE、SECおよびHICを用いて実施例7の免疫複合体が作製されたことを確認した。
【0240】
実施例8:抗-EGFR抗体-リンカー1-FL118複合体(DAR 8)の作製
オリジナルバッファー(20mMヒスチジン、150mM塩化ナトリウム、pH6.0)中、抗-EGFR抗体(セツキシマブ)を5mMのTCEPで還元させ、反応バイアルを3時間60rpm回転速度で22℃でインキューベータ-シェーカーに置いた。還元後、スピン脱塩カラム(40K、2mL×2)を介してTCEPを除去した。
【0241】
DMSOおよびFL118-リンカー化合物溶液(DMSOの10mg/mLストック、抗体に対する12eq.)を最終DMSO濃度が10%である還元された抗体溶液に添加した。反応混合物を適宜混合し、反応バイアルを4℃で2時間放置した。
【0242】
コンジュゲート後、反応混合物をスピン脱塩カラム(40K、10mL)を介して18mMMES(pH6.5)で交換バッファーに入れた。次いで、生成物を0.2μmのPVDF1回用フィルターを介して滅菌濾過させた。結果物である免疫複合体を特性化し、0.07mMPS80および20mMトレハロース脱水物を添加した後、生成された免疫複合体を凍結乾燥させた。
【0243】
HICおよびMSを用いて実施例8の免疫複合体のDARを決定し、平均MS-DAR値は、8.00により確認された(表3)。
【0244】
【0245】
実施例9:抗-Trop-2抗体-リンカー1-FL118複合体(DAR 8)の作製
抗-EGFR抗体(セツキシマブ)の代わりに抗-Trop-2抗体(サシツズマブ)を使用したこと以外は、実施例8と同様の方法で抗-Trop-2抗体-リンカー1-FL118複合体(DAR8)を用意した(表4)。
【0246】
【0247】
実施例10:試験管内(in vitro)細胞毒性および生体内(in vivo)の薬効を評価するために使用される動物モデルおよび材料の準備
本研究における動物取り扱い、管理、および治療に関連する全ての手順は、実験室動物の管理評価および認証協会(AAALAC)の指針に従って、Shanghai Model Organisms Center、Inc.の施設内動物管理および使用委員会(IACUC)により承認された指針に従って行った。体重が16~18gである9~11週齢の雌マウス30匹をそれぞれのケージ(300mM×180mM×150mM)に3~5匹ずつ収容し、一定温度(18~26℃)および湿度(40~70%)で管理し、個別喚起ケージで放射線殺菌した乾燥顆粒飼料および滅菌食用水に自在に接近できるようにした。
【0248】
実施例5(分子量159kDa、純度97%)、実施例6(分子量154kDa、純度98%)、実施例8(分子量160kDa、純度99%)および実施例9(分子量160kDa、純度99.6%)の免疫複合体は、それぞれ-80℃で保存された凍結乾燥粉末状態で用意したものを使用した。
【0249】
-80℃で保存された溶液状態でBCDによって供給されるトラスツズマブ(分子量148kDa、純度97%)は、緩衝液(20mMヒスチジン、150mM塩化ナトリウム、pH6.0)に溶解された状態(濃度10.09mg/mL)に対照群として使用し、セツキシマブ(分子量148kDa、純度100%)は、緩衝液(20mMヒスチジン、150mM塩化ナトリウム、pH 6.0)に溶解された状態(濃度10.47mg/mL)として使用し、サシツズマブ(分子量148kDa、純度100%)は、緩衝液に溶解された状態で使用した。
【0250】
-80℃で保存された溶液状態のBCDによって供給されるDS8201(分子量156kDa、純度99%)は、緩衝液(25mMヒスチジン、pH 5.5)に溶解された状態(濃度2.87mg/mL)に対照群として使用した。DS8201は、トラスツズマブとデルクステカン(deruxtecan)の免疫複合体であって、実施例5および6の免疫複合体と抗-HER2標的化抗体は、トラスツズマブで同一であり、細胞毒性の薬物(ペイロード)であるデルクステカンは、トポイソメラーゼI阻害剤として実施例のFL118と構造および機能的な側面で類似する点がある。しかし、DS8201は、テトラペプチド-に基づく切断可能なリンカー(cleavable tetrapeptide-based linker)を用いてリンカーの構造および特性において、実施例5および6の免疫複合体と差がある。DS8201は、内在化された後、切断され、薬物が放出される特性を有し、放出された薬物は、細胞膜透過性が高くて、標的発現に拘わらず、周辺癌細胞まで細胞毒性を示すことが知られている(Cancer Sci 2016;107:1039~1046)。また、近年、HER2陽性転移性乳がん患者を対象とする第2臨床試験で優れた効果が報告されており(N Engl J Med 2020;382:610~621)、米国FDAから2017年および2020年にそれぞれHER2陽性再発・転移性乳がんおよびHER2陽性再発・転移性胃癌に対して画期的な治療剤として指定されたことがある。
【0251】
【0252】
実施例11:試験管内(in vitro)細胞毒性評価
実施例5、6、8および9の免疫複合体および対照群としてDS8201に対し、HER2過剰発現JIMT-1乳癌細胞株、EGFR過剰発現MDA-MB-468乳癌細胞株またはMDA-MB-468細胞株に対する細胞毒性の分析は、以下のような工程で実施した。
【0253】
JIMT-1細胞またはMDA-MB-468細胞に対する免疫複合体媒介細胞毒性は、細胞生存力測定によって決定した。0日目に10%FBS(HyClone、SV30087.03)を含む50μlのDMEM(Gibco、#11995-065)を分注した96-ウェルプレート(Greinier、# 655090)にJIMT-1をウェル当たり6×103個細胞(3日培養の場合)またはウェル当たり3×103個細胞(6日培養の場合)で播種した。MDA-MB-468細胞の場合には、0日目に10%FBS(HyClone、SV30087.03)を含む50μlのRPMI(Gibco、#11875-093)を分注した96-ウェルプレート(Greinier、#655090)にウェル当たり6×103個細胞(3日培養の場合)またはウェル当たり3×103個細胞(6日培養の場合)で播種した。翌日、免疫複合体のサンプルを連続して3倍希釈(2000、666.667、222.222、74.074、24.6914、8.2305、2.7435、0.9145、0.3048、0.1016および0nM)した後、50μl/ウェルで播種された細胞にそれぞれ追加した。細胞を37℃、5%CO2インキュベーターで3日または6日間培養した。
【0254】
4日目または7日目にメーカーの取り扱い説明書に従ってCellTiter-Glo(Promega、# G7573)を用いて細胞生存力を検出した。プレートをほぼ15分間、室温まで平衡させた後、50μl/ウェルのCellTiter-Glo溶液を添加した。プレートを約1分間、緩やかに振とうさせた後、室温で10分間培養した。その後、Envision(PerkinElmer)を用いて発光を読み取った。
【0255】
各免疫複合体について得た細胞毒性効果は、以下の式で対照群ウェル(cell only)で得た発光値と比較して計算した。
細胞毒性%=100×(Vcell only-Vsample)/Vcell on
ly
【0256】
GraphPad Prism6.0ソフトウェアを用いて細胞毒性に対するIC50値を得るために、4個のパラメーター非線形回帰分析を使用した。
【0257】
結果
実施例5の免疫複合体を添加し、3日または6日間JIMT-1細胞を培養した場合の両方ともに細胞毒性効果を示し、アポトーシスを誘発した。驚くべきことに、実施例5の免疫複合体は、DS8201(陽性対照群)より著しく優れた細胞毒性効果を示した。3日間培養した場合、DS8201は、わずか27.2%の細胞毒性を示したのに対し、実施例5の免疫複合体は、88.6%の細胞毒性を示し、3倍以上の優れた効果を示した。また、6日間培養した場合、実施例5の免疫複合体は、陽性対照群であるDS8201に比べてIC
50値で100倍以上優れた効果があることを確認することができた(
図6)。
【0258】
実施例6の免疫複合体の場合でもJIMT-1細胞に添加し、3日または6日間培養したとき、全部細胞毒性効果を示し、アポトーシスを誘発した。実施例5と同様に、実施例6の免疫複合体も同様にDS8201(陽性対照群)より著しく優れた細胞毒性効果を示した(
図7)。
【0259】
また、実施例8の免疫複合体の場合でも、MDA-MB-468細胞に添加し、3日または6日間培養したとき、全部細胞毒性効果を示し、アポトーシスを誘発した。すなわち、実施例5および6と同様に、実施例8の免疫複合体も同様に相対高い水準の細胞毒性効果を示すことが確認された(
図9)。
【0260】
また、実施例9の免疫複合体の場合でも、MDA-MB-468細胞に添加し、3日または6日間培養したとき、全部細胞毒性効果を示し、アポトーシスを誘発した。すなわち、実施例5、6および8と同様に、実施例9の免疫複合体もまた相当に高い水準の細胞毒性効果を示すことが確認された(
図11)。
【0261】
実施例12:in vivo(in vivo)の薬効評価
12-1.細胞培養
JIMT-1乳癌細胞は、5%CO2、37℃条件で10%FBS、100 U/mLペニシリンおよび100μg/mLストレプトマイシンを含むDMEMで培養し、トリプシン-EDTA処理によって週2回日常的な方法で継代培養した。指数増殖期に増殖する細胞を収穫し、腫瘍を接種するために計数した。MDA-MB-468乳癌細胞は、5%CO2、37℃条件で10%FBS、100U/mLペニシリンおよび100μg/mLストレプトマイシン含有RPMIで培養し、トリプシン-EDTA処理によって週2回日常的な方法で継代培養した。指数増殖期で増殖する細胞を収穫し、腫瘍を接種するために計数した。
【0262】
12-2.腫瘍の接種
マトリゲルのある0.2mLのDPBS中のJIMT-1腫瘍細胞(1×107)またはMDA-MB-468細胞(1×107)を各マウスの右前脇腹に皮下接種した。平均腫瘍体積が約215mM3に達したとき、動物をランダムにグループ分け(表5~表7)した後、薬物効能を研究するための治療を開始した。
【0263】
【0264】
【0265】
【0266】
12-3.観察
定期的なモニタリングの際、移動性(mobility)のような正常な行動、食物および水の消費(観察のみ該当)、体重の変化(週2回体重測定)、眼/髪の艶(matting)、腫瘍成長および治療効果を動物から毎日確認した。死亡および観察された臨床
の徴候は、各サブセット内の動物の数を基準に記録した。
【0267】
12-4.腫瘍測定および終了点
腫瘍成長を遅延させることが可能であるか、マウスを治療することが可能であるかを確認できる時点を主な終了点とした。腫瘍の2次元的大きさはキャリパー(caliper)を用いて週2回測定し、体積は、公式(V=0.5 a×b2、ここでaとbは、それぞれ腫瘍の長径と短径)を用いてmM3で表した。
【0268】
各グループについてTGI(腫瘍成長抑制率)を計算した。
TGI(%)=[1-(Ti/T0)/(Vi/V0)] × 100
(Tiは、所定の日における治療群の平均腫瘍体積であり、T0は、治療1日目の治療群の平均腫瘍体積、Viは、Tiと同じ日の溶媒対照群の平均腫瘍体積、V0は、治療1日目に溶媒グループの平均腫瘍体積)。
【0269】
体重減少が15%以上である、または腫瘍体積が3000mm3以上である動物は、人道的なエンドポイントで安楽死させた。
【0270】
12-5.統計的分析
結果は平均と標準誤差(平均±SEM)で表した。データは、Graphpad Prism 6.0ソフトウェアを用いて、双方向RM ANOVA Dunnettの多重比較検定を用いて分析しており、p<0.05は、統計的に有意なものとみなした。
【0271】
12-6.JIMT-1またはMDA-MB-468腫瘍モデルの体重
JIMT-1またはMDA-MB-468腫瘍モデルマウスの体重を定期的にモニタリングした。表8~表10、
図8、
図10および
図12に示すように、全ての処理群において顕著な体重減少は、観察されなかった。
【0272】
【0273】
【0274】
【0275】
ヒトと異なり、マウス血漿は、高レベルのエステラーゼ活性(esterase activity)を有し、エステルや炭酸塩官能基のような酸感受性結合を容易に切断することができるので、本発明の免疫複合体を腫瘍モデルマウスに投与する場合、体重減少などの副作用が発生することができるものと予測したが、驚くべきことに、このような副作用が全く観察されなかった。前記の結果から、本発明の免疫複合体は、血中でFL118を分離放出したとしても、正常細胞に対しては毒性を示さないことがわかった。
【0276】
12-7.JIMT-1またはMDA-MB-468腫瘍モデルマウスにおける腫瘍成長阻害アッセイ
各グループにおいてJIMT-1またはMDA-MB-468腫瘍モデルマウス(n=3)の平均腫瘍体積を表11~表13にそれぞれ表した。
【0277】
【0278】
【0279】
【0280】
次に、治療後、21日目に腫瘍の大きさ(n=3)を基準としてJIMT-1またはMDA-MB-468腫瘍モデルマウス(n=3)のTGI値を計算した。結果は、表14~表16にそれぞれ示した。
【0281】
【0282】
【0283】
【0284】
JIMT-1またはMDA-MB-468腫瘍モデルマウス(n=3)の腫瘍成長曲線の結果は、
図8、
図10および
図12にそれぞれ示した。試験の結果、生理食塩水の対照群であるグループ1の平均腫瘍の大きさは、処理後21日目にそれぞれ1336.32±361.41mm
3および390.24±45.45mm
3であった。トラスツズマブ、
セツキシマブまたはサシツズマブ治療は、いずれも生理食塩水の対照群と比較して統計的に有意性なしに単に部分的な抗腫瘍効果を示し(p>0.05)、平均腫瘍体積は、それぞれ671.06±92.85mm
3(TGI=59.41%)、363.07±44.38mm
3(TGI=15.92%)および433.08±126.82mm
3(TGI=43.6%)であった。しかし、実施例5の免疫複合体は、投与量1mg/kg、5 mg/kgおよび10mg/kg(グループ3、4および5)でそれぞれ370.14±71.86、102.20±18.12および73.87±12.01mm
3の平均腫瘍体積、実施例8の免疫複合体は、投与量5mg/kgおよび10mg/kg(グループ4および5)でそれぞれ24.59±12.8および7.56±7.56mm
3の平均腫瘍体積、実施例9の免疫複合体は、投与量5mg/kgおよび7mg/kg(グループ5および6)においてそれぞれ77.45±1.46および74.61±11.55mm
3の平均腫瘍体積が著しく優れた抗腫瘍効果を示すことより確認された(実施例5の免疫複合体のTGI=86.31、110.23、112.73%、p<0.01、0.001、0.001;実施例8の免疫複合体のTGI=207.18、216.60%、p<0.001、0.0001;実施例9の免疫複合体のTGI=129.70、130.53%、p<0.01、0.05)。これは、本発明の免疫複合体がそれ自体で既に優れた抗腫瘍効果を示すものとして知られているトラスツズマブ、セツキシマブおよびサシツズマブに比べてより優れた効果を有することを実証するものである。また、本発明の免疫複合体はいずれも用量依存反応を示すことが確認されたので、各患者別に最大の効能および最小の毒性を示すことができるように、患者固有の用法/用量で投与することができる。
【0285】
まとめると、本発明のFL118-リンカー複合体は、目的とする抗原に対する抗体またはその抗原結合断片と結合して、免疫複合体を形成することができる。本発明の一実施例により作製された実施例5および6の免疫複合体は、公知の免疫複合体であるDS8201と同じ抗体(トラスツズマブ)を含み、構造と機能が類似した薬物(ペイロード)を含んでいるにも拘わらず、in vitroでDS8201に比べて癌細胞に対して圧倒的に優れた細胞毒性を示すことが確認された。本発明の一実施例により作製されたセツキシマブを含む実施例8の免疫複合体においても同様にin vitroで強力な細胞毒性を示すことが確認された。本発明の一実施例により作製されたサシツズマブを含む実施例9の免疫複合体も、in vitroで強力な細胞毒性を示すことが確認された。
【0286】
また、実施例5の免疫複合体およびトラスツズマブを、実施例8の免疫複合体とセツキシマブ、および実施例9の免疫複合体とサシツズマブの抗癌活性を腫瘍モデルマウスで試験した結果、トラスツズマブ、セツキシマブ及びサシツズマブも一部抗癌効果を示してはいるが、本発明の免疫複合体は、投与したすべての用量において著しく優れた抗癌活性を示し、体重減少などの副作用もみられなかったことが確認された。
【0287】
したがって、本発明の免疫複合体は、癌の予防または治療用途として非常に有用に使用することができ、本発明のFL118-リンカー複合体は、前記免疫複合体を作製する目的で非常に有用に使用することができる。
【0288】
以上の説明から、本発明の属する技術分野の当業者は、本発明がその技術的思想や必須的な特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施することができることを理解されるはずである。これに関連して、上述した実施例はすべての面で例示的なものであって、限定的なものではないものと理解されなければならない。本発明の範囲は、前記詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその均等概念から導き出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【国際調査報告】