(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-14
(54)【発明の名称】圧縮ガス貯蔵装置、圧縮ガス貯蔵装置を有する車両
(51)【国際特許分類】
F17C 13/12 20060101AFI20230804BHJP
F16J 12/00 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
F17C13/12 301A
F16J12/00 G
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504646
(86)(22)【出願日】2021-07-15
(85)【翻訳文提出日】2023-01-23
(86)【国際出願番号】 EP2021069830
(87)【国際公開番号】W WO2022023063
(87)【国際公開日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】102020209664.3
(32)【優先日】2020-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ブレンク,マルクス
【テーマコード(参考)】
3E172
3J046
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB05
3E172BB12
3E172BB17
3E172BC05
3E172BC06
3E172BD03
3E172CA20
3E172DA03
3E172DA20
3E172JA05
3J046AA04
3J046AA09
3J046BA02
3J046BD02
3J046CA02
3J046CA04
3J046DA05
(57)【要約】
【課題】
本発明は、圧縮ガスを充填できる貯蔵容積(3)を画定する少なくとも1つの金属製貯蔵ハウジング(2)と、貯蔵ハウジング(2)に配置された少なくとも1つの感温および/または感圧過負荷弁(4)とを備える、移動用途のための、特に車両に搭載して水素を貯蔵するための圧縮ガス貯蔵装置(1)に関する。
【解決手段】
本発明によれば、貯蔵ハウジング(2)または圧縮ガス貯蔵装置(1)が、少なくとも部分的に、殊に少なくとも1つの過負荷弁(4)を覆わない状態で、熱防護シールド(5)によって取り囲まれる。本発明は、さらに、本発明による水素を貯蔵するための圧縮ガス貯蔵装置(1)を備える車両に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮ガスを充填できる貯蔵容積(3)を画定する少なくとも1つの金属製貯蔵ハウジング(2)と、前記貯蔵ハウジング(2)に配置された少なくとも1つの感温および/または感圧過負荷弁(4)とを備える、移動用途のための、特に車両に搭載して水素を貯蔵するための圧縮ガス貯蔵装置(1)において、
前記貯蔵ハウジング(2)または前記圧縮ガス貯蔵装置(1)が、少なくとも部分的に、殊に前記少なくとも1つの過負荷弁(4)を覆わない状態で、熱防護シールド(5)によって取り囲まれることを特徴とする、圧縮ガス貯蔵装置。
【請求項2】
前記熱防護シールド(5)は、コーティング、カバー、および/またはケーシングであるか、あるいはコーティング、カバー、および/またはケーシングを備えることを特徴とする、請求項1に記載の圧縮ガス貯蔵装置(1)。
【請求項3】
前記熱防護シールド(5)は、少なくとも部分的に、殊に温度伝導率(a)<1mm
2/sを有する非金属材料から製造されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の圧縮ガス貯蔵装置(1)。
【請求項4】
前記貯蔵ハウジング(2)は、実質的に円筒形状であり、および/または少なくとも1つのドーム状端部(6)を有し、前記端部の領域に前記過負荷弁(4)が配置されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の圧縮ガス貯蔵装置(1)。
【請求項5】
前記熱防護シールド(5)は、前記貯蔵ハウジング(2)の外周領域に配置され、少なくとも45°、好ましくは少なくとも90°、さらに好ましくは少なくとも120°の角度範囲にわたって延在することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の圧縮ガス貯蔵装置(1)。
【請求項6】
前記熱防護シールド(5)は、前記貯蔵ハウジング(2)の端面の領域に配置されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の圧縮ガス貯蔵装置(1)。
【請求項7】
前記熱防護シールド(5)は、前記貯蔵ハウジング(2)の外輪郭に適合させた内輪郭を有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の圧縮ガス貯蔵装置(1)。
【請求項8】
前記圧縮ガス貯蔵装置(1)は、複数の貯蔵ハウジング(2)を備え、前記複数の貯蔵ハウジングの各々が熱防護シールド(5)を備えることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の圧縮ガス貯蔵装置(1)。
【請求項9】
水素を貯蔵するための、請求項1から8までのいずれか1項に記載の圧縮ガス貯蔵装置(1)を備える車両。
【請求項10】
前記圧縮ガス貯蔵装置(1)の前記熱防護シールド(5)は、少なくとも前記車両の熱源の方に向いた前記圧縮ガス貯蔵装置(1)の外面の領域に配置されていることを特徴とする、請求項9に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部の特徴を有する圧縮ガス貯蔵装置に関する。圧縮ガス貯蔵装置は、特に移動用途、例えば燃料電池を用いて動かされる車両に搭載して水素を貯蔵するのに適するものである。したがって、本発明はさらに本発明による圧縮ガス貯蔵装置を有する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
移動用途での、例えば燃料電池車を動かすための水素の貯蔵は技術的要求が厳しく、主なコスト要因となる。基本的に、水素はいわゆるクライオタンクに超低温で、あるいは1つまたは複数の圧縮ガス容器に圧力下で貯蔵することができる。水素の連続的な取出しが確保されていない用途には、圧力下で、すなわち圧縮ガス貯蔵装置に貯蔵することが有利な解決策である。
【0003】
水素用の圧縮ガス貯蔵装置内では圧力が700barにまでなり得る。そのため貯蔵装置をそのように高い圧力向けに設計しなければならない。したがって、通常、金属、特に鋼、または高強度炭素繊維で製作された容器もしくは貯蔵ハウジングが選択される。加えて、炭素繊維は特に軽いという利点を有し、これで製造された容器は、特に鋼容器と比べて非常に小さい重量を有する。しかしそのような容器の製造には比較的手間がかかり、したがってより高価であることから、鋼容器が好んで使用される。
【0004】
車載で十分な量の水素を提供するために、圧縮ガス貯蔵装置は、通常、多数の同種の圧縮ガス容器を備えている。したがって容器の数が増すにつれてコスト上の利点が増す。
【0005】
圧縮ガス貯蔵装置内の高い貯蔵圧力に加えて、外部からの入熱によって圧縮ガス容器もしくは圧縮ガス貯蔵装置内で温度と、それに伴い圧力が上昇することとなる。同じように、個々の圧縮ガス容器の負荷が上昇し、それに伴い破裂の危険が高まる。そのため圧縮ガス貯蔵装置に対する安全要求は相応に高い。したがって、例えば圧縮ガス容器内の圧力が700barである圧縮ガス貯蔵装置は、安全要求を遵守するために1000barより格段に高い破裂圧力向けに設計される。それに加えて、安全のために容器ごとに少なくとも1つの感温および/または感圧過負荷弁が設けられ、この過負荷弁により圧力を許容最大圧力に制限することができる。なぜなら最大圧力に達すると弁が開き、このようにして負荷が軽減されるからである。
【0006】
特許文献1から、例えば負荷軽減弁と圧力信号線とを含む圧力軽減装置を有する燃料圧縮ガス容器が明らかになっている。圧力信号が相応の場合に負荷軽減弁が開き、それにより圧縮ガス容器からガスを逃すことができる。このようにして圧縮ガス容器の破裂が阻止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許発明第102006009537号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の先行技術を出発点として、高い圧力向けに設計され、それと同時に高い温度許容度(Temperaturtoleranz)を有する移動用途のための、特に車両に搭載して水素を貯蔵するための圧縮ガス貯蔵装置を提供するという課題にもとづいている。このようにして高い安全要求を満たす圧縮ガス貯蔵装置が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1の特徴を有する圧縮ガス貯蔵装置、および請求項9の特徴を有する車両が提案される。本発明の有利な発展形態はそれぞれの従属請求項から読み取ることができる。
【0010】
提案される圧縮ガス貯蔵装置は、圧縮ガスを充填できる貯蔵容積を画定する少なくとも1つの金属製貯蔵ハウジングと、貯蔵ハウジングに配置された少なくとも1つの感温および/または感圧過負荷弁とを備えている。本発明によれば、貯蔵ハウジングまたは圧縮ガス貯蔵装置は少なくとも部分的に、殊に少なくとも1つの過負荷弁を覆わない状態で(unter Freilassung)熱防護シールドによって取り囲まれる。
【0011】
熱防護シールドに課せられた仕事は、外部から内部への、すなわち圧縮ガスが充填された貯蔵容積への有害な入熱を低減することである。このようにして貯蔵ハウジング内の温度上昇、およびそれに伴う圧力上昇が防がれる。したがって、その結果、個々の貯蔵ハウジングもしくは圧縮ガス貯蔵装置の温度許容度が全体として上がる。
【0012】
提案される圧縮ガス貯蔵装置の高い温度許容度は、金属製の貯蔵ハウジング、例えば鋼製の貯蔵ハウジングの使用を可能にする。金属製貯蔵ハウジングは、金属の熱伝導率が高いことにより、通常、温度許容度が高くなく、それにより金属製貯蔵ハウジングは、他の安全措置を講じることなしには、高い安全要求を満たさなければならない圧縮ガス貯蔵装置には通常使用することができない。しかし金属製貯蔵ハウジングは、金属、特に鋼が高強度であることから高い貯蔵圧力が可能であるという利点を有している。それに加えて、冒頭で述べたように、金属製貯蔵ハウジングの使用はコスト上の利点を伴う。
【0013】
提案される圧縮ガス貯蔵装置では、金属製貯蔵ハウジングの利点の効果が十分に発揮される。温度許容度が低いという欠点は熱防護シールドを設けることによって解消され、それに加えて、提案される少なくとも1つの金属製貯蔵ハウジングを有する圧縮ガス貯蔵装置は、移動用途のための圧縮ガス貯蔵装置に課せられる高い安全要求を満たす。
【0014】
熱防護シールドは、コーティング(Beschichtung)、カバー(Verkleidung)、および/またはケーシング(Einhausung)であるか、あるいはコーティング、カバー、および/またはケーシングを備えることが好ましい。
【0015】
コーティングは、貯蔵ハウジングの外側に直接設けられ、したがって追加の構造空間を必要としないか、またはわずかしか必要としない。コーティングの別の利点は、貯蔵ハウジングの外面に非常に良好に付着させることができるというということである。それに加えて、コーティングは噴霧または噴射によって簡単に設けることができる。
【0016】
カバーの場合、これも同様に貯蔵ハウジングの少なくとも1つの外面に直接配置することができ、それによりカバーが貯蔵容器に直接隣接する。これに代えて、例えばカバーを収容する取付け具を貯蔵ハウジングとカバーとの間に配置するために、貯蔵ハウジングに対してある程度の距離を保ってカバーを配置することができる。圧縮ガス貯蔵装置が複数の貯蔵ハウジングを備える場合、これらが熱防護シールドを形成するための共通のカバーを有することができる。これは1つ1つの貯蔵容器が自身の熱防護シールドを備える必要がないということを意味し、それにより製造および組立の手間が軽減される。それと同時に、このようにして構造空間を節約することができる。
【0017】
これに代えて、またはこれに加えて、熱防護シールドはケーシングであるか、またはケーシングを備えることができる。ケーシングの利点は、それを必ずしも個々の貯蔵ハウジングの形状に適合させる必要がなく、そのため簡単な、例えば直線のおよび/または角形の形状を有することができるということである。さらに1つのケーシングを簡単に複数の貯蔵ハウジングのための熱防護シールドとすることができる。
【0018】
提案される圧縮ガス貯蔵装置の熱防護シールドは、少なくとも部分的に非金属材料から製造されることが好ましい。なぜなら貯蔵ハウジングとは異なり熱防護シールドは、これが貯蔵容積内で高圧にさらされないことから、高い強度要求を満たす必要がないからである。熱防護シールドの機能は、貯蔵ハウジングの機能とは全く異なり、つまり外部からの入熱を低減する機能である。貯蔵ハウジングと熱防護シールドとの間で機能を分けることによって、それぞれの機能に応じた材料選択を行うことができる。これは熱防護シールドに関しては、熱防護シールドの温度伝導率を低下させるために、殊に熱伝導率が低い材料が選択されることを意味する。
【0019】
熱伝導率λと温度伝導率aとの間には次の関係が成り立つ:
a=λ/(ρ*c)、
ここで「ρ」は密度、「c」は比熱容量を表す。したがって温度伝導率aは、設計および材料に依存する。本発明による圧縮ガス貯蔵装置の熱防護シールドは、殊に温度伝導率a<1mm2/sを有する。例えばこれは熱防護シールドを形成するために、例えばガラスウールまたはロックウールなどの断熱材料を使用することによって実現できる。
【0020】
さらに、圧縮ガス貯蔵装置の金属製貯蔵ハウジングが実質的に円筒形状であることが提案される。円筒形状の貯蔵ハウジングは、高い貯蔵圧力のために特に適している。貯蔵ハウジングは、例えばボトルの形状を有することができる。これに代えて、またはこれに加えて貯蔵ハウジングが少なくとも1つのドーム状端部を有し、この端部の領域に過負荷弁が配置されていることが提案される。これは過負荷弁が殊に端面側に配置されることを意味する。このことは、複数の貯蔵ハウジングを直接隣り合わせて並列に配置すること、およびそれにより緊密な「詰め込み(Packung)」を可能にし、そのことが移動用途に有利である。
【0021】
熱防護シールドは、殊に貯蔵ハウジングの外周領域に配置され、少なくとも45°、好ましくは少なくとも90°、さらに好ましくは少なくとも120°の角度範囲にわたって延在する。例えば、熱防護シールドが周囲を囲んで形成されてもよく、すなわち貯蔵ハウジングの外周全体もしくは360°にわたって延在してもよい。熱防護シールドの配置は、とりわけ圧縮ガス貯蔵装置が外部からの入熱に対して広い面積にわたって保護されるべきなのか、または局所的のみなのかによって決まる。局所的入熱は、特に車両の単独の熱源によって引き起こされ得る。さらに、他に熱源がない場合、保護を局所に限定することができる。これは圧縮ガス貯蔵装置が熱防護シールドによって一部分だけ保護されることを意味する。車両の単独の熱源によって高温に達し得るので、少なくとも一部分の保護が提供される。この場合、熱防護シールドは、少なくとも入熱が最大であるところに形成もしくは配置される。なぜなら圧縮ガス貯蔵装置の不具合は、それが局所のみであっても絶対に阻止されなければならないからである。
【0022】
局所のみの入熱は、特に入熱の場所が熱で作動する過負荷弁から遠く離れている場合に危険であり得る。なぜならその場合、局所的入熱が検出されないか、または遅れてしか検出されないからである。少なくとも一部分の熱防護シールドを用いてこの危険を防ぐことができる。
【0023】
熱で作動することができる過負荷弁は、危険な外部熱源を認識できなければならないので、圧縮ガス貯蔵装置の少なくとも1つの過負荷弁を露出させたままにして、すなわち熱防護シールドによって覆わないようにして熱防護シールドを形成もしくは配置することが提案される。これは、例えば過負荷弁が端面側に、および熱防護シールドが外周側に配置される場合である。
【0024】
しかし、さらに、熱防護シールドを貯蔵ハウジングの端面の領域に配置することもできる。この領域に過負荷弁がある場合、ここを残して熱防護シールドを設けることができる。
【0025】
熱防護シールドは、貯蔵ハウジングの外輪郭に適合させた内輪郭を有することが好ましい。それにより熱防護シールドを非常にスペース節約的に形成もしくは配置することができる。殊に、熱防護シールドは一定の厚みを有し、それにより熱防護シールドの外輪郭が貯蔵ハウジングの外輪郭に従う。
【0026】
熱防護シールドが、貯蔵ハウジングの全面に当接することがさらに好ましい。それによって、例えば火災発生時に、貯蔵ハウジングと熱防護シールドとの間に火炎が到達せず、貯蔵ハウジングが直接燃え上がらないことが確保される。
【0027】
提案される圧縮ガス貯蔵装置は、各々が熱防護シールドを備えた複数の貯蔵ハウジングを備えることができる。したがって、貯蔵ハウジングの数を必要に応じて変化させることができ、熱防護シールドには変更を加える必要がない。
【0028】
さらに提案される車両は、水素を貯蔵するための本発明による圧縮ガス貯蔵装置を備えることを特徴とする。したがって圧縮ガス貯蔵装置だけでなく車両も高い安全要求を満たす。そのために、圧縮ガス貯蔵装置の少なくとも1つの金属製貯蔵ハウジングが高い貯蔵圧力を可能にする。車両は、燃料電池を用いて水素と酸素を電気エネルギーに変換し、電気機械を駆動するためにこれを利用する、特に燃料電池車であり得る。この場合、殊に圧縮ガス貯蔵装置は、車両の燃料電池システムの構成要素である。
【0029】
車両における圧縮ガス貯蔵装置の配置は、殊に、圧縮ガス貯蔵装置の熱防護シールドが少なくとも車両の熱源の方に向いた圧縮ガス貯蔵装置の外面の領域に配置されるように行われる。これは、外部からの入熱が最大であるところに熱防護シールドが的確に配置されることを意味する。車両における他の熱源が危険でないならば、熱防護シールドをこの領域に限定することができる。しかし、熱防護シールドをより大きく設計することもできる。さらに、他の熱防護シールドを設けることができる。
【0030】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付の図面をもとにして詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明による第1の圧縮ガス貯蔵装置の模式的縦断面図である。
【
図2】本発明による第2の圧縮ガス貯蔵装置の模式的縦断面図である。
【
図3】本発明による第3の圧縮ガス貯蔵装置の模式的縦断面図である。
【
図4】本発明による第4の圧縮ガス貯蔵装置の模式的縦断面図である。
【
図5】本発明による第5の圧縮ガス貯蔵装置の模式的縦断面図である。
【
図6】本発明による第6の圧縮ガス貯蔵装置の模式的縦断面図である。
【
図7】本発明による第7の圧縮ガス貯蔵装置の模式的縦断面図である。
【
図8】従来技術から知られている圧縮ガス貯蔵装置の模式的縦断面図である。
【
図9】従来技術から知られている圧縮ガス貯蔵装置の貯蔵ハウジングの壁の温度プロファイルを示した図表である。
【
図10】本発明による圧縮ガス貯蔵装置の貯蔵ハウジングの壁の温度プロファイルを示した図表である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1において、本発明による第1の圧縮ガス貯蔵装置1が示されている。この圧縮ガス貯蔵装置は、各端にそれぞれ1つのドーム状端部6を有する円筒形状の金属製貯蔵ハウジング2を備えている。端部6の中心にはそれぞれ1つの過負荷弁4が配置されている。
【0033】
円筒形状の金属製貯蔵ハウジング2は、圧力下にあるガス、ここでは水素を収容するための貯蔵容積3を画定する。貯蔵容積3内の圧力が700barにまでなり得るので、外部からの入熱による温度上昇と、それに伴うさらなる圧力上昇とを阻止するか、または少なくとも格段に小さく抑える必要がある。したがって図示される貯蔵ハウジング2は、コーティングの形態の熱防護シールド5によって、2つの過負荷弁4を覆わない状態で完全に取り囲まれている。コーティングは、貯蔵ハウジング2の金属より格段に低い熱伝導率を有する材料からなり、それにより温度伝導率が低下する。その結果、外部からの入熱による貯蔵ハウジング2の加熱の程度が格段に小さくなる。
【0034】
図2は、熱防護シールド5が部分的にしか形成されていないという点で
図1とは異なる、別の本発明による圧縮ガス貯蔵装置1を示す。熱防護シールドは、両方の過負荷弁4のみならず両方の端部6も覆っていない。
【0035】
圧縮ガス貯蔵装置1が過負荷弁4を1つだけ有することもできるので、この場合、場合によって過負荷弁4が配置されている端部6の領域のみを残して熱防護シールド5で覆うことが可能である。この実施形態は
図3に例示的に示されている。
【0036】
図4は、熱防護シールド5が貯蔵ハウジング2のカバーによって形成される本発明による圧縮ガス貯蔵装置1の一実施形態を示す。カバーは、それぞれ端面側に配置された2つの過負荷弁4を覆わない状態で貯蔵ハウジングを完全に包み込む。
【0037】
図5は、一方の端面側にのみ配置された過負荷弁4と、熱防護シールド5としてのケーシングとを有する一変形形態を示す。
図3の実施例と同様に、ケーシングは、過負荷弁4が配置された端部6を残している。
【0038】
図6および
図7が示すように、ケーシングをさらに少なくすることができ、それにより具体的な使用時に熱源の方に向くこれらの領域のみが外部からの入熱に対して保護される。
【0039】
図8において、円筒形状の金属製貯蔵ハウジング2と、それぞれ端面側に配置された2つの過負荷弁4とを有する従来の圧縮ガス容器が示される。熱防護シールド5がないことにより、貯蔵ハウジング2の内部(の圧縮ガス)が外部からの入熱によって熱せられ、高い破裂の危険を伴う圧力上昇が起きる可能性がある。
【0040】
図9において、
図8による実施形態の貯蔵ハウジング2の壁の温度プロファイルが例示的に示される。外面A
Aの温度T
Aは、内面A
Iまでの壁の厚みにわたってごくわずかに低下し、それにより貯蔵容積3内の圧縮ガスが激しく加熱される。したがって温度は許容最大温度T
maxよりもかろうじて低い。
【0041】
本発明による圧縮ガス貯蔵装置1では、熱防護シールド5を用いて加熱を格段に低減することができる。このことは
図10に例示的に示されている。熱防護シールド5の材料の熱伝導率が劣ることにより、温度T
Aが貯蔵ハウジング2の外側でもなお許容最大温度T
max未満の値に低下する。したがって、貯蔵ハウジング2の外面A
A2で測定される温度は、熱防護シールド5の外面A
A1の温度T
Aよりも格段に低い。貯蔵ハウジング2の壁にわたって温度を引き続き低下させられるので、貯蔵ハウジング2の内部の温度がT
maxよりも格段に低くなる。
【符号の説明】
【0042】
1 圧縮ガス貯蔵装置
2 貯蔵ハウジング
3 貯蔵容積
4 過負荷弁
5 熱防護シールド
6 ドーム状端部
【手続補正書】
【提出日】2023-01-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮ガスを充填できる貯蔵容積(3)を画定する少なくとも1つの金属製貯蔵ハウジング(2)と、前記貯蔵ハウジング(2)に配置された少なくとも1つの感温および/または感圧過負荷弁(4)とを備える、移動用途のための、特に車両に搭載して水素を貯蔵するための圧縮ガス貯蔵装置(1)において、
前記貯蔵ハウジング(2)または前記圧縮ガス貯蔵装置(1)が、少なくとも部分的に、殊に前記少なくとも1つの過負荷弁(4)を覆わない状態で、熱防護シールド(5)によって取り囲まれることを特徴とする、圧縮ガス貯蔵装置。
【請求項2】
前記熱防護シールド(5)は、コーティング、カバー、および/またはケーシングであるか、あるいはコーティング、カバー、および/またはケーシングを備えることを特徴とする、請求項1に記載の圧縮ガス貯蔵装置(1)。
【請求項3】
前記熱防護シールド(5)は、少なくとも部分的に、殊に温度伝導率(a)<1mm
2/sを有する非金属材料から製造されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の圧縮ガス貯蔵装置(1)。
【請求項4】
前記貯蔵ハウジング(2)は、実質的に円筒形状であり、および/または少なくとも1つのドーム状端部(6)を有し、前記端部の領域に前記過負荷弁(4)が配置されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の圧縮ガス貯蔵装置(1)。
【請求項5】
前記熱防護シールド(5)は、前記貯蔵ハウジング(2)の外周領域に配置され、少なくとも45°の角度範囲にわたって延在することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の圧縮ガス貯蔵装置(1)。
【請求項6】
前記熱防護シールド(5)は、前記貯蔵ハウジング(2)の外周領域に配置され、少なくとも90°の角度範囲にわたって延在することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の圧縮ガス貯蔵装置(1)。
【請求項7】
前記熱防護シールド(5)は、前記貯蔵ハウジング(2)の外周領域に配置され、少なくとも120°の角度範囲にわたって延在することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の圧縮ガス貯蔵装置(1)。
【請求項8】
前記熱防護シールド(5)は、前記貯蔵ハウジング(2)の端面の領域に配置されていることを特徴とする、請求項1から
7までのいずれか1項に記載の圧縮ガス貯蔵装置(1)。
【請求項9】
前記熱防護シールド(5)は、前記貯蔵ハウジング(2)の外輪郭に適合させた内輪郭を有することを特徴とする、請求項1から
8までのいずれか1項に記載の圧縮ガス貯蔵装置(1)。
【請求項10】
前記圧縮ガス貯蔵装置(1)は、複数の貯蔵ハウジング(2)を備え、前記複数の貯蔵ハウジングの各々が熱防護シールド(5)を備えることを特徴とする、請求項1から
9までのいずれか1項に記載の圧縮ガス貯蔵装置(1)。
【請求項11】
水素を貯蔵するための、請求項1から
10までのいずれか1項に記載の圧縮ガス貯蔵装置(1)を備える車両。
【請求項12】
前記圧縮ガス貯蔵装置(1)の前記熱防護シールド(5)は、少なくとも前記車両の熱源の方に向いた前記圧縮ガス貯蔵装置(1)の外面の領域に配置されていることを特徴とする、請求項
11に記載の車両。
【国際調査報告】