(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-15
(54)【発明の名称】蒸発したソース材料のフラックス分布を制御するための方法、ソース表面で反射された電磁放射を測定するための検出器、及び、電磁放射を用いた熱蒸発のためのシステム
(51)【国際特許分類】
C23C 14/24 20060101AFI20230807BHJP
C23C 14/28 20060101ALI20230807BHJP
G01J 1/02 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
C23C14/24 U
C23C14/28
G01J1/02 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574401
(86)(22)【出願日】2020-06-30
(85)【翻訳文提出日】2023-01-25
(86)【国際出願番号】 EP2020068388
(87)【国際公開番号】W WO2022002367
(87)【国際公開日】2022-01-06
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512247223
【氏名又は名称】マツクス-プランク-ゲゼルシヤフト ツール フエルデルング デル ヴイツセンシヤフテン エー フアウ
【氏名又は名称原語表記】MAX-PLANCK-GESELLSCHAFT ZUR FOeRDERUNG DER WISSENSCHAFTEN E.V.
【住所又は居所原語表記】Hofgartenstrasse 8,80539 Muenchen, Bundesrepublik Deutschland
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ウルフギャング
【テーマコード(参考)】
2G065
4K029
【Fターム(参考)】
2G065AA11
2G065AB02
2G065AB22
2G065BA11
2G065BA33
2G065BA34
2G065DA20
4K029CA01
4K029CA02
4K029DA03
4K029DB08
4K029DB17
4K029DB20
4K029EA07
(57)【要約】
本発明は、電磁放射(120)を用いた熱蒸発のためのシステム(10)において、蒸発したソース材料(20)のフラックス分布(30)を制御するための方法に関する。システム(10)は、電磁放射(120)を提供するための電磁放射源(110)と、反応雰囲気(16)を収容している真空チャンバ(12)と、電磁放射(120)を測定するための検出器(40)と、を備える。ソース材料(20)及びコーティングされるターゲット材料(18)は真空チャンバ(12)内に配置され、放射源は、プラズマ閾値未満でのソース材料(20)の熱蒸発及び/又は昇華のため、その電磁放射(120)が好ましくは45度の角度でソース材料(20)のソース表面(22)に入射するように配置され、電磁放射(120)を測定するための検出器(40)は、ソース表面(22)で反射された電磁放射(120)が検出器(40)に到達するように配置されている。更に、本発明は、好ましくは本発明に従った方法に適切な、電磁放射(120)を測定するための検出器(40)に関し、また、本発明に従った方法に適切な、電磁放射(120)を用いた熱蒸発のためのシステム(10)に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁放射(120)を用いた熱蒸発のためのシステム(10)において、蒸発したソース材料(20)のフラックス分布(30)を制御するための方法であって、
前記システム(10)は、電磁放射(120)を提供するための電磁放射源(110)と、反応雰囲気(16)を収容している真空チャンバ(12)と、電磁放射(120)を測定するための検出器(40)と、を備え、
ソース材料(20)及びコーティングされるターゲット材料(18)は、前記真空チャンバ(12)内に配置され、
前記放射源は、前記プラズマ閾値未満での前記ソース材料(20)の熱蒸発及び/又は昇華のため、その電磁放射(120)が好ましくは45度の角度で前記ソース材料(20)のソース表面(22)に入射するように配置され、
電磁放射(120)を測定するための前記検出器(40)は、前記ソース表面(22)で反射された電磁放射(120)が前記検出器(40)に到達するように配置され、
前記方法は、
a)前記ソース表面(22)から蒸発したソース材料(20)のフラックスの所望の分布(32)、及び前記所望の分布(32)のために必要な電磁放射(120)の入射分布(130)を規定するステップと、
b)ステップa)の前記所望の分布(32)及び前記入射分布(130)に基づいて、前記ソース表面(22)で反射された電磁放射(120)の予想分布(132)を決定するステップと、
c)前記電磁放射源(110)によって、ステップa)で規定された前記必要な入射分布(130)を有する電磁放射(120)を提供するステップと、
d)前記検出器(40)によって、前記ソース表面(22)で反射された電磁放射(120)を測定するステップと、
e)ステップd)の前記測定データに基づいて、前記ソース表面(22)で反射された電磁放射(120)の測定分布(134)を決定するステップと、
f)ステップb)で決定された前記予想分布(132)とステップe)で決定された前記測定分布(134)との差を決定するステップと、
g)ステップf)で決定された前記差を最小限に抑えるように、前記電磁放射源(110)によって提供される電磁放射(120)の前記必要な入射分布(130)を再決定するステップと、
h)前記電磁放射源(110)によって、ステップg)で再決定された前記必要な入射分布(130)を有する電磁放射(120)を提供するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
ステップa)で規定された前記所望の分布(32)は、時間依存性を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップb)の前記予想分布(132)は、前記予想分布(132)を計算すること、及び/又は、前記予想分布(132)を実験的に測定すること、及び/又は、前記予想分布(132)を経験的に推定すること、によって決定される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップd)からステップh)は、繰り返し実行される、請求項1から3のうち1項に記載の方法。
【請求項5】
前記電磁放射(120)として、光、特に波長が100nmから1400nmのレーザ光が用いられる、請求項1から4のうち1項に記載の方法。
【請求項6】
ステップe)及び/又はステップf)において、前記検出器(40)の応答関数が考慮される、請求項1から5のうち1項に記載の方法。
【請求項7】
ステップf)において、前記差を決定するため、前記予想分布(132)及び前記測定分布(134)のサイズ及び/又は形状が用いられる、請求項1から6のうち1項に記載の方法。
【請求項8】
前記電磁放射源(110)は、2つ以上の放出器セクション(112)を含み、
ステップc)及びステップh)において、各放出器セクション(112)は、前記ソース表面(22)に入射する電磁放射(120)を提供し、
前記システム(10)は、2つ以上の検出器(40)を含み、
各検出器(40)は、前記放射器セクション(112)のうち1つによって提供されて前記ソース表面(22)で反射された電磁放射(120)を測定するように配置されている、請求項1から7のうち1項に記載の方法。
【請求項9】
前記2つ以上の放出器セクション(112)によって提供された前記各電磁放射(120)は、前記ソース表面(22)に対して放射対称に入射する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記2つ以上の放出器セクション(112)は、調整可能なパワー密度及び/又は形状及び/又はサイズを有する電磁放射(120)を提供する、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
ソース表面(22)で反射された電磁放射(120)を測定するための検出器(40)であって、
吸収体(52)を備えたセンサ要素(50)を含み、
前記吸収体(52)は、前記電磁放射(120)を少なくとも部分的に吸収するための吸収表面(60)を含み、
前記センサ要素(50)は更に、前記吸収された電磁放射(120)によって前記吸収体(52)に引き起こされた絶対温度及び/又は温度変化を検出するため、前記吸収体(52)の温度を測定するための熱検知要素(70)を含み、
前記熱検知要素(70)は、前記吸収体(52)の穴(54)に配置された温度センサ(74)、特に熱電対要素(76)を含み、
前記穴(54)は、前記吸収体(52)内で、好ましくは前記吸収表面(60)の近くで終端する、検出器(40)。
【請求項12】
前記検出器(40)は、請求項1から10のうち1項に記載の方法において使用可能である、請求項11に記載の検出器(40)。
【請求項13】
前記吸収表面(60)は、光、特に波長が100nmから1400nmのレーザ光を吸収する、請求項11又は12に記載の検出器(40)。
【請求項14】
前記吸収体(52)は、前記吸収体(52)の能動的冷却のための冷却システム(80)を含み、
前記冷却システム(80)は、好ましくは水である冷却剤(84)が前記吸収体(52)内で流れるための少なくとも1つの冷却ダクトを前記吸収体(52)内に含む、請求項11から13のうち1項に記載の検出器(40)。
【請求項15】
前記熱検知要素(70)は、前記吸収体(52)内の前記冷却ダクトを通る前記冷却剤(84)の流れを測定するための流量センサ(72)と、前記吸収体(52)内の前記冷却ダクトを通って流れることで誘発された前記冷却剤(84)の絶対温度及び/又は前記冷却剤(84)の温度変化を測定するための温度センサ(74)(74)と、を含む、請求項14に記載の検出器(40)。
【請求項16】
前記吸収体(52)は、特に銅又はアルミニウムのような金属を含む、特にそのような金属から成る、請求項11から15のうち1項に記載の検出器(40)。
【請求項17】
前記吸収体(52)は、一端において中空吸収ボリューム(56)を取り囲み、
前記吸収ボリューム(56)の前記内部側壁(58)は、前記吸収表面(60)を形成し、
前記吸収ボリューム(56)は、吸収オリフィス(62)を含み、
前記吸収オリフィス(62)は、測定される前記電磁放射(120)の想定された及び/又は決定された入射方向(122)に位置合わせすることができる、請求項11から16のうち1項に記載の検出器(40)。
【請求項18】
前記吸収表面(60)は、前記吸収ボリューム(56)内で部分的に円錐形状であり、
前記円錐形状の吸収表面(60)の円錐は、前記吸収オリフィス(62)に向かい合っている、請求項17に記載の検出器(40)。
【請求項19】
前記吸収オリフィス(62)の縁(64)を形成する前記吸収ボリューム(56)の前記部分は、前記吸収ボリューム(56)に対して内側に傾斜している、請求項18に記載の検出器(40)。
【請求項20】
前記検出器(40)は、アパーチャ開口(92)を有するアパーチャ(90)を含み、
前記アパーチャ(90)は、前記センサ要素(50)に対して上流に、測定される前記電磁放射(120)の前記想定された及び/又は決定された入射方向(122)に沿って配置されている、請求項11から19のうち1項に記載の検出器(40)。
【請求項21】
前記アパーチャ開口(92)のサイズは、前記吸収体(52)、特に前記吸収オリフィス(62)に適合されて、前記アパーチャ開口(92)を通る前記電磁放射(120)が特に前記吸収オリフィス(62)を通って前記吸収体(52)の前記吸収表面(60)に入射するようになっている、請求項20に記載の検出器(40)。
【請求項22】
前記検出器(40)は、遮蔽要素(94)を含み、
前記遮蔽要素(94)は、前記アパーチャ(90)と前記吸収体(52)との間で、測定される前記電磁放射(120)の前記想定された及び/又は決定された入射方向(122)に沿って延出する、請求項20又は21に記載の検出器(40)。
【請求項23】
前記遮蔽要素(94)は、前記電磁放射(120)の前記想定された入射方向(122)に沿って、前記吸収体(52)に沿って更に延出する、請求項22に記載の検出器(40)。
【請求項24】
前記検出器(40)は、2つ以上のセンサ要素(50)を含み、
前記2つ以上のセンサ要素(50)は、相互に隣接すると共に熱的に分離している、請求項11から23のうち1項に記載の検出器(40)。
【請求項25】
前記2つ以上のセンサ要素(50)は、測定される前記電磁放射(120)の前記想定された及び/又は決定された入射方向(122)に対して垂直な面又は少なくとも実質的に垂直な面内で、回転対称パターン、又は列、又は行列に配置されている、請求項24に記載の検出器(40)。
【請求項26】
測定される前記電磁放射(120)の前記想定された及び/又は決定された入射方向(122)に対して垂直な面又は少なくとも実質的に垂直な面内で、前記2つ以上のセンサ要素(50)は、
矩形、方形、円形、円環、円環の一部、
の形状のうち1つを含む、請求項24又は25に記載の検出器(40)。
【請求項27】
前記検出器(40)は、真空フィードスルー(14)に前記吸収体(52)を配置するための配置要素(42)を含む、請求項11から26のうち1項に記載の検出器(40)。
【請求項28】
前記配置要素(42)は、前記真空フィードスルー(14)に対する前記吸収体(52)の位置を変更するための位置決め要素を含む、請求項27に記載の検出器(40)。
【請求項29】
電磁放射(120)を用いた熱蒸発のためのシステム(10)であって、
電磁放射(120)を提供するための電磁放射源(110)と、反応雰囲気(16)を収容している真空チャンバ(12)と、電磁放射(120)を測定するための検出器(40)と、を備え、
ソース材料(20)及びコーティングされるターゲット材料(18)は、前記真空チャンバ(12)内に配置され、
前記放射源は、前記プラズマ閾値未満での前記ソース材料(20)の熱蒸発及び/又は昇華のため、その電磁放射(120)が好ましくは45度の角度で前記ソース材料(20)の前記ソース表面(22)に入射するように配置され、
電磁放射(120)を測定するための前記検出器(40)は、前記ソース表面(22)で反射された電磁放射(120)が前記検出器(40)に到達するように配置され、
請求項1から10のうち1項に記載の方法を実行するように適合されている、システム(10)。
【請求項30】
前記検出器(40)は、請求項11から28のうち1項に従って構築される、請求項29に記載のシステム(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁放射を用いた熱蒸発のためのシステムにおいて、蒸発したソース材料のフラックス分布を制御するための方法に関する。このシステムは、電磁放射を提供するための電磁放射源と、反応雰囲気を収容している真空チャンバと、電磁放射を測定するための検出器と、を含む。ソース材料及びコーティングされるターゲット材料は真空チャンバ内に配置され、放射源は、プラズマ閾値未満でのソース材料の熱蒸発及び/又は昇華のため、電磁放射が好ましくは45度の角度でソース材料のソース表面に入射するように配置されている。電磁放射を測定するための検出器は、ソース表面で反射された電磁放射が検出器に到達するように配置されている。
【0002】
更に、本発明は、ソース表面で反射された電磁放射を測定するための検出器に関する。この検出器は、吸収体を備えたセンサ要素を含み、吸収体は、電磁放射を少なくとも部分的に吸収するための吸収表面を含む。センサ要素は更に、吸収された電磁放射によって吸収体に引き起こされた絶対温度及び/又は温度変化を検出するため、吸収体の温度を測定するための熱検知要素を含む。
【0003】
更に、本発明は、電磁放射を用いた熱蒸発のためのシステムに関する。このシステムは、電磁放射を提供するための電磁放射源と、反応雰囲気を収容している真空チャンバと、電磁放射を測定するための検出器と、を含む。ソース材料及びコーティングされるターゲット材料は真空チャンバ内に配置され、電磁放射源は、プラズマ閾値未満でのソース材料の熱蒸発及び/又は昇華のため、電磁放射が好ましくは45度の角度でソース材料のソース表面に入射するように配置されている。電磁放射を測定するための検出器は、ソース表面で反射された電磁放射が主検出器に到達するように配置されている。
【背景技術】
【0004】
ソース材料を蒸発させるため、特に、可視光線、赤外線、又は紫外線範囲内の波長を有するレーザ光のような電磁放射を用いることは広く知られている。このようなレーザ蒸発システムは、ソース材料ブロックの中心を前面側から連続波レーザで加熱することによって、低圧で薄い材料膜を堆積することを可能とする。例えばシリコンは、蒸発した材料の所望のフラックスを達成するために必要な温度で溶融し、同じソース材料の固体部分の内部に溶融プールを形成する。従って、固体シリコンは液体シリコンのためのるつぼを形成し、ソース材料とるつぼとの熱膨張の不一致が存在しないので極めて高い加熱及び冷却率が可能である。同時に、異なるるつぼ材料によるソース材料の汚染は回避される。あるいは、蒸発させる材料とは異なる材料から成るるつぼが用いられる。
【0005】
しかしながら、電磁放射を入射させることでソース材料が枯渇していくと、例えば、溶融プールが凹状の形態を生じる、及び/又はソース材料内に昇華スポットがどんどん深く形成されるというように、ソース表面の形状が変化する。ソース表面の形状は蒸発した材料のフラックス分布及び蒸発率に直接影響を及ぼすので、蒸発した材料のフラックス分布及び蒸発率は本質的に不安定である。
【0006】
一般に、2つの主な事例を区別することができる。局所的に凹状の昇華又は蒸発の場合、スポットすなわち電磁放射の真下に凹状くぼみが形成される。これは、ビーム内での電磁放射の半径方向強度減衰及び強度最大値からの温度勾配に起因して、このスポットの中心で昇華又は蒸発率が最大になるからである。このくぼみの最も深いポイントの外側では、表面要素はソース対称軸の方へ向かって内側に傾斜し、このためフラックス分布の中心に対する寄与が大きくなる。このようなフラックス分布の集束は、特に比較的大きい距離で小さいサンプルをコーティングする場合、有益であり得る。しかしながら、一度ソース表面のくぼみが深くなりすぎると、その側壁表面要素からの蒸発又は昇華は傾斜が大きくなりすぎ、フラックス分布は再び焦点がぼける。更に、急勾配の側壁はコーティング対象のモル(mole)の一部を陰にして、大きな厚さ不均一性を生じる可能性がある。
【0007】
第2の主な事例は、局所的に凸状の昇華又は蒸発表面である。この場合、ソースの対称軸から離れた表面要素は外側に傾斜し、より拡散したフラックス分布に直結し、平坦な表面の場合に比べて多くの材料がサンプル外へ誘導される。このような焦点がぼけたフラックス分布はターゲット基板上の成長率の低下を招き、平坦なソース表面の場合に比べて、ターゲットに当たらない昇華又は蒸発ソース材料量が多くなる。
【0008】
一般に、この問題を克服するための既知の手法は、ソース材料上の電磁放射スポットを移動させることで、より均一な分布エネルギ堆積を提供し、従ってより均一な蒸発ソース材料のフラックス分布を提供することである。しかしながら、フラックス分布の実際の能動的制御を行うためには、電磁放射スポットの真下の表面曲率を信頼性高く検出する必要がある。カメラを用いたソース表面の直接的な観察は、ソース表面に向かい合うウィンドウの迅速なコーティングにより、従って蒸発又は昇華フラックスにより、妨げられる。
【0009】
上述のことに鑑み、本発明の目的は、上述した当技術分野の欠点が存在しない、蒸発したソース材料のフラックス分布を制御するための改良された方法、ソース表面で反射された電磁放射を測定するための改良された検出器、及び、電磁放射を用いた熱蒸発のための改良されたシステムを提供することである。特に、本発明の目的は、電磁放射を用いた熱蒸発のためのシステムにおいて、蒸発したソース材料のフラックス分布の制御を、特に容易かつコスト効率の高い方法で可能とする方法、検出器、及びシステムを提供することである。好ましくは、特に閉ループ制御において、形状、サイズ、及び方向に関する空間的な変動についてフラックス分布を調整することができる。
【0010】
この目的は、各独立クレームによって満足される。特に、この目的は、請求項1に記載の方法、請求項11に記載の検出器、及び請求項29に記載のシステムによって満足される。従属クレームは、本発明の好適な実施形態を記載する。また、本発明の第1の態様に従った方法に関して記載される詳細事項及び利点は、場合によっては技術的な意味で、本発明の第2の態様に従った検出器及び本発明の第3の態様に従ったシステムに当てはまり、逆もまた同様である。
【発明の概要】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、この目的は、電磁放射を用いた熱蒸発のためのシステムにおいて、蒸発したソース材料のフラックス分布を制御するための方法によって満足される。システムは、電磁放射を提供するための電磁放射源と、反応雰囲気を収容している真空チャンバと、電磁放射を測定するための検出器と、を備える。ソース材料及びコーティングされるターゲット材料は真空チャンバ内に配置され、放射源は、プラズマ閾値未満でのソース材料の熱蒸発及び/又は昇華のため、その電磁放射が好ましくは45度の角度でソース材料のソース表面に入射するように配置され、電磁放射を測定するための検出器は、ソース表面で反射された電磁放射が検出器に到達するように配置されている。
【0012】
本発明に従った方法は、以下のステップを含む。
【0013】
a)ソース表面から蒸発したソース材料のフラックスの所望の分布、及び所望の分布のために必要な電磁放射の入射分布を規定するステップと、
b)ステップa)の所望の分布及び入射分布に基づいて、ソース表面で反射された電磁放射の予想分布を決定するステップと、
c)電磁放射源によって、ステップa)で規定された必要な入射分布を有する電磁放射を提供するステップと、
d)検出器によって、ソース表面で反射された電磁放射を測定するステップと、
e)ステップd)の測定データに基づいて、ソース表面で反射された電磁放射の測定分布を決定するステップと、
f)ステップb)で決定された予想分布とステップe)で決定された測定分布との差を決定するステップと、
g)ステップf)で決定された差を最小限に抑えるように、電磁放射源によって提供される電磁放射の必要な入射分布を再決定するステップと、
h)電磁放射源によって、ステップg)で再決定された必要な入射分布を有する電磁放射を提供するステップ。
【0014】
本発明に従った方法は、電磁放射を用いたソース材料の熱蒸発のためのシステムで使用することができ、また、このシステムによって使用することができる。以下では、蒸発という用語は、明示的に言及されていない場合であっても、任意の昇華プロセスも含む。蒸発したソース材料は、好ましくは、例えば薄膜の形態でターゲット材料をコーティングするために使用できる。ソース材料及びターゲット材料は、システムの真空チャンバ内に配置される。真空チャンバは、ターゲット材料の所望のコーティングに適した反応雰囲気を収容している。例えば反応雰囲気は、真空として提供するか、又は酸素及び/又は窒素等の必要な反応ガスを収容することができる。
【0015】
蒸発プロセスのため、電磁放射源は電磁放射を提供し、電磁放射は真空チャンバ内へ導かれてソース材料のソース表面に入射する。電磁放射のエネルギ堆積は、ソース材料を蒸発又は昇華させる。エネルギ堆積は、ソース材料のプラズマ閾値に達しないように選択される。従って、特に、プラズマを形成することのないソース材料の純粋な熱蒸発を与えることができる。好ましくは45度の角度で入射することにより、真空チャンバ内の電磁放射の経路と真空チャンバ内のソース及び/又はターゲット保持要素のような他の構造との衝突を回避することができる。
【0016】
ソース表面に入射する電磁放射の一部のみがソース材料によって吸収され、蒸発プロセスに用いられる。電磁放射の残り部分はソース表面で反射される。言い換えれば、電磁放射の吸収部分と反射部分は相互に直接関連している。具体的に述べると、例えば表面の平坦部分、凹状部分、及び凸状部分は、入射する電磁放射を異なるように反射するので、電磁放射の反射部分は表面の形状及び形態の情報を伝える。これにより、表面の形状及び形態は反射電磁放射に反映される(impress)。従って、ソース表面で反射された電磁放射を検出することにより、ソース表面の実際の形状及び形態を推論することができる。反射電磁放射を検出するため、本発明に従った方法では、真空チャンバ内で反射電磁放射の経路に適切に位置決めされた検出器が用いられる。
【0017】
上述のように、測定された反射電磁放射によってソース表面の実際の形状及び形態を推論することができる。従って、蒸発又は昇華したソース材料のフラックスの実際の分布も決定することが可能となる。所望のフラックス分布が既知であるので、実際の現在のソース表面に入射する場合に所望のフラックス分布を生成するにはどのように入射電磁放射を形成するべきであるかを決定できる。
【0018】
以下、本発明に従った方法の個々のステップを詳細に説明する。
【0019】
本発明に従った方法の第1のステップa)では、ソース表面から蒸発したソース材料のフラックスの所望の分布を規定する。ほとんどの場合、所望のフラックス分布は、ターゲットの均一なコーティングを達成できるようなものである。しかしながら、ターゲット上で位置に依存した厚さを有するコーティングを与えるため、前述のものとは異なる、特に空間依存する所望のフラックス分布も可能である。
【0020】
更に、ステップa)は、電磁放射の入射分布を規定することも含む。この入射分布は、蒸発したソース材料のフラックスの所望の分布を提供できるように規定される。所望のフラックス分布の他に、電磁放射の入射分布を規定する際、好ましくは、ほとんどの場合は平坦及び/又は円形であるソース表面の初期の形状及び形態も考慮に入れることができる。
【0021】
本発明に従った方法の次のステップb)では、ステップa)の結果に基づいて、ソース表面で反射された電磁放射の予想分布を決定する。具体的には、所望の分布及び入射分布を用いて予想分布を決定する。ステップa)と同様、電磁放射の予想分布を決定する際、ソース表面の初期の形状及び形態も考慮に入れることができる。
【0022】
本発明に従った方法の次のステップc)では、電磁放射源によって、ステップa)で規定された必要な入射分布を電磁放射に与える。電磁放射源は、真空チャンバに直接取り付けることができる。あるいは電磁放射源は、真空チャンバから離隔して、場合によっては異なる部屋又は建物に位置決めされ、例えば光ファイバのような適切な誘導要素によって電磁放射を真空チャンバへ誘導することができる。この結果、電磁放射は必要な入射分布でソース材料のソース表面に入射し、プラズマ閾値未満でソース材料を熱的に蒸発又は昇華させる。
【0023】
同時に、ソース材料で吸収されない電磁放射の部分はソース表面で反射される。本発明に従った方法の次のステップd)では、この反射電磁放射をシステムの検出器によって測定する。この目的のため、検出器は真空チャンバ内に適切に位置決めされる。
【0024】
本発明に従った方法のステップd)で取得した測定データは、次のステップe)で分析される。具体的には、ステップd)の測定データに基づいて、電磁放射の測定分布を決定する。
【0025】
ステップe)で取得された測定分布に関する情報を次のステップfで用いて、ステップb)で決定された予想分布とステップe)で決定された測定分布との差を決定する。言い換えれば、ステップf)の実行後、予想分布が実際の測定分布と合致するか否かに関する情報を生成する。これら2つの分布間の不一致が大きくなればなるほど、蒸発したソース材料の実際のフラックス分布と本発明に従ったステップa)で規定された所望の分布との差も大きくなる。
【0026】
ステップf)の結果に基づいて、本発明に従った方法の次のステップg)では、必要な入射分布を再決定する。具体的に述べると、測定分布と、この測定分布及び予想分布の差と、によってソース表面の実際の形状及び形態に関する情報を取得できる。従って、これに基づいて、蒸発したソース材料のフラックスの所望の分布を達成するように、電磁放射の必要な入射分布の改善された決定が可能となる。これにより、ステップf)で決定された差は自動的に最小限に抑えられるはずである。
【0027】
本発明に従った方法の最後のステップh)では、電磁放射源によって、ステップg)で再決定された必要な入射分布を電磁放射に与える。この結果、電磁放射は再決定された必要な入射分布でソース材料のソース表面に入射し、プラズマ閾値未満でソース材料を熱的に蒸発又は昇華させる。ソース表面の実際の形状及び形態を考慮に入れているので、蒸発したソース材料のフラックスの所望の分布と実際の現在の分布との合致が向上する。
【0028】
要約すると、上述された本発明に従った方法は、実際の測定に基づいて各蒸発システムの動作中に蒸発又は昇華したソース材料のフラックス分布の能動的調整を可能とする。従って、フラックス分布の制御が可能となる。この結果、ターゲット材料のコーティングを改善することができる。
【0029】
更に、本発明に従った方法は、ステップa)で規定された所望の分布が時間依存性を含むことを含み得る。本発明に関する時間依存性は、例えば、所望の分布の空間的な形状及び/又は向きについて当てはまる可能性がある。代替的に又は追加的に、所望の分布の強度は経時的に変動し得る。この結果、ターゲットのコーティングは、例えばターゲット材料のコーティングの空間的厚さ変動を含めて、非常に独特な方法で制御することができる。好ましくは、所望の分布は時間依存性であるので、本発明に従った方法の残りのステップはそれに応じて適合される。すなわち、例えば、必要な分布及び予想分布も調整された時間依存性を含み、この時間依存性に従うように、ステップd)、f)、及びg)における測定、比較、及び再決定は繰り返し実行される。
【0030】
更に、本発明に従った方法は、ステップb)の予想分布が、予想分布を計算すること、及び/又は予想分布を実験的に測定すること、及び/又は、予想分布を経験的に推定すること、によって決定されることを特徴とすることができる。このリストは限定されたもの(closed)でなく、特に、可能な場合及び技術的意味において、予想分布を決定する異なる方法も適用可能である。予想分布の計算は、例えば所望の分布及び必要な分布のような全てのアクセス可能な情報に基づく。経験的な推定は、例えばソース表面の想定される形態及び形状のような一般的な仮定に基づく。好ましくは、計算と推定の組み合わせが用いられる。予想分布を実験的に測定することにより、極めて正確な予想分布を提供できる。この方法の欠点は、追加の実験的測定のために時間と労力が必要となることである。
【0031】
好ましくは、本発明に従った方法は、ステップd)からステップh)を繰り返し実行することを含み得る。繰り返し率は一定とすることができ、例えば、10Hz又はそれ以上から、ステップd)からh)の連続的な繰り返しまでとすることができる。また、適合された繰り返し率も可能であり、これによって各繰り返しを手動でトリガすることができる。及び/又は、適合された繰り返し率が可能であるのは、例えば、ソース表面で反射された電磁放射による検出器内のエネルギ堆積のようなシステムのパラメータが閾値を上回るか又は下回る場合である。ステップd)からh)の繰り返しにより、長期間にわたって所望の分布の提供を保証できる可能性が与えられる。特に、繰り返しによって、所望の分布を有する蒸発又は昇華したソース材料のフラックスを提供する閉ループ制御が可能となる。
【0032】
更に、本発明に従った方法は、電磁放射として、光、特に波長が100nmから1400nmのレーザ光が用いられることを含み得る。光、特にレーザ光は、提供が容易であり、特に、真空チャンバから離隔した光源から真空チャンバへ容易に誘導できる。特に、光には広範囲のエネルギ密度を与えることができ、従って、特定のソース材料のプラズマ閾値未満で蒸発させるため電磁放射の提供を容易に行うことができる。
【0033】
別の実施形態によれば、本発明に従った方法は、ステップe)及び/又はステップf)において検出器の応答関数が考慮されることを特徴とすることができる。検出器の応答関数は、反射された電磁放射の測定に対して直接的な影響を有する。例えば、検出器がカバーする立体角は、測定される信号を限定する。また、検出器の不感時間と、例えば検出器の感度のエネルギ依存性と、は実際の測定に影響を及ぼし得る。従って、ステップe)及び/又はステップf)で応答関数を考慮することにより、測定される分布に対する検出器セットアップの影響を、少なくとも部分的に、好ましくは完全に考慮に入れることができる。
【0034】
追加的に又は代替的に、本発明に従った方法は、ステップf)において、差を決定するため、予想分布及び測定分布のサイズ及び/又は形状を用いることを含み得る。上述のように、ソース表面の形状及び/又は形態の変化は、反射電磁放射の分布に影響を及ぼす。具体的には、ソース表面の凹状及び凸状の部分は双方とも入射電磁放射を異なるように反射し、特に、入来する電磁放射を分散させる。これにより、表面の形状及び形態は反射電磁放射の形状及び形態に反映される。従って、ソースで反射された電磁放射のサイズ及び/又は形状を検出することにより、反射電磁放射に反映されたソース表面の形状及び形態の情報を特に容易に検出することができる。
【0035】
更に、本発明に従った方法は、電磁放射源が2つ以上の放出器セクションを含み、ステップc)及びステップh)において、各放出器セクションがソース表面に入射する電磁放射を提供し、システムは2つ以上の検出器を含み、各検出器は、放射器セクションのうち1つによって提供されてソース表面で反射された電磁放射を測定するように配置されていることを特徴とすることができる。言い換えると、この実施形態によれば、ソース表面は電磁放射の2つの別個のビームによって照明され、各ビームは別個の専用の検出器によって監視される。放出器セクションとこれに割り当てられた検出器との各ペアは、本発明に従った方法の放出及び測定要素を実施することができる。簡潔に述べると、ソース表面に入射する電磁放射のいっそう均一な分布を提供することができ、また、単一の放出器を備える電磁放射源について上述されているような、この分布の能動的制御を実行できる。また、これにより、提供され得る所望の分布の平滑性が向上する。
【0036】
更に、本発明に従った方法は、2つ以上の放出器セクションによって提供された各電磁放射がソース表面に対して放射対称に入射することによって改良され得る。言い換えると、放出器セクションは、ソース表面の周囲に均一に分布している。この結果、2つ以上の放出器セクションの入射分布が等しい場合、これらを組み合わせた入射分布も回転対称になる。特に、これによって、入射電磁放射の方向における溶融ソース材料の傾き及び/又は傾斜のような効果を防止することができる。
【0037】
本発明に従った方法の更に別の改良された実施形態は、2つ以上の放出器セクションが調整可能なパワー密度及び/又は形状及び/又はサイズを有する電磁放射を提供することを特徴とすることができる。すでに述べたように、場合によっては、ソース表面上に空間的分布を含む必要な分布を提供することが有利である可能性がある。これは、2つ以上の放出器セクションを提供し、各放出器セクションが電磁放射を放出し、電磁放射のパワー密度、形状、及び/又はサイズを個別に変更可能とすることによって、容易に実施され得る。簡潔に述べると、これによって、ソース表面上の位置に応じた、ソース材料から蒸発させるソース材料フラックスの所望の分布が可能となる。
【0038】
本発明の第2の態様によれば、目的は、ソース表面で反射された電磁放射を測定するための検出器によって満足される。検出器は、吸収体を備えたセンサ要素を含み、吸収体は、電磁放射を少なくとも部分的に吸収するための吸収表面を含み、センサ要素は更に、吸収された電磁放射によって吸収体に引き起こされた絶対温度及び/又は温度変化を検出するため、吸収体の温度を測定するための熱検知要素を含み、熱検知要素は、吸収体の穴に配置された温度センサ、特に熱電対要素を含み、穴は吸収体内で、好ましくは吸収表面の近くで終端する。
【0039】
本発明に従った検出器は、電磁放射を用いた熱蒸発のためのシステムにおいて使用することができる。特に、このような検出器は、例えばソース材料のソース表面で反射された電磁放射のような電磁放射を測定するために使用できる。
【0040】
測定される電磁放射は、吸収体に、具体的には吸収表面に入射し、少なくとも部分的に吸収表面によって吸収される。言い換えると、電磁放射のエネルギの少なくとも一部分は吸収体内に堆積される。従って、吸収体の温度を測定及び監視すると、吸収体内に堆積されたエネルギを決定すること、これにより、吸収表面に入射する電磁放射の量を決定することが可能となる。
【0041】
吸収表面は少なくとも部分的にソース表面に向かい合っている。従って吸収表面は、ソースの蒸発又は昇華したソース材料でコーティングされる。このため、充分に長い堆積の後、検出器は、ソースと同一の(一定であることも示唆される)吸収率及び反射率を有する。
【0042】
吸収表面は、例えば、測定される電磁放射の想定入射方向に対して垂直に位置合わせすることができる。入射電磁放射の一部分のみが吸収されるので、残り部分は反射して同一方向に戻る。本発明に従った検出器を用いてソース表面で反射された電磁放射を測定する熱蒸発のためのシステムでは、このような吸収表面で反射された電磁放射はソース表面へ戻るように方向付けられ、熱蒸発のために2回用いることができる。
【0043】
しかしながら、その後のソース表面での2回目の反射によって電磁放射が電磁放射源へ導かれ、外乱(disturbance)を引き起こす恐れがある。2つの平坦なセクションを有する吸収表面の一実施形態において、これらのセクションを相互に隣接させ、90度よりわずかに小さい角度に、例えば89度に配置することで、この問題を解決できる。電磁放射はこの場合も反射されてソース表面へ戻り得るが、全く同じ方向ではないので、電磁放射源には当たらない。更に、2要素吸収表面に入射する電磁放射が2回反射されると、吸収表面による入射電磁放射の吸収も2倍になる。これにより、吸収体内へのエネルギ堆積を増大させ、従って測定の精度を向上させることができる。
【0044】
入射電磁放射によって吸収体内へ堆積されたエネルギの量を測定及び/又は監視するため、吸収体の絶対温度及び/又は温度変化を測定及び/又は監視することができる。本発明に従った検出器では、吸収体内の穴の中で吸収表面の近くに配置された温度センサを用いることによってこの測定を実行する。
【0045】
この穴によって、温度センサを吸収表面の近くに配置することが可能となり、従って温度測定の精度を向上させることができる。吸収体内の温度センサにより、吸収体の実際の温度及び/又はこの温度の変化を直接測定できる。従って、吸収体内で吸収された電磁放射が引き起こしたエネルギ堆積の絶対値を決定することができる。特に、例えば本発明に従った検出器によるソース表面で反射された電磁放射の測定、ソース表面で反射された電磁放射の測定分布に基づいて、蒸発したソース材料の実際の分布と蒸発したソース材料の所望の分布との合致を推論し、次いで制御することができる。
【0046】
好ましくは、本発明に従った検出器は、本発明の第1の態様に従った方法において検出器を使用できることを含み得る。従って、本発明の第1の態様に従った方法に関して詳述される全ての特徴及び利点は、本発明の第1の態様に従った方法を実行するために用いられる本発明の第2の態様に従った検出器によっても提供され得る。
【0047】
更に、本発明に従った検出器は、吸収表面が、光、特に波長が100nmから1400nmのレーザ光を吸収することを特徴とすることができる。本発明の第1の態様に従った方法に関して上述されているように、光、特にレーザ光は、使用され得る広範なソース材料の蒸発及び/又は昇華に適している。光を吸収できる吸収表面を提供することにより、本発明に従った検出器は、この特別な電磁放射に適合させることができる。適合は例えば、吸収表面が配置されている吸収体のために適切な材料を選択することを含み得る。追加的に又は代替的に、光吸収を増大させるため、適応的に選択された吸収表面のコーティングも用いることができる。
【0048】
本発明に従った検出器の別の実施形態によれば、吸収体は、吸収体の能動的冷却のための冷却システムを含み、冷却システムは、好ましくは水である冷却剤が吸収体内で流れるための少なくとも1つの冷却ダクトを吸収体内に含む。冷却システムの冷却ダクトは、吸収体内を通り、吸収体内で冷却剤が流れることを可能とする。冷却剤は流体とすることができ、好ましくは冷却剤として水が用いられる。吸収体内を流れることにより、冷却剤は吸収体を冷却する。好ましくは、冷却システムは吸収体を一定の温度に維持する。従って、吸収体は温度が変化せず、これにより入射電磁放射のための検出能力を維持する。更に、吸収体内の冷却ダクトを流れる冷却剤は、好ましくは、入射電磁放射によって吸収体内に堆積されたエネルギを吸収する。このため、冷却剤の温度は吸収したエネルギの量に応じて変化する。
【0049】
従って、本発明に従った検出器は、熱検知要素が、吸収体内の冷却ダクトを通る冷却剤の流れを測定するための流量センサと、吸収体内の冷却ダクトを通って流れることで誘発された冷却剤の絶対温度及び/又は温度変化を測定するための温度センサと、を含むことによって、更に改良することができる。冷却剤の温度及び/又は温度変化を測定し、それによって吸収体の温度及び/又は温度変化を測定するため、本発明に従った検出器の検知要素は、2つの異なるタイプのセンサ、すなわち流量センサと温度センサを備える。特に、流量センサは、冷却ダクトを通って流れる冷却剤の流量を測定する。温度センサは、冷却剤の温度を測定する。特に、冷却剤の温度は、少なくとも冷却ダクトの出口で測定され、好ましくは冷却ダクトの入口でも測定される。冷却剤が一定温度で入口に提供されると仮定すると、出口温度は経時的な温度変化の検出を可能とする。更に冷却剤の入口温度を測定することにより、相対的な温度変化のこの測定を向上させることができる。特に、温度測定を上述の流量測定と組み合わせることによって、吸収体内で吸収された電磁放射が引き起こしたエネルギ堆積の絶対値を決定することができる。
【0050】
追加的に測定されたこの温度値を用いて、穴の中に配置された温度センサの測定をチェックすること、及び/又は、温度測定の全体的な精度を向上させること、が可能となる。更に、穴の中の温度センサに基づく温度測定が失敗するか又は完全に失われている場合も、吸収体の温度の測定、従って電磁放射により吸収体内に堆積されたエネルギの測定は依然として可能である。
【0051】
更に、本発明に従った検出器は好ましくは、吸収体が、特に銅又はアルミニウムのような金属を含む、特にそのような金属から成ることを含み得る。吸収体の材料としての金属は、いくつかの利点を与える。第1に、金属、特に銅又はアルミニウムは、高い熱伝導を有する。本発明に従った検出器はボロメータとして設計される。ボロメータは、入射電磁放射を吸収し、この吸収によって生じる温度及び/又は温度変化を測定するセンサ要素を含む。高い熱伝導を有する材料は、そのようなボロメータには特に適している。更に、金属は、超高真空条件のもとでの使用に適合した材料である。従って、本発明に従った検出器によって反応雰囲気としてのそのような超高真空が汚染されること及びその逆を回避することができる。
【0052】
本発明に従った検出器の更に別の好適な実施形態によれば、吸収体は一端において中空吸収ボリュームを取り囲み、吸収ボリュームの内部側壁は吸収表面を形成し、吸収ボリュームは吸収オリフィスを含み、吸収オリフィスは、測定される電磁放射の想定された及び/又は決定された入射方向に位置合わせすることができる。上述のように、ほとんどの場合、吸収表面は、入射電磁放射の、少なくとも検出器に直接入射する電磁放射の、一部分のみを吸収する。本発明に従った検出器のこの好適な実施形態において、吸収表面は中空吸収ボリュームの内部側壁として与えられる。検出器に入射する電磁放射は、吸収オリフィスを介して吸収ボリューム内に入る。吸収ボリューム内で、電磁放射は吸収表面に入射し、部分的に吸収されると共に部分的に反射される。この反射は、吸収オリフィスに対して好ましくは大きい吸収ボリューム内で生じるので、反射した電磁放射は吸収オリフィスに当たらずに、吸収ボリュームの内部側壁すなわち吸収表面の別のセクションに再び衝突する可能性が高い。理想的な事例では、入射電磁放射が吸収体によって完全に又は少なくとも実質的に完全に吸収されるまで、この手順は繰り返す。この場合、吸収体内のエネルギ堆積は入射電磁放射の全エネルギを表す。特に、これにより、蒸発したソース材料による吸収表面のコーティングは効果がなくなる。
【0053】
本発明に従った検出器の更に別の改良された実施形態は、吸収表面が吸収ボリューム内で部分的に円錐形状であり、円錐形状の吸収表面の円錐が吸収オリフィスに向かい合っていることを含み得る。円錐は、突起及びくぼみの双方として成形することができる。突起の実施形態では、円錐の先端部が吸収オリフィスに向かい合い、くぼみの実施形態では、円錐の基部が吸収オリフィスに向かい合う。言い換えると、吸収オリフィスを横切る入射電磁放射は最初に吸収表面の円錐形状部分に衝突する。円錐が吸収オリフィスに向かい合っているので、円錐の側面で反射された電磁放射は吸収ボリューム内のどこかに誘導され、間違いなく吸収オリフィスに当たらない。従って、吸収ボリューム内で入射電磁放射が完全に吸収される上述の理想的な事例を、より容易に達成することができる。
【0054】
更に、本発明に従った検出器は、吸収オリフィスの縁を形成する吸収ボリュームの部分が吸収ボリュームに対して内側に傾斜していることによって改良できる。吸収オリフィスに対向する前述の円錐と同様、吸収オリフィスの周りの内側に傾斜した縁も、電磁放射を確実に吸収ボリューム内へ反射させるのに役立つ。従って、これにより、本発明に従った検出器のこの実施形態においても、吸収ボリューム内で入射電磁放射が完全に吸収される上述の理想的な事例を、より容易に達成することができる。
【0055】
好ましくは、本発明に従った検出器は、吸収オリフィスに対向する円錐形状セクション及び吸収オリフィスを取り囲む傾斜縁の双方を含む。
【0056】
本発明に従った検出器の別の実施形態は、検出器がアパーチャ開口を有するアパーチャを含み、アパーチャがセンサ要素に対して上流に、測定される電磁放射の想定された及び/又は決定された入射方向に沿って配置されていることを特徴とすることができる。このようなアパーチャは、本発明に従った検出器によって調査され得る立体角を規定するのに役立ち得る。立体角の規定を向上させるため、想定された及び/又は決定された入射方向に沿って上流に位置合わせして並べられた2つ以上のアパーチャも使用できる。好ましくは、例えば電磁放射源によって照明されるソース表面を検出器の視点から見ることができるように、従って、ソース表面で反射された電磁放射が検出器に到達できるように、アパーチャはサイズが設定されて配置される。更に、真空チャンバ内の他の位置から発する電磁放射はアパーチャによって阻止されるので、本発明に従った検出器の測定の全体的な精度を向上させることができる。
【0057】
本発明に従った検出器の更に別の改良された実施形態によれば、アパーチャ開口のサイズは、吸収体、特に吸収オリフィスに適合されて、アパーチャ開口を通る電磁放射が特に吸収オリフィスを通って吸収体の吸収表面に入射するようになっている。この実施形態では、前述した検出器の視野の制約が更に改善される。アパーチャ開口及び吸収体、特に吸収オリフィスは、相互に適合されて構築されているので、アパーチャオリフィスを通って入来する電磁放射は全て検出器によって確実に検知する(register)ことができる。これにより、情報の損失を回避すること、又は少なくとも最小限に抑えることが可能となる。
【0058】
視野を更に制約すると共に最適化するため、複数の連続したアパーチャを用いてもよい。これは、例えばソースが相互に近接して配置され、ソースから長距離で測定を行う必要がある場合、特に有用である。
【0059】
更に、本発明に従った検出器は、検出器が遮蔽要素を含み、遮蔽要素がアパーチャと吸収体との間で、測定される電磁放射の想定された入射方向に沿って延出することによって改良できる。遮蔽要素はアパーチャと共に、アパーチャオリフィスを通って入来する電磁放射のみがアクセスできるボリュームを検出器の前方に形成する。アパーチャからは完全に外れているが吸収体に衝突する散乱電磁放射は、遮蔽要素によって阻止される。これにより、向上した精度で検出器の視野を規定することができる。
【0060】
更に、本発明に従った検出器の別の改良された実施形態において、遮蔽要素は、電磁放射の想定された入射方向に沿って、吸収体に沿って更に延出する。吸収表面から離れた場所で吸収体に入射する電磁放射は、それでもなお吸収体内にエネルギを堆積するので、検出器が測定する結果を歪ませる可能性がある。吸収体に沿って更に延出する遮蔽要素は吸収体を覆い、全ての入来する電磁放射を途中で阻止する。従って、検出器の測定の歪みを回避すること、又は少なくとも最小限に抑えることが可能となる。
【0061】
別の好適な実施形態において、本発明に従った検出器は、検出器が2つ以上のセンサ要素を含み、2つ以上のセンサ要素は相互に隣接すると共に熱的に分離していることによって特徴付けることができる。上述のように、蒸発中、ソース表面の空間的形状は変化し得る。特に、ソース表面は凸状又は凹状の形状になる可能性がある。ソース表面のこの空間的形状は、反射された電磁放射の一部が単に主検出器に当たらないこと、及び/又は、他の部分が検出器の方向に集束されること、から検出器の測定結果に影響を及ぼす。2つ以上のセンサ要素を備えた検出器を提供することにより、反射された電磁放射の分布のいっそう精密な測定を得ることができる。特に、ソース表面の空間的形状及び/又は形態が変化すると、2つ以上のセンサ要素が測定する反射電磁放射分布において検出可能な差が生じるので、こういった変化を検出することができる。熱的に分離されたこれら2つ以上のセンサ要素を提供することにより、各センサ要素の独立した測定を実行できる。センサ要素を相互に隣接して配置することで、反射された電磁放射が検出器から外れるセンサ要素間のギャップは確実に最小限に抑えられる。
【0062】
更に、本発明に従った検出器は、2つ以上のセンサ要素が、測定される電磁放射の想定された及び/又は決定された入射方向に対して垂直な面又は少なくとも実質的に垂直な面内で、回転対称パターン、又は列、又は行列に配置されていることによって改良できる。異なるパターンにより、異なる測定の目的に検出器を適合させることが可能となる。例えば、回転対称パターンは、電磁放射源によって与えられる電磁放射に関する集束の問題を識別することを可能とする。この電磁放射とソース表面との間の不整合を発見するには、行の配置が特に有用である。特に複数のセンサ要素を用いる場合は、行列によって、ソース表面で反射された電磁放射の分布をいっそう詳細に測定することができる。
【0063】
本発明に従った検出器の更に別の改良された実施形態は、測定される電磁放射の想定された及び/又は決定された入射方向に対して垂直な面又は少なくとも実質的に垂直な面内で、2つ以上のセンサ要素が、
矩形、方形、円形、円環、円環の一部
の形状のうち1つを含むことを含み得る。
【0064】
このリストは完全なものでなく、別の適切な形状によって拡張され得る。特に、2つ以上のセンサ要素の上述した配置パターンでは、適用される現在のパターンに対して適応的に選択された各センサ要素の形状によって、別個のセンサ要素間の回避できるギャップを有することなく、各センサ要素のコンパクトで連続的な配置が可能となる。
【0065】
更に、本発明に従った検出器は、検出器が、真空フィードスルーに吸収体を配置するための配置要素を含むことによって特徴付けることができる。本発明に従った検出器のこの特に好適な実施形態は、真空チャンバの真空フィードスルー内に及び/又は真空フィードスルーに検出器を直接配置することを可能とする。例えば冷却チャネルの入口及び出口ポート並びにセンサ要素の電気接続を含む全ての接続は、真空チャンバの外部からアクセス可能である。真空チャンバ内には、基本的に吸収体のみが配置され、アパーチャ及び/又は遮蔽要素が存在する場合はこれらも配置される。これらの要素は、超高真空を可能とする実施形態において提供され得る。従って、検出器の部品及び真空チャンバ内の反応雰囲気の相互の損傷を回避することができる。
【0066】
本発明に従った検出器の更に別の改良された実施形態によれば、配置要素は、真空フィードスルーに対する吸収体の位置を変更するための位置決め要素を含む。真空チャンバ内の吸収体の位置を変更できる機能性(possibility)は、例えばソース材料及び/又はターゲット材料を交換する際に使用され得る。これにより、このような手順を検出器が干渉すること、特に吸収体が干渉することを回避できる。特に、手順の完了後、吸収体をソース要素の近くに再び配置して、カバーされる立体角を拡大することにより、本発明に従った検出器の測定能力を強化することができる。
【0067】
本発明の第3の態様によれば、目的は、電磁放射を用いた熱蒸発のためのシステムによって満足される。このシステムは、電磁放射を提供するための電磁放射源と、反応雰囲気を収容している真空チャンバと、電磁放射を測定するための主検出器と、を備える。ソース材料及びコーティングされるターゲット材料は真空チャンバ内に配置され、放射源は、プラズマ閾値未満でのソース材料の熱蒸発及び/又は昇華のため、その電磁放射が好ましくは45度の角度でソース材料のソース表面に入射するように配置され、電磁放射を測定するための主検出器は、ソース表面で反射した電磁放射が主検出器に到達するように配置され、本発明の第3の態様に従ったシステムは、本発明の第1の態様に従った方法を実行するように適合されている。従って、本発明の第1の態様に従った方法に関して詳述される全ての特徴及び利点は、本発明の第1の態様に従った方法を実行するように適合されている本発明の第3の態様に従ったシステムによっても提供され得る。
【0068】
好ましくは、本発明に従ったシステムは、少なくとも主検出器、好ましくは電磁放射のための全ての検出器が、本発明の第2の態様に従って構築されていることによって改良できる。この特別な実施形態において、本発明の第2の態様に従った検出器に関して詳述される全ての特徴及び利点は、本発明の第2の態様に従った少なくとも1つの検出器を含む本発明の第3の態様に従ったシステムによっても提供され得る。
【0069】
添付図面に示されている例示の実施形態を参照して、以下で本発明を更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図2】本発明に従った検出器の第1の可能な実施形態である。
【
図4】2つのセンサ要素を備える、本発明に従った検出器の一実施形態である。
【
図6】平坦なソース表面から蒸発したソース材料のフラックスである。
【
図7】凹状のソース表面から蒸発したソース材料のフラックスである。
【
図8】凸状のソース表面から蒸発したソース材料のフラックスである。
【
図10】2つの入射電磁放射による溶融小滴の挙動である。
【
図12】2つの入射電磁放射ビームを調整することによるターゲットの掃引である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
図1に、本発明に従った電磁放射120を用いるソース材料20の熱蒸発のためのシステム10の主要コンポーネントが示されている。ソース材料20は真空チャンバ12内に配置され、真空チャンバ12は反応雰囲気16を収容している。真空チャンバ12自体は単に真空フィードスルー14の隣に示されている。真空フィードスルー14の一方には電磁放射源110が配置され、他方には本発明に従った検出器40が配置されている。
【0072】
システム10の動作時、電磁放射源110は、ソース材料20のソース表面22に誘導されてこれに入射する電磁放射120を提供する。ソース材料20は電磁放射120の一部分を吸収し、従ってソース材料20の一部は
図1に破線の円で示されるように蒸発又は昇華する。ソース材料20に対向してターゲット材料18が配置されている。蒸発したソース材料20はターゲット材料18に到達し、ターゲット材料18の表面にコーティングを形成する。
【0073】
電磁放射120の残り部分はソース表面20で反射される。電磁放射源110の放出方向と、ソース表面22の位置及び大まかな向きは既知であるので、反射した電磁放射120の想定された及び/又は決定された入射方向122に検出器40を配置することができる。電磁放射源110について前述したのと同様に、検出器、具体的にはその吸収体52を、真空チャンバ12の真空フィードスルー14に配置することができる。
【0074】
本発明に従った検出器40はボロメータとして機能する。電磁放射120は吸収体52の吸収表面60に入射し、少なくとも部分的に吸収される。図示のように、吸収表面60はソース表面22の方を向いているので、
図1で示されているように蒸発したソース材料20によってコーティングされる。従って、短い蓄積時間の後、吸収表面60はソース表面22と同一であるか又は少なくとも同様の吸収及び反射特性を含む。
【0075】
吸収体52内への前述のエネルギ堆積によって、吸収体52の温度変化が生じるか、又は少なくとも冷却の要求増大が生じる。温度又は変化する挙動を測定することにより、入射電磁放射120によって蒸発又は昇華したソース材料20の蒸発率及び/又はフラックス分布を決定することができる。
【0076】
図2は、本発明に従った検出器40の可能な実施形態の断面を示す。検出器40は、好ましくは銅又はアルミニウムのような熱伝導性の高い金属から成る吸収体52を備えた単一のセンサ要素50を含む。配置要素40によって、本発明に従ったシステム10の真空チャンバ12の真空フィードスルー14に吸収体52を配置することができる。具体的に述べると、配置要素42は、真空チャンバ12の反応雰囲気16内での吸収体52の実際の位置を変更するための位置決め要素44を備える。従って、例えばソース材料20(
図1を参照のこと)のような、真空チャンバ12内に配置されたシステム10の他の要素を、検出器40によって妨害されずに移動させることができる。
【0077】
本発明に従った検出器40は、ボロメータの原理に基づいている。電磁放射120は吸収体52の吸収表面60に入射し、少なくとも部分的に吸収される。このエネルギ堆積は、吸収体52の絶対温度又は温度変化を測定することによって測定できる。
【0078】
このため、本発明に従った図示されている検出器40では、2つの異なる測定方法及びそれぞれの検知要素70が実施される。各方法は、温度又は温度変化を測定するため別個に用いることができる。しかしながら、以下に記載される2つの方法を組み合わせることによって精度の向上を図ることも可能である。
【0079】
第1の方法では、吸収体52の穴54内に、特に吸収表面60の近くに、好ましくは熱電対要素76である温度センサ74が配置されている。上述のように、吸収表面60に入射する電磁放射120によって堆積したエネルギは、吸収体52の温度上昇を引き起こす。吸収体52内で吸収表面60の近くに位置付けられた熱電対76は、これを絶対温度として又は温度変化として測定することができる。従って、この測定方法は、吸収体52内に堆積したエネルギ量を精密に決定することも可能とする。
【0080】
第2の方法では、吸収体52は能動的冷却のための冷却システム80を含む。冷却剤84が吸収体52内の冷却ダクト82を流れることで、入射電磁放射120によって吸収体80内に堆積したエネルギを取り込む。
図2で示されているように、冷却ダクト82の入口及び出口の双方において、流量センサ72が冷却剤84の流量を測定し、温度センサ74が冷却剤84の温度を測定する。簡潔に述べると、これらの測定を組み合わせることにより、吸収体52内に堆積したエネルギ量を精密に決定することが可能となる。
【0081】
図3は、本発明に従った検出器40の回転対称の好適な実施形態の、特にその吸収表面60の断面を示す。この実施形態によれば、図示されているセンサ要素50の吸収体52は、測定される電磁放射120の入射方向122に向かい合う端部において、中空の吸収ボリューム56を含む。この吸収ボリューム56は、入射電磁放射120が吸収ボリューム56内に入ることを可能とする単一の開口すなわち吸収オリフィス62を含む。吸収ボリューム56の内部側壁58は吸収表面60を形成する。つまり、電磁放射120は吸収ボリューム120内に入り、
図3の矢印で示されるように吸収ボリューム56内で何度も反射され、各反射において入射電磁放射120のエネルギの一部分が吸収される。理想的には、電磁放射120は吸収ボリューム56内に捕捉され、このため吸収表面60によって完全に吸収される。この理想的な事例の可能性を高めるため、吸収オリフィス62を取り囲む縁64を形成する側壁部分は吸収ボリューム56に対して内側に傾斜している。この内側に傾斜した表面は、これらの表面に入射する電磁放射が反射して入射方向に戻ることを回避できるという追加の利点を与える。更に、吸収オリフィス62に対向して配置された吸収表面60の部分は円錐形状であり、円錐の先端部は吸収オリフィス62の方を指している。
【0082】
図4に、2つのセンサ要素50を備えた検出器40が示されている。センサ要素50は相互に隣接して配置され、熱的に分離している。各センサ要素50は、それぞれの吸収体52及び吸収表面60を含む。センサ要素50の残り部分は図示されていない。簡潔に述べると、2つ以上のセンサ要素50を設けることで、例えば、蒸発したソース材料20(図示せず)の蒸発率及び/又はフラックス分布を決定するため、吸収された電磁放射120に関するいっそう詳しい情報を提供できる。
【0083】
更に、各センサ要素50の上流に、重ねて位置合わせされた2つのアパーチャ90が配置されている。アパーチャ開口92が、各センサ要素50の許容立体角を限定する。破線で示されているセンサ要素50間のクロストークを回避することができる。更に、アパーチャ90と吸収体52との間に、更に各アパーチャ本体52に沿って、遮蔽要素94が配置されている。これらの遮蔽要素94は、一方では上述のクロストークを更に低減する。他方では、吸収体52の側面に入射する電磁放射120を阻止し、測定結果を歪めることを不可能とする。
【0084】
図4に関して述べたように、本発明に従った検出器40は2つ以上のセンサ要素50を含むことができる。
図5に、センサ要素50及びそれらの吸収表面60の形状及び配置パターンのいくつかの例が示されている。明らかに、他の配置も可能であり、1つの限定では電子カメラと同様の高解像度画素アレイが可能である。簡潔に述べると、検出器40の測定の目的に関連して、例えば、蒸発したソース材料20の蒸発率及び/又はフラックス分布を決定するために、様々な配置パターンのうち最も適切なものを選択することができる。
【0085】
図5の上部左側に、単純な円形アクティブエリアを有する標準的な幾何学的形状が示されている。
【0086】
上部右側に示されているような四象限では、電磁放射120の入射方向122の移動を検出することができる。ここで、センサ要素50は方形に成形され、センサ要素50の数を少なく維持しながら、主にそれらの対角線に沿った水平方向及び垂直方向の移動を検出できるように配置されている。
【0087】
図5の下部左側では、円形リングの回転対称パターンを形成するセンサ要素50を用いた第3の配置が示されている。このパターンは、電磁放射源110によって与えられる電磁放射120の集束又は焦点のぼけに対して最も感度が高い。
【0088】
図5の下部右側に示されているような矩形センサ要素50のストライプ配置では、この場合は垂直方向のみであるものの、位置及び焦点のぼけの双方を検出することができる。ソース表面22で約45度の入射方向122に反射された電磁放射120は、垂直な場合よりも、入射及び反射ビームを含む面内で大きく影響を受けるので、この配置は有益であり得る。
【0089】
以下の3つの図、すなわち
図6、
図7、及び
図8は、蒸発したソース材料20のフラックス分布30と、検出器40上の測定分布134内のソース表面22で反射された電磁放射120の分布と、の双方に対して、ソース材料のソース表面22の形状及び形態が及ぼす影響を示す。以下では、
図6、
図7、及び
図8を一緒に説明し、これらの図の違いを強調する。更に、本発明に従った方法を説明する。
【0090】
電磁放射源110は、入射分布130有する電磁放射120を提供する。この電磁放射120の提供は、本発明に従った方法のステップc)で実行される。ステップa)に従って、ソース表面22から蒸発したソース材料20のフラックス分布30が、蒸発した及び/又は昇華したソース材料20のステップa)で規定された所望の分布32に対応するように、入射分布130を規定する。特に、平坦なソース表面22を用いる
図6に示された状況では、この条件は容易に満足させることができる。反応雰囲気16内でソース材料20に対向して配置されたターゲット材料18を、蒸発したソース材料20によって予想どおりにコーティングすることができる。
【0091】
このコーティングプロセスの制御を可能とするため、検出器40は、特に本発明に従った方法のステップd)において、ソース表面22で入射方向122に反射された電磁放射120を測定できるように配置されている。この結果、検出器40は、好ましくは検出器40の応答関数を考慮に入れて、測定電磁放射120の測定分布134を与える。ソース表面22の形態及び/又は形状に変化があると、そういった変化は反射電磁放射120に反映されるので、この測定分布134を用いて、想定された理想的な事例からの逸脱を検出することができる。
【0092】
このため、本発明に従った方法の第2のステップb)では、反射電磁放射120の予想分布132を決定する。これは例えば、計算されるか、経験的に推定されるか、又は、実験的に決定される。本発明に従った方法のステップf)において、ソース表面22で反射された電磁放射120の測定分布134を予想分布132と比較することにより、これら2つの分布132、134の差を決定することができる。
【0093】
本発明に従った方法のステップf)で求められた差に基づいて、ステップg)は、これらの差を排除するため入射分布130を再決定することを含む。最後に、最終ステップh)において、電磁放射源110は、新たに再決定された入射分布130を有する、例えば波長が100nm~1400nmのレーザ光である電磁放射120を提供する。これにより、蒸発したソース材料20のフラックス分布30の実際の制御を行うことができる。
【0094】
特に、本発明に従った方法の、少なくともステップd)~ステップh)を繰り返し実行して、蒸発の能動的な閉ループ制御を行うことができる。代替的に又は追加的に、ステップa)で、所望の分布32はすでに時間依存性によって規定されている可能性がある。
【0095】
上述したように、
図6では、平坦なソース表面22を有するソース材料20が示されている。これは理想的な事例であり、計算が容易である。実際のフラックス分布30は所望の分布32に等しい。
【0096】
電磁放射120によるある程度の照射の後、ソース表面22は、例えばソース材料20の実際の蒸発に起因して凹状部分が生じる可能性がある。これにより、フラックス分布30及び反射電磁放射分布の双方はそれぞれ変化する。フラックス分布30はもはや所望の分布32(図示せず)と等しくない。新たに測定された分布134を予想分布132と比較することによって、この状況を識別し、それに応じて入射分布130を再決定することによって解決する。
【0097】
図8は、
図7と類似の状況を示す。唯一の違いは、ソース表面22の形状が凹状でなく凸状であることである。分布30、130、132、143に関する全ての記載、及び上記で提示した解決手法は、
図7に関して記載し、言及したものと同じである。
【0098】
図9に、特定のソース材料20の特別な挙動が示されている。図示されているソース材料20は自立式ロッドとして提供され、ソース表面22はロッドの上端に配置されている。ソース表面22を入射電磁放射120で照射することにより、ソース材料20から成るロッドのこの上端に溶融ソース材料20の小滴が形成される。電磁放射120は例えば45度の角度で入射するので、電磁放射120に近いロッドの側は、より多くのエネルギを吸収する。従ってこの結果、溶融ソース材料20の小滴は電磁放射120の方向に傾く及び/又は傾斜する。特に、フラックス分布30もこの空間的な向きに従う。
【0099】
図10は、この問題に対する可能な解決策を示す。本発明に従った方法によれば、電磁放射120の第2のビームを用いてソース材料20内のエネルギ堆積のバランスを取ることができる。フラックス分布30は歪まず、再び所望の分布32に等しくなる。
【0100】
電磁放射120のビームの数は2に限定されない。
図11は、電磁放射源110が3つの放出器セクション112を備える本発明に従ったシステム10の実地形態を示す。放出器セクション112は、ソース材料20のソース表面22を中心として回転対称に配置されている。電磁放射120の各ビームに対して専用の検出器40が提供される。このため、上述されている本発明に従った方法は、放出器セクション112と検出器40の各ペアをそれぞれ個別に組み合わせて実行することができる。特に、放出器セクション112は、調整可能なパワー密度及び/又は形状及び/又はサイズを有する電磁放射120を提供できる。このため、実際の入射分布130、従ってフラックス分布30、及び所望の分布32は、ソース表面22における空間的な変動を与えることができる。
【0101】
図12にこの状況が図示されている。電磁放射120の2つの入射ビームが示されており、図示された矢印の異なる太さで示唆されるように、それらの入射分布130は異なっている。この差は、例えば電磁放射120の提供されたビームの異なるパワー密度によって与えられ、結果として、ソース表面22から蒸発したソース材料20のフラックス30はわずかに歪む。この場合、これは意図的であり、フラックス分布30は所望の分布32に等しい。フラックス分布30はターゲット材料18の一方側へ誘導されるので、ターゲット材料18がこのフラックス分布30によって等しくコーティングされないことは明確に視認できる。電磁放射120のビームの個々の入射分布130を変動させることにより、フラックス分布30の方向を変更することができる。この結果、ターゲット材料18上での所望の堆積厚さもしくは厚さ変動、又は所望の分布32の時間依存掃引を実現し、実際のフラックス分布30によって追跡することができる。
【符号の説明】
【0102】
10 システム
12 真空チャンバ
14 真空フィードスルー
16 反応雰囲気
18 ターゲット材料
20 ソース材料
22 ソース表面
30 フラックス分布
32 所望の分布
40 検出器
42 配置要素
44 位置決め要素
50 センサ要素
52 吸収体
54 穴
56 吸収ボリューム
58 側壁
60 吸収表面
62 吸収オリフィス
64 縁
70 熱検知要素
72 流量センサ
74 温度センサ
76 熱電対要素
80 冷却システム
82 冷却ダクト
84 冷却剤
90 アパーチャ
92 アパーチャ開口
94 遮蔽要素
110 電磁放射源
112 放出器セクション
120 電磁放射
122 入射方向
130 入射分布
132 予想分布
134 測定分布
【国際調査報告】