(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-15
(54)【発明の名称】義肢又は装具の制御方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/64 20060101AFI20230807BHJP
A61F 2/70 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
A61F2/64
A61F2/70
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580440
(86)(22)【出願日】2021-07-20
(85)【翻訳文提出日】2023-01-18
(86)【国際出願番号】 EP2021070284
(87)【国際公開番号】W WO2022018092
(87)【国際公開日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】102020004338.0
(32)【優先日】2020-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506153712
【氏名又は名称】オットー・ボック・ヘルスケア・プロダクツ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ザイフェルト、ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン、トーマス
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA07
4C097BB02
4C097BB06
4C097CC01
4C097CC12
4C097CC18
4C097TA06
4C097TB05
4C097TB14
(57)【要約】
本発明は、本発明は、上部(10)と、膝関節を介して上部(10)に接続され、上部(10)に対して関節軸(15)を中心に旋回可能に支承された下部(20)とを有する下肢の義肢又は装具を制御する方法であって、上部(10)と下部(20)の間に調節可能な抵抗装置(40)が配置され、抵抗装置を介してセンサデータに基づいて抵抗(Rf)が変更され、センサにより状態情報が検出され、歩行とは異なる周期的運動が検知され、周期的運動中に、抵抗(Rf)が低レベルに調整される、方法に関し、周期的運動の検知が、a.少なくとも1つの運動周期にわたって下部(20)及び/又は上部(10)の屈曲角度(αK)と少なくとも1つの絶対角度(αS)を検出するステップと、b.上部(10)と下部(20)の相対運動、ならびに上部(10)及び/又は下部(20)の絶対運動から周期的運動を認識するステップと、を包含する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部(10)と、膝関節を介して前記上部(10)に接続され、前記上部(10)に対して関節軸(15)を中心に旋回可能に支承された下部(20)とを有する下肢の義肢又は装具を制御する方法であって、前記上部(10)と前記下部(20)の間に調節可能な抵抗装置(40)が配置され、前記抵抗装置を介してセンサデータに基づいて抵抗(Rf)が変更され、センサにより状態情報が検出され、歩行とは異なる周期的運動が検知され、前記周期的運動中に、前記抵抗(Rf)が低レベルに調整される、方法において、前記周期的運動の検知が、
a.少なくとも1つの運動周期にわたって前記下部(20)及び/又は前記上部(10)の屈曲角度(α
K)と少なくとも1つの絶対角度(α
S)を検出するステップと、
b.上部(10)と下部(20)の相対運動と、空間における上部(10)及び/又は下部(20)の絶対運動から前記周期的運動を認識するステップと、を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記抵抗(Rf)の低減は、特定の条件が満たされるインターバルにわたって合計された屈曲角度変化(ΣΔα
K)、特に前記屈曲角度変化の量が指定された限界値より大きい、特に240°より大きい場合にのみ行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記屈曲角度(α
K)が限界値よりも大きく、特に10°よりも大きく、特に15°よりも大きい場合にのみ、周期的運動が確認されることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記下部(20)の傾斜角度(α
S)及び/又は屈曲角度(α
K)が特定の限界値を上回らない、及び/又は下回らない場合にのみ、周期的運動が確認されることを特徴とする、請求項1-3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
鉛直線(G)に対して前方への前記下部(20)の傾斜角度(α
S)が限界値よりも小さい、特に5°よりも小さい場合にのみ周期的運動が確認されることを特徴とする、請求項1-4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記下部(20)が所定期間にわたって軸力(FA)から解放され、前記軸力(FA)が所定限界値よりも下に低下し、前記屈曲角度(α
K)が限界値を下回るか、又は鉛直線(G)に対する前記下部(20)の傾斜(α
S)が限界値を上回ることによって、前記周期的運動の終了が認識されることを特徴とする、請求項1-5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記周期的運動が中断され、同時に前記下部(20)に軸力(FA)が加えられると、指定された屈曲角度(α
K)未満の前記膝関節(1)の伸展が防止され、かつ屈曲抵抗(Rf)が増加され、エンドストップに達し、屈曲が次に続き、新たに伸展した後に、前記周期的運動のための抵抗調整が新たに調整されることを特徴とする、請求項1-6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記周期的運動を検知するために、前記屈曲角度(α
K)及び傾斜角度(α
S)の角速度が計算され、前記角速度の商が指定された時間間隔で算出されることを特徴とする、請求項1-7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記角速度の商の変化が、指定された時間間隔で接線勾配として検知されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
接線勾配の時間プロファイルが単調に増加する場合に、前記周期的運動の確認が行われることを特徴とする、請求項8又は請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記角速度の評価は、屈曲角速度の限界値を上回る場合にのみ行われることを特徴とする、請求項8-10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記周期的運動を検知するために、2つの角度特性量及び/又はそれらの導関数の位相空間が考慮され、特に前記位相空間における回転方向が決定及び考慮されることを特徴とする、請求項1-11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
膝角度(KA)及び/又は上部(10)と下部(20)の絶対角度から、検知された股関節回転中心に対する足部(30)の軌道曲線及び/又はその導関数が決定され、前記周期的運動の検知のために考慮されることを特徴とする、請求項1-12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上部と、膝関節を介して上部に接続され、上部に対して関節軸を中心に旋回可能に支承された下部とを有する下肢の義肢又は装具を制御する方法であって、上部と下部の間に調節可能な抵抗装置が配置され、抵抗装置を介してセンサデータに基づいてふぃざ屈曲および/または伸展の抵抗が変更され、センサにより状態情報が検出され、歩行とは異なる周期的運動が検知され、周期的運動中に、抵抗が低レベルに調整される、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人工膝関節は、義肢や装具、及び装具の特殊なケースとして外骨格に使用される。人工膝関節は、関節軸、すなわち膝軸を中心に相対して旋回可能に支承されている上部と下部を有する。最も単純な事例では、膝関節は、例えばボルト、又は旋回軸上に配置された2つの軸受箇所が個々の膝軸を形成する単軸膝関節として形成されている。上部と下部の間に固定回転軸を形成するのではなく、滑り面又は回旋面、あるいは関節式に互いに接続された複数のリンクを有する人工膝関節も知られている。膝関節の運動特性に影響を及ぼすことができ、かつ自然な歩行挙動に近い装具又は義肢あるいは外骨格の運動挙動を得るために、上部と下部の間にそれぞれの抵抗を変更できる抵抗装置が設けられる。全く受動的な抵抗装置は、例えば液圧ダンパ、空気圧ダンパ、又は磁気レオロジ効果に基づいて運動抵抗を変化させるダンパなどのパッシブダンパである。相応の相互接続により発電機又はエネルギー貯蔵器として動作できる、モータ又はその他の駆動装置などの能動的な抵抗装置も存在する。
【0003】
それぞれの膝関節、すなわち義肢関節又は装具膝関節は、それぞれの接続手段で患者に固定される。義肢膝関節の場合、固定は通常、四肢の断端を収容する大腿ソケットによって行われる。例えば、オッセオインテグレーション接続手段によって、あるいはストラップ及び他の装置を介して、それに代わる種類の固定も可能である。装具及び外骨格の場合、上部と下部が大腿及び下腿に直接固定される。このために提供される取付装置は、例えば、ベルト、カフ、シェル又はフレーム構造である。装具は、足又は靴を載せるための足部を有することもできる。足部は下部に関節式に支承することができる。
【0004】
人工膝関節は、構造上最大限達成可能な伸張で180°の膝角度を有し、過伸展、すなわち180°より大きい後方側の角度は、通常、予定されていない。上部に対する下部の後方への旋回は膝屈曲と呼ばれ、前方への、又は前方方向の旋回は伸展と呼ばれる。
【0005】
EP2498729 B1から、少なくとも1つのアクチュエータが割り当てられ、それを介して屈曲及び/又は伸展抵抗がセンサデータに依存して変更される抵抗装置を有する下肢の人工装具又は義肢関節を制御する方法が知られ、この場合、関節の使用中、センサにより状態情報が提供される。歩行とは異なる周期的運動が検知された場合、その周期的運動が継続する間、抵抗が低減される。周期的運動を検知するために、膝角度の最大値と最小値の間の時間間隔と、特徴的な膝角度推移が考慮される。最大値と最小値が認識されない場合は抵抗が増加される。
【0006】
この場合、自転車走行時に規則正しく踏み込まれない状況が生じる可能性があることが問題である。例えば、下り坂走行の場合、又は利用者が障害物を乗り越えるために立ち上がる必要がある場合である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【0008】
本発明の課題は、人工膝関節での自転車走行を簡単にする方法を提供することである。
【0009】
本発明によれば、上記課題は、主請求項の特徴を有する方法によって解決される。本発明の有利な実施形態及び発展形態は、従属請求項、以下の説明、及び図に開示されている。
【0010】
上部と、膝関節を介して上部に接続され、上部に対して関節軸を中心に旋回可能に支承された下部とを有する下肢の義肢又は装具を制御する方法であって、上部と下部の間に調節可能な抵抗装置が配置され、抵抗装置を介してセンサデータに基づいて抵抗が変更され、センサにより状態情報が検出され、歩行とは異なる周期的運動が検知され、周期的運動中に、抵抗が低レベルに調整される方法は、周期的運動の検知が、少なくとも1つの運動周期にわたって下部及び/又は上部の屈曲角度と少なくとも1つの絶対角度を検出することと、上部と下部の相対運動、ならびに上部及び/又は下部の絶対運動から周期的運動を認識することと、を企図する。その場合、屈曲角度を角度センサにより直接測定する必要はなく、これを上部と下部の絶対角度により計算することもできる。屈曲角度、すなわち、180°の膝角度で伸ばされた位置からの上部と下部の間の相対的旋回を検出すること、及び少なくとも1つの慣性角度センサ又はIMUにより上部若しくは下部の少なくとも1つの絶対角度を検出することにより、上部と下部の相互の相対運動、及び空間における運動を認識することが可能である。屈曲角度と1つ又は複数の絶対角度、すなわち上部の絶対角度及び/又は下部の絶対角度を継続的に検出することは、装具利用者又は義肢利用者による追加の行動が行われる必要なしに、人工膝関節の自転車機能に簡単に切り替えることを可能にする。スイッチの位置を変更したり、アプリを起動したり、特別な動作パターンを実行したりする必要はなく、むしろペダル運動だけで自転車機能への切替えが引き起こされる。自転車機能は、少なくとも1つの終了基準が検出されるまで維持される。特に歩行とは異なる継続的で途切れのない周期的運動が存在する必要はない。例えば、降りるときに義肢又は装具が地面に置かれた場合、自転車機能が作動停止されるのに対して、途切れることなく走行している間は、周期的な運動がなくても、例えば利用者が立った状態でペダルを踏んだ場合、この機能は、有利にも作動停止されず、それにより自転車機能をオンにするために、認識サイクル全体を新たに実行する必要がない。自転車機能では、周期的運動を認識した後、有利にも伸展抵抗及び屈曲抵抗が低減される。以下に、一般に抵抗という言葉を使う場合、屈曲抵抗及び伸展抵抗が個別に、又は一緒に言及され、明示的に伸展抵抗又は屈曲抵抗という言葉を使う場合、その抵抗のみを意味する。
【0011】
本発明の一発展形態は、抵抗の低減は、特定の条件が満たされるインターバルにわたって合計された屈曲角度変化、特に屈曲角度変化の量が指定された限界値より大きい、特に240°より大きい場合にのみ行われることを企図する。周期的ペダル運動を認識し、それにより自転車機能を作動させるために、上部及び/又は下部の屈曲角度と絶対角度の両方が特定の基準、厳密には特定の期間にわたって満たされ、それによりスイッチオン命令が行われる場合が有利である。有利にも、この期間は、屈曲角度変化に対して決定される。屈曲角度の量を合計することには、屈曲角度特性量の検出を連続的に行うことができ、屈曲と伸展を区別する必要がないという利点がある。符号を有する屈曲角度を合計すると、ペダルを1回転させた後に、和がゼロであり、周期的運動が繰り返しを必要とするため、これは決して確認できない。これに代えて、屈曲角度変化の合計は、特定の時間インターバルまたは特定の条件の場合にのみ、例えば屈曲角度が増加した場合のみ、又は屈曲角度が減少した場合のみ、又は下部が特定の軸方向荷重下にあるときのみ変化した場合、又は同時に下部に対する足部の角度が変化した場合などに行われる。屈曲角度は監視され、その変化が特定の時間インターバルで累積又は合計される。累積された絶対屈曲角度変化の期間にわたって、周期的運動及び自転車モードの作動を認識するために必要な条件が存在する場合、抵抗が低減される。
【0012】
周期的運動を検知する期間にわたって条件が満たされなくなった場合、例えば屈曲角度が所定の限界値内にないか、下部及び/又は上部が所定のパラメータ内ではなくなるほど移動した場合、屈曲角度のカウンタが再びリセットされる。これにより、偶然の運動又はパラメータとの一致が1日を通して分散して合計されることが防がれる。限界値又はパラメータは、例えば屈曲角度変化の和又は累積した絶対屈曲角度変化が指定された期間にわたって満たされていなければならない。自転車モードの作動前に必要な条件の存在が途切れた場合、抵抗の減少が引き起こされず、車両モードに切り替えられない。
【0013】
好ましくは、屈曲角度の累積的変化、例えば、屈曲角度変化の量の和が240°より大きいといった、累積された屈曲角度変化に対する下部の屈曲角度及び傾斜角度のための設定された条件が存在するか、又は満たされる場合にのみ抵抗の低減が行われることが企図されている。抵抗の減少に必要な条件は、例えば240°より大きいなどの累積した屈曲角度変化の全期間にわたって存在しなければならず、そうでなければ自転車機能は作動されない。自転車機能の作動が実行されると、すなわち屈曲角度変化の指定された期間にわたって必要な条件、特に240°より大きいということが存在する場合、抵抗を低減させておくための一様で周期的な運動を実行する必要がなくなる。低減された抵抗は、定義された変化が生じるか、あるいは、屈曲抵抗及び/又は伸展抵抗の増加を必要とするセンサ値が検出されるまで維持される。
【0014】
本発明の一展開形態は、屈曲角度が指定された限界値より大きい、特に10°より大きい、特に15°より大きい場合にのみ周期的運動が確認されることを企図する。10°より大きい、特に15°より大きい屈曲角度は、ペダル運動が実行されることの有用な指標である。少なくとも座って、自転車を運転する場合、最初に、屈曲角度は常に10°より大きく、特に15°より大きい屈曲角度が存在するか、又は存在しなければならない。そうである場合は、高い確率で、ペダル運動が存在すると考えることができる。
【0015】
本発明の一発展形態は、下部の傾斜角度及び/又は屈曲角度が特定の限界値を上回らない、及び/又は下回らない場合にのみ周期的運動が確認されることを企図する。空間における下部の傾斜角度、及びその時間に対するプロファイルは、周期的運動が存在するか否か、及び周期的運動が維持されるか否かの有用な指標である。屈曲角度との組み合わせにより、周期的運動の有無について説得力のあるパラメータに絞り込むことができる。下部の傾斜角度が指定された期間にわたって特定の限界値内にある場合、すなわち、限界値を上回るか、又は下回らず、屈曲角度についても同じことが当てはまる場合、そのことから、周期的運動の有無を推測することができる。周期的運動の存在が検出されると抵抗が減少し、自転車モードがオン又は作動されない場合、抵抗は初期レベル、例えば平地歩行のための立脚期レベルにとどまる。
【0016】
本発明の一発展形態は、鉛直線に対する下部の傾斜角度が限界値を上回らない、特に5°より小さい場合にのみ周期的運動が確認されることを企図する。いわゆるロール角度である下部の傾斜角度も、自転車走行行動が実行されることの指標である。鉛直線に対して前方への下部の傾斜角度が特定時間にわたって常に限界値より小さい、特に、より前方に向いた傾斜が無害の5°よりも小さい場合、これを自転車走行運動であると考えることができる。足部又は踝関節軸が膝関節軸より前にある場合、下部の後傾は正のロール角とみなされる。わずかな後傾は許容することができ、自転車運転時に発生し、限界値を上回ってはならず、特に5°より大きくなってはならない。
【0017】
本発明の一発展形態は、下部が、特に150msより大きい所定期間、軸方向荷重又は軸方向力から負荷解除され、屈曲角度が、限界値を下回る、特に15°より小さいか、又は鉛直線に対する下部の傾斜が限界値を上回る、特に10°より大きいことによって周期的運動の終了が認識されることを企図する。下部の軸方向力の負荷解除(Entlastung)は、膝関節の方向に作用する軸方向力が所定の限界値より下に低下するか、又は下部の完全な負荷解除が存在し、すなわち軸方向力が膝関節の方向に作用しないということであり得る。下部が所定期間負荷解除された場合、及び関節軸の方向に作用する力が下部に作用しない場合、これを、利用者がペダルから足を離し、したがって、場合によっては降りようとするか、あるいはその他の仕方で体を支えるために足を下すか、又は足を下さざるを得ないことの手がかりとなる値とみなすことができる。さらに、屈曲角度が限界値を下回る、特に15°より小さい場合、装着脚の伸展を推測でき、あるいは例えば降りる場合、及び後輪及びサドル上で脚を振り動かす場合に、鉛直線に対する下部の傾斜が限界値を上回る、特に10°より大きい場合、有利にも自転車走行が終了したとして認識され、特に屈曲抵抗が再び増加される。周期的運動を最初から継続的に行う必要はなく、抵抗を低減するために、特定の期間、すなわち特定数のペダル回転数、又は屈曲角度変化の特定の総和に関して行いさえすればよい。
【0018】
本発明の一発展形態は、周期的運動が中断され、同時に下部に軸方向力が加えられると、指定された屈曲角度未満の、特に10°未満の膝関節の伸展が防止され、かつ屈曲抵抗が増加され、エンドストップに達し、屈曲が次に続き、新たに伸展した後に、周期的運動のための抵抗調整が新たに調整されることを企図する。例えば、膝の伸展が検出され、それが周期的運動の中断であるが、自転車走行の中断、したがって抵抗装置の調整された抵抗モードの中断ではなく、同時に軸方向力が検出される場合、特定の値を超える、例えば10°より小さい伸展値を超える膝関節の伸展が防がれ、それにより膝関節の完全な伸展が防がれる。例えば立ち上がる場合など、踏み込み運動が中断した場合の完全な伸展は、膝関節を曲げ難くする可能性があるが、これはペダル運動を再開するべき場合に望ましくない。同時に、例えば歩行時の立脚期レベルまで屈曲抵抗が増加し、これが基本的な屈曲を可能にする。それによって、制御された膝曲げを可能にするために、立ち上がった後に座る場合にも十分に高い屈曲減衰又は屈曲抵抗が提供される。伸展のエンドストップに達し、次いで場合によっては増加された抵抗に抗して屈曲が行われる場合、運動が反転し、新たに伸展する場合に、周期的運動のための抵抗調整が新たに調整され、すなわち屈曲抵抗、及び場合によっては伸展抵抗が低減される。それによって、屈曲角度及び下部の傾斜角度に関する一様性基準が、累積された絶対屈曲角度変化の完全な必要値、例えば屈曲角度変化の量に対して再び存在する必要がなくなる。例えば、障害物を越える場合など、立ち上がる状況が認識され、抵抗装置の簡単なアクティブ化が可能にされる。
【0019】
本発明の一発展形態は、周期的運動を検知するために、角速度が計算され、角速度の商が指定された時間間隔で算出されることを企図する。角速度の商の変化は、指定された時間間隔で接線勾配として検知される。接線勾配の時間プロファイルが単調に上昇する場合、周期的運動の確認が行われる。接線勾配の単調に上昇する時間プロファイルは、単調条件の比較的小さい偏差が存在する場合にも存在する。その場合、勾配の変化が指定された限界値より下に低下しないことが重要である。角速度、すなわち屈曲角度と下部の傾斜角度の角速度の計算、及び指定された時間間隔での角速度の商の計算は、閉じた凸状の2次元曲線として表すことができる2つの角速度の推移の接線勾配を検出できることを可能にする。接線勾配が曲線の完全な一周にわたって単調に上昇することが確認される場合、周期的運動、したがって抵抗の減少の確認が推測される。
【0020】
本発明の一発展形態は、角速度の評価が、屈曲角速度の限界値を上回る場合にのみ行われることを企図する。屈曲角速度を考慮することは、実際に自転車走行運動が行われ、例えば座るときなど偶然の小さな反復運動が自転車走行運動と間違って認識されないことの追加の手がかりを与える。さらに、接線勾配を決定する場合、それによって非定常箇所の出現が回避される。
【0021】
周期的運動を検知するために、2つの角度特性量、又はそれらの導関数の位相空間を考慮することができ、特に、位相空間における回転方向を決定及び考慮することができ、それにより、平地歩行とは異なる周期的運動が存在するかどうか、及び抵抗が相応に低減されるかどうかを認識することができる。角度特性量は、屈曲角度と、膝関節の周りのコンポーネントのうちの1つの少なくとも1つの絶対角度である。空間における角度は、下部及び/又は上部のために使用される。
【0022】
本発明の一発展形態は、膝角度及び/又は上部と下部の絶対角度から、検知された股関節回転中心に対する足部の軌道曲線及び又はそれらの導関数が決定され、周期的運動の検知のために考慮されることを企図する。膝角度、複数の絶対角度又は1つの絶対角度、ならびに膝軸と足部との間の既知の幾何学的関係、例えば足裏に近い足部の基準点、又は踝関節軸の位置から足部の軌道曲線を決定することが可能である。軌道曲線又はその時間導関数は、検知された回転中心に関係付けることができる。股関節回転中心は、整形外科技術者によって、装具又は義肢の適合中にいずれにしても決定される。したがって、膝関節軸との距離も既知である。それぞれ既知の幾何学的関係と角度変化とから、回転中心に対する足部の基準点の軌道曲線形状、軌道曲線速度、及び/又は軌道曲線加速度を検知することができ、周期的運動が存在するか否かの指標として用いられる。
【0023】
以下、図を用いて本発明の一実施例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図5】対比及び測定及び算出された角速度の図である。
【
図6】
図5による線図における接続線の勾配のプロファイルの図である。
【
図7】発進及び自転車走行機能の作動のデータのプロットの図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、義脚に使用される人工膝関節1の模式図示す。義脚に使用する代わりに、相応に設計された人工膝関節1を装具又は外骨格に使用することもできる。次に、本物の関節を置き換える代わりに、それぞれの人工膝関節が、本物の関節の内側及び/又は外側に配置される。図示される実施例では、人工膝関節1は、歩行方向の前方に位置する前方側11と、前方側11の反対側に位置する後方側12とを有する上部10を備える義肢膝関節の形態で形成されている。下部20は、旋回軸15を中心に旋回可能に上部10に支承されている。下部20も、前方側21又は前側と後方側22又は後ろ側とを有する。図示される実施例では、膝関節1は、単中心膝関節として形成され、基本的に、多中心膝関節を相応に制御することも可能である。下部20の遠位端には足部30が配置され、足部は、動かない足関節を有する固定足部30として、又は自然な運動シーケンスに近づけた運動シーケンスを可能にするために旋回軸35を用いて下部と接続することができる。
【0026】
膝角度KAは、上部10の後方側12と下部20の後方側22との間で測定される。膝角度KAは、旋回軸15の領域に配置することができる膝角度センサ25により直接測定することができる。膝角度センサ25は、関節軸15の周りの膝モーメントを検出するために、モーメントセンサに結合することができ、又はそのようなモーメントセンサを有することができる。慣性角度センサ又はIMU51は上部10に配置され、このセンサは、例えば鉛直方向下方を指す重力Gなどの一定の力方向と関係がある上部10の空間位置を測定する。下部20には、義脚の使用中に下部の空間位置を検知するために、慣性角度センサ又はIMU53も配置されている。
【0027】
慣性角度センサ53に加えて、加速度センサ及び/又は横力センサ53を下部20又は足部30に配置することができる。下部20に作用する軸方向力FA又は踝関節軸35を中心に作用する踝モーメントを、下部20又は足部30の力センサ又はモーメントセンサ54により検知することができる。
【0028】
上部10に相対する下部20の旋回運動に影響を及ぼすために、上部10と下部20との間に抵抗装置40が配置されている。抵抗装置40をパッシブダンパ、駆動装置、あるいは運動エネルギーを蓄積すること、及び運動を制動するため、又は支援するために後の時点で再び的確に放出することが可能である、いわゆるセミアクティブアクチュエータ40として形成することができる。抵抗装置40を線形抵抗装置又は回転抵抗装置として形成することができる。抵抗装置40は、例えば有線で、又はワイヤレス接続により制御装置60と接続され、制御装置もまたセンサ25、51、52、53、54のうちの少なくとも1つと結合されている。制御装置60は、センサから伝送される信号をプロセッサ、計算ユニット、又はコンピュータにより電子的に処理する。制御装置は、電気エネルギー供給部と少なくとも1つの記憶ユニットを有し、記憶ユニットにはプログラムとデータが記憶され、かつデータを処理するための内部記憶装置が設けられている。センサデータの処理後、抵抗装置40が作動又は作動停止される作動又は作動停止コマンドが出力される。抵抗装置40内のアクチュエータを作動させることによって、例えば、弁を開閉することができ、又は制動挙動を変更するために磁場を発生させることができる。
【0029】
義肢膝関節1の上部10には、大腿断端を収容するために用いられる義肢ソケットが取り付けられている。義脚は大腿断端を介して股関節16と接続され、上部10の前方側で股関節角度HAが測定され、この股関節角度は、股関節16及び上部10の長手方向延在を通る鉛直線と、股関節16と膝関節軸15との接続線との間で前方側11に提供される。大腿断端が持ち上げられ、股関節16が屈曲されると、例えば着席する場合に股関節角度HAが減少する。逆に、股関節角度HAは、伸展時、例えば立ち上がるか、又はそれに類する運動シーケンス、例えば自転車走行時にペダルを下へ踏む場合場合に増加する。
【0030】
図2において、上部10と下部20との間に人工膝関節を有する義脚が模式的に示される。義足30は、ペダル2に載せられ、ペダル軌道に沿って円運動を行う。図示される位置では、下部20、若しくは下部20の長手方向延在は鉛直位置にあり、したがって鉛直線Gに対する下部20の傾斜は0°であり、したがってロール角は0である。膝軸を中心とした下部20に対する上部10の旋回から生じる屈曲角度α
Kは、完全に伸展又は伸ばされた義脚に対する変化である。屈曲角度α
Kは、180°と膝角度KAとの差から算出される。自転車走行時に自転車を駆動するために必要であるペダル運動を実行した場合、周期的運動が実行される。足部30からペダル2への力は、
図1に示される力導入点PFで導入される。筋肉の運動能力が制限されている義肢利用者又は装具利用者は重力方向に逆らって作用する力をかけることが非常に難しいため、これは、通常、圧縮力である。下部20に筋肉が接続されていないため、通常、水平方向に作用する力をペダル2に加えることはできない。足部30は安全上の理由からペダル2に固定されていないので、例えば股関節屈筋を動かすことによって、重力方向に逆らって作用する力も伝達されない。そのため、ペダル運動時には、屈曲抵抗及び伸展抵抗はクランクの回転軸を中心としたペダル2の回転運動に対抗するため、これらの抵抗は望ましくない。
【0031】
したがって、少なくとも抵抗、特に屈曲抵抗、場合によっては伸展抵抗も、自転車走行時の周期的運動の認識に依存して低減されることが企図されている。この認識及びWの低減は、人工膝関節の利用者が自転車走行運動を実行する以外に他の措置を講じる必要なしに、可能な限り迅速に実行されなければならない。自転車走行に伴う周期的運動シーケンスが一旦認識されると、自転車走行モードは、周期的運動の終了に必ず伴わなければならないわけでない自転車走行の終了を示唆するパラメータ又はセンサ値の変化が認識されるまで、調整された状態のままとなる。
【0032】
図3において、空間における下部20の傾斜角度としての屈曲角度α
K及びロール角度α
Sが示される。左の図から、自転車走行中に両方の角度が実質的に周期的に動き、ペダルの回転数が一定の場合に一様に変化することが見て取れる。右の図は、X-Y線図における2つの値の図示である。ペダル運動により、閉じた凸状の2次元曲線が生じ、この場合、屈曲角度α
KがX軸上にプロットされ、下腿角度α
SがY軸上にプロットされている。一様で周期的な運動が、厳密には指定された期間にわたって、例えばペダル2回転にわたって認識された場合、抵抗装置の抵抗が減少する。自転車走行時、
図3の右の図の曲線は反時計回りに進み、
図4に示す曲線の接線勾配の時間プロファイルは右方向に読み取られ、したがって単調に増加する。特定の時点t
1における勾配k
1は、水平成分と垂直成分との商から算出され、後の時点t
2における接線の勾配k
2は、図示される実施例においてより大きい。接線勾配は、X成分とY成分の変化の商、すなわち下部20の屈曲角度α
K及び傾斜角度α
Sの角速度の商である。
【0033】
接線勾配の計算又は算出の変形形態が、
図5及び
図6に示されている。
図5において、測定値とフィルタリングされた測定値の両方の角速度を示している。下部の角速度V
Sと屈曲角度の角速度V
Aは、例えば振動又はや測定誤差により干渉信号を有し、これは不規則な曲線形状によって判別できる。フィルタリングされた角速度信号V
SF及びV
AFもプロットされている。右の図では、値は、十字に座標の原点があるX-Y線図に示されている。この場合も、比較的滑らかな曲線形状と不安定な曲線形状との違いが明らかである。
図4による規則により、時点t
1及び時点t
2におけるX-Y線図の原点Xと曲線上のそれぞれの点との間の接続線の勾配が算出される。膝角速度V
A=0の場合、正の無限大から負の無限大への符号の急激な反転が生じるだろう。このような値は、屈曲角速度の限界値を上回る場合にのみ評価が行われることにより、考慮において除外される。原則として、上述したように、単調条件の比較的小さい偏差を許容することもでき、、均一性基準が引き続き満たされていると見なされる。
【0034】
自転車走行の周期的運動が行われるかどうかを認識するために、屈曲角度変化の量ΣΔα
Kが合計され、その際、屈曲角とロール角及び/又は空間における上部の向きが考慮される。
図7の線図において、自転車走行の開始時の屈曲角度α
Kの推移がプロットされている。伸ばされた脚を出発点として、屈曲、それに続いて伸展、そして再び屈曲と伸展が行われる。抵抗Rfは、最初は高いレベルにとどまる。十分な絶対膝角速度、すなわち屈曲角α
Kの十分に大きな変化がある場合にはいつも計数値ΣΔα
Kが増加する。屈曲角度変化が減少した運動反転の領域では、自転車走行運動を認識する際に十分な安全性を危険にさらさないようにするために、計数値は更新されない。最大伸展、すなわち屈曲角度α
Kの下の相対的最小値を計算した後の進行についても同じことが当てはまる。カウンタが指定された制限値、例えば240°の屈曲角度変化の量に達し、そのことがカウンタΣΔα
Kの水平方向の進行から認識できる場合、抵抗RFは所望の値に低減され、例えばほぼ0に下げられる。均一性基準が十分に満たされているため、計数値はそれ以上更新されない。
【0035】
図8において、上部10と、旋回軸15を中心に旋回可能にこれに支承された下部20とを有する装具の一実施例が模式図で示され、この装具によって本発明を実施することもできる。それによって、上部10と下部20との間に、図示される実施例では本物の膝関節に対して横方向に配置される人工膝関節1が形成されている。脚に対して上部10と下部20を片側に配置することに加えて、2つの上部と下部を本物の脚に対して内側と外側に配置することもできる。下部20は、その遠位端に、踝関節軸35を中心に下部20に対して旋回可能に支承された足部30を有する。足部30は、足又は靴を載せることができるフットプレートを有する。下部20と上部30の両方に、下腿若しくは大腿に固定するための固定装置が配置されている。足部30には、足部30に足を固定するための装置も配置することができる。固定装置は、装具を取り外し可能に利用者の脚に装着し、破壊することなく再び取り外すことができるようにするために、止め金、ベルト、締め金、又はそれに類するものとして形成することができる。上部10には、抵抗装置40が取り付けられ、これは下部20及び上部10に支持され、旋回軸15を中心とした旋回に対する調整可能な抵抗を提供する。したがって、義肢の実施例との関連で先に説明されたセンサ及び制御装置は、装具にも存在する。
【国際調査報告】