(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-10
(54)【発明の名称】干渉信号を低減するための強化を特徴とする検体センサ
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1473 20060101AFI20230803BHJP
A61B 5/1486 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
A61B5/1473
A61B5/1486
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501061
(86)(22)【出願日】2021-06-15
(85)【翻訳文提出日】2023-02-17
(86)【国際出願番号】 US2021037307
(87)【国際公開番号】W WO2022010620
(87)【国際公開日】2022-01-13
(32)【優先日】2020-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500211047
【氏名又は名称】アボット ダイアベティス ケア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT DIABETES CARE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】オヤ スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】フォックス ケード ブライリー
(72)【発明者】
【氏名】トラン ラム エヌ
(72)【発明者】
【氏名】リュウ ゼンヘ
(72)【発明者】
【氏名】フェルドマン ベンジャミン ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ホス ウード
(72)【発明者】
【氏名】ヤンケ マーク スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】ハン タヒル エス
(72)【発明者】
【氏名】バブカ ジャン-ピエール
(72)【発明者】
【氏名】レイノルズ オーウェン ダニエル
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038KK10
4C038KL01
4C038KL09
4C038KY08
(57)【要約】
検体センサは、生体内で様々な検体をモニタするために益々使用されている。検体センサは、干渉物質種から得られた信号に対処するための強化を特徴とする場合がある。一部の検体センサは、活性区域がその上に配置されてそこから電極凹凸がレーザ平滑化された作用電極を備えることができる。一部の検体センサは、そこに組み込まれた干渉物質-反応物質種を備えることができる。一部の検体センサは、干渉物質洗浄電極を備えることができる。これに加えて、これらの強化の組合せが使用される場合がある。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体応答性酵素を含む活性区域がその上に配置された作用電極と、
洗浄電極とを備え、該洗浄電極が(1)前記作用電極に対して対面関係に位置決めされ、該作用電極及び洗浄電極が空間的にオフセットされている、又は(2)前記作用電極の上方に位置決めされ、かつ着目検体に対して前記活性区域への該着目検体の拡散に関して透過性である、
ことを特徴とする検体センサ。
【請求項2】
前記洗浄電極は、前記作用電極に対して対面関係に位置決めされ、該作用電極及び洗浄電極は、空間的にオフセットされ、該オフセットは、約1μmから約200μmの範囲の薄層である、
請求項1に記載の検体センサ。
【請求項3】
前記洗浄電極は、約200μmから約8000μmの幅を有する、
請求項1に記載の検体センサ。
【請求項4】
前記洗浄電極は、前記作用電極に対して対面関係に位置決めされ、該作用電極及び洗浄電極は、空間的にオフセットされ、該作用電極に対する該洗浄電極の幅が、約2:1から約50:1の範囲にある、
請求項1に記載の検体センサ。
【請求項5】
前記洗浄電極は、約-2000mVから約+2000mVの範囲の電位を有する、
請求項1に記載の検体センサ。
【請求項6】
前記洗浄電極は、前記作用電極の上方に位置決めされ、着目検体に対して前記活性区域への該着目検体の拡散に関して透過性であり、前記着目検体がアスコルビン酸である、
請求項1に記載の検体センサ。
【請求項7】
前記洗浄電極は、前記作用電極の上方に位置決めされ、着目検体に対して前記活性区域への該着目検体の拡散に関して透過性であり、前記洗浄電極は、カーボンナノチューブ材料から構成される、
請求項1に記載の検体センサ。
【請求項8】
前記洗浄電極は、前記作用電極の上方に位置決めされ、着目検体に対して前記活性区域への該着目検体の拡散に関して透過性であり、該洗浄電極は、カーボンナノチューブ材料で含浸されたPEDOT:PSSから構成されている、
請求項1に記載の検体センサ。
【請求項9】
前記洗浄電極は、前記作用電極の上方に位置決めされ、着目検体に対して前記活性区域への該着目検体の拡散に関して透過性であり、該洗浄電極は、電子伝達剤で含浸される、
請求項1に記載の検体センサ。
【請求項10】
前記洗浄電極は、前記作用電極の上方に位置決めされ、着目検体に対して前記活性区域への該着目検体の拡散に関して透過性であり、前記洗浄電極は、約0.5μmから約100μmの厚みを有する、
請求項1に記載の検体センサ。
【請求項11】
検体応答性酵素を含む活性区域がその上に配置された作用電極と、
洗浄電極と、を備え、前記洗浄電極が(1)前記作用電極に対して対面関係に位置決めされ、該作用電極及び洗浄電極が空間的にオフセットされ、又は(2)該作用電極の上方に位置決めされ、かつ着目検体に対して前記活性区域への該着目検体の拡散に関して透過性である検体センサを体液に露出する段階、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項12】
前記洗浄電極は、前記作用電極に対して対面関係に位置決めされ、該作用電極及び洗浄電極は、空間的にオフセットされ、該オフセットは、約1μmから約200μmの範囲の薄層である、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記洗浄電極は、約200μmから約8000μmの幅を有する、
請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記洗浄電極は、前記作用電極に対して対面関係に位置決めされ、該作用電極及び洗浄電極は、空間的にオフセットされ、該作用電極に対する該洗浄電極の幅が、約2:1から約50:1の範囲にある、
請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記洗浄電極は、約-2000mVから約+2000mVの範囲の電位を有する、
請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記洗浄電極は、前記作用電極の上方に位置決めされ、着目検体に対して前記活性区域への該着目検体の拡散に関して透過性であり、前記着目検体は、アスコルビン酸である、
請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記洗浄電極は、前記作用電極の上方に位置決めされ、着目検体に対して前記活性区域への該着目検体の拡散に関して透過性であり、前記洗浄電極は、カーボンナノチューブ材料から構成される、
請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記洗浄電極は、前記作用電極の上方に位置決めされ、着目検体に対して前記活性区域への該着目検体の拡散に関して透過性であり、該洗浄電極は、カーボンナノチューブ材料で含浸されたPEDOT:PSSから構成される、
請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記洗浄電極は、前記作用電極の上方に位置決めされ、着目検体に対して前記活性区域への該着目検体の拡散に関して透過性であり、前記洗浄電極は、電子伝達剤で含浸される、
請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記洗浄電極は、前記作用電極の上方に位置決めされ、かつ着目検体に対して前記活性区域への該着目検体の拡散に関して透過性であり、該洗浄電極は、約0.5μmから約100μmの厚みを有する、
請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
本出願は、引用によって本明細書にその全体が組み込まれている2020年7月8日出願の米国仮特許出願第63/049,210号に対する優先権及びその利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
個人内の異なる検体の検出は、時として彼らの健康状態をモニタするのに必須である可能性がある。正常検体レベルからの逸脱は、多くの場合にいくつかの生理学的状態を示すことができる。例えば、グルコースレベルは、糖尿病患者において検出及びモニタするのに特に重要である可能性がある。グルコースレベルを十分な規則性と共にモニタすることにより、糖尿病患者は、有意な生理学的障害が発生する前に是正アクションを取ることができると考えられる(例えば、グルコースレベルを下げるためにインスリンを注射することにより、又はグルコースレベルを上げるために摂食することにより)。他の様々な生理学的状態に関して他の検体のモニタが望ましい場合がある。複数の検体のモニタも、一部の事例では、特に2又は3以上の検体の同時異常調節を互いとの組合せでもたらす併発状態に関して望ましい場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0213225号明細書
【特許文献2】米国特許第6,605,200号明細書
【特許文献3】米国特許第8,268,143号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2020/0237275号明細書
【特許文献5】米国特許出願第16/774,835号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2020/0241015号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2019/0320947号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2020/0060592号明細書
【特許文献9】米国特許第6,134,461号明細書
【特許文献10】米国特許第6,736,957号明細書
【特許文献11】米国特許第7,501,053号明細書
【特許文献12】米国特許第7,754,093号明細書
【特許文献13】米国特許第8,444,834号明細書
【特許文献14】米国特許第6,605,201号明細書
【特許文献15】米国特許第8,983,568号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多くの検体は、適切な検出化学物質を識別することができることを前提として生理学的解析に対する興味深いターゲットを表している。この目的に対して、様々な生理学的検体を検定するように構成された生体内検体センサが開発されて近年にわたって改善されており、その多くは、検出特異性を容易にするために酵素ベースの検出戦略を利用する。実際に、血中グルコースレベルをモニタするためにグルコース反応性酵素を利用する生体内検体センサは、現在では糖尿病患者の間で一般的に利用されている。複数の検体をモニタすることができる生体内検体センサを含む他の検体のための生体内検体センサは、様々な開発ステージにある。少量検体に対する感度不足は、特に作用電極又は他の検体感知化学成分との干渉物質の相互作用から生じる背景信号に起因して、一部の検体センサに対して特に問題である場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0005】
以下の図は、本発明の開示のある一定の態様を示すために含められるが、限定的な実施形態として見てはならない。開示する主題は、本発明の開示の範囲から逸脱することなく形態及び機能においてかなりの修正、変更、組合せ、及び均等物が可能である。
【0006】
【
図1】本発明の開示の検体センサを組み込むことができる例示的感知システムの図である。
【
図2A】単一活性区域を備える検体センサの断面図である。
【
図2B】単一活性区域を備える検体センサの断面図である。
【
図2C】単一活性区域を備える検体センサの断面図である。
【
図3A】2つの活性区域を備える検体センサの断面図である。
【
図3B】2つの活性区域を備える検体センサの断面図である。
【
図3C】2つの活性区域を備える検体センサの断面図である。
【
図4】活性区域がその上に各々存在する2つの作用電極を備える検体センサの断面図である。
【
図5】活性区域をその上に有する従来の炭素作用電極の上面図である。
【
図6A】膜がその上に配置されていない作用電極の上面視点の写真である。
【
図6B】
図6Aに示す線に沿った深さプロファイルを示す図である。
【
図7A】膜がその上に配置された作用電極の上面視点の写真である。
【
図7B】
図7Aに示す線に沿った深さプロファイルを示す図である。
【
図8】本発明の開示の1又は2以上の態様によるレーザ平滑化作用電極の3D視野を示す写真である。
【
図9A】干渉物質-反応物質種を組み込んでいない従来のセンサの図である。
【
図9B】本発明の開示の1又は2以上の態様による干渉物質-反応物質種を組み込んだ
図9Bのセンサの図である。
【
図10】本発明の開示の1又は2以上の態様による洗浄電極を備えるセンサ電極構成の図である。
【
図11】本発明の開示の1又は2以上の態様による透過性洗浄電極を備えるセンサ電極構成の図である。
【
図12】本発明の開示の1又は2以上の態様による不透過性洗浄電極と透過性洗浄電極とを備えるセンサ電極構成の図である。
【
図13A】膜及び活性区域がその上に配置されていない作用電極の上面視点の写真である。
【
図13C】本発明の開示の1又は2以上の態様によるレーザ平滑化後の
図13Aの作用電極の上面視点の写真である。
【
図14A】本発明の開示の1又は2以上の態様によるレーザ平滑化の後の膜がその上に配置されていないかつ活性区域がその上に配置された作用電極の上面視点の写真である。
【
図15】干渉アスコルビン酸に応答する活性区域を有するか又はそれを欠くかのいずれかである平滑化及び非平滑化作用電極を比較する一対差異試験のグラフである。
【
図16A】本発明の開示の1又は2以上の態様によりレーザ平滑化されていない作用電極の写真である。
【
図16B】本発明の開示の1又は2以上の態様によりレーザ平滑化された作用電極の写真である。
【
図16C】本発明の開示の1又は2以上の態様によりレーザ平滑化されていない作用電極の写真である。
【
図16D】本発明の開示の1又は2以上の態様によりレーザ平滑化された作用電極の写真である。
【
図16E】本発明の開示の1又は2以上の態様によりレーザ平滑化された作用電極の写真である。
【
図17】本発明の開示の1又は2以上の態様による干渉物質-反応物質種層の包含のためのセンサ構成の図である。
【
図18】本発明の開示の1又は2以上の態様による干渉物質-反応物質種層を備える
図17の検体センサに関するアスコルビン酸較正曲線の図である。
【
図19】本発明の開示の1又は2以上の態様による干渉物質-反応物質種層を備える
図17の検体センサに関するグルコース較正曲線の図である。
【
図20】本発明の開示の1又は2以上の態様による洗浄電極を備えるセンサのセンサ電流トレースを示す図である。
【
図21A】本発明の開示の1又は2以上の態様による洗浄電極を備えるセンサのセンサ電流トレースを示す図である。
【
図21B】本発明の開示の1又は2以上の態様による洗浄電極を備えるセンサのセンサ電流トレースを示す図である。
【
図22】本発明の開示の1又は2以上の態様による洗浄電極を備えるセンサのセンサ電流トレースを示す図である。
【
図23】本発明の開示の1又は2以上の態様による透過性洗浄電極の包含のためのセンサ構成の図である。
【
図24】本発明の開示の1又は2以上の態様による
図24のセンサのセンサ電流トレースを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の開示は、一般的に生体内使用に適する検体センサ、より具体的には、検出感度の改善を促進するために干渉物質種を示す信号を低減する又は排除するための1又は2以上の強化を特徴とする検体センサ及びその生成及び使用の方法を説明する。
【0008】
そのような強化は、センサテール(組織の中への挿入のためのセンサの部分)の上の作用電極面の利用可能性、特に、干渉物質がその上で反応して検体に関連付けられない信号に寄与する場合があるセンサテールの上の炭素作用電極の利用可能性を低減することを含む場合がある。検体センサの他の成分が干渉物質と反応し、炭素作用電極での信号に寄与する可能性もある。本発明の開示の態様は、炭素作用電極との干渉物質の相互作用を防止するために干渉物質と反応する化合物を含む炭素作用電極から凹凸の平滑化、及び/又は炭素作用電極との干渉物質の相互作用を防止するために干渉物質と反応する洗浄電極の追加を単体又は組合せで含む。1又は2以上の態様では、本明細書に説明する強化は、干渉物質に対するセンサの感度を低減することができ(例えば、作用電極での干渉物質が信号を発生させることを抑制するか又は低減することにより、例えば、感知化学物質及び/又は膜を用いて余剰炭素電極面を排除することにより)、及び/又は作用電極での干渉物質の局所濃度を低減することができる(例えば、干渉物質が作用電極に到達しないか又は実質的に到達しないように干渉物質を「事前反応させる」ことにより)。必要ではないが、着目検体の信号が損なわれない時に、本明細書に説明する強化のうちの1つ又は全ては、着目干渉物質の酸化電位よりも下の低い作用電位を有する作用電極との組合せに使用することができる。一部の事例では、低電位作用電極を組み込む検体センサは、そのような低作用電位の着目検体信号の検出を強化するために低電位レドックス媒介剤を更に組み込むことができる。
【0009】
一般的にかつ限定ではなく、1又は2以上の干渉強化を備える本発明の開示の実施形態は、この強化を欠くセンサと比較して100%までとすることができる少なくとも約20%よりも大きい範囲、又は例えば約20%から約70%の範囲又はそれよりも大きく、好ましくは、少なくとも約40%又はそれよりも大きく、少なくとも約45%又はそれよりも大きく、又は少なくとも約50%であるアスコルビン酸干渉信号のような干渉信号の低減を可能にすることができ、これらの間のあらゆる値及び部分集合を包含し、かつ上限と下限が分離可能である。干渉物質の低減の量は、センサの特定の構成(例えば、1又は2以上のどの強化が選択されるか)及び体液中の干渉物質の濃度など、及びこれらのあらゆる組合せを含むがそれらに限定されないいくつかの因子に依存する場合がある。
【0010】
本明細書に説明する検体センサは、少なくとも1つの作用電極、特に炭素作用電極とその上に配置された活性区域とを備えるセンサテールを備える。更に、質量搬送制限膜が、炭素作用電極上に配置される(すなわち、センサテールを形成する活性区域と活性区域を欠くいずれかの異質炭素作用電極との両方の上に配置される)。
【0011】
炭素作用電極の縁部に沿って様々な炭素電極凹凸が存在する場合があり、それらは、質量搬送制限膜で単に不十分に被覆されるか又は全く被覆されず、それによって干渉物質が反応を受けて作用電極での測定信号に寄与する原因になる炭素面を与える場合がある。本明細書に使用する時に、用語「凹凸」及びその文法的変形は、面に沿う(例えば、作用電極に沿う)粗い縁部を意味する。凹凸は、作用電極の縁部に沿うリッジの形態にあり、それによってこの場所で質量搬送制限膜の不十分なコーティングを招く場合がある。そのような干渉信号を低減するか又は排除するために、本発明の開示は、炭素凹凸を除去するような炭素作用電極の1又は2以上の縁部の平滑化を可能にし、それによって作用電極面のより均一なプロファイルを提供する。そのような凹凸は、作用電極が炭素以外の材料から形成される場合にも、特定の作用電極の組成中に同じく存在することができる(「電極凹凸」)。
【0012】
炭素凹凸を除去するために炭素作用電極の1又は2以上の縁部を平滑化するのとは別々に又はそれとの組合せで、本発明の開示は、作用電極への干渉物質のアクセスを防止する又は低減するための1又は2以上の手段を備える検体センサを更に提供する。特に、着目干渉物質と反応してそれが作用電極での測定信号に寄与することができないように当該干渉物質を不活性にする1又は2以上の酵素化合物又は化学化合物を検体センサの中に組み込むことができる。これに代えて又はここでもまた組合せで、着目干渉物質と反応してそれが作用電極での測定信号に寄与することができないように当該干渉物質を不活性にする洗浄電極を検体センサの中に組み込むことができる。
【0013】
本明細書では、各タイプの強化の具体的な詳細及び更に別の利点をより詳細に説明する。本発明の開示の検体センサは、特定の必要性に依存して1つの検体を検出するか又は複数の検体を同時又はほぼ同時に検出するように構成することができる。
【0014】
酵素ベースの検出を使用する検体センサは、特定の基質又は基質部類に対する酵素の高頻度の特異性に起因してグルコースのような単一検体を検定するのに一般的に使用される。単一酵素と協働的に作用する複数の酵素を備える酵素システムとの両方を使用する検体センサは、この目的で使用することができる。本明細書に使用する時に、用語「協働的に」及びその文法的変形は、第1の酵素反応の生成物が第2の酵素反応に対する基質になり、第2の酵素反応又はその後の酵素反応が検体の濃度を測定するためのベースとして機能する共役酵素反応を意味する。更に、1よりも多い検体タイプを検出するために酵素及び/又は酵素システムの組合せを使用することができる。検出を容易にするための酵素又は酵素システムを特徴とする検体センサを使用することは、他に検体モニタに必要とされる場合がある体液の頻繁な抜き取りが行われることを回避するのに特に有利である場合がある。
【0015】
生体内検体センサは、真皮液、間質液、血漿、血液、リンパ液、滑液、脳脊髄液、唾液、気管支肺胞洗浄液、又は羊水などのような着目する生体液内の1又は2以上の検体をモニタする。そのような流体は、検体センサの作用電極と作用電極(例えば、炭素作用電極)自体の上で直接に又は電極上に配置された1又は2以上の感知化学成分(例えば、以下に説明するレドックスポリマー)とのいずれかで反応することができる1又は2以上の干渉物質を含む場合がある。本明細書に使用する時に、用語「干渉物質」及びその文法的変形は、体液(例えば、間質液など)内で着目する検体ではないあらゆる存在する電気活性種(例えば、着目する検体ではない生体内電気活性種)を意味する。その例は、アスコルビン酸(ビタミンC、アスコルビン酸塩とも呼ぶ)、グルタチオン、尿酸、パラセタモール(アセトアミノフェン)、イソニアジド、サリチル酸塩など、及びこれらのあらゆる組合せを含むがそれらに限定されない。これらの干渉物質の作用電極との反応は、着目する検体から発する信号から分離不能又は簡単には分離することができない電気化学信号を発生させる場合があり、これは、そのような検体、特に少量(例えば、低濃度からミリモル以下の濃度まで)のものの正確な検出を複雑にする場合がある。干渉物質が発生させる電気化学信号は、干渉物質からの信号の大きさがターゲット検体からの信号に近づく時に特に問題である場合がある。これは、例えば、干渉物質の濃度が着目する検体の濃度に近づく又はそれを超える時に発生する場合がある。一部の干渉物質は生体内に遍在し、簡単には避けられない。従って、生体内解析中にこれらの干渉物質の影響を最小にする技術が非常に望ましいと考えられる。
【0016】
本発明の開示は、下記でより詳細に説明するように、単一検体と互いに組み合わされる複数の検体との両方に対する検出感度を単体又は他の強化との組合せのいずれかで改善することができる検体センサ強化を提供する。すなわち、本発明の開示は、生体内干渉物質からもたらされる背景信号の低下を提供することができる小さい炭素作用電極縁部凹凸及び/又は組み込まれた成分又は洗浄電極を有する検体センサを提供する。本発明の開示のある一定の態様は、炭素作用電極の強化に関連するが、本明細書の開示に従って他のタイプの電極を同じく強化することができることは認められるものとする。本明細書の開示の使用によって強化することができる電極のタイプは、金、プラチナ、及びPEDOTなども含む。
【0017】
一般的にかつ限定ではなく、1又は2以上の干渉物質強化を備える本発明の開示の実施形態は、本明細書で詳述するように、少なくとも、これらの強化を欠くセンサと比較して100%までとすることができる約20%よりも大きい範囲、又は例えば、約20%から約70%又はそれよりも大きい範囲、好ましくは、少なくとも約40%大きく、少なくとも約45%大きく、又は少なくとも約50%であり、これらの値の間であるいずれかの値及び部分集合を包含し、上限と下限が分離可能な範囲のアスコルビン酸干渉物質信号のような干渉物質信号の低減を可能にすることができる。干渉物質の低減の量は、センサの特定の構成(例えば、1又は2以上のどの強化が選択されるか)及び体液内の干渉物質の濃度など及びこれらのあらゆる組合せを含むがそれらに限定されないいくつかの因子に依存する場合がある。
【0018】
本発明の開示の検体センサ及びその強化をより詳細に説明する前に、本発明の開示の実施形態をより良く理解することができるように、最初に、適切な生体内検体センサ構成及びこれらの検体センサを使用するセンサシステムの簡単な概要を提供する。
図1は、本発明の開示の検体センサを組み込むことができる例示的感知システムの図を例示している。図示のように、感知システム100は、有線又は無線、一方向又は双方向、及び暗号化又は非暗号化とすることができるローカル通信の経路又はリンク140を通して互いに通信するように構成されたセンサ制御デバイス102と読取器デバイス120とを含む。一部の実施形態により、読取器デバイス120は、センサ104又はそれに関連付けられたプロセッサによって決定された検体濃度及び警告又は通知を見るための出力媒体を含み、更に、1又は2以上のユーザ入力を可能にすることができる。読取器デバイス120は、多目的スマート電話又は専用電子読取計器とすることができる。1つの読取器デバイス120しか示していないが、ある一定の事例では、複数の読取器デバイス120が存在することができる。
【0019】
読取器デバイス120はまた、有線又は無線、一方向又は双方向、及び暗号化又は非暗号化とすることができる通信経路/リンク141及び/又は142をそれぞれ通じてリモート端末170及び/又は高信頼性コンピュータシステム180と通信することができる。読取器デバイス120は、同じく又はこれに代えて、通信経路/リンク151を通してネットワーク150(例えば、携帯電話ネットワーク、インターネット、又はクラウドサーバ)と通信することができる。ネットワーク150は、更に通信経路/リンク152を通してリモート端末170に、及び/又は通信経路/リンク153を通して高信頼性コンピュータシステム180に通信的に結合することができる。これに代えて、センサ104は、介在読取器デバイス120が存在することなくリモート端末170及び/又は高信頼性コンピュータシステム180と直接に通信することができる。例えば、一部の実施形態により、センサ104は、本明細書に引用によってその全体が組み込まれている米国特許出願公開第2011/0213225号明細書に説明されているように、ネットワーク150への直接に通信リンクを通してリモート端末170及び/又は高信頼性コンピュータシステム180と通信することができる。
【0020】
通信の経路又はリンクの各々に対して近距離無線通信(NFC)プロトコル、無線周波数識別(RFID)プロトコル、BLUETOOTH(登録商標)プロトコル又はBLUETOOTH(登録商標)低エネルギプロトコル、又はWiFiなどのようなあらゆる適切な電子通信プロトコルを使用することができる。一部の実施形態により、リモート端末170及び/又は高信頼性コンピュータシステム180は、ユーザの検体レベルに興味を有する1次ユーザ以外の個人によってアクセス可能とすることができる。読取器デバイス120は、ディスプレイ122と任意的な入力構成要素121とを備えることができる。一部の実施形態により、ディスプレイ122は、タッチ画面インタフェースを備えることができる。
【0021】
センサ制御デバイス102は、センサ104を作動させるための回路及び電源を収容することができるセンサハウジング103を含む。任意的に、電源及び/又は能動回路は除外することができる。センサ104にプロセッサ(図示せず)を通信的に結合することができ、プロセッサは、センサハウジング103又は読取器デバイス120の中に物理的に位置付けられる。一部の実施形態により、センサ104は、センサハウジング103の下面から突出し、かつセンサハウジング103を皮膚のような組織面に接着させるように構成された接着層105を通って延びる。
【0022】
センサ104は、皮膚の真皮層又は皮下層内のような着目する組織の中に少なくとも部分的に挿入されるようになっている。これに代えて、センサ104は、表皮を貫通するように適応させることができる。更に別の代替として、センサ104は、皮膚上の汗内の1又は2以上の検体を検定する時のように面上に配置され、組織を貫通しない場合がある。センサ104は、所与の組織内の望ましい深さまでの挿入に十分な長さのセンサテールを備えることができる。センサテールは、1又は2以上の着目する検体を検定するのに適するように構成された少なくとも1つの作用電極と酵素又は酵素システムを備える活性区域とを備えることができる。
【0023】
対電極は、少なくとも1つの作用電極との組合せで、任意的に基準電極との更に別の組合せで存在することができる。センサテール上の特定の電極構成に関して下記で
図2A~
図4を参照してより詳細に説明する。様々な実施形態により、活性区域内の1又は2以上の酵素は、活性区域を備えるポリマーに共有結合させることができる。これに代えて、酵素は、活性区域内にカプセル封入又は物理的同伴等によって非共有的に会合させることができる。真皮液、間質液、血漿、血液、リンパ液、滑液、脳脊髄液、唾液、気管支肺胞洗浄液、又は羊水などのような着目する生体液内で1又は2以上の検体をモニタすることができる。特定の実施形態では、本発明の開示の検体センサは、生体内の検体濃度を決定するために真皮液又は間質液を分析することに適応させることができる。しかし、本発明の開示の範囲から逸脱することなく、センサ制御デバイス102の全体は、1又は2以上の着目する検体を検定するために組織の下及び1又は2以上の体液内への完全埋め込みを可能にする1又は2以上の様々な構成を有することができることは認められるものとする。
【0024】
再度
図1を参照すると、センサ104は、読取器デバイス120にデータを自動的に伝達することができる。例えば、検体濃度データは、自動的かつ定期的に、例えば、データが得られた時又はデータを伝達までメモリに格納して予め決められた期間が経過した後に予め決められた頻度(例えば、1分毎、5分毎、又は他の予め決められた期間)でBLUETOOTH(登録商標)プロトコル又はBLUETOOTH(登録商標)低エネルギプロトコル等によって通信することができる。異なる検体に関するデータを同じ頻度又は異なる頻度で及び/又は同じか又は異なる通信プロトコルを用いて伝達することができる。他の実施形態では、センサ104は、読取器デバイス120と非自動方式でかつ設定スケジュールに従うことなく通信することができる。例えば、データは、センサ電子機器が読取器デバイス120の通信距離の中に入れられた時にRFID技術を用いてセンサ104から通信することができる。読取器デバイス120に通信されるまで、データは、センサ104のメモリに格納されたままに留まることができる。従って、ユーザは、常時読取器デバイス120との至近距離を維持する必要はなく、代わりに都合の良い時間に自動的又は非自動的にデータをアップロードすることができる。更に他の実施形態では、自動データ伝達と非自動データ伝達との組合せを実施することができる。例えば、データ伝達は、読取器デバイス120がもはやセンサ104の通信距離に存在しなくなるまで自動ベースで継続することができる。
【0025】
組織内へのセンサ104の導入を促進するために一時的に導入器が存在する場合がある。例示的実施形態では、導入器は、針又は類似の尖頭体又はその組合せを含むことができる。代替実施形態では、シース又はブレードのような他のタイプの導入器が存在することができることは認識されるものとする。より具体的には、針又は他の導入器は、組織挿入の前にセンサ104の近くに一時的に存在することができ、その後にそれを引き抜くことができる。存在する間には、これらの針又は他の導入器は、センサ104が辿るためのアクセス経路を開くことによって組織内へのセンサ104の挿入を容易にすることができる。例えば、1又は2以上の実施形態により、針は、センサ104の埋め込みを行うことを可能にするための真皮に至るまでのアクセス経路として表皮の貫通を容易にすることができる。アクセス経路を開いた後に、針又は他の導入器が尖傷を示すことのないようにこれらを引き抜くことができる。例示的実施形態では、適切な針は、中実又は中空、ベベル又は非ベベル、及び/又は円形断面又は非円形断面とすることができる。より具体的な実施形態では、適切な針は、約250ミクロンの断面直径を有することができる鍼灸針と断面直径及び/又は先端設計が同等とすることができる。しかし、適切な針は、特定の用途に合わせて必要に応じて大きめ又はより小さい断面直径を有することができることは認識されるものとする。例えば、約300ミクロンから約400ミクロンまでの範囲の断面直径を有する針を使用することができる。
【0026】
一部の実施形態では、最初に針が組織を貫通してセンサ104のためのアクセス経路を開くように、針の先端を(それが存在する間に)センサ104の終端の上に傾斜させることができる。他の例示的実施形態では、センサ104は、針の管腔又は溝の中に存在することができ、針は、同じくセンサ104のためのアクセス経路を開く。いずれの場合にも、針は、センサの挿入を容易にした後に引き抜くことができる。
【0027】
対応する単一検体の検出に適するように構成された単一活性区域を特徴とするセンサ構成は、
図2A~
図2Cを参照して本明細書で更に説明するように、二電極又は三電極の検出モチーフを使用することができる。その後に、別々の作用電極又は同じ作用電極のいずれかの上での別々の検体の検出に適する2つの異なる活性区域を特徴とするセンサ構成を
図3A~
図4を参照して別々に説明する。複数の作用電極を有するセンサ構成は、同じセンサテールの中に2つの異なる活性区域を組み込むのに各活性区域からの信号寄与を各作用電極の別々の評価によってより容易に決定することができるので特に有利とすることができる。各活性区域は、同じか又は異なる組成の質量輸送制限膜で保護することができる。
【0028】
検体センサ内に単一作用電極が存在する時は、三電極センサ構成は、作用電極と対電極と基準電極とを備えることができる。関連の二電極センサ構成は、作用電極と第2の電極とを備えることができ、この場合に、第2の電極は、対電極と基準電極の両方として機能することができる(すなわち、対/基準電極)。様々な電極は、センサテール上で少なくとも部分的に上下に積み重ねる「層状にする」、及び/又は横方向に互いに離間させることができる。本明細書に開示するセンサ構成のいずれでも、様々な電極は、誘電材料又は類似の絶縁体によって互いに電気的に隔離することができる。
【0029】
複数の作用電極を特徴とする検体センサもまた、少なくとも1つの追加電極を備えることができる。1つの追加電極が存在する時は、この電極は、複数の作用電極の各々に対する対/基準電極として機能することができる。2つの追加電極が存在する時は、追加電極の一方は、複数の作用電極の各々に対する対電極として機能することができ、追加電極のうちの他方は、複数の作用電極の各々に対する基準電極として機能することができる。
【0030】
以下で説明する作用電極構成のうちのいずれも、センサテール上の作用電極の縁部凹凸の利用可能性を低減することに関する下記の更に別の開示から利益を得ることができる。
【0031】
図2Aは、本明細書の開示での使用に適合する例示的二電極検体センサ構成の図を例示している。図示のように、検体センサ200は、作用電極214と対/基準電極216の間に配置された基板212を含む。これに代えて、作用電極214及び対/基準電極216は、基板212の同じ面上に位置付けることができ、これらの電極の間に誘電材料が挟み込まれる(構成を示していない)。活性区域218は、作用電極214の少なくとも一部分の上に少なくとも1つの層として配置される。活性区域218は、本明細書で更に議論するように、検体の検出に適するように構成された複数の不連続スポット又は単一連続スポットを備えることができる。
【0032】
引き続き
図2Aを参照すると、一部の実施形態により、膜220が、少なくとも活性区域218を保護し、任意的に作用電極214及び/又は対/基準電極216の一部又は全て又は検体センサ200の全体を保護することができる。検体センサ200の一方又は両方の面を膜220で保護することができる。膜220は、活性区域218への検体流束を制限する機能を有する1又は2以上のポリマー膜材料を備えることができる(すなわち、膜220は、着目する検体に対してある程度の透過性を有する質量輸送制限膜である)。膜220の組成及び厚みは、活性区域218への望ましい検体流束を容易にし、それによって信号の望ましい強度及び安定性を与えるように変更することができる。検体センサ200は、電量測定、電流測定、電圧測定、又は電位差測定の電気化学検出技術のうちのいずれかによって検体を検定するように作動可能とすることができる。
【0033】
図2B及び
図2Cは、本明細書での開示での使用に同じく適合する例示的三電極検体センサ構成の図を例示している。三電極検体センサ構成は、検体センサ201及び202(
図2B及び
図2C)内への追加電極217の包含を除いて
図2Aの検体センサ200に関して示したものと同様とすることができる。この場合に、追加電極217を使用することにより、対/基準電極216は対電極又は基準電極のいずれかとして機能することができ、追加電極217は、他に対処されていない他の電極機能を充足する。作用電極214は、その元来の機能を充足する。追加電極217は、誘電材料の分離層がその間にある状態で作用電極214又は電極216のいずれかの上に配置することができる。例えば、
図2Bに示すように、誘電材料層219a、219b、及び219cは、電極214216及び217を互いにか分離し、電気的隔離を提供する。これに代えて、
図2Cに示すように、電極214216及び217のうちの少なくとも1つを基板212の対向する面の上に位置付けることができる。従って、一部の実施形態では、電極217(基準電極)が電極214又は216の一方の上に位置付けられ、誘電材料によってこれらの電極から離間した状態で、電極214(作用電極)と電極216(対電極)とを基板212の対向する面の上に位置付けることができる。電極217の上には基準材料層230(例えば、Ag/AgCl)が存在することができ、基準材料層230の場所は、
図2B及び
図2Cに示すものに限定されない。
図2Aに示すセンサ200の場合と同様に、検体センサ201及び202内の活性区域218は、複数のスポット又は単一スポットを備えることができる。更に、検体センサ201及び202もまた、電量測定、電流測定、電圧測定、又は電位差測定の電気化学検出技術のうちのいずれかによって検体を検定するように作動可能とすることができる。
【0034】
検体センサ200と同様に、膜220は、検体センサ201及び202内の活性区域218、並びに他のセンサ構成要素を保護することができ、それによって質量輸送制限膜として機能する。一部の実施形態では、追加電極217は、膜220で保護することができる。膜220は、ここでもまた浸漬コーティング又は原位置光重合によって生成することができ、様々な場所で組成が異なるか又は同じとすることができる。
図2B及び
図2Cは、電極214216及び217の全てを膜220で保護されるものとして示すが、一部の実施形態では作用電極214又は活性区域218のみを保護することができることは認識されるものとする。更に、電極214216及び217の各々での膜220の厚みは、同じか又は異なる場合がある。二電極検体センサ構成(
図2A)の場合と同様に、
図2B及び
図2Cのセンサ構成でも、検体センサ201及び202の一方又は両方の面を膜220で保護することができ、又は検体センサ201及び202の全体を保護することができる。従って、
図2B及び
図2Cに示す三電極センサ構成は、本明細書に開示する実施形態を限定しないものとして理解しなければならず、代わりの電極構成及び/又は層構成が依然として本発明の開示内に留まっている。
【0035】
図3Aは、単一作用電極を有し、その上に2つの異なる活性区域が配置されたセンサ203に関する例示的構成を例示している。
図3Aは、作用電極214上の2つの活性区域、すなわち、異なる検体に応答し、作用電極214の面上で互いに横方向に離間した第1の活性区域218aと第2の活性区域218bとの存在を除いて
図2Aと同様である。活性区域218a及び218bは、各検体の検出に適するように構成された複数のスポット又は単一スポットを備えることができる。膜220の組成は、活性区域218a及び218bで異なるか又は同じとすることができる。下記で更に議論するように、第1の活性区域218aと第2の活性区域218bとは、その対応する検体を互いに異なる作用電極電位で検出するように構成することができる。
【0036】
図3B及び
図3Cは、それぞれ、第1の活性区域218a及び第2の活性区域218bがその上に配置された単一作用電極を各々が特徴とするセンサ204に関する例示的三電極センサ構成及び205に関する例示的三電極センサ構成の断面図を例示している。
図3B及び
図3Cは、
図2B及び
図2Cと他に同様であり、これらの図の引用によってより良く理解することができる。
図3Aの場合と同様に、膜220の組成は、活性区域218a及び218bで異なるか又は同じとすることができる。
【0037】
図4は、本明細書での開示での使用に適合する2つの作用電極、基準電極、及び対電極を有する例示的検体センサ構成の断面図を例示している。図示のように、検体センサ400は、基板402の対向する面の上に配置された作用電極404及び406を含む。第1の活性区域410aは、作用電極404の面上に配置され、第2の活性区域410bは、作用電極406の面上に配置される。対電極420は、作用電極404から誘電材料層422によって電気的に隔離され、基準電極431は、作用電極406から誘電材料層423によって電気的に隔離される。基準電極431及び対電極420の上に外側誘電材料層430及び432がそれぞれ配置される。様々な実施形態により、膜440は、少なくとも活性区域410a及び410bを保護することができ、任意的に検体センサ400の他の構成要素又は検体センサ400の全体は、同じく膜440によって保護される。ここでもまた、膜440は、各場所での検体流束を差別的に調整するのに適する透過率値を与えるために、活性区域410a及び410bで必要に応じて組成が異なるとすることができる。
【0038】
複数の作用電極を有し、
図4に示す構成とは異なる代替的センサ構成は、別々の対電極420と基準電極431の代わりに対/基準電極を特徴とし、及び/又は指定しているものとは異なる層配置及び/又は膜配置を特徴とすることができる。例えば、対電極420の配置と基準電極431の配置とは、
図4に示すものと逆にすることができる。更に、作用電極404と406は、必ずしも
図4に示す方式で基板402の対向する面の上に存在する必要はない。
【0039】
炭素作用電極は、本明細書に開示する検体センサのうちのいずれかで作用電極を適切に構成することができる。炭素作用電極は、電気化学検出で非常に一般的に使用されるが、電気化学感知でのその使用は、困難を伴わないわけではない。特に、活性区域が検体と相互作用し、活性区域に隣接する炭素作用電極の部分に電子を伝達した時にのみ、着目する検体に関する電流がもたらされる。着目する検体を含有する体液は、活性区域によって保護されていない炭素作用電極の炭素面と同じく相互作用するが、これらの場所に検体から作用電極への電子伝達を促進する酵素又は酵素システムが存在しないので検体信号には寄与しない。しかし、干渉物質は、活性区域を欠く作用電極の部分で酸化を受け、全体の信号に背景に寄与する可能性がある。従って、電極面上に外部(又は「露出」)炭素区域を有する炭素作用電極は、検体信号に大きく寄与せず、一部の場合は背景信号の寄与を招く場合がある。着目する検体を直接検出しない余分な面区域を有する他の電極も、類似の背景信号を受ける場合があり、本明細書での開示の修正によって強化することができる。
【0040】
様々な干渉物質は、本明細書に説明する検体センサの作用電極と相互作用する可能性があるが、アスコルビン酸は、生体液内に一般的に存在し、炭素作用電極で背景信号を発生させる可能性がある干渉物質の一例である。例えば、アスコルビン酸は、作用電極で酸化してデヒドロアスコルビン酸を生成する。本明細書では、本発明の開示の様々な実施形態をアスコルビン酸である干渉物質に関して以下に説明する。しかし、本明細書に説明する実施形態及び検体センサ構成は、他の干渉物質(着目する検体を有する体液内にある電気活性種)に等しく当て嵌めることができることは理解されるものとする。
【0041】
上記で提供したように、本明細書に説明する活性区域は、複数の感知スポットを有する単一感知層又は互いに圧縮された複数の感知スポットを有し、従って、実質的に単一感知層に対応する感知層とすることができる。次に、
図5を参照すると、複数の感知スポット518を含む活性区域504がその上に配置された従来の炭素作用電極500の上面図が例示されている。検体が活性区域504と相互作用した時に、感知スポット518を含む炭素作用電極500の部分のみが、着目する検体に関する信号に寄与する。炭素作用電極500は、活性区域504の中に6つの感知スポット518を示すが、本発明の開示の範囲から逸脱することなく、6よりも少ないか又は多い感知スポット518を炭素作用電極500上に含めることができることは認められるものとする。外部炭素区域510には感知スポット518が直接重ねられず、この区域は、検体に関する信号に寄与しないが、1又は2以上の干渉物質に関する背景信号を発生させる場合がある。従って、炭素作用電極500での干渉物質の酸化は、干渉物質との相互作用に使用される可能性がある外部炭素区域510の面積に比例する。実際に、炭素作用電極500でのアスコルビン酸の酸化は、使用される可能性がある外部炭素区域510の面積と共にほぼ線形に強弱する。
【0042】
図示のように、活性区域504は不連続であり、複数の感知スポット518の形態にある。本明細書で定める場合に、用語「不連続」及びその文法的変形は、いずれの単一スポット(感知要素)も隣接スポットと縁部又は境界を共有しない(例えば、接触しない)ことを意味する。
【0043】
本発明の開示に説明する炭素作用電極500を備えるセンサテールは、テンプレート基板材料(
図2A~
図2B、
図3A~
図3C、
図4)上でセンサテールの追加の層状要素(例えば、誘電材料及び他の電極など)と共に前処理することができる。その後に、センサの製作中に、炭素作用電極500を備えるセンサテールは、1又は2以上の手段によって分離される。分離は、レーザ分離、スリット加工、剪断、及び押し抜きなどを含むがこれらに限定されない1又は2以上の切断又は分離のプロトコルによって達成することができる。センサテールの分離は、センサテールの遠位先端の近く(すなわち、組織の中に最も深く挿入されることになるセンサテールの部分)の炭素作用電極500上への活性区域の付加の前又は後に実行することができる。本明細書に使用する時に、センサテールの「先端」は、センサテールの最も遠位の縁部又は組織の中に最も深く挿入される部分を意味する。
【0044】
センサテールの1又は2以上の部分はレーザ分離され、センサテールを望ましい形状に切断するために典型的に複数回の通過を必要とする。センサテールの先端は、作用電極の少なくとも一部分及び活性区域を備える。典型的には、レーザ分離されたセンサテールは、約100μmから約500μmまでの範囲の幅及び約3mmから約10mmまでの長さのような約50μmから約800μmまでの範囲の幅及び約1mmから約20mmまでの長さである幅及び長さを有し、これらの間のあらゆる値及び部分集合を包含し、かつ上限と下限が分離可能である。一般的に、センサテールの遠位部分は、約0.1mmから約5mmまでのような約0.1mmから約10mmの遠位長さを占め、これらの間のあらゆる値及び部分集合を包含し、かつ上限と下限が分離可能である。レーザ分離の後に、活性区域を備える少なくとも1つのセンサ先端上に質量搬送制限膜が堆積される。
【0045】
本発明の開示の1又は2以上の態様では、質量搬送制限膜を配置する前に、レーザ分離過程に起因して炭素電極の縁部に沿って炭素凹凸が存在する場合がある。これらの炭素凹凸は、干渉物質が反応して検体センサに背景信号に寄与する可能性がある面を与える場合がある。
【0046】
炭素作用電極のレーザ分離は、約1μmから約75μm、約5μmから約50μm、又は約10μmから約30μmのような約75μm又はそれ未満の範囲の幅を有する炭素凹凸の形成をもたらす場合があり、これらの間のあらゆる値及び部分集合を包含し、かつ上限と下限が分離可能である。更に、これらの炭素凹凸は、約1μmから約50μm、約1μmから約30μm、約1μmから約20μm、又は約2μmから約10μmのような約50μm又はそれ未満又は約20μm又はそれ未満の範囲の高さを有する場合があり、これらの間のあらゆる値及び部分集合を包含し、かつ上限と下限が分離可能である。従って、これらの炭素凹凸は、干渉物質が相互作用する可能性がある実質的な面積を与える場合がある。更に、凹凸は、質量搬送制限膜の不定のカバレージ(厚み)に寄与する場合がある。これらの炭素凹凸は、下記で説明するように1又は2以上のレーザ平滑化方法によって低減するか又は除去することができる。
【0047】
最初に
図6Aを参照して、かつ本発明の開示に従って炭素凹凸を低減するか又は除去するためのいずれかのレーザ平滑化の前に、図示しているのは、その上に質量搬送制限膜が堆積されていないセンサテールの少なくとも一部分として使用するためのレーザ分離された炭素作用電極の例の拡大図である。他の手段によって望ましい形状に切断された電極も、類似の外見及びサイズの凹凸を有することができる。炭素凹凸は、干渉物質が反応する可能性がある作用電極の縁部に沿って現れている。
図6Bは、
図6Aに示す線に沿って識別された430.71μmの深さプロファイルに沿って評価された深さプロファイルを例示している。この3D光学プロファイルは、ZEGAGE(登録商標)3D Optical Profiler、ZYGOOR Corporation(米国コネチカット州ミドルフィールド)を用いて取得したものである。
図6Bに示すように、例示的分離センサテールの分離(切除)縁部に沿う炭素凹凸は、約30μmまでの幅及び約10μmまでの高である。
【0048】
質量搬送制限膜は、異質炭素区域(例えば、
図5の異質炭素区域510)への干渉物質のアクセスを低減するか又は防止することができる。レーザ分離された炭素作用電極(及びその上の活性区域)の上に配置された時に、膜の厚みは、特に有意な凹凸が存在する場合は作用電極の幅にわたって変化する。典型的には、膜は、炭素凹凸が位置付けられる場所でもある電極縁部に沿って最も薄い。従って、膜が存在する時であっても、炭素凹凸は、それとの干渉物質の相互作用を十分に低減するか又は防止するほど十分には膜によって被覆されない場合がある。
【0049】
図7Aを参照して、かつ本発明の開示の1又は2以上の態様により炭素凹凸を低減するか又は除去するためのいずれかのレーザ平滑化の前に、図示しているのは、質量搬送制限膜が配置された例示的レーザ分離炭素作用電極の拡大図である。
図7Bは、
図7Aに示す線に沿って識別された345.53μmの深さプロファイルに沿って評価された深さプロファイルを例示している。この3D光学プロファイルは、ZEGAGE(登録商標)3D Optical Profiler、ZYGOOR Corporation(米国コネチカット州ミドルフィールド)を用いて取得したものである。
図7Bに示すように、膜は、炭素作用電極の分離リッジに沿ってかなり薄めである。
【0050】
様々な態様では、本発明の開示は、センサテールを形成するのに使用するための炭素作用電極を1又は2以上の1回通過又は複数回通過のレーザ平滑化切断によって平滑化する方法及び検体センサを提供する。一部の実施形態では、レーザ深さを作用電極の厚みよりも浅く設定する1回通過レーザ平滑化方法が使用される。例えば、レーザ平滑化は、炭素層の上部約50%のような炭素層の上面部分を除去することができる。炭素層は、典型的に5μmから約20μmの範囲にあり(凹凸を除いて)、一部の実施形態ではそこから約5μmから約10μmまで(例えば、約20%、30%、40%、50%、60%、又は70%、100%まで)を除去することができる(例えば、
図13Cを参照されたい)。本明細書の開示によるレーザ平滑化は、凹凸の突出を除去するか又は低減することができる。
【0051】
一部の実施形態では、炭素凹凸を低減するか又は排除するために、各々が作用電極の中間長さに徐々に近づく1よりも多い、例えば、約20個よりも少ない(又は約15個、又は約10個の)1回通過レーザ平滑化切断を行うことができる。そのような方法で最初のレーザ平滑化切断をいずれかの単一炭素凹凸の最も外側の場所で行うことができ、次に、複数のレーザ平滑化切断を作用電極の中線長さの場所に向けて行って圧延縁部を生成することができ、この圧延縁部は、約90°の段階状縁部とするか、又は例えば電極の中線に最も近いレーザ平滑化切断が真の90°角度をもたらさない場合は斜角縁部とすることができる(レーザ平滑化切断部(縁部)810を剪断90°角度縁部ではなく傾斜縁部として示す
図8を参照されたい)。例えば、一実施形態では、各々が約0.1μmから約200μm、例えば、約1μmから約100μmの間の離間距離を有する約1個から約20個まで、例えば、約2個から約10個までの1回通過レーザ平滑化切断を行うことができ、これらの間のあらゆる値及び部分集合を包含し、かつ上限と下限が分離可能である。特定のレーザ平滑化通過回数及びその離間距離の選択は、炭素凹凸の形状及びサイズ、作用電極の長さ及び幅、及び作用電極の上に配置されたいずれかの膜のカバレージプロファイルなど、及びこれらのあらゆる組合せを含むがこれらに限定されないいくつかの因子に基づく場合がある。
【0052】
レーザ平滑化は、炭素作用電極を備える分離されたセンサテールから全炭素凹凸面積のうちの少なくとも約5%から約100%まで又はこれらの間のあらゆる値及び部分集合をほぼ包含する範囲にある面積を除去するのに支配的に使用することができる。一部の実施形態では、炭素凹凸のうちの100%までが除去されるか、又は全炭素凹凸面積のうちの約5%から約75%まで、約5%から約50%まで、又は約5%から約25%までの面積が除去され、これらの間のあらゆる値及び部分集合を包含し、かつ上限と下限が分離可能である。好ましい実施形態では、炭素凹凸全面積のうちの少なくとも約50%が除去される。特定の炭素凹凸除去量は、炭素凹凸の密度、形状、及びサイズ、及び分析中の体液内で関与する可能性がある干渉物質の濃度と比較した着目検体の濃度など、及びこれらのあらゆる組合せを含むがこれらに限定されないいくつかの因子に基づく場合がある。
【0053】
図8は、本発明の開示の1又は2以上の実施形態によるレーザ分離切断部(リッジ)805と、炭素作用電極の縁部の一部分(炭素層又は電極層)を除去することでセンサテールの縁部から陥入したレーザ平滑化切断部(縁部)810とを示すセンサテール800の縁部の写真を例示している。すなわち、レーザ平滑化切断部810は、作用電極の薄めの部分が外側周囲に沿って(かつ活性区域を備えない電極の反対部分で)残ったまま炭素電極の上側部分又は上面部分(活性区域が存在する場所)に沿って炭素凹凸を低減することに向けられる。
【0054】
本発明の開示の1又は2以上の態様では、干渉物質に関する検体センサ信号を低減するか又は排除するために単体で又はいずれかの他の強化との組合せで干渉物質-反応物質種を備える検体センサを提供する。本明細書に使用する時に、用語「干渉物質-反応物質種」用語及びその文法的変形は、生物学的又は非生物学的のいずれであるかに関わらず、干渉物質と反応してそれが作用電極での測定信号に寄与することができないように当該干渉物質を不活性にする機能を有するいずれかの化合物を意味する。すなわち、干渉物質-反応物質種は、干渉物質が検体センサの作用電極上で反応する(それに接触する)ことができる前に干渉物質を「事前反応」させるために検体センサの一部として含めることができる。従って、干渉物質-反応物質種は、作用電極に存在するか又はそれにアクセス可能な干渉物質の局所濃度を排除し又は低減し、それによって干渉物質が作用電極の余剰区域に決して到達しないことでそのような干渉物質に起因する信号を排除するか又は低減することができる。
【0055】
干渉物質-反応物質種を組み込む方法及びそれを組み入れた検体センサの様々な態様をアスコルビン酸の排除又は除去のための干渉物質-反応物質種に関して説明するが、本明細書に説明する強化は、限定することなく他の潜在的干渉物質に適することは引き続き認められるものとする。そのような干渉物質は、例えば、アスコルビン酸(ビタミンC)、グルタチオン、尿酸、パラセタモール(アセトアミノフェン)、イソニアジド、及びサリチル酸塩など、及びこれらのあらゆる組合せを含むことができる。非限定例では、本発明の開示の干渉物質-反応物質種は、アスコルビン酸オキシダーゼ酵素(アスコルビン酸と反応するための)、グルタチオンペルオキシダーゼ酵素(グルタチオンと反応するための)、キサンチンオキシダーゼ酵素(尿酸と反応するための)、尿酸オキシダーゼ酵素(尿酸と反応するための)、チトクロムP450酵素(パラセタモールと反応するための)、好酸球ペルオキシダーゼ酵素(イソニアジドと反応するための)、サリチル酸酸化酵素(サリチル酸と反応するための)、着目干渉物質を酸化、還元、又は他に反応させて分解することができる他の酵素、及びこれらのあらゆる組合せとすることができる。代替実施形態又は組合せ実施形態では、干渉物質-反応物質種は、非酵素とすることができる。例えば、酸化マンガン(MnO2)又は酸化鉄(Fe2CO3)のような様々な金属酸化物は、アスコルビン酸を酸化又は他に反応させて本発明の開示の1又は2以上の干渉物質-反応物質種として使用することができる。
【0056】
図9Aを参照すると、アスコルビン酸902と余剰作用電極との潜在的な干渉物質反応を例証し、かつアスコルビン酸に起因する場合がある信号を発生させる感知化学物質を潜在的に例証する従来のセンサ900の図が例示されている。
図9Aのセンサには、干渉物質-反応物質種が組み込まれていない。アスコルビン酸902は、体液904を通ってセンサ900に遭遇し、感知化学物質906と基板910上に配置された余剰区域作用電極908(例えば、感知化学物質906を含まない)とに接触する。感知化学物質906及び作用電極908に遭遇すると、アスコルビン酸902は、少なくとも余剰作用電極908上で酸化され、及び/又はこれに加えて感知化学物質908上で酸化されてデヒドロアスコルビン酸912に変換される場合がある。
【0057】
本発明の開示の様々な態様により、
図9Bは、干渉物質-反応物質種914を組み込んだ
図9Aのセンサの図、及び特にアスコルビン酸オキシダーゼ(AOx)の干渉物質-反応物質種の図を示している。図示のように、アスコルビン酸オキシダーゼ914は、作用電極906又は感知化学物質906に接触する前にアスコルビン酸902と反応し、それによってこのアスコルビン酸902が検体信号に寄与することを防止する。
図9Bに示すセンサは、本明細書に説明するセンサのあらゆる構成及び/又は構成要素を限定することなく有することができることに注意されたい。
【0058】
本発明の開示の検体センサ内への組み込みに適する1又は2以上の干渉物質-反応物質種の特定の場所は、特に限定的であるとは考えられない。例えば、干渉物質-反応物質種は、検体感知活性区域、検体感知活性区域を被覆する膜の一部としてかつ作用電極、検体感知活性区域、及び/又は膜コーティングなどのうちのいずれかの上の独自の層としてかつこれらのあらゆる組合せとして設けることができる。活性層、膜の一部、又は独自の層として設けられる時に、干渉物質-反応物質種は、ポリマー母材中で浮動性のもの又は他に不動化(例えば、共有結合又は非共有結合)されたものとすることができる。検体センサの中に(いずれか1又は2以上の場所に)組み込まれた干渉物質-反応物質種の特定の濃度は、特定の着目検体、特定の着目干渉物質、及び検体センサの生体内の場所など、及びこれらのあらゆる組合せを含むがこれらに限定されないいくつかの因子に依存する場合がある。一部の事例では、干渉物質-反応物質種が酵素である時に、干渉物質-反応物質種の全量は、センサ毎の活動で約0.01単位から約100単位の範囲のようなセンサ毎の活動で約0.01単位から約200単位までとすることもでき、これらの間のあらゆる値及び部分集合を包含し、かつ上限と下限が分離可能である。例えば、アスコルビン酸オキシダーゼである干渉物質-反応物質種を有するセンサは、センサ毎の活動で約0.01単位から約10単位まで、約0.01単位から約5単位まで、又は約0.1単位から約1単位までを有することができる。他の事例では、干渉物質-反応物質種が金属酸化物のような非酵素化合物である時に、干渉物質-反応物質種の全量は、センサ毎に約0.01μgから約200μgまで、又はセンサ毎に約0.1μgから約100μgの範囲とすることができ、これらの間のあらゆる値及び部分集合を包含し、かつ上限と下限が分離可能である。例えば、MnO2である干渉物質-反応物質種を有するセンサは、センサ毎に約0.1μgから約10μgまでの量で存在することができ、上限と下限が分離可能である。
【0059】
上述のように、本明細書に説明する干渉物質-反応物質種は、それ自体が層として存在しているか、膜の中に存在しているか、又は活性区域の中に存在しているかに関わらず、動化状態又は不動化状態のいずれかでポリマー母材の中に存在することになる。このポリマー母材は、検体センサでの使用に適するように選択される感知化学物質を妨害しない干渉物質-反応物質種に適合するいずれかのポリマー、架橋剤、及び/又は添加剤で構成することができる。これらのポリマー、架橋剤、及び/又は添加剤の各々は、本明細書に説明するもののうちのいずれかから限定することなく選択することができる。例えば、そのようなポリマーの非限定例は、ポリ(4-ビニルピリジン)及びポリ(N-ビニルイミダゾール)(PVI)又はこれらのコポリマー、スルホン化テトラフルオロエチレンベースのフルオロポリマー-コポリマー(例えば、NAFION(登録商標)、The Chemours Company、米国デラウェア州ウィルミントン)、ポリビニルアルコール、及びこれらのあらゆる組合せを含み、架橋剤の非限定例は、トリグリシジルグリセロールエーテル(gly3)、PEDGE、及び/又はポリジメチルシロキサンジグリシジルエーテル(PDMS-DGE)を含み、添加剤の非限定例は、アルブミンのような安定剤及び/又は本明細書に説明するいずれかの他の安定剤を含む。
【0060】
本発明の開示の1又は2以上の態様では、干渉物質に関する検体センサ信号を低減するか又は排除するために単体で又はいずれかの他の強化との組合せで洗浄電極を備える(例えば、干渉物質-反応物質種及び/又は凹凸平滑化の組み入れを用いて又は用いずに)検体センサを提供する。本明細書に説明する場合に、用語「洗浄電極」及びその文法的変形は、干渉物質と反応してそれが作用電極での測定信号に寄与することができないようにする機能を有する電極を意味する。すなわち、洗浄電極は、干渉物質が検体センサの作用電極上で反応することができる前に干渉物質を「事前反応」させるために検体センサの一部として含めることができる。従って、干渉物質-反応物質種の存在と同様に、洗浄電極は、作用電極に存在するか又はそれにアクセス可能な干渉物質の局所濃度を排除し又は低減し、それによって干渉物質が作用電極の余剰区域に決して到達しないことでそのような干渉物質に起因する信号を排除するか又は低減することができる。
【0061】
1又は2以上の態様では、洗浄電極は、作用電極との対面関係でかつそこから空間的にオフセットされた状態に位置決めすることができる。すなわち、作用電極の活性区域と、基板上に配置される又はされない場合がある洗浄電極の活性区域とは、互いに対面し、間隙によって分離される。好ましくは、間隙は、着目検体を含む体液がその間を通過し、その間に着目検体及びいずれかの干渉物質を含む2つの電極の間である薄層である。望ましくは、作用電極に対する洗浄電極の構成は、体液が作用電極に到達するまでにいずれかの干渉物質に対して反応するほど十分な時間にわたって体液が洗浄電極との接触状態になるようなものである。洗浄電極は、いずれの感知化学物質も含まず、従って、着目検体は、洗浄電極と反応しない。そのような方式で、体液から干渉物質が取り除かれるか又は実質的に取り除かれ、作用電極で得られる信号は、全体的に又は主として着目検体に起因するものである。
【0062】
体液が作用電極の前に洗浄電極に接触することを保証するために様々な電極構成を使用することができる。1つのそのような非限定的構成1000を
図10に示している。図示のように、洗浄電極1006と作用電極1008とが対面関係にあり、洗浄電極1006と比較して作用電極1008は陥入しているか又は他に狭めの幅のものである。作用電極は、その上に配置された感知化学物質(図示せず)を更に備える。
図10に示す作用電極1008と洗浄電極1006との特定の構成は矩形の形状にあるが、本明細書に説明する実施形態に正方形、丸形、及び螺旋形などのような他の構成を同じく適用可能とすることができる。一般的に、作用電極1008及び洗浄電極1006は、幅1002よりも大きい長さ1004を有することができる。
【0063】
1又は2以上の態様では、作用電極に対する洗浄電極の幅は、約2:1から約50:1の範囲とすることができ、これらの間のあらゆる値及び部分集合を包含し、かつ上限と下限が分離可能である。例えば、一部の事例では、洗浄電極1006は、約300μmから約5000μmの範囲のような約200μmから約8000μmの幅を有することができ、作用電極1008は、約50μmから約1000μmの範囲のような約50μmから約2000μmの幅を有することができ、これらの間のあらゆる値及び部分集合を包含し、かつ上限と下限が分離可能である。これらの寸法は、洗浄電極1006のサイズと作用電極1008のサイズの間の比を実際の生体内使用(挿入)に向けてセンサテールを過度に幅広にすることなく増大させるために、薄層1010がセンサテールの長さに沿って線形又は非線形の形状を有しながら延びることができる向きを組み込んでいる。
【0064】
薄層1010は、洗浄電極1006と作用電極1008の間に形成される。この薄層は、約10μmから約100μmの範囲のような約1μmから約200μmとすることができ、これらの間のあらゆる値及び部分集合を包含し、かつ上限と下限が分離可能である。一部の事例では、薄層は、約10μmから約50μm、又は約10μm、約20μm、約30μm、約40μm,又は約50μmとすることができ、上限と下限が分離可能である。薄層1010は、一般的に、体液が作用電極1008の前に洗浄電極1006に到達することを保証するように制御される様式で密封されていない薄層1010空間の空間に体液が進入することができるように洗浄電極1006の対向する縁部に沿う流体通路(例えば、薄層「セル」)を密封することによって形成される。一般的に、溶質(例えば、干渉物質)が洗浄電極1006と相互作用する機会を最大に高めるために、薄層1010の容積に対する洗浄電極1006の面積のより大きい比が好ましい場合がある。例えば、
図10を参照すると、洗浄電極1006と作用電極1008の間の薄層1010は、これらの電極の幅縁部に沿って接着剤、スペーサ、又は他の非限定的分離手段を付加することによって形成することができる。従って、体液は、縁部を通してその長さに沿って薄層1010の中に向けられる。従って、干渉物質と着目検体とを含む体液が薄層1010を通って拡散する時に、作用電極1008に到達するまでに洗浄電極1006との十分以上の相互作用がある。従って、そのような洗浄電極1006を備える検体センサは、作用電極1008との干渉物質相互作用を制限するのに膜に頼ることができるがそれを必要とせず、それによって製造の利点及びコストの利点をもたらすことができる。
【0065】
様々な実施形態では、薄層1010は、生体適合性を容易にするために、殺菌性及び抗菌性を与えるために、及び類似の目的、及びこれらの目的のあらゆる組合せで体液を薄層1010の中に誘導することを助ける界面活性剤、ヒドロゲル、膜、又は他の材料を用いて改質することができる。
【0066】
1又は2以上の態様では、特定の干渉物質との洗浄電極の反応有効性を微調整するために、洗浄電極電位を調節することなどによって洗浄電極を独立に制御することができるように様々な構成を調整することができる。一般的に、干渉物質と反応することに対する洗浄電極の有効性は、電位が高くなる時に増大することになる。洗浄電極電位は、約-1000mVから約+1000mVの範囲のような約-2000mVから約+2000mVまでとすることができ、これらの間のあらゆる値及び部分集合を包含し、かつ上限と下限が分離可能である。一般的に、洗浄電極電位は、水の電位窓までの範囲のいずれかの作用電位、すなわち、体液に関する溶媒である水自体が酸化又は還元を受けない電位とすることができる。洗浄電極電位は、一部の実施形態では洗浄電極と作用電極の両方が共有することができる包含基準電極(例えば、Ag/AgCl基準電極)に対するものとすることができる。更に、洗浄電極をほぼ負の電位で作動させることにより、酸素のような酸化剤の追加の洗浄を可能にすることができる。すなわち、洗浄電極を用いて不要な酸素を洗浄し、検体信号への酸素の寄与を低減することができる。
【0067】
洗浄電極の組成は、特に限定的であるとは考えられず、公知の電極材料で製造することができ、かつ作用電極と同じか又は異なる組成である場合がある。適切な材料の例は、炭素、金、プラチナ、及びPEDOTなどを含むがこれらに限定されない。一部の事例では、洗浄電極の組成は、着目干渉物質との反応に特異的な材料又は利点のうちでも取りわけ洗浄電極の面積を増大させるための材料で改質する又はそれを追加することができる。作用電極に到達する干渉物質の排除又は低減を更に強化するために干渉物質-反応物質種を上述したいずれかの方式で洗浄電極上に被覆することができることは更に認めるものとする。
【0068】
一部の実施形態では、洗浄電極の組み込みのための薄層構成を有する代わりに、洗浄電極組成は、着目検体に対して透過性を有するように選択することができる。そのような方式で、洗浄電極を作用電極の上方に積層することができ、洗浄電極は、検体透過性膜又はセンサの短絡を回避するための誘電材料層をこれらの電極の間に有して薄層を持たない。すなわち、それ自体で着目検体に対する透過性を有する絶縁材料が、透過性洗浄電極と検体感知材料を備える作用電極との間に配置される。そのような方式で、上述した薄層洗浄電極構成と同じ理論的根拠に基づいて、着目検体と干渉物質の両方を備える体液が透過性洗浄電極との接触状態になり、そこで干渉物質が反応して排除され又は他にその濃度が低減され、その後に体液(着目検体を含み、干渉物質を全く又はそれほど含まない)が作用電極との接触状態になる。従って、洗浄電極は、作用電極に存在するか又はそれにアクセス可能な干渉物質の局所濃度を排除し又は低減し、それによって干渉物質は作用電極の余剰区域に決して到達しないので、そのような干渉物質に起因する信号を排除する又は低減することができる。
【0069】
透過性洗浄電極を備える検体センサ1100の1つのそのような非限定的構成を
図11に示している。図示のように、作用電極1102は、その上に配置されて活性区域1104を形成する感知化学物質を備える(単一区域として又は複数の不連続スポットを備えるものとして)。活性区域1104の上には、1又は2以上の着目検体1112がその中を通って拡散することができる限り、いずれかの材料とすることもできる例えば本明細書に説明するポリマーのうちのいずれかとすることができる検体透過性絶縁層1106が存在する。例えば、検体透過性絶縁層1106は、拡散制限膜とすることができる。検体透過性洗浄電極1108は、検体透過性絶縁層1106の上に配置される。検体透過性洗浄電極1108は、ベース作用電極1102と同じ寸法とすることができるが、好ましい実施形態では、検体透過性洗浄電極1108は、絶縁層1106又は作用電極1102のいずれの前でも生体液に接触する形状及びサイズを有する。追加の拡散制限特性、生体適合性特性、殺菌性又は抗菌性、及び透過性洗浄電極1108の保護など、及びこれらのあらゆる組合せを与えるために外側膜1110を含めることができる。
図11に示すように、干渉物質1114は、外側膜1110を通って透過性洗浄電極1106まで拡散することができるが、そこで反応して不活性になり、それによって作用電極1102での測定信号に寄与することができない。これに代えて、着目検体1112は、洗浄電極1106(検体感知化学物質を持たない)との反応性を持たず、検体1112は、外側膜1110、洗浄電極1108、及び絶縁層1106を通って作用電極1102の上の感知層1104まで拡散する。下記で議論する
図23に示す別の非限定的構成は、検体透過性洗浄電極を有する「井戸」構造を使用することができる。
【0070】
透過性洗浄電極を備える検体センサ1200の別の非限定的構成を
図12に示している。この構成では、透過性洗浄電極1202は、そこに電位を印加することができるように電気接触を与えるために不透過性洗浄電極1204トレースとの組合せで提供される。不透過性洗浄電極1204は、誘電材料1206上をトレースすることができ、作用電極1208を配置することができ、かつそれ自体がベース基板1210(例えば、プラスチックベース基板)を配置することができる。更に、第2の誘電材料を不透過性洗浄電極1204上に配置することができる。作用電極1208の露出部分の上に感知化学物質1204を分注することができる。センサAのこの部分は、生成して分離することができる。その後に、それは、内側ポリマー膜1214を付加するために浸漬被覆されて硬化され、次に、透過性洗浄膜1202を付加するために浸漬被覆されて硬化され。最後に外側ポリマー膜1216を付加するために浸漬被覆することができる。この構成は、製造及びコスト利益を提供することができる。
【0071】
本明細書に説明するセンサの共通層及び要素の様々な組成の各々は、検体透過性洗浄電極を備えるいずれか又は全ての実施形態内に同等に含めることができる。検体透過性洗浄電極の組成は、導電性であり、干渉物質と反応する(例えば、アスコルビン酸を酸化させる)ことができ、かつ特定の着目検体に対して透過性を有する限り、特に限定的であるとは考えられない。一部の事例では、透過性電極は、カーボンナノチューブ材料を備えることができる。他の組成物は、導電性ナノ粒子及び導電性ナノワイヤなど及びこれらのあらゆる組合せを含むことができるがこれらに限定されない。透過性洗浄電極には、導電性、透過性、及び透過性電極の物理的性質など及びこれらのあらゆる組合せを強化するために他の導電性インク又は導電性ポリマーを更に追加することができる。例えば、カーボンナノチューブ透過性洗浄電極組成の粘性を増大させて浸漬コーティングを強化するために、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホナート(PEDOT:PSS)をこの電極組成に組み込む又は含浸させることができる。1又は2以上の態様では、干渉物質洗浄効率を強化するために、本明細書に説明するような電子伝達剤を検体透過性洗浄電極の多孔質構造の中に組み込む又は他に含浸させることができる。
【0072】
検体透過性洗浄電極の厚みは、特に限定的であるとは考えられず、約1μmから約50μmの範囲のような約0.5μmから約100μmとすることができ、これらの間のあらゆる値及び部分集合を包含し、かつ上限と下限が分離可能である。理論に縛られることなく、透過性洗浄電極の厚みが着目検体の拡散を逆に妨害しない限り、干渉物質が洗浄電極のより大きい面積に露出されると考えられるので、洗浄効率を強化するために透過性洗浄電極の厚みを増大させることができる。
【0073】
理論に縛られることなく、一部の実施形態では、洗浄電極(透過性を有するか否かに関わらず)は、これに加えて検体検出システムの製品を再生させるために用いられ、それによって検体の濃度を増大させて検体信号を実質的に増幅することができる。
【0074】
本明細書に説明する検体センサの上述の構成要素のうちのいずれかの様々な層は、以下に限定されるものではないが、自動分注又は浸漬コーティングのようないずれかの適切な手段によって堆積させることができる。電極は、例えば、スクリーン印刷される場合があり、適切な電気接続を行うためにトレースが設けられる。
【0075】
本明細書に開示する検体センサのうちのいずれかでの活性区域は、単体で作用するか又は酵素システム内で協働的に作用するかのいずれかである1又は2以上の検体反応性酵素を備えることができる。1又は2以上の酵素は、活性区域を備えるポリマーに共有結合させることができ、同じく1又は2以上の電子伝達剤は、活性区域内に位置付けることができる。
【0076】
各活性区域内の適切なポリマーの例は、例えば、内部で四級化ピリジン及びイミダゾール基が電子伝達剤又は電子伝達酵素に対する取付点として機能するポリ(4-ビニルピリジン)及びポリ(N-ビニルイミダゾール)又はこれらのコポリマーを含むことができる。活性区域に存在することができる他の適切なポリマーは、本明細書に引用によってその全体が組み込まれている米国特許第6,605,200号明細書に説明されているもの、例えば、ポリ(アクリル酸)、スチレン/マレイン酸無水物コポリマー、メチルビニルエーテル/マレイン酸無水物コポリマー(GANTREZポリマー)、ポリ(ビニルベンジルクロリド)、ポリ(アリルアミン)、ポリリジン、カルボキシペンチル基によって四級化されたポリ(4-ビニルピリジン)、及びポリ(ナトリウム4-スチレンスルホナート)を含むがこれらに限定されない。
【0077】
活性区域内のポリマーに共有結合され、検体検出を容易にする機能を有する酵素は、具体的に限定されるとは考えられない。適切な酵素は、グルコース、ラクタート、ケトン、又はクレアチニンなどを検出する機能を有するものを含むことができる。これらの検体のいずれも、複数の検体を検出する機能を有する検体センサ内で互いとの組合せで検出することができる。これらの検体を検出するのに適する酵素及び酵素システムを以下で説明する。
【0078】
一部の実施形態では、検体センサは、センサテール上に配置されたグルコース反応性酵素を備えるグルコース反応性活性区域を備えることができる。適切なグルコース反応性酵素は、例えば、グルコースオキシダーゼ又はグルコースデヒドロゲナーゼ(例えば、ピロロキノリンキノン(PQQ)又は補因子依存性グルコースデヒドロゲナーゼ、例えば、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)依存性グルコースデヒドロゲナーゼ又はニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)依存性グルコースデヒドロゲナーゼ)を備えることができる。グルコースオキシダーゼとグルコースデヒドロゲナーゼは、グルコースを酸化する時に酸素を電子受容体として利用する機能によって区別され、グルコースオキシダーゼは、酸素を電子受容体として利用することができ、それに対してグルコースデヒドロゲナーゼは、天然又は人工電子受容体、例えば、酵素補因子に電子を伝達する。グルコースオキシダーゼ又はグルコースデヒドロゲナーゼは、検出を容易にするのに使用することができる。グルコースオキシダーゼとグルコースデヒドロゲナーゼとの両方は、グルコース反応性活性区域を備えるポリマーに共有結合させることができ、これら両方は、同じくポリマーに共有結合させることができる電子伝達剤(例えば、オスミウム(Os)複合体又は類似の遷移金属複合体)と電子を交換することができる。適切な電子伝達剤に対しては、下記でより詳細に説明する。グルコースオキシダーゼは、電子伝達剤と電子を直接交換することができ、それに対してグルコースデヒドロゲナーゼは、補因子を利用して電子伝達剤との電子交換を促進することができる。FAD補因子は、電子伝達剤と電子を直接交換することができる。それとは対照的に、NAD補因子は、ジアホラーゼを利用して補因子から電子伝達剤への電子伝達を促進することができる。グルコースオキシダーゼ又はグルコースデヒドロゲナーゼを組み込んだグルコース反応性活性区域、並びにそれを用いたグルコース検出に関する詳細は、例えば、本明細書に引用によってその全体が組み込まれている本発明の出願人所有の米国特許第8,268,143号明細書に見出すことができる。
【0079】
一部の実施形態では、本発明の開示の活性区域は、ケトンを検出するのに適するように構成することができる。ケトンに対して反応性を有する酵素システムに関する追加の詳細は、2020年1月28日に出願されて米国特許出願公開第2020/0237275号明細書として公開された本明細書に引用によってその全体が組み込まれている「グルコースとケトンとの二重検出を特徴とする検体センサ及び感知方法(Analyte Sensors and Sensing Methods Featuring Dual Detection of Glucose and Ketones)」という名称の本発明の出願人所有の米国特許出願第16/774,835号明細書に見出すことができる。そのようなシステムでは、β-ヒドロキシブチラートは、生体内で形成されるケトンに対する代用物として機能し、本明細書で更に説明するように、少なくとも1つの作用電極の面上に配置されたケトン反応性活性区域内のケトンの検出を容易にするβ-ヒドロキシブチラートのデヒドロゲナーゼ(HBDH)及びジアホラーゼを含有する酵素システムとの反応を受ける。ケトン反応性活性区域内では、β-ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼは、β-ヒドロキシブチラート及び酸化ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)をそれぞれアセトアセタート及び還元ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)に変換することができる。用語「ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)」は、上述の酵素補因子のホスファート結合形態を含むことは認められるものとする。すなわち、本明細書での用語「NAD」の使用は、NAD+ホスファートとNADHホスファートとの両方、特に、一方がアデニン核酸塩基を含有し、他方がニコチンアミド核酸塩基を含有する2つのヌクレオチドを結合するジホスファートを意味する。NAD+/NADH酵素補因子は、本明細書に開示する協働的酵素反応を促進することを助ける。形成された状態で、NADHは、ジアホラーゼ媒介の下で酸化を受けることができ、この処理中に電子が伝達されて作用電極でのケトン検出に対する基礎が与えられる。すなわち、作用電極に伝達される電子の量と変換されるβ-ヒドロキシブチラートの量との間には1:1のモル相応関係がある。作用電極への電子の伝達は、下記でより詳細に説明するように、オスミウム(Os)化合物又は類似の遷移金属複合体のような電子伝達剤の更に別の媒介の下で発生することができる。活性区域内にはアルブミンが安定剤として更に存在することができる。β-ヒドロキシブチラートのデヒドロゲナーゼ及びジアホラーゼは、ケトン反応性活性区域を備えるポリマーに共有結合させることができる。NAD+は、ポリマーに共有結合させる又はさせない場合があるが、共有結合させない場合はケトン反応性活性区域内に物理的に保持することができ、例えば、ケトンに対して同じく透過性を有する質量輸送制限膜がケトン反応性活性区域を保護する。
【0080】
ケトンを酵素的に検出するための他の適切な化学物質は、本発明の開示の実施形態に従って利用することができる。例えば、β-ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼ(HBDH)は、ここでもまたβ-ヒドロキシブチラート及びNAD+をそれぞれアセトアセタート及びNADHに変換することができる。作用電極への電子伝達をジアホラーゼ及び適切なレドックス媒介剤によって完了させる代わりに、還元型のNADHオキシダーゼ(NADHOx(Red))が、反応を受けて対応する酸化型(NADHOx(Ox))を形成する。次に、NADHOx(Red)が、分子酸素との反応によって再形成されてスーパーオキシドを生成することができ、スーパーオキシドは、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)媒介下でその後の過酸化水素への変換を受けることができる。次に、過酸化水素は、作用電極で酸化を受けて、最初に存在していたケトンの量に相関させることができる信号を供給することができる。様々な実施形態により、SODは、ケトン反応性活性区域内のポリマーに共有結合させることができる。β-ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼ及びNADHオキシダーゼは、ケトン反応性活性区域内のポリマーに共有結合させることができ、NAD+は、ケトン反応性活性区域内のポリマーに共有結合させる又はさせない場合がある。NAD+は、共有結合されない場合にケトン反応性活性区域内に物理的に保持することができ、膜ポリマーが、ケトン反応性活性区域内のNAD+の保持を改善する。ここでもまた、作用電極に伝達される電子の量と変換されるβ-ヒドロキシブチラートの量との間に1:1のモル相応関係があり、それによってケトン検出に対する基礎が与えられる。
【0081】
ケトンに対する別の酵素検出化学物質は、β-ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼ(HBDH)を利用してβ-ヒドロキシブチラート及びNAD+をそれぞれアセトアセタート及びNADHに変換することができる。この場合の電子伝達サイクルは、NAD+を再形成する1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンによるNADHの酸化によって完了し、その後に、1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンは、電子を作用電極に伝達する。1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンは、ケトン反応性活性区域内のポリマーに共有結合させる又はさせない場合がある。β-ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼは、ケトン反応性活性区域内のポリマーに共有結合させることができ、NAD+は、ケトン反応性活性区域内のポリマーに共有結合させる又はさせない場合がある。活性区域内へのアルブミンの包含は、応答安定性の驚くべき改善を提供することができる。適切な膜ポリマーは、ケトン反応性活性区域内のNAD+の保持を改善することができる。ここでもまた作用電極に伝達される電子の量と変換されるβ-ヒドロキシブチラートの量との間に1:1のモル相応関係があり、それによってケトン検出に対する基礎が与えられる。
【0082】
一部の実施形態では、検体センサは、協働的に作動してクレアチニンの検出を容易にする酵素システムを備えるクレアチニン反応性活性区域を更に備えることができる。クレアチニンは、クレアチニンアミドヒドラーゼ(CNH0029)の存在下で可逆的かつ加水分解的に反応してクレアチンを形成することができる。更に、クレアチンは、クレアチンアミドヒドラーゼ(CRH)の存在下で触媒加水分解を受けてサルコシンを形成することができる。これらの反応のいずれも電子の流れ(例えば、酸化又は還元)を生成せず、クレアチニンの電気化学検出に対する基礎を与える。クレアチンの加水分解によって生成されたサルコシンは、酸化型のサルコシンオキシダーゼ(SOX-ox)の存在下で酸化を受けてグリシン及びホルムアルデヒドを形成し、それによってこの処理で還元型のサルコシンオキシダーゼ(SOX-red)を発生させることができる。酸素の存在下では、過酸化水素が発生する可能性もある。次に、還元型のサルコシンオキシダーゼは、酸化型の電子伝達剤(例えば、Os(III)複合体)の存在下で再酸化を受けることができ、それによって対応する還元型の電子伝達剤(例えば、Os(II)複合体)が生成され、電子流れが作用電極に送出される。
【0083】
酸素は、上述の開示に従ってクレアチニンを検出するのに使用される協働的な反応シーケンスと干渉する場合がある。具体的には、還元型のサルコシンオキシダーゼは、酸素との反応を受けて対応する酸化型のこの酵素を再形成するが、電子伝達剤と電子を交換することなく再形成することができる。酸素との反応が発生する時は、酵素は、全て活性状態に留まるが、電子は、作用電極に流れない。理論又は機構はさておき、動力学効果から酸素との競争反応がもたらされると考えられる。すなわち、酸素による還元型のサルコシンオキシダーゼの酸化は、電子伝達剤によって容易にされる酸化よりも速く発生すると考えられる。酸素の存在下では、過酸化水素も形成される。
【0084】
クレアチニンの検出を容易にするのに望ましい反応経路は、酵素システムの周りに脱酸素剤を含めることによって促進することができる。グルコースオキシダーゼのようなオキシダーゼ酵素を備える様々な脱酸素剤及びその配置を適切とすることができる。低分子脱酸素剤が適切である場合もあるが、これらの脱酸素剤は、センサ寿命が他に完全に尽きる前に完全に消費される場合がある。それとは対照的に、酵素は、可逆的な酸化及び還元を受け、それによってより長いセンサ寿命を提供することができる。酸素による還元型のサルコシンオキシダーゼの酸化を消勢することにより、電子伝達剤との緩慢な電子交換反応を発生させ、それによって作用電極での電流生成を可能にすることができる。生成される電流の強度は、最初に反応したクレアチニンの量に比例する。
【0085】
本発明の開示のいずれの実施形態でも、望ましい反応を促進するのに使用される脱酸素剤は、オキシダーゼ酵素とすることができる。酵素に適する基質も存在し、それによってオキシダーゼ酵素の存在下で酸素と反応するための試薬を供給することを前提として酵素システムの周りでの脱酸素を促進するのにあらゆるオキシダーゼ酵素を使用することができる。本発明の開示では、脱酸素に適切とすることができるオキシダーゼ酵素は、グルコースオキシダーゼ、ラクタートオキシダーゼ、及びキサンチンオキシダーゼなどを含むがこれらに限定されない。グルコースオキシダーゼは、様々な体液内のグルコースの即座の利用可能性に起因して脱酸素を促進するのに特に望ましいオキシダーゼ酵素とすることができる。下記の反応1は、酸素の除去を提供するためにグルコースオキシダーゼによって容易にされる酵素反応を例示している。
β-D-グルコース+O2――→D-グルコノ-1,5-ラクトン+H2O2
反応1
生体内で利用可能なラクタートの濃度は、グルコースの濃度よりも低いが、脱酸素を促進するのには依然として十分である。
【0086】
グルコースオキシダーゼのようなオキシダーゼ酵素は、本明細書に開示する検体センサでの脱酸素を促進するのに適するいずれの場所にも配置することができる。グルコースオキシダーゼは、例えば、グルコース検出を容易にするのに適するように機能するように及び/又は機能しないようにセンサテール上に配置することができる。グルコース検出を容易にするのに適するように機能しない時に、グルコースオキシダーゼは、グルコース酸化中に生成される電子が、グルコースオキシダーゼを作用電極から電気的に隔離することなどによって作用電極に到達することが不可能であるようにセンサテール上に配置することができる。
【0087】
クレアチニンに対して反応性を有する酵素システムに関する追加の詳細は、2019年9月25日に出願されて米国特許出願公開第2020/0241015号明細書として公開された本明細書に引用によってその全体が組み込まれている「クレアチニンを検出するための検体センサ及び感知方法(Analyte Sensors and Sensing Methods for Detecting Creatinine)」という名称の本発明の出願人所有の米国特許出願第16/774,835号明細書に見出すことができる。
【0088】
一部の実施形態では、検体センサは、センサテール上に配置されたラクタート反応性酵素を備えるラクタート反応性活性区域を備えることができる。適切なラクタート反応性酵素は、例えば、ラクタートオキシダーゼを備えることができる。ラクタートオキシダーゼ又は他のラクタート反応性酵素は、ラクタート反応性活性区域を備えるポリマーに共有結合させることができ、同じくポリマーに共有結合させることができる電子伝達剤(例えば、オスミウム(Os)複合体又は類似の遷移金属複合体)と電子を交換することができる。適切な電子伝達剤に対して下記でより詳細に説明する。本明細書に引用によってその全体が組み込まれている本発明の出願人所有の米国特許出願公開第2019/0320947号明細書により詳細に説明されているように、センサ反応性を安定化するためにヒト血清アルブミンのようなアルブミンは、ラクタート反応性活性区域に存在することができる。ラクタートレベルは、例えば、摂食、ストレス、運動、敗血症又は敗血症性ショック、感染、低酸素、又は癌性組織の存在などを含む数々の環境因子又は生理学的因子に応答して変化する場合がある。
【0089】
一部の実施形態では、検体センサは、pHに対して反応性を有する活性区域を備えることができる。pHを決定するのに適するように構成された適切な検体センサは、本発明の出願人所有で本明細書に引用によってその全体が組み込まれている米国特許出願公開第2020/0060592号明細書に説明されている。そのような検体センサは、第1の作用電極と第2の作用電極とを備えるセンサテールを備えることができ、第1の作用電極上に位置付けられた第1の活性区域は、pH依存性レドックス化学物質を有する基質を備え、第2の作用電極上に位置付けられた第2の活性区域は、pHと共に変化することが実質的にないレドックス化学物質を有する基質を含む。第1の信号と第2の信号の間の差を取得することにより、この差は、検体センサが露出される流体のpHと相関させることができる。
【0090】
2つの異なるタイプの活性区域は、上記で議論した炭素作用電極のような単一作用電極上に位置付けて互いに離間させることができる。各活性区域は、レドックス電位を有することができ、活性区域の一方からの信号の独立した生成を可能にするために、第1の活性区域のレドックス電位は、第2の活性区域のレドックス電位から十分に分離される。非限定例として、これらのレドックス電位は、少なくとも約100mVだけ、少なくとも約150mVだけ、又は少なくとも約200mVだけ異なることができる。これらのレドックス電位間の分離の上限は、生体内作用電気化学窓に依存する。強度が互いに十分に分離された2つの活性区域のレドックス電位を有することにより、2つの活性区域の一方内で(すなわち、第1の活性区域又は第2の活性区域内で)他方の活性区域内に電気化学反応を実質的に誘起することなく電気化学反応が発生することができる。従って、第1の活性区域又は第2の活性区域の一方からの信号は、その対応するレドックス電位(下位のレドックス電位)、又はそれよりも大きいが他方の活性区域のレドックス電位よりも小さい電位で独立に生成することができる。異なる信号は、各検体からの信号寄与を分解することを可能にすることができる。
【0091】
本明細書に開示する検体センサの一部又は全ての実施形態は、少なくとも1つの作用電極の面上に位置付けられて同じか又は異なる検体を検出する1又は2以上の活性区域を特徴とすることができる。膜は、少なくとも活性区域(検体反応性酵素を備える)を保護することができ、かつ作用電極の全て又は活性区域を欠くその部分(作用電極の露出部分又は外部部分)を保護することができる。膜は、質量輸送制限膜とすることができ、膜の単層、2つの異なる膜ポリマーの二重層、又は2つの異なる膜ポリマーの混成物とすることができる。
【0092】
本明細書に開示する活性区域のうちのいずれの中にも電子伝達剤が存在することができる。適切な電子伝達剤は、1又は2以上の検体が対応する活性区域内で酵素レドックス反応を受けた後の隣接作用電極への電子の搬送を促進することができ、それによって特定の検体の存在を示す電子流れを発生させる。発生する電流の量は、存在する検体の数量に比例する。活性区域内で異なる検体に対して反応性を有する電子伝達剤は、使用されるセンサ構成に依存して同じか又は異なる場合がある。例えば、2つの異なる活性区域が同じ作用電極上に配置される時に、各活性区域内の電子伝達剤は、異なる(例えば、これらの電子伝達剤が異なるレドックス電位を示すように化学的に異なる)場合がある。複数の作用電極が存在する時は、各作用電極は別々に評価することができるので、各活性区域内の電子伝達剤は、同じか又は異なる場合がある。
【0093】
適切な電子伝達剤は、標準カロメル電極(SCE)のレドックス電位を数百ミリボルト超えるか又は下回るレドックス電位を有する電気還元性及び電気酸化性のイオン、複合体、又は分子(例えば、キノン類)を備えることができる。一部の実施形態により、適切な電子伝達剤は、本明細書に引用によってその全体が組み込まれている米国特許第6,134,461号明細書及び第6,605,200号明細書に説明されているような低電位オスミウム複合体を備えることができる。適切な電子伝達剤の追加の例は、本明細書に引用によってその各々の開示が全体的に組み込まれている米国特許第6,736,957号明細書、第7,501,053号明細書、及び第7,754,093号明細書に説明されているものを備える。他の適切な電子伝達剤は、例えば、ルテニウム、オスミウム、鉄(例えば、ポリビニルフェロセン又はヘキサシアノフェラート)、又はコバルトの金属化合物又は金属複合体にこれらのメタロセン化合物を含めたものを備えることができる。例えば、金属複合体に適する配位子は、例えば、ビピリジン、ビイミダゾール、フェナントロリン、又はピリジル(イミダゾール)のような二座又はそれよりも多い座数の配位子を備えることができる。他の適切な二座配位子は、例えば、アミノ酸、シュウ酸、アセチルアセトン、ジアミノアルカン、又はo-ジアミノアレイーンを備えることができる。金属複合体内には、最大の配位圏を達成するように単座、二座、三座、四座、又はそれよりも高い座数の配位子のあらゆる組合せが存在することができる。
【0094】
本明細書に開示する検体のうちのいずれかを検出するのに適する活性区域は、電子伝達剤が共有結合されるポリマーを備えることができる。本明細書に開示する電子伝達剤のいずれも、活性区域内のポリマーへの共有結合を促進するのに適する官能基を備えることができる。ポリマー結合電子伝達剤の適切な例は、本明細書に引用によってそれらの開示が全体的に組み込まれている米国特許第8,444,834号明細書、第8,268,143号明細書、及び第6,605,201号明細書に説明されているものを備えることができる。活性区域内への包含に適するポリマーは、ポリビニルピリジン(例えば、ポリ(4-ビニルピリジン))、ポリビニルイミダゾール(例えば、ポリ(1-ビニルイミダゾール))、又はこれらのいずれかのコポリマーを備えることができるがこれらに限定されない。活性区域内への包含に適切とすることができる例示的コポリマーは、例えば、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、又はアクリロニトリルのようなモノマー単位を含有するものを含む。2又は3以上の異なる活性区域が存在する時は、各活性区域内のポリマーは、同じか又は異なる場合がある。
【0095】
活性区域内のポリマーへの電子伝達剤の共有結合は、共有結合された電子伝達剤を担持するモノマー単位を重合することによって発生させることができ、又はポリマーが予め合成された後に電子伝達剤をポリマーと別々に反応させることができる。二官能性スペーサは、電子伝達剤を活性区域内のポリマーに共有結合させることができ、この場合に、第1の官能基は、ポリマーとの反応性を有し(例えば、ピリジン窒素原子又はイミダゾール窒素原子を四級化する機能を有する官能基)、第2の官能基は、電子伝達剤との反応性を有する(例えば、金属イオンを配位する配位子との反応性を有する官能基)。
【0096】
同様に、活性区域内の酵素のうちの1又は2以上は、活性区域を備えるポリマーに共有結合させることができる。所与の活性区域内に複数の酵素を備える酵素システムが存在する時は、一部の実施形態では複数の酵素の全てをポリマーに共有結合させることができ、他の実施形態では複数の酵素の一部分のみをポリマーに共有結合させることができる。例えば、酵素システムを備える1又は2以上の酵素は、ポリマーに共有結合させることができ、このポリマーの中に非共有結合酵素が物理的に同伴されるように少なくとも1つの酵素をポリマーと非共有会合させることができる。所与の活性区域内のポリマーへの酵素の共有結合は、適切な架橋剤を用いて導入された架橋剤を通して発生させることができる。酵素中の遊離アミノ基との(例えば、リジン中にある遊離側鎖アミンとの)反応に適する架橋剤は、例えば、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(PEGDGE)又は他のポリエポキシド、シアヌル酸クロリド、N-ヒドロキシサクシニミド、イミドエステル類、エピクロロヒドリン、又はこれらの誘導変異体のような架橋剤を備えることができる。酵素中にある遊離カルボン酸基との反応に適する架橋剤は、例えば、カルボジイミドを含むことができる。ポリマーへの酵素の架橋は、一般的に分子間のものであるが、一部の実施形態では分子内とすることができる。特定の実施形態では、所与の活性区域内の酵素の全てをポリマーに共有結合させることができる。
【0097】
電子伝達剤及び/又は酵素は、活性区域内のポリマーと共有結合以外の手段によっても会合させることができる。一部の実施形態では、電子伝達剤及び/又は酵素は、ポリマーとイオン会合又は配位会合させることができる。例えば、荷電ポリマーは、逆荷電の電子伝達剤又は酵素とイオン会合させることができる。更に他の実施形態では、電子伝達剤及び/又は酵素は、ポリマーに結合させることなくその中に物理的に同伴させることができる。物理的に同伴させた電子伝達剤及び/又は酵素は、活性区域から実質的に浸出することなく依然として流体と適切に相互作用して検体の検出を容易にすることができる。
【0098】
活性区域内のポリマーは、それに共有結合されていないNAD+又は別の補因子の外方拡散が制限されるように選択することができる。補因子の外方拡散の制限は、十分な内方検体拡散を可能にして検出を促進しながらも、ある程度のセンサ寿命(数日から数週)を増大することができる。
【0099】
一部の実施形態では、センサの機能を改善して望ましい感度及び安定性を達成するために、本明細書に説明する検体の活性区域内に安定剤を組み込むことができる。そのような安定剤は、例えば、抗酸化剤及び/又は酵素を安定化する同伴蛋白質を備えることができる。適切な安定剤の例は、血清アルブミン(例えば、ヒト又はウシの血清アルブミン、又は他の適合するアルブミン)、カタラーゼ、及び他の酵素抗酸化剤など、及びこれらのあらゆる組合せを含むことができるがそれらに限定されない。安定剤は、共役又は非共役とすることができる。
【0100】
本発明の開示の特定の実施形態では、1又は2以上の活性区域を保護する質量輸送制限膜は、架橋ポリビニルピリジンのホモポリマー又はコポリマーを備えることができる。質量輸送制限膜の組成は、この膜が異なるタイプの活性区域を保護する場合に同じか又は異なる場合がある。膜組成が2つの異なる場所で異なる時に、膜は、2つの異なる膜ポリマーの二重層膜又は均一な混成物を備えることができ、これらの膜ポリマーの一方は、架橋ポリビニルピリジン又は架橋ポリビニルイミダゾールのホモポリマー又はコポリマーとすることができる。活性区域上に質量輸送制限膜を堆積させるのに適する技術は、例えば、スプレーコーティング、塗布、インクジェット印刷、スクリーン印刷、刷り込み、ローラーコーティング、浸漬コーティング、類似のもの、及びその組合せを含むことができる。浸漬コーティング技術は、ポリビニルピリジン及びポリビニルイミダゾールのポリマー及びコポリマーに特に望ましいとすることができる。
【0101】
ある一定の実施形態では、上記で議論した質量輸送制限膜は、ポリビニルピリジン及びポリビニルイミダゾールのポリマーのような複素環窒素基を含有する架橋ポリマーで構成される膜である。実施形態はまた、ポリウレタン、ポリエーテルウレタン、又はこれらに化学的に関連する材料で製造された膜、又はシリコーンなどで製造された膜を含む。
【0102】
一部の実施形態では、膜は、上記で議論したものを含むポリマーを双性イオン部分、非ピリジンコポリマー成分、並びに任意的に親水性又は疎水性のいずれかを有する及び/又は他の望ましい特性を有する別の部分で改質したものを原位置架橋することによって緩衝溶液(例えば、アルコール緩衝溶液)中で形成することができる。改質されたポリマーは、複素環窒素基を含有する前駆体ポリマーから製造することができる。例えば、前駆体ポリマーは、ポリビニルピリジン又はポリビニルイミダゾールとすることができる。任意的に、親水性又は疎水性の改質剤を用いて、得られる膜の着目する検体に対する透過性を「微調整」することができる。ポリ(エチレングリコール)改質剤、ヒドロキシル改質剤、又はポリヒドロキシル改質剤、及び類似の改質剤、及びこれらのあらゆる組合せのような任意的親水性改質剤を用いて、ポリマー又は得られる膜の生体適合性を強化することができる。
【0103】
一部の実施形態では、膜は、ポリ(スチレン-コ-マレイン酸アンヒドリド)、ドデシルアミン、及びポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)(2-アミノプロピルエーテル)をポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(エチレンオキシド)とポリ(プロピレンオキシド)とのコポリマー、ポリビニルピリジン、ポリビニルピリジン誘導体、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルイミダゾール誘導体、及びポリビニルピロリドン(PVP)など及びこれらのあらゆる組合せと架橋したものを含むがそれらに限定されない化合物を備えることができる。一部の実施形態では、膜は、ピリジン窒素原子の一部分が非架橋ポリ(エチレングリコール)テールによって官能化され、ピリジン窒素原子の一部分がアルキルスルホン酸基によって官能化されたポリビニルピリジン-コ-スチレンポリマーを備えることができる。他の膜化合物は、単体で又は上述のいずれかの膜化合物との組合せで4-ビニルピリジンとスチレンとアミン非含有ポリエーテルアームとの適切なコポリマーを備えることができる。
【0104】
本明細書に説明する膜化合物は、本明細書に説明する酵素に関連して上記で列挙したものを含む1又は2以上の架橋剤と更に架橋することができる。例えば、適切な架橋剤は、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(PEGDGE)、グリセロールトリグリシジルエーテル(Gly3)、ポリジメチルシロキサンジグリシジルエーテル(PDMS-DGE)、又は他のポリエポキシド、シアヌル酸クロリド、N-ヒドロキシサクシニミド、イミドエステル、エピクロロヒドリン、又はこれらの誘導変異体、及びこれらのあらゆる組合せを含むことができるがそれらに限定されない。類似の末端化学物質を有する分岐物も本発明の開示に適切である。例えば、一部の実施形態では、化学式1は、トリグリシジルグリセロールエーテル、PEDGE、及び/又はポリジメチルシロキサンジグリシジルエーテル(PDMS-DGE)と架橋することができる。
【0105】
膜は、活性区域及びそこに含まれるいずれかの追加の化合物(例えば、電子伝達剤)の上に架橋剤と改質ポリマーとのアルコール緩衝溶液を付加し、この溶液を約1日間から2日間又は他の適切な期間にわたって硬化させることによって原位置で形成することができる。架橋剤-ポリマー溶液は、膜溶液の1又は複数の小滴をセンサテールの少なくともセンサ要素の上に配置すること、センサテールを膜溶液の中に浸漬すること、膜溶液をセンサ上にスプレーすること、いずれかのサイズの層(個別又は全て包含のような)内への単体化、膜の蒸着、及び膜の粉末コーティングなどの前又は後のいずれかに膜を熱プレス又は溶着すること、及びこれらのあらゆる組合せによって活性区域の上に提供することができる。センサの遠位縁及び側縁を被覆するために、センサ電子前駆体(例えば、電極)の付加(例えば、単体化)に続いて膜材料を付加することができる。一部の実施形態では、電子前駆体の付加に続いて1又は2以上の膜を付加するために検体センサが浸漬被覆される。これに代えて、検体センサは、スロット-ダイ被覆することができると考えられ、検体センサの各側部が別々に被覆される。上述の方式で付加される膜は、質量輸送制限(すなわち、活性区域に到達する1又は2以上の検体及び/又は化合物の流束の低減又は排除)、生体適合性の強化、及び干渉物質の低減など、及びこれらのあらゆる組合せを含むがこれらに限定されない様々な機能のうちのいずれかを有することができる。
【0106】
一般的に、膜の厚みは、膜溶液の濃度、付加される膜溶液の小滴の個数、センサが膜溶液内に浸漬される回数、及びセンサ上にスプレーされる膜溶液の容積など、及びこれらの因子のあらゆる組合せによって制御される。一部の実施形態では、本明細書に説明する膜は、約0.1マイクロメートル(μm)から約1000μmの範囲であってこれらの値の間であるいずれかの値及び部分集合を包含し、上限と下限が分離可能な範囲にわたる厚みを有することができる。上述のように、膜は、1又は2以上の活性区域の上に重なることができ、一部の実施形態では、活性区域は、約0.1μmから約50μmであってこれらの値の間であるいずれかの値及び部分集合を包含し、上限と下限が分離可能な範囲にある厚みを有することができる。一部の実施形態では、望ましい厚みの活性区域及び/又は膜を達成するために、一連の小滴をそれらの直径を実質的に増大させることなく(すなわち、望ましい直径又はその範囲を維持しながら)互いの上に付加することができる。例えば、各単一小滴を付加し、次に、それを冷却又は乾燥させ、それに1又は2以上の追加の小滴を続けることができる。活性区域及び膜は、全体を通して同じ厚み又は組成とすることができるが、そうである必要はない。
【0107】
一部の実施形態では、本発明の開示の質量輸送制限層として使用するのに適する膜組成は、レベリング剤として使用するのに適する(例えば、膜組成物又は活性区域組成物の接触角度を低減するための)ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリジメチルシロキサンジグリシジルエーテル(PDMS-DGE)、及びアミノプロピル末端ポリジメチルシロキサンなど、及びこれらのあらゆる組合せを含むことができる。類似の末端化学物質を有する分岐物も本発明の開示に適している。例えば、本明細書に引用によってその開示が全体的に組み込まれている米国特許第8,983,568号明細書に見出されるようなある一定のレベリング剤を追加的に含めることができる。
【0108】
一部の事例では、膜は、活性区域との1又は2以上の結合を形成することができる。本明細書に使用する時に、用語「結合」及びその文法的変形は、化合物間が互いに会合を形成することを可能にする共有結合、イオン結合、双極-双極相互作用、水素結合、及びロンドン分散力など、及びこれらのあらゆる組合せ等であるがそれらに限定されない原子又は分子間のいずれかのタイプの相互作用を意味する。例えば、膜の原位置重合は、膜のポリマーと活性区域内のポリマーとの間の架橋を形成することができる。一部の実施形態では、活性区域への膜の架橋は、センサからの膜の剥離の発生の低減を容易にする。
【0109】
本明細書に開示する実施形態は、以下を含む:
【0110】
A.検体応答性酵素を有する活性区域がその上に配置された作用電極をレーザ分離する段階であって、得られるレーザ分離作用電極が電極凹凸を備える上記レーザ分離する段階と、電極凹凸の少なくとも一部分をレーザ平滑化する段階であって、レーザ平滑化部がレーザ分離作用電極の縁部から窪み、それによってレーザ平滑化作用電極がもたらされる上記レーザ平滑化する段階とを備える方法。
【0111】
B.検体応答性酵素を有する活性区域がその上に配置された作用電極であって、作用電極が最初にレーザ分離され、それによって電極凹凸がもたらされ、その後に作用電極から電極凹凸の少なくとも一部分を除去するために作用電極の縁部がレーザ平滑化され、それによってレーザ平滑化作用電極がもたらされる上記作用電極を備える検体センサ。
【0112】
C.検体応答性酵素を有する活性区域がその上に配置された作用電極をレーザ分離する段階であって、得られるレーザ分離作用電極が電極凹凸を備える上記レーザ分離する段階と、活性区域の少なくとも一部分の上に膜を配置する段階と、電極凹凸の少なくとも一部分をレーザ平滑化する段階であって、レーザ平滑化部がレーザ分離作用電極の縁部から窪み、それによってレーザ平滑化作用電極がもたらされる上記レーザ平滑化する段階とを備える方法。
【0113】
D.検体応答性酵素を備える活性区域がその上に配置されて電極凹凸がレーザ平滑化されたレーザ平滑化作用電極を備える検体センサ。
【0114】
E.検体応答性酵素を備える活性区域がその上に配置されて電極凹凸がレーザ平滑化されたレーザ平滑化作用電極を備える検体センサを体液に露出する段階を備える方法。
【0115】
F.検体応答性酵素を備える活性区域がその上に配置された作用電極と、活性区域を備える作用電極の少なくとも一部分の上に配置された膜と、検体センサの中に組み込まれた干渉物質-反応物質種とを備える検体センサ。
【0116】
G.検体応答性酵素を備える活性区域がその上に配置された作用電極と、活性区域を備える作用電極の少なくとも一部分の上に配置された膜と、検体センサの中に組み込まれた干渉物質-反応物質種とを備える検体センサを体液に露出する段階を備える方法。
【0117】
H.検体応答性酵素を備える活性区域がその上に配置された作用電極と、(1)作用電極に対して対面関係に位置決めされて作用電極と空間的にオフセットされた洗浄電極、又は(2)作用電極の上方に位置決めされて活性区域への着目検体の拡散に適するように着目検体に対する透過性を有する洗浄電極とを備える検体センサ。
【0118】
I.検体応答性酵素を備える活性区域がその上に配置された作用電極と、(1)作用電極に対して対面関係に位置決めされて作用電極と空間的にオフセットされた洗浄電極、又は(2)作用電極の上方に位置決めされて活性区域への着目検体の拡散に適するように着目検体に対する透過性を有する洗浄電極とを備える検体センサを体液に露出する段階を備える方法。
【0119】
J.検体応答性酵素を備える活性区域がその上に配置された作用電極と、作用電極に対して対面関係に位置決めされて作用電極と空間的にオフセットされた洗浄電極とを備える検体センサ。
【0120】
K.検体応答性酵素を備える活性区域がその上に配置された作用電極と、作用電極に対して対面関係に位置決めされて作用電極と空間的にオフセットされた洗浄電極とを備える検体センサを生体液に露出する段階を備える方法。
【0121】
L.検体応答性酵素を備える活性区域がその上に配置された作用電極と、作用電極の上方に位置決めされ、活性区域への着目検体の拡散に適するように着目検体に対して透過性を有する透過性洗浄電極とを備える検体センサ。
【0122】
M.検体応答性酵素を備える活性区域がその上に配置された作用電極と、作用電極の上方に位置決めされ、活性区域への着目検体の拡散に適するように着目検体に対して透過性を有する透過性洗浄電極とを備える検体センサを生体液に露出する段階を備える方法。
【0123】
実施形態Aは、以下の追加の要素のうちの1又は2以上をあらゆる組合せで有することができる。
【0124】
要素A1:レーザ平滑化作用電極は、平滑化されていない作用電極と比較して干渉物質の干渉信号の低減を示す。
【0125】
要素A2:レーザ平滑化作用電極は、平滑化されていない作用電極と比較して干渉物質の干渉信号の低減を示し、干渉物質の干渉信号低減は、約20%よりも大きい。
【0126】
要素A3:レーザ平滑化作用電極は、平滑化されていない作用電極と比較して干渉物質の干渉信号の低減を示し、干渉物質の干渉信号低減は、約20%から約70%の範囲であり、これらの間のあらゆる値及び部分集合を包含し、かつ上限と下限が分離可能である。
【0127】
要素A4:レーザ平滑化作用電極は、平滑化されていない作用電極と比較して干渉物質の干渉信号の低減を示し、干渉物質はアスコルビン酸である。
【0128】
要素A5:電極凹凸の全面積のうちの少なくとも約5%を除去する段階を更に備える。
【0129】
要素A6:電極凹凸の全面積のうちの約5%から約75%の範囲の電極凹凸面積を除去する段階を更に備え、これらの間のあらゆる値及び部分集合を包含し、かつ上限と下限が分離可能である。
【0130】
要素A7:レーザ平滑化は、複数の1回通過レーザ平滑化切断を備える。
【0131】
要素A8:レーザ平滑化は、複数の1回通過レーザ平滑化切断を備え、複数の1回通過レーザ平滑化切断は、レーザ分離作用電極の縁部に対して直角のもの又はレーザ分離作用電極の縁部に対して斜角のもののうちの少なくとも一方である。
【0132】
要素A9:電極凹凸は、1μmから約75μmの範囲の幅を有し、これらの間のあらゆる値及び部分集合を包含し、かつ上限と下限が分離可能である。
【0133】
要素A10:電極凹凸は、約1μmから約50μmまでの高さを有し、これらの間のあらゆる値及び部分集合を包含し、かつ上限と下限が分離可能である。
【0134】
要素A11:活性区域は、複数の不連続活性区域又は単一連続活性区域から構成される。
【0135】
要素A12:活性区域は圧縮される。
【0136】
要素A13:検体応答性酵素は、グルコース応答性酵素である。
【0137】
要素A14:活性区域の少なくとも一部分の上に膜が配置される。
【0138】
非限定例としてAに適用可能な例示的組合せは、AとA1~A14のうちのいずれか1又は2以上又は全てとのあらゆる組合せを含むがこれらに限定されない。
【0139】
実施形態Bは、以下の追加の要素のうちの1又は2以上をあらゆる組合せで有することができる。
【0140】
要素B1:レーザ平滑化作用電極は、平滑化されていない作用電極と比較して干渉物質の干渉信号の低減を示す。
【0141】
要素B2:レーザ平滑化作用電極は、平滑化されていない作用電極と比較して干渉物質の干渉信号の低減を示し、干渉物質の干渉信号低減は、約20%よりも大きい。
【0142】
要素B3:レーザ平滑化作用電極は、平滑化されていない作用電極と比較して干渉物質の干渉信号の低減を示し、干渉物質の干渉信号低減は、約20%から約70%の範囲であり、これらの間のあらゆる値及び部分集合を包含し、かつ上限と下限が分離可能である。
【0143】
要素B4:レーザ平滑化作用電極は、平滑化されていない作用電極と比較して干渉物質の干渉信号の低減を示し、干渉物質はアスコルビン酸である。
【0144】
要素B5:電極凹凸の全面積のうちの少なくとも約5%が除去される。
【0145】
要素B6:電極凹凸の全面積のうちの約5%から約75%の範囲の電極凹凸面積が除去され、これらの間のあらゆる値及び部分集合を包含し、かつ上限と下限が分離可能である。
【0146】
要素B7:電極凹凸は、1μmから約75μmの範囲の幅を有し、これらの間のあらゆる値及び部分集合を包含し、かつ上限と下限が分離可能である。
【0147】
要素B8:電極凹凸は、約1μmから約50μmまでの高さを有し、これらの間のあらゆる値及び部分集合を包含し、かつ上限と下限が分離可能である。
【0148】
要素B9:活性区域は、複数の不連続活性区域又は単一連続活性区域から構成される。
【0149】
要素B10:活性区域は圧縮される。
【0150】
要素B11:検体応答性酵素は、グルコース応答性酵素である。
【0151】
要素B12:活性区域の少なくとも一部分の上に膜が配置される。
【0152】
非限定例としてBに適用可能な例示的組合せは、BとB1~B12のうちのいずれか1又は2以上又は全てとのあらゆる組合せを含むがこれらに限定されない。
【0153】
実施形態Cは、以下の追加の要素のうちの1又は2以上をあらゆる組合せで有することができる。
【0154】
要素C1:レーザ平滑化作用電極は、平滑化されていない作用電極と比較して干渉物質の干渉信号の低減を示す。
【0155】
要素C2:レーザ平滑化作用電極は、平滑化されていない作用電極と比較して干渉物質の干渉信号の低減を示し、干渉物質の干渉信号低減は、約20%よりも大きい。
【0156】
要素C3:レーザ平滑化作用電極は、平滑化されていない作用電極と比較して干渉物質の干渉信号の低減を示し、干渉物質の干渉信号低減は、約20%から約70%の範囲であり、これらの間のあらゆる値及び部分集合を包含し、かつ上限と下限が分離可能である。
【0157】
要素C4:レーザ平滑化作用電極は、平滑化されていない作用電極と比較して干渉物質の干渉信号の低減を示し、干渉物質はアスコルビン酸である。
【0158】
要素C5:電極凹凸の全面積のうちの少なくとも約5%を除去する段階を更に備える。
【0159】
要素C6:電極凹凸の全面積のうちの約5%から約75%の範囲の電極凹凸面積を除去する段階を更に備え、これらの間のあらゆる値及び部分集合を包含し、かつ上限と下限が分離可能である。
【0160】
要素C7:レーザ平滑化は、複数の1回通過レーザ平滑化切断を備える。
【0161】
要素C8:レーザ平滑化は、複数の1回通過レーザ平滑化切断を備え、複数の1回通過レーザ平滑化切断は、レーザ分離作用電極の縁部に対して直角のもの又はレーザ分離作用電極の縁部に対して斜角のもののうちの少なくとも一方である。
【0162】
要素C9:電極凹凸は、1μmから約75μmの範囲の幅を有し、これらの間のあらゆる値及び部分集合を包含し、かつ上限と下限が分離可能である。
【0163】
要素C10:電極凹凸は、約1μmから約50μmまでの高さを有し、これらの間のあらゆる値及び部分集合を包含し、かつ上限と下限が分離可能である。
【0164】
要素C11:活性区域は、複数の不連続活性区域又は単一連続活性区域から構成される。
【0165】
要素C12:活性区域は圧縮される。
【0166】
要素C13:検体応答性酵素は、グルコース応答性酵素である。
【0167】
非限定例としてCに適用可能な例示的組合せは、CとC1~C13のうちのいずれか1又は2以上又は全てとのあらゆる組合せを含むがこれらに限定されない。
【0168】
実施形態D及びEは、以下の追加の要素のうちの1又は2以上をあらゆる組合せで有することができる。
【0169】
要素D/E1:レーザ平滑化作用電極は、平滑化されていない作用電極と比較して干渉物質の干渉信号の低減を示す。
【0170】
要素D/E2:レーザ平滑化作用電極は、平滑化されていない作用電極と比較して干渉物質の干渉信号の低減を示し、干渉物質の干渉信号低減は、約20%よりも大きい。
【0171】
要素D/E3:レーザ平滑化作用電極は、平滑化されていない作用電極と比較して干渉物質の干渉信号の低減を示し、干渉物質の干渉信号低減は、約20%から約70%の範囲であり、これらの間のあらゆる値及び部分集合を包含し、かつ上限と下限が分離可能である。
【0172】
要素D/E4:レーザ平滑化作用電極は、平滑化されていない作用電極と比較して干渉物質の干渉信号の低減を示し、干渉物質はアスコルビン酸である。
【0173】
要素D/E5:電極凹凸の全面積のうちの少なくとも約5%が除去される。
【0174】
要素D/E6:電極凹凸の全面積のうちの約5%から約75%の範囲の電極凹凸面積が除去され、これらの間のあらゆる値及び部分集合を包含し、かつ上限と下限が分離可能である。
【0175】
要素D/E7:電極凹凸は、1μmから約75μmの範囲の幅を有し、これらの間のあらゆる値及び部分集合を包含し、かつ上限と下限が分離可能である。
【0176】
要素D/E8:電極凹凸は、約1μmから約50μmまでの高さを有し、これらの間のあらゆる値及び部分集合を包含し、かつ上限と下限が分離可能である。
【0177】
要素D/E9:活性区域は、複数の不連続活性区域又は単一連続活性区域から構成される。
【0178】
要素D/E10:活性区域は圧縮される。
【0179】
要素D/E11:検体応答性酵素は、グルコース応答性酵素である。
【0180】
要素D/E12:活性区域の少なくとも一部分の上に膜が配置される。
【0181】
非限定例としてD/Eに適用可能な例示的組合せは、D/EとD/E1~D/E12のうちのいずれか1又は2以上又は全てとのあらゆる組合せを含むがこれらに限定されない。
【0182】
実施形態HからMは、下記で説明する洗浄電極の構成に依存して以下の追加の要素のうちの1又は2以上をあらゆる組合せで有することができる。
【0183】
要素H-M1:洗浄電極は、作用電極に対して対面関係に位置決めされ、作用電極と洗浄電極は空間的にオフセットされ、オフセットは、約1μmから約200μmの範囲の薄層であり、これらの間のあらゆる値及び部分集合を包含し、かつ上限と下限が分離可能である。
【0184】
要素H-M2:洗浄電極は、約200μmから約8000μmまでの幅を有し、これらの間のあらゆる値及び部分集合を包含し、かつ上限と下限が分離可能である。
【0185】
要素H-M3:洗浄電極は、作用電極に対して対面関係に位置決めされ、作用電極と洗浄電極は空間的にオフセットされ、作用電極に対する洗浄電極の幅は、約2:1から約50:1の範囲であり、これらの間のあらゆる値及び部分集合を包含し、かつ上限と下限が分離可能である。
【0186】
要素H-M4:洗浄電極は、約-2000mVから約+2000mVの範囲の電位を有し、これらの間のあらゆる値及び部分集合を包含し、かつ上限と下限が分離可能である。
【0187】
要素H-M5:洗浄電極は、作用電極の上方に位置決めされて活性区域への着目検体の拡散に適するように着目検体に対する透過性を有し、着目検体はアスコルビン酸である。
【0188】
要素H-M6:洗浄電極は、作用電極の上方に位置決めされ、かつ活性区域への着目検体の拡散に適するように着目検体に対する透過性を有し、洗浄電極は、カーボンナノチューブ材料から構成される。
【0189】
要素H-M7:洗浄電極は、作用電極の上方に位置決めされ、かつ活性区域への着目検体の拡散に適するように着目検体に対する透過性を有し、洗浄電極は、カーボンナノチューブ材料が含浸したPEDOT:PSSから構成される。
【0190】
要素H-M8:洗浄電極は、作用電極の上方に位置決めされ、かつ活性区域への着目検体の拡散に適するように着目検体に対する透過性を有し、洗浄電極は、電子伝達剤で含浸したものである。
【0191】
要素H-M9:洗浄電極は、作用電極の上方に位置決めされ、かつ活性区域への着目検体の拡散に適するように着目検体に対する透過性を有し、洗浄電極は、約0.5μmから約100μmまでの厚みを有し、これらの間のあらゆる値及び部分集合を包含し、かつ上限と下限が分離可能である。
【0192】
非限定例としてH-Mに適用可能な例示的組合せは、洗浄電極構成(すなわち、空間オフセット又は透過性)に基づいてH-MとH-M1からH-M9までのうちのいずれか1又は2以上又は全てとのあらゆる組合せを含むがこれらに限定されない。
【0193】
本明細書に説明する実施形態のより明快な理解を容易にするために、以下の様々な代表的な実施形態の実施例を提供する。以下の実施例は、本発明の範囲を限定する又は定めるものと読解すべきでは決してない。
【実施例1】
【0194】
この実施例では、
図13Aに示す例示的レーザ分離作用電極に対してレーザ平滑化を実行した。
図13Aは、その上に配置された活性区域を備えない。
図13Bは、識別された深さプロファイルに沿って評価された
図13Aの分離された作用電極の一部分の3D光学プロファイルを例示している。この3D光学プロファイルは、ZEGAGE(登録商標)3D Optical Profiler、ZYGOOR Corporation(米国コネチカット州ミドルフィールド)を用いて取得したものである。
図13Bに示すように、分離されたセンサテールの縁部にある電極凹凸は、約1μmから約5μmまでの高さを示す。
【0195】
炭素凹凸の縁部に配置されて電極の中線に向けて約5μmから約20μm、例えば、約5μmから約10μmまでの徐々に離間させた10%レーザ電力の3本の1回通過レーザ線を用いてレーザ平滑化を実行した。本明細書に説明する実施例では、UVレーザを用いたが、レーザ平滑化を実行するのに本発明の開示の範囲から逸脱することなくいずれのレーザも使用することができることは認められるものとする。
図13Cは、センサテールの作用電極の斜角縁部を示す平滑化されたセンサテールの写真である。
図13Dは、電極凹凸が除去されたことを示す識別されたプロファイル線に沿う3D光学プロファイルである(上述のように取得したもの)。
【実施例2】
【0196】
図14Aを参照すると、この実施例では、活性区域1402がその上に分注されたレーザ平滑化された炭素作用電極1400が実施例1に従って調製された。活性区域1402を備える非平滑化炭素電極を示していないが、以下で「非平滑化、分注」電極と呼ぶ。
図14Bは、平滑化の結果として僅かな電極凹凸のみを示し、識別されたプロファイル線に沿う3D光学プロファイルである(上述のように取得したもの)。
【実施例3】
【0197】
一対差異試験を実行した。
図13Aの非平滑化電極と活性区域を持たない
図13Cの平滑化電極(それぞれ「非平滑化、分注なし」と「平滑化、分注なし」)とが実施例2の「非平滑化、分注」電極と共に精査され、複数の感知スポットを有する
図14Aの平滑化電極が、37℃で100mM PBS内で50mg/dLのグルコースと2mg/dLのアスコルビン酸とで別個に評価された。結果を下記の表1に提供しており、
図15にグラフ表示している。
表1
*背景補正されたもの、
**対照に対してレーザ平滑化されたもの
【0198】
図示のように、一対差異試験は、レーザ平滑化された電極の非平滑化対応物と比較して約25%から約30%の2mg/dLnoアスコルビン酸の低減を例証した。
【実施例4】
【0199】
以下の調製されたレーザ分離作用電極に対して一対差異試験を実行した。非平滑化「対照」作用電極は、複数の感知スポットの活性区域を備えるものであった。「圧縮された」として説明する電極は、同じ凝集度の活性区域(圧縮活性区域)を含むが、複数の感知スポットが互いに近い及び/又は電極の先端に近い。例えば、各不連続活性区域の間のピッチ(隣接する感知スポット間の距離)は、約50μmから約800μm、例えば、約50μmから約500μmとすることができ、これらの間のあらゆる値及び部分集合を包含し、かつ上限と下限が分離可能である。本明細書に使用する時に、用語「ピッチ」及びその文法的変形は、各隣接感知スポットの中心から測定した活性区域感知層内で隣接する感知スポット間隔を意味する。一般的に、最も遠位にある活性区域は、体液内で最も遠位に位置付けされた作用電極の先端(センサテールの先端に等しい場合がある)から少なくとも約200μmから300μmまで(当該活性区域の感知中心から測定して)の場所に位置付けられ、これらの間のあらゆる値及び部分集合を包含し、かつ上限と下限が分離可能である。
【0200】
圧縮されたか否かに関わらず、全てのサンプルに対する検体応答性酵素の全てが同じであった。レーザ平滑化は、各々が最初の非平滑化電極の縁部からの特定の距離にある3つの別個の1回通過レーザ線(「平滑化スキーム」)に関して説明する。例えば、「20-40-60」は、第1の1回通過レーザ線が非平滑化電極の縁部から20μmの場所にあり、第2の1回通過レーザ線が非平滑化電極の縁部から40μmの場所にあり、第3の1回通過レーザ線が非平滑化電極の縁部から60μmの場所にあることを意味する。
表2
【0201】
一部の事例では、表2の電極16A~16Eは、下記の表3に示す厚みを有する質量搬送制限膜で被覆される。一対差異試験(平均でn=6/条件)は、37℃で100mM PBS内で50mg/dLのグルコース内と2mg/dLのアスコルビン酸内とで別個に実行した。結果を下記の表3に提供する。
表3
【0202】
表3に示すように、この一対差異試験は、レーザ平滑化された電極が非平滑化対応物と比較して約20%よりも有意なアスコルビン酸信号干渉の低減を明らかにすることができることを例証した。従って、本発明の開示の実施形態は、少なくとも、約20%よりも大きく、例えば、検体センサの構成に依存して100%までとすることができる範囲又は例えば約20%から約70%の範囲又はそれよりも大きく、好ましくは少なくとも約40%又はそれよりも大きく、少なくとも約45%又はそれよりも大きく、又は少なくとも約50%のアスコルビン酸のような干渉信号の低減を可能にし、これらの間のあらゆる値及び部分集合を包含し、かつ上限と下限が分離可能である。更に、結果は、比較的小さいレーザ平滑化量であっても有効である場合があることを示している。
【実施例5】
【0203】
この実施例では、作用電極での干渉信号を排除するか又は低減するために検体センサの中に酵素的干渉物質-反応物質種を組み込む有効性が評価された。アスコルビン酸と反応するための干渉物質-反応物質層を有するグルコースセンサ1700を
図17に示すように与えた。6つの不連続感知スポットの形態にあり、グルコースオキシダーゼ感知化学物質を備えるグルコース活性区域感知層1704は、炭素作用電極1702(基板(図示せず)の上に配置された炭素電極)の上に被覆されている。作用電極1702全体の上に拡散制限膜1706を被覆し、感知スポット1702の各々を覆った。拡散制限膜1706の上に50nLの干渉物質-反応物質種層1708を被覆し、感知層1704及びいずれの余剰(露出)炭素作用電極1702も覆った。干渉物質-反応物質種層1708は、PVIポリマー母材(~9mg/ml)中のアスコルビン酸オキシダーゼ(~25mg/ml)と、PEDGE-400架橋剤(~6mg/ml)と、アルブミン安定剤(~25mg/ml)とを備えるものであった(溶液は、10mM MES緩衝液、pH5.5内で作られた)。
【0204】
日本国大阪に本社を置くTOYOBOから各々が利用可能なASO-301及びASO-311という2タイプのアスコルビン酸オキシダーゼが評価された。架橋した外側膜1710の薄層が、干渉物質-反応物質種層1708全体の上に被覆された。これらのセンサは、使用するアスコルビン酸オキシダーゼに依存して「GOx/膜/架橋剤/AscOx301」及び「GOx/膜/架橋剤/AscOx311」と呼ぶ。
【0205】
これらのセンサは、~30℃の温度、~7.5のpHの100mM PBS内で+40mVの作用電位で2つの対照と共に4通りでアスコルビン酸内とグルコース内とで別個に試験された。第1の対照(「Gox/膜対照」)は、炭素作用電極1702と、感知スポット1703と、拡散制限膜1704とを備えるものであった(干渉物質-反応物質種層1708と外側膜層とは不在であった)。第2の対照(「GOx/膜/架橋剤」)は、炭素作用電極1702と、感知スポット1704と、拡散制限膜1706と、その上に被覆された外側膜層1710とを備えるものであった(干渉物質-反応物質種層1708は不在であった)。これらのセンサを
図18に示すようにアスコルビン酸内で較正し、更に
図19に示すように30mMグルコース内で較正した。
【0206】
図示のように、干渉物質-反応物質層(アスコルビン酸オキシダーゼを備える)を有するセンサは、PVP膜を有する場合と持たない場合の両方の対照センサと比較してアスコルビン酸の追加に対して非常に僅かな応答しか示さなかった。更に、干渉物質-反応物質層を備えることは、PVP膜を有する場合と持たない場合の両方の対照センサと比較してグルコースに対する応答に対して判別可能な影響を持たなかった。更に、干渉物質-反応物質層がグルコース感知に影響を及ぼした場合であっても、グルコースに対する線形性及び安定性が保持される限り、いずれのそのような影響も簡単に対処することができた。従って、酵素的干渉物質-反応物質種層の組み込みは、干渉物質に起因する作用電極での信号を排除するか又は低減する実際的な方法である。
【実施例6】
【0207】
この実施例では、作用電極での干渉信号を排除するか又は低減するために検体センサの中に金属酸化物干渉物質-反応物質種を組み込む有効性が評価された。アスコルビン酸と反応するための干渉物質-反応物質層を有するグルコースセンサを
図17に示すように与えた。グルコース活性区域感知層1702を炭素作用電極1702の上に被覆し、炭素電極を基板(図示せず)の上に配置した。活性区域感知層1702は、グルコースオキシダーゼ感知化学物質を備える6つの不連続感知スポットの形態にあった。活性区域は、~0.1mm
2の全面積を有した。感知スポットを備える作用電極は、MnO
2(米国ミズーリ州セントルイスに本社を置くSIGMA-ALDRICHから利用可能なカタログ番号217646)を備える対照ポリマー組成又は実験ポリマー組成のいずれかを備える拡散制限膜中に浸漬された。これらの対照拡散制限膜及び実験拡散制限膜を硬化させた。
【0208】
これらのセンサは、~30℃の温度の100mM PBS内で2つの対照と共に4通りで1mg/mlアスコルビン酸内と5mMグルコース内とで別個にビーカー試験された。センサ電流の結果を表5に示している。
表5
【0209】
図示のように、拡散制限膜の中に干渉物質-反応物質種を備える実験センサは、低いアスコルビン酸干渉を示している。従って、金属酸化物干渉物質-反応物質種の組み込みは、干渉物質に起因する作用電極での信号を排除するか又は低減する実際的な方法である。
【実施例7】
【0210】
この実施例では、作用電極での干渉信号を排除するか又は低減するために検体センサの中に洗浄電極を組み込む有効性が評価された。作用電極にグルコースオキシダーゼ化学物質のグルコース感知活性区域を付加することによってグルコースセンサを与えた。作用電極は、幅が約200μmであった。接着層を付加して約50μmの薄層を生成することによって洗浄電極を組み込んだ。洗浄電極は、幅が約2500μmであった。センサの中には拡散制限膜を組み込まなかった。
【0211】
このセンサは、~30℃の温度の100mM PBS内の1mMグルコース内でビーカー試験された。
図20は、作用電極2002と洗浄電極2004の両方に関する電流を例示している。図示のように、拡散制限膜が不在であっても、2週間余にわたって、作用電極2002は、実質的に安定したグルコース応答を維持し、洗浄電極2004は、グルコース感知化学物質を備えないことで予想される通りにグルコースに対する応答を示さない。従って、洗浄電極を用いて膜の拡散制限機能を達成することができる。
【実施例8】
【0212】
この実施例では、作用電極での干渉信号を排除するか又は低減するために検体センサの中に洗浄電極を組み込む有効性が評価された。実施例7の洗浄電極を備えるグルコースセンサは、グルコース及びアスコルビン酸の存在下で電位を洗浄電極に印加して又はそこから除去して試験された。作用電極又は洗浄電極のいずれに電位を印加した時も、電位は+40mVであった。
図21Aに示すように、このセンサを~30℃の温度の100mM PBS内でビーカー試験した。約24時間後に、2102で250μMのグルコースを追加し、作用電極機能2104と洗浄電極機能2106とを観察した。図示のように、作用電極2104は、グルコースを検出した時にピークに達して定常状態になり、洗浄電極2106は、実質的に影響を受けないままに留まった。約25時間後に、2108で2mg/dL(~115μM)のアスコルビン酸を追加し、図示のように、作用電極2104の応答は定常のままに留まり(グルコースを検出して)、洗浄電極2106の応答電流は、瞬時に増大した(アスコルビン酸を検出して2108)。その後に、洗浄電極2106の電位を停止し(2110とラベル付けしている)、再度作動状態に戻し(2110とラベル付けしている)、グルコース信号のこれらのアクションの間の同等の増大は、アスコルビン酸2102に帰することができる。
図21Bは、約18日後のセンサを示し、少なくともこの期間にわたるセンサの安定性を例証しており、2114で2mg/mlのアスコルビン酸を追加し、2116で洗浄電極2106を再度停止した。従って、作用電極にアクセスするアスコルビン酸を除去するのに洗浄電極が有効であることが明らかである。
【実施例9】
【0213】
この実施例では、作用電極での干渉信号を排除するか又は低減するために検体センサの中に洗浄電極を組み込む有効性が評価された。洗浄電極を備えて各々が異なるカーボンインクタイプと異なるスクリーン印刷場所とを有する2つのグルコースセンサが実施例7に従って調製された。Steven Label Corporation(米国カリフォルニア州サンタフェバネズ)による洗浄電極(
図22に「C1」とラベル付けしている太線)と、社内の洗浄電極(
図22に「C2」とラベル付けしている細線)とを与えた。市販のカーボンインク組成は変化する(例えば、様々な炭素粒子、様々な結合剤、及び/又は様々な炭素対結合剤比)。更に、例えば、独自の印刷過程、温度、及び硬化時間などに起因してスクリーン印刷の場所も異なる。これら2つの異なるセンサは、~30℃の温度の100mM PBS内で約0.8時間の第2の電流スパイクに対応する場所で追加された2.0mg/dLアスコルビン酸内でビーカー試験された。mVを単位とする様々な印加電位(+40、+100、+200、+300、及び+400、並びに電位が印加されない「オフ」とラベル付けしている)に応答する洗浄電極の各々のセンサ電流を
図22に示しており、洗浄電極の組成材料、場所、及び洗浄電極に印加される電位が洗浄電極の洗浄効率に影響を及ぼす可能性があることは明らかである。従って、洗浄電極は、体液中の着目干渉物質及び/又はその濃度など及びこれらのあらゆる組合せに鑑みて最適化することができる。
【実施例10】
【0214】
この実施例では、作用電極での干渉信号を排除するか又は低減するために検体センサの中に検体透過性洗浄電極を組み込む有効性が評価された。カーボンナノチューブ検体透過性電極を備えるグルコースセンサ2300を
図23に示すように与えた。周囲井戸2306がセンサの追加の構成要素の堆積溶液を試験することを可能にする状態で、作用電極2304をプラスチック基板2302の上にスクリーン印刷した。井戸2306は、
図23の「井戸境界」部分2306a、2306bとして表している。この井戸構成及びその変形は、上述した本発明の開示の実施形態で使用することができる。ケトン感知化学物質の活性区域2308は、井戸2306の中にかつ作用電極2304の上に(それとの接触状態で)自動液体分注された。この実施例はケトン感知化学物質を利用したが、本発明の開示の範囲から逸脱することなくグルコース、ラクタート、クレアチニン、及びエタノールなど、及びこれらの複数の組合せを本明細書に説明するように使用することができることは認められるものとする。活性区域2308は、作用電極の一部分を覆ったが、活性区域2308の左及び右に示す余剰(露出)作用電極2304aが存在したままに残った。その後に、最初の拡散制限膜2310a(例えば、10Q5又は本明細書に説明するような他の膜ポリマーのもの)が、井戸内で活性区域2308及び余剰作用電極部分2304aの上に堆積(例えば、手動堆積又は自動堆積)された。カーボンナノチューブ検体透過性洗浄電極2311を井戸内で最初の膜2310aの上に堆積し、それに第2の拡散制限コーティング(例えば、本明細書に説明するような膜ポリマー)中へのセンサ全体の浸漬コーティング(又は他の堆積方式)を続けた。最初の及び第2の膜コーティング2310a及び2310bは、それぞれ、本発明の開示の範囲から逸脱することなく、少なくとも検出されている検体に依存して同じか又は異なる組成とすることができる。
【0215】
図24に示すように、
図23に示して上述したカーボンナノチューブ検体透過性洗浄電極を備えるケトンセンサが、100mM PBS内でビーカー試験された。約1時間(~1.3時間)後に、5mg/dLのアスコルビン酸を追加し、作用電極2404(太線)と洗浄電極2406(細線)とを観察した。図示のように、アスコルビン酸の追加は、作用電極からの干渉信号をもたらした。+40mVの電位を洗浄電極に印加した後に、作用電極の干渉信号は、~85%だけ低下した。洗浄電極が切断されてベース電極上の干渉信号は以前のレベルまで戻った。洗浄電極を再度接続し、印加電位を+40mV、+200mV、及び+600mVに調節し、より高い電位では洗浄効率の控えめな改善があった。図示していないが、ケトンに加えて、グルコース及びベータヒドロキシブチラートを含む様々な他の着目検体が洗浄電極を通って容易に拡散し、下層の作用電極で信号を発生させることが観察されている。
【0216】
従って、本発明の開示は、様々な検体を生体内でモニタするための検体センサを提供する。検体センサは、干渉物質種から得られる信号に対処するための強化を特徴とすることができる。一部の検体センサは、その上に活性区域が配置されて電極凹凸がレーザ平滑化された作用電極を備えることができる。一部の検体センサは、そこに組み込まれた干渉物質-反応物質種を備えることができる。一部の検体センサは、干渉物質洗浄電極を備えることができる。これに加えて、これらの強化の組合せが使用される場合がある。
【0217】
他に示さない限り、本明細書及び関連する特許請求の範囲内で数量などを表す全ての数字は、全ての事例では用語「約」によって修飾されるものと理解されるものとする。従って、反意を示さない限り、本明細書及び特許請求の範囲に言及する数値パラメータは、本発明の実施形態によって取得することが求められる望ましい特性に依存して異なる場合がある近似値である。最低限でもかつ特許請求の範囲に対する均等論の適用を限定しようとする試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも報告された有意桁の数字を踏まえて通常の丸め技術を適用することによって解釈しなければならない。
【0218】
様々な特徴を組み込む1又は2以上の例示的実施形態を本明細書に提供する。本明細書では、明瞭化の目的で、物理的実施の全ての特徴を説明又は図示するわけではない。本発明の実施形態を組み込む物理的な実施形態の開発において、実施毎にかつ時々に異なるシステム関連、商取引関連、政府関連、及び他の制約条件の遵守のような開発者の目標を達成するために、数々の実施独特の決定を行わなければならないことは認められるものとする。開発者の労力は時間を消費する可能性があると考えられるが、それにも関わらず、そのような労力は、本発明の開示の利益を有する当業者にとってはルーチン作業であると考えられる。
【0219】
本明細書では様々なシステム、ツール、及び方法を様々な構成要素又は段階を「備える」という用語で説明するが、システム、ツール、及び方法はまた、様々な構成要素及び段階で「基本的に構成する」又は「構成する」ことができる。
【0220】
本明細書に使用する時に、一連の項目に続く「のうちの少なくとも1つ」という表現は、これらの項目のうちのいずれかを分離するための「及び」又は「又は」という用語と共に列挙事項の各構成単位(すなわち、各項目)ではなく列挙事項を全体的に修飾する。「のうちの少なくとも1つ」という表現は、項目のうちのいずれかのもののうちの少なくとも1つ、項目のあらゆる組合せのうちの少なくとも1つ、及び/又は項目の各々のうちの少なくとも1つを含む意味を許容する。一例として、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つ」又は「A、B、又はCのうちの少なくとも1つ」という表現の各々は、Aのみ、Bのみ、又はCのみ、AとBとCとのあらゆる組合せ、及び/又はA、B、及びCの各々のうちの少なくとも1つを意味する。
【0221】
従って、本発明の開示のシステム、ツール、及び方法は、言及した目的及び利点、及びこれらのシステム、ツール、及び方法に内在する目的及び利点を獲得するように十分に適応される。本発明の開示の教示は、その利益を有する当業者に対して明らかに異なるが均等な方式で修正及び実施することができるので、上記に開示した特定の実施形態は例示的ものに過ぎない。更に、下記の特許請求の範囲に説明するもの以外に本明細書に示す構造又は設計の詳細へのいずれの限定も意図していない。従って、上記に開示した特定の例示的実施形態を変更すること、組み合わせること、又は修正することができ、全てのそのような変形は、本発明の開示内であると見なされることは明らかである。本明細書に例示的に開示するシステム、ツール、及び方法は、本明細書に具体的に開示しないいずれの要素及び/又は本明細書に開示するいずれの任意的な要素もなしに適切に実施することができる。システム、ツール、及び方法を様々な構成要素又は段階を「備える」、「含有する」、又は「含む」という用語で説明するが、システム、ツール、及び方法は、様々な構成要素及び段階で「基本的に構成する」又は「構成する」ことができる。上記に開示した全ての数字及び範囲は、一部の量だけ異なる場合がある。下限と上限を有する数値範囲を開示する時は必ず当該範囲に収まるあらゆる数字及び含まれるあらゆる範囲を具体的に開示している。特に、本明細書に開示する全ての値範囲(「約aから約bまで」又は同等に「近似的にaからbまで」又は同等に「近似的にa-b」の形態の)は、広い当該値範囲内に包含される全ての数字及び範囲を列挙すると理解されるものとする。同様に、特許請求の範囲での用語は、本特許権者が他に明示的かつ明確に定めない限り、当該用語の平易な通常の意味を有する。更に、本明細書では、特許請求の範囲に使用する複数形ではない名詞は、特許請求の範囲が導入する1又は1よりも多い要素を意味するものとして定める。本明細書での言葉又は用語の使用と引用によって本明細書に組み込まれる場合がある1又は2以上の特許文献又は他の文献での言葉又は用語の使用とでいずれかの矛盾があった場合は、本明細書と合致する定義が使用されなければならない。
【国際調査報告】