(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-14
(54)【発明の名称】ハイブリッド型音響遠心油/水分離
(51)【国際特許分類】
B01D 17/00 20060101AFI20230804BHJP
B01D 17/038 20060101ALI20230804BHJP
E21B 43/00 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
B01D17/00 502
B01D17/038
B01D17/00 503A
E21B43/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023503069
(86)(22)【出願日】2021-07-15
(85)【翻訳文提出日】2023-03-16
(86)【国際出願番号】 US2021041844
(87)【国際公開番号】W WO2022015993
(87)【国際公開日】2022-01-20
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521448008
【氏名又は名称】エーダブリュイー テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シンハ、ディペン エヌ
(57)【要約】
流体がその中で加熱される大型分離タンクを必要とすることなく、エネルギー効率の高い分離プロセスを使用して、生成された油中の油を水から分離するための装置および方法について説明される。遠心力は、それら自体では、二成分流体、特に、たとえば、重油のなどで、流体の密度が同程度である場合に、完全に分離するのには効果的でない。遠心力は、それら自体では、二成分流体を、特に、たとえば、重油の場合に、上記流体の密度が同程度である場合に、完全に分離するのには効果的でない。一次音響力および二次音響力の両方を組み合わせ、流体流からの遠心力を利用し、それによって、音響放射力が、液滴の蓄積のプロセスを開始し、液滴の合体に寄与することで、遠心分離が強化される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油滴を水から、それらの混合物中で分離する方法であって、
第1の出口オリフィスを有する第1の長さのパイプを通って、前記混合物を流すステップと、
前記第1の長さのパイプの内部に、第1の圧力ノードを有する音響放射力を生成するのに有効な第1の音響定在波を発生させるステップであって、それによって、前記油滴が、前記第1の圧力ノードで凝集および合体し、音響波が、第1の周波数を有する、第1の音響定在波を発生させるステップと、
第2の出口オリフィスを有する第2の長さのパイプを通って、凝集および合体した前記油滴を有し、前記第1の出口オリフィスを通過する前記混合物を流すステップであって、前記第2の長さのパイプが、曲率半径および軸を有する平面構成に形成され、それによって、合体した前記油滴が、遠心力の結果として、前記軸からより大きい距離に移動する、前記混合物を流すステップと、
前記第2の出口オフィスを通過する前記水から合体した前記油滴を分離するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記水から合体した前記油滴を分離するステップは、
垂直方向に配置され、上方出口オリフィスおよび下方出口オリフィスを有する第3の長さのパイプを通って、前記第2のパイプの長さの出口を通過する凝集および合体した前記油滴を有する前記混合物を流すステップであって、それによって、凝集および合体した前記油滴が、合体した前記油滴の浮力の結果として前記水から分離して前記上方出口オリフィスを通過し、前記水が、その前記下方出口オリフィスを通過する、前記混合物を流すステップ
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1の長さのパイプの内部に、第1の周波数を有する前記第1の音響定在波を発生させるステップの後であって、第2の長さのパイプを通って、凝集および合体した前記油滴を有する前記混合物を流すステップの前に、第4の出口オリフィスを有する第4の長さのパイプを通って、凝集および合体した油滴を有し、前記第1の出口オリフィスを通過する前記混合物を流すステップと、
前記第4の長さのパイプの内部に、第2の圧力ノードを有する音響放射力を生成するのに有効な第2の音響定在波を発生させるステップであって、それによって、前記油滴が前記第2の圧力ノードで凝集および合体し、第2の音響波が第2の周波数を有する、第2の音響定在波を発生させるステップと
をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記第1の周波数および前記第2の周波数は、500kHzと3MHzとの間にある、
請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記第1の周波数は、前記第2の周波数よりも大きい、
請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記第2の長さのパイプは、曲率半径および軸を有するヘリカル構成に形成され、
前記軸は、垂直方向である、
請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記第1の長さのパイプおよび前記第4の長さのパイプは、断面が扁円状である、
請求項3記載の方法。
【請求項8】
油滴を水から、それらの混合物中で分離する方法であって、
第1の出口を有する第1の長さのパイプを通って、前記混合物を流すステップと、
前記第1の長さのパイプの内部に、第1の圧力ノードを有する音響放射力を生成するのに有効な第1の音響定在波を発生させるステップであって、それによって、前記油滴が、前記第1の圧力ノードで凝集および合体し、音響波が、第1の周波数を有する、第1の音響定在波を発生させるステップと、
第2の直径および第2の出口を有する第2の長さのパイプを通って、前記第1の出口を通過する凝集および合体した油滴を有する前記混合物を流すステップであって、前記第2の長さのパイプが、曲率半径および軸を有する平面円形構成に形成され、それによって、合体した前記油滴が、遠心力の結果として、前記軸からより大きい距離に移動する、前記混合物を流すステップと、
垂直方向に配置され、上方出口オリフィスおよび下方出口オリフィスを有する第3の長さのパイプを通って、第2の出口オリフィスを通過する凝集および合体した油滴を有する前記混合物を流すステップであって、それによって、凝集および合体した前記油滴が、合体した前記油滴の浮力の結果として前記水から分離して前記上方出口オリフィスを通過し、
垂直方向に配置され、上方出口オリフィスおよび下方出口オリフィスを有する第3の長さのパイプを通って、前記第2のパイプの長さの出口を通過する凝集および合体した前記油滴を有する前記混合物を流すステップであって、それによって、凝集および合体した前記油滴が、合体した前記油滴の浮力の結果として前記水から分離して前記第3の長さのパイプの前記上方出口オリフィスを通過し、前記水が、その前記下方出口オリフィスを通過する、前記混合物を流すステップ
と含む、方法。
【請求項9】
前記第1の長さのパイプの内部に、第1の周波数を有する前記第1の音響定在波を発生させるステップの後であって、前記第2の長さのパイプを通って、凝集および合体した前記油滴を有する前記混合物を流すステップの前に、第4の長さのパイプを通って、凝集および合体した油滴を有し、前記第1の出口オリフィスを通過する前記混合物を流すステップと、
前記第4の長さのパイプの内部に、第2の圧力ノードを有する音響放射力を生成するのに有効な第2の音響定在波を発生させるステップであって、それによって、前記油滴が前記第2の圧力ノードで凝集および合体し、第2の音響波が第2の周波数を有する、第2の音響定在波を発生させるステップと
をさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記第1の周波数および前記第2の周波数は、500kHzと3MHzとの間にある、
請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記第1の周波数は、前記第2の周波数よりも大きい、
請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記第2の長さのパイプは、曲率半径および軸を有するヘリカル構成に形成され、
前記軸は、垂直方向である、
請求項8記載の方法。
【請求項13】
前記第1の長さのパイプおよび前記第4の長さのパイプは、断面が扁円状である、
請求項9記載の方法。
【請求項14】
油滴を水から、それらの混合物中で分離する装置であって、
第1の長さのパイプであって、前記混合物がそれを通って流され、前記第1の長さのパイプが、外表面、内部容積、および第1の出口オリフィスを有する、第1の長さのパイプと、
前記第1の長さのパイプの前記内部容積内に、第1の圧力ノードを有する音響放射力を生成するのに有効な第1の音響定在波を発生させるための、前記第1の長さのパイプの前記外表面と音響的に接触する少なくとも1つの第1の音響変換子であって、それによって、前記油滴が、前記第1の圧力ノードで凝集および合体し、音響波が、第1の周波数を有する、少なくとも1つの第1の音響変換子と、
前記少なくとも1つの第1の音響変換子を作動させるための第1の波形発生器と、
前記第1の長さのパイプの前記第1の出口オリフィスを通って流れる凝集および合体した前記油滴を受容するための、第2の出口オリフィスを有する第2の長さのパイプであって、前記第2の長さのパイプが、曲率半径および軸を有する平面構成に形成され、それによって、合体した前記油滴が、遠心力の結果として前記軸からより大きい距離に移動する、第2の長さのパイプと
を備える、装置。
【請求項15】
垂直方向に配置され、上方出口オリフィスおよび下方出口オリフィスを有する、前記第2の出口オリフィスを通って流れる凝集および合体した前記油滴を受容するための第3の長さのパイプであって、それによって、凝集および合体した前記油滴が、合体した前記油滴の浮力の結果として前記水から分離して前記第3の長さのパイプの前記上方出口オリフィスを通過し、前記水が、その前記下方出口オリフィスを通過する、第3の長さのパイプ
をさらに備える、請求項14記載の装置。
【請求項16】
前記第1の出口オリフィスを通って流れる凝集および合体した油滴を有する前記混合物を受容するための、外表面および内部容積を有する第4の長さのパイプと、
前記第4の長さのパイプの前記内部容積内に、第2の圧力ノードを有する音響放射力を生成するのに有効な第2の音響定在波を発生させるための、前記第4の長さのパイプの前記外表面と音響的に接触する少なくとも1つの第2の音響変換子であって、それによって、前記油滴が、前記第2の圧力ノードで凝集および合体し、音響波が、第2の周波数を有する、少なくとも1つの第2の音響変換子と
をさらに備える、請求項14記載の装置。
【請求項17】
前記第1の周波数および前記第2の周波数は、500kHzと3MHzとの間にある、
請求項16記載の装置。
【請求項18】
前記少なくとも1つの第1の音響変換子および前記少なくとも1つの第2の音響変換子は、圧電変換子を備える、
請求項16記載の装置。
【請求項19】
前記第1の周波数は、前記第2の周波数よりも大きい、
請求項17記載の装置。
【請求項20】
前記第2の長さのパイプは、曲率半径および軸を有するヘリカル構成に形成され、
前記軸は、垂直方向である、
請求項14記載の装置。
【請求項21】
前記第1の長さのパイプおよび前記第4の長さのパイプは、断面が扁円状である、
請求項16記載の装置。
【請求項22】
油滴を水から、それらの混合物中で分離する装置であって、
第1の長さのパイプであって、前記混合物がそれを通って流され、前記第1の長さのパイプが、外表面、内部容積、および第1の出口オリフィスを有する、第1の長さのパイプと、
前記第1の長さのパイプの前記内部容積内に、第1の圧力ノードを有する音響放射力を生成するのに有効な第1の音響定在波を発生させるための、前記第1の長さのパイプの前記外表面と音響的に接触する少なくとも1つの第1の音響変換子であって、それによって、前記油滴が、前記第1の圧力ノードで凝集および合体し、音響波が、第1の周波数を有する、少なくとも1つの第1の音響変換子と、
前記少なくとも1つの第1の音響変換子を作動させるための第1の波形発生器と、
前記第1の長さのパイプの前記第1の出口オリフィスを通って流れる凝集および合体した前記油滴を受容するための、第2の出口オリフィスを有する第2の長さのパイプであって、前記第2の長さのパイプが、曲率半径および軸を有する平面構成に形成され、それによって、合体した前記油滴が、遠心力の結果として前記軸からより大きい距離へ移動する、第2の長さのパイプと、
垂直方向に配置され、上方出口オリフィスおよび下方出口オリフィスを有する、前記第2の出口オリフィスを通って流れる凝集および合体した前記油滴を受容するための第3の長さのパイプであって、それによって、凝集および合体した前記油滴が、合体した前記油滴の浮力の結果として前記水から分離して前記第3の長さのパイプの前記上方出口オリフィスを通過し、前記水が、その前記下方出口オリフィスを通過する、第3の長さのパイプと
を備える、装置。
【請求項23】
前記第1の出口オリフィスを通って流れる凝集および合体した油滴を有する前記混合物を受容するための、外表面および内部容積を有する第4の長さのパイプと、
前記第4の長さのパイプの前記内部容積内に、第2の圧力ノードを有する音響放射力を生成するのに有効な第2の音響定在波を発生させるための、前記第4の長さのパイプの前記外表面と音響的に接触する少なくとも1つの第2の音響変換子であって、それによって、前記油滴が、前記第2の圧力ノードで凝集および合体し、音響波が、第2の周波数を有する、少なくとも1つの第2の音響変換子と
をさらに備える、請求項22記載の装置。
【請求項24】
前記第1の周波数および前記第2の周波数は、500kHzと3MHzとの間にある、
請求項23記載の装置。
【請求項25】
前記少なくとも1つの第1の音響変換子および前記少なくとも1つの第2の音響変換子は、圧電変換子を備える、
請求項23記載の装置。
【請求項26】
前記第1の周波数は、前記第2の周波数よりも大きい、
請求項24記載の装置。
【請求項27】
前記第2の長さのパイプは、曲率半径および軸を有するヘリカル構成に形成され、
前記軸は、垂直方向である、
請求項22記載の装置。
【請求項28】
前記第1の長さのパイプおよび前記第4の長さのパイプは、断面が扁円状である、
請求項23記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2020年7月17日に出願された、「Hybrid Acoustic, Centripetal Oil/Water Separation」と題する米国仮特許出願番号第63/053,442号の利益を主張し、その特許出願の内容全体は、具体的には、それが開示および教示するすべてについて、本明細書中において参照によって援用される。
【背景技術】
【0002】
油およびガスは、1日当たり100バレルの私有井戸から1日当たり4000バレルの大口径井戸まで、深さ20mの貯留層から深さ3000mの井戸まで、水深が2000mよりも大きい井戸から、世界のほぼ全域で生産されているが、生産プロセスの多くの部分は基本的には類似している。石油貯留層内に存在する天然の炭化水素は、広い範囲の圧力および温度にわたり、多相挙動を示す、有機化合物の混合物であり、種々の坑口から生成される、油、ガス、および水の混合物は、分離設備内で個々の成分に分離される。ガスは、油および水が分離される前に、貯蔵容器内の減圧において混合物から分離され、この分離は、異なる圧力および温度における圧力容器内の多段階の熱力学的分離プロセス、それに続く、別個の油および水流への油および水の重力分離を必要とする場合がある。水および油、特に、油が重油を含む油の分離の場合、原流体が加熱され、これらの流体が分離し得るように、油および水の密度を変化させる。
【0003】
ガス-液体分離の代替案は、経済的に魅力的であり、略中央に配置され、下向きに傾斜した接線方向の入口を備える垂直パイプセクションを有する、単純で、コンパクトで、低コストの分離装置であるガス液体円筒サイクロン(GLCC)がある。GLCCにおける分離は、遠心および重力効果によって実現される。液体-液体サイクロン分離に関する研究の多くは、円錐型液体ハイドロサイクロン(LLHC)に注目している。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的によれば、本明細書中で実施され、概括的に説明されているように、油滴を水から、それらの混合物中で分離する方法の一実施形態は、第1の出口オリフィスを有する第1の長さのパイプを通って、混合物を流すステップと、第1の長さのパイプの内部に、第1の圧力ノードを有する音響放射力を生成するのに有効な第1の音響定在波を発生させるステップであって、それによって、油滴が、第1の圧力ノードで凝集および合体し、音響波が、第1の周波数を有する、第1の音響定在波を発生させるステップと、第2の出口オリフィスを有する第2の長さのパイプを通って、凝集および合体した油滴を有し、第1の出口オリフィスを通過する混合物を流すステップであって、第2の長さのパイプが、曲率半径および軸を有する平面構成に形成され、それによって、合体した油滴が、遠心力の結果として、軸からより大きい距離に移動する、混合物を流すステップと、第2の出口オフィスを通過する水から合体した油滴を分離するステップとを含んでいる。
【0005】
本発明の別の態様において、その目的によれば、油滴を水から、それらの混合物中で分離する方法の一実施形態は、第1の出口オリフィスを有する第1の長さのパイプを通って、混合物を流すステップと、第1の長さのパイプの内部に、第1の圧力ノードを有する音響放射力を生成するのに有効な第1の音響定在波を発生させるステップであって、それによって、油滴が、第1の圧力ノードで凝集および合体し、音響波が、第1の周波数を有する、第1の音響定在波を発生させるステップと、第2の出口オリフィスを有する第2の長さのパイプを通って、凝集および合体した油滴を有する混合物を流すステップであって、第2の長さのパイプが、曲率半径および軸を有する平面構成に形成され、それによって、合体した油滴が、遠心力の結果として、軸からより大きい距離に移動する、混合物を流すステップと、垂直方向に配置され、上方出口オリフィスおよび下方出口オリフィスを有する第3の長さのパイプを通って、第2の出口オリフィスを通過する凝集および合体した油滴を有する混合物を流すステップであって、それによって、凝集および合体した油滴が、合体した油滴の浮力の結果として、水から分離して上方出口オリフィスを通過し、垂直方向に配置され、上方出口オリフィスおよび下方出口オリフィスを有する第3の長さのパイプを通って、第2のパイプの長さの出口を通過する凝集および合体した油滴を有する混合物を流すステップであって、それによって、合体した油滴が、合体した油滴の浮力の結果として、水から分離して第3の長さのパイプの上方出口オリフィスを通過し、水が、その下方出口オリフィスを通過する、混合物を流すステップと含んでいる。
【0006】
本発明の別の態様において、その目的によれば、油滴を水から、それらの混合物中で分離する装置の一実施形態は、第1の長さのパイプであって、混合物がそれを通って流され、第1の長さのパイプが、外表面、内部容積、および第1の出口オリフィスを有する、第1の長さのパイプと、第1の長さのパイプの内部容積内に、第1の圧力ノードを有する音響放射力を生成するのに有効な第1の音響定在波を発生させるための、第1の長さのパイプの外表面と音響的に接触する少なくとも1つの第1の音響変換子であって、それによって、油滴が、第1の圧力ノードで凝集および合体し、音響波が、第1の周波数を有する、少なくとも1つの第1の音響変換子と、少なくとも1つの第1の音響変換子を作動させるための第1の波形発生器と、第1の長さのパイプの第1の出口オリフィスを通って流れる凝集および合体した油滴を受容するための、第2の出口オリフィスを有する第2の長さのパイプであって、第2の長さのパイプが、曲率半径および軸を有する平面構成に形成され、それによって、合体した油滴が、遠心力の結果として、軸からより大きい距離に移動する、第2の長さのパイプとを含んでいる。
【0007】
本発明の別の態様において、その目的によれば、油滴を水から、それらの混合物中で分離する装置の一実施形態は、第1の長さのパイプであって、混合物がそれを通って流され、第1の長さのパイプが、外表面、内部容積、および第1の出口オリフィスを有する、第1の長さのパイプと、第1の長さのパイプの内部容積内に、第1の圧力ノードを有する音響放射力を生成するのに有効な第1の音響定在波を発生させるための、第1の長さのパイプの外表面と音響的に接触する少なくとも1つの第1の音響変換子であって、それによって、油滴が、第1の圧力ノードで凝集および合体し、音響波が、第1の周波数を有する、少なくとも1つの第1の音響変換子と、少なくとも1つの第1の音響変換子を作動させるための第1の波形発生器と、第1の長さのパイプの第1の出口オリフィスを通って流れる凝集および合体した油滴を受容するための、第2の出口オリフィスを有する第2の長さのパイプであって、第2の長さのパイプが、曲率半径および軸を有する平面構成に形成され、それによって、合体した油滴が、遠心力の結果として、軸からより大きい距離へ移動する、第2の長さのパイプと、垂直方向に配置され、上方出口オリフィスおよび下方出口オリフィスを有する、第2の出口オリフィスを通って流れる凝集および合体した油滴を受容するための第3の長さのパイプであって、それによって、凝集および合体した油滴が、合体した油滴の浮力の結果として、水から分離して第3の長さのパイプの上方出口オリフィスを通過し、水が、その下方出口オリフィスを通過する、第3の長さのパイプとを含んでいる。
【0008】
本発明の便益および利点は、限定されるものでないが、油を水から、それらの乳濁液中で分離するための、装置および方法を、現在、使用されているような大型の加熱された分離タンクを必要とすることなく提供し、それによって、保守を軽減してエネルギー効率を向上させることを含む。
【0009】
本明細書に組み込まれており、その一部を形成する添付図面は、本発明の実施形態を示し、明細書とともに、本発明の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1Aは、水平定在波ノード平面であって、垂直シリンダ内にその底部上に配置される音響変換子によって発生し、それによって、油/水乳濁液中の油滴がこれらの平面で凝集および合体する水平定在波ノード平面を示す、油の水からの大量分離のための装置の一実施形態の側面斜視図の模式図である。1Bは、合体した液滴の増加した浮力による、結果として生じる水の表面上の油層の形成を示す。
【
図2】
図2Aは、本願の
図1Aおよび1Bの装置内の油滴への力の方向を示しており、向きが水平である、平行な円形表面である定在波ノード平面であって、音響放射力(ARF)が、両側からこれらのノード平面に向かって導かれ、上向きの垂直方向のみに作用する重力浮力が示される、定在波ノード平面を示す。
図2Bは、集塊形成によって、油滴のサイズが大きくなるにつれて、浮力が後の段階において増加する、この分離プロセスの進行を示す。
図2Cは、集塊形成によって、油滴のサイズが大きくなるにつれて、浮力が後の段階において増加する、この分離プロセスの進行を示す。
【
図3】
図1Aおよび1Bの大量分離システムのものと同様に動作するが、しかし、大きい寸法に容易にスケーリングされ得る、連続流分離システムの側面図の模式図である。
【
図4】
図4Aは、共鳴器キャビティとして使用される円形断面を有し、油滴が同心円状の円形平面内に収集される分離チャンバの断面の模式図である。
図4Bは、共鳴器キャビティであって、ノード平面が共鳴器の表面に平行なラインに崩れるように、キャビティの対称性がパイプの形状をわずかに楕円形にすることで、乱れている、共鳴器キャビティの断面の模式図である。
図4Cは、
図4Bに示される楕円形パイプの側面斜視図の模式図である。
【
図5】本発明のハイブリッド型音響/遠心分離システムの一実施形態の上面斜視図の模式図である。
【
図6】
図6Aは、本願の
図5に示されるパイプの断面の模式図であり、円形パイプセクションの内部の水中の油滴に作用する主要な力、それによって生じる概略的な油収集領域を示す。
図6Bは、油および水の完全な分離を示す。
【
図7】コンパクトな構成における、油の水からのさらなる分離をもたらす、スパイラルまたはヘリカル構成に形成される連続パイプとして動作する複数の積層型分離ユニットの側面斜視図の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
油井内に見出される水は、一般的であり、オペレータにとって負担が大きい。現在の水/油分離プロセスは、遅く、環境的に優しくなく、加熱に大量のエネルギーを消費する。洋上および浮体式掘削プラットフォーム上では、スペースが限られており、小さいサイズおよび重量を有する分離装置、よって、低いエネルギー消費量が望まれる。油および水の混合物を圧力容器内で加熱すること、および、成分の分離のために重力を利用すること、ならびに、一連の分離システム(圧力容器および分離タンク)が所望の分離品質を実現するために必要であることで、かなりのスペースが必要になる。洋上プラットフォームの場合、重量も重要な問題である。
【0012】
海底および洋上浮体式プラットフォーム作業ができ、大型沈降タンクを使用することなく、リアルタイムで油を水から分離し得る、小さい設置面積を有する、単純で、安価な装置は、スペースを節約し、多くの環境問題をなくすことに加えて、業界にとって運用および保守コストについて、かなりの金額の節約になり得る。
【0013】
簡潔に言えば、本発明の実施形態は、大型タンクであって、流体がその中で加熱される大型タンクを必要とすることなく、成分の分離のために重力に依存することなく、生成された油/水混合物中で油を水から分離するための装置および方法を含んでいる。むしろ、本発明の実施形態は、音響重力として機能する音響放射力を利用するが、いくつかの相違点を有する、単純で、エネルギー効率の高い分離プロセスを使用する。混合物は、任意の長さのパイプであって、油滴が凝集および合体する圧力ノードを有する音響放射力を生成するのに有効な音響定在波がその中で発生する任意の長さのパイプを通って流され、その後、混合物は、任意の軸を有する平面円形構成を有する任意の長さのパイプを通って流され、それによって、合体した油滴が、遠心力の結果としてパイプ軸からの、より大きい距離へ移動し、合体した油滴は、より容易に水から分離され得る。
【0014】
音響放射力は、音場内の物体に作用する時間平均的な力であり、波経路内の物体は、音エネルギーを吸収または反射する。固体(粒子)の流体からの音響分離、および液体-液体分離は、よく知られており、小規模の分離プロセスに使用されており、マイクロフルイディクスが、重要な応用分野であるが、この技術は、大規模分離には、たとえば、エネルギー産業などにおいて、使用されていない。これは、音響力だけでは、低エネルギー消費量で流体混合物を迅速に分離するために、より大きい寸法に容易にスケーリングされ得ないからである。音響分離プロセスは、大型超音波変換子を励起するために必要なパワーのために、大きい寸法では非効率になる。さらに、高い音響出力では、音響流が支配的になり、それは分離を低下させる。
【0015】
さらに、遠心、コリオリの、および重力/浮力は、それら自体では、二成分流体を、特に、たとえば、重油および水などの、流体の密度が同程度である場合に、完全に分離するのには効果的でない。しかし、一次および二次の両方の音響力を組み合わせ、流体流を利用することで、分離のエネルギーの大半が流動流体自体の運動エネルギーに由来する相乗効果がもたらされ、一方、流体水動力学、核生成、および媒質の非線形性は相まって、分離プロセスのエネルギー効率をかなり向上させる。したがって、分離プロセスを行うために、大型分離容器の代わりに、パイプのセクションを使用することが可能である。音響放射力は、混合物分離プロセスを開始し、流体液滴合体に寄与し、それは、分離の開始をさらに強化する。そして、湾曲した形状を有するパイプ内の流動液体からの遠心力は、大きい音響エネルギー入力を必要とすることなく、流体混合物(流体乳濁液(油-水-ガス)および懸濁液(粒子-流体)の両方)の分離プロセスを完了する。本発明の実施形態は、海底から地上に油を送り込む前に、水が油から分離されることが望まれる海底作業に効果的になることが期待される。別の重要な利用分野は、浮体式石油プラットフォームである。
【0016】
A.音響放射力
電磁波、弾性弦上の横波、液体上の表面波、および縦方向の音波を含む、波動の形態はすべて、それらの経路内の吸収し、反射する障害物に一方向の反射力を作用させる。同様に、音響放射力は、音響波の、その経路内に配置される障害物との相互作用によって生じる物理現象であり、音場内の物体に作用する時間平均的な力として解釈され得る。力の大きさは、物体のサイズ、密度、および圧縮率、ならびに、圧縮率、密度、および音速などの、ホスト媒体の性質に依存する。通常、ホスト媒質粘性の影響は、非常に小さい。以下の式は、種々のパラメータに対する力の依存度を示している。
ここで、
であり、それぞれ、Vp=液滴(粒子)の体積、β=圧縮率、ρ=密度、λ=音の波長、
P0=ピーク音圧、z=圧力ノードからの距離、m、p=ホストおよび液滴(下付き文字)である。
【0017】
式2は、音響コントラスト因子を定義している。この因子の符号は、物体がキャビティ内部の共鳴音場内に配置される場合に、どの方向に物体が押されるかを決定する。これは、音響源の反対側からの反射によって、定在波がキャビティ内に引き起こされるように音波の周波数が調整される場合、小さい物体が圧力ノードで迅速に収集することを意味している。収集時間は、滞留時間、および音響周波数、ならびにパワーに依存する。さらに、流体液滴または粒子が互いに近付くと、引力であるビヤクネス力が強くなり、それは、パターンをよりコンパクトにし、液滴を合体させる。
【0018】
次に、本発明の本実施形態が詳細に参照され、それらの例は添付図面に示される。図中、同様の構造は、同一の参照符号を用いて識別される。図が、本発明の特定の実施形態を表す目的で提示されており、それらに本発明を限定することを意図するものでないことが理解されよう。次に
図1Aおよび1Bに移れば、示されているのは、油の水からの大量分離のための装置10の一実施形態の側面斜視図の模式図である。パワー増幅器15を通って波形発生器14によって励起される変換子12は、水中の油の乳濁液18を含む垂直シリンダ16の底部上に配置されている。励起周波数は、約200kHzから約3MHzまでの範囲内にあり得る。パワーレベルは、流体の深さ、および形状に依存するが、通常、実験室での応用の場合、5W~100W間にある。シリンダ16は、底面20であって、変換子12がそこに音響的に結合される底面20、または、変換子12によって形成される底面を有し得る。シリンダは、最上端22において開放されるか、または、最上面(図示せず)を有し得る。変換子12が、選定周波数で作動すると、乳濁液と、液体の上の物質(たとえば、空気)または固体との間の大きい音響インピーダンス不整合による、変換子12からの音波の、乳濁液18の最上面24からの反射によって、垂直方向の音場が発生する。乳濁液18中の小さい油滴は、複数の水平定在波ノード平面26において凝集および合体してサイズが大きくなり、次の上方ノードに上昇し、このプロセスはアバランシェになる。というのは、より大きい複数の液滴は、より大きい浮力を表し、それが、それらの重力分離を強化するからである。油滴に対する力の方向は、
図2A~2Cに示されており、
図2Aは、平行な円形表面であり、向きが水平である定在波ノード平面26を示す。音響放射力(ARF)32a、32bは、(最上部および底部として示される)両側からこれらのノード平面に向かって導かれ、油滴34をノード平面へ押し出す。対照的に、重力浮力36は、上向きの垂直方向のみに作用する。
図2Bおよび2Cは、油滴34のサイズが合体によって大きくなるにつれて、浮力が後の段階において増加する、この分離プロセスの進行を示す。
【0019】
これらの力に加えて、液体中の励起源からの音波が懸濁液を流れに導く、考えられる音響流もまた存在しており、通常、これは、音の強度が流体特性に依存する特定の閾値を超える場合に生じる。ARF、重および音響流力は相乗的に組み合わされ、それは迅速な油の分離をもたらし、その結果、油滴は、本願の
図1B中に見られ得るように、水30の表面上の油層28内に収集する。油分離プロセスは、~1秒で行われる場合があり、この時間は、より高い周波数(1MHzよりも大きい)から始めて、底部に配置される変換子に加えられる周波数を変化させ、複数の液滴が形成され、それらのサイズが合体によって増加するにつれて、それを数100kHzに低下させることで、短縮され得る。この非常に動的なプロセスは、変化させる周波数が、プロセスの動力学(たとえば、時間スケール)および加えられる周波数に調整されることを必要とする。定在波およびノード平面は、音響変換子が電気的に駆動される限り、非可視的骨格(invisible scaffolding)として流体中に留まる。
【0020】
図1Aおよび1Bに示される装置は、いくつかの音響変換子が、タンクのサイズに依存する数で、タンクの底部側の近傍に取り付けられ得る、複数の大型分離タンクにも適合し得る。変換子は、底部上に配置されることを必要とするものでないが、通常の円形および水平の分離タンクの外表面上の広範な角度を包含するように配置され得る。すなわち、変換子は、液体の高さの半分から上記タンクの底部までの任意の位置に配置され、そうする目的は、単純な重力分離と比較して、分離プロセスを大幅に高速化することである場合がある。それによって、分離タンクのサイズが低減する場合があり、これは、利用可能なスペースが限られた石油プラットフォームの主要目標である。要約すれば、この手法は、音響学を利用して、油-水混合物中に油の複数の液滴を発生させ、それらの合体に加勢し、その後、重および音響流力は、油の、水からの最終的な分離を完了し得る。
【0021】
図1Aおよび1Bは静止状態の装置を示すが、油-水混合物が、上記装置の底部近くの側部から流入し、分離された油および水流が、最上部近くのその側部において上記装置を流出する、流動乳濁液を有する装置が設計され得る。そうした装置は、液滴、気泡、および固体粒子についても同様である。
【0022】
図3は、
図1Aおよび1Bの大量分離システムのものと同様に動作するが、しかし、大きい寸法に容易にスケーリングされ得る、連続流分離システム50の側面図の模式図である。分離チャンバ52は、原油-水混合物54が、ポンプシステム58によって源56からそれを通って流され、その外表面に音響的に接触する、波形発生器62によって駆動される第1の音響圧電変換子60、および波形発生器66によって駆動される第2の音響圧電変換子64を有している。いすれの波形発生器も、任意の標準的な(正弦、方形、三角、パルス、チャープ、または正弦変調ガウス波などの任意の所望の式によって発生する任意の形状の)波形を発生させ得る。反射体68は、別個のチャンバ52の、第1の圧電変換子60および第2の圧電変換子64とは反対側に配置されている。チャンバ52が金属を備える場合、反射体68は必要でない。というのは、壁69が効率的な反射体になるからである。
【0023】
第1の変換子60は、約500kHzおよび約3MHzの間の範囲内の周波数で励起され、それは、油-水混合物に対するいわゆる前処理ステップであって、非常に小さい油滴(10μmよりも大きい)が、ARFによって混合物から分離し、さらに、合体し始めて、より大きい液滴を生成する、前処理ステップを行う。第2の変換子64は、より低い周波数で、通常、任意の整数で除算される第1の変換子周波数である周波数で動作する。そして、いずれの変換子も、定在波を流体混合物中に発生させ、それは、異なるサイズの液滴を分離し得る。すなわち、重力が支配的になるにつれて、液滴のサイズがより大きくなり、浮力がより大きくなるので、合体プロセスは、より低い周波数によって、より効率的に継続される。2つの変換子は、互いに隣接して示されているが、これらは、分離プロセスに影響をおよぼすことなく、互いに横方向にわずかにずらされ得る。変換子に加えられる音響パワーは、大型タンクの場合、約50Wおよび約500W間の範囲内にあるが、液体冷却型変換子を使用して、より高い出力パワーにスケーリングされ得る。すなわち、より高いパワーもまた、分離容器に加えられ得るが、変換子結晶の過熱を防止するために、変換子が有効なヒートシンク能力、および液体冷却を有することを必要とし得る。設計の単純化に必要とされる場合には、変換子64の周波数はさらに、約500Hzおよび約10kHz間の範囲内の周波数で振幅および周波数変調され、当該範囲は、チャンバのサイズ、および形状に依存し、それは、図示されるように矩形ではなく、円形であり得る。
【0024】
このようにして、音響定在波70が、変換子60、および油滴が凝集し得る反射体68によって発生する。波形発生器66は、変換子64を変調し、それによって、定在波70のノードおよび反ノード内に凝集した複数の液滴がさらに集塊形成し(72)、より大きい複数の液滴を形成し(73)、それによって、それらの浮力を増加させ、それによって、流動システム内で、油リッチ画分74が、水リッチ画分76から分離され、その後に、それは、別個の容器内に収集され得る。
【0025】
B.油凝集のライン
図4Aは、分離チャンバ80の断面の模式図であり、同心円状の円形平面88内に収集される油滴を分離および凝集させるために、波形発生器86によって励起される、その外表面84に音響的に接触する変換子82によって駆動される、共鳴器キャビティとして使用される円形断面(たとえば、パイプセクション)を有している。変換子82は、音響圧電変換子である場合があり、増幅器は、いくつかの状況において、波形発生器86の出力を増加させるために使用され得る。
図4Bは、共鳴器キャビティ80の断面の模式図であり、キャビティの対称性は、パイプの形状をわずかに楕円形にすることで、乱れている。波形発生器86によって作動されると、変換子82によって発生する、いったんは円状であったノード平面88(
図4A)が、共鳴器の表面84に平行なライン90に崩れる。
図4Cは、
図4Bに示される楕円形パイプの側面斜視図の模式図である。
【0026】
図4A~4Cに示されるような、パイプ80の外表面84に取り付けられた外部音響変換子(たとえば、圧電変換子)82による励起以外に、パイプを励起する、種々のやり方が存在する。たとえば、「Ultrasonic analyte concentration and application in flow cytometry」と題する、Kaduchak et al.による、米国特許第8,783,109号明細書は、キャピラリチューブの外表面とのライン接触を行う、単一の矩形の圧電結晶が、粒子の懸濁液がそれを通って流れるキャピラリチューブの軸に、粒子が凝集し得るようにチューブを励起し得る、ライン駆動チューブの概念を導入している。本発明者は、これが、数ミリメートルよりも小さい径を有するキャピラリチューブに対して良好に機能するが、>2cmの径を有するチューブに対して、パイプの外表面上に、湾曲した圧電変換子を取り付けることで、複数の同心円状リングを発生させるために必要とされる、より高い周波数の振動モードを励起することも可能である。キャピラリチューブの励起は、チューブの振動の双極子モードで動作するように設計されており、それは、大口径パイプ(たとえば、6インチ)に対して、可聴域内になる。したがって、パイプは、可聴域を超える周波数で駆動されるものであり、本発明者は、これが行われ得ることを見出した。凝集に必要な音響場強度に応じて、パイプの外表面の部分的なカバレッジから全面カバレッジまで使用することが可能である。湾曲した変換子、湾曲した前方部を有する平坦な変換子を使用するものでも、より高価であるため、各変換子が、小さい湾曲部を有する、表面に容易に取り付けられ得る、長い(パイプの外径の約0.2倍~約1倍の)複数の圧電体を使用することが好ましい。音の波長は、共鳴器幅の寸法(パイプの場合、パイプ径)に一致する必要があるため、すべての周波数で定在波を発生させ得ないので、収集ライン90の数は、加えられる音の周波数に依存する。
【0027】
円形形状の場合、図示されるリング構造は、数学的なベッセル関数から導かれる。楕円形構成の場合、周波数は、知覚可能に変化しない。たとえば、「Cylindrical acoustic levitator/concentrator having non-circular cross section」と題する、Sinha et al.による米国特許第6,644,118号明細書を参照されたい。発生する定在波は、パイプの機械的構造および材料の弾性特性に依存する。関係する周波数範囲は、数十kHzであり、パイプ自体は、その長さに沿って振動して定在波を発生させる。従来の構成では、音響定在波は、変換子、および変換子と反射体との間の流体領域の寸法に制限されていた。より低い周波数では、構造的振動は、その制限を取り除く。すなわち、ノード平面としての同心円状シリンダが、長い長さのパイプにわたって設定され得る。たとえば、本発明者は、パイプが任意の位置で励起される場合、その効果がパイプ径の約20倍の長さまで持続し、変換子がパイプの表面に沿って周期的に配置される場合、パイプ全体が励起されなくてよいので、長いパイプにわたり、油および水を分離する効率的な方法になることを見出した。楕円形パイプの使用が実用的でない状況においては、円形断面のパイプが、わずかに、より大きい長さにおいてではあるが、効果的になる。前述されたように、パイプの表面上の所定の位置における変換子による外部励起(
図4A~4C)は、20チューブ径を超えて延びる凝集効果をもたらすのに効果的であることが明らかになっている。たとえば、「Ultrasonic analyte concentration and application in flow cytometry」と題する、Gregory Kaduchak et al.による米国特許第7,340,957号明細書を参照されたい。したがって、少数の圧電源のみが必要であり、パイプは、その全長にわたって駆動されなくてよい。さらなる詳細は、Shulim Kogan、Gregory Kaduchak、およびDipen N. Sinhaによる「Acoustic concentration OF particles in piezoelectric tubes: Theoretical modeling OF cavity shape and symmetry breaking」,J.Acous.Soc.Am.,116(41),1967-1974(2004)、および、「Cylindrical acoustic levitator/concentrator having non-circular cross-section」と題する、Gregory KaduchakおよびDipen N. Sinhaによる米国特許第6,644,118号明細書を参照されたい。
【0028】
C.遠心力ハイブリッド型システム
遠心分離装置は、径が100μmよりも大きい液滴を乳濁液から除去するのに効果的であり、多くの場合、水が合法的に海洋に排出され得るような、一次分離後の、最小レベルまでの、水中に残留している少量の油の抽出での最終ステップとして使用される。遠心分離装置またはサイクロン分離装置では、遠心力は、液滴にそれが円筒状分離装置に流入するにつれて、重力のものよりも数倍大きい力で作用する。遠心分離装置内の非混和性液体の、油などの水からの分離は、固体の液体からの分離と同様に実現され得る。しかし、それは、より困難である。異なる液体の密度差は、一般により小さく、剪断の存在は、分散相の液滴の合体よりも分裂をもたらし得る。
【0029】
石油が生産されると、水、砂、掘削流体および掘削くず、生産廃棄物と呼ばれる、石油生産の意図しない副産物も生成される。生成された水は、それが大量に生成されるため、これらの廃棄物の中でも、最も重要である。たとえば、貯留層の寿命中、平均で、4バレルの水が、1バレルの石油毎に生成される。生成された水は、環境に害をおよぼし得る物質も含んでいる。よって、そうした水の、それを地上に引き上げた後の、海洋への排出は、分離した生成水が水注入に使用され得ても、より厳しい規制の対象である。
【0030】
種々の理由で、水および油を、それらを地上に送る前に分離することによる海底分離の必要性が存在する。同様の状況が、洋上石油プラットフォームについても存在する。たとえば、油-水混合物を地上に引き上げ、次いで、油を水から分離するためのコストが存在する。というのは、その際に、水は、汚染物質の除去後に処理される必要があるからである。したがって、複数の海底分離装置は、それらの経済的および環境上の利点によって、任意の海底設備に対して、重要な構成要素を構成する。海底および洋上プラットフォーム作業の両方について、現在の重力または遠心分離は、多くの場合、乳濁液の形成を抑制して発泡を防止する乳化剤を使用し、油を水から分離することをより困難にする化学処理を必要とする。コストを削減し、分離プロセスをより効率的にするためには、そうした化学処理に頼ることなく、油および水を分離する方法を見出すことが重要である。
【0031】
サイクロン分離装置は、単一のメカニズム、すなわち、密度差、液滴体積、および速度に依存する遠心力に依存する。重油などの多くの種類の油について、油と水との間の密度差は小さい。したがって、液滴体積が十分大きく、速度が高い場合でない限り、分離力は高くない。対照的に、ARFは、密度差、圧縮率差、液滴体積、および音響周波数に依存するので、密度差が最小であり、液滴サイズが小さい場合にも、油を水から分離するのに十分な力が存在する。よって、ARFは、油が当初、顕微鏡レベルで水から分離されて合体し始め、それによって、より大きい液滴を形成し、そこでは、遠心力が、支配的な分離メカニズムとなり得る根源プロセスとして効果的であり得る。そうしたハイブリッド型分離システムは、遠心分離システム単独よりも、よりコンパクトで、より効率的に形成され得る。
【0032】
図5に移り、本発明のハイブリッド型音響/遠心分離システム100の一実施形態の上面斜視図の模式図が示されている。中空パイプ102のセクションは、円形状104に形成され、水平方向に配置されており、一定の選定間隔で、その表面108に取り付けられる変換子106を有している。音響圧電変換子であり得る変換子106は、増幅器112を通って、波形発生器110を使用して励起され、間隔を空けて、湾曲したパイプ102の内表面に取り付けられるように示されているが、外側に配置される場合もある。油-水混合物または乳濁液54は、ポンプ114を使用して、パイプ102を通り、水平入口120を通り、垂直パイプ118と流体連通する出口ポート116を通って外に流される。いくつかの海底用途分野では、ポンプ114は、油/水混合物がかなりの圧力下にあるため、不必要になる。パイプ118は、縮尺通りに示されていない、選定長さを有し、その両端で、油リッチ流体の上方出口122および水リッチ流体の下方出口124を有している。選定長さは、パイプ102の直径に依存し、出口の場所122および124は、分離装置の近傍でなくてもよい。音響および遠心力は、油の微小液滴を混合流体から分離し、垂直ステージ118は、分離された流体を2つの別個の出口に物理的に優先的に流す。油は、水よりも密度が低いので、分離した油は、上方出口の場所に達する。いったん分離されると、油および水流は、例として、油用の貯蔵タンクおよび水用の水処理ユニットに導かれ得る。増幅器130を通って波形発生器128を使用して励起される高周波変換子126は、上述されたように、油-水乳濁液54に対して、それがパイプ102に流入するにつれて、前処理を行い、本願の
図3に示されるように、流れの方向に平行に、空間的に孤立したノードを形成している。そして、遠心力は、分離プロセスを実現するために、集塊形成された液滴を、流れに直交する方向に移動させている。
【0033】
パイプ102の円形断面が、油の水からの分離に効果的であることが期待されるが、最大限の効率のためには、パイプ102は、断面が扁円状(たとえば、楕円形)である必要がある。
図4Bおよび4Cに示されるように、変換子82は、楕円形パイプの外表面84に音響的に接触して配置されており、必要に応じて、パイプに沿って、間隔を空けている場合がある。通常は、楕円形の長軸は、
図5に示される円形ループの半径に垂直とすべきである。この形状をさらに例証するために、極端な場合には、平坦なパイプは、その幅が半径平面に垂直であるループに形成される。その方向にわずかに楕円形のパイプを曲げることが、より簡単である。
図7に示される、らせんの形状のわずかな変化は、重要な変化をもたらすものでない。通常は、長楕円形パイプは、必要とされない。たとえば、楕円の短軸対長軸比は、約0.8~約0.99の間の範囲である場合があり、粒子(液摘)の局所的な凝集は、依然として生じる。たとえば、米国特許第6,644,118号明細書(前掲)の
図9Aを参照されたい。’118特許は、流動流体用の楕円形圧電シリンダについて述べているが、本発明者は、その外表面に音響的に接触する変換子を有する楕円形パイプが、同様の音響力パターンを発生させることを見出していることが言及されるものである。パイプ102が、その湾曲が正確に円形でなくてよいが、必要な遠心力を発生させるために単純に湾曲していることも言及されるものである。
【0034】
図6Aおよび6Bは、パイプ102の断面の模式図であり、円形パイプセクションの内部において、水中の油滴に作用する主要な力を示している。作用する力は、(1)密度差、液滴体積、および流速に依存する遠心力132、(2)密度差に依存する重力134、および(3)音響力を含んでいる。音響力は、小さい液滴が、互いに密集および合体することを促進する。粘性抗力は、任意の液滴の移動に対抗するが、
図6Aでは示されていない。というのは、主分力は、より後の段階で支配的であるからである。重力134は、浮力をもたらし、それは、複数の液滴136が合体してサイズが大きくなるにつれて、顕著になる。遠心力の大きさは、流体流量に加えて、液滴サイズおよびパイプ曲率に依存する。これらの力は、
図6Aおよび6Bに示されるように、パイプの選定長さを辿って、パイプの一方側に、油138を移動させるように作用する。概略的な油収集領域138が、
図6Aに示されており、一方、
図6Bは、油140および水142の完全な分離を示している。実際には、二相(油および水)を完全に分離することは必要でなく、通常、大きい油の塊および液滴が一方側に押圧される。その分離は、垂直分離装置ステージ118における、油および水の最終的な分離に十分であり、それは、分離装置がよりコンパクトになることを可能にしている。
【0035】
より高い温度では、密度差がより大きくなり、それによって、液滴に対する力が増加する。さらに、より高い温度によって、より低い粘性がもたらされ、それは、分離された液滴がパイプの一方側に移動することを助長する。
【0036】
図7は、連続パイプ144として動作し、増加した長さを有するスパイラルまたはヘリカル構成に形成される、本願の
図5に示される、複数の積層型分離ユニット102の側面斜視図の模式図である。この構成は、コンパクトな構成における、油の水からのさらなる分離をもたらす。明らかに、他の構成も想定され得る。
【0037】
曲率半径Rのパイプ内の水のホスト媒質中を接線方向に移動する、径D
oおよび密度ρ
oの単一の油滴は、遠心力Fcを受ける。
【0038】
渦、核生成中心、および小気泡の存在は、分離をさらに強化する。海底作業では、圧力は高い場合があり、それによって、油-水混合物は、非常に小さい液滴サイズを有する乳濁液の形態を有している。音響分離、およびより大きい複数の液滴をもたらすための液滴合体は、
図3から見られ得るように、より大きい複数の液滴が、より強い分離力を受けるので、遠心分離をかなり助長する。
【0039】
音響分離が遠心分離に対して有する利点は、式2および3によって認められ得る。油および水の密度が同じであると、通常、圧縮率は、極めて異なるため、液滴に作用する強い力は、依然として存在する。音響力は、液滴サイズおよび他の因子以外に、密度および圧縮率の両方に依存し、一方、遠心力については、油および水の密度が同じであると、それは消滅するが、作用するいくつかの二次的効果が存在し得る。したがって、分離プロセスを音響的に始め、それによって、より大きい液滴、およびそれに続く遠心力を発生させることは、ハイドロサイクロンにおいて行われるように、遠心力のみを使用することよりも合理的である。
【0040】
本発明の前述の説明は、例証および説明の目的で提示されており、網羅的であるか、または、開示された正確な形態に本発明を限定することを意図するものでなく、明らかに、上記教示に照らして、多くの修正形態および変形形態が可能である。実施形態は、本発明の原理およびその実用的応用を最もよく説明しており、それによって、当業者が、種々の実施形態において、および、想定される特定の用途に適した種々の修正形態を伴って、本発明を最もよく利用することを可能にするために選択および説明されている。本発明の範囲は、本明細書に添付された請求項によって画定されることを意図している。
【国際調査報告】