(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-09
(54)【発明の名称】リン含有難燃剤混合物、前記混合物の製造方法および前記混合物の使用、ならびにまた前記難燃剤混合物を含むエポキシ樹脂配合物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/14 20060101AFI20230802BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20230802BHJP
C09K 21/14 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
C08G59/14
C08L63/00
C09K21/14
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022577107
(86)(22)【出願日】2021-06-11
(85)【翻訳文提出日】2023-01-13
(86)【国際出願番号】 EP2021065804
(87)【国際公開番号】W WO2021254908
(87)【国際公開日】2021-12-23
(32)【優先日】2020-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596081005
【氏名又は名称】クラリアント・インターナシヨナル・リミテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】オステロート・フランク
(72)【発明者】
【氏名】ジッケン・マルティン
(72)【発明者】
【氏名】バウアー・ハーラルト
(72)【発明者】
【氏名】ハウエンシュタイン・オーリヴァー
【テーマコード(参考)】
4H028
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4H028AA46
4H028AA48
4H028BA01
4H028BA04
4J002CD201
4J002FD010
4J002FD040
4J002FD090
4J002FD131
4J002FD140
4J002FD150
4J002FD320
4J002GH01
4J002GJ01
4J002GQ01
4J036AC02
4J036AC15
4J036AD08
4J036AF06
4J036AJ03
4J036AJ05
4J036CC02
4J036JA01
4J036JA06
4J036JA08
4J036KA01
(57)【要約】
リン含有難燃剤混合物、前記混合物の製造方法および前記混合物の使用、ならびにまた前記難燃剤混合物を含むエポキシ樹脂配合物。
本発明は、各場合に1または複数の式(I)、(II)および(III)の官能基を有する個々の難燃剤を含むリン含有難燃剤混合物に関し、
ここで、難燃剤混合物における官能基の全量を基準として、1~98モル%の式(I)の官能基、1~35モル%の式(II)の官能基および1~98モル%の式(III)の官能基が存在し、R
1およびR
2は、同一であるかまたは異なっており、互いに独立して、水素、直鎖状または分岐状C
1~C
12-アルキル、および/またはC
6~C
18-アリールであり、(I)、(II)および(III)の全体は常に100モル%である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各場合に1または複数の式(I)、(II)および(III)の官能基を有する個々の難燃剤を含むリン含有難燃剤混合物であって、
【化1】
前記難燃剤混合物における官能基の全量を基準として、1~98モル%の式(I)の官能基、1~35モル%の式(II)の官能基および1~98モル%の式(III)の官能基が存在し、R
1およびR
2は、同一であるかまたは異なっており、互いに独立して、水素、直鎖状または分岐状C
1~C
12-アルキル、および/またはC
6~C
18-アリールであり、(I)、(II)および(III)の全体は常に100モル%である前記リン含有難燃剤混合物。
【請求項2】
R
1およびR
2が、同一であるかまたは異なっており、互いに独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、3-メチルブタ-2-イル、2-メチルブタ-2-イル、2,2-ジメチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、シクロペンチル、シクロペンチルエチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルエチルおよび/またはフェニルであることを特徴とする、請求項1に記載のリン含有難燃剤混合物。
【請求項3】
R
1およびR
2が、同一であるかまたは異なっており、互いに独立して、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよび/またはtert-ブチルであることを特徴とする、請求項1または2に記載のリン含有難燃剤混合物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載のリン含有難燃剤混合物であって、それらが
5~94モル%の式(I)、
3~35モル%の式(II)および
3~92モル%の式(III)
を含み、(I)、(II)および(III)の全体が常に100モル%であることを特徴とする、前記リン含有難燃剤混合物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載のリン含有難燃剤混合物であって、それらが
25~90モル%の式(I)、
5~30モル%の式(II)および
5~70モル%の式(III)
を含み、(I)、(II)および(III)の全体が常に100モル%であることを特徴とする、前記リン含有難燃剤混合物。
【請求項6】
式(I)および(II)の混合において、式(II)の割合T(モル%)が、T=[y/(x+y)]*100%から計算され、ここで、xは式(I)の量であり、yは式(II)の量であり、各場合においてモル%であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1つに記載のリン含有難燃剤混合物。
【請求項7】
Tが10~70モル%であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1つに記載のリン含有難燃剤混合物。
【請求項8】
Tが20~45モル%であることを特徴とする、請求項6または7に記載のリン含有難燃剤混合物。
【請求項9】
難燃剤混合物における官能基(I)、(II)および(III)を有する個々の難燃剤が、式R
21-O-(I)、R
21-O-(II)および/またはR
21-O-(III)に一致し、ここでR
21は、2~8個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状アルキル構造を意味し、および/またはタイプ-[-CH(CH
3)-CH
2-O-]
k-Hまたは-[-CH
2-CH(CH
3)-O-]
k-Hのポリプロピレンオキシドを意味し、および/またはタイプ-[-CH
2-CH
2-O-]
k-Hのポリエチレンオキシドを意味し、kは各場合において1~12の整数であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1つに記載のリン含有難燃剤混合物。
【請求項10】
難燃剤混合物における官能基(I)、(II)および(III)を有する個々の難燃剤が、式D-O-[-CH
2-CH
2-O-]
r-Eおよび/またはD-O-[-CH(CH
3)-CH
2-O-]
r-Eに一致し、ここで、DおよびEは同一であってもまたは異なっていてもよく、各場合において、式(I)、(II)および/または(III)を表し、rは1~12の整数であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1つに記載のリン含有難燃剤混合物。
【請求項11】
難燃剤混合物における官能基(I)、(II)および(III)を有する個々の難燃剤が、式(IV)
【化2】
に一致し、Qは、下記式(V)を表し、
【化3】
ここで、Mは水素またはメチルであり、DおよびEは同一であってもまたは異なっていてもよく、各場合において、式(I)、(II)および/または(III)を表し、Lは0~5の整数であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1つに記載のリン含有難燃剤混合物。
【請求項12】
難燃剤混合物における官能基(I)、(II)および(III)を有する個々の難燃剤が、式(VI)
【化4】
[式中、F、GおよびJは同一であってもまたは異なっていてもよく、各場合において、式(I)、(II)および/または(III)を表し、Uは1~12の整数であり、R
3は水素、メチル、エチル、プロピルおよび/またはブチルであり、R
4およびR
5は互いに独立して水素、メチルおよび/または
【化5】
であり、GおよびR
3は上記に定義されるとおりである]
に一致することを特徴とする、請求項1~8のいずれか1つに記載のリン含有難燃剤混合物。
【請求項13】
難燃剤混合物における官能基(I)、(II)および(III)を有する個々の難燃剤が、式(VIII)
【化6】
[式中、F、GおよびJは同一であってもまたは異なっていてもよく、各場合において、式(I)、(II)および/または(III)を表す]
に一致することを特徴とする、請求項1~8のいずれか1つに記載のリン含有難燃剤混合物。
【請求項14】
各場合に1または複数の式(I)、(II)および(III)
【化7】
[式中、R
1およびR
2は、同一であるかまたは異なっており、互いに独立して、水素、直鎖状または分岐状C
1~C
12-アルキル、および/またはC
6~C
18-アリールである]
の官能基を有する難燃剤を含むリン含有難燃剤混合物であって、前記難燃剤が、少なくとも1つのホスフィン酸と、単官能性、二官能性、多官能性および/または複素環式エポキシ化合物との反応によって製造されたことを特徴とする、前記リン含有難燃剤混合物。
【請求項15】
請求項14に記載のリン含有難燃剤混合物であって、これらの難燃剤混合物の製造のために、ポリエチレンオキシドのグリシジルエーテル(IX)
【化8】
、またはポリプロピレンオキシドのグリシジルエーテル(X)、(XI)
【化9】
の群からの、あるいは、2~8個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状脂肪族モノアルコールのグリシジル化合物の群からの、少なくとも1種の単官能性エポキシ化合物が使用され、Kは1~12の整数であることを特徴とする、前記リン含有難燃剤混合物。
【請求項16】
請求項14に記載のリン含有難燃剤混合物であって、これらの難燃剤混合物の製造のために、式(XII)のビスフェノールAの、ビスフェノールFのおよび/またはビスフェノールA/Fのジグリシジルエーテルの群からの二官能性エポキシ化合物が使用され、ここで、Mは水素および/またはメチルであり、Lは0~5の整数であることを特徴とする、前記リン含有難燃剤混合物。
【化10】
【請求項17】
請求項14に記載のリン含有難燃剤混合物であって、これらの難燃剤混合物の製造のために、ポリプロピレンオキシドのジグリシジル化合物(XIII)
【化11】
またはポリエチレンオキシドのジグリシジル化合物(XIV)
【化12】
の群からの、あるいは、2~8個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状脂肪族ジオールのジグリシジル化合物の群からの、少なくとも1種の二官能性エポキシ化合物が使用され、Kは0~12の整数であることを特徴とする、前記リン含有難燃剤混合物。
【請求項18】
請求項14に記載のリン含有難燃剤混合物であって、これらの難燃剤混合物の製造のために、エポキシノボラック樹脂の、特に式(XV)のフェノールおよびクレゾールをベースとするエポキシノボラック樹脂の群からの少なくとも1種の多官能性エポキシ化合物が使用され、Uは1~12の整数であり、R
3は水素および/またはメチルであることを特徴とする、前記リン含有難燃剤混合物。
【化13】
【請求項19】
難燃剤混合物の製造のために、トリグリシジルイソシアヌレート類、芳香族アミン類のおよび複素環式窒素塩基のN-グリシジル化合物、例えばN,N-ジグリシジルアニリン、N,N,O-トリグリシジル-p-アミノフェノール、トリグリシジルイソシアヌレートおよびN,N,N,N-テトラグリシジル-ビス(p-アミノフェニル)メタンの群からの少なくとも1種の複素環式エポキシ化合物が使用されることを特徴とする、請求項14に記載のリン含有難燃剤混合物。
【請求項20】
規格IEC61249-2-21に従って非ハロゲン系であるか、またはハロゲンを含まないことを特徴とする、請求項1~19のいずれか1つに記載のリン含有難燃剤混合物。
【請求項21】
少なくとも1つのホスフィン酸、アルキルホスフィン酸および/またはジアルキルホスフィン酸と、エポキシドの開環した環との反応が触媒の存在下で行われることを特徴とする、請求項1~20のいずれか1つに記載の難燃剤混合物の製造方法。
【請求項22】
前記触媒が、エチルトリフェニルホスホニウムクロリド、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、エチルトリフェニルホスホニウムヨージド、エチルトリフェニルホスホニウムアセテート、エチルトリフェニルホスホニウムホスフェート、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムヨージド、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムアセテート酢酸複合体、ブチルトリフェニルホスホニウムテトラブロモビスフェネート、ブチルトリフェニルホスホニウムビスフェネート、ブチルトリフェニルホスホニウムブロミドおよび/またはブチルトリフェニルホスホニウムビカーボネートであることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ジアルキルホスフィン酸をエポキシノボラックと95℃~160℃で1~6時間反応させることを特徴とする、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記の難燃剤混合物が、式R
1R
2P(=O)O-の少なくとも1つのホスフィン酸エステル構造を含み、合成が開環されたエポキシ環でのP-O-C結合によって進行し、R
1およびR
2は請求項1におけるように定義されることを特徴とする、請求項21~23のいずれか1つに記載の方法。
【請求項25】
エポキシ樹脂配合物の製造のための、請求項1~20のいずれか1つに記載のリン含有難燃剤混合物の使用。
【請求項26】
請求項1~20のいずれか1つに記載の少なくとも1種のリン含有難燃剤混合物、エポキシ樹脂、硬化剤、促進剤、レオロジー添加剤および/または他の添加物を含むことを特徴とする、難燃性エポキシ樹脂配合物。
【請求項27】
他の添加物が、光安定剤、着色顔料、分散添加剤、消泡剤、発泡剤、泡形成剤、機械的強度を改善するための添加剤、熱伝導率を調節するための添加剤、ガラススフィア、ガラス粉末、ガラス繊維、炭素繊維および/またはチキソトロープ剤であることを特徴とする、請求項26に記載の難燃性エポキシ樹脂配合物。
【請求項28】
請求項1~20のいずれか1つに記載のリン含有難燃剤混合物を、エポキシ樹脂、硬化剤、促進剤、レオロジー添加剤、および任意選択的に他の添加物と反応させることを特徴とする、請求項27に記載のエポキシ樹脂配合物の製造方法。
【請求項29】
溶媒が使用されないことを特徴とする、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
請求項26または27に記載のエポキシ樹脂配合物の、難燃性複合材料部品、接着剤、ペースト、フォーム、フォーム組成物、シーリング組成物、ホットメルト接着剤、フィラー、ポッティング組成物、こて塗り用組成物、仕上げマット、コーティング系、繊維、プリプレグ、はんだ付け用マスキングラッカー、熱伝導性層、熱伝導性ペースト、ショックアブソーバー層、LED、センサー、絶縁用途、回路基板、アンテナのための、あるいはこれらにおける、ならびにまたコーティング系における、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
重量を節約し、輸送分野(鉄道、航空、船舶、道路など)において複合材料部品の形態をとるために広く使用される複合材料は、ユーザーまたは乗客の安全を確保することを意図した厳格な防火要件に付される。
【背景技術】
【0002】
火炎および煙に関する挙動に関する、ならびに煙毒性に関する厳格な制限値が、特に鉄道輸送に関する欧州規格EN45545-2、および航空機旅行に関するFAR25.853において規定されている。
【0003】
そのような複合材料部品の製造に関しては、様々な利用可能な方法が存在する。例えば、プリプレグの製造のために例えばエレクトロニクス分野において記載されるタイプの溶媒の使用(US-2012/0279769A1(特許文献1))は、しばしば望ましくないか、または技術的に不可能である。
【0004】
従って、実際の樹脂だけでなく、他の成分、例えばフィラー、難燃剤および硬化剤も含み得るような配合物は、強化材料(例えば、繊維、織布、レイドスクリムまたは編地の形態のガラス繊維または炭素繊維)の均一な濡れを提供するため、および、対応する材料部品の製造を可能にするために十分に低い粘度を有しなければならない。
【0005】
従って、使用される樹脂は、複合材料部品の製造が技術的および経済的に成功できるように、低い初期粘度および良好な流動挙動および濡れ挙動を有していなければならない。さらに、使用される難燃剤は、加工に悪影響を及ぼしてはならない。
【0006】
複合材料部品の製造には様々な樹脂系が使用されるが、これらの多くは火炎に関して十分に良好な挙動を有しておらず、従って、そのような場合、使用(特に輸送分野での使用)を可能にするためには適切な難燃剤を使用することが必要である。
【0007】
複合材料部品の製造のための固体の難燃剤の使用はしばしば不可能であり、なぜならば、そのような難燃剤の使用は粘度の大幅な増加をもたらし、従って、複合材料部品の製造を妨げるか、または相当な量の溶媒を必要とし、これはその結果その後に除去を必要とするためである。
【0008】
成形体の製造のための一般的な方法であるレジン・トランスファー・モールディング(RTM)プロセスの場合には、プランジャーを使用して、成形組成物を、通常は加熱された上流チャンバーから、分配チャネルを経由して成形チャンバーに注入し、そこで熱および圧力を使用して前記成形組成物を硬化させる。
【0009】
上述の配合物がRTMプロセスだけでなく、インフュージョンプロセスにおいても使用される場合、ろ過効果がしばしば観察される。
【0010】
EP-3309190A1(特許文献2)は、添加剤フィラーとして添加される置換ホスフィン酸塩を使用するエポキシ樹脂の製造方法を記載している。付随する欠点は、加工中の大きな粘度増加、およびフィラーが最終生成物中に不都合に残存するという事実である。
【0011】
DE-4308187A1(特許文献3)は、高い乾燥コストを招く溶媒含有系においてホスフィン酸無水物を使用するリン変性エポキシ樹脂の製造を記載している。
【0012】
EP-2794623B1(特許文献4)は、ポリマー系への混合によるジアルキルホスフィン酸混合物の使用を記載している。そのようにして製造されたエポキシ樹脂は、熱膨張の減少を示す。
【0013】
CA-A-2826672(特許文献5)は、2つの位置異性体を含むリン変性エポキシ樹脂の使用を記載している。この場合には、9,10-ジヒドロ-9-オキサ 10-ホスファフェナントレン-10-オキシド(DOPO)(両方の位置異性体が、反応するエポキシドのC2およびC3炭素原子へのP-C結合を有する)が、エポキシ樹脂の変性のために使用される。
【0014】
WO-2017/117383A1(特許文献6)は、航空機分野における防火複合材料部品の使用を記載している。この目的のために必要とされるエポキシ樹脂は、溶媒の存在下でDOPOまたはジエチルホスフィン酸で変性され、当該エポキシ樹脂は液体または固体であり、170~450g/molのエポキシ当量を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】US-2012/0279769A1
【特許文献2】EP-3309190A1
【特許文献3】DE-4308187A1
【特許文献4】EP-2794623B1
【特許文献5】CA-A-2826672
【特許文献6】WO-2017/117383A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特に、少量で使用された場合であっても、エポキシ樹脂中で良好な難燃性を達成し、エポキシ樹脂配合物の粘度に負の影響を及ぼさず、従って良好な濡れ挙動を示す難燃剤および難燃剤混合物は存在していない。さらに、無溶剤加工にも適しており、最終の材料部品において良好な機械的および物理的特性(例えば、高いガラス転移温度)を有する、フィラー不含の難燃性エポキシ樹脂配合物は存在していない。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的は、本発明に従って、各場合に1または複数の式(I)、(II)および(III)の官能基を有する個々の難燃剤を含むリン含有難燃剤混合物によって達成され、
【0018】
【化1】
ここで、前記難燃剤混合物における官能基の全量を基準として、1~98モル%の式(I)の官能基、1~35モル%の式(II)の官能基および1~98モル%の式(III)の官能基が存在し、R
1およびR
2は、同一であるかまたは異なっており、互いに独立して、水素、直鎖状または分岐状C
1~C
12-アルキル、および/またはC
6~C
18-アリールであり、(I)、(II)および(III)の全体は常に100モル%である。
【0019】
リン含有難燃剤混合物において、R1およびR2は、同一であるかまたは異なっており、互いに独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、3-メチルブタ-2-イル、2-メチルブタ-2-イル、2,2-ジメチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、シクロペンチル、シクロペンチルエチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルエチルおよび/またはフェニルであることが好ましい。
【0020】
R1およびR2は、同一であるかまたは異なっており、互いに独立して、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよび/またはtert-ブチルであることが特に好ましい。
【0021】
リン含有難燃剤混合物は、
5~94モル%の式(I)、
3~35モル%の式(II)および
3~92モル%の式(III)、
を含み、(I)、(II)および(III)の全体が常に100モル%であることが好ましい。
【0022】
リン含有難燃剤混合物は、
25~90モル%の式(I)、
5~30モル%の式(II)および
5~70モル%の式(III)、
を含み、(I)、(II)および(III)の全体が常に100モル%であることが特に好ましい。
【0023】
式(I)および(II)の混合において、式(II)の割合T(モル%)は、T=[y/(x+y)]*100%から計算されることが好ましく、ここで、xは式(I)の量であり、yは式(II)の量であり、各場合においてモル%である。
【0024】
Tは10~70モル%であることが好ましい。
【0025】
Tは20~45モル%であることが特に好ましい。
【0026】
本発明のリン含有難燃剤混合物はまた、難燃剤混合物における官能基(I)、(II)および(III)を有する個々の難燃剤が、式R21-O-(I)、R21-O-(II)および/またはR21-O-(III)に一致するような形態で存在することもでき、式中、R21は2~8個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状アルキル構造を意味し、および/またはタイプ-[-CH(CH3)-CH2-O-]K-Hまたは-[-CH2-CH(CH3)-O-]K-Hを意味し、および/またはタイプ-[-CH2-CH2-O-]K-Hのポリエチレンオキシドを意味し、ここでKは各場合において1~12の整数である。
【0027】
別の実施態様において、難燃剤混合物における官能基(I)、(II)および(III)を有する個々の難燃剤は、式D-O-[-CH2-CH2-O-]r-Eおよび/またはD-O-[-CH(CH3)-CH2-O-]r-Eに一致し、ここで、DおよびEは同一であってもまたは異なっていてもよく、各場合において、式(I)、(II)および/または(III)を表し、rは1~12の整数である。
【0028】
さらに別の実施態様において、難燃剤混合物における官能基(I)、(II)および(III)を有する個々の難燃剤は、式(IV)に一致し、
【0029】
【0030】
【化3】
(Mは水素またはメチルである)
DおよびEは同一であってもまたは異なっていてもよく、各場合において、式(I)、(II)および/または(III)を表し、Lは0~5の整数である。
【0031】
別の実施態様において、難燃剤混合物における官能基(I)、(II)および(III)を有する個々の難燃剤は、式(VI)に一致し、
【0032】
【化4】
式中、F、GおよびJは同一であってもまたは異なっていてもよく、各場合において、式(I)、(II)および/または(III)を表し、Uは1~12の整数であり、R
3は水素、メチル、エチル、プロピルおよび/またはブチルであり、R
4およびR
5は互いに独立して水素、メチルおよび/または(VII)である
【0033】
【化5】
(式中、GおよびR
3は上記に定義されるとおりである)。
【0034】
最後に、難燃剤混合物における官能基(I)、(II)および(III)を有する個々の難燃剤は、式(VIII)に一致し、
【0035】
【化6】
式中、F、GおよびJは同一であってもまたは異なっていてもよく、各場合において、式(I)、(II)および/または(III)を表す。
【0036】
本発明はまた、各場合に1または複数の式(I)、(II)および(III)の官能基を有する難燃剤を含むリン含有難燃剤混合物
【0037】
【化7】
[式中、R
1およびR
2は、同一であるかまたは異なっており、互いに独立して、水素、直鎖状または分岐状C
1~C
12-アルキル、および/またはC
6~C
18-アリールである]
であって、前記難燃剤が、少なくとも1つのホスフィン酸と、単官能性、二官能性、多官能性および/または複素環式エポキシ化合物との反応によって製造されたことを特徴とする、前記リン含有難燃剤混合物を提供する。
【0038】
これらの難燃剤混合物の製造のためには、ポリエチレンオキシドのグリシジルエーテル(IX)
【0039】
【化8】
、またはポリプロピレンオキシドのグリシジルエーテル(X)、(XI)
【0040】
【化9】
の群からの、あるいは、2~8個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状脂肪族モノアルコール類のグリシジル化合物類の群からの、少なくとも1種の単官能性エポキシ化合物が使用されることが好ましく、ここで、Kは1~12の整数である。
【0041】
また、これらの難燃剤混合物の製造のためには、式(XII)のビスフェノールAの、ビスフェノールFのおよび/またはビスフェノールA/Fのジグリシジルエーテル類の群からの二官能性エポキシ化合物
【0042】
【化10】
を使用することが好ましく、式中、Mは水素および/またはメチルであり、Lは0~5の整数である。
【0043】
リン含有難燃剤混合物は、これらの難燃剤混合物の製造のために、ポリプロピレンオキシドのジグリシジル化合物(XIII)
【0044】
【化11】
、またはポリエチレンオキシドのジグリシジル化合物(XIV)
【0045】
【化12】
の群からの、あるいは、2~8個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状脂肪族ジオール類のジグリシジル化合物類の群からの、少なくとも1種の二官能性エポキシ化合物が使用されること(ここでKは0~12の整数である)を特徴とすることもできる。
【0046】
別の実施態様では、これらの難燃剤混合物の製造のために、エポキシノボラック樹脂の、特に式(XV)のフェノールおよびクレゾールをベースとするエポキシノボラック樹脂の群からの少なくとも1種の多官能性エポキシ化合物
【0047】
【化13】
が使用され、Uは1~12の整数であり、R
3は水素および/またはメチルである。
【0048】
別の実施態様では、難燃剤混合物の製造のために、トリグリシジルイソシアヌレート類、芳香族アミン類のおよび複素環式窒素塩基のN-グリシジル化合物、例えばN,N-ジグリシジルアニリン、N,N,O-トリグリシジル-p-アミノフェノール、トリグリシジルイソシアヌレートおよびN,N,N,N-テトラグリシジル-ビス(p-アミノフェニル)メタンの群からの少なくとも1種の複素環式エポキシ化合物が使用される。
【0049】
本発明のリン含有難燃剤混合物は、規格IEC61249-2-21に従って非ハロゲン系であるか、またはハロゲンを含まないことが好ましい。
【0050】
本発明はまた、少なくとも1つのホスフィン酸、アルキルホスフィン酸および/またはジアルキルホスフィン酸と、エポキシド類の開環した環との反応が触媒の存在下で行われることを特徴とする、請求項1~20の1つ以上に記載の難燃剤混合物の製造方法を提供する。
【0051】
前記触媒は、エチルトリフェニルホスホニウムクロリド、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、エチルトリフェニルホスホニウムヨージド、エチルトリフェニルホスホニウムアセテート、エチルトリフェニルホスホニウムホスフェート、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムヨージド、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムアセテート酢酸複合体、ブチルトリフェニルホスホニウムテトラブロモビスフェネート、ブチルトリフェニルホスホニウムビスフェネート、ブチルトリフェニルホスホニウムブロミドおよび/またはブチルトリフェニルホスホニウムビカーボネートであることが好ましい。
【0052】
本発明の方法では、ジアルキルホスフィン酸類をエポキシノボラックと95℃~160℃で1~6時間反応させることが好ましい。
【0053】
本発明はまた、エポキシ樹脂配合物の製造のための、請求項1~20の1以上に記載のリン含有難燃剤混合物の使用を提供する。
【0054】
本発明は特に、請求項1~20の1つ以上に記載の少なくとも1種のリン含有難燃剤混合物、エポキシ樹脂、硬化剤、促進剤、レオロジー添加剤および/または他の添加物を含む、難燃性エポキシ樹脂配合物を提供する。
【0055】
他の添加物は、光安定剤、着色顔料、分散添加剤、消泡剤、発泡剤(blowing agents)、泡形成剤(foam-formers)、機械的強度を改善するための添加剤、熱伝導率を調節するための添加剤、ガラススフィア(glass spheres)、ガラス粉末、ガラス繊維、炭素繊維および/またはチキソトロープ剤(thixotropizing agents)であることが好ましい。
【0056】
本発明はまた、上記のエポキシ樹脂配合物の製造方法であって、請求項1~20の1以上に記載のリン含有難燃剤混合物を、エポキシ樹脂、硬化剤、促進剤、レオロジー添加剤、および任意選択的に他の添加物と反応させることを特徴とする、前記製造方法を提供する。
【0057】
本発明の方法では溶媒を使用しないことが好ましい。
【0058】
最後に、本発明はまた、これらのエポキシ樹脂配合物の、難燃性複合材料部品(composite components)、接着剤、ペースト、フォーム、フォーム組成物、シーリング組成物、ホットメルト接着剤、フィラー、ポッティング組成物、こて塗り用(trowelling)組成物、仕上げマット、コーティング系、繊維、プリプレグ、はんだ付け用マスキングラッカー、熱伝導性層、熱伝導性ペースト、ショックアブソーバー層、LED、センサー、絶縁用途、回路基板、アンテナのための、あるいはこれらにおける、ならびにまたコーティング系における、使用を提供する。
【0059】
R1およびR2は、互いに独立して、エチルまたはプロピルであることが非常に特に好ましい。
【0060】
式R21-O-(I)、R21-O-(II)および/またはR21-O-(III)の難燃剤混合物の場合には、アルキル構造R21は、好ましくは、2~8個の炭素原子を有する。
【0061】
式(XII)または(V)の化合物の場合、Lは、好ましくは、0~5である。
【0062】
式(VI)では、
Uは、1~6であり、
R3は、水素、メチルまたはエチルであり、
R4は、水素またはメチルであり、そして
R5は、水素またはメチルである
ことが好ましい。
【0063】
本発明によれば、官能基(I)、(II)および(III)を有する難燃剤は、少なくとも1つのホスフィン酸と、単官能性、二官能性、多官能性および/または複素環式エポキシ化合物との反応によって製造される。
【0064】
従って、種々のタイプの難燃剤が本発明の難燃剤混合物中に存在することが可能である。
【0065】
これらの難燃剤混合物の製造のためには、210g/mol未満のエポキシ当量(EEW:epoxy equivalent weight)を有するエポキシ樹脂を使用することが好ましく、それらの中でも、ビスフェノールAをベースとするジグリシジルエーテルおよびまたフェノールをベースとするノボラック樹脂のオリゴマー混合物が好ましい。
【0066】
複素環式エポキシ化合物が本発明の難燃剤混合物の製造に使用される場合、そのような場合には、トリグリシジルイソシアヌレート類が特に適している。
【0067】
本発明のリン含有難燃剤混合物は、好ましくは、900ppm未満の塩素、900ppm未満の臭素、および合計で1500ppm未満のハロゲン(ハロゲン含有物質の形態で)を含み、従って、IEC規格61249-2-21に従って非ハロゲン系である。
【0068】
別の好ましい実施態様では、リン含有難燃剤混合物はハロゲンを含まない。
【0069】
本発明の難燃剤混合物の合成は、エポキシ基の開環、ならびに、それぞれタイプR1R2P(=O)O-CH2-CH(OH)-CH2-のおよびタイプR1R2P(=O)O-CH(CH2OH)-CH2-の、ホスフィン酸エステル構造の形成を介したP-O-C共有結合の形成によって達成されることが好ましい。
【0070】
触媒は、難燃剤混合物を基準として0.1重量パーセント(%)未満の量で使用されるエチルトリフェニルホスホニウムヨージドであることが好ましい。得られる全ハロゲン含有量は1500ppm未満である。
【0071】
ジアルキルホスフィン酸類は、本発明の方法において、触媒の存在下、120~150℃で3~6時間、エポキシノボラック類と反応させることが好ましい。
【0072】
驚くべきことに、本発明によれば、ホスフィン酸類から(およびそれぞれホスフィン酸混合物から)および適切なエポキシ樹脂から製造された、結果として得られる変性エポキシ樹脂が、合成の間に2つの得られたエステルの特定の異性体比が成功裏に確立されると、比較的低い粘度を有し、従って改善された加工条件を有することが見出された。特に、触媒が上記に関与している。
【0073】
変性樹脂の2つの位置異性体または位置異性体混合物が得られ、これらは、得られるP-O-Cホスフィン酸エステル構造がオキシラン環のCH2基またはCH基のいずれかで生じ得るという顕著な特徴を有する。しかしながら、各オキシラン基に関しては、1当量のそれぞれのホスフィン酸との反応のみが可能である。
【0074】
驚くべきことに、変性エポキシ樹脂におけるこれらの異なる(位置)異性体、および形成される量的割合が、ホスフィン酸における2つの部分R1およびR2によって、および触媒によって制御できることがさらに見出された。
【0075】
これらの位置異性体または混合物の比はまた、得られるリン変性エポキシ樹脂の粘度に決定的な影響を及ぼす。
【0076】
本発明による生成物は、低い粘度を有し、続いて、硬化された複合材料部品において、良好な火災挙動をもたらす;すなわち、最終生成物はより不燃性である。それらはまた、良好な難燃特性および高いリン含有量を有する。それらはさらに、P-ダイマー副生成物、すなわちR1R2P(=O)-O-P(=O)R1R2(これらは毒性であり、マイグレーション挙動の問題のある増加レベルを示す)を含まない。
【0077】
さらに、本発明の製造方法では、触媒によって異性体比を制御すること、および低い粘度への標的化された調節を達成することが可能である。
【0078】
第四級ホスホニウム構造をベースとする上記の触媒が、本発明の方法に特に適していることが示された。
【0079】
さらに、適切な触媒の選択を通して、エポキシ基の消費を伴うエポキシ樹脂同士の反応を回避することが可能である。エポキシ樹脂同士の反応は、望ましくない粘度増加を引き起こし、さらに、エポキシ基の消費が、硬化剤による硬化に悪影響を及ぼすであろう(より低いガラス転移温度)。
【0080】
比較的高い粘度のために、処理中に溶媒を使用するかまたは比較的高い温度で操作することがさらに必要となるであろう;これは、不必要に高いエネルギーコストにつながるであろう。
【0081】
前記触媒はまた、一置換または二置換ホスフィン酸との反応の間に生じ得る、可能性のある副生成物の割合を減少させる。従って、対応するダイマーの形成が低減または回避され、従って、変性エポキシ樹脂は、低い粘度とともに、比較的高いリン含有量を有する。
【0082】
揮発性で低分子量で非マイグレーション耐性であるダイマーリン成分(これらはさもなければ上記のような反応において生じ得る)の回避はさらに、後続の最終熱硬化性生成物において、改善された長期安定性および表面の質を達成する。
【0083】
本発明の方法を用いると、エポキシ基のある特定の割合だけがホスフィン酸エステル構造によって変性され、一部のエポキシ基は反応しないので、変性エポキシ樹脂において異なるリン含有量を達成することができる。従って、残存するエポキシ基の数に応じて、架橋/硬化において好ましい影響を達成することが可能である。
【0084】
下流の硬化ステップにおいて、硬化剤をそのように変性された低粘度エポキシ樹脂と、良好な難燃剤特性だけでなく高いガラス転移温度も有する熱硬化性構造を得るために混合することができる。
【0085】
エポキシ樹脂に関して知られているタイプの通例の硬化剤を、ここで使用することができる。変性エポキシ樹脂の2つの位置異性体の一級および二級OH基の反応を介した、イソシアネート類による硬化もまた有利である。
【0086】
比較的低い粘度のために、これらの成分は溶媒を使用せずに製造することができ、粘度を低下させるために比較的高い処理温度を使用する必要はない。従って、対応する製品の製造における資源、時間およびエネルギーを節約することが可能である。
【0087】
本発明に従って変性されたエポキシ樹脂は、単独のエポキシ樹脂成分として、または他のエポキシ樹脂と一緒に、または他の樹脂及び/又はフィラーとのブレンドで、使用することができる。他の樹脂の中で、フェノール樹脂、ベンゾオキサジン類、シアネートエステルおよびポリウレタン化学で使用されるタイプのポリオールが好ましい。
【0088】
本発明に従って変性されたエポキシ樹脂の粘度が比較的低いため、他の状況では粘度増加を伴う他のフィラーの問題のない組み入れを達成することも可能である。従って、材料部品を製造できる最大粘度を、より高いフィラー含有量で実現することができる。
【0089】
強化繊維を有する材料部品を製造すると、低下した粘度のために、より良好な繊維の濡れを実現することができる。従って、材料部品の機械的特性が改善される。
【0090】
本発明により変性されたエポキシ樹脂は、現代の製造技術、例えばレジン・トランスファー・モールディング(RTM)技術、リキッド・コンプレッション・モールディング(LCM:liquid compression moulding)技術、および加工温度において低い樹脂配合物粘度を必要とする他のインフュージョン技術、のために特に良好な適合性を有する。
【0091】
下式(XVI)のエポキシ樹脂は、タイプR1R2P(=O)OHの一置換および二置換ホスフィン酸でのリン変性に適している:
【0092】
【化14】
(式中、R
20は、置換または非置換の芳香族、脂肪族、脂環式または複素環式基であり、Wは1~14である)。
【0093】
Wは、好ましくは、1~6である。
【0094】
式(XVI)における部分R20は、以下の群に由来することができる:レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン類、ビスフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールK、フェノール-ホルムアルデヒドノボラック樹脂、アルキル置換フェノールホルムアルデヒド樹脂、フェノール-ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、クレゾール-ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン置換フェノール系樹脂、テトラメチルビフェノール樹脂および/またはこれらの組み合わせ。
【0095】
少なくとも1つのエポキシ構造を有するエポキシ樹脂は、本発明のリン変性エポキシ樹脂配合物の合成に特に適している。
【0096】
複数のエポキシ構造を有するエポキシ樹脂も特に好ましい。
【0097】
エポキシ-ノボラック樹脂が特に適しており、ここでは、フェノール及びクレゾールをベースとするエポキシ-ノボラック樹脂、およびまたエポキシ化ビスフェノールA樹脂又はエポキシ化ビスフェノールF樹脂が好ましい。
【0098】
リン含有難燃剤の製造に適した、考えられる単官能性、二官能性または多官能性エポキシ樹脂の例は、以下である:
例えばDow(Olin)からの商標DER(登録商標)330で入手可能な、タイプの177~189のエポキシ当量(EEW)を有するビスフェノールAのジグリシジルエーテル類、ならびに脂環式エポキシドおよびグリシジルメタクリレートエーテルとスチレンとのコポリマーである。
【0099】
好ましいポリエポキシドは、エポキシノボラック樹脂、例えばD.E.N.(登録商標)438またはD.E.N.(登録商標)439(以前はDow/Olin)、クレゾールエポキシノボラック樹脂、トリエポキシ化合物、例えばTactix(登録商標)742、エポキシ化ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール-エポキシ-ノボラック樹脂;テトラフェノールエタンのグリシジルエーテル類;ビスフェノールAのジグリシジルエーテル類;ビスフェノールFのジグリシジルエーテル類およびヒドロキノンのジグリシジルエーテル類である。
【0100】
芳香族ポリグリシジルエーテル類、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテルおよびビスフェノールSジグリシジルエーテル、フェノール/ホルムアルデヒド樹脂の、およびクレゾール/ホルムアルデヒド樹脂のポリグリシジルエーテル類、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ポリプロピレンオキシド類の、およびポリエチレンオキシド類のモノ-およびジグリシジルエーテル、テトラキス(p-グリシジルフェニル)エタン、フタル酸、イソフタル酸およびテレフタル酸の、およびトリメリット酸のジ-およびポリグリシジルエステル類。
【0101】
窒素上に1個または2個のエポキシ基を担持する窒素含有エポキシ構造を使用することも可能である。ここで、出発材料は、エポキシ基を担持する窒素の複数の出現を含むこともできる。窒素自体は、例えばトリグリシジルイソシアヌレートの場合のように、複素環式構造の一部であってもよい。
【0102】
ヒダントイン-エポキシ樹脂およびウラシル-エポキシ樹脂を使用することも可能である。
【0103】
本発明のリン含有難燃剤の製造に適した他のエポキシ化合物は、tert-ブタノールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、多官能性脂肪族アルコール(例えば1,4-ブタンジオール)のジ-およびポリグリシジル化合物;オキサゾリジノン変性エポキシ樹脂;ビスフェノールSタイプの樹脂、例えば、日本化薬からのBPS(登録商標)-200、ACR Co.からのEPX(登録商標)-30、大日本インキ化学工業からのEpiculon(登録商標)EXA-1514;ビスフェノールA樹脂、例えば大日本インキ化学工業からのEpiclon(登録商標) N-3050、N-7050、N-9050、HuntsmanからのXAC(登録商標)-5005、GT(登録商標)-7004、6484T、6099;ビスフェノールF樹脂、例えば東都化成からのYDF(登録商標)-2004、YDF(登録商標)2007、
複素環式エポキシ樹脂、例えば日産化学からのTEPIC(登録商標)、HuntsmanからのAraldite(登録商標) PT 810、エポキシ化ノボラック類、例えば日本化薬によって製造されるEPPN(登録商標)-201、EOCN(登録商標)-103、EOCN(登録商標)-1020、EOCN(登録商標)-1025、朝日化学工業からのECN(登録商標) 278、ECN(登録商標)-292およびECN(登録商標) 299、CIBA GEIGY AGからのGY(登録商標)-1180、ECN(登録商標)-1273およびECN(登録商標)-1299、東都化成からのYDCN(登録商標)-220L、YDCN(登録商標)-220HH、YDCN(登録商標)-702、YDCN-704、YDPN-601およびYPDN-602、大日本インキ化学工業によって製造されるEpiclon(登録商標) 673、N(登録商標)-680、N(登録商標)-695、N(登録商標)-770およびN(登録商標)-775、
アミノ官能性エポキシ樹脂、例えば東都化成からのYH(登録商標)-1402およびST(登録商標)-110、Yuka Shell Co.からのYL(登録商標)-931およびYL(登録商標)-933、ゴム変性エポキシ樹脂、例えば大日本インキ化学工業からのEpiclon(登録商標) TSR-601、 EPX(登録商標)-84-2およびEPX(登録商標)4061、ナフタレン含有エポキシ構造、例えば大日本インキ化学工業からのもの、Epiclon(登録商標) HP-4710、HP-7250およびHP-9500、シリコーン変性エポキシ樹脂、例えば旭電化工業からの1359、および他のエポキシ樹脂である。
【0104】
これらのリン変性樹脂または樹脂ブレンドの対応するエポキシ当量(EEW)は、最大8000g/molまでであり得る。良好な適合性を有する構造は、200g/mol~4000g/molのEEWを有するもの、好ましくは480~3500g/molのEEWを有するものである。
【0105】
本発明のリン変性エポキシ樹脂の製造に適した化合物は、特にビスフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールAP、ビスフェノールB、ビスフェノールBP、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールFL、ビスフェノールG、ビスフェノールM、ビスフェノールP、ビスフェノールPH、ビスフェノールS、ビスフェノールTMC、ビスフェノールZおよび/またはビスフェノールKである。
【0106】
特に適切な化合物は、<210g/molのエポキシ当量(EEW<210g/mol)有する、ビスフェノールAをベースとするジグリシジルエーテル類である。
【0107】
本発明は、触媒として、多数の酸、アミン類、イミダゾール類および四級ホスホニウム塩を使用することができる。四級ホスホニウムおよびアンモニウム化合物をベースとする触媒が特に適切であり、例えば以下である:エチルトリフェニルホスホニウムクロリド、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、エチルトリフェニルホスホニウムヨージド、エチルトリフェニルホスホニウムアセテート、エチルトリフェニルホスホニウムホスフェート、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムヨージド、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムアセテート酢酸複合体、ブチルトリフェニルホスホニウムテトラブロモビスフェネート、ブチルトリフェニルホスホニウムビスフェネート、ブチルトリフェニルホスホニウムブロミド、ブチルトリフェニルホスホニウムビカーボネート、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルホスホニウムクロリド、エチルトリフェニルホスホニウムアセテート、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、エチルトリフェニルホスホニウムヨージド、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムブロミドおよびそれらの適切な混合物。
【0108】
本発明の方法によって製造される難燃剤は、使用される触媒が副反応を抑制し、リン含有ダイマー(例えば、無水物)の形成を防ぐので、狭い分子量分布を有する。
【0109】
最終用途における所望の特性を最適化するために、他のフィラーおよびポリマーをリン変性エポキシ樹脂に添加することができる。ここでは特に、エポキシ樹脂、難燃剤、及び機械的強度を改善するための添加剤(「強化材(tougheners)」)を挙げることができる。後者は、熱可塑性ポリマー、エラストマーまたはコアシェルゴムの群からの化合物であり得る。
【0110】
本発明を、以下の例によって説明する。
【実施例】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
(I):(II)異性体比の分析は、31P-NMRおよび1H-NMR分光法によって達成される。エポキシ当量は、残存エポキシ基の割合に関する結果をもたらす。X、YおよびZは、NMRの結果とエポキシ当量を組み合わせることによって決定できる。
【0115】
例1~4:二官能性エポキシ樹脂
例1:
802gのDGEBAを初期装入物として使用し、撹拌器、還流冷却器、滴下漏斗、温度計および窒素供給を備えたフラスコ装置中で130℃に加熱する。次いで、0.1m%(DEPSおよびDGEBAの全質量を基準とする質量パーセント)のETPPI、続いて258gのDEPSを添加すると、発熱反応が観察される。次いで、撹拌を2時間続け、得られたエポキシ樹脂を熱い液体の形態で取り出す。
【0116】
例2(比較)
反応は例1の反応と類似するが、触媒としてのエチルトリフェニルホスホニウムヨージドを含まない。
【0117】
例3
例1と類似して、1000gのDGEBAを初期装入物として使用して130℃に加熱し、次いで、0.1m%のエチルトリフェニルホスホニウムヨージドを、続いて642gのジエチルホスフィン酸を添加すると、発熱反応を観察できる。次いで、撹拌を2時間続け、得られたエポキシ樹脂を熱い液体の形態で取り出す。
【0118】
例4(比較)
反応は例3の反応と類似するが、触媒としてのエチルトリフェニルホスホニウムヨージドを含まない。
【0119】
【0120】
例1および3のそれぞれにおいて、本発明の生成物は、より高い割合の異性体IIを有する。IIのより高い割合は、(X+Y)に対するYの比を提供するTの値から認識可能である。従って、各場合において、本発明の生成物は、それぞれの比較例の生成物よりも低い粘度を有する。
【0121】
さらに、本発明の生成物は、有利には、リン含有ダイマー副生成物(これらの好ましくない特性、例えばマイグレーションおよび毒性の増加したレベルは、最終製品を使い物にならなくするであろう)を含まない。
【0122】
例5~15:多官能性エポキシドの反応
例5
1000gのエポキシノボラック(180g/molのEEWを有するDEN(登録商標)438)を初期装入物として使用し、撹拌器、還流冷却器、滴下漏斗、温度計および窒素供給を備えた2000mlの五口フラスコ装置中で130℃に加熱する。次いで、0.1m%のエチルトリフェニルホスホニウムヨージド(全質量を基準として)を、続いて73gのジエチルホスフィン酸を添加する。次いで、撹拌を120分間続け、生成したエポキシ樹脂を熱い液体の形態で取り出す。
【0123】
例6~9のための方法は例5のための方法と同一であるが、各場合において、使用されるジエチルホスフィン酸の量は表2に示すとおりである。
【0124】
例10
製造方法は例8におけるとおりであるが、触媒としてエチルトリフェニルホスホニウムヨージドの代わりにメチルトリフェニルホスホニウムヨージドを用いる。
【0125】
例11
製造方法は例8におけるとおりであるが、ジエチルホスフィン酸の代わりに286gのエチルメチルホスフィン酸を用いる。
【0126】
例12(比較)
製造方法は例6におけるとおりであるが、触媒は使用しなかった。
【0127】
例13(比較)
製造方法は例8におけるとおりであるが、触媒は使用しなかった。
【0128】
例14(比較)
製造方法は例9におけるとおりであるが、触媒は使用しなかった。
【0129】
【0130】
上記の表から、同様のリン含有量で、本発明に従って製造された例5~11のエポキシ樹脂が、各場合において、それぞれの比較例12~15の生成物よりも高い割合の異性体IIを有することが明らかである。
【0131】
さらに、本発明の生成物は各場合において、同様のリン含有量を有するそれぞれの比較例の生成物よりも低い粘度を有し、従って、本発明の生成物は、溶媒を含まない処理を達成する単純なまたは唯一の方法を提供する。本発明の生成物は、有利には、リン含有ダイマー副生成物(これらの好ましくない特性、例えばマイグレーションおよび毒性の増加したレベルは、最終製品を使い物にならなくするであろう)を含まない。
【0132】
本発明の例16~19
例16(単官能性エポキシドを用いる)
100.0gのtert-ブチルグリシジルエーテルおよび0.1m%のエチルトリフェニルホスホニウムヨージド(全含有量を基準とする)を初期装入物として使用し、撹拌器、還流冷却器、滴下漏斗および温度計を備えた反応フラスコにおいて窒素下で120℃に加熱し、次いで91.8gのジエチルホスフィン酸をゆっくりと滴加し、撹拌を30分間続ける。これにより、無色の液体生成物が得られる。
【0133】
例17(三官能性複素環式および窒素含有エポキシドを用いる)
100.0gのトリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)を初期装入物として使用し、還流冷却器、熱電対、窒素供給および撹拌器を備えたガラスフラスコ中で溶融する。次いで、0.1m%のエチルトリフェニルホスホニウムヨージド(全含有量を基準とする)を添加し、混合物を撹拌し、フラスコ内の温度を130℃に上昇させ、41.0gのジエチルホスフィン酸を撹拌しながら窒素流下でゆっくりと添加し、混合物を130℃で30分間維持する。引き続き、生成物を温かい液体の形態で取り出し、冷却する。
【0134】
例18(三官能性複素環式および窒素含有エポキシドを用いる)
手順は例17におけるとおりであるが、123.0gのジエチルホスフィン酸を反応させる(41.0gの代わりに)。
【0135】
例19(二官能性エポキシド:ブタンジオールジグリシジルエーテル)
100.0gのブタンジオールジグリシジルエーテルを、温度計、窒素供給、滴下漏斗、冷却器および撹拌器を備えたガラスフラスコにおいて初期装入物として使用し、0.1m%のエチルトリフェニルホスホニウムヨージド(全含有量を基準とする)を添加し、混合物を撹拌する。次いで、120.8gのジエチルホスフィン酸を130℃の温度で滴加する。反応を30分間継続した後、良好な流動性を有する透明生成物を冷却し、取り出す。
【0136】
例20(比較、二官能性エポキシド:ブタンジオールジグリシジルエーテル)
100.0gのブタンジオールジグリシジルエーテルを、温度計、窒素供給、滴下漏斗、冷却器および撹拌器を備えたガラスフラスコにおいて初期装入物として使用し、混合物を撹拌する。120.8gのジエチルホスフィン酸を130℃の温度で滴加する。反応を30分間継続した後、生成物を冷却し、取り出す。
【0137】
【0138】
上記表における例から、本発明の生成物16~19の各場合において、比較例20の生成物におけるよりも異性体IIの割合が高いことが明らかである。
【0139】
さらに、本発明の生成物19はそれぞれ、比較例20の生成物よりも低い粘度を有し、従って、無溶媒処理を容易にする。
【手続補正書】
【提出日】2022-04-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各場合に1または複数の式(I)、(II)および(III)の官能基を有する個々の難燃剤を含むリン含有難燃剤混合物であって、
【化1】
前記難燃剤混合物における官能基の全量を基準として、1~98モル%の式(I)の官能基、1~35モル%の式(II)の官能基および1~98モル%の式(III)の官能基が存在し、R
1およびR
2は、同一であるかまたは異なっており、互いに独立して、水素、直鎖状または分岐状C
1~C
12-アルキル、および/またはC
6~C
18-アリールであり、(I)、(II)および(III)の全体は常に100モル%である前記リン含有難燃剤混合物
において、
式(I)および(II)の混合において、式(II)の割合T(モル%)が、T=[y/(x+y)]*100%から計算され、ここで、xは式(I)の量であり、yは式(II)の量であり、各場合においてモル%であり、Tが20~45モル%であることを特徴とする、前記リン含有難燃剤混合物。
【請求項2】
R
1およびR
2が、同一であるかまたは異なっており、互いに独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、3-メチルブタ-2-イル、2-メチルブタ-2-イル、2,2-ジメチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、シクロペンチル、シクロペンチルエチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルエチルおよび/またはフェニルであることを特徴とする、請求項1に記載のリン含有難燃剤混合物。
【請求項3】
R
1およびR
2が、同一であるかまたは異なっており、互いに独立して、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよび/またはtert-ブチルであることを特徴とする、請求項1または2に記載のリン含有難燃剤混合物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載のリン含有難燃剤混合物であって、それらが
5~94モル%の式(I)、
3~35モル%の式(II)および
3~92モル%の式(III)
を含み、(I)、(II)および(III)の全体が常に100モル%であることを特徴とする、前記リン含有難燃剤混合物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載のリン含有難燃剤混合物であって、それらが
25~90モル%の式(I)、
5~30モル%の式(II)および
5~70モル%の式(III)
を含み、(I)、(II)および(III)の全体が常に100モル%であることを特徴とする、前記リン含有難燃剤混合物。
【請求項6】
難燃剤混合物における官能基(I)、(II)および(III)を有する個々の難燃剤が、式R
21-O-(I)、R
21-O-(II)および/またはR
21-O-(III)に一致し、ここでR
21は、2~8個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状アルキル構造を意味し、および/またはタイプ-[-CH(CH
3)-CH
2-O-]
k-Hまたは-[-CH
2-CH(CH
3)-O-]
k-Hのポリプロピレンオキシドを意味し、および/またはタイプ-[-CH
2-CH
2-O-]
k-Hのポリエチレンオキシドを意味し、kは各場合において1~12の整数であることを特徴とする、請求項1~
5のいずれか1つに記載のリン含有難燃剤混合物。
【請求項7】
難燃剤混合物における官能基(I)、(II)および(III)を有する個々の難燃剤が、式D-O-[-CH
2-CH
2-O-]
r-Eおよび/またはD-O-[-CH(CH
3)-CH
2-O-]
r-Eに一致し、ここで、DおよびEは同一であってもまたは異なっていてもよく、各場合において、式(I)、(II)および/または(III)を表し、rは1~12の整数であることを特徴とする、請求項1~
5のいずれか1つに記載のリン含有難燃剤混合物。
【請求項8】
難燃剤混合物における官能基(I)、(II)および(III)を有する個々の難燃剤が、式(IV)
【化2】
に一致し、Qは、下記式(V)を表し、
【化3】
ここで、Mは水素またはメチルであり、DおよびEは同一であってもまたは異なっていてもよく、各場合において、式(I)、(II)および/または(III)を表し、Lは0~5の整数であることを特徴とする、請求項1~
5のいずれか1つに記載のリン含有難燃剤混合物。
【請求項9】
難燃剤混合物における官能基(I)、(II)および(III)を有する個々の難燃剤が、式(VI)
【化4】
[式中、F、GおよびJは同一であってもまたは異なっていてもよく、各場合において、式(I)、(II)および/または(III)を表し、Uは1~12の整数であり、R
3は水素、メチル、エチル、プロピルおよび/またはブチルであり、R
4およびR
5は互いに独立して水素、メチルおよび/または
【化5】
であり、GおよびR
3は上記に定義されるとおりである]
に一致することを特徴とする、請求項1~
5のいずれか1つに記載のリン含有難燃剤混合物。
【請求項10】
難燃剤混合物における官能基(I)、(II)および(III)を有する個々の難燃剤が、式(VIII)
【化6】
[式中、F、GおよびJは同一であってもまたは異なっていてもよく、各場合において、式(I)、(II)および/または(III)を表す]
に一致することを特徴とする、請求項1~
5のいずれか1つに記載のリン含有難燃剤混合物。
【請求項11】
規格IEC61249-2-21に従って非ハロゲン系であるか、またはハロゲンを含まないことを特徴とする、請求項1~
10のいずれか1つに記載のリン含有難燃剤混合物。
【請求項12】
少なくとも1つのホスフィン酸、アルキルホスフィン酸および/またはジアルキルホスフィン酸と、エポキシドの開環した環との反応が触媒の存在下で行われることを特徴と
し、前記触媒が、エチルトリフェニルホスホニウムクロリド、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、エチルトリフェニルホスホニウムヨージド、エチルトリフェニルホスホニウムアセテート、エチルトリフェニルホスホニウムホスフェート、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムヨージド、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムアセテート酢酸複合体、ブチルトリフェニルホスホニウムテトラブロモビスフェネート、ブチルトリフェニルホスホニウムビスフェネート、ブチルトリフェニルホスホニウムブロミドおよび/またはブチルトリフェニルホスホニウムビカーボネートであることを特徴とする、請求項1~
11のいずれか1つに記載の難燃剤混合物の製造方法。
【請求項13】
ジアルキルホスフィン酸をエポキシノボラックと95℃~160℃で1~6時間反応させることを特徴とする、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記の難燃剤混合物が、式R
1R
2P(=O)O-の少なくとも1つのホスフィン酸エステル構造を含み、合成が開環されたエポキシ環でのP-O-C結合によって進行し、R
1およびR
2は請求項1におけるように定義されることを特徴とする、請求項
12または13に記載の方法。
【請求項15】
エポキシ樹脂配合物の製造のための、請求項1~
11のいずれか1つに記載のリン含有難燃剤混合物の使用。
【請求項16】
請求項1~
11のいずれか1つに記載の少なくとも1種のリン含有難燃剤混合物、エポキシ樹脂、硬化剤、促進剤、レオロジー添加剤および/または他の添加物を含むことを特徴とする、難燃性エポキシ樹脂配合物。
【請求項17】
他の添加物が、光安定剤、着色顔料、分散添加剤、消泡剤、発泡剤、泡形成剤、機械的強度を改善するための添加剤、熱伝導率を調節するための添加剤、ガラススフィア、ガラス粉末、ガラス繊維、炭素繊維および/またはチキソトロープ剤であることを特徴とする、請求項
16に記載の難燃性エポキシ樹脂配合物。
【請求項18】
請求項1~
11のいずれか1つに記載のリン含有難燃剤混合物を、エポキシ樹脂、硬化剤、促進剤、レオロジー添加剤、および任意選択的に他の添加物と反応させることを特徴とする、請求項
17に記載のエポキシ樹脂配合物の製造方法。
【請求項19】
溶媒が使用されないことを特徴とする、請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
請求項
16または
17に記載のエポキシ樹脂配合物の、難燃性複合材料部品、接着剤、ペースト、フォーム、フォーム組成物、シーリング組成物、ホットメルト接着剤、フィラー、ポッティング組成物、こて塗り用組成物、仕上げマット、コーティング系、繊維、プリプレグ、はんだ付け用マスキングラッカー、熱伝導性層、熱伝導性ペースト、ショックアブソーバー層、LED、センサー、絶縁用途、回路基板、アンテナのための、あるいはこれらにおける、ならびにまたコーティング系における、使用。
【国際調査報告】