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特表2023-534802ポリフェノール系物質の粒状物及びそれらの分散液
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-14
(54)【発明の名称】ポリフェノール系物質の粒状物及びそれらの分散液
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/60 20060101AFI20230804BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20230804BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20230804BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20230804BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20230804BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20230804BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20230804BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20230804BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
A61K8/60
A61Q17/04
A61Q1/02
A61K8/49
A61K8/9789
A61K8/39
A61K8/55
A61Q19/08
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023502587
(86)(22)【出願日】2021-07-16
(85)【翻訳文提出日】2023-02-27
(86)【国際出願番号】 US2021042087
(87)【国際公開番号】W WO2022016117
(87)【国際公開日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】63/052,675
(32)【優先日】2020-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518040194
【氏名又は名称】ナノフェーズ テクノロジーズ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Nanophase Technologies Corporation
【住所又は居所原語表記】1319 Marquette Drive Romeoville, Illinois 60446 USA
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】サーカス ハリー ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ボファ クリストファー シー.
(72)【発明者】
【氏名】テサール ルーカス ティー.
(72)【発明者】
【氏名】クレトン ケビン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB222
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB332
4C083AB432
4C083AC022
4C083AC122
4C083AC242
4C083AC302
4C083AC331
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC392
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC582
4C083AC662
4C083AC841
4C083AC842
4C083AC912
4C083AD242
4C083AD391
4C083AD392
4C083AD571
4C083AD572
4C083BB01
4C083BB11
4C083BB21
4C083BB25
4C083BB46
4C083CC02
4C083CC11
4C083CC19
4C083DD11
4C083DD39
4C083EE07
4C083EE12
4C083EE17
4C083FF05
(57)【要約】
組成物は、ポリフェノール系粒子と、ポリフェノール系粒子上の界面活性剤とを含む。組成物は親油性である。ポリフェノール系粒子は非色素性である。分散液は、ポリフェノール系粒子、界面活性剤、及び担体ビヒクルを含む。担体ビヒクルは、親油性である、化粧品として許容される流体又はワックスであってもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェノール系粒子と、
前記ポリフェノール系粒子上の界面活性剤と
を含む組成物であって、前記ポリフェノール系粒子が、非色素性であってもよい、前記組成物。
【請求項2】
親油性ポリフェノール系粒子。
【請求項3】
ポリフェノール系粒子がルチンを含む、請求項1又は2に記載の組成物又は粒子。
【請求項4】
ポリフェノール系粒子がシラン化ポリフェノール系粒子である、請求項1~3のいずれかに記載の組成物又は粒子。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の組成物又は粒子と、
担体ビヒクルと
を含む分散液。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の組成物又は粒子と、
UV線保護剤と
を含む日焼け止め組成物。
【請求項7】
ルチン粒子と、
界面活性剤と、
担体ビヒクルと
を含む分散液であって、前記ルチン粒子が、0.1~1.0ミクロンの粒径を有し、前記分散液が注入可能である、前記分散液。
【請求項8】
組成物が非常に耐水性である、請求項1~7のいずれかに記載の組成物、分散液、日焼け止め組成物、又は粒子。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の組成物、分散液、日焼け止め組成物、又は粒子を製造する方法であって、
ポリフェノール系粒子、界面活性剤、及び担体ビヒクルを容器内で合わせて、分散液を形成するステップと;
前記分散液を均質になるまで撹拌するステップと;
場合により、分散液をミリングするステップと
を含む、前記方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の組成物、分散液、日焼け止め組成物、又は粒子を製造する方法であって、
ポリフェノール系粒子をシラン化剤と反応させて、シラン化ポリフェノール系粒子を形成するステップと;
前記シラン化ポリフェノール系粒子及び担体ビヒクルを容器内で合わせて、分散液を形成するステップと;
前記分散液を均質になるまで撹拌するステップと;
場合により、分散液をミリングするステップと
を含む、前記方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の組成物、分散液、日焼け止め組成物、又は粒子を製造する方法であって、
ポリフェノール系物質をミリングして、ポリフェノール系粒子を形成するステップと;
容器内で撹拌下、場合により加熱しながら、前記ポリフェノール系粒子に界面活性剤又はシラン化剤を噴霧して、親油性ポリフェノール系粒子を形成するステップと
を含む、前記方法。
【請求項12】
ポリフェノール系粒子が、ルチン、ケルセチン、ケルセチノールグルコシド、アストラガリン、ミリセチン、レスベラトロール、マンギフェリン、エモジン、ゲニステイン、カンナビジオール(CBD)、カンナビゲロール(CBG)、カテキン、エピカテキン、クロロゲン酸、没食子酸、オリベトール、オリベトール酸、パリドール、エラグ酸、ピセイド、マルビジン、クリサンテミン、ミケリアニン、及びシリビニンからなる群から選択される物質を含む、請求項1~11のいずれかに記載の組成物、分散液、日焼け止め組成物、又は粒子。
【請求項13】
ポリフェノール系粒子が、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツ、タンジェリン、ソバ、アスパラガス、リンゴ、モモ、ケッパー、タマネギ、ブラックラディッシュ、キイチゴ、ブラックベリー、スグリ、グーズベリー、プラム、アプリコット、トマト、チェリートマト、ブドウ、ズッキーニ、トウガラシ、ピーナッツ、ココア、茶、コーヒー、ビート、ブルーベリー、ナス、イチジク、赤キャベツ、アサイー、紫トウモロコシ、パイナップル、レイシ、及びマリアアザミからなる群から選択される天然物から得られる、請求項1~12のいずれかに記載の組成物、分散液、日焼け止め組成物、又は粒子。
【請求項14】
ポリフェノール系粒子が、マリアアザミ抽出物又はブドウ種子抽出物から得られる、請求項1~13のいずれかに記載の組成物、分散液、日焼け止め組成物、又は粒子。
【請求項15】
界面活性剤が、脂肪アルコール及びポリオール、脂肪酸、ポリグリセリルエステル、ポリグリセリルポリエステル、親和性ヒドロキシル基、アミン基、又はアミド基を有するポリエステル、親和性ヒドロキシル基、アミン基、又はアミド基を有するポリウレタン、親和性ヒドロキシル基、アミン基、又はアミド基を有するポリアミド、親和性ヒドロキシル基、アミン基、又はアミド基を有するポリアクリレート、リン酸エステル、ポリマーリン酸塩、リン脂質、セラミド、スフィンゴシン、それらの組み合わせ、それらのコポリマー、及びそれらのクロスポリマーからなる群から選択される物質を含む、請求項1~14のいずれかに記載の組成物、分散液、日焼け止め組成物、又は粒子。
【請求項16】
フェノール系ポリマー粒子が、0.001~10.0ミクロン(μm)、及び/又は0.01~5.0ミクロン(μm)、及び/又は0.1~1.0ミクロン(μm)の粒径を有する、請求項1~15のいずれかに記載の組成物、分散液、日焼け止め組成物、又は粒子。
【請求項17】
担体ビヒクルが、化粧品として許容される流体を含む、請求項1~16のいずれかに記載の組成物、分散液、日焼け止め組成物、又は粒子。
【請求項18】
担体ビヒクルが、トリグリセリド、エステル、天然油及びバター、アルカン、シリコーン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される物質を含む、請求項1~17のいずれかに記載の組成物、分散液、日焼け止め組成物、又は粒子。
【請求項19】
担体ビヒクルがワックスを含む、請求項1~18のいずれかに記載の組成物、分散液、日焼け止め組成物、又は粒子。
【請求項20】
ポリフェノール系粒子が、0.1~75.0重量%、及び/又は0.5~50.0重量%、及び/又は1.0~40.0重量%の量で存在し、
界面活性剤が、前記ポリフェノール系粒子の質量の1.0~100.0%、及び/又は前記ポリフェノール系粒子の質量の10.0~60.0.0%、及び/又は前記ポリフェノール系粒子の質量の20.0~50.0%の量で存在する、
請求項1~19のいずれかに記載の組成物、分散液、日焼け止め組成物、又は粒子。
【請求項21】
分散液が非常に耐水性である;及び/又は
前記分散液が注入可能である、
請求項1~20のいずれかに記載の組成物、分散液、日焼け止め組成物、又は粒子。
【請求項22】
界面活性剤がポリグリセリル-2ジポリヒドロキシステアレートを含む、請求項1~21のいずれかに記載の組成物、分散液、日焼け止め組成物、又は粒子。
【請求項23】
担体ビヒクルがカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドを含む、請求項1~22のいずれかに記載の組成物、分散液、日焼け止め組成物、又は粒子。
【請求項24】
界面活性剤がポリグリセリル-2ジポリヒドロキシステアレートを含み、
担体ビヒクルがカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドを含み、
ルチンが1.0~40.0重量%の量で存在し、
前記ポリグリセリル-2ジポリヒドロキシステアレートが15.0~50.0重量%の量で存在する、
請求項1~23のいずれかに記載の組成物、分散液、日焼け止め組成物、又は粒子。
【請求項25】
UV線保護剤が、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化チタン(TiO)、p-アミノ安息香酸(PABA)、パディメートO、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、シノキセート(2-エトキシエチルp-メトキシシンナメート)、ジオキシベンゾン(ベンゾフェノン-8)、オキシベンゾン(ベンゾフェノン-3)、ホモサレート(ホモメチルサリチレート)、メンチルアントラニレート(メラジメート)、オクトクリレン(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸)、オクチルメトキシシンナメート(オクチノキサート)、オクチルサリチレート(2-エチルヘキシルサリチレート)、スルイソベンゾン(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、3-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-6-メトキシベンゼンスルホン酸、ベンゾフェノン-4)、トロラミンサリチレート(トリエタノールアミンサリチレート)、アボベンゾン(1-(4-メトキシフェニル)-3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパン-1,3-ジオン)、エカムスル(テレフタリリデンジカンファースルホン酸)、酸化セリウム(CeO)、ドロメトリゾールトリシロキサン、bis-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ビソクトリゾール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~24のいずれかに記載の組成物、分散液、日焼け止め組成物、又は粒子。
【請求項26】
皮膚の酸化的損傷を処置若しくは予防する方法、ヒト皮膚を保護する方法、皮膚の脂質過酸化を抑制する方法、皮膚の線及びしわの出現を予防若しくは低減する方法、皮膚の弾力の低下を予防する方法、皮膚の菲薄化を予防する方法、皮膚の黒ずみを予防する方法、又は皮膚に対するHEV光線曝露を弱める方法であって、
請求項1~25のいずれかに記載の組成物、分散液、日焼け止め組成物、又は粒子を適用するステップを含む、前記方法。
【請求項27】
ケラチン質材料を保護する方法又はケラチン質材料においてフリーラジカルをクエンチする方法であって、
請求項1~26のいずれかに記載の組成物、分散液、日焼け止め組成物、又は粒子を前記ケラチン質材料に適用するステップ
を含み、
前記ケラチン質材料が、髪、指の爪、足の爪、皮膚の外層からなる群から選択される、
前記方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ポリフェノール(「ポリフェノール系物質」とも呼ばれる)は、芳香族環上の複数の-OH基の存在により特徴づけられる分子の部類である。ポリフェノールは一般に、フェノール酸、ヒドロキシ桂皮酸、ヒドロキシ安息香酸、及びフラボノイドとして分類されることがある。ポリフェノールは、抗酸化剤として機能する能力、及び紫外(UV)線を吸収する能力などの、いくつかの独自の特性を有する。一部のポリフェノールは、それらの抗菌特性又は殺菌特性のため、殺菌剤としても使用されてきた。
【0002】
ポリフェノールは、果物、野菜、及び穀物を含む様々な植物の葉組織、表皮、樹皮層、花、及び果実に天然に存在する。天然ポリフェノールは、ベリー類、ワイン、ビール、茶、コーヒー、オリーブ油、ココア、チョコレート、リンゴ酒、果実ジュース、酢、ハーブ、香辛料、及びナッツ類を含む食物及び飲料に存在する(D’Archivio, M. et al., ''Bioavailability of the polyphenols: status and controversies'', International Journal of Molecular Sciences, Vol. 11, pp. 1321-1342 (2010))。植物ポリフェノールは抗酸化剤の食物供給源として認識されてきた(Pandey, K. B. et al., ''Plant polyphenols as dietary antioxidants in human health and disease'', Oxidative Medicine and Cellular Longevity, Vol. 2, No. 5, pp. 270-278 (2009))。ポリフェノールは微生物中にも天然に存在し、細菌、例えばアクチノバクテリア、シアノバクテリア、及びプロテオバクテリア、酵母、キノコなどの菌類、地衣類、及び藻類などに見られることがある。
【0003】
アントシアニン又はアントシアニジン、フラバン-3-オール、フラボノール、フラバノン、フラボン、及びイソフラボンとして知られる主な亜綱を含むフラボノイドは、それらの潜在的な治療上の有益性のため、多くの近年の研究の主題であった。フラボノイドの研究は、それらが抗炎症活性、抗血栓活性、抗糖尿病活性、抗癌活性、及び神経保護活性を示すこと、並びにフラボノイドが代謝の健康、心臓血管の健康、血管内皮機能、糖尿病性患者の血糖管理、及び認知機能において有益となり得ることを示す(Crozier, A. et al., ''Flavonoids'', Oregon State University Linus Pauling Institute Micronutrient Information Center, available online at lpi.oregonstate.edu/book/export/html/484 (2016))。フラボノイドは多くの食物中に存在し、果実及び野菜が豊富な食事の一部として摂取されることになる。しかし、食物フラボノイドは、体から急速に排出されるのでそれらのバイオアベイラビリティーが低いことから、非常にわずかな健康上の利益しかもたらさない。
【0004】
ルチン(ルトシド、ケルセチン-3-O-ルチノシド、及びソホリンとしても知られる)は、ケルセチン及びルチノースの配糖体である良く知られたフラボノイドである。ルチンの食物供給源としては、かんきつ類果実、ソバ、アスパラガス、リンゴ、モモ、ケッパー、オリーブ、キイチゴ、スグリ、プラム/プルーン、ブラックベリー、チェリートマト、ブドウ/レーズン、ズッキーニ、アプリコット、及び茶が挙げられる(''Showing all foods in which the polyphenol Quercetin 3-O-rutinoside is found'', Phenol Explorer, available online at phenol-explorer.eu/contents/polyphenol/296, accessed on March 13, 2020)。ルチンは、植物のカルポブローツス・エドゥリス(Carpobrotus edulis)(ホッテントットフィグ、アイスプラント、ハイウェイアイスプラント、ピッグフェイス、及びサワーフィグとしても知られる)及びヘンルーダ(Ruta graveolens)(ルー、コモンルー、又はハーブオブグレイスとしても知られる)においても見られる。ルチンは、抗酸化活性、細胞保護活性、血管保護活性、抗腫瘍形成活性、神経保護活性、及び心保護活性を有することが示されている(Ganeshpurkar, A. et al., ''The pharmacological potential of rutin'', Saudi Pharmaceutical Journal, Vol. 25, pp. 149-164 (2017))。とりわけ、ルチンはUV-B誘発性炎症を低減することが示されており、ルチンの10%w/w水中油型エマルションは30に迫る日焼け防止指数(SPF)値を実現する(Ganeshpurkar, A. et al., ''The pharmacological potential of rutin'', Saudi Pharmaceutical Journal, Vol. 25, pp. 149-164 (2017))。
【0005】
シリビニン(シリビン又はSBとしても知られる)は、UV線保護を実現する別のポリフェノールである。シリビニンは、マリアアザミ(Silybum marianum)種子の抽出物において見られる。マリアアザミ植物は、肝臓疾患、癌、及びシロタマゴテングダケの毒作用を治療するのに使用されてきた、良く知られた薬用植物である。シリマリン(SM)は、シリビン、イソシリビン(ISB)、シリクリスチン(SC)、シリジアニン(SD)、2,3-デヒドロシリビン(DHSB)、デヒドロシリクリスチン、及びタキシフォリン、並びに化学的に未定義の画分及び酸化ポリフェノール系化合物(20~30%)を含む、フラボノリグナン(70~80%)を含有する、マリアアザミ種子の標準化抽出物である。シリマリン及びそのフラボノリグナンは、UV-A及びUV-B防護を実現し、フリーラジカルを捕捉し、UV-Bにより及び化学的に誘発される損傷を低減し、抗コラゲナーゼ活性を示し、抗エラスターゼ活性を示すことが示された(Vostalova, J. et al., ''Skin protective activity of silymarin and its flavonolignans'', Molecules, Vol. 24, No. 1022, 12 pages (2019))。これらの結果は、マリアアザミ抽出物が皮膚保護配合物のためのポリフェノールの有効な供給源であり皮膚の光老化を防ぐことを示す。
【0006】
ポリフェノールの独自の特性、特にそれらの抗酸化性及びUV防護特性によって、これらの物質を配合物中の望ましい成分となる。例えば、局所適用される配合物は、バイオアベイラビリティーが不十分な食物フラボノイドのための代替の投与経路をもたらすことが可能である。再生可能な資源である天然物におけるそれらのアベイラビリティーにもかかわらず、配合物の課題はポリフェノール系粒子などのポリフェノール成分に対する需要を限定してきた。ルチン、シリビニン、及びレスベラトロールなどの一部のポリフェノールは、水溶性が不十分である。他のポリフェノールは水溶性が高く、このことはそれらの使用を配合物の水相に制限する。特定のポリフェノールの高い水溶性は、水にさらされるとポリフェノールが皮膚から洗い流されることになるため、固体状態の局所用配合物へそれらを含有させることも限定する。これらの溶解性の懸念は、製造業者がポリフェノールの有用な特性を十分に生かす能力を制限してきた。
【0007】
ルチンは、0.125g/Lという低い水溶性、及び大豆油などのバルク油中の0.1重量%という限られた溶解性を有し、この有益な抗酸化剤の使用をひどく限定する(M.J. Frutos, L. Rincon, and E. Valero-Cases in Nonvitamin and Nonmineral Nutritional Supplements 2019, Chapter 2.14, pp. 111-117、及びI. Dammak, and P.J. do Amaral Sorbal, Food Bioprocess Technol., 10, 926-939, (2017))。様々な手法が低い水溶性を克服するのに使用されてきた。これらは総説論文に詳細に記載され、ここでは各々の手法の欠点が論じられている(G. H. Palliyage, S. Singh, C. R. Ashby, Jr., A.K. Tiwari, and H Chauhan AAPS PharmSciTech 20, 250 (2019))。目的の成分が脂質二重層を有する球状の小胞内に捕らえられる、リポソーム脂質二重層の手法は、小胞を形成するのに必要とされる高圧均質化に起因して小胞を形成するリン脂質が酸化及び劣化する、固有の低い熱安定性に起因して特殊な保存が必要とされる、及び疎水性ポリフェノールではカプセル化効率が低いという欠点がある。両親媒性ポリマーにより形成されるポリマーシェル構造は、非常に不安定であり保持能力が低いという問題を有する(G. H. Palliyage, S. Singh, C. R. Ashby, Jr., A.K. Tiwari, and H Chauhan AAPS PharmSciTech 20, 250 (2019))。脂質中のナノ粒子分散液は、低い成分保持能力、固体脂質マトリックスを加工するのに必要とされる温度に起因した活性成分の熱劣化の高い傾向をもたらし、凝集を生じさせる高い界面の表面エネルギーに起因した不十分な長期安定性を示す。最後に、ヒドロゲルはポリマー系の範囲が限られるという欠点を有し、複合体は混合下で機械的に弱く不安定である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】D’Archivio, M. et al., ''Bioavailability of the polyphenols: status and controversies'', International Journal of Molecular Sciences, Vol. 11, pp. 1321-1342 (2010)
【非特許文献2】Pandey, K. B. et al., ''Plant polyphenols as dietary antioxidants in human health and disease'', Oxidative Medicine and Cellular Longevity, Vol. 2, No. 5, pp. 270-278 (2009)
【非特許文献3】Crozier, A. et al., ''Flavonoids'', Oregon State University Linus Pauling Institute Micronutrient Information Center, available online at lpi.oregonstate.edu/book/export/html/484 (2016)
【非特許文献4】''Showing all foods in which the polyphenol Quercetin 3-O-rutinoside is found'', Phenol Explorer, available online at phenol-explorer.eu/contents/polyphenol/296, accessed on March 13, 2020
【非特許文献5】Ganeshpurkar, A. et al., ''The pharmacological potential of rutin'', Saudi Pharmaceutical Journal, Vol. 25, pp. 149-164 (2017)
【非特許文献6】Vostalova, J. et al., ''Skin protective activity of silymarin and its flavonolignans'', Molecules, Vol. 24, No. 1022, 12 pages (2019)
【非特許文献7】M.J. Frutos, L. Rincon, and E. Valero-Cases in Nonvitamin and Nonmineral Nutritional Supplements 2019, Chapter 2.14, pp. 111-117
【非特許文献8】I. Dammak, and P.J. do Amaral Sorbal, Food Bioprocess Technol., 10, 926-939, (2017)
【非特許文献9】G. H. Palliyage, S. Singh, C. R. Ashby, Jr., A.K. Tiwari, and H Chauhan AAPS PharmSciTech 20, 250 (2019)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様において、本発明は、ポリフェノール系粒子と、ポリフェノール系粒子上の界面活性剤とを含む組成物である。ポリフェノール系粒子は非色素性である。
【0010】
第2の態様において、本発明は、ルチン粒子、界面活性剤、及び担体ビヒクルを含む分散液である。ルチン粒子は0.1~1.0ミクロンの粒径を有する。分散液は注入可能である。
【0011】
第3の態様において、本発明は、シラン化ポリフェノール系粒子及び担体ビヒクルを含む分散液である。
【0012】
第4の態様において、本発明は親油性ルチン粒子である。ルチン粒子は0.05~0.5ミクロン(μm)の粒径を有する。
【0013】
定義
「ポリフェノール」又は「ポリフェノール系」という用語は、非複素環の芳香族環上に複数の-OH基を含む物質を意味する。この出願で使用される、「ポリフェノール」及び「ポリフェノール系」という用語は、ポリマー又はポリマー状物質を含まない。
【0014】
「非色素性」という用語は、400nm以下のUV吸収極大(λMax)を有する物質を意味する。
【0015】
「紫外線」という用語は、10~400nmの波長を有する電磁波を意味する。紫外線は、紫外光、UV線、又はUV光とも呼ばれる。略称「UV」は本出願において「紫外光」という言い回しと交換可能に使用される。
【0016】
「高エネルギー可視光線」又は「HEV光線」という語は、400~490nmの波長を有する電磁波を意味する。HEV光線は可視スペクトルにおける青色及び紫色の光として知覚される。
【0017】
「粒径」という用語は、別段の指定がない限り、数の分布に基づく静的光散乱(ISO 13320:2009粒径解析-レーザー回折法)により決定される中央(D50)粒径を意味する。
【0018】
「非常に耐水性」という用語は、水に曝露する前のそのMPFとインビトロでの80分の水浸手順後のMPFとの間で50%未満の単色保護指数(MPF)の変化を示す組成物を意味する(Cosmetics Europe, ''Guidelines for evaluating sun product water resistance'', available online at www.cosmeticseurope.eu/files/7914/6407/7400/Guidelines_for_Evaluating_Sun_Product_Water_Resistance_-_2005.pdf, 15 pages (2005))。
【0019】
粉末の分散液の流動性は以下の流出距離試験を使用して測定される。ピペットからの3滴(75mg)の分散液を清浄なガラスプレート基材上に置き、その際表面は水平位置にある。次いでガラス基材を90度の角度で120秒間直立状態で保持して分散液が流れるようにする。分散液の流動性は分散液が起点から流れる距離として表される。(この試験は初期のスクリーニングの際にのみ使用された;起点からの測定された流出距離である164±10mm(標準誤差として報告される)は、20s-1のせん断速度における145±25cP(標準誤差として報告される)の粘度に相当する。)。分散液は100mmを超える流出距離を示す場合に注入可能であると考えられる。
【0020】
別段の指定がない限り、すべてのパーセンテージ(%)は重量/重量パーセントである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明は以下の図面及び説明を参照してさらに良く理解することができる。
図1】界面活性剤で修飾されたポリフェノール系粒子の略図である。
図2】シリマリン及びその構成成分のポリフェノールの紫外光吸収スペクトルのグラフの図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、親油性となるように修飾されたポリフェノール系粒子を含む。親油性ポリフェノール系粒子は、粒子に表面処理を加えることにより又は粒子をシラン化剤と反応させることにより形成させることができる。親油性の修飾は、ポリフェノール系粒子が配合物の油相中に固体状態で存在することを可能にする。例えば、ポリフェノール系粒子及び界面活性剤は親油性の担体ビヒクル中に分散させることができる。油相中でポリフェノール系粒子を使用できるということは、非修飾状態で水溶性が高いポリフェノール系粒子の考えられる使用を大幅に拡大させる。好ましくは、ポリフェノール系粒子は非色素性である。
【0023】
本発明は、界面活性剤を直接ポリフェノール系粒子の表面上にコーティングし長期安定性を示す表面修飾ポリフェノール系粒子を形成し、高いポリフェノール系物質濃度の送達を可能にする様々なキャリア流体への取り込みを可能にすることにより、溶解性の問題を克服する。
【0024】
実験的試験は、親油性ポリフェノール系粒子を含む調製物がいくつかの望ましい物理的及び化学的特性を有することを明らかにした。これらの調製物は非常に耐水性であり強いHEV光遮断剤であり、このことはそれらが日焼け防止配合物での使用に良く適していることを示す。ルチン粒子は日焼け防止のための特に望ましいUV保護剤である。
【0025】
ポリフェノール系粒子を含む調製物はいくつかの商業的な利点も提供する。多くのポリフェノールは天然物から得ることができ、このことによりそれらは経済的に好都合な原料となる。ポリフェノールの植物系原料はそれらが再生可能な資源であるので特に望ましい。天然原料に由来するポリフェノールは天然物として市場に出すことができ、これは消費者にとって魅力的である。さらに、ポリフェノール系粒子の分散液は、高価な反応物、極端な温度、長い反応時間、又は有害な反応物を必要とせず、有害な廃棄物を生み出さない、従来の化学的加工技術を使用して製造することができる。すべてのこれらの利点は、製造業者が市販の配合物中にポリフェノール系粒子を加えることを促すことになる。
【0026】
図1は、界面活性剤で修飾されたポリフェノール系粒子の略図を示す。組成物100は、ポリフェノール系粒子110と、粒子の表面上の界面活性剤120とを含む。界面活性剤は、ポリフェノール系粒子を親油性にさせ、水への溶解に対して耐性のあるものにする表面処理である。分散液は、ポリフェノール系粒子、界面活性剤、及び担体ビヒクルを合わせることにより調製することができる。好ましくは、分散液は注入可能である。
【0027】
ポリフェノール系粒子は、非複素環の芳香族環上に複数の-OH基を有する任意の物質であってもよい。好ましくは、ポリフェノール系粒子は非色素性であり、それらが400nm以下のUV吸収極大(λMax)を有することを意味する。ポリフェノール系粒子は、カロテノイド、カロテン、β-カロテン、アスタキサンチン、レチノイド、クルクミノイド、リコピン、アナトー、及び21 C.F.R.§73(Listing of Color Additives Exempt from Certification(認証免除の着色添加剤のリスト))で特定される他の物質などの、米国食品医薬品局(FDA)により承認されている着色剤を除外する。ポリフェノール系粒子はまた、リグニン、タンニン、又はフミン酸塩などの、ポリマー又はポリマー系物質も除外する。
【0028】
ポリフェノール系粒子は、フェノール酸、ヒドロキシ桂皮酸、ヒドロキシ安息香酸、及びフラボノイド、並びにこれらの酸の誘導体、例えばグルコシド及びアセチル化酸などとして分類することができる。適切なヒドロキシ桂皮酸の例としては、コーヒー酸、チコリ酸、及びクロロゲン酸、並びにヒドロキシシンナモイル酒石酸、例えばカフタル酸などが挙げられる。適切なヒドロキシ安息香酸の例としては、ジヒドロキシ安息香酸、例えば次没食子酸、α-レソルシル酸、β-レソルシル酸、γ-レソルシル酸、ゲンチジン酸、プロトカテク酸、及びオルセリン酸など、並びにトリヒドロキシ安息香酸、例えば没食子酸、フロログルシノールカルボン酸、ベルゲニン、ノルベルゲニン、テオガリン、ケブリン酸、没食子酸エチル、オイデスミン酸、メチルガレート、及びシリンガ酸などが挙げられる。フラボノイドであるポリフェノール系粒子は、主なフラボノイドのサブグループである、アントシアニン又はアントシアニジン、フラバン-3-オール、フラボノール、フラバノン、フラボン、及びイソフラボンにさらに分類することができる。これらの部類の多くのメンバーは、上記で定義される通り、ポリフェノール系及び非色素性であると考えられるが、一部のメンバーはそうではない場合がある。
【0029】
好ましいポリフェノール系粒子は、ルチン、ケルセチン、ケルセチノールグルコシド、アストラガリン、ミリセチン、レスベラトロール、マンギフェリン、エモジン、ゲニステイン、カンナビノイド、カンナビジオール(CBD)、カンナビゲロール(CBG)、カテキン、エピカテキン、クロロゲン酸、没食子酸、オリベトール、オリベトール酸、パリドール、エラグ酸、ピセイド、マルビジン、クリサンテミン、ミケリアニン、並びにマリアアザミ抽出物であるシリマリン(SM)において見られるポリフェノール、例えばシリビニン(SB)、イソシリビン(ISB)、シリクリスチン(SC)、シリジアニン(SD)、デヒドロシリビン(DHSB)、デヒドロシリクリスチン、及びタキシフォリンなどを含む。ルチンは特に好ましいポリフェノール系粒子である。
【0030】
ポリフェノール系粒子は、それらの紫外光吸収スペクトルを分析することによりそれらが非色素性であるかどうかを評価することができる。これは実験的に、又は科学文献で見られるUV吸収スペクトルの解析により行うことができる。例えば、図2は、Vostalova, J. et al., ''Skin protective activity of silymarin and its flavonolignans'', Molecules, Vol. 24, No. 1022, 12 pages (2019)から得られるシリマリン及びその構成成分のポリフェノールの紫外光吸収スペクトルのグラフである。図2に示すように、シリマリン及びその構成成分のポリフェノールのUV吸収極大は400nm未満であり、これらの物質が非色素性であることを示す。
【0031】
いくらかの可視光吸収を示すポリフェノール系粒子は好ましくは、粒子によって与えられる色が皮膚に適用された場合に消費者にとって商業的に有意であることを防ぐのに十分な低い濃度で配合物中に存在する。あるいは、ポリフェノール系粒子によって与えられる色は、配合物中の他の成分、例えば顔料及び染料などによって遮蔽されてもよい。
【0032】
ポリフェノール系粒子は、植物及び微生物などの天然物質から得ることができる。しかし、合成ポリフェノール系粒子、及び天然ポリフェノール系粒子の合成類似物も使用してもよい。ポリフェノール系粒子は、果実、野菜、穀物、細菌、例えばアクチノバクテリア、シアノバクテリア、及びプロテオバクテリアなど、酵母、菌類、例えばキノコなど、地衣類、及び藻類から得ることができる。
【0033】
ポリフェノール系粒子の植物系供給源の例としては、かんきつ類果物(ミカン属のメンバー、例えばオレンジ(Citrus × sinensis)、レモン(Citrus limon(L.)Osbeck)、ライム(Citrus × latifolia)、グレープフルーツ(Citrus × paradisi)、及びタンジェリン(Citrus reticula L.var.)など)、ソバ(Fagopyrum esculentum)、アスパラガス(Asparagus officinalis)、リンゴ(Malus Domestica)、モモ(Prunus persica)、ケッパー(Capparis spinosa)、タマネギ(Allium cepa L.)、ブラックラディッシュ(Raphanus sativus L.var.niger J.Kern)、キイチゴ及びブラックベリー(キイチゴ属のメンバー、例えばヨーロッパキイチゴ(Rubus idaeus)、ブラックラズベリー(Rubus occidentalis)、ルブス・ロイコデルミス(Rubus leucodermis)、カリフォルニアブラックベリー(Rubus ursinus)、セイヨウヤブイチゴ(Rubus armeniacus)、及びクロミキイチゴ(Rubus allegheniensis)など)、スグリ又はグーズベリー(スグリ属、スグリ亜属、及びセイヨウスグリ亜属のメンバー)、プラム及びアプリコット(サクラ属のサクラ亜属のメンバー、例えばダムソンスモモ(PrunusDomestica subsp.Insititia)、ダムソン(Prunus insititia)、セイヨウスモモ(Prunus Domestica)、アンズ(Prunus armeniaca)など)、トマト(Solanum lycopersicum)、チェリートマト(Solanum lycopersicum var.cerasiforme)、ブドウ(ブドウ属のメンバー、例えばヨーロッパブドウ(Vitis vinifera)、ラブルスカ種(Vitis labrusca)、ヴィティス・リパリア(Vitis riparia)、マスカディンブドウ(Vitis rotundifolia)、及びマンシュウヤマブドウ(Vitis amurensis)など)、ズッキーニ(Cucurbita pepo)、トウガラシ(トウガラシ属のメンバー、例えばトウガラシ(Capsicum annuum)、アヒ・アマリージョ(Capsicum baccatum)、カプシクム・キネンセ(Capsicum chinense)、キダチトウガラシ(Capsicum frutescens)、及びロコト(Capsicum pubescens)など)、ピーナッツ(Arachishypogaea)、ココア(Theobroma cacao)、チャ(Camellia sinensis)、コーヒー(コーヒー属のメンバー、例えばアラビアコーヒーノキ(Coffea arabica)及びロブスタコーヒーノキ(Coffea canephora)など)、ビート(Beta vulgaris)、ブルーベリー(Vaccinium Section Cyanococcus)、ナス(Solanum melongena)、イチジク(Ficus carica)、赤キャベツ(Brassica oleracea var.capitata f.rubra)、アサイー(Euterpe oleracea)、紫トウモロコシ(Zea mays)、パイナップル(Ananas comosus)、レイシ(Litchi chinensis)、並びにマリアアザミ(Silybum marianum)が挙げられる。ポリフェノール系粒子は、天然状態から加工又は修飾された植物、及びこれらの物質の誘導体、例えば抽出物、レーズン及びプルーンなどのドライフルーツ、ワイン、ジュース、ビール、及びチョコレートなどから得ることもできる。
【0034】
ポリフェノール系粒子は、油、精油、及びバルサムを含む様々な植物抽出物から得ることができる。好ましい植物抽出物としては、ブドウ種子抽出物、緑茶抽出物、イタドリ抽出物、カンゾウ抽出物、パイナップル抽出物、及びマリアアザミ抽出物(シリマリンとしても知られる)が挙げられる。ポリフェノール系物質を含有する植物抽出物は、典型的には様々な他の物質を含むことになる。植物抽出物中の非色素性ではない個々の物質の存在は、植物抽出物全体が非色素性であるならば、ポリフェノール系粒子の供給源としての植物抽出物の使用を排除しない。好ましくは、植物抽出物は、ポリフェノール系粒子の供給源として使用する前に分離などの加工が行われない。
【0035】
界面活性剤は、ポリフェノール系粒子との強い酸-塩基相互作用を有し親油性表面処理を粒子上に施す任意の界面活性剤であってもよい。適切な界面活性剤の例としては、脂肪アルコール及びポリオール(例えば、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、及びセテアリルアルコール)、脂肪酸(例えば、ステアリン酸及びオレイン酸)、アミノ酸(例えば、ラウロイルリジン及びミリストイルグルタメート)、ポリグリセリルエステル(例えば、ポリグリセリル-3リシノレエート、ポリグリセリル-6リシノレエート、ポリグリセリル-10ペンタステアレート、及びポリグリセリル-4オレエート)、ポリグリセリルポリエステル(例えば、ポリグリセリル-4ジイソステアレート/ポリヒドロキシステアレート/セバケート、ポリグリセリル-2ジポリヒドロキシステアレート、及びポリグリセリル-3ステアレート/イソステアレート/ダイマージリノレエートクロスポリマー)、親和性ヒドロキシル基、アミン基、又はアミド基を有するポリエステル(例えば、ポリヒドロキシステアリン酸)、親和性ヒドロキシル基、アミン基、又はアミド基を有するポリウレタン、親和性ヒドロキシル基、アミン基、又はアミド基を有するポリアミド、親和性ヒドロキシル基、アミン基、又はアミド基を有するポリアクリレート、リン酸エステル(例えば、トリラウレス-4ホスフェート及びトリセテアレス-4ホスフェート)、ポリマーリン酸塩(例えば、1,2-エタンジアミン、アジリジンを有するポリマー、N-[3-[(2-エチルヘキシル)オキシ]-3-オキシプロピル]誘導体、及びポリエチレン-ポリプロピレングリコールを含む化合物)、リン脂質、セラミド、スフィンゴシド(例えば、レシチン、リゾレシチン、及びセラミド3)、親和性基を有する置換シリコーン(例えば、セチルジグリセリルトリス(トリメチルシロキシ)シリルエチルジメチコン、CAS 番号104780-66-7(シロキサン及びシリコーン、ジ-Me、3-ヒドロキシプロピル基末端)、CAS番号102782-61-6(シロキサン及びシリコーン、ジ-Me、3-ヒドロキシプロピルMe)、及びCAS番号106214-84-0(シロキサン及びシリコーン、ジメチル、3-アミノプロピル))、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0036】
あるいは、親油性ポリフェノール系粒子は、粒子をシラン化剤と反応させることにより形成させることができる。シラン化剤は、官能化ポリシロキサンをポリフェノール系粒子の表面上に与える任意の物質であってもよい。適切なシラン化剤の例としては、反応性シリコーン及びシランの疎水化表面処理剤(例えば、トリエトキシカプリリルシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、水素ジメチコン(CAS番号68037-59-2/69013-23-6/70900-21-9)、及びCAS番号69430-47-3(シロキサン及びシリコーン、ジ-Me、水素シロキサンとの反応生成物、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン))が挙げられる。
【0037】
担体ビヒクルは、親油性である化粧品として許容される任意の流体又はワックスであってもよい。適切な担体ビヒクルの例としては、トリグリセリド(例えば、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド)、エステル(例えば、C12-C15アルキルベンゾエート、イソペンチルラウレート、イソプロピルイソステアレート、ココカプリレート、エチルヘキシイソノナノエート、トリデシルサリチレート、エチルヘキシルイソノナノエート、イソデシルサリチレート、オクチルドデシルネオペンタノエート、ブチルオクチルサリチレート、ホホバエステル、及びシアバターエチルエステル)、天然油及びバター(例えば、ホホバ(Simmondsia chinensis)種子油、シアバター、アルガン(Argania spinosa)油、クロヨナ属(カンラジャ)油、及びホワイトメドウフォーム(Limnanthes alba)種子油)、アルカン(例えば、スクアラン、ヘミスクアラン、イソドデカン、及びイソヘキサデカン)、シリコーン(例えば、ジメチコン、ベヘニルジメチコン、セチルジメチコン、セテアリルメチコン、及びフェニルジメチコン)、ワックス(例えば、天然ワックス、合成ワックス、及びシリコーンワックス)、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0038】
ポリフェノール系粒子は、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、2.0%、3.0%、4.0%、5.0%、6.0%、7.0%、8.0%、9.0%、10.0%、15.0%、20.0%、25.0%、30.0%、35.0%、40.0%、45.0%、50.0%、55.0%、60.0%、65.0%、及び70.0重量%を含む、0.1~75.0重量%の量で分散液中に存在してもよい。好ましくは、ポリフェノール系粒子は、0.5~50.0重量%の量で存在する。より好ましくは、ポリフェノール系粒子は1.0~40.0重量%の量で存在する。
【0039】
界面活性剤は、ポリフェノール系粒子の質量の1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、5.5%、6.0%、6.5%、7.0%、7.5%、8.0%、8.5%、9.0%、9.5%、10.0%、15.0%、20.0%、25.0%、30.0%、35.0%、40.0%、45.0%、50.0%、55.0%、60.0%、65.0%、70.0%、75.0%、80.0%、85.0%、90.0%、及び95.0%を含む、ポリフェノール系粒子の質量の1.0~100.0%の量で分散液中に存在してもよい。好ましくは、界面活性剤はポリフェノール系粒子の質量の10.0~60.0%の量で存在する。より好ましくは、界面活性剤はポリフェノール系粒子の質量の20.0~50.0%の量で存在する。
【0040】
分散液中の担体ビヒクルの量は、分散液中に存在するポリフェノール系粒子の量及び界面活性剤の量によって決まることになる。ポリフェノール系粒子と界面活性剤を合わせた後、所望の分散液を作るのに必要な任意の適切な量で担体ビヒクルを加えてもよい。
【0041】
分散液は従来の配合技術により調製することができる。例えば、ポリフェノール系粒子、界面活性剤、及び担体ビヒクルを容器内で合わせ、均質になるまで撹拌してもよい。温度、撹拌速度、及び混合時間などの適切な混合条件を変化させて、所望の分散液を得ることができる。次いで分散液をメディアミルなどのミルへ移し、粉砕して所望の粒径を実現することができる。
【0042】
ポリフェノール系粒子は、0.002μm、0.003μm、0.004μm、0.005μm、0.006μm、0.007μm、0.008μm、0.009μm、0.01μm、0.02μm、0.03μm、0.04μm、0.05μm、0.06μm、0.07μm、0.08μm、0.09μm、0.1μm、0.2μm、0.3μm、0.4μm、0.5μm、0.6μm、0.7μm、0.8μm、0.9μm、1.0μm、1.1μm、1.2μm、1.3μm、1.4μm、1.5μm、1.6μm、1.7μm、1.8μm、1.9μm、2.0μm、2.5μm、3.0μm、3.5μm、4.0μm、4.5μm、5.0μm、5.5μm、6.0μm、6.5μm、7.0μm、7.5μm、8.0μm、8.5μm、9.0μm、及び9.5μmを含む、0.001~10.0ミクロン(μm)(1~10,000nm)の粒径を有していてもよい。好ましくは、ポリフェノール系物質は0.01~5.0μm(10~5,000nm)の粒径を有する。より好ましくは、ポリフェノール系物質は0.1~1.0μm(100~1,000nm)の粒径を有する。皮膚上の粒子を知覚するのを防ぎ使用者にとってザラザラした又は粒感のある質感を有する配合物を避けるために、ポリフェノール系粒子の最大粒径は10.0μmである。
【0043】
親油性ポリフェノール系粒子は、担体ビヒクルを除去することにより、ポリフェノール系粒子、界面活性剤、及び担体ビヒクルの分散液から得ることができる。例えば、担体ビヒクルは周囲温度及び圧力で蒸発する揮発性物質であってもよい。同様に、分散液は、担体ビヒクルが除去されるまで担体ビヒクルの沸点を超えて加熱されてもよい。
【0044】
親油性ポリフェノール系粒子は、分散液からの単離によってよりもむしろ直接調製することもできる。最初に、ポリフェノール系粒子の粒径を乾式粉砕により小さくする。高性能エアミリング、振動ミリング、メディアミリング、ハンマーミリング、及びジェットミリングなどの、任意の適切な乾式粉砕技術を使用してもよい。粉砕はそのままで又はポリマー粒子又は酸化物(例えば、金属酸化物、及びマイカ又はシリカなどのケイ酸塩)などの第2の材料と併せて行われてもよい。次に、界面活性剤又はシラン化剤を適切な溶媒中に溶解させることにより、溶液を調製する。適切な溶媒の例としては、USPヘプタン、USPアセトン、USPイソプロパノール、及びUSPエタノールが挙げられる。次いで、溶液は、ブレンダー/ミキサーにおいて撹拌下で粉砕ポリフェノール系粒子上に噴霧される。溶液及び粉砕ポリフェノール系粒子を場合により加熱して、界面活性剤又はシラン化剤を粒子に結合させるための反応を促進させることができる。最後に、真空にして溶媒を除去する。
【0045】
親油性ポリフェノール系粒子は、調製物の油相中に存在してもよく、又は粉末調製物に加えられてもよい。好ましくは、調製物は局所適用に適している。適切な調製物の例としては、エマルション(水中油型及び油中水型エマルション)、スプレー、バーム、スティック、粉末、パウダートゥクリーム調製物、親油性調製物、及び無水調製物が挙げられる。親油性ポリフェノール系粒子を含む調製物は、1又は2以上の試験により評価することができる。好ましくは、親油性ポリフェノール系粒子を含む調製物は、非常に耐水性で、超光安定性であり、フリーラジカルクエンチ試験に合格する。
【0046】
親油性ポリフェノール系粒子を含有する調製物は、様々な異なる用途で使用するために配合されてもよい。適切な配合物の例としては、化粧品(例えば、チーク、フェースパウダー、ファンデーション、リップスティック、化粧下地、及び口紅)、スキンケア製品(例えば、皮膚クレンジングクリーム、化粧水、液体、及びパッド;顔用及び首用のクリーム、化粧水、粉末、及びスプレー;体用及び手用のクリーム、化粧水、粉末、及びスプレー;足用の粉末及びスプレー;保湿剤;夜用のクリーム、化粧水、粉末、及びスプレー;ペーストマスク/泥パック;及び皮膚フレッシュナー)、並びに日焼け止め剤が挙げられる。日焼け止め剤は特に好ましい配合物である。配合物は、局所投与に適した任意の形態、例えば局所用懸濁液、化粧水、クリーム、軟膏、ジェル、ヒドロゲル、泡、ペースト、チンキ、適用薬、噴霧型液体、エアロゾル、スティック、又は粉末の形態などで提供されてもよい。配合物は場合により、不活性な成分、補助剤、及び/又は添加剤、例えば共乳化剤、脂肪、ワックス、安定化剤、増粘剤、生物由来の活性成分、膜形成剤、香料、染料、真珠光沢剤、保存料、顔料、電解質、及びpH調整剤などを含んでいてもよい。
【0047】
日焼け止め剤は、親油性ポリフェノール系粒子及びUV線保護剤を含んでいてもよい。UV線保護剤は、UV線を吸収、反射、及び/又は散乱する任意の物質であってもよい。日焼け止め剤は場合により、日焼け防止指数(SPF)増強剤又は安定化剤、例えばメトキシクリレン及びポリエステル-8などを含んでいてもよい。
【0048】
適切なUV線保護剤の例としては、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化チタン(TiO)、p-アミノ安息香酸(PABA)、パディメートO(OD-PABA、オクチルジメチル-PABA、σ-PABA)、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸(エンスリゾール、EUSOLEX(登録商標)232、PBSA、PARSOL(登録商標)HS)、シノキセート(2-エトキシエチルp-メトキシシンナメート)、ジオキシベンゾン(ベンゾフェノン-8)、オキシベンゾン(ベンゾフェノン-3、EUSOLEX(登録商標)4360、ESCALOL(登録商標)567)、ホモサレート(ホモメチルサリチレート、HMS)、メンチルアントラニレート(メラジメート)、オクトクリレン(EUSOLEX(登録商標)OCR、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸、2-エチルヘキシルエステル)、オクチルメトキシシンナメート(オクチノキサート、EMC、OMC、エチルヘキシルメトキシシンナメート、ESCALOL(登録商標)557、2-エチルヘキシル-パラメトキシシンナメート、PARSOL(登録商標)MCX)、オクチルサリチレート(オクチサレート、2-エチルヘキシルサリチレート、ESCALOL(登録商標)587)、スルイソベンゾン(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、3-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-6-メトキシベンゼンスルホン酸、ベンゾフェノン-4、ESCALOL(登録商標)577)、トロラミンサリチレート(トリエタノールアミンサリチレート)、アボベンゾン(1-(4-メトキシフェニル)-3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパン-1,3-ジオン、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、BMDBM、PARSOL(登録商標)1789、EUSOLEX(登録商標)9020)、エカムスル(MEXORYL(登録商標)SX、テレフタリリデンジカンファースルホン酸)、酸化セリウム(CeO)、ドロメトリゾールトリシロキサン(MEXORYL(登録商標)XL)、ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン(TINOSORB(登録商標)S)、ビソクトリゾール(TINOSORB(登録商標)M、MILESTAB(商標)360)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。好ましいUV線保護剤としては、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化チタン(TiO)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、UV線保護剤は、米国(米国食品医薬品局又はFDA)、カナダ、欧州連合、オーストラリア、日本、韓国、中国、メルコスール、東南アジア諸国連合(ASEAN)、独立国家共同体(CIS)、及び湾岸協力会議(GCC)の規制機関の少なくとも1つにより承認されている。
【0049】
親油性ポリフェノール系粒子を含む日焼け止め剤は従来の日焼け止め剤と比較していくつかの利点を提供する。ポリフェノール系粒子を含有することにより、非常に耐水性である日焼け止め剤が得られる。さらに、ポリフェノール系粒子は、日焼け止め剤がUV線及びHEV光線の両方を阻害する又は弱めることを可能にする。ポリフェノール系粒子はUV線及びHEV光線による光誘起フリーラジカルの生成に対しても耐性がある。
【0050】
親油性ポリフェノール系粒子を含む配合物は、様々な健康上の利益をもたらす。ポリフェノール系粒子は、フリーラジカルの中和において極めて有効であるので抗酸化剤として作用する。これらの特性は、ポリフェノール系粒子が、皮膚、髪、及び爪の酸化ストレス若しくは損傷を処置する又は予防することを可能にする。例えば、ポリフェノール系粒子は、ケラチン質の材料(髪、指の爪、足指の爪、及び皮膚の外層など)を保護する、ヒトの皮膚を保護する、脂質過酸化を抑制する、皮膚の線及びしわを予防又は低減する、皮膚の弾力の低下を予防する、皮膚の菲薄化を予防する、並びに皮膚の黒ずみを予防するために使用することができる。親油性ポリフェノール系粒子を含有する配合物を皮膚のある領域に適用することにより、これらの健康上の利益を得ることができる。
[実施例]
【実施例1】
【0051】
カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド中の親油性ルチン粒子の分散液
30.0重量部のルチン(>96%のルチンを含有するエンジュ(Sophora japonica)抽出物)を、10.5重量部のポリグリセリル-2ジポリヒドロキシステアレート及び59.5重量部のカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドと合わせた。混合物を均質になるまで撹拌し、水平メディアミルへ移し、0.3mmのイットリア安定化ジルコニアメディアを使用して、0.5のスケールグラデーションを有する0~12ミクロン指示ヘグマンゲージで指示される最大粒径が0.5ミクロン未満となるまで粉砕した。得られる分散液は注入可能であった。分散液中のルチン粒子の粒径は静的光散乱により0.171ミクロンであると測定され、0.1ミクロン未満の粒子は検出されなかった。
【実施例2】
【0052】
カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド中の親油性シリマリン粒子の分散液
30.0重量部のシリマリン(>80%のシリマリンを含有するマリアアザミ抽出物)を、10.5重量部のポリグリセリル-2ジポリヒドロキシステアレート及び59.5重量部のカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドと合わせた。混合物を均質になるまで撹拌し、水平メディアミルへ移し、0.3mmのイットリア安定化ジルコニアメディアを使用して、0.5のスケールグラデーションを有する0~12ミクロン指示ヘグマンゲージで指示される最大粒径が0.5ミクロン未満となるまで粉砕した。得られる分散液は注入可能であった。分散液中のシリマリン粒子の粒径は静的光散乱により0.166ミクロンであると測定され、0.1ミクロン未満の粒子は検出されなかった。
【実施例3】
【0053】
カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド中の親油性ルチン粒子の分散液
30.0重量部のルチン(>96%のルチンを含有するエンジュ抽出物)を、8重量部のポリグリセリル-2ジポリヒドロキシステアレート、2.66部のレシチン、及び59.34重量部のカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドと合わせた。混合物を均質になるまで撹拌し、水平メディアミルへ移し、0.3mmのイットリア安定化ジルコニアメディアを使用して、0.5のスケールグラデーションを有する0~12ミクロン指示ヘグマンゲージで指示される最大粒径が0.5ミクロン未満となるまで粉砕した。得られる分散液は注入可能であった。分散液中のルチン粒子の粒径は静的光散乱により0.141ミクロンであると測定され、0.1ミクロン未満の粒子は検出されなかった。
【実施例4】
【0054】
メチルヘプチルイソステアレート中の親油性ルチン粒子の分散液
30.0重量部のルチン(>96%のルチンを含有するエンジュ抽出物)を、8重量部のポリグリセリル-4ジイソステアレート/ポリヒドロキシステアレート/セバケート、2.66部のレシチン、及び59.34重量部のメチルヘプチルイソステアレートと合わせた。混合物を均質になるまで撹拌し、水平メディアミルへ移し、0.3mmのイットリア安定化ジルコニアメディアを使用して、0.5のスケールグラデーションを有する0~12ミクロン指示ヘグマンゲージで指示される最大粒径が0.5ミクロン未満となるまで粉砕した。得られる分散液は注入可能であった。分散液中のルチン粒子の粒径は静的光散乱により0.152ミクロンであると測定され、0.1ミクロン未満の粒子は検出されなかった。
【実施例5】
【0055】
ホホバ油中の親油性ルチン粒子の分散液
30.0重量部のルチン(>96%のルチンを含有するエンジュ抽出物)を、8重量部のポリグリセリル-2ジポリヒドロキシステアレート、2.66部のレシチン、及び59.34重量部のホホバ油と合わせた。混合物を均質になるまで撹拌し、水平メディアミルへ移し、0.3mmのイットリア安定化ジルコニアメディアを使用して、0.5のスケールグラデーションを有する0~12ミクロン指示ヘグマンゲージで指示される最大粒径が0.5ミクロン未満となるまで粉砕した。得られる分散液は注入可能であった。分散液中のルチン粒子の粒径は静的光散乱により0.156ミクロンであると測定され、0.1ミクロン未満の粒子は検出されなかった。
【実施例6】
【0056】
C12-15アルキルベンゾエート中の親油性緑茶抽出物ポリフェノール系粒子の分散液
30.0重量部の緑茶抽出物粉末(>50の全ポリフェノールを含有し、>35%がカテキンであり>15%がエピガロカテキンガラートである)を、8重量部のポリグリセリル-2ジポリヒドロキシステアレート、2.66部のレシチン、及び59.34重量部のC12-15アルキルベンゾエートと合わせた。混合物を均質になるまで撹拌し、水平メディアミルへ移し、0.3mmのイットリア安定化ジルコニアメディアを使用して、0.5のスケールグラデーションを有する0~12ミクロン指示ヘグマンゲージで指示される最大粒径が0.5ミクロン未満となるまで粉砕した。得られる分散液は注入可能であった。分散液中の粒子の粒径は静的光散乱により0.150ミクロンであると測定され、0.1ミクロン未満の粒子は検出されなかった。
【実施例7】
【0057】
カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド中のオリーブ葉抽出物ポリフェノール系粒子の分散液
30.0重量部のオリーブ(Olea europaea)葉抽出物粉末(>20%のオレウロペインを含有する)を、8重量部のポリグリセリル-2ジポリヒドロキシステアレート、2.66部のレシチン、及び59.34重量部のカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドと合わせた。混合物を均質になるまで撹拌し、水平メディアミルへ移し、0.3mmのイットリア安定化ジルコニアメディアを使用して、0.5のスケールグラデーションを有する0~12ミクロン指示ヘグマンゲージで指示される最大粒径が0.5ミクロン未満となるまで粉砕した。得られる分散液は注入可能であった。分散液中のルチン粒子の粒径は静的光散乱により0.150ミクロンであると測定され、0.1ミクロン未満の粒子は検出されなかった。
【実施例8】
【0058】
カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド中のクズ(Pueraria lobata)ポリフェノール系粒子の分散液
30.0重量部のクズ抽出物粉末(>40%の全ポリフェノール系イソフラボンを含有する)を、8重量部のポリグリセリル-2ジポリヒドロキシステアレート、2.66部のレシチン、及び59.34重量部のカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドと合わせた。混合物を均質になるまで撹拌し、水平メディアミルへ移し、0.3mmのイットリア安定化ジルコニアメディアを使用して、0.5のスケールグラデーションを有する0~12ミクロン指示ヘグマンゲージで指示される最大粒径が0.5ミクロン未満となるまで粉砕した。得られる分散液は注入可能であった。分散液中の粒子の粒径は静的光散乱により0.148ミクロンであると測定され、0.1ミクロン未満の粒子は検出されなかった。
【実施例9】
【0059】
選択された親油性ポリフェノール系粒子の相対的抗酸化力の決定
Om P. Sharma and Tej K. Bhat, Food Chemistry, Volume 113, Issue 4, 15 April 2009, Pages 1202-1205に記載される抗酸化力アッセイを使用し、DL-アルファ-トコフェロールを参照として使用して、実施例1及び実施例2の分散液を抗酸化力について分析した。質量基準で親油性ルチン粒子はDL-アルファ-トコフェロールの抗酸化力の67%である抗酸化力を示したが、一方親油性シリマリン粒子はDL-アルファ-トコフェロールの抗酸化力の50%である抗酸化力を示すことが確認された。
【実施例10】
【0060】
親油性ルチン粒子のHEV阻害
実施例3の分散液のHEV阻害を評価し、ここではカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドを使用して分散液を5%のルチン濃度まで希釈した。21 C.F.R.§201.327(店頭販売の日焼け防止医薬品;有効性試験に基づく必要なラベリング)及びISO24443(インビトロでの日焼け止め剤のUVA光防護性の決定)に記載される方法と同様の拡散透過法を使用して、HEV阻害を測定した。
【0061】
1.3mg/cmの希釈分散液を、粗面化された3次元表面トポグラフィー(LabSphere HelioPlate HD6)を有する光学グレードのポリメチルメタクリレート(PMMA)基材の表面に適用した。次いで試料を室温で1時間静置した。LabSphere UV-2000S分光光度計を使用して、試料及び対照ブランクの光学グレードPMMA基材の吸光度を412nmのHEV波長で測定した。対照ブランク基材の吸光度を基材上の試料の測定された吸光度から引くことにより、正味の吸光度値を決定した。
【0062】
Bleasel, M.D. et al., ''In vitro evaluation of sun protection factors of sunscreen agents using a novel UV spectrophotometric technique'', International Journal of Cosmetic Science, Vol. 30, Issue 4, pp. 259-270 (2008)の手法にしたがって412nmでの単色保護指数(MPF)を決定した。MPFは下記の式(I)によって表すことができ、式中、A(λ)は波長λにおける試料の正味の吸光度である。
【0063】
【数1】
【0064】
結果を下記の表に示す。
【0065】
【表1】
【実施例11】
【0066】
耐水性の検討
実施例10のPPMA上に導入された試料を使用して、実施例3の分散液の耐水性を評価した。耐水性はCOLIPA 2005(Cosmetics Europe, ''Guidelines for evaluating sun product water resistance'', available online at www.cosmeticseurope.eu/files/7914/6407/7400/Guidelines_for_Evaluating_Sun_Product_Water_Resistance_-_2005.pdf, 15 pages (2005))と一致した80分の水浸手順を使用して測定されたが、インビトロで行われた。
【0067】
高さ22cm×直径16cmのステンレス鋼容器に脱イオン水を入れ、30~33℃の温度で維持した。直径5cmのフラットブレードインペラーを使用して試験時間中を通して容器を350RPMで撹拌した。適用された試料をインペラーに向けるようにして、PMMAに適用された実施例10の試料を容器の壁付近で容器内に懸濁させた。80分の浸漬後に試料を容器から取り出し、1時間乾燥させた。実施例10に記載されるように正味の吸光度及び単色保護指数(MPF)を測定した。結果を下記の表に示す。
【0068】
【表2】
【0069】
実施例3の分散液は、正味の吸光度(412nm)の98.5%を維持し初期MPF(412nm)値の96%を保持することができた。これらの結果は、実施例1の分散液が非常に耐水性であることを示す。
【実施例12】
【0070】
油相中の親油性ポリフェノール系粒子を有する保湿剤
先述の実施例の親油性ポリフェノール系粒子分散液を油相中に含む油中水型エマルションとして保湿剤組成物を調製した。保湿剤組成物の成分を下記に示す。
【0071】
【表3】
【0072】
コールドプロセスを使用して、油相の成分を合わせて均質になるまで混合し、別個に、水相の成分を合わせて均質になるまで混合した。次いで2つの相を合わせ、Ross HSM-100LC1ホモジナイザーを使用して5,000RPMで4分間均質化させた。得られるエマルションは50℃で75日間のエージング後に安定で、非常に耐水性であった。親油性ポリフェノール系粒子の存在によって、抗酸化特性を有する保湿性組成物が得られた。
【実施例13】
【0073】
油相中の親油性ポリフェノール系粒子を有するコンシーラースティック(予測)
先述の実施例の親油性ポリフェノール系粒子分散液を含む無水組成物として、コンシーラースティック組成物を調製する。コンシーラースティックの成分を下記に示す。
【0074】
【表4】
【0075】
相Aを合わせ、高せん断条件下で混合する。相Bを相Aに加え、高せん断条件下で混合物を85℃まで加熱する。85℃で温度を維持しながら、高せん断条件下で相Cを混合物中に分散させる。次いで高せん断混合下でバッチを冷却する。混合物が65℃未満まで冷えたら、高せん断混合条件下で相D及びEを段階的に混合物へ加える。温度が60℃に到達するまでバッチを冷却させる。次いでバッチを最終的なパッケージへ分注する。親油性ポリフェノール系粒子の存在によって、抗酸化特性を有するコンシーラースティックが得られる。
【実施例14】
【0076】
油相中のフェノール系ポリマーを有する保湿性日焼け止め剤
油相中の実施例1の分散液を含むとして日焼け止め組成物を調製した。日焼け止め組成物の成分を下記に示す。
【0077】
【表5】
【0078】
コールドプロセスを使用して、油相の成分を合わせて均質になるまで混合し、別個に、水相の成分を合わせて均質になるまで混合した。次いで2つの相を合わせ、Ross HSM-100LC1ホモジナイザーを使用して5,000RPMで4分間均質化させた。得られるエマルションは50℃で75日間のエージング後に安定で、非常に耐水性であった。親油性ポリフェノール系粒子の存在によって、抗酸化特性を有する保湿性日焼け止め剤が得られた。
【実施例15】
【0079】
HEV曝露から生じる活性酸素種(ROS)の親油性ポリフェノール系粒子による捕捉
0.4%(低い)及び1.5%(高い)の最終ルチン濃度を有する実施例1の分散液を使用して、実施例12の2種類の保湿剤組成物を製造した。比較例組成物を下記に示すように製造した。高いルチン濃度である1.5%のルチンは、1.0% DL-アルファ-トコフェロールと同じ抗酸化力を有し、0.4%ルチン保湿剤はそれらの抗酸化力の25%を有する。
【0080】
【表6】
【0081】
スキンフォトタイプIIのドナーからのヒト皮膚外植片について、細胞内の活性酸素種(ROS)捕捉活性アッセイを行った。皮膚外植片を非蛍光性プローブである2’、7’-ジクロロフルオレセインジアセテート(DCFHDA)により処理した。処理後、皮膚外植片を2mg/cmの用量で保湿剤組成物により処理し、選択的HEV波長(412nm及び450nm)に20J/cmの線量で3回曝露した。DCFH-DAは受動拡散により細胞に吸収され、DCFH-DAは細胞エステラーゼにより脱アセチル化されて非蛍光性DCFHとなり、これは細胞内でトラップされる。酵素還元及びその後のROSによる酸化において、蛍光性2’、7’-ジクロロフルオレセイン(DCF)が生成される。蛍光が測定され、試験品がROSを捕捉する能力に相関する。結果は、保護されていない皮膚のUVA/UVB曝露後に生成するレベルに対する、ROSの減少率(パーセント)として表される。これらの検討の結果は下記の表に示され、保護されていない皮膚に対する細胞内ROSの減少率(パーセント)として表される。結果から、参照DL-アルファ-トコフェロールは統計的に有意なROSの減少を示さないが、親油性ルチン粒子を含有する両方の配合物は、DL-アルファ-トコフェロールの抗酸化力の25%のレベルでしか抗酸化力が導入されなかった場合であっても、関連する皮膚保護効果と共に統計的に有意なROSの減少を示したことが明らかである。これら関連する皮膚保護効果としては、限定はされないが、皮膚の脂質過酸化の抑制、皮膚の線及びしわの出現の防止又は低減、皮膚の弾力の低下の防止、皮膚の菲薄化の防止、及び皮膚の黒ずみの防止が挙げられる。
【0082】
【表7】
【実施例16】
【0083】
擬似太陽UVA/UVB曝露から生じる活性酸素種(ROS)の親油性ポリフェノール系粒子による捕捉
0.5%(低い)及び2.0%(高い)の最終シリマリン濃度を有する実施例2の分散液を使用して、実施例12の2種類の保湿剤組成物を製造した。DL-アルファ-トコフェロールを1.0%(高い)の濃度で含有する実施例15に記載の比較例組成物も製造した。高いルチン濃度である1.5%のルチンは、1.0% DL-アルファ-トコフェロールと同じ抗酸化力を有し、0.4%ルチン保湿剤はそれらの抗酸化力の25%を有する。
【0084】
スキンフォトタイプIIのドナーからのヒト皮膚外植片について、細胞内の活性酸素種(ROS)捕捉活性アッセイを行った。皮膚外植片を非蛍光性プローブである2’、7’-ジクロロフルオレセインジアセテート(DCFHDA)により処理した。処理後、皮膚外植片を2mg/cmの用量で保湿剤組成物により処理し、擬似太陽UVA/UVBに70mJ/cmの線量で3回曝露した。DCFH-DAは受動拡散により細胞に吸収され、DCFH-DAは細胞エステラーゼにより脱アセチル化されて非蛍光性DCFHとなり、これは細胞内でトラップされる。酵素還元及びその後のROSによる酸化において、蛍光性2’、7’-ジクロロフルオレセイン(DCF)が生成される。蛍光が測定され、試験品がROSを捕捉する能力に相関する。結果は、保護されていない皮膚のUVA/UVB曝露後に生成するレベルに対する、ROSの減少率(パーセント)として表される。これらの検討の結果は下記の表に示され、保護されていない皮膚に対する細胞内ROSの減少率(パーセント)として表される。結果から、参照DL-アルファ-トコフェロールは統計的に有意なROSの減少を示し、一方親油性シリマリン粒子を含有する両方の配合物は、DL-アルファ-トコフェロールの抗酸化力の25%のレベルでしか抗酸化力が導入されなかった場合であっても、関連する皮膚保護効果と共に統計的に有意なより大きいROSの減少を示したことが明らかである。これら関連する皮膚保護効果としては、限定はされないが、皮膚の脂質過酸化の抑制、皮膚の線及びしわの出現の防止又は低減、皮膚の弾力の低下の防止、皮膚の菲薄化の防止、及び皮膚の黒ずみの防止が挙げられる。
【0085】
【表8】
【0086】
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図1
図2
【国際調査報告】