(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-09
(54)【発明の名称】空気電極及びその製造方法と使用
(51)【国際特許分類】
B01D 53/32 20060101AFI20230802BHJP
【FI】
B01D53/32
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568619
(86)(22)【出願日】2022-01-07
(85)【翻訳文提出日】2022-11-10
(86)【国際出願番号】 CN2022070781
(87)【国際公開番号】W WO2022257449
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】202110655463.1
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517215032
【氏名又は名称】合肥美的電冰箱有限公司
【氏名又は名称原語表記】HEFEI MIDEA REFRIGERATOR CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.669,West Changjiang Road,Hefei,Anhui 230601,CHINA
(71)【出願人】
【識別番号】516320344
【氏名又は名称】合肥華凌股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HEFEI HUALING CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.176 JinXiu Road,Hefei Economic And Technological Development Area Hefei,Anhui, 230601,China
(71)【出願人】
【識別番号】512237419
【氏名又は名称】美的集団股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】MIDEA GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】B26-28F, Midea Headquarter Building, No.6 Midea Avenue, Beijiao, Shunde, Foshan, Guangdong 528311 China
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(74)【代理人】
【識別番号】100213517
【氏名又は名称】韓 明花
(72)【発明者】
【氏名】賈麗
(72)【発明者】
【氏名】任相華
(72)【発明者】
【氏名】王勝傑
(72)【発明者】
【氏名】黄勇
(57)【要約】
空気電極及びその製造方法と使用である。前記空気電極は触媒層を含み、前記触媒層中の触媒活性成分はシリコン粉末を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒層を含み、前記触媒層中の触媒活性成分は、シリコン粉末を含む、空気電極。
【請求項2】
前記触媒層は、シリコン粉末の質量百分率が5%~55%である、請求項1に記載の空気電極。
【請求項3】
前記シリコン粉末の粒径は1μm~100μmである、請求項1又は2に記載の空気電極。
【請求項4】
前記シリコン粉末のメジアン径D50は21μmである、請求項3に記載の空気電極。
【請求項5】
前記触媒層中の触媒活性成分は、アルミナを更に含む、請求項1又は2に記載の空気電極。
【請求項6】
前記アルミナは、γ-Al
2O
3を含む、請求項5に記載の空気電極。
【請求項7】
前記触媒層は、導電剤、活性炭、及びバインダーを更に含む、請求項1又は2に記載の空気電極。
【請求項8】
前記触媒層の製造方法は、前記シリコン粉末、導電剤、活性炭及びバインダーを均一に混合した後、プレス成形することである、請求項7に記載の空気電極。
【請求項9】
前記導電剤は、カーボンブラック、導電性グラファイト、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェン、及び金属粉末のうちの少なくとも1つを含む、請求項7に記載の空気電極。
【請求項10】
前記バインダーは、ポリテトラフルオロエチレンエマルジョン、ポリエチレンワックスエマルジョン、ポリフッ化ビニリデンエマルジョン、アクリルシリコンエマルジョン、及びシリコーンエマルジョンのうちの少なくとも1つを含む、請求項7に記載の空気電極。
【請求項11】
前記空気電極は、順に設置される第1拡散層、集電層、第2拡散層、及び前記触媒層を含む、請求項1又は2に記載の空気電極。
【請求項12】
請求項11に記載の空気電極の製造方法であって、前記第1拡散層、前記集電層、前記第2拡散層、及び前記触媒層を順次積層した後、プレス成形することを含む、空気電極の製造方法。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の空気電極の、電気化学的酸素除去における使用。
【請求項14】
空気電極の製造における触媒活性成分としてのシリコン粉末の使用。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか一項に記載の空気電極を備える冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年06月11日に出願された「空気電極及びその製造方法と使用」と題する出願番号第202110655463.1号の中国特許出願の優先権を主張しており、その内容の全ては、ここに参照として取り込まれる。
【0002】
本開示は電気化学的触媒技術の分野に属し、具体的には空気電極及びその製造方法と使用に関する。
【背景技術】
【0003】
電気化学的酸素製造プロセスは日増しに重視され、空気電極技術もますます成熟している。電気化学的酸素製造用空気電極は、一般には、液密通気層、多孔質触媒層及び金属マトリックス導電性メッシュを含む三層から構成される。液密通気層は、一般には、ポリテトラフルオロエチレンからなる多孔質構造であり、電極内部に気体が入り込むことを可能にし、電解液が通気層から漏れるのを防ぐ。多孔質触媒層は、主に炭素とポリテトラフルオロエチレンと触媒からなり、そのうちの炭素と触媒は親水性物質であり、撥水性のポリテトラフルオロエチレンがそれらを結合する。金属マトリックス導電性メッシュは、電極の機械的強度を増加させることができる。電極には撥水成分が含まれているため、電解質に一定の圧力を加えても、電極内部には溶液で満たされていない気孔がある。同時に、活性炭及び触媒表面は親水性であるため、触媒粒子の大部分の外表面に、ガス電極反応を実施するのに使うことができる薄い液膜が形成される。これにより、電極の表面及び内部に連続又は不連続の気孔、液孔が形成され、主体の電解液と連通する薄い液膜が生成され、それによって気-液-固の三相界面が形成される。
【0004】
空気中の酸素は電極で還元反応に参与する時、まず拡散によって溶液に溶け込み、その後、液相で拡散し、電極表面で化学吸着を行い、最後に触媒層で電気化学的還元を行う。酸素は、電極で電気化学的還元反応が発生する場合、電極の材料や反応条件によって、異なる反応メカニズムを持つことができる。中間生成物の過酸化水素が出現するかどうかによって、酸素還元反応コースは二種類に分けることができる。一つは中間生成物の過酸化水素を生成する反応コース(2e反応コースと呼ぶ)である。もう一つは、中間生成物の過酸化水素を生成しない反応コース(4e反応コースと呼ぶ)である。
【0005】
空気電極の組成と構造は電気化学的酸素製造性能に重要な影響を与える。関連技術において、電気化学的酸素製造に用いられる触媒には主に貴金属の白金、金、パラジウム、酸化ルテニウム、イリジウムなどがあり、その他、マンガンの酸化物、酸化コバルト又はマンガンコバルト複合酸化物がある。しかし、実際の使用では、貴金属と希少金属酸化物のコストが高すぎて、大量使用の可能性が低く、マンガン系触媒はコストが比較的低いが、反応中に性能が不安定で、脱落、脱溶、加水分解変性などの問題が発生しやすい。また、アルカリ性の環境条件で、二酸化マンガンを触媒として、触媒の過程で、酸化還元反応に参与し、過酸化水素イオン又は過酸化水素が発生して、陽極の化学的腐食を引き起こして、陽極の耐用年数を低下させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、従来技術における上述の技術的問題の少なくとも一つを解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、本開示は、空気電極を提供し、該空気電極において、触媒活性物質がシリコン粉末を含む。シリコン粉末が陰極において還元反応に参与しないため、過酸化水素と過酸化水素イオンが発生せず、陽極の化学的腐食問題を避ける。
【0008】
本開示はまた、上記空気電極の製造方法を提供する。
【0009】
本開示はまた、上記空気電極の、電気化学的酸素除去における使用を提供する。
【0010】
本開示はまた、空気電極の製造における、触媒活性成分としてのシリコン粉末の使用を提供する。
【0011】
本開示はまた、上記空気電極を備える冷蔵庫を提供する。
【0012】
本開示の第1の態様は、触媒層を有し、前記触媒層中の触媒活性成分がシリコン粉末である空気電極を提供する。
【0013】
本開示の空気電極は、少なくとも以下の有益な効果を有する。
本開示の空気電極において、触媒活性物質はシリコン粉末であり、シリコン粉末は陰極で還元反応に参与しないため、過酸化水素と過酸化水素イオンが発生せず、陽極(金属)の化学的腐食問題を避ける。
【0014】
本開示の空気電極において、触媒活性物質はシリコン粉末であり、シリコン粉末は安価で入手しやすい。シリコン資源の貯蔵量が大きく、地殻の質量の約26%を占め、コストは二酸化マンガンなどの他の常用物質より低く、工業化の普及応用に有利である。
【0015】
本開示の一部の実施形態によれば、前記触媒層は、シリコン粉末の質量百分率が5%~55%である。
【0016】
本開示の一部の実施形態によれば、前記触媒層は、シリコン粉末の質量百分率が10%~50%である。
【0017】
本開示の一部の実施形態によれば、前記触媒層は、シリコン粉末の質量百分率は20%~40%である。
【0018】
本開示の一部の実施形態によれば、前記触媒層は、シリコン粉末の質量百分率は約30%である。
【0019】
本開示の一部の実施形態によれば、シリコン粉末は、単体のシリコンを主成分とし、鉄や銅などの不純物を少量含み得る。シリコン粉末を触媒とし、空気電極に電気化学的酸化還元反応が発生する時、陰極に過酸化物を形成することを避け、更に陽極を化学的腐食から保護する。シリコンに関する原料の中で、シリコン粉末を触媒活性成分として使用してもよく、そのほか、他のシリコン含有原料、例えばマイクロシリコン粉末(シリコン微細粉末とも呼ばれる)も触媒層中の触媒活性成分として使用してもよい。マイクロシリコン粉末(又はシリコン微細粉末)の主成分は二酸化珪素であり、同時に酸化ナトリウム、酸化カルシウムなどの不純物を含む可能性があるが、マイクロシリコン粉末又はシリコン粉末を触媒活性物質とする時、過酸化水素と過酸化水素イオンが発生せず、陽極の化学的腐食問題を避けることができる。しかし、シリコン粉末の触媒活性はより高い。
【0020】
本開示の一部の実施形態によれば、前記シリコン粉末は、1μm~100μmの粒径を有する。
【0021】
本開示の一部の実施形態によれば、前記シリコン粉末は、10μm~60μmの粒径を有する。
【0022】
本開示の一部の実施形態によれば、前記シリコン粉末は、D50が21μmである。
【0023】
シリコン粉末の粒径が減少するにつれて、シリコン粉末の表面の原子数は急速に増加し、表面積、表面エネルギーと表面結合エネルギーはすべて急速に増加することができる。表面原子の周囲には隣接する原子が欠けており、不飽和性があり、他の原子と結合して安定しやすいため、大きな表面活性を持つことにより、触媒性能が向上する。比表面積が大きく、気孔率が高く、イオン拡散に有利で、濃度分極が小さく、電気性能が向上する。しかし、粒径が小さすぎると、シリコン粉末自体間の凝集が激しくなり、触媒性能が逆に低下する。
【0024】
本開示の一部の実施形態によれば、前記触媒層中の触媒活性成分は、アルミナを更に含む。
【0025】
本開示の一部の実施形態によれば、前記アルミナはγ-Al2O3を含む。
【0026】
触媒活性成分は、実際に触媒作用を果たす空気電極中の成分、すなわち、酸素を実際にOH-に還元する空気電極中の成分である。γ-Al2O3は立方晶スピネル型であり、スピネルの構造に類似しており、面心立方格子配列に属する。A13+はスピネル中の8つの四面体空隙と16つの八面体空隙に分布している。MgAl2O4スピネルのうち3つのMg2+を2つのA13+で置換することに相当するため、欠損スピネル構造とも呼ばれ、その分子式はA12/3A12O4と表すことができる。γ-Al2O3は正に帯電し、電子を吸収しやすく、空気陰極で酸素が撥水拡散層を透過し、触媒層でアルミナの表面に酸素を吸着し、酸素が電解液と接触し、負極と正極の電気回路をオンにし、このアルミナの表面に多くの電子が蓄積し、電子を得た後、溶液中で酸素(O)をOH-に還元する。
【0027】
本開示の一部の実施形態によれば、前記触媒層は、導電剤、活性炭、及びバインダーを更に含む。
【0028】
導電剤は活物質の間、活物質と金属集電層の間に微小電流を収集する役割を果たし、電極の接触抵抗を低下させ、電子の移動速度を加速し、したがって電極の効率を向上させる。また、導電剤は、極板加工性を高め、電解液の触媒への濡れを促進することもできる。電極の良好な導電性を保証するために、極板を製造する時、一般には一定量の導電剤を加える。
【0029】
活性炭は担体として触媒反応の場を提供する役割を果たす。
【0030】
バインダーは空気電極触媒中の重要な補助機能材料の一つであり、それ自体は触媒活性がないが、触媒全体の力学性能の主要な源であり、触媒の触媒性能に重要な影響を与える。
【0031】
本開示の一部の実施形態によれば、前記触媒層は、導電剤の質量百分率が5%~20%である。
【0032】
本開示の一部の実施形態によれば、前記触媒層は、導電剤の質量百分率が10%~20%である。
【0033】
本開示の一部の実施形態によれば、前記触媒層は、活性炭の質量百分率が15%~55%である。
【0034】
本開示の一部の実施形態によれば、前記触媒層は、活性炭の質量百分率が20%~40%である。
【0035】
本開示の一部の実施形態によれば、前記触媒層は、活性炭の質量百分率が25%~30%である。
【0036】
本開示の一部の実施形態によれば、前記触媒層は、活性炭の質量百分率が約27%である。
【0037】
本開示の一部の実施形態によれば、前記触媒層は、バインダーの質量百分率が30%~55%である。
【0038】
本開示の一部の実施形態によれば、前記触媒層は、バインダーの質量百分率が30%~40%である。
【0039】
本開示の一部の実施形態によれば、前記触媒層の製造方法は、前記シリコン粉末、導電剤、活性炭及びバインダーを均一に混合した後、プレス成形することである。
【0040】
本開示の一部の実施形態によれば、前記シリコン粉末、導電剤、活性炭、及びバインダーを均一に混合するプロセスは、180rpm~280rpmの範囲の高速撹拌であってもよい。
【0041】
本開示の一部の実施形態によれば、前記シリコン粉末、導電剤、活性炭、及びバインダーを均一に混合するプロセスは、200rpm~250rpmの範囲の高速撹拌であってもよい。
【0042】
本開示の一部の実施形態によれば、前記触媒層の製造方法は、プレス成形がロールプレスである。
【0043】
本開示の一部の実施形態によれば、前記触媒層の製造方法は、ロールプレスの回数が複数回である。
【0044】
本開示の一部の実施形態によれば、前記導電剤は、カーボンブラック、導電性グラファイト、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェン、及び金属粉末のうちの少なくとも一つを含む。
【0045】
上記導電剤の中で、カーボンブラックの特徴は粒径が小さく、比表面積が大きく、導電性能がよく、電極に吸液保液の役割を果たすことである。カーボンブラック粒子の高比表面積、密な堆積は、粒子間の密接な接触を促進し、触媒中の導電性ネットワークを構成する。カーボンブラックが最もよく使われる。
【0046】
導電性グラファイトも良好な導電性を有し、それ自体の粒子は活物質粒子の粒径に近く、粒子と粒子の間は点接触の形式を呈し、一定規模の導電ネットワークを構成でき、導電速度を向上させることができるとともに、負極に用いる時、負極容量を更に向上させることができる。
【0047】
炭素繊維は線形構造を有する。炭素繊維を導電剤とする電池内部において、活物質と導電剤の接触形式は点線接触であり、導電性カーボンブラックと導電性グラファイトとの点点接触形式に比べ、電極の導電性を向上させるだけでなく、導電剤の使用量を低下させ、電池容量を向上させることもできる。
【0048】
カーボンナノチューブ(Carbon Nanotube、CNTと略称する)は単層CNTと多層CNTに分けことができる。一次元構造のカーボンナノチューブは繊維と類似し、長い柱状を呈し、内部が中空である。カーボンナノチューブを導電剤として利用すれば、完備した導電ネットワークを完成することができ、それと活物質も点線接触形式を呈し、電極中の電子の移動度を向上させることができる。
【0049】
グラフェンは、触媒において導電剤として作用するほか、放熱を補助する役割も果たす。同時に、グラフェンは一般にはナノシート状構造であり、活物質との接触は点面接触であり、導電剤の作用を発揮し、導電剤の使用量を減らし、電極中の電子の移動速度を向上させることができる。
【0050】
金属粉末は、理論的には最も導電性が高いが、重量が大きく、空隙が小さい。
【0051】
本開示の一部の実施形態によれば、前記金属粉末は、Fe粉末、Cu粉末、Ag粉末、及びNi粉末のうちの少なくとも一つを含む。
【0052】
バインダーは空気電極触媒中の重要な補助機能材料の一つであり、それ自体は触媒活性がないが、触媒全体の力学性能の主要な源であり、触媒の触媒性能に重要な影響を与える。
【0053】
本開示の一部の実施形態によれば、前記バインダーは、撥水性のエマルジョンバインダーである。
【0054】
本開示の一部の実施形態によれば、前記バインダーは、ポリテトラフルオロエチレン(poly tetra fluoroethylene、PTFEと略称する)エマルジョン、ポリエチレンワックスエマルジョン、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride、PVDFと略称する)エマルジョン、アクリルシリコンエマルジョン及びシリコーンエマルジョンのうちの少なくとも一つを含む。
【0055】
ポリテトラフルオロエチレンは、テトラフルオロエチレンをモノマーとして重合して得られる高分子重合体である。白色ワックス状を呈し、半透明であり、耐熱、耐寒性に優れ、-180℃~260℃での長期使用が可能である。この材料は耐酸耐アルカリ性、各種有機溶媒に対する耐性を有し、すべての溶媒にほとんど溶解しない。同時に、ポリテトラフルオロエチレンは耐高温の特徴を有し、摩擦係数は極めて低い。
【0056】
ポリフッ化ビニリデンは主にフッ化ビニリデン単独重合体又はフッ化ビニリデンと他の少量のフッ素含有ビニルモノマーの共重合体を指し、それはフッ素樹脂と汎用樹脂の特性を兼ね備え、良好な耐化学的腐食性、耐高温性、耐酸化性、耐候性、耐放射線性能を有するほか、圧電性、誘電性、焦電性などの特殊な性能を有する。
【0057】
本開示の一部の実施形態によれば、前記空気電極は、順に設置される第1拡散層、集電層、第2拡散層及び前記触媒層を含む。
【0058】
拡散層+集電層+触媒層の電極構造と比較して、本開示の空気電極は第1拡散層、集電層、第2拡散層と触媒層の構造を採用し、集電層と触媒層の間に第2拡散層を設置し、電極の両側に同じ組成の拡散層を有することを保証することができる。ロールプレスして電極を作った後、両側の接着力がよく、触媒層が金属集電層から脱落するリスクを低減することができる。
【0059】
本開示の第2態様は、上記空気電極の製造方法を提供し、具体的には、前記第1拡散層、集電層、第2拡散層、及び前記触媒層を順次積層した後、プレス成形する。
【0060】
上記空気電極の製造方法は、少なくとも以下の有益な効果を有する。
本開示による空気電極の製造方法は、まずシリコン粉末、導電剤、活性炭とバインダーを比例によって均一に混合してプレスするだけで触媒層を製造でき、更に第1拡散層、集電層、第2拡散層と触媒層を順に積層してからプレス成形すればよく、製造過程の操作が簡単で、大規模な工業生産に有利である。
【0061】
本開示による空気電極の製造方法は、製造プロセス条件が簡単であり、設備への要件が低く、更に生産投入を低減する。
【0062】
本開示の第3態様は、上記空気電極の電気化学的酸素除去における使用を提供する。
【0063】
上記空気電極を電気化学的酸素除去に使用すると、少なくとも以下の有益な効果を有する。
空気電極には触媒層が含まれ、シリコン粉末は触媒層中の活性触媒成分であり、空気電極は電気化学酸化還元反応が発生する時、陰極で過酸化物の形成を避け、更に陽極を化学的腐食から保護することができる。
【0064】
上記触媒層を含む電極を陰極とし、ニッケル網を陽極とし、炭酸カリウムを電解液として、常温で酸素除去試験を行い、30日間連続実行した後、陽極に目立った腐食はなかった。同じ条件で、触媒を二酸化マンガンに取り替えると、酸素除去試験を12-15日ほど実行すると、陽極に明らかな錆が出現し、ひどい場合は錆による貫通もある。
【0065】
上記触媒層を含む空気電極によれば、消費電力が低く、消費電力を約20%低減することができる。ニッケル網を陽極とし、5%~40%の炭酸カリウムを電解液とした場合を例に、電流密度は40mA~300mAの定電流条件で、充電電圧は1.6V~1.9Vである。同じ実験条件で、触媒を二酸化マンガンに変更すると、モジュールの充電電圧は2.0V~2.3Vである。
【0066】
上記触媒層を含む空気電極によれば、材料信頼性が高い。ニッケル網を陽極とし、5℃~40℃の炭酸カリウムを電解液とする場合を例に、実験モジュールを0℃~5℃の条件で3~10日間放置し、空気電極触媒を含む電極の初回充電電圧は2.3Vであり、充電時間の増加に伴い、電圧は絶えず低下し、4hまで運転した後、充電電圧は1.8V~2.0Vに安定する。同じ条件で、もし二酸化マンガンを空気電極触媒として採用すれば、実験モジュールを0℃~5℃条件で3~10日間放置し、シリコン粉末触媒の空気電極の初回充電電圧は4.5Vであり、充電時間の増加に伴い、電圧はある程度低下し、7hまで運転した後、充電電圧は3.5V~3.8Vに安定する。これからわかるように、上記触媒層を含む空気電極は二酸化マンガン空気電極より安定性がよく、環境信頼性が高い。
【0067】
本開示の第4の態様は、空気電極の製造における、触媒活性成分としてのシリコン粉末の使用を提供する。
【0068】
本開示の第5態様は、上記空気電極を備える冷蔵庫を提供する。
【0069】
冷蔵庫は、家庭用冷蔵庫、商業用冷蔵庫、冷凍庫、コールドチェーン配送車等を含んでもよい。
【0070】
空気電極は酸素を除去することができるため、冷蔵庫に空気電極が設置されている場合、冷蔵庫のドアが閉まると、空気電極が作動し始め、冷蔵庫内部の酸素を除去し、これにより、果物や野菜の呼吸作用を抑制し、野菜や果物の鮮度保持を促進することができる。
【0071】
なお、本開示でいう「冷蔵庫」は、家庭用冷蔵庫以外にも、商業用冷蔵庫、冷凍庫等の装置を含んでもよい。
【0072】
現代物流では、コールドチェーン運送がますます重要になっている。コールドチェーン運送とは、運送の全過程において、積み下ろし運搬、運送方式の変更、包装設備の交換などの段階のすべてが、運送貨物を常に一定温度に保つ運送を指す。
【0073】
コールドチェーン運送方式は道路運送、水路運送、鉄道運送、航空運送でもよく、複数の運送方式を組み合わせた総合運送方式でもよい。コールドチェーン運送はコールドチェーン物流の重要な一環である。コールドチェーン運送はコストが高く、しかも複雑な移動冷凍技術と保温箱製造技術を含む。コールドチェーン運送管理はより多くのリスクと不確定性を含んでいる。
【0074】
コールドチェーン運送の対象は主に生鮮品、加工食品と医薬製品に分けられる。その中、生鮮品には野菜、果物、肉、鳥、卵、水産物や花製品が含まれ、加工食品には冷凍食品、家禽、肉、水産などの包装調理食品、アイスクリーム、乳製品とファーストフード原料が含まれ、医薬品には、ワクチンなどの冷蔵が必要な各種医薬品、医療デバイスなどが含まれている。
【0075】
一部の食品は運送中に長期鮮度保存ができないため捨てられる。生鮮で腐敗しやすい貨物運送では、確かに途中の手掛けや車両の不快感によって死亡する部分があるが、そのほとんどは腐敗によるものである。腐敗の原因は、動物性食品の場合、主に微生物の作用である。植物性食品の場合、腐敗の原因は主に呼吸作用によるものである。
【0076】
コールドチェーン運送過程は必ず冷凍又は冷蔵などの専用車両で行わなければならない。冷凍又は冷蔵専用車両は貨物車と同じ車体と機械を必要とするほか、車に冷凍又は冷蔵と保温設備を別途設置しなければならない。運送中には連続冷蔵でなければならない。なぜなら、微生物活動と呼吸作用は温度の上昇に伴って強化されるので、運送中の各段階が連続冷蔵の条件を保証できない場合、貨物はこの段階で腐敗し変質し始める可能性があるからである。
【0077】
本開示の空気電極がコールドチェーン運送の段階で使用される場合、空気電極の酸素除去作用によって、微生物の繁殖を抑制し、生物の呼吸作用を減少させ、これにより、物品の腐敗を遅らせることができる。
【0078】
酸素は電極で電気化学的還元反応が発生する場合、反応メカニズムは複雑で、電極の材料、反応条件によって、異なる反応メカニズムを持つことができる。
【0079】
中間生成物の過酸化水素が出現するかどうかによって、酸化還元反応の過程は2つの種類に分けことができる。
一つは中間生成物の過酸化水素を生成する反応コース(二電子反応コース、すなわち2e-反応コースと呼ばれる)である。
【0080】
もう一つは、中間生成物の過酸化水素を生成しない反応コース(四電子反応コース、すなわち4e
-反応コースと呼ばれる)である。
中間生成物の過酸化水素を生成する反応コース(すなわち2e
-反応コース)は以下のとおりである。
アルカリ性溶液では、その中間生成物は過酸化水素イオンである。
【化1】
生成したHO
2
-は次のような化学分解反応が発生する。
【化2】
【0081】
具体的には、過酸化水素イオンは主に以下の4つの危害がある。
(1)過酸化水素イオンが完全に分解すると、空気電極の周囲に蓄積し、空気電極電位を負に移動させる。
(2)酸素が過酸化水素イオンを形成する反応は二分子反応であり、酸素利用率を全反応よりも1倍低下させる。
(3)過酸化水素イオンは負に帯電し、電解液で負極へ移動し、陽極を直接酸化して容量の損失と熱量の増加をもたらし、陽極の利用率を低下させる。
(4)過酸化水素イオンは強い酸化作用を有し、セパレータの損傷は電池のサイクル寿命に影響を与える。
【0082】
酸素は還元反応が発生すると、過酸化水素や過酸化水素イオンが存在することが多い。ある反応条件では、中間生成物である過酸化水素は非常に安定しており、ひていは、反応の最終生成物になり、従って、電極電位を負に移動させる。蓄積した過酸化水素は陽極へ移動し、陽極と反応し、陽極が化学的腐食され、陽極の耐用年数を低下させる。不安定なHO2
-は酸化性が強く、陰極膜に破壊作用があり、陰極は急速に崩壊して性能が低下する。
【0083】
中間生成物の過酸化水素を生成しない反応コース(すなわち4e
-反応コース)は以下のとおりである。
【化3】
上記2つを組み合わせて以下が得られる。
【化4】
ここで、MMは触媒活性成分を表し、「0
吸着」は、触媒活性成分表面に吸着した酸素を意味する。
【0084】
酸素は電気化学的還元が発生すると、酸素分子はまず電極表面で吸着し、吸着酸素を形成するか、又は表面で酸化物又は水酸化物を生成し、その後還元され、この過程は4e反応コースである。
【0085】
上記の電気化学的酸素製造反応原理によれば、空気電極を密閉空間に置くと、密閉空間内の酸素がまずOH-に還元されて電解液に吸収され、最後に陽極で酸化されて酸素として排出されるため、密閉空間内の酸素を低減することができる。
【0086】
この原理により、上記空気電極を備える冷蔵庫を製造することにより、この電極を果物と野菜の鮮度保持に用いることができ、果物と野菜の呼吸作用を抑制することができ、良好な鮮度保持効果がある。
【0087】
冷蔵庫以外にも、冷蔵キャビネット、冷蔵室、冷凍庫などに使用してもよい。
【0088】
他の酸素除去方式に比べ、空気電極を使用して酸素を除去する過程は、汚染がなく、騒音が低く、エネルギー転化と酸素除去効率が高く、量産コストが低く、操作が容易で、使用範囲が広い。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【
図1】本開示の実施例における空気電極の製造フローの概略図である。
【
図2】本開示の実施例における空気電極の構造の概略図である。
【
図3】本開示の実施形態における空気電極試験装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0090】
以下、本開示の目的、特徴及び効果を理解するために、本開示の思想及び効果について実施例に基づいて説明する。記載された実施例は、全ての実施例ではなく、本開示の実施例の一部にすぎない。本開示の実施例に基づいて当業者が創造的な労力を費やすことなく得られる他の実施例は、本開示の範囲に含まれる。
【0091】
なお、本開示の説明において、第1、第2、第3等の説明は、技術的特徴を区別することのみを目的とするものであり、相対的な重要性を示す、又は示唆する技術的特徴の数を暗示的に示す、又は示唆する技術的特徴の前後関係を暗示的に示すものとして解釈すべきではない。
【0092】
本開示の説明において、方位についての説明、例えば、上、下、左、右などが指示する方位又は位置関係は、図面に示す方位又は位置関係に基くものであり、単に本開示の説明を容易にし、説明を単純化するためであり、示された装置又は要素が特定の方位を有し、特定の方位で構成され、動作しなければならないと示すか暗示的に示すものではなく、したがって、本開示を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0093】
本開示の説明において、特に明確な限定がない限り、設置、取り付け、接続などの用語は広義に解釈されるべきであり、当業者は、技術的解決策の具体的な内容と併せて、本開示におけるこれらの用語の具体的な意味を合理的に決定することができる。
【0094】
実施例1
本実施例は具体的に空気電極を製造し、製造フローは
図1のように示し、以下のステップS1~S5を含む。
S1:第1拡散層を製造する。具体的なステップは次のとおりである。
第1拡散層は、カーボンブラック15部、活性炭40部及びPTFEエマルジョン45部の重量部の原料成分からなる。
上記原料を比例によって均一に混合し、その後エタノールを加え、複数回のロールプレスプロセスを繰り返すことによって、第1拡散層を製造する。
S2:集電層を製造する。具体的なステップは次のとおりである。
脱脂:集電層金属を25℃のアセトンに10min浸漬する。
水洗:脱脂処理後の集電層金属を水で3回洗浄する。
酸洗:水洗処理後の集電層金属を超音波の条件で、5mol/Lの塩酸で10min洗浄し、更にエタノールと水で4回洗浄する。
乾燥:前工程の酸洗処理後の集電層金属を、60℃で5h乾燥する。
S3:第2拡散層を製造する。具体的なステップは次のとおりである。
第2拡散層は、カーボンブラック15部、活性炭40部及びPTFEエマルジョン45部の重量部の原料成分からなる。
上記原料を比例によって均一に混合し、その後エタノールを加え、複数回のロールプレスプロセスを繰り返すことによって、第2拡散層を製造する。
S4:触媒層を製造する。触媒層は、以下の質量百分率の成分から調製される。
シリコン粉末:20%、
カーボンブラック:12%、
活性炭:35%、
バインダーPTFEエマルジョン:33%。
上記原料を高速撹拌下で均一に混合した後、複数回のロールプレスプロセスを繰り返すことで、触媒層にプレスする。
S5:空気電極を製造する。
第1拡散層100、集電層101、第2拡散層102及び触媒層103を、
図2に示す構造で積層した後、ロールプレス成形して空気電極を製造する。
本実施例で用いたシリコン粉末は、清河県創盈金属材料有限公司から購入したものである。その中に、シリコンの含有率は99.96wt%であり、不純物としては、0.03wt%の鉄、0.014wt%の銅と0.005wt%の錫などが含まれる。シリコン粉末のメジアン径D50は約21μmである。
【0095】
実施例2
本実施例は具体的に空気電極を製造し、製造フローは
図1のように示し、以下のステップS1~S5を含む。
S1:第1拡散層を製造する。具体的なステップは次のとおりである。
第1拡散層は、カーボンブラック15部、活性炭40部及びPTFEエマルジョン45部の重量部の原料成分からなる。
上記原料を比例によって均一に混合し、その後エタノールを加え、複数回のロールプレスプロセスを繰り返すことによって、第1拡散層を製造する。
S2:集電層を製造する。具体的なステップは次のとおりである。
脱脂:集電層金属を25℃のアセトンに10min浸漬する。
水洗:脱脂処理後の集電層金属を水で3回洗浄する。
酸洗:水洗処理後の集電層金属を超音波の条件で、5mol/Lの塩酸で10min洗浄し、更にエタノールと水で4回洗浄する。
乾燥:前工程の酸洗処理後の集電層金属を、60℃で5h乾燥する。
S3:第2拡散層を製造する。具体的なステップは次のとおりである。
第2拡散層は、カーボンブラック15部、活性炭40部及びPTFEエマルジョン45部の重量部の原料成分からなる。
上記原料を比例によって均一に混合し、その後エタノールを加え、複数回のロールプレスプロセスを繰り返すことによって、第2拡散層を製造する。
S4:触媒層を製造する。触媒層は、以下の質量百分率の成分から調製される。
シリコン粉末:30%、
カーボンブラック:10%、
活性炭:27%、
バインダーPTFEエマルジョン:33%。
上記原料を高速撹拌下で均一に混合した後、複数回のロールプレスプロセスを繰り返すことで、触媒層にプレスする。
S5:空気電極を製造する。
第1拡散層100、集電層101、第2拡散層102及び触媒層103を、
図2に示す構造で積層した後、ロールプレス成形して空気電極を製造する。
本実施例で用いたシリコン粉末は、清河県創盈金属材料有限公司から購入したものである。その中に、シリコンの含有率は99.96wt%であり、不純物としては、0.03wt%の鉄、0.014wt%の銅と0.005wt%の錫などが含まれる。シリコン粉末のメジアン径D50は約21μmである。
【0096】
実施例3
本実施例は具体的に空気電極を製造し、製造フローは
図1のように示し、以下のステップS1~S5を含む。
S1:第1拡散層を製造する。具体的なステップは次のとおりである。
第1拡散層は、カーボンブラック15部、活性炭40部及びPTFEエマルジョン45部の重量部の原料成分からなる。
上記原料を比例によって均一に混合し、その後エタノールを加え、複数回のロールプレスプロセスを繰り返すことによって、第1拡散層を製造する。
S2:集電層を製造する。具体的なステップは次のとおりである。
脱脂:集電層金属を25℃のアセトンに10min浸漬する。
水洗:脱脂処理後の集電層金属を水で3回洗浄する。
酸洗:水洗処理後の集電層金属を超音波の条件で、5mol/Lの塩酸で10min洗浄し、更にエタノールと水で4回洗浄する。
乾燥:前工程の酸洗処理後の集電層金属を、60℃で5h乾燥する。
S3:第2拡散層を製造する。具体的なステップは次のとおりである。
第2拡散層は、カーボンブラック15部、活性炭40部及びPTFEエマルジョン45部の重量部の原料成分からなる。
上記原料を比例によって均一に混合し、その後エタノールを加え、複数回のロールプレスプロセスを繰り返すことによって、第2拡散層を製造する。
S4:触媒層を製造する。触媒層は、以下の質量百分率の成分から調製される。
シリコン粉末:35%、
カーボンブラック:10%、
活性炭:22%、
バインダーPTFEエマルジョン:33%。
上記原料を高速撹拌下で均一に混合した後、複数回のロールプレスプロセスを繰り返すことで、触媒層にプレスする。
S5:空気電極を製造する。
第1拡散層100、集電層101、第2拡散層102及び触媒層103を、
図2に示す構造で積層した後、ロールプレス成形して空気電極を製造する。
本実施例で用いたシリコン粉末は、清河県創盈金属材料有限公司から購入したものである。その中に、シリコンの含有率は99.96wt%であり、不純物としては、0.03wt%の鉄、0.014wt%の銅と0.005wt%の錫などが含まれる。シリコン粉末のメジアン径D50は約21μmである。
【0097】
実施例4
本実施例は具体的に空気電極を製造し、製造フローは
図1のように示し、以下のステップS1~S5を含む。
S1:第1拡散層を製造する。具体的なステップは次のとおりである。
第1拡散層は、カーボンブラック15部、活性炭40部及びPTFEエマルジョン45部の重量部の原料成分からなる。
上記原料を比例によって均一に混合し、その後エタノールを加え、複数回のロールプレスプロセスを繰り返すことによって、第1拡散層を製造する。
S2:集電層を製造する。具体的なステップは次のとおりである。
脱脂:集電層金属を25℃のアセトンに10min浸漬する。
水洗:脱脂処理後の集電層金属を水で3回洗浄する。
酸洗:水洗処理後の集電層金属を超音波の条件で、5mol/Lの塩酸で10min洗浄し、更にエタノールと水で4回洗浄する。
乾燥:前工程の酸洗処理後の集電層金属を、60℃で5h乾燥する。
S3:第2拡散層を製造する。具体的なステップは次のとおりである。
第2拡散層は、カーボンブラック15部、活性炭40部及びPTFEエマルジョン45部の重量部の原料成分からなる。
上記原料を比例によって均一に混合し、その後エタノールを加え、複数回のロールプレスプロセスを繰り返すことによって、第2拡散層を製造する。
S4:触媒層を製造する。触媒層は、以下の質量百分率の成分から調製される。
シリコン粉末:20%,
γ-Al
2O
3:2%,
カーボンブラック:12%
活性炭:33%
バインダーPTFEエマルジョン:33%。
上記原料を高速撹拌下で均一に混合した後、複数回のロールプレスプロセスを繰り返すことで、触媒層にプレスする。
S5:空気電極を製造する。
第1拡散層100、集電層101、第2拡散層102及び触媒層103を、
図2に示す構造で積層した後、ロールプレス成形して空気電極を製造する。
本実施例において、触媒層中の触媒活性成分はシリコン粉末とγ-Al
2O
3の複合であり、両者の複合は触媒活性を更に向上させ、充電電圧を低下させることに有利である。
【0098】
実施例5
本実施例は、空気電極を備える冷蔵装置を提供する。
【0099】
空気電極は酸素を除去することができるため、冷蔵装置に空気電極が設置されている場合、冷蔵装置が密閉状態にあると、空気電極が作動し始め、冷蔵装置内部の酸素を除去し、これにより、果物や野菜の呼吸作用を抑制し、野菜や果物の鮮度保持を促進することができる。
【0100】
なお、本開示でいう「冷蔵装置」は、家庭用冷蔵庫以外に、商業用冷蔵庫、冷凍庫、コールドチェーン車などの装置を含んでもよい。
【0101】
現代物流では、コールドチェーン運送がますます重要になっている。コールドチェーン運送とは、運送の全過程において、積み下ろし運搬、運送方式の変更、包装設備の交換などの段階のすべてが、運送貨物を常に一定温度に保つ運送を指す。
【0102】
コールドチェーン運送方式は道路運送、水路運送、鉄道運送、航空運送でもよく、複数の運送方式を組み合わせた総合運送方式でもよい。コールドチェーン運送はコールドチェーン物流の重要な一環である。コールドチェーン運送はコストが高く、しかも複雑な移動冷凍技術と保温箱製造技術を含む。コールドチェーン運送管理はより多くのリスクと不確定性を含んでいる。
【0103】
コールドチェーン運送の対象は主に生鮮品、加工食品と医薬製品に分けられる。その中、生鮮品には野菜、果物、肉、鳥、卵、水産物や花製品が含まれ、加工食品には冷凍食品、家禽、肉、水産などの包装調理食品、アイスクリーム、乳製品とファーストフード原料が含まれ、医薬品には、ワクチンなどの冷蔵が必要な各種医薬品、医療機器などが含まれている。
【0104】
一部の食品は運送中に長期鮮度保存ができないため捨てられる。生鮮で腐敗しやすい貨物運送では、確かに途中の手掛けや車両の不快感によって死亡する部分があるが、そのほとんどは腐敗によるものである。腐敗の原因は、動物性食品の場合、主に微生物の作用である。植物性食品の場合、腐敗の原因は主に呼吸作用によるものである。
【0105】
コールドチェーン運送過程は必ず冷凍又は冷蔵などの専用車両で行わなければならない。冷凍又は冷蔵専用車両は貨物車と同じ車体と機械を必要とするほか、車に冷凍又は冷蔵と保温設備を別途設置しなければならない。運送中には連続冷蔵でなければならない。なぜなら、微生物活動と呼吸作用は温度の上昇に伴って強化されるので、運送中の各段階が連続冷蔵の条件を保証できない場合、貨物はこの段階で腐敗し変質し始める可能性があるからである。
【0106】
本開示の空気電極がコールドチェーン運送の段階で使用される場合、空気電極の酸素除去作用によって、微生物の繁殖を抑制し、生物の呼吸作用を減少させ、これにより、物品の腐敗を遅らせることができる。
【0107】
比較例1
本比較例は具体的に空気電極を製造し、製造フローは
図1に示すように、以下のステップS1~S5を含む。
S1:第1拡散層を製造する。具体的なステップは次のとおりである。
第1拡散層は、カーボンブラック15部、活性炭40部及びPTFEエマルジョン45部の重量部の原料成分からなる。
上記原料を比例によって均一に混合し、その後エタノールを加え、複数回のロールプレスプロセスを繰り返すことによって、第1拡散層を製造する。
S2:集電層を製造する。具体的なステップは次のとおりである。
脱脂:集電層金属を25℃のアセトンに10min浸漬する。
水洗:脱脂処理後の集電層金属を水で3回洗浄する。
酸洗:水洗処理後の集電層金属を超音波の条件で、5mol/Lの塩酸で10min洗浄し、更にエタノールと水で4回洗浄する。
乾燥:前工程の酸洗処理後の集電層金属を、60℃で5h乾燥する。
S3:第2拡散層を製造する。具体的なステップは次のとおりである。
第2拡散層は、カーボンブラック15部、活性炭40部及びPTFEエマルジョン45部の重量部の原料成分からなる。
上記原料を比例によって均一に混合し、その後エタノールを加え、複数回のロールプレスプロセスを繰り返すことによって、第2拡散層を製造する。
S4:触媒層を製造する。触媒層は、以下の質量百分率の成分から調製される。
マイクロシリコン粉末:12.5%、
カーボンブラック:20%、
活性炭:47.5%、
バインダーPTFEエマルジョン:20%。
上記原料を高速撹拌下で均一に混合した後、複数回のロールプレスプロセスを繰り返すことで、触媒層にプレスする。
S5:空気電極を製造する。
第1拡散層100、集電層101、第2拡散層102及び触媒層103を、
図2に示す構造で積層した後、ロールプレス成形して空気電極を製造する。
本比較例では、シリカを主成分とするマイクロシリコン粉末を用いる。
マイクロシリコン粉末とシリコン粉末との違いは、マイクロシリコン粉末の主成分がシリカであるのに対し、シリコン粉末の主成分が単体シリコンである点である。マイクロシリコン粉末やシリコン粉末を触媒活性物質とすると、いずれも過酸化水素と過酸化水素イオンが発生せず、陽極の化学的腐食問題を避けることができる。しかし、マイクロシリコン粉末をシリコン粉末に変えると、充電電圧を下げ、触媒活性を向上させることができる。
【0108】
比較例2
本比較例は具体的に空気電極を製造し、製造フローは
図1に示すように、以下のステップS1~S5を含む。
S1:第1拡散層を製造する。具体的なステップは次のとおりである。
第1拡散層は、カーボンブラック15部、活性炭40部及びPTFEエマルジョン45部の重量部の原料成分からなる。
上記原料を比例によって均一に混合し、その後エタノールを加え、複数回のロールプレスプロセスを繰り返すことによって、第1拡散層を製造する。
S2:集電層を製造する。具体的なステップは次のとおりである。
脱脂:集電層金属を25℃のアセトンに10min浸漬する。
水洗:脱脂処理後の集電層金属を水で3回洗浄する。
酸洗:水洗処理後の集電層金属を超音波の条件で、5mol/Lの塩酸で10min洗浄し、更にエタノールと水で4回洗浄する。
乾燥:前工程の酸洗処理後の集電層金属を、60℃で5h乾燥する。
S3:第2拡散層を製造する。具体的なステップは次のとおりである。
第2拡散層は、カーボンブラック15部、活性炭40部及びPTFEエマルジョン45部の重量部の原料成分からなる。
上記原料を比例によって均一に混合し、その後エタノールを加え、複数回のロールプレスプロセスを繰り返すことによって、第2拡散層を製造する。
S4:触媒層を製造する。触媒層は、以下の質量百分率の成分から調製される。
二酸化マンガン:30%、
カーボンブラック:10%、
活性炭:27%、
バインダーPTFEエマルジョン:33%。
上記原料を高速撹拌下で均一に混合した後、複数回のロールプレスプロセスを繰り返すことで、触媒層にプレスする。
S5:空気電極を製造する。
第1拡散層100、集電層101、第2拡散層102及び触媒層103を、
図2に示す構造で積層した後、ロールプレス成形して空気電極を製造する。
【0109】
測定例1
本測定例は、実施例1~3及び比較例1、2で製造された空気電極の性能を試験する。
試験に使用される装置は空気電極試験装置であり、この装置の構造図は
図3である。
試験に際しては、正極が陽極202に接続され、負極が空気電極201に接続された電源200と、空気電極201と、陽極202と、電解液203とを
図3に示すように組み立てる。
酸素除去試験:定電流の条件で、陽極202はニッケル網で、質量分率20%の炭酸カリウムは電解液で、電流密度は150mAである。空気電極の充電電圧と陽極202の腐食状況を測定し、性能試験結果は表1に示す。
低温性能試験:ニッケル網を陽極とし、質量分率が40℃の炭酸カリウムを電解液とし、0℃±5℃の条件で10日間放置し、充電電圧を測定する。
【表1】
【0110】
表1の試験結果と併せて、本開示の実施例1~3で製造された空気電極を陰極として使用し、陽極としてニッケル網を使用し、電解液として質量分率40%の炭酸カリウム溶液を用いて、常温で酸素除去試験を行ったところ、実施例1~3で製造された空気電極を30日間連続運転した後、陽極に腐食なし(反応メカニズムは、中間生成物の過酸化水素を生成しない反応コース)。
【0111】
また、表1からわかるように、実施例1~3の空気電極では、シリコン粉末の含有率が20%の場合、充電電圧は1.680Vであり、シリコン粉末の含有率が30%の場合、充電電圧は1.623Vと低く、シリコン粉末の含有率が35%の場合、充電電圧は1.754Vである。上記変化規則は触媒層中の触媒活性成分のシリコン粉末が増加するにつれて、シリコン粉末の含有量が一定割合を超えた後、反応空間が減少し、触媒効率がかえって低下するからである。
【0112】
実施例4において、触媒層中の触媒活性成分はシリコン粉末とγ-Al2O3の配合であり、シリコン粉末とγ-Al2O3の配合は触媒活性を更に高め、充電電圧を下げるのに有利である。
【0113】
比較例1では、シリコン粉末をマイクロシリコン粉末に変えた後、充電電圧が上昇し、マイクロシリコン粉末の触媒活性がシリコン粉末の触媒活性よりも低いことを示している。
【0114】
比較例2では、二酸化マンガンを空気電極の触媒活性成分として使用する(反応メカニズムは、中間生成物である過酸化水素を生成する反応コースである)。酸素除去試験を12日間実行すると、陽極に明らかな錆が発生し、深刻な状況では錆による貫通現象が現れる。
【0115】
上記分析からわかるように、シリコン粉末を触媒として使用する場合、空気電極は電気化学的酸化還元反応が発生する時、陰極で過酸化物の形成を避け、陽極を化学的腐食から保護することができ、空気電極の耐腐食性能は比較例2で選択した二酸化マンガンよりはるかに優れている。
【0116】
表1の結果からわかるように、本開示の実施例1~3で製造された空気電極を陰極とし、ニッケル網を陽極とし、質量分率が40%の炭酸カリウム溶液を電解液とし、電流密度が150mAの定電流条件で、本開示の実施例1~3で製造された空気電極の充電電圧は1.623V~1.754Vであったと測定した。同様条件で、比較例2で製造された空気電極(触媒活性成分が二酸化マンガン)の充電電圧を測定したところ、2.136Vである。この比較から、本開示の実施例1~3で製造された空気電極の消費電力が大幅に減少したことが分かる。
【0117】
測定例2
本測定例は、実施例2を参考にして、同じ条件で、拡散層の厚さが充電電圧に与える影響を調べた結果を表2に示す。
【表2】
表2の試験結果から、拡散層の厚さが増加するほど、充電電圧が増加することが分かる。
【0118】
本開示の空気電極において、触媒活性物質はシリコン粉末であり、シリコン粉末は陰極で還元反応に参与せず、したがって過酸化水素と過酸化水素イオンを生成せず、陽極の化学的腐食問題を避ける。
【0119】
本開示の空気電極において、触媒活性物質はシリコン粉末であり、シリコン粉末は安価で入手しやすく、シリコン資源の貯蔵量が大きく、地殻の質量の約26%を占め、コストは二酸化マンガンより低く、工業化の普及応用に有利である。
【0120】
空気電極を製造する時、まずシリコン粉末、導電剤、活性炭とバインダーを比例によって均一に混合してプレスすれば触媒層を製造でき、更に第1拡散層、集電層、第2拡散層と触媒層を順に積層してからプレス成形すればよく、製造過程の操作が簡単で、大規模な工業生産に有利である。
【0121】
また、空気電極の製造技術条件が厳しくなく、設備への要件が低く、更に生産投入を低下させる。
【0122】
上記空気電極を電気化学酸素除去に使用し、空気電極に触媒層を含み、シリコン粉末は触媒層中の活性触媒成分であるため、空気電極は電気化学酸化還元反応が発生する時、陰極で過酸化物の形成を避け、更に陽極を化学的腐食から保護することができる。
【0123】
上記触媒層を含む電極を陰極とし、ニッケル網を陽極とし、炭酸カリウムを電解液として、常温で酸素除去試験を行い、30日間連続実行した後、陽極に目立った腐食はなかった。同じ条件で、触媒を二酸化マンガンに取り替えると、酸素除去試験を12-15日ほど実行すると、陽極に明らかな錆が出現し、ひどい場合は錆で貫通することもある。
【0124】
上記触媒層を含む空気電極によれば、消費電力が低く、消費電力を約20%低減することができる。ニッケル網を陽極とし、5%~40%の炭酸カリウムを電解液とした場合を例に、電流密度は40mA~300mAの定電流条件で、充電電圧は1.6V~1.9Vである。同じ実験条件で、触媒を二酸化マンガンに変更すると、モジュールの充電電圧は2.0V~2.3Vである。
【0125】
上記触媒層を含む空気電極によれば、材料信頼性が高い。ニッケル網を陽極とし、5%~40%の炭酸カリウムを電解液とする場合を例に、実験モジュールを0℃~5℃の条件で3~10日間放置し、空気電極触媒を含む電極の初回充電電圧は2.3Vで、充電時間の増加に伴い、電圧は絶えず低下し、4hまで実行した後、充電電圧は1.8V~2.0Vで安定する。同じ条件で、もし二酸化マンガンを空気電極触媒として採用すれば、実験モジュールを0℃~5℃条件で3~10日間放置し、二酸化マンガン触媒空気電極の初回充電電圧は4.5Vで、充電時間の増加に伴い、電圧はある程度低下し、7hまで実行した後、充電電圧は3.5V~3.8Vで安定する。これからわかるように、上記触媒層を含む空気電極は二酸化マンガン空気電極より安定性がよく、環境信頼性が高い。
【0126】
以上、図面を参照して本開示の実施例を詳細に説明したが、本開示は上述した実施例に限定されるものではなく、当業者の知識の範囲内で、その要旨を逸脱しない前提で種々変更可能である。更に、本開示の実施例及び実施例の特徴は、矛盾することなく組み合わせられてもよい。
【符号の説明】
【0127】
100 第1拡散層
101 集電層
102 第2拡散層
103 触媒層
200 電源
201 空気電極
202 陽極
203 電解液
【国際調査報告】