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特表2023-534663ビス-フェニルフェノキシ金属-配位子錯体のためのヒドロカルビル修飾メチルアルミノオキサン共触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-10
(54)【発明の名称】ビス-フェニルフェノキシ金属-配位子錯体のためのヒドロカルビル修飾メチルアルミノオキサン共触媒
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/64 20060101AFI20230803BHJP
【FI】
C08F4/64
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501652
(86)(22)【出願日】2021-02-05
(85)【翻訳文提出日】2023-02-09
(86)【国際出願番号】 US2021016820
(87)【国際公開番号】W WO2022015370
(87)【国際公開日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】63/053,354
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】フォンテーヌ、フィリップ ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ピアソン、デイビッド エム.
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ、ヒエン キュー.
(72)【発明者】
【氏名】デローブ、ジョナサン イー.
(72)【発明者】
【氏名】ウアクハ、ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】ベイリー、レット エイ.
(72)【発明者】
【氏名】コン、ロンジュアン
【テーマコード(参考)】
4J128
【Fターム(参考)】
4J128AA01
4J128AB00
4J128AC01
4J128AC27
4J128BA00A
4J128BA01B
4J128BB00A
4J128BB01B
4J128BC25B
4J128EA01
4J128EB02
4J128EB07
4J128EC02
4J128FA09
4J128GA01
4J128GA06
4J128GA07
4J128GA08
(57)【要約】
オレフィンモノマーを重合するプロセス。本プロセスは、触媒系の存在下でエチレンと任意選択的に1つ以上のオレフィンモノマーとを反応させることを含み、触媒系は、アルミニウムの総モル数に基づいて50モルパーセント未満のAlRA1B1C1を有する修飾ヒドロカルビルメチルアルミノオキサンであって、RA1、RB1、及びRC1は、独立して、直鎖(C~C40)アルキル、分枝鎖(C~C40)アルキル、又は(C~C40)アリールである、修飾ヒドロカルビルメチルアルミノオキサンと、式(I)による1つ以上の金属-配位子錯体と、を含む。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィンモノマーを重合するプロセスであって、前記プロセスは、触媒系の存在下でエチレンと任意選択的に1つ以上のオレフィンモノマーとを反応させることを含み、前記触媒系は、
修飾ヒドロカルビルメチルアルミノオキサンであって、前記ヒドロカルビル修飾メチルアルミノオキサン中のアルミニウムの総モル数に基づいて50モルパーセント未満のAlRA1B1C1を有し、RA1、RB1、及びRC1は、独立して、直鎖(C~C40)アルキル、分枝鎖(C~C40)アルキル又は(C~C40)アリールである、修飾ヒドロカルビルメチルアルミノオキサンと、
式(I)による1つ以上の金属-配位子錯体:
【化1】

[式中、
Mは、チタン、ジルコニウム、又はハフニウムであり、
nは、1、2、又は3であり、
各Xは、独立して、不飽和(C~C50)炭化水素、不飽和(C~C50)ヘテロ炭化水素、(C~C50)ヒドロカルビル、(C~C50)アリール、(C~C50)ヘテロアリール、シクロペンタジエニル、置換シクロペンタジエニル、(C~C12)ジエン、ハロゲン、-N(R、及び-N(R)CORから選択された単座配位子であり、
前記金属-配位子錯体は、全体的に電荷中性であり、
及びR16は、独立して、-H、(C~C40)アリール、(C~C40)ヘテロアリール、式(II)を有するラジカル、式(III)を有するラジカル、及び式(IV)を有するラジカルからなる群から選択され、
【化2】

式中、R31~35、R41~48及びR51~59のそれぞれは、独立して、-H、(C~C40)ヒドロカルビル、(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、又はハロゲンから選択され、
、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、及びR15は、独立して、-H、(C~C40)ヒドロカルビル、(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、及びハロゲンから選択され、
Yは、CH、CHR21、CR2122、SiR2122、又はGeR2122であり、R21及びR22は、(C~C20)アルキルであり、
ただし、(1)YがCHであるとき、R及びRのうちの少なくとも1つは、-Hではなく、
式(I)中の各R、R、及びRは、独立して、(C~C30)ヒドロカルビル、(C~C30)ヘテロヒドロカルビル、又は-Hである]と、を含み、
前記触媒系は、ホウ酸塩活性化剤を含有しない、重合プロセス。
【請求項2】
前記修飾ヒドロカルビルメチルアルミノオキサンは、前記ヒドロカルビル修飾メチルアルミノオキサン中のアルミニウムの総モル数に基づいて25モルパーセント未満のAlRA1B1C1を含有する、請求項1に記載の重合プロセス。
【請求項3】
前記修飾ヒドロカルビルメチルアルミノオキサンは、前記ヒドロカルビル修飾メチルアルミノオキサン中のアルミニウムの総モル数に基づいて15モルパーセント未満のAlRA1B1C1を含有する、請求項1又は2に記載の重合プロセス。
【請求項4】
前記修飾ヒドロカルビルメチルアルミノオキサンは、前記ヒドロカルビル修飾メチルアルミノオキサン中のアルミニウムの総モル数に基づいて10モルパーセント未満のAlRA1B1C1を含有する、請求項1又は2に記載の重合プロセス。
【請求項5】
前記修飾ヒドロカルビルメチルアルミノオキサンは、修飾メチルアルミノオキサンである、請求項1~4のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項6】
前記アルミニウム対触媒金属は、500:1未満である、請求項1~5のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項7】
前記アルミニウム対触媒金属は、200:1未満又は50:1未満である、請求項1~6のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項8】
及びRのうちの少なくとも1つは、(C~C40)ヒドロカルビル、(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、又はハロゲン原子である、請求項1~7のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項9】
及びRのうちの少なくとも1つは、(C~C)アルキルである、請求項1~8のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項10】
及びR16は、同一である、請求項1~9のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項11】
及びR16のうちの少なくとも1つは、式(III)を有するラジカルである、請求項1~10のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項12】
42及びR47は、(C~C20)ヒドロカルビル又は-Si[(C~C20)ヒドロカルビル]である、請求項7に記載の重合プロセス。
【請求項13】
43及びR46は、(C~C20)ヒドロカルビル又は-Si[(C~C20)ヒドロカルビル]である、請求項7に記載の重合プロセス。
【請求項14】
及びR16のうちの少なくとも1つは、式(II)を有するラジカルである、請求項1~5のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項15】
32及びR34は、(C~C12)ヒドロカルビル又は-Si[(C~C20)ヒドロカルビル]である、請求項10に記載の重合プロセス。
【請求項16】
及びR16のうちの少なくとも1つは、式(IV)を有するラジカルである、請求項1~5のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項17】
52、R53、R55、R57、及びR58のうちの少なくとも2つは、(C~C20)ヒドロカルビル又は-Si[(C~C20)ヒドロカルビル]である、請求項12に記載の重合プロセス。
【請求項18】
及びRは、独立して、メチル、エチル、1-プロピル、又は2-プロピルから選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項19】
及びR14は、(C~C20)アルキルである、請求項1~18のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項20】
及びR14は、メチルであり、R及びR11は、ハロゲンである、請求項1~19のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項21】
及びR11は、tert-ブチルである、請求項1~20のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項22】
及びR14は、tert-オクチル又はn-オクチルである、請求項1~20のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項23】
Mは、ジルコニウムである、請求項1~22のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項24】
前記オレフィンモノマーは、(C~C20)α-オレフィンである、請求項1~23のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項25】
前記オレフィンモノマーは、環状オレフィンである、請求項1~24のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項26】
前記重合プロセスは、溶液重合反応である、請求項1~25のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年7月17日に出願された米国特許仮出願第63/053,354号に対する優先権を主張し、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本開示の実施形態は、全般的に、3原子エーテルリンカーを有するビス-フェニルフェノキシ金属-配位子錯体を含む触媒系のための修飾ヒドロカルビルメチルアルミノオキサン活性化剤に関する。
【背景技術】
【0003】
Ziegler及びNattaによる不均一系オレフィン重合の発見以来、世界中のポリオレフィン生産は2015年に年間約1億5000万トンに達し、これは市場の需要の増加により上昇している。この成功は、共触媒技術における一連の重要な解明に部分的に基づく。発見された共触媒には、トリフェニルカルベニウム又はアンモニウムカチオンを含む、アルミノオキサン、ボラン、及びホウ酸塩が含まれる。これらの共触媒は均一系シングルサイトオレフィン重合触媒を活性化し、ポリオレフィンは産業界でこれらの共触媒を使用して製造されている。
【0004】
α-オレフィン重合反応における触媒組成物の一部として、活性化剤は、α-オレフィンポリマーの生成及びα-オレフィンポリマーを含む最終ポリマー組成物にとって有益な特徴を有し得る。α-オレフィンポリマーの生成を増加させる活性化剤の特徴としては、プロ触媒の迅速な活性化、高い触媒効率、高温性能、一貫したポリマー組成、及び選択的な失活が挙げられるが、これらに限定されない。
【0005】
特に、ホウ酸塩系共触媒は、オレフィン重合機構の基本的な理解に著しく寄与しており、触媒の構造及びプロセスを意図的に調整することにより、ポリオレフィンの微細構造を正確に制御する能力を向上させた。これにより、反応機構研究への関心が高まり、ポリオレフィンの微細構造及び性能を正確に制御する新規の均一系オレフィン重合触媒系の開発へとつながっている。しかしながら、活性化剤又は共触媒のカチオンがプロ触媒を活性化すると、活性化剤のイオンがポリマー組成物中に残留する場合がある。結果として、ホウ酸アニオンが、ポリマー組成に影響を与える場合がある。具体的には、ホウ酸アニオンのサイズ及びホウ酸アニオンの電荷、ホウ酸アニオンと周囲の媒体との相互作用、並びにホウ酸アニオンと利用可能な対イオンとの解離エネルギーが、溶媒、ゲル、又はポリマー材料などの周囲の媒体を通じてイオンが拡散する能力に影響を与えるであろう。
【0006】
修飾メチルアルミノオキサン(MMAO)は、アルミノオキサン構造とトリヒドロカルビルアルミニウム種との混合物として説明することができる。トリメチルアルミニウムのようなトリヒドロカルビルアルミニウム種は、オレフィン重合触媒の失活に寄与し得る重合プロセスにおける不純物を除去するためのスカベンジャーとして使用される。しかしながら、トリヒドロカルビルアルミニウム種は、いくつかの重合系において活性であり得ると考えられている。触媒抑制は、トリメチルアルミニウムが60℃でハフノセン触媒を用いたプロピレンホモ重合中に存在するときに注目されている(Busico,V.et.al.Macromolecules 2009,42,1789-1791)。しかしながら、これらの観察は、MAO活性化対ホウ酸塩活性化における差異を複雑にし、直接比較においてでさえ、いくらかのトリメチルアルミニウムありとなしとの間の差異を捕捉する可能性があるだけである。更に、そのような観察が他の触媒系、エチレン重合、又はより高い温度で行われる重合にまで及ぶかは明らかではない。いずれにしても、可溶性MAOを優先するにはMMAOを使用する必要があり、その結果、トリヒドロカルビルアルミニウム種が存在することになる。
【0007】
修飾メチルアルミノオキサン(MMAO)は、いくつかのPEプロセスにおいてホウ酸塩系活性化剤に代わる活性化剤として使用される。しかしながら、MMAOは、ビス-ビフェニルフェノキシ金属-配位子錯体などのいくつかの触媒の性能に悪影響を及ぼし、ポリビニル樹脂の生産に悪影響を及ぼすことが見出されている。重合プロセスにおける悪影響には、触媒活性の低下、生成されるポリマーの組成分布の拡大、及びペレットの取り扱いへの悪影響が含まれる。
【発明の概要】
【0008】
触媒効率、反応性及び良好な物理的特性を有するポリマーを生成する能力を維持しながら、触媒系を作成することが継続的に必要とされている。更に、均一なポリマー組成物を生成する必要がある。
【0009】
本開示の実施形態は、オレフィンモノマーを重合するためのプロセスを含む。1つ以上の実施形態において、本プロセスは、触媒系の存在下でエチレンと任意選択的に1つ以上のオレフィンモノマーとを反応させることを含む。触媒系は、修飾ヒドロカルビルメチルアルミノオキサン及びプロ触媒を含む。アルミニウムの総モル数に基づいて50モル未満のAlRを有する修飾ヒドロカルビルメチルアルミノオキサン[式中、R、R及びRは、独立して、直鎖(C~C40)アルキル、分枝鎖(C~C40)アルキル、又は(C~C40)アリールである]、及び式(I):
【0010】
【化1】

による1つ以上の金属-配位子錯体。
【0011】
式(I)において、Mは、チタン、ジルコニウム、又はハフニウムである。(X)の下付き文字nは、1、2、又は3である。各Xは、独立して、不飽和(C~C50)炭化水素、不飽和(C~C50)ヘテロ炭化水素、(C~C50)ヒドロカルビル、(C~C50)アリール、(C~C50)ヘテロアリール、シクロペンタジエニル、置換シクロペンタジエニル、(C~C12)ジエン、ハロゲン、-N(R、及び-N(R)CORから選択された単座配位子であり、金属-配位子錯体は、全体的に電荷中性である。
【0012】
式(I)において、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、及びR15は、独立して、-H、(C~C40)ヒドロカルビル、(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、及びハロゲンから選択される。
【0013】
式(I)において、R及びR16は、独立して、-H、(C~C40)ヒドロカルビル、(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、-N=C(R、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、ハロゲン、式(II)を有するラジカル、式(III)を有するラジカル、及び式(IV)を有するラジカルからなる群から選択される。
【0014】
【化2】
【0015】
式(II)、(III)、及び(IV)において、R31~35、R41~48、及びR51~59のそれぞれは、独立して、-H、(C~C40)ヒドロカルビル、(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、又はハロゲンから選択される。
【0016】
式(I)において、Yは、CH、CHR21、CR2122、SiR2122、又はGeR2122であり、R21及びR22は、(C~C20)アルキルであり;ただし、YがCHのとき、R及びRのうちの少なくとも1つは、-Hではない。
【0017】
式(I)、(II)、(III)、及び式(IV)において、式(I)の各R、R、及びRは、独立して、(C~C30)ヒドロカルビル、(C~C30)ヘテロヒドロカルビル、又は-Hである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】MMAO共触媒の機能としての金属-配位子錯体I1、I3、及びI7の触媒効率のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ここで、触媒系の特定の実施形態を説明する。本開示の触媒系は、異なる形態で具現化され得、本開示に記載される特定の実施形態に限定されると解釈されるべきではないことを理解されたい。むしろ、実施形態は、本開示が、徹底的かつ完全であり、主題の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。
【0020】
一般的な略語を以下に列挙する。
Me:メチル、Et:エチル、Ph:フェニル、Bn:ベンジル、i-Pr:iso-プロピル、t-Bu:tert-ブチル、t-Oct:tert-オクチル(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)、Tf:トリフルオロメタンスルホナート、THF:テトラヒドロフラン、EtO:ジエチルエーテル、CHCl:ジクロロメタン、CV:カラム体積(カラムクロマトグラフィで使用される)、EtOAc:酢酸エチル、C:重水素化ベンゼン又はベンゼン-d6、CDCl:重水素化クロロホルム、NaSO:硫酸ナトリウム、MgSO:硫酸マグネシウム、HCl:塩化水素、n-BuLi:ブチルリチウム、t-BuLi:tert-ブチルリチウム、MAO:メチルアルミノオキサン、MMAO:修飾メチルアルミノオキサン、GC:ガスクロマトグラフィ、LC:液体クロマトグラフィ、NMR:核磁気共鳴、MS:質量分析、mmol:ミリモル、mL:ミリリットル、M:モル濃度、min又はmins:分、h又はhrs:時間、d:日。
【0021】
「独立して選択される」という用語は、R、R、R、R、及びRなどのR基が、同一であっても異なっていてもよいこと(例えば、R、R、R、R、及びRは全て、置換アルキルであってもよく、又はR及びRは、置換アルキルであってもよく、Rは、アリールであってもよい、など)を示すために本明細書で使用される。R基に関連する化学名は、化学名の化学構造に対応するものとして当該技術分野で認識されている化学構造を伝えることを意図している。したがって、化学名は、当業者に既知の構造的定義を補足及び例示することを意図しており、排除することを意図するものではない。
【0022】
「プロ触媒」という用語は、活性化剤と組み合わせたときにオレフィン重合触媒活性を有する、遷移金属化合物を指す。「活性化剤」という用語は、プロ触媒を触媒的に活性な触媒に変換するようにプロ触媒と化学的に反応する化合物を指す。本明細書で使用する場合、「共触媒」及び「活性化剤」という用語は、互換的な用語である。
【0023】
特定の炭素原子を含有する化学基を記載するために使用するとき、「(C~C)」の形態を有する括弧付きの表現は、化学基の非置換形態がx及びyを含めてx個の炭素原子からy個の炭素原子を有することを意味する。例えば、(C~C50)アルキルは、その非置換形態で1~50個の炭素原子を有するアルキル基である。いくつかの実施形態及び一般構造において、特定の化学基は、Rなどの1つ以上の置換基によって置換され得る。括弧付きの「(C~C)」を使用して定義されるR置換化学基は、任意の基Rの同一性に従ってy個を超える炭素原子を含有することができる。例えば、「Rがフェニル(-C)である厳密に1つの基Rで置換された(C~C50)アルキル」は、7~56個の炭素原子を含有し得る。したがって、一般に、括弧付きの「(C~C)」を使用して定義される化学基が1個以上の炭素原子を含有する置換基Rによって置換されるとき、化学基の炭素原子の最小及び最大合計数は、x及びyの両方に、全ての炭素原子を含有する置換基R由来の炭素原子の合計数を加えることによって、決定される。
【0024】
「置換」という用語は、対応する非置換化合物又は官能基の炭素原子に結合した少なくとも1個の水素原子(-H)が、置換基(例えば、R)によって置換されることを意味する。「-H」という用語は、別の原子に共有結合している水素又は水素ラジカルを意味する。「水素」及び「-H」は交換可能であり、明記されていない限り、同一の意味を有する。
【0025】
「(C~C50)アルキル」という用語は、1~50個の炭素原子を含有する飽和直鎖又は分枝鎖炭化水素ラジカルを意味し、「(C~C30)アルキル」という用語は、1~30個の炭素原子の飽和直鎖又は分枝鎖炭化水素ラジカルを意味する。各(C~C50)アルキル及び(C~C30)アルキルは、非置換であり得るか、又は1つ以上のRで置換され得る。いくつかの例では、炭化水素ラジカル中の各水素原子は、例えばトリフルオロメチルなどのRで置換され得る。非置換(C~C50)アルキルの例は、非置換(C~C20)アルキル、非置換(C~C10)アルキル、非置換(C~C)アルキル、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-ブチル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、1-ペンチル、1-ヘキシル、1-ヘプチル、1-ノニル、及び1-デシルである。置換(C~C40)アルキルの例は、置換(C~C20)アルキル、置換(C~C10)アルキル、トリフルオロメチル、及び[C45]アルキルである。「[C45]アルキル」という用語は、置換基を含むラジカル中に最大45個の炭素原子が存在することを意味し、例えば、メチル、トリフルオロメチル、エチル、1-プロピル、1-メチルエチル、又は1,1-ジメチルエチルなどの(C~C)アルキルである、1つのRによって置換されている(C27~C40)アルキルである。
【0026】
(C~C50)アルケニルという用語は、3~50個の炭素原子、少なくとも1つの二重結合を含有し、かつ非置換であるか又は1つ以上のRで置換されている、分枝又は非分枝の環状又は非環状一価炭化水素ラジカルを意味する。非置換(C~C50)アルケニルの例:n-プロペニル、イソプロペニル、n-ブテニル、イソブテニル、オクテニル、デセニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、及びシクロヘキサジエニル。置換(C~C50)アルケニルの例:(2-トリフルオロメチル)ペンタ-1-エニル、(3-メチル)ヘキサ-1-エニル、(3-メチル)ヘキサ-1,4-ジエニル、及び(Z)-1-(6-メチルヘプタ-3-エン-1-イル)シクロヘキサ-1-エニル。
【0027】
「(C~C50)シクロアルキル」という用語は、非置換であるか、又は1つ以上のRで置換されている、3~50個の炭素原子の飽和環状炭化水素ラジカルを意味する。他のシクロアルキル基(例えば(C~C)シクロアルキル)は、x~y個の炭素原子を有し、かつ非置換であるか、又は1つ以上のRで置換されているものであるかのいずれかとして、同様の様式で定義される。非置換(C~C40)シクロアルキルの例は、非置換(C~C20)シクロアルキル、非置換(C~C10)シクロアルキル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、及びシクロデシルである。置換(C~C40)シクロアルキルの例は、置換(C~C20)シクロアルキル、置換(C~C10)シクロアルキル、及び1-フルオロシクロヘキシルである。
【0028】
「ハロゲン原子」又は「ハロゲン」という用語は、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、又はヨウ素原子(I)の基を意味する。「ハライド」という用語は、ハロゲン原子のアニオン形態、フルオリド(F)、クロリド(Cl)、ブロミイド(Br)、又はヨージド(I)を意味する。
【0029】
「飽和」という用語は、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、及び(ヘテロ原子含有基において)炭素-窒素二重結合、炭素-リン二重結合、及び炭素-ケイ素二重結合を欠くことを意味する。飽和化学基が1つ以上の置換基Rによって置換されている場合、1つ以上の二重結合又は三重結合は、任意選択的に置換基R中に存在し得る。「不飽和」という用語は、1個以上の炭素-炭素二重結合若しくは炭素-炭素三重結合、又は(ヘテロ原子含有基において)1個以上の炭素-窒素二重結合、炭素-リン二重結合、又は炭素-ケイ素二重結合を含有し、置換基R(存在する場合)、又は芳香環若しくはヘテロ芳香環(存在する場合)中に存在し得る二重結合を含まないことを意味する。
【0030】
本開示の諸実施形態は、オレフィンモノマーを重合するためのプロセスを含む。1つ以上の実施形態において、本プロセスは、触媒系の存在下でエチレンと任意選択的に1つ以上のオレフィンモノマーとを反応させることを含む。
【0031】
様々な実施形態において、触媒系は、ホウ酸塩活性化剤を含有しない。
【0032】
いくつかの実施形態において、オレフィンモノマーは、(C~C20)α-オレフィンである。他の実施形態において、オレフィンモノマーは、(C~C20)α-オレフィンではない。様々な実施形態において、オレフィンモノマーは、環状オレフィンである。
【0033】
1つ以上の実施形態において、触媒系は、ヒドロカルビル修飾メチルアルミノオキサン及びプロ触媒を含む。ヒドロカルビル修飾メチルアルミノオキサンは、アルミニウムの総モル数に基づいて50モルパーセント未満のAlRA1B1C1を有する。式AlRA1B1C1において、RA1、RB1、及びRC1は、独立して、直鎖(C~C40)アルキル、分枝鎖(C~C40)アルキル、(C~C40)アリール、又はこれらの組み合わせである。
【0034】
「ヒドロカルビル修飾メチルアルミノオキサン」という用語は、ある量のトリヒドロカルビルアルミニウムを含むメチルアルミノオキサン(MMAO)構造を指す。ヒドロカルビル修飾メチルアルミノオキサンは、ヒドロカルビル修飾メチルアルミノオキサンマトリックスとトリヒドロカルビルアルミニウムとの組み合わせを含む。ヒドロカルビル修飾メチルアルミノオキサン中のアルミニウムの総モル量は、ヒドロカルビル修飾メチルアルミノオキサンマトリックスからのアルミニウムのモル数及びトリヒドロカルビルアルミニウムからのアルミニウムのモル数からのアルミニウム寄与からなる。ヒドロカルビル修飾メチルアルミノオキサンは、ヒドロカルビル修飾メチルアルミノオキサン中のアルミニウムの総モル数に基づいて2.5モルパーセント超のトリヒドロカルビルアルミニウムを含む。これらの追加のヒドロカルビル置換基は、その後のアルミノオキサン構造に影響を及ぼし得、アルミノオキサンクラスターの分布及びサイズの違いをもたらし得る(Bryliakov,K.P et.al.Macromol.Chem.Phys.2006,207,327-335)。追加のヒドロカルビル置換基はまた、米国特許第5777143号に示すように、ヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン、及びISOPAR E(商標)などであるがこれらに限定されない炭化水素溶媒中でのアルミノオキサンの溶解度を増加させることができる。修飾メチルアルミノオキサン組成物は、一般的に開示されており、米国特許第5066631号及び同第5728855号に記載されているように調製することができ、その両方が参照により本明細書に組み込まれる。
【0035】
本開示の実施形態において、触媒系は、式(I)による金属-配位子錯体を含む。
【0036】
【化3】
【0037】
式(I)において、Mは、+2、+3、若しくは+4の形式酸化状態を有するチタン、ジルコニウム、又はハフニウムである。(X)の下付き文字nは、1、2、又は3である。各Xは、独立して、不飽和(C~C50)炭化水素、不飽和(C~C50)ヘテロ炭化水素、(C~C50)ヒドロカルビル、(C~C50)アリール、(C~C50)ヘテロアリール、シクロペンタジエニル、置換シクロペンタジエニル、(C~C12)ジエン、ハロゲン、-N(R、及び-N(R)CORから選択された単座配位子であり、金属-配位子錯体は、全体的に電荷中性である。
【0038】
式(I)において、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、及びR15は、独立して、-H、(C~C40)ヒドロカルビル、(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、及びハロゲンから選択される。
【0039】
式(I)において、R及びR16は、独立して、-H、(C~C40)ヒドロカルビル、(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、-N=C(R、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、ハロゲン、式(II)を有するラジカル、式(III)を有するラジカル、及び式(IV)を有するラジカルからなる群から選択される。
【0040】
【化4】
【0041】
式(II)、(III)、及び(IV)において、R31~35、R41~48、及びR51~59のそれぞれは、独立して、-H、(C~C40)ヒドロカルビル、(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、又はハロゲンから選択される。
【0042】
式(I)において、Yは、CH、CHR21、CR2122、SiR2122、又はGeR2122であり、R21及びR22は、(C~C20)アルキルであり、ただし、YがCHのとき、R及びRのうちの少なくとも1つは、-Hではない。
【0043】
理論に束縛されるものではないが、3原子架橋(-CHYCH-)を含むこれらの好ましい置換パターンは、本開示のR及びR基での置換パターンと組み合わせて、主にシングルサイトの挙動をもたらすと考えられる。MMAO活性化の場合に観察されることが多い第2の重合部位は、これらの本発明の触媒系と共に生成されない。第2の重合部位は、得られるポリマー中に追加の性質を有害に生成する可能性がある。これらの性質は、次に、分子量分布曲線の広がりとして、又は不均一なコモノマー分布を通じて明らかになり得る。
【0044】
式(I)、(II)、(III)、及び式(IV)において、式(I)の各R、R、及びRは、独立して、(C~C30)ヒドロカルビル、(C~C30)ヘテロヒドロカルビル、又は-Hである。
【0045】
実施形態において、重合プロセスにおける修飾ヒドロカルビルメチルアルミノオキサンは、ヒドロカルビル修飾メチルアルミノオキサン中のアルミニウムの総モル数に基づいて、20モルパーセント未満及び5モルパーセント超のトリヒドロカルビルアルミニウムを有する。いくつかの実施形態において、修飾ヒドロカルビルメチルアルミノオキサンは、ヒドロカルビル修飾メチルアルミノオキサン中のアルミニウムの総モル数に基づいて、15モルパーセント未満のトリヒドロカルビルアルミニウムを有する。1つ以上の実施形態において、修飾ヒドロカルビルメチルアルミノオキサンは、ヒドロカルビル修飾メチルアルミノオキサン中のアルミニウムの総モル数に基づいて、10モルパーセント未満のトリヒドロカルビルアルミニウムを有する。様々な実施形態において、修飾ヒドロカルビルメチルアルミノオキサンは、修飾メチルアルミノオキサンである。
【0046】
いくつかの実施形態において、トリヒドロカルビルアルミニウムは、AlRA1B1C1の式を有し、式中、RA1、RB1、及びRC1は、独立して、直鎖(C~C40)アルキル、分枝鎖(C~C40)アルキル、又は(C~C40)アリールである。1つ以上の実施形態において、RA1、RB1、及びRC1は、独立して、メチル、エチル、プロピル、2-プロピル、ブチル、tert-ブチル、又はオクチルである。いくつかの実施形態において、RA1、RB1、及びRC1は、同じである。他の実施形態において、RA1、RB1、及びRC1のうちの少なくとも1つは、他のRA1、RB1、及びRC1と異なる。
【0047】
式(I)の金属-配位子錯体におけるR基及びR16基は、互いに独立して選択される。例えば、Rは、式(II)、(III)、若しくは(IV)を有するラジカルから選択されてもよく、R16は、(C~C40)ヒドロカルビルであり得るか、又はRは、式(II)、(III)、若しくは(IV)を有するラジカルから選択されてもよく、R16は、式(II)、(III)、若しくは(IV)を有するラジカルから選択され得、Rのそれと同じか又は異なる。R及びR16の両方は、式(II)を有するラジカルであり得、その場合、R31~35基は、R及びR16において同じか又は異なる。他の実施例において、R及びR16の両方は、式(III)を有するラジカルであり得、その場合、R41~48基は、R及びR16において同じか若しくは異なるか、又はR及びR16の両方は、式(IV)を有するラジカルであり得、その場合、R51~59基は、R及びR16において同じか若しくは異なる。
【0048】
いくつかの実施形態において、R及びR16のうちの少なくとも1つは、式(II)を有するラジカルであり、R32及びR34は、tert-ブチルである。1つ以上の実施形態において、R32及びR34は、(C~C12)ヒドロカルビル又は-Si[(C~C10)アルキル]である。
【0049】
いくつかの実施形態において、R又はR16のうちの少なくとも1つが、式(III)を有するラジカルであるとき、R43及びR46のうちの一方又は両方は、tert-ブチルであり、R41~42、R44~45、及びR47~48は、-Hである。他の実施形態において、R42及びR47のうちの一方又は両方は、tert-ブチルであり、R41、R43~46、及びR48は、-Hである。いくつかの実施形態において、R42及びR47の両方は、-Hである。様々な実施形態において、R42及びR47は、(C~C20)ヒドロカルビル又は-Si[(C~C10)アルキル]である。他の実施形態において、R43及びR46は、(C~C20)ヒドロカルビル又は-Si[(C~C10)アルキル]である。
【0050】
実施形態において、R又はR16のうちの少なくとも1つが、式(IV)を有するラジカルであるとき、各R52、R53、R55、R57、及びR58は、-H、(C~C20)ヒドロカルビル、-Si[(C~C20)ヒドロカルビル]、又は-Ge[(C~C20)ヒドロカルビル]である。いくつかの実施形態において、R52、R53、R55、R57、及びR58のうちの少なくとも1つは、(C~C10)アルキル、-Si[(C~C10)アルキル]、又は-Ge[(C~C10)アルキル]である。1つ以上の実施形態において、R52、R53、R55、R57、及びR58のうちの少なくとも2つは、(C~C10)アルキル、-Si[(C~C10)アルキル]、又は-Ge[(C~C10)アルキル]である。様々な実施形態において、R52、R53、R55、R57、及びR58のうちの少なくとも3つは、(C~C10)アルキル、-Si[(C~C10)アルキル]、又は-Ge[(C~C10)アルキル]である。
【0051】
いくつかの実施形態において、R又はR16のうちの少なくとも1つが、式(IV)を有するラジカルであるとき、R52、R53、R55、R57、及びR58のうちの少なくとも2つは、(C~C20)ヒドロカルビル又は-C(H)Si[(C~C20)ヒドロカルビル]である。
【0052】
(C~C10)アルキルの例としては、プロピル、2-プロピル(iso-プロピルとも呼ばれる)、1,1-ジメチルエチル(tert-ブチルとも呼ばれる)、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-ブチル、ペンチル、3-メチルブチル、ヘキシル、4-メチルペンチル、ヘプチル、n-オクチル、tert-オクチル(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イルとも呼ばれる)、ノニル、及びデシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
式(I)において、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、及びR15は、独立して、-H、(C~C40)ヒドロカルビル、(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、及びハロゲンから選択される。
【0054】
1つ以上の実施形態において、R、R、R、R12、R13、及びR15は、水素である。
【0055】
様々な実施形態において、R、R、R、及びRのうちの少なくとも1つは、ハロゲン原子であり、R、R10、R11、及びR12のうちの少なくとも1つは、ハロゲン原子である。いくつかの実施形態において、R及びRは、独立して、(C~C)アルキルである。
【0056】
いくつかの実施形態において、R及びR14は、(C~C20)アルキルである。1つ以上の実施形態において、R及びR14は、メチルであり、R及びR11は、ハロゲンである。実施形態において、R及びR11は、tert-ブチルである。他の実施形態において、R及びR14は、tert-オクチル又はn-オクチルである。
【0057】
様々な実施形態において、R及びR14は、(C~C24)アルキルである。1つ以上の実施形態において、R及びR14は、(C~C24)アルキルである。いくつかの実施形態において、R及びR14は、1-プロピル、2-プロピル(iso-プロピルとも呼ばれる)、1,1-ジメチルエチル(tert-ブチルとも呼ばれる)、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-ブチル、ペンチル、3-メチル-1-ブチル、ヘキシル、4-メチル-1-ペンチル、ヘプチル、n-オクチル、tert-オクチル(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イルとも呼ばれる)、ノニル、及びデシルである。実施形態において、R及びR14は、-ORであり、Rは、(C~C20)炭化水素であり、いくつかの実施形態において、Rは、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル(iso-プロピルとも呼ばれる)、又は1,1-ジメチルエチルである。
【0058】
1つ以上の実施形態において、R及びRのうちの1つは、-Hではない。様々な実施形態において、R及びRのうちの少なくとも1つは、(C~C24)アルキルである。いくつかの実施形態において、R及びRの両方は、(C~C24)アルキルである。いくつかの実施形態において、R及びRは、メチルである。他の実施形態において、R及びRは、ハロゲンである。
【0059】
いくつかの実施形態において、R及びR14は、メチルである。1つ以上の実施形態において、R及びR14は、(C~C24)アルキルである。いくつかの実施形態において、R及びRは、1-プロピル、2-プロピル(iso-プロピルとも呼ばれる)、1,1-ジメチルエチル(tert-ブチルとも呼ばれる)、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-ブチル、ペンチル、3-メチル-1-ブチル、ヘキシル、4-メチル-1-ペンチル、ヘプチル、n-オクチル、tert-オクチル(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イルとも呼ばれる)、ノニル、及びデシルである。
【0060】
様々な実施形態において、式(I)の金属-配位子錯体では、R及びR11は、ハロゲンである。いくつかの実施形態において、R及びR11は、(C~C24)アルキルである。様々な実施形態において、R及びR11は、独立して、1-プロピル、2-プロピル(iso-プロピルとも呼ばれる)、1,1-ジメチルエチル(tert-ブチルとも呼ばれる)、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-ブチル、ペンチル、3-メチルブチル、ヘキシル、4-メチルペンチル、ヘプチル、n-オクチル、tert-オクチル(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イルとも呼ばれる)、ノニル、及びデシルから選択される。いくつかの実施形態において、R及びR11は、tert-ブチルである。実施形態において、R及びR11は、-ORであり、Rは、(C~C20)ヒドロカルビルであり、いくつかの実施形態において、Rは、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル(iso-プロピルとも呼ばれる)、又は1,1-ジメチルエチルである。他の実施形態において、R及びR11は、-SiR であり、各Rは、独立して、(C~C20)ヒドロカルビルであり、いくつかの実施形態において、Rは、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル(iso-プロピルとも呼ばれる)、又は1,1-ジメチルエチルである。
【0061】
いくつかの実施形態において、式(I)の金属-配位子錯体の化学基(例えば、X及びR1~59)のうちのいずれか又は全ては、非置換であり得る。他の実施形態において、式(I)の金属-配位子錯体の化学基X及びR1~59のうちのいずれも1つ又は2つ以上のRで置換されていない場合も、それらのうちのいずれか又は全てが、1つ又は2つ以上のRで置換されている場合もある。2つ又は3つ以上のRが式(I)の金属-配位子錯体の同じ化学基に結合している場合、化学基の個々のRは、同じ炭素原子若しくはヘテロ原子、又は異なる炭素原子若しくはヘテロ原子に結合していてもよい。いくつかの実施形態において、化学基X及びR1~59のうちのいずれもRで過置換されていない場合も、それらのうちのいずれか又は全てが、Rで過置換されている場合もある。Rで過置換されている化学基では、個々のRは、全て同じであり得るか、又は独立して選択され得る。1つ以上の実施形態において、Rは、(C~C20)ヒドロカルビル、(C~C20)アルキル、(C~C20)ヘテロヒドロカルビル、又は(C~C20)ヘテロアルキルから選択される。
【0062】
式(I)、(II)、(III)、及び(IV)において、各R、R、及びRは、独立して、(C~C30)ヒドロカルビル、(C~C30)ヘテロヒドロカルビル、又は-Hである。
【0063】
いくつかの実施形態において、式(I)による金属-配位子錯体では、R及びRの両方は、メチルである。他の実施形態において、R及びRのうちの一方は、メチルであり、R及びRの他方は、-Hである。
【0064】
式(I)による金属-配位子錯体において、Xは、共有結合、又はイオン結合を通してMと結合する。いくつかの実施形態において、Xは、-1の正味の形式酸化数を有するモノアニオン性配位子であり得る。各モノアニオン性配位子は、独立して、水素化物イオン、(C~C40)ヒドロカルビルカルボアニオン、(C~C40)ヘテロヒドロカルビルカルボアニオン、ハライド、ニトレート、カーボネート、ホスフェート、スルフェート、HC(O)O、HC(O)N(H)、(C~C40)ヒドロカルビルC(O)O、(C~C40)ヒドロカルビルC(O)N((C~C20)ヒドロカルビル)、(C~C40)ヒドロカルビルC(O)N(H)、R、R、R、R、R、又はRSiであってもよく、各R、R、及びRは、独立して、水素、(C~C40)ヒドロカルビル、若しくは(C~C40)ヘテロヒドロカルビルであるか、又はR及びRが一緒になって、(C~C40)ヒドロカルビレン若しくは(C~C20)ヘテロヒドロカルビレンを形成し、Rは、上で定義されたとおりである。
【0065】
いくつかの実施形態において、Xは、ハロゲン、非置換(C~C20)ヒドロカルビル、非置換(C~C20)ヒドロカルビルC(O)O-、又はRN-であり、R及びRのそれぞれは、独立して、非置換(C~C20)ヒドロカルビルである。いくつかの実施形態において、各単座配位子Xは、塩素原子、(C~C10)ヒドロカルビル(例えば、(C~C)アルキル若しくはベンジル)、非置換(C~C10)ヒドロカルビルC(O)O-、又はRN-であり、R及びRのそれぞれは、独立して、非置換(C~C10)ヒドロカルビルである。
【0066】
更なる実施形態において、Xは、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2,2,-ジメチルプロピル、トリメチルシリルメチル、フェニル、ベンジル、又はクロロから選択される。Xは、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2,2,-ジメチルプロピル、トリメチルシリルメチル、フェニル、ベンジル、及びクロロである。一実施形態において、nは、2であり、少なくとも2つのXは、独立して、モノアニオン性単座配位子である。特定の実施形態において、nは、2であり、2つのX基は一緒になって、二座配位子を形成する。更なる実施形態において、二座配位子は、2,2-ジメチル-2-シラプロパン-1,3-ジイル又は1,3-ブタジエンである。
【0067】
1つ以上の実施形態において、各Xは、独立して、-(CH)SiR であり、各Rは、独立して、(C~C30)アルキル又は(C~C30)ヘテロアルキルであり、少なくとも1つのRは、(C~C30)アルキルである。いくつかの実施形態において、Rのうちの1つが(C~C30)ヘテロアルキルであるとき、ヘテロ原子は、シリカ又は酸素原子である。いくつかの実施形態において、Rは、メチル、エチル、プロピル、2-プロピル、ブチル、1,1-ジメチルエチル(又は、tert-ブチル)、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、n-オクチル、tert-オクチル、又はノニルである。
【0068】
1つ以上の実施形態において、Xは、-(CH)Si(CH、-(CH)Si(CH(CHCH)、-(CH)Si(CH)(CHCH、-(CH)Si(CHCH、-(CH)Si(CH(n-ブチル)、-(CH)Si(CH(n-ヘキシル)、-(CH)Si(CH)(n-Oct)R、-(CH)Si(n-Oct)R 、-(CH)Si(CH(2-エチルヘキシル)、-(CH)Si(CH(ドデシル)、-CHSi(CHCHSi(CH(本明細書では、-CHSi(CHCHTMSと称される)である。任意選択的に、いくつかの実施形態において、式(I)による金属-配位子錯体は、正確に2つのRが共有結合しているか、又は正確に3つのRが共有結合している。
【0069】
いくつかの実施形態において、Xは、-CHSi(R3-Q(OR、-Si(R3-Q(OR、-OSi(R3-Q(ORであり、下付き文字Qは0、1、2、又は3であり、各Rは、独立して、置換若しくは非置換(C~C30)ヒドロカルビル、又は置換若しくは非置換(C~C30)ヘテロヒドロカルビルである。
【0070】
共触媒成分
式(I)の金属-配位子錯体を含む触媒系は、オレフィン重合反応の金属系触媒を活性化するための当該技術分野で既知の任意の技術によって触媒的に活性化され得る。例えば、式(I)の金属-配位子錯体によるプロ触媒は、錯体を活性化共触媒と接触させるか、又は錯体を活性化共触媒と組み合わせることによって、触媒的に活性にされ得る。加えて、式(I)による金属-配位子錯体は、中性であるプロ触媒形態、及びベンジル又はフェニルなどのモノアニオン性配位子の損失によって正に帯電され得る触媒形態の両方を含む。本明細書で使用するのに好適な活性化共触媒としては、オリゴマーアルムオキサン又は修飾アルキルアルミノオキサンが挙げられる。
【0071】
ポリオレフィン
先行する段落に記載される触媒系は、オレフィン、主にエチレン及びプロピレンの重合に利用され、エチレン系ポリマー又はプロピレン系ポリマーを形成する。いくつかの実施形態において、重合スキーム中に単一タイプのオレフィン又はα-オレフィンのみが存在し、ホモポリマーを生成する。しかしながら、追加のα-オレフィンを重合手順に組み込んでもよい。追加のα-オレフィンコモノマーは、典型的には、20個以下の炭素原子を有する。例えば、α-オレフィンコモノマーは、3~10個の炭素原子、又は3~8個の炭素原子を有し得る。例示的なα-オレフィンコモノマーとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、及び4-メチル-1-ペンテンが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、1つ以上のα-オレフィンコモノマーは、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、及び1-オクテンからなる群から、又は代替として、1-ヘキセン及び1-オクテンからなる群から選択され得る。
【0072】
エチレン系ポリマー、例えば、エチレンのホモポリマー及び/又は、エチレンと任意選択的にα-オレフィンなどの1つ以上のコモノマーとのインターポリマー(コポリマーを含む)は、エチレンに由来するモノマー単位を少なくとも50モルパーセント(モル%)含み得る。「少なくとも50モルパーセント」に包含される全ての個々の値及び部分範囲は、別個の実施形態として本明細書に開示され、例えば、エチレン系ポリマー、エチレンのホモポリマー及び/又は、エチレンと任意選択的にα-オレフィンなどの1つ以上のコモノマーとのインターポリマー(コポリマーを含む)は、エチレンに由来する少なくとも60モルパーセントのモノマー単位、エチレンに由来する少なくとも70モルパーセントのモノマー単位、エチレンに由来する少なくとも80モルパーセントのモノマー単位、又はエチレンに由来する50~100モルパーセントのモノマー単位、又はエチレンに由来する80~100モルパーセントのモノマー単位を含み得る。
【0073】
いくつかの実施形態において、エチレン系ポリマーは、エチレンに由来する少なくとも90モルパーセントの単位を含み得る。少なくとも90モルパーセントからの全ての個々の値及び部分範囲は本明細書に含まれ、別個の実施形態として本明細書に開示される。例えば、エチレン系ポリマーは、エチレンに由来する少なくとも93モルパーセントの単位、少なくとも96モルパーセントの単位、エチレンに由来する少なくとも97モルパーセントの単位、又は代替として、エチレンに由来する90~100モルパーセントの単位、エチレンに由来する90~99.5モルパーセントの単位、若しくはエチレンに由来する97~99.5モルパーセントの単位を含み得る。
【0074】
エチレン系ポリマーのいくつかの実施形態において、追加のα-オレフィンの量は50モル%未満であり、他の実施形態は、少なくとも1モルパーセント(mol%)~25モル%を含み、更なる実施形態において、追加のα-オレフィンの量は少なくとも5mol%~103mol%を含む。いくつかの実施形態において、追加のα-オレフィンは1-オクテンである。
【0075】
任意の従来の重合プロセスを使用してエチレン系ポリマーを生成してもよい。そのような従来の重合プロセスとしては、例えば、ループ反応器、等温反応器、撹拌槽型反応器、バッチ反応器などの1つ以上の従来の反応器を、並列、直列、又はこれらの任意の組み合わせで使用する、溶液重合プロセス、スラリー相重合プロセス、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
一実施形態において、エチレン系ポリマーは、二重反応器系、例えば、二重ループ反応器系において、溶液重合によって生成することができ、エチレン及び任意選択的に1つ以上のα-オレフィンは、本明細書に記載の触媒系及び任意選択的に1つ以上の共触媒の存在下で重合される。別の実施形態において、エチレン系ポリマーは、二重反応器系、例えば、二重ループ反応器系において、溶液重合によって生成することができ、エチレン及び任意選択的に1つ以上のα-オレフィンは、本開示及び本明細書に記載の触媒系並びに任意選択的に1つ以上の他の触媒の存在下で重合される。本明細書に記載の触媒系は、任意選択的に1つ以上の他の触媒と組み合わせて、第1の反応器又は第2の反応器において使用することができる。一実施形態において、エチレン系ポリマーは、二重反応器系、例えば、二重ループ反応器系において、溶液重合によって生成することができ、エチレン及び任意選択的に1つ以上のα-オレフィンは、本明細書に記載の触媒系の存在下で両方の反応器において重合される。
【0077】
別の実施形態において、エチレン系ポリマーは、単一反応器系、例えば、単一ループ反応器系において、溶液重合によって生成することができ、エチレン及び任意選択的に1つ以上のα-オレフィンは、本開示内に記載される触媒系、及び前の段落に記載される任意選択的に1つ以上の共触媒の存在下で重合される。
【0078】
エチレン系ポリマーは、1つ以上の添加剤を更に含み得る。そのような添加剤としては、帯電防止剤、色増強剤、染料、潤滑剤、顔料、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤、加工助剤、紫外線安定剤、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。エチレン系ポリマーは、任意の量の添加剤を含み得る。エチレン系ポリマーは、エチレン系ポリマー及び1つ以上の添加剤の重量に基づいて、そのような添加剤を合計重量の約0~約10パーセントを含み得る。エチレン系ポリマーは充填剤を更に含んでもよく、その充填剤としては、有機又は無機充填剤を挙げることができるが、これらに限定されない。エチレン系ポリマーは、エチレン系ポリマーと全ての添加剤又は充填剤の合計重量に基づいて、例えば、炭酸カルシウム、タルク又はMg(OH)などの約0~約20重量パーセントの充填剤を含み得る。エチレン系ポリマーは、1つ以上のポリマーと更に配合されてブレンドを形成し得る。
【0079】
いくつかの実施形態において、エチレン系ポリマーを生成するための重合プロセスは、エチレン及び少なくとも1つの追加のα-オレフィンを、本開示による触媒系の存在下で重合することを含み得る。式(I)の金属-配位子錯体を組み込むそのような触媒系から得られるポリマーは、ASTM D792(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に従って、例えば、0.850g/cm~0.970g/cm、0.880g/cm~0.920g/cm、0.880g/cm~0.910g/cm、又は0.880g/cm~0.900g/cmの密度を有し得る。
【0080】
別の実施形態において、本開示による触媒系から得られるポリマーは、5~15のメルトフロー比(I10/I)を有し、メルトインデックスIは、ASTM D1238(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に従って、190℃及び2.16kgの負荷で測定され、メルトインデックスI10は、ASTM D1238に従って、190℃及び10kgの負荷で測定される。他の実施形態において、メルトフロー比(I10/I)は5~10であり、また他の実施形態において、メルトフロー比は5~9である。
【0081】
いくつかの実施形態において、本開示による触媒系から得られるポリマーは、1~25の分子量分布(MWD)を有し、MWDは、M/Mとして定義され、Mは、重量平均分子量であり、Mは、数平均分子量である。他の実施形態において、触媒系から得られるポリマーは、1~6のMWDを有する。別の実施形態は、1~3のMWDを含み、他の実施形態は、1.5~2.5のMWDを含む。
【0082】
ゲル浸透クロマトグラフィ(Gel Permeation Chromatography、GPC)
クロマトグラフィシステムは、内部IR5赤外線検出器(IR5)を装備するPolymerChar GPC-IR(Valencia、Spain)の高温GPCクロマトグラフから構成された。オートサンプラオーブンコンパートメントを摂氏160度に設定し、カラムコンパートメントを摂氏150度に設定した。使用したカラムは、4本のAgilent「Mixed A」30cm、20マイクロメートルの線形混床式カラムであった。使用したクロマトグラフィ溶媒は、1,2,4-トリクロロベンゼンであり、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(butylated hydroxytoluene、BHT)を含有していた。溶媒源を、窒素スパージした。使用した注入体積は、200マイクロリットルであり、流量は、1.0ミリリットル/分であった。
【0083】
GPCカラムセットの較正を、580~8,400,000の範囲の分子量を有する少なくとも20の狭い分子量分布のポリスチレン標準を用いて実施し、個々の分子量の間に少なくとも10の間隔を空けて、6つの「カクテル」混合物中に配置した。標準物質を、Agilent Technologiesから購入した。1,000,000以上の分子量については、50ミリリットルの溶媒中の0.025グラムで、1,000,000未満の分子量については、50ミリリットルの溶媒中の0.05グラムで、ポリスチレン標準物質を調製した。ポリスチレン標準物質を、穏やかに撹拌しながら摂氏80度で30分間溶解させた。ポリスチレン標準物質のピーク分子量を、式1を使用してポリエチレン分子量に変換した(Williams and Ward,J.Polym.Sci.,Polym.Let.,6,621(1968)に記載のとおり)。
ポリエチレン=A×(Mポリスチレン (方程式1)
式中、Mは、分子量であり、Aは、0.4315の値を有し、Bは、1.0に等しい。
【0084】
それぞれのポリエチレン同等較正点をフィッティングさせるために、5次多項式を使用した。NIST標準NBS 1475が52,000Mwで得られるように、カラム分解能及びバンドの広がり効果を補正するために、Aに対してわずかな調整(約0.40~0.44)を行った。
【0085】
高温温度勾配相互作用クロマトグラフィ(HT-TGIC又はTGIC)
市販の結晶化溶出分別装置(Crystallization Elution Fractionation instrument、CEF)(Polymer Char,Spain)を使用して、高温温度勾配相互作用クロマトグラフィ(high temperature thermal gradient interaction chromatography、HT-TGIC又はTGIC)測定を行った(Cong,et al.,Macromolecules,2011,44(8),3062-3072.)。CEF機器には、IR-5検出器が装備される。グラファイトは、HT TGICカラムの固定相として使用されている(Freddy,A.Van Dammeら、米国特許第8,476,076号、Winnifordら、同第8,318,896号)。分離には単一のグラファイトカラム(250×4.6mm)を使用した。グラファイトは、乾式充填技法に続いてスラリー充填技法を使用してカラムに充填する(Congら、欧州特許第2714226(B1)号及び引用文献)。実験パラメータは次のとおりであった:トップオーブン/移送ライン/針温度150℃、溶解温度150℃、溶解撹拌設定2、ポンプ安定化時間15秒、カラム洗浄のためのポンプ流量0.500mL/m、カラム充填のポンプ流量0.300mL/分、安定化温度150℃、安定化時間(前、カラムへの充填前)2.0分、安定化時間(後、カラム充填後)1.0分、SF(可溶性画分)時間5.0分、150℃から30℃への冷却速度3.00℃/分、冷却プロセスの間の流量0.04mL/分、30℃から160℃への加熱速度2.00℃/分、等温時間160℃で10分間、溶出流量0.500mL/分、及び注入ループサイズ200マイクロリットル。
【0086】
冷却プロセスの間の流量は、全てのポリマー画分が冷却サイクルの終わりにカラム上に必ず残留するように、グラファイトカラムの長さに従って調節する。
【0087】
試料は、PolymerCharオートサンプラにより150℃で120分間、ODCB(以下に定義)中4.0mg/mLの濃度で調製した。シリカゲル40(粒径0.2~0.5mm、カタログ番号10181-3、EMD)を使用前に約2時間、160℃の真空オーブン中で乾燥させた。2 N2パージ能力を有するオートサンプラを備えたCEF装置の場合、シリカゲル40を、3本の300×7.5mmのGPCサイズのステンレス鋼カラムに充填し、シリカゲル40カラムをCEF装置のポンプの入口に取り付けて、ODCBを精製する。BHTは移動相に全く添加しない。シリカゲル40で乾燥させたODCBを、ここで「ODCB」と称する。TGICデータは、PolymerChar(Spain)の「GPC One」ソフトウェアプラットフォームで処理した。温度較正は、約4~6mgのエイコサンと、14.0mgのイソタクチックホモポリマーポリプロピレン(isotactic homopolymer polypropylene)iPPとの混合物を用いて行い(3.6~4.0の多分散性、150,000~190,000のポリエチレン当量として報告された分子量Mw、及び3.6~4.0の多分散性(Mw/Mn)、iPPのDSC溶融温度は158~159℃と測定された(本明細書の下で説明したDSC法)。7.0mLのODCBを充填した10mLバイアル中における14.0mgのホモポリマーポリエチレンHDPE(コモノマー含有量ゼロ、ポリエチレン当量として報告された重量平均分子量(Mw)115,000~125,000、及び多分散性2.5~2.8)。溶解時間は160℃で2時間であった。
【0088】
HT-TGICのポリマー試料についてのデータ処理
溶媒ブランク(純粋溶媒注入)をポリマー試料と同じ実験条件で実行した。ポリマー試料のデータ処理には、較正の加熱速度から計算された、各検出器チャンネルの溶媒ブランクの減算、較正プロセスで説明されている温度外挿、較正プロセスで測定された遅延量による温度の補正、及び溶出温度軸の30℃~160℃の範囲への調整が含まれる。
【0089】
クロマトグラム(IR-5検出器の測定チャンネル)を、PolymerChar「GPC One」ソフトウェアと統合した。ピークが、高溶出温度で平らなベースライン(ブランク減算クロマトグラムではおおよそゼロの値)に、及び可溶性画分(soluble fraction、SF)の高温側の検出器シグナルの最小又は平らな領域に落ちるとき、可視的差異から直線のベースラインを引いた。
【0090】
TGICプロファイルのブロードネス指数(B指数)
TGICクロマトグラムは、コモノマー含量及びその分布に関連する。それは、触媒活性部位の数に関連し得る。TGICプロファイルは、クロマトグラフィに関連する実験因子によってある程度影響を受け得る(Stregel,et al.,「Modern size-exclusion liquid chromatography,Wiley,2nd edition,Chapter3)。TGICブロードネス指数(B指数)は、異なる組成及び分布を有する試料のTGICクロマトグラムの幅広さを定量的に比較するために使用することができる。B指数は、最大プロファイル高さの任意の割合で計算することができる。例えば、「N」B指数は、プロファイルの最大高さの1/Nでのプロファイル幅を測定し、以下の式を利用することによって得ることができる。
【0091】
【数1】

式中、Tpは、プロファイルにおいて最大高さが観察される温度であり、Nは、整数2、3、4、5、6又は7である。TGICクロマトグラムが類似のピーク高さを有する複数のピークを有する場合、最高溶出温度でのピークは、プロファイル温度(Tp)として定義される。
【0092】
TGICプロファイルのU指数(U指数)
TGICを使用してポリマーの組成分布を測定した。組成分布の均一性を評価するために、得られたクロマトグラムを以下の式に従ってガウス分布にフィッティングさせた。
【0093】
【数2】
【0094】
上記関数を使用して最小二乗法を使用することによってフィッティングさせた。データと関数f(x,β)との間の残差を二乗し、続いて合計した。式中、xiは、35℃超の溶出温度であり、i=0であり、nは、TGICプロファイルの最終溶出温度である。
【0095】
【数3】
【0096】
フィッティング関数は、合計の最小値を提供するように調整された。最小二乗法に加えて、フィッティング方程式を更に重み付け関数と組み合わせて、ピーク形状の過大評価を防止した。
【0097】
【数4】
【0098】
式中、wは、(y-f(x,β))の全ての正の場合について1に等しく、(y-f(x,β))の全ての負の値について11に等しい。この方法を使用して、フィッティング関数は、ピーク形状の過大評価を防止し、シングルサイト触媒によってカバーされる面積のより良好な近似値を提供する。曲線をフィッティングさせると、フィッティングによってカバーされる分布の総面積を、TGIC実験の冷却工程の終わりに30℃で残っている画分を除いた試料クロマトグラムの総面積と比較することができる。この値に100を掛けると、均一性指数(U指数)が得られる。
【0099】
【数5】
【0100】
前の段落で述べたように、低密度ポリマーは一般に、溶出温度に起因して、高密度ポリマーよりも幅広い分子量分布(MWD)を有する。TGICプロファイルは、ポリマーMWDによって影響され得る(Abdulaal,et al.,Macromolecular Chem Phy,2017,218,1600332)。したがって、TGICを用いてMWD曲線の幅広さを分析するとき、曲線の幅は、ポリマー化学組成の正確な指標ではない。
【0101】
本開示に記載される触媒系の実施形態は、形成されたポリマーの高分子量及びポリマーに取り込まれたコモノマーの量の結果として、固有のポリマー特性をもたらす。
【0102】
本開示の1つ以上の特徴は、以下の実施例を考慮して例示される。
【実施例
【0103】
連続プロセス反応器重合のための手順:原料(エチレン、1-オクテン)及びプロセス溶媒(ExxonMobil CorporationからISOPAR Eという商標で市販されている狭い沸点範囲の高純度イソパラフィン溶媒)をモレキュラーシーブで精製し、その後、反応環境に導入する。水素を、高純度グレードとして加圧シリンダー内に供給し、それ以上精製しない。反応器モノマー供給流(エチレン)を、反応圧力を超えるまで加圧する。溶媒及びコモノマー供給を、反応圧力を超えるまで加圧する。個々の触媒成分(金属-配位子錯体及び共触媒)を、精製された溶媒を用いて指定の成分濃度に手動でバッチ希釈し、反応圧力より高い圧力に加圧する。全ての反応供給流を、質量流量計を用いて測定し、コンピュータにより自動化された弁制御系によって独立して制御する。
【0104】
連続溶液重合は、連続撹拌槽反応器(continuously stirred-tank reactor、CSTR)で実行する。溶媒、モノマー、コモノマー、及び水素を組み合わせた反応器への供給物は、5℃~50℃の間に温度制御され、典型的には15~25℃である。全ての成分を、溶媒供給物と共に重合反応器に供給する。触媒は、エチレンの特定の変換率に達するように反応器に供給される。共触媒成分(複数可)は、計算された特定のモル比又はppm量に基づいて別々に供給される。重合反応器からの流出物(溶媒、モノマー、コモノマー、水素、触媒成分、及びポリマーを含有する)が反応器を出て、水と接触する。加えて、酸化防止剤などの様々な添加剤を、この時点で添加することができる。次いで、流れをスタティックミキサに通し、混合物を均一に分散させる。
【0105】
添加剤の添加に続いて、流出物(溶媒、モノマー、コモノマー、水素、触媒成分、及び溶融ポリマーを含む)は、他の低沸点成分からのポリマーの分離に備えて熱交換器を通過して流れの温度を上げる。次いで、全体にわたって圧力が大幅に低減された反応器圧力制御バルブに、流れを通す。そこから、流出物は、揮発分除去機器(devolatizer)及び真空押出機からなる2段階の分離システムに入り、そこで溶媒、並びに未反応の水素、モノマー、コモノマー、及び水をポリマーから除去する。押出機の出口では、形成された溶融ポリマーのストランドは、冷水浴を通過し、そこで固化する。次いで、ストランドチョッパを通してストランドを供給し、空気乾燥後、ポリマーをペレットに切断する。
【0106】
バッチ反応器重合のための手順。原料(エチレン、1-オクテン)及びプロセス溶媒(ISOPAR E)は、モレキュラーシーブで精製し、その後、反応環境に導入する。撹拌オートクレーブ反応器に、ISOPAR E及び1-オクテンを入れた。次いで、反応器をある温度に加熱し、エチレンを入れ、所望の圧力に到達させた。任意選択的に、水素も添加した。触媒系は、不活性雰囲気下のドライボックス中で、金属-配位子錯体及び任意選択的に1つ以上の添加剤を追加の溶媒と混合することによって調製した。次いで、触媒系を反応器中に注入した。重合中にエチレンを供給し、必要に応じて反応器を冷却することによって、反応器の圧力及び温度を一定に保った。10分後、エチレンの供給を止め、溶液を窒素パージした樹脂製ケトルに移した。ポリマーを真空オーブン中で徹底的に乾燥させ、重合実験の間に反応器を熱いISOPAR Eで徹底的にすすいだ。
【0107】
試験方法
本明細書に特に指示のない限り、本開示の態様の記載において以下の分析方法を使用する。
【0108】
メルトインデックス
ポリマー試料のメルトインデックスI(又はI2)及びI10(又はI10)を、それぞれ、190℃並びに2.16kg及び10kgの荷重で、ASTM D-1238(方法B)に従って測定した。それらの値を、g/10分で報告する。
【0109】
密度
密度測定用の試料を、ASTM D4703に従って調製した。測定を、試料加圧の1時間以内に、ASTM D792、方法Bに従って行った。
【0110】
ヒドロカルビル修飾メチルアルミノオキサンの分析
実施例1は、溶液中のアルミニウム濃度を決定するための分析手順である。
【0111】
窒素雰囲気グローブボックス内で、式AlRA1B1C1を有するアルミニウム系分析物を風袋計量済み瓶に移し、試料の質量を記録した。試料をメチルシクロヘキサンで希釈し、次いでメタノールでクエンチした。混合物を中で回し、15分間にわたって反応させ、その後、グローブボックスから試料を取り出した。HSOの添加により、試料を更に加水分解した。瓶に蓋をして、5分間振盪した。アルミニウム濃度に応じて、瓶の定期的な通気が必要な場合がある。溶液を分液漏斗に移した。瓶を水で繰り返しすすぎし、このプロセスからの各すすぎ液を分液漏斗に添加した。有機層を廃棄し、残った水溶液をメスフラスコに移した。分液漏斗を更に水ですすぎし、各すすぎ液をメスフラスコに添加した。フラスコを既知の体積に希釈し、十分に混合し、過剰のEDTAとの錯体形成と、それに続く指示薬としてキシレノールオレンジを用いたZnCl2による逆滴定とによって分析した。
【0112】
ヒドロカルビル修飾アルキルアルミノオキサン中のAlRA1B1C1化合物の計算。
【0113】
【数6】
【0114】
AlRA1B1C1化合物含量は、以前に記載された方法を使用して分析する(Macromol.Chem.Phys.1996,197,1537、国際公開第2009029857(A1)号、Analytical Chemistry 1968,40(14),2150-2153及びOrganometallics 2013,32(11),3354-3362)。
【0115】
金属錯体は、遷移金属源及び中性多官能配位子源を含む標準的なメタレーション並びに配位子交換手順によって都合よく調製される。更に、錯体はまた、対応する遷移金属テトラアミド及びトリメチルアルミニウムなどのヒドロカルビル化剤から出発する、アミド除去及びヒドロカルビル化プロセスによって調製され得る。使用される技術は、米国特許第6,320,005号、同第6,103,657号、国際公開第02/38628号、同第03/40195号、米国特許A第2004/0220050号に開示されているものと類似しているものと同じである。
【0116】
金属-配位子錯体I1~18及びC1~C3を合成するための合成手順は、以下の手順において、及び以前に開示されている場合、以下の公報、米国特許第20040010103(A1)号、国際公開第2007136494(A2)号、同第2012027448(A1)号、同第2016003878(A1)号、同第2016014749(A1)号、同第2017058981(A1)号、同第2018022975(A1)号において見出すことができる。
【0117】
調製I1(国際公開第2018022975(A1)号に開示された配位子)
【0118】
【化5】
【0119】
6’,6’’’-(((ジイソプロピルシランジイル)ビス(メチレン))ビス(オキシ))ビス(3-(3,6-ジ-tert-ブチル-9H-カルバゾール-9-イル)-3’-フルオロ-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)-[1,1’-ビフェニル]-2-オール)ジメチル-ジルコニウム(I1)の合成:ジエチルエーテル中のMeMgBr(3.00M、5.33mL、16.0mmol)を、トルエン(60mL)中のZrCl(0.895g、3.84mmol)の-30℃溶液に添加した。3分間撹拌した後、固体配位子(5.00g、3.77mmol)を少量ずつ加えた。混合物を8時間撹拌し、次に、溶媒を減圧下で一晩除去し、暗色の残留物を得た。ヘキサン/トルエン(10:1 70mL)を残留物に添加し、溶液を室温で数分間振盪し、次いでこの材料をフリット漏斗CELITEプラグに通した。フリットをヘキサン(2×15mL)で抽出した。合わせた抽出物を減圧下で濃縮乾固させた。ペンタン(20mL)を淡褐色固体に添加し、不均一混合物を冷凍庫(-35℃)に18時間置いた。褐色のペンタン層をピペットを用いて除去した。残った物質を真空下で乾燥させて、I1(4.50g、収率:83%)を白色粉末として得た。
【0120】
H NMR(400MHz,C)δ 8.65-8.56(m,2H),8.40(dd,J=2.0,0.7Hz,2H),7.66-7.55(m,8H),7.45(d,J=1.9Hz,1H),7.43(d,J=1.9Hz,1H),7.27(d,J=2.5Hz,2H),7.10(d,J=3.2Hz,1H),7.08(d,J=3.1Hz,1H),6.80(ddd,J=9.0,7.4,3.2Hz,2H),5.21(dd,J=9.1,4.7Hz,2H),4.25(d,J=13.9Hz,2H),3.23(d,J=14.0Hz,2H),1.64-1.52(m,4H),1.48(s,18H),1.31(s,24H),1.27(s,6H),0.81(s,18H),0.55(t,J=7.3Hz,12H),0.31(hept,J=7.5Hz,2H),-0.84(s,6H);19F NMR(376MHz,C)δ-116.71。
【0121】
I5の合成:
【0122】
【化6】
【0123】
オーブンで乾燥させた100mLのガラス瓶に、ZrCl(798mg、3.43mmol)、トルエン(30mL)、及び撹拌棒を入れた。溶液を冷凍庫に置き、-30℃で20分間冷却した。溶液を冷凍庫から取り出し、MeMgBr(4.35mL、13.1mmol、EtO中3M)で処理し、15分間撹拌した。冷懸濁液に、I5配位子(5.00g、3.26mmol)を固体として加えた。反応物を室温で3時間撹拌し、次いで、フリットプラスチック漏斗を通して濾過した。濾液を真空下で乾燥させた。得られた固体をヘキサンで洗浄し、真空下で乾燥させて、I5をオフホワイトの粉末(3.31g、62%)として得た。
【0124】
H NMR(400MHz,ベンゼン-d)δ 8.19(d,J=8.2Hz,2H),8.03-7.96(m,4H),7.87(d,J=2.5Hz,2H),7.81-7.76(m,2H),7.64(d,J=2.5Hz,2H),7.56(d,J=1.7Hz,2H),7.51(dd,J=8.2,1.7Hz,2H),7.30(dd,J=8.3,1.7Hz,2H),7.06-7.01(m,2H),3.57(dt,J=9.9,4.9Hz,2H),3.42(dt,J=10.3,5.2Hz,2H),1.79(d,J=14.5Hz,2H),1.66(d,J=14.4Hz,2H),1.60(s,18H),1.46(s,6H),1.42(s,6H),1.37-1.22(m,50H),0.94-0.91(m,24H),0.62-0.56(m,4H),0.11(s,6H),0.08(s,6H),-0.64(s,6H)。
【0125】
I6の合成スキーム
【0126】
【化7】
【0127】
2-ブロモ-4-フルオロ-6-メチル-フェノールの合成:1Lのガラス瓶に、アセトニトリル(400mL)、4-フルオロ-6-メチル-フェノール(50g、396.4mmol)、及びp-トルエンスルホン酸(一水和物)(75.6g、396mmol)を入れ、全てが溶解したことを確認した。溶液を氷で25分間、0℃に冷却した(沈殿物が形成された)。冷却した溶液を、(およそ5分間にわたって)N-ブロモスクシンイミド(70.55g、396.4mmol)でゆっくりと処理し、一晩撹拌しながら室温に到達させた。反応物を19F NMR分光法及びGC/MSによって分析して、完全な転化を確認した。揮発性物質を真空下で除去し、得られた固体をジクロロメタン(600mL)で処理し、冷凍庫(0℃)で冷却し、シリカゲルの大きなプラグを通して濾過した。シリカゲルを、冷CHClで数回洗浄した。揮発性物質を真空下で除去した(第1の画分の収量:46g、56%)。H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ 7.05(ddd,J=7.7,3.0,0.7Hz,1H),6.83(ddt,J=8.7,3.0,0.8Hz,1H),5.35(s,1H),2.29(d,J=0.7Hz,3H)。19F NMR(376MHz,Chloroform-d)δ-122.84。
【0128】
【化8】
【0129】
ビス((2-ブロモ-4-フルオロ-6-メチルフェノキシ)メチル)ジイソプロピルゲルマンの合成:グローブボックスにおいて、磁気撹拌棒を備えた250mLのフラスコ内で、95%のNaH(1.76g)(注意Hが生成される)を、水素発生が停止するまで、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(35mL)中の2-ブロモ-4-フルオロ-6-メチル-フェノール(15g、73.2mmol)の溶液にゆっくりと添加した。この混合物を、室温で30分間撹拌した。この時間の後、ジイソプロピルゲルミルジクロリド(6.29g、24.4mmol)を添加した。混合物を55℃に温め、この温度で18時間保持した。反応物をグローブボックスから取り出し、飽和NHCl水溶液(20mL)及びHO(8mL)でクエンチした。EtO(30mL)を添加し、相を分液漏斗に移し、分離した。水相をEtO(20mL)で更に抽出し、合わせた有機抽出物をブライン(10mL)で洗浄した。次いで有機層を乾燥させ(MgSO)、濾過し、濃縮乾固させた。粗残渣をシリカゲル上にドライロードし、次いでフラッシュカラムクロマトグラフィ(100mL/分、20分かけて10%に上昇する酢酸エチルを含む純粋なヘキサン)を使用して精製して、淡黄色油状物を生成物として得た。全ての清浄な画分(いくつかの画分は、出発フェノールの10%未満を含有していた)を合わせ、最終生成物を真空下で一晩放置した(収量:9g、62%)。
【0130】
H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ 7.10(dd,J=7.7,3.0Hz,2H),6.84(ddd,J=8.8,3.1,0.8Hz,2H),4.14(s,4H),2.33(s,6H),1.74(hept,J=7.4Hz,2H),1.35(d,J=7.4Hz,12H);19F NMR(376MHz,クロロホルム-d)δ-118.03。
【0131】
I6配位子の合成
【0132】
【化9】
【0133】
撹拌棒を備えた500mLのガラス瓶に、2,7-ジ-tert-ブチル-9-(2-((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェニル)-9H-カルバゾール(国際公開第2014105411(A1)号に開示)(29.0g、41.9mmol)、ビス((2-ブロモ-4-フルオロ-6-メチルフェノキシ)メチル)ジイソプロピルゲルマン(6.00g、8.65mmol、10%の2-ブロモ-4-フルオロ-2-メチル-フェノールを含有する)、及びTHF(80mL)を入れた。溶液を55℃に加熱し、撹拌しながら、クロロ[(トリ-tert-ブチルホスフィン)-2-(2-アミノビフェニル)]パラジウム(II)(tBuP-PdG2)(199mg、0.346mmol、4mol%)で処理した。NaOH水溶液(17.3mL、51.9mmol、3M)を窒素で20分間パージし、次いでTHF溶液に添加した。反応物を55℃で一晩撹拌した。水相を分離し、廃棄し、残存する有機相をジエチルエーテルで希釈し、ブラインで2回洗浄した。溶液をシリカゲルの短いプラグに通した。濾液をロータリーエバポレーターで乾燥させ、THF/MeOH(40mL/40mL)に溶解させ、HCl(2mL)で処理し、70℃で一晩撹拌した。溶液を真空下で乾燥させ、C18逆相カラムクロマトグラフィによって精製して、I6配位子をオフホワイトの固体として得た(収量:6.5g、54%)。
【0134】
H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ 8.01(d,J=8.2Hz,4H),7.42(dd,J=25.5,2.4Hz,4H),7.32(dd,J=8.2,1.6Hz,4H),7.17(s,4H),6.87(ddd,J=16.4,8.8,3.0Hz,4H),6.18(s,2H),3.79(s,4H),2.12(s,6H),1.71(s,6H),1.56(s,4H),1.38(s,12H),1.31(s,36H),0.83-0.73(m,30H);19F NMR(376MHz,クロロホルム-d)δ-119.02。
【0135】
I6の合成:
【0136】
【化10】
【0137】
オーブンで乾燥させた100mLのガラス瓶に、ZrCl(402mg、1.72mmol)、トルエン(83mL)、及び撹拌棒を入れた。溶液を冷凍庫に置き、-30℃で20分間冷却した。溶液を冷凍庫から取り出し、MeMgBr(2.4mL、7.1mmol、EtO中3M)で処理し、3分間撹拌した。冷懸濁液に、I6配位子(2.3g、1.64mmol)を固体として加え、残留粉末を冷トルエン(3mL)に溶解させ、反応物に加えた。反応物を室温で一晩撹拌し、次いで、フリットプラスチック漏斗を通して濾過した。濾液を真空下で乾燥させ、トルエン(40mL)に再溶解させ、セライトのプラグを通して再び濾過し、真空下で再び乾燥させた。得られた固体をペンタン(約5mL)で洗浄し、真空下で乾燥させて、I10をオフホワイトの粉末(2.1g、84%)として得た。
【0138】
H NMR(400MHz,ベンゼン-d)δ 8.20(dd,J=8.2,0.5Hz,2H),8.11(dd,J=8.2,0.6Hz,2H),7.88-7.82(m,4H),7.77(d,J=2.6Hz,2H),7.50(dd,J=8.3,1.7Hz,2H),7.42-7.37(m,4H),6.99(dd,J=8.7,3.1Hz,2H),6.20-6.10(m,2H),4.29(d,J=12.2Hz,2H),3.90(d,J=12.2Hz,2H),1.56(s,4H),1.53(s,18H),1.29(s,24H),1.27(s,6H),1.18(s,6H),1.04-0.94(m,2H),0.81(d,J=7.4Hz,6H),0.80(s,18H),0.74(d,J=7.4Hz,6H),-0.47(s,6H);19F NMR(376MHz,ベンゼン-d)δ-116.24。
【0139】
I7の合成スキーム
ビス((2-ブロモ-4-t-ブチルフェノキシ)メチル)ジイソプロピルシランの調製
【0140】
【化11】
【0141】
グローブボックス内で、250mLの一口丸底フラスコ内の無水THF(120mL)に、ジイソプロピルジクロロシラン(3.703g、20mmol、1.0当量)を溶解させた。フラスコをセプタムで蓋をし、密封し、グローブボックスから取り出し、ドライアイス-アセトン浴中で-78℃に冷却した。ブロモクロロメタン(3.9mL、60.0mmol、3.0当量)を加えた。シリンジポンプを使用して、n-BuLiのヘキサン溶液(18.4mL、46mmol、2.3当量)をフラスコの冷却壁に3時間かけて添加した。混合物を室温まで一晩(16時間)かけて昇温し、飽和NHCl(30mL)を加えた。2つの層が分離された。水層をエーテル(2x50mL)で抽出した。合わせた有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。粗生成物を更に精製することなく、次の工程に使用した。
【0142】
グローブボックス内で、40mLバイアルに、ビス(クロロメチル)ジイソプロピルシラン(2.14g、10mmol、1.0当量)、4-t-ブチル-2-ブロモフェノール(6.21g、27mmol、2.7当量)、KPO(7.46g、35mmol、3.5当量)、及びDMF(10mL)を入れた。反応混合物を80℃で一晩撹拌した。室温に冷却した後、反応混合物を、溶離液としてエーテル/ヘキサン(0/100→30/70)を使用するカラムクロマトグラフィによって精製した。4.4gの無色油状物を回収し、2工程後の全収率は、73%であった。
【0143】
H NMR(400MHz,CDCl)δ 7.51(d,J=2.4Hz,2H),7.26(dd,J=8.6,2.4Hz,2H),6.98(d,J=8.6Hz,2H),3.93(s,4H),1.45-1.33(m,2H),1.28(s,18H),1.20(d,J=7.3Hz,12H)。
【0144】
6’’,6’’’’’-(((ジイソプロピルシランジイル)ビス(メチレン))ビス(オキシ))ビス(3,3’’,5-トリ-tert-ブチル-5’-メチル-[1,1’:3’,1’’-テルフェニル]-2’-オール)の調製
【0145】
【化12】
【0146】
グローブボックス内で、撹拌棒を備えた40mLバイアルに、ビス((2-ブロモ-4-t-ブチルフェノキシ)メチル)ジイソプロピルシラン(1.20g、2.0mmol、1.0当量)、2-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-5-メチル-2-((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(2.54g、5.0mmol、2.5当量)、tBuP Pd G2(0.031g、0.06mmol、0.03当量)、THF(3mL)、及びNaOH 4M溶液(3.0mL、12.0mmol、6.0当量)を入れた。バイアルを窒素下にて55℃で2時間加熱した。完了したとき、上部の有機層をエーテルで抽出し、シリカゲルの短いプラグを通して濾過した。溶媒を減圧下で除去した。残留物をTHF(10mL)及びMeOH(10mL)に溶解させた。次いで、濃HCl(0.5mL)を添加した。得られた混合物を75℃で2時間加熱し、次いで室温まで冷却した。溶媒を減圧下で除去した。残留物を、溶離液としてTHF/MeCN(0/100→100/0)を使用する逆相カラムクロマトグラフィによって精製した。白色固体1.62gを回収した(収率78%)。
【0147】
H NMR(400MHz,CDCl)δ 7.39(t,J=1.8Hz,2H),7.36(d,J=1.8Hz,4H),7.29(d,J=2.5Hz,2H),7.22(dd,J=8.6,2.6Hz,2H),7.10(d,J=2.2Hz,2H),6.94(d,J=2.3,2H),6.75(d,J=8.6Hz,2H),5.37(s,2H),3.61(s,4H),2.32(d,J=0.9Hz,6H),1.33(s,36H),1.29(s,18H),0.90-0.81(m,2H),0.73(d,J=7.1Hz,12H)。
【0148】
I7の調製
【0149】
【化13】
【0150】
グローブボックス内で、撹拌棒を備えたオーブン乾燥した40mLバイアルに、ZrCl(47mg、0.2mmol、1.0当量)及び無水トルエン(6.0mL)を入れた。バイアルを冷凍庫で少なくとも30分間-30℃に冷却した。バイアルを冷凍庫から取り出した。MeMgBr(3M、0.29mL、0.86mmol、4.3当量)を、撹拌している懸濁液に添加した。2分後、6’’,6’’’’’-(((ジイソプロピルシランジイル)ビス(メチレン))ビス(オキシ))ビス(3,3’’,5-トリ-tert-ブチル-5’-メチル-[1,1’:3’,1’’-テルフェニル]-2’-オール(206mg、0.2mmol、1.0当量)を固体として添加した。得られた混合物を室温で一晩撹拌した。溶媒を真空下で除去して、暗色固体を得て、これをヘキサン(10mL)で洗浄し、次いでトルエン(12mL)で抽出した。濾過した後、トルエン抽出物を真空下で乾燥させた。白色固体170mgを回収した(収率74%)。
【0151】
H NMR(400MHz,C)δ 8.20-7.67(m,4H),7.79(t,J=1.8Hz,2H),7.56(d,J=2.5Hz,2H),7.26(d,J=2.4,2H),7.21(d,J=2.4,2H),7.18(d,J=2.4,2H),5.67(d,J=8.6Hz,2H),4.61(d,J=13.5Hz,2H),3.46(d,J=13.5Hz,2H),2.26(s,6H),1.47(s,36H),1.25(s,18H),0.52(dd,J=17.0,7.5Hz,12H),0.30-0.18(m,2H),-0.05(s,6H)。
【0152】
金属-配位子錯体I1~I8は、式(I)による構造を有し、以下のとおりである。
【0153】
【化14】
【0154】
【化15】
【0155】
金属-配位子錯体C1~C3は比較例であり、以下のとおりである。
【0156】
【化16】
【0157】
実施例2-重合反応
金属-配位子錯体(Metal-ligand complexes、MLC)I1~I8を、活性化剤としてMMAO-A1、MMAO-B、MMAO-C、MMAO-D1、MMAO-D2、MMAO-E、又はMMAO-Fを使用する連続重合プロセスにおいて試験し、比較金属配位子錯体C1~C3と比較し、データを表2~表9にまとめる。
【0158】
【表1】

メチル:n-オクチル比が約6:1になるように、MMAO-A1及びA2は、n-オクチル置換基で修飾されている。メチル:n-オクチル比が約19:1になるように、MMAO-Bは、n-オクチル置換基で修飾されている。
【0159】
【表2】
【0160】
160℃の反応器温度、3.4kg/時間のエチレン、3.3kg/時間の1-オクテン、21kg/時間のISOPAR Eの連続供給流での重合。[A]%固形分は反応器中のポリマーの濃度である。[B](mol%)は、反応器に供給されたエチレンに対する水素のモル分率として定義される。%で表示。[C]効率(Eff.)は、ポリマー10g/金属gとして測定される。反応器温度=153℃、2.5kg/時間のエチレン、3.3kg/時間の1-オクテン、21kg/時間のISOPAR Eの連続供給流。[HNMe(C1837][B(C]を錯体に対して1.2モル比で使用し、MMAO-Dを反応器中の報告されたAl濃度で使用した。反応器温度=190℃、4.6kg/時間のエチレン、2.0kg/時間の1-オクテン、22kg/時間のISOPAR Eの連続供給流。
【0161】
【表3】

エントリ番号は表2を参照している。
【0162】
【表4】

エントリ番号は表2を参照している。
【0163】
表2~表4に記録されたデータは、MMAO活性化剤と組み合わせた本発明の触媒が、MMAO活性化剤にかかわらず、U指数によって示される狭いMWDを有するポリマーを生成することを示す。
【0164】
U指数が100に近づくと、フィッティングの面積と試料の面積は類似しており、したがってシングルサイト触媒を示す。先に述べたように、本発明の触媒系の置換パターンは、第2の活性部位の形成を防止し、したがってより狭い組成分布をもたらすと考えられる。更に、組成分布が狭いほど、予想されるB指数は小さくなる。表3及び表4に示される本発明の実施例は全て、非置換架橋を有する比較例よりも小さいB指数を示す。
【0165】
MMAO-A1、MMAO-B及びMMAO-Cの利点を実証するために、連続プロセスデータを表5~表8に示す。所望のポリマーメルトインデックスに達するようにHを調節し、密度を変化させた。
【0166】
【表5】
【0167】
160℃での重合、3.4kg/時間のエチレン、3.3kg/時間の1-オクテン、21kg/時間のISOPAR Eの連続供給流、14%の固体、81%のエチレン転化。効率(Eff.)は、ポリマー10g/金属gとして測定される。
【0168】
【表6】
【0169】
160℃での重合、3.4kg/時間のエチレン、3.3kg/時間の1-オクテン、21kg/時間のISOPAR Eの連続供給流、14%の固体、81%のエチレン転化。効率(Eff.)は、ポリマー10g/金属gとして測定される。
【0170】
【表7】
【0171】
175℃での重合、3.3kg/時間のエチレン、1.6kg/時間の1-オクテン、22kg/時間のISOPAR Eの連続供給流、14%の固体、87%のC2転化。効率(Eff.)は、ポリマー10g/金属gとして測定される。
【0172】
図1は、共触媒の種類に応じた触媒効率のグラフである。MMAO-A1、MMAO-B及びMMAO-Cと組み合わせて使用したときの金属-配位子錯体I1、I3及びI7の効率は、比較共触媒MMAO-D/ホウ酸塩と組み合わせたときよりも大きい。
【0173】
【表8】
【0174】
175℃での重合、140lbs/時間のエチレン、30.7~35.0lbs/時間の1-オクテン、900lbs/時間のISOPAR Eの連続流、14%の固体、93.8%のエチレン転化率。効率(Eff.)は、ポリマー10g/金属gとして測定される。
【0175】
装置規格
全ての溶媒及び試薬は、商業的供給源から入手し、別段の記載がない限り、受け取ったまま使用した。無水トルエン、ヘキサン、テトラヒドロフラン、及びジエチルエーテルを、活性アルミナ、及び場合によってはQ-5反応物質を通過させることによって精製する。窒素充填グローブボックス中で行った実験に使用した溶媒は、活性化4Åモレキュラーシーブ上での貯蔵によって更に乾燥させる。水分に敏感な反応用のガラス器具を、使用前に一晩オーブン内で乾燥させる。NMRスペクトルを、Varian 400-MR分光計及びVNMRS-500分光計で記録する。LC-MS分析は、Waters 2424 ELS検出器、Waters 2998 PDA検出器、及びWaters 3100 ESI質量検出器と組み合わせたWaters e2695分離モジュールを使用して行う。LC-MS分離は、XBridge C18 3.5μm 2.1×50mmカラムで、5:95~100:0のアセトニトリル及び水のグラジエント(イオン化剤として0.1%のギ酸を含む)を使用して行う。HRMS分析は、エレクトロスプレーイオン化を備えたAgilent 6230 TOF質量分析計と組み合わせたZorbax Eclipse Plus C18 1.8μm 2.1×50mmカラムを備えたAgilent 1290 Infinity LCを使用して行う。H NMRデータは、次のように報告する:化学シフト(多重度(br=幅広線、s=1重線、d=2重線、t=3重線、q=4重線、p=5重線、sex=6重線、sept=7重線、及びm=多重線)、積分値、及び帰属)。H NMRデータの化学シフトは、基準として重水素化溶媒中の残留プロトンを使用して、内部テトラメチルシラン(TMS、δスケール)から低磁場に(ppmで報告する。13C NMRデータは、Hデカップリングを用いて決定し、化学シフトは、基準として重水素化溶媒中の残留炭素を使用して、テトラメチルシラン(TMS、δスケール)から低磁場にppmで報告する。
図1
【手続補正書】
【提出日】2023-03-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィンモノマーを重合するプロセスであって、前記プロセスは、触媒系の存在下でエチレンと任意選択的に1つ以上のオレフィンモノマーとを反応させることを含み、前記触媒系は、
修飾ヒドロカルビルメチルアルミノオキサンであって、前記ヒドロカルビル修飾メチルアルミノオキサン中のアルミニウムの総モル数に基づいて50モルパーセント未満のAlRA1B1C1を有し、RA1、RB1、及びRC1は、独立して、直鎖(C~C40)アルキル、分枝鎖(C~C40)アルキル又は(C~C40)アリールである、修飾ヒドロカルビルメチルアルミノオキサンと、
式(I)による1つ以上の金属-配位子錯体:
【化1】

[式中、
Mは、チタン、ジルコニウム、又はハフニウムであり、
nは、1、2、又は3であり、
各Xは、独立して、不飽和(C~C50)炭化水素、不飽和(C~C50)ヘテロ炭化水素、(C~C50)ヒドロカルビル、(C~C50)アリール、(C~C50)ヘテロアリール、シクロペンタジエニル、置換シクロペンタジエニル、(C~C12)ジエン、ハロゲン、-N(R、及び-N(R)CORから選択された単座配位子であり、
前記金属-配位子錯体は、全体的に電荷中性であり、
及びR16は、独立して、-H、(C~C40)アリール、(C~C40)ヘテロアリール、式(II)を有するラジカル、式(III)を有するラジカル、及び式(IV)を有するラジカルからなる群から選択され、
【化2】

式中、R31~35、R41~48及びR51~59のそれぞれは、独立して、-H、(C~C40)ヒドロカルビル、(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、又はハロゲンから選択され、
、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、及びR15は、独立して、-H、(C~C40)ヒドロカルビル、(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、及びハロゲンから選択され、
Yは、CH、CHR21、CR2122、SiR2122、又はGeR2122であり、R21及びR22は、(C~C20)アルキルであり、
ただし、(1)YがCHであるとき、R及びRのうちの少なくとも1つは、-Hではなく、
式(I)中の各R、R、及びRは、独立して、(C~C30)ヒドロカルビル、(C~C30)ヘテロヒドロカルビル、又は-Hである]と、を含み、
前記触媒系は、ホウ酸塩活性化剤を含有しない、重合プロセス。
【請求項2】
前記修飾ヒドロカルビルメチルアルミノオキサンは、前記ヒドロカルビル修飾メチルアルミノオキサン中のアルミニウムの総モル数に基づいて25モルパーセント未満のAlRA1B1C1を含有する、請求項1に記載の重合プロセス。
【請求項3】
前記修飾ヒドロカルビルメチルアルミノオキサンは、前記ヒドロカルビル修飾メチルアルミノオキサン中のアルミニウムの総モル数に基づいて15モルパーセント未満のAlRA1B1C1を含有するか、又は前記修飾ヒドロカルビルメチルアルミノオキサンは、前記ヒドロカルビル修飾メチルアルミノオキサン中のアルミニウムの総モル数に基づいて10モルパーセント未満のAlRA1B1C1を含有する、請求項1又は2に記載の重合プロセス。
【請求項4】
前記修飾ヒドロカルビルメチルアルミノオキサンは、修飾メチルアルミノオキサンである、請求項1に記載の重合プロセス。
【請求項5】
前記アルミニウム対触媒金属は、500:1未満である、請求項1に記載の重合プロセス。
【請求項6】
前記アルミニウム対触媒金属は、200:1未満又は50:1未満である、請求項1に記載の重合プロセス。
【請求項7】
及びRのうちの少なくとも1つは、(C~C40)ヒドロカルビル、(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、又はハロゲン原子である、請求項1に記載の重合プロセス。
【請求項8】
及びRのうちの少なくとも1つは、(C~C)アルキルである、請求項1に記載の重合プロセス。
【請求項9】
及びR16のうちの少なくとも1つは、式(III)を有するラジカルである、請求項1に記載の重合プロセス。
【請求項10】
42及びR47は、(C~C20)ヒドロカルビル若しくは-Si[(C~C20)ヒドロカルビル]であるか、又はR43及びR46は、(C~C20)ヒドロカルビル若しくは-Si[(C~C20)ヒドロカルビル]である、請求項9に記載の重合プロセス。
【請求項11】
及びR16のうちの少なくとも1つは、式(II)を有するラジカルである、請求項1に記載の重合プロセス。
【請求項12】
32及びR34は、(C~C12)ヒドロカルビル又は-Si[(C~C20)ヒドロカルビル]である、請求項11に記載の重合プロセス。
【請求項13】
及びR16のうちの少なくとも1つは、式(IV)を有するラジカルである、請求項1に記載の重合プロセス。
【請求項14】
52、R53、R55、R57、及びR58のうちの少なくとも2つは、(C~C20)ヒドロカルビル又は-Si[(C~C20)ヒドロカルビル]である、請求項12に記載の重合プロセス。
【請求項15】
及びR14は、(C~C20)アルキルである、請求項1に記載の重合プロセス。
【請求項16】
及びR11は、tert-ブチルである、請求項1に記載の重合プロセス。
【請求項17】
及びR14は、tert-オクチル又はn-オクチルである、請求項1に記載の重合プロセス。
【請求項18】
前記オレフィンモノマーは、(C~C20)α-オレフィンである、請求項1に記載の重合プロセス。
【請求項19】
前記オレフィンモノマーは、環状オレフィンである、請求項1に記載の重合プロセス。
【請求項20】
前記重合プロセスは、溶液重合反応である、請求項1に記載の重合プロセス。
【国際調査報告】