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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-09
(54)【発明の名称】カンナビノイドの使用および製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/12 20060101AFI20230802BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230802BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230802BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230802BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230802BHJP
   A61P 19/06 20060101ALI20230802BHJP
   A61P 19/04 20060101ALI20230802BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20230802BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230802BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230802BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230802BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20230802BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230802BHJP
   A61P 5/50 20060101ALI20230802BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20230802BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230802BHJP
   A61K 9/28 20060101ALI20230802BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
A61K31/12
A61P29/00
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P21/00
A61P37/02
A61P19/06
A61P19/04
A61P19/08
A61P17/00
A61P9/00
A61P1/04
A61P3/00
A61P9/10 101
A61P5/50
A61P7/04
A61K47/10
A61K9/28
A61K47/38
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568567
(86)(22)【出願日】2020-05-11
(85)【翻訳文提出日】2023-01-06
(86)【国際出願番号】 EP2020063087
(87)【国際公開番号】W WO2021228366
(87)【国際公開日】2021-11-18
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521446381
【氏名又は名称】アド アドヴァンスト ドラッグ デリヴァリー テクノロジーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ADD ADVANCED DRUG DELIVERY TECHNOLOGIES LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】ノヴァク,レインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ノヴァク,ミルコ
(72)【発明者】
【氏名】ノヴァク,ジェスコ ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ペリンガー,ノルベルト
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA44
4C076BB01
4C076CC05
4C076CC07
4C076CC11
4C076CC14
4C076CC16
4C076CC18
4C076CC21
4C076DD09E
4C076EE23E
4C076EE32L
4C076EE49E
4C076FF51
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA19
4C206KA01
4C206KA17
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA05
4C206MA54
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZA36
4C206ZA45
4C206ZA53
4C206ZA66
4C206ZA89
4C206ZA91
4C206ZA94
4C206ZA96
4C206ZB05
4C206ZB08
4C206ZB11
4C206ZB15
4C206ZC21
4C206ZC31
4C206ZC35
(57)【要約】
カンナビノイド、特にカンナビジオールの使用および製剤が提供される。カンナビノイド、特にカンナビジオールは、サイトカイン放出症候群(CRS)を含む、自己免疫疾患、慢性炎症性疾患および感染に関する炎症状態に関連する炎症状態に罹患している患者の治療に使用される。製剤は、カンナビノイド、特にカンナビジオールの経口投与を特に対象とする。これらの製剤は、上述の状態に罹患している患者を治療するのに有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL-6レベルの上昇により特徴づけられる炎症状態に罹患した患者の治療用カンナビノイド。
【請求項2】
前記カンナビノイドが、カンナビジオール(2-[(1R,6R)-3-メチル-6-(1-メチルエテニル)-2-シクロヘキセン-1-イル]-5-ペンチル-1,3-ベンゼンジオール)であることを特徴とする、請求項1に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項3】
前記患者が、自己免疫疾患に関連する炎症状態に罹患することを特徴とする、請求項1または2に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項4】
前記患者が、慢性炎症性疾患に関連する炎症状態に罹患することを特徴とする、請求項1または2に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項5】
前記患者が、感染に関する炎症状態に罹患することを特徴とする、請求項1または2に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項6】
前記治療が、サイトカイン放出症候群(CRS)を予防または改善するためのものであることを特徴とする、請求項5に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項7】
前記治療される状態が、リウマチ性疾患であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項8】
前記疾患が、変形性関節症;関節リウマチ;線維筋痛;全身性エリテマトーデス;痛風;若年性特発性関節炎;感染性関節炎;乾癬性関節炎;多発性筋炎;滑液包炎;強直性脊椎炎;反応性関節炎;強皮症;リウマチ性多発筋痛から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項9】
前記治療される状態が、巨細胞性動脈炎(GCA)であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項10】
前記治療される状態が、炎症性腸疾患(IBD)であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項11】
前記患者が、メタボリックシンドロームに罹患することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項12】
前記治療が、アテローム性動脈硬化症、インスリン耐性および/または凝固障害を予防、停止または改善することを特徴とする、請求項11に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項13】
前記治療が、血清IL-6レベルを低下させることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項14】
前記治療が、以下の1つまたは複数:血清IL-6≧5.4pg/ml;CRPレベル>70mg/L(他の感染性または非感染性経過の確認なし);CRPレベル>=40mg/Lかつ48時間以内に倍加(他の感染性または非感染性経過の確認なし);ラクテートデヒドロゲナーゼ>250U/L;D-ダイマー>1μg/mL;血清フェリチン>300μg/mL、
に基づいて開始されることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項15】
前記患者が、血小板減少<120.000×10E9/L、および/またはリンパ球数<0.6×10E9/Lを示す場合に、前記治療を開始することを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項16】
前記患者が、血清IL-6≧5.4pg/ml;CRPレベル>70mg/L(他の感染性または非感染性経過の確認なし);CRPレベル>=40mg/Lかつ48時間以内に倍加(他の感染性または非感染性経過の確認なし);ラクテートデヒドロゲナーゼ>250U/L;D-ダイマー>1μg/mL;血清フェリチン>300μg/mLから選択される少なくとも1つの検査所見を示し;かつ、血小板減少<120.000×10E9/L、および/またはリンパ球数<0.6×10E9/Lを示す場合に、前記治療を開始することを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項17】
前記治療が、血清IL-6≧5.4pg/mlである場合に開始されることを特徴とする、請求項1~16のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項18】
前記カンナビノイドが経口投与されることを特徴とする、請求項1~17のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項19】
前記カンナビノイドが、250mg~5000mgの用量で1日に1~4回投与されることを特徴とする、請求項1~18のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項20】
前記用量が、375mg、750mg、1500mgまたは3000mgであり、この用量が1日に1~4回投与されることを特徴とする、請求項19に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項21】
前記用量がBIDで投与されることを特徴とする、請求項20に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項22】
前記カンナビノイドが、1500mgの用量でBIDで投与されることを特徴とする、請求項1~21のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項23】
前記カンナビノイドが、固体分散体として製剤化されることを特徴とする、請求項1~22のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項24】
前記固体分散体が、カンナビノイド、および、水性媒体と組み合わせた場合にミセル溶液を形成することができる両親媒性ブロックコポリマーである可溶化剤を含むことを特徴とする、請求項23に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項25】
前記可溶化剤が、少なくとも1つのポリオキシエチレンブロックおよび少なくとも1つのポリオキシプロピレンブロックを含むブロックコポリマーであることを特徴とする、請求項23または24に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項26】
前記可溶化剤がポロキサマーであることを特徴とする、請求項25に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項27】
前記製剤が、活性物質としてのカンナビジオール、可溶化剤としてのポロキサマー188、および必要に応じて抗酸化剤を含むことを特徴とする、請求項26に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項28】
前記製剤が、USPパドル法に従って、0.1N HCl中でのin vitro溶解試験に供した場合、60分以内に少なくとも60質量%のカンナビノイドを放出することを特徴とする、請求項23~27のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項29】
前記カンナビノイドが、コアおよびコア上のコーティングを含む製剤中に組み込まれ、前記コーティングは、カンナビノイド、1つまたは複数の水溶性フィルム形成剤、および全成分の重量に基づいて20質量%以下の他の賦形剤を含むことを特徴とする、請求項1~22のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項30】
前記水溶性フィルム形成剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)が使用されることを特徴とする、請求項29に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項31】
前記フィルム形成剤が、カンナビノイドの総量に基づいて、0.3~10質量%の総比率で含まれることを特徴とする、請求項29または30に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項32】
前記含有されるカンナビノイドの30質量%超かつ80質量%未満が2時間以内に放出される;および/または、前記含有されるカンナビノイドの40質量%超かつ90質量%未満が3時間以内に放出される;および/または、前記含有されるカンナビノイドの50質量%超かつ95質量%未満が4時間以内に放出される、ことを特徴とする、請求項29~31のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カンナビノイド、特にカンナビジオールの使用および製剤に関する。本発明によれば、カンナビノイド、特にカンナビジオールは、IL-6レベルの上昇を特徴とする炎症状態に罹患している患者の治療に使用される。これには、サイトカイン放出症候群(CRS)を含む、自己免疫疾患、慢性炎症性疾患および感染に関する炎症状態に関連する炎症状態が含まれる。
【0002】
本発明はまた、カンナビノイド、特にカンナビジオールの経口投与のための製剤を提供する。これらの製剤は、炎症状態に罹患している患者を治療するのに有用である。
【背景技術】
【0003】
サイトカイン放出症候群(CRS)を含む、自己免疫疾患、慢性炎症性疾患および感染に関する炎症状態に関連する炎症状態は、罹患患者に重大な疾患負担を提示する。いくつかの症状は、生命を脅かすことさえあり得る。
【0004】
そのような状態のための様々な治療が示唆されているが、さらなる治療選択肢、特に単純かつ便利な薬理学的介入が依然として必要とされている。
【0005】
上記の考察とは別に、カンナビノイド、特にカンナビジオールは薬物と考えられている。カンナビノイドは、疼痛、炎症、てんかん、睡眠障害、多発性硬化症の徴候、食欲不振、および統合失調症を含む多くの臨床状態を治療するのに有益であり得るという証拠がある(非特許文献1)。
【0006】
様々な適応症におけるカンナビノイドの使用が提案されているが、これまで限られた用途しか市場認可を受けていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】N. Bruni et al., Cannabinoid Delivery Systems for Pain and Inflammation Treatment. Molecules 2018, 23, 2478
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、IL-6レベルの上昇を特徴とする炎症状態に罹患している患者の治療のための組成物および治療レジメンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、そのような組成物および治療レジメンが提供される。
【0010】
カンナビノイドは、好ましくは経口投与される。250mg~5000mgの用量で1日に1~4回投与される。
【0011】
カンナビノイドは、固体分散体、特に、カンナビノイドと、水性媒体と組み合わせた場合にミセル溶液を形成することができる両親媒性ブロックコポリマーである可溶化剤とを含む固体分散体として、製剤化することができる。
【0012】
ブロックコポリマーは、好ましくはポロキサマーである。
【0013】
カンナビノイドはまた、コアおよびコア上のコーティングを含む製剤に組み込むことができ、コーティングは、カンナビノイドと、1つ以上の水溶性フィルム形成剤と、全成分の重量に基づいて20質量%以下の他の賦形剤とを含む。
【0014】
さらなる目的およびその解決手段は、以下の本発明の詳細な説明から結論付けることができる。
【0015】
以下において、図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】カンナビノイドを含有する固体分散体の調製および固体分散体と水性媒体との相互作用を概略的に示す。
図2】活性物質としての2-[1R-3-メチル-6R-(1-メチルエテニル)-2-シクロヘキセン-1-イル]-5-ペンチル-1,3-ベンゼンジオール、およびフィルム形成剤としての低粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、3種類のペレット製品からのin vitro放出を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
インターロイキン(IL)は、サイトカイン、すなわちシグナル分子として作用する分泌タンパク質の群である。免疫系の機能は、大部分がインターロイキンに依存する。
【0018】
インターロイキンの1つは、インターロイキン-6(IL-6)である。異なるキナーゼ経路を活性化することによって、IL-6は、細胞増殖、細胞分化、酸化ストレスおよび免疫調節などの複雑な生物学的反応を促進する。
【0019】
炎症誘発性サイトカインとして作用するIL-6は、自然免疫および適応免疫の両方において重要な役割を有する。
【0020】
IL-6は、異なる細胞型、中でもマクロファージ、内皮細胞、およびT細胞によって産生され得る。IL-6の産生は、感染に反応して開始することができる。IL-6はまた、腫瘍壊死因子(TNF)などの特定の他のサイトカインに応答して形成される。
【0021】
IL-6は、自然免疫系において役割を果たし、急性期応答に寄与する。IL-6は肝細胞に作用して、C反応性タンパク質(CRP)、フィブリノーゲン、および血清アミロイドAの発現を誘導する。
【0022】
IL-6はまた、適応免疫応答において重要な役割を果たし、抗体産生B細胞の増殖を媒介する。その結果、抗体応答の増強が観察される。IL-6はさらに、IL-1βおよびTNF-αと相乗的に作用して、T細胞の活性化、増殖および分化を刺激する。
【0023】
火傷または外傷によって引き起こされる炎症などの非感染性炎症において、損傷細胞または死細胞に由来する損傷関連分子パターン(DAMPS)は、Toll様受容体を刺激し、これによってIL-6が産生される。
【0024】
IL-6は重要な生理学的役割を有するが、このサイトカインの調節不全は、いくつかの疾患状態の発症および進行に関与している。IL-6産生の調節不全は、様々な自己免疫疾患および炎症性疾患において病理学的役割を果たすことが実証されている。IL-6の標的化は、これらの疾患の治療に対する合理的なアプローチである。
【0025】
治療される患者
本発明に従って治療される患者は、サイトカイン放出症候群(CRS)を含む、自己免疫疾患、慢性炎症性疾患および感染に関する炎症状態に関連する炎症状態に罹患している。
【0026】
IL-6は、自己免疫疾患に関連する炎症状態において重要な役割を果たす。より具体的には、IL-6は、TGF-βと共に、自己免疫組織傷害の誘導において重要な役割を果たすIL-17-産生Tヘルパー細胞(Th17)の分化を促進する。同時に、IL-6は、TGF-β誘導性調節性T細胞(Treg)分化を抑制する。したがって、IL-6は、Treg細胞よりもTh17細胞の優性を誘導する。
【0027】
結果として生じるTh17/Tregの不均衡は、免疫寛容の破壊をもたらし、様々な自己免疫疾患および炎症性疾患の発症に病理学的に重要である。
【0028】
IL-6は、多くの慢性炎症性疾患において上昇する。
【0029】
ヒト化抗IL-6受容体抗体であるトシリズマブの臨床試験により、関節リウマチおよび全身性若年性特発性関節炎を有する患者に対するその有効性および耐容性が確認されている。
【0030】
活性化メモリーT細胞株において、CBDは、Th17シグネチャーサイトカインIL-17の減少によって示されるように、自己抗原特異的Th17細胞表現型を用量依存的に減少させる。この減少は、IL-6産生および分泌の減少、およびIL-10の産生の増加を伴っており、Th17細胞増殖の減少に関連する重要な変化である(E. Kozela et al. (2013). Cannabinoids decrease the th17 inflammatory autoimmune phenotype. J Neuroimmune Pharmacol 8(5): 1265-76)。
【0031】
さらに、カンナビノイド、特にCBDは、糖尿病、喘息、膵炎および肝炎を含む炎症性表現型に関連する疾患の様々な動物モデルにおいて循環IL-6を抑制する(see J.M. Nichols and B.L.F. Kaplan (2020). Immune responses regulated by cannabidiol. Cannabis and Cannabinoid Research 5(1): 12-31)。
【0032】
したがって、本発明によれば、IL-6レベルの上昇を特徴とする炎症状態を、カンナビノイド、特にカンナビジオールの投与によって治療することができる。
【0033】
これらの状態はまた、自己免疫成分を含み得る。
【0034】
本発明に従って治療することができる、自己免疫成分が実証されているまたは実証されていない疾患は、リウマチ性疾患である。リウマチ性疾患としては、変形性関節症;関節リウマチ;線維筋痛;全身性エリテマトーデス;痛風;若年性特発性関節炎;感染性関節炎;乾癬性関節炎;多発性筋炎;滑液包炎;強直性脊椎炎;反応性関節炎;強皮症;リウマチ性多発筋痛、が挙げられる。
【0035】
治療することができるさらなる疾患は、巨細胞性動脈炎(GCA)である。
【0036】
さらに、炎症性腸疾患(IBD)が本発明に従って治療することができる。
【0037】
IL-6はまた、脂肪細胞によって産生される。メタボリックシンドロームに罹患している患者では、血清IL-6レベルが増加する。これにより、慢性炎症プロセスが生じ、これは次に、アテローム性動脈硬化症、インスリン耐性および凝固障害をもたらす。本発明によれば、メタボリックシンドロームに罹患している患者が治療される。治療は、慢性炎症プロセスの結果を予防、停止または改善する。治療は、特に、アテローム性動脈硬化症、インスリン耐性および/または凝固障害を予防、停止または改善する。
【0038】
感染性疾患では、感染後初期に、感染物質を排除し、疾患段階への進行を予防するために、免疫応答が必須である。この段階で免疫応答を高めるための戦略が重要であり得る。免疫抑制療法は、この初期の疾患段階で患者を危険にさらすことが予想される。
【0039】
初期免疫応答が損なわれるかまたは不充分である場合、感染物質は増殖し、次いで大量の組織損傷を引き起こし、最終的に炎症誘発性サイトカインによって引き起こされる炎症をもたらす。その結果、損傷した細胞は、炎症誘発性マクロファージおよび顆粒球によって主に媒介される自然炎症をもたらす。IL-6レベルは、感染を有する患者において上昇する。
【0040】
IL-6レベルは、特に敗血症およびセプシス(sepsis)で上昇する。IL-6レベルは、臨床および実験パラメータによって評価されるように、セプシスの重症度と相関する。
【0041】
CRSは、多くの感染性および非感染性疾患において起こり得る。CRSは、全身性炎症反応症候群の形態である。免疫細胞は、受容体-リガンド相互作用を介して、ストレスを受けたまたは感染した細胞によって活性化される。CRSは、多くの白血球が活性化されて炎症性サイトカインを放出し、これが病原性炎症の正のフィードバックループにおいてさらに白血球を活性化し、炎症誘発性サイトカインの急速な上昇をもたらす場合に起こる。
【0042】
サイトカインストームという用語は、CRSの重症例に使用される。
【0043】
患者は、CRP、LDH、IL-6、およびフェリチンの上昇を含むCRSの古典的な血清バイオマーカーを有する。
【0044】
集中治療を必要とする患者は、典型的には、集中治療を必要としない患者よりも高い血中濃度の炎症誘発性サイトカインを有する。患者は、特に炎症誘発性サイトカインIL-6レベルの増加を示す。疾患の発症直後のレベルの増加は、疾患の重篤な経過を示す。CRS自体が、いくつかの病理学的事象の原因であると考えられる。
【0045】
IL-6のレベルが高いことは、CRSの顕著で重要な原動力である。
【0046】
本発明は、薬理学的介入が免疫応答の望ましくない成分を予防または低減することができるという知見に基づく。
【0047】
これは、炎症誘発性サイトカイン、特にIL-6の放出を妨げる薬理学的介入によって達成される。
【0048】
本発明は特に、サイトカイン放出症候群(CRS)および望ましくない炎症プロセスを含むその臨床症状を予防または改善することを可能にする。
【0049】
本発明は、上記の疾患に対する単純かつ便利な治療、すなわち経口投与することができる治療を提供する。
【0050】
治療を開始するための適切な基準は、検査所見に基づく。
【0051】
患者の治療を開始するための検査所見としては、以下の1つまたは複数が含まれる:血清IL-6≧5.4pg/ml;CRPレベル>70mg/L(他の感染性または非感染性経過の確認なし);CRPレベル>=40mg/Lかつ48時間以内に倍加(他の感染性または非感染性経過の確認なし);ラクテートデヒドロゲナーゼ>250U/L;D-ダイマー>1μg/mL;血清フェリチン>300μg/mL。
【0052】
好ましくは、治療開始は、IL-6のレベルの上昇に基づく。
【0053】
さらに、患者の治療は、患者が、必要に応じて上記の基準の1つに加えて、血小板減少<120.000×10E9/L、および/またはリンパ球数<0.6×10E9/Lを示す場合に開始することができる。
【0054】
治療の進行は、例えば最初の投与、14日目および28日目の間の、IL-6、CRP、トランスアミナーゼ、LDH、D-ダイマー、フェリチン、IL-1β、IL-18、インターフェロンガンマ、好中球、リンパ球、好中球対リンパ球比(NLR)(%)の低下によって、監視することができる。
【0055】
治療は、関連する臨床的改善が達成されるまで継続される。慢性炎症を伴う状態において、治療は長期的であり得る。
【0056】
活性成分
カンナビノイドは、いわゆるカンナビノイド受容体と親和性を有する不均質な薬理活性物質の群である。カンナビノイドには、例えば、テトラヒドロカンナビノール(THC)および非精神活性カンナビジオール(non-psychoactive cannabidiol)(CBD)が含まれる。
【0057】
カンナビノイドは、フィトカンナビノイドおよび合成カンナビノイドの両方であってよい。
【0058】
フィトカンナビノイドは、約70種のテルペンフェノール化合物の群である(V.R. Preedy (ed.), Handbook of Cannabis and Related Pathologies (1997))。これらの化合物は、典型的には、フェノール環に結合したモノテルペン基を含み、フェノール性ヒドロキシル基に対してメタ位にあるC~Cアルキル鎖を有する。
【0059】
カンナビノイドの好ましい群は、以下の一般式(1)のテトラヒドロカンナビノールである:
【化1】
式中、Rは、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、またはC~C20アルキニルから選択され、任意選択で1つまたは複数の置換基を有する。
【0060】
上記の一般式(1)の化合物のさらに好ましい群において、Rは、C~C10アルキル、またはC~C10アルケニルから選択され、任意選択で1つまたは複数の置換基を有する。
【0061】
特に、式(1)において、Rは式C11のアルキル基である。
【0062】
一般式(1)の化合物は、立体異性体の形態で存在してもよい。好ましくは、中心6aおよび10aはそれぞれR立体配置を有する。
【0063】
テトラヒドロカンナビノールは、特に化学名(6aR,10aR)6,6,9-トリメチル-3-ペンチル-6a,7,8,10a-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[c]クロメン-1-オールを有するΔ9-THCである。その構造は以下の式(2)で表される:
【化2】
【0064】
カンナビノイドの別の好ましい群は、以下の一般式(3)のカンナビジオールである:
【化3】
式中、Rは、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、またはC~C20アルキニルから選択され、任意選択で1つまたは複数の置換基を有する。
【0065】
上記の一般式(3)の化合物のさらなる好ましい群において、Rは、C~C10アルキル、またはC~C10アルケニルから選択され、任意選択で1つまたは複数の置換基を有する。
【0066】
特に、式(3)において、Rは式C11のアルキルラジカルである。
【0067】
カンナビジオールは、特に、2-[1R-3-メチル-6R-(1-メチルエテニル)-2-シクロヘキセン-1-イル]-5-ペンチル-1,3-ベンゼンジオールである。本明細書において、カンナビジオールまたはその略語CBDという用語が使用される場合、特に明記しない限り、この特定の化合物を意味する。
【0068】
CBDは、向精神性Δ9-THC以外のカンナビス種(Cannabis sp.)の主要な構成成分である。THCの向精神作用は、主に神経細胞上で発現されるカンナビノイド受容体CB1によって媒介される。THCとは対照的に、CBDは、向精神活性を有さない末梢および中枢に作用する化合物である。
【0069】
本発明によれば、Δ9-THC((6aR,10aR)-6,6,9-トリメチル-3-ペンチル-6a,7,8,10a-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[c]クロメン-1-オール)およびCBD(2-[1R-3-メチル-6R-(1-メチルエテニル)-2-シクロヘキセン-1-イル]-5-ペンチル-1,3-ベンゼンジオール)の組合せを使用することができる。
【0070】
カンナビノイドのさらに好ましい群は、以下の一般式(4)のカンナビノールである:
【化4】
式中、Rは、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、またはC~C20アルキニルから選択され、任意選択で1つまたは複数の置換基を有する。
【0071】
上記の一般式(4)の化合物のさらなる好ましい群において、Rは、C~C10アルキル、またはC~C10アルケニルから選択され、任意選択で1つまたは複数の置換基を有する。
【0072】
特に、式(4)において、Rは式C11のアルキル基である。
【0073】
カンナビノールは、特に、6,6,9-トリメチル-3-ペンチル-6H-ジベンゾ[b,d]ピラン-1-オールである。
【0074】
本発明によれば、大麻(ヘンプ)抽出物のカンナビノイドまたはカンナビノイド混合物も使用することができる。
【0075】
例えば、ナビキシモルス(Nabiximols)は、標準化された含有量のテトラヒドロカンナビノール(THC)およびカンナビジオール(CBD)を含む、大麻草(カンナビス・サティバ (Cannabis sativa L.))の葉および花の薬物として使用される植物エキス混合物である。
【0076】
合成カンナビノイドも使用することができる。
【0077】
それらには、3-(1,1-ジメチルヘプチル)-6,6a,7,8,10,10a-ヘキサヒドロ-1-ヒドロキシ-6,6-ジメチル-9H-ジベンゾ[b,d]ピラン-9-オンが含まれる。この化合物は、2つのキラル中心を含む。薬物ナビロン(nabilone)は、(6aR,10aR)形態と(6aS,10aS)形態の1:1混合物(ラセミ体)である。ナビロンは、本発明による好ましいカンナビノイドである。
【0078】
合成カンナビノイドのさらなる例は、JWH-018(1-ナフチル-(1-ペンチルインドール-3-イル)メタノン)である。
【0079】
カンナビノイド、特にカンナビジオールの使用は、それらの薬力学的特性に基づく。カンナビノイド受容体には、主に脳で発現されるCB1、および主に免疫系の細胞で見出されるCB2が含まれる。CB1およびCB2受容体の両方が免疫細胞上に見出されているという事実は、カンナビノイドが免疫系の調節において重要な役割を果たすことを示唆している。この知見とは別に、いくつかの研究では、カンナビノイドが、サイトカインおよびケモカインの産生をダウンレギュレートし、いくつかのモデルにおいて、炎症反応を抑制するメカニズムとして制御性T細胞(Treg)をアップレギュレートすることが示される。エンドカンナビノイド系はまた、免疫調節にも関与する。
【0080】
カンナビノイド、特にカンナビジオールは、サイトカイン放出症候群(CRS)を含む、自己免疫疾患、慢性炎症性疾患および感染に関する炎症状態に関連する炎症状態の進行を予防するか、または少なくとも停止する、または有意に減速させるのに特に適している。
【0081】
この治療的有用性は、カンナビノイドの薬力学的特性、特にエンドカンナビノイド系とのそれらの相互作用、ならびにセロトニン作動性受容体、アデノシンシグナル伝達、バニロイド受容体、PPAR-γ受容体およびGPR55を含むさらなる薬理学的標的に基づき、これは免疫制御性または免疫抑制性でさえあることが示されている。
【0082】
カンナビノイド、特にカンナビジオールは、自然免疫系(すなわち、好中球、マクロファージおよび他の骨髄細胞を介した病原体に対する迅速な反応を可能にする免疫系の一部)に影響を及ぼす。自然免疫系の影響を受ける細胞タイプとしては、特に、単核細胞、マクロファージ、好中球、樹状細胞、ミクログリア細胞および骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)が挙げられる(J.M. Nichols and B.L.F. Kaplan (2020), loc.cit.):
・ヒト単核細胞における炎症誘発性サイトカインの放出は、ナノモルまたはマイクロモル濃度のCBDによって抑制される。
・CBD(20mg/kg)は、LPS誘発性肺炎後のマウスの気管支肺胞洗浄液中のマクロファージおよび好中球を含む白血球の数を減少させる。この効果は、アデノシンA2A受容体によって媒介される(A. Ribeiro et al. (2012)。非向精神性植物由来カンナビノイドであるカンナビジオールは、急性肺損傷のマウスモデルにおいて炎症を減少させる(role for the adenosine A(2A) receptor. Eur J Pharmacol 678(1-3): 78-85). Furthermore, CBD also inhibits the migration of human neutrophils (D. McHugh et al. (2008))。さらに、CBDはまた、ヒト好中球の移動を阻害する(D. McHugh et al. (2008). Inhibition of human neutrophil chemotaxis by endogenous cannabinoids and phytocannabinoids: evidence for a site distinct from CB1 and CB2. Mol Pharmacol 73(2): 441-50)。好中球数の減少は、治療上の関連性がある。
・CBDは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染を有する個体に由来する樹状細胞におけるCD83樹状細胞活性化マーカーを抑制するが、健康な個体では抑制しない(A.T. Prechtel and A. Steinkasserer (2007). CD83: an update on functions and prospects of the maturation marker of dendritic cells. Arch Dermatol Res 299(2): 59-69)。
・CBD(1~16μmol/l)は、中枢神経系の主要な自然免疫細胞であるミクログリア細胞においてアポトーシスを誘導する(H.Y. Wu et al. (2012). Cannabidiol-induced apoptosis in murine microglial cells through lipid raft. Glia 60(7): 1182-90)。
・ナチュラルキラー(NK)細胞およびナチュラルキラーT(NKT)細胞の数は、健常ラットにおいてCBD(5mg/kg/日)によって影響を受けないか、またはさらに増加した(2.5mg/kg/日)ことから、CBDがNK/NKT関連非特異的免疫応答を増強し得ることが示唆される(B. Ignatowska-Jankowska et al. (2009). Cannabidiol-induced lymphopenia does not involve NKT and NK cells. J Physiol Pharmacol 60 Suppl 3: 99-103)。
・さらに、CBDは、MDSCの制御性免疫細胞集団を誘導することができる。化学的に誘発された急性肝炎を有するマウスにおいて、CBD(25mg/kg)は、IL-2、TNF-αおよびIL-6などの炎症誘発性サイトカインの減少と共にMDSCの発現を誘導する;この効果はTRPV1受容体によって媒介される(V.L. Hegde et al. (2011). Role of myeloid-derived suppressor cells in amelioration of experimental autoimmune hepatitis following activation of TRPV1 receptors by cannabidiol. PLoS One 6(4): e18281)。
【0083】
さらに、カンナビノイド、特にCBDは、適応免疫系の細胞に対して効果を示す。適応免疫系は、T細胞およびB細胞から構成される。T細胞は、感染細胞を直接溶解するか、または感染細胞のアポトーシスを誘導するか(細胞傷害性T細胞)、または病原体に対する抗体を産生するB細胞を含む他の免疫細胞(Tヘルパー[Th]細胞)を動員する:
・健常ラットでの研究において、5mg/kgのCBDを毎日投与すると、ヘルパーT細胞および細胞傷害性T細胞を含むT細胞およびB細胞の数が著しく減少した(B. Ignatowska-Jankowska et al., loc. cit.)。
・TNF-αおよびIL-12などの炎症誘発性サイトカインの減少およびIL-10などの抗炎症性サイトカインの増加をもたらすTh1からTh2への免疫応答のシフトは、CBDの抗炎症効果の原因であることが示唆されている(L. Weiss et al. (2006). Cannabidiol lowers incidence of diabetes in non-obese diabetic mice. Autoimmunity 39(2): 143-51)。
・活性化メモリーT細胞株において、CBDは、Th17シグネチャーサイトカインIL-17の減少によって示されるように、自己抗原特異的Th17細胞表現型を用量依存的に(1~5μmol/l)減少させた。この発見は、IL-6産生および分泌の減少、ならびにIL-10の産生の増加を伴っており、Th17細胞増殖に関連する重要な変化であった(E. Kozela et al. (2013), loc.cit.)。
・CBDは、いくつかの疾患モデルにおいて制御性T細胞(Treg)を誘導することが示された(J.M. Nichols and B.L.F. Kaplan (2020), loc. cit.)。虚血再灌流誘導腎臓損傷を有するマウスでは、制御性T-17(Treg17)細胞のレベルは減少し、Th17レベルは増加した。Treg17細胞の生理学的機能は、Th17媒介性炎症作用の抑制を含む。腎損傷誘導後の10mg/kgのCBDの投与は、腎保護的であり、これらの効果を逆転させた(B. Baban et al. (2018). Impact of cannabidiol treatment on regulatory T-17 cells and neutrophil polarization in acute kidney injury. Am J Physiol Renal Physiol 315(4): F1149-f58)。
【0084】
多くの研究は、カンナビノイド、特にCBDが、TNF-α、IFN-γ、IL-6、IL-1β、IL-2、IL-17Aなどの炎症誘発性サイトカイン、およびCCL-2などのケモカインの抑制によってそれらの免疫抑制および抗炎症効果を発揮することを実証している。炎症誘発性サイトカインIL-6は、
サイトカイン放出症候群(CRS)を含む、自己免疫疾患、慢性炎症性疾患および感染に関する炎症状態に関連する炎症状態において中心的な役割を有する。IL-6シグナル伝達は、カンナビノイド、特にCBDによって影響を受ける主要な古典的経路の1つである。カンナビノイド、特にCBDは、様々な炎症動物モデルにおいて循環IL-6を抑制するので、IL-6の抑制により所望でない免疫および炎症反応が予防されることは、本明細書において考慮される患者におけるカンナビノイド、特にCBDの最も関連のある作用様式であると考えられる。
【0085】
本発明によれば、カンナビノイド、特にカンナビジオールを併用治療の一部として適用することもできる。
【0086】
投薬および投与
本発明によれば、カンナビノイド、特にカンナビジオールは、好ましくは経口投与される。
【0087】
しかしながら、他の投与経路も、特に経口薬を摂取できない患者について企図される。このような他の経路は、特に静脈内、筋肉内または皮下注射である。
【0088】
投与は1日当たり1~4回である。典型的には、投与は1日2回(BID)である。
【0089】
本発明によれば、患者は有効量のカンナビノイド、特にカンナビジオールで治療される。
【0090】
単回用量は、250mg~5000mgであってもよく、1日に1~4回、例えば、BIDで投与される。
【0091】
例示的な用量は、375mg、750mg、1500mg、および3000mgであり、1日に1~4回、例えば、BIDで投与される。
【0092】
特に好ましい用量は、1500mgであり、1日に1~4回、好ましくはBIDで投与される。
【0093】
上記のように、カンナビノイド、特にカンナビジオールは、様々な動物モデルにおいて免疫系に対して抑制的な薬力学的効果を有する。
【0094】
多様な動物モデルにおいて、大多数の症例において、炎症プロセスは、主に腹腔内または経口投与される2.5~20mg/kg体重の用量で抑制されることが示されている。代替経路は、経皮、鼻腔内およびIV(静脈内)投与である(J.M. Nichols and B.L.F. Kaplan BLF (2020), loc. cit.)。
【0095】
大多数の症例において、IL-6分泌に対する抑制効果を決定する細胞モデルでは、有効濃度は5μMの大きさであった(J. Chen et al. (2016). Protective effect of cannabidiol on hydrogen peroxideinduced apoptosis, inflammation and oxidative stress in nucleus pulposus cells. Mol Med Rep 14(3): 2321-7)。
【0096】
314.5g/molのCBDの分子量に基づいて、得られる濃度は1,570ng/mlである。
【0097】
Ribeiroらは、一度は予防的介入において(A. Ribeiro et al. (2012), loc. cit.)および一度は急性期における治療的介入において(A. Ribeiro et al. (2014). Cannabidiol improves lung function and inflammation in mice submitted to LPS-induced acute lung injury. Immunopharmacol Immunotoxicol 37(1): 35-41)、ARDSの疾患モデルとしてマウスにおけるLPS誘発急性肺損傷に対するCBDの影響を調査した。
【0098】
マウスに、腹腔内経路を介して0.3、1.0、10、20、30、40および80mg/kgのCBDを予防的に投与した。投与の60分後、大腸菌LPSの鼻腔内点滴注入により急性肺損傷を誘発した。滴下注入の1、2、4および7日後にマウスを死亡させた。全白血球遊走、ミエロペルオキシダーゼ活性、TNF-αおよびIL-6を含む炎症誘発性サイトカイン産生ならびに血管透過性は有意に減少した(A. Ribeiro et al. (2012), loc. cit.)。効果は用量依存的であったが、予防的適用を伴うこの研究において20mg/kgでほぼ最大に達した。
【0099】
その後の研究において、同じ群が、LPSによって急性肺損傷が誘発された後のCBDの効果を調査した。試験シナリオは、介入の時点をLPS投与の6時間後に選択したことを除いて同様であった。20および80mg/kgの用量を、先の研究の結果に基づいて選択した(A. Ribeiro et al. (2014), loc. cit.)。本研究は、20mg/kgでの、機械的肺機能の改善、肺への白血球移動(好中球、マクロファージおよびリンパ球)の減少、肺組織におけるミエロペルオキシダーゼ活性の減少、血管透過性の減少および炎症誘発性サイトカイン/ケモカインの産生を示した。
【0100】
マウスおよびラットにおけるCBDの腹腔内および経口適用後の全身曝露についての比較調査は、単回用量としての120mg/kgが、マウスにおける14,000ng/mlの最大血漿濃度をもたらすことを示した(S. Deiana et al. (2012). Plasma and brain pharmacokinetic profile of cannabidiol (CBD), cannabidivarine (CBDV), Delta(9)-tetrahydrocannabivarin (THCV) and cannabigerol (CBG) in rats and mice following oral and intraperitoneal administration and CBD action on obsessive-compulsive behaviour. Psychopharmacology (Berl) 219(3): 859-73)。
【0101】
これらのデータを考慮し、得られた血漿濃度について用量比例関係を仮定すると、動物モデルにおいて有効であることが示された20mg/kgの用量は、2,300ng/mlの標的ピーク曝露をもたらす。
【0102】
ヒトにおける全身曝露データに関して、Epidyolex(登録商標)の絶食投与後、定常状態条件下での朝方の最大値が541ng/mlであることが観察される。夕方の最大値はより高い。1日2回のEpidyolex投与で、朝方と夕方との間に3.8倍の全身曝露が観察される(L. Taylor et al. (2018). A Phase I, Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled, Single Ascending Dose, Multiple Dose, and Food Effect Trial of the Safety, Tolerability and Pharmacokinetics of Highly Purified Cannabidiol in Healthy Subjects. CNS Drugs 32(11): 1053-67)。
【0103】
したがって、Epidyolexで既に承認されているように1日2回投与される1,500mgのCBDの標準用量は、安全かつ有効であると考えられる。
【0104】
上記のデータに基づいて、患者はまた、本明細書に概説される範囲内の他の用量から利益を得るであろう。
【0105】
ガレノス製剤
特に経口投与の際のカンナビノイドの低いかつ変化するバイオアベイラビリティは、これらの化合物の効果的な臨床的使用を妨げる。
【0106】
カンナビノイド、特にカンナビジオールは、その高度に親油性の性質のために製剤化することが困難である。
【0107】
実際、カンナビノイドは、非常に低い水溶性(2~10μg/ml)を有する高親油性分子(logP6~7)である。logPは、n-オクタノール/水分配係数の常用対数である。分配係数は実験的に決定することができる。値は、典型的には、室温(25℃)での値を指す。分配係数は、分子構造から大まかに算出することもできる。
【0108】
低い溶解度に加えて、カンナビノイド、特にCBDは、高い初回通過代謝を受けやすく、これはさらに経口投与後の低い全身利用能の一因となる。
【0109】
カンナビノイドの様々な製剤が提案されてきた。
【0110】
カンナビノイドの高親油性により、塩形成(すなわち、pH調整)、共溶媒和(例えば、エタノール、プロピレングリコール、PEG400)、ミセル形成(例えば、ポリソルベート80、Cremophor-ELP)、マイクロエマルション形成およびナノエマルション形成を含む、エマルション化(乳化)、複合体形成(例えば、シクロデキストリン)、および脂質ベース製剤(例えば、リポソーム)中への封入が、従来技術において製剤戦略の中で検討されている。ナノ粒子系も提案されている(N. Bruni et al., loc. cit.)。
【0111】
様々な経口固形製剤が、例えば国際公開第2008/024490号および国際公開第2018/035030号などの特許文献において提案されている。これらの文献は、放出挙動に関するデータを含まないため、カンナビノイドの投与のために提案された形態の実際の適合性は不明なままである。
【0112】
国際公開第2015/065179号は、カンナビジオールに加えて、乳糖およびショ糖脂肪酸モノエステルを含む圧縮錠剤について記載する。
【0113】
ドロナビノール(Dronabinol)(Δ9-THC)は、カプセル形態(Marinol(登録商標))、および経口溶液(Syndros(登録商標))として市販されている。Marinol(登録商標)カプセルは、ゴマ油中に活性成分を含むソフトゼラチンカプセルである。
【0114】
ナビキシモルス(nabiximols)を含有する製剤Sativex(登録商標)は、頬の内側に噴霧される口腔スプレーである。
【0115】
油、界面活性剤の混合物であり、場合により親水性溶媒を含有する自己乳化型薬物送達システム(SEDDS)もまた、特定のカンナビノイドの経口バイオアベイラビリティを改善するためのアプローチとして関心を集めている(K. Knaub et al. (2019). A Novel Self-Emulsifying Drug Delivery System (SEDDS) Based on VESIsorb Formulation Technology Improving the Oral Bioavailability of Cannabidiol in Healthy Subjects. Molecules, 24(16), 2967)。胃液または腸液などの水相と接触すると、SEDDSは穏やかな撹拌条件下で自然に乳化する。
【0116】
Vesifact AG(Baar, Switzerland)によって開発された自己乳化型薬物送達製剤技術であるVESIsorb(登録商標)は、特定の親油性分子の経口バイオアベイラビリティの増加を示した。
【0117】
特定の形態のてんかんの治療のためのオーファンドラッグとして米国FDAによって最近承認された製剤Epidiolexは、活性成分であるカンナビジオールに加えて、賦形剤である無水エタノール、ゴマ油、ストロベリー香料、およびスクラロースを含有する経口溶液の形態で提供される。
【0118】
しかしながら、これら提案の全てにかかわらず、カンナビジオールなどのカンナビノイドの、特に経口固形剤形のための改良された剤形が依然として必要とされている。
【0119】
先行技術において提案された様々なアプローチは、完全に満足のいくものではない。これらのアプローチのいくつかは、液体製剤に依存する。このような製剤の取り扱いは、固形製剤の場合よりも困難である。先行技術の製剤は、多くの場合、調製するのが複雑であり、時にはカンナビノイドの低いバイオアベイラビリティしかもたらさない。
【0120】
当技術分野で知られている製剤を本発明の治療態様において使用することができるが、本発明は改良された製剤も提供する。
【0121】
本発明の一態様では、カンナビノイド、特にカンナビジオールと可溶化剤とを含む固体分散体である製剤が提供される。以下にさらに詳述するように、満足のいくバイオアベイラビリティを示す経口投与用の固体剤形をこのようにして得ることができる。
【0122】
この態様によれば、ほぼ水不溶性のCBDのような高度に親油性のカンナビノイドは、水性媒体中での可溶化によって薬物溶解度を高めるために、可溶化剤と組み合わされる。溶解度の増加は、ひいては薬物化合物の吸収速度を増加させる。
【0123】
カンナビノイド、特にカンナビジオールおよび可溶化剤を含む固体分散体は、水または胃腸液などの他の水性媒体と接触するとミセルの形成をもたらす。ミセルは、可溶化剤によって囲まれた薬剤物質から本質的に形成される(図1参照)。
【0124】
したがって、本発明の一態様は、ミセルが分散している水相を含むミセル組成物であり、このミセルはカンナビノイド、特にカンナビジオール、および可溶化剤を含む。
【0125】
適切な可溶化剤は、周囲温度で固体である。それらは界面活性剤特性を有し、水性媒体、特に水中で適切な濃度範囲で使用される場合、ミセル溶液を形成することができる。
【0126】
適切な可溶化剤としては、特に両親媒性ブロックコポリマーが挙げられる。
【0127】
より詳細には、少なくとも1つのポリオキシエチレンブロックおよび少なくとも1つのポリオキシプロピレンブロックを含むブロックコポリマーを使用することができる。
【0128】
適切なブロックコポリマーは、特にポロキサマーである。ポロキサマーは、分子量が1,100~14,000を超える範囲のブロックコポリマーである。異なるポロキサマーは、製造中に添加されるプロピレンおよびエチレンオキシドの相対量のみが異なる。
【0129】
ポロキサマーは、以下の一般式を有する:
【化5】
【0130】
この一般式において、nはポリオキシエチレン単位の数を示し、mはポリオキシプロピレン単位の数を示す。
【0131】
一実施形態では、可溶化剤は、ポロキサマー188である(Kolliphor P188;旧商品名Lutrol F 68)/BASF;CAS番号:9003-11-6)。
【0132】
Kolliphor P188は、上記一般式のポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーであり、式中、nは約79であり、mは約28である。
【0133】
Kolliphor P188は、52~57℃の融点を有するマイクロパールの形態の白色~わずかに黄色がかったワックス状物質として入手可能である。これは、ポロキサマー188に関するPh.Eur.,USP/NFの要件を満たす。
【0134】
固体分散体は、ホットメルトプロセスによって調製することができる。カンナビノイドおよび可溶化剤は、カンナビジオールおよび可溶化剤が分子状態で存在する均質な溶融物を形成できる温度まで加熱され、その後、冷却されると固体分散体を形成する。
【0135】
溶融物をペレットに加工する。これは、バッチ式噴霧造粒/ペレット化(流動床トップスプレー、Wurster=ボトムスプレー技術)によって行うことができる。
【0136】
あるいは、好ましくは、連続噴霧造粒/ペレット化(流動床MicroPx Technology、ProCell Technology)を使用する。
【0137】
別の調製方法は、カンナビノイド、特にカンナビジオールを可溶化剤の水溶液、例えば可溶化剤の水溶液に分散させることに依存する。
【0138】
溶液は、バッチ式噴霧造粒/ペレット化(流動床トップスプレーまたはWurster=ボトムスプレー技術)によって、または好ましくは連続噴霧造粒/ペレット化(流動床MicroPx Technology、ProCell Technology)によって処理して、固体顆粒を得ることができる。
【0139】
製剤は、活性成分および可溶化剤に加えて、1つまたは複数の賦形剤を含有してもよい。特に、カンナビノイド、特にカンナビジオールを酸化から保護するために、抗酸化剤または抗酸化剤の組合せを含むことが考えられる。
【0140】
有用な抗酸化剤としては、パルミチン酸アスコルビル、α-トコフェロール、ブチルヒドロキシトルオール(BHT、E321)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA、E320)、アスコルビン酸、およびエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)ナトリウムが挙げられる。
【0141】
抗酸化剤または抗酸化剤の組合せは、カンナビノイド、特にCBDの添加前に可溶化剤の溶融物または溶液に添加することができる。
【0142】
固体分散体は、好ましくは、全ての成分に対して20質量%を超える追加の賦形剤を含有しない。
【0143】
固体分散体は、好ましくはトリグリセリドを含まないか、または本質的に含まない。本質的に含まないとは、製剤が、全成分に対して5質量%未満のトリグリセリドを含有することを意味する。
【0144】
さらに、固体分散体は、好ましくは脂肪酸を含まないか、または本質的に含まない。本質的に含まないとは、製剤が、全成分に対して5質量%未満の脂肪酸を含有することを意味する。
【0145】
固体分散体顆粒またはペレットは、市販の標準的な技術および装置を用いて、硬質ゼラチンカプセル、小袋またはスティックパックに充填することができる。
【0146】
単位当たりの有効性成分含量に応じて、固体分散体顆粒を、嚥下可能なカプセルに充填することができる(例えば、25mg/用量のためのカプセルサイズ2-1)。あるいは、高用量単位については、より大きなカプセルを顆粒の一次包装材料として使用することができる。このようなカプセルは嚥下用ではない(例えば、100~200mg/用量に対して最大000/スプリンクルキャップのカプセルサイズ)。むしろ、固体分散体顆粒は、食品に振りかけられるか、または液体、例えば水に分散される。
【0147】
固体分散体顆粒を液体に分散させて得られた組成物は、胃管を介してシリンジで嚥下できない患者に適用することができる。
【0148】
あるいは、固体分散体顆粒を錠剤に加工することもできる。固体分散体顆粒は、崩壊剤、流動促進剤、および/または潤滑剤などの1つまたは複数の賦形剤と組み合わされる。次いで、得られた混合物を錠剤に圧縮する。
【0149】
本発明の別の態様によれば、カンナビノイド、特にカンナビジオールの放出のための製品は、コアおよびコア上のコーティングを含み、コーティングは、カンナビノイド、特にカンナビジオール、1つまたは複数の高親油性生理活性物質、1つまたは複数の水溶性フィルム形成剤、および全成分の重量に基づいて20質量%以下の他の賦形剤を含む。
【0150】
驚くべきことに、カンナビノイド、特にカンナビジオールの固体経口剤形を提供することができ、放出は、カンナビノイドの量に対するフィルム形成剤の量によって制御することができることが見出された。
【0151】
1つまたは複数のフィルム形成剤の使用は、カンナビノイドを含有するコーティングの形成を可能にするだけでなく、放出を制御する役割も果たす。特に、フィルム形成剤は、水にわずかしか溶解しないカンナビノイドの放出を促進する。フィルム形成剤によって初めて、これらは充分な量および速度で放出される。
【0152】
この目的のために、コアは、カンナビノイド、特にカンナビジオールに加えて、1つまたは複数の水溶性フィルム形成剤を含むコーティングを備える。カンナビノイドに加えて、コーティングは、好ましくは、任意の他の生理活性物質を含有しない。
【0153】
好適な水溶性フィルム形成剤の例は、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Na-CMC)およびポリビニルピロリドン(PVP)である。
【0154】
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、特に、20℃で2%(w/w)水溶液の粘度が6mPa・s以下であるHPMCのような、低粘度HPMCであることが好ましい。
【0155】
商品名Pharmacoat(登録商標)603で市販されているような、20℃で2%(w/w)水溶液の粘度が3mPa・sであるHPMCが特に好ましい。
【0156】
カンナビノイドおよび1つまたは複数の水溶性フィルム形成剤を含むコーティングは、他の慣用されている賦形剤を含むことができる。本発明によれば、さらなる賦形剤の量は、全成分の重量に基づき20質量%以下に制限される。好ましくは、全成分の重量に基づき10質量%以下のさらなる賦形剤が含まれる。
【0157】
特に好ましい実施形態では、コーティングは、カンナビノイドおよびフィルム形成剤からなる。
【0158】
本発明によるペレットは、カンナビノイドの総量に対して、0.1~10質量%の総量で、好ましくは0.5~8質量%の総量で、特に1~6質量%の総比率で、1つまたは複数の水溶性フィルム形成剤を含有するコーティングを有する。
【0159】
フィルム形成剤の量が少なすぎると、放出は非常にゆっくりとかつ不完全にしか行われないと考えられる。特定された範囲内の比率を選択することにより、生理活性物質の放出を調整することができる。例えば、経口製剤からの放出は、生理活性物質が胃腸通過の通常の時間にわたって放出されるように調節することができる。
【0160】
コーティングがコアに塗布される。コアは、任意の構造を有することができ、任意の生理学的に許容可能な材料から構成されてよい。コアとして、例えば、錠剤、ミニタブレット、ペレット、顆粒または結晶を使用することができる。コアは、例えば、糖、酒石酸または微結晶セルロースを含むかまたはそれらからなることができる。微結晶セルロースで作られたペレットのような不活性スターターコアが好ましい。このようなペレットは、Cellets(登録商標)の名称で市販されている。
【0161】
コアのサイズは限定されない。適切なサイズは、10μm~2000μmの範囲、例えば50μm~1500μmの範囲、好ましくは100μm~1000μmの範囲であり、サイズはふるい分析によって決定することができる。特に、500~710μmのふるい分級物からなるペレットが使用され得る。
【0162】
本発明の製品は、まず、1つまたは複数のカンナビノイドおよび1つまたは複数の水溶性フィルム形成剤を含む噴霧液を作製することによって製造することができる。
【0163】
カンナビノイドは非常に低い水溶性しか有さないため、典型的には有機溶媒または有機溶媒と水との混合物が使用される。
【0164】
次いで、噴霧液をコアに塗布する。液体成分を蒸発させ、それによって、溶媒および水をほとんど含まないコーティングがコア上に形成される。これは、例えば流動層システム(fluidized bed system)、噴流層システム(jet bed system)、噴霧乾燥機またはコーターにおいて行うことができる。
【0165】
その後、コーティングされたコアを経口製剤として使用することができる。コーティングされたペレット(コーティングペレット)は、例えば、サシェ(sachet)で提供することができ、またはさらに加工してもよい。
【0166】
本発明によりコーティングされたコアには、1つまたは複数のさらなるコーティングを設けてもよい。これは、放出の追加の制御を可能にする。
【0167】
好ましい実施形態では、放出を制御するさらなるコーティングは設けられない。
【0168】
コーティングペレットを使用して、多粒子製剤(multiparticulate dosage form)を得ることができる。例えば、それらを、カプセル中に充填することができ、または錠剤中に組み込むことができる。一実施形態によれば、それらは経口分散性錠剤に加工される。
【0169】
異なる放出プロファイルを有するコーティングペレットを、1つの剤形(カプセル/錠剤/サシェ)中において組み合わせることができる。本発明による製品は、その中に含まれるカンナビノイド、または2種以上のカンナビノイドが含まれる場合には含まれる全てのカンナビノイドを、摂取後に消化管で放出する。製品は、特に放出制御のために使用される。特に、それらは、含まれる生理活性物質の30質量%超かつ80質量%未満を2時間以内に放出する。さらに、それらは、特に、含まれる生理活性物質の40質量%超かつ90質量%未満を3時間以内に放出する。さらに、それらは、含まれる生理活性物質の50質量%超かつ95質量%未満を4時間以内に放出する。2種以上のカンナビノイドが含まれる場合、その情報は含まれる全ての物質に関連する。
【0170】
各場合において、放出は、37℃で、0.4%のTween(登録商標)80を添加した1000mlのリン酸緩衝液(pH6.8)中において、ブレードスターラー装置で決定する。
【実施例
【0171】
本発明を具体的な実施例に基づいて説明するが、それによって何ら限定されない。
【0172】
実施例1
カンナビジオール含有顆粒(固体分散体)は、20重量部のカンナビジオールおよび80重量部のKolliphor P188を用いて得ることができる。顆粒を調製するために、以下の選択肢が利用可能である。
【0173】
オプション(a)
成分を約100℃の温度に加熱する。溶融物は、約15~25℃の製品温度で流動床中のCBDの固体試料上に噴霧される。このバッチプロセスでは、トップスプレー、ボトムスプレーおよびタンジェンシャルスプレー構成を使用することができる。
【0174】
オプション(b)
成分を約100℃の温度に加熱する。溶融物は、最初は空である流動床装置に噴霧される。約15~25℃の製品温度で流動床条件下で溶融物を固化させると、顆粒が形成される。このバッチプロセスでは、トップスプレー、ボトムスプレーおよびタンジェンシャルスプレー構成を使用することができる。
【0175】
オプション(c)
溶融物からの顆粒の調製は、連続的に行うこともできる。これは、ProCellまたはMicroPx Technology(Glatt)を使用することによって行うことができる。
【0176】
オプション(d)
溶融物は、噴霧塔で処理することもできる。プリルノズルを用いて、規定サイズの球状粒子を得ることができる。
【0177】
実施例2
カンナビジオール含有顆粒(固体分散体)は、30重量部のカンナビジオールおよび70重量部のKolliphor P188を用いて得ることができる。顆粒を調製するために、実施例1に概説される選択肢が利用可能である。
【0178】
実施例3
カンナビジオール含有顆粒(固体分散体)は、40重量部のカンナビジオールおよび60重量部のKolliphor P188を用いて得ることができる。顆粒を調製するために、実施例1に概説される選択肢が利用可能である。
【0179】
実施例4
カンナビジオール含有顆粒(固体分散体)は、20.05重量部のカンナビジオール、76重量部のKolliphorP188、3.4重量部のAvicel PH 101、0.5重量部のAerosil 200、および0.05重量部のBHTを用いて得ることができる。
【0180】
約100℃の温度を有するKolliphor P188およびBHTからの溶融物を、流動床中の固体CBD、Avicel PH 101およびAerosil 200上に噴霧する。製品温度は約15~25℃である。このバッチプロセスでは、トップスプレー、ボトムスプレーおよびタンジェンシャルスプレー構成を使用することができる。
【0181】
実施例5
CBD/可溶化剤の異なる重量比に基づく組成物を、溶融し、溶融物を冷却することによって調製した。組成物を、USPパドル法に従って、0.1N HCl中でのin vitro溶解に関して分析した。
【0182】
比較のために、DAC/NRF 22.10に従って、油性カンナビジオール溶液および市販品Bionic Softgelsも試験した。
【0183】
0.1N HCl中での60分間のin vitro溶解試験後のCBD放出:
CBD/Kolliphor P188=33/67;200mg CBD:69%薬物放出
CBD/Kolliphor P188=27/73;200mg CBD:82%薬物放出
CBD/Kolliphor P188=20/80;200mg CBD:96%薬物放出
油性(Miglyol 812)溶液中のCBD;200mg CBD:0%薬物放出
バイオトニックソフトゲル;25mg CBD:96%薬物放出。
【0184】
実施例6
93.5質量%の実施例1~4のいずれかによる顆粒、5質量%のPolyplasone XL(崩壊剤)、1%のAerosil 200(流動促進剤)および0.5%のステアリン酸マグネシウム(潤滑剤)を用いて、錠剤を調製する。
【0185】
実施例7
以下の表1に示す量の成分を使用してペレットを作製した。
【0186】
この目的のために、2-[1R-3-メチル-6R-(1-メチルエテニル)-2-シクロヘキセン-1-イル]-5-ペンチル-1,3-ベンゼンジオール(Canapure PH)を96%エタノールに溶解させた。この活性成分は、約6.1のlogPを有する。
【0187】
HPMC(Pharmacoat(登録商標)603)を水に溶解させて別の溶液を調製した。
【0188】
次いで、HPMC溶液をカンナビジオール溶液に徐々に添加した。
【0189】
次いで、非晶質(アモルファス)二酸化ケイ素(Syloid(登録商標)244 FP)を添加した。
【0190】
混合物をプロペラスターラーで撹拌した。
【0191】
得られた噴霧液を微結晶セルロース(Cellets(登録商標)500)で作られたスターターコアに噴霧(スプレー)した。
【0192】
これは、ウルスターインサート(Wurster insert)を有するMini-Glat流動層システムで行った。空気入口空気温度は40℃であった。平均噴霧速度は0.5g/分であった。
【0193】
【表1】
【0194】
【表2】
【0195】
実施例8
実施例1から得られたペレット製品からの放出を、特に37℃で、0.4%Tween(登録商標)80を添加した1000mlのリン酸緩衝液(pH6.8)中においてブレードスターラー装置を用いて調べる。得られた結果を図2に示す。
図1
図2
【国際調査報告】