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特表2023-534422B型肝炎ウイルスの表面抗原に結合する抗体及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-09
(54)【発明の名称】B型肝炎ウイルスの表面抗原に結合する抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230802BHJP
   C07K 16/08 20060101ALI20230802BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20230802BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230802BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20230802BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230802BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230802BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230802BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230802BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20230802BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230802BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/08 ZNA
C07K16/46
C12N15/63 Z
C12N15/86 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N7/01
A61K39/395 S
A61P31/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501215
(86)(22)【出願日】2021-07-09
(85)【翻訳文提出日】2023-01-23
(86)【国際出願番号】 CN2021105523
(87)【国際公開番号】W WO2022007955
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】202010659026.2
(32)【優先日】2020-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010659828.3
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】513123920
【氏名又は名称】ベイジン カイン テクノロジー シェア-ホールディング シーオー., エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】許▲ソウ▼
(72)【発明者】
【氏名】常▲紅▼▲艶▼
(72)【発明者】
【氏名】李▲響▼
(72)【発明者】
【氏名】宋瑞
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼影
(72)【発明者】
【氏名】李峰
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA14
4C085BA90
4C085BB36
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC23
4C085DD23
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG02
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント、当該抗体または抗原結合フラグメントを含む医薬組成物、及びその使用が提供される。また、当該抗体をコードする核酸分子、当該核酸分子を含むベクター及び宿主細胞、ならびに当該抗体を調製する方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域(VH)配列及び軽鎖可変領域(VL)配列を含む、B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
前記重鎖可変領域は、以下に示す相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:
HCDR1:X1YX3FX5X6X7Y(配列番号33)、
HCDR2:X11NX13X14X15X16X17X18(配列番号34)、
HCDR3:ARDX21WX23X24X25X26DX28YGMDX33(配列番号35)を含み、
前記軽鎖可変領域は、以下に示すCDRアミノ酸配列:
LCDR1:X34X35X36SX38X39(配列番号36)、
LCDR2:X40X41X42(配列番号37)、
LCDR3:QQSYSTPLX51(配列番号38)を含み、
X1はGまたはAから選択され、X3はT、AまたはSから選択され、X5はT、AまたはIから選択され、X6はG、A、YまたはDから選択され、X7はYまたはAから選択され、X11はIまたはAから選択され、X13はPまたはAから選択され、X14はN、AまたはYから選択され、X15はS、AまたはNから選択され、X16はGまたはAから選択され、X17はGまたはAから選択され、X18はTまたはAから選択され、X21はL、VまたはAから選択され、X23はN、QまたはAから選択され、X24はD、QまたはAから選択され、X25はD、GまたはAから選択され、X26はV、GまたはAから選択され、X28はYまたはAから選択され、X33はVまたはAから選択され、X34はQまたはAから選択され、X35はSまたはAから選択され、X36はI、AまたはVから選択され、X38はT、AまたはSから選択され、X39はYまたはAから選択され、X40はA、G、D、TまたはSから選択され、X41はAまたはSから選択され、X42はAまたはSから選択され、X51はTまたはAから選択される、前記HBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
前記VHは、以下に示されるような相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:配列番号17に示されるHCDR1、配列番号21に示されるHCDR2、配列番号23に示されるHCDR3を含み、かつ前記VLは、配列番号25に示されるLCDR1、配列番号28に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を含む;または
前記VHは、以下に示されるような相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:配列番号17に示されるHCDR1、配列番号21に示されるHCDR2、配列番号23に示されるHCDR3を含み、かつ前記VLは、配列番号26に示されるLCDR1、配列番号28に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を含む;または
前記VHは、以下に示されるような相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:配列番号20に示されるHCDR1、配列番号21に示されるHCDR2、配列番号24に示されるHCDR3を含み、かつ前記VLは、配列番号25に示されるLCDR1、配列番号28に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を含む;または
前記VHは、以下に示されるような相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:配列番号18に示されるHCDR1、配列番号22に示されるHCDR2、配列番号23に示されるHCDR3を含み、かつ前記VLは、配列番号26に示されるLCDR1、配列番号28に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を含む;または
前記VHは、以下に示されるような相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:配列番号19に示されるHCDR1、配列番号21に示されるHCDR2、配列番号23に示されるHCDR3を含み、かつ前記VLは、配列番号27に示されるLCDR1、配列番号29に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を含む;または
前記VHは、以下に示されるような相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:配列番号19に示されるHCDR1、配列番号21に示されるHCDR2、配列番号23に示されるHCDR3を含み、かつ前記VLは、配列番号27に示されるLCDR1、配列番号30に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を含む;または
前記VHは、以下に示されるような相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:配列番号19に示されるHCDR1、配列番号21に示されるHCDR2、配列番号23に示されるHCDR3を含み、かつ前記VLは、配列番号26に示されるLCDR1、配列番号30に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を含む;または
前記VHは、以下に示されるような相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:配列番号17に示されるHCDR1、配列番号21に示されるHCDR2、配列番号23に示されるHCDR3を含み、かつ前記VLは、配列番号26に示されるLCDR1、配列番号31に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を含む、
請求項1に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
ヒト共通フレームワーク領域(FR)を含む、請求項1または2に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
前記VHは、以下に示すFRアミノ酸配列:
HFR1:Z1Z2Z3LZ4Z5SGAEVKKPGASZ6KVSCKAS(配列番号39)
HFR2:Z7HWVRQAPGQGZ8EWMGW(配列番号40)
HFR3:NYAQKFQGRVTZ9TZ10DZ11SZ12STAYMELSZ13LRSZ14DTAVYYC(配列番号41)
HFR4:WGZ15GTZ16VTVSS(配列番号42)を含み、
前記VLは、以下に示すFRアミノ酸配列:
LFR1:Z17Z18Z19LTQSPZ20Z21LSZ22SZ23GZ24RZ25TZ26Z27CRAS(配列番号43)
LFR2:LZ28WYQQKPGZ29APZ30LLIZ31(配列番号44)
LFR3:Z32Z33Z34Z35GZ36PZ37RFSGSGSGTZ38FTLTIZ39SLZ40Z41Z42DZ43ATYYC(配列番号45)
LFR4:FGZ44GTZ45Z46Z47IKR(配列番号46)を含み、
Z1はQまたはEから選択され、Z2はVまたはIから選択され、Z3はQまたはTから選択され、Z4はVまたはKから選択され、Z5はEまたはQから選択され、Z6はVまたはMから選択され、Z7はM、IまたはLから選択され、Z8はLまたはPから選択され、Z9はMまたはIであり、Z10はRまたはAであり、Z11はTまたはKであり、Z12はIまたはTであり、Z13はRまたはSであり、Z14はDまたはEであり、Z15はKまたはQから選択され、Z16はLまたはMから選択され、Z17はDまたはEから選択され、Z18はIまたはTから選択され、Z19はQ、TまたはVから選択され、Z20はS、AまたはGから選択され、Z21はSまたはTから選択され、Z22はAまたはLから選択され、Z23はVまたはPから選択され、Z24はDまたはEから選択され、Z25はVまたはAから選択され、Z26はIまたはLから選択され、Z27はTまたはSから選択され、Z28はNまたはAから選択され、Z29はKまたはQから選択され、Z30はK、QまたはRから選択され、Z31はYまたはSから選択され、Z32はSまたはN、Z33はLまたはRから選択され、Z34はQまたはAから選択され、Z35はSまたはTから選択され、Z36はVまたはIから選択され、Z37はSまたはAから選択され、Z38はDまたはEから選択され、Z39はSまたはRであり、Z40はQまたはEから選択され、Z41はPまたはSから選択され、Z42はEまたはGから選択され、Z43はFまたはLから選択され、Z44はG、QまたはPから選択され、Z45はKまたはRから選択、Z46はVまたはLから選択、Z47はDまたはEから選択される、
請求項1~3のいずれか一項に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
前記VH配列が、配列番号1~6から選択されるいずれか1つの配列であるか、または配列番号1~6のいずれか1つの配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列である、請求項1~4のいずれか一項に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
前記VL配列が、配列番号7~13から選択されるいずれか1つの配列であるか、または配列番号7~13のいずれか1つの配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列である、請求項1~5のいずれか一項に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
前記VH配列及びVL配列は、以下の配列の群:配列番号1及び配列番号7、配列番号1及び配列番号8、配列番号2及び配列番号8、配列番号2及び配列番号12、配列番号2及び配列番号13、配列番号3及び配列番号8、配列番号4及び配列番号8、配列番号5及び配列番号9、配列番号5及び配列番号10、配列番号5及び配列番号11、配列番号6及び配列番号7、ならびに上記VH配列またはVL配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列から選択されるいずれかである、請求項1~6のいずれか一項に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
Fab、F(ab’)2、Fab’、scFv、Fv、Fd、dAb、ダイアボディ(diabody)、またはマルチボディ(multibody)から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
前記抗体が完全ヒト抗体、ヒト化抗体、マウス抗体、キメラ抗体、またはナノボディである、請求項1~8のいずれか一項に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項10】
単一特異性抗体、二重特異性抗体、または多重特異性抗体である、請求項1~9のいずれか一項に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項11】
IgGの重鎖定常領域から選択される重鎖定常領域と、κ鎖またはλ鎖から選択される軽鎖定常領域とをさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントをコードするポリヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項13】
請求項12に記載の核酸分子を含む構築物。
【請求項14】
プラスミド、ファージミド、ウイルスベクター、または線状核酸から選択される、請求項13に記載の構築物。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか一項に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを発現する、あるいは請求項12に記載の核酸または請求項13もしくは14に記載の構築物を含む、ウイルス、ファージ、または細胞。
【請求項16】
請求項1~11のいずれか一項に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント、請求項12に記載の核酸、請求項13もしくは14に記載の構築物、または請求項15に記載のウイルス、ファージ、もしくは細胞を含む、医薬組成物。
【請求項17】
請求項1~11のいずれか一項に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント、請求項12に記載の核酸、請求項13もしくは14に記載の構築物、または請求項15に記載のウイルス、ファージ、もしくは細胞を含む、キット。
【請求項18】
有効量の請求項16に記載の医薬組成物を患者に投与することを含む、B型肝炎ウイルス(HBV)感染を治療もしくは予防する、またはB型肝炎の症状を緩和する方法。
【請求項19】
請求項1~11のいずれか一項に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント、請求項12に記載の核酸、請求項13もしくは14に記載の構築物、または請求項15に記載のウイルス、ファージ、もしくは細胞を、被験者からの体液と接触させることを含む、HBVを検出する方法。
【請求項20】
前記被験者からの前記体液が、前記被検者の血漿または血清である、請求項19記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年7月9日に出願された中国出願202010659026.2及び2020年7月10日に出願された中国出願202010659828.3の優先権を主張し、それらの内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、抗体の技術分野に属し、B型肝炎ウイルスの表面抗原に結合する抗体、及びB型肝炎ウイルス感染に関連する疾患の治療におけるその抗体の使用に関する。
[背景技術]
B型肝炎ウイルス(HBV)感染症は世界中で蔓延しているが、HBV感染症の有病率は地域によって大きく異なる。世界保健機関の報告によると、世界で約20億人がHBVに感染したことがあり、そのうち2.4億人が慢性的にHBVに感染しており、毎年約65万人がHBV感染による肝不全、肝硬変、及び肝細胞癌(HCC)で死亡している。世界の肝硬変及びHCC患者の中で、HBV感染による割合はそれぞれ30%及び45%である。中国では、肝硬変及びHCC患者の中で、HBV感染による割合はそれぞれ60%及び80%である。中国はB型慢性肝炎の人口が多い国である。疫学的調査によると、7%を超える人々がB型肝炎ウイルスに感染しており、その総数は1億人に近い。2015年末までに、HBV感染者の9%のみが検査を受けて診断されていた。B型肝炎ウイルス感染症と診断された患者の8%だけが治療を受けていた(中国肝炎防止・治療基金会のデータ)。それらの患者は、長期、あるいは生涯にわたる治療が必要であり、家族や社会に大きな負担をかけるだけではなく、肝硬変や肝癌を発症するリスクもある。推定によると、中国には2,800万人の慢性B型肝炎患者がおり、毎年100万人近くの肝硬変患者及び約30万人の肝臓癌患者が新たに追加されている。慢性肝炎患者の5%、肝硬変と肝癌患者の95%の受診率から推算すると、中国のB型肝炎治療に関連する直接医療費は年間800億元から1200億元に達する。
【0003】
B型肝炎患者の抗ウイルス治療後、体内のウイルス量を減らし、重篤な疾患の進行を遅らせることができるが、多くの人はB型肝炎ウイルスを完全に排除することはできない。B型肝炎の患者は、長期間にわたって薬を服用する必要があり、患者の経済的負担は重い。中国CDC(中国疾病予防管理センター)が発表したデータによると、慢性肝炎患者の平均年間診断及び治療費は、平均年間世帯収入の56.24%を占め、代償性肝硬変は81.53%を占め、非代償性肝硬変は157.21%を占め、肝臓癌は96.76%を占めている。重い経済的負担により、多くの患者が治療を断念したり、家族が病気のために貧困に陥ったりした。また、過去10数年間の肝疾患の診断・治療費の推移から見て、肝疾患の診断・治療費は年々増加傾向にあり、毎年10%~20%程度の増加があり、それに伴い個人の負担分も増加している。
【0004】
研究によると、B型肝炎患者の血液中のHBsAgで構成される大量のサブウイルス粒子が、免疫系の抑制及び感染肝細胞の除去不能の主な原因である。特定の技術に頼って血液中のHBsAgのレベルを10~100分の1に減らすと、ヒトの体自身のT細胞免疫が活性化され、体自身の免疫系が感染した肝細胞を効果的に殺し始めることができる。したがって、血液中のHBsAgのレベルを効果的に下げることは、B型肝炎の治癒の重要な基準の1つであるだけではなく、B型肝炎を治療して感染細胞を除去するための前提条件でもある。
【0005】
最新の臨床研究結果によると、ウイルスDNAを除去するためにヌクレオチド類似体で治療された患者では、HBsAgが特定のレベル(HBsAg<1500 IU/mLなど)よりも低い場合、インターフェロンによるHBsAg除去の確率が50%を超え得、通常考えられている5~10%のみのインターフェロン治癒率よりもはるかに高い。
【0006】
しかし、HBsAgを効果的に低下させる薬剤がないため、ほとんどの患者(90%を超える)のHBsAgレベルはこの指標を超えており、インターフェロンではこれらの患者を治すことができない(これが、インターフェロンの治癒率がわずか5~10%である理由である)。これらの新しい臨床的証拠により、HBsAg低下治療がより現実的かつ緊急に必要とされている。
【0007】
現在の研究では、B型肝炎ウイルスの表面抗原を減少させる主な方法が、HBsAgの発現の抑制(siRNA)、細胞からのHBsAgの放出の防止(NAPs)、及びHBsAg抗体の3つである。
【0008】
HBsAgレベルを下げるために抗体技術を使用する研究の方向性が決定され、スクリーニング後、発明者らは複数の抗体株を取得した。インビトロ研究は、本発明の抗体がHBsAgに特異的に結合できることを示しており、動物モデル研究の結果は、HBsAgレベルを効果的に下げることができることを示している。
【0009】
[発明の開示]
本願の目的の1つは、B型肝炎ウイルスの表面抗原(HBsAg)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを提供することである。インビトロ抗原親和性試験は、本願の抗体がHBsAgに特異的に結合する能力を有することを証明している。インビボ試験は、本願の抗体がB型肝炎ウイルス(HBV)の中和抗体として使用でき、HBsAgのレベルを効果的に低下させ、HBVの増殖を阻害できることをさらに証明している。
【0010】
具体的には、本願は以下に関する。
1、重鎖可変領域(VH)配列及び軽鎖可変領域(VL)配列を含む、B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
前記重鎖可変領域は、以下に示す相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:
HCDR1:X1YX3FX5X6X7Y(配列番号33)、
HCDR2:X11NX13X14X15X16X17X18(配列番号34)、
HCDR3:ARDX21WX23X24X25X26DX28YGMDX33(配列番号35)を含み、
前記軽鎖可変領域は、以下に示すCDRアミノ酸配列:
LCDR1:X34X35X36SX38X39(配列番号36)、
LCDR2:X40X41X42(配列番号37)、
LCDR3:QQSYSTPLX51(配列番号38)を含み、
ここで、X1、X3、X5、X6、X7、X11、X13、X14、X15、X16、X17、X18、X21、X23、X24、X25、X26、X28、X33、X34、X35、X36、X38、X39、X40、X41、X42、及びX51はそれぞれ、任意のアミノ酸から選択される、前記HBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0011】
2、X1はGまたはAから選択され、X3はT、AまたはSから選択され、X5はT、AまたはIから選択され、X6はG、A、YまたはDから選択され、X7はYまたはAから選択され、X11はIまたはAから選択され、X13はPまたはAから選択され、X14はN、AまたはYから選択され、X15はS、AまたはNから選択され、X16はGまたはAから選択され、X17はGまたはAから選択され、X18はTまたはAから選択され、X21はL、VまたはAから選択され、X23はN、QまたはAから選択され、X24はD、QまたはAから選択され、X25はD、GまたはAから選択され、X26はV、GまたはAから選択され、X28はYまたはAから選択され、X33はVまたはAから選択され、X34はQまたはAから選択され、X35はSまたはAから選択され、X36はI、AまたはVから選択され、X38はT、AまたはSから選択され、X39はYまたはAから選択され、X40はA、G、D、TまたはSから選択され、X41はAまたはSから選択され、X42はAまたはSから選択され、X51はTまたはAから選択される、項1に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0012】
3、HCDR1中のX1、X3、X5、X6、及びX7は順番に、次の組み合わせ:
G、T、T、G、Y;A、T、T、G、Y;G、A、T、G、Y;G、T、A、G、Y;G、T、T、A、Y;G、T、T、G、A;G、S、I、G、Y;G、T、T、D、Y;G、T、T、Y、Yのいずれかから選択され、
HCDR2中のX11、X13、X14、X15、X16、X17、及びX18は順番に、次の組み合わせ:I、P、N、S、G、G、T;A、P、N、S、G、G、T;I、A、N、S、G、G、T;I、P、A、S、G、G、T;I、P、N、A、G、G、T;I、P、N、S、A、G、T;I、P、N、S、G、A、T;I、P、N、S、G、G、A;I、P、Y、N、G、G、Tのいずれかから選択され、
HCDR3中のX21、X23、X24、X25、X26、X28、及びX33は順番に、次の組み合わせ:L、N、D、D、V、Y、V;A、N、D、D、V、Y、V;L、A、D、D、V、Y、V;L、N、A、D、V、Y、V;L、N、D、A、V、Y、V;L、N、D、D、A、Y、V;L、N、D、D、V、A、V;L、N、D、D、V、Y、A;V、Q、Q、G、G、Y、Vのいずれかから選択され、
LCDR1のX34、X35、X36、X38、及びX39は順番に、次の組み合わせ:
Q、S、I、T、Y;A、S、I、T、Y;Q、A、I、T、Y;Q、S、A、T、Y;Q、S、I、A、Y;Q、S、I、T、A;Q、S、I、S、Y;Q、S、V、S、Yのいずれかから選択され、
LCDR2中のX40、X41、及びX42は順番に、次の組み合わせ:
A、A、S;S、A、S;A、S、S;A、A、A;G、A、S;D、A、S;T、A、Sのいずれかから選択され、及び
LCDR3中のX51は、TまたはAから選択される、
項2に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0013】
4、X1、X3、X5、X6、X7、X11、X13、X14、X15、X16、X17、X18、X21、X23、X24、X25、X26、X28、及びX33は順番に、下記表1の組み合わせのいずれかから選択される、項3に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0014】
【表1】
【0015】
5、X34、X35、X36、X38、X39、X40、X41、X42、及びX51は順番に、下記表2の組み合わせのいずれかから選択される、項3または4に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0016】
【表2】
【0017】
6、X1、X3、X5、X6、X7、X11、X13、X14、X15、X16、X17、X18、X21、X23、X24、X25、X26、X28、X33、X34、X35、X36、X38、X39、X40、X41、X42、及びX51は順番に、下記表3の組み合わせのいずれかから選択される、項3に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0018】
【表3】
【0019】
いくつかの実施形態では、前記HBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントでは、前記VHは、以下に示されるような相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:配列番号17に示されるHCDR1、配列番号21に示されるHCDR2、配列番号23に示されるHCDR3を含み、かつ前記VLは、配列番号25に示されるLCDR1、配列番号28に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を含む;または
前記VHは、以下に示されるような相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:配列番号17に示されるHCDR1、配列番号21に示されるHCDR2、配列番号23に示されるHCDR3を含み、かつ前記VLは、配列番号26に示されるLCDR1、配列番号28に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を含む;または
前記VHは、以下に示されるような相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:配列番号20に示されるHCDR1、配列番号21に示されるHCDR2、配列番号24に示されるHCDR3を含み、かつ前記VLは、配列番号25に示されるLCDR1、配列番号28に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を含む;または
前記VHは、以下に示されるような相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:配列番号18に示されるHCDR1、配列番号22に示されるHCDR2、配列番号23に示されるHCDR3を含み、かつ前記VLは、配列番号26に示されるLCDR1、配列番号28に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を含む;または
前記VHは、以下に示されるような相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:配列番号19に示されるHCDR1、配列番号21に示されるHCDR2、配列番号23に示されるHCDR3を含み、かつ前記VLは、配列番号27に示されるLCDR1、配列番号29に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を含む;または
前記VHは、以下に示されるような相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:配列番号19に示されるHCDR1、配列番号21に示されるHCDR2、配列番号23に示されるHCDR3を含み、かつ前記VLは、配列番号27に示されるLCDR1、配列番号30に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を含む;または
前記VHは、以下に示されるような相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:配列番号19に示されるHCDR1、配列番号21に示されるHCDR2、配列番号23に示されるHCDR3を含み、かつ前記VLは、配列番号26に示されるLCDR1、配列番号30に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を含む;または
前記VHは、以下に示されるような相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:配列番号17に示されるHCDR1、配列番号21に示されるHCDR2、配列番号23に示されるHCDR3を含み、かつ前記VLは、配列番号26に示されるLCDR1、配列番号31に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を含む。
【0020】
7、ヒト共通フレームワーク領域(FR)を含む、項1~6のいずれか一項に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。いくつかの実施形態では、前記VHは、ヒトサブグループIII共通フレームワーク領域(FR)を含む。いくつかの実施形態では、前記VLは、ヒトサブグループκI共通フレームワークを含む。いくつかの実施形態では、ヒト共通フレームワーク領域(FR)、及びヒト共通フレームワーク領域(FR)に基づく1つまたは複数のアミノ酸置換が含まれる。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記フレームワーク領域は、ヒト共通フレームワーク領域であり、1つ以上(例えば、1~20、1~15、1~10、1~5、1~4、1~3)のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、前記フレームワーク領域は、ヒト共通フレームワーク領域であるか、またはヒト共通フレームワーク領域と70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%の同一性を有する。本発明のいくつかの例示的な実施形態では、前記VHは、以下に示すFRアミノ酸配列:
HFR1:Z1Z2Z3LZ4Z5SGAEVKKPGASZ6KVSCKAS(配列番号39)
HFR2:Z7HWVRQAPGQGZ8EWMGW(配列番号40)
HFR3:NYAQKFQGRVTZ9TZ10DZ11SZ12STAYMELSZ13LRSZ14DTAVYYC(配列番号41)
HFR4:WGZ15GTZ16VTVSS(配列番号42)を含み、
前記VLは、以下に示すFRアミノ酸配列:
LFR1:Z17Z18Z19LTQSPZ20Z21LSZ22SZ23GZ24RZ25TZ26Z27CRAS(配列番号43)
LFR2:LZ28WYQQKPGZ29APZ30LLIZ31(配列番号44)
LFR3:Z32Z33Z34Z35GZ36PZ37RFSGSGSGTZ38FTLTIZ39SLZ40Z41Z42DZ43ATYYC(配列番号45)
LFR4:FGZ44GTZ45Z46Z47IKR(配列番号46)を含み、
ここで、Z1~Z47はそれぞれいずれかのアミノ酸から選択される。
【0022】
8、Z1はQまたはEから選択され、Z2はVまたはIから選択され、Z3はQまたはTから選択され、Z4はVまたはKから選択され、Z5はEまたはQから選択され、Z6はVまたはMから選択され、Z7はM、IまたはLから選択され、Z8はLまたはPから選択され、Z9はMまたはIであり、Z10はRまたはAであり、Z11はTまたはKであり、Z12はIまたはTであり、Z13はRまたはSであり、Z14はDまたはEであり、Z15はKまたはQから選択され、Z16はLまたはMから選択され、Z17はDまたはEから選択され、Z18はIまたはTから選択され、Z19はQ、TまたはVから選択され、Z20はS、AまたはGから選択され、Z21はSまたはTから選択され、Z22はAまたはLから選択され、Z23はVまたはPから選択され、Z24はDまたはEから選択され、Z25はVまたはAから選択され、Z26はIまたはLから選択され、Z27はTまたはSから選択され、Z28はNまたはAから選択され、Z29はKまたはQから選択され、Z30はK、QまたはRから選択され、Z31はYまたはSから選択され、Z32はSまたはN、Z33はLまたはRから選択され、Z34はQまたはAから選択され、Z35はSまたはTから選択され、Z36はVまたはIから選択され、Z37はSまたはAから選択され、Z38はDまたはEから選択され、Z39はSまたはRであり、Z40はQまたはEから選択され、Z41はPまたはSから選択され、Z42はEまたはGから選択され、Z43はFまたはLから選択され、Z44はG、QまたはPから選択され、Z45はKまたはRから選択、Z46はVまたはLから選択、Z47はDまたはEから選択される、項7に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0023】
9、HFR1中のZ1、Z2、Z3、Z4、Z5、及びZ6は順番に、次の組み合わせ:Q、V、Q、V、E、V;E、V、Q、V、Q、V;E、V、Q、V、E、V;Q、I、T、K、E、V;E、V、Q、V、Q、Mのいずれかから選択され、
HFR2中のZ7及びZ8は順番に、次の組み合わせ:M、L;L、L;I、Pのいずれかから選択され、
HFR3中のZ9、Z10、Z11、Z12、Z13、及びZ14の組み合わせは、M、R、T、I、R、D、またはI、A、K、T、S、Eであり、
HFR4中のZ15及びZ16は順番に、次の組み合わせ:K、L;Q、M;Q、L;またはK、Mのいずれかから選択される、項8に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0024】
10、LFR1中のZ17、Z18、Z19、Z20、Z21、Z22、Z23、Z24、Z25、Z26、及びZ27は順番に、次の組み合わせ:D、I、Q、S、S、A、V、D、V、I、T;E、I、V、G、T、L、P、E、A、L、S;E、I、V、A、T、L、P、E、A、L、S;E、T、T、S、T、A、V、D、V、I、Tのいずれかから選択され、
LFR2中のZ28、Z29、Z30、及びZ31は順番に、次の組み合わせ:N、K、K、Y;A、Q、R、Y;N、K、K、S;N、K、Q、Yのいずれかから選択され、
LFR3中のZ32、Z33、Z34、Z35、Z36、Z37、Z38、Z39、Z40、Z41、Z42、及びZ43は順番に、次の組み合わせ:S、L、Q、S、V、S、D、S、Q、P、E、F;S、R、A、T、I、A、E、S、Q、S、E、F;N、R、A、T、I、A、D、S、E、P、E、F;S、L、Q、S、V、S、E、R、Q、P、E、F;S、L、Q、S、V、S、D、S、Q、P、G、Lのいずれかから選択され、
LFR4中のZ44、Z45、Z46、及びZ47は順番に、次の組み合わせ:G、K、V、D;G、K、L、E;P、K、V、E;G、K、V、E;Q、R、L、Eのいずれかから選択される、
項8または9に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0025】
11、Z1~Z16は順番に、下記表4の組み合わせのいずれかから選択される、項10に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0026】
【表4】
【0027】
12、Z17~Z47は順番に、下記表5の組み合わせのいずれかから選択される、項8~11のいずれか一項に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0028】
【表5】
【0029】
13、Z1~Z47は順番に、下記表6の組み合わせのいずれかから選択される、項8に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0030】
【表6】
【0031】
14、前記VH配列が、配列番号1~6から選択されるいずれか1つの配列であるか、または配列番号1~6のいずれか1つの配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列である、項1に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0032】
15、前記VL配列が、配列番号7~13から選択されるいずれか1つの配列であるか、または配列番号7~13のいずれか1つの配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列である、項1または14に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0033】
16、前記VH配列及びVL配列は、以下の配列の群:
配列番号1及び配列番号7、配列番号1及び配列番号8、配列番号2及び配列番号8、配列番号2及び配列番号12、配列番号2及び配列番号13、配列番号3及び配列番号8、配列番号4及び配列番号8、配列番号5及び配列番号9、配列番号5及び配列番号10、配列番号5及び配列番号11、配列番号6及び配列番号7、ならびに上記VH配列またはVL配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列から選択されるいずれかである、項1~15のいずれか一項に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0034】
17、Fab、F(ab’)2、Fab’、scFv、Fv、Fd、dAb、ダイアボディ(diabody)、またはマルチボディ(multibody)から選択される、項1~16のいずれか一項に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0035】
18、前記抗体が完全ヒト抗体、ヒト化抗体、マウス抗体、キメラ抗体、またはナノボディである、項1~17のいずれか一項に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0036】
19、IgGの重鎖定常領域から選択される重鎖定常領域と、κ鎖またはλ鎖から選択される軽鎖定常領域とをさらに含む、項1~18のいずれか一項に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0037】
20、前記重鎖定常領域がヒトIgG1の重鎖定常領域である、項19に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。いくつかの実施形態では、前記重鎖定常領域は、配列番号14に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号14と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列(例えば、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列)を含む。
【0038】
21、前記軽鎖定常領域がヒトκ鎖由来である、項19または20に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。いくつかの実施形態では、前記軽鎖定常領域は、配列番号15に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号15と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列(例えば、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列)を含む。
【0039】
22、単一特異性抗体、二重特異性抗体、または多重特異性抗体である、項1~21のいずれか一項に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0040】
23、項1~22のいずれか一項に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントをコードするポリヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
24、プラスミド、ファージミド、ウイルスベクター、または線状核酸から選択される、項23に記載の核酸分子を含む、構築物。
【0041】
25、項1~22のいずれか一項に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを発現する、あるいは項23に記載の核酸または項24に記載の構築物を含む、ウイルス、ファージ、または細胞。
【0042】
26、項1~22のいずれか一項に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント、項23に記載の核酸、項24に記載の構築物、または項25に記載のウイルス、ファージ、もしくは細胞を含む、医薬組成物。
【0043】
27、項1~22のいずれか一項に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント、項23に記載の核酸、項24に記載の構築物、または項25に記載のウイルス、ファージ、もしくは細胞を含む、キット。
【0044】
28、有効量の項26に記載の医薬組成物を患者に投与することを含む、B型肝炎ウイルス(HBV)感染を治療もしくは予防する、またはB型肝炎の症状を緩和する方法。
29、項1~22のいずれか一項に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント、項23に記載の核酸、項24に記載の構築物、または項25に記載のウイルス、ファージ、もしくは細胞を、被験者からの体液と接触させることを含む、HBVを検出する方法。
【0045】
30、前記体液が、前記被検者の血漿または血清である、項29記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1図1は、マウスIgG1定常領域の005、062、079、及び083抗体を尾静脈注射した後のAAV/HBVマウスの血漿HBV DNAに対する効果を示す図である。
図2図2は、マウスIgG1定常領域の005、062、079、及び083抗体を尾静脈注射した後のAAV/HBVマウスの血漿HBsAgに対する効果を示す図である。
図3図3は、マウスIgG1定常領域の005、021、062、及び088抗体を尾静脈注射した後のAAV/HBVマウスの血漿HBV DNAに対する効果を示す図である。
図4図4は、マウスIgG1定常領域の005、021、062、及び088抗体を尾静脈注射した後のAAV/HBVマウスの血漿HBsAgに対する効果を示す図である。
図5図5は、ヒトIgG1定常領域の021、090、091、及び093抗体を尾静脈注射した後、及びヒトIgG1定常領域の021を腹腔内注射した後の、AAV/HBVマウスの血漿HBV DNAに対するそれぞれの効果を示す図である。
図6図6は、ヒトIgG1定常領域の021、090、091、及び093抗体を尾静脈注射した後、及びヒトIgG1定常領域の021を腹腔内注射した後の、AAV/HBVマウスの血漿HBsAgに対するそれぞれの効果を示す図である。
図7図7は、ヒトIgG1定常領域の021、095、及び096抗体を尾静脈注射した後、及びヒトIgG1定常領域の021を腹腔内注射した後の、AAV/HBVマウスの血漿HBV DNAに対するそれぞれの効果を示す図である。
図8図8は、ヒトIgG1定常領域の021、095、及び096抗体を尾静脈注射した後、及びマウスIgG1定常領域の021を腹腔内注射した後の、AAV/HBVマウスの血漿HBsAgに対するそれぞれの効果を示す図である。
図9図9は、AAV/HBVマウスの血漿HBsAgに対する、マウスへの本願の抗体の連続投与の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
[発明の詳細]
0052 本願の目的は、B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)に特異的に結合することができる真新しい抗体またはその抗原結合フラグメントを提供することであり、前記結合により患者の血液中のHBsAgの発現レベルを低下させ、ヒトの体自身のT細胞を活性化し、体自身の免疫系が感染した肝細胞を効果的に殺し始めることができ、HBVの増殖を阻害することができる。前記特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントにより、本出願は、HBVの予防及び治療のための新しい選択肢及びアイデアを提供すると同時に、HBVの検出及び診断のための新しいツールを提供する。
【0048】
定義
本発明で使用されているように、用語の「抗体」は、「免疫グロブリン」とも呼ばれ、天然抗体の構造的特徴を有する抗体、及び天然抗体とは異なる構造的特徴を有するが抗原分子に対して結合特異性を示す抗体様分子を包含する。用語の抗体は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学活性フラグメント、すなわち、抗原結合部位を含む分子を包含することを意図している。免疫グロブリン分子は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、またはサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)であってもよい。
【0049】
本明細書において、抗体の「抗原結合フラグメント」は、組換えDNA技術によって、または完全な抗体の酵素的または化学的切断によって得られる。抗原結合フラグメントは特に、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、dAb及び相補性決定領域(CDR)フラグメント、一本鎖抗体(scFv)、単一ドメイン抗体、キメラ抗体、ダイアボディ、及び特異的な抗原結合の部分を付与するのに十分な免疫グロブリンを少なくとも含むポリペプチドを含む。本明細書に記載の抗原抗体フラグメントの例としては、(i)VL、CL、VH及びCH1ドメインを有するFabフラグメント;(ii)Fab’フラグメント、すなわち、CH1ドメインのC末端に1つ以上のシステイン残基を有するFabフラグメント;(iii)VH及びCH1ドメインを有するFdフラグメント;(iv)VH及びCH1ドメインを有し、かつCH1ドメインのC末端に1つ以上のシステイン残基を有するFd’フラグメント;(v)抗体の単一アームのVL及びVHドメインを有するFvフラグメント;(vi)VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al.,Nature 341,544-546(1989));(vii)単離されたCDR領域;(viii)F(ab’)2フラグメントであって、ヒンジ領域でジスルフィド結合によって架橋された2つのFab’フラグメントを含む二価フラグメント;(ix)一本鎖抗体分子(例えば、一本鎖Fv;scFv)(Bird et al.,Science 242:423-426(1988);及びHuston et al.,PNAS(USA)85:5879-5883(1988));(x)同じポリペプチド鎖内の軽鎖可変領域(VL)に連結された重鎖可変領域(VH)を含む、2つの抗原結合部位を有する「ダイアボディ」(例えば、EP404,097;WO93/11161;及びHollinger et al.,Pr C.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444-6448(1993)を参照);(xi)一対のタンデムFdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む「線状抗体」であって、前記Fdセグメントは相補的な軽鎖ポリペプチドと共に一対の抗原結合領域を形成するもの(Zapata et al.,Protein Eng.8(10):1057-1062(1995);及び米国特許第5,641,870号)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
用語の「重鎖」(「CH」)、「軽鎖」(「CL」)、「軽鎖可変領域」(「VL」)、「重鎖可変領域」(「VH」)、「フレームワーク」(「FR」)とは、天然に存在する免疫グロブリンのドメイン、及び合成(例えば、組換え)結合タンパク質(例えば、ヒト化抗体)の対応するドメインを指す。天然に存在する免疫グロブリン(例えば、IgG)の基本の構造単位は、2つの軽鎖と2つの重鎖を持つ四量体である。各鎖のアミノ末端(「N」)部分は、主に抗原認識を担当する約100~110またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含む。カルボキシ末端(各鎖の「C」)部分は定常領域を定義し、軽鎖は単一の定常領域を有し、重鎖は通常3つの定常領域と1つのヒンジ領域を有する。したがって、天然に存在する軽鎖構造IgG分子はN’-VL-CL-C’であり、IgG重鎖の構造はN’-VH-CH1-H-CH2-CH3-C’(Hはヒンジ領域)である。IgG分子の可変領域は、抗原の認識と接触に関与する相補性決定領域(CDR)と、可変領域の構造を維持し、CDRループの位置を決定するフレームワーク領域(FR)、すなわち非CDRセグメントとを含む。したがって、VL及びVHドメインは、N’-FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4-C’という構造を有する。本願において、VHの3つのCDRはそれぞれHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と呼ばれ、VHの4つのフレームワーク領域はそれぞれHFR1、HFR2、HFR3、及びHFR4と呼ばれ、VLの3つのCDRはそれぞれLCDR1、LCDR2、及びLCDR3と呼ばれ、VLの4つのフレームワーク領域はそれぞれLFR1、LFR2、LFR3、LFR4と呼ばれる。
【0051】
本願では、前記CDR及びFRは、ImmunoGeneTics(IMGT)ナンバリングシステム(例えば、Lefranc M.P.The IMGT unique numbering for immunoglobulins,T-cell receptors,and Ig-like domains.The immunologist 7,132-136,1999(1999)を参照)に従って識別される。
【0052】
本明細書で使用される「ナノボディ」という用語は、抗体重鎖の可変領域のみからなる単一ドメイン抗体を意味する。その相対的な分子サイズがナノスケールであるため、ナノボディと呼ばれる。ナノボディは、通常の抗体のように抗原にしっかりと結合できるが、一本鎖抗体のように互いにくっついて凝集することは容易ではない。「単一ドメイン抗体」という用語は、1つの可変領域、または標的結合のみを促進する操作された定常ドメインからなる独立した抗原結合単位である。「ダイアボディ」という用語は、scFvの二量体であり、2つのscFvフラグメントが、VH及びVLドメインの鎖間対形成(交差対形成)によって共発現されてダイアボディを形成する。同様に、複数のscFvによって形成される多量体は、マルチボディと呼ばれる。例えば、3つのscFvからなるトリアボディ、4つのscFvからなるテトラボディなどが挙げられる。ここで、各scFvは、同じ抗原特異性または異なる抗原特異性を有し得る。
【0053】
本明細書で使用される場合、「単一特異性抗体」、「二重特異性抗体」及び「多重特異性抗体」は、それぞれ、1つ、2つまたはそれ以上の異なる抗原、あるいは同じ抗原の1つ、2つまたはそれ以上の異なる抗原エピトープに結合する単一の抗体分子を指す。
【0054】
本明細書で使用されているように、用語の「キメラ抗体」とは、異なる種からの抗体フラグメントを組み合わせた抗体を指す。具体的には、例えば、組換えDNA技術を使用して、ある種(例えば、マウス)からのモノクローナル抗体のFc定常領域を別の種(例えば、ヒト)のFc定常領域に置き換えた抗体を指す。例えば、特許出願PCT/US86/02269;EP/173,494を参照されたい。
【0055】
本明細書で使用されているように、用語の「ヒト化抗体」とは、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域及び非ヒト(例えば、マウス、ラット、ウサギ、または合成)免疫グロブリンからの1つまたは複数のCDRを含む抗体を指す。CDRを除いて、ヒト化抗体の他のすべての部分は、天然のヒト免疫グロブリン配列の対応する部分と実質的に同じである。遺伝子工学によってヒト化抗体を構築する方法について、例えば、特許出願US/5,585,089を参照されたい。
【0056】
本明細書で使用されているように、用語の「完全ヒト抗体」は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する抗体を含むことを意図している。本技術の完全ヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基を含んでもよい(例えば、ランダムまたは部位特異的インビトロ突然変異誘発、またはインビボ体細胞の突然変異によって導入される突然変異)。しかしながら、本明細書で使用されているように、用語の「完全ヒト抗体」は、別の哺乳動物種(例えば、ウサギ)の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植されている抗体を含むことを意図しない。したがって、本明細書で使用されているように、用語の「完全ヒト抗体」とは、ヒトの天然免疫グロブリンと比べてわずかな配列変化または変異のみで、タンパク質分子の実質的にすべての部分(例えば、CDR、FR、CL、HCドメイン(例えば、CH1、CH2、CH3)、ヒンジ、VL、VH)がヒトにおいて実質的に非免疫原性である抗体を指す。したがって、完全ヒト抗体は、キメラ抗体またはヒト化抗体とは異なる。なお、完全ヒト抗体は、機能的に再構成されたヒト免疫グロブリン(例えば、重鎖及び/または軽鎖)遺伝子を発現することができる非ヒト動物または原核生物または真核生物細胞によって産生され得る。
【0057】
本明細書で使用される「特異的結合」という用語は、抗原決定基及び抗体分子の可変領域の空間コンフォメーションによって決定される高い親和性を有する相補的結合の特性を指す。この高い親和性は、前記抗体分子が前記抗原に結合すると、その対応する生理学的機能(例えば、本願のいくつかの実施形態では、前記抗体の前記抗原への結合及び除去に寄与する機能)を発揮できることを決定する。
【0058】
「ヒト共通フレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択において最もよく見いだされるアミノ酸残基を表すフレームワークのことである。一般に、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列は、可変領域配列のサブグループから選択される。一般に、配列サブグループは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Edition,NIH Publication 91-3242,Bethesda MD(1991)、第1~3巻のサブグループのようなものである。一部の実施形態では、VLについて、前記サブグループは、Kabat et al.,(同上)によって記載されているサブグループκIである。一部の実施形態では、VHについて、前記サブグループは、Kabat et al.,(同上)によって記載されているサブグループIIIである。
【0059】
2つのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列間の「相同性」または「同一性」とは、2つの配列間の同一のアミノ酸残基またはヌクレオチド残基のパーセンテージを指す。互いに比較される2つの配列の長さが異なる場合、配列「相同性」または「同一性」は、好ましくは、より長い配列のアミノ酸残基またはヌクレオチド残基と同一である短い配列のヌクレオチド残基のパーセンテージを指す。配列同一性は、Wisconsin配列分析パッケージなど、当技術分野で一般的に使用される配列解析ソフトウェアを使用することによって通常に決定することができる。
【0060】
本出願において、「ポリヌクレオチド」または「核酸」及び「核酸分子」という用語は、交換可能に使用され、DNA、RNA、cDNA(相補的DNA)、mRNA(メッセンジャーRNA)、rRNA(リボソームRNA)、shRNA(ショートヘアピンRNA)、snRNA(核内低分子RNA)、snoRNA(核小体低分子RNA)、miRNA(マイクロRNA)、ゲノムDNA、合成DNA、合成RNA及び/またはtRNAを含むがこれらに限定されない。
【0061】
本明細書で使用される場合、「構築物」とは、宿主を形質転換し、導入された配列の発現(転写及び翻訳など)を促進するために、それを介してポリヌクレオチド配列(外来遺伝子など)を宿主細胞に導入することができるベクターを指し、プラスミド、ファージミド、ウイルスベクターなどを含む。
【0062】
本明細書で使用する場合、「ファージミド」という用語は、繊維状ファージ由来のベクターであり、その基本的な構成要素は主にプラスミド複製起点、選択マーカー、遺伝子間領域(IG領域)を含み、通常、ネガティブ鎖及びポジティブ鎖のパッケージング配列と複製起点、ファージコートタンパク質遺伝子、制限エンドヌクレアーゼ認識部位、プロモーター、及びシグナルペプチドをコードするDNAフラグメントも含む。さらに、ファージミドは、ファージミドベースのライブラリーのスクリーニングを容易にするために分子タグを含むこともできる。ファージミドは、子孫ファージ粒子のアセンブリ(組み立て)を独立して完了することはできず、ライフサイクルを完了するために必要な他の構造的及び機能的タンパク質は、ヘルパーファージによって提供される。ヘルパーファージはDNA複製効率が極めて低い繊維状ファージの変異体であるため、ヘルパーファージとファージミドがパッケージングにより形成されたファージは宿主菌に共感染すると、ファージミドを含むファージを大量にパッケージングできるが、少量のヘルパーファージのみをパッケージングする。
【0063】
本明細書において「プラスミド」とは、細菌、酵母、放線菌などの生物の染色体(またはヌクレオイド(核様体))以外のDNA分子であり、細胞質や核に存在し、自律的に複製する能力を有し、それによって子孫細胞で一定のコピー数を維持し、持っている遺伝情報を表現することもできる。
【0064】
本明細書で使用される場合、「ウイルスベクター」とは、外来遺伝子及び関連する遺伝要素を運ぶことができ、ウイルス粒子にパッケージ化され、ウイルス侵入によって持っている外来遺伝子を細胞に導入する、遺伝子操作されたウイルスゲノムである、ウイルスベースの遺伝子ベクターを指す。
【0065】
本明細書で特に定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
抗体またはその抗原結合フラグメント
一態様では、本願は、B型肝炎ウイルスの表面抗原(HBsAg)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。一般に、本願の抗体は、重鎖可変領域(VH)配列及び軽鎖可変領域(VL)配列を含み、ここで:
前記重鎖可変領域は、以下に示す相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列の一般式:
HCDR1:X1YX3FX5X6X7Y(配列番号33)、
HCDR2:X11NX13X14X15X16X17X18(配列番号34)、
HCDR3:ARDX21WX23X24X25X26DX28YGMDX33(配列番号35)を含み、
前記軽鎖可変領域は、以下に示すCDRアミノ酸配列:
LCDR1:X34X35X36SX38X39(配列番号36)、
LCDR2:X40X41X42(配列番号37)、
LCDR3:QQSYSTPLX51(配列番号38)を含み、
ここで、X1、X3、X5、X6、X7、X11、X13、X14、X15、X16、X17、X18、X21、X23、X24、X25、X26、X28、X33、X34、X35、X36、X38、X39、X40、X41、X42、及びX51はすべて、いずれかのアミノ酸から選択できる。前記いずれかのアミノ酸は、20種類の天然アミノ酸のいずれであってもよく、人工的に合成または改変されたアミノ酸であってもよい。
【0066】
ここで、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3は、重鎖可変領域の3つのCDRを表し、重鎖可変領域のN’末端からC’末端まで順に配置されている。同様に、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3は、軽鎖可変領域の3つのCDRを表し、軽鎖可変領域のN’末端からC’末端まで順に配置されている。
【0067】
本願の実施例では、前記一般式によって提供されるCDRを検出するためにいくつかのアミノ酸が選択され、それは、X1がGまたはAである場合、X3がT、AまたはSである場合、X5がT、AまたはIである場合、X6がG、A、YまたはDの場合、X7がYまたはAの場合、X11がIまたはAの場合、X13がPまたはAの場合、X14がN、AまたはYの場合、X15がS、AまたはNの場合、X16がGまたはAの場合、X17がGまたはAの場合、X18がTまたはAの場合、X21がL、A、またはVの場合、X23がN、Q、またはAの場合、X24がD、Q、またはAの場合、X25がD、GまたはAの場合、X26がV、GまたはAの場合、X28がYまたはAの場合、X33がVまたはAの場合、X34がQまたはAの場合、X35がSまたはAの場合、X36がI、AまたはVの場合、X38がT、AまたはSの場合、X39がYまたはAの場合、X40がA、G、D、TまたはSの場合、X41がAまたはSの場合、X42がAまたはSの場合、X51がTまたはAの場合を含む。検出結果は、前記一般式を含む本願の抗体がHBsAgに特異的に結合できることを確認した。
【0068】
当業者は、前記一般式中の各Xn(ここで、nは一般式中の各Xの整数の下付き文字を表す)の各値を互いに組み合わせることができることを知っているであろう。例えば、いくつかの実施形態では、HCDR1中のX1、X3、X5、X6及びX7は順番に、以下の組み合わせ:G、T、T、G、Y;A、T、T、G、Y;G、A、T、G、Y;G、T、A、G、Y;G、T、T、A、Y;G、T、T、G、A;G、S、I、G、Y;G、T、T、D、Y;G、T、T、Y、Yのいずれかから選択される。いくつかの特定の実施形態では、HCDR1は、GYTFTGYY(配列番号17);GYSFIGYY(配列番号18);GYTFTDYY(配列番号19);GYTFTYYY(配列番号20)から選択される。
【0069】
HCDR2では、X11、X13、X14、X15、X16、X17、及びX18は順番に、以下の組み合わせ:I、P、N、S、G、G、T;A、P、N、S、G、G、T;I、A、N、S、G、G、T;I、P、A、S、G、G、T;I、P、N、A、G、G、T;I、P、N、S、A、G、T;I、P、N、S、G、A、T;I、P、N、S、G、G、A;I、P、Y、N、G、G、Tのいずれかから選択される。いくつかの特定の実施形態では、HCDR2は、INPNSGGT(配列番号21);INPYNGGT(配列番号22)から選択される。
【0070】
HCDR3では、X21、X23、X24、X25、X26、X28、X33は順番に、次の組み合わせ:L、N、D、D、V、Y、V;A、N、D、D、V、Y、V;L、A、D、D、V、Y、V;L、N、A、D、V、Y、V;L、N、D、A、V、Y、V;L、N、D、D、A、Y、V;L、N、D、D、V、A、V;L、N、D、D、V、Y、A;V、Q、Q、G、G、Y、Vのいずれかから選択される。いくつかの特定の実施形態では、HCDR3は、ARDLWNDDVDYYGMDV(配列番号23)またはARDVWQQGGYYYYMDV(配列番号24)である。
【0071】
LCDR1では、X34、X35、X36、X38、及びX39は順番に、次の組み合わせ:Q、S、I、T、Y;A、S、I、T、Y;Q、A、I、T、Y;Q、S、A、T、Y;Q、S、I、A、Y;Q、S、I、T、A;Q、S、I、S、Y;Q、S、V、S、Yのいずれかから選択される。いくつかの特定の実施形態では、LCDR1は、QSISTY(配列番号25);QSISSY(配列番号26);QSVSSY(配列番号27)から選択される。
【0072】
LCDR2では、X40、X41、X42が順番に、次の組み合わせ:A、A、S;S、A、S;A、S、S;A、A、A;G、A、S;D、A、S;T、A、Sのいずれかから選択される。いくつかの特定の実施形態では、LCDR2は、AAS(配列番号28);GAS(配列番号29);DAS(配列番号30);TAS(配列番号31)から選択される。
【0073】
LCDR3のX51は、TまたはAから選択される。いくつかの特定の実施形態では、LCDR3はQQSYSTPLT(配列番号32)である。
いくつかの実施形態では、前記VHは、
配列番号17に示されるHCDR1、配列番号21に示されるHCDR2、配列番号23に示されるHCDR3;または
配列番号20に示されるHCDR1、配列番号21に示されるHCDR2、配列番号24に示されるHCDR3;または
配列番号18に示されるHCDR1、配列番号22に示されるHCDR2、配列番号23に示されるHCDR3;または
配列番号19に示されるHCDR1、配列番号21に示されるHCDR2、配列番号23に示されるHCDR3を含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、前記VLは、
配列番号25に示されるLCDR1;配列番号28に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3;または
配列番号26に示されるLCDR1;配列番号28に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3;または
配列番号27に示されるLCDR1;配列番号29に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3;または
配列番号27に示されるLCDR1;配列番号30に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3;または
配列番号26に示されるLCDR1;配列番号30に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3;または
配列番号26に示されるLCDR1;配列番号31に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、B型肝炎ウイルスの表面抗原(HBsAg)に特異的に結合する前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、重鎖可変領域(VH)配列及び軽鎖可変領域(VL)配列を含み、
前記VHは、以下に示されるような相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:配列番号17に示されるHCDR1、配列番号21に示されるHCDR2、配列番号23に示されるHCDR3を含み、かつ前記VLは、配列番号25に示されるLCDR1、配列番号28に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を含む;または
前記VHは、以下に示されるような相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:配列番号17に示されるHCDR1、配列番号21に示されるHCDR2、配列番号23に示されるHCDR3を含み、かつ前記VLは、配列番号26に示されるLCDR1、配列番号28に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を含む;または
前記VHは、以下に示されるような相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:配列番号20に示されるHCDR1、配列番号21に示されるHCDR2、配列番号24に示されるHCDR3を含み、前記VLは、配列番号25に示されるLCDR1、配列番号28に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を含む;または
前記VHは、以下に示されるような相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:配列番号18に示されるHCDR1、配列番号22に示されるHCDR2、配列番号23に示されるHCDR3を含み、かつ前記VLは、配列番号26に示されるLCDR1、配列番号28に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を含む;または
前記VHは、以下に示されるような相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:配列番号19に示されるHCDR1、配列番号21に示されるHCDR2、配列番号23に示されるHCDR3を含み、かつ前記VLは、配列番号27に示されるLCDR1、配列番号29に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を含む;または
前記VHは、以下に示されるような相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:配列番号19に示されるHCDR1、配列番号21に示されるHCDR2、配列番号23に示されるHCDR3を含み、かつ前記VLは、配列番号27に示されるLCDR1、配列番号30に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を含む;または
前記VHは、以下に示されるような相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:配列番号19に示されるHCDR1、配列番号21に示されるHCDR2、配列番号23に示されるHCDR3を含み、かつ前記VLは、配列番号26に示されるLCDR1、配列番号30に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を含む;または
前記VHは、以下に示されるような相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:配列番号17に示されるHCDR1、配列番号21に示されるHCDR2、配列番号23に示されるHCDR3を含み、かつ前記VLは、配列番号26に示されるLCDR1、配列番号31に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を含む。
【0076】
ここで、いずれかの組み合わせを選択した後、CDRの群の特定の配列を、上記の一般式に従って決定し得る。HCDR1、HCDR2、及びHCDR3の特定の配列は、上記の表1の組み合わせなど、特定の重鎖CDRの組み合わせをさらに形成することができる。同様に、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3の特定の配列は、上記の表2の組み合わせなど、軽鎖CDRの特定の組み合わせをさらに形成することができる。HCDRの群とLCDRの群をランダムに組み合わせることもできる。例えば、いくつかの特定の実施形態では、軽鎖及び重鎖のCDRの組み合わせは、上の表3に示される通りである。
【0077】
さらに、いくつかの実施形態では、前記HBsAgに特異的に結合する抗体は、各CDR領域の両側にフレームワーク領域(FR)をさらに含み、前記フレームワーク領域は、ヒト共通フレームワーク領域であるか、または少なくとも1つのアミノ酸の置換、欠失もしくは挿入を含むヒト共通フレームワーク領域である。1つの例示的な実施形態では、VHは、以下に示すFRアミノ酸配列:
HFR1:Z1Z2Z3LZ4Z5SGAEVKKPGASZ6KVSCKAS(配列番号39)
HFR2:Z7HWVRQAPGQGZ8EWMGW(配列番号40)
HFR3:NYAQKFQGRVTZ9TZ10DZ11SZ12STAYMELSZ13LRSZ14DTAVYYC(配列番号41)
HFR4:WGZ15GTZ16VTVSS(配列番号42)を含み、
VLは、以下に示すFRアミノ酸配列:
LFR1:Z17Z18Z19LTQSPZ20Z21LSZ22SZ23GZ24RZ25TZ26Z27CRAS(配列番号43)
LFR2:LZ28WYQQKPGZ29APZ30LLIZ31(配列番号44)
LFR3:Z32Z33Z34Z35GZ36PZ37RFSGSGSGTZ38FTLTIZ39SLZ40Z41Z42DZ43ATYYC(配列番号45)
LFR4:FGZ44GTZ45Z46Z47IKR(配列番号46)を含み、ここで、Z1~Z47はそれぞれいずれかのアミノ酸から選択される。前記いずれのアミノ酸は、20種類の天然アミノ酸のいずれであってもよく、人工的に合成または改変されたアミノ酸であってもよい。
【0078】
ここで、HFR1、HFR2、HFR3、及びHFR4は、重鎖可変領域の4つのFRを表し、重鎖可変領域のN’末端からC’末端まで順に配置されている。同様に、LFR1、LFR2、LFR3、及びLF4は、軽鎖可変領域の4つのFRを表し、軽鎖可変領域のN’末端からC’末端まで順に配置されている。
【0079】
本願の実施例では、特定のFR配列を形成するためにいくつかのアミノ酸が選択され、前述のCDRとのランダムなマッチングによって、CDRコンフォメーションに対する前記FRアミノ酸配列の一般式の支持効果が検出された。選択されたアミノ酸は、例えば、以下を含む:
Z1はQまたはEから選択され、Z2はVまたはIから選択され、Z3はQまたはTから選択され、Z4はVまたはKから選択され、Z5はEまたはQから選択され、Z6はVまたはMから選択され、Z7はM、IまたはLから選択され、Z8はLまたはPから選択され、Z9はMまたはIであり、Z10はRまたはAであり、Z11はTまたはKであり、Z12はIまたはTであり、Z13はRまたはSであり、Z14はDまたはEであり、Z15はKまたはQから選択され、Z16はLまたはMから選択され、Z17はDまたはEから選択され、Z18はIまたはTから選択され、Z19はQ、TまたはVから選択され、Z20はS、AまたはGから選択され、Z21はSまたはTから選択され、Z22はAまたはLから選択され、Z23はVまたはPから選択され、Z24はDまたはEから選択され、Z25はVまたはAから選択され、Z26はIまたはLから選択され、Z27はTまたはSから選択され、Z28はNまたはAから選択され、Z29はKまたはQから選択され、Z30はK、QまたはRから選択され、Z31はYまたはSから選択され、Z32はSまたはNから選択され、Z33はLまたはRから選択され、Z34はQまたはAから選択され、Z35はSまたはTから選択され、Z36はVまたはIから選択され、Z37はSまたはAから選択され、Z38はDまたはEから選択され、Z39はSまたはRであり、Z40はQまたはEから選択され、Z41はPまたはSから選択され、Z42はEまたはGから選択され、Z43はFまたはLから選択され、Z44はG、QまたはPから選択され、Z45はKまたはRから選択、Z46はVまたはLから選択、Z47はDまたはEから選択される。
【0080】
いくつかの実施形態では、HFR1中のZ1、Z2、Z3、Z4、Z5、及びZ6は順番に、以下の組み合わせ:Q、V、Q、V、E、V;E、V、Q、V、Q、V;E、V、Q、V、E、V;Q、I、T、K、E、V;E、V、Q、V、Q、Mのいずれかから選択される;HFR2のZ7、Z8は順番に、次の組み合わせ:M、L;L、L;I、Pのいずれかから選択される;HFR3のZ9、Z10、Z11、Z12、Z13、Z14の組み合わせは、M、R、T、I、R、D;またはI、A、K、T、S、Eである;HFR4のZ15とZ16の組み合わせは、K、L;Q、M;Q、L、またはK、Mである。いくつかの実施形態では、前記LFR1中のZ17、Z18、Z19、Z20、Z21、Z22、Z23、Z24、Z25、Z26、及びZ27は順番に、以下の組み合わせ:D、I、Q、S、S、A、V、D、V、I、T;E、I、V、G、T、L、P、E、A、L、S;E、I、V、A、T、L、P、E、A、L、S;E、T、T、S、T、A、V、D、V、I、Tのいずれかから選択される。いくつかの実施形態では、LFR2中のZ28、Z29、Z30、及びZ31は順番に、以下の組み合わせ:N、K、K、Y;A、Q、R、Y;N、K、K、S;N、K、Q、Yのいずれかから選択される。いくつかの実施形態では、LFR3中のZ32、Z33、Z34、Z35、Z36、Z37、Z38、Z39、Z40、Z41、Z42、Z43は順番に、以下の組み合わせ:S、L、Q、S、V、S、D、S、Q、P、E、F;S、R、A、T、I、A、E、S、Q、S、E、F;N、R、A、T、I、A、D、S、E、P、E、F;S、L、Q、S、V、S、E、R、Q、P、E、F;S、L、Q、S、V、S、D、S、Q、P、G、Lのいずれかから選択される。いくつかの実施形態では、LFR4中のZ44、Z45、Z46、及びZ47は順番に、以下の組み合わせ:G、K、V、D;G、K、L、E;P、K、V、E;G、K、V、E;Q、R、L、Eのいずれかから選択される。
【0081】
いくつかの実施形態において、重鎖可変領域におけるFRの可変パラメーターZn(ここで、nは、一般式における各Zの整数の下付き文字を表す)は、前述の表4の任意の組み合わせから順に選択することができる。同様に、軽鎖可変領域のFRの可変パラメーターZnは、上記表5の任意の組み合わせから順次選択することができる。いくつかの実施形態において、軽鎖及び重鎖のCDRの組み合わせは、上記の表6に示される通りである。
【0082】
ここで明確されたいのは、表1から表6などの本願のすべての表は、各行の枠におけるすべてのパラメーター値(例えばZnのパラメーター値またはXnのパラメーター値)が1つまたは一種類の組み合わせを形成することである。
【0083】
いくつかの特定の実施形態では、VH配列は、配列番号1~6から選択される。いくつかの特定の実施形態では、VL配列は、配列番号7~13から選択される。いくつかの特定の実施形態では、前記抗体のVH配列は配列番号1~6から選択され、前記VL配列は配列番号7~13から選択される。いくつかの特定の実施形態では、VH配列及びVL配列は、配列番号1及び配列番号7、配列番号1及び配列番号8、配列番号2及び配列番号8、配列番号2及び配列番号12、配列番号2及び配列番号13、配列番号3及び配列番号8、配列番号4及び配列番号配列番号8、配列番号5及び配列番号9、配列番号5及び配列番号10、配列番号5及び配列番号11、配列番号6及び配列番号7のいずれかの群から選択される。
【0084】
しかし、当業者は、すべての抗体またはその抗原結合フラグメントが完全な重鎖及び軽鎖可変領域を含むわけではないことを理解するであろう。さらに、多くの場合、抗体抗原結合フラグメントのみを含むタンパク質分子は、抗原に特異的に結合及び/または中和する能力を依然として持っている。いくつかの実施形態では、前記抗体は、抗体のVH及び/またはVLのみを含んでもよく、例えばdAb、軽鎖可変領域のみを含む単一ドメイン抗体、ナノボディなどである。いくつかの実施形態では、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは定常領域を含まなくてもよく、例えば前述のHCDR及びLCDRを含むscFvである。いくつかの実施形態では、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、Fab、F(ab’)2、Fab’、Fv、Fd、ダイアボディ(diabody)、またはマルチボディ(multibody)から選択される。ここで、前記ダイアボディ及びマルチボディは、1つ、2つ、またはそれ以上の前述のscFvを含み、HBsAgまたは他の抗原に特異的に結合する他のscFvを含み得る。いくつかの実施形態では、前記抗体は、単一特異性抗体、二重特異性抗体、または多重特異性抗体である。また、本願に記載の抗体の抗原結合フラグメントとして、本願に開示される各種CDR、前記CDRの組み合わせ、及び前記CDR(HCDR3及び/またはLCDR3など)を含みながらHBsAgを特異的に認識する能力を保持する抗体または抗体結合フラグメントも本出願の保護範囲内に含まれる。
【0085】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、マウス抗体、キメラ抗体またはナノボディである。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、重鎖定常領域及び軽鎖定常領域をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記重鎖定常領域及び/または軽鎖定常領域は、天然の免疫グロブリンに由来し、例えば、前記重鎖定常領域は、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY、またはサブタイプ、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2に由来し得る。軽鎖定常領域は、κ鎖またはλ鎖から選択され得る。いくつかの特定の実施形態では、前記重鎖定常領域は、配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む、または配列番号14と70%以上の配列同一性を有する、例えば、配列番号14と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、ヒトIgG1の重鎖定常領域である。いくつかの特定の実施形態では、前記軽鎖定常領域はκ鎖に由来し、配列番号15に示されるアミノ酸配列を含む、または配列番号15と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、例えば、配列番号15と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0086】
核酸、構築物、ウイルス、ファージまたは細胞
一態様では、本願はまた、HBsAgに特異的に結合する前述の抗体またはその抗原結合フラグメントをコードするポリヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子を提供する。いくつかの実施形態では、前記核酸分子はRNAまたはDNA分子である。いくつかの実施形態では、前記核酸は一本鎖または二本鎖である。いくつかの実施形態では、前記核酸は線状または環状である。前記核酸は、細胞によって、または化学的に合成することができる。いくつかの実施形態では、前記核酸は化学的に修飾された核酸分子である。
【0087】
一態様では、本出願は、前述の核酸分子を含む構築物も提供し、前記構築物は、プラスミド、ファージミド、ウイルスベクター、または線状核酸から選択される。本願は、上述の構築物を含む構築物の組成物も提供し、組成物中の各構築物はそれぞれ、HBsAgに特異的に結合する上述の抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする核酸分子の一部を含み得る。例えば、構築物の組成物であって、該構築物はプラスミドであり、該構築物の組成物はそれぞれ、前述の抗体分子の重鎖及び軽鎖をコードするものを含むプラスミドを含む。
【0088】
一態様では、本願はまた、HBsAgに特異的に結合する前述の抗体またはその抗原結合フラグメントを発現または含有する、あるいは前述の核酸、前述の構築物、または前述の構築物の組成物を含むウイルス、ファージまたは細胞を提供する。前記ウイルスは、例えば、AAV、レンチウイルスなどから選択される。前記ファージは、例えばλファージ、Tファージ、M13ファージ、f1ファージ、fdファージなどから選択される。前記細胞は、例えば、哺乳動物細胞、昆虫細胞、細菌、真菌などから選択され得る。
【0089】
さらに、本願はまた、HBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを産生するための核酸、構築物、ウイルス、ファージまたは細胞の使用を含む。
医薬組成物及び治療法
本願はまた、HBsAgに特異的に結合する上記抗体またはその抗原結合フラグメント、上記核酸、上記構築物、または上記ウイルス、ファージもしくは細胞を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、適切な量の薬学的に許容される添加剤(補助物質)をさらに含む。これらの添加剤は、とりわけ、送達及び許容性などを改善するために処方に組み込まれる。すべての製薬化学者によく知られている薬局方、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company,Easton,PA)には、大量の適切な処方が記載されている。本明細書において、薬学的に許容される添加剤とは、非毒性の充填剤、安定剤、希釈剤、担体、溶媒または他の製剤添加剤を指す。これらのうち、微結晶セルロース、マンニトールなどの希釈剤、賦形剤;デンプン、スクロースなどの充填剤;デンプン、セルロース誘導体、アルギン酸塩、ゼラチン及び/またはポリエチレンピロリドンなどの結合剤;炭酸カルシウム及び/または重炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;第四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤;セチルアルコールなどの界面活性剤;水、生理食塩水、カオリン、ベントナイトなどの担体、溶媒;タルク、ステアリン酸カルシウム/マグネシウム、ポリエチレングリコールなどの潤滑剤が挙げられる。また、本発明の医薬組成物は注射剤であることが好ましい。
【0090】
本発明のいくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物中の抗体またはその抗原結合フラグメントは、1mg/mlから1000mg/mlの濃度で存在し、好ましくは10mg/mlから1000mg/mlの濃度で存在し、より好ましくは50mg/mlから500mg/mlの濃度で存在し、さらにより好ましくは100mg/mlから300mg/mlの濃度で存在する。
【0091】
本発明の医薬組成物は、pHが3.0~9.0であることが好ましい。ここで、緩衝系、防腐剤、表面張力剤、キレート剤、安定剤、及び界面活性剤をさらに含むことができる。本発明の一実施形態では、本発明の医薬組成物は水性製剤である。このような製剤は、通常、溶液または懸濁液である。本発明の特定の実施形態では、該医薬組成物は安定な水性溶液である。本発明の別の特定の実施形態では、該医薬組成物は凍結乾燥製剤であり、使用前に医師または患者は溶媒及び/または希釈剤を加えて前記凍結乾燥製剤を溶解する。
【0092】
一態様では、本出願は、適切な用量の前述の医薬組成物を患者に投与することを含む、HBV感染を治療する方法も提供する。その適切な用量は、被検者の年齢、体格、対象疾患、症状、投与経路等により適宜増減される。本発明の医薬組成物が、成人のB型肝炎ウイルス感染に関連するさまざまな症状及び疾患の治療のために、HBsAgに特異的に結合する上記抗体またはその抗原結合フラグメントを含む場合、前記医薬組成物は、静脈内投与することができ、典型的には、体重1キログラムあたり約0.01から約20mgの抗体の単回用量、例えば、約0.1から約15、約1から約10、約3から約10mg/kg体重(mpk)、約12mpk体重で投与する。治療の頻度と期間は、病気の重症度に応じて調整することができる。例えば、患者に週に一度投与する。
【0093】
本発明の医薬組成物を投与するために使用できる様々な薬剤送達システムが知られている。例えば、リポソーム、マイクロ粒子、マイクロカプセルへのカプセル化、突然変異ウイルスを発現できる組換え細胞、受容体介在エンドサイトーシス効果(例えば、Wu et al.,(1987),J.Biol.Chem.262:4429-4432を参照)などが挙げられる。薬剤の投与方法には、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、及び経口などの経路が含まれるが、これらに限定されない。当該医薬組成物は、注入またはボーラス注射、上皮層及び粘膜層(例えば、口腔粘膜、直腸及び小腸粘膜)を介した吸収などの任意の便利な経路によって投与することができ、他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与することができる。投与方法は、全身投与または局所投与であり得る。
【0094】
該医薬組成物はまた、ベシクル、特にリポソームによって送達することもできる(Langer(1990)Science 249:1527-1533;Treat et al.,(1989)in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,Lopez Berestein and Fidler(eds.),Liss,New York,pp.353-365;Lopez-Berestein,supra,pp.317-327を参照)。
【0095】
場合によっては、医薬組成物は放出制御システムによって送達することができる。一実施形態では、ポンプを使用することができる(Langer,supra;Sefton(1987)CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201を参照)。別の実施形態では、ポリマー材料を使用することができる(Medical Application of Controlled Release,Langer and Wise(ed.),CRC Pres.,Boca Raton,Florida(1974)を参照)。他の放出制御系の議論については、Langer(1990)Science 249:1527-1533を参照されたい。
【0096】
前記医薬組成物は、単独でまたは組み合わせて投与することができ、B型肝炎ウイルスの表面抗原の負荷を減少させることによって患者の症状を改善することができる。いくつかの実施形態において、前記投与は併用投与であり、ここで、HBsAg抗体またはその抗原結合フラグメントが1つ以上の治療剤(または第2の治療剤)と組み合わせて投与される。共投与及び併用療法は、同時投与に限定されず、抗HBsAg抗体またはその抗原結合フラグメントが、患者の少なくとも1つの他の治療剤の投与を含む治療過程において少なくとも1回投与されるレジメンも含む。第2の治療剤は、別の抗体/抗体フラグメント、または可溶性サイトカイン受容体(例えば、インターフェロン、インターロイキン、チモファシンなど)、ヌクレオシド類似体(テノホビル、エンテカビル、アデホビルなど)などの別のHBV治療薬であり得る。
【0097】
本発明はまた、疾患または状態を治療するための薬剤の調製における、本明細書に記載の任意の抗HBsAg抗体または抗原結合フラグメントの使用を含み、ここで、疾患または状態は、人体におけるHBsAgのレベルを低下させることによって改善される。
【0098】
試薬、キット、検出方法
一態様では、本願は、HBsAgに特異的に結合する前記の抗体もしくはその抗原結合フラグメント、前述の核酸の相補鎖もしくは前述相補鎖のフラグメント、または前述の構築物、ウイルス、ファージもしくは細胞を含む試薬を提供する。いくつかの実施形態では、前記試薬は、標識分子をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記標識分子は、西洋ワサビペルオキシダーゼ及びアルカリホスファターゼなどの酵素標識分子、蛍光タンパク質分子、フルオレセイン分子、ビオチン分子、同位体などの造影剤から選択することができる。いくつかの実施形態では、前記標識分子は、HBsAgに特異的に結合する前記の抗体またはその抗原結合フラグメント、前述の核酸の相補鎖または前記相補鎖のフラグメント、あるいは前述の構築物、ウイルス、ファージまたは細胞に結合して複合体を形成する。
【0099】
一方、本願はキットも提供する。いくつかの実施形態では、前記キットは、HBsAgに特異的に結合する前述の抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、前記キットは、前述の核酸、該核酸のフラグメント、または該核酸の相補鎖もしくは該相補鎖のフラグメントを含む。いくつかの実施形態では、前記キットは、前述の構築物、ウイルス、ファージ、または細胞を含む。いくつかの実施形態では、前記キットは前述の試薬を含む。いくつかの実施形態では、前記キットはインビトロ検出キットである。いくつかの実施形態では、前記キットは、HBsAgに特異的に結合する前述の抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、ELISAキットまたは免疫組織化学キットなどの免疫検出キットである。いくつかの実施形態では、前記キットは、HBsAgに特異的に結合する前述の抗体またはその抗原結合フラグメントを含むインビボ非侵襲的診断キットであり、HBsAgに特異的に結合する前述の抗体またはその抗原結合フラグメントは、標識分子と一緒に複合体を形成する。いくつかの実施形態では、前記インビボ非侵襲的診断キットは、ラジオイムノイメージングまたは標的超音波造影から選択されるイメージング方法に使用することができる。ラジオイムノイメージングで使用される場合、前記標識分子は放射性核種である。標的超音波造影に使用する場合、前記標識分子は超音波造影剤である。
【0100】
また、本願は、HBsAgに特異的に結合する上記抗体またはその抗原結合性フラグメント、上記試薬またはキットを用いた、HBVの検出方法、HBV感染の診断方法またはHBV関連疾患の進行状況の判定方法も提供する。
【0101】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の技術構想の範囲内で、本発明の技術案に対して、様々な技術的特徴を他の適切な方法で組み合わせることを含め、様々な単純な変更を加えることができ、これらの単純な変更及び組み合わせも、本発明によって開示される内容とみなされるべきであり、すべて本発明の保護範囲に属する。
【0102】
前述の説明及び以下の実施例は、本発明の範囲を限定するのではなく、説明することを意図していることを理解されたい。本発明の範囲内の他の態様、利点、及び修正は、本発明が属する分野の技術者には明らかであろう。本発明の実施形態に基づいて、創造的な努力をすることなく当業者によって得られる他のすべての実施形態は、本発明の保護範囲内に入る。
【実施例
【0103】
実施例1:HBsAg抗体発現ベクターの構築
HindIII制限部位、Kozak配列、分泌シグナルペプチド遺伝子及びHBsAg抗体重鎖コード遺伝子(VHアミノ酸配列のコード遺伝子及びヒトIgG1の定常領域コード遺伝子を含む)、終止コドン及びEcoRIコード遺伝子を順次、直列に融合し、化学合成を使用して遺伝子断片を取得した。上記断片をEcoRIとHindIII部位を介して真核発現プラスミドpCDNA3.1(+)(Invitrogen社より購入、カタログ番号V790-20)に挿入し、配列決定により確認して、HBsAg抗体重鎖に使用するための発現プラスミドpCDNA3.1(+)-DHを得た。
【0104】
HindIII制限部位、Kozak配列、分泌シグナルペプチド遺伝子及びHBsAg軽鎖コード遺伝子(VLアミノ酸配列のコード遺伝子及びκ鎖定常領域のコード遺伝子を含む)、終止コドン及びEcoRIコード遺伝子を順次、直列に融合し、化学合成を使用して遺伝子断片を取得した。上記断片をEcoRIとHindIII部位を介して真核発現プラスミドpCDNA3.1(+)に挿入し、配列決定により確認して、抗体軽鎖に使用するための発現プラスミドpCDNA3.1(+)-DLを得た。
【0105】
ここで、VHのアミノ酸配列は、Z123LZ45SGAEVKKPGASZ6KVSCKAS 1 YX 3 FX 5 6 7 7HWVRQAPGQGZ8EWMGW 11 NX 13 14 15 16 17 18 NYAQKFQGRVTZ9TZ10DZ11SZ12STAYMELSZ13LRSZ14DTAVYYCARDX 21 WX 23 24 25 26 DX 28 YGMDX 33 WGZ15GTZ16VTVSS(配列番号47)であり、
VLのアミノ酸配列は、Z171819LTQSPZ2021LSZ22SZ23GZ24RZ25TZ2627CRAS 34 35 36 SX 38 39 LZ28WYQQKPGZ29APZ30LLIZ31 40 41 42 32333435GZ36PZ37RFSGSGSGTZ38FTLTIZ39SLZ404142DZ43ATYYCQQSYSTPLX 51 FGZ44GTZ454647IKR(配列番号48)である。
【0106】
ここで、下線部分はCDRであり、下線のない部分はFRであり、Xn及びZn(nは任意の整数の下付き文字を指す)は、任意のアミノ酸から選択することができる。
本出願の実施例でテストされたHBsAg抗体のうち、番号がそれぞれ021、021-M1、021-M3、021-M5、021-M6、021-M7、021-M11、021-M13、021-M14、021-M15、021-M16、021-M17、021-M18、021-M21、021-M23、021-M24、021-M25、021-M26、021-M28、021-M33、021-M34、021-M35、021-M36、021-M38、021-M39、021-M40、021-M41、021-M42、及び021-M51の抗体について、そのZn及びXnの値はそれぞれ、下記表7(Zn)及び発明の開示の表3(Xn)に示されるとおりである。
【0107】
【表7】
【0108】
番号がそれぞれ005、062、079、083、088、090、091、093、095、096の抗体のXn及びZnの値は、それぞれ発明の開示の表3(Xn)及び表6(Zn)のとおりである。具体的なVH及びVL配列は次のとおりである。
【0109】
VH配列:
021及び079:QVQLVESGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTGYYMHWVRQAPGQGLEWMGWINPNSGGTNYAQKFQGRVTMTRDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCARDLWNDDVDYYGMDVWGKGTLVTVSS(配列番号1)
005、095、096:EVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTGYYMHWVRQAPGQGLEWMGWINPNSGGTNYAQKFQGRVTMTRDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCARDLWNDDVDYYGMDVWGQGTMVTVSS(配列番号2)
062:EVQLVESGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTGYYMHWVRQAPGQGLEWMGWINPNSGGTNYAQKFQGRVTMTRDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCARDLWNDDVDYYGMDVWGQGTLVTVSS(配列番号3)
088:QITLKESGAEVKKPGASVKVSCKASGYSFIGYYLHWVRQAPGQGLEWMGWINPYNGGTNYAQKFQGRVTMTRDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCARDLWNDDVDYYGMDVWGKGTLVTVSS(配列番号4)
090、091、093:EVQLVQSGAEVKKPGASMKVSCKASGYTFTDYYIHWVRQAPGQGPEWMGWINPNSGGTNYAQKFQGRVTMTRDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCARDLWNDDVDYYGMDVWGKGTMVTVSS(配列番号5)
083:EVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTYYYMHWVRQAPGQGLEWMGWINPNSGGTNYAQKFQGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARDVWQQGGYYYYMDVWGKGTLVTVSS(配列番号6)
VL配列:
021、083:DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISTYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQSYSTPLTFGGGTKVDIKR(配列番号7)
005、062、079、088:DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQSYSTPLTFGGGTKLEIKR(配列番号8)
090:EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPARFSGSGSGTEFTLTISSLQSEDFATYYCQQSYSTPLTFGPGTKVEIKR(配列番号9)
091:EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFATYYCQQSYSTPLTFGGGTKVDIKR(配列番号10)
093:DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYDASSLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTIRSLQPEDFATYYCQQSYSTPLTFGGGTKLEIKR(配列番号11)
095:DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLISAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPGDLATYYCQQSYSTPLTFGGGTKVEIKR(配列番号12)
096:ETTLTQSPSTLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPQLLIYTASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQSYSTPLTFGQGTRLEIKR(配列番号13)
【0110】
ここで、上記の抗体VH及びVLとCDR配列との対応関係は下記表8に示す通りである。
【0111】
【表8】
【0112】
実施例2:抗HBsAg抗体の発現及び精製
実施例1に記載の発現プラスミドpCDNA3.1(+)-DH及びpCDNA3.1(+)-DLを用いて、標的抗体を真核発現細胞FreeStyle(商標)293-F Cells(Invitrogen Corporation、R790-07)によって発現させた。FreeStyle(商標)293 ExpressionSystemのマニュアルに従って、プラスミドトランスフェクションの1日前に細胞密度を1x106細胞/mlに調整した。プラスミドトランスフェクションの当日、重鎖と軽鎖の対応関係に従ってプラスミドを組み合わせ(すなわち、同番号の抗体の軽鎖と抗体の重鎖を組み合わせ)た後、トランスフェクション試薬と混合し、細胞培養培地に加えた。37℃、8%CO2で5~7日間連続培養した後、細胞培養上清を回収して抗体精製を行った。
【0113】
発現上清を0.22μMのフィルターメンブレンでろ過し、発現上清からMabpurixアフィニティークロマトグラフィーカラム(Sepax社より購入、65008)を用いて発現抗体を捕捉し、クロマトグラフィーカラムを平衡化緩衝液(120mM Tris+100mM NaCl、pH7.5)で平衡化した後、アフィニティークロマトグラフィーカラムを通過させ、溶出緩衝液(0.15M 氷酢酸、pH2.8)で溶出した。精製された抗体は、SDS PAGE及びSECによって検出され、純度は95%以上であった。
【0114】
これから見ると、実施例で使用した抗体の各Xn及び各Znに対して選択されたアミノ酸が異なるため、これらの抗体を使用して、上記のVH及びVL配列の一般式のXn及び/またはZnパラメーターの値が変更されることによって引き起こされる、抗原に特異的に結合する抗体の親和性の変化をテストすることができる。
【0115】
実施例3:抗原結合親和性の測定
HBsAgタンパク質(20μg/ml、出願人が単離したもの、配列番号16に示すアミノ酸配列を含む)をマイクロタイタープレートに100μl/ウェルでコーティングし、プレートメンブレンで密封し、4℃で一晩置き、プレートを洗浄液PBST(0.5‰Tweenを含むPBS)で3回洗浄し、10%ウシ血清アルブミン溶液(洗浄液PBSTにより調製された)でブロッキングし、マイクロタイタープレートに200μl/ウェルで加え、37℃で2分間インキュベートした。プレートを洗浄液PBST(0.5‰Tweenを含むPBS)で3回洗浄し、被験抗体を100μl/ウェルで段階希釈して加え(20、4、0.8、0.16、0.032、0.064、0.00128、0.00256mg/mL、合計8勾配)、システムのブランク対照を設定し、37℃で2時間インキュベートした。プレートを洗浄液PBST(0.5‰Tweenを含むPBS)で3回洗浄し、二次抗体(1:10000希釈、Jackson ImmunoResearch)を加え、マイクロタイタープレートに100μl/ウェルで加え、37℃で1時間インキュベートした。最後に、プレートを洗浄液PBST(0.5‰Tweenを含むPBS)で5回洗浄し、TMB発色液を100μl/ウェルで加え、暗所で室温で20~40分間反応させ、等量の反応停止液を加えて発色反応を停止させ、マイクロプレートリーダーを用いて波長450nmにおける吸光度(OD値)を測定した。抗原結合のOD値が0.1を超える場合、一般的に抗体はその濃度で結合を検出できると考えられる。
【0116】
MENTTSGFLGPLLVLQAGFFLLTRILTIPQSLDSWWTSLNFLGGAPTCPGQNSQSPTSNHSPTSCPPICPGYRWMCLRRFIIFLFILLLCLIFLLVLLDYQGMLPVCPLLPGTSTTSTGPCKTCTIPAQGTSMFPSCCCTKPSDGNCTCIPIPSSWAFARFLWEWASVRFSWLSLLVPFVQWFVGLSPTVWLSVIWMMWYWGPSLYNILSPFLPLLPIFFCLWVYIHHHHHH(配列番号16)
【0117】
テスターのHBsAg抗原結合活性は、マイクロプレートリーダーにより波長450nmで測定された吸光度(OD値)で表し、各抗体の希釈濃度はいずれも20、4、0.8、0.16、0.032、0.0064、0.00128、0.000256μg/mLの合計8濃度勾配であり、各抗体で検出されたOD値が0.05未満(通常、結合活性のないブランクプレートと同等と見なされる)であり、抗体-抗原結合のOD値が0.1より大きい場合、抗体はその濃度で結合を検出できると一般的に考えられている。抗体021は、0.16μg/mLの濃度で抗原に結合したOD値が0.1より大きく、抗体021に基づき、その活性を「++++」グレードと定義し、他の抗体の希釈濃度が4μg/mLである場合の対応OD値と021抗体の4μg/mLにおける対応OD値との比が1.1より大きい場合、その活性を「+++++」グレードと定義し、比が0.8~1.1の場合、その活性を「++++」グレードと定義し、比が0.6~0.8の場合、その活性を「+++」グレードと定義し、比が0.4~0.6の場合、その活性を「++」グレードと定義し、比が0.2~0.4の場合、その活性を「+」グレードと定義し、比が0.2未満の場合、結合活性がないと考えられる。
【0118】
試験後、各試験抗体の親和性を以下の表9に示す。
【0119】
【表9】
【0120】
この結果は、本願の抗体が良好なHBsAg特異的結合能を有することを示している。
021、021-M1、021-M3、021-M5、021-M6、021-M7、021-M11、021-M13、021-M14、021-M15、021-M16、021-M17、021-M18、021-M21、021-M23、021-M24、021-M25、021-M26、021-M28、021-M33、021-M34、021-M35、021-M36、021-M38、021-M39、021-M40、021-M41、021-M42、及び021-M51は同じFR領域を持つが、各CDRのXn位置で選択されたアミノ酸が異なる。これは、本願によって提供される抗体のCDR領域の特定の位置におけるアミノ酸置換が、依然として抗体にHBsAgを特異的に認識する能力を維持させることができることを示している。
【0121】
番号005、062、079、083、088、090、091、093、095、096の抗体は、本願に記載のCDRと、異なるFR領域とを有する場合にHBsAgを特異的に認識することができる。これは、本出願に記載のCDRがHBsAg抗原を特異的に認識して結合する能力をさらに証明している。また、前記CDR領域に適切なFRもマッチングさせた。異なるZn値の場合でも、前記FRは依然として本願の抗体のCDRコンフォメーションを維持できるため、前記抗体はHBsAgを特異的に認識できる。
【0122】
実施例4:インビボ薬効試験
本実験では、抗体の定常領域としてはマウスIgG1を選択した。
動物:
特定の病原体を含まない5週齢のオスC57BL/6マウスを、SHANGHAI SLAC LABORATORY ANIMAL CO.LTD.から購入し、独立した換気ケージで飼育した。マウスの給餌とWuXiAppTec IACUCによって承認された実験プロトコル(IACUC#:ID01-013-2020v1.0)を使用した。マウスに4日間の環境適応期間の後にAAV/HBVウイルスを注射した(つまり、D型HBVの完全なゲノムを含むAAV組換えウイルスrAAV8-1.3HBVであり、本明細書では「AAV/HBVウイルス」と「rAAV8-1.3HBV」は置き換えて使用可能である)。
【0123】
溶媒:PBS。
試験した化合物:抗体005、抗体062、抗体079、抗体083、用量:12mpk。
【0124】
組換えrAAV8-1.3HBV:rAAV8-1.3HBV(タイプD、ayw)はWuXiAppTecから提供され、バッチ番号はawy1-P4-200102であり、1×1012ウイルスゲノム(v.g.)/mLであった。実験前に滅菌PBSで5×1011v.g./mLに希釈した。各マウスに200μLを注射した。つまり、各マウスに1x1011v.gを注射した。
【0125】
試験方法:
AAV/HBVマウスモデルの確立
AAV/HBV注入。rAAV8-1.3HBVは、注入前に滅菌PBSで1×1011v.g./200μL溶液の濃度に調製されておいた。32匹のマウスに、200μLのrAAV8-1.3HBV溶液を尾静脈注射により投与した。
【0126】
群分け前の採血。ウイルス注射後14、21、及び35日目に、血漿採取のために顎下静脈を介してすべての感染マウスから約100μLを採血した。採取した静脈血は、K2-EDTAで抗凝固処理を行い、4℃、7000g/分で10分間遠心分離し、血漿を収集した。血漿は、qPCRによってHBV DNAを検出し、ELISAによってHBsAgを検出した。血漿サンプルは、関連項目をテストするためにWuXiAppTecBiologicalDepartmentのinvitro実験室に送られるまで、-80℃で保存された。
【0127】
最初の投与を0日として記録し、感染後45日目は0日とした。マウスは、ウイルス注射後14、21、35日目に採取した血漿HBV DNA及びHBsAgのレベルに従って群分けし、20匹のマウスから正式な実験用の16匹のマウスを選択し、ランダムに5つの群に分け、第1群から第5群までと記し、第1群のマウスの数は4匹であり、残りの群のマウスの数は3匹であった。すべてのマウスに、PBSまたは試験抗体12mpkを尾静脈注射により1回投与した。投与前にすべてのマウスの体重を測定した。
【0128】
採血:
投与後の-1、1、3、5、7、10、14及び17日目に、HBV DNA及びHBsAgを検出するために、すべてのマウスから顎下静脈から採血し、血漿を採取した。
【0129】
実験的終点:試験部分:試験群のすべてのマウスは、投与後22日目に安楽死させた。
体重記録:インビボ実験中、マウスの状態を毎日観察し、感染、投与、及び採血の当日にマウスの体重を記録した。
【0130】
サンプルの保管及び移送。すべての血漿サンプルを-80℃で保管し、対応する試験のためにドライアイスとともにWuXiAppTecBiologicalDepartmentのinvitro実験室に移送した。
【0131】
マウス血漿中のHBV DNA含有量の定量的PCR検出。血漿中のDNAを抽出し、実験手順はQIAamp 96 DNA Blood Kitの説明書を参照した。定量的PCRを使用して、マウス血漿中のHBV DNAの含有量を検出した。方法を以下に簡単に説明する。
【0132】
qPCR反応混合液(Taqman Universal Master Mix(2X))を調製し、サンプル及び標準品を添加して、PCR反応を実行した。反応条件:95℃、10分間;95℃、15秒、60℃、1分間、40サイクル。
【0133】
ELISAを使用して、マウスの血漿中のHBsAgの含有量を検出した。実験手順は、HBsAg ELISA(AutoBio、CL0310)キットの説明書を参照した。この方法を次のように簡単に説明する:血漿サンプルを2、10、20、または600倍に希釈し、コーティングされたプレートに加え、酵素複合体(enzyme conjugate)と共にインキュベートし(37℃、60分間)、プレートを5回繰り返し洗浄し、発光基質を加え、室温、暗所で10分間反応させ、マイクロプレートリーダーで発光強度を検出した。
【0134】
(抗体005、072、079、及び083、用量12mpk)AAV/HBVマウスモデルにおけるHBV複製の阻害活性は、マウス血漿中のHBV DNA含有量及びHBsAg発現を検出することによって評価された。結果を図1及び図2に示す。
【0135】
結果は次のとおりである。
1)AAV/HBVマウスの血漿HBV DNAに対する試験化合物の効果
溶媒群(群1 PBS)のマウスの血漿HBV DNA含有量は、実験で比較的に安定しており、5.31~5.74 log10 copy/μLの間で変動した(変動は0.43 log10 copy/μL以下であった)。溶媒群と比較して、治療群2(抗体005、12mpk)のマウスの血漿HBV DNAは、投与後1日目に有意に減少し、平均で2.69 log10 copy/μL(p<0.01)減少し、その後徐々に上昇傾向を示し、10日目には溶媒群のレベルまで上昇し、この時のマウスの血漿HBV DNAは5.65 log10 copy/μLであった;治療群3(抗体062、12mpk)マウスの血漿HBV DNAは、投与後1日目に有意に減少し、平均して2.81 log10 copy/μL減少し(p<0.01)、その後徐々に上昇傾向を示し、10日目には溶媒群のレベルまで上昇し、この時のマウスの血漿HBV DNAは5.45 log10 copy/μLであった;治療群4(抗体079、12mpk)マウスの血漿HBV DNAは、投与後1日目に有意に減少し、平均で2.68 log10 copy/μL(p<0.01)減少し、その後徐々に上昇傾向を示し、10日目には溶媒群のレベルまで上昇し、この時のマウスの血漿HBV DNAは5.59 log10 copy/μLであった;治療群5(抗体083、12mpk)マウスの血漿HBV DNAは、投与後1日目に有意に減少し、平均0.78 log10 copy/μL減少し(p<0.01)、3日目には溶媒群のレベルまで上昇し、この時のマウスの血漿HBV DNAは5.36 log10 copy/μLであった。
【0136】
2)AAV/HBVマウスの血漿HBsAgに対する試験化合物の効果
溶媒群(群1)のマウスの血漿HBsAg含有量は実験で比較的に安定しており、4.65~5.27 log10 IU/mLの間で変動した(変動は0.62 log10 IU/mL以下であった);溶媒群と比較して、治療群2(抗体005、12mpk)マウスの血漿HBsAgは、投与後1日目に有意に減少し、平均で2.73 log10 IU/mL(p<0.01)減少し、その後徐々に上昇傾向を示し、10日目には溶媒群のレベルまで上昇し、この時のマウスの血漿HBsAgは4.87 log10 IU/mLであった;治療群3(抗体062、12mpk)マウスの血漿HBsAgは、投与後1日目に有意に減少し、平均で2.95 log10 IU/mL減少し(p<0.01)、その後徐々に上昇傾向を示し、10日目には溶媒群のレベルまで上昇し、この時のマウスの血漿HBsAgは4.78 log10 IU/mLであった。治療群4(抗体079、12mpk)のマウスの血漿HBsAgは、投与後1日目に有意に減少し、平均で2.80 log10 IU/mL減少し(p<0.01)、その後徐々に上昇傾向を示し、10日目には溶媒群のレベルまで上昇し、この時のマウスの血漿HBsAgは4.79 log10 IU/mLであった。治療群5(抗体083、12mpk)のマウスの血漿HBsAgは投与1日目に有意に低下し、平均で1.10 log10 IU/mL減少し(p<0.01)、3日目に溶媒群のレベルまで上昇し、この時のマウスの血漿HBsAgは4.93 log10 IU/mLであった。
【0137】
実施例5:抗体005、021、062及び088のインビボ活性測定
実験スキームは実施例4と同様であり、マウスを5つの群に分け、各群で4匹とし、使用したIgG1はマウスIgG1であった。試験結果を図3及び図4に示す。具体的な結果は次のとおりである。
【0138】
1)各群のマウスの血漿中のHBV DNA含量。
溶媒群(群1)のマウスの血漿HBV DNA含有量は、実験で比較的に安定しており、5.21~6.06 log10 copy/μLの間で変動した(変動は0.85 log10 copy/μL以下であった)。溶媒群と比較して、治療群2(抗体005、12mpk)のマウスの血漿HBV DNAは、投与後1日目に有意に減少し、平均で2.43 log10 copy/μL(p<0.01)減少し、その後徐々に上昇傾向を示し、10日目には溶媒群のレベルまで上昇し、この時のマウスの血漿HBV DNAは5.49 log10 copy/μLであった;治療群3(抗体021、12mpk)マウスの血漿HBV DNAは、投与後1日目に有意に減少し、平均して2.44 log10 copy/μL減少し(p<0.01)、その後徐々に上昇傾向を示し、14日目には溶媒群のレベルまで上昇し、この時のマウスの血漿HBV DNAは5.81 log10 copy/μLであった;治療群4(抗体062、12mpk)マウスの血漿HBV DNAは、投与後1日目に有意に減少し、平均で2.51 log10 copy/μL(p<0.01)減少し、その後徐々に上昇傾向を示し、10日目には溶媒群のレベルまで上昇し、この時のマウスの血漿HBV DNAは5.55 log10 copy/μLであった;治療群5(抗体088、12mpk)マウスの血漿HBV DNAは、投与後1日目に有意に減少し、平均2.17 log10 copy/μL減少し(p<0.01)、7日目には溶媒群のレベルまで上昇し、この時のマウスの血漿HBV DNAは5.59 log10 copy/μLであった。
【0139】
2)各群のマウスの血漿HBsAg含有量。
溶媒群(群1)のマウスの血漿HBsAg含有量は実験で比較的に安定しており、4.74~5.11 log10 IU/mLの間で変動した(変動は0.37 log10 IU/mL以下であった);溶媒群と比較して、治療群2(抗体005m、12mpk)マウスの血漿HBsAgは、投与後1日目に有意に減少し、平均で2.74 log10 IU/mL(p<0.01)減少し、その後徐々に上昇傾向を示し、10日目には溶媒群のレベルまで上昇し、この時のマウスの血漿HBsAgは4.75 log10 IU/mLであった;治療群3(抗体021、12mpk)マウスの血漿HBsAgは、投与後1日目に有意に減少し、平均で2.38 log10 IU/mL減少し(p<0.01)、その後徐々に上昇傾向を示し、17日目には溶媒群のレベルまで上昇し、この時のマウスの血漿HBsAgは4.98 log10 IU/mLであった。治療群4(抗体062、12mpk)のマウスの血漿HBsAgは、投与後1日目にいずれも有意に減少し、平均でそれぞれ2.41及び2.60 log10 IU/mL減少し(p<0.01)、その後徐々に上昇傾向を示し、14日目には溶媒群のレベルまで上昇し、この時のマウスの血漿HBsAgは4.95 log10 IU/mLであった。治療群5(抗体088、12mpk)のマウスの血漿HBsAgは投与1日目に有意に低下し、平均で2.19 log10 IU/mL減少し(p<0.01)、その後徐々に上昇傾向を示し、5日目に溶媒群のレベルまで上昇し、この時のマウスの血漿HBsAgは5.14 log10 IU/mLであった。
【0140】
実施例6:抗体021 090-097のインビボ実験
実験方法は実施例4と同様であり、モデルマウスを8つの群に分け、各群で4匹ずつとし、IgG1は全てヒトIgG1を用いた。つまり、前記抗体の重鎖及び軽鎖の定常領域は次のとおりである。
【0141】
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号14)
及び
TVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号15)
【0142】
群8では抗体021(用量12mpk)を腹腔内注射した以外、他の群のマウスには、PBSまたは試験抗体(抗体021、抗体090、抗体091、抗体093、抗体095、抗体096、12mpk)を尾静脈注射により各群に1回投与し、溶媒群には同量のPBSを注射した。試験結果を図5及び図6に示す。詳細は次のとおりである。
【0143】
溶媒群(群1)のマウスの血漿HBV DNA及びHBsAg含有量は、実験中比較的に安定したままであり、それぞれ4.36~4.80 log10 copy/μL及び4.44~4.70 log10 IU/mLの間で変動した(変動は0.44 log10 copy/μL及び0.26 log10 IU/mL以下である);溶媒群と比較して、治療群2(抗体090、12mpk、IV)マウスの血漿HBV DNA及びHBsAgは、投与後1日目に有意に減少し、それぞれ平均1.33 log10 copy/μL(p<0.01)及び0.81 log10 IU/mL(p<0.01)減少し、その後どちらも徐々に上昇傾向を示し、それぞれ11日目及び14日目に溶媒群のレベルまで上昇し、この時のマウスの血漿HBV DNA及びHBsAgは、それぞれ4.80 log10 copy/μL及び4.66 log10 IU/mLであった;治療群3(抗体091、12mpk、IV)マウスの血漿HBV DNA及びHBsAgは、投与後1日目に有意に減少し、平均でそれぞれ1.12 log10 copy/μL(p<0.01)及び0.93 log10 IU/mL(p<0.01)減少し、その後いずれも徐々に上昇傾向を示し、それぞれ7日目及び11日目には溶媒群のレベルまで上昇した。この時点で、マウスの血漿HBV DNA及びHBsAgは、それぞれ4.57 log10 copy/μL及び4.88 log10 IU/mLであった;治療群4(抗体093、12mpk、IV)マウスの血漿HBV DNA及びHBsAgは、投与後1日目に有意に減少し、平均でそれぞれ1.19 log10 copy/μL(p<0.01)及び1.46 log10 IU/mL(p<0.01)減少し、その後いずれも徐々に回復傾向を示し、それぞれ7日目及び11日目に溶媒群のレベルまで上昇した。この時点で、マウスの血漿HBV DNA及びHBsAgは、それぞれ4.52 log10 copy/μL及び4.90 log10 IU/mLであった;治療群5(抗体021、12mpk、IV)マウスの血漿HBV DNA及びHBsAgは、それぞれ投与後1日目に有意に減少し、平均でそれぞれ1.93 log10 copy/μL(p<0.01)及び1.23 log10 IU/mL(p<0.01)減少し、その後どちらも徐々に上昇傾向を示し、それぞれ18日目及び11日目に溶媒群のレベルまで上昇した。このとき、マウスの血漿HBV DNA及びHBsAgは、それぞれ4.20 log10 copy/μL及び4.59 log10 IU/mLであった;治療群6(抗体095、12mpk、IV)マウスの血漿HBV DNA及びHBsAgは、投与後1日目にそれぞれ有意に減少し、平均でそれぞれ2.04 log10 copy/μL(p<0.01)及び1.76 log10 IU/mL(p<0.01)減少し、その後いずれも徐々に回復傾向を示し、11日目には溶媒群のレベルまで上昇した。この時点のマウスの血漿HBV DNA及びHBsAgは、それぞれ4.66 log10 copy/μL及び4.59 log10 IU/mLであった;治療群7(抗体096、12mpk、IV)マウスの血漿HBV DNA及びHBsAgは、それぞれ投与後1日目に有意に減少し、平均でそれぞれ1.64 log10 copy/μL(p<0.01)及び1.22 log10 IU/mL(p<0.01)減少し、その後どちらも徐々に上昇傾向を示し、マウスの血漿HBV DNAは7日目に溶媒群のレベル近くまで上昇し、その後わずかに変動し、実験終了まで維持した。このとき、実験の終点、すなわち、投与18日目のマウスの血漿HBV DNAが3.83 log10 copy/μLであった。マウスの血漿HBsAgは11日目に溶媒群のレベルまで上昇し、その時点でマウスの血漿HBsAgは4.62 log10 IU/mLであった;-3日と比較して、治療群8(抗体021、12mpk、IP)マウスの血漿HBV DNA量は、投与後1日目に0.60 log10 copy/μL減少し、5日目にはLLOQ(定量下限)レベルまで低下し、11日目には-3日目のレベルに回復し、11~18日目の間で、2.73~3.14 log10 copy/μLの間で変動した(変動は0.41 log10 copy/μL以下であった)。マウスの血漿HBsAgは、投与後1日目に有意に減少し、平均で0.82 log10 IU/mL減少し、5日目に最大の減少が起こり、平均で1.22 log10 IU/mL減少し、その後11日目には-3日目のレベルに回復した。この時のマウスの血漿HBsAgは3.94 log10 IU/mLであった。
【0144】
要約すると、実施例4~6の結果は、++のみの親和性を有する062を含む本出願のすべての抗体が、HBVに対する中和抗体として使用でき、HBVの増殖を有意に阻害し、HBsAgの発現を減少させることができることを示している。
【0145】
実施例7:複数回投与実験
AAV/HBVマウスモデルは、実施例4と同様に確立した。
モデルマウスを陽性対照群と抗体005群(マウスIgG1使用)の2つの群に分け、各群で4匹ずつとした。初回投与を0日目とし、以降7日ごとに1回投与し、合計7回投与し、12mpkの用量で尾静脈注射により投与し、陽性対照群には10mL/kgのPBS溶液を投与した。
【0146】
投与後-25、-18、-11、-4、1、3、5、7、10、14、17、21、24、28、31、35、38、42、45、49、52日目に、すべてのマウスは顎下静脈から採血され、HBV DNA及びHBsAgの検出のために血漿が採集された。
【0147】
その結果、マウスの血漿HBsAgは投与後1日目に有意に減少し、平均で1.61 log10 IU/mL(p<0.01)減少し、3日目に最低レベルに達し、平均で約1.73 log10 IU/mL(p<0.01)減少し、0日目から52日目までの連続投与期間中、マウスの血漿HBsAg濃度は常に低レベルに維持された。この結果は、本願の抗体が、長期間使用しても、HBVに対する良好な耐性及び治療効果を維持でき、さらに、週に1回以下の注射でウイルスの増殖を長期間阻害することができることを証明している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
2023534422000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-07-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域(VH)配列及び軽鎖可変領域(VL)配列を含む、B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
前記重鎖可変領域は、以下に示す相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:
HCDR1:X1YX3FX5X6X7Y(配列番号33)、
HCDR2:X11NX13X14X15X16X17X18(配列番号34)、
HCDR3:ARDX21WX23X24X25X26DX28YGMDX33(配列番号35)を含み、
前記軽鎖可変領域は、以下に示すCDRアミノ酸配列:
LCDR1:X34X35X36SX38X39(配列番号36)、
LCDR2:X40X41X42(配列番号37)、
LCDR3:QQSYSTPLX51(配列番号38)を含み、
X1はGまたはAから選択され、X3はT、AまたはSから選択され、X5はT、AまたはIから選択され、X6はG、A、YまたはDから選択され、X7はYまたはAから選択され、X11はIまたはAから選択され、X13はPまたはAから選択され、X14はN、AまたはYから選択され、X15はS、AまたはNから選択され、X16はGまたはAから選択され、X17はGまたはAから選択され、X18はTまたはAから選択され、X21はL、VまたはAから選択され、X23はN、QまたはAから選択され、X24はD、QまたはAから選択され、X25はD、GまたはAから選択され、X26はV、GまたはAから選択され、X28はYまたはAから選択され、X33はVまたはAから選択され、X34はQまたはAから選択され、X35はSまたはAから選択され、X36はI、AまたはVから選択され、X38はT、AまたはSから選択され、X39はYまたはAから選択され、X40はA、G、D、TまたはSから選択され、X41はAまたはSから選択され、X42はAまたはSから選択され、X51はTまたはAから選択される、前記HBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
前記VHは、以下に示されるような相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:配列番号17に示されるHCDR1、配列番号21に示されるHCDR2、配列番号23に示されるHCDR3を含み、かつ前記VLは、配列番号25に示されるLCDR1、配列番号28に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を含む;または
前記VHは、以下に示されるような相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:配列番号17に示されるHCDR1、配列番号21に示されるHCDR2、配列番号23に示されるHCDR3を含み、かつ前記VLは、配列番号26に示されるLCDR1、配列番号28に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を含む;または
前記VHは、以下に示されるような相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:配列番号20に示されるHCDR1、配列番号21に示されるHCDR2、配列番号24に示されるHCDR3を含み、かつ前記VLは、配列番号25に示されるLCDR1、配列番号28に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を含む;または
前記VHは、以下に示されるような相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:配列番号18に示されるHCDR1、配列番号22に示されるHCDR2、配列番号23に示されるHCDR3を含み、かつ前記VLは、配列番号26に示されるLCDR1、配列番号28に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を含む;または
前記VHは、以下に示されるような相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:配列番号19に示されるHCDR1、配列番号21に示されるHCDR2、配列番号23に示されるHCDR3を含み、かつ前記VLは、配列番号27に示されるLCDR1、配列番号29に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を含む;または
前記VHは、以下に示されるような相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:配列番号19に示されるHCDR1、配列番号21に示されるHCDR2、配列番号23に示されるHCDR3を含み、かつ前記VLは、配列番号27に示されるLCDR1、配列番号30に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を含む;または
前記VHは、以下に示されるような相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:配列番号19に示されるHCDR1、配列番号21に示されるHCDR2、配列番号23に示されるHCDR3を含み、かつ前記VLは、配列番号26に示されるLCDR1、配列番号30に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を含む;または
前記VHは、以下に示されるような相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:配列番号17に示されるHCDR1、配列番号21に示されるHCDR2、配列番号23に示されるHCDR3を含み、かつ前記VLは、配列番号26に示されるLCDR1、配列番号31に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を含む、
請求項1に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
ヒト共通フレームワーク領域(FR)を含好ましくは、
前記VHは、以下に示すFRアミノ酸配列:
HFR1:Z1Z2Z3LZ4Z5SGAEVKKPGASZ6KVSCKAS(配列番号39)
HFR2:Z7HWVRQAPGQGZ8EWMGW(配列番号40)
HFR3:NYAQKFQGRVTZ9TZ10DZ11SZ12STAYMELSZ13LRSZ14DTAVYYC(配列番号41)
HFR4:WGZ15GTZ16VTVSS(配列番号42)を含み、
前記VLは、以下に示すFRアミノ酸配列:
LFR1:Z17Z18Z19LTQSPZ20Z21LSZ22SZ23GZ24RZ25TZ26Z27CRAS(配列番号43)
LFR2:LZ28WYQQKPGZ29APZ30LLIZ31(配列番号44)
LFR3:Z32Z33Z34Z35GZ36PZ37RFSGSGSGTZ38FTLTIZ39SLZ40Z41Z42DZ43ATYYC(配列番号45)
LFR4:FGZ44GTZ45Z46Z47IKR(配列番号46)を含み、
Z1はQまたはEから選択され、Z2はVまたはIから選択され、Z3はQまたはTから選択され、Z4はVまたはKから選択され、Z5はEまたはQから選択され、Z6はVまたはMから選択され、Z7はM、IまたはLから選択され、Z8はLまたはPから選択され、Z9はMまたはIであり、Z10はRまたはAであり、Z11はTまたはKであり、Z12はIまたはTであり、Z13はRまたはSであり、Z14はDまたはEであり、Z15はKまたはQから選択され、Z16はLまたはMから選択され、Z17はDまたはEから選択され、Z18はIまたはTから選択され、Z19はQ、TまたはVから選択され、Z20はS、AまたはGから選択され、Z21はSまたはTから選択され、Z22はAまたはLから選択され、Z23はVまたはPから選択され、Z24はDまたはEから選択され、Z25はVまたはAから選択され、Z26はIまたはLから選択され、Z27はTまたはSから選択され、Z28はNまたはAから選択され、Z29はKまたはQから選択され、Z30はK、QまたはRから選択され、Z31はYまたはSから選択され、Z32はSまたはN、Z33はLまたはRから選択され、Z34はQまたはAから選択され、Z35はSまたはTから選択され、Z36はVまたはIから選択され、Z37はSまたはAから選択され、Z38はDまたはEから選択され、Z39はSまたはRであり、Z40はQまたはEから選択され、Z41はPまたはSから選択され、Z42はEまたはGから選択され、Z43はFまたはLから選択され、Z44はG、QまたはPから選択され、Z45はKまたはRから選択、Z46はVまたはLから選択、Z47はDまたはEから選択される、
請求項1または2に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
前記VH配列が、配列番号1~6から選択されるいずれか1つの配列であるか、または配列番号1~6のいずれか1つの配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列であ及び/または
前記VL配列が、配列番号7~13から選択されるいずれか1つの配列であるか、または配列番号7~13のいずれか1つの配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列である、
請求項1~のいずれか一項に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
前記VH配列及びVL配列は、以下の配列の群:配列番号1及び配列番号7、配列番号1及び配列番号8、配列番号2及び配列番号8、配列番号2及び配列番号12、配列番号2及び配列番号13、配列番号3及び配列番号8、配列番号4及び配列番号8、配列番号5及び配列番号9、配列番号5及び配列番号10、配列番号5及び配列番号11、配列番号6及び配列番号7、ならびに上記VH配列またはVL配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列から選択されるいずれかである、請求項1~のいずれか一項に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
Fab、F(ab’)2、Fab’、scFv、Fv、Fd、dAb、ダイアボディ(diabody)、またはマルチボディ(multibody)から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
前記抗体が完全ヒト抗体、ヒト化抗体、マウス抗体、キメラ抗体、またはナノボディである、請求項1~のいずれか一項に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
単一特異性抗体、二重特異性抗体、または多重特異性抗体である、請求項1~のいずれか一項に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
IgGの重鎖定常領域から選択される重鎖定常領域と、κ鎖またはλ鎖から選択される軽鎖定常領域とをさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントをコードするポリヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項11】
請求項10に記載の核酸分子を含む構築物であって、好ましくは、前記構築物は、プラスミド、ファージミド、ウイルスベクター、または線状核酸から選択される、構築物。
【請求項12】
請求項1~のいずれか一項に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを発現する、あるいは請求項10に記載の核酸または請求項11に記載の構築物を含む、ウイルス、ファージ、または細胞。
【請求項13】
請求項1~のいずれか一項に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント、請求項10に記載の核酸、請求項11に記載の構築物、または請求項12に記載のウイルス、ファージ、もしくは細胞を含む、医薬組成物またはキット
【請求項14】
型肝炎ウイルス(HBV)感染を治療もしくは予防する、またはB型肝炎の症状を緩和するための請求項13に記載の医薬組成物
【請求項15】
請求項1~のいずれか一項に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント、請求項10に記載の核酸、請求項11に記載の構築物、または請求項12に記載のウイルス、ファージ、もしくは細胞を、被験者からの体液と接触させることを含好ましくは、前記被験者からの前記体液が、前記被検者の血漿または血清である、HBVを検出する方法への請求項1~9のいずれか一項に記載のHBsAgに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント、請求項10に記載の核酸、請求項11に記載の構築物、または請求項12に記載のウイルス、ファージ、もしくは細胞の使用
【国際調査報告】