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特表2023-534715ハイブリッド車のためのマグネシウム及びホウ素含有潤滑油組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-10
(54)【発明の名称】ハイブリッド車のためのマグネシウム及びホウ素含有潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/04 20060101AFI20230803BHJP
   C10M 139/00 20060101ALN20230803BHJP
   C10M 159/22 20060101ALN20230803BHJP
   C10M 159/24 20060101ALN20230803BHJP
   C10M 135/10 20060101ALN20230803BHJP
   C10M 129/54 20060101ALN20230803BHJP
   C10N 10/04 20060101ALN20230803BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20230803BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20230803BHJP
【FI】
C10M169/04 ZHV
C10M139/00 A
C10M159/22
C10M159/24
C10M135/10
C10M129/54
C10N10:04
C10N40:25
C10N30:00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504281
(86)(22)【出願日】2021-07-20
(85)【翻訳文提出日】2023-03-08
(86)【国際出願番号】 IB2021056527
(87)【国際公開番号】W WO2022018624
(87)【国際公開日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】63/054,275
(32)【優先日】2020-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391050525
【氏名又は名称】シェブロンジャパン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】598037547
【氏名又は名称】シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 勲
(72)【発明者】
【氏名】ミラー、ジョン ロバート
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BB08A
4H104BB24C
4H104BB33A
4H104BB34A
4H104BG06C
4H104BJ05C
4H104CA04A
4H104DA02A
4H104DA06A
4H104DB06C
4H104DB07C
4H104FA02
4H104LA12
4H104PA41
(57)【要約】
ハイブリッドエンジン中のエマルション安定性を維持する方法が開示される。方法は、主要量の潤滑粘度の油、少量のマグネシウム含有清浄剤、及び少量のホウ酸化分散剤を有する潤滑油組成物によりハイブリッドエンジンを潤滑にすること及び作動させることを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッドエンジン中のエマルション安定性を維持する方法であって、
a.主要量の潤滑粘度の油、
b.少量のマグネシウム含有清浄剤、及び
c.少量のホウ酸化分散剤
を含む潤滑油組成物により前記ハイブリッドエンジンを潤滑にすること及び作動させることを含む、前記方法。
【請求項2】
前記マグネシウム清浄剤が、スルホン酸マグネシウム清浄剤またはサリチル酸マグネシウム清浄剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マグネシウム含有清浄剤が、異性化ノルマルαオレフィンから誘導される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記異性化ノルマルαオレフィンが、約0.1~約0.4の前記ノルマルαオレフィンの異性化レベル(I)を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記異性化ノルマルαオレフィンが、約0.1~約0.3の前記ノルマルαオレフィンの異性化レベル(I)を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記異性化ノルマルαオレフィンが、約0.16~約0.27の前記ノルマルαオレフィンの異性化レベル(I)を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記マグネシウム含有清浄剤が、約50ppm~1500ppmのマグネシウムを提供する量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ハイブリッドエンジンを作動させる方法であって、
a.主要量の潤滑粘度の油、
b.少量のマグネシウム含有清浄剤、及び
c.少量のホウ酸化分散剤
を含む潤滑油組成物により前記ハイブリッドエンジンを潤滑にすること及び作動させることを含む、前記方法。
【請求項9】
前記潤滑油組成物が、前記潤滑油組成物中で10%の水を含むように改変されたASTM D7563によって決定されるように、前記ハイブリッドエンジン中の水及び/または燃料汚染物の乳化を改善する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ハイブリッドエンジン中の水分及び/または燃料汚染物の乳化を改善するための潤滑油組成物の使用であって、
a.主要量の潤滑粘度の油、
b.少量のマグネシウム含有清浄剤、及び
c.少量のホウ酸化分散剤
を含む潤滑油組成物を前記ハイブリッドエンジンへ提供することを含む、前記潤滑油組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
開示の背景
現代の潤滑油調合物は、多くの場合相手先ブランド製造業者によって設定された厳格な仕様へ調合される。かかる仕様を満たすために、様々な添加剤が粘度を潤滑にする基油と一緒に使用される。適用に依存して、典型的な潤滑油組成物は、ほんの2・3の例を挙げると、分散剤、清浄剤、抗酸化剤、摩耗防止剤、錆防止剤、腐食防止剤、発泡防止剤、及び摩擦調整剤を含有し得る。異なる適用は、潤滑油組成物の中へ入れる添加剤のタイプを支配するだろう。
【0002】
ハイブリッド車は、主に低速では電気モーターによって駆動され、高速では内燃エンジンによって駆動される。電気モーターに電力を供給するバッテリーは、典型的には回生ブレーキを介し、且つ内燃エンジンによって充電される。加速の間にモーターがエンジンを支援する並列システムがある。直列/並列システムは、速度増加と釣合の取れている様式でエンジン及びモーターからの動力入力を分配し、発進時及び低速度では主駆動源はモーターである。
【0003】
これらのハイブリッド車において、車が停止する場合にエンジンは停止され、車がモーターまたはブレーキによってのみ駆動される場合にはエンジンの燃料システムも中断される。したがって、エンジンは、通常の作動の間にアイドリングストップを繰り返す。
【0004】
結果的に、ハイブリッド車のために使用されるエンジン油は、従来のエンジンのみによって駆動される自動車のエンジン油に比較して、異なる環境で作動する。ハイブリッド車が短い期間しかエンジンを稼働させないので、エンジンの長期作動を介して水分及び燃料を十分に蒸発させることができずに、油中に水分及び燃料を蓄積するという問題がある。このことは、エンジン性能に負の影響を与える不安定なエマルションの形成をもたらす。
【0005】
したがって、安定的なエマルションの形成により油中で有意量の水分(低温での作動から生成された)を維持することによってエンジン部品の保護を改善する組成物が必要である。
【発明の概要】
【0006】
開示の要約
改変されたASTM D7563法によって決定される、ハイブリッド車のエンジン中のエマルション安定性を維持するための内燃エンジン用の潤滑油組成物が開示される。ハイブリッド車のエンジン中のエマルション安定性を維持するために当該潤滑油組成物を使用する方法も開示される。
【0007】
一態様において、ハイブリッドエンジン中のエマルション安定性を維持する方法であって、主要量の潤滑粘度の油、少量のマグネシウム含有清浄剤、及び少量のホウ酸化分散剤を含む潤滑油組成物によりハイブリッドエンジンを潤滑にすること及び作動させることを含む、方法が提供される。
【0008】
別の態様において、ハイブリッドエンジンを作動させる方法であって、主要量の潤滑粘度の油、少量のマグネシウム含有清浄剤、及び少量のホウ酸化分散剤を含む潤滑油組成物によりハイブリッドエンジンを潤滑にすること及び作動させることを含む、方法が提供される。
【0009】
さらなる態様において、ハイブリッドエンジン中の水分及び/または燃料汚染物の乳化を改善するための潤滑油組成物の使用であって、主要量の潤滑粘度の油、少量のマグネシウム含有清浄剤、及び少量のホウ酸化分散剤を含む潤滑油組成物をハイブリッドエンジンへ提供することを含む、潤滑油組成物の使用が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
開示の詳細な記述
本開示は様々な改変及び代替形態を受け入れるが、その具体的な実施形態が本明細書において詳細に記載される。しかしながら、具体的な実施形態の本明細書における記載は、本開示を開示される特定の形態へ限定することを意図しないが、反対に、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の趣旨及び範囲内にあるすべての改変物、均等物、及び代替物をカバーすることを意図することが理解されるべきである。
【0011】
本明細書において開示される主題の理解を容易にするために、本明細書において使用される多数の用語、略語、または他の短縮語を以下で定義する。定義されない任意の用語、略語、または短縮語は本出願の申請と同時期に当業者によって使用される通常の意味を有することが理解される。
【0012】
定義
本明細書において使用される時、以下の用語は、相反することが明示的に述べられない限り、以下の意味を有する。本明細書において、以下の単語及び表現は、使用されるならば、及び使用される場合に、以下で与えられる意味を有する。
【0013】
「主要量」は、組成物の50重量%を超えることを意味する。
【0014】
「少量」は、述べられた添加剤に関して、及び組成物中に存在するすべての添加剤の総質量に関して表現された、添加剤(複数可)の活性成分として計算される組成物の50重量%未満を意味する。
【0015】
「活性成分」または「活性物質」または「油不含有」は、希釈物質または溶媒ではない添加材料を指す。
【0016】
報告されるすべてのパーセンテージは、別段述べられない限り、活性成分ベース(すなわち担体または希釈油を考慮しない)の重量%である。
【0017】
略語「ppm」は、潤滑油組成物の総重量に基づく重量百万分率を意味する。
【0018】
150℃での高温高剪断(HTHS)粘度は、ASTM D4683に従って決定された。
【0019】
100℃での動粘度(KV100)は、ASTM D445に従って決定された。
【0020】
金属。「金属」という用語は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの混合物を指す。
【0021】
本明細書及び特許請求の範囲を通して、油溶性または分散性という表現が使用される。油溶性または分散性によって、活性または性能の所望されるレベルを提供するのに必要とされる量が、潤滑粘度の油中で溶解、分散、または懸濁されることによって取り込まれ得ることが意味される。通常、これは、潤滑油組成物中の材料の少なくとも約0.001重量%が取り込まれ得ることを意味する。油溶性及び分散性、特に「安定分散性」という用語のさらなる考察については、米国特許出願第4,320,019号(これは、この点に関して関連する教示のために、参照することによって明示的に本明細書に援用される)を参照されたい。
【0022】
「硫酸灰分」という用語は、本明細書において使用される時、潤滑油中の清浄剤及び金属添加剤からもたらされる不燃性残留を指す。硫酸灰分は、ASTM試験D874を使用して決定され得る。
【0023】
「全塩基価」または「TBN」という用語は、本明細書において使用される時、1グラムのサンプル中のKOHのミリグラムに相当する塩基の量を指す。したがって、より高いTBN数はより多くのアルカリ生成物及びしたがってより高いアルカリ度を反映する。TBNは、ASTM D2896試験を使用して決定された。
【0024】
ホウ素、カルシウム、マグネシウム、モリブデン、リン、硫黄、及び亜鉛の含有量は、ASTM D5185に従って決定された。
【0025】
窒素含有量は、ASTM D4629に従って決定された。
【0026】
本明細書において言及されるすべてのASTM基準は、本出願の出願日の時点での最新版である。
【0027】
オレフィン。「オレフィン」という用語は、多数のプロセスによって得られる、1つまたは複数の炭素-炭素二重結合を有する脂肪族不飽和炭化水素のクラスを指す。1つの二重結合を含有するものはモノアルケンと呼ばれ、2つの二重結合を備えたものはジエン、アルキルジエン、またはジオレフィンと呼ばれる。αオレフィンは、二重結合が第1の炭素と第2の炭素との間であるので、特に反応性が高い。例としては1-オクテン及び1-オクタデセンであり、それらは中間的な生体分解性界面活性物質のための開始点として使用される。直鎖状及び分岐状のオレフィンも、オレフィンの定義中に包含される。
【0028】
ノルマルαオレフィン。「ノルマルαオレフィン」という用語は、炭化水素鎖のα位または1位に存在する炭素-炭素二重結合を備えた、直鎖の非分岐炭化水素であるオレフィンを指す。
【0029】
異性化ノルマルαオレフィン。「異性化ノルマルαオレフィン」という用語は、本明細書において使用される時、存在するオレフィン種の分布の変更及び/またはアルキル鎖に沿った分岐の導入をもたらす異性化条件に供されたαオレフィンを指す。異性化オレフィン生成物は、約10~約40の炭素原子、好ましくは約20~約28の炭素原子、及び好ましくは約20~約24の炭素原子を含有する直鎖状αオレフィンの異性化によって得られ得る。
【0030】
10-40ノルマルαオレフィン。この用語は、10未満の炭素数が蒸留または他の分画方法によって取り出されたノルマルαオレフィンの画分を定義する。
【0031】
別段の定めのない限り、すべてのパーセンテージは重量パーセントである。
【0032】
本開示は様々な改変及び代替形態を受け入れるが、その具体的な実施形態が本明細書において詳細に記載される。しかしながら、具体的な実施形態の本明細書における記載は、本開示を開示される特定の形態へ限定することを意図しないが、反対に、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の趣旨及び範囲内にあるすべての改変物、均等物、及び代替物をカバーすることを意図することが理解されるべきである。
【0033】
概要または例において記載される作用のすべてが要求されるとは限らないこと、特定の作用の一部は要求されなくてもよいこと、及び1つまたは複数のさらなる作用が記載されるものに加えて実行されてもよいことに注目されたい。なおさらに、作用がリストされる順序は必ずしもそれらが実行される順序ではない。
【0034】
利益、他の利点、及び問題に対する解決策は、特定の実施形態に関して本明細書において記載されている。しかしながら、利益、利点、及び問題に対する解決策、ならびに任意の利益、利点、または解決策を生じさせ得るか、またはより明らかにさせ得る任意の特色(複数可)は、任意のまたはすべての請求項の決定的な、必要な、または必須の特色として解釈されるべきでない。
【0035】
本明細書において記載される実施形態の明細及び例示は、様々な実施形態の構造の一般的な理解を提供することが意図される。
【0036】
本明細書において使用される時、「含む」、「含むこと」、「包含する」、「包含すること」、「有する」、「有すること」という用語、または任意の他のこれらの変化形は、非排他的な包含を網羅することが意図される。例えば、あるリストの特色を含むプロセス、方法、物品、または装置は、必ずしもそれらの特色にのみ限定されないが、明示的にリストされない他の特色、またはかかるプロセス、方法、物品、もしくは装置に固有の他の特色を含み得る。さらに、相反することが明示的に述べられない限り、「または」は、包含的なまたはを指し、排他的なまたはを指さない。例えば、条件AまたはBは以下のうちの任意の1つにより満たされる。Aは真であり(または存在する)且つBは偽である(または存在しない)こと、Aは偽であり(または存在しない)且つBは真である(または存在する)こと、ならびにA及びBの両方は真である(または存在する)こと。
【0037】
「a」または「an」の使用を用いて、本明細書において記載される要素及び構成要素を記載する。これは単に便宜上のため、及び本開示の実施形態の範囲の一般的な意味を与えるために行われる。この記載は1つまたは少なくとも1つを含むように解釈されるべきであり、そうでないことが明らかに意味されない限り、単数は複数も包含し、その逆も成立する。「平均化した」という用語は、値を指す場合に、平均、幾何平均、または中央値を意味することが意図される。元素周期表内の列に対応する族番号は、CRC Handbook of Chemistry and Physics, 81st Edition (2000-2001)の中で見られるような「新しい表記法」の規約を使用する。
【0038】
別段定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって共通して理解されるものと同じ意味を有する。材料、方法、及び例は、単に例示的なものであり、限定を意図したものではない。本明細書において記載されていない程度の、特異的な材料及び加工行為に関する多くの詳細は従来のものであり、潤滑剤そして油及びガスの産業内の教科書及び他の出典で見出され得る。
【0039】
本明細書及び例示は、本明細書において記載される構造または方法を使用する調合物、組成物、装置、及びシステムのすべての要素及び特色の網羅的且つ包括的な記載として供されることは意図されない。別個の実施形態は単一の実施形態中の組み合わせで提供され得、反対に、単一の実施形態の文脈中で記載される様々な特色は、簡潔さのために、別々にまたは任意の副組み合わせでも提供され得る。さらに、範囲中で述べられる値への参照は、その範囲内の各々の値及びすべての値を含む。他の多くの実施形態がこの明細書を読了した後のみに当業者へ明らかであろう。本開示の範囲から逸脱せずに、構造的置換、論理的置換、または他の変更が行われ得るように、他の実施形態が使用され得、本開示から導き出され得る。したがって、本開示は制限的というよりむしろ例示的なものとして見なされるべきである。
【0040】
ハイブリッド車のエンジンのエマルション安定性を維持する内燃エンジン用の潤滑油組成物であって、
主要量の潤滑粘度の油、
少量のマグネシウム含有清浄剤、及び
少量のホウ酸化分散剤
を含む、潤滑油組成物が開示される。
【0041】
ハイブリッド車のエンジン中の水の汚染物を乳化するために水分及び燃料が混入された潤滑油の能力を改善する方法も開示される。
【0042】
改変されたASTM D7563試験(本明細書において開示される)によって決定されるハイブリッドエンジンのエマルション安定性を維持する方法であって、
主要量の潤滑粘度の油、
少量のマグネシウム含有清浄剤、及び
少量のホウ酸化分散剤
を含む潤滑油組成物によりハイブリッドエンジンを潤滑にすること及び作動させることを含む、方法も開示される。
【0043】
内燃エンジンを潤滑にするための潤滑油組成物の使用であって、潤滑油組成物が、
主要量の潤滑粘度の油、
少量のマグネシウム含有清浄剤、及び
少量のホウ酸化分散剤
を含み、
改変されたASTM D7563法によって決定されるように、ハイブリッド車のエンジン中のエマルション安定性を維持する、潤滑油組成物の使用も開示される。
【0044】
潤滑粘度の油
潤滑粘度の油(時には「ベースストック」または「基油」として称される)は、潤滑剤の一次液体構成物であり、その中へ添加剤及び場合によっては他の油がブレンドされて、例えば最終的な潤滑剤(または潤滑剤組成物)を生成する。基油は、濃縮物を作製するために、そして潤滑油組成物をそれから作製するために有用であり、天然潤滑油及び合成潤滑油ならびにそれらの組み合わせから選択され得る。
【0045】
天然油としては、動植物油、液体石油系油分、ならびにパラフィン系タイプ、ナフテン系タイプ、及びパラフィン系-ナフテン系混合タイプの水素化精製され溶媒処理された鉱油系潤滑油が挙げられる。石炭または頁岩から誘導された潤滑粘度の油も有益な基油である。
【0046】
合成潤滑油としては、炭化水素油[重合及び共重合(interpolymerized)したオレフィン(例えばポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン-イソブチレンコポリマー、塩素化ポリブチレン、ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、ポリ(1-デセン))、アルキルベンゼン(例えばドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2-エチルヘキシル)ベンゼン))、ポリフェノール(例えばビフェニル、テルフェニル、アルキル化ポリフェノール)、ならびにアルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化硫化ジフェニル、ならびにそれらの誘導体、類似体、及び同族体等]が挙げられる。
【0047】
合成潤滑油の別の好適なクラスは、ジカルボン酸(例えばマロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸、及びアルケニルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、アジピン酸、リノール酸二量体、フタル酸)と、様々なアルコール(例えばブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール)とのエステルを含む。これらのエステルの具体的な例としては、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2-エチルヘキシル)、フマル酸ジ-n-ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸二量体の2-エチルヘキシルジエステル、ならびに1モルのセバシン酸を2モルのテトラエチレングリコール及び2モルの2-エチルヘキサン酸と反応させることによって形成された複合体エステルが挙げられる。
【0048】
合成油として有益なエステルとしては、C~C12モノカルボン酸及びポリオール、ならびにポリオールエーテル(ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、及びトリペンタエリトリトール等)から作製されたものも挙げられる。
【0049】
基油は、Fischer-Tropsch合成した炭化水素から誘導され得る。Fischer-Tropsch合成した炭化水素は、Fischer-Tropsch触媒を使用してH及びCOを含有する合成ガスから作製される。かかる炭化水素は、基油として有用であるために典型的にはさらなるプロセシングを要求する。例えば、炭化水素は、当業者に公知のプロセスを使用して、水素化異性化、水素化分解と水素化異性化、脱蝋、または水素化異性化と脱蝋され得る。
【0050】
未精製油、精製油、及び再精製油は、本潤滑油組成物中で使用され得る。未精製油は、さらなる精製処理無しに天然源または合成源から直接得られたものである。例えば、乾留操作から直接得られるシェール油、蒸留から直接得られる石油系油分、またはエステル化プロセスから直接得られ、さらなる処理無しに使用されるエステル油は、未精製油であるだろう。精製油は、1つまたは複数の特性を改善する1つまたは複数の精製ステップにおいてさらに処理される以外は未精製油に類似する。多くのかかる精製技法(蒸留、溶媒抽出、酸抽出または塩基抽出、濾過、及びパーコレーション等)が、当業者に公知である。
【0051】
再精製油は、業務で既に使用されている精製油へ適用される、精製油を得るのに使用されたものに類似するプロセスによって得られる。かかる再精製油は再生油または再処理油としても公知であり、多くの場合使用済み添加剤及び油分解生成物の承認のための技法によって追加でプロセシングされる。
【0052】
したがって、本潤滑油組成物の作製に使用され得る基油は、American Petroleum Institute (API) Base Oil Interchangeability Guidelines (API Publication 1509)の中で規定されるグループI~V中の基油のうちの任意のものから選択され得る。かかる基油グループは以下の表1中で要約される。
【表1】
【0053】
本明細書における使用に好適な基油は、APIのグループI、グループII、グループIII、グループIV、及びグループVの油に対応する様々なもの、ならびにそれらの組み合わせのうちの任意のもの、好ましくは卓越した揮発性、安定性、粘度測定性、及び清浄度の特色に起因してグループIII~グループVの油である。
【0054】
本開示の潤滑油組成物における使用のための潤滑粘度の油(基油とも称される)は、典型的には主要量(例えば組成物の総重量に基づいて、50重量%超、好ましくは約70重量%超、より好ましくは約80~約99.5重量%、及び最も好ましくは約85~約98重量%の量)で存在する。「基油」という表現は、本明細書において使用される時、ベースストック、またはベースストックのブレンドを意味すると理解されるべきであり、これは、同じ仕様書に対する単一の製造者によって(供給源または製造業者の所在位置に依存せずに)生成され、同じ製造者仕様書を満たし、一意的な式、製品識別番号、またはその両方によって同定される、潤滑性の構成要素である。本明細書における使用のための基油は、任意の及びすべてのかかる適用のための潤滑油組成物の調合において使用される現時点で公知のまたは後に見出される任意の潤滑粘度の油、例えばエンジン油、船舶用シリンダー油、機能液(油圧油、ギア油、トランスミッション液等)であり得る。追加で、本明細書における使用のための基油は、粘度指数向上剤(例えばポリマーアルキルメタクリレート)、オレフィン系コポリマー(例えばエチレン-プロピレンコポリマーまたはスチレン-ブタジエンコポリマー)、ならびに同種のもの及びそれらの混合物を任意選択で含有し得る。
【0055】
当業者が容易に認識するように、基油の粘度は適用に依存する。したがって、本明細書における使用のための基油の粘度は、通常摂氏100度(℃)で約2~約2000センチストーク(cSt)の範囲だろう。概して、個別にエンジン油として使用された基油は、100℃で約2cSt~約30cSt、好ましくは約3cSt~約16cSt、及び最も好ましくは約4cSt~約12cStの動粘度範囲を有し、所望される最終用途及び完成した油中の添加剤に依存して、選択されるかまたはブレンドされて、所望されるグレードのエンジン油(例えば0W、0W-8、0W-12、0W-16、0W-20、0W-26、0W-30、0W-40、0W-50、0W-60、5W、5W-20、5W-30、5W-40、5W-50、5W-60、10W、10W-20、10W-30、10W-40、10W-50、15W、15W-20、15W-30、15W-40、30、40のSAE粘度グレード、及び同種のものを有する潤滑油組成物)を与えるだろう。
【0056】
Mg清浄剤
好ましいマグネシウム含有清浄剤としては、スルホン酸マグネシウム、石炭酸マグネシウム、及びサリチル酸マグネシウム、特にスルホン酸マグネシウム及びサリチレートが挙げられる。
【0057】
サリチレート清浄剤は、塩基性金属化合物を少なくとも1つのカルボン酸と反応させ、反応生成物から水を除去することによって調製され得る。サリチル酸から作製された清浄剤は、カルボン酸から調製された清浄剤の1クラスである。有益なサリチレートとしては、長鎖アルキルサリチレートが挙げられる。組成物の1つの有益なファミリーは、以下の構造(5):
【化5】

[式中、R”はC~C30(例えばC13~C30)アルキル基であり、nは、1~4の整数であり、Mはマグネシウムである]
のものである。
【0058】
ヒドロカルビル置換サリチル酸は、Kolbe反応によってフェノールから調製され得る(米国特許第3,595,791号を参照)。ヒドロカルビル置換サリチル酸の金属塩は、極性溶媒(水またはアルコール等)中での金属塩の複分解によって調製され得る。
【0059】
本開示の一態様において、サリチレートはC10-C40異性化NAOから誘導され、約0.10~約0.40、好ましくは約0.10~約0.35、好ましくは約0.10~約0.30、より好ましくは約0.12~約0.30の異性化レベル(i)を有する異性化NAOから誘導されたアルキル基を備えたアルキルフェノールから作製される。本開示の別の態様において、サリチレートはC20-C24異性化NAOから誘導される。
【0060】
典型的な清浄剤は、分子の長鎖疎水性部分及び分子のより小さな陰イオン性または疎油性の親水性部分を含有する、陰イオン性材料である。清浄剤の陰イオン性部分は、典型的には有機酸(硫黄酸、カルボン酸、亜リン酸、フェノール、またはそれらの混合物等)から誘導される。カウンターイオンは、典型的にはアルカリ土類またはアルカリ金属である。
【0061】
実質的に化学量論的な量の金属を含有する塩は中性塩として記載され、0~80mgのKOH/gの全塩基価(TBN)を有する。多くの組成物が過塩基性であり、酸性ガス(例えば二酸化炭素)に富んで過剰量の金属化合物(例えば金属水酸化物または酸化物)を反応させることによって達成される、多量の金属塩基を含有する。有益な清浄剤は、中性、軽度の過塩基性、または高度の過塩基性であり得る。
【0062】
清浄剤混合物中で使用される少なくともいくつかの清浄剤は、過塩基性であることが所望される。過塩基性清浄剤は、燃焼プロセスによって生成された酸性不純物を中和し、油中でトラップされるようになることを支援する。典型的には、過塩基性材料は、当量ベースで、1.05:1~50:1(例えば4:1~25:1)の清浄剤の金属イオン対陰イオン性部分の比を有する。もたらされる清浄剤は、典型的には150mgのKOH/g以上(例えば250~450mgのKOH/g以上)のTBNを有する過塩基性清浄剤である。異なるTBNの清浄剤の混合物が使用され得る。
【0063】
スルホネートは、典型的にはアルキル置換芳香族炭化水素(石油の分画からまたは芳香族炭化水素のアルキル化によって得られたもの等)のスルホン化によって得られるスルホン酸から調製され得る。例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ジフェニル、またはそれらのハロゲン誘導体のアルキル化によって得られるものが挙げられる。アルキル化は、約3~70超の炭素原子を有するアルキル化剤と共に触媒の存在下において実行され得る。アルカリールスルホネートは、通常1つのアルキル置換芳香族部分あたり約9~80以上の炭素原子(例えば約16~60の炭素原子)を含有する。
【0064】
フェネートは、アルカリ土類金属水酸化物またはアルカリ土類金属酸化物(例えばCaO、Ca(OH)、MgO、またはMg(OH))を、アルキルフェノールまたは硫化アルキルフェノールと反応させることによって調製され得る。有益なアルキル基としては、直鎖または分岐鎖のC~C30(例えばC~C20)アルキル基、またはそれらの混合物が挙げられる。好適なフェノールの例としては、イソブチルフェノール、2-エチルヘキシルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、及び同種のものが挙げられる。出発アルキルフェノールが、各々独立して直鎖または分岐鎖である2つ以上のアルキル置換基を含有し得ること留意されたい。非硫化アルキルフェノールが使用される場合に、硫化生成物は、当技術分野において周知の方法によって得られ得る。これらの方法は、アルキルフェノール及び硫化剤(例えば硫黄元素、二塩化硫黄等のハロゲン化硫黄、及び同種のもの)の混合物を加熱し、次いで硫化フェノールをアルカリ土類金属塩基と反応させることを包含する。
【0065】
マグネシウム含有清浄剤は、潤滑油組成物に対するマグネシウムの重量で、少なくとも100~2000ppm、少なくとも100~1500ppm、少なくとも100~1200ppm、少なくとも100~1100ppm、少なくとも100~1000ppm、少なくとも200ppm~2000ppm、少なくとも300~1500ppm、少なくとも300~1200ppm、少なくとも300~1200ppm、少なくとも300~1100ppm、少なくとも300~1000ppm、または少なくとも400ppm~1000ppmを提供する量で使用され得る。
【0066】
ホウ素含有分散剤
ホウ酸化分散剤の例としては、ホウ酸化無灰分散剤(ホウ酸化ポリアルケニルコハク酸無水物等)、ポリアルキレンコハク酸無水物の非窒素含有ホウ酸化誘導体、スクシンイミド、カルボン酸アミド、ヒドロカルビルモノアミン、ヒドロカルビルポリアミン、Mannich塩基、ホスホノアミド、チオホスホノアミド、及びホスホロアミド、チアゾール(例えば2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、及びそれらの誘導体)、トリアゾール(例えばアルキルトリアゾール及びベンゾトリアゾール)、1つまたは複数の追加の極性官能基(アミン、アミド、イミン、イミド、ヒドロキシル、カルボキシル、及び同種のものが挙げられる)を備えたカルボン酸エステルを含有するコポリマー(例えば長鎖アルキルアクリレートまたはメタクリレートと上記の官能基の単量体とのコポリマー化によって調製された生成物)からなる群から選択される、ホウ酸化塩基性窒素化合物、ならびに同種のもの及びそれらの組み合わせが挙げられる。好ましいホウ酸化分散剤は、ホウ素のスクシンイミド誘導体(例えばホウ酸化ポリイソブテニルスクシンイミド等)である。
【0067】
ホウ酸化無灰分散剤の例は、ヒドロカルビルコハク酸または無水物をアミンと反応させることによって調製されたホウ酸化無灰ヒドロカルビルスクシンイミド分散剤である。好ましいヒドロカルビルコハク酸または無水物は、ヒドロカルビル基がCまたはCのモノオレフィンのポリマー(特にポリイソブチレン)から誘導されるものであり、ポリイソブテニル基は、700~5,000の数平均分子量(Mn)、より好ましくは900~2,500を有する。かかる分散剤は、概して各々のポリイソブテニル基について少なくとも1つ、好ましくは1~2、より好ましくは1.1~1.8のコハク酸基を有する。一実施形態において、油溶性または油分散性のホウ酸化ポリイソブチレンスクシンイミド分散剤は、約550~約5000の数平均分子量を有するポリイソブチレン基から誘導される。一実施形態において、油溶性または油分散性のホウ酸化ポリイソブチレンスクシンイミド分散剤は、約550~約4000の数平均分子量を有するポリイソブチレン基から誘導される。一実施形態において、油溶性または油分散性のホウ酸化ポリイソブチレンスクシンイミド分散剤は、約550~約3000の数平均分子量を有するポリイソブチレン基から誘導される。一実施形態において、油溶性または油分散性のホウ酸化ポリイソブチレンスクシンイミド分散剤は、550超~約2300の数平均分子量を有するポリイソブチレン基から誘導される。一実施形態において、油溶性または油分散性のホウ酸化ポリイソブチレンスクシンイミド分散剤は、約950~約2300の数平均分子量を有するポリイソブチレン基から誘導される。一実施形態において、油溶性または油分散性のホウ酸化ポリイソブチレンスクシンイミド分散剤は、約950~約1300の数平均分子量を有するポリイソブチレン基から誘導される。一実施形態において、油溶性または油分散性のホウ酸化ポリイソブチレンスクシンイミド分散剤は、約2300の数平均分子量を有するポリイソブチレン基から誘導される。一実施形態において、油溶性または油分散性のホウ酸化ポリイソブチレンスクシンイミド分散剤は、約1300の数平均分子量を有するポリイソブチレン基から誘導される。一実施形態において、油溶性または油分散性のホウ酸化ポリイソブチレンスクシンイミド分散剤は、約1000の数平均分子量を有するポリイソブチレン基から誘導される。
【0068】
スクシンイミドを形成する反応のための好ましいアミンは、1分子あたり2~60の炭素原子及び2~12の窒素原子を有するポリアミンであり、特に好ましいものは、式:
NH(CH-(NH(CH-NH
(式中、nは2~3であり、mは0~10である)によって表わされるポリアルキレンアミンである。例示的なのものは、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、テトラプロピレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、及び同種のもの、そしてかかるポリアミンの商業的に入手可能な混合物である。ポリオキシアルキレンポリアミンと同様に、他の基(ヒドロキシ、アルコキシ、アミド、窒化物、及びイミダゾリン基等)を含むアミンも、使用され得る。約1:1~10:1、好ましくは1:1~3:1モルのアルケニルコハク酸または無水物対ポリアミンの従来比で、好ましくは約1:1の比で、典型的には1~10、好ましくは2~6時間、100~250℃、好ましくは125~175℃の反応物の加熱によって、アミンをアルケニルコハク酸または無水物と反応させる。
【0069】
アルケニルスクシンイミド分散剤のホウ酸化も、米国特許出願第3,087,936号及び同第3,254,025号中で開示されるように当該技術分野において周知である。スクシンイミドは、例えば分散剤中の窒素の各々の原子比率について、0.1のホウ素の原子比率~10のホウ素の原子比率を提供する量で、ホウ素、酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、ホウ素酸、及びそのエステルからなる群から選択されるホウ素化合物により処理され得る。
【0070】
ホウ酸化生成物は、概してホウ酸化分散剤の総重量に基づいて、0.1~2.0、好ましくは0.2~0.8の重量パーセントホウ素を含有するだろう。ホウ素は、イミドのメタホウ酸塩で結合する、脱水ホウ酸ポリマーとして存在すると判断される。ホウ酸化反応は、1~3重量パーセント(分散剤の重量に基づいて)の当該ホウ素化合物(好ましくはホウ酸)を鉱物油中のスラリーとして分散剤へ添加し、135℃~165℃で1~5時間撹拌しながら加熱し、続いて生成物の窒素ストリッピング濾過をして、容易に実行される。代替的に、ホウ酸は、水分を除去する間に、コハク酸または無水物及びアミンの熱い反応混合物へ添加され得る。
【0071】
ホウ素含有分散剤は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、少なくとも30~1000ppm、少なくとも30~900ppm、少なくとも30~800ppm、少なくとも30~700ppm、少なくとも30~600ppm、少なくとも30~500ppm、少なくとも30~400ppm、少なくとも30~350ppm、少なくとも30~300ppm、少なくとも40~1000ppm、少なくとも40~900ppm、少なくとも40~800ppm、少なくとも40~700ppm、少なくとも40~600ppm、少なくとも40~500ppm、少なくとも40~400ppm、少なくとも40~350ppm、少なくとも40~300ppm、少なくとも50~1200ppm、少なくとも50~1000ppm、少なくとも50~900ppm、少なくとも50~800ppm、少なくとも50~700ppm、少なくとも50~600ppm、少なくとも100~600ppm、少なくとも100~500ppm、少なくとも100~400ppm、または少なくとも100~300ppmのホウ素を提供するのに十分な量で存在する。
【0072】
追加の潤滑油添加剤
本開示の潤滑油組成物は、これらの添加剤が分散または溶解される潤滑油組成物の任意の所望される特性を付与または改善し得る他の従来の添加剤も含有し得る。当業者に公知の任意の添加剤は、本明細書において開示される潤滑油組成物中で使用され得る。いくつかの好適な添加剤は、Mortier et al., “Chemistry and Technology of Lubricants”, 2nd Edition, London, Springer, (1996); and Leslie R. Rudnick, “Lubricant Additives: Chemistry and Applications”, New York, Marcel Dekker (2003)(その両方は参照することによって本明細書に援用される)中で記載される。例えば、潤滑油組成物は、抗酸化剤、抗摩耗剤、清浄剤(金属清浄剤等)、錆防止剤、曇り除去剤、解乳化剤、金属非活性化剤、摩擦調整剤、流動点降下剤、消泡剤、共溶媒、腐食防止剤、分散剤、多機能性剤、色素、極圧添加剤、及び同種のもの、ならびにそれらの混合物とブレンドされ得る。様々な添加剤が公知であり、商業的に入手可能である。これらの添加剤、またはそれらの類似した化合物は、通常のブレンディング手順によって本開示の潤滑油組成物の調製のために用いられ得る。
【0073】
潤滑油調合物の調製において、添加剤を、炭化水素油(例えば鉱油系潤滑油)または他の好適な溶媒中に10~100重量%で活性成分濃縮物の形態で導入することは一般的な実践である。
【0074】
通常これらの濃縮物は、完成した潤滑剤(例えばクランク室モーター油)の形成において、1重量部の添加剤パッケージあたり3~100(例えば5~40)重量部の潤滑油により希釈され得る。当然、濃縮物の目的は、様々な材料の取り扱いを困難で扱いにくいものにしないこと、そして最終的なブレンドにおける溶解または分散を容易にすることである。
【0075】
前述の添加剤の各々は、使用される場合に、機能的有効量で使用されて、潤滑剤に所望される特性を付与する。したがって、例えば、添加剤が摩擦調整剤であるならば、この摩擦調整剤の機能的有効量は、潤滑剤に所望される摩擦調整特徴を付与するのに十分な量だろう。
【0076】
概して、潤滑油組成物中の添加剤の各々の濃度は、使用される場合に、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.001重量%~約20重量%、約0.01重量%~約15重量%、または約0.1重量%~約10重量%、約0.005重量%~約5重量%、または約0.1重量%~約2.5重量%の範囲であり得る。さらに、潤滑油組成物中の添加剤の総量は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.001重量%~約20重量%、約0.01重量%~約10重量%、または約0.1重量%~約5重量%の範囲であり得る。
【0077】
以下の例は本開示の実施形態を例示するために示されるが、本開示を説明された特定の実施形態に限定することは意図されない。相反する指示がない限り、すべての部及びパーセンテージは重量である。すべての数値は概算である。数値範囲が与えられる場合に、述べられた範囲の外側の実施形態が、依然として本開示の範囲内に入り得ることを理解されたい。各々の例中で記載される特定の詳細は、本開示の必要な特色として解釈されるべきでない。
【0078】
本明細書において開示される実施形態に様々な改変が行われ得ることが理解されるだろう。したがって、上の記載は限定としてではなく、単に好ましい実施形態の例示として解釈されるべきである。例えば、上で記載され、本開示を運用するための最良の形態として実装される機能は、例示の目的のみのためのものである。他の構成及び方法は、本開示の範囲及び趣旨から逸脱せずに、当業者によって実装され得る。さらに、当業者は、本明細書に添付された特許請求の範囲及び趣旨内で他の改変を想定するだろう。
【0079】
以下の例(実施例)は、例示の目的のみのために意図され、本開示の範囲をいかなる手法でも限定しない。
【0080】
潤滑油を、以下のASTM法によって評価した。
【0081】
サンプルを、改変されたASTM D7563法に従って試験した。ASTM D7563は、油が水分及びE85燃料を乳化する能力を測定するものである。この改変において、潤滑油を10%の水と混合し、エマルション安定性を25℃で24時間後に追跡するだろう。その後に、油、水、及びエマルションの量を観察及び報告した。D7563は「非水性」層または「水性」層のみを定義するため、「非水性」層を、茶色及び白色(油性層及びエマルション層とも呼ぶことができる)へとさらに分割した。この試験において、エマルション層が50%を超えるならば、それは合格であると見なされる。
【0082】
ASTM D7563において、より多くのエマルション層が所望されるが、それは、水が系中で良好に一様に分散している指標であるからである。エマルションが所望される。これは、エンジン油の安定性をチェック及び評価する試験であり、当該試験は、エンジン油と混合された任意の(縮合)水またはE85燃料及び同種のものが、表面上に堆積せず、分離及び/または薄層中に縮合することなく、エマルションの形態で取り込まれたままであり、その結果、個別のエンジン構成要素が錆びないかまたは腐食しないかどうかに関するものである。
【0083】
ベースライン調合物
以下の構成要素を一緒にブレンドすることによって潤滑油組成物を調製して、SAE 0W-20粘度グレード調合物を得た。
およそ770ppm(リン含有量に関して)の第一級及び第二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛の混合物、
アルキル化ジフェニルアミン抗酸化剤、
エチレンプロピレンVII、
従来量の流動点降下剤、
発泡防止剤、及び
グループIIIの基油の混合物でバランスする。
【0084】
清浄剤A
清浄剤Aは、αオレフィンから作製されたC20-C24スルホン酸マグネシウム清浄剤である。特性:TBN(mg KOH/g)=400;Mg(重量%)=9.4。
【0085】
清浄剤B
MeOH(81.4グラム)及びキシレン(500グラム)中のMgO(82グラム)のスラリーを調製し、反応器の中へ導入する。次いで異性化αオレフィン(C20-24、0.16異性化レベル)(1774グラム、キシレン中で43%の活性)から作製したヒドロキシ安息香酸を、反応器の中へロードし、温度を40℃で15分間維持した。次いでドデセニル無水物(DDSA、7.6グラム)、続いてAcOH(37.3グラム)、次いでHO(69グラム)を、温度を50℃まで上昇させながら30分間にわたって反応器中に導入する。次いでCOを、強い撹拌下で反応器中に導入する(96グラム)。次いでキシレン(200グラム)中でMgO(28グラム)からなるスラリーを反応器中に導入し、さらなる量のCOを混合物を介してバブリングする。CO導入の終了時に、溶媒の蒸留を132℃への加熱によって達成する。次いで500グラムの基油を反応器中に導入する。次いで混合物を実験室用の遠心分離機中で遠心分離して、未反応酸化マグネシウム及び他の固体を除去する。最終的に、混合物を真空(15mbar)下で170℃で加熱して、キシレンを除去し、0.16の異性化レベルの異性化NAOから作製されたC20-C24サリチル酸マグネシウム清浄剤として4.3%のマグネシウムを含有する最終生成物を生ずる。特性:TBN(mgKOH/g)=35重量%の希釈油中で199。
【0086】
清浄剤C
清浄剤Cは、αオレフィンから作製されたC14-C18サリチル酸マグネシウム清浄剤である。特性:TBN(mgKOH/g)=236;Mg(重量%)=5.34。
【0087】
清浄剤D
清浄剤Dは、C14-C18サリチル酸マグネシウム清浄剤であり、取引上の表示「Infineum C9012」下でInfineum International Ltdから利用可能である。特性:TBN(mgKOH/g)=345;Mg(重量%)=7.45。
【0088】
例1
調合物ベースラインへ、清浄剤Aからのおよそ1040ppmのMg、及びおよそ1300のMnのホウ酸化ビス-スクシンイミド分散剤を添加した。
【0089】
例2
調合物ベースラインへ、清浄剤Bからのおよそ1040ppmのMg、及びおよそ1300のMnのホウ酸化ビス-スクシンイミド分散剤を添加した。
【0090】
例3
調合物ベースラインへ、清浄剤Cからのおよそ1040ppmのMg、及びおよそ1300のMnのホウ酸化ビス-スクシンイミド分散剤を添加した。
【0091】
例4
調合物ベースラインへ、清浄剤Dからのおよそ1040ppmのMg、及びおよそ1300のMnのホウ酸化ビス-スクシンイミド分散剤を添加した。
【0092】
例5
調合物ベースラインへ、清浄剤Cからのおよそ520ppmのMg、及びおよそ1300のMnのホウ酸化ビス-スクシンイミド分散剤を添加した。
【0093】
例6
調合物ベースラインへ、清浄剤Cからのおよそ130ppmのMg、及びおよそ1300のMnのホウ酸化ビス-スクシンイミド分散剤を添加した。
【0094】
比較例1
調合物ベースラインへ、清浄剤Aからのおよそ1050ppmのMg、及び後処理されないビス-スクシンイミド分散剤を添加した。
【0095】
比較例2
調合物ベースラインへ、清浄剤Aからのおよそ1030ppmのMg、及びエチレンカーボネート後処理ビス-スクシンイミド分散剤を添加した。
【0096】
比較例3
調合物ベースラインへ、清浄剤Bからのおよそ1050ppmのMg、及び後処理されないビス-スクシンイミド分散剤を添加した。
【0097】
比較例4
調合物ベースラインへ、清浄剤Cからのおよそ1050ppmのMg、及び後処理されないビス-スクシンイミド分散剤を添加した。
【0098】
比較例5
調合物ベースラインへ、清浄剤Dからのおよそ1050ppmのMg、及び後処理されないビス-スクシンイミド分散剤を添加した。

【表2】

異性化レベル(I)及びNMR法
オレフィンの異性化レベル(I)を水素-1(1H)NMRによって決定した。NMRスペクトルを、TopSpin 3.2スペクトルプロセシングソフトウェアを使用して、400MHzでクロロホルム-d1中でBruker Ultrashield Plus 400で得た。
異性化レベル(I)は、メチレン骨格基(-CH-)(化学シフト1.01~1.38ppm)へ結合されたメチル基(-CH)(化学シフト0.30~1.01ppm)の相対量を表わし、以下で示す式
I=m/(m+n)
によって定義され、
式中、mは化学シフトが0.30±0.03~1.01±0.03ppmのメチル基についてのNMR積分であり、nは化学シフトが1.01±0.03~1.38±0.10ppmのメチレン基についてのNMR積分である。
【国際調査報告】