(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-10
(54)【発明の名称】有機構造指向剤の混合物を使用して合成されたゼオライト構造
(51)【国際特許分類】
C01B 39/48 20060101AFI20230803BHJP
C01B 39/04 20060101ALI20230803BHJP
B01J 29/76 20060101ALI20230803BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
C01B39/48
C01B39/04
B01J29/76 A
B01D53/94 222
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522710
(86)(22)【出願日】2021-02-09
(85)【翻訳文提出日】2022-06-13
(86)【国際出願番号】 US2021017261
(87)【国際公開番号】W WO2022173419
(87)【国際公開日】2022-08-18
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】モイニ,アーマド
(72)【発明者】
【氏名】クンケス,エドゥアルド エル.
(72)【発明者】
【氏名】トーマス,ジョネル シャーメイン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァッティパリ,ヴィヴェク
(72)【発明者】
【氏名】カステラーノ,クリストファー アール.
【テーマコード(参考)】
4D148
4G073
4G169
【Fターム(参考)】
4D148AA03
4D148AA06
4D148AA08
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4G073BA02
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4G169CA13
4G169DA06
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4G169ZA14A
4G169ZA14B
4G169ZB08
(57)【要約】
本開示は、小細孔ゼオライトを調製する方法を提供し、本方法は、第1の有機構造指向剤および第2の有機構造指向剤を使用して、ゼオライトを結晶化することを含み、第1の有機構造指向剤は、ビス四級アンモニウムカチオンであり、第2の有機構造指向剤は、モノ四級アンモニウムカチオンである。さらに、制御されたフレームワークアルミニウム分布を有する小細孔ゼオライト、および金属で促進されたそのようなゼオライトを含む選択的触媒還元触媒組成物、物品、およびシステムが開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小細孔ゼオライトを合成する方法であって、前記方法が、
水、アルミニウム供給源、ケイ素供給源、第1の有機構造指向剤の供給源、および第2の有機構造指向剤の供給源の混合物を調製して、合成ゲルを形成することと、
前記合成ゲルを結晶化プロセスに供して、前記小細孔ゼオライトを結晶化させることと、を含み、
前記第1の有機構造指向剤が、ビス四級アンモニウムカチオン、前記ビス四級アンモニウムカチオンの誘導体、またはそれらの組み合わせを含み、前記第2の有機構造指向剤が、モノ四級アンモニウムカチオン、前記モノ四級アンモニウムカチオンの誘導体、またはそれらの組み合わせを含む、方法。
【請求項2】
前記小細孔ゼオライトが、ケージを含む構造であり、前記ケージを含む構造に含まれる可能な限り大きな球の直径が、約4.4Å~約15Åである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ビス四級アンモニウムカチオンが、約8~約20個の炭素原子を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記小細孔ゼオライトが、7~15の範囲のC/N比を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ビス四級アンモニウムカチオンの各窒素原子が、4つの置換基を有し、各置換基が、独立して、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ビス四級アンモニウムカチオンが、式Iによって表される構造を有し、
【化1】
式中、
置換基R
1、R
2、およびR
3の各々が、メチルもしくはエチルであるか、または、任意選択で、両方のR
3基が、結合して-(CH
2)
n-架橋を形成し、nが、1~3の整数であり、
Xが、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ビス四級アンモニウムカチオンが、N1,N1,N1,N3,N3,N3-ヘキサエチルプロパン-1,3-ジアミニウム、N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサメチルブタン-1,4-ジアミニウム、N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサエチルブタン-1,4-ジアミニウム、(E)-N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサメチルブト-2-エン-1,4-ジアミニウム、N1,N1,N1,N5,N5,N5-ヘキサメチルペンタン-1,5-ジアミニウム、(E)-N1,N1,N1,N5,N5,N5-ヘキサメチルペント-2-エン-1,5-ジアミニウム、N1,N1,N1,N6,N6,N6-ヘキサメチルヘキサン-1,6-ジアミニウム、(E)-N1,N1,N1,N6,N6,N6-ヘキサメチルヘキサ-2-エン-1,6-ジアミニウム、(2E,4E)-N1,N1,N1,N6,N6,N6-ヘキサメチルヘキサ-2,4-ジエン-1,6-ジアミニウム、N1,N1,N1,N7,N7,N7-ヘキサメチルヘプタン-1,7-ジアミニウム、N1,N1,N1,N8,N8,N8-ヘキサメチルオクタン-1,8-ジアミニウム、N1,N1,N1,N3,N3,N3-ヘキサメチルシクロヘキサン-1,3-ジアミニウム、N1,N1,N1,N3,N3,N3-ヘキサメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1,3-ジアミニウム、N1,N1,N1,N3,N3,N3-ヘキサメチルベンゼン-1,3-ジアミニウム、N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサメチルシクロヘキサン-1,4-ジアミニウム、N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1,4-ジアミニウム、N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサメチルビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジアミニウム、N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサメチルベンゼン-1,4-ジアミニウム、1,1,4,4-テトラメチルピペラジン-1,4-ジイウム、1,1,3,3-テトラメチルヘキサヒドロピリミジン-1,3-ジイウム、1,1’-(1,3-フェニレン)ビス(N,N,N-トリメチルメタンアミニウム)、1,1’-(1,4-フェニレン)ビス(N,N,N-トリメチルメタンアミニウム)、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の有機構造指向剤の前記供給源が、前記ビス四級アンモニウムカチオンと、OH
-、Cl
-、およびBr
-からなる群から選択される平衡化アニオンと、を含むビス四級アンモニウム化合物である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の有機構造指向剤の前記供給源が、ヘキサメトニウムまたはオクタメトニウムカチオンを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記モノ四級アンモニウムカチオンが、約4~約14個の炭素原子を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記モノ四級アンモニウムカチオンの前記窒素原子が、4つの置換基を有し、各置換基が、独立して、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記モノ四級アンモニウムカチオンが、式IIによって表される構造を有し、
【化2】
式中、
R
1、R
2、およびR
3が、各々メチルまたはエチルであり、
R
4が、メチル、エチル、ヒドロキシエチル、シクロヘキシル、アザビシクロヘプチル、アダマンチル、およびフェニルからなる群から選択されるか、
または、任意選択で、R
3およびR
4が一緒に、もしくはR
2、R
3、およびR
4が一緒に連結して、単環式もしくは二環式環系が形成され得、これが、任意選択で、1つ以上のメチルもしくはOH基で置換され得る、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記モノ四級アンモニウムカチオンが、テトラエチルアンモニウム、2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタン-1-アミニウム、N,N,N-トリメチルシクロヘキサンアミニウム、N,N,N-トリメチルアダマンタン-1-アミニウム(TMAda)、N,N,N-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-アミニウム、N,N,N-トリメチルベンゼンアミニウム、1,1-ジメチルピペリジン-1-イウム、1,1,3,5-テトラメチルピペリジン-1-イウム、1-メチルキヌクリジン-1-イウム、3-ヒドロキシ-1-メチルキヌクリジン-1-イウム、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の有機構造指向剤の前記供給源が、前記モノ四級アンモニウムカチオンと、OH
-、Cl
-、およびBr
-からなる群から選択される平衡化アニオンと、を含むモノ四級アンモニウム化合物である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の有機構造指向剤の前記供給源が、N,N,N-トリメチルアダマンタン-1-アミニウムカチオンを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の有機構造指向剤の前記供給源が、ヘキサメトニウムジヒドロキシド(HMOH)またはオクタメトニウムジヒドロキシド(OMOH)であり、前記第2の有機構造指向剤の前記供給源が、N,N,N-トリメチルアダマンタン-1-アミニウムヒドロキシド(TMAdaOH)である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の有機構造指向剤の前記第2の有機構造指向剤に対するモル比が、約0.001~約1000の範囲にある、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の有機構造指向剤の前記第2の有機構造指向剤に対するモル比が、約0.1~約10である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の有機構造指向剤の前記第2の有機構造指向剤に対するモル比が、約0.5~約2である、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記混合物が、無機構造指向剤をさらに含み、前記無機構造指向剤が、アルカリ金属カチオンまたはアルカリ土類金属カチオンである、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記アルカリ金属カチオンが、リチウム、ナトリウム、カリウム、またはセシウムからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記アルミニウムの供給源が、アルミニウム塩、アルミニウム金属、酸化アルミニウム、アルミノケイ酸塩、またはゼオライトのうちの1つ以上を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記アルミニウムの供給源が、FAU、LTA、LTL、MFI、またはBEA結晶フレームワークを有するゼオライトを含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記アルミニウムの供給源が、Na
+形態にあるゼオライトYである、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記ケイ素の供給源が、コロイダルシリカ、ケイ素アルコキシド化合物、アルカリ金属ケイ酸塩、ヒュームドシリカ、アモルファスシリカ、またはアルミノシリケートである、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記ケイ素の供給源が、ケイ酸ナトリウムである、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記合成ゲルのOH/Si比が、約0.03~約1.0である、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記結晶化プロセスが、前記合成ゲルを約90℃~約250℃の温度に維持することを含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記結晶化プロセスが、前記合成ゲルを約120℃~約200℃の温度に維持することを含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
加熱工程中に形成された結晶をろ過することをさらに含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記ゼオライトを約450℃~約750℃の温度でか焼することをさらに含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記小細孔ゼオライトが、AEI、AFT、AFX、AFV、AVL、CHA、EAB、ERI、ITW、KFI、LEV、LTA、MER、SAS、SAT、およびSAVからなる群から選択される結晶フレームワーク構造タイプを有する、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記小細孔ゼオライトが、AEI、AFV、AVL、CHA、EAB、ITW、KFI、LEV、LTA、MER、SAS、SAT、およびSAVからなる群から選択される結晶フレームワーク構造タイプを有する、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記小細孔ゼオライトが、AEIまたはCHA結晶フレームワーク構造タイプを有する、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記小細孔ゼオライトが、CHA結晶フレームワーク構造タイプを有する、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記小細孔ゼオライトが、約6~約100のシリカ対アルミナ比(SAR)を有する、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記小細孔ゼオライトが、約10~約30のシリカ対アルミナ比(SAR)を有する、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記小細孔ゼオライトが、約20~約30の範囲のSARを有する、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記小細孔ゼオライトが、約75m
2/g未満のMSA、および少なくとも約450m
2/gのZSAを有する、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記小細孔ゼオライトが、モノ四級OSDAのみで合成された小細孔ゼオライトと比較して、0.25Mを超えるCu
+2濃度での変更された平衡Cu
+2取り込みを特徴とする、変更されたアルミニウム位置付けおよびペアリング配列を含む、制御されたアルミニウム分布を有する、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
か焼する前に、前記小細孔ゼオライトの細孔の少なくとも一部が、前記ビス四級アンモニウムカチオンによって占められ、前記細孔の少なくとも一部が、前記モノ四級アンモニウムカチオンによって占められている、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記細孔の約1~約99%が、前記ビス四級アンモニウムカチオンによって占められ、前記細孔の約99~約1%が、前記モノ四級アンモニウムカチオンによって占められている、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記細孔の約60~約40%が、前記ビス四級アンモニウムカチオンによって占められ、前記細孔の約40~約60%が、前記モノ四級アンモニウムカチオンによって占められている、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
請求項1~43のいずれか一項に記載の方法に従って調製された、小細孔ゼオライト。
【請求項45】
制御されたアルミニウム分布を有する小細孔ゼオライトであって、前記制御されたアルミニウム分布が、モノ四級OSDAのみで合成された小細孔ゼオライトと比較して、0.25Mを超えるCu
+2濃度での変更された平衡Cu
+2取り込みを特徴とする、変更されたアルミニウム位置付けおよびペアリング配列を含む、アニオン性フレームワークAl中心の配列を含む、小細孔ゼオライト。
【請求項46】
小細孔ゼオライトであって、前記小細孔ゼオライトの細孔の少なくとも一部が、ビス四級アンモニウムカチオンによって占められ、前記細孔の少なくとも一部が、モノ四級アンモニウムカチオンによって占められている、小細孔ゼオライト。
【請求項47】
前記小細孔ゼオライトが、ケージを含む構造であり、前記ケージを含む構造に含まれる可能な限り大きな球が、約4.4Å~約15Åである、請求項45または45に記載の小細孔ゼオライト。
【請求項48】
前記細孔の約1~約99%が、ビス四級アンモニウムカチオンによって占められ、前記細孔の約99~約1%が、モノ四級アンモニウムカチオンによって占められている、請求項46または47に記載の小細孔ゼオライト。
【請求項49】
前記細孔の約60~約40%が、ビス四級アンモニウムカチオンによって占められ、前記細孔の約40~約60%が、モノ四級アンモニウムカチオンによって占められている、請求項46~48のいずれか一項に記載の小細孔ゼオライト。
【請求項50】
前記ビス四級アンモニウムカチオンが、約8~約20個の炭素原子を含む、請求項46~49のいずれか一項に記載の小細孔ゼオライト。
【請求項51】
前記ビス四級アンモニウムカチオンの各窒素原子が、4つの置換基を有し、各置換基が、独立して、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項46~50のいずれか一項に記載の小細孔ゼオライト。
【請求項52】
前記ビス四級アンモニウムカチオンが、式Iによって表される構造を有し、
【化3】
式中、
置換基R
1、R
2、およびR
3の各々が、メチルもしくはエチルであるか、または、任意選択で、両方のR
3基が、結合して-(CH
2)
n-架橋を形成し、nが、1~3の整数であり、
Xが、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項46~50のいずれか一項に記載の小細孔ゼオライト。
【請求項53】
前記ビス四級アンモニウムカチオンが、N1,N1,N1,N3,N3,N3-ヘキサエチルプロパン-1,3-ジアミニウム、N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサメチルブタン-1,4-ジアミニウム、N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサエチルブタン-1,4-ジアミニウム、(E)-N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサメチルブト-2-エン-1,4-ジアミニウム、N1,N1,N1,N5,N5,N5-ヘキサメチルペンタン-1,5-ジアミニウム、(E)-N1,N1,N1,N5,N5,N5-ヘキサメチルペント-2-エン-1,5-ジアミニウム、N1,N1,N1,N6,N6,N6-ヘキサメチルヘキサン-1,6-ジアミニウム(ヘキサメトニウム)、(E)-N1,N1,N1,N6,N6,N6-ヘキサメチルヘキサ-2-エン-1,6-ジアミニウム、(2E,4E)-N1,N1,N1,N6,N6,N6-ヘキサメチルヘキサ-2,4-ジエン-1,6-ジアミニウム、N1,N1,N1,N7,N7,N7-ヘキサメチルヘプタン-1,7-ジアミニウム、N1,N1,N1,N8,N8,N8-ヘキサメチルオクタン-1,8-ジアミニウム(オクタメトニウム)、N1,N1,N1,N3,N3,N3-ヘキサメチルシクロヘキサン-1,3-ジアミニウム、N1,N1,N1,N3,N3,N3-ヘキサメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1,3-ジアミニウム、N1,N1,N1,N3,N3,N3-ヘキサメチルベンゼン-1,3-ジアミニウム、N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサメチルシクロヘキサン-1,4-ジアミニウム、N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1,4-ジアミニウム、N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサメチルビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジアミニウム、N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサメチルベンゼン-1,4-ジアミニウム、1,1,4,4-テトラメチルピペラジン-1,4-ジイウム、1,1,3,3-テトラメチルヘキサヒドロピリミジン-1,3-ジイウム、1,1’-(1,3-フェニレン)ビス(N,N,N-トリメチルメタンアミニウム)、1,1’-(1,4-フェニレン)ビス(N,N,N-トリメチルメタンアミニウム)、またはそれらの組み合わせである、請求項46~52のいずれか一項に記載の小細孔ゼオライト。
【請求項54】
前記ビス四級アンモニウムカチオンが、ヘキサメトニウムまたはオクタメトニウムである、請求項46~53のいずれか一項に記載の小細孔ゼオライト。
【請求項55】
前記モノ四級アンモニウムカチオンが、約4~約14個の炭素原子を含む、請求項46~54のいずれか一項に記載の小細孔ゼオライト。
【請求項56】
前記モノ四級アンモニウムカチオンの窒素原子が、4つの置換基を有し、各置換基が、独立して、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項46~55のいずれか一項に記載の小細孔ゼオライト。
【請求項57】
前記モノ四級アンモニウムカチオンが、式IIによって表される構造を有し、
【化4】
式中、
R
1、R
2、およびR
3が、各々メチルまたはエチルであり、
R
4が、メチル、エチル、ヒドロキシエチル、シクロヘキシル、アザビシクロヘプチル、アダマンチル、およびフェニルからなる群から選択されるか、
または、任意選択で、R
3およびR
4が一緒に、もしくはR
2、R
3、およびR
4が一緒に連結して、単環式もしくは二環式環系が形成され得、これが、任意選択で、1つ以上のメチルもしくはOH基で置換され得る、請求項46~56のいずれか一項に記載の小細孔ゼオライト。
【請求項58】
前記モノ四級アンモニウムカチオンが、テトラエチルアンモニウム、2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタン-1-アミニウム、N,N,N-トリメチルシクロヘキサンアミニウム、N,N,N-トリメチルアダマンタン-1-アミニウム(TMAda)、N,N,N-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-アミニウム、N,N,N-トリメチルベンゼンアミニウム、1,1-ジメチルピペリジン-1-イウム、1,1,3,5-テトラメチルピペリジン-1-イウム、1-メチルキヌクリジン-1-イウム、3-ヒドロキシ-1-メチルキヌクリジン-1-イウム、またはそれらの組み合わせである、請求項46~57のいずれか一項に記載の小細孔ゼオライト。
【請求項59】
前記モノ四級アンモニウムカチオンが、TMAdaである、請求項46~58のいずれか一項に記載の小細孔ゼオライト。
【請求項60】
前記ビス四級アンモニウムカチオンが、ヘキサメトニウムまたはオクタメトニウムであり、前記モノ四級アンモニウムカチオンが、TMAdaである、請求項46~59のいずれか一項に記載の小細孔ゼオライト。
【請求項61】
前記小細孔ゼオライトが、AEI、AFT、AFX、AFV、AVL、CHA、EAB、ERI、ITW、KFI、LEV、LTA、MER、SAS、SAT、およびSAVからなる群から選択される結晶フレームワーク構造タイプを有する、請求項45~60のいずれか一項に記載の小細孔ゼオライト。
【請求項62】
前記小細孔ゼオライトが、AEI、AFV、AVL、CHA、EAB、ERI、ITW、KFI、LEV、LTA、MER、SAS、SAT、およびSAVからなる群から選択される結晶フレームワーク構造タイプを有する、請求項45~61のいずれか一項に記載の小細孔ゼオライト。
【請求項63】
前記小細孔ゼオライトが、AEIまたはCHA結晶フレームワーク構造タイプを有する、請求項45~62のいずれか一項に記載の小細孔ゼオライト。
【請求項64】
前記小細孔ゼオライトが、CHA結晶フレームワーク構造タイプを有する、請求項45~63のいずれか一項に記載の小細孔ゼオライト。
【請求項65】
前記小細孔ゼオライトが、約6~約100のシリカ対アルミナ比(SAR)を有する、請求項45~64のいずれか一項に記載の小細孔ゼオライト。
【請求項66】
前記小細孔ゼオライトが、約10~約30のシリカ対アルミナ比(SAR)を有する、請求項45~65のいずれか一項に記載の小細孔ゼオライト。
【請求項67】
前記小細孔ゼオライトが、約20~約30の範囲のSARを有する、請求項45~66のいずれか一項に記載の小細孔ゼオライト。
【請求項68】
前記小細孔ゼオライトが、約75m
2/g未満のMSA、および少なくとも約450m
2/gのZSAを有する、請求項45~67のいずれか一項に記載の小細孔ゼオライト。
【請求項69】
排気ガス流における窒素酸化物(NO
x)の軽減に有効な選択的触媒還元(SCR)触媒組成物であって、前記SCR触媒が、促進剤金属で促進された、請求項45~68のいずれか一項に記載のゼオライトを含む、選択的触媒還元(SCR)触媒組成物。
【請求項70】
前記促進剤金属が、前記SCR触媒の総重量に基づいて金属酸化物として計算されて約1.0重量%~約10重量%の量で存在する、請求項69に記載のSCR触媒組成物。
【請求項71】
前記促進剤金属が、約4~約6重量%の量で存在する、請求項69または70に記載のSCR触媒組成物。
【請求項72】
前記促進剤金属が、鉄、銅、およびこれらの組み合わせから選択される、請求項70~71のいずれかに一項に記載のSCR触媒組成物。
【請求項73】
エンジン排気ガス流から窒素酸化物(NO
x)を軽減するのに有効なSCR触媒物品であって、前記SCR触媒物品が、基材の少なくとも一部の上に配置された請求項69~72のいずれか一項に記載のSCR触媒組成物を有する基材を含む、SCR触媒物品。
【請求項74】
前記基材が、ハニカム基材である、請求項73に記載のSCR触媒物品。
【請求項75】
前記ハニカム基材が、フロースルー基材またはウォールフローフィルタである、請求項74に記載のSCR触媒物品。
【請求項76】
排気ガス流を生成するエンジンの下流に、かつそれと流体連通して位置する、請求項73~75のいずれか一項に記載のSCR触媒物品を含む排気ガス処理システム。
【請求項77】
排気ガス流を処理するための方法であって、前記排気ガス流を、請求項73~75のいずれか一項に記載のSCR触媒物品、または請求項75に記載の排気ガス処理システムと接触させることを含む、方法。
【請求項78】
7~15の範囲のC/N比を有するaCHAフレームワーク構造を含む、小細孔ゼオライト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年10月18日に出願された米国仮出願第62/916992号の全体に対する優先権の利益を主張する。
【0002】
本開示は、ゼオライト、そのようなゼオライトを含む触媒組成物の調製のための方法と、そのような触媒組成物を使用する触媒物品および触媒系とに関する。
【背景技術】
【0003】
NOx含有ガス混合物を処理して、大気汚染を減少させるために、様々な処理方法が使用されてきた。1つの処理タイプは、窒素酸化物の触媒還元を伴う。2つのプロセスがある:(1)一酸化炭素、水素、または炭化水素が還元剤として使用される非選択的還元プロセス、および(2)アンモニアまたはアンモニア前駆体が還元剤として使用される選択的還元プロセス。選択的還元プロセスでは、少量の還元剤を用いて高度な窒素酸化物の除去を達成でき、以下の式に従って主として窒素および蒸気が形成される:
4NO+4NH3+O2→4N2+6H2O(標準SCR反応)
2NO2+4NH3→3N2+6H2O(低速SCR反応)
NO+NO2+2NH3→2N2+3H2O(高速SCR反応)
【0004】
SCRプロセスで用いられる触媒は、理想的には、水熱条件下で、広い使用温度条件範囲、例えば、200℃~600℃以上で良好な触媒活性を維持できる必要がある。SCR触媒は、一般に、粒子の除去に使用される排気ガス処理システムの構成要素である煤フィルタの再生中などに、水熱条件で用いられる。
【0005】
SCRプロセスで用いられる現在の触媒としては、鉄または銅などの触媒金属とイオン交換された、ゼオライトなどのモレキュラーシーブが挙げられる。とりわけ、鉄促進および銅促進ゼオライト触媒を含む金属促進ゼオライト触媒は、アンモニアによる窒素酸化物の選択的触媒還元で知られている。特に、例えば、菱沸石(CHA)およびAEIフレームワークを有する銅交換小細孔ゼオライトは、アンモニアまたは二次アンモニア源によるNOxの選択的触媒還元(SCR)のための触媒として機能する。
【0006】
ますます厳しくなる排出規制により、特に、リーンで、低いエンジン排気温度条件下で、十分な高温熱安定性を示しながら、NOx排出を管理する能力が向上したSCR触媒を開発するニーズが高まっている。調整された吸着および触媒機能を有するゼオライト材料と、効率的かつ低コストであるが、例えば、SCR触媒作用に好適な特性を有する材料も提供する、CHAフレームワークを有するゼオライトなどの小細孔ゼオライトを作製するための方法と、に関するニーズが存在する。特に、当技術分野では、排気ガス流からのNOx排出を効率的かつ効果的に軽減するのに効果的なSCR触媒に対する継続的なニーズが存在する。
【0007】
ゼオライトの触媒特性は、それらのフレームワークの接続性によってだけでなく、触媒活性部位を発生させるフレームワークアルミニウム(Al)原子の微視的な原子配列によっても、定義される。具体的には、ゼオライト中のアルミニウムの分布は、ゼオライト上に交換することができるフレームワーク外の金属イオン(例えば、Cu2+、(CuOH)+)の数および構造に関連付けられている。ゼオライト中の触媒的に活性なCuサイトの密度および分布は、ゼオライトフレームワーク構造内のアルミニウム原子の位置付けおよび近接性に依存する。ゼオライト中の有用なCuの比率および密度を高めることは、生成物のシリカ対アルミナ比(SAR)を変えることなく、ゼオライトの触媒性能を改善するのに役立つであろう。
【0008】
最近、合成中CHAケージ内で、TMAda+およびNa+カチオンの両方が組み込まれるため、有機構造指向剤(OSDA)としてトリメチルアダマンチルアンモニウムカチオン(TMAda)を含むNa+などの無機カチオンを使用することにより、CHAゼオライト中のAl分布を制御し得、合成ゲル中のTMAda+およびNa+の相対比を使用して、ゼオライト生成物のAlペアリングの程度を制御し得ることが報告された。Gounder and Di Iorio,Chem.Mater.,2016,28(7),2236-2247を参照されたい。
【0009】
そのような進歩にもかかわらず、例えば、ゼオライト材料中のアルミニウムの位置付けおよび近接性を制御するために合成ゲルで使用される構造指向剤のタイプおよび量を操作することによって、調整された吸着および触媒機能をゼオライト材料に提供する合成手順に対する重大な必要性が当技術分野において依然として存在する。
【発明の概要】
【0010】
本開示は、概して、ゼオライトフレームワーク構造および生成物ゼオライト中のアルミニウム分布の制御を可能にする、ゼオライト合成をテンプレート化するための様々な構造を有する2つの有機構造指向剤(OSDA)の組み合わせの使用を説明する。
【0011】
驚くべきことに、本開示によれば、ゼオライト合成ゲルにおいて特定のモノおよびビス四級アンモニウムイオン有機構造指向剤(OSDA)の組み合わせを使用することにより、単一のモノ四級アンモニウムイオン有機構造指向剤で合成されたCHAゼオライトと比較した場合の平衡Cu取り込みの違いによって示されるように、ゼオライト生成物におけるAlの位置付けおよびペアリングが変更されたCHA結晶フレームワーク構造を有するゼオライトが提供されることが見出された。
【0012】
したがって、一態様では、本開示は、小細孔ゼオライトを合成する方法を提供し、この方法は、水、アルミニウム供給源、ケイ素供給源、第1の有機構造指向剤の供給源、および第2の有機構造指向剤の供給源の混合物を調製して、合成ゲルを形成することと、合成ゲルを結晶化プロセスに供して、小細孔ゼオライトを結晶化させることと、を含み、第1の有機構造指向剤が、ビス四級アンモニウムカチオンであり、第2の有機構造指向剤が、モノ四級アンモニウムカチオンである。
【0013】
別の態様では、本開示は、小細孔ゼオライトを合成する方法であって、この方法が、
水、アルミニウム供給源、ケイ素供給源、第1の有機構造指向剤の供給源、および第2の有機構造指向剤の供給源の混合物を調製して、合成ゲルを形成することと、
合成ゲルを結晶化プロセスに供して、小細孔ゼオライトを結晶化させることと、を含み、
第1の有機構造指向剤が、ビス四級アンモニウムカチオン、ビス四級アンモニウムカチオンの誘導体、またはそれらの組み合わせを含み、第2の有機構造指向剤が、モノ四級アンモニウムカチオン、モノ四級アンモニウムカチオンの誘導体、またはそれらの組み合わせを含む、方法、を提供する。
【0014】
いくつかの実施形態では、小細孔ゼオライトが、ケージを含む構造であり、このケージを含む構造に含まれる可能な限り大きな球の直径が、約4.4Å~約15Åである。
【0015】
いくつかの実施形態では、ビス四級アンモニウムカチオンが、約8~約20個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、ビス四級アンモニウムカチオンの各窒素原子が、4つの置換基を有し、各置換基が、独立して、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ビス四級アンモニウムカチオンが、式Iによって表される構造を有し、
【化1】
式中、
置換基R
1、R
2、およびR
3の各々が、メチルもしくはエチルであるか、または、任意選択で、両方のR
3基が、結合して-(CH
2)
n-架橋を形成し、nが、1~3の整数であり、
Xが、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0016】
いくつかの実施形態では、ビス四級アンモニウムカチオンが、N1,N1,N1,N3,N3,N3-ヘキサエチルプロパン-1,3-ジアミニウム、N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサメチルブタン-1,4-ジアミニウム、N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサエチルブタン-1,4-ジアミニウム、(E)-N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサメチルブト-2-エン-1,4-ジアミニウム、N1,N1,N1,N5,N5,N5-ヘキサメチルペンタン-1,5-ジアミニウム、(E)-N1,N1,N1,N5,N5,N5-ヘキサメチルペント-2-エン-1,5-ジアミニウム、N1,N1,N1,N6,N6,N6-ヘキサメチルヘキサン-1,6-ジアミニウム、(E)-N1,N1,N1,N6,N6,N6-ヘキサメチルヘキサ-2-エン-1,6-ジアミニウム、(2E,4E)-N1,N1,N1,N6,N6,N6-ヘキサメチルヘキサ-2,4-ジエン-1,6-ジアミニウム、N1,N1,N1,N7,N7,N7-ヘキサメチルヘプタン-1,7-ジアミニウム、N1,N1,N1,N8,N8,N8-ヘキサメチルオクタン-1,8-ジアミニウム、N1,N1,N1,N3,N3,N3-ヘキサメチルシクロヘキサン-1,3-ジアミニウム、N1,N1,N1,N3,N3,N3-ヘキサメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1,3-ジアミニウム、N1,N1,N1,N3,N3,N3-ヘキサメチルベンゼン-1,3-ジアミニウム、N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサメチルシクロヘキサン-1,4-ジアミニウム、N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1,4-ジアミニウム、N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサメチルビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジアミニウム、N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサメチルベンゼン-1,4-ジアミニウム、1,1,4,4-テトラメチルピペラジン-1,4-ジイウム、1,1,3,3-テトラメチルヘキサヒドロピリミジン-1,3-ジイウム、1,1’-(1,3-フェニレン)ビス(N,N,N-トリメチルメタンアミニウム)、1,1’-(1,4-フェニレン)ビス(N,N,N-トリメチルメタンアミニウム)、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0017】
いくつかの実施形態では、第1の有機構造指向剤の供給源が、ビス四級アンモニウムカチオンおよびOH-、Cl-、およびBr-からなる群から選択される平衡化アニオンを含むビス四級アンモニウム化合物である。いくつかの実施形態では、第1の有機構造指向剤の供給源が、ヘキサメトニウムまたはオクタメトニウムカチオンを含む。いくつかの実施形態では、第1の有機構造指向剤の供給源が、ヘキサメトニウムジヒドロキシド(HMOH)またはオクタメトニウムジヒドロキシド(OMOH)である。
【0018】
いくつかの実施形態では、モノ四級アンモニウムカチオンが、約4~約14個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、モノ四級アンモニウムカチオンの窒素原子が、4つの置換基を有し、各置換基が、独立して、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、モノ四級アンモニウムカチオンが、式IIによって表される構造を有し、
【化2】
式中、
R
1、R
2、およびR
3が、各々メチルまたはエチルであり、
R
4が、メチル、エチル、ヒドロキシエチル、シクロヘキシル、アザビシクロヘプチル、アダマンチル、およびフェニルからなる群から選択されるか、
または、任意選択で、R
3およびR
4が一緒に、もしくはR
2、R
3、およびR
4が一緒に連結して、単環式もしくは二環式環系が形成され得、これが、任意選択で、1つ以上のメチルもしくはOH基で置換され得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、モノ四級アンモニウムカチオンが、テトラエチルアンモニウム、2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタン-1-アミニウム、N,N,N-トリメチルシクロヘキサンアミニウム、N,N,N-トリメチルアダマンタン-1-アミニウム(TMAda)、N,N,N-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-アミニウム、N,N,N-トリメチルベンゼンアミニウム、1,1-ジメチルピペリジン-1-イウム、1,1,3,5-テトラメチルピペリジン-1-イウム、1-メチルキヌクリジン-1-イウム、3-ヒドロキシ-1-メチルキヌクリジン-1-イウム、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0020】
いくつかの実施形態では、第2の有機構造指向剤の供給源が、モノ四級アンモニウムカチオンおよびOH-、Cl-、およびBr-からなる群から選択される平衡化アニオンを含むモノ四級アンモニウム化合物である。いくつかの実施形態では、第2の有機構造指向剤の供給源が、N,N,N-トリメチルアダマンタン-1-アミニウムカチオンを含む。いくつかの実施形態では、第2の有機構造指向剤の供給源が、N,N,N-トリメチルアダマンタン-1-アミニウムヒドロキシド(TMAdaOH)である。いくつかの実施形態では、第1の有機構造指向剤の供給源が、HMOHまたはOMOHであり、第2の有機構造指向剤の供給源が、TMAdaOHである。
【0021】
いくつかの実施形態では、第1の有機構造指向剤の第2の有機構造指向剤に対するモル比が、約0.001~約1000の範囲にある。いくつかの実施形態では、第1の有機構造指向剤の第2の有機構造指向剤に対するモル比が、約0.1~約10である。いくつかの実施形態では、第1の有機構造指向剤の第2の有機構造指向剤に対するモル比が、約0.5~約2である。
【0022】
いくつかの実施形態では、混合物が、無機構造指向剤をさらに含み、無機構造指向剤が、アルカリ金属カチオンまたはアルカリ土類金属カチオンである。いくつかの実施形態では、アルカリ金属カチオンが、リチウム、ナトリウム、カリウム、またはセシウムからなる群から選択される。
【0023】
いくつかの実施形態では、アルミニウムの供給源が、アルミニウム塩、アルミニウム金属、酸化アルミニウム、アルミノケイ酸塩、またはゼオライトのうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、アルミニウムの供給源が、FAU、LTA、LTL、MFI、またはBEA結晶フレームワークを有するゼオライトを含む。いくつかの実施形態では、アルミニウムの供給源が、Na+形態にあるゼオライトYである。
【0024】
いくつかの実施形態では、ケイ素の供給源が、コロイダルシリカ、ケイ素アルコキシド化合物、アルカリ金属ケイ酸塩、ヒュームドシリカ、アモルファスシリカ、またはアルミノシリケートである。いくつかの実施形態では、ケイ素の供給源が、ケイ酸ナトリウムである。いくつかの実施形態では、合成ゲルのOH/Si比は、約0.03~約1.0である。
【0025】
いくつかの実施形態では、結晶化プロセスが、合成ゲルを約90℃~約250℃の温度に維持することを含む。いくつかの実施形態では、結晶化プロセスが、合成ゲルを約120℃~約200℃の温度に維持することを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、方法が、加熱工程中に形成された結晶をろ過することをさらに含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、方法が、ゼオライトを約450℃~約750℃の温度でか焼することをさらに含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、小細孔ゼオライトが、AEI、AFT、AFX、AFV、AVL、CHA、EAB、ERI、ITW、KFI、LEV、LTA、MER、SAS、SAT、およびSAVからなる群から選択される結晶フレームワーク構造タイプを有する。いくつかの実施形態では、小細孔ゼオライトが、AEI、AFV、AVL、CHA、EAB、ITW、KFI、LEV、LTA、MER、SAS、SAT、およびSAVからなる群から選択される結晶フレームワーク構造タイプを有する。いくつかの実施形態では、小細孔ゼオライトが、AEIまたはCHA結晶フレームワーク構造タイプを有する。いくつかの実施形態では、小細孔ゼオライトが、CHA結晶フレームワーク構造タイプを有する。
【0029】
いくつかの実施形態では、小細孔ゼオライトが、約6~約100のシリカ対アルミナ比(SAR)を有する。いくつかの実施形態では、小細孔ゼオライトが、約10~約30のシリカ対アルミナ比(SAR)を有する。いくつかの実施形態では、小細孔ゼオライトが、約20~約30の範囲のSARを有する。
【0030】
いくつかの実施形態では、小細孔ゼオライトが、約75m2/g未満のMSA、および少なくとも約450m2/gのZSAを有する。
【0031】
いくつかの実施形態では、小細孔ゼオライトが、モノ四級OSDAのみで合成された小細孔ゼオライトと比較して、0.25Mを超えるCu+2濃度での変更された平衡Cu+2取り込みを特徴とする、変更されたアルミニウム位置付けおよびペアリング配列を含む、制御されたアルミニウム分布を有する。
【0032】
いくつかの実施形態では、か焼する前に、小細孔ゼオライトの細孔の少なくとも一部が、ビス四級アンモニウムカチオンによって占められ、細孔の少なくとも一部が、モノ四級アンモニウムカチオンによって占められている。いくつかの実施形態では、細孔の約1~約99%が、ビス四級アンモニウムカチオンによって占められ、細孔の約99~約1%が、モノ四級アンモニウムカチオンによって占められている。いくつかの実施形態では、細孔の約60~約40%が、ビス四級アンモニウムカチオンによって占められ、細孔の約40~約60%が、モノ四級アンモニウムカチオンによって占められている。
【0033】
別の態様では、本明細書に開示される方法に従って調製された小細孔ゼオライトが提供される。
【0034】
いくつかの実施形態では、小細孔ゼオライトが、制御されたアルミニウム分布を有し、制御されたアルミニウム分布が、モノ四級OSDAのみで合成された小細孔ゼオライトと比較して、0.25Mを超えるCu+2濃度での変更された平衡Cu+2取り込みを特徴とする、変更されたアルミニウム位置付けおよびペアリング配列を含む、アニオン性フレームワークAl中心の配列を含む。いくつかの実施形態では、小細孔ゼオライトが、ケージを含む構造を含み、このケージを含む構造に含まれる可能な限り大きな球の直径が、約4.4Å~約15Åである。
【0035】
さらなる態様では、小細孔ゼオライトであって、小細孔ゼオライトの細孔の少なくとも一部が、ビス四級アンモニウムカチオンによって占められ、細孔の少なくとも一部が、モノ四級アンモニウムカチオンによって占められている小細孔ゼオライトが提供される。いくつかの実施形態では、小細孔ゼオライトが、ケージを含む構造を含み、このケージを含む構造に含まれる可能な限り大きな球の直径が、約4.4Å~約15Åである。
【0036】
いくつかの実施形態では、細孔の約1~約99%が、ビス四級アンモニウムカチオンによって占められ、細孔の約99~約1%が、モノ四級アンモニウムカチオンによって占められている。いくつかの実施形態では、細孔の約60~約40%が、ビス四級アンモニウムカチオンによって占められ、細孔の約40~約60%が、モノ四級アンモニウムカチオンによって占められている。
【0037】
いくつかの実施形態では、ビス四級アンモニウムカチオンが、約8~約20個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、ビス四級アンモニウムカチオンの各窒素原子が、4つの置換基を有し、各置換基が、独立して、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ビス四級アンモニウムカチオンが、式Iによって表される構造を有し、
【化3】
式中、
置換基R
1、R
2、およびR
3の各々が、メチルもしくはエチルであるか、または、任意選択で、両方のR
3基が、結合して-(CH
2)
n-架橋を形成し、nが、1~3の整数であり、
Xが、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0038】
いくつかの実施形態では、ビス四級アンモニウムカチオンが、N1,N1,N1,N3,N3,N3-ヘキサエチルプロパン-1,3-ジアミニウム、N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサメチルブタン-1,4-ジアミニウム、N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサエチルブタン-1,4-ジアミニウム、(E)-N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサメチルブト-2-エン-1,4-ジアミニウム、N1,N1,N1,N5,N5,N5-ヘキサメチルペンタン-1,5-ジアミニウム、(E)-N1,N1,N1,N5,N5,N5-ヘキサメチルペント-2-エン-1,5-ジアミニウム、N1,N1,N1,N6,N6,N6-ヘキサメチルヘキサン-1,6-ジアミニウム(ヘキサメトニウム)、(E)-N1,N1,N1,N6,N6,N6-ヘキサメチルヘキサ-2-エン-1,6-ジアミニウム、(2E,4E)-N1,N1,N1,N6,N6,N6-ヘキサメチルヘキサ-2,4-ジエン-1,6-ジアミニウム、N1,N1,N1,N7,N7,N7-ヘキサメチルヘプタン-1,7-ジアミニウム、N1,N1,N1,N8,N8,N8-ヘキサメチルオクタン-1,8-ジアミニウム、N1,N1,N1,N3,N3,N3-ヘキサメチルシクロヘキサン-1,3-ジアミニウム、N1,N1,N1,N3,N3,N3-ヘキサメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1,3-ジアミニウム、N1,N1,N1,N3,N3,N3-ヘキサメチルベンゼン-1,3-ジアミニウム、N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサメチルシクロヘキサン-1,4-ジアミニウム、N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1,4-ジアミニウム、N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサメチルビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジアミニウム、N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサメチルベンゼン-1,4-ジアミニウム、1,1,4,4-テトラメチルピペラジン-1,4-ジイウム、1,1,3,3-テトラメチルヘキサヒドロピリミジン-1,3-ジイウム、1,1’-(1,3-フェニレン)ビス(N,N,N-トリメチルメタンアミニウム)、1,1’-(1,4-フェニレン)ビス(N,N,N-トリメチルメタンアミニウム)、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、ビス四級アンモニウムカチオンが、ヘキサメトニウムまたはオクタメトニウムである。
【0039】
いくつかの実施形態では、モノ四級アンモニウムカチオンが、約4~約14個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、モノ四級アンモニウムカチオンの窒素原子が、4つの置換基を有し、各置換基が、独立して、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、モノ四級アンモニウムカチオンが、式IIによって表される構造を有し、
【化4】
式中、
R
1、R
2、およびR
3が、各々メチルまたはエチルであり、
R
4が、メチル、エチル、ヒドロキシエチル、シクロヘキシル、アザビシクロヘプチル、アダマンチル、およびフェニルからなる群から選択されるか、
または、任意選択で、R
3およびR
4が一緒に、もしくはR
2、R
3、およびR
4が一緒に連結して、単環式もしくは二環式環系が形成され得、これが、任意選択で、1つ以上のメチルもしくはOH基で置換され得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、モノ四級アンモニウムカチオンが、テトラエチルアンモニウム、2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタン-1-アミニウム、N,N,N-トリメチルシクロヘキサンアミニウム、N,N,N-トリメチルアダマンタン-1-アミニウム(TMAda)、N,N,N-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-アミニウム、N,N,N-トリメチルベンゼンアミニウム、1,1-ジメチルピペリジン-1-イウム、1,1,3,5-テトラメチルピペリジン-1-イウム、1-メチルキヌクリジン-1-イウム、3-ヒドロキシ-1-メチルキヌクリジン-1-イウム、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、モノ四級アンモニウムカチオンが、TMAdaである。いくつかの実施形態では、ビス四級アンモニウムカチオンが、ヘキサメトニウムまたはオクタメトニウムであり、モノ四級アンモニウムカチオンが、TMAdaである。
【0041】
いくつかの実施形態では、小細孔ゼオライトが、AEI、AFT、AFX、AFV、AVL、CHA、EAB、ERI、ITW、KFI、LEV、LTA、MER、SAS、SAT、およびSAVからなる群から選択される結晶フレームワーク構造タイプを有する。いくつかの実施形態では、小細孔ゼオライトが、AEI、AFV、AVL、CHA、EAB、ITW、KFI、LEV、LTA、MER、SAS、SAT、およびSAVからなる群から選択される結晶フレームワーク構造タイプを有する。いくつかの実施形態では、小細孔ゼオライトが、AEIまたはCHA結晶フレームワーク構造タイプを有する。いくつかの実施形態では、小細孔ゼオライトが、CHA結晶フレームワーク構造タイプを有する。
【0042】
いくつかの実施形態では、小細孔ゼオライトが、約6~約100のシリカ対アルミナ比(SAR)を有する。いくつかの実施形態では、小細孔ゼオライトが、約10~約30のシリカ対アルミナ比(SAR)を有する。いくつかの実施形態では、小細孔ゼオライトが、約20~約30の範囲のSARを有する。
【0043】
いくつかの実施形態では、小細孔ゼオライトが、約75m2/g未満のMSA、および少なくとも約450m2/gのZSAを有する。
【0044】
さらに別の態様では、排気ガス流における窒素酸化物(NOx)の軽減に有効な選択的触媒還元(SCR)触媒組成物が提供され、SCR触媒は促進剤金属で促進される、本明細書で開示される小細孔ゼオライトを含む。いくつかの実施形態では、促進剤金属は、SCR触媒の総重量に基づき、金属酸化物として計算されて、約1.0重量%~約10重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、促進剤金属は、約4~約6重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、促進剤金属は、鉄、銅、およびこれらの組み合わせから選択される。
【0045】
別の態様では、エンジン排気ガス流から窒素酸化物(NOx)を軽減するのに有効なSCR触媒物品が提供されSCR触媒物品は、基材を含み、基材は、その少なくとも一部上に配置された、本明細書で開示されるSCR触媒組成物を有する。いくつかの実施形態では、基材はハニカム基材である。いくつかの実施形態では、ハニカム基材は、フロースルー基材またはウォールフローフィルタである。
【0046】
さらに別の態様では、排気ガス流を生成するエンジンの下流に、かつそれと流体連通して位置する、本明細書に開示されるようなSCR触媒物品を含む排気ガス処理システムが提供される。
【0047】
さらに別の態様では、排気ガス流を処理する方法が提供され、この方法は、それぞれ本明細書に開示されるように、排気ガス流をSCR触媒物品または排気ガス処理システムと接触させることを含む。
【0048】
本開示のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下に簡単に記載される添付の図面とともに以下の詳細な説明で明らかになるだろう。本発明は、上記の実施形態の2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の任意の組み合わせ、および本開示に記載されている任意の2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の特徴または要素の組み合わせを、そのような特徴または要素が、本明細書の特定の実施形態の説明で明示的に組み合わされているか否かに関わらず含む。本開示は、開示される本発明の任意の分離可能な特徴または要素が、その様々な態様および実施形態のいずれかにおいて、文脈からそうでないことが明確に示されない限り、組み合わせ可能であるように意図されているとみなされるべきであるように、全体として読み取られることが意図されている。本発明の他の態様および利点は、以下で明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0049】
本発明の実施形態の理解を提供するために、添付図面が参照され、これらは、必ずしも縮尺通りに描かれておらず、参照番号は、本発明の例示的な実施形態の構成要素を指す。図面は、単なる例であり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0050】
【
図1】本開示による触媒(すなわち、選択的触媒還元触媒)ウォッシュコート組成物を含み得るハニカム型基材の斜視図である。
【
図2】ウォールフローフィルタ基材の一部の断面図である。
【
図3A】本開示の層状の触媒物品の一実施形態の断面図である。
【
図3B】本開示のゾーン化された触媒物品の一実施形態の断面図である。
【
図3C】本開示の層状の区画化された触媒物品の一実施形態の断面図である。
【
図4】本開示のSCR触媒物品が利用されている排出物処理システムの実施形態の概略図を示す。
【
図5】本開示の一実施形態についての銅交換等温線である。
【
図6】本開示の一実施形態についてのT-O-T結合振動のDRIFTS測定値である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明のいくつかの例示的な実施形態を記載する前に、本発明は、以下の説明に記載される構成またはプロセス工程の詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施または実行することができる。本明細書の発明は、特定の実施形態を参照して記載されているが、これらの実施形態は、本発明の原理および用途の単なる例示であることを理解されたい。本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本開示の方法および装置に対して様々な修正および変更を行うことができることは、当業者には明らかであるだろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内にある修正および変更を含むことが意図される。
【0052】
本開示で使用される用語に関して、以下の定義が提供される。
【0053】
本明細書全体を通して「一実施形態」、「ある特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」、または「実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、材料、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、「1つ以上の実施形態では」、「ある特定の実施形態では」、「一実施形態では」、または「実施形態では」などの語句が本明細書全体の様々な箇所に出現することが、必ずしも本発明の同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、材料、または特性は、1つ以上の実施形態では任意の好適な方法で組み合わせることができる。
【0054】
冠詞「a」および「an」は、冠詞の文法上の目的語の1つまたは2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために本明細書で使用される。
【0055】
本明細書で引用される任意の範囲は、包括的である。
【0056】
本明細書全体を通して使用される「約」という用語は、小さな変動を表現し、説明するために使用される。例えば、「約」という用語は、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.2%以下、±0.1%以下、または±0.05%以下など、±5%以下を指し得る。すべての数値は、明示的に示されているか否かに関わらず、「約」という用語によって修飾される。当然ながら、「約」という用語によって修飾された値には、特定の値が含まれる。例えば、「約5.0」には5.0を含める必要がある。
【0057】
「AMOx」とは、1つ以上の金属(典型的にはPtであるが、これに限定されることはない)とアンモニアを窒素に変換するのに好適なSCR触媒とを含有する触媒である、選択的アンモニア酸化触媒を指す。
【0058】
「触媒」または「触媒材料(catalyst material)」または「触媒組成物」または「触媒性材料(catalytic material)」という用語は、反応を促進する材料を指す。触媒物品を製造するために、本明細書で開示される基材は、触媒組成物でコーティングされる。コーティングは、「触媒コーティング組成物」または「触媒コーティング」である。「触媒組成物」および「触媒コーティング組成物」という用語は、同義語である。
【0059】
「CSF」は、ウォールフローモノリスである触媒化スートフィルタを指す。ウォールフローフィルタは、交互に位置した入口チャネルと出口チャネルとからなり、入口チャネルは出口端部に差し込まれており、出口チャネルは入口端部に差し込まれている。入口チャネルに入る、煤を運搬する排気ガス流は、出口チャネルから出る前に、フィルタ壁を通過させられる。煤煙過および再生に加えて、CSFは、COおよびHCをCO2およびH2Oに酸化し、またはNOをNO2に酸化して、下流のSCR触媒作用を促進する、またはより低い温度で煤煙粒子の酸化を促進する。CSFは、LNT触媒の後ろに位置する場合、H2S酸化機能を有し、LNT脱硫プロセスの間にH2S排出を抑制することができる。
【0060】
「DOC」とは、ディーゼルエンジンの排気ガス中の炭化水素および一酸化炭素を変換するディーゼル酸化触媒を指す。典型的には、DOCは、1つ以上の白金族金属、例えば、パラジウムおよび/または白金;担体材料、例えば、アルミナ;HC貯蔵のためのゼオライト;ならびに任意選択的に促進剤および/または安定剤を含む。
【0061】
「LNT」とは、白金族金属、セリア、およびリーン条件中にNOxを吸着するのに好適なアルカリ土類金属トラップ材料(例えば、BaOまたはMgO)を含有する触媒であるリーンNOxトラップを指す。リッチ条件下で、NOxが放出され、窒素に還元される。
【0062】
「NOx」という用語は、NOまたはNO2などの窒素酸化物化合物を指す。
【0063】
コーティング層に関連する「上」および「上方」という用語は、同義語として使用され得る。「上に直接」という用語は、直接接触していることを意味する。開示される物品は、ある特定の実施形態では、第2のコーティング層「上」に1つのコーティング層を含むと示され、そのような文言は、コーティング層間の直接接触が要求されない、介在層を伴う実施形態を包含することが意図されている(すなわち、「上」は「上に直接」とは同等ではない)。
【0064】
本明細書で使用される場合、「選択的触媒還元」(SCR)という用語は、窒素性還元剤を使用して、窒素酸化物を二窒素(N2)に還元する触媒プロセスを指す。本明細書で使用される場合、「窒素酸化物」および「NOx」という用語は、窒素の酸化物を意味している。
【0065】
「SCRoF」とは、ウォールフローフィルタ上に直接コーティングされたSCR触媒組成物を指す。
【0066】
本明細書で使用される場合、「構造指向剤」という用語は、ゼオライトの結晶化中に存在し、所望の結晶構造(例えば、CHA)の形成を導くのに役立つ化合物である。
【0067】
本明細書で使用される場合、「基材」という用語は、触媒組成物、すなわち触媒コーティングが、典型的にはウォッシュコートの形態でその上に配置されているモノリシック材料を指す。1つ以上の実施形態では、基材は、フロースルーモノリスおよびモノリシックウォールフローフィルタである。ウォッシュコートは、液体中に特定の固形物含量(例えば、30~90重量%)の触媒を含有するスラリーを調製し、次いで、これを基材上にコーティングさせ、乾燥させてウォッシュコート層を提供することによって形成される。「モノリシック基材」への言及は、入口から出口まで均質かつ連続的である単一構造を意味する。
【0068】
「ウォッシュコート」は、「基材」、例えば、ハニカムフロースルーモノリス基材または処理されるガス流の通過を可能にするのに十分に多孔性であるフィルタ基材に適用される材料(例えば、触媒)の薄くて付着性のあるコーティングの当技術分野におけるその通常の意味を有する。本明細書において使用され、Heck,Ronald,and Farrauto,Robert,Catalytic Air Pollution Control,New York:Wiley-Interscience,2002,pp.18-19に記載されているように、ウォッシュコート層は、モノリシック基材または下側のウォッシュコート層の表面に配置された材料の、組成的に区別される層を含む。基材は、1つ以上のウォッシュコート層を含むことができ、各ウォッシュコート層は、何らかの態様が異なることができ(例えば、粒径または結晶子相のような、ウォッシュコートの物理的特性が異なり得る)、かつ/または化学触媒機能が異なり得る。
【0069】
「モレキュラーシーブ」は、例えば、粒子形態で、1つ以上の促進金属と組み合わせて、触媒として使用することができるフレームワーク材料である。モレキュラーシーブは、一般に四面体型の部位を含み、かつ実質的に均一な細孔分布を有し、平均細孔径が20オングストローム(Å)以下の、広範な三次元網目構造の酸素イオンに基づく材料である。細孔径は環径によって画定される。
【0070】
本明細書で使用されているように、「ゼオライト」という用語は、ケイ素およびアルミニウム原子を含むモレキュラーシーブの特定の例を指す。ゼオライトは、ゼオライトのタイプ、ならびにゼオライト格子に含まれるカチオンのタイプおよび量に応じて、直径が約3~10Åの範囲の、かなり均一な細孔径を有する結晶材料である。ゼオライトは、コーナー共有TO4(式中、TはAlまたはSiである)四面体から構成された開放三次元フレームワーク構造を有するアルミノシリケートであると理解される。アニオン性フレームワークの電荷を平衡化するカチオンは、フレームワーク酸素と緩く会合しており、残りの細孔容積は水分子で満たされている。非フレームワークカチオンは一般に交換可能であり、水分子は除去可能である。
【0071】
特定の実施形態では、「アルミノシリケートゼオライト」フレームワーク型を参照することができ、これは、材料を、フレームワークにおいて置換されたリンまたは他の金属を含まないゼオライトに限定し、一方、「ゼオライト」というより広い用語は、アルミノシリケートおよびアルミノホスフェートを含むことを意図している。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、アルミノシリケートゼオライトである。「アルミノホスフェート」という用語は、アルミニウム原子およびリン酸原子を含む、ゼオライトの別の特定の例を指す。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、シリコアルミノホスフェートである。シリコアルミノホスフェートゼオライトは、SiO4/AlO4/PO4四面体を含み、「SAPO」と称される。SAPOの非限定的な例としては、SAPO-34およびSAPO-44が挙げられる。
【0072】
ゼオライトは一般に、2以上のシリカ対アルミナ(SAR)モル比を含む。開示された触媒組成物で使用するためのゼオライトは、SAR値に関して特に限定されないが、ゼオライトに関連する特定のSAR値は、いくつかの実施形態では、(例えば、特にエージング後に)それが組み込まれる触媒組成物のSCR性能に影響を及ぼし得る。いくつかの実施形態では、ゼオライトのSAR値は、約5~約100の範囲、または約5~約50の範囲である。いくつかの実施形態では、SARは約5~約25であり、他の実施形態では、SARは約10~約15である。
【0073】
ゼオライトは、構造が特定されるフレームワークトポロジーによって分類することができる。いくつかの実施形態では、本開示は、菱沸石(CHA)フレームワークを有するゼオライトに関する。ゼオライトCHAフレームワーク型モレキュラーシーブは、近似式:(Ca,Na2,K2,Mg)Al2Si4O12・6H2O(例えば、水和ケイ酸アルミニウムカルシウム)を有する。ゼオライトCHA-フレームワークタイプのモレキュラーシーブの3つの合成形態は、参照によって組み込まれる、John Wiley&Sonsによって1973年に出版された、D.W.Breckによる”Zeolite Molecular Sieves”に記載されている。Breckによって報告された3つの合成形態は、参照によって本明細書に組み込まれる、J.Chem.Soc.,p.2822(1956),Barrer et alに記載されているZeolite K-G、英国特許第868,846号(1961)に記載されているZeolite D、および米国特許第3,030,181号に記載されているZeolite Rである。ゼオライトCHAフレームワークタイプの別の合成形態であるSSZ-13の合成は、参照によって組み込まれる米国特許第4,544,538号に記載されている。特定の実施形態では、CHAフレームワーク型ゼオライトは、SSZ-13、SSZ-62、天然チャバサイト、ゼオライトK-G、リンデD、リンデR、LZ-218、LZ-235、LZ-236、ZK-14、SAPO-34、SAPO-44、SAPO-47、およびZYT-6からなる群から選択される。
【0074】
ゼオライトは、二次構造単位(SBU)および複合構造単位(CBU)からなり、多くの異なるフレームワーク構造で生じる。二次構造単位は、16個までの四面体原子を含み、キラルではない。複合構造単位は、アキラルである必要はなく、フレームワーク全体の構築に必ずしも使用可能であるわけではない。CHAフレームワークは、「二重6環」(d6r)二次構造単位を有する。d6r二次構造単位は、12個の四面体原子を有し、2つの「単一s6r単位」を結合することによって作り出され、「6」は、四面体のケイ素原子およびアルミニウム原子の位置を表し、酸素原子は四面体原子の間にある。
【0075】
いくつかの実施形態では、本発明のゼオライトは、小細孔ゼオライトである。本明細書で使用されているように、「小細孔」という用語は、約5Åよりも小さい細孔開口部、例えば、約3.8Åのオーダーの細孔開口部を指す。細孔径は、最大環径によって画定される。小細孔ゼオライトは、最大8個の四面体原子によって画定されるチャネルを含む。「八環」ゼオライトという句は、八環細孔開口部および二重六環(d6r)二次構造単位を有し、かつ4つの環による二重六環構造単位の接続から生じるケージ様構造を有する、ゼオライトを指す。例示的な小細孔ゼオライトには、フレームワークタイプACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG、ZON、およびそれらの混合物または連晶が含まれる。
【0076】
場合によっては、これらのゼオライトの細孔は、本明細書では「ケージ」と呼ばれるより大きな空洞に開く。理論に縛られることを望むものではないが、これらのケージは、反応分子、また場合によっては触媒原子が相互作用し得る局所的な体積を提供し得るため、多くのシステムで触媒的に関連すると考えられている。ゼオライト中に存在する細孔システムと比較したケージのサイズに関するより定量的な情報を提供するために、国際ゼオライト協会-構造委員会(IZA-SC)データベース(例えば、参照により本明細書に組み込まれるhttp://www.iza-structure.org/databasesでアクセス可能)は、以下の情報-(i)可能な限り大きな含まれる球の直径、ならびに(ii)3つの結晶学的方向a、b、およびcに沿って拡散することができる最大の自由球の直径、を提供する。可能な限り大きな含まれる球の直径の値を、フレームワーク内で拡散することができる最大の自由球の直径と比較することにより、ゼオライトの細孔のサイズと比較したゼオライトケージのサイズに関する情報を得ることができる。ただし、ケージはすべての方向で対称ではないことが多いため、これらの数値は、ゼオライト構造に存在するケージの完全な説明を常に提供することができるとは限らない。例えば、AFXフレームワークはCBUとして「aft」ケージを有し、一方、CHAフレームワークはCBUとして「cha」ケージを有する。両方のフレームワーク構造には8環の細孔開口部があり、含めることができる最大の球の直径は非常に似ている(AFXの場合は7.76Åに対してCHAの場合は7.37Å)。ただし、実際には2つのケージの構造は大きく異なる。それにもかかわらず、可能な限り大きな含まれる球の直径への参照は、ケージを含むゼオライト構造をチャネルのみを含むものから区別する方法を提供する。
【0077】
別途指示されない限り、すべての部分および割合は、重量による。「重量パーセント(重量%)」は、別途指示されない場合、いずれの揮発性物質も含まない組成物全体に基づく、すなわち、乾燥固形物含量に基づく。
【0078】
本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書で別途指示されない限り、または別様に文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施されることができる。本明細書で提供されるありとあらゆる実施例または例示的文言(例えば、「など」)の使用は、材料および方法をより良好に説明することのみを意図したものであり、別途請求されない限り、範囲に限定を課さない。本明細書におけるいかなる文言も、請求されていない要素を、開示された材料および方法の実践に必須であるものとして示すものと解釈されるべきではない。
【0079】
本明細書で参照されるすべての米国特許出願、公開特許出願および特許は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0080】
小細孔ゼオライト合成法
非限定的な実施例の説明として、本明細書に開示されるゼオライト材料は、第1の有機構造指向剤の供給源、第2の有機構造指向剤の供給源、ケイ素の供給源、アルミニウムの供給源、および水を含有する反応混合物(合成ゲル)から調製される。したがって、一態様では、小細孔ゼオライトを合成する方法が提供され、この方法は、第1のOSDAが、ビス四級アンモニウムカチオンであり、第2のOSDAが、モノ四級アンモニウムカチオンである、水、アルミニウム供給源、シリカ源、第1の有機構造指向剤(OSDA)の供給源、および第2のOSDAの供給源を混合して、合成ゲルを形成することと、合成ゲルを結晶化プロセスに供して、小細孔ゼオライトを結晶化させることと、を含む。各成分は、以下でさらに詳しく説明されている。
【0081】
有機構造指向剤
開示された方法に従って小細孔ゼオライトを調製するために、本明細書では「テンプレート」または「テンプレート剤」とも呼ばれるOSDAが使用される。OSDAは、ゼオライトのフレームワークの分子形状およびパターンを誘導するまたは指向させる有機(すなわち、炭素含有)分子であり、例えば、ゼオライト結晶がその周りに形成されるスキャフォールドとして機能する。結晶の形成後、OSDAは、結晶の内部構造から除去され(例えば、か焼により)、分子的に多孔質のアルミノシリケートケージが残る。使用されるOSDAの特定の型は変わり得る。典型的には、OSDAは、環状アミンおよび/またはアンモニウム化合物、例えば、様々な置換基を有する四級アンモニウムカチオンから選択される。好適なOSDAは、例えば、各々参照により本明細書に組み込まれる、Zeolites and Related Microporous Materials:State of the Art 1994,Studies of Surface Science and Catalysis,Vol.84,p 29-36、Novel Materials in Heterogeneous Catalysis(Baker and Murrell編)Chapter 2,p14-24,May 1990、J.Am.Chem.Soc.,2000,122,p 263-273、および米国特許第4,544,538号および同第6,709,644号において開示されている。
【0082】
具体的には、本明細書で提供される方法は、ビス四級アンモニウムカチオンである第1のOSDA、およびモノ四級アンモニウムカチオンである第2のOSDAという2つの異なるOSDAを利用する。本明細書で使用される場合、「四級アンモニウムカチオン」という用語は、4つの置換基を有し、したがって正(カチオン)電荷を有する窒素原子を含有する有機分子を指す。四級アンモニウムカチオンは、アニオン、例えば、ハロゲン化物(例えば、Cl-、Br-、I-)、硫酸水素塩(HSO4
-)、または水酸化物(OH-)イオンと平衡しており、本明細書では、「四級アンモニウム塩」または「四級アンモニウム化合物」と称され、溶液中で、遊離の四級アンモニウムカチオンおよびそれぞれのアニオンに解離する。本明細書で使用される場合、OSDAに関する「供給源」という用語は、ゼオライト合成条件下で解離して構造指向剤として活性な四級アンモニウムカチオン種を提供する四級アンモニウム化合物(例えば、塩)を指す。
【0083】
本明細書で使用される場合、「モノ四級アンモニウム」という用語は、本明細書に記載されるような1つの四級アンモニウムカチオンを含む分子を指す。本明細書で使用される場合、「ビス四級アンモニウム」という用語は、本明細書に記載されるような2つのそのような四級アンモニウムカチオンを含む分子を指す。
【0084】
第1のOSDA
いくつかの実施形態では、第1のOSDAは、ビス四級アンモニウムカチオンである。いくつかの実施形態では、ビス四級アンモニウムカチオンは、約8~約20個の炭素原子、例えば、約8、9、10、11、12、13、14、または15個の炭素原子~約16、17、18、19、または20個の炭素原子を含む。ビス四級アンモニウムカチオンは、様々な構造配列、例えば、非環式または環式構造を含み得る。いくつかの実施形態では、ビス四級アンモニウムカチオンは非環式であり、これは、環系が存在しないことを意味する。非環式ビス四級アンモニウムカチオンの非限定的な例には、N1,N1,N1,N3,N3,N3-ヘキサエチルプロパン-1,3-ジアミニウムおよびN1,N1,N1,N8,N8,N8-ヘキサメチルオクタン-1,8-ジアミニウムが含まれる。いくつかの実施形態では、ビス四級アンモニウムカチオンは環状であり、これは、四級アンモニウム基が、1つ以上の環系に結合していること、または2つ以上の置換基と一緒にそれを形成することを意味する。環状ビス四級アンモニウムカチオンの非限定的な例には、N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサメチルシクロヘキサン-1,4-ジアミニウム、1,1,4,4-テトラメチルピペラジン-1,4-ジイウム、およびN1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサメチルビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジアミニウムが含まれる。
【0085】
いくつかの実施形態では、ビス四級アンモニウムカチオンの各窒素原子が、4つの置換基を有し、各置換基が、独立して、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0086】
いくつかの実施形態では、ビス四級アンモニウムカチオンが、式Iによって表される構造を有し、
【化5】
式中、
置換基R
1、R
2、およびR
3の各々が、メチルもしくはエチルであるか、または、任意選択で、両方のR
3基が、結合して-(CH
2)
n-架橋を形成し、nが、1~3の整数であり、
Xが、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0087】
いくつかの実施形態では、Xはアルキル基である。本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、2~8個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖飽和炭化水素を指す。代表的なC2-C8アルキル基には、-エチル、-n-プロピル、-n-ブチル、-n-ペンチル、および-n-ヘキシルが含まれるが、これらに限定されず、一方、分岐C2-C8アルキルには、-イソプロピル、-sec-ブチル、-イソブチル、-tert-ブチル、-イソペンチル、および2-メチルブチルが含まれるが、これらに限定されない。
【0088】
いくつかの実施形態では、Xはアルケニル基である。本明細書で使用される場合、「アルケニル」という用語は、不飽和の少なくとも1つの部位を有する通常の、二次、または三次炭素原子、すなわち炭素-炭素、sp2二重結合を含むC2-C8炭化水素を指す。例には、エチレンまたはビニル、-アリル、-1-ブテニル、-2-ブテニル、-イソブチルエニル、-1-ペンテニル、-2-ペンテニル、-3-メチル-1-ブテニル、-2-メチル-2-ブテニル、-2,3-ジメチル-2-ブテニルなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0089】
いくつかの実施形態では、Xはシクロアルキル基である。本明細書で使用される「シクロアルキル」は、単環式または二環式であり得、4~8個の炭素原子を有する環系を含む飽和炭素環式ラジカルを指す。単環式シクロアルキル基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが含まれる。
【0090】
いくつかの実施形態では、Xはアリール基である。本明細書で使用される「アリール」は、C6-C20炭素環式芳香族基を指す。アリール基の例には、フェニルおよびナフチルが含まれるが、これらに限定されない。
【0091】
いくつかの実施形態では、Xはアリールアルキル基である。本明細書で使用される「アリールアルキル」は、炭素原子に結合した水素原子のうちの1つ、典型的には末端またはsp3炭素原子がアリールラジカルで置き換えられている非環式アルキルラジカルを指す。典型的なアリールアルキル基には、ベンジル、ジベンジル、2-フェニルエタン-1-イル、ナフチルメチル、2-ナフチルエタン-1-イル、ナフトベンジル、2-ナフトフェニルエタン-1-イルなどが含まれるが、これらに限定されない。アリールアルキル基は、6~20個の炭素原子を含み、例えば、アリールアルキル基のアルキル部分は、1~6個の炭素原子であり、アリール部分は、5~14個の炭素原子である。
【0092】
上記のラジカル命名規則は、ジラジカルを指すことを理解されたい。例えば、「アルキル」として識別される置換基は、2つの結合点を必要とし、したがって、-CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2-などのジラジカルを含む。このラジカル命名規則は、任意のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、およびアリールアルキルラジカルがジラジカル(すなわち、それぞれアルキレン、アルケニレン、シクロアルキレン、アリーレン、およびアリールアルキレン)であることを明確に示している。特に明記しない限り、ジラジカル置換基は、任意の方向構成で結合することができることを理解されたい。
【0093】
式Iによるビス四級アンモニウムカチオンの非限定的な例には、表1に示される構造が含まれる。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0094】
いくつかの実施形態では、ビス四級アンモニウムカチオンは、表1に表されるような構造を有する。
【0095】
いくつかの実施形態では、ビス四級アンモニウムカチオンは、N1,N1,N1,N3,N3,N3-ヘキサエチルプロパン-1,3-ジアミニウム、N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサメチルブタン-1,4-ジアミニウム、N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサエチルブタン-1,4-ジアミニウム、(E)-N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサメチルブト-2-エン-1,4-ジアミニウム、N1,N1,N1,N5,N5,N5-ヘキサメチルペンタン-1,5-ジアミニウム、(E)-N1,N1,N1,N5,N5,N5-ヘキサメチルペント-2-エン-1,5-ジアミニウム、N1,N1,N1,N6,N6,N6-ヘキサメチルヘキサン-1,6-ジアミニウム、(E)-N1,N1,N1,N6,N6,N6-ヘキサメチルヘキサ-2-エン-1,6-ジアミニウム、(2E,4E)-N1,N1,N1,N6,N6,N6-ヘキサメチルヘキサ-2,4-ジエン-1,6-ジアミニウム、N1,N1,N1,N7,N7,N7-ヘキサメチルヘプタン-1,7-ジアミニウム、N1,N1,N1,N8,N8,N8-ヘキサメチルオクタン-1,8-ジアミニウム、N1,N1,N1,N3,N3,N3-ヘキサメチルシクロヘキサン-1,3-ジアミニウム、N1,N1,N1,N3,N3,N3-ヘキサメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1,3-ジアミニウム、N1,N1,N1,N3,N3,N3-ヘキサメチルベンゼン-1,3-ジアミニウム、N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサメチルシクロヘキサン-1,4-ジアミニウム、N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1,4-ジアミニウム、N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサメチルビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジアミニウム、N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサメチルベンゼン-1,4-ジアミニウム、1,1,4,4-テトラメチルピペラジン-1,4-ジイウム、1,1,3,3-テトラメチルヘキサヒドロピリミジン-1,3-ジイウム、1,1’-(1,3-フェニレン)ビス(N,N,N-トリメチルメタンアミニウム)、1,1’-(1,4-フェニレン)ビス(N,N,N-トリメチルメタンアミニウム)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される構造を有する。
【0096】
いくつかの実施形態では、第1のOSDA(すなわち、ビス四級アンモニウムカチオン)の供給源は、本明細書で上述されるようなビス四級アンモニウムカチオンと、平衡化アニオンと、を含むビス四級アンモニウム化合物である。いくつかの実施形態では、平衡化アニオンは、OH、Cl、およびBrからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1の有機構造指向剤の供給源は、N1,N1,N1,N6,N6,N6-ヘキサメチルヘキサン-1,6-ジアミニウムジヒドロキシド(ヘキサメトニウムジヒドロキシド;HMOH)またはN1,N1,N1,N8,N8,N8-ヘキサメチルオクタン-1,8-ジアミニウムジヒドロキシド(オクタメトニウムジヒドロキシド;OMOH)である。
【0097】
いくつかの実施形態では、第1のOSDAは、ビス四級アンモニウムカチオンの誘導体を含む。ビス四級アンモニウムカチオンの誘導体は、ある原子を別の原子もしくは原子の群で置き換えることによって、または原子もしくは原子の群を除去することによって、または単一結合を二重結合もしくは三重結合に変換することによって、または二重結合もしくは三重結合を単一結合に変換することによって、ビス四級アンモニウムカチオンから生じるもしくは生成される化合物を含む。ビス四級アンモニウムカチオンの誘導体は、ゼオライト合成混合物に意図的に添加することができ、または合成反応中に生成することができる。
【0098】
第2のOSDA
いくつかの実施形態では、第2のOSDAは、モノ四級アンモニウムカチオンである。いくつかの実施形態では、モノ四級アンモニウムカチオンは、約4~約14個の炭素原子、例えば、約4、5、6、7、8、9、または10個の炭素原子~約11、12、13、または14個の炭素原子を含む。モノ四級アンモニウムカチオンは、様々な構造配列、例えば、非環式または環式構造を含み得る。いくつかの実施形態では、モノ四級アンモニウムカチオンが、非環式である。非環式モノ四級アンモニウムカチオンの非限定的な例には、テトラメチルアンモニウムおよびテトラエチルアンモニウムが含まれる。いくつかの実施形態では、モノ四級アンモニウムカチオンが、環式である。環式モノ四級アンモニウムカチオンの非限定的な例には、N,N,N-トリメチルアダマンタン-1-アミニウムおよび1,1-ジメチルピペリジン-1-イウムが含まれる。
【0099】
いくつかの実施形態では、モノ四級アンモニウムカチオンの窒素原子が、4つの置換基を有し、各置換基が、独立して、各々上記で定義されるようなアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0100】
いくつかの実施形態では、モノ四級アンモニウムカチオンは、式IIによって表される構造を有し、
【化6】
式中、
R
1、R
2、およびR
3が、各々メチルまたはエチルであり、
R
4が、メチル、エチル、ヒドロキシエチル、ベンジル、シクロヘキシル、アザビシクロヘプチル、アダマンチル、およびフェニルからなる群から選択されるか、
または、任意選択で、R
3およびR
4が結合した窒素と一緒に、もしくはR
2、R
3、およびR
4が結合した窒素と一緒に連結して、単環式もしくは二環式環系が形成され得、これが、任意選択で、1つ以上のメチルもしくはOH基で置換され得る。
【0101】
いくつかの実施形態では、R3およびR4が結合した窒素と一緒に、ピペリジン環を形成する(すなわち、R3およびR4が一緒に-(CH2)5-である)。いくつかの実施形態では、ピペリジン環は、1つ以上のメチル基で置換されている。いくつかの実施形態では、ピペリジン環は、3位および5位においてメチル基で置換されている。
【0102】
いくつかの実施形態では、R2、R3、およびR4が結合した窒素と一緒に、アザビシクロオクタン環を形成する。いくつかの実施形態では、アザビシクロオクタン環が、ヒドロキシル基で置換されている。いくつかの実施形態では、アザビシクロオクタン環が、3位においてヒドロキシル基で置換されている。
【0103】
式IIによるモノ四級アンモニウムカチオンの非限定的な例には、表2に示される構造が含まれる。
【表2-1】
【表2-2】
【0104】
いくつかの実施形態では、ビス四級アンモニウムカチオンは、表2に表されるような構造を有する。
【0105】
いくつかの実施形態では、モノ四級アンモニウムカチオンは、テトラエチルアンモニウム、2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタン-1-アミニウム、N,N,N-トリメチルシクロヘキサンアミニウム、N,N,N-トリメチルアダマンタン-1-アミニウム(TMAda)、N,N,N-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-アミニウム、N,N,N-トリメチルベンゼンアミニウム、1,1-ジメチルピペリジン-1-イウム、1,1,3,5-テトラメチルピペリジン-1-イウム、1-メチルキヌクリジン-1-イウム、3-ヒドロキシ-1-メチルキヌクリジン-1-イウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第2の有機構造指向剤は、N,N,N-トリメチルアダマンタン-1-アミニウム(TMAda)である。
【0106】
いくつかの実施形態では、第2のOSDA(すなわち、モノ四級アンモニウムカチオン)の供給源は、本明細書で上述されるようなモノ四級アンモニウムカチオンと、平衡化アニオンと、を含むモノ四級アンモニウム化合物である。いくつかの実施形態では、平衡化アニオンは、OH、Cl、およびBrからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第2の有機構造指向剤の供給源は、TMAdaOHである。
【0107】
いくつかの実施形態では、第1の有機構造指向剤の供給源が、HMOHまたはOMOHであり、第2の有機構造指向剤の供給源が、TMAdaOHである。
【0108】
HMOHのみがEUOおよび*MREフレームワークゼオライトの合成を導くことが以前に示されているが、CHAフレームワークゼオライトの合成にはこれまで使用されていない。驚くべきことに、本開示によれば、TMAdaOHの存在下でのHMOHまたはOMOHの使用は、純粋なCHA相ゼオライトの結晶化をもたらすことが見出された。
【0109】
合成ゲル中に存在する第1および第2のOSDAの量は変わり得る。いくつかの実施形態では、存在する第1および第2のOSDAの各々の量は、ケイ素に対するモル比によって表され得る。いくつかの実施形態では、第1のOSDAのケイ素に対するモル比は、約0.01~約0.2であり、例えば、約0.01、約0.02、約0.03、約0.04、約0.05、約0.06、約0.07、約0.08、約0.09、または約0.1~約0.11、約0.12、約0.13、約0.14、約0.15、約0.16、約0.17、約0.18、約0.19、または約0.2である。いくつかの実施形態では、第2のOSDAのケイ素に対するモル比は、約0.02~約0.1、例えば、約0.02、約0.03、約0.04、約0.05~約0.06、約0.07、約0.08、または約0.09、または約0.1である。
【0110】
第1の有機構造指向剤の第2の有機構造指向剤に対する比率は変わり得る。いくつかの実施形態では、第1の有機構造指向剤の第2の有機構造指向剤に対するモル比は、約0.001~約1000の範囲、例えば、約0.001、約0.01、約0.1、約0.5、または約1~約10、約20、約50、約100、約500、または約1000である。いくつかの実施形態では、第1の有機構造指向剤の第2の有機構造指向剤に対するモル比は、約0.1~約10である。いくつかの実施形態では、第1の有機構造指向剤の第2の有機構造指向剤に対するモル比は、約0.5~約2.0である。
【0111】
いくつかの実施形態では、第2のOSDAは、モノ四級アンモニウムカチオンの誘導体を含む。モノ四級アンモニウムカチオンの誘導体は、ある原子を別の原子もしくは原子の群で置き換えることによって、または原子もしくは原子の群を除去することによって、または単一結合を二重結合もしくは三重結合に変換することによって、または二重結合もしくは三重結合を単一結合に変換することによって、モノ四級アンモニウムカチオンから生じるもしくは生成される化合物を含む。モノ四級アンモニウムカチオンの誘導体は、ゼオライト合成混合物に意図的に添加することができ、または合成反応中に生成することができる。
【0112】
無機構造指向剤
いくつかの実施形態では、合成ゲルは、無機構造指向剤(SDA)をさらに含む。存在する場合、無機SDAは変化する可能性があり、いくつかの実施形態では、アルカリ金属またはアルカリ土類金属カチオンであり得る。いくつかの実施形態では、無機SDAは、リチウム、ナトリウム、カリウム、またはセシウムなどのアルカリ金属カチオンである。ある特定の実施形態では、無機SDAは、ナトリウムまたはカリウムカチオンである。無機SDAの供給源(例えば、アルカリ金属カチオン)は変わり得る。例えば、Li+、K+、またはCs+などのアルカリ金属カチオンは、水酸化物の形態で、または別の好適な塩(例えば、硫酸塩、塩化物、硝酸塩など)として添加され得る。特定の実施形態では、ナトリウムまたはカリウムカチオンの供給源は、それぞれ、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)または酸化カリウム(K2O)の水溶液である。いくつかの実施形態では、ナトリウムまたはカリウムカチオンの供給源は、硫酸ナトリウムまたは硫酸カリウムである。
【0113】
存在する無機構造指向剤の量は変わり得る。特に、水酸化物イオンは、反応混合物において必要とされる唯一の必要な鉱化剤であり、合成ゲルにおいて必要とされる水酸化物の量は、有機構造指向剤の供給源から提供することができる。いくつかの実施形態では、アルカリ金属ヒドロキシドは、無機SDAおよび水酸化物イオン源として機能し、合成ゲルが特定の範囲内のpHを有することを確実にするような量で提供される。例えば、いくつかの実施形態では、pHは、有利に塩基性であり、例えば、約12~約13である。
【0114】
アルミニウム供給源
アルミニウム供給源は変わり得る。いくつかの実施形態では、アルミニウム供給源は、非ゼオライト系である。いくつかの実施形態では、アルミニウム供給源は、非結晶質である。例えば、ある特定の実施形態では、アルミニウム供給源は、アルミニウム塩(例えば、アルミニウムトリイソプロポキシドまたは他のアルコキシド、水酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、リン酸アルミニウム)、アルミニウム金属、非結晶性酸化アルミニウム、または非結晶性アルミノシリケートから選択される非結晶質源であり得る。他の実施形態では、アルミニウムの供給源は、結晶性アルミナまたはゼオライトなどの結晶質である。
【0115】
いくつかの実施形態では、アルミニウム供給源はゼオライトを含む。アルミニウム供給源として使用されるゼオライトは多様であり得るが、当技術分野で知られている様々なゼオライト材料、特に様々なケイ酸アルミノゼオライトが含まれるであろう。いくつかの実施形態では、アルミニウムの供給源が、FAU、LTA、LTL、MFI、またはBEA結晶フレームワークを有するゼオライトを含む。いくつかの実施形態では、アルミニウムの供給源が、Na+形態にあるゼオライトYである。
【0116】
ケイ素供給源
ケイ素供給源も変わり得る。様々な実施形態では、ケイ素は、沈降シリカ、コロイダルシリカ、シリカゲル、水酸化ケイ素、ケイ素アルコキシド、アモルファスシリカ、アルミノシリケート、ヒュームドシリカ、またはシリケート、例えば、アルカリシリケートのうちの1つ以上によって提供される。いくつかの実施形態では、ケイ素供給源は、コロイダルシリカである。いくつかの実施形態では、ケイ素供給源は、アルカリ金属ケイ酸塩である。いくつかの実施形態では、ケイ素供給源は、ナトリウムケイ酸塩である。
【0117】
いくつかの実施形態では、合成ゲル中に存在するケイ素およびアルミニウムの量は、出発組成物の計算されたSARが約1~約100、例えば、約2~60の範囲になるように選択される。いくつかの実施形態では、出発組成物のSARは、約10~約35の範囲である。いくつかの実施形態では、出発組成物のSARは、約20~約30の範囲である。当業者は、合成時のSARと最終ゼオライトにおけるSARが必ずしも同じであるとは限らないことを知っており、最終ゼオライトにおいて所望のSARを得るために合成時のSAR値を選択する方法も知っている。
【0118】
いくつかの実施形態では、合成ゲルのOH/Si比は、約0.03~約1.0であり、例えば、約0.03、約0.04、約0.05、約0.06、約0.07、約0.08、約0.09、または約0.1~約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、または約1.0である。
【0119】
混合
上記のように、方法は、一般に、水、アルミニウム供給源、ケイ素供給源、第1の有機構造指向剤(OSDA)の供給源、および第2のOSDAを含む反応混合物を形成して、合成ゲルを形成することと、合成ゲルを結晶化プロセスに供して、ゼオライトを結晶化させることと、を含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、この方法は、水、アルミニウム供給源、ケイ素供給源、第1の有機構造指向剤(OSDA)の供給源、および第2のOSDAの供給源を含む反応混合物を混合して、本明細書では「合成ゲル」または「ゲル」と呼ばれるアルミノケイ酸塩含有溶液を形成することを含む。一般に、合成ゲルは、高い固形分(例えば、約15%以上または約20%以上)を有する。
【0121】
混合工程は、様々な温度で行うことができ、いくつかの実施形態では、混合は室温で行う。いくつかの実施形態では、混合は、高温(例えば、約25℃~約100℃などの室温より高い温度)で行う。
【0122】
混合工程は、様々な時間で実行することができる。混合のための時間は、1秒~約24時間の範囲であることができる。例えば、時間は、約1秒~約1分、または約1分、約5分、約10分、もしくは約15分から、約30分、約45分、もしくは約1時間まで、または約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間から、もしくは約6時間から、約12時間、もしくは約24時間までであることができる。いくつかの実施形態では、時間は、約2時間である。
【0123】
いくつかの実施形態では、混合は、分離している別個の工程で実施することができる。したがって、いくつかの実施形態では、方法は、第1のOSDAの供給源、第2のOSDAの供給源、およびアルミニウム供給源を水に添加してアルミニウム含有水溶液を形成し、水溶液を第1の時間混合することを含む第1の混合工程を含む。
【0124】
第1の時間は、1秒~約24時間の範囲であることができる。例えば、第1の時間は、約1秒~約1分の範囲であることができ、または約1分、約5分、約10分、もしくは約15分から、約30分、約45分、もしくは約1時間まで、または約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間から、もしくは約6時間から、約12時間、もしくは約24時間までの範囲であることができる。いくつかの実施形態では、第1の時間は、約15分である。
【0125】
第1の混合工程は、様々な温度で行うことができ、いくつかの実施形態では、混合は室温で行う。いくつかの実施形態では、混合は、高温(例えば、約25℃~約100℃などの室温より高い温度)で行う。
【0126】
いくつかの実施形態では、方法は、ケイ素の供給源を、アルミニウム含有水溶液に添加し、第2の時間混合して合成ゲルを形成することを含む第2の混合工程を含む。
【0127】
第2の時間は、1秒~約24時間の範囲であることができる。例えば、第2の時間は、約1秒~約1分、または約1分、約5分、約10分、もしくは約15分~約30分、約45分、もしくは約1時間、または約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、もしくは約6時間~約12時間、もしくは約24時間であることができる。いくつかの実施形態では、第2の時間は、約2時間である。
【0128】
第2の混合工程は、様々な温度で行うことができ、いくつかの実施形態では、混合は室温で行う。いくつかの実施形態では、混合は、高温(例えば、約25℃~約100℃などの室温より高い温度)で行う。
【0129】
いくつかの実施形態では、第1および第2の時間は、各々独立して、約1秒~約24時間である。いくつかの実施形態では、第1の時間は、約5分~約1時間である。いくつかの実施形態では、第2の時間は、約5分~約1時間である。
【0130】
いくつかの実施形態では、第1および第2の混合工程は、約20℃~約100℃の温度で実施される。いくつかの実施形態では、第1および第2の混合工程は、約20℃~約50℃の温度で実施される。いくつかの実施形態では、第1および第2の混合工程は、約20℃~約30℃の温度で実施される。
【0131】
結晶化
合成ゲル成分の混合に続いて、合成ゲルは次に結晶化プロセスにかけられて小細孔ゼオライトが結晶化される。結晶化条件は、一般に、ゼオライト結晶を含有する固体沈殿物の形成を促進するように選択される。典型的には、結晶化プロセスは、合成ゲルを高温で一定時間維持することを含む。一般に、本明細書で上記した反応混合物は、圧力容器内で撹拌しながら加熱すると、所望の小細孔ゼオライト結晶性生成物を生成する。いくつかの実施形態では、結晶化は、任意選択で、ゼオライト種結晶を合成ゲルに添加することをさらに含み、所望の結晶構造の形成を促進する。いくつかの実施形態では、種結晶は、CHAフレームワークを有する。いくつかの実施形態では、種結晶は、か焼された、かつNa+形態であるCHA型ゼオライトである。
【0132】
いくつかの実施形態では、その時間は、約24時間~約6日の範囲であることができる。例えば、時間は、約24時間、約30時間、または約36時間から、約2日、約3日、約4日、約5日、または約6日までの範囲であることができる。いくつかの実施形態では、その時間は、約30時間~約3日である。いくつかの実施形態では、時間は約3日である。結晶化プロセスは、対応する自生圧力において、様々な温度で行うことができ、いくつかの実施形態では、結晶化プロセスは、約90℃~約250℃の範囲、例えば、約120℃~約200℃、または約140℃~約180℃の範囲である。いくつかの実施形態では、温度は、約160℃~約180℃である。
【0133】
合成ゲルを冷却した後、次いで、ゼオライト材料を含む沈殿物をろ別し、任意選択でさらなる処理に供する。任意選択的に、生成物は、遠心分離され得る。有機添加剤は、固形生成物の取り扱いおよび単離を助けるために使用され得る。沈殿物は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Yangらによる米国特許出願公開第2015/118150号に開示されているように、ろ別し、残りの母液を廃棄するか、またはリサイクルすることができる。噴霧乾燥は、生成物の処理における任意選択的工程である。
【0134】
さらなる処理
ゼオライト生成物は、空気または窒素中で熱処理またはか焼することができる。典型的なか焼温度は、1~10時間の間にわたって、約400℃~約850℃(例えば、約450℃~約750℃)である。最初のか焼に続いて、ゼオライト生成物は、主にアルカリ金属形態(例えば、Na+形態)である。
【0135】
か焼後に得られたゼオライトは、アルカリの量を減らすために、または例えばアンモニウムイオンと交換するために、イオン交換され得る。いくつかの実施形態では、単一または複数のアンモニウムイオン交換を使用して、ゼオライトのNH4
+形態を生成することができ、これは、任意選択でさらにか焼して、H+形態を形成し得る。イオン交換法は、当技術分野で周知であり、特許請求の範囲から逸脱することなく適用することができる。イオン交換は、例えば、塩化アンモニウム水溶液で処理することによって達成することができる。
【0136】
ゼオライトの特性
いくつかの実施形態では、開示されたプロセスによって得られる小細孔ゼオライトは、ケージを含む構造であり、ケージを含む構造に含めることができる球の最大直径は、約4.4Å~約7.8Åである。
【0137】
いくつかの実施形態では、結晶化から生じる小細孔ゼオライト結晶は、約50~約100%の結晶質であり得る。いくつかの実施形態では、結晶化から生じる小細孔ゼオライト結晶は、約80%~約99%の結晶質または約90%~約97%の結晶質であり得る。結晶パーセントは、X線回折分析によって測定することができる。
【0138】
いくつかの実施形態では、小細孔ゼオライトが、AEI、AFT、AFX、AFV、AVL、CHA、EAB、ITW、KFI、LEV、LTA、MER、SAS、SAT、およびSAVから選択される結晶フレームワーク構造タイプを有する。いくつかの実施形態では、小細孔ゼオライトが、AEI、AFV、AVL、CHA、EAB、ITW、KFI、LEV、LTA、MER、SAS、SAT、およびSAVから選択される結晶フレームワーク構造タイプを有する。いくつかの実施形態では、小細孔ゼオライトが、AEIまたはCHA結晶フレームワークを有する。いくつかの実施形態では、小細孔ゼオライトが、CHA結晶フレームワークを有する。
【0139】
いくつかの実施形態では、小細孔ゼオライト生成物は、シリカ対アルミナのモル比(SAR)によって特徴とすることができる。一実施形態では、小細孔ゼオライトにおけるシリカのアルミナに対するモル比は、約6~約100の範囲である。ある特定の実施形態では、ゼオライト生成物は、約10~約30のSARを有する。ある特定の実施形態では、小細孔ゼオライト生成物は、約20~約30のSARを有する。
【0140】
いくつかの実施形態では、小細孔ゼオライト生成物は、良好な触媒性能を提供するゼオライト表面積(ZSA)と組み合わされた比較的低いメソ細孔表面積(MSA)を特徴とする。細孔容積および表面積の特性は、窒素吸着(BET表面積法)によって決定され得る。いくつかの実施形態では、ゼオライト生成物のMSAは、約75m2/g未満(例えば、約25~約75m2/g)または約25m2/g未満(例えば、約5~約25m2/g)である。ゼオライト生成物のZSAは、典型的には、少なくとも約450m2/g、または少なくとも約475m2/g、または少なくとも約500m2/gであり、例示的なZSA範囲は、約450~約600m2/gまたは約500~約600m2/gである。
【0141】
いくつかの実施形態では、小細孔ゼオライト生成物はまた、50℃で40重量%のNH4F溶液を用いて小細孔ゼオライト材料のH+形態を処理し、20分間350rpmで撹拌および超音波処理(35kHz、90W)した後、450℃で6時間乾燥およびか焼した後の約60%未満(または約50%未満)などの、NH4F溶液での処理後の比較的低い正規化されたZSA損失も特徴とし得る。相互成長した結晶子と他の欠陥の多い領域との間の界面である粒界のゼオライト材料を選択的にエッチングするNH4F処理は、もともとメソ多孔性を付与する手段としてQin et al.[Qin et.al,Angew.Chem.Int.Ed.2016 55,19049]によって開発された。本明細書では、この処理は、エッチングの相対速度を測定することによって、欠陥密度の定量化の手段として用いられる。
【0142】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される小細孔ゼオライト生成物は、制御されたアルミニウム分布を示し、制御されたアルミニウム分布は、アニオン性フレームワークAl中心の配列を含む。そのような制御されたアルミニウム分布は、ゼオライト材料に関連する特性によって証明され得る。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に開示される小細孔ゼオライトは、OSDAがモノ四級アンモニウムカチオン(例えば、N,N,N-トリメチルシクロヘキサンアミニウムまたはN,N,N-トリメチルアダマンタン-1-アミニウム(TMAda)のみ)であるプロセスによって調製される小細孔ゼオライトに対して変更されたAl位置付けおよびペアリングを示す。いくつかの実施形態では、変更されたAlの位置付けおよびペアリングは、モノ四級OSDAのみで合成されたゼオライトの平衡Cu+2取り込みと比較して、変更された平衡Cu+2取り込みによって特徴付けられ得る。具体的には、いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるゼオライトは、それらのSARに基づいて予想されるよりも高いCu+2取り込みを示す。そのような違いは、イオン交換条件下で、より高い濃度のCu+2で示され得る(例えば、少なくとも約0.1M、少なくとも約0.2M、少なくとも約0.25M、少なくとも約0.3M、または少なくとも約0.4MのCu+2濃度で)。いくつかの実施形態において、ゼオライトは、唯一の有機構造指向剤としてTMAdaOHを用いて合成された小細孔ゼオライトと比較して、0.25Mを超えるCu+2濃度での変更された平衡Cu+2取り込みによって特徴付けられ得る。
【0143】
いくつかの実施形態では、か焼前に、小細孔ゼオライトの細孔の少なくとも一部は、ビス四級アンモニウムカチオンによって占められ、細孔の少なくとも一部は、モノ四級アンモニウムカチオン(すなわち、小細孔ゼオライトを調製するために使用されるOSDA)によって占められており、各アンモニウムカチオンは、本明細書で上述の通りである。いくつかの実施形態では、細孔の約1~約99%が、ビス四級アンモニウムカチオンによって占められ、細孔の約99~約1%が、モノ四級アンモニウムカチオンによって占められている。いくつかの実施形態では、細孔の約60~約40%が、ビス四級アンモニウムカチオンによって占められ、細孔の約40~約60%が、モノ四級アンモニウムカチオンによって占められている。いくつかの実施形態では、ビス四級アンモニウムカチオンが、約8~約20個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、ビス四級アンモニウムカチオンの各窒素原子が、4つの置換基を有し、各置換基が、独立して、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ビス四級アンモニウムカチオンが、式Iによって表される構造を有し、
【化7】
式中、
置換基R
1、R
2、およびR
3の各々が、メチルもしくはエチルであるか、または、任意選択で、両方のR
3基が、結合して-(CH
2)
n-架橋を形成し、nが、1~3の整数であり、
Xが、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、ただし、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキルは各々上で定義した通りである。
【0144】
いくつかの実施形態では、ビス四級アンモニウムカチオンが、N1,N1,N1,N3,N3,N3-ヘキサエチルプロパン-1,3-ジアミニウム、N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサメチルブタン-1,4-ジアミニウム、N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサエチルブタン-1,4-ジアミニウム、(E)-N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサメチルブト-2-エン-1,4-ジアミニウム、N1,N1,N1,N5,N5,N5-ヘキサメチルペンタン-1,5-ジアミニウム、(E)-N1,N1,N1,N5,N5,N5-ヘキサメチルペント-2-エン-1,5-ジアミニウム、N1,N1,N1,N6,N6,N6-ヘキサメチルヘキサン-1,6-ジアミニウム(ヘキサメトニウム)、(E)-N1,N1,N1,N6,N6,N6-ヘキサメチルヘキサ-2-エン-1,6-ジアミニウム、(2E,4E)-N1,N1,N1,N6,N6,N6-ヘキサメチルヘキサ-2,4-ジエン-1,6-ジアミニウム、N1,N1,N1,N7,N7,N7-ヘキサメチルヘプタン-1,7-ジアミニウム、N1,N1,N1,N8,N8,N8-ヘキサメチルオクタン-1,8-ジアミニウム、N1,N1,N1,N3,N3,N3-ヘキサメチルシクロヘキサン-1,3-ジアミニウム、N1,N1,N1,N3,N3,N3-ヘキサメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1,3-ジアミニウム、N1,N1,N1,N3,N3,N3-ヘキサメチルベンゼン-1,3-ジアミニウム、N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサメチルシクロヘキサン-1,4-ジアミニウム、N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1,4-ジアミニウム、N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサメチルビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジアミニウム、N1,N1,N1,N4,N4,N4-ヘキサメチルベンゼン-1,4-ジアミニウム、1,1,4,4-テトラメチルピペラジン-1,4-ジイウム、1,1,3,3-テトラメチルヘキサヒドロピリミジン-1,3-ジイウム、1,1’-(1,3-フェニレン)ビス(N,N,N-トリメチルメタンアミニウム)、1,1’-(1,4-フェニレン)ビス(N,N,N-トリメチルメタンアミニウム)、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、ビス四級アンモニウムカチオンが、表1から選択される。いくつかの実施形態では、ビス四級アンモニウムカチオンが、ヘキサメトニウムまたはオクタメトニウムである。
【0145】
いくつかの実施形態では、モノ四級アンモニウムカチオンが、約4~約14個の炭素原子を含む。モノ四級アンモニウムカチオンの窒素原子では、4つの置換基を有し、各置換基が、独立して、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0146】
いくつかの実施形態では、モノ四級アンモニウムカチオンが、式IIによって表される構造を有し、
【化8】
式中、
R
1、R
2、およびR
3が、各々メチルまたはエチルであり、
R
4が、メチル、エチル、ヒドロキシエチル、シクロヘキシル、アザビシクロヘプチル、アダマンチル、およびフェニルからなる群から選択されるか、
または、任意選択で、R
3およびR
4が一緒に、もしくはR
2、R
3、およびR
4が一緒に連結して、単環式もしくは二環式環系が形成され得、これが、任意選択で、1つ以上のメチルもしくはOH基で置換され得る。
【0147】
いくつかの実施形態では、モノ四級アンモニウムカチオンが、テトラエチルアンモニウム、2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタン-1-アミニウム、N,N,N-トリメチルシクロヘキサンアミニウム、N,N,N-トリメチルアダマンタン-1-アミニウム(TMAda)、N,N,N-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-アミニウム、N,N,N-トリメチルベンゼンアミニウム、1,1-ジメチルピペリジン-1-イウム、1,1,3,5-テトラメチルピペリジン-1-イウム、1-メチルキヌクリジン-1-イウム、3-ヒドロキシ-1-メチルキヌクリジン-1-イウム、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、モノ四級アンモニウムカチオンが、表2から選択される。いくつかの実施形態では、モノ四級アンモニウムカチオンが、TMAdaである。いくつかの実施形態では、ビス四級アンモニウムカチオンが、ヘキサメトニウムまたはオクタメトニウムであり、モノ四級アンモニウムカチオンが、TMAdaである。
【0148】
本発明の方法によって合成される小細孔ゼオライトは、7~15の範囲の炭素対窒素比、すなわちC/N比を含む。
【0149】
促進されたゼオライト
いくつかの実施形態では、本明細書に開示の小細孔ゼオライト材料は、促進剤金属でさらに処理されて、金属で促進された(例えば、イオン交換された)ゼオライト触媒を形成する。本明細書で使用される場合、「促進される」という用語は、モレキュラーシーブ中の固有の不純物とは対照的に、モレキュラーシーブ材料に意図的に添加される金属構成要素(「促進剤金属」)を指す。したがって、促進剤は、意図的に添加される促進剤を有しない触媒と比較して触媒の活性を向上させるために意図的に添加される。促進剤金属は、化学反応の促進に積極的に関与し、例えば、銅は、窒素酸化物の変換に関与し、したがって、多くの場合活性金属と称される。アンモニアの存在下での窒素酸化物の選択的触媒還元を促進するために、1つ以上の実施形態では、好適な金属が、独立して、開示のゼオライト材料に交換される。
【0150】
いくつかの実施形態では、開示されるゼオライトは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第IIIB族、第IVB族、第VB族、第VIB族、第VIIB族、第VIIIB族、第IB族、および第IIB族の遷移金属、第IIIA族の元素、第IVA族の元素、ランタニド、アクチニド、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される助触媒金属で促進される。いくつかの実施形態では、さらに、開示される触媒組成物の促進ゼオライトを調製するために使用され得る助触媒金属には、銅(Cu)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ランタン(La)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、バナジウム(V)、銀(Ag)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、イットリウム(Y)、タングステン(W)、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、促進剤金属は、銅または鉄である。例えば、銅または鉄は、イオン交換されて、Cu-チャバザイトまたはFe-チャバザイトを形成することができる。酢酸銅が使用される場合、銅イオン交換で使用される液体銅溶液の銅濃度は、特定の実施形態では、約0.01~約0.4モルの範囲、より具体的には約0.05~約0.3モルの範囲である。
【0151】
促進剤金属を、液相交換プロセスによってゼオライトに交換することができ、可溶性金属イオンは、ゼオライトの細孔内に位置するプロトンまたはアンモニウムまたはナトリウムイオンと交換する。交換はまた、固体状態プロセスによっても実行され得、ここで、促進剤金属酸化物または金属塩の固体粒子が、ゼオライト粉末と混合され、蒸気を含んでも、または含まなくてもよいある特定の温度およびガス環境下で処理される。交換プロセスはまた、スラリー調製中にインサイツプロセスを介しても達成され得、ここで、微細な金属酸化物粒子が、固体液体相互作用に好適な条件下でゼオライトスラリー中に懸濁される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるようなゼオライト材料を促進剤金属で交換する前に、ゼオライトを、それぞれの材料のH+形態を得るために、当技術分野で知られているように、NH4
+で交換し、かつか焼しなければならない。
【0152】
窒素酸化物のSCRをさらに促進するために、いくつかの実施形態では、ゼオライトは、2つ以上の金属(例えば、1つ以上の他の金属と組み合わせた銅)で促進することができる。2つ以上の金属が、促進ゼオライト系材料中に含まれる場合、複数の金属前駆体(例えば、銅および鉄前駆体)が、同時にまたは別個にイオン交換され得る。ある特定の実施形態では、第2の金属は、第1の金属で最初に促進されたゼオライト材料中に交換され得る(例えば、第2の金属は、銅で促進されたゼオライト材料中に交換され得る)。
【0153】
金属促進ゼオライト中で交換される金属イオンの量は、変わり得る。1つ以上の実施形態では、金属酸化物として計算される促進剤金属含有量は、独立して、(促進剤金属を含む)対応するか焼ゼオライトの総重量に基づき、揮発性物質を含まない基準で報告すると、約0.01重量%~約15重量%、約0.5重量%~約12重量%、または約1.0重量%~約10重量%の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、酸化物として計算される促進剤金属含有量は、(促進剤金属を含む)対応するか焼ゼオライトの総重量に基づき、揮発性物質を含まない基準で報告すると、少なくとも約0.1重量%である。特定の実施形態では、ゼオライトの促進剤金属は、Cuを含み、CuOとして計算されたCu含有量は、約0.1重量%~約20重量%の範囲であり、例えば、約0.5重量%~約17重量%、約2重量%~約15重量%、または約2重量%~約10重量%の範囲であり、いずれの場合も、揮発性物質を含まない基準で報告されたか焼ゼオライトの総重量に基づいている。
【0154】
いくつかの実施形態では、ゼオライト(促進剤金属を含む)は、促進されたゼオライト内における促進剤金属のアルミニウムに対する比によって定義することができる。例えば、いくつかの実施形態では、促進剤金属のアルミニウムに対する重量比は、約0.002~約0.5の範囲である。特定の実施形態では、ゼオライトの促進金属は、Cuを含み、ゼオライトにける銅のアルミニウムに対する原子比は、約0.1~約0.5である(例えば、Cu/Al比は、約0.1~約0.5である)。
【0155】
ゼオライト材料中に存在し得る銅種(例えば、酸化銅、金属、およびイオン交換された銅)は、拡散反射フーリエ変換赤外(DRIFT)分光法によって摂動T-O-T結合(Si-O-AlおよびSi-O-Si)振動を監視することで識別することができる。このFTIR技術の使用は、文献、例えば、Giamello et al.,J.Catal.136,510-520(1992)で示されている。ゼオライトにおけるT-O-T結合の構造振動は、非対称振動モードおよび対称振動モードについて、それぞれ1300~1000cm-1および850~750cm-1に吸収ピークを有する。酸素含有環の非対称T-O-T振動の周波数は、カチオンとの相互作用に敏感であるため、カチオンと相互作用すると、IR帯域は、通常の1000~1300cm-1(摂動されていない環の位置特性)から約850~1000cm-1にシフトする。シフトした帯域は、T-O-T非対称振動および対称振動の2つの強い帯域間の透過窓に現れる。そのようなシフトした帯域の位置は、カチオンの特性に応じる。そのような摂動T-O-T結合振動は、フレームワーク構造における銅イオンと隣接酸素原子との間の強い相互作用に基づいて、銅イオンがゼオライトフレームワーク構造のカチオン交換位置に交換されるときに観察される。ピーク位置は、補償カチオンの状態およびゼオライトフレームワークの構造に応じる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される銅促進ゼオライトの粉末試料は、OSDAがモノ四級アンモニウムイオン(例えば、N,N,N-トリメチルシクロヘキサンアミニウムまたはN,N,N-トリメチルアダマンタン-1-アミニウム(TMAda)のみ)であるプロセスによって調製された銅促進ゼオライトと比較して高い波数にシフトされるDRIFT分光法によって測定されたT-O-T結合ピークを示す。
【0156】
SCR触媒組成物
本開示は、還元剤の存在下で、リーンバーンエンジンなどからのエンジン排気ガス由来のNOxの還元を触媒するのに有効な選択的触媒還元(SCR)触媒組成物を提供し、触媒組成物は、本明細書に開示されている促進された小細孔ゼオライトを含む。
【0157】
いくつかの実施形態では、SCR触媒組成物は、結合剤、例えば、酢酸ジルコニルなどの好適な前駆体または硝酸ジルコニルなどの任意の他の好適なジルコニウム前駆体から誘導されるZrO2結合剤をさらに含み得る。例えば、触媒が、少なくとも約600℃、例えば、約800℃以上の高温および約5%以上の高水蒸気環境に対して曝されると、酢酸ジルコニル結合剤は、熱エージング後に均一かつ無傷なままのコーティングを提供する。他の潜在的に好適な結合剤としては、アルミナおよびシリカが挙げられるが、これらに限定されない。アルミナ結合剤としては、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、およびオキシ水酸化アルミニウムが挙げられる。アルミニウム塩、およびアルミナのコロイド形態が使用されてもよい。シリカ結合剤は、シリケートおよびコロイダルシリカを含む、SiO2の様々な形態を含む。結合剤組成物は、ジルコニア、アルミナ、およびシリカの任意の組み合わせを含み得る。他の例示的な結合剤は、ベーマイト、ガンマ-アルミナ、またはデルタ/シータアルミナ、ならびにシリカゾルを含む。存在する場合、結合剤は、典型的には、ウォッシュコートの総充填量の約1~5重量%の量で使用される。あるいは、結合剤は、ジルコニア系またはシリカ系、例えば、酢酸ジルコニウム、ジルコニアゾル、またはシリカゾルであることができる。存在する場合、アルミナ結合剤は、典型的には、約0.05g/in3~約1g/in3の量で使用される。
【0158】
触媒物品
別の態様では、還元剤の存在下でリーンバーンエンジンなどからのエンジン排気ガス由来のNOxの還元を触媒するのに効果的なSCR物品を提供し、SCR物品は、全長を画定する入口端および出口端を有する基材と、当材の少なくとも一部上に配置される本明細書に開示のSCR触媒組成物と、を含む。
【0159】
基材
1つ以上の実施形態では、本SCR触媒組成物は、触媒物品を形成するために基材上に配置される。基材を含む触媒性物品は、一般に、排気ガス処理システムの一部として用いられる(触媒物品としては、本明細書に開示されるSCR組成物を含む物品が挙げられるが、それらに限定されない)。有用な基材は、3次元であり、円柱と同様の長さ、直径、および体積を有する。形状は、必ずしも円柱に一致する必要はない。長さは、入口端部および出口端部によって画定される軸方向長さである。
【0160】
1つ以上の実施形態によれば、開示される組成物のための基材は、自動車触媒を調製するために典型的に使用されるあらゆる材料から構成され得、典型的には、金属またはセラミックのハニカム構造を含む。基材は、典型的には、ウォッシュコート組成物が塗布されかつ付着している複数の壁面を提供し、それによって触媒組成物の基材として機能する。
【0161】
セラミック基材は、任意の好適な耐火材料、例えば、コーディエライト、コーディエライト-α-アルミナ、チタン酸アルミニウム、チタン酸ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコンムライト、リシア輝石、アルミナ-シリカ-マグネシア、ケイ酸ジルコン、シリマナイト、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、ペタライト、α-アルミナ、アルミノシリケートなどから作製され得る。
【0162】
基材はまた、1つ以上の金属または金属合金を含む、金属であり得る。金属基材は、チャネル壁に開口部または「パンチアウト」を有するような任意の金属基材を含み得る。金属性基材は、ペレット、圧縮金属性繊維、波形シート、またはモノリス形態のような様々な形状で用いられ得る。金属基材の具体例としては、耐熱卑金属合金、特に、鉄が実質的または主要な成分であるものが挙げられる。そのような合金は、ニッケル、クロム、およびアルミニウムのうちの1つ以上を含有し得、これらの金属の合計は、有利には、各々の場合に、基材の重量に基づいて、少なくとも約15重量%(重量パーセント)の合金、例えば、約10~約25重量%のクロム、約1~約8重量%のアルミニウム、および0~約20重量%のニッケルを含み得る。金属基材の例としては、直線的なチャネルを有するもの、ガス流を妨害し、チャネル間のガス流の連通を開くために軸方向チャネルに沿って突出したブレードを有するもの、ならびにブレードおよびモノリス全体にわたる半径方向のガス輸送を可能にする、チャネル間のガス輸送を向上させるための穴も有するものが挙げられる。
【0163】
通路がそれを通した流体流に対して開放するように、基材の入口または出口面からそれを通して延在する、微細な平行ガス流路を有するタイプのモノリシック基材(「フロースルー基材」)などの本明細書に開示される触媒物品のための任意の好適な基材が、採用され得る。別の好適な基材は、基材の長手方向軸線に沿って延在する複数の微細な実質的に平行なガス流路を有するタイプのものであり、典型的には、各通路は、基材本体の一方の端部において遮断されており、1つおきに通路が、反対側の端面において遮断されている(「ウォールフローフィルタ」)。フロースルーおよびウォールフロー基材はまた、例えば、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる国際出願公開第2016/070090号に教示されている。
【0164】
いくつかの実施形態では、触媒基材は、ウォールフローフィルタまたはフロースルー基材の形態のハニカム基材を含む。いくつかの実施形態では、基材は、ウォールフローフィルタである。いくつかの実施形態では、基材は、フロースルー基材である。フロースルー基材およびウォールフローフィルタが、本明細書で以下にさらに議論される。
【0165】
フロースルー基材
いくつかの実施形態では、基材は、フロースルー基材(例えば、フロースルーハニカムモノリシック基材を含むモノリシック基材)である。フロースルー基材は、通路が流体流に対して開いているように、基材の入口端部から出口端部まで延在している微細で平行なガス流路を有する。流体の入口から流体の出口までの本質的に直線の経路である通路は、壁によって画定されており、壁の上または壁の中において、触媒性コーティングは、通路を通って流れるガスが触媒性材料と接触するように、配置されている。フロースルー基材の流路は、薄い壁のチャネルであり、台形、長方形、正方形、正弦波、六角形、楕円形、円形などのあらゆる好適な断面形状およびサイズであり得る。フロースルー基材は、上記のようにセラミックまたは金属であり得る。
【0166】
フロースルー基材は、例えば、約50in3~約1200in3の体積と、約60セル毎平方インチ(cpsi)~約500cpsiまたは最大で900cpsi、例えば、約200~約400cpsiのセル密度(入口開口部)と、約50~約200ミクロンまたは約400ミクロンの壁厚とを有する。
【0167】
ウォールフローフィルタ基材
いくつかの実施形態では、基材はウォールフローフィルタであり、これは一般に、基材の長手方向軸線に沿って延在する複数の微細で実質的に平行なガス流路を有する。典型的には、各通路は、基材本体の一端で遮断され、1つおきに通路は、反対の端面で遮断される。そのようなモノリスウォールフローフィルタ基材は、断面の平方インチ当たり最大約900以上の流路(または「セル」)を含んでもよいが、はるかに少ない数が用いられてもよい。例えば、基材は、平方インチ当たり約7~600、より一般には約100~400のセル(「cpsi」)を有し得る。セルは、長方形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形、または他の多角形である断面を有することができる。ウォールフローフィルタ基材は、上記に説明されるようにセラミックまたは金属であり得る。
【0168】
図1を参照すると、例示的なウォールフローフィルタ基材は、円筒形と、直径Dおよび軸方向長さLを有する円筒形の外面とを有する。モノリシックウォールフローフィルタ基材の断面図が、交互になっている閉塞通路および開放通路(セル)を示す、
図2に図示される。遮断または閉塞端100は、開放通路101と交互になり、各対向端が、それぞれ、開放し、遮断されている。フィルタは、入口端102および出口端103を有する。多孔質セル壁104を横切る矢印は、開放セル端に進入し、多孔質セル壁104を通って拡散し、開放出口セル端から退出する、排気ガス流を表す。閉塞端100は、ガス流を妨げ、セル壁を通して拡散を促進する。各セル壁は、入口側104aおよび出口側104bを有する。通路は、セル壁によって包囲されている。
【0169】
ウォールフローフィルタ物品基材は、例えば、約50cm3、約100in3、約200in3、約300in3、約400in3、約500in3、約600in3、約700in3、約800in3、約900in3、または約1000in3から、約1500in3、約2000in3、約2500in3、約3000in3、約3500in3、約4000in3、約4500in3、または約5000in3までの体積を有し得る。ウォールフローフィルタ基材は、典型的には、約50ミクロン~約2000ミクロン、例えば、約50ミクロン~約450ミクロン、または約150ミクロン~約400ミクロンの壁厚を有する。
【0170】
ウォールフローフィルタの壁は、多孔質であり、一般に、機能性コーティングを配置する前に、少なくとも約40%または少なくとも約50%の壁多孔度を有し、平均細孔径は少なくとも約10ミクロンである。例えば、いくつかの実施形態におけるウォールフローフィルタ物品基材は、≧40%、≧50%、≧60%、≧65%、または≧70%の多孔度を有する。例えば、ウォールフローフィルタ物品基材は、触媒性コーティングを配置する前に、約50%、約60%、約65%、または約70%から、約75%までの壁多孔度および約10ミクロンまたは約20ミクロンから、約30ミクロンまたは約40ミクロンまでの平均細孔径を有するであろう。「壁多孔度」および「基材多孔度」という用語は、同じ意味であり、置き換え可能である。多孔度は、空隙容量(または細孔容積)を基材材料の総体積で割った比率である。細孔径および細孔径分布は、典型的には、Hgポロシメトリー測定によって決定される。
【0171】
基材コーティングプロセス
本開示のSCR触媒性物品を製造するために、本明細書に記載の基材は、本明細書に開示されるSCR触媒組成物でコーティングされる。コーティングは、「触媒コーティング組成物」または「触媒コーティング」である。「触媒組成物」および「触媒コーティング組成物」は、同義語である。
【0172】
一般に、触媒組成物は、本明細書に記載されるように調製され、基材上にコーティングされる。この方法は、本明細書に一般に開示される触媒組成物(または触媒組成物の1つ以上の成分)を溶媒(例えば、水)と混合して、触媒基材をコーティングするためのスラリーを形成することを含むことができる。触媒組成物に加えて、スラリーは、任意選択で、様々な追加の成分を含有し得る。典型的な追加の成分としては、本明細書で上記したような結合剤、例えば、スラリーのpHおよび粘度を制御するための添加剤が挙げられるが、それらに限定されない。追加の成分としては、炭化水素(HC)貯蔵成分(例えば、ゼオライト)、会合性増粘剤、および/または界面活性剤(アニオン性、カチオン性、非イオン性または両性界面活性剤を含む)を挙げることができる。スラリーの典型的なpH範囲は、約3~約6である。酸性または塩基性の種をスラリーに添加してpHを調整してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、スラリーのpHは、含水酢酸の添加によって調整される。
【0173】
スラリーは、粒径を縮小し、粒子の混合および均質材料の形成を向上させるために粉砕されることができる。粉砕は、ボールミル、連続ミル、または他の同様の装置で達成することができ、スラリーの固形物含量は、例えば、約20~60重量%、より具体的には、約20~40重量%であり得る。一実施形態では、粉砕後のスラリーは、約1~約40ミクロン、好ましくは2~約20ミクロン、より好ましくは約4~約15ミクロンのD90粒径によって特徴付けられる。
【0174】
本触媒組成物は、典型的には、本明細書に開示されるようなSCR触媒組成物成分を含有する1つ以上のウォッシュコートの形態で適用することができる。ウォッシュコートは、液体ビヒクル中の触媒組成物(または触媒組成物の1つ以上の成分)の特定の固形分(例えば、約10~約60重量%)を含有するスラリーを調製することによって形成され、次いで、それを、当技術分野で知られている任意のウォッシュコート技法を使用して基材に適用し、乾燥およびか焼してコーティング層を提供する。複数のコーティングが適用される場合、各ウォッシュコートが適用された後、および/または所望の数の複数のウォッシュコートが適用された後、基材は、乾燥および/またはか焼される。1つ以上の実施形態では、触媒材料は、ウォッシュコートとして基材に適用される。
【0175】
か焼後に、上記に説明されるウォッシュコート技法によって取得される触媒充填量は、基材のコーティングされた重量およびコーティングされていない重量の差の計算を通して決定されることができる。当業者に明らかであるように、触媒充填量は、スラリーのレオロジーを変えることによって修正することができる。加えて、ウォッシュコート層(コーティング層)を生成するためのコーティング/乾燥/か焼プロセスは、コーティングを所望の充填量レベルまたは厚さに構築するために、必要に応じて繰り返されることができ、1つより多いウォッシュコートが適用され得ることを意味する。
【0176】
コーティングの構成
本触媒性コーティングは、1つ以上のコーティング層を含むことができ、その少なくとも1つの層は、本触媒組成物または触媒組成物の1つ以上の成分を含む。触媒コーティングは、基材の少なくとも一部上に配置され、かつこれに付着している、1つ以上の薄い付着性コーティング層を含み得る。コーティング全体は、個々の「コーティング層」を含む。
【0177】
いくつかの実施形態では、本触媒物品は、1つ以上の触媒層の使用、および1つ以上の触媒層の組み合わせを含み得る。触媒材料は、基材壁の入口側のみ、出口側のみ、入口側および出口側の両方に存在し得るか、または壁自体は、全体的もしくは部分的に触媒材料で構成され得る。触媒コーティングは、基材壁表面上および/または基材壁の細孔内、すなわち、基材壁「内」および/または「上」にあり得る。したがって、「基材上に配置されたウォッシュコート」という句は、任意の表面上、例えば、壁表面上および/または細孔表面上を意味する。
【0178】
ウォッシュコートは、異なるコーティング層が基材と直接接触し得るように適用されることができる。あるいは、1つ以上の「アンダーコート」が存在していてもよく、それによって、触媒性コーティング層またはコーティング層の少なくとも一部は、基材と直接接触しない(むしろ、アンダーコートと接触する)。コーティング層の少なくとも一部がガス流または雰囲気に直接曝されないように(むしろ、オーバーコートと接触するように)、1つ以上の「オーバーコート」が存在してもよい。
【0179】
あるいは、本触媒組成物は、ボトムコーティング層の上を覆うトップコーティング層中に存在し得る。触媒組成物は、トップ層およびボトム層中に存在し得る。任意の1つの層は、基材の軸方向長さ全体に延在し得、例えば、ボトム層は、基材の軸方向長さ全体に延在し得、トップ層はまた、ボトム層の上方で基材の軸方向長さ全体に延在し得る。トップ層およびボトム層は各々、入口端部または出口端部のいずれかから延在し得る。
【0180】
例えば、底部および上部コーティング層は両方とも、同じ基材端から延在し得、上部層は、部分的または完全に底部層にオーバーレイし、底部層は、基材の部分長または全長に延在し、上部層は、基材の部分長または全長に延在する。あるいは、トップ層が、ボトム層の一部をオーバーレイしていてもよい。例えば、ボトム層は、基材の全長に延在し得、トップ層は、入口端部または出口端部のいずれかから、基材の長さの約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%まで延在し得る。
【0181】
あるいは、ボトム層は、入口端部または出口端部のいずれかから、基材の長さの約10%、約15%、約25%、約30%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、または約95%まで延在し得、トップ層は、入口端部または出口端部のいずれかから、基材長の約10%、約15%、約25%、約30%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、または約95%まで延在し得、トップ層の少なくとも一部は、ボトム層をオーバーレイしている。この「オーバーレイ」ゾーンは、例えば、基材の長さの約5%から、約80%、例えば、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60、または約70%まで延在し得る。
【0182】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるような基材上に配置された本明細書に開示されるような酸化触媒組成物は、触媒基材の長さの少なくとも一部上に配置された第1のウォッシュコートを含む。
【0183】
いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、触媒基材上に直接配置されており、第2のウォッシュコート(同じであるか、または異なる触媒もしくは触媒成分を含む)は、第1のウォッシュコートの少なくとも一部上に配置されている。いくつかの実施形態では、第2のウォッシュコートは、触媒基材上に直接配置されており、第1のウォッシュコートは、第2のウォッシュコートの少なくとも一部上に配置されている。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、入口端部から、全長の約10%~約50%の長さまで、触媒基材上に直接配置されており、第2のウォッシュコートは、第1のウォッシュコートの少なくとも一部上に配置されている。いくつかの実施形態では、第2のウォッシュコートは、入口端部から、全長の約50%~約100%の長さまで、触媒基材上に直接配置されており、第1のウォッシュコートは、第2のウォッシュコートの少なくとも一部上に配置されている。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、入口端部から、全長の約20%~約40%の長さまで、触媒基材上に直接配置されており、第2のウォッシュコートは、入口端部から出口端部まで延在している。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、出口端部から、全長の約10%~約50%の長さまで、触媒基材上に直接配置されており、第2のウォッシュコートは、第1のウォッシュコートの少なくとも一部上に配置されている。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、出口端部から、全長の約20~約40%の長さまで、触媒基材上に直接配置されており、第2のウォッシュコートは、入口端部から出口端部まで延在している。いくつかの実施形態では、第2のウォッシュコートは、出口端部から、全長の約50%~約100%の長さまで、触媒基材上に直接配置されており、第1のウォッシュコートは、第2のウォッシュコートの少なくとも一部上に配置されている。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、全長の100%をカバーする触媒基材上に直接配置されており、第2のウォッシュコートは、全長の100%をカバーする第1のウォッシュコート上に配置されている。いくつかの実施形態では、第2のウォッシュコートは、全長の100%をカバーする触媒基材上に直接配置されており、第1のウォッシュコートは、全長の100%をカバーする第2のウォッシュコート上に配置されている。
【0184】
触媒性コーティングは、有利には、「ゾーン化」させることができ、ゾーン化された触媒性層を含む、すなわち、触媒性コーティングは、基材の軸方向の長さにわたって様々な組成物を含有する。これは、「横方向にゾーン化された」と表され得る。例えば、層は、基材の長さの約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%に延在して、入口端から出口端に向かって延在し得る。別の層が、基材の長さの約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%に延在して、出口端から入口端に向かって延在し得る。異なるコーティング層は、互いに隣接し、互いに重なっていなくてもよい。あるいは、異なる層が、互いの一部に重なって、第3の「中間」ゾーンを提供してもよい。中間ゾーンは、例えば、基材長さの約5%~約80%、例えば、基材長さの約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、または約70%にわたって延在していてもよい。
【0185】
本開示のゾーンは、コーティング層の関係によって定義される。異なるコーティング層に関しては、いくつかの可能なゾーニング構成がある。例えば、上流ゾーンおよび下流ゾーンが存在し得る、上流ゾーン、中間ゾーン、および下流ゾーンが存在し得る、4つの異なるゾーンが存在し得るなどである。2つの層が隣接し、重複しない場合、上流ゾーンおよび下流ゾーンが存在する。2つの層がある程度重複する場合、上流、下流、および中間のゾーンが存在する。例えば、コーティング層が基材の全長に延在し、異なるコーティング層が出口端からある長さに延在し、第1のコーティング層の一部にオーバーレイする場合、上流および下流ゾーンが存在する。
【0186】
例えば、SCR触媒物品は、第1のウォッシュコート層を含む上流ゾーンと、異なる触媒材料または成分を含む第2のウォッシュコート層を含む下流ゾーンと、を含み得る。あるいは、上流ゾーンは第2のウォッシュコート層を含み得、下流ゾーンは第1のウォッシュコート層を含み得る。
【0187】
いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、入口端から、全長の約10%~約50%の長さまで、触媒基材上に配置され、第2のウォッシュコートは、出口端から、全長の約50%~約90%の長さまで、触媒基材上に配置されている。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、出口端から、全長の約10%~約50%の長さまで、触媒基材上に配置され、第2のウォッシュコートは、入口端から、全長の約50%~約90%の長さまで、触媒基材上に配置されている。
【0188】
図3a、3b、および3cは、2つのコーティング層を有するいくつかの可能なコーティング層構成を示す。コーティング層201(トップコート)および202(ボトムコート)が配置されている基材壁200が示されている。これは、簡略化された図であり、多孔質ウォールフロー基材の場合、細孔および細孔壁に付着したコーティングは示されておらず、閉塞端は、示されていない。
図3aでは、コーティング層201および202はそれぞれ、基材の全長に延在し、上部層201は、底部層202にオーバーレイしている。
図3aの基材は、ゾーン化されたコーティング構成を含まない。
図3bは、出口から基材の長さの約50%に延在して、下流ゾーン204を形成するコーティング層202と、入口から基材の長さの約50%に延在して、上流ゾーン203を提供するコーティング層201とを有する、ゾーン化された構成を例示している。
図3cでは、底部コーティング層202は、出口から基材の長さの約50%に延在し、上部コーティング層201は、入口から長さの50%を超えて延在し、層202の一部をオーバーレイし、上流ゾーン203、中間オーバーレイゾーン205,および下流ゾーン204を提供する。
図3a、3b、および3cは、ウォールスルー基材またはフロースルー基材上のSCR触媒組成物コーティングを例示するために有用であり得る。
【0189】
いくつかの実施形態では、基材はハニカム基材である。いくつかの実施形態では、ハニカム基材は、フロースルー基材またはウォールフローフィルタである。ある特定の実施形態では、本明細書に開示のSCR触媒組成物は、本明細書に開示のSCR触媒物品に組み込まれる場合、還元剤の存在下で、リーンバーンエンジンからの排気などのエンジン排気ガス由来のNOxの還元を触媒するのに有効である。いくつかの実施形態では、SCR物品は、様々な温度でのSCR活性によって特徴付けることができる。いくつかの実施形態では、NOxの効果的な還元は、約150℃より高く、かつ約700℃より低い温度のときである。いくつかの実施形態では、NOxの効果的な還元は、約200℃~約600℃の温度のときである。
【0190】
排気ガス処理システム
さらなる態様では、エンジンからの排気ガス流を処理するためのシステムを提供し、システムは、リーンバーンエンジンなどの排気ガス流を生成するエンジンの下流に位置し、かつエンジンと流体連通している本明細書に開示のSCR物品を含む。エンジンは、例えば、化学量論的燃焼のために要求される空気を超える空気を伴う燃焼条件、すなわち、リーン条件で動作する、ディーゼルエンジンであり得る。他の実施形態では、エンジンは、ガソリンエンジン(例えば、リーンバーンガソリンエンジン)、または固定電源(例えば、発電機またはポンプ場)と関連のあるエンジンであることができる。排気ガス処理システムは、一般に、排気ガス流と流体連通するようにエンジンの下流に配置された2つ以上の触媒性物品を含む。システムは、例えば、本明細書に開示される選択的触媒還元触媒(SCR)と、ディーゼル酸化触媒(DOC)と、還元剤注入器、煤煙フィルタ、アンモニア酸化触媒(AMOx)、またはリーンNOxトラップ(LNT)を含む1つ以上の物品と、を含み得る。還元剤インジェクターを含む物品は還元物品である。還元システムは、還元剤注入器および/またはポンプおよび/またはリザーバなどを含む。本処理システムは、煤フィルタおよび/またはアンモニア酸化触媒をさらに含み得る。煤煙フィルタは、無触媒化または触媒化(CSF)され得る。例えば、本処理システムは、上流から下流まで、DOCを含む物品、CSF、尿素インジェクター、SCR物品、およびAMOxを含む物品を含み得る。リーンNOxトラップ(LNT)も含まれる場合がある。
【0191】
排出処理システム内に存在する様々な触媒成分の相対的配置は、変動し得る。本排気ガス処理システムおよび方法では、排気ガス流は、上流端部に入って下流端部を出ることによって、物品または処理システムに受け取られる。基材または物品の入口端部は、「上流」端部または「前」端部と同義である。出口端部は、「下流」端部または「後」端部と同義である。処理システムは、一般に、内燃機関の下流にあり、かつ内燃機関と流体連通している。
【0192】
1つの例示的な排出処理システムが、排出処理システム20の概略図を描写する
図4に図示される。示されるように、排出処理システムは、リーンバーンエンジンなどのエンジン22の下流に直列である複数の触媒成分を含むことができる。触媒成分のうちの少なくとも1つは、本明細書に記載されているような本発明のSCR触媒であろう。本発明の触媒組成物は、多数の追加の触媒材料と組み合わせることができ、追加の触媒材料と比較して様々な位置に置くことができる。
図4は、直列に5つの触媒成分24、26、28、30、32を図示するが、触媒成分の総数は、変動し得、5つの構成要素は、単なる一例である。
【0193】
限定するものではないが、表3は、1つ以上の実施形態の様々な排気ガス処理システム構成を提示する。各触媒は、エンジンが触媒Aの上流にあり、それが触媒Bの上流にあり、それが触媒Cの上流にあり、それが触媒Dの上流にあり、それが触媒Eの上流にある(存在する場合)ように排気導管を介して次の触媒に接続されることに留意されたい。表中の構成要素A~Eに対する参照は、
図4の同じ記号で相互参照され得る。
【0194】
表3に記載されるLNT触媒は、NOxトラップとして従来から使用されている任意の触媒であり得、典型的には、卑金属酸化物(BaO、MgO、CeO2など)および触媒によるNOの酸化および還元のための白金族金属(例えば、PtおよびRh)を含むNOx吸着剤組成物を含む。
【0195】
表3に記載されるLT-NA触媒は、低温(<250℃)でNOx(例えば、NOまたはNO2)を吸着し、高温(>250℃)でそれをガス流に放出することができる、任意の触媒であり得る。放出されたNOXは、一般に、下流SCRまたはSCRoF触媒上でN2およびH2Oに変換される。典型的には、LT-NA触媒は、Pd促進ゼオライトまたはPd促進耐火金属酸化物を含む。
【0196】
表中のSCRへの言及は、本発明のSCR触媒組成物を含み得るSCR触媒を指す。SCRoF(すなわち、フィルタ上のSCR)への言及は、本発明のSCR触媒組成物を含むことができる微粒子または煤煙フィルタ(例えば、ウォールフローフィルタ)を指している。SCRおよびSCRoFの両方が存在する場合、1つもしくは両方が本発明のSCR触媒を含むことができるか、または触媒のうちの1つが従来のSCR触媒(例えば、従来の金属充填レベルのSCR触媒)を含むことができよう。
【0197】
表中のAMOxへの言及は、本発明の1つ以上の実施形態の触媒の下流に提供されて、あらゆる漏れたアンモニアを排気ガス処理システムから除去することができる、アンモニア酸化触媒を指す。特定の実施形態では、AMOx触媒は、PGM成分を含み得る。1つ以上の実施形態では、AMOx触媒は、PGMを有するボトムコートと、SCR機能を有するトップコートとを含み得る。
【0198】
当業者によって認識されるように、表3に列挙された構成では、構成要素A、B、C、D、またはEのうちのいずれか1つ以上は、ウォールフローフィルタなどの粒子フィルタ上に、またはフロースルーハニカム基材上に配置されることができる。1つ以上の実施形態では、エンジン排気システムは、エンジンの近くの位置(直結位置、CC)に取り付けられた1つ以上の触媒組成物を含み、追加の触媒組成物は車体の下の位置(床下位置、UF)にある。1つ以上の実施形態では、排気ガス処理システムは、尿素噴射構成要素をさらに備え得る。
【表3】
【0199】
エンジン排気の処理方法
本発明の別の態様は、リーンバーンエンジン、特に、リーンバーンガソリンエンジン、またはディーゼルエンジンなどのエンジンの排気ガス流を処理する方法に関する。本方法は、本発明の1つ以上の実施形態によるSCR触媒物品をエンジンの下流に置くこと、およびエンジン排気ガス流を触媒の上に流すことを含むことができる。1つ以上の実施形態では、本方法は、上記のように、エンジンの下流に追加の触媒成分を置くことをさらに含む。本触媒組成物、本物品、本システム、および本方法は、内燃機関、例えば、ガソリン、小型ディーゼルおよび大型ディーゼルエンジンの排気ガス流の処理に好適である。触媒組成物はまた、静止した工業プロセスからの排出の処理、屋内空気からの有害または有毒物質の除去、または化学反応プロセスにおける触媒作用にも好適である。
【0200】
本物品、システム、および方法は、トラックおよび自動車のような移動排出物源からの排気ガス流の処理に好適である。本物品、システム、および方法は、発電所のような固定電源からの排気流の処理にも好適である。
【0201】
本明細書に記載されている組成物、方法、および用途に対する好適な修正および適合が、任意の実施形態またはそれらの態様の範囲から逸脱することなく行われ得ることは、関連技術の当業者には容易に明らかであろう。提供される組成物および方法は、例示的なものであり、請求される実施形態の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書に開示されている様々な実施形態、態様、および選択肢のすべては、すべての変更で組み合わされ得る。本明細書に記載されている組成物、配合物、方法、およびプロセスの範囲には、本明細書の実施形態、態様、選択肢、例、および選好のすべての実際のまたは潜在的な組み合わせが含まれる。本明細書で引用されたすべての特許および刊行物は、組み込まれた他の具体的な記述が具体的に提供されない限り、記載されるように、それらの具体的な教示について参照によって本明細書に組み込まれる。
【0202】
本発明を以下の実施例を参照して説明する。本発明のいくつかの例示的な実施形態を記載する前に、本発明は、以下の説明に記載される構成またはプロセス工程の詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、様々な手法で実施または実行することができる。
【0203】
実験
一般的な手順
メソ細孔(またはマトリックス)およびゼオライト(微細孔)の表面積を、ISO9277法に従って、Micromeritics TriStar 3000シリーズ機器でN2吸着ポロシメトリーによって決定した。Micromeritics SmartPrep脱気装置で、試料を合計6時間脱気した(乾燥窒素流の下300℃まで2時間上昇させ、その後、300℃で4時間保持した)。窒素BET表面積は、0.05~0.20の5つの分圧点を使用して決定される。ゼオライトおよびマトリックスの表面積は、同じ5つの分圧点を使用して決定され、HarkinsおよびJuraのtプロットを使用して計算される。20Å超の直径を有する細孔が、マトリックスの表面積に寄与するとみなされる。
【0204】
拡散反射フーリエ変換赤外線分光法(DRIFTS)測定を、MCT検出器を備えたThermo Nicolet FTIR、およびZnSe窓を備えたHarrick環境チャンバにおいて実施した。乳鉢および乳棒で試料を細かい粉末に粉砕し、試料カップに充填した。試料粉末を、最初に40ml/分の流量でArを流しながら400℃で1時間脱水し、その後30℃に冷却した。試料のスペクトルを取得し、KBrを参照として使用した。
【0205】
小細孔ゼオライト材料の調製
すべての場合において、同じSiおよびAl供給源がゲル調製で使用され、2Lの撹拌オートクレーブ内で、自生圧力で結晶化を行った。生成物をろ過により単離し、乾燥およびか焼(540℃、6時間)して生成物(XRDにより分析)を得、これをNa2O含有量が<500ppmに達するまで単一または複数のNH4
+交換にかけた。比較(実施例1~3)および本発明(実施例4~6)のゼオライト材料をもたらすゲル組成、ならびにそれらの対応する生成物SARを表4に概説する。すべての材料は170℃で合成され、結晶化時間は30~72時間の範囲であった。
【0206】
実施例1~3(比較)。
各合成では、トリメチルアダマンチルアンモニウムヒドロキシド(TMAdaOH)が使用された唯一のOSDAであった。表4に示すように、ゲル組成(Si/Al比、OH/Si比、H2O対Si比)を各実施例について変化させた。実施例3のゲルにはNa+を加えなかった。すべての結晶化によって、>90%のCHA相の結晶化度およびそれに対応する高い微細孔表面積(>500m2/g)を有する生成物が得られた。実施例2からの材料をか焼し、実施例4~7のシードとして使用した(合成ゲルでのCHAシードの使用は任意である)。
【0207】
実施例4(比較)。
比較例4は、ゲルおよび生成物SARが本発明実施例のものとは異なる、代替のNaを含まない合成アプローチを示している。この合成では、トリメチルシクロヘキシルアンモニウムヒドロキシド(TMChAOH)をOSDAとして使用した。Na+はゲルに添加されなかったが、結晶化のために添加されたシードゼオライト中にはいくらかのNaが存在し、これが、生成物中のNaの存在を説明している。テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAOH)が、Siに対して0.09の比率で添加され、生成物中にテトラメチルアンモニウムが含まれていなかったため、それがCHAゼオライト形成のテンプレートとしては機能しなかったと推測される。結晶化によって、>90%のCHA相の結晶化度およびそれに対応する高い微細孔表面積(>500m2/g)を有する生成物が得られた。
【0208】
実施例5~7(本発明)。
各合成では、ヘキサメトニウムジヒドロキシド(HMOH)またはオクタメトニウムジヒドロキシド(OMOH)のいずれかを第1のOSDA供給源として使用し、TMAdaOHを第2のOSDA供給源として使用した。実施例5および7ではNa
+はゲルに添加されなかったが、結晶化のために添加されたシードゼオライト中にはいくらかのNaが存在し、これが、生成物中のNaの存在を説明している。実施例6では、Na
+を合成ゲルに加えた。理論に縛られることを望むものではないが、生成物ゼオライト中に見られる異なるNa/Al比は、比較例1~4と比較して、これらのゼオライト材料における異なるアルミニウム分布を示している可能性がある。結晶化によって、>90%のCHA相の結晶化度およびそれに対応する高い微細孔表面積(>500m
2/g)を有する生成物が得られた。
【表4】
【0209】
理論に縛られることを望むものではないが、CHAゼオライトの合成に典型的には単独で使用されるモノ四級TMAdaOHと比較して著しく異なる構造を有するビス四級アンモニウム化合物(HMOHまたはOMOH)の組み込みは、TMAdaOHのみで合成されたCHAゼオライト、または2つの四級アンモニウム化合物の混合物で合成されたCHAゼオライトと比較して、生成物ゼオライト中のAlの分布が異なることを示す。
【0210】
ゼオライト生成物への各OSDAの組み込みの程度をさらに評価するために、本発明の実施例4、実施例5、および実施例6からの洗浄された、作製されたままの生成物について元素分析を行った。TMAdaOH、HMOH、およびOMOHは、それぞれ13、6、および7のC/Nモル比を有する。実施例4、実施例5、および実施例6の元素分析の結果は、それぞれ10.1、11、および11.4の生成物C/Nモル比を示し、これは、か焼の前に、すべての本発明の材料について、最終生成物中にモノおよびビス四級アンモニウムOSDAの両方がかなりに組み込まれたことを示している。
【0211】
さらに、実施例4対実施例5のC/N比の増加によって示されるように、使用されるNa+の濃度は、CHA生成物におけるビス四級OSDAの取り込みの程度(したがって、Al分布)を制御するのに役立ち得る。具体的には、C/N比の増加は、本発明の実施例5に使用される合成ゲルへのNa+の添加が、本発明の実施例5のCHAゼオライト生成物へのビス四級アンモニウムOSDA(HMOH)の取り込みを減少させることを示した。
【0212】
実施例8.Cu交換CHAゼオライト材料
実施例1、実施例4、および実施例5からの材料(各々NH
4
+形態)を450℃で6時間か焼して、H
+形態のCHAゼオライトを得た。各試料は、Cu交換等温線実験およびCu交換試料のFTIR測定によって評価された。Cu交換は、60℃で異なる濃度の酢酸銅水溶液を使用して実行された。比較例1および実施例4の等温線は、実施例5(
図5)の材料の等温線とは著しく異なる同様の勾配を示した。0.1MのCu
+2濃度での取り込み(CuOとしての銅の重量%として測定)は、予想される傾向に従った(つまり、Al含有量が高い(SARが低い)材料は高いCu取り込みを示す)。しかしながら、高い濃度のCu
2+(例えば、0.2M以上)では、本発明の実施例5は、生成物SARに基づいて予想されるよりも顕著に高いCu取り込みを示した。TMAda
+またはTMChA
+のみで合成された比較CHAゼオライトと比較した場合のこの平衡Cu取り込みの違いは、ゼオライト生成物中の変更されたAl位置付けおよびペアリングの証拠である。ゼオライト中の触媒的に活性なCuサイトの密度および分布は、ゼオライトフレームワーク構造内のアルミニウム原子の位置付けおよび近接性に依存するため、この増加したCu取り込みは、銅種の正電荷を有効に平衡化する、近接して配置された負に帯電したより高い濃度のアルミニウム種の存在を示唆する。
【0213】
実施例5の変更されたAl位置付けおよびペアリングのさらなる証拠は、Cu交換後のこの材料のT-O-T結合振動のDRIFTS測定によって提供された(
図6)。典型的に、約950cm
-1のピークは、単一のAlサイトに関連付けられた[CuOH]
+による摂動T-O-T結合振動に割り当てられる。実施例5の場合、このピークは高い波数(960cm
-1)にシフトし、これは、比較ゼオライト材料(例えば、OSDAとしてTMAda
+またはTMChA
+のみで調製されたもの)と比較して、この材料における[CuOH]+種の環境がわずかに異なることを示している。
【国際調査報告】