(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-15
(54)【発明の名称】グルココルチコイドを含む眼内挿入物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/573 20060101AFI20230807BHJP
A61K 9/00 20060101ALI20230807BHJP
A61P 27/04 20060101ALI20230807BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230807BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230807BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20230807BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230807BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20230807BHJP
【FI】
A61K31/573
A61K9/00
A61P27/04
A61K47/10
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/36
A61K47/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023502835
(86)(22)【出願日】2021-07-15
(85)【翻訳文提出日】2023-01-13
(86)【国際出願番号】 US2021041761
(87)【国際公開番号】W WO2022015940
(87)【国際公開日】2022-01-20
(32)【優先日】2021-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521465348
【氏名又は名称】オキュラ セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【氏名又は名称】杉山 共永
(72)【発明者】
【氏名】ブリザード,チャールズ,ディー.
(72)【発明者】
【氏名】デサイ,アンキタ
(72)【発明者】
【氏名】ゴールドスタイン,マイケル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA51
4C076AA94
4C076BB24
4C076DD26
4C076DD26Z
4C076EE06
4C076EE06A
4C076EE16
4C076EE16A
4C076EE23
4C076EE23A
4C076EE24
4C076EE24A
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4C076GG11
4C086AA01
4C086AA02
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA34
4C086MA58
4C086NA12
4C086ZA33
(57)【要約】
あるいくつかの実施形態において、本発明は、ドライアイ疾患の治療のための、ヒドロゲル内に分散されたグルココルチコイドを含む徐放性生分解性小管内挿入物に関する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロゲルと、グルココルチコイドとを含む、徐放性生分解性眼内挿入物であって、前記ヒドロゲル内にグルココルチコイドの粒子が分散され、前記挿入物が、その乾燥状態で約2.75mm未満の長さを有する、前記徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項2】
前記挿入物が、約375μg未満のデキサメタゾンまたは等価用量の別のグルココルチコイドを含む、請求項1に記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項3】
前記挿入物が、投与してから最大約1か月の期間、治療有効量のグルココルチコイドの放出をもたらす、請求項1または2に記載の徐放性生分解性挿入物。
【請求項4】
前記グルココルチコイドがデキサメタゾンである、先行請求項のいずれかに記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項5】
前記挿入物が小管内挿入物である、先行請求項のいずれかに記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項6】
約160μg~約250μgのデキサメタゾンを含む、先行請求項のいずれかに記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項7】
約180μg~約220μgのデキサメタゾンを含む、請求項6に記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項8】
約200μgのデキサメタゾンを含む、請求項7に記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項9】
約240μg~約375μgのデキサメタゾンを含む、請求項1~5のいずれかに記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項10】
約270μg~約330μgのデキサメタゾンを含む、請求項9に記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項11】
約300μgのデキサメタゾンを含む、請求項10に記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項12】
前記挿入物が円筒形または本質的に円筒形である、先行請求項のいずれかに記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項13】
前記挿入物が非円筒形である、請求項1~11のいずれかに記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項14】
前記挿入物が円筒形または本質的に円筒形であり、その乾燥状態で約2.5mm未満の長さを有する、請求項1~12のいずれかに記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項15】
前記挿入物が円筒形または本質的に円筒形であり、その乾燥状態で約0.75mm未満の直径を有する、請求項1~12及び14のいずれかに記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項16】
前記挿入物が円筒形または本質的に円筒形であり、その乾燥状態で約2.14mm~約2.36mmの長さ及び約0.41mm~約0.55mmの直径を有する、請求項1~12、14または15に記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項17】
前記挿入物が円筒形または本質的に円筒形であり、水和時(37℃、pH7.2のリン酸緩衝食塩水中で24時間後)に、前記挿入物の前記直径が増加し、前記挿入物の前記長さが減少する、請求項1~12、または14~16に記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項18】
前記水和状態の前記挿入物の前記直径:前記乾燥状態の前記挿入物の前記直径の比が約1.5~約4の範囲である、請求項17に記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項19】
前記水和状態の前記挿入物の前記直径:前記乾燥状態の前記挿入物の前記直径の比が約2~約3.5の範囲である、請求項18に記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項20】
前記水和状態の前記挿入物の前記長さ:前記乾燥状態の前記挿入物の前記長さの比が約0.9以下である、請求項17~19のいずれかに記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項21】
前記水和状態の前記挿入物の前記長さ:前記乾燥状態の前記挿入物の前記長さの比が約0.75以下である、請求項20に記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項22】
前記挿入物が、円筒形または本質的に円筒形であり、その水和状態で(37℃、pH7.2のリン酸緩衝食塩水中で24時間後)、1を超える長さ:直径の比を有する、請求項1~12または14~21のいずれかに記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項23】
前記挿入物が円筒形または本質的に円筒形であり、その水和状態で、約1.35mm~約1.80mの範囲の直径及び約1.64mm~約2.0mmの範囲の長さを有する、請求項1~12または14~22のいずれかに記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項24】
約100~約1000μgの範囲の総重量を有する、先行請求項のいずれかに記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項25】
約400~約600μgの範囲の総重量を有する、請求項24に記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項26】
前記挿入物が、投与してから約12時間またはそれ以上の期間の間、例えば、約1日またはそれ以上の期間の間、治療有効量のグルココルチコイドの放出をもたらす、先行請求項のいずれかに記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項27】
前記挿入物が、投与してから最大約14日、または最大約21日、または最大約25日の期間の間、治療有効量のデキサメタゾンの放出をもたらす、先行請求項のいずれかに記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項28】
前記グルココルチコイドがデキサメタゾンであり、前記挿入物が、投与してから最大約21日の期間の間、涙液中に1日当たり約5μg~約50μgの平均速度でデキサメタゾンの放出をもたらす、先行請求項のいずれかに記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項29】
前記挿入物が、投与してから最大約21日の期間の間、涙液中に1日当たり約15μg~約25μgの平均速度でデキサメタゾンの放出をもたらす、請求項28に記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項30】
前記挿入物が約200μgのデキサメタゾンを含み、投与してから最大約7日の期間、1日当たりデキサメタゾン約15μg~約25μgの平均速度でデキサメタゾンの放出をもたらす、請求項29に記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項31】
前記挿入物が約300μgのデキサメタゾンを含み、投与してから最大約14日の期間、1日当たりデキサメタゾン約15μg~約25μgの平均速度でデキサメタゾンの放出をもたらす、請求項29に記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項32】
前記挿入物が、投与してから約1か月以内、または約2か月以内、または約3か月以内、または約4か月以内に生分解する、先行請求項のいずれかに記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項33】
前記挿入物からの前記グルココルチコイドが完全にまたは本質的に完全に枯渇した後に、前記挿入物が生分解する、請求項32に記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項34】
前記ヒドロゲルが、ポリアルキレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアルキレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリ(ビニルピロリジノン)、ポリ乳酸、ポリ乳酸-co-グリコール酸、これらのいずれかのランダムもしくはブロックコポリマーまたは組合せもしくは混合物の1つ以上の単位、あるいはポリアミノ酸、グリコサミノグリカン、多糖、もしくはタンパク質の1つ以上の単位を含むポリマーネットワークを含む、先行請求項のいずれかに記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項35】
前記ヒドロゲルが、同じまたは異なる、約10,000~約60,000ダルトンの数平均分子量を有するマルチアームPEG単位を含む、請求項34に記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項36】
前記ヒドロゲルが、同じまたは異なる、約10,000~約40,000ダルトン、または約20,000ダルトンの数平均分子量を有するマルチアームPEG単位を含む、請求項35に記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項37】
前記ヒドロゲルが架橋されたPEG単位を含み、前記PEG単位間の前記架橋が、以下の式
【化1】
(式中、mは0~10の整数(例えば、2)である)によって表される基を含む、請求項35または36に記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項38】
前記PEG単位が、約20,000ダルトンの数平均分子量を有する4アーム及び/または8アームPEG単位(例えば、4a20k PEG単位)を含む、請求項35~37のいずれかに記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項39】
前記挿入物が、乾燥状態で約40重量%~約56重量%の前記グルココルチコイド及び約36重量%~約55重量%のポリマー単位(乾燥組成物)を含む、請求項34~38のいずれかに記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項40】
前記挿入物が、乾燥状態で約40重量%~約46重量%のデキサメタゾン及び約45重量%~約55重量%のPEG単位(乾燥組成物)を含む、請求項39に記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項41】
前記挿入物が、乾燥状態で約50重量%~約56重量%のデキサメタゾン及び約36重量%~約46重量%のPEG単位(乾燥組成物)を含む、請求項39に記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項42】
前記挿入物が、小管内挿入物であり、約160μg~約250μgまたは約180μg~約220μgまたは約200μgのデキサメタゾンを含み、円筒形または本質的に円筒形であり、その乾燥状態で約0.41mm~約0.49mmの範囲の直径及び約2.14mm~約2.36mmの範囲の長さを有し、その水和状態で(37℃、pH7.2のリン酸緩衝食塩水中で24時間後)、約1.35mm~約1.80mmの範囲の直径及び1を超える長さ:直径の比を有し、前記ヒドロゲルが、架橋された4a20k PEG単位を含み、前記PEG単位間の前記架橋が、以下の式
【化2】
(式中、mは2である)によって表される基を含む、請求項1に記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項43】
前記挿入物が、投与してから最大約14日、または最大約21日の期間の間、デキサメタゾンの放出をもたらす、請求項42に記載の徐放性生分解性挿入物。
【請求項44】
前記挿入物が小管内挿入物であり、約240μg~約375μgまたは約270μg~約330μgまたは約300μgのデキサメタゾンを含み、円筒形または本質的に円筒形であり、その乾燥状態で約0.44mm~約0.55mmの範囲の直径及び約2.14mm~約2.36mmの範囲の長さを有し、その水和状態で(37℃、pH7.2のリン酸緩衝食塩水中で24時間後)、約1.35mm~約1.80mmの範囲の直径及び1を超える長さ:直径の比を有し、前記ヒドロゲルが、架橋された4a20k PEG単位を含み、前記PEG単位間の前記架橋が、以下の式
【化3】
(式中、mは2である)によって表される基を含む、請求項1に記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項45】
前記挿入物が、投与してから最大約21日、または最大約1か月の期間の間、デキサメタゾンの放出をもたらす、請求項44に記載の徐放性生分解性挿入物。
【請求項46】
前記グルココルチコイドがデキサメタゾンであり、前記デキサメタゾンの粒子が、レーザー回折による定量で約5μm以下のd90粒子サイズ及び/または約10μm未満のd98粒子サイズを有し、任意選択で、全てのまたは本質的に全ての粒子が約90μmより小さい、先行請求項のいずれかに記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項47】
可視化剤を含む、先行請求項のいずれかに記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項48】
前記可視化剤がフルオロフォア(例えば、フルオレセイン)である、先行請求項のいずれかに記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項49】
前記挿入物が、抗微生物防腐剤を含まないか、または実質的に含まない、先行請求項のいずれかに記載の徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項50】
請求項1~49のいずれかに記載の徐放性生分解性眼内挿入物を製造する方法であって、ポリマーネットワークと、グルココルチコイドの粒子とを含むヒドロゲルであって、前記グルココルチコイドの粒子が前記ヒドロゲル内に分散されている、前記ヒドロゲルを形成するステップと、前記ヒドロゲルを成形するステップと、前記ヒドロゲルを乾燥するステップとを含む、前記方法。
【請求項51】
前記ポリマーネットワークが、求電子基含有PEG前駆体を、グルココルチコイドの粒子の存在下の緩衝溶液中で、求核基含有架橋剤と混合及び反応させ、前記混合物をゲル化させて前記ヒドロゲルを形成することによって形成される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記架橋剤がアミン基を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記架橋剤がトリリジンまたはトリリジンアセテートである、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記PEG前駆体の前記求電子基が活性化エステル基である、請求項51~53のいずれかに記載の方法。
【請求項55】
前記PEG前駆体が4a20k PEG-SGである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
可視化剤を前記ポリマーネットワークと結合体化することを含む、請求項50~55のいずれかに記載の方法。
【請求項57】
前記ポリマー前駆体を架橋する前に、前記可視化剤を前記架橋剤と結合体化することを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記可視化剤が、フルオレセイン、フルオレセイン誘導体、または別のフルオロフォアである、請求項56または57に記載の方法。
【請求項59】
前記ヒドロゲルの完全なゲル化の前に、前記混合物を鋳型またはチューブにキャストすることによって前記ヒドロゲルを成形して、ヒドロゲルストランドを形成することと、前記ヒドロゲルストランドを乾燥することとを含む、請求項51~58のいずれかに記載の方法。
【請求項60】
前記ヒドロゲルを乾燥する前または後に、前記ヒドロゲルストランドを延伸すること(湿式延伸または乾式延伸)をさらに含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記ヒドロゲルを乾燥する前に、前記ヒドロゲルストランドを長手方向に約1~約3の範囲の延伸係数で延伸すること(湿式延伸)をさらに含む、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記延伸係数が約2.2~約2.8の範囲である、請求項60または61に記載の方法。
【請求項63】
ドライアイ疾患(DED)の治療を、それを必要とする患者において行う方法であって、前記患者に、請求項1~49のいずれかに記載の、または請求項50~62のいずれかに記載の方法に従って製造された、徐放性生分解性眼内挿入物を投与することを含む、前記方法。
【請求項64】
DEDの前記治療がDEDの急性期治療である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
ドライアイ疾患(DED)のエピソード性フレアの治療を、それを必要とする患者において行う方法であって、ヒドロゲル及びグルココルチコイドを含む徐放性生分解性眼内挿入物であって、前記ヒドロゲル内にグルココルチコイドの粒子が分散されている、前記徐放性生分解性眼内挿入物を前記患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項66】
前記治療期間が最大約1か月である、請求項63~65のいずれかに記載の方法。
【請求項67】
前記挿入物が、請求項1~49のいずれかに記載の、または請求項50~62のいずれかに記載の方法に従って製造された、徐放性生分解性眼内挿入物である、請求項65または66に記載の方法。
【請求項68】
前記挿入物が請求項42に定義される通りであり、前記治療期間が最大14日である、または約14日である、請求項63~67のいずれかに記載の方法。
【請求項69】
前記挿入物が請求項44に定義される通りであり、前記治療期間が最大21日である、または約21日である、請求項63~67のいずれかに記載の方法。
【請求項70】
前記挿入物が眼の小管内への挿入によって投与される、請求項63~69のいずれかに記載の方法。
【請求項71】
前記挿入物が下小管及び/または上小管に投与される、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記挿入物が片側性に投与される、請求項63~71のいずれかに記載の方法。
【請求項73】
前記挿入物が両側性に投与される、請求項63~71のいずれかに記載の方法。
【請求項74】
第1の挿入物が依然として小管内に保持されている間に、さらなる徐放性生分解性挿入物を小管内に投与すること(「挿入物スタッキング」)を含む、請求項63~73のいずれかに記載の方法。
【請求項75】
前記第1の挿入物がグルココルチコイドを完全または本質的に完全に枯渇させたときに、前記さらなる挿入物が投与される、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記徐放性生分解性小管内挿入物によるDEDの前記治療が、DEDの別の治療と組み合わされるか、またはそれに続いて行われる、請求項63~75のいずれかに記載の方法。
【請求項77】
前記他の治療がDEDの慢性治療である、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
または請求項63~77のいずれかに記載の方法で使用するための、請求項1~49のいずれかに記載の徐放性生分解性眼内挿入物、請求項50~62のいずれかに記載の方法に従って製造された徐放性生分解性眼内挿入物。
【請求項79】
請求項63~77のいずれかに記載の方法で使用するための医薬を調製するための、請求項1~49のいずれかに記載の徐放性生分解性眼内挿入物、または請求項50~62のいずれかに記載の方法に従って製造された徐放性生分解性眼内挿入物の使用。
【請求項80】
請求項1~49のいずれかに記載の、または請求項50~62のいずれかに記載の方法に従って製造された1つ以上の徐放性生分解性眼内挿入物(複数可)と、前記挿入物(複数可)の使用説明書とを含むキットであって、前記挿入物(複数可)が1回の投与用に個別にパッケージングされている、前記キット。
【請求項81】
前記挿入物(複数可)が発泡体担体内に固定されている、請求項80に記載のキット。
【請求項82】
前記挿入物(複数可)を投与するための1つ以上の手段をさらに含む、請求項80または81に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本発明は、米国仮出願第63/052,646号(2020年7月16日出願)、米国仮出願第63/124,176号(2020年12月11日出願)、及び米国仮出願第63/181,720号(2021年4月29日出願)に対する優先権を主張し、これら全てを参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、ドライアイ疾患(DED)の治療に関し、あるいくつかの実施形態では、DEDの急性治療またはDEDのエピソード性フレアの治療に関連するものである。本発明のあるいくつかの実施形態によれば、DEDは、生分解性挿入物を眼の上小管及び/または下小管に投与することによって治療され、当該挿入物は、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)の徐放をもたらす。
【背景技術】
【0003】
ドライアイ疾患(DED)は、「乾性角結膜炎(KCS)」(単に「ドライアイ」とも称される)として知られており、最も頻繁に遭遇する眼の病的状態に含まれる。現在眼科を受診する多くの患者がドライアイの症状を訴え、これが大きな公衆衛生問題となっており、眼科開業医が目にする最も一般的な状態に含まれる。罹患率は、年齢及び女性において有意に増加する。
【0004】
DEDは、乾燥、刺激、灼熱感、刺痛、ゴロゴロ感、異物感、流涙、及び眼球疲労の症状を特徴とする涙及び眼表面の多因子疾患である。DEDの病因は完全には理解されていないが、この衰弱性状態の発生及び伝播には炎症が顕著な役割を担っていることが認識されている。涙膜の安定性及び浸透圧に悪影響を及ぼす因子は、眼表面損傷を誘導し、自然免疫応答及び適応免疫応答を活性化する炎症カスケードを開始させる可能性がある。これらの免疫炎症応答は、眼表面のさらなる損傷及び永続的な炎症サイクルの発生につながり得る。例えば、眼表面で炎症が生じると、結果として涙産生が低減し、これにより、言及した状態はさらに悪化する。ヒトにおいては、ドライアイが結膜T細胞の存在と関連し、涙中の炎症性サイトカインレベルが対照群に比べて上昇していることが分かっており、これにより、炎症が当該障害の駆動源であることが裏付けられている。
【0005】
DEDは、エピソード性フレアを伴う慢性状態と考えられており、エピソード性フレアは、急激な症状の発症または症状の悪化を包含し、患者の日常生活に大きく影響を及ぼす。DEDに対するいくつかの薬理学的療法が検討されており、これには、市販の潤滑剤及び人工涙代替物(点眼薬として供給)に始まり、局所抗炎症療法や、涙を保持するための涙点プラグまたは小管内プラグを用いた涙腺閉塞に至る段階的アプローチが含まれる。プラグは、多くの場合、コラーゲン、アクリルポリマー、またはシリコンからなる。プラグはDED患者に有効であることが示されているものの、プラグは紛失することがあり(すなわち、十分な保持力を示さない)、さらには鼻涙管に移動し、炎症または他の病的状態の原因となる可能性がある(Fezza,et al.Study Raises Concern Over Plug,Review of Ophthalmology,2011を参照)。
【0006】
現在、DEDに対する短期治療は、局所用グルココルチコイド(例えば、フルオロメトロン(FML)、エタボン酸ロテプレドノール(Alrex(登録商標)及びLotemax(登録商標))、及び酢酸プレドニゾロン(PRED MILD(登録商標)))、ならびにシクロスポリン(Restasis(登録商標))及びリフィテグラスト(Xiidra(登録商標))を用いて行われているが、これらの活性物質はいずれも点眼薬の形態で送達される。最近、デキサメタゾンを含むEYSUVIS(商標)(Kala Pharmaceuticals)点眼薬がDED治療薬として承認された。現在利用可能なシクロスポリン及びリフィテグラストを含む点眼製剤に伴う具体的な問題は、灼熱感及び刺痛などの忍容性の問題であり、これは数週間から数か月にまでも持続することがある。さらに、点眼薬を使用すると、概して作用の発現が比較的遅いことが認められている。加えて、点眼薬は、有効成分の大部分が速やかに眼の外に洗い流されるため、眼表面が有効成分に曝露されるのが短時間になり得ることから、1日当たり数回投与しなければならないと考えられる。この理由により、製剤は濃度を最大限に上げてこの非効率性を補うことが多く、これは、眼表面での急性高濃度に結び付き、その結果、安全性の問題が生じる恐れがある。加えて、点眼薬に含まれる防腐剤(例えば、抗微生物防腐剤)に関連する灼熱感、痒み、及び刺痛が観察されることがある。さらに、患者は、点眼薬を1日当たり複数回投与する必要があるため、日常生活に大きな影響が及び、患者のコンプライアンスが低いものとなり得る。眼内への点眼薬の投与は難しいと認識され得るため、眼表面への点眼送達の正確さも限られ得る。したがって、過量投与または過少投与が生じ得る。
【0007】
グルココルチコイドは、ドライアイ疾患の治療に使用されている。しかし、点眼薬に含まれるグルココルチコイドは、長期間使用すると、眼圧(IOP)上昇につながる可能性があり、また白内障を誘導する可能性もある。
【0008】
現在利用可能な治療で経験した欠点及び課題を考慮すると、グルココルチコイドを毎日投与する必要性を回避しながら、グルココルチコイドを適切な用量で効果的に送達し、1週間以上という長期間にわたって効果的にDED(DEDのエピソード性フレアを含む)を治療する新規の治療法が、患者に利益をもたらすと考えられる。
【発明の概要】
【0009】
本発明のあるいくつかの実施形態の目的は、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を含む眼内挿入物であって、DEDの治療、特にDEDの急性治療、例えば、1週間以上の期間中の患者のエピソード性フレアに対し有効である、眼内挿入物を提供することである。
【0010】
本発明のあるいくつかの実施形態の別の目的は、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を含む眼内挿入物であって、涙液を通じて眼表面にグルココルチコイドの徐放をもたらす、眼内挿入物を提供することである。
【0011】
本発明のあるいくつかの実施形態の別の目的は、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を含む眼内挿入物であって、涙液を通じて眼表面にグルココルチコイドの徐放をもたらし、徐放の期間が、1日当たりに一定のグルココルチコイドが放出される期間を含む、眼内挿入物を提供することである。
【0012】
本発明のあるいくつかの実施形態の別の目的は、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を含む眼内挿入物であって、1回の投与のみで1週間以上の期間のDEDの治療をもたらす、眼内挿入物を提供することである。
【0013】
本発明のあるいくつかの実施形態の別の目的は、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を含む眼内挿入物であって、眼内の涙の保持を高める、眼内挿入物を提供することである。
【0014】
本発明のあるいくつかの実施形態の別の目的は、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を含む眼内挿入物であって、抗炎症療法及び涙の保持を高めることの両方のためにグルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)の持続的送達をもたらして、投与後に、相加的または相乗的で有益な効果を迅速に開始するとともに、1回の投与だけで長期間(例えば、1週間以上の期間)の間維持される、相加的または相乗的で有益な効果をもたらす、眼内挿入物を提供することである。
【0015】
本発明のあるいくつかの実施形態の別の目的は、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を含む眼内挿入物であって、十分に生分解性であることにより、薬物が枯渇した挿入物を除去する必要性を回避する、眼内挿入物を提供することである。
【0016】
本発明のあるいくつかの実施形態の別の目的は、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を含む眼内挿入物であって、涙膜を通じて眼表面にグルココルチコイドを放出する期間の後、涙液保持の治療効果が持続する、眼内挿入物を提供することである。
【0017】
本発明のあるいくつかの実施形態の別の目的は、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を含む眼内挿入物であって、挿入物のあるいくつかの実施形態が動物由来またはヒト由来の構成要素を含まないために生体適合性であり、免疫原性が低いまたはない、眼内挿入物を提供することである。
【0018】
本発明のあるいくつかの実施形態の別の目的は、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を含む眼内挿入物であって、抗微生物防腐剤を含まない、眼内挿入物を提供することである。
【0019】
本発明のあるいくつかの実施形態の別の目的は、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を含む眼内挿入物であって、乾燥状態では寸法が安定しているが、水和時、例えば眼に投与した後は寸法が変化する、眼内挿入物を提供することである。
【0020】
本発明のあるいくつかの実施形態の別の目的は、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を含む眼内挿入物であって、乾燥状態で投与され、例えば小管に挿入されたときに水和する、眼内挿入物を提供することである。
【0021】
本発明のあるいくつかの実施形態の別の目的は、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を含む眼内挿入物であって、乾燥状態では投与が容易であるが、小管内でしっかり固定され、治療期間中に挿入物が消失する可能性を回避することにより、特に、一般的に適用されるプラグ(例えば、コラーゲンまたはシリコーンプラグ)に比べた場合に、保持の改善がもたらされる、眼内挿入物を提供することである。
【0022】
本発明のあるいくつかの実施形態の別の目的は、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を含む眼内挿入物であって、挿入物が安定しており、挿入前だけでなく挿入後(すなわち、小管内で)も定義された形状及び表面積を有する、眼内挿入物を提供することである。
【0023】
本発明のあるいくつかの実施形態の別の目的は、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を含む眼内挿入物であって、取扱いが容易であり、特に、容易に溢れたり断片化したりしない、眼内挿入物を提供することである。
【0024】
本発明のあるいくつかの実施形態の別の目的は、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を含む眼内挿入物であって、正確な用量(広範な用量範囲内)の投与を可能にすることにより、過剰投与及び過少投与のリスクを回避する、眼内挿入物を提供することである。
【0025】
本発明のあるいくつかの実施形態の別の目的は、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を含む眼内挿入物であって、副作用(例えば、眼圧上昇、緑内障、及び白内障)をもたらす可能性のあるグルココルチコイドピークまたは実質的なピークを引き起こさない、眼内挿入物を提供することである。
【0026】
本発明のあるいくつかの実施形態の別の目的は、ドライアイ疾患の治療(例えば、DEDの急性治療)のためのグルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を含む眼内挿入物であって、一般的に知られているドライアイ治療薬に比べて副作用(例えば、灼熱感、刺痛、または痒み)の発生率が低い、眼内挿入物を提供することである。
【0027】
本発明のあるいくつかの実施形態の別の目的は、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を含む眼内挿入物であって、従来のDED治療に比べて患者にハンズフリーの代替手段を提供する、眼内挿入物を提供することである。
【0028】
本発明のあるいくつかの実施形態の別の目的は、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を含む眼内挿入物であって、例えば医師によって投与されるため、乱用に供されない、眼内挿入物を提供することである。
【0029】
本発明のあるいくつかの実施形態の別の目的は、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を含む眼内挿入物であって、概して、投与された眼の領域(例えば、下小管及び/または上小管(垂直部))にとどまる、眼内挿入物を提供することである。
【0030】
本発明のある特定の実施形態の別の目的は、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を含む眼内挿入物であって、安全かつ忍容性が良好である、眼内挿入物を提供することである。
【0031】
本発明のあるいくつかの実施形態の別の目的は、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を含む眼内挿入物であって、現在利用可能なDED治療に比べて患者のコンプライアンスを増大させた、眼内挿入物を提供することである。
【0032】
本発明のあるいくつかの実施形態の別の目的は、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を含む眼内挿入物であって、迅速かつ単純な方式で、及び非侵襲的な方法により、可視化することができる、眼内挿入物を提供することである。
【0033】
本発明のあるいくつかの実施形態の別の目的は、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を含む眼内挿入物であって、投与してから長期間にわたり、例えば、最大約7日、最大約14日、または最大約21日、または最大約25日の期間にわたり、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)の治療有効量の徐放をもたらす、眼内挿入物を提供することである。
【0034】
本発明のあるいくつかの実施形態の別の目的は、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を含む眼内挿入物であって、投与してから長期間にわたり、例えば、最大約7日、または最大約14日、または最大約21日、または最大約25日の期間の間、一定のまたは本質的に一定の量のグルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を放出する、眼内挿入物を提供することである。
【0035】
本発明のあるいくつかの実施形態の別の目的は、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を含む眼内挿入物であって、投与してから長期間にわたり、例えば、最大約7日、最大約14日、または最大約21日、または最大約25日の期間にわたり、治療有効量のグルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)の徐放をもたらして、頻繁なグルココルチコイド投与の必要性(例えば、点眼薬を使用する際は1日数回の投与を要する)を回避する、眼内挿入物を提供することである。
【0036】
本発明のあるいくつかの実施形態の別の目的は、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を含む眼内挿入物であって、投与してから長期間にわたり、例えば、最大約7日、最大約14日、または最大約21日、または最大約25日の期間の間、治療有効量のグルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)の徐放をもたらし、涙膜中のグルココルチコイド量が、一貫して眼表面の抗炎症療法に十分な治療有効レベルで維持される、眼内挿入物を提供することである。
【0037】
本発明のあるいくつかの実施形態の別の目的は、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を含む眼内挿入物であって、投与してから長期間にわたり、例えば、最大約7日、最大約14日、または最大約21日、または最大約25日の期間の間、治療有効量のグルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)の徐放をもたらし、毒性濃度のグルココルチコイドが眼表面及び/または涙膜中に本質的に観察されない、眼内挿入物を提供することである。
【0038】
本発明のあるいくつかの実施形態の別の目的は、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を含む眼内挿入物であって、投与してから長期間にわたり、例えば、最大約7日、最大約14日、または最大約21日、または最大約25日の期間の間、治療有効量のグルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)の徐放をもたらし、グルココルチコイドが全身に再吸収されない、または実質的に全身に再吸収されないことにより、全身毒性を最小化または回避する、眼内挿入物を提供することである。
【0039】
本発明のあるいくつかの実施形態の別の目的は、DEDの治療、特にDEDの(エピソード性フレアの)急性治療を、それを必要とする患者において行う方法を提供することである。
【0040】
本発明のあるいくつかの実施形態の別の目的は、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を含む眼内挿入物を製造する方法を提供することである。
【0041】
本発明のこれらの目的のうちの1つ以上及びその他は、本明細書に開示し特許請求するように本発明の1つ以上の実施形態によって解決される。
【0042】
あるいくつかの実施形態において、本発明は、抗炎症グルココルチコイド療法の利点を涙点閉塞による涙保存の効果と組み合わせて1つの療法にした単純かつハンズフリーの(例えば、医師が投与する)挿入物により、局所用グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を介したDEDの徴候及び症状の有効な短期治療を可能にする。本発明の挿入物は、あるいくつかの実施形態では、(例えば、DEDのエピソード性フレアの治療のための)治療期間の最初に1回だけ投与されるため、患者が反復投与する必要はなく、過剰投与または過少投与を回避するだけでなく、乱用/誤用の潜在可能性も回避することができる。あるいくつかの実施形態において、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)の用量及び活性物質の放出期間は、DEDのエピソード性フレアの治療に必要とされる短い治療期間(例えば、約2または約3週間)に適合するように調節される。不必要に高用量のグルココルチコイドへの曝露、及び不必要に長時間のグルココルチコイドへの曝露を低減することにより、長期及び/または高用量の使用または用量ピーク、ならびに患者の乱用または誤用に結び付き得るグルココルチコイドの潜在的に有害な副作用を可能な限り回避する。また、あるいくつかの実施形態において、本発明の挿入物は、抗微生物防腐剤(perservative)を必要としないことにより、局所適用眼科用製剤にしばしば使用される防腐剤に関連し得る、例えばアレルギー反応または有害作用の潜在可能性をさらに低減することができる。また、本発明の挿入物は、利便性が増加することから患者のコンプライアンスを高め、DED(DEDのエピソード性フレアを含む)の治療の有効性を高めることもできる。
【0043】
本発明の個々の態様を本明細書に開示し独立請求項で特許請求する。一方、従属請求項は、本発明のこれらの態様の特定の実施形態及び変形形態を特許請求するものである。本発明の様々な態様の詳細については、以下の発明を実施するための形態に示す。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】例示的な挿入物パッケージングの概略図である。挿入物を発泡体担体に入れ、ホイルパウチで封入する。
【
図2】眼の下涙点を通じた小管垂直部内への挿入物の設置を例示的に示す概略図である(A)。挿入物の可視化は、例えば青色光を用いた照明によって可能である(B)。小管内挿入物中のフルオレセインは、1つの実施形態では、青色光で励起することによって発光して、非侵襲的な方法で挿入物の存在を確認することができる。
【
図3】乾燥挿入物の小管内への挿入後、涙液に接触し、涙液によって水和されたときの挿入物の寸法変化を例示的に示す概略図である。
【
図4】0.2mg及び0.3mgのデキサメタゾンを含む本発明の実施形態に従う小管内挿入物からの経時的なin vitroのデキサメタゾン放出(PBS中37℃、pH7.4)。
【
図5】本発明の実施形態に従う挿入物からの放出を説明するための、0.22mgのデキサメタゾン挿入物からビーグル犬涙液中へのデキサメタゾン放出についての薬物動態プロファイル。0日目に、挿入物を、7頭のビーグル(すなわち、合計14眼)の涙点に両側性に設置した。挿入物を小管内に挿入してから1、2、4、7、10、14、17、21、28、35、37、及び40日目に、10mmシルマー涙試験紙を用いて、ビーグル犬の眼から涙液試料を採取した。涙液中のデキサメタゾンレベルをLC-MS/MSによって測定した。デキサメタゾンは、対応する標準偏差のエラーバーとともに平均値として提示されている。測定した試料数:1日目のnは6眼、2日目のnは8眼、14日目及び21日目のnは7眼、28日目のnは6眼、35日目のnは2眼であった。1回の挿入でおよそ14日間、眼表面にデキサメタゾンを送達し、7日目まで涙液中で持続的なレベルのデキサメタゾンが維持され、続いて7日目から14日目にかけて漸減し、17日目までに完全に放出された。
【
図6】異なる試験時点における本発明の実施形態に従う挿入物からの放出を説明するための、0.37mgのデキサメタゾン挿入物からのデキサメタゾン放出。デキサメタゾンは、主に涙点開口部の近位にある挿入部位から、経時的に涙液中に放出される。挿入物の濃い陰影部分はデキサメタゾンの存在を反映しており、透明部分はデキサメタゾンが枯渇した挿入物のゾーンを反映している。デキサメタゾンは、28日後に0.37mg挿入物から本質的に完全に放出される。
【
図7】第2相臨床試験の概要。14日の休薬期間の後、患者(3群、群当たりn=50)に、0.2mgのデキサメタゾン挿入物、0.3mgのデキサメタゾン挿入物、またはヒドロゲルビヒクル(すなわち、デキサメタゾンなしの挿入物)のいずれかを投与する。有効性の主要エンドポイントは2週目である。
【0045】
定義
本明細書で使用する場合、「挿入物」という用語は、活性薬剤、具体的にはグルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を含み、ヒトまたは動物の体内、例えば、眼の小管(片眼または両眼、ならびに下小管及び/または上小管)に投与され、周囲環境に活性薬剤を放出しながらある一定の期間の間とどまる物体を指す。挿入物は、挿入される前に任意の所定の形状を有することができ、その全般的な形状は、挿入物を所望の位置に設置した際はある程度まで維持することができるが、挿入物の寸法(例えば、長さ及び/または直径)は、本明細書でさらに開示するように、投与後に水和によって変化し得る。言い換えれば、眼の小管内に投与されるのは、溶液でも懸濁液でもなく、既に整形された密着性の物体である。したがって挿入物は、投与される前に、例えば本明細書で開示する方法に従って、完全に形成されている。時間とともに、挿入された挿入物は、あるいくつかの実施形態では(本明細書で開示するように)生分解することにより、完全に溶解/再吸収されるまでその形状を変化させ得る(例えば、直径が拡大し、長さが減少し得る)。本明細書では、「挿入物」という用語は、挿入物が水を含むとき(例えば、挿入物が、眼に投与されて水和または再水和した後、または他の形で水性環境に(例えば、in vitroで)浸漬された後)の水和(本明細書では「湿潤」とも称される)状態の挿入物と、その/乾燥(乾燥された/脱水された)状態の挿入物との両方を指すために使用される。したがって、あるいくつかの実施形態において、本発明の文脈において、挿入物は、その乾燥/乾燥された状態で約1重量%以下の水を含むことができる。挿入物の乾燥/乾燥された状態での水分含量は、例えばカールフィッシャー電量法によって測定することができる。本明細書において、挿入物の寸法(すなわち、長さ、直径、または体積)が水和状態で報告されている場合は常に、これらの寸法は、挿入物を37℃、pH値7.4のリン酸緩衝食塩水に24時間浸漬した後に測定したものである。本明細書で挿入物の寸法が乾燥状態で報告される場合は常に、これらの寸法は挿入物を完全に乾燥させた後に測定されたものである(したがって、あるいくつかの実施形態では約1重量%以下の水分を含む)。あるいくつかの実施形態において、挿入物は、酸素及び水分をいずれも20ppm未満含む不活性雰囲気グローブボックス内に少なくとも約7日間保管される。
【0046】
本発明のある特定の実施形態において、「繊維」という用語(本明細書では「ロッド」という用語と互換的に使用される)は、概して細長い形状を有する物体(すなわち、この例では、本発明のあるいくつかの実施形態に従う挿入物)を特徴付けるものである。本発明の挿入物の具体的な寸法について本明細書で開示する。挿入物は、円筒形または本質的に円筒形の形状を有しても、非円筒形の形状を有してもよい。繊維または挿入物の断面積は、円形または本質的に円形のいずれであってもよいが、ある特定の実施形態では楕円形または長円形であってもよく、または他の実施形態では、本明細書に開示するように十字形、星形などのような種々の形態を有してもよい。
【0047】
本明細書で使用する場合、「眼」という用語は、眼全般、または眼の任意の部位もしくは部分を指す(本発明に従う「眼内挿入物」は、原理上は眼の任意の部位または部分に投与することができる挿入物を指すため)。本発明は、あるいくつかの実施形態では、本明細書でさらに開示するように、眼内挿入物の小管内投与(この場合、「眼内挿入物」はしたがって「小管内挿入物」である)、及びドライアイ疾患(DED)の治療を対象とする。
【0048】
本明細書で使用する場合、「生分解性」という用語は、in vivoで、すなわち、ヒトまたは動物の体内に設置すると分解される、材料または物体(例えば、本発明に従う小管内挿入物)を指す。本発明の文脈において、本明細書で以下に詳細に開示するように、ヒドロゲルを含む挿入物であって、ヒドロゲル内にグルココルチコイドの粒子(例えば、デキサメタゾンの粒子)が分散されている挿入物は、ひとたび眼内(例えば、小管内)に堆積すると、経時的にゆっくりと生分解する。あるいくつかの実施形態において、生分解は、少なくとも部分的には、涙液がもたらす水性環境におけるエステル加水分解によって行われる。あるいくつかの実施形態において、本発明の小管内挿入物はゆっくりと軟化及び液化し、最終的には鼻涙管を通って除去される(廃棄される/洗い流される)。
【0049】
「ヒドロゲル」とは、水中で膨潤し、ある量の水を保持する一方で、例えば、個々のポリマー鎖の化学的または物理的架橋により、その構造を維持または実質的に維持することができる、(本明細書に開示するような)1つ以上の親水性の天然または合成ポリマーの三次元ネットワークである。ヒドロゲルは、その高い水分含量ゆえに軟質で柔軟であり、そのため天然の組織に非常に似ている。本発明において、「ヒドロゲル」という用語は、水を含むとき(例えば、ヒドロゲルが水溶液中で形成された後、またはヒドロゲルが、眼に挿入されたときにもしくは別の方法で水性環境中に浸漬されたときに、水和もしくは再水和した後)の水和された状態(本明細書では同義的に「湿潤状態」とも称される)のヒドロゲル、及び本明細書で開示するように例えば1重量%以下の低い水分含量まで乾燥した場合のその/乾燥している(乾燥された/脱水された)状態のヒドロゲルの両方を指す。本発明において、有効成分がヒドロゲル内に含まれている(例えば、分散されている)場合、ヒドロゲルは「マトリックス」と称されることもある。
【0050】
本明細書で使用する場合、「ポリマーネットワーク」という用語は、互いに架橋されたポリマー鎖(分子構造が同じまたは異なり、平均分子量が同じまたは異なるもの)から形成された構造を表したものである。本発明の目的に適したポリマーのタイプについて本明細書で開示する。また、ポリマーネットワークは、本明細書でも開示するように、架橋剤を利用して形成することができる。
【0051】
「非結晶性」という用語は、X線または電子散乱実験で結晶構造を示さないポリマーもしくはポリマーネットワーク、または他の化学物質もしくは実体を指す。
【0052】
「半結晶性」という用語は、何らかの結晶特性を有する、すなわち、X線または電子散乱実験で何らかの結晶特性を示すポリマーもしくはポリマーネットワーク、または他の化学物質もしくは実体を指す。
【0053】
「結晶性」という用語は、X線または電子散乱実験によって証明される、結晶特性を有するポリマーもしくはポリマーネットワークまたは他の化学物質もしくは実体を指す。「前駆体」または「ポリマー前駆体」、具体的には「PEG前駆体」という用語は、本明細書では、互いに反応させ、架橋を介し接続して、ポリマーネットワーク、ひいてはヒドロゲルマトリックスを形成する分子または化合物を指す。ヒドロゲル内には、活性薬剤、可視化剤、または緩衝剤などの他の材料が存在する可能性はあるが、これらは「前駆体」と称されない。
【0054】
本発明の目的のために使用され、本明細書で開示するポリマー前駆体の分子量は、当技術分野で知られている解析方法によって定量することができる。例えば、ポリエチレングリコールの分子量は、ゲル電気泳動、例えば、SDS-PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(動的光散乱(DLS)を伴うGPCを含む)、液体クロマトグラフィー(LC)、及び質量分析(例えば、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間(MALDI-TOF)分光分析またはエレクトロスプレーイオン化(ESI)質量分析)を含む、当技術分野で既知の任意の方法によって定量することができる。ポリマー(本明細書で開示するポリエチレングリコール前駆体を含む)の分子量は、(ポリマーの分子量分布に基づく)平均分子量であり、そのため、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を含む様々な平均値によって示され得る。任意のこのような平均値が、本発明の文脈で広く使用され得る。本発明の文脈では、本明細書で開示するポリエチレングリコール単位または他の前駆体もしくは単位の平均分子量は、数平均分子量(Mn)であり、単位「ダルトン」で示される。
【0055】
最終的なポリマーネットワークに依然存在する前駆体分子の部分は、本明細書では「単位」とも呼ばれる。したがって、「単位」は、ヒドロゲルを形成するポリマーネットワークのビルディングブロックまたは構成物質である。例えば、本発明での使用に適したポリマーネットワークは、本明細書でさらに開示するように、同一または異なるポリエチレングリコール単位を含むことができる。
【0056】
本明細書で使用する場合、「架橋剤」または「クロスリンカー」という用語は、架橋を介し前駆体を接続して、ポリマーネットワーク、ひいてはヒドロゲルマトリックスを形成するのに適している任意の分子を指す。あるいくつかの実施形態において、架橋剤は、低分子量の化合物であっても、本明細書で開示するようなポリマー化合物であってもよい。
【0057】
「徐放」という用語は、概して本発明の目的のために定義され、活性物質(例えば、本発明に従うグルココルチコイド(具体的には、限定されるものではないが、デキサメタゾンを含む))を、投与後長期間(例えば、1週間以上)にわたって利用できるように製剤化することにより、即時放出投与形態(例えば、眼に局所適用されるグルココルチコイドの溶液(すなわち、グルココルチコイドを含む点滴薬))に比べて投薬頻度の低減を可能にする、医薬投与形態または製品(本発明の場合、このような製品は挿入物である)を指す。本明細書で「徐放」と互換的に使用することができる他の用語としては、「長期放出」または「制御放出」がある。このように「徐放」は、概して、本発明に従う挿入物に含まれるAPI、具体的にはグルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)の放出を特徴付けるものである。「徐放」という用語それ自体は、(in vitroまたはin vivo)放出の特定の速度に関連付けられたり限定されたりするわけではないが、本発明のあるいくつかの実施形態では、挿入物は、本明細書で開示するような(in vitroまたはin vivo)放出のある一定の平均速度またはある一定の放出プロファイルを特徴とする場合がある。本発明の挿入物は(本明細書で明示的に「徐放」性挿入物と称されるか、単に「挿入物」と称されるかにかかわらず)APIの徐放をもたらすことから、本発明の挿入物は「デポー」と称されることもある。
【0058】
本発明における具体的な意味において、「徐放」という用語は、1日当たりにグルココルチコイドが一定にまたは実質的に一定に(すなわち、あるレベルを上回って)放出される期間も含み、この一定にまたは実質的に一定に放出される期間の次に、グルココルチコイド放出が漸減する期間が続く。このような具体的な場合において、本発明の挿入物(上記で定義したようなもの)によってもたらされる全体的な徐放は、グルココルチコイドが放出される全期間を通じて放出速度が必ずしも一定または本質的に一定ではなく、説明したように経時的に変化し得る(すなわち、一定または本質的に一定に放出される、すなわち徐放される最初の期間があり、その次に放出が漸減する期間がある)ことを意味することがある。本発明の意味において、「漸減されている」または「漸減する」という用語は、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)が完全に放出されるまで、経時的にグルココルチコイドの放出が減少することを指す。
【0059】
本明細書で使用する場合、「可視化剤」という用語は、本発明の挿入物内に含まれてもよい分子または組成物であって、挿入物が眼の小管内に位置するときに、好適な光源(例えば、青色光)を用いて対応する眼の部位を照らすことにより、非侵襲的な方式で挿入物を容易に可視化できるようにする分子または組成物を指す。可視化剤は、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、及びシアニンなどのフルオロフォア、または本明細書で開示する他の好適な薬剤とすることができる。あるいくつかの実施形態において、可視化剤はフルオレセインであるか、またはフルオレセイン部分を含む。
【0060】
本明細書で使用する場合、「眼表面」という用語は、結膜及び角膜、ならびに涙器などの要素(涙点及び涙小管を含む)ならびに関連する眼瞼構造を含む。本発明の意味において、眼表面は房水も包含する。
【0061】
本明細書で使用する場合、「涙液」または「涙」または「涙膜」という用語は、涙腺から分泌され、眼を潤滑にする液体を指す。涙は、水、電解質、タンパク質、脂質、及びムチンから構成される。
【0062】
本明細書で使用する場合、「両側性に」または「両側性」という用語は、(本発明の挿入物の投与の文脈では)挿入物を患者の両眼に投与することを指す。したがって、「片側性に」または「片側性」とは、一方の眼のみに挿入物を投与することを指す。挿入物は、両眼または片眼の上小管及び/または下小管に独立して挿入することができる。
【0063】
本明細書で使用する場合、「投与」または「投与する」または「投与される」などの用語は、本発明の挿入物の文脈では、挿入物を涙点の開口部を通じて眼の小管内に挿入するプロセスを指す。したがって、「挿入物を投与する」または同様の用語は、挿入物を小管内に挿入することを指す。本発明の挿入物の文脈において、「挿入」または「挿入する」または「挿入される」などの用語は、同様に、涙点の開口部を通じて眼の小管内に挿入物を挿入するプロセスを指し、したがって、本明細書では「投与」または「投与する」または「投与される」という用語と互換的に使用される。これに対し、点眼薬などの局所用眼科用薬理学的製品(本発明の主題ではない)の文脈における「投与」または「投与する」または「投与される」などの用語は、これらの製品を眼に局所的に適用することを指す。
【0064】
本明細書で使用する場合、「挿入物スタッキング」または「スタッキング」という用語は、第1の挿入物が(まだ十分に生分解していないために、及び/またはまだ鼻涙管を通って除去されていないために)まだ小管内に保持されているうちに、第1の挿入物の上にさらなる挿入物が挿入されることを指す。あるいくつかの実施形態において、さらなる挿入物は、第1の挿入物に含まれるグルココルチコイドが完全にもしくは本質的に完全に放出された後、または第1の挿入物に含まれるグルココルチコイドの少なくとも約70%もしくは少なくとも約80%もしくは少なくとも約90%が放出された後、第1の挿入物の上に設置される。挿入物スタッキングは、例えば、グルココルチコイドの長期投与を可能にする。
【0065】
本明細書で使用する場合、「プラグ」という用語は、涙管(複数可)の閉塞、実質的な閉塞、または部分的な閉塞(「涙管閉塞」)をもたらすことにより、涙の排出を最小化または防止することが可能なデバイスを指す。したがって、プラグは涙の保持を高め、これが眼の湿潤性を保つのに役立つ。プラグは、「涙点プラグ」及び「小管内プラグ」に分類することができる。小管内プラグは、文献内で「小管プラグ」とも称される。いずれのプラグ分類も、眼の上涙点及び/または下涙点を通じて挿入される。涙点プラグは涙点開口部にとどまるため、容易に視認でき、したがって大きな困難を伴わずに取り外し可能である。しかし、涙点プラグが示す保持率は不十分なことがあり、また露出して配置されるため、より容易に微生物に汚染され、その結果感染症を生じる可能性がある。これに対し、小管内プラグは本質的には視認されず、小管の垂直部内にも水平部内にも設置されるため、涙点プラグに比べて良好な保持率をもたらす。しかし、現在利用可能な小管内プラグは、取り外しが容易でないことがあり、及び/またはフィットが緩いために動くリスクを増加させ得る。市販のプラグは、コラーゲン製、アクリルポリマー製、またはシリコーン製であることが多い。
【0066】
「小管(canaliculus、複数形はcanaliculi」)または代替的に「涙管」という用語は、本明細書で使用する場合、涙管、すなわち、涙点から鼻涙管に涙液(lacrimal fluid)(涙液(tear fluid))を排出する各瞼の小さなチャネルを指す(
図2Aも参照)。そのため、小管は、涙液を眼表面から鼻腔に排出する涙器の一部を形成する。上瞼の小管は「上小管」または「上部小管」、下瞼の小管は「下小管」または「下部小管」と称される。各小管は、涙点に続く垂直な領域(「小管垂直部」と称される)と、小管垂直部に続く水平な領域(「小管水平部」と称される)とを含み、小管水平部は鼻涙管に合流する。
【0067】
「涙点(punctum、複数形はpuncta)」という用語は涙点(lacrimal punctum)を指し、瞼の縁にある開口部であり、小管の入口に相当する。涙が産生された後、液の一部はまばたきの間に蒸発し、一部は涙点を通じて排出される。上瞼及び下瞼のいずれも涙点を示すため、これらの涙点は、それぞれ「上部涙点」または「上涙点」、「下涙点」または「下部点」と称される(
図2Aも参照)。
【0068】
「小管内挿入物」という用語は、上涙点及び/または下涙点を通じて眼の上小管及び/または下小管内、特に、眼の上小管及び/または下小管垂直部内に投与することができる挿入物を指す。挿入物は、小管内に配置されるため、小管内プラグでも観察されるように涙腺の閉塞を通じて涙の排出を遮断する。本発明の小管内挿入物は、眼の下小管及び/または上小管垂直部内に、両側性または片側性に挿入することができる。本発明のあるいくつかの実施形態に従えば、小管内挿入物は、徐放性生分解性挿入物である。
【0069】
「API」、「活性(医薬)成分」、「活性(医)薬剤」、「有効(医薬)成分」、「(活性)治療剤」、「活性」、及び「薬物」という用語は、本明細書では互換的に使用され、医薬品最終製品(FPP)で使用される物質、及びこのような医薬品最終製品の調製で使用される物質を指し、このような物質は、薬理学的活性をもたらすこと、または他の方法で疾患の診断、治癒、緩和、治療、もしくは予防に直接的な効果を有すること、または患者の生理機能の修復、矯正、もしくは修正に直接的な効果を有することが意図されている。
【0070】
本発明に従って使用されるAPIは、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)である。グルココルチコイドはコルチコステロイドの一分類であり、コルチコステロイドはステロイドホルモンの一分類である。「グルココルチコイド」という名称は混成語(グルコース+コルテックス(皮質)+ステロイド)であり、糖代謝の調節におけるその役割と、副腎皮質内での合成と、そのステロイド構造とから構成されている。より一般的でない同義語はグルココルチコステロイドである。グルココルチコイドは、体内のほとんどの細胞に存在するグルココルチコイド受容体媒介経路を介し作用して遺伝子発現を調節し、非受容体経路を介し炎症性サイトカイン(TNFアルファ、IL-1a、及びIL-6)ならびにケモカインの産生を抑制し、マトリックスメタロプロテイナーゼの合成を減少させる(Rosenbaum et al.,1980;Nature 286(5773):611-613)。グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)は、炎症応答の浮腫、フィブリン沈着、毛細血管沈着、及び食細胞移動を阻害することによって炎症を抑制する(Chrousos 1995,NEJM 332(20):1351-1362;Abelson et al.2002,Review of Ophthalmology:110-114;Sherif and Pleyer 2002,Ophthalmologica 216(5):305-315)。他の組織と同じように、眼組織でもグルココルチコイドは特定の作用機序を有さず、ただし幅広い抗炎症活性を発揮するように思われる(Leopold 1985,M.L.Sears and A.Tarkkanen,ed.New York,Raven Press:83-133;Kaiya 1990,J Cataract Refract Surg 16(3):320-324)。概して、グルココルチコイドは、長期間の使用に伴う副作用の潜在可能性に対する懸念から、その大半の使用は、比較的短期間(約2~3週間)に限定される。コルチゾール(またはヒドロコルチゾンと称される合成形態)は、最も重要なヒトグルココルチコイドである。さらに、様々な効力を有する多様な合成グルココルチコイドが治療使用向けに創出されている。合成グルココルチコイドの例としては、プレドニゾン、プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、ベタメタゾン、ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム、ブデソニド、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンヘキサセトニド、トリアムシノロンジアセテート、フルオシノロンアセトニド、酢酸フルドロコルチゾン、ロテプレドノール、エタボン酸ロテプレドノール、ジフルプレドナート、フルオロメトロン、フロ酸モメタゾン、酢酸デオキシコルチコステロン、アルドステロン、リメクソロン、ベクロメタゾン、及びジプロピオン酸ベクロメタゾンがある。これらの合成グルココルチコイドはいずれも、本発明で使用するのに適している。本発明の特定の実施形態において、グルココルチコイドは、低溶解度グルココルチコイド(すなわち、水中溶解度が約100μg/mL未満のもの)であり、これには、(限定されるものではないが)ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム、ブデソニド、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンヘキサセトニド、トリアムシノロンジアセテート、デキサメタゾン、酢酸デキサメサゾン、酢酸プレドニゾロン、エタボン酸ロテプレドノール、ジフルプレドナート、フルオロメトロン、フルオシノロンアセトニド、及びフロ酸モメタゾンが含まれる。デキサメタゾンは、「デキサメタゾンアルコール」と称されることもある。
【0071】
概して、グルココルチコイドの効力は、コルチゾールの効力の観点からの相対効力として報告される。等価グルココルチコイド用量の定量は、当技術分野で十分に確立されている。表1に、例示的に選択したグルココルチコイドにおける等価経口用量及び相対経口グルココルチコイド効力を示す(例えば、Buttgereit et al.2002,Ann Rheum Dis 61:718-722(参照により本明細書に援用する)を参照)。
【表1】
【0072】
本明細書で使用する場合、「等価用量」という用語は、同じ投与経路を介して(例えば、経口、静脈内、局所、または本出願の小管内挿入物を介して)送達したときの、ある活性物質(例えば、あるグルココルチコイド)における、別の活性物質(例えば、別のグルココルチコイド)の用量と生物学的活性の観点で等価な用量を指す。グルココルチコイドの等価経口用量の例を表1に提示する。例えば、20mgのヒドロコルチゾンを経口投与した場合、0.8mgのデキサメタゾンの経口投与と比べたときに同様の生物学的効果が期待される。
【0073】
あるいくつかの実施形態において、本発明に従って使用されるグルココルチコイドはデキサメタゾンである。デキサメタゾンは、長時間作用型抗炎症性9-フルオログルココルチコイド(グルココルチコイドアゴニストとも称される)であり、分子量は392.47g/molである。デキサメタゾンの分子式はC
22H
29FO
5であり、IUPAC名は9-フルオロ-11β,17,21-トリヒドロキシ-16α-メチル-プレグナ-1,4-ジエン-3,20-ジオン(CAS No.50-02-2)である。デキサメタゾンの化学構造を以下に再現する。
【化1】
【0074】
デキサメタゾンは、白色~ほぼ白色の無臭の結晶性粉末であり、水溶解度は低い(25℃でおよそ89mg/L)。その分配係数(n-オクタノール/水)は1.83である(logP;参照:DrugBank項目「デキサメタゾン」)。
【0075】
あるいくつかの実施形態において、本発明で使用する任意のグルココルチコイド(デキサメタゾンを含む)については、粒子サイズ(例えば、d90値によって表されるもの)が約100μm以下、または約75μm以下、または約50μm以下のものを使用することができる。本発明の特定の実施形態において、デキサメタゾンは微粉化された粒子の形態で使用することができ、約100μm以下、または約75μm以下、または約50μm以下、または約20μm以下、または約10μm以下、または約5μm以下のd90粒子サイズを有することができる。これら及び他の実施形態において、微粉化されたデキサメタゾンのd98粒子サイズは、約100μm以下、または約75μm以下、または約50μm以下、または約20μm以下、または約10μm以下、または約5μm以下とすることができる。本発明の特定の実施形態において、微粉化されたデキサメタゾンは、約5μm以下のd90粒子サイズ及び約10μm未満のd98粒子サイズを有する。「d90」値とは、(ある一定の粒子サイズ分布を有する)測定されたバルク材料内の全ての粒子の少なくとも90体積%が、示された値を下回る粒子サイズを有することを意味する。例えば、d90粒子サイズが約50μm未満の場合、測定されたバルク材料中の粒子の少なくとも90体積%が約50μm未満の粒子サイズを有することを意味する。対応する定義が他の「d」値(例えば、「d98」値)にも適用される。粒子サイズ分布は、当技術分野で知られている方法(ふるい分け、レーザー回折、または動的光散乱を含む)によって測定することができる。本発明でデキサメタゾンとは別のグルココルチコイドが使用される実施形態では、デキサメタゾンについて開示されたものと同様の粒子サイズが適用され得る。
【0076】
本発明のあるいくつかの実施形態の目的において、最終製品における含量の均一性を高めるため(ひいては離散粒子による高すぎるもしくは低すぎる薬物含量を回避するため)、及び/または挿入物の製造中(例えば、本明細書で開示するようなヒドロゲルのキャスト中)に離散API粒子が凝集する潜在可能性を低減するため、ある一定の粒子サイズ仕様(例えば、本明細書で開示するようなd90及び/またはd98値)を満たすことに加えて、API出発材料中に、ある特定のサイズより大きな(例えば、約120μm超、または約100μm超、または約90μm超の)離散粒子が存在しないかまたは本質的に存在しないことを確実にすることが有用であり得る。これは、例えば、ふるい分けによって達成することができる。特定の実施形態において、本発明に従う挿入物の製造に使用されるデキサメタゾンは、約5μm以下のd90粒子サイズ、及び約10μm未満のd98粒子サイズを有し、全てのまたは本質的に全ての離散粒子が約90μm未満のサイズを有する。
【0077】
本発明の目的において、活性薬剤(デキサメタゾンを含む)は、それらの全ての可能な形態で(任意の活性薬剤多形、または活性薬剤の任意の医薬的に許容される塩、無水物、水和物、他の溶媒和物、もしくは誘導体を含む)使用することができる。この説明または特許請求の範囲において、活性薬剤が、例えば「デキサメタゾン」のように名称によって言及される場合は常に、明示的な記述がない場合であっても、活性薬剤のこのような任意の医薬的に許容される多形、塩、無水物、溶媒和物(水和物を含む)、または誘導体も指す。詳細には、「デキサメタゾン」という用語は、デキサメタゾン及びその医薬的に許容される塩を指し、これらはいずれも本発明の目的において使用することができる。本明細書で使用する場合、「多形」という用語は、デキサメタゾンなどの活性薬剤の任意の結晶形態を指す。室温で固体である活性薬剤は、様々な異なる結晶形態、すなわち多形で存在することが多く、所与の温度及び圧力で熱力学的に最も安定する1つの多形を伴う。
【0078】
あらゆるデキサメタゾン多形(無水形態であっても溶媒和物であっても)を本発明の実施形態に従う挿入物の調製に使用することができる。デキサメタゾンに関しては、デキサメタゾンの非結晶形態及び多形を含む好適な固体形態(これらのいずれにも限定されない)が、例えばOliveira et al.,Cryst.Growth Des.2018,18,1748-1757;及びAljarah et al.,Indian Journal of Forensic Medicine & Toxicology,January-March 2019,Vol.13,No.1,372-377;またはこれらのいずれかで引用されている任意の参考文献に開示されている。
【0079】
デキサメタゾン(アルコール)自体に加えて、本発明で使用するのに適したデキサメタゾンの固体形態としては、例えば(以下に限定されるものではないが)、デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム、酢酸デキサメサゾン、安息香酸デキサメタゾン、デキサメタゾン21-(アダマンタン-1-カルボキシレート)、イソニコチン酸デキサメタゾン、吉草酸デキサメタゾン、テブト酸デキサメタゾン、21-スルホ安息香酸デキサメタゾン、メタスルホ安息香酸デキサメタゾンナトリウム、パルミチン酸デキサメタゾン、シペシル酸デキサメタゾン、デキサメタゾンカルボキサミド、プロピオン酸デキサメタゾン、及びこれらの任意の混合物が挙げられる。
【0080】
本明細書で使用する場合、「治療有効~」という用語は、投与してから所望の治療応答または結果をもたらすのに要する薬物または活性薬剤(すなわち、グルココルチコイド)の量を指す。例えば、本発明の文脈では、1つの所望される治療結果は、DEDに関連する症状の低減と考えられる。本明細書で使用する場合、「DED」という略語は、「ドライアイ疾患」または「ドライアイ」を指す。
【0081】
本明細書で使用する場合、「ドライアイ疾患」、「DED」、または「ドライアイ」という用語は、互換的に使用され、同等の意味を有する。DEDは、文献内で「乾性角結膜炎(KCS)」とも称される。DEDとは、乾燥、刺激、灼熱感、刺痛、ゴロゴロ感、異物感、流涙、及び眼球疲労の症状を特徴とする涙及び眼表面の多因子疾患を指す。DEDの病因は完全には理解されていないが、この衰弱性状態の発生及び伝播には炎症が顕著な役割を担っていることが認識されている。涙膜の安定性及び浸透圧に悪影響を及ぼす因子は、眼表面損傷を誘導し、自然免疫応答及び適応免疫応答を活性化する炎症カスケードを開始させる可能性がある。これらの免疫炎症応答は、眼表面のさらなる損傷及び永続的な炎症サイクルの発生につながり得る。DEDは、エピソード性フレアを伴う慢性状態と考えられており、エピソード性フレアは、急激な症状の発症または症状の悪化を包含し、患者の日常生活に大きく影響を及ぼす。
【0082】
本明細書で使用する場合、「エピソード性フレア」という用語は、DED症状の急激な発症またはDED症状の悪化が発生する状態を指す。比較的短期間のDEDのエピソード性フレアの間では、症状をほとんど経験しないか、または軽度に経験するにとどまる場合がある。あるいくつかの実施形態において、本発明は、具体的には、DEDのエピソード性フレアの急性(短期)治療、例えば、最大約2週間もしくは約2週間、または最大約3週間もしくは約3週間、または最大約4週間もしくは約4週間の期間にわたる治療に関する。
【0083】
本明細書で使用する場合、「急性治療」もしくは「急性治療を行う」という用語または同様の表現は、DED(例えば、DEDのエピソード性フレア)の短期治療または短期治療を行うことを指す。本発明のあるいくつかの実施形態において、本発明に従う挿入物に含まれるグルココルチコイドを用いた急性治療の期間は、約1週間以上、例えば、約2または約3週間である。
【0084】
本明細書における「患者」という用語は、ヒト及び動物のいずれの患者も含まれる。本発明に従う挿入物は、概してヒトまたは動物の医薬用途に適している。臨床試験に登録され、治療を受ける患者は、「対象」と称されることもある。概して「対象」とは、本発明に従う挿入物が(例えば、臨床試験中に)投与される(ヒトまたは動物の)個体である。「患者」とは、特定の生理的または病理的状態により、治療を必要とする対象のことである。
【0085】
本明細書で使用する場合、「平均」という用語は、データ(点)の集合における中心的または典型的な値を指し、集合内のデータ(点)の和をデータ数で割ることによって算出される(すなわち、データの集合の平均値である)。
【0086】
本明細書で使用する場合、測定された量に関連する「約」という用語は、測定を行い、測定の目的及び測定装置の精度に応じた注意レベルを行使する上で、当業者によって予想されるその測定された量における通常のばらつきを指す。
【0087】
本明細書で使用する場合、測定された量に関連する「少なくとも約~」という用語は、測定を行い、測定の目的及び測定装置の精度に応じた注意レベルを行使する上で、当業者によって予想される測定された量の通常のばらつきならびに測定された量よりも高い任意の量を指す。
【0088】
本明細書で使用する場合、文脈による別段の明確な指示がない限り、単数形「a」、「an」、及び「the」には複数の指示対象が含まれる。
【0089】
本明細書において「A及び/またはB」などの表現で使用される「及び/または」という用語は、「A及びB」ならびに「AまたはB」の両方を含むことが意図されている。
【0090】
本明細書で使用する場合、「含む(include)」、「含むこと(including)」、「含む(contain)」、「含むこと(containing)」などのオープンな用語は、「含むこと(comprising)」を意味し、要素、方法ステップなどのオープンエンドなリストまたは列挙を指すことが意図されており、したがって、挙げられた要素、方法ステップなどに限定されることは意図されず、追加の挙げられていない要素、方法ステップなども含むことが意図されている。
【0091】
「最大~」という用語は、ある特定の値または数字とともに本明細書で使用される場合、それぞれの値または数字を含むことが意図されている。例えば、「最大25日」という用語は、「25日を含むそれ以下」を意味する。
【0092】
本明細書で使用する場合、「PBS」という略語はリン酸緩衝食塩水を意味する。
【0093】
本明細書で使用する場合、「PEG」という略語はポリエチレングリコールを意味する。
【0094】
本明細書で開示する全ての文献は、全ての目的において参照により全体として本明細書に援用する(矛盾が生じた場合は本明細書が優先される)。
【発明を実施するための形態】
【0095】
I.挿入物
本発明は、概して、ヒドロゲルと、グルココルチコイドとを含む、徐放性生分解性眼内挿入物であって、グルココルチコイドの粒子がヒドロゲル内に分散されている、徐放性生分解性眼内挿入物に関する。あるいくつかの実施形態において、挿入物は眼の小管内に投与するためのものであり、すなわち、挿入物は小管内挿入物である。
【0096】
1つの態様における本発明は、ヒドロゲルと、グルココルチコイドとを含む、徐放性生分解性眼内(例えば、小管内)挿入物であって、グルココルチコイドの粒子がヒドロゲル内に分散され、挿入物が、その乾燥状態で約2.75mm未満の長さを有する、徐放性生分解性眼内挿入物に関する。
【0097】
別の態様における本発明は、概して、ヒドロゲルと、約375μg以下のデキサメタゾンまたは等価用量の別のグルココルチコイドとを含む、徐放性生分解性眼内(例えば、小管内)挿入物に関する。
【0098】
別の態様における本発明は、概して、ヒドロゲルと、グルココルチコイドとを含む徐放性生分解性眼内(例えば、小管内)挿入物であって、乾燥状態で(例えば、投与される前)約2.75m以下の長さを有する、徐放性生分解性眼内挿入物に関する。
【0099】
別の態様における本発明は、概して、ヒドロゲルと、グルココルチコイドとを含む、徐放性生分解性眼内(例えば、小管内)挿入物であって、投与してから最大約25日の期間、治療有効量のグルココルチコイドの放出をもたらす、徐放性生分解性眼内挿入物に関する。
【0100】
これらの全ての態様において、本発明で使用するための特定のグルココルチコイドはデキサメタゾンである。
【0101】
これらの全ての態様において、本発明のあるいくつかの実施形態における眼内挿入物は、小管内挿入物であってもよく、すなわち、挿入物は、一方または両方の眼(複数可)の小管への挿入/投与用である。
【0102】
本発明の3つの態様において上記で挙げた特徴の各々は、本発明の徐放性生分解性挿入物に別々に存在してもよく、またはこれらの特徴のうちの任意の2つが組み合わせて存在してもよく、またはこれらの特徴のうちの3つ全てが組み合わせて存在してもよい。
【0103】
したがって、1つの具体的な実施形態において、本発明は、ヒドロゲルと、グルココルチコイドとしてのデキサメタゾンとを含む、徐放性生分解性小管内挿入物であって、当該挿入物が、約375μg以下のデキサメタゾンを含み、約2.75mm以下の長さを有し、投与してから最大約25日の期間の間、治療有効量のデキサメタゾンの放出をもたらす、徐放性生分解性小管内挿入物に関する。
【0104】
本発明の挿入物の具体的な実施形態及び特徴を以下に開示する。
【0105】
有効成分:
あるいくつかの実施形態における本発明は、概して、ヒドロゲルと、グルココルチコイドとを含む、徐放性生分解性眼内(例えば、小管内)挿入物に関する。本発明の全ての態様で使用するための1つの特定のグルココルチコイドは、デキサメタゾンである。デキサメタゾンの詳細、その化学構造、及びその特性(例えば、溶解度)については、本明細書の定義セクションで開示している。
【0106】
1つの実施形態において、本発明は、ヒドロゲルと、約375μg以下のデキサメタゾンまたは等価用量の別のグルココルチコイドとを含む、徐放性生分解性小管内挿入物に関する。
【0107】
別の実施形態において、本発明は、ヒドロゲルと、約350μg以下のデキサメタゾンまたは等価用量の別のグルココルチコイドとを含む、徐放性生分解性小管内挿入物に関する。
【0108】
本発明の特定の実施形態において、徐放性生分解性眼内(例えば、小管内)挿入物に含まれるグルココルチコイドはデキサメタゾンであり、これは挿入物中に約100μg~約350μg、または約150μg~約320μgの範囲の用量で存在する。これらの用量範囲内の任意のデキサメタゾン量を使用することができ、例えば、約100μg、約150μg、約200μg、約250μg、約300μg、約320μg、約350μgなどを使用することができ、全ての値は、+25%及び-20%の変動、または±10%の変動も含む。あるいくつかの特定の実施形態において、本発明の挿入物に含まれるデキサメタゾンの用量は、以下の通りである:
-約160μg~約250μgの範囲、もしくは約180μg~約220μgの範囲、もしくは非常に特定の実施形態では約200μg(すなわち、200μgの+25%及び-20%の変動、もしくは±10%の変動を含む)、または
-約240μg~約375μgの範囲、もしくは約270μg~約330μgの範囲、もしくは非常に特定の実施形態では約300μg(すなわち、300μgの+25%及び-20%の変動、または±10%の変動を含む)。
【0109】
代替の実施形態において、本発明の挿入物におけるグルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)の用量は約50μg~約500μgとすることができ、例えば、約50μg、約100μg、約150μg、約200μg、約250μg、約300μg、約350μg、約400μg、約450μg、もしくは約500μgのデキサメタゾン、または等価用量の別のグルココルチコイドとすることができる。例外的な場合には、このような用量は500μgを上回ることもある。
【0110】
デキサメタゾン以外のグルココルチコイドが本発明に従う徐放性生分解性小管内挿入物に使用される場合、デキサメタゾンについて上記に開示したいずれかの用量及び範囲と等価であるある用量のその他のグルココルチコイドが挿入物に含まれる。グルココルチコイド間の好適な変換係数は当技術分野で知られており、適用することができる(上記の「定義」セクションを参照)。
【0111】
グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)の開示された量(言及された変動を含む)は、挿入物内の有効成分の最終含量と、挿入物を製造する際に挿入物の出発構成要素として使用される有効成分の量との両方を指す。
【0112】
具体的な実施形態において、本発明の徐放性生分解性小管内挿入物が、(本明細書で以下に開示するように)約2.75mm以下の長さ、及び/または(本明細書で以下に開示するように)投与してから最大約25日の期間の間、治療有効量のグルココルチコイドを放出することによって定義される場合、挿入物に含まれるデキサメタゾンの用量(または別のグルココルチコイドの等価用量)は、375μgを超えてもよく、また約400μg以上(例えば、約400μg~約600μg、または約500μgのデキサメタゾン)であってもよい。しかし、本明細書で開示する範囲内の約375μg以下の用量が本発明に特に適している。
【0113】
あるいくつかの実施形態において、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)は、グルココルチコイドの粒子がポリマーネットワークから構成されたヒドロゲル内に分散または分布するように本発明の挿入物中に含めることができる。あるいくつかの実施形態において、粒子はヒドロゲル内に均質に分散されている。ヒドロゲルは、薬物粒子が凝集するのを防止し、涙液に接触すると持続的な方式で薬物を放出する粒子のためのマトリックスを提供することができる。
【0114】
本発明のあるいくつかの実施形態において、グルココルチコイドの粒子(例えば、デキサメタゾンの粒子)はマイクロカプセル化することができる。「マイクロカプセル」という用語は、例えば約50nm~約2mmの間で変動するサイズを有する、ほぼ球状の粒子と定義されることがある。マイクロカプセルは、周囲を囲むまたは部分的に囲む材料(シェルと称されることもある)の中でカプセル化されている、活性薬剤の少なくとも1つの個別のドメイン(またはコア)を有する。本発明の目的において、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)をマイクロカプセル化するのに適した薬剤は、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)である。
【0115】
1つの実施形態において、グルココルチコイドの粒子(例えば、デキサメタゾンの粒子)は、小さな粒子サイズを有してもよく、微粉化された粒子であってもよい。別の実施形態において、グルココルチコイドの粒子(例えば、デキサメタゾンの粒子)は、微粉化されていなくてもよい。微粉化とは、固体材料の粒子の平均直径を低減するプロセスを指す。直径が低減した粒子はとりわけ溶解率が高くなり、それにより活性医薬成分のバイオアベイラビリティーを高めることができる。複合材料分野において、粒子サイズは、マトリックスと組み合わせたときの機械的特性に影響を及ぼすことが知られており、粒子が小さいほど所与の質量分率で優れた補強が得られる。したがって、微粉化されたグルココルチコイドの粒子が中に分散されているヒドロゲルマトリックスは、より大きなグルココルチコイドの粒子の同様の質量分率に比べて機械的特性(例えば、脆性、破壊までの歪みなど)が改善され得る。このような特性は、製造時、投与中、及び挿入物の分解中に重要である。また、微粉化は、選択された剤形またはマトリックス中で活性成分のより均質な分布を促進することもできる。あるいくつかの実施形態において、本発明で使用する任意のグルココルチコイド(デキサメタゾンを含む)については、粒子サイズ(例えば、本明細書で定義され、本明細書で開示するように測定されたd90値によって表されるもの)が約100μm以下、または約75μm以下、または約50μm以下のものを使用することができる。特定の実施形態において、デキサメタゾンは微粉化された粒子の形態で使用することができ、約100μm以下、または約75μm以下、または約50μm以下、または約20μm以下、または約10μm以下、または約5μm以下のd90粒子サイズを有することができる。これら及び他の実施形態において、微粉化されたデキサメタゾンのd98粒子サイズは、約100μm以下、または約75μm以下、または約50μm以下、または約20μm以下、または約10μm以下、または約5μm以下とすることができる。本発明の特定の実施形態において、本発明の挿入物に使用される(または調製に使用される)微粉化されたデキサメタゾンは、約5μm以下のd90粒子サイズ及び約10μm未満のd98粒子サイズを有する。本発明でデキサメタゾンとは別のグルココルチコイドが使用される実施形態では、デキサメタゾンについて開示されたものと同様の粒子サイズが適用され得る。
【0116】
あるいくつかの実施形態において、グルココルチコイド、特にデキサメタゾンの出発材料においてある一定のサイズより大きい離散粒子(例えば、約120μmより大きい、または約100μmより大きい、または約90μmより大きいもの)の存在を低減するため、挿入物の湿潤組成物を調製する前に、本明細書で開示する(d90及び/またはd98)粒子サイズ仕様(複数可)を満たすバルクグルココルチコイド材料をふるい分けすることができる。特定の実施形態において、本発明に従う挿入物の製造に使用されるデキサメタゾンは、約5μm以下のd90粒子サイズ、及び約10μm未満のd98粒子サイズを有し、全てのまたは本質的に全ての離散粒子が約90μm未満のサイズを有する。
【0117】
微粉化されたデキサメタゾンの粒子は、供給業者(例えば、PfizerまたはSanofi)から仕様に従って購入しても、当技術分野で知られている任意のプロセスに従って調製してもよい。例えば、微粉化プロセスは、例えば、EP2043698A2もしくはEP2156823A1(参照により本明細書に援用する)であるいくつかのグルココルチコイドについて例示的に開示されているように使用してもよく、または、例えばWO2016/183296A1(参照により本明細書に援用する)の実施例13で異なる活性薬剤に関して開示されているような例示的な手順と類似するプロセスを使用してもよい。
【0118】
ポリマーネットワーク:
あるいくつかの実施形態において、ヒドロゲルは、架橋を形成してポリマーネットワークを形成する官能基を有する前駆体から形成することができる。ポリマーストランド間またはアーム間のこれらの架橋は、事実上化学的(すなわち、共有結合であってもよい)及び/または物理的(例えば、イオン結合、疎水性会合、水素架橋など)であり得る。
【0119】
ポリマーネットワークは、1つのタイプの前駆体から調製することも、反応することができる2つ以上のタイプの前駆体から調製することもできる。前駆体は、得られるヒドロゲルに所望される特性を考慮して選択される。ヒドロゲルの作製で使用するための様々な好適な前駆体が存在する。概して、ヒドロゲルを形成する任意の医薬的に許容される架橋可能なポリマーは、本発明の目的において使用することができる。ヒドロゲル及びそれに組み込まれる構成要素(ポリマーネットワークの作製に使用されるポリマーを含む)は、例えば、免疫応答もしくは実質的な免疫応答または他の有害作用を誘発しないように、生理学的に安全であるべきである。ヒドロゲルは、天然ポリマー、合成ポリマー、または生合成ポリマーから形成することができる。
【0120】
天然ポリマーとしては、グリコサミノグリカン、多糖(例えば、デキストラン)、ポリアミノ酸、及びタンパク質、またはこれらの混合物もしくは組合せを挙げることができるが、このリストは限定を意図するものではない。
【0121】
合成ポリマーは概して、異なるタイプの重合(フリーラジカル重合、アニオンまたはカチオン重合、連鎖成長または付加重合、縮合重合、開環重合などを含む)によって、様々な供給原料から合成的に生産される任意のポリマーであり得る。重合は、あるいくつかの開始剤、光及び/または熱によって開始することができ、触媒が媒介することもできる。合成ポリマーは、あるいくつかの実施形態では、ヒトまたは動物由来のいかなる成分も含まない投与形態でアレルギーの潜在可能性を低下させるために使用することができる。
【0122】
概して、本発明の目的において、ポリアルキレングリコールの1つ以上の単位を含む群の1つ以上の合成ポリマーを使用することができ、詳細には、限定されるものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアルキレンオキシド、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリ(ビニルピロリジノン)、ポリ乳酸、ポリ乳酸-co-グリコール酸、ランダムもしくはブロックコポリマー、またはこれらのいずれかの組合せ/混合物が含まれる(ただし、このリストは限定的であるようには意図されていない)。
【0123】
共有結合的に架橋されたポリマーネットワークを形成するために、前駆体を互いに共有結合的に架橋することができる。あるいくつかの実施形態において、(例えば、フリーラジカル重合において)少なくとも2つの反応中心を有する前駆体は、各反応性基が、異なる成長ポリマー鎖の形成に関与することができるため、クロスリンカーとして機能することができる。
【0124】
前駆体は、生物学的に不活性かつ親水性の部分、例えば、コアを有し得る。分岐ポリマーの場合において、コアとは、コアから伸長するアームに連結した分子の連続部分を指し、ここで、アームは、しばしばアームまたは分岐の末端にある官能基を有する。マルチアームPEG前駆体は、このような前駆体の例であり、本明細書でさらに開示するような本発明の特定の実施形態で使用される。
【0125】
本発明で使用するためのヒドロゲルは、例えば、第1の官能基(複数可)(のセット)を有する1つのマルチアーム前駆体及び第2の官能基(複数可)(のセット)を有する別の(例えば、マルチアーム)前駆体から作製することができる。例として、マルチアーム前駆体は、一級アミンで終端された親水性アーム(例えば、ポリエチレングリコール単位)を有してもよく(求核性)、または活性化されたエステル末端基を有してもよい(求電子性)。本発明に従うポリマーネットワークは、互いに架橋された同一または異なるポリマー単位を含み得る。前駆体は、高分子量の構成要素(例えば、本明細書でさらに開示するような官能基を有するポリマー)であっても、低分子量の構成要素(例えば、本明細書でさらに開示するような低分子アミン、チオール、エステルなど)であってもよい。
【0126】
あるいくつかの官能基は、活性化基を使用することにより、反応性を高めることができる。このような活性化基としては、(限定されるものではないが)カルボニルジイミダゾール、スルホニルクロリド、アリールハロゲン化物、スルホスクシンイミジルエステル、N-ヒドロキシスクシンイミジル(「NHS」と略記される)エステル、スクシンイミジルエステル、ベンゾトリアゾリルエステル、チオエステル、エポキシド、アルデヒド、マレイミド、イミドエステル、アクリレートなどが挙げられる。NHSエステルは、求核性ポリマー、例えば、一級アミン末端もしくはチオール末端ポリエチレングリコール、または他の求核基含有薬剤、例えば、求核基含有架橋剤と架橋するのに有用な基である。NHS-アミン架橋反応は、水溶液中で、緩衝液(例えば、リン酸緩衝液(pH5.0~7.5)、トリエタノールアミン緩衝液(pH7.5~9.0)、ホウ酸緩衝液(pH9.0~12)、または重炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.0~10.0))の存在下で行うことができる。
【0127】
あるいくつかの実施形態において、各前駆体は、求核前駆体及び求電子前駆体の両方が架橋反応に使用される限りにおいて、求核官能基のみまたは求電子官能基のみを含むことができる。したがって、例えば、クロスリンカーが求核官能基(例えば、アミン)のみを有する場合、前駆体ポリマーは求電子官能基(例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド)を有することができる。一方、クロスリンカーがスルホスクシンイミドなどの求電子官能基を有する場合、機能性ポリマーはアミンやチオールなどの求核官能基を有することができる。したがって、機能性ポリマー(例えば、タンパク質、ポリ(アリルアミン)、またはアミン終端二官能性または多官能性ポリ(エチレングリコール))を使用して、本発明のポリマーネットワークを調製することもできる。
【0128】
本発明の1つの実施形態において、本発明に従う挿入物を形成するために中でグルココルチコイドが分散されているヒドロゲルを形成するポリマーネットワークのための前駆体は、それぞれ約2~約16個の求核官能基(官能性と称される)を有し、別の実施形態では、前駆体はそれぞれ約2~約16個の求電子官能基(官能性と称される)を有する。反応性(求核または求電子)基の数が4の倍数、したがって例えば、4、8、及び16個の反応性基を有する反応性前駆体は、本発明に特に好適である。ただし、前駆体が本発明に従って使用され、その一方で適切な架橋ネットワークの形成に官能性が十分であることを保証するためには、任意の数の官能基(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16のいずれかの基を含む)が可能である。
【0129】
PEGヒドロゲル:
本発明のあるいくつかの実施形態において、ヒドロゲルを形成するポリマーネットワークは、ポリエチレングリコール(「PEG」)単位を含む。PEGは、架橋されるとヒドロゲルを形成することが当技術分野で知られており、これらのPEGヒドロゲルは医薬用途、例えば、ヒトまたは動物の身体の任意の部位に投与されることが意図される薬物のマトリックスとしての用途に適している。
【0130】
本発明のヒドロゲル挿入物のポリマーネットワークは、2~10個のアーム、または4~8個のアーム、または4、5、6、7もしくは8個のアームを有する1つ以上のマルチアームPEG単位を含むことができる。あるいくつかの実施形態において、本発明のヒドロゲルに使用されるPEG単位は、4個のアームを有する。あるいくつかの実施形態において、本発明のヒドロゲルに使用されるPEG単位は、8個のアームを有する。あるいくつかの実施形態において、4個のアームを有するPEG単位及び8個のアームを有するPEG単位が、本発明のヒドロゲルに使用される。あるいくつかの特定の実施形態において、1つ以上の4アームPEGが利用される。任意の組合せのマルチアームPEGを使用することができる。具体的な実施形態において、4アームPEG単位のみ(同じであっても異なっていてもよい)が使用される。
【0131】
使用されるPEG(複数可)のアームの数は、得られるヒドロゲルの柔軟性または柔らかさの制御に寄与する。例えば、4アームPEGを架橋することによって形成されたヒドロゲルは、同じ分子量の8アームPEGから形成されたものよりも概して軟質で柔軟である。詳細には、本明細書で後に挿入物の製造に関するセクションで開示するように、乾燥前に(あるいは乾燥後も)ヒドロゲルを延伸することが所望される場合、より柔軟なヒドロゲル、例えば4アームPEGを、任意選択で、別のマルチアームPEG(例えば、上記に開示したような8アームPEG、または別の(異なる)4アームPEG)と組み合わせて、使用することができる。
【0132】
本発明のあるいくつかの実施形態において、前駆体として使用されるポリエチレングリコール単位は、約2,000~約100,000ダルトンの範囲内、または約10,000~約60,000ダルトンの範囲内、または約15,000~約50,000ダルトンの範囲内の平均分子量(Mn)を有する。あるいくつかの特定の実施形態において、ポリエチレングリコール単位は、約10,000~約40,000ダルトンの範囲内、または約15,000~約30,000ダルトンの範囲内、または約15,000~約25,000ダルトンの範囲内の平均分子量を有する。具体的な実施形態において、本発明に従うヒドロゲルを作製するために使用されるポリエチレングリコール単位は、約20,000ダルトンの平均分子量(Mn)を有する。分子量の異なるポリエチレングリコール前駆体を互いに組み合わせることができる。本明細書で、(本明細書で定義されるような)特定の平均分子量(例えば、約20,000ダルトン)を有するPEG材料に言及する場合、±10%の変動が含まれることが意図されており、すなわち、約20,000ダルトンの平均分子量を有する材料に言及した場合、約18,000~約22,000ダルトンの平均分子量を有するこのような材料も指す。本明細書で使用する場合、分子量の文脈における「k」という略語は1,000ダルトンを意味し、すなわち、「20k」は20,000ダルトンを意味する。
【0133】
さらに、ある一定の平均分子量を有するPEG前駆体(例えば、15k PEGまたは20k PEG前駆体)に言及する場合、示された平均分子量(すなわち、それぞれ15,000または20,000のMn)は、末端基が付加される前の前駆体のPEG部分を指す(ここでは、「20k」は20,000ダルトンを意味し、「15k」は15,000ダルトンを指す。同じ略語は、本明細書内でPEG前駆体の他の平均分子量にも使用されている)。あるいくつかの実施形態において、前駆体のPEG部分のMnは、MALDIによって定量される。本明細書で開示する末端基による置換の程度は、末端基の官能化後、1H-NMRによって定量することができる。
【0134】
4アーム(「4a」)PEGにおいて、あるいくつかの実施形態では、アームの各々は、PEGの総分子量を4で割った平均アーム長(または分子量)を有することができる。したがって、本発明で使用するのに特に好適な前駆体である4a20k PEG前駆体は、平均分子量が各々約5,000ダルトンで総分子量が20,000ダルトンである4個のアームを有する。したがって、本発明において4a20k PEG前駆体と組み合わせてまたはその代わりに使用することもできる8a20k PEG前駆体は、平均分子量が各々2,500ダルトンで総分子量が20,000ダルトンである8個のアーム(「8a」)を有する。長いアームは、短いアームよりも柔軟性が高くなる可能性がある。長いアームを有するPEGは短いアームを有するPEGよりも多く膨潤する可能性がある。また、アームの数が少ないPEGは、アームの数が多いPEGよりも多く膨潤する可能性があり、また柔軟性が高い可能性がある。あるいくつかの特定の実施形態において、1つ以上の4アームPEG前駆体(複数可)のみが本発明で利用される。あるいくつかの他の実施形態において、1つ以上の4アームPEG前駆体(複数可)と1つ以上の8アームPEG前駆体(複数可)との組合せが本発明で利用される。加えて、長いPEGアームは乾燥時の融点が高くなり、これが保管中の寸法安定性を高める可能性がある。
【0135】
ある特定の実施形態において、本発明のヒドロゲルの調製のためにPEG前駆体とともに使用するための求電子末端基はN-ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)エステルであり、このようなエステルとしては、限定されるものではないが、NHSジカルボン酸エステル(例えば、スクシンイミジルマロン酸基、スクシンイミジルマレイン酸基、スクシンイミジルフマル酸基)、「SAZ」(スクシンイミジルアゼレート末端基を指す)、「SAP」(スクシンイミジルアジペート末端基を指す)、「SG」(スクシンイミジルグルタレート末端基を指す)、及び「SS」(スクシンイミジルスクシネート末端基を指す)が挙げられる。NHSエステルに加えて、本発明で有用な他の活性化エステルの例としては、(限定されるものではないが)チオエステル、ベンゾトリアゾリルエステル、及びアクリル酸エステルが挙げられる。
【0136】
ある特定の実施形態において、本発明のヒドロゲルの調製のために求電子基含有PEG前駆体とともに使用するための求核末端基は、アミン(「NH2」として示される)末端基である。チオール(-SH)末端基または他の求核末端基も可能である。
【0137】
本発明のあるいくつかの実施形態において、約20,000ダルトンの平均分子量を有する4アームPEG及び上記で開示したような求電子末端基(例えば、SAZ、SAP、SG、及びSS末端基、特にSG末端基)は、ポリマーネットワーク、ひいては本発明に従うヒドロゲルを形成するために架橋される。好適なPEG前駆体は、多くの供給業者(例えば、Jenkem Technologyなど)から入手できる。
【0138】
例えば求核基含有クロスリンカーと求電子基含有PEG単位との反応(例えば、アミン基含有クロスリンカーと活性化エステル基含有PEG単位との反応)の結果、複数のPEG単位が式:
【化2】
を有する加水分解性リンカーによって架橋され、式中、mは0~10の整数、具体的には1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。SAZ末端基の場合、mは6、SAP末端基の場合、mは3、SG末端基の場合、mは2、SS末端基の場合、mは1になると考えられる。特定の実施形態において、mは2である。ポリマーネットワーク内の全ての架橋は、同じでも異なってもよい。
【0139】
あるいくつかの実施形態において、本発明に従うヒドロゲルを形成するために使用されるポリマー前駆体は、4a20k PEG-SAZ、4a20k PEG-SAP、4a20k PEG-SG、4a20k PEG-SS、8a20k PEG-SAZ、8a20k PEG-SAP、8a20k PEG-SG、8a20k PEG-SS、またはこれらの混合物から選択することができ、4a20k PEG-NH2、8a20k PEG-NH2、及びトリリジン、またはトリリジン塩もしくは誘導体(例えば、トリリジンアセテート)から選択される1つ以上のPEG-またはリジンベースアミン基を伴う。
【0140】
あるいくつかの実施形態において、本発明ではSG末端基が利用される。この末端基は、他の末端基(例えば、SAZ末端基)を使用した場合に比べると、涙液におけるような水性環境でヒドロゲルが生分解されるまでの時間をより短くすることができる。SAZ末端基は、リンカー内により多くの数の炭素原子をもたらし、したがって疎水性が高いため、SG末端基よりもエステル加水分解が生じにくい可能性がある。
【0141】
特定の実施形態において、SG末端基(上記で定義の通り)を有する4アーム20,000ダルトンPEG前駆体は、1つ以上の反応性アミン末端基を有する架橋剤で架橋される。このPEG前駆体を本明細書では4a20k PEG-SGと略記する。4a20k PEG-SGの概略的な化学構造を以下に再現する。
【化3】
この式において、nはそれぞれのPEGアームの分子量によって決定される。
【0142】
あるいくつかの特定の実施形態において、使用される架橋剤(本明細書では「クロスリンカー」とも称される)は、求核末端基(例えば、アミンまたはチオール末端基)を含む低分子量の構成要素である。あるいくつかの実施形態において、求核基含有架橋剤は、1,000Da未満の分子量を有する低分子アミンである。あるいくつかの実施形態において、求核基含有架橋剤は、2つ、3つ、またはそれ以上の一級脂肪族アミン基を含む。本発明で使用するための好適な架橋剤としては、(限定されるものではないが)スペルミン、スペルミジン、リジン、ジリジン、トリリジン、テトラリジン、ポリリジン、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、1,3-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、ジエチレントリアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,1,1-トリス(アミノエチル)エタン、これらの医薬的に許容される塩、水和物、または他の溶媒和物、及びこれらの誘導体(例えば、結合体(架橋に十分な求核基が存在する限りにおいて))、ならびにこれらの任意の混合物がある。本発明で使用するための特定の架橋剤は、リジンベース架橋剤(例えば、トリリジン、またはトリリジンの塩もしくは誘導体)である。本発明で使用するための特定の求核性架橋剤は、トリリジンアセテートである。他の低分子量マルチアームアミンも使用することができる。トリリジンの化学構造を以下に再現する。
【化4】
【0143】
本発明の非常に特定の実施形態において、4a20k PEG-SG前駆体をトリリジンアセテートと反応させてポリマーネットワークを形成する。
【0144】
あるいくつかの実施形態において、求核基含有架橋剤は、可視化剤に結合しているか、または可視化剤と結合体化している。フルオロフォア、例えば、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、及びシアニンを本明細書で開示する可視化剤として使用することができる。本発明の具体的な実施形態において、可視化剤としてフルオレセインが使用される。可視化剤は、例えば、架橋剤の求核基の一部を介して、架橋剤と結合体化することができる。架橋には十分な量の求核基が必要であるため、概して「結合体化した」または「結合体化」には、部分的結合体化が含まれ、これは、求核基の一部のみが可視化剤との結合体化に使用され得ることを意味し、例えば、架橋剤の求核基の約1%~約20%、または約5%~約10%、または約8%が可視化剤と結合体化し得る。具体的な実施形態において、架橋剤はトリリジンアセテートであり、フルオレセインと結合体化している。
【0145】
他の実施形態において、可視化剤は、例えば、ポリマー前駆体のあるいくつかの反応性(例えば、求電子)基を介し、ポリマー前駆体と結合体化してもよい。あるいくつかの実施形態において、架橋剤自体またはポリマー前駆体自体が、例えばフルオロフォア(fluorophoric)基または他の可視化可能な基を含むことができる。
【0146】
本発明では、可視化剤を、以下で開示するポリマー前駆体(複数可)または架橋剤と結合体化させることが意図されており、これにより、活性薬剤が涙液中に放出される間、可視化剤がヒドロゲル内に保持されるため、小管内の挿入物の存在を便利かつ非侵襲的な方法によって確認することが可能になる。
【0147】
あるいくつかの実施形態において、互いに反応する求核末端基及び求電子末端基のモル比は約1:1であり、すなわち、1つの求電子基(例えば、SG基)ごとに1つのアミン基が提供される。4a20k PEG-SG及びトリリジン(アセテート)の場合、トリリジンが求電子性SGエステル基と反応することができる4つの一級アミン基を有することから、結果的に、この2つの構成要素のモル比は約1:1となる。ただし、求電子(例えば、NHS(例えば、SG))末端基前駆体または求核(例えば、アミン)末端基前駆体のいずれかを過剰に使用してもよい。特に、過剰な求核末端基(例えば、アミン末端基)含有前駆体または架橋剤を使用することができる。あるいくつかの実施形態において、求電子基含有前駆体:求核基含有架橋剤のモル比、例えば、4a20k PEG-SG:トリリジンアセテートのモル比は、約1:2~約2:1である。
【0148】
最後に、代替の実施形態において、アミン結合剤は、4a20k PEG-SGと同じまたは異なる数のアーム及び同じまたは異なるアーム長(平均分子量)を有し、ただし末端アミン基、すなわち4a20k PEG-NH2を有する別のPEG前駆体であってもよい。
【0149】
さらなる成分:
本発明の挿入物は、上記に開示したようなポリマーネットワークを形成するポリマー単位及び有効成分に加えて、他の追加成分を含んでもよい。このような追加成分は、例えば、ヒドロゲルの調製中に使用される緩衝剤から生じる塩、例えば、リン酸塩、ホウ酸塩、重炭酸塩、またはトリエタノールアミンなどの他の緩衝剤である。本発明のあるいくつかの実施形態において、リン酸ナトリウム緩衝剤(具体的には、一塩基性リン酸ナトリウム及び二塩基性リン酸ナトリウム)が使用される。
【0150】
具体的な実施形態において、本発明の挿入物は、抗微生物防腐剤を含まないか、または少なくとも相当量の抗微生物防腐剤(限定されるものではないが、塩化ベンザルコニウム(BAK)、クロロブタノール、過ホウ酸ナトリウム、及び安定化オキシクロロ錯体(SOC)を含む)を含まない。
【0151】
さらなる具体的な実施形態において、本発明の挿入物は、動物またはヒト由来のいかなる成分も含まず、合成成分のみを含む。
【0152】
あるいくつかの実施形態において、本発明の挿入物は可視化剤を含む。本発明に従って使用される可視化剤は、ヒドロゲルの構成要素と結合体化するか、またはヒドロゲル内に封入することができ、視認可能であるか、または例えばある特定の波長の光に曝露すると可視化することができるか、または造影剤である、全ての薬剤である。本発明で使用するのに適した可視化剤は、(限定されるものではないが)例えば、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、シアニン、ユーロピウムキレート錯体、ボロンジピロメテン、ベンゾフラザン、ダンシル、ビマン、アクリジン、トリアザペンタレン、ピレン、及びこれらの誘導体である。このような可視化剤は、例えば、TCIから市販されている。あるいくつかの実施形態において、可視化剤は、フルオロフォア(例えば、フルオレセイン)であるか、またはフルオレセイン部分を含む。フルオレセイン含有挿入物は、青色光及び黄色フィルターで照らすことによって可視化することができる。小管内挿入物内のフルオレセインは、青色光で励起すると発光し、挿入物の存在を確認することができる。具体的な実施形態において、可視化剤は、ヒドロゲルを形成する構成要素のうちの1つと結合体化している。例えば、可視化剤(例えば、フルオレセイン)は、架橋剤(例えば、トリリジンまたはトリリジンの塩もしくは誘導体(例えば、トリリジンアセテート))と、あるいはPEG構成要素と結合体化している。例えば、NHS-フルオレセインは、PEG前駆体(複数可)との架橋反応の前にトリリジンアセテートと結合体化することができる。可視化剤を結合体化することにより、可視化剤が挿入物から溶出または放出されるのが防止される。可視化剤を架橋剤と結合体化する方法については、実施例1で説明する。架橋には、十分な量の求核基(少なくとも1モル当量超)が必要であるため、可視化剤と、例えば上記で開示したような架橋剤との部分的な結合体化を実施してもよい。
【0153】
本発明の挿入物は、あるいくつかの実施形態では界面活性剤を含むことができる。界面活性剤は、非イオン性界面活性剤とすることができる。非イオン性界面活性剤は、ポリ(エチレングリコール)鎖を含むことができる。例示的な非イオン性界面活性剤としては、Tween(登録商標)として市販されているポリ(エチレングリコール)ソルビタンモノラウレート(特に、PEG-20-ソルビタンモノラウレートのTween(登録商標)20、またはPEG-80-ソルビタンモノラウレートのTween(登録商標)80)、Cremophorとして市販されているヒマシ油のポリ(エチレングリコール)エステル(特に、PEG-40-ヒマシ油のCremophor40)、Tyloxapolとして市販されているエトキシル化4-tert-オクチルフェノール/ホルムアルデヒド縮合ポリマー、及び他のもの(例えば、Triton)がある。界面活性剤は、有効成分を分散させるのを助けることができ、粒子の凝集を防止することができ、また、乾燥中に起こり得るヒドロゲルストランドのチューブへの付着を低減することもできる。
【0154】
製剤:
あるいくつかの実施形態において、本発明に従う挿入物は、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)と、ヒドロゲルの形態をとる、本明細書で開示する1つ以上のポリマー前駆体から作製されたポリマーネットワークと、任意選択の追加の構成要素(例えば、生産プロセスから挿入物に残存する可視化剤や塩など(例えば、緩衝剤などとして使用されるリン酸塩))とを含む。あるいくつかの好ましい実施形態において、グルココルチコイドはデキサメタゾンである。特定の実施形態において、挿入物は防腐剤を含まない。
【0155】
いくつかの実施形態において、本発明に従う挿入物は、乾燥状態で約30重量%~約70重量%のグルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)及び約25重量%~約60重量%のポリマー単位(例えば、上記で開示したもの)を含む。さらなる実施形態において、本発明に従う挿入物は、乾燥状態で約30重量%~約60重量%のグルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)及び約30重量%~約60重量%のポリマー単位位(例えば、上記で開示したもの)を含む。
【0156】
あるいくつかの実施形態において、本発明に従う挿入物は、乾燥状態で約40重量%~約56重量%のグルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)及び約36重量%~約55重量%のポリマー単位(例えば、上記で開示したようなポリエチレングリコール単位)を含む。
【0157】
あるいくつかの特定の実施形態において、本発明に従う挿入物は、乾燥状態で約40重量%~約46重量%のデキサメタゾン及び約45重量%~約55重量%のPEG単位を含む。
【0158】
あるいくつかの他の特定の実施形態において、本発明に従う挿入物は、乾燥状態で約50重量%~約56重量%のデキサメタゾン及び約36重量%~約46重量%のPEG単位を含む。
【0159】
あるいくつかの実施形態において、本発明に従う挿入物は、乾燥状態で約0.1重量%~約1重量%の可視化剤(例えば、フルオレセインまたはフルオレセイン部分を含む分子)を含むことができる。また、あるいくつかの実施形態において、本発明に従う挿入物は、乾燥状態で約0.5重量%~約5重量%の1つ以上の緩衝塩(複数可)(別々にまたは一緒に)も含むことができる。あるいくつかの実施形態において、挿入物は、乾燥状態で、例えば、約0.01重量%~約2重量%または約0.05重量%~約0.5重量%の界面活性剤を含むことができる。
【0160】
特定の実施形態において、本発明に従う挿入物は、約200μgのデキサメタゾン(すなわち、本明細書で開示するように、約200μgの目標用量のデキサメタゾンを+25%及び-20%の変動内、または±10%の変動内で含む)と、約200μg~約250μgのPEG単位(例えば、4a20k PEG-SG)と、約5μg~約7μgのトリリジンアセテートと、約1μg~約3μgの可視化剤(例えば、フルオレセイン)と、約2.5μg~約20μgの緩衝塩(例えば、リン酸ナトリウム(一塩基性及び/または二塩基性))とから作製することができる。
【0161】
別の特定の実施形態において、本発明に従う挿入物は、約300μgのデキサメタゾン(すなわち、本明細書で開示するように、約300μgの目標用量のデキサメタゾンを+25%及び-20%の変動内、または±10%の変動内で含む)と、約200μg~約250μgのPEG単位(例えば、4a20k PEG-SG)と、約5μg~約7μgのトリリジンアセテートと、約1μg~約3μgの可視化剤(例えば、フルオレセイン)と、約2.5μg~約20μgの緩衝塩(例えば、リン酸ナトリウム(一塩基性及び/または二塩基性))とから作製することができる。
【0162】
あるいくつかの実施形態において、その乾燥状態での挿入物の残部(すなわち、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)と、ポリマーヒドロゲル(例えば、トリリジン架橋PEGヒドロゲル)と、任意選択で可視化剤(例えば、フルオレセイン)とが既に考慮されているときの製剤の残部)は、本明細書で開示する挿入物の製造中に使用される緩衝剤から残存する塩であってもよく、または挿入物の製造中に使用される他の成分(例えば、(使用する場合)界面活性剤)であってもよい。あるいくつかの実施形態において、このような塩は、リン酸塩、ホウ酸塩、または(重)炭酸塩である。1つの実施形態において、緩衝塩はリン酸ナトリウム(一塩基性及び/または二塩基性)である。
【0163】
グルココルチコイド及びポリマー(複数可)の量は変化させてもよく、本明細書で開示しているもの以外のグルココルチコイド及びポリマーヒドロゲルの他の量も、本発明に従う挿入物を調製するために使用することができる。
【0164】
あるいくつかの実施形態において、製剤内の薬物の最大量(重量%)は、ポリマー(例えば、PEG)単位の量の約2倍であるが、あるいくつかの場合において、例えば前駆体と、可視化剤と、緩衝剤と、薬物(ヒドロゲルが完全にゲル化する前の状態)とを含む混合物が、所望の鋳型または細い直径のチューブに均一にキャストすることができる限り、及び/またはヒドロゲルが、依然として本明細書で開示するように十分に延伸可能である限り、及び/または本明細書で開示するように水和時に直径を十分に増加させる限りは、薬物の最大量がより多くなってもよい。
【0165】
あるいくつかの実施形態において、約20%~約50%(w/v)の固体含量(ここで「固体」とは、溶液中のポリマー前駆体(複数可)、任意選択の可視化剤、塩、及び薬物の合計重量を意味する)が、本発明に従う挿入物のヒドロゲルを形成するために利用される。
【0166】
あるいくつかの実施形態において、乾燥(脱水された/乾燥された)状態のヒドロゲルの水分含量は低くてもよく、例えば、水の約1重量%以下(例えば、本明細書で開示しているように定量されたもの)であってもよい。また水分含量は、あるいくつかの実施形態では、それよりも低くてもよく、場合によっては約0.25重量%以下、または約0.1重量%以下でさえあってもよい。
【0167】
挿入物の寸法及び水和時の寸法変化:
乾燥された挿入物は、製造方法(例えば、完全なゲル化の前に、グルココルチコイドを含むヒドロゲル前駆体を含む混合物をキャストする鋳型またはチューブの内径または形状)に応じて、種々の幾何学的形状を有することができる。本発明に従う挿入物は、「繊維」(この用語は、本明細書では「ロッド」という用語と互換的に使用される)とも称され、概して繊維はその直径を超える長さを有する。挿入物(または繊維)は、本明細書で開示するような具体的な寸法を伴った異なる幾何学的形状を有することができる。
【0168】
1つの実施形態において、挿入物は円筒形であるか、または本質的に円筒形の形状を有する。本明細書または特許請求の範囲において、挿入物の形状の文脈で「円筒形」と言及される場合、これは常に「本質的に円筒形」を含む。この場合、挿入物は円形または本質的に円形の断面を有する。本発明の他の実施形態において、挿入物は非円筒形である。本発明に従う挿入物は、その乾燥状態では任意選択で細長く、挿入物の長さは挿入物の幅より大きい(ここで幅は、長さに対し実質的に垂直な最大の断面寸法である)。円筒形または本質的に円筒形の挿入物において、幅は直径とも称される。
【0169】
また、様々な幾何学的形状の挿入物の外側形状またはその断面も本発明で使用することができる。例えば、円形直径の繊維(すなわち、円筒形の挿入物の場合)の代わりに卵形(または楕円形)直径の繊維を使用してもよい。他の断面の幾何学的形状、例えば、卵形または長円形、長方形、三角形、星形、十字形なども、広く使用することができる。挿入物が小管内で水和したときに、その直径が本明細書で開示するような水和直径に拡大する限り、挿入物の周りに組織が形成されるので正確な断面形状は決定的なものではない。あるいくつかの実施形態において、水和状態での挿入物の長さ:挿入物の直径の比は、少なくとも約1、または少なくとも約1.1、または少なくとも約1.2であり、これは、挿入物を小管内の所定の位置に保つ助けとなり、小管内での挿入物のねじれ及び回転を防止し、また周辺組織との密接な接触を維持する助けにもなる。あるいくつかの実施形態において、この比率は、約2未満、または約1.75未満とすることができる。
【0170】
ポリマーネットワーク(例えば、本発明のあるいくつかの実施形態に従うヒドロゲル挿入物のPEGネットワーク)は、室温以下の乾燥状態で半結晶性、湿潤状態で非結晶性であり得る。延伸された形態であっても、乾燥挿入物は、室温以下で寸法的に安定であることができ、これは挿入物を小管内に投与する上で、また品質管理にとっても有利であり得る。
【0171】
小管内の挿入物が涙液によって水和すると(これは、例えば、37℃、pH7.4でPBSに挿入物を浸すことにより24時間後(平衡と考えられる)in vitroでシミュレートすることができる)、本発明に従う挿入物の寸法は変化し得る。概して、挿入物の直径は増加し得、一方その長さは減少し得、またはあるいくつかの実施形態では、長さは同じまたは本質的に同じまま保たれ得る。この寸法変化の利点は、挿入物が、その乾燥状態では、涙点(これ自体の直径は小管よりも小さい)を通じて小管内に投与及び設置する上で十分に薄く、水和してその直径が拡大すると、小管内に密接にフィットし、よって小管内プラグとして作用することである。そのため、この挿入物は、本明細書で開示するように、ある一定の期間にわたり、制御された方式で有効成分を涙液に放出することに加えて、涙腺閉塞をもたらして涙を保存する。
【0172】
あるいくつかの実施形態において、この寸法変化は、少なくとも部分的には、本明細書で開示するように、製造中にヒドロゲルストランドを長手方向に延伸することによって挿入物に導入される「形状記憶」効果によって可能となる。あるいくつかの実施形態において、この延伸は、湿潤状態で、すなわち乾燥する前に実施することができる。ただし、あるいくつかの他の実施形態では、ヒドロゲルストランドの延伸は(ひとたびキャストされ硬化したら)、乾燥状態で(すなわち、ヒドロゲルストランドを乾燥した後に)実施されることがある。延伸を全く実施しない場合、挿入物は単に水の取り込みにより膨潤し得るが、本明細書で開示する直径の増加及び長さの減少という寸法変化は達成されないか、またはあまり達成されない可能性があることに留意されたい。これにより、小管内の挿入物が最適には固定されず、鼻涙管または涙点を通じて挿入物が除去される結果につながる可能性がある(有効成分の完全用量が放出される前であっても可能性はある)。これが所望されない場合、ヒドロゲルストランドは、再水和時の直径を拡大させるため、例えば乾燥または湿式延伸することができる。
【0173】
本発明のヒドロゲルの場合、材料を延伸し、次いで固化させ、分子配向を固定することにより、ある程度の分子配向を付与することができる。分子配向は、挿入物を水和媒体(例えば、涙液)に接触させた際の異方性膨潤に対する1つの機構を提供する。水和時に、本発明のあるいくつかの実施形態の挿入物は、半径方向寸法のみ膨潤し、一方、長さは減少するか、または維持されるか、または本質的に維持される。「異方性膨潤」という用語は、円筒形において直径は支配的に膨潤するが、長手方向寸法はほとんど膨潤しない(または収縮さえする)ように、一方向において優先的に膨潤し、別の方向には膨潤しないことを意味する。
【0174】
水和時の寸法変化の程度は、とりわけ延伸係数に依存し得る。延伸の効果を説明するための単なる例として、(例えば、湿式延伸によって)例えば約1.3の延伸係数で延伸した場合、あまり顕著な効果を有しないか、または水和時の長さ及び/または直径をあまり変化させない可能性がある。これに対し、(例えば、湿式延伸によって)例えば約1.8の延伸係数で延伸した場合、結果として、水和時に長さが短くなり、及び/または直径が増加する可能性がある。(例えば、乾式延伸によって)例えば約3または4の延伸係数で延伸した場合、結果として、水和時に長さがはるかに短くなり、直径がはるかに大きくなる可能性がある。当業者であれば、延伸以外の他の因子も膨潤挙動に影響を及ぼし得ることを理解するであろう。
【0175】
ヒドロゲルを延伸し、水和時に挿入物の寸法を変化させる可能性に影響を及ぼす他の要因に含まれるものとして、ポリマーネットワークの組成がある。PEG前駆体が使用される場合、アームの数が少ない前駆体(例えば、4アームPEG前駆体)は、アームの数が多い前駆体(例えば、8アームPEG前駆体)よりも、ヒドロゲルの柔軟性をより高めることに寄与する。ヒドロゲルが柔軟性の低い構成要素を多く含む場合(例えば、より多くの数のアームを含むPEG前駆体(例えば、8アームPEG単位)の量が多い場合)、ヒドロゲルはより堅くなり、破損なしで延伸するのが容易でなくなる可能性がある。一方、柔軟性が高い構成要素(例えば、より少ない数のアームを含むPEG前駆体(例えば、4アームPEG単位))を含むヒドロゲルは、延伸がより容易で、より軟質である可能性があるが、水和時により膨潤する可能性もある。したがって、ひとたび挿入物が投与され、再水和された後の挿入物の挙動及び特性は、構造的特徴を変化させることによって、また最初に形成された後の挿入物の処理を変更することによっても調整することができる。
【0176】
乾燥された挿入物の寸法は、とりわけ、組み込まれるグルココルチコイドの量及びグルココルチコイド:ポリマー単位の比に依存し得、さらに、ヒドロゲルをゲル化させる鋳型またはチューブの直径及び形状によって制御することができる。乾燥された挿入物の直径は、本明細書で開示するようにひとたび形成されたヒドロゲルストランドの(湿式または乾式)延伸により、さらに制御することができる。乾燥されたヒドロゲルストランド(延伸後)を所望される長さのセグメントに切断して挿入物を形成する。したがって、長さは必要に応じて選択することができる。
【0177】
以下では、具体的な寸法を有する挿入物の実施形態を開示する。本明細書の具体的な実施形態で開示されている寸法の範囲または値は、円筒形または本質的に円筒形の挿入物の長さ及び直径に関するものである。ただし、円筒形の挿入物に対する全ての値及び範囲は、非円筒形の挿入物にも同様に使用することができる。1つの挿入物の長さまたは直径の測定が複数回行われた場合、または測定中に複数のデータポイントが収集された場合、本明細書で定義するような平均(average)(すなわち、平均(mean))値が報告される。本発明に従う挿入物の長さ及び直径は、例えば、顕微鏡法により、または、例えば実施例1で開示するような(任意選択で自動化された)カメラシステムにより、測定することができる。また、挿入物寸法を測定する他の好適な方法を使用してもよい。
【0178】
1つの実施形態において、本発明は、ヒドロゲルと、グルココルチコイドとを含む、徐放性生分解性小管内挿入物であって、当該挿入物が、乾燥状態で約2.75mm以下の長さを有する、徐放性生分解性小管内挿入物に関する。特定の実施形態において、グルココルチコイドはデキサメタゾンである。
【0179】
本発明のあるいくつかの実施形態において、挿入物は、乾燥状態で約2.5mm以下の長さ、または約2.3mm未満の長さ、または約2.25mmの長さを有する。本発明のあるいくつかの実施形態において、挿入物は、乾燥状態で約1mm超、または約1.5mm超、または約2mm超の長さを有する。あるいくつかの特定の実施形態において、挿入物は、その乾燥状態で約2.5mm未満かつ約1.5mm超の長さを有する。
【0180】
代替的な実施形態において、挿入物は、約0.5mm~約3mm(例えば、約0.5mm~約2.5mm、約1mm~約2.5mm、約1.25mm~約2.5mm、約1.5mm~約2.25mm、約0.5mm、約0.75mm、約1mm、約1.25mm、約1.5mm、約1.75mm、約2.0mm、約2.25mm、約2.5mm、約2.75mm、または約3mm)の長さを有することができる。
【0181】
本発明のあるいくつかの実施形態において、挿入物は、乾燥状態で約1mm未満、もしくは約0.8mm未満、もしくは約0.75mm未満、もしくは約0.6mm未満の直径、または約0.40mm~約0.58mm、もしくは約0.45mm、もしくは約0.5mmの直径を有する。
【0182】
本発明の具体的な実施形態において、挿入物は、乾燥状態で約2.14mm~約2.36mmの範囲の長さ及び約0.41mm~約0.55mmの範囲の直径を有する。
【0183】
あるいくつかの実施形態において、本発明に従う挿入物は、円筒形または本質的に円筒形であり、水和時(in vivoでは小管内、またはin vitroでは37℃でpH7.2のリン酸緩衝食塩水中で24時間後)、挿入物の直径は増加し、挿入物の長さは減少する。詳細には、挿入物の直径は、約1.5~約4倍、または約2~約3.5倍、または約3倍の範囲で増加してもよい。言い換えれば、水和状態の挿入物の直径:乾燥状態の挿入物の直径の比は、約1.5~約4、または約2~約3.5、または約3の範囲とすることができる。
【0184】
あるいくつかの実施形態において、本発明に従う挿入物の長さは、水和後に、乾燥状態での長さの約0.9倍、または乾燥状態での長さの約0.75倍、または乾燥状態での長さの約3分の2に減少する。すなわち、水和状態の挿入物の長さ:乾燥状態の挿入物の長さの比は、約0.9以下、または約0.75以下、または約3分の2以下とすることができ、少なくとも約0.25、または少なくとも約0.4とすることができる。
【0185】
したがって、あるいくつかの実施形態において、本発明に従う挿入物は、その水和状態で約1~約2mmの範囲の直径と、その乾燥状態での挿入物の長さよりも短い長さとを有する。あるいくつかの実施形態において、水和状態において、例えば、挿入物が小管内に設置されたとき、挿入物の長さ:直径の比は好適には1を超え、すなわち、挿入物の長さはその直径よりも長い。これは、いかなるねじれも回転も伴わずに、挿入物を小管内の定位置に保つ一助となる。これは、小管/涙点を閉塞し、涙液を眼内に保持することに加えて、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を放出するために挿入物の表面と涙液との接触を確保する一助となる。
【0186】
あるいくつかの実施形態において、本発明に従う挿入物は、水和状態で約1.35mm~約1.80mmの範囲の直径及び約1.65mm~約2.0mmの範囲の長さを有する。具体的には、本発明に従う挿入物は、水和状態で約1.40mm~約1.60mmの範囲の直径及び約1.70mm~約2.0mmの範囲の長さ(例えば、約1.5mmの直径及び約1.8mmの長さ)を有することができる。
【0187】
あるいくつかの実施形態において、寸法変化は、ヒドロゲルストランドを約1.5~約3の範囲、または約2.2~約2.8の範囲、または約2.5~約2.6の範囲の延伸係数で湿式延伸することにより、達成することができる。他の実施形態において、このような寸法変化は、乾式延伸によって達成することができる。
【0188】
あるいくつかの実施形態において、このように延伸することで形状記憶が生じる。つまりこれは、挿入物が小管内に投与され、ひとたび涙液に接触したときの水和時に、とりわけ、元の成形寸法及び組成変数によって決定される平衡寸法に(おおよそ)近づくまで、長さが収縮し、直径が広がることを意味する。狭い乾燥寸法は、挿入物を、涙点を通じて小管内に投与するのを容易にし、一方、投与後に直径が広がり長さが短くなることにより、主に近位表面(涙液に接触し、涙点開口部に向けられた挿入物の表面)で活性薬剤を放出しながら、小管内で密接にフィットし涙点を閉塞する、長さが短く幅が広い挿入物が得られる。
【0189】
ある実施形態において、本発明の徐放性生分解性小管内挿入物が、(本明細書の上記で開示したように)約375μg以下のデキサメタゾンもしくは等価用量の別のグルココルチコイドの含量、及び/または(本明細書の下記で開示するように)投与してから最大約25日の期間の間の治療有効量のグルココルチコイドの放出によって定義される場合、挿入物の長さは乾燥状態で2.75mmを超えてもよく、例えば、挿入物の長さは、乾燥状態で約3mm以上であってもよい。しかし、本明細書で開示するような約2.75mm以下の長さが本発明に特に適している。
【0190】
1つの具体的な実施形態において、本発明の挿入物は、約200μg(本明細書で開示する+25%/-20%または±10%の変動を含む)のデキサメタゾンを含み、(本質的に)円筒形の形状を有し、乾燥状態で約0.41mm~約0.49mmの範囲(例えば、約0.47mmまたは約0.45mm)の直径及び約2.14mm~約2.36mmの範囲(例えば、約2.25mm)の長さを有する。このような挿入物は、小管内のin vivoまたはin vitroでの水和時に(ここで、in vitroでの水和は、37℃、pH7.4のリン酸緩衝食塩水中で24時間後(平衡と考えられる)に測定される)、長さを減少させ直径を増加させることができ、長さは、乾燥状態での長さよりも短い長さ、例えば、約1.69mm~約1.87mmの範囲(例えば、約1.79mmまたは約1.8mm)となり、直径は、約1.35mm~約1.80mmの範囲(例えば、約1.5mmまたは約1.54mm)となる。
【0191】
別の具体的な実施形態において、本発明の挿入物は、約300μg(本明細書で開示するような+25%/-20%または±10%の変動を含む)のデキサメタゾンを含み、(本質的に)円筒形の形状を有し、その乾燥状態で、約0.44mm~約0.55mmの範囲(例えば、約0.5mmまたは約0.51mm)の直径及び約2.14mm~約2.36mmの範囲(例えば、約2.25mm)の長さを有する。このような挿入物は、小管内のin vivoまたはin vitroでの水和時に(ここで、in vitroでの水和は、37℃、pH7.4のリン酸緩衝食塩水中で24時間後(平衡と考えられる)に測定される)、長さを減少させ直径を増加させることができ、長さは、乾燥状態での長さよりも短い長さ、例えば、約1.64mm~約2.0mmの範囲(例えば、約1.8mmまたは約1.85mm)となり、直径は、約1.35mm~約1.80mmの範囲(例えば、約1.5mmまたは約1.47mm)となる。
【0192】
あるいくつかの実施形態において、本発明の挿入物は、約100~約1000μgの範囲(例えば約200~約800μgの範囲、または約300~約700μgの範囲)の総重量を有する。特定の実施形態において、本発明の挿入物は、約400~約600μgの範囲、例えば、約400~約500μg(特に、挿入物がデキサメタゾンを約200μg(本明細書で開示するような変動を含む)の量で含む場合)、または約500~約600μg(特に、挿入物がデキサメタゾンを約300μg(本明細書で開示するような変動を含む)の量で含む場合)の総重量を有する。
【0193】
活性物質の放出及び挿入物の生分解:
1つの実施形態において、本発明は、ヒドロゲルと、グルココルチコイドとを含む、徐放性生分解性眼内(例えば、小管内)挿入物であって、当該挿入物が、投与してから(すなわち、小管内に挿入されてから)最大約25日の期間の間、治療有効量のグルココルチコイドの放出をもたらす、徐放性生分解性眼内挿入物に関する。特定の実施形態において、グルココルチコイドはデキサメタゾンである。
【0194】
理論に拘束されることを望むものではないが、グルココルチコイドの涙液中への放出は、水環境におけるグルココルチコイドの溶解度によって決定される。本発明に従って使用するための1つの特定のグルココルチコイドは、デキサメタゾンである。デキサメタゾンの溶解度は、涙液などの水性媒体中では非常に低い(100μg/mL未満)と判定されている。デキサメタゾンは、小管に投与されると、主に、涙液に近接した、したがって眼表面に近接した挿入物の表面から(すなわち、涙点開口部に面した挿入物の表面から)放出される。
【0195】
あるいくつかの実施形態において、活性薬剤は徐々に溶解し、ヒドロゲルから涙液中に拡散する。これは主に一方向性に生じ、挿入物と挿入物の近位表面の涙液との界面で開始する。「薬物前面」は概して反対方向に、すなわち近位面から離れて進行し、最終的には挿入物全体で活性薬剤が枯渇する。これを
図6に示す。
【0196】
あるいくつかの実施形態において、本発明に従う挿入物は、(治療有効量の)グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)の放出を、投与してから約6時間以上の期間の間(例えば、約12時間以上、例えば、少なくとも約1日、または少なくとも約7日の期間の間)もたらし、これは既知の即時放出眼科用投与形態よりも長いものである。
【0197】
あるいくつかの実施形態において、本発明に従う挿入物は、投与してから最大約1か月、または最大約25日、または最大約21日(すなわち約3週間)、または最大約14日(すなわち約2週間)の期間の間、(治療有効量の)グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)の放出をもたらす。
【0198】
あるいくつかの実施形態において、投与後、1日当たりに挿入物から放出される活性薬剤のレベルは、(活性薬剤の溶解度に基づく放出の制限により)ある一定の期間にわたり、例えば、デキサメタゾンの場合は約7日間、または約11日間、約14日間にわたり、持続したまま、一定のまま、または本質的に一定のまま保たれる。次に、1日当たりに放出される活性薬剤の量は、さらなる期間の間(例えば、デキサメタゾンの場合、さらなる約7日間(またはあるいくつかの実施形態ではより長い間))、活性薬剤の全てまたは実質的に全てが放出されるまで減少(「漸減」とも称される)し得、「空の」ヒドロゲルは、完全に分解されるまで、及び/または鼻涙管を通じて除去される(廃棄される/洗い流される)まで、小管にとどまり得る。
【0199】
あるいくつかの実施形態において、本発明の挿入物は、放出が持続的である、一定である、または本質的に一定である期間の間(例えば、投与してから最大約7日、または最大約11日、または最大約14日、またはそれ以上の期間の間)、涙液中に1日当たり約5~約50μg、例えば、約10~約35μg、具体的には約15μg~約25μg(例えば、約20μg)のデキサメタゾンの平均放出をもたらす。
【0200】
具体的な実施形態において、約200μg(本明細書で開示するような変動を含む)のデキサメタゾンの目標用量を含む挿入物からは、投与してから最大7日の期間の間、1日当たり平均約15μg~約25μg(例えば、約20μg)のデキサメタゾンが涙液中に放出され、続いてさらなる最大約7日またはそれ以上の期間の間、挿入物に含まれるデキサメタゾンが全て放出されるまで、より少ない量のデキサメタゾンが放出される。全体的には、約200μg(本明細書で開示するような変動を含む)のデキサメタゾンの目標用量を含む挿入物は、例えば、投与してから最大約7日、投与してから最大約14日、またはそれ以上の期間の間、治療有効量のデキサメタゾンを涙液中に放出することができる。
【0201】
他の具体的な実施形態において、約300μg(本明細書で開示するような変動を含む)のデキサメタゾンの目標用量を含む挿入物からは、投与してから最大約11日の期間の間、または最大約14日の期間の間、1日当たり平均約15μg~約25μg(例えば、約20μg)のデキサメタゾンが放出され、続いてさらなる最大約7日またはそれ以上の期間の間、挿入物に含まれるデキサメタゾンが全て放出されるまで、より少ない量のデキサメタゾンが放出される。全体として、約300μg(本明細書で開示するような変動を含む)のデキサメタゾンの目標用量を含む挿入物は、投与してから最大約21日、またはそれ以上の期間の間、治療有効量のデキサメタゾンの放出をもたらすことができる。
【0202】
さらなる実施形態において、本発明の徐放性生分解性小管内挿入物が、挿入物に含まれる(本明細書の上記で開示したように)約375μg以下の用量のデキサメタゾンもしくは等価用量の別のグルココルチコイドによって、及び/または(本明細書の下記で開示するように)約2.75mm以下の長さによって定義される場合、挿入物は、治療有効量のグルココルチコイドの放出を、例えば、投与してから25日よりも長い期間の間、例えば、投与してから最大約1か月、またはさらに長く、例えば、最大約2か月、または最大約3か月の期間の間、もたらすことができる。しかし、治療有効量のデキサメタゾン(または他のグルココルチコイド)は、投与してから最大約25日、具体的には最大約14日(すなわち約2週間)または最大約21日(すなわち約3週間)の期間の間の放出が、本発明に特に適している。
【0203】
薬物が主に挿入物の近位面から放出される場合、ヒドロゲル挿入物のこの領域には薬物粒子が存在しなくなるため、これを「クリアランスゾーン」とも呼ぶことがある。あるいくつかの実施形態において、水和時において「クリアランスゾーン」は、このように、水和したヒドロゲルの別の領域内の活性薬剤よりも低い濃度の活性薬剤を有する挿入物の領域である。クリアランスゾーンが増加するにつれて、挿入物内に濃度勾配が生じ、薬物の放出速度の漸減につながり得る。
【0204】
薬物がヒドロゲルから拡散するのと同時に(また、薬物の全量がヒドロゲルから拡散した後に)、ヒドロゲルは、例えば、涙液の水性環境下のエステル加水分解により、ゆっくりと分解され得る。分解が進んだ段階では、ヒドロゲルの歪み及び侵食が始まる。これが起こるに伴ってヒドロゲルはより軟化し、より液状化し(したがって、その形状が歪み)、最終的にはヒドロゲルは溶解し完全に吸収される。ただし、ヒドロゲルが軟化し薄くなり、その形状が歪んでくるにつれて、ある一定の時点で、ヒドロゲルが投与された小管内の意図された部位にとどまることができず、小管の奥深くまで進み、最終的には鼻涙管を通じて除去される(廃棄される/洗い流される)ことがある。
【0205】
1つの実施形態において、ヒトの眼(小管を含む)におけるような水性環境内でのヒドロゲルの持続性は、とりわけ、ヒドロゲル内のポリマー単位(例えば、PEG単位)を架橋するリンカーの構造に依存する。あるいくつかの実施形態において、ヒドロゲルは、投与してから約1か月、または約2か月、または約3か月、または最大約4か月の期間内に生分解される。ただし、ヒドロゲルは、小管内の涙液におけるような水性環境下での分解プロセス中に徐々に軟化し歪むため、挿入物が完全に生分解される前に鼻涙管から除去される(洗い流される/廃棄される)ことがある。
【0206】
本発明の実施形態において、ヒドロゲル、ひいては挿入物は、投与してから最大約1か月、または最大約2か月、または最大約3か月、または最大約4か月の期間の間、小管内にとどまる。
【0207】
本発明のあるいくつかの実施形態において、グルココルチコイドがデキサメタゾンである場合、ヒドロゲルが完全に分解する前にデキサメタゾンの全量が放出されてもよく、挿入物はその後、投与してから全体で最大約1か月、または投与してから最大約2か月、または最大約3か月、または投与してから最大約4か月の期間の間、小管内に残存してもよい。あるいくつかの他の実施形態において、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)がまだ挿入物から完全に放出されていないときに、ヒドロゲルが完全に生分解されてもよい。他の実施形態において、挿入物は、グルココルチコイドが少なくとも約90%、または少なくとも約92%、または少なくとも約95%、または少なくとも約97%放出された後に完全に分解され得る。
【0208】
あるいくつかの実施形態において、in vitro放出試験を使用して、例えば、品質管理または他の定性的評価の目的で、(例えば、異なる製造バッチの、異なる組成の、及び異なる投与量強度などの)異なる挿入物を互いに比較することができる。本発明の挿入物からのグルココルチコイドのin vitro放出は、様々な方法により、例えば、37℃のPBS(リン酸緩衝食塩水、pH7.4)中のノンシンクシミュレート生理条件下で、ヒトの眼の涙液と同程度の体積のPBSを毎日交換することを伴って定量することができる。
【0209】
約200μgの用量のデキサメタゾンを含む具体的な挿入物:
1つの特定の実施形態において、本発明は、デキサメタゾンを約160μg~約250μg、または約180μg~約220μgの範囲の量、または特に約200μgの量で含み、デキサメタゾンがヒドロゲル内に分散されている、徐放性生分解性小管内挿入物に関する。この挿入物は、乾燥状態で円筒形または本質的に円筒形の形状であり、約0.41mm~約0.49mmの範囲の直径及び約2.14mm~約2.36mmの範囲の長さを有する。水和状態において(小管内のin vivoでの水和またはin vitroでの水和;ここで、in vitroでの水和は、37℃、pH7.4のリン酸緩衝食塩水中で24時間後(平衡と考えられる)に測定される)、この挿入物は約1.35mm~約1.80mmの範囲の直径及び1を超える長さ:直径の比を有し、詳細には約1.69mm~約1.87mmの範囲の長さを有することができる。
【0210】
この挿入物において、ヒドロゲルは、架橋されたマルチアームポリエチレングリコール単位、特に4a20k PEG単位を含むポリマーネットワークを含み、PEG単位間の架橋は、以下の式によって表される基を含み、
【化5】
式中、mは2である。この挿入物を作製するために、4a20k PEG-SG単位を架橋剤(例えば、トリリジンアセテート)によって架橋することができる。この実施形態において、挿入物は、ポリマーネットワーク(例えば、トリリジンアセテート)と結合体化する可視化剤(例えば、フルオレセイン)も含むことができる。
【0211】
また、この実施形態において、挿入物は、乾燥状態で約40重量%~約46重量%のデキサメタゾン及び約45重量%~約55重量%のポリエチレングリコール単位で構成される。さらに、挿入物は、その乾燥状態で約1重量%以下の水を含むことができる。
【0212】
この挿入物中のデキサメタゾンの粒子は、レーザー回折による定量で約5μm以下のd90粒子サイズ及び/または約10μm未満のd98粒子サイズを有することができる。
【0213】
この挿入物は、投与してから最大約7日以上、例えば、最大約14日、最大約21日、または最大約25日、または最大約1か月の期間にわたり、治療有効量のデキサメタゾンの放出をもたらす。特定の実施形態において、この挿入物は、投与してから最大約14日の期間にわたり(すなわち、約2週間または最大約2週間)治療有効量のデキサメタゾンの放出をもたらす。
【0214】
この挿入物は、DEDの治療(DEDまたはDEDのエピソード性フレアの急性治療を含む)に使用することができる。
【0215】
約300μgの用量のデキサメタゾンを含む特定の挿入物:
別の特定の実施形態において、本発明は、デキサメタゾンを約240μg~約375μg、または約270μg~約330μgの範囲の量、または特に約300μgの量で含み、デキサメタゾンがヒドロゲル内に分散されている、徐放性生分解性小管内挿入物に関する。この挿入物は、乾燥状態で円筒形または本質的に円筒形の形状であり、約0.44mm~約0.55mmの範囲の直径及び約2.14mm~約2.36mmの範囲の長さを有する。水和状態において(小管内のin vivoでの水和またはin vitroでの水和;ここで、in vitroでの水和は、37℃、pH7.4のリン酸緩衝食塩水中で24時間後(平衡と考えられる)に測定される)、この挿入物は約1.35mm~約1.80mmの範囲の直径及び1を超える長さ:直径の比を有し、詳細には約1.64mm~約2.0mmの範囲の長さを有することができる。
【0216】
この挿入物において、ヒドロゲルは、架橋されたマルチアームポリエチレングリコール単位、特に4a20k PEG単位を含むポリマーネットワークを含み、PEG単位間の架橋は、以下の式によって表される基を含み、
【化6】
式中、mは2である。この挿入物を作製するために、4a20k PEG-SG単位を架橋剤(例えば、トリリジンアセテート)によって架橋することができる。この実施形態において、挿入物は、ポリマーネットワーク(例えば、トリリジンアセテート)と結合体化する可視化剤(例えば、フルオレセイン)も含むことができる。
【0217】
また、この実施形態において、挿入物は、乾燥状態で約50重量%~約56重量%のデキサメタゾン及び約36重量%~約46重量%のポリエチレングリコール単位で構成される。さらに、挿入物は、その乾燥状態で約1重量%以下の水を含むことができる。
【0218】
この挿入物中のデキサメタゾンの粒子は、レーザー回折による定量で約5μm以下のd90粒子サイズ及び/または約10μm未満のd98粒子サイズを有することができる。
【0219】
この挿入物は、投与してから最大約14日以上、例えば、最大約21日、または最大約25日、または最大約1か月の期間にわたり、治療有効量のデキサメタゾンの放出をもたらす。具体的な実施形態において、この挿入物は、投与してから最大約21日の期間にわたり(すなわち、約3週間または最大約3週間)治療有効量のデキサメタゾンの放出をもたらす。
【0220】
この挿入物は、DEDの治療(DEDまたはDEDのエピソード性フレアの急性治療を含む)に使用することができる。
【0221】
II.挿入物の製造
あるいくつかの実施形態において、本発明は、本明細書で開示するような、ヒドロゲルと、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)とを含む、徐放性生分解性小管内挿入物を製造する方法にも関する。
【0222】
あるいくつかの実施形態において、本発明に従う製造方法は、(例えば、PEG単位を含む)ポリマーネットワーク、及びヒドロゲル内に分散されたグルココルチコイドの粒子を含む、ヒドロゲルを形成するステップと、ヒドロゲルを成形またはキャストするステップと、ヒドロゲルを乾燥するステップとを含む。1つの実施形態において、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)は、挿入物を調製するために本明細書で開示するような微粉化された形態で使用することができる。別の実施形態において、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)は、挿入物を調製するために微粉化されていない形態で使用することができる。
【0223】
本発明のあるいくつかの実施形態のヒドロゲルを形成するための好適な前駆体は、上記の挿入物自体に関するセクションで開示した通りである。あるいくつかの具体的な実施形態において、ヒドロゲルは、本明細書で開示するような架橋されたポリエチレングリコール単位を含むポリマーネットワークから作製される。ポリエチレングリコール(PEG)単位は、特定の実施形態では、マルチアーム(例えば4アーム)PEG単位であり、約2,000~約100,000ダルトン、または約10,000~約60,000ダルトン、または約15,000~約50,000ダルトン、または約20,000ダルトンの平均分子量を有する。反応性基(例えば、本明細書で開示するような求電子基)を有する好適なPEG前駆体は、ポリマーネットワークを形成するために架橋される。架橋は、反応性基(例えば、本明細書で開示するような求核基)を有する低分子化合物または別のポリマー化合物(別のPEG前駆体を含む)のいずれかである架橋剤によって実施することができる。あるいくつかの実施形態において、求電子末端基を有するPEG前駆体を、求核末端基を有する架橋剤(低分子化合物、または別のPEG前駆体)と反応させて、ポリマーネットワークを形成する。
【0224】
具体的な実施形態において、本発明の挿入物を製造する方法は、デキサメタゾンの粒子の存在下、緩衝液中で、求電子基含有マルチアームポリエチレングリコール(例えば、4a20k PEG-SG)を求核基含有架橋剤(例えば、トリリジンアセテート)と混合し反応させることと、混合物をゲル化させることとを含む。あるいくつかの実施形態において、PEG前駆体中の求電子基:架橋剤中の求核基のモル比は約1:1であるが、約2:1~約1:2の範囲であってもよい。
【0225】
あるいくつかの実施形態において、ひとたび挿入物が小管内に投与されたらこれを可視化できるように、本明細書で開示するような可視化剤がヒドロゲルを形成する混合物に含まれる。例えば、可視化剤は、フルオロフォア(例えば、フルオレセインもしくはフルオレセイン部分を含む分子)、または上記で開示したような別の可視化剤とすることができる。あるいくつかの実施形態において、可視化剤は、挿入物が生分解されるまで常に挿入物内にとどまるように、ポリマーネットワークの1つ以上の構成要素としっかりと結合体化してもよい。
【0226】
可視化剤は、例えば、ポリマー(例えば、PEG)、前駆体、または(ポリマーもしくは低分子量)架橋剤のいずれかと結合体化してもよい。具体的な実施形態において、可視化剤はフルオレセインであり、実施例1に示すように、架橋剤をPEG前駆体と反応させる前に、トリリジンアセテート架橋剤と結合体化させる。例えば、フルオレセインの場合、NHS-フルオレセイン(N-ヒドロキシスクシンイミジル-フルオレセイン)をトリリジンアセテートと反応させ、(例えば、UV検出を備えたRP-HPLCにより)トリリジン-フルオレセイン結合体の形成の完了をモニタリングすることができる。次いでこの結合体をさらに使用して、ポリマー前駆体(複数可)(例えば、4a20k PEG-SG)を架橋することができる。
【0227】
あるいくつかの特定の実施形態において、本発明の挿入物の製造中に、グルココルチコイド及びPEG前駆体(複数可)(例えば、デキサメタゾン及び4a20k PEG-SG)の水中(任意選択で緩衝)混合物/懸濁液が調製される。次いで、このグルココルチコイド/PEG前駆体混合物を、架橋剤及びそれと結合体化した可視化剤(例えば、リジンアセテート/フルオレセイン結合体)を含む(任意選択で緩衝)溶液と合わせる。このようにして得られた合わせた混合物は、グルココルチコイド、ポリマー前駆体(複数可)、架橋剤、可視化剤、及び(任意選択で)緩衝剤を含む。これを実施例1で例示的に示す。
【0228】
あるいくつかの実施形態において、ひとたび求電子基含有ポリマー前駆体と、求核基含有架橋剤と、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)と、任意選択で可視化剤(任意選択で例えば架橋剤に結合体化)と、任意選択で緩衝剤との混合物が調製されたら(すなわち、これらの構成要素が組み合わされた後)、例えばヒドロゲルストランド、最終的には所望されるヒドロゲルの最終形状をもたらすため、得られた混合物を好適な鋳型またはチューブにキャストした後に完全にゲル化させる。次いで、混合物をゲル化させる。次いで、得られたヒドロゲルを乾燥する。
【0229】
挿入物の最終形状が円筒形または本質的に円筒形の場合、ヒドロゲルストランドは、グルココルチコイドの粒子を含むヒドロゲル前駆体混合物を微細直径チューブ(例えば、ポリウレタン(PU)チューブ)にキャストすることによって調製する。ヒドロゲルストランドの、ひいては最終的な挿入物の所望される最終的な断面幾何学的形状、その初期直径(これは延伸によってさらに減少し得る)に応じて、また反応性混合物がチューブを均一に充填し、乾燥後にチューブから取り外される能力にも応じて、異なる形状及び直径のチューブを使用することができる。したがって、チューブの内部は、円形の幾何学的形状を有しても、円形以外の幾何学的形状(例えば、卵形(または他の)幾何学的形状)を有してもよい。
【0230】
あるいくつかの実施形態において、ヒドロゲルストランドを形成し、放置して硬化させ、チューブ内でゲル化プロセスを完了させた後、ヒドロゲルストランドは、本明細書で開示するように、湿潤または乾燥状態で長手方向に延伸することができる。この延伸の結果、挿入物は、水和時に(例えば、小管内に設置された後に)寸法を変化させることができる。特定の実施形態において、ヒドロゲルストランドは、(完全な)乾燥の前に、約1~約3、または約1.5~約3、または約2.2~約2.8、または約2.5~約2.6の範囲の延伸係数によって延伸される。あるいくつかの実施形態において、延伸は、ヒドロゲルストランドがまだチューブ内にあるときに実施することができる。代替手段として、延伸する前にヒドロゲルストランドをチューブから取り出してもよい。本発明のあるいくつかの実施形態において乾式延伸が実施される場合、ヒドロゲルストランドは、最初に乾燥され、次いで(まだチューブの内部にあるとき、またはチューブから取り出された後に)延伸される。本発明のあるいくつかの実施形態において湿式延伸が実施される場合、ヒドロゲルは湿潤状態で(すなわち、完全に乾燥する前に)延伸され、次いで、張力下で放置して乾燥する。任意選択で、延伸時に熱を適用してもよい。
【0231】
延伸及び乾燥後、ヒドロゲルストランドをチューブから取り外し、本明細書で開示するような所望の長さのセグメントに切断して、最終挿入物を産生することができる(チューブ内で切断した場合、切断セグメントは切断後チューブから取り外される)。本発明の目的において特に所望される長さは、例えば、約2.75mm以下、または約2.5mm以下の長さ、例えば、約2.0mm~約2.5mm、または約2.14mm~約2.36mmの範囲の長さ、例えば、約2.25mmの長さである。
【0232】
挿入物は、切断後、次いで水分を防ぐようにパッケージングすることができる(例えば、密封ホイルパウチ)。挿入物を所定の位置に保ち、挿入物への損傷を避けるため、また、パッケージから挿入物を取り出し、患者に投与するために挿入物を掴む/保持することを容易にするため、挿入物を台または支持体に固定してもよい。例えば、本発明の挿入物は、取り外したり掴んだりするのを容易にするために、発泡体担体の開口部に固定し、挿入物の一部を突出させてもよい(
図1に示す通り)。挿入物は、鉗子によって発泡体担体から取り出し、次いで直ちに患者の小管に挿入することができる。
【0233】
本発明に従う製造プロセスの特定の実施形態を実施例1で詳細に開示する。
【0234】
III.療法
1つの態様において、本発明は、ドライアイ疾患(DED)の治療を、それを必要とする患者において行う方法であって、本明細書で開示するような徐放性生分解性眼内(例えば、小管内)挿入物を当該患者に投与することを含む、方法に関する。
【0235】
別の態様において、本発明はまた、DEDのエピソード性フレアの治療を、それを必要とする患者において行う方法であって、ヒドロゲルと、グルココルチコイドとを含む、徐放性生分解性眼内(例えば、小管内)挿入物を当該患者に投与することを含み、グルココルチコイドの粒子がヒドロゲル内に分散している、方法にも関する。
【0236】
本発明に従って治療される患者は、DED療法(急性DED療法を含む)を必要とするヒトまたは動物の対象とすることができる。あるいくつかの実施形態において、患者は、DEDのエピソード性フレアの急性治療を必要とする対象とすることができる。
【0237】
あるいくつかの代替的な実施形態において、DEDの治療は、DEDの長期(またはより長期の)治療とすることができる。
【0238】
1つの実施形態において、本発明はまた、DEDの治療を、それを必要とする患者において行うのに使用するための、本明細書で開示するような徐放性生分解性眼内(例えば、小管内)挿入物にも関する。
【0239】
1つの実施形態において、本発明はまた、DEDの治療をそれを必要とする患者において行うための医薬の製造のための、本明細書で開示するような徐放性生分解性眼内(例えば、小管内)挿入物の使用にも関する。
【0240】
あるいくつかの実施形態において、DEDの治療は、DEDの急性短期治療(本明細書では、DEDのエピソード性フレアの治療とも称される)である。本発明に従うDEDのエピソード性フレアの急性治療のための期間は、DEDの継続的な長期(すなわち、慢性)治療に比べて相対的に短いものとすることができ、あるいくつかの実施形態では、最大約1か月もしくは約1か月、または最大約25日もしくは約25日、または最大約21日もしくは約21日(すなわち、最大約3週間もしくは約3週間)、または最大約14日もしくは約14日(すなわち、最大約2週間もしくは約2週間)、または最大約7日もしくは約7日(すなわち、最大約1週間もしくは約1週間)とすることができる。DEDの長期的(慢性)治療は、約1か月よりも長く(例えば数か月、またはさらにより長く)持続することがある。
【0241】
あるいくつかの実施形態において、患者に投与される徐放性生分解性小管内挿入物は、デキサメタゾンを含む。
【0242】
あるいくつかの実施形態において、患者に投与される徐放性生分解性小管内挿入物は、約375μg以下、もしくは約350μg以下のデキサメタゾンまたは等価用量の別のグルココルチコイドを含む。別のグルココルチコイドの等価用量は、本明細書で開示するように決定することができる。本発明の実施形態において、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)は、本明細書で開示するようなポリマーネットワークから形成されたヒドロゲル内に分散された粒子として挿入物中に存在する。
【0243】
あるいくつかの実施形態において、患者に投与される徐放性生分解性小管内挿入物は、約100μg~約350μgの範囲の用量のデキサメタゾン、もしくは約150μg~約320μgの範囲のデキサメタゾン、または等価用量の別のグルココルチコイドを含む。
【0244】
あるいくつかの実施形態において、患者に投与される徐放性生分解性小管内挿入物は、約160μg~約250μgのデキサメタゾン、もしくは約180μg~約220μgのデキサメタゾン、または約200μgのデキサメタゾンを含む。
【0245】
あるいくつかの他の実施形態において、患者に投与される徐放性生分解性小管内挿入物は、約240μg~約375μgのデキサメタゾン、もしくは約270μg~約330μgのデキサメタゾン、または約300μgのデキサメタゾンを含む。
【0246】
挿入物は、本明細書で開示されるような追加の成分を含んでもよい。
【0247】
本発明に従う挿入物の投与は、涙点の開口部を通じて下小管及び/または上小管内に実施される。
【0248】
あるいくつかの実施形態において、小管内の投与後にin vivoで水和すると、患者に投与された徐放性生分解性小管内挿入物は、本明細書で開示するように直径が増加し長さは減少し得る。
【0249】
あるいくつかの実施形態において、患者に投与される徐放性生分解性小管内挿入物は、乾燥状態で約2.75mm以下、または約2.5mm以下の長さを有する。あるいくつかの実施形態において、患者に投与される徐放性生分解性小管内挿入物は、乾燥状態で約1mm未満の直径、または約0.75mm未満の直径を有する。乾燥状態でこのような直径を持つ挿入物は、眼の涙点を通じて容易に投与することができる。これらの実施形態のうちの特定の実施形態において、グルココルチコイドはデキサメタゾンである。
【0250】
あるいくつかの特定の実施形態において、患者に投与される徐放性生分解性小管内挿入物は、乾燥状態で約0.41mm~約0.55mmの範囲の直径及び約2.14mm~約2.36mmの範囲の長さを有する。あるいくつかの実施形態において、患者に投与される徐放性生分解性小管内挿入物は、乾燥状態で約0.5mmの直径及び約2.25mmの長さを有する。特定の実施形態において、この挿入物中のグルココルチコイドはデキサメタゾンであり、約200μgまたは約300μg(本明細書で開示するような変動を含む)の量で挿入物中に存在する。
【0251】
あるいくつかの他の特定の実施形態において、患者に投与される徐放性生分解性小管内挿入物は、水和状態にあるときに約1.35mm~約1.80mmの範囲の直径及び1を超える長さ:直径の比を有する。あるいくつかの実施形態において、患者に投与される徐放性生分解性小管内挿入物は、水和状態にあるとき、約1.40mm~約1.60mmの範囲(例えば、約1.5mm)の直径及び約1.70mm~約2.0mmの範囲の長さを有する。特定の実施形態において、この挿入物中のグルココルチコイドはデキサメタゾンであり、約200μgまたは約300μg(本明細書で開示するような変動を含む)の量で挿入物中に存在する。
【0252】
あるいくつかの実施形態において、当該方法は、投与してから約6時間以上(例えば、約12時間以上)という長期間の間(既知の即時放出眼科用投与形態とは対照的に「長い」)、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)の放出をもたらす。あるいくつかの実施形態において、長期間は、投与してから1週間以上である。
【0253】
あるいくつかの実施形態において、当該方法は、DEDのエピソード性フレアの(急性、短期)治療(本明細書で定義されるようなDEDの長期治療とは対照的に「短期」)を提供し、投与してから最大約7日、または最大約14日、または最大約21日、または最大約25日、または最大約1か月の期間の間、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)による治療を提供する、
【0254】
本発明の方法のあるいくつかの実施形態において、患者に投与される徐放性生分解性小管内挿入物は、約200μgのデキサメタゾン(本明細書に開示するような変動を含む)を含み、挿入物からのデキサメタゾン放出によってもたらされる治療期間が投与してから最大約14日となるように、投与してから最大14日の期間の間、デキサメタゾンを放出する。あるいくつかの実施形態において、この治療期間は、投与してから約14日よりも長くてもよい。
【0255】
本発明の方法のあるいくつかの実施形態において、患者に投与される徐放性生分解性小管内挿入物は、約300μgのデキサメタゾン(本明細書に開示するような変動を含む)を含み、挿入物からのデキサメタゾン放出によってもたらされる治療期間が投与してから最大約21日となるように、投与してから最大約21日の期間の間、デキサメタゾンを放出する。あるいくつかの実施形態において、この治療期間は、投与してから約21日よりも長くてもよい。
【0256】
本発明の方法のあるいくつかの実施形態において、患者に投与される徐放性生分解性小管内挿入物は、投与してから長期間の間、例えば、最大約7日、または最大約14日、または最大約21日、または最大約25日、または最大約1か月の期間の間、1日当たり平均で約15~約25μgのデキサメタゾンを放出する。
【0257】
これらの実施形態のうちのあるいくつかにおいて、患者に投与される徐放性生分解性小管内挿入物は、約200μgのデキサメタゾンを含み、投与してから最大約7日の期間の間、1日当たり平均約15μg~約25μgのデキサメタゾンを放出する。その後、挿入物は依然としてデキサメタゾンを放出し得るが、より低い速度でデキサメタゾンを放出する可能性がある(すなわち、1日当たりより少ない量のデキサメタゾンを放出しする可能性がある)。これは、本明細書では「漸減放出」とも称される。
【0258】
あるいくつかの他の実施形態において、患者に投与される徐放性生分解性小管内挿入物は、約300μgのデキサメタゾンを含み、投与してから最大約11日、または最大約14日の期間の間、1日当たり平均約15μg~約25μgのデキサメタゾンを放出する。この場合もまた、その後、挿入物は依然としてデキサメタゾンを放出し得るが、より低い速度でデキサメタゾンを放出する可能性がある(すなわち、1日当たりより少ない量のデキサメタゾンを放出する可能性がある)。これは、本明細書では「漸減放出」とも称される。
【0259】
本発明の方法の1つの実施形態において、本発明に従うDED(DEDのエピソード性フレアを含む)の治療方法で患者に投与される徐放性生分解性小管内挿入物は、ヒドロゲルと、ヒドロゲル内に分散されたデキサメタゾンの粒子とを含み、当該挿入物は、約160μg~約250μgまたは約180μg~約220μgまたは約200μgのデキサメタゾンを含み、円筒形または本質的に円筒形であり、乾燥状態で約0.41mm~約0.49mmの範囲の直径及び約2.14mm~約2.36mmの範囲の長さ、水和状態で約1.35mm~約1.80mmの直径及び1を超える長さ:直径の比を有し、投与してから最大約14日または最大約21日の期間の間、デキサメタゾンを放出する。この実施形態において、ヒドロゲルはポリマーネットワークを含み、ここでポリマーネットワークは、4a20k PEG単位を含み、4a20k PEG-SG前駆体を架橋剤としてのトリリジンまたはトリリジンアセテートと反応させることによって形成される。この実施形態において、挿入物はさらに可視化剤(例えば、フルオレセイン)を含む。また、この実施形態において、挿入物は、乾燥状態で約40重量%~約46重量%のデキサメタゾン及び約45重量%~約55重量%のポリエチレングリコール単位で構成される。さらに、挿入物は、その乾燥状態で約1重量%以下の水を含むことができる。この挿入物による治療期間は、最大約14日(すなわち、約2週間)とすることができる。
【0260】
本発明の方法の別の実施形態において、本発明に従うDED(DEDのエピソード性フレアを含む)の治療方法で患者に投与される徐放性生分解性小管内挿入物は、ヒドロゲルと、ヒドロゲル内に分散されたデキサメタゾンの粒子とを含み、当該挿入物は、約240μg~約375μgまたは約270μg~約330μgまたは約300μgのデキサメタゾンを含み、円筒形または本質的に円筒形であり、乾燥状態で約0.44mm~約0.55mmの範囲の直径及び約2.14mm~約2.36mmの範囲の長さ、水和状態で約1.35mm~約1.80mmの範囲の直径及び1を超える長さ:直径の比を有し、投与してから最大約21日または最大約25日、または最大約1か月の期間の間、デキサメタゾンを放出する。この実施形態において、ヒドロゲルはポリマーネットワークを含み、ここでポリマーネットワークは、4a20k PEG単位を含み、4a20k PEG-SG前駆体を架橋剤としてのトリリジンアセテートまたは誘導体と反応させることによって形成される。この実施形態において、挿入物はさらに可視化剤(例えば、フルオレセイン)を含む。また、この実施形態において、挿入物は、乾燥状態で約50重量%~約56重量%のデキサメタゾン及び約36重量%~約46重量%のポリエチレングリコール単位で構成される。さらに、挿入物は、その乾燥状態で約1重量%以下の水を含むことができる。この挿入物による治療期間は、最大約21日(すなわち、約3週間)とすることができる。
【0261】
本発明の方法のまたさらなる実施形態において、患者に投与される徐放性生分解性小管内挿入物が、挿入物に含まれる(本明細書の上記で開示したように)約375μg以下の用量のデキサメタゾンもしくは等価用量の別のグルココルチコイドによって、及び/または(本明細書の下記で開示するように)約2.75mm以下の長さによって定義される場合、挿入物は、投与してから約25日よりも長い期間の間、例えば投与してから最大約1か月、またはさらに長い期間の間、治療有効量のグルココルチコイドを放出することができる。
【0262】
長い送達時間(例えば、投与してから最大約7日、もしくは最大約14日、もしくは最大約21日、もしくは最大約25日、もしくは最大約1か月、またはあるいくつかの実施形態ではさらに長い期間)を達成するのに、1つの挿入物(またはあるいくつかの例外的な実施形態では同時にいくつかの挿入物)を患者に投与するだけでよいため、毎日または1日当たり数回も投与しなければならない点眼薬の使用に比べて、患者のコンプライアンスが高められる。
【0263】
あるいくつかの実施形態において、挿入物は、下涙点を通じて下小管に、片側性に投与されるか、または両側性に投与される。他の実施形態において、挿入物は、上涙点を通じて上小管に、片側性に投与されるか、または両側性に投与される。あるいくつかの実施形態において、挿入物は、下涙点を通じた下小管への投与と、上涙点を通じた上小管への投与とが、両方行われる。片眼ごとの特定の投与は、他方と独立していてもよい。
【0264】
あるいくつかの実施形態において、挿入物は、下小管垂直部及び/または上小管垂直部に投与される。
【0265】
あるいくつかの実施形態において、徐放性生分解性小管内挿入物は、小管内に設置したときに迅速かつ非侵襲的に挿入物を視覚化できるようにするために可視化剤(例えば、フルオレセイン)を含む。可視化剤がフルオレセインの場合、挿入物は、青色光源で照射し、黄色のフィルターを使用することによって可視化することができる。
【0266】
あるいくつかの実施形態において、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)は、挿入物から放出されたときに涙膜中に溶解するため、グルココルチコイドは、涙膜を通じて挿入物から眼表面に送達される。グルココルチコイドは、ヒドロゲルと涙液との界面で、主に挿入物の近位端から放出される(
図6に例示的に示す通り)。グルココルチコイドの徐放速度は、ヒドロゲルマトリックス及び涙液におけるグルココルチコイドの溶解度によって制御される。あるいくつかの実施形態において、グルココルチコイドはデキサメタゾンであり、デキサメタゾンは、本明細書で開示するように水性媒体における溶解度が低い。
【0267】
あるいくつかの実施形態において、挿入物からグルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)が完全に枯渇した後、挿入物は、ヒドロゲルが生分解し、及び/または鼻涙管を通じて廃棄される(洗い流される/除去される)まで、小管内にとどまる。挿入物のヒドロゲルマトリックスは、例えば、小管内の涙液の水性環境下のエステル加水分解によって生分解するように製剤化されているため、挿入物は経時的に軟化及び液化し、取り出す必要なく鼻涙管を通じて除去される。したがって、不快な取出しを避けることができる。しかし、例えば、アレルギー反応の潜在可能性もしくは挿入物の除去を必要とする他の状況(例えば、患者が感じる不快な異物感)のため、または別の理由により治療を終了すべきであるために挿入物を取り出すべき場合には、挿入物は、例えば手動で小管から排出することができる。
【0268】
あるいくつかの実施形態において、挿入物は、投与してから最大約1か月、または最大約2か月、または最大約3か月、または最大約4か月の間、小管内にとどまる。
【0269】
あるいくつかの実施形態において、本発明の挿入物を投与した後のグルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)の全身濃度は非常に低い(例えば、定量可能量未満)。これにより、薬物間相互作用または全身毒性のリスクが顕著に低減され、これは例えば、眼疾患を頻繁に患い、さらに他の薬剤を服用している高齢の患者において、有益であり得る。
【0270】
あるいくつかの実施形態において、本発明の徐放性生分解性小管内挿入物は、ドライアイ疾患(DED)の徴候及び症状の治療のために、特にDEDの(例えば、エピソード性フレアに対する)急性治療のために患者に投与される。あるいくつかの実施形態において、本発明の挿入物は、グルココルチコイド放出(例えば、デキサメタゾン放出)による炎症抑制の効果と、涙腺閉塞に由来する利益とを組み合わせたものである。これらの複合効果は、DEDの治療法の改善をもたらし得る。
【0271】
あるいくつかの実施形態において、本発明の徐放性生分解性小管内挿入物によるDEDの治療は、DEDの別の治療と組み合わせるか、またはそれが後に続くことができる。あるいくつかの実施形態において、徐放性生分解性小管内挿入物によるDEDの治療は、DEDの慢性治療(例えば、シクロスポリン、リフィテグラスト、またはタクロリムスを用いた慢性治療)と組み合わされるか、またはそれが後に続く。あるいくつかの他の実施形態において、徐放性生分解性小管内挿入物によるDEDの治療は、点眼薬(例えば、人工涙液)を用いた治療と組み合わされるか、またはそれが後に続く。
【0272】
あるいくつかの実施形態において、本発明の挿入物は小管内に位置するため、眼の表面にはなく、また、本明細書で開示するようにグルココルチコイドの放出を長期間の間もたらすのに1回の投与のみで済むことから、挿入物はコンタクトレンズを妨害しないかまたは実質的に妨害せず、そのためコンタクトレンズを装用する患者にとっては特に好適かつ便利であると考えられる。
【0273】
本発明の挿入物を用いて治療される患者は、治療を必要とする任意の人物とすることができる。患者は、男性であっても女性であってもよい。あるいくつかの実施形態において、患者は女性である。あるいくつかの実施形態において、患者は、50歳超、または60歳超、または70歳超、または80歳超である。あるいくつかの実施形態において、患者は、眼のレーザー手術(例えば、光学的角膜切除術(PRK)もしくは生体内レーザー屈折矯正術(LASIK)、またはこれらの任意の特定の変種)を受けたことがある。
【0274】
あるいくつかの実施形態において、本発明の挿入物を用いて治療される患者は、人工涙液及び/または他の対症的治療を受けており、エピソード性DEDフレアを経験している。
【0275】
あるいくつかの実施形態において、患者は、DEDの治療を開始しながら導入療法を必要とする。DEDの長期治療を開始する前に、本発明に従う徐放性生分解性小管内挿入物による前治療を行うことにより、DEDの徴候及び症状をより迅速に解決したり、副作用(例えば、DED治療のための活性成分(例えば、シクロスポリン)が引き起こす灼熱感または刺痛)を低減したりすることにつながり得る。本発明に従う挿入物による前治療期間は、例えば、より長期の治療を開始する前に、最大約7日、または最大約14日、または最大約21日、または具体的な実施形態では最大約1か月持続することができる。
【0276】
あるいくつかの実施形態において、本発明の挿入物を用いて治療される患者は、例えばシクロスポリンまたはリフィテグラストを用いた慢性DED治療を受けており、本発明に従う挿入物を用いて治療され得るDEDのエピソード性フレアを経験している。
【0277】
あるいくつかの実施形態において、本発明の挿入物を用いて治療される患者は、白内障手術及び屈折矯正手術の前に、このような手術の転帰/満足度を改善するためにDEDの治療を必要とする。
【0278】
あるいくつかの実施形態において、本発明の挿入物を用いて治療される患者は、白内障または屈折矯正手術の後のDEDの徴候及び症状の短期治療を必要とする。
【0279】
あるいくつかの実施形態において、本明細書で開示する挿入物を用いたDEDの治療は、人工涙液及び/または点眼薬及び/または鼻腔神経刺激デバイスの適用と組み合わされる。同時投与される人工涙液及び/または点眼薬及び/または鼻腔神経刺激デバイスは、抗感染成分を含むことがある。あるいくつかの実施形態において、同時投与される点眼薬は、投与される挿入物のグルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)以外の他のグルココルチコイドを含むことができる。あるいくつかの実施形態において、同時投与される点眼薬は、投与される挿入物に含まれるグルココルチコイドと同じグルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を含むことができる。同時投与に適した薬理学的製品としては、Restasis(登録商標)及びCequa(登録商標)(シクロスポリンを含む点眼薬)、Xiidra(登録商標)(リンパ球機能関連抗原1(LFA-1)アンタゴニストのリフィテグラストを含む点眼薬)、ならびにTrueTear(登録商標)(涙液産生を一次的に増大させる鼻腔神経刺激デバイス)が挙げられる。この段落の任意の実施形態と組み合わせることができるあるいくつかの実施形態において、徐放性生分解性小管内挿入物によるDEDの治療は、睫毛線における眼瞼剥離(BlephEx(登録商標))、眼瞼熱脈動(iLux(登録商標))、ならびに眼瞼加温及び刺激(LipiFlow(登録商標))と組み合わされる。
【0280】
本発明のあるいくつかの実施形態において、第1の徐放性生分解性小管内挿入物がまだ小管内に保持されている間に、さらなる徐放性生分解性小管内挿入物が眼の涙点を通じて小管内に投与され(この手順は、「挿入物スタッキング」または短縮して「スタッキング」と称される)、これは、第1の挿入物がまだグルココルチコイドを放出している間に、または第1の挿入物がグルココルチコイドを完全に枯渇した後に、または第1の挿入物がグルココルチコイドを少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%部分的に枯渇させた後に、及び/または第1の挿入物がその投与後の当初よりも少ない量のグルココルチコイドを放出している場合に行われる。
【0281】
あるいくつかの実施形態において、挿入物スタッキングにより、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を用いた長期治療が可能になる。あるいくつかの実施形態において、挿入物スタッキングは、したがって、最初の挿入物を投与してから最大約14日、または最大約28日、または最大約42日、または最大約50日、または最大約2か月の合計期間の間、治療有効量のグルココルチコイドの放出をもたらす。
【0282】
IV.キット
あるいくつかの実施形態において、本発明はさらに、本明細書で開示するような1つ以上の挿入物(複数可)を含む、または本明細書で開示するような方法に従って製造されたキットを対象とする。
【0283】
あるいくつかの具体的な実施形態において、キットは、1つ以上の徐放性生分解性小管内挿入物(複数可)を含み、各挿入物は、約160μg~約250μgまたは約180μg~約220μgまたは約200μgのデキサメタゾンを含み、乾燥状態で約0.41mm~約0.49mmの範囲の直径及び約2.14mm~約2.36mmの範囲の長さを有し、水和状態で約1.35mm~約1.80mmの直径及び1を超える長さ:直径の比を有し、各挿入物は、投与してから最大約14日、または最大約21日の期間の間、デキサメタゾンの放出をもたらす。
【0284】
あるいくつかの他の具体的な実施形態において、キットは、1つ以上の徐放性生分解性小管内挿入物(複数可)を含み、各挿入物は、約240μg~約375μgまたは約270μg~約330μgまたは約300μgのデキサメタゾンを含み、乾燥状態で約0.44mm~約0.55mmの範囲の直径及び約2.14mm~約2.36mmの範囲の長さを有し、水和状態で約1.35mm~約1.80mmの直径及び1を超える長さ:直径の比を有し、各挿入物は、投与してから最大約21日、または最大約1か月の期間の間、デキサメタゾンの放出をもたらす。
【0285】
あるいくつかの実施形態において、キットはさらに、1つ以上の徐放性生分解性小管内挿入物(複数可)の使用説明書を含む。1つ以上の徐放性生分解性小管内挿入物(複数可)の使用説明書は、挿入物(複数可)を投与する医師向けの操作マニュアルの形態をとることができる。キットはさらに、製品関連情報を含む添付文書を含むことができる。
【0286】
あるいくつかの実施形態において、キットはさらに、1つ以上の徐放性生分解性小管内挿入物(複数可)を投与するための1つ以上の手段を含むことができる。投与手段は、例えば、1回限りの使用または繰返し使用のいずれかのための1つ以上の好適なピンセット(複数可)または鉗子とすることができる。例えば、好適な鉗子は平滑である(歯がない)。また、投与手段は、シリンジまたはアプリケーターシステムなどの注入デバイスであってもよい。
【0287】
あるいくつかの実施形態において、キットはさらに、1つ以上の徐放性生分解性小管内挿入物(複数可)の投与前に涙点を拡張して、涙点を通じて小管内に挿入物(複数可)を挿入するのを容易にするための眼科用拡張器を含むことができる。拡張器は、鉗子またはアプリケーターと組み合わされ/一体化されて、例えば、デバイスの一端が拡張器であり、デバイスの他端が挿入物の投与に適しているようなものであってもよい。代替的に、キットは、例えば、拡張及び挿入の両方に使用することができる先細りの先端を有する、変形アプリケーターを含んでもよい。
【0288】
あるいくつかの実施形態において、1つ以上の徐放性生分解性小管内挿入物(複数可)は、1回の投与用に個別にパッケージングされる。あるいくつかの実施形態において、1つ以上の徐放性生分解性小管内挿入物(複数可)は、各挿入物を発泡体担体内に固定し、発泡体担体をホイルパウチに封入することにより、1回の投与用に個別にパッケージングされる。発泡体担体は、例えば、Vノッチ、またはVノッチの底に挿入物を保持するための開口部を有する円形の切り込みを有することができる(例えば、
図1も参照)。
【0289】
2つ以上の徐放性生分解性小管内挿入物がキットに含まれる場合、これらの挿入物は同一でも異なってもよく、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)の同一または異なる用量を含むことができる。
【0290】
本明細書では、上記の開示に加えて、以下の他の実施形態も開示する。
【0291】
第1の実施形態のリスト:
1.ドライアイの治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、有効量のコルチコステロイドを含む生分解性眼内ヒドロゲル組成物を約12時間以上の期間の間、前記対象に投与することを含む、前記方法。
【0292】
2.前記ポリマーネットワークが、複数のポリエチレングリコール(PEG)単位を含む、実施形態1に記載の方法。
【0293】
3.前記ポリマーネットワークが、2~10個のアームを有する複数のマルチアームPEG単位を含む、実施形態1または2に記載の方法。
【0294】
4.前記ポリマーネットワークが、4~10個のアームを有する複数のマルチアームPEG単位を含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0295】
5.前記ポリマーネットワークが、4~8個のアームを有する複数のマルチアームPEG単位を含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0296】
6.前記ポリマーネットワークが、8個のアームを有する複数のマルチアームPEG単位を含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0297】
7.前記ポリマーネットワークが、4個のアームを有する複数のマルチアームPEG単位を含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0298】
8.前記ポリマーネットワークが、以下の式:
【化7】
(式中、nはエチレンオキシドの繰返し単位を表し、破線はポリマーネットワークの繰返し単位の点を表す)を有する複数のPEG単位を含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0299】
9.前記ポリマーネットワークが、4a20k PEG-SAZ、4a20k PEG-SAP、4a20k PEG-SG、4a20k PEG-SS、8a20k PEG-SAZ、8a20k PEG-SAP、8a20k PEG-SG、8a20k PEG-SSから選択される複数のポリエチレングリコール(PEG)単位を、4a20k PEG-NH2、8a20k PEG-NH2、及びトリリジン、またはこれらの塩から選択される1つ以上のPEGまたはリジンベースアミン基と反応させることによって形成される、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0300】
10.前記ポリマーネットワークが、4a20k PEG-SGをトリリジンまたはその塩と反応させることによって形成される、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0301】
11.前記ポリマーネットワークが水性条件下で非結晶質である、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0302】
12.前記ポリマーネットワークが水の不在下で半結晶性である、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0303】
13.前記コルチコステロイドがデキサメタゾンである、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0304】
14.前記コルチコステロイドが、約0.2mg~約0.3mgの投与量で送達するために製剤化されたデキサメタゾンである、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0305】
15.前記ヒドロゲル組成物が小管内挿入物である、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0306】
16.前記ヒドロゲル組成物が、約1.0mm~約3.0mmの長さを有する小管内挿入物である、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0307】
17.前記ヒドロゲル組成物が、前記コルチコステロイドを放出した後に完全に分解される、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法。
【0308】
18.ドライアイ疾患のエピソード性フレアが治療される、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0309】
19.ドライアイを治療するための小管内挿入物であって、前記小管内挿入物が涙点を閉塞し、治療有効量のステロイドを最大3週間送達する、前記小管内挿入物。
【0310】
20.前記小管内挿入物が、治療有効量のステロイドを最大2週間送達する、実施形態19に記載の小管内挿入物。
【0311】
21.前記ステロイドがデキサメタゾンである、実施形態19または20に記載の小管内挿入物。
【0312】
22.前記ステロイドが、約0.2mg~約0.3mgの投与量で送達するために製剤化されたデキサメタゾンである、実施形態19~21のいずれか1つに記載の小管内挿入物。
【0313】
23.前記小管内挿入物が約1.0mm~約3.0mmの長さを有する、実施形態19~22のいずれか1つに記載の小管内挿入物。
【0314】
24.前記小管内挿入物が生分解性である、実施形態19~23のいずれか1つに記載の小管内挿入物。
【0315】
25.前記小管内挿入物が、複数のポリエチレングリコール(PEG)単位を有するポリマーネットワークを含むヒドロゲルを含む、実施形態19~24のいずれか1つに記載の小管内挿入物。
【0316】
26.前記ポリマーネットワークが、2~10個のアームを有する複数のマルチアームPEG単位を含む、実施形態25に記載の小管内挿入物。
【0317】
27.前記ポリマーネットワークが、4~10個のアームを有する複数のマルチアームPEG単位を有する、実施形態25または26に記載の小管内挿入物。
【0318】
28.前記ポリマーネットワークが、4~8個のアームを有する複数のマルチアームPEG単位を含む、実施形態25~27のいずれか1つに記載の小管内挿入物。
【0319】
29.前記ポリマーネットワークが、8個のアームを有する複数のマルチアームPEG単位を含む、実施形態25~28のいずれか1つに記載の小管内挿入物。
【0320】
30.前記ポリマーネットワークが、4個のアームを有する複数のマルチアームPEG単位を含む、実施形態25~29のいずれか1つに記載の小管内挿入物。
【0321】
31.前記ポリマーネットワークが、以下の式:
【化8】
(式中、nはエチレンオキシドの繰返し単位を表し、破線はポリマーネットワークの繰返し単位の点を表す)を有する複数のPEG単位を含む、実施形態25~30のいずれか1つに記載の小管内挿入物。
【0322】
32.前記ポリマーネットワークが、4a20k PEG-SAZ、4a20k PEG-SAP、4a20k PEG-SG、4a20k PEG-SS、8a20k PEG-SAZ、8a20k PEG-SAP、8a20k PEG-SG、8a20k PEG-SSから選択される複数のポリエチレングリコール(PEG)単位を、4a20k PEG-NH2、8a20k PEG-NH2、及びトリリジン、またはこれらの塩から選択される1つ以上のPEGまたはリジンベース-アミン基と反応させることによって形成される、実施形態25~31のいずれか1つに記載の小管内挿入物。
【0323】
33.前記ポリマーネットワークが、4a20k PEG-SGをトリリジンまたはその塩と反応させることによって形成される、実施形態25~32のいずれか1つに記載の小管内挿入物。
【0324】
34.前記ポリマーネットワークが水性条件下で非結晶質である、実施形態25~33のいずれか1つに記載の小管内挿入物。
【0325】
35.前記ポリマーネットワークが水の不在下で半結晶性である、実施形態25~34のいずれか1つに記載の小管内挿入物。
【0326】
36.前記ヒドロゲルが、前記ステロイドを放出した後に完全に分解される、実施形態25~35のいずれか1つに記載の小管内挿入物。
【0327】
第2の実施形態のリスト:
1.ヒドロゲルと、約375μg以下のデキサメタゾンまたは等価用量の別のグルココルチコイドとを含む、徐放性生分解性小管内挿入物。
【0328】
2.ヒドロゲルと、グルココルチコイドとを含む、徐放性生分解性小管内挿入物であって、前記挿入物が、乾燥状態で約2.75mm以下の平均長さを有する、前記徐放性生分解性小管内挿入物。
【0329】
3.ヒドロゲルと、グルココルチコイドとを含む、徐放性生分解性小管内挿入物であって、前記挿入物が、投与してから最大約25日の期間の間、治療有効量の前記グルココルチコイドの放出をもたらす、前記徐放性生分解性小管内挿入物。
【0330】
4.前記グルココルチコイドとしてデキサメタゾンを含む、先行実施形態のいずれかに記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0331】
5.約375μg以下のデキサメタゾンを含む、実施形態2、3、または4のいずれかに記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0332】
6.約350μg以下のデキサメタゾンを含む、先行実施形態のいずれかに記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0333】
7.約100μg~約350μgのデキサメタゾン、または約150μg~約320μgのデキサメタゾンを含む、実施形態6に記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0334】
8.約160μg~約250μgのデキサメタゾンを含む、実施形態5に記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0335】
9.約180μg~約220μgのデキサメタゾンを含む、実施形態8に記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0336】
10.約200μgのデキサメタゾンを含む、実施形態9に記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0337】
11.約240μg~約375μgのデキサメタゾンを含む、実施形態5に記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0338】
12.約270μg~約330μgのデキサメタゾンを含む、実施形態11に記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0339】
13.約300μgのデキサメタゾンを含む、実施形態12に記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0340】
14.前記グルココルチコイドの粒子が前記ヒドロゲル内に均一に分散されている、先行実施形態のいずれかに記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0341】
15.前記グルココルチコイドの粒子が微粉化された粒子である、実施形態14に記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0342】
16.前記グルココルチコイドの粒子が、約100μm未満、または約75μm未満、または約50μm未満、または約20μm未満、または約10μm未満のd90粒子サイズを有する微粉化されたデキサメタゾンの粒子である、実施形態15に記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0343】
17.前記挿入物が、投与前は乾燥状態にあり、ひとたび小管内に投与されると水和される、先行実施形態のいずれかに記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0344】
18.前記ヒドロゲルが、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリ(ビニルピロリジノン)、ポリ乳酸、ポリ乳酸-co-グリコール酸、これらのいずれかのランダムもしくはブロックコポリマーまたは組合せもしくは混合物の1つ以上の架橋されたポリマー単位、あるいはポリアミノ酸、グリコサミノグリカン、多糖、またはタンパク質の1つ以上の単位を含む、ポリマーネットワークを含む、先行実施形態のいずれかに記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0345】
19.前記ポリマーネットワークが、約2,000~約100,000ダルトン、または約10,000~約60,000ダルトン、または約15,000~約50,000ダルトンの範囲の平均分子量を有する1つ以上の架橋されたポリエチレングリコール単位を含む、実施形態18に記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0346】
20.前記ポリエチレングリコール単位が約20,000ダルトンの平均分子量を有する、実施形態19に記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0347】
21.前記ポリマーネットワークが、1つ以上の架橋された2~10アームポリエチレングリコール単位、または1つ以上の4~8アームポリエチレングリコール単位を含む、実施形態18~20のいずれかに記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0348】
22.前記ポリマーネットワークが4アームポリエチレングリコール単位を含む、実施形態21に記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0349】
23.前記ポリマーネットワークが、求電子基含有マルチアームポリマー前駆体を求核基含有架橋剤と反応させることによって形成される、実施形態18~22のいずれかに記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0350】
24.前記求核基がアミン基であり、前記求電子基が活性化エステル基である、実施形態23に記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0351】
25.前記求電子基含有マルチアームポリマー前駆体が4a20k PEG-SGであり、前記架橋剤がトリリジンアセテートである、実施形態24に記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0352】
26.可視化剤を含む、先行実施形態のいずれかに記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0353】
27.前記可視化剤がフルオロフォアである、実施形態26に記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0354】
28.前記可視化剤がフルオレセインである、実施形態27に記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0355】
29.前記挿入物が、乾燥状態で約40重量%~約56重量%のグルココルチコイド及び約36重量%~約55重量%のポリマー単位を含む、先行実施形態のいずれかに記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0356】
30.前記挿入物が、乾燥状態で約40重量%~約46重量%のデキサメタゾン及び約45重量%~約55重量%のポリエチレングリコール単位を含む、実施形態29に記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0357】
31.前記挿入物が、乾燥状態で約50重量%~約56重量%のデキサメタゾン及び約36重量%~約46重量%のポリエチレングリコール単位を含む、実施形態29に記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0358】
32.前記挿入物が、乾燥状態で約0.1重量%~約1重量%の可視化剤を含む、実施形態26~31のいずれかに記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0359】
33.前記挿入物が、乾燥状態で1つ以上のリン酸塩(複数可)、ホウ酸塩(複数可)、または炭酸塩(複数可)を含む、先行実施形態のいずれかに記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0360】
34.前記挿入物が、約0.5重量%~約5重量%の1つ以上のリン酸塩(複数可)を含む、実施形態33に記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0361】
35.前記挿入物が、乾燥状態で約1重量%以下の水を含む、先行実施形態のいずれかに記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0362】
36.前記挿入物が抗微生物防腐剤を含まないか、または実質的に含まない、先行実施形態のいずれかに記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0363】
37.前記挿入物が、本質的に円筒形の形状を有する、先行実施形態のいずれかに記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0364】
38.前記挿入物が、乾燥状態で約3mm未満の平均長さを有する、実施形態1または3~37のいずれかに記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0365】
39.前記挿入物が、乾燥状態で約2.75mm以下の平均長さを有する、実施形態38に記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0366】
40.前記挿入物が、乾燥状態で約2.5mm以下の平均長さを有する、実施形態2または39に記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0367】
41.前記挿入物が、乾燥状態で約1mm未満の平均直径、または約0.75mm未満の平均直径を有する、先行実施形態のいずれかに記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0368】
42.前記挿入物が、乾燥状態で約2.14mm~約2.36mmの範囲の平均長さ及び約0.41mm~約0.55mmの範囲の平均直径を有する、先行実施形態のいずれかに記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0369】
43.前記挿入物が、乾燥状態で約2.25mmの平均長さ及び約0.5mmの平均直径を有する、実施形態42に記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0370】
44.小管内のin vivoでのまたはin vitroでの水和時に、前記挿入物の前記平均直径が増加し、任意選択でその平均長さが減少する、先行実施形態のいずれかに記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0371】
45.in vitroでの水和が、37℃、pH7.4のリン酸緩衝食塩水中で24時間後に測定される、実施形態44に記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0372】
46.水和時に、前記挿入物の前記平均直径が、約1.5~約4倍の範囲または約2~約3.5倍の範囲で増加する、実施形態44または45に記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0373】
47.水和時に、前記挿入物の前記平均直径が約3倍増加する、実施形態46に記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0374】
48.水和時に、前記挿入物の前記平均長さが、前記乾燥状態でのその平均長さの約0.9倍以下、または前記乾燥状態でのその平均長さの約0.75倍以下に減少する、実施形態44~47のいずれかに記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0375】
49.水和時に、前記挿入物の前記平均長さが、前記乾燥状態でのその平均長さの約3分の2に減少する、実施形態48に記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0376】
50.前記挿入物が、水和状態で、約1mm~約2mmの範囲の平均直径と、前記乾燥状態での前記挿入物の前記平均長さよりも短い平均長さと、を有する、先行実施形態のいずれかに記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0377】
51.前記挿入物が、水和状態で約1.35mm~約1.80mmの範囲の平均直径及び1を超える直径:長さの比を有する、実施形態50に記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0378】
52.前記挿入物が、水和状態で約1.40mm~約1.60mmの範囲の平均直径及び約1.70mm~約2.0mmの範囲の平均長さを有する、実施形態51に記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0379】
53.前記挿入物が、投与してから約6時間以上の期間の間、治療有効量のグルココルチコイドの放出をもたらす、先行実施形態のいずれかに記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0380】
54.前記挿入物が、投与してから約12時間以上の期間の間、治療有効量のグルココルチコイドの放出をもたらす、実施形態53に記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0381】
55.前記挿入物が、投与してから最大約14日、または最大約21日、または最大約25日、または最大約1か月の治療有効量のグルココルチコイドの放出をもたらす、実施形態1、2、または4~54のいずれかに記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0382】
56.前記挿入物が、投与してから最大約14日、または最大約21日、または最大約25日の期間の間、治療有効量のグルココルチコイドの放出をもたらす、実施形態3または55に記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0383】
57.前記挿入物が約200μgのデキサメタゾンを含み、投与してから最大約14日の期間の間、デキサメタゾンの放出をもたらす、先行実施形態のいずれかに記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0384】
58.前記挿入物が約300μgのデキサメタゾンを含み、投与してから最大約21日の期間の間、デキサメタゾンの放出をもたらす、先行実施形態のいずれかに記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0385】
59.前記挿入物が、投与してから最大約7日、または最大約14日、または最大約21日の期間中、1日当たり約15μg~約25μgのデキサメタゾンの平均放出をもたらす、先行実施形態のいずれかに記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0386】
60.前記挿入物が約200μgのデキサメタゾンを含み、投与してから最大約7日の期間中、1日当たり約15μg~約25μgのデキサメタゾンの平均放出をもたらす、実施形態1~57のいずれかに記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0387】
61.前記挿入物が約300μgのデキサメタゾンを含み、投与してから最大約11日、または最大約14日の期間中、1日当たり約15μg~約25μgのデキサメタゾンの平均放出をもたらす、実施形態1~56または58のいずれかに記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0388】
62.前記挿入物からグルココルチコイドが完全に枯渇した後、前記ヒドロゲルが、投与してから約1か月以内、または約2か月以内、または約3か月以内、または約4か月以内に、小管内で生分解される、及び/または鼻涙管を通じて除去される、先行実施形態のいずれかに記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0389】
63.前記挿入物からグルココルチコイドが完全に枯渇する前に、前記ヒドロゲルが生分解される、実施形態1~61のいずれかに記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0390】
64.ヒドロゲルと、前記ヒドロゲル内に分散されたデキサメタゾンの粒子とを含む、徐放性生分解性小管内挿入物であって、前記挿入物が、約160μg~約250μgまたは約180μg~約220μgまたは約200μgのデキサメタゾンを含み、乾燥状態で約0.41mm~約0.49mmの範囲の平均直径及び約2.14mm~約2.36mmの範囲の平均長さを有し、水和状態で約1.35mm~約1.80mmの平均直径及び1を超える長さ:直径の比を有し、前記挿入物が、投与してから最大約14日、または最大約21日の期間の間、デキサメタゾンの放出をもたらす、前記徐放性生分解性小管内挿入物。
【0391】
65.ヒドロゲルと、前記ヒドロゲル内に分散されたデキサメタゾンの粒子とを含む、徐放性生分解性小管内挿入物であって、前記挿入物が、約240μg~約375μgまたは約270μg~約330μgまたは約300μgのデキサメタゾンを含み、乾燥状態で約0.44mm~約0.55mmの範囲の平均直径及び約2.14mm~約2.36mmの範囲の平均長さを有し、水和状態で約1.35mm~約1.80mmの平均直径及び1を超える長さ:直径の比を有し、前記挿入物が、投与してから最大約21日、または最大約1か月の期間の間、デキサメタゾンの放出をもたらす、前記徐放性生分解性小管内挿入物。
【0392】
66.前記ヒドロゲルが、架橋されたマルチアームポリエチレングリコール及び可視化剤の単位を含むポリマーネットワークを含む、実施形態64または65に記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0393】
67.前記ポリマーネットワークが、トリリジンアセテートで架橋された4a20k PEG-SG単位を含む、実施形態64~66のいずれかに記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0394】
68.前記可視化剤がフルオレセインである、実施形態64~67のいずれかに記載の徐放性生分解性小管内挿入物。
【0395】
69.先行実施形態のいずれかに記載の徐放性生分解性小管内挿入物を製造する方法であって、ポリマーネットワークと、グルココルチコイドの粒子とを含む、ヒドロゲルであって、前記グルココルチコイドの粒子が前記ヒドロゲル内に分散されている、前記ヒドロゲルを形成するステップと、前記ヒドロゲルを成形するステップと、前記ヒドロゲルを乾燥するステップとを含む、前記方法。
【0396】
70.前記グルココルチコイドがデキサメタゾンである、実施形態69に記載の方法。
【0397】
71.前記グルココルチコイドの粒子が、ヒドロゲル内に均質に分散されている、実施形態69または70に記載の方法。
【0398】
72.前記グルココルチコイドの粒子が微粉化された粒子である、実施形態69~71のいずれかに記載の方法。
【0399】
73.前記グルココルチコイドの粒子が、約100μm未満、または約75μm未満、または約50μm未満、または約20μm未満、または約10μm未満のd90粒子サイズを有する微粉化されたデキサメタゾンの粒子であり、ヒドロゲル内に均質に分散されている、実施形態71または72に記載の方法。
【0400】
74.約375μg以下、または約350μg以下、または約100μg~約350μg、または約150μg~約320μgのデキサメタゾンが前記挿入物に含まれる、実施形態69~73のいずれかに記載の方法。
【0401】
75.約160μg~約250μgのデキサメタゾン、または約180μg~約220μgのデキサメタゾン、または約200μgのデキサメタゾンが前記挿入物に含まれる、実施形態74に記載の方法。
【0402】
76.約240μg~約375μgのデキサメタゾン、または約270μg~約330μgのデキサメタゾン、または約300μgのデキサメタゾンが前記挿入物に含まれる、実施形態74に記載の方法。
【0403】
77.前記ポリマーネットワークが、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリ(ビニルピロリジノン)、ポリ乳酸、ポリ乳酸-co-グリコール酸、これらのいずれかのランダムもしくはブロックコポリマーまたは組合せもしくは混合物の1つ以上の架橋されたポリマー単位、あるいはポリアミノ酸、グリコサミノグリカン、多糖、またはタンパク質の1つ以上の単位から形成される、実施形態69~76のいずれかに記載の方法。
【0404】
78.前記ポリマーネットワークが、緩衝溶液中でマルチアームポリエチレングリコール単位を架橋することによって形成される、実施形態69~77のいずれかに記載の方法。
【0405】
79.ポリマーネットワークが、デキサメタゾンの存在下、緩衝溶液中で求電子基含有マルチアームポリエチレングリコール及び求核基含有架橋剤を混合し反応させ、前記混合物をゲル化させることによって形成される、実施形態78に記載の方法。
【0406】
80.前記架橋剤がアミン基を含む、実施形態79に記載の方法。
【0407】
81.前記求電子基含有マルチアームポリマー前駆体が4a20k PEG-SGであり、前記架橋剤がトリリジンアセテートである、実施形態79または80に記載の方法。
【0408】
82.可視化剤を混合することを含む、実施形態69~81のいずれかに記載の方法。
【0409】
83.前記可視化剤をポリマーネットワークと結合体化することを含む、実施形態82に記載の方法。
【0410】
84.前記ポリマー前駆体を架橋する前に、前記可視化剤を架橋剤と結合体化することを含む、実施形態83に記載の方法。
【0411】
85.前記可視化剤がフルオロフォアである、実施形態82~84のいずれかに記載の方法。
【0412】
86.前記可視化剤がフルオレセインである、実施形態85に記載の方法。
【0413】
87.前記フルオレセインが、架橋反応の前にトリリジンアセテートと結合体化される、実施形態86に記載の方法。
【0414】
88.4a20k PEG-SG:トリリジンアセテートのモル比が約1:2~約2:1である、実施形態81~87のいずれかに記載の方法。
【0415】
89.実施形態79~88のいずれかに記載の方法であって、前記方法が、前記ヒドロゲルが完全にゲル化する前に、前記混合物を鋳型またはチューブに充填するステップと、前記混合物をゲル化させるステップと、前記ヒドロゲルを乾燥させるステップとを含む、前記方法。
【0416】
90.前記混合物が、ヒドロゲルストランドを調製するために微細直径チューブに充填される、実施形態89に記載の方法。
【0417】
91.前記チューブの内部が円形の幾何学的形状を有する、実施形態90に記載の方法。
【0418】
92.前記ヒドロゲルストランドを延伸することをさらに含む、実施形態90または91に記載の方法。
【0419】
93.前記ヒドロゲルストランドの前記延伸が、前記ヒドロゲルストランドを乾燥する前に実施される、実施形態92に記載の方法。
【0420】
94.前記ヒドロゲルストランドが、約1.5~約3、または約2.2~約2.8、または約2.5~約2.6の範囲の延伸係数によって延伸される、実施形態93に記載の方法。
【0421】
95.前記乾燥ヒドロゲルストランドが、約2.75mm以下の平均長さを有するセグメントに切断される、実施形態90~94のいずれかに記載の方法。
【0422】
96.前記乾燥ヒドロゲルストランドが、約2.5mm以下の平均長さを有するセグメントに切断される、実施形態95に記載の方法。
【0423】
97.前記ヒドロゲルストランドが、約2.25mmの平均長さのセグメントに切断される、実施形態96に記載の方法。
【0424】
98.ドライアイ疾患の治療を、それを必要とする患者において行う方法であって、前記患者に、実施形態1~68のいずれかに記載の、または実施形態69~97のいずれかに記載の方法に従って製造された、徐放性生分解性小管内挿入物を投与することを含む、前記方法。
【0425】
99.前記治療が、ドライアイ疾患の急性治療である、実施形態98に記載の方法。
【0426】
100.前記治療が、ドライアイ疾患のエピソード性フレアの急性治療である、実施形態98または99に記載の方法。
【0427】
101.前記挿入物が下小管及び/または上小管に投与される、実施形態98~100のいずれかに記載の方法。
【0428】
102.前記挿入物が小管垂直部に投与される、実施形態98~100のいずれかに記載の方法。
【0429】
103.前記挿入物が両側性に投与される、実施形態98~102のいずれかに記載の方法。
【0430】
104.前記グルココルチコイドが涙膜を通じて眼表面に送達される、実施形態98~103のいずれかに記載の方法。
【0431】
105.前記挿入物が、約375μg以下の用量のデキサメタゾンまたは等価用量の別のグルココルチコイドを含む、実施形態98~104のいずれかに記載の方法。
【0432】
106.前記挿入物が、約350μg以下の用量のデキサメタゾンまたは等価用量の別のグルココルチコイドを含む、実施形態105に記載の方法。
【0433】
107.前記挿入物がデキサメタゾンを含む、実施形態98~106のいずれかに記載の方法。
【0434】
108.前記挿入物が約100μg~約350μgのデキサメタゾンを含む、実施形態107に記載の方法。
【0435】
109.前記挿入物が、約160μg~約250μgのデキサメタゾン、または約180μg~約220μgのデキサメタゾン、または約200μgのデキサメタゾンを含む、実施形態105に記載の方法。
【0436】
110.前記挿入物が、約240μg~約375μgのデキサメタゾン、または約270μg~約330μgのデキサメタゾン、または約300μgのデキサメタゾンを含む、実施形態105に記載の方法。
【0437】
111.前記挿入物が、投与してから約6時間以上の期間の間、治療有効量のデキサメタゾンを放出する、実施形態98~110のいずれかに記載の方法。
【0438】
112.前記挿入物が、投与してから約12時間以上の期間の間、治療有効量のデキサメタゾンを放出する、実施形態111に記載の方法。
【0439】
113.前記挿入物が、投与してから最大約7日、または最大約14日、または最大約21日、または最大約25日、または最大約1か月の期間の間、治療有効量のデキサメタゾンを放出する、実施形態98~112のいずれかに記載の方法。
【0440】
114.前記挿入物が、約200μgのデキサメタゾンを含み、投与してから最大約14日の期間の間、デキサメタゾンを放出する、実施形態113に記載の方法。
【0441】
115.前記挿入物が、約300μgのデキサメタゾンを含み、投与してから最大約21日の期間の間、デキサメタゾンを放出する、実施形態113に記載の方法。
【0442】
116.前記挿入物が、投与してから最大約14日、または最大約21日の期間の間、1日当たり平均約15μg~約25μgのデキサメタゾンを放出する、実施形態98~115のいずれかに記載の方法。
【0443】
117.前記挿入物が、約200μgのデキサメタゾンを含み、投与してから最大約7日の期間の間、1日当たり平均約15μg~約25μgのデキサメタゾンを放出する、実施形態116に記載の方法。
【0444】
118.前記挿入物が、約300μgのデキサメタゾンを含み、投与してから最大約11日、または最大約14日の期間の間、1日当たり平均約15μg~約25μgのデキサメタゾンを放出する、実施形態116に記載の方法。
【0445】
119.前記挿入物からグルココルチコイドが完全に枯渇した後、前記ヒドロゲルが生分解し、及び/または鼻涙管を通じて除去されるまで、前記挿入物が小管内にとどまる、実施形態98~118のいずれかに記載の方法。
【0446】
120.前記挿入物が、投与してから最大約1か月、または最大約2か月、または最大約3か月、または最大約4か月の間、小管内にとどまる、実施形態119に記載の方法。
【0447】
121.第1の挿入物がまだ小管内にとどまっている間に、請求項1~68のいずれかに記載の、または請求項69~97のいずれかに記載の方法に従って製造された、さらなる徐放性生分解性小管内挿入物を小管内に投与すること(「挿入物スタッキング」)を含む、実施形態98~120のいずれかに記載の方法。
【0448】
122.前記さらなる挿入物が、前記第1の挿入物と同じであるか、または異なる、実施形態121に記載の方法。
【0449】
123.前記第1の挿入物がグルココルチコイドを完全に枯渇させたときに、前記さらなる挿入物が投与される、実施形態121または122に記載の方法。
【0450】
124.第1の挿入物がまだグルココルチコイドを完全に枯渇させていないときに、前記さらなる挿入物が挿入される、実施形態121~122のいずれかに記載の方法。
【0451】
125.前記徐放性生分解性小管内挿入物によるドライアイ疾患の前記治療が、ドライアイ疾患の別の治療と組み合わされるか、またはそれに続いて行われる、実施形態98~124のいずれかに記載の方法。
【0452】
126.ドライアイ疾患の前記他の治療が、ドライアイ疾患の慢性治療である、実施形態125に記載の方法。
【0453】
127.実施形態98~126のいずれかに記載の方法に従って、ドライアイ疾患の治療を、それを必要とする患者において行うのに使用するための、実施形態1~68のいずれかに記載の、または実施形態69~97のいずれかに記載の方法に従って製造された徐放性生分解性小管内挿入物。
【0454】
128.実施形態98~126のいずれかに記載の方法に従って、ドライアイ疾患の治療を、それを必要とする患者において行うための医薬を製造するための、実施形態1~68のいずれかに記載の、または実施形態69~97のいずれかに記載の方法に従って製造された徐放性生分解性小管内挿入物の使用。
【0455】
129.実施形態1~68のいずれかに記載の、または実施形態69~97のいずれかに記載の方法に従って製造された、1つ以上の徐放性生分解性小管内挿入物(複数可)と、前記挿入物(複数可)の使用説明書とを含む、キット。
【0456】
130.挿入物(複数可)を投与するための1つ以上の手段をさらに含む、実施形態129に記載のキット。
【0457】
131.挿入物(複数可)が、1回の投与用に個別にパッケージングされている、実施形態129または130に記載のキット。
【0458】
132.前記挿入物(複数可)が、ホイルパウチに封入された発泡体担体に固定されている、実施形態129~131のいずれか1つに記載のキット。
【実施例】
【0459】
以下の実施例は、特許請求の範囲に記載される本発明のあるいくつかの態様及び実施形態を実証するために含めるものである。ただし当業者は、以下の説明が例示的なものに過ぎず、いかなる形でも本発明を制約するものとして解釈すべきではないことを理解するはずである。
【0460】
実施例1:デキサメタゾン挿入物の調製
本出願のいくつかの実施形態のデキサメタゾン挿入物は、本質的に円筒形であり、本明細書で指定するようなある一定の長さ及び直径を有し、デキサメタゾンが均質に分散し、PEGベースのヒドロゲルマトリックス内に封入されて、涙液を通じて眼表面にデキサメタゾンの徐放をもたらす。デキサメタゾンは水溶解度が低いため、本発明の挿入物からのデキサメタゾンの放出は溶解度によって駆動される。
【0461】
実施例で使用する挿入物を調製するため、最初にオートクレーブ処理したポリウレタンチューブを適切な長さに切断した。製剤プロセスは、トリリジンアセテート及びNHSフルオレセインを含む1つのシリンジと、デキサメタゾン及び4a20k PEG-SG(4アーム20,000Da PEGスクシンイミジルグルタル酸エステル)を含む別のシリンジとを調製することを伴った。次いで、これらの2つのシリンジの内容物を合わせて混合物(懸濁液)とし、これをゲル化して、中にデキサメタゾンが分散したヒドロゲルを形成する。以下では、0.2mgまたは0.3mgのデキサメタゾンを含む挿入物の生成プロセスを例示的に説明する。
【0462】
トリリジンアセテート/NHSフルオレセインシリンジを調製するため、対応する量の緩衝剤(二塩基性リン酸ナトリウム)、注射用水、及びトリリジンアセテートを混合し、pHを8.4に調整した(表2)。その後、16,045±10mgの得られた溶液を、対応する量のNHS-フルオレセインと混合した(表2)。トリリジンアセテート及びNHS-フルオレセイン混合物を室温で1~24時間反応させて、トリリジン-フルオレセイン結合体を形成した。反応時間が経過した後(UV検出を備えたRP-HPLCを用いてトリリジン-フルオレセイン結合体の形成を確認)、溶液を濾過し、調製した溶液の4,200±10mg部分をシリンジに分取した。
【表2】
【0463】
デキサメタゾン/4a20k PEG-SGシリンジを調製するため、最初に2つのシリンジを調製し、次いでそれらを合わせてデキサメタゾン/4a20k PEG-SGシリンジを生成した。第1のシリンジには、水中の対応する量のふるい分けされ微粉化されたデキサメタゾン(Pfizer)の懸濁液が含まれた(表3)。デキサメタゾンはd90≦5μm及びd98<10μmの粒子サイズを有し、90μm以上の粒子を除去するようにさらにふるい分けしてあった。第2のシリンジには、無菌容器内で対応する量(表3)を混合することによって調製した5,620±10mgの4a20k PEG-SG及び一塩基性リン酸ナトリウム緩衝溶液の溶液が入っていた。次いで、デキサメタゾン懸濁液シリンジを4a20k PEG-SGシリンジにルアーツールアー(luer-to-luer)接続し、シリンジの内容物を各シリンジ間で往復させることによって混合した。次いで懸濁液を1つのシリンジに移して、デキサメタゾン/4a20k PEG-SGシリンジを形成した。
【表3】
【0464】
トリリジンアセテート/NHSフルオレセインシリンジ及びデキサメタゾン/4a20k PEG-SGシリンジをルアーツールアー接続し、シリンジの内容物を各シリンジ間で往復させることによって混合して、ヒドロゲル構成要素及びデキサメタゾンの混合物(懸濁液)を作出し、次いでこの混合物を1つのシリンジに移した。ヒドロゲルが(完全に)ゲル化する前に、調製したポリウレタンチューブに懸濁液をキャストした。ゲル化時間は、ゲルタップ試験を実施することによって確認した。キャストしたストランドを3~6時間垂直に保管して、ヒドロゲルを硬化させた。その後、ストランドを制御された速度で、元のチューブ長さのおよそ2.5~2.6倍まで延伸した。延伸したストランドを、窒素フラッシュ雰囲気中で、32.0±2.0℃で60~72時間垂直に保存して、ストランドを完全に乾燥させた。
【0465】
乾燥後、乾燥したストランドをポリウレタンチューブから取り出し、切断しておよそ2.25mmのセグメントにした。切断した挿入物の表面の粒子、円筒形状、任意の視認可能な表面欠陥について検査した。いかなる欠陥も示さず、必要な形状を提供する挿入物に対し、長さ及び直径の寸法を評価した。全ての要件を満たさない挿入物は不合格とした。
【0466】
品質検査後、挿入物を別々に発泡体担体に入れてパッケージングし(1つの発泡体担体当たり1つの挿入物)、ユーザーが剥がして開封できるアルミニウム-低密度ポリエチレン(LDPE)ホイルパウチに封入した(
図1)。これについては、鉗子を用いて挿入物を発泡体担体の開口部に設置し、挿入物の一部を突出させて簡単に取り出せるようにした。挿入物を有する発泡体担体をホイルパウチに入れた。密封されていないホイルパウチをグローブボックスに移し、不活性窒素環境下で16~96時間保持して、発泡体及びパウチ材料からの残留水分を低減した(≦1.0%の水分含量)。次いでグローブボックス内で、パウチに完全で連続的な密封を施すためのパウチシーラーを用いてパウチを密封した。パウチを密封した後、検査し、滅菌するまで2~8℃で保管した。滅菌のため、パッケージングした挿入物をガンマ線照射した(送達した内部照射線量25.0~45.1kGy)。その後、パッケージングした挿入物を、投与前に光から保護して2~8℃で保管した。
【0467】
0.2mg及び0.3mgのデキサメタゾンの両方の挿入物について、組成パーセント、挿入当たりの目標量、及び各成分の機能を表4に提示する。
【表4】
【0468】
0.2mg及び0.3mgのデキサメタゾン挿入物の特徴を表5に提示する。デキサメタゾンの放出期間は、0.2mg挿入物の場合には最大約14日、0.3mg挿入物の場合には最大約21日持続することが推定される(下記の実施例3も参照)。水和寸法は、本明細書で開示するように、生体関連媒体(リン酸緩衝食塩水(PBS)、37℃でpH7.4)中で24時間後(平衡と考えられる)に測定した。カスタム3-camera Keyence Inspection Systemによって挿入物の寸法の測定(乾燥状態及び湿潤状態の両方)を実施した。2台のカメラを使用して直径を±0.002mmの許容差で測定し(取得した全てのデータポイントについて、平均(average)(=平均(mean))値を記録)、1台のカメラを使用して長さを±0.04mmの許容差で測定した(複数のデータポイントについて、最も長い測定値を記録する)。
【表5】
【0469】
挿入物は、例えばピンセットを用いて、眼の上涙点及び/または下涙点を通じて眼の上小管及び/または下小管垂直部内に投与することが意図されている(
図2A)。挿入物は、青色光源で蛍光性PEGを照らし、黄色フィルターを用いて可視化することができる(
図2B)。生成プロセス中にストランドを延伸することで、形状記憶が作り出される、これは、挿入物が眼の小管内に投与されたときの水和時に、迅速に長さを短縮させ(例えば、乾燥状態での長さの約2/3に)、直径を広げて(例えば、乾燥状態での直径の約3倍に)、元のウェットキャスト寸法に近づくことを意味する(
図3及び表5)。概して、水和時に長さが縮み直径が拡大する程度は、とりわけ延伸係数に依存する。狭い乾燥寸法は、涙点を通じて小管内に挿入物を投与するのを容易にする一方で、投与後に長さが短縮することにより、眼の小管内で挿入物が短くなり、患者に煩わしい影響が及ぶ潜在可能性を最小限に抑え、小管垂直部での良好なフィット、ひいては良好な保持をもたらす。さらに、挿入物の直径は水和時に拡大するため、患者の個々の小管サイズに適合し、密接にフィットする。これにより、一般的に使用されているプラグ(例えば、コラーゲンプラグまたはシリコンプラグ)で経験されることがある意図しない挿入物の消失が大きく低減される。
【0470】
小管内に挿入物を設置した後、挿入物に含まれる微粉化されたデキサメタゾンは、涙液に溶解して、治療有効量のデキサメタゾンを眼表面に持続的に局所送達する。治療有効量のデキサメタゾンの放出は、例えば、0.2mg挿入物の場合には最大約14日、0.3mg挿入物の場合には最大約21日持続する。全てのデキサメタゾンが挿入物から放出された後、デキサメタゾンが枯渇した挿入物は、投与してからある一定の期間の間(例えば、約1か月、約2か月、約3か月、または約4か月)小管内にとどまり、鼻涙管から除去される(廃棄される/洗い流される)までゆっくりと生分解され小さくなっていく。最大数週間という長期の送達時間に対し1回の投与のみで済むことから、毎日または1日当たり数回も投与しなければならない点眼薬の使用に比べて、患者のコンプライアンスが高められる。デキサメタゾンは、ヒドロゲルと涙液との界面で、主に挿入物の近位端から放出される(
図6に例示的に示す通り)。薬物の徐放速度は、ヒドロゲルマトリックス及び涙液における薬物の溶解度によって制御される。挿入物のヒドロゲルマトリックスは、例えば、小管の水性環境下でエステル加水分解によって生分解するように製剤化する。これにより、挿入物は経時的に軟化し、液化し、(特定の状況で取出しが所望されない限り)取り出す必要なく、鼻涙管を通じて除去される(廃棄される/洗い流される)。したがって、不快な取出しを回避することができる。挿入物は、ドライアイ疾患(DED)の症状及び徴候の治療、特にDEDの(例えば、DEDのエピソード性フレアに対する)急性治療のために適用される。そのため、本出願のデキサメタゾン挿入物は、デキサメタゾン放出による炎症抑制効果と、涙腺閉塞による利益とを組み合わせたものであり、この複合効果は、DEDの治療法の改善をもたらす。
【0471】
実施例2:in vitroでのデキサメタゾン放出
0.2mg及び0.3mg挿入物からのデキサメタゾンの放出速度(表4及び5)をin vitro試験によって定量した。in vitro放出は、以下に簡単に説明するように加速条件下で検討した。1つの挿入物をボトルに入れ、100mLの緩衝溶液(1×リン酸緩衝食塩水、PBS、pH7.4)を加え、挿入物表面全体が緩衝溶液にさらされるようにした。対応する時点で、HPLC分析用に1mLの上清を取り出した。1mLの新鮮な緩衝溶液をボトルに対する置き換えとして加えた。in vitroアッセイは、例えば、挿入物のバッチ間適合を判定するための品質管理に使用することができる。
【0472】
デキサメタゾンは、0.2mg挿入物からは3日後に、0.3mg挿入物からは4日後に完全に放出された(
図4)。
【0473】
実施例3:前臨床試験におけるデキサメタゾン挿入物の評価
ビーグル犬において、様々な用量の活性成分を含むデキサメタゾン挿入物の安全性、忍容性、及び薬物放出を評価した。
【0474】
LC-MS/MSによるデキサメタゾンの定量
三連四重極質量分析計を用いたタンデム質量分析(LC-MS/MS)と組み合わせた高速液体クロマトグラフィーにより、血漿、房水、及び涙液試料中のデキサメタゾン濃度を測定した。
【0475】
涙液試料の調製のため、涙試料ごとに50μLの体積が得られるように、涙液試料に脱イオン水を加えた。次いで、各涙試料に50μLの内部標準溶液(プレドニゾロン-21アセテート)を加えた。房水試料の調製のため、50μLの各房水試料を50μLの内部標準溶液と混合した。試料を13,500rpmで5分間遠心分離した。血漿試料の調製のため、50μLのビーグル犬血漿を、0.1%ギ酸(v/v)を含むアセトニトリル中200μLの内部標準溶液と混合した。血漿試料をボルテックスし、次いで4,000rpmで15分間遠心分離した。異なる試料上清をLC-MS/MS分析に使用した。
【0476】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システムは、Shimadzu AD10vpポンプ及びCTCオートサンプラーからなるものであった。質量分析計(MS)は、ABI3000タンデム質量分析計であった。装置をAnalyst 1.4.2ソフトウェアによって操作した。HPLC移動相は、アセトニトリル及び0.1%ギ酸(v/v)を含むHPLCグレードの水とした。カラムを周囲温度に保ち、試料コンパートメントを2~5℃に保った。移動相の混合から得られたグラジエントを用いて、カラムから分析物を0.8mL/分で溶出させた。デキサメタゾンを陰イオンエレクトロスプレーによってイオン化した。MSシステムを陰イオンモードで操作した。デキサメタゾン(391.0~361.1m/z、保持時間1.23±0.5分)及び内部標準(プレドニゾロン-21アセテート、401.2~321.0m/z;1.29±0.5分)をMSでフラグメント化した。総実行時間は2.4分であった。デキサメタゾン濃度を較正曲線から決定した。試料の分析の前に、デキサメタゾンを含むビーグル犬血漿及び人工涙液を用いて当該方法を検証した。当該方法は、再現可能であり、精密であり、線形であり、正確であり、具体的であることが示された。定量下限は1.0ng/mL、検出下限は0.08~0.06ng/mLと定められた。
【0477】
挿入物からの薬物放出
異なるデキサメタゾン用量を含む本発明に従う挿入物からのデキサメタゾン放出を調べるため、0.22、0.37、0.46、0.58、0.65、0.72、及び0.85mgのデキサメタゾンをそれぞれ含む挿入物を健康なビーグル犬に小管内投与した(用量当たりn=10~14)。挿入物を小管内に挿入した後、10mmシルマー涙試験紙を用いてビーグル犬の眼から涙液試料を採取した。涙液中のデキサメタゾンレベルをLC-MS/MSによって測定した。挿入物は、上記の実施例1で説明したものと同じ方法に従って調製した。本実施例で使用した挿入物の正確な組成を表6に示す。
【表6】
【0478】
示された時点で房水及び/または涙液試料を採取し、上記のようにLC-MS/MSを用いて分析した(表7及び8;0.22mg挿入物については
図5)
【表7】
【表8】
【0479】
涙液及び房水試料における薬物動態結果は同等であった。この値は、デキサメタゾンの徐放を実証するものであり、ほぼ一定のレベルのデキサメタゾンが数日間、用量依存的に涙液及び房水中に認められ、続いて放出薬物量の低減(漸減)が最終的に完全に放出されるまで認められた。例えば、0.22mgのデキサメタゾン挿入物は、7日にわたって涙液中にほぼ一定のデキサメタゾンレベルをもたらし、続いて7日目から濃度が漸減し、投与の17日後に挿入物から完全にデキサメタゾンが放出され、したがって、全体の徐放時間は17日となった(
図5)。
図5に示すように、これらの0.22mg挿入物の涙液中の薬物動態プロファイルを決定するため、0日目に7頭のビーグル(すなわち、合計14眼)の涙点に挿入物を両側性に設置した。挿入物を小管内に挿入後1、2、4、7、10、14、17、21、28、35、37、及び40日目に、10mmシルマー涙試験紙を用いてビーグル犬の眼から涙液試料を採取した。涙液中のデキサメタゾンレベルをLC-MS/MSによって測定した。デキサメタゾンは、対応する標準偏差のエラーバーとともに平均値として提示されている。測定した試料数は、以下の通り:1日目のnは6眼、2日目のnは8眼、14日目及び21日目のnは7眼、28日目のnは6眼、35日目のnは2眼であった。1回の挿入でおよそ14日間、眼表面にデキサメタゾンを送達した。7日目まで涙液中で持続的なレベルのデキサメタゾンが維持され、続いて7日目から14日目にかけて漸減し、17日目までに完全に放出された。0.37mgのデキサメタゾン挿入物は、21日にわたって涙液中に一定のデキサメタゾンレベルをもたらし、続いて21日目から28日目にかけて漸減した(表7)。漸減は房水中においても確認され、0.37mg用量では21日目に、0.46mg用量では28日目に認められた(表8)。注目すべきことに、試験した用量から得られた房水及び涙液のデキサメタゾン濃度は、1滴当たりおよそ50μgのデキサメタゾンを含むMAXIDEX(登録商標)点眼薬(0.1%デキサメタゾン懸濁液)を1日当たり4回適用することにより達成される濃度に相当するものであった。
【0480】
要約すると、7日及び14日におけるビーグル犬の房水中のデキサメタゾン濃度は、試験した全ての用量間で同等であった.さらに、ビーグル犬の涙液中のデキサメタゾン濃度も、7日目において試験した全ての用量間で同等であった。
【0481】
デキサメタゾン挿入物は、定義された数の動物に対し、選択された時点で涙点開口部から手動で表出させることにより、小管から取り出した。残存するデキサメタゾンを挿入物から抽出し、上記のようにLC-MS/MSによって測定した。挿入物から放出されたデキサメタゾンの量を、挿入物を取り出した試験日で割った値を求めることにより、挿入物からの漸減及び完全な枯渇(涙液及び/または房水中のデキサメタゾン濃度の減少により立証される)の前の1日当たりのデキサメタゾン放出速度を算出した(表9)。その結果、求めた1日当たりのデキサメタゾン放出速度は、試験した全ての用量間で同等であることが示される。これは、本発明に従う挿入物からのデキサメタゾン放出速度が、ヒドロゲルマトリックス及び涙液における薬物の溶解度によって調節されるという事実に適合するものである。デキサメタゾンは、主に涙液に近接した界面で、すなわち、涙点開口部に面する挿入部分から放出される(
図6に例示的に示す通り)。したがって、放出される薬物レベルは、挿入物と涙液との間の界面で挿入物中のデキサメタゾン量が十分に低減するまで、ほとんど一定のまま保たれており、これが、涙液及び房水の薬物動態プロファイルで観察されるような緩やかな漸減効果につながっている。これらの試験で測定した本発明に従う挿入物から放出されるデキサメタゾンの平均量は、デキサメタゾンの用量と本質的に無関係であり、漸減及び完全な枯渇の前は1日当たりおよそ0.020mg(または1日当たり約0.015mg~約0.025mg)となっている。
【表9】
【0482】
涙液中に一方向性に薬物が放出されていることが、
図6の0.37mgのデキサメタゾンの挿入物において例示的に視覚的に実証されている。デキサメタゾンは、挿入物が(完全に)生分解される前に挿入物から放出される(例えば、0.37mgのデキサメタゾン挿入物の場合、薬物はおよそ28日後に完全に放出されるが、挿入物はまだかなりの程度において視覚的に分解されていない)が、薬物が枯渇した挿入物が長期に存在することで、涙腺閉塞というさらなる長期の利点がもたらされる。あるいくつかの患者において、より長期のデキサメタゾン治療が必要とされるまたは所望される場合、新たな挿入物を、先の薬物枯渇挿入物の上に設置することができる(「挿入物スタッキング」とも称される)。いずれの場合においても、挿入物は生分解性であるため、挿入物を取り出す必要はなく、それにより患者のコンプライアンスが大きく改善する。
【0483】
0.2mg及び0.3mgのデキサメタゾンをそれぞれ含む挿入物は、投与してから最大約7日(0.2mg挿入物の場合)、及び最大約11日または最大約14日間(0.3mg挿入物の場合)の期間の間、眼表面に本質的に一定の濃度のデキサメタゾンを提供することが期待される。次いで、デキサメタゾン濃度は、0.2mg及び0.3mgのデキサメタゾン挿入物から活性物質が完全に枯渇するまで、およそ次の7日にわたって減少(漸減)する。そのため、本発明に従う挿入物からの治療有効量の徐放は、それぞれ約14日の期間及び約21日の期間の間、もたらされる。
【0484】
挿入物の安全性及び忍容性
0.72mgのデキサメタゾン挿入物における潜在的な眼の毒性、刺激、全身曝露について、ビーグル犬において小管内挿入した後、35日の期間にわたって評価した。14日の回復期間後、任意の毒性作用の可逆性及び遅延発生を評価した。
【0485】
2つの異なる種類の挿入物(これらの各々についてデキサメタゾンを含むバージョン及び含まないバージョンの両方)を評価した。第1の挿入物タイプは、100%の4アーム20k PEG-SGヒドロゲル材料(上記の実施例1で説明の通り)を含むものであった。第2の挿入物タイプは、4アーム20k PEG-SGと、4アーム20k PEG-SSヒドロゲル材料の50/50ブレンドを含むものであった。第2の挿入物タイプについて、言及したPEG前駆体ブレンドを使用したこと以外は、両方の挿入物タイプを上記の実施例1で説明したものと同じ方法に従って調製した。0.72mg挿入物の正確な組成については、表6で言及されている(表6で報告されている0.72mg挿入物の4a20k PEG-SGの50%が、PEGブレンドを含む挿入物の4a20k PEG-SSによって置き換えられたことのみ)。
【0486】
この試験は、2群のビーグル犬を含むものであった。第1群(n=17)の動物には、デキサメタゾンを含む挿入物、すなわち、一方の眼に100%の4アーム20k PEG-SG及びデキサメタゾンを含む第1の挿入物タイプを、他方の眼に50/50PEGブレンド及びデキサメタゾンを含む第2の挿入物タイプを投与し、各動物の各眼に1つの挿入物タイプ(デキサメタゾンあり)を投与するようにし、その結果、総曝露用量は動物当たり1.44mgのデキサメタゾンとなった。第2群(n=16)の動物は、対照挿入物(デキサメタゾンなし)、すなわち、一方の眼に100%の4アーム20k PEG-SGの第1の挿入物タイプを、他方の眼に50/50PEGブレンドの第2の挿入物タイプを投与し、各動物の各眼に1つの挿入物タイプ(デキサメタゾンなし)を投与するようにした。
【0487】
評価には、任意の観察された毒性作用、肉眼剖検、及び病理組織学的所見が含まれた。眼科検査には、スリットランプ生体顕微鏡検査、フルオレセイン染色、眼底鏡検査、及び眼圧測定が含まれた。スリットランプ検査は、角膜、結膜、虹彩、前房、及び水晶体の潜在的な変化を追跡するために使用した。また、フルオレセイン染色を用いて角膜表面も評価した。網膜について、網膜または視神経に対する肉眼的変化を調べ、正常または異常と記録した。臨床観察及び食物摂取観察を毎日行った。体重を毎週測定した。
【0488】
要約すると、デキサメタゾン挿入物は忍容性が良好であった。全身的には、体重、食物摂取、血液学的検査値、臨床化学検査値、凝固、及び尿検査パラメーターにおいて処置に関連する影響は見られなかった。眼の眼内圧及び後眼部の評価においては影響が見られなかった。巨視的及び顕微鏡的評価では、直接的な試験品の毒性を示す試験品関連の所見は示されなかった。涙点における所見は、手順上の合併症または通常のバックグラウンド効果による可能性がある。
【0489】
眼科検査からの観察結果からは、刺激作用は軽度~なし、結膜充血及び眼脂は軽度、瞳孔光反射は緩慢~不在が示された。所見は、挿入物のタイプ(PEG組成)、及び挿入物にデキサメタゾンが含まれているかどうかとは無関係に、全ての群にわたり同等であった。充血所見は軽度であり、有害とはみなさなかった。眼脂は、涙点プラグの存在に関係するものであり、試験品を含む材料に特に関係するものではないものとみなした。緩慢~不在という瞳孔光反射の観察結果は、観察の主観性によるものと考えられ、限定的なものであり、有害とはみなさなかった。14日の回復期間の後、いかなる毒性作用の遅延発生も観察されなかった。
【0490】
血漿濃度(上記のように定量)は、試験期間にわたり全ての動物で定量下限(1.0ng/mL)未満であり、動物当たり1.44mgという高い総用量(2つの挿入物(片眼当たり1つの挿入物)に起因する)であっても、デキサメタゾンの臨床的に重大な全身性曝露が欠如していることを確証するものであった。
【0491】
加えて、デキサメタゾン及びビヒクル対照を含む挿入物の存在も35日の試験期間にわたりモニタリングした。全ての群において、治療期間後も84%超の動物で小管内挿入物が依然存在していた。ただし、100%の4アーム20k PEG-SGを含む挿入物は、50/50PEGブレンドの挿入物に比べて、デキサメタゾンの存在の有無とは無関係に、挿入物が存在する(保持されている)全体的発生率が高かった。
【0492】
実施例4:臨床試験(プロスペクティブ)
0.2mg及び0.3mgのデキサメタゾン挿入物(挿入物の組成及び寸法については表4及び表5を参照)を、ヒトにおけるドライアイ疾患(DED)の急性短期治療の可能性について評価する。プロスペクティブランダム化二重盲検第2相試験において、6か月以上にわたり両眼がDEDと診断されている対象を登録する。さらに、視覚アナログ尺度(VAS)眼乾燥重症度スコアが30以上、眼球結膜充血グレードが2以上であることを要件とする(Cornea and Contact Lens Research Unit,CCLRU scale)。
【0493】
第2相臨床試験の概要は
図7に概説されている。挿入物を挿入する前に、0.2mg及び0.3mgのデキサメタゾン挿入物の適用に関連しない任意の影響を避けるため、DEDの任意の前治療(例えば、点眼薬の適用)を2週間中止することが対象に求められる(「休薬期間」)。対象(0.2mg群において対象50例、0.3mg群において別の対象50例、及びデキサメタゾンなしでプラセボビヒクルのみを投与するさらなる対象50例)には、0.2mgもしくは0.3mgのデキサメタゾン挿入物、またはデキサメタゾンを含まない挿入物(ヒドロゲルビヒクルのみ;プラセボ対照)を両側性に、眼の下涙点または上涙点を通じて下小管または上小管垂直部に挿入する(小管内挿入物)。挿入後1週目、2週目、3週目、4週目、及び8週目にスクリーニング来院を実施して、眼球結膜充血、眼乾燥スコア(VAS尺度)、総角膜フルオレセイン染色、及び有害事象(眼及び眼以外)を評価する。さらに、全ての試験来院時に挿入物の存在を評価する。有効性の主要エンドポイントは、挿入後2週目である。有効性の主要エンドポイントの後も、例えば挿入物の存在を評価するため、長期間の間(さらに6週間;「安全性追跡調査」)患者を追跡調査する。試験経過に応じて、追加のスクリーニング来院または安全性追跡調査の延長を予定することがある。
【国際調査報告】