(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-14
(54)【発明の名称】光センサアレイの汚れを検出する方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/497 20060101AFI20230804BHJP
G01S 17/894 20200101ALI20230804BHJP
【FI】
G01S7/497
G01S17/894
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504045
(86)(22)【出願日】2021-06-15
(85)【翻訳文提出日】2023-03-09
(86)【国際出願番号】 EP2021066095
(87)【国際公開番号】W WO2022017689
(87)【国際公開日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】102020119116.2
(32)【優先日】2020-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】シンドラー、 フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】シャルフ、 アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ハインツラー、 ロビン
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AC02
5J084AC07
5J084BA03
5J084BA36
5J084BA39
5J084BA49
5J084CA03
5J084CA65
5J084EA17
(57)【要約】
本発明は、光センサ装置の信号経路内の汚れを検出する方法に関する。センサ装置の複数の光検出素子によって物体(O1~On)を検出するために、本発明は、物体(O1~On)で反射された光信号を検出し、それぞれの物体(O1~On)をその種類に従って分類し、分類中に特定の反射率を有する物体クラスに物体(O1~On)を割り当て、物体(O1~On)までの距離を測定し、検出された光信号の複数の光検出素子でのクロストークを特定し、分類中に特定された特定の反射率、距離及びクロストークの程度に基づいて、汚れの程度を特定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光センサアレイ(1)の信号経路内の汚れを検出する方法であって、
前記センサアレイ(1)内の複数の光検出素子を使用して物体(O1~On)に反射された光信号(LS2)を検出することによって前記物体(O1~On)を検出することと、
各物体(O1~On)をその種類によって分類し、分類する際に所定の反射率を有する物体クラスに前記物体(O1~On)を割り当てることと、
前記物体(O1~On)までの距離を特定することと、
検出された前記光信号(L2)における複数の光検出素子へのクロストークを特定することと、
分類中に特定された前記所定の反射率、前記距離、及び前記クロストークの大きさに基づいて汚れの程度を特定することと
を特徴とする方法。
【請求項2】
少なくとも1つのルックアップテーブルを用いて前記汚れの程度を特定することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記センサアレイ(1)によって得られた少なくとも1つの基準測定値に基づいて前記少なくとも1つのルックアップテーブルを生成することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
典型的なクロストーク構造について前記センサアレイ(1)によって検出された画像(B)をテストすることによってクロストークを特定することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記構造として直線構造を使用することと、
前記直線構造がぼやけている場合にクロストークがあると特定することと
を特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ぼやけの程度が増大するにつれて、より高い程度のクロストークが特定されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
検出された前記物体(O1~On)の寸法をそのような物体(O1~On)の予想寸法と比較し、
検出された前記物体(O1~On)の寸法の前記予想寸法からの正の偏差が増加することでクロストークの程度の増加を特定する
ようにクロストークを特定することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記センサアレイ(1)によって得られた少なくとも1つの基準測定値に基づいて前記物体(O1~On)に対応する物体クラスに対して特定された寸法から前記予想寸法を特定することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記物体(O1~On)に対応する物体クラスから前記予想寸法が導き出され、前記物体クラスに属する物体(O1~On)が標準化された寸法を有することを特徴とする、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
車両及び/又はロボットにおいて自動運転、特に完全自動運転、又は自律動作を行うための請求項1から9のいずれか一項に記載の方法の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光センサアレイの信号経路内の汚れを検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車両のライダセンサを含むセンサアレイの汚れを特定する方法であって、センサアレイによってカバーされる領域を異なるサブ領域に分割し、特定の周辺領域からサブ領域に送信されるセンサ信号を、センサアレイの操作性を特定するために評価する方法を開示している。これには、様々なサブ領域を通り過ぎて特定の周辺領域まで運転している間にそれらのサブ領域に対して順次検出されるセンサ信号を評価することが含まれる。このためのサブ領域は、それらの検出範囲がそれぞれ1つのサブ領域を表す複数の個々のセンサが検査されるように指定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第102005003970号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、先行技術を改善する、光センサアレイの信号経路内の汚れを検出する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、請求項1に示された特徴を有する方法によってこの目的を達成する。
【0006】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項の対象である。
【0007】
本発明による、物体を検出するためにライダセンサ又はカメラなどの光学センサアレイの信号経路内の汚れを検出する方法では、物体に反射された光信号をセンサアレイ内の複数の光検出素子によって検出する。各物体をその種類に基づいて分類し、分類する際に所定の反射率を有する物体クラスに物体を割り当てる。次に、物体までの距離を測定し、検出された光信号の複数の光検出素子へのクロストークを特定し、分類中に特定された所定の反射率、距離、及びクロストークの大きさに基づいて汚れの程度を特定する。
【0008】
センサアレイの光路が汚れていること又はセンサアレイの光路の汚れにより、センサアレイの検出性能が低下し、その結果、センサアレイによって検出されたデータを使用するシステム、特に運転者支援システム又は車両及び/又はロボットの自動運転、特に完全自動運転又は自律動作のためのシステムの可用性と信頼性が低下する。センサアレイ内に汚れがある場合、これは容易には修復できない潜在的な欠陥である。しかしながら、センサアレイのカバーの汚れは、適切なクリーニングシステムによって除去することができる。したがって、汚れの検出は、このようなクリーニングシステムの動作のため及び安全関連の本質的な制限を監視するために不可欠である。
【0009】
この方法により、センサアレイの光路内のごみ又は汚れを非常に簡単かつ信頼性の高い方法で検出することができるため、センサアレイによって検出されたデータを使用するシステムのシステム制限を正確に認識し、センサアレイをクリーニングすることができる。これにより、センサの可用性、ひいてはシステムの可用性が向上する。さらに、性能限界を確実に検出することで、システムの安全性が向上する。
【0010】
方法の1つの可能な実施形態では、少なくとも1つのルックアップテーブルを用いて汚れの程度を特定する。これは、格別な容易さと信頼性で行うことができる。
【0011】
方法の別の可能な実施形態では、センサアレイによって得られた少なくとも1つの基準測定値に基づいて少なくとも1つのルックアップテーブルを生成する。これにより、最適な参照が可能になる。
【0012】
方法の1つの可能な実施形態では、典型的なクロストーク構造についてセンサアレイによって検出された画像をテストすることによってクロストークを特定する。これにより、クロストークの容易で信頼性の高い特定が可能になる。
【0013】
方法の1つの可能な実施形態では、構造として直線構造を使用し、直線構造がぼやけている場合にクロストークがあると特定する。このような実施形態は、いわゆるラインスキャナ、特にライダとして構成されたセンサアレイに特によく適しており、クロストークの容易で非常に信頼性の高い特定を可能にする。詳細には、ぼやけの程度が増大するにつれて、より高い程度のクロストークが特定される。
【0014】
方法の1つの可能な実施形態では、検出された物体の寸法をそのような物体の予想寸法と比較することによってクロストークを特定し、検出された物体の寸法の予想寸法からの正の偏差が増加することでクロストークの程度の増加を特定する。この実施形態は、簡単で信頼できるクロストークの特定も可能にする。
【0015】
方法の1つの可能な実施形態では、センサアレイによって得られた少なくとも1つの基準測定値に基づいて物体に対応する物体クラスに対して特定された寸法から予想寸法を特定する。
【0016】
方法の1つの可能な実施形態では、物体に対応する物体クラスから予想寸法が導き出され、物体クラスに属する物体は標準化された寸法を有する。交通標識は、このような物体の例である。このような物体の標準化された寸法により、それらを検出された物体の寸法と比較した結果は非常に正確で信頼性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図面を参照して本発明の実施例を以下でより詳細に説明する。
【0018】
【
図1】レーザ光の送信中のライダの第1の実施形態の例とその検出範囲の概略斜視図である。
【
図2】反射されたレーザ光の受信中の
図1によるライダとその検出範囲の概略斜視図である。
【
図4】ライダによって検出された
図3のシーンの画像の概略図である。
【0019】
すべての図において同じ物には同じ符号が付けられている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、レーザ光として構成された光信号L1の送信中のライダとして構成された光センサアレイ1の第1の実施形態とその検出領域Eの斜視図を示す。
図2は、レーザ光として構成された反射光信号L2の受信中の
図1と同様のセンサアレイ1と検出領域Eの斜視図を示す。
【0021】
センサアレイ1は、例えば、図示されていない車両及び/又はロボットの構成要素であり、車両及び/又はロボットの周囲でセンサアレイ1によって検出されたデータは、車両及び/又はロボットの自動運転、特に完全自動運転又は自律動作を制御するために使用される。
【0022】
ライダとして構成されたセンサアレイ1は、光信号L1、詳細にはレーザパルスを送信し、これらの光信号L1は、検出領域Eで
図3に示されている近くの物体O1~Onによって反射され、ライダによって反射光信号L2として検出される。
【0023】
この場合、センサアレイ1は、詳細には示されていない複数の受信素子を含み、これらの受信素子は、検出領域Eの様々な立体角に結像される。詳細には、受信素子は光検出素子である。
【0024】
図示の実施形態の例では、ライダとして構成されたセンサアレイ1は、その全視野又は検出領域Eの線Yを照らし、同時にいわゆるイメージャ又はダイオードフィールドに様々な立体角を結像する、いわゆるラインスキャナである。これは垂直検出領域E全体を照らし、同時に複数の個々の受信機、詳細には光検出素子によって垂直解像度を得る。次に、この線Yは、例えばセンサアレイ1内の送信機と受信機を回転させることによって、検出領域Eを通して水平方向に偏向される。
【0025】
センサアレイ1の信号経路内に汚れ、特にしみ(スミアリング)又はごみがある場合、送信した光信号L1及び受信した光信号L2は汚れによって少なくとも部分的に散乱されるため、センサアレイ1内の複数の個々の受信機で検出される。このような反射されて検出された光信号L2の複数の光検出素子への散乱はクロストークとして知られている。
【0026】
したがって、センサアレイ1の信号経路内の汚れを検出するために、物体O1~Onをセンサアレイ1によって検出した後、物体O1~Onをその種類に基づいて分類し、物体O1~Onを分類する際に所定の反射率を有する物体クラスに物体を割り当てる。次に、物体O1~Onまでの距離を測定し、検出された光信号L2におけるクロストークを複数の光検出素子で特定し、分類中に特定された所定の反射率、距離、クロストークの大きさに基づいて汚れの程度を特定する。
【0027】
図3は、複数の物体O1~Onがあるシーンを示しており、1つの物体O1は交通標識、他の物体O2~Onは反射率の高い路面標識である。
【0028】
このシーンをライダラインスキャナとして構成されたセンサアレイ1によって測定又はスキャンすると、
図4に示す画像Bが得られる。
【0029】
これは、物体O1~Onがセンサアレイ1によって実際よりも大きく検出されることを明確に示している。これはクロストークによるものであり、クロストークの程度は対応する物体O1~Onの反射率、センサアレイ1から対応する物体O1~Onまでの距離、センサアレイ1の信号経路の汚れによる光散乱によって決まる。
【0030】
物体O1~Onからセンサアレイ1までの距離は、ランタイム測定によって直接ライダによって特定されるため、既知である。個々の物体O1~Onの反射率は、例えば、それらの種類による物体O1~Onの分類に基づいて、例えば交通標識として特定され、その後、デジタル道路地図からのデータを用いて精緻化される。このために、特定された反射率は、例えば、いわゆるマッピング車両及び/又はフリートデータによってデジタル地図に入力され、それによって厳密に最新かつ極めて正確に保たれる。このようにして、信号経路内の汚れは、クロストークの程度から直接導き出すことができる。また、散乱は受信した光信号L2との重なりがある場合にのみ現れるため、クロストークに基づいて、どの立体角に汚れが存在するかを特定することができる。したがって、例えば、ライダラインスキャナとして構成されたセンサアレイ1の検出領域の左側に汚れがある場合、その領域のクロストークは、光学的開口が汚れと重なっている間は非常に強くなる。重なりが少なくなるほど、影響は小さくなる。
【0031】
例えば、汚れの程度は、センサアレイ1によって、又は他の車両及び/又はロボットのセンサアレイ1などの他の同様のセンサアレイ1によって得られた少なくとも1つの基準測定値に基づいて生成された、少なくとも1つのルックアップテーブルに基づいて特定される。
【0032】
したがって、クロストークは、典型的なクロストーク構造についてセンサアレイ1によって検出された画像Bをテストすることによって特定される。例えば、ライダラインスキャナとして構成されたセンサアレイ1の場合、構造として直線構造が使用され、直線構造がぼやけている場合にクロストークがあると特定される。したがって、ぼやけの程度が増大するにつれて、より高い程度のクロストークが特定され得る。
【0033】
クロストークは、代替的に又は追加的に、検出された物体O1~Onの寸法をそのような物体O1~Onの予想寸法と比較することによって特定することができ、クロストークの程度の増加は、検出された物体O1~Onの寸法の予想寸法からの正の偏差が増加することで特定される。したがって、予想寸法は、センサアレイ1によって得られた少なくとも1つの基準測定値に基づいて分類における物体O1~Onに対応する物体クラスに対して特定された寸法から特定される。代替的に又は追加的に、予想寸法は、物体O1~Onに対応する物体クラスから導き出され、交通標識などの物体クラスに属する物体O1~Onは、標準化された寸法を有する。
【0034】
センサアレイ1の信号経路内の汚れを検出する前述の方法は、センサとして少なくとも1つのカメラを含むセンサアレイ1にも適用することができる。この場合、他の交通参加者及びインフラからの光及び車両又はロボットの光源からの光を使用して物体O1~Onを照らし、物体O1~Onから反射された光信号L2をカメラによって検出する。この場合に現れる効果は、フロントガラスのワイパーからの水の筋が車両のフロントガラスに残っている場合に他の車両のライトによって生成される、いわゆるライトセーバーに相当する。このような効果は、例えば画素(ピクセル)光による交通標識の照明の増加により、例えば車両のライトによって、交通標識に生じる可能性がある。結果として生じる効果を強化するために、カメラの露出時間を適宜調整することができ、詳細には長くすることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 センサアレイ
B 画像
E 検出領域
L1 光信号
L2 光信号
O1~On 物体
Y 線
【国際調査報告】