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特表2023-534435SEI膜様成分添加剤の調製方法及び電解液、リチウムイオン電池、電池モジュール、電池パック及び電気装置
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  • 特表-SEI膜様成分添加剤の調製方法及び電解液、リチウムイオン電池、電池モジュール、電池パック及び電気装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-09
(54)【発明の名称】SEI膜様成分添加剤の調製方法及び電解液、リチウムイオン電池、電池モジュール、電池パック及び電気装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20230802BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20230802BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230802BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20230802BHJP
   H01M 4/40 20060101ALI20230802BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20230802BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20230802BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20230802BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20230802BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0568
H01M10/052
H01M4/587
H01M4/40
H01M4/13
H01M4/58
H01M4/505
H01M4/525
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501449
(86)(22)【出願日】2021-06-23
(85)【翻訳文提出日】2023-01-10
(86)【国際出願番号】 CN2021101835
(87)【国際公開番号】W WO2022266886
(87)【国際公開日】2022-12-29
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】呉則利
(72)【発明者】
【氏名】韓昌隆
(72)【発明者】
【氏名】黄磊
(72)【発明者】
【氏名】艾志勇
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ04
5H029AJ05
5H029AJ12
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029CJ02
5H029CJ08
5H029CJ28
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ14
5H029HJ18
5H050AA07
5H050AA09
5H050AA15
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA03
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA14
5H050HA18
(57)【要約】
本願は、SEI膜(solid electrolyte interphase、固体電解質界面膜)様成分添加剤の調製方法、及び該方法により調製されたSEI膜様成分添加剤を含む電解液を提供する。従来の電解液(SEI膜様成分添加剤を添加していない電解液)と比べて、本願の電解液は、電池の保存と使用過程における負極SEI膜の電解液への溶解による有効成分の損失を防止することができ、また、本願の電解液は損失又は破損したSEI膜に有効成分を適時に補充してSEI膜の破損部を迅速且つ適時に補充することができ、更にSEI膜の破損による電解液の分解、副反応の増加、大量ガスの産生、活性リチウムの損失等の不具合を顕著に改善することで、電池のサイクル特性及び安全性を顕著に改善する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEI膜様成分添加剤の調製方法であって、
不活性ガス雰囲気において、リチウムナフタレン有機溶液を混合溶媒と反応させ、SEI膜様成分添加剤を含む混合物を得るステップと、
前記混合物を真空で乾燥し、SEI膜様成分添加剤を得るステップと、を含み、
前記リチウムナフタレン有機溶液におけるリチウムナフタレンの質量と前記混合溶媒の質量との比は2~8:1であり、前記混合溶媒は電池電解液用有機溶媒を含む、
ことを特徴とする調製方法。
【請求項2】
前記混合溶媒は、環状エステル、線状エステル、環状スルホン類、線状スルホン類のうちの1つ以上を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
前記混合溶媒は、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート及びジメチルカーボネートの混合物である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記混合溶媒の質量に基づくとして、前記エチレンカーボネートの使用量は20%~30%、前記エチルメチルカーボネートの使用量は30%~40%、前記ジメチルカーボネートの使用量は30%~50%であり、総量は100%である、
ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記リチウムナフタレン有機溶液及び前記混合溶媒の反応温度W1及び反応時間S1は、23.59K・min≦ln(W1+273.15)×lnS1≦30.16K・minを満たし、好ましくは、反応は十分な撹拌条件下で実施される、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記リチウムナフタレン有機溶液及び前記混合溶媒の反応温度W1は45~60℃、反応時間S1は60~180分間である、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記リチウムナフタレン有機溶液は以下の方法により調製され、
不活性ガス雰囲気において、ナフタレンを含む有機溶液にリチウム金属を加え、前記ナフタレンと加えたリチウム金属とのモル比を1~3:1とするように、前記ナフタレンを前記リチウム金属と反応させ、
反応プロセスにおいて、前記ナフタレン及び前記リチウム金属の反応温度W2及び反応時間S2は、23.59K・min≦ln(W2+273.15)×lnS2≦30.16K・minを満たし、好ましくは、反応は十分な撹拌条件下で実施される、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記反応温度W2は45~60℃、前記反応時間S2は60~180分間である、
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ナフタレンを含む有機溶液において、前記有機溶媒と前記ナフタレンとのモル比は1~5:1であり、前記有機溶媒は、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールメチルプロピルエーテルから選ばれる1つ以上である、
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記混合物の真空で乾燥する時の温度は60~80℃であり、任意に、得られたSEI膜様成分添加剤は固体である、
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の方法により調製されたSEI膜様成分添加剤を含む、
ことを特徴とする電解液。
【請求項12】
前記電解液に対する前記SEI膜様成分添加剤の添加量の質量百分率は0.05%~0.3%である、
ことを特徴とする請求項11に記載の電解液。
【請求項13】
前記電解液にリチウム供与体を含み、前記SEI膜様成分添加剤の添加量と前記リチウム供与体との質量比は0.5~5:100であり、任意に、前記リチウム供与体は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウムのうちの1つ以上である、
ことを特徴とする請求項11又は12に記載の電解液。
【請求項14】
前記電解液に他の添加剤を含み、前記電解液の質量に対する前記他の添加剤の質量は0.5%~3%であり、任意に、前記他の添加剤は、フルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、硫酸ビニルから選ばれる1つ以上である、
ことを特徴とする請求項10~13のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項15】
正極シート、セパレータ、負極シート及び請求項10~14のいずれか1項に記載の電解液を含むリチウムイオン電池であって、
前記負極シートは負極膜層を含み、前記負極膜層は負極活物質を含み、前記負極活物質は天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン、ケイ素-炭素複合物、リチウム錫合金、リチウムアルミニウム合金のうちの1つ以上を含む、
ことを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項16】
前記電解液に対する前記SEI膜様成分添加剤の添加量の質量百分率含有量をm1にし、片面の負極集電体における前記負極活物質の質量(単位:g/77mm)をm2にすると、m1とm2との比は1.1~2.8(g/77mm-1である、
ことを特徴とする請求項15に記載のリチウムイオン電池。
【請求項17】
前記正極材料がリン酸鉄リチウムシステムに属する場合、前記リチウムイオン電池の充電カットオフ電圧は3.65~3.8Vに達され、前記正極材料がニッケルコバルトマンガン三元系システムに属する場合、前記リチウムイオン電池の充電カットオフ電圧は4.0~4.8Vに達される、
ことを特徴とする請求項15又は16のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項18】
請求項15~17のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池を含む、
ことを特徴とする電池モジュール。
【請求項19】
請求項15~17のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池又は請求項18に記載の電池モジュールを含む、
ことを特徴とする電池パック。
【請求項20】
請求項14~17のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池又は請求項18に記載の電池モジュール又は請求項19に記載の電池パックのうちの1つ以上を含む電気装置であって、
前記リチウムイオン電池又は前記電池モジュール又は前記電池パックは、前記電気装置の電源又は前記電気装置のエネルギー貯蔵ユニットとして使用される、
ことを特徴とする電気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電気化学分野に関し、特にSEI膜(solid electrolyte interphase、固体電解質界面膜)様成分添加剤の調製方法、及び該方法により調製されたSEI膜様成分添加剤を含む電解液、それを含むリチウムイオン電池、電池モジュール、電池パック及び電気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
新エネルギー分野の急速な発展に伴い、リチウムイオン電池は、優れた電気化学特性、記憶効果がなく、環境汚染が少ない等の優位性により様々な大規模動力装置、エネルギー貯蔵システム及び様々な消費類製品に広く使用されて、特に、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等の新エネルギー自動車分野で広く使用されている。
【0003】
リチウムイオン電池の最初の充電プロセスにおいて、電解液溶媒とリチウム塩が負極の表面にSEI膜(solid electrolyte interphase、固体電解質界面膜)を生成して、この膜はリチウムイオンの電気化学特性の発揮にとって非常に重要である。しかし、電池の保存又は使用過程において、SEI膜の有効成分が安定していないため、SEI膜自体の構造が破壊された時、負極活性材料と電解液との相界面における安定性を破壊し、電池内部の副反応を加速し、電池のサイクル特性及び安全性に悪影響を与える。ところが、SEI膜は、形成過程において電解液と大量のリチウムイオンを消費する必要があるため、電池の充放電効率を低下し、電池容量が急速に減衰する。SEI膜の形成過程における大量ガスの産生も電池の安全性に影響を与える。
【0004】
従って、SEI膜様成分添加剤の調製方法を開発し、該方法により調製されたSEI膜様成分添加剤を電解液に添加することができれば、SEI膜構造が破壊されるか又はSEI膜が消費される時に破損したSEI膜を適時に補充又は復元して、これは、電池特性の改善にとって非常に意義がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願は上記課題に鑑みてなされたものであり、SEI膜様成分添加剤の調製方法、及び該方法により調製されたSEI膜様成分添加剤を含む電解液、それを含むリチウムイオン電池、電池モジュール、電池パック及び電気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の第1態様は、
不活性ガス雰囲気において、リチウムナフタレン有機溶液を混合溶媒と反応させ、SEI膜様成分添加剤を含む混合物を得るステップと、
上記混合物を真空で乾燥し、SEI膜様成分添加剤を得るステップと、を含み、
上記リチウムナフタレン有機溶液におけるリチウムナフタレンの質量と上記混合溶媒の質量との比は2~8:1であり、
上記混合溶媒は電池電解液用有機溶媒を含む、SEI膜様成分添加剤の調製方法を提供する。
【0007】
任意の実施形態において、上記混合溶媒は、環状エステル、線状エステル、環状スルホン類、線状スルホン類のうちの1つ以上を含む。
【0008】
任意の実施形態において、上記混合溶媒は、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート及びジメチルカーボネートの混合物である。
【0009】
任意の実施形態において、上記混合溶媒の質量に基づくとして、エチレンカーボネートの使用量は20%~30%、エチルメチルカーボネートの使用量は30%~40%、ジメチルカーボネートの使用量は30%~50%であり、総量は100%である。
【0010】
任意の実施形態において、上記リチウムナフタレン有機溶液及び上記混合溶媒の反応温度W1及び反応時間S1は、23.59K・min≦ln(W1+273.15)×lnS1≦30.16K・minを満たし、好ましくは、反応は十分な撹拌条件下で実施される。
【0011】
任意の実施形態において、上記リチウムナフタレン有機溶液及び上記混合溶媒の反応温度W1は45~60℃、反応時間S1は60~180分間である。
【0012】
任意の実施形態において、上記リチウムナフタレン有機溶液は以下の方法により調製され、
不活性ガス雰囲気において、ナフタレンを含む有機溶媒にリチウム金属を加え、上記ナフタレンと加えたリチウム金属とのモル比を1~3:1とするように、上記ナフタレンを上記リチウム金属と反応させ、反応プロセスにおいて、上記ナフタレン及び上記リチウム金属の反応温度W2及び反応時間S2は、23.59K・min≦ln(W2+273.15)×lnS2≦30.16K・minを満たし、好ましくは、反応は十分な撹拌条件下で実施される。
【0013】
任意の実施形態において、上記ナフタレン及び上記リチウム金属の反応温度W2は45~60℃、反応時間S2は60~180分間である。
【0014】
任意の実施形態において、上記ナフタレンを含む有機溶液において、上記有機溶媒と上記ナフタレンとのモル比は1~5:1であり、上記有機溶媒は、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールメチルプロピルエーテルから選ばれる1つ以上である。
【0015】
任意の実施形態において、上記混合物の真空で乾燥する温度は60~80℃であり、任意に、得られたSEI膜様成分添加剤は固体である。
【0016】
本願の第2態様は、本願の第1態様の方法により調製されたSEI膜様成分添加剤を含む電解液を提供する。
【0017】
任意の実施形態において、上記電解液に対する上記SEI膜様成分添加剤の添加量の質量百分率は0.05~0.3%である。
【0018】
任意の実施形態において、上記電解液にリチウム供与体を含み、上記SEI膜様成分添加剤の添加量と上記リチウム供与体との質量比は0.5~5:100であり、任意に、上記リチウム供与体はヘキサフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウムのうちの1つ以上である。
【0019】
上記電解液に他の添加剤を含み、上記電解液の質量に対する上記他の添加剤の質量は0.5%~3%であり、任意に、上記他の添加剤はフルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、硫酸ビニルから選ばれる1つ以上である。
【0020】
本願の第3態様は、正極シート、セパレータ、負極シート及び本願の第2態様による電解液を含むリチウムイオン電池であって、上記負極シートは負極膜層を含み、上記負極膜層は負極活物質を含み、上記負極活物質は天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン、ケイ素-炭素複合物、リチウム錫合金、リチウムアルミニウム合金のうちの1つ以上を含むリチウムイオン電池を提供する。
【0021】
任意の実施形態において、上記電解液に対する上記SEI膜様成分添加剤の添加量の質量百分率をm1にし、片面の負極集電体における上記負極活物質の質量(単位:g/77mm)をm2にすると、m1とm2との比は1.1~2.8(g/77mm-1である。
【0022】
任意の実施形態において、上記正極材料がリン酸鉄リチウムシステムに属する場合、上記リチウムイオン電池の充電カットオフ電圧は3.65~3.8Vに達され、上記正極材料がニッケルコバルトマンガン三元系システムに属する場合、上記リチウムイオン電池の充電カットオフ電圧は4.0~4.8Vに達される。
【0023】
本願の第4態様は、本願の第3態様に記載のリチウムイオン電池を含む電池モジュールを提供する。電池モジュールの製造は、従来の技術で既知されている電池モジュールを製造する方法を用いることができる。
【0024】
本願の第5態様は、本願の第3態様のリチウムイオン電池又は本願の第4態様の電池モジュールのうちの1つ以上を含む電池パックを提供する。電池パックの製造は、従来の技術で既知されている電池パックを製造する方法を用いることができる。
【0025】
本願の第6態様は、本願の第3態様のリチウムイオン電池、本願の第4態様に記載の電池モジュール又は本願の第5態様の電池パックのうちの1つ以上を含む電気装置であって、前記リチウムイオン電池、前記電池モジュール又は前記電池パックが上記電気装置の電源又は上記電気装置のエネルギー貯蔵ユニットとして使用される電気装置を提供する。電気装置の製造は、従来の技術で既知されている電気装置を製造する方法を用いることができる。
【0026】
【発明の効果】
【0027】
本願に記載のSEI膜様成分添加剤の調製方法は、操作が簡単であり、産業上に適用されやすい。従来の電解液に本願の方法により調製されたSEI膜様成分添加剤を加えることで、一方では、SEI膜のリチウムイオン電池の保存又は使用過程における電解液による溶解を緩和又は回避し、SEI膜の消費を減少させることで、SEI膜と電解液との相界面の安定性を維持し、更に継続的に消費される電解液による電池のサイクル特性及び安全性の劣化を回避する。一方では、高温又は高圧等の異常な状況によってSEI膜が不可避的に消費された場合、本願に記載のSEI膜様成分添加剤は新しいSEI膜を迅速に形成し、破損したSEI膜を適時に補充することができるため、電池のサイクル特性及び安全性はSEI膜が破損しない場合と同じのレベルに維持される。
【0028】
本願の電池モジュール、電池パック及び電気装置は、本願により提供されるリチウムイオン電池を含むため、少なくとも上記リチウムイオン電池と同じ優位性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】A~Cは、本願の実施例1に係るSEI膜様成分添加剤の調製プロセスにおけるナフタレンを含む有機溶液、リチウムナフタレン有機溶液、SEI膜様成分添加剤を含む混合物にそれぞれ対応する物質状態図である。
図2】本願の実施例1-1及び比較例1の電解液に対応する電池の3.65Vでの60℃サイクル特性グラフ(図2.A)と60℃保存特性グラフ(図2.B)である。
図3】本願の実施例1-1及び比較例1の電解液に対応する電池の3.8Vでの60℃サイクル特性グラフ(図3.A)と60℃保存特性グラフ(図3.B)である。
図4】本願の一実施形態のニッケルコバルトマンガン三元系層状材料を正極活物質とする電池の4.8V電圧での60℃サイクル特性グラフ(図4.A)と60℃保存特性グラフ(図4.B)である。
図5】本願の一実施形態のリチウムイオン電池の模式図である。
図6図5に示される本願の一実施形態のリチウムイオン電池の分解図である。
図7】本願の一実施形態の電池モジュールの模式図である。
図8】本願の一実施形態の電池パックの模式図である。
図9図8に示される本願の一実施形態の電池パックの分解図である。
図10】本願の一実施形態の電気装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら、詳しく説明する。具体的には、本願のSEI膜様成分添加剤の調製方法、及び該方法により調製されたSEI膜様成分添加剤を含む電解液、それを含むリチウムイオン電池、電池モジュール、電池パック及び電気装置を開示するが、不必要な詳細説明が省略される場合がある。例えば、周知の事項に対する詳細な説明、実際の同一構造に対する繰り返し説明が省略される場合があり、その理由は、以下の説明が不必要に長くなるのを回避し、当業者の理解を容易にすることである。また、図面及び下記説明は、当業者に本願を十分に理解させるために提供するものであり、特許請求の範囲に記載されている主旨を限定するものではない。
【0031】
簡潔化するために、本願は具体的に幾つかの値の範囲を開示し、様々な値の範囲を互いに組み合わせて、対応する実施形態を形成することができる。任意の下限と任意の上限を組み合わせて明確に記述されていない範囲を形成してもよく、また、任意の下限と他の下限を組み合わせて明確に記述されていない範囲を形成してもよく、同様に、任意の上限と任意の他の上限を組み合わせて明確に記述されていない範囲を形成してもよい。また、個別に開示された各ポイント又は単一の値は、それ自体が下限又は上限として任意の他のポイント又は単一の値と組み合わせるか又は他の下限又は上限と組み合わせることで明確に記述されていない範囲を形成してもよい。
【0032】
別途説明がない限り、本願で使用される用語は当業者に一般的に理解される公知の意味を有する。本願において、別途説明がない限り、「以上」、「以下」はその数自体を含み、例えば「aとbのうちの1つ以上」とは、a、b又はaとbなど、aとbのうちの少なくとも1つを指す。同様に、「1つ以上」とは、少なくとも1つを含むことを指す。本明細書の説明において、別途説明がない限り、「又は(or)」という用語は包括的なものであり、即ち、「A又は(or)B」という表現は「A、B又はAとBの両者」を表す。
【0033】
本願において、「SEI膜様成分添加剤」とは、リチウムナフタレン有機性溶液と本明細書に記載の混合溶媒が反応して生成された生成物を指す。該生成物を電解液に加えた後にSEI膜の破損を緩和又は回避することができるため、電池のサイクル特性及び安全性を顕著に改善することができ、該反応生成物はSEI膜成分の機能と類似するため、説明しやすくするために、本明細書においてそれを比喩的に「SEI膜様成分添加剤」と呼ぶ。なお、リチウムナフタレン有機性溶液と混合溶媒との反応が複雑であり、生成物には複数の成分が含まれる可能性がある。ところが、本願は、上記SEI膜様成分添加剤に具体的に含まれる成分及び各成分の含有量を検討することを意図せず、SEI膜様成分添加剤の調製方法及び本願の方法により調製されたSEI膜様成分添加剤を含む電解液を用いた電池のサイクル特性及び安全性を研究することを目的とする。
【0034】
リチウムイオン電池の最初の充電プロセスにおいて、電解液とリチウム塩が負極の表面で還元反応が発生し、還元生成物が負極の表面に堆積して有機-無機複合生成物であるSEI膜が形成され、この膜はリチウムイオンの電気化学特性の発揮にとって非常に重要である。しかし、発明者らは、実際の研究過程において、リチウムイオン電池の保存又は使用過程において、形成されたSEI膜の有効成分が不可避的に電解液へ溶解し、更にSEI膜構造が破損して有効成分と電解液との直接接触面積が大幅に増加し、これはSEI膜と電解液との相界面における安定性を大幅に低下させ、電池内部の副反応の発生(主に、電解液分解の副生成物の負極表面での堆積及び電解液によるガスの産生)を加速し、最終的に電池のサイクル特性及び安全性を劣化させることを発見した。
【0035】
特に、長期間の高温保存や連続高圧充電プロセス等、電池内部が高温又は高圧である場合、SEI膜は電解液に溶解しやすくなり、SEI膜の自体の成分損失又は消費がより深刻であり、電池のサイクル特性及び安全性への悪影響がより顕著である。
【0036】
特に、電池が複数回の高温サイクルを経た後、負極材料の複数回の膨張-収縮-膨張のため、SEI膜の有効成分の連続的な溶解、ひいては脱落を加速し、更に、電池のサイクル特性及び安全性を劣化させる。
【0037】
発明者らは同時に、電解液内部の反応のみではSEI膜の有効成分を生成して、SEI膜を形成すれば、一方では、該反応によって生成された有効成分の量が少なく、反応速度が遅く、消費したSEI膜を適時且つ十分に補充することができず、一方では、該反応は電解液及び大量のリチウムイオンを消費する必要があり、大量のガスが産生するため、電池容量の減衰を加速し、電池の安全性を低下させることを発見した。
【0038】
これらに基づいて、大量の実験により、発明者らは、SEI膜様成分添加剤の調製方法、及び該方法により調製されたSEI膜様成分添加剤を含む電解液を開発した。本願の電解液を用いることで、リチウムイオン電池のSEI膜の有効成分が損失する問題を顕著に改善し、それにより電池のサイクル特性及び安全性を顕著に向上させることができる。
【0039】
[SEI膜様成分添加剤の調製方法]
本願は、
不活性ガス雰囲気において、リチウムナフタレン有機溶液を混合溶媒と反応させ、SEI膜様成分添加剤を含む混合物を得るステップと、
上記混合物を真空で乾燥し、SEI膜様成分添加剤を得るステップと、を含み、
上記リチウムナフタレン有機溶液におけるリチウムナフタレンの質量と上記混合溶媒の質量との比は2~8:1であり、
上記混合溶媒は電池電解液用有機溶媒を含む、SEI膜様成分添加剤の調製方法を提供する。
【0040】
本願の調製方法は操作が簡単であり、産業規模で適用されやすい。
【0041】
なお、リチウムナフタレン有機溶液は強還元性溶液である。予想外に、発明者らは、大量の実験により、リチウムナフタレン有機溶液と本明細書に記載の混合溶媒との反応生成物を電解液に加えた後、SEI膜の破損を効果的に緩和又は回避することができるため、電解液及び活性リチウムの消費を減少させ、更に電池のサイクル特性及び安全性を顕著に改善することを発見した。説明しやすくするために、本明細書において、リチウムナフタレン有機溶液と本明細書に記載の混合溶媒が反応した後に生成された生成物を「SEI膜様成分添加剤」と呼ぶ。
【0042】
また、従来の技術において、SEI膜を製造するために、一般的に、エチレンカーボネートなど、膜形成成分を電解液に事前に加え、SEI膜の破損後に上記膜形成成分を負極で還元反応させて新しいSEI膜を生成する方法を使用する。該方法は破損したSEI膜を補充することができるが、膜形成成分と負極との反応が依然として電解液及び大量のリチウムイオンを消費する必要があり、大量のガスが産生するため、電池容量の減衰を加速し、電池の安全性を低下させる。逆に、本願に記載の方法は電池の外部でSEI膜様成分添加剤を事前に調製するため、上記問題を良く解決できた。
【0043】
なお、空気中の酸素ガスの影響を回避するために、本願に記載のSEI膜様成分添加剤の調製方法は、不活性ガス雰囲気で満たされたグローブボックス(HOの含有量が100ppm未満、Oの含有量が100ppm未満)内で操作する必要があり、上記不活性ガスは窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスであり、好ましくは窒素ガス又はアルゴンガスである。
【0044】
以下、本願のSEI膜様成分添加剤の一般的な調製プロセスに従って、様々な実施形態を説明する。
【0045】
ナフタレンを含む有機溶媒の調製
幾つかの実施形態において、ナフタレンを含む有機溶液を調製するために、反応容器に有機溶媒を加え、更に該溶媒にナフタレン固体を加え、ナフタレンを完全に溶解するように常温で撹拌し、ナフタレンを含む白色で透明な溶液を得て、その形態は図1.Aに示される。
【0046】
幾つかの実施形態において、任意に、上記有機溶媒と上記ナフタレンとのモル比は1~5:1であり、上記有機溶媒は、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールメチルプロピルエーテルから選ばれる1つ以上である。
【0047】
リチウムナフタレン有機溶液の調製
幾つかの実施形態において、任意に、要件を満たすリチウムナフタレン有機溶液を調製するために、不活性ガス雰囲気において、ナフタレンを含む有機溶液にリチウム金属を加え、上記ナフタレンを上記リチウム金属と反応させ、但し、上記ナフタレンと加えたリチウム金属とのモル比は1~3:1であり、反応プロセスにおいて、上記ナフタレン及び上記リチウム金属の反応温度W2及び反応時間S2は、23.59K・min≦ln(W2+273.15)×lnS2≦30.16K・minを満たし、好ましくは、反応は十分な撹拌条件下で実施される。調製されたリチウムナフタレン有機溶液は極めて強い還元性を有する暗黒色溶液であり、その形態は図1.Bに示される。
【0048】
幾つかの実施形態において、任意に、上記反応の反応温度W2は45~60℃、反応時間S2は60~180分間である。
【0049】
幾つかの実施形態において、任意に、撹拌条件は回転速度を200~500r/min(回転/分間)に制御することである。
【0050】
リチウムナフタレン有機溶液と混合溶媒との反応
幾つかの実施形態において、任意に、リチウムナフタレン有機溶液を混合溶媒と反応させ、SEI膜様成分添加剤を含む混合物を得て、但し、
上記リチウムナフタレン有機溶液におけるリチウムナフタレンの質量と上記混合溶媒の質量との比は2~8:1であり、上記混合溶媒は電池電解液用有機溶媒を含み、調製されたSEI膜様成分添加剤を含む混合物はやや黄色の混濁液体を呈し、その形態は図1.Cに示される。
【0051】
本願は、混合溶媒における具体的な混合溶媒成分の種類に対して制限されず、実際に対応するリチウムイオン電池内の電解液用有機溶媒の具体的な成分に応じて合理的に組み合わせることができる。例えば、上記混合溶媒は、環状エステル、線状エステル、環状スルホン類、線状スルホン類を含むものから選ばれる1つ以上であってもよく、具体的には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ブチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、1,4-ブチロラクトン、スルホラン、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン及びジエチルスルホンから選ばれる1つ以上であってもよい。
【0052】
幾つかの実施形態において、任意に、上記混合溶媒は、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート及びジメチルカーボネートの混合物である。
【0053】
幾つかの実施形態において、任意に、上記混合溶媒の質量に基づくとして、エチレンカーボネートの使用量は20~30%、エチルメチルカーボネートの使用量は30~40%、ジメチルカーボネートの使用量は30~50%であり、総量は100%である。
【0054】
幾つかの実施形態において、任意に、上記リチウムナフタレン有機溶液及び混合溶媒の反応温度W1及び反応時間S1は、23.59K・min≦ln(W1+273.15)×lnS1≦30.16K・minを満たし、好ましくは、反応は十分な撹拌条件下で実施される。
【0055】
幾つかの実施形態において、任意に、上記リチウムナフタレン有機溶液及び上記混合溶媒の反応温度W1は45~60℃、反応時間S1は60~180分間である。
【0056】
幾つかの実施形態において、任意に、撹拌条件は回転速度を200~500r/minに制御することである。
【0057】
23.59K・min≦ln(W1+273.15)×lnS1≦30.16K・minを満たすように、反応温度及び反応時間を制御する理由は、混合溶媒がリチウムナフタレンにより十分に還元されることである。
【0058】
真空で乾燥してSEI膜様成分添加剤を得る
リチウムナフタレン有機溶液を混合溶媒と反応させた後の反応生成物を、60~80℃の真空条件下で乾燥し、本願のSEI膜様成分添加剤の製品を得て、任意に、得られたSEI膜様成分添加剤は固体である。該製品を任意のリチウムイオン電池商用電解液に加えると、負極の膨張率を改善し、高温保存及び高温サイクル特性を改善する技術効果を奏することができる。
【0059】
本願により提供されるSEI膜様成分添加剤を調製する調製方法は、操作が簡単であり、原料が入手しやすく、調製したSEI膜様成分添加剤が電解液に添加された後、負極シートの膨張成長率、電池の高温サイクル特性と高温保存特性を顕著に改善することができる。
【0060】
[電解液]
本願の第2態様は、本願の第1態様の方法により調製されたSEI膜様成分添加剤を含む電解液を提供する。
【0061】
電解液は、正極シートと負極シートとの間にイオンを伝達する役割を果たす。本願の電解液は本願の方法により調製されたSEI膜様成分添加剤を含み、本願に記載のSEI膜様成分添加剤が含まれていない従来の電解液と比べて、本願の電解液は電池の保存と使用過程における負極SEI膜の電解液への溶解による有効成分の損失を防止することができ、同時に上記電解液は更に損失又は破損したSEI膜に有効成分を適時に補充することができるため、SEI膜の破損部を迅速且つ適時に補充し、更にSEI膜の破損による電解液の分解、副反応の増加、大量ガスの産生、活性リチウムの損失等の不具合を顕著に改善し、それにより電池のサイクル特性及び安全性を顕著に改善する。
【0062】
特に、電池が高温又は高圧の状況にある場合、高温又は高圧によってSEI膜の有効成分の電解液への溶解度を増加させるため、SEI膜の有効成分の損失を加速する。しかし、対応的に、高温又は高圧によって電解液における成分が迅速に新しいSEI膜を再形成するように促進するため、本願の電解液にSEI膜様成分添加剤を含む場合、これらのSEI膜様成分添加剤は適時に補充して新しいSEI膜を形成する。
【0063】
また、SEI膜様成分添加剤の有効成分が真のSEI膜内の有効成分と非常に類似するため、本願のSEI膜様成分添加剤を含む電解液において、SEI膜の有効成分は基本的に飽和、ひいては過飽和に達することができ、このように、高温又は高圧等の過酷な条件下においても、本願の電池内のSEI膜の溶解速度がより遅くなり、より壊れにくくなる。
【0064】
特に、電池が複数回の高温サイクル及び高圧充電を経た後、負極材料の複数回の膨張-収縮-膨張のため、SEI膜の有効成分の連続的な溶解、ひいては脱落を加速するが、本願の電解液にSEI膜様成分添加剤を含むことで、一定の程度で負極材料の膨張を抑制し、SEI膜の負極膨張による連続的な溶解、ひいては脱落を効果的に防止することができるため、電池のサイクル特性及び安全性を改善する。
【0065】
大量の実験により、本願の電解液におけるSEI膜様成分添加剤は、電解液における他の成分の機能に影響を与えないことが示されている。
【0066】
なお、SEI膜様成分添加剤を負極の表面に事前に直接コーティングする場合、同様に電解液と負極表面の界面の安定性の維持に役立つ。しかし、電池の負極の特性をより助長する観点から、負極の表面に直接コーティングするのみなら、該SEI膜様成分添加剤が負極膜層の内部に均一に浸透/均一に分散できない場合があるため、本願は、好ましくは該SEI膜様成分添加剤を電解液に添加する。本願は、適量なSEI膜様成分添加剤を電解液に添加することで、一方では、破損したSEI膜を適時に補充又は復元することで、電池のサイクル特性及び安全性を改善することができ、一方では、SEI膜様成分添加剤は電解液に均一に分散し、負極の表面に均一且つ緻密なSEI膜を形成することに役立つ。
【0067】
幾つかの実施形態において、任意に、上記電解液に対する上記SEI膜様成分添加剤の添加量の質量百分率は0.05%~0.3%である。
【0068】
大量の実験により、電解液におけるSEI膜様成分添加剤の含有量は電池の特性の発揮にとって非常に重要であることが発見された。電解液におけるSEI膜様成分添加剤の含有量が0.05%未満である場合、電池の高温サイクル特性における高温保存特性を改善する効果がごくわずかであり、これは、一方では、SEI膜様成分添加剤の含有量が少なすぎる場合、電解液におけるSEI膜の有効成分が飽和に達することができないため、負極におけるSEI膜の溶解への抑制に実際な役割を果たせず、一方では、SEI膜様成分添加剤の含有量が少なすぎる場合、破損したSEI膜を補充したとしても、補充量が損失量に達することができないため、SEI膜の有効成分の補充効果も低いからである。
【0069】
逆に、電解液におけるSEI膜様成分添加剤の含有量が0.3%を超える場合、SEI膜様成分添加剤に高粘度のポリカーボネート等の大分子量の物質を含むため、その添加量が大きい場合、電解液の導電率を低下させるだけでなく、SEI膜様成分添加剤の負極SEI膜を形成する抵抗を増加するため、電池のサイクル特性に悪影響を与える。
【0070】
幾つかの実施形態において、任意に、上記電解液にリチウム供与体を含み、上記SEI膜様成分添加剤の添加量と上記リチウム供与体との質量比は0.5~5:100である。
【0071】
幾つかの実施形態において、任意に、リチウム供与体は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、ヘキサフルオロヒ素酸リチウム、リチウムビスフルオロスルホンイミド、リチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド、リチウムトリフレート、ホウ酸ジフルオロシュウ酸リチウム、ホウ酸ジシュウ酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、ジフルオロビスオキサレートリン酸リチウム及テトラフルオロオキサレートリン酸リチウムから選ばれる1つ以上であってもよく、更に、任意に、上記リチウム供与体は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウムのうちの1つ以上である。
【0072】
なお、本願の電解液におけるSEI膜様成分添加剤とリチウム供与体など、電解液における適量な他の物質との組み合わせは、負極SEI膜特性を改善し、更に電池特性を改善する効果がより好適である。例えば、負極SEI膜は複合の有機-無機ネットワークであり、このような有機-無機ネットワークにより、SEI膜が適切なイオン導電率、適切な機械的強度、適切な柔軟性、緻密性を有する。
【0073】
従って、本願の電解液に上記リチウム供与体を加えることで、一方では、電解液における活性リチウムイオンの数を増やすため、電池のサイクル特性を改善し、一方では、無機物質であるリチウム供与体は、SEI膜の破損時にSEI膜様成分添加剤と作用して新しいSEI膜を形成し、電池の特性を改善することに役立つ。
【0074】
本願の電解液におけるSEI膜様成分添加剤は主に有機成分であり、主にSEI膜の柔軟性、緻密性等の特性に寄与するが、本願の電解液におけるリチウム供与体は主にSEI膜のイオン導電率、機械的強度、剛性等の特徴に寄与する。従って、SEI膜様成分添加剤の質量とリチウム供与体の質量の比が0.5:100未満である場合、新しく形成したSEI膜における有機成分の相対含有量が低いため、膜の柔軟性が低く、剛性が高いことを招き、負極にひどい膨張が発生する場合、SEI膜は脱落又は破損しやすいため、電池の高温保存とサイクル特性に悪影響を与える。逆に、SEI膜様成分添加剤の質量とリチウム供与体の質量の比が5:100を超える場合、新しく形成したSEI膜における有機成分が多すぎて無機成分が少なすぎるため、新しく形成したSEI膜が緻密であり、単位細孔断面を通過できるリチウムイオンの数が減少し、リチウムイオン伝送の抵抗が大きいため、電池の高温サイクル特性が低くなる。
【0075】
また、新しく形成したSEI膜における有機成分が多すぎる場合、SEI膜全体の熱可塑性を増加させ、SEI膜全体の熱安定性を低下させるため、SEI膜の溶解又は破損を加速し、電池内部の副反応を引き起こし、更に電池の高温サイクルと保存特性を劣化させる。
【0076】
幾つかの実施形態において、任意に、上記電解液は他の添加剤を更に含み、上記他の添加剤はフルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、硫酸ビニルから選ばれる1つ以上であり、上記電解液の質量に対する上記他の添加剤の質量は0.5%~3%である。
【0077】
導入した他の添加剤は、負極表面の膜形成に更に関与することができると同時に、サイクル過程における負極SEI膜の修復に関与することができる。発明者らは大量の実験により、SEI膜様成分添加剤を使用した後、上記添加剤と組み合わせて使用すると、その使用量を一定の範囲内に制御する前提下で、より優れたサイクル効果を奏することができることを発見した。他の添加剤をまったく使用しない場合、SEI膜様成分添加剤の膜形成効果は一定の程度で不十分であるが、他の添加剤を多く使用する場合、SEI膜様成分添加剤の膜形成への関与程度に影響を与えるだけでなく、SEI膜も厚過ぎて、リチウムイオンの伝送経路が長くなり、電池のサイクル特性に影響を与える。
【0078】
幾つかの実施形態において、任意に、上記電解液には上記添加剤以外の添加剤をさらに含んでもよい。例えば、負極膜形成添加剤を含んでもよく、正極膜形成添加剤を含んでもよく、また、電池の過充電特性を改善する添加剤、電池の高温特性を改善する添加剤、及び電池の低温特性を改善する添加剤等、電池の特定の特性を改善できる添加剤を含んでもよい。
【0079】
[リチウムイオン電池]
本願の一実施形態において、正極シート、負極シート、セパレータ及びSEI膜様成分添加剤を含む電解液を含むリチウムイオン電池を提供する。
【0080】
本願において、負極シートは、負極集電体及び負極集電体の少なくとも1つの表面に設置された、負極活性材料を含有する負極膜層を含む。
【0081】
例として、負極集電体は、それ自体の厚さ方向の対向する2つの表面を有し、負極膜層は負極集電体の対向する2つの表面のいずれか一方又は両方に設置されている。
【0082】
本願のリチウムイオン電池において、上記負極集電体は金属箔又は複合集電体を用いることができる。例えば、金属箔として、銅箔を用いることができる。複合集電体は高分子材料基材及び高分子材料基材の少なくとも1つの表面に形成された金属層を含むことができる。複合集電体は、金属材料(銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金等)を高分子材料基材(例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)等の基材)に形成させることで形成してもよいが、本願はこれらの材料に限定されない。
【0083】
本願の負極シートにおいて、上記負極膜層は一般的に、負極活性材料及び選択可能な接着剤、選択可能な導電剤及び他の選択可能な助剤を含み、一般的には、負極ペースのコーティング及び乾燥によりなされる。負極ペーストは一般的に、負極活性材料及び選択可能な導電剤と接着剤等を溶媒に分散し、均一に撹拌して形成される。溶媒はN-メチルピロリドン(NMP)又は脱イオン水であってもよい。例として、導電剤は超伝導炭素、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノ繊維から選ばれる1つ以上であってもよい。
【0084】
幾つかの実施形態において、任意に、負極材料のコーティングは当該分野でよく使用される負極材料のコーティング方法を使用することができる。例として、負極材料と導電剤、接着剤等とを一定の比率で脱イオンに溶解し、均一に混合した後に負極ペーストを調製し、次に負極ペーストを一回又は複数回に分けて負極集電体に均一にコーティングする。電池の複数回の充放電サイクル過程において、負極シートはリチウムイオンの繰り返し脱離により膨張するため、負極構造を破壊し、電池のサイクル特性及び安全性に悪影響を与える。
【0085】
幾つかの実施形態において、任意に、上記負極シートの膨張成長率は2%~10%である。任意に、上記負極シートの負極材料は、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン、ケイ素-炭素複合物、リチウム錫(Li-Sn)合金、リチウムアルミニウム(Li-Al)合金のうちの1つ以上を含む。
【0086】
幾つかの実施形態において、任意に、上記Li-Sn合金はLi-Sn-O合金である。
【0087】
幾つかの実施形態において、任意に、上記負極シートの負極材料は、ケイ素、Sn、SnO、SnO、リチウム金属のうちの1つ以上を含む。
【0088】
リチウムイオン電池にとって、複数回の充放電サイクル後、金属と合金類の負極材料、ケイ素に富んだ負極材料等が電池の高速充電性能の向上に役立つが、負極の膨張率が大きくなる。予想外に、発明者らは実験により、このような負極が本願のSEI膜様成分添加剤を含む電解液と組み合わせて使用する場合、負極の膨張成長率を顕著に改善できたことを発見した。
【0089】
幾つかの実施形態において、任意に、上記電解液に対する上記SEI膜様成分添加剤の添加量の質量百分率をm1にし、片面の負極集電体における上記負極活物質の質量(単位:g/77mm)をm2にすると、m1とm2との比は1.1~2.8(g/77mm-1である。発明者らは大量の実験により、上記の比が1.1~2.8(g/77mm-1である場合、同じ電池内部の電解液におけるSEI膜様成分添加剤の含有量と負極材料のコーティング量の組み合わせが合理的で、両者の組み合わせが相乗効果を有し、リチウムイオン電池の高温保存特性と高温サイクル特性を十分に発揮することに役立つことを発見した。
【0090】
上記の比が小さすぎる場合、負極シートの負極材料のコーティング量が多くなり、それに対応する電解液におけるSEI膜様成分添加剤の含有量が相対的に少ない。負極シートの負極材料のコーティング量が多すぎる場合、SEI膜成分を適時に補充するようにより多くのSEI膜様成分添加剤が必要であり、この場合、電解液におけるSEI膜様成分添加剤の含有量が少さ過ぎると、負極での膜形成の効率及び品質に影響を与え、電池の電気化学特性の発揮に影響を与える。逆に、上記の比が大きすぎる場合、SEI膜様成分添加剤が多くなり、対応する負極シートの負極材料のコーティング量が少ない。この場合、電解液における過剰のSEI膜様成分は電解液の導電率を劣化させ、それにより電池の特性を劣化させる。
【0091】
本願において、正極シートは、正極集電体及び正極集電体の少なくとも1つの表面に設置された正極材料を含む。例として、正極集電体は、それ自体の厚さ方向の対向する2つの表面を有し、正極材料は正極集電体の対向する2つの表面のいずれか一方又は両方に設置されている。
【0092】
本願のリチウムイオン電池において、上記正極集電体は金属箔又は複合集電体を用いることができる。例えば、金属箔として、アルミニウム箔を用いることができる。複合集電体は高分子材料基材及び高分子材料基材の少なくとも1つの表面に形成された金属層を含むことができる。複合集電体は、金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金等)を高分子材料基材(例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、1,3-プロパンスルトン(PS)、ポリエチレン(PE)等の基材)に形成させることで形成してもよいが、本願はこれらの材料に限定されない。
【0093】
本願において、正極材料の非限定的な例は、リン酸鉄リチウムシステム又はニッケルコバルトマンガン三元系システムの正極材料など、二次電池に使用可能な従来の正極活性材料を含む。
【0094】
幾つかの実施形態において、任意に、上記正極材料がリン酸鉄リチウムシステムに属する場合、上記リチウムイオン電池の充電カットオフ電圧は3.65~3.8Vに達され、上記正極材料がニッケルコバルトマンガン三元系システムに属する場合、上記リチウムイオン電池の充電カットオフ電圧は4.0~4.8Vに達される。
【0095】
予想外に、本願のSEI膜様成分添加剤を含む電池は、高電圧での電解液の副反応を効果的に改善し、高温と高圧での電池サイクル容量の維持率と高温保存特性を向上させることができる。電池にとって、充放電の電圧の向上は、電池の正極活性材料の容量の発揮、電池のエネルギー密度の向上に役立つが、充放電の電圧が高すぎると、電解液分解の副反応を招き、電池のサイクル特性及び安全性を劣化させる。発明者らは大量の実験及び研究により、本願のSEI膜様成分添加剤を含む電解液により製造された電池は高い電圧で依然として良好なサイクル特性及び安全性を有することを発見した。例として、正極活性材料がリン酸鉄リチウムである場合、従来のリン酸鉄リチウム電池の充電カットオフ電圧は一般的に3.6~3.65Vであり、電圧がより高い場合に電池の特性が劣化するが、本願のリチウムイオン電池は、3.8Vの場合においても良好な高温サイクル特性と高温保存特性を有する(特性グラフは図3.A-B参照)。
【0096】
三元系層状材料など、三元系システムにとって、一般的な三元系層状材料の電圧上限は4.0V~4.3Vであり、三元系層状材料の電圧上限を増やすことで、正極材料の容量と動作電圧を大幅に増やすことができ、それによりリチウムイオン電池のエネルギー密度を大幅に向上させる。しかし、使用の上限を増やすだけで、電解液の電気化学ウィンドウが狭いので、電池の高温保存特性と高温サイクル特性を大幅に劣化させる。ところが、SEI膜様成分添加剤を使用することで、対応するリチウムイオン電池は4.8Vにおいても良好な高温サイクル特性と高温保存特性を有する(特性グラフは図4.A-B参照)。
【0097】
任意に、上記正極材料は導電剤を更に含む。但し、導電剤の種類を具体的に限定せず、当業者は実際のニーズに応じて選択することができる。例として、正極材料に使用される導電剤は、超伝導炭素、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノ繊維から選ばれる1つ以上であってもよい。
【0098】
本願の正極シートは当該分野で既知されている方法に従って製造することができる。正極材料のコーティングは負極材料のコーティングと類似する方法を使用して行うことができる。例として、本願の正極活性材料、導電剤及び接着剤を溶媒(例えば、N-メチルピロリドン(NMP))に分散し、均一な正極ペーストを形成し、正極ペーストを正極集電体にコーティングし、乾燥、冷間圧延等プロセスを経た後に正極シートを得られる。
【0099】
[セパレータ]
電解液を用いるリチウムイオン電池、及び固体電解質を用いる幾つかのリチウムイオン電池において、セパレータを更に含む。セパレータは正極シートと負極シートとの間に設置され、隔離の役割を果たす。本願は、セパレータの種類を特に限定せず、優れる化学的安定性及び機械的安定性を有する任意の公知の多孔質構造のセパレータを選択することができる。幾つかの実施形態において、セパレータの材質はガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンから選ばれる1つ以上であってもよい。セパレータは単層薄膜であってもよく、多層複合薄膜であってもよく、特に限定されていない。セパレータは多層複合薄膜である場合、各層の材料は同じ又は異なるであってもよく、特に限定されていない。
【0100】
幾つかの実施形態において、正極シート、負極シート及びセパレータは、巻き取りプロセス又はラミネーションプロセスによって電極アセンブリを製造することができる。
【0101】
幾つかの実施形態において、リチウムイオン電池は外装を含むことができる。該外装は上記電極アセンブリ及び電解質のパッケージに用いることができる。
【0102】
幾つかの実施形態において、リチウムイオン電池の外装は、硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、スチールケースなどのハードケースであってもよい。リチウムイオン電池の外装は、ソフトバッグなどのソフトパッケージであってもよい。ソフトパッケージの材質は、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)及びポリブチレンサクシネート(PBS)等が挙げられるプラスチックであってもよい。
【0103】
本願は、リチウムイオン電池の形状を特に限定されず、円筒形、四角形又は他の任意の形状であってもよい。例えば、図5は一つの例として四角形構造のリチウムイオン電池5である。
【0104】
幾つかの実施形態において、図6を参照すると、外装はケース51とカバープレート53を含むことができる。そのうち、ケース51はボトムプレート及びボトムプレートに接続されたサイドプレートを含み、ボトムプレートとサイドプレートが取り囲んで収容キャビティが形成される。ケース51は、収容キャビティに連通する開口を有し、カバープレート53は、上記収容キャビティを密閉するように、上記開口を覆設することができる。正極シート、負極シート及びセパレータは、巻き取りプロセス又はラミネーションプロセスによって電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は、上記収容キャビティ内に封入される。電解液は電極アセンブリ52に含浸される。リチウムイオン電池5に含まれている電極アセンブリ52の数は1つ又は複数であってもよく、当業者は具体的なニーズに応じて選択することができる。
【0105】
[電池モジュール]
幾つかの実施形態において、リチウムイオン電池は、電池モジュールに組み立てることができ、電池モジュールに含まれているリチウムイオン電池の数は1つ又は複数であってもよく、当業者は、電池モジュールの適用及び容量に応じて具体的な数を選択することができる。
【0106】
図7は例とする電池モジュール4である。図7を参照すると、電池モジュール4において、複数のリチウムイオン電池5は電池モジュール4の長さ方向に沿って順に並べて設置することができる。当然ながら、他の任意の方式により配置することもできる。更に、締結部品によって、この複数のリチウムイオン電池5を固定することができる。
【0107】
任意に、電池モジュール4は、収容スペースを有するハウジングを含んでもよく、複数のリチウムイオン電池5はこの収容スペースに収容される。
【0108】
[電池パック]
幾つかの実施形態において、上記電池モジュールは、電池パックに組み立てることもでき、当業者は、電池パックの適用及び容量に応じて、電池パックに含まれている電池モジュールの数を選択することができる。
【0109】
図8及び図9は例とする電池パック1である。図8及び図9を参照すると、電池パック1には、電池ボックス及び電池ボックス内に設置された複数の電池モジュール4を含むことができる。電池ボックスは上筐体2と下筐体3を含み、上筐体2は下筐体3に覆設されて、電池モジュール4を収容するための密閉スペースを形成することができる。複数の電池モジュール4は任意の方式によって電池ボックス内に配置することができる。
【0110】
[電気装置]
また、本願は、本願により提供されるリチウムイオン電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの1つ以上を含む電気装置を更に提供する。上記リチウムイオン電池、電池モジュール、又は電池パックは、上記装置の電源として使用されてもよいが、上記装置のエネルギー貯蔵ユニットとして使用されてもよい。上記装置は、モバイルデバイス(例えば、携帯電話、ノートパソコン等)、電気自動車(例えば、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電気自転車、電気スクーター、電気ゴルフカート、電気トラック等)、電車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システム等であってもよいが、これらに限定されない。
【0111】
上記電気装置として、その使用のニーズに応じて、リチウムイオン電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0112】
図10は例とする装置である。該装置は電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車等である。該装置のリチウムイオン電池の高パワーと高エネルギー密度に対するニーズを満たすために、電池パック又は電池モジュールを用いることができる。
【0113】
別の例の装置として、携帯電話、タブレットパソコン、ノートパソコン等であってもよい。該装置は一般的に軽質化が要求され、電源としてリチウムイオン電池を用いることができる。
【実施例
【0114】
以下、本願の実施例を説明する。以下に説明する実施例は例示的であり、本願を解釈するものに過ぎず、本願を制限するものと理解できない。実施例には具体的な技術又は条件が明記されていない場合、当該分野内の文献に記載されている技術又は条件、或いは、製品の説明書に従って実施される。製造メーカーが明記されていない試薬又は機器は、いずれも当該分野でよく使用され、市販されている従来の製品である。本願の実施例における各成分の含有量は、別途説明がない限り、いずれも結晶水を含まない質量によるものである。
【0115】
本願の実施例に係る原材料の供給源は以下のとおりである。
【0116】
リン酸鉄リチウム(LiFePO、天津国安盟固利テクマテリアルテクノロジー株式会社)
ニッケルコバルトマンガン三元系(LiMO、MはNi-Co-Mn固溶体、その質量比は8:1:1)
人造黒鉛(広東凱金新エネルギーテクノロジー株式会社)
セパレータ(ポリプロピレン膜、寧徳時代新エネルギーテクノロジー株式会社)
N-メチルピロリドン(NMP、CAS:872-50-4、純度≧99%、上海マクリーンバイオテクノロジー有限公司)
ポリフッ化ビニリデン(CAS:24937-79-9、分子量は80~150万の間、上海マクリーンバイオテクノロジー有限公司)
アセチレンブラック(広東凱金新エネルギーテクノロジー株式会社)
導電剤カーボンブラック(広東凱金新エネルギーテクノロジー株式会社)
アクリレート(CAS:25067-02-1、純度≧99%、上海マクリーンバイオテクノロジー有限公司)
エチレンカーボネート(EC、純度≧99.5%、CAS:96-49-1、上海マクリーンバイオテクノロジー有限公司)
ジメチルカーボネート(DMC、純度≧99.5%、CAS:616-38-6、上海マクリーンバイオテクノロジー有限公司)
エチルメチルカーボネート(EMC、純度≧99.5%、CAS:623-53-0、上海マクリーンバイオテクノロジー有限公司)
エチレングリコールジメチルエーテル(CAS:110-71-4、純度≧99%、上海マクリーンバイオテクノロジー有限公司)
ナフタレン固体(CAS:91-20-3、純度≧99%、上海マクリーンバイオテクノロジー有限公司)
リチウム金属シート(CAS:7439-93-2、上海マクリーンバイオテクノロジー有限公司)
■化カリウム(KBr、CAS:7758-02-3、純度≧98%、上海マクリーンバイオテクノロジー有限公司)
ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF、CAS:21324-40-3、広州天賜ハイテクマテリアルテクノロジー株式会社)
ジフルオロリン酸リチウム(LiPO、CAS:24389-25-1、広州天賜ハイテクマテリアルテクノロジー株式会社)
テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF、CAS:14283-07-9、広州天賜ハイテクマテリアルテクノロジー株式会社)
【0117】
実施例1-1
[SEI膜様成分添加剤を含む電解液の調製]
調製プロセス全体は、不活性雰囲気で満たされたグローブボックス内(アルゴンガスで満たされ、且つHOが100ppm未満、Oが100ppm未満)で実施された。
【0118】
ビーカーを取り、ビーカーに1molのエチレングリコールジメチルエーテル純溶媒を加え、上記溶媒に1molのナフタレン固体(純度100%の純ナフタレンC10として)を加え、50℃、回転速度500r/minで3時間撹拌し、ナフタレンを含む有機溶液を得た。
【0119】
上記ナフタレンを含む有機溶液に1molの金属リチウム固体(Liとして)を加え、50℃、回転速度500r/minで2h撹拌し、リチウムシートを完全に溶解させてリチウムナフタレン有機溶液を得た。
【0120】
25℃下で、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及びジメチルカーボネート(DMC)を、EC:EMC:DMC=30:30:40の質量比で混合して混合溶媒を得た。
【0121】
50℃下で、リチウムナフタレン有機溶液:混合溶媒=10:1の質量比で、20gの混合溶媒を200gのリチウムナフタレン有機溶液に徐々に注入し、300r/minの回転速度で3時間反応させ、SEI膜様成分添加剤を含む混合物を得た。
【0122】
上記混合物を真空に60℃下で2h乾燥し、10gのSEI膜様成分添加剤固体を得た。
【0123】
[SEI膜様成分添加剤を含む電解液の調製]
25℃下で、エチレンカーボネート(EC)300g、エチルメチルカーボネート(EMC)300g及びジメチルカーボネート(DMC)400gを取って混合し、混合溶媒を得た。
【0124】
91.65gの上記混合溶媒を取り、0.1gのSEI膜様成分添加剤、2gのフルオロエチレンカーボネート及び6.25gのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPFとして)を加え、撹拌して溶解させた後に実施例1-1に示される電解液を得た。
【0125】
[正極シートの製造]
正極活性材料であるリン酸鉄リチウム(LiFePOとして)材料、接着剤であるポリフッ化ビニリデン、導電剤であるアセチレンブラック、N-メチルピロリドン(NMP)を、重量比48:1:1:50で混合し、真空ブレンダーを使用して均一に撹拌し、正極ペーストを得た。正極ペーストを厚さ12μmのアルミニウム箔に均一にコーティングし、片面をコーティングした後、乾燥、冷間圧延、分割・切断によって、実施例1-1の正極シートを得た。
【0126】
[負極シートの製造]
負極材料である人造黒鉛、導電剤であるカーボンブラック、接着剤であるアクリレート及び脱イオン水を、重量比48:1:1:50で均一に混合し、真空ブレンダーを均一に撹拌し、負極ペーストを得た。負極ペーストを厚さ8μmの銅箔に均一にコーティングし、コーティングの質量が0.008g/77mmになるように片面をコーティングした後、乾燥、冷間圧延、分割・切断によって、実施例1-1の負極シートを得た。
【0127】
[セパレータ]
ポリプロピレン膜をセパレータとした。
【0128】
[リチウムイオン電池の製造]
実施例1-1の正極シート、セパレータ、負極シートを順に積み重ね、セパレータが正極シートと負極シートとの間に位置することで隔離の役割を果たし、次に巻き取って裸セルを得て、裸セルにタブを溶接し、裸セルをアルミニウムケース内に入れ、80℃下で乾燥して水分を除去し、続いて12gの上記のSEI膜様成分添加剤を含む電解液を注入し、密封後に充電されていない電池を得た。充電されていない電池は、順に静置、熱間と冷間圧延、化学的形成、成形、容量テスト等のプロセスを経て、実施例1のリチウムイオン電池製品を得た。
【0129】
実施例1-2から1-7
電解液に対するSEI膜様成分添加剤の添加量の質量百分率がそれぞれ0.15%、0.2%、0.25%、0.3%、0.05%、0.35%であったことを除いて、実施例1-2~1-7の他のステップは実施例1-1と同じであった。
【0130】
実施例2-1から2-10
リチウム供与体をLiPF、LiPO(LiPFとLiPOとのモル比は1:1)に変更し、他の添加剤をフルオロエチレンカーボネートからビニルエチレンカーボネートに変更し、SEI膜様成分添加剤の添加量とリチウム供与体の質量との比をそれぞれ0.5:100、0.8:100、1.6:100、2.4:100、3.2:100、4.0:100、4.8:100、5:100、0.1:100、6:100に変更したことを除いて、実施例2-1~2-10の他のステップは実施例1~3と同じであった。
【0131】
実施例3-1から3-8
リチウム供与体をLiPF、LiPO、LiBF(LiPF、LiPO及びLiBFのモル比は1:1:1)に変更し、他の添加剤をフルオロエチレンカーボネートから硫酸ビニルに変更し、上記電解液に対する他の添加剤の質量の質量百分率をそれぞれ0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、0%、5%に変更したことを除いて、実施例3-1~3-8の他のステップは実施例1~3と同じであった。
【0132】
実施例4-1から4-6
[負極シートの製造]のステップにおいてコーティング質量を0.008g/77mmから0.01g/77mm、0.01g/77mm、0.008g/77mm、0.008g/77mm、0.008g/77mm、0.008g/77mmに変更し、上記電解液に対するSEI膜様成分添加剤の質量百分率含有量をそれぞれ0.01%、0.01%、0.012%、0.016%、0.0224%、0.024%に変更したことを除いて、実施例4-1~4-6の他のステップは実施例1-1と同じであった。
【0133】
比較例1
電解液には30質量部のエチレンカーボネート(EC)、30質量部のエチルメチルカーボネート及び40質量部のジメチルカーボネート(DMC)を含み、また、該電解液において、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度(LiPFとして)は0.5mol/Lであった。
【0134】
他のステップは実施例1-1と同じであった。
【0135】
[関連パラメータ及び電池特性テスト]
1、負極膨張成長率テスト
60℃下で、実施例1-1に対応するリチウムイオン電池を1Cの定電流で3.65Vに充電し、更に定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、この状態の電池を分解し、負極部分を別途取り出し、ノギスを使用して負極の厚さh1を測定して、同じバッチで製造した別のリチウムイオン電池に対し、連続的に充放電サイクル300回を実施した後(サイクル条件:1Cの定電流で3.65Vに充電し、更に3.65Vの定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、5min放置した後に1Cの定電流で2.5Vに放電した)、この電池を1Cで3.65Vに充電し続け、定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、この状態の電池を分解し、負極部分を別途取り出し、ノギスを使用して負極の厚さh2を測定すると、負極の膨張成長率=[(h2-h1)/h1]×100%であった。比較例及び他の実施例のテスト過程は上記と同じであった。表1の負極膨張成長率のデータを得た。
【0136】
2、60℃サイクル特性テスト
(1)3.65Vフル充電電圧でのリチウムイオン電池の60℃サイクル特性テスト
実施例1-1を例にすると、電池の容量維持率テスト過程は以下のとおりであった。60℃下で、実施例1-1に対応する電池を、1Cの定電流で3.65Vに充電し、更に3.65Vの定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、5min放置し、更に1Cの定電流で2.5Vに放電し、得られた容量を初期容量C0と記した。上記の同一の電池に対して上記のステップを繰り返すと同時にカウントし、n回目のサイクル後の電池の放電容量Cnを記録すると、毎回のサイクル後の電池の容量維持率Pn=Cn/C0100%、P、P……P300という100個のポイント値を縦座標とし、対応するサイクル回数を横座標とし、図2.Aに示される実施例1-1の電池の容量維持率及びサイクル回数の曲線図を得た。
【0137】
該テスト過程において、1回目のサイクルはn=1に対応し、2回目のサイクルはn=2に対応し、……300回目のサイクルはn=300に対応した。表1の実施例1-1に対応する電池の容量維持率データは、上記のテスト条件下で300回目のサイクル後に測定されたデータ、即ちP300の値であった。比較例及び他の実施例のテスト過程は上記と同じであった。表1の60℃サイクル容量維持率のデータを得た。
【0138】
(2)3.8Vフル充電電圧でのリチウムイオン電池の60℃サイクル特性テスト
実施例1-1を例にすると、フル充電電圧を3.65Vから3.8Vのフル充電電圧に変更したことを除いて、他のテスト過程は(1)テスト過程と同じであり、本願の図3のAを得た。
【0139】
3、60℃保存特性テスト
(1)3.65Vフル充電電圧でのリチウムイオン電池の60℃保存特性テスト
実施例1-1を例にすると、電池の高温可逆容量維持率テスト過程は以下のとおりであった。25℃下で、実施例1-1に対応する電池を、0.5Cの定電流で3.65Vに充電し、更に3.65Vの定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、5min放置した後、更に0.5Cの定電流で2.5Vに放電し、この時の放電容量を初期容量C0と記した。
【0140】
上記電池を更に0.5Cの定電流で3.65Vに充電し、更に3.65Vの定電圧で電流が0.05Cになるまで充電した後、この電池を60℃の定温ボックスに入れ、60日保存した後に取り出した。取り出した電池を25℃の大気環境に置き、リチウムイオン電池の温度が完全に25℃に降下した後、リチウムイオン電池を0.5Cの定電流で2.5V(フル放電)に放電し、0.5Cの定電流で3.65Vに充電し、最後にリチウムイオン電池を0.5Vの定電流で2.5Vに放電し、この時の放電容量はC1であったと、60日保存した後、電池の高温可逆容量維持率M=C1/C0×100%であった。比較例及び他の実施例のテスト過程は上記と同じであり、表1の60℃保存可逆容量維持率のデータを得た。
【0141】
(2)3.8Vフル充電電圧でのリチウムイオン電池の60℃保存特性テスト
実施例1-1を例にすると、フル充電電圧を3.65Vから3.8Vのフル充電電圧に変更したことを除いて、他のテスト過程は(1)テスト過程と同じであり、本願の図3のBを得た。
【0142】
備考:本願のリチウムイオン電池の正極活物質がニッケルコバルトマンガン三元系層状材料である場合、本願は、主に4.8Vフル充電電圧での60℃サイクル特性テストと60℃サイクル特性テストを焦点とする。測定されたデータが図4のAとBを参照する。
【0143】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表2】
表1から分かるように、上記のすべての実施例に対応するリチウムイオン電池の高温サイクル維持率と高温保存容量維持率は、比較例1よりも明らかに高いと同時に、すべての実施例の負極膨張成長率も比較例1よりも低かった。
【0144】
実施例1-1から1-7を総合的に比較すると、電解液の質量に対するSEI膜様成分添加剤の添加量が0.1%~0.3%である場合、リチウムイオン電池の高温サイクル維持率が高く(94.8%以上)、リチウムイオン電池はまた、高い高温保存容量(96.1%以上)を兼ねると同時に、このリチウムイオン電池の負極はより低い負極膨張成長率(14.1%以下)を持っているが、電解液の質量に対するSEI膜様成分添加剤の添加量が0.1%未満(実施例1-6)又は0.3%より高い(実施例1-7)場合、リチウムイオン電池の高温サイクル特性、高温保存特性、負極膨張に対する改善効果が顕著ではないことが分かった。
【0145】
実施例2-1から2-10を総合的に比較すると、SEI膜様成分添加剤の添加量とリチウム供与体との質量比が0.5~5:100の範囲内である場合、リチウムイオン電池の高温サイクル維持率が高く(94%以上)、リチウムイオン電池はまた、高い高温保存容量(95.3%以上)を兼ねると同時に、このリチウムイオン電池の負極はより低い負極膨張成長率(14.1%以下)を持っているが、SEI膜様成分添加剤の添加量とリチウム供与体との質量比が0.5:100未満(実施例2-9)又は5:100より高い(実施例2-10)場合、リチウムイオン電池の高温サイクル特性、高温保存特性、負極膨張に対する改善が顕著ではないことが分かった。
【0146】
実施例3-1から3-8を総合的に比較すると、電解液にSEI膜様成分添加剤を含む場合、電解液における他の添加剤の含有量が0.5%~3%の範囲内である時、リチウムイオン電池の高温サイクル維持率が高く(95.1%以上)、リチウムイオン電池はまた、高い高温保存容量(96.9%以上)を兼ねるが、電解液における他の添加剤の含有量が0.5%未満(実施例3-7)又は3%より高い(実施例3-8)場合、リチウムイオン電池の高温サイクル特性、高温保存特性に対する改善が顕著ではないことが分かった。
【0147】
実施例4-1から1-6を総合的に比較すると、m1とm2との比が1.1~2.8(g/77mm-1の範囲内である場合、リチウムイオン電池の負極膨張が顕著に改善され、リチウムイオン電池の高温サイクル維持率が高く、リチウムイオン電池はまた、高い高温保存容量を兼ねるが、この比が1.1未満又は2.8より高い場合、負極膨張成長率、電池の高温サイクル特性、高温保存特性に対する改善が顕著ではないことが分かった。
【符号の説明】
【0148】
1 電池パック
2 上筐体
3 下筐体
4 電池モジュール
5 リチウムイオン電池
51 ケース
52 電極アセンブリ
53 トップカバーアセンブリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】