IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ レスメド・アジア・プライベート・リミテッドの特許一覧

特表2023-534630酸素濃縮器における動作を制御するための方法及び装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-10
(54)【発明の名称】酸素濃縮器における動作を制御するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/10 20060101AFI20230803BHJP
   C01B 13/02 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
A61M16/10 B
C01B13/02 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022581639
(86)(22)【出願日】2021-06-15
(85)【翻訳文提出日】2023-02-28
(86)【国際出願番号】 SG2021050345
(87)【国際公開番号】W WO2022005388
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】62/705,499
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522043172
【氏名又は名称】レスメド・アジア・プライベート・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】RESMED ASIA PTE. LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(72)【発明者】
【氏名】ナヴァーロ,レックス,デール
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ジェイソン,ユーチェン
(72)【発明者】
【氏名】ミアラリプール,シャヤン
【テーマコード(参考)】
4G042
【Fターム(参考)】
4G042BA14
4G042BB02
4G042BC04
(57)【要約】
本発明の方法および装置は、動的圧力インバランスまたは他の空気圧特性など、濃縮器のキャニスター間の空気圧インバランスを低減する制御を実施するとともに、酸素濃縮器において酸素富化空気の制御された生成を実施し得る。1つ以上のコントローラは、濃縮器のキャニスターに加圧空気流を供給する圧縮機の動作を調整し得る。これによって、圧縮機の速度が、加圧流を生成するための速度設定点に調整され得る。調整は、電力パラメータなどの特性パラメータを有する圧縮機制御信号を生成することを含み得る。コントローラは、アキュムレータ内に酸素富化空気を生成するために、バルブをサイクリックパターンで動作させ得る。サイクリックパターンのサイクルは、複数のフェーズを含み得、複数のフェーズの各々は、期間を有する。コントローラはその後、特性パラメータの評価に基づいて、期間に対する動的調整を生成し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧空気流を生成するように構成される、圧縮機と、
それぞれが、前記加圧空気流から成分ガスを優先的に吸着するように構成される吸着材を含むことによって、前記加圧空気流から酸素富化空気を生成する、少なくとも2つのキャニスターと、
1つ以上のバルブであって、
前記加圧空気流を前記キャニスターに選択的に供給するために、前記圧縮機を各キャニスターに選択的に空気圧連結し、
各キャニスターを大気中に選択的に通気させるように構成される、1つ以上のバルブと、
生成された前記酸素富化空気を受け入れるように空気圧連結される、アキュムレータと、
前記1つ以上のバルブおよび前記圧縮機に動作可能に連結される1つ以上のコントローラであって、
前記加圧空気流を生成しながら、前記圧縮機の速度を速度設定点に調整するステップであって、前記調整が、特性パラメータを有する圧縮機制御信号を生成することを含む、ステップと、
前記アキュムレータ内に酸素富化空気を生成するために、サイクリックパターンで前記1つ以上のバルブを選択的に動作させるステップであって、前記サイクリックパターンのサイクルが複数のフェーズを含み、前記複数のフェーズの各々が期間を含む、ステップと、
前記特性パラメータの評価に基づいて、前記期間のうちの1つ以上に対する動的調整を生成するステップであって、前記動的調整が、前記キャニスター間の空気圧特性の動的インバランスを低減する、ステップと、
を実行するように構成される、1つ以上のコントローラと、
を含む、酸素濃縮器。
【請求項2】
前記1つ以上のコントローラが、前記1つ以上の期間に対する前記動的調整を生成するように構成されるインバランス制御システムを含み、前記インバランス制御システムが、
サンプラであって、
1つのサイクルにわたる前記特性パラメータの1つ以上の値のサンプリング、および、
前記サンプリングされた値に基づくインバランスのメジャーの計算、
を実行するように構成されるサンプラと、
前記インバランスのメジャーから少なくとも1つのフェーズ期間調整を計算するように構成されるインバランスコントローラと、
を含む、請求項1に記載の酸素濃縮器。
【請求項3】
前記インバランスコントローラが、前記インバランスのメジャーとインバランス目標値との比較に基づいて、前記少なくとも1つのフェーズ期間調整を計算するように構成される、請求項2に記載の酸素濃縮器。
【請求項4】
前記比較が、前記インバランスのメジャーと前記インバランス目標値との差を含む、請求項3に記載の酸素濃縮器。
【請求項5】
前記インバランスコントローラが、比例積分微分(PID)又は比例積分(PI)コントローラである、請求項2から4のいずれか一項に記載の酸素濃縮器。
【請求項6】
前記サンプラが、前記インバランスのメジャーを、
連続的な半サイクルの各サンプリング点におけるサンプル値の間の1つ以上の差、および、
連続的な半サイクルの各サンプリング点におけるサンプル値の間の1つ以上の比率
のうちの1つ以上を含むベクトルとして計算するように構成される、請求項2から5のいずれか1項に記載の酸素濃縮器。
【請求項7】
前記サンプリング点が、前記サイクルのフェーズ転移と一致する、請求項6に記載の酸素濃縮器。
【請求項8】
前記サンプラがさらに、サンプリング点における各サンプル値を、前記サンプリング点までの複数のサンプル値から算出するように構成される、請求項2から7のいずれか1項に記載の酸素濃縮器。
【請求項9】
前記評価は、(a)前記特性パラメータの第1サンプル値と、(b)前記特性パラメータの第2サンプル値との間の比較を含み、前記第1サンプル値は、前記少なくとも2つのキャニスターのうちの1つの少なくとも1つの第1フェーズに関連付けられ、前記第2サンプル値は、前記少なくとも2つのキャニスターのうちの別の1つの少なくとも1つの第2フェーズに関連付けられ、前記少なくとも1つの第1フェーズおよび前記少なくとも1つの第2フェーズは、対応するフェーズである、請求項1から2のいずれか1項に記載の酸素濃縮器。
【請求項10】
前記比較が、前記第1サンプル値と前記第2サンプル値との差を含む、請求項9に記載の酸素濃縮器。
【請求項11】
前記比較が、前記第1サンプル値と前記第2サンプル値との比率を含む、請求項9に記載の酸素濃縮器。
【請求項12】
前記評価が、前記比較に基づくエラーの決定をさらに含む、請求項9から11のいずれか1項に記載の酸素濃縮器。
【請求項13】
前記エラーが、目標インバランス値によって決定される、請求項12に記載の酸素濃縮器。
【請求項14】
前記評価は、前記1つ以上の期間の前記動的調整を生成するように構成される比例積分微分(PID)または比例積分(PI)コントローラに、前記エラーを入力することを含む、請求項12から13のいずれか1項に記載の酸素濃縮器。
【請求項15】
前記圧縮機の速度を速度設定点に調整するために、前記1つ以上のコントローラは、(a)速度センサによって生成される測定速度信号と(b)前記速度設定点との差に基づいて前記圧縮機制御信号を生成するように構成される、請求項1から14のいずれか1項に記載の酸素濃縮器。
【請求項16】
前記圧縮機制御信号がパルス幅変調(PWM)波形であり、前記特性パラメータが前記PWM波形のデューティサイクルである、請求項1から15のいずれか1項に記載の酸素濃縮器。
【請求項17】
酸素濃縮器を動作させる方法であって、
圧縮機を1つ以上のコントローラで制御して、少なくとも2つのキャニスターへの加圧空気流を生成するステップであって、各キャニスターが、前記加圧空気流から成分ガスを優先的に吸着するように構成される吸着材を含むことによって、前記加圧空気流からアキュムレータへ酸素富化空気を生成し、アキュムレータが、生成された前記酸素富化空気を受け入れるように空気圧連結され、前記圧縮機の制御が、前記圧縮機の速度を速度設定点に調整することを含み、前記調整が、特性パラメータを有する圧縮機制御信号を生成することを含む、ステップと、
(a)前記加圧空気流を前記キャニスターに選択的に供給するために、前記圧縮機を各キャニスターに選択的に空気圧連結し、(b)各キャニスターを大気中に選択的に通気させるように、前記1つ以上のコントローラで1つ以上のバルブの動作を制御するステップであって、前記1つ以上のバルブの前記制御動作が、前記酸素富化空気を生成するためにサイクリックパターンで前記1つ以上のバルブを選択的に動作させることを含み、前記サイクリックパターンのサイクルが複数のフェーズを含み、前記複数のフェーズの各々が期間を含む、ステップと、
前記特性パラメータの評価に基づく、前記期間のうちの1つ以上に対する動的調整の生成を、前記1つ以上のコントローラで制御するステップであって、前記動的調整が、前記キャニスター間の空気圧特性の動的インバランスを低減する、ステップと、
を含む方法。
【請求項18】
前記1つ以上の期間に対する前記動的調整を生成するために、前記1つ以上のコントローラは、
1つのサイクルにわたって、前記特性パラメータの1つ以上の値をサンプリングし、
前記サンプリングされた値に基づいてインバランスのメジャーを計算し、
前記インバランスのメジャーから少なくとも1つのフェーズ期間調整を計算する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つのフェーズ期間調整を計算するために、前記1つ以上のコントローラが、前記インバランスのメジャーとインバランス目標値とを比較する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記インバランスのメジャーとインバランス目標値とを比較するために、前記1つ以上のコントローラが、前記インバランスのメジャーとインバランス目標値との差を計算する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記1つ以上のコントローラが、計算された前記差に比例積分微分(PID)制御または比例積分(PI)制御を適用する、請求項18から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記1つ以上のコントローラが、前記インバランスのメジャーを、
連続的な半サイクルの各サンプリング点におけるサンプル値の間の1つ以上の差、および
連続的な半サイクルの各サンプリング点におけるサンプル値の間の1つ以上の比率のうちの1つ以上を含むベクトルとして計算する、請求項18から21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記サンプリング点が、前記サイクルのフェーズ転移と一致する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記1つ以上のコントローラが、サンプリング点における各サンプル値を、前記サンプリング点までの複数のサンプル値から算出する、請求項18から22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記評価は、(a)前記特性パラメータの第1サンプル値と、(b)前記特性パラメータの第2サンプル値との間の比較を含み、前記第1サンプル値は、前記少なくとも2つのキャニスターのうちの1つの少なくとも1つの第1フェーズに関連付けられ、前記第2サンプル値は、前記少なくとも2つのキャニスターのうちの別の1つの少なくとも1つの第2フェーズに関連付けられ、前記少なくとも1つの第1フェーズおよび前記少なくとも1つの第2フェーズは、対応するフェーズである、請求項17から24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記比較が、前記第1サンプル値と前記第2サンプル値との差を計算することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記比較が、前記第1サンプル値と前記第2サンプル値との比率を計算することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記評価が、前記比較に基づいてエラーを決定することをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記エラーが、目標インバランス値によって決定される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記評価は、前記エラーを比例積分微分(PID)または比例積分(PI)コントローラに入力して、前記1つ以上の期間の前記動的調整を生成することを含む、請求項28から29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記圧縮機の速度を速度設定点に調整する前記ステップは、(a)速度センサによって生成される測定速度信号と(b)前記速度設定点との差に基づいて前記圧縮機制御信号を生成することを含む、請求項17から30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記圧縮機制御信号がパルス幅変調(PWM)波形であり、前記特性パラメータが前記PWM波形のデューティサイクルである、請求項17から31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
圧縮機を制御して、少なくとも2つのキャニスターへの加圧空気流を生成する手段であって、各キャニスターが、前記加圧空気流から成分ガスを優先的に吸着するように構成される吸着材を含むことによって、前記加圧空気流からアキュムレータへ酸素富化空気を生成し、アキュムレータが、生成された前記酸素富化空気を受け入れるように空気圧連結され、前記圧縮機の制御が、前記圧縮機の速度を速度設定点に調整することを含み、前記調整が、特性パラメータを有する圧縮機制御信号を生成することを含む、手段と、
(a)前記加圧空気流を前記キャニスターに選択的に供給するために、前記圧縮機を各キャニスターに選択的に空気圧連結し、(b)各キャニスターを大気中に選択的に通気させるように、1つ以上のバルブの動作を制御する手段であって、前記1つ以上のバルブの前記制御動作が、前記酸素富化空気を生成するためにサイクリックパターンで前記1つ以上のバルブを選択的に動作させることを含み、前記サイクリックパターンのサイクルが複数のフェーズを含み、前記複数のフェーズの各々が期間を含む、手段と、
前記特性パラメータの評価に基づく、前記期間のうちの1つ以上に対する動的調整の生成を制御する手段であって、前記動的調整が、前記キャニスター間の空気圧特性の動的インバランスを低減する、手段と、
を含む、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本明細書は、2020年6月30日に提出された米国仮特許出願番号62/705,499号の優先権を主張しており、その開示の全てが参照によりここに組み込まれる。
【0002】
本技術は、一般に、酸素富化空気を生成するための制御された圧力スイング吸着を含む方法および装置のような、呼吸障害を治療するための方法および装置に関する。この方法は、酸素濃縮器において実施され得る。いくつかの例では、本技術は、より具体的には、例えば、動作効率を向上または維持するための、酸素濃縮器の動作制御のための方法および装置に関する。このような動作制御は、酸素濃縮器の使用期間中または延長使用期間中に生じ得るインバランスを打ち消すように実施され得る。
【背景技術】
【0003】
[人間の呼吸器系およびその障害]
体の呼吸器系はガス交換を促進する。鼻と口は患者の気道への入口を構成する。
【0004】
気道には一連の分岐管が含まれており、それらが肺に深く入るにつれて、より狭く、より短く、より多くの数になる。肺の主な機能はガス交換であり、吸い込まれる空気から静脈血に酸素が入り、二酸化炭素が反対方向に移動することを可能にする。気管は右主気管支と左主気管支に分けられ、最終的にはさらに終末細気管支に分けられる。気管支は伝導気道を構成し、ガス交換には関与しない。気道のさらなるディビジョンは、呼吸細気管支を引き起こし、最終的に肺胞を引き起こす。肺の肺胞領域は、ガスの交換が起こる場所であり、呼吸ゾーンと呼ばれる。ジョン・B・ウェスト、リッピンコット・ウィリアムズ&ウィルキンスによる、2012年に出版された第9版の「呼吸生理学」を参照する。
【0005】
幅広い呼吸障害が存在する。呼吸障害の例としては、呼吸不全、肥満過換気症候群(OHS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、神経筋疾患(NMD)、胸壁障害などがある。
【0006】
呼吸不全は、肺が患者のニーズを満たすように十分な酸素を吸い込むことができないか、十分なCOを吐き出すことができない、呼吸障害の総称である。呼吸不全には、以下の障害の一部または全部が含まれる場合がある。
【0007】
呼吸機能不全(呼吸不全の一種)の患者は、運動中に異常な息切れを発症することがある。
【0008】
肥満過換気症候群(OHS)は深刻な肥満と覚醒性慢性高炭酸血症の結合と定義され、他に換気不足の原因は知られていない。症状は、呼吸困難、朝の頭痛、日中の過度の眠気を含む。
【0009】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、ある共通の特徴を有する下気道疾患のグループのうちのいずれかを含む。これらは、空気の動きに対する抵抗の増加、呼吸のための呼気相の延長、肺の正常な弾性の喪失を含む。慢性閉塞性肺疾患の例としては、肺気腫や慢性気管支炎がある。慢性閉塞性肺疾患は、長期にわたる喫煙(主なリスク要因)、職業暴露、大気汚染、遺伝的要因によって引き起こされる。症状は、労作時の呼吸困難、慢性咳嗽、痰の生成を含む。
【0010】
神経筋疾患(NMD)は、内在筋病理学的に直接に筋機能を損傷する或いは神経病理学的に間接的に筋機能を損傷する多くの疾患と病症を含む、幅広い用語である。一部のNMD患者は、歩行能力の喪失、車椅子生活、嚥下困難、呼吸筋の弱さ、結局、呼吸不全での死亡を引き起こす、進行性筋損傷によって特徴付けられる。神経筋障害は、急速進行性と緩慢進行性に分けられる。急速進行性障害は、数ヶ月以内に悪化し、数年以内に死亡をもたらす、筋損傷によって特徴付けられる(例えば、ティーンエイジャーの筋萎縮性側索硬化症(ALS)やデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD))。変化性または緩慢進行性障害は、経時的に悪化し、期待寿命を軽度にしか短縮しない筋損傷によって特徴付けられる(例えば、肢帯型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、および筋強直性ジストロフィー)。NMD呼吸不全の症状は、全身虚弱の増悪、嚥下障害、労作と休息時の呼吸困難、疲労、眠気、朝の頭痛及び注意力と情緒変化の困難を含む。
【0011】
胸壁障害は、呼吸筋と胸郭との間の非効率なカップリングを引き起こす胸部奇形のグループである。これらの障害は通常、制限的欠陥によって特徴付けられ、長期的な高炭酸血症呼吸不全の可能性を有する。脊柱側凸および/または脊柱後凸は、重度の呼吸不全を引き起こすことがある。呼吸不全の症状は、労作時の呼吸困難、末梢浮腫、正座呼吸、胸部感染症の繰り返し、朝の頭痛、疲労、睡眠の質の悪さ、食欲不振を含む。
【0012】
[呼吸治療]
非侵襲的換気(NIV)、侵襲的換気(IV)および高流量治療(HFT)のような種々の呼吸治療が、上記の呼吸障害の1つ以上を治療するために用いられている。
【0013】
“呼吸圧力治療”
呼吸圧力治療とは、(例えば、タンクベンチレータや陽陰圧体外式人工呼吸器(cuirass)などの陰圧治療とは対照的に)患者の呼吸サイクル全体にわたって大気に対してノミナル陽圧になるように制御された目標圧力で気道の入口へ空気を供給することの適用である。
【0014】
非侵襲的換気(NIV)は、呼吸作業の一部または全部を完了することによって、患者の呼吸を助け、および/または体内の十分な酸素レベルを維持するために、上部気道を介して患者に換気支援を提供する。換気支援は、非侵襲性患者インターフェースを介して提供される。NIVは、CSRやOHS、COPD、NMD、胸壁障害などの形態の呼吸不全を治療するために用いられている。いくつかの形態において、これらの治療の快適性と有効性が改善され得る。
【0015】
侵襲的換気(IV)は、もはや有効な呼吸ができなくなって、気管切開管を使用し得る患者に換気支援を提供する。いくつかの形態において、これらの治療の快適性と有効性が改善され得る。
【0016】
“流量治療”
全ての呼吸治療が、所定の治療圧力の送達を目的としているわけではない。いくつかの呼吸治療は、正のベースライン圧力とできるだけ重なる吸気流量プロファイルの送達を目標期間にわたって行うことによって、所定の呼吸量を送達することを目的している。他の場合において、患者の気道へのインターフェースが「開放」(シール解除)されており、調和空気または濃縮空気の流れによる呼吸治療は、患者自身の自発呼吸の補充としてのみ用いられ得る。一例において、高流量治療(HFT)とは、連続的な、加熱された、加湿された空気流を気道への入口に密閉されていないかまたは開口された患者インターフェースを通じて、呼吸サイクル全体にわたってほぼ一定に保持される「治療流量」で提供することである。治療流量は、患者のピーク吸気流量を超えるようにノミナル設定されている。HFTは、OSA、CSR、呼吸不全、COPDおよび他の呼吸障害の治療のために用いられている。作用メカニズムの1つは、気道入口での空気の高流量が、患者の解剖学的デッドスペースからの呼気COをフラッシュまたは洗い流すことにより、換気効率を向上させることである。そのため、HFTは、デッドスペース治療(DST)と呼ばれることがある。その他の利点は、上昇した暖かさおよび加湿(分泌物の管理に役立つ可能性がある)、並びに気道圧力が適度に上昇する可能性を含み得る。一定の流量の代替例として、治療流量は、呼吸サイクルにわたって変動するプロファイルに追随し得る。
【0017】
流量治療の他の形態は、長期酸素治療(LTOT)または補充酸素治療である。医師は、特定の流量(例えば、1リットル/分(LPM)、2LPM、3LPMなど)で患者の気道に送達される、特定の酸素濃度(周囲空気中の酸素分率、21%から100%まで)の酸素富化空気の連続流を規定し得る。
【0018】
“補充酸素”
特定の患者の場合、補充酸素を加圧空気流へ付加することにより、酸素治療と呼吸圧力治療またはHFTとの組み合わせが得られ得る。呼吸圧力治療へ酸素を付加した場合、これは、補充酸素を用いたRPTと呼ばれる。HFTへ酸素を付加した治療は、補充酸素を用いたHFTと呼ばれる。
【0019】
[呼吸治療システム]
これら呼吸治療は、呼吸治療システムまたはデバイスによって提供され得る。このようなシステムおよびデバイスは、疾患を治療することなくスクリーニング、診断、または監視するために用いられてもよい。
【0020】
本明細書に記載の呼吸治療システムは、酸素源、空気回路、および患者インターフェースを含み得る。
【0021】
“酸素源”
この分野の専門家は、呼吸不全患者の運動が疾患の進行を遅らせ、生活の質を高め、患者の寿命を延ばす長期的な利点を提供することをすでに認識している。しかし、トレッドミルや固定自転車などのほとんどの固定形態の運動は、これらの患者にとってはきつすぎる。その結果、モビリティの必要性は長い間認識されてきた。最近まで、このモビリティは、ドーリーホイール付きのカートに取り付けられる小さな圧縮酸素タンクまたはシリンダーの使用によって促進されていた。これらのタンクの欠点は、酸素量が有限であることと、実装時の重量が約50ポンドと重いことである。
【0022】
酸素濃縮器は、約50年間、呼吸治療のために酸素を供給するように使用されてきた。酸素濃縮器は、真空スイング吸着(VSA)、圧力スイング吸着(PSA)、または真空圧力スイング吸着(VPSA)のようなサイクリックプロセスを実施し得る。例えば、POCのような酸素濃縮器は、スイング吸着プロセス(例えば、真空スイング吸着、圧力スイング吸着、または真空圧力スイング吸着。各々は本明細書で「スイング吸着プロセス」と呼ばれる)における減圧(例えば、真空動作)および/または加圧(例えば、圧縮機動作)に基づいて作業し得る。圧力スイング吸着は、1つ以上の圧縮機を使用して、ガス分離吸着剤の粒子を含む1つ以上のキャニスター内のガス圧力を増加させることを含み得る。このようなキャニスターは、ガス分離吸着剤の層のようなガス分離吸着剤のマスを含む場合、シーブベッドと呼ばれてもよい。圧力が上昇するにつれて、ガス中の特定の分子がガス分離吸着剤に吸着されるようになり得る。加圧条件下におけるキャニスター内のガスの一部の除去は、未吸着分子を吸着分子から分離することを可能にする。吸着分子はその後、キャニスターを通気させることにより脱着され得る。酸素濃縮器に関するさらなる詳細は、例えば、2009年3月12日に公開された「酸素濃縮器装置及び方法」と題する米国公開特許出願2009-0065007号に記載されており、その特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0023】
周囲空気は通常、約78%の窒素と21%の酸素を含み、残りはアルゴン、二酸化炭素、水蒸気、およびその他の微量ガスで構成されている。例えば、空気のようなガス混合物が、酸素よりも窒素を強く吸着するガス分離吸着剤を含むキャニスターを介して加圧下で供給されると、窒素の一部または全部は吸着剤に吸着され、キャニスターから出るガスは酸素に富む。吸着剤が窒素の吸着能力の限界に達するとき、吸着された窒素は通気によって脱着され得る。その後、キャニスターは、酸素富化空気を生成する別のサイクルの準備ができている。二重キャニスターシステムでキャニスターを交互に加圧することにより、一方のキャニスターは、他方のキャニスターが通気されている間、酸素を分離(または濃縮)していることが可能になる(その結果、空気から酸素がほぼ連続的に分離される)。この交互作用により、窒素から酸素がほぼ連続的に分離される。このようにして、酸素富化空気は、例えばキャニスターに結合される貯蔵容器あるいは他の加圧可能なベッセルまたは導管内に蓄積されて、ユーザへの補充酸素の供給を含む種々の用途に使用されることができる。
【0024】
真空スイング吸着(VSA)は、代替のガス分離技術を提供する。VSAは通常、キャニスター内において真空を作り出すように構成されるコンプレッサーなどの真空を使用して、キャニスターの分離プロセスを通じてガスを引き出す。真空圧力スイング吸着(VPSA)は、真空と加圧を組み合わせた技術を用いたハイブリッドシステムとして理解され得る。例えば、VPSAシステムは、分離プロセスのためにキャニスターを加圧するとともに、真空を適用してキャニスターを減圧し得る。
【0025】
従来の酸素濃縮器が大型で重いため、それらを使って通常の歩行活動を行うことが困難で非現実的である。最近、大型固定式酸素濃縮器を製造していた会社が携帯型酸素濃縮器(POC)の開発を開始した。POCの利点は、理論上で無限の酸素供給を生成し、患者(ユーザー)にモビリティを提供できることにある。これらの装置をモビリティのために小型化するように、酸素富化空気の生成に必要な各種システムが凝縮される。POCは、重量、サイズ、消費電力を最小化するために、生成した酸素をできるだけ有効に利用しようとする。いくつかの実施態様では、これは、酸素富化空気を一連のパルスとして送達することによって達成され得、各パルスまたは「ボーラス」は、吸入の開始に一致するようにタイミングされる。この治療モードは、固定式酸素濃縮器により適した従来の連続流送達とは対照的に、パルス酸素送達(POD)またはデマンドモードとして知られる。PODモードは、実質的に吸入の開始を決定するためのセンサーを備えるアクティブバルブである、コンサーバーを用いて実施され得る。
【0026】
“空気回路”
空気回路は、空気流が酸素源と患者インターフェースのような呼吸治療システムの2つの構成要素の間を移動することを使用時に可能にするように構成され、配置される導管または管である。いくつかの場合において、吸息および呼息のための空気回路の別個の肢があり得る。他の場合において、単肢空気回路が吸気と呼気の両方に使用される。
【0027】
“患者インターフェース”
患者インターフェースは、例えば気道入口への空気流を提供することにより呼吸装具へのインターフェースを着用者へ提供するために用いられ得る。空気流は、鼻および/または口へのマスク、口への管、または患者の気管への気管切開管を介して提供され得る。適用される療法に応じて、患者インターフェースは、例えば患者の顔の領域とのシールを形成し得、これにより、療法実行のための周囲圧力と共に充分な分散の圧力において(例えば、例えば周囲圧力に対して約10HOの陽圧において)ガス送達を促進する。酸素送達などの他の治療形態において、患者インターフェースは、約10cmHOの陽圧において気道へのガス供給の送達を促進するのに充分な密閉を含まない場合がある。鼻HFTなどの流量治療の場合、患者インターフェースは、鼻孔への送気を行うが完全に密閉しないように、配置される。このような患者インターフェースの一例として、鼻カニューレがある。
【0028】
“システムバランス”
理想的なPSAベースの酸素濃度システムは、ガスがキャニスター内、キャニスター間およびキャニスター外でバランスの取れた質量流量を有するように、対称またはバランスの取れたインピーダンスを備える。最適なバランスは、システムの最適な効率、すなわち、最小の消費電力で高純度酸素を最適に回収することを可能にする。残念ながら、完全に対称なPSAシステムは、構成要素、材料、およびアセンブリの公差が積み重ねるため、製造が困難である。運用上、インバランスは、時間の経過とともに、システムの漏れや酸素富化空気の不規則な出力送達の形で進行する可能性もある。キャニスターのインバランスが大きくなりすぎたり、長く続いたりすると、一方のキャニスターが他方のキャニスターよりも先によく排気され、純度が低下したり、過圧になったりして、吸着剤の交換が必要になることがある。したがって、PSAシステムにおけるキャニスターの間のインバランスを打ち消すように構成され得る制御方法および装置が必要である。
【発明の概要】
【0029】
本技術の例は、携帯型酸素濃縮器などの酸素濃縮器の制御された動作のための方法および装置を提供し得る。
【0030】
特に、本技術は、キャニスターに関連する空気圧経路間の1つ以上の空気圧特性(例えば、圧力)のインバランスを低減するために、PSAサイクルの1つ以上のフェーズのタイミングを調整する制御モードを有する携帯型酸素濃縮器のための方法および装置を提供し得る。例えば、各キャニスター内の圧力は、調整速度(例えば、一定速度)で動作するように制御されている圧縮機への制御信号の特性パラメータから推定され得る。このような制御信号は、圧力インバランスを低減するように評価され得る。一般に、制御信号の特性パラメータは、圧縮機への負荷に応じて変化することができ、その変化している特性パラメータは、各タンクの空気圧特性の表示として使用することができる。例えば、制御信号の変化は評価され、1つまたは他のキャニスター内の圧力変化の指標とすることができる。したがって、制御信号特性パラメータは、キャニスターの圧力のインバランスのメジャーを取得するように、PSAサイクルの半分ごとに異なる点でサンプリングされ得る。インバランスのメジャーは、1つのキャニスターの半サイクルに関連する1つ以上のサンプルと、別のキャニスターの半サイクルに関連する1つ以上のサンプルとの間の比較によって導出され得る。次に、インバランスのメジャーはその後、各半サイクルで動作するバルブのタイミングを変更することなどにより、PSAサイクルフェーズ期間を設定または調整するように、コントローラによって適用され得る。例えば、インバランスのメジャーは、キャニスター間の圧力インバランスを低減するために、比例積分コントローラまたは比例積分微分コントローラなどの制御モダリティに適用され得る。
【0031】
本技術のいくつかの実施態様は、酸素濃縮器を含み得る。酸素濃縮器は、加圧空気流を生成するように構成される圧縮機を含み得る。酸素濃縮器は、少なくとも2つのキャニスターを含み得、各キャニスターは、加圧空気流から成分ガスを優先的に吸着するように構成される吸着材を含むことによって、加圧空気流から酸素富化空気を生成し得る。酸素濃縮器は、加圧空気流をキャニスターに選択的に供給するために、圧縮機を各キャニスターに選択的に空気圧連結するように構成される1つ以上のバルブを含み得る。1つ以上のバルブは、各キャニスターを大気中に選択的に通気させるように構成され得る。酸素濃縮器は、生成された酸素富化空気を受け入れるように空気圧連結されるアキュムレータを含み得る。酸素濃縮器は、1つ以上のバルブおよび圧縮機に動作可能に連結される1つ以上のコントローラを含み得る。1つ以上のコントローラは、加圧空気流を生成しながら、圧縮機の速度を速度設定点に調整するように構成され得、調整は、特性パラメータを有する圧縮機制御信号を生成することを含み得る。1つ以上のコントローラは、アキュムレータ内に酸素富化空気を生成するために、サイクリックパターンで、1つ以上のバルブ制御信号を生成することなどにより、1つ以上のバルブを選択的に動作させるように構成され得る。サイクリックパターンのサイクルは、複数のフェーズを含み得る。複数のフェーズの各々は、期間を含み得る。1つ以上のコントローラは、特性パラメータの評価に基づいて、1つ以上の期間に対する動的調整を生成するように構成され得る。動的調整は、キャニスター間の空気圧特性の動的インバランスを低減し得る。
【0032】
いくつかの実施態様では、1つ以上のコントローラは、1つ以上の期間に対する動的調整を生成するように構成されるインバランス制御システムを含み得る。インバランス制御システムは、サンプラを含み得る。サンプラは、1つのサイクルにわたって、特性パラメータの1つ以上の値をサンプリングまたはアクセスするように構成され得る。サンプラは、サンプリングされた値に基づいてインバランスのメジャーを計算するように構成され得る。インバランス制御システムは、インバランスのメジャーから少なくとも1つのフェーズ期間調整を計算するように構成されるインバランスコントローラを含み得る。インバランスコントローラは、インバランスのメジャーとインバランス目標値との比較に基づいて、少なくとも1つのフェーズ期間調整を計算するように構成され得る。比較は、インバランスのメジャーとインバランス目標値との差を含み得る。インバランスコントローラは、比例積分微分(PID)または比例積分(PI)コントローラであり得る。
【0033】
いくつかの実施態様では、サンプラは、インバランスのメジャーをベクトルとして計算するように構成され得る。ベクトルは、(a)連続的な半サイクルの各サンプリング点におけるサンプル値の間の1つ以上の差、(b)連続的な半サイクルの各サンプリング点におけるサンプル値の間の1つ以上の比率のうちの1つ以上を含み得る。サンプリング点は、サイクルのフェーズ転移と一致し得る。サンプラはさらに、サンプリング点における各サンプル値を、サンプリング点までの複数のサンプル値から算出するように構成され得る。
【0034】
いくつかの実施態様では、評価は、(a)特性パラメータの第1サンプル値と、(b)特性パラメータの第2サンプル値との間の比較を含み得、第1サンプル値は、少なくとも2つのキャニスターのうちの1つの少なくとも1つの第1フェーズに関連付けられ、第2サンプル値は、少なくとも2つのキャニスターのうちの別の1つの少なくとも1つの第2フェーズに関連付けられ、少なくとも1つの第1フェーズおよび少なくとも1つの第2フェーズは、対応するフェーズである。比較は、第1サンプル値と第2サンプル値との差を含み得る。比較は、第1サンプル値と第2サンプル値との比率を含み得る。評価は、比較に基づくエラーの決定をさらに含み得る。エラーは、目標インバランス値によって決定され得る。
【0035】
いくつかの実施態様では、評価は、1つ以上の期間の動的調整を生成するように構成される比例積分微分(PID)または比例積分(PI)コントローラに、エラーを入力することを含み得る。圧縮機の速度を速度設定点に調整するために、1つ以上のコントローラは、(a)速度センサによって生成される測定速度信号と(b)速度設定点との差に基づいて圧縮機制御信号を生成するように構成され得る。圧縮機制御信号はパルス幅変調(PWM)波形であり得、特性パラメータはPWM波形のデューティサイクルであり得る。
【0036】
本技術のいくつかの実施態様は、酸素濃縮器を動作させる方法を含み得る。この方法は、圧縮機を1つ以上のコントローラで制御して、少なくとも2つのキャニスターへの加圧空気流を生成するステップを含み得る。各キャニスターは、加圧空気流から成分ガスを優先的に吸着するように構成される吸着材を含むことによって、加圧空気流からアキュムレータへ酸素富化空気を生成し得、アキュムレータは、生成された酸素富化空気を受け入れるように空気圧連結される。圧縮機の制御は、圧縮機の速度を速度設定点に調整することを含み得る。調整は、特性パラメータを有する圧縮機制御信号を生成することを含み得る。この方法は、加圧空気流をキャニスターに選択的に供給するために、圧縮機を各キャニスターに選択的に空気圧連結するように、1つ以上のコントローラで1つ以上のバルブの動作を制御するステップを含み得る。この方法は、各キャニスターを大気中に選択的に通気させるように、1つ以上のコントローラで1つ以上のバルブの動作を制御するステップを含み得る。1つ以上のバルブの制御動作は、酸素富化空気を生成するためにサイクリックパターンで1つ以上のバルブを選択的に動作させることを含み得る。サイクリックパターンのサイクルは、複数のフェーズを含み得る。複数のフェーズの各々は、期間を含み得る。この方法は、特性パラメータの評価に基づく、期間のうちの1つ以上に対する動的調整の生成を、1つ以上のコントローラで制御するステップを含み得る。動的調整は、キャニスター間の空気圧特性の動的インバランスを低減し得る。
【0037】
いくつかの実施態様では、1つ以上の期間に対する動的調整を生成するために、1つ以上のコントローラは、(a)1つのサイクルにわたって、特性パラメータの1つ以上の値をサンプリング(例えば、アクセス)し、(b)サンプリングされた値に基づいてインバランスのメジャーを計算し、および/または(c)インバランスのメジャーから少なくとも1つのフェーズ期間調整を計算し得る。少なくとも1つのフェーズ期間調整を計算するために、1つ以上のコントローラは、インバランスのメジャーとインバランス目標値とを比較し得る。インバランスのメジャーとインバランス目標値とを比較するために、1つ以上のコントローラは、インバランスのメジャーとインバランス目標値との差を計算し得る。1つ以上のコントローラは、計算された差に比例積分微分(PID)制御または比例積分(PI)制御を適用し得る。1つ以上のコントローラは、インバランスのメジャーをベクトルとして計算し得る。ベクトルは、(a)連続的な半サイクルの各サンプリング点におけるサンプル値の間の1つ以上の差、(b)連続的な半サイクルの各サンプリング点におけるサンプル値の間の1つ以上の比率のうちの1つ以上を含み得る。サンプリング点は、サイクルのフェーズ転移と一致し得る。1つ以上のコントローラは、サンプリング点における各サンプル値を、サンプリング点までの複数のサンプル値から算出し得る。
【0038】
いくつかの実施態様では、評価は、(a)特性パラメータの第1サンプル値と、(b)特性パラメータの第2サンプル値との間の比較を含み得る。第1サンプル値は、少なくとも2つのキャニスターのうちの1つの少なくとも1つの第1フェーズに関連付けられ得る。第2サンプル値は、少なくとも2つのキャニスターのうちの別の1つの少なくとも1つの第2フェーズに関連付けられ得る。少なくとも1つの第1フェーズおよび少なくとも1つの第2フェーズは、対応するフェーズであり得る。比較は、第1サンプル値と第2サンプル値との差を計算することを含み得る。比較は、第1サンプル値と第2サンプル値との比率を計算することを含み得る。評価は、比較に基づくエラーの決定をさらに含み得る。エラーは、目標インバランス値によって決定され得る。評価は、1つ以上の期間の動的調整を生成するように、比例積分微分(PID)または比例積分(PI)コントローラにエラーを入力することを含み得る。
【0039】
いくつかの実施態様では、圧縮機の速度を速度設定点に調整するステップは、(a)速度センサによって生成される測定速度信号と(b)速度設定点との差に基づいて圧縮機制御信号を生成することを含み得る。圧縮機制御信号はパルス幅変調(PWM)波形であり得、特性パラメータはPWM波形のデューティサイクルであり得る。
【0040】
本技術のいくつかの実施態様は、装置を含み得る。この装置は、圧縮機を制御して少なくとも2つのキャニスターへの加圧空気流を生成する手段を含み得、各キャニスターは、加圧空気流から成分ガスを優先的に吸着するように構成される吸着材を含むことによって、加圧空気流からアキュムレータへ酸素富化空気を生成し得、アキュムレータは、生成された酸素富化空気を受け入れるように空気圧連結され、圧縮機を制御するステップは、圧縮機の速度を速度設定点に調整することを含み得、調整は、特性パラメータを有する圧縮機制御信号を生成することを含み得る。
【0041】
この装置は、(a)加圧空気流をキャニスターに選択的に供給するために、圧縮機を各キャニスターに選択的に空気圧連結し、(b)各キャニスターを大気中に選択的に通気させるように、1つ以上のバルブの動作を制御する手段を含み得、1つ以上のバルブの制御動作は、酸素富化空気を生成するためにサイクリックパターンで1つ以上のバルブを選択的に動作させることを含み得、サイクリックパターンのサイクルは複数のフェーズを含み得、複数のフェーズの各々は期間を含み得る。この装置は、特性パラメータの評価に基づく、期間のうちの1つ以上に対する動的調整の生成を制御する手段を含み得、動的調整は、キャニスター間の空気圧特性の動的インバランスを低減する。
【0042】
もちろん、上記態様の一部は、本技術の下位態様を形成し得る。また、下位態様および/または態様のうちのそれぞれを多様に組み合わせ、同様に本技術のさらなる態様または下位態様を構成することができる。
【0043】
本技術の他の特徴は、以下の詳細な説明、要約、図面および特許請求の範囲中に含まれる情報に鑑みれば明らかになる。
【0044】
本技術の利点は、以下の実施態様の詳細な説明から利益を得て、同様の符号が同様の構成要素を表す添付図面を参照することにより、当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1A図1Aは、本技術の一形態による酸素濃縮器を示す。
図1B図1Bは、図1Aの酸素濃縮器のガス分離システムの概略図である。
図1C図1Cは、図1Aの酸素濃縮器の主な構成要素の側面図である。
図1D図1Dは、図1Aの酸素濃縮器の圧縮システムの斜視側面図である。
図1E図1Eは、熱交換導管を含む圧縮システムの側面図である。
図1F図1Fは、図1Aの酸素濃縮器の例示的な出口構成要素の概略図である。
図1G図1Gは、図1Aの酸素濃縮器用の出口導管を示す。
図1H図1Hは、図1Aの酸素濃縮器用の代替出口導管を示す。
図1I図1Iは、図1Aの酸素濃縮器用の分解されたキャニスターシステムの斜視図である。
図1J図1Jは、図1Iのキャニスターシステムの端部図である。
図1K図1Kは、図1Jに示されるキャニスターシステムの端部の組立図である。
図1L図1Lは、図1Jおよび図1Kに示されるキャニスターシステムの端部に対向する、図1Iのキャニスターシステムの端部を示す図である。
図1M図1Mは、図1Lに示されるキャニスターシステムの端部の組立図である。
図1N図1Nは、図1Aの酸素濃縮器用の例示的な制御パネルを示す。
図2図2は、本技術の一実施態様によるPSAプロセスの完全なPSAサイクルの説明図である。
図3図3は、本技術の一実施態様によるモータ制御回路の概略図である。
図4図4は、PWMデューティサイクル波形を重畳した、図2からのPSAサイクルにわたるキャニスター圧力波形を含むグラフである。
図5図5は、本技術の一実施態様による、図1AのPOCなどのPOC用のインバランス制御システムのブロック図である。
図6図6は、図1AのPOCなどのPOCにおける連続的なPSA半サイクルのPWMデューティサイクル波形間のインバランスに対する動的フェーズ期間調整の影響を示す、4つのグラフを含む。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本技術の態様は、添付図面を参照して詳細に説明され、ここで、同様の符号は、同様または同一の要素を表す。開示される実施態様は、様々な形態で実施され得る技術の例にすぎないことが理解されるべきである。周知の機能または構造は、不必要な詳細によって本開示を不明瞭にすることを避けるために、詳細には説明されていない。そのため、本明細書に開示される特定の構造的および機能的詳細は、限定的なものとして解釈されるべきではなく、特許請求の範囲の根拠として、また、当業者が事実上任意の適切に詳細な構造において本技術をさまざまに使用することを教示するための代表的根拠として解釈されるべきである。
【0047】
図1A~1Nは、酸素濃縮器100の実施態様を示す。酸素濃縮器100は、空気流内の酸素を濃縮して、酸素富化空気をユーザに提供し得る。酸素濃縮器100は携帯型酸素濃縮器であり得る。例えば、酸素濃縮器100は、酸素濃縮器を手でおよび/またはキャリングケースに入れて運ぶことができる重量およびサイズを有し得る。一実施態様では、酸素濃縮器100は、約20ポンド未満、約15ポンド未満、約10ポンド未満、または約5ポンド未満の重量を有する。一実施態様では、酸素濃縮器100は、約1000立方インチ未満、約750立方インチ未満、約500立方インチ未満、約250立方インチ未満、または約200立方インチ未満の容積を有する。
【0048】
本明細書に記載されるように、酸素濃縮器100は、サイクリック圧力スイング吸着(PSA)プロセスを使用して酸素富化空気を生成する。しかしながら、他の実施態様では、酸素濃縮器100は、サイクリック真空スイング吸着(VSA)プロセスまたはサイクリック真空圧力スイング吸着(VPSA)プロセスを使用して酸素富化空気を生成するように変更され得る。
【0049】
[外側ハウジング]
図1Aは、酸素濃縮器100の外側ハウジング170の実施態様を示す。いくつかの実施態様では、外側ハウジング170は、軽量プラスチックから構成され得る。外側ハウジング170は、圧縮システム入口105、外側ハウジング170の各端にある冷却システム受動入口101および出口173、出口ポート174、ならびに制御パネル600を含む。入口101および出口173は、冷却空気がハウジングに入り、ハウジングを流れ、ハウジング170の内部から出て、酸素濃縮器100の冷却を支援することを可能にする。圧縮システム入口105は、空気が圧縮システムに入るのを可能にする。出口ポート174は、酸素濃縮器100によって生成される酸素富化空気をユーザに提供するための導管を取り付けるために使用される。
【0050】
[ガス分離システム]
図1Bは、本技術の一実施態様による、酸素濃縮器100などの酸素濃縮器のガス分離システム110の概略図を示す。分離システム110は、空気流内の酸素を濃縮して、酸素富化空気を出口システム(後述)に供給し得る。
【0051】
酸素富化空気は、ガス分離吸着剤を含むため、シーブベッドと呼ばれるキャニスター302および304内において周囲空気を加圧することによって、周囲空気から生成され得る。酸素濃縮器に有用なガス分離吸着剤は、空気流から少なくとも窒素を分離して酸素富化空気を生成することができる。ガス分離吸着剤の例としては、空気流から窒素を分離することができるモレキュラーシーブがある。酸素濃縮器に使用可能な吸着剤の例としては、高圧下で空気流から窒素を分離するゼオライト(天然)または合成結晶性アルミノシリケートがあるが、これらに限定されない。使用可能な合成結晶性アルミノシリケートの例としては、UOP LLC, Des Plaines, IWから入手可能なOXYSIV吸着剤、W. R. Grace & Co, Columbia, MDから入手可能なSYLOBEAD吸着剤、CECA S.A. of Paris, Franceから入手可能なSILIPORITE吸着剤、Zeochem AG, Uetikon, Switzerlandから入手可能なZEOCHEM吸着剤、およびAir Products and Chemicals, Inc., Allentown, PAから入手可能なAgLiLSX吸着剤が、これらに限定されない。
【0052】
図1Bに示されるように、空気は、空気入口105を通して分離システム110に入り得る。空気は、圧縮システム200によって空気入口105に引き込まれ得る。圧縮システム200は、酸素濃縮器の周囲から空気を引き込み、空気を圧縮して、圧縮された空気をキャニスター302および304の一方または両方に押し込み得る。一実施態様では、入口マフラー108は、空気入口105に結合されて、圧縮システム200によって酸素濃縮器に引き込まれる空気によって生成される音を低減し得る。一実施態様では、入口マフラー108は、音だけでなく水分も低減し得る。例えば、(ポリマー吸水材料またはゼオライト材料などの)吸水材料を使用して、入ってくる空気から水を吸着するとともに、空気入口105に入る空気の音を低減し得る。一実施態様では、入口マフラー108は、汚染粒子(ほこり)および音を低減し得る。例えば、ほこりフィルタを使用して、入ってくる空気からほこりを除去するとともに、空気入口105に入る空気の音を低減し得る。
【0053】
圧縮システム200は、空気を圧縮するように構成される1つ以上の圧縮機を含み得る。圧縮システム200によって生成される加圧空気は、キャニスター302および304の一方または両方に供給され得る。いくつかの実施態様では、周囲空気は、キャニスター内で、約13~25ポンド/平方インチゲージ(psig)の範囲内の目標圧力まで加圧され得る。キャニスター内に配置されるガス分離吸着剤のタイプに応じて、他の目標圧力値を使用してもよい。
【0054】
各キャニスター302/304に結合されているのは、三方向入口バルブ122/124などのバルブである。図1Bに示されるように、(Aとラベル付けされる)入口バルブ122はキャニスター302の「供給端」に結合され、(Bとラベル付けされる)入口弁124はキャニスター304の「供給端」に結合される。入口バルブ122/124は、圧縮システム200からそれぞれのキャニスターへの空気の通過を制御し、それぞれのキャニスターから大気へ排気ガスを排出するために使用される。いくつかの実施態様では、入口バルブ122/124は、シリコンプランジャソレノイドバルブであり得る。しかし、ポペットバルブや圧電バルブなど、他のタイプのバルブを使用してもよい。プランジャバルブは、他の種類のバルブに比べて静かで滑りが少ないという利点がある。いくつかの実施態様では、入口バルブ122/124の一方または両方を、アンチフェーズで作動して三方向バルブをエミュレートする一対の二方向バルブに置き換えられ得る。
【0055】
いくつかの実施態様では、ツーステップバルブ作動電圧を生成して入口バルブ122/124を制御し得る。例えば、高電圧(例えば、24V)を入口バルブに印加して、入口バルブを作動させ得る。その後、電圧を(例えば、7Vまで)下げて入口バルブの作動を維持し得る。より低い電圧を使用してバルブの作動を維持すると、より少ない電力を使用し得る。この電圧の低下は、発熱および電力消費を最小化して、電源180(後述)からの稼働時間を延長する。入口バルブ122/124への電力が遮断される時、バルブはスプリングの作用によって作動を停止する。いくつかの実施態様では、電圧は、必ずしもステップ応答ではない時間の関数として印加され得る(例えば、初期の24Vと最終の7Vとの間の下向き湾曲電圧)。
【0056】
一実施態様では、コントローラ400は、入力/出力インターフェースによって入口バルブ122および124に電気的に結合される。コントローラ400は、メモリ420に格納されるプログラム命令を実行するように動作可能な1つ以上のプロセッサ410を含む。プログラム命令は、本明細書でより詳細に説明される方法など、酸素濃縮器を操作するために使用されるさまざまな所定の方法を実行するようにコントローラを構成する。プログラム命令は、出力インターフェースを介して制御信号を生成して、入口バルブ122および124をサイクリックパターンで動作させて、本明細書に記載されるようなサイクリックPSAプロセスを実施するためのプログラム命令を含み得る。いくつかの実施態様では、入口バルブを開くために使用される電圧および電圧の期間は、コントローラ400によって制御され得る。コントローラ400は、プロセッサ410によって収集されるデータを送信するように、またはプロセッサ410のための外部デバイスから命令を受信するように、外部デバイスと通信し得るトランシーバ430も含み得る。
【0057】
チェックバルブ142および144は、それぞれキャニスター302および304の「製品端」に結合される。チェックバルブ142および144は、キャニスターが加圧され通気されるときに生じる圧力差によって受動的に動作する一方向バルブであってもよいし、能動バルブであってもよい。チェックバルブ142および144は、キャニスターに結合され、各キャニスターの加圧中に生成される酸素富化空気がキャニスターから流出するのを可能にし、酸素富化空気または他のガスのキャニスターへの逆流を阻止する。このように、チェックバルブ142および144は、酸素富化空気が加圧中にそれぞれのキャニスターから出ることを可能にする一方向バルブとして機能する。
【0058】
本明細書で使用される「チェックバルブ」という用語は、流体(気体または液体)の一方向の流れを可能にし、流体の逆流を阻止するバルブを意味する。「流体」という用語は、気体または気体の混合物(例えば、空気)を含み得る。適用されるチェックバルブの例としては、ボールチェックバルブ、ダイヤフラムチェックバルブ、バタフライチェックバルブ、スイングチェックバルブ、ダックビルバルブ、アンブレラバルブ、およびリフトチェックバルブがあるが、これらに限定されない。加圧下では、加圧された周囲空気中の窒素分子は、加圧されたキャニスター内のガス分離吸着剤によって吸着される。圧力が上昇するにつれて、より多くの窒素が、キャニスター内のガスが酸素に富むまで吸着される。キャニスターに結合されるチェックバルブの抵抗を克服するのに十分な点に圧力が達する時、吸着されていないガス分子(主に酸素)が、加圧されたキャニスターから流出する。一実施態様では、チェックバルブの順方向の圧力降下は1psi未満である。逆方向のブレーク圧力は100psiより大きい。しかしながら、1つ以上の構成要素の変更は、これらのバルブの動作パラメータを変えることが理解されるべきである。順流圧力が増加すると、一般に、酸素富化空気の生成が減少する。逆流のブレーク圧力が低下する場合、または低く設定されすぎる場合、一般に、酸素富化空気の圧力が低下する。
【0059】
一実施態様では、加圧空気は、キャニスター302または304の一方に送られ、他方のキャニスターは通気される。例えば、使用中、入口バルブ124が作動されている間、入口バルブ122が作動されていない。圧縮システム200からの加圧空気は、作動されている入口バルブ124によってキャニスター304に入ることが阻止されながら、作動されていない入口バルブ122を介してキャニスター302に供給される。キャニスター302の加圧中、作動されている入口バルブ124は、キャニスター304を大気に接続して、排気ガス(主に窒素)がキャニスター304から濃縮器出口130を通して大気に排出されることを可能にする。一実施態様では、排気ガスがマフラー133を通して送られ、キャニスターから排気ガスを排出することによって生成されるノイズを低減する。排気ガスがキャニスター304から排出されるにつれて、キャニスター304内の圧力が低下して、窒素がガス分離吸着剤から脱着されることを可能にする。窒素の脱着は、キャニスター304を、供給空気流からの窒素の新たな分離を可能にする状態にリセットする。マフラー133は、酸素濃縮器を出る排気ガスの音をマッフルするために連続気泡フォーム(または別の材料)を含み得る。いくつかの実施態様では、空気の入力および酸素富化空気の出力のための組み合わせたマッフリング部品/技術は、50デシベル未満の音レベルでの酸素濃縮器の動作を提供し得る。
【0060】
しばらくすると、キャニスター302内の圧力はチェックバルブ142を開くのに十分な圧力になる。キャニスター302内で生成された酸素富化空気は、チェックバルブ142および流量制限器143を通過し、一実施態様では、アキュムレータ106内に収集される。流量制限器143は、アキュムレータ106への酸素富化空気の流れを制御する。例えば、アキュムレータ106がボーラス放出(後述)時に減圧される場合、流量制限器143が存在しない(そして介在経路のインピーダンスが非常に低い)と、アキュムレータ106は、現在加圧中または吸着中のキャニスターから高流量でガスを引き出す。その結果、キャニスター内の圧力が大幅に低下し、未濃縮の空気をアキュムレータ 106に引き込む傾向があり、それによって酸素純度が低下する。さらに、キャニスターの製品端で高酸素純度を維持するための E およびG バルブ 152および154 を介するシーブベッド間のガス交換は、PSA サイクル全体の混乱を引き起こす大きな影響を受ける。流量制限器143の存在は、放出された酸素富化空気を最適な速度で置換し、上記の有害な影響を減衰させるのに役立つ。
【0061】
さらにしばらくすると、キャニスター302内のガス分離吸着剤は窒素で飽和し、入ってくる空気から相当量の窒素を分離することができなくなる。この点は、通常、酸素富化空気の生成の所定の時間後に到達する。上記の実施態様では、キャニスター302内のガス分離吸着剤がこの飽和点に達する時、キャニスター302をキャニスター304にそれらの製品端で直接接続する、(Eとラベル付けされる)二方向バルブ152の作動が行われる。これにより、キャニスター302内の圧力が急速に低下し、キャニスター304内の圧力がキャニスター302との平衡に向けて等しく急速に上昇する。入口バルブ124はその後、作動が、圧縮システム200をキャニスター304に接続して供給端からの圧力の均等化を支援するように停止される。所定の時間の後、キャニスター内の圧力が均等化されると、バルブ152は、作動が、キャニスターを再び隔離するように停止され、入口バルブ122は、キャニスター302への圧縮空気の供給を停止し、キャニスター302を大気に接続して排気ガスの排出を可能にするように作動される。キャニスター302が通気されている間、キャニスター304は加圧されて、上記と同様に酸素富化空気を生成する。キャニスター304の加圧は、作動されていない入口バルブ124によって達成される。しばらくすると、酸素富化空気はチェックバルブ144を通してキャニスター304を出る。
【0062】
キャニスターの通気中に、窒素ガスの少なくとも大部分が除去されることが有利である。一実施態様では、空気から窒素を分離するためにキャニスターを再使用する前に、キャニスター内の窒素の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または実質的にすべてが除去される。
【0063】
いくつかの実施態様では、窒素の除去は、他のキャニスターからキャニスターに導入された酸素富化空気流、または貯蔵された酸素富化空気を使用して支援され得る。例示的な実施態様では、キャニスター304から排気ガスが排出されているときに、酸素富化空気の一部は、キャニスター302からキャニスター304に移送され得る。キャニスター304の通気中におけるキャニスター302からキャニスター304への酸素富化空気の移送は、吸着剤に隣接する窒素の分圧を低下させることによって、吸着剤から窒素を脱着するのに役立つ。酸素富化空気の流れは、脱着された窒素(および他のガス)をキャニスターからパージするのにも役立つ。一実施態様では、酸素富化空気は、2つのキャニスターの間で流量制限器153および155を通して移動し得る。流量制限器153および155は、0.013Dの流量制限器であり得る。他の流量制限器のタイプおよびサイズも考えられ、キャニスターを連結するために使用される特定の構成および配管に応じて使用され得る。いくつかの実施態様では、流量制限器153および155は、それぞれの導管内により狭い直径を導入することによって空気流を制限する圧入流量制限器であり得る。いくつかの実施態様では、圧入流量制限器は、サファイア、金属、またはプラスチック(他の材料も考えられる)で製作され得る。
【0064】
キャニスター間の酸素富化空気の流れも、(Gとラベル付けされる)二方向バルブ154の使用によって制御される。バルブ154は、通気プロセス中に開き、それ以外の場合はパージキャニスターからの過度の酸素損失を防止するように閉じ得る。他の期間も考えられる。例示的な一実施態様では、キャニスター302は通気されており、キャニスター304で生成される酸素富化空気の一部をキャニスター302に通過させることによってキャニスター302をパージすることが望ましい。酸素富化空気の一部は、キャニスター304からバルブ154ならびに流量制限器153および155を通してキャニスター302に送られる。バルブ154の制御された開口部と結合される適切な流量制限器153および155の選択は、制御された量の酸素富化空気をキャニスター304からパージキャニスター302に送ることを可能にする。一実施態様では、酸素富化空気の制御量は、キャニスター302をパージし、キャニスター302のバルブ122を通して大気への酸素富化空気の損失を最小限に抑えるのに十分な量である。本実施態様はキャニスター302の通気について説明しているが、バルブ154ならびに流量制限器153および155を使用してキャニスター304を通気させるために同じプロセスを使用できることが理解されるべきである。
【0065】
バルブ154は、流量制限器153および155と協働して、2つのキャニスター間のガス流量バランスを最適化する。これにより、一方のキャニスターを他方のキャニスターから酸素富化空気でパージするためのより良い流量制御が可能になり得る。また、2つのキャニスターの間でより良い流れ方向が提供され得る。いくつかの実施態様では、パージ流経路は、流量制限器を有しなくてもよく、代わりに、Gバルブは、流れ抵抗を内蔵し得、またはパージ流経路自体は、狭い半径を有して流れ抵抗を提供し得る。
【0066】
いくつかの実施態様では、パージ流は、2つのキャニスターの中の圧力が均等化されるときに2つのキャニスターの隔離を完了するように、バルブ152の作動が停止されると同時にバルブ154の作動を停止することによって停止される。
【0067】
図2は、本技術の一実施態様によるPSAプロセスの完全なPSAサイクル2000の説明図である。この図は、コントローラ400によって生成されるバルブ制御信号を表す、それぞれA、B、E、およびGバルブ122、124、152、および154のバルブ作動波形2010、2020、2030、および2040を含む。この図は、波形2010、2020、2030、および2040と同期したキャニスター302および304内の圧力を示す圧力波形2050および2060も含む。
【0068】
図2に示されるPSAサイクル2000は、8つの連続フェーズを含み、各フェーズは、バルブ状態(作動または非作動)の特定のセットに対応する(例えば、波形の信号の高状態および低状態にそれぞれ関連する)。PSAサイクルは、(Aとラベル付けされる)キャニスター302がAバルブ122の非作動によって加圧されている加圧フェーズから始まる。圧力波形2050は、キャニスター302の圧力の着実な上昇を示す。一方、(Bとラベル付けされる)キャニスター304は、Bバルブ124の作動によって通気される。圧力波形2060は、キャニスター304の急速な減圧を示す。したがって、キャニスター302の加圧フェーズは、キャニスター304の脱着/通気フェーズと一致する。EおよびGバルブ152および154は、作動が、キャニスター間におけるそれらの製品端でのガス交換を防止するように停止される。
【0069】
第2フェーズは、Gバルブ154が作動される時に始まり、キャニスター302を出る酸素富化空気の一部が、キャニスター304から脱着した窒素および他のガスをパージすることを可能にする。キャニスター302の圧力は安定し、キャニスター302は窒素を吸着し続け、酸素富化空気を生成する。一方、キャニスター304内の圧力は、少し上昇した後に安定する。このフェーズは、キャニスター302の吸着フェーズおよびキャニスター304のパージフェーズと呼ばれる。
【0070】
第3フェーズは、キャニスター302をキャニスター304にそれらの製品端で直接接続するEバルブ152の作動によってトリガされる。これにより、キャニスター302内の圧力が急速に低下し、キャニスター304内の圧力がキャニスター302との平衡に向けて等しく急速に上昇する。第3フェーズは、キャニスター302の均等化(1)フェーズと呼ばれる。しばらくして、第4フェーズは、Bバルブ124の作動が停止される時に始まり、キャニスター304の通気を終了し、圧縮システム200をキャニスター304に接続して、供給端からの圧力の均等化を支援する。キャニスター302および304内の圧力は、それぞれ低下および上昇し続ける。第4フェーズは、キャニスター302の均等化(2)フェーズと呼ばれる。
【0071】
第5フェーズは、キャニスター302と304内の圧力がほぼ等しくなる均等化(2)フェーズの終わりに始まる。Aバルブ122は、キャニスター302を圧縮システム200から切り離し、それを大気に接続して排気ガスが排出されることを可能にするように作動される。同時に、Gバルブ154とEバルブ152は、作動が、キャニスターの間におけるそれらの製品端でのガス交換を防止するように停止される。Bバルブ124は非作動のままである。圧力波形2050は、キャニスター302の急速な減圧を示す。圧力波形2060は、キャニスター304の圧力の着実な上昇を示す。したがって、第5フェーズは、キャニスター302および304の役割を逆にして第1フェーズをミラーリングする。したがって、キャニスター304の加圧フェーズは、キャニスター302の脱着/通気フェーズと一致する。
【0072】
第6フェーズは、Gバルブ154が作動される時に始まり、キャニスター304を出る酸素富化空気の一部が、キャニスター302から脱着した窒素および他のガスをパージすることを可能にする。キャニスター304の圧力は安定し、キャニスター304は窒素を吸着し続け、酸素富化空気を生成する。一方、キャニスター302内の圧力は、少し上昇した後に安定する。第6フェーズは、キャニスター302のパージフェーズおよびキャニスター304の吸着フェーズと呼ばれる。
【0073】
第7フェーズは、キャニスター302をキャニスター304にそれらの製品端で直接接続するEバルブ152の作動によってトリガされる。これにより、キャニスター302内の圧力が急速に上昇し、キャニスター304内の圧力がキャニスター304との平衡に向けて等しく急速に低下する。第7フェーズは、キャニスター304の均等化(1)フェーズと呼ばれる。しばらくして、第8フェーズは、Aバルブ122の作動が停止される時に始まり、キャニスター302の通気が終了し、圧縮システム200をキャニスター302に接続して、供給端からの圧力の均等化を支援する。キャニスター302および304内の圧力は、それぞれ上昇および下降し続ける。第8フェーズは、キャニスター304の均等化(2)フェーズと呼ばれる。その後、PSAサイクル2000が完了し、PSAプロセスは別のPSAサイクルで継続する。
【0074】
第1~第4フェーズはPSA半サイクルを構成し、第5~第8フェーズは残りのPSA半サイクルを構成する。
【0075】
表1は、本技術の一実施態様による6つの流速設定のそれぞれにおけるPSA半サイクルのベースフェーズ期間を、ミリ秒単位で含む。
【表1】
【0076】
いくつかの実施態様では、完全なPSAサイクルのフェーズ期間は、2つのPSA半サイクルの間で同じである(そして、ベースフェーズ期間に等しい)。しかしながら、いくつかの実施態様では、完全なPSAサイクルの2つの半サイクルのフェーズ期間に差がある。表2は、本技術の一実施態様における(すべての流量設定に適用される)各フェーズのベース期間の静的調整を含む。
【表2】
【0077】
静的調整は、キャニスター302および304に関連する空気圧経路間の固定的な非対称性の知識に基づいて予め決定され得る。このような非対称性は、製造公差の結果として各キャニスターを含む流路間のインピーダンスが異なるために発生し得る。例えば、表2によるフェーズ3(キャニスター302の均等化(1)フェーズ)の期間に対する静的調整は、20msである。これは、フェーズ3がフェーズ3および7のベース期間よりも静的に20ms長いことを意味する。フェーズ7の期間に対する静的調整は0であり、これは、フェーズ3がフェーズ7よりも静的に20ms長いことを意味する。表1におけるベースフェーズ期間の値が使用され、これは、フェーズ3とフェーズ7の静的期間がそれぞれ120ms、100msであることを意味する。このような差は、キャニスター304から302への方向よりもキャニスター302から304への方向により高いインピーダンスを有するEバルブ152の非対称性を打ち消す。キャニスター302の均等化(1)フェーズはそのため、キャニスター304の均等化(1)フェーズ中のキャニスター304からキャニスター302への均等化流と同量のキャニスター302からキャニスター304への均等化流を達成するように、わずかに長くなる必要がある。
【0078】
以下で説明されるように、フェーズ期間も、キャニスター302および304に関連する空気圧経路間の動的なインバランスを打ち消すように、動的に調整され得る。このような調整は、例えばこのようなインバランスが使用時間の経過とともに進行する患者によるPOCデバイスの使用中に行われ得る。
【0079】
上記のPSAサイクルは、PSAステートマシンによって実施され得る。
【0080】
[圧縮システム]
図1Cを参照して、酸素濃縮器100の一実施態様が示されている。酸素濃縮器100は、外側ハウジング170内に配置された圧縮システム200、キャニスターシステム300、および電源180を備える。入口101は、外側ハウジング170内に配置され、環境からの空気が酸素濃縮器100に入ることを可能にする。入口101により、空気がコンパートメントに流れ込み、コンパートメント内の構成要素の冷却を助け得る。電源180は、酸素濃縮器100への電力源を供給する。圧縮システム200は、入口105およびマフラー108を通して空気を引き込む。マフラー108は、圧縮システムによって引き込まれた空気の騒音を低減し得、また、入ってくる空気から水を除去するための乾燥剤材料も含み得る。酸素濃縮器100は、出口173を介して酸素濃縮器から空気および他のガスを排出するためのファン172をさらに含み得る。
【0081】
一部の実施態様では、圧縮システム200は、1つ以上の圧縮機を含む。別の実施態様では、圧縮システム200は、キャニスターシステム300におけるすべてのキャニスターに結合された単一の圧縮機を含む。図1Dおよび1Eを参照すると、圧縮機210およびモータ220を備えた圧縮システム200が示されている。モータ220は、圧縮機210に結合され、圧縮機に動作力を提供して圧縮機構を動作させる。例えば、モータ220は、空気を圧縮する圧縮機の構成要素の周期運動を引き起こす回転可能な構成要素を提供するモータであり得る。圧縮機210がピストン型圧縮機である場合、モータ220は、圧縮機210のピストンを往復運動させる動作力を提供する。ピストンの往復運動により、圧縮空気が圧縮機210によって生成される。圧縮空気の圧力は、圧縮機が動作する速度(例えば、ピストンの往復運動の速度)によって部分的に推定される。したがって、モータ220は、圧縮機210によって生成される空気の圧力を動的に制御するために、様々な速度で動作可能な可変速モータであり得る。
【0082】
一実施態様では、圧縮器210は、ピストンを有する単一ヘッドウォブルタイプの圧縮機を含む。ダイアフラム圧縮機や他のタイプのピストン圧縮機など、他のタイプの圧縮機を使用し得る。モータ220は、DCまたはACモータであり得、圧縮機210の圧縮構成要素に動作電力を供給する。一実施態様では、モータ220は、ブラシレスDCモータであってもよい。モータ220は、圧縮機210の圧縮構成要素を可変速度で動作させるように構成された可変速モータであってもよい。モータ220は、モータの動作を制御するために動作信号をモータに送信するコントローラ400に結合され得る。例えば、コントローラ400は、モータ220に信号を送信して、モータをオンにし、モータをオフにし、およびモータの動作速度を設定し得る。したがって、図1Bに示されるように、圧縮システム200は、速度センサ201を含み得る。速度センサ201は、モータ220の回転速度または圧縮システム200の別の往復動作の周波数を決定するために使用されるモータ速度変換器であり得る。例えば、モータ速度変換器(速度センサ201)からのモータ速度信号は、コントローラ400に提供され得る。速度センサ201またはモータ速度変換器は、例えば、ホール効果センサであり得る。コントローラ400は、速度信号および/または圧力センサ(例えば、アキュムレータ圧力センサ107)などの酸素濃縮器100の任意の他のセンサの信号に基づいて、モータ220を介して圧縮システム200を動作させ得る。したがって、コントローラ400は、速度センサ201からの速度信号およびアキュムレータ圧力センサ107からのアキュムレータ圧力信号などのセンサ信号を受信する。このような信号により、コントローラ400は、本明細書でより詳細に説明されるように、圧縮システム200の動作に対する1つ以上の制御ループ(例えば、フィードバック制御)を実施し得る。
【0083】
図3は、モータ220が圧縮機210を含む負荷290を駆動している間、モータ220の動作速度が速度設定点に調整される、本技術の一実施態様による例示的なモータ制御回路3000の概略図である。このような速度制御は、フィードバック制御(閉ループ)によって実施され得る。負荷290の大きさは、圧縮機210が空気流を生成する際に受ける背圧を表す。背圧は、圧縮機210によって加圧されているキャニスターのいずれか内の圧力に関連する。
【0084】
モータ制御回路3000において、速度設定点は、例えばPOCコントローラ400によって、速度指令3010としてモータコントローラ270に提供される。速度設定点の設定については、以下でより詳細に説明する。モータコントローラ270は、例えば、酸素濃縮器100に配置された回路基板上に含まれる1つ以上のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、マイクロコントローラなどを含む集積回路として実施され得る。あるいは、モータコントローラは、コントローラ400の一部として実施され、内部メモリ420またはコントローラ400に結合された外部記憶媒体に格納されたプログラム命令によって構成され、1つ以上のプロセッサ410によって実行され得る。
【0085】
モータコントローラ270はまた、速度センサ201からの速度信号3020を入力とする。モータコントローラは、速度信号3020および速度指令3010を処理し、モータ制御信号3030を生成する。したがって、モータ制御信号3030は、速度指令3010によって与えられる速度設定点で負荷290を駆動するように、モータ220の制御を可能にする特性パラメータで生成される。速度設定点が固定されている限り、モータ制御信号3030の特性パラメータは、いつでも負荷290の大きさを表す。電力は負荷に速度を乗じたものであり、ほぼ一定であるので、特性パラメータはモータ220によって生成される電力を表し、電力パラメータと呼ばれてもよい。
【0086】
前述のように、負荷290は、キャニスター302または304の入口バルブ122または124を介して圧縮機210に接続されるキャニスター302および304のいずれかの圧力を表す。したがって、モータ制御信号3030の電力パラメータは、圧縮機210に現在接続されているキャニスター内の圧力を表す。
【0087】
一実施態様では、モータ制御信号3030は、モータの速度に依存しない所定の周波数の一連のパルスからなる2値(高または低)波形である。一実施態様では、パルス周波数は20kHzである。パルス列のデュ-ティサイクル(1周期の期間に対する1周期中の高レベル時間の比率または割合)は、0%(全くパルスがない)から100%(1つの連続パルス)の範囲である。このような波形は、パルス幅変調(PWM)波形と呼ばれる。PWM波形のデュ-ティサイクルは、PWM波形の電力パラメータである。本実施態様では、モータコントローラ270は、モータ220が速度指令3010によって与えられる速度設定点で負荷290を駆動できるように、デュ-ティサイクルを有するPWM波形を生成する。したがって、速度設定点が固定されている限り、いつでもPWM波形のデュ-ティサイクルは、その時点での負荷290の大きさを表す。したがって、PWM波形のデュ-ティサイクル(モータ制御信号3030の電力パラメータ)は、キャニスターの入口バルブを介して圧縮機210に現在接続されているキャニスター内の圧力を表す。
【0088】
他の実施態様では、モータ制御信号3030は、電圧や電流など、連続値または離散値のDC信号である。このような実施態様では、電力パラメータは、モータ制御信号3030自体の値であり得る。
【0089】
図3に戻り、モータ制御信号3030は、1つ以上のモータ駆動信号3040を生成するモータドライバ回路280に渡される。モータドライバ回路280は、例えば、酸素濃縮器100に配置された回路基板上に含まれる1つ以上のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、マイクロコントローラなどを含む集積回路として実施され得る。モータ制御信号3030は、モータ駆動信号3040を変調して、モータ220に供給される電力量を調整し、モータ220が負荷290を駆動する速度を調整する。一例示的な実施態様では、図3に示されるように、モータ220は三相モータであるため、各巻線に1つずつ、位相の異なる3つのモータ駆動信号3040がある。
【0090】
“熱管理”
圧縮システム200は、実質的に十分な熱を発生する。熱は、モータ220による電力の消費および電力の機械的運動への変換によって引き起こされる。圧縮機210は、圧縮された空気による圧縮機構成要素の移動に対する抵抗が増大するため、熱を生成する。圧縮機210による空気の断熱圧縮により、熱も実質的に生成される。これにより、空気の継続的な加圧により、エンクロージャ内で熱が発生する。また、電源180は、電力が圧縮システム200に供給されると熱を発生し得る。さらに、酸素濃縮器のユーザは、屋内より周囲温度が高い可能性がある調節されていない環境(例えば、屋外)でデバイスを操作できるため、入ってくる空気はすでに加熱された状態になる。
【0091】
酸素濃縮器100の内部で発生する熱は、問題となる可能性がある。リチウムイオンバッテリは、長寿命で軽量であるため、酸素濃縮器用の電源として一般的に採用されている。しかしながら、リチウムイオンバッテリパックは高温では危険であり、酸素濃縮器100に安全制御が採用され、危険なほど高い電源温度が検出された場合にシステムをシャットダウンする。また、酸素濃縮器100の内部温度が上昇するにつれて、濃縮器によって生成される酸素の量が減少する可能性がある。これは、部分的には、高温では一定量の空気中の酸素量が減少するためである。生成する酸素の量が所定量以下になった場合、酸素濃縮器100は自動的にオフになり得る。
【0092】
酸素濃縮器はコンパクトなため、放熱が難しい可能性がある。典型的に、解決策は、1つ以上のファンを使用して、エンクロージャを通過する冷却空気の流を生成することを含む。しかしながら、そのような解決策は、電源180からの追加の電力を必要とするため、酸素濃縮器の携帯使用時間を短縮する。一実施態様では、モータ220によって生成された機械力を利用する受動冷却システムを使用し得る。図1Dおよび図1Eを参照すると、圧縮システム200は、回転可能な外部電機子(または回転可能な外部電機子)230を有するモータ220を含む。具体的には、モータ220(例えば、DCモータ)の電機子230は、電機子を駆動する静止磁場に巻き付けられる。モータ220は、システム全体に対して熱の主要な貢献者であるため、モータから熱を移送し、エンクロージャから熱を掃き出すことは役立つ。外部高速回転では、モータの主要構成要素とそこに存在する空気との相対速度が非常に高い。電機子は、外部に取り付けられたよりも内部に取り付けられたほうが大きな表面積がある。熱交換速度は表面積と速度の2乗に比例するため、より大きな表面積がある外部に取り付けられた電機子を使用することで、モータ220から熱を放散する能力が向上する。電機子を外部に取り付けることによる冷却効率の向上により、1つ以上の冷却ファンを不要とすることができるため、酸素濃縮器の内部を適切な温度範囲に維持しながら、重量及び消費電力を低減することができる。また、外部に取り付けられた電機子の回転により、モータの近くに空気の動きが生じ、追加の冷却が生じる。
【0093】
さらに、回転可能な外部電機子は、モータの効率を向上させ、熱の発生を抑えることができる。外部電機子を備えたモータは、内燃エンジンでフライホイールが動作するのと同様に動作する。モータが圧縮機を駆動している場合、低圧では回転に対する抵抗が小さくなる。圧縮空気の圧力が高いほど、モータの回転に対する抵抗が大きくなる。その結果、モータは一貫した理想的な回転安定性を維持するのではなく、代わりに圧縮機の圧力要求に応じてサージして減速する。モータがサージしてから減速するこの傾向は非効率的であり、そのため熱が生成する。外部電機子の使用により、モータにより大きな角運動量が加えられ、モータが受ける可変抵抗を補償するのに役立つ。モータはそれほどハードに動作する必要がないので、モータから発生する熱が減少する可能性がある。
【0094】
一実施態様では、冷却効率は、空気移送装置240を回転可能な外部電機子230に結合することによって、さらに向上し得る。一実施態様では、空気移送装置240は、外部電機子230に結合され、これにより、外部電機子230の回転によって空気移送装置240がモータの少なくとも一部を通過する空気流を生成する。一実施態様では、空気移送装置240は、外部電機子230に結合された1つ以上のファンブレードを含む。一実施態様では、複数のファンブレードは、空気移送装置240が回転可能な外部電機子230の動きによって回転するインペラとして機能するように、環状リングに配置され得る。図1Dおよび図1Eに示されるように、空気移送装置240は、モータ220と整列して、外部電機子230の外面に取り付け得る。電機子230への空気移送装置240の取り付けによって、空気流が回転可能な外部電機子230の主要部分に向けられることを可能にし、使用中に冷却効果を提供する。一実施態様では、空気移送装置240は、回転可能な外部電機子230の大部分が空気流路内にあるように空気流を導く。
【0095】
さらに、図1D及び図1Eを参照すると、圧縮機210によって加圧された空気は、圧縮機出口212で圧縮機210を出る。圧縮機出口導管250は、圧縮空気をキャニスターシステム300に移送するために圧縮機出口212に結合される。前述のように、空気の圧縮により、空気の温度が上昇する。この温度の上昇は、酸素濃縮器の効率に悪影響を与える可能性がある。加圧空気の温度を下げるために、圧縮機出口導管250は、空気移送装置240によって生成される空気流路に配置される。圧縮機出口導管250の少なくとも一部は、モータ220に近接して配置され得る。このため、空気移送装置240によって生成された空気流は、モータ220と圧縮機出口導管250の両方に接触し得る。一実施態様では、圧縮機出口導管250の大部分は、モータ220に近接して配置される。一実施態様では、圧縮機出口導管250は、図1Eに示されるように、モータ220の周りに巻かれる。
【0096】
一実施態様では、圧縮機出口導管250は、熱交換金属からなる。熱交換金属には、アルミニウム、炭素鋼、ステンレス鋼、チタン、銅、銅ニッケル合金、またはこれらの金属の組み合わせからなる他の合金が含まれるが、これらに限定されない。したがって、圧縮機出口導管250は、空気の圧縮によって実質的に生じる熱を除去するための熱交換器として機能し得る。圧縮空気から熱を除去することにより、所定の圧力で所定の体積中の分子数が増加する。その結果、各PSAサイクル中に各キャニスターで生成可能な酸素富化空気の量を増加させることができる。
【0097】
本明細書に述べた放熱機構は、受動的であるか、酸素濃縮器100に必要な要素を利用するかのいずれかである。したがって、例えば、追加の電力を必要とするシステムを使用せずに熱の放散を増加させることができる。追加の電力を必要としないことにより、バッテリパックの運転時間が長くなり、酸素濃縮器のサイズと重量を最小限に抑えることができる。同様に、追加のボックスファンまたは冷却ユニットの使用をなくしてもよい。このような追加フィーチャを除去することで、酸素濃縮器の重量と消費電力が削減される。
【0098】
前述のように、空気の断熱圧縮により、空気の温度が上昇する。キャニスターシステム300におけるキャニスターの排気中、キャニスターから排気される排気ガスの圧力は低下する。キャニスターを出るガスの断熱減圧により、排出時に排気ガスの温度が低下する。一実施態様では、キャニスターシステム300から排出された冷却された排気ガス327は、電源180および圧縮システム200に向けられる。一実施態様では、キャニスターシステム300のベース315は、キャニスターから排気ガスを受け取る。排気ガス327は、ベース315を介してベース315の出口325および電源180に向けられる。上記のように、排気ガスは、ガスの減圧により冷却されるため、電源180を受動的に冷却する。圧縮システム200が動作すると、空気移送装置240は、冷却された排気ガス327を集合させ、圧縮システム200のモータ220に向ける。ファン172は、排気ガス327を圧縮システム200を横切ってハウジング170の外に向けるのも助けることができる。このようにして、追加の冷却は、バッテリからの電力を必要とせずに得られる。
【0099】
[キャニスターシステム]
酸素濃縮器100は、少なくとも2つのキャニスターを含み得、各キャニスターはガス分離吸着剤を含む。酸素濃縮器100のキャニスターは、成形されたハウジングから形成され得る。一実施態様では、図1Iに示されるように、キャニスターシステム300は、2つのハウジング構成要素310および510を含む。様々な実施態様では、酸素濃縮器100のハウジング構成要素310および510は、2つのキャニスター302および304ならびにアキュムレータ106を画定する2つの部分からなる成形プラスチックフレームを形成し得る。ハウジング構成要素310および510は、別々に形成され、その後結合され得る。一部の実施態様では、ハウジング構成要素310および510は、射出成形または圧縮成形され得る。ハウジング構成要素310および510は、ポリカーボネート、メチレンカーバイド、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリプロピレン、ポリエチレン、またはポリ塩化ビニルなどの熱可塑性ポリマーから作製され得る。別の実施態様では、ハウジング構成要素310および510は、熱硬化性プラスチックまたは金属(ステンレス鋼または軽量アルミニウム合金など)で作製され得る。酸素濃縮器100の重量を減らすために、軽量材料を使用することができる。一部の実施態様では、2つのハウジング構成要素310および510は、ねじまたはボルトを使用して固着され得る。あるいは、ハウジング構成要素310および510は、レーザーまたは溶剤で溶着されてもよい。
【0100】
図示されるように、バルブシート322、324、332、および334ならびに導管330および346は、酸素濃縮器100の空気流全体にわたって必要とされる密閉接続の数を減らすために、ハウジング構成要素310に統合され得る。
【0101】
ハウジング構成部品310および510の異なるセクション間の空気経路/チュービングは、成形された導管の形態をとることができる。空気経路用の成形チャネルの形態である導管は、ハウジング構成要素310および510内の複数の平面を占め得る。例えば、成形された空気導管は、ハウジング構成要素310および510内で異なる深さおよび異なる位置に形成され得る。一部の実施態様では、潜在的な漏れ点を減らすために、導管の大部分または実質的にすべてを、ハウジング構成要素310および510に統合し得る。
【0102】
一部の実施態様では、ハウジング構成要素310および510を結合する前に、ハウジング構成要素が適切にシールされることを確実にするために、ハウジング構成要素310および510の様々な点の間にOリングを配置し得る。一部の実施態様では、構成要素は、ハウジング構成要素310および510に別々に統合および/または結合され得る。例えば、チュービング、流量制限器(例えば、圧入流量制限器)、酸素センサ、ガス分離吸着剤、チェックバルブ、プラグ、プロセッサ、電源などは、ハウジング構成要素310および510を結合する前および/または後に結合され得る。
【0103】
一部の実施態様では、ハウジング構成要素310および510の外部に通じるアパーチャ337は、流量制限器などのデバイスを挿入するために使用され得る。アパーチャは、成形性を高めるためにも使用できる。アパーチャの1つ以上は、成形後に(例えば、プラスチックプラグで)塞がれ得る。一部の実施態様では、プラグを挿入して通路をシールする前に、流量制限器を通路に挿入することができる。圧入流量制限器は、圧入流量制限器とそれぞれのアパーチャとの間の摩擦嵌合を可能にする直径を有し得る。一部の実施態様では、接着剤を圧入流量制限器の外部に添加して、圧入流量制限器を挿入後に適切な位置に保持し得る。一部の実施態様では、プラグは、それぞれのチューブとの摩擦嵌合を有し得る(または、プラグの外面に塗布された接着剤を有し得る)。圧入流量制限器および/または他の構成要素は、狭い先端ツールまたはロッド(例えば、それぞれのアパーチャの直径よりも小さい直径を有する)を使用して、それらのそれぞれのアパーチャに挿入および圧入され得る。一部の実施態様では、圧入流量制限器は、チューブ内のフィーチャに当接して挿入を停止するまで、それぞれのチューブに挿入され得る。例えば、フィーチャは、半径の減少を含み得る。その他のフィーチャ(例えば、チュービングの側面の隆起、ねじ山など)も考慮される。一部の実施態様では、圧入流量制限器は、(例えば、細いチューブセグメントとして)ハウジング構成要素内に成形され得る。
【0104】
一部の実施態様では、スプリングバッフル139は、バッフル139のスプリング側がキャニスターの出口に面するように、ハウジング構成要素310および510のそれぞれのキャニスター受容部内に配置され得る。スプリングバッフル139は、キャニスター内のガス分離吸着剤に力を加えることができると同時に、ガス分離吸着剤が出口アパーチャに入るのを防止することも助ける。スプリングバッフル139の使用によって、ガス分離吸着剤をコンパクトに保持することができると同時に、膨張(例えば、熱膨張)も許容する。ガス分離吸着剤をコンパクトに保持することにより、酸素濃縮器100の移動中にガス分離吸着剤が壊れるのを防止することができる。
【0105】
一部の実施態様では、フィルタ129は、それぞれのキャニスターの入口に面するハウジング構成要素310および510のそれぞれのキャニスター受容部に配置され得る。フィルタ129は、キャニスターに入る空気流から粒子を除去する。
【0106】
一部の実施態様では、圧縮システム200からの加圧空気は、空気入口306に入ることができる。空気入口306は、入口導管330に結合される。空気は、入口306からハウジング構成要素310に入り、入口導管330を通ってバルブシート322および324に移動する。図1Jおよび図1Kは、ハウジング構成要素310の端面図を示す。図1Jは、バルブをハウジング構成要素310に取り付ける前のハウジング構成要素310の端面図を示す。図1Kは、バルブがハウジング構成要素310に取り付けられたハウジング構成要素310の端面図を示す。バルブシート322および324は、それぞれ入口バルブ122および124を受け入れるように構成される。入口バルブ122はキャニスター302に結合され、入口バルブ124はキャニスター304に結合される。
【0107】
一実施態様において、加圧空気は、キャニスター302または304の一方に送られ、他方のキャニスターは通気される。バルブシート322は、ハウジング構成要素310を通過してキャニスター302に入る開口部323を含む。同様に、バルブシート324は、ハウジング構成要素310を通過してキャニスター304に入る開口部375を含む。入口導管330からの空気は、それぞれのバルブ122および124が作動していない場合、開口部323または375を介して、それぞれのキャニスター302および304に入る。
【0108】
チェックバルブ142および144(図1I参照)は、それぞれキャニスター302および304に結合される。チェックバルブ142および144は、キャニスターが加圧されて通気されるときに生じる圧力差によって受動的に動作する一方向バルブである。キャニスター302および304で生成された酸素富化空気は、キャニスターからハウジング構成要素510の開口部542および544に入る。通路(図示せず)は、開口部542および544を導管342および344にそれぞれ連結する。キャニスター302内で生成された酸素富化空気は、キャニスター内の圧力がチェックバルブ142を開くのに十分な場合、キャニスターから開口部542を介して導管342内に入る。チェックバルブ142が開いているとき、酸素富化空気は導管342を介してハウジング構成要素310の端部に向かって流れる。同様に、キャニスター304内で生成された酸素富化空気は、キャニスター内の圧力がチェックバルブ144を開くのに十分な場合、キャニスターから開口部544を介して導管344内に入る。チェックバルブ144が開いているとき、酸素富化空気は導管344を介してハウジング構成要素310の端部に向かって流れる。
【0109】
いずれかのキャニスターからの酸素富化空気は、導管342または344を介して移動し、ハウジング構成要素310に形成された導管346に入る。導管346は、それを導管342、導管344、およびアキュムレータ106に結合する開口部を含む。そのため、キャニスター302または304で生成された酸素富化空気は、導管346に移動し、アキュムレータ106に入る。図1Bに示されるように、アキュムレータ106内のガス圧力は、アキュムレータ圧力センサ107などのセンサによって測定され得る。(図1Fも参照)したがって、アキュムレータ圧力センサ107は、蓄積された酸素富化空気の圧力を表す信号を生成する。適切な圧力変換器の例は、HONEYWELL ASDXシリーズのセンサである。代替の適切な圧力変換器は、GENERAL ELECTRICのNPAシリーズのセンサである。一部のバージョンでは、圧力センサ107は、代わりに、アキュムレータ106とボーラスでユーザに送達するための酸素空気の放出を制御するバルブ(例えば、供給バルブ160)との間の出力経路などで、アキュムレータ106の外側のガスの圧力を測定することができる。
【0110】
キャニスター302は、入口バルブ122を作動させることによって排気され、これにより、排気ガスがキャニスター302からハウジング構成要素310の端部によって画定される容積領域内に放出される。キャニスターからのガスの放出による音を低減するために、ハウジング構成要素310の端部を発泡材料で覆うことができる。同様に、キャニスター304は、入口バルブ124を作動させることによって排気され、排気ガスをキャニスター304からハウジング構成要素310の端部によって画定される容積領域内に放出する。
【0111】
キャニスター間で酸素富化空気を移送する際に使用するために、ハウジング構成要素510内に2つの導管が形成される。図1Lに示されるように、導管530は、キャニスター302をキャニスター304に結合する。図1Mに示されるように、導管530は、バルブ154を受けるバルブシート554に結合される。流量制限器153および155(図示せず)は、キャニスター302とキャニスター304との間で導管530内に配置され、パージ中の酸素富化空気の流れを制限する。バルブ154は、流量制限器153および155と連携して、2つのキャニスター間のパージ流量バランスを最適化する。導管532はまた、キャニスター302をキャニスター304に結合する。図1Mに示されるように、導管532は、バルブ152を受けるバルブシート552に結合される。
【0112】
アキュムレータ106内の酸素富化空気は、以下に説明するように供給バルブ160を通過する。ハウジング構成要素510における開口部(図示せず)は、アキュムレータ106を供給バルブ160に結合する。
【0113】
[出口システム]
キャニスターの1つ以上に結合された出口システムは、酸素富化空気をユーザに供給するための1つ以上の導管を含む。一実施態様では、図1Bに概略的に示されるように、キャニスター302および304のいずれかで生成された酸素富化空気は、それぞれチャッキバルブ142および144を介してアキュムレータ106に収集される。キャニスターから出た酸素富化空気は、ユーザに供給される前に酸素アキュムレータ106に収集され得る。一部の実施態様では、導管をアキュムレータ106に結合して、酸素富化空気をユーザに供給し得る。酸素富化空気は、酸素富化空気をユーザの口および/または鼻に移送する気道送達装置を介してユーザに供給され得る。一実施態様では、送達装置は、酸素をユーザの鼻および/またはユーザの鼻に直接結合されない口に向けるチューブを含み得る。
【0114】
図1Fを参照すると、酸素濃縮器用の出口システム150の一実施態様の概略図が示されている。供給バルブ160は、導管に結合して、アキュムレータ106からユーザへの酸素富化空気の放出を制御することができる。供給バルブ160は、コントローラ400によって作動され、酸素富化空気のユーザへの送達を制御する。一実施態様では、供給バルブ160は、電磁作動プランジャバルブである。供給バルブ160の作動は、圧力スイング吸着プロセスに対して時間調整または同期化されていない。代わりに、以下に説明するように、作動はユーザの呼吸に同期される。一部の実施態様では、供給バルブ160は、酸素富化空気を供給するための臨床的に有効な振幅プロファイルを確立するために、連続値の作動を有し得る。
【0115】
アキュムレータ106内の酸素富化空気は、図1Fに示されるように、供給バルブ160を介して酸素センサ165に入る。一実施態様では、酸素センサ165は、酸素センサ165を通過するガスの酸素濃度(純度)を推定するように構成された1つ以上のデバイスを含み得る。酸素富化空気は、供給バルブ160によってアキュムレータ106から放出され、その後小さなオリフィス流量制限器175を介して酸素センサ165に、次いで粒子フィルタ187に排出される。流量制限器175は、0.025Dの流量制限器であり得る。他のタイプおよびサイズの流量制限器を使用してもよい。一部の実施態様では、ハウジングにおける空気経路の直径を制限して、制限された空気流を生成し得る。粒子フィルタ187は、酸素富化空気をユーザに送達する前に、バクテリア、ほこり、顆粒粒子などを濾過するために使用することができる。酸素富化空気は、フィルタ187を介して、酸素富化空気を送達導管192を介してユーザに送り、および圧力センサ194に送るコネクタ190に達する。
【0116】
出口経路の流体力学は、供給バルブ160のプログラムされた作動と相まって、正確な時間に、過度の浪費なしにユーザの肺への迅速な送達を保証する振幅プロファイルで、供給される酸素のボーラスをもたらし得る。
【0117】
酸素センサ165は、ガス中の酸素濃度を測定するように構成されるデバイスである。酸素センサの例としては、超音波酸素センサ、電気的酸素センサ、化学的酸素センサ、および光学的酸素センサが挙げられるが、これらに限定されない。一実施態様では、酸素センサ165は、化学的酸素センサである。
【0118】
粒子フィルタ187は、酸素富化空気をユーザに供給する前に、バクテリア、ほこり、顆粒粒子などを除去する。濾過された酸素富化空気は、コネクタ190に達する。コネクタ190は、フィルタ187の出口を圧力センサ194および送達導管192に結合する「Y」コネクタであり得る。圧力センサ194は、送達導管192を介してユーザに至るガスの圧力を監視するために使用できる。一部の実施態様では、圧力センサ194は、感知面に加えられる正圧または負圧の量に比例する信号を生成するように構成される。圧力センサ194によって感知された圧力の変化は、以下に説明するように、ユーザの呼吸速度、および吸入の開始(トリガ瞬間とも呼ばれる)を決定するために使用され得る。コントローラ400は、ユーザの呼吸数および/または吸入の開始に基づいて、供給バルブ160の作動を制御し得る。一実施態様では、コントローラ400は、圧力センサ194によって提供される情報に基づいて、供給バルブ160の作動を制御し得る。
【0119】
酸素富化空気は、送達導管192を介してユーザに供給され得る。一実施態様では、送達導管192はシリコーンチューブであり得る。送達導管192は、図1Gおよび図1Hに示されるように、気道送達装置196によってユーザに結合され得る。気道送達装置196は、酸素富化空気を鼻腔または口腔に供給できる任意のデバイスであり得る。気道送達装置の例としては、鼻マスク、鼻ピロー、鼻プロング、鼻カニューレ、およびマウスピースが挙げられるが、これらに限定されるものではない。鼻カニューレ気道送達装置196は、図1Gに示されている。鼻カニューレ気道搬送装置196は、ユーザの気道に近接して(例えば、ユーザの口および/または鼻に近接して)配置され、酸素富化空気がユーザに送達できるようにしながら、ユーザが周囲から空気を呼吸できるようにする。
【0120】
代替の実施態様では、マウスピースを使用して、酸素富化空気をユーザに供給してもよい。図1Hに示されるように、マウスピース198は、酸素濃縮器100に結合され得る。マウスピース198は、酸素富化空気をユーザに供給するために使用される唯一のデバイスであってもよいし、鼻送達装置(例えば、鼻カニューレ)と組み合わせて使用されてもよい。図1Hに示されるように、酸素富化空気は、鼻カニューレ気道送達装置196およびマウスピース198の両方によってユーザに供給され得る。
【0121】
マウスピース198は、取り外し可能にユーザの口に配置可能である。一実施態様では、マウスピース198は、ユーザの口内の1つ以上の歯に取り外し可能に結合可能である。使用中、酸素富化空気はマウスピースを介してユーザの口に送られる。マウスピース198は、ユーザの歯に適合するように成形されたナイトガードマウスピースであり得る。あるいは、マウスピースは、下顎の再配置装置であってもよい。一実施態様では、使用中に、マウスピースの少なくとも大部分はユーザの口に配置される。
【0122】
使用中に、マウスピースの近くで圧力の変化が検出される時、酸素富化空気はマウスピース198に送られる。一実施態様では、マウスピース198は、圧力センサ194に結合され得る。ユーザがユーザの口から空気を吸入すると、圧力センサ194は、マウスピース近傍の圧力低下を検出し得る。酸素濃縮器100のコントローラ400は、吸入開始時に酸素富化空気のボーラスのユーザへの放出を制御し得る。
【0123】
個体の典型的な呼吸過程では、吸入は鼻から、口から、または鼻と口の両方から発生し得る。さらに、呼吸は、さまざまな要因によってある通路から他の通路へ変化し得る。例えば、より活発な活動中に、ユーザは鼻呼吸から口呼吸、または口と鼻からの呼吸に切り替え得る。単一の送達モード(経鼻または経口)に依存するシステムは、監視された経路を介した呼吸が停止すると、適切に機能しない可能性がある。例えば、鼻カニューレがユーザに酸素富化空気を供給するのに使用される場合、吸入センサ(例えば、圧力センサまたは流量センサ)が鼻カニューレに結合され、吸入の開始を決定する。ユーザが鼻呼吸を止め、口呼吸に切り替えれば、酸素濃縮器100は、鼻カニューレからのフィードバックがないため、酸素富化空気を供給するタイミングがわからない場合がある。このような状況下では、酸素濃縮器100は、吸入センサがユーザによる吸入を検出するまで、流量を増加させ、および/または酸素富化空気を供給する頻度を増加させ得る。ユーザが呼吸モードを頻繁に切り替える場合、酸素富化空気を供給するデフォルトモードにより、酸素濃縮器100をより激しく動作させ得、システムの携帯使用時間を制限する。
【0124】
一実施態様では、マウスピース198は、図1Hに示されるように、鼻カニューレ気道送達装置196と組み合わせて使用され、酸素富化空気をユーザに供給する。マウスピース198および鼻カニューレ気道送達装置196の両方は、吸入センサに結合される。一実施態様では、マウスピース198および鼻カニューレ気道送達装置196の両方は、同じ吸入センサに結合される。代替の実施形態では、マウスピース198および鼻カニューレ気道送達装置196の両方は、異なる吸入センサに結合される。いずれの実施態様においても、吸入センサは、口または鼻のいずれかからの吸入の開始を検出することができる。酸素濃縮器100は、吸入の開始が検出された場所に近接する送達装置(すなわち、マウスピース198または鼻カニューレ気道送達装置196)に酸素富化空気を提供するように構成され得る。あるいは、酸素富化空気は、いずれかの送達装置の近くで吸入の開始が検出された場合、マウスピース198および鼻カニューレ気道送達装置196の両方に供給されてもよい。図1Hに示されるようなデュアル送達システムの使用は、ユーザが眠っているときに特に有用であり、意識的な努力なしに鼻呼吸と口呼吸とを切り替えることができる。
【0125】
[コントローラシステム]
酸素濃縮器100の動作は、本明細書に記載されるように、酸素濃縮器100の様々な構成要素に結合された内部コントローラ400を使用して自動的に実行され得る。コントローラ400は、1つ以上のハードウェアコンポーネント(例えば、ハードウェアコントローラ)によって実施されてもよく、ハードウェアコントローラのプログラミングロジックモジュールである1つ以上のプログラミングロジックまたはソフトウェアコントローラで実施されてもよい。したがって、コントローラ400は、図1Bに示されるように、1つ以上のプロセッサ410および内部メモリ420を含み得る。酸素濃縮器100を操作および監視するために使用される方法は、内部メモリ420またはコントローラ400に結合された外部記憶媒体に格納されたプログラム命令によって実施され、1つ以上のプロセッサ410によって実行され得る。記憶媒体は、様々なタイプの記憶装置またはストレージ装置のいずれかを含み得る。「記憶媒体」という用語は、例えば、コンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD?ROM)、フロッピーディスク、またはテープデバイスなどのインストール媒体、例えば、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、ダブルデータレートランダムアクセスメモリ(DDR RAM)、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、拡張データ出力ランダムアクセスメモリ(EDO RAM)、またはランダムアクセスメモリ(RAM)などのコンピュータシステムメモリまたはランダムアクセスメモリ、例えば、ハードドライブ、または光学ストレージなどの磁気媒体のような不揮発性メモリ、を含むことを意図している。記憶媒体は、他のタイプのメモリまたはそれらの組み合わせも含み得る。また、記憶媒体は、プログラムまたは制御ロジックが実行されるコントローラ400に近接して配置されてもよいし、以下に説明するように、ネットワークを介してコントローラ400に接続する外部コンピューティングデバイスに配置されてもよい。後者の場合、外部コンピューティングデバイスは、実行のためにコントローラ400にプログラム命令を提供し得る。「記憶媒体」という用語は、例えば、ネットワークを介して接続された異なるコンピューティングデバイスなど、異なる場所に存在可能な2つ以上の記憶媒体を含み得る。
【0126】
一部の実施態様では、コントローラ400は、例えば、酸素濃縮器100に配置された回路基板上に含まれる1つ以上のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、マイクロコントローラなどを含むプロセッサ410を含む。プロセッサ410は、メモリ420に格納されたプログラミング命令(例えば、制御ロジック)を実行するように構成される。一部の実施態様では、プログラミング命令は、プロセッサ410の外部のメモリが別個にアクセスされないようにプロセッサ410に組み込まれ得る(すなわち、メモリ420はプロセッサ410の内部にあり得る)。
【0127】
プロセッサ410は、圧縮システム200、システムを通る流体流を制御するために使用される1つ以上のバルブ(例えば、バルブ122、124、152、154、160)、酸素センサ165、圧力センサ194、温度センサ(図示せず)、ファン172、および電気的に制御され得る任意の他の構成要素を含むがこれらに限定されない、酸素濃縮器100の様々な構成要素に結合され得る。一部の実施態様では、別個のプロセッサ(および/またはメモリ)は、構成要素のうちの1つ以上に結合され得る。
【0128】
コントローラ400は、酸素濃縮器100を動作させるように構成され(例えば、プログラム命令によってプログラムされる)、誤動作状態または他のプロセス情報などについて酸素濃縮器100を監視するようにさらに構成される。例えば、一実施態様では、コントローラ400は、システムが動作しており、ユーザによる呼吸が所定の時間内で検出されない場合に、アラームをトリガするようにプログラムされる。たとえば、コントローラ400が75秒以内に呼吸を検出しない場合、アラームLEDが点灯し、および/または可聴アラームが鳴らされ得る。ユーザが本当に呼吸を停止した場合、例えば、睡眠時無呼吸エピソード中に、アラームはユーザを目覚めさせるのに十分であり得、それにより、ユーザは呼吸を再開する。呼吸の動作は、コントローラ400がこのアラーム機能をリセットするのに十分であり得る。あるいは、送達導管192がユーザから取り外されたときにシステムが誤ってオンのままになっている場合、アラームは、酸素濃縮器100をオフにするようにユーザに思い出させるリマインダとして機能し得る。
【0129】
コントローラ400は、さらに酸素センサ165に結合され、酸素センサ165を通過する酸素富化空気の酸素濃度を連続的または定期的に監視するようにプログラムされ得る。最小酸素濃度閾値は、コントローラがLED視覚アラームおよび/または可聴アラームを点灯させて酸素濃度が低いことをユーザに警告するように、コントローラ400にプログラムされ得る。
【0130】
コントローラ400は、内部電源180にも結合され、内部電源の充電レベルを監視するように構成され得る。最小電圧および/または電流閾値は、コントローラがLED視覚アラームおよび/または可聴アラームを点灯させて低電力状態をユーザに警告するように、コントローラ400にプログラムされ得る。バッテリの使用可能な充電量がゼロに近づくにつれて、アラームは断続的に、および増加している頻度で起動し得る。
【0131】
コントローラ400によって実施され得るさらなる機能については、本開示の他のセクションで詳細に説明する。例えば、POCのコントローラは、圧縮機制御を実施して、システム内の圧力を調整し得る。これにより、POCは、キャニスター302および304の下流のアキュムレータ106に圧力センサ107などの圧力センサを備え得る。POCにおけるコントローラ400は、例えば、1つ以上のモードで、圧力センサおよびモータ速度センサからの信号を使用して、圧縮機210の速度の調整を制御し得る。この点に関して、コントローラは、圧力粗調整モードおよび圧力微調整モードと呼ばれるデュアル制御モードを実施し得る。圧力粗調整モードは、POCの異なる流量設定(または「流設定」)の間で変更するため、および開始/初期起動のために実施し得る。そして、圧力粗調整モードの各動作が終了すると、圧力微調整モードが引き継がれる。
【0132】
圧力粗調整モードでは、モータ速度は、前の動作状態に応じてランプアップまたはランプダウンするように設定/制御される。ランピング中、コントローラは、圧力センサからの測定値を使用して、キャニスター内のセンサ上流の推定圧力を生成する。一部の実施態様では、推定圧力は、例えば、推定圧力が、POCの選択された流量設定に関連する、製造時に生成された所定の目標圧力値に到達したときに、ランプを終了するための試験に使用される。表2には、本技術の一実施態様による6つの流量設定のそれぞれに関連する流量および目標圧力値が含まれる。
【表3】
【0133】
圧力推定値は、圧力センサからのデータを使用して回帰(例えば、線形)を実行することによって計算され得る。それによって、コントローラは、センサ信号サンプルから回帰パラメータ(例えば、直線の傾きおよび切片パラメータ)を決定する。圧力推定値は、回帰パラメータと既知のシステム応答遅延によって計算される。
【0134】
圧力微調整モードでは、モータ速度は、圧力センサからの信号を使用してシステムの圧力を目標圧力値に調整するように制御される。圧力粗調整モードが終了すると、モータ速度のランピングが停止し、基本モータ速度が現在のモータ速度と等しくなるように設定される。モータ速度に対するさらなる変化は、PID(比例、積分、微分)コントローラなどの微細圧力コントローラによって実施される。圧力微調整モードの間、目標圧力は、適格な圧力推定値と比較して、速度調整を生じるために微細圧力コントローラに適用される第1エラー信号を生成する。速度調整を基本モータ速度に加えることにより、モータに対する速度設定点が得られる。次に、速度設定点は、図3を参照して上述したモータ制御回路3000に渡され、モータが速度設定点で動作し、それによって目標システム圧力が達成される。
【0135】
微細圧力コントローラに対する適格な圧力推定値は、回帰によって計算できる。この点に関して、圧力信号からのサンプルは、最適なアルゴリズム(例えば、線形回帰)に適用され、PSAサイクルの吸着フェーズ中の圧力信号からのデータの回帰パラメータ(例えば、線の傾きおよび切片)を決定し得る。傾きが正の場合、これらのパラメータ(圧力センサからの圧力サンプルではなく、傾きと切片である)をPSAサイクルの所与の吸着フェーズの特定の時間に適用して、線形回帰からの回帰直線のピーク値を決定し得る。傾きが負の場合、切片パラメータをピーク値として使用される。その後、回帰情報からのピーク値は、最近のピーク値の平均値(例えば、6以上)を維持する移動平均バッファに適用され得る。その後、平均ピーク値は、微細圧力コントローラに対する適格な圧力推定値として使用される。このようなプロセスのバージョンについては、2019年9月24日に出願された米国仮特許出願第62/904,858号でより詳細に説明されており、その開示全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0136】
また、POCのコントローラは、システムにおけるボーラスサイズ(体積)を調整するために供給バルブ制御を実施するように構成され得、供給バルブ制御は、POCの流量センサを使用せずに任意に実施され得る。例えば、POCは、キャニスターの下流のアキュムレータ106内の圧力センサ107などの圧力センサを備え、圧力の関数として、POCによって生成されるボーラスサイズを調整し得る。そのようなボーラスサイズに対する調整は、アキュムレータ圧力の関数であり得る。
【0137】
さらに、前述したように、POCは動的インバランス低減を実施し得る。そのような動的インバランス低減機能は、コントローラ400によって実施され得る。その機能に対する制御ロジックを含み得るそのような機能は、本開示の他のセクションで詳細に説明される。例えば、コントローラ400は、電力パラメータを有するモータ制御信号を生成することによって加圧空気流を生成しながら、圧縮機の速度を速度設定点に調整する、1つ以上のコントローラとして実施され得る。コントローラ400は、周期的パターンで1つ以上のバルブを選択的に動作させて、アキュムレータに酸素富化空気を生成するように実施され得る。周期的パターンのサイクルは、複数のフェーズを有し得、複数のフェーズのそれぞれは、期間設定点によって実装され得る期間を有し得る。コントローラ400は、電力パラメータの評価に基づいて、期間のうちの1つ以上(例えば、期間設定点)に対する動的調整を生じ得る。このような動的調整は、キャニスターに関連する空気圧経路間の圧力などの空気圧特性の動的インバランスを低減し得る。
【0138】
[制御パネル]
制御パネル600は、ユーザとコントローラ400との間のインターフェースとして機能し、ユーザが酸素濃縮器100の所定の動作モードを起動し、システムの状態を監視できるようにする。図1Nは、制御パネル600の一実施態様を示す。内部電源180を充電するための充電入力ポート605は、制御パネル600に配置され得る。
【0139】
一部の実施態様では、制御パネル600は、酸素濃縮器100に対して様々な動作モードを起動するためのボタンを含み得る。例えば、制御パネルは、電源ボタン610、流量設定ボタン620~626、アクティブモードボタン630、スリープモードボタン635、高度ボタン640、およびバッテリチェックボタン650を含み得る。一部の実施態様では、1つ以上のボタンは、それぞれのボタンが押されると点灯し得、それぞれのボタンが再度押されると電源がオフになり得るそれぞれのLEDを有し得る。電源ボタン610は、システムの電源をオンまたはオフにし得る。電源ボタン610が起動してシステムをオフにすると、コントローラ400は、シャットダウンシーケンスを開始して、システムをシャットダウン状態(例えば、両方のキャニスターが加圧された状態)にし得る。
【0140】
流量設定ボタン620、622、624、および626により、酸素富化空気の流量を選択できる(例えば、ボタン620で0.2LPM、ボタン622で0.4LPM、ボタン624で0.6LPM、ボタン626で0.8LPM)。他の実施態様では、流量設定の数は増加または減少してもよい。流量設定が選択された後、酸素濃縮器100は、選択された流量設定に従って酸素富化空気の生成を達成するように動作を制御する。
【0141】
高度ボタン640は、ユーザが酸素濃縮器100を定期的に使用する位置よりも高い位置にいる場合に起動され得る。
【0142】
バッテリチェックボタン650は、酸素濃縮器100内のバッテリチェックルーチンを起動し、その結果、制御パネル600上で相対的なバッテリ残量LED655が点灯する。
【0143】
ユーザは、検出された呼吸数または深さを閾値と比較することによって推定されるように、比較的アクティブでない場合(例えば、眠っている、座っているなど)、呼吸数または深さが低いことがある。ユーザは、比較的アクティブな場合(たとえば、ウォーキング、運動など)、呼吸数または深さが高いことがある。アクティブ/スリープモードは、呼吸数または深さから自動的に推定され得、および/またはユーザは、アクティブモードのボタン630またはスリープモードのボタン635を押すことによって、アクティブモードまたはスリープモードを手動で示し得る。一部の実施態様では、POC100のデフォルトはアクティブモードである。
【0144】
[POCの操作方法]
以下に説明するPOC100を操作および監視する方法は、POC100のメモリ420などのメモリに格納された、前述のように、1つ以上の機能および/またはそれに対応する関連データを含むようなプログラム命令によって構成された、コントローラ400の1つ以上のプロセッサ410などの1つ以上のプロセッサによって実行され得る。
【0145】
酸素濃縮器100の主な用途は、補助酸素をユーザに提供することである。酸素濃縮器100の制御パネル600上で1つ以上の流量設定を選択し得、その後、選択された流量設定に従って酸素富化空気の生成を達成するように操作を制御する。一部のバージョンでは、複数の流量設定が実施され得る(例えば、5つの流量設定)。本明細書でより詳細に説明されているように、コントローラ400は、POD(パルス酸素送達)または需要動作モードを実施し得る。コントローラ400は、選択された流量設定に従って酸素富化空気の送達を達成するために、1つ以上の放出パルスまたはボーラスのサイズを調整し得る。
【0146】
送達された酸素富化空気の効果を最大にするために、コントローラ400は、酸素富化空気の各ボーラスの放出をユーザの吸入と同期させるようにプログラムされ得る。ユーザが息を吸うときに酸素富化空気のボーラスのユーザへの放出は、例えば、ユーザが息を吐くときに酸素を放出しないことによって、酸素の浪費を減らし得る。制御パネル600上の流量設定は、送達された酸素の分量(ボーラス量に1分あたりの呼吸数を乗じた値)に対応し得、例えば、表3に示されるように、0.2LPM、0.4LPM、0.6LPM、0.8LPM、1LPM、1.1LPMである。
【0147】
酸素濃縮器100によって生成された酸素富化空気は、酸素アキュムレータ106に貯蔵され、POD動作モードでは、ユーザが息を吸うときにユーザに放出される。酸素濃縮器100によって供給される酸素富化空気の量は、供給バルブ160によって部分的に制御される。一実施態様では、供給バルブ160は、コントローラ400によって推定された適切な量の酸素富化空気をユーザに提供するのに十分な時間だけ開かれる。酸素の浪費を最小限に抑えるために、酸素富化空気は、ユーザの吸入の開始が検出された直後にボーラスとして放出され得る。例えば、酸素富化空気のボーラスは、ユーザの吸入の最初の数ミリ秒で放出され得る。
【0148】
一実施態様では、圧力センサ194などの吸入センサを使用して、ユーザによる吸入の開始を検出し得る(「トリガリング」と呼ばれるプロセス)。例えば、ユーザの吸入の開始は、圧力センサ194によって検出され得る。使用中、酸素富化空気を提供するための送達導管192は、鼻気道送達装置196および/またはマウスピース198を介してユーザの鼻および/または口に結合される。したがって、送達導管192内の圧力は、ユーザの気道圧力を表し、そのため、ユーザの呼吸を示す。吸入が開始される時、ユーザは鼻及び/又は口から空気を身体に吸い込み始める。空気が引き込まれると、部分的には、送達導管192の端部を横切って引き込まれる空気のベンチュリ作用により、送達導管192の端部に負圧が発生する。コントローラ400は、圧力センサ194からの圧力信号を分析して、吸入の開始を示す圧力の低下を検出する。吸入の開始が検出されると、供給バルブ160が開かれて、酸素富化空気のボーラスがアキュムレータ106から放出される。
【0149】
送達導管192内の圧力の正の変化または上昇は、ユーザによる呼気を表す。コントローラ400は、圧力センサ194からの圧力信号を分析して、呼気の開始を示す圧力の上昇を検出し得る。一実施態様では、正の圧力変化が感知されると、供給バルブ160は次の吸入開始が検出されるまで閉じられる。あるいは、供給バルブ160は、ボーラス期間として知られる所定の間隔の後に閉じられてもよい。
【0150】
隣接する吸入開始間の間隔を測定することにより、ユーザの呼吸数を推定し得る。吸気の開始とその後の呼気の開始の間の間隔を測定することにより、ユーザの吸気時間を推定し得る。
【0151】
他の実施態様では、圧力センサ194は、ユーザの気道と空気圧連通しているが、送達導管192とは別個の感知導管内に配置され得る。このような実施態様では、そのため、圧力センサ194からの圧力信号は、ユーザの気道圧力も表す。
【0152】
一部の実施態様では、圧力センサ194の感度は、特に圧力センサ194が酸素濃縮器100に配置され、圧力差が酸素濃縮器100をユーザに結合する送達導管192を通じて検出される場合、ユーザから圧力センサ194までの物理的距離によって影響を受け得る。一部の実施態様では、圧力センサ194は、酸素富化空気をユーザに供給するために使用される気道送達装置196に配置され得る。圧力センサ194からの信号は、酸素濃縮器100内のコントローラ400に、ワイヤを介して、あるいはBluetooth(登録商標)または他の無線技術などのテレメトリを介して電子的に提供され得る。
【0153】
トリガプロセスの感度は、吸入の開始を示す圧力の大幅な低下が起こったか否かを決定するために、圧力センサ194からの信号が比較されるトリガ閾値によって支配される。トリガ閾値を調整することにより、トリガプロセスの感度が変わる。一部の実施態様では、トリガ閾値は、POC100がアクティブモードにある(例えば、自動的に推定されたか、またはアクティブモードボタン630を介してユーザによって要求される)ときと比較して、POC100がスリープモードにある(例えば、自動的に推定されるか、またはスリープモードボタン635を介してユーザによって要求される)ときのトリガプロセスの感度を高くするように設定される。
【0154】
一部の実施態様では、POC100がアクティブモードにあり、吸入の開始が所定の間隔(例えば8秒)で検出されない場合、POC100はスリープモードに変化し、上述のようにトリガ感度を増加させる。そして、吸入の開始がさらなる所定の間隔(例えば8秒)で検出されない場合、POC100は「自動パルス」モードに入る。自動パルスモードでは、コントローラ400は、一定の所定の間隔(例えば、4秒)でボーラスを送達するように、供給バルブ160の作動を制御する。POC100は、トリガプロセスによって吸入の開始が検出されるか、またはPOC100の電源がオフになると、自動パルスモードを終了する。
【0155】
一部の実施態様では、検出されたユーザの呼吸数によって推定されたレベルなど、ユーザの現在の活動レベルが所定の閾値を超える場合、コントローラ400は、アラーム(例えば、視覚および/または音声)を実施し、現在の呼吸数が酸素濃縮器100の送達能力を超えたことをユーザに警告し得る。例えば、閾値は、毎分40回の呼吸(BPM)に設定され得る。
【0156】
“インバランス制御に対する動的フェーズ期間調整”
上述したように、PSAサイクルの各フェーズの期間は、キャニスター302および304に関連する空気圧経路間の空気圧特性の動的インバランスを打ち消すように動的に調整され得る。PSAサイクルにわたるキャニスター内の圧力間のインバランスが各キャニスターによる酸素富化空気の生成を決定するための重要なパラメータであり得るため、重要な主なインバランスは、PSAサイクルにわたるキャニスター内の圧力間のインバランスであり得る。動的インバランスは、空気圧経路のさまざまな点からの漏れの一時的な変動に起因し得る。動的インバランスの別の原因は、キャニスター302からキャニスター304への流れ方向とキャニスター304からキャニスター302への流れ方向との間のEバルブ152のインピーダンスの差である。また、ユーザの吸気の開始が、そのキャニスターが主に酸素富化空気の生成に関与するフェーズと偶然に一致する場合、PODモードでのボーラス送達の結果として、1つのキャニスターに偏る期間があり得る。
【0157】
一実施態様では、PSAサイクルにわたる各キャニスター内の圧力は、直接感知され、サンプリングされ、2つのキャニスター間のインバランスを表す差値に変換され得る。これは、各キャニスター内であるか、または各キャニスターに空気圧で結合された圧力センサで達成され得る。あるいは、各キャニスターによって生成された酸素富化空気の質量流量は、直接感知され、サンプリングされ、2つのキャニスター間のインバランスを表す差分値に変換され得る。これは、各キャニスター内であるか、または各キャニスターに空気圧で結合された質量流量センサで達成され得る。インバランスを減らして酸素富化空気の全体的な収量を最適化するために、その後、代表的な差の値をインバランス制御システムで使用して、PSAサイクルの1つ以上のフェーズの期間を動的に調整し得る。これは、複数の吸着剤容器を含むガス分離のための工業規模のPSAプロセスで最も頻繁に採用されるアプローチである。
【0158】
しかしながら、PSAサイクルのそのような計装は、酸素濃縮器100などの治療用に設計された小規模の携帯用酸素濃縮器にとって高価である。また、アキュムレータ圧力センサ107からの圧力信号は、正確なインバランス制御に使用される、図1Bの空気圧アーキテクチャにおけるPSAサイクルにわたる各キャニスター内の圧力に対する十分に信頼できるガイドではない可能性がある。
【0159】
上述したように、モータ制御回路3000内のモータ制御信号3030の電力パラメータは、圧縮機が一定の速度に調整されている間、圧縮機210に現在接続されているキャニスター内の圧力を表す(すなわち、十分に実行可能なプロキシである)。上述の圧力微調整モードの間、モータ速度は、システム圧力を目標圧力値に調整するために変化し得る。しかし、PSAサイクル内で、モータ速度は、モータ220上の負荷290の変動と比較してゆっくりと変動し、したがって、モータ制御信号3030の電力パラメータは、モータ制御回路3000によって生成される。したがって、モータ制御信号3030の電力パラメータは、圧縮機210に現在接続されているキャニスター内の圧力に対する十分に実行可能なプロキシである。したがって、モータ制御信号3030を評価して、POCのキャニスター間のインバランスを低減し得る。
【0160】
電力パラメータの一例は、本技術の一実施態様において、モータコントローラ270によってモータ制御信号3030として生成されるPWM波形のデューティサイクルである。図4は、同じPSAサイクルにわたるPWMデューティサイクル波形4010が同期的に重ね合わされる、図2からのPSAサイクルにわたるキャニスター圧力波形2050および2060を含むグラフ4000を含む。図4は、PWMデューティサイクル波形4010が、Aバルブ122の非作動によってキャニスター302が圧縮機210に接続されるとき、フェーズ1から4にわたってキャニスター302の圧力波形の形状を厳密に追跡し、Bバルブ124の非作動によってキャニスター304が圧縮機210に接続されるとき、フェーズ5から8にわたってキャニスター304の圧力波形の形状を厳密に追跡することを示している。
【0161】
以下では、電力パラメータはPWM波形のデューティサイクルであるが、モータ制御信号3030の電力パラメータの他の実施態様も考えられる。
【0162】
PWMデューティサイクル波形は、例えば、圧縮機モータコントローラがソフトウェアロジックで実施されるとき、PWMモータ制御信号3030から、またはモータの動作の調整においてそのような信号を生成するために圧縮機モータコントローラによって導出される制御パラメータから決定され得る。PWMデューティサイクル波形は、PSAサイクルの長さよりも短いサンプリング間隔、例えば、5msまたは10msでサンプリングされ得る。図4はまた、PWMデューティサイクル波形のサンプル値を記録できるPSAサイクルにわたる8つのサンプリングポイントも示している。記録された8つのサンプリングポイントでの値は、SA1、SA2、SA3、SA4、SB1、SB2、SB3、およびSB4とラベル付けされ、PSAサイクルの8つのフェーズのそれぞれに関連するPWMデューティサイクル波形のサンプルを表す。一実施態様では、サンプリングポイントは8つのフェーズ遷移と一致するため、8つのサンプル値は表4のように定義できる。
【表4】
【0163】
一例示的な実施態様では、各サンプル値は、対応するサンプリングポイントまでのサンプリング時点での3つのサンプル値の平均を表す。
【0164】
空気圧インバランスの動的指標を導出するために、その後、1つのキャニスターに関連付けられたいずれかまたは各フェーズに対するサンプルを、他のキャニスターに関連付けられた対応するフェーズ対するサンプルと比較し得る。例えば、SA1とSB1、SA2とSB2、SA3とSB3、SA4とSB4の差は、各PSAサイクル毎に計算され、それぞれSD1、SD2、SD3、SD4としてラベル付けされ得る。同様に、SA1とSB1、SA2とSB2、SA3とSB3、SA4とSB4の比率は、各PSAサイクル毎に計算され、それぞれSR1、SR2、SR3、SR4としてラベル付けされ得る。差SD1、SD2、SD3、およびSD4の値、および/または比率SR1、SR2、SR3、およびSR4などの比較からの結果は、PSAの半サイクルごとに得られる。
【0165】
それぞれの結果(例えば、計算されたデューティサイクル差SD1、SD2、SD3、およびSD4または比率SR1、SR2、SR3、およびSR4)は、キャニスター間の圧力インバランスの測定値を表し、したがって、圧力インバランスの測定値をインバランス目標値、通常はゼロに調整するように構成されたインバランスコントローラへの入力として使用される。例えば、インバランスコントローラは、POC100のコントローラ400のプロセッサのプロセスまたはアルゴリズム(例えば、比例積分(PI)または比例積分微分(PID)制御ループアルゴリズムまたは制御ロジック)によって実施され得る。インバランスコントローラの出力は、バルブ制御信号のタイミング調整として実施できる、PSAサイクルの1つ以上のフェーズ期間に対する動的調整である。例えば、表5には、本技術によるインバランスコントローラによって生成され得る動的フェーズ期間調整値についての8つのラベル、ならびに各調整値が調整するフェーズ期間および調整による遅延するバルブ状態の変化がリストされる。(なお、負の調整値は、バルブ状態の変化を遅らせるのではなく、時間的に早めることになる。)
【表5】
【0166】
表5にリストされる動的調整値は、表2にリストされるようなフェーズ期間に対する任意の静的調整値の上に(加えて)、リアルタイムでフェーズ期間に適用される。
【0167】
図5は、本技術の一実装態様による、POC100などのPOC用のインバランス制御システム5000の一例のブロック図である。インバランス制御システム5000は、POCまたはコントローラ400のプロセッサなどのための制御ロジックで実施され得る。インバランス制御システム5000は、例えばゼロに設定され得る所定のインバランス目標値を有し得る。インバランス制御システム5000のオプション加算器5010は、(インバランス目標値がゼロでない場合)インバランス目標値からインバランスのメジャーを減算して、インバランスエラーを得ることができる。インバランスコントローラ5020は、エラーを1つ以上の動的フェーズ期間調整値に変換する。例えば、インバランスコントローラ5020は、比例ゲインKと積分ゲインKの2つのパラメータを有する比例積分(PI)コントローラで実施され得る。比例ゲインKは、インバランスエラーで乗算される。積分ゲインKは、いくつかの反復回数(PSAの半サイクルごとに1回の反復)にわたるインバランスエラーの合計で乗算され、比例ゲインにインバランスエラーを乗算した結果に加算されて、動的フェーズ期間調整が得られる。動的フェーズ期間調整は、上述のようにPSAサイクルを実施するために、POCのガス分離システム5040(例えば、ガス分離システム110)を制御するPSA状態マシン5030に適用される。電力パラメータサンプラ5050は、図3に関して上述したように、ガス分離システム5040のモータを制御するモータ制御信号(例えば、モータ制御信号3030)の電力パラメータをサンプリングして、上述のようにPSAの半サイクルごとにインバランスのメジャーを生成する。
【0168】
一般に、インバランス制御システム5000の例は、インバランス目標値、インバランスベクトルのメジャー(SD1~SD4、SR1~SR4のうちn個を選択する)、動的フェーズ期間調整ベクトル(PA0、GA0、E1A、E2A、PB0、GB0、E1B、及びE2Bのうちm個を選択する)、インバランスエラーベクトルによって乗算されたm×nの比例ゲインマトリックスK、およびある数(例えば5つ)のPSA半サイクルにわたってインバランスエラーベクトルの合計を乗算したm×nの積分ゲインマトリックスK、を含むパラメータに対する定義を実装し得る。
【0169】
表6は、例示的なインバランス制御システム5000のパラメータに対する例示的な定義を含む。
【表6】
【0170】
なお、表6で定義されているインバランス制御システムは、マトリックスKとKの対角の性質により、同時に並行して動作する2つの独立した不均衡制御システムと実質的に同等であり、一つはSD1を入力として、100のKと20のKに基づいてE1A値を生成し、もう一つはSD2を入力として、-500のKと-100のKに基づいてPB0値を生成する。
【0171】
一部の実施態様では、フェーズ期間調整の負の値を適用するのではなく、相補フェーズ期間調整には、同じ大きさの正の値が代わりに与えられる。例えば、インバランスコントローラ5020がE1Aに対して負の値を返す場合、同じ大きさの正の値をE2Aに割り当て、E1Aをゼロに設定することができる。同様に、インバランスコントローラ5020がPB0に対して負の値を返す場合、同じ大きさの正の値をPA0に割り当て、PB0をゼロに設定することができる。このような実施態様では、動的フェーズ期間調整は、PSAサイクルのフェーズを短縮するのではなく、延長するだけである。
【0172】
図6は、15BPMの呼吸数を有する患者に設定2で酸素富化空気を供給するPOCにおける連続するPSA半サイクルのPWMデューティサイクル波形間のインバランスに対するE1A調整の潜在的な影響を示す4つのグラフを含む。各グラフの2つのトレース(AとB)は、複数のPSAサイクルで平均化された、2つの連続するPSAハーフサイクルにわたるPWMデューティサイクル波形を表す。各グラフの右上は、出力された酸素富化空気の酸素純度である。0(調整なし)のE1A値に対応する左上のグラフ6010は、2つのPWMデューティサイクル波形間で顕著なインバランスを示している。10msのE1A値に対応する右上のグラフ6020は、インバランスのわずかな減少を示している。20msのE1A値に対応する左下のグラフ6030は、インバランスのさらなる減少を示している。30msのE1A値に対応する右下のグラフ6040は、2つのPWMデューティサイクル波形間でほぼ完全なバランスを示している。調整値E1Aが0から30msに増加するにつれて、酸素純度が84.7%から86.4%、87.4%、89.4%に増加することは注目に値し、これは、PWMインバランスの制御が酸素富化空気の収率に大きく影響することを示す。
【0173】
一部の実施態様では、時系列の差SD1からSD4または比率SR1からSR4は、インバランスベクトルのメジャーで使用される前にローパスフィルタ処理され得る。ローパスフィルタの時定数は、数PSAサイクルを含むのに十分な長さであり得る。
【0174】
一部の実施態様では、各PSA半サイクルにわたるPWMデューティサイクル波形を積分し得る。各PSA半サイクルにわたるデューティサイクルの積分間の差または比率は、インバランス制御システム5000のインバランスコントローラ5020によって動的フェーズ期間調整に変換されるインバランスのメジャーとして使用され得る。
【0175】
[用語集]
本技術開示の目的のために、本技術の特定の形態において、以下の定義のうちの1つ以上が適用され得る。本技術の他の形態において、代替の定義が適用され得る。
【0176】
“概要”
空気:本技術の特定の形態において、空気は、78%の窒素(N)、21%の酸素(O)、および1%の水蒸気、二酸化炭素(CO)、アルゴン(Ar)、およびその他の微量ガスからなる大気を意味すると解釈され得る。
【0177】
酸素富化空気:少なくとも約50%の酸素、少なくとも約60%の酸素、少なくとも約70%の酸素、少なくとも約80%の酸素、少なくとも約87%の酸素、少なくとも約90%の酸素、少なくとも約95%の酸素、少なくとも約98%の酸素、または少なくとも約99%の酸素など、酸素濃度が大気濃度(21%)より高い空気。「酸素富化空気」は略して「酸素」と呼ばれることがある。
【0178】
医療用酸素:医療用酸素は、酸素濃度が80%以上の酸素富化空気と定義される。
【0179】
周囲:本技術の特定の形態において、周囲という用語は、(i)治療システムまたは患者の外部、および(ii)治療システムまたは患者のすぐ周囲を意味するものと解釈される。
【0180】
流量:単位時間あたりに送られる空気の体積(または質量)。流量は、瞬間的な量を指し得る。一部の場合において、流量への参照は、スカラー量、すなわち、大きさのみを有する量への参照となる。他の場合において、流量への参照は、ベクトル量、すなわち、大きさ及び方向の両方を有する量への参照となる。流量には、記号Qが付与され得る。「流量」は、単に「流」または「空気流」と記すことがある。
【0181】
流量治療:患者の呼吸サイクル全体にわたって典型的にポジティブである治療流量と呼ばれる制御された流量で気道の入口へ空気流を送達することを含む呼吸治療である。
【0182】
患者:呼吸状態に苦しむか否かにかかわらず、人である。
【0183】
圧力:単位面積あたりの力である。圧力は、cmHO、g-f/cm、ポンド/平方インチ(psi)、およびヘクトパスカルを含む単位の範囲で表され得る。1cmHOは、1g-f/cmに等しく、約0.98ヘクトパスカル(1ヘクトパスカル=100Pa=100N/m=1ミリバール~0.001atm~0.015psi)である。特に明記しない限り、本明細書において、圧力値はゲージ圧(周囲大気圧に対する圧力)として与えられる。
【0184】
[総論]
本明細書で使用される「結合された」という用語は、1つ以上の対象または構成要素間の直接接続または間接接続(例えば、1つ以上の介在接続)のいずれかを意味する。「接続された」という語句は、対象または構成要素が互いに直接接続されるような、対象または構成要素間の直接接続を意味する。本明細書で使用されるように、デバイスを「取得する」という語句は、デバイスが購入されるか、または構築されることを意味する。
【0185】
本開示では、特定の米国特許、米国特許出願、および他の資料(例えば、記事)が参照によって組み込まれている。ただし、そのような米国特許、米国特許出願、および他の資料のテキストは、そのテキストと本明細書に記載された他の記述および図面との間に矛盾が存在しない範囲でのみ、参照によって組み込まれている。そのような矛盾が生じた場合、参照により組み込まれる米国特許、米国特許出願、およびその他の資料におけるそのような矛盾のテキストは、特に参照により本特許に組み込まれない。
【0186】
この説明を考慮すると、本技術の様々な態様のさらなる修正および代替的な実施態様は、当業者には明らかであり得る。したがって、この説明は、例示のみとして解釈されるべきであり、技術を実行する一般的な方法を当業者に教示することを目的としている。本明細書で示され、説明された技術の形態は、実施態様と見なされるべきであることが理解されるべきである。要素および材料は、本明細書で図示および説明したものと置き換えてもよく、部品およびプロセスは逆にしてもよく、技術の特定の特徴は、独立して利用してもよく、これらはすべて、技術におけるこの説明の利益を受けた後、当業者には明らかになるであろう。添付の特許請求の範囲に記載されている技術の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載されている要素に変更を加えることができる。
【0187】
[ラベルリスト]
【表7】
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図1I
図1J
図1K
図1L
図1M
図1N
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】