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特表2023-534944接触分解のためのプロセス及び平衡FCC触媒
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  • 特表-接触分解のためのプロセス及び平衡FCC触媒 図1
  • 特表-接触分解のためのプロセス及び平衡FCC触媒 図2A
  • 特表-接触分解のためのプロセス及び平衡FCC触媒 図2B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-15
(54)【発明の名称】接触分解のためのプロセス及び平衡FCC触媒
(51)【国際特許分類】
   C10G 11/18 20060101AFI20230807BHJP
   B01J 38/64 20060101ALI20230807BHJP
   B01J 29/08 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
C10G11/18
B01J38/64
B01J29/08 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023502620
(86)(22)【出願日】2021-07-07
(85)【翻訳文提出日】2023-02-09
(86)【国際出願番号】 US2021040746
(87)【国際公開番号】W WO2022015552
(87)【国際公開日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】63/051,551
(32)【優先日】2020-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001706
【氏名又は名称】ダブリュー・アール・グレース・アンド・カンパニー-コーン
【氏名又は名称原語表記】W R GRACE & CO-CONN
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】クンドゥ,シャンカマラ
(72)【発明者】
【氏名】フー,ルイジョーン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ウー-チェン
(72)【発明者】
【氏名】ジーバース,マイケル
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA02A
4G169BA06A
4G169BA06B
4G169BA07A
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BB04C
4G169BB05C
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BB16C
4G169BC09A
4G169BC10A
4G169BC10B
4G169BC26A
4G169BC29B
4G169CC07
4G169DA06
4G169DA08
4G169EB18X
4G169ED07
4G169FC04
4G169FC08
4G169GA12
4G169GA16
4G169ZA03A
4G169ZA04A
4G169ZA11A
4G169ZA19A
4H129AA02
4H129CA08
4H129DA04
4H129GA12
4H129KA02
4H129KB03
4H129KB05
4H129KB10
4H129KC03Y
4H129KC14X
4H129KC14Y
4H129KC16X
4H129KC16Y
4H129KD06X
4H129KD06Y
4H129KD07X
4H129KD07Y
4H129KD09X
4H129KD09Y
4H129KD19X
4H129KD19Y
4H129KD32X
4H129KD32Y
4H129NA05
4H129NA20
4H129NA21
4H129NA37
(57)【要約】
鉄で汚染された流動接触分解(FCC)供給原料の接触分解のためのプロセス。プロセスは、流動接触分解条件下でのFCCプロセスの間に、FCC触媒と、マグネシウム化合物を含有するスラリーと、鉄で汚染されたFCC供給原料とを合わせ、それによって鉄被毒が低減された平衡FCC触媒を生成することを含み得る。マグネシウム化合物を含有するスラリーは、カルシウム化合物を含有しなくてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄で汚染された流動接触分解(FCC)供給原料の接触分解のためのプロセスであって、前記プロセスが、
流動接触分解条件下でのFCCプロセスの間に、FCC触媒と、マグネシウム化合物を含むスラリーと、鉄で汚染されたFCC供給原料とを合わせ、それによって鉄被毒が低減された平衡FCC触媒を生成することを含み、
前記マグネシウム化合物を含む前記スラリーが、カルシウム化合物を含有しない、プロセス。
【請求項2】
前記FCC触媒を、前記マグネシウム化合物を含む前記スラリーと合わせることが、前記鉄で汚染されたFCC供給原料と合わせることと同時に実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記FCC触媒を、前記マグネシウム化合物を含む前記スラリーと合わせることが、前記鉄で汚染されたFCC供給原料と合わせる前又は後に実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記スラリーが、約5nm~約1μmの範囲の平均粒径を有する前記マグネシウム化合物の粒子を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記マグネシウム化合物の前記粒子が、約7nm~約300nmの範囲の前記平均粒径を有する、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記マグネシウム化合物の前記粒子が、約15nm~約150nmの範囲の前記平均粒径を有する、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記スラリー中の前記マグネシウム化合物の濃度が、MgOとして報告される場合、約5重量%~約50重量%の範囲にある、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記スラリー中の前記マグネシウム化合物の前記濃度が、MgOとして報告される場合、約20重量%~約40重量%の範囲にある、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記鉄で汚染されたFCC供給原料中の鉄化合物の濃度が、Feとして報告される場合、約0.5重量ppm~約100重量ppmの範囲にある、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記鉄で汚染されたFCC供給原料中の前記鉄化合物の前記濃度が、Feとして報告される場合、約1重量ppm~約50重量ppmの範囲にある、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記鉄で汚染されたFCC供給原料中の前記鉄化合物の前記濃度が、Feとして報告される場合、約2重量ppm~約30重量ppmの範囲にある、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記マグネシウム化合物が、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、スルホン酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、並びにマグネシウムのアルミニウム又はケイ素と混合された金属酸化物及び金属炭酸塩からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
前記スラリーが、液相又は分散剤として水、有機溶媒、又はそれらの混合物を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
前記マグネシウム化合物又は前記マグネシウム化合物の誘導体が、前記合わせることの後に前記平衡FCC触媒上に堆積する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項15】
前記平衡FCC触媒上の前記マグネシウム化合物又は前記マグネシウム化合物の前記誘導体の量が、MgOとして報告される場合、前記平衡FCC触媒の約100重量ppm~約30,000重量ppmの範囲にある、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記平衡FCC触媒上の前記マグネシウム化合物又は前記マグネシウム化合物の前記誘導体の前記量が、MgOとして報告される場合、前記平衡FCC触媒の約300重量ppm~約20,000重量ppmの範囲にある、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記平衡FCC触媒上の鉄化合物の量が、Feとして報告される場合、前記平衡FCC触媒の約500重量ppm~約30,000重量ppmの範囲にある、請求項14に記載のプロセス。
【請求項18】
前記平衡FCC触媒上の前記鉄化合物の前記量が、Feとして報告される場合、前記平衡FCC触媒の約1,000重量ppm~約20,000重量ppmの範囲にある、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記平衡FCC触媒上のMgOとしての前記マグネシウム化合物又は前記マグネシウム化合物の前記誘導体対Feとしての前記鉄化合物の重量比が、約0.1超である、請求項17に記載のプロセス。
【請求項20】
前記平衡FCC触媒上のMgOとしての前記マグネシウム化合物又は前記マグネシウム化合物の前記誘導体対Feとしての前記鉄化合物の前記重量比が、約0.5超である、請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
前記平衡FCC触媒が、逆ガスクロマトグラフィー技法によって測定される場合、約5mm/分超の拡散係数を有する、請求項19に記載のプロセス。
【請求項22】
前記平衡FCC触媒が、逆ガスクロマトグラフィー技法によって測定される場合、少なくとも約8mm/分の前記拡散係数を有する、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記スラリーが、アンチモン又はアンチモン化合物を更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項24】
前記FCC触媒の、前記スラリー及び前記鉄で汚染されたFCC供給原料との前記合わせることが、FCCユニット内で行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項25】
平衡FCC触媒であって、
FCC触媒であって、カルシウムを含有し、前記FCC触媒上に堆積した少なくとも1つのマグネシウム化合物及び鉄化合物を有する、FCC触媒を含み、
前記平衡FCC触媒上のMgOとしての前記マグネシウム化合物対Feとしての前記鉄化合物の重量比が、約0.1超であり、前記平衡FCC触媒上のカルシウム化合物対前記マグネシウム化合物の重量比が、CaO/MgOとして報告される場合、約0.25未満である、平衡FCC触媒。
【請求項26】
前記平衡FCC触媒上のMgOとしての前記マグネシウム化合物対Feとしての前記鉄化合物の前記重量比が、約0.5超である、請求項25に記載の平衡FCC触媒。
【請求項27】
前記マグネシウム化合物の量が、MgOとして報告される場合、前記平衡FCC触媒の約100重量ppm~約30,000重量ppmの範囲にある、請求項25に記載の平衡FCC触媒。
【請求項28】
前記マグネシウム化合物の前記量が、MgOとして報告される場合、前記平衡FCC触媒の約300重量ppm~約20,000重量ppmの範囲にある、請求項27に記載の平衡FCC触媒。
【請求項29】
前記平衡FCC触媒が、SI単位で500×10-6を上回る磁化率を有する、請求項25に記載の平衡FCC触媒。
【請求項30】
前記平衡FCC触媒が、SI単位で2000×10-6を上回る磁化率を有する、請求項29に記載の平衡FCC触媒。
【請求項31】
前記平衡FCC触媒が、約5mm/分以上の拡散係数を有する、請求項25に記載の平衡FCC触媒。
【請求項32】
前記FCC触媒が、フォージャサイト及び/又はZSM-5及び/又はベータゼオライトを含む、請求項25に記載の平衡FCC触媒。
【請求項33】
前記フォージャサイトゼオライトが、Y型ゼオライトである、請求項32に記載の平衡FCC触媒。
【請求項34】
前記FCC触媒上のカルシウム化合物対前記マグネシウム化合物の前記重量比が、CaO/MgOとして報告される場合、約0.15未満である、請求項25に記載の平衡FCC触媒。
【請求項35】
前記平衡FCC触媒が、前記ZSM-5を含む、請求項32に記載の平衡FCC触媒。
【請求項36】
前記ZSM-5が、6重量%超のレベルで存在する、請求項35に記載の平衡FCC触媒。
【請求項37】
前記平衡FCC触媒中のCe含有化合物対前記マグネシウム化合物の重量比が、CeO/MgOとして報告される場合、約0.15未満である、請求項25に記載の平衡FCC触媒。
【請求項38】
前記平衡FCC触媒中に、XRDによって検出可能なCeO結晶性相が存在しない、請求項37に記載の平衡FCC触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触分解のためのプロセス、より具体的には、鉄で汚染された流動接触分解(fluid catalytic cracking、FCC)供給原料の接触分解のためのプロセス及びそれから生成された平衡FCC触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
流動接触分解(FCC)プロセスは、非常に重要な精製プロセスである。FCCプロセスの間、触媒は、水熱失活及び熱失活、並びにアルカリ及びアルカリ土類金属、ニッケル、バナジウム、及び鉄などの供給原料汚染物質による被毒などの異なる失活機構に曝される。長年にわたる平均的な供給原料品質の低下に起因する鉄被毒がより頻繁に観察されるので、鉄被毒は、近年非常に注目を集めている。汚染されたFCC供給原料によってもたらされるFeは、FCC触媒上に堆積し、触媒粒子の外表面上に高密度な層を形成し得ることが知られている。高密度な層は、触媒粒子に入る供給物分子の拡散及び分解された粒子が触媒粒子から出ることを低減し、それによってFCC触媒の活性及び選択性に負の影響を与える。この現象は、多くの場合、FCC触媒の鉄被毒と称される。FCC触媒の鉄被毒は、操作上の問題、並びに触媒の活性及び選択性の低下を生じ得る。
【0003】
米国特許第8372269号は、流動接触分解(FCC)中の金属不動態化の方法について開示している。方法は、流動接触分解触媒と粒子状金属トラップとの混合物を含むFCCユニットにおいて、金属含有炭化水素流体流を接触させることを含む。粒子状金属トラップは、カオリン、酸化マグネシウム又は水酸化マグネシウム、及び炭酸カルシウムの噴霧乾燥混合物を含む。
【0004】
米国特許第6,723,228号は、均質な液体の形態であり、複合金属化合物を含む炭化水素の接触分解に使用される、添加剤について開示している。複合金属化合物は、第1族金属のうちの少なくとも1つと第2族金属のうちの少なくとも1つとの、酸化物、水酸化物、有機酸塩、無機酸塩、又は金属有機錯化合物からなる。第1族金属は、元素周期表のIIIA、IVA、VA、VIA族の金属からなる群から選択される。第2族金属は、アルカリ土類金属、遷移金属、及び希土類金属からなる群から選択される。添加剤は、金属を不動態化し、COの酸化を促進することができ、生成コストを減少させるとともに容易に扱われる。
【0005】
米国特許第7361264(B2)号は、少なくとも1つの金属の存在下で、流動接触分解(FCC)触媒の性能を増加させる方法について開示している。方法は、マグネシウム及びアルミニウムを含み、かつ約43度及び約62度の2シータピーク位置に少なくとも1つの反射を示すX線回折パターンを有する、化合物と、流動接触分解触媒を含むFCCユニットからの流体流を接触させることを含み、化合物は、ハイドロタルサイト化合物から誘導されたものではない。
【0006】
国際公開第2015/051266号は、鉄で汚染されたFCC触媒を再活性化するプロセスについて開示している。そのプロセスは、鉄で汚染されたFCC触媒を鉄移動剤と接触させることを含む。鉄移動剤は、カルシウム、マンガン、ランタン、鉄、亜鉛、又はホスファートからなる群から選択される改質剤を含有するマグネシア-アルミナハイドロタルサイト材料を含む。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一例は、鉄で汚染されたFCC供給原料を接触分解するためのプロセスである。プロセスは、流動接触分解条件下でのFCCプロセスの間に、FCC触媒と、マグネシウム化合物を含むスラリーと、鉄で汚染されたFCC供給原料とを合わせ、それによって鉄被毒が低減された平衡FCC触媒を生成することを含み得る。マグネシウム化合物を含むスラリーは、カルシウム化合物を含有しなくてもよい。予期せぬことに、カルシウム化合物の非存在下での、鉄で汚染されたFCC触媒上への少量のマグネシウム化合物の添加によって、FCC触媒に出入りする炭化水素の拡散性が効果的に増加し、それによってFCC触媒の活性及び選択性が維持される。結果として、FCCプロセスの間の、鉄で汚染されたFCC供給原料によるFCC触媒の鉄被毒が顕著に低減される。
【0008】
本発明の別の例は、平衡FCC触媒である。平衡FCC触媒は、FCC触媒を含み得る。FCC触媒は、カルシウムを含有し得、FCC触媒上に堆積した少なくとも1つのマグネシウム化合物及び鉄化合物を有し得る。平衡FCC触媒上のMgOとしてのマグネシウム化合物対Feとしての鉄化合物の重量比は、約0.1超であり得る。FCC触媒上のカルシウム化合物対マグネシウム化合物の重量比は、CaO/MgOとして報告される場合、約0.25未満であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示とみなされる主題は、本明細書の最後の特許請求の範囲において具体的に示され、明確に特許請求される。本開示の前述及び他の目的、特色、及び利点は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明から明らかである。
図1】関連技術におけるFCC触媒上に堆積した鉄化合物のナノ粒子の電子プローブマイクロアナライザ(electron probe micro-analyzer、EPMA)分析を示す。
図2A】本開示の一実施形態によるFCC触媒上に堆積した鉄化合物のナノ粒子の電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)分析を示す。
図2B】本開示の一実施形態によるFCC触媒上に堆積したマグネシウム化合物のナノ粒子の電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、添付の図面を参照して更に詳細に記載されるであろう。図を参照すると、全体を通じて示される同じの構造及び要素は、同じ参照番号で示される。明らかに、記載の実施形態は、本開示の実施形態の一部にすぎず、実施形態の全てではない。創造的努力を伴わずに本開示の実施形態に基づいて当業者によって得られる全ての他の実施形態は、本開示の保護範囲内にある。以下の実施形態の記載の特定の特色、構造、材料、又は特徴は、任意の1つ以上の実施形態又は実施例において任意の好適な様式で組み合わせられ得る。
【0011】
本明細書において「約」によって修飾された数は、数がその10%だけ変動し得ることを意味する。本明細書において「約」によって修飾された数値範囲は、数値範囲の上限及び下限がその10%だけ変動し得ることを意味する。
【0012】
本開示で使用される用語は、例示的な実施例を説明することのみを目的とし、本開示を限定することを意図しない。本開示及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、別段文脈が明確に指示しない限り、同様に複数形を含むことを意図する。
【0013】
本記載及び添付の特許請求の範囲において使用される以下の用語は、以下の定義を有する。
【0014】
平衡FCC触媒又は「Ecat」は、炭化水素供給原料の繰り返される分解及びコークスを燃焼させるための再生に起因して失活したFCCユニットの、インベントリにある触媒である。未使用の流動接触触媒は、触媒供給業者によって製造及び販売されている触媒である。触媒は、古くなるにつれて、摩耗、供給原料金属の蓄積、及びFCCユニットの過酷な熱水環境への曝露に起因して変化を受ける。古くなった触媒は、活性及び選択性の低下を生じる表面積及び酸性部位の損失を特徴とする。FCCプロセスの間、触媒活性及び選択性を維持し、FCC反応器及び再生器容器内の触媒床レベルを適切に保持するために、必要に応じて、未使用の触媒が添加され、古くなった触媒が取り出される。平衡触媒は、循環中のインベントリにある触媒であり、触媒の失活速度と交換速度との間のバランスを反映する。したがって、Ecatは、未使用のFCC触媒粒子から重度に失活したFCC触媒粒子までの古さ(age)分布を含む。
【0015】
本発明の一例は、鉄で汚染された流動接触分解(FCC)供給原料を接触分解するためのプロセスである。プロセスは、流動接触分解条件下でのFCCプロセスの間に、FCCユニットの循環中のインベントリからのFCC触媒と、マグネシウム化合物を含有するスラリーと、鉄で汚染されたFCC供給原料とを合わせ、それによって鉄被毒が低減された改善された平衡FCC触媒を生成することを含み得る。マグネシウム化合物を含有するスラリーは、カルシウム化合物を含有しなくてもよい。
【0016】
FCC触媒は、約50μm~約110μmの範囲の平均直径を有する粒子の形態であり得、約10~60%のゼオライト結晶を含有し得る。ゼオライトは、選択的分解反応のための主要な触媒構成要素であり得る。一実施形態では、ゼオライトは、合成フォージャサイト結晶性材料である。合成フォージャサイト結晶性材料としては、シリカ及びアルミナを含有する組成物のアルカリ条件下での結晶化、続いてナトリウムを低下させるための洗浄によってナトリウム形態(Standard-Y)で製造される材料、並びに脱アルミニウムプロセスを介して親標準-Yゼオライトのケイ素/アルミニウム原子比を増加させることによって生成される超安定Y(ultrastable Y、「USY」)で製造される材料が挙げられる。生じるUSYゼオライトは、市販のFCCユニットにおける水熱失活に対して、Standard Yゼオライトよりもはるかに安定である。Standard-Y及びUSYゼオライトは、カチオン、典型的には希土類混合物で処理してゼオライト骨格からナトリウムを除去して、REY、CREY、及びREUSYを形成することができ、これらは、活性を増加させ、FCCユニットにおける失活に対してゼオライトを更に安定化させることができる。ゼオライトは、7.4~12Åの範囲の細孔を有し得る。ゼオライトに対応する平衡FCC触媒の表面積、すなわち、20Å未満の範囲の細孔に対応する表面積は、t-プロット方法によって測定して、典型的には20~300m/g、好ましくは40~200m/gの範囲である。上記のYゼオライトはまた、米国特許第6656347号、米国特許第6942784号、及び米国特許第5395809号に記載のように、焼成カオリンを含む微小球の結晶化によっても作製され得る。
【0017】
FCC触媒において、ゼオライト以外に、触媒は、マトリックスを含有する。FCCマトリックスは、供給原料中のより重い分子の分解、いわゆるボトム分解を改善するために、多孔質の触媒的に活性なアルミナ又はシリカアルミナを含み得る。
【0018】
また、FCCマトリックスは、ニッケルを不動態化するための特殊アルミナ、及びバナジウムを不動態化するためのトラップを含み得る。ニッケル不動態化アルミナの一例は、Alとして報告される場合、結晶性ベーマイトから誘導されたアルミナであり、3~30重量%の範囲で未使用の触媒中に組み込まれ得る。バナジウムトラップの一例は、希土類化合物であり、REとして報告される場合、1~10重量%の範囲で未使用の触媒中に組み込まれ得る。
【0019】
FCCマトリックスは、粘土を更に含有し得る。一般に触媒活性に寄与しないが、粘土は、触媒粒子全体に機械的強度及び密度を提供して、その流動化を向上することができる。
【0020】
最後に、FCCマトリックスは、結合剤を更に含有し得る。これは、ゼオライト、活性アルミナ、金属トラップ、及び粘土を一緒に保持する接着剤である。結合剤は、典型的には、シリカ系、アルミナ系、シリカ-アルミナ系、又は粘土系であり得る。
【0021】
FCCマトリックスは、メソ細孔範囲(20~500Å)並びにマクロ細孔(500Å超)の細孔に寄与する。平衡FCC触媒のマトリックスに対応する表面積、すなわち20~10000Åの範囲の細孔の表面は、t-プロット方法によって測定して、典型的には10~220m/g、好ましくは20~150m/gの範囲である。最終平衡FCC触媒は、0.2~0.6cm/gの総水分細孔容積を有し得る。
【0022】
FCC触媒は、触媒と添加剤との物理的なブレンドを含み得る。添加剤は、FCCにおいて、プロピレン又はブチレンを優先するように生成物選択性を変化させること、再生器におけるコークスの燃焼を制御すること、又はSOx及びNOx排出若しくはガソリン硫黄規格などの環境規制を満たすことにおいて精製業者を支援することなどの、ある特定の機能を実施するために使用される。
【0023】
添加剤としては、ZSM-5系添加剤;酸化セリウム(CeO)及び酸化バナジウムによって促進されたアルミン酸マグネシウムスピネルに基づく添加剤;並びに/又は白金系及びパラジウム系添加剤を挙げることができる。
【0024】
W.R.GraceからのOlefinsUltra(登録商標)などのZSM-5系添加剤が、プロピレン及びブチレンの生成を向上するために一般的に使用されている。ZSM-5添加剤は、総触媒の1~50重量%の範囲でブレンドされ得る。本発明は、プロピレン及びブチレンの高収率を所望するユニットに特に有益である。
【0025】
W.R.GraceからのSuper DESOX(登録商標)などの、酸化セリウム(CeO)及び酸化バナジウムによって促進されたアルミン酸マグネシウムスピネルに基づく添加剤が、SOx排出を制御するために一般的に使用されている。SOx添加剤は、総触媒の0.2~20重量%の範囲でブレンドされ得る。SOxを制御するために高レベルの添加剤を使用するFCCユニットからの平衡触媒は、約0.15超のCeO/MgO重量比を有するか、又はX線回折技法(x-ray diffraction、XRD)によって検出可能な結晶性酸化セリウム(CeO)の存在を示すであろう。
【0026】
白金系及びパラジウム系添加剤は、再生器におけるコークス燃焼を助けるために一般的に使用されており、典型的には、総触媒のPt又はPd基準で、10ppm未満で使用されている。
【0027】
マグネシウム含有スラリーは、約5nm~約1μm、好ましくは約7nm~約300nm、より好ましくは約15nm~約150nmの範囲の平均粒径を有するマグネシウム化合物の粒子を含有し得る。スラリー中のマグネシウム化合物の濃度は、MgOとして報告される場合、約5重量%~約50重量%、好ましくは約20重量%~約40重量%の範囲であり得る。マグネシウム化合物は、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、スルホン酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、並びにマグネシウムのアルミニウム又はケイ素と混合された金属酸化物及び金属炭酸塩からなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。スラリーは、液相又は分散剤として水、有機溶媒、又はそれらの混合物を更に含有し得る。有機溶媒は、1つ以上の他の物質を溶解又は分散させる炭素系物質であり得る。例えば、有機溶媒は、炭化水素、酸素化炭化水素、アルコール、界面活性剤、及びそれらの組み合わせであり得る。一実施形態では、スラリーは、アンチモン又はアンチモン化合物を更に含有する。
【0028】
FCC供給原料は、未使用の軽油又は分解された軽油のいずれかであり得る。また、真空残渣油、常圧残渣油、及び脱アスファルト油などのより重質の供給原料も使用され得る。汚染金属は、全ての上の供給原料中に存在し得るが、重質流中に最も多く存在する。FCC供給原料は、液体として導入されるが、しかしながら、それらは再生器から流れ出る高温の触媒と接触すると蒸発し、次いでFCC分解反応が気相で進行する。金属は、最初に触媒の表面上に堆積するが、しかしながら、経時的に金属の一部が移動する場合がある。FCCユニットにおける触媒インベントリの平均古さは、数週間又は数ヶ月であり得るので、これは、金属が、ユニット内を循環する全時間にわたって触媒上に蓄積し続けるであろうことを意味する。
【0029】
供給原料中に存在する鉄は、触媒上に堆積すると、脱水素反応を生じ得るが、より重要なことに、それが触媒の細孔を塞ぐことが見出されている。これが起こると、大きな分子は、触媒の細孔内に拡散することができず、したがって分解されない。典型的には、ポルフィリン、ナフテネート、又は無機化合物としてFCC供給原料中に存在する鉄化合物は、Feとして0~10000重量ppm(mg/kg)の量で存在する。異なる鉄含有化合物は、異なる程度まで細孔を塞ぎ得る。
【0030】
一実施形態では、鉄で汚染されたFCC供給原料中の鉄化合物の濃度は、Feとして報告される場合、約0.5重量ppm~約100重量ppm、好ましくは約1重量ppm~約50重量ppm、より好ましくは約2重量ppm~約30重量ppmの範囲であり得る。
【0031】
Fe被毒が、触媒に出入りする炭化水素拡散の制限を通してFCC触媒に負の影響を与える場合、マグネシウム化合物及びカルシウム化合物は、異なって挙動し得る。カルシウム化合物は、FCC触媒の外表面上に高密度な鉄の層の形成を向上し、それによって細孔閉塞を生じ得ることが知られている(Stud.Surf.Sci.and Catal.(2003)Vol.149,p.139)。対照的に、鉄で汚染されたFCC触媒の表面上への少量のマグネシウム化合物の添加は、FCC触媒に出入りする炭化水素の拡散性を予想外に増加させる。特定の理論に拘束されるものではないが、鉄で汚染されたFCC触媒上の少量のマグネシウム化合物が、FCC触媒上の高密度なFe層形成を低減又は排除し、FCC触媒に入る供給物分子の拡散及び分解された分子がFCC触媒から出ることを維持し、それによってFCC触媒の活性及び選択性を維持するのに役立ち得る可能性が非常に高い。
【0032】
一実施形態では、FCC触媒を、マグネシウム化合物を含有するスラリーと合わせることは、鉄で汚染されたFCC供給原料と合わせることと同時に実施される。
【0033】
別の実施形態では、FCC触媒と合わせる前に、マグネシウム化合物を含有するスラリーは、鉄で汚染されたFCC供給原料を更に含み得る。この場合、スラリー及び供給原料は、混和性であり得る。
【0034】
別の実施形態では、FCC触媒を、マグネシウム化合物を含有するスラリーと合わせることは、鉄で汚染されたFCC供給原料と合わせる前に実施される。例えば、まず、マグネシウム化合物を含有するが、カルシウム化合物を含有しないスラリーが調製され得る。次いで、FCC触媒は、スラリーと合わせられ、続いて鉄で汚染されたFCC供給原料と合わせられ得る。この場合、スラリー及び供給原料は、混和性であってもよく、混和性でなくてもよい。
【0035】
別の実施形態では、FCC触媒を、マグネシウム化合物を含有するスラリーと合わせることは、鉄で汚染されたFCC供給原料と合わせた後に実施される。例えば、まず、マグネシウム化合物を含有するが、カルシウム化合物を含有しないスラリーが調製され得る。次いで、FCC触媒は、鉄で汚染されたFCC供給原料と合わせられ、続いてスラリーと合わせられ得る。この場合、スラリー及び供給原料は、混和性であってもよく、混和性でなくてもよい。FCC触媒の、スラリー及び鉄で汚染されたFCC供給原料との合わせることは、FCCユニット内で行われ得る。
【0036】
FCC触媒、スラリー、及び鉄で汚染されたFCC供給原料を合わせた後、マグネシウム化合物又はマグネシウム化合物の誘導体が、平衡FCC触媒上に堆積し得る。FCCプロセスの間、マグネシウム化合物は、マグネシウム化合物の誘導体へと化学的又は物理的に変換され得、次いで、平衡FCC触媒上に堆積したままである。マグネシウム化合物又はマグネシウム化合物の誘導体は、平衡FCC触媒の外表面上又はその近くに堆積し得る。
【0037】
一実施形態では、平衡FCC触媒上のマグネシウム化合物又はマグネシウム化合物の誘導体の量は、MgOとして報告される場合、平衡FCC触媒の約100重量ppm~約30,000重量ppm、好ましくは約300重量ppm~約20,000重量ppmの範囲にある。
【0038】
一実施形態では、平衡FCC触媒上の鉄化合物の量は、Feとして報告される場合、平衡FCC触媒の約500重量ppm~30,000重量ppm、好ましくは約1,000重量ppm~約20,000重量ppmの範囲にある。
【0039】
一実施形態では、平衡FCC触媒上のMgOとしてのマグネシウム化合物又はマグネシウム化合物の誘導体対Feとしての鉄化合物の重量比は、約0.1超、好ましくは約0.5超である。
【0040】
一実施形態では、平衡FCC触媒は、逆ガスクロマトグラフィー技法によって測定される場合、約5mm/分超、好ましくは少なくとも約8mm/分の拡散係数を有する。
【0041】
平衡FCC触媒又は「Ecat」は、炭化水素供給原料の繰り返される分解及びコークスを燃焼させるための再生に起因して失活したFCCユニットの、インベントリにある触媒である。未使用の流動接触触媒は、触媒供給業者によって製造及び販売されている触媒である。触媒は、古くなるにつれて、摩耗、供給原料金属の蓄積、及びFCCユニットの過酷な熱水環境への曝露に起因して変化を受ける。古くなった触媒は、活性及び選択性の低下を生じる表面積及び酸性部位の損失を特徴とする。FCCプロセスの間、触媒活性及び選択性を維持し、並びにFCC反応器及び再生器容器内の触媒床レベルを適切に保持するために、必要に応じて、未使用の触媒が添加され、古くなった触媒が取り出される。平衡触媒は、循環中のインベントリにある触媒であり、触媒の失活速度と交換速度との間のバランスを反映する。したがって、Ecatは、未使用のFCC触媒粒子から重度に失活したFCC触媒粒子までの古さ分布を含む。
【0042】
マグネシウム化合物を含有するスラリーは、CaOなどのカルシウム化合物を含有しないが、FCC供給原料中に不純物として少量のカルシウム化合物が存在し得る。カルシウムはまた、未使用の触媒を作製するために使用される原材料中の不純物であり得る。結果として、典型的な平衡FCC触媒は、少量のカルシウム化合物を含有し得る。
【0043】
本発明の別の例は、平衡FCC触媒である。平衡FCC触媒は、カルシウムを含有し、FCC触媒上に堆積した少なくとも1つのマグネシウム化合物及び鉄化合物を有するFCC触媒を含み得る。平衡FCC触媒上のMgOとしてのマグネシウム化合物対Feとしての鉄化合物の重量比は、0.1超であり得る。平衡FCC触媒上のカルシウム化合物対マグネシウム化合物の重量比は、CaO/MgOとして報告される場合、約0.25未満、好ましくは約0.15未満であり得る。
【0044】
一実施形態では、平衡FCC触媒上のMgOとしてのマグネシウム化合物対Feとしての鉄化合物の重量比は、0.5超である。一実施形態では、マグネシウム化合物の量は、MgOとして報告される場合、平衡FCC触媒の約100重量ppm~約30,000重量ppm、好ましくは約300重量ppm~約20,000重量ppmの範囲にある。
【0045】
平衡FCC触媒は、SI単位で500×10-6を上回る、好ましくは2000×10-6を上回る磁化率を有し得る。
【0046】
一実施形態では、平衡FCC触媒は、約5mm/分以上の拡散係数を有する。FCC触媒は、フォージャサイト及び/又はZSM-5及び/又はベータゼオライトを含み得る。フォージャサイトゼオライトは、Y型ゼオライトであり得る。
【0047】
一実施形態では、平衡FCC触媒は、Ce含有化合物を含み得る。平衡FCC触媒中のCe含有化合物対マグネシウム化合物の重量比は、CeO/MgOとして報告される場合、約0.15未満、好ましくは約0.12未満であり得る。一実施形態では、平衡FCC触媒中に、XRDによって検出可能なCeO結晶性相は存在しない。
【0048】
本明細書の記載において、「一実施形態」、「いくつかの実施形態」、「例」、及び「いくつかの例」などという用語に対する言及は、本開示の少なくとも1つの実施形態又は実施例に含まれる実施形態又は実施例に関連して記載される特定の特色、及び構造、材料、又は特徴を指すことが意図される。用語の概略的な表現は、必ずしも同じ実施形態又は実施例を指すわけではない。更に、記載の特定の特色、構造、材料、又は特徴は、任意の1つ以上の実施形態又は実施例において任意の好適な様式で含まれ得る。
【0049】
以下、実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。しかしながら、本発明の範囲は、以下の実施例に限定されない。これらの実施例は、例示目的のみを意図しており、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例
【0050】
特徴評価方法
FCC触媒の平均粒径は、ASTM D4464である、Standard Test Method for Particle Size Distribution of Catalytic Materials by Laser Light Scatteringに従って測定する。MgOナノ粒子の粒径は、ASTM E2490である、Standard Guide for Measurement of Particle Size Distribution of Nanomaterials in Suspension by Photon Correlation Spectroscopy(Photon Correlation Spectroscopy、PCS)に記載の動的光散乱によって決定する。化学組成又は元素分析は、誘導結合プラズマ(inductively coupled plasma、ICP)技法によって実施する。表面積は、ASTM D3663-03(2015)である、Standard Test Method for Surface Area of Catalysts and Catalyst Carriersに従って決定する。ゼオライト表面積及びマトリックス表面積は、ASTM D4365-19である、Standard Test Method for Determining Micropore Volume and Zeolite Area of a Catalystに従って決定する。単位胞サイズは、ASTM D3942-03(2013)である、標準的なTest Method for Determination of the Unit Cell Dimension of a Faujasite-Type Zeoliteに従って決定する。分解反応は、30秒の供給物注入時間を用い、残渣供給原料を使用する、1004°FのAdvanced Cracking Evaluations(ACE(商標))固定流動床反応器において実行する。触媒使用量を変動させて、4.5、6、及び8の触媒対油比での変換範囲を得た。エネルギー分散型分光計(Energy Dispersive Spectrometer、EDS)及び波長分散型分光計(Wavelength Dispersive Spectrometer、WDS)の両方を備えたJEOL JXA-8230電子プローブマイクロアナライザで、元素マッピングを実行した。粒子断面の撮像及びマッピングのために、粒子をエポキシ中に入れ、樹脂を室温で一晩硬化させた。次いで、試料スタブをダイヤモンドブレードで切断し、滑らかな表面へと研磨した。
【0051】
グレース有効拡散係数(Grace Effective Diffusion Coefficient、GeDC)の決定は、逆ガスクロマトグラフィーの原理に基づき、PAC Analytical Controlsによって構成されたAgilent HP7890GCで実行する。各試験では、長さ12cm、ID2mmの石英ガラスカラムに100mgの触媒を充填する。プローブ分子である、1,2,4-トリメチルシクロヘキサンを、二硫化炭素中5重量%の溶液として調製する。窒素をキャリアガスとして使用する。各試料では、70~99mL/分の間の7つのキャリア流設定でGC実験を行った。各キャリア流量での不感時間決定のために、メタンパルスを使用する。米国特許出願第2017/0267934(A1)号に記載のように、van Deemterの式によってクロマトグラムを分析して、GeDCを決定する。
【0052】
試料の磁化率を、HF/LFモードで操作したMS2Bセンサと組み合わせたBartington MS3メータで測定した。最低17gの試料を、20mLのHDPEバイアルに充填した。各測定の前に、ブランクを5秒間測定し、その後試料を、メータに入れ、10秒間測定した。全ての結果をSI単位で報告する。
【0053】
比較例1及び2
13mm/分のグレース有効拡散係数(GeDC)を有する比較例1としての平衡FCC触媒(Ecat)を、市販のFCCユニットから採取する。循環プロピレン流(Cyclic Propylene Steam、CPS)失活プロトコルを40時間、1350°Fで60サイクル使用する、流動床実験室反応器において、平衡FCC触媒を失活させて、比較例2として失活平衡FCC触媒を得た。CPS失活手順は、Wallenstein et.al.,Appl.Catal.A.,Vol.204,89-106(2000)に記載されている。表1に示されるように、失活平衡FCC触媒のGeDCは、7mm/分まで減少した。
【0054】
比較例3
水溶液中に懸濁させた、鉄化合物であるオキシ水酸化鉄(III)のナノ粒子を使用する7000ppmwのFeで、比較例1としての平衡FCC触媒のアリコートを噴霧コーティングし、続いて比較例2と同じCPS失活を行って、比較例3として鉄化合物のみでコーティングした失活平衡FCC触媒を得た。噴霧コーティングの手順は、Wallenstein et.al.,Appl.Catal.A.,Vol.462-463,91-99(2013)に記載されている。電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)分析は、図1に示されるように、鉄化合物のナノ粒子が、主に平衡FCC触媒粒子の外表面上に堆積し、平衡FCC触媒粒子を取り囲む薄いシェルを形成したことを示している。表1に示されるように、鉄化合物のみでコーティングした生じた失活平衡FCC触媒のGeDCは、3mm/分まで減少した。表1に示されるように、鉄化合物のみでコーティングした生じた失活平衡FCC触媒の磁化率は、鉄化合物の添加とともに1桁を超えて増加した。GeDCの減少及び磁化率の増加の両方は、Fe被毒を経験している市販のFCCユニットにおける観察と一致する。
【0055】
実施例1
水溶液中に懸濁させた、鉄化合物であるオキシ水酸化鉄(III)のナノ粒子を使用する7000ppmwのFe、及び水溶液中に懸濁させた、MgO/Mg(OH)のナノ粒子を使用する17000ppmwのMgOで、比較例1としての平衡FCC触媒の別のアリコートを噴霧コーティングし、続いて比較例2と同じCPS失活を行って、実施例1としての鉄化合物及びマグネシウム化合物でコーティングした失活平衡FCC触媒を得た。表1に示されるように、鉄化合物及びマグネシウム化合物でコーティングした生じた失活平衡FCC触媒のGeDCは、10mm/分までしか減少しなかった。図2A及び図2Bにそれぞれ示されるように、EPMA分析は、鉄化合物及びMgO/Mg(OH)のナノ粒子が、主に平衡FCC触媒粒子の外表面上に堆積し、平衡FCC触媒粒子を取り囲む薄いシェルを形成したことを示している。
【0056】
【表1】
【0057】
表1に示されるように、比較例3におけるようにFeを添加したEcatでは、比較例2におけるようにFeを添加しなかったEcatよりも大幅にGeDCが減少したことを、分析結果は示している。対照的に、実施例1におけるようにFeを添加しMgを添加したEcatでは、比較例3におけるようにFe単独を添加した場合、及び比較例2におけるように何も処理しなかった場合よりも、GeDCの減少は非常に少なかった。これらの結果は、平衡FCC触媒の外部表面への少量のMgOなどのマグネシウム化合物の添加が、触媒に出入りする炭化水素の拡散率に対する、Fe添加の負の影響を軽減するのに役立ち、それによって触媒の鉄被毒を顕著に低減することを実証している。
【0058】
表2に示される特性を有する供給原料を使用して、3つの失活Ecat試料である、比較例2及び3、並びに実施例1をACEによって試験した。
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
表3に、結果を列挙する。80重量%の一定の変換率での失活Ecat(比較例2)と比較して、Feのみを添加した失活Ecat(比較例3)は、等しい変換率を達成するのに必要な触媒対油比がより高いこと、より多くのコークス、及びより高いボトム収率によって証明されるように、より低い活性を有する。Feのみの触媒(比較例3)はまた、より高い(イソブタン/イソブテンの比として定義される)水素移動指数、より少ないC4オレフィン、より少ないガソリンオレフィン、及びより少ないオクタンによって証明されるように、オレフィンを飽和する傾向がより高い。ACE試験において観察された活性及び選択性の差は、触媒インベントリがFeによって被毒している市販のFCCユニットにおいて一般的に観察される活性及び選択性の差と一致する。
【0062】
対照的に、Feのみを添加した失活Ecat(比較例3)と比較して、Fe及びMgを添加した失活Ecat(実施例1)は、等しい変換率を達成するのに必要な触媒対油比がより低いこと、より少ないコークス、及びより低いボトム収率によって証明されるように、予想外に高い活性を有する。Fe及びMgを添加した触媒(実施例1)は、より低い水素移動指数、並びにより多くのC4オレフィン、より多くのガソリンオレフィン、及びより多くのオクタンを有する。これらの結果は、Fe被毒の影響が、MgOの添加によって予想外に低減又は排除されたことを実証している。
【0063】
比較例4~6
以下の実施例及び比較例は、Fe被毒に起因する拡散率の損失を低減することにおける、CaOを上回るMgOの優位性を実証する。鉄化合物であるオキシ水酸化鉄(III)のナノ粒子で、比較例1からの同じEcatのアリコートを噴霧コーティングした(比較例4)。鉄化合物であるオキシ水酸化鉄(III)のナノ粒子、続いて2つのレベル(それぞれ比較例5及び6として、CaOとして11400及び20200ppmw)の硝酸カルシウム溶液を使用するCaOで、比較例1からの同じEcatの新しいアリコートを噴霧コーティングした。比較例2に記載のCPS失活プロトコルを使用する流動床反応器において、金属含浸試料を失活させた。
【0064】
実施例2及び3
鉄化合物であるオキシ水酸化鉄(III)のナノ粒子、続いて、2つのレベル(それぞれ実施例2及び3として、MgOとして7300及び16200ppmw)の実施例1に記載のMgO/Mg(OH)懸濁液で、比較例1からの同じEcatの新しいアリコートを噴霧コーティングし、比較例2に記載のCPS失活プロトコルを使用する流動床反応器において、金属含浸試料を失活させた。
【0065】
6つのCPS失活Ecat試料のGeDC、磁化率、及び化学分析を、表4に列挙する。結果は、Feを添加した全ての試料では、磁化率が増加することを示している。比較例4におけるようにFeのみを添加した試料では、GeDCが減少する。実施例2及び3におけるFe及びMgOの添加によって、GeDCは、Feを添加しなかった失活Ecatとほぼ同じであり、Feのみを添加した試料よりもはるかに高い。比較のために、Fe及びCaOで噴霧コーティングした試料のGeDC値は、Feのみの試料の値とほぼ同じであった。再び、その結果は、FCC触媒の外部表面へのMgOの添加が、触媒に出入りする炭化水素の拡散の制限において、Fe添加の負の影響を軽減するのに役立つことを実証している。しかしながら、カルシウム化合物の添加は、Fe被毒した触媒の拡散性を改善する利点を提供しない。
【0066】
本発明の様々な実施形態の説明は、例示の目的で提示されており、網羅的であること、又は開示された実施形態に限定されることを意図するものではない。説明された実施形態の範囲及び趣旨から逸脱することなく、多くの修正及び変形が当業者には明らかであろう。本明細書で使用される用語は、実施形態の原理、市場に見られる技術による実用的な用途若しくは技術的改善、又は当業者が本明細書に開示される実施形態を理解することを可能にするように選定された。
【0067】
【表4】
図1
図2A
図2B
【国際調査報告】