(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-14
(54)【発明の名称】延性の高いパッチを有する金属構造部品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B21D 22/20 20060101AFI20230804BHJP
B21D 22/26 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
B21D22/20 G
B21D22/20 H
B21D22/26 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577189
(86)(22)【出願日】2021-07-14
(85)【翻訳文提出日】2022-12-13
(86)【国際出願番号】 EP2021069610
(87)【国際公開番号】W WO2022013294
(87)【国際公開日】2022-01-20
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517098527
【氏名又は名称】オートテック・エンジニアリング・ソシエダッド・リミターダ
【氏名又は名称原語表記】Autotech Engineering, S.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100128428
【氏名又は名称】田巻 文孝
(72)【発明者】
【氏名】ジロー ドュ ポイェ クエンティン ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】ロパテギ サンス ウナイ
(72)【発明者】
【氏名】マーミッテ アミン
(72)【発明者】
【氏名】ルロー ヨアン オーレリアン
【テーマコード(参考)】
4E137
【Fターム(参考)】
4E137AA02
4E137BA01
4E137BB01
4E137BC01
4E137BC02
4E137CA09
4E137CA21
4E137DA02
4E137EA01
4E137GA03
4E137GB03
(57)【要約】
車両用の金属構造部品(E)を製造する方法であって、本方法は、a)平板状のブランク(B)を用意するステップと、b)ブランク(B)を切り欠いて第1の部分(Q)を有する開口部(A)を作るステップとを含み、開口部(A)の第1の部分(Q)は、第1の横方向(T)において第2の長さ(lt)を有し、本方法は、c)パッチ(P)をブランク(B)に溶接して開口部(A)を覆うステップをさらに含み、パッチ(P)は、ブランク(B)の材料よりも高い延性を備えた金属で作られ、本方法は、さらに、d)ブランク(B)とパッチ(P)で形成された組立体をプレス加工して部品(E)を得るステップを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の金属構造部品(E)を製造する方法であって、前記構造部品(E)は、U字形断面を有する少なくとも1つの部分を備えた異形材であり、前記部分は、底部(1)および2つの側壁(2,3)を有し、前記部分は、長手方向(L)、第1の横方向(T)および第2の横方向(T)を有し、前記部分の前記U字形断面で見て、
‐前記部分の底部(1)が形成され、前記底部(1)は、前記第1の横方向(T)と一致した方向を有し、
‐前記部分の第1の側壁(2)および第2の側壁(3)が形成され、前記2つの側壁(2,3)は、前記第2の横方向(T)と一致した方向を有し、
U字形断面を有する前記部分の中間ゾーン(Z)が前記長手方向(L)に沿って定められた第1の長さ(l)を有し、前記中間ゾーン(Z)は、前記中間ゾーン(Z)を包囲した前記部品(E)の主要な材料よりも高い延性を有する金属から成り、
前記方法は、
a)前記長手方向(L)および前記第1の横方向(T)に及ぶ平板状のブランク(B)を用意するステップを含み、
b)前記ブランク(B)を切り欠いて第1の部分(Q)を有する開口部(A)を作るステップを含み、前記開口部(A)の前記第1の部分(Q)は、前記第1の横方向(T)において第2の長さ(lt)を有し、
c)パッチ(P)を前記ブランク(B)に溶接して前記開口部(A)を覆うステップを含み、前記パッチ(P)は、前記ブランク(B)の材料よりも高い延性を備えた金属で作られ、
d)前記ブランク(B)と前記パッチ(P)で形成された組立体をプレス加工してU字形断面を備えた前記少なくとも1つの部分を備えた前記部品(E)を得て前記部分の前記底部(1)の少なくとも一部が前記第1の定められた長さ(l)上の前記パッチに対応しかつ前記第1の横方向(T)に第2の長さ(lt)を有する前記ブランク(B)の前記開口部(A)の前記第1の部分(Q)が前記第1の側壁(2)から前記少なくとも1つの部分の前記第2の側壁(3)まで延びるようにするステップを含む、方法。
【請求項2】
U字形断面を有する前記部分の前記第1の側壁(2)は、第1の湾曲した部分(R1)を有し、前記第1の湾曲部分(R1)は、前記第1の側壁(2)をU字形断面を有する前記部分の前記底部(1)に接合し、前記第1の湾曲部分(R1)は、前記部分の前記底部(1)の曲率よりも大きな曲率を有し、かつ/あるいは
U字形断面を有する前記部分の第2の側壁(3)は、第2の湾曲した部分(R2)を有し、前記第2の湾曲部分(R2)は、前記第2の側壁(3)をU字形断面を有する前記部分の前記底部(1)に接合し、前記第2の湾曲部分(R2)は、前記部分の前記底部(1)の曲率よりも大きな曲率を有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ステップc)は、前記パッチが前記ブランク(B)の開口部(A)全体を覆うように実施される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記パッチ(P)の第1の部分(DZ)は、前記ブランク(B)の前記開口部(A)を覆い、前記パッチ(P)の第2の部分(RZ)が前記ブランク(B)にオーバーラップ状態で溶接され、それにより二重の厚さを備えた前記部品(E)の領域を作り、好ましくは、前記長手方向(L)における前記パッチ(P)の最大長さは、前記開口部(A)を覆っている前記パッチ(P)の前記第1の部分(DZ)の前記長手方向における最大長さの少なくとも2倍である、請求項1~3のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップb)で切り欠かれた前記開口部(A)は、前記長手方向(L)において最大長さを有し、前記ステップd)は、前記開口部(A)が前記第1の側壁(2)から前記長手方向(L)全体に沿って第2の側壁(3)まで延びるよう実施される、請求項1~4のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップb)で切り欠かれた前記開口部(A)は、前記長手方向(L)における最大長さを有し、前記開口部(A)の前記最大長さの第1の区分が前記開口部(A)の前記第1の部分(Q)を含み、前記開口部(A)の前記最大長さの第2の区分が前記開口部(A)の第2の部分(S)を含み、前記第2の部分(S)は、前記第1の横方向(T)において、前記第1の部分(Q)の前記第1の横方向における前記長さ(lt)よりも小さい長さを有し、前記ステップd)の実施時、前記開口部の前記第2の部分(S)は、前記最大長さの前記第2の区分に沿ってU字形断面を有する前記部分の前記底部(1)によって側方に制限されるようになっている、請求項1~4のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項7】
前記長手方向(L)における前記開口部(A)の前記最大長さは、第3の区分を含み、前記第3の区分は、前記開口部(A)の第3の部分(U)を含み、前記第3の部分(U)は、前記側壁のうちの一方(2)から他方の前記側壁(3)まで延び、前記開口部(A)の前記第2の部分(S)は、前記開口部(A)の前記第1の部分(Q)と前記開口部(A)の前記第3の部分(U)との間に位置している、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記開口部(A)の前記第1の部分(Q)は、幅および長さを有する少なくとも1つの延長部(6)を含み、前記幅は、前記長さよりも小さく、前記少なくとも1つの延長部(6)は、前記開口部(A)の前記第2の部分(S)からU字形断面を有する前記部分の前記側壁(2,3)まで延び、かつ/あるいは
前記開口部(A)の前記第3の部分(U)は、幅および長さを有する少なくとも1つの延長部(6)を有し、前記幅は、前記長さより小さく、前記少なくとも1つの延長部(6)は、前記開口部(A)の前記第2の部分(S)からU字形断面を有する前記部分の前記側壁(2,3)まで延びている、請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
前記ステップb)で切り欠かれた前記開口部(A)は、前記ブランクのエッジ(4)によって制限され、前記ステップd)の実施時、前記パッチ(P)は、前記開口部(A)の厚さが減少するよう前記開口部(A)に入る隆起部分(7)を有する、請求項1~8のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップd)の実施時、前記隆起部分(7)は、前記開口部(A)を覆う前記パッチ(P)の部分全体を含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記ステップd)は、ホットスタンピングによって実施される、請求項1~10のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項12】
金属構造部品(E)であって、請求項1~11のうちいずれか一に記載の方法に従って製造された金属構造部品(E)。
【請求項13】
前記金属構造部品(E)は、Bピラーである、請求項12記載の金属構造部品(E)。
【請求項14】
自動車であって、請求項12または13記載の前記金属構造部品(E)を有する自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用金属構造部品の製造、具体的には、ホワイトボデー部品の製造、より具体的には異形材の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の製造にあたり、種々の部品の強度および延性は、衝突の場合に車両の挙動を制御するとともにキャビン(客室)内の乗員を誰でも保護するように選択される場合がある。幾つかの延性の高い部品が自動車衝突の場合の衝撃を吸収するとともに部品で衝撃を吸収して軽減するために使用される場合があり、かかる部品は、高強度のものでなければならない。単一の部品が高い延性および低い延性のゾーンを有することが有利な場合がある。例えば、Bピラーの場合、このピラーの上側区分は、衝突の際にその形状を維持しなければならず、しかもこの上側区分が、乗員の頭部および胸部が位置している場合のある領域に対応しているのでキャビン中に侵入することがないようにしなければならない。ピラーの下側区分は、制御された侵入ゾーンとして使用される場合がある。特に、この制御された侵入ゾーンが幅全体にわたって延性の高い材料で作られている場合、側面衝突の際にBピラーが
図8に示されているようなこの領域のところで折れ曲がる恐れがあるということが観察された。Bピラーのこの全体的折れ曲がりおよび場合によっては破断を防ぐため、衝撃吸収ゾーンを作る種々の方法が開発された。
【0003】
韓国特許第101865740号明細書は、種々の形式のスチールのブランクの一体形ホットスタンピング(hot stamping)およびBピラーの横方向側部に設けられたスロット中に補強部材を挿入追加する方法を開示している。補強部材は、幾つかのオーバーラップした層を作るよう折り畳まれ、そしてこの補強部材は、ホットスタンピング後かつ機械加工により部品の側部にスロットを設けた後に部品に組み付けられ、したがって、補強部材は、一体的には形成されない。補強部材は、衝突時に衝撃を吸収してBピラーが破断するのを阻止する。しかしながら、補強領域の層状構造は、不必要な重量を車両に追加する場合があるので全体的形状に悪影響を及ぼす場合がある。
【0004】
韓国特許第101865741号明細書は、種々の材料および種々の厚さのブランクの一体形ホットスタンピング方法を開示している。この場合、1対の補強パッチをホットスタンピング前にブランクにスポット溶接する。パッチは、切り欠かれたBピラーの2つの側方領域に配置される。これらパッチは、衝突時に衝撃を吸収することができるが、Bピラー破断が最も起こりやすい領域を標的にしているわけではない。加うるに、切り欠きの配設場所は、部品の全体的健全性を損なう場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国特許第101865740号明細書
【特許文献2】韓国特許第101865741号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、先行技術の欠点を解決する衝撃吸収ゾーンを備えた金属構造部品を製造する方法を提供することが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点は、車両用の金属構造部品を製造する方法に関する。構造部品は、U字形断面を有する少なくとも1つの部分を備えた異形材であり、当該部分は、底部および2つの側壁を有する。当該部分は、長手方向、第1の横方向および第2の横方向を有し、当該部分のU字形断面で見て、
‐底部が形成され、底部は、第1の横方向と一致した方向を有し、
‐2つの側壁が形成され、2つの側壁は、第2の横方向と一致した方向を有する。
【0008】
注目されるべきこととして、車両、より具体的には自動車の構造体の幾つかの構造部品がU字形断面を備える。
【0009】
U字形断面を有する部分の中間ゾーンが長手方向に沿って定められた第1の長さを有し、中間ゾーンは、中間ゾーンを包囲した部品の主要な材料よりも高い延性を有する金属から成る。このようにして、延性が互いに異なる2種類の材料を組み合わせる。本方法は、
a)長手方向および第1の横方向を有する平板状ブランクを用意するステップを含む。ブランクは、スチール、例えば超強力鋼(ultra-high strength steel:UHSS)で作られるのが良い。
b)ブランクを切り欠いて第1の部分を有する開口部を作るステップを含み、開口部の第1の部分は、第1の横方向において第2の長さを有する。このようにして適当な部分を切り欠くことによって、ブランクの材料のない金属構造部品の領域を制御することができる。
c)例えばスポット溶接によりパッチをブランクに溶接して開口部を覆うステップを含む。このようにして、ブランクの幾つかの領域において、ブランクをパッチに溶接し、他方、他の領域では、パッチは、開口部を覆う。溶接プロセスは、パッチとブランクとの間に機械的継手または接合部を生じさせる。パッチは、ブランクの材料よりも大きな延性を有する金属で作られ、例えば、パッチは、超高強度鋼(very high strength steel:VHSS)または極高強度鋼(extra high strength steel:EHSS)で作られるのが良い。したがって、パッチで覆われている開口部の領域は、ブランクの材料から成る領域よりも高い延性を有する。
d)ブランクおよびパッチで形成された組立体をプレス加工(スタンピング)してU字形断面を備えた少なくとも1つの部分を有する部品を得て、この部分の底部の少なくとも一部が上述の第1の定められた長さのパッチに対応するとともに第1の横方向において第2の長さを有するブランクの開口部の第1の部分が少なくとも1つの部分の側壁のうちの一方から他方の側壁まで延びるようになっている。
【0010】
このようにして、パッチが開口部を覆っている底部の一部分に衝撃が加わったとき、金属構造部品、より具体的にはパッチは、衝撃エネルギー量のうちの多くを吸収して変形する。
【0011】
加うるに、パッチは、U字形断面の側壁相互間の高い機械的連続性をもたらし、と言うのは、2つの側壁は、パッチを介して機械的に連結されているからである。
【0012】
加うるに、延性のあるパッチが開口部を覆っている底部の一部分に衝撃が加わったときの金属構造部品の機械的応答具合が改善される。その理由は、衝撃エネルギー量のうち多くを側壁の両方の変形と一緒になって底部の変形により吸収できるということにあり、と言うのは、パッチは、衝撃応力を第1の横方向においてその延長部全体に沿って伝達するからである。
【0013】
加うるに、金属構造部品は、パッチをブランクに溶接し、そして互いに溶接されたパッチとブランクを含む組立体をプレス加工することによって単純な仕方で製造される。加うるに、金属構造部品は、これがブランクに単一の開口部を切り欠き、単一のパッチをブランクに溶接し、そして単一のパッチおよびブランクを含む組立体をプレス加工するのに十分なので、より単純な仕方で製造できる。
【0014】
幾つかの実施形態では、U字形断面を有する部分の第1の側壁は、第1の湾曲した部分を有し、第1の湾曲部分は、第1の側壁を、U字形断面を有する部分の底部に接合し、第1の湾曲部分は、部分の底部の曲率よりも大きな曲率を有し、かつ/あるいは
U字形断面を有する部分の第2の側壁は、第2の湾曲した部分を有し、第2の湾曲部分は、第2の側壁を、U字形断面を有する部分の底部に接合し、第2の湾曲部分は、部分の底部の曲率よりも大きな曲率を有する。
【0015】
このようにして、第1および/または第2の湾曲部分のU字形断面の曲率は、U字形断面の底部の曲率よりも大きい。第1および/または第2の湾曲部分は、U字形断面を有する部分の底部と側壁との間の移行領域となる。移行領域の曲率を減少させるのが良く、その目的は、底部と側壁との間の移行部の急峻さを減少させることにある。
【0016】
幾つかの実施形態では、ステップc)は、パッチがブランクの開口部全体を覆うように実施される。このようにして、機械的連続性が開口部全体にわたって高められる。
【0017】
幾つかの実施形態では、大きなパッチ(P)をブランク(B)に溶接してパッチ(P)の第1の部分(DZ)がブランク(B)の開口部(A)を覆うとともにパッチ(B)の第2の部分(RZ)がブランク(B)にオーバーラップ状態で溶接され、それにより二重の厚さを持つ部品(E)の領域を作るようにすることが可能である。パッチ(P)は、全体にわたって単一の材料から成り、この材料は、ブランクの主要な材料よりも高い延性のものである。第2の部分は、金属構造部品を補強することができる。加うるに、このようにすると、同一の製造ステップでは、すなわち、開口部を切り欠き、パッチをブランクに溶接し、そして溶接状態のパッチとブランクをプレス加工することによって、金属構造部品の一部分を補強すると同時に金属構造部品の別の部分の延性を高める。ブランクの材料は、パッチの第2の部分またはパッチの第2の部分のほとんどとオーバーラップするのが良い。これら実施形態のうちの幾つかにおいて、パッチの最大長さは、パッチの第1の部分の最大長さの少なくとも3倍である。このようにすると、パッチが開口部を覆っている底部の一部分に衝撃が加わったときにパッチの変形の大部分がパッチの延性のある部分で起こる。
【0018】
幾つかの実施形態では、ステップb)で切り欠かれた開口部は、長手方向において最大長さを有し、ステップd)は、開口部が一方の側壁から長手方向全体に沿って他方の側壁まで延びるよう実施される。このようにすると、側壁内には長手方向で見て開口部の長い部分が存在することになる。この長い部分の延性は、この部分を延性のあるパッチで覆ったときに高められる。
【0019】
幾つかの実施形態では、ステップb)で切り欠かれた開口部は、長手方向における最大長さを有し、開口部の最大長さの第1の区分が開口部の第1の部分を含み、開口部の最大長さの第2の区分が開口部の第2の部分を含み、第2の部分は、第1の横方向において、第1の部分の第1の横方向における長さよりも小さい長さを有し、ステップd)の実施時、開口部の第2の部分は、最大長さの第2の区分に沿ってU字形断面を有する部分の底部によって側方に制限されるようになっている。このようにすると、長手方向で見て開口部の長さ全体のちょうど一部分しか、側壁に、具体的には開口部の第1の部分のところにしか入らない。したがって、開口部の第2の部分が第1の横方向で見ると短く、それ故に小さいので、開口部を覆うのに必要なパッチ延長部が低くなり、それ故にパッチ材料が少なくて済む。加うるに、用いる材料が少ないが、側壁は、依然として延性部分を有し、この延性部分は、長手方向において減少した長さを有する。加うるに、底部の開口部の中央部分を延性パッチで覆うことができる。したがって、パッチで覆われたこの中央部分に衝撃が加わったときに、多くの量の衝撃エネルギーを吸収するための機械的要件が満たされる。この理由は、中央部分の変形に必要な延性が側壁の変形に必要な延性に合わされているからであり、それにより多量の衝撃エネルギーの相乗的な吸収が行われる。それと同時に、開口部の第2の部分が第1の横方向で見て短く、それ故に小さいので、金属構造部品の多くの部分、より具体的には、側壁は、ブランクの材料で作られ、それ故に強固である。好ましくは、底部の領域全体、すなわち、開口部によって占められている長手方向および第1の横方向を有する平面内の全領域は、側壁の全領域、すなわち、側壁の開口部によって占められている側壁に対して接線方向の平面内の全領域よりも広い。
【0020】
幾つかの実施形態では、長手方向における開口部の最大長さは、第3の区分を含み、第3の区分は、開口部の第3の部分を含み、第3の部分は、側壁のうちの一方から他方の側壁まで延び、開口部の第2の部分は、開口部の第1の部分と開口部の第3の部分との間に位置している。このようにすると、パッチが開口部を覆っている底部の一部分に加わる衝撃のエネルギーの吸収度がさらに改善される。この理由は、各側壁が開口部の2つの部分を備え、これら2つの部分相互間に開口部の中間部分が位置し、中間部分が底部内に位置しているからである。それ故、開口部を延性パッチで覆うことによって、側壁を開口部の2つの部分の両方のところで曲げることができる。このエネルギー吸収量は、側壁の開口部の4つの部分が単一の開口部で互いに連結され、それ故、これら4つの部分を延性パッチを介して互いに機械的に連結することができるのでさらに多くなる。さらに、パッチを覆うのに必要なパッチ材料の量がさらに減少し、と言うのは、第2の部分の長手方向延長部を減少させることができるからであり、それと言うのも、変形の一部が開口部の第3の部分を覆っているパッチの変形により側壁によって吸収されるからである。
【0021】
幾つかの実施形態では、開口部の第1の部分は、幅および長さを有する少なくとも1つの延長部を含み、幅は、長さよりも小さく、少なくとも1つの延長部は、開口部の第2の部分からU字形断面を有する部分の側壁まで延び、かつ/あるいは
開口部の第3の部分は、幅および長さを有する少なくとも1つの延長部を有し、幅は、長さより小さく、少なくとも1つの延長部は、開口部の第2の部分からU字形断面を有する部分の側壁まで延びている。
【0022】
このようにして、必要なパッチ材料の量が減少する。開口部の延長部の長さは、底部の延長部の始まりから側壁の延長部の終わりまでの長さである。好ましくは、少なくとも1つの延長部の始まりは、第1の横方向で見て開口部の第2の部分の端の近くに位置する開口部の一部分のところに配置されている。このようにすると、パッチ材料の量がさらに減少し、他方、パッチが開口部を覆っている底部の一部分に加わる衝撃に対する金属構造部品の応答が満足のゆくものとなり、と言うのは、延長部が底部と側壁との機械的連結具合を確かなものとするからである。
【0023】
幾つかの実施形態では、ステップb)で得られた開口部は、ブランクのエッジによって制限され、ステップd)の実施時、パッチは、開口部の厚さが減少するよう開口部に入る隆起部分を有する。
【0024】
幾つかの実施形態では、ステップd)の実施時、隆起部分は、開口部を覆うパッチの部分全体を含む。このようにすると、機械的連続性が開口部全体を通じて高められる。パッチの隆起部分は、部品の表面全体がその製造中に一方の側部のところで工具との接触関係を失うことがないようにすることができ、かかる接触関係を失うことは、部品の冷却速度に悪影響を及ぼす。パッチの一部分を隆起させて穴の隙間を満たすことによって、製造工具との部品の同一かつ連続した接触を確保することができる。良好な冷却はまた、この領域の正確な公差を維持することができるようにすることができる。これにより、ブランクの穴とパッチとの間の領域の材料の連続性が得られ、しかも部品の挙動がより均一になる。
【0025】
幾つかの実施形態では、ステップd)は、ホットスタンピングによって実施される。
【0026】
本発明の第2の観点は、上述の実施形態のうちの任意の実施形態に従って構成された金属構造部品に関する。
【0027】
幾つかの実施形態では、金属構造部品は、Bピラーである。好ましくは、長手方向で見て、覆われた状態の開口部の最大長さは、Bピラーの長さの1/3未満であり、この最大長さ部分は、Bピラーの下半分に位置している。より好ましくは、覆われた状態の開口部の最大長さは、少なくとも30mmである。
【0028】
本発明の第3の観点は、上述の実施形態のうちの任意の1つの金属構造部品を有する自動車に関する。このようにすると、側面衝突の際、Bピラーは、延性パッチを変形させ、それ故にパッチによって覆われた底部および側壁の幾つかの部分を変形させることによって多量の衝撃エネルギーを吸収する。
【0029】
上述した本発明の互いに異なる観点および互いに異なる実施形態をこれらが互いに両立する限り、互いに組み合わせることができる。
【0030】
本発明の追加の利点および追加の特徴は、以下の詳細な説明から明らかになり、しかも特許請求の範囲に具体的に指摘される。
【0031】
説明を完全にするためかつ本発明の良好な理解を提供するため、1組の図面が提供されている。これら図面は、本明細書の一体部分をなして本発明の実施形態を記載しており、本発明の実施形態は、本発明の範囲を限定するものと解されてはならず、本発明の実施の仕方についての一例としてのみ解されるべきである。図面は、以下の図を含む。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】パッチが例えば溶接によって平板状ブランクの切り欠き領域に貼り付けられた金属構造部品の製造の一ステップを示す図である。
【
図2】ブランクおよびパッチによって形成された組立体がプレス加工されてU字形断面の少なくとも一部分を有する部品を得ている金属構造部品の製造における別のステップを示す図である。
【
図3A】部品がBピラーである本発明の第1の好ましい実施形態に係る金属構造部品の分解組立図である。
【
図3B】
図3AのBピラーのパッチとブランクとの間の結合部の拡大図である。
【
図4A】部品がBピラーである本発明の第2の好ましい実施形態に係る金属構造部品の分解組立図である。
【
図4B】
図4Aの部品に組み付けられたパッチの拡大図である。
【
図5】第2の実施形態のBピラーの製造における一ステップを示す図である。
【
図6】第2の実施形態のBピラーの製造における別のステップを示す図である。
【
図7】第2の実施形態のBピラーの製造における別のステップを示す図である。
【
図8】既知の製造プロセスに従って高い延性領域を有するBピラーに加わる側方からの衝撃の効果を示す図である。
【
図9】第1の実施形態のBピラーに加わる同一の側方からの衝撃効果のタイムラプス撮影写真図である。
【
図10】第1の実施形態のBピラーに加わる同一の側方からの衝撃効果のタイムラプス撮影写真図である。
【
図11】第2の実施形態のBピラーに加わる同一の側方からの衝撃の効果のタイムラプス撮影写真図である。
【
図12】第2の実施形態のBピラーに加わる同一の側方からの衝撃の効果のタイムラプス撮影写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下の説明は、本発明を限定する意味で受け取られてはならず、本発明の広義の原理を説明する目的でのみ提供されている。上記において簡単に説明した図面を参照して本発明の実施形態について例示として説明する。
【0034】
図1および
図2は、本発明の金属部品の製造法を概略的に示す図である。
図1では、ブランクBが部品を製造するために用いられる。ブランクBは、長手方向Lおよび横方向Tに及ぶ平板状の金属シート(板金)である。例えばレーザ切断によってまたは打ち抜きプロセス中に、シートから開口部Aを切り欠く。シートBは、鋼製のものであるのが良い。適当なサイズのパッチPを高い延性の別の材料、例えば極高強度鋼(EHSS)または超高強度鋼(VHSS)から作る。パッチPは、開口部Aを覆うように寸法決めされている。次に、パッチを溶接によって開口部Aを覆うよう貼り付ける。
【0035】
図2は、例えばスタンピング(プレス加工)によってU字形断面を備えた一部分を有する部品Eの状態に付形された後の組み合わせ状態のブランクとパッチを示している。この図では、U字形部分の側壁2,3が延びる別の方向Hが定められている。側壁2,3および底部1は、U字形断面を形成している。各壁2,3から底部1への移行部は、丸形部分R1,R2を各移行部のところに形成することができるよう丸められている。パッチが貼り付けられた中間ゾーンZもまた、U字形部分に形成されており、中間ゾーンZは、この部品の周囲部分よりも高い延性を有するとともに長手方向において第1の定められた長さlを有している。
【0036】
図3Aは、本発明の第1の好ましい実施形態に係る金属部品、この場合Bピラーの分解組立図である。Bピラーは、主要な金属材料、例えば鋼で作られている。断面の寸法形状は、長手方向に様々であるが、実質的にU字形の断面を備えた一部分がBピラー中に特定でき、この部分は、中間ゾーンZを含む。主要材料に設けられている開口部Aは、不規則な形状を有し、この開口部内において種々の部分、すなわちU字形部分の側壁2,3および底部1の一部におよびかつ第1の横方向Tにおいて第2の長さltを有する第1の部分Q、第1の横方向Tにおいてltよりも短い長さを有する第2の部分S、およびこれまた側壁2,3および底部1の一部に及ぶ第3の部分Uが設けられるのが良い。第1および第3の部分Q,Uの各々は、開口部の第2の部分Sから各側壁2,3まで延びる延長部6を有する。
【0037】
パッチPは、開口部Aの形状と相補する形状を備えた隆起領域7を有し、その結果、組み付け時、開口部Aの領域は、周囲材料と比較して厚さが減少している。これは、
図3Bに詳細に示されている。
【0038】
図4Aは、本発明の第2の好ましい実施形態に係るBピラーの分解組立図である。この実施形態では、パッチPは、開口部Aよりも著しく大きくかつBピラーの主要材料と大部分がオーバーラップしている。パッチPの第1の部分DZを開口部A内に位置するパッチの部分として定めることができる。この部分はまた、主要材料からパッチへのBピラーの表面のシームレス移行部を提供するために隆起しているのが良い。第2の部分RZを主要材料とオーバーラップしたパッチPの部分として定めることができる。これは、例えば溶接によって主要材料に接合されるのが良い。
図4Bは、Bピラー中に組み付けられた第1の部分DZを詳細に示している。
【0039】
図5、
図6および
図7は、第2の実施形態に係るBピラーの製造における種々のステップを示している。主要材料のブランクBを平らな形状になるよう切断しまたは作り、そして孔Aをブランクに形成する。この図では、開口部を画定するエッジは、符号4で示されている。平板状のパッチPを別の平板状の高延性材料から形成しまたは切断する。
図6は、スポット溶接によってパッチPと平板状ブランクBとの間に設けられていて、エッジ4周りにかつパッチの第2の部分RZ内に施された斑点によって表された結合部を示している。次に、最終の部品E、この場合Bピラーをホットスタンピングしてその三次元形状を形成し、この三次元形状は、U字形断面を備えた一部分を有する。U字形断面は、側壁2,3と底部1との間の角度または曲率とは無関係に側壁2,3および側壁相互間の底部1を含む構成の可能性を提供すると共にU字形をより大きな形状内に、例えばΩ形状内に見出すことができる構成を含む。
【0040】
図8~
図12は、本発明の高延性パッチPを自動車用部品、例えばBピラーに設けた場合の作用効果のうちの幾つかを示している。
図8は、既知のプロセスに従って、例えば一体形ホットスタンピングによって製造された一体形Bピラーを示している。側方からの衝撃をBピラーに加えた結果として、延性領域が主要材料よりも大きく変形する。しかしながら、延性領域が部品全体にわたって横方向に延びているので、この部品は、折れ曲がって場合によっては図示の線に沿って破断する傾向を有する。かかる折れ曲がりまたは破断により、車両キャビンの健全性が低下する。
【0041】
図9は、比較のために、第1の実施形態に係るBピラーへの側方からの衝撃の効果を示している。この場合、パッチPの形状は、側方衝撃に合わせてBピラーの最も衝撃に弱い領域により厳密に合致している。第2の実施形態と比較して小さな切り欠きが用いられており、部品の残部は、その健全性を保持している。衝撃時、Bピラーに対する変形全体は、既知のプロセスで観察される変形よりも小さく、しかも実質的にパッチに限定されている。
【0042】
図11および
図12は、第2の実施形態にかかるBピラーに加わる同一の側方からの衝撃の効果を示している。同様に、パッチPには主要な変形が生じ、これに対し、側壁2,3およびBピラーの全体的形状に対する影響の度合いは小さい。
図12では、主要な変形領域を示す線は、高延性パッチP内に限定され、これに対し、Bピラーの強度の高い側方領域は、影響を受けていないままであり、車両キャビンの内部は、押し込まれていない。
【0043】
この技術的思想は、他の金属部品、特に衝撃吸収領域を設けることが有利である自動車用物品に適用できる。
【0044】
この関係で、原文明細書で用いられている“comprises”(訳文では「~を有する」としている場合が多い)およびその変形語(例えば、“comprising”など)は、排他的な意味で理解されるべきではなく、すなわち、このような用語は、記載されかつ定められている内容が別の要素、ステップなどを含む場合があるという可能性を排除するものとして解されてはならない。
【0045】
他方、本発明は、本明細書に記載された特定の実施形態に限定されないことが明らかであり、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲全体内で当業者によって想到できる任意の変形例(例えば、材料、寸法形状、部品、形態などの選択に関して)を含む。
【図】
【国際調査報告】