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特表2023-534507汚染除去プロセスにおける混合処理の確証
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-09
(54)【発明の名称】汚染除去プロセスにおける混合処理の確証
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/28 20060101AFI20230802BHJP
   A61B 90/70 20160101ALI20230802BHJP
   A61L 2/16 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
A61L2/28
A61B90/70
A61L2/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023503149
(86)(22)【出願日】2021-07-19
(85)【翻訳文提出日】2023-03-15
(86)【国際出願番号】 GB2021051848
(87)【国際公開番号】W WO2022018419
(87)【国際公開日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】2011192.8
(32)【優先日】2020-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511282531
【氏名又は名称】トリステル ピーエルシー
【氏名又は名称原語表記】TRISTEL PLC
【住所又は居所原語表記】Unit 1b Lynx Business Park,Fordham Road,Snailwell,Newmarket,CB8 7NY Great Britain
(74)【代理人】
【識別番号】100079980
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 伸行
(74)【代理人】
【識別番号】100167139
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ブランド,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ジャンセン,エスター
(72)【発明者】
【氏名】スウィニー,ポール
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA12
4C058BB07
4C058DD01
4C058DD13
4C058EE26
4C058JJ01
(57)【要約】
【構成】
二成分系消毒剤システムを使用するプロセスにおける混合処理を検査・確証する方法を開示する。消毒剤システムは担体中に第1試薬を有する第1成分、およびこの第1成分と混和し、かつ担体中に第2試薬を有する第2成分を有する。混合時に第1試薬と第2試薬とが反応し、消毒組成物を生成する。本発明の確証方法では、ユーザーが行う混合処理の作業領域のビデオストリームを取り込み、このビデオストリームを解析し、正確に行われている混合処理に対応するビデオストリーム内の一つかそれ以上の混合事象を確認し、確認された各混事象に基づいて、混合処理が終了したことを判定し、そして混合処理終了の判定時に、対応する指示をユーザーに提供する。この方法では、潜在的なエラーについてユーザーに警告を発することができ、および/または監査証跡を与えるデータを記録することができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体中に第1試薬を有する第1成分、および
前記第1成分と混和し、かつ担体中に第2試薬を有する第2成分を有し、
混合時に前記第1試薬および前記第2試薬が反応して消毒組成物を生成する二成分系消毒システムを使用するプロセスにおける混合処理を確証する方法であって、
前記方法はユーザーが前記混合処理を行う作業領域のビデオストリームを取り込み、
前記ビデオストリームを解析して、正確に実施されている前記混合処理に対応する、前記ビデオストリーム内の一つかそれ以上の混合事象を確認し、
確認された各混合事象に基づいて、前記混合処理が終了したかどうかを判定し、そして
前記混合処理の終了判定時に、対応する指示を前記ユーザーに与えることを特徴とする確証方法。
【請求項2】
前記ビデオストリームを解析する際、トレーニングを受けたニューラルネットワークを使用して、前記混合事象または複数の混合事象の少なくとも一つを確認する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記消毒システムの前記第1成分および/または前記第2成分がこれら第1成分および第2成分の混合時に変色を呈する指示薬成分を有し、前記混合事象または複数の混合事象の一つがこの変色を呈する請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記混合事象または複数の混合事象の一つにおいて前記消毒システムの前記第1成分の所定量を前記消毒システムの前記第2成分の所定量に加える請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記消毒システムの第1成分がディスペンサーに含まれることにより流体として配分可能とされ、前記混合事象または複数の混合事象の一つにおいて、前記ディスペンサーから前記流体を配分する請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記消毒システムの第2成分がワイプに吸収させられるか、あるいは含浸され、そして前記混合事象または複数の混合事象の一つにおいて、前記第1成分を前記ワイプに加えた後、このワイプを折り畳むか丸める請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記混合処理が終了したかどうかを判定する際に、前記混合事象または複数の混合事象の少なくとも一つが実施された累加時間を判定し、この累加時間を所定の最短混合時間と比較する請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項6に従属する請求項7に記載の方法において、前記混合処理が終了したかどうかを判定する際に、少なくとも2つの確認された混合事象に基づいて、(a)前記消毒システムの前記第1成分の前記所定量が前記ワイプに加えられたかどうかを判定し、そして(b)引き続き、前記ワイプが少なくとも前記所定の最短混合時間折り畳まれたか、あるいは丸められたかどうかを判定する方法。
【請求項9】
前記混合処理が終了したかどうかを判定する際に、複数の異なる混合事象が所定のシーケンスで行われたかどうかを判定する請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記混合事象または複数の混合事象の少なくとも一つにおいて、前記第1成分を含有する容器および/または前記第2成分を含有する容器を提供する請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
さらに、前記ビデオストリームを解析する際に、前記混合処理の実行時に発生する潜在的なエラーに対応する前記ビデオストリーム内の一つかそれ以上の警戒を要する事象を確認し、
警戒を要する事象の確認時、対応する警告がユーザーに供される請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記警戒を要する事象または複数の警戒を要する事象の一つが前記第1成分を含有する容器の振動または前記第2成分を含有する容器の振動である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記警戒を要する事象または複数の警戒を要する事象の一つが前記作業領域においてユーザーの両手、前記消毒システムの前記第1成分および/または前記消毒システムの前記第2成分が見えなくなる事象である請求項11または請求項12に記載の方法。
【請求項14】
さらに、警戒の要する事象が確認されたことを電子的に記録する請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記混合処理が終了したことを電子的に記録する請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記システムの前記第1成分および/または前記システムの前記第2成分に関する情報を電子的に記録する請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ビデオストリームを解析する際に、前記ビデオストリーム内において、前記システムの前記第1成分および/または前記システムの前記第2成分に関する前記情報を確認する請求項16に記載の方法
【請求項18】
前記システムの前記第1成分および/または前記システムの前記第2成分に関する前記情報が前記第1成分または第2成分の種類、ロット番号またはバッチ番号、製造日、および使用期限又は有効期限のうちの少なくとも一つに関する請求項16または請求項17に記載の方法。
【請求項19】
二成分系消毒システムを使用するプロセスにおける混合処理を確証する装置であって、
ユーザーによってこの混合処理が行われる作業領域のビデオストリームを取り込むカメラシステムと、
このユーザーにオーディオ表示、テキスト表示および/または視覚的表示を出力する出力デバイスと、
前記ビデオストリームを受け取り、かつ前記混合処理が正確に実施されていることに対応するこのビデオストリーム内の一つかそれ以上の混合事象を確認するように構成された画像解析モジュールと、
確認された各混合事象に基づいて、前記混合処理が終了したかどうかを判定し、かつこの混合処理が終了したことの判定時に前記出力デバイスが前記ユーザーに対して対応する指示を出すバリデータモジュールと、
を有することを特徴とする装置。
【請求項20】
前記画像解析モジュールが、前記ビデオストリーム内の前記の一つかそれ以上の混合事象を認識するように訓練されたニューラルネットワークをベースとする分類子を有する請求項19に記載の装置。
【請求項21】
さらに、前記混合処理が終了したことを電子的に記録する記録モジュールを有する請求項19または請求項20に記載の装置。
【請求項22】
スマートフォンまたはタブレットコンピュータデバイスを有する請求項19~21のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
請求項1~18のいずれかの方法に従って二成分系消毒システムを使用するプロセスにおける混合処理を確証するための請求項19~22いずれか一項に記載の装置の使用。
【請求項24】
担体中に第1試薬を有する第1成分、およびこの第1成分と混和しかつ担体中に第2試薬を有する第2成分を有し、これら第1試薬および第2試薬が混合時に消毒組成物を生成する消毒剤システム、および
この消毒剤システムの使用時における混合処理を確証する請求項19~22のいずれか一項に記載の装置
を有する汚染除去システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
a. 発明の分野
本発明は汚染除去システムの使用時に処理工程を検査・確証(validation)する方法および装置に関する。特に、本発明は臨床環境における医療機器・デバイスおよび表面の消毒プロセスの検査・確証を対象とする。
【背景技術】
【0002】
b. 関連分野
臨床環境における医療機器、表面およびその他の対象物を有効に汚染除去することは患者の安全性を確保するために必須である。この必須条件に対処するために、幾種類かの高度に有効な消毒システムが開発されている。
【0003】
例えばWO 2005/011756には二成分系消毒剤システムが開示されている。この消毒剤システムは担体中に第1試薬を有する第1成分、および第1成分と混和し、担体中に第2試薬を有する第2成分を有する。混合時に第1試薬と第2試薬が反応し、消毒組成物を生成する。好ましい実施態様では、これら2成分の一方は酸性溶液であり、他方の成分は亜塩素酸ナトリウムまたは塩素酸ナトリウムを含有する溶液であり、そして二酸化酸素を有する消毒組成物がこれら二成分の混合時に発生する。活性化剤として知られている第1成分はポンプディスペンサーに容れておくことによって流体として、好ましくは気泡として配分することができ、第2成分は封着した容器内の少なくとも一種の布部材に吸収するか、あるいは含浸する(しみ込ませる)。消毒ティッシュを調製するために、使用者が容器から含浸ティッシュを取り出し、気泡の一部を噴霧器からこのティッシュに加える。気泡およびティッシュ内の試薬の混合を促すために、使用者はティッシュを折り畳んで気泡を包み込むか、折り畳んだティッシュを開ける前にこれを押し潰すか摩擦してもよい。
【0004】
WO 2005/107823には、手で3回拭き取りを行う消毒プロセスを使用する非ルーメン化医療機器の再処置に好適な汚染除去システムが図1に開示されている。実施例として示されているシステムは使用前ティッシュ(pre-clean wipes)のバッグ(sachet)11を含むボックス10、上記のようなディスペンサー14および消毒ティッシュのバッグ16を含む消毒システム12、および殺菌したリンスティッシュのバッグ20を有するボックス18を有する。使用前ティッシュを使用して、汚染を除去すべき内視鏡などの器具の拭き取り処理を行う。(ティッシュに活性体気泡を併用した)二成分系消毒システム12を使用してこの器具を殺菌または消毒し、そして殺菌したリンスティッシュを使用して、化学的残渣がある場合にはこれを除去する。消毒の詳細のすべては付属する監査証跡ブックに記録し、消毒処理を完全に追跡できる。
【0005】
このタイプの汚染除去システムを完全に有効化することを確実に行うために、ユーザーは具体的な工程シーケンスを正確に順守する必要がある。このようなシーケンスの実施例を図2に示す。
【0006】
工程101で、使用前ティッシュ等のワイプ(wipe)をそのバッグ11から取り出す。工程102で、使用前ワイプでの拭き取りを行うが、拭き取りは(ハンドルなどの)最もきれいな部分から始め、(侵襲的な遠位部分などの)最も汚い又は最も汚染された部分に向かう。
【0007】
工程103で、消毒ワイプをそのバッグ16から引き出し、広げてから、工程104でこのワイプに(一般にディスペンサー14を予め設定された回数操作することによって測定した)正確な量の活性体気泡を配分する。工程105で、ワイプを折り畳み、気泡を包み込んでから、予め設定された時間丸めこみ、消毒剤システムの2つの成分を完全に混合する。工程106で、デバイスを活性化した消毒剤ワイプで拭きとる。この場合も拭き取りは最もきれいな部分で開始し、最も汚い部分に向かう。
【0008】
工程107で、バッグ20からすすぎワイプを引き出し、工程108でこのすすぎワイプでデバイスのきれいな部分から汚れた部分に向かって再度ふき取る。
【0009】
工程109で、汚染を除去したデバイスを予め設定された清潔な領域に回すので、このようにしない場合に発生する恐れがあるデバイスの再汚染を防止できる。
【0010】
使用者が何らかのエラーを犯した場合には、汚染除去プロセスの失敗につながる。このようなエラーを例示すると、工程101、103または107のいずれかにおけるバッグ11、16、20の間違った選択、工程102、106または108における間違ったふき取り方向、あるいは速すぎるふき取り、工程104における活性体の不十分な配分量、および工程105における短すぎる丸めこみなどである。
【0011】
このようなエラーを避けるためには、監査証跡ブックや監査証跡ソフトウェアを使用すればよいが、いずれも一般にユーザー入力に依存するもので、工程の一部が正確に実施されたことを直接確証することは容易ではない。
【0012】
上記背景から見た場合、汚染除去プロセス時にユーザー入力への依存性が小さく、かつ汚染除去プロセスにおける工程をより多く直接確証できる処理の確証という技術課題を解決することが望ましい。
【発明の概要】
【0013】
本発明の第1態様は二成分系消毒剤システムを使用するプロセスにおける混合処置を検査する方法を提供するものである。消毒剤システムは担体内に第1試薬を有する第1成分、およびこの第1成分と混和し、かつ担体内に第2試薬を有する第2成分を有し、混合時に第1試薬および第2試薬が反応し、消毒組成物を生成する。本発明方法では、ユーザーが混合処理を行う作業領域のビデオストリームを取得し、このビデオストリームを分析して、混合処理が正確に行われていることに対応するビデオストリーム中の一つかそれ以上の混合事象(mixing event)を確認し、確認された各混合事象に基づいて、混合処理が終了したかどうかを判定し、そして混合処理が終了したとの判定時に、対応する指示をユーザーに示す。
【0014】
この方法の場合、二成分系消毒剤システムの混合処理の確証はビデオストリームの分析によるユーザーアクションの自動化評価に基づくため、混合処理が終了したことをユーザーが正確に確認する際にきわめて効果がある。この方法はユーザーに混合処理が成功裏に終了したことを確実に示すことができ、これによって消毒組成物が最適な効果を発揮し、かつユーザーの信頼が増すことになる。
【0015】
ビデオストリーム分析では、トレーニング済みニューラルネットワークを使用して、混合事象、少なくとも一つの混合事象を確認することが好ましい。適正なトレーニング(訓練)を受けると、ニューラルネットワークはユーザーが混合事象を行っている間これら混合事象を信頼性高くまた迅速に確認できる。
【0016】
消毒剤システムの第1成分および/または第2成分は、第1成分および第2成分の混合時に変色を呈する指示薬成分を有することができる。この場合、画像分析において確認すべき混合事象または複数の混合事象の一つが上記変色を示す。従って、画像分析を通じて変色が完全かつ均質に発生したことを確認でき、混合処理が正常に終了したことを確認できる。
【0017】
画像分析工程で確認した混合事象または複数の混合事象の一つでは、消毒剤システムの予め設定された量の第1成分を消毒剤システムの予め設定された量の第2成分に加える。
【0018】
消毒剤システムの第1成分はディスペンサーに収めてもよく、流体として配分することができる。この場合、混合事象または複数の混合事象の一つで、流体をディスペンサーから配分することができる。消毒剤システムの第2成分はワイプに吸収させるか、あるいは含浸してもよい。この場合、混合事象で、あるいは複数の混合事象の一つで、第1成分のワイプへの処置後にワイプを折り畳むか、あるいは丸めてもよい。このように構成した本方法では、ユーザーがワイプを正確かつ機械的に操作し、このワイプ全体に第1成分を完全に配分しかつ混合したことを確認できる。
【0019】
別な実施例では、消毒剤システムの第1成分および第2成分は個別に、あるいは予め混合した状態で気泡として配分することができ、混合事象または複数の混合事象の一つでは、(撹拌または気泡をワイプへ配分し、このワイプを折り畳むか丸めるなどによる)気泡の混合を行い、および/または混合状態の気泡を滞留させる。
【0020】
混合処理が終了したどうかを判定する際には、混合事象または複数の混合事象の少なくとも一つを行った累加時間を求め、この累加時間を予め設定された最少の混合時間と比較してもよい。例えば、消毒剤システムの第1成分をディスペンサーに収容し、そして第2成分がワイプの場合には、混合処理が終了したかどうかを判定する際には、少なくとも2つの確認された混合事象に基づいて、(a)消毒剤システムの予め設定された量の第1成分がワイプに加えられたかどうかを、そして(b)ワイプが少なくとも予め設定された最短の混合時間折り畳まれたか、あるいは丸められたかどうかを判定することが好ましい。本発明方法では、メモリから予め設定された混合時間を検索するなどして必要な最短の混合時間を判定してもよい。場合にもよるが、必要な最短混合時間を判定する際に、所定の環境温度または他の環境パラメータやシステムパラメータに基づいて最短混合時間を選択するか、あるいは演算してもよい。
【0021】
あるいは別に、またはこれに加えて、混合処理が終了したかどうかを判定する際には、複数の異なる混合事象が予め設定されたシーケンスで行われたどうかを判定してもよい。この異なる混合事象のシーケンスには、例えば、最初に所定量の気泡系の第1成分を第2成分のワイプに配分してから、ワイプを気泡全体に折り畳み、次に予め設定された時間ワイプを丸めるシーケンスがある。混合処理において正しい試薬が使用されていることを確認するために、混合事象または複数の混合事象の少なくとも一つにおいて、第1成分を含有する容器を提供し、および/または第2成分を含有する容器を提供してもよい。
【0022】
混合処理が正しく終了したことを確実に示すことができるだけでなく、本発明方法では、エラーが発生したようだと示すこともでき、このエラーが十分深刻な場合に修正処置を取ることができ、必要に応じて混合処理を中止するか、あるいは混合処理をやり直すことができる。このために、本発明方法では、ビデオストリーム解析時に、混合処理の実行時に潜在的なエラーに対応するビデオストリーム内の一つかそれ以上の警戒的な事象を確認し、警戒的な事象の確認後は、ユーザーに対応する警告を出す。
【0023】
例えば、警戒を要する事象または警戒を要する複数の事象の一つは、第1成分を収めた容器の振動や第2成分を収めた容器の振動である。特に、第1成分および/または第2成分を気泡として配分する場合、気泡の配分前にディスペンサーが振動すると、ディスペンサーの配分動作毎に配分量に悪影響が出る。この場合、容器の振動を止めるようユーザーに警告を出すことができる。警戒を要する事象または警戒を要する複数の事象の一つは、実行しようとする工程に間違った成分を選択することである。この場合には、正しい成分を選択するようユーザーに警告を発することができる。
【0024】
別な実施例では、警戒を要する事象または警戒を要する複数の事象の一つはユーザーの手による作業領域、消毒剤システムの第1成分および/または消毒剤システムの第2成分が見えなくなることである。この場合には、ユーザーにビデオストリームの視野内で混合処理を確実に行うよう指示できる。
【0025】
本発明方法は混合処理に関する情報を電子的に記録する手段をも提供し得る。より具体的には、この方法では混合処理が終了したことを電子的に記録することができる。警戒を要する事象を確認する場合には、警戒を要する事象が確認されたことを電子的に記録することができる。この方法では、消毒剤システムの第1成分および/または消毒剤システムの第2成分に関する情報を電子的に記録することができる。この場合、ビデオストリームを分析する際に、ビデオストリーム内において、消毒剤システムの第1成分および/または消毒剤システムの第2成分に関する情報を確認し、この確認については例えば使用中の担体の確認後機械可読コードを読み取るか、あるいは情報を検索することによって行う。消毒剤システムの第1成分および/または消毒剤システムの第2成分に関する情報としては第1成分または第2成分の種類、ロット番号またはバッチ番号、製造日時、および使用期限または有効期限のうちの少なくとも一つを使用することができる。
【0026】
第2態様によると、本発明は二成分系消毒剤システムを使用するプロセスにおける混合処理を確証する装置にも拡張でき、この確証装置はユーザーが混合処理を行う作業領域のビデオストリームを取り込むカメラシステム、ユーザーにオーディオ表示、テキスト表示および/または視覚表示を提供する出力デバイス、ビデオストリームを受け取りかつ混合処理が正確に実施されていることに対応するビデオストリーム中の一つかそれ以上の混合事象を確認する構成の画像解析モジュール、および確認された各混合事象に基づいて、混合処理が終了したかどうかを判定しかつ出力デバイスが、混合処理が終了したとの判定時にユーザーに対応する指示を与えるバリデータモジュール(validator module)を有する。画像解析モジュールについては、ニューラルネットワークをベースとし、ビデオストリーム中の一つかそれ以上の混合事象を認識できるようにトレーニングした分類子(classifier)を有するのが好ましい。この確証装置はさらに混合処理が終了したことを電子的に記録できる構成の記録モジュールを実装できる。、確証装置はスマートフォンまたはタブレットコンピュータデバイスを実装するのがさらに都合がよい。
【0027】
さらに別な態様では、本発明は、第1態様の方法に係る二成分系消毒剤システムを使用するプロセスにおける混合処理の確証に第2態様に係る装置を適用することにも関する。
【0028】
また、本発明は、担体内に第1試薬を有する第1成分、および第1成分と混和し、かつ担体内に第2試薬を有する第2成分を有し、第1成分と第2成分との混合時に第1試薬と第2試薬とが反応し、二酸化塩素系消毒組成物を生成する消毒剤システム、および消毒剤システムの使用時に混合処理を確証する本発明の第2態様に係る確証装置を有する汚染除去システムに関する。
【0029】
本発明は、活性的な消毒組成物や清浄化組成物を生成するために混合処理が必要な実質的にすべての汚染除去プロセスにおける混合処理を確証するために使用できる。この汚染除去プロセスでも、使用前のステージおよび/または洗浄のステージを使用するなどの他の工程や処理を行うことができ、従って本発明の実施態様は混合処理に加えて関連する処理の一つかそれ以上の確証に拡張することができる。この汚染除去プロセスを使用して、医療器具や医療デバイスの汚染除去処理を実施することができ、この場合本発明の実施態様を使用して、混合処理に加えてデバイスの正確な洗浄処理を確証することができる。
【0030】
他の態様でも、本発明の各態様の好適な、および/または適宜採用する特徴を単独で、あるいは適宜併用して適用することができる。
【0031】
本明細書の文脈に関する限り、“処理を検査・確証する”とは適正な手段によって対象となる処理を行う際に一つかそれ以上の特定工程を採用するか、あるいはこれらを採用しないかを、および/または一つかそれ以上の特定成分を使用したかを確認することを指す。確証対象の処理は必ずしもデバイス、物体や表面を汚染除去処理するプロセス全体を包摂するものではないが、より長い汚染除去プロセスのごく一部のみであってもよい。
【0032】
また、本明細書で使用する“汚染除去プロセス”は物または表面を清浄化し、清浄化準備し、消毒し、殺菌し、洗浄するなどの一連の工程を指し、これら処理作業に使用する材料および成分を調製する工程を含む。本明細書で使用する“汚染除去処理”は汚染除去プロセスの単独工程、より長い汚染除去プロセスの部分セットとしてのこれら工程の併用、あるいは汚染除去プロセスの工程すべてを指すもので、文脈から判断すべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【特許文献1】WO 2005/011756
【特許文献2】WO 2005/107823
【特許文献3】WO 2006/079822 A1
【図面の簡単な説明】
【0034】
例示のみを目的として、添付図面を参照して以下本発明の実施態様を説明する。なお、図中同じ参照符号は同じ部分を指す。
図1図1には本発明の実施態様を適用する公知の汚染除去システムを示す。
図2図2には図1のシステムを使用する汚染除去プロセスにおける一連の工程を示す。
図3図3には汚染除去処理の確証装置を示す。
図4-12】図4図12には医療デバイスの汚染除去プロセス時に生じる事象を示すビデオストリームから取り込んだ画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の実施態様は、ユーザーが汚染除去プロセスを実施する際に行う必要がある各種処理または各種工程を自動的に、あるいは半自動的に検査・確証する方法および装置を提供するものである。以下に、図1および図2を参照して説明する汚染除去システムおよび対応する汚染除去プロセスの実施例を示す。なお、本発明の実施態様は他の汚染除去システムおよびプロセスにも同様に適用可能である。
【0036】
図3は、処理の検査・確証装置を示す概略図である。この実施例では、確証装置は作業領域34のビデオストリームを取り込むカメラシステム32を備えた携帯式デバイス30を有する。
【0037】
このカメラシステム32が画像解析モジュール36にビデオストリームを出力する。以下に詳しく説明するように、画像解析モジュール36がビデオストリームを解析し、所定の事象または作用が作業領域内でいつ生じたのかを確認する。画像解析モジュール36が対応する事象データをバリデータ(validator)モジュール38に出力する。
【0038】
バリデータモジュール38が受け取った事象データを解析し、所定の処理が正しく終了したかどうかを、あるいは何らかの潜在的なエラーが発生しつつあるのかどうかを判定する。このような判定後、バリデータモジュール38によってディスプレー40がユーザーに対応する指示を与える。また、バリデータモジュール38がラウドスピーカ出力やヘッドフォン出力などのオーディオ出力(図示省略)を介して指示を与えてもよい。
【0039】
また、バリデータモジュール38はメモリ42にデータを記録する構成である。このように構成すると、バリデータモジュール38がメモリ42に、一つかそれ以上の処理が正しく終了したことを、および/またはビデオストリーム中に一つかそれ以上の潜在的なエラーが認められたことを記録できる。
【0040】
この記録された事象情報については、ユーザーの氏名や他のユーザーの詳細、患者の詳細、処理を行っている位置、デバイスの種類、汚染除去を行っている表面や他のアイテム、デバイスの通し番号、あるいはバッチ番号やロット番号、製造日時、有効期限データなどの汚染除去システムおよび構成部分の詳細などの補足情報に相関させてもよい。このような補足的な情報については、好適なインターフェース(図示省略)、一般的にはタッチスクリーンを介してユーザーが入力してもよく、カメラに呈示されたバーコードやマトリックスコードを読み取ることによって取り込み、あるいはビデオストリームの解析によって決定・判定してもよい。後者の場合、例えばバリデータモジュール38は汚染除去システムに使用する各種成分を収めた容器(即ちバッグ11、16、20およびディスペンサー14)を認識するように構成してもよく、またバリデータモジュール38は確認された各容器に対応する記憶された成分種類情報を検索し、かつ記録された事象情報とともにこの情報を記録できるように構成することができる。
【0041】
このように構成すると、メモリ42がこれに保存され得る汚染除去プロセスの部分的な、あるいは完全な監査証跡を記憶し、次にこれを検索し、および/または記録を保持するサーバまたは他のデバイスに好適な通信プロトコルまたはネットワークに伝達することができる。
【0042】
本発明装置については、スマートフォンやタブレットコンピュータなどの自己完結式の携帯デバイス30として構成することができる。通常使用されているスマートフォン、タブレットコンピュータや同様なデバイスは、本明細書に記載する方法を実施する好適な指示を実行できる構成のプロセッサとともに既にカメラシステム、データ保存装置、ディスプレー、オーディオ出力装置やネットワークに接続できる通信デバイスなどを実装しているのが好ましい。従って、画像解析モジュール36およびバリデータモジュール38については、プロセッサによって実行できるソフトウェアで実施するのが好ましい。ソフトウェアについては、デバイスのオペレーティング システム環境内で動作するインストール可能なアプリケーションとして組み入れることができる。画像解析モジュール36および/またはバリデータモジュール38についても、デバイス30が通信できる構成のクラウドベースのサービスによってすべてを、あるいは一部を構成することができる。
【0043】
カメラシステムの場合、一つか複数のカメラを備えることができ、(サーマルカメラや深度カメラなどの)非可視光カメラを使用して、補足データを画像解析モジュール36に送ることが考えられる。
【0044】
デバイス30については、カメラ装置32を作業領域34に向けた状態で好適なスタンドに取り付けるのが好ましく、ユーザーが両手を自由に使って汚染除去プロセスを実施できる。なお場合にもよるが、プロセスの一部または全部を通してデバイス30を手で保持することも可能である。
【0045】
画像解析モジュール36の場合、ビデオストリームを解析するために任意の好適な方法を使用できるが、機械学習アプローチを使用するのが好ましい。例えば、画像解析モジュール36の場合、(畳み込み型ニューラルネットワークおよび/または再帰型ニューラルネットワーク等の)トレーニング済み人工ニューラルネットワークを利用して、フレーム毎に、あるいは複数のフレームをまたいで作業領域34に現れるか発生するものおよび処置を確認し、分類し、あるいは特徴づけることができる。確認すべき事象のビデオ映像および/または複数バージョンの画像を使用してネットワークをトレーニングすることによって教師あり学習(supervised learning)を簡単に利用できる。半教師あり学習、アクティブラーニングおよびユーザーフィードバック入力を使用しても精度の継続的な改善を達成できる。複数の実施態様では、これらのアプローチを使用してニューラルネットワークを改良でき、具体的なユーザーおよび/または具体的な環境または作業領域に応じて精度を改善できる。
【0046】
機械学習をベースとするビデオ解析の分野に従事する当業者は各種の好適なニューラルネットワークに精通しているため、これ以上詳しく説明しない。一つの好適なニューラルネットワークアーキテクチュアはMobileNetをベースとするもので、ビデオストリームからフレームワイズ機能を抽出する畳み込み型ニューラルネットワークを構成する。これにLTSM(長・短期記憶)再帰型ニューラルネットワークを併用すると、一時的な情報(即ちフレーム間の動き)を集合できる。考えられる他のネットワークにはツーストリーム畳み込み型ニューラルネットワークがある。
【0047】
なお、本発明の各実施態様では、画像解析モジュール36は比較的少数の異なる事象を確認する場合にのみ必要で、バリデータモジュール38によって対象の処理が正しく実施されたかどうかを、あるいは潜在的なエラーが発生したかどうかを正確に判定できる。
【0048】
画像解析モジュール36によって確認した事象の一部は、正確に実施された汚染除去処理における一つの工程に対応するものと考えることができる。このような“汚染除去事象”の実例には正しい成分を採取すること、消毒剤システムの二成分の正確な混合、汚染除去成分の正確な方法でのデバイスへの供給などが含まれる。事象のうちの他のものはユーザーが犯しつつある潜在的なエラーに対応するものと考えられる。このような“警戒の要する事象”の例には処理の具体的な段階における間違った成分の選択、あまりにも速いデバイス洗浄速度、あるいは間違ったデバイス洗浄方向、二成分系消毒剤システムの一方の成分の誤った量を他の成分へ配分すること、二成分の不正確な混合または不十分な混合時間、使用前のディスペンサーの振動、汚染除去前に作業領域の指定された汚れのない部分へのデバイスの配置や汚染除去後の作業領域の指定された汚れた部分へのデバイスの配置、手袋および/またはその他の保護装置の非着用などがある。
【0049】
ニューラルネットワークについては、マルチタスク学習環境において確認すべき事象やタスクのすべてを対象としてトレーニングを行う。各事象やタスクの特徴付けについては、結果の階層表現を使用することができる。例えば、バッグに収めた成分の種類を検出するタスクはバッグの観察に基づく。このようにすると、結果については強制的に一致することになる。
【0050】
確認すべき事象のすべてをカバーするトレーニングデータセットについては、使用時に期待される変動の主な原因を反映する好適な変動をもつ同じ事象を示す複数の事例を始めとする、事象が分類される複数のデモビデオから生成することができる。このような変動にはカメラの変動、ポートレートや風景の配向変動、カメラの傾き変動、カメラと作業領域との距離の変動、背景色および背景素材の変動、照明色の変動、照明源の変動、照明強度の変動、照明方向の変動、手袋の色変動、ユーザーの皮膚の色変動、ジェンダー変動、成分使用時の利き手および使用効率の変動などがある。例えば輝度、異なる光条件、水平フリップおよび垂直フリップに変動性を導入してカメラの向きをシミュレートし、かつシアリングおよび回転に変動性を導入してカメラの傾きをシミュレートするために、さらに別な変動性をデータ拡張によって合成できる。以降のテストを目的として、例えば異なるユーザーおよび/または上記変動の異なる設定をもつ異なるデモ動画をトレーニングデータセットのデモ動画と比較するテストデータセットを使用することができる。
【0051】
ラベルのない処理の学習を容易にするために、自己教師あり学習アプローチを付加できる。たとえば、正確な処理を示すビデオでのフレーム順をシャッフルしてから、ネットワークにトレーニングを施し、元のフレーム順を認識させることができる。自己教師あり学習の他の例にはイメージインペインティング(image inpainting:画像の一部を取り出し、これを再構成するようにネットワークにトレーニングを施し、物/医療デバイスの構造を学習させる)、および画像の再着色(モデルに混合時の色変化を学習させ、および/またはバッグやその他の容器の予期される色を学習させる)がある。
【0052】
画像解析モジュール36が確認された汚染除去事象および確認された警戒の要する事象をバリデータモジュール38に出力する。バリデータモジュール38が、画像解析モジュール36の出力が必要な処理に特定的な汚染除去事象(複数の場合もある)が生じたことを示した場合に、処理における各工程が正確に実施されたと判定することができる。このために、バリデータモジュール38は有限状態機械か、あるいは隠れマルコフモデルを使用して、画像解析モジュール36から出力された事象のフレームワイズ予測を当該処理において実行された工程シーケンスのグロバール評価に転換できる。当該処理を正確に実施するために一つかそれ以上の事象が必要な場合には、必要な事象のすべてが発生し、しかもこれら事象が正確な順で発生したことをバリデータモジュール38がチェックできる。バリデータモジュール38の場合、警戒を要する事象が発生しなかったこともチェックでき、あるいは確認された警戒の要する事象に対応するエラーがその後に(例えば直後の対応する汚染除去事象などによって)修正されたこともチェックすることができる。警戒を要する事象の一部としては直ちに修正できるエラー、例えば正しくない成分の選択、ユーザーの手指や汚染除去システムの一部が見えなくなるか、あるいは視野の外に出る事象を挙げることができ、また間違った成分のデバイスへの供給などの事象が生じた場合には、汚染除去プロセスを再開する必要がある。
【0053】
メモリ42に監査証跡の一部としてこれら結果を記録できるだけでなく、デバイス30はグラフィカル表示および/またはテキスト表示をディスプレー40に再生することによって、および/またはデバイスのオーディオ出力を介して音および/またはスピーチを再生することによってユーザーに直接フィードバックを提供でき、有利である。このように構成するため、特定の処理の各工程が正確に実施されている場合には、ユーザーに指示を与えて、この工程が終了したかを、そしてデバイス30がこの事実を記録したかの両者を確認できる。同様に、潜在的なエラーが発生し、警戒を要する事象が生じた場合には、適正な補正を行うことを適正な指示によってユーザーに促すことができる。
【0054】
また、デバイス30はディスプレー40および/またはオーディオ出力を使用して、行うべき次の工程に関するプロンプトまたは指示を提供することによってユーザーに処理を案内できる。例えば、バリデータモジュール38は特定の汚染除去処理事象の確認後に表示すべき処理の次の工程に関する指示を出すことができる。あるいは、ある具体的な処置を特定時間実施する必要がある場合には、この処置を示す事象の確認時に、バリデータモジュール38はタイマーを表示し、ユーザーを案内することができる。
【0055】
このようにバリデータモジュール38の動作を可能にするために、特定な各処理に関する好適な処理データをメモリ42に保存できる。この処理データとしては、例えば、所要事象およびこれら事象の実施順のリスト、個々の工程に対して予め設定された時間やその他のパラメータ、および潜在的なエラーに対応する考えられる警戒事象のリストを挙げることができる。バリデータモジュール38が確認された汚染除去事象および警戒事象を記憶された処理データと比較し、処理の各工程が正しく行われたことを、あるいはエラーが発生したかを判定でき、予期される次の工程に関する情報を検索し、カウントダウンタイマーの開始などの指示や処置の表示をトリガーする。メモリ42には複数の考えられる処理の処理データセットを保存することができるため、バリデータモジュール38が行われている処理に対してどの処理データセットが適切であるかを選択できる。処理データとしては、温度や湿度などの環境要因を補償するパラメータを調節できる補正などを挙げることができ、これらパラメータについては好適なセンサを使用してデバイス30が判定してもよく、および/またはユーザーが入力してもよい。
実施例1
【0056】
以下の実施例に、図1に示す型式の汚染除去システムを使用した医療デバイス用の汚染除去プロセスを確証するためにデバイス30を使用する例を示す。医療デバイスとしては、例えば内視鏡、鼻内視鏡、経膣プローブなどを例示でき、いずれも近位ハンドル部および遠位侵襲端部を備える。図4図12にカメラシステム32によって取り込んだ例示的なフレームを示す。この場合、カメラ32は作業領域の上に位置する。理解の一助として、画像解析モジュール36からの出力を各画像の上部左隅に示す。
【0057】
工程1
まず、汚染除去対象の医療デバイスの型式を確認し、かつ記録する。これについては、デバイスの作業領域への配置時にビデオストリームの画像解析によって自動的に行える。この場合、ユーザーを促して医療デバイスの型式が正しく認められたことを確認させる。あるいは、ユーザーが例えば所定のオプションのリストから選択することによって、医療デバイスの型式をユーザーが入力してもよい。
【0058】
工程2
デバイスの固有な通し番号を取り込み、かつ記録する。上記と同様に、画像解析によって、例えばバーコードまたはマトリックス(QR)コードを取り込むか、あるいはテキストを直接読み込むことによって行える。あるいは、ユーザーが通し番号を入力してもよい。一旦取り込んだ後は、通し番号をチェックし、当該型式のデバイスに妥当であるかを確認する。
【0059】
工程3
デバイス30がプロンプトを呈示し、ユーザーに使用前洗浄(pre-cleaning)ワイプの用意を促す。
【0060】
工程4
デバイス30が適切な使用前洗浄成分が使用されているかを確認かつ認証する。画像解析モジュール36が汚染除去事象として、承認済みの、使用前洗浄ワイプバッグがユーザーによってカメラに呈示されている間に作業領域内にこれが存在していることを確認する。使用前洗浄ワイプバッグはプロセスの後半で使用するバッグとは異なる色のインディシアによって識別できるため、画像解析モジュール36によって各種のバッグを識別できる。予定した使用前洗浄ワイプバッグに対応しないバッグが呈示された場合には、警戒を要する事象の発生とみなし、デバイス30が間違ったバッグが選択されたことを表示する。この確認されたバッグの種類については、好適な使用前洗浄成分やユーザー入力システムに保存されているストックリストと照合してもよい。使用前洗浄成分の存在については、場合に応じてバッチ番号や使用期限などを成分種類などの情報とともに、記録する。
【0061】
工程5
画像解析を使用して、デバイスの近位ハンドル部およびデバイスの侵襲的な遠位端部を確認する。
【0062】
工程6
デバイス30がプロンプトを表示し、ユーザーにデバイスの使用前洗浄の開始を促し、そして次にビデオストリームをモニターし、警戒を要する事象をモニターする。例えば、使用前洗浄をよりきれいな近位ハンドル部ではなく、より汚い侵襲端部から開始する場合には、あるいはワイプの移動方向が間違った方向にある場合には、エラーが表示されることになる。同様に、ユーザーが行う使用前洗浄速度が速すぎるか、あるいは使用データ用の予め設定された成分特定指示に従っていない場合にもエラーが表示されることになる。
【0063】
工程7
画像解析モジュール36が、デバイスが警戒を要する事象を確認することなく、成分に特定なユーザー指示に従ってきれいな部分から汚れた部分まで洗浄されたことを確認した場合には、デバイス30がユーザーに承認を与える。
【0064】
工程8
デバイス30がユーザーに消毒ワイプを準備することを促す。
【0065】
工程9
デバイス30が適正な消毒成分を使用すべきことを確認かつ認証する。上記工程4と同様に、画像解析モジュール36が汚染除去事象として、承認済みの、消毒ワイプバッグがユーザーによってカメラに呈示されている間に作業領域内にこれが存在していることを確認する。これについては図4に示す通りである。予定した消毒ワイプバッグに対応しないバッグが呈示された場合には、警戒を要する事象の発生とみなし、デバイス30は間違ったバッグが選択されたことを表示する。この確認されたバッグの種類については、好適な使用前洗浄成分かユーザー入力システムの保存されているストックリストと照合してもよい。さらに消毒成分を事前に使用した使用前洗浄成分と相互参照チェックし、両者が共に使用可能であることを確実にする。消毒ワイプの存在については、場合に応じてバッチ番号や使用期限などを成分種類などの情報とともに、記録する。
【0066】
工程9A
デバイス30が適正な消毒活性体を使用すべきことを確認かつ認証する。ここで、画像解析モジュール36が汚染除去事象として、活性体気泡の、承認済みディスペンサーの作業領域がユーザーによってカメラに呈示されている間に作業領域内にこれが存在していることを確認する。上記工程9と同様に、この工程でも同じ照合を活性体成分に行ってもよい。
【0067】
工程9B
デバイス30がユーザーに活性体気泡をワイプに処置することを促し、次に以下の事象についてビデオストリームをモニターする。
(a)消毒剤ワイプをバッグから取り出し、作業領域で可視化する(図5を参照)。
(b)気泡の2つのアリコートが既にワイプに加えられている(本実施例では、2つのアリコートは一枚のワイプに加えられる正確な量に対応する)。図6にディスペンサーからワイプに気泡を配分する工程の確認作業を示し、図7にワイプ上の2つの気泡アリコートを示す。
(c)ワイプが既に折り畳まれ(図8)かつ丸められ(図9)、消毒組成物を確実に完全活性化する少なくとも最短時間ワイプ全体に気泡を配分する。
(d)ワイプが既に開いた状態にあり、見た目に均質であり、使用準備が整っている(図10)。
【0068】
各事象の確認後、デバイス30がこの事象を記録し、対応する工程が正しく終了したことの認証を表示し、そしてユーザーに次の工程を行うことを促す。気泡の必要以上に少ないか多いアリコートが配分されているなどの何らかのエラーが生じた場合には、ユーザーに警告が呈示される。場合にもよるが、ポンプがその度に正しく作動したことを確認するために、各アリコートの大きさを照合する。
【0069】
工程10
画像解析を再び使用して、デバイスの近位ハンドル部およびデバイスの遠位侵襲端部を確認する。
【0070】
工程11
デバイス30がプロンプトを表示し、ユーザーにデバイスの消毒を開始することを促し、ビデオストリームをモニターし、警戒を要する事象が発生しているかを調べる。図11に消毒ワイプがデバイスに配置されていることの確認作業を示す。消毒がデバイスの近位ハンドル部分の代わりに侵襲端部から始まっている場合か、あるいはワイプの移動方向が間違った方向にある場合には、エラーが表示されることになる。同様に、ユーザーが行う消毒の速度が速すぎるか、あるいは使用データ用の予め設定された成分特定指示に従っていない場合にもエラーが表示されることになる。
【0071】
工程12
画像解析モジュール36が、消毒ワイプが医療デバイスのすべてを処置した時点を確認する。次に、デバイス30がカウントダウンタイマーを表示し、消毒プロセスの接触時間のカウントダウンを開始する。拭き取りプロセス時に、この拭き取りが停止または中断し、あるいはデバイスの長さに沿って均一な速度で行えなかった場合には、あるいはワイプがデバイスから外れた場合には、エラーが表示されることになる。同様に、カウントダウン時に、ユーザーがデバイスに触れた場合にも、あるいは(ワイプなどの)他のアイテムがデバイスに触れた場合にもエラーが表示されることになる。
【0072】
工程13
画像解析モジュール36が消毒の具体的なユーザー指示に従ってデバイスがきれいな部分から汚い部分まで消毒されたことを確認し、そして警戒を要する事象が発生せずに、必要な接触時間が認められた場合には、装置30がユーザーに認証を与える。
【0073】
工程14
使用前洗浄/消毒段階で使用した消毒成分の最後のすすぎが必要ない場合には、デバイス30が、消毒プロセスが終了したことを表示することになる。予め設定されたパラメータが使用した消毒成分のすすぎが必要であると指示した場合には、デバイス30が工程15に移ることを促す。
【0074】
工程15
すすぎが必要な場合には、デバイス30がユーザーにすすぎワイプを準備することを促す。
【0075】
工程16
デバイス30が適切なすすぎワイプを使用すべきことを確認かつ認証する。画像解析モジュール36が、消毒事象として、作業領域内に認証されたすすぎワイプバッグの存在がユーザーによってカメラに呈示されている間にこの存在を確認する。予期したすすぎワイプバッグに対応しないバッグが呈示された場合には、警戒を要する事象の発生とみなし、デバイス30が間違ったバッグが選択されたことを表示する。この確認されたバッグの種類については、好適なすすぎ用成分やユーザー入力システムの保存されているストックリストと照合し、かつこの工程の前の工程で使用された使用前洗浄/消毒剤ワイプへの適合性もチェックしてもよい。すすぎ成分の存在については、場合に応じてすすぎ成分の種類およびバッチ番号や使用期限などの情報とともに、記録することができる。
【0076】
工程17
再度同様に、画像解析を使用して、デバイスの近位ハンドル部およびデバイスの遠位侵襲端部を確認する。
【0077】
工程18
デバイス30がプロンプトを表示し、ユーザーにデバイスのすすぎを開始することを促し、次に警戒を要する事象の発生についてビデオストリームをモニターする。例えば、よりきれいな近位ハンドル部ではなく侵襲端部からすすぎが開始した場合や、ワイプの進行方向が間違った方向にある場合には、エラーが表示されることになる。
【0078】
工程19
画像解析モジュール36が、警戒を要する事象が認められることなく、消毒の具体的なユーザー指示に従ってデバイスがきれいな部分から汚い部分まですすがれたことを確認した場合には、デバイス30がユーザーに承認を与える。
【0079】
工程20
プロセスの最後で、デバイス30が(必要ならばユーザーによって)プロセスが成功したとの検査コードを出し、メモリ42にプロセスの詳細を記録する。デバイス30が、再消毒が必要になる前に推奨保存期間を記録することも可能である。
【0080】
上記工程における画像解析操作はカメラの視野内で処理が実施されることを前提とする。従って、工程の全部を通して、図12に示すように、ユーザーの手指が隠れるためか、あるいは可視領域外にあるためにユーザーの手指がビデオストリーム内において見えなくなった場合には、デバイス30がエラーを表示することになる。
【0081】
以上の工程で、“承認”された成分は、この成分が意図する用途に使用でき、この意図する用途のユーザーの施設によって承認され、および/または医療デバイス製造者によって承認された成分を指す。
実施例2
【0082】
本実施例では、二成分系消毒剤システム12は、一方の成分または両成分に、これら二成分混合時に変色を呈する構成成分を有する。この変色はビデオストリーム内で確認できるため、消毒剤システム12の両成分が完全に混合したことを確証できるだけでなく、実施例1の工程9Bに記載した物理的な混合プロセスを確証できる。
【0083】
以下に、本実施例における活性化消毒ワイプの正確な準備に関連する確証工程を示す。
【0084】
工程1
消毒ワイプバッグを確認し、適性をチェックし、そしてユーザーに認証を与える。
【0085】
工程2
活性体気泡ディスペンサーを確認し、適性をチェックし、そしてユーザーに認証を与える。
【0086】
工程3
バッグからの取り出し時に非活性化状態にあるワイプを確認する。この段階で、ワイプが正確な開始時の色を有していない場合には、エラーが表示される。
【0087】
工程4
気泡のワイプへの供給を確認し、場合に応じて、気泡アリコートの正確な数を確認する。
【0088】
工程5
ワイプが正確な時間折り畳められ、かつ丸められたことを確認する。
【0089】
工程6
丸めた後、消毒ワイプが正確な変色後の色を有していることを確認し、かつこの色がワイプ全体で均質であることを確認する。
【0090】
また、変色のみを使用して、消毒剤システムの両成分が完全に混合したことも確証できる。この場合、工程4および工程5は省略できる。
【0091】
なお、必ずしも上記実施例に記載した工程すべてを、画像解析モジュール36によって事象として確認する必要はなく、また確証モジュール38によってデバイス30におけるそれぞれのプロセスを高い信頼度で確証する必要はない。本発明の実施態様では、一部の工程については確認作業を省略できる。同様に、これら実施例で言及しなかった補足的な工程については確証方法において確認しかつ使用することができる。
【0092】
以上の実施例は、本発明によって確証できる汚染除去プロセスを例示することのみを目的とし、多くの態様で展開できる。
【0093】
例えば、WO 2006/079822 A1には気泡促進剤を添加して水性担体に第1試薬および第2試薬を担持し、システムの第1成分および第2成分をそれぞれ第1気泡および第2気泡として配分する消毒システムが記載されている。第1気泡および第2気泡を混合して消毒組成物を発生し、次にこの組成物を消毒すべきアイテムや表面に直接供給するか、あるいはワイプによって供給する。第1気泡および第2気泡については、個別に配分してもよく、あるいは手で混合することができる。あるいは配分時に予め気泡を混合するディスペンサーから同時に配分してもよい。このようなシステムの場合、確証プロセスでは各気泡ディスペンサーを確認し、好適な量の気泡(あるいは適用可能な場合には、予め混合した気泡)を配分し、(気泡を予め設定された時間撹拌するか、あるいはワイプ上の気泡を押し潰すなどして)手による混合プロセスが実施されたことを確認し、混合された気泡が使用前に予め設定された時間滞留したことを確認し、および/または気泡を個別に、あるいは混合形態でティシュまたは他の基体に適用する。上記の実施例2と同様に、一方の成分または両成分は両成分混合時に変色を呈する構成成分を含有していてもよい。この場合、確証プロセスでは混合後、混合された気泡が正確な変色後の色を有していることを確認し、そしてこの色が気泡内で均質であることを確認する。
【0094】
既述のように、実施例1のプロセスでは、用途により必要ない場合にはすすぎステージを省略することができる。この場合には、使用前洗浄ステージ/消毒ステージのみを使用すればよい。消毒ステージおよびすすぎステージのみを使用し、使用前洗浄ステージを省略することも考えられる。2つの異なる成分を使用する少なくとも2つのステージを使用する場合には、確証プロセスは使用する各成分を確認する工程、およびこれらステージが正しい順番で使用されていることを確認する工程を有する。
【0095】
上記のアプローチを使用して、単独ステージの消毒プロセスまたは汚染除去プロセスを確証することも可能である。例えば一部の用途では、洗浄用の、あるいは消毒用のワイプのみを使用して、必要な汚染除去度を達成することができる。このような場合、ワイプが医療デバイスやその他の機器(例えば実施例1の工程10~13に記載したような)医療デバイスやその他の機器に正確に貼着したことを判定することに確証プロセスを集中させてもよい。なお、場合にもよるが、ワイプの正確な貼着は上記と異なっていてもよい。例えば、近位ハンドル部から作業を行う遠位部に向けて拭き取る必要がない場合もあり、このような場合、確証プロセスによって例えば医療デバイスの全面に、あるいは特定の領域に貼着したことを判定してもよい。
【0096】
WO 2005/011756に記載されている二酸化塩素系の消毒システムなどの二成分系消毒システムを使用する場合、消毒システムの二成分の正確な混合を確実に行う工程を確証することが有益である。なお、用途にもよるが単一成分系消毒組成物を使用した方が適切なこともあり、本発明の要旨ではないが、成分の正確な選択やデバイスの正確な洗浄などの他の処理工程を確証することも可能である。単一成分系消毒組成物は限定するわけではないが、過酸化水素、過酢酸、次亜塩素酸、ペルオキシ酸、第4級アンモニウム化合物などを含有することができる。
【0097】
以上記載してきた方法および装置はワイプを使用する汚染除去プロセスの確証に限定されるものではない。実質的にすべての成分例えば気泡、液体、噴霧組成物や粉体は上記汚染除去プロセスに実質的に任意の組み合わせで使用でき、また上記方法および装置を使用してこれらを確証できる。例えば、成分容器の確認に基づく確証も可能である。また、画像解析モジュールをトレーニングして、医療デバイスへの気泡または液体成分の噴霧や医療デバイスの液体の容器への浸漬などの処置を確認および検証することも可能である。
【0098】
以上の実施例は医療デバイスの汚染除去に関しているが、本明細書に記載する確証アプローチはカメラシステムの視野内に簡単には設置できない表面やアイテムの汚染除去にも適用できる。このような場合には、例えば正確な成分や成分シーケンスの選択、および/または二成分系消毒剤システムの正確な混合を行うために確証を実施できる。
【0099】
上記に明示的に記載していないさらなる変更なども特許請求の範囲に記載した本発明の範囲から逸脱しなくても実施可能である。
【符号の説明】
【0100】
10 ボックス
11 バッグ
12 二成分系消毒剤システム
14 ディスペンサー
16 バッグ
18 ボックス
20 バッグ
30 携帯式デバイス
32 カメラシステム
34 作業領域
36 画像解析モジュール
38 バリデータモジュール
40 ディスプレー
42 メモリ
101 工程
102 工程
103 工程
104 工程
105 工程
106 工程
107 工程
108 工程
109 工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】