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▶ シャンハイ、レイジング、ファーマシューティカル、カンパニー、リミテッドの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-15
(54)【発明の名称】医薬組成物およびその適用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/445 20060101AFI20230807BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230807BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230807BHJP
   A61K 31/661 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
A61K31/445
A61P25/28
A61P43/00 121
A61K31/661
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501271
(86)(22)【出願日】2021-09-09
(85)【翻訳文提出日】2023-03-03
(86)【国際出願番号】 CN2021117404
(87)【国際公開番号】W WO2022007982
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】202010662333.6
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522044799
【氏名又は名称】シャンハイ、レイジング、ファーマシューティカル、カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI RAISING PHARMACEUTICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】チョン、チュンチウ
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ホアン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC21
4C086DA38
4C086GA14
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA52
4C086NA05
4C086ZA16
4C086ZC75
(57)【要約】
ベンフォチアミンまたはその薬学的に許容可能な塩;およびドネペジルまたはその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物。ベンフォチアミンおよび塩酸ドネペジルを併用投与すると、より優れた相乗効果が得られ、ADマウスの空間学習記憶能力を比較的良好に改善することができ、その効果はベンフォチアミンまたは塩酸ドネペジルを単独で投与した場合の効果よりも有意に優れていることが実験結果から示されており、これは、本発明の医薬組成物がアルツハイマー病の治療においてより優れた医薬活性を有することを示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンフォチアミンまたはその薬学的に許容可能な塩;および
ドネペジルまたはその薬学的に許容可能な塩
を含む、医薬組成物。
【請求項2】
ドネペジルまたはその薬学的に許容可能な塩に対するベンフォチアミンまたはその薬学的に許容可能な塩の重量比が(180~400):(3~6)、または(180~400):3、または(200~400):3、または180:3、または200:3、または400:3である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記医薬組成物が、少なくとも1種の薬学的に許容可能な担体または賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記薬学的に許容可能な塩が、塩酸塩、または臭化水素酸塩、または硫酸塩、または酢酸塩、またはマレイン酸塩、または酒石酸塩である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記医薬組成物が経口製剤であり、該経口製剤が錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤および丸剤のいずれかである、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記医薬組成物が、ベンフォチアミンおよび塩酸ドネペジルを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
塩酸ドネペジルに対するベンフォチアミンの重量比が(180~400):(3~6)である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
塩酸ドネペジルに対するベンフォチアミンの重量比が、180:6、または240:6、または360:6、または240:3、または360:3である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
塩酸ドネペジルに対するベンフォチアミンの重量比が(180~360):(3~6)である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項10】
塩酸ドネペジルに対するベンフォチアミンの重量比が(200~400):(3~6)である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項11】
塩酸ドネペジルに対するベンフォチアミンの重量比が(200~400):3である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
塩酸ドネペジルに対するベンフォチアミンの重量比が200:3、または400:3である、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記医薬組成物が3mg~10mgの塩酸ドネペジルを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記医薬組成物が150mg~600mgのベンフォチアミンを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
アルツハイマー病の予防または治療のための医薬の製造における、請求項1に記載の医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の分野に属し、特に、ベンフォチアミンまたはその薬学的に許容可能な塩およびドネペジルまたはその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物、およびアルツハイマー病の予防または治療のための医薬の製造における該医薬組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(AD、一般に老年性認知症と呼ばれる)は、主な臨床症状として認知および行動の障害を伴う進行性の神経変性疾患であり、主に認知障害および記憶機能の急速な低下として現れる最も一般的なタイプの老人性認知症でもある。World Alzheimer Report 2015によると、世界のAD患者数は2050年までに1億3000万人に増加する。
【0003】
ドネペジル(分子式:C2429NO、塩酸ドネペジルは医薬品として用いれる一般的な形態である)は、クリニックでADを治療するための主要な薬品である。これは、コリンエステラーゼを阻害し、アセチルコリンレベルを上昇させることにより、中期および初期の段階のADの進行を遅らせ、早期ADの臨床症状を改善することができる。
【0004】
ベンフォチアミン(分子式:C1923PS;化学名:S-2-[[(2-メチル-4-アミノ-5-ピリミジニル)メチル]ホルミルアミノ]-5-ホスホノオキシ-2,3-ペンテニル-3-メルカプトベンゾエート、ベンゾイルチアミンモノホスフェート;略称:BTMP)は、水溶性のビタミンB1の低いバイオアベイラビリティを改善し、血中および組織中のビタミンB1の濃度を増大させ、それによって治療効果を改善することができる。最近の研究では、ベンフォチアミンがアルツハイマー病の予防および治療に用いられ得ることが示されている。例えば、特許CN200710041571.Xには、ベンフォチアミンを含むアルツハイマー病の治療のための医薬組成物が開示されている。
【0005】
先行技術では、アルツハイマー病を治療するための上記の薬物が開示されているものの、疾患の進行を効果的に逆転または予防するための薬物は今日まで利用可能ではない。したがって、より効果的で、患者の服用遵守を改善することができる薬が不足している。
【発明の概要】
【0006】
本発明が解決しようとする技術的課題は、薬力学的活性が低く、ベンフォチアミンまたはドネペジルを単独で投与する場合の投与が不便であるという問題である。
【0007】
上記の技術的課題を解決するために、本発明は:
ベンフォチアミンまたはその薬学的に許容可能な塩;および
ドネペジルまたはその薬学的に許容可能な塩
を含む医薬組成物を提供する。
【0008】
任意に、ドネペジルまたはその薬学的に許容可能な塩に対するベンフォチアミンまたはその薬学的に許容可能な塩の重量比は、(180~400):(3~6)、または(180~400):3、または(200~400):3、または180:3、または200:3、または400:3である。
【0009】
任意に、医薬組成物は、少なくとも1種の薬学的に許容可能な担体または賦形剤をさらに含む。
【0010】
任意に、薬学的に許容可能な塩は、塩酸塩、または臭化水素酸塩、または硫酸塩、または酢酸塩、またはマレイン酸塩、または酒石酸塩である。
【0011】
任意に、医薬組成物は経口製剤であり、経口製剤は錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤および丸剤のいずれかである。
【0012】
任意に、医薬組成物は、ベンフォチアミンおよび塩酸ドネペジルを含む。
【0013】
任意に、塩酸ドネペジルに対するベンフォチアミンの重量比は(180~400):(3~6)である。
【0014】
任意に、塩酸ドネペジルに対するベンフォチアミンの重量比は、180:6、または240:6、または360:6、または240:3、または360:3である。
【0015】
任意に、塩酸ドネペジルに対するベンフォチアミンの重量比は(180~360):(3~6)である。
【0016】
任意に、塩酸ドネペジルに対するベンフォチアミンの重量比は(200~400):(3~6)である。
【0017】
任意に、塩酸ドネペジルに対するベンフォチアミンの重量比は(200~400):3である。
【0018】
任意に、塩酸ドネペジルに対するベンフォチアミンの重量比は、200:3、または400:3である。
【0019】
任意に、医薬組成物は3mg~10mgの塩酸ドネペジルを含む。
【0020】
任意に、医薬組成物は150mg~600mgのベンフォチアミンを含む。
【0021】
本発明はさらに、アルツハイマー病の予防または治療のための医薬の製造における、上記の医薬組成物の使用を提供する。
【0022】
従来技術と比較して、本発明は以下の利点を有する:
本発明により提供される医薬組成物は、ベンフォチアミンまたはその薬学的に許容可能な塩;およびドネペジルまたはその薬学的に許容可能な塩を含む。水迷路試験の結果から、ベンフォチアミンと塩酸ドネペジルとを併用投与した後、良好な相乗効果が得られ、ADマウスの空間学習および記憶能力が改善され、その効果はベンフォチアミンまたは塩酸ドネペジルを単独で投与する場合よりも有意に優れていることが示されている。これの結果は、本発明の医薬組成物がアルツハイマー病の治療において良好な薬学的活性を有することを示すものである。
【0023】
さらに、本発明によれば、ベンフォチアミンと塩酸ドネペジルとの組み合わせ製剤を調製することにより、投与を容易にし、患者の服薬遵守を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、実施例における動物の潜時に対する各化合物の効果を示す。
図2図2は、実施例における動物の足場を越える回数に対する各化合物の効果を示す。
図3図3は、実施例における動物のターゲット区画で過ごす時間に対する各化合物の効果を示す。
【発明の詳細な説明】
【0025】
ドネペジルまたはベンフォチアミンがアルツハイマー病の治療に単独で用いることができることは先行技術で開示されているものの、これら2種の薬物の組み合わせがアルツハイマー病の予防または治療のための医薬の製造においてより有益である可能性があることは明らかになったおらず、認識もされていない。本発明者らは、ドネペジルおよびベンフォチアミンが、単独で用いられる場合の有効成分の効果よりも著しく優れた相乗効果を達成できることを見出した。
【0026】
本発明は、ベンフォチアミンまたはその薬学的に許容可能な塩;およびドネペジルまたはその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物を提供する。水迷路試験の結果から、ベンフォチアミンと塩酸ドネペジルとを併用投与した後、良好な相乗効果が得られ、ADマウスの空間学習および記憶能力が改善され、その効果はベンフォチアミンまたは塩酸ドネペジルを単独で投与する場合よりも有意に優れていることが示されている。この結果は、本発明の医薬組成物がアルツハイマー病の治療において良好な薬学的活性を有することを示すものである。さらに、本発明によれば、ベンフォチアミンと塩酸ドネペジルとの組み合わせ製剤を調製することにより、投与を容易にし、患者の服薬遵守を改善することができる。
【0027】
上述した本発明の目的、特徴および利点をより容易に理解できるようにするために、本発明の特定の実施形態の詳細な説明を以下に提供する。
【0028】
別段の指定がない限り、本発明において、一般に、用いられる材料または試薬の供給源は特に限定されず、例えば商業的に入手することができる。
【0029】
例1
組成物に含まれる有効成分は:ベンフォチアミン150mg;および塩酸ドネペジル5mgである。
【0030】
準備方法:
ベンフォチアミンおよび塩酸ドネペジルAPIを所定量で秤量し、少なくとも1種の薬学的に許容可能な担体または賦形剤を添加して経口製剤を調製する。経口製剤は錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤および丸剤のいずれであってもよい。
【0031】
例2
組成物に含まれる有効成分は:ベンフォチアミン200mg;および塩酸ドネペジル5mgである。
【0032】
準備方法:
ベンフォチアミンおよび塩酸ドネペジルAPIを所定量で秤量し、少なくとも1種の薬学的に許容可能な担体または賦形剤を添加して経口製剤を調製する。経口製剤は錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤および丸剤のいずれであってもよい。
【0033】
例3
組成物に含まれる有効成分は:ベンフォチアミン300mg;および塩酸ドネペジル5mgである。
【0034】
準備方法:
ベンフォチアミンおよび塩酸ドネペジルAPIを所定量で秤量し、少なくとも1種の薬学的に許容可能な担体または賦形剤を添加して経口製剤を調製する。経口製剤は錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤および丸剤のいずれであってもよい。
【0035】
例4
組成物に含まれる有効成分は:ベンフォチアミン400mg;および塩酸ドネペジル5mgである。
【0036】
準備方法:
ベンフォチアミンおよび塩酸ドネペジルAPIを所定量で秤量し、少なくとも1種の薬学的に許容可能な担体または賦形剤を添加して経口製剤を調製する。経口製剤は錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤および丸剤のいずれであってもよい。
【0037】
例5
組成物に含まれる有効成分は:ベンフォチアミン600mg;および塩酸ドネペジル5mgである。
【0038】
準備方法:
ベンフォチアミンおよび塩酸ドネペジルAPIを所定量で秤量し、少なくとも1種の薬学的に許容可能な担体または賦形剤を添加して経口製剤を調製する。経口製剤は錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤および丸剤のいずれであってもよい。
【0039】
例6
組成物に含まれる有効成分は:ベンフォチアミン400mg;および塩酸ドネペジル3mgである。
【0040】
準備方法:
ベンフォチアミンおよび塩酸ドネペジルAPIを所定量で秤量し、少なくとも1種の薬学的に許容可能な担体または賦形剤を添加して経口製剤を調製する。経口製剤は錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤および丸剤のいずれであってもよい。
【0041】
例7
組成物に含まれる有効成分は:ベンフォチアミン400mg;および塩酸ドネペジル6mgである。
【0042】
準備方法:
ベンフォチアミンおよび塩酸ドネペジルAPIを所定量で秤量し、少なくとも1種の薬学的に許容可能な担体または賦形剤を添加して経口製剤を調製する。経口製剤は錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤および丸剤のいずれであってもよい。
【0043】
例8
組成物に含まれる有効成分は:ベンフォチアミン200mg;および塩酸ドネペジル6mgである。
【0044】
準備方法:
ベンフォチアミンおよび塩酸ドネペジルAPIを所定量で秤量し、少なくとも1種の薬学的に許容可能な担体または賦形剤を添加して経口製剤を調製する。経口製剤は錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤および丸剤のいずれであってもよい。
【0045】
以下では、本明細書で提供される医薬組成物の効果と、ベンフォチアミン、塩酸ドネペジルおよびビタミンB1を単独で用いた場合の効果とを、モリス水迷路試験で比較する。
【0046】
実験例1:モリス水迷路試験
1.実験原理
水中では、げっ歯類は水環境から逃れる強い動機を持ち、水環境から最も速く、最も直接的に逃げることができる。水環境から逃れることを学習するプロセスは、動物の学習能力を反映する。周囲環境に応じた空間配置および水中の安全な場所(プラットフォーム等)への意図的な水泳は、動物の空間学習および記憶能力を反映することができる。
【0047】
2.試験プロトコル
2.1.材料
(1)試験動物
試験動物は、雄のAPP/PS1/TauマウスおよびC57BL/6野生型マウスとした。マウスは8月齢でであり、体重は250~300gであり、ジャクソン研究所から購入した。
【0048】
App/PS1/Tauマウスは、APP/PS1/tauトリプルトランスジェニックアルツハイマー病(3×Tg-AD)モデルマウスであり、該モデルマウスにおいてはタウタンパク質の病理学的変化よりも数か月早くAβ沈着が起こり、アルツハイマー病の病理学的変化についてより現実的な臨床プロセスをシミュレートすることができる。
【0049】
(2)主な処方
CMC-Na(カルボキシメチルセルロースナトリウム)、Shanghai Sinopharm Chemical Reagent Co., Ltd.、バッチ番号:20181203;BTMP(ベンフォチアミン)、Shanghai Raising Biotechnology Co., Ltd.、バッチ番号:1908002;塩酸ドネペジル、Eisai(China) Co., Ltd.、バッチ番号:1704019。
【0050】
2.2.薬剤の調製および投与に関する情報
(1)薬剤の調製
0.7%m/vのCMC Na(カルボキシメチルセルロースナトリウム)の調製:カルボキシメチルセルロースナトリウムを0.7g秤量し、精製水100mlに溶解して、0.7%m/vのCMC-Naを得た。
【0051】
10mg/mlのビタミンB1溶液の調製(用量:200mg/kg):ビタミンBを500mg秤量し、0.7%m/vのCMC-Naを添加して50mlとして、10mg/mlの溶液を得た。
【0052】
10mg/mlのBTMP懸濁液の調製(用量:200mg/kg):BTMPを500mg秤量し、0.7%m/vのCMC-Naを添加して50mlとして、10mg/mlのBTMP懸濁液を得た。
【0053】
20mg/mlのBTMP懸濁液の調製(用量:400mg/kg):BTMPを500mg秤量し、0.7%m/vのCMC-Naを添加して25mlとして、20mg/mlのBTMP懸濁液を得た。
【0054】
0.075mg/mlの塩酸ドネペジル懸濁液の調製(用量:1.5mg/kg):塩酸ドネペジルの錠剤(5mgの塩酸ドネペジルを含有)を1錠すりつぶし、0.7%m/vのCMC-Naを添加して66.67mlとして、0.075mg/mlの塩酸ドネペジル懸濁液を得た。
【0055】
0.15mg/mlの塩酸ドネペジル懸濁液の調製(用量:3.0mg/kg):塩酸ドネペジルの錠剤(5mg塩酸ドネペジルを含有)を1錠すりつぶし、0.7%m/vのCMC-Naを添加して33.33mlとして、0.15mg/mlの塩酸ドネペジル懸濁液を得た。
【0056】
10mg/mlのBTMP懸濁液+0.075mg/mlの塩酸ドネペジル懸濁液の調製(用量:200mg/kgのBTMP懸濁液+1.5mg/kgの塩酸ドネペジル懸濁液):20mg/mlのBTMP懸濁液および0.15mg/mlの塩酸ドネペジル懸濁液をそれぞれ調製し、投与前に等量を均一に混合し、10mg/mlのBTMP懸濁液+0.075mg/mlの塩酸ドネペジル懸濁液を得た。
【0057】
5mg/mlのBTMP懸濁液+0.075mg/mlの塩酸ドネペジル懸濁液の調製(用量:100mg/kgのBTMP懸濁液+1.5mg/kgの塩酸ドネペジル懸濁液):10mg/mlのBTMP懸濁液および0.15mg/mlの塩酸ドネペジル懸濁液をそれぞれ調製し、投与前に等量を均一に混合し、5mg/mlのBTMP懸濁液+0.075mg/mlの塩酸ドネペジル懸濁液を得た。
【0058】
(2)投与に関する情報
【表1】
【0059】
2.3.試験方法
ブランク対照群、モデル群および試験群のマウスは、2.2の投与量/仕様に従って8週間胃内に投与され、水迷路のトレーニングおよび試験は、投与の最後の週に開始された。水迷路のトレーニングおよび試験は、5日間のトレーニングおよび1日間の試験で、6日間行った。また、水迷路のトレーニングおよび試験の期間中(計6日間)は、室内照明等の条件を一定に保ち、部屋を静かに保ち、環境や人の干渉を排除した。
【0060】
(1)試験前準備:水迷路プールに水温が22±3℃に保たれた水を適量の入れ、水面下1cmの固定位置(ターゲット区画)にプラットフォームを設置し、水色が白色になりプラットフォームがはっきりと見えなるまで二酸化チタンを添加した。
【0061】
(2)トレーニング期間(1~5日目):各マウスを、各日の第1の区画トレーニングの前に15秒間プラットフォームに配置して(プラットフォームに対するマウスの安心感を増大させるため)、次いで、マウスを、プール中のプラットフォームが設置された区画に配置して(頭を壁に向けて)、水泳時間を60秒に設定した。60秒以内にプラットフォームを発見して5秒間留まった場合、プラットフォームの発見に成功したと見なした。プラットフォームを発見できなかった場合、時間を60秒として記録し、マウスをプラットフォームに誘導して20秒間留め、その後マウスを取り出し、この区画でのこのマウスのトレーニングを終了した。
【0062】
第1の区画トレーニングの後、残りの3つの区画のトレーニングを順番に行い、これらのトレーニングでは、マウスをプラットフォームに配置し、トレーニング前に15秒間保持することは不要とした。各マウスの2つの区画トレーニングの間隔は10~15分とした。このようにして連続5日間のトレーニングを行った。
【0063】
(3)試験期間(6日目):最後のトレーニングの完了から24時間後にプラットフォームを取り外し、最初のプラットフォーム区画の反対側のサイト(つまり、プラットフォームから最も離れた位置)にマウスを置いた。マウスがターゲット区画(プラットフォームが最初に配置された区画)に留まった時間、最初のプラットフォーム位置を通過した回数(プラットフォームを通過した回数)、および最初のプラットフォーム位置を最初に通過した時間(潜時)を記録し、マウスの空間学習・記憶能力を評価する指標とした。
【0064】
3.試験結果
ブランク対照群と比較して、モデル群のマウスの潜時は大幅に増大し、プラットフォームを通過する回数は減少し、ターゲット区画に留まる時間は大幅に減少し、有意差があった。これらの結果は、トランスジェニックマウスが空間学習および記憶能力において正常なマウスとは異なり、空間学習および記憶訓練に適していることを示すものである。モデル群と比較して、陽性対照群および試験群は、潜時、プラットフォームを通過する回数、およびターゲット区画に留まる時間に有意な改善を示し、すべて有意差があった。結果を表1に示す。
【0065】
【表2】
【0066】
化合物の有効性を評価する指標を、潜時、プラットフォームを通過する回数、ターゲット区画に留まる時間とすると、順位は、ブランク対照群、BTMP+塩酸ドネペジル、1/2BTMP+塩酸ドネペジル、BTMP、塩酸ドネペジル、VB1およびモデル群(性能が優れる順に順位付けした)の順であった。結果を図1~3に示す。これらの結果は、VB1がADマウスの学習および記憶を有意に改善しなかったのに対し、BTMP、塩酸ドネペジル、BTMP+塩酸ドネペジル、1/2BTMP+塩酸ドネペジルがADマウスの空間記憶および学習能力を有意に改善し、BTMPおよび塩酸ドネペジルの併用投与が最も改善効果が高く、BTMPおよび塩酸ドネペジルを単独投与した場合よりも改善効果が有意に高かったことを示すものである。
【0067】
本発明における水迷路試験の結果は、ベンフォチアミンおよび塩酸ドネペジルの併用投与後、良好な相乗効果が達成され、ADマウスの空間学習および記憶能力が改善され、その効果が、ベンフォチアミンまたは塩酸ドネペジルを単独投与した場合の改善効果よりも有意に優れていること、さらにはビタミンB1による改善効果よりも優れていることを示すものである。本発明の医薬組成物は、アルツハイマー病の治療において良好な医薬活性を有する。
【0068】
実験例2:臨床試験
中程度のアルツハイマー病(スクリーニング時のMMSE10~19)の患者を対象に、52週間の臨床試験研究を行った。試験群分けと投与レジメンは以下のとおりである:
【表3】
【0069】
患者の認知機能レベルを評価するために、投与後12週、24週、36週および52週の患者を、ADAS-cogスケール(11項目(単語再生、呼称、命令実行、構成行為、観念運動、見当識、単語再認、テスト教示の再生、口語言語能力、喚語能力および言語の理解能力)を含む)に基づいて、スコアが高いほど認知障害が深刻であることを示す0~70のスコア範囲で採点した。ベースラインに対する患者スコアの変化の群間差を以下の表に示す。
【0070】
【表4】
【0071】
上述した結果によると、処理群の患者のADAS-cogスコアは、プラセボ群よりも良好に改善していた。特に、処理群の患者は、36週でADAS-cogスコアが2.116改善し、統計的差異があり(p=0.077)、52週でADAS-cogスコアが3.331改善し、統計的差異があった(p=0.029)。これらの結果は、ベンフォチアミンと塩酸ドネペジルとの併用療法がアルツハイマー病の進行を有意に遅らせることができることを示すものである。
【0072】
一方、投与中、処理群の患者に重大な薬物関連の副作用は観察されず、ベンフォチアミンと塩酸ドネペジルとの併用療法が良好な安全性プロファイルを有し、患者はこの療法に十分に耐えられることが示唆された。
【0073】
以上、本発明を開示したが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更および修正を行うことができる。
図1
図2
図3
【国際調査報告】