(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-14
(54)【発明の名称】運動分析方法および運動分析装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/11 20060101AFI20230804BHJP
【FI】
A61B5/11 200
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574157
(86)(22)【出願日】2021-06-11
(85)【翻訳文提出日】2023-01-23
(86)【国際出願番号】 GB2021051467
(87)【国際公開番号】W WO2021250430
(87)【国際公開日】2021-12-16
(32)【優先日】2020-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520233043
【氏名又は名称】コネクサ ヘルス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100141173
【氏名又は名称】西村 啓一
(72)【発明者】
【氏名】ケリー ピーター ジョン
(72)【発明者】
【氏名】エリス ロバート デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ファン チェンルイ
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038VA12
4C038VB35
4C038VC09
(57)【要約】
【解決手段】
運動分析方法と運動分析装置とが開示される。本装置と本方法とは、ユーザにより携帯される加速度計から加速度データ(または他の動作センサから測定値)を受信する。加速度データは複数のエポックに分割されて、各エポック内でユーザが歩行または走行しているかの決定が行われる。ユーザが歩行または走行している期間を決定するために、ユーザが歩行しているとみなされた連続する複数のエポックは、連結されてもよい。ユーザが歩行または走行を開始した時刻と歩行または走行を停止した時刻との初期推定値は、歩行期間ごとに決定される。次いで、歩行または走行期間の正確な開始時刻と停止時刻とを決定するために、反復最適化プロセスが実行される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの歩行または走行期間の開始時刻と停止時刻とを決定する装置であって、
少なくとも1つのプロセッサとメモリとを有してなり、
前記プロセッサと前記メモリとは、
歩行または走行の際に前記ユーザにより携帯されるユーザデバイスから動作データを取得して、
前記動作データを一連のエポックに分割して、
前記ユーザが歩行または走行している1つ以上の前記エポックを決定するために、前記エポックのそれぞれにおける前記動作データを処理して、
1つ以上の前記エポックから前記ユーザの少なくとも1つの歩行または走行期間を決定して、
決定された前記歩行または走行期間の初期開始時刻と初期停止時刻とを決定して、
予め定義された最適化関数を最適化する前記歩行または走行期間の最適化開始時刻および/または最適化停止時刻を特定するために、前記初期開始時刻および/または前記初期停止時刻を修正する反復最適化プロセスを実行する、
ように構成される、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記反復最適化プロセスは、
i)現在の候補開始時刻のインクリメントまたはデクリメントと、
ii)インクリメントまたはデクリメントされた現在の前記候補開始時刻および現在の候補停止時刻に基づく、メトリックの値の決定と、
iii)ii)で決定された前記メトリックが、先行する反復においてii)で決定された前記メトリックよりも良好であるか否かの決定、インクリメントまたはデクリメントされた前記開始時刻を現在の前記候補開始時刻としての受け入れ、次いで、ii)で決定された前記メトリックが先行する前記反復において決定された前記メトリックよりも良好であればi)への戻し、先行する前記反復においてii)で決定された前記メトリックが現在の前記反復において決定された前記メトリックよりも良好であれば先行する前記候補開始時刻への復帰と、
を含む、
請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記反復最適化プロセスは、
i)現在の前記候補停止時刻のインクリメントまたはデクリメントと、
ii)インクリメントまたはデクリメントされた現在の前記候補停止時刻および現在の前記候補開始時刻に基づく、前記メトリックの値の決定と、
iii)ii)で決定された前記メトリックが、先行する前記反復においてii)で決定された前記メトリックよりも良好であるか否かの決定、インクリメントまたはデクリメントされた前記停止時刻を現在の前記候補停止時刻としての受け入れ、次いで、ii)で決定された前記メトリックが先行する前記反復において決定された前記メトリックよりも良好であればi)への戻し、先行する前記反復においてii)で決定された前記メトリックが現在の前記反復において決定された前記メトリックよりも良好であれば先行する前記候補停止時刻への復帰と、
を含む、
請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記反復最適化プロセスは、前記歩行または走行期間について所定の前記メトリックを最大化または最小化するように構成される、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記歩行または走行期間の継続時間が(前記開始時刻または前記停止時刻のいずれかを変更することにより)延長された場合において、追加された間隔が歩行または走行に対応する場合、前記メトリックは増加するように構成されて、前記追加された間隔が歩行または走行に対応しない場合、前記メトリックは減少するように構成される、
請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記歩行または走行期間の前記継続時間が(前記開始時刻または前記停止時刻のいずれかを変更することにより)短縮された場合において、削除された間隔が歩行または走行に対応しない場合、前記メトリックは増加するように構成されて、追加された間隔が歩行または走行に対応する場合、前記メトリックは減少するように構成される、
請求項4または5記載の装置。
【請求項7】
前記メトリックは、前記開始時刻と前記停止時刻との間の時間差に依存する、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
少なくとも1つの前記プロセッサと前記メモリとは、前記動作データの自己相関関数を決定するように構成されて、
前記メトリックは、
前記自己相関関数から得られる1つ以上のパラメータ、
を含む、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
少なくとも1つの前記プロセッサと前記メモリとは、ゼロ遅延ピークの後の前記自己相関関数のピーク値を決定するように構成されて、
前記メトリックは、決定された前記ピーク値に依存する、
請求項8記載の装置。
【請求項10】
少なくとも1つの前記プロセッサと前記メモリとは、前記ピーク値に対応する自己相関遅延を決定するように構成されて、
前記メトリックは、決定された前記自己相関遅延に依存する、
請求項9記載の装置。
【請求項11】
少なくとも1つの前記プロセッサと前記メモリとは、前記エポックのそれぞれの内の加速度計データの前記自己相関関数を決定して、前記エポックについて決定された前記自己相関関数に依存して、前記ユーザが前記エポック内で歩行または走行しているかを決定するように構成される、
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
少なくとも1つの前記プロセッサと前記メモリとは、前記ユーザが前記エポック内で歩行または走行しているかを決定するために、歩幅周期と、歩幅相関値と、振幅測定値と、のうちの1つ以上を決定するように構成される、
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
少なくとも1つの前記プロセッサと前記メモリとは、
前記歩幅周期が第1閾値を上回り、かつ第2閾値を下回るとの決定と、
前記歩幅相関値が第3閾値を上回るとの決定と、
前記振幅測定値が第4閾値を上回るとの決定と、
のうちの1つ以上を決定することにより、前記ユーザが前記エポック内で歩行または走行しているかを決定するように構成される、
請求項12記載の装置。
【請求項14】
少なくとも1つの前記プロセッサと前記メモリとは、前記ユーザの前記歩行または走行期間を決定するために、前記ユーザが歩行または走行していると決定された一連の前記エポックのうち隣接する前記エポックを連結して、連結された前記エポックを用いて、決定された前記歩行または走行期間の前記初期開始時刻と前記初期停止時刻とを決定するように構成される、
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
動作センサは、前記加速度計またはジャイロスコープである、
請求項1乃至14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
少なくとも1つの前記プロセッサと前記メモリとは、歩行または走行時に前記ユーザにより携帯される複数の前記動作センサから前記動作データを取得するように構成されて、少なくとも1つの前記歩行または走行期間の前記開始時刻と前記停止時刻とは、複数の前記動作センサからの前記動作データを用いて決定される、
請求項1乃至15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
少なくとも1つの前記プロセッサと前記メモリとは、前記動作センサのそれぞれからの前記動作データを用いて、少なくとも1つの前記歩行または走行期間のそれぞれの前記開始時刻と前記停止時刻とを決定して、i)少なくとも1つの前記歩行または走行期間の前記開始時刻と前記停止時刻とを平均する、またはii)前記動作データを用いて1つの前記動作センサからの前記動作データまたは他の前記動作センサから取得された前記動作データから得られるデータから決定された前記開始時刻と前記停止時刻とを検証するように構成される、
請求項16記載の装置。
【請求項18】
前記動作センサは、前記ユーザにより携帯される同じ前記ユーザデバイスに搭載されるか、または前記動作センサは、前記ユーザにより携帯される異なる前記ユーザデバイスに、通常、異なる装着位置で搭載される、
請求項16または17記載の装置。
【請求項19】
臨床試験システムの一部を構成する装置であって、
複数の前記ユーザデバイスと通信する中央コンピュータ、
を有してなり、
前記ユーザデバイスのそれぞれは、前記ユーザデバイスに関連付けられた前記ユーザの運動に関する前記動作データを収集するように構成されて、
前記中央コンピュータまたは少なくとも1つの前記ユーザデバイスは、
前記ユーザの前記歩行または走行期間の前記開始時刻と前記停止時刻とを決定する請求項1乃至18のいずれか一項に記載の装置、
を備える、
請求項1乃至18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
ユーザの歩行または走行期間の開始時刻と停止時刻とを決定する方法であって、
歩行または走行の際に前記ユーザにより携帯されるユーザデバイスから動作データを取得する工程と、
前記動作データを一連のエポックに分割する工程と、
前記ユーザが歩行または走行している1つ以上の前記エポックを決定するために、前記エポックのそれぞれにおける前記動作データを処理する工程と、
1つ以上の前記エポックから前記ユーザの少なくとも1つの前記歩行または走行期間を決定する工程と、
決定された前記歩行または走行期間の初期開始時刻と初期停止時刻とを決定する工程と、
予め定義された最適化関数を最適化する前記歩行または走行期間の最適化開始時刻および/または最適化停止時刻を特定するために、前記初期開始時刻および/または前記初期停止時刻を修正する反復最適化プロセスを実行する工程と、
を含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項21】
プログラマブルコンピュータデバイスを請求項1乃至19のいずれか一項に記載の装置として構成させるコンピュータ実装可能な命令、
を含む、
ことを特徴とする有形コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの運動の測定分野に関する。特に、本発明の実施形態は、ユーザがいつ歩行または走行しているかを検出して、ユーザがどのくらいの時間歩行または走行しているかを決定するために、ユーザの運動を測定する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
活動量計や歩数計などのデバイスは、ユーザの運動を測定するために使用される。これらのデバイスは、ユーザがいつ歩行しているかを決定するために使用され得て、これにより、ユーザの歩数(ステップカウント)が決定され得る。歩数を正確に把握することは、ユーザの正確な活動量を決定する上で重要であり得る。
【0003】
現在のデバイスは、一般にレジャー市場向けであり、精度よりも再現性が重視される。これらのデバイスは、ユーザの歩数をモニタリングするように設計された専用のデバイスでもよく、携帯電話やスマートウォッチなどのユーザデバイス上で作動するソフトウェアアプリケーションの形態を取ってもよい。これらのデバイスを使用したことがある人なら分かるように、デバイスが異なれば、歩いた距離が同じでもステップカウントが大きく異なることがよくある。
【0004】
現在のデバイスは、ユーザのステップカウントや歩行期間を不正確に測定し得る。現在の運動量測定の手法において、十分に活発な運動が歩行期間としてカウントされ得る。例えば、手首に装着されるデバイスの場合、野菜を切るなど手首の運動を要する活動は、誤読の原因になり得る。既存の活動量測定法は、十分に活発な運動の開始を歩行エピソードの開始時刻と仮定する。同様に、十分に活発な運動の停止が歩行エピソードの終了と仮定される。歩行開始前や歩行終了後、歩行以外の活動に対応するが、基準を満たすほど十分に活発な運動がある場合は、歩行の継続時間の過大推定につながり得る。
【0005】
正確な活動量データは、医療用途を含む様々な目的で重要であり得る。さらに、臨床的に承認されたある評価では、予め定められた特定の期間、歩行することが求められる。必要な歩行期間からの逸脱は、評価を無効にして、臨床試験全体の妥当性に影響を与え得る。そのため、例えば、他のセンサとの相関や時間ごとの測定にこのデータが必要な場合に、正確な活動量データがないことにより、治療効果の決定に悪影響が及ぼされ得る。医療用途では、治療の決定および/または薬の試験結果に影響を与えて、それにより健康に重大な影響を及ぼし得るため、精度に対する要求は、特に重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の態様は独立請求項に記載されて、好ましい特徴は従属請求項に記載される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
運動分析方法と運動分析装置とが開示される。本装置と本方法とは、ユーザにより携帯される加速度計から加速度データ(または動作センサから他の動作データ)を受信する。データは一連のエポックに分割されて、各エポック内でユーザが歩行しているかの決定が行われる。ユーザが歩行している少なくとも1つの期間を決定するために、ユーザが歩行しているとみなされた連続する複数のエポックは、連結されてもよい。ユーザが歩行を開始した時刻と歩行を停止した時刻との初期推定値は、連結された一連のエポックの最初のエポックと最後のエポックとのエポック時刻に基づいて、歩行期間ごとに決定される。各歩行期間の正確な開始時刻と停止時刻とを決定するために、反復最適化プロセスが実行される。
【0008】
一態様によれば、本発明は、ユーザの歩行または走行期間の開始時刻と停止時刻とを決定する装置を提供する。本装置は、少なくとも1つのプロセッサとメモリとを備える。プロセッサとメモリとは、歩行または走行の際にユーザにより携帯されるユーザデバイスから動作データを取得して、動作データを一連のエポックに分割して、ユーザが歩行または走行している1つ以上のエポックを決定するために、各エポックにおける動作データを処理して、1つ以上の前記エポックからユーザの少なくとも1つの歩行または走行期間を決定して、決定された歩行または走行期間の初期開始時刻と初期停止時刻とを決定して、予め定義された最適化関数を最適化する歩行または走行期間の最適化開始時刻および/または最適化停止時刻を特定するために、初期開始時刻および/または初期停止時刻を修正する反復最適化プロセスを実行するように構成される。動作センサは、加速度計またはジャイロスコープでもよい。
【0009】
反復プロセスは、i)現在の候補開始時刻のインクリメントまたはデクリメントと、ii)インクリメントまたはデクリメントされた現在の候補開始時刻と、現在の候補停止時刻と、に基づく、メトリックの値の決定と、iii)ii)で決定されたメトリックが、先行する反復においてii)で決定されたメトリックよりも良好であるか否かの決定、インクリメントまたはデクリメントされた開始時刻を現在の候補開始時刻としての受け入れ、次いで、ii)で決定されたメトリックが先行する反復において決定されたメトリックよりも良好であればi)への戻し、先行する反復においてii)で決定されたメトリックが現在の反復において決定されたメトリックよりも良好であれば先行する候補開始時刻への復帰と、を含んでもよい。
【0010】
反復プロセスは、i)現在の候補停止時刻のインクリメントまたはデクリメントと、ii)インクリメントまたはデクリメントされた現在の候補停止時刻と、現在の候補開始時刻と、に基づく、メトリックの値の決定と、iii)ii)で決定されたメトリックが、先行する反復においてii)で決定されたメトリックよりも良好であるか否かの決定、インクリメントまたはデクリメントされた停止時刻を現在の候補停止時刻としての受け入れ、次いで、ii)で決定されたメトリックが先行する反復において決定されたメトリックよりも良好であればi)への戻し、先行する反復においてii)で決定されたメトリックが現在の反復において決定されたメトリックよりも良好であれば先行する候補停止時刻への復帰と、をさらに含んでもよい。
【0011】
通常、最適化プロセスは、歩行または走行期間について所定のメトリックを最大化または最小化するように構成される。歩行または走行の期間の継続時間が(開始時刻または停止時刻のいずれかを変更することにより)延長された場合において、追加された間隔が歩行または走行に対応する場合、メトリックは増加するように構成されて、追加された間隔が歩行または走行に対応しない場合、メトリックは減少するように構成されてもよい。また、歩行または走行の期間の継続時間が(開始時刻または停止時刻のいずれかを変更することにより)短縮された場合、削除された間隔が歩行または走行に対応しない場合、メトリックは増加するように構成されて、追加された間隔が歩行または走行に対応する場合、メトリックは減少するように構成されてもよい。一実施形態において、メトリックは、開始時刻と終了時刻との間の時間差に依存する。少なくとも1つのプロセッサとメモリとは、加速度データの自己相関関数を決定するように構成されてもよく、メトリックは、自己相関関数から得られる1つ以上のパラメータを含む。パラメータは、ゼロ遅延ピークの後の自己相関関数のピーク値と、ピーク値に対応する自己相関遅延と、のうちの1つ以上でもよい。
【0012】
エポックは所定の継続時間であり、通常、重なり合っている。一部の実施形態において、少なくとも1つのプロセッサとメモリとは、各エポック内の加速度計データの自己相関関数を決定して、エポックについて決定された自己相関関数に依存して、ユーザがエポック内で歩行または走行しているかを決定するように構成される。少なくとも1つのプロセッサとメモリとは、ユーザがエポック内で歩行または走行しているかを決定するために、歩幅周期と、歩幅相関値と、二乗平均平方根振幅と、うちの1つ以上を決定するようにさらに構成されてもよい。少なくとも1つのプロセッサとメモリとは、歩幅周期が第1閾値を上回り、かつ第2閾値を下回るとの決定と、歩幅相関値が第3閾値を上回るとの決定と、二乗平均平方根振幅が第4閾値を上回るとの決定と、のうちの1つ以上を決定することにより、ユーザがエポック内で歩行または走行しているかを決定するように構成されてもよい。
【0013】
少なくとも1つのプロセッサとメモリとは、ユーザの歩行または走行期間を決定するために、ユーザが歩行または走行していると決定された一連のエポックのうち隣接するエポックを連結してもよく、連結されたエポックを用いて、決定された歩行または走行期間の初期開始時刻と初期停止時刻とを決定してもよい。
【0014】
少なくとも1つのプロセッサとメモリとは、歩行または走行期間に対応する連結された一連のエポックの最初のエポックのエポック時刻から初期開始時刻を決定してもよく、歩行または走行期間に対応する連結された一連のエポックの最後のエポックのエポック時刻から初期停止時刻を決定してもよい。
【0015】
少なくとも1つのプロセッサとメモリとは、歩行または走行時にユーザにより携帯される複数の動作センサから動作データを取得するようにさらに構成されてもよく、少なくとも1つの歩行または走行期間の開始時刻と停止時刻とは、複数の動作センサからの動作データを用いて決定される。プロセッサとメモリとは、各動作センサからの動作データを用いて、少なくとも1つの歩行または走行期間のそれぞれの開始時刻と停止時刻とを決定してもよく、i)少なくとも1つの歩行または走行期間の決定された開始時刻と停止時刻とを平均する、またはii)動作データを用いて1つのセンサからの動作データまたは他の動作センサから取得された動作データから得られるデータから決定された開始時刻と停止時刻とを検証してもよい。動作センサは、ユーザにより携帯される同じユーザデバイスの一部を構成してもよく、またはユーザにより携帯される異なるユーザデバイスに搭載されてもよい。動作センサが異なるユーザデバイスに搭載される場合、通常、異なる装着位置で携帯される。
【0016】
本発明はまた、ユーザの歩行または走行期間の開始時刻と停止時刻とを決定する装置を提供する。本装置は、プロセッサとメモリとを備える。プロセッサとメモリとは、ユーザのユーザデバイスから加速度データを取得して、ユーザの歩行または走行期間を決定するために、加速度データを処理して、決定された歩行または走行期間の初期開始時刻と初期停止時刻とを決定して、歩行または走行期間の最適化開始時刻と最適化停止時刻とを決定するために、予め定義された最適化関数を最適化する歩行または走行期間の開始時刻と停止時刻とを特定するために、初期開始時刻と初期停止時刻とを修正する反復最適化プロセスを実行するように構成される。
【0017】
別の態様によれば、本発明は、ユーザの歩行または走行期間の開始時刻と停止時刻とを決定する方法を提供する。本方法は、歩行または走行の際にユーザにより携帯されるユーザデバイスから動作データを取得する工程と、動作データを一連のエポックに分割する工程と、ユーザが歩行または走行している1つ以上のエポックを決定するために、各エポックにおける動作データを処理する工程と、1つ以上の前記エポックからユーザの少なくとも1つの歩行または走行期間を決定する工程と、決定された歩行または走行期間の初期開始時刻と初期停止時刻とを決定する工程と、予め定義された最適化関数を最適化する歩行または走行期間の最適化開始時刻および/または最適化停止時刻を特定するために、初期開始時刻および/または初期停止時刻を修正する反復最適化プロセスを実行する工程と、を含む。
【0018】
本発明はまた、プログラマブルコンピュータデバイスを上記概要のとおりの装置として構成させるコンピュータ実装可能な命令を含む有形コンピュータ可読媒体を提供する。
【0019】
本発明はまた、複数のユーザデバイスと通信する中央コンピュータを含む臨床試験システムを提供する。各ユーザデバイスは、ユーザデバイスに関連付けられたユーザの運動に関する加速度データを収集するように構成されて、中央コンピュータまたは少なくとも1つのユーザデバイスは、上記概要のとおりの装置を備える。
【図面の簡単な説明】
【0020】
次に、本発明の例示的な実施形態について、以下の添付の図を参照して説明する。
【
図1A】臨床試験に参加するユーザの運動が、ユーザにより装着または携帯されるユーザデバイスにより決定されて、収集および分析のために中央サーバに報告される、臨床試験を模式的に示す図である。
【
図1B】
図1Aに示されるシステムの主要な電子部品を示すブロック図である。
【
図2】
図1Bに示されるユーザデバイスの主要な構成要素を示すブロック図である。
【
図3】ユーザの歩行期間の開始時刻と停止時刻とを決定する従来技術を示すフロー図である。
【
図4】連続する4つのエポックに適用されるハミング窓を示すグラフであり、分析されるエポックの重なる性質を示す。
【
図5】エポックが歩行に対応するか否かを決定する好ましい技術を示すフロー図である。
【
図6】ユーザの歩行中に取得される加速度計データから算出される自己相関関数を示すプロットである。
【
図7】ユーザが移動している際の加速度の大きさをプロットして、その期間を示すグラフである。
【
図8】ユーザが歩行する際の開始時刻と停止時刻とを決定するために使用される、算出されるメトリックの等高線プロットを示す図である。
【
図9】反復手順を用いて歩行期間の正確な開始時刻と停止時刻とを決定するフロー図である。
【0021】
図面では、同様の要素を示すために、同様の参照番号が使用される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
概要
上記に概要を述べたように、本発明は、ユーザの運動を分析する代替方法を提供する。本発明により提供される方法と装置とは、フィットネストラッカや、パフォーマンス管理など、様々な用途で使用され得る。しかしながら、本発明は、次に説明する医療現場でも使用され得る。
【0023】
より具体的には、
図1Aと
図1Bとは、いくつかの患者(以下、ユーザともいう)30a-30eがそれぞれのユーザデバイス100a-100eを使用して、対応する患者の歩行時の運動をモニタリングする臨床試験システム10において、本発明がどのように使用され得るかを示す。ユーザデバイス100により集められた情報は、通信ネットワーク120(
図1Aでは破線40a-40eで表される)を介して、クリニック20内に表示され得る結果と共に中央サーバ140に送信される。
【0024】
クリニック20は、病院や医師の手術室などの医療センタでもよい。クリニック20は、単一のセンタで構成されてもよく、またはいくつかの異なる地理的場所に位置するいくつかのセンタで構成されてもよい。患者30a-30eは、クリニック20の患者であり、クリニック20が組織する治験に参加している。治験の患者は、それぞれ同じ病状を持つグループに分けられる。
【0025】
患者30a-30eのそれぞれには、クリニック専用であり、治験終了後にクリニックに返却され得るユーザデバイス100が提供される。あるいは、クリニックは、携帯電話やスマートウォッチなど、患者自身のユーザデバイス上で作動できるソフトウェアアプリケーションを患者に提供してもよい。いずれの場合も、各患者は、ユーザデバイスに付随する加速度計が臨床試験中のユーザの運動を捕捉し得るように自身のユーザデバイスを装着または携帯するように依頼される。
図1Bに示されるように、一部のユーザデバイス100は内蔵型加速度計102を備えるが、一部のユーザデバイス100(この例ではユーザデバイス100a)は備えていない。あるいは、ユーザデバイス100が加速度計を有していない場合などには、患者30aの運動を捕捉する加速度計102-aを有する別のアクチグラフ測定(actigraphy-measuring)デバイス101aが提供される。ユーザデバイスまたはアクチグラフ測定デバイス101は、例えば、患者の手首の周り、足首の周り、ポケット内、ベルト上に付ける、手に持つ、患者が身につけるバッグに入れる、例えば、患者の首の周りにペンダントとして身につけるなど、患者により装着または携帯される。
【0026】
加速度計は、通常、加速度計の向きに応じた3つの直交方向における加速度情報を提供する。加速度計データを分析することにより、ユーザデバイス100は、治験の一部としてさらなる分析のために中央サーバ140に患者データとして送信される(無線または有線接続で)患者に関する運動情報を決定できる。
【0027】
一実施例において、中央サーバ140に提供される患者データは、歩行データと、歩行データに関連する患者を識別する識別データと、を含む。歩行データは、例えば、1日、1週間、1ヶ月、1年などの臨床試験により特定された期間において、ステップカウントと、歩行期間または活動期間と、歩行距離と、消費カロリと、のうちの1つ以上を含んでもよい。患者データは、患者がクリニックを訪れた際に、ユーザデバイス100から取得されてもよく、または患者データは、携帯電話や有線電話、コンピュータネットワークを介して(無線または有線接続で)クリニックに送信されてもよい。クリニックで収集された患者データには、クリニック20で実施されるのみで、遠隔でモニタリングされ得ない身体観察や検査が補完され得る。クリニック20の外や自宅での患者の活動に関するクリニック20に提供されるデータの精度は、モニタリング期間中の患者の活動の実態が治験において収集されることを保証するために重要である。これは、臨床試験の治療法の有効性を決定することに役立ち得る。
【0028】
別の実施例において、中央サーバ140に提供される患者データは、加速度計データと共に患者の識別データを含むため、中央サーバ140が各患者の加速度計データを処理して、そこから中央サーバ140が各患者の歩行データ自体を算出する。
図1Bに図示されていないが、この場合、中央サーバ140は、キーボードなどのユーザ入力デバイスを備えるユーザインタフェース、および/またはシステムのユーザデバイスから収集されたデータを処理するソフトウェアをさらに備える。
【0029】
歩行データなどの患者の活動を示す患者データは、患者の健康や体力レベルを示す良い指標となる。例えば、ステップカウントは健康全般を表す指標であるため、その患者データは回復の指標として使用され得る。ステップカウントの増加は可動性の増加を示して、患者の改善を示し得る一方、ステップカウントの減少または停滞は、患者が治療に反応していない、改善が見られない、または患者の病状がより悪化していることを示し得る。場合によっては、ステップカウントは、患者をクリニックに呼ばれる必要性を示してもよく、または患者が短期間入院する必要があることを示し得る。治療効果が薄れた期間と比較して治療効果が最大である期間のステップカウントの増加は、治療効果の指標を与え得る。いつくかの例において、収集された患者データは、クリニックにより使用されて、必要に応じて医師や臨床医との患者の予約を取るために役立ち得る。
【0030】
ユーザデバイスにより提供される歩行データは、複数の患者30a-30eのうちの1人以上に、データにより示される個々のニーズおよび/または能力に合わせた、個人用の運動計画を提供するためにも使用され得る。臨床試験のために、歩行データは、試験プロトコルの遵守度を測定して、必要なデータを捕捉して、遵守されていない評価を特定するために使用され得る。必要に応じて評価を繰り返すよう要請する、歩行期間が不十分な場合やステップカウントが少なすぎる場合に活動するよう促す、またはより広範な健康関連の行動変容の推奨事項を特定するプロンプトが患者に送信されてもよい。
【0031】
歩行データは、歩行能力に影響を与えることが知られている1つ以上の病状を持つ患者の研究に特に有用である。一時的に歩行やバランスに関する合併症が怪我、外傷、炎症、または痛みにより引き起こされる場合がある。また、歩行、バランス、協調性などの歩行に関する問題が、特定の状態により引き起こされる場合もある。歩行活動を測定する上で特に重要となり得る状態としては、関節炎、多発性硬化症(MS:multiple sclerosis)、メニエール病、出血や腫瘍などにより生じる脳損傷、パーキンソン病、腰や下半身の整形外科手術、癌および関連する治療、脳性麻痺、肥満、痛風、筋ジストロフィー、脳卒中、脊髄損傷、変形などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
また、歩行データは、理学療法の測定やパフォーマンス管理にも活用され得る。管理された、または管理されていない治療セッション活動時のターゲットとなる時間評価中の歩行データの詳細な分析は、患者またはその療法士や医師に提供され得る。そして、そのデータは、回復プログラムを改善するための治療法を知らせるために使用され得る。
【0033】
ユーザデバイス
図2は、前述のシステムで使用される典型的なユーザデバイス100のブロック図である。図示のとおり、この場合、ユーザデバイス100は、加速度計データを少なくとも1つの中央処理装置(CPU:central processing unit)108に提供する加速度計102を有する。CPU108の動作は、メモリ106に記憶されるソフトウェア命令により制御される。図示のとおり、ソフトウェア命令は、オペレーティングシステム106-1と、運動分析アプリケーション106-2と、を含む。加速度計102からの加速度計データは、運動分析アプリケーション106-2により処理されて、患者の歩行データが算出される。
【0034】
ユーザデバイス100はさらに、運動分析アプリケーション106-2により決定された患者データを中央サーバ140に通信する通信インタフェース110と、キーパッド112-1およびディスプレイ112-2を含み、患者のユーザデバイス100との対話を可能にするユーザインタフェース112と、を備える。ディスプレイ112-2は、ユーザに情報を提供するように構成される1つ以上のアイコン、および/または、時間と、日付と、歩数と、活動特定アイコン(歩行走行、サイクリングなど)と、活動の継続時間と、活動に関するリマインダメッセージおよび/または指示と、ネットワーク接続状態と、電池残量と、ユーザに表示すべき他の任意の有用な情報と、のうちの1つ以上を表示してもよい。
【0035】
運動分析アプリケーション-概要
図3は、ユーザが歩行している期間の開始時刻と停止時刻とを決定するために、加速度計データに対して運動分析アプリケーション106-2により実行される処理の概要を示す。
【0036】
ステップ310において、加速度計102からのデータが運動分析アプリケーション106-2により受信される。加速度計データは、時間によりインデックス付けされた一連のデータポイントを含む。時間tにおける加速度計からのデータポイント(読取値)は、3つの直交方向Ax、Ay、Azの加速度測定値(AAx(t)、AAy(t)、AAz(t))を含む。Axと、Ayと、Azとは、加速度計を携帯する人の向きや他の地理的座標系ではなく、加速度計102の向きに位置合わせされる(それにより定義される)。通常、加速度計102からの読取値は単位gで提供されて、gは地表における重力による加速度(9.8m/s2)である。サンプリングレート(加速度計102が加速度読取値を提供する速度)は、加速度計によって異なり、多くの場合、設定可能であるが、歩行の分析に有用であるためには、サンプリングレートは少なくとも20Hz、好ましくはより高い値(例えば、30Hzまたは100Hz)であるべきである。
【0037】
所望により、ステップ310で受信された生の加速度計データは、任意のローパスフィルタ106-2-1によりフィルタリングされて、ユーザの歩行運動に関連しない加速度計測定値の高周波変動を除去してもよい。このようなローパスフィルタのカットオフ周波数は、通常8Hzから20Hzの間、好ましくは約10Hzである。
【0038】
ステップ320において、ステップ310で受信された(または、実行された場合はローパスフィルタリング後の)ベクトル加速度計データは、エポック分割部106-2-2により一連のエポックに分割される。エポックとは、所定の時間の区切りである。最も単純な形態では、例えば、エポック長が5秒の場合、最初のエポックは最初の5秒、2番目のエポックは次の5秒、というように、データはいくつかの重ならないエポックに分割されてもよい。しかしながら、この場合、エポック境界の位置の影響を受けやすいという欠点がある。2つのエポックにまたがる事象は、1つのエポックに完全に含まれる同じ事象よりも検出の信頼性が低くなり得る。
【0039】
そのため、好ましい実施形態において、隣接するエポックと重なるより長いエポックが定義される(通常、継続時間は5秒から20秒の間)。例えば、重なりが50%の場合、各エポックの前半は前のエポックに重なり、後半は次のエポックに重なる。各エポック内のデータは、エポックの中間のデータが最も重視されて、各エポックの開始時と終了時とのデータはあまり重視されないように重み付けされる。これを実現するためにハミング窓が使用されてもよいが、例えば、バートレット(Bartlett)、ハニング(Hanning)、テーパーコサイン(tapered cosine)など、他の窓関数が使用されてもよい。
図5は、4つの連続するエポックのハミング窓のグラフである。グラフは、データを分割して、重み付けするために使用され得る、重なり合ったハミング窓を示す。4つのエポックはそれぞれ10秒の長さで、前のエポックの開始から5秒後に開始する(つまり、エポック1が0秒に開始して10秒に終了する、エポック2が5秒に開始して15秒に終了する、など)。隣接するエポック間には50%の重なりがあり、その結果、エポックは5秒間隔で開始される。各エポックは、例えば、エポックの開始時刻、エポックの終了時刻、またはエポックの中間時刻に対応する関連時刻(以下、エポック時刻と呼ぶ)を有する。詳細は後述するが、このエポック時刻は、歩行期間のおおよその開始時刻と停止時刻とを特定するために使用される。
【0040】
各エポックの長さは、必要とされる歩行検出の粒度とほぼ等しいか、それより短くなければならない。例えば、10秒程度の短い歩行期間を検出したい場合、約10秒のエポック長を使用する必要がある。ただし、エポック長は、予想される歩幅周期の少なくとも2倍、つまり、少なくとも約2秒でなければならない。また、エポック長が短いと(例えば、2秒または3秒)、エポック長が長い場合(例えば、10秒)よりもS/N比が低くなりやすいことに留意されたい。しかしながら、エポックを長くすればするほど、ユーザの歩行パラメータ(特に歩幅周期)がエポック継続時間中に一定でなくなり、他の不正確な情報をもたらすリスクが高くなる。実際に、本発明者らは、約10秒または20秒のエポック長が、臨床試験の精度の基準を満たすかそれを超える精度で、様々な身体状態の患者に対してよく機能することを見出している。
【0041】
ステップ330において、歩行決定部106-2-3は、各エポックにおける重み付けされた加速度データを分析して、そのエポック内でユーザが歩行していることをデータが示すか否かを決定する。ステップ340において、開始/停止決定部106-2-4は、ユーザの歩行に対応すると決定された連続するエポックを統合して、ステップ350において、統合されたエポックの開始時刻と停止時刻とを決定する。開始時刻は、統合されたエポックの最初のエポックのエポック時刻(最初のエポックとは、ステップ330で決定された、エポックのデータが歩行に対応すると決定された一連の統合されたエポックのうちの最初のもの)に対応して、停止時刻は、統合されたエポックの最後のエポック時刻(最後のエポックとは、エポックのデータが歩行に対応すると決定された一連の統合されたエポックのうちの最後のもの)に対応する。歩行期間が1つのエポックに対応する場合、歩行決定部106-2-3は、エポックの開始時刻を開始時刻として、エポックの終了時刻を終了時刻として使用してもよい。ただし、ハミング窓関数はエポックの最初と最後との1/4の影響を低減するため、代わりにエポックの2つ目の1/4の開始の時刻で開始時刻が定義されて、エポックの3つ目の1/4の終了の時刻で終了時刻が定義されてもよい。
【0042】
運動分析アプリケーション-歩行決定部
次に、歩行決定部106-2-3が実行する処理について、
図2と、
図4と、
図6とを参照しながら、より詳細に説明する。
【0043】
ステップ415において、歩行決定部106-2-3は、エポック分割部106-2-2により加速度計データから抽出された現在のエポックのデータを受信する。ステップ420において、歩行決定部106-2-3は、エポック内の加速度計データの大きさを次式で決定する。
A
mag(t)=sqrt(A
Ax(t)
2+A
Ay(t)
2+A
Az(t)
2)
加速度の大きさは、加速度計の向きに依存しないため、この大きさを算出する。ステップ420において、歩行決定部106-2-3はさらに、これらの大きさから、これらの大きさの平均値を減算する。
式中、A
mag(n)はエポック内の時間nにおける加速度計データポイントであり、Nは加速度計のサンプルレートと平均が計算されるエポックの長さとにより定義される。重力は加速度計102により測定される加速度の最大の静的成分であるため、大きさ信号の平均値は1g(gは地表での重力による加速度)に近くなることが予想される。
【0044】
次いで、ステップ425において、歩行決定部106-2-3は、得られたデータ(A
mag(t)-A
epoch
mean)に対して、前述のハミング窓を適用する。ステップ430において、歩行決定部106-2-3は、ステップ425で取得された窓を適用したデータに対して自己相関関数を計算して、エポックデータにおける周期的パターンを検出する。具体的には、歩行決定部106-2-3は、エポックデータの以下の自己相関関数を計算する。
式中、AC(k)は遅延kでの自己相関であり、A
*
mag(n)は時間nでのハミング窓が適用されたデータ、すなわち、以下のとおりである。
式中、W(n)は、(A
mag(n)-A
epoch
mean)が乗算されたハミング窓関数である。ステップ435において、歩行決定部106-2-3は、自己相関値を処理して、自己相関関数において、ゼロ遅延ピーク(ゼロ遅延ピークは、ゼロ遅延と自己相関関数がゼロ未満である最初の点との間の自己相関関数の部分と定義される)後の最高ピークが求められる遅延を決定する。計算された遅延は、ユーザの歩幅周期またはユーザのステップ周期のいずれかに対応する。この計算を説明するために、
図6は、1つのエポックについてステップ430で決定される自己相関関数を表すプロットである。自己相関関数は、ゼロ遅延(k=0)に対して対称であり、非負の遅延(non-negative lags)に対応する部分のみがプロットに示される。歩幅周期とステップ周期とに対応するピークは、それぞれ丸と四角とで示される。一般的な歩幅周期は1.0秒と1.2秒との間(1分間に100歩-120歩)であり、一般的なステップ周期はこの値の半分になる。
【0045】
図6に示される例示の自己相関関数において、0.5秒の遅延での自己相関関数のピークは、1.0秒の遅延での自己相関関数のピークとほぼ同じ高さであり、加速度計データのわずかな変動により、どのピークが最も高いのか、したがってどのピークがステップ435において最高ピークとして識別されるか変わり得る。
【0046】
自己相関関数は定義された複数の遅延で計算されるため、計算された自己相関値は、正確にピーク時の自己相関値を含まなくてもよい。自己相関関数のピークに対応する遅延のより正確となり得る推定は、補間を用いて決定され得る。例えば、計算されたピーク値とそのいずれかの側の近傍とに2次多項式をあてはめて、その多項式関数のピークを自己相関関数のピークとすることにより、最高ピークに対応するより正確な遅延値の算出が達成され得る。
【0047】
特定されるピークは、ユーザの歩行の対称性や加速度計の装着位置に応じて、ステップ周期または歩幅周期のいずれかに対応し得る。例えば、被験者の歩行が左右対称であると仮定すると、デバイスが身体の中心に装着/保持されている場合(例えば、胸の前に保持された携帯電話や被験者の腰のくびれに取り付けられたデバイス)、左足のステップと右足のステップとは非常に類似した大きさの加速度をデバイスに生じさせて、計算される期間はステップ周期に対応し得る。一方、デバイスが足首や手首に装着された場合、左右のステップは大きく異なる加速度データを生じさせて、計算される期間は歩幅周期に対応し得る。
【0048】
この曖昧さを解消するために、様々な方法がある。例えば、予想される歩幅周期に基づいて、および歩幅周期の半分であると予想されるステップ周期などに基づいて、識別されたピークがユーザの歩幅周期またはステップ周期に対応するか否かを決定するために、閾値処理技術が使用され得る。しかしながら、これらの技術は本発明にとって本質的でないため、さらなる説明は行わない。
【0049】
ステップ440において、最高ピークがユーザのステップ周期またはユーザの歩幅周期のどちらに対応するかを確定した歩行決定部106-2-3は、ユーザの歩幅周期(ピークが歩幅周期に対応する場合は最高ピークの遅延に相当して、ピークがステップ周期に対応する場合は最高ピークの遅延の2倍に相当)が、歩行に一般的な所定の範囲内(例えば、0.8秒と1.25秒との間)にあるか否かを決定する。ユーザの歩幅周期が所定の範囲内にある場合、処理はステップ445に進む。ユーザの歩幅周期が所定の範囲外にある場合、歩行決定部106-2-3は、ステップ460において、現在のエポックではユーザは歩行していないと決定する。当然のことながら、ステップ周期を用いることに代えて(または加えて)、同様の決定が行われ得る。
【0050】
ステップ445において、歩行決定部106-2-3は、エポックに対する歩幅相関値を計算する。これは、ゼロ遅延(k=0)での自己相関関数の値に対する、計算された歩幅周期における自己相関関数の値の比として定義される。歩幅相関値が閾値より大きい場合、処理はステップ450に進む。歩幅相関値が閾値を下回る場合、歩行決定部106-2-3は、ステップ460において、現在のエポックではユーザは歩行していないと決定する。使用される閾値は、ユーザが歩行しているか否かを分かっている学習データを処理することにより決定されてもよい。この閾値の典型的な値は0.2と0.8との間であり、本発明者らは閾値0.4が効果的であることを見出した。
【0051】
ステップ450において、歩行決定部106-2-3は、自己相関関数の入力として用いられる信号(すなわち、ステップ425から取得される信号A*
mag(n))の二乗平均平方根(RMS:root-mean-square)振幅(または他の何らかの振幅関数)が閾値より大きいか否かを決定する。RMS振幅が閾値より大きい場合、処理はステップ455に進み、歩行決定部106-2-3は、現在のエポックが歩行に対応すると決定する。RMS振幅の値が閾値を下回る場合、歩行決定部106-2-3は、ステップ460において、現在のエポックではユーザは歩行していないと決定する。ステップ450において使用される閾値は、通常0.01gと0.1gとの間で、本発明者らは値0.04gが効果的であることを見出した。
【0052】
運動分析アプリケーション-開始/停止決定部
以上の処理は、どのエポックが歩行に対応して、どのエポックが歩行に対応しないかを特定する。その後、各歩行エポックは独立して分析されて、歩数、速度、移動距離などの関連する特徴のスコアが抽出されてもよい。あるいは、隣接または連続する歩行エポックは、連結して、より長い歩行期間を形成してもよい。歩行エポックが連結する場合、歩行期間の最大継続時間に制限が設けられてもよい。例えば、被験者が10分間歩行した場合、その間の歩行特徴スコアは一定ではないことが想定されて、10分間を30秒間隔に分割して、30秒間隔ごとに特徴スコアを計算することが望ましいと考えられる。
【0053】
それぞれの連結された一連のエポックの最初のエポックと最後のエポックとのエポック時刻から、各歩行期間のおおよその開始時刻と停止時刻との決定が(開始/停止決定部106-2-4により)行われ得る。エポック長が10秒で、50%の重なりがある場合、歩行の開始時刻と停止時刻との粒度/精度は、約5秒または10秒となる。現在の技術の用途の多くでは、この程度の精度で十分であろう。しかしながら、開始時刻と停止時刻との精度の向上が望まれる場合は、より短い継続時間(例えば、1秒または2秒)のエポックが、開始時刻と停止時刻とを分析して、さらに精度を向上させるために使用され得る。しかしながら、前述のように、短いエポックはノイズの影響を受けやすくて、歩行特徴を捕捉するために必要な最短のエポック継続時間が存在する(各エポックは少なくとも2歩幅周期にわたる必要がある)。
【0054】
本発明者らは、エポックの継続時間を大幅に短縮する必要なく開始/停止時刻の決定精度を向上させるために、予め定義されたメトリックを最大化する開始時刻と停止時刻とを特定することを目的とした反復ルーチンを考案した。異なるメトリックが使用され得る。ただし、メトリックは以下の性質を持つべきである。
歩行に対応する時間間隔のメトリックは、歩行でない時間間隔のメトリックよりも高い。
歩行期間の継続時間が(開始時刻または停止時刻のいずれかを変更することにより)延長された場合において、追加された間隔が歩行に対応する場合ではメトリックは増加して、追加された間隔が歩行に対応しない場合ではメトリックは減少する。
逆に、歩行期間の継続時間が短縮された場合において、削除された間隔が歩行に対応する場合ではメトリックは減少して、削除された間隔が歩行に対応しない場合ではメトリックは増加する。
【0055】
図4を参照した前述の処理技術を用いると、候補開始時刻と候補停止時刻との組(t
start、t
stop)のメトリックは、以下のように決定され得る。
候補開始時刻と候補停止時刻との間の加速度データが抽出される。
抽出されたデータの大きさが計算される。
これらの大きさから、これらの大きさの平均値が差し引かれる。
ハミング窓が適用される。
自己相関関数が計算される。
0.5秒から2秒の範囲の遅延について自己相関関数の最高ピークの値が決定される(0.5秒から2秒は歩幅周期の予想範囲である)。
この最高ピークの遅延が特定される。
メトリック(t
start,t
stop)=peak_value/sqrt(t
stop-t
start-lag)が計算される。
【0056】
次に、このメトリックがどのように反復手順に用いられ得るかを、
図7に示される歩行およびそれ以外の運動のある2つの期間を有する加速度データを例に説明する。具体的には、
図7は、ユーザの運動を表す時間に対する加速度の大きさをプロットしたものである。加速度が大きい期間は、ユーザの運動に対応する。グラフに表された歩行に対応する、15秒から37秒までと、54秒から74秒までと、の2つの運動期間がある。また、加速度が大きくても歩行に対応しない運動もある。この運動は、0秒と2秒との間、85秒、および95秒と98秒との間である。グラフのみからでは、どの加速度が歩行に対応して、どの加速度が歩行に対応しないかを見分けることは難しい。しかしながら、前述の歩行決定技術と前述のメトリックとを用いることにより、どの期間が歩行に対応して、その期間の開始と停止とをより正確に特定することが可能である。
【0057】
具体的には、可能な限りの開始時刻と停止時刻とについて前述のメトリックが計算されて、等高線にプロットされると、歩行に対応する期間が等高線プロット上に複数のピークとして現れて、これを用いて歩行期間の開始時刻と停止時刻とが特定され得る。これは、
図7に示される加速度データの例について計算された
図8の等高線プロットに示される。
図8に示されるとおり、等高線プロットには3つのピークがあり、これにより、歩行に対応し得る期間の開始時刻/停止時刻である15秒/37秒、55秒/73秒、15秒/73秒が特定可能である。等高線プロット上の最初の2つのピークは、
図7の2つの歩行期間を表して、3つ目のピーク(開始時刻15秒、停止時刻73秒)は、2つの歩行期間の融合を表す。(
図8の右下の三角形は、開始時刻が停止時刻より遅い場合を表すため、等高線は描かれていない)。したがって、前述の歩行決定と、この等高線プロットの情報と、を組み合わせることにより、どの期間が歩行に対応するかを特定して、その期間の正確な開始時刻と停止時刻とを決定することが可能となる。
【0058】
実際に、可能な限りの開始時刻と停止時刻との組に対応するメトリックを計算する必要はない。
図4を参照した前述の処理は、歩行に対応する期間と、その期間のおおよその開始時刻および停止時刻と、を特定するために使用され得る。次いで、前述のメトリックはこの初期候補の開始時刻と停止時刻との組に対して計算されて、初期候補の近傍でメトリックを最大化する開始時刻と停止時刻とを求める(すなわち、初期候補の開始時刻/停止時刻の組に最も近い、
図8に示される等高線プロットのピークを求める)ための反復ルーチンが実行される。この最適化プロセスを実行するために、様々な反復技術が使用され得る。
図9を参照しながら、一例の技術を後述のとおり説明する。この最適化プロセスは、開始/停止決定部106-2-4により実行される。
【0059】
ステップ910において、歩行決定部106-2-3がユーザが歩行中であると決定した、連結された一連のエポックの最初のエポックと最後のエポックとのエポック時刻から、開始時刻/停止時刻の初期推定値が決定される。前述のとおり、エポック長が10秒で、50%の重なりがある場合、前述の処理を用いて決定される歩行の開始時刻と停止時刻との粒度/精度は、約5秒または10秒となる。ステップ915において、開始時刻と停止時刻との初期推定値について、前述のメトリックが計算される。ステップ920において、開始時刻は1秒ずつインクリメントされて、メトリックが再計算される。
【0060】
ステップ925において、再計算されたメトリックが増加したか否かが決定される。メトリックが増加した場合、処理はステップ920に戻り、開始時刻はさらに1秒インクリメントされて、メトリックが再計算される。メトリックの増加が止まり、減少し始めると(または、開始時刻を最初にインクリメントさせた後にメトリックが減少した場合)、処理はステップ930において以前の開始時刻に復帰する。次いで、開始時刻の減少がメトリックの改善につながるか否かを決定するために、ステップ935とステップ940とにおいて同様の処理が実行される。ステップ940においてメトリックが増加しない(減少する)ことが判明すると、処理はステップ945において以前の開始時刻に復帰する。この開始時刻は、対象となる歩行期間の開始時刻を正確に決定することを意味する。次いで、処理はステップ950と、ステップ955と、ステップ960と、ステップ965と、ステップ970と、ステップ975とに進み、停止時刻について同様の処理が実行される。これにより、ステップ975において正確な停止時刻が決定されて、処理が終了する。
【0061】
反復プロセス中にメトリックが計算されるたびに、新しい開始時刻と停止時刻との間の加速度データが抽出されて、抽出された加速度データの大きさが決定されて、その平均値が決定されて大きさから差し引かれて、ハミング窓が適用されて、自己相関関数が決定されて、ゼロ遅延ピーク後の最高ピークが求められて、その後メトリックが計算される。
【0062】
この反復プロセスの例として、
図7に示される加速度データと
図8に示される等高線プロットとを考えてみる。15秒と37秒との間の歩行期間の開始時刻と停止時刻との初期推定値は、エポックデータからそれぞれ20秒および40秒と決定される。停止時刻を40秒に固定したまま、開始時刻を20秒から、19秒、18秒などと減らしていき、開始時刻の値を減らすごとにメトリックを計算して、14秒でメトリックの増加が止まり、減少し始めることが分かった。こうして、最適な開始時刻が15秒と決定される。次いで、同じプロセスを歩行期間の終了に適用すると、停止時刻が37秒のときにメトリックが最大となることが分かった。
【0063】
開始/停止決定部106-2-4が正確な開始時刻と停止時刻とを決定すると、次いで、この情報がディスプレイ112-2上でユーザに出力され得て、および/または、他の関連する歩行データおよびデータに関連するユーザを識別する識別子と共に、臨床試験での使用のために中央サーバ140に送信されてもよい。
【0064】
変形例および代替例
以上、詳細な実施形態を前述のとおり説明した。なお、前述の実施形態には、種々の変形および変更が可能である。以下、これらの代替例の一部について説明する。
【0065】
前述の実施形態において、歩行期間の開始時刻と停止時刻とを正確に決定する方法の一例について説明した。当然のことながら、この反復プロセスには種々の変更が可能である。例えば、正確な開始時刻が決定される前に正確な停止時刻が決定され得て、反復プロセスは、必要に応じて時刻をインクリメントさせる前に時刻をデクリメントできる。同様に、インクリメントまたはデクリメントが1秒単位である必要はない。他の単位でインクリメントおよびデクリメントすることも可能である。
【0066】
求められた最大値は、単にメトリック関数の局所的な最大値でもよく、初期推定値の近傍での全体的な最大値でなくてもよい。局所的な最大値を求めた後に、その近傍でより大きな最大値が探索され得る。例えば、停止時刻をインクリメントさせる場合、メトリックが減少し始めたらすぐに探索を止めるのではなく、停止時刻をインクリメントさせるプロセスを続けて、より高いメトリックが求められるかを確認できる。より高いメトリックが求められた場合、これが現在の最適解として受け入れられて、処理が続けられる。このプロセスは、何らかの停止条件が満たされるまで続けられて、その時点で、これまでに求められた最も高いメトリックに対応する開始時刻と停止時刻とが最適解として受け入れられる。停止条件の例としては、現在の候補停止時刻が最も高いメトリックに対応する停止時刻よりも指定された秒数を上回って遅いこと、または現在の候補停止時刻のメトリックが最善のメトリックに対して閾値を下回ることが考えられる。
【0067】
例として、
図7の開始時刻17秒と停止時刻37秒とに対応するピークを考えてみる。停止時刻がインクリメントされると、メトリックは減少する。候補停止時刻がこれまでに求められた最も高いメトリックの停止時刻から20秒しか延長できないという停止基準であれば、候補停止時刻は57秒になるまでインクリメントされて、その時点で、停止時刻37秒に対応するメトリックが求められた最も高いものとして、処理は停止する。一方、候補停止時刻が30秒延長できる場合、15秒/73秒の開始時刻/停止時刻に対応するより高いピークが求められて、最適解として選ばれて、(15秒/37秒と55秒/73秒との開始時刻/停止時刻に対応する)2つの歩行期間が15秒/73秒の開始時刻/停止時刻の単一の歩行期間に統合される。
【0068】
上記で定義したメトリックは単なる一例である。このメトリックは他の定義も可能であり、異なるシナリオではそれが有利になり得る。例えば、前述のメトリックは、以下のより一般的な形式の特殊なケースである。
ここで、0≦n≦1とする。(前述の実施形態においてn=1/2。)
【0069】
nを1に近い値にすると、短い歩行期間が多数発生する。歩行期間は、歩行に関する特徴が非常に似ている場合にのみ、1つのより長い期間に統合される。同様に、歩行期間は、提案された延長分の特徴が元の歩行期間と非常に似ている場合にのみ延長される。nを0に近い値にすると、統合された歩行期間の特徴が特に似ていなくても、それぞれが比較的長い継続時間を有する歩行期間がいくつか生じる。実際に、本発明者らは、n=1/2の値がこれら2つの極端な値の間の良い折衷点であることを見出した。
【0070】
さらなる代替方法として、上記のメトリックを反転させて、メトリックを最大化する開始時刻と停止時刻とを探す代わりに、メトリックを最小化する開始時刻と停止時刻とが求められてもよい。
【0071】
前述の実施形態において、正確な開始時刻と停止時刻とが計算されて、臨床試験のデータを提供するために使用された。当業者であれば理解できるように、前述の技術は、他の用途にも使用可能である。例えば、前述の技術は、フィットネストラッカなどにおいて、ユーザの歩行期間についてより正確な情報を提供するために使用可能である。
【0072】
前述の実施形態において、デバイスは、ユーザの歩行期間を決定するように構成された。使用する閾値や他のパラメータを調整することにより(例えば、加速度の大きさについてより高い閾値を使用して、予想されるより短いステップ/歩幅周期を使用する)、デバイスは、走行期間を検出するように構成され得る。このようなデバイスは、自分が行っているトレーニングの正確な情報を追跡することを望むアスリートの関心を引くであろう。具体的には、走行の開始時刻と停止時刻とは、競技力の測定および管理のために使用可能である。アスリート活動のターゲット評価における開始時刻と停止時刻との詳細な分析は、アスリートまたはそのトレーナーやコーチに提供可能である。そのデータは、競技力向上のためのトレーニング法を知らせるために使用可能である。
【0073】
前述の実施形態において、歩行決定部106-2-3は、あるエポックにおいてユーザが歩行中であるか否かを決定するために(ステップ440と、ステップ445と、ステップ450とにおいて)3つのメトリックを適用した。当業者であれば理解できるように、エポック内でユーザが歩行しているか(または走行しているか)を決定するために、他の技術も使用され得る。例えば、ステップ440と、ステップ445と、ステップ450とで使用されたメトリックのうち、1つまたは2つのメトリックのみを用いて決定が行われ得る。
【0074】
前述の実施形態において、加速度計から取得された加速度計データは、データの自己相関関数に着目して分析された。自己相関分析は、歩行や走行などの反復運動により生じる、加速度データにおける周期的な変化を強調することに適している。このような周期的な変化(およびその期間)を特定するために、他の種類の分析が実行され得る。例えば、ステップ周期または歩幅周期を表す周波数領域内のピークを特定するために、フーリエ変換(または離散コサイン変換などの他の周波数分析)が決定されて、分析され得る。
【0075】
前述の実施形態において、開始時刻または停止時刻をインクリメントまたはデクリメントさせるたびに、自己相関は一から再計算されている。開始時刻や停止時刻は、比較的小さな値(上記の例では1秒単位)でしかインクリメントまたはデクリメントされないため、現在の反復で自己相関関数を決定するために使用されるデータは、前回の反復の計算の大部分を共有することになる。特定の遅延での自己相関値には、一部のデータ値が追加されるだけでよく(開始時刻がデクリメントされた、または停止時刻がインクリメントされた場合)、あるいは、一部のデータ値がそこから減算されるだけでよい(開始時刻がインクリメントされた、または停止時刻がデクリメントされた場合)。そのため、すべての計算を再度行う必要はない。また、ゼロ遅延ピーク後の最高ピークの遅延が反復ごとに大きく変化しないと仮定することにより、さらなる計算負荷が軽減可能である。そこで、先行する反復で(ゼロ遅延ピークの後の)最高ピークに対して特定された遅延値周辺の遅延値に対してのみ、自己相関値が決定されてもよい。
【0076】
前述の実施形態において、加速度計からのデータを基に計算が行われた。歩行または走行するユーザの運動に合わせて変化するセンサ信号を提供する他の動作センサも使用可能であるだろう。例えば、歩行または走行期間の開始時刻と停止時刻とを算出するために、ジャイロスコープからの信号が前述と同様に処理されてもよい。
【0077】
さらに、ユーザデバイスに複数のセンサが内蔵されている場合、より正確な、またはノイズの少ない開始時刻と停止時刻とを算出するために、各センサからのデータが分析されて、その結果が組み合わされてもよい(例えば、平均化する)。同様に、ユーザが複数のデバイス(携帯電話など)とアクチグラフデバイスとを携帯して、両方のデバイスが動作センサ(加速度計やジャイロスコープなど)を有する場合、システムは、両方のデバイスのデータを用いて開始時刻と停止時刻とを決定できる。次いで、2つのデバイスからの測定値が、S/N比を向上させるために再度平均化されてもよく、または一方のデバイスからの測定値が、他方のデバイスから取得された動作データから決定された開始時刻と停止時刻との実証もしくは妥当性を確認するために使用されてもよい。
【0078】
前述の実施形態において、加速度計データを処理するソフトウェアアプリケーションがユーザデバイスに設けられた。中央サーバが前述のステップ/歩幅分析を実施するように、同一または同様のソフトウェアが中央サーバのコンピュータに提供されてもよい。このソフトウェアアプリケーションは、キャリア信号上または有形のコンピュータ可読媒体上にコンピュータ実装可能な命令として提供されてもよい。あるいは、ソフトウェアアプリケーションの機能は、FPGAやASICデバイスなどのハードウェア回路で定義されてもよい。
【0079】
上記の説明から、異なる実施例の多くの特徴は、交換可能であり、組み合わせ可能であることが理解されるであろう。本開示は、特に言及されていない方法で一緒に組み合わされた異なる実施例からの特徴を含むさらなる実施例に及ぶ。実際に、上記の実施例に提示された特徴は多数あり、これらを互いに有利に組み合わせ得ることは、当業者には明らかであろう。
【0080】
また、本願は、以下の番号の項を含む。
【0081】
項1
ユーザの歩行または走行期間の開始時刻と停止時刻とを決定する装置であって、少なくとも1つのプロセッサとメモリとを有してなり、
プロセッサとメモリとは、
歩行または走行の際にユーザにより携帯されるユーザデバイスから動作データを取得して、
動作データを一連のエポックに分割して、
ユーザが歩行または走行している1つ以上のエポックを決定するために、エポックのそれぞれにおける動作データを処理して、
1つ以上のエポックからユーザの少なくとも1つの歩行または走行期間を決定して、
決定された歩行または走行期間の初期開始時刻と初期停止時刻とを決定して、
予め定義された最適化関数を最適化する歩行または走行期間の最適化開始時刻および/または最適化停止時刻を特定するために、初期開始時刻および/または初期停止時刻を修正する反復最適化プロセスを実行する、
ように構成される装置。
【0082】
項2
反復最適化プロセスは、
i)現在の候補開始時刻のインクリメントまたはデクリメントと、
ii)インクリメントまたはデクリメントされた現在の候補開始時刻および現在の候補停止時刻に基づく、メトリックの値の決定と、
iii)ii)で決定されたメトリックが、先行する反復においてii)で決定されたメトリックよりも良好であるか否かの決定、インクリメントまたはデクリメントされた開始時刻を現在の候補開始時刻としての受け入れ、次いで、ii)で決定されたメトリックが先行する反復において決定されたメトリックよりも良好であればi)への戻し、先行する反復においてii)で決定されたメトリックが現在の反復において決定されたメトリックよりも良好であれば先行する候補開始時刻への復帰と、
を含む、項1記載の装置。
【0083】
項3
反復最適化プロセスは、
i)現在の候補停止時刻のインクリメントまたはデクリメントと、
ii)インクリメントまたはデクリメントされた現在の候補停止時刻および現在の候補開始時刻に基づく、メトリックの値の決定と、
iii)ii)で決定されたメトリックが、先行する反復においてii)で決定されたメトリックよりも良好であるか否かの決定、インクリメントまたはデクリメントされた停止時刻を現在の候補停止時刻としての受け入れ、次いで、ii)で決定されたメトリックが先行する反復において決定されたメトリックよりも良好であればi)への戻し、先行する反復においてii)で決定されたメトリックが現在の反復において決定されたメトリックよりも良好であれば先行する候補停止時刻への復帰と、を含む、
項1または2記載の装置。
【0084】
項4
反復最適化プロセスは、歩行または走行期間について所定のメトリックを最大化または最小化するように構成される、
項1乃至3のいずれか一項に記載の装置。
【0085】
項5
歩行または走行期間の継続時間が(開始時刻または停止時刻のいずれかを変更することにより)延長された場合において、追加された間隔が歩行または走行に対応する場合、メトリックは増加するように構成されて、追加された間隔が歩行または走行に対応しない場合、メトリックは減少するように構成される、
項4記載の装置。
【0086】
項6
歩行または走行の期間の継続時間が(開始時刻または停止時刻のいずれかを変更することにより)短縮された場合において、削除された間隔が歩行または走行に対応しない場合、メトリックは増加するように構成されて、追加された間隔が歩行または走行に対応する場合、メトリックは減少するように構成される、
項4または5記載の装置。
【0087】
項7
メトリックは、開始時刻と終了時刻との間の時間差に依存する、
項1乃至6のいずれか一項に記載の装置。
【0088】
項8
少なくとも1つのプロセッサとメモリとは、動作データの自己相関関数を決定するように構成されて、メトリックは、自己相関関数から得られる1つ以上のパラメータを含む、項1乃至7のいずれか一項に記載の装置。
【0089】
項9
少なくとも1つのプロセッサとメモリとは、ゼロ遅延ピークの後の自己相関関数のピーク値を決定するように構成されて、メトリックは、決定されたピーク値に依存する、
項8記載の装置。
【0090】
項10
少なくとも1つのプロセッサとメモリとは、ピーク値に対応する自己相関遅延を決定するように構成されて、メトリックは、決定された自己相関遅延に依存する、
項9記載の装置。
【0091】
項11
エポックは、所定の継続時間である、
項1乃至10のいずれか一項に記載の装置。
【0092】
項12
隣接するエポックは重なり合う、
項1乃至11のいずれか一項に記載の装置。
【0093】
項13
少なくとも1つのプロセッサとメモリとは、エポックのそれぞれの内の加速度計データの自己相関関数を決定して、エポックについて決定された自己相関関数に依存して、ユーザがエポック内で歩行または走行しているかを決定するように構成される、
項1乃至12のいずれか一項に記載の装置。
【0094】
項14
少なくとも1つのプロセッサとメモリとは、ユーザがエポック内で歩行または走行しているかを決定するために、歩幅周期と、歩幅相関値と、振幅測定値と、うちの1つ以上を決定するように構成される、
項1乃至13のいずれか一項に記載の装置。
【0095】
項15
少なくとも1つのプロセッサとメモリとは、
歩幅周期が第1閾値を上回り、かつ第2閾値を下回るとの決定と、
歩幅相関値が第3閾値を上回るとの決定と、
振幅測定値が第4閾値を上回るとの決定と、
のうちの1つ以上を決定することにより、ユーザがエポック内で歩行または走行しているかを決定するように構成される、
項14記載の装置。
【0096】
項16
少なくとも1つのプロセッサとメモリとは、ユーザの歩行または走行期間を決定するために、ユーザが歩行または走行していると決定された一連のエポックのうち隣接するエポックを連結して、連結されたエポックを用いて、決定された歩行または走行期間の初期開始時刻と初期停止時刻とを決定するように構成される、
項1乃至15のいずれか一項に記載の装置。
【0097】
項17
少なくとも1つのプロセッサとメモリとは、歩行または走行期間に対応する連結された一連のエポックの最初のエポックのエポック時刻から初期開始時刻を決定するように構成される、
項1乃至16のいずれか一項に記載の装置。
【0098】
項18
少なくとも1つのプロセッサとメモリとは、歩行または走行期間に対応する連結された一連のエポックの最後のエポックのエポック時刻から初期停止時刻を決定するように構成される、
項1乃至17のいずれか一項に記載の装置。
【0099】
項19
動作センサは、加速度計またはジャイロスコープである、
項1乃至18のいずれかに記載の装置。
【0100】
項20
少なくとも1つのプロセッサとメモリとは、歩行または走行時にユーザにより携帯される複数の動作センサから動作データを取得するように構成されて、少なくとも1つの歩行または走行期間の開始時刻と停止時刻とは、複数の動作センサからの動作データを用いて決定される、
項1乃至19のいずれか一項に記載の装置。
【0101】
項21
少なくとも1つのプロセッサとメモリとは、動作センサのそれぞれからの動作データを用いて、少なくとも1つの歩行または走行期間のそれぞれの開始時刻と停止時刻とを決定して、i)少なくとも1つの歩行または走行期間の開始時刻と停止時刻とを平均する、またはii)動作データを用いて1つの動作センサからの動作データまたは他の動作センサから取得された動作データから得られるデータから決定された開始時刻と停止時刻とを検証するように構成される、
項20記載の装置。
【0102】
項22
動作センサは、ユーザにより携帯される同じユーザデバイスに搭載されるか、または動作センサは、ユーザにより携帯される異なるユーザデバイスに、通常、異なる装着位置で搭載される、
項20または21記載の装置。
【0103】
項23
動作センサは、ユーザにより携帯される異なるユーザデバイスに、異なる装着位置で搭載される、
項22記載の装置。
【0104】
項24
ユーザの歩行または走行期間の開始時刻と停止時刻とを決定する装置であって、
プロセッサとメモリとを備えて、
プロセッサとメモリとは、
ユーザのユーザデバイスから動作データを取得して、
ユーザの歩行または走行期間を決定するために、動作データを処理して、
決定された歩行または走行期間の初期開始時刻と初期停止時刻とを決定して、
予め定義された最適化関数を最適化する歩行または走行期間の開始時刻と停止時刻とを特定するために、初期開始時刻および/または初期停止時刻を修正する反復最適化プロセスを実行する、ように構成される。
【0105】
項25
ユーザの歩行または走行期間の開始時刻と停止時刻とを決定する装置であって、
歩行または走行の際にユーザにより携帯されるユーザデバイスから動作データを取得する手段と、
動作データを一連のエポックに分割する手段と、
ユーザが歩行または走行している1つ以上のエポックを決定するために、エポックそれぞれにおける動作データを処理する手段と、
1つ以上の前記エポックからユーザの少なくとも1つの歩行または走行期間を決定する手段と、
決定された歩行または走行期間の初期開始時刻と初期停止時刻とを決定する手段と、
予め定義された最適化関数を最適化する歩行または走行期間の最適化開始時刻および/または最適化停止時刻を特定するために、初期開始時刻および/または初期停止時刻を修正する反復最適化プロセスを実行する手段と、
を備える装置。
【0106】
項26
ユーザの歩行または走行期間の開始時刻と停止時刻とを決定する方法であって、
歩行または走行の際にユーザにより携帯されるユーザデバイスから動作データを取得する工程と、
動作データを一連のエポックに分割する工程と、
ユーザが歩行または走行している1つ以上のエポックを決定するために、エポックのそれぞれにおける動作データを処理する工程と、
1つ以上のエポックからユーザの少なくとも1つの歩行または走行期間を決定する工程と、
決定された歩行または走行期間の初期開始時刻と初期停止時刻とを決定する工程と、
予め定義された最適化関数を最適化する歩行または走行期間の最適化開始時刻および/または最適化停止時刻を特定するために、初期開始時刻および/または初期停止時刻を修正する反復最適化プロセスを実行する工程と、
を含む
ことを特徴とする方法。
【0107】
項27
プログラマブルコンピュータデバイスを項1乃至25のいずれか一項に記載の装置として構成させるコンピュータ実装可能な命令、
を含む有形コンピュータ可読媒体。
【0108】
項28
複数のユーザデバイスと通信する中央コンピュータを含む臨床試験システムであって、
ユーザデバイスのそれぞれは、ユーザデバイスに関連付けられたユーザの運動に関する加速度データを収集するように構成されて、
中央コンピュータまたは少なくとも1つのユーザデバイスは、加速度データを分析する、
項1乃至25のいずれか一項に記載の装置を備える。
【国際調査報告】