(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-10
(54)【発明の名称】バソプレシン受容体V1Aアンタゴニストとしてのヘテロアリール-メチル置換トリアゾール
(51)【国際特許分類】
C07D 401/14 20060101AFI20230803BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20230803BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20230803BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20230803BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230803BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20230803BHJP
C07D 413/14 20060101ALI20230803BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
C07D401/14
A61P25/24
A61P25/22
A61P25/18
A61P9/00
A61P25/20
C07D413/14 CSP
A61K31/4439
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504332
(86)(22)【出願日】2021-07-21
(85)【翻訳文提出日】2023-03-03
(86)【国際出願番号】 EP2021070310
(87)【国際公開番号】W WO2022018105
(87)【国際公開日】2022-01-27
(32)【優先日】2020-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ガレイ,グイド
(72)【発明者】
【氏名】シュニダー,パトリック
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA03
4C063BB03
4C063BB08
4C063CC41
4C063CC47
4C063CC51
4C063DD12
4C063DD41
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC60
4C086BC62
4C086BC67
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA09
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA05
4C086ZA12
4C086ZA18
4C086ZA36
(57)【要約】
本発明は、一般式I
(式中、RおよびXは本明細書に定義する通りである)の新規化合物、該化合物を含む組成物、および該化合物の使用方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化16】
(式中、Rは、非置換、またはH、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、シアノおよびヒドロキシルで置換されたヘテロアリール環であり、Xは、H、ハロゲン、アルキルまたはハロアルキルである)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項2】
Rが、非置換であるか、またはH、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、シアノおよびヒドロキシルで置換された、1~4個のNおよび0~1個のOを含むヘテロアリール環である、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項3】
Rが、非置換であるか、またはH、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、シアノおよびヒドロキシルで置換された、1~4個のNおよび0~1個のOを含む5員ヘテロアリール環である、請求項1または2に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項4】
Rが、非置換であるか、またはアルキルで置換された、1~4個のNおよび0~1個のOを含む5員ヘテロアリール環である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項5】
Rが、非置換であるか、もしくはメチルで置換された、1個のNおよび1個のOを含む5員ヘテロアリール環、または1~4個のNを含む非置換ヘテロアリール環である、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項6】
Rが、メチルイソオキサゾリル、イソオキサゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、イミダゾリルまたはテトラゾリルである、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項7】
Xがハロゲンである、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項8】
XがClである、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項9】
Rが、非置換であるか、もしくはメチルで置換された、1個のNおよび1個のOを含む5員ヘテロアリール環、または1~4個のNを含む非置換ヘテロアリール環であり、
Xがハロゲンである、
請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項10】
Rが、非置換であるか、もしくはメチルで置換された、1個のNおよび1個のOを含む5員ヘテロアリール環、または1~4個のNを含む非置換ヘテロアリール環であり、
XがClである、
請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項11】
Rが、メチルイソオキサゾリル、イソオキサゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、イミダゾリルまたはテトラゾリルであり、
XがClである、
請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項12】
トランス-3-[[4-(4-クロロフェニル)-5-(4-ピリジン-2-イルオキシシクロヘキシル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]メチル]-5-メチル-1,2-オキサゾール;
トランス-3-[[4-(4-クロロフェニル)-5-(4-ピリジン-2-イルオキシシクロヘキシル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]メチル]-1,2-オキサゾール;
トランス-5-[[4-(4-クロロフェニル)-5-(4-ピリジン-2-イルオキシシクロヘキシル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]メチル]-1,2-オキサゾール;
トランス-2-[4-[4-(4-クロロフェニル)-5-(ピラゾール-1-イルメチル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]シクロヘキシル]オキシピリジン;
トランス-2-[4-[4-(4-クロロフェニル)-5-(トリアゾール-2-イルメチル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]シクロヘキシル]オキシピリジン;
シス-2-[4-[4-(4-クロロフェニル)-5-(トリアゾール-2-イルメチル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]シクロヘキシル]オキシピリジン;
トランス-2-[4-[4-(4-クロロフェニル)-5-(トリアゾール-1-イルメチル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]シクロヘキシル]オキシピリジン;
トランス-2-[4-[4-(4-クロロフェニル)-5-(イミダゾール-1-イルメチル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]シクロヘキシル]オキシピリジン;
トランス-2-[4-[4-(4-クロロフェニル)-5-(1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]シクロヘキシル]オキシピリジン;
トランス-2-[4-[4-(4-クロロフェニル)-5-(テトラゾール-1-イルメチル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]シクロヘキシル]オキシピリジン;
から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項13】
トランス-3-[[4-(4-クロロフェニル)-5-(4-ピリジン-2-イルオキシシクロヘキシル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]メチル]-5-メチル-1,2-オキサゾール;
トランス-3-[[4-(4-クロロフェニル)-5-(4-ピリジン-2-イルオキシシクロヘキシル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]メチル]-1,2-オキサゾール;
トランス-5-[[4-(4-クロロフェニル)-5-(4-ピリジン-2-イルオキシシクロヘキシル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]メチル]-1,2-オキサゾール;
トランス-2-[4-[4-(4-クロロフェニル)-5-(ピラゾール-1-イルメチル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]シクロヘキシル]オキシピリジン;
トランス-2-[4-[4-(4-クロロフェニル)-5-(トリアゾール-2-イルメチル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]シクロヘキシル]オキシピリジン;
シス-2-[4-[4-(4-クロロフェニル)-5-(トリアゾール-2-イルメチル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]シクロヘキシル]オキシピリジン;
から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項14】
式4の化合物と式5の化合物との反応を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩の製造方法であって、
【化17】
式中、XおよびRは上記に定義される通りである、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法に従って製造される、請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項16】
治療活性物質として使用するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項17】
請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩と、薬学的に許容され得る賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項18】
バソプレシンの不適切な分泌、不安症、うつ病性障害、強迫性障害、自閉症スペクトラム障害、統合失調症、攻撃的行動、社会不安障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、脳卒中または外傷性脳損傷における脳浮腫、および位相シフト睡眠障害、特に時差ぼけの状態の治療的処置および/または予防的処置のための、請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩の使用。
【請求項19】
バソプレシンの不適切な分泌、不安症、うつ病性障害、強迫性障害、自閉症スペクトラム障害、統合失調症、攻撃的行動、社会不安障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、脳卒中または外傷性脳損傷における脳浮腫、および位相シフト睡眠障害、特に時差ぼけの状態の治療的処置および/または予防的処置のための医薬を製造するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩の使用。
【請求項20】
バソプレシンの不適切な分泌、不安症、うつ病性障害、強迫性障害、自閉症スペクトラム障害、統合失調症、攻撃的行動、社会不安障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、脳卒中または外傷性脳損傷における脳浮腫、および位相シフト睡眠障害、特に時差ぼけの状態の治療的処置および/または予防的処置のための、請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項21】
バソプレシンの不適切な分泌、不安症、うつ病性障害、強迫性障害、自閉症スペクトラム障害、統合失調症、攻撃的行動、社会不安障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、脳卒中または外傷性脳損傷における脳浮腫、および位相シフト睡眠障害、特に時差ぼけの状態の治療的処置および/または予防的処置のための方法であって、治療的有効量の請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を投与することを含む方法。
【請求項22】
上述に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、V1a受容体モジュレーター、特にV1a受容体アンタゴニストとして作用するヘテロアリール-メチル置換トリアゾール、それらの製造、それらを含有する医薬組成物、および医薬品としてのそれらの使用を提供する。本化合物は、バソプレシンの不適切な分泌、不安症、うつ病性障害、強迫性障害、自閉症スペクトラム障害、統合失調症、攻撃的行動、社会不安障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、脳卒中または外傷性脳損傷における脳浮腫、および位相シフト睡眠障害、特に時差ぼけの状態における、末梢および中枢に作用する治療薬として有用である。
【0002】
[技術分野]
本発明は、式Iの化合物を提供する。
【化1】
式中、置換基および変数は、下記および請求項に記載の通りである。
【0003】
一実施形態では、V1a受容体に拮抗する方法であって、受容体を有効量の本明細書に記載の式Iの化合物もしくはその薬学的に許容され得る塩、またはそれを含む医薬組成物と接触させることを含む、方法が提供される。
【0004】
一実施形態では、V1a受容体の拮抗作用が医学的に示されている対象の病状を処置するための方法が提供される。そのような方法は、対象に有益な効果を提供するのに十分な頻度および持続時間で、有効量の本明細書に記載の式Iの化合物、またはその薬学的に許容され得る塩、またはそれらを含む医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0005】
一実施形態では、少なくとも1種の薬学的に許容され得る担体、希釈剤、または賦形剤と組み合わせた、本明細書に記載の式Iの化合物またはその薬学的に許容され得る塩を含む医薬組成物が提供される。
【0006】
一実施形態では、本明細書に記載の式Iの化合物またはその薬学的に許容され得る塩の合成方法が提供される。
【0007】
本化合物は、自閉症スペクトラム障害、社会不安障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、脳卒中または外傷性脳損傷における脳浮腫、および位相シフト睡眠障害、特に時差ぼけの処置に有用なV1a受容体アンタゴニストである。
【背景技術】
【0008】
全てクラスIGタンパク質共役受容体に属する3種のバソプレシン受容体が知られている。V1a受容体は脳、肝臓、血管平滑筋、肺、子宮および精巣で発現し、V1bまたはV3受容体は脳および脳下垂体で発現し、V2受容体は腎臓で発現し、そこで水分再吸収を調節し、バソプレシンの抗利尿作用を媒介する(Robbenら)i。したがって、V2受容体に活性を有する化合物は、血液恒常性において副作用を引き起こし得る。
【0009】
オキシトシン受容体は、バソプレシン受容体ファミリーに関連し、脳および末梢における神経ホルモンのオキシトシンの効果を媒介する。オキシトシンは、中枢性抗不安作用を有すると考えられている(Neumann)ii。したがって、中枢オキシトシン受容体拮抗作用は、望ましくない副作用と見なされる抗不安作用をもたらし得る。
【0010】
脳では、バソプレシンは神経調節因子として作用し、ストレス中に扁桃体で上昇する(Ebnerら)iii。ストレスの多い生活上の出来事は、大うつ病および不安症を引き起こす可能性があり(Kendlerら)iv、両者の合併率は非常に高く、不安症がしばしば大うつ病に先行することが知られている(Regierら)v。V1a受容体は、脳において、特に、不安の調節において重要な役割を果たしている扁桃体、外側中隔および海馬のような辺縁領域において広範囲に発現している。実際、V1aノックアウトマウスは、プラス迷路、オープンフィールドおよび明暗箱において不安行動が減少している(Bielskyら)vi。また、アンチセンスオリゴヌクレオチドを隔壁に注射して、V1a受容体を下方制御すると、不安行動を減少させる(Landgrafら)vii。バソプレシV1a受容体はまた、他の神経心理学的障害に関与している:遺伝学的研究は、ヒトV1a受容体のプロモーターにおける配列多型を自閉症スペクトラム障害に関連付け(Yirmiyaら)viii、バソプレシンの鼻腔内投与がヒト男性における攻撃性に影響を及ぼすことが示され(Thompsonら)ix、バソプレシンレベルが統合失調症患者(Raskindら)xおよび強迫性障害患者(Altemusら)xiにおいて上昇することが見出された。
【0011】
自閉症スペクトラム障害(ASD)は、社会化および言語の欠陥を特徴とする臨床的に不均一な状態である。ASDとしては、情動関係を組織化する真の能力不足、相互的な社会的相互作用における行動異常、言語的および非言語的コミュニケーション、常同的な運動および反復的な遊びに関連する周囲環境への関心の制限(Bourreauら、2009)xiiを含む広範囲の異常が挙げられる。これまでの研究は、遺伝的素因が関与し得ることを示しているが、環境要因も考慮しなければならない(Bourgeron,2009)xiii。現在のところ、ASDに対する効率的な生物学的/薬学的処置法はない。
【0012】
視交叉上核(SCN)は、概日リズムを調節する体内時計であり、バソプレシンニューロンが豊富に存在し(Kalsbeekら2010)xiv、24時間の概日リズムでバソプレシンを産生および放出すること(Schwartzら.1983)xvが知られている。概日リズムに対するバソプレシンの主要な調節効果は、先行技術によって実証し得なかった。点変異に起因してバソプレシンを天然に欠くラット系統であるブラットルボローラットは、その概日リズムに明らかな欠陥がない(Groblewskiら.1981)xvi。バソプレシンをハムスターSCNに直接注射しても、概日性位相シフトに影響はなかった(Albersら.1984)xvii。対照的に、バソプレシン受容体は、より微妙な方法で概日時計を調節することが示された。Yamaguchiら(2013)xviiiは、V1aノックアウトマウスおよびV1a/V1bダブルノックアウトマウスが、ヒトにおける時差ぼけを模倣する実験である概日位相前進または位相遅延後の新しい明暗サイクルへのより速い再同調を示すことを実証した。V1aおよびV1b小分子アンタゴニストの混合物をSCN上に直接ミニポンプによって長期投与した後、同じ結果が得られた。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の目的は、本明細書に記載の式Iの化合物およびその薬学的に許容され得る塩、上記の化合物の調製、それらを含有する医薬およびそれらの製造、ならびにV1a受容体の調節、特にV1a受容体拮抗作用に関連する疾患および障害の治療的および/または予防的処置における上記の化合物の使用である。本発明のさらなる目的は、V1a受容体に対する選択性が、上記のような望ましくないオフターゲット関連副作用を引き起こす可能性が低いと予想されるので、V1a受容体の選択的阻害剤を提供することである。
【0014】
以下の一般的な用語の定義は、問題の用語が単独で現れるか、または他の基と組み合わせて現れるかに関係なく適用される。
【0015】
「アルキル」という用語は、単独でまたは他の基と組み合わせて、直鎖または分岐であってもよく、単一または複数の分岐を有する炭化水素基を表し、アルキル基は一般に1~6個の炭素原子を含み、例えば、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル、イソプロピル(i-プロピル)、n-ブチル、i-ブチル(イソブチル)、2-ブチル(sec-ブチル)、t-ブチル(tert-ブチル)、イソペンチル、2-エチル-プロピル、1,2-ジメチル-プロピルなどを含む。特定の「アルキル」基は、1~4個の炭素原子を有する(「アルキル」)。特定の基は、メチルである。
【0016】
「ハロゲン」という用語は、単独で、または他の基と組み合わせて、クロロ(Cl)、ヨード(I)、フルオロ(F)、およびブロモ(Br)を示す。
【0017】
「ハロアルキル」の「ハロゲン-アルキル」という用語は、単独でまたは他の基と組み合わせて、1個または複数のハロゲン、特に1~5個のハロゲン、より特には1~3個のハロゲンで置換されている本明細書で定義されるアルキルを指す。特定のハロゲンは、クロロである。
【0018】
「ヒドロキシ」という用語は、単独で、または他の基と組み合わせて、OHを指す。
【0019】
「ヒドロキシ-アルキル」という用語は、単独で、または他の基と組み合わせて、1~6個の炭素原子を有する上記に定義したアルキル基を意味し、アルキル基の水素原子の少なくとも1つはヒドロキシ、すなわちOH基で置き換えられている。ヒドロキシアルキルの例は、ヒドロキシエチルである。
【0020】
「シアノ」という用語は、基-CNを示す。
【0021】
「ヘテロシクロアルキル」という用語は、単独でまたは組み合わせて、N、OおよびSから選択される1、2、または3個の環ヘテロ原子を含み、残りの環原子が炭素である、4~9個の環原子からなる一価飽和または部分的に不飽和の一環式または二環式環系を意味する。二環式とは、2個の環原子を共通して有する2個の環からなるものを意味し、すなわち、2個の環を分離するブリッジは、1個または2個の環原子の単結合または鎖のいずれかである。
【0022】
「アリール」という用語は、単独で、または他の基と組み合わせて、単環式または二環式芳香環からなる一価の環状芳香族炭化水素部分を表す。好ましいアリールはフェニルまたはナフチルである。アリールは、本明細書に記載されるように非置換であっても置換されていてもよい。
【0023】
「ヘテロアリール」という用語は、単独でまたは他の基と組み合わせて、NおよびOから選択される1~4個の環ヘテロ原子を含む一価芳香族を指し、残りの環原子はCであり、5または6員ヘテロアリールであることが好ましい。ヘテロアリール部分の例としては、トリアゾリル、イミダゾリル、オキシゾリル、ピラゾリルおよびテトラゾリルが挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロアリールは、本明細書に記載されるように非置換であっても置換されていてもよい。
【0024】
置換基の数を示す場合、「1個以上」という用語は、1個の置換基から可能な限り最高の置換の数、すなわち1個の水素の置き換えから全ての水素の置換基による置き換えまでの範囲を意味する。それにより、1個、2個または3個の置換基が好ましい。さらにより好ましいのは、1個もしくは2個の置換基または1個の置換基である。
【0025】
「薬学的に許容され得る塩」という用語は、ヒトおよび動物の組織と接触して使用するのに適した塩を指す。無機酸および有機酸との好適な塩の例としては、酢酸、クエン酸、蟻酸、フマル酸、塩酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、硝酸、リン酸、p-トルエンスルホン酸、コハク酸、硫酸(sulfuric acid)(硫酸(sulphuric acid))、酒石酸、およびトリフルオロ酢酸などがあるが、これらに限定されない。特定の酸は、蟻酸、トリフルオロ酢酸、および塩酸である。特定の酸は、塩酸、トリフルオロ酢酸、およびフマル酸である。
【0026】
「薬学的に許容され得る担体」および「薬学的に許容され得る補助物質」という用語は、製剤の他の成分と適合性である担体および補助物質、例えば希釈剤または賦形剤を指す。
【0027】
「医薬組成物」という用語は、所定の量または比率で特定の成分を含む製品、および特定の量で特定の成分を組み合わせることによって直接的または間接的に生じる任意の生成物を包含する。特に、それは、1種以上の活性成分と、不活性成分を含む任意の担体とを含む生成物、ならびに任意の2種以上の成分の組み合わせ、複合体化もしくは凝集から、または1種以上の成分の解離から、または1種以上の成分の他のタイプの反応もしくは相互作用から直接的または間接的に生じる任意の生成物を包含する。
【0028】
語「半数阻害濃度」(IC50)という用語は、インビトロで生物学的プロセスの50%阻害を得るために必要とされる、特定の化合物の濃度を示す。IC50値は対数的にpIC50値(-log IC50)へと変換し得、これは、値が高いほど効力が指数関数的に大きいことを示す。IC50値は絶対値ではなく、実験条件、例えば使用した濃度に依存する。IC50値は、Cheng-Prusoff方程式(Biochem.Pharmacol.(1973)22:3099)を使用して、絶対阻害定数(Ki)に変換し得る。「阻害定数」(Ki)という用語は、受容体に対する特定の阻害剤の絶対結合親和性を表す。Ki値は競合結合アッセイを用いて測定され、競合するリガンド(例えば、放射性リガンド)が存在しない場合、特定の阻害剤が受容体の50%を占める濃度に等しい。Ki値は対数的にpKi値(-log Ki)へと変換し得、これは、値が高いほど効力が指数関数的に大きいことを示す。
【0029】
「水和物」という用語は、水分子と組み合わせて存在する化合物を指す。組み合わせは、一水和物または脱水和物のように化学量論量の水を含み得、またはランダムな量の水を含み得る。この用語が本明細書中で使用される場合、「水和物」とは、固体形態のことを指す。すなわち、水溶液中の化合物は、水和され得るが、この用語が本明細書で使用されるような水和物ではない。
【0030】
「溶媒和物」という用語は、水以外の溶媒が存在することを除いて、水和物を指す。例えば、メタノールまたはエタノールは「アルコラート」を形成し得、これもまた化学量論的または非化学量論的であり得る。この用語が本明細書中で使用される場合、「溶媒和物」とは、固体形態を指す。すなわち、溶媒溶液中の化合物は、溶媒和されていてもよいが、この用語が本明細書で使用されるような溶媒和物ではない。
【0031】
用語 「アンタゴニスト」 は、例えば、GoodmanおよびGilmanの‘‘The Pharmacological Basis of Therapeutics,第7版’’第35頁,Macmillan Publ.Company,Canada,1985に定義されているように、別の化合物の作用を減弱または防止する化合物を表わす。特に、アンタゴニストは、アゴニストの効果を減弱する化合物を指す。「競合的アンタゴニスト」は、アゴニストと同じ受容体の部位に結合するが、受容体を活性化せず、それによってアゴニストの作用を遮断する。「非競合的アンタゴニスト」は、受容体上のアロステリック(非アゴニスト)部位に結合して、受容体の活性化を防止する。「可逆的アンタゴニスト」は、受容体に非共有結合的に結合し、したがって「洗い流す」ことが可能である。「不可逆的アンタゴニスト」は、受容体に共有結合し、競合リガンドまたは洗浄のいずれかによって置き換えられ得ない。
【0032】
「同位体」は、同数のプロトンを有するが異なる数の中性子を有する原子を指し、本明細書に記載の式Iの化合物の同位体は、1つ以上の原子がその原子の同位体で置き換えられている任意のそのような化合物が挙げられる。例えば、炭素の最も一般的な形態である炭素12は、6個の陽子および6個の中性子を有するのに対して、炭素13は、6個の陽子および7個の中性子を有し、炭素14は、6個の陽子および8個の中性子を有する。水素は、重水素(1個の陽子および1個の中性子)およびトリチウム(1個の陽子および2個の中性子)という2種の安定同位体を有する。フッ素は多くの同位体を有するが、フッ素19は最も長寿命である。したがって、本明細書に記載の式Iの化合物の同位体には、1個以上の炭素12原子が炭素-13および/もしくは炭素-14原子で置き換えられており、1個以上の水素原子が重水素および/もしくはトリチウムで置き換えられており、ならびに/または1個以上のフッ素原子がフッ素-19で置き換えられている、本明細書に記載の式Iの化合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0033】
「治療的有効量」とは、病態を処置するために対象へ投与された場合、その病態に対してこのような処置効果を及ぼすのに充分な量の化合物を意味する。「治療的有効量」は、化合物、処置される病態、処置される重症度または疾患、対象の年齢および相対的健康、投与の経路および形態、主治医または獣医の判断、並びに他の因子に依存して変化する。
【0034】
「本明細書で定義される」および「本明細書に記載される」という用語は、変数に言及する場合、変数の広範な定義、ならびにもしあれば、具体的な、より具体的な、および最も具体的な定義を参照により組み込む。
【0035】
「処置すること」、「接触すること」、および「反応すること」という用語は、化学反応に言及する場合、2つ以上の試薬を適切な条件下において添加または混合して、示されたおよび/または所望の生成物を生成することを意味する。示されたおよび/または所望の生成物を生成する反応は、最初に加えられた2つの試薬の組合せから必ずしも直接的に生じるわけではなく、すなわち、示されたおよび/または所望の生成物の形成を最終的にもたらす混合物中で生成される1つ以上の中間体が存在し得ることを理解されたい。
【0036】
「芳香族」という用語は、文献、特にIUPACにおいて定義されている従来の芳香族性の概念を示す。
【0037】
「薬学的に許容され得る賦形剤」という用語は、治療活性を有さず、かつ医薬製品を処方する際に使用される崩壊剤、結合剤、充填剤、溶媒、緩衝液、等張化剤、安定剤、抗酸化剤、界面活性剤、または潤滑剤のような無毒の任意の成分を示す。
【0038】
「自閉症スペクトラム」および「自閉症スペクトラム障害」という用語は、広汎性発達障害として分類される状態を要約したものであり、広汎性発達障害としては、自閉症、アスペルガー症候群、別段特定されない広汎性発達障害(PDD-NOS)、小児期崩壊性障害、レット症候群および脆弱X、特に自閉症が挙げられるが、これらに限定されない。これらの障害は、典型的には、社会性の欠如、コミュニケーション障害、固定観念または反復的な行動および興味、ならびに認知遅延を特徴とする。
【0039】
「位相シフト睡眠障害」という用語は、概日リズム、すなわち生物、例えばヒトによって生成される約24時間のサイクルにおける障害として分類される状態を要約したものである。位相シフト睡眠障害としては、仕事、社会的責任、もしくは病気による睡眠スケジュールの変更した場合の、時差ぼけなどの一過性障害、ならびに睡眠相後退症候群(DSPS)、睡眠相後退型(DSPT)、睡眠相前進症候群(ASPS)、および不規則な睡眠覚醒サイクルなどの慢性障害が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
詳細には、態様1では、本発明は、一般式I
【化2】
(式中、
Rは、非置換、またはH、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、シアノおよびヒドロキシルで置換されたヘテロアリール環であり、
Xは、H、ハロゲン、アルキルまたはハロアルキルである)の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0041】
本発明の特定の実施形態である態様2は、Rが、非置換であるか、またはH、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、シアノおよびヒドロキシルで置換された、1~4個のNおよび0~1個のOを含むヘテロアリール環である、態様1による式Iの化合物またはその薬学的に許容され得る塩を指す。
【0042】
本発明の特定の実施形態である態様3は、Rが、非置換であるか、またはH、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、シアノおよびヒドロキシルで置換された、1~4個のNおよび0~1個のOを含む5員ヘテロアリール環である、態様1~2による式Iの化合物またはその薬学的に許容され得る塩を指す。
【0043】
本発明の特定の実施形態である態様4は、Rが、非置換であるか、またはアルキルで置換された、1~4個のNおよび0~1個のOを含む5員ヘテロアリール環である、態様1~3による化合物を指す。
【0044】
本発明の特定の実施形態である態様5は、Rが、非置換であるか、またはメチルで置換された1個のNおよび1個のOを含む5員ヘテロアリール環、または1~4個のNを含む非置換ヘテロアリール環である、態様1~4による式Iの化合物を指す。
【0045】
本発明の特定の実施形態である態様6は、Rがメチルイソオキサゾリル、イソオキサゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、イミダゾリルまたはテトラゾリルである、態様1~5による式Iの化合物を指す。
【0046】
本発明の特定の実施形態であり態様7は、Xがハロゲンである、態様1~6による式Iの化合物を指す。
【0047】
本発明の特定の実施形態である態様8は、XがClである、態様1~7による式Iの化合物を指す。
【0048】
本発明の特定の実施形態では、式I:
(式中、Rが、非置換であるか、もしくはメチルで置換された、1個のNおよび1個のOを含む5員ヘテロアリール環、または1~4個のNを含む非置換ヘテロアリール環であり、Xがハロゲンである)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩が提供される。
【0049】
本発明の特定の実施形態では、式I:
(式中、Rが、非置換であるか、もしくはメチルで置換された、1個のNおよび1個のOを含む5員ヘテロアリール環、または1~4個のNを含む非置換ヘテロアリール環であり、XがClである)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩が提供される。
【0050】
本発明の特定の実施形態では、式I:
(式中、Rが、メチルイソオキサゾリル、イソオキサゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、イミダゾリルまたはテトラゾリルであり、XがClである)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩が提供される。
【0051】
本発明による化合物の例を実験の部および以下の表に示す。
【表1】
【0052】
本発明の好ましい化合物を実施例に示し、以下に列挙する。
トランス-3-[[4-(4-クロロフェニル)-5-(4-ピリジン-2-イルオキシシクロヘキシル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]メチル]-5-メチル-1,2-オキサゾール;
トランス-3-[[4-(4-クロロフェニル)-5-(4-ピリジン-2-イルオキシシクロヘキシル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]メチル]-1,2-オキサゾール;
トランス-5-[[4-(4-クロロフェニル)-5-(4-ピリジン-2-イルオキシシクロヘキシル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]メチル]-1,2-オキサゾール;
トランス-2-[4-[4-(4-クロロフェニル)-5-(ピラゾール-1-イルメチル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]シクロヘキシル]オキシピリジン;
トランス-2-[4-[4-(4-クロロフェニル)-5-(トリアゾール-2-イルメチル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]シクロヘキシル]オキシピリジン;
シス-2-[4-[4-(4-クロロフェニル)-5-(トリアゾール-2-イルメチル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]シクロヘキシル]オキシピリジン;
トランス-2-[4-[4-(4-クロロフェニル)-5-(トリアゾール-1-イルメチル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]シクロヘキシル]オキシピリジン;
トランス-2-[4-[4-(4-クロロフェニル)-5-(イミダゾール-1-イルメチル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]シクロヘキシル]オキシピリジン;
トランス-2-[4-[4-(4-クロロフェニル)-5-(1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]シクロヘキシル]オキシピリジン;
トランス-2-[4-[4-(4-クロロフェニル)-5-(テトラゾール-1-イルメチル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]シクロヘキシル]オキシピリジン;
またはその薬学的に許容され得る塩。
【0053】
特に好ましいのは、
トランス-3-[[4-(4-クロロフェニル)-5-(4-ピリジン-2-イルオキシシクロヘキシル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]メチル]-5-メチル-1,2-オキサゾール;
トランス-3-[[4-(4-クロロフェニル)-5-(4-ピリジン-2-イルオキシシクロヘキシル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]メチル]-1,2-オキサゾール;
トランス-5-[[4-(4-クロロフェニル)-5-(4-ピリジン-2-イルオキシシクロヘキシル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]メチル]-1,2-オキサゾール;
トランス-2-[4-[4-(4-クロロフェニル)-5-(ピラゾール-1-イルメチル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]シクロヘキシル]オキシピリジン;
トランス-2-[4-[4-(4-クロロフェニル)-5-(トリアゾール-2-イルメチル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]シクロヘキシル]オキシピリジン;
シス-2-[4-[4-(4-クロロフェニル)-5-(トリアゾール-2-イルメチル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]シクロヘキシル]オキシピリジン;
またはその薬学的に許容され得る塩である。
【0054】
特定の実施形態では、本発明は、式Iの化合物を製造するための方法であって、式4の化合物を式5の化合物と反応させる工程を含み、式中、XおよびRは上記に定義される通りである、方法に関する。
【化3】
【0055】
本発明の特定の実施形態は、本明細書に定義される方法によって製造される場合、本明細書に記載される式Iの化合物を指す。
【0056】
本発明の特定の実施形態は、治療活性物質として使用するための本明細書に記載の式Iの化合物に関する。
【0057】
本発明の特定の実施形態は、本明細書に記載の式Iの化合物と、薬学的に許容され得る担体および/または薬学的に許容され得る補助物質もしくは賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0058】
本発明の特定の実施形態は、V1a受容体拮抗作用に関連する疾患および障害の治療的および/または予防的処置のための治療活性物質として使用するための本明細書に記載の式Iの化合物を指す。
【0059】
一実施形態では、器質的、ストレス誘発性または医原性のいずれであっても、バソプレシン依存性状態を処置する方法が提供される。
【0060】
「バソプレシン依存性状態」という用語は、特に慢性ストレスへの応答における、ならびにストレス関連情動障害を含むストレス、気分および行動障害などの情動障害において調節不全である回路における、バソプレシンの不適切な分泌に関連する状態を指す。バソプレシン依存性状態としては、心血管の状態、例えば高血圧、肺高血圧症、心不全、特に喫煙者における心筋梗塞もしくは冠動脈攣縮、レイノー症候群、不安定狭心症およびPTCA(経皮経管冠動脈形成術)、心虚血、止血機能障害、または血栓症;中枢神経系の状態、例えば偏頭痛、脳血管攣縮、脳出血、外傷および脳浮腫、うつ病、不安、ストレス、情動障害、強迫性障害、パニック発作、精神病状態、攻撃性、記憶障害もしくは睡眠障害、または認知障害、例えば、社会的認知障害に関連する障害(例えば統合失調症、自閉症スペクトラム障害);腎臓系の状態、例えば腎血管攣縮、腎皮質壊死、腎性尿崩症、または糖尿病性腎症;あるいは胃系の状態、例えば胃血管攣縮、肝硬変、潰瘍、または嘔吐病態、例えば、化学療法による悪心を含む悪心、もしくは乗り物酔い;概日リズム関連障害、例えば位相変位睡眠障害、時差ぼけ、睡眠障害、および他の時間生物学的障害などの状態が挙げられる。バソプレシン依存性状態のさらなる例としては神経精神障害、神経変性疾患における神経精神症状、PTSD、不適切な攻撃性、不安、うつ病性障害、大うつ病、強迫性障害、自閉症スペクトラム障害、統合失調症、および攻撃行動、ならびに他の感情障害が挙げられるがそれらに限定されない。
【0061】
一実施形態では、自閉症スペクトラム障害の処置のための方法であって、処置を必要とする対象に、有効量の式Iの化合物もしくはその薬学的に許容され得る塩、またはそれらを含む医薬組成物を、対象に有益な効果を提供するのに十分な頻度および期間で投与する工程を含む、自閉症スペクトラム障害の処置のための方法が提供される。
【0062】
自閉症スペクトラム障害(ASD)は、本明細書では自閉症スペクトラム障害とも呼ばれ、脳による社会的およびコミュニケーションスキルの正常な発達に影響する複合発達障害を説明する包括的な用語である。ASDの中心的な症状としては、社会的交流の困難などの社会的交流の障害、言語および非言語コミュニケーションの障害を含むコミュニケーションの課題、感覚からの情報を処理する問題、ならびに行動の制限された反復的パターンに関与する傾向が挙げられる。一実施形態では、自閉症スペクトラム障害の中心的な症状は、社会的交流の障害およびコミュニケーションの課題である。一実施形態では、自閉症スペクトラム障害の中心的な症状は、社会的相互作用の障害である。一実施形態では、自閉症スペクトラム障害の中心的症状は、コミュニケーション障害である。一実施形態では、自閉症スペクトラム障害の中心的症状は、行動の制限された反復パターンに関与する傾向である。
【0063】
一実施形態では、不安障害の処置のための方法であって、不安障害の処置を必要とする対象に、有効量の本明細書に記載の式Iの化合物もしくはその薬学的に許容され得る塩、またはそれらを含む医薬組成物を、対象に有益な効果を提供するのに十分な頻度および期間で投与することを含む、不安障害の処置のための方法が提供される。
【0064】
不安障害は、異常かつ病理学的な恐怖および不安のいくつかの異なる形態を網羅する包括的な用語である。現在の精神医学的診断基準は、全般性不安障害、パニック障害、ストレス関連障害、強迫障害、恐怖症、社会不安障害、分離不安障害および心的外傷後ストレス障害(PTSD)を含む多種多様な不安障害を認識している。一実施形態では、不安障害は社会不安障害である。一実施形態では、不安障害は恐怖症である。一実施形態では、不安障害はストレス関連障害である。一実施形態では、不安関連障害はPTSDである。
【0065】
全般性不安障害は、任意の1つの対象物または状況に集中していない長期にわたる不安を特徴とする一般的な慢性障害である。全般性不安症に罹患している個人は、非特異的な持続的な恐怖および心配を経験し、日常的な事柄に過度に関心を持つようになる。全般性不安障害は、高齢者が罹患する最も一般的な不安障害である。
【0066】
パニック障害では、個人は、しばしば振戦、震え、錯乱、めまい、吐き気、呼吸困難を特徴とする激しい恐怖および不安の短時間の発作に苦しむ。これらのパニック発作は、突然発生して10分未満でピークに達する恐怖または不快感としてAPAによって定義され、数時間続く可能性があり、ストレス、恐怖、または運動によって引き起こされる可能性があるが、具体的な原因は必ずしも明らかではない。パニック障害の診断はまた、突発的なパニック発作の再発に加えて、前記発作が慢性的な結果、すなわち、発作の潜在的な影響に対する心配、将来の発作に対する持続的な恐怖、または発作に関連する行動の著しい変化のいずれかを有することを必要とする。したがって、パニック障害に罹患している個人は、特定のパニックエピソード以外の症状を経験する。多くの場合、心拍の正常な変化は、パニック罹患者によって気付かれ、彼らは心臓に何か問題があると考えるか、または別のパニック発作を起こすと考える。場合によっては、身体機能の高まった認識(過覚醒)がパニック発作の間に起こり、知覚された生理学的変化は、生命を脅かす病気の可能性があるとして解釈される(すなわち、極端な心気症)。
【0067】
強迫性障害は、主に反復的な強迫(不快で、持続的で、侵入的な思考またはイメージ)および強迫衝動(特定の行為または儀式を行うことを促す)を特徴とする不安障害の一種である。OCD思考パターンは、実際には存在しない原因関係の確信を含む限り、迷信にたとえられる可能性がある。多くの場合、プロセスは完全に非論理的である。例えば、一定のパターンで歩行することを強制され、差し迫った害への執着を軽減し得る。また、多くの場合、強迫衝動は完全に説明不可能であり、単に緊張によって引き起こされる行為を完了させたいという衝動である。一部の症例では、OCDの罹患者は、強迫観念のみを経験し、明白な脅迫衝動はなぃ。はるかに少数の罹患者は脅迫衝動だけを経験する。
【0068】
不安障害の単一の最大のカテゴリーは、特定の刺激または状況によって恐怖および不安が引き起こす全ての症例を含む恐怖症のカテゴリーである。通常、患者は、恐怖の対象物に遭遇することによる恐ろしい結果を予期するものであり、これらは社会恐怖症、限局性恐怖症、広場恐怖症、動物恐怖症から場所恐怖症、体液恐怖症までのいずれかであり得る。
【0069】
心的外傷後ストレス障害またはPTSDは、心的外傷経験から生じる不安障害である。心的外傷後ストレスは、戦闘、性的暴行、人質状況、または重大な事故などの極端な状況から生じる可能性がある。これはまた、例えば個々の戦闘に耐えているが、継続的な戦闘に対処し得ない兵士などの深刻なストレス要因への長期(慢性)曝露によって生じ得る。一般的な症状としては、フラッシュバック、回避行動、およびうつ病が挙げられる。
【0070】
一実施形態では、うつ病性障害、うつ病、またはうつ病性障害の処置を必要とする対象に、有効量の本明細書に記載の式Iの化合物、またはその薬学的に許容され得る塩、またはそれらを含む医薬組成物を、対象に有益な効果を提供するのに十分な頻度および持続時間で投与することを含む、うつ病性障害、うつ病、またはうつ病性障害の処置のための方法が提供される。そのような障害の例としては、大うつ病、MDD、薬物抵抗性うつ病、気分変調症および双極性障害が挙げられる。
【0071】
一実施形態では、気分障害または情動障害の処置を必要とする対象に、有効量の本明細書に記載の式Iの化合物、またはその薬学的に許容され得る塩、またはそれらを含む医薬組成物を、対象に有益な効果を提供するのに十分な頻度および期間で投与することを含む、気分障害または情動障害の処置のための方法が提供される。
【0072】
気分障害または情動障害としては、例えば、大うつ病性障害(MDD)。双極性障害;快感消失;気分変調;大うつ病、精神病性大うつ病(PMD)、または精神病性うつ病;産後うつ病;季節性情動障害(SAD);運動行動および他の症状の障害を伴う、まれで重篤な形態の大うつ病である緊張性うつ病が挙げられる。
【0073】
「快感消失」および「快感消失症状」という用語は互換的に使用され、通常は楽しめる活動、例えば運動、趣味、音楽、性的活動または社会的交流からの喜びを経験できないこととして定義される。「快感消失」および「快感消失症状」という用語は、DSM-5において、ほとんどまたは全ての活動における喜びの喪失、快刺激に対する反応の消失、悲しみまたは喪失よりも顕著な抑うつ気分の質、朝の時間における症状の悪化、早朝覚醒、精神運動遅滞、過度の体重減少、または過度の自責感によって特徴付けられるうつ病として定義されている「メランコリー特徴を有するうつ病性障害」の基準に密接に関連している。「メランコリー型の特徴を有するうつ病性障害の処置」という用語は、うつ病性障害およびそれに関連するうつ病性の特徴の両方の処置を含む。一実施形態では、気分障害は快感消失である。一実施形態では、気分障害は大うつ病である。一実施形態では、気分障害は、季節性情動障害(SAD)である。
【0074】
一実施形態では、情動障害の処置を必要とする対象に、有効量の本明細書に記載の式Iの化合物、もしくはその薬学的に許容され得る塩、またはそれを含む医薬組成物を、対象に有益な効果を提供するのに十分な頻度および期間で、それを必要とする被験体に投与することを含む、情動障害の処置のための方法が提供される。ストレス関連感情障害を含む感情障害、例えばストレス障害、気分障害、および行動障害、強迫性障害、自閉症スペクトラム障害、人格障害、ADHD、パニック発作など。本明細書で使用される場合、「自閉症スペクトラム障害」および「自閉症スペクトラム障害」は互換的に使用され、自閉症、シナプス結合などの自閉症の単遺伝的原因、例えばレット症候群、脆弱X症候群、アンジェルマン症候群などを指す。
【0075】
一実施形態では、怒り、攻撃性もしくは攻撃性障害または衝撃制御障害の処置を必要とする対象に、有効量の本明細書に記載の式Iの化合物、もしくはその薬学的に許容され得る塩、またはそれを含む医薬組成物を、対象に有益な効果を提供するのに十分な頻度および期間で、それを必要とする被験体に投与することを含む、怒り、攻撃性もしくは攻撃性障害または衝撃制御障害の処置のための方法が提供される。怒り、攻撃性もしくは攻撃性障害、または衝動制御障害の例としては、不適切な攻撃性、攻撃的行動、社会的孤立に関連する攻撃性や、ADHD、自閉症、双極性障害、情動障害、記憶および/または認知および認知障害(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病等)、ならびに嗜癖障害/物質乱用などの疾患と同時に起こる対人暴力が挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
一実施形態では、間欠性爆発性障害(IEDと略されることもある)の処置を必要とする対象に、有効量の本明細書に記載の式Iの化合物、その塩、またはそれらを含む医薬組成物を、対象に有益な効果を提供するのに十分な頻度および期間で投与することを含む、間欠性爆発性障害(IEDと略されることもある)の処置のための方法が提供される。間欠性爆発性障害は、目の前の状況とは不相応な、しばしば激怒するほどの爆発的な怒りおよび暴力を特徴とする行動障害(例えば、比較的重要でない事象によって引き起こされる衝撃的な叫び)である。衝動的攻撃は、あらかじめ計画されておらず、実際のまたは知覚される任意の誘発に対する不釣り合いな反応として定義される。一部の個体は、噴出前の情動変化(例えば、緊張、気分の変化、エネルギーの変化など)を報告している。障害は、現在、精神障害の診断および分類の手引き(DSM-5)において「破壊的、行動制御障害、および行為障害」というカテゴリーに分類されている。障害自体は容易には特徴付けられず、他の気分障害、特に双極性障害との併存症を示すことが多い。IEDと診断された個人は、発作が短時間である(1時間未満続く)ことが報告され、1つのサンプルの3分の1で様々な身体症状(発汗、吃音、胸部圧迫感、単収縮、動悸)が報告されている。攻撃的な行為は、しばしば、安心感および場合によっては喜びを伴って報告されるが、多くの場合、後の自責の念が続く。
【0077】
他の実施形態では、統合失調症スペクトル障害の処置を必要とする対象に、有効量の本明細書中に記載の式Iの化合物もしくはその薬学的に許容され得る塩、またはそれらを含む医薬組成物を、対象に有益な効果を提供するのに十分な頻度および持続時間で投与する工程を含む、統合失調症スペクトル障害の処置のための方法が提供される。統合失調症スペクトラム障害の例としては、統合失調症、統合失調感情障害、精神病状態および記憶障害が挙げられる。
【0078】
他の実施形態では、概日リズム関連障害の処置を必要とする対象に、有効量の本明細書に記載の式Iの化合物もしくはその薬学的に許容され得る塩、またはそれらを含む医薬組成物を、対象に有益な効果を提供するのに十分な頻度および期間で投与することを含む、概日リズム関連障害の処置のための方法が提供される。概日リズム睡眠障害は、体内の睡眠覚醒リズム(体時計)と外部の明暗周期との間の非同期または不整合によって引き起こされる。概日リズム障害(時には位相シフト障害とも呼ばれる)としては、時差ぼけ、交替勤務、または睡眠相タイプの変化に関連する睡眠障害が挙げられ、その結果、毎日の睡眠時間が遅くなること、異常な夜間睡眠パターン、および/または日中に起きていることが困難になる。原因は、体内(例えば、睡眠相後退症候群もしくは睡眠相前進症候群、または非24時間睡眠覚醒症候群)または体外(例えば、時差ぼけ、交替勤務)であり得る。原因が体外のものである場合、温度およびホルモン分泌を含む他の概日性体内リズムが、明暗周期と同調しなくなる可能性があり(外部非同期)、また互いに同期しなくなる可能性があり(内部非同期)、これらの変化は、不眠および過度の眠気に加えて、悪心、倦怠感、過敏性、およびうつ病を引き起こし得る。心血管障害および代謝障害のリスクも増加し得る。本発明の化合物は、概日リズム関連障害、例えば、うつ病、時差ぼけ、交替勤務症候群、睡眠障害、緑内障、生殖障害、癌、月経前症候群、免疫障害、炎症性関節疾患および神経内分泌障害、非24時間障害の処置に有用である。
【0079】
また、本発明による化合物は、神経性食欲不振、過食症、気分障害、うつ病、不安、睡眠障害、嗜癖障害、パニック発作、恐怖症、強迫観念、疼痛知覚障害(線維筋痛症)、物質への依存、出血性ストレス、筋攣縮および低血糖などの神経精神障害の処置または予防に使用し得る。嗜癖障害は、薬物乱用または嗜癖、および強迫行動に関連する障害を含む。
【0080】
本発明による化合物はまた、免疫抑制、妊娠障害、および視床下部下垂体副腎皮質系機能障害などの慢性ストレス状態の処置または予防に使用し得る。
【0081】
本発明による化合物はまた、原発性または続発性月経困難症、早産または子宮内膜症、男性または女性の性機能障害、高血圧、慢性心不全、バソプレシンの不適切な分泌、肝硬変およびネフローゼ症候群などの障害の処置に使用し得る。
【0082】
本発明による化合物はまた、疲労およびその症候群、ACTH依存性障害、心臓障害、疼痛、胃内容排出の改変、便排泄の変化(大腸炎、過敏性腸症候群またはクローン病)または酸分泌の改変、高血糖、免疫抑制、炎症過程(関節リウマチおよび変形性関節症)、多発性感染、敗血症性ショック、がん、喘息、乾癬およびアレルギーなどのストレスに起因する任意の病態の処置または予防に使用し得る。
【0083】
本発明による化合物はまた、精神刺激薬として使用することが可能であり、環境に対する意識/覚醒および/または感情反応性の増加をもたらし、適応をより容易にする。
【0084】
本発明による化合物は、治癒において、鎮痛において、抗不安において、疼痛の予防において、不安、うつ病、統合失調症、自閉症または強迫症候群の予防、母体の行動(子供による母親の認識および受け入れの促進)および社会的行動において、記憶において、飲食物摂取、薬物依存、離脱および性的動機づけの調節において、高血圧、低ナトリウム血症、心不全、アテローム性動脈硬化症、血管新生、腫瘍の増殖、カポジ肉腫において、脂肪細胞による脂肪の蓄積を調節において、高脂血症、トリグリセリド血症およびメタボリックシンドロームの制御において使用し得る。
【0085】
本発明による化合物は、小細胞肺癌または乳癌などの癌;低ナトリウム血症性脳症;肺症候群;メニエル病;高眼圧;緑内障;白内障;肥満;I型およびII型糖尿病;アテローム性動脈硬化症;メタボリックシンドローム;高脂血症;インスリン抵抗性;または高トリグリセリド血症の処置において;特に腹部手術後の術後処置において;自閉症;高コルチゾール血症;高アルドステロン血症;褐色細胞腫;クッシング症候群;子癇前症;排尿障害;または早漏の処置に使用し得る。
【0086】
本発明の特定の実施形態は、バソプレシンの不適切な分泌、不安、うつ病性障害、強迫性障害、自閉症スペクトラム障害、統合失調症、攻撃的行動、社会不安障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、脳卒中または外傷性脳損傷における脳浮腫、および位相シフト睡眠障害、特に時差ぼけの状態の治療的および/または予防的処置のための本明細書に記載の式Iの化合物の使用に関する。
【0087】
本発明の特定の実施形態は、バソプレシンの不適切な分泌、不安、うつ病性障害、強迫性障害、自閉症スペクトラム障害、統合失調症、攻撃的行動、社会不安障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、脳卒中または外傷性脳損傷における脳浮腫、および位相シフト睡眠障害、特に時差ぼけの状態で末梢および中枢に作用する医薬を製造するための本明細書に記載の式Iの化合物の使用に関する。
【0088】
本発明の特定の実施形態は、バソプレシンの不適切な分泌、不安、うつ病性障害、強迫性障害、自閉症スペクトラム障害、統合失調症、攻撃的行動、社会不安障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、脳卒中または外傷性脳損傷における脳浮腫、および位相シフト睡眠障害、特に時差ぼけの状態の治療的および/または予防的処置のための本明細書に記載の式Iの化合物に関する。
【0089】
本発明の特定の実施形態は、バソプレシンの不適切な分泌、不安、うつ病性障害、強迫性障害、自閉症スペクトラム障害、統合失調症、攻撃的行動、社会不安障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、脳卒中または外傷性脳損傷における脳浮腫、および位相シフト睡眠障害、特に時差ぼけの状態で末梢および中枢に作用する治療活性物質としての使用のための本明細書に記載の式Iの化合物に関する。
【0090】
本発明の特定の実施形態は、バソプレシンの不適切な分泌、不安、うつ病性障害、強迫性障害、自閉症スペクトラム障害、統合失調症、攻撃的行動、社会不安障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、脳卒中または外傷性脳損傷における脳浮腫、および位相シフト睡眠障害、特に時差ぼけの状態で末梢および中枢に作用する、本明細書に記載の化合物の使用のための方法に関する。
【0091】
本発明のある特定の実施形態は、バソプレシンの不適切な分泌、不安、うつ病性障害、強迫性障害、自閉症スペクトラム障害、統合失調症、攻撃的行動、社会不安障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、脳卒中または外傷性脳損傷における脳浮腫、および位相シフト睡眠障害、特に時差ぼけの状態の治療的および/または予防的処置のための方法であって、治療有効量の式Iの化合物を投与する工程を含む方法に関する。
【0092】
式Iの化合物の合成は、例えば、以下のスキームに従って達成し得る。
スキーム
【化4】
【0093】
工程A:トランス-4-ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸IVと2-クロロピリジンまたは2-ブロモピリジンとの反応により、N-メチル-2-ピロリジノン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)またはジメトキシエタンなどの適切な溶媒中、ナトリウムtert-ペントキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシド、水素化ナトリウムなどの追加の塩基を用いて20℃~140℃で1時間~120時間で達成し得る。
【0094】
好都合な条件は、トランス-4-ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸をN-メチル-2-ピロリジノン中2-クロロピリジンおよびナトリウムtert-ペントキシドと共に90℃で96時間加熱する。
【0095】
工程B:アニリンとのアミドカップリングは、-20℃~70℃で、1~24時間かけて、塩化オキサリル、塩化チオニルまたはオキシ塩化リンを使用することによって酸を酸塩化物に変換し、続いてジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランまたはtert-ブチルメチルエーテルなどの様々な溶媒中、4-クロロアニリンおよび塩基、例えばトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンまたはN-メチルモルホリンを添加することによって達成し得る。あるいは、アシル化は、0℃~60℃で、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランまたはtert-ブチルメチルエーテルなどの様々な溶媒中、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンまたはN-メチルモルホリンなどの有機塩基の存在下、DCC、EDC、TBTUまたはHATUなどのカップリング試薬の存在下で、4-クロロアニリンおよびカルボン酸のカップリング反応によって達成し得る
【0096】
好都合な条件は、酸と塩化オキサリルとのジクロロメタン中0~25℃で2.5時間反応し、続いて酸塩化物中間体とアニリンとを0~25℃で1.5時間反応させることである。
【0097】
工程AおよびBは逆にしてもよい。
【0098】
工程C:チオアミドIVの形成は、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、ジオキサンまたは1,2-ジメトキシエタンなどの適切な溶媒中、20℃~140℃で1時間~24時間、アミドVと、ローソン試薬または五硫化リンなどのチオン化試薬との反応によって達成し得る。
【0099】
好都合な条件は、テトラヒドロフラン中、65℃で3時間のローソン試薬の使用である。
【0100】
工程D:S-メチルチオイミデートIIの形成は、チオアミドIVとメチル化試薬、例えばヨウ化メチル、硫酸ジメチルまたはメチル4-メチルベンゼンスルホネート、および無機塩基、例えばカリウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、水素化ナトリウムを、適切な溶媒、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミド中、20℃~70℃で1時間~24時間反応させることによって達成し得る。
【0101】
好都合な条件は、室温で1時間における、テトラヒドロフラン中のメチル4-メチルベンゼンスルホネートおよびカリウムtert-ブトキシドの使用である。
【0102】
工程E:トリアゾールI-1およびI-2の形成は、n-ブタノール、n-プロパノールまたは1,4-ジオキサンなどの適切な溶媒中、50℃~130℃で1時間~24時間、ヒドラジドIII、S-メチルチオイミデートIIおよび酸、例えばトリフルオロ酢酸の反応によって達成し得る。この環化の主要な生成物として、または反応の唯一の生成物として、トランス異性体I-1が形成され、場合によってはさらに副生成物としてシス異性体I-2が形成される。異性体I-1およびI-2のいずれもが形成される場合、それらはカラムクロマトグラフィーまたはHPLCによって分離し得る。好都合な条件は、反応物IIおよびIIIをn-ブタノール中のトリフルオロ酢酸と共に120℃で2時間加熱し、続いてクロマトグラフィー分離することである。
【0103】
トランス形状の化合物Iの代わりにシス形状の化合物Iを所望する場合、記載されるのと同様の方法でシス-4-ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸から入手可能なシス構成中間体を、トランス-4-ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸の代わりに出発物質として使用し得る。合成によって形成され得る少量の異性体は、実験手順、すなわちカラムクロマトグラフィーまたは結晶化に記載の標準的な精製工程によって除去し得る。
【0104】
酸との薬学的に許容され得る塩は、当業者に公知の標準的な方法によって、例えば、本明細書に記載の式Iの化合物を適切な溶媒、例えばジオキサンまたはTHFに溶解し、適切な量の対応する酸を添加することによって得ることが可能である。生成物は通常、濾過またはクロマトグラフィーによって単離できる。式Iの化合物を薬学的に許容され得る塩へと塩基によって変換することは、そのような化合物をそのような塩基で処理することによって行い得る。そのような塩を形成する1つの可能な方法は、例えば、1/n当量の例えばM(OH)nといった塩基性塩(M=金属またはアンモニウムカチオン、およびn=ヒドロキシドアニオン数)を適当な溶媒(例えば、エタノール、エタノール-水混合物、テトラヒドロフラン-水混合物)中の化合物の溶液に加え、蒸発または凍結乾燥によって溶媒を除去することによる方法である。
【0105】
それらの調製が実施例に記載されていない限り、式Iの化合物および全ての中間体生成物は、類似の方法または本明細書に記載の方法に従って調製し得る。出発物質は市販されており、当技術分野で公知であるか、または当技術分野で公知の方法によって、もしくはそれに類似する方法で調製し得る。
【0106】
本発明における一般式Iの化合物を官能基で誘導体化して、インビボで親化合物に変換して戻し得る誘導体を提供できることが、理解されるであろう。
薬理試験
【0107】
本発明の化合物はV1a活性を示す。本発明の化合物は、V1a受容体の選択的阻害剤であり、したがって、望ましくない標的外関連副作用を引き起こす可能性は低いと考えられる。V1a活性は、以下に説明するように検出することが可能である。
【0108】
ヒトV1a受容体を、全ヒト肝臓RNAからRT-PCRによってクローニングした。配列決定後にコード配列を発現ベクターにサブクローニングして、増幅した配列の同一性を確認した。本発明からの化合物のヒトV1a受容体への親和性を実証するために、結合試験を実施した。発現ベクターで一過性にトランスフェクトしたHEK293細胞から細胞膜を調製し、以下のプロトコルで20リットル発酵槽中で増殖させた。
【0109】
50gの細胞を、新たに調製した、30mLの氷冷溶解緩衝液(pH=7.4に調整した50mM HEPES、1mM EDTA、10mM MgCl2+プロテアーゼ阻害剤の完全カクテル(Roche Diagnostics))に再懸濁する。Polytronで1分間均質化し、氷上で80%強度で2×2分間超音波処理した(Vibracell超音波処理器)。調製物を4℃、500gで20分間遠心分離し、ペレットを廃棄し、上清を4℃、43’000gで1時間遠心分離する(19’000rpm)。ペレットを12.5mlの溶解緩衝液+12.5mlの20%スクロースに再懸濁し、Polytronを使用して1~2分間均質化した。Bradford法によってタンパク質濃度を測定し、一定分量を使用するまで-80℃で保存する。結合試験のために、60mgのケイ酸イットリウムSPAビーズ(Amersham)を、結合緩衝液(50mM Tris、120mM NaCl、5mM KCl、2mM CaCl2、10mM MgCl2)中で一定分量の膜と15分間混合する。次いで、50μlのビーズ/膜混合物を96ウェルプレートの各ウェルに添加し、続いて50μlの4nM 3H-バソプレシン(American Radiolabeled Chemicals)を添加する。全結合測定のために、100μlの結合緩衝液をそれぞれのウェルに添加し、非特異的結合のために100μlの8.4mMの冷バソプレシンを添加し、化合物試験のために100μlの2% DMSO中の各化合物の段階希釈液を添加する。プレートを室温で1時間インキュベートし、1000gで1分間遠心分離し、Packard Top-Countでカウントする。非特異的結合カウントを各ウェルから減算し、データを100%の最大特異的結合セットに対して正規化する。IC50を計算するために、非線形回帰モデル(XLfit)を使用して曲線をフィッティングし、Cheng-Prussoff方程式を使用してKiを算出する。
【0110】
以下の代表的なデータは、本発明による化合物のヒトV1a受容体に対する拮抗活性を示す。
【表2】
【0111】
医薬組成物
式Iの化合物および薬学的に許容され得る塩は、治療的活性物質として、例えば、医薬製剤の形態で、使用し得る。医薬製剤は、経口、例えば、錠剤、コーティング錠、糖衣錠、硬質ゼラチンカプセルおよび軟質ゼラチンカプセル、溶液、エマルジョン、または懸濁液の形態で投与し得る。しかしながら、投与はまた、例えば坐剤の形態で直腸に、または、例えば注射液の形態で非経口的に行い得る。
【0112】
式Iの化合物およびその薬学的に許容され得る塩は、医薬製剤の生産のために、薬学的に不活性、無機、または有機担体で処理し得る。ラクトース、コーンスターチもしくはその誘導体、タルク、およびステアリン酸またはその塩等は、例えば、錠剤、コーティング錠、糖衣錠、および硬質ゼラチンカプセルの担体として使用し得る。軟質ゼラチンカプセルに好適な担体は、例えば、植物油、ワックス、脂肪、半固体および液体ポリオール等である。しかしながら、活性物質の性質にもよるが、軟質ゼラチンカプセルの場合には通常、担体は必要とされない。溶液およびシロップ剤の製造に適した担体材料は例えば、水、ポリオール、グリセロール、植物油等である。坐剤に適した担体は、例えば、天然油または硬化した油、ワックス、油脂、半液体または液体ポリオール等である。
【0113】
更に、医薬製剤は、防腐剤、可溶化剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味剤、着色剤、着香剤、浸透圧を変化させるための塩、緩衝液、マスキング剤、または酸化防止剤などの、薬学的に許容され得る補助物質を含み得る。それらはまた、さらに他の治療的に価値のある物質を含有し得る。
【0114】
式Iの化合物またはその薬学的に許容され得る塩、および治療的に不活性な担体を含有する医薬もまた、本発明により提供され、その生産方法は、式Iの1つ以上の化合物および/またはその薬学的に許容され得る塩、ならびに所望により、1つ以上の他の治療上有用な物質を、1つ以上の治療的に不活性な担体と共に生薬投与形態とすることを含む。
【0115】
投与量は、広範囲内で変化させ得、当然、それぞれの具体的な症例において個々の要件に対して調整されなければならない。経口投与の場合、成人の投与量は、一般式Iの化合物またはその薬学的に許容され得る塩の対応する量で1日あたり約0.01mg~約1000mgまで変化させ得る。1日投与量は、単回用量または分割用量で投与し得、さらに、必要であると判明した場合、上限を超えることもできる。
【0116】
以下の実施例は、本発明を限定することなく説明するが、本発明の代表例に過ぎない。医薬製剤は、好都合には、約1~500mg、特に1~100mgの式Iの化合物を含有する本発明による組成物の例は、以下の通りである。
【0117】
実施例A
以下の組成の錠剤は、通常の方法で製造される:
【表3】
【0118】
製造手順
1.成分1、2、3および4を混合し、精製水で造粒する。
2.顆粒を50℃で乾燥させる。
3.顆粒を適切な粉砕装置に通す。
4.成分5を添加し、3分間混合し、適切なプレス機で圧縮する。
【0119】
実施例B-1
以下の組成のカプセル剤を製造する:
【表4】
【0120】
製造手順
1.材料1、2、3を適当なミキサーで30分間混合する。
2.材料4および5を加えて3分間混合する。
3.適切なカプセルに充填する。
【0121】
式Iの化合物、ラクトース、およびコーンスターチを、先ずミキサー中で混合し、次いで粉砕機中で混合する。混合物をミキサーに戻し、そこにタルクを加えてよく混合する。混合物は、機械によって適切なカプセル、例えば硬質ゼラチンカプセルに充填される。
【0122】
実施例B-2
次の組成の軟質ゼラチンカプセルを製造する:
【表5】
【表6】
【0123】
製造手順
式Iの化合物を他の成分の温かい融解物に溶解し、混合物を適当なサイズの軟質ゼラチンカプセル剤に充填する。充填した軟質ゼラチンカプセル剤を、通常の手順に従って処理する。
【0124】
【0125】
製造手順
坐剤練剤をガラスまたはスチール容器中で溶融し、充分に混合し、45℃に冷却する。次いで、これに式Iの微粉末化合物を添加し、完全に分散するまで撹拌する。混合物を好適なサイズの坐剤型に注ぎ、冷えるまで放置し、その後、坐剤を型から取り出し、ろう紙または金属箔で個々に包装する。
【0126】
実施例D
以下の組成の注射液を製造する:
【表8】
【0127】
製造手順
式Iの化合物を、ポリエチレングリコール400と注射用水(一部)との混合物に溶解する。pHは酢酸により5.0に調整する。残量の水を加えて、体積を1.0mlに調整する。溶液をフィルタにかけ、適切な過量を用いてバイアルに充填し、滅菌する。
【0128】
実施例E
次の組成のサシェ剤(sachet)を製造する:
【表9】
【0129】
製造手順
式Iの化合物を、ラクトース、微結晶セルロース、およびカルボキシルメチルセルロースナトリウムと混合し、水中のポリビニルピロリドンの混合物で顆粒化する。顆粒にステアリン酸マグネシウムおよび香味添加剤を混合し、サシェに充填する。
【0130】
以下の表は、本文書内で使用される略語を列挙する。
【表10】
【0131】
実施例部分
以下の実施例は、本発明の例示のために提供される。これらは本発明の範囲を制限されるものとして考えられるべきではなく、単にこれらを代表するものとして理解されるべきである。
式IIのS-メチルチオイミデート中間体の合成
トランス-メチルN-(4-クロロフェニル)-4-(ピリジン-2-イルオキシ)シクロヘキサン-1-カルビミドチオエート
【化5】
a)トランス-4-(ピリジン-2-イルオキシ)シクロヘキサンカルボン酸
【0132】
ナトリウムtert-ペントキシド(17.3g、157mmol、2.44当量)のN-メチル-2-ピロリジノン(100ml)溶液に、90℃で、N-メチル-2-ピロリジノン(30ml)に溶解したトランス-4-ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸(CAS3685-26-5;9.3g、64.5mmol、1.00当量)を約20分で添加して、濃厚な懸濁液を得た。2-クロロピリジン(8.79g、7.26ml、77.4mmol、1.2当量)を添加し、反応混合物を90℃で96時間攪拌した。後処理のために、反応混合物を水に注ぎ、塩酸(2M、55.5ml、111mmol、1.72当量)を添加することによってpHを4~5に設定した。懸濁液を2時間撹拌し、次いで、沈殿を濾過によって回収し、氷/水(200ml、3回)で洗浄し、減圧下に乾燥させ、標題の化合物9.11g(64%)を灰白色固体として得た。MSm/e:220(M-H+)
b)トランス-N-(4-クロロフェニル)-4-(ピリジン-2-イルオキシ)シクロヘキサンカルボキサミド
【0133】
トランス-4-(ピリジン-2-イルオキシ)シクロヘキサン-1-カルボン酸(5g、22.6mmol、1当量)のジクロロメタン(200ml)中溶液に、塩化オキサリル(3.44g、2.37ml、27.1mmol、1.20当量)を0~5℃で添加し、続いて触媒量のDMFを添加した。30分後に冷却浴を除去し、撹拌を2時間続けた。反応混合物を減圧濃縮し、残渣をジクロロメタン(200ml)に溶解した。0~5℃で、4-クロロアニリン(2.85g、22.4mmol、0.99当量)を一度に添加し、続いてトリエチルアミン(4.8g、6.58ml、47.5mmol、2.1当量)を添加した。触媒量のDMAPを添加し、反応混合物を0~5℃で30分間撹拌した。氷浴を取り除き、撹拌を室温で1時間続けた。後処理のために、反応混合物をジクロロメタン(200ml)および0.5M水酸化ナトリウム水溶液(200ml)に分配し、層を分離した。水層をジクロロメタン150mlで3回抽出した。合わせた有機層を、200mlの飽和塩化アンモニウム溶液、150mlの水および200mlの食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、フィルタにかけ、減圧濃縮した。残渣をn-ヘプタンエチルアセテート9:1(300ml)中で研和した。固体を濾過によって回収し、n-ヘプタンで洗浄し、減圧下で乾燥させ、標題の化合物6.76g(86%)を灰白色固体として得た。MSm/e:331(M+H+)
c)トランス-(4-クロロフェニル)-4-(ピリジン-2-イルオキシ)シクロヘキサンカルボチオアミド
【0134】
トランス-N-(4-クロロフェニル)-4-(ピリジン-2-イルオキシ)シクロヘキサン-1-カルボキサミド(6.5g、19.6mmol、1当量)およびローソン試薬(4.77g、11.8mmol、0.6当量)のテトラヒドロフラン(100ml)中溶液を還流下で加熱し、3時間撹拌した。後処理のために、反応混合物を減圧濃縮し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ、ヘプタン中0~100%酢酸エチル)によって精製し、標題の化合物4.4g(61%)を灰白色固体として得た。MSm/e:347(M+H+)
d)トランス-メチルN-(4-クロロフェニル)-4-(ピリジン-2-イルオキシ)シクロヘキサン-1-カルビミドチオエート
【0135】
トランス-N-(4-クロロフェニル)-4-(ピリジン-2-イルオキシ)シクロヘキサン-1-カルボチオアミド(4.4g、12.7mmol、1当量)のテトラヒドロフラン(180ml)中溶液に、カリウムtert-ブトキシド(1.45g、12.9mmol、1.018当量)を室温で添加した。反応混合物を10分間撹拌した。メチル4-メチルベンゼンスルホネート(2.42g、13mmol、1.023当量)を添加して懸濁液を得た。撹拌を室温で1時間続けた。後処理のために、反応混合物を減圧濃縮した。残渣をジクロロメタン(200ml)および水(150ml)に分配し、層を分離した。水層を200mLのジクロロメタンで1回抽出した。合わせた有機層を150ml部分の水、125ml部分の食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、フィルタにかけ、減圧濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ、ヘプタン中0~15%酢酸エチル)によって精製し、標題の化合物4.2g(87%)を白色固体として得た。MSm/e:361(M+H+)
【実施例】
【0136】
一般的な手順:N-(4-クロロフェニル)-4-(ピリジン-2-イルオキシ)シクロヘキサン-1-カルビミドチオエートおよび式IIIのヒドラジドの式Iの1,2,4-トリアゾールへの環化縮合
trans-メチルN-(4-クロロフェニル)-4-(ピリジン-2-イルオキシ)シクロヘキサン-1-カルビミドチオエート(100mg、277μmol、1当量)および式IIIのヒドラジド(333μmol、1.2当量)のn-ブタノール(1ml)中溶液に、トリフルオロ酢酸(49mg、32.9μl、429μmol、1.55当量)を50℃で添加した。反応混合物を120℃で2時間加熱した。室温に冷却した後、反応混合物を減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカ、ジクロロメタン中0~20%イソプロパノール)または分取(HPLCカラムGeminiNX、12nm、5μm、100×30mm、水/アセトニトリル/ギ酸または水/アセトニトリル/トリエチルアミン)によって精製した。主生成物は常にトランス異性体であったが、このクロマトグラフィー分離によっても場合によってはより少量のシス異性体を得ることが可能であった。得られた固体を酢酸エチルからの再結晶によってさらに精製し、標題の化合物を得た。
【0137】
実施例1
トランス-3-[[4-(4-クロロフェニル)-5-(4-ピリジン-2-イルオキシシクロヘキシル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]メチル]-5-メチル-1,2-オキサゾール
【化6】
一般手順に従って、標題の化合物を白色固体として収率23%で得た。
ヒドラジド:2-(5-メチルイソオキサゾール-3-イル)アセトヒドラジド(CAS934172-41-5)
MS m/e:450(M+H
+)
【0138】
実施例2
トランス-3-[[4-(4-クロロフェニル)-5-(4-ピリジン-2-イルオキシシクロヘキシル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]メチル]-1,2-オキサゾール
【化7】
一般手順に従って、標題の化合物を白色固体として収率29%で得た。
ヒドラジド:2-(イソオキサゾール-3-イル)アセトヒドラジド(CAS934172-86-8)
MS m/e:436(M+H
+)
【0139】
実施例3
トランス-5-[[4-(4-クロロフェニル)-5-(4-ピリジン-2-イルオキシシクロヘキシル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]メチル]-1,2-オキサゾール
【化8】
一般手順に従って、標題の化合物を灰白色固体として収率52%で得た。
ヒドラジド:2-(イソオキサゾール-5-イル)アセトヒドラジド(CAS934172-37-9)
MS m/e:436(M+H
+)
【0140】
実施例4
トランス-2-[4-[4-(4-クロロフェニル)-5-(ピラゾール-1-イルメチル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]シクロヘキシル]オキシピリジン
【化9】
一般手順に従って、標題の化合物を白色固体として収率23%で得た。
ヒドラジド:2-(1H-ピラゾール-1-イル)アセトヒドラジド(CAS934175-49-2)
MS m/e:435(M+H
+)
【0141】
実施例5
トランス-2-[4-[4-(4-クロロフェニル)-5-(トリアゾール-2-イルメチル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]シクロヘキシル]オキシピリジン
【化10】
一般手順に従って、標題の化合物を灰白色固体として収率9%で得た(主要なジアステレオマー)。
ヒドラジド:2-(2H-1,2,3-トリアゾール-2-イル)アセトヒドラジド(CAS859154-18-0)
MS m/e:436(M+H
+)
【0142】
実施例6
シス-2-[4-[4-(4-クロロフェニル)-5-(トリアゾール-2-イルメチル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]シクロヘキシル]オキシピリジン
【化11】
一般手順に従って、標題の化合物を淡褐色固体として収率2%で得た(微量のジアステレオマー)。
ヒドラジド:2-(2H-1,2,3トリアゾール-2-イル)アセトヒドラジド(CAS859154-18-0)
MS m/e:436(M+H
+)
【0143】
実施例7
トランス-2-[4-[4-(4-クロロフェニル)-5-(トリアゾール-1-イルメチル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]シクロヘキシル]オキシピリジン
【化12】
一般手順に従って、標題の化合物を白色固体として収率30%で得た。
ヒドラジド:2-(1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル)アセトヒドラジド(CAS4332-47-2)
MS m/e:436(M+H
+)
【0144】
実施例8
トランス-2-[4-[4-(4-クロロフェニル)-5-(イミダゾール-1-イルメチル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]シクロヘキシル]オキシピリジン
【化13】
一般手順に従って、標題の化合物を白色固体として収率19%で得た。
ヒドラジド:2-(1H-イミダゾール-1-イル)アセトヒドラジド(CAS 56563-00-9)
MS m/e:435(M+H
+)
【0145】
実施例9
トランス-2-[4-[4-(4-クロロフェニル)-5-(1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]シクロヘキシル]オキシピリジン
【化14】
一般手順に従って、標題の化合物を白色固体として収率18%で得た。
ヒドラジド:2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)アセトヒドラジド(CAS56563-02-1)
MS m/e:436(M+H
+)
【0146】
実施例10
トランス-2-[4-[4-(4-クロロフェニル)-5-(テトラゾール-1-イルメチル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]シクロヘキシル]オキシピリジン
【化15】
一般手順に従って、標題の化合物を白色固体として収率9%で得た。
ヒドラジド:2-(1H-テトラゾール-1-イル)アセトヒドラジド(CAS81548-04-1)
MS m/e:437(M+H
+)
【0147】
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【国際調査報告】