(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-09
(54)【発明の名称】レーザ生成乾燥エアロゾルを使用したジェット印刷
(51)【国際特許分類】
B22F 3/115 20060101AFI20230802BHJP
C23C 26/00 20060101ALI20230802BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20230802BHJP
B22F 12/50 20210101ALI20230802BHJP
B22F 10/366 20210101ALI20230802BHJP
B22F 10/36 20210101ALI20230802BHJP
B22F 10/25 20210101ALI20230802BHJP
B22F 3/105 20060101ALI20230802BHJP
B33Y 10/00 20150101ALN20230802BHJP
B33Y 30/00 20150101ALN20230802BHJP
【FI】
B22F3/115
C23C26/00 E
B22F1/00 L
B22F1/00 K
B22F1/00 N
B22F1/00 R
B22F12/50
B22F10/366
B22F10/36
B22F10/25
B22F3/105
B33Y10/00
B33Y30/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023503993
(86)(22)【出願日】2021-07-08
(85)【翻訳文提出日】2023-03-17
(86)【国際出願番号】 EP2021069080
(87)【国際公開番号】W WO2022017824
(87)【国際公開日】2022-01-27
(32)【優先日】2020-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520160657
【氏名又は名称】ザ プロボスト フェローズ スカラーズ アンド アザー メンバーズ オブ ボード オブ トリニティ カレッジ ダブリン
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100217412
【氏名又は名称】小林 亜子
(72)【発明者】
【氏名】ロッコ ルポイ
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ ルーニー
【テーマコード(参考)】
4K018
4K044
【Fターム(参考)】
4K018AA02
4K018AA03
4K018AA14
4K018AA40
4K018BA01
4K018BA02
4K018BA08
4K018BA20
4K018CA44
4K044BA01
4K044BA06
4K044BA08
4K044BA10
4K044BA11
4K044BA18
4K044BA21
4K044BB01
4K044BB10
4K044BB11
4K044CA41
4K044CA71
(57)【要約】
乾燥ナノ粒子のマスクフリー印刷方法であって、レーザアブレーションシステムを大気圧で使用して大気ガス流中の供給材料から乾燥ナノ粒子ストリームを発生させることを含み、乾燥ナノ粒子ストリームは流体キャリア媒体によって汚染されておらず、流体キャリア媒体によって汚染されていない乾燥ナノ粒子は、ノズルを通してガス流により乾燥状態で基板に案内され、基板に付着する、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥ナノ粒子のマスクフリー印刷方法であって、レーザアブレーションシステムを大気圧で使用して大気ガス流中の供給材料から乾燥ナノ粒子ストリームを発生させることを含み、前記乾燥ナノ粒子ストリームは流体キャリア媒体によって汚染されておらず、流体キャリア媒体によって汚染されていない前記乾燥ナノ粒子は、ノズルを通して前記ガス流により乾燥状態で基板に案内され、前記基板に付着する、
方法。
【請求項2】
前記基板上に印刷する前に前記大気ガス流を加熱する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
印刷後に前記粒子を焼結する工程を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ガス流中の又は粒子印刷後の前記粒子を焼結する前記工程は、加熱、レーザ照射、又はプラズマ処理による、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記粒子の加熱は、オーブン又は炉内で実施される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記供給材料は、金属、非金属、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記金属は、銅、銀、金、白金、ガリウム、アルミニウム、及びそれらの合金から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記非金属は、カーボン、黒鉛、グラフェン、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、窒化ホウ素、セラミック、ポリマー、非金属絶縁体、非金属半導体、超電導体、金属酸化物、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記ガスは、アルゴン、窒素、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、又はこれらの組み合わせから選択される不活性ガスである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ノズル先端部と前記基板との間の距離は、約0.01mm~約15mmである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記アブレーションセル内の前記ガス流、前記ノズルを出る前記ガス流、又はこれらの両方の前記ガス流の速度は、約0.05m/s~約1000m/sである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記粒子は、前記基板上に線、コーティング、又はシートとして印刷される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記粒子は、約5μm~約1mmの幅を有する線で前記基板上に印刷される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記粒子は、約5μm~約400μm、又は約10μm~約400μm、又は約50μm~約400μmの幅を有する線で前記基板上に印刷される、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記レーザは、約500ナノ秒(500×10
-9s)~約5フェムト秒(5×10
-15s)の範囲のパルス持続時間を有するパルスレーザである、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記レーザは、紫外線(150nm)から遠赤外線(20μm)までの範囲の波長を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記基板は、ガラス、カーボン、セラミック、シリコン、金属、ポリマー、又はこれらの組み合わせから作製される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記供給材料は、金属、セラミック、絶縁体、ポリマー、又は超伝導体、又はこれらの組み合わせから選択される導電性又は非導電性材料である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
アブレーションセル(2)及びプリントヘッド(3)を含み、前記アブレーションセル(2)は、供給材料(10)を収容するように適合されたチャンバ(5)を画定するハウジング(4)と、透明窓(6)と、ガス入口(7)と、エアロゾル出口(8)とを含み、前記プリントヘッド(3)は、先端部(3b)を有するノズル(3a)を含み、前記ノズル(3a)は、内部円筒状チャネル(18)に対して約90°の角度で前記チャネル(18)に結合する外部収束チャネル(19)と流体連通する前記内部円筒状チャネル(18)と、噴射孔(22)とを含む、
乾燥エアロゾルジェット印刷装置(1)。
【請求項20】
レーザ源と前記アブレーションセル(2)との間に位置し、前記透明窓(6)の近傍にあるレンズ(12)を更に含む、請求項19に記載の装置(1)。
【請求項21】
前記ノズル(3a)は、外壁(3c)と、内壁(3d)と、遠位端(3e)と、近位端(3f)とを含む、請求項19又は20に記載の装置(1)。
【請求項22】
前記先端部(3b)は噴射孔(22)に向けて内向きにテーパしている、請求項19~21のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項23】
前記噴射孔(22)は約200~約400μmの直径を有する、請求項19~22のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項24】
空気力学的レンズを更に含む、請求項19~23のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターゲット上に機能材料構造を堆積させるための直接書込み印刷法に関する。
【背景技術】
【0002】
付加製造(AM:additive manufacturing)市場は、近年、重要な技術トレンドとして登場した。AM市場は、3D印刷、材料堆積、プリンテッドエレクトロニクスなどの多くの異なる名称で呼ばれている。この市場には、関連する異なる利点/欠点を持つ数多くの技術的解決策があり、特定の解決策が特定のセグメント内に合致することがよくある。例えば、数百ユーロで販売されており様々なプラスチックデバイスを作成するために使用される卓上型溶融積層造形(FDM:fusion deposition modelling)システムから、商用製品ラインで金属部品を製造する非常に高価なインクジェットプレスまで存在する。これらのAM市場の規模及びバリエーションによって、複数のAM技術的解決策が存在し得る。
【0003】
導電要素(例えば、アンテナ、インターコネクト製品、配線、電磁障害(EMI:electromagnetic interference)シールド)又は非導電要素(容量式センサ、ひずみセンサ、又は環境センサなど)などの機能要素は、現在のほとんどの技術的解決策の基本構成単位であり、例えば、トランシーバには接続のためにアンテナが必要である。これら機能要素の技術要件は、関連する製品の解決策がより複雑になるにつれてこれまで以上に厳しくなっている。その一例は、スマートフォン(3G/4G/5G/近距離通信(NFC)/WIFI(登録商標)/Bluetooth(登録商標)など)における複数アンテナの要件及び関連する複数のチップのEMIシールド要件である。この進展により、製品供給元は様々なAM手法を用いなければならなくなった。したがって、最新のスマートフォン内のほとんどのチップにはEMIシールドが適用されているとともに、様々な異なる手法、材料、及び場所で作成された複数のアンテナを有する。
【0004】
更なる例は、電気自動車の普及及び効率的なBLDC(ブラシレスDC)モータの適用によって推進されるパワーエレクトロニクスの用途である。これらの用途では、高い動作温度及びパッケージングの配線を改善したパッケージング解決策が必要である。
【0005】
米国特許第8132744号明細書は、平面又は非平面ターゲット上に収束及び堆積され、熱的に又は光化学的に処理されて、対応するバルク材料のものに近い物理的、光学的、及び/又は電気的性質を達成するパターンを形成するエアロゾルストリームを含むエアロゾルジェット法(AJP:aerosol jetting process)として知られる技術的解決策について記述している。この解決策の課題は、後処理工程で、最初に材料を堆積させるのに使用した流体成分/溶剤の除去が必要なことである。ナノ粒子を含む液体基材の使用は高価であり、基板は親水性であることが必要であるため、堆積が進む速度が遅くなり、使用できる基板材料の範囲が限定される。
【0006】
米国特許第10058881B1号明細書は、空気力学的レンズによって形成される可能性のある、収束又はコリメートされるエアロゾル粒子ストリーム用の空気圧シャッターの動作について記述している。しかしながら、エアロゾルジェットは液体状態であることが意図される。
【0007】
欧州特許出願公開第2671970A1号明細書は、超短レーザパルス(ピコ秒又はフェムト秒)を使用したナノ微粒子金属酸化物膜の真空中におけるパルスレーザ堆積法(PLD:pulsed laser deposition)について記述している。これは、真空下で動作する膜(広域)堆積法である。
【0008】
米国特許第7527824B2号明細書は、エアロゾル中での材料Aのマイクロ粒子のレーザアブレーションを使用してナノ粒子ストリームを作成し、同じ手法で作成した材料Bのナノ粒子と混合し、この2つの材料の複合ナノ粒子又はナノ構造化膜を形成することができる方法について記述している。この方法は、マイクロ粒子のレーザアブレーションに依存して材料のコーティングを微粒子形態の別の材料の周囲に適用する。この文書は、印刷技術については記述しておらず、粒子のコーティングのみに適用可能なコーティング方法について記述している。
【0009】
欧州特許出願公開第1544168A1号明細書は、レーザビームを使用して、エアロゾルストリーム中での粒子のアブレーションによってナノ粒子を生成し、同じ材料のナノ粒子エアロゾルを作成する方法について記述している。
【0010】
米国特許出願公開第2004/197493A1号明細書は、材料を堆積させる機械に噴射される、堆積させる材料のナノ粒子を含む液体エアロゾルを使用した直接及びマスクレス材料堆積の湿式(液体)方法について記述している。供給材料は、別途製造される液体インクである。
【0011】
欧州特許出願公開第1881085A2号明細書は、固体ターゲット材料の超高速パルスレーザアブレーションを使用して、サイズ選択されたナノ粒子を生成し、基板上に堆積させる方法であり、アブレーションは真空中で実施される。
【0012】
米国特許第1070500B2号明細書は、分光計による分析のために、ガス流を使用してレーザアブレーションフラグメントを輸送する誘導結合プラズマ質量分析方法について記述している。
【0013】
国際公開第2007/096487号パンフレットは、超短レーザパルスを使用して又はレーザスキャナを使用してレーザビームを原材料上で移動させる従来の真空(又は低圧)PLDの別の例である。これは大気圧条件下ではない。
【0014】
本発明の目的は、上述の課題の少なくとも1つを克服することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本明細書中に記載される発明は、概して、流体媒体を使用することなく基板上に乾燥粒子を印刷する方法に関する。本方法は、機能材料の乾燥エアロゾルのメソスケール(10μm~1mm)マスクフリー印刷のための、大気圧レーザアブレーション方法を使用した供給材料の乾燥粒子(例えば乾燥ナノ粒子)の発生を含む。ノズルを通して収束されたガス流中に、粒子を発生させる。より具体的には、本発明は、堆積させる供給材料のパルスレーザアブレーションによって生成される乾燥エアロゾルを使用したジェット印刷の方法に関する。エアロゾルジェットは、基板上に直接印刷されてもよい、又は空気力学的収束を使用してメソスケール寸法に収束させてもよい。基板は、平面であっても非平面であってもよい。パルスレーザアブレーションは、印刷される供給材料(feedstock of the material)を収容し、大気圧の流動ガスで満たされたアブレーションセル内で行われる。レーザは、反復的に(1Hz~100MHzのレートで)パルス化され、個々のレーザパルスの持続時間は500ナノ秒(ns)~5フェムト秒(fs)の範囲である。レーザは、透明窓を通ってアブレーションセルに入り、適切なレンズを使用して供給材料に収束される。供給材料の均一なアブレーションを確実にするために、レーザビームを材料にわたって走査する、又は材料をレーザビーム内で移動させる。
【0016】
レーザアブレーションプロセスは、高圧で、供給材料の蒸気、プラズマ、又はナノ粒子のアブレーションプルームを生成する。アブレーションプルームはガス中に広がる。各レーザパルスのエネルギー及びガス密度に応じて、広がりはガスの反対圧力及び慣性によって遅くなり、その寸法が0.1mm~30mmのときに停止する。アブレーションプルームの広がりの空間的閉じ込めにより、ナノ粒子の凝縮が促進される。ナノ粒子アブレーションプルームは流動ガスによって捉えられ、ナノ粒子エアロゾルを形成し、アブレーションセルからジェット印刷ヘッドに運ばれる。通常、ナノ粒子の凝集が起こり、より大きな粒子が形成される。微粒子エアロゾルのジェットは、それが印刷される適切な基板に案内される。粒子は、ノズルによって画定される特定位置のターゲットサイトに付着する。これらの粒子は後に焼結され、機能要素又はコーティング層の一部を形成する固体材料を形成することができる。ジェットは、空気力学的レンズを使用して、より小さな寸法に収束させてもよい。印刷される材料の微細線又は層を形成するために、基板をプリントヘッドに対して移動させることができる。潜在的な形状寸法は、マイクロエレクトロニクスからパワーエレクトロニクス(power electrоnics)に及ぶ機能要素、又はターゲットサイト上のコーティングとして使用することができる、十分な精度のものである。
【0017】
一般に、凝集したナノ粒子のエアロゾルは多孔質材料堆積物の形成につながる。ほとんどの用途では、必要とされる物理的及び/又は電気的特性を得るために、いずれかの形態の更なる処理を行うことが必要である。第1に、基板の近傍又は印刷場所のエアロゾルジェットに熱を供給するために、レーザ又はプラズマを使用することにより焼結をその場で行うことができる。基板も加熱され得る。第2に、焼結は、印刷後プロセスにおいて、プラズマ若しくはレーザで又はオーブン内で加熱することにより行われてもよい。加熱は、真空の存在若しくは不存在下で、不活性雰囲気の存在若しくは不存在下で、又はこれらの組み合わせで行われてもよい。
【0018】
既存の導電性インク及びエアロゾル化ベースのシステムに勝るこの手法のいくつかの重要な利点がある。これらには以下を含む。
1.任意の供給材料から粒子を発生させることが潜在的に可能であること。
2.非常に小さな粒子の取り扱いの容易さ。
3.非常に小さな粒子の費用対効果の高い発生。
4.汚染のない粒子発生(キャリアインクがない)。
5.ターゲットサイトへの粒子の付着の向上。
6.大幅なコスト削減を伴ったスループットの改善。
7.柔軟性の増加-ターゲット材料(すなわち、接着性を向上させるため)、粒度を変更することができる、改質等。
8.後処理用の化学薬品又は鉛が必要なく、はるかに環境に優しい。
9.アブレーション工程にレーザを使用することにより、本出願人は、粒子発生と粒子キャリアガス流を別々に制御することができ、プロセス制御の大幅な改善につながる。
【0019】
クレームに係る発明の方法は、既存のAJPシステムよりもコストが大幅に削減され、スループットが大幅に高くなる。更に、方法の工程中に任意の供給材料から粒子を発生させること、及び供給材料を容易に入れ替えることが可能なことにより、完全に新しい製品クラスの製造を容易にできる可能性がある。
【0020】
粒子は、不活性ガス流中で、ターゲットサイト上に準稠密な導電性の線又はコーティング(層)を形成し得る十分な熱エネルギーを伴って発生させることができるものと考えられる。その後、これらの準稠密な線又はコーティングを不活性ガス中でレーザを使用して焼結することが可能となり得る。これにより、非常に低い温度で基板上に金属線又はコーティングを即時に作成することが可能になる。
【0021】
印刷用の乾燥ナノ粒子を発生させる方法が提供され、本方法は、レーザアブレーションシステムを大気圧で使用して、大気ガス流中の供給材料から汚染物質を含まない乾燥ナノ粒子ストリームを発生させることを含み、汚染物質を含まない乾燥ナノ粒子は、ノズルを通してガス流により乾燥状態で基板に案内され、基板に付着し、導電性の、半導電性の、機能的な、若しくは3Dの幾何学的構造、又はこれらの組み合わせを生成する。
【0022】
添付の特許請求の範囲に記載されるように、乾燥ナノ粒子のマスクフリー印刷の方法が提供され、本方法は、レーザアブレーションシステムを大気圧で使用して大気ガス流中の供給材料から流体キャリア媒体によって汚染されていない乾燥ナノ粒子ストリームを発生させることを含み、流体キャリア媒体によって汚染されていない乾燥ナノ粒子は、ノズルを通してガス流により乾燥状態で基板に案内され、基板に付着する。
【0023】
一態様では、本方法は、印刷時に焼結構造を促進するために大気ガス流を加熱する工程、すなわち、基板上に印刷する前に大気ガスを加熱する工程を更に含む。
【0024】
一態様では、本方法は、基板に印刷する前に大気ガス流中の粒子を焼結する工程を更に含む。
【0025】
一態様では、本方法は、印刷後に粒子を焼結する工程を更に含む。
【0026】
好ましくは、焼結工程は、粒子の印刷前に大気ガス流中で行われる、及び粒子の印刷後に行われる、の組み合わせである。
【0027】
一態様では、供給材料は、金属、非金属、絶縁体、又はこれらの組み合わせから選択される。好ましくは、金属は、銅、銀、金、白金、ガリウム、アルミニウム、及びそれらの合金から選択される。好ましくは、非金属は、カーボン、黒鉛、グラフェン、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、窒化ホウ素、セラミック、ポリマー、非金属絶縁体(ガラスなど)、非金属半導体(シリコン、ゲルマニウム、窒化ガリウムなど)、金属酸化物(酸化チタン、酸化銅、酸化アルミニウム、酸化銀、酸化白金、酸化ガリウムなど)、及びこれらの組み合わせ(しかしこれらに限定されない)から選択される。
【0028】
一態様では、ガスは不活性である。好ましくは、ガスは、空気、アルゴン、窒素、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、又はこれらの組み合わせから選択される。好ましくは、ガス流中で又はナノ粒子の印刷後に粒子を焼結する工程は、加熱、レーザ照射、プラズマ処理による。理想的には、加熱は、不活性雰囲気の存在若しくは不存在下で、又は真空の存在若しくは不存在下で、又はこれらの組み合わせで、オーブン又は炉内で行われる。
【0029】
一態様では、ノズル先端部と基板との間の距離は、約0.01mm~約15mmである。好ましくは、距離は約0.1~10mmである。
【0030】
一態様では、アブレーションセル内のガス流の速度は、約0.1m/s~約1000m/sである。
【0031】
一態様では、ノズルを出るガス流の速度は、約0.1m/s(亜音速)~約1000m/sである。
【0032】
一態様では、粒子は、約5μ~約1mmの幅を有する線で基板上に印刷される。好ましくは、線は、約5μm~約1mm、又は約10μm~約1mm、理想的には約50μm~約1mm、又は理想的には約5μm~約400μm、又は約10μm~約400μm、又は約50μ~約400μmの幅を有する。
【0033】
一態様では、粒子は、コーティング又は層(シート)として基板上に堆積される。
【0034】
一態様では、レーザは、約500ナノ秒(500×10-9s)~約5フェムト秒(5×10-15s)の範囲のパルス持続時間を有するパルスレーザである。
【0035】
一態様では、レーザは、紫外線(150nm)から遠赤外線(20μm)までの範囲の波長を有する。
【0036】
一態様では、基板は、ガラス、カーボン、セラミック、シリコン、金属、ポリマー、又はこれらの組み合わせから作製される。
【0037】
一態様では、供給材料は、上記のような金属、セラミック、絶縁体、ポリマー、又は超伝導体、又はこれらの組み合わせから選択される導電性又は非導電性材料である。
【0038】
一態様では、アブレーションセル(2)及びプリントヘッド(3)を含み、アブレーションセル(2)は、供給材料(10)を収容するように適合されたチャンバ(5)を画定するハウジング(4)と、透明窓(6)と、ガス入口(7)と、エアロゾル出口(8)とを含み、プリントヘッド(3)は、先端部(3b)を有するノズル(3a)を含み、ノズル(3a)は、内部円筒状チャネル(18)に対して約90°の角度でチャネル(18)に結合する外部収束チャネル(19)と流体連通する内部円筒状チャネル(18)と、噴射孔(22)とを含む、乾燥エアロゾルジェット印刷装置(1)が提供される。
【0039】
一態様では、装置は、レーザ源とアブレーションセル(2)との間に位置し、透明窓(6)の近傍にあるレンズ(12)を更に含む。
【0040】
一態様では、ノズル(3a)は更に、外壁(3c)と、内壁(3d)と、遠位端(3e)と、近位端(3f)とによって画定される。
【0041】
一態様では、先端部(3b)は噴射孔(22)に向けて内向きにテーパしている。
【0042】
一態様では、噴射孔(22)は約200~約400μmの直径を有する。
【0043】
一態様では、装置は、空気力学的レンズを更に含む。
【0044】
一態様では、上記の方法によって作成された製品が提供される。
【0045】
一態様では、製品は、エアロゾル発生器(清浄な空気の高速振動ジェットを粉末表面に集中させ、粒子を乱し、分離することにより粉末からエアロゾルを発生させる)、ウェアラブルデバイス(携帯電話、時計、パーソナルGPSロケータなどであるがこれらに限定されない)、EMIシールド、アンテナ、RFIDシールド、センサ、カテーテルインターフェース、医療デバイス(例えば、心拍数モニタ、感覚素子を備えるマイクロニードルパッチなど)、家庭医療用遠隔測定器(例えば、心拍数モニタ、脈拍モニタ、呼吸モニタなど)、照明、スマートフォン用アンテナ、家電用アンテナ、自動車用電気インターコネクト製品、IOT/MMIC/5Cインターコネクト製品(1つのデバイスを別のデバイスに電気的に接続するためのインターコネクトライン)、中間インターコネクトデバイスから選択される。
【0046】
一態様では、ポリマーは、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエステル、アクリル、ポリアクリル、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、エチレン酢酸ビニル、エチレンビニルアルコール、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンクロロトリフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレン、液晶ポリマー、ポリブタジエン、ポリクロロトリフルオロエチレン(polychlorotrifluoroehtylene)、ポリスチレン、ポリウレタン、及びポリ酢酸ビニルを含む群から選択され得るがこれらに限定されない熱可塑性物質である。
【0047】
一態様では、ポリマーは、当業者に周知の加硫ゴム、ベークライト(ポリオキシベンジルメチレングリコールアンハイドライド)、尿素ホルムアルデヒド発泡体、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、シアン酸エステル又はポリシアヌレート、シリコーンなどを含む群から選択され得るがこれらに限定されない熱硬化物質である。
【0048】
一態様では、ポリマーは、ポリブタジエン、ブタジエンアクリロニトリル共重合体(NBR)、天然及び合成ゴム、ポリエステルアミド、クロロペン(chloropene)ゴム、ポリ(スチレン-b-ブタジエン)共重合体、ポリシロキサン(ポリジメチルシロキサン(PDMS)など)、ポリイソプレン、ポリウレタン、ポリクロロプレン、塩素化ポリエチレン、ポリエステル/エーテルウレタン、ポリエチレンプロピレン、クロロスルホン化(chlorosulphanated)ポリエチレン、ポリアルキレンオキシド、及びこれらの混合物を含む群から選択され得るがこれらに限定されないエラストマーである。
【0049】
一態様では、ポリマーは、ゼラチン、リグニン、セルロース、ポリアルキレンエステル、ポリビニルアルコール、ポリアミドエステル、ポリアルキレンエステル、ポリ酸無水物、ポリラクチド(PLA)、及びそれらの共重合体、及びポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を含む群から選択され得るがこれらに限定されないバイオポリマーである。
【0050】
一態様では、ポリマーは、プロピレンエチレン共重合体、アセタール共重合体(ポリオキシメチレン)、ポリメチルペンテン共重合体(PMP)、アモルファスコポリエステル(PETG)、アクリルアクリレート共重合体、ポリカーボネート(PC)共重合体、数ある中でもとりわけ、ポリ(スチレン-ブタジエン-スチレン)(SBS)、ポリ(スチレン-イソプレン-スチレン)(SIS)、ポリ(スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン)(SEBS)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、及びエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)を含むスチレンブロック共重合体(SBC)を含む群から選択されるがこれらに限定されない共重合体である。
【0051】
一態様では、レーザは、約150nm(UV)~約11μm(赤外線)の波長を有する。
【0052】
定義
本明細書において、用語「プラスチック」及び「ポリマー」は、延性があることにより固体物体に成形することができる広範な合成有機化合物又は半合成有機化合物のいずれかからなる材料を意味するものと理解すべきである。これらの用語は、互換的に使用することができる。プラスチック又はポリマーは、熱可塑性物質、熱硬化性ポリマー、アモルファスプラスチック、結晶性プラスチック、導電性ポリマー、生分解性ポリマー、バイオプラスチックなどに分類することができる。
【0053】
本明細書において、用語「センサ」は、ひずみ、温度、ガス、化学物質、圧力などを測定するために使用される構成要素を意味するものと理解すべきである。
【0054】
本明細書において、用語「ウェアラブルデバイス」は、ユーザによって着用され得るスマートデバイスを意味するものと理解すべきである。例えば、スマートウォッチ、スマートフォン、医療デバイスである。
【0055】
本明細書において、用語「バーチャルインパクタ」は、粒子をサイズによって2つの気流に分離するために使用されるデバイスを意味するものと理解すべきである。バーチャルインパクタは従来のインパクタに類似するが、衝突面が停滞した又は動きの遅い空気の仮想空間に置換されている。大きな粒子は表面上に衝突するのではなく収集プローブで捉えられる。
【0056】
本明細書において、用語「セラミック」は、イオン結合又は共有結合を有する金属又は半金属と非金属の無機化合物を含む固体材料を意味するものと理解すべきである。一般的な例は、陶器、磁器、煉瓦、及びサーメット(セラミックと金属の複合材料)である。サーメットの例としては、チタン酸バリウム、ビスマスストロンチウムカルシウム銅酸化物、ホウ素酸化物、窒化ホウ素、フェライト、チタン酸ジルコン酸鉛、炭化ケイ素、窒化ケイ素、酸化亜鉛、二酸化ジルコニウムが挙げられる。
【0057】
本明細書において、用語「供給材料」は、アブレーションセル内でアブレーションされ、ターゲットサイトに堆積させるために選択された材料を意味するものと理解すべきである。
【0058】
本明細書において、用語「機能材料」は、特定の電気、磁気、光学的、化学的、又は機械的機能を可能にする特定の電気、磁気、光学的、化学的、又は機械的特性を有する材料を意味するものと理解すべきである。
【0059】
本明細書において、構造化形態(線、コーティング、又は層(又はシート))で敷設される乾燥ナノ粒子に関連する用語「印刷された」は、乾燥ナノ粒子が機能的手法又は非機能的な手法のいずれかにおいて構造化形態で基板上に印刷されることも意味することは理解すべきである。
【0060】
本発明は、添付の図面を参照して単なる例として記載する、本発明の実施形態の以下の説明からより明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】アブレーションセル(粒子発生器)、ジェット印刷ヘッド、及びコンピュータ制御式並進/回転ステージ上に取り付けられた基板を示す、クレームに係る発明の乾燥エアロゾルジェット印刷装置の概略図を示す。
【
図2A】レーザが固定されたままでターゲットが移動する本発明の一態様によって均一なアブレーションが達成される、クレームに係る発明の装置の概略図を示す。収束されたレーザビームは固定されたままであるが、ターゲット材料の円筒状ロッドは収束されたレーザビームの下で回転及び並進する。エアロゾルは、アブレーションサイトを横切るガス流によって運び去られる。
【
図2B】レーザが平坦な供給材料上を移動する場合を示す。
【
図3】クレームに係る発明の装置でエアロゾルジェットを収束させるために使用される空気力学的レンズを示す概略図を示す。
【
図4】クレームに係る発明の装置及び方法を使用して1、2、3、4、及び5mmの隔離距離で印刷された銀線を示す。
【
図5】クレームに係る発明の方法及び装置を使用する、造形速度を測定するためにガラススライド上に印刷された長さ38cmのジグザグ線を示す。
【
図6】クレームに係る発明のレーザ生成乾燥エアロゾル(3W)方法及び先行技術のOptomec Aerosol Jet(登録商標)システムを使用して得られる造形速度の比較を示す棒グラフである。
【
図7】クレームに係る発明のレーザ生成乾燥エアロゾル方法及び装置を使用して印刷された銀トラックの走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
【
図8A-8B】印刷されたままの材料の2つの異なる倍率のSEM画像である。
【
図9A-9B】レーザ焼結印刷材料の2つの異なる倍率のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
図面の詳細な説明
本発明では、機能的な供給材料(the feedstock of functional material)の固体ターゲットのレーザアブレーションによって作成された乾燥エアロゾルは、大気圧の適切な流動ガスを含むアブレーションセル内に閉じ込められる。レーザは、適切な透明窓を通ってアブレーションセルに入る。適切なガスとしては、酸化を受ける材料に対しては希ガス又は窒素などの不活性ガス、又は貴金属又はセラミックなどの酸化を受けない材料のアブレーションに対しては空気が挙げられる。対象の機能的な供給材料の範囲には、金属、絶縁体、半導体、ポリマー、及びセラミックを含む。レーザアブレーションは、パルス持続時間が500ナノ秒(500×10-9s)~5フェムト秒(5×10-15s)の範囲の反復的にパルス化されるレーザを使用して行われる。レーザは、供給材料によって顕著に吸収されるべきであり、紫外線(150ナノメートル(50×10-9m))から遠赤外線(20マイクロメートル(20×10-6m))の範囲の波長を有するべきである。パルスレーザアブレーションを得るために、レーザを供給材料の表面上に収束させ、典型的には材料の沸点温度を上回る温度に起因する激しい蒸発を発生させる。各レーザパルスに対して、ある量の供給材料が蒸気として、場合によってはプラズマとして表面から離れる。アブレーションスポットを適切な手法で移動させることによって、すなわち、供給材料を固定したままでレーザビームを走査すること、レーザを固定したままで供給材料を移動すること、又はレーザ及び供給材料の両方を移動させることのいずれかによって、供給材料の表面からの材料の均一な除去が達成される。
【0063】
レーザアブレーションプロセスは、高圧で、供給材料の蒸気、プラズマ、又はナノ粒子のアブレーションプルームを生成する。アブレーションプルームはガス中に広がり、各レーザパルスのエネルギー及びガス密度に応じて、広がりはガスの反対圧力及び慣性によって遅くなり、プルーム寸法が0.1mm~30mmのときに停止する。すなわち、広がりは、アブレーション材料がガス雰囲気の圧力及び慣性の組み合わせに対して広がることによって停止する。(T.E.Itina and A.Voloshko,Appl.Phys.B(2013)113:473-478)。アブレーションプルームの広がりの空間的閉じ込めによりナノ粒子の凝縮を促進する。ナノ粒子アブレーションプルームは流動ガスによって捉えられ、ナノ粒子エアロゾルを形成し、アブレーションセルからジェット印刷ヘッドに運ばれる。ターゲット表面上における典型的なガス流速度は、約0.1m/s(亜音速)~約1000m/s(超音速)である。エアロゾルが印刷ヘッドに運ばれる際にナノ粒子の凝集が起こり、μm範囲のサイズのより大きな粒子が形成される。
【0064】
粒子発生器を出る微粒子エアロゾルのストリームは、適切な孔を通過することによりジェットへと形成され、それが印刷される適切な基板に案内される。ジェットの形状及び寸法は、噴射孔の形状及び寸法によって制御される。印刷の微細線を形成するために又は均一なコーティングを得るために、基板をプリントヘッドに対して移動させることができる。ジェットは、空気力学的レンズを使用してより小さな寸法に収束させてもよい。典型的には、噴射孔と基板との間の隔離距離は0.1~10mmである。堆積物の微細線を形成するために、又は均一なコーティングを得るために、基板をプリントヘッドに対して移動させることができる。
【0065】
一般に、凝集したナノ粒子のエアロゾルは多孔質堆積物の形成につながる。ほとんどの用途では、必要とされる物理的及び/又は電気的特性を得るためにいずれかの形態の更なる処理、例えば熱印加を行うことが必要である。第1に、基板の近傍又は印刷場所のエアロゾルジェットに熱を供給するために、レーザ又はプラズマを使用することにより焼結をその場で行うことができる。基板も加熱され得る。第2に、焼結は、印刷後プロセスにおいて、プラズマ若しくはレーザで又はオーブン内で加熱することにより行われてもよい。加熱は、真空中若しくは非真空中で、及び/又は不活性雰囲気中若しくは非不活性雰囲気中で、又はこれらの組み合わせで行われてもよい。
【0066】
この手法は、機能的構造の低温でのコンフォーマル印刷を可能にする可能性がある。これらの構造は、例えば、導電性の線、アンテナ、又はセンサであり得る。これにより、様々な製品の様々な位置及び構成上に機能的金属線を印刷することが可能になる。これらの金属線は、導電線又は信号線として使用することができる。この手法により、場合によっては、製品の複雑さが大幅に低下し、信頼性及びコストが増加する。なぜなら、これらの金属構造では、多くの場合、専用の構成要素(PCBなど)を必要とするからである。
【0067】
この「印刷される電気要素(printed electrics)」の手法は、5G、MMIC、IoT、及び電力などの重要プラットフォーム技術の確立において重要と考えられる。これらのプラットフォーム技術は、将来の家電製品市場、距離測定市場、産業市場、医療市場、医薬市場、及び輸送市場を下支えするであろう。
【0068】
装置
ここで、クレームに係る発明の装置について説明する。
図1は、本発明の乾燥エアロゾルジェット印刷装置の全体的な実施形態を示す。具体的には、
図1は、クレームに係る発明の乾燥エアロゾルジェット印刷装置の断面図を示し、全体として参照番号1によって参照される。装置1は、典型的には、堆積又はプリントヘッド3と流体連通するアブレーションセル2を含む。
【0069】
アブレーションセル2は、チャンバ5を画定するハウジング4と、ハウジング4の一方の側にある透明窓6と、ガス入口7と、エアロゾル出口8とを含む。エアロゾル出口8はプリントヘッド3と流体連通する。ハウジング4のチャンバ5は供給材料10を収容する。
【0070】
典型的には、プリントヘッド3は、先端部3bを有するノズル3aを有するジェット印刷ヘッドである。プリントヘッド3は、
図3により詳細に示されるように、内部円筒状チャネル18を取り囲む外壁17を更に含み、内部円筒状チャネル18は、内部円筒状チャネル18に対して約90°の角度でチャネル18に結合する外部収束チャネル19と流体連通する。内部円筒状チャネル18はノズル3aと流体連通する。ノズル3aは、外壁3cと、内壁3dと、遠位端3eと、近位端3fとを含む。遠位端3eは、噴射孔22に向けて内向きにテーパしている先端部3bを含む。
【0071】
装置1はまた、透明窓6の近傍にあり、レーザ源と透明窓6との間に配置されているレンズ12を含む。レンズ12は、レーザビームが透明窓6に入る前にレーザビーム(矢印C)を収束させて、チャンバ5内の供給材料10に作用させ、アブレーションされた供給材料を得る。
【0072】
粒子発生器/アブレーションセル
粒子発生器又はアブレーションセル2は上で記載したものであり、印刷される供給材料10の固体塊を内包する。供給材料10の蒸気又はプラズマがパルスレーザアブレーションによって形成される。アブレーションされた材料のアブレーションプルームは、ガスの反対圧力及び慣性によって閉じ込められ、これに続いて蒸気が凝縮し、約1~150nm、好ましくは約3~約100nmのサイズ範囲のナノ粒子が形成され、最終的に、ナノ粒子が凝集して約100nm~約35000nmのサイズ範囲のナノ粒子凝集体が形成される。ナノ粒子凝集体はガスと混合され、エアロゾルジェット流(
図1の矢印Bの通り)としてアブレーションセル2から出される。エアロゾル流の微粒子濃度を増加させるためにバーチャルインパクタが使用されてもよい。透明窓6は、レーザビームを入れるために使用される。透明窓6の材料は、透明である限りは重要でない。使用することができる材料は、例えば、石英、サファイア、ガラスなどである。
【0073】
アブレーションセル2を通るガスの流れ(矢印A)は、アブレーションされた供給材料をエアロゾルジェット流(矢印B)によってプリントヘッド3に、及び供給材料が堆積される基板14へと運ぶ。均一な印刷を得るために又は印刷パターンを生成するために、コンピュータ制御式並進/回転ステージ16を使用して、基板14をプリントヘッド3に対して移動させる。供給材料10の表面からの材料の均一な除去は、供給材料10上でアブレーションスポットを適切な手法で移動させること、すなわち、(i)レーザを固定したままで供給材料10を移動させること、(ii)供給材料10を固定したままでレーザビーム(矢印C)を走査すること、又は(iii)レーザ及び供給材料10の両方を移動させること、によって達成される。
図2Aは、収束されたレーザビーム(矢印C)は固定されたままであるが、収束されたレーザビーム(矢印C)の下で供給材料10の円筒状ロッドが回転(矢印D)及び並進する(矢印E)スキーム(i)を示す。(ii)については、
図2Bに示されるように、平坦な供給材料10はアブレーションセル2内で静止したままにされ、コンピュータ制御式レーザビームスキャナ50を使用して、収束されたレーザビーム(矢印C)が供給材料10を走査する。
図2A及び
図2Bの両方において、ガスの流れ(矢印A)は一定である。
【0074】
ジェット印刷
空気力学的収束を伴わない
アブレーションセル2を出る微粒子エアロゾルのストリームは、噴射孔22を通過することによりエアロゾルジェットストリーム20(
図3を参照)へと形成され、印刷される基板14に案内される。エアロゾルジェットストリーム20の形状及び寸法は、噴射孔22の形状及び寸法によって制御される。様々な堆積パターン又は均一なコーティングを形成するために、基板14をプリントヘッド3に対して移動させることができる。或いは、プリントヘッド3を基板14に対して移動させることができる、又は基板14及びプリントヘッド3の両方を互いに対して移動させることができる。
【0075】
空気力学的収束を伴う
エアロゾルジェットストリーム20は、
図3に示されるように、同軸のノズルに基づく空気力学的レンズを使用してより小さな寸法に収束させてもよい。エアロゾル流(Q
a)(矢印F)は内部円筒状チャネル17に入り、シースガス流(Q
s)(矢印G)は外部収束チャネル19に入る。ノズル3aを出るエアロゾルジェットストリーム20の直径(D
j)は
【数1】
によって与えられ、式中、Q
tは、Q
t=Q
a+Q
sによって与えられる総ガス流である。シースガスはまた、ノズル3aの内壁3dの内面におけるエアロゾル微粒子の印刷を阻止するように機能する。典型的には、噴射孔22と基板14との間の隔離距離は0.1~10mmである。約5μmの幅の微細線を含む様々な堆積パターンを形成するために、基板14をプリントヘッド3に対して移動させることができる。或いは、プリントヘッド3を基板14に対して移動させることができる、又は基板14及びプリントヘッド3の両方を互いに対して移動させることができる。
【0076】
作業距離
基板14からのレーザの作業距離は、ノズル3aから先端部3bまでの距離1、2、3、4、及び5mmにおける堆積を視覚的に検査することにより推定した。キャリアガス及びシースガスに対して、それぞれ、レーザパワー3W、速度90RPM、及び流量33CC/min及び100CC/minを使用した。
【0077】
造形速度
造形速度は、ガラススライド上に約38cmの線を吹き付け、上記と同じパラメータを用いて質量差(Δm)を測定することによって測定した。
【0078】
結果及び説明
図4は、クレームに係る発明の装置1を用いて印刷された銀線のいくつかの例を示す。波長約1μm(1.065μm)及びパルス持続時間約250nsで動作する高繰り返し率のファイバレーザを使用した。レーザはパルス繰り返し率約5kHzで動作し、平均パワーは3Wであった。レーザは、20cmレンズを使用して収束させた。レンズは、銀ターゲットの表面が焦点を約1mm超えるように配置し、レーザスポットのピークフルエンスを約20Jcm
2とした。これは、供給材料のアブレーションを生じさせるのに十分である。供給材料は、90RPMで回転させ、約0.005cms
-1~約1cms
-1で並進させた。大気圧のアルゴンガスを33毎分標準立方センチメートル(sccm)の流量で粒子発生器に供給した。このガス流は、ノズルを出るエアロゾルジェットの直径を低減するための空気力学的レンズが備えられたプリントヘッドに銀エアロゾルを運ぶ。ノズルの直径は300マイクロメートルであった。シースガスは、100sccmの流量で空気力学的レンズに供給した。5mms
-1の走査速度及び様々な値の隔離距離を用いてガラス基板上に線を印刷した。
図4は、1、2、3、4、及び5mmの隔離距離で印刷した線を示す。
【0079】
測定された造形速度を、Aerosol Jet(登録商標)システムを使用して得られる典型的な速度と比較した。(King,Bruce H.,Michael J.O’Reilly、and Stephen M.Barnes.2009.“Characterizing Aerosol Jet(登録商標)Multi-Nozzle Process Parameters for Non-Contact Front Side Metallization of Silicon Solar Cells.”Conference Record of the IEEE Photovoltaic Specialists Conference,001107-11.https://doi.org/10.1109/PVSC.2009.5411213)。レーザパワーはわずか3Wであったことに留意されたい。平均パワーが最大約300~500Wのパルスレーザは容易に利用可能であり、平均パワーを常時増加させることにより、造形速度を同様に増加させることができる。
図6は、クレームに係る発明の装置を使用した造形速度が先行技術の装置を使用した造形速度よりも優れていることを明確に示す。
【0080】
図7は、クレームに係る発明の装置を使用して印刷された銀トラックの走査電子顕微鏡(SEM)写真を示す。トラック幅は、150ミクロンから200ミクロンまで変化する。空気力学的収束の式(上記を参照)によれば、33sccmのエアロゾル流(Q
a)、100sccmのシースガス流(Q
s)、及び300ミクロンのノズルを使用すると、予想線幅は150ミクロンである。
【0081】
図8A及び
図8Bは、印刷されたままの材料のSEM画像を2つの異なる倍率で示す。低倍率の画像は、凝集した金属ナノ粒子の集約において予想されるような印刷の高多孔質の性質を呈する。高倍率の画像では個々のナノ粒子を見ることができる。この画像で見られるより大きい非常に球形の粒子は、アブレーションプロセス中にターゲットから放出された液滴による可能性が最も高い。
【0082】
電気抵抗率測定
印刷されたトラックの電気抵抗は、15mmだけ離れた2つの銀ペイントパッドの間にトラックを印刷することにより測定し、抵抗はマルチメータを使用して測定した。2.3×10-3mg mm-1の質量負荷で印刷された長さ15mmの線に関しては、抵抗は390オーム(Ω)であることが分かり、これは26Ωmm-1に相当する。同じ質量負荷における長さ15mmのバルク銀線の抵抗は1.1Ωであり、これは0.073Ωmm-1に相当する。予想のとおり、印刷されたままのトラックの抵抗は、同じ質量負荷を有するバルク銀線よりも高い抵抗を有する。
【0083】
銀トラックの電気抵抗を低減するために様々な焼結方法を研究した。これらは、(i)200℃で1~4時間の空気中での炉アニーリング、(ii)直径10mmの出力開口を通して収束され、銀トラック上に5及び2.5mms
-1で走査される、100Wの赤外線ランプによる照射、及び(iii)直径6mmのスポットに収束され、銀トラック上に10mms
-1で走査される、45Wの連続的なCO
2(10.6μm)レーザによる照射、であった。抵抗の最大の減少はレーザ焼結を使用して得られ、長さ15mmのトラックの抵抗は、焼結前の350Ωからレーザ焼結後の32Ωに減少することが見出された。これは2.1Ωmm
-1に相当し、これは、同じ単位長さあたりの質量を有するバルク銀線よりも約30倍高い。この方法により、印刷される材料のバルク値と約1000倍高いバルク値との間の抵抗率を達成することが可能である。視覚的に、堆積されたままのトラックは黒色に見えるが、アニーリング後にはより輝きのある外観を有する。
図9A及び
図9Bは、レーザ焼結材料の2つの異なる拡大画像を示す。
【0084】
記載されている発明の利点は、例えば、流体キャリア媒体によって汚染される先行技術の粒子とは異なり、アブレーションされるときに粒子が汚染されないことである。これにより、必要な場合には後処理処置のオプション、効率、及び容易さが向上する。アブレーション工程にレーザを使用し、粒子発生を粒子キャリアガス流から分離することにより、本方法は、キャリアフローの動力学に影響を及ぼすことなく、発生させることができる粒子のサイズに対するプロセス制御を大幅に向上させる。これにより、非常に小さな粒子の作成が可能になる。通常、これらの粒子は取り扱いが非常に困難であり、非常に費用がかかる。しかしながら、クレームに係る発明は、取り扱いの容易さ及び関連する多大なコスト削減を可能にする。粒子が小さいほど、はるかに容易に、低温で焼結することが知られている。粒子エネルギーは、レーザパラメータを、用途、例えば付着力の向上又は焼結の容易さ、に応じて変更することによって変化させることができる。システムは、不活性ガス流環境(例えば、ターゲット印刷点に収束させた焼結レーザ)内における、印刷される粒子の焼結を容易にするために、追加的な焼結システムと組み合わせることができる。
【0085】
本明細書において、用語「含む(comprise)、含む(comprises)、含まれる(comprised)、及び含む(comprising)」又はその任意の変化形並びに用語「含む(include)、含む(includes)、含まれる(included)、及び含む(including)」又はその任意の変化形は、完全に互換的であるとみなされ、これらは全て、可能な限り最も広い解釈が与えられるべきであり、その逆もまた然りである。
【0086】
本発明は、前述の実施形態に限定されず、構造及び細部の両方において変更することができる。
【国際調査報告】