(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-09
(54)【発明の名称】圧力センサ用のガラスウエハおよびガラスエレメント
(51)【国際特許分類】
C03C 15/00 20060101AFI20230802BHJP
C03C 3/091 20060101ALI20230802BHJP
C03C 3/093 20060101ALI20230802BHJP
C03C 23/00 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
C03C15/00 Z
C03C3/091
C03C3/093
C03C23/00 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023502968
(86)(22)【出願日】2021-07-15
(85)【翻訳文提出日】2023-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2021069695
(87)【国際公開番号】W WO2022013334
(87)【国際公開日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】102020118939.7
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ ポイヒャート
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ブレツィンガー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ウッツ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ブライトバッハ
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ヨッツ
(72)【発明者】
【氏名】ゼーレン リープシュ
【テーマコード(参考)】
4G059
4G062
【Fターム(参考)】
4G059AA01
4G059AB11
4G059AC01
4G059BB04
4G062AA01
4G062BB01
4G062DA06
4G062DA07
4G062DB03
4G062DB04
4G062DC03
4G062DC04
4G062DD01
4G062DE01
4G062DE02
4G062DE03
4G062DE04
4G062DF01
4G062EA01
4G062EB03
4G062EB04
4G062EC03
4G062EC04
4G062ED01
4G062ED02
4G062ED03
4G062EE01
4G062EE02
4G062EE03
4G062EG03
4G062FA01
4G062FB02
4G062FB03
4G062FC01
4G062FD01
4G062FE01
4G062FF01
4G062FG01
4G062FH01
4G062FJ01
4G062FK01
4G062FL01
4G062GA01
4G062GA10
4G062GB01
4G062GC01
4G062GD01
4G062GE01
4G062HH01
4G062HH03
4G062HH05
4G062HH07
4G062HH09
4G062HH11
4G062HH13
4G062HH15
4G062HH17
4G062HH20
4G062JJ01
4G062JJ03
4G062JJ05
4G062JJ07
4G062JJ10
4G062KK01
4G062KK03
4G062KK05
4G062KK07
4G062KK10
4G062MM17
4G062MM21
4G062NN34
(57)【要約】
本発明は総じて、圧力センサに使用するガラスエレメントを製造するためのガラスウエハ、圧力センサに使用するガラスエレメント、ならびにかかるガラスエレメントおよびガラスウエハの製造方法に関する。さらなる態様は、かかるガラスエレメントを備えた、またはかかるガラスエレメントによって得ることができる、圧力センサに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力センサ(6)、特にピエゾ抵抗式または静電容量式圧力センサ、好ましくはピエゾ抵抗式圧力センサに使用するフレーム状ガラスエレメント(100)を製造するためのガラスウエハ(10)であって、前記ガラスウエハ(10)は、板状ガラス基材(1)と、前記ガラス基材(1)の一方の表面(11)から前記ガラス基材(1)の他方の表面(12)に延びる少なくとも1つの開口部(2)とを備え、前記開口部(2)は、断面領域(3,3a)を有する断面を有し、前記断面領域(3,3a)は、直線部分(31)によって画定されており、前記直線部分(31)は有利には、少なくとも10μm、好ましくは少なくとも20μm、またはさらには特に好ましくは少なくとも100μmの最小長さを有し、前記開口部(2)は側面(4)を有し、前記側面(4)は表面(41)を有し、前記表面(41)は有利には、歪度Ssk
【数1】
が0でないことを特徴とし、前記歪度Sskの値は、有利には少なくとも0.001であり、特に好ましくは最大で5であり、有利には
前記歪度の値は、少なくとも0.002、より好ましくは少なくとも0.003、特に好ましくは少なくとも0.004、非常に特に好ましくは少なくとも0.01であり、かつ/または
前記歪度の値は、最大で2.0、特に好ましくは最大で1.5であり、
特に好ましくは、前記歪度は、前記側面(4)の平坦領域、有利には前記直線部分(31)に対応する領域(431)において求められ、
ここで、S
qは、表面の二乗平均粗さ、つまりRMS値を表し、Aは、前記歪度を求める積分領域の面積を表し、Z(x,y)は、座標x,yにおける表面プロファイルのそれぞれの高さ値を表し、前記高さ値は、前記表面プロファイルの前記高さ値の算術平均値を基準として示されるものであり、前記表面プロファイルのある点が前記平均値より高ければ、対応する前記値Z(x,y)は正となり、前記点が前記平均値より低ければ、対応する前記値Z(x,y)は負となる、ガラスウエハ(10)。
【請求項2】
前記断面領域(3,3a)は、少なくとも2つの直線部分(31)によって画定されており、前記直線部分(31)は、少なくとも10μm、好ましくは少なくとも20μm、特に好ましくは少なくとも50μmでかつ有利には最大で1000μm、好ましくは最大で500μm、特に好ましくは最大で250μm、より好ましくは最大で150μm、非常に特に好ましくは最大で130μm、最も好ましくは最大で100μmの曲率半径で角をなしている、請求項1記載のガラスウエハ(10)。
【請求項3】
前記ガラス基材(1)は、少なくとも50重量%のSiO
2、好ましくは少なくとも55重量%のSiO
2、特に好ましくは少なくとも70重量%のSiO
2、非常に特に好ましくは少なくとも78重量%のSiO
2を有するガラスを含み、前記ガラスのSiO
2含有量は、有利には最大で85重量%のSiO
2、好ましくは最大で83重量%のSiO
2に制限されている、請求項1または2記載のガラスウエハ(10)。
【請求項4】
前記ガラス基材(1)は、少なくとも1.5重量%のB
2O
3、好ましくは少なくとも2.0重量%のB
2O
3、特に好ましくは少なくとも2.5重量%のB
2O
3、非常に特に好ましくは少なくとも5重量%のB
2O
3を有するガラスを含み、前記ガラスのB
2O
3含有量は、有利には最大で15重量%に制限されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のガラスウエハ(10)。
【請求項5】
前記ガラス基材(1)は、少なくとも2重量%のAl
2O
3を有するガラスを含み、前記ガラスのAl
2O
3含有量は、有利には最大で25重量%に制限されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のガラスウエハ(10)。
【請求項6】
前記断面領域(3,3a)は、少なくとも0.04mm
2でかつ最大で2.7mm
2の平均面積を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載のガラスウエハ(10)。
【請求項7】
前記歪度は0未満である、請求項1から6までのいずれか1項記載のガラスウエハ(10)。
【請求項8】
前記ガラスウエハ(10)は、複数の開口部(2)を備え、前記開口部(2)間のウェブ幅は、少なくとも0.3mm、好ましくは少なくとも0.5mmでかつ有利には最大で7mm、好ましくは最大で5mmである、請求項1から7までのいずれか1項記載のガラスウエハ(10)。
【請求項9】
前記開口部(2)と前記ガラスウエハ(10)の総面積との比率は、0.1%~12%、好ましくは0.2%~10%である、請求項1から8までのいずれか1項記載のガラスウエハ(10)。
【請求項10】
前記ガラス基材(1)の厚さは、少なくとも200μm、好ましくは少なくとも300μmでかつ最大で3500μm、好ましくは最大で3000μm、特に好ましくは最大で2000μm、非常に特に好ましくは最大で180μm、最良の場合には最大で1000μmであり、そのため、前記ガラス基材(1)の厚さと前記開口部の平均横寸法との比率は、少なくとも0.33でかつ最大で3である、請求項1から9までのいずれか1項記載のガラスウエハ(10)。
【請求項11】
前記ガラスウエハ(10)は、10μm未満、好ましくは5μm未満、特に好ましくは2μm未満、非常に特に好ましくは1μm未満の厚さ変動を有する、請求項1から10までのいずれか1項記載のガラスウエハ(10)。
【請求項12】
前記開口部(2)の前記側面(4)は、傾斜角を有し、前記傾斜角は、有利には最大で2°であり、ここで前記傾斜角とは、前記ガラスウエハ(10)の前記表面(11,12)と90°の角をなす理想的には直立した側面(4)からのずれである、請求項1から11までのいずれか1項記載のガラスウエハ(10)。
【請求項13】
シリコンダイアフラム(61,62)の形状に合わせてその下方にある前記開口部(2)が形成されているため、前記シリコンダイアフラム(61,62)のアスペクト比が前記開口部(2)のアスペクト比と等しいという点で、前記シリコンダイアフラム(61,62)の形状は前記開口部(2)の形状に対応している、請求項1から12までのいずれか1項記載のガラスウエハ(10)。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項記載のガラスウエハ(10)の部分の分離により製造可能であるガラスエレメント(100)であって、前記ガラスエレメント(100)は、開口部(2)を備えたフレーム状エレメントであり、前記開口部(2)は、断面領域(3,3a)を有する断面を有し、前記断面領域(3,3a)は、直線部分(31)によって画定されており、前記直線部分(31)は有利には、少なくとも10μm、好ましくは少なくとも20μm、またはさらには特に好ましくは少なくとも100μmの最小長さを有し、前記開口部(2)は側面(4)を有し、前記側面(4)は表面(41)を有し、前記表面(41)は有利には、歪度Ssk
【数2】
が0でないことを特徴とし、前記歪度Sskの値は、有利には少なくとも0.001であり、特に好ましくは最大で5であり、有利には
前記歪度の値は、少なくとも0.002、より好ましくは少なくとも0.003、特に好ましくは少なくとも0.004、非常に特に好ましくは少なくとも0.01であり、かつ/または
前記歪度の値は、最大で2.0、特に好ましくは最大で1.5であり、
ここで、S
qは、表面の二乗平均粗さ、つまりRMS値を表し、Aは、前記歪度を求める積分領域の面積を表し、Z(x,y)は、座標x,yにおける表面プロファイルのそれぞれの高さ値を表し、前記高さ値は、前記表面プロファイルの前記高さ値の算術平均値を基準として示されるものであり、前記表面プロファイルのある点が前記平均値より高ければ、対応する前記値Z(x,y)は正となり、前記点が前記平均値より低ければ、対応する前記値Z(x,y)は負となる、ガラスエレメント(100)。
【請求項15】
少なくとも1つの開口部(2)を備えたガラスウエハ(10)またはガラスエレメント(1)、特に請求項1から13までのいずれか1項記載のガラスウエハ(10)または請求項14記載のガラスエレメントの製造方法であって、前記方法は、
- 板状ガラス基材(1)を提供するステップと、
- 前記板状ガラス基材(1)の表面(11,12)のうちの一方に超短パルスレーザ(8)のレーザ光(80)を照射するステップであって、前記レーザ光(80)が集光光学系(81)により前記板状ガラス基材(1)内に細長い焦点を形成することで、前記レーザ光(80)の入射エネルギーによって前記板状ガラス基材(1)の体積内に1本のフィラメント状損傷(70)を生成し、前記フィラメント状損傷(70)は、その長手方向が前記板状ガラス基材(1)の前記表面(11,12)に直交しているものとし、1本のフィラメント状損傷(70)を生成するために、前記超短パルスレーザ(8)により、1パルス、または連続する少なくとも2つのレーザパルスを有するパルスパケットを照射するステップと、
- 前記レーザ光の入射点(82)を前記板状ガラス基材(1)上で所定の閉じた線(71)に沿って誘導することにより、前記板状ガラス基材(1)において所定の線上に隣り合う複数のフィラメント状損傷(70)を得るステップであって、前記フィラメント(71)は有利には、前記板状ガラス基材(1)の一方の表面(11,12)から他方の表面(11,12)まで延びているものとするステップと、
- 前記板状ガラス基材(1)のエッチングを、少なくとも前記板状ガラス基材(1)にフィラメント状損傷(70)が形成されている領域において液体エッチング媒体で行うステップであって、前記フィラメント状損傷(70)を広げてチャネルを形成し、エッチングにより前記チャネルの直径を広げて、各チャネル間に位置する前記板状ガラス基材(1)のガラス状材料を除去し、その結果、各チャネルが一体化して、断面領域(3)を備えた断面を有する開口部(2)を形成し、その際、前記断面領域(3)は、少なくとも1つの直線(31)によって画定されており、前記開口部(2)は側面(4)を有し、前記側面(4)は表面(41)を有し、前記表面(41)は有利には、歪度Ssk
【数3】
が0でないことを特徴とし、前記歪度Sskの値は、有利には少なくとも0.001であり、特に好ましくは最大で5であり、有利には
前記歪度の値は、少なくとも0.002、より好ましくは少なくとも0.003、特に好ましくは少なくとも0.004、非常に特に好ましくは少なくとも0.01であり、かつ/または
前記歪度の値は、最大で2.0、特に好ましくは最大で1.5であるものとするステップと、
- 任意に、前記ガラス基材(1)を個片化してガラスエレメント(100)を得るステップと
を含み、
ここで、S
qは、表面の二乗平均粗さ、つまりRMS値を表し、Aは、前記歪度を求める積分領域の面積を表し、Z(x,y)は、座標x,yにおける表面プロファイルのそれぞれの高さ値を表し、前記高さ値は、前記表面プロファイルの前記高さ値の算術平均値を基準として示されるものであり、前記表面プロファイルのある点が前記平均値より高ければ、対応する前記値Z(x,y)は正となり、前記点が前記平均値より低ければ、対応する前記値Z(x,y)は負となる、方法。
【請求項16】
以下の特徴:
- 前記板状ガラス基材(1)の前記ガラス状材料を、毎時5μm未満の除去速度で除去する、および/または
- エッチング時間は、少なくとも12時間である、および/または
- 前記板状ガラス基材(1)の前記少なくとも1つの表面(11,12)上の前記レーザ光の2つの入射点間の空間距離は、最大で6μm、有利には最大で4.5μmである、および/または
- 前記フィラメント状損傷を導入するためのバーストのパルス数は、最大で2または少なくとも7である、および/または
- 前記板状ガラス基材(1)の前記少なくとも1つの表面(11,12)上の前記レーザ光の2つの入射点間の空間距離は、1μm~15μmであって、前記レーザのパルス持続時間は、0.5ps~2psの範囲にある、
- 少なくとも1つの表面(11,12)を機械的に研磨する
のうちの少なくとも1つを特徴とする、請求項15記載の方法。
【請求項17】
請求項15または16記載の方法で製造されたまたは製造可能である、ガラスウエハ(10)またはガラスエレメント(100)。
【請求項18】
請求項14記載のガラスエレメント(100)を少なくとも1つ備えた、圧力センサ(6)、特にピエゾ抵抗式または静電容量式圧力センサ。
【請求項19】
前記ガラスエレメント(1)の前記開口部(2)において、前記開口部(2)の前記側面(4)は、傾斜角を有し、前記傾斜角は、有利には最大で2°であり、ここで前記傾斜角とは、前記ガラスウエハ(10)の前記表面(11,12)と90°の角をなす理想的には直立した側面(4)からのずれであり、
前記圧力センサ(6)は、シリコンダイアフラム(61,62)を備え、
前記開口部(2)は、前記シリコンダイアフラム(61,62)の方向に先細状である断面領域(3,3a)を有する断面を有し、それにより有利には、前記圧力センサ(6)が備えている前記シリコンダイアフラム(61,62)の少なくとも1つの点(A,B)で最大圧力に達するまでの時間を、前記開口部(2)の前記断面領域(3)が一定であるかまたは広がっている場合に比べて有利には少なくとも30%、好ましくはさらには少なくとも40%短縮することが可能であるか、
または
前記開口部(2)は、前記シリコンダイアフラム(61,62)の方向に広がった断面領域(3,3a)を有する断面を有し、それにより有利には、前記圧力センサ(6)の感度を、前記開口部(2)の前記断面領域(3)が一定であるかまたは広がっている圧力センサ(6)に比べて少なくとも5%、有利には少なくとも10%高めることが可能である、請求項18記載の圧力センサ(6)。
【請求項20】
以下の特徴:
- 前記シリコンダイアフラム(61)のキャビティ(600)は、断面領域(603)を有し、前記ガラスエレメント(100)の前記断面領域(3,3a)に対する前記キャビティ(600)の前記断面領域(603)の比は、10未満、有利には5未満である、
- 前記シリコンダイアフラム(61)は、前記ガラスエレメント(100)に陽極接合されている
のうちの少なくとも1つを特徴とする、請求項18または19記載の圧力センサ(6)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は総じて、圧力センサ、例えばピエゾ抵抗式または静電容量式圧力センサ、好ましくはピエゾ抵抗式圧力センサに使用するガラスエレメントを製造するためのガラスウエハ、圧力センサに使用するガラスエレメント、ならびにかかるガラスエレメントおよびガラスウエハの製造方法に関する。さらなる態様は、かかるガラスエレメントを備えた、またはかかるガラスエレメントによって得ることができる、圧力センサに関する。
【0002】
発明の背景
マイクロエレクトロメカニカル(すなわちMEMS)圧力センサは、圧力による弾性変形が可能なシリコンの薄いダイアフラムを備えている。このシリコンダイアフラムは、通常、絶縁体やシリコンなどの半導体材料の台座の上に施与されている。台座は、気体や液体などの流体が圧力センサの測定キャビティに入ることができる開口部を備えている。ここで、ダイアフラムには両面から圧力がかかり、片面には基準圧力が、またダイアフラムの面のうち測定キャビティに向いている方には可変圧力がかかり、基準圧力は、固定または可変とすることができる。ダイアフラムの両面の圧力が互いに異なると、ダイアフラムは変形する。ダイアフラムには、変形すると抵抗値が変化する測定用抵抗(いわゆるピエゾ抵抗)が組み込まれている。これらは、いわゆるホイートストンブリッジ回路の形で電気的に配置されている。ダイアフラムが変形すると、ブリッジ回路の電圧が変化する。この測定可能なブリッジ電圧の変化は、圧力差にほぼ比例する。
【0003】
また、圧力差を容量的に測定することも可能である。この場合、シリコンに抵抗が組み込まれておらず、容量を測定するためのマイクロメカニカル構造、つまりコンデンサの機能が組み込まれている。
【0004】
このような圧力センサの台座材としては、例えば、ガラスなどの絶縁材料やシリコンなどの半導体材料が使用できる。部品の小型化のために、可能であれば厚さが1mm未満、例えば200μm~900μmの範囲、特に例えば800μmまたは400μmの薄い台座エレメントが使用される。しかし、MEMS部品と支持体材料との熱的結合を最適にするために、より厚い台座が必要となる場合もある。これらは、厚さが最大で3.5mmになることがある。
【0005】
台座材に設けられる開口部の詳細な構成は可変である。一般的に、これらの開口部は円形の断面を有するが、断面開口部のサイズは台座材の厚さによって異なり得る。例えば、断面開口部が円錐台形状を有し、すなわち、円形の断面形状において開口部の壁が互いに傾斜していることが可能である。また、角錐台様の形状の開口部も知られている。
【0006】
特開昭57-128074号公報には、特定の結晶方位のシリコン単結晶から台座材を形成した圧力センサが記載されている。台座の開口部は、単結晶の異方性エッチングにより得られる。単結晶台座材の正確な配向によって、各種幾何学的形状の開口部を得ることが可能であり、断面が円形の開口部に加えて、角形の断面を有する開口部も可能である。
【0007】
米国特許出願公開第2011/0000304号明細書には、ガラス台座を備えた圧力センサが記載されており、ガラス台座の開口部は、シリコンダイアフラムの方向にある開口部の直径が、金属台座の方に向いている開口部の直径よりも大きくなるような形態の、異なる直径を有する。ガラス材料において異なる直径を生じさせる方法は記載されていない。
【0008】
米国特許出願公開第2006/0288793号明細書には、圧力伝達ゲルを含む圧力センサが記載されており、圧力センサに囲まれたガラス台座の厚さとガラス台座に設けられた開口部との間に所定の比率が存在する。これは、開口部の直径を十分に確保すると同時に、ガラス台座の厚さをごく小さくすることで、特に温度変化によるゲルの膨張で生じ得るゲルによるシリコンダイアフラムの変形を防ぐ役割を果たす。
【0009】
米国特許出願公開第2995/0172724号明細書には、ガラス台座を備えた圧力センサが記載されている。ガラス台座は、ガラス台座の厚さに応じてサイズが異なる開口部を備えている。例えば、開口部は、円錐台や角錐台の形状を有することができる。ここで、ガラス台座の、圧力センサダイアフラムとは反対側の方は、ガラス台座の、シリコンダイアフラムに向くように配置された方の開口部よりサイズが小さい。この理由は、こうすることで、測定キャビティに不純物が侵入して圧力測定の精度が低下してしまうのを防ぐまたは少なくとも最小限に抑えるためである。開口部は、例えばUSSL(超音波振動ラッピング)によりガラス台座に設けることができる。
【0010】
特開平09-126924号公報にも、ガラス台座の厚さに応じてガラス台座の開口部のサイズが異なることが記載されている。この場合、開口部はエッチングプロセスにより形成される。開口部のサイズは、ガラス台座の、シリコンダイアフラムに向いている方よりも、ガラス台座の、シリコンダイアフラムとは反対側の方がより大きい。これは、ガラス台座の開口部の機械的安定性を向上させるとともに、シリコンダイアフラムとは反対側の方のガラス台座の開口部の端部が割れるのを防ぐ役割を果たす。
【0011】
米国特許9470593号明細書には、カバーまたはキャップがガラス製であってよく、かつ開口部を有し、この開口部が任意の形状およびサイズを有し得るため、流体が開口部を通ってウエハに達することができる圧力センサが記載されている。
【0012】
さらに、米国特許出願公開第2009/0096040号明細書には、最適化されたセンサ形状を有するセンサが記載されている。
【0013】
このように、圧力センサ用途の台座は、先行技術から非常に様々な構成が知られている。その際、台座の開口部の正確な構成が、圧力センサの機械的安定性および/または信頼性に大きな影響を与えることがわかっている。例えば、開口部のサイズ、側壁または側面の傾斜角、さらにこれらの側壁または側面の表面の構成は、例えば、濡れ性および/またはコーティング性に関して重要な役割を果たす。ここで、ガラス台座の側面または側壁の表面特性の狙いどおりの調整を、例えば、好ましくは再現性の高いプロセスで、好ましくは、ウエハまたはシート面の開口部の幾何学的構成と組み合わせて、例えば、開口部の少なくとも1つの縁部が少なくとも部分的に直線状に形成されているという形態で行うことにより、既知の圧力センサの改善への決定的な寄与を成すことができる。
【0014】
したがって、先行技術の既知の欠点を少なくとも緩和する圧力センサ用ガラスエレメントまたはその製造用ガラスウエハが必要とされている。
【0015】
発明の課題
したがって、本発明は、圧力センサの機械的安定性および/または信頼性をさらに向上させる、圧力センサに使用するガラスウエハまたはガラスエレメントを提供することを課題とする。さらなる態様は、ガラスエレメントの製造方法、および該ガラスエレメントを備えた圧力センサである。
【0016】
圧力センサの安定性および/または信頼性の向上とは、ここでは、機械的安定性の向上、ひいては例えば圧力センサの寿命の向上であってもよいが、総じて他の態様も含むものであり、例えばセンサによって生成される信号の均一性および/または安定性も含むものである。
【0017】
発明の概要
本発明の課題は、独立請求項の主題によって解決される。好ましい具体的な実施形態は、従属請求項および本明細書のさらなる開示から得られる。
【0018】
したがって、本開示は、圧力センサ、例えばピエゾ抵抗式または静電容量式圧力センサ、有利にはピエゾ抵抗式圧力センサに使用するフレーム状ガラスエレメントを製造するためのガラスウエハであって、ガラスウエハは、板状ガラス基材と、板状ガラス基材の一方の表面から板状ガラス基材の他方の表面に延びる少なくとも1つの開口部とを備え、開口部は、断面領域を有する断面を有し、断面領域は、少なくとも1つの直線部分によって画定されており、直線部分は有利には、少なくとも10μm、好ましくは少なくとも20μm、特に好ましくは少なくとも100μmの最小長さを有し、開口部は側面を有し、側面は表面を有し、表面は有利には、以下の式
【数1】
により求められる歪度Sskが0でないことを特徴とし、歪度Sskの値は、有利には少なくとも0.001であり、特に好ましくは最大で5であり、特に好ましくは、歪度は、側面の平坦領域、有利には直線部分に対応する領域において求められる、ガラスウエハに関する。
【0019】
上式で、S
qは、表面の二乗平均粗さ、つまりRMS値を表す。Aは、歪度を求める積分領域の面積を表す。Z(x,y)は、座標x,yにおける表面プロファイルのそれぞれの高さ値を表す。この高さ値は、表面プロファイルの高さ値の算術平均値を基準として示されるものである。したがって、表面プロファイルのある点が平均値より高ければ、対応する値Z(x,y)は正となり、その点が平均値より低ければ、Z(x,y)は負となる。実際の表面測定では、積分を計算する代わりに、離散的な点での表面プロファイルを決定することができる。積分は和に、面積は和の数、つまり測定点の数に置き換えることができる。すると、Sskは以下のようになる:
【数2】
【0020】
歪度は有利には、白色光干渉法(略称:WLi)により測定される。このような測定は、例えばZygo社の白色光干渉計、例えば干渉計ZYGO NewViewで行うことができる。データは、適切な倍率(対物レンズによる20倍の倍率および0.5倍のズーム)でソフトウェアZYGO Mx
TNで記録および評価される。評価の精度を高めるために、ソフトウェアで評価領域の制限(いわゆるマスク)を行い、測定不可能な領域を排除することができる。ここでは、必要に応じて740μm×320μmまたは740μm×520μmの寸法の矩形の測定領域を選択することができる。その際、Sskの値は、以下の式または上記の式(1)に従って求められる:
【数3】
【0021】
値S
qは、以下の式によって算出することができる:
【数4】
【0022】
したがって、これは高さの二乗平均値である。また、決定時には、積分の代わりに和による離散的な測定点の数での計算も可能である:
【数5】
【0023】
好ましくは、歪度値は、少なくとも0.002、より好ましくは少なくとも0.003、特に好ましくは少なくとも0.004、非常に特に好ましくは少なくとも0.01である。
【0024】
好ましい一実施形態によれば、歪度値は、最大で2.0、特に好ましくは最大で1.5である。
【0025】
特に、歪度値は、0.003~5、好ましくは0.004~2.0、特に好ましくは0.01~1.5であってよい。
【0026】
特に、一実施形態によれば、歪度を0より大きくすることができる。この場合、表面は、高所を主な特徴とする表面として形成されている。隆起部が互いに並んだ表面は、ノッチ構成によって穴の壁面に乱流境界層が形成されるため、流体の通過に有利となり得る。これは、流体の粘性を局所的に増加させるように作用し、隣接する層流を促進する。
【0027】
この場合、歪度は、有利には少なくとも0.001であり、有利には最大で5である。ここで好ましくは、歪度は、少なくとも0.002、特に少なくとも0.003、有利には少なくとも0.004、非常に特に好ましくは少なくとも0.01である。さらに好ましくは、歪度は、最大で2.0、好ましくは最大で1.5である。
【0028】
ここで、歪度の好ましい範囲は、少なくとも0.003でかつ最大で5まで、特に少なくとも0.004でかつ最大で2.0まで、特に好ましくは0.01~1.5である。
【0029】
さらなる実施形態によれば、歪度を0未満とすることができる。この場合、表面は、低所を主な特徴とする。この場合、表面には、ノッチとも呼ばれることがある細い低所が存在しない。その結果、特に圧力をかけた状態で負荷をかける場合のノッチ効果が低減し、部品強度が向上する。
【0030】
この場合、歪度は、有利には最大で-0.001、さらに有利には少なくとも-5である。この場合好ましくは、歪度は、最大で-0.002、特に最大で-0.003、有利には最大で-0.004、非常に特に好ましくは最大で-0.01である。さらに好ましくは、歪度は、少なくとも-2、好ましくは少なくとも-1.5である。
【0031】
ここで、歪度の好ましい範囲は、最大で-0.003から少なくとも-5まで、特に最大で-0.004から少なくとも-2.0まで、特に好ましくは-0.01~-1.5である。
【0032】
本開示において、以下の定義が適用される。
【0033】
本開示において、ガラス基材とは、ガラス状材料からなるまたはガラス状材料を含む製品を意味する。ガラス状材料とは総じて、特に溶融工程で混合物から溶融される無機非晶質材料を意味する。溶融工程の後に、さらにいわゆる熱間成形工程を行うことができ、それにより、例えばガラス状材料からなるまたはガラス状材料を含むパネルまたは板が得られる(すなわち、例えばガラスパネルまたは板ガラスが得られる)。当業者に知られている熱間成形工程には、例えば、延伸、圧延またはフローティングがある。したがって、本開示の趣意におけるガラス基材は、例えば、板ガラスまたはガラスパネルとして形成されていてよい。特に、本開示において、ガラス状材料は、いわゆるホウケイ酸ガラスであってもよいし、ホウケイ酸ガラスを含むものであってもよい。
【0034】
ここで、表面または面全般の平坦領域とは、表面または面全般の湾曲していない領域を意味する。しかしここで、平坦領域は、特に粗さを有するような構成であってよい。つまり、本開示の趣意における平坦領域とは、理想的に平らまたは平滑であるものを意味するわけではない。本開示の趣意における平坦領域は特に、少なくとも1つの直線部分によって画定されている領域であってよい。
【0035】
ガラス基材は、有利には透明に形成されており、その際、ここでの透明性とは、380nm~780nmの波長範囲、すなわち可視光範囲での電磁放射に関するものである。
【0036】
ガラス基材は、特に板状に形成されていてよい。これは、直交座標系の第1の方向におけるガラス基材の横寸法(これはガラスエレメントの厚さをも意味し得る)が、第1の方向に直交する直交座標系の2つのさらなる方向における横寸法(これはガラスエレメントの長さおよび幅をも意味し得る)の最大で5分の1であることを意味する。つまり、ガラス基材の厚さは、長さおよび幅の最大で5分の1である。ガラス基材の長さおよび幅が厚さの5倍を明らかに超えるような実施形態も可能である。この場合、ガラス基材は非常に長く幅広い薄板、例えば薄板ガラスや薄板ガラスリボンとして形成されている。本明細書では、リボンとは、長さが幅よりも明らかに大きい、例えば一桁大きい成形体である。長さおよび幅が同じオーダーであれば、通常は板と呼ばれる。ガラス基材が円形に形成されている場合は、長さおよび幅がガラス基材の直径に置き換えられる。
【0037】
ここで、横寸法の表示は、ガラス基材を画定する表面間の距離に関するものである。つまり、ガラス基材とは、ガラス状材料からなるまたはガラス状材料を含む成形体である。本開示において、ガラス基材の表面、ひいてはガラスウエハまたはガラスエレメントの表面に言及する場合、明示的に別段の記載がない限り、それは、合計で成形体の総表面積の50%超を占める面を指す。ガラス基材が板状の構成の場合、これらの表面は主面と呼ばれることもあり、これはガラス基材の長さおよび幅によって画定される面であり、ガラスエレメントが円形または楕円形の構成の場合には、2つの円形面または2つの楕円である。ガラス基材の主面は、面と呼ばれることもある。また、ガラス基材、ひいてはガラスウエハやガラスエレメントの詳細な配置によっては、これは例えば、ガラス基材(またはウエハやガラスエレメント)が水平に配置されている場合には上面および下面、垂直に配置されている場合には前面および裏面と呼ばれることもある。
【0038】
通常、ガラス基材の表面は、互いに実質的に平行に配置されており、すなわち、ガラス基材は、幾何学的観点から、薄く、場合によっては細長い直方体、または薄い円筒体、または総じて任意のベース面を有する薄い角柱体と表すことも可能である。表面の実質的に平行な配置とは、表面が互いに最大で5°の角をなしており、有利には通常の製造公差の範囲内で互いに平行に配置されていることを意味する。
【0039】
ガラスウエハ(またはガラスエレメントウエハ)とは、ガラス基材と少なくとも1つの開口部とを備えた成形体を意味する。つまり、ガラス基材とは、開口部のない板ガラスを意味することができ、ガラスウエハは、複数の開口部を備えた板ガラスを意味することができる。本開示の趣意におけるガラスエレメントは総じて、開口部を1つのみ備え、ガラスウエハよりも小さく、特にガラスエレメントは、ガラスウエハの個片化により得ることができる。本明細書においてガラスエレメントまたはガラスウエハの表面に言及する場合、これらが、ガラスウエハに含まれるガラス基材の表面であることは自明である。また、ガラス基材の厚さ、ガラス基材を含むガラスウエハの厚さ、およびガラスウエハから個片化により得られるガラスエレメントの厚さも、これに対応して同様である。同様に、ガラス基材、ガラスエレメントおよびガラスウエハのガラス状材料の化学組成についても同様のことが該当する。
【0040】
ガラスエレメント(またはガラスウエハ)の一方の表面からガラスエレメント(またはガラスウエハ)の他方の表面に延びる開口部とは、本開示において、ガラスエレメントまたはガラスウエハまたはガラス基材における連続した凹部を意味する。つまり、開口部の領域にはガラス状材料が配置されていない。したがって、開口部は、チャネルまたは穴と呼ばれることもある。そのため、このような開口部を備えたガラスエレメントは、フレーム状に形成されている。つまり、開口部をガラス状材料が覆ってまたは囲んでいる。フレーム状のガラスエレメントとは、本明細書において特に、フレーム状のガラスエレメントがちょうど1つの開口部を備えていることをも意味する。
【0041】
幾何学的に、開口部は、ガラスエレメントまたはガラスウエハの各面の開口部の断面に対応する1つまたは場合により2つのベース面積と、ガラスエレメント/ガラスウエハの厚さに相当する高さとを有する中空体と表すことができる。開口部のベース面積は、断面積とも呼ばれる。2つのベース面積が同じ大きさである場合には、開口部が有する断面積が1つであるとも言える。ここで、断面積の大きさに言及する場合、開口部の断面積の大きさが高さ方向に変化する場合は、総じて断面積の平均値を示すことができる。総じて、開口部は、角柱もしくは円錐の形態の中空体と表すことができ、また開口部の高さ方向に断面積の大きさが変化する場合には角錐台と表すことができ、またガラスエレメントの一方の表面の方向に断面積の大きさが連続的に増加する場合には円錐台と表すことができる。また、断面形状が変化することも理論的には可能である。しかし、プロセス技術的または製造技術的観点からは、断面形状が変わらず、サイズのみが変化し得ることが好ましい。
【0042】
開口部はさらに、ガラスエレメント/ガラス基材のガラス状材料によって形成された側面、すなわち開口部の壁によって画定されている。側面は、開口部が角柱として構成されている場合には角柱の側面に相当し、また詳細な構成に応じて、角錐台の側面、円錐の側面または円錐台の側面に相当する。側面のより複雑な幾何学的構成も考えられるが、プロセス技術上または製造技術上の理由から好ましくない。
【0043】
総じて、断面領域は原則として任意の形状を有することができ、例えば断面領域が円形の構成も原則的に考えられる。しかし、断面領域が直線部分によって画定されており、直線部分が有利には、少なくとも10μm、好ましくは少なくとも20μm、またはさらには特に好ましくは少なくとも100μmの最小長さを有するという形態で断面領域が形成されていることが本開示において有利である。このような構成は、特にガラスエレメントを圧力センサに使用する場合に有利となり得る。なぜならば、こうすることで、すなわち、特に有利には可能な限りダイアフラムの形状に合わせてその下方にある開口部を形成することで、圧力センサの測定キャビティにおいて圧力ピークが回避され、その結果、シリコンダイアフラムの負荷がより均一になり、特に経時的なシリコンダイアフラムの負荷がより均一になることが判明したためである。つまり、このような断面領域の構成により、経時的な圧力変動を少なくとも低減することができる。これにより、シリコンダイアフラムへの機械的負荷が低いことに基づいて、このようなガラスエレメントを備えた圧力センサの寿命を有利に延長させることができる。したがって原則的には、開口部の設計に非円形の断面要素を使用すると、ダイアフラムの振動モードを有利に構築する、すなわち振動の位置および強度を制御することができる。ここで、直線部分は、非常に短くても寄与を成すことができる。直線部分の最小長さは、少なくとも10μm、好ましくは少なくとも20μmである。最良の場合には、さらに少なくとも100μmの長さが可能であり、その際、好ましくは、長さは、最大で2mm、特に好ましくは最大で1.7mmである。
【0044】
特に、非円形の断面領域、例えば角形の断面領域を有する開口部は、特にガラスウエハまたはガラスエレメントを圧力センサに使用する場合に有利であることが判明した。通常は、このような、例えば静電容量式やピエゾ抵抗式などの圧力センサのシリコンダイアフラム内の測定キャビティも同様に、大抵は角形に、しばしば正方形に形成されている。ここで、測定キャビティの断面は、ガラスエレメントの開口部より大きい。したがって、角形の開口部、特にキャビティの断面と同様の、つまり例えば対応する形状を有する断面を有する開口部であれば、圧力が印加された際に生じる面負荷が低くなることが判明した。こうすることで、シリコンダイアフラムとガラスエレメントとの接合界面にかかる負荷が低くなり、剥離しにくくなるため、有利である。つまり、このような圧力センサは、破裂圧に対する安定性が高いため、より高い圧力での使用が可能である。
【0045】
ここでは、以下の関係性を計算で示す:
- シリコンダイアフラムの下方にあるガラスエレメントにおいて生じる自由領域が大きいほど、すなわちシリコンダイアフラムに接合していないガラス領域が測定キャビティ内に多く存在するほど、円形の断面を有する開口部と、非円形の断面、すなわち少なくとも1つの直線部分を有する断面領域を有する断面を有する開口部との差が小さくなる。これは、逆に言えば、特に生じる自由領域が小さい場合には、断面領域の直線部分、または断面領域の角形の構成が特に重要となることを意味する。
【0046】
- 生じる自由領域が大きいほど、圧力印加時に生じる面負荷が高くなり、ひいては作用力が大きくなる。
【0047】
- センサに印加される圧力が大きいほど、生じる自由領域がごくわずかである方が良い。なぜならば、接合界面の負荷がより一層低くなるためである。
【0048】
総じて、断面形状を円形から角形に変更すると、すなわち、直径xの円形の断面領域から、この円形の断面領域の直径xに相当する辺長xを有する少なくともほぼ正方形の断面領域に変更すると、生じる自由領域は約27%小さくなる。特に、生じる自由領域が小さいと、これは作用力に明らかに影響を与える。
【0049】
特にこのことは、高圧用途、すなわち少なくとも30barの圧力向けに設計された圧力センサにおいて重要である。
【0050】
上記で挙げた、生じる自由領域(または、生じる領域)とは、キャビティの横方向の1つ以上の寸法とガラスエレメントの開口部の寸法との差により生じるものである。
【0051】
これを、計算例により以下の表に示す。ここでは、辺長が1.18mmの正方形のキャビティを例にして計算した。
【0052】
【0053】
つまり、この正方形のキャビティについて、ガラスエレメントの開口部の断面領域が同じように正方形の場合には、断面領域が円形の場合に比べて作用力が14%小さくなる。この有利な特性は、生じる自由領域が小さい場合に特に顕著であり、特に、開口部の断面領域に対するキャビティの断面領域の比が小さい場合、つまり例えば10未満または5未満である場合にも顕著である。
【0054】
これに関して、上記の表では、対応するキャビティ/開口部φの面積比(円形の開口部の場合)またはキャビティ/開口部□の面積比(角形の、この場合はさらには正方形の開口部の場合)を算出した。得られる面積比が小さいと、ここでは非円形の開口部の場合には、上述のとおり作用力に2桁パーセント範囲の差が生じる。
【0055】
面積比が大きくなると、この傾向は弱くなる。
【0056】
このことは、例示的に以下の表に記載したデータで確認することができる:
【表2】
【0057】
上記の例では、円形の断面領域に対する角形の断面領域による利点はもはやさほど顕著ではなく、この生じた自由領域がそれぞれ約6mm2と全体的に大きい場合には、作用力にはごくわずかな差しか生じない。
【0058】
すなわち、断面領域を円形の形状から非円形の形状に変更した場合、開口部の断面領域に対するキャビティの断面領域の比が小さいと、すなわち有利には10未満、特に5未満であると、特に良好な効果がある。その上さらに、上記2つの表のうち最初の表ではこの効果が特に顕著であり、この場合、キャビティと開口部の互いの断面領域の比は3未満である。
【0059】
好ましくは可能な限りダイアフラムの形状に合わせてその下方にある開口部を形成するとは、本開示において、ダイアフラムのアスペクト比が開口部のアスペクト比と実質的に等しいという点で、ダイアフラムの形状が開口部の形状に対応していることを意味する。ここで、アスペクト比が実質的に等しいとは、ダイアフラムの断面領域の大きさと開口部の断面領域の大きさとが互いに相違していてもよいこと、および/またはダイアフラムの角の半径と開口部の角の半径とが任意に相違していてもよいことを意味する。しかし本実施形態によれば、これらの相違を除いて、開口部の断面領域の形状は、ダイアフラムの形状に対応している。ガラスウエハの一実施形態によれば、ダイアフラム、例えばシリコンダイアフラムの形状に合わせてその下方にある開口部が形成されているため、ダイアフラム、特にシリコンダイアフラムのアスペクト比が開口部のアスペクト比と等しいという点で、ダイアフラム、例えばシリコンダイアフラムの形状は開口部の形状に対応している。
【0060】
断面領域が2つ以上の直線部分、例えば4つの直線部分によって画定されていると特に有利な場合がある。特に、断面領域は多角形であってよい。有利には、断面領域は、矩形または正方形である。こうすることで、このようなガラスエレメントを備えた圧力センサの測定キャビティ内で特に均一な圧力分布が可能となる。断面領域の多角形、例えば矩形または正方形の構成とは、本明細書において、そのような多角形の角が丸み付けされているか、または少なくとも丸み付け可能であることをも意味する。
【0061】
さらに、側面が表面を有し、該表面が有利には、以下の式
【数6】
により求められる歪度Sskが0でないことを特徴とすると有利であることが判明しており、ここで、歪度Sskの値は、有利には少なくとも0.001であり、特に好ましくは最大で5であり、有利には歪度値は、少なくとも0.002、より好ましくは少なくとも0.003、特に好ましくは少なくとも0.004、非常に特に好ましくは少なくとも0.01であり、かつ/または歪度値は、最大で2.0、特に好ましくは最大で1.5であり、ここで、S
qは、表面の二乗平均粗さ、つまりRMS値を表し、Aは、歪度を求める積分領域の面積を表し、Z(x,y)は、座標x,yにおける表面プロファイルのそれぞれの高さ値を表し、この高さ値は、表面プロファイルの高さ値の算術平均値を基準として示されるものであり、表面プロファイルのある点が平均値より高ければ、対応する値Z(x,y)は正となり、その点が平均値より低ければ、対応する値Z(x,y)は負となる。
【0062】
歪度は、好ましくは、側面の平坦領域、有利には直線部分に対応する領域において求められる。この場合、直線部分に対応する領域は、側面の平坦領域と同一または部分的に同一であってよい。また、開口部の詳細な構成に応じて、例えば、直線部分に対応する領域は、側面の平坦領域の部分領域とも解釈できる。開口部の構成として、例えば断面形状が矩形、例えば角を丸み付けした矩形に相当する断面である場合、側面の平坦領域は4つの矩形で形成されており、これは角柱の側面とも解釈できる。歪度は、ここでは特にこの側面の矩形のうちの1つにおいて求められ、これらの矩形はそれぞれ、開口部の断面領域の直線部分に属し得る。
【0063】
すなわち、本開示によれば有利には、ガラスエレメントの開口部の表面または開口部の表面のある領域について、高所または低所の非対称または不均一な分布を有するものが製造される。これは、本開示の実施形態によるガラスウエハから製造されたフレーム状のガラスエレメントを圧力センサに使用する場合に特に有利となり得る。なぜならば、この高所または場合により低所の非対称または不均一な分布によって、例えば機能性シリコンMEMSダイアフラムに向かう液体や気体などの流体の乱流および層流成分の分布を生成することや、これに狙いどおりに影響を及ぼすことができるためである。
【0064】
このように、少なくとも1つの領域において表面を所定の構成とすることで、開口部の流れの抵抗を増加および減少させることができる。
【0065】
流れの方向に沿った構造物は、生物学的な例で言えばサメの皮のように、流れの抵抗を大幅に減少させることができる。このような表面は、センサの動的応答性を向上させることができる。
【0066】
流れの方向に直交する構造物や不規則な構造物は、流れの抵抗を増加させる。センサに外部の圧力衝撃が加わった際、このような構成を有する表面では、センサ(または測定)キャビティに流体がゆっくりとしか流れ込むことができず、それにより、センサダイアフラムが受ける急激な負荷が、非構造化表面に比べて低くなる。
【0067】
センサにかかる圧力が急激に低下した場合にも同様の効果が生じ、流れの方向に直交するように構造された表面では、媒体がキャビティからゆっくりと逃げ、センサへの動的負荷が、非構造化表面に比べて低くなる。
【0068】
この2つの効果を組み合わせることで、振動性システムのキャビティ-センサダイアフラムのダンピングを狙いどおりに調整することができ、それにより例えば、システムの固有振動を狙いどおりにシフトさせ、センサの寿命を延長させ、また特定の周波数域で特に高い信号品質を達成することが可能となる。
【0069】
また、壁面の構造を非対称とすることも可能であり、これは、一方向の流れの抵抗が高く、他方向の流れの抵抗が著しく低いことを意味する。
【0070】
ダイアフラムの動きによるキャビティ内への流体の移動に加え、媒体の圧縮性による波動現象も無視することはできない。
【0071】
衝撃的な負荷の場合、圧縮波または膨張波が開口部からセンサダイアフラムに向かって流れる。これはキャビティ内で反射されるため、センサダイアフラムに高周波の負荷がかかり、その振幅は圧力ピーク自体と同じオーダーになる。
【0072】
ここで、開口部の表面を狙いどおりに構造化することで、この波が音響スタジオやコンサートホールの拡散反射板のように開口部の内部で拡散反射され、それにより、センサダイアフラム自体での圧力上昇の発生がより穏やかになるという利点がある。
【0073】
ここで、最小歪度が存在し、したがって、少なくとも1つの領域における側面の表面が、狙いどおりに高所と低所との不均一な分布を有することが有利である。しかし、分布がさほど歪んでいないと、好ましくない流れ成分が優勢になる可能性があるため、有利になることもある。
【0074】
開口部の側壁または側面の表面モルホロジーの形状は、開口部の製造時のプロセスパラメータにより狙いどおりに調整することができる。
【0075】
一実施形態によれば、表面は、低所(「谷」)が優勢であるという形態で形成されている。この場合、歪度は0未満である。別の実施形態によれば、高所(「山」)が優勢である場合もあり、この場合、これはSskが0より大きいことに相当する。
【0076】
上記式中、S
qは、高さの二乗平均を表し、これは以下の式により算出される:
【数7】
【0077】
Aは、測定領域の面積を表し、xおよびyは、対象となる領域(測定領域)の面座標を表し、zは、高さを表す。歪度(または歪み)Sskは、表面高さの分布が平均高さを中心にどの程度対称であるかを示す。したがってこれは、表面トポグラフィーにおいて「谷」あるいは低所が優勢であるのか高所が優勢であるのかを示す指標であると理解することができる。高所および低所が等しく分布している場合、歪度は0の値をとる。低所が優勢である表面の場合、Sskは負の値をとる。高所が優勢である場合、Sskは正であり、つまり0を超える値を有する。有利には歪度は、0.1mm2を超えかつ有利には3mm2未満の測定領域内で求められる。
【0078】
本発明は、開口部の側面の内面のトポロジーに言及するものであり、好ましくはこの特定のトポロジーは、側面の表面の少なくとも1つの領域、有利には構造化プロセスの結果として生じる断面領域の少なくとも1つの直線部分に属する領域に存在する。構造化の手法は多様であり、それに使用されるパラメータも多様である。用途に応じて、内面は様々な特性を示す必要がある。
【0079】
ここで好ましくは、主に低所によって、時には高所によっても、特にドーム状の、すなわち半球状の低所または高所によっても特徴付けられる開口部の側面の表面が提供される。驚くべきことに、表面のこのような調整によって、ガラスエレメントの機械的安定性が向上することが判明した。これは、本開示による開口部の側面内または側面上で特に好ましい結合状態を表面上で得ることができ、この結合状態は、例えば表面の実質的な化学的除去によって得ることができるためであると考えられる。言い換えれば、これは、ガラスの網目構造の化学的に攻撃可能な特に弱い結合が切断され、一方で強い結合は最初にまだ保持されており、したがってその結果ガラスエレメントの全体的に良好な機械的安定性が得られることが側面の表面において特徴的であることを意味する。特にこのようにして、開口部での貝殻状断口の発生を少なくとも減少させることができる。
【0080】
ドーム状の内壁構造の形状は、プロセスパラメータによって狙いどおりに調整することができる。フレーム状のガラスエレメントを例示的に圧力センサに使用する場合、山と谷の非対称/不均一な分布は、例えば機能性Si-MEMSダイアフラムに向かう液体や気体の乱流および層流の流れ成分の分布において流体技術上の利点を有することが判明した。上記のように、開口部の内壁構造をカスタマイズすることで、特定の周波数域で信号が増強される可能性もある。また、それに伴って特定の周波数域を少なくとも抑制することができ、それにより生じる信号のノイズを低減することも可能である。
【0081】
一実施形態によれば、断面領域は、少なくとも2つの直線部分によって画定されており、直線部分は、少なくとも10μm、好ましくは少なくとも20μm、特に好ましくは少なくとも50μmでかつ有利には最大で1000μm、好ましくは最大で500μm、特に好ましくは最大で250μm、より好ましくは最大で150μm、非常に特に好ましくは最大で130μm、最も好ましくは最大で100μmの曲率半径で角をなしている。こうすることで、このように圧力センサに組み込まれたガラスエレメントの断面領域の角での圧力ピークを抑制することができるため、これは有利である。
【0082】
さらなる実施形態によれば、ガラス基材は、少なくとも50重量%のSiO2、好ましくは少なくとも55重量%のSiO2、特に好ましくは少なくとも70重量%のSiO2、非常に特に好ましくは少なくとも78重量%のSiO2を有するガラスを含み、ガラスのSiO2含有量は、有利には最大で85重量%のSiO2、好ましくは最大で83重量%のSiO2に制限されている。すなわち、ガラスは、有利には高純度SiO2ガラスとして形成されている。こうすることで、例えば水酸化カリウムを用いたエッチングプロセスを特に効率的に行えるガラスが得られるため有利である。したがって、開口部の側面の有利な表面構造は、このようなガラスまたはガラスエレメントまたはガラスウエハまたはガラス基材において特に容易に製造することができる。ただし、ガラスのSiO2含有量が多すぎるとガラスの溶融性が低下するため、多すぎないことが望ましい。したがって有利には、ガラスのSiO2含有量は制限されており、一実施形態によれば、最大で85重量%、好ましくはさらには最大で83重量%である。SiO2含有量を前述の限度内に調整することで、ガラス基材に対して効率的にエッチングプロセスを行うことができると同時に、ガラス基材を経済的な製造プロセスで製造することができる。
【0083】
さらなる実施形態によれば、ガラス基材(または対応する態様ではガラスエレメントまたはガラスウエハ)は、少なくとも1.5重量%のB2O3、好ましくは少なくとも2.0重量%のB2O3、特に好ましくは少なくとも2.5重量%のB2O3、非常に特に好ましくは少なくとも5重量%のB2O3を有するガラスを含み、ガラスのB2O3含有量は、有利には最大で15重量%に制限されている。B2O3は、総じてガラスの耐薬品性を向上させるガラス成分である。また、B2O3を一定量含有させるとガラスの融点が下がり、溶融性が向上する。これは特に、SiO2含有量の多いガラスにおいて有利である。したがって、一実施形態によれば、ガラスまたはこのガラス状材料を含むガラス基材は、少なくとも1.5重量%、有利には少なくとも2.0重量%のB2O3、特に好ましくは少なくとも2.5重量%のB2O3、非常に特に好ましくは少なくとも5重量%のB2O3を含む。このことは、ガラス基材から得られる、またはガラス基材を含むガラスエレメントが、腐食性媒体とこのガラスまたはガラスエレメントとが接触する圧力センサに使用される場合に、特に好ましいことである。
【0084】
一方、ガラスのB2O3含有量が多すぎると、ガラスのエッチング性が低下し、ひいてはガラスエレメントの製造が遅くなり、したがって不経済となるため不利である。よって、ガラスのB2O3含有量は、有利には制限されており、さらなる実施形態によれば15重量%以下である。
【0085】
さらに別の実施形態によれば、ガラス基材は、少なくとも2重量%のAl2O3を有するガラスを含み、ガラスのAl2O3含有量は、有利には最大で25重量%に制限されている。
【0086】
Al2O3は、特にホウケイ酸ガラスにおいて偏析を防止し、したがってガラスの生産性を有利に支持する成分であることから、好ましい成分である。したがって、一実施形態によれば、ガラスまたはこのガラスを含むガラスエレメントは、少なくとも2重量%のAl2O3を含む。しかし、Al2O3はガラスの耐薬品性、特に耐酸性を低下させ得る成分であるため、ガラスまたはガラスエレメントのAl2O3含有量が多すぎると不利になる場合がある。これは、例えば排ガス領域の圧力センサにおいて起こり得るような、使用中にガラスまたはこのガラスを含むガラスエレメントが腐食性媒体と接触する場合に特に不利になる。したがって、ガラスのAl2O3含有量は25重量%以下であることが望ましい。
【0087】
さらなる実施形態によれば、断面領域は、少なくとも0.04mm2でかつ最大で2.7mm2の平均面積を有する。こうすることで、圧力センサのコンパクトな、すなわち小型でかつ省スペースな設計が可能となる。したがって、このような断面領域の等価直径は、例えば0.3mm~0.9mmとなり得る。
【0088】
さらに別の実施形態によれば、ガラスウエハは複数の開口部を備え、開口部間のウェブ幅は、少なくとも0.3mm、好ましくは少なくとも0.5mmでかつ有利には最大で7mm、好ましくは最大で5mmである。こうすることで、複数の開口部を同時に効率的に製造できるため有利である。また、通常フォーマットのガラスウエハを、確立されたプロセスで良好に取り扱い、出荷することができる。
【0089】
構造化されたガラスウエハやシートのスペースを有効利用すること、つまり、個々の要素をできるだけ多くできるようにすることは、コストに直結するため、多くの用途で重要である。ほぼ正方形または矩形の穴、例えば角が丸み付けされた正方形または矩形の穴を使用すると、同じ面積の円形の穴に比べて個々の要素の数を数%増やせることが判明した。
【0090】
さらなる実施形態によれば、複数の開口部を備えたガラスウエハにおいて、開口部とガラスエレメントの総面積との比率は、0.1%~12%、好ましくは0.2%~10%である。これにより、通常のハンドリングプロセスに対するガラスウエハの十分な安定性が保証される。
【0091】
さらに別の実施形態によれば、ガラスエレメントまたはガラスウエハの厚さは、少なくとも200μm、好ましくは少なくとも300μmでかつ最大で3500μm、好ましくは最大で3000μm、特に好ましくは最大で2000μm、非常に特に好ましくは最大で1800μm、最良の場合には最大で1000μmであり、そのため、ガラスエレメント/ガラスウエハの厚さと断面領域の平均横寸法、例えば等価直径との比率は、少なくとも0.33でかつ最大で3である。ここで、ガラスエレメントまたはガラスウエハの厚さは、一方ではガラスエレメントまたはガラスウエハの機械的安定性に関する決定的因子であり、したがって、ガラスの破損の増加を避けるために、小さすぎないようにすることが望ましい。他方では、コストや重量の理由から、また例えば圧力センサなどの小型部品を実現するためには、厚さが大きすぎないようにすることが望ましい。さらに、ガラスエレメントの厚さと断面領域の平均横寸法との間に所定の比率が生じていると、圧力センサの機械的安定性だけでなく、そのような圧力センサの測定データの品質もさらに改善できることが判明した。断面領域の平均横寸法は、例えば断面領域の大きさが開口部の高さ方向に変化する場合には平均等価直径であり得る。断面領域の大きさを特徴付けるための等価直径の表示は、本開示によれば好ましいものであるような多角形の形状を有する断面領域の場合に特に有利である。ここで、開口部の等価直径とは、対象となるが円形ではない断面領域と同じ面積を有する円の直径である。圧力センサガラスの厚さは、例えば、少なくとも0.4mmでかつ最大で0.9mmとすることができるが、1.6mmや2.7mmの厚さも可能であり、有利には、例えば200μmの小さい厚さが好ましい。
【0092】
一実施形態によれば、ガラスウエハは、10μm未満、好ましくは5μm未満、特に好ましくは2μm未満、非常に特に好ましくは1μm未満の厚さ変動を有する。
【0093】
一実施形態によれば、開口部の側面は、傾斜角を有し、傾斜角は、有利には最大で2°であり、ここで傾斜角とは、ガラスウエハの表面と90°の角をなす理想的には直立した側面(または側壁)からのずれを意味する。
【0094】
さらなる実施形態によれば、ガラスウエハおよび/またはガラスエレメントの少なくとも1つの表面は研磨されており、したがって有利には、<2nm、好ましくは<1nmの粗さRaを有する。これは有利には、シリコンダイアフラムとの接続が予定されるガラスエレメントまたはガラスウエハの表面に該当する。
【0095】
こうすると、特に良好な接続が可能な、粗さがごくわずかである表面となるため、有利である。しかしここで、ガラスウエハの表面を特に開口部の領域でこのように研磨することがクリティカルであると考えられることが判明した。なぜならばこの場合、ガラスの機械的な破損に基づいて特に開口部の縁部領域でチッピングが発生しかねないためである。驚くべきことに特に、歪度を本開示で規定された限度内に設定することによって表面の有利な構成が生じる、後述の方法でもより詳細に説明されるような本開示によるエッチングされた開口部と、機械的な表面研磨との組み合わせがここで有利であることが判明した。なぜならば、このエッチングと機械的研磨との組み合わせによって、端部領域のチッピングを低減し、有利にはそれを完全に防ぐことさえできるためである。
【0096】
さらなる態様は、少なくとも1つの開口部を備えたガラスウエハまたはガラスエレメント、特に一実施形態によるガラスエレメントまたはガラスウエハの好ましい製造方法であって、該方法は、
- 板状ガラス基材を提供するステップと、
- 板状ガラス基材の表面のうちの一方に超短パルスレーザのレーザ光を照射するステップであって、レーザ光が集光光学系により板状ガラス基材内に細長い焦点を形成することで、レーザ光の入射エネルギーによって板状ガラス基材の体積内に1本のフィラメント状損傷を生成し、該フィラメント状損傷は、その長手方向が板状ガラス基材の表面に直交しているものとし、1本のフィラメント状損傷を生成するために、超短パルスレーザにより、1パルス、または連続する少なくとも2つのレーザパルスを有するパルスパケットを照射するステップと、
- レーザ光の入射点を板状ガラス基材上で所定の閉じた線に沿って誘導することにより、板状ガラス基材において所定の線上に隣り合う複数のフィラメント状損傷を得るステップであって、フィラメントは有利には、板状ガラス基材の一方の面から他方の面まで延びているものとするステップと、
- 板状ガラス基材のエッチングを、少なくとも板状ガラス基材にフィラメント状損傷が形成されている領域において液体エッチング媒体で行うステップであって、フィラメント状損傷を広げてチャネルを形成し、エッチングによりチャネルの直径を広げて、各チャネル間に位置する板状ガラス基材のガラス状材料を除去し、その結果、各チャネルが一体化して、断面領域を備えた断面を有する開口部の境界を成し、その際、断面領域は、直線部分によって画定されており、直線部分は有利には、少なくとも10μm、好ましくは少なくとも20μm、またはさらには特に好ましくは少なくとも100μmの最小長さを有し、開口部は側面を有し、側面は表面を有し、表面は有利には、以下の式
【数8】
により求められる歪度Sskが0でないことを特徴とし、歪度Sskの値は、有利には少なくとも0.001であり、特に好ましくは最大で5であり、有利には
歪度の値は、少なくとも0.002、より好ましくは少なくとも0.003、特に好ましくは少なくとも0.004、非常に特に好ましくは少なくとも0.01であり、かつ/または
歪度の値は、最大で2.0、特に好ましくは最大で1.5であるものとするステップと、
- 任意に、ガラス基材(1)を個片化してガラスエレメントを得るステップと
を含み、
ここで、S
qは、表面の二乗平均粗さ、つまりRMS値を表し、Aは、Ssk値(または歪度)を求める積分領域の面積を表し、Z(x,y)は、座標x,yにおける表面プロファイルのそれぞれの高さ値を表し、この高さ値は、表面プロファイルの高さ値の算術平均値を基準として示されるものであり、表面プロファイルのある点が平均値より高ければ、対応する値Z(x,y)は正となり、その点が平均値より低ければ、対応する値Z(x,y)は負となり、特に好ましくは、歪度は、側面の平坦領域、有利には直線部分に対応する領域において求められる、方法に関する。
【0097】
フィラメント状損傷とは、本明細書では、長く細い損傷を意味する。総じて、フィラメントとは、長く延びる細い物体または長く延びる構造体を意味し、長く延びるとは、構造体または物体の長さが、物体または構造体の長さに対して垂直な他の2つの寸法における空間的広がり、特に例えば物体または構造体の長さに対して垂直に延びる断面領域の等価直径よりも少なくとも1桁、有利には少なくとも2桁大きいことを意味する。そのため、フィラメント状損傷は、損傷の長さに比べて断面領域がごくわずかである。
【0098】
上記の方法は、特に有利であることが実証されている。しかし本願は、この方法に限定されるものではない。また、CNCドリル加工、超音波振動ラッピング、サンドブラスト、ローカルエッチングなどの方法も利用可能である。
【0099】
板状ガラス基材内または板状ガラス基材上で所定の線に沿ってフィラメント状損傷を生成することにより、本方法により板状ガラス基材内に形成される開口部の輪郭を非常に容易に決定することができる。特に、この方法では、直線部分によって画定されている開口部であって、該直線部分は有利には、少なくとも10μm、好ましくは少なくとも20μm、またはさらには特に好ましくは少なくとも100μmの最小長さを有するものとする開口部を特に容易に生成することができる。しかし、他の幾何学的形状の開口部も可能であり、この方法により複雑な幾何学的形状の開口部を生成することも原理的には可能である。しかし有利には、本方法により特に多角形の断面形状を生成することができ、例えば矩形および/または正方形の面形状を生成することもでき、角が丸み付けされたものも存在することができる。これは特に、線の形状の適切な選択と、各損傷間のガラス材料のエッチングとの組み合わせによって達成することができる。
【0100】
有利には、エッチング媒体として、アルカリ性エッチング媒体が好ましい。
【0101】
ここで、特に開口部の側面の表面の有利な構成は、例えば除去速度を巧みに選択することによって得られることが判明した。したがって、好ましい一実施形態によれば、ガラスエレメントのガラス状材料は、毎時5μm未満の除去速度で除去される。
【0102】
代替的または付加的に、エッチング時間が少なくとも12時間であれば、開口部の断面領域の形状および/または開口部の側面の表面の構成に有利な影響を与えることができる。
【0103】
このような処理は、例えば、pH値が12を超える塩基性エッチング浴で行うことができる。KOH水溶液が好ましく、特にKOHの濃度は4mol/l超、特に好ましくは5mol/l超、非常に特に好ましくは6mol/l超であるが、しかし濃度が30mol/l未満であることが望ましい。一実施形態によれば、エッチングは、使用されるエッチング媒体とは無関係に、70℃超、有利には80℃超、特に好ましくは90℃超であるがしかし100℃未満のエッチング浴温度で実施することができる。
【0104】
特に、目標とする材料除去および/またはフィラメント状損傷の導入は、特に材料の適切な選択にも影響され得る。高いケイ酸塩含有量を有するガラス、すなわち少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも55重量%のSiO2、特に好ましくは少なくとも70重量%のSiO2含有量を有するガラスは、本実施形態による、特に上述の方法によるガラスエレメントの製造に特に適していることが判明した。
【0105】
一実施形態によれば、エッチングの後に、少なくとも1つの表面、特に圧力センサのシリコンダイアフラムに面する表面を機械的に研磨することができる。
【0106】
ここで、特に有利なガラス組成は、ガラスがホウケイ酸ガラスとして構成されている場合であり得る。これは、SiO2の含有とB2O3の含有とを組み合わせることで、ガラスエレメントの後の使用、例えば自動車分野の圧力センサにおける例えば腐食性媒体との接触のための十分な耐薬品性を有しつつなおも十分な溶融性を示すことと、なおかつ湿式化学エッチングプロセスにおける十分なエッチング性を示すこととの、良好な両立を達成することができるためである。したがって、50重量%~85重量%のSiO2、好ましくは78重量%~83重量%のSiO2と、1.5重量%~15重量%のB2O3、好ましくは2.0重量%~15重量%のB2O3、特に好ましくは2.5重量%~15重量%のB2O3、非常に特に好ましくは5重量%~15重量%のB2O3とを含むガラスを含むガラスエレメントが有利であることが判明した。
【0107】
ホウケイ酸ガラスの既知の傾向に基づき、ガラスが偏析を防ぐ成分を代替的に含んでいるとさらに有利であり得る。したがって有利には、一実施形態によるガラスまたはガラスエレメントは、前記含有量のSiO2およびB2O3に加えてさらに、成分としてAl2O3を含み、好ましくは少なくとも2重量%のAl2O3であるが、しかし一方で、Al2O3はガラスの耐薬品性に強い影響を与え得る成分でもある。また、ある種のガラスに含まれるAl2O3は、特にアルカリ範囲での耐薬品性を向上させ得ることも知られている。したがって、ガラスがアルカリ性エッチング媒体によって依然として十分にエッチング可能であることを保証するためには、ガラスのAl2O3含有量が高すぎないことが望ましく、したがって有利には、最大で25重量%に制限されている。SiO2、B2O3およびAl2O3を上記の限度内で含むこのようなガラスは、驚くべきことに、かなり遅いエッチングプロセス、すなわちかなり低いエッチング速度および/または長いエッチング時間で得られ、このことは、所定の表面構成を形成するのに有利であることが判明した。
【0108】
以下の成分を重量%単位で含むガラスを含むかまたはそれから製造されたガラスエレメントが、実施形態によるガラスエレメントの提供に特に好ましく、かつ/または実施形態による方法で製造可能であることが判明した:
組成範囲1
SiO2 60~65
B2O3 6~10.5
Al2O3 14~25
MgO 0~3
CaO 0~9
BaO 3~8
ZnO 0~2
ここで、MgO、CaOおよびBaOの含有量の合計が8~18重量%の範囲であることを特徴とする。
組成範囲2
SiO2 60~85
B2O3 5~20
Al2O3 2~15
Na2O 3~15
K2O 3~15
ZnO 0~12
TiO2 0.5~10
CaO 0~0.1
組成範囲3
SiO2 75~85
B2O3 8~15
Al2O3 2~4.5
Na2O 1.5~5.5
K2O 0~2
組成範囲4
SiO2 20~70、好ましくは50~60、特に好ましくは52~58
B2O3 0.5~14、好ましくは2~12、特に好ましくは2~4
Al2O3 15~41、好ましくは16~24、特に好ましくは18~23
MgO 0.5~15、好ましくは2~12、特に好ましくは3~5
CaO 0~5、好ましくは0~3
BaO 0~7、好ましくは0~6
ZnO 0~20、好ましくは2~12、特に好ましくは8~10
NaO 0~7、好ましくは1~6、特に好ましくは3~5
【0109】
上記のすべての組成範囲において、例えば着色物質および/または清澄剤の形で、例えばSnO2、CeO2、As2O3、Cl-、F-、硫酸塩といった二次成分および/または微量成分がさらに含まれていてもよい。
【0110】
総じて、本明細書に記載の組成範囲に限定されることなく、ガラス状材料が陽極接合可能(または接合可能)であるように形成されていることが有利である場合がある。このために、ガラス状材料が、アルカリまたはアルカリ金属酸化物、特にナトリウムまたは酸化ナトリウムを一定の割合で含んでいると有利である場合がある。Na2O含有量は、少なくとも0.5重量%であることが望ましいが、好ましくは6重量%を超えない。
【0111】
本方法の有利な一実施形態は、代替的にまたは追加的にさらに、板状ガラス基材の少なくとも1つの表面上のレーザ光の2つの入射点間の空間距離が最大で6μm、有利には最大で4.5μmである場合、および/またはフィラメント状損傷を導入するためのバーストのパルス数が最大で2または少なくとも7である場合、および/または板状ガラス基材の少なくとも1つの表面上のレーザ光の2つの入射点間の空間距離が1μm~15μm、有利には最大で6μm、例えば最大で4.5μmであって、レーザのパルス持続時間が0.5ps~2psの範囲にある場合である。
【0112】
さらに別の態様は、一実施形態による少なくとも1つのガラスエレメントを備えた圧力センサ、例えばピエゾ抵抗式または静電容量式圧力センサ、有利にはピエゾ抵抗式圧力センサに関する。
【0113】
このような圧力センサは、総じて少なくとも1つのシリコンダイアフラムを備えることができる。
【0114】
ここで好ましくは、ガラスエレメントは、開口部の側面が傾斜角を有し、傾斜角が有利には最大で2°であるように形成されている。ここで傾斜角とは、ガラスエレメントの表面と90°の角をなす理想的には直立した側壁からのずれのことである。
【0115】
このように、ガラスエレメントは、ガラスエレメントの一方の表面上において、この第1の表面に対向するガラスエレメントの他方の表面上よりも開口部の面積が大きくなるように形成されている。ここで、一実施形態によれば、圧力センサは、ガラスエレメントの断面領域の面積が大きい方の表面がシリコンダイアフラムに向くように形成されていてよい。これは「逆円錐形」とも呼ばれる。驚くべきことに、このような構成は、開口部の断面領域がシリコンダイアフラムに向かって減少する逆の構成よりも、圧力センサの機械的安定性、さらには測定結果の安定性に有利であることが判明した。
【0116】
これは、シリコンダイアフラムに向いている方のガラスエレメントの開口部よりも、シリコンダイアフラムとは反対側の方のガラスエレメントの開口部の方が大きい場合、開口部がノズルのように作用して測定キャビティ内で圧力が明らかに経時的に変動し、圧力測定結果が不正確になり得るだけでなく、シリコンダイアフラムへの機械的負荷が高くなり得るためである。
【0117】
さらに、1つ以上のシリコンダイアフラムに向いている方の開口部よりも、1つ以上のシリコンダイアフラムとは反対側の方の開口部の方が小さいと有利となり得ることが判明した。例えば、こうすることで、ガラスエレメントの面のうち1つ以上のシリコンダイアフラムとは反対側の方では、他の部品と接合するための面積がより広くなる。これは、圧力センサと他の部品との間の接続の機械的安定性を向上させることができるため、有利である。
【0118】
しかし、さらなる実施形態によれば、ガラスエレメントの開口部の側面が傾斜角を有し、傾斜角が有利には最大で2°であり、ここで傾斜角とは、ガラスウエハの表面と90°の角をなす理想的には直立した側面からのずれであり、開口部が、シリコンダイアフラムの方向に先細状である断面領域を有する断面を有する、というように圧力センサが構成されていることも提供可能である。すなわち、本実施形態によれば、開口部の断面領域は、ガラスエレメントの面のうち1つ以上のシリコンダイアフラムに向いている方が、ガラスエレメントの面のうち1つ以上のシリコンダイアフラムとは反対側の方よりも小さい。こうすることで、圧力センサ内の最大圧力に達するまでの時間を短縮することができるため、有利になる。これは、図の説明で説明する後述の
図12により例示的に示すことができる。このような開口部のいわゆる「円錐形」の実施形態では、例えば、圧力センサが備えているシリコンダイアフラムの少なくとも1つの点A、Bで最大圧力に達するまでの時間を、開口部の断面領域が一定であるかまたは広がっている場合に比べて少なくとも30%、好ましくはさらには少なくとも40%短縮することさえ可能である。
【0119】
一実施形態によれば、圧力センサは、圧力センサがガラスエレメントとシリコンダイアフラムとを備え、シリコンダイアフラムの形状に合わせてガラスエレメントの開口部が形成されており、その結果、シリコンダイアフラムのアスペクト比が開口部のアスペクトと等しいという点で、シリコンダイアフラムの形状が開口部の形状に対応している、というように構成されている。
【0120】
特に有利であるのは、断面領域の幾何学的形状の技術的利点および効果に関しても上述したように、ガラスエレメントにおける開口部の断面領域に対するキャビティの断面領域の比が小さい場合である。有利には、一実施形態によれば、開口部の断面領域に対するキャビティの断面領域の比は、10未満、有利には5未満である。したがって、一実施形態によれば、圧力センサは、シリコンダイアフラムのキャビティが断面領域を有し、ガラスエレメントの断面領域に対するキャビティの断面領域の比が10未満、有利には5未満となるように構成されている。
【0121】
上記組成範囲に対応するガラス組成により、例えば以下の表に示す歪度値Sskを得ることができる。ここで、ガラスエレメントまたはガラスウエハのガラスの組成範囲を最上行にそれぞれ記載した。測定には、本開示の実施形態によるガラスエレメントを用いた。ここで、開口部の側壁の表面を、有利には開口部の直線部分に属し得る少なくとも1つの領域で測定した。ここで、ガラスエレメントは、本開示による方法、すなわち、レーザ加工によって1つ以上のフィラメントを生成し、その後エッチングプロセスを実施することによって得られたものである。2行目に「エッチングパラメータ」として示したように、エッチングの際に異なるパラメータを使用した。
【0122】
最後に、フィラメントを生成するためのレーザ加工のパラメータについて、測定点A~Jにおいてさらに相違点がある。以下の2つの表に記載したサンプルから、開口部の側壁の表面の粗さが様々に調整可能であることがわかる。
【0123】
【0124】
以下、図面を参照して本発明をより詳細に説明する。ここで、同一の参照符号は、同一のまたは対応する要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【
図1】ガラスウエハの一実施形態を示す、正確な縮尺ではない概略図である。
【
図2】ガラスウエハの一実施形態を示す、正確な縮尺ではない概略図である。
【
図3】ガラスウエハの一実施形態を示す、正確な縮尺ではない概略図である。
【
図4】ガラスエレメントの一実施形態を示す、正確な縮尺ではない概略図である。
【
図5】傾斜角を説明するためのガラスエレメントの一部を示す概略図である。
【
図6】ピエゾ抵抗式圧力センサの一実施形態を示す、正確な縮尺ではない概略図である。
【
図7】ガラスウエハまたはガラスエレメントの製造方法を示す、正確な縮尺ではない概略図である。
【
図8】ガラスウエハまたはガラスエレメントの製造方法の中間生成物としてのガラス基材を示す、正確な縮尺ではない概略図である。
【
図9】同一の開口部体積で円形の開口部から角形の開口部へ移行した場合の6’’ウエハにおける構造要素の高所を示す図である。
【
図10】同一の開口部体積で円形の開口部から角形の開口部へ移行した場合の6’’ウエハにおける構造要素の高所を示す図である。
【
図11】開口部の断面形状が円形で、側壁の傾斜角が様々に構成された圧力センサの、圧力衝撃の時間分布に関する挙動を示す図である。
【
図12】開口部の断面形状が円形で、側壁の傾斜角が様々に構成された圧力センサの、圧力衝撃の時間分布に関する挙動を示す図である。
【
図13】圧力衝撃の時間分布に関して、開口部の断面形状が円形である圧力センサの挙動を、開口部の断面形状が正方形である圧力センサの挙動と対比して示す図である。
【
図14】圧力衝撃の時間分布に関して、開口部の断面形状が円形である圧力センサの挙動を、開口部の断面形状が正方形である圧力センサの挙動と対比して示す図である。
【
図15】キャビティの断面領域と開口部の断面領域との異なる面積比を例示した図である。
【0126】
図1~
図3はそれぞれ、複数の開口部2を備えたガラスウエハ10の、正確な縮尺ではない概略図を示す。開口部2(わかりやすくするため、すべてが表されているわけではない)は、ここでは例示的に断面領域3を有し、断面領域3は、直線部分31によって画定されており、直線部分31は有利には、少なくとも10μm、好ましくは少なくとも20μm、またはさらには特に好ましくは少なくとも100μmの最小長さを有する。
図1および
図2にそれぞれ示すガラスウエハ10において、開口部2の断面領域3は、それぞれ4つの直線部分31(わかりやすくするため、すべてが図示されているわけではない)によって画定されているため、この場合の断面領域3はそれぞれ矩形の形状を有し、ここでは例示的に角が丸い矩形の形状を有する。しかし、総じて他の断面領域も考えられ、例えば円形セグメントの形態や、開口部2について
図3に例示されているような全般的に多角形の断面領域3も考えられる。わかりやすくするために、ここでは開口部2がそれぞれガラスウエハ10に対して大きめに示されているが、例えばコンパクトな設計の圧力センサなどの小型部品の製造の際には、開口部2を、ガラスウエハ10の寸法に対してより小さくすることが一般的である。開口部2の典型的な等価直径は、例えば1mm未満であり得る。さらに、直線32が示されている。したがって、直線部分31は、直線32の一部であると理解することも可能である。
【0127】
図1~
図3はそれぞれ、複数の開口部2を備えたガラスウエハ10の一実施形態を示す。したがってこれらのガラスウエハ10は、それぞれ開口部2を1つのみ備えたフレーム状のガラスエレメント100を製造するための半製品である。
図1~
図3に示すガラスウエハ10により、高速かつ安価な製造が可能となる。こうすることで、複数の開口部を同時に効率よく製造できるだけでなく、ガラスウエハの例えば取扱いや出荷も容易になるため、有利である。その後、個片化や圧力センサなどの小型部品への組み立てを、必要に応じて顧客自身が行うことも可能である。
【0128】
図4は、開口部2を1つのみ備えたフレーム状のガラスエレメント100の一実施形態の、正確な縮尺ではない概略図を示す。ガラスエレメント100は、板状ガラス基材1を備えており、ガラス基材1は、表面(または主面もしくは面)11と、この第1の表面11に対向するさらなる表面12とを備えている。有利には、ガラスエレメント100またはガラス基材1は、表面11および表面12が通常の製造公差の範囲内で互いに平行になるように形成されていてよい。ガラスエレメント100(またはガラス基材1)は、ここでは水平に配置されているため、この場合、表面11を上面、表面12を下面と呼ぶこともできる。
【0129】
図4において、ガラスエレメント100は、開口部2を通る断面図で示されている。開口部2は側面4を有し、側面4は表面41を有し、表面41は有利には、以下の式
【数9】
により求められる歪度Sskが0でないことを特徴とし、歪度Sskの値は、有利には少なくとも0.001であり、特に好ましくは最大で5であり、有利には歪度の値は、少なくとも0.002、より好ましくは少なくとも0.003、特に好ましくは少なくとも0.004、非常に特に好ましくは少なくとも0.01であり、かつ/または歪度の値は、最大で2.0、特に好ましくは最大で1.5であり、ここで、S
qは、表面の二乗平均粗さ、つまりRMS値を表し、Aは、歪度を求める積分領域の面積を表し、Z(x,y)は、座標x,yにおける表面プロファイルのそれぞれの高さ値を表し、この高さ値は、表面プロファイルの高さ値の算術平均値を基準として示されるものであり、表面プロファイルのある点が平均値より高ければ、対応する値Z(x,y)は正となり、その点が平均値より低ければ、対応する値Z(x,y)は負となり、特に好ましくは、歪度は、側面4の平坦領域、有利には直線部分31に対応する領域431において求められる。ここで、
図4の図示では、領域431が上面図で示されている。これは側面4の一部であり、ここでは直線部分31によって開口部の断面領域が画定されている部分に相当する。
【0130】
図5には、側面4の表面41が、上面図で表面に点を付した形で概略的に示されている。
【0131】
図4に示すガラスエレメント100の側面4は、傾斜している。言い換えれば、側面4は傾斜角を有する、ただし、わかりやすくするため、この傾斜角は
図4には示されていない。これは、開口部2の側面(または側壁)4の傾斜角が、有利にはごくわずかであるためである。
【0132】
図5には、側面4の傾斜角51をより詳細に説明するために、ガラスエレメント100(またはガラスウエハ10)の一部の詳細図が、正確な縮尺によらずに概略的に示されている。ここで、破線5は、理想的には直立した、すなわちガラスエレメント100(またはガラス基材1)の表面11、12に対して直角(角52)に延びる仮想の側壁(図示せず)の延在を示すものである。この線5(これは幾何学的には、辺4、5および110を有する三角形の「高さ」であるとも解釈でき、またガラスエレメント1との関係では、ガラスエレメント1の厚さであるとも解釈できる)と、ガラスエレメント100の(またはガラス基材1の)側壁4とが、角51を成している。この角51は、ここでは傾斜角とも呼ばれる。したがってこの角は、ガラスエレメント100の表面11、12と90°の角をなす理想的には直立した側壁からのずれの大きさを示している。有利には、傾斜角は最大で2°であり、つまり側面4の傾斜はごくわずかである。その結果、開口部2の断面領域3の大きさは、開口部2の高さ方向にごくわずかしか変化しない。ガラスエレメント100の両面11、12において断面領域が通常の製造公差の範囲内で同じである実施形態が好ましい場合もある。しかし、ガラスエレメント100を特にピエゾ抵抗式圧力センサに使用する場合には、ガラスエレメント100の一方の表面において断面領域3の大きさがより大きいと有利となり得る。
【0133】
図6に、例示的な圧力センサ6を、正確な縮尺によらない概略図で示す。圧力センサ6は、断面図で示され、台座60を備えており、台座60は、例えばセラミック材料から形成されていてよい。台座60には、例えばエポキシ樹脂製の接着層63によりガラスエレメント100が固定されている。ガラスエレメント100は開口部2を備え、ここでは側壁4が傾斜しているため、開口部2の断面領域3(図示せず)は、ガラスエレメント1の表面12上よりも表面11上の方が大きい。したがって開口部2のサイズは、圧力センサ6の測定キャビティ600に向かって、またはシリコンダイアフラム62に向かって大きくなっている。圧力センサ6は任意に、もう1つのさらなるシリコンダイアフラム61をさらに備えており、シリコンダイアフラム61は、基準圧力キャビティ601を形成している。
【0134】
図示された例に限定されることなく、本開示による圧力センサ6は、特にピエゾ抵抗式または静電容量式圧力センサとして形成されていてよく、かつ本開示による少なくとも1つのガラスエレメント100を備えることができ、該ガラスエレメント100は、開口部2を備え、その表面は、本明細書に記載の、歪度がゼロでない構造を有する。その際、ガラスエレメント100には、圧力測定用の変形可能なダイアフラムを備えたエレメントが接続されている。好ましい一実施形態によれば、ここでは、変形可能なダイアフラム部610を備えたシリコンエレメントまたはシリコンダイアフラム61が提供されている。特にシリコンダイアフラム61のようなエレメントは、ガラスエレメント100に陽極接合されている。接続の種類にかかわらず、ダイアフラムに接続されたガラスエレメント100の表面は、好ましい一実施形態によれば機械研磨されている。これにより特に、陽極接合による殊に安定した接続が可能となる。陽極接合による接続は、両エレメントの表面同士が直に接続されている、あるいは直に接していることにより識別可能である。結果的に、ガラスエレメント100に接続されたエレメント、例えば特にシリコンダイアフラム61はキャビティ600を備え、このキャビティ600に開口部2が通じている。
【0135】
図7において、方法の一実施形態によるガラスエレメント100またはガラスウエハ10の製造を説明する。
【0136】
ガラスエレメント100またはガラスウエハの製造方法では、板状ガラス基材1の表面11、12のうちの一方に超短パルスレーザ8のレーザ光80を照射する。その際、レーザ光80は、集光光学系81により板状ガラス基材1内に細長い焦点を形成する。このようにして、レーザ光80の入射エネルギーによって板状ガラス基材1の体積内に、その長手方向が板状ガラス基材1の表面11、12に直交するフィラメント状損傷70を生成する。その際、フィラメント状損傷70を生成するために、超短パルスレーザ8により、1パルス、または連続する少なくとも2つのレーザパルスを有するパルスパケットを照射する。レーザ光80の入射点82を板状ガラス基材1上で所定の閉じた線71に沿って誘導することにより、板状ガラス基材1において所定の線71上に隣り合う複数のフィラメント状損傷70が得られる。その際、フィラメント71は有利には、板状ガラス基材1の表面11、12のうちの一方から他方の表面11、12まで延びている。この閉じた線71上の入射点82の操作は、例えば位置決めユニット9により実施することができる。これは、例えば演算ユニット91により制御することができる。合理的なことに、演算ユニット91によりレーザ出力を制御することも可能である。また、複数の演算ユニット91を使用することも当然可能である。
【0137】
さらなる過程では、板状ガラス基材1のエッチングが、少なくとも板状ガラス基材1にフィラメント状損傷70が形成されている領域において液体エッチング媒体で行われ、その際、フィラメント状損傷70を広げてチャネルを形成する。エッチングによりチャネルの直径を広げて、各チャネル間に位置する板状ガラス基材1のガラス状材料を除去する。その結果、各チャネルが一体化して、断面領域3を備えた断面を有する開口部2の境界を成し、その際、断面領域3は、直線部分31によって画定されており、直線部分31は有利には、少なくとも10μm、特に好ましくは少なくとも20μm、またはさらには特に好ましくは少なくとも100μmの最小長さを有し、開口部2は側面4を有し、側面は表面41を有し、表面41は有利には、以下の式
【数10】
により求められる歪度Sskが0でないことを特徴とし、歪度Sskの値は、有利には少なくとも0.001であり、特に好ましくは最大で5であり、有利には歪度の値は、少なくとも0.002、より好ましくは少なくとも0.003、特に好ましくは少なくとも0.004、非常に特に好ましくは少なくとも0.01であり、かつ/または歪度の値は、最大で2.0、特に好ましくは最大で1.5であり、ここで、S
qは、表面の二乗平均粗さ、つまりRMS値を表し、Aは、歪度を求める積分領域の面積を表し、Z(x,y)は、座標x,yにおける表面プロファイルのそれぞれの高さ値を表し、この高さ値は、表面プロファイルの高さ値の算術平均値を基準として示されるものであり、表面プロファイルのある点が平均値より高ければ、対応する値Z(x,y)は正となり、その点が平均値より低ければ、対応する値Z(x,y)は負となり、特に好ましくは、歪度は、側面4の平坦領域、有利には直線部分31に対応する領域431において求められる。
【0138】
所定の閉じた線71は、断面領域3の輪郭を形成する。
【0139】
図7に示し、これに基づいて説明したステップの後にさらに、ガラスエレメントまたはガラスウエハの表面のうち少なくとも1つを研磨することができる。
図8は、複数のフィラメント状損傷70が導入された板状ガラス基材1の上面図である。わかりやすくするために、これらはすべてが図示されているわけではない。フィラメント状損傷70は、この場合は例示的に角が丸くなった矩形の輪郭を形成する閉じた71に沿って施与されるような形態でガラス基材1に導入されている。例示的に
図7に示すガラス基材について、フィラメント状損傷70は4本の閉じた線71に沿って導入されているため、その後のエッチングプロセスにおいて、この場合には4つの開口部を備えたガラスウエハが生じることになるが、当然のことながら、開口部の数は、開口部のサイズ、板状ガラス基材のサイズおよび形状に応じて、特にスペースの有効利用が達成されるように適合させることができる。
【0140】
総じて、フィラメント形成とそれに続くエッチングプロセスとを伴うこのような方法は、このようにして開口部の角でより小さな半径を得ることができるために有利であり、これは、少なくとも1つの直線部分を有する断面領域を製造する場合に特に有利となり得るものである。従来のUSSLプロセスで達成される最小半径は、150μmである。それに対して、記載される本方法では、150μm未満、有利には100μm未満の半径が可能である。角の半径の下限は、総じて20μmであり得る。
【0141】
図9および
図10では、円形の開口部から、断面領域を備えた断面を有する開口部であって、該断面領域は、少なくとも1つの直線部分によって画定されており、該直線部分は有利には、少なくとも10μm、好ましくは少なくとも20μm、またはさらには特に好ましくは少なくとも100μmの該直線部分の最小長さを有するものとする開口部に移行することの利点が、ウエハ占有密度の観点から示されている。
図9の左側の領域の開口部の寸法は500μm×420μmであり、角の半径は90μmである。
図9の右側の領域の開口部の半径は、254.2μmである。流路面積(本例では203,000μm
2)が等しいこと、および開口部の壁から圧力センサの台座の端部までのウェブ幅(この場合、750μm)が等しいことを考慮すると、完全な円形ではない開口部、つまり断面領域が少なくとも1つの直線部分によって画定されている開口部の場合、各台座は横方向に数%小さくなっている。これを6インチウエハに転用した場合も同様に、数%程度より有効なスペースの利用が可能となり(
図10)、コストダウンにつながる。
図9には、さらにパーセンテージの数値も示されている。これらは、
図9に示したガラスエレメントの寸法の場合のガラスエレメントの総面積に関するものである。これは、円形の開口部の場合には5%大きくなる。ガラスエレメントの接合可能または接続可能な領域のみ(つまり開口部の断面領域を差し引いたもの)を考慮した場合、
図9に示す開口部の寸法では、これは、円形の開口部の場合には5.3%大きくなる。
図10には、開口部の形状が円形の場合、
図10の左側の部分に示した断面領域が完全な円形ではない開口部と比較して、それ以外は同じウェブ幅のウエハにおいて実現できる開口部の数が4%減少することを示している。
【0142】
図11および
図12は、例示的な軸対称の圧力センサキャビティの流体力学の演算および対応するモデルを、直立壁を有する円形の台座開口部を使用した場合と、傾斜壁を有する台座開口部を使用した場合とで対比して示すものである。例示的な媒体として、ここでは、層流で流れる実質的に非圧縮性の水が利用される。この水は、30barでキャビティに流れ込み、そこで壁での反射により時間的に不均一に分散する。キャビティダイアフラムの中央および側方の2つの例示的な点AおよびBに、時間的に異なる圧力が加えられる。ここで、完全な圧力均衡が数マイクロ秒以内で行われる。
【0143】
圧力均衡の時間は、第1の近似では開口部の形状(直立壁、または上向きもしくは下向きに傾斜した壁)に関わらず同じオーダーとなる。しかし、非常に高い精度が要求される非常に繊細な圧力測定の場合には、わずかなずれも、時として重大な影響を及ぼすことがある。驚くべきことに、特にわずかに円錐形状を有する構造の場合には、最大圧力に達するまでの時間がより短いことが判明した。一方で、テーパー構造の場合には、完全な圧力均衡に達するまで、より高い圧力変動を引き起こす。
【0144】
また、より迅速に圧力均衡に達することが望ましい場合には、断面が先細状であることに加えて、壁が直立形であっても基本的に断面領域がよりわずかである開口部も有利である。
【0145】
さらに、驚くべきことに、非常に高い周波数を使用した場合、すなわち本例示的ケースのように100kHzを超える周波数の圧力衝撃が加えられた場合、非常に混沌とした状態が発生し得るため好ましくないことが、演算から判明した。このような用途では、開口部の断面形状は、変動を少なくとも低減することができ、好ましくは最小限に抑えることができるものが好ましい。
【0146】
図11の上部には、高さh
siを有する測定キャビティ600の例示的な図が示されている。測定キャビティ600は、ここでは例示的に対称軸線605を中心とした回転対称となるように形成されている。測定キャビティ600の上方領域では、測定キャビティ600は半径r
0を有する。したがって、測定キャビティ600は、ここでは例示的に、測定キャビティの下側半径r
aがr
0よりも大きくなるように、まっすぐな円錐台の形態で形成されている。測定用キャビティ600には、ここでは下方に開口部2の領域が続いている。開口部2の高さh
glは、ガラスエレメント(ここでは図示せず)の厚さに相当する。開口部2は、この場合も同様に軸線605を中心とした回転対称となるように形成されており、したがって、半径r
uを有する円筒体の形状を有する。
【0147】
図11の下部では、開口部2(ここでは図示せず)の構成について3つの異なるケースが区別されている。側面が傾斜していない場合の寸法は、
図11の上部に関して前述したものが適用される。このケースを
図11の左下部分に概略断面図の形で示し、「直立形」とした。
図11の中央下部には、シリコンダイアフラムまたは測定キャビティ(それぞれ図示せず)の方向の開口部の断面領域の半径r
tが半径r
uよりも小さくなるように開口部2(図示せず)の側面が傾斜しているケースが示されている。つまり、ガラスエレメントの、測定キャビティに向いている方の断面領域は、ガラスエレメントの、測定キャビティとは反対側の方の断面領域より小さくなっている。これは、例えば開口部が断面領域を有する断面を有し、該断面領域が少なくとも1つの直線部分によって画定されている場合にも、ここで、また以下で、総じて「円錐形」と呼ばれるものである。最後に、
図11の右下には、逆にr
uがr
tより小さい場合が示されている。これは、断面領域の形状が円形から逸脱している場合にも、例えば開口部が断面領域を有する断面を有し、該断面領域が少なくとも1つの直線部分によって画定されている場合にも、ここで、また以下で、逆円錐形と呼ばれるものである。既に上述したように、演算を考察すると、開口部のいわゆる「円錐形」の実施形態の場合には、例えば、有利には、圧力センサが備えているシリコンダイアフラムの少なくとも1つの点A、Bで最大圧力に達するまでの時間を、開口部の断面領域が一定であるかまたは広がっている場合に比べて有利には少なくとも30%、好ましくはさらには少なくとも40%短縮することすら可能であることが判明した。ここで、このような圧力センサの実施形態は、有利になる場合がある。しかし、逆のケースである「逆円錐形」の実施形態も、この場合には圧力変動が小さくなるため、有利になる場合がある。
【0148】
図13および
図14に、断面形状が円形である開口部の流体力学のシミュレーションを、断面形状が角形の開口部の流体力学のシミュレーションと対比して示す。上部には、この場合にも
図11の上部に相当する円形の断面形状を有する測定キャビティが示されている。一方で、
図13の下部には、開口部または測定キャビティにおいて、断面形状が円形から逸脱しており、すなわち、開口部または測定キャビティが断面領域を有する断面を有し、該断面領域が少なくとも1つの直線部分、ここでは4つの直線部分によって特徴付けられるケースが示されている。
図13の下部において例示的に右側部分の略図から見て取れるように、対応する断面領域の角は、この場合それぞれ丸み付けされている。断面形状が異なるため、ここでは角の丸みを特徴付けるために角の半径R
rのみが示されているが、それ以外では半径ではなく寸法b
a、b
uまたはb
0が示されており、これらは、この場合、測定キャビティの上方の縁部長さの半分(b
0)、測定キャビティの下方(すなわちガラスエレメントの方向)の縁部長さの半分(b
a)、およびガラスエレメントの開口部の縁部長さの半分(b
u)である。ここで、シミュレーションの条件は、
図11および
図12の説明の場合と同じである、しかし、シリコン内のキャビティおよび流入開口部は、どちらも理想的には円形ではなく、すなわち、少なくとも1つの直線の縁部または直線部分31を示す。両モデルとも流動断面積は同じである。
【0149】
図11および
図12での演算と同様に、圧力均衡はマイクロ秒の時間窓で行われる。その際、キャビティ端部の点Bの方が中心部の点Aよりも変動が少なく、このことは、全体として後方反射がより小さいことを意味する。Aでは、開口部が角形でないことの利点が特に顕著であり、すなわち、高周波の変動が大幅に減衰していることにより、高周波の適用をより確実かつ正確に監視することができる。
【0150】
本発明によれば、ここでまた驚くべきことに、幾何学的影響、すなわち開口部の断面形状だけでなく、開口部またはその側壁もしくは側面自体の表面モルホロジーも重要である。驚くべきことに、山および谷の非対称な条件/比率が、上記の混沌とした状態をポジティブに打ち消し得ることを認めることができる。例えば理想的な平滑ではない構造により、乱流成分をもたらすことができる。この乱流成分を形状効果と合致させるか、または狙いどおりに選択すると、圧力の大きさ、飽和および変動という点で、センサキャビティや高感度Siダイアフラムの理想的な圧力印加を生じさせることができる。
【0151】
図15は、測定キャビティ600(それぞれ図示せず)の断面領域603およびガラスエレメント100の断面領域3または3aを正確な縮尺によらずに概略的に示す。
図15のa)には、圧力センサの測定キャビティの断面領域603の上面図が示されている。同様に、開口部2の、この場合は中央に配置された断面領域3が示されている(開口部2は図示せず)。ガラスエレメントの開口部の円形の断面領域3は、ここではキャビティの断面領域603に比べて小さい。また、円形の開口部3の直径に相当する辺長を有する、開口部2(ここでも図示せず)の仮想的な角形の断面領域3aが示されている。断面領域603と3(または603と3a)との差の結果として、自由領域604、すなわち圧力が印加された際に力が作用し得る領域が生じる。
【0152】
図15のb)は、対応する図解を示すが、ただしこの場合、生じる自由領域604が
図15のa)に比べて著しく小さいという違いがある。すなわちこの場合、2つの断面領域603と3と(または603と3aと)の比が、
図15のa)の図解の場合よりも著しく小さくなっている。既に上で説明したように、少なくとも1つの直線部分を有する開口部の有利な構成、例えば開口部の角形の構成や丸み付けされた角の影響が、
図15のb)の場合に特に顕著に現れている。なぜならば、見てわかるとおり、特にこの場合に、円形または丸い断面から少なくとも1つの直線部分を有する断面へと変更することが、結果として生じる自由領域604を減少させるのに特に効果的であるためである。
【符号の説明】
【0153】
1 板状ガラス基材
10 ガラスウエハ
100 ガラスエレメント
11,12 表面
110 三角形の辺
2 開口部
3,3a 断面領域
31 直線部分/直線縁部
32 直線
4 側壁、側面
41 側壁の表面
431 直線部分に対応する領域
5 厚さ
51 角、傾斜角
52 角、直角
6 圧力センサ
60 台座
61,62 シリコンダイアフラム
63 接着層、接着剤
600,601 測定キャビティ
603 キャビティの断面領域
604 生じる自由領域
605 対称軸
610 変形可能なダイアフラム部
70 フィラメント状損傷、フィラメント
71 閉じた線、輪郭
8 レーザ
80 レーザ光
81 集光光学系
82 入射点
9 位置決めユニット
91 演算ユニット
A,B シリコンダイアフラム上の点
hsi シリコンダイアフラムの高さ
hgl ガラスエレメントの高さ
ru シリコンダイアフラムとは反対側での開口部の半径
ra ガラスエレメントに向いた側での測定キャビティの半径
rt 測定キャビティに向いた側での開口部の半径
ro ガラスエレメントとは反対側での測定キャビティの半径
bu シリコンダイアフラムとは反対側での開口部の寸法の半分
ba ガラスエレメントに向いた側での測定キャビティの寸法の半分
bo ガラスエレメントとは反対側での測定キャビティの寸法の半分
Rr 角の半径
【国際調査報告】