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特表2023-534718止血促進剤で補強された表面を有する止血複合凝集体材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-10
(54)【発明の名称】止血促進剤で補強された表面を有する止血複合凝集体材料
(51)【国際特許分類】
   A61L 15/32 20060101AFI20230803BHJP
   A61L 15/28 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
A61L15/32 100
A61L15/32 310
A61L15/28 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504323
(86)(22)【出願日】2021-07-19
(85)【翻訳文提出日】2023-02-08
(86)【国際出願番号】 IB2021056499
(87)【国際公開番号】W WO2022018610
(87)【国際公開日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】16/934,998
(32)【優先日】2020-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512080321
【氏名又は名称】エシコン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Ethicon, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ワン・イ-ラン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・ジェリー
(72)【発明者】
【氏名】クリクスノフ・レオ・ビー
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AA02
4C081AA12
4C081CD022
4C081CD121
4C081CD151
4C081CD23
4C081CE03
4C081DC13
4C081EA06
(57)【要約】
本発明は、止血吸収性組成物であって、流動可能な複数の別個の凝集体を含み、各凝集体が、吸収性の補助的な止血促進剤を含む複数のより小さい粒子によってその表面がコーティングされている複数の吸収性担体粒子を含む、止血吸収性組成物に関する。いくつかの実施形態では、吸収性担体粒子はゼラチン又はコラーゲンを含み、補助的な止血促進剤は酸化セルロース、酸化再生セルロース、カルボキシル酸化セルロース、カルボキシル酸化再生セルロース、トロンビン、又はトラネキサム酸を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
止血吸収性組成物であって、
流動可能な複数の別個の凝集体を含み、各凝集体が、第1のサイズ寸法を有する吸収性担体粒子であり、前記吸収性担体粒子は、前記第1のサイズ寸法よりも小さいサイズ寸法を有する複数の止血促進粒子によってその表面がコーティングされている、止血吸収性組成物。
【請求項2】
前記補助的な止血促進剤が、前記担体粒子の外側表面上に、又は前記担体粒子の外側層中に、排他的に又は主に存在する、請求項1に記載の止血吸収性組成物。
【請求項3】
前記担体粒子の内部部分が、前記補助的な止血促進剤を実質的に全く含まない、請求項1に記載の止血吸収性組成物。
【請求項4】
前記別個の凝集体が、100~500μm(100~500ミクロン)の平均寸法を有する、請求項1に記載の止血吸収性組成物。
【請求項5】
前記吸収性担体粒子が、ゼラチン又はコラーゲンを含む、請求項1に記載の止血吸収性組成物。
【請求項6】
前記吸収性担体粒子が、熱架橋ゼラチンを含む、請求項1に記載の止血吸収性組成物。
【請求項7】
前記補助的な止血促進剤が、カルボキシル酸化セルロース、カルボキシル酸化再生セルロース、トロンビン、又はトラネキサム酸を含む、請求項1に記載の止血吸収性組成物。
【請求項8】
前記補助的な止血促進剤が、平均で少なくとも3以上のアスペクト比を有する微細な細長い粒子の形態の酸化再生セルロースを含む、請求項1に記載の止血吸収性組成物。
【請求項9】
前記吸収性担体粒子が、平均で3未満のアスペクト比を有する粒子を含む、請求項1に記載の止血吸収性組成物。
【請求項10】
前記補助的な止血促進剤が、酸化再生セルロースを含み、前記吸収性担体粒子が、ゼラチンを含み、ORC:ゼラチンの質量比が10:1超である、請求項1に記載の止血吸収性組成物。
【請求項11】
前記ORC:ゼラチンの質量比が、17:1超である、請求項10に記載の止血吸収性組成物。
【請求項12】
前記ORC:ゼラチンの質量比が、約17:1~30:1である、請求項11に記載の止血吸収性組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の止血吸収性組成物を作製する方法であって、
a)前記吸収性担体粒子を水和させる工程と、
b)水和した前記吸収性担体粒子を、前記吸収性の補助的な止血促進剤を含む前記より小さい粒子と混合する工程と、
c)前記吸収性担体粒子に付着している前記吸収性の補助的な止血促進剤を含む前記より小さい粒子との混合物を形成する工程と、
d)前記混合物を乾燥させる工程と、任意選択で
e)前記混合物をふるい分けする工程と、を含む、方法。
【請求項14】
前記混合する工程が、前記混合物を容器中で振とうすること、又は前記混合物をボールミル粉砕することを含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止血吸収性組成物であって、流動可能な複数の別個の凝集体を含み、各凝集体が、吸収性の補助的な止血促進剤を含む複数のより小さい粒子によってその表面がコーティングされている複数の吸収性担体粒子を含む、止血吸収性組成物に関する。いくつかの実施形態では、吸収性担体粒子はゼラチン又はコラーゲンを含み、補助的な止血促進剤は酸化セルロース、酸化再生セルロース、トロンビン、又はトラネキサム酸を含む。
【背景技術】
【0002】
多種多様な状況において、ヒトを含む動物は、創傷が原因で、又は外科的処置の間に、出血に見舞われることがある。状況によっては、出血は比較的軽いものであり、通常の血液凝固作用が、簡単な応急処置の実施に加われば、それだけで充分である。他の状況では、相当な出血が起こることがある。これらの状況では通常、専門的な設備及び物資、並びに適切な救助を施すように訓練された人員が必要となる。外科的処置中の出血は、多くの形態で顕在化し得る。出血は、離散したものであるか、又は広い表面積から拡散したものであり得る。出血は、高容量又は低容量の、大小の血管、動脈(高圧)又は静脈(低圧)からのものであり得る。出血は容易にアクセス可能であるかもしれず、又はアクセスが難しい部位に由来する場合もある。出血の制御は、失血を最小限に抑え、術後合併症を低減させ、手術室での手術の時間を短くするために、外科的処置において必須かつ重要である。
【0003】
止血を達成するための従来の方法には、外科的技術、縫合糸、結紮糸又はクリップ、及びエネルギーに基づく凝固又は焼灼の使用が挙げられる。これらの従来の対策が非効果的又は非実用的なとき、補助的な止血技術及び製品が典型的に利用される。出血を制御するための適切な方法又は製品の選択は、出血の重症度、出血源の解剖学的な場所及び隣接する重要な構造の近接性、出血が離散した出血源からのものであるか又はより広い表面積からのものであるか、出血源の視認性及び正確な特定、並びに出血源へのアクセスが挙げられるがこれらに限定されない、多くの因子に依存する。
【0004】
上述の問題に対処するべく、過剰な出血を制御するための物質が開発されてきた。局所用吸収性止血材(Topical Absorbable Hemostat、TAH)は、外科用途で広く使用されている。TAHは、酸化セルロース(oxidized cellulose、OC)、酸化再生セルロース(oxidized regenerated cellulose、ORC)、トロンビン溶液を含む又は含まない様々な形態のゼラチン、コラーゲン、キチン、キトサンなどに基づく製品を包含する。止血能力を改善するために、上述の物質に基づくスキャフォールドは、トロンビン及びフィブリノゲンなどの生物由来の凝固因子と組み合わせることができる。
【0005】
最も一般的に使用される局所用止血剤のうちの1つは、酸化再生セルロース(ORC)から作製された、SURGICEL(登録商標)Original吸収性止血材である。ORCは、1960年に多くの外科的処置のための安全かつ有効な止血剤として導入された。ORC布材は、そのマトリックス構造にゆるい編地を有しており、その隣接する周囲に迅速にぴったりと一致し、外科用器具に粘着せず、そのサイズを容易に調節できるので、他の吸収剤よりも管理が容易である。これによって、外科医は、全ての出血が止まるまで、セルロースを適所にしっかりと保持することができる。
【0006】
その生分解性及びその殺菌性、並びに止血特性により、酸化セルロース並びに酸化再生セルロースは、神経外科、腹部手術、心臓血管手術、胸部手術、頭部及び頸部手術、骨盤手術、並びに皮膚及び皮下組織処置などの様々な外科的処置において局所性止血用創傷包帯として長い間使用されてきた。粉末、織布、不織布、編地、及びその他の形態で作られるか否かにかかわらず、酸化セルロース材料に基づいた様々な種類の止血材を形成するための数多くの方法が知られている。現在利用される止血用創傷包帯には、セルロース繊維の均質性を増加させた酸化セルロースである酸化再生セルロース(ORC)を含む編み布地若しくは不織布又は粉末が含まれる。
【0007】
SURGICEL(登録商標)吸収性止血材は、結紮又はその他の従来の制御方法が非実用的若しくは非効果的である場合に、毛細血管、静脈、及び動脈の出血の制御を補助するために、外科的処置において補助的に使用される。吸収性止血材のSURGICELファミリーは、全ての止血用創傷包帯がEthicon,Inc.(Somerville,N.J.)、Johnson&Johnson Companyから市販されている、4つの主な製品グループからなる。
【0008】
SURGICEL Original止血材は、淡黄色のギプス包帯の白い布材であり、この材料は強く、ほつれることなく縫合又は切断することができる。
【0009】
SURGICEL NU-KNIT(登録商標)吸収性止血材は、Originalと似ているが、より密度の高い編地を有し、これにより引張り強度がより高く、この材料は、出血を制御するために適所に巻きつけたり縫合されたりすることができるため、外傷及び移植手術での使用に特に推奨されている。
【0010】
SURGICEL FIBRILLAR(商標)吸収性止血材の形態は、外科医が出血部位で止血を達成するために必要な任意の量の材料を鉗子で剥離及び把持することを可能にする層状構造を有し、到達しにくかったり、又は不規則な形状であったりする出血部位のためには編地形態よりも便利な場合があり、整形外科/脊椎及び神経外科手術での使用に特に推奨されている。
【0011】
SURGICEL SNoW(商標)吸収性止血材の製品形態は、構造化不織布であり、かつ高度に適応できるために、内視鏡用途の他の形態よりも便利な場合がある構造化不織布であり、切開及び低侵襲的処置の両方において推奨されている。
【0012】
SURGICEL Powder Absorbable Hemostatは、ORC繊維断片の凝集体から作製される粉末状の補助的止血薬である。
【0013】
コラーゲン及びゼラチンなどのタンパク質系止血材料は、外科手術で使用するために、固体スポンジ、フィブリル、及びゆるい又は固められていない粉末の形態で市販されている。ゆるい又は固められていない粉末を、生理食塩水又はトロンビンなどの流体と混合することは、材料の混合状態及び相対的な比率に応じて、特に凹凸のある表面や手の届きにくい領域からの拡散性の出血の場合に使用するための止血組成物として有用なペースト又はスラリーを形成することができる。
【0014】
固体スポンジ又は粉末形態の両方のゼラチン系止血材が市販されており、外科手術に使用されている。ゼラチン粉末は、流体と混合されると、流動性があり、押出可能、かつ注入可能な止血剤として、特に凹凸のある表面や手の届きにくい場所からの拡散性の出血に有用なペースト又はスラリーを形成することができる。従来のスラリーは、組成物の均一性を付与するために、粉末及び液体の機械的撹拌及び混合によって、使用される時点で調製される。
【0015】
止血性の流動性ペースト(水又は水溶液と混合される又はその中に分散されたゼラチン粒子など)は、創傷への投与前に血漿と接触すると、止血カスケードの有効性を活性化する、開始する、促進する、又はさもなければ強化する、追加の又は補助的な止血剤(トロンビンなど)と、均質に混合されることが多い。追加の止血剤は、結果的にペーストのバルク内に主に含まれ、最も早い可能な時間には、出血している創傷面に曝露されない。したがって、ペーストのバルク内にある追加の止血剤は、出血している表面での止血の生物学的プロセスに直ちに寄与することができず、タイミングよく止血に利用できなかった薬剤を吸収するための不要なコストや必要性を潜在的に加え得る。
【0016】
Ethicon,Inc.(Somerville,NJ)から入手可能なSURGIFLO(登録商標)Hemostatic Matrix Kitは、トロンビンを含むSURGIFLO止血薬ゼラチンマトリックスを含有し、血小板付着のためのマトリックスを提供し、血小板プラグの形成を促進し、フィブリン血餅形成を補助する。これは、EVITHROM(登録商標)トロンビン、局所(ヒト)、溶液中で再構成するための凍結乾燥粉末形態のトロンビンを含有し、これを吸収性止血ゼラチンと組み合わせて、出血表面に適用することによる止血用途を意図した流動可能なマトリックス又は吸収性ゼラチンペーストを形成することができる。ゼラチンペーストは、予め充填されたシリンジ内で供給されて、2ミリリットルの追加の液体(滅菌生理食塩水溶液又はトロンビン)と均質に混合される。
【0017】
米国特許出願公開第2019/0134258号「Hemostatic Paste Having Surface Enriched With Hemostasis-Promoting Agents and Devices For Delivery」は、止血半固体ペースト材料であって、a)生体吸収性担体止血材料と、b)補助的な止血剤とを含み、ペースト材料が、長さ方向軸に沿って少なくとも3のアスペクト比で延びる細長い形態を有し、ペースト材料は、自己支持型及びシリンジ押出可能であり、補助的な止血剤は、長さ方向軸を横断して取得された断面にわたって不均質な分布プロファイルを有する、止血半固体ペースト材料を開示している。
【0018】
米国特許第10,034,957号「Compacted Hemostatic Cellulosic Aggregates」は、複数の止血凝集体を作製する方法であって、a)セルロース源材料を粉砕して繊維を形成する工程と、b)繊維を、11.0重量%~20重量%の含水量まで加湿する工程と、c)繊維をローラー圧縮して止血凝集体を形成する工程と、d)止血凝集体をふるい分けする工程と、e)止血凝集体を、乾燥減量によって決定される5.5%未満の含水率まで除湿する工程と、f)任意選択で、得られた止血凝集体を保存容器又は送達デバイスに投入する工程と、を含む、方法を開示している。
【0019】
米国特許第9,539,358号「Oxidized Regenerated Cellulose Hemostatic Powders And Methods Of Making」は、約1~約18の平均アスペクト比を有し、180ミクロンを超える粒径及び少なくとも0.44g/mLのタップ密を有する粒子を含むローラー圧縮ORC粉末を含む止血材料を開示している。
【0020】
欧州特許第1952828(B1)号「Hemostatic Textile Material」は、出血を止めるための止血テキスタイル材料であって、ジアルデヒドセルロースの酸化度が1.5%から12%まで変化する、ジアルデヒドセルロース(dialdehyde cellulose、DAC)担体と、キトサン及びゼラチンから選択される血液凝固因子と、を含み、当該血液凝固因子がその上に化学的に固定化されており、任意選択で、リゾチーム酵素、硝酸銀、及びクロルヘキシジンから選択される溶菌剤を更に含み、更に任意選択で、溶血を防止する選択された成分を含み、当該成分は、その上に化学的に固定化される、トラネキサム酸及びε-アミノカプロン酸から選ばれ、アルデヒド基は、当該血液凝固因子のアミノ基との共有結合を85~90%のみ可能にするために、当該担体上及び担体内に均等かつ均一に広げられる、止血テキスタイル材料を開示している。
【0021】
米国特許第6,797,260号「Bleeding Control And Healing Aid Compositions And Methods Of Use」は、(a)硫酸第二鉄、次硫酸第二鉄、及びこれらの混合物からなる群から選択される止血剤と、(b)塩化アルミニウムと、(c)硫酸アンモニウムアルミニウム、及び(d)再生酸化セルロースと、を含むスラリーを調製する工程と、当該スラリーを脱水することによって実質的に乾燥した組成物を調製する工程と、当該乾燥組成物に十分な溶媒を添加して、当該乾燥組成物をペースト様粘稠度に再構成することによってペースト組成物を調製する工程と、を含む、改善された止血組成物を作製する方法を開示している。
【0022】
米国特許出願公開第2012/0302640号「Oral Formulations」は、ゲルの形態で、1~約70重量%のトラネキサム酸、抗菌剤を含み、約100~約15,000cPの粘度を有する局所経口製剤、更に、ゲルが多糖ゲル、セルロースゲル、メチルセルロースゲル、ヒドロゲル、アガロース、若しくはゼラチン、又はそれらの任意の2つ又は3つ以上の組み合わせである組成物を開示している。
【0023】
欧州特許第1786480(B1)号「Haemostatic Composition Comprising Hyaluronic Acid」は、ゼラチン及びヒアルロン酸又はその誘導体を含む止血組成物であって、当該ヒアルロン酸又はその誘導体が、少なくとも10%(w/w)ヒアルロン酸の最終含有量まで当該組成物に組み込まれ、当該組成物が化学架橋剤又はその残留物を含まず、当該組成物が、ゼラチン、ヒアルロン酸又はその誘導体及び溶媒の混合物を110~200℃の温度で乾熱処理することによって得られる止血組成物を開示している。
【0024】
公開されたPCT特許出願第WO2015/013106A1号「Bone Paste Compositions And Methods Of Using The Same」は、a)マトリックス材料と、b)複数のナノ粒子であって、当該ナノ粒子が、少なくとも1つの抗生剤、少なくとも1つの成長因子、又は少なくとも1つの抗生剤及び少なくとも1つの成長因子の組み合わせを含む、複数のナノ粒子と、c)少なくとも1つの止血剤と、を含む、血栓形成性骨ペースト組成物を開示している。
【0025】
米国特許出願公開第2015/0017225号「Hemostatic Pad Assembly Kit And Method」は、創傷側表面及び反対面を有する生体吸収性スキャフォールドであって、血液でも血漿でもない生体適合性の液体で湿潤される、生体吸収性スキャフォールドと、水分により当該生体吸収性スキャフォールドの少なくとも創傷側表面に付着する止血粉末とを備える、止血創傷治療装置を開示している。
【0026】
米国特許第8,961,544号「Dry Composition Wound Dressings And Adhesives Comprising Gelatin And Transglutaminase In A Cross-Linked Matrix」は、乾燥ゼラチン組成物を含むパッチに関する。
【0027】
中国特許公開番号第CN105148317A号「Hemostatic Implant」は、止血用インプラントに関するものであり、ゼラチンスポンジが、トラネキサム酸を注入してしみ込ませたゲルフォームスポンジであることを特徴とする。
【0028】
中国特許公開番号第CN105727345A号「Absorbable Hemostasis Film Material And Preparation Method Thereof」は、吸収性止血フィルム材料を開示し、その主成分が、デンプン、カルボキシメチルセルロース及びゼラチンを含み、デンプン、カルボキシメチルセルロース及びゼラチンの重量比は、(1~4):(1~2):(1~3)である。
【0029】
チェコ公開公報第CZ201400005A3号「Composition For Preparing Modified Gelatin Nanofilaments,Nanofilaments And Process Of Their Preparation」は、ゼラチンと、アルカリ金属を有する酸化セルロース及び/又は酸化セルロースと、アルカリ土類金属又はアンモニウムとの塩と、ギ酸及び/又は酢酸を含む溶媒と、を含み、酸化セルロースの塩又は酸化セルロースのゼラチンに対する重量比が0.1~2である、変性ゼラチンナノフィラメント調製組成物を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
粒子形態のゼラチン、酸化セルロース及びデンプンなどの特定の止血材料が知られているが、これらの粒子を単に混合すると、物理化学的特性が異なるために混合物が分離し、止血特性が改善されない。送達及び創傷部位の均一な被覆のための粒子形態の止血材料が必要とされており、そのような材料は、高い止血効力、付着性、送達性、及び作用速度を有する。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明は、止血吸収性組成物であって、流動可能な複数の別個の凝集体を含み、各凝集体が、吸収性の補助的な止血促進剤を含む複数のより小さい粒子によってその表面がコーティングされている複数の吸収性担体粒子を含む、止血吸収性組成物に関する。いくつかの実施形態では、吸収性担体粒子はゼラチン又はコラーゲンを含み、補助的な止血促進剤は酸化セルロース、酸化再生セルロース、トロンビン、又はトラネキサム酸を含む。いくつかの実施形態では、補助的な止血促進剤は、担体粒子の外側表面上に、又は担体粒子の外側層中に、排他的に又は主に存在し、担体粒子の内部部分は、補助的な止血促進剤を実質的に含有しない。
【0032】
いくつかの実施形態では、補助的な止血促進剤は、酸化再生セルロースを含み、吸収性担体粒子はゼラチンを含み、ORC:ゼラチンの質量比は10:1超、17:1超、又は17:1~30:1である。
【0033】
いくつかの態様では、本発明は、止血吸収性組成物を作製する方法であって、吸収性担体粒子を水和させる工程と、水和した吸収性担体粒子を、吸収性の補助的な止血促進剤を含むより小さい粒子と混合する工程と、吸収性担体粒子に付着している吸収性の補助的な止血促進剤を含むより小さい粒子との混合物を形成する工程と、混合物を乾燥させる工程と、混合物をふるい分けする工程と、を含む、方法に関する。
【0034】
いくつかの態様では、本発明は、創傷を治療する方法であって、本明細書に記載の止血吸収性組成物を患者の創傷の上及び/又は中に適用する工程を含む、方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の成分の概略断面図である。
図2】本発明の一実施形態の概略断面図である。
図3】本発明の一実施形態の概略断面図である。
図4】本発明の一実施形態の概略断面図である。
図5】ゼラチン粒子を示す図である。
図6】ORC微細繊維を示す図である。
図7】ORC微細繊維でコーティングされたゼラチン粒子を示す図である。
図8】ORC微細繊維でコーティングされたゼラチン粒子を示す図である。
図9】ORC微細繊維でコーティングされたゼラチン粒子を示す図である。
図10】ORCについての粒径分布及び粒子数対ミクロン単位の粒径を示す図である。
図11】ゼラチン粒子及びORC微細繊維凝集体でコーティングされたゼラチンについての粒径分布及び粒子数対ミクロン単位の粒径を示す図である。
図12】インビトロ凝固試験の比較結果を示す図である。
図13】インビトロ凝固試験の比較結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の実施形態によれば、止血吸収性組成物粉末又は凝集体材料は、第1の止血剤で作製されたコア又はスキャフォールド又は担体粒子を含む固体微粒子を含み、当該コア又はスキャフォールド又は担体粒子の表面は、第2の又は補助的な止血促進剤で補強又はコーティングされている。補助的な薬剤は、本発明の微粒子の表面に露出しており、主にコア粒子の外側のコーティング又は層として存在し、好ましくはコア粒子の外側に広がっている。補助的な薬剤は、コア粒子の外側表面上に又はコア粒子の外側層中に排他的に又は主に配置される。補助的な薬剤の一部をコア粒子の表面に埋め込むことができる。
【0037】
図1を参照すると、本発明の止血吸収性粉末又は凝集体材料を作製するために使用される成分の概略表現が、比較的大きい担体粒子10、並びに1を超える、例えば2、3、5、又はそれ以上であるアスペクト比(長さ:幅又は直径比)を有する細長い粒子20などの比較的小さい補助的な粒子20及び30の形態、又は約1~2のアスペクト比を有する粒子30の形態における補助的な止血促進剤とともに、概略断面図で示されている。担体粒子10は、好ましくは約1~5、より好ましくは1~3のアスペクト比を有する。担体粒子は、粉末の形態の離散固体粒子である。
【0038】
担体又はコア粒子10は、好ましくは、補助的な止血促進剤粒子20、30よりも大きく、例えば、最大寸法、直径、体積又は重量で少なくとも2、3、5、10、15、20、50、100、又は更に1000倍大きい。いくつかの実施形態では、担体又はコア粒子10は、150、200、300、500、1000、2000ミクロンの最大寸法を有し、一方、補助的な粒子20及び30は、3、5、10、20、30、50、75、100ミクロンの最大寸法を有する。いくつかの実施形態では、より大きなコア粒子10は、500、1000、2000、3000ミクロンの最大寸法を有し、一方、補助的な粒子20及び30は、150、200、300ミクロンの最大寸法を有する。
【0039】
図2を参照すると、本発明の止血吸収性粉末又は凝集体材料50の一実施形態の概略表現が概略断面図で示されており、担体粒子10は、その表面に、細長い補助的な止血促進剤粒子22によって示されるように担体粒子10に部分的に埋め込まれているか、又は細長い補助的な止血促進剤粒子24によって示されるように担体粒子10の表面に付着しているかのいずれかである細長い補助的な止血促進剤粒子22、24を有する。
【0040】
図3を参照すると、本発明の止血吸収性粉末又は凝集体材料60の別の実施形態の概略表現が概略断面図で示されており、担体粒子10が、その表面に、担体粒子10に部分的に埋め込まれるか又は担体粒子10の表面に付着した粒子30を有している。
【0041】
図4を参照すると、本発明の止血吸収性粉末又は凝集体材料70の更に別の実施形態の概略表現が概略断面図で示されており、担体粒子10が、補助的な止血促進剤を含む非粒子状コーティング40を表面に有する。
【0042】
有利には、平均して、粒子22、24、30又はコーティング40の形態の補助的な止血促進剤のより大きな部分が、コア又は担体粒子10内に埋められたか又は埋め込まれた粒子22、24、30又はコーティング40のより小さな部分に対して、表面上に露出される。補助的な止血促進剤粒子22、24、30及びコーティング40は、止血吸収性粉末又は凝集体材料50、60、70の表面上に主に存在し、したがって、補助的な止血促進剤は、補助的な止血促進剤が担体又はコア粒子材料と均質に混合され、担体又はコア粒子材料の中に分散される系と比較して、止血のために創傷部位においてより容易に利用可能である。有利なことに、本発明の実施形態において必要とされる補助的な止血促進剤の量は、創傷部位における血液及び組織との相互作用のための表面上の補助的な止血促進剤の容易な利用可能性に起因して、補助的な止血促進剤が担体又はコア粒子材料と均質に混合され、担体又はコア粒子材料内に分配される系と比較した場合、より少ない。
【0043】
本発明の止血吸収性粉末又は凝集体材料の止血性能は、担体粒子10と補助的な止血促進剤20、30との単純な機械的混合物、又は、別個の担体粒子10及び補助的な止血促進剤粒子20、30、又は担体若しくはコア粒子材料と均質に混合され、担体若しくはコア粒子材料の中に分散された補助的な止血促進剤と比較してより良好であると予想される。補助的な止血促進剤は、コア粒子10上に存在する場合により生物学的に利用可能であるだけでなく、非常に大きな面積を有する非常に小さな粒子20、30がより大きな担体粒子上に担持される場合、生体力学、利用可能性、組織上に留まること、並びに組織及び血液と相互作用するために組織及び創傷表面に付着することが改善される。逆に、小粒子20、30は、優れた表面積及び反応性を有するが、単独で存在する(すなわち、担体10上に担持されていない)ため、創傷に送達することが困難である。更に、このような粒子は、止血を行うのに十分長く創傷上に留まることができないことが多く、血流又は任意の他の機械的妨害によって容易に取れてしまい、これは望ましくない。
【0044】
有利なことに、所与の量Qcの担体粒子10及び所与の量Qhの止血促進剤粒子20、30を含み、止血促進剤が表面層54上又は表面層54の中に配置されている本発明の止血吸収性粉末又は凝集体材料は、以下のように、同じ所与の量Qc及びQhのそれぞれの担体粒子及び止血促進剤を含む比較試験品の性能よりも良好である止血性能を有すると仮定される。
a.止血促進剤が担体粒子10の材料に均質に混ぜ込まれている比較試験品、又は
b.止血促進剤が担体粒子10と単に混合されている比較試験品。
【0045】
更に、所与の量Qcの担体粒子10及び所与の量Qhの止血促進粒子20、30を含み、止血促進剤が表面層54上又は表面層54の中に配置されている本発明試験品については、止血性能が、より多量の止血促進剤、例えば1.25Qh、1.5Qh、2Qh、3Qh、5Qhを含む比較試験品の性能と同等又はより優れていると仮定し、それによって、かかる止血促進剤は、以下のようになる。
a.担体粒子10の材料に均質に混ぜ込まれるか、又は
b.担体粒子10と単に混合される。
【0046】
有利には、本発明によれば、止血性能は、同量のQhの止血剤が表面層54上又は表面層54の中に配置された場合に、担体粒子に均質に混ぜ込まれた、又は担体粒子と混合された止血促進剤の同量Qhと比較して改善される。更に、担体粒子に均質に混ぜ込まれた、又は担体粒子と混合された止血促進剤の量1.25Qh以上と比較して、同じ止血性能が、表面層54上又は表面層54の中に配置された止血剤のより少ない量Qhで達成され得る。
【0047】
本発明によれば、表面層54上又は表面層54の中に配置された止血促進剤が存在していることは、止血が求められたとき、最初の数秒又は数分で出血部位及び/又は組織への止血剤のより迅速なアクセスをもたらす。反対に、担体粒子の奥深くに埋もれている比較止血促進剤は、その結果、止血が求められたときの重要な最初の数秒又は数分の間に止血に影響を与える能力が低い。
【0048】
一例では、担体粒子10はゼラチン粒子によって表され、補助的な止血促進剤粒子20は酸化再生セルロース(ORC)粉末によって表され、それによって、本発明の止血複合凝集体材料50は、ゼラチン担体粒子10及びORC系の補助的な止血促進剤粒子20の単純な機械的混合物、又は別個のゼラチン担体粒子10とORC系の補助的な止血促進剤粒子20、又はゼラチンベースの担体若しくはコア粒子10と均質に混合され、その中に分布されたORCベースの補助的な止血促進剤と比較して、より良好な止血性能を示す。
【0049】
有利には、コア粒子10及び補助的な粒子22、24、30、又はコーティング40は、物理的又は生理化学的に結合され、ともに一体化される。担体粒子10は、担体粒子10の表面に露出している比較的小さい補助的な止血促進剤粒子又はコーティングでその表面のみが補強されている。
【0050】
材料:コア粒子
一実施形態では、担体又はコア止血粒子10は、ゼラチン、コラーゲン、又はそれらの組み合わせを含む。図5は、典型的なゼラチン粒子を示す。
【0051】
WVRカタログなどを含む、ゼラチン及びゼラチン粉末の多くの供給源が利用可能である。Ethicon,Inc.(Somerville,NJ)から入手可能なSURGIFLO Hemostatic Matrixとして市販されているゼラチンは、出血表面に適用することによる止血使用を意図した無菌の吸収性架橋ゼラチンを含む。
【0052】
ゼラチン又はコラーゲン粒子は、当業者に公知の多くの技術によって得ることができる。一実施形態では、ゼラチンは、Ethicon,Inc.(Somerville,NJ)から入手可能なSURGIFOAM(登録商標)Absorbable Gelatin Spongeを粉砕することによって得ることができる。ゼラチンコア粒子の別の供給源は、Ethicon,Inc.(Somerville,NJ)から入手可能なSURGIFOAM Absorbable Gelatin Powder Kitであり得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、ゼラチン粒子は、任意の医療グレードのゼラチンを適切なサイズに粉砕することによって得ることができる。
【0054】
材料:補助的な止血剤
補助的な止血剤20、22、24、30、40は、酵素、タンパク質、ペプチド、分子、天然材料、酸化セルロース(OC)若しくは酸化再生セルロース(ORC)などの変性天然物材料、溶媒抽出物、又は粒子、又は粒子凝集体、及びそれらの組み合わせなどの任意の止血促進、及び/又は凝固促進、及び/又は血小板凝集促進活性薬剤材料を含む。
【0055】
全体が参照により本明細書に組み込まれる、Yi-Lan Wang、Guanghui Zhangによる米国特許第9,539,358号、「Oxidized Regenerated Cellulose Hemostatic Powders And Methods Of Making」は、本発明の実施において補助的な止血剤として利用できる様々なORC粗繊維粒子及び微細繊維粒子を開示している。
【0056】
参照により本明細書に組み込まれる、Yi-Lan Wang、Guanghui Zhangによる米国特許第9,717,820号、同第9,149,511号、「Procoagulant Peptides And Their Derivatives And Uses Therefor」は、本発明の実施において補助的な止血剤として利用できる止血活性ペプチドを開示している。
【0057】
参照により本明細書に組み込まれるYi-Lan Wangらによる米国特許第9,028,851号、「Hemostatic Materials And Devices With Galvanic Particulates」は、本発明を実施する際に補助的な止血剤として利用できる止血活性ガルバーニ微粒子を開示している。
【0058】
好ましい実施形態では、補助的な止血剤は以下を含む。(A)酸化セルロース粒子、(B)酸化再生セルロース粒子、(C)任意選択で賦形剤と混合された、トロンビン又はトロンビン等価物などの止血活性酵素、(D)血小板凝集ペプチド、(E)天然材料の止血溶媒抽出物(F)トラネキサム酸、(G)ゼラチン、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)などの任意選択の賦形剤との組み合わせ又は類似物。
【0059】
ORC粗繊維及び微細繊維は、以下のようにして得ることができる。米国特許第9,539,358号の酸化再生セルロース止血粉末及び製造方法を参照するが、これは、全ての目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0060】
ORC布地又は不織布製品などのセルロース材料からORC粗繊維及び微細繊維を直接得る1つの方法は、以下のとおりである。
【0061】
簡単に言うと、製造プロセスは、SURGICEL Original吸収性止血材などのORC材料で開始し、1~2インチの幅の切片に切断されてから、材料は、布材をより小さい断片に切断するブレードに供給される。次いで、切断されたORC布材片は、2回の連続した粉砕プロセス(ハンマー粉砕及び空気分級粉砕)によって、中間ORC微細繊維にすりつぶされる。代替実施形態において、切断されたORC布材片は、ボールミル内で中間微細繊維に直接変換される。
【0062】
より具体的には、ORC微細繊維を製造するための1つのプロセスは、a)セルロース原料物質を細長く切って切断する工程と、b)工程a)から得られた材料を粉砕する工程と、c)空気分級機内での第2の粉砕工程と、を含む。
【0063】
細長く切って切断することは、約1インチ×3インチ又は2インチ×3インチの間の適切なサイズの断片に布材を細長く切って切断するように実施することができるのが好ましいが、より小さい断片も使用することができる。細長く切って切断するために実施される主な動作は、布材のロールを巻き戻し、布材をストリップに細長く切り、そのストリップを切断してサイズ決めし、切断片を第1の粉砕工程に供給することである。AZCOから入手可能なAZCOモデルFTW-1000など、多くの切断機及び細断機が公知であり、市販されている。第1の粉砕工程において、処理されたセルロース系布材は、材料の色指数及び水溶性含量に与える影響を最小限に抑えながら、細長く切って切断する工程で生成された中間粗繊維から452μm未満のD90値及び218μm未満のD50値を有する材料に変換される。ハンマーミル型粉砕機であり、497マイクロメートルの丸いスクリーンと、中間粗セルロース繊維を製造するために布材がスクリーンを通過するまで布材を破砕する1組のブレードと、を備える、Fitzpatrickによって製造されたモデルDASO6及びWJ-RS-D6Aなど、粉砕用の多くの機械が市販されている。
【0064】
例示的な処理運転において、ミル速度約7000RPM、80℃未満での処理温度、1534~9004のスクリーンサイズ、8個(それぞれ2個のインペラ)のブレードの数、225ナイフなどのブレード型、衝撃型ブレード、「衝撃」として設定されたブレードの向き、とすることができる。
【0065】
好ましいプロセスのこの段階では、第1の粉砕工程で生成された中間粗繊維のサイズは、材料の色指数及び水溶性含量に与える影響を最小限に抑えながら、177μm未満のD90値及び95μm未満のD50値に更に低減される。QuadroによるAir Classifier/F10 Quadro Fine Grindなど、多くの機械が、第2の粉砕工程に使用可能である。
【0066】
第1の粉砕工程からの中間粗繊維は、制御された速度で第2のミル内に送り込まれ、粉砕スクリーンによって隔てられた2つの粉砕チャンバを通過することができる。材料は、送風機によって粉砕チャンバから引き出すことができる。中間粗繊維は、所望のサイズを得るために、空気分級装置に3回通して処理することができる。第2の粉砕工程の終わりに、中間微細繊維を採集することができる。
【0067】
例示的な処理運転では、Quadro Air Classifier F10が、8400rpmの粉砕速度、1800rpmの送風機速度、0.0018インチの丸穴スクリーン、及び3回の通過により、第2の粉砕工程で使用され得る。ORC中間微細繊維はまた、上述のような2工程粉砕工程の代わりに、ボール粉砕によって1工程で製造することができる。代替のボール粉砕の実施形態では、50gの事前に切断されたORC布地(2インチ×2インチ)は、ボール及びサンプルを500mLの粉砕ジャーに入れることにより、12個の高密度ジルコニア(二酸化ジルコニウムZrO2、直径20mm、Glen Mills Inc.(Clifton,N.J.,USA))でボール粉砕される。このジャーはラッチブラケットの中へ圧締めされ、次いで遊星ボールミルPM100(Retsch,Inc.(Newtown,Pa,USA))上で均衡化され得る。次いで、粉砕を450rpmにて20分間、双方向で行う。
【0068】
本発明の実施において使用可能な典型的なORC粒子は、好ましくは約2~約100、例えば3~50、例えば10のアスペクト比又は長さ対直径の比、及び約10~約300ミクロン、例えば20~200ミクロンの粒径を有するORC微細繊維粒子である。
【0069】
ここで図6を参照すると、本発明を実施するのに有用なORC微細繊維が示されている。
【0070】
ORC被覆ゼラチンコアを有する本発明の実施形態
一実施形態では、担体又はコア止血粒子10はゼラチンを含み、補助的な止血剤20、22、24は細長いORC微細粒子を含む。
【0071】
ORC微細繊維粒子のアスペクト比又は長さ対直径の比は、好ましくは約2~約100、例えば3~50である。好ましくは、平均して、ORC粒子のより小さい部分がゼラチン内に埋められるのに対して、平均して、ORC粒子のより大きい部分が露出される。表面上に存在するORCは、止血のために創傷部位においてより容易に利用可能である。必要とされるORCの量は、ゼラチン粒子の表面上のORCのみが創傷上の組織及び血液との即時反応のために活性であるので、比較的少ない。より少量のORCは、ORCが表面上に存在する場合、ゼラチン粒子中に均質に混ぜ込まれた場合のより多量のORCと比較して、同一又はより良好な止血効果を有するはずである。本発明の粒子の止血性能は、ゼラチンとORC粉末の単純な混合物と比較して、並びに個々のORC粉末及び個々のゼラチン粉末と比較して、より良好である。コア粒子10の表面上の粒子の形態の補助的な止血剤は、血液との相互作用に利用可能な補助的な止血剤のより大きな表面積のために、コア粒子10の表面上の均質なコーティングと比較して、より良好でより速い反応性を有することが予想される。
【0072】
以下に、本発明の止血複合凝集体材料を作製するいくつかの方法を記載する。好ましい実施形態において、コア粒子10は、ゼラチン又はコラーゲンを含み、補助的な止血剤は、ORC粒子、トロンビン、トラネキサム酸、又はそれらの組み合わせを含む。
【0073】
作製方法:実施例1A.水和ゼラチン粒子+ORC。一実施形態において、ゼラチン粒子は、少量の水又は生理食塩水への曝露によって最初に水和され、いくらかの水を吸収する。次いで、ORC微細粒子を混合し、成分を十分に混合し、次いで乾燥させる。もしあれば、形成された任意のクラスターの任意選択の穏やかな細断が、次いで提供され得る。
【0074】
作製方法:実施例1B.急速に蒸発可能な溶媒の存在下でのゼラチン粒子+ORC。水の代わりに、実施例1Aに示すように、エタノールなどの溶媒を使用することができる(ゼラチンは100%エタノールには溶解しない)。この実施形態において、エタノールは、水の代わりに、又はエタノール-水混合物として使用される。
【0075】
作製方法:実施例1C.ゼラチン粒子及びORCのボールミル粉砕。ゼラチン粒子及びORC微細粒子をボールミル中で混合し、制御された高湿度雰囲気中で一緒に粉砕し、次いで乾燥させる。湿った雰囲気の代わりに、少量の水又はエタノール(無水又は1~10%の水を含む)を添加することができる。
【0076】
作製方法:実施例1D.ORC布地+ゼラチンでコーティングし、粉砕した。この実施形態では、ORC不織布又は布地材料をゼラチンでコーティングし、コーティングを完全に乾燥させ、次に布地又は不織布を粉砕又は細断して、表面上に部分的に露出したORCを有するゼラチン/ORC粒子を得る。
【0077】
作製方法:実施例1E.ゼラチン+トラネキサム酸。トラネキサム酸(Tranexamic acid、TA)は、水に可溶性であり(167mg/mL)、エタノールには溶けにくい(<1mg/mL)。ゼラチン粒子を、トラネキサム酸を含有する少量の水又はエタノール/水混合物と混合し、次いで乾燥させて、表面上にTAのコーティングを形成する。
【0078】
作製方法:実施例1F.ゼラチン+トラネキサム酸。ゼラチン粒子は、少量の水又はエタノール/水への曝露によってすることによって水和され、いくらかの水を吸収する。次いでTA粉末を混合し、成分を十分に混合し、次いで乾燥させる。任意選択-もしあれば、形成された任意のクラスターの穏やかな細断。
【0079】
作製方法:実施例1G.ゼラチン+トラネキサム酸。ゼラチン粒子及びTA粉末をボールミル中で混合し、制御された高湿度雰囲気中で一緒に粉砕し、次いで乾燥させる。湿った雰囲気の代わりに、少量の水又はエタノール(無水又は含水)を添加することができる。
【0080】
ここで図7及び図8を参照すると、実施例1aの方法によって作製された、本発明の止血吸収性複合粉末又は凝集体材料を含むORC微細繊維でコーティングされたゼラチン粒子が示されている。
【0081】
実施例2.インビトロ試験のための止血吸収性複合凝集体粉末材料の調製、特性評価、及び試験
試薬を混合する。試薬グレードのゼラチン粉末は、VWRから入手した9764-500Gであった。調製工程は、以下を含んでいた。約0.1gのゼラチンを秤量する。500μLの精製水を加え、完全に混合して、全てのゼラチンが確実に水和されるようにする。その後、1gのORC微細繊維を添加し、繊維が均一に分散されて全てのゼラチン粒子が確実にコーティングされるように、密閉容器内で振とうすることによって混合する。この実施例では、ゼラチン対水対ORC繊維の初期比は、初期混合(調製のため)について重量で1:0.5:10であり、混合プロセスのために経過した時間は約30秒であった。次いで、過剰なORC繊維をふるい分けすることによって除去した(下記参照)。より大きなORC-ゼラチン粒子も、より小さい粒子に均質化され、次いで、多層ふるい分けプロセス中に更にコーティングされた。全ての粒子が適切にコーティングされていることを確認するために、顕微鏡下で検査を行い、コーティング比を観察した(予想される特性評価については以下を参照されたい)。
【0082】
乾燥。加熱オーブン:Isotemp(Fisher Scientific、モデル:2001FS)を利用して、ORC-コーティングされたゼラチン粒子から過剰な水分を除去した。加熱オーブンを60℃に加熱し、十分に混合した試薬を内部に入れた。次の工程の前に、サンプルの質量が安定するまで、使用される天秤上のサンプルの質量を定期的にチェックする。
【0083】
ふるい分け。W.S.Tyler Company(8570 Tyler Boulevard,Mentor,Ohio)によるふるい(106μm、180μm、300μm)を利用して、本発明の複合凝集体粉末材料の均質なサイズ分布を得た。3つのふるいを、サイズが減少する順に(上に300、下に106)互いの上に置く。乾燥工程からの複合凝集体粉末材料サンプルをジルコニウムボールとともに上のふるいに置く。ジルコニウムボールを使用して、ORC-ゼラチン粒子クラスターをより小さい均質な小片に穏やかに粉砕した。上のふるい層に大きな粒子がなくなるまで振とうする。次いで、180μm層上のORC-コーティングゼラチン粒子(約180~300μmの大きさ)を含む複合凝集体粉末材料を、以下に示すように、止血性能を評価するために利用した。
【0084】
特性評価。顕微鏡下での光学研究を使用して、ゼラチン粒子当たりのORC繊維のコーティング比を評価する。顕微鏡:ZEISS SteREO Discovery.V20(Carl Zeiss Microscopy,LLC(One North Broadway,White Plains,NY))を使用して、ORC-コーティングゼラチン粒子の成分の質量比を評価した。本実施例で利用したORCコーティングゼラチン凝集体(直径180~300μm)を顕微鏡下で分析し、ゼラチン粒子1個当たり平均29本のORC微細繊維を含有することが分かった。粒子の例を図9に示す。
【0085】
0.2gのゼラチン及び2gのORCを使用して、上記1:10と同じ重量比のゼラチン対ORCを乾燥形態で調製した。粉末の初期バルク質量と最終コーティング比とを比較するために、これを水で繰り返してORC-コーティングゼラチン粒子を形成し、次いで試験前に乾燥させて過剰な水分を除去した。
【0086】
次いで、ORC及びゼラチン粉末の各バルク質量中の粒子の数を、粒径及び形状分析器を使用して計数した。
【0087】
粒子数及び粒径分布。ORC微細繊維及びゼラチン粒子の数を、所与の質量(それぞれ、2g及び0.2gのバルク粉末)について決定する。質量比は、平均ORC-コーティングゼラチン凝集体において、ORC:ゼラチンが0.289g:1gであることが分かった。データは、Particle Size and Shape Analyzer QICPIC Sympatec(Sympatec GmbH,Am Pulverhaus 1,38678 Clausthal-Zellerfeld,Germany)によって得られ、これを使用して粒子を計数し、凝集体内の粒子の質量比を決定した。図10図11を参照すると、ORC(図10)、ゼラチン、及び本発明の凝集体を形成するORC微細繊維でコーティングされたゼラチン(図11)について、粒径分布及び粒子数がミクロン単位の粒径に対してプロットされている。これらの図は、材料の止血効力において役割を果たし得る個々の成分に対する本発明の凝集体の一般的な特性評価の詳細を提供する。
【0088】
凝固試験。クエン酸ヒト血液(Lampire Biological Laboratories(Pipersville,PA,USA)から入手、ドナーの性別:男性、血液は、凝固不全の徴候を示さない、正常で、健康な、薬物を使用していないドナーから無菌的に採取した)を、以下のように実施されるインビトロ凝固試験で使用する前に2~8℃で保存した。
【0089】
クエン酸血液を保存所から取り出し、温め、オービタルシェーカー又はローテータ(Belly Button Orbital Platform Shaker、(Stovall BBUAAUV1S又はIBI Scientific(商標)BBUAAUV1S、Fisher Scientific、Thermo Fisher Scientific Inc.81 Wyman Street,Waltham,MA)を使用して穏やかに振とうして、試験前の60分間、又は血液の色が均一になるまで、室温でクエン酸血液を完全に混合する。
【0090】
対照サンプル(止血材料の添加なし)についてのインビトロ凝固試験を、以下のように行った。較正された天秤を用いて空のバイアルを秤量した。300μLのクエン酸血液をバイアルに添加した。血餅を形成させるために3分間待った。血液で満たされたバイアルを秤量し、バイアルを1分間反転させて、凝固していない血液をバイアルから流出させた。最初の反転後、バイアルの底を5回しっかりとタップした。内部に残った凝固血液を含むバイアルを再び秤量し、最初の測定と最後の測定との間に保持された質量%を計算し、バイアルの質量を差し引いた。次いで、反転後にバイアル中に保持された血液の%を使用して、凝固の効率を特徴付ける(高いパーセントがより良好な凝固に対応する)。
【0091】
インビトロ凝固試験サンプル(添加された止血材料を含有する)を、以下のように行った。較正された天秤を用いて空のバイアルを秤量した。較正された天秤を用いて0.02gの適切なサンプルを調製した。300μLのクエン酸血液をバイアルに添加した。その後、マイクロ漏斗を使用して、試験サンプルをそれぞれのバイアルに添加した。
【0092】
血餅を形成させるために3分間待った。血液で満たされたバイアル及び試験サンプルの重量を秤量し、バイアルを1分間反転させて、凝固していない血液をバイアルから流出させた。最初の反転後にバイアルの底を5回しっかりとタップして、過剰な材料を除去し、血液とバイアル壁との間の接着力による偽凝固を減少させた。内部に残った凝固血液を含むバイアルを再び秤量し、最初の測定と最後の測定との間に保持された質量%を計算し、バイアルの質量を差し引いた。次いで、反転後にバイアル中に保持された血液の%を使用して、凝固の効率を特徴付ける(高いパーセントがより良好な凝固に対応する)。各試験サンプルについて工程を繰り返し、保持された(すなわち凝固した)血液の質量%を記録した。対照を含む各試験群からの1つのサンプルを、凝固有効性について同時に試験して、実験設定における変動性を最小限にした。各実験試行内の変動性を低減するために、少なくとも4回の試行を行った。
【0093】
試験の各試行はまた、各サンプルにORC及びゼラチンの異なる組み合わせを添加して、クエン血液の4つのサンプルに対して行った。これらのサンプルを使用して、同様の条件下での他の試験品に対するORC-コーティングゼラチンのインビトロ凝固有効性を比較した。また、これらの4つのサンプルを、試験品が添加されていないクエン酸ヒト血液の4つのサンプルからなる対照群と比較した。実験の変動性を最小限に抑えるために、少なくとも4回の試行を行った。
【0094】
対照群を除く全てのサンプルについて、各試験品を20mg/300μLの血液で適用した。この比は、臨床的に関連し、凝固性能を適切に捕捉するように選択された。
【0095】
変動性を低減するために、各試験群及び対照からの1つのサンプルを各試行に使用した。
【0096】
ここで図12を参照すると、インビトロ凝固試験の結果が示されている。所定の時間内にほとんどの凝固を示す保持された最大の質量は、本発明のORC/ゼラチン凝集体で観察された。試験した個々の材料、ORC、ゼラチン、並びに本発明の複合ORC/ゼラチン凝集体に形成されないORCとゼラチンの物理的混合物は、本発明の複合ORC/ゼラチン凝集体に対して、より低い保持質量を示し、したがって、より低い止血又は凝固性能を示す。保持された最低の質量は、予想通り、止血材料を全く添加していない血液(対照)について観察された。結果は、本発明の複合ORC/ゼラチン凝集体について凝固を加速させる有意な相乗効果を示す。
【0097】
実施例3.電気機械的凝固特性評価
インビトロ凝固/ゲル化性能を、電気機械的血餅検出法(粘度に基づく検出システム)によって決定して、再石灰化したクエン酸ヒト血液を用いて様々な重量の試験材料について凝固/ゲル化時間を測定した。このインビトロ凝固/ゲル化性能を、凝固計Diagnostica Stago ST4凝固分析器(Diagnostica Stago Inc.(5 Century Drive,Parsippany,NJ)又はDiagnostica Stago S.A.S.(3 allee Theresa,CS 10009,92665 Asnieres sur Seine Cedex,France))を使用して評価した。
【0098】
対照群(血液サンプルに止血材料の添加なし)のものを除いて、試験材料を5mg/200μLで適用した。血液に対する試験材料の比を、このインビトロ凝固試験を実施する前に評価した。
【0099】
クエン酸ヒト血液を保存から取り出し、温め、試験前に室温で60分間、オービタルローテータを用いて穏やかに振とうした。クエン酸ヒト血液は、Lampire Biological Laboratories(Pipersville,PA,USA)から購入した。血液は、凝固不全の徴候を示さない、正常で、健康な、薬物を使用していない男性ドナーから無菌的に採取した。
【0100】
較正は、試験前にベンチトップ凝固計で行い、Neoplastine CI PLUS STAのマニュアルに従った。異常対照のPT時間は33~48秒で得られ、正常のPT時間は11.5~15.5秒で得られた。
【0101】
0.02M CaCl生理食塩水ストック溶液[65.33μL生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム洗浄、USP、Baxter Healthcare Corporation)中の1.33μLの1M標準CaCl(Fluka Analytical)溶液]を調製した。66.67μLの0.02M CaCl生理食塩水ストック溶液を1個の鉄球を含有する各キュベットに添加し、キュベットを37℃で少なくとも60秒間予熱するためにインキュベーション領域に配置した。次いで、133.33μLのクエン酸ヒト血液をキュベットに添加し、続いて、予め秤量した試験材料をマイクロ漏斗(QOSMEDIX 20038、0.78インチ×0.83インチ)を介して各キュベットに直ちに添加し、開始ボタンを押して試験を開始した。対照群の血液には試験材料を添加しなかった。凝固時間を各適用について記録した。
【0102】
ここで図13を参照すると、試験の結果が示されている。示されるように、結果は、本発明の複合ORC/ゼラチン凝集体が、より速いインビトロ凝固/ゲル化時間を示し、全体として、質量比17:1及び30:1のORC/ゼラチンの凝集体については50秒より速く、30:1のORC/ゼラチンについては25秒より速いことを示す。これらの凝集体の凝固/ゲル化は、それぞれ100秒又は150秒を超える時間を示している、同じ量及び比率の材料を有するORCとゼラチンの比較混合物(凝集体ではない)について観察されるよりもはるかに速い。同様に、純粋なORC及び純粋なゼラチンは、それぞれ100秒又は150秒を超える遅い凝固/ゲル化時間を示した。対照(添加止血材料を含まない)は、予想通り、300秒を超える最長凝固時間を示した。注目すべきことに、8:1のORC/ゼラチン凝集体は、同じ量及び材料比、すなわち8:1のORCとゼラチンの比較混合物(凝集体ではない)に対していかなる改善も示さず、凝固までの時間は、凝集体形態及び比較混合物の両方について約150秒であった。実験データは、本発明の複合ORC/ゼラチン凝集体、特に、8:1超、例えば10:1超、又は例えば15:1超、例えば18:1、30:1及びそれ以上などの比を有する凝集体についての止血効果における有意な相乗効果及び改善を示す。
【0103】
以上、本発明についてその具体的な実施形態を参照して説明してきたが、本明細書に開示される本発明の概念から逸脱することなく、多くの変更、修正、及び変形が可能であることは明白である。したがって、これは、添付の特許請求の範囲の趣旨及び広義の範囲内にある、全てのかかる変更、修正、及び変形を包含するものとする。
【0104】
〔実施の態様〕
(1) 止血吸収性組成物であって、
流動可能な複数の別個の凝集体を含み、各凝集体が、第1のサイズ寸法を有する吸収性担体粒子であり、前記吸収性担体粒子は、前記第1のサイズ寸法よりも小さいサイズ寸法を有する複数の止血促進粒子によってその表面がコーティングされている、止血吸収性組成物。
(2) 前記補助的な止血促進剤が、前記担体粒子の外側表面上に、又は前記担体粒子の外側層中に、排他的に又は主に存在する、実施態様1に記載の止血吸収性組成物。
(3) 前記担体粒子の内部部分が、前記補助的な止血促進剤を実質的に全く含まない、実施態様1に記載の止血吸収性組成物。
(4) 前記別個の凝集体が、100~500μm(100~500ミクロン)の平均寸法を有する、実施態様1に記載の止血吸収性組成物。
(5) 前記吸収性担体粒子が、ゼラチン又はコラーゲンを含む、実施態様1に記載の止血吸収性組成物。
【0105】
(6) 前記吸収性担体粒子が、熱架橋ゼラチンを含む、実施態様1に記載の止血吸収性組成物。
(7) 前記補助的な止血促進剤が、カルボキシル酸化セルロース、カルボキシル酸化再生セルロース、トロンビン、又はトラネキサム酸を含む、実施態様1に記載の止血吸収性組成物。
(8) 前記補助的な止血促進剤が、平均で少なくとも3以上のアスペクト比を有する微細な細長い粒子の形態の酸化再生セルロースを含む、実施態様1に記載の止血吸収性組成物。
(9) 前記吸収性担体粒子が、平均で3未満のアスペクト比を有する粒子を含む、実施態様1に記載の止血吸収性組成物。
(10) 前記補助的な止血促進剤が、酸化再生セルロースを含み、前記吸収性担体粒子が、ゼラチンを含み、ORC:ゼラチンの質量比が10:1超である、実施態様1に記載の止血吸収性組成物。
【0106】
(11) 前記ORC:ゼラチンの質量比が、17:1超である、実施態様10に記載の止血吸収性組成物。
(12) 前記ORC:ゼラチンの質量比が、約17:1~30:1である、実施態様11に記載の止血吸収性組成物。
(13) 実施態様1に記載の止血吸収性組成物を作製する方法であって、
a)前記吸収性担体粒子を水和させる工程と、
b)水和した前記吸収性担体粒子を、前記吸収性の補助的な止血促進剤を含む前記より小さい粒子と混合する工程と、
c)前記吸収性担体粒子に付着している前記吸収性の補助的な止血促進剤を含む前記より小さい粒子との混合物を形成する工程と、
d)前記混合物を乾燥させる工程と、任意選択で
e)前記混合物をふるい分けする工程と、を含む、方法。
(14) 前記混合する工程が、前記混合物を容器中で振とうすること、又は前記混合物をボールミル粉砕することを含む、実施態様13に記載の方法。
(15) 創傷を治療する方法であって、実施態様1~12のいずれかに記載の止血吸収性組成物を前記創傷の上又は前記創傷の中に適用することを含む、方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】