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特表2023-534626プログラム可能な水溶性を有する共重合体
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  • 特表-プログラム可能な水溶性を有する共重合体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-10
(54)【発明の名称】プログラム可能な水溶性を有する共重合体
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/20 20060101AFI20230803BHJP
【FI】
C08J3/20 Z CES
C08J3/20 CEX
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580373
(86)(22)【出願日】2021-02-02
(85)【翻訳文提出日】2023-02-24
(86)【国際出願番号】 US2021016149
(87)【国際公開番号】W WO2021262254
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】16/913,483
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522499221
【氏名又は名称】タイムプラスト,エルエルシー
【住所又は居所原語表記】1844 Longwood Lake Mary Rd #1080 Longwood,FL 32750(USA)
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レンドン,マニュエル
【テーマコード(参考)】
4F070
【Fターム(参考)】
4F070AA13
4F070AA26
4F070AB11
4F070FA17
4F070FB09
(57)【要約】
共重合体組成物は、LDPEをヘプタン浴中に浸漬し、上記LDPEが上記ヘプタン浴中に溶け出し、水のような溶液が生じるまで上記ヘプタン浴を加熱することを含む第1の工程を有する方法を含む。第2の工程は、上記水のような溶液を沈殿させ、上記水のような溶液内に上記PEワックスを形成することを含む。第3の工程は、上記水のような溶液をろ過および蒸留し、上記PEワックスを上記ヘプタン浴から分離することを含む。第4の工程は、上記PEワックスを液体担体中に分散させ、複合物を生じさせることを含む。第5の工程は、押出プロセスの間に、上記複合物をPVAに導入することによって、上記PEワックスを上記LDPEに重合し、均質な共重合体混合物を生じさせることを含む。第6の工程は、上記均質な混合物の水溶性をプログラミングする。湿気のある状態で一定の時間にわたりプログラム可能な水溶性、保管寿命安定性、および品質を有する共重合組成物が生じる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共重合体組成物の生成方法であって、
a)低密度ポリエチレンLDPEをヘプタン浴中に浸漬し、前記LDPEが前記ヘプタン浴中に溶け出し、水のような溶液が生じるまで前記ヘプタン浴を加熱する工程と、
b)前記水のような溶液からPEワックスを沈殿させることによって、前記水のような溶液内に前記PEワックスを形成する工程と、
c)前記水のような溶液をろ過および蒸留し、それによって、前記PEワックスを前記ヘプタン浴から分離する工程と、
d)前記PEワックスを液体担体中に分散させ、複合物を生じさせる工程と、
e)押出プロセスの間に、前記複合物をポリビニルアルコールPVAに導入することによって、前記PEワックスを前記LDPEに再重合し、均質な共重合体混合物を生じさせる工程と、
f)前記PEワックスのレットダウン比率(letdown ratio)を変えることによって、前記均質な共重合体混合物の水溶性をプログラミングする工程とを含み、前記均質な共重合体混合物が前記共重合体組成物として定義される、共重合体組成物の生成方法。
【請求項2】
前記ヘプタン浴が155℃~255℃の間の温度で維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記LDPEが前記ヘプタン浴内に15~30分間の間浸漬される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記PEワックスが細かな白色粉末形状である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上記細かな白色粉末が溶融時に粘着性の濁った液体を形成する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記液体担体が合成または天然であり、さらに、前記液体担体が高い煙点を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記均質な共重合体混合物の水溶性が、用いられる前記PEワックスの量に比例する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記均質な共重合体混合物がプログラム可能な保管寿命および短い環境寿命を有する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本発明は、共重合体組成物、より具体的には、プログラム可能な水溶性を有する共重合体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術の説明
水溶性共重合体組成物の設計はいくつか過去に行われている。しかし、これらはいずれも、湿気または液体のある状態で一定の時間にわたり、共重合体の保管寿命、市場で期待される品質、および安定性の維持を可能にする、プログラム可能な水溶性を有する環境に優しい均質な混合物である共重合体組成物を対象としていない。さらに、共重合体組成物の老朽時間は、共重合体鎖における非水溶性アップサイクル樹脂(up-cycled resin)の量を変えることによって水溶性プログラマビリティを通じて操作され、共重合体の有用性および機能性が向上する。加えて、共重合体組成物は、2つの重合体を組み合わせるときの、典型的な混合性の問題を回避する。混合性の問題は、低密度ポリエチレン(LDPE)の粒子径および分子量を重合体の均一な混合を可能にするのに十分な程度まで下げると同時に、製造中に重合体を共重合体として再度LDPEへと重合するのに適切な分子量を維持する解重合の事前プロセスを通じて、2つの重合体のうちの1つをポリエチレン(PE)ワックスとして分子的に見せかけることによって2つの重合体を組み合わせる際に生じる。LDPEの最終的な量は、共重合体組成物の大半が依然として水溶性かつ環境に優しいままとなるように、最小である。
【0003】
本出願人によれば、関連する引用文献は、溶融押出可能なポリビニルアルコール組成物に関する、James Newton Cokerに対して交付された特許文献1に対応する。しかし、Cokerの引用文献では押出プロセスを向上させるためにワックスを使用するが、水溶性プログラマビリティが向上した共重合体はCokerの技術では作製されないため、この米国特許は本発明とは異なる。本出願人によれば、別の関連する引用文献は、ポリオレフィンとポリビニルアルコールとの組成物、当該組成物から処理されるフィルム、シート、ならびに当該組成物を使用する多層体に関する、Dong Kweon Leeに対して交付された特許文献2に対応する。しかし、Leeの技術で作製される共重合体の大半は、本発明とは異なり一般的なプラスチックや非水溶性プラスチックを用いて生成されるため、この米国特許は本発明とは異なる。したがって、環境に優しくない共重合体混合物が生じる。加えて、Leeの引用技術では、本発明のように分子多層体が生成されず、共重合体が均一にならない。Leeの技術で均一な共重合体が欠如していることは、生成された共重合体混合物が、中に含まれる各重合体と同じ品質を含んでいないことを意味する。Leeの引用文献では、本発明の混合物のような均質な混合物の代わりに、プラスチック混合が得られる。
【0004】
最も近い主題を記載する他の文献では、効率的かつ経済的に課題を解決することができない、多少複雑な特徴がいくつか提供されている。これらの特許はいずれも、本発明の新たな特徴を示唆していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第3997489号
【0006】
【特許文献2】米国特許第6544661号
【発明の概要】
【0007】
プログラム可能な水溶性を有する共重合体組成物を提供することは、本発明の目的のうちの一つである。
【0008】
湿気または液体のある状態で一定の時間にわたり、品質を維持する共重合体組成物を提供することは、本発明のもう一つの目的である。
【0009】
均質かつ均一な共重合体組成物を提供することは、本発明のさらにもう一つの目的である。
【0010】
効果を保つと同時に、安価に実施および維持することができるようなデバイスを提供することは、本発明のさらにもう一つの目的である。
【0011】
本発明のさらなる目的は、本明細書の以下の部分において明らかにされ、詳細な説明は、制限を設けることなく本発明を完全に開示することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
上記および他の関連目的を考慮すると、本発明は、添付の図面と合わせて読まれたときに、以下の記載からより完全に理解される部品の構造および組み合わせの詳細からなる。
図1図1は、ポリビニルアルコール(PVA)および低密度ポリエチレン(LDPE)から共重合体を作製するのに必要な工程のフローチャートを表す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここで図面を参照すると、本発明は、概して符号10で示され、共重合体組成物10および共重合体組成物を作製するための方法20を基本的に含むことを観察することができる。
【0014】
共重合組成物10は、好ましくは、ポリビニルアルコール(PVA)および低密度ポリエチレン(LDPE)を含む。個々の各重合体は、適用を成功させ、有用なものにすることができる特性を含む。PVAの所望の特性は水溶性であることである。LDPEの所望の特性は、保管寿命の安定性、および、湿気のある状態で品質を維持することである。したがって、PVAおよびLDPEの特性を組み合わせることは非常に有益であり得る。しかし、PVAとLDPEなどの化石資源ベースの重合体との混合は、分子混和性、安定性、および混合物から生成される非均質的な共重合体が生じる可能性に関する課題により、難題であることが証明されている。よって、本発明は、LDPEをその完全に重合化された形状で使用しない方法20を用いてそのような問題をいずれも克服する。
【0015】
方法20は、LDPEをヘプタン浴中に浸漬する第1の工程22を含む。ヘプタン浴を155℃~255℃の間の温度におく必要がある場合がある。LDPEをヘプタン浴内に15~30分の間浸漬する必要がある場合がある。好ましくは、LDPEは、ヘプタン浴中に完全に溶解して、水のような透明な溶液が生じるまで、ヘプタン浴に浸漬されたままであってもよい。
【0016】
第2の工程24において、工程22から生じる水のような透明な溶液は冷却される。水のような透明な溶液は、その後、LDPEの解重合化された形状である、ポリエチレンワックスまたはPEワックス中に沈殿する。一定の時間の後、PEワックスは、水のような透明な溶液の底で成形し始める。
【0017】
水のような透明な溶液は、第2の工程24の後、白色溶液となると理解される。第3の工程26において、白色溶液のろ過および蒸留が行われる。白色溶液のろ過によって、ヘプタンからより濃度の高い白色溶液が分離される。より濃度の高い白色溶液は、蒸留を経てもなお残存するヘプタンを取り除くために、70℃で加熱され、非常に細かな白色粉末が生じることがある。非常に細かな白色粉末は、特定の種類のワックス、例えば、PEワックスであると理解される。PEワックスは第2の工程24のものでもよい。白色粉末は、溶融時に粘着性の濁った液体を形成するのを助ける。非常に細かな白色粉末は、好ましくは、単色顔料(solid color pigment)の粒径を有し得る。この粒径は、方法20の後の工程で、PVAが水溶性の用途のために用いられる押出プロセスにおいて、非常に細かな白色粉末が容易かつ均質に吸収され、着色剤に見せかけることを可能にする程度に小さい。
【0018】
第4の工程28において、第3の工程26からの白色粉末は液体担体において分散される。液体担体は、合成または天然であり、高い煙点を有してもよい。液体担体において分散される白色粉末によって、押出の間に用いることができる複合物が生じる。
【0019】
非常に細かな白色粉末は、粒径が小さいものの分子量が高い状態で維持することによって、重要なことに重合の間際で作製されたと理解され、よって、白色粉末は、PVAと結合し、LDPE-PVA共重合体となる前に、追加の融点に達する必要がある。第5の工程32において、第4の工程28において生じた複合物は、PVAとともに押出プロセスに導入される。その結果、PVAとPEワックスの両方を含む均質な混合物を作製するために、着色顔料のように見せかけられた、PEワックスを受けるように作られた重合体鎖が生じる。押出プロセスの間の熱および圧力は、PEワックスまたは白色粉末をLDPEに再重合する。PVA内で、白色粉末に前もって力がかけられることによって、共重合体マトリックスが生じる。共重合体マトリックスは、PVAまたは共重合体組成物10を含む実質的なLDPEとなる。
【0020】
第6の工程34において、結果として生じる共重合体組成物の水溶性は、プログラミングされ、PEワックスのレットダウン比率(letdown ratio)を変えることによって操作される。水溶性は、共重合体の水溶性が押出の間に用いられるPEワックスの量に比例するため、プログラミングすることができる。さらに、以下の関数を用いて水溶性を評価することも可能な場合がある。F(LDPE)=PVA-共重合体組成物。第4の工程28からの複合物の0.1から0.5%のレットダウン比率で開始する場合、5%から10%の水溶性の減少が達成されるが、結果として生じる材料または共重合体は99.5%から99.9%水溶性のままである。特定の保管寿命を要する特定の単一使用製品については、より高いレットダウン比率が必要とされ得ると理解される。より高いレットダウン比率にもかかわらず、プログラム可能な保管寿命、有用な寿命、およびより短い環境寿命のすべてを同時に達成するために、水溶性は高いままである。
【0021】
以上の説明は、本発明の目的および利点の最良の理解を伝える。本発明の発明的概念から様々な実施形態がもたらされ得る。本明細書において開示されるすべての事項は単に例示的に解釈され、限定的な意味では解釈されないと理解される。
【産業上の利用可能性】
【0022】
共重合体組成物を生成するための方法は、産業上の利用可能性のためのいくつかの実施を有する。共重合体は均質かつ均一である。重要な点は、共重合体組成物がプログラム可能な水溶性を有することである。さらに、共重合体組成物は、湿気のある状態であっても、一定の時間にわたり、その品質を維持することができる。方法は、低密度ポリエチレン(LDPE)をヘプタン浴中に浸漬する第1の工程を含む。ヘプタン浴は、その後、LDPEがヘプタン浴中に溶け出し、水のような溶液が生じるまで加熱される。方法は、その後、水のような溶液中にPEワックスを形成するために、水のような溶液を沈殿させることを含む第2の工程を含む。方法は、その後、PEワックスをヘプタン浴から分離するための、水のような溶液のろ過および蒸留を含む第3の工程を含む。第4の工程において、PEワックスは液体担体において分散され、複合物が生じる。方法は、PEワックスのLDPEへの重合が起こる第5の工程を含む。これは、第4の工程から生じる複合物を、押出プロセスの間にポリビニルアルコール(PVA)に導入することによって完遂される。第5の工程が完了すると、均質な混合物が生じる。方法は、均質な混合物の水溶性をプログラミングする工程を含む第6の工程を含む。方法により、湿気のある状態で一定の時間にわたり、プログラム可能な水溶性、保管寿命、および品質を有する共重合体組成物がもたらされる。
図1
【国際調査報告】