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特表2023-534811S.リコペルシクムにおいてToBRFV抵抗性をもたらす遺伝子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-14
(54)【発明の名称】S.リコペルシクムにおいてToBRFV抵抗性をもたらす遺伝子
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20230804BHJP
   A01H 5/00 20180101ALI20230804BHJP
   C12N 5/04 20060101ALI20230804BHJP
   A01H 5/10 20180101ALI20230804BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230804BHJP
   A01H 1/00 20060101ALI20230804BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20230804BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALI20230804BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20230804BHJP
   C12N 15/29 20060101ALI20230804BHJP
   C07K 14/415 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
C12N15/11 Z
A01H5/00 Z ZNA
C12N5/04
A01H5/10
C12N5/10
A01H1/00 A
C12Q1/06
C12Q1/6851 Z
C12Q1/686 Z
A01H5/00 A
C12N15/29
C07K14/415
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023503105
(86)(22)【出願日】2021-07-19
(85)【翻訳文提出日】2023-03-14
(86)【国際出願番号】 EP2021070104
(87)【国際公開番号】W WO2022013452
(87)【国際公開日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2020/070347
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500502222
【氏名又は名称】ライク・ズワーン・ザードテールト・アン・ザードハンデル・ベスローテン・フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(72)【発明者】
【氏名】カリスファールト,ヨナタン
(72)【発明者】
【氏名】ルーデキング,ダニエル ヨハネス ウィルヘルムス
(72)【発明者】
【氏名】ローフェルス,アルウィン ヨハネス マリヌス
【テーマコード(参考)】
2B030
4B063
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
2B030AA02
2B030AB03
2B030AD04
2B030CA05
2B030CA07
2B030CA14
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA18
4B063QQ04
4B063QQ09
4B063QQ13
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR55
4B063QR62
4B063QR73
4B063QR78
4B063QR80
4B063QS25
4B063QS34
4B063QS36
4B063QS38
4B063QX01
4B065AA88X
4B065AA88Y
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA01
4B065BA30
4B065CA24
4B065CA46
4B065CA53
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA30
4H045EA05
4H045EA50
(57)【要約】
本発明は、配列番号1と4との間に染色体8のQTLを含む、ToBRFVに抵抗性であるソラヌム・リコペルシクム植物に関する。染色体8のQTLの存在は、配列番号1~42に示されるSNPからなる群5から選択される少なくとも1つのマーカーを使用することにより同定される。QTLは、寄託番号NCIMB 43637の下でNCIMBに寄託されたソラヌム・リコペルシクム植物の代表的な種子のゲノムに存在する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
染色体8のQTLを含むソラヌム・リコペルシクム植物であって、染色体8のQTLが配列番号1と配列番号42との間に位置し、QTLがホモ接合で存在する場合にToBRFV抵抗性を付与する、ソラヌム・リコペルシクム植物。
【請求項2】
QTLが、抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を含み、前記抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子が、配列番号45を含むか、または配列番号45に対して少なくとも70%の配列同一性を有する相同Tom2a配列を含む、請求項1に記載のソラヌム・リコペルシクム植物。
【請求項3】
染色体8のQTLの存在が、配列番号1~44に示されるSNPからなる群から選択されるマーカーの少なくとも1つに、好ましくは、配列番号3、配列番号4、配列番号14、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号34、配列番号42、配列番号43、および配列番号44に示されるSNPからなる群から選択されるマーカーによって、最も好ましくは、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号43、および配列番号44からなる群から選択されるマーカーによって、遺伝的に連鎖している、請求項1または2に記載のソラヌム・リコペルシクム植物。
【請求項4】
QTLが、寄託番号NCIMB 43637の下でNCIMBに寄託されたソラヌム・リコペルシクム植物の代表的な種子のゲノムに存在する、請求項1、2または3に記載のソラヌム・リコペルシクム植物。
【請求項5】
QTLが、NCIMB 43637からか、またはその子孫植物から遺伝子移入されている、請求項1、2または3に記載のソラヌム・リコペルシクム植物。
【請求項6】
QTLが、ソラヌム・ピンピネリフォリウム種の植物からか、またはS.リコペルシクムと性的に適合する別のソラヌム種の植物から遺伝子移入される、請求項1、2または3に記載のソラヌム・リコペルシクム植物。
【請求項7】
QTLが、ホモ接合で存在する、請求項1から6のいずれかに記載のソラヌム・リコペルシクム植物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のソラヌム・リコペルシクム植物の細胞であって、前記細胞が、請求項1から3のいずれか一項に規定の染色体8のQTLをそのゲノム中に含む、細胞。
【請求項9】
請求項1から4のいずれか一項に規定の染色体8のQTLを含むソラヌム・リコペルシクム種子であって、前記種子から生長した植物が、植物1から7のいずれか一項に記載の植物である、種子。
【請求項10】
請求項1から7のいずれか一項に記載のソラヌム・リコペルシクム植物の生産に適した繁殖材料であって、ここで、繁殖材料が、有性生殖に適しており、特に、小胞子、花粉、子房、胚珠、胚嚢、および卵細胞からなる群から選択されるか;または、栄養繁殖に適しており、特にカッティング(cutting)、根、茎、細胞、およびプロトプラストからなる群から選択されるか;または、再生可能な細胞の組織培養に適しており、特に、葉、花粉、胚、子葉、胚軸、分裂組織細胞、根、根冠、葯、花、種子、および茎からなる群から選択されるものであり;ここで、繁殖材料から生産された植物が、請求項1から4のいずれか一項に規定のToBRFV抵抗性をもたらす染色体8のQTLを含む、繁殖材料。
【請求項11】
ソラヌム・リコペルシクム植物、またはソラヌム・ピンピネリフォリウム植物、またはS.リコペルシクムと性的に適合する別のソラヌム種の植物におけるToBRFV抵抗性の同定のためのマーカーであって、前記マーカーが配列番号1~44に示されるSNPからなる群から選択され、好ましくは、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号43、および配列番号44で示されるSNPからなる群から選択され、最も好ましくは、配列番号26、配列番号28、配列番号43、および配列番号44で示されるSNPからなる群から選択される、マーカー。
【請求項12】
ソラヌム・リコペルシクム植物、またはソラヌム・ピンピネリフォリウム植物、またはS.リコペルシクムと性的に適合する別のソラヌム種の植物におけるToBRFV抵抗性をもたらす染色体8のQTLの同定のためのマーカーであって、前記マーカーが、配列番号1~44に示されるSNPからなる群から選択され、好ましくは、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号43、および配列番号44に示されるSNPからなる群から選択され、最も好ましくは、配列番号26、配列番号29、および配列番号30に示されるSNPからなる群から選択される、マーカー。
【請求項13】
ソラヌム・リコペルシクム植物、またはソラヌム・ピンピネリフォリウム植物、またはS.リコペルシクムと性的に適合する別のソラヌム種の植物におけるToBRFV抵抗性の同定のための、請求項11または12に記載のマーカーの使用。
【請求項14】
請求項1から4のいずれか一項に規定の染色体8のQTLをS.リコペルシクム植物に遺伝子移入することを含む、ToBRFV抵抗性ソラヌム・リコペルシクム植物を生産するための方法。
【請求項15】
請求項1から4のいずれか一項に規定の染色体8のQTLの存在を同定すること、および前記QTLを含む植物をToBRFV抵抗性植物として選択することを含む、ToBRFV抵抗性ソラヌム・リコペルシクム植物、またはソラヌム・ピンピネリフォリウム植物、またはS.リコペルシクムと性的に適合する別のソラヌム種の植物を選択するための方法。
【請求項16】
染色体8のQTLの存在を同定することが、配列番号1~44に示されるSNPからなる群から選択されるマーカーを使用することによって、好ましくは、配列番号3、配列番号4、配列番号14、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号34、配列番号42、配列番号43、および配列番号44に示されるSNPなる群から選択されるマーカーを使用することによって、最も好ましくは、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号43、および配列番号44に示されるSNPからなる群から選択されるマーカーによって行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ToBRFVに抵抗性のあるソラヌム・リコペルシクム植物を製造する方法であって、前記方法が:
a) 染色体8にQTLを含む請求項1から6のいずれか一項に記載の植物を別の植物と交配すること;
b) さらなる世代集団を取得するために、工程a)の交配から得られた植物の自家受粉および/または交配を1回または複数回、適宜、実行すること;
c)工程a)の交配から得られる植物から、または工程b)のさらなる世代集団から、請求項1から4のいずれか一項に規定の染色体8にQTLを含む植物を選択することを含み、QTLがホモ接合で存在する場合、前記植物はToBRFVに対して抵抗性である、方法。
【請求項18】
染色体8にQTLを含む植物の選択が、QTLに遺伝的に連鎖された分子マーカーを使用することによって行われ、前記マーカーが、配列番号1~44に示されるSNPからなる群から選択され、好ましくは、配列番号3、配列番号4、配列番号14、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号配列番号34、配列番号42、配列番号43、および配列番号44に示されるSNPからなる群から選択され、最も好ましくは、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号43、および配列番号44に示されるSNPからなる群から選択されるマーカーによるものである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ToBRFVに対して抵抗性である植物が、特にToBRFV抵抗性のバイオアッセイを使用することによって表現型的に選択されるか、またはqPCR試験を使用して選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
請求項1から7のいずれか一項に記載の植物が、NCIMB受託番号NCIMB 43637の下で寄託された種子から生長した植物であるか、またはその子孫植物である、請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
第1の親植物を第2の親植物と交配すること、および得られたハイブリッド種子を収穫することを含む、ソラヌム・リコペルシクムハイブリッド種子を生産のための方法であって、第1の親植物および第2の親植物が、請求項1から4のいずれか一項に規定された染色体8のQTLを含むToBRFVに対して抵抗性である本発明の植物であり、QTLの存在が、種子から生長するハイブリッド植物においてToBRFVに対する抵抗性をもたらす、方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法によって生産された、ハイブリッド種子。
【請求項23】
配列番号45を含むか、または配列番号45に対して少なくとも70%の配列同一性を有する相同Tom2a配列を含む、抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子。
【請求項24】
配列番号46を含むタンパク質をコードするか、または配列番号46に対して少なくとも70%の配列同一性を有する相同タンパク質をコードする、請求項23に記載の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子。
【請求項25】
相同配列が、配列番号48の105位でのAlaの欠失、配列番号48の187位でのArgからGlyへの変換、配列番号48の225位でのGlyからSerへの変換、または配列番号48の282位でのThrからAlaへの変換の少なくとも1つを含むタンパク質をコードする、請求項23または24に記載の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トマト褐色しわ果実ウイルス(Tomato brown rugose fruit virus)(ToBRFV)抵抗性をもたらす遺伝子の対立遺伝子を含むQTLを含むトマト[ソラヌム・リコペルシクム(Solanum lycopersicum)]植物に関する。本発明はさらに、ToBRFV抵抗性を付与する遺伝子の対立遺伝子に関する。本発明はさらに、ToBRFV抵抗性ソラヌム・リコペルシクム植物を製造するための方法、および同遺伝子の対立遺伝子を含むそのような植物を同定および選択のための方法に関する。本発明はまた、トマト褐色しわ果実ウイルス抵抗性ソラヌム・リコペルシクム植物の子孫(progeny)、種子および果実、ソラヌム・リコペルシクム植物の生産に適した繁殖材料、ならびにそのようなトマト果実またはその一部を含む食品に関する。本発明はさらに、トマト褐色しわ果実ウイルス抵抗性ソラヌム・リコペルシクム植物から生じるか、またはそれに再生することができる細胞または組織培養物に関する。本発明はまた、ソラヌム・リコペルシクムにおけるトマト褐色しわ果実ウイルス抵抗性をもたらす遺伝子の対立遺伝子を同定するためのマーカー、および前記マーカーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルス病は、保護された畑や露地栽培の作物において、野菜生産者が対処しなければならない主要な脅威の一つである。作物が感染すると、制御が困難なベクター、通常は昆虫を介してウイルスが急速に拡散する可能性がある。さらに、栽培法は、しばしば農具や現場作業員を介した樹液の伝播により、ウイルスのさらなる拡散に寄与する。
【0003】
ウイルス感染に対する最善の保護は、抵抗性のある品種を使用することである。育種を通じて適切なトマト品種に組み込まれており、栽培者がウイルスの圧力下でも良好な収量を得ることができる、多くの既知ウイルスに対する抵抗性が同定されている。抵抗性(Resistances)は通常、さまざまなタイプに分類できるが、最も一般的なものは耐性と抵抗性(resistance)である。耐性は、必ずしも抵抗性(resistance)のレベルが低いことを意味するのではなく、ウイルスが宿主内でまだ複製できるにもかかわらず、植物に病徴がないか、あるいは病徴が軽減されていることを意味する。抵抗性(Resistance)とは、病徴が消失または大きく減少するだけでなく、植物内でのウイルスの複製が制限される、すなわち消失または大きく減少するメカニズムを表す。
【0004】
2015年、トマトでの新しいトバモウイルスの発生が発表された[Salem et al: A new tobamovirus infecting tomato crops in Jordan. Arch Virol . 2016 Feb; 161(2):503-6. Epub 2015 Nov 19]。このウイルスは既知のトバモウイルスであるタバコモザイクウイルス(TMV)、トマトモザイクウイルス(ToMV)、トマトマイルドモトルウイルス(ToMMV)に関連しており、ToMMVとToMVの最も近い関連配列の配列同一性は約80%から90%であることが示された。植物での病徴はむしろ軽度であったが、ほとんど全ての果実に非常に重度の褐色縮葉病徴が存在した。ウイルスは、ToMV:Tm-1、Tm-2、およびTm-2(後者はTm-2としても知られている)に対して一般的に使用される抵抗性遺伝子の抵抗性を破壊することが観察された。後の文献では、ウイルスがイスラエルでも発見されたことを示し、ウイルスがトウガラシ(キャプシカム・アンヌアム)(Capsicum annuum)植物にも感染できることが確立された[Luria et al (2017):A new Israeli tobamovirus isolate infects tomato plants harboring Tm-22 resistance genes. PLoS ONE 12(1):e0170429. Doi:10.1371/journal.pone.0170429]。病徴は罹患した変種によって異なるようで、特定の例では、重度または軽度のモザイク、ネクロシス、葉の歪み、またはその他の病徴の形で主に栄養部分に病徴が見られた。このウイルスは既知のトバモウイルスとは明らかに異なるため、新しい呼称:トマト褐色しわ果実ウイルス(TBRFV)が割り当てられた。それまでの間、このウイルスの一般的に使用される略語はToBRFVであり、そのため、今回はこの出願でも使用されている。
【0005】
過去数年間で、ToBRFVは多くの国々に急速に広がっており、急速に増えている野菜栽培の分野におけるトマト果実の生産に大きな影響を与えている。果実の病徴が深刻であるため、果実が基本的に市場に出回ることができずToBRFVの存在がトマト生産者に与える影響は非常に大きい。このウイルスは少なくとも機械的に伝染するため、拡散が容易かつ急速で、コントロールが難しい。ウイルスの伝染は、感染した種子を介して発生する可能性も高い。
【0006】
本発明の目的は、トマト褐色しわ果実ウイルス(ToBRFV)に対して真の抵抗性を示すソラヌム・リコペルシクム種のトマト植物を提供することである。
【0007】
本発明のさらなる目的は、ToBRFV抵抗性をもたらす遺伝子の対立遺伝子を提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
新しいToBRFVの問題は非常に急速に広がり、特定の地域のトマト生産に大きな影響を与えたため、抵抗性トマト植物を取得する緊急性は非常に高くなった。さらに、ウイルスは非常に効果的な伝染により、他の地域に急速に広がる可能性があると予想されていた。したがって、可能性のある供給源の存在下で洞察を得るために、大規模な生殖質スクリーニングが編成された。最初に、ソラヌム・ピンピネリフォリウム(Solanum pimpinellifolium)種のいくつかの抵抗性系統が同定され、同時係属中の出願WO2019110130およびWO2019110821に記載されているように、これらの供給源とS.リコペルシクム系統の間で作られた集団の微細マッピングおよび表現型の決定を通じて、染色体6、11および12にQTLが見出された。これらのQTLをS.リコペルシクムに遺伝子移入したところ、有用な表現型の抵抗性レベルが得られたが、実験室での実験では、ウイルス力価はまだ比較的高く、ウイルスが植物内でまだ複製できると実証することが見出された。
【0009】
したがって、使用されているS.ピンピネリフォリウム供給源の1つであるGNL.3951について、さらなるQTLマッピングのためにそれを内部育種系統と組み合わせて、さらなる集団が開発され、ウイルス複製の制限に基づくより堅牢な真の抵抗性を持つ植物を取得した。全ての世代の植物についてバイオアッセイを行ったが、植物中のウイルス力価の存在およびレベルを決定するためにqPCR分析も行った(実施例2)。
【0010】
分子マーカーによるQTLの同定と特性解析により、遺伝的に連鎖したマーカーを使用してQTLの存在、したがって抵抗性の存在を特定する機会が得られ、これは、qPCR解析と組み合わせたバイオアッセイの使用よりも明らかにはるかに効率的である。この目的のために、F2集団、戻し交配、および供給源とのF1ハイブリッドで新しいQTLマッピング研究が行われた。これらの観察により、染色体8の新しいQTL領域が同定された(実施例1)。
【0011】
本発明は、植物におけるウイルス複製を制限する染色体8の遺伝子の対立遺伝子を含むQTLを含む、トマト褐色しわ果実ウイルス(ToBRFV)に対して抵抗性であるソラヌム・リコペルシクム植物を提供する。染色体8の遺伝子の対立遺伝子は、特に、S.ピンピネリフォリウム種に由来するかまたは遺伝子移入された遺伝子の対立遺伝子である。
【0012】
染色体8で同定された最初のQTL領域は、配列番号1と42との間に位置していた。染色体8のこのQTLの存在は、配列番号1~42に示されたSNPからなる群から選択される遺伝的に連鎖したマーカーによって、好ましくは、配列番号3、配列番号4、配列番号14、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号34、および配列番号42に示されたSNPからなる群から選択されるマーカーによって同定できる。QTLは、配列番号26、配列番号29、および配列番号30に示されるSNPからなる群から選択されるマーカーにしっかりと連鎖されていることが決定された。QTLを同定するための遺伝的に連鎖したマーカーは、QTLに存在する図1に列挙された配列のいずれか1つによって表されるマーカーである。
【0013】
最初に同定された染色体8のQTL領域は、抵抗性を付与するQTL内の遺伝子の位置を決定するためにさらにファインマッピングされた。最初のファインマッピング作業により、配列番号22と配列番号34の間に位置するより小さいQTL領域が得られた。このより小さいQTL領域は、7つの遺伝子を含んでいた。高度に連鎖していると特定された3つを含む最初のマッピングからの5つのマーカーは、これらの遺伝子の1つであるTom2a遺伝子の配列に存在しており、ToBRFV感受性参照ゲノムバージョンSL3_00と比較して、Tom2aに多型性が存在することを示している。最もよく連鎖するマーカーがこの遺伝子に存在するため、Tom2aは、本発明のToBRFV抵抗性の最も有望な候補遺伝子であるように思われた。この遺伝子の配列決定、および公開参照ゲノムとのその後のアラインメントにより、さらに2つの多型性が決定された。参照ゲノム配列SL3_00とTom2aの抵抗性配列との間の多型性は、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号43または配列番号44として示されるマーカーのいずれか1つによって同定され得る。Tom2aの抵抗性配列は、本発明の対立遺伝子を構成する。
【0014】
ToBRFV抵抗性におけるTom2a遺伝子の関与を確認するために、さらなる研究と観察が行われた。この過程で、QTL領域において組み換えを起こした集団が開発された。これらの組み換え系統のマーカー解析および表現型の決定により、QTL領域に存在する他の遺伝子は、ToBRFV抵抗性の潜在的な要因として除外され、Tom2a遺伝子が本発明のToBRFV抵抗性の原因遺伝子として確認することができた(実施例4;図4)。
【0015】
本発明は、抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を含む染色体8のQTLを含むソラヌム・リコペルシクム植物であって、染色体8のQTLの存在は、配列番号1~44に示されるSNPからなる群から選択されるマーカーの少なくとも1つに、好ましくは、配列番号3、配列番号4、配列番号14、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号34、配列番号42、配列番号43、および配列番号44に示されるSNPからなる群から選択されるマーカーによって、最も好ましくは、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号43、および配列番号44からなる群から選択されるマーカーによって、遺伝的に連鎖している、ソラヌム・リコペルシクム植物に関する。
【0016】
本発明は、ソラヌム・リコペルシクムの染色体8の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を提供し、抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子は、配列番号45を含むか、または配列番号45に対して少なくとも70%の配列同一性を有する相同なTom2a配列を含む。S.リコペルシクム植物において前記抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子または相同Tom2a配列が存在すると、ToBRFV抵抗性がもたらされる。配列番号45は、Tom2aの抵抗性付与対立遺伝子のコード配列(CDS)を表す。本明細書で使用される場合、Tom2aの抵抗性付与対立遺伝子は、ToBRFV抵抗性をもたらすTom2a遺伝子のバージョンである。
【0017】
配列番号45は、配列番号46を含むタンパク質をコードする。本発明は、ToBRFV抵抗性をもたらす配列番号46を含むか、またはToBRFV抵抗性をもたらす配列番号46に対して少なくとも70%の配列同一性を有する相同Tom2aタンパク質を含む、Tom2aタンパク質に関する。
【0018】
Tom2a遺伝子の野生型配列は、配列番号47を含み、配列番号48を含むタンパク質をコードする。Tom2a遺伝子の抵抗性付与対立遺伝子の存在を同定するために使用することができるこの遺伝子のゲノム配列における多型性は、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号43、または配列番号44の配列で示されるSNPを含む。Tom2aの抵抗性付与対立遺伝子は、SNPの存在を決定することにより、これらのSNPのいずれか1つをマーカーとして使用することによって同定することができる。
【0019】
相同Tom2a遺伝子は、配列番号45に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、77%、80%、83%、85%、87%、90%、93%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する配列である相同配列を含む。相同Tom2aタンパク質は、配列番号46に対して少なくとも70%の配列同一性、好ましくは少なくとも75%、77%、80%、83%、85%、87%、90%、93%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する配列である相同配列を含む。
【0020】
一実施形態では、抵抗性を付与する相同Tom2a対立遺伝子は、配列番号26によって、または配列番号28によって、または配列番号43によって、または配列番号44によって同定され得る多型性を保持している。一実施形態では、抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子またはその相同対立遺伝子は、配列番号26および配列番号28;配列番号26および配列番号43;配列番号26および配列番号44;配列番号28および配列番号43;配列番号28および配列番号44;配列番号43および配列番号44;配列番号26および配列番号28および配列番号43;配列番号26および配列番号28および配列番号44;配列番号26および配列番号43および配列番号44;配列番号28および配列番号43および配列番号44;または配列番号26および配列番号28および配列番号43および配列番号44によって同定できる多型の組合せを保持している。
【0021】
この遺伝子は公開ゲノムのマイナス鎖に存在するため、配列番号26は、配列番号47の559位でのAからGへの変換を同定し;配列番号28は、配列番号47の312~314位のGGC欠失を同定し;配列番号43は、配列番号47の673位でのGからAへの変換を同定し、配列番号44は、配列番号47の844位のAからGへの変換を同定する。
【0022】
一実施形態では、抵抗性を付与する相同Tom2a対立遺伝子は、配列番号47の559位でのAからGへの変換;配列番号47の312~314位のGGC欠失;配列番号47の673位でのGからAへの変換、配列番号47の844位でのAからGへの変換、または相同Tom2a遺伝子の対応する位置での任意のこれらの多型性の少なくとも1つを保持している。さらなる実施形態では、抵抗性を付与する相同Tom2a対立遺伝子は、これらの多型性の2つ、3つ、または4つ全ての組合せを保持している。図5は、Tom2a野生型のCDS配列と、抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を個別にアラインメントして示している。
【0023】
一実施形態では、相同Tom2a対立遺伝子配列は、配列番号48の105位のAの欠失、配列番号48の187位のGへの変換、配列番号48の225位のSへの変換、または配列番号48の282位のAへの変換のうちの少なくとも1つを含むタンパク質をコードする。
【0024】
一実施形態では、抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子によってコードされるタンパク質、またはその相同タンパク質は、配列番号48の105位のAla欠失、配列番号48の187位のArgからGlyへの置換、配列番号48の225位でのGlyからSerへの置換、もしくは配列番号48の282位でのThrからAlaへの置換、または相同タンパク質の対応する位置での改変を保持している。一実施形態では、抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子によってコードされるタンパク質は、これらの多型性の2つ、3つ、または4つ全ての組合せを保持している。図6は、野生型のTom2aタンパク質配列と、抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を個別にアラインメントさせて示す。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1-1】ToBRFV抵抗性を示すSNPを含む、配列番号1~44のヌクレオチド配列。
図1-2】同上。
図1-3】同上。
図1-4】同上。
図1-5】同上。
図2】qPCR観察に基づく感受性系統、抵抗性ドナー、およびF2集団におけるウイルス力価の変動。
図3】寄託物のqPCR結果。
図4】組み換え系統の表現型の決定と組み合わせたマーカー解析による、ToBRFV抵抗性の原因遺伝子としてのTom2aの同定。
図5-1】CDS配列Tom2a遺伝子 配列番号45:GNL_R(抵抗性)、GNL.3951からの抵抗性を付与する対立遺伝子、NCIMB 43637に存在;配列番号47:参照ゲノムSL3_00(感受性);個別的およびアラインメント。
図5-2】同上。
図5-3】同上。
図6】Tom2aタンパク質配列 配列番号46:抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子によってコードされるタンパク質;配列番号48:野生型タンパク質、感受性;SL3_00の参照配列によってコードされる;個別的およびアラインメント。
図7】交配開発同質遺伝子系統で感受性親として使用される系統の感受性野生型を有する植物、ならびに、染色体11にQTLを有し、染色体8に本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を含むQTLを有し、染色体8および11にQTLの組合せを有し、両方のQTLを欠くこれらの同質遺伝子系統の植物のウイルス力価(Cq_corr)を示す平均qPCR結果。
図8】Tom2aタンパク質のドメインと膜の予測。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書で使用される場合、配列同一性は、それらの配列の適切なアラインメント後に2つの配列間で同一であるヌクレオチドまたはアミノ酸のパーセンテージである。当業者は、例えば、ヌクレオチド配列およびタンパク質配列の両方に使用できるBLAST(登録商標)などの配列アラインメントツールを使用することによって、配列をアラインメントする方法を承知している。最も有意な結果を得るためには、最高の配列同一性スコアを与える可能な限り最良のアラインメントを取得する必要がある。配列同一性パーセンテージは、評価における最も短い配列の長さの比較を通じて計算され、それによって、この場合には、配列は、少なくとも開始コドンと停止コドンを含む遺伝子、またはそのような遺伝子によってコードされる完全なタンパク質を表す。
【0027】
Tom2aタンパク質は、テトラスパニン/ペリフェリンドメインを有するタンパク質であるテトラスパニンタンパク質である。このタンパク質は、N末端およびC末端尾部、ならびに2つの非細胞質ループおよび1つの非常に短い細胞質ループによって接続された4つの膜貫通ドメインを含む(図8)。観察された突然変異は、特に105位のAla欠失である第2の膜貫通ドメイン(TM2)の末端、およびタンパク質のC末端尾部に存在した。105位のAlaの欠失はTM2ドメインに影響を与え、それに続く短い細胞質ループにも影響を与える可能性がある。本発明は、TM2ドメインに影響を与えるTom2a遺伝子での突然変異、または細胞質ループに影響を与える突然変異、またはタンパク質のC末端尾部に影響を与える突然変異、または前記突然変異の組合せに関する。
【0028】
一実施形態では、抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子は、非機能性タンパク質をコードする。
【0029】
図1は、トマト植物においてToBRFV抵抗性をもたらす染色体8の本発明のTom2a遺伝子の対立遺伝子を含むQTLの存在を同定するための、マーカーとして使用することができるか、またはマーカーを開発するために使用することができる配列番号の配列を提供する。表4は、図1の配列において、QTLの存在、したがって抵抗性植物、ならびにSNPの位置を同定する配列中のヌクレオチドを示す。本明細書で使用する場合、ある配列番号に「示されるSNP」は、表4の「本発明のマーカーとして使用される、図1のSNPのヌクレオチド」の欄で示される、抵抗性を示す配列内のヌクレオチドである。マーカーの配列がS.リコペルシクムの公的に入手可能なゲノム参照配列のバージョンSL3_00上に位置すると、前記マーカー配列におけるSNP多型性が対応する物理的位置を導出することができる。この位置は、表4にも示されている。公開されたS.リコペルシクムゲノム参照配列のバージョンSL3_00は、例えば、ソルゲノミクスウェブサイト(solgenomics.net)でアクセスすることができ、本明細書で使用される「公開トマトゲノム」の参照となる。本発明のマーカーの位置は公開マップから導き出すことができ、これらの位置は前記物理的位置に関連している。
【0030】
マーカーを使用することによる、QTLまたは抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子の存在の同定は、特に、抵抗性を示すマーカー配列内のSNPの位置でのヌクレオチドの存在を同定することによって行われる。野生型ヌクレオチドは、公開ゲノムのその位置に存在するヌクレオチドである。
【0031】
本明細書において、トマト植物は、ソラヌム・リコペルシクム種の植物である。
【0032】
本明細書で使用される場合、トマト褐色しわ果実ウイルスに対する抵抗性は、ウイルスがNCBI分類学ID 1761477に割り当てられた、Salem et al(2016年、上記を参照)に記載されているウイルスに対する抵抗性である。
【0033】
本明細書で使用される場合、マーカーは、本発明のQTLを含む植物とそのQTLを欠く植物との交配から生じる分離集団において、前記マーカーとToBRFV抵抗性が共分離する場合、本発明のTom2a遺伝子の対立遺伝子を含むQTLに遺伝的に連鎖しており、したがって、その同定のために使用することができる。QTLに遺伝的に連鎖するマーカーは、連鎖マーカーが前記QTLに存在するため、そのQTLの同定に使用することができる。本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子に存在するマーカーは完全に連鎖しており、したがって、遺伝子の抵抗性を付与する対立遺伝子の存在を直接的に示している。
【0034】
本発明のToBRFV抵抗性は、劣性遺伝する。これは、本発明のTom2a遺伝子の対立遺伝子がホモ接合的に存在する場合、本発明の対立遺伝子が存在しないかまたはヘテロ接合的に存在する植物と比較すると、植物におけるウイルス複製が存在しないか、または大幅に減少することを意味する。しかしながら、ヘテロ接合体植物は、交配および選択を通じてホモ接合植物の発生に使用することができ、したがって、ヘテロ接合体植物も本発明の一部を形成する。
【0035】
ウイルス複製、およびそれによる本発明のToBRFV抵抗性は、実施例2に記載されているように、qPCR試験によって適切に決定される。抵抗性の確認は、当業者に知られており、例えばLuria et al(2017年、上記を参照)にも記載されている、例えばトバモウイルスの標準的な樹液-機械的接種技術(sap-mechanical inoculation technique)を使用したバイオアッセイによって決定することができる。
【0036】
抵抗性を表現型的に決定するために、試験される系統の種子を標準苗トレイに播種し、播種後4週間で少なくとも10個の苗に接種する。接種材料は、セライトと混合した0.01Mリン酸緩衝液(pH 7.0)中、ToBRFVに感染したトマト植物の葉を接地することによって調製される。次に、接種材料で葉をやさしくこする前に、苗にカーボランダム粉末をまぶす。抵抗性は0~5のスケールで採点される;スコアのスケールの説明は、表3で見出され得る。バイオアッセイにおける若いトマト植物の病徴の観察は、接種の14~21日後(dai)に行われる。
【0037】
ToBRFV抵抗性は、ToBRFV感受性であることが知られている対照変種と比較することによって決定される。感受性対照として使用される、本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を染色体8に持たないToBRFV感受性トマト変種の例としては、Livento F1およびAdventure F1がある。本発明のToBRFV抵抗性を有するトマト変種は、本発明がなされる前には知られていなかったため、本発明がなされる前に知られていた抵抗性対照を含めることはできなかった。しかしながら、NCIMB 43637として寄託された種子から生長した植物の抵抗性コントロールを使用することができる;この寄託物から生長した植物は、本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を染色体8に含む。ある系統の10の植物で試験が行なわれ、平均スコアを採用する。感受性(S)対照の平均スコアが3.0より高く、好ましくは3.5より高い場合、試験は適切に実行される。この平均に達した場合には、アッセイをスコアリングする正しい時点となる。
【0038】
【表1】
【0039】
本明細書で使用される場合、染色体8に本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子をホモ接合的に含むToBRFV抵抗性トマト植物は、表3によるスコアリングが使用される場合、1.5または1.5より少ない平均スコア、好ましくは1.0より少ないスコアを有する。
【0040】
本明細書で使用される場合、抵抗性とは、ToBRFVに感染した植物においてウイルスの複製が減少するかまたは存在しないことを意味する。ウイルス複製の減少は、qPCR試験によって測定できる。系統がToBRFVウイルス複製の減少を有するかまたは不在であるかを有するかどうかを決定するために、ウイルス力価は、ToBRFVに感染しているその系統の少なくとも5つの植物から採取された葉の試料において決定される。各々の植物から直径6mmの葉のパンチを採取して、ひき続いて500μlのPBS緩衝液中で粉砕する。得られた懸濁液の50μlを96ウェルのキングフィッシャーFlex分離プロトコールにおいて使用して、innuPREP DNA/RNAウイルスプラスキットを使用することによって葉の材料を分離する。その後、Cq_ToBRFV値を取得するために、試料を50℃で5分間、および95℃で20秒、その後、95℃で10秒および60℃で60秒を40サイクルのプログラムを使用して、ウイルスPCR産物を得るために必要なサイクルの数を表す96CFX qPCRサーモサイクラー(Biorad)で分析する。
【0041】
サイズやバックグラウンドの異なる試料の値を比較できるようにするために、トマトのハウスキーピング遺伝子であるS.リコペルシクムPHD参照遺伝子をqPCRアッセイに含めて、試料材料の量のあらゆるばらつきを補正して、次いでCq_PHD値を得る。アッセイで使用されるプライマーを、表1に示す。アッセイで使用されるPCR容量を、表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
ウイルス力価の最終値を正確に決定するために、PHDをハウスキーピング遺伝子として、およびToBRFVを目的の遺伝子として、デルタ-デルタCt法を使用する。最終値は、Cq_ToBRFV-Cq_PHDとして計算されるCq_corrである。植物は、少なくとも5つの植物試料の平均Cq_corrが-11.00より高い場合、または平均Cq-corrが感受性対照の平均Cq_corrより少なくとも5.00高い場合に、ToBRFVウイルスの複製が減少していると判断される(実施例2、表5)。
【0045】
一実施形態では、本明細書で規定されているように、染色体8に本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を含む本発明の抵抗性植物は、優先度の増加順に-11.00 -10.50、-10.00、-9.50、-9.00、-8.50、-8.00、-7.50、または-7.00より高い平均Cq_corrスコアを有している。
【0046】
一実施形態では、本明細書で規定されているように、染色体8に本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を含む本発明の抵抗性植物は、感受性対照の平均値よりも、優先度の増加順に少なくとも5.00、5.50、6.00、6.50、7.00、7.50、8.00高い平均Cq_corrスコアを有する。
【0047】
上記の平均値の計算は、少なくとも2回の試行の平均として行うことが好ましい。植物は、試験における感受性対照の平均Cq_corr値が、-12以下、好ましくは-13以下、最も好ましくは-14以下である場合に、適切にToBRFVに感染している。
【0048】
ToBRFV抵抗性をもたらす本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を有するS.リコペルシクム植物は、NCIMB 43637として寄託された種子から生長させることができる。
【0049】
NCIMB 43637は、本発明のToBRFV抵抗性を有し、配列番号45を有する抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を含む、配列番号1と42との間に位置する染色体8の本発明のQTLを含む。QTL、およびそれによって抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子は、寄託NCIMB 43637にホモ接合型で存在する。NCIMB 43637にあるQTLは、配列番号1~44に示されるSNPによって表されるマーカーのいずれかに連鎖されており、そのため、配列番号1~44に示されるSNPによって表されるマーカーのいずれか1つによって同定できる。NCIMB 43637における抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子は、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号43、および配列番号44で示される多型性を含む。抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子は、特に、配列番号26、配列番号28、配列番号43、または配列番号44に示されるSNPの存在を決定することによって同定することができる。
【0050】
本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を染色体8に含む植物は、ToBRFVバイオアッセイまたはqPCR試験において抵抗性対照変種として使用することができる。評価される植物、系統、または集団がNCIMB 43637と同じ抵抗性を示し、この植物、系統、または集団が、本明細書に記載の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を染色体8に含む場合、この植物、系統、または集団は、本発明のToBRFV抵抗性を有しており、したがって、本発明の植物であるとみなされる。
【0051】
本発明の植物は、商業栽培に適するように農業特性が改善された、栽培されたS.リコペルシクムであってもよい。したがって、この植物は農業的にエリートな植物である。
【0052】
一実施形態では、本発明のToBRFV抵抗性S.リコペルシクム植物は、Tm-1遺伝子の抵抗性付与対立遺伝子を必要としない。一実施形態では、本発明のToBRFV抵抗性S.リコペルシクム植物は、抵抗性付与TOM1遺伝子またはTOM3遺伝子を必要としない。抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を含む、本発明のToBRFV抵抗性S.リコペルシクム植物は、抵抗性を示すためにトバモ抵抗性付与Tm-1遺伝子、TOM1遺伝子、またはTOM3遺伝子の存在を必要としない。
【0053】
一実施形態では、本発明のToBRFV抵抗性S.リコペルシクム植物は、同時係属出願であるWO2019110821号に記載されているように、抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子および染色体11の抵抗性を付与するQTLを含む。特に染色体11にQTLを付与する前記抵抗性は、WO2021110855号および同時係属出願であるPCT/EP2021/055008にそれぞれ記載される抵抗性を付与するCCA遺伝子または抵抗性を付与するAlbino3様遺伝子を含む。これらのQTLの組合せ、特に抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子に前記遺伝子のいずれかの組合せにより、S.リコペルシクムにおいてより強力で耐久性のあるToBRFV抵抗性が得られる。
【0054】
本発明はまた、本発明の植物から収穫されたトマト果実であって、植物のToBRFV抵抗性をもたらす、本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子をそのゲノムに含む、トマト果実に関する。このトマト果実は、本明細書では「本発明の果実」または「本発明のトマト果実」とも呼ばれる。本明細書で使用する場合、「トマト果実」とは、ソラヌム・リコペルシクム種の植物によって生産される果実である。
【0055】
本発明は、前記QTLを欠くS.リコペルシクム植物において、染色体8に抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を含むQTLを導入することを含む、ToBRFV抵抗性S.リコペルシクム植物の製造方法であって、QTL領域は、配列番号1と配列番号42との間に位置しており、配列番号1~44に示されるSNPからなる群から選択されるマーカー、好ましくは、配列番号3、配列番号4、配列番号14、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号34、配列番号42、配列番号43、および配列番号44に示されるSNPからなる群から選択されるマーカー、最も好ましくは、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号43、および配列番号44に示されるSNPからなる群から選択されるマーカーのいずれかに連鎖している、製造方法に関する。
【0056】
本発明は、本明細書に記載の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を、前記対立遺伝子を欠くS.リコペルシクム植物に導入することを含む、ToBRFV抵抗性S.リコペルシクム植物の製造方法に関する。
【0057】
本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子は、抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を含む別の植物から、植物が性的に適合する場合、交配および選択などの一般的に使用される育種技術によって導入することができる。そのような導入は、通常は容易に交配できる同種の植物から、または近縁種の植物からであってもよい。交配が困難であった場合は、胚レスキューなどの当技術分野で知られている技術によって克服することができるし、または、シスジェネシスを適用することもできる。好適には、抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子の別の植物への組み込みを追跡するために、本明細書に記載のマーカーを使用する。
【0058】
上記の方法は、特に、本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を、そのような遺伝情報の組み込みに適した植物種に導入するために使用することができる。特定の実施形態では、前記抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子は、抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を含むソラヌム・ピンピネリフォリウム植物からか、またはS.リコペルシクムと性的に適合する別のソラヌム種から、抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を欠くソラヌム・リコペルシクム植物に、例えば、交配と選択を含む標準的な育種方法を使用することにより、導入することができる。別の実施形態では、前記抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子は、抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を含むソラヌム・リコペルシクム植物から、抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を欠くソラヌム・リコペルシクム植物に、標準的な育種方法を使用して、導入することができる。
【0059】
染色体8の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子は、ソラヌム・リコペルシクム植物の、寄託番号NCIMB 43637の下でNCIMBに寄託された代表的な種子からか、またはNCIMB 43637の寄託された種子から、またはその性的または無性生殖の子孫(descendants)である寄託の子孫(progeny)から導入することができる。ソラヌム・リコペルシクムの染色体8の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子の導入により、ToBRFV抵抗性がもたらされる。
【0060】
あるいは、本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子は、例えばトランスジェニックアプローチを使用することによって、別の性的に不適合な植物から、移入または導入することができる。適切に使用できる技術には、アグロバクテリウム媒介トランスフォーメーション法の使用など、当業者に知られている一般的な植物トランスフォーメーション技術が含まれる。CRISPR/Casシステムの使用のようなゲノム編集法もまた、例えば、内因性の感受性Tom2a遺伝子を編集して、抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子に改変することによって、本発明の植物を得るために使用することができる。感受性Tom2a遺伝子は、特に、配列番号48の105位のAlaの欠失、配列番号48の187位のArgからGlyへの変換、配列番号48の225位のGlyからセリンへの変換、または配列番号48の282位のThrからAlaへの変換、または相同タンパクの対応する位置にそれらの改変のいずれかをもたらす突然変異の誘発を標的とすることが可能である。これらの改変の組合せをもたらす標的化された改変もまた、本発明の一部を形成する。感受性Tom2a遺伝子をさらに編集して、非機能的なTom2aタンパク質を得ることができるが、これは本発明の一部である。
【0061】
本発明はさらに、ホモ接合性またはヘテロ接合性のToBRFV抵抗性をもたらす、本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を含む、本発明の植物に関する。植物は、近交系、ハイブリッド、二倍体ハプロイドであるか、または分離集団の植物である。好ましくは、本発明の植物は非トランスジェニック植物である。
【0062】
本発明はまた、本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を染色体8に含むソラヌム・リコペルシクム種子であって、種子から生長した植物が本発明の植物である、種子に関する。好ましい実施形態では、本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子は、種子中にホモ接合的に存在し、種子から生長した植物は、ToBRFVに対して抵抗性である。本発明はまた、種子が本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を保有する、本発明の植物によって生産される種子にも関し、したがって、前記種子から生長した植物は本発明の植物である。本発明はまた、前記種子を植物に生長させることによる、本発明の植物の生産のための前記種子の使用に関する。本発明は、果実または種子を含む、本発明の植物の植物部分にも関し、前記植物部分は、そのゲノム中の染色体8に本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を含む。
【0063】
さらに、本発明は、本発明のトマト果実またはその一部を含む食品または加工食品にも関する。食品は、1つまたは複数の加工工程を経ていてもよい。そのような加工工程は、以下の処理のいずれか1つまたはそれらの組合せを含み得るが、これらに限定されない:皮むき、カッティング(cutting)、洗浄、搾汁、調理、冷却、または本発明の果実を含むサラダ混合物。得られる加工された形態も本発明の一部である。
【0064】
本発明はまた、本発明のソラヌム・リコペルシクム植物の生産に適した繁殖材料であって、ここで、繁殖材料は、有性生殖に適しており、特に小胞子、花粉、子房、胚珠、胚嚢、および卵細胞から選択されるか;または、栄養繁殖に適しており、特にカッティング(cutting)、根、茎、細胞、プロトプラストから選択されるか;または、再生可能な細胞の組織培養に適しており、特に、葉、花粉、胚、子葉、胚軸、分裂組織細胞、根、根冠、葯、花、種子、および茎から選択され;ここで、繁殖材料から生産された植物は、ToBRFV抵抗性を付与する、本明細書で規定される染色体8に本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を含む、繁殖材料に関する。本発明の植物は、繁殖材料の供給源として使用することができる。
【0065】
さらに、本発明は本明細書で規定される本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を含む細胞に関する。本発明の細胞は、本発明の植物から得ることができるか、または本発明の植物に存在することができる。そのような細胞は、単離された形態、または完全な植物の一部、またはその一部からのいずれかであってもよく、そのような細胞は、栽培されたS.リコペルシクム植物のToBRFV抵抗性をもたらす本明細書に記載の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を決定する遺伝情報を含むため、依然として本発明の細胞を構成する。本発明の植物の各々の細胞は、ToBRFV抵抗性をもたらす遺伝情報を持っている。本発明の細胞はまた、本発明の新しい植物に再生できる再生可能な細胞であってもよい。この文脈における遺伝情報の存在は、本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子の染色体8における存在であり、ここで、抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子は、本明細書で規定される通りである。
【0066】
本発明はさらに、本明細書で規定されるように、本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を染色体8に含む、本発明の植物の植物組織に関する。前記組織は、未分化の組織またはすでに分化した組織であってもよい。未分化の組織は、例えば、茎の先端、葯、花弁、または花粉であり、マイクロプロパゲーションで使用して、本発明の新しい植物に生長する新しい植物体を得ることができる。前記組織は、本発明の細胞から増殖させることもできる。
【0067】
本発明はさらに、本発明の植物、細胞、組織、または種子の子孫であって、子孫は、本明細書で規定されるように、本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を染色体8に含み、ここで、抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子の存在は、好ましくはホモ接合型で、ToBRFV抵抗性をもたらす、子孫に関する。そのような子孫は、それ自体が植物、カッティング(cutting)、種子、細胞、または組織である可能性がある。
【0068】
本明細書で使用される場合、「子孫」(progeny)は、本発明の植物との交配からの、F1、F2、またはさらなる世代などの、最初のおよび全てのさらなる子孫(descendants)を意味することを意図しており、ここで、交配は、それ自体との交配または別の植物との交配を含み、ここで、子孫(progeny)であると決定される子孫(descendant)は、本明細書で規定されるように、ToBRFVに対する抵抗性をもたらす、本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を染色体8に含む。この交配で使用される本発明の植物は、適宜、寄託された種子から生長した植物を、1つまたは複数のそれに続く世代のために、それ自体または別の植物と交配することにより、直接的な、またはさらなる子孫(descendant)である寄託物NCIMB 43637の種子から生長した植物であるか、またはその子孫(progeny)種子から生長した植物であり、ここで、子孫(progeny)種子は、本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を染色体8に保持している。
【0069】
子孫(progeny)はまた、染色体8に本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を持っており、ToBRFVに抵抗性であり、本発明の植物または植物の子孫(progeny)から栄養繁殖または別の形態の繁殖により得られる、S.リコペルシクム植物を包含する。
【0070】
本発明はさらに、有性生殖に適した本発明のS.リコペルシクム植物の一部に関し、その植物部分は、染色体8に本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を含み、ここで、この抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子は、本明細書で規定される通りである。そのような部分は、例えば、小胞子、花粉、子房、胚珠、胚嚢、および卵細胞からなる群から選択される。
【0071】
さらに、本発明は、栄養繁殖に適した本発明のS.リコペルシクム植物の一部、特に、抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を染色体8に含む、カッティング(cutting)、根、茎、細胞、またはプロトプラストに関し、ここで、この抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子は、本明細書で規定される通りである。前述のように、植物の一部は、繁殖材料とみなされる。繁殖材料から生産される植物は、本明細書で規定されるように、本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を染色体8に含み、その抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子の存在は、ToBRFV抵抗性をもたらす。
【0072】
本発明はさらに、繁殖材料でもあり、そのゲノム中の染色体8に本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を含む本発明の植物の組織培養物であって、その抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子は本明細書で規定される通りである、組織培養物に関する。前記組織培養物は、再生可能な細胞を含む。そのような組織培養物は、植物の任意の部分から、特に葉、花粉、胚、子葉、胚軸、分裂組織細胞、根、根冠、葯、花、種子、または茎から選択または誘導することができる。前記組織培養物は、本明細書で規定されるように、本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を染色体8に含むS.リコペルシクム植物に再生することができ、ここで、再生されたS.リコペルシクム植物は、ToBRFV抵抗性を発現し、これもまた、本発明の一部である。
【0073】
本発明はさらに、植物育種における本発明の植物の使用に関する。したがって、本発明はまた、ToBRFVに抵抗性である栽培されたS.リコペルシクム植物の開発のための育種方法にも関し、ここで、本明細書で規定されるように、本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を染色体8に含む植物は、前記抵抗性を別の植物に付与するために使用される。ToBRFV抵抗性を有する別の植物を開発するために植物育種に使用できる植物の代表的な種子は、寄託番号NCIMB 43637の下でNCIMBに寄託された。
【0074】
本発明はまた、染色体8の本発明のQTLの使用、特に、ToBRFVに抵抗性のあるソラヌム・リコペルシクム植物の開発のための、本明細書で規定されるような、抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子の使用に関する。
【0075】
本発明はまた、ソラヌム・リコペルシクム植物、またはソラヌム・ピンピネリフォリウム植物、またはソラヌム・リコペルシクムと性的に適合する別のソラヌム種の植物におけるToBRFV抵抗性の同定のためのマーカーであって、そのマーカーが配列番号1~44に示されるSNPからなる群から選択され、好ましくは、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号43、および配列番号44で示されるSNPからなる群から選択され、最も好ましくは、配列番号26、配列番号28、配列番号43、および配列番号44で示されるSNPからなる群から選択される、マーカーに関する。配列番号1と配列番号42との間の上記で規定された領域における多型性に基づいて、特に、配列番号47と比較した多型性に基づいて開発された任意の他のマーカーもまた、本発明の一部である。
【0076】
ソラヌム・リコペルシクム植物、またはソラヌム・ピンピネリフォリウム植物、またはソラヌム・リコペルシクムと性的に適合する別のソラヌム種の植物におけるToBRFV抵抗性の同定のための、配列番号1~44で示されるSNPからなる群からの任意のマーカーの使用、好ましくは配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号43、および配列番号44で示されるSNPからなる群からの任意のマーカーの使用、最も好ましくは、配列番号26、配列番号28、配列番号43、および配列番号44に示されるSNPからなる群から選択されるマーカーによる使用もまた、本発明の一部である。配列番号22と34の間の領域における任意の他の多型性を決定することを含む、染色体8のQTLの同定のための、特にToBRFV抵抗性をもたらす抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子の同定のための他のマーカーを開発するためのこれらのマーカーの任意の使用もまた、本発明の一部である。
【0077】
本発明はまた、ToBRFV抵抗性のソラヌム・リコペルシクム植物、またはToBRFV抵抗性ソラヌム・ピンピネリフォリウム植物、またはToBRFV抵抗性であるソラヌム・リコペルシクムと性的に適合する別のソラヌム種の植物を選択する方法であって、染色体8の本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子の存在を同定すること、およびToBRFV抵抗性植物として前記抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を含む植物を選択することを含む、方法に関する。
【0078】
染色体8の本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子の存在の同定は、配列番号1~44に示されるSNPからなる群から、好ましくは、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号43、および配列番号44で示されるSNPからなる群から選択されるマーカーの少なくとも1つを使用して、最も好ましくは、配列番号26、配列番号28、配列番号43、および配列番号44に示されるSNPからなる群から選択されるマーカーによって、適切に行われる。
【0079】
本発明はまた、ソラヌム・リコペルシクム植物、ソラヌム・ピンピネリフォリウム植物、またはソラヌム・リコペルシクムと性的に適合する別のソラヌム種の植物を、ToBRFV抵抗性を付与する本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子の存在について試験する方法であって、配列番号1~44で示されるSNPからなる群から、好ましくは、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号43、および配列番号44で示されるSNPからなる群から選択されるマーカー配列の存在を、最も好ましくは、植物のゲノム中の配列番号26、配列番号28、配列番号43、および配列番号44に示されるSNPからなる群から選択されるマーカーによって検出することを含む、方法に関する。
【0080】
ToBRFV抵抗性を付与する本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子の存在について、ソラヌム・リコペルシクム植物、ソラヌム・ピンピネリフォリウム植物、またはソラヌム・リコペルシクムと性的に適合する別のソラヌム種の植物を試験する方法は、ToBRFV抵抗性植物としての前記抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を含む、ソラヌム・リコペルシクム植物、ソラヌム・ピンピネリフォリウム植物、またはソラヌム・リコペルシクムと性的に適合する別のソラヌム種の植物を選択することをさらに含んでもよい。ソラヌム・リコペルシクム植物、ソラヌム・ピンピネリフォリウム植物、またはこのように選択されたソラヌム・リコペルシクムと性的に適合する別のソラヌム種の植物は、その後、ToBRFV抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を、抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を欠くS.リコペルシクム植物に遺伝子移入するための供給源として使用できる。
【0081】
本発明はまた、ToBRFVに抵抗性であるソラヌム・リコペルシクム植物の生産方法であって、以下:
a) 本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を染色体8に含む、本発明の植物を別の植物と交配すること;
b) 適宜、交配によってもたらされた植物の自家受粉および/または交配を1回または複数回行って、さらなる世代集団を取得すること;
c) 工程a)の交配によってもたらされた集団からか、または工程b)のさらなる世代集団から、本明細書で規定される抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を染色体8に含み、抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子がホモ接合で存在する場合、ToBRFVに対して抵抗性である植物を選択すること
を含む方法に関する。
【0082】
本発明はまた、ToBRFVに抵抗性であるソラヌム・リコペルシクム植物の生産方法であって、以下:
a)本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を染色体8に含む第1の親植物を、本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を含まない植物である第2の親植物と交配すること;
b) 工程a)によってもたらされた植物を第2の親植物と少なくとも3世代戻し交配すること;
c) 3番目またはそれ以上の戻し交配集団から、少なくとも工程a)の第1の親植物の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を染色体8に含む植物を選択すること
を含む方法に関する。
【0083】
抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を染色体8に含む植物の選択は、好適には抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子に遺伝的に連鎖した分子マーカーを使用することによって行われ、このマーカーは、配列番号1~44に示されるSNPからなる群から選択され、好ましくは、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号43、および配列番号44で示されるSNPからなる群から選択され、最も好ましくは、配列番号26、配列番号28、配列番号43、および配列番号44に示されるSNPからなる群から選択されるマーカーによって、染色体8の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子の同定のために、行われる。あるいは、またはさらに、植物は、特に、ToBRFV感染後の植物におけるウイルス力価の不在または大幅な低下を決定するためのqPCR試験を実行することによって、ToBRFVに対する抵抗性を有することが確認され得る。
【0084】
一実施形態において、ToBRFVに対して抵抗性であるソラヌム・リコペルシクム植物の生産方法において使用される本発明の植物は、NCIMB受託番号NCIMB 43637の下で寄託された種子から生長した植物、またはその子孫植物である。
【0085】
本発明はさらに、ToBRFV抵抗性を含むソラヌム・リコペルシクム植物に別の所望の形質を導入する方法であって、以下:
a) 抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を染色体8に含む本発明のソラヌム・リコペルシクム植物を、他の所望の形質を含む第2のソラヌム・リコペルシクム植物と交配させて、F1子孫を生産すること;
b) 適宜、抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子および他の所望の形質を含む植物を、F1において選択すること;
c) 適宜、選択されたF1子孫をいずれかの親と交配して、戻し交配子孫を生産すること;
d) ToBRFV抵抗性および他の所望の形質を含む、戻し交配の子孫を選択すること;ならびに
e) 適宜、工程c)およびd)を連続して1回または複数回繰り返して、他の所望の形質を含み、ToBRFVに対する抵抗性を有する、選択された4番目またはそれ以降の戻し交配の子孫を生産することを含む方法を提供する。戻し交配は、3~10回までの戻し交配後に、戻し交配の子孫が安定し、親系統として使用できるようになるまで、適宜、行われる。
【0086】
一実施形態では、別の所望の形質を、ToBRFVに対する抵抗性を含むソラヌム・リコペルシクム植物に導入する方法において使用される、本発明の植物は、NCIMB受託番号NCIMB 43637の下で寄託された種子から生長した植物、またはその子孫植物である。
【0087】
自家受粉工程は、上記の方法における交配または戻し交配工程のいずれかの後に実行されてもよい。ToBRFV抵抗性および他の所望の形質をもたらす本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を染色体8に含む植物の選択は、方法の任意の交配または自家受粉の工程に従って、代替的に行うことができる。他の所望の形質は、以下の群から選択することができるが、これらに限定されない:細菌性、真菌性またはウイルス性疾患に対する抵抗性、昆虫または害虫抵抗性、発芽の改善、植物の大きさ、植物の種類、収量の改善、貯蔵寿命の改善、水ストレス耐性、塩ストレス耐性、熱ストレス耐性、および雄性不稔。本発明は、本方法によって生産されたソラヌム・リコペルシクム植物およびそれから得られたトマト果実を含む。
【0088】
本発明はさらに、本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を染色体8に含むソラヌム・リコペルシクム植物の生産方法に関し、抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子のホモ接合体の存在が、組織培養を使用することによって、または栄養繁殖を使用することによって、ToBRFVに対する抵抗性をもたらす。
【0089】
本発明はさらに、本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子をホモ接合的に含み、ToBRFVに対して抵抗性である、倍加半数体系統を生成するために倍加半数体生成技術を使用することによって、本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を染色体8に含み、本明細書で規定されるToBRFVに対する抵抗性を有するソラヌム・リコペルシクム植物の生産方法を提供する。
【0090】
本発明はさらに、本明細書で規定される本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を染色体8に含むソラヌム・リコペルシクム植物の生産方法であって、前記抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子の存在が、ToBRFV抵抗性をもたらし、前記抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を含む種子を前記ソラヌム・リコペルシクム植物に生長させることを含む方法に関する。一実施形態では、本方法で使用される種子は、寄託番号NCIMB 43637の下でNCIMBに寄託された種子、またはその子孫種子である。
【0091】
本発明はさらに、本発明の種子からソラヌム・リコペルシクム植物を生長させること、植物に種子を有するトマト果実を生産させること、トマト果実を収穫すること、およびそれらの種子を抽出することを含む種子の生産方法に関する。種子の生産は、それ自体と、または、適宜、本発明の植物でもある別の植物と交配することによって、適切に行われる。そのように生産された種子は、本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を含む植物に生長する能力を有する。種子生産に使用される植物における好ましい実施形態では、抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子はホモ接合的に存在する。
【0092】
本発明はさらに、ハイブリッド種子ならびに、第1の親植物を第2の親植物と交配すること、および得られたハイブリッド種子を収穫することを含む、前記ハイブリッド種子を生産する方法であって、第1の親植物および/または第2の親植物が、本明細書で規定される本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を染色体8に含む、本発明の植物である方法に関する。得られたハイブリッド種子およびハイブリッド種子から生長させることができるハイブリッド植物もまた、本発明の一部である。好ましい実施形態では、両方の親植物が、本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を含み、ハイブリッド種子は、本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子をホモ接合的に含む。
【0093】
本明細書で使用される本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子の染色体8の遺伝子移入は、標準的な育種技術によって、前記抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を含むドナー植物から、前記抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を保有しないか、または抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子をヘテロ接合的に保有するレシピエント植物への抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子の導入を含む。交配および選択、戻し交配、組み換え選択、または抵抗性植物から感受性植物への遺伝子配列の移入をもたらす他の育種方法などの、育種方法を使用することができる。本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を含む植物の選択は、qPCR試験を行うことによって、またはToBRFVに対する抵抗性の観察によるバイオアッセイを行うことによって行うことができるか、または選択は、本明細書において規定されたマーカー、好ましくは、配列番号1~44に示されるSNPからなる群から選択されるマーカー、好ましくは、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号43、および配列番号44に示されるSNPからなる群から選択されるマーカーを使用して、最も好ましくは、配列番号26、配列番号28、配列番号43、および配列番号44に示されるSNPからなる群から選択されるマーカーにより、マーカー支援育種、またはこれらの選択方法の組合せによって、行うことができる。ドナー植物は、ソラヌム・リコペルシクム植物、ソラヌム・ピンピネリフォリウム植物、またはS.リコペルシクムと性的に適合する別のソラヌム種の植物であってもよい。選択は、レシピエント植物とドナー植物との間の最初の交配からF1または任意のさらなる世代において開始され、その後、本明細書において同定および定義されるマーカーを適切に使用することによって、それ自体または別の植物とさらに交配される。
【0094】
本発明は、説明の目的のみである以下の実施例で、さらに説明される。実施例は、本発明を限定することをいかなる意味でも意図していない。実施例および本出願において、以下の図を参照する。
【0095】
寄託
染色体8に本発明の抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子をホモ接合で含むトマト ソラヌム・リコペルシクム集団20R.1552Q08_04の種子は、2020年7月14日にNCIMB Ltd、Ferguson Building、Craibstone Estate、Bucksburn、Aberdeen AB21 9YA、英国、NCIMB Ltdに寄託物受託番号NCIMB 43637の下、寄託された。
【実施例
【0096】
[実施例1]
染色体8のToBRFV抵抗性QTLのマッピング
S.ピンピネリフォリウム供給源GNL.3951を用いて以前に作製されたBC3F2集団および内部育種系統TB2は良好な表現型抵抗性レベルを持っていたことが観察されたが、qPCRを行うと、それらはウイルス力価レベルで分離していた。供給源自体は、感染後のウイルス力価が低かったため(実施例2、図2、表5)、繁殖プロセス中に完全な抵抗性メカニズムが移入されたわけではないようである。ウイルスの複製が制限されていると、抵抗性がより信頼できることが期待されるため、新しいF1を取得するために、BC3F2をドナー植物と再び交配することにした。その後、F2集団が3つのF1植物から作製され、ToBRFV感染後の植物のウイルス力価を決定するために再びqPCR観察が行われた。集団のうちの2つは、供給源に匹敵するウイルス力価レベルを有することが観察されたが、これは、植物に病徴がないだけでなく、植物内でのウイルス複製も大きく減少したことを意味する。しかしながら、第3の集団は、qPCR試験において多くの分離を示した(実施例3、図2)。
【0097】
この観察結果は、どの遺伝子領域が依然としてヘテロ接合体であるかを決定し、3つの集団間の違いを同定するために、広範なマーカー分析で追跡された。このことにより、染色体8の領域がウイルス複製の制限と、より優れた抵抗性レベルとに関与している可能性があることがわかった。この領域は、低いウイルス力価を示した2つのF2集団に対して固定されていたが、感染後に植物内に存在するウイルスを分離した集団に対しては依然として分離していた。さらなるファインマッピングを通して、染色体8のこのQTL領域をさらに絞り込むことができた。元来のQTL内の組み換え体の同定は、最初に、配列番号1と配列番号42との間に位置する、およそ1.5Mbpのより小さい領域をもたらした。この領域内で、QTLに連鎖された、いくつかの多型SNPマーカーが同定された。
【0098】
この分析で同定され、QTL領域に存在する多型SNPマーカーを表4に示す。公開されているSL3_00トマトマップに基づくSNPの正確な物理的位置もまた、表4に見出すことができる。これらのマーカーの配列、すなわち抵抗性を示すSNPをマーカー設計に使用されるいくつかの周辺ヌクレオチドと組み合わせたものを図1に示す。これらのマーカー、特にこれらのマーカーのSNPは、QTLと共分離することが決定された。マーカーは、寄託物から生長した植物またはその子孫におけるQTLの存在を同定するために使用することができる。これらマーカーは、QTLを含む他の任意のS.リコペルシクム集団における、染色体8のToBRFV抵抗性に関する本発明のQTLの存在を同定するため、さらに使用することができる。さらに、マーカーは、S.ピンピネリフォリウムまたは別のソラヌム種の抵抗性を同定するために使用できる。
【0099】
QTLをホモ接合的に有するように選択されたF2およびF3植物で、さらなる観察を行い、QTLが存在すると、表3に記載されたスケールに従って、平均0~1、場合によっては1.5に向かう疾患スコアをもたらし、qPCR分析で観察した場合、ウイルス力価が低いことが確認された。育種系統を反復親としてさらに戻し交配を行い、戻し交配世代のその後の自家受粉集団でも、QTLがホモ接合体として存在すると、ToBRFVに対して抵抗性のある植物をもたらすことが見出された。
【0100】
【表4】
【0101】
SNPの位置は、図1に見られるように、配列番号の101位に存在し、太字で下線が引かれている。配列番号28について、マーカーとして使用される多型は101~104位にある。配列番号30について、マーカーとして使用される多型は101~103位にある。このようにして、野生型配列と比較した場合の101位以降のGCCの欠失およびGの欠失をそれぞれ同定することができる。
【0102】
配列番号28および30は、一塩基多型ではなくInDelであるため、技術的に言えばSNPではない。配列番号28は、公開参照ゲノム中の野生型の配列の61.253.155位から始まるヌクレオチドTGCCの欠失を有し、これはTによって置換されてGCCの実際の欠失がもたらされる。野生型配列の61.253.155から61.253.161に対応する位置はTGCCGCTである一方で、抵抗性系統は、配列番号28の101から104位で見出されるようにTGCTを有しており、すなわち、GCCの欠失がある。配列番号30は、公開参照ゲノム中の野生型の配列の61.254.440位から始まるヌクレオチドTGの欠失を有し、これはTに置換されてGの実際の欠失がもたらされる。野性型配列の61.254.440から61.254.443に対応する位置はTGGAである一方で、抵抗性系統は、配列番号30の101~103位に見出されるようにTGAを有しており、すなわち、Gの欠失がある。簡潔にする理由で、これらのInDel多型は本発明の文脈においてSNPとも呼ばれる。
[実施例2]
【0103】
ToBRFV抵抗性供給源のqPCR試験
表現型ToBRFV抵抗性の供給源にToBRFVを感染させ、その後ウイルス力価を観察した。これは、抵抗性が単なる表現型であり、病徴はなかったがウイルスはまだ複製しており、したがって供給源が抵抗性と呼ばれるかどうか、または、ウイルス力価が本当に大幅に低下しているか、もしくは、無く、したがって、供給源が、確かに抵抗力があるかどうかを決定するために行われた。
【0104】
ウイルス力価の測定は、qPCR試験を実行することによって行われた。この試験では、ToBRFV感染植物から直径約6mmのリーフパンチ試料を採取した。これらの試料を500μlのPBS緩衝液中で粉砕し、得られた50μlの懸濁液を96ウェルのキングフィッシャーFlex分離プロトコールで使用した。葉の材料の分離は、innuPREP DNA/RNAウイルスプラスキットを使用して行った。50℃で5分間、および95℃で20秒、引き続き40サイクルの95℃で10秒および60℃で60秒のプログラムを使用して、試料を96CFX qPCRサーモサイクラー(Biorad)で分析した。PCR産物を得るために必要なサイクル数が、試料中に存在するウイルスの量の測定値(Cq_ToBRFV)である。異なる遺伝的背景を持ち、異なる試料サイズを持つ試料を比較できるようにするために、トマト参照遺伝子であるPHD遺伝子を各PCRランに含め、結果を補正した(Cq_PHD)。各試料の最終値、Cq_corrは、Cq_ToBRFV - Cq_PHD = Cq_corrとして計算される。Cq_PHDは通常25~29の間であるため、例えばCq_ToBRFVが7の非常に高いウイルス力価を持つ試料では、最終的なCq_corrは約-20になる。ウイルス力価が低い試料では、Cq_corrが-10から0程度になる。
【0105】
アッセイで使用されるプライマーを表1に示す。アッセイで使用されるPCR容量を表2に示す。
【0106】
2つの内部育種系統(TO1およびTB2)の5つの異なる試行試料から、表現型抵抗性を有する、すなわちバイオアッセイで病徴を示さなかった2つの供給源を収集した。各試行において、系統ごとに5から10の植物が含まれていた。感染後のウイルス力価を決定するために、これらの試料の各々に対してqPCR分析が行われた。最初の試行であるヨルダン_冬は、積極的に接種した野外試行であった。他の試行は、管理された条件下で行われ、それによって、苗に接種してスコアを付けた。異なる試行では、各遺伝子型の結果の間にいくらかの変動が観察されたが、ウイルス力価と遺伝子型の間には非常に良好な相関関係があった(表5)。2つの耐性系統のスコアは同等で、-14.94~-19.94の平均Cq_corr値を有していた。病徴のない供給源GNL.3919は、ウイルス力価が、-11.70から-17.19の間の値で、感受性育種系統に比べてそれほど低くなかったため、明らかに耐性供給源とみなさざるを得なかった。しかし、他の供給源であるGNL.3951のスコアは、試行ごとの平均Cq_corr値が-0.40から-8.75の間であって、全ての試行で非常に説得力のある一貫した低レベルのウイルス力価を記録した。したがって、植物でのウイルスの複製が減少している真の抵抗性のためには、GNL.3951のジェネティクスを使用する必要があることが確認された。
【0107】
【表5】
[実施例3]
【0108】
ToBRFV戻し交配ならびにF2集団および寄託物のqPCR試験
実施例1に記載したように、最初にBC3F2集団をGNL.3951と感受性S.リコペルシクム系統TB2との間で作製した。これらの集団に対するToBRFVのバイオアッセイからの試料でウイルス力価が決定され、その力価がGNL.3951供給源と同等ではないことが見出された。したがって、BC3F2とGNL.3951の間で新しい交配が行われ、このF1はF2集団を取得するために自家受粉された。
【0109】
ここでも、ウイルスの病徴を観察するために、3つのF2集団をToBRFVに感染させた。3つのF1植物から生じるこれら3つのF2集団では、表現型のウイルス抵抗性が存在することが見出された。しかしながら、ウイルス力価を決定するためにqPCRアッセイを行ったところ、F2集団の1つはウイルス力価の明らかな分離を示した一方で、他の2つは抵抗性供給源と同等なウイルス力価レベルを有した(図2)。真の抵抗性、すなわちウイルス複製の減少は、バイオアッセイによって必ずしも決定できるわけではなく、ウイルス力価を決定する試験で確認しなければならないと結論付けられた。S.リコペルシクム植物において、真の抵抗性、すなわちウイルス力価の減少を得ることもできたということも確認された。
【0110】
qPCRでウイルス力価を分離しなかったF2集団の1つから、自家受粉によってF3集団が得られた。実施例1に記載されるように、QTL分析から並行して開発されたマーカーを使用して、植物は、表4のマーカーに連鎖された染色体8のQTLを有することが確認された。ここでも、植物はToBRFVに感染し、ウイルス力価のqPCR分析が行われた。F3集団でもウイルスの複製が減少していることが確認されたため、抵抗性は、これらの植物においても維持されていたことがわかった(図3)。染色体8のQTLのために開発されたマーカーは、ウイルス力価の減少と共分離することが見出され、したがって、ウイルス力価の減少を同定するために使用できる。これらのF3集団の1つである20R.1552Q08_4は、その後、本発明のためにNCIMB 43637として寄託された。
[実施例4]
【0111】
ToBRFV抵抗性についての原因遺伝子としてのTom2aの同定
ToBRFV抵抗性を付与した染色体8のQTL領域内の実際の遺伝子を決定するために、最初に、元来使用された系統に由来する組み換え体、すなわちQTL領域に組み換えを有する系統、を使用して、さらにファインマッピング工程を実行した。組み換え体の表現型の決定後、関与するQTL領域は、配列番号22および配列番号34として示されるマーカーの間の領域に短縮された。この領域内に、7つの推定遺伝子が存在した(図4)。
【0112】
最初に、配列番号26、配列番号29、および配列番号30を有するマーカーが最も好ましいと同定され、これらのマーカーは、Tom2aと名付けられたSl3_00ゲノム内のSolyc08g077220.3として同定されたこれらの遺伝子の1つの中に存在していた。目標は、この遺伝子が材料中の抵抗性付与遺伝子であることを確認することであった。抵抗性は、本明細書に開示される遺伝子の対立遺伝子によって付与される。
【0113】
新たに開発された一連の系統では、さらなる組み換え体を得るために再び自家受粉が行われた。これらの組み換え体を、その領域(図4のSL001~SL013)に存在する13個のマーカーで分析したところ、その集団にはTom2a遺伝子の両側に組み換えを有する植物が含まれていることが見出された。SL004とSL005の間の組み換えにより、Solyc08g077220.3の残された遺伝子がこの領域から分離された。SL009とSL010の間の組み換えにより、Solyc08g077230.3からSolyc08g077220.3が分離された。これらの組み換え体の表現型の決定を行って、抵抗性表現型が実際にTom2a遺伝子の存在に連鎖している可能性があるかどうかを決定した。
【0114】
図4は、組み換え系統のマーカープロファイルおよび表現型の決定スコアを示している。領域内の示された遺伝子は、例えば、ソルゲノミクスのウェブサイトで見出すことができる、公開ITAG3.2参照の注釈に基づいて同定される。07を除いた、全ての12の組み換え体表現型は、SL005から残された遺伝子のクラスターが原因遺伝子を含む場合に予測されるものから外れていた。したがって、これらの遺伝子は除外される可能性がある。組み換え体07の表現型は、Solyc08g077220.3、すなわちTom2aがToBRFV抵抗性の原因遺伝子であるという予測と一致していた。これらの観察により、抵抗性材料中のTom2a遺伝子の対立遺伝子がトマト系統のToBRFV抵抗性を引き起こしていることが確かに確認された。
[実施例5]
【0115】
染色体8のQTLおよび染色体11のQTLを持つ材料のウイルス力価
同質遺伝子系統は、BC2F3集団の開発を通じて作製された。抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を含む本発明のQTLを有する系統、WO2019110821に記載の染色体11にQTLを有する系統、染色体8および染色体11のQTLの組合せを有する系統、ならびに染色体8および染色体11のQTLの感受性バージョンを有する系統を接種し、同質遺伝子BC2F3系統の開発のために交配で使用された感受性の親と一緒に分析した。染色体11のQTLは、抵抗性を付与するCCA遺伝子および/または抵抗性を付与するAlbino3様遺伝子を含んでいた。接種後、ウイルス力価についてのqPCR分析を、実施例2に記載のように行った。
【0116】
結果は、図7に示される。抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子を有する系統(4_IL_QTL08)におけるウイルス力価の減少は、第染色体11のQTL(5_IL_QTL08+11)と組み合わせると、なおさらに減少することが見出された。第染色体11のQTLのみを持つ系統(3_IL_QTL11)では、限定的なウイルス力価の減少であったため、これは非常に驚くべき効果であった。両方の抵抗性QTLを欠く同質遺伝子系統(2_IL_野生型)は、感受性の親(1_オリジナル系統)と同様のウイルス力価を持っていた。したがって、トマトにおける、より強力でより耐久性のある抵抗性は、染色体8および染色体11のQTLを組み合わせることで得ることができると結論付けられた。より強力でより耐久性のあるToBRFV抵抗性は、特に、抵抗性を付与するCCA遺伝子と合わせるか、または抵抗性を付与するAlbino3様遺伝子と合わせる、抵抗性を付与するTom2a対立遺伝子の組合せによって得ることができる。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図1-5】
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6
図7
図8
【配列表】
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【国際調査報告】