(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-09
(54)【発明の名称】半径方向弾性材部を有するトルクセンサ
(51)【国際特許分類】
G01L 3/10 20060101AFI20230802BHJP
【FI】
G01L3/10 311
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023502940
(86)(22)【出願日】2021-07-13
(85)【翻訳文提出日】2023-03-10
(86)【国際出願番号】 EP2021069453
(87)【国際公開番号】W WO2022013214
(87)【国際公開日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】102020004286.4
(32)【優先日】2020-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513010572
【氏名又は名称】センソドライブ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147599
【氏名又は名称】丹羽 匡孝
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【氏名又は名称】西山 善章
(74)【代理人】
【識別番号】100098062
【氏名又は名称】梅田 明彦
(72)【発明者】
【氏名】グランドル、ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】ルスト、クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】サトラー、マチアス
(57)【要約】
本発明は、軸線方向及び周方向に延びる本体(12)を有し、第1の力導入点(16)を有した環状の内側フランジ(18)から、出力信号を生成する測定センサを備えた機械的に弱いセンサ部(20)を介して、第2の力導入点(34)を有した環状の外側フランジ(32)まで、本体の半径方向に延びており、第2の力導入点が半径方向弾性材部(28)を介してセンサ部に接続されているトルクセンサ(10)に関する。半径方向弾性材部(28)は、本体の全周にわたって分散して配置された複数の半径方向弾性曲げストリップ部(31)によって形成されていると共に、半径方向に剛性を有した環状のデカップリング領域(27)を介して機械的に弱いセンサ部(20)に接続されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向及び周方向に延びる本体(12)を有し、第1の力導入点(16)を有した環状の内側フランジ(18)から、出力信号を生成するための測定用トランスデューサを備えた機械的に弱いセンサ部(20)を介して、第2の力導入点(34)を有した環状の外側フランジ(32)まで、前記本体の半径方向に延びており、前記第2の力導入点(34)が半径方向弾性材部(28)を介して前記センサ部(20)に接続されているトルクセンサ(10)であって、
-前記半径方向弾性材部(28)が前記本体(12)の全周にわたって分散して配置された複数の半径方向弾性曲げストリップ部(31)によって形成されており、
-前記半径方向弾性材部(28)が半径方向に剛性を有した環状のデカップリング領域(27)を介して前記機械的に弱いセンサ部(20)に接続されている、
ことを特徴とするトルクセンサ。
【請求項2】
前記曲げストリップ部(31)が軸線方向又は半径方向に前記半径方向弾性材部(28)を貫通する一連のスロット(30a,30b;30c,30d;30e)によって形成されている、請求項1に記載のトルクセンサ。
【請求項3】
前記スロット(30a,30b;30c,30d;30e)が少なくとも実質的に周方向に延びている、請求項2に記載のトルクセンサ。
【請求項4】
少なくとも三つの曲げストリップ部(31)が前記本体(12)の全周にわたって分散して配置されている、請求項1から請求項3の何れか一項に記載のトルクセンサ。
【請求項5】
少なくとも実質的に周方向に延びているスロット(30a,30b)が、各々、円形リング片形状を有している、請求項3に記載のトルクセンサ。
【請求項6】
円形リング片形状の前記スロット(30a,30b)が少なくとも二つのグループに分けて配置されており、各グループが前記本体(12)の中心から異なる半径方向距離に位置している、請求項5に記載のトルクセンサ。
【請求項7】
一方のグループの円形リング片形状の前記スロット(30a)は、他方のグループの円形リング片形状の前記スロット(30b)に対して周方向にオフセットされて配置されている、請求項6に記載のトルクセンサ。
【請求項8】
全てのグループの円形リング片形状の前記スロット(30a,30b)が互いに周方向にオフセットされて配置されている、請求項6に記載のトルクセンサ。
【請求項9】
少なくとも実質的に周方向に延びる前記スロット(30c,30d;30e)は周方向部分(36a;36b)を有しており、該周方向部分(36a;36b)についての前記本体(12)の中心(M)からの半径距離が少なくとも実質的に周方向に延びる前記スロット(30c,30d;30e)の他の周方向部分(38a;38b)についての前記本体(12)の前記中心(M)からの半径方向距離と異なるようになっている、請求項3に記載のトルクセンサ。
【請求項10】
少なくとも実質的に周方向に延びる前記スロットについての前記本体(12)の前記中心(M)からの半径方向距離がスロットの輪郭に沿って連続的に変化している、請求項3に記載のトルクセンサ。
【請求項11】
前記スロット(30a,30b;30c,30d;30e)のうちの少なくとも幾つかが周方向に重なりあっている、請求項2から請求項10の何れか一項に記載のトルクセンサ。
【請求項12】
前記本体(12)が円形ディスク形状である、請求項1から請求項11の何れか一項に記載のトルクセンサ。
【請求項13】
前記本体(12)が単一体である、請求項1から請求項12の何れか一項に記載のトルクセンサ。
【請求項14】
前記測定用トランスデューサが歪みゲージ(26)である、請求項1から請求項13の何れか一項に記載のトルクセンサ。
【請求項15】
前記第2の力導入点(34)、前記半径方向弾性材部(28)、前記環状のデカップリング領域(27)、前記センサ部(20)及び前記第1の力導入点(16)が共通の半径方向横断面を有している、請求項1から請求項14の何れか一項に記載のトルクセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸線方向及び周方向に延びる本体を有し、第1の力導入点を有する環状の内側フランジから、出力信号を生成するための測定用トランスデューサを備えた機械的に弱いセンサ部を介して、第2の力導入点を有する環状の外側フランジまで、本体の半径方向に延びており、第2の力導入点が半径方向弾性材部を介してセンサ部に接続されているトルクセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなトルクセンサは、国際公開第2018/041948号から公知となっている。この公知のトルクセンサによれば、半径方向に大きなデカップリング(非干渉化)が実現され得る。すなわち、トルクセンサに作用する半径方向を向いた力が測定誤差につながることを防止することが可能である。このような半径方向を向いた力は、例えば、製造公差によって生じる第2の力導入点での真円度のずれから生じ得る。このような真円度のずれにより、結果として、測定用トランスデューサのクロストーク(混信)が生じ得る。半径方向に作用する力によって引き起こされ得る測定誤差を回避するために、公知のトルクセンサでは、半径方向弾性材部が本体の軸線方向に延びる肉盗み部(薄肉材料部)として形成されている。この半径方向弾性材部は、薄肉形態のため、半径方向の変形に対しては低い剛性を有するが、ねじり力に対しては実質的に剛性を有する、すなわち、ねじり力に対しては高い剛性を有している。しかしながら、公知のトルクセンサにおいて軸線方向に延びる肉盗み部は、トルクセンサ全体の軸線方向の寸法を増大させる結果となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、機械的干渉に対する公知のトルクセンサの不感性、特に半径方向に作用する力に対する不感性を維持し、さらに、よりコンパクトな構造形態を実現することを可能にさせるトルクセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、前述の包括的なタイプのトルクセンサであって、半径方向弾性材部が本体の周囲に分散して配置されている複数の半径方向弾性曲げストリップ部(細片部)によって形成され、半径方向弾性材部が環状の半径方向剛性デカップリング領域(非干渉化領域)を介して機械的に弱いセンサ部に接続されているトルクセンサによって達成される。
【0006】
半径方向弾性曲げストリップ部は、軸線方向において本体の残余の領域又は部分よりも小さい又は少なくとも大きくはない設置スペースしか必要としないように容易に設計され得る。例えば、曲げストリップ部は、軸線方向又は半径方向に半径方向弾性材部を貫通する一連のスロットによって形成され得る。スロットは、好ましくは、少なくとも実質的に周方向に延びているが、スロットが直線的な又は直線的に屈曲した外形を有している実施形態も可能である。本開示の範囲内では、用語「スロット」は、特に、スロットによって形成される開口の幅が開口の長手方向の範囲よりも非常に小さくなっていることを意味する。
【0007】
半径方向弾性曲げストリップ部の数は、比較的自由に選択することができる。半径方向に作用する力に対する優れたデカップリング性(非干渉性)を実現するために、全周にわたってみたときに、少なくとも三つの曲げストリップ部が本体の全周に整然と分散して配置されていることが好ましい。しかしながら、三つより多くの半径方向弾性曲げストリップ部、例えば、四個、五個、六個、七個又は八個の半径方向曲げストリップ部が設けられていることが特に好ましい。著しく多い数の半径方向曲げストリップ部、例えば十六個の半径方向弾性曲げストリップ部を設けることさえも容易に可能である。実際に使用される半径方向弾性曲げストリップ部の数は、本体の構造形態及び大きさ、特に本体において利用可能なスペース、に依存し得る。原則として、半径方向曲げストリップ部の数がより多くなることで、半径方向に作用する力に対するデカップリング性を均一にさせることが可能となるが、三つ又は四つの半径方向弾性曲げストリップ部でさえも半径方向に作用する力に対して優れたデカップリング性を示すには十分である。
【0008】
弱いセンサ領域と半径方向弾性材部との間に環状の半径方向剛性デカップリング領域を設けることで、半径方向弾性材部によって吸収される力が弱いセンサ領域に影響を及ぼすことを防止させる。すなわち、環状の半径方向剛性デカップリング領域は、弱いセンサ領域が半径方向弾性料領域で起こることによって影響を受けなくなる又は実質的に受けなくなる。
【0009】
全体として、半径方向弾性材部の構成における半径方向弾性曲げストリップ部の使用は、環状の半径方向剛性デカップリング領域と組み合わさって、第2の力導入点、半径方向弾性材部、環状デカップリング領域、弱いセンサ部及び第1の力導入点が共通の半径方向横断面を有することを可能にさせる。このような構成では、半径方向内側から見たときに、第1の力導入点、センサ部、環状デカップリング領域、半径方向弾性材部及び第2の力導入点が半径方向に互いの後に続いている。このような半径方向の広がりに加えて、センサ部及び半径方向弾性材部の両方、環状デカップリング領域並びに第1及び第2の力導入点は、軸線方向に広がりを有しており、これは、あらゆる場合において安定性の理由で必要である。第1及び第2の力導入点、環状デカップリング領域、半径方向弾性材部及びセンサ部は、同じ半径方向横断面(ここで、この横断面の厚さは第1及び第2の力導入点の軸線方向の広がり(範囲)、環状デカップリング領域の軸線方向の広がり、半径方向弾性材部の軸線方向の広がり、及びセンサ部の軸線方向の広がりに対応する)内に全体を配置することができるが、個々の領域又は部分の間には程度(高さ)の差がってもよい。例えば、安定性の理由で、第2の力導入点の軸線方向の広がりは、半径方向弾性料部及び/又はセンサ部の軸線方向の広がりよりも大きくすることもできる。このような共通の半径方向横断面は、トルクセンサの軸線方向の寸法が小さくなる利点を与える。
【0010】
本発明によるトルクセンサの好ましい実施形態では、半径方向弾性材部は、少なくとも実質的に周方向に延び且つ軸線方向に半径方向弾性材部を貫通した、すなわち半径方向弾性材部を軸線方向に貫通して延びた、一連の連続したスロットを有している。少なくとも実質的に周方向に延びるこれらスロットは、半径方向弾性材部の周方向の範囲の一部にわたってのみ延びており、半径方向に見たときに、材料つなぎ部が残り、トルクセンサの機械的一貫性を確保させるようになっている。実質的に周方向に延びる個々のスロットは、トルクセンサの本体の中心から異なる半径方向距離に位置してもよい。
【0011】
各スロットの周方向の範囲は、例えば、25°から70°までの範囲とすることができ、好ましい例示の実施形態では、約35°から約55°の間である。各スロットの周方向の範囲は等しい大きさとすることができるが、同様に、半径方向弾性材部において、異なる大きさの周方向範囲のスロットを組み合わせることも可能である。例えば、所望されれば、異なる大きさの周方向範囲のスロットを適切に配置することによって、半径方向弾性材部の半径方向の追従性を特定の半径方向に増加又は減少させることができる。基本原理は、スロットの周方向範囲が大きくなるほど、そのようなスロットが配置されている領域における半径方向の追従性をより高くするということである。
【0012】
一つの実施形態では、少なくとも実質的に周方向に延びるスロットが、各々、部分的な円形リング形状となっている。円形リング片形状(円形リングの一部のような形状)のスロットは、周方向の範囲の大きさにかかわらず、複数のグループに分けて配置されることができる。本発明によるトルクセンサの一つの実施形態では、円形リング片形状のスロットが少なくとも二つのグループに分けて配置されており、各グループが本体の中心から異なる距離に位置すると共に、円形リング片形状のスロットの周方向の範囲が同じとすることもでき、異なるようにすることもできる。
【0013】
上述した実施形態のさらなる発展形によれば、一つのグループの円形リング片形状のスロットが、他のグループの円形リング片形状のスロットに対して周方向にオフセットさせて(すなわち、偏移させて)配置される。このような実施形態のさらなる発展形によれば、全てのグループの円形リング片形状のスロットが互いに対して周方向にオフセットさせて配置される。半径方向弾性材部に存在している円形リング片形状のスロットが他の円形リング片形状のスロットに対して周方向にオフセットして配置されていることは、周方向に見たときに、半径方向弾性材部が少なくとも実質的に同一の半径方向追従性を全体にわたって有するようになったトルクセンサの形成を容易にする。
【0014】
本発明によるトルクセンサの他の好ましい実施形態では、少なくとも実質的に周方向に延びるスロットは周方向部分を有しており、周方向部分についての本体の中心からの半径方向距離が少なくとも実質的に周方向に延びるスロットの他の周方向部分についての本体の中心からの半径方向距離と異なるようになっている。特に、一つのスロットが、それによって、本体の中心からの半径方向距離がそれぞれ異なっている周方向部分を有するようにすることができる。個々の周方向部分の周方向の範囲を適宜に選択すると共に本体の中心からの半径方向距離を適宜に選択することによって、半径方向弾性材部の半径方向の追従性(可撓性)を要望に応じて適合させることができ、特に、均一に作成することもできる。
【0015】
本発明によるトルクセンサのさらに他の好ましい実施形態によれば、少なくとも実質的に周方向に延びるスロットについての本体の中心からの半径方向距離が、スロットの外形(プロファイル)に沿って連続的に変化するようになっている。このような実施形態では、スロットの外形は、例えばタービン羽根車のタービン羽根の配置に似せたものとすることができる。
【0016】
本発明によるトルクセンサの好ましい実施形態では、スロットの細かい形態にかかわらず、スロットのうちの少なくとも幾つかが周方向に重なり合っている。このような周方向のスロットの重なり合いは、半径方向弾性曲げストリップ部を構造的に簡単に製造できるようにさせる。
【0017】
上述した実施形態の多くを互いに組み合わせることができることは言うまでもない。よって、例えば、スロットを複数のグループに分けた配置は、スロットの円形リング片形状に依存するものではない。また、スロットは、形状や、グループに分けて配置されているか否かにかかわらず、周方向に重なり合うことができる。さらに、上述した実施形態は、それらが明らかに矛盾していない限り組み合わせることが可能である。
【0018】
上述した実施形態に関係なく、本発明によるトルクセンサの本体は、円形ディスク形状であることが好ましい。円形ディスク形状からの逸脱が特殊な導入状況によって必要とされることがある。
【0019】
本発明によるトルクセンサの本体は、本体が円形ディスク形状であるか否かにかかわらず、単一体、すなわち一部品であることがさらに好ましい。半径方向弾性材部のスロットは、例えばウォータージェット切断又はレーザ切断によって製造され得る。
【0020】
本発明によるトルクセンサの好ましい実施形態では、測定用トランスデューサとして、歪みゲージが使用されている。これに代えて又はこれに加えて、例えば、ファイバ・ブラッグ・グレーティング又は圧電素子を備えた測定用トランスデューサを使用することができる。
【0021】
以下、本発明によるトルクセンサの複数の例示の実施形態が、添付の略図を参照して、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明によるトルクセンサの第1の実施形態の平面図である。
【
図3】第1の実施形態を斜め上方から空間表示(立体表示)して示す図である。
【
図5】本発明によるトルクセンサの第2の実施形態の平面図である。
【
図7】第2の実施形態を斜め上方から空間表示して示す図である。
【
図9】本発明によるトルクセンサの第3の実施形態の平面図である。
【
図11】第3の実施形態を斜め上方から空間表示して示す図である。
【
図13】本発明によるトルクセンサの第4の実施形態の平面図である。
【
図15】第4の実施形態を斜め上方から空間表示して示す図である。
【
図17】本発明によるトルクセンサの第5の実施形態の平面図である。
【
図18】
図17の断面XVIII-XVIIIを示す断面図である。
【
図19】第5の実施形態を斜め上方から空間表示して示す図である。
【
図21】本発明によるトルクセンサの第6の実施形態の平面図である。
【
図22】
図21の断面XXII-XXIIを示す断面図である。
【
図23】第6の実施形態を斜め上方から空間表示して示す図である。
【
図25】本発明によるトルクセンサの第7の実施形態の平面図である。
【
図26】
図25の断面XXVI-XXVIを示す断面図である。
【
図27】第7の実施形態を斜め上方から空間表示して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1から
図4は、本発明によるトルクセンサ10の第1の実施形態を異なる図で示している。トルクセンサ10は、長手方向中心軸線A(
図2参照)とここでは仮想的である中心M(
図1)とを有した円形ディスク形状の本体12を有している。本体12の中央部には開口部14が設けられており、この開口部14は例えば軸棒又はシャフト(図示せず)にトルクセンサ10を取り付けるために役立つことができる。
【0024】
本体12の中央開口部14の周囲には、複数の第1の力導入点(ここでは、8個の第1の力導入点)16が円形態に配置されており、これら第1の力導入点が一緒になって環状の内側フランジ18を形成している。図示されている例示の実施形態では、各第1の力導入点は本体12を軸線方向に貫通して延びる孔である。環状の内側フランジ18の半径方向外側には、機械的に弱いセンサ部20が設けられており、これらセンサ部20は同様に環状になっている。このセンサ部20の機械的な強度低下は、本体12に環状に配置された一連の窓穴22によって実現されており、各窓穴22は、ここに図示されている実施形態では、パイ片の形状を有している。丸まった角部を有した窓穴22は、本体12を軸線方向に完全に貫通している。窓穴22の間には、円周方向に見たときに、半径方向に延びる測定用スポーク(測定用輻部)24aとシャントスポーク(短絡輻部)24bとが交互に形成されている。測定用スポーク24aは、均一な幅であり、測定用トランスデューサ26(
図1、
図5及び
図9にのみ示されている)を担持している。これら測定用トランスデューサ26は電気的な出力信号を生成するように構成されている。例えば、これら測定用トランスデューサ26は、公知の方法で測定用スポーク24aに接着されている歪みゲージとすることができる。シャントスポーク24bの幅は、半径方向内側から半径方向外側へ向かって連続的に減少している。
【0025】
機械的に弱いセンサ部20の半径方向外側には、ここでは円形リング形状である半径方向に剛性を有した本体12のデカップリング領域(非干渉化領域)27が隣接している。デカップリング領域27は、半径方向に向いた力が本体12に作用するときに半径方向弾性材部28で発生し得る力に対して、機械的に弱いセンサ部20を絶縁させる機能を果たす。半径方向弾性材部28については、以下でより詳細に説明する。
【0026】
既に言及された半径方向弾性材部28は、ここでは同様に円形リング形状であり、デカップリング領域27の半径方向外側に設けられており、その半径方向の追従性により、本体12に導入された半径方向に向いた力が測定結果を改ざんしないことを確実にさせている。半径方向弾性材部28の例示の実施形態は、以下で詳細に説明される。
【0027】
図1から
図4に示されている例示の第1の実施形態では、半径方向弾性材部28は、円周方向に延びる一連のスロット30a,30bを備えている。スロット30a,30bは、半径方向弾性材部28、すなわち本体12、を軸線方向に完全に貫通している。第1の実施形態では、スロット30a,30bの各々が、円形リング片形状をしており、スロット30a,30bが、二つのグループ、すなわち、複数のスロット30bによって構成される半径方向内側の第1のグループと複数のスロット30bによって構成される半径方向外側の第2のグループとに分けて配置されている。半径方向内側の第1のグループのスロット30aは、各々、約55°の円周方向の範囲(広がり)を有しているのに対して、半径方向外側の第2のグループの各スロット30bの範囲は約45°だけである。他の実施形態では、スロット30a及び30bの円周方向の範囲はそれよりも小さい又はそれよりも大きくすることができ、スロット30a,30bの円周方向の範囲は同じサイズとすることもできる。半径方向内側の第1のグループのスロット30aは、すべて、本体12の中心Mから同じ距離に位置する。同様に、半径方向外側の第2のグループのスロット30bは、すべて、本体12の中心Mから同じ距離に位置するが、この半径方向の距離r2は、第1のグループのスロット30aの半径方向の距離r1よりもわずかに大きい。図示されているように、第1のグループのスロット30aは、円周方向に見たときに、第2のグループのスロット30bと重なっており、それにより、各重なる領域が半径方向弾性曲げストリップ部(半径方向弾性細片部)31を形成する。したがって、
図1から
図4に示されているトルクセンサ10の第1の実施形態では、半径方向弾性材部28は8個の半径方向弾性曲げストリップ部31を有しており、これら半径方向弾性曲げストリップ部31が半径方向弾性材部28の所望の半径方向の弾性を提供する。
【0028】
半径方向弾性材部28の半径方向外側には、各々が孔の形態である複数の第2の力導入点34を有した環状の外側フランジ32が設けられている。第2の力導入点34は、第1の力導入点16と同様に、軸線方向に完全に本体12を貫通している。図示されている例示の実施形態では、環状の外側フランジ32が同時に本体12の外周部を形成している。しかしながら、必ずしもこのようなものではなくてもよい。代わりに、トルクセンサ10の意図される用途及び使用分野に応じて、環状の外側フランジ32の半径方向外側にさらに材料領域(図示せず)があってもよい。トルクセンサ10の正確な位置決めを容易にするために、位置決め開口部35が外側フランジ32において二つの第2の力導入点34の間の位置に形成されている。
【0029】
図示されているすべての実施形態では、トルクセンサ10の本体12は、一部品形態、すなわち単一体形態となっており、半径方向の全域にわたって軸線方向に均一の厚さを有している。しかしながら、本体12を複数部品からなる形態で構成することも可能である。本体12が複数部品からなる形態か否かに関わらず、同様に、本体の個々の部分の軸線方向の厚さが他の部分の軸線方向の厚さと異なっているようにすることもできる。よって、例えば、環状の外側フランジ32が設けられている領域が、安定化の理由のために、半径方向弾性材部28及び/又はセンサ部20よりも大きな軸線方向厚さを有するように設計されることも可能である。同じことは、環状の内側フランジ18及び/又はデカップリング領域27の領域にも当てはまる。本体12は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金から構成することができるが、他の材料、例えば鉄鋼から構成することも可能である。
【0030】
半径方向弾性材部28は、半径方向弾性曲げストリップ部31の存在のため、半径方向に弾性的な追従性(可撓性)を有し、よって半径方向の補償領域として作用することができ、結果として、トルクセンサ10に作用する軸線A周りの傾動モーメントが、測定用トランスデューサが設けられた測定用スポーク24aに悪影響を与えないようになっている。また、外側フランジ32で生じる変形、例えば楕円状又はアーチ状(弧状)の変形、によって、測定用スポーク24aが悪影響を受けるようにはならず、よって、測定用トランスデューサ26によって生成される出力信号の改ざんにもつながらなくなる。代わりに、このような楕円状又はアーチ状の変形が半径方向弾性材部28によって効果的に吸収され、デカップリング領域31によって測定用スポーク24aから隔離される。弾性曲げストリップ部31は、一方で、その半径方向により容易に変形しやすい特性から、所望の半径方向弾性を提供するが、他方で、円周方向に高い耐変形性を有しており、半径方向弾性材部28の存在にもかかわらず、トルクセンサ10が円周方向に高い剛性を有し、それにより、測定されるべきトルクの測定用スポーク24aへの良好な導入及び伝達のための優れた要件を充足している。この円周方向の高い剛性は、トルクセンサ10に導入されるトルクが正確に検出されることを可能にさせる。
【0031】
図5から
図8に示されているトルクセンサ10の第2の実施形態は、半径方向弾性材部28の構成のみが
図1から
図4に示されている第1の実施形態と異なっている。第2の実施形態には、第1の実施形態の円形リング片形状のスロット30a及び30bに代えて、同様に少なくとも実質的に円周方向に延びるスロット30c及び30dが存在しており、各スロット30c,30dが少なくとも一つの周方向端部36a,36bを有し、周方向端部36a,36bについての本体12の中心Mからの半径方向距離が、同じスロット30c,30dの他の周方向部分38a,38bについての本体12の中心Mからの半径方向距離と異なるようになっている。
図5から明確に分かるように、各スロット30cは、相対的に半径方向内側に位置する二つの周方向端部36aと、ここでは階段(段差)形態である遷移領域37によって二つの周方向端部36aに接続されており且つ周方向端部36aよりも半径方向外側に設けられた中央周方向部分38aとを有している。同様に、各スロット30dは、二つの周方向端部36bと、中央周方向部分38bとを有しているが、周方向端部36bはここでは中央周方向部分38bよりも半径方向外側に配置されている。同様に
図5から明確に分かるように、図示されている例示の実施形態では、スロット30dの周方向端部36bは、スロット30cの中央周方向部分38aについての本体12の中心Mからの半径方向距離に相当する本体12の中心Mからの半径方向距離に位置している。対照的に、各スロット30dの中央周方向部分38bは、周方向端部36a及び36bについての本体12の中心Mからの半径方向距離の間に位置する本体12の中心Mからの半径距離に位置している。
【0032】
さらに、スロット30c及び30dはそれらの周方向端部36a及び36bの領域において円周方向に重なっており、それによって再び合計8個の半径方向弾性曲げストリップ部31を形成していることが
図5から明確に分かる。
【0033】
第1の実施形態に関して説明された半径方向弾性材部28の利点は、同様に第2の実施形態にも当てはまる。
【0034】
図9から
図12は、トルクセンサ10の第3の実施形態を示しており、第3の実施形態は、半径方向弾性材部28の構成のみが先に説明した二つの実施形態と異なっている。第3の実施形態においては、最初の二つの実施形態と異なり、二つのグループのスロット30a,30b又は30c,30dではなく、単に、最初の二つの実施形態と一致して少なくとも実質的に円周方向に延びている均一の設計の複数のスロット30eになっている。各スロット30eは、階段状の遷移領域37によって相互に接続されている周方向端部36aと周方向端部36bを有する。周方向端部36aは、周方向端部36bよりも半径方向内側に配置されている。スロット30eは、その周方向端部36a,36bの領域において、周方向に重なり合っており、それによって合計16個の弾性曲げストリップ部31を形成している。
【0035】
第3の実施形態の利点は、最初の二つの実施形態の利点に対応する。
【0036】
図13から
図16は、トルクセンサ10の第4の実施形態を示しており、第4の実施形態は、全体的に第1の実施形態と非常に類似している。第1の実施形態のように、半径方向弾性材部28は、二つのグループの円形リング片形状のスロット、すなわちスロット30aから構成される半径方向内側のグループとスロット30bから構成される半径方向外側のグループ、を有している。
図1から
図4に示されている第1の実施形態と異なり、第4の実施形態では、スロット30a,30bの各々の円周方向の範囲が第1の実施形態よりも小さく、各グループが第1の実施形態よりも多くのスロットを備えている。第1の実施形態では、半径方向内側のグループと半径方向外側のグループが、各々、四個のスロット30a又は30bを含んでいる一方、第4の実施形態では、半径方向内側のグループに8個のスロット30aがあり、半径方向外側のグループに8個のスロット30bがある。したがって、半径方向弾性材部28のスロット30a及び30bの重なり領域では、合計16個の半径方向弾性曲げストリップ部31が形成されている。
【0037】
その他の点では、第4の実施形態の構造は、第1の実施形態に対応しており、第1の実施形態に関連して説明された利点は第4の実施形態にも当てはまる。
【0038】
図17から
図20は、トルクセンサ10の第5の実施形態を示しており、第5の実施形態の構造は、これまで説明した実施形態と僅かに異なっている。これまで説明した実施形態と異なり、第5の実施形態では、第2の力導入点34を有した環状の外側フランジ32が、半径方向に剛性を有するデカップリング領域27、機械的に弱いセンサ部20、及び第1の力導入点16を有した環状の内側フランジ18が設けられている横断面に対して僅かにオフセットされた横断面に設けられている。環状の外側フランジ32を環状のデカップリング領域27に接続する半径方向弾性材部28は、環状のデカップリング領域27の平面に始まっており、ここでは8個のスロット30fから構成されている第1のグループの円形リング片形状のスロット30fを有している。各スロット30fは、これまで説明した実施形態のように、軸線方向に本体12を完全に貫通している。
【0039】
デカップリング領域27、センサ部20及び内側フランジ18が設けられている第1の横断面の外周縁部40では、半径方向弾性材部28が、第1の横断面からL字形状に屈曲しており、軸線方向に延びる円形リング形状の周壁42によって、環状の外側フランジ32が配置されている第2の横断面との接続を確立している。環状の外側フランジ32は、円形リング形状の周壁42から半径方向外側に延びている。
【0040】
半径方向弾性曲げストリップ部31を形成するために、円形リング形状の周壁42は、第2のグループの円形リング片形状のスロット30gを備えており、スロット30gはここでは同様に8個のスロット30gから構成されている。各スロット30gは、周壁42を半径方向に貫通しており、第1のグループの二つのスロット30fと円周方向に重なり合うように配置されている。図示されている例示の実施形態では、周壁42のスロット30gは、環状の外側フランジ32の真下で且つ本体12において第1の横断面を規定する部分の上方に設けられている。しかしながら、軸線方向にスロット30fのより近くにスロット30gを移動させることは同様に想到できる範囲である。ただし、これには、製造の観点からより大きな支出を伴う。
【0041】
スロット30fとスロット30gが円周方向に重なり合っている結果として、半径方向弾性曲げストリップ部31が、半径方向弾性材部28に、より具体的には、円形リング形状の周壁42に形成される。半径方向弾性曲げストリップ部31の数は、スロットの数及び重なり領域の数に依存する。図示されている例示の実施形態では、半径方向弾性材部28は、それぞれ8個存在する相互に重なり合うスロット30f及びスロット30gの結果として、合計16個の半径方向弾性曲げストリップ部31を有している。
【0042】
機能の観点から、第5の実施形態は、上述した最初の四つの実施形態と全く同様の挙動を示す。
【0043】
図21から
図24は、トルクセンサ10の第6の実施形態を示しており、第6の実施形態の構造は、上で説明した第5の実施形態と類似している。しかしながら、第5の実施形態と異なり、環状の外側フランジ32が円形リング形状の周壁42から半径方向内側に延びており、それにより、第2の力導入点34も第5の実施形態よりも半径方向内側に設けられている一方、その他の点では、トルクセンサの寸法は同じままとなっている。半径方向弾性材部28の構造は、第5の実施形態の構造に対応している。
【0044】
図25から
図28は、トルクセンサ10の第7の実施形態を示しており、第7の実施形態の構造は基本的に第4の実施形態と同様になっている。第7の実施形態の本体12は、第4の実施形態の本体12と同様に、ディスク形状であり単一体であるが、その外形は八角形状となっている。よって、外側フランジ32は環状ではあるが、円形リング形状ではない。これは、半径方向弾性材部28及び半径方向に剛性を有したデカップリング領域27の形状にも当てはまる。
【0045】
また、半径方向弾性材部28は、これまで説明した実施形態とは構造でも僅かに異なっている。第4の実施形態と一致して、例えば、半径方向内側のグループのスロットと半径方向外側のグループのスロットとがあり、これらは、第7の実施形態では、8個の半径方向内側のスロット30hと8個の半径方向外側のスロット30iから構成されているが、スロット30h及びスロット30iはいずれも円形リング片形状ではない。その代わりに、半径方向内側のスロット30hの各々は屈曲部(曲がり角)で互いに接続されている二つの直線部分から構成されており、屈曲点はそれぞれ八角形の角部から本体12の中心まで延びる半径線分上に設けられる。半径方向外側のスロット30iの各々は、完全に直線的に延びており、八角形の角部から本体12の中心まで延びる半径線分の何れも横切らない。図示されているように、スロット30h及びスロット30iは周方向に重なり合っており、それによって、ここでは合計16個の曲げストリップ部31である半径方向弾性曲げストリップ部31が重なり領域に形成されている。
【0046】
スロット30h,30iの形状が僅かに異なっているにもかかわらず、それによって半径方向弾性材部28に形成される半径方向弾性曲げストリップ部31の機能は上述した実施形態の半径方向弾性曲げストリップ部31の機能に対応している。よって、同じ利点が得られる。
【0047】
本発明によるトルクセンサ10は図示及び説明された実施形態に限定されるものではないことは分かるであろう。むしろ、半径方向弾性材部28におけるスロットについて、同様に半径方向に所望の弾性(可撓性)を生じさせると同時に周方向に高い剛性を提供するさらに多数の形態が可能である。よって、例えば、第7の実施形態では、屈曲スロットが半径方向外側に配置され且つ直線スロットが内側に配置されることも可能であり、また、半径方向内側のスロットと半径方向外側のスロットの両方が屈曲形態を有することも可能である。さらに、半径方向弾性材部28は、半径方向弾性材部28でタービンの羽根のように延びる一連のスロットを備えることもできる。さらに多くのスロット形態及び可能な組み合わせが本発明の基本的概念から逸脱することなく当業者にとって自明である。
【国際調査報告】