(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-10
(54)【発明の名称】多能性幹細胞からドーパミン作動性ニューロンを導出する方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0793 20100101AFI20230803BHJP
A61K 35/30 20150101ALI20230803BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20230803BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230803BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20230803BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
C12N5/0793
A61K35/30
A61P25/16
A61P25/28
A61P25/14
A61P25/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580313
(86)(22)【出願日】2021-06-28
(85)【翻訳文提出日】2023-02-22
(86)【国際出願番号】 US2021039431
(87)【国際公開番号】W WO2021263241
(87)【国際公開日】2021-12-30
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507081094
【氏名又は名称】ミネルバ バイオテクノロジーズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バムダッド,シンシア
(72)【発明者】
【氏名】イー,ケビン,アール.
(72)【発明者】
【氏名】モエ,スコット,ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,トーマス
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065BD25
4B065BD39
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB45
4C087BB64
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA16
(57)【要約】
【解決手段】本出願は、多能性幹細胞をドーパミン作動性ニューロンへ分化させるプロトコルの20±3日目頃に、神経基礎培地にビタミンを添加するか、またはビタミン濃度を増加させることによって、ヒト幹細胞からドーパミン作動性ニューロンを産生する方法を開示する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト幹細胞からドーパミン作動性ニューロンを産生する方法であって、多能性幹細胞をドーパミン作動性ニューロンへ分化させるプロトコルの20±3日目頃に、神経基礎培地にビタミンを添加するか、またはビタミン濃度を増加させる工程を含む、方法。
【請求項2】
前記プロトコルは、プロトコルAである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ビタミンは、ビタミンAである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ビタミンAは、レチノールの形態である、請求項3に記載方法。
【請求項5】
前記ビタミンAは、酢酸レチニルの形態である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記ビタミンAは、9-シスレチノイン酸、13-シスレチノイン酸、またはオールトランス型レチノイン酸の形態である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記ビタミンAは、脂質に富んだ製剤中に可溶化される、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記脂質に富んだ製剤は、ヒト血清アルブミンである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記脂質に富んだ製剤は、Albumaxである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記脂質に富んだ製剤は、非ヒト血清アルブミンである、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記ビタミンAの最終濃度は、1uM~3uMである、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
前記ビタミンは、ビタミンB6である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記ビタミンB6は、ピリドキシンの形態である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ビタミンB6は、ピリドキサルの形態である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記ビタミンB6は、PLPとしても知られているピリドキサル-5’-ホスフェートの形態である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記ビタミンB6の最終濃度は、10uM~30uMである、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記ビタミンは、ビタミンCである、請求項1記載の方法。
【請求項18】
前記ビタミンCは、2-ホスホ-アスコルビン酸の形態である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ビタミンCは、L-アスコルビン酸の形態である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記ビタミンCの最終濃度は、200nM~110uMである、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
分化される前記多能性幹細胞は、NME7-AB中で培養される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
分化される前記多能性幹細胞は、WNT3A中で培養される、請求項1に記載の方法た。
【請求項23】
分化される前記多能性幹細胞は、未処理状態である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
産生されたドーパミン作動性ニューロンは、ビタミンを添加または増加させない分化プロトコルによって産生されたドーパミン作動性ニューロンより30%多くのドーパミンを発現することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
産生されたドーパミン作動性ニューロンは、ビタミンを添加または増加させない分化プロトコルによって産生されたドーパミン作動性ニューロンより100%多くのドーパミンを発現することを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
産生されたドーパミン作動性ニューロンは、ビタミンを添加または増加させない分化プロトコルによって産生されたドーパミン作動性ニューロンより500%多くのドーパミンを発現することを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
産生されたドーパミン作動性ニューロンは、ビタミンを添加または増加させない分化プロトコルによって産生されたドーパミン作動性ニューロンより1000%多くのドーパミンを発現することを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
産生されたドーパミン作動性ニューロンは、ビタミンを添加または増加させない分化プロトコルによって産生されたドーパミン作動性ニューロンより30%多くの神経突起を形成することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
産生されたドーパミン作動性ニューロンは、ビタミンを添加または増加させない分化プロトコルによって産生されたドーパミン作動性ニューロンより100%多くの神経突起を形成することを特徴とする、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
産生されたドーパミン作動性ニューロンは、ビタミンを添加または増加させない分化プロトコルによって産生されたドーパミン作動性ニューロンより500%多くの神経突起を形成することを特徴とする、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
産生されたドーパミン作動性ニューロンは、ビタミンを添加または増加させない分化プロトコルによって産生されたドーパミン作動性ニューロンより1000%多くの神経突起を形成することを特徴とする、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
必要とする対象へのドーパミン作動性ニューロンの移植の成功の可能性を増加させる方法であって、請求項1に記載の方法で得られたドーパミン作動性ニューロンを対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項33】
ドーパミン産生神経細胞の生着が望ましい患者において中枢神経系疾患を処置する方法であって、請求項1に記載の方法で得られたドーパミン作動性ニューロンを必要とする個人に生着させる工程を含む、方法。
【請求項34】
前記中枢神経系疾患は、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、またはアルツハイマー病である、請求項33に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、多能性幹細胞をドーパミン作動性ニューロンへ分化させる方法に関する。本出願はさらに、それによって得られたドーパミン作動性神経細胞を患者に移植することに関連する疾患の治療または予防に関する。
【背景技術】
【0002】
パーキンソン病を処置するための幹細胞由来のドーパミン作動性ニューロンの開発は、再生医療の主要な分野として注目されている。これまでに1件の臨床試験(高橋純、日本)が行われているが、技術的に大きな課題が残っており、これまで米国ではFDAによるヒト試験の承認が得られなかった。これらの技術的課題は、幹細胞由来のドーパミン作動性ニューロンによるパーキンソン病の処置を非現実的にする可能性がある。
【0003】
その一つは、胚性幹細胞(ESC)は人工多能性幹細胞(iPSC)よりも所望の細胞型に分化しやすいという問題である。胚性幹細胞は、iPSC由来の細胞よりも機能的な最終分化した細胞を産生ことが多い。しかしながら、規制当局の承認には、実験データを可能にするすべての治験用新薬を生成するために使用され、その後患者を処置するために使用される、マスター細胞バンクである同じESCの大量のストックを作成することが必要とされる。これまでの取り組みでは、源細胞バンクを生成し、必要な実験を行い、ヒトでの臨床試験に使用するために必要とされる多くの継代を経て、ESCは核型異常を得て、不安定になることが明らかにされた。加えて、現在、多くの国では、胚性幹細胞を研究または処置に使用することが禁止されている。
【0004】
iPSCは、各処置が患者固有のものであり、典型的に、患者自身の細胞から生成されるため、規制当局の承認の観点からより実用的である。したがって、マスター細胞バンクは存在しない。しかしながら、これまでのiPSCは、胚性幹細胞と同様に機能的細胞に分化していなかった。クローン制限は、iPSCを所望の細胞型に分化させるには大きな問題となる。言い換えると、あるiPSCクローンは神経細胞を形成することができても、別のクローンはできない場合がある。さらに細かいことを言えば、あるクローンは実に優れた神経細胞または肝細胞を形成する場合があるが、他のクローンは特徴的な分子マーカーを発現していても、他のクローンまたは自然発生細胞と同じようには機能しないこともある。多くの場合、どのクローンが特定の細胞型に分化できるかを判断するために、多くのクローンをテストする必要がある。クローン形成の制限は、プライミング状態の幹細胞がすでに行った細胞運命の決定に起因するという考えを支持する重要な科学的根拠がある。多能性になるように誘導された細胞は、その細胞クローンが成熟できるものを制限するメチル化またはアセチル化などの分子マークをまだ保持する。
【0005】
幹細胞由来の治療法開発におけるこれらの基本的な課題は、パーキンソン病処置のためのドーパミン作動性ニューロンの開発においてさらなる問題となる。
【0006】
パーキンソン病の患者は、平均して65歳の時に、初めて処置を必要とする。ドーパミン作動性ニューロンがドナーの胚性幹細胞に由来する場合、患者はドナー細胞の拒絶反応を防ぐために、ある期間、免疫抑制剤を服用することが必要とされる。この年齢は、免疫抑制剤を投与することに適していない。
【0007】
加えて幹細胞からドーパミン作動性ニューロンを生成する現在の方法では、非常に低い生着率のニューロンが産生される。パーキンソン病の場合、治療効果を得るには100,000個の細胞が生着する必要があると考えられる。生着率が低いため、治療効果を得るためには、10倍~100倍の細胞ニューロンを移植することが必要とされる。つまり、1,000,000~10,000,000個の細胞を移植する必要があり、幹細胞をドーパミン作動性ニューロンに分化させる既存の方法では技術的に難しい課題である。ヒトiPS細胞からドーパミン作動性ニューロンを生成した場合、真のドーパミン作動性ニューロンが得られるのは収量の3%程度であることが報告されている。iPSCからドーパミン作動性ニューロンの純粋な集団を得るために、研究者は分化の初期段階でCorinおよびLRTM1などの特定の分子マーカーによって細胞を選別する必要があった。これらの研究者は、Corin+およびLRTM1+について選別されたドーパミン作動性ニューロンまたはその前駆体は、TH陽性細胞の割合が高く、また、選別されていない細胞より純粋な集団に比べて約10倍の生着能を示した(Samata and Takahashi 2016,DOI:10.1038/ncomms13097)。それでも、ドーパミン作動性ニューロンまたはその前駆体は、28日目という早い時期に移植する必要があり、その場合にも移植後3カ月では約10%しか存在しなかった。
【0008】
幹細胞由来のドーパミン作動性ニューロンの生着率が低いという問題を克服するために、ドーパミン作動性ニューロンが前駆段階にある分化15日目から32日目の早い時期に移植される。未熟なニューロンを生着させると、生着率が大幅に向上することが実験で明らかにされているが、これは、効率的な生着に必要な未知の因子が宿主の脳から提供されるためと思われる。しかし、初期前駆細胞の移植は、USFDAなどの規制当局に懸念される。
【0009】
他国の規制当局と同様にUSFDAは、移植用細胞の特性評価を必要とする。例えば、パーキンソン病の処置のためのドーパミン作動性ニューロンの特性評価には、その細胞がドーパミンを産生することを実証することが期待される。しかし、適切な生着かつ拡大を確保するために移植される初期の細胞(約15~20日目)は、まだドーパミン、またはドーパミン作動性ニューロンとして識別する最終的な分子マーカーさえも分泌していない。さらに、初期の細胞集団は、多能性幹細胞を含み得、レシピエントの脳にテラトーマ腫瘍を発生させる可能性がある。
【0010】
USFDAがパーキンソン病の処置のための細胞に、他の細胞療法と同じ受け入れ基準を適用する場合、ドーパミン作動性ニューロンまたはその前駆体の早期移植が受け入れられるとは到底思えない。FDAは、治療用細胞が一定のリリース基準を満たすことを要求することが予想され得る。言い換えると、製造された細胞は、特定の分子マーカーを再現性よく発現し、例えば、特定の範囲のドーパミンを分泌するなど、効力を発揮することが必要とされる。幹細胞由来のドーパミン作動性ニューロンを生成する現在の方法、と早期の移植では、移植前に細胞産生物の特性を十分に把握し、力価を示すことは不可能である。
【0011】
したがって、効率的かつ再現性よく幹細胞を誘導して、生存率が向上し、生着能が向上し、収率が向上し、さらにドーパミンの分泌量が増加するドーパミン作動性ニューロンまたはその前駆体に分化させる、製剤を含む方法を開発することは、当技術分野の改善となるであろう。効率、純度、収量および/またはヒトiPS細胞から分泌されるドーパミンのそのいずれかを向上させる方法が開発されれば、現状から大きく改善されると考えられる。iPSC由来のドーパミン作動性ニューロンは、患者を免疫抑制剤で処置する必要をなくし、胚性ドナー細胞のマスターセルバンクの必要性をなくす。
【0012】
現在、パーキンソン病の細胞治療では、幹細胞をドーパミン作動性ニューロンの前駆体に分化させ、最終的にドーパミン産生ニューロンへと成熟する前に脳の適切な部位に移植する戦略がとられている。ドーパミン作動性ニューロンまたはその前駆体を早期に移植する理由は、脳内の局所環境によって、前駆体が神経輸送能力を有し、生着し、ドーパミンを産生および分泌する機能的ドーパミン作動性ニューロンに最終成熟するステップに必要な未知の因子が提供されるからである。
【0013】
現在、幹細胞由来のドーパミン作動性ニューロン、より具体的にその前駆体は、完全に発達する前に脳に生着される必要がある。実験によると、早期に移植することで生着率が高くなり、より多くの利益が得られるが、これはおそらくドーパミンの産生が増加するためだと考えられる。ドーパミン作動性ニューロンまたは前駆体は、脳の局所環境における未知の因子がドーパミン産生段階への適切な成熟を誘導するように、ドーパミン産生以前の段階で移植される。
【0014】
ドーパミン作動性ニューロンまたは前駆細胞を早期に生着させる方法の欠点は、細胞の特徴を完全に把握できないことである。細胞治療でヒトを処置する場合、米国FDAは、細胞の特性評価を行い、事前に定めた一定の基準を満たした場合のみ、ヒトへの投与のために「リリース」することを要求する。他の細胞療法に対するFDAのリリース基準要件に基づき、特定の分子マーカーを発現する細胞の割合が定義されていること、1M細胞によるドーパミンの産生量が定義されていることなどの基準が期待される。
【0015】
したがって、幹細胞由来のドーパミン作動性ニューロンを、移植用細胞の高割合が確定的な分子マーカーを発現し、かつ相当量のドーパミンが産生される段階まで、信頼性および再現性が高くin vitroで培養することができれば、当技術分野の著しい進歩となる。最後に、これらの細胞は、脳への生着能力をin vitroで実証するべきである。
【0016】
したがって、ドーパミン作動性ニューロンの成熟のステップを誘導する脳から提供される因子、ならびにドーパミン作動性ニューロン前駆体がそれらの因子と接触すべき時間枠を特定することは、当技術分野の現状に対する大きな改善となるであろう。
【発明の概要】
【0017】
本発明は、多能性幹細胞をドーパミン作動性ニューロンに分化させるプロトコルの20±3日目頃に、神経基礎培地にビタミンを添加するか、またはビタミン濃度を増加させる工程を含む、ヒト幹細胞からドーパミン作動性ニューロンを産生する方法に関する。プロトコルは、プロトコルAであってもよい。ビタミンは、レチノール、酢酸レチノール、9-シスレチノイン酸、13-シスレチノイン酸、またはオールトランス型レチノイン酸などのビタミンAであってもよい。ビタミンAは、ヒト血清アルブミン、Albumax、非ヒト血清アルブミンなどの脂質に富んだ製剤中に可溶化されてもよい。1つの実施形態では、ビタミンAの最終濃度は、1uM~3uMであってもよい。
【0018】
代替的に、上記に従って、ビタミンはビタミンB6であってもよい。ビタミンB6は、ピリドキシン、ピリドキサール、またはPLPとしても知られているピリドキサール-5’-ホスフェートの形態であってもよい。1つの実施形態では、ビタミンB6の最終濃度は、10uM~30uMであってもよい。
【0019】
代替的に上記に従って、ビタミンはビタミンCであってもよい。ビタミンCは、2-ホスホ-アスコルビン酸またはL-アスコルビン酸の形態であってもよい。1つの実施形態では、ビタミンCの最終濃度は、200nM~110uMであってもよい。
【0020】
上記のいずれの方法においても、分化される多能性幹細胞は、NME7-AB、またはWNT3Aで培養されてもよい。他の態様では、分化される多分化能性幹細胞は未処理状態であってもよい。
【0021】
以上により、産生されたドーパミン作動性ニューロンは、ビタミンを添加または増加させない分化プロトコルで産生されたドーパミン作動性ニューロンと比較して、30%以上、100%以上、500%以上または1000%以上のドーパミンを発現することを特徴とする場合がある。
【0022】
以上により、産生されたドーパミン作動性ニューロンは、ビタミンを添加または増加させない分化プロトコルで産生されたドーパミン作動性ニューロンと比較して、30%以上、100%以上、500%以上または1000%以上の神経突起を形成することが特徴である。
【0023】
本発明はさらに、上記の方法で得られたドーパミン作動性ニューロンを対象に投与することを含む、必要とする対象へのドーパミン作動性ニューロンの生着の成功の可能性を向上させる方法にも対象とする。
【0024】
本発明はさらに、ドーパミン産生神経細胞の生着が望まれる患者の中枢神経系疾患を処置する方法であって、上記の方法で得られたドーパミン作動性ニューロンを、それを必要とする個人に生着させることを含む、方法にも対象とする。中枢神経系疾患は、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、またはアルツハイマー病である。中枢神経系および末梢神経系の損傷はさらに、損傷部位にニューロンを生着させること、中枢神経系の疾病にドーパミン作動性ニューロン、および末梢神経の損傷には他の種類のニューロンを生着させることで処置されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
特許または出願のファイルは、色つきで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を備えるこの特許または特許出願公開のコピーは、請求および必要な料金の支払い後に当該事務局によって提供される。
【0026】
本発明は、本明細書における所与の詳細な説明、および例示としてのみ与えられる添付図面からより完全に理解され、したがって、本発明を限定するものではない。
【
図1A】多能性幹細胞をドーパミン作動性ニューロンに分化させるために使用された4つの異なるプロトコルの模式図である。
図1Aは、(多能性幹細胞を作動性ニューロンに分化させる培地の開示に関して、その内容は本明細書に参照により組み込まれる)特許出願US2018/0094242A1で公開されたプロトコルの模式図であり、本明細書ではプロトコルAと称する。
【
図1B】多能性幹細胞をドーパミン作動性ニューロンに分化させるために使用しされた4つの異なるプロトコルの模式図である。
図1Bは、本発明者らが開発した新規かつ改善されたプロトコルの模式図であり、ここではプロトコルBと称し、該プロトコルでは、21日目以降、最終濃度11uMでピリドキサールを添加し、培地中のピリドキサール濃度の合計を約21uMとする。
【
図1C】多能性幹細胞をドーパミン作動性ニューロンに分化させるために使用しされた4つの異なるプロトコルの模式図である。
図1Cは、本発明者らによって開発された新規かつ改善されたプロトコルの模式図であり、ここではプロトコルCと称し、該プロトコルでは、21日目以降、基礎となる神経培地に様々な形態のビタミンA、ビタミンB、場合によってはビタミンCが添加される。
【
図1D】多能性幹細胞をドーパミン作動性ニューロンに分化させるために使用しされた4つの異なるプロトコルの模式図である。
図1Dは、プロトコルC.2の模式図を示し、該プロトコルでは、21日目以降に、基礎となる神経培地は、ピリドキサールを含むことなく、代わりに最終濃度16uMのピリドキシンおよび最終濃度1.2uMのレチノールおよび最終濃度0.17uMの酢酸レチニルを含むものに交換される。
【
図1E】多能性幹細胞をドーパミン作動性ニューロンに分化させるために使用しされた4つの異なるプロトコルの模式図である。
図1Eは、最適化されたプロトコルであるプロトコルDの模式図であり、該プロトコルでは、21日目以降、約10uMのピリドキサールを含む基礎となる培地が、さらに11uMのピリドキサール、1.2uMのレチノール、0.17uMの酢酸レチニル、61uMの2-リン酸アスコルビン酸および11uMのL-アスコルビン酸で補充される。
【
図2】A~Lは、異なる培地中で培養された異なる3種類の多能性幹細胞を分化させ、ドーパミン作動性ニューロンの生成を試みたプロトコルAの24日目に撮影した蛍光写真を示す。A~Dは、HES3市販細胞、ここではhES
E8-HES3と称する、分化前にE8培地中で培養されたヒト胚性幹細胞の蛍光写真である。E~Hは、分化前にE8培地中で培養された、ここではiPS
E8-A6と称するヒト人工多能性幹細胞の蛍光写真である。I~Lは、ここではiPS
NME7-6Eと称する、分化前にNME7
AB未処理培地中で培養されたヒト人工多能性幹細胞の蛍光写真を示す。A,E,Iは、ドーパミン作動性ニューロンに発現するGIRK2(Gタンパク質制御型内向き整流性カリウムチャンネル2(G-protein-regulated inward-rectifier potassium channel 2))の存在について染色された細胞を示す。B、F、Jは、ドーパミン作動性ニューロンの同定におけるゴールドスタンダードと考えられているTH(チロシンヒドロキシラーゼ)の存在について染色された細胞を示す。C、G、Kは、汎神経マーカーであるTuj1(ニューロン特異的クラスIll B-チューブリン)の存在について染色された細胞を示す。D、H、Lは3つのマーカーを重ね合わせたものを示す。
【
図3】A~Lは、異なる培地において培養された異なる3種類の多能性幹細胞を分化させられ、ドーパミン作動性ニューロンの生成を試みたプロトコルC.2の24日目に撮影した蛍光写真を示す。A~Dは、HES3市販細胞、ここではhES
E8-HES3と称する、分化前にE8培地中で培養されたヒト胚性幹細胞の蛍光写真を示す。E~Hは、分化前にE8培地中で培養された、ここではiPS
E8-A6と称するヒト人工多能性幹細胞の蛍光写真を示す。I~Lは、ここではiPS
NME7-6Eと称する、分化前にNME7
AB未処理培地中で培養されたヒト人工多能性幹細胞の蛍光写真を示す。A、E、Iは、ドーパミン作動性ニューロンに発現するGIRK2(G-protein-regulated inward-rectifier potassium channel 2)の存在について染色された細胞を示す。B、F、Jは、ドーパミン作動性ニューロンの同定におけるゴールドスタンダードと考えられているTH(チロシンヒドロキシラーゼ)の存在について染色された細胞を示す。C、G、Kは、汎神経マーカーであるTuj1(ニューロン特異的クラスIll B-チューブリン)の存在について染色された細胞を示す。D、H、Lは3つのマーカーを重ね合わせたものを示す。
【
図4】A~Hは、プロトコルAまたはプロトコルC.2のいずれかに従って、分化された多能性幹細胞の60日目に撮影した蛍光写真を示す。一部の写真は、プロトコルC.2に従って分化されたが、分化開始前の48時間多能性幹細胞培地にWNT3Aを100ng/mLで添加された、細胞を示す。A、B、E、F、GおよびHは、エピソーム法で初期化されたiPS
NME7-N7Bナイーブ幹細胞から分化された細胞の画像を示す。CおよびDは、iPS
E8-A6幹細胞から分化された細胞の画像を示す。A~BはプロトコルAに従って分化された。E~FはプロトコルC.2に従って分化された。C~DおよびG~Hは、分化プロトコルを開始する前48時間、それぞれの多能性培地にWNT3Aを100ng/mLで添加した以外は、プロトコルC.2に従って分化された。A、E、CおよびGは、DAT(ドーパミン活性輸送体)およびTuj1の存在について染色された細胞を示す。B、F、DおよびHは、GIRK2、THおよびTuj1の存在について染色された細胞を示す。
【
図5】A~Fは、傷跡または創傷治癒アッセイとしても知られる、ニューロンの生着能力を評価するスクラッチアッセイの蛍光写真を示す。開始幹細胞は、NME7
AB培地中で培養されたナイーブ幹細胞「iPS
NME7-6E」、またはE8培地中で培養されたプライミング状態の幹細胞「iPS
E8-A6」である。示された細胞は、プロトコルC.2に従ってドーパミン作動性ニューロンに分化され、13日目または15日目にコンフルエントになるまで増殖させられた。ギャップを作るために、細胞のフィールドを横切るように機械的なスクラッチがつけられた。神経突起の成長がそのギャップを架橋する速度は、モニタリングされ、生着能に関連づけられる。緑色の蛍光は、標識されたドーパミンからのドーパミンの取り込みの指標である。A~Cは、iPS
NME7-6E由来のニューロンの写真を示す。D~Fは、iPS
E8-A6由来のニューロンの写真を示す。
【
図6】A~Dは、プロトコルの11日目に蒔かれた800,000個/cm
2の細胞からの、分化開始後の30日目から60日目にかけてドーパミンとその代謝物の分泌量グラフを示す。A~Bは、プロトコルAに従ってドーパミン作動性ニューロンに分化された細胞から分泌されたドーパミンを示す。C~Dは、プロトコルC.2に従ってドーパミン作動性ニューロンに分化された細胞から分泌されたドーパミンを示す。A、Cは、iPS
E8-A6プライミング状態の幹細胞由来のドーパミン作動性ニューロンを示す。B、Dは、iPS
NME7-6E未処理状態の幹細胞由来のドーパミン作動性ニューロンを示す。
【
図7】可変数の細胞によって分泌されたドーパミンおよびその代謝物の量であって、示される場合には60日目、または40日目に測定された量を示すグラフであり、横縞の棒はプロトコルAに従って分化されたプライミング状態の幹細胞、クロスハッチの棒はプロトコルC.2に従って分化されたプライミング状態の幹細胞、縦縞の棒はプロトコルAに従って分化されたナイーブ幹細胞、実線の黒い棒はプロトコルC.2に従って分化されたナイーブ幹細胞を示す。細胞数は、プロトコルの11日目に蒔かれた細胞数を1cm
2あたりで示したものであることに注意されたい。
【
図8】様々な数のヒト幹細胞由来のドーパミン作動性ニューロンによって分泌されるドーパミンとその代謝物の量を示す表である。表は、開始幹細胞型に応じて整理されている。幹細胞は、プライミング状態の胚「HES3」細胞、プライミング状態の人工多能性幹細胞iPS
E8-A6細胞、センダイウイルスで生成された未処理状態の人工多能性幹細胞「iPS
NME7-6E」、またはエピソーム技術で生成された未処理状態の人工多能性幹細胞「iPS
NME7-N7B」のいずれかであった。場合によっては、表で示されるように、幹細胞は、100ng/mLのWNT3Aが添加されたそれぞれの培地中で、分化を開始する前に48時間培養された。
【
図9】エピソームナイーブクローンiPS
NME7-N7Bによって分泌されるドーパミンおよびその代謝物の量を示す表である。11日目に蒔かれた細胞数、およびドーパミン分泌を測定する日にちを変化させる。さらに、場合によっては、示される場合、WNT3Aは分化開始前の48時間、100ng/mLで培地に添加された。
【
図10】エピソームナイーブクローンiPS
NME7-6Eによって分泌されるドーパミンおよびその代謝物の量を示す表である。11日目に蒔かれた細胞数、およびドーパミン分泌を測定する日にちを変化させる。さらに、場合によっては、示される場合、WNT3Aは分化開始前の48時間、100ng/mLで培地に添加された。
【
図11-1】A~Kは、プロトコルAとして本明細書に記載されるプロトコルに従ってドーパミン作動性ニューロンに分化して24日目のヒトiPS細胞を共焦点顕微鏡で20倍に拡大して撮影した蛍光写真を示すが、プロトコルの20日目頃にレチノールおよび酢酸レチニルの形態のビタミンAが細胞採取まで培地に導入されているという修正が加えられている。これらの細胞は、プロトコルの20日目頃に様々な形態のビタミンB6を添加した場合の効果を調べるための対照として機能した。Aは、GIRK2について染色された細胞の蛍光写真を示す。Bは、TH、チロシンヒドロキシラーゼについて染色された細胞の蛍光写真を示す。Cは、Tuj1について染色された細胞の蛍光写真を示す。Dは、核が見えるようにヘキスト(Hoechst)染色で染色された細胞の蛍光写真を示す。Eは明視野像を示す。Fは、GIRK2、TH、Tuj1、およびヘキストを重ねた蛍光写真を示す。
【
図11-2】A~Kは、プロトコルAとして本明細書に記載されるプロトコルに従ってドーパミン作動性ニューロンに分化して24日目のヒトiPS細胞を共焦点顕微鏡で20倍に拡大して撮影した蛍光写真を示すが、プロトコルの20日目頃にレチノールおよび酢酸レチニルの形態のビタミンAが細胞採取まで培地に導入されているという修正が加えられている。これらの細胞は、プロトコルの約20日目に様々な形態のビタミンB6を添加した場合の効果を調べるための対照として機能した。Gは、DAT、ドーパミン輸送タンパク質について染色された細胞の蛍光写真を示す。Hは、Tuj1について染色された細胞の蛍光写真を示す。Iは、核が見えるようにヘキスト染色で染色された細胞の蛍光写真を示す。Jは明視野像を示す。Kは、DAT、Tuj1、およびヘキストを重ねた蛍光写真を示す。
【
図12-1】A~Kは、20日目頃に、レチノールおよび酢酸レチニルの形態のビタミンAが、細胞採取まで培地に導入されていることを除いて、本明細書にプロトコルAとして記載されるプロトコルに従ってドーパミン作動性ニューロンへの分化の24日目のヒトiPS細胞の共焦点顕微鏡で20倍の倍率で撮影した蛍光写真を示す。この実験では、ピリドキシンの形態のビタミンB6は、最終濃度16uMになるまで添加された。Aは、GIRK2について染色された細胞の蛍光写真を示す。Bは、TH、チロシンヒドロキシラーゼについて染色された細胞の蛍光写真を示す。Cは、Tuj1について染色された細胞の蛍光写真を示す。Dは、核が見えるようにヘキスト染色で染色された細胞の蛍光写真を示す。
図12-1のEは明視野像を示す。Fは、GIRK2、TH、Tuj1、およびヘキストを重ねた蛍光写真を示す。
【
図12-2】A~Kは、20日目頃に、レチノールおよび酢酸レチニルの形態のビタミンAが、細胞採取まで培地に導入されていることを除いて、本明細書にプロトコルAとして記載されるプロトコルに従ってドーパミン作動性ニューロンへの分化の24日目のヒトiPS細胞の共焦点顕微鏡で20倍の倍率で撮影した蛍光写真を示す。この実験では、ピリドキシンの形態のビタミンB6は、最終濃度16uMになるまで添加された。Gは、DAT、ドーパミン輸送タンパク質について染色された細胞の蛍光写真を示す。Hは、Tuj1について染色された細胞の蛍光写真を示す。Iは、核が見えるようにヘキスト染色で染色された細胞の蛍光写真を示す。Jは明視野像を示す。Kは、DAT、Tuj1、およびヘキストを重ねた蛍光写真を示す。
【
図13-1】A~Kは、20日目頃に、レチノールおよび酢酸レチニルの形態のビタミンAが、細胞採取まで培地に導入されていることを除いて、本明細書にプロトコルAとして記載されるプロトコルに従ってドーパミン作動性ニューロンへの分化の24日目のヒトiPS細胞の共焦点顕微鏡で20倍の倍率で撮影した蛍光写真を示す。この実験では、ピリドキサールの形態のビタミンB6は、最終濃度11uMになるまで添加された。Aは、GIRK2について染色された細胞の蛍光写真を示す。Bは、TH、チロシンヒドロキシラーゼについて染色された細胞の蛍光写真を示す。Cは、Tuj1について染色された細胞の蛍光写真を示す。Dは、核が見えるようにヘキスト染色で染色された細胞の蛍光写真を示す。Eは明視野像を示す。Fは、GIRK2、TH、Tuj1、およびヘキストを重ねた蛍光写真を示す。
【
図13-2】A~Kは、20日目頃に、レチノールおよび酢酸レチニルの形態のビタミンAが、細胞採取まで培地に導入されていることを除いて、本明細書にプロトコルAとして記載されるプロトコルに従ってドーパミン作動性ニューロンへの分化の24日目のヒトiPS細胞の共焦点顕微鏡で20倍の倍率で撮影した蛍光写真を示す。この実験では、ピリドキサールの形態のビタミンB6は、最終濃度11uMになるまで添加された。Gは、DAT、ドーパミン輸送タンパク質について染色された細胞の蛍光写真を示す。Hは、Tuj1について染色された細胞の蛍光写真を示す。Iは、核が見えるようにヘキスト染色で染色された細胞の蛍光写真を示す。Jは明視野像を示す。Kは、DAT、Tuj1、およびヘキストを重ねた蛍光写真を示す。
【
図14-1】A~Kは、20日目頃に、レチノールおよび酢酸レチニルの形態のビタミンAが、細胞採取まで培地に導入されていることを除いて、本明細書にプロトコルAとして記載されるプロトコルに従ってドーパミン作動性ニューロンへの分化の24日目のヒトiPS細胞の共焦点顕微鏡で20倍の倍率で撮影した蛍光写真を示す。この実験では、PLPとしても知られているピリドキサール-5’-ホスフェートの形態のビタミンB6は、最終濃度20uMになるまで添加された。Aは、GIRK2について染色された細胞の蛍光写真を示す。Bは、TH、チロシンヒドロキシラーゼについて染色された細胞の蛍光写真を示す。Cは、Tuj1について染色された細胞の蛍光写真を示す。Dは、核が見えるようにヘキスト染色で染色された細胞の蛍光写真を示す。Eは明視野像を示す。Fは、GIRK2、TH、Tuj1、およびヘキストを重ねた蛍光写真を示す。
【
図14-2】A~Kは、20日目頃に、レチノールおよび酢酸レチニルの形態のビタミンAが、細胞採取まで培地に導入されていることを除いて、本明細書にプロトコルAとして記載されるプロトコルに従ってドーパミン作動性ニューロンへの分化の24日目のヒトiPS細胞の共焦点顕微鏡で20倍の倍率で撮影した蛍光写真を示す。この実験では、PLPとしても知られているピリドキサール-5’-ホスフェートの形態のビタミンB6は、最終濃度20uMになるまで添加された。Gは、DAT、ドーパミン輸送タンパク質について染色された細胞の蛍光写真を示す。Hは、Tuj1について染色された細胞の蛍光写真を示す。Iは、核が見えるようにヘキスト染色で染色された細胞の蛍光写真を示す。Jは明視野像を示す。Kは、DAT、Tuj1、およびヘキストを重ねた蛍光写真を示す。
【
図15-1】A~Kは、20日目頃に、レチノールおよび酢酸レチニルの形態のビタミンAが、細胞採取まで培地に導入されていることを除いて、本明細書にプロトコルAとして記載されるプロトコルに従ってドーパミン作動性ニューロンへの分化の24日目のヒトiPS細胞の共焦点顕微鏡で20倍の倍率で撮影した蛍光写真を示す。この実験では、ビタミンB6の3つの形態はすべて、ピリドキシン-HCL、ピリドキサールおよびPLPとしても知られているピリドキサール-5’-ホスフェートとして添加された。Aは、GIRK2について染色された細胞の蛍光写真を示す。Bは、TH、チロシンヒドロキシラーゼについて染色された細胞の蛍光写真を示す。Cは、Tuj1について染色された細胞の蛍光写真を示す。Dは、核が見えるようにヘキスト染色で染色された細胞の蛍光写真を示す。Eは明視野像を示す。は、GIRK2、TH、Tuj1、およびヘキストを重ねた蛍光写真を示す。
【
図15-2】A~Kは、20日目頃に、レチノールおよび酢酸レチニルの形態のビタミンAが、細胞採取まで培地に導入されていることを除いて、本明細書にプロトコルAとして記載されるプロトコルに従ってドーパミン作動性ニューロンへの分化の24日目のヒトiPS細胞の共焦点顕微鏡で20倍の倍率で撮影した蛍光写真を示す。この実験では、ビタミンB6の3つの形態はすべて、ピリドキシン-HCL、ピリドキサールおよびPLPとしても知られているピリドキサール-5’-ホスフェートとして添加された。Gは、DAT、ドーパミン輸送タンパク質について染色された細胞の蛍光写真を示す。Hは、Tuj1について染色された細胞の蛍光写真を示す。Iは、核が見えるようにヘキスト染色で染色された細胞の蛍光写真を示す。Jは明視野像を示す。Kは、DAT、Tuj1、およびヘキストを重ねた蛍光写真を示す。
【
図16】A~Eは、様々な形態のビタミンB6の添加効果を見られるように、20日目頃にレチノールおよび酢酸レチニルが、分化培地に導入されていることを除いて、本明細書にプロトコルAとして記載されるプロトコルに従ってドーパミン作動性ニューロンへの分化の24日目のヒトiPS細胞の共焦点顕微鏡で20倍の倍率で撮影した蛍光写真を示す。
図16のAは、20日目からピリドキシン-HCLを最終濃度16uMになるまで添加したときの細胞の蛍光写真を示す。
図16のBは、20日目からピリドキサールを最終濃度11uMになるまで添加したときの細胞の蛍光写真を示す。
図16のCは、20日目からピリドキサール-5’-ホスフェートを最終濃度20uMになるまで添加したときの細胞の蛍光写真を示す。
図16のDは、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサール-5’-ホスフェートを含む3種類のビタミンB6全てが添加された場合の細胞の蛍光写真を示す。
図16のEは、レチノールおよび酢酸レチニルの形態のビタミンAが20日目に添加されたことを除いて、プロトコルAに従った対照実験を示す。
【
図17】30日目、40日目、50日目または60日目に採取された200,000個の細胞からの調整培地中に存在する、HPLCで測定されたドーパミンおよびその代謝物の量を示すグラフである。培地は単一の細胞源から取り出されていない。培地は、分析のために培地を採取する日まで、別々の実験を進行させた。この実験では、20日目頃以降にレチノールおよび酢酸レチニルが各条件で添加されたプロトコルCを使用した。基礎となる神経培地に添加されたビタミンBの形態は変更されていた。この実験では、基礎となる培地は約10uMのピリドキサールを含有していた。ピリドキシンを添加した条件では、基礎となる培地からピリドキサールが省かれている。
【
図18-1】A~Iは、ドーパミン作動性ニューロンへの分化の24日目のヒトiPS細胞を共焦点顕微鏡で20倍に拡大して撮影した蛍光写真を示す。これらの写真は、プロトコルAに従って細胞を分化させた対照実験のものである。Aは、GIRK2について染色された細胞の蛍光写真を示す。Bは、TH、チロシンヒドロキシラーゼについて染色された細胞の蛍光写真を示す。Cは、Tuj1について染色された細胞の蛍光写真を示す。Dは、核が見えるようにヘキスト染色で染色された細胞の蛍光写真を示す。Eは、GIRK2、TH、Tuj1、およびヘキストを重ねた蛍光写真を示す。
【
図18-2】A~Iは、ドーパミン作動性ニューロンへの分化の24日目のヒトiPS細胞を共焦点顕微鏡で20倍に拡大して撮影した蛍光写真を示す。これらの写真は、プロトコルAに従って細胞を分化させた対照実験のものである。Fは、DAT、ドーパミン輸送タンパク質について染色された細胞の蛍光写真を示す。Gは、Tuj1について染色された細胞の蛍光写真を示す。Hは、核が見えるようにヘキスト染色で染色された細胞の蛍光写真を示す。Iは、DAT、Tuj1、およびヘキストを重ねた蛍光写真を示す。
【
図19-1】A~Iは、ドーパミン作動性ニューロンへの分化の24日目のヒトiPS細胞を共焦点顕微鏡で20倍に拡大して撮影した蛍光写真を示す。これらの写真は、20日目にピリドキサールが最終濃度11uMで培地に添加されたことを除いて、プロトコルAに従って細胞が分化された別の対照実験のものであり、この修正プロトコルはここではプロトコルBと称する。このように、さまざまな形態のビタミンAを添加することによって付加的な効果が見られる。Aは、GIRK2について染色された細胞の蛍光写真を示す。Bは、TH、チロシンヒドロキシラーゼについて染色された細胞の蛍光写真を示す。Cは、Tuj1について染色された細胞の蛍光写真を示す。Dは、核が見えるようにヘキスト染色で染色された細胞の蛍光写真を示す。Eは、GIRK2、TH、Tuj1、およびヘキストを重ねた蛍光写真を示す。
【
図19-2】A~Iは、ドーパミン作動性ニューロンへの分化の24日目のヒトiPS細胞を共焦点顕微鏡で20倍に拡大して撮影した蛍光写真を示す。これらの写真は、20日目にピリドキサールが最終濃度11uMで培地に添加されたことを除いて、プロトコルAに従って細胞が分化された別の対照実験のものであり、この修正プロトコルはここではプロトコルBと称する。このように、さまざまな形態のビタミンAを添加することによって付加的な効果が見られる。Fは、DAT、ドーパミン輸送タンパク質について染色された細胞の蛍光写真を示す。Gは、Tuj1について染色された細胞の蛍光写真を示す。Hは、核が見えるようにヘキスト染色で染色された細胞の蛍光写真を示す。Iは、DAT、Tuj1、およびヘキストを重ねた蛍光写真を示す。
【
図20-1】A~Iは、プロトコルBに従ってドーパミン作動性ニューロンへの分化の24日目のヒトiPS細胞を共焦点顕微鏡で20倍に拡大して撮影した蛍光写真を示す。この実験では、20日目以降、培地にピリドキサールが添加されたことに加え、2つの形態のビタミンAが添加された。レチノールは最終濃度0.7uMになるまで、酢酸レチニルは最終濃度0.6uMになるまで添加された。Aは、GIRK2について染色された細胞の蛍光写真を示す。Bは、TH、チロシンヒドロキシラーゼについて染色された細胞の蛍光写真を示す。Cは、Tuj1について染色された細胞の蛍光写真を示す。Dは、核が見えるようにヘキスト染色で染色された細胞の蛍光写真を示す。Eは、GIRK2、TH、Tuj1、およびヘキストを重ねた蛍光写真を示す。
【
図20-2】A~Iは、プロトコルBに従ってドーパミン作動性ニューロンへの分化の24日目のヒトiPS細胞を共焦点顕微鏡で20倍に拡大して撮影した蛍光写真を示す。この実験では、20日目以降、培地にピリドキサールが添加されたことに加え、2つの形態のビタミンAが添加された。レチノールは最終濃度0.7uMになるまで、酢酸レチニルは最終濃度0.6uMになるまで添加された。Fは、DAT、ドーパミン輸送タンパク質について染色された細胞の蛍光写真を示す。Gは、Tuj1について染色された細胞の蛍光写真を示す。Hは、核が見えるようにヘキスト染色で染色された細胞の蛍光写真を示す。Iは、DAT、Tuj1、およびヘキストを重ねた蛍光写真を示す。
【
図21-1】A~Iは、プロトコルBに従ってドーパミン作動性ニューロンへの分化の24日目のヒトiPS細胞を共焦点顕微鏡で20倍に拡大して撮影した蛍光写真を示す。この実験では、20日目以降、培地にピリドキサールが添加されたことに加え、以下の、ビタミンAの形態が9-シスレチノイン酸が最終濃度0.446uMになるまで、13-シスレチノイン酸が最終濃度0.446uMになるまで、オールトランス型レチノイン酸が最終濃度0.446uMになるまで、が添加された。Aは、GIRK2について染色された細胞の蛍光写真を示す。Bは、TH、チロシンヒドロキシラーゼについて染色された細胞の蛍光写真を示す。Cは、Tuj1について染色された細胞の蛍光写真を示す。Dは、核が見えるようにヘキスト染色で染色された細胞の蛍光写真を示す。Eは、GIRK2、TH、Tuj1、およびヘキストを重ねた蛍光写真を示す。
【
図21-2】A~Iは、プロトコルBに従ってドーパミン作動性ニューロンへの分化の24日目のヒトiPS細胞を共焦点顕微鏡で20倍に拡大して撮影した蛍光写真を示す。この実験では、20日目以降、培地にピリドキサールが添加されたことに加え、以下の、ビタミンAの形態が9-シスレチノイン酸が最終濃度0.446uMになるまで、13-シスレチノイン酸が最終濃度0.446uMになるまで、オールトランス型レチノイン酸が最終濃度0.446uMになるまで添加された。Fは、DAT、ドーパミン輸送タンパク質について染色された細胞の蛍光写真を示す。Gは、Tuj1について染色された細胞の蛍光写真を示す。Hは、核が見えるようにヘキスト染色で染色された細胞の蛍光写真を示す。Iは、DAT、Tuj1、およびヘキストを重ねた蛍光写真を示す。
【
図22-1】A~Iは、プロトコルBに従ってドーパミン作動性ニューロンへの分化の24日目のヒトiPS細胞を共焦点顕微鏡で20倍に拡大して撮影した蛍光写真を示す。この実験では、20日目以降、培地にピリドキサールが添加されることに加え、オールトランス型レチノイン酸が最終濃度1.33uMになるまで添加された。Aは、GIRK2について染色された細胞の蛍光写真を示す。Bは、TH、チロシンヒドロキシラーゼについて染色された細胞の蛍光写真を示す。Cは、Tuj1について染色された細胞の蛍光写真を示す。Dは、核が見えるようにヘキスト染色で染色された細胞の蛍光写真を示す。Eは、GIRK2、TH、Tuj1、およびヘキストを重ねた蛍光写真を示す。
【
図22-2】A~Iは、プロトコルBに従ってドーパミン作動性ニューロンへの分化の24日目のヒトiPS細胞を共焦点顕微鏡で20倍に拡大して撮影した蛍光写真を示す。この実験では、20日目以降、培地にピリドキサールが添加されることに加え、オールトランス型レチノイン酸が最終濃度1.33uMになるまで添加された。Fは、DAT、ドーパミン輸送タンパク質について染色された細胞の蛍光写真を示す。Gは、Tuj1について染色された細胞の蛍光写真を示す。Hは、核が見えるようにヘキスト染色で染色された細胞の蛍光写真を示す。Iは、DAT、Tuj1、およびヘキストを重ねた蛍光写真を示す。
【
図23】A~Eは、ドーパミン作動性ニューロンへの分化の24日目のヒトiPS細胞を共焦点顕微鏡で20倍に拡大して撮影した蛍光写真を示す。Aは、プロトコルAに従って分化された細胞の蛍光写真を示す。Bは、プロトコルBに従って分化された細胞の蛍光写真を示すが、20日目に、ピリドキサール添加に加えて、レチノール(0.7uM)および酢酸レチニル(0.6uM)の形態のビタミンAが添加された。Cは、プロトコルBに従って分化された細胞の蛍光写真を示すが、20日目に、ピリドキサールの添加に加えて、9-シスレチノイン酸、13-シスレチノイン酸、オールトランス型レチノイン酸の形態のビタミンAがそれぞれ最終濃度0.446uMで添加された。Dは、プロトコルBに従って分化された細胞の蛍光写真を示すが、20日目に、ピリドキサールに加えて、オールトランス型の形態のビタミンAは最終濃度1.33uMで添加された。Eは、プロトコルBに従って細胞を分化された対照実験であり、プロトコルAとは、20日目以降に、ピリドキサールが最終濃度11uMまで添加された点が異なっている。
【
図24-1】A~Iは、プロトコルBに従ってドーパミン作動性ニューロンへの分化の24日目のヒトiPS細胞を共焦点顕微鏡で20倍に拡大して撮影した蛍光写真を示す。この実験では、20日目以降の培地にはピリドキサールを添加することに加え、2mg/mLでアルブマックスに可溶化させた2種類のビタミンAは添加された。レチノールは1.2uMの最終濃度になるまで添加され、および酢酸レチニルは0.17uMの最終濃度になるまで添加された。Aは、GIRK2について染色された細胞の蛍光写真を示す。Bは、TH、チロシンヒドロキシラーゼについて染色された細胞の蛍光写真を示す。Cは、Tuj1について染色された細胞の蛍光写真を示す。Dは、核が見えるようにヘキスト染色で染色された細胞の蛍光写真を示す。Eは、GIRK2、TH、Tuj1、およびヘキストを重ねた蛍光写真を示す。
【
図24-2】A~Iは、プロトコルBに従ってドーパミン作動性ニューロンへの分化の24日目のヒトiPS細胞を共焦点顕微鏡で20倍に拡大して撮影した蛍光写真を示す。この実験では、20日目以降の培地にはピリドキサールを添加することに加え、2mg/mLでアルブマックスに可溶化させた2種類のビタミンAは添加された。レチノールは1.2uMの最終濃度になるまで添加され、および酢酸レチニルは0.17uMの最終濃度になるまで添加された。Fは、DAT、ドーパミン輸送タンパク質について染色された細胞の蛍光写真を示す。Gは、Tuj1について染色された細胞の蛍光写真を示す。Hは、核が見えるようにヘキスト染色で染色された細胞の蛍光写真を示す。Iは、DAT、Tuj1、およびヘキストを重ねた蛍光写真を示す。
【
図25-1】A~Iは、プロトコルBに従ってドーパミン作動性ニューロンへの分化の24日目のヒトiPS細胞を共焦点顕微鏡で20倍に拡大して撮影した蛍光写真を示す。この実験では、20日目以降に培地にピリドキサールの添加に加え、2つの形態のビタミンAと2つの形態のビタミンCが添加された。ビタミンAは2mg/mLでAlbumaxに可溶化された。レチノールは最終濃度1.2uMまで、酢酸レチニルは最終濃度0.17uMまで添加された。ビタミンCは、2-ホスホ-アスコルビン酸を61uM、L-アスコルビン酸として110uMで添加された。Aは、GIRK2について染色された細胞の蛍光写真を示す。Bは、TH、チロシンヒドロキシラーゼについて染色された細胞の蛍光写真を示す。Cは、Tuj1について染色された細胞の蛍光写真を示す。Dは、核が見えるようにヘキスト染色で染色された細胞の蛍光写真を示す。Eは、GIRK2、TH、Tuj1、およびヘキストを重ねた蛍光写真を示す。
【
図25-2】A~Iは、プロトコルBに従ってドーパミン作動性ニューロンへの分化の24日目のヒトiPS細胞を共焦点顕微鏡で20倍に拡大して撮影した蛍光写真を示す。この実験では、20日目以降に培地にピリドキサールの添加に加え、2つの形態のビタミンAと2つの形態のビタミンCが添加された。ビタミンAは2mg/mLでAlbumaxに可溶化された。レチノールは最終濃度1.2uMになるまで、酢酸レチニルは最終濃度0.17uMになるまで添加された。ビタミンCは、2-ホスホ-アスコルビン酸を61uM、L-アスコルビン酸として110uMで添加された。Fは、DAT、ドーパミン輸送タンパク質について染色された細胞の蛍光写真を示す。Gは、Tuj1について染色された細胞の蛍光写真を示す。Hは、核が見えるようにヘキスト染色で染色された細胞の蛍光写真を示す。Iは、DAT、Tuj1、およびヘキストを重ねた蛍光写真を示す。
【
図26-1】A~Iは、プロトコルBに従ってドーパミン作動性ニューロンへの分化の24日目のヒトiPS細胞を共焦点顕微鏡で20倍に拡大して撮影した蛍光写真を示す。本実験では、20日目以降の培地にピリドキサールが添加されたことに加え、Albumaxに2mg/mLで可溶化されていたビタミンAはオールトランス型レチノイン酸として、最終濃度1.33uMになるまで添加された。Aは、GIRK2について染色された細胞の蛍光写真を示す。Bは、TH、チロシンヒドロキシラーゼについて染色された細胞の蛍光写真を示す。Cは、Tuj1について染色された細胞の蛍光写真を示す。Dは、核が見えるようにヘキスト染色で染色された細胞の蛍光写真を示す。Eは、GIRK2、TH、Tuj1、およびヘキストを重ねた蛍光写真を示す。
【
図26-2】A~Iは、プロトコルBに従ってドーパミン作動性ニューロンへの分化の24日目のヒトiPS細胞を共焦点顕微鏡で20倍に拡大して撮影した蛍光写真を示す。本実験では、20日目以降の培地にピリドキサールが添加されたことに加え、Albumaxに2mg/mLで可溶化されていたビタミンAはオールトランス型レチノイン酸として、最終濃度1.33uMになるまで添加された。Fは、DAT、ドーパミン輸送タンパク質について染色された細胞の蛍光写真を示す。Gは、Tuj1について染色された細胞の蛍光写真を示す。Hは、核が見えるようにヘキスト染色で染色された細胞の蛍光写真を示す。Iは、DAT、Tuj1、およびヘキストを重ねた蛍光写真を示す。
【
図27-1】A~Iは、プロトコルBに従ってドーパミン作動性ニューロンへの分化の24日目のヒトiPS細胞を共焦点顕微鏡で20倍に拡大して撮影した蛍光写真を示す。本実験では、20日目以降の培地にピリドキサールが添加されたことに加え、Albumaxに2mg/mLで可溶化されていたビタミンAはオールトランス型レチノイン酸として、最終濃度1.33uMになるまで添加された。ビタミンCは、2-ホスホ-アスコルビン酸が61uM、L-アスコルビン酸が110uMになるまで添加された。Aは、GIRK2について染色された細胞の蛍光写真を示す。Bは、TH、チロシンヒドロキシラーゼについて染色された細胞の蛍光写真を示す。Cは、Tuj1について染色された細胞の蛍光写真を示す。Dは、核が見えるようにヘキスト染色で染色された細胞の蛍光写真を示す。Eは、GIRK2、TH、Tuj1、およびヘキストを重ねた蛍光写真を示す。
【
図27-2】A~Iは、プロトコルBに従ってドーパミン作動性ニューロンへの分化の24日目のヒトiPS細胞を共焦点顕微鏡で20倍に拡大して撮影した蛍光写真を示す。本実験では、20日目以降の培地にピリドキサールが添加されたことに加え、Albumaxに2mg/mLで可溶化されていたビタミンAはオールトランス型レチノイン酸として、最終濃度1.33uMになるまで添加された。ビタミンCは、2-ホスホ-アスコルビン酸が61uM、L-アスコルビン酸が110uMになるまで添加された。
図27-2のFは、DAT、ドーパミン輸送タンパク質について染色された細胞の蛍光写真を示す。
図27-2のGは、Tuj1について染色された細胞の蛍光写真を示す。
図27-2のHは、核が見えるようにヘキスト染色で染色された細胞の蛍光写真を示す。
図27-2のIは、DAT、Tuj1、およびヘキストを重ねた蛍光写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
定義
【0028】
本明細書で使用される用語一般的には、当該技術において、本発明の文脈内で、および、それぞれの用語が使用される特定の文脈において、通常の意味を備えている。特定の用語は、本発明の組成物および方法、ならびにそれらの製造方法および使用方法を説明する際に当業者に追加のガイダンスを提供するために、以下に、または明細書の他のところで説明される。
【0029】
本願において、「a」および「an」は、単一の対象および複数の対象の双方を指すために使用される。
【0030】
本明細書で使用されるように、「約」または「実質的に」は、一般的に、正確な数値に限定されない余地を与える。例えば、ポリペプチド配列の長さの文脈で使用されるように、「約」または「実質的に」は、ポリペプチドが言及されたアミノ酸の数に限定されるべきでないことを示す。結合活性などの機能活性が存在する限り、N-末端またはC-末端に付加または除去されたいくつかのアミノ酸が含まれていてもよい。用語「約(about)」または「およそ(approximately)」は、当業者によって決定されるような特定の値の許容可能な誤差範囲内であることを意味し、これは、その値がどのように測定または決定されるか、例えば、測定システムの制限に部分的に依存している。例えば、「約」とは、当該技術分野での実践につき3つ以内または3つを超える標準偏差を意味し得る。代替的に、「約」は、所定の値の最大20%、例えば、最大10%、最大5%、または最大1%の範囲を意味し得る。代替的に、特に生物系または生物学的プロセスに関して、この用語は、ある値の1桁以内、例えば、5倍以内、または2倍以内を意味し得る。
【0031】
本明細書で使用されるように、用語「細胞の集団」または「細胞集団」は、少なくとも2つの細胞の群を指す。非限定的な例では、細胞集団は、少なくとも約10、少なくとも約100、少なくとも約200、少なくとも約300、少なくとも約400、少なくとも約500、少なくとも約600、少なくとも約700、少なくとも約800、少なくとも約900、少なくとも約1000の細胞を含み得る。集団は、ドーパミン作動性ニューロンの集団のような1つの細胞型を含む純粋な集団であってもよく、未分化幹細胞の集団であってもよい。代替的に、集団は、例えば、混合細胞集団のように、1より多くの細胞型を含む場合がある。
【0032】
本明細書で使用されるように、「アミノ酸(amino acid)」および「アミノ酸(amino acids)」は、天然に存在するすべてのL-α-アミノ酸を指す。この定義には、ノルロイシン、オルニチン、およびホモシステインが含まれることを意味する。
【0033】
本明細書で使用されるように、「担体」は、採用される投与量および濃度でそれに曝露される細胞または哺乳類に対して無毒である、薬学的に許容可能な担体、賦形剤または安定化剤を含む。多くの場合、薬学的に許容可能な担体は、pH緩衝化された水溶液である。薬学的に許容可能な担体の例は、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸などの緩衝剤、アスコルビン酸を含む抗酸化剤、低分子量(約10未満の残基)ポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質、ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリジンなどのアミノ酸、単糖類、二糖類、およびグルコース、マンノース、またはデキストリンを含む他の炭水化物、EDTAなどのキレート剤、マンニトールまたはソルビトールなどの糖アルコール、ナトリウムなどの塩形成対イオン、および/またはTWEEN(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、およびPLURONICS(登録商標)などの非イオン界面活性剤を限定されることなく含む。
【0034】
本明細書で使用されるように、細胞(複数可)を化合物(例えば、1つ以上の阻害剤、活性化剤、および/または誘導剤)に「接触させる」という用語は、細胞(複数可)が化合物にアクセス可能な位置に化合物を提供することを意味する。接触は、いずれかの適切な方法を使用して遂行されてもよい。例えば、所望の濃度を達成するために、接触は、濃縮された形態の化合物を、例えば、細胞培養の文脈で、細胞または細胞の集団に添加することによって遂行され得る。接触はさらに、化合物を製剤された培地の成分として含むことによって遂行され得る。
【0035】
本明細書で使用されるように、用語「培地」は、ペトリ皿、マルチウェルプレートなどの培養容器内の細胞を覆う液体であり、細胞に栄養を与え支持するための栄養素を含むものを指す。培地は、細胞に所望の変化をもたらすために添加される成長因子をさらに含んでもよい。
【0036】
本明細書で使用されるように、「NMEファミリーメンバータンパク質を阻害する有効量の薬剤」は、NMEファミリーメンバータンパク質とその同族受容体との間の活性化相互作用を阻害する際の薬剤の有効量を指す。
【0037】
本明細書で使用されるように、1つ以上のさらなる治療剤と「組み合わせて」投与することは、任意の順序で同時(concurrent)および連続(con successive)投与を含む。
【0038】
本明細書で使用されるように、用語「人工多能性幹細胞」または「iPSC」は、特定の胚性遺伝子(OCT4、SOX2、およびKLF4導入遺伝子などではあるが、それらに限定されない)を体細胞に導入することによって形成される多能性幹細胞の一型を指す(例えば、参照することにより本明細書に組み込まれるTakahashi and Yamanaka Cell 126,663-676(2006)を参照されたい)。
【0039】
本明細書で使用されるように、「多能性」幹細胞は、異なる細胞型の数が制限されている他の細胞型に分化し得る幹細胞を意味する。
【0040】
本明細書で使用されるように、「ナイーブ幹細胞」は、胚盤胞の内塊の細胞に類似し、定量的な特徴を共有するものである。ナイーブ幹細胞は、プライム幹細胞と比較して、特定の遺伝子の発現に定量的な差があり、胚盤胞のエピブラスト部分の細胞に類似した特徴や特性を共有する。女性由来のナイーブ幹細胞は、XaXaと呼ばれる、2本の活性型X染色体を有するのに対し、女性由来の後期プライム化幹細胞はX染色体の片方が不活性化されていることに注目されたい。
【0041】
本明細書で使用されるように、「神経基礎培地」は、神経細胞の正常な表現型と成長を長期間維持することができ、アストロサイトフィーダー層を必要とされることなく神経細胞の純粋な集団を維持することができる培地を意味する。
【0042】
本明細書で使用されるように、「NMEファミリータンパク質」または「NMEファミリーメンバータンパク質」は、1~10までの番号が付けられており、いずれも少なくとも1つのNDPK(ヌクレオチド二リン酸キナーゼ(nucleotide diphosphate kinase))ドメインを有することからグループ化されているタンパク質である。場合によっては、NDPKドメインは、ATPからADPへの変換を触媒することができる点で、機能しない。NMEタンパク質は、以前はNM23タンパク質として知られており、H1とH2という番号が付けられていた。近年、10種類ものNMEファミリーが同定された。本明細書において、用語NM23、NMEは交換可能である。本明細書において、用語NME1、NME2、NME5、NME6、NME7、NME8およびNME9は、天然タンパク質と同様にNME変異体を指すために使用されている。場合によっては、これらの変異体は、可溶性が高く、大腸菌での発現が良好であり、または天然配列のタンパク質よりも溶解性が高い。例えば、本明細書で使用されるようなNME7は、天然タンパク質、またはNME7ABなどの変異体を意味し得、該変異体は、大腸菌において可溶性で適切に折り畳まれたタンパク質の高収率発現を可能にするため、優れた商業的適用性を有する。NME7ABは、主にNME7 AドメインおよびBドメインから構成されるが、天然タンパク質のN末端にあるDM10ドメインの大部分は欠落している。本明細書で言及される「NME1」は「NM23-H1」と交換可能である。本発明は、NMEタンパク質の正確な配列によって制限されないことがさらに意図される。本明細書で言及されるようなNME7は、約42kDaの分子量を有する天然NME7を意味することが意図される。本明細書で言及されるようなNME7ABは、DM-10ドメインを欠いた、分子量約33kDaの天然または組み換えのNME7、あるいは同じくDM-10ドメインを欠いた、分子量約31kDaの代替天然変異体NME7-X1のいずれかを意味することが意図される。
【0043】
本明細書で使用されるように、用語「NME7AB」、「NME7AB」、および「NME-AB」は、交換可能に使用される。
【0044】
本明細書で使用されるように、「薬学的に許容可能な担体および/または希釈液」は、全ての溶媒和物、分散媒体、コーティング、抗菌剤と抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。医薬品の有効物質のためのこうした媒体と薬剤の使用は当該技術分野で公知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性成分と適合しない限り、治療用組成物中にそれらの使用が企図される。補足の活性成分も組成物に組み込むことが可能である。
【0045】
投与を容易にするために、および、用量を均一にするために、投与単位剤形で非経口組成物を製剤化することは特に利点がある。本明細書で使用されるような投与単位剤形は、処置される哺乳動物対象用の単位投与量(unitary dosages)として適した物理的に個別の単位を指し、単位はそれぞれ、必要とされる医薬担体に関連する望ましい治療効果をもたらすように計算された、あらかじめ決められた量の活物質を含有している。本発明の投与単位剤形に関する仕様は、(a)活物質の固有の特性および達成される特定の治療効果、ならびに、(b)身体の健康が損なわれている疾病を有する生きる対象の疾患の処置のためにそのような活性質を配合する技術における固有の制限によって決定され、それらに直接依存する。
【0046】
主要な有効成分は、便利かつ有効な投与のために、有効量を適切な薬学的に許容可能な担体とともに、投与単位の形態で配合される。単位剤形は、例えば、0.5μg~約2000mgの範囲の量の主要な活性化合物を含み得る。割合で表すと、活性化合物は一般的に約0.5μg/mlから担体中に存在する。補助的な有効成分を含有する組成物の場合、投与量は、当該成分の通常の用量および投与方法を参照して決定される。
【0047】
本明細書で使用されるように、「多能性マーカー」は、細胞が最初の細胞より成熟度の低い状態に戻ったときに発現が増加する遺伝子およびタンパク質である。多能性マーカーは、OCT4、SOX2、NANOG、KLF4、KLF2、Tra 1-60、Tra 1-81、SSEA4、およびREX-1、ならびに以前に記載されたものおよび現在発見されているものを含む。例えば、線維芽細胞は、これらの多能性マーカーを検出できないか、または低レベルで発現するが、CD13と呼ばれる線維芽細胞分化マーカーを発現する。細胞が最初の細胞よりも成熟度が低下しているか否かを判断するために、最初の細胞と得られた細胞との間の多能性マーカーの発現レベルの差を測定することができる。
【0048】
本明細書で使用されるように、「多能性」幹細胞は、内胚葉、外胚葉、中胚葉の3つの生殖細胞すべてに分化し、体内のあらゆる細胞型に分化できるが、完全な生物を生み出すことはできない幹細胞を指す。全能性幹細胞は、ヒトのような完全な生物に分化または成熟することができる細胞である。胚性多能性幹細胞に関して、胚盤胞の内部細胞塊に由来する細胞である。典型的な多能性マーカーは、OCT4、KLF4、NANOG、Tra 1-60、Tra 1-81、およびSSEA4である。
【0049】
本明細書で使用されるように、「刺激された幹細胞」は、胚盤胞の上胚葉部分の細胞に類似し、その形質および特徴を共有する細胞である。
【0050】
本明細書で使用されるように、細胞集団の「半ドーパミン作動性ニューロン状態」、もしくは「前ドーパミン作動性ニューロン状態」、または「ドーパミン作動性ニューロン前駆体」は、細胞の一部または全部がドーパミン作動性ニューロンの形態的特徴およびドーパミン発現レベルを有するが、細胞の集団は完全に成熟したドーパミン作動性ニューロンではない細胞を少なくともいくつか含有する細胞集団を指す。
【0051】
本明細書で使用されるように、用語「幹細胞」は、培養下で不定期に分裂し、特殊な細胞を生み出す能力を有する細胞を指す。
【0052】
本明細書で使用されるように、「処置」は、有益か、または所望の臨床結果を得るためのアプローチである。本発明の目的のために、有益または所望の臨床結果は、検出可能または検出不可能なものにかかわらず、限定されないが、症状の緩和、疾患の範囲の減少、疾患の安定(例えば、悪化しない)状態、疾患進行の遅延または減速、疾患状況の改善または軽減、および寛解(部分的または全体的のいずれか)を含む。「処置」はさらに、処置を受けない場合の予想される生存時間と比較して、生存時間を延ばすことを意味し得る。「処置」は、治療用処置および予防的または再発防止の措置の両方を指す。処置を必要とするものは、すでに障害を有する人同様に障害が予防される人を含む。疾患を「軽減する」ことは、処置を行わない場合と比較して、疾患状態の程度および/または望ましくない臨床症状が軽減されること、および/または進行の時間経過が遅くなるもしくは長くなることを意味する。
【0053】
多能性幹細胞のドーパミン作動性ニューロンへの分化
【0054】
研究のこの部分では、発明者は、1)ナイーブ幹細胞とプライミング状態幹細胞のドーパミン機能的ニューロンへの分化能の比較、および2)発育中の胚の脳内で産生されるビタミンを含む様々な因子の時間依存的添加が、機能的ドーパミン作動性ニューロンの分化に及ぼす影響の2つの主要な研究テーマを探求した。
【0055】
本発明者らはまず、本明細書にプロトコルAと称する、US2018/0094242A1由来のプロトコルを使用して、ヒトiPS細胞をドーパミン作動性ニューロンに分化させた(
図1Aおよび実施例1)。これらの実験では、開始のiPSCは、NME7-AB未処理培地で培養した最も初期の未処理状態(Carter et al 2016)、またはFGF2含有E8培地で培養した後期のプライミング状態のいずれかであった。プロトコルAを使用して、FGF2含有E8培地で培養したプライミング状態のhESCまたはhiPSCのいずれかから開始した場合、得られたドーパミン作動性ニューロンは、プロトコルの60日目に細胞80万個/cm
2あたり約2~3ng/mLのみのドーパミンまたはその代謝物を分泌した。これに対して、プロトコルAを使用したが、未処理状態のhiPSCから開始した場合、60日目には、ある場合では細胞40万個/cm
2あたり8.45ng/mLのドーパミンと代謝物が分泌され、別の場合では細胞80万個/cm
2あたり5.85ng/mLのドーパミンと代謝物が分泌された。これらの結果は、未処理状態でNME7-ABで培養した細胞は、プライミング状態の幹細胞よりもドーパミン作動性ニューロンへの分化が良いという観念と一致する。
【0056】
これまでの研究で、ドーパミン作動性ニューロン前駆体を分化開始後約16日目~28日目に脳に移植すると、完全に成熟してから40~60日目に移植するよりも良好に生着し、より高い治療効果が得られることが示された。これらの結果は、脳の環境中で、前駆細胞が機能的なドーパミン作動性ニューロンに成熟することができたことを示唆する。これらの結果はさらに、脳から供給される成熟因子は、ニューロンまたはドーパミン作動性ニューロン前駆体への分化の初期段階には必要とされないという観念と一致する。したがって、脳内で産生されるどの因子がドーパミン作動性ニューロンの発生に重要になり得るかを決定し、さらにドーパミン作動性ニューロン前駆体にそれらの因子を接触させる時間枠を決定することを目指した。研究者が経験的にドーパミン作動性ニューロンの前駆細胞を脳に移植する必要があると判断したのとほぼ同じ時点に、分化プロトコルの16日目と28日目の間に候補因子を添加した(Samata and Takahashi 2016,DOI:10.1038/ncomms13097)。個別に、または組み合わせて添加された候補、分子マーカーの発現、生着、ドーパミン分泌に及ぼす影響は評価された。
【0057】
神経分化には、脳内で産生されるいくつかの因子が重要であることが示唆されている。ドーパミン作動性ニューロンへの成熟の最終段階を誘導し得る脳から供給される候補因子の一部としては、ビタミンA [Qing mu et al 2018,DOI:10.1080/21691401.2018.1436552;Engberg et al,Stem Cells 2010;28:1498-1509;JD Bremner,007,doi:10.1016/j.pnpbp.2007.07.001]、ビタミンB [Carlos Alberto Calderon-Ospina,Mauricio Orlando Nava-Mesa,doi:10.1111/cns.13207,Guilarte,2006 Journal of Neurochemistry,DOI:10.1111/j.1471-4159.1987.tb04111.x,Peraza et al,2018,BMC Neuroscience]、ビタミンC [V.Bagga et al 2008,Cell Transplantation;Xi-Biao He et al,2015,Stem Cells,doi:10.1002/stem.1932]、およびビタミンD [Luan et al 2018,Mol Neurobiol,doi:10.1007/s12035-017-0497-3]が挙げられる。これらのビタミンにはさまざまな形態があり、いくつかは神経の発達期に脳内でレベルが上昇することが報告されている。しかしながら、試験結果はしばしば矛盾している。ビタミンA、またはその誘導体であるレチノイン酸は、神経分化を遮断すると結論付けた学術研究がいくつかある一方、神経分化に必要である可能性を示唆する研究もある。同様に、各種ビタミンBも、神経分化に有効であると報告される一方、神経分化を抑制するとの報告もある。
【0058】
本発明者らは、様々な形態のビタミンB群、特に神経刺激性のビタミンBであるB1、B6、B12、ビタミンAの形態、およびビタミンCがhiPS細胞由来のドーパミン作動性ニューロンの発生に及ぼす影響を評価した。かなり難溶性のビタミンAに加え、市販のアルブマックスを含む血清アルブミンや血清アルブミン代替物など、ビタミンAを可溶化するための様々な高脂質密度添加物の効果を評価した。
【0059】
本発明者らは、技術水準と本発明の方法および組成物とを比較する一連の実験を行った。一方、標準的なプライミング状態の幹細胞と、ドーパミン作動性ニューロンに分化するNME7-AB培養したナイーブ幹細胞とを比較した。一方、プロトコルAと、プロトコルの20±3日目頃から各種ビタミンや他の成分を添加した改善されたプロトコルである、プロトコルB、プロトコルC、プロトコルC.2、プロトコルD(
図1のA~
図1E)を比較した。得られた細胞は、適切な分子マーカーの存在、特徴的な形態、生着の可能性の指標となる神経突起の伸長、そして最も重要なドーパミンの生成と分泌量について、さまざまな時点で分析された。
【0060】
プロトコルC.2では、20日目頃、神経基盤培地を、ピリドキサールを含まない代わりに、ピリドキシンと2つの形態のビタミンAを含むものに交換した。以下の実験では、プロトコルAまたはプロトコルC.2に従ってドーパミン作動性ニューロンになるように分化させた幹細胞が比較される。24日目に、プロトコルA(
図2のA~L)またはプロトコルC.2(
図3のA~L)を使用して生成されたドーパミン作動性ニューロン前駆細胞の分子マーカーの存在を検出するために免疫蛍光染色が行われた。GIRK2(Gタンパク質共役型内向き整流性カリウムチャネル2)はドーパミン作動性ニューロンに発現し、Tuj1(神経特異的III型Bチューブリン)(neuron-specific class Ill B-tubulin)は汎神経マーカーである。TH(チロシンヒドロキシラーゼ)は、ドーパミン合成における律速段階であるL-チロシンからL-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(dihydroxyphenylalanine)への変換する酵素であるので、ドーパミン作動性ニューロンの同定におけるゴールドスタンダードと見なされる。DAT(ドーパミン活性輸送体)も同様に重要で、シナプスから細胞質へとドーパミンを送り戻す膜貫通タンパク質である。両方の分化プロトコルで、適切な分子マーカーがすべて陽性である細胞が産生された。しかしながら、プロトコルC.2を使用して産生された細胞は、プロトコルAから産生された細胞よりも長い突起および良好な連結性を有する、相互に結合したニューロンネットワークを形成した。
【0061】
この形態の違いは、60日目に遂行され免疫蛍光法試験でさらに明らかである。事前にNME7
ABで培養し、プロトコルAに従って分化されたiPSC
Sは、機能性ニューロンの軸索突起および相互接続ネットワークの特性を欠く一方、プロトコルC.2に従って分化された同じ細胞は望ましい形態を有する(
図4のA~Bおよび
図4のE~F)。この実験では、第2のナイーブクローンであるiPSC
NME7-N7Bが使用されたことに注意されたい。この第2の未処理状態のクローンは、NME7-AB培地においてコア多能性因子であるOCT4/SOX2/KLF4/c-Mycを使用してエピソーム再プログラム化により生成された。これらの実験で使用した別のクローンであるiPSC
NME7-6Eは、センダイウイルスを使用して生成され(Carter et al 2016)、機能的な心筋細胞および肝細胞に分化し得ることが以前に証明された。iPS
E8-A6のようなプライミング状態の幹細胞の分化にプロトコルAを使用すると、60日目に到達する前に細胞が繰り返し失敗した。しかし、E8で増殖したiPSCをE8+βカテニン、WNT3Aなどのアゴニストで48時間培養してから分化を開始すると、60日目の生存率が上がり、形態も改善される可能性があることを示した。しかし、DAT、TH、およびGIRK2の形態ならびに発現パターンは、NME7
ABとWNT3Aで48時間培養され、プロトコルC.2に従って分化されたiPSCよりも劣っている(
図4のC~Dおよび
図4のG~H)。プロトコルC.2に従って分化されたナイーブ幹細胞は、所望の形態を有するネットワークを形成した。ニューロンの分岐密度およびグループ化パターンなどの形態の複雑さは、ニューロンの機能と高い相関がある。
【0062】
幹細胞由来のドーパミン作動性ニューロンの治療利用を妨げる要因の一つは、現在の低い生着率である。治療効果を得るためには、少なくとも100,000個の機能的なドーパミン作動性ニューロンが患者の脳に生着される必要があると推定されている。生着率を評価するための1次のin vitro法は、スクラッチテストとしても知られる創傷治癒アッセイであろう。NME7
ABまたはE8のいずれかで培養したiPSCを、プロトコルC.2を使用して細胞がコンフルエントになるまで分化され、その後スクラッチ、または傷が作製された。事前にNME7
AB培地で事前に培養したiPSC由来のドーパミン作動性ニューロンは、6日以内に神経、軸索突起が発生し、ギャップを埋めることができたが、E8培地で培養した細胞は突起が少なく、より短かった(
図5のA~F)。緑色の蛍光は、標識されたドーパミンの模倣品からのドーパミンの取り込みの指標である。
【0063】
ドーパミン作動性ニューロン機能の最も重要な指標のひとつは、ドーパミンを作り出し分泌する能力である。分泌されたドーパミンおよびその代謝物を定量するためのHPLC分析は、様々な細胞密度、および分化プロトコルの様々な段階において実施された。プロトコルAに従ってドーパミン作動性ニューロンに分化されたプライミング状態のヒトiPSC細胞は、60日目までに10ng/mLものドーパミンとその代謝物を分泌する(
図6のA)一方、プロトコルAを使用して分化させた未処理状態の幹細胞はその時点で約7ng/mL程度しか分泌していなかった(
図6のB)。対照的に、プロトコルC.2を使用して分化されたプライミング状態の幹細胞は、60日目にほぼ40ng/mLのドーパミンとその代謝物を分泌し(
図6のC)、および未処理状態の幹細胞は、ほぼ60ng/mLのドーパミンとその代謝物(
図6のD)を分泌した。
図6に示される実験では、測定されたドーパミンとその代謝物の量は、1cm
2あたり40万個の細胞から分泌され、分化開始後60日目に測定された。
図7は、可変数の細胞によって分泌された60日目、または40日目に測定されたドーパミンおよびその代謝物の量のグラフを示し、示されている場合には、横縞および縦縞の棒はプロトコルAを使用して分化された細胞を示し、クロスハッチおよび塗り潰された棒はプロトコルC.2を使用して分化された細胞を示す。横縞とクロスハッチの棒はプライミング状態の幹細胞が使用されたことを示し、縦縞と塗り潰された棒は未処理状態の幹細胞が使われたことを示す。プロトコルC.2と比較してプロトコルAを使用して実施された40以上の実験(
図8、
図9、
図10)では、プロトコルC.2を使用してドーパミン作動性ニューロンに分化された細胞は、プロトコルAを使用して産生された細胞に比べて平均10倍以上のドーパミンを分泌する細胞が産生したことが示される。さらに、NME7
ABナイーブ細胞から分化された細胞が再現性よく最も多くのドーパミンを産生した。
【0064】
次に、ドーパミン作動性ニューロンへの幹細胞分化に対する様々な形態のビタミンB6の効果をさらに調査しようとした。前の一連の実験では、プライミング状態の幹細胞または未処理状態の幹細胞のいずれかを、プロトコルAまたはプロトコルC.2のいずれかに従ってドーパミン作動性ニューロンになるように分化させられ、該プロトコルでは、約20日目に、神経基礎となる培地を、もはやピリドキサールを含まず、代わりにピリドキシンおよびレチノールならびに酢酸レチニルを含むように交換したことを想起されたい。
【0065】
この次の一連の実験では、20日目頃に神経基礎となる培地を、約1.2uMのレチノールと0.17uMの酢酸レチニルを含む培地に交換し、その後様々な他の形態のビタミンB6を添加した以外は、プロトコルAを従った(
図1、実施例2)。結果として生じた細胞は、細胞形態、Tuj1陽性に対するTHおよびDAT陽性細胞の収量、生着の可能性の指標としての神経突起の数および長さについて分析された。
【0066】
ビタミンB亜群、B1(チアミン)、B6(ピリドキシン)、およびB12(コバラミン)は、向神経性ビタミンB群と名付けられる。B6のレベルは、妊娠中の脳の発達で増加する。ピロドキシンは食物性形態のB6の一種である。ビタミンB6のPLP型(リン酸ピリドキサール)は、L-ドーパからドーパミンを合成するなど、神経伝達物質の合成に必要な生物学的活性型ビタミンB6である。培地中では、ピリドキシンはピリドキサール-5’-ホスフェートを形成するために代謝され得る。B12は、ミエリンの合成に関与することが報告されている。
【0067】
本発明者らは、基礎的神経分化培地にある形態のビタミンB6を添加すると、幹細胞由来のドーパミン作動性ニューロンの質が大幅に向上し、分泌するドーパミン量が大幅に増加し、in vitro創傷治癒実験における生着率が大幅に向上することを発見した。ビタミンBの摂取時期、濃度、および様々な形態は、in vitroにおけるヒト幹細胞からのドーパミン作動性ニューロンの分化と成熟の重要な要因である。
【0068】
本発明者らは、ヒトiPS細胞からのドーパミン作動性ニューロンへの分化に及ぼす様々な形態のビタミンB6の影響を評価した。最初の実験で、ナイーブNME7-ABヒトiPS細胞は、FGF2を含むE8培地で培養したhiPSCよりもドーパミン作動性ニューロンによく分化することが示されたため、これらの実験は未処理状態の幹細胞のみで行われ、後にプライミング状態の幹細胞を使って繰り返された。プロトコルA(
図1)と呼ばれる分化プロトコルに20日目まで従った。21日目以降、基礎培地にビタミンAをレチノールの形態で1.2uM、酢酸レチニルの形態で0.17uM、ビタミンCをアスコルビン酸-2-リン酸の形態で最終濃度約200nMで添加した。追加のビタミンBを添加しない陰性対照は
図11のA~Kで示される。ここで重要なのは、すべての条件において使用された神経基礎培地には10uMのピリドキサールが含まれており、この低濃度のピリドキサールが分化の開始から存在していたことに注意されることである。
【0069】
すべての条件下で一定であるビタミンAとCに加え、16uMのピリドキシン(
図12のA~K)、11uMのピリドキサール(
図13のA~K)、またはPLPとして知られる20uMのピリドキサール-5’-ホスフェート(
図14のA~K)、またはすべてのビタミンBが添加された。対照培地に添加された追加のビタミンB群の全ては、
図15のA~Kに示される。対照培地と各種ビタミンB6の形態の添加との比較は、
図16のA~Eに示される。結果として生じたドーパミン作動性ニューロンの質を評価するために、我々は以下のことを検査した。a)GIRK2陽性細胞のうち、ドーパミン合成の速度制限段階であるL-チロシンからL-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニンへの変換を媒介する酵素である、TH、チロシンヒドロキシラーゼに対しても陽性であった細胞の割合であって、この割合は、所望の細胞型であるドーパミン作動性ニューロンの収量を示す指標として高くあるべきである。b)TH陽性でもあったTUJ陽性ニューロンの割合。TUJは、ニューロンの多面発現性マーカーであり、TH陽性のもののみが真のドーパミン作動性ニューロンである。c)TUJ陽性細胞のうち、ドーパミン輸送タンパク質であるDATにも陽性である細胞の割合。d)細胞体の形状は、ニューロンに特徴的な細長い三角形であるべき。そして、e)TH陽性およびDAT陽性に関連する神経突起の長さと数である。生着には、神経突起の長さと数が最も重要な因子であると考えらる。
図12~
図16の写真を検討すると、分化プロトコルの21日目頃に各種形態のビタミンBの量が増加すると、形態および収率に基づいてドーパミン作動性ニューロンへの分化が大きく促進されることが示される。
図16のEに示される対照群では、ビタミンAとCの2つの形態が添加されることを想起されたい。
図16のA~Eを参照すると、ヘキスト色素によって可視化された、多数の相互接続した長い神経突起を有するTH陽性およびDAT陽性の細胞の割合は、分化プロトコルの21日目当たりから生理活性形態のビタミンB6、ピロドキサール-5-ホスフェートを添加すること、または生理活性形態の即時前駆体のピリドキサール、もしくはすべてのビタミンB6形態の組み合わせを添加することが、多くの長く相互接続した神経突起を生成してドーパミン収率および生着能を大幅に増加させることを表している。
図17は、30日目、40日目、50日目、または60日目に採取された200,000個の細胞のみからの調整培地中に存在する、HPLCによって測定したドーパミンおよびその代謝物の量を示すグラフである。培地は、単一の細胞源から取り出されていなかった。より正確に言えば、分析のために培地が取り出された日まで、別々の実験を続行する可能であった。この実験では、20日目頃以降に、すべての条件にレチノールと酢酸レチニルが添加されたプロトコルCを使用した。基礎となる神経培地に添加されたビタミンBの形態は様々であった。この実験では、基礎となる培地に約10uMのピリドキサールが含まれていた。ピリドキシンを添加した条件、プロトコルC.2では、基礎培地からピリドキサールが省略される。
図17では、「NBM」は神経基礎となる培地を指すが、レチノールおよび酢酸レチニルの形態でビタミンAも添加されたので、20日目以降に様々な形態でビタミンBをさらに添加した効果だけを比較できることに注意することが重要である。200,000個/cm
2の細胞には、30日目、40日目、50日目、60日目に培地に分泌されたドーパミンとその代謝物の量はHPLCによって測定された(
図17)。このグラフは、分化プロトコルの50日目あたりにドーパミンの分泌のピークがあることを示す。図から見えるように、神経基礎培地に20日目頃にレチノール、酢酸レチニル、ビタミンCが添加されたもの、または11uMのピリドキサールを添加したもの、あるいはピリドキサールを11uMで、ピリドキサール-5’-ホスフェートを20uMで、ピリドキシンを16uMで添加した3種類のB6形態を全て一緒に添加されたものが最も多量のドーパミンをもたらすことが明らかになる。なお、ドーパミンの産生量と、生きている脳のある領域に生着する能力は、移植に適したドーパミン作動性ニューロンの2つの異なる尺度であると思われる。対照、神経基礎媒体ならびにレチノールおよび酢酸レチニルは、大量のドーパミンを産生するが、生着に重要な多くの長く相互接続した突起を備えたドーパミン作動性ニューロンは生成されない。
【0070】
本発明の一態様では、ピリドキシンまたはピリドキシン-HCLは、16日目頃から始まり30日目まで分化培地に添加され、40日目~60日目になり得る移植または最終試験の日まで継続される。本発明の他の態様では、ピリドキシンまたはピリドキシン-HClは、20±3日目頃から分化培地に添加され、40日目~60日目になり得る移植または最終試験の日まで継続される。一態様では、ピリドキシンは、20+/-3日目で最終濃度が5.0uM~25.0uMになるまで分化培地に添加される。他の態様では、ピリドキシンは最終濃度が10.0uM~30.0uMになるまで添加される。他の態様では、ピリドキシンは最終濃度が10.0uM~20.0uMになるまで添加される。さらに別の態様では、ピリドキシンは最終濃度が15.0uMになるまで添加される。本発明の他の態様では、ピリドキシンは、分化の開始時から5.0uM~15.0uMの濃度で存在する。他の態様では、ピリドキシンは、16日目~30日目頃に10uM~30uMの最終濃度に増加し、細胞の採取まで継続される。本発明の他の態様では、ピリドキサールは、16日目~30日目頃に分化培地に添加され、40日目~60日目になり得る移植または最終試験の日まで継続される。本発明の他の態様では、ピリドキサールは、20±3日目頃から分化培地に添加され、40日目~60日目になり得る移植または最終試験の日まで継続される。一態様では、ピリドキサールは、分化培地中の最終濃度が10uM~40uMとなるように添加される。他の態様では、ピリドキサールは、最終濃度が10uM~30uMになるまで添加される。他の態様では、ピリドキサールは、最終濃度が15uM~30uMになるまで添加される。さらに別の態様では、ピリドキサールは、最終濃度が21uMになるまで添加される。本発明の他の態様では、ピリドキサールは、分化の開始時から5.0uM~15.0uMの濃度で存在する。他の態様では、ピリドキサールは、16日目~30日目頃に10uM~30uMの最終濃度に増加し、細胞の採取まで継続される。本発明の他の態様では、ビタミンB6の生体活性形態であるピリドキサール-5’-ホスフェートは、16日目~30日目頃から分化培地に添加され、25日目~60日目になり得る移植または最終試験の日まで継続される。本発明の他の態様では、ピリドキサール-5’-ホスフェートは、20±3日目頃から分化培地に添加され、30日目~60日目になり得る移植または最終試験の日まで継続される。一態様では、ピリドキサール-5’-ホスフェートは、最終濃度が5.0uM~50.0uMになるまで添加される。他の態様では、ピリドキサール-5’-ホスフェートは、最終濃度が10.0uM~30.0uMになるまで添加される。さらに別の態様では、ピリドキサール-5’-ホスフェートは、最終濃度が20.0uMになるまで添加される。本発明の他の態様では、ピリドキサール-5’-ホスフェートは、分化の開始時から5.0uM~15.0uMの濃度で存在する。他の態様では、ピリドキサール-5’-ホスフェートは、分化の開始時から5.0uM~25.0uMの濃度で存在する。他の態様では、ピリドキサール-5’-ホスフェートは、16日目~30日目頃に10uM~30uMの最終濃度に増加し、細胞の採取まで継続される。他の態様では、ピリドキサール-5’-ホスフェートは、16日目~30日目頃に10uM~40uMの最終濃度に増加し、細胞の採取まで継続される。
【0071】
さらに本発明の他の態様では、これらのビタミンB群は、16日目~30日目頃に、より好ましくは20±3日目頃にまとめて分化培地に添加され、40日目~60日目になり得る移植または最終試験の日まで継続され、ビタミンB群の合計最終濃度は5uM~140uMである。本発明の他の態様では、ビタミンB群の合計最終濃度は15uM~100uMである。本発明の他の態様では、ビタミンB群の合計最終濃度は40uM~70uMである。本発明の他の態様では、ビタミンB群の合計最終濃度は50uM~55uMである。本発明の他の態様では、ビタミンB群の合計最終濃度は10uM~30uMである。一面では、ピリドキサールは、開始時からドーパミン作動性ニューロン分化培地中に約10uMで存在し、20±3日目に最終合計濃度20uMに増加し、これとともにピリドキシンは20±3日目頃に最終濃度15uMになるまで添加され、ピリドキサール-5’-ホスフェートは20±3日目頃に最終濃度20uMになるまで添加される。
【0072】
ビタミンA
【0073】
ビタミンAが神経分化を阻害するとともに神経分化を促進することは、実質的に同数の文献に報告されている[2011 Gudas and Wagner J Cell Physiol 2011 Feb;226:322-330;Khillan et al Nutrients 2014 doi:10.3390/nu6031209;Ole Isacson Molecular and Cellular Neuroscience Vol 45,Issue 3,November 2010;258-266]。レチノイン酸は、核内の特定のレチノイン酸受容体(RAR)に結合し、幹細胞分化、より具体的には神経分化に関与する遺伝子の発現を誘導する。RARαは、ドーパミン作動性ニューロンの発達を促すレチノイン酸受容体である。したがって、BMS753などのRARαのアゴニストは、各種ビタミンAの代わりに、またはそれらに加えて、後期培地に添加されてもよい。
【0074】
本発明者らは、ビタミンAの形態がドーパミン作動性ニューロンの成熟に有益であるが、基礎となる培地に添加されるビタミンAの添加時期、濃度、および種類が大きな要因となることを発見した。本発明者らは、基礎的神経分化培地に様々な形態のビタミンAを20日±3日目頃から添加することによってプロトコルAを修正し、30日目、40日目、50日目、60日目のいずれかで細胞を採取するまで継続した。ビタミンA、レチノール、その活性代謝物であるレチノイン酸(RA)、9シス-RA、オール-トランスRA(atRA)、13シス-RA、および/または酢酸レチニルを基礎的神経分化培地に添加した。本発明者らは、ビタミンAおよび/またはその活性代謝物の添加によって、幹細胞からのドーパミン作動性ニューロンの生成が、表現型、適切な分子マーカーの発現、生着、産生されるドーパミン量の観点において大幅に改善することを見いだした。
【0075】
この一連の実験では、未処理状態のヒトiPS細胞を使用した。これらの多能性幹細胞は、唯一の成長因子としてNME7-ABを添加した最小培地中で培養された(Carter et al 2016)。対照はプロトコルA(
図18のA~I)であり、添加されたビタミンAの効果のみを確認するために、本発明者らは、プロトコルBと名付けて改変したプロトコルAを採用し、このプロトコルでは、分化開始時から基礎となる培地に約10uMのピリドキサールが存在するが、さらに2+/-3日目から細胞の採取まで10~11uMのピリドキサールまたはピリドキサールHCLが添加される(
図19のA~I)。20日目±3日頃のプロトコルBの分化幹細胞に、最終濃度0.7uMのレチノールおよび最終濃度0.6uMの酢酸レチニルの形態でビタミンAが添加された(
図20のA~I)。別の実験群では、20日目頃に添加されたビタミンAの形態は、9-シス、13-シス、オールトランス型レチノイン酸であり、それぞれ最終濃度は0.446uMであった(
図21のA~I)。他の実験群では、オールトランス型レチノイン酸のみを最終濃度が1.33uMになるまで添加した(
図22のA~I)。
図23のA~Eは、2つの対照として、20日目頃にビタミンB6もビタミンAも添加されなかったプロトコルA(
図23のA)および20日目頃にビタミンB6のピリドキサール形態がさらに11uMの添加により増加したプロトコルB(
図23のE)と、レチノールと酢酸レチニルの形態でビタミンAを添加したもの(
図23のB)、もしくは9-シス、13-シス、オールトランス型レチノイン酸の形態でビタミンAを添加したもの(
図23のC)、またはオールトランス型レチノイン酸の形態でビタミンAを添加したもの(
図23のD)との比較を示す。図に見られるように、レチノールおよび酢酸レチニルの添加(
図23のB)、または9-シス、13-シス、オールトランス型レチノイン酸の添加(
図23のC)では、それぞれ対照(
図23のA、
図23のE)と比較すると、神経突起の数、長さ、相互接続性が増加した。しかし、GIRK2で染色した神経細胞体の形態を、TH陽性でDAT陽性でもある高割合のTUJ陽性細胞と組み合わせると、レチノールおよび酢酸レチニルの添加により生着率が高くなることが認められる。
【0076】
本発明の一態様では、レチノール、酢酸レチニル、および/またはレチノイン酸は、16日目頃から30日目頃まで分化培地に添加され、40日目~60日目になり得る移植または最終試験の日まで継続される。本発明の他の態様では、これらは、20±3日目頃から分化培地に添加され、40日目~60日目になり得る移植または最終試験の日まで継続される。一態様では、ビタミンAおよび/またはその誘導体は、組合せの最終濃度が0.5uM~5.0uMになるまで基礎となる培地に添加される。他の態様では、ビタミンAおよび/またはその誘導体は、組合せの最終濃度が1.0uM~3.0uMになるまで基礎となる培地に添加される。他の態様では、レチノールは、最終濃度0.5uM~5.0uMで基礎となる培地に添加される。さらに別の態様では、レチノールは最終濃度1.0uM~2.0uMで基礎となる培地に添加され、酢酸レチニルは最終濃度0.1uM~1.0uMで添加される。さらに別の態様では、レチノールは最終濃度1.0uM~3.0uMで基礎となる培地に添加され、酢酸レチニルは最終濃度0.1uM~1.2uMで添加される。ビタミンAおよび/またはその誘導体が添加される基礎となる培地は、Neural Basal Media(ThermoFisher)やNeuroCult(StemCell Technologies)などを含むがこれらに限定されない神経分化の基礎となる培地とすることができる。
【0077】
ビタミンAは脂溶性であるため、任意選択で、ビタミンAまたはその誘導体が添加されると、脂質またはアルブミンが基礎となる培地に添加される場合がある。本発明者らが使用した基礎となる神経培地にはBSAがいくらか含まれていたが、ヒトに使用する場合、BSAの代わりにウシ以外のものを求めた。追加のビタミンAには、溶解性を補助するのに追加の脂質が必要になることが予想される。この一連の実験では、先ずビタミンAをAlbumaxで可溶化し、その後、プロトコルBに記載されるように、20±3日目頃から分化培地に添加した。プロトコルBは、20+/-3日目頃からさらに11uMのピリドキサールの追加を含むことを想起されたい。
図24のA~Iは24日目に得られた細胞の共焦点顕微鏡画像を示し、2mg/mLのAlbumax中で可溶化された、レチノール(1.2uM)と酢酸レチニル(0.17uM)の形態にあるビタミンAは、20日目頃から培地に添加される。
図25のA~Iは、前述のレチノールおよび酢酸レチニルに加えて、20日目頃に、最終濃度が61uMになるまで2-ホスホ-アスコルビン酸の形態で、および最終濃度が110uMになるまでL-アスコルビン酸の形態でビタミンCを分化培地に添加したときに得られる細胞の共焦点顕微鏡画像を示す。別の実験群では、20日目頃にプロトコルBの培地に、Albumax中で可溶化されたオールトランス型レチノイン酸の形態のビタミンAを最終濃度が1.33uMになるまで添加した(
図26のA~I)。
図27のA~Iは、前述のオールトランス型レチノイン酸および酢酸レチニルに加えて、20日目頃に、最終濃度が61uMになるまで2-ホスホ-アスコルビン酸の形態で、および最終濃度が110uMになるまでL-アスコルビン酸の形態でビタミンCを分化培地に添加したときに得られる細胞の共焦点顕微鏡画像である。
【0078】
本発明の一態様では、ビタミンCは、分化の16日目~30日目頃に分化培地に添加される。他の態様では、ビタミンCは、20日目頃に分化培地に添加される。一態様では、ビタミンCは、最終濃度が200nM~110uMになるまで添加される。他の態様では、ビタミンCは、最終濃度が1uM~100uMになるまで添加される。さらに他の態様では、ビタミンCは、最終濃度が50uM~75uMになるまで添加される。一態様では、ビタミンCは2-ホスホ-アスコルビン酸の形態にある。他の態様では、ビタミンCはL-アスコルビン酸の形態にある。さらに別の態様では、両形態のビタミンCが添加される。本発明の他の態様では、ビタミンCは、分化の開始時から最終濃度100nM~500nMで分化培地中に存在する。本発明の他の態様では、ビタミンCは、分化開始時から100nM~500nMの濃度で存在し、16日目~30日目頃、または20日目頃から50uM~70uMに増加する。
【0079】
図5は、in vivo生着におけるin vitro代用物とされる、スクラッチテストとも呼ばれる創傷治癒アッセイの写真を示す。幹細胞は、プロトコルC.2に従い、ドーパミン作動性ニューロンになるように分化された。ある場合では、開始幹細胞は、FGF2または他の成長因子を一切含まないNME7-AB未処理培地において成長された未処理状態の幹細胞であった(
図5のA~C)。別の場合では、開始幹細胞は、FGF2を含有するE8培地中で成長された、プライミング状態の幹細胞であった(
図5のD~F)。傷を付けてから6日後である21日目に、得られた細胞の神経突起の数と神経突起の長さを分析した。21日目、未処理状態の幹細胞由来のニューロンは、プライミング状態の幹細胞に比べて10~12倍、すなわち1000~1200%多くの突起を生成した。それらの突起の長さは、プライミング状態の幹細胞で生成された突起の5~7倍、すなわち500~700%の増加であった。したがって、未処理状態の幹細胞に変更したことのみに起因して、シミュレートされた生着は、500%~1200%向上する。
【0080】
さらに、最先端技術に対する向上は、得られた集団の収量と純度の観点から測定される。パーキンソン病の治療のために幹細胞由来のドーパミン作動性ニューロンを取得する、従来知られている方法は、半純粋な集団を得るために14日目に細胞の選別を必要とすることを想起されたい。このような従来の方法では、精製された集団は純粋でない集団に比べて10倍も良好にラット脳に生着することが示された。
図4は、プロトコルAを使用してドーパミン作動性ニューロンに分化されたナイーブ幹細胞の収量と純度を、プロトコルC.2を使用したものと比較する。GIRK2、TH、DAT、Tuj1の4つのキーマーカーが陽性であって神経形態を呈する細胞の割合により、集団の純度が決定される。ヘキスト色素はすべての細胞の核を染め、Tuj1は多くの種類のニューロンの一般的な染色剤であるが、Tuj1、GIRK2(A9ニューロンのマーカー)、TH(ドーパミンを生成する反応を触媒する)、DAT(ドーパミン輸送タンパク質)が陽性であるものだけが、実際にドーパミン作動性ニューロンである。プロトコルAに従って分化された細胞のうち、GIRK2とTHの両方が陽性となるのは、赤に緑を重ねた部分が黄色であることから、約5%しかない(
図4のB)。これに対して、プロトコルC.2に従って分化された細胞は神経形態を呈し、Tuj1陽性細胞の80%~90%がDAT陽性であり(
図4のE)、約70%がGIRK2とTHの両方に陽性である(
図4のF)。プロトコルC.2によって、ドーパミン作動性ニューロンの収量と純度が10倍(1000%)より多く増加した。
【0081】
別の実験では、ナイーブ幹細胞をプロトコルAに従って分化した(
図18のA~I)。ここでは、GIRK2、TH、DAT、Tuj1が陽性であって神経形態を呈する細胞の割合は、35%未満であった。
図24A~
図24Iは、同じ開始細胞がプロトコルCに従って分化され、21日目にピリドキサールが添加され、さらにレチノールと酢酸レチニルが添加されたものを示す。GIRK2、TH、DAT、Tuj1が陽性である細胞の割合は90%~100%であった。
図25は、同じ開始細胞がプロトコルDに従って分化された写真を示すが、本プロトコルDは、21日目以降にビタミンCが2-ホスホ-アスコルビン酸とL-アスコルビン酸の形態でさらに添加されるという点で
図24に示されたプロトコルと相違する。
図25A~
図25Iで見られるように、事実上100%の細胞が神経形態を呈し、GIRK2、TH、DAT、Tuj1が陽性である。したがって、プロトコルAと
図24の説明に記載されるプロトコルと間の改善率は250%である。プロトコルAとプロトコルD(
図25)と間の改善率は290%である。
【0082】
パーキンソン病の処置における治療薬として有用性に重要なドーパミン作動性ニューロンの別の特徴は、ドーパミンを分泌できるということである。ドーパミンとその代謝物の産生量の直接比較は、1)ナイーブ幹細胞対プライミング状態の幹細胞と、2)最先端技術のプロトコルA、およびプロトコルAの約24日目以降に基礎となる培地中のピリドキサールがピリドキシンと交換され、ビタミンAがレチノールおよび酢酸レチニルの形態で添加される本発明のプロトコルC.2との間で定量化された。HPLC(Vanderbilt University)によって測定された、分化開始後の特定の日数で条件培地に分泌されるドーパミンおよびその代謝物の量についてのグラフを、
図6および
図7に示す。先ずプロトコルAを使用して、プライミング状態の幹細胞から始めて1cm
2あたり40万個の細胞密度でプレーティングし、ドーパミンとその代謝物の測定値は40日目で1.34ng/mL、60日目で13.4ng/mLであった(
図6A)。未処理状態の幹細胞に対しプロトコルAを使用すると、40日目に1.3ng/mL、60日目に5.85ng/mLを測定した(
図6のB)。これに対して、プライミング状態の幹細胞にプロトコルC.2を使用すると、ドーパミンおよびその代謝物の測定値は40日目で33.4ng/mL、60日目で15.6ng/mLであった(
図6のC)。未処理状態の幹細胞にプロトコルC.2を使用すると、ドーパミンおよびその代謝物の測定値は40日目で43.0ng/mL、60日目で54.1ng/mLであった(
図6のD)。プロトコルC.2を用いたときの40日目のドーパミンおよびその代謝物の分泌量は、プロトコルAを用いたときと比べて、プライミング状態の幹細胞を使用した場合は25倍すなわち2500%、未処理状態の幹細胞を使用した場合は33倍すなわち3300%増加する。
図7では、示されている60日目または40日目で様々な数の細胞から分泌されたドーパミンの量が、グラフ化されている。1cm
2あたり800,000個の密度でプレーティングされた未処理状態の幹細胞を使用すると、60日目、プロトコルC.2に従って分化された細胞は、プロトコルAに従って分化された同細胞に比べて約10倍のドーパミン(54ng/mL対5.8ng/mL)を産生した。そのうち半分の細胞を400,000個/cm
2でプレーティングすると、プロトコルC.2により分化された細胞は、プロトコルAにより分化された同細胞に比べて約2.0~2.6倍のドーパミンを産生した。現在の最先端技術、プライミング状態の細胞、およびプロトコルAに従って産生されたドーパミンの量(60日目で800K細胞から3ng/mL)と、本発明の組成物および方法、プロトコルC.2に従って未処理状態の幹細胞によって産生されたドーパミンの量(60日目で800K細胞から54ng/mL)とを比較すると、ナイーブ細胞およびプロトコルC.2では、最先端技術の18倍すなわち1800%多くのドーパミンが産生された。
【0083】
本発明の一態様では、プロトコルBは、分化プロトコルの20±3日目頃から、最終濃度が0.5uM~2.0uMになるまで添加されたレチノール、および最終濃度が0.1~1.5uMになるまで添加された酢酸レチニルが分化培地に補足されるように改変される。本発明の他の態様では、レチノールは最終濃度が0.7~1.2uMになるまで、酢酸レチニルは最終濃度が0.17~0.6uMになるまで添加される。本発明のさらに別の態様では、レチノールと酢酸レチニルの組合せは、組合せの最終濃度が1.0uM~2.5uMとなるように添加される。本発明のさらに別の態様では、組合せの最終濃度は1.33uMである。
【0084】
一態様では、ウシ血清アルブミンが添加される。他の態様では、ヒト血清アルブミンが添加される。さらに別の態様では、脂質に富んだヒト血清アルブミンは添加される。まだ別の態様では、Albumax、すなわち脂質に富んだウシアルブミンまたは同様の脂質に富んだヒトアルブミンが添加される。脂質に富んだアルブミンは、最終モル濃度が10.0uM~40.0uMになるまで添加される場合がある。最終モル濃度は10.0uM~15.0uMの場合がある。一態様では、ビタミンAおよび/またはその誘導体は、アルコール/水混合物に溶解され、真空下で蒸発ささると、薄膜を形成する。その後、この薄膜をBSAまたはHSAの溶液と37℃で30分間混合して、脂質を溶解させる。
【0085】
ビタミンCは、神経発達の後期に胎児の脳中、高レベルで発現される。ビタミンCはNurr1の発現上昇に関与することが報告されており、Nurr1は中脳の神経分化に重要で、ドーパミン作動性ニューロンの成熟に重要な因子となる可能性がある。本発明の一態様では、ビタミンC 2-ホスホ-L-アスコルビン酸三ナトリウム塩は、16日目~30日目頃に分化培地に添加され、40日目~60日目になり得る移植または最終試験の日まで継続される。本発明の他の態様では、ビタミンC 2-ホスホ-L-アスコルビン酸三ナトリウム塩は、20+/-3日目頃に分化培地に添加され、40日目~60日目になり得る移植または最終試験の日まで継続される。一態様では、ビタミンC 2-ホスホ-L-アスコルビン酸三ナトリウム塩は、最終濃度が40.0uM~100.0uMになるまで分化培地に添加される。他の態様では、ビタミンC 2-ホスホ-L-アスコルビン酸三ナトリウム塩は最終濃度が50.0uM~70.0uMになるまで添加される。さらに他の態様では、ビタミンC 2-ホスホ-L-アスコルビン酸三ナトリウム塩は最終濃度が60.0uM~65.0uMになるまで添加される。本発明の他の態様では、ビタミンCアスコルビン酸は、16日目~21日目頃に分化培地に添加され、40日目~60日目になり得る移植または最終試験の日まで継続される。本発明のさらに他の態様では、ビタミンCアスコルビン酸は、20+/-3日目頃に分化培地に添加され、40日目~60日目になり得る移植または最終試験の日まで継続される。一態様では、アスコルビン酸は、最終濃度が5.0uM~20.0uMになるまで分化培地に添加される。他の態様では、アスコルビン酸は最終濃度が10.0uM~15.0uMになるまで添加される。さらに他の態様では、アスコルビン酸は最終濃度が12.0uM~14.0uMになるまで添加される。
【0086】
本発明の一態様では、2-ホスホ-アスコルビン酸の形態にあるビタミンCは、最終濃度が25uM~100uMになるまで20日目頃に分化培地に添加される。本発明の他の態様では、ビタミンCは最終濃度が40~75uMになるまで添加される。好ましい実施形態では、ビタミンCは最終濃度が61uMになるまで添加される。本発明の一態様では、L-アスコルビン酸の形態にあるビタミンCは、最終濃度が1uM~120uMになるまで20日目頃に分化培地に添加される。本発明の他の態様では、ビタミンCは最終濃度が5~100uMになるまで添加される。好ましい実施形態では、ビタミンCは最終濃度が11uMになるまで添加される。好ましい実施形態では、ビタミンCの1つ以上の形態は、最終濃度が50~75uMになるまで20+/-3日目頃にプロトコルBの培地に添加される。より好ましい実施形態では、ビタミンCの2つの形態は、2-ホスホ-アスコルビン酸とL-アスコルビン酸である。
【0087】
本発明の一態様では、前述のビタミンは、脂質に富んだアルブミンとともに、所与の濃度で基礎となる神経培地に添加され、幹細胞にはドーパミン作動性ニューロンへの分化が行われ、この培地中で約16日目~30日目、具体的に20±3日目から、分化開始後30日目~60日目の間になり得る最終分化または移植の日まで培養される。
【0088】
分化幹細胞に添加されるとドーパミン作動性ニューロンへの分化を増加かつ促進させる主要なビタミン、その代謝物、および脂質に富んだアルブミンが発見されたことに加え、未処理状態の幹細胞の使用によりドーパミン作動性ニューロンへの分化がさらに増加かつ促進されることが発見された。
【0089】
好ましい実施形態では、幹細胞はプロトコルCに従ってドーパミン作動性ニューロンに分化される。
【0090】
より好ましい実施形態では、幹細胞は、プロトコルDに従ってドーパミン作動性ニューロンに分化され、このとき、好ましくはNME7-ABに培養されたナイーブ幹細胞である幹細胞は神経基礎となる培地中にあり、この培地は、20±3日目頃に、11uMのピリドキサールまたは20uMのピリドキサール-5’-ホスフェート、1.2uMのレチノール、および0.17uMの酢酸レチニルを脂質に富んだ製剤中で可溶化して添加し、61uMの2-ホスホ-アスコルビン酸と11uMのL-アスコルビン酸を添加することで補足される。
【0091】
本発明のさらに別の態様では、プロトコルB、プロトコルC、プロトコルC.2、またはプロトコルDを含む本発明のプロトコルは、NME7-ABを含有する多能性幹細胞培地で培養された多能性幹細胞に適用される。
【0092】
本発明のさらに別の態様では、プロトコルB、プロトコルC、プロトコルC.2、またはプロトコルDを含む本発明のプロトコルは、WNT3Aを含有する多能性幹細胞培地で培養された多能性幹細胞に適用される。
【0093】
本明細書に記載する最先端技術の改善点は、基礎となる神経分化培地に、様々な形態で特定の濃度の特定のビタミン、およびその他の因子を添加することである。本発明の一態様では、ビタミンA、ビタミンB、および/もしくはビタミンCの添加または濃度上昇は、分化の開始とともに始まり、分化過程全体にわたって継続される。本発明の他の態様では、それらは分化開始後16~30日目に添加され、細胞採取まで継続される。本発明のさらに他の態様では、それらは分化開始後18~23日目頃に添加され、細胞採取まで継続される。有効な一実施形態では、候補となる因子は20日目または21日目に添加された。ドーパミン作動性成熟因子であると見出されたこれらのビタミンA、B6、およびCは、Neural Basal Media(ThermoFisher),NeuroCult(StemCell Technologies)を含むがこれに限定されない、いくつかの異なる基礎的神経分化培地に添加することができる。
【0094】
本明細書に示す例の一部では、プロトコルA(
図1、実施例1)の基礎は、特定のビタミンが基礎となる神経分化培地に添加される20±3日目頃まで利用された。これらの因子を20±3日目頃に添加すると、生着率とドーパミン分泌量の上昇を含め、幹細胞由来のドーパミン作動性ニューロンの収量と機能性が大きく向上し、同時に、完全に機能的なドーパミン作動性ニューロンがin vitroで成熟することができた。
【0095】
神経変性障害、疾病、または傷害を処置する方法
【0096】
in vitroで分化されたドーパミン作動性ニューロンは、神経変性障害の処置に使用されてもよい。本明細書に明示される組成物と方法は、幹細胞から他のタイプのニューロンを生成するのに適用可能である。分化されたドーパミン作動性ニューロンは、中枢神経系でのドーパミン作動性ニューロンの生着成功により利益を得る神経変性疾患状態などの疾病の処置に使用されてもよい。脊髄などへの損傷によるものといった他の疾病の処置のために、本発明の方法を利用して幹細胞から他のタイプのニューロンを生成することができる。感覚ニューロン、運動ニューロン、または介在ニューロンなどのニューロンは、本発明の方法に従って幹細胞から生成される場合がある。これらのニューロンはさらに末梢神経損傷の処置に使用されてもよく、末梢神経損傷としては、神経の伸張、切断(裂傷)、圧迫、剪断、または圧壊による神経の全体または一部の切断が挙げられる場合がある。本開示の発明特定事項は、神経変性障害を処置する方法であって、神経変性障害を患っている対象に本開示の分化されたドーパミン作動性ニューロンを有効量で投与する工程を含む方法を提供する。
【0097】
神経変性障害の非限定的な例には、パーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー病、多発性硬化症が挙げられる。本明細書に記載されるプロトコルには、他の神経栄養ビタミンB群が追加される場合がある。例えば、多発性硬化症の処置用ニューロンが生成される際に、ミエリンの生成を補助するビタミンB12が分化培地に添加されてもよい。
【0098】
具体的には、神経変性疾患はパーキンソン病である。パーキンソン病の主な運動症状には、手、腕、脚、顎、および顔の振戦、運動の緩徐化もしくは緩慢化、四肢や躯幹の強直もしくは硬直、および姿勢の不安定、またはバランスや協調性の喪失などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
ある実施形態では、神経変性疾患はパーキンソン症候群病(parkinsonism disease)であり、動作を制御する脳の一部である基底核中のドーパミンが不足していることに関連する疾患を指す。ある実施形態では、症状として、振戦、運動緩徐化(運動の極端な緩慢化)、屈曲姿勢、姿勢の不安定、強直が挙げられる。パーキンソン症候群病の非限定的な例として、大脳皮質基底膜変性症、レビー小体型認知症、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺が挙げられる。
【0100】
本開示の分化されたドーパミン作動性ニューロンは、神経変性障害を処置または予防するために、対象に全身的にもしくは直接投与または提供される場合がある。ある実施形態では、本開示の分化されたドーパミン作動性ニューロンは、対象の器官(例えば、中枢神経系(CNS)や末梢神経系(PNS))に直接注射される。ある実施形態では、本開示の分化されたドーパミン作動性ニューロンは、線条体に直接注射される。
【0101】
本開示の分化されたドーパミン作動性ニューロンは、あらゆる生理学的に容認可能なビヒクルに入れて投与することができる。本開示の分化されたドーパミン作動性ニューロンと薬学的に許容可能なビヒクルとを含む医薬組成物も提供される。本開示の分化されたドーパミン作動性ニューロン、および当該細胞を含む医薬組成物は、局所注射、同所(OT)注射、全身注射、静脈内注射、または非経口投与によって投与できる。ある実施形態では、本開示の分化されたドーパミン作動性ニューロンは、神経変性障害を患っている対象に同所(OT)注射を介して投与される。
【0102】
本開示の分化されたドーパミン作動性ニューロン、および当該細胞を含む医薬組成物は、滅菌液体製剤、例えば、等張水溶液、懸濁液、乳濁液、分散液、または粘性組成物として提供するのが都合の良い可能性があり、これらは選択されたpHにまで緩衝化される場合がある。液体調製物は、通常、ゲル、その他の粘性組成物、および固形組成物よりも調製が容易である。さらに、液体組成物は、特に注射によって投与する方が、幾分都合が良い。一方、粘性組成物は、特定の組織との接触期間を更に長くするために、適切な粘度範囲内で製剤化することができる。液体または粘性組成物は担体を含むことができ、この担体は、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物を含有する溶媒または分散媒とすることができる。滅菌注射溶液は、本開示の発明特定事項の組成物、例えば、本開示の分化されたドーパミン作動性ニューロンを含む組成物を、所望により様々な量の他の成分を含む必要量の適切な溶媒に取り込むことによって調製することができる。そのような組成物は、滅菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロースなどの適切な担体、希釈剤、または賦形剤と混和されてもよい。組成物は、さらに凍結乾燥することもできる。組成物は、投与経路および所望の調製物に応じて、湿潤剤、分散剤、乳化剤(例えば、メチルセルロース)、pH緩衝剤、ゲル化または粘度上昇添加剤、防腐剤、香料、着色料などの補助物質を含有できる。「REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCE」の1985年の第17版などの、参照により本明細書に援用される標準テキストは、過度の実験を必要とすることなく適切な調製物を調製するために閲覧される場合がある。
【0103】
抗菌防腐剤、抗酸化剤、キレート剤、緩衝液を含む、組成物の安定性や無菌性を増強する各種添加剤を添加することができる。微生物作用の防止は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などの様々な抗菌剤および抗真菌剤によって確実にすることができる。注射可能な医薬品形態の長期間吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムやゼラチンを使用することによってもたらすことができる。しかし、本開示の発明特定事項によれば、使用されるいずれかのビヒクル、希釈剤、または添加剤が、本開示の分化されたドーパミン作動性ニューロンと適合可能でなければならない。
【0104】
組成物の粘度は、所望により、薬学的に許容可能な増粘剤を使用して、選択されたレベルに維持することができる。容易にかつ経済的に入手可能であり、ともに作用するのが容易であるという理由で、メチルセルロースが使用できる。他の適切な増粘剤として、例えば、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマーなどが挙げられる。増粘剤の濃度は、選択される薬剤に左右され得る。重要な点は、選択された粘度を達成する量を使用することである。適切な担体および他の添加剤の選択は、正確な投与経路、および特定の剤形、例えば、液体剤形の性質(例えば、組成物が溶液、懸濁液、ゲル、または時間放出形態や液体充填形態などの別の液体形態に製剤化される否か)に依存するであろう。
【0105】
当業者は、組成物の成分が化学的に不活性であるように選択されるべきであり、本開示の分化されたドーパミン作動性ニューロンの生存率または効力に影響を与えないことを認識するであろう。このことは、化学的および薬学的専門分野の当業者にとって、本開示および本明細書に引用された文書から、標準的なテキストを参照することによって、または(過度の実験を伴わない)簡単な実験によって、問題を容易に回避することができるであろう。
【0106】
ある非限定的な実施形態では、本明細書に記載される細胞および前駆体は、生体適合性スキャフォールドまたはマトリックス、例えば、細胞が対象に移植または生着されたときに組織再生を促進する生体適合性3次元スキャフォールドをさらに含む組成物中に構成される。ある非限定的な実施形態では、生体適合性スキャフォールドは、細胞外マトリックス材料、合成高分子、サイトカイン類、コラーゲン、ポリペプチドまたはタンパク質、フィブロネクチン、ラミニン、ケラチン、フィブリン、フィブリノーゲン、ヒアルロン酸、ヘパリン硫酸、コンドロイチン硫酸、アガローズまたはゼラチンを含む多糖類、および/またはヒドロゲルを含む。(例えば、米国公報第2015/0159135号、第2011/0296542号、第2009/0123433号、第2008/0268019号を参照、これらの各内容は参照によりその全体が組み込まれる。)ある実施形態では、組成物は、移植/生着された細胞の中脳DA細胞への成熟を促進するための成長因子をさらに含む。
【0107】
本開示の分化されたドーパミン作動性ニューロンの治療用使用に関する一つの考察は、最適な効果を達成するために必要な細胞の量である。最適な効果は、神経変性障害を患う対象のCNSおよび/またはPNS領域の再増殖、および/または対象のCNSおよび/またはPNSの機能向上を含むが、これらに限定されない。
【0108】
ある実施形態では、本開示の分化されたドーパミン作動性ニューロンの有効量は、神経変性障害を患っている対象のCNSおよび/またはPNS領域を再増殖させるのに十分な量である。ある実施形態では、本開示の分化されたドーパミン作動性ニューロンの有効量は、神経変性障害を患っている対象のCNSおよび/またはPNSの機能を改善するのに十分な量であり、例えば、改善された機能は、正常者のCNSおよび/またはPNSの機能の約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約98%、約99%または約100%になり得る。
【0109】
投与される細胞の量は、処置される対象によって変動する。ある実施形態では、約1×104~約1×1010、約1×104~約1×105、約1×105~約1×109、約1×105~約1×106、約1×105~約1×107、約1×106~約1×107、約1×106~約1×108、約1×107~約1×108、約1×108~約1×109、約1×108~約1×1010、または約1×109~約1×1010の本明細書に開示される分化されたドーパミン作動性ニューロンは対象に投与される。ある実施形態では、約1×105~約1×107の本開示の分化されたドーパミン作動性ニューロンは、神経変性障害を患う対象に投与される。ある実施形態では、約1×106~約1×107の本開示の分化されたドーパミン作動性ニューロンは、神経変性障害を患う対象に投与される。有効量とみなされるものの厳密な決定は、特定の対象のサイズ、年齢、性別、体重、状態など、各対象に個別の要因に基づく場合がある。投与量は、本開示および当業者の知識から当業者が容易に把握することができる。
【実施例】
【0110】
実施例1―プロトコルA
【0111】
プロトコルAでは、細胞を、Geltrex被覆されたプレート上に、NeuroBasal培地(Thermo Fisher # 21103049)、ビタミンAなしのB-27(Thermo Fisher #12587010)、N2サプリメント(Stem Cell Technologies #07156)、2mMGlutamax(Thermo Fisher #35050061)、250nM LDN193189(Selleck Chemicals #S7507)、10.8μM SB431542(Selleck Chemicals #S1067)、500ng/mlのSHH(R&D Systsems # 464-SH-200)、0.7μM CHIR99021(R&D Systems #4423)、10μM Y27632(Selleck Chemicals #S1049)、中に蒔いた。1日目および3日目に、培地を、ビタミンAなしのB-27、N2サプリメント、2mMGlutamax、250nM LDN193189、10.8μM SB431542、500ng/mlのSHH、0.7μM CHIR99021を含有する新鮮なNeuroBasal培地に交換した。4日目および6日目に、培地を、ビタミンAなしのB-27、N2サプリメント、2mMGlutamax、250nM LDN193189、10.8μM SB431542、500ng/mlのSHH、7.5μM CHIR99021を含有すると新鮮なNeuroBasal培地に交換した。7日目および9日目に、培地は、ビタミンAなしのB-27、N2サプリメント、2mM Glutamax、7.5μM CHIR99021を含有している新鮮なNeuroBasal培地に交換した。10日目に、培地を、ビタミンAなしのB-27、2mM Glutamax、3μM CHIR99021、20ng/mLのBDNF(Peprotech #450-02)、200nM アスコルビン酸(Sigma Aldrich #A4403)、20ng/mLのGDNF(Peprotech #450-10)、1ng/mLのTGFβ3(Peprotech #100-36E)、500nM cAMP(Peprotech #1698950)を含有している新鮮なNeuroBasal培地に交換した。11日目に、細胞を、15μgのポリL-オルニチン(Sigma Aldrich #P4957)/1μgのラミニン(Sigma Aldrich #L2020)/1μgのフィブロネクチン(Thermo Fisher #33016-015)によって被覆されたプレート上に、10μM Y27632を備えた10日目の培地に再度蒔いた。12~60日目に、培地を、ビタミンAなしのB-27、2mM Glutamax、20ng/mLのBDNF、200nM アスコルビン酸、20ng/mLのGDNF、1ng/mLのTGFβ3、500nM cAMP、10μM DAPT(Selleck Chem #S2215)を含有しているNeuroBasal培地に毎日取り換えた。
【0112】
NeuroBasal培地(Thermo Fisher #21103049)は、グリシン、L-アラニン、L-アルギニン塩酸塩、L-アスパラギン-H2O、L-システイン、L-ヒスチジン塩酸塩-H2O、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リジン塩酸塩、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-セリン、L-スレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、L-バリンのアミノ酸、0.028571420mM 塩化コリン、0.008385744mM Dパントテン酸カルシウム、0.009070295mM 葉酸、0.032786883mM ナイアシンアミド、0.019607844mM 塩酸塩ピリドキサール、0.0010638298mM リボフラビン、0.011869436mM 塩酸塩チアミン、5.0184503E-6mM ビタミンB12、0.04mM i-イノシトールのビタミン群、塩化カルシウム(CaCl2)(無水)、硝酸鉄(III)(Fe(NO3)3”9H2O)、塩化マグネシウム(無水)、塩化カリウム(KCl)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、塩化ナトリウム(NaCl)、リン酸ナトリウム一塩基(NaH2PO4-H2O)硫酸亜鉛(ZnSO4-7H2O)の無機塩類、その他の成分としてD-グルコース(デキストロース)、HEPES、フェノールレッド、ピルビン酸ナトリウムを含有するように示される。
【0113】
実施例2-プロトコルAにビタミンB6の形態を添加する効果の調査
【0114】
この一連の実験では、20日目頃からスタートして、10uMピリドキサール、1.2uMレチノールおよび0.17uM酢酸レチニルを含有している基礎となる神経培地を使用していた。増加したレベルの様々なビタミンBを、宿主脳中への移植は生着が増大させることを研究者が発見した時点である20日目頃に添加した。20日目+/-3に、5~25uMの間の最終濃度になるまでのピリドキシン、5~20uMの間の最終濃度になるまでのピリドキサール、10~40の間の最終濃度になるまでの生体活性形態のピリドキサール-5’-ホスフェート、または、組み合わせた3つのすべてのビタミンBを添加した。ピリドキシンの最適濃度が約10~20uMであることは経験的に決定した。
図12のA~Kは、16uMの最終濃度になるまでに添加されたピリドキシンの効果を示す。ピリドキサールの最適濃度が約5~20uMであることは経験的に決定した。
図13のA~Kは、11uMの最終濃度になるまでに添加されたピリドキサールの効果を示す。ピリドキサール-5’-ホスフェートの最適濃度が約10~40uMであることは経験的に決定した。
図14のA~Kは、20uMの最終濃度になるまでに添加されたピリドキサール-5’-ホスフェートの効果を示す。
図15のA~Kは、ともに添加された3つのすべてのビタミンBの効果を示す。
【0115】
実施例3-プロトコルB
【0116】
実施例2の結果に基づいて、20日目頃に添加するビタミンB6の種類および濃度を制限し、次に、純度/収量、生着率、または幹細胞由来のドーパミン作動性ニューロンが分泌するドーパミン量を改善する可能性のあるビタミンAの種類および濃度を検討することができるようにした。
【0117】
プロトコルBでは、細胞を、Geltrex被覆されたプレート上の、NeuroBasal培地、ビタミンAなしのB-27、N2サプリメント、2mM Glutamax、250nM LDN193189、10.8μM SB431542、500ng/mlのSHH、0.7μM CHIR99021、10μM Y27632、中に蒔いた。1日目および3日目に、培地を、ビタミンAなしのB-27、N2サプリメント、2mMGlutamax、250nM LDN193189、10.8μM SB431542、500ng/mlのSHH、0.7μM CHIR99021を含有すると新鮮なNeuroBasal培地に交換した。4日目および6日目に、培地を、ビタミンAなしのB-27、N2サプリメント、2mMGlutamax、250nM LDN193189、10.8μM SB431542、500ng/mlのSHH、7.5μM CHIR99021を含有する新鮮なNeuroBasal培地に交換した。7日目および9日目に、培地は、ビタミンAなしのB-27、N2サプリメント、2mM Glutamax、7.5μM CHIR99021を含有している新鮮なNeuroBasal培地に交換した。10日目に、培地を、ビタミンAなしのB-27、2mM Glutamax、3μM CHIR99021、20ng/mLのBDNF(Peprotech #450-02)、200nM アスコルビン酸(Sigma Aldrich #A4403)、20ng/mLのGDNF(Peprotech #450-10)、1ng/mLのTGFβ3(Peprotech #100-36E)、500nM cAMP(Peprotech #1698950)を含有している新鮮なNeuroBasal培地に交換した。11日目に、細胞を、15μgのポリL-オルニチン(Sigma Aldrich #P4957)/10μgのラミニン(Sigma Aldrich #L2020)/1μgのフィブロネクチン(Thermo Fisher #33016-015)によって被覆されたプレート上の、10μM Y27632を備えた10日目の培地に再度蒔いた。12~20日目に、培地を、ビタミンAなしのB-27、2mM Glutamax、20ng/mLのBDNF、200nM アスコルビン酸、20ng/mLのGDNF、1ng/mLのTGFβ3、500nM cAMP、10μM DAPT(Selleck Chem #S2215)を含有しているNeuroBasal培地に毎日取り換えた。21~60日目に、または細胞採取まで、培地を、ビタミンAなしのB-27、2mM Glutamax、20ng/mLのBDNF、200nM アスコルビン酸、20ng/mLのGDNF、1ng/mLのTGFβ3、500nM cAMP、10μM DAPT、プラス11μMピリドキサール(Sigma Aldrich P1930)を含有しているNeuroBasal培地に毎日取り換えた。
【0118】
実施例4-プロトコルBに様々な形態のビタミンAを添加する効果を検討する
【0119】
プロトコルBに従って分化の20日目に、または20日目頃、様々な形態のビタミンAを濃度範囲にわたって添加した。レチノールを、20日目頃から0.1~1.5uMの濃度範囲で添加した。酢酸レチニルを、20日目頃から0.1~1.5uMの濃度範囲で添加した。9-シス、13-シス、および/またはオール-トランス型のレチノイン酸を、個別にまたはともに添加されたとしても、最終濃度が約1.5~2.0uMになるまで添加した。結果は
図18~
図23として示される。経験的に、ドーパミン作動性ニューロンの分化に最適な条件は、20日目以降にレチノールと酢酸レチニルをともに組合せの最終濃度2uM程度まで添加することであると決定した。
【0120】
実施例5-プロトコルBに、ビタミンCを追加するまたは追加することなく、脂質に富んだ製剤中に可溶化された様々な形態のビタミンAを添加する効果を検討する
【0121】
ビタミンAは極めて不溶性であることが知られている。したがって、脂質に富んだ製剤中に可溶化された後、ビタミンAの様々な形態を添加することを試験した。ビタミンAを、2mg/mLのBSA、またはヒト血清アルブミンに置換され得るAlbumax中に可溶化することを試験した。可溶化されたビタミンAの様々な形態を添加することに加えて、2-ホスホ-アスコルビン酸またはL-アスコルビン酸の形態のビタミンCをさらに添加することを試験した。これらの試験の結果は、
図24~
図27に示される。
【0122】
実施例6-プロトコルC
【0123】
プロトコルCでは、その11日目に、分化する細胞が再度蒔かれる表面が1ug/mLの代わりに10ug/mLのラミニンを含むという例外を除いて、プロトコルAに20日目+/-3日までに従った。プロトコルCに応じて、20日目頃、培地を、16uMでのピリドキシン、11uMでのピリドキサール、20uMでのピリドキサール-5’-ホスフェートのいずれかの形態、またはそれらすべてを合わせたビタミンB6、およびレチノール0.7~1.2uMと酢酸レチニル0.17~0.6uM、またはそれぞれが0.446uMでの9-シスレチノイン酸と13-シスレチノイン酸とオールトランス型レチノイン酸、あるいはオールトランス型レチノイン酸1.33uMの形態のビタミンA、および2-ホスホ-アスコルビン酸61uMとL-アスコルビン酸110uMの形態のビタミンCで補足した。
【0124】
実施例7―プロトコルC.2
【0125】
プロトコルC.2では、その11日目に、分化する細胞が再度蒔かれる表面が1ug/mLの代わりに10ug/mLのラミニンを含むという例外を除いて、プロトコルAに20日目+/-3日までに従った。プロトコルC.2に従って、20日目頃に、神経基礎となる培地を、ピリドキサールを含有することなく、代わりにピリドキシンの形態のビタミンB6を16uM、レチノール1.2uMおよび酢酸レチニル0.17uMの形態のビタミンAを含有するものに交換する。
【0126】
実施例8-プロトコルD
【0127】
プロトコルDでは、その11日目に、分化する細胞が再度蒔かれる表面が1ug/mLの代わりに10ug/mLのラミニンを含むという例外を除いて、プロトコルAに20日目+/-3日までに従った。プロトコルDに応じて、20日目頃から続けて、培地を、11uMでのピリドキサール、1.2uMでのレチノールならびに0.17uMでの酢酸レチニル、および61uMでの2-ホスホ-アスコルビン酸ならびに11uMでのL-アスコルビン酸の形態のビタミンCで補足した。プロトコルC.2に従ってドーパミン作動性ニューロンに分化された幹細胞の定量化に関しては、
図3~
図10を参照する。
【0128】
当業者は、本明細書に特定に記載された特定の本発明の実施形態に対する多くの同等物を認識するか、または日常的な実験以上のことを用いずに、上記同等物を確認することができるであろう。そのような同等物は、請求項の範囲に包含されることが意図される。
【国際調査報告】