(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-09
(54)【発明の名称】乗客搬送設備用の手すり処理装置
(51)【国際特許分類】
B66B 31/02 20060101AFI20230802BHJP
A61L 2/10 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
B66B31/02 A
A61L2/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023502942
(86)(22)【出願日】2021-06-17
(85)【翻訳文提出日】2023-02-24
(86)【国際出願番号】 EP2021066518
(87)【国際公開番号】W WO2022012856
(87)【国際公開日】2022-01-20
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040729
【氏名又は名称】インベンテイオ・アクテイエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】INVENTIO AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バウアー,ボルフガング
(72)【発明者】
【氏名】ハイダー,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ネスメラク,ボルフガング
【テーマコード(参考)】
3F321
4C058
【Fターム(参考)】
3F321HA23
3F321HA31
4C058AA30
4C058BB06
4C058CC05
4C058DD03
4C058EE23
4C058KK02
4C058KK22
(57)【要約】
本発明は、ハウジング151と、回転軸53を中心に回転可能であるようにハウジング151内に配置された円筒状基体155とを備える手すり処理装置141に関する。清掃フェーシング59が基体の円筒外面57上に配置され、その上に、汚れおよび細菌61を除去する目的で乗客輸送システム1の循環手すり17が案内されることができる。少なくとも1つの放射線源43がハウジング151の内部に配置され、この放射線源が殺菌電磁放射線を放出することができ、放射線源43は、放射線源43を過ぎて連続的に移動する清掃フェーシング59が、基体155が回転するとこの放射線源43の殺菌電磁放射線に曝されるように、基体155と位置合わせされる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのハウジング(51、151)と、回転軸(53)を中心にハウジング(51、151)内に回転可能に配置された円筒状基体(55、155)とを備え、基体の円筒外面(57)上に清掃フェーシング(59)が配置され、この清掃フェーシング(59)上に、エスカレータまたは動く歩道として設計された乗客輸送システム(1)の循環手すり(17)が汚れおよび細菌(61)を除去するために案内されることができる、手すり処理装置(41、141)であって、少なくとも1つの放射線源(43)がハウジング(51、151)の内部に配置され、この放射線源は殺菌電磁放射線を放出することができ、放射線源(43)は、放射線源(43)を通過して連続的に移動する清掃フェーシング(59)が、基体(55、155)が回転すると、この放射線源(43)の殺菌電磁放射線に曝されるように、基体(55、155)と位置合わせされることを特徴とする、手すり処理装置(41、141)。
【請求項2】
ハウジング(51、151)内に少なくとも1つの拭取要素(63、65)があり、拭取要素の拭取エッジ(67)は、清掃フェーシング(59)の清掃チップ(69)と相互作用する、請求項1に記載の手すり処理装置(41、141)。
【請求項3】
拭取要素(65)は可撓性材料で出来ているリップを有し、拭取エッジ(67)はリップに形成されている、請求項2に記載の手すり処理装置(41、141)。
【請求項4】
拭取要素(63)は拭取ブラシを有し、その剛毛チップは拭取エッジ(67)を形成する、請求項2に記載の手すり処理装置(41、141)。
【請求項5】
円筒状基体(55、155)は、その上を案内される手すり(17)の移動によって駆動され、拭取要素(63、65)は、清掃フェーシング(59)の清掃チップ(69)と相互作用し、手すり(17)が移動されると、円筒状基体(55、155)に対して制動効果が生じ、その結果、手すり(17)の手すり表面18とそれに接触する清掃チップ(69)との間に差速が存在する、請求項2~4のいずれか一項に記載の手すり処理装置(41、141)。
【請求項6】
円筒状基体(55、155)はモータ(177)によって駆動可能であり、円筒状基体(55、155)の回転速度は、手すり(17)が移動されるときに手すり(17)の手すり表面(18)とそれに接触する清掃チップ(69)との間に速度差が存在するように手すり(17)の速度に調整される、請求項1~4のいずれか一項に記載の手すり処理装置(41、141)。
【請求項7】
清掃フェーシング(59)は、回転軸(53)に直交して輪郭付けられ、その結果、清掃フェーシング(59)のトレッド輪郭が、案内される手すり(17)の外面輪郭に対応する、請求項1~6のいずれか一項に記載の手すり処理装置(41、141)。
【請求項8】
円筒状基体(55、155)はカップ形状であり、その円筒ジャケット(181)は開口部(183)を有し、清掃フェーシング(59)は、円筒ジャケット(181)の既存の円筒外面(57)に配置され、カップ形状の基体(55、155)の内部(185)は、放射線源(43)または別の放射線源(43)によって、その殺菌電磁放射線が開口部(183)を通って清掃フェーシング(59)まで通過するように照射されることができる、請求項1~7のいずれか一項に記載の手すり処理装置(41、141)。
【請求項9】
汚れ保護部(187)は、少なくとも1つの放射線源(43)のためにハウジング(51、151)内に配置される、請求項1~8のいずれか一項に記載の手すり処理装置(41、141)。
【請求項10】
清掃装置(191)が、少なくとも1つの放射線源(43)のためにハウジング(51、151)内に配置される、請求項1~9のいずれか一項に記載の手すり処理装置(41、141)。
【請求項11】
手すり(17)の移動方向に関して、清掃フェーシング(59)を有する円筒状基体(55、155)の下流に放射線源(43)を有する領域(197、199)が存在し、手すり(17)の手すり表面(18)の少なくとも一部は、放射線源の殺菌電磁放射線によって照射されることができる、請求項1~10のいずれか一項に記載の手すり処理装置(41、141)。
【請求項12】
ハウジング(51、151)は2つの部分に設計され、開いた側面を有する主ハウジング部(149)と、主ハウジング部(149)の開いた側面を覆うカバー(147)とを有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の手すり処理装置(41、141)。
【請求項13】
少なくとも1つの循環手すり(17)を具備する少なくとも1つの欄干(15)を備える、エスカレータまたは動く歩道として設計された乗客輸送システム(1)であって、各循環手すり(17)に対して、請求項1~12のいずれか一項に記載の少なくとも1つの手すり処理装置(41、141)を有することを特徴とする、乗客輸送システム(1)。
【請求項14】
欄干(15)は、手すり(17)の戻り走行が乗客輸送システム(1)の利用者から隠されるように案内される欄干基部(13)を備え、手すり処理装置(41、141)は欄干(15)の欄干基部(13)に設置される、請求項13に記載の乗客輸送システム(1)。
【請求項15】
乗客輸送システム(1)は、手すり(17)を駆動するための駆動モータ(21)と、駆動モータ(21)を制御するための駆動コントローラ(19)とを有し、手すり処理装置(41、141)の少なくとも1つの放射線源(43)は、駆動コントローラ(19)から駆動モータ(21)への速度信号および/または移動方向信号に応じて制御されることを特徴とする、請求項13または14に記載の乗客輸送システム(1)において手すり処理装置(41、141)を制御する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのハウジングと、回転清掃フェーシングと、殺菌電磁放射線を放出することができる放射線源とを備える手すり処理装置、ならびに少なくとも1つの手すり処理装置を備えた乗客輸送システムおよび手すり処理装置を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータまたは動く歩道として設計された乗客輸送システムは、通常、利用者が立つことができる搬送ベルトと同じ速度で移動する循環手すりを有する。これにより、利用者は、移動中に手すりを掴むことができる。利用者が掴むことができる手すりの領域は先行走行と呼ばれ、戻り走行は、通常、乗客輸送システムの利用者から隠され、輸送方向とは反対に戻される。
【0003】
利用者の手が手すりの表面に触れると、バクテリア、胞子、およびウイルスが手すりに付着する。このようにして堆積した病原体は、手すり上で増殖し、後続の利用者に伝播され得る。したがって、このような乗客輸送システムの手すりは、感染症が伝播され得る公共空間内の非衛生的な場所の象徴である。
【0004】
国際公開第2019/164256号は、従来技術による手すり処理装置を示している。この場合、放射線源によって手すりに紫外線が照射される。この殺菌電磁放射線は、これらの細菌のデオキシリボ核酸を破壊し、その結果、この手すり処理装置の出口側から手すりの表面で微生物の著しい減少を検出することができる。しかしながら、手すりに付着した汚れは、バクテリアおよびウイルスを十分に保護し、その結果、細菌およびウイルスは、放射線処理に損傷を受けずに耐えることができる。
【0005】
例えば、特開平08-188369号公報は、回転ブラシによる広範な前清掃および殺菌流体による洗浄システムを提供し、それにより、手すりの清掃された表面をUVランプの放射によって消毒することができ、さらに完全な消毒を可能にする。しかしながら、そのような手すり処理装置は非常に高価であり、特に必要な流体のために、高い運転コストをもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2019/164256号
【特許文献2】特開平08-188369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、簡単な手すり処理装置によって、手すりに付着した病原体を安価かつ安全な方法で無害化することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、少なくとも1つのハウジングと、回転軸線を中心に回転可能であるようにハウジング内に配置された円筒状基体とを備える手すり処理装置によって達成される。清掃フェーシングは、円筒状基体の円筒外面に配置され、この清掃フェーシング上に、エスカレータまたは動く歩道の循環手すりが汚れ粒子を除去するために案内されることができる。さらに、殺菌電磁放射線を放出することができる少なくとも1つの放射線源が、ハウジングの内部に配置される。放射線源は、放射線源を過ぎて連続的に移動する清掃フェーシングが、基体が回転するとこの放射線源の殺菌電磁放射線に曝されるように、基体と位置合わせされる。
【0009】
使用される殺菌電磁放射線は、好ましくは200nm~280nm、特に好ましくは250nm~260nmの波長範囲を有し、例えばUV-C管またはUV-C発光ダイオードによって生成されることができる。清掃フェーシングは、剛毛フェーシング、弾性材料製のラメラフェーシングなどとすることができる。
【0010】
清掃フェーシングは電磁殺菌放射線に連続的に曝されるため、清掃フェーシングに付着したバクテリアおよびウイルスは、その汚染領域が再び手すりと接触する前に死滅する。換言すれば、清掃フェーシングを照射することにより、これらの細菌が、滅菌されていない清掃フェーシングによって、例えば手すりの細かいひび割れや窪みに混入して、エスカレータまたは動く歩道の利用者に伝播されることが防止される。本発明の本主題による消毒された回転清掃フェーシングで手すりを機械的に清掃することにより、手すりの表面から、それに付着しかつ細菌で汚染された汚れが取り除かれ、その結果、全体的な細菌圧力(これらの表面に存在する細菌の量)が低減される。
【0011】
基体の形状に関して、「円筒形」は、単に、それが細長い回転可能に取り付けられた本体であることを意味する。この本体は、好ましくは、回転対称であるように設計されており、それによって、その上で案内される手すりにできるだけ少ない不均衡および振動が引き起こされる。基体は、鋼ローラのように必ずしも剛性である必要はなく、繊維強化プラスチック材料のようなより弾力性のある材料から、またはエラストマーのような可撓性材料からであっても、ハウジング内で容易に回転されることができるという条件で作製されることができる。論理的には、基体を構築し、支持点における寸法剛性や清掃フェーシングの領域におけるより高い弾性特性などの有利な特性を基体に提供するために、異なる材料の複合材も可能である。
【0012】
手すり処理装置のハウジング内には、少なくとも1つの拭取要素が存在することができ、拭取要素の拭取エッジは、清掃フェーシングの清掃チップと相互作用する。これらの清掃チップは、剛毛フェーシングの場合は剛毛チップ、ラメラフェーシングの場合はラメラチップ、清掃フェーシングとして機能する発泡体リングなどの別の材料の場合は手すりと接触する多孔質表面である。このようにして、手すりから除去され、場合によっては清掃フェーシングに付着した汚れは、そこから連続的に除去され、その結果、主に、このようにして機械的に清掃された清掃フェーシングの領域が再び手すりに到達する。
【0013】
一実施形態では、拭取要素は、可撓性材料製のリップまたはラメラを有することができる。拭取エッジは、このリップ上に形成される。その結果、リップと接触する清掃チップは、より低い機械的力に曝され、その結果として耐用年数が増加する。さらに、リップを通過する清掃チップは振動を発生させ、この振動は、清掃フェーシングから汚れを振り落とすことを促すが、可撓性リップに起因して減衰した方法でのみハウジングに伝達される。このようにして、手すり処理装置によって生成される騒音は、動作中に大幅に低減され得る。
【0014】
代替的な実施形態では、拭取要素は拭取ブラシを有することができ、その剛毛チップは拭取エッジを形成する。拭取ブラシの有効な特性は、リップを有する拭取要素の前述の実施形態と実質的に同じである。清掃フェーシングの設計(剛毛の厚さ、剛毛密度、剛毛または剛毛束の配置、ラメラの形状および剛性など)に応じて、リップを有するバージョンまたは拭取ブラシを有するバージョンは、清掃フェーシングをより良好に清掃するので、選択は好ましくは実験的に行われる。
【0015】
手すり処理装置の一実施形態では、円筒状基体は、その上で案内される手すりの移動によって駆動されることができる。しかしながら、十分な清掃効果を達成するために、手すりの表面と清掃フェーシングの清掃チップとの間の速度差が必要とされる。このような速度差は、基体または清掃フェーシングの回転運動が連続的に制動されるが、それを完全に阻止することはないという点で達成されることができる。拭取要素はこの目的に特に適しており、この拭取要素は、手すりが移動されたときに、これが円筒状基体に対する制動効果をもたらし、結果として、手すりの表面とそれと接触する清掃チップとの間に差速が存在するように、清掃フェーシングの清掃チップと相互作用する。
【0016】
あるいは、円筒状基体は、モータによって駆動されることもできる。これにより、手すりが移動されたときに手すりの表面とそれに接触する清掃チップとの間に速度差が生じるように、円筒状基体の回転速度が手すりの速度に好適に調整されることができる。この代替案はまた、基体の回転速度を、基体の上で案内される手すりの速度よりも著しく高くすることができ、その結果、汚れ粒子に作用するより高い遠心力が、清掃フェーシングから汚れを除去するために使用され得るという利点を有する。この代替実施形態では、反対の移動方向も可能である。
【0017】
本発明のさらなる実施形態では、清掃フェーシングは、回転軸線に直交して輪郭付けられることができ、その結果、清掃フェーシングのトレッド輪郭は、その上で案内されるかまたは清掃される手すりの外面輪郭に対応する。その結果、利用者の手のひらが通常置かれる広い主面が清掃されるだけでなく、利用者の指によって通常把持される2つの側面も清掃フェーシングによって到達され、ブラシがかけられる。
【0018】
本発明のさらなる実施形態では、円筒状基体はカップ形状であってもよく、その円筒ジャケットは開口部を有することができる。清掃フェーシングは、円筒ジャケットの既存または残りの円筒外面に配置される。カップ形状の基体の内部はまた、放射線源または別の放射線源によって、その殺菌電磁放射線が開口部を通って清掃フェーシングまで通過するように照射されることができる。本発明のこの発展により、清掃フェーシングは到達されることができ、殺菌電磁放射線によって徹底的に消毒されることもできる。
【0019】
手すり処理装置のさらなる実施形態では、ハウジング内で旋回する汚れが放射線源に直接付着しないように、少なくとも1つの放射線源のための汚れ保護部がハウジング内に配置されることができる。そのような汚れ保護部は、例えば、放射線源の透明カバーまたは放射線源から汚れ粒子を遠ざける任意の種類のガイド本体とすることもできる。汚れ保護部はまた、例えば、電気掃除機と同様の吸引装置とすることができ、これは旋回する汚れ粒子を直接吸引し、したがってそれらがハウジング内に沈降して集まる前に放射線源および円筒状基体の領域からそれらを除去する。
【0020】
手すり処理装置のさらなる実施形態では、少なくとも1つの放射線源のための清掃装置がハウジング内に配置されることができる。これには、放射線源に向けられた圧縮空気ノズル、電気機械的または手動で操作され得るワイパーシステムなど、様々な可能性がある。
【0021】
手すり処理装置のさらなる実施形態では、手すりの移動方向に関して、清掃フェーシングを有する円筒状基体の下流に放射線源を有する領域が存在することができる。それらの殺菌電磁放射線によって、手すりの手すり表面の少なくとも一部が照射されることができる。このようにして処理された手すりは、手すり処理装置が細菌をほとんど除去する。可能な輸送方向または移動方向の両方が乗客輸送システムに提供される場合、手すり表面を照射するための放射線源を有する2つの領域が存在することもでき、この場合、円筒状基体は2つの領域の間に配置される。エネルギーを節約するために、例えば、2つの領域は、円筒状基体の後に、したがって下流に配置された領域のみが殺菌電磁放射線を放出するように、移動方向に応じて制御されることができる。
【0022】
清掃フェーシングを有する回転円筒状基体は、除去された汚れ粒子の周りを旋回し得るので、手すり処理装置は、好ましくは、入口開口および出口開口を介して手すりが通過する実質的に閉じたハウジングを有する。手すりを交換時により容易に実施できるようにするために、ハウジングは、好ましくは2つの部分に設計され、U字形の主ハウジング部と、主ハウジング部の開放側にまたがるカバーとを有する。
【0023】
エスカレータまたは動く歩道として設計された乗客輸送システムは、利用者が移動中に掴むことができる、少なくとも1つの循環手すりを備える少なくとも1つの欄干を有する。通常、乗客輸送システムの搬送ベルトの両側に延在する2つの欄干がある。本発明による手すり処理装置は、循環手すりごとに少なくとも1つ設けられることが好ましい。
【0024】
ほとんどの場合、欄干は、手すりの戻り走行が乗客輸送システムの利用者から隠される欄干基部を備える。したがって、欄干基部は、欄干の欄干基部の内部に、手すり処理装置も利用者の視界から隠されて設置する可能性を提供する。
【0025】
知られているように、動く歩道またはエスカレータとして設計された乗客輸送システムは、手すりを駆動するための駆動モータと、駆動モータを制御するための駆動コントローラとを有する。上述した手すり処理装置の実施形態の変形例の少なくとも1つの放射線源は、駆動コントローラから駆動モータへの速度信号および/または移動方向信号の関数として制御することができる。結果として、例えば、手すりが動いているときに、少なくとも1つの放射線源が殺菌電磁放射線のみを放出することが達成され得る。当然ながら、円筒状基体の回転速度および/または回転方向は、基体がモータによって駆動される場合、これらの信号の関数として制御されることもできる。
【0026】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照して以下に説明され、図面も説明も本発明を限定するものとして解釈されることを意図するものではない。また、同一要素である、または同一効果を奏する要素については、同一符号を用いる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】手すり処理装置を有するエスカレータとして設計された乗客輸送システムの略図である。
【
図2】
図1の乗客輸送システムを通る線A-Aに沿った断面図である。
【
図3】
図1および
図2に示された手すり処理装置の第1の実施形態における正面図である。
【
図4】
図3に示された手すり処理装置を通る線B-Bに沿った断面図である。
【
図5】
図1および
図2に示された手すり処理装置の第2の実施形態における正面図である。
【
図6】
図5に示された手すり処理装置を通る線C-Cに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、骨組として設計された支持構造11を有する乗客輸送システム1の略図を示している。エスカレータとして設計された乗客輸送システム1は、建物5の下階E1を上階E2に接続する。乗客輸送システム1は、アクセス領域3を介して利用者によって繰り返し出入りされることができる。循環ステップベルト9が支持構造11内に配置され、循環ステップベルト9は、上階E2および下階E1で偏向され、したがって先行部分および戻り部分を有する。より良い概要のために、戻り部分の詳細な表現、ならびにフレーム、ガイドレール、およびレールブロックの詳細な表現は省略されている。
【0029】
乗客輸送システム1はまた、ステップベルト9の各長手方向側面に沿って延在する2つの欄干15を有し、
図1では、観察面において前景に配置された欄干15のみが見える。手すり17は、各欄干15上を循環するように配置され、その戻り走行は欄干基部13内に案内される。この欄干基部13は、欄干15を支持構造11に接続する。言い換えると、手すり17の戻り走行は、乗客輸送システム1の利用者から隠され、欄干基部13内に案内される。
【0030】
ステップベルト9および手すり17は、乗客輸送システム1の駆動ユニット7によって駆動されることができ、この駆動ユニット7は駆動モータ21を有する。手すり17およびステップベルト9の移動方向ならびにそれらの速度は、制御信号によって、例えば周波数変換器(図示せず)を介して駆動モータ21を制御するコントローラ19によって指定される。
【0031】
さらに、乗客輸送システム1は、循環手すり17ごとに少なくとも1つの手すり処理装置41、141を有する。これは、欄干15の欄干基部13にも設置され、したがって乗客輸送システム1の利用者から隠される。
【0032】
図2は、
図1による乗客輸送システム1の線A-Aに沿った断面を示している。この断面では、ステップベルト9の先行部分および戻り部分の両方が見える。ステップベルト9が、支持構造11内のガイドレール23上を案内される。欄干15および欄干基部13が、乗客輸送システム1が意図したように設置されたときに上部に配置されるステップベルト9の先行部分の左右に配置される。クランプ装置29が欄干基部13内に設けられており、個々の欄干パネル33のためのクランプレセプタクルとして機能するクラディングパネル25、27によって隠されている。この場合、欄干パネル33は、クランプ装置29の少なくとも一方において、その下端部で静止した状態でクランプされる。クランプ装置29は、支持構造11上の欄干基部13内に乗客輸送システム1の長手方向延長部に沿って配置される。手すり処理装置41、141が、欄干15上に周回配置された手すり17ごとに、クランプ装置29の下方に設けられている。
【0033】
手すり17の戻り走行も欄干基部13内に案内されるため、手すり処理装置41、141を欄干基部13内に配置することが有利であり、この場合、設計に応じて、手すり処理装置41、141の上または中を通って戻り走行を案内することが有利である。これにより、乗客輸送システム1の利用者が手すり処理装置41、141に接触できないようにすることができる。
【0034】
図3は、
図1および
図2に示された手すり処理装置41の第1の実施形態を正面図で示している。
図4は、
図3に示された手すり処理装置41を通る線B-Bに沿った断面図を示している。以下では、
図3と
図4の両方が併せて説明される。
【0035】
この実施形態は、ハウジング51と、回転軸53を中心に回転可能であるようにハウジング51内に配置された円筒状基体55とを備える。清掃フェーシング59が、基体55の円筒外面57上に配置され、この清掃フェーシング59上に手すり17が案内されることができ、その結果、汚れ粒子61がその手すり表面18から除去されることができる。手すり17の移動は、清掃フェーシング59と手すり表面18との間の摩擦の結果として、円筒状基体55を駆動する。
【0036】
さらに、殺菌電磁放射線を放出することができる2つの放射線源43が、ハウジング51の内部に配置される。この目的のために、例えば200nm~280nmの波長範囲の紫外線、いわゆるUV-C光を放出することができる蛍光管または発光ダイオードが好ましく使用されるが、殺菌放射線を放出することができる他の放射線源43も可能である。論理的には、十分な照射のために、示されているUV-C蛍光管のうちの1つと同じ幅のハウジング51に対して消毒効果を得るために、重なり合う光円錐を有するUV-C LEDの列が必要である。
【0037】
2つの放射線源43は、放射線源43を過ぎて連続的に移動する清掃フェーシング59が、基体55が回転すると、この放射線源43の殺菌電磁放射線に曝されるように、基体55と位置合わせされる。これにより、清掃フェーシング59と、清掃フェーシング59によって手すりから除去された汚れとが消毒され、それにより、手すり17は、清掃フェーシング59の消毒された領域を通って連続的に清掃され、バクテリアおよびウイルスは、回転する清掃フェーシング59によって手すり表面18に再付着しない。
【0038】
さらに、3つの拭取要素63、65がハウジング51内に配置され、その拭取エッジ67は、清掃フェーシング59の清掃チップ69と相互作用する。結果として、例えば、清掃フェーシング59の剛毛またはラメラは局所的に離れて広がり、その結果、汚れ61は、剛毛またはラメラの間の隙間からより良好に落ちることができ、他方、電磁放射は、剛毛またはラメラの間をより深く貫通することができる。さらに、拭取要素63、65は、円筒状基体55の回転速度を制動し、その結果、手すり表面18と清掃チップ69との間に速度差が生じる。この事実は、手すり17の手すり速度および円筒状基体55の回転速度に対応する、等しくない長さの矢印71、72によって、
図4に象徴的に示されている。
【0039】
拭取要素65は、可撓性材料製のリップを有することができ、拭取エッジ67はリップ上に形成される。しかしながら、拭取要素63はまた、拭取ブラシとすることもでき、その剛毛チップは拭取エッジ67を形成する。原則として、手すり処理装置41のすべての拭取要素63、65は、同じ設計を有することができる。
図4に明確に見られるように、拭取要素63、65の2つの設計変形形態の組み合わせが同じ装置で使用されることもできる。
【0040】
ハウジング51内に集められた汚れ粒子61を除去できるようにするために、汚れ除去装置75が設けられることができる。本実施形態では、これは、サービススタッフによって時々空にされることができる単純な引き出しである。もちろん、連続的または定期的に汚れ61を自動的に吸引することを可能にするために、吸引装置用の接続部が、汚れ除去装置75としてハウジング55上に存在することもできる。
【0041】
図5は、
図1および
図2に示された手すり処理装置141の第2の実施形態としての正面図である。
図6は、
図5に示された手すり処理装置141を通る線C-Cに沿った断面図を示している。以下では、
図5と
図6の両方が併せて説明される。
【0042】
第2の実施形態も、第1の実施形態と同様に、回転軸53を中心に回転可能にハウジング151やその内部に配置された円筒状基体155など、同じ効果を有する複数の構成要素を有する。拭取要素65および殺菌性の電磁放射線、例えばUV-C光のための放射線源43もハウジング151内に配置される。
【0043】
第1の実施形態との大きな相違点の一つは、円筒状基体155がモータ177で駆動されることができる点である。この場合、手すりが移動されたときに、手すり17の表面18と、それに接触する清掃チップ69との間に速度差が生じるように、円筒状基体155の回転速度が手すり17の速度に好適に調整される。必要に応じて、実線または破線で示される矢印71、72、73、74によって示されるように、手すり表面18とは反対の基体155の回転方向も選択することができる。
【0044】
もう一つの相違点は、円筒状基体155がカップ形状であり、その円筒ジャケット181が開口部183を有することである。清掃フェーシング59、本実施形態では剛毛は、本円筒ジャケット181の円筒外面57に配置される。カップ形状の基体155の内部185は、その殺菌電磁放射線が開口部183を通って清掃フェーシング59に到達するように、内部に配置された放射線源43によって照射される。
【0045】
放射線源43の汚れ保護部187は、重力によって放射線源43の上側に汚れ61が集まることがないように、ハウジング151内に配置される。これには、放射線源43に向けられた反射面189を設けることもでき、その結果、反射面189に当たる放射線は、基体155の内部185の他の領域に反射される。
【0046】
図5に示すように、清掃装置191は、放射線源43の少なくとも一方のために存在することもできる。これは、例えば、作動リンケージ195によって放射線源43上を移動されることができるブラシリング193として設計されている。清掃装置191および/または汚れ保護部187は、好ましくは、放射線源43の各々についてハウジング151内に配置される。
【0047】
図6から分かるように、手すり処理装置141の第2の実施形態は、清掃フェーシング59を有する円筒状基体155の下流に位置する、放射線源43を有する領域197、199を有する。この下流領域197、199は、手すり17の移動方向に調整され、すなわち、その放射線源43からの殺菌電磁放射線が、清掃フェーシング59によって清掃された手すり17を照射するように配置される。乗客輸送システム1が両方の搬送方向で動作されることができる場合、破線で示すように、そのような下流領域197、199はまた、基体155の両側に存在することができる。例えば、放射線源43は、乗客輸送システム1の搬送方向に応じて制御されることができる。
【0048】
環境の影響から清掃フェーシング59を保護するために、また、必要に応じて、安全上の理由から下流領域197、199の放射線源43を覆うために、ハウジング151は、2つの部分に設計されることができ、開いた側面を有する主ハウジング部149と、主ハウジング部149の開いた側面にまたがるカバー147とを有することができる。
【0049】
上述した手すり処理装置41、141の2つの実施形態では、清掃フェーシング59はまた、回転軸53に直交して輪郭付けられ、その結果、清掃フェーシング49のトレッド輪郭は、案内される手すり17の外面輪郭に対応する。その結果、手すり17の側面16も清掃および消毒されることができる。
【0050】
図1~
図6は、エスカレータとして設計された乗客輸送システム1に基づいて本発明の相異なる態様を示しており、これは、互いに垂直方向に離間したフロアE1、E2を接続するように意図されているが、記載された手すり処理装置41、141は、斜めに配置された動く歩道または水平に配置された動く歩道にも適用されることは明らかである。さらに、下流領域197、199はそれぞれ複数の放射線源43を有し、相異なる平面に配置されることができ、その結果、乗客輸送システムの利用者が触れることができる手すり表面18全体が、放射線源によって直接照射されることができる。さらに、モータ177の代わりに、手すり17の移動を検出し、ステップダウンギアまたはステップアップギアを介して基体155を駆動することができる摩擦ホイールを使用することも可能である。
【0051】
最後に、「備える(comprising)」、「有する(having)」などの用語は、他の要素またはステップを排除せず、「1つの(a)」または「1つの(an)」などの用語は、複数性を排除しないことに留意されたい。さらに、上記の実施形態のうちの1つを参照して説明された特徴またはステップはまた、上記の他の実施形態の他の特徴またはステップと組み合わせて使用されてもよいことに留意されたい。請求項における参照符号は、限定的であると見なされるべきではない。
【国際調査報告】