(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-14
(54)【発明の名称】ターゲットアセンブリ、X線装置、構造測定装置、構造測定方法、及びターゲットアセンブリの変更方法
(51)【国際特許分類】
H01J 35/08 20060101AFI20230804BHJP
H01J 35/18 20060101ALI20230804BHJP
H01J 35/06 20060101ALI20230804BHJP
H01J 35/16 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
H01J35/08 E
H01J35/18
H01J35/06 E
H01J35/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504660
(86)(22)【出願日】2021-07-23
(85)【翻訳文提出日】2023-03-10
(86)【国際出願番号】 EP2021070687
(87)【国際公開番号】W WO2022018265
(87)【国際公開日】2022-01-27
(32)【優先日】2020-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511054444
【氏名又は名称】ニコン・メトロロジー・エヌヴェ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ヘイグ,イアン ジョージ
(57)【要約】
X線装置のためのターゲットアセンブリであって、ターゲットハウジングと、入射電子ビームを受け容れるためのターゲットハウジングの入口部分に形成された入口経路と、入口経路を介した電子ビーム照明下でX線を生成するためのターゲット部材と、生成されたX線が前記ターゲットアセンブリを出られるように、ターゲットハウジングの出口部分に形成された出口経路であって、出口経路はX線透過窓によってカバーされている、出口経路と、を備えるターゲットアセンブリが提供される。アセンブリにおいて、出口経路は、出口経路内に形成された出口孔を備え、ターゲット部材から反射された散乱電子が孔の内側に衝突することよる、X線の生成を制限するように構成されている。ターゲットアセンブリ、X線装置、構造測定装置、構造測定方法、及びターゲットアセンブリの変更方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線装置のためのターゲットアセンブリであって:
ターゲットハウジングと;
入射する電子ビームを受け容れるための前記ターゲットハウジングの入口部分に形成された入口経路と;
前記入口経路を介した電子ビームの照明下でX線を生成するためのターゲット部材と;
生成されたX線が前記ターゲットアセンブリを出られるように、前記ターゲットハウジングの出口部分に形成された出口経路であって、前記出口経路はX線透過窓によってカバーされており、前記出口経路は、前記出口経路内に形成された出口孔を有し、前記出口孔は前記ターゲット部材から反射された散乱電子が前記出口孔の内側に衝突することよる、前記X線の生成を制限するように構成されている、出口経路と;
を備える、ターゲットアセンブリ。
【請求項2】
前記出口孔は非円筒状である、
請求項1記載のターゲットアセンブリ。
【請求項3】
前記出口孔は、前記出口孔のX線入口側からの方向において横断面が増大する、
請求項1又は2記載のターゲットアセンブリ。
【請求項4】
前記出口孔は円錐状である、
請求項1乃至3いずれか1項記載のターゲットアセンブリ。
【請求項5】
前記出口孔は、ターゲット上のX線入射点と前記出口孔の出口アパーチャとの間で画定される円錐角と整合する円錐角を有する、
請求項1乃至4いずれか1項記載のターゲットアセンブリ。
【請求項6】
前記出口部分は前記出口孔を提供するプラグを有する、
請求項1乃至5いずれか1項記載のターゲットアセンブリ。
【請求項7】
前記出口孔にはライナが設けられており、前記ライナは、前記ライナの内側の出口部分の表面の主要な材料の原子番号よりも低い原子番号を有する材料から、主に構成されているか、任意に構成されており、
前記原子番号は任意に16未満であり、
前記ライナは前記出口孔の横断面の周りに実質的に延在する、
請求項1乃至6いずれか1項記載のターゲットアセンブリ。
【請求項8】
前記出口孔には、アルミニウム、ベリリウム又はカーボンのライナが設けられている、
請求項1乃至7いずれか1項記載のターゲットアセンブリ。
【請求項9】
前記ライナは、ターゲットが動作するように設計された電子の侵入深さよりも大きい壁厚を有する、
請求項7又は8記載のターゲットアセンブリ。
【請求項10】
前記ライナは、10ミクロンを超え、任意に15ミクロンを超え、任意に25ミクロンを超え、任意に50ミクロンを超え、任意に100ミクロンを超える壁厚を有する、
請求項7乃至9いずれか1項記載のターゲットアセンブリ。
【請求項11】
前記ライナは、2mm未満、任意で1mm未満、任意で500ミクロン未満、任意で250ミクロン未満の壁厚を有する、
請求項7乃至10いずれか1項記載のターゲットアセンブリ。
【請求項12】
前記ライナは、前記出口孔の内側に延在して入口孔と前記ターゲット部材との間に配置される突出部分を有し、
前記突出部分はターゲットへの前記電子ビームを受け入れるためのアパーチャを有する、
請求項7乃至11いずれか1項記載のターゲットアセンブリ。
【請求項13】
前記突出部分は、前記ターゲット部材の表面に適合するように形成されており、任意に前記ターゲット部材の表面から2mm未満、任意に1mm未満、任意に500ミクロン未満だけ離間している、
請求項12項記載のターゲットアセンブリ。
【請求項14】
前記入口経路は前記入口部分の入口孔に沿っている、
請求項1乃至13いずれか1項記載のターゲットアセンブリ。
【請求項15】
前記入口経路は前記入口孔の中心線に沿っている、
請求項14記載のターゲットアセンブリ。
【請求項16】
前記入口孔は円形の断面を有する、
請求項14又は15項記載のターゲットアセンブリ。
【請求項17】
前記突出部分のアパーチャは円形の横断面を有する、
請求項12乃至16いずれか1項記載のターゲットアセンブリ。
【請求項18】
前記ターゲット部材は、前記入射する電子ビームの経路内に配置されたロッド形状のターゲット部分を備える、
請求項1乃至17いずれか1項記載のターゲットアセンブリ。
【請求項19】
前記ターゲットハウジングは放射線不透過性である、
請求項1乃至18いずれか1項記載のターゲットアセンブリ。
【請求項20】
前記ターゲットアセンブリはタングステン銅製である、
請求項1乃至19いずれか1項記載のターゲットアセンブリ。
【請求項21】
前記X線透過窓は、ベリリウム、アルミニウム、グラファイト又はダイヤモンド製である、
請求項1乃至20いずれか1項記載のターゲットアセンブリ。
【請求項22】
請求項1乃至21いずれか1項記載のターゲットアセンブリと、
前記ターゲット部材に入射する電子ビームを生成するようにアレンジされた電子ビーム生成器と、
を備える、X線装置。
【請求項23】
前記ターゲット部材上の焦点に前記電子ビームを焦束するように構成された電子レンズをさらに備える、
請求項22記載のX線装置。
【請求項24】
請求項23記載のX線装置と、
前記X線装置とX線検出器との間に配置された対象物の構造を測定するために配置されたX線検出器と、
を備える、構造測定装置。
【請求項25】
請求項23記載のX線装置及びX線検出器を使用して、前記X線装置と前記X線検出器との間に配置された対象物の構造を測定する、ステップ
を含む、構造測定方法。
【請求項26】
X線装置のためのターゲットアセンブリを変更する方法であって、
前記ターゲットアセンブリは:
ターゲットハウジングと;
入射する電子ビームを受け容れるための前記ターゲットハウジングの入口部分に形成された入口経路と;
前記入口経路を介した電子ビームの照明下でX線を生成するためのターゲット部材と;
生成されたX線が前記ターゲットアセンブリを出られるように、前記ターゲットハウジングの出口部分に形成された出口経路であって、前記出口経路はX線透過窓によってカバーされており、前記出口経路は前記出口経路内に形成された出口孔を有する、出口経路と;を備え、
前記変更は、前記ターゲット部材から反射された散乱電子が、前記出口孔の内側に衝突することよる、前記X線の生成を制限するステップを含む、
方法。
【請求項27】
前記変更は、前記出口孔を非円筒状に変更するステップを含む、
請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記変更は、前記出口孔のX線入口側からの方向の横断面が拡大するように、前記出口孔を変更するステップを含む、
請求項26又は27記載の方法。
【請求項29】
前記変更は、前記出口孔を円錐状に変更するステップを含む、
請求項26乃至28いずれか1項記載の方法。
【請求項30】
前記変更は、ターゲット上のX線入射点と前記出口孔の出口アパーチャと、間で画定される円錐角と整合する円錐角を有するように、前記出口孔を変更するステップを含む、
請求項26乃至29いずれか1項記載の方法。
【請求項31】
前記変更は、前記出口孔にプラグを提供するステップを含む、
請求項26乃至30いずれか1項記載の方法。
【請求項32】
前記変更は、前記出口孔にライナを設けるステップであって、前記ライナは、前記ライナの内側の前記出口部分の表面の主要な材料の原子番号よりも低い原子番号を有する材料から、主に構成されるか、任意に構成され、前記原子番号は任意に16未満であり、前記ライナは前記出口孔の断面の周りに実質的に延在する、ステップを含む、
請求項26乃至31いずれか1項記載の方法。
【請求項33】
前記変更は、アルミニウム、ベリリウム又はカーボンのライナを前記出口孔に設けるステップを含む、
請求項26乃至32いずれか1項記載の方法。
【請求項34】
前記ライナは、前記ターゲットが動作するように設計された、電子の侵入深さよりも大きい壁厚を有する、
請求項32乃至33いずれか1項記載の方法。
【請求項35】
前記ライナは、10ミクロンを超え、任意に15ミクロンを超え、任意に25ミクロンを超え、任意に50ミクロンを超え、任意に100ミクロンを超える壁厚を有する、
請求項32、33又は34記載の方法。
【請求項36】
前記ライナは、2mm未満、任意で1mm未満、任意で500ミクロン未満、任意で250ミクロン未満の壁厚を有する、
請求項32、33、34又は35記載の方法。
【請求項37】
前記ライナは、前記出口孔の内側に延在して入口孔と前記ターゲット部材との間に配置される突出部分を有し、
前記突出部分はターゲットへの前記電子ビームを受け入れるためのアパーチャを有する、
請求項27乃至36いずれか1項記載の方法。
【請求項38】
前記突出部分は、前記ターゲット部材の表面に適合するように形成されており、任意に前記ターゲット部材の表面から2mm未満、任意に1mm未満、任意に500ミクロン未満だけ離間している、
請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記入口経路は前記入口部分の入口孔に沿っている、
請求項26乃至38いずれか1項記載の方法。
【請求項40】
前記入口経路は前記入口孔の中心線に沿っている、
請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記入口孔は円形の断面を有する、
請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記突出部分のアパーチャは円形の横断面を有する、
請求項37乃至41いずれか1項記載の方法。
【請求項43】
前記ターゲット部材は、前記入射する電子ビームの経路内に配置されたロッド形状のターゲット部分を備える、
請求項26乃至42いずれか1項記載の方法。
【請求項44】
前記ターゲットハウジングは放射線不透過性である、
請求項26乃至43いずれか1項記載の方法。
【請求項45】
前記ターゲットアセンブリはタングステン銅製である、
請求項26乃至44いずれか1項記載の方法。
【請求項46】
前記X線透過窓は、ベリリウム、アルミニウム、グラファイト又はダイヤモンド製である、
請求項26乃至45いずれか1項記載の方法。
【請求項47】
前記ターゲット部材に入射電子ビームを印加するステップと、
前記ターゲット部材から反射された電子の、前記孔の内側への前記衝突によるX線生成の低減を観察するステップと、をさらに含む、
請求項26乃至46いずれか1項記載の方法。
【請求項48】
前記ターゲット部材に入射電子ビームを印加するステップと、
検査対象のゴースト画像の低下した強度を観察するステップであって、
前記ゴースト画像は、結像面上の検査対象の直接像を取り囲む円形軌跡上に配置され、
前記検査対象は前記ターゲット部材と前記結像面との間に配置される、ステップと、を含む
請求項26乃至47いずれか1項記載の方法。
【請求項49】
前記出口孔の構成を調整して、前記検査対象のゴースト画像の低減された強度を観察する、ステップを
さらに含む、請求項48記載の方法。
【請求項50】
X線装置を変更する方法であって、前記X線装置は、
請求項1乃至21いずれか1項記載のターゲットアセンブリと、
前記ターゲット部材に入射する電子ビームを生成するようにアレンジされた電子ビーム生成器と、を備え、
前記方法は、請求項26乃至49いずれか1項記載の方法によってターゲットアセンブリを修正するステップを含む、
方法。
【請求項51】
前記ターゲット部材上の焦点に前記電子ビームを焦束するように構成された電子レンズをさらに備える、
請求項50記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線装置用のターゲットアセンブリ、特に反射ターゲットアセンブリであるX線装置用のターゲットアセンブリに関する。
【0002】
また、本発明は、ターゲットアセンブリを備えるX線装置、X線装置を備える構造測定装置、X線装置を用いた構造測定方法、及びX線装置用のターゲットアセンブリを変更する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
X線の生成、特に画像化又は構造測定技術に用いるX線の生成では、所望のX線ビームを生成するためにX線生成ターゲットに電子ビームを印加するのが通常である。
【0004】
しかしながら、ターゲットを収容するハウジングの構造によっては、不所望な二次像(secondary images)が観察されることがあり、画像の鮮明さや忠実度が低下する傾向がある。さらに、かかる二次像の存在は、CT (コンピュータ断層撮影) などの再構成技術を使用して、取得した画像から体積データ (体積画像など) を再構成する場合には、不十分な結果(poor results)をもたらす可能性がある。
【0005】
したがって、特に二次像の発生(incidents of secondary images)を抑制することによって、画像の鮮明さと忠実度を改善し、信頼性の高い体積再構成を提供できるX線装置のターゲットアセンブリが必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1態様によれば、X線装置のためのターゲットアセンブリが提供される。
【0007】
ターゲットアセンブリは、ターゲットハウジングを備える。
【0008】
ターゲットアセンブリは、入口経路を備える。
入口経路は、ターゲットハウジングの入口部分に形成されている。
入口経路は、入射電子ビーム(an incident electron beam)を受け入れる。
ターゲットアセンブリは、ターゲット部材を備える。
【0009】
ターゲット部材は、電子ビーム照明の下でX線を生成するためのものである。
電子ビーム照明は、入口経路を介する。
ターゲットアセンブリは、出口経路を備える。
出口経路は、ターゲットハウジングの出口部分内に形成されている。
出口経路は、生成されたX線がターゲットアセンブリを出られるようにするものである。
出口経路はX線透過窓によってカバーされている。
出口経路は、出口孔を備える。
出口孔は、出口部分内に形成されている。
出口経路は、ターゲット部材から反射された電子が孔の内側に衝突することより、X線の生成を制限するように構成されている。
【0010】
いくつかの実施形態では、出口孔は非円筒状である。
【0011】
いくつかの実施形態では、出口孔は、孔のX線入口側からの方向の横断面が拡大(increases in cross-section)する。
いくつかの実施形態では、出口孔は円錐状である。
【0012】
いくつかの実施形態では、出口孔は、ターゲット上のX線入射点と出口孔の出口アパーチャとの間で画定される円錐角と整合する円錐角を有する。
【0013】
いくつかの実施形態では、出口部分は出口孔を提供するプラグを有する。
【0014】
いくつかの実施形態では、出口孔にはライナが設けられており、ライナは、ライナの内側の出口部分の表面の主要な材料(the predominant material of a surface of the exit part inward of the liner)の原子番号よりも低い原子番号を有する材料から、主に構成されている。
いくつかの実施形態では、ライナは、ライナの内側の出口部分の表面の主要な材料の原子番号よりも低い原子番号を有する材料から、構成されている。
いくつかの実施形態では、原子番号は任意に16未満である。
いくつかの実施形態では、ライナは孔の横断面の周りに実質的に延在する。
【0015】
いくつかの実施形態では、出口孔は、アルミニウム、ベリリウム又はカーボンのライナが設けられている。
【0016】
いくつかの実施形態では、ライナは、ターゲットが動作するように設計された(with which the target is designed to operate)電子の侵入深さよりも大きい壁厚を有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、ライナは、10ミクロンより大きい壁厚を有する。いくつかの実施形態では、ライナは、15ミクロンより大きい壁厚を有する。いくつかの実施形態では、ライナは、25ミクロンより大きい壁厚を有する。いくつかの実施形態では、ライナは、50ミクロンより大きい壁厚を有する。いくつかの実施形態では、ライナは、100ミクロンより大きい壁厚を有する。
【0018】
いくつかの実施形態では、ライナは、2mm未満である壁厚を有する。いくつかの実施形態では、ライナは、1mm未満である壁厚を有する。いくつかの実施形態では、ライナは、500ミクロン未満である壁厚を有する。いくつかの実施形態では、ライナは、250ミクロン未満である壁厚を有する。
【0019】
いくつかの実施形態では、ライナは、出口孔の内側に延在する又は内向きに延在する(extends inward)突出部分(a projection portion)を有する。いくつかの実施形態では、ライナは、入口孔とターゲット部材との間に配置される。いくつかの実施形態では、突出部分はターゲットへの電子ビームを受け入れるためのアパーチャを有する。
【0020】
いくつかの実施形態では、突出部分は、ターゲット部材の表面に適合するように形成されており、任意にターゲット部材の表面から2mm未満、任意に1mm未満、任意に500ミクロン未満だけ離間している。
【0021】
いくつかの実施形態では、入口経路は入口部分の入口孔に沿っている。
【0022】
いくつかの実施形態では、入口経路は入口孔の中心線に沿っている。
【0023】
いくつかの実施形態では、入口孔は円形の横断面を有する。
【0024】
いくつかの実施形態では、突出部分のアパーチャは円形の横断面を有する。
【0025】
いくつかの実施形態では、ターゲット部材はロッド形状のターゲット部分を有する。いくつかの実施形態では、ロッド形状のターゲット部分は、入射電子ビームの経路内にあるように配置されている。
【0026】
いくつかの実施形態では、ターゲットハウジングは放射線不透過性である。
【0027】
いくつかの実施形態では、ターゲットアセンブリの本体はタングステン銅製である。いくつかの実施形態では、ターゲットアセンブリの実質的に全てはタングステン銅製である。
【0028】
いくつかの実施形態では、窓は、ベリリウム、アルミニウム、グラファイト又はダイヤモンド製である。
【0029】
本発明の第2態様によれば、X線装置が提供される。X線装置は、ターゲットアセンブリを備える。X線装置は、電子ビーム生成器を備える。電子ビーム生成器は、電子ビームを生成するように準備又はアレンジ(arranged)されている。電子ビームは、ターゲット部材に入射する。
【0030】
いくつかの実施形態では、X線装置は、電子レンズをさらに備える。電子レンズは、電子ビームを焦点に焦束するように構成されている。焦点は、ターゲット部材上にある。
【0031】
本発明の第3態様によれば、構造測定装置が提供される。構造測定装置は、X線装置を備える。
構造測定装置は、X線検出器を備える。X線検出器は、対象物(an object)の構造を測定するために配置される。対象は、X線装置とX線検出器との間に配置されている(interposed)。
【0032】
本発明の第4態様によれば、構造測定方法が提供される。構造測定方法は、X線装置及びX線検出器を使用して、対象物の構造を測定するステップを含む。対象物は、X線装置とX線検出器との間に配置されている。
【0033】
本発明の第5態様によれば、X線装置のためのターゲットアセンブリを変更する(modifying)方法が提供される。ターゲットアセンブリは、ターゲットハウジングを備える。ターゲットアセンブリは、入口経路を備える。入口経路は、ターゲットハウジングの入口部分に形成されている。入口経路は、入射電子ビームを受け入れるためのものである。ターゲットアセンブリは、電子ビーム照明の下でX線を生成するためのターゲット部材を備える。電子ビーム照明は、入口経路を介する。ターゲットアセンブリは、出口経路を備える。出口経路は、ターゲットハウジングの出口部分に形成されている。出口経路は、生成されたX線がターゲットアセンブリを出られるようにするためのものである。出口経路はX線透過窓によってカバーされている。出口経路は、出口孔を備える。出口孔は、出口部分に形成されている。変更は、ターゲット部材から反射された散乱電子が孔の内側に衝突することより、X線の生成を制限するステップを含む。
【0034】
一実施形態では、変更は、出口孔を非円筒状に変更するステップを含む。
【0035】
一実施形態では、変更は、出口孔のX線入口側からの方向において横断面が拡大するように、出口孔を変更するステップを含む。
【0036】
一実施形態では、変更は、出口孔を円錐状に変更するステップを含む。
【0037】
一実施形態では、変更は、ターゲット上のX線入射点と出口孔の出口アパーチャとの間で画定される円錐角と整合する円錐角を有するように、出口孔を変更するステップを含む。
【0038】
一実施形態では、変更は、出口孔にプラグを提供するステップを含む。
【0039】
一実施形態では、変更は、ライナを出口孔に設けるステップを含み、ライナは、ライナの内側の出口部分の表面の主要な材料の原子番号よりも低い原子番号を有する材料から主に構成される(predominantly composed of)。一実施形態では、変更は、ライナを出口孔に設けるステップを含み、ライナは、ライナの内側の出口部分の表面の主要な材料の原子番号よりも低い原子番号を有する材料から構成される(composed of)。一実施形態では、原子番号は任意に16未満である。一実施形態では、ライナは孔の横断面の周りに実質的に延在する。
【0040】
一実施形態では、変更は、アルミニウム、ベリリウム又はカーボンのライナを出口孔に設けるステップを含む。
【0041】
一実施形態では、ライナは、ターゲットが動作するように設計された、電子の侵入深さよりも大きい壁厚を有する。
【0042】
一実施形態では、ライナは、10ミクロンより大きい壁厚を有する。一実施形態では、ライナは、15ミクロンより大きい壁厚を有する。一実施形態では、ライナは、25ミクロンより大きい壁厚を有する。一実施形態では、ライナは、50ミクロンより大きい壁厚を有する。一実施形態では、ライナは、100ミクロンより大きい壁厚を有する。
【0043】
一実施形態では、ライナは、2mm未満である壁厚を有する。一実施形態では、ライナは、1mm未満である壁厚を有する。一実施形態では、ライナは、500ミクロン未満である壁厚を有する。一実施形態では、ライナは、250ミクロン未満である壁厚を有する。
【0044】
一実施形態では、ライナは、出口孔の内側に又は内向きに(inward of the exit bore)延在する突出部分を有する。一実施形態では、突出部分は入口孔とターゲット部材との間に配置される。一実施形態では、突出部分はアパーチャを有する。一実施形態では、アパーチャは、電子ビームをターゲット部材に受け入れるためのものである。
【0045】
一実施形態では、突出部分は、ターゲット部材の表面に適合するように形成されている。一実施形態では、突出部分は、ターゲット部材の表面から、2mm未満だけ離間している。一実施形態では、突出部分は、ターゲット部材の表面から、1mm未満だけ離間している。一実施形態では、突出部分は、ターゲット部材の表面から、500ミクロン未満だけ離間している。
【0046】
一実施形態では、入口経路は入口部分の入口孔に沿っている。
【0047】
一実施形態では、入口経路は入口孔の中心線に沿っている。
【0048】
一実施形態では、入口孔は円形の横断面を有する。
【0049】
一実施形態では、突出部分のアパーチャは円形の横断面を有する。
【0050】
一実施形態では、ターゲット部材はロッド形状のターゲット部分を有する。一実施形態では、ロッド形状のターゲット部分は、入射電子ビームの経路内にあるように配置されている。
【0051】
一実施形態では、ターゲットハウジングは放射線不透過性である。
【0052】
一実施形態では、ターゲットアセンブリはタングステン銅製である。
【0053】
一実施形態では、窓は、ベリリウム、アルミニウム、グラファイト又はダイヤモンド製である。一実施形態では、方法はさらに、ターゲット部材に入射電子ビームを印加するステップと、ターゲット部材から反射された電子の、孔の内側への衝突によるX線生成の低減を観察するステップと、を含む。
【0054】
一実施形態では、方法はさらに、ターゲット部材に入射電子ビームを印加するステップと、検査対象(a test object)のゴースト画像の低下した強度を観察又は観測する(observing)ステップと、を含む。一実施形態では、ゴースト画像は、結像面上の検査対象の直接像(a true image)を取り囲む円形軌跡上に配置される。一実施形態では、検査対象は、ターゲット部材と結像面との間に配置される。
【0055】
一実施形態では、方法はさらに、検査対象のゴースト画像の低減された強度を観察するように出口孔の構成を調整するステップを含む。
【0056】
本発明の第6態様によれば、ターゲットアセンブリと、ターゲット部材に入射する電子ビームを生成するようにアレンジされた電子ビーム生成器と、を備えるX線装置を変更する方法が提供される。方法は、X線装置のためのターゲットアセンブリを変更する方法にしたがってターゲットアセンブリを変更するステップを含む。
【0057】
一実施形態では、X線装置はさらに、ターゲット部材上の焦点に電子ビームを焦束するように構成された電子レンズを備える。
【図面の簡単な説明】
【0058】
本発明をよりよく理解するため、及び本発明がどのように実施されるかを示すために、添付の図面を例示的にのみ参照する:
【
図1】
図1は、本発明を実施することができるX線装置を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、本発明が対処することができる問題を示し得るX線ターゲットアセンブリの断面を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1実施形態によるX線装置のためのターゲットアセンブリの断面を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2実施形態によるX線装置のためのターゲットアセンブリの断面を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に関連して使用可能なライナを示す図である。
【
図7】
図7は、従来のターゲットアセンブリを使用して作成されたゴースト画像を示す放射線不透過性ボールのX線画像を、
図3に示すターゲットアセンブリを使用して作成されたX線画像と、
図4のターゲットアセンブリを使用して取得された放射線不透過性ボールの画像と、共に示す一連の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図1は、対象物Sの測定又は画像取得に使用することができる、X線構造測定システム1の概略図である。
【0060】
構造測定システム1は、対象物Sに向かって伝播するX線のビームBxを生成する、X線源又はX線銃と称されることもある、X線装置10を備える。対象物Sは、X線ビームBxの経路上で対象物Sを支持するように配置されたステージ20によって支持される。対物Sを通過したX線ビームBxは、続けてX線検出器30に衝突し、対象物Sの構造に関する情報を提供する。
【0061】
X線構造測定システム1は、データ/制御線によってX線源10、ステージ20、検出器30のそれぞれに接続されたコントローラ40によって制御される。これにより、コントローラ40は、X線ビームBxの動作とパラメータ、ステージ20の位置と動作、検出器30の動作、並びに、検出器30からの画像情報の受信、X線源10とステージ20とからのステータス情報の受信、を制御することができる。
【0062】
図1の例では、構造測定システムはコンピュータ断層撮影システム(a computerised tomography system)であり、対象物SがビームB
xの経路内のステージ20上で回転するにしたがって、対象物Sの画像シーケンスが取得される。その後、画像シーケンスの一部又は全てが、当業者に知られているコンピュータ断層撮影技術を使用して結合され、対象物Sの内部構造及び外部輪郭に関する、体積構造情報とも称される3次元構造情報を生成する。
【0063】
図1の例では、X線源10及び検出器30は、X線装置10から検出器30まで伝播するX線ビームB
xの経路内のステージ20との固定された位置関係に留まる。ステージ20は、例えば、対象物Sを支持したままで、X線源10と検出器30との間のX線ビームB
xの、例えば中心線によって画定される経路に垂直な軸の周りに対象物Sを回転させることができる回転ステージである。他の構成では、ステージ20は、X線ビームBXの経路に垂直な第1軸周りの回転を可能にし、また、X線ビームB
xの経路に垂直で第1軸に垂直な第2軸周りの傾斜を可能にするステージであることもできる。回転と傾斜の両方の能力を有する、かかるステージは、対象物の位置を改善することができるか、又は、対象物と交差するより広い範囲の方向から体積再構成に使用される画像を取得することができる。さらなる構成では、ステージ20は、対象物Sを1、2、又は3自由度の直線運動(in one, two or three degrees of linear motion)で平行移動させることができる直線軸を装備することもでき、それによって、ビームB
xの経路内の対象物Sの所望の位置を達成するために、ビームB
xの経路内の対象物Sの平行移動を可能にする。
【0064】
図1に示す構成は、体積再構成を提供せず、二次元画像のみを提供することができるX線構造測定システムにも適用できる。このような構成では、対象物と交差するより広い範囲の方向から画像を得ることができるようにするために、ステージ20は前述したものと同じ又は類似した構成を有することができる。かかる構成では、代替的に、ステージ20が存在しない場合もあれば、固定位置又は調整可能な位置を有するサンプルホルダに置き換えられる場合もある。
【0065】
図1を参照して説明したものと同等の原理にしたがって動作する他の構成では、対象物Sは静止したままであるが、一方で、X線源10及び検出器30は、1つ以上の回転軸で、物体Sを中心として反対又は対向関係(an opposed relationship)にある1つ又は2つの回転軸周りに一緒に回転するようにアレンジされる。かかる回転は、例えば、回転支持体又は回転ガントリの反対セクションに線源10及び検出器30を配置し、回転軸で前述したように、対象Sをステージ又はサンプルホルダで支持することによって提供することができる。
【0066】
図1に示す構成では、X線源10は真空エンクロージャ15を有し、その中にフィラメント11とターゲット13が含まれている。動作中、フィラメント11は加熱され、熱電子放出のプロセスによって電子を放出する負の電位が与えられる。このようにして発生した電子は、
図1に電子ビームB
eとして示され、タングステン、ロジウム又はモリブデン、銀、銅又は金などのX線発生材料を含むターゲット13に衝突し、電子ビームB
eがターゲット13に衝突した結果、X線のビームBXがターゲット13から放出される。ターゲット材料の選択は、X線の放出スペクトルに影響を与える可能性があり、それに応じてX線ビームの所望の特性に応じて選択される。
【0067】
ターゲット13への電子ビームBeの入射を促進するために、ターゲット13をアースに接続するか、又は、例えばフィラメント11の負の電位よりも正の電位である正の電位など、アースとは異なる電位に接続して、フィラメント11から伝播する電子を誘引することができる。
【0068】
フィラメント11を取り囲むグリッド電極12は、フィラメント11と同様又はわずかに負の電位を有し、フィラメントによって放出された電子を反発させるために、フィラメント11の周りに局所的な負の電位を提供し、フィラメントから遠ざかる電子ビームBeを形成するとともに、フィラメント11からの電子ビーム電流をレギュレートする又は調節する(regulate)。
【0069】
フィラメント11とターゲット13との間に配置されたアノード電極17は、アースに接続されている場合もあれば、フィラメント11とターゲット13との間の電子ビームBeの電子のフラックス及びエネルギーをさらに制御するために調整可能な電位にある場合もある。
【0070】
また、フィラメント11とターゲット13との間、かつ、アノード電極17のターゲット側には、電子レンズとしての静電レンズ14が配置されており、これに電位を印加してターゲット13に衝突する電子ビームBeの焦点を制御することができる。静電レンズ14は、複数のシリンダの形状を有し、複数のシリンダは、電子ビームBeがシリンダを通過できるように、それらの間に配置されて寸法が決められたギャップを有する。各シリンダの電位が異なる場合、シリンダ間のギャップは電子ビームを収束又は発散させるレンズとして動作することができる。環状開口は、当業者には理解できるように、別の構成では、静電レンズとして使用することができる。
【0071】
フィラメント11、グリッド電極12、アノード電極17、ターゲット13、静電レンズ14の全ては、エンクロージャ15内に含まれるように図示されており、エンクロージャは内部の真空を支援するように密閉可能である。しかしながら、変形構成では、静電レンズ14をフォーカシングコイルなどの電子レンズとして磁気レンズによって置き換えることができる。熱及び密閉の複雑さを避けるために、かかるコイルは、非磁性材料製のエンクロージャ14の管状セクションの外側に配置することができる。
【0072】
エンクロージャ15は、実質的に任意の気密材料製であり得、金属、ガラス、樹脂などの異なる材料のセクションで形成することができる。気密シールは、異なるセクション間に設けることができる。
【0073】
エンクロージャ15は、その全体的な気密構造により、それによって、ポンプアウトポート(図には示されていない)でポンピングすることによって相対的真空状態にすることができ、この相対的真空状態は、実質的な吸収なしにフィラメント11からターゲット13へ電子ビームBeを自由に伝播させることを可能にする。エンクロージャ15の一部を形成するのは窓16であり、これはエンクロージャ15の残りの部分を形成する材料とは異なる材料で形成され、ベリリウム、アルミニウム、グラファイト又はダイヤモンドなどの、X線に対して比較的透過性であるが、電子に対して比較的不透過性な材料で形成される。これにより、窓16はX線ビームBxを実質的な吸収なしにエンクロージャ115の外に通過させることができる。
【0074】
測定システム1全体には、典型的には、周囲を取り囲む放射線不透過性の、図示されていないエンクロージャが設けられており、ソース10によって生成されたX線が測定システムの外部に漏洩するのを防ぐ役割を果たしている。
【0075】
図1では、ターゲット13のための支持アレンジメントは図示されていない。
図2は、X線ビームが生成されやすいように、ターゲットハウジング内にX線発生ターゲットを支持するための典型的な構成の断面を示す。したがって、
図2の構成は、電子ビームが導入されることができ、X線ビームを放出することができるターゲットアセンブリを構成する。かかるハウジングは、
図1に示す真空エンクロージャ15の上側部分を形成し、電子ビームを生成及び方向付けるコンポーネント、すなわち電子レンズ14、アノード電極17、フィラメント11、及びグリッド電極12、を含む真空エンクロージャ15の残りの部分に気密に接続される。
【0076】
図2に示すターゲットアセンブリ900は、軸935上の回転X線ターゲット930を支持しており、これによりターゲット930は、図示されていない回転ドライブによって又は手動で軸935周りに回転することができる。したがって、ターゲット930は回転することができる。これは、例えば、電子ビームによる照射の結果、電子ビームが入射したターゲットの点が浸食された場合に、ターゲットの損傷していない部分をビームの経路に持ち込むことができるようにするために有用である。
【0077】
ターゲット930は、ターゲットハウジング901に支持されており、ターゲットハウジングは、電子ビームを受け入れるための入口部分920と、ターゲット930への電子ビームの入射によって生成されたX線ビームがハウジングから出られるようにするための出口部分910と、ターゲットハウジング901を、電子ビームを生成し方向付ける前述のコンポーネントを収容する真空エンクロージャ15の残りの部分に接続するためのマウント部分950と、を備える。
【0078】
図2に示すように、電子ビームは、ターゲットハウジング901のマウント部分950に形成されたソケット955と係合するように構成された接続部分970を有する電子ビーム管960に沿ってターゲットハウジング910に導入することができる。接続は、電子ビームが電子ビーム管960からターゲットハウジング901の内部に伝播する真空を保つために、管960の端部とソケット955との間に挿入された適切なシールによって気密になっている。
【0079】
入口部分920には、ソケット955とターゲット930が配置される位置との間に入口孔として形成された入口経路925が設けられている。電子ビーム管960の内部は、電子ビームがターゲット930上の所望の入射位置に入射できるように、入口経路925と整列されている。
【0080】
出口部分910は、ターゲット部材930に隣り合って設けられており、出口孔によって形成される出口経路915を含む。出口経路915は、X線が放出されるべきターゲットハウジング901の表面と、ターゲット部材930との間に延在する。
【0081】
出口経路915を画定する出口孔の出口アパーチャ912を覆うのは、X線透過窓940であり、これはベリリウムなどのX線透過性材料で形成される。窓940は、取付プレート945によって出口孔915の出口アパーチャ912の上方に固定されている。取付プレート945は、出口アパーチャ912が形成されたターゲットハウジング901の平らな表面に対して取り付けられ、したがって、透過窓940が出口開口部912の上方に確実に配置される。
【0082】
取付プレート945は、透過窓940を収容するためにターゲットハウジング901の表面に面するように配置された凹部を有し、透過窓940の表面が取付プレート945の周囲の表面と実質的に面一になるようになっている。取付プレート945には、凹部から取付プレート945の反対側の表面まで延在する開口949が、貫通孔の形態で形成されており、出口アパーチャ912と位置合わせされて、出口アパーチャ912の上に(over)配置されるようにアレンジされており、開口949と出口アパーチャ912との間にX線透過窓940を有し、生成されたX線が、出口孔915から透過窓940を介し、さらに開口949を介して通るようになっている。したがって、発生したX線を調査中の対象物に向けて方向付けることができる。
【0083】
X線透過窓940と取付プレート945との間にOリング状の第1シール946を設け、取付プレート945とターゲットハウジング901の表面との間に同じくOリング状の第2シール947を設ける。取付プレート945は、
図2において取付ネジ948によって例示される適切な固定具によってターゲットハウジング901に固定され、そのうちの1つ以上は、必要に応じて、取付プレート945をターゲットハウジング901の残りの部分に気密に固定するために提供され得る。
【0084】
したがって、
図2に示すターゲットアセンブリの構成では、電子ビームは電子ビーム管960を介して到着し、ターゲット部材930に衝突するように入口孔によって画定された入口経路925を通過する。それによって生成されたX線は、ターゲット部材930から放出され、X線透過窓940を通って出口経路915に沿って調査中の対象に向かって方向付けられる。したがって、
図2の構成は、いわゆる反射モードで動作し、X線放射の経路は、ターゲットへの入射電子ビームの方向とは異なる方向に沿っている。これは、X線放射が入射電子ビームの方向と実質的に同じ方向に沿っている、いわゆる透過モードの配置とは対照的である。
【0085】
図2の構成では、ターゲットハウジング901の少なくとも本体は、典型的にはタングステン銅、例えば80%タングステン/20%銅合金又は低い熱膨張を示すタングステンを高い割合で含む別のタングステン銅合金から形成される。電子ビーム管960、接続部分970、取付プレート945などの他の部品も、このようなタングステン銅、又は別の適切な材料から形成される。
【0086】
図2のターゲットアセンブリが動作すると、観察されるべき対象の不所望な二次像が取得した画像データ内で得られることがある。
【0087】
例えば、かかる従来のターゲットを使用して120kV、6Wのビームエネルギーで直径1mmのタングステン銅球を撮像すると、
図7aに示す画像が取得される。
図7aでは、直径1mmのタングステン銅球の画像を囲んで、円形の二次像が観察でき、これは、放射されたX線ビームの中心の周りの円形の軌跡又は経路上に配置された、タングステン銅球のかすかな(ゴースト)画像の重ね合わせとして理解することができる。効果の強度によっては、
図7aに示す効果が目にはっきりと見えるように、画像のコントラストを引き伸ばす必要がある場合がある。かかる二次像の存在は、可視性の有無にかかわらず、画像コントラストと忠実性を低下させ、標準的なコンピュータ断層撮影技術による適切な体積再構成を妨げる可能性がある。
【0088】
したがって、本発明によれば、
図2に示すターゲットアセンブリ900は、
図3に示すように、本発明の第1実施形態に至るように変更される。
【0089】
本発明の第1実施形態であり、
図3に示すターゲットアセンブリ100は、以下に説明する場合を除き、構造及び機能において、
図2に示すターゲットアセンブリ900に実質的に対応する。したがって、参照符号1XXが割り当てられているターゲットアセンブリ100の部品は、
図2に示す類似の部品9XXと構造及び機能において直接対応するものとみなされるべきである。
【0090】
図3に示すターゲットアセンブリ100には、インサート180が提供されている。インサート180はプラグの形で構成され、ターゲットハウジング901と類似又は同一の材料で作られている。例えば、インサート180はタングステン銅製であり得る。インサート180は、ターゲットハウジング101の出口孔内に収まるように長さと外径の寸法が決められており、ターゲット部材130に最も近い位置の入口アパーチャ181とターゲット部材130から最も遠い位置のインサート180の出口アパーチャ182との間にテーパ状の内部孔を有する。
図3の実施例では、テーパ状の出口孔185は、直線的なテーパ状の内部表面を有する円錐形であるが、これに限らず、湾曲又は階段状の内部テーパで形成することもできる。
【0091】
インサート180の内部孔185のテーパ度合いは、ターゲット部材130から放出されるX線の所望の円錐角度に一致するように選択されるが、これは通常、ターゲットアセンブリ100が組み込まれるX線構造測定装置の残りの部分の幾何学的形状によって決定される。例えば、円錐角度は、ターゲットから検出器の意図された距離で検出器のX線感応面を完全に満たすように選択される。
【0092】
図3の構成では、インサート180は、透過窓140に直接隣り合う位置からターゲット部材130に直接隣り合う位置まで延在するが、必要に応じて、インサート180の軸方向を短縮することもできる。
【0093】
インサート180が存在しない場合、ターゲット部材130に衝突た後、部材130のターゲットから散乱する電子は、ターゲットハウジング901の内面に衝突し、不要な電子を生成した後、透過窓140から放出され得る。このようなものは、
図2のターゲットアセンブリ900が動作したときに、
図7aに示す二次像の起源であると仮定される。
【0094】
インサート180をターゲットアセンブリ100に提供することによって、非円筒形の出口孔が提供され、これにより、ターゲット部材から散乱又は反射された電子が孔の内部に衝突し、そこでX線の二次源を生成する可能性が制限される。
【0095】
したがって、
図3に示す構成によって、不所望な二次像の発生(the incidence of undesirable secondary images)が減少する。
【0096】
これは、例えば
図7bを参照して観察することができ、
図7aを生成するために使用されたX線ターゲットアセンブリに、
図3に関連して示され説明されるようなテーパインサート180を導入する効果を示す。インサート180を導入することにより、コントラストが引き伸ばされた場合でも、不所望な二次像の発生はほぼ完全に除去される。したがって、画像のコントラストと忠実度が向上し、標準的なコンピュータ断層撮影技術による体積再構成がより成功し得る。
【0097】
本発明の第2実施形態について、
図4を参照して説明する。ここでも、
図2に示すターゲットアセンブリ900と構造及び機能が類似している部品は、参照符号2XXで示され、
図3に示す同様の部品9XXに対応する。
【0098】
図4のターゲットアセンブリ200は、出口孔215の内部にライナ280を備える。ライナ280は、ターゲットハウジング201の本体の主要な材料の原子番号よりも低い原子番号を有する材料で形成されている。ターゲットハウジング201は、本実施形態ではタングステン銅製であるため、ライナ280は、例えば、原子番号16未満の材料で形成されることができ、好ましくはアルミニウム、ベリリウム又は炭素で形成されることができる。
【0099】
本実施形態では、ライナ280は、円筒形の外面と円筒形の内面を有し、ターゲットが動作するように設計された電子の侵入深さよりも大きな壁厚を有する。特に、
図4の実施形態では、ライナは4mmの外径と3mmの内径を有することができる。したがって、ライナ280は1mmの壁厚を有することができる。他の構成では、壁厚は、10ミクロンを超え、15ミクロンを超え、25ミクロンを超える、50ミクロンを超え、又は100ミクロンを超えることができる。さらに、製造を容易にするために、ライナは、2mm未満、任意で1mm未満、任意で500ミクロン未満、又は任意で250ミクロン未満の壁厚を有する。ライナは、透過窓240に隣り合う位置とターゲット部材230に隣り合う位置との間に延在し、ターゲットハウジング201の出口孔215を実質的に裏打ちする又は内面を覆う(lines)。
【0100】
ライナ280は、出口孔215内に収まるように形状及び寸法決めされた円筒形の挿入部分284から電子ビーム入射経路225を横断して突き出るように突出する突出部分(a projection portion)258も有する。突出部分285には円形のアパーチャ286が形成されており、突出部分285を介して電子ビームが通過できるように寸法が決められている。突出部分285に形成されたアパーチャ286は円形以外の形状も考えられる。
【0101】
ライナ280は散乱電子を吸収するように機能し、それによって、それらがX線を発生させるのに十分なエネルギーを伴ってターゲットハウジング201の出口孔215の表面に到達するのを防ぐ。ライナ280の厚さを調整することによって、不要なX線の減少の程度を制御することができる。
【0102】
図4に示すように、ライナ280の挿入部分284から延在する突出部分285は、ターゲット部材230の表面に一致するように形成されおり、したがって、ターゲット部材230と突出部分285との間にわずかなクリアランスを設けることができる。
図4の実施形態では、突出部分285は、ライナ280の全体的に円筒形の軸方向形状から、実質的に円筒形の横方向の切り欠き(cylindrical transverse cut-out)を有するように形成される。
【0103】
かかる形状は、少なくとも挿入部分284については、ライナ280の縦軸の周りに高い対称性の形状を有することが望ましいが、ライナ280については、円筒形以外の他の形状も考えられる。例えば正多角形のプリズム等である。断面におけるライナ280の外面形状は、好ましくは、出口孔215の断面形状に一致するが、内部の断面形状は、同じであっても異なっていてもよい。
図4の実施例では、挿入部分284はその縦軸に関して円筒対称である。
【0104】
図5と6はライナ280の別の図を示し、
図5はライナ280を単独で、つまり出口孔215から取り外した外観を示し、
図6はライナ280の断面図を示し、実質的に円筒形の挿入部分284と、ターゲット部材230を収容するために切り取られた、アパーチャ286を有する突出部分285と、を示している。
【0105】
図4に示すライナを、
図7aに関連して前述したのと同じ画像化条件で
図2の構成に適用すると、
図7cに示すようなタングステン銅球の画像が得られる。ここでも、タングステン球の円形二次像の顕著な減少が観察できる。第1実施形態と同様に、インサート280を導入することにより、コントラストが引き伸ばされても、不所望な二次像の発生が大幅に除去される。したがって、画像のコントラストと忠実度が向上し、標準的なコンピュータ断層撮影技術による体積再構成がより成功し得る。
【0106】
さらに、適切な適合によって、
図4のライナを
図3に示すインサート180の内部に提供することができる。かかる構成では、
図4に関連して説明されているような厚さと材料のテーパライナが、インサート180のテーパ状の出口孔185内に提供され、それによってインサート180のテーパ孔を考慮しても、テーパ孔の表面に到達するあらゆる電子を吸収する。かかるライナを提供することで、これらの電子さえも吸収することができ、不要な二次像の発生をさらに減らすことができる。
【0107】
上記では、インサート180及びライナ280は、製造時にターゲットアセンブリと統合され得るターゲットアセンブリの個別のコンポーネントとして提供されていると説明した。しかしながら、かかるインサート又はライナを既存のターゲットアセンブリに後付け又は改造して(retrofit)、その画像化性能を向上させることも可能である。
【0108】
さらに、上記では、インサート180及びライナ280は、ターゲットアセンブリに適用される個別のコンポーネントであると説明されているが、別の構成では、
図3に示す要素180は、ターゲットハウジングのインサートとしてではなく、ターゲットハウジングの一体部分として提供されることができる。このようなものは、例えば、ターゲットハウジングの出口孔を適切に成形することによって、孔のX線入口側からの方向において横断面が増加する適切なテーパ状にすることができる。同様に、
図4に関連して説明されているようなライナは、適用される別個の部品としてではなく、ターゲットアセンブリの出口孔の内面にライニング材を適切にコーティングすることによって、製造時に提供することができる。このようなコーティングは、例えば、当該技術分野で知られているコーティング技術によって提供することができる
【0109】
したがって、上記の実施形態は例示的なものであると理解されるべきであるが、一方で、請求項に記載された発明の範囲は、添付された請求項のみによって定義されるべきである。
【国際調査報告】