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特表2023-534400多嚢胞性卵巣症候群の患者における不妊症の処置での使用のためのHP-hMG
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-09
(54)【発明の名称】多嚢胞性卵巣症候群の患者における不妊症の処置での使用のためのHP-hMG
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/09 20060101AFI20230802BHJP
   A61K 38/04 20060101ALI20230802BHJP
   A61K 38/24 20060101ALI20230802BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
A61K38/09
A61K38/04
A61K38/24
A61P15/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580468
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(85)【翻訳文提出日】2023-02-07
(86)【国際出願番号】 US2020039745
(87)【国際公開番号】W WO2021262186
(87)【国際公開日】2021-12-30
(81)【指定国・地域】
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)ウェブサイトに公開された「Abstracts 36th Virtual Annual Meeting of the European Society of Human Reproduction and Embryology」における「O-012 Predicted high-responder women diagnosed with oligoovulation may benefit from stimulation with highly purified human menopausal gonadotrophin(HP-hMG)」
(71)【出願人】
【識別番号】517191312
【氏名又は名称】フェリング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・ハイザー
【テーマコード(参考)】
4C084
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084BA44
4C084DB10
4C084DB49
4C084DB71
4C084NA05
4C084NA10
4C084NA14
4C084ZA811
(57)【要約】
記載されるのは、特に希発排卵及び/又はPCOSと診断されており、且つ制御された卵巣刺激に対して高い卵巣反応を有すると予想される女性において、高度に精製されたメノトロピン(HP-hMG)を使用して卵胞成長を刺激する補助生殖技術の組成物及び方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の患者における、任意選択的に制御された卵巣刺激による不妊症の処置での使用のための、高度に精製されたメノトロピン(HP-hMG)を含む組成物であって、前記患者は、処置/刺激前に35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中抗ミュラー管ホルモン(AMH)レベルを有する、組成物。
【請求項2】
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)に起因する希発排卵の患者における、任意選択的に制御された卵巣刺激による不妊症の処置での使用のための、高度に精製されたメノトロピン(HP-hMG)を含む組成物であって、前記患者は、処置/刺激前に35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中抗ミュラー管ホルモン(AMH)レベルを有する、組成物。
【請求項3】
75~450IUのHP-hMGを含む、請求項1又は2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
前記不妊症の処置は、任意選択的に処置の1日目~処置の少なくとも5日目に75~450IU/日、好ましくは75~225IU/日、より好ましくは150又は225IU/日、最も好ましくは150IU/日のHP-hMGの1日用量を前記患者に投与することを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記不妊症の処置は、
(a)処置/刺激前に35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中抗ミュラー管ホルモン(AMH)レベル、及び(b)処置/刺激前に145pmol/L以上の血清中エストラジオールレベル(例えば、150pmol/L以上の血清中エストラジオールレベル)を有し、且つ任意選択的に、(c)処置/刺激前に1.10nmol/L以上の血清中テストステロンレベル(例えば、1.14nmol/L以上の血清中テストステロンレベル)、及び(d)処置/刺激前に7U/L以上の血清中黄体形成ホルモン(LH)レベル(例えば、7.55U/L以上の血清中黄体形成ホルモン)の一方又は両方も有する患者を同定すること(例えば、診断すること)と;
任意選択的に処置の1日目~処置の少なくとも5日目に75~450IU/日、好ましくは75~225IU/日、より好ましくは150又は225IU/日、最も好ましくは150IU/日のHP-hMGの1日用量を前記患者に投与することと
を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)であり、且つ処置/刺激前に35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中抗ミュラー管ホルモン(AMH)レベルを有する患者における、任意選択的に制御された卵巣刺激による不妊症の処置での使用のための、高度に精製されたメノトロピン(HP-hMG)を含む組成物であって、前記処置は、
処置/刺激前に35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中抗ミュラー管ホルモン(AMH)レベルを有するPCOSの患者を同定すること(例えば、診断すること)と;
任意選択的に処置の1日目~処置の少なくとも5日目に75~450IU/日、好ましくは75~225IU/日、より好ましくは150又は225IU/日、最も好ましくは150IU/日のHP-hMGの1日用量を前記患者に投与することと
を含む、組成物。
【請求項7】
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)に起因する希発排卵であり、且つ処置/刺激前に35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中抗ミュラー管ホルモン(AMH)レベルを有する患者における、任意選択的に制御された卵巣刺激による不妊症の処置での使用のための、高度に精製されたメノトロピン(HP-hMG)を含む組成物であって、前記処置は、
処置/刺激前に35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中抗ミュラー管ホルモン(AMH)レベルを有する、PCOSに起因する希発排卵の患者を同定すること(例えば、診断すること)と;
任意選択的に処置の1日目~処置の少なくとも5日目に75~450IU/日、好ましくは75~225IU/日、より好ましくは150又は225IU/日、最も好ましくは150IU/日のHP-hMGの1日用量を前記患者に投与することと
を含む、組成物。
【請求項8】
前記不妊症の処置は、
(a)処置/刺激前に35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中抗ミュラー管ホルモン(AMH)レベル、及び(b)処置/刺激前に145pmol/L以上の血清中エストラジオールレベル(例えば、150pmol/L以上の血清中エストラジオールレベル)を有し、且つ任意選択的に、(c)処置/刺激前に1.10nmol/L以上の血清中テストステロンレベル(例えば、1.14nmol/L以上の血清中テストステロンレベル)、及び(d)処置/刺激前に7U/L以上の血清中黄体形成ホルモン(LH)レベル(例えば、7.55U/L以上の血清中黄体形成ホルモン)の一方又は両方も有する患者を同定すること(例えば、診断すること)と;
任意選択的に処置の1日目~処置の少なくとも5日目に75~450IU/日、好ましくは75~225IU/日、より好ましくは150又は225IU/日、最も好ましくは150IU/日のHP-hMGの1日用量を前記患者に投与することと
を含む、請求項6又は7に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
前記不妊症の処置は、組換え卵胞刺激ホルモン(rFSH)による処置と比較して継続妊娠率を上昇させる、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
前記処置は、hCG又は任意選択的にhCGが補充されているGnRHアゴニストを投与することにより、最終卵胞成熟を誘発することをさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
前記処置は、卵母細胞を回収することと、前記卵母細胞を受精させることと、前記受精した卵母細胞を胚盤胞期まで成長させることと、任意選択的に胚盤胞の品質/形態を評価することと、(任意選択的に例えば品質/形態の視覚的評価に基づいて選択された)新鮮な胚盤胞を子宮に移植することとをさらに含む新鮮移植方法である、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
前記処置は、卵母細胞を回収することと、前記卵母細胞を受精させることと、前記受精した卵母細胞を胚盤胞期まで成長させることと、任意選択的に胚盤胞の染色体品質を評価することと、1つ若しくは複数又は全ての胚盤胞を凍結させることと、解凍された凍結胚盤胞(例えば、染色体評価に基づいて選択された正倍数性胚盤胞)を子宮に移植することとをさらに含む凍結移植方法である、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項13】
前記処置は、
卵母細胞を回収すること、未受精卵母細胞を凍結させること、その後、1つ又は複数の卵母細胞を解凍すること、1つ若しくは複数又は全ての解凍卵母細胞を受精させること、受精した卵母細胞を胚盤胞期まで成長させること、任意選択的に胚盤胞の品質/形態を評価すること及び(任意選択的に例えば品質/形態の視覚的評価に基づいて選択された)胚盤胞を子宮に移植すること;又は
卵母細胞を回収すること、未受精卵母細胞を凍結させること、その後、1つ又は複数の凍結卵母細胞を解凍すること、1つ若しくは複数又は全ての解凍卵母細胞を受精させること、受精した卵母細胞を胚盤胞期まで成長させること、任意選択的に胚盤胞の染色体品質を評価すること、1つ若しくは複数又は全ての胚盤胞を凍結させること及び解凍された凍結胚盤胞(例えば、染色体評価に基づいて選択された正倍数性胚盤胞)を子宮に移植すること
をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項14】
処置の6日目に開始して、GnRHアンタゴニストを投与する工程をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項15】
前記患者は、無排卵性ではなく、21~35歳であり、且つ処置の開始時に18~30kg/mのBMIを有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項16】
希発排卵及びPSCOSの一方又は両方と診断されており、且つ制御された卵巣刺激に対して高い卵巣反応を有すると予想される女性を処置するための補助生殖技術方法であって、
女性を、希発排卵及びPCOSの一方又は両方と診断されており、且つ処置前に35.7±0.5pmol/L(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中抗ミュラー管ホルモン(AMH)レベルを有すると同定することと、
卵胞成長を刺激するのに有効な量の高度に精製されたメノトロピン(HP-hMG)を、前記同定された女性に投与することにより、制御された卵巣刺激を行うことと
を含む補助生殖技術方法。
【請求項17】
前記女性を、(i)処置/刺激前に7U/L以上の血清中黄体形成ホルモン(LH)レベル、(ii)処置/刺激前に1.10nmol/L以上の血清中テストステロンレベル、及び(iii)処置/刺激前に145pmol/L以上の血清中エストラジオールレベルの1つ又は複数を有すると同定することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記女性は、希発排卵と診断されると同定されている、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記HP-hMGは、1日当たり75~450IUのhMGの用量で投与される、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記HP-hMGは、処置の1日目~少なくとも5日目に1日当たり150IUのhMGの用量で投与される、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
組換え卵胞刺激ホルモン(rFSH)の投与による制御された卵巣刺激と比較して、体外受精後の継続妊娠率を上昇させるのに有効である、請求項16~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
処置/刺激の6日目に開始して、性腺刺激ホルモン放出ホルモンアンタゴニスト(GnRHアンタゴニスト)を投与することをさらに含む、請求項16~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)又は任意選択的にhCGが補充されている性腺刺激ホルモン放出ホルモンアゴニスト(GnRHアゴニスト)を投与することにより、最終卵胞成熟を誘発することをさらに含む、請求項16~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
(a)卵母細胞を回収すること、前記卵母細胞を受精させること、前記受精した卵母細胞を胚盤胞期まで成長させること、任意選択的に胚盤胞の品質/形態を評価すること及び(任意選択的に例えば品質/形態の視覚的評価に基づいて選択された)新鮮な胚盤胞を子宮に移植すること;又は
(b)卵母細胞を回収すること、前記卵母細胞を受精させること、前記受精した卵母細胞を胚盤胞期まで成長させること、任意選択的に胚盤胞の染色体品質を評価すること、1つ若しくは複数又は全ての胚盤胞を凍結させること及び解凍された凍結胚盤胞(例えば、染色体評価に基づいて選択された正倍数性胚盤胞)を子宮に移植すること;又は
(c)卵母細胞を回収すること、未受精卵母細胞を凍結させること、その後、1つ又は複数の卵母細胞を解凍すること、1つ若しくは複数又は全ての解凍卵母細胞を受精させること、受精した卵母細胞を胚盤胞期まで成長させること、任意選択的に胚盤胞の品質/形態を評価すること及び(任意選択的に例えば品質/形態の視覚的評価に基づいて選択された)胚盤胞を子宮に移植すること;又は
(d)卵母細胞を回収すること、未受精卵母細胞を凍結させること、その後、1つ又は複数の凍結卵母細胞を解凍すること、1つ若しくは複数又は全ての解凍卵母細胞を受精させること、受精した卵母細胞を胚盤胞期まで成長させること、任意選択的に胚盤胞の染色体品質を評価すること、1つ若しくは複数又は全ての胚盤胞を凍結させること及び解凍された凍結胚盤胞(例えば、染色体評価に基づいて選択された正倍数性胚盤胞)を子宮に移植すること
をさらに含む、請求項16~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記女性は、無排卵性ではなく、21~35歳であり、且つ処置の開始時に18~30kg/m2のBMIを有する、請求項16~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
希発排卵及び/又はPCOSと診断されると同定されている、処置前に35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中AMHレベルを有する女性における不妊症の処置のための医薬品の製造におけるHP-hMGの使用であって、前記処置は、卵胞成長を刺激するのに有効な量の高度に精製されたメノトロピン(HP-hMG)を、前記同定された女性に投与することを含む、使用。
【請求項27】
前記女性は、処置前に、処置/刺激前に145pmol/L以上の血清中エストラジオールレベル(例えば、150pmol/L以上の血清中エストラジオールレベル)を有し、且つ任意選択的に、処置/刺激前に1.10nmol/L以上の血清中テストステロンレベル(例えば、1.14nmol/L以上の血清中テストステロンレベル)及び処置/刺激前に7U/L以上の血清中黄体形成ホルモン(LH)レベル(例えば、7.55U/L以上の血清中黄体形成ホルモン)の一方又は両方も有すると同定されている、請求項26に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載される本発明は、補助生殖技術に関する。具体的には、本明細書に記載されるのは、希発排卵を経験しており、及び/又は多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)を有し、且つ制御された卵巣刺激に対して高い卵巣反応を有すると予想される女性に特に有用であり得る制御された卵巣刺激方法を含む、不妊症を処置するための組成物及び方法である。
【背景技術】
【0002】
補助生殖技術(ART)手順は、一般的に、卵子の成長及び成熟を刺激することと、女性の卵巣から卵子を採取することと、卵子と精子とをインビトロで組み合わせることと、それを女性(ドナー又は別の女性)の子宮に移植することとを伴う。ARTの成功は、卵子の成長及び成熟の刺激と関連する母体及び出生時のリスク(例えば、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)及び子宮外妊)により妨げられる。ARTで生じる他の懸念は、継続妊娠率及び出生率を支えるための高品質の胚及び正倍数性胚盤胞の生産である。
【0003】
性腺刺激ホルモン、例えばメノトロピン(例えば、ヒト閉経期性腺刺激ホルモン又はhMG)、卵胞刺激ホルモン(FSH)及び黄体形成ホルモン(LH)は、制御された卵巣刺激(COS)に使用されており、高度に精製されたメノトロピン(HP-hMG)及び組換えヒトFSH(rFSH)は、比較的最近になって使用されている。HP-hMGは、主にヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)の形態でFSH及び外来性LHの活性を提供する。卵巣刺激プロトコルの有効性は、周期制御のために長期に性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)アゴニスト又はGnRHアンタゴニストを使用して増強され得る。例えば、Devroey et al.,Fertility and Sterility 97:561-71(2012)を参照されたい。Ziebe et al.,Human Reproduction 22(9)2404-13(2007)は、HP-hMG対rFSHの使用が胚の形態に影響を及ぼす可能性があることを報告しており、且つチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)由来のrFSH(GONAL-F)と比較して、HP-hMGによる刺激に由来する最高品質の胚(視覚的評価に基づく)での着床、継続妊娠率及び出生率の改善を観察した。
【0004】
卵巣刺激に対する患者の反応は、大きく異なることから、処置は、個別化されることが多い。例えば、個別化は、不良な、正常な又は高い反応を予測する性腺刺激ホルモン刺激に対する予想される卵巣反応に基づき得る。高卵巣反応者は、通常、制御された卵巣刺激(COS)の標準的なプロトコルに従って多数の成長中の卵胞を産生する女性と定義される。この患者は、一般的に、ARTの良好な候補であると考えられるが、高卵巣反応は、比較的低い着床率及び比較的高い流産率と関連している場合があり、そのため、正常な卵巣反応と比較して、結果が成功する確率が低下する場合がある。この高反応者は、OHSS及びそれに伴う合併症のリスクも高くなる。
【0005】
予想される高反応者のための改善されたART方法を開発するための取り組みには、より穏やかな刺激プロトコルの検討が含まれる。例えば、Rubio et al.,Human Reproduction 25(9):2290-97(2010)は、高反応者に投与する性腺刺激ホルモン用量の減少により、受精率及び胚の品質が改善され得るが、用量が低いほど卵母細胞が少なくなることを報告した。他の取り組みでは、使用される特定の性腺刺激ホルモンが結果に影響を及ぼすかどうかが検討されている。例えば、Arce et al.,Gyn.Endocrin.30(6):444-50(2014)は、予想される高反応者(AMHが5.2ng/ml以上である対象)の中で、CHO細胞由来のrFSH(GONAL-F)で刺激された群が、HP-hMGで刺激された群と比較して有意に多い卵母細胞を回収したが、1回の周期当たりの出生率が有意に低いことを報告しており(MERIT「長期アゴニスト」臨床試験における20%対33%;MEGASET「アゴニスト」試験における23%対34%)、La Marca et al.,Fertility and Sterility O-169(2012)(同上)も参照されたい。
【0006】
月経周期が平均的である女性は、典型的には、月に1回、その周期のほぼ中間で成熟卵子を排卵又は放出する。希発排卵は、排卵が稀に又は不規則に起こる場合を指し、通常、1年間の月経周期(期間)が8回以下であると分類される。希発排卵は、女性にとっての不妊症の最も一般的な原因の1つである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特に、希発排卵を経験しており、及び/又は多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)を有し、且つ制御された卵巣刺激に対して高い卵巣反応を有すると予想される女性のための改善された補助生殖技術方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に記載される組成物及び方法は、希発排卵を経験しており(例えば、PCOSに起因する希発排卵を経験している女性)、且つ制御された卵巣刺激に対して高い卵巣反応を有すると予想され(例えば、高反応者であると予想され)、及び性腺刺激ホルモンとしてhMGを使用する制御された卵巣刺激プロトコルによる不妊症処置を受けている患者が、性腺刺激ホルモンとしてrFSHを使用する制御された卵巣刺激プロトコルによる不妊症処置を受けている患者と比較して継続妊娠率が有意に高いという驚くべき及び予想外の発見に由来する。換言すると、本明細書に記載される組成物及び方法は、性腺刺激ホルモンとしての(rFSHではなく)HP-hMGによる制御された卵巣刺激不妊症処置に対する予想高反応者である、希発排卵と診断された患者(例えば、希発排卵及びPCOSと診断された女性)の選択(例えば、本明細書で開示されるように、AMH、エストラジオール、LH及び/又はテストステロンのベースラインレベルが高い患者の選択)は、比較的高い継続妊娠率と関連し得るという驚くべき及び予想外の発見に由来する。
【0009】
本明細書で提供されるのは、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の患者における、任意選択的に制御された卵巣刺激による不妊症の処置での使用のための、高度に精製されたメノトロピン(HP-hMG)を含む組成物であって、患者は、処置/刺激前に35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中抗ミュラー管ホルモン(AMH)レベルを有する、組成物である。
【0010】
同様に本明細書で提供されるのは、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)に起因する希発排卵の患者における、任意選択的に制御された卵巣刺激による不妊症の処置での使用のための、高度に精製されたメノトロピン(HP-hMG)を含む組成物であって、患者は、処置/刺激前に35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中抗ミュラー管ホルモン(AMH)レベルを有する、組成物である。
【0011】
任意の実施形態では、本使用のための組成物は、75~450IUのHP-hMGを含み得る。任意の実施形態では、不妊症の処置は、任意選択的に処置の1日目~処置の少なくとも5日目に75~450IU/日、好ましくは75~225IU/日、より好ましくは150又は225IU/日、最も好ましくは150IU/日のHP-hMGの1日用量を患者に投与することを含み得る。
【0012】
任意の実施形態では、不妊症の処置は、(a)処置/刺激前に35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中抗ミュラー管ホルモン(AMH)レベル、及び(b)処置/刺激前に145pmol/L以上の血清中エストラジオールレベル(例えば、150pmol/L以上の血清中エストラジオールレベル)を有し、且つ任意選択的に、(c)処置/刺激前に1.10nmol/L以上の血清中テストステロンレベル(例えば、1.14nmol/L以上の血清中テストステロンレベル)、及び(d)処置/刺激前に7U/L以上の血清中黄体形成ホルモン(LH)レベル(例えば、7.55U/L以上の血清中黄体形成ホルモン)の一方又は両方も有する患者を同定すること(例えば、診断すること)と;任意選択的に処置の1日目~処置の少なくとも5日目に75~450IU/日、好ましくは75~225IU/日、より好ましくは150又は225IU/日、最も好ましくは150IU/日のHP-hMGの1日用量を患者に投与することとを含み得る。
【0013】
同様に提供されるのは、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)であり、且つ処置/刺激前に35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中抗ミュラー管ホルモン(AMH)レベルを有する患者における、任意選択的に制御された卵巣刺激による不妊症の処置での使用のための、高度に精製されたメノトロピン(HP-hMG)を含む組成物であって、処置は、処置/刺激前に35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中抗ミュラー管ホルモン(AMH)レベルを有するPCOSの患者を同定すること(例えば、診断すること)と;任意選択的に処置の1日目~処置の少なくとも5日目に75~450IU/日、好ましくは75~225IU/日、より好ましくは150又は225IU/日、最も好ましくは150IU/日のHP-hMGの1日用量を患者に投与することとを含む、組成物である。
【0014】
同様に提供されるのは、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)に起因する希発排卵であり、且つ処置/刺激前に35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中抗ミュラー管ホルモン(AMH)レベルを有する患者における、任意選択的に制御された卵巣刺激による不妊症の処置での使用のための、高度に精製されたメノトロピン(HP-hMG)を含む組成物であって、処置は、処置/刺激前に35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中抗ミュラー管ホルモン(AMH)レベルを有する、PCOSに起因する希発排卵の患者を同定すること(例えば、診断すること)と;任意選択的に処置の1日目~処置の少なくとも5日目に75~450IU/日、好ましくは75~225IU/日、より好ましくは150又は225IU/日、最も好ましくは150IU/日のHP-hMGの1日用量を患者に投与することとを含む、組成物である。
【0015】
任意の実施形態では、不妊症の処置は、(a)処置/刺激前に35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中抗ミュラー管ホルモン(AMH)レベル、及び(b)処置/刺激前に145pmol/L以上の血清中エストラジオールレベル(例えば、150pmol/L以上の血清中エストラジオールレベル)を有し、且つ任意選択的に、(c)処置/刺激前に1.10nmol/L以上の血清中テストステロンレベル(例えば、1.14nmol/L以上の血清中テストステロンレベル)、及び(d)処置/刺激前に7U/L以上の血清中黄体形成ホルモン(LH)レベル(例えば、7.55U/L以上の血清中黄体形成ホルモン)の一方又は両方も有する患者を同定すること(例えば、診断すること)と;任意選択的に処置の1日目~処置の少なくとも5日目に75~450IU/日、好ましくは75~225IU/日、より好ましくは150又は225IU/日、最も好ましくは150IU/日のHP-hMGの1日用量を患者に投与することとを含み得る。
【0016】
本明細書で開示される使用のための組成物に関して、本明細書で開示される不妊症の処置は、組換え卵胞刺激ホルモン(rFSH)による処置と比較して継続妊娠率を上昇させる。
【0017】
本明細書で開示される使用のための組成物の任意の実施形態では、本処置は、hCG又は任意選択的にhCGが補充されているGnRHアゴニストを投与することにより、最終卵胞成熟を誘発することをさらに含み得る。
【0018】
本明細書で開示される使用のための組成物の任意の実施形態では、本処置は、卵母細胞を回収することと、この卵母細胞を受精させることと、受精した卵母細胞を胚盤胞期まで成長させることと、任意選択的に胚盤胞の品質/形態を評価することと、(任意選択的に例えば品質/形態の視覚的評価に基づいて選択された)新鮮な胚盤胞を子宮に移植することとをさらに含む新鮮移植方法であり得る。
【0019】
本明細書で開示される使用のための組成物の任意の実施形態では、本処置は、卵母細胞を回収することと、この卵母細胞を受精させることと、受精した卵母細胞を胚盤胞期まで成長させることと、任意選択的に胚盤胞の染色体品質を評価することと、1つ若しくは複数又は全ての胚盤胞を凍結させることと、解凍された凍結胚盤胞(例えば、染色体評価に基づいて選択された正倍数性胚盤胞)を子宮に移植することとをさらに含む凍結移植方法であり得る。
【0020】
本明細書で開示される使用のための組成物の任意の実施形態では、本処置は、卵母細胞を回収すること、未受精卵母細胞を凍結させること、その後、1つ又は複数の卵母細胞を解凍すること、1つ若しくは複数又は全ての解凍卵母細胞を受精させること、受精した卵母細胞を胚盤胞期まで成長させること、任意選択的に胚盤胞の品質/形態を評価すること及び(任意選択的に例えば品質/形態の視覚的評価に基づいて選択された)胚盤胞を子宮に移植すること;又は卵母細胞を回収すること、未受精卵母細胞を凍結させること、その後、1つ又は複数の凍結卵母細胞を解凍すること、1つ若しくは複数又は全ての解凍卵母細胞を受精させること、受精した卵母細胞を胚盤胞期まで成長させること、任意選択的に胚盤胞の染色体品質を評価すること、1つ若しくは複数又は全ての胚盤胞を凍結させること及び解凍された凍結胚盤胞(例えば、染色体評価に基づいて選択された正倍数性胚盤胞)を子宮に移植することをさらに含み得る。
【0021】
本明細書で開示される使用のための組成物の任意の実施形態では、本処置は、処置の6日目に開始して、GnRHアンタゴニストを投与する工程をさらに含み得る。
【0022】
本明細書で開示される使用のための組成物の任意の実施形態では、患者は、無排卵性ではなく、21~35歳であり、且つ処置の開始時に18~30kg/m2のBMIを有する。
【0023】
同様に提供されるのは、希発排卵及びPCOSの一方又は両方と診断されており、且つ制御された卵巣刺激に対して高い卵巣反応を有すると予想される女性を処置するための補助生殖技術方法であって、女性を、希発排卵及びPCOSの一方又は両方と診断されており、且つ35.7±0.5pmol/L(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中抗ミュラー管ホルモン(AMH)レベルを有すると同定することと、卵胞成長を刺激するのに有効な量の高度に精製されたメノトロピン(HP-hMG)を、同定された女性に投与することにより、制御された卵巣刺激を行うこととを含む方法である。一部の実施形態では、この女性は、希発排卵と診断されると同定されている。一部の実施形態では、この女性は、PCOSに起因する希発排卵と診断されると同定されている。一部の実施形態では、この女性は、PCOSと診断されると同定されている。一部の実施形態では、この女性は、希発排卵及びPCOSと診断されると同定されている。この方法は、女性を、(i)処置/刺激前に7U/L以上の血清中黄体形成ホルモン(LH)レベル、(ii)処置/刺激前に1.10nmol/L以上の血清中テストステロンレベル、及び(iii)処置/刺激前に145pmol/L以上の血清中エストラジオールレベルの1つ又は複数を有すると同定することをさらに含み得る。この方法は、組換え卵胞刺激ホルモン(rFSH)の投与による処置/制御された卵巣刺激と比較して、体外受精後の継続妊娠率を上昇させるのに有効である。
【0024】
本HP-hMGは、1日当たり75~450IUのhMGの用量で投与され得る。このHP-hMGは、例えば、処置の1日目~少なくとも5日目に1日当たり150IUのhMGの用量で投与され得る。
【0025】
本方法は、処置/刺激の6日目に開始して、性腺刺激ホルモン放出ホルモンアンタゴニスト(GnRHアンタゴニスト)を投与することをさらに含み得る。
【0026】
本方法は、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)又は任意選択的にhCGが補充されている性腺刺激ホルモン放出ホルモンアゴニスト(GnRHアゴニスト)を投与することにより、最終卵胞成熟を誘発することをさらに含み得る。
【0027】
本方法は、(a)卵母細胞を回収すること、この卵母細胞を受精させること、受精した卵母細胞を胚盤胞期まで成長させること、任意選択的に胚盤胞の品質/形態を評価すること及び(任意選択的に例えば品質/形態の視覚的評価に基づいて選択された)新鮮な胚盤胞を子宮に移植すること;又は(b)卵母細胞を回収すること、この卵母細胞を受精させること、受精した卵母細胞を胚盤胞期まで成長させること、任意選択的に胚盤胞の染色体品質を評価すること、1つ若しくは複数又は全ての胚盤胞を凍結させること及び解凍された凍結胚盤胞(例えば、染色体評価に基づいて選択された正倍数性胚盤胞)を子宮に移植すること;又は(c)卵母細胞を回収すること、未受精卵母細胞を凍結させること、その後、1つ又は複数の卵母細胞を解凍すること、1つ若しくは複数又は全ての解凍卵母細胞を受精させること、受精した卵母細胞を胚盤胞期まで成長させること、任意選択的に胚盤胞の品質/形態を評価すること及び(任意選択的に例えば品質/形態の視覚的評価に基づいて選択された)胚盤胞を子宮に移植すること;又は(d)卵母細胞を回収すること、未受精卵母細胞を凍結させること、その後、1つ又は複数の凍結卵母細胞を解凍すること、1つ若しくは複数又は全ての解凍卵母細胞を受精させること、受精した卵母細胞を胚盤胞期まで成長させること、任意選択的に胚盤胞の染色体品質を評価すること、1つ若しくは複数又は全ての胚盤胞を凍結させること及び解凍された凍結胚盤胞(例えば、染色体評価に基づいて選択された正倍数性胚盤胞)を子宮に移植することの1つをさらに含み得る。
【0028】
本女性は、無排卵性ではなく、21~35歳であり、且つ処置の開始時に18~30kg/m2のBMIを有し得る。
【0029】
同様に本明細書で提供されるのは、希発排卵及び/又はPCOSと診断されると同定されている、処置/刺激前に35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中AMHレベルを有する女性における不妊症の処置のための医薬品の製造におけるHP-hMGの使用であって、処置は、卵胞成長を刺激するのに有効な量の高度に精製されたメノトロピン(HP-hMG)を、同定された女性に投与することを含む、使用である。この処置は、投与する前に、女性を、(i)処置/刺激前に7U/Lの血清中黄体形成ホルモン(LH)レベル、(ii)処置/刺激前に1.10nmol/L以上の血清中テストステロンレベル、及び(iii)処置/刺激前に145pmol/L以上の血清中エストラジオールレベルの1つ又は複数を有すると同定することをさらに含み得る。この処置は、組換え卵胞刺激ホルモン(rFSH)の投与による処置/刺激と比較して、体外受精後の継続妊娠率を上昇させるのに有効である。
【0030】
上述の概要は、例示的且つ説明的であり、本発明のさらなる説明を提供することが意図されている。本発明の詳細な理解のために下記の詳細な説明を参照されたい。他の目的、利点及び新規の特徴は、下記の詳細な説明から当業者に容易に明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本明細書に記載されるのは、補助生殖技術方法、例えば希発排卵及び/又はPCOSと診断されている患者の不妊症を処置する方法である。具体的には、本明細書に記載されるのは、希発排卵及び/又はPCOSと診断されており(例えば、PCOSに起因する希発排卵を経験しているか又は希発排卵及びPCOSと診断されている女性)、且つ制御された卵巣刺激に対する高い卵巣反応を有すると予想される(例えば、高反応者であると予想される)女性(例えば、本明細書で開示されるように、AMH、エストラジオール、LH及び/又はテストステロンのベースラインレベルを有する女性)に特に有用であり得る制御された卵巣刺激(COS)方法である。実施例1に示すように、この方法は、継続妊娠率の上昇に有用である。
【0032】
本発明は、希発排卵と診断されている好反応者であると予想される患者(例えば、PCOSに起因する希発排卵を経験している女性)のCOSによる処置のための、高度に精製されたメノトロピン(HP-hMG)の使用により、継続妊娠率が改善されるという本発明者らによる予想外の発見に基づく。下記の実施例1で報告するように、希発排卵と診断される高反応者であると予想され(例えば、PCOSに起因する希発排卵を経験している女性)、且つ性腺刺激ホルモンとしてHP-hMGで処置した患者(N=50)は、性腺刺激ホルモンとしてrFSHで処置した患者(N=56)と比較して、継続妊娠率が19.2%高かった(95%信頼区間1.2%~37.3%)。これらの患者は、35.7pmol/L以上(5.0ng/ml以上)のAMHのベースライン血清レベル、7U/L以上のLHのベースライン血清レベル、1.10nmol/L以上のテストステロンのベースライン血清レベル及び145pmol/L以上のベースライン血清エストラジオールレベルを有した。下記の実施例1で論じるように、例えばこれらのAMH、エストラジオール、LH及びテストステロンの血清レベルに基づいて、この患者集団は、PCOSの患者、例えば希発排卵がPCOSに起因している患者を含んでいたと思われる。この発見に基づいて、本明細書で開示される組成物及び方法は、より高い継続妊娠率を達成するために、FSHではなく、HP-hMGによる処置のための、希発排卵及び/又はPCOSと診断された予想高反応者患者、例えば35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)のAMHのベースライン血清レベル、145pmol/L以上のエストラジオールのベースライン血清レベル、7U/L以上のLHのベースライン血清レベル及び/又は1.10nmol/L以上のテストステロンのベースライン血清レベルを有する、希発排卵及び/又はPCOSと診断された予想高反応者患者の選択に基づく。
【0033】
定義
本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、別途定義されない限り、本発明が関連する補助生殖技術の分野の当業者により一般に理解されている意味を有する。本明細書では、当業者に既知の様々な方法論が引用される。別途指定されない限り、当業者に既知の任意の好適な材料及び/又は方法を本発明の実行で用い得る。しかしながら、特定の材料及び方法が説明されている。下記の説明及び実施例で言及される材料、試薬及び同類のものは、別途注記されない限り、商業的供給源から入手可能である。
【0034】
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、単数のみを示すという明確な定めのない限り、単数及び複数の両方を示す。
【0035】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、数又は範囲が使用される文脈に応じて当業者に理解されるように、数又は範囲が、明記された厳密な数又は範囲に限定されず、列挙された数又は範囲の前後の範囲を包含することを意味する。別途文脈又は当技術分野の慣例から明らかでない限り、「約」は、特定の用語のプラス又はマイナス10%までを意味する。
【0036】
本明細書で使用される場合、「希発排卵」という用語は、1年当たりの月経周期(生理)が合計で8回以下である希発の又は不規則な排卵(例えば、周期が31日以上である女性)を指す。本明細書で使用される場合、「希発排卵と同定された」か又は「希発排卵と診断された」患者及び「希発排卵である」患者という語句は、1年間の月経周期(生理)が8回以下である患者を指すために互換的に使用されているが、無排卵患者は除外される。希発排卵は、女性にとっての不妊症の最も一般的な原因の1つである。
【0037】
本明細書で使用される場合、「無排卵性」又は「無排卵」という用語は、月経周期の間に卵巣が卵母細胞を放出しない患者を指す。従って、排卵が行われない。慢性無排卵は、不妊症の一般的な原因である。一般的に、本明細書に記載される組成物及び方法の患者は、無排卵患者ではない。
【0038】
本明細書で使用される場合、「多嚢胞性卵巣症候群」又は「PCOS」は、テストステロンレベルの上昇、多嚢胞性卵巣及び排卵機能障害(例えば、希発の、不規則な及び/又は長期にわたる月経周期)の2つ以上を特徴とするホルモン障害を指す。PCOSを、アンドロゲン過剰症又は排卵機能障害の他の原因を除外して、Rotterdam基準に従い、(i)アンドロゲン過剰症、(ii)排卵機能障害、及び(iii)多嚢胞性卵巣の少なくとも2つの存在に基づいて診断し得る。
【0039】
本明細書で使用される場合、「継続妊娠」は、10~11週間の妊娠(例えば、胚盤胞/胚移植後8~9週間)での、生存胎児及び検出可能な胎児心音を伴う妊娠を指す。
【0040】
本明細書で使用される場合、「臨床妊娠」は、5~6週間の妊娠(例えば、胚盤胞/胚移植後3~4週間)での妊娠及び検出可能な胎児心音を指す。
【0041】
本明細書で使用される場合、「女性」は、成体の雌のヒトを指す。典型的には、本明細書に記載される組成物及び方法に従って処置される女性は、35歳以下であり、Arce et al.,Fertility and Sterility 99:1644-53(2013)で説明されているBeckmann-Coulter Gen 2アッセイを使用して測定した場合、35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の抗ミュラー管ホルモン(AMH)の血清中レベル又は別の方法により評価した同等のAMHレベル及び30kg/m以下のBMIを有する。一部の実施形態では、本明細書に記載される組成物及び方法に従って処置される女性は、処置前に、21~35歳であると同定されている。一部の実施形態では、本明細書に記載される組成物及び方法に従って処置される女性は、処置前に、35歳以下又は34歳以下であると同定されている。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法に従って処置される女性は、処置前に、21~34歳、又は21~33歳、又は21~32歳、又は21~31歳であると同定されている。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法に従って処置される女性は、処置前に18~30kg/mのBMIを有すると同定されている。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法に従って処置される女性は、処置前に、38kg/m以下、36kg/m以下、34kg/m以下、32kg/m以下、30kg/m以下又は28kg/m以下のBMI、例えば18~38、18~36、18~34、18~32、18~30又は18~28kg/mのBMIを有すると同定されている。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法に従って処置される女性は、18~25kg/m、18~26kg/m、18~27kg/m、18~28kg/m、18~29kg/m又は18~30kg/mのBMIを有すると同定されている。
【0042】
本明細書で使用される場合、「制御された卵巣刺激に対して高い卵巣反応を有すると予想される」か又は「予想高反応者」と分類される対象は、制御された卵巣刺激(COS)の標準的なプロトコルに従って多数の卵胞又は卵母細胞を成長させる可能のある女性、例えば15個以上の卵母細胞を産する可能性が平均と比べて高い女性を指す。女性が過去のARTサイクル(例えば、過去のCOS処置)で15個以上の卵母細胞を生成している場合、女性を予想高反応者であると同定し得る。加えて又は代わりに、女性がOHSSを発症するリスクがある見なされる場合、女性を予想高反応者であると同定し得る。加えて又は代わりに、女性は、Arce et al.,Fertility and Sterility 99:1644-53(2013)で説明されているBeckmann-Coulter Gen 2アッセイを使用して測定した場合、35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の抗ミュラー管ホルモン(AMH)の血清中レベル、例えば35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中AMHレベル又は別の方法により評価した同等のAMHレベルを有する場合、女性を予想高反応者であると同定し得る。
【0043】
「メノトロピン」という用語は、本明細書で使用される場合、「高度に精製されたメノトロピン」又は「HP-hMG」等のヒト閉経期性腺刺激ホルモン又は「hMG」を含む。本明細書で使用される場合、「高度に精製されたメノトロピン」及び「HP-hMG」という用語は、卵胞刺激ホルモン(FSH)及びヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)駆動黄体形成ホルモン(LH)活性の両方を含む高度に精製されたhMG製品、例えばLH活性の大部分がhCGによりもたらされているhMG製品、例えばLH活性の90%以上又は95%以上がhCGによりもたらされている製品を指す。例えば、Foutouh et al.,Reproductive BioMed.Online,14(2):145-47(2007);Wolfenson et al.,Reprod.BioMed.Online,10(4):442-54(2005)を参照されたい。一部の実施形態では、HP-hMGは、Ferring Pharmaceuticals,Inc.の商標MENOPUR(登録商標)で入手可能なHP-hMG製品であり、このHP-hMG製品は、FSH及びhCG駆動LH活性を含み、免疫反応性により評価した場合、LH活性の95%以上は、hCG(下垂体hCG)によりもたらされている。例えば、Arce and Smitz,Human Fertility,14(3):192-99(2011)を参照されたい。使用するために再構成される場合、MENOPUR(登録商標)の1つのバイアル(75IUのHP-hMG)は、75IUのFSH活性と、75IUのLH活性とを含み、hCGは、約70IUのLH活性に寄与する。
【0044】
「GnRHアゴニスト」という用語は、本明細書で使用される場合、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)アゴニスト、例えばブセレリン(例えば、SUPRECUR(登録商標))、リュープロレリン(例えば、酢酸リュープロリド、例えばLUPRON(登録商標))、ナファレリン(例えば、SYNAREL(登録商標))及びトリプトレリン(例えば、TRELSTAR(登録商標))を含む。
【0045】
「GnRHアンタゴニスト」という用語は、本明細書で使用される場合、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)アンタゴニストを含み、例えば、酢酸ガニレリクス(例えばORGALUTRAN(登録商標))及び酢酸セトロレリクス(例えばCETROTIDE(登録商標))を含み、これらは、下垂体の性腺刺激ホルモン分泌細胞上のGnRH受容体を競合的にブロックすることによりGnRHの作用をブロックし、そのため、性腺刺激ホルモンの産生/放出が妨げられ、未熟卵排卵(卵子の放出)が妨げられる。
【0046】
本明細書で使用される場合、「有効な量」という語句は、特定の薬理的効果(これを得るために、そのような処置を必要とする対象に薬物が投与される)をもたらすために決定された投与量を指す。治療上有効な量は、たとえ当業者がそのような投与量を治療上有効な量であると見なしていても、所与の患者における本明細書に記載される病態の処置で必ずしも有効であるとは限らないことが強調される。便宜上でのみ、成体の雌のヒト対象に関連して、例示的な投与量及び治療上有効な量が下記で提供される。当業者は、特定の対象及び/又は病態/疾患を処置する必要に応じて、標準的技法に従ってそのような量を調節し得る。
【0047】
補助生殖技術方法
本明細書に記載される処置方法は、制御された卵巣刺激(COS)を伴う任意の生殖技術方法、例えば体外受精、例えば卵細胞質内精子注入法(ICSI)による体外受精、受精卵(例えば、胚盤胞/胚)の新鮮移植を伴う方法、後の移植のための受精卵の凍結を伴う方法及び後の受精のための未受精卵母細胞の凍結を伴う方法に有用である。
【0048】
上記のように、本発明は、COSに対して高い卵巣反応を有すると予想され、且つCOSを受けている希発排卵及び/又はPCOSの女性(例えば、PCOSに起因する希発排卵を経験している女性並びに希発排卵及びPCOSと診断されている女性)におけるCOSのために性腺刺激ホルモンとして高度に精製されたメノトロピン(HP-hMG)を使用することを伴う生殖技術の組成物及び方法を提供する。同様に上記のように、本明細書で開示される組成物及び方法の目的のために、女性を、過去のARTサイクル(例えば、過去のCOS処置)において示した高い卵巣反応に基づいて、COSに対して高い卵巣反応を有すると予想されると同定し得るか、又はArce et al.,Fertility and Sterility 99:1644-53(2013)で説明されているBeckmann-Coulter Gen 2アッセイを使用して測定した場合、35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の抗ミュラー管ホルモン(AMH)の血清中レベル、例えば35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中AMHレベル又は別の方法により評価した同等のAMHレベルを有する場合、COSに対して高い卵巣反応を有すると予想されると同定し得る。AMHの血清中レベルは、機能的卵胞予備能の代理マーカーであり、AMHの血清中レベルと卵巣反応(例えば卵母細胞収量)との間の正の相関関係が報告されている(同文献)。本明細書に記載される組成物及び方法に従い、女性を、典型的には血清中AMHレベルに基づいて予想高反応者であると同定する。
【0049】
本発明の任意の実施例又は本明細書で開示される組成物及び方法の任意の実施形態において、処置/刺激前に35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中抗ミュラー管ホルモン(AMH)レベルを有する患者を同定する(例えば、診断する)工程は、処置/刺激前に、過去のARTサイクル(例えば、過去のCOS処置)において15個以上の卵母細胞を生成している患者を同定する工程又は処置/刺激前に、OHSSを発症するリスクがあると見なされる患者を同定する工程に置き換えられ得るか、又はこの工程によって増強され得ることが理解されるであろう。
【0050】
本明細書に記載される補助生殖技術方法は、HP-hMGを使用して卵胞成長を刺激することにより、希発排卵及び/又はPCOSと診断されており(例えば、PCOSに起因する希発排卵を経験している女性並びに希発排卵及びPCOSと診断されている女性)、且つ制御された卵巣刺激に対して高い卵巣反応を有すると予想される女性において、制御された卵巣刺激を行うことを含む。本明細書に記載される任意の実施形態では、HP-hMGは、MENOPUR(登録商標)であり得る。
【0051】
本処置方法は、制御された卵巣刺激を行う前に、女性を、希発排卵及び/又はPCOS(例えば、PCOSに起因する希発排卵)と診断されると同定することを含み得る。そのため、一部の実施形態では、女性を、希発排卵と診断されると同定し、一部の実施形態では、女性を、PCOSに起因する希発排卵と診断されると同定し、一部の実施形態では、女性を、PCOSと診断されると同定し、一部の実施形態では、女性を、希発排卵及びPCOSと診断されると同定する。
【0052】
本処置方法は、制御された卵巣刺激を行う前に、女性を、制御された卵巣刺激に対する高い卵巣反応を有すると予想されると同定することをさらに含み得る。そのため、本明細書に記載される補助生殖技術方法は、希発排卵及び/又はPCOSと診断された女性を選択することと、制御された卵巣刺激を行う前に、例えば、この女性が、Beckmann-Coulter Gen 2アッセイを使用して測定した場合、35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中AMHレベル又は別の方法により測定した同等のAMHレベルを有すると決定することにより、女性を、制御された卵巣刺激に対して高い卵巣反応を有すると予想されると同定することとを含み得る。任意の実施形態では、この女性は、Beckmann-Coulter Gen 2アッセイを使用して測定した場合、35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中AMHレベル又は別の方法により測定した同等のAMHレベルを有し得るか又は有すると同定され得る。任意の実施形態では、この患者(例えば、女性)は、無排卵女性ではない。
【0053】
加えて又は代わりに、任意の実施形態では、女性は、処置/刺激前に145pmol/L以上の血清中エストラジオールレベル又は処置/刺激前に150pmol/L以上の血清中エストラジオールレベルを有し得るか又は有すると同定され得る。加えて又は代わりに、任意の実施形態では、女性は、処置/刺激前に7U/L以上の血清中黄体形成ホルモン(LH)レベル(又は7.55U/L以上の処置/刺激前に血清中黄体形成ホルモン(LH)レベル)及び処置/刺激前に1.10nmol/L以上の血清中テストステロンレベル(又は処置/刺激前に1.14nmol/L以上の血清中テストステロンレベル)の1つ又は複数を有し得るか又は有すると同定され得る。
【0054】
そのため、任意の実施形態では、女性は、処置/刺激前に、(a)35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中抗ミュラー管ホルモン(AMH)レベル;(b)145pmol/L以上の血清中エストラジオールレベル(例えば、150pmol/L以上の血清中エストラジオールレベル);(c)1.10nmol/L以上の血清中テストステロンレベル(例えば、1.14nmol/L以上の血清中テストステロンレベル)、及び(d)7U/L以上の血清中黄体形成ホルモン(LH)レベル(例えば、7.55U/L以上の血清中黄体形成ホルモン)の1つ若しくは複数又は全てを有し得るか又は有すると同定され得る。一部の実施形態では、女性は、処置/刺激前に、(a)35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中抗ミュラー管ホルモン(AMH)レベル;及び(b)145pmol/L以上の血清中エストラジオールレベル(例えば、150pmol/L以上の血清中エストラジオールレベル)を有し得るか又は有すると同定され得る。一部の実施形態では、女性は、処置/刺激前に、(a)35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中抗ミュラー管ホルモン(AMH)レベル、及び(b)145pmol/L以上の血清中エストラジオールレベル(例えば、150pmol/L以上の血清中エストラジオールレベル)、並びに任意選択的に、(c)1.10nmol/L以上の血清中テストステロンレベル(例えば、1.14nmol/L以上の血清中テストステロンレベル)、及び(d)7U/L以上の血清中黄体形成ホルモン(LH)レベル(例えば、7.55U/L以上の血清中黄体形成ホルモン)の一方又は両方を有し得るか又は有すると同定され得る。
【0055】
本方法は、卵胞成長を刺激するのに有効な量(例えば、約75IU/日~約450IU/日、例えば75IU/日、150IU/日、225IU/日、300IU/日、375IU/日又は450IU/日)のHP-hMGを対象に投与することを含む。典型的には、HP-hMGの開始用量は、150IU/日であるが、75IU/日~225IU/日の範囲であり得る。HP-hMGの投与を典型的には患者の月経周期の2日目又は3日目に開始し、その結果、処置1日目(本明細書で刺激1日目とも称される)は、患者の月経周期の2日目又は3日目となる。上記のように、HP-hMGを含む医薬組成物は、市販されている(例えば、皮下注射のために製剤化されている、Ferring Pharmaceuticals,Inc.から販売されているMENOPUR(登録商標)製品)。HP-hMGの投与を、約1~約20日の総刺激期間、典型的には8~12日の総刺激期間、より具体的には典型的には約9~11日、例えば約10日にわたり、所望のレベルの卵胞産生が達成されるまで毎日継続する。
【0056】
例えば、経膣的超音波検査(TVUS)により評価され得る対象の卵巣(卵胞)反応及び血清中エストラジオールレベルに基づいて、刺激期間中に性腺刺激ホルモンの投与を調節すること(例えば、HP-hMG又はrFSHの投与を増加させるか又は減少させること)は、当技術分野で既知である。例えば、患者の血清中エストラジオールレベル及び12mm超の卵胞の数の一方又は両方が過剰に低いか又は過剰に高い場合、刺激期間中に性腺刺激ホルモンの投与を調節することは、既知である。そのような評価及び調節を刺激期間中、典型的には刺激の中間卵胞期中の任意の時間、典型的には刺激の5日目、又は6日目、又は7日目に行い得る。そのため、処置は、処置の1日目(刺激1日目)~例えば少なくとも5日目(刺激5日目)に注射により75~450IU/日(例えば150IU/日)の開始1日用量でHP-hMG(例えばMENOPUR(登録商標))の1日用量を投与することを含み得る。従って、用量は、(例えば、患者の卵巣反応に応じて)300若しくは450IUのhMGの最大1日用量又は75IUのhMGの最小1日用量まで(例えば、75IUのhMGの増分で)上下に調節され得る。
【0057】
上記のように、所望のレベルの卵胞産生が達成されるまで、HP-hMG投与を毎日継続する。例えば、HP-hMGは、TVUSによって決定され得るように、直径が17mm以上である3つの卵胞が得られるまで投与され得る。典型的には、最大HP-hMG投与期間は、20日であり、典型的な投与期間は、8~12日、より具体的には典型的には約9~11日、例えば約10日である。
【0058】
一部の実施形態では、本処置方法は、性腺刺激ホルモン(例えば、HP-hMG)投与期間の一部中でのGnRHアンタゴニストの投与を含む。例えば、GnRHアンタゴニストを、リード卵胞が直径14mmに達した時点で投与して、性腺刺激ホルモン(例えばHP-hMG)投与の残りの期間を通して継続し得る。例えば、GnRHアンタゴニストを、刺激の5日目、又は6日目、又は7日目(例えば刺激6日目)に開始して投与して、性腺刺激ホルモン(例えば、HP-hMG)投与の残りの期間を通して継続し得る。GnRHアンタゴニストが酢酸ガニレリクス(例えば、ORGALUTRAN(登録商標))である場合、典型的な用量は、皮下投与される0.25mg/日である。
【0059】
他の実施形態では、本処置方法は、制御された卵巣刺激を行う前のGnRHアゴニストの投与を含み、例えば制御された卵巣刺激を行う前のトリプトレリン(典型的には0.1mg/日の皮下)又はリュープロレリン(例えば、酢酸リュープロリド、例えばLUPRON(登録商標))の投与を含む。
【0060】
一部の実施形態では、本処置方法は、最終卵胞成熟を誘発することをさらに含む。例えば、所望のレベルの卵胞産生が達成されると、最終卵胞成熟のトリガーを、当技術分野で既知の方法(例えば、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)のボーラス注射)により刺激し得る。例えば、直径がそれぞれ17mm以上である卵胞が3個以上であり、且つ典型的にはエストラジオール(E2)レベルが10,000pmol/mL未満である患者において、最終卵胞成熟のトリガーを刺激し得る。そのため、一部の実施形態では、本処置方法は、hCGを投与して最終卵胞成熟を誘発することを含み得る。hCGの用量は、5,000IU~10,000IUであり得る。組換えhCG(例えば、OVITRELLE(登録商標),Merck)の典型的な用量は、250μg(6,500IUのhCG活性)であり、通常、単回の皮下注射により投与される。
【0061】
GnRHアゴニストをhCGの使用の代替として使用して、最終卵胞成熟を誘発し得る。そのため、一部の実施形態では、本処置方法は、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRHアゴニスト)を投与して最終卵胞成熟を誘発することを含み得る。GnRHアゴニストを使用して、例えば過剰反応の場合、例えば(COS処置後に)直径が12mm以上である卵胞が25個超であるか若しくは血清中エストラジオール(E2)レベルが5,000pmol/L以上であるか、又は直径が12mm以上である卵胞が30個超であるか若しくは血清中エストラジオール(E2)レベルが5,000pmol/L以上であるか、又はエストラジオール(E2)レベルが10,000pmol/L以上であるか、又は直径が12mm以上である卵胞が20個以上であるか若しくはエストラジオール(E2)レベルが15,000pmol/L以上である患者において、最終卵胞成熟を誘発し得る。GnRHアゴニストは、酢酸リュープロリド(例えば、LUPRON(登録商標))であり得、典型的には例えば1~4mgの用量で使用される。GnRHアゴニストは、酢酸トリプトレリン(例えば、DECAPEPTYL(登録商標))であり得、典型的には例えば0.2mgの用量で使用される。GnRHアゴニストを使用して最終卵胞成熟を誘発する場合、少量のhCG、例えば500~3000IUのhCGも使用し得る。GnRHアゴニストを使用して最終卵胞成熟を誘発する場合、例えば安全性の理由により、典型的には「全凍結」プロトコル(下記で論じる)に従う。
【0062】
一部の実施形態では、本処置方法は、卵母細胞を回収することと、技術分野で既知の方法(例えば、ICSI)により、この卵母細胞を受精させることとをさらに含む。
【0063】
一部の実施形態では、本処置方法は、新鮮移植方法である。新鮮移植方法では、1つ又は複数の胚盤胞を移植のために選択する。残余の胚盤胞を、将来の移植のために、当技術分野で既知の方法により凍結させ得る(ガラス化を含む)。そのため、新鮮移植実施形態では、この方法は、卵母細胞を回収することと、この卵母細胞を受精させることと、受精した卵母細胞を胚盤胞期まで成長させることと、胚盤胞を回収することと、任意選択的に品質/形態の評価に基づいて胚盤胞を選択することと、(任意選択的に例えば品質/形態の評価に基づいて選択された)新鮮な胚盤胞を子宮に移植することとを含む。具体的な実施形態では、本明細書に記載される組成物及び方法を単一胚盤胞移植プロトコルで使用し、単一胚盤胞を新鮮移植のために選択する。この実施形態に従い、残余の胚盤胞を、将来の移植のために、当技術分野で既知の方法により凍結させ得る。
【0064】
一部の実施形態では、本方法は、凍結移植方法である。凍結移植実施形態では、この方法は、卵母細胞を回収することと、この卵母細胞を受精させることと、受精した卵母細胞を胚盤胞期まで成長させることと、任意選択的に胚盤胞の染色体品質を評価することと、1つ若しくは複数又は全ての胚盤胞を凍結させることと、解凍された凍結胚盤胞(例えば、染色体評価に基づいて選択された正倍数性胚盤胞)を子宮に移植することとを含む。凍結及び「全凍結」方法では、選択された胚盤胞を、将来の移植(implantation)/移植(transfer)のために、当技術分野で既知の方法により凍結させる。
【0065】
一部の実施形態では、未受精卵母細胞を凍結させる。そのような実施形態では、この方法は、卵母細胞を回収することと、1つ若しくは複数又は全ての回収した卵母細胞を、将来の受精のために、当技術分野で既知の方法により凍結させることとを含む。そのような実施形態では、この方法は、その後、1つ又は複数の凍結卵母細胞を解凍することと、この卵母細胞を受精させることと、受精した卵母細胞を胚盤胞期まで成長させることと、任意選択的に品質/形態の評価に基づいて胚盤胞を選択することと、(任意選択的に例えば品質/形態の視覚的評価に基づいて選択された)胚盤胞を子宮に移植することとを含み得る。代わりに、この方法は、卵母細胞を回収することと、1つ若しくは複数又は全ての回収した卵母細胞を将来の受精のために凍結させることと、その後、1つ又は複数の凍結卵母細胞を解凍することと、この卵母細胞を受精させることと、受精した卵母細胞を胚盤胞期まで成長させることと、胚盤胞の染色体評価を行うことと、胚盤胞を凍結させることと、解凍された凍結胚盤胞(例えば、染色体評価に基づいて選択された正倍数性胚盤胞)を子宮に移植することとを含み得る。
【0066】
上記のように、一部の実施形態では、本方法は、胚盤胞の染色体品質を評価すること又は染色体評価に基づいて胚盤胞を選択することを含む。これは、遺伝情報及び染色体情報に関して胚盤胞(胚)を検査するために使用される、当技術分野で既知の方法、例えば着床前染色体異数性検査(PGSとしても既知であるPGT-A)又は着床前遺伝子診断(PGD)で行うことができる。PGS又はPGDが使用される場合、全ての染色体を評価し得、染色体異常のリスクが低いと同定された胚盤胞のみを胚移植(子宮への移植)のために選択する。これは、インキュベーター中で3~5日間成長させた後、顕微鏡下の外観に従って胚を選択する従来の方法に代わるものである。
【0067】
上記のように、本明細書に記載される方法は、性腺刺激ホルモンとして組換え卵胞刺激ホルモン(rFSH)を使用する同等の方法と比較して継続妊娠率を上昇させるのに有用である。具体的には、本明細書に記載される方法は、性腺刺激ホルモンとしてrFSH(例えば、GONAL-F)を使用する同等の方法と比較して継続妊娠率を上昇させる。実施例1で報告するように、本明細書に記載される方法により、継続妊娠率は、15%若しくは19%であり得るか又はより高くなり得る。
【0068】
そのため、一部の実施形態によれば、希発排卵及びPCOSの一方又は両方と診断されており、且つ制御された卵巣刺激に対して高い卵巣反応を有すると予想される女性を処置するための補助生殖技術方法であって、女性を、希発排卵及びPCOSの一方又は両方と診断されており、且つ35.7±0.5pmol/L(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中抗ミュラー管ホルモン(AMH)レベルを有すると同定することと、卵胞成長を刺激するのに有効な量の高度に精製されたメノトロピン(HP-hMG)を、同定された女性に投与することにより、不妊症処置(例えば、制御された卵巣刺激)を行うこととを含む方法が提供される。この方法は、女性を、(i)処置前に例えば7U/L以上の血清中黄体形成ホルモン(LH)レベル、(ii)処置前に例えば1.10nmol/L以上の血清中テストステロンレベル、及び(iii)処置前に例えば145pmol/L以上の血清中エストラジオールレベルの1つ又は複数を有すると同定することをさらに含み得る。HP-hMGは、典型的には、処置の1日目~処置の少なくとも例えば5日目に1日当たり75~450IUのhMGの用量、例えば1日当たり150IUのhMGの用量で投与され得、このとき、用量は、最終卵胞成熟の誘発のために所望のレベルの卵胞成熟が達成されるまで、患者の反応に応じて(例えば、75IUのHP-hMGの増分で)上下に調節され得る。この方法は、例えば、処置の6日目に開始して、性腺刺激ホルモン放出ホルモンアンタゴニスト(GnRHアンタゴニスト)を投与することをさらに含み得る。この方法は、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)又は任意選択的にhCGが補充されている性腺刺激ホルモン放出ホルモンアゴニスト(GnRHアゴニスト)を投与することにより、最終卵胞成熟を誘発することをさらに含み得る。上記で論じたように且つ下記の実施例1に示すように、この方法は、組換え卵胞刺激ホルモン(rFSH)の投与による処置(例えば、制御された卵巣刺激)と比較して体外受精後の継続妊娠率を上昇させるのに有効である。
【0069】
一例では、本方法は、女性を、希発排卵及びPCOS(例えば、PCOSに起因する希発排卵)の一方又は両方と診断されており、且つ35.7±0.5pmol/L(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中抗ミュラー管ホルモン(AMH)レベルを有すると同定することと、処置の1日目~処置の少なくとも例えば5日目に例えば1日当たり150IUの用量において、HP-hMGを、同定された女性に投与することにより、不妊症処置(例えば、制御された卵巣刺激)を行うことであって、このとき、用量は、最終卵胞成熟の誘発のために所望のレベルの卵胞成熟が達成されるまで、患者の反応に応じて(例えば、75IUのHP-hMGの増分で)上下に調節され得る、行うこととを含む。この例では、最大1日用量は、300又は450IUのHP-hMGであり、最小1日用量は、75IUのHP-hMGである。HP-hMGを、約1~約20日の総処置期間(刺激期間)、典型的には8~12日の総処置(刺激)期間、より具体的には典型的には約9~11日、例えば約10日にわたり、所望のレベルの卵胞産生が達成されるまで投与する。
【0070】
本発明によれば、処置/刺激前に35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中AMHレベルを有する、PCOSの(例えば、PCOSと同定又は診断された)患者(例えば、女性)における不妊症の処置での使用のためのHP-hMGを含む組成物(例えば、医薬組成物)も提供される(この患者は、無排卵患者ではない)。この不妊症の処置は、制御された卵巣刺激による不妊症の処置であり得る。この組成物は、75~450IUのHP-hMGを含み得る。この処置は、任意選択的に処置の1日目~処置の少なくとも5日目に75~450IU/日、好ましくは75~225IU/日、より好ましくは150又は225IU/日、最も好ましくは150IU/日のHP-hMGの1日用量を患者に投与することを含み得る。このHP-hMGの1日用量を、約1~約20日の総処置期間(刺激期間)、典型的には8~12日の総処置(刺激)期間、より具体的には典型的には約9~11日、例えば約10日にわたり、所望のレベルの卵胞産生が達成されるまで、例えば処置の1日目~例えば5日目での開始用量での処置後、例えば患者の反応に基づいてこの刺激期間中に調節し得る。
【0071】
本発明によれば、処置/刺激前に35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中AMHレベルを有する、PCOSに起因する希発排卵の(例えば、PCOSに起因する希発排卵と同定又は診断された)患者(例えば、女性)における不妊症の処置での使用のためのHP-hMGを含む組成物(例えば、医薬組成物)も提供される(この患者は、無排卵患者ではない)。この不妊症の処置は、制御された卵巣刺激による不妊症の処置であり得る。この組成物は、75~450IUのHP-hMGを含み得る。この処置は、任意選択的に処置の1日目~処置の少なくとも5日目に75~450IU/日、好ましくは75~225IU/日、より好ましくは150又は225IU/日、最も好ましくは150IU/日のHP-hMGの1日用量を患者に投与することを含み得る。このHP-hMGの1日用量を、約1~約20日の総処置期間(刺激期間)、典型的には8~12日の総処置(刺激)期間、より具体的には典型的には約9~11日、例えば約10日にわたり、所望のレベルの卵胞産生が達成されるまで、例えば処置の1日目~例えば5日目での開始用量での処置後、例えば患者の反応に基づいてこの刺激期間中に調節し得る。
【0072】
任意の実施形態では、本組成物は、処置/刺激前に35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中AMHレベル及び処置/刺激前に145pmol/L以上の血清中エストラジオールレベル(例えば、150pmol/L以上の血清中エストラジオールレベル)を有する患者の処置のためのものであり得る。血清中エストラジオールレベルを、実施例1で説明するように、当技術分野で公知の方法により測定し得る。任意の実施形態では、この処置は、処置/刺激前に、Arce et al.,Fertility and Sterility 99:1644-53(2013)で説明されているBeckmann-Coulter Gen 2アッセイを使用して測定した場合、35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中AMHレベル、例えば35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)のAMHレベル又は別の方法により評価した同等のAMHレベルを有する患者を同定するさらなる工程を含み得る。
【0073】
任意の実施形態では、本処置は、処置/刺激前に、上記で開示されているように、35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中AMHレベル及び145pmol/L以上の血清中エストラジオールレベル(例えば、150pmol/L以上の血清中エストラジオールレベル)を有する患者を同定するさらなる工程を含み得る。
【0074】
任意の実施形態では、本組成物は、処置/刺激前に7U/L以上の血清中黄体形成ホルモン(LH)レベル(例えば、7.55U/L以上の血清中黄体形成ホルモン)及び/又は処置/刺激前に1.10nmol/L以上の血清中テストステロンレベル(例えば、1.14nmol/L以上の血清中テストステロンレベル)の1つ又は複数を有する患者の処置のためのものであり得る。血清中のLHレベル及びテストステロンレベルを、実施例1で説明するように、当技術分野で公知の方法により測定し得る。そのため、任意の実施形態では、この処置は、処置/刺激前に7U/L以上の血清中黄体形成ホルモン(LH)レベル(例えば、7.55U/L以上の血清中黄体形成ホルモン)及び/又は処置/刺激前に1.10nmol/L以上の血清中テストステロンレベル(例えば、1.14nmol/L以上の血清中テストステロンレベル)を有する患者を同定するさらなる工程を含み得る。
【0075】
任意の実施形態では、本処置は、(a)処置/刺激前に35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中抗ミュラー管ホルモン(AMH)レベル、及び(b)処置/刺激前に145pmol/L以上の血清中エストラジオールレベル(例えば、150pmol/L以上の血清中エストラジオールレベル)を有し、且つ任意選択的に、(c)処置/刺激前に1.10nmol/L以上の血清中テストステロンレベル(例えば、1.14nmol/L以上の血清中テストステロンレベル)、及び(d)処置/刺激前に7U/L以上の血清中黄体形成ホルモン(LH)レベル(例えば、7.55U/L以上の血清中黄体形成ホルモン)の一方又は両方も有する患者を同定すること(例えば、診断すること)と;任意選択的に処置の1日目~処置の少なくとも5日目に75~450IU/日、好ましくは75~225IU/日、より好ましくは150又は225IU/日、最も好ましくは150IU/日のHP-hMGの1日用量を患者に投与することとを含み得る。
【0076】
本発明によれば、PCOSであり(例えば、PCOSと同定又は診断されており)、且つ処置/刺激前に35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中AMHレベルを有する患者(非無排卵患者、例えば女性)における不妊症の処置での使用のためのHP-hMGを含む組成物(例えば、医薬組成物)であって、処置は、
処置/刺激前に、例えばArce et al.,Fertility and Sterility 99:1644-53(2013)で説明されているBeckmann-Coulter Gen 2アッセイを使用して測定した場合、35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中AMHレベル又は別の方法により評価した同等のAMHレベルを有するPCOSの患者を同定する(例えば、診断する)ことと;
任意選択的に処置の1日目~処置の少なくとも5日目に1日当たり75~450IU、好ましくは75~225IU/日、より好ましくは150又は225IU/日、最も好ましくは150IU/日のHP-hMGの1日用量を(この患者に)投与することと
を含む、組成物も提供される。1日用量を、約1~約20日の総刺激期間(処置期間)、典型的には8~12日の総刺激期間、より具体的には典型的には約9~11日、例えば約10日にわたり、所望のレベルの卵胞産生が達成されるまで、例えば処置の1日目~例えば5日目での開始用量での処置後、例えば患者の反応に基づいてこの刺激期間中に調節し得る。この不妊症の処置は、制御された卵巣刺激による不妊症の処置であり得る。この組成物は、75~450IUのHP-hMGを含み得る。
【0077】
本発明によれば、PCOSに起因する希発排卵であり(例えば、PCOSに起因する希発排卵と同定又は診断されており)、且つ処置/刺激前に35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中AMHレベルを有する患者(非無排卵患者、例えば女性)における不妊症の処置での使用のためのHP-hMGを含む組成物(例えば、医薬組成物)であって、処置は、
処置/刺激前に、例えばArce et al.,Fertility and Sterility 99:1644-53(2013)で説明されているBeckmann-Coulter Gen 2アッセイを使用して測定した場合、35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中AMHレベル又は別の方法により評価した同等のAMHレベルを有する、PCOSに起因する希発排卵の患者を同定する(例えば、診断する)ことと;
任意選択的に処置の1日目~処置の少なくとも5日目に1日当たり75~450IU、好ましくは75~225IU/日、より好ましくは150又は225IU/日、最も好ましくは150IU/日のHP-hMGの1日用量を(この患者に)投与することと
を含む、組成物も提供される。1日用量を、約1~約20日の総刺激期間(処置期間)、典型的には8~12日の総刺激期間、より具体的には典型的には約9~11日、例えば約10日にわたり、所望のレベルの卵胞産生が達成されるまで、例えば処置の1日目~例えば5日目での開始用量での処置後、例えば患者の反応に基づいてこの刺激期間中に調節し得る。この不妊症の処置は、制御された卵巣刺激による不妊症の処置であり得る。この組成物は、75~450IUのHP-hMGを含み得る。
【0078】
任意の実施形態では、本処置は、(a)処置/刺激前に35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中抗ミュラー管ホルモン(AMH)レベル、及び(b)処置/刺激前に145pmol/L以上の血清中エストラジオールレベル(例えば、150pmol/L以上の血清中エストラジオールレベル)を有し、且つ任意選択的に、(c)処置/刺激前に1.10nmol/L以上の血清中テストステロンレベル(例えば、1.14nmol/L以上の血清中テストステロンレベル)、及び(d)処置/刺激前に7U/L以上の血清中黄体形成ホルモン(LH)レベル(例えば、7.55U/L以上の血清中黄体形成ホルモン)の一方又は両方も有する患者を同定すること(例えば、診断すること)と;任意選択的に処置の1日目~処置の少なくとも5日目に75~450IU/日、好ましくは75~225IU/日、より好ましくは150又は225IU/日、最も好ましくは150IU/日のHP-hMGの1日用量を患者に投与することとを含み得る。
【0079】
さらなる態様において、本発明によれば、希発排卵及び/又はPCOS(例えば、PCOSに起因する希発排卵である女性)であり(例えば、希発排卵及び/又はPCOSと同定又は診断されており)、且つ処置/刺激前に35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中AMHレベルを有する患者(例えば、女性、例えば非無排卵女性)における不妊症の処置のための医薬品(例えば、医薬組成物)の製造におけるHP-hMGの使用が提供される。この不妊症の処置は、制御された卵巣刺激による不妊症の処置であり得る。この組成物は、75~450IUのHP-hMGを含み得る。この処置は、(例えば、Arce et al.,Fertility and Sterility 99:1644-53(2013)で説明されているBeckmann-Coulter Gen 2アッセイを使用して測定した場合に)処置/刺激前に35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)の血清中抗ミュラー管ホルモン(AMH)レベル又は別の方法により評価した同等のAMHレベルを有する患者を同定することを含み得る。この処置は、処置/刺激前に145pmol/L以上の血清中エストラジオールレベル(例えば、150pmol/L以上の血清中エストラジオールレベル)を有する患者を同定するさらなる工程を含み得る。この処置は、加えて、処置/刺激前に7U/L以上の血清中黄体形成ホルモン(LH)レベル(例えば、7.55U/L以上の血清中黄体形成ホルモン)及び/又は処置/刺激前に1.10nmol/L以上の血清中テストステロンレベル(例えば、1.14nmol/L以上の血清中テストステロンレベル)を有する患者を同定するさらなる工程を含み得る。この不妊症の処置は、所望のレベルの卵胞産生が達成されるまで、1日当たり75~450IUのhMGの用量でHP-hMGを投与することを含み得る。
【0080】
上記のように、本明細書で開示される(即ち本明細書で開示される様々な実施形態のそれぞれに従う)不妊症の処置は、性腺刺激ホルモンとして組換え卵胞刺激ホルモン(rFSH)を使用する同等の処置方法と比較して高い継続妊娠率と関連している。
【0081】
上記のように、任意の実施形態では、この組成物は、75~450IUのHP-hMG(例えば、MENOPUR(登録商標))を含み得る。
【0082】
上記のように、任意の実施形態では、不妊症の処置は、約1~約20日の総刺激期間(処置期間)、典型的には8~12日の総刺激期間、より具体的には典型的には約9~11日、例えば約10日にわたり、所望のレベルの卵胞産生が達成されるまで、1日当たり75~450IUのHP-hMG、例えば75IU/日、150IU/日、225IU/日、300IU/日、375IU/日又は450IU/日の用量(用量は、例えば処置の1日目~例えば5日目での開始用量での処置後、例えば患者の反応に基づいてこの刺激期間中に調節され得る)を(患者に)投与することを含み得る。そのため、任意の実施形態では、この処置は、任意選択的に処置の1日目~処置の少なくとも5日目に75~450IU/日、好ましくは75~225IU/日、より好ましくは150又は225IU/日、最も好ましくは150IU/日のHP-hMGの1日用量を患者に投与することを含み得る。
【0083】
一例では、この処置は、処置の1日目~少なくとも5日目に1日当たり150IUのHP-hMGの用量を(患者に)投与することを含む。用量は、例えば、処置の6日目から、(例えば、患者の反応に応じて)上下に(例えば、75IUのhMGの増分で)調節され得る。この例では、最大1日用量は、300又は450IUのhMGであり、最小1日用量は、75IUのhMGである。
【0084】
任意の実施形態では、本処置は、リード卵胞が直径14mmに達した時点及び/又は刺激の5日目、若しくは6日目、若しくは7日目(例えば、刺激6日目)に開始して、且つHP-hMG投与の残りの期間を通して継続してGnRHアンタゴニストを投与するさらなる工程を含み得る。
【0085】
任意の実施形態では、本処置は、上記で説明されているように、最終卵胞成熟を誘発することをさらに含み得る。そのため、この処置は、hCG(例えば、組換えhCG)又はGnRHアゴニストを投与して最終卵胞成熟を誘発することを含み得る。上記で論じたように、GnRHアゴニストを使用して最終卵胞成熟を誘発する場合、少量のhCGも使用し得る。
【0086】
任意の実施形態では、本処置は、卵母細胞を回収すること(例えば、採取すること)と;この卵母細胞を受精させること(fertilizing)(例えば、授精させること(inseminating))と;受精した卵母細胞を胚盤胞期まで成長させることとをさらに含み得る。受精(fertilization)(例えば、授精(insemination))は、体外受精、任意選択的に卵細胞質内精子注入法(ICSI)であり得る。
【0087】
任意の実施形態では、本処置は、卵母細胞を回収することと、この卵母細胞を受精させることと、受精した卵母細胞を胚盤胞期まで成長させることと、胚盤胞を回収することと、任意選択的に品質/形態の評価に基づいて胚盤胞を選択することと、(任意選択的に例えば品質/形態の評価に基づいて選択された)新鮮な胚盤胞を子宮に移植することとを含む新鮮移植方法であり得る。この処置は、新鮮移植のために単一の胚盤胞が選択される単一胚盤胞移植プロトコルであり得る。任意選択的に、残余の胚盤胞を、将来の移植のために、当技術分野で既知の方法により凍結させ得る。
【0088】
任意の実施形態では、本処置は、卵母細胞を回収することと、この卵母細胞を受精させることと、受精した卵母細胞を胚盤胞期まで成長させることと、任意選択的に胚盤胞の染色体品質を評価することと、1つ若しくは複数又は全ての胚盤胞を凍結させることと、解凍された凍結胚盤胞(例えば、染色体評価に基づいて選択された正倍数性胚盤胞)を子宮に移植することとを含む凍結移植方法であり得る。凍結及び「全凍結」方法では、選択された胚盤胞を、将来の移植(implantation)/移植(transfer)のために、当技術分野で既知の方法により凍結させる。
【0089】
任意の実施形態では、本方法は、未受精卵母細胞を凍結させることを伴い得る。そのため、この方法は、卵母細胞を回収することと、1つ若しくは複数又は全ての回収した卵母細胞を凍結させることと、その後、1つ又は複数の凍結卵母細胞を解凍することと、この卵母細胞を受精させることと、受精した卵母細胞を胚盤胞期まで成長させることと、任意選択的に品質/形態の評価に基づいて胚盤胞を選択することと、(任意選択的に例えば品質/形態の視覚的評価に基づいて選択された)胚盤胞を子宮に移植することとを含み得る。代わりに、この方法は、卵母細胞を回収することと、1つ若しくは複数又は全ての回収した卵母細胞を凍結させることと、その後、1つ又は複数の凍結卵母細胞を解凍することと、この卵母細胞を受精させることと、受精した卵母細胞を胚盤胞期まで成長させることと、胚盤胞の染色体評価を行うことと、胚盤胞を凍結させることと、解凍された凍結胚盤胞(例えば、染色体評価に基づいて選択された正倍数性胚盤胞)を子宮に移植することとを含み得る。
【0090】
本明細書に記載される方法のさらなる態様を下記の実施例で説明するが、この実施例は、いかなる点においても限定的ではない。
【実施例
【0091】
実施例1 - MEGASET HRの臨床試験及びレトロスペクティブ分析
下記は、卵細胞質内精子注入及び単一胚盤胞移植(新鮮移植)を受けている、BMIが18~30kg/mであり、且つ血清中抗ミュラー管ホルモン(AMH)が35.7pmol/L以上である620例の女性(21~35歳)における多施設、無作為化、評価者ブラインドの対照非劣性試験で収集したデータのレトロスペクティブ分析を説明する。この試験は、「MENOPUR(登録商標)in a Gonadotropin-Releasing Hormone(GnRH)Antagonist Cycle With Single-Blastocyst Transfer in a High Responder Subject Population(MEGASET HR)」(ClinicalTrials.gov識別子NCT02554279)という名称であった。さらなる詳細は、clinicaltrials.gov/ct2/show/record/NCT02554279及びWitz et al.,Fertility and Sterility(印刷中)(2020年3月29日にオンラインで公開)に見出され得る。
【0092】
1.試験集団
主な選択基準は、21~45日の規則的な排卵月経周期であり、肥満度指数(BMI)が18~30kgである、妊娠を望んでいる21~35歳の女性であった。患者/対象は、スクリーニング時に血清中抗ミュラー管ホルモン(AMH)が5ng/以上(35.71pmol/L)である対象と定義された予想高反応者であった。この対象は、不妊症の病歴(例えば、少なくとも12ヶ月にわたり又はドナー精子を受け取っている場合には少なくとも6ヶ月にわたり妊娠できなかった)が証明されており、月経周期2日目又は3日目の血清中FSHレベルは、1~12IU/L(含む)であった。
【0093】
除外基準は、既知のステージIII~IVの子宮内膜症;出生につながらない反復流産の病歴(反復は、2回以上の連続した流産と定義される);及び性腺刺激ホルモンに対する反応不良に起因する過去の体外受精(IVF)又は補助生殖技術(ART)の失敗(反応不良は、2個以下の成熟卵胞の成長又は反応不良に起因する卵母細胞回収前の2回の過去の失敗した周期キャンセルの病歴と定義される)であった。無排卵女性も除外した。
【0094】
2.試験プロトコル
これは、米国の高反応者対象集団での強制単一胚盤胞移植(新鮮移植)によるGnRHアンタゴニストサイクルにおけるHP-hMG及びrFSHを比較する、他施設、無作為化、評価者ブラインドの第IV相臨床試験であった。この試験の目的は、IVF/ICSI処置を受けている潜在的な高反応者において、HP-hMGが、継続妊娠率(OPR)に関してrFSHに対して少なくとも非劣性であることを実証することであった。
【0095】
対象を、Beckman Coulter-DSL assay(Chaska,MN)からの材料及び試薬を利用する単一基準試験所(ReproSource,Inc.,Woburn,MA)を使用して、Arce et al.,Fertility and Sterility 99:1644-53(2013)で説明されているBeckmann-Coulter Gen 2アッセイによる5.0ng/ml以上(例えば35.7pmol/L以上)のAMHの血清中レベルに基づいて、潜在的な高卵巣反応者と分類した。
【0096】
対象を1:1に無作為化して、GnRHアンタゴニストサイクルにおいて、性腺刺激ホルモンとしての150IU用量のHP-hMG(N=311;MENOPUR(登録商標),Ferring Pharmaceuticals,Inc.)又はrFSH(N=309;GONAL-F,EMD Serono)のいずれかによるCOSを施した。処置を、最初の5日にわたり、150IUのHP-hMG又はrFSHの用量で月経周期の2日目又は3日目に開始した。刺激6日目以降、TVUSにより評価した卵胞反応に基づいて、1回の調節当たり75IUで必要に応じて投与を調節し得た。しかしながら、最大性腺刺激ホルモン用量は、300IU/日であった。性腺刺激ホルモン投与を、最大20日間継続し得、惰性を禁止した。
【0097】
リード卵胞が直径14mm超であった場合、GnRHアンタゴニスト(酢酸ガニレリクス)を0.25mgの1日用量で開始し、性腺刺激ホルモン処置期間全体を通して継続した。
【0098】
TVUSで、直径が17mm以上の卵胞を3個観察すると直ちに250μgのhCG(絨毛性ゴナドトロピンアルファ)の単回注射を投与して、最終卵胞成熟を誘発した。しかしながら、対象が過剰な卵巣反応(それぞれ12mm以上の30個超の卵胞及び/又は5,000pg/mL以上のエストラジオール(E2)レベル)を示した場合、GnRHアゴニスト(4mgの酢酸リュープロリド)を最後のGnRHアンタゴニスト用量後12時間以上で投与し、新鮮移植をキャンセルし、全ての胚盤胞を生検し、生存している胚盤胞を、OHSSのリスクを軽減するために、次の移植サイクルでの使用のために凍結させた。
【0099】
卵母細胞の回収をhCG又はGnRHアゴニスト投与後約36時間で行った。卵母細胞を回収後4±1時間でICSIにより、パートナー精子を使用して受精させた。卵母細胞、胚及び胚盤胞の品質を評価した。ICSI後5日目に形態(Gardner and Schoolcraftスケール)による最高品質の単一の胚盤胞を移植し(新鮮移植)、全ての残余の胚盤胞を、ガラス化方法を使用して凍結させた。
【0100】
卵母細胞回収の翌日に、黄体期支持のために黄体ホルモンの膣への挿入(100mgを1日2回-ENDOMETRIN(登録商標);Ferring)を開始し、これをβ-hCG検査日まで継続した(胚盤胞/胚移植後10~15日)。継続妊娠を確認するまで黄体支持を継続し得た。
【0101】
胚盤胞移植の約2週間後、陽性のβ-hCG検査により生化学的妊娠を確認した。5~6週間の妊娠での胎児心音を伴う少なくとも1つの子宮内胎嚢を示すTVUSにより、臨床妊娠を確認した。10~11週間の妊娠での少なくとも1人の子宮内生存胎児により、継続妊娠を確認した。
【0102】
新鮮サイクルにおいて継続妊娠していない対象について、この試験での対象の無作為化から6ヶ月以内に単一の凍結胚盤胞移植を開始し得た。PGSの結果を使用して、凍結移植のために正倍数性胚盤胞を選択し得た。胚盤胞移植情報、β-hCG検査、臨床妊娠、継続妊娠、妊娠損失率及び出生を含む凍結-解凍胚移植サイクルのデータを収集した。
【0103】
試験後の追跡調査には、新鮮サイクル又は無作為化凍結-解凍胚移植サイクルの1年後で継続妊娠している全ての対象に関して収集した出産情報(出生及び新生児の健康状態)の収集が含まれていた。新鮮サイクル後の出生率並びに新鮮サイクル後及び無作為化凍結-解凍胚置換サイクルの6ヶ月後の累積出生率を試験後の追跡調査の一部として評価した。
【0104】
使用したHP-hMGは、MENOPUR(登録商標)(Ferring Pharmaceuticals,Inc.により提供される)であり、乾燥HP-hMG(75IUのHP-hMG、75IUのFSH活性及び75IUのLH活性(hCGにより提供されるLH活性を含む)を提供する)が入ったバイアル及び再構成のための溶媒が入ったバイアルとして提供された。再構成後、各バイアルには、75IUのFSH活性及び75IUのLH活性(hCGにより提供されるLH活性を含む)が入っている。
【0105】
使用したFSHは、組換えFSH(GONAL-F,EMD Serono)であり、注射のための溶液として提供された。
【0106】
使用した他の薬物は、下記であった:
・酢酸ガニレリクス注射液、Merck製、0.25mgのガニレリクスを送達するプレフィルドシリンジ(0.5mL)として提供される。リード卵胞が14mm以上であり、及び/又は血清中E2レベルが300pg/mL以上となると、酢酸ガニレリクスを0.25mgの1日用量で開始し、性腺刺激ホルモン処置期間全体を通して継続させた。
・OVIDREL(登録商標)(絨毛性ゴナドトロピンアルファ)、EMD Serono製、250μgの絨毛性ゴナドトロピンアルファを送達するプレフィルドシリンジ(0.5mL)として提供され、TVUSで、直径が17mm以上の卵胞を3個観察すると直ちに単回注射として投与した。
・ENDOMETRIN(登録商標)(黄体ホルモン)、Ferring製、1日2回経膣投与する挿入物として提供され、それぞれ100mg(200mg/日)を送達する。
【0107】
主要エンドポイントは、継続妊娠率であり、継続妊娠は、10~11週間の妊娠での検出可能な胎児心音を伴う生存胎児を有する少なくとも1つの子宮内妊娠の存在として定義される。副次的エンドポイントには、下記が含まれた:
・生化学妊娠率(陽性のβ-hCG検査)
・臨床妊娠率(5~6週間の妊娠での胎児心音を伴う少なくとも1つの子宮内胎嚢を示す経膣超音波検査)
・初期妊娠喪失(新鮮サイクルにおける10~11週間の妊娠においてβ-hCG検査が2回陽性であるが継続妊娠ではないと定義される)
・出生率
・TVUSで評価した場合の卵胞成長、卵胞レベル(卵胞の総数、9mm以下、10~11mm、12~14mm、15~16mm及び17mm以上の卵胞の数)並びに対象レベル(最大卵胞サイズ、平均卵胞サイズ、3つの最大卵胞の平均サイズ並びに17mm以上、15mm以上及び12mm以上の卵胞の平均数)
・内分泌プロファイル(血清中エストラジオール[E2]、黄体ホルモン[P4]、hCG、LH)
・回収された卵母細胞、受精率及び胚の品質。
【0108】
3.血清アッセイ
血液サンプルを、刺激期間前及び刺激期間全体を通して採取した(例えば、刺激開始前、刺激6日目及び刺激最終日)。血清を、AMH(Beckman Coulter Gen 2)、FSH、LH及びhCGに関してELISAを使用して分析し、エストラジオールに関して二次元高速液体クロマトグラフィー及びタンデム質量分析を使用して分析し、プロゲステロン及びテストステロンに関して液体クロマトグラフィー及びタンデム質量分析を使用して分析した。検出下限は、下記の通りであった:FSH 0.017mIU/mL;LH 0.005mIU/mL;βhCG 0.5mIU/mL;エストラジオール 1.0pgl/mL、プロゲステロン 10ng/dL及びテストステロン 2.5ng/dL。
【0109】
4.結果及びレトロスペクティブ分析
継続妊娠の主要エンドポイントに関する非劣性目標が達成された。HP-hMGは、rFSHと比較して数値的に高い継続妊娠率と関連していた(35.5%対30.7%、P>0.05)。rFSH群における1例の患者当たりの卵母細胞の平均数(±SD;22.2±11.54)は、hMG群(15.1±10.12)と比べて高く、OHSSの割合での統計的に有意な増加を伴う卵巣反応の差違であった(21.4%対9.7%;p<0.05)。
【0110】
改変治療意図集団(性腺刺激ホルモンの少なくとも1回の用量が投与された全無作為化対象)におけるレトロスペクティブ分析には、不妊症診断による主要エンドポイント率の評価が含まれた。不妊症診断によるレトロスペクティブ分析により、子宮内膜症、男性因子、卵管性不妊症、突発性又は他のものと診断されたものにおける処置群間での継続妊娠率の有意差が示されなかった。しかしながら、希発排卵と診断されたものの中では、HP-hMG処置(N=50)は、rFSH処置(N=56)と比べて19.2%高い継続妊娠率(95%信頼区間1.2%、37.3%;それぞれ46.0%対26.8%の継続妊娠率)と予想外にも関連していた。
【0111】
下記の表で示すように、FSH及びBMIは、類似していたが、残りの試験集団と比較して、希発排卵の試験集団は、平均ベースラインAMHがより高く(60.95対52.10pmol/L、p<0.001)、平均ベースライン黄体形成ホルモンがより高く(7.55対6.45U/L、p=0.007)、平均ベースラインテストステロンがより高く(1.13対1.00nmol/L、p=0.006)、且つ平均ベースラインエストラジオールがより高かった(167.04対135.46pmol/L、p=0.001)。t検定(連続パラメータ)又はフィッシャーの正確確率検定(断片的パラメータ)のいずれかを使用して、希発排卵である集団と、希発排卵ではない集団との間の比較を行った。
【0112】
【表1】
【0113】
血清中のAMH、LH、テストステロン及びエストラジオールのレベルの評価(並びにプロゲステロン上昇の傾向)に基づいて、希発排卵患者集団は、PCOSの患者(例えば、希発排卵がPCOSに起因した患者)に含まれていた可能性が高い。これは、AMH、LH、テストステロン、エストラジオール及びプロゲステロンのレベルの上昇がPCOSの特徴であり、且つ希発排卵の他の一般的な原因(例えば、卵巣機能不全、高プロラクチン血症、甲状腺機能障害及び腎臓機能障害)がこの試験の選択基準及び除外基準により除外されていると思われたからである。
【0114】
【表2】
【0115】
【表3】
【0116】
そのため、本発明者らは、驚くべきことに、高反応者であると予想される患者であって、希発排卵(例えば、PCOSに起因する希発排卵)と診断され、且つCOSのための性腺刺激ホルモンとしてHP-hMGで処置される患者(N=50)が、COSのための性腺刺激ホルモンとしてrFSHで処置される患者(N=56)と比較して、新鮮移植後の継続妊娠率が19.2%高い(95%信頼区間1.2%~37.3%)ことを発見した。これは、予想される高反応者の全集団におけるHP-hMG処置に関連する継続妊娠率の改善(FSHを基準にする)と比べて大きい(35.5%対30.7%、P>0.05)。
【0117】
そのため、本発明者らは、FSHではなく、COSのための性腺刺激ホルモンとしてのhMGによる処置のための、希発排卵(例えば、PCOSに起因する希発排卵)と診断された予想される高反応者患者の選択が、より高い継続妊娠率と関連し得ることを発見した。従って、本明細書に記載される本発明は、下記の1つ若しくは複数又は全てを含む複数の基準に従って選択された対象に関する:希発排卵診断;PCOS診断;Arce et al.,Fertility and Sterility 99:1644-53(2013)で説明されているBeckmann-Coulter Gen 2アッセイによる35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)のAMHの血清中レベル又は別の方法により決定された同等の血清中AMHレベル;145pmol/L以上のベースライン血清中エストラジオール、7U/L以上のベースライン血清中LH及び1.10nmol/L以上のベースライン血清中テストステロン。
【0118】
実施例2
予想される高反応者である希発排卵及び/又はPCOS患者(例えば、PCOSに起因する希発排卵)の不妊症処置の例示的な方法を下記に概説する。性腺刺激ホルモンとしての(FSHではなく)HP-hMGによるCOSを含む不妊症処置は、比較的高い継続妊娠率と関連している。
【0119】
典型的には、この不妊症の処置は、医師が監督する。典型的には、患者は、医師により、希発排卵及び/又はPCOS(例えば、PCOSに起因する希発排卵)と診断されるか又は診断されている。この患者は、例えば、血清中AMH検査、例えばArce et al.,Fertility and Sterility 99:1644-53(2013)で説明されているBeckmann-Coulter Gen 2アッセイにより、AMHの血清中レベルが35.7±0.5pmol/L以上(5.0±0.2ng/ml以上)であるか又は別の方法により決定された血清中AMHレベルが同等であることに基づいて、予想される高反応者とも診断されるか又は診断されている場合がある。加えて又は代わりに、この患者は、(i)制御された卵巣刺激前に7U/L以上の血清中黄体形成ホルモン(LH)レベル、(ii)制御された卵巣刺激前に1.10nmol/L以上の血清中テストステロンレベル、及び(iii)制御された卵巣刺激前に145pmol/L以上の血清中エストラジオールレベルの1つ又は複数を有すると同定されるか又は同定されている場合がある。
【0120】
希発排卵及び/又はPCOS(例えば、PCOSに起因する希発排卵)と診断されており、且つ処置前に35.7±0.5pmol/L以上又は5.0±0.2ng/ml以上のAMHの血清中レベルを有し(任意選選択的に有すると同定されており)、且つ任意選択的に、(i)制御された卵巣刺激前に7U/L以上の血清中黄体形成ホルモン(LH)レベル、(ii)制御された卵巣刺激前に1.10nmol/L以上の血清中テストステロンレベル、及び(iii)制御された卵巣刺激前に145pmol/L以上の血清中エストラジオールレベルの1つ又は複数を有すると同定されている患者を、性腺刺激ホルモンとしてHP-hMG(例えばMENOPUR(登録商標)、Ferring Pharmaceuticalsから入手可能)を使用するCOSのために選択する。上記のように、使用のために再構成した場合、MENOPU(登録商標)の各バイアルは、75IUのFSH活性及び75IUのLH活性(hCG駆動LH活性を含む)を含む。
【0121】
制御された卵巣刺激を患者の月経周期の2日目又は3日目に開始する(「刺激1日目」)。この処置は、処置の1日目(刺激1日目)~少なくとも5日目(刺激5日目)に注射によりMENOPUR(登録商標)の1日用量(例えば150IU/日)を投与することを含む。用量は、(例えば、患者の卵巣反応に応じて)300若しくは450IUのhMGの最大1日用量又は75IUのhMGの最小1日用量まで(例えば、75IUのhMGの増分で)上下に調節され得る。この処置を最大20日(刺激20日目以下)にわたり継続し得るが、典型的には8~12日(例えば約10日)である。
【0122】
リード卵胞が、TVUSにより評価した場合に直径14mm以上である場合、GnRHアンタゴニスト(酢酸ガニレリクス)を0.25mgの1日用量で開始して、性腺刺激ホルモン刺激処置期間全体を通して継続し得る。
【0123】
最終卵胞成熟をhCG又はGnRHアゴニストにより誘発する。TVUSで、直径が17mm以上の卵胞を3個観察すると直ちに250μgのhCG(絨毛性ゴナドトロピンアルファ)の単回注射を投与して、最終卵胞成熟を誘発し得る。代わりに、例えばCOSに対する過剰な反応の場合(例えば、COS処置後に直径12mm以上の30個超の卵胞を有するか又は5,000pg/ml以上の血清中エストラジオール(E2)レベルである患者)、GnRHアゴニストを使用して最終卵胞成熟を誘発し得る。GnRHアゴニストを使用する場合、このGnRHアゴニストは、例えば、例えば1~4mgの用量の酢酸リュープロリド(例えば、LUPRON(登録商標))であり得る。
【0124】
この方法は、上記で説明されているプロトコル及び当技術分野で既知であるこのプロトコルの変形形態に従い、卵母細胞の回収(一般的に最終卵胞成熟の誘発後約36時間)、受精及びその後の手順(例えば、胚盤胞の回収及び新鮮な胚盤胞の子宮への移植)をさらに含む。
【国際調査報告】