(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-09
(54)【発明の名称】音響渦ビームによる固形物の制御された破砕のためのシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/225 20060101AFI20230802BHJP
【FI】
A61B17/225
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504096
(86)(22)【出願日】2021-07-15
(85)【翻訳文提出日】2023-03-17
(86)【国際出願番号】 ES2021070524
(87)【国際公開番号】W WO2022018311
(87)【国際公開日】2022-01-27
(32)【優先日】2020-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521171472
【氏名又は名称】ウニベルシタット・ポリテクニカ・デ・バレンシア
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITAT POLITECNICA DE VALENCIA
(71)【出願人】
【識別番号】593005895
【氏名又は名称】コンセホ・スペリオル・デ・インベスティガシオネス・シエンティフィカス(セエセイセ)
【氏名又は名称原語表記】CONSEJO SUPERIOR DE INVESTIGACIONES CIENTIFICAS(CSIC)
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】ヒメネス ゴンサレス,ノエ
(72)【発明者】
【氏名】カマレナ フェメニア,フランシスコ
(72)【発明者】
【氏名】ベンリョチ バビエラ,ホセ マリア
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160EE03
4C160EE17
4C160JJ35
(57)【要約】
本発明は、音響渦ビームによる固形物の制御された破砕のためのシステムに関し、本システムは、少なくとも1つの音響ビーム発生装置(100)と、発生装置(100)の1つのフィードバック及び制御装置(200)とを備える。優位点として、本システムによって発生される音響ビームは音響渦ビームであり、フィードバック及び制御装置(200)は、破砕される固形物に関する情報を受信し、それを使用して音響ビーム発生装置(100)の動作を適応化するように構成されたフィードバックサブシステム(12)をさらに備える。剪断応力の発生が渦ビームを用いてより効率的になるならば、結石を破砕するために必要とされる超音波フィールドの振幅は、現在の体外衝撃波結石破砕法技術の場合よりもずっと低くなる。同様に、本システムは、固形物を包囲する軟らかい組織に対する不要な影響を最小化する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響渦ビームによる固形物の制御された破砕のためのシステムであって、1つの音響ビーム発生装置(100)及び1つのフィードバック及び制御装置(200)を少なくとも備え、
上記1つの音響ビーム発生装置(100)は、
-電気パルス発生サブシステム(1)と、
-上記電気パルスを音響波に変換するように適応された第1の変換サブシステム(2)と、
-上記変換サブシステム(2)によって生成された上記音響波から音響ビームを生成し、破砕すべき1つ又は複数の固形物が配置される焦点領域に上記ビームを合焦させる音響ビーム発生サブシステム(3)と、
-上記破砕すべき1つ又は複数の固形物に上記音響ビームを結合するように適応された音響結合サブシステム(4)と、
-上記焦点(14)の位置を調整するように適応された位置決めサブシステム(5)とを備え、
上記1つのフィードバック及び制御装置(200)は、
-上記音響ビーム発生装置(100)を制御する制御サブシステム(7)と、
-上記音響ビームに関する情報を取得するように適応された第2の変換サブシステム(8)と、
-上記第2の変換サブシステム(8)によって取得された情報を処理する処理サブシステム(11)とを備え、
-上記音響ビームは音響渦ビームであり、
-上記フィードバック及び制御装置(200)は、上記処理サブシステム(11)によって処理された情報を受信し、それを上記制御サブシステム(7)に送るように構成されたフィードバックサブシステム(12)をさらに備える、
システム。
【請求項2】
上記音響渦ビームは超音波音響渦ビームである、
請求項1記載のシステム。
【請求項3】
上記フィードバック及び制御装置(200)は、
パルスエコー超音波画像化サブシステム(9)を備え、
上記1つ又は複数の固形物に関連付けられた情報のグラフィカル表現のための手段を備えた、上記1つ又は複数の固形物をモニタリングするモニタリングサブシステム(10)をさらに備える、
請求項1又は2記載のシステム。
【請求項4】
上記情報処理サブシステム(11)は、上記システムの焦点(14)において実質的に発生されるキャビテーションのリアルタイム測定のための手段を備え、
上記フィードバックサブシステム(12)は、上記情報を処理して、上記焦点(14)に入射するように上記音響ビームを再調整するようにさらに構成される、
請求項1~3のうちのいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
上記第1の変換サブシステム(2)は電気水力式であり、
上記音響ビーム発生サブシステム(3)は、上記渦を反射により発生する螺旋楕円面を有する反射器を備え、
上記位置決めサブシステム(5)はさらに、上記破砕すべき固形物に対して上記システムの焦点(14)を整列させる機械式である、
請求項1~4のうちのいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
上記第1の変換サブシステム(2)は電磁式であり、
上記音響ビーム発生サブシステム(3)は螺旋放物面反射器を備え、
上記位置決めサブシステム(5)はさらに、上記破砕すべき固形物に対して上記システムの焦点(14)を整列させる機械式である、
請求項1~4のうちのいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
上記第1の変換サブシステム(2)は電磁式であり、
上記音響ビーム発生サブシステム(3)は音響レンズを備える、
請求項1~4のうちのいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
上記音響レンズは、螺旋形又は螺旋楕円体の位相プロファイルをさらに有する、
請求項7記載のシステム。
【請求項9】
上記第1の変換サブシステム(2)は圧電式であり、
上記音響ビーム発生サブシステム(3)は、流体に浸漬された複数素子フェーズドアレイを備え、
上記位置決めサブシステム(5)は、電子式であり、上記システムの焦点(14)の位置を再調整するように上記フェーズドアレイのチャネルの各々の励振信号に適用される遅延を構成する、
請求項1~4のうちのいずれかに記載のシステム。
【請求項10】
上記第1の変換サブシステム(2)は、流体に浸漬された単一の圧電トランスデューサを備え、
螺旋回転楕円面における上記トランスデューサの配置は、上記音響ビーム発生サブシステム(3)によって提供され、
上記システムは、上記システムの焦点(14)を調整する機械式の位置決めサブシステム(5)をさらに備える、
請求項1~4のうちのいずれかに記載のシステム。
【請求項11】
上記第1の変換サブシステム(2)は、流体に浸漬された複数素子圧電トランスデューサを備え、
螺旋回転楕円面における複数のチャネルの各々の配置は、上記音響ビーム発生サブシステム(3)によって提供され、
上記システムは、上記システムの焦点(14)を調整する機械式の位置決めサブシステム(5)をさらに備える、
請求項1~4のうちのいずれかに記載のシステム。
【請求項12】
上記第1の変換サブシステム(2)は圧電式であり、
上記音響ビーム発生サブシステム(3)は音響レンズを備える、
請求項1~4のうちのいずれかに記載のシステム。
【請求項13】
上記音響レンズは、螺旋形又は螺旋楕円体の位相プロファイルを有する、
請求項1~12のうちのいずれかに記載のシステム。
【請求項14】
砕石において使用するための、請求項1~13のうちのいずれかに記載のシステム。
【請求項15】
上記フィードバック及び制御の装置(200)は、上記システムの焦点(14)を再調整する複数のアクチュエータを備える、
請求項1~14のうちのいずれかに記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的組織及び物体に対する超音波音響ビームの相互作用のための技術に関する。より具体的には、本発明は、最小の侵襲性の方法で、硬化した塊又は結石を破砕するための音響渦ビームシステムに関する。上記システムにおいて、渦ビームは、上記ビームが塊に与えるエネルギーに加えて、破壊される塊のサイズ、場所、及び組成に従って、強度、位相、反復レート、トポロジカルチャージなどに関して変調されてもよい。
【背景技術】
【0002】
1980年代の初めまで、大部分の腎結石は開腹手術により治療された。最小侵襲性の腎盂尿管鏡検査(ureterorenoscopy:URS)及び経皮的腎砕石術(percutaneous nephrostolithotomy (or nephrolithotomy):PCNL)技術における進歩により、例えば非特許文献1において報告されているように、非侵襲性の体外衝撃波砕石(extracorporeal shockwave lithotripsy:ESWL)システムの到来とともに、腎結石及び/又は胆石を除去するための開腹手術治療は行われなくなった。
【0003】
最初のESWL治療は、ドルニエ(Dornier)の「HM1(Human Model 1)」砕石器を用いて、ドイツにおいて1980年に行われた(非特許文献2を参照)。ESWL砕石技術の臨床使用は、その有効性と、抑制された副作用とに起因して、腎臓結石の破砕のために急速に広まっている。
【0004】
URS及びPCNLとは対照的に、ESWL治療の目的は、結石抽出ではなく結石破砕である。このことは、一連の高振幅の超音波パルスに結石をさらすことで達成される。これらのパルスは、結石内の剪断応力及び大きな内部応力を生じる力学的な波である。そのような力学的応力にさらされた後で、結石はより小さな破片に砕け、破片は組織自体によって自然に放出される(非特許文献3を参照)。
【0005】
ESWLの音響エネルギーは、比較的に小さなエリア、すなわち、砕石器の焦点を包囲し、関心対象の腎臓結石の場所であるエリアに集中される。焦点ゾーンは小さくても大きくてもよく、それに適用されるエネルギー量又は最大圧力もまた操作可能である。現代の砕石器に係る典型的な合焦値は、先に参照した非特許文献2で言及されているように、3~6mmの焦点ゾーンに与えられる、50~150MPaの圧力である。しかしながら、大きな合焦値は治療の有効性を保証しない。合焦した砕石器の個数が増えると、実際に結石に影響を与える衝撃波の個数が減少する傾向があり、衝撃波エネルギーの残りは腎臓組織へ直接に当たることになる。(非特許文献4を参照)結石は、ゾーンのほうが大きい場合、治療中に焦点ゾーン内にとどまる可能性が高いので、より低い圧力及びより大きな焦点領域、例えば、20mmの焦点上の20MPaで動作する装置が存在する。文献(非特許文献5、非特許文献6を参照)に報告されるように、広い焦点ゾーンの砕石器は、より小さな腎臓病変を発生させ、従って、より有利である。さらに、焦点の幅が結石の直径より大きい場合、大きな内部応力を引き起こすのに必要な剪断波が増大することが示された(非特許文献7を参照)。
【0006】
現在、すべての砕石器は、4つの共通の構成要素、すなわち、高い強度の超音波を発生するためのメカニズムと、この波を合焦するためのメカニズムと、発生システム及び患者の体の間の結合手段と、治療計画及びモニタリングのために結石を位置決めするためのシステムとを必要とする。
【0007】
超音波を発生するために主に3種類の技術、すなわち、電気水力式システム、圧電式システム、及び電磁式システムが存在する。
【0008】
まず、電気水力式発生システムは、楕円体反射器の第1の焦点F1上に位置した電気アークによって衝撃波を発生する。装置は、楕円体反射器の一般的にF2と呼ばれる第2の幾何学的焦点上に結石が位置するように設けられる。従って、衝撃波面は、第1の焦点から、水浴を通過し、水浴は次いで患者の体との音響結合として作用し、結石が位置した楕円体反射器の第2の幾何学的焦点までに伝搬する。
【0009】
第2に、圧電式システムは、電界にさらされる圧電材料の振動に基づき、これは、一般的に、2つの電極間の短い高電圧パルスによって発生される。圧電アクチュエータの膨張及び収縮は、結石が位置したシステムの焦点に伝搬する超音波を発生する。先に参照した非特許文献3に開示され、また、非特許文献8に開示されるように、圧電式システムが多数の構成要素から構成される場合、それらはフェーズドアレイ(配置としても知られる)を構成し、それらは、電気パルスのタイムラグによって電子的な合焦を可能にし、焦点が動的に配置されることを可能にする。
【0010】
最後に、電磁式砕石器は、水に接する金属薄膜に対して配置されたコイルからなる電気力学式トランスデューサを使用する。キャパシタにわたって高電圧パルスが放電されることで、コイルによってパルス化された電流を発生する。コイルを流れる後の電流パルスは、金属薄膜に対して斥力を引き起こし、それは、水を激しく収縮させて超音波パルスを発生する。この処理は、いくつかの従来技術文献、例えば、先に引用した非特許文献3、又は、非特許文献9に詳述されている。パルス合焦は、音響レンズ又は放物面反射器を用いることで達成される(先に言及した非特許文献8の論文を参照)。
【0011】
結石破砕メカニズムのうちの1つは、結石のまわりに生成されるキャビテーション泡の活性化である。例えば、同時又は急速に連続して発生する複数の衝撃波を用いて結石に対する泡の崩壊を発生させることで、この現象を最適化しようとする砕石器が存在する。これを達成するための1つの方法は、第2の圧電ヘッドによって、第1のものと焦点を共有する第2の衝撃波を発生することであり、それは、結石の破砕を著しく改善する。このことは、非特許文献10及び11から公知である。もう1つの方法は、非特許文献12に開示されたように、砕石器に余分な電気的励振システムを追加して2つの連続パルスを発生することである、最後に、デュアルヘッド砕石器は、非特許文献13及び14で実行されるように、破砕を最適化するように衝撃波を同じ点に送ることができる。
【0012】
超音波発生システムと患者の体との間を結合する2つの方法が一般的に使用される。水浴砕石器と呼ばれる第1の方法は、組織中への衝撃波の適切な伝達を保証するために、患者の体を水中に部分的に浸漬する。乾燥ヘッド砕石器と呼ばれる第2の方法は、放射システムを水バルーンで覆い、それを患者の皮膚に接する弾性膜によって結合することからなる。(先に引用した非特許文献8の論文を参照)。この最後の技術において、結合ゲルを用いて薄膜及び皮膚の間の正しいインピーダンス結合を保証することが重要である。非特許文献15で実証されるように、ESWLの有効性を大幅に低下させる、ゲル中の泡の発生を回避することが必要である。
【0013】
短い休止を有する複数の電力変動区間のように、超音波ビームの発生中に異なるシーケンスを使用することは、腎臓組織損傷を低減することに加えて、ESWL結石破砕結果を改善することが知られている。毎分約60波の遅い反復レートを使用することは、最小の合併症で最適な破砕をもたらす。
【0014】
結石を識別及び位置決めするために、一般に、X線又は蛍光透視法のような画像化技術が使用される。このことはまた、ESWL治療を開始する前に、システムの焦点を、破砕すべき固形物(例えば腎臓結石)に整列させる。しかしながら、主な欠点は、治療中における砕石器の焦点に関する結石の移動である。これは、主に、患者の呼吸運動に起因する。いかなる対策もとられない場合、このことは、結果として、伝送された衝撃波の50%以上が結石に到達せず、腎臓組織に入射し、それを過熱し、さらにそれに損害を与えることになる。これを回避するために、結石を連続的に位置決めして衝撃波トリガ発生を同期させる超音波画像化及び圧電砕石器(非特許文献16を参照)又は光学的砕石器を用いて、動的追跡及び合焦システムが開発された。
【0015】
最近になって、結石の破砕をモニタリングするための音響システムが提案された。ブロードバンド受信機を用いて、超音波の作用下における結石の反響及び共振から音響信号が取得される。取得される信号の周波数のような様々なパラメータが、破片のサイズと相関する(非特許文献17を参照)。このことは、治療のモニタリングを可能にし、また、治療をいつ停止する必要があるかを認識して、健康な腎臓組織に対する不必要な音響エネルギーを低減することを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】N. Bhojani and J. E. Lingeman, "Shockwave Lithotripsy-New Concepts and Optimizing Treatment Parameters", Urol. Clin. North Am., vol. 40, no. 1, p. 59-66, 2013
【非特許文献2】C. Chaussy et al., "Extracorporeally Induced Destruction of Kidney Stones by Shock Waves", Lancet, vol. 316, no. 8207, p. 1265-1268, 1980
【非特許文献3】J. J. Rassweiler et al., "Shock Wave Technology and Application: An Update", Eur. Urol., vol. 59, no. 5, p. 784-796, 2011
【非特許文献4】R. O. Cleveland et al., "Effect of Stone Motion on in Vitro Comminution Efficiency of Storz Modulith SLX", J. Endourol., vol. 18, no. 7, p. 629-633, 2004
【非特許文献5】A. P. Evan et al., "Independent assessment of a wide-focus, low-pressure electromagnetic lithotripter: absence of renal bioeffects in the pig", BJU Int, vol. 101, no. 3, p. 382-388, 2008
【非特許文献6】J. A. McAteer et al., "Independent Evaluation of the Lithogold LG-380 Lithotripter: In Vitro Acoustic Characteristics and Assessment of Renal Injury in the Pig Model", J. Urol., vol. 181, no. 4, p. 665-666, 2009
【非特許文献7】R. O. Cleveland and O. A. Sapozhnikov, "Modeling elastic wave propagation in kidney stones with application to shock wave lithotripsy", J. Acoust. Soc. Am., vol. 118, no. 4, p. 2667-2676, 2005
【非特許文献8】T. G. Leighton and R. O. Cleveland, "Lithotripsy", Proc. Inst. Mech. Eng. Part H J. Eng. Med., vol. 224, no. 2, p. 317-342, 2010
【非特許文献9】W. Folberth et al., "Pressure distribution and energy flow in the focal region of two different electromagnetic shock wave sources", J. Stone Dis., vol. 4, no. 1, p. 1-7, 1992
【非特許文献10】X. Xi and P. Zhong, "Improvement of stone fragmentation during shock-wave lithotripsy using a combined EH/PEAA shock-wave generator-in vitro experiments," Ultrasound Med. Biol. vol. 26, no. 3, p. 457-467, 2000
【非特許文献11】A. Z. Weizer et al., "New Concepts in Shock Wave Lithotripsy," Urol. Clin. North Am. vol. 34, no. 3, p. 375-382, 2007
【非特許文献12】F. Fernandez et al, "Treatment time reduction using tandem shockwaves for lithotripsy: An in vivo study," J. Endourol. vol. 23, no. 8, p. 1247-1253, 2009
【非特許文献13】D. L. Sokolov et al., "Use of a dual-pulse lithotripter to generate a localized and intensified cavitation field," J. Acoust. Soc. Am., vol. 110, no. 3, p. 1685-1695, 2001
【非特許文献14】D. L. Sokolov et al., "Dual-pulse lithotripter accelerates stone fragmentation and reduces cell lysis in vitro," Ultrasound Med. Biol. vol. 29, no. 7, p. 1045-1052, 2003
【非特許文献15】Y. A. Pishchalnikov et al, "Air Pockets Trapped During Routine Coupling in Dry Head Lithotripsy Can Significantly Decrease the Delivery of Shock Wave Energy," J. Urol. vol. 176, no. 6, p. 2706-2710, 2006
【非特許文献16】C. Bohris et al., "Hit/miss monitoring of ESWL by spectral Doppler ultrasound", Ultrasound Med. Biol., vol. 29, no. 5, p. 705-712, 2003
【非特許文献17】N. R. Owen et al., "The use of resonant scattering to identify stone fracture in shock wave lithotripsy", J. Acoust. Soc. Am., vol. 121, no. 1, p. EL41-EL47, 2007
【非特許文献18】S. C. Kim et al., "Cystine calculi: Correlation of CT-visible structure, CT number, and stone morphology with fragmentation by shock wave lithotripsy", Urol. Res., vol. 35, no. 6, p. 319-324, 2007
【非特許文献19】L. J. Wang et al., "Predictions of outcomes of renal stones after extracorporeal shock wave lithotripsy from stone characteristics determined by unenhanced helical computed tomography: A multivariate analysis", Eur. Radiol, vol. 15, no. 11, p. 2238-2243, 2005
【非特許文献20】J. A. McAteer et al., "Shock Wave Injury to the Kidney in SWL: Review and Perspective", p. 287-301, 2007
【非特許文献21】K. Maeda et al., "Energy shielding by cavitation bubble clouds in burst wave lithotripsy," J. Acoust. Soc. Am. vol. 144, no. 5, pp. 2952-2961, 2018
【非特許文献22】N. Jimenez et al., "Sharp acoustic vortex focusing by Fresnel-spiral zone plates," Applied Physics Letters, 2018, vol. 112, no 20, p. 204101
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、ESWLは広く受けいれられて広く使用されているが、この手順はいくつかの重要な制限を有する。まず、ブルシャイトからなる結石のようなある種の腎結石は大きな耐性を有し、ESWLによるそれらの破砕は限定的である。そのような結石を有する患者がESWLを受け、従って、達成可能な破砕の利益を受けることなくその(軽度及び重度の)合併症にさらされることになるので、この欠点は極めて重要である(非特許文献18を参照)。
【0019】
結石の場所、サイズ、及び組成は、ESWL治療の成功に関する最も重要な予測子である。異なるタイプの結石は、硬さに関して、従って破砕の難しさに関して降順で、ブルシャイト(リン酸水素カルシウム)、シスチン、シュウ酸カルシウム一水化物、ストルバイト、シュウ酸カルシウム二水化物、又は尿酸からなる。結石のタイプは、X線断層撮影法によって放射線濃度を測定することで識別可能である。900ハウンズフィールド単位(Hounsfield unit:HU)を超える濃度を有する結石は、ESWL治療に失敗する可能性を予想する(非特許文献19を参照)。X線に基づく技術は、ESWLによる結石破砕の予測子として使用される。シュウ酸カルシウム一水化物又はシスチンからなる結石の場合によくあるように、他の結石は完全には破砕されず、相補的な治療は必要である。最後に、主として健康な組織に対する衝撃波の作用に起因して、軽度の合併症が非常に頻繁に発生し、また、いくつかの場合には重度の合併症が発生する(非特許文献20を参照)。
【0020】
ESWL結果の最適化における現在の進歩は、石(又は結石)のタイプ、場所、及びサイズの初期特徴づけ、波の音響結合及び反復レートの最適化、及び衝撃波のシーケンスのような、治療パラメータの最適化に焦点をおいている。
【0021】
しかしながら、破砕すべき結石を包囲する組織が高い強度の超音波パルスに常にさらされるので、これらの組織は軽度又は重度の合併症にさらされる。これらの合併症は、出血、血栓、不整脈、血管収縮、高血圧、腎機能低下、感染症、自律神経系の変化、及び細胞メディエータ及びホルモンの放出を含む。組織損傷の発生は、2段階の逐次処理で識別された。第1段階は、衝撃波の力学的な影響に起因する初期組織破壊からなる。このことは血液の蓄積をもたらす。第2段階では、そのような蓄積は、組織に対する最も有害な影響を生じる、焦点ゾーンにおける慣性キャビテーションの発生を促進する(先に言及した非特許文献8の論文を参照)。慣性キャビテーションの発生は、衝撃波希薄化、すなわち最小脈圧の振幅に密接にリンクされる。最後に、過剰なキャビテーションは、衝撃波へのバリアとして作用する気体泡を発生する(非特許文献21を参照)。これらの理由すべてにより、流体力学の分野において開示されている異なるキャビテーションインデックスを用いて、発生するキャビテーションを定量化すること必要がある。
【0022】
さらに、患者は以前に腎結石から大きな苦痛を経験しているが、ESWL技術もまた、いくつかの場合に途中で治療を中止しなければならないほど大きな苦痛を引き起こす(先に引用した非特許文献8の論文を参照)。苦痛を軽減するために、ここでは、より弱く合焦されたソース(延いては音響波のより低い振幅)が使用されるが、このことは従来技術の主な制限として残る。
【0023】
一方、例えば特許文献1(Unemuraほか)、「超音波放射システム(Ultrasonic irradiation system)」に開示されるような、音響ビーム合焦技術が知られている。この文献は、複数のリング音響トランスデューサのシステムを提案し、その励振信号は、二次元(2D)の(環状又は楕円状)平面焦点ゾーンに対する合焦を達成し、伝搬方向に沿った不要な2次合焦を避けるように、適切に調整された遅延を有する。三次元(3D)螺旋渦ビームに関するより最近の例は、例えば、非特許文献22に開示される。渦ビームは、典型的には超音波範囲の周波数を有する、長手方向の力学的な波であり、対応する音響場は1つの軸に沿った位相特異性を示す。特に、円筒座標r=r(θ,r,z)において、そのようなビームは次式で表されてもよい。
【0024】
【0025】
ここで、P
0は任意の圧力値であり、G
r(r)及びG
z(z)は、放射方向(r)及び軸方向(z)の座標に沿ったビーム形状をそれぞれ示し、Mは(運動量移動効率に関連づけられた)トポロジカルビームチャージであり、θは方位角の座標である。(典型的にはネジ状の)位相欠陥は、
図1に示すように、その点における弱め合う波の干渉に起因して、音響ビームの軸におけるヌルフィールドを生じさせる。フィールドの最大値は、焦点のまわりにおいて環状又は環状体の分布を有する。しかしながら、フィールドの位相(Φ)は、方位角の座標に沿って線形に変化し、従って、圧力の最大値は時間の関数として回転する。これにより、渦ビームは、線形及び角運動量を、相互作用する物体に非常に効率的に伝達することになる。さらに、それらが特定の領域に所定の物理的パラメータ(強度、周波数、波反復レートなど)で合焦されるように設計可能であるので、それらは、上記物体に伝達されたエネルギーを投与することを可能にする。この場合、これらの渦ビームは、容積測定の3D焦点ゾーンを到達することを可能にし、それにより、同時に、かつ、(電子的に又は機械的に)焦点を再調整する必要なく、3D焦点ゾーンに、意図的かつ制御された方法で到達可能になり、このことは2D平面に限定されない。
【0026】
要約すると、通常の体外衝撃波結石破砕手順の悪影響及び合併症とともに患者が受ける苦痛を最小化するように、低減された振幅を有する力学的な波を用いて結石の効率的な破砕を可能にする新たな技術を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、音響渦を用いた固形物の非侵襲的な破砕のためのシステムを開示する。その最も重要なアプリケーションのうちの1つが、砕石でのその使用であることに注意すべきである。
【0028】
特定のアプリケーションにおいて、本発明の目的は、破砕すべき固形物(例えば、胆石又は腎結石)に適用されずに周囲の軟らかい組織に適用されるエネルギー量に関する、ESWL技術の不十分な効率の問題への解決方法を提供する。この意味で、本発明は、現在の技術水準に優越し、また、非侵襲的な方法で、かつ、高い強度の超音波ビームとして公知である有限振幅の合焦された超音波渦ビームを用いて、組織内部の結石を破砕するために必要な方法及びシステムを提供する。しかしながら、本願は、限定することなく、非侵襲的な方法で固形物の制御された破壊を必要とする他のアプリケーションに適応されてもよい。
【0029】
進歩性を有する第1の態様において、本発明は、音響衝撃波による固形物の制御された破砕のためのシステムに関し、本システムは、1つの音響ビーム発生装置及び1つのフィードバック及び制御装置を備え、
a)上記1つの音響ビーム発生装置は、
-電気パルス発生サブシステムであって、上記パルスは、固形物の破砕に適した電圧及び/又は電流によって特徴づけられる電気パルス発生サブシステムと、
-電気パルスを高い強度の音響波又は圧力に変換するように適応された第1の変換サブシステムであって、上記変換は、電気水力式、電磁式、圧電式、又は任意の種類であってもよい第1の変換サブシステムと、
-上記変換サブシステムによって生成された上記音響波から音響ビームを生成し、破砕すべき1つ又は複数の固形物が配置される焦点領域に上記ビームを合焦させる音響ビーム発生サブシステムと、
-上記破砕すべき1つ又は複数の固形物に上記音響ビームを結合し、従って、上記システムの焦点への音響波の伝搬中に生じる減衰を最小化するように適応された音響結合サブシステムと、
-上記焦点の位置を調整するように適応された位置決めサブシステムであって、上記位置決めサブシステムは電気機械式であってもよく、焦点の位置を自動的に調整すること、又は、システムオペレータ又はユーザによって要求されるように手動で調整することを可能にする位置決めサブシステムとを備え、
b)上記1つのフィードバック及び制御装置は、破砕すべき1つの固形物に入射する音響波の向き及び強度を変更することを可能にし、
-上記音響ビーム発生装置を制御する制御サブシステムと、
-1つ又は複数の固形物との相互作用の前後における音響ビームに関する情報を取得するように適応された第2の変換サブシステムと、
-上記第2の変換サブシステムによって取得された情報を処理する処理サブシステムと
を備える。
【0030】
優位点として、上記システムにおいて、音響ビームは音響渦ビームであり、フィードバック及び制御装置は、処理サブシステムによって処理された情報を受信してそれを制御サブシステムに送るように構成されたフィードバックサブシステムをさらに備える。
【0031】
本発明の好ましい実施形態では、音響渦ビームは、高い強度の超音波音響渦ビームである。上記渦ビームは結石に合焦され、上記結石を効率的に破砕するトルク、剪断応力、及び大きな内部応力を生じる。音響渦の結果、(縦波の形式を有する)超音波励振エネルギーは、非常に効率的に、(横波としての)力学的エネルギーに変換される。この種のビームを用いて剪断応力の発生がより効率的になるので、結石を破砕するために必要とされる超音波フィールド振幅は、現在の体外衝撃波結石破砕法技術の場合よりもずっと低くなり、それにより、キャビテーションに起因する周囲の組織の出血又は損傷のような、軟らかい組織に対する不要な影響を低減することができる。音響渦発生技術は既知であり、特許の目的の本質的な部分ではない。実際、位相欠陥を軸に沿って調整できるならば、複数の渦ビーム構成をこの目的で役立てることができる。
【0032】
本発明の他の実施形態では、フィードバック及び制御装置は、画像化サブシステムをさらに備え、それはまた、1つ又は複数の固形物をモニタリングするモニタリングサブシステムを備え、それは、破砕方法に関する情報をシステムのユーザに提供するグラフィカル表現のための手段を含む。画像化システムは、固形物のモニタリング(その位置及びその周囲の位置決め、追跡、及び測定)を可能にする。本発明の他の好ましい実施形態では、固形物に適用されるエネルギーの投与を制御するために、焦点のまわりの温度を測定するためのセンサが含まれてもよい。本発明の有利な実施形態では、モニタリングサブシステムは、パルスエコー超音波画像化の方法を含む。本発明の他の実施形態では、さらに、他の画像化方法(蛍光透視法、X線など)を使用することが可能であり、これは、次いで、他の変換メカニズムを必要としてもよい。モニタリングサブシステムの結果、システムのユーザは、治療をモニタリングすることができ、必要ならば(例えば、患者が苦痛を報告する場合、又は、音響波が過大な振幅を有する場合)、それの中断を決定することができる。
【0033】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、情報処理サブシステムは、焦点のまわりに生じたキャビテーションのリアルタイム測定を含み、フィードバックサブシステムは、焦点に入射する音響ビームを記述する物理的パラメータを再調整するために、少なくとも上記キャビテーションの進展又は状態をさらに考慮する。例えば、過度のキャビテーションが存在する場合、音響ビームの振幅又は反復レートが低減されてもよい。
【0034】
本発明のいくつかの特定の実施形態では、第1の電気機械式変換サブシステムは電気水力式であり、音響ビーム発生サブシステムは、渦を反射により発生する螺旋楕円面を有する反射器を備える。この場合、位置決めサブシステムは機械式であり、破砕すべき固形物に対してシステムの焦点を整列させることを担当する。
【0035】
本発明の他の好ましい実施形態では、第1の変換サブシステムは電磁式であり、音響ビーム発生サブシステムは螺旋放物面反射器を備える。さらに、上記実施形態では、位置決めサブシステムは、好ましくは機械式であり、破砕すべき固形物に対してシステムの焦点を整列させるように働く。
【0036】
本発明の他の有利な実施形態では、第1の変換サブシステムは電磁式であり、一方、音響ビーム発生サブシステムは音響レンズを備える。上記レンズは、焦点を調整するために機械式の位置決めサブシステムを必要とする。他のさらにもっと有利な実施形態では、音響レンズは、螺旋形又は螺旋楕円体の位相プロファイルを有する。
【0037】
本発明のもう1つの特定の実施例では、ビームを発生する第1の変換サブシステムは圧電式である。この場合、音響ビーム発生サブシステムは、流体に浸漬された複数素子フェーズドアレイを備える。上述した特定の実施形態とは異なり、測位システムは、好ましくは電子式であり、また、機械的整列の必要なくシステムの焦点の位置を再調整するようにフェーズドアレイのチャネルの各々の励振信号に適用される遅延を構成することを可能にする。
【0038】
本発明のさらなる実施形態では、第1の変換サブシステムは、流体に浸漬された単一の圧電トランスデューサを備え、螺旋回転楕円面における上記トランスデューサの配置は、音響ビーム発生サブシステムによって提供され、上記システムは、システムの焦点を調整する機械式の位置決めサブシステムをさらに備える。
【0039】
本発明のもう1つの追加の実施形態は、上述の実施形態において、単一のトランスデューサを複数素子圧電トランスデューサで置き換えることからなり、各素子は螺旋回転楕円面に配置される。この意味で、この実施形態において、第1の変換サブシステムは、流体に浸漬された複数素子圧電トランスデューサを備え、螺旋回転楕円面における複数のチャネルの各々の配置は、音響ビーム発生及び合焦サブシステムによって提供され、上記システムは、システムの焦点を調整する機械式の位置決めサブシステムをさらに備える。
【0040】
本発明のもう1つの好ましい実施形態は、音響波を発生する圧電式の第1の変換サブシステムを含み、音響ビーム発生(及び合焦)サブシステムは音響レンズをさらに備える。いくつかのさらにもっと有利な実施形態では、上記音響レンズは、螺旋形又は螺旋楕円体の位相プロファイルを有してもよい。
【0041】
固形物の破砕のためのシステムの好ましい使用は、砕石の分野におけるその適用からなる。
【0042】
本発明のさらに好ましい実施形態では、フィードバック及び制御装置は、患者の移動に従ってシステムの焦点を再調整するための、例えば、患者の呼吸によって生じた焦点の誤整列をオフセットするための複数のアクチュエータを備える。そのような場合において、アクチュエータは、圧力パッド、腹部空気センサ、気管呼吸音モニタ、又は呼吸を検出するための同様のセンサであってもよい。焦点のこの再調整は、好ましくは、リアルタイムで実行される。
【0043】
本発明の範囲において、アレイ又はフェーズドアレイ又は配置は、好ましくは、複数の音響トランスデューサの行列として理解され、各素子は、所定の物理的特性(振幅、周波数、位相など)を有するビームを放射するように調整されてもよい。トランスデューサは、次いで、単一の素子(単一のトランスデューサ)であってもよく、又は、独立したトランスデューサとしてそれぞれ動作する複数素子(セクタ又はチャネルとしても知られる)に分割されてもよい。また、音響レンズは、光学レンズが合焦する方法と同様に音を合焦することができる装置であると理解される。
【0044】
本発明のコンテキストでは、いったん音響波が形成されて、それらが作用すべき位置に向けられると、それらは音響ビームと呼ばれる。音響ビームは、既に形成された音響波を示す。
【0045】
さらに、渦ビームは、二次元であろうと三次元であろうと、軸(「伝搬軸」と呼ばれる)に沿った位相欠陥を有する音響場を有する音響ビームとして理解されるものとする。従って、2D渦ビームは環状又は楕円形状を有してもよく、一方、3Dビームは螺旋形状を有してもよい。上記ビームが合焦されるゾーンは、ビームの伝搬の方向に沿って延在する3Dの焦点領域である。システムの焦点は、好ましくは、上記焦点領域の重心に実質的に対応する領域として理解されているものとする。本発明の範囲において、「実質的に」という表現は、同様に、同一であるか又は±15%の変動マージン内に含まれると理解されているものとする。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】
図1は、合焦された渦ビームの音響場を示す。(a)|P|/P
0として示す、矢状断面P(x,y=0,z)における正規化された音響場の絶対値。(b)矢状断面における音響場の位相φ。(c)焦点ゾーンにわたる横断面P(x,y,z=F)における正規化された音響場の絶対値。(d)焦点のゾーンに関する横断面における音響場の位相。
【
図2】
図2は、砕石に適用するための、本発明の目的である(超音波)音響渦による固形物の破砕のためのシステムの図を示す。
【
図3】
図3は、音響ビーム発生サブシステム(3)が電気水力式であり、螺旋楕円体反射器を備える、本発明の好ましい実施例の方式を示す。渦ビーム(13)は、破砕すべき固形物(この場合、腎結石)の位置に一致する、システムの焦点(14)に向けられる。
【
図4】
図4は、
図3の渦ビームを発生及び合焦するために使用される螺旋楕円体反射器をより詳細に示す。
【
図5】
図5は、電磁式の音響ビーム発生サブシステム(3)を備え、螺旋放物面反射器を含む、本発明のシステムの好ましい実施例の方式を示す。渦ビーム(13)は、破砕すべき固形物の位置に一致する、システムの焦点(14)に向けられる。
【
図6】
図6は、
図5において参照され、音響ビーム発生サブシステム(3)に使用される、電磁式である螺旋放物面反射器の構造の詳細図を含む。
【
図7】
図7は、音響ビーム発生サブシステム(3)として動作する螺旋位相音響レンズを含む電磁式の渦発生器を有する、本発明のシステムの実施例を示す。渦ビーム(13)は、破砕すべき固形物の位置に一致する、システムの焦点(14)に向けられる。
【
図8】
図8は、焦点Fにおいて合焦する、
図7に示す電磁式渦発生システムのための螺旋位相音響レンズの詳細図を含む。
【
図9】
図9は、渦発生器が電気機械式変換サブシステム(2)としてフェーズドアレイ構成の複数素子圧電トランスデューサを備える、好ましい実施例を示す。渦ビーム(13)は、破砕すべき固形物の位置に一致する、システムの焦点(14)に向けられる。
【
図10】
図10は、
図9に示すフェーズドアレイによる圧電式渦発生システムの詳細図を示す。
【
図11】
図11は、電気機械式変換サブシステム(2)が球面合焦された単一素子圧電式螺旋回転楕円面トランスデューサを備える、特定の実施例を示す。渦ビーム(13)は、破砕すべき固形物の位置に一致する、システムの焦点(14)に向けられる。
【
図12】
図12は、
図11に示す球面合焦された単一素子圧電式螺旋回転楕円面トランスデューサの詳細図を示す。
【
図13】
図13は、電気機械式の変換サブシステム(2)が球面合焦された複数素子圧電式螺旋回転楕円面トランスデューサによって実装される、特定の実施例を示す。渦ビーム(13)は、破砕すべき固形物の位置に一致する、システムの焦点(14)に向けられる。
【
図14】
図14は、螺旋面(15)に配置された球面合焦された複数素子による圧電式渦発生システムの詳細図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明の説明を補足するために、説明の不可欠な部分を形成し、本発明のいくつかの好ましい実施例を示す一組の図面が添付される。しかしながら、そのような実施例は、本発明の範囲を限定すると理解されるべきではなく、むしろ、単に本発明を実施しうる態様の異なる例として理解されるべきである。
【0048】
図2は、本発明に係る固形物の破砕のためのシステムの好ましい実施形態を示す。上記システムは、好ましくは、少なくとも2つの装置、すなわち、好ましくは超音波かつ高強度の音響ビーム発生装置(100)と、フィードバック及び制御装置(200)とを備える。
【0049】
まず、音響ビーム発生装置(100)は、好ましくは超音波である音響ビームを発生させ、結石の破砕を引き起こす目的で、結石が位置したゾーンに音響ビームを適切に向けることを担当する。この装置(100)は、少なくとも下記のサブシステムによって形成される。
- 高電圧及び/又は大電流の電気パルスを発生するように適応された電子的電力発生サブシステム(1)。
- 発生サブシステム(1)によって提供された電気パルスを高強度の超音波に変換するための(好ましくは電気機械式の)第1の変換サブシステム(2)。
- 第1の変換サブシステム(2)において得られた超音波から1つ又は複数の渦ビームを発生及び方向付けることを担当する音響ビーム発生サブシステム(3)。
- 治療(6)の効率に大きな悪影響を与える伝搬中に渦を構成する超音波の減衰を最小化するための、音響ビーム発生装置(100)と、破砕すべき物体(例えば、患者の体の内部の結石)との間の音響結合サブシステム(4)。
- 音響ビーム発生サブシステム(3)によって形成及び合焦されたビームの焦点を整列させ、従って、破砕すべき結石が位置した場所に入射させる、電子式又は機械式であってもよい、位置決めサブシステム(5)。
【0050】
いったん音響ビーム発生装置(100)が構成されると、それは、次いで、破砕すべき固形物に向かって音響波を導くことからなる治療(6)を行う。
【0051】
治療のためのフィードバック及び制御装置(200)に関して、上記装置は、治療(6)の前、実施中、及び/又は後に、結石の位置、特性、及び状態に関する情報を取得することを担当する。結石の位置及びサイズの推定に基づいて、装置(200)は、システムの焦点(14)の位置と、適宜、渦の他のパラメータ(トポロジカルチャージなど)との調整を可能にする制御信号を提供する。概して、装置(200)は、少なくとも下記の構成要素からなる。
- 音響ビーム発生装置(100)のサブシステム(1、2、3、4、5)のうちの1つ又は複数を操作することでビームの物理的パラメータ(振幅、強度、周波数など)を変更するように構成された、超音波渦ビーム発生サブシステム(3)の制御サブシステム(7)。上記サブシステム(7)は、(例えば、患者が過度の苦痛を報告した場合における)システムオペレータによる治療の随意の中断を可能にするか、又はさもなければ、何らかの重要なしきい値(治療されるゾーンの周囲のエリアにおける過大な温度、又は、高すぎるキャビテーションインデックス)を超過した場合における、電気パルス発生サブシステム(1)の自動停止を可能にしなければならない。
- 治療の前、実施中、及び/又は後に、音響ビームの信号を取得するように構成された、電気機械式の第2の変換サブシステム(8)。
- 破砕すべき固形物及び/又はその周辺領域を画像化する画像化サブシステム(9)。好ましくは、画像は超音波画像である。
- システムを操作しているオペレータに治療に関する情報を提供し、特に、固形物の画像と、それから得られる関心対象の他のパラメータとを表示するモニタ、又は、グラフィカル表現のための任意の手段を備える、治療を好ましくはリアルタイムでモニタリングするモニタリングサブシステム(10)。モニタリングサブシステム(10)によって提供される固形物(結石)に関する追跡情報は、高強度音響ビーム発生装置(100)の焦点を調整するために使用される。
- 互いに異なる複数の関心対象の周波数帯においてそのエネルギーを分析する手段を含む、取得された情報を処理する処理サブシステム(11)。本サブシステムは、モニタリングサブシステム(10)のモニタ又はグラフィカル表現のための手段にもこの情報が現れるように、(例えば、治療中の重大な副作用のリスクを予測することに関連しうる様々なキャビテーションインデックス又は他の同様のパラメータを計算することによって)治療(6)の有効性をリアルタイムで評価することを目的とする。
- モニタリングサブシステム(10)によって実行される結石の追跡に基づいて、情報処理サブシステム(11)によって抽出された情報(超音波信号など)に基づいて、及び/又は、他の測定値(例えば、ビームが合焦されているゾーンの近傍において温度上昇)に基づいて、(例えば、電気パルス発生サブシステム(1)の振幅、周波数、及び反復レートの変更などによって)ビームを調整する必要性を制御サブシステム(7)に通知するフィードバックサブシステム(12)。
【0052】
各サブシステム内の構成要素(1、2、3、4、5、7、8、9、10、11、12)は、好ましくは、
図2に示すように相互接続される。
【0053】
フィードバック及び制御装置(200)と、特に取得情報処理サブシステム(11)とは、フィードバックサブシステム(12)を変調する互いに異なる複数の音響インデックスの計算を担当し、フィードバックサブシステム(12)は、次いで、パルス発生サブシステムにおいて行われなければならない変更を制御サブシステム(7)に通知する。上記インデックスは、好ましくはリアルタイムで、パルスの強度を変調し、従って、超音波の振幅及びパルスの反復レートを変調する。この目的のために、システムは、取得された信号のエネルギーを積分し、互いに異なる複数の帯域幅にわたってフィルタリングすることで、キャビテーションインデックスを計算する。下記に定義されるパラメータは排他的ではなく、当業者は他の同様のパラメータを定義できるであろう。特に、これらの音響インデックスは音響信号のフーリエ変換から得られ、P(ω)と表記される。
【0054】
まず、安定なキャビテーションインデックスは次式で定義される。
【0055】
【0056】
ここで、ω0は、超音波放射の基本周波数(正弦波バーストの基本周波数、又は、パルス励振の場合にはパルスの中心周波数)であり、N=ωmax/ω0であり、ここで、ωmaxは、取得システムの帯域幅によって許容される最大周波数である。
【0057】
サブ高調波キャビテーションインデックス(subharmonic cavitation index:ISH)は、サブ高調波構成要素パワースペクトルから計算される。すなわち、次式で示される。
【0058】
【0059】
超高調波キャビテーションインデックス(ultraharmonic cavitation index:IUH)は、すべての基本周波数超高調波のパワースペクトルを積分することで計算される。すなわち、次式で示される。
【0060】
【0061】
慣性キャビテーションインデックス(inertial cavitation index:IIC)は、音響信号のスペクトル全体を積分し、基本周波数高調波のパワースペクトルを減算することで、次式のように計算される。
【0062】
【0063】
最後に、ブロードバンドキャビテーションインデックス(broadband cavitation index:IBB)は、音響信号のスペクトルを積分し、基本周波数高調波及び超高調波のパワースペクトルを減算することで計算される。
【0064】
【0065】
このように、キャビテーションインデックスの信号は、破砕すべき結石が好ましくは位置する、焦点(14)のまわりのキャビテーション活動に基づいて変動する。これらのインデックスは、音響フィードバックシステムにより電力発生システムの制御信号を変調するために使用される。インデックスは、リアルタイムで治療(6)をモニタリングし、治療(6)の追跡及び/又は随意の中断に関連する情報を提供するためのグラフィックインターフェースによってさらに表示される。
【0066】
音響ビーム発生装置(100)の多数の好ましい実施例を以下で説明する。
【0067】
図3に、第1の電気水力式変換サブシステム(2)として動作する流体に浸漬された点火プラグを電気パルス発生サブシステム(1)が電気的に励振する、本発明の好ましい実施例を示す。点火プラグに特定の電圧を印加した後に、誘電体は破壊され、その端子間に電気アークを発生する。このことは、2つの端子間に流れる電子の大電流を引き起こし、その結果、流体の温度の瞬間的な上昇をもたらす。次いで、温度上昇は気体泡を発生させ、気体泡は、激しく膨張し、次いで、残りの流体の流体力学的圧力下で収縮する。この過程は、流体の全体にわたって伝搬する、球状の、過渡的な、高圧振幅音響波を発生させる。システムは、音響ビーム発生サブシステム(3)として、螺旋楕円面を有する反射器を備え、これは、破砕すべき結石の位置に向かって波面を反射することを担当する。螺旋楕円体反射器の特性に起因して、渦ビームが反射により発生され、
図4に示す座標系によれば、波面が焦点F
2に合焦され、ここで結石の破砕が行われる。上記波面の最適な伝送を保証するために、システムは音響結合サブシステム(4)を使用する。音響結合サブシステム(4)は、弾性膜、結合ゲルの層、又は水浴によって患者の皮膚に結合された水バルーンであってもよい。螺旋楕円体反射器は、次式に等しい方位角座標(θ)の関数として音響遅延差(Δt)を提供できる螺旋面において配置されることに注意すべきである。
【0068】
【0069】
ここで、ω0は設計角周波数であり、Mはビームのトポロジカルチャージである。ビームは、一定の伝搬速度を仮定できる流体において伝搬するので、音響行路差(ΔL)が次式に等しい場合、そのような遅延が発生する。
【0070】
【0071】
ここで、λ
0=2πc
0/ω
0は設計波長であり、c
0は流体における音速である。aが螺旋楕円体反射器の短半径の最大値である場合、焦点F
1及びF
2と、楕円定数a
p(θ)=[2a-ΔL(θ)]/2とを有する楕円曲線が定義される場合、反射器の面の半軸(b
x及びb
y)は、方位角座標
【数9】
及び
【数10】
に基づいて定義されてもよい。最終的に、点r=r(x,y,z)における螺旋楕円体反射器の面は、F
2によって与えられる。
【0072】
【0073】
式(4)~(6)において、方位角θは0及び2πの間に含まれ、慣例に従い、仰角Φは0及びπの間に含まれる。反射器の半軸がその開口(A)幾何学的に制限することがさらに考慮される場合、すなわちA<2aの場合、最大仰角は、Φmax=tan-1(A/2F2)によって与えられ、一方、治療(6)をモニタリングするために使用される電気水力式電気的パルス発生サブシステム(1)と第2の変換サブシステム(8)との間の中央ギャップ(Ah)の直径は、最小高さが、Φmin=tan-1(Ah/2F2)によって与えられることを決定する。非常に低い周波数では、位相差が非常に小さくなるので、反射器は楕円反射器として動作する。従って、低周波及び高周波の両方において、螺旋楕円体反射器は、すべての音響エネルギーが焦点F2に合焦されることを保証する。焦点の位置が電子的に制御できず、螺旋楕円体反射器の焦点によって設定されるので、焦点(14)、F2を結石に対して整列させるために機械式移動システムが必要とされる。この実施例の主な欠点は、使用による点火プラグの浸食に起因する、その短い耐用年数である。
【0074】
好ましい代替の実施例では、超音波の大振幅音響(渦)ビーム発生サブシステム(3)は、電磁式の第1の変換サブシステム(2)の前置動作を必要とし、
図5に示すような、ビームを発生及び合焦するための螺旋放物面反射器を備える。それによって、システムは、システムの軸に配置されかつ流体に浸漬された可動弾性体シリンダに固定されたコイルによる電気的な励振のために、大電流電気パルス発生サブシステム(1)を使用する。ダイナミックスピーカに存在する電気機械式トランスデューサと同様に、コイルの誘導は、シリンダをまず膨張させて次いで収縮させる力を発生する。上記電磁式変換処理は、大振幅の、過渡的な、円筒状圧力音響波面を発生し、それは、システムの軸に垂直な放射座標に沿った流体に沿って伝搬する。螺旋形の放物面の表面を備えた反射器は、結石の破砕が起こる場合には、Fとして以下に参照されて、焦点(14)の上の上記波面を転送するために用いられる。音響結合サブシステム(4)は、とりわけ、弾性膜、結合ゲルの層、又は水浴によって患者の皮膚に結合された水バルーンであってもよい。(
図6に示す)反射器の設計は、焦点上への波面の合焦と、その点上で位相欠陥が生じることとを同時に保証することに注意すべきである。その目的で、音響行路差は、式(2)~(3)の条件を満たさなければならない。反射器の設計は、点r(θ,r,z)=(0,0,F)に設定された焦点を有する放物線のプロファイルによって形成される、螺旋放物面を考慮して行われる。放物線のプロファイルは、z=0において設けられたシステムの下方の平面を、点r(θ,r,z)=(θ,r
c(θ),0)において切断する。ここで、座標r
c(θ)=R
m-(m’Mθλ
0/2π)であり、R
mは初期半径であり、m’は、位相を整列させ、かつ、放物面の曲率をオフセットさせるために必要とされるファクタである。次式のアプローチを用いる場合、
【数14】
波面の位相の整列は、1%未満の誤差を示す。より高次までの級数展開を用いて、又は、数値技術によって、より正確なアプローチが可能である。螺旋放物面の頂点は、点r(θ,r,z)=(0,-1/4a(θ),F)にある。ここで、次式を用いる。
【0075】
【0076】
円筒座標表現r=r(θ,r,z)において、反射器の面は次式で定義される。
【0077】
【0078】
ここで、0<θ<2πかつ0<z<zmaxであり、ここで、zmaxは円筒状の電磁発生器の高さである。焦点の位置が電子的に制御できず、螺旋放物面反射器の焦点によって設定されるので、この実施例もまた、破砕すべき結石に対して焦点(14)を整列させる機械式システムを必要とする。
【0079】
もう1つの好ましい実施例では、高強度の渦の発生は、
図7に示すように、螺旋形の位相レンズに結合された、平面及び円形又は環状形状を有する電磁式の第1の変換サブシステム(2)を備える。システムは、可動の円形又は環状表面に固定されたコイルを電気的に励振するために、大電流電気パルス発生サブシステム(1)を使用する。この表面は、その面のうちの1つにあり、流体に接している。コイルの誘導は、円形又は環状表面を軸方向に一時的な方法で変位させる力を発生する。この過程は、平坦で、過渡的な、高圧振幅音響波面を発生し、それは、システムの軸に沿った流体に沿って伝搬する。システムは、螺旋形の位相レンズを用いて波面を制御する。波面は、以前の実施例でのように反射器を必要とすることなく)伝送により発生され、結石の破砕が行われる焦点(F)に合焦される。
図8は、流体中の速度とは異なる音響伝播速度を有する媒体を通過するときの音響波の屈折に基づく、音響レンズモデルを詳細に示す。レンズ材料が、流体(c
0)における伝搬速度より大きな伝搬速度(c
n)を有する場合、レンズは両凹である。このことは、流体が水であり、レンズ材料(例えば、金属、プラスチック、又はポリマー)が固体である場合に生じる。逆の場合、レンズ材料が流体より低い伝搬速度を有する場合、レンズは両凸である。レンズは、第1の側における球面と、第2の側における螺旋楕円面とからなる。音響レンズの設計は下記に詳述される。螺旋楕円面は、方位角θの関数として変化するパラメータを有する回転する楕円プロファイルによって、円柱座標において定義されてもよい。そのような楕円プロファイルの偏心性(ε)は一定であり、ε=c
0/c
nによって与えられ、一方、プロファイルの焦点は次式で与えられる。
【0080】
【0081】
ここで、Fはレンズの幾何学的焦点であり、m’は、この場合、1に近い値を有し、数値的に計算可能である。最終的に、螺旋楕円面の長半軸がa(θ)=c(θ)/εによって与えられ、かつ、短半軸が
【数18】
によって与えられることが考慮される場合、螺旋回転楕円体レンズの表面は次式で与えられる。
【0082】
【0083】
他のレンズ面、球面は、次式の面によって与えられる。
【0084】
【0085】
ここで、曲率半径は、Rc=(Fs+Δz)(1-ε)であり、ここで、Fsは凹面レンズの焦点であり、Δzはその軸における厚さである。下方の面における球面レンズの使用はオプションであるが、それは、螺旋楕円体レンズの最大開口における制限を低減する。例えば、焦点Fs=4Fを有するレンズを用いて、システムは、大開口の渦発生器を生じ、従って、焦点ゾーンにおいてより高い音響強度を生じることを可能にする。焦点の位置が電子的に制御できず、螺旋位相音響レンズによって設定されるので、焦点(14)を結石に対して整列させるために機械式システムが必要とされる。
【0086】
好ましいもう1つの実施形態では、高強度の音響ビーム発生サブシステム(3)は、
図9に見られるように、フェーズドアレイとして構成された複数素子圧電式システムを備える。システムは、球面に配置されて流体に浸漬された一連の圧電トランスデューサを電気的に励振するために、マルチチャネル高電圧電気パルス発生サブシステム(1)を使用する。過渡的な電界の動作下では、第1の変換サブシステム(2)を構成する圧電トランスデューサは変形され、流体を収縮及び膨張させ、合焦された、過渡的な、高圧振幅音響波面を発生し、それは球面の中心に収束する。球面の半径は、結石の破砕が行われるシステムの焦点(14)に一致する。圧電素子の形状は、とりわけ、扇形、円形、又は六角形であってもよく、また、球面におけるそれらの配置は、好ましくは、極座標における通常のパターン、又は、周期的であるか否かにかかわらず他の任意のパターンに従う。フェーズドアレイの圧電素子が極座標において互いに等距離を有して配置されると仮定すると、波面を制御して音響渦を発生するために、
図10に詳細に示すフェーズドアレイの電圧パルスの各々に対して一連の遅延を適用しなければならない。各遅延(τ)の値は、各圧電素子の位置θに依存し、τ=(Mθ)/ω
0によって与えられる。それによって、このフェーズドアレイは、ビームを位相的に整列させるまで電子的励振システムのチャネルの各々を遅延させ、システムの焦点Fを移動させることを可能にする。この構成により、渦が点r
F(x,y,z)=(F
x,F
y,F
z)に移動される場合、フェーズドアレイの素子の各々(それらは点r
0(x,y,z)を中心とする)に適用されなければならない遅延は、次式により計算される。
【0087】
【0088】
一方、球面に配置されたフェーズドアレイの場合、上の式は次式に変形される。
【0089】
【0090】
圧電式システムは、長い継続時間の励振信号の発生を可能にし、ここで、位相遅延は、複素係数φ(r0,rF)=exp(iω0Δt)によって与えられ、ここで、項ω0Δtは、励振が過渡的ではない場合、正弦波信号又はバーストを遅延させるために使用される。この過程は、より小振幅のビームを入射させることで結石の破砕を可能にすし、このことは、不要な治療効果を緩和する。
【0091】
図11にもう1つの特に有利な実現を示し、これは
図9に示すシステムの変形例である。フェーズドアレイは、各チャネルに適用される遅延の電子制御を必要とする(このことは設計に複雑性を追加する)ので、
図11の設計は、単一の圧電トランスデューサからなる第1の変換サブシステム(2)を励振する単一の高電圧電気パルス発生サブシステム(1)を使用する。圧電素子の表面は、
図12に示すように、螺旋回転楕円面であり、円弧セクションの方位角方向の回転として表現されてもよい。ここで、弧の曲率半径Rc(θ)は、次式で与えられる。
【0092】
【0093】
上記曲率の結果、設計周波数ω0=2πc0/λ0においてビーム間に行路差が生じ、これにより、トポロジカルチャージMの渦を発生する。螺旋回転楕円面の設計のために、球面座標r=r(θ,φ,r)におけるその定義が考慮され、次式で与えられる。
【0094】
【0095】
ここで、0<θ<2πであり、仰角の下限及び上限は、Φmin=tan-1(Ah/2F2)及びΦmax=tan-1(A/2F2)によって与えられ、ここで、Aはトランスデューサ開口であり、Ahはトランスデューサの下方のギャップの直径であり、それはゼロであってもよい。螺旋面を有する単一素子トランスデューサによって音響ビームを発生する圧電式の音響ビーム発生サブシステム(3)は、焦点(14)において渦を有し、その位置は制御不可能であり、その結果、電気水力式及び電磁式発生器の場合のように、破砕すべき結石に対して焦点を整列させるために機械式の位置決めサブシステム(5)が必要とされる。
【0096】
本発明のより有利な実施形態は、
図13に示すように、螺旋面に配置された複数の圧電素子によって形成された第1の変換サブシステム(2)を備える。このように、先に
図11及び12に示したような、螺旋面を有する単一の圧電トランスデューサの製造に関連付けられた複雑化は回避される。
図13に示す複数の圧電素子(トランスデューサ)は、単一の電気信号によって励振されてもよく、このことは、
図11~
図12のフェーズドアレイシステムに比較して、システムのコスト及び複雑性を低減する。螺旋面を有する複数素子トランスデューサによって音響ビームを発生する圧電式の音響ビーム発生サブシステム(3)は、焦点(14)において渦を有し、その位置は、すべての素子のために同じ信号が使用される場合には制御不可能であり、その結果、結石に対して焦点(14)を整列させるために機械式の位置決めサブシステム(5)が必要とされる。
図14に螺旋面の曲率の詳細事項を示し、それは式(15)~(18)によって説明される。複数の圧電素子の形状は扇形であってもよく、又は、他の任意の形状(円形、六角形など)であってもよい。
【0097】
さらに、本発明のもう1つの好ましい実施形態は、単一素子でも複数素子でもあってもよいトランスデューサを有する第1の圧電変換サブシステム(2)を備え、また、合焦された渦を発生する螺旋楕円体位相音響レンズをさらに備える。音響レンズは、1つ又は複数の圧電トランスデューサ上に配置され、それらのそれぞれは、パルス又は正弦波の高電圧信号により励振される。音響レンズの使用は、ビーム合焦の制御を可能にし、それと同時に、素子の各々を個々に励振するために多重チャンネルの電子装置を用いることを必要とすることなく、任意のトポロジカルチャージを有する渦の発生を可能にする。レンズが、システムの着脱可能かつ容易に交換可能な構成要素であるので、いくつかのレンズは、焦点距離、トポロジカルチャージ、設計周波数、及びビーム幅を調整するために、従って、実施すべき治療に応じて音響焦点特性を調整するために交換されてもよい。レンズ設計は数式(10)~(12)によって与えられる。圧電式システムが平坦な円の表面に配置される場合、レンズはその下面において平坦になる。すべての圧電素子に対して同じ信号が使用される場合、又は、単一の圧電素子が使用されてレンズによって設定される場合、焦点(14)を電子的に制御できないので、結石に対して焦点を整列させるために機械式の移動システムが必要とされる。
【0098】
音響ビーム発生装置(100)が、電気水力式トランスデューサ、電磁式トランスデューサ、又は圧電トランスデューサ(単一又は複数素子のトランスデューサにかかわらず)を含む実施例において、機械式の位置決めサブシステム(5)は、システムの焦点(14)を再整列することを可能にする、少なくとも1つのアクチュエータを備える。
【0099】
フィードバック及び制御装置(200)の様々な好ましい実施例を下記に示す。
【0100】
本発明の好ましい実施例では、第2の電気機械式変換サブシステム(8)は、パルスエコーモードの超音波画像化サブシステム(9)を提供する圧電トランスデューサのフェーズドアレイを備える。
【0101】
もう1つのより有利な実施例では、治療のモニタリングサブシステム(10)は、患者の自然な動作(例えば呼吸)をリアルタイムで記録する手段をさらに備え、少なくとも1つの移動センサを備える。記録されたデータは、患者の(随意又は不随意の)移動に起因するシステムの焦点(14)の誤整列を自動的に補正するために、制御サブシステム(7)によって使用される。
【0102】
本発明のいくつかの代替の実施形態では、フィードバック及び制御装置(200)は省略されてもよい。そのようなソリューションは、超音波治療の連続的なモニタリング及び変更を可能にしないので、準最適であると考えられる。それらはまた、後に治療を中断して(X線、超音波などによる)いくつかのタイプの画像を取得し、その結果の評価を可能にするために、電気パルスの予め定義されたシーケンスを適用することを必要とする。
【符号の説明】
【0103】
(1) 電気パルス発生サブシステム
(2) 第1の変換サブシステム
(3) 音響ビーム発生サブシステム
(4) 音響結合サブシステム
(5) 位置決めサブシステム
(6) 治療(破砕すべき固形物に対する音響ビームの適用)
(7) (音響ビーム発生サブシステムの)制御サブシステム
(8) 第2の変換サブシステム
(9) 画像化サブシステム
(10) モニタリングサブシステム
(11) 情報処理サブシステム
(12) フィードバックサブシステム
(13) 渦ビーム
(14) システムの焦点(好ましくは、破砕すべき結石又は塊の位置と実質的に一致する)
(15) 螺旋回転楕円面
(100) 音響ビーム発生装置
(200) フィードバック及び制御装置
【国際調査報告】