IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マイクロポート・ニューロテック(シャンハイ)・カンパニー・リミテッドの特許一覧

特表2023-534402放射線不透過構造、ステント、および血栓摘出システム
<>
  • 特表-放射線不透過構造、ステント、および血栓摘出システム 図1
  • 特表-放射線不透過構造、ステント、および血栓摘出システム 図2
  • 特表-放射線不透過構造、ステント、および血栓摘出システム 図3
  • 特表-放射線不透過構造、ステント、および血栓摘出システム 図4
  • 特表-放射線不透過構造、ステント、および血栓摘出システム 図5
  • 特表-放射線不透過構造、ステント、および血栓摘出システム 図6
  • 特表-放射線不透過構造、ステント、および血栓摘出システム 図7
  • 特表-放射線不透過構造、ステント、および血栓摘出システム 図8
  • 特表-放射線不透過構造、ステント、および血栓摘出システム 図9
  • 特表-放射線不透過構造、ステント、および血栓摘出システム 図10
  • 特表-放射線不透過構造、ステント、および血栓摘出システム 図11
  • 特表-放射線不透過構造、ステント、および血栓摘出システム 図12
  • 特表-放射線不透過構造、ステント、および血栓摘出システム 図13
  • 特表-放射線不透過構造、ステント、および血栓摘出システム 図14
  • 特表-放射線不透過構造、ステント、および血栓摘出システム 図15
  • 特表-放射線不透過構造、ステント、および血栓摘出システム 図16
  • 特表-放射線不透過構造、ステント、および血栓摘出システム 図17
  • 特表-放射線不透過構造、ステント、および血栓摘出システム 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-09
(54)【発明の名称】放射線不透過構造、ステント、および血栓摘出システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/22 20060101AFI20230802BHJP
   A61F 2/01 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
A61B17/22 528
A61F2/01
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022581435
(86)(22)【出願日】2021-08-19
(85)【翻訳文提出日】2023-02-21
(86)【国際出願番号】 CN2021113545
(87)【国際公開番号】W WO2022002282
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】202010621109.2
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516346171
【氏名又は名称】マイクロポート・ニューロテック(シャンハイ)・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メン,ファンヘ
(72)【発明者】
【氏名】ホウ,フアン
(72)【発明者】
【氏名】キアン,イエ
(72)【発明者】
【氏名】リュー,チェンヤン
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160EE22
4C160MM36
4C160MM37
4C160NN04
(57)【要約】
放射線不透過構造、ステントおよび血栓摘出システムが開示される。放射線不透過構造は、放射線不透過スリーブ(2)を固定し、支持し、接続する少なくとも1つの突起と、前記少なくとも1つの突起のそれぞれ上に配置される少なくとも1つの放射線不透過スリーブ(2)と、前記放射線不透過スリーブ(2)と前記突起との間の隙間に充填される少なくとも1つの充填物(3)とを含む。従来技術と比較すると、放射線不透過機構により、レーザーカット血栓摘出装置の遠位端に配置された放射線不透過性ドットのX線可視性が向上し、X線撮像においてレーザーカット血栓摘出装置内のすべての金属ステントが視認できるわけではないという問題を解決する。放射線不透過構造は、任意の種類のステントで用いることができ、血栓摘出装置における使用に限らない。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステント(11)における使用のための放射線不透過構造であって、
前記放射線不透過構造は、
少なくとも1つの突起の上に配置される、少なくとも1つの放射線不透過スリーブ(2)と、
前記放射線不透過スリーブ(2)と前記突起との間の隙間に充填される、少なくとも1つの充填物(3)と、
を備える、放射線不透過構造。
【請求項2】
さらに少なくとも1つの本体放射線不透過ワイヤ(4)を備える、請求項1に記載の放射線不透過構造。
【請求項3】
前記本体放射線不透過ワイヤ(4)は、前記ステント(11)内のメッシュ開口を画定する支柱のうち1つに沿って巻き付けられる、請求項2に記載の放射線不透過構造。
【請求項4】
前記ステント(11)上の前記本体放射線不透過ワイヤ(4)の数は0~8であり、各本体放射線不透過ワイヤ(4)は10mmから150mmまでの長さを有する、請求項2に記載の放射線不透過構造。
【請求項5】
前記本体放射線不透過ワイヤ(4)および前記放射線不透過スリーブ(2)は、同じ材料または異なる材料から作製される、請求項2に記載の放射線不透過構造。
【請求項6】
前記本体放射線不透過ワイヤ(4)はワイヤ材料から作製され、前記本体放射線不透過ワイヤ(4)の前記ワイヤ材料は、X線放射に対して不透明な、純粋な金属および/または合金であり、0.01mm~0.1mmの直径を有する、請求項5に記載の放射線不透過構造。
【請求項7】
前記少なくとも1つの突起は、前記ステント(11)の少なくとも一端に設けられた少なくとも1つのロッド(101)である、請求項1に記載の放射線不透過構造。
【請求項8】
前記少なくとも1つのロッド(101)の自由端は、ノッチまたはスロットが形成されている、請求項7に記載の放射線不透過構造。
【請求項9】
前記ノッチまたは前記スロットの数は、少なくとも1である、請求項8に記載の放射線不透過構造。
【請求項10】
前記少なくとも1つのロッド(101)は、アーチ型形状、三日月形状、ジグザグ形状、テーパ形状、台形形状および楕円形状、のいずれか1つを有する、請求項7に記載の放射線不透過構造。
【請求項11】
前記少なくとも1つの突起は、前記ステント(11)と一体に形成されるか、または前記ステント(11)に固定的に接続されている、請求項1に記載の放射線不透過構造。
【請求項12】
前記放射線不透過スリーブ(2)は放射線不透過チューブまたは放射線不透過バネである、請求項1に記載の放射線不透過構造。
【請求項13】
前記放射線不透過バネは、ワイヤ材料から製造され、0.03mmから1mmまでの内径を有する、請求項12に記載の放射線不透過構造。
【請求項14】
前記ワイヤ材料は、X線放射に対して不透明な、純粋な金属および/または合金であり、0.01mmから0.1mmまでの直径を有する、請求項13に記載の放射線不透過構造。
【請求項15】
前記充填物(3)は、充填ワイヤ(複数可)によって提供され、および/または、放射線不透過性の材料と混合されたポリマー充填材料によって提供され、
前記充填ワイヤ(複数可)は、前記放射線不透過スリーブから、および/または、別の放射線不透過ワイヤから延びる放射線不透過ワイヤを含む、
請求項1に記載の放射線不透過構造。
【請求項16】
前記充填物(3)は、充填ワイヤ(複数可)によって提供され、および/または、放射線不透過性の材料と混合されたポリマー充填材料によって提供され、
前記充填ワイヤ(複数可)は、
‐前記放射線不透過スリーブから延びる放射線不透過ワイヤ、
‐前記本体放射線不透過ワイヤ(4)の延長部、
‐別の放射線不透過ワイヤ、
のうち1以上を含む、請求項2に記載の放射線不透過構造。
【請求項17】
前記別の放射線不透過ワイヤは、10mmから100mmまでの長さを有する、請求項15または16に記載の放射線不透過構造。
【請求項18】
前記充填ワイヤ(複数可)は、前記放射線不透過スリーブ(2)と一体に接合された第1後端(301)を備える、請求項15または16に記載の放射線不透過構造。
【請求項19】
前記第1後端(301)および前記放射線不透過スリーブ(2)は、前記突起の自由端において接合され、これによって、前記放射線不透過スリーブ(2)および前記第1後端(301)は第1閉ループを形成する、請求項18に記載の放射線不透過構造。
【請求項20】
前記充填ワイヤ(複数可)は、前記本体放射線不透過ワイヤ(4)と一体に接合された第2後端(302)を備える、請求項16に記載の放射線不透過構造。
【請求項21】
前記充填ワイヤ(複数可)はさらに、前記放射線不透過スリーブ(2)と一体に接合された第1後端(301)を備える、請求項20に記載の放射線不透過構造。
【請求項22】
前記第1後端(301)および前記第2後端(302)は、前記突起と前記放射線不透過スリーブ(2)との間の前記隙間に挿入される、請求項21に記載の放射線不透過構造。
【請求項23】
前記第1後端(301)、前記第2後端(302)、前記放射線不透過スリーブおよび前記突起は、前記突起の前記自由端において共に溶接され、単一の閉端構造を形成する、請求項22に記載の放射線不透過構造。
【請求項24】
前記放射線不透過構造は、本体放射線不透過ワイヤ(4)を備え、
前記突起は、前記ステント(11)の少なくとも一端に形成された少なくとも1つのロッド(101)であり、
前記ロッド(101)は、前記ステント内の支柱(102)に接続され、
前記第1後端(301)は、前記ロッドの下端(105)の周囲に巻き付けられて、前記放射線不透過スリーブ(2)と前記ロッド(101)との間の隙間に挿入され、
前記第1後端(301)は、前記ロッドの前記下端(105)の周辺に巻き付けリングを有し、
前記本体放射線不透過ワイヤ(4)は、前記支柱(102)に沿って巻き付けられ、そして、前記第1後端(301)の前記巻き付けリングの周辺にフックされる、
請求項18に記載の放射線不透過構造。
【請求項25】
前記本体放射線不透過ワイヤ(4)は、前記ステント支柱(102)の片側上に巻き付けられ、前記ロッドの前記下端(105)の周辺において、前記第1後端(301)の前記巻き付けリングの周辺にフックされ、そして、前記本体放射線不透過ワイヤ(4)は、前記支柱(102)の前記片側上で同じ経路に沿って戻りながら巻き付けられる、請求項24に記載の放射線不透過構造。
【請求項26】
前記本体放射線不透過ワイヤ(4)は、前記ステント支柱(102)の片側上に巻き付けられ、前記ロッドの前記下端(105)の周辺において、前記第1後端(301)の前記巻き付けリングの周辺にフックされ、そして、前記本体放射線不透過ワイヤ(4)は、前記支柱(102)の他側上で別の経路に沿って巻き付けられる、請求項24に記載の放射線不透過構造。
【請求項27】
前記放射線不透過スリーブ(2)は放射線不透過バネであり、
前記突起は、前記ステント(11)の少なくとも一端に設けられた少なくとも1つのロッド(101)であり、
前記ロッド(101)は、前記ステント内の支柱(102)に接続され、
前記第1後端(301)は、前記ロッドの下端(105)の周囲に巻き付けられ、前記放射線不透過スリーブ(2)と前記ロッド(101)との間の隙間に挿入され、前記ロッド(101)の自由端の周囲に巻き付けられて戻り、再び前記放射線不透過バネと前記ロッド(101)との間の前記隙間に挿入される、
請求項18に記載の放射線不透過スリーブ。
【請求項28】
前記放射線不透過スリーブ(2)は放射線不透過バネであり、
前記突起は、前記ステント(11)の少なくとも一端に設けられた少なくとも1つのロッド(101)であり、
前記ロッド(101)は、前記ステント内の支柱(102)に接続され、
前記第1後端(301)は、前記放射線不透過バネと前記ロッド(101)との間の前記隙間を充填し、そして、前記第1後端(301)は、前記支柱(102)に沿って巻き付けられた前記本体放射線不透過ワイヤ(4)として延びる、
請求項18に記載の放射線不透過構造。
【請求項29】
請求項1~28のいずれか一項に記載の放射線不透過構造を備えるステントであって、前記突起は、前記ステントに固定的に接続されるか、または、前記ステントと一体に形成される、ステント。
【請求項30】
請求項29に記載のステントを備える、血栓摘出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療装置の分野に関し、とくに、放射線不透過構造、ステントおよび血栓摘出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
脳卒中は、臨床的には主に脳虚血および出血性外傷として顕在化する急性の脳血管疾患である。2018年に出版された中国の脳卒中防止および制御に関する報告によれば、中国における脳卒中は、以下の5つの特徴を有する:高い罹患率、高い障害率、高い死亡率、高頻度の再発、重い経済的負担。脳卒中は、中国において第1の死因となった。平均して、中国では12秒ごとに誰かが脳卒中を発症し、中国では21秒ごとに誰かが脳卒中で死亡する。2016に作成された包括的標準化罹患率推定によれば、中国では毎年196万人もの脳卒中による死亡があり、生存者の70%は様々な重度の恒久的障害を受ける。すべての脳卒中患者のうち、急性の虚血性発作(AIS)を伴うものは約70~80%を占める。脳卒中の処置では、そうでなければ発生し得る二次的脳障害を低減するために、虚血によって脳に恒久的障害が発生する前に、可能な限り早く脳血流を回復することが重要である。現在、主に利用可能なAIS治療は、薬剤での血栓溶解および機械的血栓摘出である。
【0003】
AIS治療では、動脈内または静脈内の薬剤での血栓溶解が主に用いられる。この方法は、神経系の予後を顕著に改善できることが示されたが、依然としていくつかの問題を伴う。第1に、発症後、血栓溶解のために残された時間窓は、静脈内では3時間、動脈内では6時間に限られる。このような限られた時間窓により、治療は患者のうちわずかな一部のみ適したものとなる。第2に、薬剤での血栓溶解は、血管再生を達成するために長時間を要し(動脈内および静脈内の場合に少なくとも1~2時間)、これが臨床予後に大きく影響し得る。第3に、血栓溶解は、小さい血栓のみに対して適切に用いることができ、重度の脳主幹動脈閉塞(LVO)AISの場合の血管再生における成功率は低い。第4に、一部の患者は血栓溶解に適さない。
【0004】
薬剤での血栓溶解に伴う上述の問題を回避するために、近年では、血栓の機械的除去が研究のホットな話題となった。2015年以降、動脈内の機械的血栓摘出はAIS処置の分野における発展の時代を先導し、出版された5つの周知の臨床試験(MR CLEAN、ESCAPE、EX-TENDIA、SWIFT(登録商標) PRIMEおよびREVASCAT)が血管内機械的血栓摘出の効果を確認し、AISのインターベンショナル治療の新時代を開いた。米国、韓国、カナダ、欧州および中国では、関連する処置ガイドラインが、前方循環系LVO AISのための第1選択の治療として、機械的血栓摘出を推奨するよう次々に修正された。動脈内機械的血栓摘出装置は、とくにLVO AISについて、迅速な血管再生、脳卒中への介入に残された時間窓の延長、より少量の出血、および満足のいく臨床的血管再生結果を含む広範な利点の恩恵により、広く注目を集めた。
【0005】
既存の頭蓋内血栓摘出装置は、典型的には、レーザーカッティングを用いて製造された金属ステントである。しかしながら、これらの金属ステントには、依然として多くの問題がある。大きな問題の一つとして、そのような金属ステントは典型的には放射線不透過性のドットまたはワイヤの組を含み、これにより、外科的処置中に金属ステントの位置または外形がX線下で識別可能となる。しかしながら、レーザーカットされた金属ステントのすべての金属支柱が見えるわけではなく、内科医が外科的処置中に、金属ステントの解放および局所的拡張状況ならびに金属支柱による血栓のエントラップ状況を判定することが不可能となっている。したがって、これは外科的処置中に内科医の操作にとって好ましくない。
【0006】
現在、急性頭蓋内血栓症の処置において、中国および他の国で、内科医による市場で利用可能なもののうち最も受容されている血栓摘出システムは、血栓捕捉および除去にレーザーカットされたニッケル・チタンステントを採用したステントベースの血栓摘出システムである。このステントは、マイクロカテーテル上で標的病変部位に配送でき、その後解放されて血栓を捕捉し得る。これを実現する際に、それはより大きい内径を有するガイドカテーテル内に血栓とともに引き込まれ、これら双方がその後患者身体から取り去られる。しかしながら、このシステムは、血栓摘出装置の遠位端の周囲に放射線不透過性のドットがいくつか設けられているだけである。臨床報告によれば、血栓摘出にこのシステムを使用中、内科医はX線下で血栓摘出装置の解放および局所的拡張状況を判定できず、血栓摘出装置が患者身体から取り去られるまで、血栓除去が達成されたか否かを知ることができない。これは、外科的処置中の内科医の意思決定にとって好ましくなく、貴重な時間の浪費を起こし得る。
【0007】
X線可視性(fluoroscopic visibility)を改善するために、血管内使用のための血栓摘出装置が開発され、これは上述のステントベースの血栓摘出システムと本質的に同じ構造であるが、ステントの遠位端の周囲に配置された複数の放射線不透過性のドットに加え、ステントの長さに沿って分散された複数組のアーチ型マーカーを有する。これらのマーカーにより、操作する内科医が、血管内の血栓摘出装置の位置および向きを判定することが支援される。そのようなマーカーの構造を図1に示す。図1において、マーカー150は放射線不透過性の材料で作製され、アーチ型金属支柱セグメント163を含み、これがニッケル・チタンステントの主部内の金属支柱114に接合する。このセグメントおよび支柱は、レーザーカッティングを用いてワンパスで製造される。図2は、血管内で血栓165と接触しているが完全には拡張していない血栓摘出装置のX線可視性を示す。図示のように、血栓摘出装置のX線可視性は依然として準最適である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術の上述の欠点に鑑み、本発明の目的の一つは、放射線不透過構造、ステントおよび血栓摘出システムを提供することである。従来技術と比較すると、本発明は、レーザーカットされた血栓摘出装置の遠位端の周囲に配置された放射線不透過性のドットのX線可視性を向上することができる。本発明の放射線不透過構造は、任意の種類のステントにおいて使用可能であり、血栓摘出装置における使用に限定されない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のために、本発明は放射線不透過構造にあり、前記放射線不透過構造は、
少なくとも1つの突起上に配置された少なくとも1つの放射線不透過スリーブと、
前記放射線不透過スリーブと前記突起との間の隙間に充填された少なくとも1つの充填物と、
を含む。
【0010】
任意選択で、前記放射線不透過構造は、さらに少なくとも1つの本体放射線不透過ワイヤを含んでもよい。
【0011】
任意選択で、本体放射線不透過ワイヤは、前記ステント内でメッシュ開口を画定する支柱のうち1つに沿って巻き付けられてもよい。
【0012】
任意選択で、前記ステント上に0~8本の本体放射線不透過ワイヤがあってもよく、各本体放射線不透過ワイヤは10mmから150mmまでにわたる長さを有する。
【0013】
任意選択で、前記本体放射線不透過ワイヤおよび前記放射線不透過スリーブは、同じ材料または異なる材料から作製されてもよい。
【0014】
任意選択で、前記本体放射線不透過ワイヤは、X線放射に対して不透明な、純粋な金属および/または合金から作製されてもよく、0.01mmから0.1mmまでの直径を有してもよい。
【0015】
任意選択で、前記少なくとも1つの突起は、前記ステントの少なくとも一端に設けられた少なくとも1つのロッドであってもよい。
【0016】
任意選択で、前記少なくとも1つのロッドは、その自由端にノッチまたはスロットが形成されてもよい。
【0017】
任意選択で、前記ノッチまたはスロットは、少なくとも1つの位置にあってもよい。
【0018】
前記少なくとも1つのロッドは、アーチ型形状、三日月形状、ジグザグ形状、テーパ形状、台形形状、および楕円形状のうちいずれかを有してもよい。
【0019】
任意選択で、前記少なくとも1つの突起は、前記ステントと一体に形成されるか、または、前記ステントに固定的に接続されてもよい。
【0020】
任意選択で、前記放射線不透過スリーブは、放射線不透過チューブまたは放射線不透過バネであってもよい。
【0021】
任意選択で、前記放射線不透過バネはワイヤから製造されてもよく、0.03mmから1mmの内径を有してもよい。
【0022】
任意選択で、前記ワイヤは、X線放射に対して不透明な、純粋な金属および/または合金からなってもよく、0.01mmから0.1mmまでの直径を有してもよい。
【0023】
任意選択で、前記充填物は、ワイヤ(複数可)によって提供され、および/または、放射線不透過性の材料と混合されたポリマー充填材料によって提供されてもよく、前記ワイヤ(複数可)は、前記放射線不透過スリーブが製造される放射線不透過ワイヤの延長部を含み、および/または、別の放射線不透過ワイヤを含む。
【0024】
任意選択で、前記充填物は、ワイヤ(複数可)によって提供され、および/または、放射線不透過性の材料と混合されたポリマー充填材料によって提供されてもよく、前記ワイヤ(複数可)は、
‐前記放射線不透過スリーブが製造される放射線不透過ワイヤの延長部、
‐前記本体放射線不透過ワイヤの延長部、
‐別の放射線不透過ワイヤ、
のうち1以上を含む。
【0025】
任意選択で、前記別の放射線不透過ワイヤは、10mmから100mmまでの長さを有してもよい。
【0026】
任意選択で、前記ワイヤ(複数可)は、前記放射線不透過スリーブと一体に接合された第1後端を含んでもよい。
【0027】
任意選択で、前記第1後端および前記放射線不透過スリーブは、前記突起の自由端において接合されてもよく、これによって、前記放射線不透過スリーブおよび前記第1後端が第1閉ループを形成してもよい。
【0028】
任意選択で、前記ワイヤ(複数可)は、前記本体放射線不透過ワイヤと一体に接合された第2後端を含んでもよい。
【0029】
任意選択で、前記ワイヤ(複数可)は、前記放射線不透過スリーブと一体に接合された第1後端を含んでもよい。
【0030】
任意選択で、前記第1後端および前記第2後端は、前記突起と前記放射線不透過スリーブとの間の前記隙間に挿入されてもよい。
【0031】
任意選択で、前記第1後端、前記第2後端、前記放射線不透過スリーブ、および前記突起は、前記突起の前記自由端において溶接され、単一の閉端構造を形成してもよい。
【0032】
任意選択で、前記放射線不透過構造は本体放射線不透過ワイヤを含んでもよく、前記突起は、前記ステントの少なくとも一端に設けられた少なくとも1つのロッドであり、前記ロッドは、前記ステント内の支柱に接続され、前記第1後端は、前記ロッドの下端の周囲に巻き付けられて、前記放射線不透過スリーブと前記ロッドとの間の前記隙間に挿入され、それによって、前記第1後端は、前記ロッドの前記下端の周辺に巻き付けリングを有し、前記本体放射線不透過ワイヤは、前記支柱に沿って巻き付けられ、そして、巻き付け部の周辺でフックされる。
【0033】
任意選択で、前記本体放射線不透過ワイヤは、前記ステント支柱の片側上に巻き付けられ、前記ロッドの前記下端の周辺において、前記第1後端の前記巻き付け部の周辺でフックされ、そして、前記支柱の前記片側上で同じ経路に沿って戻りながら巻き付けられてもよい。
【0034】
任意選択で、前記本体放射線不透過ワイヤは、前記ステント支柱の片側上に巻き付けられ、前記ロッドの前記下端の周辺において、前記第1後端の前記巻き付け部の周辺でフックされ、そして、前記支柱の他側上で異なる経路に沿って巻き付けられてもよい。
【0035】
任意選択で、前記突起は、前記ステントの少なくとも一端に設けられた少なくとも1つのロッドであってもよく、前記ロッドは前記ステント内の支柱に接続され、前記第1後端は、前記ロッドの下端の周囲に巻き付けられ、前記放射線不透過スリーブと前記ロッドとの間の前記隙間に挿入され、前記ロッドの自由端の周囲に巻き付けられて戻り、再び前記放射線不透過スリーブと前記ロッドとの間の前記隙間に挿入される。
【0036】
任意選択で、前記第1後端は、前記放射線不透過バネと前記ロッドとの間の前記隙間を充填し、そして、前記支柱に沿って巻き付けられた前記本体放射線不透過ワイヤとして延びてもよい。
【0037】
本発明は、さらに、上述のように定義される前記放射線不透過構造を含むステントを提供し、前記突起は、前記ステントに固定的に接続されるか、または、前記ステントと一体に形成される。
【0038】
本発明は、さらに、上述のように定義されるステントを含む血栓摘出システムを提供する。
【発明の効果】
【0039】
従来技術と比較すると、本発明は以下の利点を有する。
【0040】
1.放射線不透過スリーブに追加される充填物が、X線可視性および放射線不透過スリーブと突起との間の摩擦を向上でき、放射線不透過スリーブが突起から容易に分離することが回避される。
【0041】
2.充填物の第1後端の巻き付けリングに放射線不透過ワイヤをフックし、その後ステント上で同じ経路に沿って逆に巻き付けることにより、「二重撚り線」本体放射線不透過ワイヤが得られる。
【0042】
3.充填物の第1後端は、ステント内の支柱の接合部の周囲に巻き付けられ、放射線不透過バネの内側に挿入され、自由端においてロッドに溶接することができる。このようにすると、ロッドおよび放射線不透過バネが共に閉ループを形成し、これは、放射線不透過バネの引っ張り強さを増大させるのみならず、放射線不透過バネがステントの遠位端から脱落するリスクを低減する。ロッドおよび放射線不透過バネの間の隙間に第1後端をクランプすることを介して、放射線不透過バネおよび第1後端は、それらの間の摩擦により、自己ロックを形成する。
【0043】
4.放射線不透過バネの第1後端は、ロッドの下端の周囲に巻き付けられて、V状形状を画定する2つの支柱の間を、それらの接合部の近傍を通過して、第1後端が接合部の周囲に巻き付けられてもよい。この巻き付けにより、ステントの近位端における融合した金属ワイヤ端の形成が回避できる。代わりに、滑らかな遷移が存在し、これによって、血管の内皮への損傷が低減できる。
【0044】
5.ロッド、放射線不透過スリーブ、充填物および放射線不透過ワイヤの相互接続は、様々な態様で実現可能であり、これによって、ステントの全体的な外形が実質的に改善され、ステントが完全にX線可視性にはなり得ないという問題が緩和される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】従来の血栓摘出装置におけるマーカーの構造を示す図。
図2】血栓と接触しているが完全には拡張していない血栓摘出装置のX線可視性を概略的に示す図。
図3】本発明の一実施形態による放射線不透過構造において、ステントの遠位端において支柱に接続された自由ロッドの構造を示す概略図。
図4】本発明の一実施形態による放射線不透過構造において、第1後端を有する放射線不透過バネの構造を示す概略図。
図5】本発明の第1実施形態による放射線不透過構造の主図。
図6】本発明の第1実施形態によるA-A線に沿った放射線不透過構造の断面図。
図7】本発明の第1実施形態による放射線不透過構造の正面図。
図8】本発明の第1実施形態による放射線不透過構造における、ステントの構造を示す概略図。
図9】本発明の第1実施形態によるステントの傾斜テーパ部を概略的に示す図。
図10】ステント内の本体放射線不透過ワイヤを含む、第1実施形態による放射線不透過構造の構造を示す概略図。
図11】第1実施形態による放射線不透過構造の断面図。
図12】本発明の第2実施形態による放射線不透過構造の主図。
図13】本発明の第2実施形態による放射線不透過構造の正面図。
図14】本発明の第3実施形態による放射線不透過構造の主図。
図15】本発明の第3実施形態による放射線不透過構造の正面図。
図16】ステント内の本体放射線不透過ワイヤを含む、第3実施形態による放射線不透過構造の構造を示す概略図。
図17】本発明の第4実施形態による放射線不透過構造における、自由ロッドの構造を示す概略図。
図18】本発明の第4実施形態による放射線不透過構造の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の目的、態様および利点は、添付図面とともに読まれるべき、以下の実施形態の詳細な説明からより明確となる。具体的な実施形態は、本明細書において限定でなく単に例示のために提示されるということが理解される。
【0047】
本明細書によって保護されることを求められる放射線不透過構造、ステントおよび血栓摘出システムは、当業者に理解されるように、添付図面を参照して、具体的な例として以下に詳細に説明される。
【0048】
[実施形態1]
図3は、本発明の一実施形態による放射線不透過構造における、ステントの遠位端において支柱に接続された自由ロッドの構造を示す概略図である。図4は、本発明の一実施形態による放射線不透過構造において、第1後端を有する放射線不透過バネの構造を示す概略図である。図5は、本発明の第1実施形態による放射線不透過構造の主図である。図6は、本発明の第1実施形態によるA-A線に沿った放射線不透過構造の断面図である。図7は、本発明の第1実施形態による放射線不透過構造の正面図である。
【0049】
図3図8を参照して、放射線不透過構造は、放射線不透過スリーブ2を固定し、支持し、接続するための少なくとも1つの突起を含む。この少なくとも1つの突起は、ステント11の少なくとも一端にそれぞれ形成される少なくとも1つのロッド101である。好適には、突起は、アーチ型構造(図1に示す。163でラベリングされている)に類似してもよい。突起は、ステント内の支柱のいずれかによって提供されてもよい。代替的に、その上に放射線不透過スリーブ2を配置するよう適合する任意の突起であってもよい。さらに代替的に、図3に示す突起であってもよい。第1実施形態では、図3の突起が好適であり、これは、垂直ロッド101を含み、ロッド101の下端105はステント11内の支柱102に接合される。ロッド101は、アーチ型形状、三日月形状、ジグザグ形状、テーパ形状、台形形状、および楕円形状のいずれかを有してもよい。第1実施形態では、放射線不透過構造内のロッド101は、好適には、ステント11の遠位端104に設けられる。
【0050】
ロッド101の自由端107には、ノッチまたはスロットが形成されてもよく、ロッドの自由端はノッチまたはスロットがなくてもよい。図3に示すように、好適には、第1実施形態による放射線不透過構造内のロッド101の自由端107は、ノッチまたはスロットがない。ロッド101の自由端107は、ステントに固定的に接続されていない前端である。
【0051】
好適には、第1実施形態による放射線不透過構造において、ステント11は、レーザーカッティングを用いて製造される自己拡張式ステントである。図8に示すように、ステント11は、閉リング形状の構造であり、マイクロカテーテル内に部分的にまたは完全に引き込むことができる。ステント11は、V形状支柱102、U形状支柱102、正弦波状支柱102および放物線状支柱102のいずれかを含んでもよい。第1実施形態による放射線不透過構造では、好適には、図3に示すようにステントはV形状支柱102を含む。
【0052】
図9に示すように、ステント11は、傾斜テーパ近位端部103(5~15mmの長さを有し、水平面に対して20~60°の角度を有する)を有する。ステント11は、内部にメッシュ開口を有する閉リング形状構造の遠位端部104を有し、メッシュ開口の数は2~8である。好適には、第1実施形態による放射線不透過構造において、傾斜テーパ部の長さは11mmであり、水平面に対するその角度は35°である。さらに、閉リング形状構造内には3つのメッシュ開口がある。ロッド11は、レーザーカッティングによる製造の間、ステント11と共に一体に形成されてもよい。代替的に、ロッド101は、分離して製造され、その後、レーザーカッティングを用いて製造されたステント11に溶接されてもよい。
【0053】
少なくとも1つの放射線不透過スリーブ2について、少なくとも1つの放射線不透過スリーブ2は、少なくとも1つの突起のそれぞれの上に配置される。各放射線不透過スリーブ2は、中空構造であり、放射線不透過スリーブ2は放射線不透過性のチューブまたはバネ等である。放射線不透過チューブは、白金・金、白金・イリジウム合金または白金・タングステン合金等の放射線不透過性金属から形成されてもよい。放射線不透過バネは、0.1mmから0.5mmまでの範囲にわたる内径を有してもよい。好適には、第1実施形態において、放射線不透過バネの内径は0.2mmである。放射線不透過バネは、X線の放射に対して不透明である金属または合金(白金・金合金、白金・イリジウム合金または白金・タングステン合金、等)のワイヤから形成されてもよい。ワイヤは0.03~0.1mmの直径を有してもよい。好適には、第1実施形態による放射線不透過構造において、放射線不透過スリーブ2は放射線不透過バネにより提供され、ワイヤの直径は0.05mmである。
【0054】
少なくとも1つの充填物3について、少なくとも1つの充填物3は、放射線不透過スリーブ2と突起との間の隙間を充填する。充填物3は、第1後端301および/または第2後端302、少なくとも1つの分離された放射線不透過ワイヤ、およびポリマー充填材料、またはこれらの組み合わせのいずれかによって提供されてもよい。
【0055】
好適には、図4に示すように、第1実施形態による放射線不透過構造において、充填物3は第1後端301および第2後端302によって提供される。第1後端301は、放射線不透過バネと一体に接合され、第2後端302は、本体放射線不透過ワイヤ4と一体に接合される。
【0056】
本体放射線不透過ワイヤ4は、X線放射に対して不透明な金属または合金であってもよく、0.01mmから0.1mmまでの範囲にわたる直径を有してもよい。ステント11は、0~8本のそのような本体放射線不透過ワイヤ4を含んでもよく、各本体放射線不透過ワイヤ4は100mmから200mmまでの長さを有する。第1実施形態による放射線不透過構造では、各本体放射線不透過ワイヤ4は、0.01mmから0.1mmまでの範囲内の直径(0.05mmが好適)を有し、各本体放射線不透過ワイヤ4は100mmの長さを有し、ステント11内に3本の本体放射線不透過ワイヤ4が存在する。
【0057】
また、第1実施形態では、放射線不透過構造において、ロッド101、放射線不透過スリーブ2、充填物3および本体放射線不透過ワイヤ4の相互接続の方法が提供され、これは以下に詳述するステップを含む。
【0058】
放射線不透過バネがロッド101上に配置される。
【0059】
第1後端301が、放射線不透過バネとロッド101との間の隙間を通過する。図4~7に示すように、放射線不透過バネの第1後端301は、ロッドの下端105の周囲に巻き付けられ、V状形状を画定する2つの支柱102の接合部を通過し、その結果、第1後端301がロッド101の他側に到達し、第1後端301が放射線不透過バネとロッド101との間の隙間を、ロッド101の自由端107に向かって通過してもよい。
【0060】
第2後端302は、放射線不透過バネとロッド101との間の隙間を通過する。図5に示すように、第2後端302の一端は、放射線不透過バネの内側を通ってロッド101の自由端107に向かって通過し、その結果、図6に示すように、第1後端301と第2後端302とが互いにロッド101の反対側に配置されてもよい。続いて、第1後端および第2後端の不要部分が除去されてもよく、それらの残りがロッド101の自由端107に溶接されてもよく、その結果、放射線不透過バネの第1後端301の材料と第2後端302とが溶接工程中に融合し、閉端を提供する単一の球形キャップを共に形成する。このように、球形キャップ(すなわち閉端)は、放射線不透過バネの遠位端、第1後端301の終端、第2後端302の終端およびロッド101の前端を提供する。放射線不透過バネの近位端部は、溶接工程における球形キャップの形成の結果として、第1後端301とともに連続し、放射線不透過バネは、近位端および遠位端の双方において第1後端301に接合され、結果として、閉ループが形成される。球形キャップは、放射線不透過バネを接続して固定し、これの脱落を防止するよう作用してもよい。
【0061】
図5に示すように、第2後端302の他端に接続される本体放射線不透過ワイヤ4は、ステント11の支柱102の周囲に巻き付けられる。3本の本体放射線不透過ワイヤ4の場合の放射線不透過構造は、図10に示される。
【0062】
図11は、放射線不透過構造の断面図である。上からのロッド101の投影は、長さLおよび高さHを有し、放射線不透過バネの金属ワイヤは外径d1を有する。さらに、第1後端301の金属ワイヤは直径d2を有し、第2後端302の金属ワイヤは直径d3を有する。直径d1、d2およびd3は、互いに等しくてもよいし、そうでなくてもよい。放射線不透過バネは内径Dを有し、上からのロッド101の投影の最大断面は、放射線不透過バネの投影の内側円に接する(これによって放射線不透過バネの不安定性が回避される)。さらに、以下の式1および2が満足される。
+L=D (1)
D≧H+d2+d3 (2)
【0063】
[実施形態2]
図12は、本発明の第2実施形態による放射線不透過構造の主図である。図13は、本発明の第2実施形態による放射線不透過構造の正面図である。
【0064】
図12および図13を参照して、第2実施形態は、ロッド101および放射線不透過スリーブ2を含み、これらは第1実施形態と同じ方法で構築される。ロッド101は、ステント11の遠位端104に配置される。好適には、本発明の第2実施形態による放射線不透過構造において、放射線不透過スリーブ2もまた放射線不透過バネであってもよいが、そこに含まれる充填物3は第1実施形態とは異なる構造を有する。具体的には、充填物3は第1後端301によって提供され、これは放射線不透過バネと一体に接合される。さらに、第2実施形態の放射線不透過構造は、本体放射線不透過ワイヤ4を含む。
【0065】
また、第2実施形態は、放射線不透過構造内のロッド101、放射線不透過スリーブ2、充填物3および本体放射線不透過ワイヤ4を相互接続する方法を提供し、これは以下に詳述する各ステップを含む。
【0066】
放射線不透過バネがロッド101上に配置される。
【0067】
第1後端301が、放射線不透過バネとロッド101との間の隙間を通過する。図12および13に示すように、放射線不透過バネの第1後端301は、ロッドの下端105の周囲に巻き付けられ、V状形状を画定する2つの支柱102の間を、それらの接合部の近傍において、ロッド101の他端へと通過してもよい。第1後端301は、接合部の周囲に巻き付けられてもよく、その後、放射線不透過バネの内側を、ロッド101の自由端107に向かって通過してもよい。接合部の周囲に第1後端301を巻き付けることにより、ステント11の近位端103における自由金属ワイヤ端の形成が回避できる。代わりに、滑らかな遷移が存在し、これによって、血管の内皮への損傷が低減できる。
【0068】
図12に示すように、本体放射線不透過ワイヤ4は、その一端がステント11の遠位端104において第1後端301の巻き付けリングを通過して周辺にフックされ、その後、それが遠位端104までと同じ経路に従ってステント11の近位端103まで戻るように、螺旋状になっている。このように、この本体放射線不透過ワイヤ4は、ステント11内の他の本体放射線不透過ワイヤ4の2倍の量(したがって重量、体積および密度)の材料を含む「二重撚り線」ワイヤであり、ステントの遠位端部104により大きなX線可視性を付与する。
【0069】
[実施形態3]
図14は、本発明の第3実施形態による放射線不透過構造の主図である。図15は、本発明の第3実施形態による放射線不透過構造の正面図である。図16は、ステント内の本体放射線不透過ワイヤを含む、第3実施形態による放射線不透過構造の構造を示す概略図である。
【0070】
図14~16を参照して、本発明の第3実施形態による放射線不透過構造は、ロッド101および放射線不透過スリーブ2を含み、これらは第1実施形態と同じ方法で構築される。ロッド101は、ステント11の遠位端104に配置される。好適には、本発明の第3実施形態による放射線不透過構造においても、放射線不透過スリーブ2は放射線不透過バネであってもよく、そこに含まれる充填物3は、第2実施形態と同じ方法で構築されてもよい。すなわち、充填物3も、放射線不透過バネの第1後端301によって提供される。しかしながら、放射線不透過構造内のロッド101、放射線不透過スリーブ2、充填物3および本体放射線不透過ワイヤ4は、以下に詳述するように、第2実施形態とは異なる態様で相互接続される。
【0071】
放射線不透過バネは、ロッド101上に配置される。
【0072】
第1後端301が、放射線不透過バネとロッド101との間の隙間を通過する。図14および15に示すように、放射線不透過バネの第1後端301は、ロッドの下端105の周囲に巻き付けられ、V状形状を画定する2つの支柱102の間を、それらの接合部の近傍において、ロッド101の他端へと通過してもよい。第1後端301は、接合部の周囲に巻き付けられてもよく、その後、放射線不透過バネの内側を、ロッド101の自由端107に向かって通過してもよい。
【0073】
図14および15に示すように、1本の本体放射線不透過ワイヤ4は、ステント11の支柱102の一方の片側に、遠位端104へと螺旋状になっており、第1後端301の巻き付けリングを通過して周辺にフックされ、他方の支柱102の他側に、ステント11の近位端103まで戻るように、螺旋状になっている。このように、本発明の第3実施形態による放射線不透過構造は、同じ数の本体放射線不透過ワイヤ4を用いて、含まれる金属支柱のそれぞれをX線可視性とすることにより、ステントのX線可視性を効果的に向上できる。3本の本体放射線不透過ワイヤ4があってもよく、放射線不透過構造は図16に示す通りであってもよい。
【0074】
[実施形態4]
図17は、本発明の第4実施形態による放射線不透過構造における、自由ロッドの構造を示す概略図である。図18は、本発明の第4実施形態による放射線不透過構造の断面図である。
【0075】
図17および図18を参照して、本発明の第4実施形態による放射線不透過構造は、放射線不透過スリーブ2を固定し、支持し、接続するための少なくとも1つの突起を含む。この少なくとも1つの突起は、ステント11の少なくとも一端に設けられた少なくとも1つのロッド101である。
【0076】
ロッド101の自由端107は、滑らかな遷移を有するか、またはノッチまたはスロットが形成されてもよい。ノッチが形成される場合には、任意の適した形状の1つ以上のノッチが形成可能であり、スロットが形成される場合には、楕円または他の任意の適した形状の1つ以上のスロットが形成されてもよい(放射線不透過スリーブと突起との間の隙間に充填物が充填可能であれば)。図17に示すように、本発明の第4実施形態による放射線不透過構造では、好適には、ロッド101の自由端107はノッチ106が形成されまたはスロットが形成される。
【0077】
少なくとも1つの放射線不透過スリーブ2は、少なくとも1つの突起の上に配置される。放射線不透過スリーブ2は、中空構造であり、放射線不透過スリーブ2は、放射線不透過性のチューブまたはバネ等である。図18に示すように、本発明の第4実施形態による放射線不透過構造において、放射線不透過スリーブ2は好適には放射線不透過バネである。
【0078】
少なくとも1つの充填物3が、放射線不透過スリーブ2と突起との間の隙間に充填される。充填物3は、第1後端301、第2後端302、少なくとも1つの分離された放射線不透過ワイヤ、およびポリマー充填材料、またはこれらの組み合わせのいずれかによって提供されてもよい。本発明の第4実施形態による放射線不透過構造では、充填物3は、好適には、第1後端301または第2後端302によって提供される。代替的に、充填物3は、複数のワイヤの第1後端301および/または第2後端302によって提供されてもよく、これによってさらに大きなX線可視性を付与可能である。第1後端301は、放射線不透過バネと一体に接合されてもよい。この実施形態では、第2後端302は、その両端において、2つの分離した本体放射線不透過ワイヤ4と一体に接合される。
【0079】
また、第4実施形態は、放射線不透過構造内のロッド101、放射線不透過スリーブ2、充填物3および本体放射線不透過ワイヤ4を相互接続する方法を提供し、これは以下の各ステップを含む。
【0080】
放射線不透過バネは、ロッド101上に配置される。
【0081】
充填物3が第1後端301によって提供される場合には、第1後端301は、放射線不透過バネとロッド101との間の隙間を通過する。図17および18に示すように、第1後端301は、ロッドの下端105の周囲に巻き付けられ、V状形状を画定する2つの支柱102の間を、それらの接合部の近傍において通過し、これによって接合部の周囲に閉ループを形成してもよい。第1後端301は、放射線不透過バネの内側を、ロッド101の他端(すなわち自由端107)へと通過してもよい。第1後端301は、その後、ロッド101の自由端107の周辺で曲げられてもよく、これによって、ロッド101の自由端107においてノッチまたはスロットを通ってロッド101の他側へと延び、さらにロッド101の下端105へと戻る。続いて、それはロッド101の下端105に溶接されてもよく、結果として、ロッド101および放射線不透過バネによって第2閉ループが形成される。この設計では、第1後端301は、放射線不透過バネ内のロッド101の両側で隙間にクランプされる。このようにすると、放射線不透過バネおよび第1後端301は、それらの間の強い摩擦の恩恵により、自己ロッキング構造を形成する。上述の第2閉ループは、放射線不透過バネの引っ張り強さを増大させ、それがステント11の遠位端104から脱落するリスクを低減する。代替的に、第1後端301がノッチまたはスロットを通って延びつつロッド101の自由端107の周辺で曲げられた後、ロッドの下端105に溶接されることに代えて、第1後端が、本体放射線不透過ワイヤ(ステント11のX線可視性を向上させるために支柱102の周囲に巻き付けられてもよい)と一体に接合されてもよい。この場合には、放射線不透過スリーブ2の内側で延びる第1後端301の一部が充填物3を提供し、第1後端301に接合され支柱102の周囲に巻き付けられる本体放射線不透過ワイヤ4は、ステント11の近位端103に固定されてもよいし、ステント11の特定位置に巻き付けられ、その後再びロッド101まで戻ってそこに固定されてもよい。第1後端301がロッドの下端に溶接される場合には、別の本体放射線不透過ワイヤ4がステントの本体上に巻き付けられてもよい。好適には、本体放射線不透過ワイヤ4は、第1後端301と下端との溶接された接合の溶接接合を通過してもよい。本発明の第4実施形態による放射線不透過構造では、本体放射線不透過ワイヤ4は、第2実施形態で採用された設計(「二重撚り線」)および第3実施形態で採用された設計(コイル部を通過し、他側の支柱102に沿って螺旋状になりステント11の近位端103まで戻る)を含むいくつかの設計のいずれかを採用してもよい。
【0082】
充填物3が、第2後端302(その両端が、2つの分離した本体放射線不透過ワイヤ4に固定されたもの)によって提供される場合には、第2後端は、放射線不透過バネとロッド101との間の隙間を通過し、その後、ロッド101の自由端107においてノッチまたはスロットを通ってロッド101の他側まで延び、さらにロッド101の下端105まで戻るように曲げられる。このようにすると、第2後端302は、放射線不透過バネの内側でロッド101の両側の隙間内に保持される。第2後端302の両端に接合された各本体放射線不透過ワイヤ4は、同じまたは異なる経路に沿って、ステントの本体に巻き付けられてもよい。
【0083】
[実施形態5]
本発明の第5実施形態による放射線不透過構造は、少なくとも1つの突起と、少なくとも1つの放射線不透過スリーブ2と、少なくとも1つの充填物3とを含む。少なくとも1つの突起は、ステント11の少なくとも一端に設けられた少なくとも1つのロッド101である。本発明の第5実施形態による放射線不透過構造ロッド101では、放射線不透過スリーブ2は第1実施形態と同じ方法で構築されるが、充填物3は放射線不透過性の粉末を含むポリマー構造である。ポリマーは、十分に生体適合性の任意のポリマーとすることができ、放射線不透過性の粉末は、金粉末、白金粉末、タングステン粉末、イリジウム粉末、タンタル粉末、および硫酸バリウムのうち1以上の混合物である。放射線不透過スリーブ2と突起との間の隙間は、ポリマー構造によって充填されてもよい。代替的に、充填物3は、放射線不透過スリーブ2と突起との間の隙間に充填される別の放射線不透過ワイヤ(複数可)によって提供されてもよい。この別の放射線不透過ワイヤの数は、1から8までにわたってもよい。好適には、本発明の第5実施形態による放射線不透過構造には、2つのそのような別の放射線不透過ワイヤが含まれる。
【0084】
また、第5実施形態は、放射線不透過構造内のロッド101、放射線不透過スリーブ2、充填物3、および本体放射線不透過ワイヤ4を相互接続する方法を提供し、これは以下の各ステップを含む。
【0085】
放射線不透過バネは、ロッド101上に配置される。
【0086】
放射線不透過スリーブ2とロッド101との間の隙間に、ポリマー構造またはいくつかの分離された放射線不透過ワイヤが充填される。この実施形態では、放射線不透過ワイヤは、ステント11の近位端103から遠位端104まで巻き付けられてもよい。
【0087】
本発明に従って提供される上述の放射線不透過構造は、ステント(とくに血栓摘出に用いられるもの)のX線可視性を効果的に向上させることができる。これらは、内科医がステントの位置と、その解放および局所的拡張状況ならびに血栓摘出装置の金属支柱による血栓のエントラップ状況を判定するのを支援することにより、外科的処置中の内科医の操作を容易にする。本発明の放射線不透過構造は、すべての種類およびブランドのステントに用いることができ、血栓摘出装置での使用に限らない。
【0088】
上述の各実施形態の様々な技術的特徴は、任意の方法で組み合わせ可能である。簡明のため、そのような組み合わせのすべてが上記で説明されたわけではないが、それらのいずれも、技術的特徴間に矛盾がない限り、本明細書の範囲内に属すると考えられる。
【0089】
上記では、単に本願のいくつかの実施形態が提示された。これらの実施形態は、いくらかの具体性およびいくらかの詳細をもって説明されているが、それらはいかなる意味においても本願の範囲を限定すると考えるべきではない。当業者は、本願の概念から逸脱することなく、変形および修正を施すことができるということに留意すべきである。したがって、そのような変形および修正のすべてが、添付の特許請求の範囲において定義される本願の範囲内に含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0090】
101 ロッド
102 ステント内の支柱
103 近位端部
104 遠位端部
105 ロッドの下端
106 ノッチ
107 自由端
11 ステント
2 放射線不透過スリーブ
3 充填物
301 第1後端
302 第2後端
4 本体放射線不透過ワイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【国際調査報告】