(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-09
(54)【発明の名称】少なくとも2つの部位を有するコポリマーの生体接着性および立体的相互作用を用いて、細胞、組織、器官系および生体に対する外部の影響により媒介される有害作用を最小限に抑える方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/785 20060101AFI20230802BHJP
A61K 31/77 20060101ALI20230802BHJP
A61K 31/74 20060101ALI20230802BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20230802BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230802BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20230802BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20230802BHJP
A61P 11/04 20060101ALI20230802BHJP
A61P 13/00 20060101ALI20230802BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230802BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20230802BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230802BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
A61K31/785 ZNA
A61K31/77
A61K31/74
A61P31/12
A61P27/02
A61P1/02
A61P11/02
A61P11/04
A61P13/00
A61P1/04
A61P31/16
A61P31/14
C07K16/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567891
(86)(22)【出願日】2021-05-07
(85)【翻訳文提出日】2023-01-06
(86)【国際出願番号】 US2021031266
(87)【国際公開番号】W WO2021226441
(87)【国際公開日】2021-11-11
(32)【優先日】2020-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522435207
【氏名又は名称】カーム ウォーター セラピューティクス エル・エル・シー
【氏名又は名称原語表記】CALM WATER THERAPEUTICS LLC
【住所又は居所原語表記】144 Southern Parkway, Rochester, NY 14618, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド エム. クラインマン
【テーマコード(参考)】
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086FA02
4C086FA03
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA17
4C086MA23
4C086MA43
4C086MA52
4C086MA56
4C086MA57
4C086MA58
4C086MA59
4C086MA66
4C086NA06
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZA34
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA67
4C086ZA81
4C086ZB33
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA50
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
少なくとも2つの部位を有するコポリマーに特異的な生体接着性および立体的相互作用を用いて、細胞、組織、器官系および生体に対する外部の影響により媒介される有害作用を最小限に抑える方法。コポリマーは、静電的および疎水性相互作用、ならびに親水性部位による不活性化により、生体接着性を発揮する。該コポリマーは、標的細胞のウイルス感染率を低下させ、宿主の罹患率を低下させるのに有用である。該コポリマーは、角膜上皮毒性を含むADCに伴う毒性の低減に有用である。該コポリマーの製剤は、安全でありかつ十分な忍容性を有する。前駆または幹細胞角膜上皮細胞を含む上皮細胞および表面を該コポリマーで処理することで、有用性および有益性が得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスフェクションに関与する組織を、カチオン性、疎水性またはアニオン性のいずれかの部位と親水性不活性化部位とを有するグラフトまたはブロックコポリマーの有効量で処理することにより、ウイルス感染力を低減する方法。
【請求項2】
前記コポリマーは、PLL-g-PEGである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記製剤の前記グラフトコポリマーは、カチオン性骨格と、水溶性でかつ非イオン性の側鎖とを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記製剤の前記ブロックコポリマーは、少なくとも1つのカチオン性ブロックと、少なくとも1つの水溶性でかつ非イオン性のブロックとを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記製剤の前記ブロックコポリマーは、疎水性である少なくとも1つのブロックと、水溶性でかつアニオン性、カチオン性または非イオン性である少なくとも1つのブロックとを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記コポリマーの製剤が投与される生体表面は、被験体の眼粘膜、口腔粘膜、鼻粘膜および気道粘膜、気道上皮、泌尿器粘膜、胃腸粘膜から選択される粘膜である、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記コポリマーの製剤が投与される生体表面は、眼の表面である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
ウイルス感染は、コロナウイルス、インフルエンザウイルス、エボラウイルスおよび粘膜曝露により伝播する新型ウイルスから選択される、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記ウイルスは、SARS-COV-2である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記製剤の前記グラフトコポリマーまたはブロックコポリマーは、前記製剤の0.001~40%を占める、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記製剤の前記グラフトコポリマーまたはブロックコポリマーは、前記製剤の0.1~10%を占める、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
不活性化作用は、SARS-Cov-2スパイクタンパク質およびリスクのある細胞上のACE2受容体の干渉に基づく、請求項8記載の方法。
【請求項13】
治療効果は、一般的な立体阻害である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
(抗体薬物複合体の使用により有害作用を受ける)細胞および組織に、静電的および立体的媒介特性を有するコポリマーの有効量を適用することによって、(有害作用を示す)非新生細胞に損傷を与える抗体薬物複合体の使用に伴う有害事象を低減する方法。
【請求項15】
前記コポリマーは、カチオン性グラフトコポリマー、カチオン性ブロックコポリマー、疎水性グラフトコポリマー、疎水性ブロックコポリマー、アニオン性グラフトコポリマーおよびアニオン性ブロックコポリマーから選択される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記コポリマーは、粉末、溶液、懸濁液、局所用剤、静脈内用剤、経口剤、口腔洗浄剤、鼻腔用スプレー、点眼剤のうちの1つ以上のアプローチで製剤化されている、請求項14または15記載の方法。
【請求項17】
コポリマー溶液の割合は、最小で0.01重量%である、請求項14または15記載の方法。
【請求項18】
コポリマー溶液の割合は、溶液および懸濁液の場合には最大で40重量%である、請求項14または15記載の方法。
【請求項19】
前記コポリマーは、PLL-g-PEGである、請求項14記載の方法。
【請求項20】
前記コポリマーは、上掲の本出願に記載の組み合わせのリストから選択される、請求項14記載の方法。
【請求項21】
生体接着性および不活性化成分を有するコポリマーをオフターゲットの薬剤取り込みのリスクのある細胞に投与することにより、ADCに伴う角膜上皮毒性を低減する方法。
【請求項22】
前記コポリマーを、角膜上皮細胞および結膜上皮細胞に適用する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記コポリマーは、PLL-g-PEGである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記製剤は、結膜下腔に送達するための溶液である、請求項14記載の方法。
【請求項25】
ヒトにおける抗体薬物複合体の使用に伴う有害事象を低減する方法であって、静電的および立体的媒介特性を有するコポリマーの有効量を、前記有害事象に関与する細胞に適用する、方法。
【請求項26】
前記コポリマーは、カチオン性グラフトコポリマー、カチオン性ブロックコポリマー、疎水性グラフトコポリマー、疎水性ブロックコポリマー、アニオン性グラフトコポリマーおよびアニオン性ブロックコポリマーから選択される、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記コポリマーは、上掲の本開示におけるポリマーから選択される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
生体接着性および不活性化特性を有するコポリマーの有効量を角膜上皮細胞に適用することにより、ADCから切断される細胞毒に伴う小嚢胞様上皮毒性を低減する方法。
【請求項29】
前記コポリマーは、PLL-g-PEGである、請求項28記載の方法。
【請求項30】
全身性ADC療法の開始前に、生体接着性および不活性化部位を有するコポリマーを眼に送達することにより、ADCの使用に伴う眼の有害事象の割合および重症度を低減する方法。
【請求項31】
全身性ADC療法の開始後に、生体接着性および不活性化部位を有するコポリマーを眼に送達することにより、ADCの使用に伴う眼の有害事象の兆候および症状を改善する方法。
【請求項32】
ADCへの曝露前に、生体接着性および不活性化部位を有するコポリマーに、辺縁幹細胞、一過性増幅細胞、基底上皮細胞、翼細胞および角膜上皮細胞のうちのいずれかを曝露することによって、前記細胞へのADCの取り込みを低減する方法。
【請求項33】
ADCへの曝露後に、生体接着性および不活性化部位を有するコポリマーに、辺縁幹細胞、一過性増幅細胞、基底上皮細胞、翼細胞および角膜上皮細胞のうちのいずれかを曝露することによって、前記細胞へのADCの取り込みを低減する方法。
【請求項34】
ADCへの曝露の前または後に、生体接着性および不活性化部位を有するコポリマーに、辺縁幹細胞、辺縁上皮細胞、辺縁上皮娘細胞、一過性増幅細胞、基底上皮細胞、翼細胞、角膜上皮細胞および分化した角膜上皮細胞のうちのいずれかを曝露し、その際、前記コポリマーの重量/重量計算に基づく有効割合を有する製剤を用いることによって、前記細胞へのマクロピノサイトーシスによるADCの取り込みを低減する方法。
【請求項35】
生体接着性および不活性化部位を有するコポリマーを用いて患者を治療し、その際、有効な量を用いることによって、ADCに伴う眼の有害事象を低減する方法。
【請求項36】
細胞レベルで静電的および立体的相互作用を示すコポリマーを使用して、SARS-Cov-2、新型ウイルス、エピデミックの状態にあるウイルス、ヒトの病的状態および罹患を招き得る細胞毒性ペイロードを有するADCから選択される因子への当該細胞の曝露によって生じる有害作用を最小限に抑える方法。
【請求項37】
カチオン性グラフトコポリマー製剤の有効量で眼を治療することにより、ペイロードとしてチューブリン破壊剤を有するADCへのヒトの全身性曝露による眼毒性を低減する方法。
【請求項38】
前記カチオン性グラフトコポリマーは、PLL-g-PEGである、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記治療を、点眼製剤により行う、請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記製剤は、防腐剤無添加である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記カチオン性グラフトコポリマーは、点眼製剤中で0.01重量%~5重量%の範囲の濃度のPLL-g-PEGである、請求項37記載の方法。
【請求項42】
リスクのある患者においてPLL-g-PEG点眼製剤を有効量で眼に適用して角膜の有害事象および眼の安全性の懸念を低減することにより、ヒトの悪性疾患の治療におけるADCの休薬および減量を低減する方法。
【請求項43】
角膜毒性を伴うADC向けの抗体であって、不活性化部位を有し、かつ眼の有害事象を低減するのに有効な量で眼に送達される、抗体。
【請求項44】
ADC、生物学的物質、低分子、高分子、ペプチドの群から選択される医薬品により生じる角膜細胞毒性を低減する方法であって、生体接着性および不活性化成分を有するコポリマーを、前記医薬品によって生じる有害作用のリスクのある眼に局所的に適用する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、2020年5月7日に出願された米国仮出願番号63/021,277の利益を主張し、その内容全体を本明細書に援用するものとする。
【0002】
発明の分野
本発明は、(荷電性または疎水性部位と不活性化親水性部位とを含む)生体接着性および不活性化コポリマーを利用して細胞、組織、器官および哺乳動物の健康を改善することにより、生物医学分野で現在直面している重大な問題に対処する方法を提供するものである。具体的には、本発明の分野は、ウイルス感染の予防、減衰、低減または治療に関する。そして具体的には、本発明の分野は、抗体薬物複合体(ADC)およびその毒性ペイロードに伴う薬剤に関連する毒性の予防、減衰、低減または治療に関する。「ADC」は、抗体薬物複合体治療薬を表すために本明細書で頻繁に用いられる。ADCは、生物学的に活性な細胞毒性(抗癌性)ペイロードまたは薬剤に結合した抗体から構成される複合分子である。抗体薬物複合体は、バイオコンジュゲートおよびイムノコンジュゲートの一種であり得る。「ADC」は、本明細書において各種抗体薬物複合体の宿主を意味し得る。ADCは、モノクローナル抗体に固有の標的化能力と細胞傷害性薬剤の癌と戦う能力とを併せ持つ。ADCは、健康な細胞や組織と病気の細胞や組織とを識別できるように設計されていることが多い。
【0003】
ここで特に着目されるウイルス感染は、SARS-CoV-2の感染力である。しかし、重要な進展は、立体的および静電的相互作用によって、宿主免疫がまだ発達していない、あるいは標的抗体や抗ウイルス療法がまだ利用できない細胞、組織または生体への新型ウイルスの感染力を抑制できるなど、この効果が新型ウイルスにも有効であることである。つまり、この効果は広範囲で、効果的で、非特異的である。新型ウイルスは、このアプローチによる治療に適している。
【0004】
ADCの毒性改善法は特に、非新生細胞へのADCのオフターゲットの進入と、ADCペイロードによって媒介される細胞プロセスの阻害に伴う有害事象とに関連する。新生細胞は、癌細胞である。ADCは、腎細胞癌、白血病、リンパ腫、骨髄腫、肺癌、前立腺癌、子宮または子宮頸癌、乳癌、膀胱癌、結腸癌、食道癌、肝臓癌、ホジキン病、卵巣癌、膵臓癌、直腸癌、皮膚癌、小腸癌、固形腫瘍、胃癌、白血球癌、尿道癌、腸間膜リンパ節炎を含むがこれらに限定されない、1つ以上の器官系または細胞型の癌または腫瘍性疾患を治療するために使用される。ここで名前を挙げた癌および名前を挙げていない癌のいずれかまたはすべてを、そのような癌細胞または組織を標的とするADCの特定の発明に関する請求項と組み合わせることができる。
【0005】
具体的には、マクロピノサイトーシス媒介毒性は、細胞または組織の表面がその局所微小環境と相互作用する分子-細胞-組織(包括的または分離)レベルで作用する立体的および静電的干渉により阻害、低減および制限される。細胞には、辺縁幹細胞、一過性増幅細胞、一過性増幅細胞娘細胞、基底上皮細胞、翼細胞、ならびに角膜上皮細胞および分化した角膜上皮細胞などがあるが、これらに限定されない。
【0006】
双方の設定において最も有用な(しかし唯一の有用な実施形態ではない)主要な基礎となるポリマー構造は、カチオン性グラフトコポリマーである。この基本構造は、カチオン性骨格とグラフト化された親水性側鎖とを含む。このようなポリマーの代表的な一例は、ポリ(L)リジングラフト(ポリ)エチレングリコールである。他の分子構造もまた、利点を付与するのに必要な相互作用を達成する。他のポリマーは、これらの作用を達成するために電荷、疎水性部位および不活性化部位を使用することができ、本明細書ではこうしたポリマーを扱う。治療方法は、前述のポリマー(溶解状態にあるか否かにかかわらず)を、意図された有益な効果を達成するのに有効な量および期間で、細胞、組織、器官、生体または哺乳動物に適用することを通じて行われる。
【0007】
したがって、ヒト集団に広がりヒトの健康に影響を及ぼす新型ウイルス性疾患に関する重症度およびリスクを低減することが求められている。
【0008】
さらに、抗体薬物複合体に伴う負の影響、特に角膜上皮毒性を低減することが求められている。
【0009】
発明の背景
カチオン性グラフトコポリマーは、イン・ビトロでの非生体表面のコーティング、医療機器のコーティング、およびドライアイの治療に有用であることが実証されている。有効なカチオン性グラフトコポリマーの一例は、ポリ(L-リジン)グラフトポリ(エチレングリコール)(PLL-g-PEG)である。PLL-g-PEGは、ポリ(L-リジン)骨格とポリ(エチレングリコール)側鎖とからなる水溶性コポリマーである(Sawhney et al. Biomaterials 1992 13:863-870)。PLL鎖は複数の正電荷を有し、負に帯電した表面に自発的に吸着し、一方でPEGは、非結合ドメインとして機能する親水性ポリマーである。PEG部位は、表面を不活性化させ、一方でPLL部位は、細胞膜や抗体、ウイルスまたはウイルスタンパク質の荷電性成分に静電的相互作用により付着する。PLL-g-PEGは、イン・ビトロ表面の不活性化、医療機器の実験的コーティング、およびドライアイの点眼薬として眼の潤滑および涙液膜の安定化に使用されている。ドライアイの治療をはるかに超える本発明は、他の細胞毒性ペイロードの中でもチューブリン阻害剤によるADC角膜毒性を直接改善するための、初めて特定されたアプローチである。
【0010】
カチオン性グラフトコポリマー、特にPLL-g-PEGの、ウイルス感染力およびまたはADCに伴う毒性の阻害における役割は、本発明以前に検討も研究も実用化もされていない。同様に有効なポリマー分子もまた、本発明以前にこれらの点に関して出願人の知る限り研究も実用化もされていない。ウイルス感染力および/またはADCに伴う毒性を阻害するのに有効なカチオン性グラフトコポリマーには、複数の構成が存在する。本明細書では、これらの代替的な分子アプローチについて検討し、取り扱う。
【0011】
発明の概要
本発明の一態様は、ウイルス感染力およびウイルス負荷曝露を予防または低減し、それによってSARS-CoV-2などのウイルス、特に新型ウイルスなどのウイルス感染の罹患率および死亡率を低下させる方法に関する。荷電性グラフトコポリマーは、感染力を予防または低減すべくリスクのある細胞および組織に適用した際に、安全かつ有効である。
【0012】
本発明の一態様は、オフターゲットの細胞および組織に対するADCに伴う薬剤の毒性を予防または低減する方法に関する。特に本発明は、ADC療法の設定における角膜上皮細胞毒性の重症度を低減する方法である。荷電性グラフトコポリマーは、ADCに伴う角膜毒性を予防または低減すべくリスクのある細胞および組織に適用した際に、安全かつ有効である。ADCに担持された細胞毒性ペイロードへの基底上皮細胞およびその前駆体、翼細胞ならびに表層上皮細胞などのヒト角膜上皮細胞の曝露は、カチオン性グラフトコポリマーによる治療の利用により低減される。溶解状態の有効量のグラフトコポリマーへの上皮細胞の曝露は、角膜上皮毒性の重症度の低減に有効である。重症度の低減は、検査所見上、小嚢胞様上皮角膜症の減少、点状表層ステイニングの重症度の低下、上皮異常の発生率の低下、眼の有害事象の減少、視力低下率の低下、眼刺激感およびかすみ目などの訴えの減少として表すことができる。
【0013】
本明細書に開示される本発明の一態様は、トランスフェクションに関与する組織を、カチオン性、疎水性またはアニオン性のいずれかの部位と親水性不活性化部位とを有するグラフトまたはブロックコポリマーの有効量で処理することにより、ウイルス感染力を低減する方法である。本方法の一実施形態では、コポリマーは、PLL-g-PEGである。本方法の別の実施形態では、前記製剤のグラフトコポリマーは、カチオン性骨格と、水溶性でかつ非イオン性の側鎖とを含む。本方法の別の実施形態では、前記製剤のブロックコポリマーは、少なくとも1つのカチオン性ブロックと、少なくとも1つの水溶性でかつ非イオン性のブロックとを含む。本方法の別の実施形態では、前記製剤のブロックコポリマーは、疎水性である少なくとも1つのブロックと、水溶性でかつアニオン性、カチオン性または非イオン性である少なくとも1つのブロックとを含む。上記実施形態のいずれかにおいて、コポリマーの製剤が投与される生体表面は、被験体の眼粘膜、口腔粘膜、鼻粘膜および気道粘膜、気道上皮、泌尿器粘膜、胃腸粘膜から選択される粘膜である。上記実施形態のいずれかにおいて、コポリマーの製剤が投与される生体表面は、眼の表面である。上記実施形態のいずれかにおいて、ウイルス感染は、コロナウイルス、インフルエンザウイルス、エボラウイルスおよび粘膜曝露により伝播する新型ウイルスから選択され、例えば、ウイルスはSARS-COV-2であるが、これに限定されない。上記実施形態のいずれかにおいて、前記製剤のグラフトコポリマーまたはブロックコポリマーは、前記製剤の0.001~40%を占める。上記実施形態のいずれかにおいて、前記製剤のグラフトコポリマーまたはブロックコポリマーは、前記製剤の0.1~10%を占める。上記実施形態のいずれかにおいて、不活性化作用は、SARS-Cov-2スパイクタンパク質およびリスクのある細胞上のACE2受容体の干渉に基づく。上記実施形態のいずれかにおいて、治療効果は、一般的な立体阻害である。
【0014】
本発明の第二の態様では、非新生細胞に損傷を与えるオフターゲットの取り込み経路において、前記毒性に影響を受ける細胞に適用される静電的および立体的媒介特性を有するコポリマーの有効量を適用することによって、抗体薬物複合体の使用に伴う有害事象を低減する方法が、本明細書に開示される。本態様の一実施形態では、コポリマーは、カチオン性グラフトコポリマー、カチオン性ブロックコポリマー、疎水性グラフトコポリマー、疎水性ブロックコポリマー、アニオン性グラフトコポリマーおよびアニオン性ブロックコポリマーから選択される。本態様の一実施形態では、コポリマーは、粉末、溶液、懸濁液、局所用剤、静脈内用剤、経口剤、口腔洗浄剤、鼻腔用スプレー、点眼剤のうちの1つ以上のアプローチで製剤化されている。本態様の一実施形態では、コポリマー溶液の割合は、最小で0.01重量%である。本態様の一実施形態では、コポリマー溶液の割合は、溶液および懸濁液の場合には最大で40重量%である。本態様の一実施形態では、コポリマーは、PLL-g-PEGである。本態様の一実施形態では、コポリマーは、上掲の本出願に記載の組み合わせのリストから選択される。
【0015】
本発明の眼科的態様の一構成要素では、1日1回の使用(片眼あたり1日1滴)、1日2回の使用(片眼あたり1日2滴)、1日3回の使用(片眼あたり1日3滴)、1日4回の使用(片眼あたり1日4滴)の頻度、または1時間毎もしくはより高い頻度での投与に至るまでの頻度での本明細書に記載のコポリマーを含む眼科薬剤製品および/または市販製剤による局所的な眼の治療により、有益性を認めることができる。投与は、患眼あたり1日1回以下と、頻度が低い場合もある。投与は、必要に応じてまたは臨機応変であってよい。投与頻度の必要性の範囲は、患者およびADCに依存し得る。
【0016】
本発明の別の態様では、生体接着性および不活性化成分を有するコポリマーをオフターゲットの薬剤取り込みのリスクのある細胞に投与することにより、ADCに伴う角膜上皮毒性を低減する方法が、本明細書に開示される。本態様の一実施形態では、コポリマーは、角膜上皮細胞および結膜上皮細胞に適用される。本態様の一実施形態では、コポリマーは、PLL-g-PEGである。本態様の一実施形態では、製剤は、結膜下腔に送達するための溶液である。
【0017】
本発明の別の態様では、ヒトにおける抗体薬物複合体の使用に伴う有害事象を低減する方法であって、静電的および立体的媒介特性を有するコポリマーの有効量を前記有害事象に関与する細胞に適用する方法が、本明細書に開示される。本態様の一実施形態では、コポリマーは、カチオン性グラフトコポリマー、カチオン性ブロックコポリマー、疎水性グラフトコポリマー、疎水性ブロックコポリマー、アニオン性グラフトコポリマーおよびアニオン性ブロックコポリマーから選択される。本態様の一実施形態では、コポリマーは、本明細書の本開示におけるポリマーから選択される。
【0018】
本発明の別の態様では、カチオン性、疎水性またはアニオン性のいずれかの部位と不活性化部位として機能し得る親水性部位とを有するグラフトまたはブロックコポリマーを含む生体接着性および不活性化特性を有するコポリマーの有効量を角膜上皮細胞に適用することにより、ADCから切断される細胞毒に伴う小嚢胞様上皮毒性を低減する方法が、本明細書に開示される。本態様の一実施形態では、コポリマーは、PLL-g-PEGである。
【0019】
本発明の別の態様では、全身性ADC療法の開始前に、カチオン性、疎水性またはアニオン性のいずれかの部位と親水性不活性化部位とを有するグラフトまたはブロックコポリマーを含む生体接着性および不活性化部位を有するコポリマーを眼に送達することにより、ADCの使用に伴う眼の有害事象の割合および重症度を低減する方法が、本明細書に開示される。
【0020】
眼の有害事象には、角膜上皮細胞死、点状表層角膜症または角膜炎、角膜瘢痕化、角膜感染、小嚢胞様角膜症、角膜細胞損傷、角膜細胞アポトーシス、眼刺激感、眼の異物感、かすみ目、眼の痛み、視覚関連タスクのトラブル、光恐怖症、角膜症および角膜上皮症があるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
本発明の別の態様では、全身性ADC療法の開始後に、カチオン性、疎水性またはアニオン性のいずれかの部位と親水性不活性化部位とを有するグラフトまたはブロックコポリマーを含む生体接着性および不活性化部位を有するコポリマーを眼に送達することにより、ADCの使用に伴う眼の有害事象の兆候および症状を改善する方法が、本明細書に開示される。兆候および症状には、視力に関連する症状、かすみ目、刺激、発赤および眼科検査所見があるが、これらの特定の兆候および症状に限定されるものではない。コポリマー製剤で治療された眼では、視力はより良好になる。
【0022】
本発明の別の態様では、全身性ADC療法の開始に伴って、カチオン性、疎水性またはアニオン性のいずれかの部位と親水性不活性化部位とを有するグラフトまたはブロックコポリマーを含む生体接着性および不活性化部位を有するコポリマーを眼に送達することにより、ADCの使用に伴う点状表層角膜症または角膜炎を低減する方法が、本明細書に開示される。送達は、ADC療法の開始前であっても、開始と同時であっても、開始後であってもよい。この局所的な眼の治療は、本明細書に記載の他の角膜毒性薬剤と併用した場合についても同様の利点がある。言い換えれば、本明細書は、特にADCに伴う既知のまたは予想される角膜毒性または眼の有害事象を招く全身または局所的な薬剤または医薬品に対処する本コポリマーのアプローチの利点の主張を広く支持するものである。
【0023】
角膜感染のリスクの低減は、本設定におけるコポリマーベースの局所療法の利点の1つである。
【0024】
本発明の別の態様では、ADCへの曝露前に、カチオン性、疎水性またはアニオン性のいずれかの部位と親水性不活性化部位とを有するグラフトまたはブロックコポリマーを含む生体接着性および不活性化部位を有するコポリマーに角膜上皮細胞を曝露することによって、(培養、実験モデルまたはイン・ビボのいずれにおいても)前記細胞へのADCの取り込みを低減する方法が、本明細書に開示される。
【0025】
本発明の別の態様では、ADCへの曝露後に、カチオン性、疎水性またはアニオン性のいずれかの部位と親水性不活性化部位とを有するグラフトまたはブロックコポリマーを含む生体接着性および不活性化部位を有するコポリマーに角膜上皮細胞を曝露することによって、前記細胞へのADCの取り込みを低減する方法が、本明細書に開示される。
【0026】
本発明の別の態様では、ADCへの曝露の前または後に、カチオン性、疎水性またはアニオン性のいずれかの部位と親水性不活性化部位とを有するグラフトまたはブロックコポリマーを含む生体接着性および不活性化部位を有するコポリマーに角膜上皮細胞を曝露し、その際、前記コポリマーの重量/重量計算に基づく有効割合を有する製剤を用いることによって、角膜上皮細胞へのマクロピノサイトーシス(またはより一般的にはピノサイトーシス)によるADCの取り込みを低減する方法が、本明細書に開示される。
【0027】
本発明の別の態様では、カチオン性、疎水性またはアニオン性のいずれかの部位と親水性不活性化部位とを有するグラフトまたはブロックコポリマーを含む生体接着性および不活性化部位を有するコポリマーを用いて患者を治療し、その際、有効な量を用いることによって、ADCに伴う眼の有害事象を低減する方法が、本明細書に開示される。治療は、いくつかの実施形態において局所的である。
【0028】
本発明の別の態様では、カチオン性、疎水性またはアニオン性のいずれかの部位と親水性不活性化部位とを有するグラフトまたはブロックコポリマーを含む、細胞レベルで静電的および立体的相互作用を示すコポリマーを使用して、SARS-Cov-2、新型ウイルス、エピデミックの状態にあるウイルス、ヒトの病的状態および罹患を招き得る細胞毒性ペイロードを有するADCを含む因子へのそれらの細胞の曝露によって生じる有害作用を最小限に抑える方法が、本明細書に開示される。
【0029】
本発明の別の態様では、カチオン性、疎水性またはアニオン性のいずれかの部位と親水性不活性化部位とを有するグラフトまたはブロックコポリマーを含むカチオン性グラフトコポリマー製剤の有効量で眼を治療することにより、ペイロードとしてチューブリン破壊剤を有するADCへのヒトの全身性曝露による眼毒性を低減する方法が、本明細書に開示される。本態様の一実施形態では、カチオン性グラフトコポリマーは、PLL-g-PEGである。本態様の一実施形態では、治療を、点眼製剤により行う。本態様の一実施形態では、製剤は、防腐剤無添加である。本態様の一実施形態では、カチオン性グラフトコポリマーは、点眼製剤中で0.01重量%~5重量%の範囲の濃度のPLL-g-PEGである。本態様の一実施形態では、毒性の低い防腐剤が、過ホウ酸ナトリウム、安定化オキシクロロ錯体、消失型防腐剤、過酸化水素ベースの防腐剤から選択される。
【0030】
本発明の別の態様では、リスクのある患者においてPLL-g-PEG点眼製剤を有効量で眼に適用して角膜の有害事象を低減し、かつ眼の安全性の懸念を軽減することにより、ヒトの悪性疾患の治療におけるADCの休薬および減量を低減する方法が、本明細書に開示される。本発明の別の実施形態では、眼毒性は、前記毒性が細胞毒の涙分泌および角膜上皮に対する二次作用に起因する場合、カチオン性、疎水性またはアニオン性のいずれかの部位と親水性不活性化部位とを有するグラフトまたはブロックコポリマーを含むコポリマーによる局所治療により軽減することが可能である。別の態様は、上皮びらんの発生率の低下、角膜潰瘍の発生率の低下、角膜上皮症の発生率の低下、点状上皮症の発生率の低下、表層角膜変化の発生率の低下、角膜ストロームの炎症または他の変化の発生率の低下、二次細菌感染の発生率の低下の効果から選択される、角膜薬剤に関連する毒性による劣悪な結果または劣悪な経過のリスクを低減するために本明細書に記載の方法を利用することである。
【0031】
本明細書において、「有害作用を受ける」とは、正常な生理学および細胞または組織または器官または生体の機能からの変化を意味し得るが、これらに限定されるものではなく、細胞生存率の低下、アポトーシスの開始、正常に分裂する細胞の増殖能力の低下、細胞の接着および移動の低下および不適切さ、密着接合部を含む接着および接合接続部の変化、細胞もしくは組織に対する炎症応答、細胞の代謝および異化の変化、細胞のバイスタンダーの損傷、痛みもしくは不快感を招く変化、または視覚的変化、または器官、組織もしくは生体のその他の機能変化、涙液膜の不規則性を招く変化、フルオレセイン色素や上皮細胞評価に使用されるその他の生体色素(リサミングリーン、ローズベンガル)の取り込みを生じる変化、眼の損傷、ならびに正常細胞の健康に影響を与える変化が挙げられるが、これらに限定されるものではない。有害事象には、薬剤、医薬品またはその他の療法による治療中に起こる医学的問題、細胞の健康問題、組織の健康問題、器官の健康問題、または生体の健康問題などがあるが、これらに限定されるものではない。本明細書では、薬剤と医薬品とが互換的に用いられる場合がある。
【0032】
本明細書において、不活性化部位は親水性部位であることができ、典型的には親水性部位と考えられるが、代替的な部位では、親水性が支配的でない特性での不活性化も可能である。
【0033】
本明細書に開示される本発明の別の実施形態では、抗体は、角膜毒性を伴うADCに向けて設計されており、抗体は、不活性化部位をさらに含んでおり、不活性化部位を有する抗体がADCの活性および/または角膜細胞を含むオフターゲットの細胞とADCとの結合に干渉するADCの分子成分と特異的かつ直接相互作用するように、眼の有害事象を低減するのに有効な量で眼に送達される。
【0034】
本発明の別の実施形態は、薬剤の有害作用に起因する角膜毒性を非特異的に阻害する方法であって、阻害は、カチオン性、疎水性またはアニオン性のいずれかの部位と親水性不活性化部位とを有するグラフトまたはブロックコポリマーを含む本明細書に記載のコポリマーと細胞傷害性薬剤との(静電的または疎水的な)非特異的相互作用により媒介され、それにより、不活性化部位の効果を通じて、角膜に対する有毒作用を有する薬剤の有害作用を低減させる。いくつかの実施形態では、角膜有害事象を伴う薬剤は、ADCであり、他の実施形態では、薬剤または医薬品は、低分子である。医薬品は、生物学的物質、抗体、および抗体薬物複合体、高分子または低分子であってよい。低分子薬剤は、900ダルトン以下の比較的低い分子量で生物学的プロセスに影響を与える任意の有機化合物である。高分子薬剤は、900ダルトン以上の比較的低い分子量で生物学的プロセスに影響を与える有機化合物である。高分子は、有機化合物、PEG化化合物、タンパク質、生物学的物質、またはペプチドであってよい。ペプチドは、分子の分子量に応じて、低分子であっても高分子であってよい。本明細書の医薬品の設定における生物学的物質または生物学的薬剤は、生体から生産されるかまたは生体の成分を含む生成物である。
【0035】
いくつかの実施形態では、薬剤は、カチオン性両親媒性薬剤、アミオダロン、アミノキロン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン(プラケニル)、アモジアキン、メパクリン、タフェノキン、ソラジン、タモキシフェン、NSAIDs、イブプロフェン、インドメタシン、ナプロキセン、ベノキン、アトバコン、スラミン、チロロン、マレイン酸ペルヘキシリン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、クラリスロマイシン、シプロフロキサシン、クロファジミン、金塩、バンデタニブ、オシメルチニブの群から選択され、低分子は、キナーゼ阻害剤、エルロチニブおよびシタラビンから選択することができるが、これらに限定されるものではない。渦状角膜症、角膜への沈着、上皮症、渦状角膜、角膜線、ハドソン・ステーリ線、結晶様沈着、間質炎症および角膜混濁を低減または予防することができる。辺縁幹細胞機能不全毒性に関連する医薬剤について、辺縁幹細胞機能不全を予防することができる。パンヌス、角膜新生血管、角膜の結膜上皮化を低減または予防することができる。特定の方法に束縛されるものではないが、コポリマーは、涙に見られかつ/または辺縁循環から辺縁幹細胞に達する細胞傷害性薬剤を不活性化させる。
【0036】
別の態様では、リスクのある細胞をコポリマーまたはそれらの細胞にかける溶液で処理することにより、任意の薬剤の角膜毒性に伴う有害事象を低減する方法である。
【0037】
別の態様では、非新生細胞に損傷を与えるオフターゲットの取り込み経路の設定において、(またはそのようなオフターゲットの経路がなく、毒性がより直接的である場合には、標的の取り込み、ADC結合部位に対する細胞受容体の類似性、またはリスクのある細胞への弾頭的進入のいずれかにより)コポリマーの有効量をそのような細胞にかける溶液に適用することによって、抗体薬物複合体の使用に伴う有害事象を低減する方法である。
【0038】
抗体薬物複合体への曝露に伴う角膜細胞を含む細胞における有害事象の低減の基本的方法論は、表面的、局所的または(特定の場合には)全身的なアプローチによる、前駆上皮細胞、一過性増幅細胞、基底上皮細および分化した上皮細胞ならびに幹細胞(および娘細胞)を含む眼および/または角膜細胞へのカチオン性グラフトコポリマーの(またはそれへの)溶液または懸濁液を介した長期間または急性の曝露により、マクロピノサイトーシスによるADCの取り込みを含む取り込みを制限することである。PLL-g-PEGは、本設定において特に安全かつ有効である。その他の類似のアプローチも考えられる。
【0039】
本発明のコポリマーは、上記のような生体接着性部位(カチオン性、アニオン性、疎水性)と、不活性化部位(親水性、時として化学的に不活性、ここで、「化学的に不活性」とは、共有結合的または静電的に、あるいは疎水性を利用して細胞またはタンパク質と著しく反応する能力を有しないことを意味する)とを有し、それにより、ウイルスおよびADCと、感染または毒性によって損傷される細胞との相互作用が低減される。いずれの部位も、様々なMWサイズを有することができ、ポリマーの組み合わせを利用することができる。複数のコポリマー構造を有する製剤を利用することができる。各ポリマー間の多分散度は既知であり、製造上予想されることであり、これにより効果が低下することはない。
【0040】
特許文献9,884,074;9,295,693;9,283,248;9,005,596;8,802,075では、グラフトコポリマーおよび該多官能性コポリマーの使用について論じられており、本明細書に援用するものとする。米国特許出願公開第2004/0181172号明細書を検討した。該文献では、涙を分析するための涙の収集について論じられている。
【0041】
本発明の方法ステップは、生体接着性および不活性化部位を有するコポリマーをリスクのある細胞および組織に適用することを含む。
【0042】
本発明の好ましい一様式は、好ましくは曝露前に、リスクのある細胞および組織にPLL-g-PEGを適用することによるものであるが、曝露後のその使用は、有害所見の重症度の低減(二次上皮細胞損傷または反復的な曝露または感染もしくは再感染を低減することができる)および有害事象の程度の低下(ADCによる継続的な取り込みの最小化)における有益性を付与する。
【0043】
ADCの特定の機序に束縛されるものではないが、オンターゲット毒性には、有害事象を招き得る、抗体/受容体により媒介される上皮細胞への取り込みが含まれ、本様式ではこのオンターゲット毒性を(特に局所環境において)低減することもできる。本発明の実施形態は、ADCの毒性を改善または軽減するための本アプローチにも対処する。例えば、角膜上皮細胞が、細胞の取り込みを開始する細胞表面上の受容体またはタンパク質標的を発現する場合、コポリマーがADCを局所的に不活性化させることによりオンターゲット毒性が低減する。
【0044】
本発明の一実施形態では、コポリマー点眼剤を含む製剤を、ADC療法の開始時または検討時に、化学療法剤とともに、場合によっては1ヶ月以上の点眼剤送達システムの供給を伴うキットとして提供することができる。キットおよび点眼剤は、郵送や同様の配送サービスによって患者に届けることも、オンラインで再充填することもできる。
【0045】
いくつかの実施形態では、コポリマーは、医薬組成物として、点眼剤ボトル、防腐剤無添加のマルチドーズボトル、標準的なスリーピースボトル、ユニットドーザー/ブローフィルシール容器で供給される。点眼剤ボトルの充填体積は、典型的には1ml~30mlである。0.1mL~1mL(0.5mL充填、0.3mL充填、0.4mL充填、0.7mL充填)の充填量の様々なサイズのブローフィルシール容器が、ユニットドーザー充填の例として挙げられる。エアロゾル、スプレー、ミスト発生装置、機械式または電子式スプレーボトル、ポンプ式スプレーボトル、洗口液、飲用液、粉末、希釈用濃縮液、およびその他の市販のシステムで医薬成分を消費財に提供することができる。点眼剤、鼻腔用スプレーおよび洗口液を含むキットを販売することができる。腫瘍やその他の疾病のケア用の、ADCを配合した点眼剤の供給物をキットに含めることができる。
【0046】
利点としては、現在、粘膜に保護材を適用することにより感染リスクを低減する方法がなく、ウイルス性疾患に対する備蓄設備において必要とされていることが挙げられる。
【0047】
利点としては、温湿布、バンデージコンタクトレンズおよび眼科潤滑剤のような支持的ケアの他には、ADC/上皮細胞相互作用の低減に基づいてADC角膜毒性のリスクを低減する治療法が存在しないことが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】気道上皮細胞の存在下でのSARS-CoV-2ウイルス粒子を示す予想図である。1.気道上皮細胞核。2.気道上皮細胞。3.細胞絨毛。4.ACE2受容体。5.SARS-CoV-2ウイルス粒子RNA。6.SARS-CoV-2ウイルス粒子スパイクタンパク質。8.ウイルスがACE2受容体に結合。9.細胞内にウイルスが侵入。10.SARS-CoV-2ウイルス。
【
図2】気道上皮細胞およびカチオン性グラフトコポリマーの存在下でのSARS-CoV-2ウイルス粒子と、ACE2に関連するウイルスの細胞への侵入を阻止するコポリマーによって付与された干渉とを示す予想図である。図では気道上皮細胞が示されているが、SARS-CoV-2に感染し得る他の上皮細胞に置き換えることも可能である。1.気道上皮細胞核。2.気道上皮細胞。3.細胞絨毛。4.ACE2受容体。5.SARS-CoV-2ウイルス粒子RNA。6.SARS-CoV-2ウイルス粒子スパイクタンパク質。7.カチオン性グラフトコポリマー。11.カチオン性グラフトコポリマー(いくつかの実施形態ではPLL-g-PEGである)の干渉作用により、細胞内にウイルスが侵入しない。
【
図3】角膜上皮細胞の存在下での抗体薬物複合体を示す予想図である。1.ADC。2.抗体成分。3.毒性ペイロード。4.角膜上皮細胞。5.角膜上皮細胞の微絨毛。6.マクロピノサイトーシスの開始。7.マクロピノサイトーシスの完了。8.マクロピノサイトーシス過程に関与するADCであり、ADCが細胞外液から角膜上皮細胞に捕捉されるところを示す。9.上皮細胞内およびリソソームにおける毒性ペイロードを有するADCであり、該ペイロードは、ADCから切断されて細胞内に放出され、そこで細胞を損傷または死滅させる。
【
図4】角膜上皮細胞およびカチオン性グラフトコポリマー(一実施形態ではPLL-g-PEGである)の存在下での抗体薬物複合体を示す予想図である。角膜上皮細胞は、一過性増幅細胞、翼細胞、基底上皮細胞または辺縁上皮幹細胞でもよいことに留意されたい。図では、簡略化のため表面上皮細胞を示す。1.ADC。2.抗体成分。3.毒性ペイロード。4.角膜上皮細胞。5.角膜上皮細胞の微絨毛。6.マクロピノサイトーシスの開始。7.マクロピノサイトーシスの完了。8.角膜上皮細胞表面上のPLL-g-PEG。9.溶解状態のPLL-g-PEG。10.数箇所でADCに接着したPLL-g-PEG。11.毒性ペイロードを有するADCが上皮細胞内に存在しない。細胞傷害および細胞死が予防されている。
【
図5】全身投与されたADCの存在下でのカチオン性グラフトコポリマーの点眼療法が眼に及ぼす有益性を示す予想図である。1.眼の前面の概略図。2.角膜の概略図。3.角膜表面の点状表層角膜炎。4.患者が癌に対する全身性ADC療法を受けた後に認められる角膜上皮の小嚢胞様変化。5.癌に対してADCを全身投与される患者の眼に投与されるPLL-g-PEGを含む点眼剤。6.点眼剤中の溶解状態のPLL-g-PEG。7.ADC療法を受けた患者およびPLL-g-PEG点眼剤で治療された患者の角膜の表面は、より健康的に見える。8.PLL-g-PEG点眼剤で治療された患者では、小嚢胞様変化が少ない。9.PLL-g-PEG点眼剤で治療された患者では、ADCを全身に投与したにもかかわらず、点状表層角膜炎が少ない。
【0049】
発明の詳細な説明
正に帯電した部位と親水性部位とを有するグラフトコポリマー、または正に帯電した部位と親水性部位とを有するブロックコポリマーは、ヒトの健康に関する2つの重要な態様において有効であることが現在判明している。
【0050】
まず、これらのポリマーは、他の曝露方法と同様に、上皮表面との接触によって感染が起こった場合、ウイルスの感染力および感染の重症度を低減するのに有効である。ウイルスの量は、感染の重症度と用量反応的に関係することが知られている。仮に感染しても、細胞内のウイルス感染数を減らすことで、疾患の経過に有益な効果が得られる(100%効果のある介入は稀である)。
【0051】
第二に、これらのポリマーは、非新生細胞に対する抗体薬物複合体(ADC)毒性を低減するのに有効である。これらのポリマーは、ADCの標的受容体を発現していない細胞への細胞毒性ペイロードを有するADCのオフターゲットの細胞取り込みに干渉することが可能である。また、局所投与により、組織を局所的に治療し、ADCを不活性化させることで、取り込みを低減することもできる。(コポリマーは、オフターゲットのADC取り込みに干渉するために内層粘膜液または細胞外空間内に存在することができる)。具体的には、オフターゲットの取り込みに関して、これらのカチオングラフトまたはカチオンブロックコポリマーは、基底上皮細胞、辺縁幹細胞、基底幹細胞、翼細胞または表層上皮細胞を含むヒト角膜上皮細胞によるADCのマクロピノサイトーシスに干渉する。内部細胞体、またはリソソームを含む細胞質、およびいくつかの実施形態ではチューブリン形成成分への曝露のこの低減は、細胞および生体に有益性を提供する。
【0052】
理論に束縛されるものではないが、干渉の方法は、グラフトまたはブロックコポリマーが、影響を受ける細胞および/またはADCもしくはウイルスの表面を不活性化させて、細胞の取り込みを予防または低減することである。カチオン性グラフトコポリマーまたは他のポリマーの実施形態は、生体表面および/またはウイルスもしくはADCの表面と相互作用する。
【0053】
重要な発見は、PLL-g-PEGのようなカチオン性グラフトコポリマーが、この設定において有効である能力である。これは安全で忍容性が高く、高い効能がある。PLL-g-PEGには、有効な複数の実施形態があり、これらのポリマーは調整可能である。
【0054】
定義
「オフターゲットの取り込み」とは、標的療法が設計された抗体-細胞受容体相互作用とは異なる、あるいは完全に依存しない機序を用いてADCが細胞内に取り込まれることを意味する。
【0055】
「新型ウイルス」とは、宿主(ヒトまたはそれ以外)にとって新しいもの、またはヒトがこれまでに遭遇したことのないものを意味する。
【0056】
宿主とは、細菌、ウイルス、原生動物、またはその他の疾患を引き起こす微生物が通常生息する生体を指す。
【0057】
「生体表面」とは、細胞、組織、身体器官の表面を意味し、外部環境に曝露しているか、身体の内部にあるかは問わない。例えば、眼の表面には、上皮細胞に覆われた角膜や結膜、後部テノン嚢および強膜が含まれ;消化管や皮膚の上皮層は、口腔粘膜、鼻腔粘膜、気道粘膜および膣粘膜を含む粘膜などの膜が含まれる。他の表面には、脾臓や肝臓などの器官の被膜、ならびに骨、軟骨および筋肉の最外面が含まれる。本明細書に記載されるコポリマーはまた、ウイルスおよびADCの表面で相互作用して有益性を付与することもできる。
【0058】
「製剤」とは、グラフトまたはブロックコポリマーによる有益な効果が生じることが可能となるようにするのに必要な成分を含む、治療すべき細胞、組織、器官または哺乳動物に投与される溶液、懸濁液、粉末、スプレー、洗浄液、点眼剤を意味する。製剤は、医薬活性成分を含んでも含まなくてもよい。本明細書において、グラフトコポリマーは、規制当局の用語で医薬活性成分と見なされることも、見なされないこともある。点眼製剤は、様々な割合(有効範囲)のコポリマーを有することができ、3.9~9.9のpHを有することができ、150~400のモル浸透圧濃度を有することができ、1.0~15cPの粘度を有することができる。粘度は、いくつかの実施形態ではさらに高くなることがある。製剤は、結膜下注射について安全である。
【0059】
「微小管破壊」とは、本明細書において特に重要な細胞毒性効果であると考えられる。これらの「細胞傷害性薬剤」の例としては、MMAF(モノメチルアウリスタチンF(MMAF)は、チューブリンの重合を阻害することによって細胞分裂を阻害する抗チューブリン剤である)、MMAE(モノメチルアウリスタチンE)、DMF(ジメチルホルムアミド)、メイタンシン、アウラスタチン、DM4(ラブタンシン)およびDM1(メルタンシン)があるが、これらに限定されるものではない。その他の細胞傷害性薬剤は別の場所に挙げられており、抗体と組み合わせたものもある。すべて含まれ、未知の細胞傷害性薬剤も同様に、様々な実施形態で含まれる。
【0060】
「細胞毒性ペイロード」とは、「弾頭」とも呼ばれることがある。抗体と弾頭とを結合するためにリンカーが使用される。リンカーは、細胞内酵素および場合によっては細胞外酵素によって切断される。特に、リンカーはリソソームで切断され、細胞内に弾頭が放出される。細胞外液または涙液中の酵素がリンカーを切断し、弾頭を放出する場合もある。このように弾頭は、直接細胞に入ることもあれば、弾頭が細胞から漏れてバイスタンダー効果(ADCを取り込まなかった近くの細胞を損傷する)を引き起こすこともある。任意のリンカーおよび多くの(既知および未知の)リンカーが、本発明の実施形態において考慮される。リンカーは、細胞および治療状況に特異的であってよい。
【0061】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、活性剤が1つ以上の薬学的に許容される担体とともに製剤化された組成物を指す。この組成物は、ヒトまたは動物の被験体への投与に適している。活性剤は、関連する集団に投与されたときに所定の治療効果を達成する統計的に有意な確率を示す治療レジームでの投与に適切な単位用量で存在する。
【0062】
本発明におけるコポリマーの製剤は、ゲル、ローション、クリーム、軟膏、スプレー、ワイプ、軟膏を含む多くのタイプの製剤を使用する実施形態を含む。製剤は、防腐剤が添加されていてもされていなくてもよい。製剤は、単相性であっても多相性であってもよい。これに限定されるものではないが、相性の製剤は、有効性および活性の持続時間に影響を与えるために、異なる成分の異なる量を有する。ある製剤は長時間の活性を示し、他の製剤は短時間の活性を示す。総じて、1回の適用で、ある有意義な持続期間で保護が提供される。本明細書における「有意義な持続時間」とは、0.1分まで、0.5分まで、1分まで、15分まで、30分まで、1時間まで、2時間まで、3時間まで、4時間まで、または典型的には6~12時間までを意味する。いくつかの実施形態では、持続時間は12時間より長い。徐放性製剤は、作用の持続時間を延長させる。活性の持続時間の値は、開発において決定されるように、ウイルスの防護およびADC毒性の低減に関してより短くもより長くもなり得る。ADCの毒性の減衰および軽減の方法に関して、投与を、製剤および/またはADCのペイロード、患者の状態および基礎状況ならびに製剤に応じて、毎日ないし毎時の範囲で行うことができる。イン・ビトロ(およびイン・ビボ)でのこれらのアプローチの使用は、実用的な価値を有し、イン・ビトロモデルによってはより短時間またはより長時間となる可能性がある。
【0063】
小干渉RNA分子を用いた他の使用の動物データから、PLL-g-PEGが静脈内で忍容され得ることが示された。PLL-g-PEGは、局所的に忍容性が十分であり、したがってここでは特に価値がある。「調整可能」とは、カチオン性グラフトコポリマーを様々に調製して有用性を維持することができることを意味する。例えば、PLL鎖の長さ、ポリマー中のモノマー結合数に対するグラフト比、および親水性側鎖の長さは、調整可能である。例として、本発明の実験的証明または実践への還元で利用されたPLL-g-PEG分子は、PLL(15,000~30,000ダルトン)-グラフト(3.5比)-PEG(5,000)を含む。代替的な分子量およびグラフト比は、効果が等しいことも、より高いことも、わずかに低いこともある。本明細書において、すべてのPLL-g-PEGのバリエーションは有効であり、PLL-g-PEGと称される。模倣物も同様に調整可能である。PEGは親水性分子であるため、顕微鏡用スライドグラスの不活性化に使用されてきた。ポリエチレングリコールは毒性が低く、様々な製品に使用されている。このポリマーは、水系および非水系環境における様々な表面の潤滑コーティングとして使用されている。
【0064】
PLL-g-PEGの特性に関して述べる。ポリリジン(PLL)は、タンパク質や細胞の表面への接着を促進する。PLLは、30,000ダルトンより大きく60,000ダルトン以上であってもよいし、15,000ダルトンより小さくてもよい。多分散度の範囲は、許容される。0.3、0.5、0.8、1または1.2の多分散度は、0.1~3より大きい範囲と同様に許容される(端点を含む)と見なされる。PLLは、単一のサイズ(例えば、20,000ダルトン)と報告されることもある。より大きいまたはより小さいPLL分子も、この設定において有効である。好ましい構成は、10,000~40,000の平均PLLサイズであるが、より大きいまたはより小さいPLLサイズも有効である。多分散度は様々であってよく、なおも有効であり得る。リジン(Lリジン、Dリジン、αまたはεポリリジンであるが、これらに限定されない)のモノマー結合数は、いくつかの実施形態において50~200であることができ、より長いまたはより短いこと(より少ないまたはより多いモノマー結合数)も可能である。グラフト比は、最適には3.5または4のPLL:PEGであるが、妥当な好ましい範囲は2~6である。6を超えて7、8、9または10は、いくつかの実施形態において許容される。上限は、単に、忍容性が低下する点である。グラフト比が2を下回ると有効性が低下することが予想されるが、生体接着のために電荷を利用したカチオン性PLL鎖による機構から最適な有益性が得られる下限は、おそらく1.1である。疎水性鎖や他の構成では、成功率が異なる可能性があり、また調整可能である。親水性部位は、この場合にはPEGであり、これは異なるサイズまたは長さを有することもできる。PEG 5,000ダルトンは好ましい一実施形態であるが、PEG 2,000もまた有効である。この特定の分子の使用において有効であるPEG分子量の範囲には、PEG 1000~PEG 20000が含まれる。範囲および可変の多分散度が許容される(0.1~2以上)。エチレングリコールのモノマー結合数は、ダルトンで報告される分子量の代替として同様に数えることができる。ここでは、モノマー結合数の妥当な範囲は22~250である。いくつかの実施形態では、モノマー結合数は50~150である。いくつかの実施形態では、これは250以上である。これらの因子は調整可能であり、PLLサイズ、グラフト比およびPEGサイズを保ちつつ、同じまたは類似の効果を認めることができる。最適な構成が記載されるが、これに限定されるものではない。異なるベースPLL-g-PEGコポリマーの混合物が許容される。PLLに対するmPEGの複数の異なるリンカーが許容される。本明細書で概説したような模倣は、グラフト比、骨格サイズおよび親水性/不活性化部位のサイズで同様に対処することができる。
【0065】
したがって本発明は、正に帯電した部位と親水性部位とを有するグラフトコポリマーまたは正に帯電した部位と親水性部位とを有するブロックコポリマーを含む製剤を被験体の生体表面に表面的または局所的に投与することによって、被験体においてウイルス(例えばSARS-CoV-2)の感染力を阻害、低減または予防し、かつ疾患経過の重症度を低減することができる方法を提供する。電荷ダイナミクスは複雑であるため、負電荷に基づく不活性化の方法論も特定することができ、これらの発見も本明細書で検討および利用される。本明細書において特許請求されるポリマーを有する製剤は、本発明の方法に従って、皮膚、粘膜、口腔粘膜、鼻粘膜および眼の表面を含むがこれらに限定されない被験体の生体表面に表面的または局所的に投与することができる。本明細書で使用される「被験体」とは、すべての動物、特に、これらに限定されるものではないが、ヒトおよびイヌ、ならびにウシ、ヒツジおよびブタのような農用動物のような哺乳動物を含むことを意味する。
【0066】
本発明の方法および製剤に用いられるグラフトコポリマーは、「骨格」と呼ばれる繰り返し単位の線状セクションを有するポリマーであり、通常は異なる化学物質の繰り返し単位の少なくとも1つの側鎖(「グラフト」と呼ばれる)が、骨格に沿った点から枝分かれしているものである。一実施形態では、グラフトコポリマーは、カチオン性骨格と、水溶性でかつ非イオン性である側鎖とを含む。別の実施形態では、グラフトコポリマーは、水溶性でかつ非イオン性骨格と、カチオン性側鎖とを含む。別の実施形態では、負のまたはアニオン性グラフトコポリマーが利用される。
【0067】
本発明の方法および製剤において使用されるブロックコポリマーは、繰り返し単位の最初のセクションの線状セクションと、最初のものと化学的に類似していない後続の繰り返し単位の線状セクションとが両端で結合したポリマーである。
【0068】
本発明の方法で使用するための製剤は、これに限定されるものではないが、細胞、上皮細胞、粘膜、哺乳動物組織、気道細胞、肺胞、気管および気管支組織、鼻粘膜、口腔粘膜、および角膜および結膜上皮細胞を含む眼表面、および辺縁幹細胞、辺縁細胞、辺縁上皮幹細胞、基底幹細胞、基底細胞、初期一過性増幅細胞、一過性増幅細胞および角膜上皮細胞全般、ならびにそれらの細胞に付随する糖衣および微絨毛などの生体表面組織に接着する骨格、グラフトまたはブロックのいずれかの1つのセクションを有するブロックまたはグラフトコポリマーを含む。静電気力による生体接着性に加えて、別の、化学的に異なるセクション、骨格、グラフトまたはブロックのいずれかは親水性であり、一実施形態ではウイルスと別のADCとの間の相互作用の不活性化および低減を誘発する。相互作用は、ヒトの健康に対する有益性のために効果的に減少される。特にエピデミックまたはパンデミックを防ぐには宿主または集団免疫が不十分であるものについて、ウイルスの伝播および接触伝染病の伝播を低減することができる。一実施形態は、疾患ならびにエピデミックおよびパンデミックの重症度を軽減するのに役立つ、ヒトが集団免疫を獲得していない新型ウイルスの感染力を低減する方法である。
【0069】
患者は、ヒトであるが、哺乳動物であってもよい。
【0070】
ヒトの健康は、特に眼および角膜へのADCの毒性全般を低減することによって改善される。具体的には、角膜上皮の健康が促進される。患者は、より健康な角膜上皮を維持しつつ、悪性疾患または他の状態の治療のためのADCに対してより良好に耐えることができ、その結果、視覚/視力の重大な低下がより少なくなり、かつ眼の症状がより少なくなる。本発明の方法で使用される製剤中のグラフトまたはブロックコポリマーの組織接着性のセクションは、カチオン性であってよく、この場合、ポリマーは静電引力によって生体表面に接着する。相互作用は、アニオン性であってもよいし、本明細書中の組み合わせで疎水性部位を使用して疎水性であってもよく、疎水性相互作用もアニオン性相互作用も有望である。
【0071】
本発明の方法に有用な製剤のグラフトまたはブロックコポリマーのカチオン性ポリマーセクションの例としては、ポリ(L-リジン)(PLL)、ポリ(2-ビニルピリジン)およびポリ(4-ビニルピリジン)およびそれらの繰り返し単位を含むビニルコポリマー、ならびにN,Nジメチルアミノエチルメタクリレート)繰り返し単位を含むポリ(アミノエチルメタクリレート)のホモおよびコポリマーがあるが、これらに限定されるものではない。使用できる他のカチオン性ポリマーセクションは、キトサン(グルコサミンとN-アセチルグルコサミンとのコポリマーであり、繰り返し単位の5~100%がグルコサミンである)およびその合成誘導体である。本発明の方法に有用な製剤のグラフトまたはブロックコポリマーの疎水性ポリマーセクションの例としては、長鎖脂肪族炭化水素、ポリエチレン、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ブチレンオキシド)などがあるが、これらに限定されるものではない。ポリマーの親水性セクションは、組織接着性セクションがカチオンの場合は非イオン性であってよく、組織接着性セクションが非イオン性(かつ疎水性)の場合はアニオン性であってよい。
【0072】
本発明の方法に有用な製剤のグラフトまたはブロックコポリマーのアニオン性ポリマーセクションの例としては、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース(CMC)などのカルボキシル化セルロース系、ポリイタコン酸、ポリマレイン酸、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリン酸塩、ポリ核酸、ポリアクリルアミドプロパンスルホン酸、アニオン性天然ガム、アニオン性炭水化物、カラギーナン、アルギン酸塩およびヒアルロン酸があるが、これらに限定されるものではない。
【0073】
本発明の方法に有用な製剤の非イオン性の親水性ポリマーセクションの例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリジノンなどがあるが、これらに限定されるものではない。アニオン性の親水性ポリマーセクションの例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、スチレンスルホン酸、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、サクシニル化キトサン、硫酸セルロースなどを含むホモポリマーおよびコポリマーがある。
【0074】
ブロックまたはグラフトコポリマーとは、ポリマーのアーキテクチャを表すことを意図している。
【0075】
「模倣ポリマー」とは、有効かつ試験済みのポリマーと同じ挙動および属性を作り出すための代替的な化学的/分子的アプローチを意味する。例えば、PLL-g-PEGが有効であるように、複数の模倣品が存在する。その効果は、主に高分子の不活性化から引き出される。
【0076】
「不活性化」とは、細胞または生体表面が有するウイルスまたは抗体薬物複合体との相互作用能力を低減して、感染またはマクロピノサイトーシス、ウイルスまたはADCの細胞インターナリゼーションを低減することを意味する。この現象は、立体的干渉でもあり、ウイルスまたはADCの相互作用に関与する電荷相互作用の能力も低下させる。「不活性化」とは、ウイルスまたはADCの表面が有するリスクのある細胞との相互作用能力を低減して、ウイルスまたはADCの感染またはマクロピノサイトーシス、ウイルスまたはADCの細胞インターナリゼーションを低減することをも意味する。
【0077】
不活性化は、ADC、細胞傷害性薬剤またはウイルスで生じ得る。不活性化はまた、細胞上の相互作用によってADC、薬剤またはウイルスを取り込みにくくすることによっても生じ得る。
【0078】
グラフトコポリマーは、上掲のリストから選択されるポリマーから構成されるカチオン性(または非イオン性の疎水性またはアニオン性)骨格と、親水性グラフトとを有していてもよいし、親水性骨格と、上掲のリストから選択されるカチオン性(または非イオン性の疎水性)グラフトとを有していてもよい。グラフトコポリマーの場合、グラフトは、骨格のすべての繰り返し単位から生じてもよいし、骨格に沿って(均一またはランダムな頻度で)断続的に間隔が空いていてもよい。例えば、本発明の方法において使用するための製剤において有用なポリマーは、骨格がカチオン性ポリマーポリ(L-リジン)であり、グラフトが親水性ポリマーであるポリエチレングリコールから構成されるPLL-g-PEGである。PLL骨格は、3つの繰り返し単位~数千の繰り返し単位の長さであってよく、PEGグラフトは、1つの繰り返し単位~数千の繰り返し単位の長さであってよい。PEGグラフトは、すべてのPLL繰り返し単位に、1つおきのPLL繰り返し単位に、2つおきの繰り返し単位に、またはそれより少ない頻度で結合することができる。一実施形態では、平均して2つおきのPLL繰り返し単位に対してPEGグラフトが1つ存在する。同様の特性を模倣ポリマーに適用することができる。
【0079】
カチオン性である少なくとも1つのブロックと、水溶性でかつ非イオン性である少なくとも1つのブロックとを含むブロックコポリマーも、本発明の方法において使用するための製剤において有用である。一実施形態では、ブロックコポリマーは、疎水性である少なくとも1つのブロックと、水溶性でかつアニオン性、カチオン性または非イオン性である少なくとも1つのブロックとを含む。アニオン性ブロックが考えられる。
【0080】
水溶性でかつ非イオン性のコポリマーブロックの例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(pHEMA)、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチルオキサゾリン(PEOX)、多糖類およびそれらの任意の2つ以上のコポリマーがあるが、これらに限定されるものではない。
【0081】
水溶性でかつアニオン性のコポリマーブロックまたは骨格の例としては、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース(CMC)などのカルボキシル化セルロース系、ポリイタコン酸、ポリマレイン酸、ポリアクリルアミドプロパンスルホン酸、アニオン性天然ゴム、アニオン性炭水化物、カラギーナン、アルギン酸塩およびヒアルロン酸があるが、これらに限定されるものではない。
【0082】
水溶性カチオン性コポリマーブロックの例としては、ビニルピリジン、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、アリルトリ(アルキル)アンモニウムハライド、ポリアミノスチレン、キトサン、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリエーテルアミン、ポリビニルピリジン、正に帯電した官能性を有する多糖類、ポリアミノ酸、例えばこれらに限定されるものではないが、ポリ-L-ヒスチジン、ポリベンジル-L-ヒスチジン、ポリ-D-リジン、ポリ-DL-リジン、ポリ-L-リジン、ポリ-ε-CBZ-D-リジン、ポリ-ε-CBZ-DL-リジン、ポリ-ε-CBZ-L-リジン、ポリ-DL-オルニチン、ポリ-L-オルニチン、ポリ-Δ-CBZ-DL-オルニチン、ポリ-L-アルギニン、ポリ-DL-アラニン-ポリ-L-リジン、ポリ(-L-ヒスチジン、L-グルタミン酸)-ポリ-DL-アラニン-ポリ-L-リジン、ポリ(L-フェニルアラニン、L-グルタミン酸)-ポリ-DL-アラニン-ポリ-L-リジン、およびポリ(L-チロシン、L-グルタミン酸)-ポリ-DL-アラニン-ポリ-L-リジン、L-アルギニンとトリプトファン、チロシンまたはセリンとのコポリマー、D-グルタミン酸とD-リジンとのコポリマー、L-グルタミン酸とリジン、オルニチンまたはリジンおよびオルニチンの混合物とのコポリマー、およびポリ(L-グルタミン酸)をベースとするポリマーがあるが、これらに限定されるものではない。
【0083】
疎水性コポリマーブロックの例としては、アルカン、アルケン、アルキン、ポリイソブチレン、ポリエステル、例えば、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、およびそれらのコポリマー(PLGA)、ポリアミド、例えば、ナイロン(6,6)およびナイロン(12)、ポリウレタン、ポリプロピレンオキシド、ポリテトラメチレンオキシド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリレート、例えば、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメタクリレート、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEKs)、ポリホスファジン、ポリカーボネート、ポリアセタールおよびポリシロキサンがあるが、これらに限定されるものではない。
【0084】
以上の本明細書の記述において、ある分子実体が別の段落に適用できるが省略された場合、適用可能な場所に含まれるように考慮することができる。同様に、各用語を、最終的な請求項をサポートするために示される場所に移動させることができる。
【0085】
本開示を読んだ際に当業者に理解されるとおり、グラフトおよびブロックならびにトリブロックおよびデンドリマーが企図され、これらの構成も本発明の実施形態として使用することが可能である。
【0086】
トリブロック構成を有する例示的なブロックコポリマーの1つとして、ポリエチレンオキシド親水性ブロック(「PEO」)、ポリプロピレンオキシド疎水性ブロック(「PPO」)および別のPEOブロックを含むPLURONIC(登録商標)F127が挙げられ、これはPoloxamer 407とも呼ばれるものである。本発明で使用するための他のブロックコポリマーは、1つの親水性ブロックおよび1つの疎水性ブロックのみを含んでもよいし、いくつかの交互のブロックを含んでもよく、例えば、PPO-PEO-PPOブロックコポリマー(PLURONIC(登録商標)、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドをベースとするブロックコポリマー、BASF、フロラムパーク、NJ)であってよい。本発明において有用な追加の例示的なPLURONICブロックコポリマーには、PLURONIC 10R5、PLURONIC 17R2、PLURONIC 17R4、PLURONIC 25R2、PLURONIC 25R4、PLURONIC 31R1、PLURONIC F 108 Cast Solid Surfacta、PLURONIC F 108 Pastille、PLURONIC F 108 Prill、PLURONIC F 108NF Prill Polaxamer 338、PLURONIC F 127 Prill、PLURONIC F 127 NF、PLURONIC F 127 NF 500 BHT Prill、PLURONIC F 127 NF Prill Poloxamer 407、PLURONIC F 38、PLURONIC F 38 Pastille、PLURONIC F 68、PLURONIC F 68 Pastille、PLURONIC F 68 LF Pastille、PLURONIC F 68 NF Prill Poloxamer 188、PLURONIC F 68 Prill、PLURONIC F 77、PLURONIC F 77 Micropastille、PLURONIC F 87、PLURONIC F 87 NF Prill Poloxamer 237、PLURONIC F 87 Prill、PLURONIC F 88 Pastille、PLURONIC F 88 Prill、PLURONIC F 98、PLURONIC F 98 Prill、PLURONIC L 10、PLURONIC L 101、PLURONIC L 121、PLURONIC L 31、PLURONIC L 35、PLURONIC L 43、PFLURONIC L 44、PLURONIC L 44 NF Polaxamer 124、PLURONIC L 61、PLURONIC L 62、PLURONIC L 62 LF、PLURONIC L 62D、PLURONIC L 64、PLURONIC L 81、PLURONIC L 92、PLURONIC L44 NF INH surfactant Polaxamer 124、PLURONIC N 3、PLURONIC P 103、PLURONIC P 104、PLURONIC P 105、PLURONIC P 123 Surfactant、PLURONIC P 65、PLURONIC P 84およびPLURONIC P85があるが、これらに限定されるものではない。適切である場合、すべての粒子径のブロックコポリマーが含まれ、例えば、PLURONIC F127およびPLURONIC F87は、プリルおよびマイクロプリル製品として入手可能である。例えば、疎水性セグメントとPEOブロックとを含む非イオン性界面活性剤は、ここではブロックコポリマーとみなされる。
【0087】
本発明で使用できる追加の例示的なブロックまたはグラフトコポリマーは、米国特許第5,578,442号明細書および米国特許第5,834,556号明細書に開示されており、それぞれの教示は、その全体が本明細書に援用されるものとする。
【0088】
ブロックまたはグラフトコポリマーは、本発明の方法で使用するための製剤に、製剤の成分として重量/重量ベースで0.001%~40%、より典型的には0.01%~25%の範囲の濃度で含まれている。製剤は、いくつかの実施形態では、組織への送達のための、または再製剤化および溶解のための凍結乾燥粉末などの粉末であり、この粉末は、0.001%~100%のブロックまたはグラフトコポリマーであってよい。コポリマーは、いくつかの実施形態において水溶性であってよい。
【0089】
コポリマーの組み合わせが考慮され、本明細書に含まれるが、製剤の割合は、異なる各成分に適用可能である。
【0090】
本明細書に製剤が記載されているヒトにおける実施例では、溶液または懸濁液として送達される場合、コポリマーの量は、約0.1%~5%である。さらに、コポリマーの量は、0.01%~3%、0.1%~2.5%、または0.5~4%であることができる。
【0091】
本発明で使用するための医薬製剤およびコーティングに組み込むこともできる追加の例示的な成分には、PLURONICゲル化剤、例えばこれに限定されるものではないがF127、F108、ならびに前掲の追加のPLURONIC薬剤があるが、これらに限定されるものではない。さらに、一実施形態では、これらの成分は、ゲル化活性に必要な分量以下の分量で使用される。
【0092】
これらの医薬製剤に含まれ得る他の成分(活性成分または不活性成分のいずれか)としては、脂質、油、界面活性剤、水、潤滑ポリマー、典型的な界面活性剤、緩衝剤、塩、物理的イオン、タンパク質、局所エモリエント剤、口腔、局所、粘膜で典型的に使用される賦形剤、皮膚用および眼用製剤、潤滑剤、例えば、PEG 400、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、鉱油、プロピレングリコール、グリセリン、ヒプロメロース、白色ワセリン、ポリビニルアルコール、リポソーム、マンニット、ヒドロキシプロピルグアー、デキストラン70、粘弾性物質およびヒアルロン酸、ならびにこれらの組み合わせがあるが、これらに限定されるものではない。追加の成分としては、洗口液、鼻腔用スプレー、シャンプー、石鹸およびコンディショナーに通常含まれるものを挙げることができる。このような成分は、0.1重量%未満~99重量%、より好ましくは1重量%未満~10重量%の範囲の様々な割合で製剤中に含まれ得る。これらの医薬製剤に含まれ得る他の成分としては、防腐剤、例えば、ポリキセトニウム、ポリクオタニウム-42、ポリクオタニウム-1、ポリクアット、アルキルヒドロキシ安息香酸塩防腐剤、パラベン、過酸化水素、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジミン、塩化セタルコニウム、過ホウ酸ナトリウム、Purite、消失型防腐剤、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、クロロブタノール、臭化ベンゾドデシニウム、「イオン緩衝系」、ポビドン、銀、硫酸銀、ベタジン、ならびに他の消毒薬、および商標を有するおよび商標を有しない防腐剤があるが、これらに限定されるものではない。また、PLL-g-PEG、は防腐剤として作用することがある。抗生物質、抗ウイルス剤(低分子または生物製剤のいずれであっても)が製剤に含まれてもよい。いくつかの実施形態では、防腐剤無添加の製剤が好ましい。
【0093】
さらに、いくつかの実施形態では、製剤およびコーティングは、1つ以上の追加の医薬活性成分を含むことができる。例としては、麻酔薬、抗生物質、抗ウイルス剤、抗炎症剤、眼圧下降剤、人工涙、潤滑剤、拡張剤、免疫抑制剤、抗血管新生剤、モノクローナル抗体、タンパク質、ペプチド、神経保護剤、低分子および抗体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、製剤は、個人用保護具の使用前に送達される。
【0094】
これらの製剤に含まれ得るいくつかの例示的な、ただしこれに制限されるものではない追加の薬物には、ヒトの有益性のために示されるように、レムデシビルを含む抗ウイルス剤、抗レトロウイルス剤、リマンタジンおよびこのリストから選択される他のものが含まれる:HIVに使用されるアバカビル、ヘルペス、例えば水疱瘡に使用されるアシクロビル、B型慢性肝炎に使用されるアデホビル、インフルエンザに使用されるアマンタジン、HIV阻害に使用されるアンプリゲン、アンプレナビル(アゲナーゼ)、アルビドール、アタザナビル、アトリプラ(固定用量薬剤)、バラビル、バロキサビルマルボキシル(ゾフルーザ)、ビクタルビ、ボセプレビル(ビクトレリス)、シドホビル、コビシスタット(タイボスト)、コンビビル(固定用量薬剤)、ダクラタスビル(ダクリンザ)、ダルナビル、デレビルジン、デスコビ、ディダノシン、ドコサノール、ドルテグラビル、ドラビリン(ピフェルトロ)、エコリーバ、エドクスジン、エファビレンツ、エルビテグラビル、エムトリシタビン、エンフビルチド、エンテカビル、エトラビリン(インテレンス)、ファムシクロビル、固定用量合剤(抗レトロウイルス剤)、フォミビルセン、フォサンプレナビル、フォスカルネット、フォスフォネット、融合阻害剤、ガンシクロビル(サイトベン)、イバシタビン、イバリズマブ(トロガルゾ)、イドクスウリジン、イミキモド、イムノビル、インジナビル、イノシン、インテグラーゼ阻害剤、I型インターフェロン、II型インターフェロン、III型インターフェロン、インターフェロン、ラミブジン、レテルモビル(プレバイミス)、ロピナビル、ロビライド、マラビロック、メチサゾン、モロキシジン、ネルフィナビル、ネビラピン、ネクサビル、ニタゾキサニド、ノービア、ヌクレオシド類似体、オセルタミビル(タミフル)、ペグインターフェロンアルファ-2a、ペグインターフェロンアルファ-2b、ペンシクロビル、ペラミビル(ラピバブ)、プレコナリル、ポドフィロトキシン、プロテアーゼ阻害剤(薬理学)、ピラミジン、ラルテグラビル、レムデシビル、逆転写酵素阻害剤、リバビリン、リルピビリン(エデュラント)、リマンタジン、リトナビル、サキナビル、シメプレビル(オリシオ)、ソホスブビル、スタブジン、相乗効果増強剤(抗レトロウイルス剤)、テラプレビル、テルビブジン(タイゼカ)、テノホビルアラフェナミド、テノホビルジソプロキシル、テノホビル、チプラナビル、トリフルリジン、トリジビル、トロマンタジン、トルバダ、バラシクロビル(バルトレックス)、バルガンシクロビル、ビクリビロック、ビダラビン、ビラミジン、ザルシタビン、ザナミビル(リレンザ)、ジドブジン。前記製剤には、ヒドロキシクロロキン、クロロキンおよびアジスロマイシンが含まれていてもよい。潜在的な製剤には、ポリまたはモノクローナルを有する抗体製品、抗体、タンパク質、抗原に結合する生体分子から選択される生体分子が含まれる。抗体の断片、トラップ分子、ならびにADCおよび本願で扱う条件に関連する他の抗体、細胞受容体およびタンパク質に結合する生体分子が、既知、開発中、未開発、着想段階のいずれでも含まれる。重要であるのは、性能または効果を向上させるために、特許請求されたコポリマーを、対処する疾患の管理において他の有効な薬剤と配合して組み合わせることであり、これには相乗療法が含まれる。生体分子は、生体によって生産される。合成された抗体、組換えタンパク質、ならびに他の高分子および低分子であって、新規技術によって新たな命名法が生まれたものも含まれる。ACE2受容体ブロッカー、ステロイド(グルココルチコイド、アンドロゲン、エストロゲンなど)も潜在的な製剤成分であり、本発明の様々な実施形態内で考慮される。
【0095】
本発明の製剤のpHは、投与部位および修飾すべき生体表面または膜の部位に応じた生理的範囲にある。典型的には、pHは、3以上、例えば5.6以上でかつ9以下である。
【0096】
製剤は、新規のまたは確立されたドライアイまたは角膜治療薬を含むことができ、これには、シクロスポリン、リフィティグラスト、LFA-アンタゴニスト、ステロイド、例えば、ロテプレドノール、デキサメタゾン、フルシノロン、ジフルプレドナート、アルデヒド捕捉剤、フォナルデパール、バレニクリン、ビソミチン、キナーゼ、絹由来タンパク質、ボクロスポリン、オメガ3脂肪酸、および本明細書において完全に参照されるOTCモノグラフの任意の緩和剤または滑沢剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。重要なことに、製剤のいくつかの実施形態は、粘度が非常に低い(市場にあるほとんどの人工涙液製品よりも低い)。この利点は、視覚が点眼時にぼやけないこと、スプレーが小径ノズルを通じて容易に機能すること、および洗口液が完全かつ容易に洗い流され、良好な忍容性を示すことである。エレクトロスプレーおよび他のマイクロエレクトロニクスおよび機械的送達システム、高精度マルチジェットシステムおよびマイクロドーズリリースへの他のアプローチが、とりわけ可能な送達システムとして含まれる。コポリマーは、次のように上昇して存在する。残留する生体接着性ポリマーは、当然のことながら、それらが保護する細胞と既に結合している。例えば、ある試験の製剤は、2.7cPの粘度を有していた。さらに、本発明で付与された有益性は、効果の機序としてグラフトまたはブロックコポリマーの価値を実証するものである。
【0097】
実施例1のイン・ビトロ実験に記載されているように、本アプローチは、ウイルスの感染力を低減するのに有効である。他の実施例では、上皮細胞へのADCの進入の低減および眼の有害事象の低減が示されている。
【0098】
さらに、本明細書の実施例に記載されるように、これらのブロックおよびグラフトコポリマー製剤の性能は、ヒトのボランティアの眼において評価される。以前の実験では、点眼剤は、良好な忍容性を示した。例えば、複数の最初のヒト曝露のうち、いずれの被験体にも刺激感または不快感が報告されなかった。さらに、50マイクロリットル以下を単回および繰り返し点眼しても、かすみが生じたという報告はなかった。したがって、本発明の一実施形態は、より低い粘度を有する生成物である。
【0099】
しかしながら、本開示を読めば当業者によって理解されるように、代替的な眼科送達手段を用いることもでき、これには、眼内、眼周囲、結膜、結膜下、経結膜、眼球周囲、眼球後、テノン嚢下、経強膜、局所ゲル、局所分散液、眼窩内、強膜内、硝子体内、網膜下、経網膜、脈絡膜、ぶどう膜、腔内、経角膜、角膜内、水晶体内(有水晶体眼および偽水晶体を含む)、および視神経内またはこれに隣接する送達手段が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明は、薬物送達を延長するためのポリマーの他の遅延放出製剤とともに使用することができる。本発明は、デポ剤とともに使用することができる。本発明は、血小板減少症のような他のADCの毒性を治療するために静脈内投与することができる。
【0100】
ADC毒性に使用するために、またウイルス感染に使用するために本発明において重要なことは、商業的価値および製品開発価値のあるイン・ビトロおよびイン・ビボの機会が存在することである。例えば、生体接着性および不活性化部位を有するこれらのコポリマーは、イン・ビトロおよびヒトの双方でこれらの条件において有効であることが示されているため、開発におけるその使用には価値がある。細胞をコポリマー製剤で治療し、その後、ADCを添加することができる。角膜上皮モデルを含む組織培養も使用することができる。オフターゲットまたはマクロピノサイトーシスによる取り込みを改善するアプローチが知られているため、コポリマーの存在下で取り込みが少ないものを開発のために選択することができる。モデルには、上皮細胞株、採取した上皮細胞、巨核球、その他の細胞およびヒト臍帯静脈内皮細胞を用いることができる。毒性に関するリスクのある細胞種は、いくつかの実験室開発手順で使用される。同様に、治療および予防策における抗ウイルス効果を、ウイルスおよびコポリマー曝露の実験室/開発設定において評価し、ヒトに向けた開発のために相乗効果および最適な分子および製剤を選択することができる。したがって、細胞を広く治療するための特許請求は、本明細書で扱うヒトの健康のための治療法を前進させるための適切かつ有用な発明である。
【0101】
SARS-Cov-2による感染症であるCOVID 19は、死亡率が最大で3%であり、入院やICUでの治療を必要とする感染者も多く、多くの患者にとって甚大な被害をもたらす疾患である。数百万人の患者が感染し、死亡率は数十万人単位で増加し続けている。全世界で300万人以上の患者が感染し、6ヶ月以内に20万人以上が死亡している。高齢で既往症のある患者は、罹患率および死亡率のリスクが高くなる。また、高度のウイルス負荷曝露も、罹患率にとって大きなリスクとなる。SARS-Cov-2は世界的なパンデミックを引き起こし、より優れた代替療法が必要とされている。新たなパンデミックが発生する可能性もある。SARS-Cov-2のスパイクタンパク質は、グラフトコポリマーおよびブロックコポリマーのアプローチによる不活性化が可能であるが、本アプローチは1つのウイルス株に特化したものではない。
【0102】
「ウイルス感染力」とは、病原性ウイルスへのリスクのある宿主細胞の曝露を指す。タンパク質受容体やその他の取り込み機序を利用して、ウイルス粒子は細胞に侵入し、そのRNAやDNAを放出し、細胞のタンパク質製造機構やヌクレオチド機構、またはその他の代謝プロセスを乗っ取って、より多くのウイルス粒子を製造し、次いでそれを放出して他の細胞や他の生体に感染させることができる。特定の機序に限定するものではないが、PLL-g-PEGなどの上記のグラフトコポリマー(カチオン性、疎水性、アニオン性であり、親水性側鎖を有する)を含む製剤は、ウイルスの脂質膜シェル上の、またはウイルス粒子全般上のウイルス粒子(SARS-Cov-2のスパイクを含む)または他の細胞進入仲介タンパク質の生体表面に接着する。荷電性、疎水性またはアニオン性部位、例えばPLLの部位は、生体接着性を生じる。親水性(例えば、PEG)部位は、標的細胞との相互作用を予防および/または低減する。液滴、スプレーミストまたはリンスとして適用された場合、グラフトコポリマーは、静電相互作用に伴う物理化学的オンオフ結合により、表面組織からウイルス粒子へと移動することが可能である。不活性化部位は、非イオン性、非イオン性および不活性、ならびに親水性であることができる。グラフトコポリマーはまた同様に、リスクのある細胞を保護し、場合によっては受容体タンパク質(例えば、ACE2)に直接干渉して活性を強化する。ウイルス粒子およびリスクのある細胞への複合的な曝露によって、それらの相互作用およびウイルス感染力が大幅に低減される。相互作用の低減は、病原体または毒素への曝露の低減により、ヒトを含む細胞、組織および生体にとって有益であり、それにより、これらの薬剤に伴う罹患率および死亡率が低下する。例えば、ウイルス量が少なければ、その後の感染の重症度が低下し、宿主の防御が働く機会が増える。ウイルスへの曝露の低減により、伝播率および場合によってはウイルス感染の重症度が低下する。したがって、本明細書に記載の感染を伴うSARS-Cov-2を低減する方法は、被験体を安全に保護するための重要な追加的アプローチとなるであろう。
【0103】
同様の製剤は、すでに眼に使用されており、有害事象はなく、口腔、気道および鼻腔の使用にも安全である。PLL-g-PEGは、アミノ酸およびPEGから構成される。広範な検討により、この製剤はヒトおよび動物に使用しても安全であることが示されている。
【0104】
これらの製剤はまた、本発明にしたがって、病院、救急部、集中治療室、航空機、幼稚園および学校、ウイルス罹患者の家庭、ならびにナーシングホームおよび慢性ケア施設を含むがこれらに限定されない環境において、鼻腔および吸入適用を介してSARS-Cov-2および新型ウイルスの伝播を低減すべく広く使用することができる。また、医療従事者や第一対応者も恩恵を受ける可能性がある。「新型」または「新規」ウイルスとは、ヒト、一般には人口の大多数が事前の曝露やワクチンによる抵抗力を持たないことを示す変異や全般的な特徴を有するウイルスを意味する。「トランスフェクション」とは、ウイルスが宿主に侵入する方法を意味する。「エピデミック」および「パンデミック」は、保健当局によってしばしば決定されるものである。パンデミックとは、ある特定の時期にある国や世界で流行する疾患のことである。エピデミックとは、ある特定の時期にある地域社会で感染症が広く発生することである。本発明は特に、ウイルスのパンデミックおよびCOVID19に関する。COVID19とは、SARS-Cov-2によって引き起こされるウイルス性疾患である。集団免疫とは、ワクチン接種またはウイルスへの事前の曝露により抗体が産生され、十分高い割合の個体がその疾患に対する免疫を持っている場合に生じる、集団内での接触伝染病の広がりに対する抵抗性のことである。集団免疫には、相当数のウイルスに対する抵抗力が必要である。子供や、免疫不全、慢性疾患および他の慢性的健康状態、例えば嚢胞性線維症など、宿主が日常的な疾患にかかりやすくなっているような虚弱体質の大人には、製剤の重要な有用性が存在する。
【0105】
角膜上皮の小嚢胞様上皮症は、ADC療法に伴う、および/またはADC療法に起因することが知られている現在特定されている問題であり、角膜上皮毒性を有するADCが長年の開発を経て商業的に使用されるようになったため、最近は臨床的に重要となってきている。ADCは、多くの形態の腫瘍疾患に対する有効な治療薬として開発が進められている。これらはコストおよびリソースを要する開発プログラムであり、眼毒性による使用制限の必要性は大きい。ヒトへの毒性は臨床試験まで現れないこともある。最適な腫瘍(または他の適応)疾患の結果(生存または無増悪反応、有益な効果)に向けて患者がADC療法を維持できるようにすることが重要であり、角膜上皮毒性は、治療を制限する、あるいは患者がADCに関連する治療を中止する原因となり得る有害事象である。ADCに伴う重大な眼科的および他の種類の有害事象は、患者および治療医にとって問題である。ペイロードまたは弾頭は、いったん細胞内に入ると、ADCからのその放出(リンカーの切断)に続いて有害事象(眼の、またはいくつかの実施形態では他の細胞や培養もしくは組織培養における細胞)を引き起こすと考えられている。
【0106】
毒性の特定の理論または機序に束縛されるものではないが、本発明の推定される有用性を説明する方法として、有益性の発見がイン・ビトロおよびイン・ビボで実証される。
【0107】
ADCは、臨床的に見られる毒性に基づき、2つの方法のうちの1つを通じて眼への曝露を得ることができる。まず、ADCは、辺縁部循環(細くほとんど見えない、動脈および静脈の成分が放射状に配向したヘアピンループを有する明確な血管系を有するVogt柵(palisades of Vogt)を含むがこれに限定されない)から細胞外空間への放出、その後の基底細胞による非特異的取り込み、およびこれの角膜への移動により、辺縁幹細胞の娘細胞、そして最終的には基底幹細胞および基底上皮細胞へと到達できる。
【0108】
「マクロピノサイトーシス」とは、ADCの抗体部分が細胞内に進入するのに使用する特異的な受容体を通常欠いているため、毒性に影響を受ける角膜細胞のような細胞にADCが進入するための機序として説明されている。したがって、ADCの細胞への進入は非特異的であり、オフターゲットであると考えることができる。本明細書の本発明の実施形態は、辺縁幹細胞、娘細胞、一過性増幅細胞、翼細胞、基底細胞、角膜上皮細胞および末端上皮分化細胞などのオフターゲットのADCにより誘発される角膜細胞毒性を改善または低減する。
【0109】
また、ADCは、涙を通じて角膜に曝露されることもある。薬剤が涙に分泌されることが報告されている。涙には多種のサイトカインが含まれることが確認されており、涙液系からの分泌物は、その存在を示す経路として示唆される。涙液膜には何百ものタンパク質および/または酵素が含まれており、その機序は、やはり涙腺からの分泌であると理解されている。血液/涙バリアを通過する血漿からの漏出、または組織間質液からの漏出も、涙に含まれるタンパク質の存在を示す経路として説明される。抗体は、涙において認められる。
【0110】
表層角膜上皮細胞には血液が供給されないため、直接的な血液供給とは独立した何らかの方法で、体液の補充や栄養を得なければならない。上皮細胞は、栄養補給の方法としてマクロピノサイトーシスを利用している。細胞の形質膜は、スフィンゴ糖脂質、コレステロールおよびタンパク質受容体の組み合わせを含み、これは脂質ラフトと呼ばれる糖脂質タンパク質のマイクロドメインに組織化されている。脂質ラフトのインターナリゼーションは、細胞外物質のインターナリゼーションについて角膜上皮細胞で記録されているプロセスである。マクロピノサイトーシスとは、細胞外物質を細胞により捕捉するエンドサイトーシスの一種である(マクロピノサイトーシスとは、細胞外物質を細胞内に取り込むエンドサイトーシスである)。(マクロピノサイトーシスは、真核細胞が細胞外の液体や溶解した分子を取り込むための手段である。本明細書では実施形態においてピノサイトーシスも用語として使用することができる。ピノサイトーシスとは、細胞膜から小胞が出芽することによって、細胞内に液体を取り込むことである。マイクロピノサイトーシスは、本明細書において考慮され、実施形態においても用語として使用され、マクロピノサイトーシスまたはピノサイトーシスのいずれかが総じて使用される任意の特定の実施形態において使用することができる。マイクロピノサイトーシスとは、膜の侵襲および比較的微細な小胞の挟み込みによって、高分子または他の化学物質が細胞に取り込まれることである。)毒素や病原体は、エンドサイトーシスやマクロピノサイトーシスを利用して、多くの種類の細胞に侵入する。ADCは、マクロピノサイトーシスによって細胞内に進入することができる。
【0111】
マクロピノサイトーシスは、多くの種類の細胞で起こる。マクロピノサイトーシスは、角膜上皮細胞へのADCの進入方法の1つであることが判明している。このような細胞外成分の細胞への取り込み方法は自然なものであるが、特定の環境においてそれを阻害することは有益である。マクロピノサイトーシスは、表層上皮細胞がADCを取り込むための方法であると考えられる。最も特異性の低い経路であり、マクロピノソームとして知られる大きなエンドサイトーシス小胞を形成するアクチン駆動の膜突出によって指示される。最終的に、これらの小胞はリソソームと融合する。ADCがリソソーム内に入ると、ペイロード、特にADV toxの設定においてはメイタンシノイドおよびアウリスタチンが毒性を伴う。しかし、チューブリン阻害剤は一般的に、角膜毒性の原因となる可能性がある。一般的に毒性ペイロード、またはチューブリン阻害剤によって最も有害作用を受けるのは、分裂(微小管に依存する分裂活性)または遊走(これも微小管に関与)のいずれかの細胞への曝露である。
【0112】
ペイロードは、抗体に連結した細胞毒性分子であり、これはその後、細胞内酵素によってリンカーで切断される。これは、ADCが毒素を標的(新生)細胞に送達する方法であるが、他の細胞も有害作用を受け、ADCと相互作用する受容体/タンパク質を発現していなくてもADCが進入することが可能である。ADCが細胞に進入する手段としては、ピノサイトーシスがある。チューブリン阻害剤以外のペイロードも角膜上皮毒性を示すことがあり、本明細書では、それらの代替的な細胞毒性ペイロードを検討する。ADCからペイロードが切断されると、細胞分裂や場合によっては細胞遊走に必要な微小管へのチューブリンの重合の阻害など、その化学的機能を積極的に発揮するようになる。細胞分裂中の細胞にチューブリン阻害剤が存在すると、細胞死(アポトーシスおよびピクノーシスが続く)を引き起こすことがある。ADC毒性では、角膜上皮細胞でアポトーシスおよびピクノーシスが観察されている。検査所見である小嚢胞様角膜症の原因は、このピクノーシス細胞であると推定される。細隙灯検査で上皮層に死滅した細胞や機能不全の細胞が観察される。その程度は、定量化可能である。
【0113】
ADCを取り込んだ細胞で一旦切断されると、細胞毒性分子が当該細胞から放出され、バイスタンダー効果を引き起こす可能性がある。したがって、細胞への取り込みおよび切断を低減することは、過剰な相対的低減(バイスタンダー死により実際に1つの細胞にADCを取り込むよりも多くの細胞を保護することができる)を有する介入である可能性がある。バイスタンダー死とは、一度切断された細胞毒が細胞外空間に放出され、そこで後続の細胞に入ることを意味する。そのため、より表層の細胞に取り込まれると、角膜上皮層内を移動する可能性がある。またこれは、幹細胞に取り込まれた後に辺縁で放出され、近くの他の幹細胞に放出され、基底部の幹細胞に内側に拡散することも可能である。このような細胞傷害性薬剤の拡散を、本発明の方法によって低減することができる。本アプローチにより取り込みおよび切断を低減できるだけでなく、ポリマーにより局所的な細胞毒の移動および再取り込みを制限することも可能である。機序の如何にかかわらず、その効果は現実的であり、価値が高い。
【0114】
ヒトにおける毒性は、ある場合には上皮層に限定される(間質も内皮も含まない)、あるいはその可能性がある。[間質または内皮は、二次的にまたは一部のADC設計において関与する場合があることに留意されたい)。表層上皮細胞の正常な補充が妨げられ、表層上皮層は異常となり、点状染色、角膜上皮欠損および異常屈折面を呈し得る。多くの場合、視力に悪影響を及ぼす。患者には、かすみ目、ドライアイ、角膜異物感、眼不快感、眼刺激感などの症状が現れることがある。ADC療法では、角膜感染、間質性角膜炎および潰瘍性角膜炎が報告されている。これらはすべて重大な有害事象であり、これらの毒性により休薬や投与延期が必要となることもまれではない。シタラビンの場合(一部のADCで遭遇するケースと同様の状況)の眼の病理組織学的検査では、急速に分裂する基底上皮細胞の甚大な変性が見られ、これは上皮小嚢胞の形成を招く。
【0115】
眼刺激感は、ADCに伴う毒性または有害事象であるが、唯一の症状ではない。ADCによる角膜毒性から、角膜点状表層上皮症、角膜びらん、および上皮欠損、角膜潰瘍、角膜感染、角膜穿孔が起こり得るかまたは潜在的に起こり得る。異物感や視力低下が起こる可能性がある。この救命処置のために、休薬、投与延期および減量が必要となる場合がある。患者は、運転や読書のために視力を必要とする。視力は、生活の質を左右する重要な要素である。患者がより規則的な投与スケジュールを維持し、眼の症状を最小限に抑えることができるようにすることが、本発明の利点である。患者は、ADCを中断することなく、重大な有害事象が少なくなり、より良好な結果を得ることができるようになる。
【0116】
ADCに伴う角膜毒性は、本明細書で示されるように、その機序に向けられた治療法を有しない。介入可能な限度は、症状管理である。市販の潤滑点眼剤、涙点閉鎖、バンデージコンタクトレンズが症状に役立つ。
【0117】
一態様では、非新生細胞に損傷を与えるオフターゲットの取り込み経路(ただし、必ずしもオフターゲットの取り込み経路に限定されない)の設定において、前記毒性に影響を受ける細胞に適用される静電的および立体的媒介特性を有するコポリマーの有効量を適用することによって、抗体薬物複合体の使用に伴う有害事象を低減する方法である。
【0118】
特定の理論に束縛されるものではないが、本発明の有用性は、本明細書に記載の干渉、軽減および阻害によって顕在化することができる。
【0119】
オフターゲットの取り込みによって局所的に発生するADCの毒性を管理する別の関連するアプローチは、ADC自体に対する抗体を使用することである。特定のADCに向けて作製された抗体は、それによってマクロピノサイトーシスにより細胞に進入するADCの能力を低下させるPEG化のような不活性化部位を有するように設計されることになる。ADCは、例えば、ピノサイトーシスによる取り込みを阻害するために局所的に送達されることになる。抗体は、細胞培養、実験室およびイン・ビボのヒトでの使用のために、親水性ポリマーに接合することによってADCに対する抗体の修飾を使用して、本明細書に記載のようにPEG化されるかまたは他の不活性化部位を有することができる。コポリマーまたは抗体がADCに伴う毒性または他の薬剤角膜毒性を低減することが示される実施形態では、治療を複雑にする眼の有害事象のリスクを低減して臨床開発を追求することができるため、実験室での使用は重要である。
【0120】
カチオン性グラフトコポリマーは、ADCの細胞(角膜上皮細胞)への取り込みに干渉する。このユニークな方法論的アプローチにより、角膜上皮の健康状態が改善され、検査所見や症状所見も改善され、眼のリスクも低減する。ADCに伴う細胞死(例えば、毒性)の低減は、多くの利点を有する。毒性低減のための静脈内投与やその他の選択肢が存在し、したがって、請求項の対象は広範である。巨核球は、ADCのインターナリゼーションのためにマクロピノサイトーシスを使用することができ、したがって、ADCに伴うこの既知の有害事象を低減する選択肢が、本発明で扱われる。
【0121】
上皮細胞は、表面に負電荷(3.6×10-4)を有することが知られている。したがって、カチオン性グラフトおよびブロックコポリマーは、ADCの取り込みに関与すると考えられるこれらの負電荷を不活性化する。ADCを正に帯電させると毒性が増し、負に帯電させると取り込みが低減されるという証拠が存在する。本発明の重要な点は、静電的(またはいくつかの実施形態では疎水性の)相互作用による不活性化が有益であることを見出したことである。細胞表面におけるADCの相互作用を低減することにより、一実施形態では、ADCの進入が低減される。細胞全般を保護することによって、ADCの毒性も低減される。他の(非上皮)細胞も同様に、これらの相互作用の低減の干渉を可能にする荷電領域(および疎水性領域)を有する。コポリマーはまた、細胞やADC上の主要なタンパク質成分に作用して、取り込みを制限することができる。
【0122】
また、カチオン性グラフトコポリマー(あるいは他の有効なブロックまたはグラフトコポリマー)を標的組織に到達させるための複数の方法があることも重要である。PLL-g-PEGは、哺乳動物の静脈内注射に対して安全であることが判明している。点眼剤および局所曝露は安全であることが判明している。このポリマーは静脈内注射により標的の辺縁細胞に到達することができる。結膜下での送達もまた、毒性を改善するための貴重なアプローチとなり得る。なぜならば、このアプローチは、リザーバーと、辺縁幹細胞および基底上皮細胞を含む娘細胞へのアプローチの双方を提供するためである。結膜はまた、高分子に対して若干の透過性を示す。結膜上皮の細胞間隙は角膜よりも広いため、より大きな分子に対してより高い透過性を示す。したがって、局所的に送達されたPLL-g-PEGは、幹細胞(角膜表層上皮細胞の前駆細胞)に達し、ADC角膜毒性への干渉により毒性を低減することができる。角膜(または眼)への局所送達は、表層角膜または結膜上皮へ進入するあらゆるADCに干渉することができる。したがって、ペイロードの放出と、それに続く角膜5層または6層を通じた基底細胞への移動が低減される。また、より大きな分子は、当然のことながら表層上皮に進入することができる。したがって、PLL-g-PEG、または他の特定されかつ特許請求されたグラフトもしくはブロックコポリマーは、上皮層のより深いところにある基底上皮細胞を保護することができる。これらは、この空間に達する。同様に、ADCは、より深い角膜上皮細胞への曝露が可能である。したがって、コポリマーは、ADCに干渉して細胞捕捉プロセスとの相互作用をブロックし、また角膜細胞表面で干渉して細胞へのADCの進入に干渉することができる。これらの効果により、ADCに伴う角膜毒性を低減するための効果的なアプローチが得られる。角膜細胞の場合、基底細胞やその他の有害作用を受ける可能性のある細胞は保護されて、ある程度より少ない毒性を示し、患者が示すADC角膜毒性の兆候や症状は、より少ない。この選択肢には重大な意義があり、オフターゲットのADCの毒性を最小限に抑えるための他のアプローチにも適用される。角膜細胞は、典型的にはADCが標的とする受容体を示さないため、毒性はオフターゲットである。いくつかの実施形態では、角膜細胞上の受容体の存在に基づくオンターゲットの取り込みの構成要素がある場合、これらのコポリマーは、局所適用で有益となり得る。
【0123】
送達は、局所的であっても限局的であっても全身的であってもよい。多くの製剤が存在する。コポリマー(PLL-g-PEG)は、ADCへの角膜組織の曝露を低減し、また取り込みを低減することができる。干渉は、立体的で荷電に基づくものである。ADCを不活性化させ、細胞表面を不活性化させることで、取り込みを低減する。荷電性または疎水性の活性部位は、細胞またはADCに接着する。ポリマーの親水性成分により、ADC-角膜間の相互作用が低減し、取り込みが低減する。コポリマーによる結膜または角膜への結合は、ADCが涙液膜から涙液排出系に移動する際に、最終的にADCの干渉および不活性化のためのリザーバーとしても機能することができる。選択されたコポリマーは、非毒性である。点眼剤の濃度は、0.01~10重量%の範囲であってよいが、より一般的には0.5~3重量%である。結膜下製剤は、より高濃度であってよい。
【0124】
試験したグラフトコポリマーは、ある実験ではPLL(20)-g[3.5]-PEG(5)であるが、他の分子サイズおよびグラフト化比も安全かつ有効である。
【0125】
本明細書に記載の製剤はまた、ある時点での安全性を提供し、ADC毒性の軽減またはウイルス防護のために他の薬剤またはポリマー成分を点眼剤に含めることが有益であり得る。結膜下送達は、必要な投与頻度がより少ない場合がある。局所送達は、長期間の使用に適合する。角膜表面の保護を助け、上皮細胞を傷つけないために、多くの実施形態では防腐剤が回避される。眼科用途の例示的な追加の医薬活性成分には、潤滑剤、緩和剤および滅菌水、ならびに他の標準的な賦形剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。コポリマーとの相乗効果が存在し得る新規の保護剤を含むいくつかの実施形態では、別の活性剤と組み合わせることが有益であり得る。また、抗生物質(フルオロキノロン、バンコマイシン、セファロスポリン、ゲンタマイシン、エリスロマイシン、アジスロマイシン、サルファ剤、バシトラシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、オフォキサシン)、アセタゾラミド、アンタゾリン、アスピリン、アトロピン、アゼラスチン、バシトラシン、ベタキソロール、ビマトプロスト、植物性薬剤、例えば、ゼアキサンチンルテイン、リコピンブリモノジン、ブリンゾラミド、カルバコール、カルテオロール、シプロフロキサシン、オフロキサシン、クロマリン、シクロスポリン、ダピプラゾール、デキサメタゾン、ジクロフェナク、ジピビフレン、ドルゾラミド、エピネフリン、エリスロマイシン、フルオロメタロン、フルルビプロフェン、ゲンタマイシン、緑内障治療薬(プロスタグランジン、炭酸脱水酵素阻害剤、エピネフリンまたはαアゴニスト、βブロッカー)、グラミシジン、ホマトロピン、ヒドロコルチゾン、ヒヨスチン、ケトロラク、イブプロフェン、ケトチフェン、ラタナプロスト、レボブノロール、レボカバスチン、レボフロキシン、ロテプレドノール、メドリソン、メタゾラミド、メチプラノロール、ナファゾリン、ナタマイシン、ネドクロミル、ネオマイシン、神経保護剤、非ステロイド性抗炎症剤、ネパファネク、ノルフロキサシン、オフロキサシン、オロパタジン、オキシメタゾリン、ペミロラスト、フェニラミン、フェニレフリン、ピロカルピン、ポビドン、プレドニゾロン、プロパラカイン、スコポラミン、テトラカイン、ステロイド、スルファセタミド、テトラヒドロゾリン、高張性涙液、チモラール、トブラマイシン、トラバプロスト、トリフルリジン、トリメチプリム、トロピカミド、ウノプロストンおよび亜鉛はいずれも、合剤において何らかの価値を有し得る。プロドラッグおよび関連化合物、ならびに任意の新規の医薬品活性成分を本明細書に記載のブロックおよびグラフトコポリマーと併用することで、ADC毒性を低減し、またはADCに伴う有害事象をより良好に管理することが可能である。
【0126】
機序および非特異的な保護および不活性化アプローチに基づいて、チューブリン阻害剤または上皮細胞毒性剤を有するADCは、このコポリマーに基づくアプローチで軽減される。以下のADCが本発明で特許請求されるが、このリストは決して限定的なものではない。本明細書で論じられるコポリマーは、ADC自体とともに配合することも、別個に配合することも可能である。毒性ペイロードは、メイタンシノイドまたはアウリスタチンであってよいが、別のタイプ全般または別のチューブリン阻害剤であってもよい。チューブリン阻害剤、およびチューブリン重合阻害剤は、本実施形態において特定の有用性を有する。チューブリン阻害剤は、パクリタキセル、エポチロン、ドセタキセル、ディスコデルモライド、コルヒチン、コンブレスタチン、2-メトキシエストラジオール、メトキシベンゼンスルホンアミド(E7010)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ビンフルイン、ドラスタチン、ハリコンドリン、ヘミアスタリン、クリプトフィシン52、パクリタキセルサイト、ビンカアルカロイドサイト、コルヒチンサイトなどであってよいが、これらに限定されるものではない。これは、チューブリン破壊剤であってもよいし、他の細胞毒性機序で働く場合もある。シタラビンのようなDNA合成阻害剤が含まれる。ペイロードとして機能し得る他の制がん剤には、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、DM1(メルタンシン)、T-DM1、メイタンシノイド、アウリスタチン、DUOデュオスタチン5および他のデュオスタチン、AF-HPA(アウリスタチンF-ヒドロキシプロピルアミド)、PBD(ピロロベンゾジアゼピン)、MMAF(モノメチルアウリスタチンF)、Calich、硝酸ナトリウム、カリケアマイシン、DM4(ラブタンシン)、SN-38、イリノテカン代謝産物、PF063801 01、Dxd、DNAトポイソメラーゼI阻害剤、DOX、ドキソルビシン、PF063801 01、ミトキサントロン、エトポシド、テシリン、PBDダイマー、ピロロベンゾジアゼピン、SG3199がある。チューブリンフィラメントを標的とする毒素、DNAを標的とする毒素、RNAを標的とする毒素、ナノキャリア、タンパク質毒素および酵素が考慮される。
【0127】
ADC薬剤における様々なリンカーが特許請求されており、モデルまたは臨床におけるコポリマー利用による毒性からの保護または治療で利用される場合、2020年に知られているものに加え、今後開発されるものも実施形態となる。実施形態には、以下に記すADCとの併用も含まれる:
ゲムツズマブオゾガマイシン、ブレンツキシマブベドチン、トラスツズマブエムタンシン、イノツズマブオゾガマイシン、
ポラツズマブベドチン-piiq、エンホルツマブベドチン、トラスツズマブデルクステカン、IMGN242(huC242-DM4)、
CanAg/DM4/SPDB、IMGN242(huC242-DM4)、CanAg/DM4/SPDB、トラスツズマブエムタンシン、(T-DM1)、SAR3419
(huB4-DM4)、SGN-CD19A、CD19/MMAF(アウリスタチン)/mc AVE9633、
ベラントマブマフォドチン、CD33/DM4/SPDB、CD70/MMAF(アウリスタチン
SGN-75 CD70陽性 CD70/MMAF(アウリスタチン)/mc、SAR566658 CA6+、DS6/DM4/SPDB、CD33/カリケアマイシン/
ヒドラジン、エフリンA型受容体2(EphA2)/mcMMAF(アウリスタチン)/mc、ロルボツズマブ、メルタンシン、D56/DM1/SPP、CD138/DM4/SPDB、FRa/DM4/SPDB、AGS-16M8FMMAF、AGS-16C3FMMAF、ENPP3/MMAF(アウリスタチン)、ならびにこれらに限定されるものではないが、以下のもの:
【表1-1】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
角膜毒性の可能性を有する新規の未公開のADCを、本発明の方法で処理することができる。
【0134】
シタラビン角膜毒性を最小限に抑えることも特許請求される。なぜならば、窒素上に正電荷を有する分子の取り込みが存在し、PLL-g-PEGおよび他のカチオン性グラフトコポリマーは、表面細胞上の負電荷を不活性化させることによってこの荷電性の相互作用を最小限に抑えることができるためである。
【0135】
物理化学に基づき、コポリマーは、本明細書の実施形態において有効である。なぜならば、コポリマーは、薬剤(医薬品)、リスクのある細胞にかける溶液、および細胞自体に到達して動的な保護環境を作り出すためである。液滴、懸濁液、溶液、制御された送達システムまたは粉末(場合によっては凍結乾燥したもの)として適用される場合、グラフトコポリマーは、静電または疎水性相互作用に伴う物理化学オンオフ結合により、表面組織から溶液または涙または細胞外液中のADCまたは他の医薬品に移動することが可能である。
【0136】
本明細書に記載の実験から、本発明の製剤は、ウイルス感染またはADCの取り込み、または皮膚、粘膜(眼、鼻、口腔)および毛髪を含むがこれらに限定されない標的細胞との相互作用を予防するためにも有用であることが予想される。したがって、これらの製剤は、眼、気道および胃腸管の上皮組織、粘膜、露出した創傷表面、角膜および結膜表面、皮膚、ならびに外科的および外傷性の創傷および潰瘍に本発明にしたがって適用することも可能である。これらの製剤は、ウイルス感染や不要なADC相互作用から皮膚や他の器官を保護する役割を果たすことができる。利点には、感染率の低下、感染の重大性の低下および角膜上皮毒性の低減が含まれ得る。コポリマーは、感染物質または医薬品とリスクのある細胞の表面との双方と相互作用して、任意の相互作用を不活性化させ、保護効果を提供することができる。
【0137】
ヒトにおけるこれらの用途のために、製剤は、ローション、ゲル、液体、スプレー、リンス、溶解可能なウエハー、またはグリセリンバーの形態であってよく、これに水を加えてグラフトコポリマーまたはブロックコポリマーを可溶化し、より適用し易くすることが可能である。製剤は、個別または単回使用製品として、あるいは工業用および/または複数回使用するディスペンサー用の容量で提供することができる。グラフトまたはブロックコポリマーに加えて、このような製剤は、化粧用スプレー、ローション、石鹸、シャンプー、洗浄剤、ならびに口腔、鼻および眼のケア製品に見られる任意のおよびすべての典型的なバインダー、賦形剤および成分を含むことができる。
【0138】
製剤はまた、ウイルス感染またはADC毒性を低減するために、家庭用ペットを含む動物に本発明にしたがって使用することができる。
【0139】
これらの製剤の他の用途は、本開示を読めば当業者には明らかになり、そのような用途は本発明に包含される。
【0140】
徐放性製剤は、特に有益であることが実証可能であり、本明細書に包含される。
【0141】
PLL-g-PEGは、生体接着性および不活性化部位を有するコポリマーの一例である。PLL-g-PEGは、カチオン性骨格による静電的生体接着を利用する。疎水性およびアニオン性部位は、代替的な生体接着性相互作用(疎水性、アニオン性)を利用する。前記コポリマーの製剤は、ヒトに使用しても安全である。
【0142】
以下の非限定的な実施例は、本発明をさらに説明するために提供されるものである。パーセンテージは、重量/重量%である。
【0143】
薬剤が涙液に分泌され得ることは、記載されている。Lee, Brian A., et al. “Clinical and Histological Characterization of Toxic Keratopathy From Depatuxizumab Mafodotin (ABT-414), an Antibody-Drug Conjugate:[RETRACTED].”Cornea(2018)から。注:小嚢胞様上皮角膜症(MEK)。MEKについて:「ステロイドは適切な治療法ではない」。および:「・・・共焦点顕微鏡により、臨床的に見られるMEKと相関すると思われる複数の大きな丸い高反射性病変が上皮全体に認められた。組織学的には、小嚢胞は、上皮全体に巻き込まれたアポトーシス細胞と相関しているようである。組織学的標本で認められたアポトーシス細胞の増加に加え、免疫組織化学的に基底上皮にIgG陽性の細胞質内顆粒が認められた。ABT-414の抗体成分であるデパツキシズマブはモノクローナルIgG1であるため、ABT-414自体が基底上皮内に沈着していることが示唆された。ABT-414が上皮に直接存在することで、今度は組織学的に見られるアポトーシスの増加が説明される可能性が高い。」
【0144】
実験手法の引用元:Zhao, Hui, et al. “Modulation of Macropinocytosis-Mediated Internalization Decreases Ocular Toxicity of Antibody-Drug Conjugates.”Cancer research 78.8 (2018): 2115-2126。細胞培養に関する試験設計:「細胞株および試薬。すべての細胞を、ベンダーのプロトコールにしたがって保持した。Life Technologies製ヒト初代角膜上皮細胞(HCEC)(カタログ番号C018-5C)をケラチノサイトSFM(カタログ番号17005-42)で培養し、ATCCのHCEC細胞(カタログ番号PCS-700-010)を、角膜上皮細胞成長キット(カタログ番号PCS-700-040)を加えた角膜上皮細胞基礎培地(カタログ番号PCS-700-030)で培養した。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC、カタログ番号C-003-5C)およびヒト皮膚線維芽細胞、成体(HDFa、カタログ番号C-013-5C)を、Life Technologiesより入手した。HUVECを、低血清増殖補充物(LSGS、カタログ番号S-003-10)を補充したMedium 200中で増殖させた。HDFa細胞を、LSGSを補充したMedium 106中で増殖させた。KU812細胞をATCCより入手し(カタログ番号CRL-2099)、前記のようにRPMI1640+10%FBS中で増殖させた。細胞株を、我々の研究室にて蘇生後6ヶ月未満で継代した。ヒト細胞株を、ショートタンデムリピートプロファイリング(Promega)を利用して確認し、マイコプラズマ陰性であることを確認した。ヒト造血幹細胞(HSC)および巨核球へのその分化のための試薬は、以前に報告されている。T-DM1(Kadcyla;Genentech/Roche)を購入した(Myoderm)。マクロピノサイトーシスHSC(105細胞/ウェル)を24ウェルプレートで一晩増殖させ、対照として1mg/mLデキストラン-FITC(10,000 MW、Life Technologies)とともに37_Cまたは4_Cで3時間インキュベートした。細胞をトリプシンで剥離し、中和液(Life Technologies、カタログ番号R002100)で中和した。その後、細胞をFACS染色バッファー(FBS、BD Pharmingen、カタログ番号554656)で3回洗浄し、Attune acoustic focusing cytometer(Life Technologies)で分析した。5-(N-エチル-Nイソプロピル)アミロリド(EIPA)の影響を調べるため、デキストラン-FITC添加の30分前に、指示量のEIPAを細胞培養物に添加した。平均蛍光強度比(MFIR)を、37_CでのMFI値を4_Cでの値に対して正規化して求めた。100mLの増殖アッセイHCEC(500細胞/ウェル)およびHUVEC(2,000細胞/ウェル)をコラーゲンコート96ウェルプレート(Corning、カタログ番号354650)に播種し、100mLのHDFa(2,000細胞/ウェル)およびKU812(2,500細胞/ウェル)を96ウェル組織培養プレート(Corningアッセイプレート、カタログ番号3903)において増殖させた。ADCで6日間処理した後、CellTiter-Glo(CTG)発光アッセイキット(Promega、カタログ番号G7572)を使用して、対照に対する処理細胞の生存率を測定した。CTG値を、6日目のモック処理細胞に対して正規化し(最大増殖%)、GraphPad Prism 6を使用して、シグモイド用量反応(可変スロープ)を用いてIC50値を得た。アッセイプレートは、各薬剤濃度についてテクニカルトリプリケートを含み、提示されたデータは、少なくとも2つの独立した測定の平均値である。ANSアッセイADC(2mg/mL)をPBS中で調製し、黒壁の96ウェルプレートで1:2の連続希釈を行った。等量の1,8-ANS(1-アニリノナフタレン-8-スルホン酸、Thermo Fisher Scientific、カタログ番号A47)を添加し、室温で30分間インキュベートした。蛍光シグナルを測定した(例えば、390nm/em.470nm)。線形回帰分析で得られた傾きを、疎水性指数とした。共焦点顕微鏡にて8ウェルチャンバースライドに細胞を播種し(1ウェルあたり0.75×105細胞)、処理およびその後の免疫染色の前に48時間培養した。次に、細胞を、0.5mg/mLのDextran-Texas Red(Molecular Probes;D18653)の共インキュベーションを伴うかまたは伴わずにAGS-16C3Fとともに37Cで4時間インキュベートした。マクロピノサイトーシスの阻害を、AGS-16C3F/Dextran-Texas Redのインキュベーション前に細胞をEIPAで30分処理することによって評価した。インキュベーション期間後、未結合の抗体をPBSで洗い流し、細胞を4%パラホルムアルデヒドで室温にて20分間固定した。その後、細胞をPBS+0.1% Triton-X-100で15分間透過処理し、PBS+10%正常ヤギ血清で非特異的標識をブロックした。細胞表面に結合して内在化した細胞質AGS-16C3Fを、Alexa Fluor 488標識ヤギ抗ヒトIgG(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号A-11013)とともに細胞をインキュベートすることにより可視化した。核を、TO-PRO-3 Iodide(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号T3605)で可視化し、イメージング用にProLong Gold Antifade reagent(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号P36934)を用いてカバースリップを取り付けた。高解像度レーザー共焦点画像セクションを、Leica TCS SP5 II(63x油浸対物レンズ;NA 1/4 1.4)を用いて取得し、これを順次走査して、蛍光体のクロストークおよび偽陽性の共局在を最小限に抑えた。」さらに、ウサギに関する技法もまたZhouらから引用した:「動物実験および福祉 イン・ビボ異種移植腫瘍モデルおよび薬力学的研究を、前記のように実施した。いずれの実験プロトコールも、Agensysの施設動物管理使用委員会による承認済みである。毒性試験におけるいずれの手順も、動物福祉法および規則(9 C.F.R. 3)に準拠したものであった。眼忍容性試験には、体重約1.5~2.0kgの雄のダッチベルテッド種[Haz:(DB)SPF]のウサギを使用した。ウサギを、初回投与前に少なくとも6日間馴化させた。いずれの動物も、個別の吊り下げ式ステンレス製ケージに収容し、飼料および水を与え、すべての動物福祉ガイドラインに準拠した環境条件下で保持した。被験薬を3~4羽のウサギ群に耳縁静脈を通じて静脈内投与し、その後、週1回、最大6回(1日目、8日目、15日目および22日目)まで生理食塩水をフラッシュさせた。全般的な健康状態を、週1回の体重測定およびケージサイドの観察により評価した。眼忍容性を、外見検査、すなわち細隙灯生体顕微鏡による各眼の付属器および前眼部の検査により評価した。さらに、散瞳剤による拡張後に間接検眼鏡で眼底を調べた。また、角膜の損傷を調べるために角膜フルオレセイン染色を行った。フルオレセイン溶液(約1mg/mL)を綿棒により角膜に適用した。剖検時、眼および他の選択された組織を、IHCのための確立された手順にしたがって固定剤に入れた。いずれのウサギ実験も、Covance Laboratoriesによって行った。」結果の計算には、標準的な統計的アプローチを利用する。
【0145】
すべての参考文献、出版物および特許文献の内容全体を本明細書に援用するものとする。
【0146】
実施例
結果は、主要評価項目の、および複数の副次的分析について、有意な有益性を示している。
【0147】
いずれの動物実験も、NIH Guide for the Care and Use of Laboratory AnimalsおよびInstitutional Animal Care and Use Committee(IACUC)の方針にしたがって実施する。特定のプロトコールは、適切な審査委員会によって承認されている。
【0148】
これらの実験結果は、そのすべてまたは一部が、本発明の有用性を実証するものである。科学的データが時としてそうであるようにデータに矛盾がある場合には、重要な変数を適切に分ける実験条件のバリエーションにより物理的な有益性が実証される。
【0149】
すべての実施例において、標的細胞の安全性は、コポリマーの存在下で維持されている。ヒトおよび哺乳動物用の製剤は、十分な忍容性を有する。
【0150】
実施例1:
培養中の気道上皮細胞、およびSARS-CoV-2ウイルス粒子の存在により、これらの細胞の非常に高い感染率およびその後の死滅が生じる。カチオン性グラフトコポリマーをこの系に溶解状態で、0.001、0.01、0.1、1、2および3重量%の濃度で、有意な感染率を可能にするのに十分な長さで、例えば数時間添加する。ウイルスの感染力は低下し、細胞の生存率は用量反応ベースで向上する。陰性対照は、単にカチオン性グラフトコポリマーを何ら含まない溶液である。この有益な効果を示すために、複数の実験を行う。1つは、サイトメーターで測定した細胞生存率を含み、もう1つは、ウイルスゲノムのコピー数を測定するための定量的PCRを含む。ある実験では、生存している気道上皮細胞を溶液中でカウントして、生存している気道上皮細胞数/mlを得る。PLL(20)-g[3.5]-PEG(5)を凍結乾燥粉末として異なる量で添加し、試験濃度を様々なウェルおよび細胞培養物(標準成長および生存培地)に提供する。ウェル1つあたりの絶対ウイルス粒子数で同量のSARS-CoV-2ウイルス粒子を添加する。24時間後、細胞生存性をカウントする。事前の実験により、添加するウイルス粒子の最適な数が示される。経験的なデータでは、気道細胞への感染に有効であるのは1mlあたり10,000個のウイルス粒子であり、24時間後にはウェル内の培養細胞の大半が死滅することが示唆されている。PLL-g-PEGを含む溶液は、以下の表1に示すように、細胞の生存率の向上を示していた。
【0151】
【0152】
SARS-Cov-2感染の設定におけるカチオン性グラフトコポリマーによる介入の同一の有効性を実証する別の方法を、評価項目がウイルスゲノムのRNAコピー数であることを除いて同様の設計を用いて実施する。本実験では、同一のPLL-g-PEG濃度を使用するが、曝露および2時間のインキュベーション期間の後に、細胞からすべてのウイルス培地およびPLL-g-PEG培地を洗い落とす。24時間後に、溶液をウイルスRNAのコピー数について調べる。SARS-CoV-2ウイルスの検出を、プライマーを用いてLight Cycler 480リアルタイムPCRシステムでOne Step Prime Script RT-PCRキットを用いて行う。次の配列を使用する:フォワードプライマー:5’-AGAAGATTGGTTAGATGATGATAGT-3’;リバースプライマー:5’-TTCCATCTCTAATTGAGGTTGAACC-3’;およびプローブ:5’-FAM-TCCTCACTGCCGTCTTGTTG ACCA-BHQ1-3’。実験をすべて三重反復で行う。表2にこれらの結果を示す。
【0153】
【0154】
これらの研究を、統計的な有意性を示すのに十分なウェルプレート(三重反復)で実施する。本実験は、リスクのある細胞、ひいては組織および生体へのSARS-CoV-2ウイルス感染力を低減するためにカチオン性グラフトコポリマーを利用する特定の選択肢を実践に還元するものである。
【0155】
実施例2:
本発明の臨床的有益性を実証するため、臨床研究を実施する。SARS-CoV-2ウイルス感染(COVID19)のリスクのあるヒトを、PLL-g-PEGの局所製剤で処置する。これらの製剤は、液体ベースである。職場環境による高リスクの曝露に基づくSARS-CoV-2ウイルス感染のリスクのある人を、試験に登録する。1000人の患者が、1:1:1のランダム化スキームで登録する。本研究は、二重盲検化されている。投与量Aは、以下のとおりのPLL-g-PEGである:点眼剤0.1%、鼻腔用スプレー0.1%、および口腔洗浄剤0.1%;投与量Bは、点眼剤0.5%、鼻腔用スプレー0.5%、および口腔洗浄剤0.5%である。コホートCには、生理食塩水のみを点眼剤、鼻腔用スプレーおよび口腔洗浄剤で投与する。参加者は、性別、年齢(60歳以上、60歳未満)、ならびにCOVID19の急性病治療用大規模病院環境における第一線の救急医療従事者または警察官および医療通報への救急医療技術者の初期対応者で等しく層別化されている。登録時、参加者全員がSars-Cov-2陰性であり、使用する溶液を提供する。指示事項は、リスクのある環境に入る直前に、眼、鼻および口腔粘膜に適用することである。適用を、曝露リスクに基づき、必要に応じて4時間ごとに繰り返さなければならない。PLL-g-PEG製剤または生理食塩水に加え、標準的な予防策を利用する。試験期間は、治療または対照の2週間である。4週間後の評価項目は、A)治療開始後または対照の被験体の感染者数、およびB)重症度であり、1-入院なしで解消、2-入院が必要、3-ICUが必要または死亡のグレードで評価したものである。二次実験として、綿棒を用いた検査により、患者の個人防護具および部屋のカウンターやベッドサイドテーブルなどの無生物物体表面に、統計的に同量のウイルス粒子が接着していることが実証された。感染リスクのある人は、個人的な安全対策を実践しているが、それにもかかわらず、リスクのある人の粘膜の曝露は重大である。カチオン性グラフトコポリマー製剤の使用により、リスクのある人の感染が予防されるが、これは、感染率および疾患の重症度の低下を示している。
【0156】
表3に結果を示す。
【0157】
【0158】
イン・ビボおよびイン・ビトロの実験では、Zhouらのテキストおよび設計を利用することに留意されたい。
【0159】
実施例3:イン・ビトロでのADC
ADCは、AGS-16C3Fである。AGS-16C3Fは、転移性腎細胞癌の治療用のmcMMAFリンカー-ペイロードを含むエクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ3(ENPP3)に対する抗体薬物複合体である。AGS-16C3Fまたはリツクスマブ-mcMMAFを被験薬(CD20と結合するADC)として、あるいは他のADCを使用することができる。
【0160】
他のADCは、患者に眼毒性を引き起こすことが報告されているが、その機序はまだ解明の途上にある。本発明は、この毒性に関する実験および新たな考え方に基づくアプローチである。
【0161】
ヒト初代角膜上皮細胞をケラチノサイトSFMで培養し、ATCCのHCEC細胞を、角膜上皮細胞成長キットを加えた角膜上皮細胞基礎培地で培養する。ヒト細胞株を、ショートタンデムリピートプロファイリングを利用して確認し、マイコプラズマ陰性であることを確認する。細胞を複数の8ウェルチャンバースライドに播種し、処理およびその後の免疫染色の前に48時間培養する。細胞を、陰性対照(コポリマーなし)で処理し、さらに単にPLLおよびPEG(一緒にグラフトされていない)でも処理する。他の細胞培養物を、主要例としてPLL-g-PEG(PLL(20-g[3.5]-PEG(5))に曝露する。他のPLL-g-PEGも同様に試験する。PLL-g-PEGの濃度は、0.001重量%、0.01重量%、0.1重量%、0.3重量%、0.5重量%、および1重量%である。角膜実質細胞は、PLL-g-PEGでの処理後に生存性を保持することができるが、イン・ビトロ実験の設定において、いくつかの角膜実質細胞は実験中に死滅する可能性がある。次に、角膜実質細胞を、0.5mg/mLのDextran-Texas Redの共インキュベーションを伴うかまたは伴わずにAGS-16C3F(またはリツクスマブ-mcMMAFまたは別のADC)とともに37℃で4時間インキュベートする。対照としてのマクロピノサイトーシスの阻害を、AGS-16C3F(または別のADC)/Dextran-Texas Redのインキュベーション前に細胞をEIPAで30分処理することによって評価する。インキュベーション期間後、未結合の抗体およびコポリマーをPBSで洗い流し、細胞を4%パラホルムアルデヒドで室温にて20分間固定する。その後、細胞をPBS+0.1% Triton-X-100で15分間透過処理し、PBS+10%正常ヤギ血清で非特異的標識をブロックする。細胞表面に結合して内在化したAGS-16C3F(または他のADC)を、Alexa Fluor 488標識ヤギ抗ヒトIgGとともに細胞をインキュベートすることにより可視化する。核を、TO-PRO-3 Iodideで可視化し、イメージング用にProLong Gold Antifade reagentを用いてカバースリップを取り付ける。高解像度レーザー共焦点画像セクションを、Leica TCS SP5 II(63x油浸対物レンズ;NA 1/4 1.4)を用いて取得し、これを順次走査して、蛍光体のクロストークおよび偽陽性の共局在を最小限に抑える。
【0162】
ADC(2mg/mLまたは他の濃度)をPBS中で調製し、黒壁の96ウェルプレートで1:2連続希釈を行う(21、23)。等量の1,8-ANSを添加し、室温で30分間インキュベートする。蛍光シグナルを測定する。
【0163】
結果:
顕微鏡検査に際して、さほど染色されていない多数のADCが、コポリマー処理でされた上皮細胞に入り込んでいる。用量反応が示されている。
【0164】
モデルおよび設計を用いるが、思想も知的財産権も、Zhouまたは引用文献の他のいかなる著者からも取得しなかった、していない、またはしたことがない。
【0165】
表4参照。
【0166】
【0167】
したがって、PLL-g-PEG、ひいては模倣品は、ADCに伴う角膜毒性を低減するための有効な介入である。
【0168】
巨核球の実験や模倣品の使用も有効である。
【0169】
ADCおよびチューブリン破壊剤ならびに他の細胞毒を用いた実験を実施するが、この有効性は、1種類のADCに限定されるものではない。実際に、角膜上皮毒性を有するすべてのADCを、このアプローチで緩和することが可能である。このアプローチは、ADCに依存せず、このクラス・エフェクトの角膜毒性を低減する方法である。
【0170】
PLL-g-PEGはまた、ADCを溶液に添加したわずかに後に添加することも可能であるため、いくつかの実施形態では、ADC曝露がPLL-g-PEG曝露より前であれば、有益性は変わらない。
【0171】
実施例4:イン・ビボでのADC
ADCに伴う角膜毒性は、イン・ビボモデルにおいて低減する。ADC毒性における動物モデルは不完全であるが(カニクイザルモデルは最適ではない)、ウサギは、可能性のある薬剤媒介性の眼毒性を試験するために一般的に使用され、ADCの眼毒性を調査するために選択される。AGS-16C3Fおよび他のADCは、これらの実験に有用である。イン・ビボでの動物毒性は、ヒトでは非常に一般的であるが、動物ではモデルとしてややばらつきがある。ウサギは、様々なADCに対して様々な毒性を示す。この実験のために、AGS-16C3F(AGS-16C3Fは、転移性腎細胞癌の治療用のmcMMAFリンカー-ペイロードを含むエクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ3(ENPP3)に対する抗体薬物複合体)およびチューブリン阻害ペイロードを有する他のADCを試験する複数の眼の実験を、ウサギで実施する。各群5匹に投薬する。10および15mg/kgの用量のanuAGS-16C3Fで毒性を示さない非ADC投与対照群が存在する。15mg/kgを投与したウサギは、可逆的な結膜充血、角膜周囲霞、角膜浮腫、および毛様体フラッシュを示す。同様に、10mg/kgの週1回投与でも眼毒性を生じる。ADC投与開始時に局所治療によるPLL-g-PEGへの曝露がない場合と比較して、この実験では0.5%、1%および2%のPLL-g-PEG局所点眼剤を1日3回投与したウサギの眼毒性が低減していることが示されている。それぞれ0.5%、1%および2%のPLL-g-PEG用量群では、平均して有益性が5%超、7.5%超および10%超だけ良好である。投与を、PLL-g-PEG点眼剤および対照を用いて毎日行う。ADCの注入は週1回である。PLL-g-PEGを投与した場合にもADC投与1週間後から有益な効果が見られるが、実験終了時には各群で有益性が約20%低下する。PLL-g-PEGを投与した動物は、対照(人工涙液のみ)に対して、ADCに伴う毒性が少ない。いずれの製剤も、防腐剤無添加である。防腐剤を添加した製剤は有効であるが、角膜上皮症を引き起こすまたは悪化させるという好ましくない影響がある。しかし、ウサギのモデルでは、防腐剤液を使用しても有益性があることが示されている。
【0172】
結膜下製剤も、週1回結膜下に送達すれば保護効果がある。
【0173】
静脈内製剤は、安全であり許容可能であり、かつ効果的であるが、局所送達の方がより効果的である。
【0174】
結果を、検査所見(染色を含む)ならびに21日目および42日目の病理組織学(浸潤および組織損傷の低減)により記録する。
【0175】
PLL-g-PEG溶液の使用は、治療された動物の回復時間を改善する。
【0176】
別のポリマー構成による他の実験も有効である。
【0177】
ウサギの所見は、ヒトのピクノーゼの所見を同一に再現するものではないが、このモデルは臨床的にも病理組織学的にも角膜前部の異常を示すことに注意されたい。サンプルADCを選択し、チューブリン阻害剤を含む他のADCを用いて結果を繰り返す。
【0178】
【0179】
実施例5:ヒトにおけるADC
本試験は、角膜毒性が知られているADCを使用して、腫瘍性疾患のためにADCを処方されている患者において実施する。市販のADCを、承認されたADCの臨床治療環境において利用し、規制当局の承認プロセスの一部として臨床調査中のまだ承認されていないADCが投与される患者も同様である。したがって、この無作為化比較試験を、複数の異なるADCを投与されている患者を対象に行う。層別化を、ADCおよび既存の眼の不快感によって行う。
【0180】
経験的に、眼科所見の相違の検出には各群25人の被験体の合計人数で十分であると判断されるため、75人の患者を登録する。
【0181】
全患者を、治療開始時に登録する。患者を、防腐剤無添加の人工涙液のみ、1%PLL-g-PEG点眼剤(防腐剤無添加)、および2%PLL-g-PEG点眼剤(防腐剤無添加)に無作為に割り付てる。全患者に、サイクル1のADC投与の1日前から1日4回、両眼に点眼するよう指示する。眼科検査を、ベースライン時および4サイクル目までの各サイクルで実施する。1サイクルは21日間である。4サイクル目以降、治療群に割り付てられた患者は、PLL-g-PEGを継続することができる。人工涙液に無作為に割り付てられた患者は、PLL-g-PEG点眼剤にクロスオーバーすることができる。
【0182】
角膜小嚢胞様上皮症または点状表層角膜炎または角膜症の程度を、上皮症の密度および領域を推定する客観的分析、ならびに/またはフルオレセインなどの生体色素による染色による上皮損傷の評価を用いて評価する。角膜の損傷率に全体的な臨床的重症度の補正係数(1~3)を掛けたスコアを使用する。試験の評価項目は、試験期間中の最も劣悪なスコアである。
【0183】
また、視力はlogMARで測定する。
【0184】
一次分析では、患者ごとに最も悪い眼を使用する。
【0185】
また、両眼を独立に観察する。
【0186】
有害事象を記録する。
【0187】
クロスオーバー群では症状の改善を評価する。
【0188】
【0189】
有害事象であるかすみ目および眼刺激感は、対照で最も高度であり、低用量および高用量では低度である。
【0190】
各群の休薬および投与延期は、対照で最も高度であり、低用量および高用量では低度である。
【0191】
PLL-g-PEGで治療した眼では、角膜点状表層角膜炎がより少ない。視力は、PLL-g-PEG(またはコポリマー)で治療した眼および患者において、平均的により良好である。
【0192】
本実験は、ADCの角膜への有害作用を低減するために眼に局所的に使用されるPLL-g-PEG溶液による本介入の臨床的価値を、例示的に明らかにするものである。
【0193】
投与サイクルごとに1%PLL-g-PEG溶液を同時に静脈内送達すると、処置した被験体において血小板減少がより少なく、それによって角膜上皮の外に広がる系へのADC毒性を軽減するより広範囲の効果が実証され、したがってより広範囲の特許請求が支持される。
【0194】
これらの実験を、他のコポリマーを用いて成功裏に繰り返す。
【0195】
実施例7.
PLL-g-PEG製剤の存在下でのヒト角膜上皮細胞への取り込みについて様々な新規のADCを前臨床的に評価すると、PLL-g-PEGの存在下で最大の有益性(取り込みの最も大幅な低減)を示すこれらの特定のADCを臨床に前進させることができる。選択の理由の1つは、特許請求されかつ本明細書で論じられるコポリマーとの同時処理により、その細胞型におけるADC毒性を処置、媒介、軽減、低減および予防するための既知の有効な臨床方法が現在存在することである。
【0196】
アンメットニーズのある腫瘍性疾患に見られる細胞受容体を標的とするADCの3つのバリエーションを、実験室で評価する。いずれも、ヒト角膜上皮細胞へのマクロピノサイトーシスによる有意な取り込みを示す。次に、様々な濃度(0.01~3重量%の範囲)のPLL-g-PEG溶液を、イン・ビトロでのヒト上皮細胞へのADCの取り込みの同様の試験に使用する。ADCの潜在的な毒性についての評価を再評価する。0.01%以上(必ずしも端点を含まない)のPLL-g-PEGは、ADCに基づいて変化し得る割合で、イン・ビトロにおける3つのADCのうちの1つの取り込みを大幅に低減することが判明したが、依然として有効である。この効果は、ウサギのイン・ビボモデルで確認されている。このように、PLL-g-PEGを局所的に適用して取り込みを最小限に抑える方法が知られているため、この分子は他の分子より早く臨床に進むことができる。他の生体接着性/不活性化コポリマーも、上記の実験と同様にADC開発に使用される。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-05-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(抗体薬物複合体の使用により有害作用を受ける)細胞および組織に、静電的および立体的媒介特性を有するコポリマーの有効量を適用することによって、(有害作用を示す)非新生細胞に損傷を与える抗体薬物複合体の使用に伴う有害事象を低減する方法。
【請求項2】
前記コポリマーは、カチオン性グラフトコポリマー、カチオン性ブロックコポリマー、疎水性グラフトコポリマー、疎水性ブロックコポリマー、アニオン性グラフトコポリマーおよびアニオン性ブロックコポリマーから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記コポリマーは、PLL-g-PEGである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記コポリマーは、上掲の本出願に記載の組み合わせのリストから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
生体接着性および不活性化成分を有するコポリマーをオフターゲットの薬剤取り込みのリスクのある細胞に投与することにより、ADCに伴う角膜上皮毒性を低減する方法。
【請求項6】
前記コポリマーを、角膜上皮細胞および結膜上皮細胞に適用する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記コポリマーは、PLL-g-PEGである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記薬剤は、結膜下腔に送達するための溶液である、請求項5記載の方法。
【請求項9】
ヒトにおける抗体薬物複合体の使用に伴う有害事象を低減する方法であって、静電的および立体的媒介特性を有するコポリマーの有効量を、前記有害事象に関与する細胞に適用する、方法。
【請求項10】
前記コポリマーは、カチオン性グラフトコポリマー、カチオン性ブロックコポリマー、疎水性グラフトコポリマー、疎水性ブロックコポリマー、アニオン性グラフトコポリマーおよびアニオン性ブロックコポリマーから選択される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記コポリマーは、上掲の本開示におけるポリマーから選択される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
生体接着性および不活性化特性を有するコポリマーの有効量を角膜上皮細胞に適用することにより、ADCから切断される細胞毒に伴う小嚢胞様上皮毒性を低減する方法。
【請求項13】
前記コポリマーは、PLL-g-PEGである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
全身性ADC療法の開始前に、生体接着性および不活性化部位を有するコポリマーを眼に送達することにより、ADCの使用に伴う眼の有害事象の割合および重症度を低減する方法。
【請求項15】
全身性ADC療法の開始後に、生体接着性および不活性化部位を有するコポリマーを眼に送達することにより、ADCの使用に伴う眼の有害事象の兆候および症状を改善する方法。
【請求項16】
ADCへの曝露前に、生体接着性および不活性化部位を有するコポリマーに、辺縁幹細胞、一過性増幅細胞、基底上皮細胞、翼細胞および角膜上皮細胞のうちのいずれかを曝露することによって、前記細胞へのADCの取り込みを低減する方法。
【請求項17】
ADCへの曝露後に、生体接着性および不活性化部位を有するコポリマーに、辺縁幹細胞、一過性増幅細胞、基底上皮細胞、翼細胞および角膜上皮細胞のうちのいずれかを曝露することによって、前記細胞へのADCの取り込みを低減する方法。
【請求項18】
ADCへの曝露の前または後に、生体接着性および不活性化部位を有するコポリマーに、辺縁幹細胞、辺縁上皮細胞、辺縁上皮娘細胞、一過性増幅細胞、基底上皮細胞、翼細胞、角膜上皮細胞および分化した角膜上皮細胞のうちのいずれかを曝露し、その際、前記コポリマーの重量/重量計算に基づく有効割合を有する製剤を用いることによって、前記細胞へのマクロピノサイトーシスによるADCの取り込みを低減する方法。
【請求項19】
生体接着性および不活性化部位を有するコポリマーを用いて患者を治療し、その際、有効な量を用いることによって、ADCに伴う眼の有害事象を低減する方法。
【請求項20】
細胞レベルで静電的および立体的相互作用を示すコポリマーを使用して、SARS-Cov-2、新型ウイルス、エピデミックの状態にあるウイルス、ヒトの病的状態および罹患を招き得る細胞毒性ペイロードを有するADCから選択される因子への当該細胞の曝露によって生じる有害作用を最小限に抑える方法。
【請求項21】
カチオン性グラフトコポリマー製剤の有効量で眼を治療することにより、ペイロードとしてチューブリン破壊剤を有するADCへのヒトの全身性曝露による眼毒性を低減する方法。
【請求項22】
前記カチオン性グラフトコポリマーは、PLL-g-PEGである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記治療を、点眼製剤により行う、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記製剤は、防腐剤無添加である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記カチオン性グラフトコポリマーは、点眼製剤中で0.01重量%~5重量%の範囲の濃度のPLL-g-PEGである、請求項21記載の方法。
【請求項26】
リスクのある患者においてPLL-g-PEG点眼製剤を有効量で眼に適用して角膜の有害事象および眼の安全性の懸念を低減することにより、ヒトの悪性疾患の治療におけるADCの休薬および減量を低減する方法。
【請求項27】
角膜毒性を伴うADC向けの抗体であって、不活性化部位を有し、かつ眼の有害事象を低減するのに有効な量で眼に送達される、抗体。
【請求項28】
ADC、生物学的物質、低分子、高分子、ペプチドの群から選択される医薬品により生じる角膜細胞毒性を低減する方法であって、生体接着性および不活性化成分を有するコポリマーを、前記医薬品によって生じる有害作用のリスクのある眼に局所的に適用する、方法。
【国際調査報告】