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特表2023-534958ウイルス検出システムおよびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-15
(54)【発明の名称】ウイルス検出システムおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/416 20060101AFI20230807BHJP
   G01N 33/66 20060101ALI20230807BHJP
   G01N 33/569 20060101ALI20230807BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20230807BHJP
   C12N 9/04 20060101ALI20230807BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20230807BHJP
   C12Q 1/00 20060101ALI20230807BHJP
   C12Q 1/32 20060101ALI20230807BHJP
   C12Q 1/25 20060101ALI20230807BHJP
   C12Q 1/6888 20180101ALI20230807BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230807BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230807BHJP
   C12N 7/00 20060101ALN20230807BHJP
【FI】
G01N27/416 336B
G01N33/66 A ZNA
G01N33/569 L
G01N33/543 545A
G01N27/416 338
C12N9/04 D
C12M1/34 Z
C12Q1/00 B
C12Q1/32
C12Q1/25
C12Q1/6888 Z
A61P31/14
A61K45/00
C12N7/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023502896
(86)(22)【出願日】2021-07-16
(85)【翻訳文提出日】2023-03-06
(86)【国際出願番号】 US2021042008
(87)【国際公開番号】W WO2022016071
(87)【国際公開日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】63/053,048
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/084,814
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.TWEEN
3.スタイロフォーム
(71)【出願人】
【識別番号】301069856
【氏名又は名称】トラスティーズ オブ ボストン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】サンカール カールティカ
(72)【発明者】
【氏名】シャウス スコット
(72)【発明者】
【氏名】ガラガン ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】クラッパーリッチ キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】コナー ジョン
(72)【発明者】
【氏名】グリンスタッフ マーク
(72)【発明者】
【氏名】ヒアロン キース
【テーマコード(参考)】
2G045
4B029
4B063
4B065
4C084
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA25
2G045CA26
2G045CB07
2G045CB12
2G045DA31
2G045FB01
2G045FB05
4B029AA08
4B029BB13
4B029BB20
4B029CC01
4B029FA12
4B029GA08
4B029GB10
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ10
4B063QR02
4B063QR14
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS02
4B063QS34
4B063QX02
4B065AA96X
4B065AA97X
4B065CA46
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZB33
(57)【要約】
本明細書に開示されるシステム、方法、デバイス、およびキットは、生物学的サンプル中の標的分析物の存在および/またはレベルを決定するのに用いられ、ここで該分析物は、病原体(たとえば、ウイルス抗原もしくは全ウイルス)またはそれ以外(たとえば、妊娠)により変化した生理状態と関連づけられる。特定の態様では、システム、方法、デバイス、およびキットは、SARS-CoV-2の検出のための当技術分野で公知のRT-PCTおよびラテラルフロー抗体アッセイと比べて、アッセイ時間、使いやすさ、感染のリスク、確度、特異性、選択性、アッセイの検出限界、定量的検出、およびセンサー出力に対する一般的な干渉物の影響、コスト、単純性、またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、1つまたは複数の改善された特性を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的サンプル中の少なくとも1つの標的分析物を検出するためのシステムであって、
(i)前記少なくとも1つの標的分析物とともに検出可能な複合体をつくることができる第1および第2の結合剤を含む、2結合剤アッセイ;ならびに
(ii)前記検出可能な複合体を検出するための検出デバイス
を含み、
前記検出デバイスは、オキシダーゼベースのアンペロメトリックセンサーであり、前記生物学的サンプルは、汗、唾液、血清、粘液、または血液中に存在している、
システム。
【請求項2】
前記アンペロメトリックセンサーは、オキシダーゼベースのアンペロメトリックセンサーである、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記アンペロメトリックセンサーは、ヒドロゲナーゼまたはデヒドロゲナーゼベースのアンペロメトリックである、請求項2記載のシステム。
【請求項4】
前記生物学的サンプルは、汗、唾液、血清、粘液、または血液である、先行請求項のいずれか一項記載のシステム。
【請求項5】
前記生物学的サンプルは、唾液である、先行請求項のいずれか一項記載のシステム。
【請求項6】
前記検出デバイスは、グルコースメーターである、先行請求項のいずれか一項記載のシステム。
【請求項7】
前記グルコースメーターは、検査ストリップ上の生物学的サンプル中のグルコースに関するセンサー出力を有するグルコースセンサーを含む、請求項6記載のシステム。
【請求項8】
前記生物学的サンプルは、限定ではないがグルコースなどの糖と混合される、先行請求項のいずれか一項記載のシステム。
【請求項9】
前記生物学的サンプルは、限定ではないがグルコースなどの糖と、約0.01 mM~約1 Mの濃度で混合される、請求項8記載のシステム。
【請求項10】
前記第1および第2の結合剤は、アプタマー、抗体、タンパク質、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される、先行請求項のいずれか一項記載のシステム。
【請求項11】
前記第1の結合剤がアプタマーであり、かつ前記第2の結合剤が抗体であり、前記抗体はグルコースオキシダーゼと連結されている、先行請求項のいずれか一項記載のシステム。
【請求項12】
前記第1および第2の結合剤は、前記標的分析物上の異なる部位と結合する、先行請求項のいずれか一項記載のシステム。
【請求項13】
前記第1および第2の結合剤は、前記標的分析物に対し、約1:1000~約1000:1のKdを有する、請求項12記載のシステム。
【請求項14】
前記第1の結合剤の結合親和性は、前記第2の結合剤の結合親和性よりも弱い、請求項12または13記載のシステム。
【請求項15】
前記標的分析物は、全ウイルスまたはその構成要素である、先行請求項のいずれか一項記載のシステム。
【請求項16】
前記ウイルスは、ベータコロナウイルス、インフルエンザウイルス、HIVウイルス、または肝炎ウイルスである、請求項15記載のシステム。
【請求項17】
前記標的コロナウイルス分析物は、SARS-CoV-2、またはその構成要素である、請求項16記載のシステム。
【請求項18】
前記標的分析物は、スパイクタンパク質、膜タンパク質、ヘマグルチニンタンパク質、またはエンベロープタンパク質からなる群より選択されるSARS-CoV-2の構成要素である、請求項17記載のシステム。
【請求項19】
前記標的分析物は、IgG、IgM、およびIgAからなる群より選択される、請求項1~14のいずれか一項記載のシステム。
【請求項20】
生物学的サンプル中の少なくとも1つのウイルスを検出するためのシステムであって、
(i)前記少なくとも1つのウイルスとともに検出可能な複合体をつくることができる第1および第2の結合剤を含む、2結合剤アッセイ;ならびに
(ii)前記検出可能な複合体を検出するための検出デバイス
を含み、
前記検出デバイスはグルコースメーターである、システム。
【請求項21】
前記グルコースメーターは、検査ストリップ上の生物学的サンプル中のグルコースに関するセンサー出力を有するグルコースセンサーを含む、請求項20記載のシステム。
【請求項22】
前記生物学的サンプルは、限定ではないがグルコースなどの糖と混合される、請求項20記載のシステム。
【請求項23】
前記生物学的サンプルは、限定ではないがグルコースなどの糖と、約0.01 mM~約1 Mの濃度で混合される、請求項22記載のシステム。
【請求項24】
前記第1および第2の結合剤は、アプタマー、抗体、タンパク質、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項20~23のいずれか一項記載のシステム。
【請求項25】
前記第1の結合剤がアプタマーであり、かつ前記第2の結合剤が抗体であり、前記抗体はグルコースオキシダーゼと連結されている、請求項20~24のいずれか一項記載のシステム。
【請求項26】
前記第1および第2の結合剤は、前記標的分析物上の異なる部位と結合する、請求項20~25のいずれか一項記載のシステム。
【請求項27】
前記第1および第2の結合剤は、前記標的分析物に対し、約1:1000~約1000:1のKdを有する、請求項26記載のシステム。
【請求項28】
前記第1の結合剤の結合親和性は、前記第2の結合剤の結合親和性よりも弱い、請求項26または27記載のシステム。
【請求項29】
前記標的分析物は、全ウイルスまたはその構成要素である、請求項20~28のいずれか一項記載のシステム。
【請求項30】
前記ウイルスは、ベータコロナウイルスである、請求項29記載のシステム。
【請求項31】
前記標的分析物は、SARS-CoV-2またはその構成要素である、請求項30記載のシステム。
【請求項32】
前記標的分析物は、スパイクタンパク質、膜タンパク質、ヘマグルチニンタンパク質、またはエンベロープタンパク質からなる群より選択されるSARS-CoV-2の構成要素である、請求項31記載のシステム。
【請求項33】
前記標的分析物は、IgG、IgM、およびIgAからなる群より選択される、請求項20~28のいずれか一項記載のシステム。
【請求項34】
診断的評価のための方法であって、
(i)対象から生物学的サンプルを収集する段階であって、前記生物学的サンプルは血液ではない、段階;
(ii)前記生物学的サンプルをグルコースの存在下で検査ストリップに添加する段階であって、前記検査ストリップが、前記生物学的サンプル中に少なくとも1つの標的分析物が存在する場合はそれとともに検出可能な複合体をつくることができる第1および第2の結合剤を含む、段階;
(iii)前記生物学的サンプルを前記検査ストリップとともにインキュベートする段階、またはインキュベートしない段階;
(iv)前記検査ストリップを検出デバイスに差し込む段階;
(v)検出可能な複合体があればそのレベルを、グルコースとグルコースオキシダーゼとの化学反応を通して検出する段階;ならびに
(vi)検出可能な複合体が生成された場合はそのレベルと、前記少なくとも1つの生物学的サンプル中に標的分析物があればその量とを相関させる段階であって、それによって診断的評価を提供する、段階
を含む、方法。
【請求項35】
診断的評価のための方法であって、
(i)対象から生物学的サンプルを収集する段階であって、前記生物学的サンプルは、尿、汗、眼房水を含めた眼性液、血液、糞便、皮脂、呼吸器由来の飛沫、精液、膣粘液、耳垢、表皮細胞、または鼻咽頭検体に由来する、段階;
(ii)前記収集したサンプルを第2の結合剤の存在下で水性の溶液/混合物中1倍~100倍希釈する段階;
(iii)前記生物学的サンプルおよび第2の結合剤を検査ストリップに添加する段階であって、前記検査ストリップが、前記生物学的サンプル中に少なくとも1つの標的分析物が存在する場合はそれとともに検出可能な複合体をつくることができる第1の結合剤を含む、段階;
(iv)前記生物学的サンプルを前記検査ストリップとともにインキュベートする段階、またはインキュベートしない段階;
(v)前記検査ストリップを検出デバイスに差し込む段階;
(vi)検出可能な複合体があればそのレベルを、グルコースとグルコースオキシダーゼとの化学反応を通して検出する段階;ならびに
(vii)検出可能な複合体が生成された場合はそのレベルと、前記少なくとも1つの生物学的サンプル中に標的分析物があればその量とを相関させる段階であって、それによって診断的評価を提供する、段階
を含む、方法。
【請求項36】
前記生物学的サンプルは、唾液である、請求項34および35記載の方法。
【請求項37】
前記検出デバイスは、グルコースメーターである、請求項34および35記載の方法。
【請求項38】
(viii)臨床医または訓練された医療提供者によるその後の検討のために、前記診断的評価または結果を電子デバイス、データベース、またはクラウドサーバーに送信する段階;および
(ix)前記診断的評価の方法を実施した個人に、前記診断的評価を提供する段階
をさらに含む、請求項34および35記載の方法。
【請求項39】
前記個人は、前記対象である、請求項38記載の方法。
【請求項40】
(vi、viii)前記診断的評価に応じて前記対象に1つまたは複数の治療レジメンを推奨する、指示する、および/または投与する段階
をさらに含む、請求項34~37のいずれか一項記載の方法。
【請求項41】
診断的評価のための方法であって、
(i)対象から生物学的サンプルを収集する段階であって、前記生物学的サンプルは、尿、汗、眼房水を含めた眼性液、血液、糞便、皮脂、呼吸器由来の飛沫、精液、膣粘液、耳垢、表皮細胞、または鼻咽頭検体に由来する、段階;
(ii)前記生物学的サンプルを検査ストリップに添加する段階であって、前記検査ストリップが、前記生物学的サンプル中に少なくとも1つの標的分析物が存在する場合はそれとともに検出可能な複合体をつくることができる第1および第2の結合剤を含む、段階;
(iii)前記生物学的サンプルを前記検査ストリップとともにインキュベートする段階、またはインキュベートしない段階;
(iv)前記検査ストリップをグルコメーターなどの検出デバイスに差し込む段階;
(v)検出可能な複合体があればそのレベルを、グルコースとグルコースオキシダーゼとの化学反応を通して検出する段階;ならびに
(vi)検出可能な複合体が生成された場合はそのレベルと、前記少なくとも1つの生物学的サンプル中の標的分析物の量とを相関させる段階であって、それによって診断的評価を提供する、段階
を含む、方法。
【請求項42】
診断的評価のための方法であって、
(i)対象から生物学的サンプルを収集する段階であって、前記生物学的サンプルは、尿、汗、眼房水を含めた眼性液、血液、糞便、皮脂、呼吸器由来の飛沫、精液、膣粘液、耳垢、表皮細胞、または鼻咽頭検体に由来する、段階;
(ii)前記収集したサンプルを第2の結合剤の存在下で水性の溶液/混合物中1倍~100倍希釈する段階;
(iii)前記生物学的サンプルおよび第2の結合剤を検査ストリップに添加する段階であって、前記検査ストリップが、前記生物学的サンプル中に少なくとも1つの標的分析物が存在する場合はそれとともに検出可能な複合体をつくることができる第1の結合剤を含む、段階;
(iv)前記生物学的サンプルを前記検査ストリップとともにインキュベートする段階、またはインキュベートしない段階;
(v)前記検査ストリップをグルコメーターなどの検出デバイスに差し込む段階;
(vi)検出可能な複合体があればそのレベルを、グルコースとグルコースオキシダーゼとの化学反応を通して検出する段階;ならびに
(vii)検出可能な複合体が生成された場合はそのレベルと、前記少なくとも1つの生物学的サンプル中の標的分析物の量とを相関させる段階であって、それによって診断的評価を提供する、段階
を含む、方法。
【請求項43】
(viii)前記診断的評価に応じて1つまたは複数の治療レジメンを推奨する、指示する、および/または投与する段階
をさらに含む、請求項41および42記載の方法。
【請求項44】
診断的評価のための方法であって、
(i)対象から生物学的サンプルを収集する段階であって、前記生物学的サンプルは、尿、汗、眼房水を含めた眼性液、血液、糞便、皮脂、呼吸器由来の飛沫、精液、膣粘液、耳垢、表皮細胞、または鼻咽頭検体に由来する、段階;
(ii)前記生物学的サンプルを検査ストリップに添加する段階であって、前記検査ストリップが、前記生物学的サンプル中に少なくとも1つの標的分析物が存在する場合はそれとともに検出可能な複合体をつくることができる第1および第2の結合剤を含む、段階;
(iii)前記生物学的サンプルを前記検査ストリップとともにインキュベートする段階;
(iv)前記検査ストリップをグルコメーターなどの検出デバイスに差し込む段階;
(v)検出可能な複合体があればそのレベルを、グルコースとグルコースオキシダーゼとの化学反応を通して検出する段階;
(vi)検出可能な複合体が生成された場合はそのレベルと、前記少なくとも1つの生物学的サンプル中に標的分析物があればその量とを相関させる段階であって、それによって診断的評価を提供する、段階;
(vii)臨床医または訓練された医療提供者によるその後の検討のために、前記診断的評価または結果を電子デバイス、データベース、またはクラウドサーバーに送信する段階;ならびに
(viii)前記診断的評価の方法を実施した個人への、前記診断的評価またはアウトカムの送信
を含む、方法。
【請求項45】
診断的評価のための方法であって、
(i)対象から生物学的サンプルを収集する段階であって、前記生物学的サンプルは、尿、汗、眼房水を含めた眼性液、血液、糞便、皮脂、呼吸器由来の飛沫、精液、膣粘液、耳垢、表皮細胞、または鼻咽頭検体に由来する、段階;
(ii)前記収集したサンプルを第2の結合剤の存在下で水性の溶液/混合物中1倍~100倍希釈する段階;
(iii)前記生物学的サンプルを検査ストリップに添加する段階であって、前記検査ストリップが、前記生物学的サンプル中に少なくとも1つの標的分析物が存在する場合はそれとともに検出可能な複合体をつくることができる第1の結合剤を含む、段階;
(iv)前記生物学的サンプルを前記検査ストリップとともにインキュベートする段階;
(v)前記検査ストリップをグルコメーターなどの検出デバイスに差し込む段階;
(vi)検出可能な複合体があればそのレベルを、グルコースとグルコースオキシダーゼとの化学反応を通して検出する段階;
(vii)検出可能な複合体が生成された場合はそのレベルと、前記少なくとも1つの生物学的サンプル中に標的分析物があればその量とを相関させる段階であって、それによって診断的評価を提供する、段階;
(viii)臨床医または訓練された医療提供者によるその後の検討のために、前記診断的評価または結果を電子デバイス、データベース、またはクラウドサーバーに送信する段階;ならびに
(ix)前記診断的評価の方法を実施した個人への、前記診断的評価またはアウトカムの送信
を含む、方法。
【請求項46】
前記個人は、前記対象である、請求項44および45記載の方法。
【請求項47】
(ix、x)前記診断的評価に応じて前記対象に1つまたは複数の治療レジメンを推奨する、指示する、および/または投与する段階
をさらに含む、請求項44および45記載の方法。
【請求項48】
1つまたは複数の異なる標的分析物が、同時にまたは連続的に評価される、請求項1~33もしくは76~98のいずれか一項記載のシステム、または請求項34~47もしくは56~75もしくは99~104のいずれか一項記載の方法。
【請求項49】
請求項1~33のいずれか一項記載のシステムまたは請求項34~47もしくは56~75のいずれか一項記載の方法で使用される、検査ストリップであって、
(i)基体、第1および第2の結合剤の少なくとも1つ、ならびに2つもしくはそれ以上の電極;
(ii)基体、第1および第2の結合剤両方、ならびに2つもしくはそれ以上の電極;
(iii)第1および第2の結合剤の少なくとも1つ、ならびに2つもしくはそれ以上の電極;または
(iv)第1および第2の結合剤両方、ならびに2つもしくはそれ以上の電極
の少なくとも1つを含む、検査ストリップ。
【請求項50】
(i)炭素、鉄、パラジウム、白金、または金でできた1つまたは複数の平面または共面電極;
(ii)メディエーターとしてのフェロシアン化第一鉄塩などの鉄塩で被覆された電極;
(iii)メディエーターとしてのプルシアンブルーで被覆された電極;
(iv)電解質溶液と接面する電極が(半)導体固体であるn電極セットアップ;
(v)前記電極セットアップが、作用電極、基準電極、および対または補助電極を含む;
(vi)電流リードとセンスリードとが接続されており、作用および作用センスが作用電極と接続されており、かつ基準および対が第2の補助、対、または擬似/擬基準電極と接続されている、2電極セットアップ;
(vii)基準リードが、対から分離されており、かつ作用および作用センスリードの両方が取りつけられている作用電極の至近点を測定するように大抵配置される第3の電極と接続されている、3電極セットアップ;
(viii)前記基準リードに加えて、作用センスリードが作用電極から切り離されている、4電極セットアップ;ならびに/あるいは
(ix)電気化学セル全体の電圧低下が正味ゼロとなるように、ストリップ内で作用電極リードと対電極リードとが共に短絡される、無抵抗電流計
の少なくとも1つを含む、検査ストリップ。
【請求項51】
前記第1の結合剤は、多孔質ポリマー、金属、またはセラミック膜に固定化され、かつ前記膜は電極の上または間に配置される、請求項49または50記載の検査ストリップ。
【請求項52】
前記膜はニトロセルロースである、請求項51記載の検査ストリップ。
【請求項53】
請求項49、50、51、または52のいずれか一項記載の検査ストリップを含む、キット。
【請求項54】
前記検査ストリップの使用のための説明を含む、請求項53記載のキット。
【請求項55】
グルコメーターまたはほかの電気化学的検出デバイスをさらに含む、請求項53記載のキット。
【請求項56】
(i)対象由来の生物学的サンプルを準備する段階、
(ii)前記生物学的サンプル中の標的分析物の存在を、上記請求項に記載のシステムを使って検出する段階であって、前記標的分析物は、SARS-CoV-2ウイルスまたはその構成要素である、段階;および
(iii)任意で、前記対象を治療剤で治療する段階
を含む、方法。
【請求項57】
前記生物学的サンプルは、唾液である、請求項56記載の方法。
【請求項58】
前記標的分析物は、SARS-CoV-2ウイルスである、請求項56~57のいずれか一項記載の方法。
【請求項59】
前記標的分析物は、SARS-CoV-2ウイルスの構成要素である、請求項56~57のいずれか一項記載の方法。
【請求項60】
前記構成要素は、Sタンパク質またはその断片である、請求項56~59のいずれか一項記載の方法。
【請求項61】
(i)対象由来の生物学的サンプルを準備する段階、
(ii)前記生物学的サンプル中の標的分析物の存在を、上記請求項のシステムを使って検出する段階であって、前記標的分析物は、CoVウイルスまたはその構成要素である、段階、および
(iii)任意で、前記対象を治療剤で治療する段階
を含む、方法。
【請求項62】
前記生物学的サンプルは、唾液である、請求項61記載の方法。
【請求項63】
前記標的分析物は、CoVウイルスである、請求項61または62記載の方法。
【請求項64】
(i)対象由来の生物学的サンプルを準備する段階、
(ii)前記生物学的サンプル中の標的分析物の存在を、上記請求項のシステムを使って検出する段階であって、前記標的分析物は、インフルエンザウイルスまたはその構成要素である、段階、および
(iii)任意で、前記対象を治療剤で治療する段階
を含む、方法。
【請求項65】
前記生物学的サンプルは、唾液である、請求項64記載の方法。
【請求項66】
前記標的分析物は、インフルエンザウイルスである、請求項64または65記載の方法。
【請求項67】
前記標的分析物は、インフルエンザウイルスの構成要素である、請求項64または65記載の方法。
【請求項68】
(i)対象由来の生物学的サンプルを準備する段階、
(ii)前記生物学的サンプル中の標的分析物の存在を、上記請求項のシステムを使って検出する段階であって、前記標的分析物は、HIVウイルスまたはその構成要素である、段階、および
(iii)任意で、前記対象を治療剤で治療する段階
を含む、方法。
【請求項69】
前記生物学的サンプルは、唾液である、請求項68記載の方法。
【請求項70】
前記標的分析物は、HIVウイルスである、請求項68または69記載の方法。
【請求項71】
前記標的分析物は、HIVウイルスの構成要素である、請求項68または69記載の方法。
【請求項72】
(i)対象由来の生物学的サンプルを準備する段階、
(ii)前記生物学的サンプル中の標的分析物の存在を、上記請求項のシステムを使って検出する段階であって、前記標的分析物は、肝炎ウイルスまたはその構成要素である、段階、および
(iii)任意で、前記対象を治療剤で治療する段階
を含む、方法。
【請求項73】
前記生物学的サンプルは、唾液である、請求項72記載の方法。
【請求項74】
前記標的分析物は、肝炎ウイルスである、請求項72または73記載の方法。
【請求項75】
前記標的分析物は、肝炎ウイルスの構成要素である、請求項72または73記載の方法。
【請求項76】
生物学的サンプル中の少なくとも1つの標的核酸を検出するためのシステムであって、
(i)前記標的核酸が配列特異的エンドヌクレアーゼおよびガイド核酸に特異的に結合すると、コラテラル核酸を切断する、配列特異的エンドヌクレアーゼおよびガイド核酸;
(ii)前記切断されたコラテラル核酸とともに検出可能な複合体をつくることができる、検出核酸;ならびに
(iii)前記検出可能な複合体を検出するための検出デバイス
を含み、
前記検出デバイスは、オキシダーゼベースのアンペロメトリックセンサーであり、かつ前記生物学的サンプルは、汗、唾液、血清、粘液、または血液中に存在している、
システム。
【請求項77】
前記配列特異的エンドヌクレアーゼは、Cas酵素である、請求項76記載のシステム。
【請求項78】
前記配列特異的エンドヌクレアーゼは、Cas12aまたはCas13である、請求項76または77記載のシステム。
【請求項79】
前記ガイド核酸は、前記標的核酸の少なくとも一部分に対し相補的または実質的に相補的である、請求項76~78のいずれか一項記載のシステム。
【請求項80】
前記検出核酸は、前記切断されたコラテラル核酸の少なくとも一部分に対し相補的または実質的に相補的である、請求項76~79のいずれか一項記載のシステム。
【請求項81】
前記検出核酸は、前記切断されたコラテラル核酸とハイブリダイズする、請求項76~80のいずれか一項記載のシステム。
【請求項82】
前記検出核酸は、切断されていないコラテラル核酸とはハイブリダイズしない、請求項76~81のいずれか一項記載のシステム。
【請求項83】
前記検出核酸は、検査ストリップと連結されている、請求項76~82のいずれか一項記載のシステム。
【請求項84】
前記コラテラル核酸は、グルコースオキシダーゼと連結されている、請求項76~83のいずれか一項記載のシステム。
【請求項85】
グルコースオキシダーゼと連結されたアプタマーをさらに含む、請求項76~84のいずれか一項記載のシステム。
【請求項86】
前記アプタマーは、前記切断されたコラテラル核酸の少なくとも一部分と特異的に結合する、請求項85記載のシステム。
【請求項87】
前記アプタマーは、前記切断されたコラテラル核酸の一本鎖部分と結合する、請求項86記載のシステム。
【請求項88】
前記アプタマーは、前記検出核酸とハイブリダイズした前記切断されたコラテラル核酸の二本鎖部分と結合する、請求項86記載のシステム。
【請求項89】
グルコースオキシダーゼと連結された抗体をさらに含む、請求項76~88のいずれか一項記載のシステム。
【請求項90】
前記抗体は、前記切断されたコラテラル核酸の少なくとも一部分と特異的に結合する、請求項89記載のシステム。
【請求項91】
前記コラテラル核酸は、グルコースオキシダーゼと特異的に結合する抗体と連結されている、請求項76~90のいずれか一項記載のシステム。
【請求項92】
前記コラテラル核酸は、親和性対の第1のメンバーと連結されている、請求項76~91のいずれか一項記載のシステム。
【請求項93】
親和性対の第2のメンバーと連結されたグルコースオキシダーゼをさらに含む、請求項92記載のシステム。
【請求項94】
親和性対の第1のメンバーおよび第2のメンバーが、
ハプテン性または抗原性化合物と、対応する抗体またはその結合部分もしくはその断片との組み合わせ;ジゴキシゲニンおよび抗ジゴキシゲニン;マウス免疫グロブリンおよびヤギ抗マウス免疫グロブリン;非免疫的結合対;ビオチンおよびアビジン;ビオチンおよびストレプトアビジン;ホルモンおよびホルモン結合タンパク質;チロキシンおよびコルチゾールホルモン結合タンパク質;受容体および受容体アゴニスト;受容体および受容体アンタゴニスト;アセチルコリン受容体およびアセチルコリンまたはそのアナログ;IgGおよびプロテインA;レクチンおよび炭水化物;酵素および酵素補因子;酵素および酵素阻害剤;核酸二本鎖を作ることのできる相補的オリゴヌクレオチド対;ならびに負電荷をもつ第1の分子および正電荷をもつ第2の分子
からなる群より選択される、請求項92または93記載のシステム。
【請求項95】
親和性対の第1のメンバーおよび第2のメンバーは、ストレプトアビジンおよびビオチンである、請求項92または93記載のシステム。
【請求項96】
ストレプトアビジンは前記コラテラル核酸と連結され、ビオチンは前記グルコースオキシダーゼと連結されている、請求項92~95のいずれか一項記載のシステム。
【請求項97】
ビオチンは前記コラテラル核酸と連結され、ストレプトアビジンは前記グルコースオキシダーゼと連結されている、請求項92~95のいずれか一項記載のシステム。
【請求項98】
前記標的核酸はウイルス核酸である、請求項76~97のいずれか一項記載のシステム。
【請求項99】
請求項76~98のいずれか一項記載のシステムを用いて標的核酸を検出するための方法であって、
(i)対象から生物学的サンプルを収集し、かつ任意で、前記生物学的サンプルから核酸を抽出する段階;
(ii)前記生物学的サンプルを、配列特異的エンドヌクレアーゼ、ガイド核酸、およびコラテラル核酸と接触させる段階であって、前記標的核酸が存在する場合は、そのように接触させることが前記コラテラル核酸の切断という結果をもたらす、段階;
(iii)前記生物学的サンプルをグルコースの存在下で検査ストリップに添加する段階であって、前記検査ストリップが、前記切断されたコラテラル核酸が存在する場合はそれとともに検出可能な複合体をつくることができる検出核酸を含む、段階;
(iv)前記生物学的サンプルを前記検査ストリップとともにインキュベートする段階、またはインキュベートしない段階;
(v)前記検査ストリップを検出デバイスに差し込む段階;
(vi)検出可能な複合体があればそのレベルを、グルコースとグルコースオキシダーゼとの化学反応を通して検出する段階;ならびに
(vii)検出可能な複合体が生成された場合はそのレベルと、前記少なくとも1つの生物学的サンプル中の標的分析物の量とを相関させる段階であって、それによって診断的評価を提供する、段階
を含む、方法。
【請求項100】
前記生物学的サンプルは、唾液である、請求項99記載の方法。
【請求項101】
前記検出デバイスは、グルコースメーターである、請求項99または100記載の方法。
【請求項102】
(viii)臨床医または訓練された医療提供者によるその後の検討のために、前記診断的評価または結果を電子デバイス、データベース、またはクラウドサーバーに送信する段階;および
(ix)前記診断的評価の方法を実施した個人に、前記診断的評価を提供する段階
をさらに含む、請求項99~101のいずれか一項記載の方法。
【請求項103】
前記個人は、前記対象である、請求項99~102のいずれか一項記載の方法。
【請求項104】
(viii)前記診断的評価に応じて前記対象に1つまたは複数の治療レジメンを推奨する、指示する、および/または投与する段階
をさらに含む、請求項99~103のいずれか一項記載の方法。
【請求項105】
検出核酸と連結されている、請求項49~52のいずれか一項記載の検査ストリップ。
【請求項106】
請求項105記載の検査ストリップを含む、キット。
【請求項107】
生物学的サンプル中の少なくとも1つの標的分析物を検出するためのセンサーであって、
(i)前記少なくとも1つの標的分析物とともに検出可能な複合体をつくることができる第1および第2の結合剤を含む、2結合剤アッセイ;ならびに
(ii)前記検出可能な複合体を検出するための検出デバイス
を含み、
前記検出デバイスは、オキシダーゼベースのアンペロメトリックセンサーであり、前記生物学的サンプルは、汗、唾液、血清、粘液、または血液中に存在している、
センサー。
【請求項108】
生物学的サンプル中の少なくとも1つのウイルスを検出するためのセンサーであって、
(i)前記少なくとも1つのウイルスとともに検出可能な複合体をつくることができる第1および第2の結合剤を含む、2結合剤アッセイ;ならびに
(ii)前記検出可能な複合体を検出するための検出デバイス
を含み、
前記検出デバイスは、グルコースメーターである、センサー。
【請求項109】
生物学的サンプル中の少なくとも1つの標的核酸を検出するためのセンサーであって、
(i)前記標的核酸が配列特異的エンドヌクレアーゼおよびガイド核酸に特異的に結合すると、コラテラル核酸を切断する、配列特異的エンドヌクレアーゼおよびガイド核酸;
(ii)前記切断されたコラテラル核酸とともに検出可能な複合体をつくることができる、検出核酸;ならびに
(iii)前記検出可能な複合体を検出するための検出デバイス
を含み、
前記検出デバイスは、オキシダーゼベースのアンペロメトリックセンサーであり、前記生物学的サンプルは、汗、唾液、血清、粘液、または血液中に存在している、
センサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許法第119条(e)の下、2020年7月21日に出願された米国特許仮出願第63/053,048号、および2020年9月29日に出願された同第63/084,814号の恩典を主張するものであり、これらの内容はすべて、参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
米国政府による支援
本発明は、国立衛生研究所により交付番号AI151559として認められた、および国防総省により契約番号TTW-27-9661として認められた、米国政府の支援によりなされた。米国政府は本発明に対して一定の権利を有する。
【0003】
配列表
本願には、EFS-Webを通してASCIIフォーマットで提出された配列表が含まれ、その内容はすべて、参照により本明細書に組み入れられる。2021年7月15日に作成された該ASCIIのコピーは、名称は701586-098060WOPT_SL.txtであり、サイズは63,151バイトである。
【0004】
技術分野
本明細書では、標的分析物を検出および観察するためのシステム、方法、デバイス、およびキットが開示される。特定の態様では、標的分析物は病態(たとえば、ウイルス感染症)の結果と関連づけられるが、ほかの態様では、標的分析物は病原体、(たとえば)ウイルス自体である。特定の態様では、高速定量ポイントオブケア(POC)システム、シングルユーザーシステム、または家庭用システム、およびSARS-CoV-2、インフルエンザ、またはほかのウイルスを検出する方法が開示され、該システムおよび方法は、グルコースオキシダーゼベースのアンペロメトリックセンサーを含む。
【背景技術】
【0005】
背景
長期にわたり新興しては再興する病原体を含め、感染性疾患は、重大な公衆衛生的および経済的脅威をもたらし続ける。その破壊的な一例がコロナウイルスパンデミック(SARS-CoV-2)であり、介入策が緊急に探求されている。コロナウイルスパンデミックにかかわらず感染性疾患の拡大率はすでに上昇しつつあったが、人口学的傾向および気候変動から、この問題は悪化の一途をたどり得ることが伺える。
【0006】
感染者を特定して隔離および/または早期介入するには、包括的検査が重要なアプローチとなる。SARS-CoV-2検査の現行のゴールドスタンダードは逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)に基づくものであり、呼吸器からのサンプルを用いてウイルス核酸を得ること、経験を積んだ職員、多量の試薬ストック、高価な設備に依存し、偽陰性がきわめて多い。高い偽陰性率を有するRT-PCRのほかにも、呼吸器からサンプルを提供する体験(たとえば、鼻腔スワブ)は不快であり得るため、検査は低調になりかねない。そのため、SARS-CoV-2についてのRT-PCR検査の件数および有用性は、最適とはいえない。
【0007】
代替として、SARS-CoV-2抗体を検出するラテラルフロー免疫アッセイがいくつか開発された。これらの検査は、免疫応答として体内で生産される3タイプの抗体、すなわちIgG、IgM、およびIgAの存在を探すものである。しかし、体がこれらの抗体を生産するには典型的には感染後5~10日を要するため、これらの抗体ベースのアッセイは、SARS-CoV-2感染症の早期診断に関し、RT-PCRほど有用ではない。最後に、抗体検査は、高い偽陽性率をもたらす感度および特異性の問題を抱える傾向がある。
【0008】
SARS-CoV-2の検査、ならびにほかのウイルス性の病的な変化した生理的状態に関する検査の件数および有用性を改善する必要は、今もある。
【発明の概要】
【0009】
概要
本明細書に開示されるシステム、方法、デバイス、およびキットを用いて、生物学的サンプル中の標的分析物の存在および/またはレベルを決定することができ、ここでたとえば、分析物は、病原体による、またはそれ以外のウイルス感染により変化した生理状態と関連づけられる。特定の態様では、システム、方法、デバイス、およびキットは、当技術分野で公知のRT-PCRおよびラテラルフロー抗体アッセイに対し相対的に、アッセイ時間、使いやすさ、感染のリスク、確度、特異性、選択性、アッセイの検出限界、定量的検出、およびセンサー出力に対する一般的な干渉物の影響、コスト、単純性、またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、1つまたは複数の改善された特性を提供する。
【0010】
一局面では、生物学的サンプル中の少なくとも1つの標的核酸を検出するためのシステムが開示され、該システムは、(i)該少なくとも1つの標的分析物とともに検出可能な複合体をつくることができる第1および第2の結合剤を含む、少なくとも2結合剤のアッセイと、(ii)該検出可能な複合体を検出するための検出デバイスとを含み、該検出デバイスは、グルコメーターまたはグルコースオキシダーゼベースのアンペロメトリックセンサーであり、該生物学的サンプルは、汗、唾液、血清、粘液、または血液中に存在している。
【0011】
一態様では、グルコメーターは、手持ち式携帯グルコースメーターであり、検査ストリップ上の生物学的サンプル中のグルコースに関するセンサー出力を有するグルコースセンサーを含む。具体的には、グルコースセンサーは、生物学的サンプル中のグルコースではない標的分析物の存在または濃度と相関のある出力を生じさせる。
【0012】
一態様では、グルコースオキシダーゼがグルコースの酸化を触媒して過酸化水素が形成し、すると、それが1つまたは複数の電極によるアンペロメトリー測定(たとえば電流の変化)により定量化される。生物学的サンプル中のグルコースの量は過剰であり、検出用に添加されているので、アンペロメトリーは、標的分析物、たとえば、SARS-CoV-2、H1N1、その他の定量化に関する。
【0013】
一態様では、生物学的サンプルは、唾液である。
【0014】
他の態様では、生物学的サンプルは、尿、汗、眼房水を含めた眼性液、血液、糞便、皮脂、呼吸器由来の飛沫、精液、膣粘液、耳垢、表皮細胞、痰、胸水、脳液、または鼻咽頭検体である。
【0015】
一態様では、生物学的サンプルは、グルコースと混合される。
【0016】
他の態様では、生物学的サンプルは、0.01 mM~1 Mの濃度のグルコースと混合される。
【0017】
他の態様では、生物学的サンプルは、アミラーゼもしくはインベルターゼを含む、(溶解限の)0.01 mM~1 Mの濃度のスクロース、フルクトース、マルトース、ガラクトース、セルロース、または任意の組み合わせと混合される。
【0018】
標的分析物を検出可能な複合体の一態様では、第1および第2の結合剤は、アプタマー、抗体、またはタンパク質から選択される。
【0019】
標的分析物を検出可能な複合体の一態様では、第1および第2の結合剤は、アプタマー、抗体、またはタンパク質から選択され、かつ第2の結合剤は、オキシダーゼ酵素と連結されたアプタマー、抗体、またはタンパク質から選択される。
【0020】
標的分析物を検出可能な複合体の特定の態様では、第1および第2の結合剤は、それぞれアプタマー、抗体、またはタンパク質から選択され、かつ第2の結合剤は、グルコースオキシダーゼと連結された、かつ発酵プロセスから生産されたアプタマー、抗体、またはタンパク質から選択される。
【0021】
標的分析物を検出可能な複合体の特定の態様では、第1および第2の結合剤は、それぞれアプタマー、抗体、またはタンパク質から選択され、かつ第2の結合剤は、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、D-グルコース:D-フルクトースオキシドレダクターゼ、およびセロビオースオキシダーゼと連結されたアプタマー、抗体、またはタンパク質から選択される。
【0022】
標的分析物を検出可能な複合体の一態様では、第1および第2の結合剤は、それぞれアプタマー、抗体、またはタンパク質から選択され、かつ第2の結合剤は、ヒドロゲナーゼ酵素と連結されたアプタマー、抗体、またはタンパク質から選択される。
【0023】
標的分析物を検出可能な複合体の特定の態様では、第1および第2の結合剤は、それぞれアプタマー、抗体、またはタンパク質から選択され、かつ第2の結合剤は、グルコースデヒドロゲナーゼ、グルコース6-リン酸デヒドロゲナーゼ、フルクトースデヒドロゲナーゼ、スクロースデヒドロゲナーゼ、グルコシドデヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、ソルビトールデヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、およびリンゴ酸デヒドロゲナーゼと連結されたアプタマー、抗体、またはタンパク質から選択される。
【0024】
標的分析物を検出可能な複合体の特定の態様では、第1および第2の結合剤は、標的分析物上の第1の部位および異なる第2の部位にそれぞれ結合する。
【0025】
標的分析物を検出可能な複合体の別の態様では、第1および第2の結合剤は、標的分析物上の同じ部位とそれぞれ結合する。標的分析物上の該部位は複数のコピー(>100)として存在するので、第1および第2の結合剤にとって十分な部位がある。
【0026】
特定の態様では、標的分析物上の第1の部位に対する第1の結合剤の結合親和性は、標的分析物上の第2の部位に対する第2の結合剤の結合親和性よりも高い。
【0027】
特定の態様では、標的分析物上の第1の部位に対する第1の結合剤の結合親和性は、標的分析物上の第2の部位に対する第2の結合剤の結合親和性と同様である。
【0028】
特定の態様では、標的分析物上の第1の部位に対する第1の結合剤の結合親和性は、標的分析物上の第2の部位に対する第2の結合剤の結合親和性よりも弱い。
【0029】
一態様では、少なくとも1つの標的分析物は、ウイルス、またはウイルス感染から生産された抗体から選択される。
【0030】
ある特定の態様では、少なくとも1つの標的分析物は、ウイルスであり、より具体的には、ベータコロナウイルスなどのコロナウイルスであり、さらに具体的には、SARS-CoV-2である。
【0031】
一態様では、第1および第2の結合剤は、SARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質の異なるエピトープと結合する。ある特定の態様では、エピトープの少なくとも1つが、Sタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)内にある。
【0032】
一態様では、結合剤のうち1つが、ヒトアンジオテンシン変換酵素(ACE)を用いてSARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質と結合する。ある特定の態様では、ACEタンパク質は、Sタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)と結合する。
【0033】
ある特定の態様では、少なくとも1つの標的分析物は、ウイルスであり、より具体的には、ベータコロナウイルスなどのコロナウイルスであり、さらに具体的には、SARS-CoVである。
【0034】
一態様では、第1および第2の結合剤は、SARS-CoVスパイク(S)タンパク質の異なるエピトープと結合する。ある特定の態様では、エピトープの少なくとも1つが、S1タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)内にある。
【0035】
一態様では、結合剤のうち1つが、ヒトアンジオテンシン変換酵素(ACE)を用いてSARS-CoV-1スパイク(S)タンパク質と結合する。ある特定の態様では、ACEタンパク質は、Sタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)と結合する。
【0036】
ある特定の態様では、少なくとも1つの標的分析物は、ウイルスであり、より具体的には、ライノウイルスである。
【0037】
一態様では、第1および第2の結合剤は、ライノウイルスの4つの可能なカプシドタンパク質の1つと結合する。
【0038】
ある特定の態様では、少なくとも1つの標的分析物は、ウイルスであり、より具体的には、229E型、NL63型、OC43型、およびHKU1型を含めた一般的なヒトコロナウイルスである。
【0039】
一態様では、第1および第2の結合剤は、一般的なヒトコロナウイルスのスパイクタンパク質、膜タンパク質、ヘマグルチニンタンパク質、エンベロープ、またはエンベロープタンパク質と結合する。
【0040】
ある特定の態様では、少なくとも1つの標的分析物は、ウイルスであり、より具体的には、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、パラインフルエンザ(PIV)、H1N1、またはヘルペスウイルスである。
【0041】
一態様では、第1および第2の結合剤は、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、パラインフルエンザ(PIV)、またはH1N1の融合タンパク質、膜タンパク質、ヘマグルチニンタンパク質、ノイラミニダーゼタンパク質、エンベロープ、またはエンベロープタンパク質と結合する。
【0042】
ある特定の態様では、少なくとも1つの標的分析物は、ウイルスであり、より具体的には、ヒトメタニューモウイルスである。
【0043】
一態様では、第1および第2の結合剤は、ヒトメタニューモウイルスの融合タンパク質、SHタンパク質、基質タンパク質、糖タンパク質、エンベロープ、またはエンベロープタンパク質と結合する。
【0044】
ある特定の態様では、少なくとも1つの標的分析物は、ウイルスであり、より具体的には、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)である。
【0045】
一態様では、第1および第2の結合剤は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のMHCタンパク質、p17基質タンパク質、gp120ドッキング糖タンパク質、gp41膜貫通糖タンパク質、エンベロープ、またはエンベロープタンパク質と結合する。
【0046】
ある特定の態様では、少なくとも1つの標的分析物は、ウイルスであり、より具体的には、エボラウイルスである。
【0047】
一態様では、第1および第2の結合剤は、エボラウイルスの糖タンパク質、基質タンパク質、核タンパク質、エンベロープ、またはエンベロープタンパク質と結合する。
【0048】
ある特定の態様では、少なくとも1つの標的分析物は、ウイルスであり、より具体的には、マールブルグウイルスである。
【0049】
一態様では、第1および第2の結合剤は、マールブルグウイルスの糖タンパク質、VP40基質タンパク質、核タンパク質、エンベロープ、またはエンベロープタンパク質と結合する。
【0050】
ある特定の態様では、少なくとも1つの標的分析物は、ウイルスであり、より具体的には、ラッサウイルスである。
【0051】
一態様では、第1および第2の結合剤は、ラッサウイルスの糖タンパク質1、糖タンパク質2、大タンパク質、ジンクタンパク質、安定信号ペプチド(SSP)、核タンパク質、エンベロープ、またはエンベロープタンパク質と結合する。
【0052】
一態様では、結合アッセイは、2つ以上の標的分析物、たとえば、2つ以上のウイルスの検出を可能にする。
【0053】
別の特定の態様では、第1の結合剤は、検査ストリップと結合したアプタマー、抗体、またはタンパク質である。
【0054】
別の特定の態様では、第1の結合剤は、検査ストリップと該ストリップに配置された高分子膜を介して結合した、アプタマー、抗体、またはタンパク質である。
【0055】
別の特定の態様では、第1の結合剤は、検査ストリップと該ストリップに配置されたニトロセルロース膜などの親水性膜を介して結合した、アプタマー、抗体、またはタンパク質である。
【0056】
別の特定の態様では、第1の結合剤は、検査ストリップと該ストリップ上の電極の真上または2つの電極間に配置されているニトロセルロース膜などの親水性膜を介して結合した、アプタマー、抗体、またはタンパク質である。
【0057】
別の特定の態様では、第1の結合剤は、検査ストリップと該ストリップに電極の上または2つの電極間で固定されているニトロセルロース膜などの親水性膜を介して結合した、アプタマー、抗体、またはタンパク質である。
【0058】
別の特定の態様では、第1の結合剤は、親水性膜を介して検査ストリップと結合したアプタマー、抗体、またはタンパク質であって、該膜はまた、生物学的サンプルを収集し、かつシンクエリアを提供して該サンプルを該膜上の一カ所から別の箇所へと流す。
【0059】
別の特定の態様では、第1の結合剤は、ニトロセルロース膜などの親水性膜を介して検査ストリップと結合したアプタマー、抗体、またはタンパク質であって、該膜はまた、生物学的サンプルを収集し、かつシンクエリアを提供して該サンプルを該膜上の一カ所から別の箇所へと流す。
【0060】
別の局面では、生物学的サンプル中の1つのウイルスを検出するためのシステムが開示され、該システムは、(i)該少なくとも1つのウイルスとともに検出可能な複合体をつくることができる第1および第2の結合剤を含む、2結合剤アッセイと、(ii)該検出可能な複合体を検出するための検出デバイスとを含み、該検出デバイスは、グルコメーター(本明細書ではグルコースメーターとも呼ばれる)である。
【0061】
一態様では、生物学的サンプルは、唾液である。
【0062】
他の態様では、生物学的サンプルは、尿、汗、眼房水を含めた眼性液、血液、糞便、皮脂、呼吸器由来の飛沫、精液、膣粘液、耳垢、表皮細胞、鼻腔サンプル、胸水、脳脊髄液、または鼻咽頭検体である。一態様では、生物学的サンプルは、グルコースと混合される。
【0063】
他の態様では、生物学的サンプルは、0.01 mM~1 Mの濃度のグルコースと混合される。
【0064】
他の態様では、生物学的サンプルは、アミラーゼもしくはインベルターゼを含む、0.01 mM~1 Mの濃度のスクロース、フルクトース、マルトース、ガラクトース、セルロース、または任意の組み合わせと混合される。
【0065】
標的分析物を検出可能な複合体の一態様では、第1および第2の結合剤は、アプタマー、抗体、またはタンパク質から選択される。
【0066】
標的分析物を検出可能な複合体の一態様では、第1および第2の結合剤は、アプタマー、抗体、またはタンパク質から選択され、かつ第2の結合剤は、オキシダーゼ酵素と連結されたアプタマー、抗体、またはタンパク質から選択される。
【0067】
標的分析物を検出可能な複合体の特定の態様では、第1および第2の結合剤は、アプタマー、抗体、またはタンパク質から選択され、かつ第2の結合剤は、グルコースオキシダーゼと連結された、かつ発酵プロセスにより生産されたアプタマー、抗体、またはタンパク質から選択される。
【0068】
標的分析物を検出可能な複合体の特定の態様では、第1および第2の結合剤は、アプタマー、抗体、またはタンパク質から選択され、かつ第2の結合剤は、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、D-グルコース:D-フルクトースオキシドレダクターゼ、およびセロビオースオキシダーゼと連結されたアプタマー、抗体、またはタンパク質から選択される。
【0069】
標的分析物を検出可能な複合体の一態様では、第1および第2の結合剤は、アプタマー、抗体、またはタンパク質から選択され、かつ第2の結合剤は、ヒドロゲナーゼ酵素と連結されたアプタマー、抗体、またはタンパク質から選択される。
【0070】
標的分析物を検出可能な複合体の特定の態様では、第1および第2の結合剤は、アプタマー、抗体、またはタンパク質から選択され、かつ第2の結合剤は、グルコースデヒドロゲナーゼ、グルコース6-リン酸デヒドロゲナーゼ、フルクトースデヒドロゲナーゼ、スクロースデヒドロゲナーゼ、グルコシドデヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、ソルビトールデヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、およびリンゴ酸デヒドロゲナーゼと連結されたアプタマー、抗体、またはタンパク質から選択される。
【0071】
標的分析物を検出可能な複合体の特定の態様では、第1および第2の結合剤は、標的分析物上の第1の部位および異なる第2の部位とそれぞれ結合する。
【0072】
標的分析物を検出可能な複合体の別の態様では、第1および第2の結合剤は、標的分析物上の同じ部位とそれぞれ結合する。標的分析物上の該部位は複数のコピー(>100)として存在するので、第1および第2の結合剤にとって十分な部位がある。
【0073】
特定の態様では、標的分析物上の第1の部位に対する第1の結合剤の結合親和性は、標的分析物上の第2の部位に対する第2の結合剤の結合親和性よりも高い。
【0074】
特定の態様では、標的分析物上の第1の部位に対する第1の結合剤の結合親和性は、標的分析物上の第2の部位に対する第2の結合剤の結合親和性と同様である。
【0075】
特定の態様では、標的分析物上の第1の部位に対する第1の結合剤の結合親和性は、標的分析物上の第2の部位に対する第2の結合剤の結合親和性よりも弱い。
【0076】
一態様では、結合アッセイは、2つ以上のウイルス、具体的には、(i)ベータコロナウイルスなどのコロナウイルス、さらに具体的にはSARS-CoV-2、および(ii)呼吸器ウイルス、さらに具体的にはインフルエンザの検出を可能にする。
【0077】
別の局面では、診断的評価のための方法が開示され、該方法は、(i)対象から生物学的サンプルを収集する段階であって、該生物学的サンプルは血液ではない、段階;(ii)該生物学的サンプルをグルコースの存在下で検査ストリップに添加する段階であって、該検査ストリップが、該生物学的サンプル中に少なくとも1つの標的分析物が存在する場合はそれとともに検出可能な複合体をつくることができる第1および第2の結合剤を含む、段階;(iii)該検査ストリップを(グルコメーターなどの)検出デバイスに差し込む段階;(iv)該生物学的サンプルを該検査ストリップとともにインキュベートする段階;(v)検出可能な複合体があればそのレベルを、グルコースとグルコースオキシダーゼとの化学反応を通して検出する段階;ならびに(vi)検出可能な複合体が生成された場合はそのレベルと、該少なくとも1つの生物学的サンプル中に標的分析物があればその量とを相関させる段階であって、それによって診断的評価を提供する、段階、を含む。
【0078】
別の局面では、診断的評価のための方法が開示され、該方法は、(i)対象から生物学的サンプルを収集する段階であって、該生物学的サンプルは血液ではない、段階;(ii)該生物学的サンプルをグルコースの存在下で検査ストリップに添加する段階であって、該検査ストリップが、該生物学的サンプル中に少なくとも1つの標的分析物が存在する場合はそれとともに検出可能な複合体をつくることができる第1および第2の結合剤を含む、段階;(iii)該生物学的サンプルを該検査ストリップとともにインキュベートする段階、またはインキュベートしない段階;(iv)該検査ストリップを(グルコメーターなどの)検出デバイスに差し込む段階;(v)検出可能な複合体があればそのレベルを、グルコースとグルコースオキシダーゼとの化学反応を通して検出する段階;ならびに(vi)検出可能な複合体が生成された場合はそのレベルと、該少なくとも1つの生物学的サンプル中に標的分析物があればその量とを相関させる段階であって、それによって診断的評価を提供する、段階、を含む。
【0079】
別の局面では、診断的評価のための方法が開示され、該方法は、(i)対象から生物学的サンプルを収集する段階であって、該生物学的サンプルは、尿、汗、眼房水を含めた眼性液、血液、糞便、皮脂、呼吸器由来の飛沫、精液、膣粘液、耳垢、表皮細胞、または鼻咽頭検体に由来する、段階;(ii)該生物学的サンプルを検査ストリップに添加する段階であって、該検査ストリップが、該生物学的サンプル中に少なくとも1つの標的分析物が存在する場合はそれとともに検出可能な複合体をつくることができる第1および第2の結合剤を含む、段階;(iv)該検査ストリップをグルコメーターなどの検出デバイスに差し込む段階;(v)該生物学的サンプルを該検査ストリップとともにインキュベートする段階;(vi)検出可能な複合体があればそのレベルを、グルコースとグルコースオキシダーゼとの化学反応を通して検出する段階;ならびに(vii)検出可能な複合体が生成された場合はそのレベルと、該少なくとも1つの生物学的サンプル中に標的分析物があればその量とを相関させる段階であって、それによって診断的評価を提供する、段階、を含む。
【0080】
別の局面では、診断的評価のための方法が開示され、該方法は、(i)対象から生物学的サンプルを収集する段階であって、該生物学的サンプルは、尿、汗、眼房水を含めた眼性液、血液、糞便、皮脂、呼吸器由来の飛沫、精液、膣粘液、耳垢、表皮細胞、または鼻咽頭検体に由来する、段階;(ii)該収集したサンプルを第2の結合剤の存在下で水性の溶液/混合物中1倍~100倍希釈する段階;(iii)該生物学的サンプルおよび第2の結合剤を検査ストリップに添加する段階であって、該検査ストリップが、該生物学的サンプル中に少なくとも1つの標的分析物が存在する場合はそれとともに検出可能な複合体をつくることができる第1の結合剤を含む、添加する段階;(iv)該生物学的サンプルを該検査ストリップとともにインキュベートする段階、またはインキュベートしない段階;(v)該検査ストリップを検出デバイスに差し込む段階;(vi)検出可能な複合体があればそのレベルを、グルコースとグルコースオキシダーゼとの化学反応を通して検出する段階;ならびに(vii)検出可能な複合体が生成された場合はそのレベルと、該少なくとも1つの生物学的サンプル中に標的分析物があればその量とを相関させる段階であって、それによって診断的評価を提供する、段階、を含む。
【0081】
別の局面では、本明細書には診断的評価のための方法が記載され、該方法は、(i)対象から生物学的サンプルを収集する段階であって、該生物学的サンプルは、尿、汗、眼房水を含めた眼性液、血液、糞便、皮脂、呼吸器由来の飛沫、精液、膣粘液、耳垢、表皮細胞、または鼻咽頭検体に由来する、段階;(ii)該生物学的サンプルを検査ストリップに添加する段階であって、該検査ストリップが、該生物学的サンプル中に少なくとも1つの標的分析物が存在する場合はそれとともに検出可能な複合体をつくることができる第1および第2の結合剤を含む、段階;(iii)該生物学的サンプルを該検査ストリップとともにインキュベートする段階、またはインキュベートしない段階;(iv)該検査ストリップをグルコメーターなどの検出デバイスに差し込む段階;(v)検出可能な複合体があればそのレベルを、グルコースとグルコースオキシダーゼとの化学反応を通して検出する段階;ならびに(vi)検出可能な複合体が生成された場合はそのレベルと、該少なくとも1つの生物学的サンプル中の標的分析物の量とを相関させる段階であって、それによって診断的評価を提供する、段階、を含む。
【0082】
別の局面では、本明細書には診断的評価のための方法が記載され、該方法は、(i)対象から生物学的サンプルを収集する段階であって、該生物学的サンプルは、尿、汗、眼房水を含めた眼性液、血液、糞便、皮脂、呼吸器由来の飛沫、精液、膣粘液、耳垢、表皮細胞、または鼻咽頭検体に由来する、段階;(ii)該収集したサンプルを第2の結合剤の存在下で水性の溶液/混合物中1倍~100倍希釈する段階;(iii)該生物学的サンプルおよび第2の結合剤を検査ストリップに添加する段階であって、該検査ストリップが、該生物学的サンプル中に少なくとも1つの標的分析物が存在する場合はそれとともに検出可能な複合体をつくることができる第1の結合剤を含む、段階;(iv)該生物学的サンプルを該検査ストリップとともにインキュベートする段階、またはインキュベートしない段階;(v)該検査ストリップをグルコメーターなどの検出デバイスに差し込む段階;(vi)検出可能な複合体があればそのレベルを、グルコースとグルコースオキシダーゼとの化学反応を通して検出する段階;ならびに(vii)検出可能な複合体が生成された場合はそのレベルと、該少なくとも1つの生物学的サンプル中の標的分析物の量とを相関させる段階であって、それによって診断的評価を提供する、段階、を含む。
【0083】
別の局面では、本明細書には診断的評価のための方法が記載され、該方法は、(i)対象から生物学的サンプルを収集する段階であって、該生物学的サンプルは、尿、汗、眼房水を含めた眼性液、血液、糞便、皮脂、呼吸器由来の飛沫、精液、膣粘液、耳垢、表皮細胞、または鼻咽頭検体に由来する、段階;(ii)該生物学的サンプルを検査ストリップに添加する段階であって、該検査ストリップが、該生物学的サンプル中に少なくとも1つの標的分析物が存在する場合はそれとともに検出可能な複合体をつくることができる第1および第2の結合剤を含む、段階;(iii)該生物学的サンプルを該検査ストリップとともにインキュベートする段階;(iv)該検査ストリップをグルコメーターなどの検出デバイスに差し込む段階;(v)検出可能な複合体があればそのレベルを、グルコースとグルコースオキシダーゼとの化学反応を通して検出する段階;(vi)検出可能な複合体が生成された場合はそのレベルと、該少なくとも1つの生物学的サンプル中に標的分析物があればその量とを相関させる段階であって、それによって診断的評価を提供する、段階;(vii)臨床医または訓練された医療提供者によるその後の検討のために、該診断的評価または結果を電子デバイス、データベース、またはクラウドサーバーに送信する段階;ならびに(viii)該診断的評価の方法を実施した個人への、該診断的評価またはアウトカムの送信、を含む。
【0084】
別の局面では、本明細書には診断的評価のための方法が記載され、該方法は、(i)対象から生物学的サンプルを収集する段階であって、該生物学的サンプルは、尿、汗、眼房水を含めた眼性液、血液、糞便、皮脂、呼吸器由来の飛沫、精液、膣粘液、耳垢、表皮細胞、または鼻咽頭検体に由来する、段階;(ii)該収集したサンプルを第2の結合剤の存在下で水性の溶液/混合物中1倍~100倍希釈する段階;(iii)該生物学的サンプルを検査ストリップに添加する段階であって、該検査ストリップが、該生物学的サンプル中に少なくとも1つの標的分析物が存在する場合はそれとともに検出可能な複合体をつくることができる第1の結合剤を含む、添加する段階;(iv)該生物学的サンプルを該検査ストリップとともにインキュベートする段階;(v)該検査ストリップをグルコメーターなどの検出デバイスに差し込む段階;(vi)検出可能な複合体があればそのレベルを、グルコースとグルコースオキシダーゼとの化学反応を通して検出する段階;(vii)検出可能な複合体が生成された場合はそのレベルと、該少なくとも1つの生物学的サンプル中に標的分析物があればその量とを相関させる段階であって、それによって診断的評価を提供する、段階;(viii)臨床医または訓練された医療提供者によるその後の検討のために、該診断的評価または結果を電子デバイス、データベース、またはクラウドサーバーに送信する段階;ならびに(ix)該診断的評価の方法を実施した個人への、該診断的評価またはアウトカムの送信、を含む。
【0085】
別の局面では、生物学的評価に用いられる検査ストリップが開示され、該検査ストリップは、(i)炭素、鉄、パラジウム、白金、または金でできた1つまたは複数の平面または共面電極;(ii)メディエーターとしてのフェロシアン化第一鉄塩などの鉄塩で被覆された電極;(iii)メディエーターとしてのプルシアンブルーで被覆された電極;(iv)電解質溶液と接面する電極が(半)導体固体であるn電極セットアップ;(v)該電極セットアップが、作用電極、基準電極、および対または補助電極を含む;(vi)電流リードとセンスリードとが接続されており、作用および作用センスが作用電極と接続されており、かつ基準および対が第2の補助、対、または擬似/擬基準電極と接続されている、2電極セットアップ;(vii)基準リードが対から分離されて、作用および作用センスリードの両方が取りつけられている作用電極の至近点を測定するように大抵配置される第3の電極と接続されている、3電極セットアップ;(viii)該基準リードに加えて、作用センスリードが作用電極から切り離されている、4電極セットアップ;ならびに/あるいは(ix)電気化学セル全体の電圧低下が正味ゼロとなるようにストリップ内で作用電極リードと対電極リードとが短絡される、無抵抗電流計、の少なくとも1つを含む。
【0086】
本明細書に記載されるシステムおよび方法を用いて得られた結果は、2値(たとえば、イエス/ノー)式、半定量的(たとえば、低・中・高)、または定量的から選択されるフォーマットで報告され得る。
【0087】
別の局面では、(i)基体、第1および第2の結合剤の少なくとも1つ、ならびに2つもしくはそれ以上の電極;(ii)基体、第1および第2の結合剤両方、ならびに2つもしくはそれ以上の電極;(iii)第1および第2の結合剤の少なくとも1つ、ならびに2つもしくはそれ以上の電極;または(iv)第1および第2の結合剤両方、ならびに2つもしくはそれ以上の電極を含む、検査ストリップが、開示される。
【0088】
一態様では、検査ストリップは、検査部位をさらに含み、ここで(i)該検査部位は第1の結合剤を含み;(ii)該検査部位は第1および第2の結合剤両方を含み;または(iii)該検査部位は基体および第1の結合剤を含み;または(iv)該検査部位は基体ならびに第1および第2の結合剤両方を含む。
【0089】
別の局面では、本明細書には、本明細書に記載されるシステムで使用される検査ストリップが記載され、該検査ストリップは、(i)基体、第1および第2の結合剤の少なくとも1つ、ならびに2つもしくはそれ以上の電極;(ii)基体、第1および第2の結合剤両方、ならびに2つもしくはそれ以上の電極;(iii)第1および第2の結合剤の少なくとも1つ、ならびに2つもしくはそれ以上の電極;または(iv)第1および第2の結合剤両方、ならびに2つもしくはそれ以上の電極を含む。
【0090】
別の局面では、検査ストリップ、および任意で検査ストリップの使用のための説明を含む、キットが開示される。特定の態様では、キットは、グルコメーターをさらに含む。
【0091】
別の局面では、ローカライズドまたはクラウドベースのソフトウェア・アルゴリズムが開示され、該ソフトウェア・アルゴリズムは、検出システムにおいて、1つまたは複数の検出可能な化学種が生物学的サンプルと検査ストリップと検出デバイスとの反応産物となるような電気化学反応をトリガーする。
【0092】
別の局面では、本明細書には、(i)対象由来の生物学的サンプルを準備する段階、(ii)該生物学的サンプル中の標的分析物の存在を、本明細書に記載されるシステムを使って検出する段階であって、該標的分析物は、SARS-CoV-2ウイルスまたはその構成要素である、段階;および(iii)任意で、該対象を治療剤(たとえば、SARS-CoV-2ウイルスに対し有効なもの)で治療する段階、を含む方法が、記載される。
【0093】
別の局面では、本明細書には、(i)対象由来の生物学的サンプルを準備する段階、(ii)該生物学的サンプル中の標的分析物の存在を、本明細書に記載されるシステムを使って検出する段階であって、該標的分析物は、CoVウイルスまたはその構成要素である、段階、および(iii)任意で、該対象を治療剤で治療する段階、を含む方法が、記載される。
【0094】
別の局面では、治療法が提供され、該治療法は(たとえば、連続工程で)、(i)(a)対象由来の生物学的サンプルを準備することであって、該生物学的サンプルは、唾液である、準備すること、および(b)該生物学的サンプル中の標的分析物の存在を、本明細書に記載されるシステムを用いて検出することであって、該標的分析物は、SARS-CoV-2ウイルスまたはその構成要素(たとえば、S-1タンパク質)である、検出すること、により決定する段階;ならびに(ii)該対象を小分子剤または生物学的剤から選択される治療剤(たとえば、SARS-CoV-2ウイルスに対し有効なもの)で治療する段階、を含む。
【0095】
別の局面では、本明細書には、(i)対象由来の生物学的サンプルを準備する段階、(ii)該生物学的サンプル中の標的分析物の存在を、本明細書に記載されるシステムを使って検出する段階であって、該標的分析物は、インフルエンザウイルスまたはその構成要素である、段階、および(iii)任意で、該対象を治療剤(たとえば、インフルエンザウイルスに対し有効なもの)で治療する段階、を含む方法が、記載される。
【0096】
別の局面では、本明細書には、(i)対象由来の生物学的サンプルを準備する段階、(ii)該生物学的サンプル中の標的分析物の存在を、本明細書に記載されるシステムを使って検出する段階であって、該標的分析物は、肝炎ウイルスまたはその構成要素である、段階、および(iii)任意で、該対象を治療剤(たとえば、肝炎ウイルスに対し有効なもの)で治療する段階、を含む方法が、記載される。
【0097】
別の局面では、本明細書には、生物学的サンプル中の少なくとも1つの標的核酸を検出するためのシステムが記載され、該システムは、(i)該標的核酸と特異的に結合するとコラテラル核酸を切断する、配列特異的エンドヌクレアーゼおよびガイド核酸と、(ii)該切断されたコラテラル核酸とともに検出可能な複合体をつくることができる、検出核酸と、(iii)該検出可能な複合体を検出するための検出デバイスとを含み、該検出デバイスは、オキシダーゼベースのアンペロメトリックセンサーであり、該生物学的サンプルは、汗、唾液、血清、粘液、または血液中に存在している。
【0098】
いずれかの局面のいくつかの態様では、配列特異的エンドヌクレアーゼは、Cas酵素である。
【0099】
いずれかの局面のいくつかの態様では、配列特異的エンドヌクレアーゼは、Cas12aまたはCas13である。
【0100】
いずれかの局面のいくつかの態様では、ガイド核酸は、標的核酸の少なくとも一部分に対し相補的または実質的に相補的である。
【0101】
いずれかの局面のいくつかの態様では、検出核酸は、切断されたコラテラル核酸の少なくとも一部分に対し相補的または実質的に相補的である。
【0102】
いずれかの局面のいくつかの態様では、検出核酸は、切断されたコラテラル核酸とハイブリダイズする。
【0103】
いずれかの局面のいくつかの態様では、検出核酸は、切断されていないコラテラル核酸とはハイブリダイズしない。
【0104】
いずれかの局面のいくつかの態様では、検出核酸は、検査ストリップと連結されている。
【0105】
いずれかの局面のいくつかの態様では、コラテラル核酸は、グルコースオキシダーゼと連結されている。
【0106】
いずれかの局面のいくつかの態様では、システムは、グルコースオキシダーゼと連結されたアプタマーをさらに含む。
【0107】
いずれかの局面のいくつかの態様では、アプタマーは、切断されたコラテラル核酸の少なくとも一部分と特異的に結合する。
【0108】
いずれかの局面のいくつかの態様では、アプタマーは、切断されたコラテラル核酸の一本鎖部分と結合する。
【0109】
いずれかの局面のいくつかの態様では、アプタマーは、検出核酸とハイブリダイズした切断されたコラテラル核酸の二本鎖部分と結合する。
【0110】
いずれかの局面のいくつかの態様では、システムは、グルコースオキシダーゼと連結された抗体をさらに含む。
【0111】
いずれかの局面のいくつかの態様では、抗体は、切断されたコラテラル核酸の少なくとも一部分と特異的に結合する。
【0112】
いずれかの局面のいくつかの態様では、コラテラル核酸は、グルコースオキシダーゼと特異的に結合する抗体と連結されている。
【0113】
いずれかの局面のいくつかの態様では、コラテラル核酸は、親和性対の第1のメンバーと連結されている。
【0114】
いずれかの局面のいくつかの態様では、システムは、親和性対の第2のメンバーと連結されたグルコースオキシダーゼをさらに含む。
【0115】
いずれかの局面のいくつかの態様では、親和性対の第1のメンバーおよび第2のメンバーは、ハプテン性または抗原性化合物と、対応する抗体またはその結合部分もしくは断片との組み合わせ;ジゴキシゲニンおよび抗ジゴキシゲニン;マウス免疫グロブリンおよびヤギ抗マウス免疫グロブリン;非免疫的結合対;ビオチンおよびアビジン;ビオチンおよびストレプトアビジン;ホルモンおよびホルモン結合タンパク質;チロキシンおよびコルチゾールホルモン結合タンパク質;受容体および受容体アゴニスト;受容体および受容体アンタゴニスト;アセチルコリン受容体およびアセチルコリンまたはそのアナログ;IgGおよびプロテインA;レクチンおよび炭水化物;酵素および酵素補因子;酵素および酵素阻害剤;核酸二本鎖を作ることのできる相補的オリゴヌクレオチド対;ならびに負電荷をもつ第1の分子および正電荷をもつ第2の分子からなる群より選択される。
【0116】
いずれかの局面のいくつかの態様では、親和性対の第1のメンバーおよび第2のメンバーは、ストレプトアビジンおよびビオチンである。
【0117】
いずれかの局面のいくつかの態様では、ストレプトアビジンはコラテラル核酸と連結され、ビオチンはグルコースオキシダーゼと連結されている。
【0118】
いずれかの局面のいくつかの態様では、ビオチンはコラテラル核酸と連結され、ストレプトアビジンはグルコースオキシダーゼと連結されている。
【0119】
いずれかの局面のいくつかの態様では、標的核酸はウイルス核酸である。
【0120】
別の局面では、本明細書には、本明細書に記載される核酸検出システムを用いて標的核酸を検出する方法が記載され、該方法は、(i)対象から生物学的サンプルを収集する段階、および任意で、該生物学的サンプルから核酸を抽出する段階;(ii)該生物学的サンプルを、配列特異的エンドヌクレアーゼ、ガイド核酸、およびコラテラル核酸と接触させる段階であって、該標的核酸が存在する場合は、そのように接触させる結果として該コラテラル核酸が切断される、段階;(iii)該生物学的サンプルをグルコースの存在下で検査ストリップに添加する段階であって、該検査ストリップが、該切断されたコラテラル核酸が存在する場合はそれとともに検出可能な複合体をつくることができる検出核酸を含む、段階;(iv)該生物学的サンプルを該検査ストリップとともにインキュベートする段階、またはインキュベートしない段階;(v)該検査ストリップを検出デバイスに差し込む段階;(vi)検出可能な複合体があればそのレベルを、グルコースとグルコースオキシダーゼとの化学反応を通して検出する段階;ならびに(vii)検出可能な複合体が生成された場合はそのレベルと、該少なくとも1つの生物学的サンプル中の標的分析物の量とを相関させる段階であって、それによって診断的評価を提供する、段階、を含む。
【0121】
いずれかの局面のいくつかの態様では、生物学的サンプルは、唾液である。
【0122】
いずれかの局面のいくつかの態様では、検出デバイスは、グルコースメーターである。
【0123】
いずれかの局面のいくつかの態様では、方法は、(viii)臨床医または訓練された医療提供者によるその後の検討のために、該診断的評価または結果を電子デバイス、データベース、またはクラウドサーバーに送信する段階;および(ix)該診断的評価の方法を実施した個人に、該診断的評価を提供する段階、をさらに含む。
【0124】
いずれかの局面のいくつかの態様では、該個人は、該対象である。
【0125】
いずれかの局面のいくつかの態様では、方法は、(viii)該診断的評価に応じて該対象に1つまたは複数の治療レジメンを推奨する、指示する、および/または投与する段階をさらに含む。
【0126】
別の局面では、本明細書には、検出核酸と連結された検査ストリップが記載される。
【0127】
別の局面では、本明細書には、検出核酸と連結された検査ストリップを含むキットが記載される。
【図面の簡単な説明】
【0128】
図1図1は、例示的な転用グルコメーターベースのSARS-CoV-2センサーを示す。
図2図2は、例示的な検査ストリップの設計、および検査ストリップをグルコメーターに入れた際の信号出力を示す。
図3図3は、グルコースバイオセンサーシステムにおいて生じる事象のシーケンスを表す概略図である。GOxによるグルコース酸化により、D-グルコノ-δ-ラクトンが生じる。プルシアンブルー(PB)フィルムでのH2O2の還元が、作用電極から移動した電子により測定される。
図4図4は、異なるビリオン(たとえば、H1N1)濃度についての経時電流を示す線グラフ(左パネル)を示す。棒グラフ(右パネル)は、バッファー中の異なるビリオン濃度についての電流vs.時間プロット(たとえば、左パネル参照)の曲線下面積を示す。
図5図5は、グルコメーター用の本明細書に記載されるCoV検査ストリップの概略図を示す。ラベル(1)~(16)は、ストリップの異なる機能部に対応し、ラベル(A)~(H)は、ストリップの層に対応する。一態様では、センサーストリップは、(下から順に)(A)ベース基体;(B)3電極を含む導電層;(C)検査されるサンプルが滴下される電極の部分のみ露出する絶縁層;(D)電子の交換を容易にするメディエーターを含む試薬層;(E)接着層;(F)親水性ニトロセルロース膜であって、近位膜は抗原を捕捉するアプタマーおよび凍結乾燥グルコースを含み、遠位端は紙シンク(13)である、膜;(G)凍結乾燥Ab-GOx;ならびに(H)上層を含む。
図6図6は、異なるH1N1ビリオン濃度が添加され、かつ10倍に希釈されたヒト唾液についての経時電流を示す線グラフを示す。
図7図7は、検出デバイスにおいて検出可能な化学変化をトリガーするのに使用される、ローカライズド・ソフトウェア・アルゴリズムの概略図を示す。
図8図8A~8Bは、データを処理する、かつ検出デバイスにおいて化学変化をトリガーするのに使用される、外部サーバーのクラウドベースのソフトウェア・アルゴリズムの概略図を示す。
図9図9は、ほかの関連コロナウイルスと整列させたSARS-CoV-2のスパイクタンパク質配列の受容体結合ドメイン(RBD)を示す。SARS-CoV-2、SARS-CoV、およびMERS-CoVの相互作用ドメインの配列アラインメントが具体的に示されている(たとえば、SEQ ID NO:1~9参照)。たとえば、W. Tai, et al., Cellular & Molecular Immunology, (2020) 17:613-620を参照されたく、その内容全体が参照により本明細書に組み入れられる。
図10図10は、H1N1ウイルスとAb-GOxとをプレインキュベートしたアッセイにおける経時電流グラフを示す線グラフを示す。
図11図11は、VSV-CoV-2偽型ウイルスに関する経時電流を示す線グラフを示す。
図12図12は、ウサギポリクローナル抗体-GOxコンジュゲート(左パネル)または膜抗体-GOxコンジュゲート(右パネル)を用いた、SARS-CoV-2ウイルスに関する経時電流を示す一連の線グラフを示す。
図13図13は、SARS-CoV-2を標的とするアプタマーおよび抗体のH1N1ウイルスに対する交差反応性を測定する線グラフおよび棒グラフを示す。なお、104のH1N1ビリオンから検出した信号と無ビリオンから検出した信号との有意差はなかった。
図14図14は、1つまたは2つのウイルスの検出を示す概略図である。1つのウイルスを検出するために、検査ストリップは1つのウイルスに対する1つのアプタマー(または抗体)を、その表面に有する。尿、唾液その他をストリップに添加し、そしてストリップをグルコメーターに挿入する。2つのウイルス(たとえば、Sars-CoV-2およびインフルエンザA H1N1)の検出では、検査ストリップの一部分は1つのウイルスに対するアプタマー(または抗体)を有し、他方の部分は第2のウイルスに対するアプタマー(または抗体)を有する。尿、唾液その他をストリップに添加し、ストリップを破線によって2つのストリップに分け、一方のストリップをグルコメーターに挿入し読ませ、次いで該第1のストリップを取り出し、第2のストリップを挿入し読ませる。
図15A図15A~15Fは、本明細書に記載される検出デバイスの代替設計を示す一連の概略図である(たとえば、実施例8参照)。図15Aは、エンドヌクレアーゼによるコラテラル切断を用いる核酸検出を示し、ここでコラテラル核酸はグルコースオキシダーゼと連結されている。
図15B図15A~15Fは、本明細書に記載される検出デバイスの代替設計を示す一連の概略図である(たとえば、実施例8参照)。図15B~15Cは、コラテラル切断核酸検出を示し、ここでコラテラル核酸の一本鎖(図15B)または二本鎖(図15C)領域と結合するアプタマーが、グルコースオキシダーゼと連結されている。
図15C図15A~15Fは、本明細書に記載される検出デバイスの代替設計を示す一連の概略図である(たとえば、実施例8参照)。図15B~15Cは、コラテラル切断核酸検出を示し、ここでコラテラル核酸の一本鎖(図15B)または二本鎖(図15C)領域と結合するアプタマーが、グルコースオキシダーゼと連結されている。
図15D図15A~15Fは、本明細書に記載される検出デバイスの代替設計を示す一連の概略図である(たとえば、実施例8参照)。図15Dは、核酸検出を示し、ここでコラテラル核酸と結合する抗体が、グルコースオキシダーゼと連結されている。
図15E図15A~15Fは、本明細書に記載される検出デバイスの代替設計を示す一連の概略図である(たとえば、実施例8参照)。図15Eは、核酸検出を示し、ここでコラテラル核酸は、グルコースオキシダーゼと特異的に結合する抗体と連結されている。
図15F図15A~15Fは、本明細書に記載される検出デバイスの代替設計を示す一連の概略図である(たとえば、実施例8参照)。図15Fは、核酸検出を示し、ここでコラテラル核酸は、親和性対と連結されており、該対の一方のメンバーがグルコースオキシダーゼと連結されている。
図16図16は、一例のプロセス、および本開示のいくつかの態様のシステムの概要の一例を示す。図16の上半分は、本明細書に記載される検査ストリップおよび検出デバイスを用いてサンプル中の標的分析物を検出する、一例のプロセスを示すフローチャートである。いずれかの局面のいくつかの態様では、検査サンプル110が(たとえば対象100から)受けられる。さらなるサンプルとしては、陰性対照111および陽性対照112が挙げられ得る。いずれかの局面のいくつかの態様では、サンプルは、任意で処理120される(たとえばタンパク質または核酸抽出;たとえば希釈)。次いでグルコース130の存在下で生物学的サンプルを検査ストリップ135に添加する。検査は、本明細書に記載される検出試薬を少なくとも1つは含み得る(たとえば、抗体、アプタマー、検出核酸)。次いで検査ストリップを検出デバイス140(たとえば、グルコメーター)に差し込む。図16の下半分は、本開示のいくつかの態様のシステムの概要の一例を示す。検査ストリップは検出デバイス150にインプットされ、該検出デバイス150は、ネットワーク160、電算デバイス170、ディスプレイ175、サーバー180、および/またはデータベース185を含むシステムの一部である。
【発明を実施するための形態】
【0129】
詳細な説明
上記の本発明の概要は、本発明の開示される各態様またはすべての実施を記載するものではない。以下の記載のほうが、例示的態様を具体的に例示している。本明細書ではいくつかの箇所で諸例のリストにより案内を提供しており、そうした例はさまざまに組み合わせて用いることができる。どの例でも、記載のリストは代表的集団としての役割しかなく、排他的なリストと解釈すべきではない。
【0130】
参考までに、本明細書、実施例、および添付の請求項で用いられるいくつかの用語および語句の意味を以下に記す。特に明記しないかぎり、または文脈から暗示されないかぎり、以下の用語および語句には、下に記載する意味が含まれる。これらの定義は、特定の態様を記載する助けとなるものであって、特許請求の発明を限定するものではない。というのも、本発明の範囲は請求項のみによって限定されるからである。別途定義しないかぎり、本明細書で使用されるすべての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されるのと同じ意味をもつ。当技術分野における用語の用法が、本明細書に提供される定義と明らかに食い違う場合は、本明細書で提供される定義が優先される。
【0131】
本明細書で使用される場合、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈が明白に否定しないかぎり複数形も含む。同様に、「or」という単語は、文脈が明白に否定しないかぎり「and」も含むものとする。本開示の実施または試験では、本明細書に記載されるものと類似または同等の方法および材料が使用され得るが、以下に好適な方法および材料を記載する。「e.g.」は、ラテン語のexempli gratiaに由来する省略形であり、本明細書では非限定例を指すのに使用される。したがって、省略形「e.g.」は、「たとえば(たとえば)」という用語と同義である。
【0132】
「約」という用語は、(数値範囲の上限および下限を含め)あらゆる値に関連して本明細書で使用される場合、±0.5%~±20%(ならびにその間の値、たとえば、±1%、±1.5%、±2%、±2.5%、±3%、±3.5%、±4%、±4.5%、±5%、±5.5%、±6%、±6.5%、±7%、±7.5%、±8%、±8.5%、±9%、±9.5%、±10%、±10.5%、±11%、±11.5%、±12%、±12.5%、±13、±13.5%、±14%、±14.5%、±15%、±15.5%、±16%、±16.5%、±17%、±17.5%、±18%、±18.5%、±19%、±19.5%、および±20%)の許容される偏差範囲を有する任意の値を指す。作業例中のものまたは別途指示があった場合を除き、本明細書で使用する成分の量や反応条件を表す数字はすべて、「約」がついたものであることを理解されたい。「約」という用語がパーセンテージと関連して用いられる場合、±1%、または上記したように±0.5%~20%を意味することができる。
【0133】
「親和性」という用語は、本明細書で使用される場合、標的分子と結合剤との結合の強さの尺度を指す。親和性は、典型的には、解離定数(Kd)で表される。一般には、約10-6 Mよりも大きいKdは、非特異的な結合を示すと考えられている。
【0134】
「アンペロメトリー(の)」という用語は、本明細書で使用される場合、化学滴定を指し、溶液中、電位差が印加されたなか、2つの電極間を流れる電流を測定し、それをエンドポイントの検出に用いる。
【0135】
「分析物」という用語は、本明細書で使用される場合、広義の用語であって、生物学的液体などの液体中の物質または化学成分を指すのに用いられる。分析物としては、天然物質、人工物質、代謝物、および/または反応産物を挙げることができる。分析物は、生物学的液体中に生来存在する、つまり内在性の、たとえば代謝産物、ホルモン、抗原、抗体等であり得る。あるいは、分析物は、体内に導入される、つまり外来性であり得る。
【0136】
「抗体」または「免疫グロブリン」という用語は、本明細書で交換可能に用いられる場合、全抗体、およびその抗原結合断片(抗原結合部分)または一本鎖同族体を含む。「抗体」は、少なくとも1つの重(H)鎖および1つの軽(L)鎖を含む。たとえば天然のIgGでは、これらの重鎖と軽鎖とがジスルフィド結合で互いにつながっていて、2組の重軽鎖対があり、この2組もまたジスルフィド結合で互いにつながっている。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと省略)と重鎖定常領域とで構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2、およびCH3で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと省略)と軽鎖定常領域とで構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLで構成される。VH領域およびVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性領域にさらに細分され得、フレームワーク領域(FR)または連結(J)領域(重鎖はJH、軽鎖はJL)と呼ばれる、より保存された領域が間に点在する。各VHおよびVLは、3つのCDR、3つのFR、および1つのJドメインで構成され、それらはアミノ末端からカルボキシ末端に向かって次の順に並んでいる:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、J。重鎖および軽鎖の可変領域は抗原と結合する。抗体の定常領域は、免疫グロブリンが、さまざまな免疫系細胞(たとえばエフェクター細胞)または古典補体系の第1構成要素(Clq)などの液性因子を含め、宿主組織または因子と結合するのを媒介し得る。「抗体」という用語は、本明細書では最も広義に使用され、所望の抗原結合活性を示すかぎり、限定ではないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(たとえば二特異性抗体)、および抗体断片を含め、さまざま抗体構造を含む。
【0137】
「抗原」という用語は、本明細書で使用される場合、抗体が結合する物質(たとえば、タンパク質性の物質またはペプチド)を指す。特定の態様では、抗原は、コロナウイルスタンパク質(たとえば、スパイクタンパク質)、またはその誘導体、断片、アナログ、ホモログ、もしくはオルソログであり、本明細書に開示されるシステムおよび方法で抗原として働く。
【0138】
「抗原結合領域」という用語は、結合剤(たとえば、抗体、アプタマー)の一部分であって、標的分子(たとえば、抗原)と相互作用する、かつ該標的分子に対する特異性および親和性を該結合剤に与える部分を指す。
【0139】
「抗ウイルス薬」という用語は、本明細書で使用される場合、対象のウイルス感染症の治療または寛解に用いられる任意の抗感染症薬または治療を広義に指す。
【0140】
「アプタマー」という用語は、本明細書で使用される場合、ナノモルのまたはナノモル以下の範囲で別の分子と高い親和性で結合するのに三次元的に適合するオリゴヌクレオチド(DNAまたはRNA)を指す。そのようなアプタマーを構成する例示的な核酸分子またはポリヌクレオチドとしては、限定ではないが、D-もしくはL-核酸、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、トレオース核酸(TNA)、グリコール核酸(GNA)、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)(ベータ-D-リボ配置を有するLNA、アルファ-L-リボ配置を有するアルファ-LNA(LNAのジアステレオマー)、2'-アミノ官能化を有する2'-アミノ-LNA、および2'-アミノ官能化を有する2'-アミノ-アルファ-LNAを含む)、またはそれらのハイブリッドが挙げられる。アプタマーは、小分子を含めほかの分子、タンパク質、核酸のほか、細胞、組織、生物(たとえば全ウイルス)とも連結され得、一価であっても多価であってもよい。開示の態様で用いられるアプタマーは、当技術分野で周知の試験管内進化法(Synthetic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment)(SELEX)などの方法を用いて大きなランダム配列ライブラリーから選択することにより得てもよい。
【0141】
「結合剤」という用語は、本明細書で使用される場合、同族リガンドと高親和性および高特異性で結合する分子を指す。結合剤は、典型的には、その同族リガンドの存在を特定するのに用いられ、特定を可能にするために検出可能に標識され得る。「X結合剤」とは、「X」と高親和性および高特異性で結合する分子を意味する。「X」結合剤の例としては、たとえば、アプタマー、抗体、受容体リガンド、または分子刷込みポリマーが挙げられる。
【0142】
「結合対」という用語は、本明細書で使用される場合、高親和性および高特異性で互いと結合する分子の対を指す。1つの「結合対メンバー」は、結合対の1つの分子を指す。たとえば、ストレプトアビジンおよびビオチンは、互いに非共有結合する結合対メンバーである。結合対(親和性対とも呼ばれる)の第1のメンバーと第2のメンバーとのさらなる非限定例としては、次のものが挙げられる:ハプテン性または抗原性化合物と、対応する抗体またはその結合部分もしくは断片との組み合わせ;ジゴキシゲニンおよび抗ジゴキシゲニン;マウス免疫グロブリンおよびヤギ抗マウス免疫グロブリン;非免疫的結合対;ビオチンおよびアビジン;ビオチンおよびストレプトアビジン;ホルモンおよびホルモン結合タンパク質;チロキシンおよびコルチゾールホルモン結合タンパク質;受容体および受容体アゴニスト;受容体および受容体アンタゴニスト;アセチルコリン受容体およびアセチルコリンまたはそのアナログ;IgGおよびプロテインA;レクチンおよび炭水化物;酵素および酵素補因子;酵素および酵素阻害剤;核酸二本鎖を作ることのできる相補的オリゴヌクレオチド対;ならびに負電荷をもつ第1の分子および正電荷をもつ第2の分子。
【0143】
「サンプル」または「検査サンプル」という用語は、本明細書で使用される場合、生物から採取または単離されたサンプル、たとえば、対象由来の血液または血漿サンプルを指す。一態様では、「生物学的サンプル」という用語は、本明細書で使用される場合、唾液を指す。他の態様では、生物学的サンプルは、尿、汗、眼房水を含めた眼性液、血液、糞便、皮脂、呼吸器由来の飛沫、精液、膣粘液、耳垢、表皮細胞、痰、胸水、脳液、または鼻咽頭検体である。さらなる例示的生物学的サンプルとしては、限定ではないが、生検;腫瘍サンプル、生物学的液体サンプル;血液;血清;血漿;尿;精液;粘液;組織生検;器官生検;滑液;胆汁;脳脊髄液;粘液分泌物;滲出液;汗;唾液;および/または組織サンプルその他が挙げられる。この用語は、上記のサンプルの混合物も含む。「検査サンプル」という用語は、未処置または前処置済み(前処理済み)の生物学的サンプルも含む。いずれかの局面のいくつかの態様では、検査サンプルは、対象由来の細胞を含み得る。検査サンプルは、サンプルを対象から除去することによって得ることができるが、過去に単離された(たとえば以前のある時点で当人または別人から単離された)サンプルを用いて得ることもできる。
【0144】
いずれかの局面のいくつかの態様では、検査サンプルは、未処置の検査サンプルであり得る。本明細書で使用される場合、「未処置(の)検査サンプル」は、溶液における希釈および/または懸濁を除き、事前に何らサンプル前処置のされていない検査サンプルを指す。検査サンプルを処置する例示的方法としては、限定ではないが、遠心処理、濾過、超音波処理、均質化、加熱、凍結、および融解、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。いずれかの局面のいくつかの態様では、検査サンプルは、凍結検査サンプル、たとえば凍結組織であり得る。凍結サンプルは、本明細書に記載される方法、アッセイ、およびシステムを使用する前に融解され得る。凍結サンプルは、融解後、本明細書に記載される方法、アッセイ、およびシステムに供される前に、遠心処理され得る。いずれかの局面のいくつかの態様では、検査サンプルは、たとえば遠心処理および清澄な検査サンプルを含む上清の収集により、清澄な検査サンプルである。いずれかの局面のいくつかの態様では、検査サンプルは、前処理済みの検査サンプルであり得、たとえば、遠心処理、均質化、超音波処理、濾過、融解、精製、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される処置から得られた上清またはろ液であり得る。いずれかの局面のいくつかの態様では、検査サンプルは、化学的および/または生物学的試薬で処置され得る。化学的および/または生物学的試薬は、たとえば、処理中にサンプル(それに含まれる生分子(たとえば核酸およびタンパク質)も含む)の安定性を保護しかつ/または維持するために用いられ得る。一例示的試薬はプロテアーゼ阻害剤であり、処理中にタンパク質の安定性を保護する、または維持するために一般に用いられる。当業者であれば、本明細書に記載されるような発現産物のレベルの決定に必要な生物学的サンプルの前処理に適した方法および処理をよく知っている。
【0145】
「生物学的サンプル」は、個人から得られるさまざまサンプルのタイプを含み、診断または観察のアッセイで用いられ得る。この定義は、血液およびほかの生物由来の液体サンプル、生検検体もしくは組織培養物などの固形組織サンプル、またはそれに由来する細胞もしくはその後代を含む。この定義は、調達後、試薬での処置、可溶化、またはポリヌクレオチドなどの特定の構成要素の濃縮など、何らかの操作がなされたサンプルも含む。「生物学的サンプル」という用語は、臨床サンプルを含み、また、限定ではないが、培養中の細胞、細胞上清、細胞ライセート、組織、末梢血、血清、血漿、尿、脳脊髄液、生物学的液体、および組織サンプルも含む。サンプルは、必要に応じて、適切なバッファー液で希釈する、または所望により濃縮することにより、前処置され得る。リン酸やトリス等のさまざまなバッファーの一つを用いた、いくつもの標準的なバッファー水溶液のいずれかを、好ましくは生理的pHで用いることができる。生物学的サンプルは、静脈穿刺、腰椎穿刺、唾液もしくは尿などの液体採取、または組織生検等などの周知の技法を用いて患者から得ることができる。特定の態様では、サンプルは任意の動物からの身体サンプル(body sample)であり、一態様では、それは哺乳類からであり、一態様ではヒト対象からであり、別の態様では非ヒト動物(たとえば昆虫またはコウモリ)からである。
【0146】
「結合親和性」という用語は、本明細書で使用される場合、結合剤が標的と結合する、または結合しない傾向を指し、結合剤が標的分子と結合する結合強さまたは親和性の尺度を記述する。
【0147】
「捕捉試薬」という用語は、本明細書で使用される場合、サンプル中の標的分子と結合して捕捉することのできる試薬を指す。典型的には、捕捉試薬は固定化されるか、または固定化可能である。サンドイッチ免疫アッセイでは、捕捉試薬は、たとえばアプタマーまたは抗体であり得る。
【0148】
「クロノアンペロメトリー」という用語は、本明細書で使用される場合、電気化学分析のための、または電極反応のキネティクスおよび機構の決定のための電気化学的測定法を指す。急上昇する電位パルスを電気化学セルの作用(または基準)電極にかけ、この電極を流れる電流を時間の関数として測定する。
【0149】
「複合体」という用語は、本明細書で使用される場合、2つ以上の分子がたとえば化学的会合により少なくとも1つのほかの分子と結合または会合している物質を指す。したがって、「マトリックス-アプタマー-標的分子複合体」という用語は、マトリックス、アプタマー、および標的分子の会合体(association)を指す。「ビオチン化第2結合剤ストレプトアビジン(またはb-結合剤-SA)複合体」という用語は、ビオチン、第2の結合剤、およびストレプトアビジンの会合体を指す。
【0150】
「~と相関のある」または「~と関連づけられる」という用語は、生理的状態、たとえば、病状または疾患の程度、治療に対する応答、および生存と統計学的に有意な相関のある、対象の生物学的サンプル中の分析物またはその断片のレベルを指す。分析物またはその断片のレベルと、特定の生理的状態の存在または不存在との相関の強さは、統計学的有意差検定により決定され得る。
【0151】
「統計学的に有意な」または「有意に」という用語は、統計学的有意性を指し、一般には2標準偏差(2SD)またはそれ以上の差を意味する。
【0152】
「交差反応性」という用語は、本明細書で使用される場合、1つの標的分子に向けられた結合剤(たとえば、アプタマー、抗体)が、別の違う分子、すなわち非標的分子と成功裏に結合する能力を指す。交差反応性の程度はさまざまであり得る。特定の態様では、標的分子と非標的分子とは、共通のエピトープをもつ、すなわち種間で高度に保存された特徴をもつ。
【0153】
「カットポイント」という用語は、本明細書で使用される場合、アッセイにおいて陰性応答と陽性応答とを区別するのに用いられる閾値を指す。それは、薬物を受けたことのない罹患者のサンプル一式のアッセイ応答を分析することにより統計学的に決定された一定値である。
【0154】
「検出可能な標識」という用語は、結合剤と結合した部分、分子、もしくは化合物、または分子群、もしくは化合物群を指し、該結合剤を特定するのに用いられる。検出可能な標識からの信号は、さまざま手段により検出され得、検出可能な標識の性質に依存することになる。検出可能な標識は、同位体、蛍光部分、着色物質、酵素、酵素基質等であり得る。検出可能な標識を検出する手段の例としては、限定ではないが、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電磁気学的、放射化学的、もしくは化学的な手段、たとえば蛍光、化学蛍光、化学発光、または任意のほかの適切な手段が挙げられる。
【0155】
「ドロップキャスト法」という用語は、平らな表面に溶液を滴下させ、次いで該溶液を蒸発させることにより、薄い固体のフィルムを形成する方法を指す。
【0156】
「電気化学システム」という用語は、本明細書で使用される場合、イオンの放出または吸収によるレドックス反応または電位により誘導されるような、溶液中の作用電極と対電極との間の電気信号を測定することで、レドックス分析物の存在および/または量を決定するシステムを指す。レドックス反応とは、電位の印加などの電気刺激中に物質が経る電子の喪失(酸化)または電子の獲得(還元)を指す。レドックス反応は作用電極で生じ、作用電極は、化学検出のために、典型的には白金または炭素などの不活性材料で作られている。作用電極の電位は基準電極に対し測定され、基準電極は、典型的には銀/塩化銀などの安定した落ち着いた電気化学的半電池である。電気化学システムは、標的生分子の存在および/または濃度を決定するための多くの異なる技法をサポートするのに用いることができ、限定ではないが、さまざまなタイプのボルタンメトリー、アンペロメトリー、ポテンシオメトリー、クーロメトリー、導電率測定、および電気伝導度測定、たとえばACボルタンメトリー、差動パルスボルタンメトリー、方形波ボルタンメトリー、電気化学インピーダンススペクトロスコピー、陽極ストリッピングボルタンメトリー、サイクリックボルタンメトリー、ならびに高速スキャンサイクリックボルタンメトリーが挙げられる。電気化学システムは、1つまたは複数の負対照電極および正対照電極をさらに含み得る。本発明の文脈では、1つの電気化学システムを用いて2つ以上のタイプの分析物を定量化することができる。
【0157】
「エピトープ」または「抗原決定基」という用語は、本明細書では交換可能に用いられ、特定の結合剤(たとえば、抗体またはアプタマー)によって認識され特異的に結合されることのできる抗原などの分子の部分を指す。抗原がポリペプチドである場合、エピトープは、タンパク質の三次折り畳みにより、並置された連続アミノ酸と非連続アミノ酸との両方から形成され得る。連続アミノ酸から形成されるエピトープは、典型的には、タンパク質変性後も保持されるが、三次折り畳みにより形成されるエピトープは、典型的には、タンパク質変性後は失われる。エピトープは、典型的には、少なくとも3つの、より普通には少なくとも5から8~10の、独特な空間配置のアミノ酸を含む。抗原決定基は、抗体との結合を、インタクト抗原(すなわち、免疫応答を誘発するのに用いられる「免疫原」)と競い得る。
【0158】
「偽陰性」という用語は、本明細書で使用される場合、1つまたは複数の分析物、たとえばウイルスを含んでいない、と誤特定されたサンプルを指す。
【0159】
「偽陽性」という用語は、本明細書で使用される場合、1つまたは複数の分析物、たとえばウイルスを含んでいる、と誤特定されたサンプルを指す。
【0160】
「断片」という用語は、本明細書で使用される場合、全長ポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さ=n)に対し相対的に、1からn-1(nマイナス1)の配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドを指す。断片の長さは、その目的に応じて適宜変えることができる。その長さの下限の例としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50以上のアミノ酸が挙げられ、ここに具体的に挙げられていない整数(たとえば11)で表される長さも下限として適切であり得る。さらに、ポリヌクレオチドの場合、その長さの下限の例としては、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、75、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000以上のヌクレオチドが挙げられ、ここに具体的に挙げられていない整数(たとえば11)で表される長さも下限として適切であり得る。
【0161】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるポリペプチド(またはそのようなポリペプチドをコードする核酸)は、本明細書に記載されるアミノ酸配列の1つの、機能性断片であり得る。本明細書で使用される場合、「機能性断片」は、ポリペプチドの断片またはセグメントであって、本明細書で以下に記載されるアッセイによると、野生型基準ポリペプチドの活性の少なくとも50%を保持している。機能性断片は、本明細書に開示される配列の保存的置換を含み得る。
【0162】
「グルコメーター」という用語は、本明細書で使用される場合、糖尿病患者の血糖自己測定用に広く使用されている医療機器を指す。多くのグルコメーターは、検査ストリップなどの検査媒体に基づく、電気化学的方法を用いる。検査ストリップは、糖尿病の観察の文脈では、各測定に用いられる血液一滴中のグルコースと反応する化学物質を含んだ消費要素である。具体的には、化学反応が生じ、メーターがmg/dlまたはmmol/lで表されるグルコースレベルを指し示す。グルコメーターは普通は携帯用で、自宅で使用されるが、業務用グルコメーターも知られている。
【0163】
「グルコース」という用語は、本明細書で使用される場合、単糖類、一般的な六単糖を指す。
【0164】
「高親和性」という用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも10-8 M、約10-8~約10-12、またはより具体的には、約10-8 M、約10-9 M;約10-10 M、約10-11 M、もしくは約10-12 Mの結合親和性を指す。
【0165】
「単離された」、「精製された」、または「生物学的に純粋な」という用語は、本明細書で使用される場合、自然な状態では通常随伴する構成要素を実質的または本質的に含まない物質を指す。純度および均質性は、典型的には、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーなどの分析化学の技法を用いて決定される。調製物中に存在する優勢種であるタンパク質は、実質的に精製されている。
【0166】
「KD」という用語は、本明細書で使用される場合、特定の結合剤と標的分子との相互作用の平衡解離定数を指す。
【0167】
「測定する(こと)」および「決定する(こと)」という用語は、本明細書全体で交換可能に用いられ、患者サンプルを得ること、および/または生物学的サンプル中のバイオマーカーのレベルを検出することを含む方法を指す。一態様では、これらの用語は、患者サンプルを得ること、そして該サンプル中の1つまたは複数のバイオマーカーのレベルを検出することを指す。別の態様では、「測定する(こと)」および「決定する(こと)」という用語は、生物学的サンプル中の1つまたは複数のバイオマーカーのレベルを検出することを意味する。「測定する(こと)」という用語はまた、本明細書全体で「検出する(こと)」という用語と交換可能に用いられる。
【0168】
「分子」という用語は、本明細書で使用される場合、天然の、合成の、または半合成の分子または化合物を指すのに広義に用いられる。
【0169】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、実質的に均質な抗体集団から得られた抗体を指し、すなわち、ごく少量存在し得る自然に生じ得る変異体を除き、該集団を構成する個々の抗体は同一である。
【0170】
「変異」という用語は、ネイティブタンパク質のアミノ酸配列における変化を指す。変異は、ネイティブ配列を用いること、そして変化した特定の酸(acid)を特定することにより記述することができる。「変異体」または「バリアント」は、変異を含むタンパク質を指す。全長変異体配列とは、変異体をネイティブタンパク質とは異なるアミノ酸として記述する代わりに、変異体タンパク質の全アミノ酸配列を指す。
【0171】
「ネイティブタンパク質」という用語は、ネイティブのまたは自然な状態のタンパク質であって、熱、化学的変異、または酵素反応などの変性作用物質により改変されていないタンパク質を指す。
【0172】
「非標的分子」という用語は、本明細書で使用される場合、関心対象のバイオマーカーではない分子を指す。具体的には、非標的分子は、関心対象のバイオマーカーと構造的に似た分子であり得る。
【0173】
「病原体」という用語は、限定ではないが、ウイルスもしくは細菌、またはほかの微生物を含め、疾患を生じさせるあらゆる因子を意味する。自己複製する病原体(たとえば、ウイルスおよび細菌)は、身体の免疫応答をほぼ回避しながら身体のリソースを使って複製することにより疾患の原因となる生物である。
【0174】
「ポイントオブケア検査」という用語または「POCT」は、本明細書では、速やかな診断/または臨床介入により介護者を支援すべく、即座にまたはごく短時間で検査結果が得られるという前提で、生物学的検体を患者でまたは患者近傍でアッセイすることを指すのに使用される。たとえば、Ehrmeyer SS et al. (2007) Clin Chem Lab Med 45:766-773を参照されたい。この用語は、患者および家庭での使用に限定する意図はなく、さまざま設定(たとえば、地域、医院、周辺の研究所および病院)およびユーザー(たとえば技工士および介護者)も含む。設定およびユーザーに応じて、POC検査の目的も、トリアージや紹介から診断、治療、および観察まで、さまざまであり得る。
【0175】
「ポテンショスタット」という用語は、本明細書で使用される場合、広義の用語であり、限定ではないが、3電極セルの作用電極と基準電極との間の電位を所定値に制御する電気装置を含め、本来の意味で用いられる。ポテンショスタットは、必要とされるセル電圧および電流がそのコンプライアンス限界を超えないかぎり、作用電極と対電極との間に流れる必要のある電流に望ましい電位を維持させる。
【0176】
「予め決定された閾(値)」という用語は、分級器が偽陰性と偽陽性と(のコスト)に望ましいバランスを与える、閾値の数値を意味する。いくつかの態様では、「予め決定された閾値」は、偽陽性および偽陰性の望ましくない効果を最小限化するために、臨床試験およびそのアウトカム分析(まとめて「臨床データ」)ならびに/または前臨床もしくは非臨床試験(まとめて「非臨床データ」)を通して、それについて、またはそれに基づいて、統計学的(および臨床的に)決定され、精査され、調節され、かつ/または確認される。
【0177】
「予防する」、「予防すること」、または「予防」という用語は、病理的な状態、たとえば、ウイルス感染症の症状または徴候などの、病気の症状または徴候の顕現の阻害を指す。
【0178】
「プロセッサー」という用語は、本明細書で使用される場合、マイクロプロセッサー、マイクロコントローラー、特定用途向け集積回路(ASICS)、プログラム可能論理デバイス(PLD)、フィールドプログラマブル・ゲートアレイ(FPGA)その他などの、プログラム可能または不可能な処理デバイスを指すのに広く用いられる。「プロセッサー」という用語は、互いに協働する多重処理デバイスも含み得る。
【0179】
「点変異」という用語は、本明細書で使用される場合、ポリヌクレオチドの操作を指し、その結果として、1つまたは複数の単一(非連続)のまたは2つのアミノ酸の異なるアミノ酸との置換もしくは交換、欠失、または挿入において、無操作アミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列が発現する。
【0180】
「タンパク質」、「ペプチド」、および「ポリペプチド」という言葉は、交換可能に用いられて、アミノ酸ポリマー、または、たとえば隣接する残基のアルファ-アミノ基とカルボキシ基とがペプチド結合により互いに結合している1組の2つ以上の相互作用または結合したアミノ酸ポリマーを指す。これらの用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工の化学的模倣物であるアミノ酸ポリマー、ならびに修飾残基を含む天然アミノ酸ポリマー、および非天然アミノ酸ポリマーに適用される。「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、そのサイズまたは機能に関わらず、修飾アミノ酸(たとえば、リン酸化、糖化、グリコシル化、その他)およびアミノ酸アナログを含め、アミノ酸のポリマーを指す。「タンパク質」および「ポリペプチド」は、比較的大きいポリペプチドに関して用いられることが多いのに対し、「ペプチド」という用語は、小さいポリペプチドに関して用いられることが多いが、これらの用語の用法は、当技術分野では重複している。「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、遺伝子産物およびその断片に言及する際、本明細書では交換可能に用いられる。したがって、例示的なポリペプチドまたはタンパク質としては、遺伝子産物、天然タンパク質、それらのホモログ、オルソログ、パラログ、断片およびほかの等価物、バリアント、断片、ならびにアナログが挙げられる。
【0181】
「基準値」という用語は、本明細書で使用される場合、「閾値」または「カットオフ値」であり得る。典型的には、「閾値」または「カットオフ値」は、実験的、経験的、または理論的に決定され得る。
【0182】
「リスク」という用語は、本明細書で使用される場合、たとえばCovid-19の検査結果が陽性に転換するような、特定の時間が経ってからある事象が生じる確率を指し、対象の「絶対」リスクまたは「相対」リスクを意味し得る。絶対リスクは、適切な時間コホートの実際の測定後観察を参照して、または適切な期間だけフォローされた統計学的に妥当な歴史的コホートから構築されたインデックス値を参照して、測定され得る。相対リスクは、低リスクコホートの絶対リスクまたは平均集団リスクと比較した、対象の絶対リスクの比率を指し、臨床リスク要因がどのように評価されるかによって変わり得る。オッズ比は、所与の検査結果の陰性事象に対する陽性事象の割合であり、同じく広く用いられている(オッズは、式p/(1-p)による[式中、pは事象の確率であり、(1-p)は事象なしから転換なしの確率である])。本発明の文脈で評価され得る代替の継続測定としては、時間対転換リスク低下の比率が挙げられる。
【0183】
「選択性」という用語は、本明細書で使用される場合、システムまたは方法が、複合混合物中ほかの構成要素に妨げられずに特定の分析物を区別する能力を指す。
【0184】
「センサー」という用語は、本明細書で使用される場合、分析物を検出するのに用いられる手段を指す。「センサーシステム」は、センサーの使用および機能を促進するように意図された、たとえば素子、構造、およびアーキテクチャーを含む。センサーシステムは、たとえば、選択された材料特性を有するような組成物、ならびに信号検出および分析に用いられる素子およびデバイスなどの電子構成要素(たとえば、電流検出器、モニター、プロセッサー等)を含み得る。
【0185】
「特異的な結合」、「特異的に結合する」、「選択的な結合」、および「選択的に結合する」という用語は、結合剤(たとえば、抗体、アプタマー)が、標的分子に対しては十分な親和性を示すが、非標的分子との有意な交差反応性は概して示さないことを意味し、このことは特定の態様では、少なくとも約1x10-8 M以下の平衡解離定数を有する(たとえば、より小さいKDはより強い結合を示す)ことを意味する。2つの分子が特異的に結合するかどうかを決定する方法は、当技術分野で周知であり、たとえば、平衡透析または表面プラズモン共鳴が挙げられる。
【0186】
具体的には、本明細書で使用される場合、「特異的な結合」という用語は、2つの分子、化合物、細胞、および/または粒子の間の化学的または物理的な相互作用を指し、第1の物質は、標的ではない第3の物質と結合するよりも高い特異性および親和性で、標的である第2の物質と結合する。いくつかの態様では、特異的な結合は、第1の物質の、標的ではない第3の物質に対する親和性よりも少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍、またはそれ以上高い、標的である第2の物質に対する親和性を指し得る。所与の標的に対し特異的な試薬とは、利用されているアッセイの条件下で該標的に対し特異的な結合を示す試薬である。
【0187】
「感度」という用語は、本明細書で使用される場合、正しく特定される陽性者の割合(たとえば、システムまたは方法により特定されるSARS-CoV-2陽性者のパーセンテージ)を指す。高感度のシステムまたは方法では、偽陰性はわずかである。
【0188】
「特異性」という用語は、本明細書で使用される場合、正しく特定される陰性者の割合(たとえば、システムまたは方法により、SARS-CoV-2に感染していないと正しく特定される人のパーセンテージ)を指す。高特異性のシステムまたは方法では、偽陽性はわずかである。
【0189】
「スクリーンプリント法」という用語は、本明細書で使用される場合、プラスチックまたはセラミック基体に異なるタイプのインクをプリントして電気化学測定デバイスを製造する技法を指し、再生産性、感度、および確度の高い、迅速なインサイチューの分析を可能にする。電極の製造に用いられる異なるインクの組成(たとえば、炭素、銀、金、白金)によって、その選択性および感度が決定され得る。スクリーンプリント法は、高品質な使い捨て電極を低コストで再生産可能に製造することを可能にする。ほかのプリント法またはほかの電極作製法は、当技術分野で公知である。
【0190】
「対象」という用語は、ヒトなどの哺乳動物を指す。普通、動物は、類人猿、げっ歯類、飼育動物、または猟獣などの脊椎動物である。類人猿としては、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、およびマカク、たとえばアカゲザルが挙げられる。げっ歯類としては、マウス、ラット、マーモット、フェレット、ウサギ、およびハムスターが挙げられる。飼育動物および猟獣としては、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、ネコ種、たとえばイエネコ、イヌ種、たとえばイヌ、キツネ、オオカミ、鳥類、たとえばニワトリ、エミュー、ダチョウ、ならびに魚類、たとえばマス、ナマズ、およびサケが挙げられる。いくつかの態様では、対象は哺乳動物、たとえば類人猿、たとえばヒトである。「個人(個体)」、「患者」、および「対象」という用語は、本明細書では交換可能に用いられる。
【0191】
好ましくは、対象は哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト類人猿、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシであり得るが、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳動物は、たとえば感染性疾患の動物モデルを代表する対象として有利に用いられ得る。対象は男性(雄)または女性(雌)であり得る。
【0192】
対象は、本明細書に記載される疾患もしくは障害(たとえば、感染性疾患)の治療を必要とする状態、またはそのような状態に関連する1つもしくは複数の合併症の治療を必要とする状態に罹患しているかまたはそれを有すると診断または特定されたことがある、かつ任意で、本明細書に記載される疾患もしくは障害(たとえば、感染性疾患)または本明細書に記載される疾患もしくは障害(たとえば、感染性疾患)に関連する1つもしくは複数の合併症の治療をすでに受けた対象であり得る。あるいは、対象は、本明細書に記載される疾患もしくは障害(たとえば、感染性疾患)または本明細書に記載される疾患もしくは障害(たとえば、感染性疾患)に関連する1つもしくは複数の合併症を有すると診断されたことがない対象であってもよい。たとえば、対象は、本明細書に記載される疾患もしくは障害(たとえば、感染性疾患)または本明細書に記載される疾患もしくは障害(たとえば、感染性疾患)に関連する1つもしくは複数の合併症の1つまたは複数のリスク要因を示す対象、あるいはリスク要因を示さない対象であり得る。
【0193】
特定の状態の治療を「必要とする対象」は、その状態を有する、その状態を有すると診断された、またはその状態を発症するリスクのある対象であり得る。
【0194】
「システムノイズ」という用語は、本明細書で使用される場合、限定ではないが、不要な電子的または拡散関連のノイズを指し、たとえば、ガウスノイズ、運動関連ノイズ、フリッカー、動力学的ノイズ、またはほかのホワイトノイズが挙げられ得る。
【0195】
「標的分子」という用語は、本明細書で使用される場合、試験サンプル中に見られ得る、かつ結合剤と結合することができる分子を指す。
【0196】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療」、または「治療すること」という用語は、治療各種を指し、その目的としては、障害または疾患、たとえばCOVID-19などの感染性疾患と関連づけられる状態および症状の進行または重症度を予防すること、阻害すること、緩和すること、逆転させること、寛解させること、遅延させること、または止めることが挙げられる。「治療する(こと)」という用語は、状態、疾患、または障害の少なくとも1つの有害事象または症状を軽減または緩和することを含む。治療は、1つまたは複数の症状または臨床マーカーが軽減すれば、概ね「有効」である。あるいは、疾患の進行が軽減または停止すれば、治療は「有効」である。つまり、「治療」は、症状またはマーカーの改善のみならず、治療の非存在下で予測されることと比べて症状の進行または悪化が治まること、または少なくとも緩徐化することも含む。有益なまたは望ましい臨床結果としては、限定ではないが、検出可能であれ検出不可能であれ、1つもしくは複数の症状の緩和、疾患範囲の減少、病状の安定(すなわち悪化しない)、疾患進行の遅延もしくは緩徐化、病状の寛解もしくは緩和、(一部であれ全部であれ)軽快、および/または死亡率の低下が挙げられる。疾患の「治療」という用語は、疾患の症状または副作用からの解放をもたらすことも含む(緩和治療を含む)。
【0197】
「治療有効量」という用語は、本明細書で使用される場合、研究者、獣医師、医師、またはほかの臨床医が求めている対象の生物学的または医療的応答を誘発する活性化合物または薬剤(たとえば、抗ウイルス薬)の量を指し、該応答としては、治療中の疾患または障害の症状の予防、寛解、または緩和が挙げられる。本薬学的組成物の治療有効用量を決定する方法は当技術分野で公知である。
【0198】
「2結合剤アッセイ」という用語は、マトリックスと結合した第1の結合剤に付着した標的分子が、化学反応性基と会合した第2の結合剤の存在下でさらにインキュベートされるアッセイを指す。
【0199】
「バリアント」という用語は、本明細書で使用される場合、関心対象の特定のポリペプチドと、その配列を比較する「親」または「基準」ポリペプチドとの関係を記述する、相対的な用語である。関心対象のポリペプチドは、少数の配列変更を特定の位置に有する以外は親のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有する場合、親または基準ポリペプチドの「バリアント」とみなされる。バリアントとしては、たとえば、置換、挿入、または欠失バリアントが挙げられる。典型的には、バリアントにおいては、親と比べて残基の20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満が置換されている。いくつかの態様では、バリアントは、親と比べて10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1つの置換残基を有する。しばしば、バリアントは、非常に少数の(たとえば、5、4、3、2、または1よりも少ない)置換された機能性残基(すなわち、生物学的活性に寄与する特定の残基)を有する。さらに、バリアントは、典型的には、親と比べて5、4、3、2、または1つしか付加または欠失をもたず、付加または欠失をまったくもたないことも多い。さらに、どの付加または欠失も、典型的には、約25残基、約20残基、約19残基、約18残基、約17残基、約16残基、約15残基、約14残基、約13残基、約10残基、約9残基、約8残基、約7残基、約6残基よりも少なく、一般的には約5残基、約4残基、約3残基、または約2残基よりも少ない。いくつかの態様では、親または基準ポリペプチドは、自然界に見られるポリペプチドである。当業者であれば理解しようが、自然界では一般に、関心対象の特定のポリペプチドの複数のバリアントが見られ得、関心対象のポリペプチドが感染性因子であるポリペプチドの場合はなおさらそうである。ある特定の態様では、バリアントはウイルスタンパク質(たとえば、スパイクタンパク質)であって、基準ウイルスタンパク質とは機能がとくに似ているが、アミノ酸配列に変異をもつせいで、野生型ウイルスタンパク質とは1つまたは複数の位置で配列が異なっている。
【0200】
本明細書に記載されるさまざまな態様では、記載される任意の特定のポリペプチドのバリアント(天然、またはその他)、アレル、ホモログ、保存的修飾バリアント、および/または保存的置換バリアントが含まれることも、さらに想定されている。アミノ酸配列については、当業者であれば認識しようが、コードされた配列の単一のアミノ酸またはアミノ酸のごくわずかなパーセンテージを変更するような、核酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の配列に対する個々の置換、欠失、または付加は「保存的修飾バリアント」であって、該変更は、アミノ酸を化学的に類似なアミノ酸で置換することになるが、そのポリペプチドの所望の活性は保持する。そのような保存的修飾バリアントは、本開示に沿った多型バリアント、種間ホモログ、およびアレルに追加され、かつそれらを排除しない。
【0201】
所与のアミノ酸は、同様の生理化学的特徴を有する残基で置き換えられることができ、たとえば、1つの脂肪族残基を別の脂肪族残基で(たとえばIle、Val、Leu、またはAlaを相互に)置換する、または1つの極性残基を別の極性残基で(たとえばLysとArgとを;GluとAspとを;またはGlnとAsnとを)置換する。ほかのそのような保存的置換、たとえば、類似の疎水性特徴を有する全領域の置換は周知である。保存的アミノ酸置換を含むポリペプチドを、本明細書に記載されるアッセイのいずれかで試験して、所望の活性、たとえばネイティブまたは基準ポリペプチドの標的に対する結合活性および特異性が保持されていることを確認することができる。
【0202】
アミノ酸は、側鎖の属性の類似性によってグループ分けすることができる(A. L. Lehninger, in Biochemistry, second ed., pp. 73-75, Worth Publishers, New York (1975)より):(1)非極性:Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M);(2)非電荷極性:Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q);(3)酸性:Asp(D)、Glu(E);(4)塩基性:Lys(K)、Arg(R)、His(H)。あるいは天然の残基を共通の側鎖属性に基づきグループに分けることができる:(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;(3)酸性:Asp、Glu;(4)塩基性:His、Lys、Arg;(5)鎖の向きに影響を与える残基:Gly、Pro;(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。非保存的置換では、これらのクラスの一つと別のクラスとの間でメンバーを交換することになる。具体的な保存的置換としては、たとえば、AlaからGlyもしくはSer;ArgからLys;AsnからGlnもしくはHis;AspからGlu;CysからSer;GlnからAsn;GluからAsp;GlyからAlaもしくはPro;HisからAsnもしくはGln;IleからLeuもしくはVal;LeuからIleもしくはVal;LysからArg、Gln、もしくはGlu;MetからLeu、Tyr、もしくはIle;PheからMet、Leu、もしくはTyr;SerからThr;ThrからSer;TrpからTyr;TyrからTrp;および/またはPheからVal、Ile、もしくはLeuの置換が挙げられる。
【0203】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるポリペプチドは、本明細書に記載される配列のバリアントであり得る。いくつかの態様では、バリアントは、保存的修飾バリアントである。保存的置換バリアントは、たとえばネイティブのヌクレオチド配列の変異により得られ得る。本明細書で言及する場合、「バリアント」は、ネイティブまたは基準ポリペプチドと実質的に相同であるが、1つまたは複数の欠失、挿入、または置換のせいで、ネイティブまたは基準ポリペプチドのアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列をもつポリペプチドである。バリアントポリペプチドをコードするDNA配列は、ネイティブまたは基準DNA配列と比べると1つまたは複数のヌクレオチドの付加、欠失、または置換を含むが、活性を保持するバリアントタンパク質またはその断片をコードする配列を含む。多様なPCRベースの部位特異的変異誘発アプローチが当技術分野で公知であり、当業者による人工バリアントの作製および試験に用いられ得る。
【0204】
バリアントアミノ酸またはDNA配列は、ネイティブまたは基準配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれ以上同一であり得る。ネイティブ配列と変異体配列との相同度(同一性パーセント)は、たとえば、ワールドワイドウェブ上で配列比較の目的で広く用いられている無料で利用できるコンピュータープログラムを(たとえば、BLASTpまたはBLASTnを、デフォルト設定で)用いて、これら2つの配列を比較することにより決定することができる。
【0205】
バリアントアミノ酸配列は、ネイティブまたは基準配列と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれ以上、類似している場合がある。本明細書で使用される場合、「類似性」は、本明細書に記載される同一アミノ酸または保存的置換アミノ酸を指す。したがって、「配列類似性」のパーセンテージは、同一であるかまたは保存的に変更されているアミノ酸のパーセンテージであり、たとえば、「配列類似性」=(配列同一性%)+(保存的変更%)である。基準配列に対し特定の類似性パーセントをもつ配列は、該基準配列に対しそれと同じ特定の同一性パーセントを有する配列を必然的に含むことを理解すべきである。当業者であれば、2つの配列間の同一性または類似性を決定するのに利用可能な、種々の数学アルゴリズムを用いた種々のコンピュータープログラムをいくつか知っている。たとえば、Needleman-Wunschアルゴリズム(Needleman et al. (1970))を用いたコンピュータープログラム;Accelrys GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラム(Accelerys Inc., 米国サンディエゴ);ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE. MeyersとW. Millerのアルゴリズム(Meyers et al. (1989));またはより好ましくはBLAST(Basic Local AlignmentToolの頭文字、デフォルトのパラメーターを用いる)を用いることができ、たとえば米国特許第10,023,890号を参照されたく、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる。
【0206】
ネイティブアミノ酸配列の変更は、当業者に公知の多数の技法のいずれかで達成することができる。変異はたとえば、ネイティブ配列の断片へのライゲーションを可能にする制限部位に隣接された変異体配列を含むオリゴヌクレオチドを合成することにより、特定の座位に導入され得る。ライゲーション後に得られる再構成された配列は、所望のアミノ酸挿入、置換、または欠失を有するアナログをコードする。あるいは、オリゴヌクレオチド依存性の部位特異的変異誘発手順を用いて、必要な置換、欠失、または挿入に従い変更された特定のコドンを有する改変されたヌクレオチド配列を得ることができる。そのような変更を行う技法はしっかりと確立されており、それにはたとえば、Walder et al. (Gene 42:133, 1986);Bauer et al. (Gene 37:73, 1985);Craik (BioTechniques, January 1985, 12-19);Smith et al. (Genetic Engineering:Principles and Methods, Plenum Press, 1981);ならびに米国特許第4,518,584号および同第4,737,462号により開示されたものが含まれ、これらの全内容が参照により本明細書に組み入れられる。ポリペプチドの適切な立体構造の維持に関与しないすべてのシステイン残基も大抵はセリンで置換され得、それによって分子の酸化安定性が向上し、かつ異常な架橋が阻止される。反対に、ポリペプチドにシステイン結合を付加して、その安定性を改善する、またはオリゴマー化を促進する場合もある。
【0207】
「野生型」という用語は、本明細書で使用される場合、自然界で見られるようなネイティブの全長形態のタンパク質または核酸を指す。全長ネイティブタンパク質配列という用語は、本明細書で使用される場合、全長ネイティブタンパク質に見られるアミノ酸配列を指す。野生型タンパク質は、たとえば生物学的サンプルから得られ得る。
【0208】
別個の諸工程を含む、本明細書に開示されるいずれの方法についても、工程は実行可能なあらゆる順番で実施され得る。また、適宜、任意に組み合わされた2つ以上の工程を同時に実行することができる。
【0209】
「減少」、「低下した」、「低下」、または「阻害」という用語はすべて、本明細書では統計学的に有意な量の減少を意味するのに用いられる。いくつかの態様では、「低下」、「低下した」、または「減少」、または「阻害」は、典型的には、基準レベル(たとえば、所与の治療または剤の不存在)と比べて少なくとも10%の減少を意味し、かつ、たとえば少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、またはそれ以上の減少を含み得る。本明細書で使用される場合、「低下」または「阻害」は、基準レベルと比べて完全な阻害または低下は含まない。「完全な阻害」とは基準レベルと比べて100%の阻害である。減少は、好ましくは、たとえば所与の障害のない人が正常な範囲内として許容するレベルまでの減少であり得る。
【0210】
「増加した」、「増加」、「強化する」、または「活性化する」という用語はすべて、本明細書では、統計学的に有意な量の増加を意味するのに用いられる。いくつかの態様では、「増加した」、「増加」、「強化する」、または「活性化する」という用語は、基準レベルと比べて少なくとも10%の増加、たとえば基準レベルと比べて少なくとも約20%、もしくは少なくとも約30%、もしくは少なくとも約40%、もしくは少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%、もしくは最大で100%の増加、または10~100%の増加、あるいは基準レベルと比べて少なくとも約2倍、もしくは少なくとも約3倍、もしくは少なくとも約4倍、もしくは少なくとも約5倍、もしくは少なくとも約10倍の増加、または2倍~10倍もしくはそれ以上の増加を意味し得る。マーカーまたは症状の文脈では、「増加」はそのようなレベルの統計学的に有意な増加である。
【0211】
本明細書で使用される場合、「核酸」または「核酸配列」という用語は、任意の分子、好ましくは複数単位のリボ核酸、デオキシリボ核酸、またはそのアナログを含む重合体の分子を指す。核酸は、一本鎖または二本鎖であり得る。一本鎖核酸は、変性した二本鎖DNAの一本の核酸鎖であり得る。あるいは、どの二本鎖DNAにも由来しない一本鎖核酸であり得る。一局面では、核酸はDNAであり得る。別の局面では、核酸はRNAであり得る。好適な核酸としては、ガイド核酸、コラテラル核酸、および/または検出核酸を挙げることができる。好適なDNAとしては、たとえば、ウイルスDNA、ゲノムDNA、またはcDNAを挙げることができる。好適なRNAとしては、たとえば、mRNAまたはウイルスRNAを挙げることができる。
【0212】
「発現」という用語は、RNAおよびタンパク質の生産と、適宜、タンパク質の分泌とに関わる細胞プロセスを指し、適宜、限定ではないが、たとえば転写、転写物プロセシング、翻訳、ならびにタンパク質折り畳み、修飾、およびプロセシングを含む。発現とは、1つもしくは複数の核酸断片に由来するセンスRNA(たとえばmRNA)もしくはアンチセンスRNAの転写および安定蓄積、ならびに/またはmRNAからポリペプチドへの翻訳を指し得る。
【0213】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるバイオマーカー、標的、または遺伝子/ポリペプチドの発現は、組織特異的である。いくつかの態様では、本明細書に記載されるバイオマーカー、標的、または遺伝子/ポリペプチドの発現は、全般的である。いくつかの態様では、本明細書に記載されるバイオマーカー、標的、または遺伝子/ポリペプチドの発現は、全身性である。
【0214】
「発現産物」としては、遺伝子から転写されたRNA、および遺伝子から転写されたmRNAの翻訳により得られたポリペプチドが挙げられる。「遺伝子」という用語は、適切な制御配列と機能的に連結されると、インビトロまたはインビボでRNAに転写される核酸配列(DNA)を指す。遺伝子は、コード領域の前後の領域、たとえば、5’非翻訳(5’UTR)または「リーダー」配列、および3’UTRまたは「トレーラー」配列、ならびに個々のコードセグメント(エキソン)間の介在配列(イントロン)を、含む場合もあれば含まない場合もある。
【0215】
本発明の文脈における「マーカー」は、対照としての対象(たとえば、健常対象)から採取された比較用サンプルと比べて、感染性疾患(たとえば、COVID-19)を有する対象から採取されたサンプル中に差別的に存在している発現産物、たとえば核酸またはポリペプチドを指す。「バイオマーカー」という用語は、「マーカー」という用語と交換可能に用いられる。
【0216】
いくつかの態様では、本明細書に記載される方法は、少なくとも1つのマーカーのレベルを測定すること、検出すること、または決定することに関する。本明細書で使用される場合、「検出する(こと)」または「測定する(こと)」という用語は、サンプル中の分析物の存在を示す、たとえばプローブ、標識、または標的分子からの信号を観測することを指す。当技術分野で公知の特定の標識部分を検出する方法はどれでも、検出に用いられ得る。例示的な検出法としては、限定ではないが、分光学的、蛍光的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的、または化学的な方法が挙げられる。いずれかの局面のいくつかの態様では、測定することは、定量的観測であり得る。
【0217】
いずれかの局面のいくつかの態様では、本明細書に記載されるポリペプチド、核酸、または細胞が、操作される場合がある。本明細書で使用される場合、「操作される(engineered)」は、人の手でマニピュレートされている局面を指す。たとえば、ポリペプチドは、その少なくとも1つの局面、たとえば配列が、人の手でマニピュレートされたことによって、該ポリペプチドが自然に存在する場合の同局面とは異なる場合、「操作され」ているとみなされる。慣例のとおり、また当業者が理解するように、操作された細胞の後代も、実際のマニピュレートは前の代に対し実施されているが、典型的にはやはり「操作され」ていると言われる。
【0218】
本明細書で使用される場合、「薬学的組成物」という用語は、薬学的に許容される担体、たとえば製薬業界で一般的に使用される担体と組み合わされた、活性な剤を指す。「薬学的に許容される」という語句は、本明細書では、正しい医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、またはほかの問題もしくは合併症なくヒトおよび動物の組織と接触させる使用に適した、合理的なメリット/リスク比に相応の、化合物、材料、組成物、および/または剤形を指すのに用いられる。いずれかの局面のいくつかの態様では、薬学的に許容される担体は、水以外の担体であり得る。いずれかの局面のいくつかの態様では、薬学的に許容される担体は、クリーム、エマルジョン、ゲル、リポソーム、ナノ粒子、および/または軟膏であり得る。いずれかの局面のいくつかの態様では、薬学的に許容される担体は、人為的または操作された担体、たとえば、活性成分が自然界では見られない、または生じないような担体であり得る。
【0219】
本明細書で使用される場合、「投与する(こと)」という用語は、本明細書に開示される化合物を、該剤を少なくとも部分的には所望の部位に送達することをもたらす方法または経路により、対象体内に配置することを指す。本明細書に開示される化合物を含む薬学的組成物は、対象において有効な治療をもたらす任意の適切な経路により投与され得る。いくつかの態様では、投与は、たとえば、注射、摂取行為、塗布行為、および/または送達デバイスもしくは機械の操作を含め、人間の身体活動を含む。そのような活動は、たとえば、医療専門家および/または治療中の対象により実施され得る。
【0220】
本明細書で使用される場合、「接触させる(こと)」は、剤を少なくとも1つの細胞に送達または曝露するための任意の好適な手段を指す。例示的な送達法としては、限定ではないが、細胞培養培地への直接送達、トランスフェクション、形質導入、灌流、注射、または当業者に公知のほかの送達法が挙げられる。いくつかの態様では、接触させることは、たとえば、注射;分配、混合、および/もしくはデカントする行為;ならびに/または送達デバイスもしくは機械の操作を含め、人間の身体活動を含む。
【0221】
基準レベルを下回るレベルは、基準レベルに対し相対的に、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、またはそれよりも低いレベルであり得る。いずれかの局面のいくつかの態様では、基準レベルを下回るレベルは、統計学的に有意に基準レベルを下回るレベルであり得る。
【0222】
基準レベルを上回るレベルは、基準レベルよりも少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約500%、またはそれよりも高いレベルであり得る。いずれかの局面のいくつかの態様では、基準レベルを上回るレベルは、統計学的に有意に基準レベルを上回るレベルであり得る。
【0223】
いずれかの局面のいくつかの態様では、基準は、本明細書に記載される疾患または障害(たとえば、COVID-19などの感染性疾患)の徴候または症状を有すると診断されたことのない、もしくは診断されない、かつ/またはそれを示さない対象の集団における標的分子のレベルであり得る。いずれかの局面のいくつかの態様では、基準はまた、対照サンプルもしくは対照サンプルのプールにおける標的分子の発現レベル、またはそれに基づく数値もしくは数値範囲であり得る。いずれかの局面のいくつかの態様では、基準は、同一の対象からもっと前の時点で採取していたサンプル中の標的分子のレベルであり得、たとえば、本明細書に記載される方法を用いて、所与の治療に対する対象の感度または応答が時間の経過とともに変化しているかどうかを決定することができる。
【0224】
いくつかの態様では、基準レベルは、標的分析物のレベルを決定すべきサンプル/対象と同様の細胞タイプの、サンプルタイプの、サンプル処理の、ならびに/または同様の年齢、性別、およびほかの人口統計パラメーターの対象から得られた、サンプルにおけるレベルであり得る。いくつかの態様では、検査サンプルと対照基準サンプルとは同一のタイプであり、つまり、同一の生物学的ソースから得られており、かつ同一の組成で、たとえば同数および同型の細胞で構成されている。
【0225】
本明細書で使用される場合、「含む(こと)」という用語は、記載されている所定の要素に加えて、ほかの要素も存在し得ることを意味する。「含む(こと)」の使用は、限定よりもむしろ包含を示す。
【0226】
「からなる」という用語は、その態様の記載には記されていない要素を除く、本明細書に記載される組成物、方法、およびそれらの各構成要素を指す。
【0227】
本明細書で使用される場合、「から本質的になる」という用語は、所与の態様に必要な要素を指す。この用語は、本発明のその態様の基本的かつ新規な、または機能的な特徴に大きな影響のない、追加の要素の存在を許容する。
【0228】
本明細書で使用される場合、「~に対応する」という用語は、第1のポリペプチドもしくは核酸における数えられた位置にあるアミノ酸もしくはヌクレオチド、または第2のポリペプチドもしくは核酸における、数えられたアミノ酸もしくはヌクレオチドに相当するアミノ酸もしくはヌクレオチドを指す。相当する数えられたアミノ酸またはヌクレオチドは、当技術分野で公知の相同度の各種プログラム、たとえばBLASTを用いて、候補配列のアラインメントにより決定することができる。
【0229】
本明細書に開示される本発明の代替要素または態様の諸群は、限定と解釈すべきでない。群の各メンバーは、個々に、または群のほかのメンバーもしくは本明細書に記載されるほかの要素と任意に組み合わせて言及され得、かつ特許請求され得る。群の1つまたは複数のメンバーは、便宜性および/または特許性を理由に、群に包含されることも削除されることもある。そのような包含または削除が生じる場合、本明細書の記載は、該修正のとおりの当該群を含むものとみなされ、添付の請求項に用いられるすべてのマーカッシュ群の記述をそのように満たす。
【0230】
本明細書で別途定義しないかぎり、本願と関連して用いられる科学技術用語は、本開示が属する技術分野の当業者が一般に理解するような意味をもつ。本発明は、本明細書に記載される具体的な方法論、プロトコル、および試薬その他には限定されず、したがって異なり得ることを理解すべきである。本明細書で使用される術語は、具体的な態様を記載する目的しかなく、請求項のみにより定められる本発明の範囲を限定するものではない。細胞生物学、免疫学、および分子生物学の一般用語の定義は、The Merck Manual of Diagnosis and Therapy, 20th Edition, 発行所Merck Sharp & Dohme Corp., 2018 (ISBN 0911910190, 978-0911910421);Robert S. Porter et al. (eds.), The Encyclopedia of Molecular Cell Biology and Molecular Medicine, 発行所Blackwell Science Ltd., 1999-2012 (ISBN 9783527600908);およびRobert A. Meyers (ed.), Molecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Reference, 発行所VCH Publishers, Inc., 1995 (ISBN 1-56081-569-8);Immunology by Werner Luttmann, 発行所Elsevier, 2006;Janeway's Immunobiology, Kenneth Murphy, Allan Mowat, Casey Weaver (eds.), W. W. Norton & Company, 2016 (ISBN 0815345054, 978-0815345053);Lewin's Genes XI, 発行所Jones & Bartlett Publishers, 2014 (ISBN-1449659055);Michael Richard Green and Joseph Sambrook, Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 4th ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., USA (2012) (ISBN 1936113414);Davis et al., Basic Methods in Molecular Biology, Elsevier Science Publishing, Inc., New York, USA (2012) (ISBN 044460149X);Laboratory Methods in Enzymology:DNA, Jon Lorsch (ed.) Elsevier, 2013 (ISBN 0124199542);Current Protocols in Molecular Biology (CPMB), Frederick M. Ausubel (ed.), John Wiley and Sons, 2014 (ISBN 047150338X, 9780471503385), Current Protocols in Protein Science (CPPS), John E. Coligan (ed.), John Wiley and Sons, Inc., 2005;およびCurrent Protocols in Immunology (CPI) (John E. Coligan, ADA M Kruisbeek, David H Margulies, Ethan M Shevach, Warren Strobe, (eds.) John Wiley and Sons, Inc., 2003 (ISBN 0471142735, 9780471142737)に記載されており、これらすべての全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0231】
ほかの用語は、本明細書において、本発明のさまざまな局面の記載中に定義されている。
【0232】
いくつかの態様では、生物学的サンプル中の1つまたは複数の標的分析物を検出するシステムが開示される。システムは、血液以外の生物学的サンプルを分析する結合アッセイ、および検出手段を含み、検出手段は、グルコースを測定または検出するグルコメーターまたは同様のデバイスである。特定の態様では、システムは、電気化学システムである。
【0233】
一局面では、生物学的サンプル中の少なくとも標的分析物を検出するためのシステムが開示され、該システムは、(a)該少なくとも1つの標的分析物とともに検出可能な複合体をつくることができる第1および第2の結合剤を含む、2結合剤アッセイと、(ii)該検出可能な複合体を検出するための検出デバイスとを含み、該検出デバイスはグルコメーターであり、該生物学的サンプルは血液ではない。
【0234】
別の局面では、生物学的サンプル中の少なくとも1つの病原体(たとえば、ウイルス)を検出するためのシステムが開示され、該システムは、(a)該少なくとも1つの病原体とともに検出可能な複合体をつくることができる第1および第2の結合剤を含む、2結合剤アッセイと、(ii)該検出可能な複合体を検出するための検出デバイスとを含み、該検出デバイスはグルコメーターである。特定の態様では、該生物学的サンプルは唾液である。
【0235】
一態様では、システムは、イエス/ノー式の結果を提供する。他の態様では、システムは、半定量的または定量的な結果を提供する(たとえば、ウイルスコピー数/体積などの分析物レベル/体積)。
【0236】
特定の態様では、第1の結合剤は、検査ストリップに固定化された捕捉試薬であり、第2の結合剤は、検出可能な結合剤であり、第1および第2の結合剤が標的分析物(たとえば、ウイルス抗原またはウイルス)と結合すると、検出可能な複合体が生じる。
【0237】
特定の態様では、第2の結合剤は、結合剤-グルコースオキシダーゼ(Ab-GOx)コンジュゲートであり、ここでグルコメーターは、標的分析物の存在を示す、かつ/または生物学的サンプル中に存在する標的分析物の量と相関のある、電気化学信号を提供し、生物学的サンプルは、血液ではない。
【0238】
特定の態様では、第2の結合剤は、結合剤-グルコースオキシダーゼ(Ab-GOx)コンジュゲートであり、ここでグルコメーターは、標的分析物の存在を示す、かつ/または生物学的サンプル中に存在する標的分析物の量と相関のある、電気化学信号を提供し、生物学的サンプルは、尿、汗、眼房水を含めた眼性液、血液、糞便、皮脂、呼吸器由来の飛沫、精液、膣粘液、耳垢、表皮細胞、鼻腔サンプル、胸水、脳脊髄液、または鼻咽頭検体である。
【0239】
特定の態様では、第2の結合剤は、結合剤-グルコースオキシダーゼ(Ab-GOx)コンジュゲートであり、ここでグルコメーターは、標的分析物の存在を示す、かつ/または生物学的サンプル中に存在する標的ウイルスの量と相関のある、電気化学信号を提供し、生物学的サンプルは、血液ではない。
【0240】
特定の態様では、第2の結合剤は、結合剤-グルコースオキシダーゼ(Ab-GOx)コンジュゲートであり、ここでグルコメーターは、標的分析物の存在を示す、かつ/または生物学的サンプル中に存在する標的ウイルスの量と相関のある、電気化学信号を提供し、生物学的サンプルは、尿、汗、眼房水を含めた眼性液、血液、糞便、皮脂、呼吸器由来の飛沫、精液、膣粘液、耳垢、表皮細胞、または鼻咽頭検体である。
【0241】
一態様では、生物学的サンプルは、グルコースと混合される。
【0242】
他の態様では、生物学的サンプルは、0.01 mM~1 Mの濃度のグルコースと混合される。
【0243】
他の態様では、生物学的サンプルは、アミラーゼもしくはインベルターゼを含む、0.01 mM~1 Mの濃度のスクロース、フルクトース、マルトース、ガラクトース、セルロース、または任意の組み合わせと混合される。いずれかの局面のいくつかの態様では、グルコース、スクロース、フルクトース、マルトース、ガラクトース、またはセルロースの濃度は、少なくとも0.01 mM、少なくとも0.02 mM、少なくとも0.03 mM、少なくとも0.04 mM、少なくとも0.05 mM、少なくとも0.06 mM、少なくとも0.07 mM、少なくとも0.08 mM、少なくとも0.09 mM、少なくとも0.1 mM、少なくとも0.2 mM、少なくとも0.3 mM、少なくとも0.4 mM、少なくとも0.5 mM、少なくとも0.6 mM、少なくとも0.7 mM、少なくとも0.8 mM、少なくとも0.9 mM、または少なくとも1.0 mM、もしくはそれ以上である。
【0244】
標的分析物を検出可能な複合体の一態様では、第1および第2の結合剤は、アプタマー、抗体、もしくはタンパク質、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0245】
標的分析物を検出可能な複合体の一態様では、第1および第2の結合剤は、アプタマー、抗体、またはタンパク質から選択され、かつ第2の結合剤は、その都度オキシダーゼ酵素と連結されたアプタマー、抗体、またはタンパク質から選択される。
【0246】
標的分析物を検出可能な複合体の特定の態様では、第1および第2の結合剤は、アプタマー、抗体、またはタンパク質から選択され、かつ第2の結合剤は、その都度グルコースオキシダーゼと連結されたアプタマー、抗体、またはタンパク質から選択される。
【0247】
標的分析物を検出可能な複合体の特定の態様では、第1および第2の結合剤は、アプタマー、抗体、またはタンパク質から選択され、かつ第2の結合剤は、その都度グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、D-グルコース:D-フルクトースオキシドレダクターゼ、またはセロビオースオキシダーゼと連結されたアプタマー、抗体、またはタンパク質から選択される。
【0248】
標的分析物を検出可能な複合体の一態様では、第1および第2の結合剤は、アプタマー、抗体、またはタンパク質から選択され、かつ第2の結合剤は、その都度ヒドロゲナーゼ酵素と連結されたアプタマー、抗体、またはタンパク質から選択される。
【0249】
標的分析物を検出可能な複合体の特定の態様では、第1および第2の結合剤は、アプタマー、抗体、またはタンパク質から選択され、かつ第2の結合剤は、その都度グルコースデヒドロゲナーゼ、グルコース6-リン酸デヒドロゲナーゼ、フルクトースデヒドロゲナーゼ、スクロースデヒドロゲナーゼ、グルコシドデヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、ソルビトールデヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、またはリンゴ酸デヒドロゲナーゼと連結されたアプタマー、抗体、またはタンパク質から選択される。
【0250】
他の態様では、システムは、単一の結合剤を含む。
【0251】
ある特定の態様では、単一の結合剤はアプタマーであり、アプタマーはセロビオースオキシダーゼと結合している。標的分析物はアプタマーと結合し、アプタマーはセロビオースを放出するので、オキシダーゼが溶液中に遊離する。
【0252】
ある特定の態様では、単一の結合剤はアプタマーであり、アプタマーは標的分析物と結合し、標的分析物は抗体-GOX複合体と結合する。次に信号分子が結合して標的分析物に取って代わり、その結果として信号が減少する。
【0253】
現在、SARS-CoV-2またはほかのウイルスの検出に関し真に有用であるために必要な低い検出限界および高い確度を有する、自宅で、または同様に職場、もしくは作戦現場、もしくはリソースが限られた環境で対象が高速に自己検査でき、15分、10分、5分、1分、0.5分、または0.1分以内に検査結果が提供されるようなFDA承認のPOCデバイスはない。POC検査は、感染を早い段階で高速検出して、より良い疾患診断、観察、および管理を促進するのに重要であり得る。
【0254】
特定の態様では、本明細書に開示されるシステムは、携帯用であり、かつ自宅、職場、医院、緊急治療室、または戦場での使用を含め数々の環境での使用に適しており、かつ呼吸器ウイルスおよびコロナウイルスなどの、より具体的にはSARS-CoV-2などのベータコロナウイルスなどの病原体を検出するシステムまたはデバイスを含め標的分析物を検出するほかのシステムまたはデバイスと同等の、または好ましくはそれらに対し相対的に改善された、1つまたは複数の特性を有する。これらの特性としては、限定ではないが、感知のスピードおよび持続時間(<1分)、特異性(>90%)、選択性(>90%)、アッセイの検出限界(1標的分析物/ミリリットル、または>100,000)、定量的検出(精度>90%、および確度>90%)、センサー出力に対する一般的な干渉物の影響、(たとえば、SARS-CoV-1およびSARS-CoV-2などの関連ウイルスとの)交差反応性(標的分析物の選択率>90%)、ダイナミックレンジ、反復測定の変動係数(分散<10%)、動作安定性、またはそれらの組み合わせが挙げられ得る。一態様では、5変数の分散分析では、使用する統計学的方法によっては、5回の測定で0.95超の収束が得られ得る。製造を標準化し、変数の数を1または2まで減らすと、この信頼レベルを2回の測定で得ることができる。
【0255】
一態様では、システムは、約90%もしくはそれ以上、約91%もしくはそれ以上、約92%もしくはそれ以上、約93%もしくはそれ以上、約94%もしくはそれ以上、約95%もしくはそれ以上、約96%もしくはそれ以上、約97%もしくはそれ以上、約98%もしくはそれ以上、または約99%もしくはそれ以上の感度を可能にする。
【0256】
ある特定の態様では、システムは、10回の検査のうち、偽陰性は1件で、9件の真陽性という結果を可能にし、ここで真陽性は、病原体(たとえばウイルス)に感染している、または過去に該病原体に感染した対象である。
【0257】
一態様では、システムは、約90%もしくはそれ以上、約91%もしくはそれ以上、約92%もしくはそれ以上、約93%もしくはそれ以上、約94%もしくはそれ以上、約95%もしくはそれ以上、約96%もしくはそれ以上、約97%もしくはそれ以上、約98%もしくはそれ以上、または約99%もしくはそれ以上の感度を可能にする。
【0258】
ある特定の態様では、システムは、10回の検査のうち、偽陰性は1件で、9件の真陰性という結果を可能にする。
【0259】
ほかのそのような特性としては、検査のスケール、アッセイ時間、使いやすさ、および二次的(たとえば、医療従事者の)感染の軽減が挙げられ得る。特に、確度は最重要であるが、それは、偽陰性という結果のせいで、感染力のある人が自分は感染症(たとえば、SARS-CoV-2)にかかっていないと思い込み、したがって知らないうちに周囲の人々に感染させかねないからである。
【0260】
ある特定の態様では、本明細書に開示されるシステムは、購入されたヒト唾液および鼻腔サンプル、または個人から直接採取したサンプルに対し実施されたRT-PCRアッセイに対し相対的に改善された1つまたは複数の特性を有する。一態様では、市販の鼻腔サンプルに対し実施されたRT-PCRよりも低い、具体的には、約20%、約18%、約16%、約14%、約12% 約10%、約8%、約6%、約4%、または約2%、もしくはそれよりも低い偽陽性率としての、本明細書に開示されるシステム。
【0261】
一態様では、本明細書に開示されるシステムは、生物学的(たとえば、唾液)サンプルの添加後約10分以内またはもっと早く、より具体的には約5分以内もしくはもっと早く、約2分以内もしくはもっと早く、または約1分以内もしくはもっと早くユーザーに結果を提供する。ある特定の態様では、システムは、約1~約2分以内にユーザーに結果を提供することを可能にする。
【0262】
一態様では、本明細書に開示されるシステムは、約33%未満の偽陽性率を有する。ある特定の態様では、偽陽性率は、約32%、約30%、約28%、約26%、約24%、約22%、約20%、約18%、約16%、約14%、約12%、約10%、約8%、約6%、約4%、または約2%、もしくはそれ未満である。
【0263】
別の態様では、本明細書に開示されるシステムは、約20%、約18%、約16%、約14%、約12%、約10%、約8%、約6%、約4%、または約2%、もしくはそれ未満の偽陰性率を有する。
【0264】
一態様では、本明細書に開示されるシステムは、約101~約1011ウイルスコピー/mLの範囲の検出を可能にする。一態様では、本明細書に開示されるシステムは、1 mLあたり少なくとも101、少なくとも102、少なくとも103、少なくとも104、少なくとも105、少なくとも106、少なくとも107、少なくとも108、少なくとも109、少なくとも1010、または少なくとも1011、もしくはそれ以上のウイルスコピーの検出を可能にする。
【0265】
一態様では、本明細書に開示されるシステムは、現在の関心対象の臨床範囲をはるかに下回る、溶液中約10~1000ウイルスの検出を可能にする。一態様では、システムは、溶液中約10~約100ウイルス、または溶液中約10~約50、より具体的には約10~約20ウイルスの検出を可能にする。
【0266】
一態様では、約10ウイルスコピー/mL、または10分析物/mL、または同様の濃度の検出限界を有する、本明細書に開示されるシステム。
【0267】
一態様では、本明細書に開示されるシステムは、(たとえば、95%の信頼区間で)95%の感度および95%の特異性を可能にする。
【0268】
別の態様では、本明細書に開示されるシステムは、最小標的臨床感度約90%、および最適標的感度約98%を可能にする。別の態様では、本明細書に開示されるシステムは、最小標的特異性約90%を可能にし、最適標的は>98%である。
【0269】
一態様では、本明細書に開示されるシステムは、改善された疾患診断、観察、管理、またはそれらの組み合わせを可能にする。
【0270】
特定の態様では、システムは、異なる時に取られた同一ユーザーの複数の検査結果を保存し、これらを比較して、疾患または状態(たとえば、COVID-19)の可能な進展を観察する、または予測する。一態様では、システムは、異なる時に同一ユーザーの標的分析物の量についての結果を2つもしくはそれ以上、3つもしくはそれ以上、または5つもしくはそれ以上得ることを可能にして、経時的な分析物レベルの傾向を観察することを可能にする。
【0271】
特定の態様では、本明細書に開示されるシステムは、疾患(たとえば、COVID-19)の予防または治療用の治療様式の選択を可能にする。治療様式はさまざまであり得、たとえば、小分子治療剤、生物学的剤(たとえば、タンパク質、抗体、治療ワクチン)を含み得る。
【0272】
特定の態様では、本明細書に開示されるシステムは、1つまたは複数の治療剤(たとえば、抗ウイルス剤)の効果を観察することを可能にし、その治療剤が一定期間にわたり十分に有効でなければ、ユーザーが代替治療アプローチを探すことを可能にする。特定の態様では、システムは、異なる時に取られた同一ユーザーの複数の検査結果を保存し、かつ、これらの検査結果を比較して所与の分析物のレベルの変動と関連づけられる治療レジメンを観察することを可能にする。一態様では、治療レジメンが(たとえば、何日間かの)所定の期間内に分析物(たとえば、ウイルス数)のレベルの低下を生じない場合、ユーザーは、当該治療レジメンを中止して代替治療レジメンを選ぶことができ、または特定の態様では、当該治療レジメンを第2の治療レジメンで補うことができる。一態様では、システムは、異なる時の同一ユーザーの標的分析物の量についての結果を2つもしくはそれ以上、3つもしくはそれ以上、または5つもしくはそれ以上得ることを可能にして、経時的な分析物レベルの傾向を観察することを可能にする。
【0273】
特定の態様では、本明細書に開示されるシステムは、次のうち1つまたは複数を有利にも可能にする:(i)唾液中のウイルス抗原の検出(すなわち、不快なサンプル収集法の使用を省く);(ii)端的な唾液サンプル収集;(iii)広く入手可能かつ比較的廉価な既存のグルコメーター技術の使用;または(iv)ほかの病原体(たとえば、ウイルス)の検出にも適用できる検査ストリップ。
【0274】
別の局面では、本明細書には、生物学的サンプル中の少なくとも1つの標的核酸を検出するためのシステム(本明細書では、核酸検出システムと呼ばれる;たとえば、図15A~15F参照)が記載され、該システムは、(i)該標的核酸と特異的に結合するとコラテラル核酸を切断する、配列特異的エンドヌクレアーゼおよびガイド核酸と、(ii)該切断されたコラテラル核酸とともに検出可能な複合体をつくることができる、検出核酸と、(iii)該検出可能な複合体を検出するための検出デバイスとを含み、該検出デバイスは、オキシダーゼベースのアンペロメトリックセンサーであり、該生物学的サンプルは、汗、唾液、血清、粘液、または血液中に存在している。
【0275】
本明細書におけるシステムおよび方法を使って検出または観察される1つまたは複数の標的は、対象、たとえばヒト対象から収集された生物学的サンプル(たとえば、液体の生物学的サンプル)中に存在し得る。
【0276】
生物学的サンプルはさまざまであり得、たとえば、血液、血清、乳汁、汗、精液、射精液、粘液、涙液、唾液、血漿、泌尿生殖器分泌物、リンパ液、尿、白血球、胸水、腹水(ascites)、痰、腹水(peritoneal fluid)、脳脊髄液、胸水、心膜液、羊水、滑液、間質液、糞便、皮脂、呼吸器由来の飛沫、精液、膣粘液、耳垢、表皮細胞、およびこれらの任意の組み合わせまたは混合物のサンプルが挙げられ得る。
【0277】
一態様では、生物学的サンプルは、血液ではない。ある特定の態様では、生物学的サンプルは、唾液である。唾液は、細菌および真菌のような微生物、インタクトなヒト細胞、細胞デブリ、ならびに多くの可溶性物質酵素、ホルモン、抗体、およびほかの分子を本質的に含む、粘性の密なねばねばした液体である。
【0278】
唾液検体は、対象から任意の好適なやり方で容易に収集することができ、特定の態様では、専用の道具は使わず、たとえば対象に容器内に吐き出して(split)もらうことにより収集され得、次いで容器の中身を希釈して検査ストリップに添加するか、あるいは検査ストリップに直接吐きかけてもらう。たとえば、Navazesn M (1993). Methods for collecting saliva. Ann N Y Acad Sci 694:72-77を参照されたい。
【0279】
生物学的サンプルの量はさまざまであり得る。一態様では、生物学的サンプルの量は、約1 μL、10 μL、20 μL、50 μL、または100 μL~約2000 μLであり、より具体的には、約100 μL、約150 μL、約200 μL、約250 μL、約300 μL、約350 μL、約400 μL、約450 μL、約500 μL、約550 μL、約600 μL、約650 μL、約700 μL、約750 μL、約800 μL、約850 μL、約900 μL、約950 μL、約1000 μL、約1250 μL、約1500 μL、約1750 μL、または約2000 μLである。
【0280】
特定の態様では、生物学的サンプルは、本明細書に開示されるシステムおよび方法で使用する前に前処理される。たとえば、唾液を(たとえば、遠心処理により)処理して、無細胞の液相を得る場合がある。
【0281】
本明細書に開示されるシステムおよび方法は、1つまたは複数の標的を検出するように設計される。代表的な非限定的標的としては、ウイルス病原体を含む標的が挙げられる。
【0282】
いくつかの態様では、1つまたは複数の標的分子は、ウイルス抗原である。本発明の文脈では、「ウイルス抗原」という用語は、ウイルスゲノムによりコードされるタンパク質、そのサブユニット、もしくはその断片、またはウイルス関連の核酸(たとえば、ウイルスゲノムまたはウイルス転写物)として理解すべきである。
【0283】
ウイルスはさまざまであり得、限定ではないが、呼吸器ウイルスおよびコロナウイルスが挙げられる。
【0284】
一態様では、標的分子は、コロナウイルス関連のウイルス抗原である。コロナウイルスは、エンベロープ型のポジティブセンス一本鎖RNAウイルスの、大きな、かつ多様な科からなる。どのコロナウイルスも、4つの構造タンパク質、たとえばスパイク(S)、エンベロープ(E)、膜(M)、およびヌクレオカプシド(N)タンパク質を含んでいる。なかでもSタンパク質は、ウイルス付着、融合、および侵入において最も重要な役割を果たす。
【0285】
Sタンパク質は、三量体のI型膜貫通糖タンパク質であり、ビリオン表面に特徴的な大きな突起状スパイクの冠(コロナ)を形成し、宿主細胞受容体との結合および宿主細胞膜との融合を媒介する。多くのコロナウイルスにおいて、Sは翻訳後切断されて、S1およびS2と呼ばれる2つのサブユニットとなって三量体化し、折り畳みにより融合前の準安定な立体構造をとる。S1サブユニットは、スパイクの「ヘッド」を形成し、アミノ(N)末端ドメイン(NTD)およびカルボキシ(C)末端ドメイン(CTD)の2つのドメインを含み、後者は通常、受容体結合ドメイン(RBD)を含む。S2サブユニットは、2つの7アミノ酸繰返し(HR)領域を含む。S1が対応する宿主受容体を認識して結合すると、S2の立体構造が変化して、圧縮形態から、融合状態と呼ばれる釘状の形状に伸びる。これにより、ウイルスエンベロープが外側の膜と融合して、ウイルス遺伝子材料を細胞内に蓄積させることが可能になる。その後、ウイルスの生活環は、生合成、ウイルス構築、およびウイルス放出などへと進む。
【0286】
一態様では、標的分子はS1またはS2であり、より具体的には、NTD、RBD、CTD1、CTD2、S1/S2、S1/S2切断部位、S2’、S2’切断部位、融合ペプチド、融合ペプチド近位領域(FPPR)、7アミノ酸繰返し1(HR1)、7アミノ酸繰返し1、中央ヘリックス領域(CHD)、コネクタードメイン(CD)、7アミノ酸繰返し2(7アミノ酸繰返し2)、膜貫通アンカー(TM)、もしくは細胞質側末端(CT)、またはそれらの組み合わせである。
【0287】
コロナウイルスの多様性は変わりやすいSタンパク質に反映されており、Sタンパク質は、受容体相互作用が異なる諸形態へと進化しており、それらがさまざまな環境に応答することで、ウイルスと細胞膜との融合が引き起こされる。特に、Sタンパク質のRBDは、ベータコロナウイルス群の最も可変的なゲノム部分である。
【0288】
血清学的に異なる4群のコロナウイルス、すなわちアルファ、ベータ(以前は第2グループと呼ばれた)、デルタ、およびガンマが記述されている。各群内で、ウイルスは、宿主範囲およびゲノム配列により特徴決定される。アルファコロナウイルスおよびベータコロナウイルスは、哺乳動物にしか感染しないが、ガンマコロナウイルスおよびデルタコロナウイルスは基本的に鳥に感染し、ただし一部は哺乳動物にも感染し得る。今や哺乳動物の新型コロナウイルスがたびたび同定されている(たとえば、Su et al., Trends Microbiol. 2016;24:490-502参照)。ヒトにとって臨床的に重要であることが知られるベータコロナウイルス(ベータ-CoV)としては、A、B、およびC系統のウイルス、より具体的には、A系統:OC43(一般的な風邪の原因であり得る)およびHKU1;ならびにB系統:SARS-CoVおよびSARS-CoV-2(COVID-19疾患の原因);ならびにC系統:MERS-CoVが挙げられる。
【0289】
一態様では、本明細書に開示されるシステムは、ベータコロナウイルス感染症、より具体的には、A系統、B系統またはC系統のコロナウイルス感染症の検出に向けられる。これらはポジティブセンス一本鎖RNAをもつ約32 Kbのウイルスであり、複数の構造タンパク質および非構造タンパク質をコードする。ウイルス粒子は、スパイク、膜、エンベロープタンパク質、およびヌクレオカプシドの、4つの主要な構造タンパク質を含む。スパイクタンパク質は、ビリオンのエンベロープから突き出しており、受容体宿主選択性および細胞付着において主要な役割を果たす。ベータコロナウイルスは、ORF1abポリタンパク質および大半の構造タンパク質のなかで多くの類似点を有するが、スパイクタンパク質およびアクセサリータンパク質はかなり多様となる。スパイクタンパク質における変異は、新たな宿主または病原性の増大を含め、ウイルス向性を変え得る。
【0290】
別の特定の態様では、本明細書に開示されるシステムおよび方法は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染症の検出に向けられる。SARS-CoV-2(2019-nCoVとも呼ばれる)は、2020年1月、重症急性呼吸器症候群2の原因因子として同定され、Covid-19とも呼ばれている。新型コロナウイルスによる感染症はたちまち大流行し、世界保健機関(WHO)は2020年3月、Covid-19をパンデミックと宣言した。2021年6月時点で、同ウイルスの感染者は1億7800万人を超え、死者は385万人を超えている。密集し密接して暮らすまたは働く人々(たとえば軍職員)は特に危険である。
【0291】
SARS-CoV-2と関連づけられる臨床徴候としては、肺炎、熱、乾性咳、頭痛、および呼吸困難が挙げられ、やがて呼吸不全および死に至る場合もある。SARS-CoV-2の潜伏期間は2~14日間で、5~7日間の平均潜伏時間を有するSARS-CoVおよびMERS-CoVよりも長くなり得る。
【0292】
SARS-CoV-2は、2020年1月には配列決定され単離された(たとえば、Zhou N. N Engl J Med., 382 (2020), pp. 727-733参照)。それ以降、SARS-CoV-2のいくつかの配列が公開されている。いずれかの局面のいくつかの態様では、標的分析物(たとえば、タンパク質、糖タンパク質、または核酸)は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2単離体SARS-CoV-2の少なくとも一部分を含む(たとえば、SARS-CoV-2 Jan. 2020/NC_045512.2 Assembly (wuhCor1)の完全ゲノム参照)。
【0293】
いずれかの局面のいくつかの態様では、標的分析物は、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2単離体SARS-CoV-2、S遺伝子)を含む。いずれかの局面のいくつかの態様では、標的核酸は、SEQ ID NO:1、またはSEQ ID NO:1と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であって、同じ機能を維持している核酸配列、またはコドン最適化バージョンのSEQ ID NO:1を含む。いずれかの局面のいくつかの態様では、標的核酸は、SEQ ID NO:1、またはSEQ ID NO:1と少なくとも95%同一であって、同じ機能を維持している核酸配列、またはコドン最適化バージョンのSEQ ID NO:1を含む。
【0294】
いずれかの局面のいくつかの態様では、標的ポリペプチドは、SEQ ID NO:2もしくはSEQ ID NO:3、またはSEQ ID NO:2~3のうち1つと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であって、同じ機能を維持しているアミノ酸配列を含む。いずれかの局面のいくつかの態様では、標的ポリペプチドは、SEQ ID NO:2~3のうち1つ、またはSEQ ID NO:2~3と少なくとも95%同一であって、同じ機能を維持しているアミノ酸配列を含む。
【0295】
SEQ ID NO:1、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2単離体Wuhan-Hu-1、S表面糖タンパク質、遺伝子ID:43740568、3822 bp ss-RNA、NC_045512領域:21563-25384
【0296】
SEQ ID NO:2、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2単離体Wuhan-Hu-1、S表面糖タンパク質、遺伝子ID:43740568、1273 aa
【0297】
SEQ ID NO:3、SARS-CoV-2、スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)、194 aa(たとえば、図9参照);SEQ ID NO:2のアミノ酸(aa)331~524に対応
【0298】
ほかのコロナウイルスと同様、スパイク(S)タンパク質は、SARS-CoV-2ウイルス表面の主要な糖タンパク質である。SARS-CoV-2は、ヒト、フェレット、ネコ、およびほかの種に由来するACE2と高い受容体相同性により高親和性で結合する受容体結合ドメイン(RBD)を有すると思われる(Wan et al., (2020) J. Virol. doi.org/10.1128/JVI.00127-20)。
【0299】
いくつかの態様では、SARS-CoV-2 S1 RBDは、194アミノ酸長である(たとえば、SEQ ID NO:2のN331-V524;たとえば、SEQ ID NO:3参照)。いくつかの態様では、SARS-CoV-2 S1 RBDは、SARS-CoV SのRBDに対応する領域であり、193アミノ酸長である(たとえば、SEQ ID NO:5のN318-V510;たとえば、SEQ ID NO:6参照)。
【0300】
報告によると、SARS-CoV-2 Sタンパク質は、SARS-CoV S Urbaniと76%のアミノ酸配列同一性を、コウモリSARSr-CoV ZXC21 SおよびZC45 S糖タンパク質と80%のアミノ酸配列同一性を有する。図9は、SARS-CoV-2とほかの関連コロナウイルスとのスパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)の配列アラインメントを示す。SARS-CoV-2(たとえば、NCBIアクセッション番号MN938384参照)、Bat-CoV(たとえば、NCBIアクセッション番号MN996532またはMG772933参照)、およびSARS-CoV(たとえば、NCBIアクセッション番号NC004718参照)の相互作用ドメインに関する配列アラインメントが入手可能である。SARS-CoV-2のRBDは主としてC末端残基でSARS-CoVと異なる。
【0301】
SARS-CoV-2のS1サブユニットは、受容体結合ドメイン(RBD)を含み、S2サブユニットは、疎水性融合ペプチドおよび2つの7アミノ酸繰返し領域を含む。S1は、構造的に独立した2つのドメイン、N末端ドメイン(NTD)およびC末端ドメイン(Cドメイン)を含む。ウイルスによっては、NTDドメインまたはCドメインが受容体結合ドメイン(RBD)として働く場合がある。
【0302】
一態様では、本明細書に開示されるシステムおよび方法は、SARS-CoV-2のSタンパク質、またはそのサブユニットもしくは断片、より具体的には、限定ではないが、RBD、S1アミノ末端ドメイン(S1-NTD)、ORF3(3aおよび3b)、ならびにアクセサリー遺伝子ORF8を含め、SARS-CoV-2のSタンパク質の1つまたは複数のエピトープの検出を可能にする。
【0303】
一態様では、本明細書におけるシステムおよび方法は、全ウイルス、すなわちSARS-CoV-2粒子の検出を可能にする。
【0304】
一態様では、本明細書におけるシステムおよび方法は、SARS-CoV-2のN末端ドメイン(NTD)およびC末端ドメイン(Cドメイン)の1つまたは複数のエピトープの検出を可能にする。
【0305】
一態様では、本明細書に開示されるシステムおよび方法は、SARS-CoV-2のSタンパク質、またはそのサブユニットもしくは断片、より具体的には、限定ではないが、RBDを含め、SARS-CoV-2のSタンパク質の1つまたは複数のエピトープの検出を可能にする。
【0306】
一態様では、本明細書におけるシステムおよび方法は、SARS-CoV-2のRBDにおける1つまたは複数のエピトープ、より具体的には、RBDの残基331から524の間の1つまたは複数のエピトープ残基(たとえば、SEQ ID NO:3参照)の検出を可能にする。
【0307】
一態様では、本明細書におけるシステムおよび方法は、SARS-CoV-2のRBDにおける1つまたは複数のエピトープ、より具体的には、RBDの残基318から510の間の1つまたは複数のエピトープ残基の検出を可能にする。
【0308】
一態様では、本明細書におけるシステムおよび方法は、SARS-CoV-2のRBDにおける1つまたは複数のエピトープ、より具体的には、RBDの残基319から510の間の1つまたは複数のエピトープ残基の検出を可能にする。
【0309】
ある特定の態様では、本明細書に開示されるシステムおよび方法は、SARS-CoV感染症の検出に向けられる。SARS-CoVは、2003年4月、重症急性呼吸器症候群(SARS)の原因の病原体として同定された(たとえば、Drosten et al., New Engl. J. Med. 2003;348:1967-1976参照)。臨床的には、SARS-CoVは2相の経過を示し、すなわち、最初の高熱、パラインフルエンザ症候群に続いて、呼吸器促拍が増大する。伝染には飛沫が主要な役割を果たす。診断は、臨床画像および疫学データに基づき、血液学的検査陽性、PCR、または細胞培養物中のウイルスの存在によりサポートされる。その後間もなくして、B群のベータコロナウイルスと最もよく似たSARS-CoVのコンセンサスゲノム配列が発表された(たとえば、Marra et al., Science. 2003;300:1399-14040;Ruan et al., Lancet. 2003;361:1779-1785参照)。
【0310】
SARS-CoVスパイクタンパク質は、S1(アミノ酸12~680)およびS2(アミノ酸681~1255)という2つの機能性ドメインからなることがわかっている(たとえば、Li et al., Science. 2005;309:1864-1868参照)。RBDはS1サブユニット内にあり、S1ドメインのアミノ酸(aa)318~510からなる断片にマップされている(たとえば、Wong et al., J Biol Chem. 2004;279:3197-3201参照)。
【0311】
一態様では、本明細書に開示されるシステムおよび方法は、SARS-CoVのSタンパク質、またはそのサブユニットもしくは断片、より具体的には、限定ではないが、RBDを含め、SARS-CoVのSタンパク質の1つまたは複数のエピトープの検出を可能にする。
【0312】
一態様では、本明細書におけるシステムおよび方法は、SARS-CoVのRBDにおける1つまたは複数のエピトープ、より具体的には、RBDの残基318から510の間の1つまたは複数のエピトープ残基の検出を可能にする。
【0313】
いずれかの局面のいくつかの態様では、標的分析物(たとえば、タンパク質、糖タンパク質、または核酸)は、SARS-CoVの少なくとも一部分を含む(たとえば、NCBI基準配列:NC_004718の完全ゲノム参照)。
【0314】
いずれかの局面のいくつかの態様では、標的分析物は、SEQ ID NO:4~6(SARS-CoV S遺伝子)のうち1つを含む。いずれかの局面のいくつかの態様では、標的核酸は、SEQ ID NO:4、またはSEQ ID NO:4と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であって、同じ機能を維持している核酸配列、またはコドン最適化バージョンのSEQ ID NO:4を含む。いずれかの局面のいくつかの態様では、標的核酸は、SEQ ID NO:4、またはSEQ ID NO:4と少なくとも95%同一であって、同じ機能を維持している核酸配列、またはコドン最適化バージョンのSEQ ID NO:4を含む。
【0315】
いずれかの局面のいくつかの態様では、標的ポリペプチドは、SEQ ID NO:5もしくはSEQ ID NO:6、またはSEQ ID NO:5~6のうち1つと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であって、同じ機能を維持しているアミノ酸配列を含む。いずれかの局面のいくつかの態様では、標的ポリペプチドは、SEQ ID NO:5~6のうち1つ、またはSEQ ID NO:5~6のうち1つと少なくとも95%同一であって、同じ機能を維持しているアミノ酸配列を含む。
【0316】
SEQ ID NO:4、スパイク糖タンパク質SARSコロナウイルスTor2、NCBI基準配列:NC_004718.3領域:21492-25259、3768 bp
【0317】
SEQ ID NO:5、スパイク糖タンパク質SARSコロナウイルスTor2、NCBI基準配列:YP_009825051.1、1255 aa
【0318】
SEQ ID NO:6、SARS-CoV、スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)、193 aa(たとえば、図9参照);SEQ ID NO:5のアミノ酸(aa)318~510に対応
【0319】
ある特定の態様では、本明細書に開示されるシステムおよび方法は、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)感染症の検出に向けられる。MERS-CoVは、新たに現われたベータコロナウイルスであり、重篤な急性呼吸疾患の原因となる。2012年にサウジアラビアで初めて単離され(たとえば、Zaki et al 2012, NEJM 367:1814-1820参照)、以来約18カ国に広がったが、事例のほとんどがサウジアラビアおよびアラブ首長国連邦内にある。ヒトのMERS-CoV感染の臨床特徴は、無症状感染から非常に重症の肺炎にまでおよび、急性呼吸促迫症候群、敗血症性ショック、および多臓器不全を発症して死に至る可能性もある。このウイルスは、そのスパイクタンパク質を用いて細胞受容体と相互作用し、標的細胞に侵入する。ウイルスは、そのスパイクタンパク質の受容体結合ドメインによって、ヒト上皮細胞および内皮細胞上のジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)と結合することがわかっている(たとえば、Raj et al 2013, Nature 495:251-256参照)。MERS-CoV受容体結合ドメインは、コア、およびDPP4と相互作用する受容体結合サブドメインからなる(たとえば、Lu et al 2013, Nature 500:227-231参照)。
【0320】
MERS-CoVスパイクタンパク質は、1353アミノ酸のI型膜糖タンパク質であり、会合してトライマーとなって、エンベロープ型MERSコロナウイルス粒子の表面にスパイクまたはペプロマーを構成する。タンパク質は、宿主受容体結合および膜融合という2つの本質的な機能を有し、それらはSタンパク質の半身であるN末端(S1、アミノ酸残基1~751)およびC末端(S2、アミノ酸残基752~1353)による。MERS-CoV-Sは、S1サブユニットに存在する約230アミノ酸長の受容体結合ドメイン(RBD)を介して、その同族受容体、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)と結合する。MERS-CoV RBDは、スパイクタンパク質の残基358~588内にある(たとえば、Mou et al (2013) J. Virology vol 87, 9379-9383ページ参照)。全長MERS-CoVスパイクタンパク質のアミノ酸配列は、GenBankにおいてアクセッション番号AFS88936.1として提供されるMERS-CoV単離体EMC/2012のスパイクタンパク質のアミノ酸配列により例示される(SEQ ID NO:8)。
【0321】
いずれかの局面のいくつかの態様では、標的分析物(たとえば、タンパク質、糖タンパク質、または核酸)は、MERS-CoVの少なくとも一部分を含む(たとえば、NCBI基準配列:NC_019843.3、単離体HCoV-EMC/2012の完全配列参照)。
【0322】
いずれかの局面のいくつかの態様では、標的分析物は、SEQ ID NO:7~9(MERS-CoV S遺伝子)のうち1つを含む。いずれかの局面のいくつかの態様では、標的核酸は、SEQ ID NO:7、またはSEQ ID NO:7と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であって、同じ機能を維持している核酸配列、またはコドン最適化バージョンのSEQ ID NO:7を含む。いずれかの局面のいくつかの態様では、標的核酸は、SEQ ID NO:7、またはSEQ ID NO:7と少なくとも95%同一であって、同じ機能を維持している核酸配列、またはコドン最適化バージョンのSEQ ID NO:7を含む。
【0323】
いずれかの局面のいくつかの態様では、標的ポリペプチドは、SEQ ID NO:8もしくはSEQ ID NO:9、またはSEQ ID NO:8~9のうち1つと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であって、同じ機能を維持しているアミノ酸配列を含む。いずれかの局面のいくつかの態様では、標的ポリペプチドは、SEQ ID NO:8~9のうち1つ、またはSEQ ID NO:8~9のうち1つと少なくとも95%同一であって、同じ機能を維持しているアミノ酸配列を含む。
【0324】
SEQ ID NO:7、Sタンパク質 [MERS、ヒトベータコロナウイルス2c EMC/2012]、NCBI基準配列:NC_019843.3、領域:21456-25514、4059 bp
【0325】
SEQ ID NO:8、Sタンパク質 [MERS、ヒトベータコロナウイルス2c EMC/2012]、GenBank:AFS88936.1、1353 aa
【0326】
SEQ ID NO:9、MERS-CoV、スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)、212 aa(たとえば、図9参照);SEQ ID NO:8のアミノ酸(aa)377~588に対応
【0327】
「MERS-CoV-S」という用語は、種々のMERS-CoV単離体、たとえばJordan-N3/2012、England-Qatar/2012、Al-Hasa_1_2013、Al-Hasa_2_2013、Al-Hasa_3_2013、Al-Hasa_4_2013、Al-Hasa_12、Al-Hasa_15、Al-Hasa_16、Al-Hasa_17、Al-Hasa_18、Al-Hasa_19、Al-Hasa_21、Al-Hasa_25、Bisha_1、Buraidah_1、England 1、Hafr-Al-Batin_1、Hafr-Al-Batin_2、Hafr-Al-Batin_6、Jeddah_1、KFU-HKU 1、KFU-HKU 13、Munich、Qatar3、Qatar4、Riyadh_1、Riyadh_2、Riyadh_3、Riyadh_3、Riyadh_4、Riyadh_5、Riyadh_9、Riyadh_14、Taif_1、UAE、およびWadi-Ad-Dawasirから単離されたMERS-CoVスパイクタンパク質のタンパク質バリアントも含む。「MERS-CoV-S」という用語は、組換えMERS-CoVスパイクタンパク質またはその断片を含む。
【0328】
本明細書におけるシステムおよび方法は、コロナウイルス以外のウイルス関連の標的分子も含む。標的分子の非限定例としては、季節性インフルエンザ、高病原性インフルエンザ、HIV、エボラウイルス、単純ヘルペスウイルス1、単純ヘルペスウイルス2、ヒトパピローマウイルス、マールブルグウイルス、ラッサウイルス、呼吸器多核体ウイルス(RSV)に関連する抗原が挙げられる。
【0329】
一態様では、結合剤のうち1つが、ヒトアンジオテンシン変換酵素(ACE)を用いてSARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質と結合する。ある特定の態様では、ACEタンパク質は、Sタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)と結合する。
【0330】
ある特定の態様では、少なくとも1つの標的分析物は、ウイルスであり、より具体的には、ベータコロナウイルスなどのコロナウイルスであり、さらに具体的には、SARS-CoV-1である。
【0331】
一態様では、第1および第2の結合剤は、SARS-CoV-1スパイク(S)タンパク質の異なるエピトープと結合する。ある特定の態様では、エピトープの少なくとも1つが、S1タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)内にある。
【0332】
一態様では、結合剤のうち1つが、ヒトアンジオテンシン変換酵素(ACE)を用いてSARS-CoV-1スパイク(S)タンパク質と結合する。ある特定の態様では、ACEタンパク質は、Sタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)と結合する。
【0333】
ある特定の態様では、少なくとも1つの標的分析物は、ウイルスであり、より具体的には、ライノウイルスである。一態様では、第1および第2の結合剤は、ライノウイルスの4つの可能なカプシドタンパク質の1つと結合する。
【0334】
ある特定の態様では、少なくとも1つの標的分析物は、ウイルスであり、より具体的には、229E型、NL63型、OC43型、およびHKU1型を含めた一般的なヒトコロナウイルスである。一態様では、第1および第2の結合剤は、一般的なヒトコロナウイルス(たとえば、229E型、NL63型、OC43型、およびHKU1型)のスパイクタンパク質、膜タンパク質、ヘマグルチニンタンパク質、エンベロープ、またはエンベロープタンパク質と結合する。
【0335】
ある特定の態様では、少なくとも1つの標的分析物は、ウイルスであり、より具体的には、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、パラインフルエンザ(PIV)、またはH1N1である。一態様では、第1および第2の結合剤は、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、パラインフルエンザ(PIV)、またはH1N1の融合タンパク質、膜タンパク質、ヘマグルチニンタンパク質、ノイラミニダーゼタンパク質、エンベロープ、またはエンベロープタンパク質と結合する。
【0336】
ある特定の態様では、少なくとも1つの標的分析物は、ウイルスであり、より具体的には、ヒトメタニューモウイルスである。一態様では、第1および第2の結合剤は、ヒトメタニューモウイルスの融合タンパク質、SHタンパク質、基質タンパク質、糖タンパク質、エンベロープ、またはエンベロープタンパク質と結合する。
【0337】
ある特定の態様では、少なくとも1つの標的分析物は、ウイルスであり、より具体的には、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)である。一態様では、第1および第2の結合剤は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のMHCタンパク質、p17基質タンパク質、gp120ドッキング糖タンパク質、gp41膜貫通糖タンパク質、エンベロープ、またはエンベロープタンパク質と結合する。
【0338】
ある特定の態様では、少なくとも1つの標的分析物は、ウイルスであり、より具体的には、エボラウイルスである。一態様では、第1および第2の結合剤は、エボラウイルスの糖タンパク質、基質タンパク質、核タンパク質、エンベロープ、またはエンベロープタンパク質と結合する。
【0339】
ある特定の態様では、少なくとも1つの標的分析物は、ウイルスであり、より具体的には、マールブルグウイルスである。一態様では、第1および第2の結合剤は、マールブルグウイルスの糖タンパク質、VP40基質タンパク質、核タンパク質、エンベロープ、またはエンベロープタンパク質と結合する。
【0340】
ある特定の態様では、少なくとも1つの標的分析物は、ウイルスであり、より具体的には、ラッサウイルスである。一態様では、第1および第2の結合剤は、ラッサウイルスの糖タンパク質1、糖タンパク質2、大タンパク質、ジンクタンパク質、安定信号ペプチド(SSP)、核タンパク質、エンベロープ、またはエンベロープタンパク質と結合する。
【0341】
ある特定の態様では、少なくとも1つの標的分析物は、寄生虫であり、より具体的には、四日熱マラリア原虫(malaria Plasmodium)種(たとえば、熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)、四日熱マラリア原虫(P. malariae)、三日熱マラリア原虫(P. vivax)、卵形マラリア原虫(P. ovale)、またはサルマラリア原虫(P. knowlesi))である。一態様では、第1および第2の結合剤は、四日熱マラリア原虫種のTRAPタンパク質、SPECTタンパク質、MAEBLタンパク質、PPLPタンパク質、LSAタンパク質、STARPタンパク質、CSタンパク質、SALSAタンパク質、SPATRタンパク質、PxSRタンパク質、またはPfEMP3タンパク質と結合する。
【0342】
特定の態様では、1つまたは複数の標的分析物または病原体は、ヒト以外の動物由来の生物学的サンプル中に見られる、たとえば、西ナイルウイルス、およびコウモリ体内の人畜共通病原体である。
【0343】
いずれかの局面のいくつかの態様では、標的分析物は、RNAウイルスまたはDNAウイルス由来の分析物(たとえば、タンパク質、糖タンパク質、核酸)である。本明細書で使用される場合、「RNAウイルス」は、RNAゲノムを含むウイルスを指す。いずれかの局面のいくつかの態様では、RNAウイルスは、二本鎖RNAウイルス、ポジティブセンスRNAウイルス、ネガティブセンスRNAウイルス、または逆転写ウイルス(たとえば、レトロウイルス)である。本明細書で使用される場合、「DNAウイルス」という用語は、DNAゲノムを含むウイルスを指す。いずれかの局面のいくつかの態様では、DNAウイルスは、第I群(dsDNA)ウイルス、第II群(ssDNA)ウイルス、または第VII群(dsDNA-RT)ウイルスである。
【0344】
いずれかの局面のいくつかの態様では、RNAウイルスは、第III群(すなわち二本鎖RNA(dsRNA))ウイルスである。いずれかの局面のいくつかの態様では、第III群RNAウイルスは、アマルガウイルス(Amalgaviridae)、ビルナウイルス(Birnaviridae)、クリソウイルス(Chrysoviridae)、シストウイルス(Cystoviridae)、エンドルナウイルス(Endornaviridae)、ハイポウイルス(Hypoviridae)、メガビルナウイルス(Megabirnaviridae)、パルティティウイルス(Partitiviridae)、ピコビルナウイルス(Picobirnaviridae)、レオウイルス(Reoviridae)(たとえば、ロタウイルス(Rotavirus))、トチウイルス(Totiviridae)、クアドリウイルス(Quadriviridae)からなる群より選択されるウイルス科に属する。いずれかの局面のいくつかの態様では、第III群RNAウイルスは、ボティビルナウイルス属(Botybirnavirus)に属する。いずれかの局面のいくつかの態様では、第III群RNAウイルスは、ボトリティスポリ(Botrytis porri)RNAウイルス1、テンサイヨコバイ(Circulifer tenellus)ウイルス1、コレトトリカム・カメリア・フィラメンタス(Colletotrichum camelliae filamentous)ウイルス1、キュウリ類黄化病(Cucurbit yellows)関連ウイルス、スクレロティニア・スクレロチオラム衰弱関連(Sclerotinia sclerotiorum debilitation-associated)ウイルス、およびスピッシスティラスフェスティナス(Spissistilus festinus)ウイルス1からなる群より選択される未分類種である。
【0345】
いずれかの局面のいくつかの態様では、RNAウイルスは、第IV群(すなわち、ポジティブセンス一本鎖(ssRNA))ウイルスである。いずれかの局面のいくつかの態様では、第IV群RNAウイルスは、ニドウイルス(Nidovirales)、ピコルナウイルス(Picornavirales)、およびティモウイルス(Tymovirales)からなる群より選択されるウイルス目に属する。いずれかの局面のいくつかの態様では、第IV群RNAウイルスは、アルテリウイルス(Arteriviridae)、コロナウイルス(Coronaviridae)(たとえば、コロナウイルス、SARS-CoV)、メソニウイルス(Mesoniviridae)、ロニウイルス(Roniviridae)、ディシストウイルス(Dicistroviridae)、イフラウイルス(Iflaviridae)、マルナウイルス(Marnaviridae)、ピコルナウイルス(Picornaviridae)(たとえば、ポリオウイルス(Poliovirus)、ライノウイルス(Rhinovirus)(一般的な風邪のウイルス)、肝炎Aウイルス)、セコウイルス(Secoviridae)(たとえば、サブ(sub)コモウイルス(Comovirinae))、アルファフレキシウイルス(Alphaflexiviridae)、ベータフレキシウイルス(Betaflexiviridae)、ガンマフレキシウイルス(Gammaflexiviridae)、ティモウイルス(Tymoviridae)、アルファテトラウイルス(Alphatetraviridae)、アルベルナウイルス(Alvernaviridae)、アストロウイルス(Astroviridae)、バルナウイルス(Barnaviridae)、ベニウイルス(Benyviridae)、ブロモウイルス(Bromoviridae)、カリシウイルス(Caliciviridae)(たとえば、ノーウォークウイルス)、カルモテトラウイルス(Carmotetraviridae)、クロステロウイルス(Closteroviridae)、フラビウイルス(Flaviviridae)(たとえば、黄熱(Yellow fever)ウイルス、西ナイル(West Nile)ウイルス、肝炎C(Hepatitis C)ウイルス、デング熱(Dengue fever)ウイルス、ジカ(Zika)ウイルス)、フサリウイルス(Fusariviridae)、ヘペウイルス(Hepeviridae)、ハイポウイルス、レビウイルス(Leviviridae)、ルテオウイルス(Luteoviridae)(たとえば、オオムギ黄化委縮(Barley yellow dwarf)ウイルス)、ポリシピウイルス(Polycipiviridae)、ナルナウイルス(Narnaviridae)、ノダウイルス(Nodaviridae)、ペルムトテトラウイルス(Permutotetraviridae)、ポティウイルス(Potyviridae)、サルスロウイルス(Sarthroviridae)、スタトウイルス(Statovirus)、トガウイルス(Togaviridae)(たとえば、風疹ウイルス(Rubella virus)、ロスリバー(Ross River)ウイルス、シンドビス(Sindbis)ウイルス、チクングニヤ(Chikungunya)ウイルス)、トンブスウイルス(Tombusviridae)、およびビルガウイルス(Virgaviridae)からなる群より選択されるウイルス科に属する。いずれかの局面のいくつかの態様では、第IV群RNAウイルスは、バチラリオルナウイルス(Bacillariornavirus)、ディシピウイルス(Dicipivirus)、ラビルナウイルス(Labyrnavirus)、セキウイルス(Sequiviridae)、ブルネルウイルス(Blunervirus)、シレウイルス(Cilevirus)、ヒグレウイルス(Higrevirus)、イデオウイルス(Idaeovirus)、ネゲウイルス(Negevirus)、ウルミアウイルス(Ourmiavirus)、ポレモウイルス(Polemovirus)、シグナイウイルス(Sinaivirus)、およびソベモウイルス(Sobemovirus)からなる群より選択されるウイルス属に属する。いずれかの局面のいくつかの態様では、第IV群RNAウイルスは、エンドウヒゲナガアブラムシ(Acyrthosiphon pisum)ウイルス、バストロウイルス(Bastrovirus)、ブラックフォード(Blackford)ウイルス、ブルーベリー壊死性リングブロッチ(Blueberry necrotic ring blotch)ウイルス、カジシストロウイルス(Cadicistrovirus)、シャラアウストラリス(Chara australis)ウイルス、エキストラスモール(Extra small)ウイルス、ゴジベリー白化(Goji berry chlorosis)ウイルス、ヘペリウイルス(Hepelivirus)、ジングメンティック(Jingmen tick)ウイルス、ルブラン(Le Blanc)ウイルス、ネジシストロジルス(Nedicistrovirus)、タバコカスミカメ(Nesidiocoris tenuis)ウイルス1、ニフラウイルス(Niflavirus)、アシナガキアリ(Nylanderia fulva)ウイルス1、オルセー(Orsay)ウイルス、ホネクイハナムシ(Osedax japonicus)RNAウイルス1、ピカリウイルス(Picalivirus)、ヒマワリトベ病(Plasmopara halstedii)ウイルス、白紋羽病菌フザリウイルス(Rosellinia necatrix fusarivirus)1、サントゥイユ(Santeuil)ウイルス、セカリウイルス(Secalivirus)、ヒアリ(Solenopsis invicta)ウイルス3、武漢大ブタ回虫(Wuhan large pig roundworm)ウイルスからなる群より選択される未分類種である。いずれかの局面のいくつかの態様では、第IV群RNAウイルスは、サルスロウイルス科(Sarthroviridae)、アルベトウイルス属(Albetovirus)、アウマイウイルス属(Aumaivirus)、パパニウイルス属(Papanivirus)、ビルトウイルス属(Virtovirus)、および慢性ミツバチ麻痺(Chronic bee paralysis)ウイルスからなる群より選択されるサテライトウイルスである。
【0346】
いずれかの局面のいくつかの態様では、RNAウイルスは、第V群(すなわち、ネガティブセンスssRNA)ウイルスである。いずれかの局面のいくつかの態様では、第V群RNAウイルスは、ネガルナウイルス(Negarnaviricota)、ハプロウイルス(Haploviricotina)、およびポリプロウイルス(Polyploviricotina)からなる群より選択されるウイルス門または亜門に属する。いずれかの局面のいくつかの態様では、第V群RNAウイルスは、チュンキウウイルス(Chunqiuviricetes)、エリオウイルス(Ellioviricetes)、インストウイルス(Insthoviricetes)、ミルネウイルス(Milneviricetes)、モンジウイルス(Monjiviricetes)、およびユンチャンウイルス(Yunchangviricetes)からなる群より選択されるウイルス綱に属する。いずれかの局面のいくつかの態様では、第V群RNAウイルスは、アーティキュラウイルス(Articulavirales)、ブニヤウイルス(Bunyavirales)、グージャンウイルス(Goujianvirales)、ジンチュウイルス(Jingchuvirales)、モノネガウイルス(Mononegavirales)、ムウイルス(Muvirales)、およびサーペントウイルス(Serpentovirales)からなる群より選択されるウイルス目に属する。いずれかの局面のいくつかの態様では、第V群RNAウイルスは、アムヌーンウイルス(Amnoonviridae)(たとえば、トストルプ(Taastrup)ウイルス)、アレナウイルス(Arenaviridae)(たとえば、ラッサウイルス)、アスピウイルス(Aspiviridae)、ボルナウイルス(Bornaviridae)(たとえば、ボルナ病(Borna disease)ウイルス)、チュウイルス(Chuviridae)、クルリウイルス(Cruliviridae)、フェラウイルス(Feraviridae)、フィロウイルス(Filoviridae)(たとえば、エボラウイルス、マールブルグウイルス)、フィモウイルス(Fimoviridae)、ハンタウイルス(Hantaviridae)、ジョンウイルス(Jonviridae)、ミモナウイルス(Mymonaviridae)、ナイロウイルス(Nairoviridae)、ニャミウイルス(Nyamiviridae)、オルトミクソウイルス(Orthomyxoviridae)(たとえば、インフルエンザウイルス)、パラミクソウイルス(Paramyxoviridae)(たとえば、麻疹(Measles)ウイルス、ムンプス(Mumpus)ウイルス、ニパ(Nipah)ウイルス、ヘンドラ(Hendra)ウイルス、およびNDV)、ペリブニヤウイルス(Peribunyaviridae)、ファスマウイルス(Phasmaviridae)、フェヌイウイルス(Phenuiviridae)、ニューモウイルス(Pneumoviridae)(たとえば、RSVおよびメタニューモウイルス(Metapneumovirus))、キンウイルス(Qinviridae)、ラブドウイルス(Rhabdoviridae)(たとえば、狂犬病(Rabies)ウイルス)、サンウイルス(Sunviridae)、トスポウイルス(Tospoviridae)、およびユユエウイルス(Yueviridae)からなる群より選択されるウイルス科に属する。いずれかの局面のいくつかの態様では、第V群RNAウイルスは、アンフェウイルス(Anphevirus)、アルリウイルス(Arlivirus)、チェンティウイルス(Chengtivirus)、クルスタウイルス(Crustavirus)、ティラピネウイルス(Tilapineviridae)、ワウトリウイルス(Wastrivirus)、およびデルタウイルス(たとえば、肝炎D(Hepatitis D)ウイルス)からなる群より選択されるウイルス属に属する。
【0347】
いずれかの局面のいくつかの態様では、RNAウイルスは、第VI群RNAウイルスであり、ウイルス性コード化逆転写酵素を含む。いずれかの局面のいくつかの態様では、第VI群RNAウイルスは、オルテルウイルス(Ortervirales)ウイルス目に属する。いずれかの局面のいくつかの態様では、第VI群RNAウイルスは、ベルパオウイルス(Belpaoviridae)、カリモウイルス(Caulimoviridae)、メタウイルス(Metaviridae)、シュードウイルス(Pseudoviridae)、レトロウイルス(Retroviridae)(たとえば、レトロウイルス、たとえばHIV)、オルトレトロウイルス(Orthoretrovirinae)、およびスピューマレトロウイルス(Spumaretrovirinae)からなる群より選択されるウイルス科または亜科に属する。いずれかの局面のいくつかの態様では、第VI群RNAウイルスは、アルファレトロウイルス(Alpharetrovirus)(たとえば、トリ白血病(Avian leukosis)ウイルス;ラウス肉腫(Rous sarcoma)ウイルス)、ベータレトロウイルス(Betaretrovirus)(たとえば、マウス乳癌(Mouse mammary tumour)ウイルス)、ボビスピューマウイルス(Bovispumavirus)(たとえば、ウシ泡沫状(Bovine foamy)ウイルス)、デルタレトロウイルス(Deltaretrovirus)(たとえば、ウシ白血病(Bovine leukemia)ウイルス;ヒトTリンパ球向性(Human T-lymphotropic)ウイルス)、イプシロンレトロウイルス(Epsilonretrovirus)(たとえば、ウォールアイ皮膚肉腫(Walleye dermal sarcoma)ウイルス)、エキスピューマウイルス(Equispumavirus)(たとえば、ウマ泡沫状(Equine foamy)ウイルス)、フェリスピューマウイルス(Felispumavirus)(たとえば、ネコ泡沫状(Feline foamy)ウイルス)、ガンマレトロウイルス(Gammaretrovirus)(たとえば、マウス白血病(Murine leukemia)ウイルス;ネコ白血病(Feline leukemia)ウイルス)、レンチウイルス(Lentivirus)(たとえば、ヒト免疫不全ウイルス1;サル免疫不全ウイルス;ネコ免疫不全ウイルス)、プロシミイスピューマウイルス(Prosimiispumavirus)(たとえば、オオガラゴ原猿類泡沫状ウイルス(Brown greater galago prosimian foamy virus))、およびシミイスピューマウイルス(Simiispumavirus)(たとえば、イースタンチンパンジー類人猿泡沫状ウイルス(Eastern chimpanzee simian foamy virus))からなる群より選択されるウイルス属に属する。いずれかの局面のいくつかの態様では、ウイルスは、内在性レトロウイルス(ERV;たとえば、内在性レトロウイルス群Wエンベロープメンバー1(ERVWE1);HCP5(HLA複合体P5);ヒト奇形癌腫由来ウイルス)であって、レトロウイルスとよく似た、かつそれに由来し得るゲノム内在性ウイルス要素である。
【0348】
いずれかの局面のいくつかの態様では、DNAウイルスは、第I群(すなわち、dsDNA)ウイルスである。いずれかの局面のいくつかの態様では、第I群dsDNAウイルスは、カウドウイルス(Caudovirales);ヘルペスウイルス(Herpesvirales);およびリガメンウイルス(Ligamenvirales)からなる群より選択されるウイルス目に属する。いずれかの局面のいくつかの態様では、第I群dsDNAウイルスは、アデノウイルス(Adenoviridae)(たとえば、アデノウイルス)、アロヘルペスウイルス(Alloherpesviridae)、アンプラウイルス(Ampullaviridae)、アスコウイルス(Ascoviridae)、アスファウイルス(Asfarviridae)(たとえば、アフリカブタ熱(African swine fever)ウイルス)、バキュロウイルス(Baculoviridae)、ビカウダウイルス(Bicaudaviridae)、クラバウイルス(Clavaviridae)、コルチコウイルス(Corticoviridae)、フセロウイルス(Fuselloviridae)、グロビュロウイルス(Globuloviridae)、グッタウイルス(Guttaviridae)、ヘルペスウイルス(Herpesviridae)(たとえば、ヒトヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹(Varicella Zoster)ウイルス)、ヒストロサウイルス(Hytrosaviridae)、イリドウイルス(Iridoviridae)、ラビダウイルス(Lavidaviridae)、リポスリクスウイルス(Lipothrixviridae)、マラコヘルペスウイルス(Malacoherpesviridae)、マルセイユウイルス(Marseilleviridae)、ミミウイルス(Mimiviridae)、ミオウイルス(Myoviridae)(たとえば、腸内細菌ファージT4)、ニマウイルス(Nimaviridae)、ヌディウイルス(Nudiviridae)、パンドラウイルス(Pandoraviridae)、パピローマウイルス(Papillomaviridae)、フィコドナウイルス(Phycodnaviridae)、プラズマウイルス(Plasmaviridae)、ポドウイルス(Podoviridae)(たとえば、腸内細菌ファージT7)、ポリドナウイルス(Polydnaviruses)、ポリオーマウイルス(Polyomaviridae)(たとえば、サル(Simian)ウイルス40、JCウイルス、BKウイルス)、ポックスウイルス(Poxviridae)(たとえば、牛痘(Cowpox)ウイルス、天然痘(smallpox))、ルディウイルス(Rudiviridae)、シホウイルス(Siphoviridae)(たとえば、腸内細菌ファージλ)、スフェロリポウイルス(Sphaerolipoviridae)、テクチウイルス(Tectiviridae)、トリストロマウイルス(Tristromaviridae)、およびトゥリウイルス(Turriviridae)からなる群より選択されるウイルス科に属する。いずれかの局面のいくつかの態様では、第I群dsDNAウイルスは、ディノドナウイルス(Dinodnavirus)、リジディオウイルス(Rhizidiovirus)、およびサルテルプロウイルス(Salterprovirus)からなる群より選択されるウイルス属に属する。いずれかの局面のいくつかの態様では、第I群dsDNAウイルスは、アバロン・シュリベリング症候群(Abalone shriveling syndrome)関連ウイルス、アピス・メリフェラ・フィラメンタス(Apis mellifera filamentous)ウイルス、バンディクート・パピローマトシス・カルシノーマトシス(Bandicoot papillomatosis carcinomatosis)ウイルス、ケドラトウイルス(Cedratvirus)、カウメーバウイルス(Kaumoebavirus)、KIs-V、レンチレ(Lentille)ウイルス、レプトピリナ・ブーラルディ・フィラメンタス(Leptopilina boulardi filamentous)ウイルス、メガウイルス(Megavirus)、メタロスフェラ・タレッテド二十面体(Metallosphaera turreted icosahedral)ウイルス、メタノサルキナ球状(Methanosarcina spherical)ウイルス、モリウイルス・シベリカム(Mollivirus sibericum)ウイルス、オルフェオウイルス(Orpheovirus)IHUMI-LCC2、ファエオキスティス・グロボサ(Phaeocystis globosa)ウイルス、およびピソウイルス(Pithovirus)からなる群より選択される未分類ウイルス種に属する。いずれかの局面のいくつかの態様では、第I群dsDNAウイルスは、オーガニックレイク(Organic Lake)ヴィロファージ、エースレイク・マウイルス(Ace Lake Mavirus)ヴィロファージ、滴水湖(Dishui Lake)ヴィロファージ1、グアラニ(Guarani)ヴィロファージ、ファエオキスティス・グロボサウイルスヴィロファージ、リオネグロ(Rio Negro)ヴィロファージ、スプートニク(Sputnik)ヴィロファージ2、イエローストーンレイク(Yellowstone Lake)ヴィロファージ1、イエローストーンレイクヴィロファージ2、イエローストーンレイクヴィロファージ3、イエローストーンレイクヴィロファージ4、イエローストーンレイクヴィロファージ5、イエローストーンレイクヴィロファージ6、イエローストーンレイクヴィロファージ7、およびザミロン(Zamilon)ヴィロファージ2からなる群より選択されるヴィロファージである。
【0349】
いずれかの局面のいくつかの態様では、DNAウイルスは、第II群(すなわち、ssDNA)ウイルスである。いずれかの局面のいくつかの態様では、第II群ssDNAウイルスは、アネロウイルス(Anelloviridae)、バチラドナウイルス(Bacilladnaviridae)、ビドナウイルス(Bidnaviridae)、サーコウイルス(Circoviridae)、ジェミニウイルス(Geminiviridae)、ジェノモウイルス(Genomoviridae)、イノウイルス(inoInoviridae)、ミクロウイルス(Microviridae)、ナノウイルス(Nanoviridae)、パルボウイルス(Parvoviridae)、スマコウイルス(Smacoviridae)、およびスピラウイルス(Spiraviridae)からなる群より選択されるウイルス科に属する。
【0350】
いずれかの局面のいくつかの態様では、DNAウイルスは、第VII群(すなわち、dsDNA-RT)ウイルスである。いずれかの局面のいくつかの態様では、第VII群dsDNA-RTウイルスは、オルテルウイルス目に属する。いずれかの局面のいくつかの態様では、第VII群dsDNA-RTウイルスは、カリモウイルス科またはヘパドナウイルス(Hepadnaviridae)科に属する(たとえば、肝炎B(Hepatitis B)ウイルス)。いずれかの局面のいくつかの態様では、第VII群dsDNA-RTウイルスは、バドナウイルス(Badnavirus)、カリモウイルス(Caulimovirus)、カベモウイルス(Cavemovirus)、ペチュウイルス(Petuvirus)、ロザドナウイルス(Rosadnavirus)、ソレンドウイルス(Solendovirus)、ソイモウイルス(Soymovirus)、ツングロウイルス(Tungrovirus)、トリヘパドナウイルス(Avihepadnavirus)、およびオルトソヘパドナウイルス(Orthohepadnavirus)からなる群より選択されるウイルス属に属する。
【0351】
いずれかの局面のいくつかの態様では、標的分析物は、コロナウイルスに由来する。コロナウイルスの学名は、オルトコロナウイルス(Orthocoronavirinae)またはコロナウイルス(Coronavirinae)である。コロナウイルスは、コロナウイルス科ニドウイルス目リボウイルス界(Riboviria)に属する。コロナウイルスは、哺乳動物に感染するアルファコロナウイルスおよびベータコロナウイルスと、主として鳥に感染するガンマコロナウイルスおよびデルタコロナウイルスとに分けられる。アルファコロナウイルスの非限定例としては、ヒトコロナウイルス229E、ヒトコロナウイルスNL63、ユビナガコウモリ(Miniopterus bat)コロナウイルス1、ユビナガコウモリコロナウイルスHKU8、ブタ流行性下痢ウイルス、キクガシラコウモリ(Rhinolophus bat)コロナウイルスHKU2、イエローハウスコウモリ(Scotophilus bat)コロナウイルス512、およびネコ伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV、ネコ伝染性肝炎ウイルスとも呼ばれる)が挙げられる。ベータコロナウイルスの非限定例としては、ベータコロナウイルス1(たとえば、ウシコロナウイルス、ヒトコロナウイルスOC43)、ヒトコロナウイルスHKU1、マウスコロナウイルス(マウス肝炎ウイルス(MHV)としても知られる)、アブラコウモリ(Pipistrellus bat)コロナウイルスHKU5、ルーセットコウモリ(Rousettus bat)コロナウイルスHKU9、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス(たとえば、SARS-CoV、SARS-CoV-2)、タケコウモリ(Tylonycteris bat)コロナウイルスHKU4、中東呼吸器症候群(MERS)関連コロナウイルス、およびヘッジホッグコロナウイルス1(EriCoV)が挙げられる。ガンマコロナウイルスの非限定例としては、シロイルカコロナウイルスSW1、および伝染性気管支炎ウイルスが挙げられる。デルタコロナウイルスの非限定例としては、ブルブルコロナウイルスHKU11、およびブタコロナウイルスHKU15が挙げられる。
【0352】
いずれかの局面のいくつかの態様では、標的核酸は核酸である(たとえば、図15A~15F参照)。いずれかの局面のいくつかの態様では、標的核酸は、ウイルス核酸、たとえば、ウイルスDNAもしくはRNAゲノム、またはウイルスRNA転写物である。
【0353】
本明細書では、本明細書に開示されるシステムおよび方法の構成要素となる結合アッセイが開示される。結合アッセイの目的は、少なくとも1つの標的分析物または標的分子と結合すること、そして検出可能な信号を発生させることである。
【0354】
一態様では、結合アッセイは、競合、直接反応、またはサンドイッチタイプのアッセイなどの免疫アッセイを含め、標準的な電気泳動法および免疫診断法を利用する。そのようなアッセイとしては、限定ではないが、ウエスタンブロット、凝集試験、酵素標識および媒介免疫アッセイ(たとえばELISA)、ビオチン/アビジンタイプのアッセイ、放射免疫アッセイ等が挙げられる。一態様では、結合アッセイは、配列特異的エンドヌクレアーゼおよびガイド核酸、コラテラル核酸、ならびに/または検出核酸を利用する。
【0355】
標的分子の特異的認識は、少なくとも1つの結合剤を用いて実現される。1つまたは複数の標的分析物または分子との会合または結合の能力のある任意の1つまたは複数の分子の使用のために適した結合剤。結合剤は、標的分析物に対し特異的な少なくとも1つの結合部位を有する。
【0356】
一態様では、少なくとも1つの結合剤は、アプタマー、抗体、受容体リガンド、タンパク質、または分子刷込みポリマーから選択される。
【0357】
一態様では、特異的結合剤は、およそ10~15 kDaのサイズ(20~45ヌクレオチド)のアプタマーであり、少なくともマイクロモルの親和性で標的分子と結合し、密接な関連のある標的分子とは区別する。
【0358】
一態様では、特異的結合剤は、およそ10~15 kDaのサイズ(20~45ヌクレオチド)のアプタマーであり、少なくともナノモルの親和性で標的分子と結合し、かつ/または密接な関連のある標的分子とは区別する。
【0359】
ある特定の態様では、結合剤はアプタマーであって、標的分子に対する該アプタマーのKdは、10 nMもしくはそれよりも小さく、または5 nMもしくはそれよりも小さく、100 pMほども低い場合もある。
【0360】
ある特定の態様では、システムは2結合剤アッセイを含み、ここで第1および第2の結合剤は、抗体(たとえば、モノクローナル抗体)およびアプタマー、またはそれらの組み合わせから選択される。一態様では、第1の結合剤はアプタマーであり、第2の結合剤は抗体(たとえば、モノクローナル抗体)である。一態様では、第1の結合剤は抗体(たとえば、モノクローナル抗体)であり、第2の結合剤はアプタマーである。
【0361】
ある特定の態様では、システムは2結合剤アッセイを含み、ここで第1および第2の結合剤は、各種抗体から選択される(たとえば、モノクローナル抗体)。一態様では、第1の結合剤は抗体であり、第2の結合剤は抗体(たとえば、モノクローナル抗体)であり、これらの抗体は同じであるか、または異なり、あるいはこれらの抗体の標的は同じであるか、または異なっている。
【0362】
特定の態様では、結合アッセイは第1および第2の結合剤を含み、第1の結合剤は標的分析物の第1の部位と結合し、第2の結合剤は標的分析物または分子の第2の(異なる)部位と結合する。
【0363】
特定の態様では、結合アッセイは第1および第2の結合剤を含み、第1の結合剤は標的分析物の第1の部位と結合し、第2の結合剤は標的分析物の同部位と結合する。標的上には該部位のコピーが過剰に存在するため、第1の結合剤も第2の結合剤も標的と結合することができる。
【0364】
ある特定の態様では、第1のエピトープに対する第1の結合剤の親和性は、第2のエピトープに対する第2の結合剤の親和性よりも高い。第1のエピトープのKdと第2のエピトープのKdとの比は、1:10,000~10,000:1であり得る。
【0365】
ある特定の態様では、第1の結合剤はアプタマーであり、第2の結合剤は抗体、より具体的には、検出可能に標識された抗体である。
【0366】
一態様では、抗体は、酵素(たとえば、グルコースオキシダーゼ)と、固定の整数比で組み合わされる、または連結される。(たとえば、抗体1に対し、酵素は少なくとも1、2、3、4、5、またはそれ以上)。
【0367】
ある特定の態様では、抗体をグルコースオキシダーゼと組み合わせて抗体-GOxコンジュゲートを得る。別の態様では、GOxとの部位特異的コンジュゲーションのための化学リンカーを用いる代替コンジュゲート戦略、たとえば、切断不可能なチオエーテルとペプチドとの連結が利用される。図2に示すように、アプタマーは、標的分析物(たとえば、ウイルス抗原)を捕捉し、Ab-GOxは、ウイルス抗原が存在すれば結合する。定電位を印加すると、GOxはグルコースを酸化し、電子を酸素に移動させ、過酸化水素を生成し、そして過酸化水素と反応する電極を介して電流出力を生じさせる。
【0368】
グルコースオキシダーゼ(酵素番号(Enzyme Commission number)(EC)1.1.3.4)は、酸素分子を電子受容体として利用してのベータ-D-グルコースからD-グルコノ-デルタ-ラクトンへの酸化を触媒し、同時に過酸化水素が生成する(たとえば、図3参照)。グルコースオキシダーゼは、ホモダイマーとして機能する。グルコースオキシダーゼはまた、ベータ-D-グルコース:酸素1-オキシドレダクターゼ;ノタチン;グルコースオキシヒドラーゼ;コリロフィリン;ペナチン;グルコースエアロデヒドロゲナーゼ(glucose aerodehydrogenase);ミクロシド(microcid);ベータ-D-グルコースオキシダーゼ;D-グルコースオキシダーゼ;D-グルコース-1-オキシダーゼ;ベータ-D-グルコース:キノンオキシドレダクターゼ;グルコースオキシヒドラーゼ;デオキシン-1;GOD;またはGOxとも呼ばれ得る。いずれかの局面のいくつかの態様では、グルコースオキシダーゼは、微生物(たとえば、真菌または細菌)グルコースオキシダーゼである。いずれかの局面のいくつかの態様では、グルコースオキシダーゼは、クロコウジカビ(Aspergillus niger)(たとえば、UniProtKB - P13006(GOX_ASPNG)から入手できる任意の配列、またはNCBI遺伝子ID:37106576、4977376、4985693、4984787もしくは4981316、または任意の関連オルソログもしくはホモログを参照;たとえば、SEQ ID NO:10参照)、ペニシリン・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)(アオカビ(Penicillium notatum)とも呼ばれる;たとえば、UniProtKB - K9L4P7(K9L4P7_PENCH)から入手できる任意の配列、または任意の関連オルソログもしくはホモログ参照)、またはペニシリン・アマガサキエンス(Penicillium amagasakiense)(たとえば、UniProtKB - P81156 (GOX_PENAG)から入手できる任意の配列、または任意の関連オルソログもしくはホモログ参照)に由来する。たとえば、Raba et al., “Glucose Oxydase as an Analytical Reagent,” Critical Reviews in Analytical Chemistry, 25(1):1-42 (1995)を参照されたく、その内容全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0369】
いずれかの局面のいくつかの態様では、グルコースオキシダーゼは、SEQ ID NO:10、またはSEQ ID NO:10と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であって、同じ機能(たとえば、グルコース酸化および/または過酸化水素生成)を維持しているアミノ酸配列を含む。いずれかの局面のいくつかの態様では、グルコースオキシダーゼは、SEQ ID NO:10、またはSEQ ID NO:10と少なくとも95%同一であって、同じ機能(たとえば、グルコース酸化および/または過酸化水素生成)を維持しているアミノ酸配列を含む。
【0370】
SEQ ID NO:10、グルコースオキシダーゼ、前駆体、クロコウジカビ、UniProtKB - P13006、605アミノ酸(aa)
【0371】
ある特定の態様では、抗体をオキシダーゼと組み合わせて、ガラクトースオキシダーゼ(たとえば、EC 1.1.3.9参照);D-グルコース:D-フルクトースオキシドレダクターゼ(たとえば、EC 1.1.99.28参照);またはセロビオースオキシダーゼ(たとえば、EC 1.1.3.25参照)でできた抗体-Oxコンジュゲートを得る。
【0372】
ある特定の態様では、抗体をデドロゲナーゼと組み合わせて、グルコースデヒドロゲナーゼ(たとえば、EC 1.1.1.47参照);グルコース6-リン酸デヒドロゲナーゼ(たとえば、EC 1.1.1.49参照);フルクトースデヒドロゲナーゼ(たとえば、EC 1.1.99.11参照);スクロースデヒドロゲナーゼ(グルコシド3-デヒドロゲナーゼとしても知られる;たとえば、EC 1.1.99.13参照);グルコシドデヒドロゲナーゼ(たとえば、EC 1.1.99.13参照);アルコールデヒドロゲナーゼ(たとえば、EC 1.1.1.1参照);ソルビトールデヒドロゲナーゼ(たとえば、EC 1.1.99.21参照);乳酸デヒドロゲナーゼ(たとえば、EC 1.1.1.27参照);またはリンゴ酸デヒドロゲナーゼ(たとえば、1.1.1.37参照)でできた抗体-DHコンジュゲートを得る。
【0373】
この2結合剤アッセイの態様では、第1および第2の結合剤は、コロナウイルスまたは関心対象のほかのウイルス関連の少なくとも1つのウイルス抗原、たとえば、コロナウイルスのSタンパク質、またはそのサブユニット、断片、もしくはエピトープに対し特異的であり得る。該少なくとも1つのウイルス抗原は、ベータコロナウイルスの、より具体的にはSARS-CoV-2もしくはSARS-CoVなどのC型ベータコロナウイルスのS-1サブユニット、またはその1つもしくは複数のエピトープであり得る。
【0374】
ある特定の態様では、アプタマーは、Song, Y. et al. Discovery of Aptamers Targeting Receptor-Binding Domain of the SARS-CoV-2 Spike Glycoprotein. (2020). doi:10.26434/chemrxiv.12053535.v2、またはSong et al., Analytical Chemistry, 02 Jul 2020, 92(14):9895-9900に開示されるアプタマーであり、それぞれの内容がすべて参照により本明細書に組み入れられる。
【0375】
別の特定の態様では、抗体は、Yuan, M. et al. A highly conserved cryptic epitope in the receptor-binding domains of SARS-CoV-2 and SARS-CoV. Science 633, eabb7269 (2020)に開示される抗体であり、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる。
【0376】
別の特定の態様では、第1の結合剤は、検査ストリップと結合したアプタマー、抗体、またはタンパク質である。
【0377】
別の特定の態様では、第1の結合剤は、検査ストリップ、より具体的には、ニトロセルロース膜などの親水性膜と結合したアプタマーである。
【0378】
別の特定の態様では、第1の結合剤は、検査ストリップと該ストリップに配置された高分子膜を介して結合した、アプタマー、抗体、またはタンパク質である。
【0379】
別の特定の態様では、第1の結合剤は、検査ストリップと該ストリップに配置されたニトロセルロース膜などの親水性膜を介して結合した、アプタマー、抗体、またはタンパク質である。
【0380】
別の特定の態様では、第1の結合剤は、検査ストリップと該ストリップ上の電極の真上または2つの電極間に配置されているニトロセルロース膜などの親水性膜を介して結合した、アプタマー、抗体、またはタンパク質である。
【0381】
別の特定の態様では、第1の結合剤は、検査ストリップと該ストリップに電極の上または2つの電極間で固定されているニトロセルロース膜などの親水性膜を介して結合した、アプタマー、抗体、またはタンパク質である。
【0382】
別の特定の態様では、第1の結合剤は、親水性膜を介して検査ストリップと結合したアプタマー、抗体、またはタンパク質であって、該膜はまた、生物学的サンプルを収集し、かつシンクエリアを提供して該サンプルを該膜上の一カ所から別の箇所へと流す。
【0383】
別の特定の態様では、第1の結合剤は、ニトロセルロース膜などの親水性膜を介して検査ストリップと結合したアプタマー、抗体、またはタンパク質であって、該膜はまた、生物学的サンプルを収集し、かつシンクエリアを提供して該サンプルを該膜上の一カ所から別の箇所へと流す。
【0384】
いずれかの局面のいくつかの態様では、標的分析物は抗体(たとえば、IgG、IgM、およびIgA)である。いずれかの局面のいくつかの態様では、第1の結合剤は、検査ストリップと結合したタンパク質であって、標的分析物(たとえば、抗体)は該タンパク質と特異的に結合する。いずれかの局面のいくつかの態様では、第1の結合剤は、ウイルスタンパク質(たとえば、Flu H1N1 HAまたはNA;SARS-CoV-2 Sスパイクタンパク質)である。いずれかの局面のいくつかの態様では、第2の結合剤は、標的分析物(たとえば、抗体)と特異的に結合するアプタマーまたは抗体である。いずれかの局面のいくつかの態様では、第2の結合剤は、抗抗体抗体である。いずれかの局面のいくつかの態様では、第2の結合剤は、グルコースオキシダーゼと連結された抗抗体抗体である。いずれかの局面のいくつかの態様では、第2の結合剤は、抗IgG、抗IgM、または抗IgA抗体である。いずれかの局面のいくつかの態様では、第2の結合剤は、抗ヒトIgG、抗ヒトIgM、または抗ヒトIgA抗体である。
【0385】
本明細書に記載される標的、たとえば、インフルエンザノイラミニダーゼタンパク質、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質、SARS-CoV-2スパイクまたは膜タンパク質、グルコースオキシダーゼに対し特異的な抗体試薬は、当技術分野で公知である。たとえば、そのような試薬は簡単に購入できる。いずれかの局面のいくつかの態様では、本明細書に記載される標的に対し特異的な(たとえば、Flu HAもしくはNA、またはSARS-CoV-2スパイクタンパク質もしくは膜タンパク質などのウイルス抗原、あるいはグルコースオキシダーゼと特異的に結合する)抗体試薬は、表2に記載のいずれか1つの抗体の1つまたは複数の(たとえば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つの)CDRを含む抗体試薬であり得る。いずれかの局面のいくつかの態様では、本明細書に記載される標的に対し特異的な(たとえば、Flu HAもしくはNA、またはSARS-CoV-2スパイクタンパク質もしくは膜タンパク質などのウイルス抗原、あるいはグルコースオキシダーゼと特異的に結合する)抗体試薬は、表2に記載のいずれか1つの抗体の6つのCDRを含む抗体試薬であり得る。いずれかの局面のいくつかの態様では、本明細書に記載される標的に対し特異的な(たとえば、Flu HAもしくはNA、またはSARS-CoV-2スパイクタンパク質もしくは膜タンパク質などのウイルス抗原、あるいはグルコースオキシダーゼと特異的に結合する)抗体試薬は、表2に記載のいずれか1つの抗体の3つの重鎖CDRを含む抗体試薬であり得る。いずれかの局面のいくつかの態様では、本明細書に記載される標的に対し特異的な(たとえば、Flu HAもしくはNA、またはSARS-CoV-2スパイクタンパク質もしくは膜タンパク質などのウイルス抗原、あるいはグルコースオキシダーゼと特異的に結合する)抗体試薬は、表2に記載のいずれか1つの抗体の3つの軽鎖CDRを含む抗体試薬であり得る。いずれかの局面のいくつかの態様では、本明細書に記載される標的に対し特異的な(たとえば、Flu HAもしくはNA、またはSARS-CoV-2スパイクタンパク質もしくは膜タンパク質などのウイルス抗原、あるいはグルコースオキシダーゼと特異的に結合する)抗体試薬は、表2に記載のいずれか1つの抗体のVHおよび/またはVLドメインを含む抗体試薬であり得る。いずれかの局面のいくつかの態様では、本明細書に記載される標的に対し特異的な(たとえば、Flu HAもしくはNA、またはSARS-CoV-2スパイクタンパク質もしくは膜タンパク質などのウイルス抗原、あるいはグルコースオキシダーゼと特異的に結合する)抗体試薬は、表2に記載のいずれか1つの抗体のVHおよびVLドメインを含む抗体試薬であり得る。そのような抗体試薬は、本明細書に記載される方法、システム、および/またはキットおける使用が具体的に想定される。
【0386】
(表2)例示的な抗体試薬
【0387】
本明細書に記載される標的、たとえば、インフルエンザノイラミニダーゼタンパク質、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質、SARS-CoV-2スパイクまたは膜タンパク質、グルコースオキシダーゼに対し特異的なアプタマー試薬は、当技術分野で公知である。たとえば、そのような試薬は簡単に購入できる。いくつかの態様では、アプタマーは、Song, Y. et al. Discovery of Aptamers Targeting Receptor-Binding Domain of the SARS-CoV-2 Spike Glycoprotein. (2020). doi:10.26434/chemrxiv.12053535.v2、またはSong et al., Analytical Chemistry, 02 Jul 2020, 92(14):9895-9900;国際特許出願WO2013183383A1;米国特許公報US20150167106A1;Gopinath et al., Aptamers that bind to the hemagglutinin of the recent pandemic influenza virus H1N1 and efficiently inhibit agglutination, Acta Biomater. 2013 Nov;9(11):8932-41に記載されるアプタマーから選択され、またはこれらに記載の方法を用いて設計してもよく、それぞれの内容がすべて参照により本明細書に組み入れられる。いずれかの局面のいくつかの態様では、アプタマーは、該アプタマーの5’末端(5Biosg)または3’末端(3Biosg)に連結されたビオチンを含む。
【0388】
いずれかの局面のいくつかの態様では、アプタマーは表3から選択される。いずれかの局面のいくつかの態様では、アプタマーは、SEQ ID NO:11~19のうち1つ、またはSEQ ID NO:11~19のうち1つと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくはそれ以上同一であって、同じ機能(たとえば、標的分析物との結合)を維持している核酸配列を含む。いずれかの局面のいくつかの態様では、アプタマーは、SEQ ID NO:11~19のうち1つ、またはSEQ ID NO:11~19のうち1つと少なくとも95%同一であって、同じ機能(たとえば、標的分析物との結合)を維持している核酸配列を含む。
【0389】
いずれかの局面のいくつかの態様では、アプタマーは、SEQ ID NO:11~12のうち1つ、またはSEQ ID NO:11~12のうち1つと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくはそれ以上同一であって、同じ機能(たとえば、標的分析物との結合)を維持している核酸配列を含む。いずれかの局面のいくつかの態様では、アプタマーは、SEQ ID NO:11~12のうち1つ、またはSEQ ID NO:11~12のうち1つと少なくとも95%同一であって、同じ機能(たとえば、標的分析物との結合)を維持している核酸配列を含む。
【0390】
(表3)例示的なアプタマー試薬
【0391】
別の局面では、本明細書には、生物学的サンプル中の少なくとも1つの標的核酸を検出するためのシステム(本明細書では、核酸検出システムと呼ばれる;たとえば、図15A~15F参照)が記載され、該システムは、(i)該標的核酸と特異的に結合するとコラテラル核酸を切断する、配列特異的エンドヌクレアーゼおよびガイド核酸と、(ii)該切断されたコラテラル核酸とともに検出可能な複合体をつくることができる、検出核酸と、(iii)該検出可能な複合体を検出するための検出デバイスとを含み、該検出デバイスは、オキシダーゼベースのアンペロメトリックセンサーであり、該生物学的サンプルは、汗、唾液、血清、粘液、または血液中に存在している。
【0392】
いずれかの局面のいくつかの態様では、配列特異的エンドヌクレアーゼはCas酵素である。いずれかの局面のいくつかの態様では、配列特異的エンドヌクレアーゼは、エンドヌクレアーゼおよびガイド核酸が標的核酸と結合するとコラテラル核酸を切断する能力がある。いずれかの局面のいくつかの態様では、配列特異的エンドヌクレアーゼは、Cas13a(以前はC2c2として知られていた)、Cas13b、Cas13c、Cas12a、および/またはCsm6である。いずれかの局面のいくつかの態様では、配列特異的エンドヌクレアーゼは、Cas12aまたはCas13である。たとえば、米国特許出願US20190241954;PCT特許出願WO2020028729;Chen et al., CRISPR-Cas12a target binding unleashes indiscriminate single-stranded DNase activity, Science. 2018 Apr 27, 360(6387):436-439を参照されたく、それぞれの内容がすべて参照により本明細書に組み入れられる。
【0393】
本明細書に記載されるさまざまな局面のいくつかの態様では、配列特異的エンドヌクレアーゼは、たとえば標的核酸の存在下で、ガイド核酸(gNA)と結合する。本明細書で使用される場合、「ガイド核酸」、「ガイド配列」、「crRNA」、「ガイドRNA」、または「シングルガイドRNA」、または「gRNA」という用語は、任意のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを指す。一般に、ガイド核酸配列は、標的核酸配列とハイブリダイズするために標的核酸配列と十分な相補性を有するように、かつ融合タンパク質、すなわち配列特異的エンドヌクレアーゼと標的核酸配列との配列特異的な結合を導くように、選択される。
【0394】
全長ガイド核酸、コラテラル核酸、および/または検出核酸の鎖は、どのような長さでもよい。たとえば、ガイド核酸、コラテラル核酸、および/または検出核酸の鎖は、約5、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約35、約40、約45、約50、約75、またはそれ以上のヌクレオチド長、あるいはもっと長い場合がある。本明細書に記載されるさまざまな局面のいくつかの態様では、ガイド核酸、コラテラル核酸、および/または検出核酸の鎖は、約75、約50、約45、約40、約35、約30、約25、約20、約15、約12未満のヌクレオチド長、またはもっと短い。たとえば、ガイド核酸、コラテラル核酸、および/または検出核酸の鎖は、10~30ヌクレオチド長である。本明細書に記載されるさまざまな局面のいくつかの態様では、ガイド核酸は、ガイド設計ツール(たとえば、Benchling(商標);Broad Institute GPP(商標);CasOFFinder(商標);CHOPCHOP(商標);CRISPOR(商標);Deskgen(商標);E-CRISP(商標);Geneious(商標);GenHub(商標);GUIDES(商標)(たとえば、ライブラリーの設計用);Horizon Discovery(商標);IDT(商標);Off-Spotter(商標);およびSynthego(商標)、ワールドワイドウェブ上で利用可能)を用いて設計される。
【0395】
いずれかの局面のいくつかの態様では、ガイド核酸は、標的核酸の少なくとも一部分に対し相補的または実質的に相補的である。いずれかの局面のいくつかの態様では、検出核酸は、切断されたコラテラル核酸の少なくとも一部分に対し相補的または実質的に相補的である。「実質的相補性」または「実質的に相補的」という用語は、本明細書で使用される場合、一部の事例では同一配列と呼ばれる結合核酸の完全な相補性、ならびに所望の核酸の結合を実現するのに十分な相補性の両方を指す。同様に、「相補的ハイブリッド」という用語は、実質的に相補的なハイブリッドを含む。
【0396】
いずれかの局面のいくつかの態様では、検出核酸は、切断されたコラテラル核酸とハイブリダイズする。いずれかの局面のいくつかの態様では、検出核酸は、切断されていないコラテラル核酸とはハイブリダイズしない。いずれかの局面のいくつかの態様では、検出核酸は、検査ストリップと、たとえば該検出核酸の5’または3’末端で連結されている。
【0397】
いずれかの局面のいくつかの態様では、コラテラル核酸は、グルコースオキシダーゼと、たとえば該コラテラル核酸の5’または3’末端で連結されている(たとえば、図15A参照)。
【0398】
いずれかの局面のいくつかの態様では、システムは、グルコースオキシダーゼと連結されたアプタマーをさらに含む(たとえば、図15B~15C参照)。アプタマーは、本明細書にさらに記載されるような当技術分野で公知の任意の連結を用いてグルコースオキシダーゼと連結され得る。アプタマーの3’末端、5’末端、または内部領域が、グルコースオキシダーゼと連結され得る。
【0399】
いずれかの局面のいくつかの態様では、アプタマーは、切断されたコラテラル核酸の少なくとも一部分と特異的に結合する。いずれかの局面のいくつかの態様では、アプタマーは、切断されたコラテラル核酸の一本鎖部分と結合する(たとえば、図15B参照)。いずれかの局面のいくつかの態様では、アプタマーは、検出核酸とハイブリダイズした切断されたコラテラル核酸の二本鎖部分と結合する(たとえば、図15C参照)。
【0400】
いずれかの局面のいくつかの態様では、システムは、グルコースオキシダーゼと連結された抗体をさらに含む(たとえば、図15D参照)。抗体は、本明細書にさらに記載されるような当技術分野で公知の任意の連結を用いてグルコースオキシダーゼと連結され得る。抗体の軽鎖または重鎖のN末端、C末端、または内部領域が、グルコースオキシダーゼと連結され得る。いずれかの局面のいくつかの態様では、抗体は、切断されたコラテラル核酸の少なくとも一部分と特異的に結合する。
【0401】
いずれかの局面のいくつかの態様では、コラテラル核酸は、グルコースオキシダーゼと特異的に結合する抗体と連結されている(たとえば、図15E参照)。グルコースオキシダーゼに対し特異的な抗体試薬は、当技術分野で公知である。たとえば、そのような試薬は簡単に購入できる(たとえば、表2参照)。
【0402】
いずれかの局面のいくつかの態様では、コラテラル核酸は、親和性対の第1のメンバーと連結されている(たとえば、図15F参照)。いずれかの局面のいくつかの態様では、システムは、親和性対の第2のメンバーと連結されたグルコースオキシダーゼをさらに含む。いずれかの局面のいくつかの態様では、親和性対の第1のメンバーおよび第2のメンバーは、ハプテン性または抗原性化合物と、対応する抗体またはその結合部分もしくは断片との組み合わせ;ジゴキシゲニンおよび抗ジゴキシゲニン;マウス免疫グロブリンおよびヤギ抗マウス免疫グロブリン;非免疫的結合対;ビオチンおよびアビジン;ビオチンおよびストレプトアビジン;ホルモンおよびホルモン結合タンパク質;チロキシンおよびコルチゾールホルモン結合タンパク質;受容体および受容体アゴニスト;受容体および受容体アンタゴニスト;アセチルコリン受容体およびアセチルコリンまたはそのアナログ;IgGおよびプロテインA;レクチンおよび炭水化物;酵素および酵素補因子;酵素および酵素阻害剤;核酸二本鎖を作ることのできる相補的オリゴヌクレオチド対;ならびに負電荷をもつ第1の分子および正電荷をもつ第2の分子からなる群より選択される。
【0403】
いずれかの局面のいくつかの態様では、親和性対の第1のメンバーおよび第2のメンバーは、ストレプトアビジンおよびビオチンである。いずれかの局面のいくつかの態様では、ストレプトアビジンはコラテラル核酸と連結され、ビオチンはグルコースオキシダーゼと連結されている。いずれかの局面のいくつかの態様では、ビオチンはコラテラル核酸と連結され、ストレプトアビジンはグルコースオキシダーゼと連結されている。
【0404】
本明細書では、本明細書に開示されるシステムおよび方法の構成要素となる検出デバイスも開示され、該検出デバイスは、結合アッセイにより発生した信号を検出する。
【0405】
特定の態様では、検出デバイスは、携帯用(たとえば、手持ち式)の電池式デバイスである。
【0406】
一態様では、本明細書におけるシステムおよび方法で利用される検出デバイスは、パーソナルグルコースメーター(PGM)などのグルコメーターである。従来、PGMは、I型またはII型糖尿病をもつユーザーが血中グルコースレベルを測定するのに用いられる携帯手持ち式デバイスである。典型的には、ユーザーは、PGMと接面する小ストリップ(たとえば、約20~30 mm x 約5~9 mm)を購入する。ユーザーは、ランサーを用いて指またはほかの部位から微量の血液(たとえば、数マイクロリットル)を抜き取り、血液の液滴サンプルをストリップの露出端に塗布し、次いでストリップのコネクター端をPGMコネクターポートに挿入する。血液サンプルとストリップ上の化学物質との間で化学反応が生じ、PGMがそれを測定して、mg/dLもしくはmmol/L、またはKg/Lという単位で血中グルコースレベルを決定する。血糖値を繰り返し測定した後、使用済みの検査ストリップをPGMから取り出し、新しい検査ストリップをコネクターポートにロードする。
【0407】
一態様では、本明細書におけるシステムおよび方法におけるグルコメーターは、標準的な市販の手持ち式グルコメーターである。市販のグルコメーターの非限定例としては、Accu Chek(登録商標)(ROCHE DIABETES CARE, INC.、インディアナ州インディアナポリス)、Van Touch(登録商標)、Bionime(登録商標)Presto(登録商標)(AGAMATRIX、ニューハンプシャー州セーレム)、Wavesense Presto(登録商標)(AGAMATRIX、ニューハンプシャー州セーレム)、Counter(登録商標)(ASCENSIA、スイス国バーゼル)、CounterPlus(登録商標)(ASCENSIA、スイス国バーゼル)、FreeStyle(登録商標)(ABBOTT DIABETES CARE INC.イリノイ州アボットパーク)、True(登録商標)(TRIVIDIA HEALTH、フロリダ州フォート・ローダーデール)が挙げられる。
【0408】
特定の態様では、グルコメーターは、使用制限のある、または使い捨てのグルコメーターである。
【0409】
グルコメーターは、典型的には、血液サンプル中の血中グルコースレベルの検査に必要な制御および検査用電子機器を収容するベースユニットを含む。他の態様では、グルコメーターは、一般のまたは唾液由来の分析物の検出機能を高めるために1つまたは複数の改造がなされている。
【0410】
ある特定の態様では、検出デバイスは、検査ストリップスロット、および生物学的サンプル(たとえば、唾液サンプル)を分析するように構成されたリーダーを有する、ベースユニットを有する、グルコメーターである。一態様では、グルコメーターは、グルコース信号を(たとえば、定量的に)測定する。ベースユニットは、形状およびサイズがさまざまであり得る。検査ストリップスロットは、本明細書に記載されるようなグルコース検査ストリップを受け入れるように構成されており、該検査ストリップは検査ストリップスロットに取り出し可能に挿入され得る。グルコメーターは、データを保存する、かつデータを送信するための手段も有し得る。
【0411】
グルコース測定は、標準的なアンペロメトリーによるグルコースオキシダーゼを用いたグルコース検出により実施され得る。この態様では、センサーを用いて、生物学的液体中のグルコース濃度を電圧または電流信号に変換する。センサーは、電気回路の一部を形成する白金および銀の電極を用い、ここで過酸化水素が電気分解される。過酸化水素は、グルコース酸化物膜上のグルコース酸化の結果として生成する。回路を流れている電流が、過酸化水素の濃度の測定を提供し、グルコース濃度が得られる。
【0412】
グルコース測定は、標準的なアンペロメトリーによるグルコースオキシダーゼを用いたグルコースの検出により実施され得る。この態様では、センサーを用いて、生物学的液体中のグルコース濃度を電圧または電流信号に変換する。センサーは、電気回路の一部を形成する炭素電極を用い、ここで過酸化水素が電気分解される。過酸化水素は、グルコース酸化物膜上のグルコース酸化の結果として生成する。回路を流れている電流が、過酸化水素の濃度の測定を提供し、グルコース濃度が得られる。
【0413】
特定の態様では、システムは、信号を増幅するための1つまたは複数の信号処理アプリケーションまたは電子増幅器を回路内に含む。
【0414】
一態様では、H2O2は、これらの電極で、低い印加電位で得られ得る(たとえば、Ag/AgClに対し約-0.2V;たとえば、Ag/AgClは基準電極であり得る)。
【0415】
一態様では、生物学的サンプルは、約0.01 mM~約1 Mの濃度のグルコースと混合される。
【0416】
他の態様では、生物学的サンプルは、アミラーゼもしくはインベルターゼを含む、0.01 mM~1 Mの濃度のスクロース、フルクトース、マルトース、ガラクトース、セルロース、または任意の組み合わせと混合される。いずれかの局面のいくつかの態様では、グルコース、スクロース、フルクトース、マルトース、ガラクトース、またはセルロースの濃度は、少なくとも0.01 mM、少なくとも0.02 mM、少なくとも0.03 mM、少なくとも0.04 mM、少なくとも0.05 mM、少なくとも0.06 mM、少なくとも0.07 mM、少なくとも0.08 mM、少なくとも0.09 mM、少なくとも0.1 mM、少なくとも0.2 mM、少なくとも0.3 mM、少なくとも0.4 mM、少なくとも0.5 mM、少なくとも0.6 mM、少なくとも0.7 mM、少なくとも0.8 mM、少なくとも0.9 mM、または少なくとも1.0 mM、もしくはそれ以上である。
【0417】
一態様では、デバイスは、結果を表示するディスプレイユニットを含む。ディスプレイは、最新の検査を表示することができ、かつ任意で、過去の検査が表示される。特定の態様では、グルコメーターは、視覚障害のある対象が使いやすいように、ボイスコントロール機能を含む。グルコメーターは、グルコース測定と無関係のほかの特徴、たとえば、ほかの生理機能の測定を含み得る。グルコメーターに表示されたグルコース読取り値は、センサー表面の酵素濃度と正の相関があり得、該酵素濃度は生物学的サンプル中に存在する分析物(たとえば、ウイルス粒子)の数と相関がある。
【0418】
グルコメーターは、ソフトウェア要素を有し得る。グルコメーター用のさまざまソフトウェア・アルゴリズムが知られている。
【0419】
一態様では、グルコメーターは、第2のデバイス、たとえば、携帯電話またはタブレットコンピューターなどのモバイルデバイスにメッセージを通信するように構成されたワイヤレス送信機を有する。一態様では、メッセージは短距離通信プロトコルで、たとえば、Bluetoothプロトコルで、第2のデバイスに送信される。メッセージはまた、たとえば、テキストメッセージまたはeメールであり得る。
【0420】
一態様では、グルコメーターは、検査が始まってすぐに、たとえば、約5分未満、約1分30秒未満、約15秒未満、または約5秒未満で結果を提示する。
【0421】
グルコメーターの確度はさまざまであり得るが、概して20%の誤差を超えず、より具体的には約15%、約10%、約5%または約5%未満の誤差を超えず、たとえば、約4%、約3%、約2%、または約1%、もしくはそれ未満の誤差を超えない。特定の態様では、グルコメーターの交差感度を、実験による新たな補正因子の決定および検証に基づき減じるかまたは制限する。一態様では、グルコメーターの確度は、約85%~約95%の範囲である。
【0422】
一態様では、グルコメーターは、ユーザーが最新検査値を保存して一定期間(たとえば、少なくとも2週間)の平均グルコース値を計算することを可能にし、それによって経時的に観察することを可能にする。
【0423】
特定の態様では、グルコースメーターは、メーターユニットの複雑さおよびコストを最小限化するために、「ディスプレイレス」である(すなわち、ディスプレイを含まない)。この態様では、グルコースメーターは、ワイヤレスでオンになり、かつ結果または読出し値を第2のデバイス、たとえば、携帯電話またはパーソナルコンピューターに送信する。
【0424】
任意で、グルコメーターは、音声信号内でコード化された分析結果に関するデータをワイヤレス送信するように構成された送信機、および該コード化を促進するように構成されたコントローラーも含む。
【0425】
本明細書では、グルコメータ、および遠隔電算デバイスである本明細書におけるシステムおよび方法で用いられ得る遠隔電算デバイスも開示される。一態様では、遠隔電算デバイスは、たとえばスマートフォン、または通信デバイスなどの任意のほかの好適なデバイスであり得、出力デバイスを構成し得る。
【0426】
グルコメーターは、送信ユニットを通して、たとえばワイヤレス音声ベースチャネルで、遠隔電算デバイスに測定値を送信する。
【0427】
遠隔電算デバイスはさらに、情報を、セントラルリポジトリデバイスなどの遠隔デバイスに通信し得、インターネットまたはモバイルベースのデバイスなどのネットワークを通して、レシピエントリストに通信し得る。たとえば、検出デバイスは、遠隔電算デバイスを通して医療データを送信し得る。その後、該データは、たとえばコンピューター、またはスマートフォンなどの手持ち式デバイスを介して、遠隔の介護者に通信され得る。
【0428】
この態様ではソフトウェア・アルゴリズムが開示され、該ソフトウェア・アルゴリズムは、検出システムにおいて、1つまたは複数の検出可能な化学種が生物学的サンプルと検査ストリップと検出デバイスとの反応産物となるような電気化学反応をトリガーする。
【0429】
一態様では、検出デバイス上でローカライズド・コンピューティングのアルゴリズムにより数学演算が実施されて、検出可能な反応産物を与える化学反応が生物学的サンプルと検査ストリップと検出デバイスとの間で進行する。
【0430】
一態様では、検出デバイスの場所に対し物理的に外部の場所にあるサーバー上でクラウド・コンピューティングを用いて数学演算が実施されて、検出可能な反応産物を与える化学反応が生物学的サンプルと検査ストリップと検出デバイスとの間で進行する。
【0431】
一態様では、検出デバイスには初期プログラムされていない追加のアルゴリズムを含むデータカードを検出デバイスのデータカードスロットに挿入して、生物学的サンプルと検査ストリップと検出デバイスとの間で進行する検出可能な反応産物を与える化学反応を発生させる。
【0432】
一態様では、標的分析物を検出するためにプロセッサーにより実行される実行可能な命令が符号化されている、非一時的なコンピューター可読記憶媒体が開示される。
【0433】
図16は、本明細書に記載される技術を実施するシステムの概要の一例を示す。システムは、検査ストリップ135が差し込まれた検出デバイス150(たとえば、グルコメーター)を含む(130)。検出デバイス150から出力されるデータが、データベース185に保存されている場合もあるプログラムに入力され得る。
【0434】
電算デバイス170とサーバー180とは、ネットワーク160により接続され得、ネットワーク160は、本開示を実施するためのさまざまほかのデバイス、サーバー、またはネットワーク装置と接続され得る。電算デバイス170は、ディスプレイ175と接続され得る。電算デバイス170は、デスクトップコンピューター、サーバー(遠隔サーバーを含む)、モバイルデバイス、またはほかの好適な電算デバイスを含め、任意の好適な電算デバイスであり得る。いくつかの例では、本明細書に記載されるアルゴリズムおよびほかのソフトウェアがデータベース185に保存されてサーバー180で実行される場合がある。それに加えて、質量分析計データ(たとえば、質量スペクトル)、および該アルゴリズムまたはプログラムにより処理または生成されたデータ(たとえば、処理されたプロファイル、スコア、出力表、その他)がデータベース185に保存され得る。
【0435】
初めに理解しておくべきは、本明細書に記載される技術は、どのタイプのハードウェアおよび/またはソフトウェアで実施されてもよいこと、そして予めプログラムされた汎用電算デバイスであってもよいことである。たとえば、システムは、サーバー、パーソナルコンピューター、携帯用コンピューター、シンクライアント、または任意の好適な1つもしくは複数のデバイスを用いて実施することができる。本明細書に記載される技術および/またはその構成要素は、一カ所にある単一のデバイスであってもよいし、あるいは、一カ所にある、または任意の適切な通信プロトコルを用いて電気ケーブル、光ファイバーケーブルなどの任意の通信媒体により、もしくはワイヤレス方式で互いに接続された複数の場所にある、複数のデバイスであってもよい。
【0436】
同じく心得ておくべきは、本明細書に記載される技術が、特定の機能を実施する複数のモジュールを有するものとして本明細書に示されかつ論じられていることである。理解しておくべきは、これらのモジュールは、明確さのみを期してそれらの機能に基づき概略的に示されており、必ずしも特定のハードウェアまたはソフトウェアを表してはいないことである。この点において、これらのモジュールは、論じられる特定の機能を実質的に実施するために実装されるハードウェアおよび/またはソフトウェアであり得る。さらに、本明細書に記載される技術の範囲でモジュールを互いに組み合わせてもよいし、または特定の望ましい機能に基づいてさらなるモジュールに分割してもよい。したがって、本明細書に記載される技術は、本明細書に開示される本技術を限定すると解釈すべきではなく、単にその一例の実施を示すものと理解すべきである。
【0437】
電算システムは、クライアントおよびサーバーを含み得る。クライアントとサーバーとは一般に、互いに対し離れており、かつ典型的には、通信ネットワークを通してやりとりする。クライアントとサーバーとの関係は、それぞれのコンピューター上で動作する、かつ互いに対しクライアント-サーバー関係を有するコンピュータープログラムによって生じる。いくつかの実施では、サーバーがクライアントデバイスにデータ(たとえば、HTMLページ)を送信する(たとえば、該クライアントデバイスとやりとりしているユーザーにデータを表示し、かつ該ユーザーからのユーザー入力を受信するという目的のため)。クライアントデバイスで生成された該クライアントデバイスからのデータ(たとえば、ユーザーインタラクションの結果)が、サーバーで受信され得る。
【0438】
本明細書に記載される主題の実施は、たとえばデータサーバーとしてのバックエンド構成要素を含む、もしくはミドルウェア構成要素、たとえばアプリケーションサーバーを含む、もしくはフロントエンド構成要素、たとえばユーザーがそれを通して本明細書に記載される主題の実施とやりとりできるグラフィカル・ユーザー・インターフェースもしくはウェブブラウザーを有するクライアントコンピューターを含む、または1つもしくは複数のそのようなバックエンド、ミドルウェア、もしくはフロントエンドの構成要素の任意の組み合わせを含む、電算システムにおいて実施され得る。システムの構成要素は、デジタルデータ通信の任意の形態または媒体、たとえば、通信ネットワークにより、互いに接続され得る。通信ネットワークの例としては、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)およびワイドエリアネットワーク(「WAN」)、インターネットワーク(たとえば、インターネット)、ならびにピアツーピアネットワーク(たとえば、アドホック・ピアツーピアネットワーク)が挙げられる。
【0439】
本明細書に記載される主題および動作の実施は、本明細書に開示される構造体およびそれらの構造的等価物、またはそれらの1つもしくは複数の組み合わせを含め、デジタル電気回路において、またはコンピューターソフトウェア、ファームウェア、もしくはハードウェアにおいて、実施され得る。本明細書に記載される主題の実施は、1つまたは複数のコンピュータープログラムとして、すなわち、コンピューター記憶媒体上で符号化されている、データ処理装置により実行されるかまたはデータ処理装置の動作を制御するための1つまたは複数のモジュールのコンピュータープログラム命令として、実施され得る。あるいは、またはそれに加えて、プログラム命令は、情報を符号化して好適な受信装置に送信しデータ処理装置に実行させるために人為的に発生させる伝搬信号、たとえば、マシン作成の電気、光、または電磁気信号上で符号化され得る。コンピューター記憶媒体は、コンピューター可読記憶デバイス、コンピューター可読記憶基板、ランダムもしくはシリアルアクセスメモリーアレイもしくはデバイス、またはそれらの1つまたは複数の組み合わせであり得、またはそれ(ら)に含まれ得る。さらに、コンピューター記憶媒体は伝搬信号ではないが、コンピューター記憶媒体は人為的に発生させた伝搬信号内に符号化されたコンピュータープログラム命令のソースまたはデスティネーションであり得る。コンピューター記憶媒体はまた、1つまたは複数の別個の物理的構成要素または媒体(たとえば、CD、ディスク、またはほかの記憶デバイス)であり得、またはそれ(ら)に含まれ得る。
【0440】
本明細書に記載される動作は、1つまたは複数のコンピューター可読記憶デバイスに記憶された、またはほかのソースから受信されたデータについて「データ処理装置」により実施される動作として実施され得る。
【0441】
「データ処理装置」という用語は、例として、プログラム可能プロセッサー、コンピューター、システムオンチップ、またはこれらの複数もしくは組み合わせを含む、データを処理するためのあらゆる種類の装置、デバイス、およびマシンを含む。装置は、特殊用途ロジック回路、たとえば、FPGA(フィールド・プログラマブル・ゲートアレイ)またはASIC(特定用途向け集積回路)を含み得る。装置は、ハードウェアに加えて、当該コンピュータープログラムの実行環境をつくるコード、たとえば、プロセッサー・ファームウェア、プロトコル・スタック、データベース管理システム、オペレーティング・システム、クロスプラットフォーム・ランタイム環境、バーチャルマシン、またはこれらの1つもしくは複数の組み合わせを構成するコードも含み得る。装置および実行環境は、各種ウェブサービス、分散コンピューティングおよびグリッド・コンピューティングのインフラストラクチャーなどの、多種多様なコンピューティングモデルのインフラストラクチャーを実現することができる。
【0442】
コンピュータープログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェア・アプリケーション、スクリプト、またはコードとしても知られる)は、コンパイル型またはインタプリタ型言語、宣言型または手続き型言語を含め、任意の形態のプログラミング言語で書かれ得、かつ、任意の形態で、たとえば自立型プログラムとして、またはモジュール、構成要素、サブルーチン、オブジェクト、もしくはコンピューティング環境での使用に適したほかの単位として展開され得る。コンピュータープログラムは、必須ではないが、ファイルシステム内のファイルに対応し得る。プログラムは、ほかのプログラムまたはデータを収容したファイルの一部分(たとえば、マークアップ言語のドキュメントに保存された1つまたは複数のスクリプト)に、当該プログラム専用の単一のファイルに、または複数のコーディネートファイル(たとえば、1つまたは複数のモジュール、サブプログラム、またはコード部分を保存したファイル)に保存され得る。コンピュータープログラムは、1つのコンピューターで、または1つのサイトにある、もしくは複数のサイトに配置され通信ネットワークにより互いに接続している複数のコンピューターで、展開されて実行され得る。
【0443】
本明細書に記載される処理および論理フローは、入力データに対する演算および出力の生成より動作を実施する、1つまたは複数のコンピュータープログラムを実行する1つまたは複数のプログラム可能なプロセッサーにより実施され得る。処理および論理フローは、特殊用途ロジック回路、たとえば、上記のFPGAまたはASICにより実施される場合もあり、かつ装置がそのような回路として実装される場合もある。
【0444】
コンピュータープログラムの実行に適したプロセッサーとしては、例として、汎用および特殊用途用の両マイクロプロセッサー、ならびにあらゆる種類のデジタルコンピューターの任意の1つまたは複数のプロセッサーが挙げられる。一般に、プロセッサーは、リード・オンリー・メモリー、またはランダム・アクセス・メモリー、またはその両方から、命令およびデータを受け取る。コンピューターの必須要素は、命令に従い動作を実施するプロセッサー、および命令およびデータを記憶する1つまたは複数のメモリーデバイスである。一般に、コンピューターは、1つまたは複数のデータ記憶用大容量記憶デバイス、たとえば、磁気ディスク、磁気光ディスク、または光ディスクも含む、あるいはそれと機能的に結合されてデータを受信する、または送信する、または受送信する。しかし、コンピューターは、そのようなデバイスを有する必要はない。さらに、コンピューターは、別のデバイス、たとえばほんの一例として、移動電話、パーソナル・デジタル・アシスタント(PDA)、モバイル音声もしくは動画プレーヤー、ゲームコンソール、全地球測位システム(GPS)受信機、またはポータブル記憶デバイス(たとえば、ユニバーサル・シリアル・バス(USB)フラッシュドライブ)に内蔵される場合がある。コンピュータープログラム命令およびデータの記憶に適したデバイスとしては、あらゆる形態の不揮発性または非一時性のメモリー、媒体、およびメモリーデバイスが挙げられ、例として、半導体メモリーデバイス、たとえば、EPROM、EEPROM、およびフラッシュメモリーデバイス;磁気ディスク、たとえば、内部ハードディスクまたはリムーバブルディスク;磁気光ディスク;ならびにCD ROMおよびDVD-ROMディスクが挙げられる。プロセッサーおよびメモリーは、特殊用途ロジック回路が補足され得、またはそれに組み込まれ得る。
【0445】
本明細書に開示されるシステムおよび方法で使用される検査ストリップも開示される。
【0446】
一態様では、検査ストリップは、使い捨ての電気化学検査ストリップであって、少量の生物学的サンプルと接触させられる。該検査ストリップは検査メーターとともに、生物学的サンプル中のグルコース濃度に比例する電流を発生させ、該濃度は分析物またはウイルスの濃度と相関がある。
【0447】
検査ストリップは、挿入部分および露出部分を含む。検査ストリップの露出部分は、対象由来の生物学的サンプル(たとえば、唾液)を受容するようにされている。
【0448】
一態様では、検査ストリップは基体を含み、該基体は、少なくとも1つの検査部位、および2つまたはそれ以上の電極(たとえば、作用電極および基準電極)、ならびにこれらの電極とメーターとを接触させる手段を含む。
【0449】
基体は、任意の好適な基体、たとえばプラスチック、セラミック、金属、または高分子材料(たとえば、ヒドロゲル)であり得る。
【0450】
一態様では、基体は、ニトロセルロース(たとえば、膜またはマイクロタイターウェルの形態)、ポリ塩化ビニル(たとえば、シートまたはマイクロタイターウェル)、ポリスチレンラテックス(たとえば、ビーズまたはマイクロタイタープレート)、フッ化ポリビニリデン、ジアゾ化した紙、ナイロン膜、活性化したビーズ、または磁気応答性ビーズから選択される。
【0451】
一態様では、基体は、ニトロセルロース膜などのアニオン性ポリマーである。他の態様では、基体は、スルホン化テトラフルオロエチレン、ポリ(アクリル酸)、またはポリ(2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸)(polyAMPS)である。
【0452】
第1の結合剤は、検査ストリップに固定化されて検査部位を提供し得る。結合剤は、本明細書で扱うアプタマー、抗体、受容体リガンド、または分子刷込みポリマーであり得る。特定の態様では、第1の結合剤(たとえば、アプタマー)は、電極(たとえば、スクリーンプリント電極)に直接固定化される。
【0453】
別の態様では、第1の結合剤は、限定ではないが、検査ストリップにおいて、ニトロセルロースなどの膜に固定化され、かつ電極の上に挿入されて、検査部位を提供し得る。結合剤は、本明細書で扱うアプタマー、抗体、受容体リガンド、タンパク質、または分子刷込みポリマーであり得る。
【0454】
別の態様では、第1の結合剤は、限定ではないが、検査ストリップにおいて、ニトロセルロースなどの膜に固定化され、かつ2つの電極間に挿入されて、検査部位を提供し得る。結合剤は、本明細書で扱うアプタマー、抗体、受容体リガンド、タンパク質、または分子刷込みポリマーであり得る。
【0455】
(限定ではないが、グルコースオキシダーゼなどの)オキシダーゼと連結された第2の結合剤を加えると、第1の結合剤により捕捉されたウイルスまたは標的分析物と結合する。
【0456】
グルコースの選択的酸化により電流が発生するが、それは検査ストリップ内の予め被覆されている2つの試薬:(1)酵素、および(2)メディエーター分子により触媒される。酵素はグルコース分子と直接反応して過酸化水素を生成し、メディエーター分子は電子と反応してそれを作用電極に移送する。
【0457】
酵素は、たとえば、グルコースオキシダーゼ、PQQ-グルコースデヒドロゲナーゼ、NAD-グルコースデヒドロゲナーゼ、またはFAD-グルコースデヒドロゲナーゼであり得る。
【0458】
メディエーター分子は、たとえば、フェリシアン化物;ヘキサシアノ鉄酸塩III/ヘキサシアノ鉄酸塩II;1,10-フェナントロリンキノン;キノンイミン/フェニレンジアミン;またはオスミウムベースのメディエーターであり得る。
【0459】
2つの電極間に電圧が印加されると、自由電子が回路内を移動し得る。各酵素およびメディエーター分子は、必要に応じてこの移動を何度も繰り返し得る。回路内を移動する電荷の量は、システム内のグルコースレベルを表し、それはサンプル中の分析物の濃度を反映している。
【0460】
ある特定の態様では、グルコースオキシダーゼが酵素として用いられ、生じる電気化学反応が、以下の式I:
式I:グルコース + O2 D-グルコノ-1,5-ラクトン + H2O2
で示される。
【0461】
この酸化反応は、電流の流れを発生させる。この電流の振幅は、血中グルコースの濃度と直接関連がある。図3は、グルコースバイオセンサーシステムにおいて生じる事象のシーケンスの概略図である。GOxによるグルコース酸化により、D-グルコノ-δ-ラクトンが生じる。プルシアンブルー(PB)フィルムでのH2O2の還元が、作用電極から移動した電子により測定される。
【0462】
一態様では、検査ストリップにおいて利用される試薬は、貯蔵安定性がある。特定の態様では、検査ストリップとともに用いられる試薬は、検査ストリップの貯蔵寿命を伸ばすために凍結乾燥されている。
【0463】
検査ストリップは、典型的には、導電性および非導電性の構成素の層を含み、それらが互いに重なってセンサー構造をつくっている。
【0464】
一態様では、検査ストリップは、ベース基体;導電層;絶縁層、試薬層;接着層;標的分析物(たとえば、抗原)を捕捉する第1の結合剤(たとえば、アプタマー)が付着された親水性(たとえば、ニトロセルロース)膜;凍結乾燥された検出可能に標識された第2の結合剤(たとえば、Ab-GOx)およびグルコース;ならびに上層を含む。
【0465】
別の態様では、検査ストリップは、ベース基体;導電層;絶縁層;試薬層;接着層;および標的分析物(たとえば、抗原)を捕捉する第1の結合剤(たとえば、アプタマー)が付着された親水性(たとえば、ニトロセルロース)膜を含み、かつ凍結乾燥グルコースおよび/または標識された第2の結合剤(たとえば、Ab-GOx)が、標的分析物を含む生物学的サンプルに加えられる。
【0466】
ベース基体は、互いに積み重なって機能センサーを構成する複数の構成素のマトリックスとなる。このベース構成素は、誘電体特徴、不透水性、不透気性、および密封性などの望ましい特質を有する多様な材料で作られ得る。いくつかの材料としては、金属製および/またはセラミックおよび/または高分子基体等が挙げられる。
【0467】
導電層はベース基体に載置され、該導電層は、アッセイされる分析物またはその副産物(たとえば酸素および/または過酸化水素)と接触する、導電性材料を含む少なくとも1つの電極(たとえば、1つ、2つ、または3つの電極)を含む。1つまたは複数の電極は、1つまたは複数の作用電極、ならびに1つまたは複数の対電極、基準電極、および/または対/基準電極を含み得る。
【0468】
電極は、たとえば導電性炭素インクを用いてスクリーンプリントされた、スクリーンプリント電極であり得る。用いられる材料はさまざまであり得る。本明細書に記載されるグルコースセンサーシステムにとって便利な導電性インク組成物としては、限定ではないが、銀、炭素、またはブレンド導電性インクが挙げられる。作用電極のプリントに便利なインクの例としては、限定ではないが、炭素、白金、炭素/白金、カーボンナノチューブ、またはサンプル中の過酸化物の検出に適したほかの導電性材料が挙げられる。
【0469】
用いられる電極、および要求される感度は、一般に、使用され得る酵素ケミストリーを定める。たとえば、グルコースオキシダーゼと連結された第2の結合剤は、サンプル中の分析物を検出するのに過剰なグルコースを必要とする。
【0470】
「作用電極」は、分析物が、その電極で、レドックスメディエーターの仲介ありまたはなしで、電気酸化または電気還元される電極である。作用電極は、標的分析物もしくは分子またはその副産物の濃度の変化などの刺激への曝露に応じての電流の増加または減少を測定し得る。電極は、過酸化水素または酸素など分子の可変濃度の存在下で検出可能な信号を提供する。
【0471】
作用電極に加えて、導電層は、基準電極(RE)または組み合わされた基準・対電極(擬似基準電極または対/基準電極とも呼ばれる)も含み得る。
【0472】
一態様では、電極は、少なくとも約50マイクロモルのグルコース濃度の最低感度、および約10 nA/mm2未満のノイズレベルを提供する。
【0473】
一態様では、絶縁層は、ポリ(塩化ビニル)、ポリエチレン、ポリプロピレン、芳香族および脂肪族ポリウレテン(polyurethenes)、芳香族および脂肪族ポリウレタン、ポリ(ブチレンテレフタラート)、ポリブタジエン、シリコーンゴム、チオール-エンコポリマー、またはポリ(エチレン-co-酢酸ビニル)などの絶縁(たとえば、電気絶縁または不透水性)材料の薄膜であり得る。
【0474】
一態様では、試薬層は、電子の交換を容易にするためのメディエーターを含む。一態様では、試薬層は、結合剤;シリカ;フェリシアン化物;フェリシアン化物;1,10-フェナントロリンキノン;またはオスミウムベースのメディエーターを含む。
【0475】
一態様では、接着層は、ポリ(アクリル酸エチル)、ポリ(シアノアクリラート)、ポリ(アクリル酸ブチル)、ポリ(2-エチルヘキシルアクリラート)、またはウレタンアクリラートコポリマーなどのアクリルコポリマーであり得る。
【0476】
一態様では、親水性膜は、ニトロセルロース、スルホン化テトラフルオロエチレン、ポリ(アクリル酸)、またはポリ(2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸)(polyAMPS)などのアニオン性親水性コポリマーで構成され得る。膜は、ストレプトアビジン-NCおよび第1の結合剤(たとえば、ビオチン化アプタマー)で被覆され得、後者は該膜に付着して標的分析物または分子の捕捉剤となる。ストレプトアビジン-NCはニトロセルロースと結合するように操作されたストレプトアビジンである。
【0477】
ある特定の態様では、検査ストリップは、(A)ベース基体;(B)3電極を含む導電層;(C)検査されるサンプルが滴下される電極の部分のみ露出する絶縁層;(D)電子の交換を容易にするメディエーターを含む試薬層;(E)接着層;(F)親水性ニトロセルロース膜であって、近位膜は標的分析物(たとえば、抗原)を捕捉する第1の結合剤(たとえば、アプタマー)および凍結乾燥グルコースを含み、遠位端は紙シンク(13)である、膜;(G)凍結乾燥Ab-GOx;ならびに(H)上層を含む。たとえば、図5、ならびに同図のラベル(A)~(H)および(1)~(16)を参照されたい。
【0478】
ある特定の態様では、検査ストリップは、(A)ベース基体;(B)2電極を含む導電層;(C)検査されるサンプルが滴下される電極の部分のみ露出する絶縁層;(D)電子の交換を容易にするメディエーターを含む試薬層;(E)接着層;(F)親水性ニトロセルロース膜であって、近位膜は標的分析物(たとえば、抗原)を捕捉する第1の結合剤(たとえば、アプタマー)および凍結乾燥グルコースを含み、遠位端は紙シンク(13)である、膜;(G)凍結乾燥Ab-GOx;ならびに(H)上層を含む。
【0479】
この態様では、ベース基体はポリエステルであり、インク接着を向上させるためにアクリル被覆が塗布されている。電極マスクのCAD(コンピューター援用設計)モデルを用いて、マスクをベース基体にレーザー加工する。次に、電極が、導電性炭素インク(ERCON INC)、次いで絶縁層(ERCON INC, INSULAYER INK)を用いてスクリーンプリントされる。2つの作用電極はそれぞれ0.6 mm2の表面積を有し得、基準電極は1.2 mm2の表面積を有し得る。一態様では、試薬層はメディエーター層であり、結合剤、シリカ、およびフェリシアン化物からなる。この試薬層は、作用電極に2サイクルでスクリーンプリントされる。一態様では、その上の接着層はアクリルコポリマーであり、親水性膜はストレプトアビジン-NCを有するニトロセルロース膜であり、かつ抗原(たとえば、ウイルス抗原)を捕捉するビオチン化アプタマーが(たとえば、ストレプトアビジンに)結合している。一態様では、上層はPET(ポリエチレンテレフタラート)であり、ストリップ上のサンプルの動きを見るための小さな透明部分がある。全体的な寸法は、たとえばLIFESCANのリーダーなどのグルコメーターとの適合性が確保されるように、ほかの検査ストリップについて記載したのと同様であり、また検査ストリップは、ほかの商業用グルコメーターに適合できるように改変することもできる。
【0480】
一態様では、凍結乾燥生物学的試薬の添加およびアプタマー固定化の前に、ドロップキャストGOxを作用電極に直接ドロップキャストする。
【0481】
特定の態様では、検査ストリップは、非特異的な結合を減じるかまたは排除するために、任意の好適なブロック剤により予めブロックされる。被覆またはブロック材料の非限定例は、タンパク質、アクリルアミド、合成ポリマー、またはポリサッカライドである。一態様では、BSAがブロック剤として利用される。別の態様では、牛乳タンパク質、TWEEN、またはほかの界面活性剤がブロック剤として利用される。
【0482】
特定の態様では、システムは、低い信号ノイズ比を可能にする、たとえば、一時的な非グルコース関連信号ノイズを制限する。ベース層の組成、電極の堆積に用いる方法、電極の構成、電極の材料、用いる酵素ケミストリー、およびほかの設計要因がすべて、システムのノイズに関与する。
【0483】
一態様では、ストリップは、1年より長い、または2年より長い、または3年より長い貯蔵寿命を有する。
【0484】
いくつかの態様では、分析物の検出は、5℃~30℃で実施される。一態様では、分析物の検出は、17℃~25℃で実施される。一態様では、分析物の検出は、少なくとも5℃、少なくとも6℃、少なくとも7℃、少なくとも8℃、少なくとも9℃、少なくとも10℃、少なくとも11℃、少なくとも12℃、少なくとも13℃、少なくとも14℃、少なくとも15℃、少なくとも16℃、少なくとも17℃、少なくとも18℃、少なくとも19℃、少なくとも20℃、少なくとも21℃、少なくとも22℃、少なくとも23℃、少なくとも24℃、少なくとも25℃、少なくとも26℃、少なくとも27℃、少なくとも28℃、少なくとも29℃、または少なくとも30℃、もしくはそれ以上の温度で実施される。
【0485】
別の局面では、本明細書には、たとえば当技術分野で公知の任意の連結法(たとえば、UV架橋、または、一方のメンバーが検出核酸と連結され、第2のメンバーが検査ストリップと連結された親和性対(たとえば、ストレプトアビジンとビオチン)を用いる)を用いて検出核酸と連結された検査ストリップが記載される。検出核酸(detection nucleic)は、その3’末端またはその5’末端で検査ストリップと連結され得る。いずれかの局面のいくつかの態様では、検出核酸は、親水性ニトロセルロース膜(たとえば、図5の層F)と連結される。いずれかの局面のいくつかの態様では、検出核酸は、検査ストリップの近位膜(たとえば、図5の層F)と連結される。いずれかの局面のいくつかの態様では、配列特異的エンドヌクレアーゼ、ガイド核酸、および/またはコラテラル核酸は、検査ストリップ内にあるが、検査ストリップと必ずしも連結されてはいない(たとえば、図5の層G;たとえば、凍結乾燥試薬として)。
【0486】
本明細書では、本明細書に記載されるシステムを用いて、少なくとも1つの標的分析物、より具体的には少なくとも1つの標的分析物、たとえば、病原体またはその構成要素(たとえば、ウイルス抗原)の存在を検出する、かつ任意で経時的に観察する方法も開示される。
【0487】
一態様では、方法は、(i)対象由来の生物学的サンプルを準備する段階であって、該生物学的サンプルは血液ではない、段階;(ii)該生物学的サンプルを検査ストリップに添加する段階であって、該検査ストリップが、該生物学的サンプル中に少なくとも1つの標的分析物が存在する場合はそれとともに検出可能な複合体をつくることができる第1および第2の結合剤を含む、段階;(iii)該検査ストリップをグルコメーターに差し込む段階;(iv)該生物学的サンプルを該検査ストリップとともにインキュベートする段階;(v)検出可能な複合体があればそのレベルを、存在する過剰なグルコースのグルコース酸化から生成する過酸化水素の形態で検出する段階;ならびに(vi)検出可能な複合体が生成された場合はそのレベルと、該少なくとも1つの生物学的サンプル中に標的分析物があればその量とを相関させる段階であって、それによって診断的評価を提供する、段階、を含む。
【0488】
一態様では、方法は、(i)対象から生物学的サンプルを収集する段階であって、該生物学的サンプルは、尿、汗、眼房水を含めた眼性液、血液、糞便、皮脂、呼吸器由来の飛沫、精液、膣粘液、耳垢、表皮細胞、鼻腔サンプル、脳脊髄液、胸水、または鼻咽頭検体である、段階;(ii)該生物学的サンプルを検査ストリップに添加する段階であって、該検査ストリップが、該生物学的サンプル中に少なくとも1つの標的分析物が存在する場合はそれとともに検出可能な複合体をつくることができる第1および第2の結合剤を含む、段階;(iii)該検査ストリップをグルコメーターに差し込む段階;(iv)該生物学的サンプルを該検査ストリップとともにインキュベートする段階;(v)検出可能な複合体があればそのレベルを、存在する過剰なグルコースのグルコース酸化から生成する過酸化水素の形態で検出する段階;ならびに(vi)検出可能な複合体が生成された場合はそのレベルと、該少なくとも1つの生物学的サンプル中に標的分析物があればその量とを相関させる段階であって、それによって診断的評価を提供する、段階、を含む。
【0489】
一態様では、方法は、(i)生物学的サンプルを1倍~1,000,000,000倍希釈しかつ第2の結合剤を収容するチューブに、対象から生物学的サンプルを収集する段階であって、該生物学的サンプルが血液ではない、段階;(ii)該生物学的サンプルを検査ストリップに添加する段階であって、該検査ストリップが、該生物学的サンプル中に少なくとも1つの標的分析物が存在する場合はそれとともに検出可能な複合体をつくることができる第1の結合剤を含む、段階;(iii)該検査ストリップをグルコメーターに差し込む段階;(iv)該生物学的サンプルを該検査ストリップとともにインキュベートする段階;(v)検出可能な複合体があればそのレベルを、存在する過剰なグルコースのグルコース酸化から生成する過酸化水素の形態で検出する段階;ならびに(vi)検出可能な複合体が生成された場合はそのレベルと、該少なくとも1つの生物学的サンプル中に標的分析物があればその量とを相関させる段階であって、それによって診断的評価を提供する、段階、を含む。
【0490】
一態様では、方法は、(i)生物学的サンプルを1倍~1,000,000,000倍希釈しかつ第2の結合剤を収容するチューブに、対象から生物学的サンプルを収集する段階であって、該生物学的サンプルが、尿、汗、眼房水を含めた眼性液、血液、糞便、皮脂、呼吸器由来の飛沫、精液、膣粘液、耳垢、表皮細胞、または鼻咽頭検体である、段階;(ii)該生物学的サンプルを検査ストリップに添加する段階であって、該検査ストリップが、該生物学的サンプル中に少なくとも1つの標的分析物が存在する場合はそれとともに検出可能な複合体をつくることができる第1の結合剤を含む、段階;(iii)該検査ストリップをグルコメーターに差し込む段階;(iv)該生物学的サンプルを該検査ストリップとともにインキュベートする段階;(v)検出可能な複合体があればそのレベルを、存在する過剰なグルコースのグルコース酸化から生成する過酸化水素の形態で検出する段階;ならびに(vi)検出可能な複合体が生成された場合はそのレベルと、該少なくとも1つの生物学的サンプル中に標的分析物があればその量とを相関させる段階であって、それによって診断的評価を提供する、段階、を含む。
【0491】
一態様では、生物学的サンプルは、たとえば、サンプル収集チューブ内の希釈液により、少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも102倍、少なくとも103倍、少なくとも104倍、少なくとも105倍、少なくとも106倍、少なくとも107倍、少なくとも108倍、または少なくとも108倍、もしくはそれ以上希釈される。一態様では、生物学的サンプル(たとえば、唾液)は、たとえば、サンプル収集チューブ内の希釈液により、少なくとも10倍希釈される。一態様では、希釈液はDMEM、PBS、PBST、もしくは別のバッファー、または細胞培地である。希釈は、生物学的サンプル(たとえば、唾液)中に存在する種々のタンパク質からの非特異的相互作用を減じるために実施され得る。
【0492】
いくつかの態様では、方法は、たとえば、過剰な結合剤(たとえば、第1および第2の結合剤;たとえば、アプタマーと連結されたグルコースオキシダーゼ、または抗体と連結されたグルコースオキシダーゼ)などの、任意の過剰な試薬を除去するための、洗浄工程をさらに含む。いくつかの態様では、洗浄工程は、検査ストリップをグルコメーターに差し込む前に実施される。いくつかの態様では、洗浄工程は、本明細書に記載される希釈剤(たとえば、DMEM、PBS、PBST、もしくは別のバッファー、もしくは細胞培地)またはブロック剤(たとえば、BSA、牛乳タンパク質、TWEEN、もしくはほかの界面活性剤)を用いて実施され得る。いくつかの態様では、方法は、洗浄工程を含まない。
【0493】
一態様では、方法は、異なる時に取られた同一ユーザーの複数の検査結果を得て、かつこれらを比較して、疾患または状態(たとえば、COVID-19)の可能な進展を観察または予測する段階を含む。ある特定の態様では、方法は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または少なくとも5つ、もしくはそれ以上の検査結果を得る段階を含む。
【0494】
特定の態様では、方法の1つまたは複数の結果は、該1つまたは複数の結果が閾値レベルまたはカットポイントを上回るかどうかを決定するために、継続的または定期的に遠隔の主体に通信され得る。
【0495】
特定の態様では、結果は、予め決定された基準レベルと比較され得る。予め決定されたレベルは、一般集団から、または選別対象集団から得られ得る。たとえば、選別集団は、疾患たとえば感染症の存在を示す徴候または症状を何ら有したことのない人などの、健康と思われる患者で構成され得る。「予め決定された基準レベル」は、たとえば、1人または複数人の対照としての(たとえば、感染症に罹患していない、またはそのような疾患に罹患しやすいとは知られていない)対象から得られた対応する生物学的サンプル中の標的分析物の発現レベルを決定することにより、決定され得る。そのような予め決定された基準レベルが用いられる場合、予め決定された基準レベルと比較して、生物学的サンプル(すなわち、対象から得られた検査サンプル)において決定されたより高いまたは増加したレベルは、たとえばその患者が疾患(たとえばCOVID-19感染症)を発症するリスクがある、または該疾患を有することを示す。
【0496】
いくつかの態様では、方法は、治療の指示を推奨する、かつ/または治療を投与する工程をさらに含み得る。一態様では、方法は、対象が閾値またはカットオフレベルを上回る標的分析物のレベルを有すると特定する段階と、したがって対象がたとえば感染症または病態の予防および/または治療の候補であると決定する段階とを含む。「決定する」段階は、検出すること、および定量化することを含み、「検出すること」は、生物学的サンプル中に標的分析物が存在するかしないかを決定することを意味し、「定量化すること」は、生物学的サンプル中に存在する標的分析物の量を決定することを意味する。
【0497】
本発明の方法は、治療における使用を有し得、たとえばさまざま病態の検出に使用され得、または対象の疾患段階もしくは治療応答の観察に使用され得る。
【0498】
特定の態様では、方法は、統計学的方法を用いて、疾患もしくは疾患の進行をもたらす標的分析物の検出の見込みを予測する、かつ/または疾患の予後予測(すなわち、疾患の経過の予測)を可能にする段階をさらに含み得る。
【0499】
特定の態様では、方法は、1群の患者集団で実行され得、たとえば、それによって該集団の治療へのアプローチを層化することができ、または公衆衛生もしくはほかの観察の目的を満たす。
【0500】
一態様では、本明細書に開示される方法および/またはシステムを用いることを含む、病態に苦しむ対象における治療レジメンの効率を観察する方法が開示され、ここで前記標的分子は該病態と関連づけられる抗原であり、前記検出可能な部分の量は病態のレベルを示し、したがって対象における治療レジメンの効率を示す。
【0501】
特定の態様では、方法は、(たとえば、何日間、何週間かの)一定期間にわたり1つまたは複数の治療剤(たとえば、抗ウイルス剤)の効果を観察することを含み、その治療剤が一定期間にわたり十分に有効でなければ、ユーザーが代替治療アプローチを探すことを可能にする。
【0502】
一態様では、治療レジメンが(たとえば、何日間かの)所定の期間内にウイルス数の低下を生じない場合、ユーザーは、当該治療レジメンを中止して代替治療レジメンを選ぶことができ、または特定の態様では、当該治療レジメンを第2の治療レジメンで補うことができる。一態様では、システムは、異なる時の同一ユーザーの標的分析物の量について、2つもしくはそれ以上の結果、3つもしくはそれ以上の結果、または5つもしくはそれ以上の結果を得ることを可能にして、経時的な分析物レベルの傾向を観察することを可能にする。
【0503】
治療剤は、さまざまであり得る。一態様では、治療剤は、小分子または生物学的抗ウイルス剤などの抗ウイルス剤である。特定の態様では、治療剤は、抗SARS-CoV-2剤または抗インフルエンザ剤である。
【0504】
別の局面では、本明細書には、本明細書に記載される核酸検出システムを用いて標的核酸を検出する方法が記載され、該方法は、(i)対象から生物学的サンプルを収集し、かつ任意で、該生物学的サンプルから核酸を抽出する段階;(ii)該生物学的サンプルを、配列特異的エンドヌクレアーゼ、ガイド核酸、およびコラテラル核酸と接触させる段階であって、該標的核酸が存在する場合は、そのように接触させる結果として該コラテラル核酸が切断される、段階;(iii)該生物学的サンプルをグルコースの存在下で検査ストリップに添加する段階であって、該検査ストリップが、該切断されたコラテラル核酸が存在する場合はそれとともに検出可能な複合体をつくることができる検出核酸を含む、段階;(iv)該生物学的サンプルを該検査ストリップとともにインキュベートする段階、またはインキュベートしない段階;(v)該検査ストリップを検出デバイスに差し込む段階;(vi)検出可能な複合体があればそのレベルを、グルコースとグルコースオキシダーゼとの化学反応を通して検出する段階;ならびに(vii)検出可能な複合体が生成された場合はそのレベルと、該少なくとも1つの生物学的サンプル中の標的分析物の量とを相関させる段階であって、それによって診断的評価を提供する、段階、を含む。
【0505】
いずれかの局面のいくつかの態様では、生物学的サンプルは、唾液である。いずれかの局面のいくつかの態様では、生物学的サンプルは、血液ではない。いずれかの局面のいくつかの態様では、検出デバイスは、グルコースメーターである。
【0506】
いずれかの局面のいくつかの態様では、方法は、(viii)臨床医または訓練された医療提供者によるその後の検討のために、該診断的評価または結果を電子デバイス、データベース、またはクラウドサーバーに送信する段階;ならびに(ix)該診断的評価の方法を実施した個人に、該診断的評価を提供する段階、をさらに含む。いずれかの局面のいくつかの態様では、該個人は、該対象である。いずれかの局面のいくつかの態様では、方法は、(viii)該診断的評価に応じて該対象に1つまたは複数の治療レジメンを推奨する、指示する、および/または投与する段階、をさらに含む。
【0507】
本明細書に開示されるシステムおよび検査ストリップを製造する方法も開示される。
【0508】
検査ストリップは、任意の好適な方法を用いて製造され得る。一態様では、検査ストリップは、ロールツーロール方式、スクリーンプリント法、ドロップキャスト法、またはそれらの組み合わせを用いて製造される。例示的な製造の方法が実施例のセクションに提供される。
【0509】
本明細書に開示される検査ストリップ組成物は、ほかの成分もしくは試薬と組み合わせてもよく、あるいはキットまたはほかの市販もしくは流通用の小売り商品の構成要素として提供されてもよい。キットは、該キットの投与および/または使用に関する指示または情報資料も含み得る。キットは、本明細書に記載されるリーダーまたは検出デバイスも含み得る。
【0510】
一態様では、キットは、グルコースメーター、少なくとも1つの本明細書に記載される検査ストリップ、および輸送中に該少なくとも1つの検査ストリップを保管するための容器またはパウチを含む。いくつかの態様では、キットは、少なくとも1つの標的分析物とともに検出可能な複合体をつくることができる第1および第2の結合剤(たとえば、1つのアプタマーおよび1つの抗体、または2つの抗体、または2つのアプタマー)を含む検査ストリップを含む。いくつかの態様では、キットは、検出核酸を含む(たとえば、検査ストリップと連結されている)検査ストリップを含み、キットの検査ストリップは、配列特異的エンドヌクレアーゼ、ガイド核酸、および/またはコラテラル核酸をさらに含み得、あるいは配列特異的エンドヌクレアーゼ、ガイド核酸、および/またはコラテラル核酸は、キットにおいて検査ストリップとは別に提供され得る。
【0511】
いくつかの態様では、キットは有効量のグルコースを含む。いくつかの態様では、キットは有効量の配列特異的エンドヌクレアーゼ、ガイド核酸、およびコラテラル核酸を含み、検査ストリップが検出核酸を含む。
【0512】
いくつかの態様では、本明細書に記載される構成要素は、単独で、またはキットとして任意の組み合わせで提供され得る。そのようなキットは、任意で、本明細書に記載される検出可能な複合体の検出を可能にする1つまたは複数の剤を含み得る。
【0513】
いくつかの態様では、キット内の組成物は、いくつかの態様ではキットのその他の構成要素を実質的に含まない、水密または気密容器内に入って提供され得る。たとえば、検査ストリップは、2つ以上の容器に入って供給され得、たとえば、予め決定された数の、たとえば1、2、3、またはそれ以上の検出反応に十分な試薬を有する容器に入って供給され得る。本明細書に記載される1つまたは複数の構成要素は、任意の形態で、たとえば、液体、乾燥、または凍結乾燥の形態で提供され得る。本明細書に記載される構成要素は、実質的に純粋かつ/または無菌であるのが好ましい。本明細書に記載される構成要素が溶液中に提供される場合、溶液は好ましくは水溶液であり、無菌水溶液が好ましい。
【0514】
情報資料は、本明細書に記載される方法に関する説明、指示、マーケティング、またはその他の資料であり得る。キットの情報資料の形態は限定されない。一態様では、情報資料は、検査ストリップの製造、濃度、有効期限、バッチまたは製造場所についての情報等を含み得る。一態様では、情報資料は、キットの構成要素を使用する、または投与する方法に関する。
【0515】
キットは、標的分析物の検出のための構成要素を含み得る。それに加えて、キットは、標的分析物である1つまたは複数のアプタマーまたは抗体を含み得る。アプタマーまたは抗体は、たとえば凍結乾燥されて乾燥調製物中に、または溶液中に供給され得る。抗体またはほかの検出試薬は、検出に用いられる標識、たとえば、放射、蛍光(たとえば、GFP)、または発色標識と連結され得る。
【0516】
キットは、典型的には、そのさまざまな要素が1つのパッケージ、たとえば、繊維ベースの、たとえば段ボールの箱、または高分子の、たとえばスタイロフォームの箱に含まれた状態で提供される。この筐体は、内部と外部との温度差を維持するように構成され得、たとえば、試薬を予め選択された期間にわたり予め選択された温度に保つ絶縁特性を提供することができる。
【0517】
文献、付与された特許、特許出願公報、および同時係属中の特許出願を含め、本願で引用したすべての特許およびほかの刊行物は、そのような刊行物に記載された、本明細書に記載される技術と関連して用いられ得るたとえば各種方法を記載し開示するという目的で、参照により本明細書に明示的に組み入れられる。これらの刊行物は単に、その開示が本願の出願日よりも早いために提供される。だからといって、先行発明またはほかの何らかの理由でそのような開示に先行する資格がないと本発明者らが認める、という解釈は一切すべきでない。これらの文書の内容についての日付または表現についてのすべての記述は、本出願人らが入手できた情報に基づいており、これらの文書の日付または内容の正確さについて何ら承認したことにはならない。
【0518】
本開示の態様の記載は、排他的であること、または本開示を開示の形態そのものに限定することは、意図しない。本開示の具体的な態様および例が、例示目的で本明細書に記載されているが、当業者であればわかるように、さまざまな同等の変更が本開示の範囲内で可能である。たとえば、方法の工程または機能が所与の順に提示されているが、代替態様では機能を異なる順に実施する場合もあり、または機能を実質的に同時に実施する場合もある。本明細書に提供される本開示の教示は、適宜ほかの手順または方法に適用され得る。本明細書に記載されるさまざまな態様を組み合わせて、さらなる態様を提供することができる。必要があれば、本開示の諸局面を、上記の参照物または出願の組成物、機能、および概念を使用するように変更して、本開示のさらなる態様を提供することができる。さらには、生物学的機能同等性により、生物学的または化学的活性に影響を及ぼすことなく、タンパク質構造の種類または量にいくつかの変更が加えられ得る。これらの、およびほかの変更は、詳細な説明に鑑み本開示に加えられ得る。そのような変更はすべて、添付の請求項の範囲に含まれるものとする。
【0519】
上記のいずれかの態様の特定の要素をほかの態様の要素と組み合わせてもよいし、置き換えてもよい。さらには、本開示の特定の態様に関する利点をこれらの態様の文脈において記載してきたし、ほかの態様もそのような利点を示し得るが、本開示の範囲に含まれるためにすべての態様が必ずしもそのような利点を示す必要はない。
【0520】
本明細書に記載される技術は、以下の実施例によりさらに例示されるが、それらをさらなる限定と解釈してはならない。
【0521】
本明細書に記載される技術のいくつかの態様は、以下の付番段落のいずれかに従い定義され得る。
1. 生物学的サンプル中の少なくとも1つの標的分析物を検出するためのシステムであって、
(i)前記少なくとも1つの標的分析物とともに検出可能な複合体をつくることができる第1および第2の結合剤を含む、2結合剤アッセイ;ならびに
(ii)前記検出可能な複合体を検出するための検出デバイス
を含み、
前記検出デバイスは、オキシダーゼベースのアンペロメトリックセンサーであり、前記生物学的サンプルは、汗、唾液、血清、粘液、または血液中に存在している、
システム。
2. 前記アンペロメトリックセンサーは、オキシダーゼベースのアンペロメトリックセンサーである、段落1のシステム。
3. 前記アンペロメトリックセンサーは、ヒドロゲナーゼまたはデヒドロゲナーゼベースのアンペロメトリックである、段落2のシステム。
4. 前記生物学的サンプルは、汗、唾液、血清、粘液、または血液である、先行段落のいずれかのシステム。
5. 前記生物学的サンプルは、唾液である、先行段落のいずれかのシステム。
6. 前記検出デバイスは、グルコースメーターである、先行段落のいずれかのシステム。
7. 前記グルコースメーターは、検査ストリップ上の生物学的サンプル中のグルコースに関するセンサー出力を有するグルコースセンサーを含む、段落6のシステム。
8. 前記生物学的サンプルは、限定ではないがグルコースなどの糖と混合される、先行段落のいずれかのシステム。
9. 前記生物学的サンプルは、限定ではないがグルコースなどの糖と、約0.01 mM~約1 Mの濃度で混合される、段落8のシステム。
10. 前記第1および第2の結合剤は、アプタマー、抗体、タンパク質、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される、先行段落のいずれかのシステム。
11. 前記第1の結合剤がアプタマーであり、かつ前記第2の結合剤が抗体であり、前記抗体はグルコースオキシダーゼと連結されている、先行段落のいずれかのシステム。
12. 前記第1および第2の結合剤は、前記標的分析物上の異なる部位と結合する、先行段落のいずれかのシステム。
13. 前記第1および第2の結合剤は、前記標的分析物に対し、約1:1000~約1000:1のKdを有する、段落12のシステム。
14. 前記第1の結合剤の結合親和性は、前記第2の結合剤の結合親和性よりも弱い、段落12または13のシステム。
15. 前記標的分析物は、全ウイルスまたはその構成要素である、先行段落のいずれかのシステム。
16. 前記ウイルスは、ベータコロナウイルス、インフルエンザウイルス、HIVウイルス、または肝炎ウイルスである、段落15のシステム。
17. 前記標的コロナウイルス分析物は、SARS-CoV-2、またはその構成要素である、段落16のシステム。
18. 前記標的分析物は、スパイクタンパク質、膜タンパク質、ヘマグルチニンタンパク質、またはエンベロープタンパク質からなる群より選択されるSARS-CoV-2の構成要素である、段落17のシステム。
19. 前記標的分析物は、IgG、IgM、およびIgAからなる群より選択される、段落1~14のいずれかのシステム。
20. 生物学的サンプル中の少なくとも1つのウイルスを検出するためのシステムであって、
(i)前記少なくとも1つのウイルスとともに検出可能な複合体をつくることができる第1および第2の結合剤を含む、2結合剤アッセイ;ならびに
(ii)前記検出可能な複合体を検出するための検出デバイス
を含み、
前記検出デバイスはグルコースメーターである、システム。
21. 前記グルコースメーターは、検査ストリップ上の生物学的サンプル中のグルコースに関するセンサー出力を有するグルコースセンサーを含む、段落20のシステム。
22. 前記生物学的サンプルは、限定ではないがグルコースなどの糖と混合される、段落20のシステム。
23. 前記生物学的サンプルは、限定ではないがグルコースなどの糖と、約0.01 mM~約1 Mの濃度で混合される、段落22のシステム。
24. 前記第1および第2の結合剤は、アプタマー、抗体、タンパク質、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される、段落20~23のいずれかのシステム。
25. 前記第1の結合剤がアプタマーであり、かつ前記第2の結合剤が抗体であり、前記抗体はグルコースオキシダーゼと連結されている、段落20~24のいずれかのシステム。
26. 前記第1および第2の結合剤は、前記標的分析物上の異なる部位と結合する、段落20~25のいずれかのシステム。
27. 前記第1および第2の結合剤は、前記標的分析物に対し、約1:1000~約1000:1のKdを有する、段落26のシステム。
28. 前記第1の結合剤の結合親和性は、前記第2の結合剤の結合親和性よりも弱い、段落26または27のシステム。
29. 前記標的分析物は、全ウイルスまたはその構成要素である、段落20~28のいずれかのシステム。
30. 前記ウイルスは、ベータコロナウイルスである、段落29のシステム。
31. 前記標的分析物は、SARS-CoV-2またはその構成要素である、段落30のシステム。
32. 前記標的分析物は、スパイクタンパク質、膜タンパク質、ヘマグルチニンタンパク質、またはエンベロープタンパク質からなる群より選択されるSARS-CoV-2の構成要素である、段落31のシステム。
33. 前記標的分析物は、IgG、IgM、およびIgAからなる群より選択される、段落20~28のいずれかのシステム。
34. 診断的評価のための方法であって、
(i)対象から生物学的サンプルを収集する段階であって、前記生物学的サンプルは血液ではない、段階;
(ii)前記生物学的サンプルをグルコースの存在下で検査ストリップに添加する段階であって、前記検査ストリップが、前記生物学的サンプル中に少なくとも1つの標的分析物が存在する場合はそれとともに検出可能な複合体をつくることができる第1および第2の結合剤を含む、段階;
(iii)前記生物学的サンプルを前記検査ストリップとともにインキュベートする段階、またはインキュベートしない段階;
(iv)前記検査ストリップを検出デバイスに差し込む段階;
(v)検出可能な複合体があればそのレベルを、グルコースとグルコースオキシダーゼとの化学反応を通して検出する段階;ならびに
(vi)検出可能な複合体が生成された場合はそのレベルと、前記少なくとも1つの生物学的サンプル中に標的分析物があればその量とを相関させる段階であって、それによって診断的評価を提供する、段階
を含む、方法。
35. 診断的評価のための方法であって、
(i)対象から生物学的サンプルを収集する段階であって、前記生物学的サンプルは、尿、汗、眼房水を含めた眼性液、血液、糞便、皮脂、呼吸器由来の飛沫、精液、膣粘液、耳垢、表皮細胞、または鼻咽頭検体に由来する、段階;
(ii)前記収集したサンプルを第2の結合剤の存在下で水性の溶液/混合物中1倍~100倍希釈する段階;
(iii)前記生物学的サンプルおよび第2の結合剤を検査ストリップに添加する段階であって、前記検査ストリップが、前記生物学的サンプル中に少なくとも1つの標的分析物が存在する場合はそれとともに検出可能な複合体をつくることができる第1の結合剤を含む、段階;
(iv)前記生物学的サンプルを前記検査ストリップとともにインキュベートする段階、またはインキュベートしない段階;
(v)前記検査ストリップを検出デバイスに差し込む段階;
(vi)検出可能な複合体があればそのレベルを、グルコースとグルコースオキシダーゼとの化学反応を通して検出する段階;ならびに
(vii)検出可能な複合体が生成された場合はそのレベルと、前記少なくとも1つの生物学的サンプル中に標的分析物があればその量とを相関させる段階であって、それによって診断的評価を提供する、段階
を含む、方法。
36. 前記生物学的サンプルは、唾液である、段落34および35の方法。
37. 前記検出デバイスは、グルコースメーターである、段落34および35の方法。
38. (viii)臨床医または訓練された医療提供者によるその後の検討のために、前記診断的評価または結果を電子デバイス、データベース、またはクラウドサーバーに送信する段階;および
(ix)前記診断的評価の方法を実施した個人に、前記診断的評価を提供する段階
をさらに含む、段落34および35の方法。
39. 前記個人は、前記対象である、段落38の方法。
40. (vi、viii)前記診断的評価に応じて前記対象に1つまたは複数の治療レジメンを推奨する、指示する、および/または投与する段階
をさらに含む、段落34~37のいずれかの方法。
41. 診断的評価のための方法であって、
(i)対象から生物学的サンプルを収集する段階であって、前記生物学的サンプルは、尿、汗、眼房水を含めた眼性液、血液、糞便、皮脂、呼吸器由来の飛沫、精液、膣粘液、耳垢、表皮細胞、または鼻咽頭検体に由来する、段階;
(ii)前記生物学的サンプルを検査ストリップに添加する段階であって、前記検査ストリップが、前記生物学的サンプル中に少なくとも1つの標的分析物が存在する場合はそれとともに検出可能な複合体をつくることができる第1および第2の結合剤を含む、段階;
(iii)前記生物学的サンプルを前記検査ストリップとともにインキュベートする段階、またはインキュベートしない段階;
(iv)前記検査ストリップをグルコメーターなどの検出デバイスに差し込む段階;
(v)検出可能な複合体があればそのレベルを、グルコースとグルコースオキシダーゼとの化学反応を通して検出する段階;ならびに
(vi)検出可能な複合体が生成された場合はそのレベルと、前記少なくとも1つの生物学的サンプル中の標的分析物の量とを相関させる段階であって、それによって診断的評価を提供する、段階
を含む、方法。
42. 診断的評価のための方法であって、
(i)対象から生物学的サンプルを収集する段階であって、前記生物学的サンプルは、尿、汗、眼房水を含めた眼性液、血液、糞便、皮脂、呼吸器由来の飛沫、精液、膣粘液、耳垢、表皮細胞、または鼻咽頭検体に由来する、段階;
(ii)前記収集したサンプルを第2の結合剤の存在下で水性の溶液/混合物中1倍~100倍希釈する段階;
(iii)前記生物学的サンプルおよび第2の結合剤を検査ストリップに添加する段階であって、前記検査ストリップが、前記生物学的サンプル中に少なくとも1つの標的分析物が存在する場合はそれとともに検出可能な複合体をつくることができる第1の結合剤を含む、段階;
(iv)前記生物学的サンプルを前記検査ストリップとともにインキュベートする段階、またはインキュベートしない段階;
(v)前記検査ストリップをグルコメーターなどの検出デバイスに差し込む段階;
(vi)検出可能な複合体があればそのレベルを、グルコースとグルコースオキシダーゼとの化学反応を通して検出する段階;ならびに
(vii)検出可能な複合体が生成された場合はそのレベルと、前記少なくとも1つの生物学的サンプル中の標的分析物の量とを相関させる段階であって、それによって診断的評価を提供する、段階
を含む、方法。
43. (viii)前記診断的評価に応じて1つまたは複数の治療レジメンを推奨する、指示する、および/または投与する段階
をさらに含む、段落41および42の方法。
44. 診断的評価のための方法であって、
(i)対象から生物学的サンプルを収集する段階であって、前記生物学的サンプルは、尿、汗、眼房水を含めた眼性液、血液、糞便、皮脂、呼吸器由来の飛沫、精液、膣粘液、耳垢、表皮細胞、または鼻咽頭検体に由来する、段階;
(ii)前記生物学的サンプルを検査ストリップに添加する段階であって、前記検査ストリップが、前記生物学的サンプル中に少なくとも1つの標的分析物が存在する場合はそれとともに検出可能な複合体をつくることができる第1および第2の結合剤を含む、段階;
(iii)前記生物学的サンプルを前記検査ストリップとともにインキュベートする段階;
(iv)前記検査ストリップをグルコメーターなどの検出デバイスに差し込む段階;
(v)検出可能な複合体があればそのレベルを、グルコースとグルコースオキシダーゼとの化学反応を通して検出する段階;
(vi)検出可能な複合体が生成された場合はそのレベルと、前記少なくとも1つの生物学的サンプル中に標的分析物があればその量とを相関させる段階であって、それによって診断的評価を提供する、段階;
(vii)臨床医または訓練された医療提供者によるその後の検討のために、前記診断的評価または結果を電子デバイス、データベース、またはクラウドサーバーに送信する段階;ならびに
(viii)前記診断的評価の方法を実施した個人への、前記診断的評価またはアウトカムの送信
を含む、方法。
45. 診断的評価のための方法であって、
(i)対象から生物学的サンプルを収集する段階であって、前記生物学的サンプルは、尿、汗、眼房水を含めた眼性液、血液、糞便、皮脂、呼吸器由来の飛沫、精液、膣粘液、耳垢、表皮細胞、または鼻咽頭検体に由来する、段階;
(ii)前記収集したサンプルを第2の結合剤の存在下で水性の溶液/混合物中1倍~100倍希釈する段階;
(iii)前記生物学的サンプルを検査ストリップに添加する段階であって、前記検査ストリップが、前記生物学的サンプル中に少なくとも1つの標的分析物が存在する場合はそれとともに検出可能な複合体をつくることができる第1の結合剤を含む、段階;
(iv)前記生物学的サンプルを前記検査ストリップとともにインキュベートする段階;
(v)前記検査ストリップをグルコメーターなどの検出デバイスに差し込む段階;
(vi)検出可能な複合体があればそのレベルを、グルコースとグルコースオキシダーゼとの化学反応を通して検出する段階;
(vii)検出可能な複合体が生成された場合はそのレベルと、前記少なくとも1つの生物学的サンプル中に標的分析物があればその量とを相関させる段階であって、それによって診断的評価を提供する、段階;
(viii)臨床医または訓練された医療提供者によるその後の検討のために、前記診断的評価または結果を電子デバイス、データベース、またはクラウドサーバーに送信する段階;ならびに
(ix)前記診断的評価の方法を実施した個人への、前記診断的評価またはアウトカムの送信
を含む、方法。
46. 前記個人は、前記対象である、段落44および45の方法。
47. (ix、x)前記診断的評価に応じて前記対象に1つまたは複数の治療レジメンを推奨する、指示する、および/または投与する段階
をさらに含む、段落44および45の方法。
48. 1つまたは複数の異なる標的分析物が、同時にまたは連続的に評価される、段落1~33もしくは76~98のいずれかのシステム、または段落34~47もしくは56~75もしくは99~104のいずれかの方法。
49. 段落1~33のいずれかのシステムまたは段落34~47もしくは56~75のいずれかの方法で使用される、検査ストリップであって、
(i)基体、第1および第2の結合剤の少なくとも1つ、ならびに2つもしくはそれ以上の電極;
(ii)基体、第1および第2の結合剤両方、ならびに2つもしくはそれ以上の電極;
(iii)第1および第2の結合剤の少なくとも1つ、ならびに2つもしくはそれ以上の電極;または
(iv)第1および第2の結合剤両方、ならびに2つもしくはそれ以上の電極
の少なくとも1つを含む、検査ストリップ。
50. (i)炭素、鉄、パラジウム、白金、または金でできた1つまたは複数の平面または共面電極;
(ii)メディエーターとしてのフェロシアン化第一鉄塩などの鉄塩で被覆された電極;
(iii)メディエーターとしてのプルシアンブルーで被覆された電極;
(iv)電解質溶液と接面する電極が(半)導体固体であるn電極セットアップ;
(v)前記電極セットアップが、作用電極、基準電極、および対または補助電極を含む;
(vi)電流リードとセンスリードとが接続されており、作用および作用センスが作用電極と接続されており、かつ基準および対が第2の補助、対、または擬似/擬基準電極と接続されている、2電極セットアップ;
(vii)基準リードが、対から分離されており、かつ作用および作用センスリードの両方が取りつけられている作用電極の至近点を測定するように大抵配置される第3の電極と接続されている、3電極セットアップ;
(viii)前記基準リードに加えて、作用センスリードが作用電極から切り離されている、4電極セットアップ;ならびに/あるいは
(ix)電気化学セル全体の電圧低下が正味ゼロとなるように、ストリップ内で作用電極リードと対電極リードとが共に短絡される、無抵抗電流計
の少なくとも1つを含む、検査ストリップ。
51. 前記第1の結合剤は、多孔質ポリマー、金属、またはセラミック膜に固定化され、かつ前記膜は電極の上または間に配置される、段落49または50の検査ストリップ。
52. 前記膜はニトロセルロースである、段落51の検査ストリップ。
53. 段落49、50、51、または52のいずれかの検査ストリップを含む、キット。
54. 前記検査ストリップの使用のための説明を含む、段落53のキット。
55. グルコメーターまたはほかの電気化学的検出デバイスをさらに含む、段落53のキット。
56. (i)対象由来の生物学的サンプルを準備する段階、
(ii)前記生物学的サンプル中の標的分析物の存在を、上記段落のシステムを使って検出する段階であって、前記標的分析物は、SARS-CoV-2ウイルスまたはその構成要素である、段階;および
(iii)任意で、前記対象を治療剤で治療する段階
を含む、方法。
57. 前記生物学的サンプルは、唾液である、段落56の方法。
58. 前記標的分析物は、SARS-CoV-2ウイルスである、段落56~57のいずれかの方法。
59. 前記標的分析物は、SARS-CoV-2ウイルスの構成要素である、段落56~57のいずれかの方法。
60. 前記構成要素は、Sタンパク質またはその断片である、段落56~59のいずれかの方法。
61. (i)対象由来の生物学的サンプルを準備する段階、
(ii)前記生物学的サンプル中の標的分析物の存在を、上記段落のシステムを使って検出する段階であって、前記標的分析物は、CoVウイルスまたはその構成要素である、段階、および
(iii)任意で、前記対象を治療剤で治療する段階
を含む、方法。
62. 前記生物学的サンプルは、唾液である、段落61の方法。
63. 前記標的分析物は、CoVウイルスである、段落61または62の方法。
64. (i)対象由来の生物学的サンプルを準備する段階、
(ii)前記生物学的サンプル中の標的分析物の存在を、上記段落のシステムを使って検出する段階であって、前記標的分析物は、インフルエンザウイルスまたはその構成要素である、段階、および
(iii)任意で、前記対象を治療剤で治療する段階
を含む、方法。
65. 前記生物学的サンプルは、唾液である、段落64の方法。
66. 前記標的分析物は、インフルエンザウイルスである、段落64または65の方法。
67. 前記標的分析物は、インフルエンザウイルスの構成要素である、段落64または65の方法。
68. (i)対象由来の生物学的サンプルを準備する段階、
(ii)前記生物学的サンプル中の標的分析物の存在を、上記段落のシステムを使って検出する段階であって、前記標的分析物は、HIVウイルスまたはその構成要素である、段階、および
(iii)任意で、前記対象を治療剤で治療する段階
を含む、方法。
69. 前記生物学的サンプルは、唾液である、段落68の方法。
70. 前記標的分析物は、HIVウイルスである、段落68または69の方法。
71. 前記標的分析物は、HIVウイルスの構成要素である、段落68または69の方法。
72. (i)対象由来の生物学的サンプルを準備する段階、
(ii)前記生物学的サンプル中の標的分析物の存在を、上記段落のシステムを使って検出する段階であって、前記標的分析物は、肝炎ウイルスまたはその構成要素である、段階、および
(iii)任意で、前記対象を治療剤で治療する段階
を含む、方法。
73. 前記生物学的サンプルは、唾液である、段落72の方法。
74. 前記標的分析物は、肝炎ウイルスである、段落72または73の方法。
75. 前記標的分析物は、肝炎ウイルスの構成要素である、段落72または73の方法。
76. 生物学的サンプル中の少なくとも1つの標的核酸を検出するためのシステムであって、
(i)前記標的核酸が配列特異的エンドヌクレアーゼおよびガイド核酸に特異的に結合すると、コラテラル核酸を切断する、配列特異的エンドヌクレアーゼおよびガイド核酸;
(ii)前記切断されたコラテラル核酸とともに検出可能な複合体をつくることができる、検出核酸;ならびに
(iii)前記検出可能な複合体を検出するための検出デバイス
を含み、
前記検出デバイスは、オキシダーゼベースのアンペロメトリックセンサーであり、かつ前記生物学的サンプルは、汗、唾液、血清、粘液、または血液中に存在している、
システム。
77. 前記配列特異的エンドヌクレアーゼは、Cas酵素である、段落76のシステム。
78. 前記配列特異的エンドヌクレアーゼは、Cas12aまたはCas13である、段落76または77のシステム。
79. 前記ガイド核酸は、前記標的核酸の少なくとも一部分に対し相補的または実質的に相補的である、段落76~78のいずれかのシステム。
80. 前記検出核酸は、前記切断されたコラテラル核酸の少なくとも一部分に対し相補的または実質的に相補的である、段落76~79のいずれかのシステム。
81. 前記検出核酸は、前記切断されたコラテラル核酸とハイブリダイズする、段落76~80のいずれかのシステム。
82. 前記検出核酸は、切断されていないコラテラル核酸とはハイブリダイズしない、段落76~81のいずれかのシステム。
83. 前記検出核酸は、検査ストリップと連結されている、段落76~82のいずれかのシステム。
84. 前記コラテラル核酸は、グルコースオキシダーゼと連結されている、段落76~83のいずれかのシステム。
85. グルコースオキシダーゼと連結されたアプタマーをさらに含む、段落76~84のいずれかのシステム。
86. 前記アプタマーは、前記切断されたコラテラル核酸の少なくとも一部分と特異的に結合する、段落85のシステム。
87. 前記アプタマーは、前記切断されたコラテラル核酸の一本鎖部分と結合する、段落86のシステム。
88. 前記アプタマーは、前記検出核酸とハイブリダイズした前記切断されたコラテラル核酸の二本鎖部分と結合する、段落86のシステム。
89. グルコースオキシダーゼと連結された抗体をさらに含む、段落76~88のいずれかのシステム。
90. 前記抗体は、前記切断されたコラテラル核酸の少なくとも一部分と特異的に結合する、段落89のシステム。
91. 前記コラテラル核酸は、グルコースオキシダーゼと特異的に結合する抗体と連結されている、段落76~90のいずれかのシステム。
92. 前記コラテラル核酸は、親和性対の第1のメンバーと連結されている、段落76~91のいずれかのシステム。
93. 親和性対の第2のメンバーと連結されたグルコースオキシダーゼをさらに含む、段落92のシステム。
94. 親和性対の第1のメンバーおよび第2のメンバーが、
ハプテン性または抗原性化合物と、対応する抗体またはその結合部分もしくはその断片との組み合わせ;ジゴキシゲニンおよび抗ジゴキシゲニン;マウス免疫グロブリンおよびヤギ抗マウス免疫グロブリン;非免疫的結合対;ビオチンおよびアビジン;ビオチンおよびストレプトアビジン;ホルモンおよびホルモン結合タンパク質;チロキシンおよびコルチゾールホルモン結合タンパク質;受容体および受容体アゴニスト;受容体および受容体アンタゴニスト;アセチルコリン受容体およびアセチルコリンまたはそのアナログ;IgGおよびプロテインA;レクチンおよび炭水化物;酵素および酵素補因子;酵素および酵素阻害剤;核酸二本鎖を作ることのできる相補的オリゴヌクレオチド対;ならびに負電荷をもつ第1の分子および正電荷をもつ第2の分子
からなる群より選択される、段落92または93のシステム。
95. 親和性対の第1のメンバーおよび第2のメンバーは、ストレプトアビジンおよびビオチンである、段落92または93のシステム。
96. ストレプトアビジンは前記コラテラル核酸と連結され、ビオチンは前記グルコースオキシダーゼと連結されている、段落92~95のいずれかのシステム。
97. ビオチンは前記コラテラル核酸と連結され、ストレプトアビジンは前記グルコースオキシダーゼと連結されている、段落92~95のいずれかのシステム。
98. 前記標的核酸はウイルス核酸である、段落76~97のいずれかのシステム。
99. 段落76~98のいずれかのシステムを用いて標的核酸を検出するための方法であって、
(i)対象から生物学的サンプルを収集し、かつ任意で、前記生物学的サンプルから核酸を抽出する段階;
(ii)前記生物学的サンプルを、配列特異的エンドヌクレアーゼ、ガイド核酸、およびコラテラル核酸と接触させる段階であって、前記標的核酸が存在する場合は、そのように接触させることが前記コラテラル核酸の切断という結果をもたらす、段階;
(iii)前記生物学的サンプルをグルコースの存在下で検査ストリップに添加する段階であって、前記検査ストリップが、前記切断されたコラテラル核酸が存在する場合はそれとともに検出可能な複合体をつくることができる検出核酸を含む、段階;
(iv)前記生物学的サンプルを前記検査ストリップとともにインキュベートする段階、またはインキュベートしない段階;
(v)前記検査ストリップを検出デバイスに差し込む段階;
(vi)検出可能な複合体があればそのレベルを、グルコースとグルコースオキシダーゼとの化学反応を通して検出する段階;ならびに
(vii)検出可能な複合体が生成された場合はそのレベルと、前記少なくとも1つの生物学的サンプル中の標的分析物の量とを相関させる段階であって、それによって診断的評価を提供する、段階
を含む、方法。
100. 前記生物学的サンプルは、唾液である、段落99の方法。
101. 前記検出デバイスは、グルコースメーターである、段落99または100の方法。
102. (viii)臨床医または訓練された医療提供者によるその後の検討のために、前記診断的評価または結果を電子デバイス、データベース、またはクラウドサーバーに送信する段階;および
(ix)前記診断的評価の方法を実施した個人に、前記診断的評価を提供する段階
をさらに含む、段落99~101のいずれかの方法。
103. 前記個人は、前記対象である、段落99~102のいずれかの方法。
104. (viii)前記診断的評価に応じて前記対象に1つまたは複数の治療レジメンを推奨する、指示する、および/または投与する段階
をさらに含む、段落99~103のいずれかの方法。
105. 検出核酸と連結されている、段落49~52のいずれかの検査ストリップ。
106. 段落105の検査ストリップを含む、キット。
107. 生物学的サンプル中の少なくとも1つの標的分析物を検出するためのセンサーであって、
(i)前記少なくとも1つの標的分析物とともに検出可能な複合体をつくることができる第1および第2の結合剤を含む、2結合剤アッセイ;ならびに
(ii)前記検出可能な複合体を検出するための検出デバイス
を含み、
前記検出デバイスは、オキシダーゼベースのアンペロメトリックセンサーであり、前記生物学的サンプルは、汗、唾液、血清、粘液、または血液中に存在している、
センサー。
108. 生物学的サンプル中の少なくとも1つのウイルスを検出するためのセンサーであって、
(i)前記少なくとも1つのウイルスとともに検出可能な複合体をつくることができる第1および第2の結合剤を含む、2結合剤アッセイ;ならびに
(ii)前記検出可能な複合体を検出するための検出デバイス
を含み、
前記検出デバイスは、グルコースメーターである、センサー。
109. 生物学的サンプル中の少なくとも1つの標的核酸を検出するためのセンサーであって、
(i)前記標的核酸が配列特異的エンドヌクレアーゼおよびガイド核酸に特異的に結合すると、コラテラル核酸を切断する、配列特異的エンドヌクレアーゼおよびガイド核酸;
(ii)前記切断されたコラテラル核酸とともに検出可能な複合体をつくることができる、検出核酸;ならびに
(iii)前記検出可能な複合体を検出するための検出デバイス
を含み、
前記検出デバイスは、オキシダーゼベースのアンペロメトリックセンサーであり、前記生物学的サンプルは、汗、唾液、血清、粘液、または血液中に存在している、
センサー。
【実施例
【0522】
実施例1:インフルエンザの検出
インフルエンザのウイルス培養。細胞培養および継代を、WHOのMDCK(Madin-Darby Canine Kidney)細胞培養プロトコルに従い実施した。細胞が70%~80%コンフルエントに達すると、DMEM培地(GIBCOダルベッコ変法イーグル培地)を吸引し、細胞を5 mLのlx PBS(リン酸緩衝食塩水)で3回洗浄した。インフルエンザH1N1 A/プエルトリコ/8/34(A/PR/8/34)のビリオンストックを37℃のバスで融解し、500 μL~1000 μLのビリオン試料をT-75フラスコに接種した。フラスコをゆっくり傾け、回転させてウイルス接種液を広げた。接種液を37℃のインキュベーター内で30分かけて吸着させた。このT75フラスコに12 mLのウイルス増殖DMEM(TPCK-トリプシン含有)を添加した(トシルフェニルアラニルクロロメチルケトン(TPCK)はセリンプロテアーゼα-キモトリプシンを不可逆的に阻害する)。これを37℃でインキュベートし、細胞傷害効果(たとえば、溶解によるフラスコの黒ずみ)を毎日調べた。細胞傷害効果が約75%~100%になると、血清用ピペットを用いて12 mLの上清を収集した。最終溶液に15%グリセロールを添加し、アリコートを-80℃で凍結させて保管した。ストックは、プラークアッセイで測定した場合に5 x 106 PFU/mL(プラーク形成単位/ミリリットル)の濃度を有し、RT-PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)アッセイで測定した場合に1.64 x 108 RNAコピー/mLの濃度を有した。
【0523】
センサーの設計。アプタマー、およびグルコースオキシダーゼ(GOx)標識抗体(両方とも関心対象のウイルスと結合する)からなるサンドイッチ式電気化学検出機構を設計し構築した。図2に示すように、アプタマー(ニトロセルロース膜と結合)は、ウイルス抗原を捕捉し、Ab-GOxは、ウイルス抗原が存在すれば結合する。定電位を印加すると、GOxはグルコース(たとえば、500 mM)を酸化し、電子を酸素に移動させ、過酸化水素を生成し、そして過酸化水素と反応する電極を介して電流出力を生じさせる。センサーの電極は、メディエーター層(たとえば、プルシアンブルー)を含み、それによって過酸化水素生成の過電圧を下げ、低めの電位で出力電流を発生させる。高めの電位での検出は、メディエーター層なしで達成され得る。
【0524】
H1N1インフルエンザの検出。サンドイッチ式感知アッセイでは、抗インフルエンザA H1N1ノイラミニダーゼ抗体(ABCAM)を用いた。この抗体は、ウイルス膜上のノイラミニダーゼタンパク質に対し高親和性を有する。同様に、ヘマグルチニンタンパク質に対し親和性を有するアプタマーを用いた(IDT TECHNOLOGIES)。0.45 μmの孔を有するニトロセルロース膜を用いた(THERMOSCIENTIFIC)。膜に4 mm直径の穴をあけた。膜にストレプトアビジン(PBS中0.5 mg/mL)をドロップキャストすることにより、膜をストレプトアビジン-NCで機能化した。膜を37℃で乾燥させ、使用前に乾燥条件で一晩保管した。次に、10 μLの20 μM ビオチン化アプタマーを30分かけてドロップキャストし、次いでPBSバッファーで洗浄した。アプタマー固定化後、1% BSA(ウシ血清アルブミン)を表面に添加して表面をブロックし、次いで洗浄した。ビリオンストックを-80℃から融解し、3000 rpmで遠心処理して細胞デブリを除去した。上清ビリオンストックに対し10倍希釈を2回実施して、105 PFU/mLおよび104 PFU/mLのビリオン濃度を得た。アプタマーを有する2つの異なる膜に、これらの溶液10 uLを液滴として加え、15分間インキュベートした。ABCAMのLIGHTNING-LINK(GOxコンジュゲートキット、#ab102887)を用いて合成したGOxコンジュゲート抗体をPBSTで希釈し(たとえば0.05%の洗剤TWEEN 20を含むPBS中1 mg/mLのGOxコンジュゲート抗体)、膜表面にドロップキャストして広げ、15分間インキュベートした。次に、200 μL PBSTを用いて膜を洗浄し、DROPSENS 710電極へ移して、電極の上に配置した。50 uLの500 mM グルコース溶液を添加した後、クロノアンペロメトリー測定を実施した。陰性対照サンプルには、ビリオンストックを添加するかわりに、ウイルスを含まないDMEM溶液(0.2% BSA、25 mM HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、2 μg/mL TPCK-トリプシン)を用いた。自作のポテンショスタットを用いて、Ag/AgCl(たとえば、基準電極)に対し、-0.2 Vの電位でクロノアンペロメトリー測定を実施し、経時的な電流を観察した。図4によると、サンプル中にビリオンが存在すると、結合したグルコースオキシダーゼがグルコースを酸化して電流信号を発生させたが、対照サンプル(ビリオンは存在せず)の場合は、無視できる程度の、またはバックグラウンド電流が測定された。電流vs.時間プロットの曲線下面積は全電荷移動を示し、図4によると、ビリオンが存在すると、電荷移動は対照サンプルの場合の10倍高かった。このように、生理学的に妥当なウイルス濃度(104 pfu/mL)の存在下で有意な電流信号が観測され、これはほかのウイルスについても対応する抗体-アプタマーの組み合わせを用いて再現され得る。
【0525】
H1N1検出の較正プロット。10 μLの1 mg/mL ストレプトアビジン-NCに続きH1N1のヘマグルチニンタンパク質を標的とする10 μLの40 μM アプタマーの添加により、センサーを調製した。ブロック剤は5 μLの3% BSAであった。この実験に用いた抗体-GOx濃度は、PBST中0.1 mg/mLであった。105 pfu/mL~10 pfu/mLの異なるウイルス濃度をDMEMバッファーで希釈することにより調製した。対照サンプルとして、ウイルスを含まないDMEMバッファーも査定した。ビリオンを15分間インキュベートし、次いでAb-GOxを添加し、次いでPBST(0.05% TWEEN-20)洗浄により洗浄した。クロノアンペロメトリー測定を、-0.2 Vで、1500秒間実施した。電流vs.時間グラフの曲線下面積を異なるビリオン濃度についてプロットした。105~102 pfu/mLのウイルス濃度と対照サンプルとの間に統計学的有意差があった(たとえば、図4参照)。
【0526】
ヒト唾液中のH1N1の検出。感染性疾患について陰性とされたヒト唾液を用いた(LEE BIOSOLUTIONS、カタログ # 991-05-S)。唾液サンプルには非常に高いタンパク質濃度が含まれた。そのため、特異的な抗体-ウイルス結合が阻害された。そこで唾液サンプルをDMEMバッファーに10倍および100倍希釈してから、膜表面に添加した。ここで、1 mg/mLの抗体濃度を用いた。唾液サンプルを10倍希釈した場合(すなわち、バッファーで10倍希釈した唾液)、対照サンプルと比べて電流に有意差が観測された。これ以降、さらなる実験には10倍の唾液希釈物を用いた。希釈は、唾液中に存在する異なるタンパク質からの非特異的相互作用を減じるために実施される。上記と同様の工程を行って、電流出力を得た。ヒト唾液に異なるウイルス濃度104~102 pfu/mLを添加し、10倍に希釈し、電流vs.時間をプロットした。唾液中ウイルスサンプルの場合に、対照サンプル(すなわち、ウイルスが存在しない10倍希釈の唾液)よりも有意に高い電流が観測された。
【0527】
H1N1検出についての異なる抗体標的の比較。H1N1ウイルス膜表面の、ヘマグルチニン(HA)タンパク質を標的とする抗体(たとえば抗HAマウスモノクローナル抗体)およびノイラミニダーゼ(NA)タンパク質を標的とする抗体(抗NAウサギポリクローナル抗体)も試験した。使用した抗体は、ab 128412(抗インフルエンザA H1N1ヘマグルチニン抗体[C102(IV.C102)]、ABCAM)およびab 91646(抗インフルエンザA H1N1ノイラミニダーゼ抗体、ABCAM)であった。NAを標的とするアプタマーとしての抗体、およびウイルス膜表面の異なるタンパク質(たとえば、HA)を標的とする抗体の場合に、より高い電流信号が観測されたが、代わりにアプタマーの標的がHAタンパク質であってもよく、抗体の標的がNAタンパク質であってもよい(たとえば、図6参照)。アプタマーおよび抗体がどちらも同じタンパク質(たとえば、HA)を標的とする場合、アプタマーおよび抗体の結合親和性が重要な役割を果たす。より親和性の高い抗体は、ウイルスをセンサー表面から剥ぎ取り得るので、信号を取得しかつウイルスを検出するためには、該抗体の低めの濃度を用いなくてはならない(たとえば、図10参照)。
【0528】
洗浄工程の排除。ウイルスと抗体-GOxとを、全部で200 μLの体積となるように予混合した(PBST中0.05 mg/mLのAb-GOx + ビリオン)。この溶液200 μLを膜円盤に滴下し、5分間インキュベートした。対照サンプルにはウイルスは含まれなかった。膜を電極に移動させ、50 μLのグルコース溶液(たとえば、500 mM)を添加し、クロノアンペロメトリーを実施した。ウイルスサンプルの場合、対照サンプルの場合と同様、溶液中で結合Ab-GOxのほうが浮遊Ab-GOxよりも電極表面に近かった。ウイルスサンプルの場合により高い電流信号が観測され、グルコースオキシダーゼの電極表面への近接が、より高い電流信号を発生させたことが示された。
【0529】
したがって、いくつかの態様では、洗浄工程(たとえば、溶液中の浮遊Ab-GOxの除去)を省くことができる。いくつかの態様では、ラテラルフローシステムでは、別個の洗浄工程がないと、分析物が検出領域から吸い取りパッドへ流出する。
【0530】
実施例2:rVSV-CoV-2およびSARS-CoV-2の検出
rVSV-CoV-2のウイルス培養:PEI(ポリエチレンイミン)を用いてATCC SARS CoV-2 Sタンパク質をHEK293Tに約2時間かけてトランスフェクトした。細胞を培地で2回洗浄して、VSV(水泡性口内炎(vesicular stomatitis)ウイルス)を除去した。細胞が(感染後約48時間で)適当な細胞傷害効果を示すと、培地を採取し、スピンダウンして細胞デブリを除去した。次に、ウイルスが含まれる上清を分注し、-80℃で保管した。
【0531】
SARS-CoV-2のウイルス培養:ウイルス培養の細胞タイプの第一選択は、SARS-CoV-2に感染しやすいという理由からVero細胞であった。同じく感染しやすい、HuH7などのほかの細胞、またはほかのヒト細胞タイプも用いることができる。Vero E6細胞の感染は、50 μg/mL DEAE-デキストラン(ジエチルアミノエチル-デキストラン)および2% ウシ胎仔血清(FCS;BODINCO)を含むリン酸緩衝食塩水(PBS)中で実行した。接種液を37℃で1時間かけて細胞に添加した後、細胞をPBSで2回洗浄し、2% FCS、2mM L-グルタミン(PAA LABORATORIES)、および抗生物質(SIGMA)を含むイーグル最小必須培地(EMEM;LONZA)中に維持した。Vero E6細胞のプラークアッセイによりウイルス滴定を決定した。
【0532】
検出:サンドイッチ式感知アッセイでは、ウサギポリクローナル抗SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質抗体(ABCAM ab 272504)を用いた。この抗体は、SARS-CoV-2のスパイク(S)タンパク質を標的とする。同様に、(たとえば、Song et al.に記載されるような)Sタンパク質を標的とするアプタマーを用いた(IDT technologies)。0.45 μmの孔を有するニトロセルロース膜を用いた(THERMOSCIENTIFIC)。膜表面(たとえば、4 mm直径の円盤)を、10 μLの溶液(PBS中1 mg/mLのストレプトアビジン-NC)を膜にドロップキャストすることにより、ストレプトアビジン-NC(ENQUIRE BIOREAGENTS製)で機能化した。膜を37℃で1時間乾燥させた。アプタマー(100 μM)を、PBS中1 mM MgCl2中、95℃で5分間かけて折り畳み、15分間放冷して室温にした。次に、アプタマーを作業濃度までPBSで希釈し、10 μLの20 μM ビオチン化アプタマーを1時間かけて膜にドロップキャストした。アプタマー固定化後、非特異的な結合を阻止するために5 μLの3% BSAを用いて表面をブロックし、次いで200 μLのPBST(PBS+0.05% TWEEN 20)で洗浄した。ビリオンストックを所望の濃度までDMEMで希釈した(THERMOFISHER、#21063029;たとえば、1000、100、または10ウイルス粒子/mL)。アプタマーを有する膜に10 μLのウイルスサンプルを液滴として加え、15分間インキュベートした。ABCAMのLIGHTNING-LINK(GOxコンジュゲートキット、#ab102887)を用いて合成したGOxコンジュゲート抗体(Ab-GOx)をPBSTで希釈し、5 μLの溶液を膜表面にドロップキャストして広げ、15分間インキュベートした。次に、200 μL PBSTを用いて膜を洗浄し、DROPSENS 710電極へ移した。50 μLの500 mM グルコース溶液を添加した後、クロノアンペロメトリー測定を実施した。陰性対照サンプルには、DMEMバッファー(すなわち、ビリオンを含まない)を用いた。クロノアンペロメトリー測定は、-0.2 Vの電位で、ポータブルポテンショスタットを用いて実施し、経時的な電流を観察した。バックグラウンド電流と比べて有意に大きい電流が観測された。
【0533】
バッファー中VSV-CoV-2偽型の検出:SARS-CoV-2と同じスパイクタンパク質をその表面に有するrVSVウイルスの検出では、上記と同様の手順を実施した。サンドイッチ式感知アッセイでは、ウサギポリクローナル抗SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質抗体(ABCAM ab 272504)を用いた。この抗体は、SARS-CoV-2のスパイク(S)タンパク質を標的とする。同様に、(たとえば、Song et al.に記載されるような)Sタンパク質を標的とするアプタマーを用いた(IDT TECHNOLOGIES)。0.45 μmの孔を有するニトロセルロース膜を用いた(THERMOSCIENTIFIC)。膜表面(たとえば、4 mm直径の円盤)を、10 μLの溶液(PBS中1 mg/mLのストレプトアビジン-NC)を膜にドロップキャストすることにより、ストレプトアビジン-NC(ENQUIRE BIOREAGENTS製)で機能化した。膜を37℃で1時間乾燥させた。アプタマー(100 μM)を、PBS中1 mM MgCl2中、95℃で5分間かけて折り畳み、15分間放冷して室温にした。次に、アプタマーを作業濃度までPBSで希釈し、10 μLの20 μM ビオチン化アプタマーを1時間かけて膜にドロップキャストした。アプタマー固定化後、非特異的な結合を阻止するために5 μLの3% BSAを用いて表面をブロックし、次いで200 μLのPBST(PBS+0.05% TWEEN 20)で洗浄した。ビリオンストックを所望の濃度までDMEMで希釈した(THERMOFISHER、#21063029;たとえば、1000、100、または10ウイルス粒子/mL)。アプタマーを有する膜に10 μLのウイルスサンプルを液滴として加え、15分間インキュベートした。ABCAMのLIGHTNING-LINK(GOxコンジュゲートキット、#ab102887)を用いて合成したGOxコンジュゲート抗体(Ab-GOx)をPBSTで希釈し、5 μLの溶液を膜表面にドロップキャストして広げ、15分間インキュベートした。次に、200 μL PBSTを用いて膜を洗浄し、DROPSENS 710電極へ移した。50 μLの500 mM グルコース溶液を添加した後、クロノアンペロメトリー測定を実施した。洗浄工程なしでは、対照サンプルとビリオンサンプルとの有意差は見られなかった。弱い洗剤(NP-40)を用いる洗浄工程を用いたが、対照サンプルとビリオンサンプルとの差は観測されなかった。PBST(0.5% tween)での洗浄を用いると、ウイルス含有サンプルと対照サンプルとの電流信号の有意差が観測された。バックグラウンド電流と比べて有意に大きい電流が観測された。
【0534】
抗体の濃度:アプタマーおよび抗体が同じタンパク質を標的とする場合、抗体の濃度が重要である。アプタマーのスパイクタンパク質に対する結合親和性はnM範囲であるが、抗体のスパイクタンパク質に対する結合親和性はpM範囲である。Ab-GOxのある濃度(0.5 mg/mL)では、対照サンプルとウイルスサンプルとの有意差は観測されなかった。ウイルスを検出するためにAb-GOxをさらに添加した(1 mg/mL)が、信号の差は見られなかった。より低濃度のAb-GOx試薬(0.1 mg/mL)を添加すると、信号が観測され、ウイルスが検出された。これらの結果が示すのは、アプタマーおよび抗体のウイルスに対する相対的な結合親和性の重要性である。標的タンパク質に対し、抗体のほうがアプタマーよりも高い結合親和性を有する場合、ウイルス粒子は洗浄工程中にAb-GOxといっしょにアプタマーから剥ぎ取られてしまう。同様に、結合親和性は似ているが、Ab-GOxを過剰に用いた場合、ウイルス粒子は洗浄工程中にAb-GOxといっしょにアプタマーから剥ぎ取られてしまう。したがって、用いられる捕捉アプタマーおよびAb-GOxの濃度は、幅広い実験および最適化によって、最適な性能の濃度を見つける必要がある。SARS-CoV-2のスパイクタンパク質の検出では、最適な性能は、Ab-GOxが、標的抗原に対し、検査ストリップと連結されたウイルス粒子を捕捉するアプタマーまたは抗体よりも低い親和性を有する場合に実現される。
【0535】
異なる抗体の比較:スパイクタンパク質および膜タンパク質を標的とする異なる抗体およびタンパク質を用いた。第一に、SARS-CoV-2スパイクタンパク質を標的とするウサギポリクローナル抗体(ABCAM ab272504)およびモノクローナル抗体(ABCAM ab273433、1A9)を用いた。第二に、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質は宿主細胞への侵入を媒介するACE2と結合するので、ACE2(アンジオテンシン変換酵素-2)-Fcキメラを用い(ABCAM #273687)、培養SARS-CoV-2に対して試験した。第三に、SARS-CoV-2膜タンパク質を標的とする抗体(NOVUS BIOLOGICALS、カタログ # NB100-56569)を用いた。これらの抗体およびACE2をすべて、SARS-CoV-2に対し試験した。すべての組み合わせで、無ビリオン対照と比べて、検出すべき信号が得られた(たとえば、図11~13参照)。ウサギポリクローナル抗体は、対照ベースラインから最大限の信号変化を発生させた(たとえば、図11~13参照)。該ウサギポリクローナルは、SARS-CoV-2スパイクタンパク質のC末端と結合し、アプタマーは、スパイクタンパク質のN末端レセプション(reception)結合ドメインを標的とする。アプタマーのエピトープと抗体のエピトープとが異なるほうが、強い信号が発生する。
【0536】
アプタマー固定化戦略:2つのアプタマー固定化法を検討し調査した。1つはニトロセルロース膜への固定化であり、2つめはスクリーンプリント電極に直接固定化するものである。各システムの性能は、これらの条件下でグルコースオキシダーゼを用いたグルコース酸化により発生する電流を測定することにより、査定され得る。
【0537】
固定化法1:電極に直接固定化する場合、チオール化アプタマーが用いられ得、チオール-金の相互作用を利用して該アプタマーが金電極に固定化され得る。アプタマー固定化のために電極がメディエーター層と金とを両方有するために、最初にメディエーター層が電着され得、それから金ナノ粒子が電着され得る。DROPSENS(DRP 510)電極(作用電極(WE):炭素、対電極(CE):Pt、基準電極(Ref):Ag/AgCl)が用いられ得、電極を0.1 M HCl中2.5 mM FeCl3、2.5 mM カリウムフェリシアン化物に浸し、0.4 Vの電位を40秒間印加することにより、プルシアンブルー層が固着され得る。次いで電極を、0.1 M HCl + 0.1 M KCl溶液中、-0.5 V~0.35 Vのサイクリック電位を25サイクル、50 mV/sで印加することにより、調整することができる。金ナノ粒子は、100 mg/mLのHAuCl4溶液に浸し、-0.2 Vの電位を30秒間印加することにより、電着され得る。電極の調製後、所望の濃度のアプタマーをドロップキャストし、そして湿度チャンバーで16時間インキュベートすることができる。
【0538】
固定化法2:NCへの固定化では、ストレプトアビジン-NC(ニトロセルロースと結合するように操作されたストレプトアビジン)を用いて、最初のセクションに記載された手順を行う。ニトロセルロース(NC)への固定化は、より大きい表面積、ならびに表面に対するより特異的かつ強力なアプタマーの結合を提供することができるが、結果としてシステムに電気抵抗を加え得る。
【0539】
固定化法3:メディエーターを含む硝酸セルロース溶液(SIGMAカタログ # 09986-500ML)が作用電極に滴下され得、そのまま乾燥させられ得る。ストレプトアビジン-NCが滴下され得、固定化法2で述べたようにその他の試薬がドロップキャストされ得る。液体セルロース溶液は、酵素とメディエーター複合体との間の電子移動を補助し得、また、固体膜と比べてシステムの抵抗が全体的に低くなり得る。同じ濃度のアプタマー-ビリオン-Ab-GOxの下で電流出力の大きさを比べて、最適な固定化戦略を決定することができる。
【0540】
異なるメディエーターの比較:ヒトサンプルからのグルコース検出に用いられる種々のメディエーターがある。メディエーター複合体のいくつかの例は、鉄、オスミウム、およびルテニウムを主成分とするメディエーターである。異なるメディエーターの徹底比較は、発生電流を観察することにより実施され得る。素早い応答および高い電流を提供し、かつ低い電力要件を要するメディエーターが、センサーストリップの製作に用いられ得る。
【0541】
バイオセンサーの性能の評価および検証:本明細書では、センサーに期待される性能が、電流束の大きさおよび速度、レドックス酵素への適切な依存、特異性、ならびにダイナミックレンジの点で検証され得ることが想定される。センサーは、分析感度および特異性、交差反応性、ダイナミックレンジ、検出限界、感知のスピードおよび持続時間、反復測定の変動係数、ならびに動作安定性を含めた重要な性能指標について最適化され得る。人工唾液サンプルを用いて、唾液中に存在する各種化合物からのセンサーに対する干渉の試験を行うことができる。購入したヒト唾液サンプルでデバイスの性能を試験することができ、続いて既知の濃度のウイルス抗原を添加し、それから較正曲線を作成することができる。サンプルを用いて、唾液サンプルを用いたセンサーの検出限界(LOD)および感度を決定することができる。統計学的方法を使って、十分な検定力あるサンプルサイズを設計し、信頼区間を決定し、かつ有意度を評価することができる。最後に、一定範囲の湿度レベル、pH、および温度でのセンサーの性能を評価し較正する試験が実施され得る。
【0542】
実施例3:検査ストリップを用いてSARS-CoV-2を検出するように商業用グルコメーターを転用
たとえば実施例1~2の最適化の結果を用いて、SARS-CoV-2を検出するために商業用グルコメーターで使用されるSARS-CoV-2検査ストリップを作製することができる。検査ストリップの作製には、レーザーカッターおよびスクリーンプリント法が用いられ得る。電極ストリップは、ヒトサンプルで検査をする前に、人工唾液(PICKERING SOLUTIONS、#1700-0313)中の既知のウイルス濃度を用いて何ラウンドかの最適化工程を経て、設計要件を満たすようにされ得る。検査ストリップは、まずはラボ用ポテンショスタットを用いて試験され得、そして市販の電極と比べられ得、それからグルコメーターに組み込まれ得る。グルコメーターは、センサー表面に存在するグルコースオキシダーゼ酵素の濃度を反映するグルコース値を読むことができる。固定グルコース濃度に対する異なるGOx濃度は、グルコメーター上で異なるグルコース出力を生じ得る。グルコメーターに表示されるグルコース値(電流出力に比例)を、存在するウイルス粒子の濃度と対応させることができる。
【0543】
商業用グルコメーターを用いるポイントオブケア検出が、ウイルス感染の感知に用いられ得る。センサー出力は結合した抗体-GOxコンジュゲートの濃度に依存するので、ウイルス抗原濃度に依存することになる。グルコース値とウイルス抗原濃度との関係に関する知識をウイルス感染の診断に用いることができる。
【0544】
検査ストリップの作製:図5に示すように、センサーストリップは、(下から順に)(A)ベース基体;(B)3電極を含む導電層;(C)検査されるサンプルが滴下され得る電極の部分のみ露出する絶縁層;(D)電子の交換を容易にするメディエーターを含む試薬層;(E)接着層;(F)親水性ニトロセルロース膜であって、近位膜は抗原を捕捉するアプタマーおよび凍結乾燥グルコースを含み、遠位端は紙シンク(13)である、膜;(G)凍結乾燥Ab-GOx;ならびに(H)上層を含む。たとえば、図5、ならびに同図のラベル(A)~(H)および(1)~(16)を参照されたい。ベース基体はポリエステルであり得、インク接着を向上させるためにアクリル被覆が塗布され得る。電極マスクのCAD(コンピューター援用設計)モデルを用いて、マスクをベース基体にレーザー加工する。電極は、導電性炭素インク(ERCON INC)、次いで絶縁層(ERCON INC, INSULAYER INK)を用いてスクリーンプリントされ得る。2つの作用電極はそれぞれ0.6 mm2の表面積を有し得、基準電極は1.2 mm2の表面積を有し得る。試薬層はメディエーター層であり、結合剤、シリカ、およびフェリシアン化物からなり得る。この試薬層は、作用電極に2サイクルでスクリーンプリントされる。その上の接着層はアクリルコポリマーであり得、親水性膜はストレプトアビジン-NCを有するニトロセルロース膜であり得、ウイルス抗原を捕捉するためにビオチン化アプタマーが(たとえば、ストレプトアビジンに)結合している。上層はPET(ポリエチレンテレフタラート)であり得、ストリップ上のサンプルの動きを見るための小さな透明部分がある。全体的な寸法は、たとえばLIFESCANリーダーなどのグルコメーターとの適合性が確保されるように、ほかの検査ストリップについて記載したのと同様であり得、また検査ストリップは、ほかの商業用グルコメーターに適合できるように改変することもできる。
【0545】
バッファーおよび人工唾液サンプル中のバイオセンサーの査定:凍結乾燥バイオ試薬の添加およびアプタマーの固定化の前に、抗体が連結された、または連結されていないGOxが作用電極に直接固着され得、そして本開示の検査ストリップの機能を市販のグルコースストリップと比べることができる。このことは、一定のグルコース濃度でグルコメーターに表示されるグルコース読取り値を観測することにより行われ得る。試薬を固定化して、前のセクションで述べたようにしてSARS-CoVストリップの作製を完了することができる。使い切りの検査ストリップは、ウイルスサンプルを用いて、バッファー中および人工唾液中で検証され得る。溶液中約100 μLのウイルス粒子がサンプルチャンバーに滴下され得、該溶液はAb-GOx層へと進む。ウイルス粒子の存在下、Ab-GOxが結合してビリオン-Ab-GOx複合体が形成する。するとこの複合体は、グルコースおよびアプタマーを含む検査ゾーンへと移動する。検査ゾーンに存在するアプタマーが複合体と結合して、GOxを作用電極および溶液中グルコースに近接させる。検査ストリップをグルコメーターに挿入すると、対応するグルコース値が表示される。バッファー中の異なるウイルスサンプル濃度についてこのプロセスを繰り返して、較正プロットをつくることができる。この検査を人工唾液サンプルでも行って、唾液中の干渉物の影響を試験することができる。ウイルス抗原あり、およびなしの盲検サンプルを検査して、検査ストリップが適切に機能することを確認することができる。
【0546】
検査ストリップの保管および貯蔵寿命:上記の試験に続き、インビトロでより幅広い試験および特徴決定を行って、動作中の安定性、貯蔵寿命、ならびに脱水および凍結乾燥に対する耐性を定めることができる。具体的には、バイオセンサーの貯蔵寿命を延長するために、保護剤(たとえば、マンニトール)および二糖(たとえば、スクロース、ラクトース、マルトース、およびトレハロース)を用いた凍結乾燥法を適用することができる。ニトロセルロース膜にストレプトアビジン-NCおよびアプタマーを添加する前に、保護剤を添加することができる。サンプルが乾燥空気中減圧下で乾燥され得るが、凍傷を回避するため氷点よりも高い温度に保持され得るという点で従来の凍結乾燥とは異なる乾燥プロトコルに、バイオセンサーを供することができる。バイオセンサーは、冷蔵庫内(4℃)に、および室温(25℃)で保存され得る。1カ月かけて、これらのセンサーの性能を、電流発生という点で、保護剤なしのセンサーと比べて査定することができる。また、ストリップに対し加速劣化を実施して、経時的な検査安定性を決定することができる。標準的な加速劣化プロトコルが行われ得る。加速劣化は、より高温での、パッケージ化デバイスのより短時間のインキュベーションに基づく貯蔵寿命の見積もりを可能にする。この方法は業界標準であり、材料の選択、表面ケミストリーの変更、またはアッセイ安定性に関するあらゆる問題の見通しを提供し得る。最初の試験を45℃で80日間実施して12カ月間の貯蔵寿命を見積もることができる。
【0547】
POCデバイスとしての使用範囲の探究:ウイルスサンプルの検査に要する時間を最適化するための試験が実施され得る。理想的なPOCデバイスは、結果を2分で提供する。グルコースリーダーを用い、唾液サンプルの添加後異なる時間間隔(t=1分、2分、5分、10分)でグルコースの読み取りを行って、インキュベーション時間が出力に及ぼす影響を調査することができるだろう。サンプル体積(100 μL、250 μL、500 μL、1000 μL、2000 μL)がグルコース出力に及ぼす影響も決定され得る。
【0548】
実施例4:ヒト唾液サンプルを用いたSARS-CoV-2グルコメーターの検証、ならびに検出限界および感度のRT-PCRとの比較
デバイスは、ウイルス抗原を添加した購入されたヒト唾液サンプルの分析確度について、RT-PCRならびにラテラルフローアッセイのような現行の商業用アッセイに対し検証され得る。1コピー/mL~100,000コピー/mLのウイルスコピーを添加したヒトサンプルが検査され得、95%の信頼区間を用いて検出限界が決定され得る。交差反応性は、デバイスの機能に潜在的に干渉し得るさまざまな微生物、ウイルス、および陰性マトリックス(negative matrixes)を検査することにより査定され得る。
【0549】
唾液サンプルからのポイントオブケア(POC)検出は、2分未満で高速かつ簡単にウイルス感染の決定を提供し得るが、それに比べてRT-PCRアッセイは、約2時間かかり、かつベテランのラボ職員および高価な設備を必要とする。RT-PCRアッセイに用いられる鼻腔スワブは、患者にとっては不快のもとである。唾液サンプル入手の容易さは、本明細書に記載されるこの検出技術の利点である。RT-PCRおよびラテラルフローアッセイ検査は、試薬を多用し、かつ高価なスワブを必要とするが、本明細書に記載される検査では、無菌バイアルに唾液サンプルを収集するので、複数の試薬もスワブも不要である。
【0550】
ヒト唾液サンプルを用いた査定:本開示の使い切り使い捨てのポイントオブケア検査ストリップは、ヒト唾液(INNOVATIVE RESEARCH INC.)において、ウイルス粒子を1コピー/mL~100,000コピー/mLの濃度で添加することにより、各濃度n=5で、査定され得る。グルコメーターの読み取りとウイルス粒子濃度との関係を見出すために較正曲線がつくられ得る。これらの結果を用いて、デバイスの検出限界が計算され得る。並行して、RT-PCRアッセイを用いて各サンプルを検証して、利用可能なゴールドスタンダードのアッセイに対しデバイスのLODを比較することができる。統計学的方法を使って、十分な検定力あるサンプルサイズを設計し、信頼区間を決定し、かつ有意度を評価することができる。95%の最大感度および特異性のための95%の信頼区間を得るために、73の陽性スパイクサンプルおよび73の陰性スパイクサンプルのサンプルセットを盲検化して146の異なるストリップで検査することができる。
【0551】
臨床的査定:ほかのウイルスとの交差反応性を決定するために、不活化された、インフルエンザ株、MERS-CoV、SARS-CoV、およびアデノウイルス(Adenovirus)のような呼吸器関連病原体とともに市販のヒト唾液サンプルが査定され得、デバイスも、デバイスに潜在的に干渉し得るマイコプラズマ肺炎(Mycoplasma pneumonia)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)その他のような微生物に対し試験され得る。SARS-CoV-2について検査した陽性25名および陰性25名の患者から50のヒト唾液サンプルが得られ得る。サンプルは無作為化され得、盲検標識され得、そして本開示のシステムデバイスおよびゴールドスタンダードのRT-PCRアッセイを用いて検査され得、それによって該2つのアッセイの合致パーセンテージが決定され得る。
【0552】
実施例5:変異体コロナウイルスおよびインフルエンザ株に対するデバイス性能の決定
試験管内進化法(SELEX、インビトロ選択またはインビトロ進化とも呼ばれる)戦略を用いて検出デバイスのアプタマーを特定することができ、確立されているアッセイを用いて検出デバイスの抗体を特定することもできる。たとえば、Darmostuk et al., Biotechnology Advances, (2015) 33, 6, 1141-1161を参照されたく、その内容全体が参照により本明細書に組み入れられる。センサーは、年間数百万人が罹患するインフルエンザの株の検出にも転用され得る。
【0553】
実施例6:ウイルス感染により生産されるIgG、IgM、およびIgAの検出
検出:宿主の体は、感染すると、IgG、IgM、およびIgAを生産して該感染に対する免疫応答を高める。これらの免疫グロブリンは、生物学的サンプル中で検出され得、個人のウイルス感染の段階に関する情報を提供し得る。これらの免疫グロブリンを検出するために、抗ヒトIgG/IgMまたは特異的に選別されたアプタマーがセンサーストリップに固定化されて、これらの抗体をヒトサンプルから捕捉し得る。検出のために、IgGまたはIgM抗体に対し親和性を有するペプチド配列(たとえばウイルス抗原)が、GOxとコンジュゲートされ得る。ペプチド-GOxは、抗体と結合する。すると抗体は、検査ストリップと連結されたアプタマーまたは抗ヒトIgG/IgMと結合する第2の結合事象を有し、GOxを作用電極表面に近接させる。すると、GOxによる過酸化水素の生成が電極により検出され得る。
【0554】
本明細書では、検査ストリップの表面に固定化されたSARS-CoV-2タンパク質(たとえば、スパイクタンパク質)、およびグルコースオキシダーゼとコンジュゲートした抗ヒトIgG(または抗ヒトIgM、または抗ヒトIgA)抗体を用いて、SARS-CoV-2抗体を検出できることが想定される。
【0555】
本明細書では、検査ストリップ表面のH1N1タンパク質(たとえば、固定化されたヘマグルチニンタンパク質)、およびグルコースオキシダーゼとコンジュゲートした抗ヒトIgG(または抗ヒトIgM、または抗ヒトIgA)抗体を用いて、H1N1抗体を検出できることが想定される。
【0556】
実施例7:商業用手持ち式グルコメーターを用いた唾液からのSARS-CoV-2検出
本開示は、症状の発症前に病気を予測するための、新興ウイルス疾患のリアルタイムの診断を提供しかつポイントオブケア(POC)設定で使用され得るセンサーを開発する、新興ウイルス疾患の注力分野に関する。この目的のために、本明細書には、唾液中のSARS-CoV-2の高速、簡単、かつ定量的診断を開発するためにグルコメーターの商業的成功およびロバストさを利用したPOCデバイスが記載される。
【0557】
背景:コロナウイルス(CoV)は、エンベロープ型ウイルスであり、表面に冠のように見えるスパイク糖タンパク質を有する。2019年12月、中国湖北省武漢で発生した新型CoVの大流行が認められ、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)と命名された。このウイルスはたちまち世界中に広がり、コロナウイルス疾患-19(COVID-19)パンデミックを引き起こし、現在までに感染者は1億7800万人を超え、死者は385万人を超えている。軍職員はとくに、人が密集し密接する職場(たとえば、基礎訓練、軍事基地、空輸、船および潜水艦、任務の主前進作戦基地)であるため、感染リスクが高くなる。こうした軍隊の職場環境は、適切に応答する能力を脅かす。実際、主要な刊行物の報告では、軍隊のCOVID-19感染率は、米国人口の感染率を超えている。
【0558】
検査は常に、感染力のある人を特定し隔離して感染拡大を最小限化するための鍵である。症候性および前症候性の人(たとえば、兵士)両方を選別し隔離することが肝要である。検査のゴールドスタンダードである逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)は、高い偽陰性率を有し、かつ感染を検出するのにウイルス核酸を必要とする。そのため、ウイルス核酸を含有しない血清および尿の使用はRT-PCT検査から除外され、鼻咽頭スワブなどの呼吸器系(respiratory track)サンプルしか使えない。それに加えて、RT-PCR法は、ベテラン技師、多量の試薬、スワブ、および設備投資機器を必要とし、かつ結果を得るまで長い所要時間(数日)がかかるため、軍配備基地または戦場での検査の助けにはならない。
【0559】
SARS-CoV抗体を検出するラテラルフロー免疫アッセイがいくつか開発されている。これらの検査は、免疫応答として体内で生産される3タイプの抗体、すなわちIgG、IgM、およびIgAの存在を探すものである。しかし、体がこれらの抗体を生産するには感染後5~10日を要するため、これらの抗体ベースのアッセイは感染症の早期診断には有用ではない。最後に、抗体検査は、高い偽陽性率をもたらす感度および特異性の問題を抱える傾向がある。
【0560】
COVID-19との戦いで変革的武器となるのは、SARS-CoV-2用の高速で正確なポイントオブケア(POC)検査である。米国国防総省は、1日6万人の軍関係者を検査するという目標を立てた。商業化しやすく、自己サンプル収集を伴う、かつ即座に検査結果を提供するフェイルセーフのPOCデバイスは、この目標を達成する。
【0561】
本明細書には、グルコース測定用グルコメーターの商業的成功および広範な使用を利用した、唾液からSARS-CoV-2を定量的に検出する携帯用の高速かつ簡単なセンサーが記載される。具体的には、本明細書には、ウイルスを捕捉するアプタマー、およびグルコースの存在下での信号増幅のための抗体-グルコースオキシダーゼ(Ab-GOx)コンジュゲートを含む、グルコメーターベースのCoV検査ストリップが記載される。このサンドイッチ式検出アッセイでは、グルコメーターは、唾液中に存在するウイルスコピーの数と相関のある電気化学信号を提供する。唾液を用いることで、出血の原因となり得る、かつウイルス伝搬の高リスクを有する鼻腔スワブの必要性がなくなる。唾液検体は、容器内に吐き出してもらうことで容易に収集され得、次いで容器の中身が検査ストリップに塗布され得る。理論に縛られることを望むものではないが、このシステムは、10コピー/mL未満の検出限界でSARS CoV-2を感知できるという仮説が立てられる(たとえば、10 PFU/mLの下限のインフルエンザウイルス検出を示す例示的な結果について、図4、6、10を参照されたい。たとえば、SARS-CoV-2の検出を示す例示的な結果について、図11~13を参照されたい)。グルコメーターベースのSARS-Cov-2センサーは、ほかのウイルス感染症の定量的POCデバイスとすることもできる。
【0562】
本明細書には、センサーの設計およびアセンブリー、ならびに電極アセンブリーの最適化およびリアルタイムアッセイへの組み込みが記載される。固定化手順は、最大限のウイルスを表面で捕捉できるように、ウイルスに対し特異的な抗体およびアプタマーを用いて最適化され得る。センサーは、SARS-CoV-2ビリオンおよびグルコース(たとえば、0.1 M)を添加したPBSおよび人工唾液サンプル中、クロノアンペロメトリーを用いて商業用研究所スケールのポテンショスタットで試験され得る。アッセイの特異性、選択性、検出限界、およびセンサー出力に対する一般的な干渉物の影響が決定され得る。性能、アッセイ時間、および使いやすさが、標準的なRT-PCRアッセイと比較され得る。
【0563】
本明細書には、検査ストリップを用いてSARS-CoV-2を検出するように商業用グルコメーターを転用することも記載される。標準的な商業用手持ち式グルコメーターにおいて使用されるグルコースセンサーストリップを模した電極ストリップがつくられる。センサー表面は、信号発生、増幅、およびその後の検出に必要な凍結乾燥試薬(Ab-GOx、グルコース)とともに、ウイルス抗原を捕捉するアプタマーを含むニトロセルロース膜からなる。グルコメーターにおける検査ストリップの性能をPBSおよび人工唾液を用いて査定して、これらのストリップが適切に機能することを確認し、かつグルコメーターの読み取り値とウイルス抗原濃度との相関を評価する。診断を実行するのに必要な時間が最適化され得る。センサーストリップの保管および貯蔵寿命も、異なる温度および湿度保存条件下で査定され得る。
【0564】
SARS-CoV-2グルコメーターはヒト唾液サンプルを用いて検証され得、検出限界および感度についてRT-PCRと比較され得る。デバイスは、購入されたヒト唾液および鼻腔サンプルの分析確度について、RT-PCRアッセイに対し検証され得る。1~1011コピー/mLのウイルスコピーを添加したヒトサンプルを検査して、グルコメーターの読み取り値とビリオン濃度との相関が定められ得る。デバイスの機能に干渉し得るさまざまな微生物、ウイルスおよび陰性マトリックスに対する交差反応性が査定され得る。デバイスは、ドナー患者由来の既知の陽性および陰性サンプルを用いて盲検式に試験され得る。
【0565】
新興コロナウイルス株に対するセンサー性能も試験され得る。今後数年(たとえば、少なくとも4年)のうちに新型または変異型CoVが出現する可能性が高いので、それらのCoV用に新規なグルコメーターベースの検査ストリップが開発され得る。それに加えて、毎年軍隊の活動にとってなおも最大の感染症の脅威となっているインフルエンザなどのほかのウイルス株を感知するように、検査ストリップを再設計することができる。
【0566】
本成果の短期的インパクトは、一般的なグルコメーターの既成原則に依拠するSARS-CoV-2センサーの開発、試験、および検証である。それに加えて、本技術開発は、ほかのCoVまたは呼吸器ウイルスの検出に容易に応用され得る。長期的には、自宅、職場、または戦場で使用可能な、廉価な個人用の簡単かつ高速応答のSARS-CoV-2検出デバイスは、世界的に重要な価値がある。
【0567】
序論:商業用手持ち式グルコメーターを用いる唾液からのSARS-CoV-2の検出
新型コロナウイルスSARS-CoV-2は、2019年12月の発生以来213カ国に拡大し、385万人以上の死者を出し、たちまち公衆衛生上の緊急事態となった。2020年3月、世界保健機関はこのコロナウイルスをパンデミックと宣言した。以来米国では、この感染症の拡大を封じるため、自主隔離、ソーシャル・ディスタンシング、および正しい個人衛生対策の実施を行っている。高い感染率に、病院および医院は病床や人工呼吸器が極度に不足して対処に窮し、多くの医師および医療衛生専門家がこのウイルスに倒れた。コロナウイルスの影響は一般人にとどまらず、多くの重要な軍事基地および任務を停滞させた。軍職員は、配備中は、高密集度、および密接した兵舎での生活条件、ならびに人と密に接することを余儀なくされるため、一般の人よりも感染リスクが高い。
【0568】
軍関係者ならびに連邦政府の衛生専門家らは、検査力の拡大の必要性を継続的に強調してきた。さらに、検査デバイスは、使いやすく、60秒以内に回答を提供し、唾液などの入手しやすい体液を要し、複雑な訓練は不要であり、かつどんな環境でも容易に展開可能でなくてはならない。本明細書に記載されるこの問題の解決策は、大きな薬局で販売されている処方箋のいらない、かつ米国で数百万人の糖尿病患者に日々使用されている、一般的なグルコメーターを土台にする。糖尿病患者は1日に何度も自分の血糖値を測定しなければならず、毎回グルコメーターの使用を必要とする。検査ストリップに1滴の微量の血液を塗布し、それをグルコメーターに挿入する。グルコメーターがアッセイを実施し、ほぼ即時に結果を提供する。本明細書では、SARS-CoV-2の検出にこの診断プラットフォームが転用され得る。
【0569】
具体的には、本明細書には、血液ではなく唾液を用いるが、それでもなお標準的な処方箋のいらない商業用グルコメーターに適合する検査ストリップが記載される。グルコメーターは、サンプルが、つまりは当人が、SARS-CoV-2陽性であるか陰性であるかについて、イエス/ノー式の結果を提供する。この発想では標準的なグルコメーターの使用が可能なので、ウイルス特異性検査ストリップさえ開発すればよい。このアプローチは、サンプル収集の鼻腔スワブの使用を回避するものである。経験したことのない人のために言っておくと、鼻腔スワブは、不快極まりない体験である。重要なことは、このアプローチにはデータの裏付けがあることであり、本明細書ではしっかりと特徴決定された材料および厳しい実験デザインが確立される。
【0570】
現在、真に有用であるために必要な低い検出限界および高い確度を有する、自宅、職場、または作戦現場で自己検査を可能にする、FDA承認のPOCデバイスはほとんどない。確度は最重要であるが、それは、偽陰性という結果のせいで、感染力のある人が自分はSARS-CoV-2をもっていないと思い込み、したがって知らないうちに周囲の人々に感染させかねないからである。POC検査は、感染を早い段階で高速検出して、より良い疾患診断、観察、および管理を促進するのに重要である。この画期的な材料、アプローチ、およびデバイスの概念は次のとおりである:(1)ヒト唾液中のウイルス抗原検出;(2)端的な唾液サンプル収集;(3)広く入手可能かつ廉価な既存のグルコメーター技術の使用;(4)検査ストリップがほかのウイルスの検出に容易に応用可能;ならびに(5)検査ストリップは、世間ですでに広く使用されている技術(グルコメーター)および実施(ウイルス検査)の唯一の新構成要素であるため、商業的実現性に優れている。
【0571】
このアプローチ全体は、新規なバイオセンサーの開発に広範囲に及ぶメリットのある、バイオセンサーの設計における劇的な変化を表している。
【0572】
本明細書に記載される検出デバイスは、SARS CoV-2を含めた呼吸器ウイルスの検出技術における重要な発見および主要な発展につながる非常に影響力あるデータをもたらし得る。デバイスは、POCセンサーおよび診断のための収集、検出、および信号発生に関する基本的知識を高める機会を提供する。軍隊に関しては、この変革的アプローチは、国防の職務および献身のため感染の高リスクにさらされている軍人の検査および観察に重大な進歩を提供するものである。
【0573】
本明細書に記載される検出デバイスは、多くの科学的を達成する一助となり得る。呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)と呼ばれる新型コロナウイルスは、中国武漢で発生した。人命を救い、このパンデミックの影響を最小限に抑えようと、世界中の研究者が競ってワクチンおよび治療法を開発している。差し当たっては、SARS-Cov-2の検査および診断が、感染者を特定し隔離するための鍵であり、総合的な検査は、重症度または死亡確率が高くなりがちな基礎疾患を有する人のために、隔離および/または早期介入する患者を特定する最良のアプローチである。本明細書には、グルコース測定用グルコメーターの商業的成功および広範な使用を利用した、唾液からSARS-CoV-2を定量的に検出することを可能にする携帯用の高速かつ簡単なセンサーが記載される。検出デバイス(本明細書ではセンサーとも呼ばれる)は、鼻腔スワブなどの不快なサンプル収集法の使用を省き、かつポイントオブケアでイエス/ノー式診断を提供する。具体的には、CoV検査ストリップは、商業用グルコメーターにおいてグルコースを測定するのに用いられるジェネリックのグルコースストリップにとって代わって、SARS-CoV-2を検査する。グルコメーターに表示されるグルコース読み取り値は特定のウイルス粒子濃度に対応するので、これはウイルス感染の定量的検出を提供する。この転用グルコメーターは、10コピー/mL未満の検出限界でSARS-CoV-2を感知できる。このCoV検査ストリップは、SARS-CoV-2検出用の初の定量的POCデバイスである。
【0574】
SARS-CoV-2検査のゴールドスタンダードは逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)に基づくものであり、呼吸器からのサンプル、ベテラン職員、多量の試薬ストック、高価な設備に依存し、偽陰性がきわめて多い。現在、FDA承認のRT-PCRキットは約80あり、平均の検出限界は約100 RNAコピー/mLである。検査率および検査数を変えるには、診断を研究所設定からポイントオブケア(POC)に移すことが肝要である。即時に検査結果を提供する正確かつスケーラブルなPOCデバイスは、地域における疾患拡大を追跡する範囲を広げ、それによって早期隔離および管理対策を支援する。現行のPOCデバイスとしては、抗体検出用のラテラルフローアッセイが挙げられ、これは高い偽陽性率、低い特異性を有し、定量的検出は提供しない。これらの試薬を多用するSARS-CoV-2検出用のゴールドスタンダードアッセイを、本明細書に記載されるようにシンプルで使いやすい既製のグルコメーターで置き換えることができる。
【0575】
感染性疾患は、ウイルス、細菌、および真菌などの微生物を原因とする。これらの疾患は、集団の間で高い死亡率を伴い指数関数的に拡大すること、および世界経済を麻痺させることがあり、政府が適正かつ的確に応答する能力の限界に迫る。今回213カ国に拡大し385万人以上の死者を出したコロナウイルスパンデミックは、そうした危機の破壊的な一例であり、西洋世界では第1次世界大戦中のスペイン風邪の大流行以来、100年近く類を見ない。SARS-CoV-2パンデミックにかかわらず、感染性疾患の拡大率は世界中ですでに上昇しつつあった。本明細書には、容易に変換可能な検出技術であるグルコメーターの成功を利用した検出デバイスが記載される。現在、グルコースメーターは、POC診断の世界市場の60%を握っている。この商業化された簡単な検出法を転用することにより、現在のウイルス疾患の検査法に重大な影響を及ぼすことができる。さらに、今後数年(たとえば、少なくとも4年)のうちに新型または変異型CoVが出現する可能性が高いので、そうしたウイルス用に新規なグルコメーターベースの検査ストリップが開発され得る。たとえば、CoV検査ストリップは、毎年米国人口の8%が罹患する季節性インフルエンザのような、ほかのウイルス感染症を感知するのに容易に転用されよう。
【0576】
本開示は、症状の発症前に病気を予測するための、新興ウイルス疾患のポイントオブケア(POC)として使用され得るリアルタイムの診断を提供するセンサーを開発する、新興ウイルス疾患の注力分野に関する。この目的のために、本明細書には、グルコメーターの商業的成功を利用したSARS-CoV-2の定量的検出用のPOCデバイスが記載される。
【0577】
コロナウイルスの伝搬。コロナウイルス(CoV)は、エンベロープ型ウイルスであり、表面に冠のように見えるスパイク糖タンパク質を有する。2019年12月、中国湖北省武漢で発生した新型CoVの大流行が認められ、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)と命名された。このウイルスはたちまち世界中に広がり、コロナウイルス疾患-19(COVID-19)パンデミックを引き起こし、現在までに感染者は1億7800万人を超え、死者は385万人を超えている。SARS-CoV-2パンデミックは、新型ウイルスに対する米国の軍隊および保健医療システムの脆弱さを実証している。SARS-CoV-2を感知するための最新の検出法は数多くあるが、容易なサンプル収集、ならびに自宅での、職場での、または現役勤務中の自己検査を伴う、ポイントオブケアデバイス(POC)はほとんどない。このことは、迫りくるパンデミックの阻止に重要である広域検査の拡大を妨げている。
【0578】
現在の検出戦略。検査は常に、感染を発現している人を特定し隔離して感染拡大を最小限化するための鍵である。感染を成功裏に封じ込めた多くの国では、診断が常に成功の礎石であった。検査の参照標準である逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)は、高い偽陽性率を有し、かつ感染を検出するのにウイルス核酸を必要とする。そのため、核酸陰性である血清および尿の使用は除外され、たとえば鼻咽頭スワブを用いる呼吸器系(respiratory track)サンプルに頼ることになる。スワブは侵襲性であるのみならず、それらを用いることで医療従事者がより高い感染リスクにさらされる。RT-PCR法はまた、ベテラン技師、多量の試薬およびスワブ、高価な設備、ならびに結果が出るまでの長い所要時間を必要とするので、大規模検査および商業化の助けにはならない。SARS-CoV抗体を検出するラテラルフロー免疫アッセイがいくつか開発されている。これらの検査は、免疫応答として体内で生産される3タイプの抗体、すなわちIgG、IgM、およびIgAの存在を探すものである。しかし、体がこれらの抗体を生産するには感染後5~10日を要するため、これらの抗体ベースのアッセイは感染症の早期診断には有用ではない。抗体検査は、同じく高い偽陽性率をもたらす、感度および特異性の問題を抱える傾向がある。COVID-19との戦いの主要な武器の一つは、SARS-CoV-2を検査するPOCデバイスの商業化による、有効な検査である。各国の政府およびその各部門(たとえば、軍)にとって極めて重要なのは、これらの検査に容易にアクセスできて、それによって感染の初期段階を特定し、かつ適切な隔離政策をとることである。理想的なSARS-CoV-2用POCデバイスは、自己サンプル収集を伴い、検査結果が即時に出る、自宅で、職場で、戦場で、または任務配備中に使用される、誰でも使えるデバイスである。
【0579】
(表1)FDA承認のSARS-CoV-2検出用キットを示す表;NS=鼻腔スワブ、OPS=中咽頭スワブ、NPS=鼻咽頭スワブ、TS=喉スワブ、TA=気管吸引、BAL=気管支肺胞洗浄、NPA=鼻咽頭吸引
【0580】
本明細書には、グルコース測定用グルコメーターの商業的成功および広範な使用を利用した、唾液からSARS-CoV-2を定量的に検出する携帯用の高速かつ簡単なセンサーが記載される。ウイルス抗原は唾液中で検出され得るので、鼻出血の原因となり、かつ伝搬のリスクを高める鼻腔スワブの使用が回避される。唾液検体は、ストリップに、またはバイアル内に吐き出してもらうことで、容易に収集され得る。具体的には、本明細書には、スクリーンプリント法を用いたグルコメーターベースのCoV検査ストリップが記載され、該CoVストリップはその後商業用グルコースリーダーを用いて読まれ得る、または分析され得る(たとえば、図1参照)。CoVストリップは、ウイルスを捕捉するアプタマー、およびグルコースの存在下での信号増幅のための抗体-グルコースオキシダーゼ(Ab-GOx)コンジュゲートを含む。このサンドイッチ式検出アッセイでは、グルコメーターは、唾液中に存在するウイルスコピーの数と相関のある電気化学信号を提供する。検出デバイスの1つのハイライトは、感知に多量の試薬を必要としない、本デバイスの低コストおよび商業化しやすさである。さらに、本技術は、将来新型もしくは新興ウイルス株、または呼吸器ウイルスの任意の株を検出するように容易に応用可能である。
【0581】
現在、低い検出限界および高い特異性を有する、自宅での自己検査を可能にするFDA承認のPOCデバイスはない。POC検査は、感染を早い段階で高速検出して、より良い疾患診断、観察、および管理を促進するのに重要である。POC検査は、研究所ベースの検査を補助することができ、研究所での検査にアクセスできない大規模な地域および集団が検査を受けられるようにし得る。
【0582】
本明細書には、広く使用されているグルコメーターをSARS-CoV-2を感知するPOCデバイスとして転用することが記載される。この感知法は、ヒト唾液中のウイルス抗原を検出するので、サンプル収集の鼻腔スワブの使用が回避される。図1~2は、患者由来の唾液サンプルを用いてウイルス抗原を感知する、本提案の機構を要約している。
【0583】
本明細書に記載されるデバイスのメリットとしては、限定ではないが、次のものが挙げられる:(1)ヒト唾液中のウイルス抗原の検出;(2)端的なサンプル収集;(3)ウイルス抗原を捕捉する独自な設計;(4)商業化しやすさ;(5)SARS-Cov-2の定量的検出;(6)アプタマーの高い安定性および特異性;(7)GOxがグルコースに高速応答するので高速感知が可能;(8)ウイルス抗原標的に対する高い感度および特異性;(8)ウイルス特異性アプタマーおよび抗体を用いることにより、ほかのウイルス抗原の感知に転用可能;(9)試薬の凍結乾燥によりSARS-Cov-2検査ストリップの貯蔵寿命を延長;(10)低コストの微小流体および微小電子機械(MEMS)デバイスに容易に組み込まれる;ならびに(11)アプローチ全体は、新規なバイオセンサーの開発に広範囲に及ぶメリットのある、バイオセンサーの設計における劇的な変化を表している。
【0584】
結果
インフルエンザのウイルス培養。細胞培養および継代を、WHOのMDCK細胞培養プロトコルに従い実施した。たとえば、Who, Manual for the laboratory diagnosis and virological surveillance of influenza. World Health Organization 2011 (2011)を参照されたく、その内容全体が参照により本明細書に組み入れられる。細胞が70%~80%コンフルエントに達すると、DMEM培地を吸引し、細胞を5 mLの1x PBSで3回洗浄した。インフルエンザH1N1 A/プエルトリコ/8/34(A/PR/8/34)のビリオンストックを37℃のバスで融解し、500 μL~1000 μLのビリオン試料をT-75フラスコに接種した。フラスコをゆっくり傾け、回転させてウイルス接種液を広げた。接種液を37℃のインキュベーター内で30分かけて吸着させた。このT75フラスコに12 mLのウイルス増殖DMEM(TPCK-トリプシン含有)を添加した。これを37℃でインキュベートし、細胞傷害効果(溶解によるフラスコの黒ずみ)を毎日調べた。細胞傷害効果が約75%~100%になると、血清用ピペットを用いて12 mLの上清を収集した。最終溶液に15%グリセロールを添加し、アリコートを-80℃で凍結させて保管した。ストックは、プラークアッセイで測定した場合に5 x 106 PFU/mLの濃度を有し、RT-PCRアッセイで測定した場合に1.64 x 108 RNAコピー/mLの濃度を有した。
【0585】
センサーの設計。本明細書には、アプタマー、およびグルコースオキシダーゼ(GOx)標識抗体(両方とも関心対象のウイルスと結合する)からなるサンドイッチ式電気化学検出機構が記載される。図2に示すように、アプタマーは、ウイルス抗原を捕捉し、Ab-GOxは、ウイルス抗原が存在すれば結合する。GOxは、その高い酵素活性および安定性により、グルコースバイオセンサーで広く研究されている酵素である。
【0586】
定電位を印加すると、GOxはグルコースを酸化し、電子を酸素に移動させ、過酸化水素を生成し、そして過酸化水素と反応する電極を介して電流出力を生じさせる。センサーの電極は、メディエーター層(たとえば、プルシアンブルー)を含み、それによって過酸化水素生成プロセスの過電圧を下げ、低めの電位で出力電流を発生させる。
【0587】
H1N1インフルエンザの検出。サンドイッチ式感知アッセイでは、抗インフルエンザA H1N1ノイラミニダーゼ抗体(ABCAM)を用いた。この抗体は、ウイルス膜上のノイラミニダーゼタンパク質に対し高親和性を有する。同様に、ヘマグルチニンタンパク質に対し親和性を有するアプタマーを用いた(IDT TECHNOLOGIES)。たとえば、Kiilerich-Pedersen et al. Biosensors & bioelectronics 49, 374-379 (2013)を参照されたく、その内容全体が参照により本明細書に組み入れられる。0.45 μmの孔を有するニトロセルロース膜を用いた(THERMOSCIENTIFIC)。膜に4 mm直径の穴をあけた。膜にストレプトアビジン(PBS中1 mg/mL)をドロップキャストすることにより、膜をストレプトアビジン-NCで機能化した。膜を37℃で乾燥させ、使用前に乾燥条件で一晩保管した。次に、10 μLの20 μM ビオチン化アプタマーを30分かけてドロップキャストし、次いでPBSバッファーで洗浄した。アプタマー固定化後、0.1% BSAを表面に添加して表面をブロックし、次いで洗浄した。ビリオンストックを-80℃から融解し、3000 rpmで遠心処理して細胞デブリを除去した。上清ビリオンストックに対し10倍希釈を2回実施して、105 pfu/mLおよび104 pfu/mLのビリオン濃度を得た。アプタマーを有する2つの異なる膜に、これらの溶液5 uLを液滴として加え、15分間インキュベートした。ABCAMのLIGHTNING-LINK(GOxコンジュゲートキット、#ab102887)を用いて合成したGOxコンジュゲート抗体をPBSTに溶解し、膜表面にドロップキャストして広げ、15分間インキュベートした。次に、200 μL PBSTを用いて膜を洗浄し、DROPSENS 710電極へ移した。50 uLの500 mM グルコース溶液を添加した後、クロノアンペロメトリー測定を実施した。陰性対照サンプルには、ビリオンストックを添加するかわりに、DMEM溶液(0.2% BSA、25 mM HEPES、2 μg/mL TPCK-トリプシン)を用いた。DROPSENSポテンショスタット(DRP-STAT-4000)を用いて、-0.2 Vの電位でクロノアンペロメトリー測定を実施し、経時的な電流を観察した。図4(左)によると、サンプル中にビリオンが存在すると、結合したグルコースオキシダーゼがグルコースを酸化して電流信号を発生させたが、対照サンプル(ビリオンは存在せず)の場合は、無視できる程度の電流が測定された。電流vs.時間プロットの曲線下面積は全電荷移動を示し、図4(右上および右下)によると、ビリオンが存在すると、電荷移動は対照サンプルの場合の10倍高かった。このように、生理学的に妥当なウイルス濃度(たとえば、104 pfu/mL)の存在下で有意な電流信号が観測され、これはSARS-CoV-2についても対応する抗体-アプタマーの組み合わせを用いて再現され得る。
【0588】
以下の実験では、次の仮説を試験する:(1)ウイルス粒子検出用の電気化学サンドイッチ式アッセイを検査ストリップ上に作製して、商業用グルコメーターを用いて読み出すことができる;(2)グルコメーターの出力は、唾液中のSARS-CoV-2粒子の数と定量的に相関があり得る;(3)この転用グルコメーターは、10コピー/mL未満の検出限界、偽陰性率は<1%で、SARS-CoV-2を感知できる。さらに、現在および将来のコロナウイルス株、ならびにほかの呼吸器ウイルス(たとえば、インフルエンザ)用の検査ストリップが調製され得る。
【0589】
この目的のために、これらの研究は、アプタマーおよび抗体-グルコースオキシダーゼ(Ab-GOx)コンジュゲート、ならびにSARS-Cov-2検出用に転用される商業用グルコメーターを含む、サンドイッチ式電気化学感知システムの開発を含む。
【0590】
センサーの設計およびアセンブリー;電極アセンブリーの最適化およびリアルタイムアッセイへの組み入れ。ウイルスに対し特異的な抗体およびアプタマーの固定化手順は、最大限のウイルスを表面で捕捉できるように最適化され得る。センサーは、SARS-CoV-2ビリオンを添加したPBSおよび人工唾液サンプル中、クロノアンペロメトリーを用いて商業用研究所スケールのポテンショスタットで試験され得る。アッセイの特異性、選択性、検出限界、およびセンサー出力に対する一般的な干渉物の影響が査定され得る。本明細書に記載されるデバイスの性能、アッセイ時間、および使いやすさが、標準的なRT-PCRアッセイと比較され得る。
【0591】
検査ストリップを用いてSARS-CoV-2を検出するように商業用グルコメーターを転用。本明細書には、商業用の標準的な手持ち式グルコメーターにおいて使用されるグルコースセンサーストリップを模した電極ストリップが記載される。一態様では、センサー表面は、信号発生、増幅、およびその後の検出に必要な凍結乾燥試薬(Ab-GOx、グルコース)とともに、ウイルス抗原を捕捉するアプタマーを有するニトロセルロース膜からなる。グルコメーターにおける検査ストリップの性能をPBSバッファーおよび人工唾液を用いて決定することができ、それによってこれらのストリップが適切に機能することを確認し、かつグルコメーターの読み取り値とウイルス抗原濃度との相関を評価することができる。診断検査に必要な時間が最適化され得、また、センサーストリップの保管および貯蔵寿命も異なる温度および湿度レベル下で査定され得る。
【0592】
ヒト唾液サンプルを用いてのSARS-CoV-2グルコメーターの検証、ならびに検出限界および感度のRT-PCRとの比較。デバイスは、購入されたヒト唾液および鼻腔サンプルの分析確度について、RT-PCRアッセイに対し検証され得る。1~1011コピー/mLのウイルスコピーを添加したヒトサンプルを検査して、グルコメーターの読み取り値とビリオン濃度との相関が定められ得る。デバイスの機能に潜在的に干渉し得るさまざまな微生物、ウイルス、および陰性マトリックスに対する交差反応性が査定され得る。デバイスはまた、ドナー患者由来の盲検標識された陽性および陰性サンプルを用いて試験され得る。
【0593】
新興コロナウイルス株に対するセンサー性能の決定。今後数年(たとえば、少なくとも4年)のうちに新型または変異型CoVが出現する可能性が高いので、それらのCoV用に新規なグルコメーターベースの検査ストリップが開発され得る。
【0594】
設計要件:以下の一式の性能水準は、次の設計要件に基づく成功裡の被覆のために本質的なものである:(1)ダイナミックレンジ>5ログで、ヒト唾液での濃度範囲の標的ウイルス抗原に対し高感度;(2)RT-PCRアッセイと同程度の10コピー/mLまたはもっと低いLOD;(3)R2≧0.99のグルコメーター読み取り値vs.ウイルス抗原濃度の較正曲線を示す;(4)ほかのウイルス株および病原体に対し5%未満の交差反応性を示す;(5)ウイルス抗原の濃度範囲全体で<10%の変動係数を示す;(6)分析時間は<1分;(7)電極ストリップおよび埋込試薬の安定性および貯蔵寿命は1年超;(8)唾液サンプル中の一般的な干渉物の効果は無視できる程度;ならびに(9)偽陰性および偽陽性率は<1%。
【0595】
SARS-CoV-2を検出する作業ラボラトリーアッセイをつくることができ、それにはアプタマーおよび抗体とウイルス抗原との結合の研究、固定化の研究、ならびにバイオセンサー性能の検証を伴う。アッセイのLODは、10コピー/mLであり得、人工唾液における干渉はほぼないかまたは皆無であり、電流出力vs.ビリオン濃度の較正曲線が実施され得、濃度範囲全体の変動係数は<10%であり得、また、一態様では、検査の持続時間は<15分である。
【0596】
グルコメーターにおいて使用されるSARS-CoV-2検査ストリップが設計されて作製され、グルコメーターの読み取り値とウイルス抗原濃度との関係が評価され得る。CoVストリップは、商業用グルコメーターにおいて動作し得、バッファーおよび人工唾液におけるグルコメーターvs.ウイルス抗原濃度の較正曲線が実施され得(ダイナミックレンジ>4~10ログ)、検査ストリップの貯蔵寿命は>1年であり得、一態様では、検査時間は<5分であり得る。
【0597】
SARS-CoV-2検査ストリップは患者サンプルを用いて検証され得、それを用いてゴールドスタンダードのアッセイとの比較を引き出すことができる。本明細書では、デバイスは、>4ログのダイナミックレンジで、ヒト唾液での濃度範囲の標的ウイルス抗原に対し高感度であり得ること、LODは10コピー/mLであり得ることが想定され、本明細書では、R2=0.99を示すグルコメーター読み取り値vs.ビリオン濃度の較正曲線が作成され得ること、デバイスは、唾液干渉物、ほかのウイルス株および病原体に対し5%未満の交差反応性を表示し得ること、デバイスは、ビリオン濃度範囲全体で<10%の変動係数を表示し得ること、偽陰性および偽陽性率は<1%であり得ること、が想定される。
【0598】
センサー部品(たとえば、アプタマー、抗体)を改変することにより、ほかのウイルス株に対するセンサー性能が査定され得る。理論に縛られることを望むものではないが、HIN1およびほかのCoV、ならびにほかの呼吸器ウイルスに対しても、同様の検出性能があり得る。
【0599】
A. 本明細書には、センサーの設計およびアセンブリー、ならびに電極アセンブリーの最適化およびリアルタイムアッセイへの組み入れが記載される。
サンドイッチ式電気化学感知戦略が、SARS-CoV-2の検出に適用され得る。クロノアンペロメトリー測定を用いてグルコースの酸化が観察され得、かつ出力電流が記録される。SARS CoV-2のウイルス膜に存在するタンパク質との強い結合親和性を示すアプタマーおよび抗体が用いられ得、たとえば、Song et al., Analytical Chemistry, 02 Jul 2020, 92(14):9895-9900;Yuan et al. Science 633, eabb7269 (2020);Wang et al. Nature Communications 11, 1-6 (2020)を参照されたく、それぞれの内容がすべて参照により本明細書に組み入れられる。アプタマー-タンパク質および抗体-タンパク質の相互作用の結合の研究を、バイオレイヤー干渉法を用いて実施して、結合親和性を確認することができる。アプタマー-抗体の組み合わせを特定した後、それらを併せてウイルス抗原を検出するバイオセンサーとすることができる。アプタマーをバイオセンサー表面に固定化するさまざま戦略(たとえば、電極に直接固定化する、間接的にニトロセルロース(NC)膜に固定化する)が組み込まれ得る。抗体-グルコースオキシダーゼコンジュゲート(Ab-GOx)の合成については、異なる合成スキームが広く研究され得る。市販のコンジュゲーションキット、またはAb-GOxの直接融合を用いることができ、次いで発現させるが、抗体-エピトープ結合親和性にはほとんど影響はない。抗体-アプタマーのペアリングは、そのコロナウイルス科のほかのウイルス株を用いて試験することにより、検証され得る。最適な組み合わせを選んだ後、特異性、選択性、検出限界、およびほかのパラメーターを最適化することができる。ヒト唾液サンプル中の一般的な干渉物がセンサー出力に及ぼす影響も研究することができる。本明細書には、SARS-CoV-2を検出するための研究所ベースのアッセイが記載され、それをポイントオブケアへと改変することができる。
【0600】
ウイルスタンパク質に対するアプタマーおよびAb-GOxの結合親和性は、バイオセンサーの感度を決定する。GOxに対し過剰なグルコースが存在するので、センサー表面に結合したGOxの濃度は、ウイルス粒子の数に比例する電流信号を提供する。GOxの高酵素活性は、該酵素が信号を増幅するので、低濃度のウイルスの検出を可能にする。
【0601】
本明細書に記載される検出デバイスは、次のことを実証する:(1)ウイルスエンベロープタンパク質に対し高い結合親和性をもつアプタマーを用いて、検査ストリップ表面にウイルス粒子を捕捉することができる;(2)ウイルス粒子が存在する場合のみ、Ab-GOxが結合して抗体とアプタマーとのウイルスサンドイッチを形成する結果、信号が発生する;ならびに(3)定電位を印加すると、過剰なグルコースの存在下、GOxがウイルス粒子の数に正比例する電流信号を発生させる。
【0602】
ウイルス培養:ウイルス培養の細胞タイプの第一選択は、SARS-CoV-2に感染しやすいという理由からVero細胞であり、感染しやすければHuH7またはほかのヒト細胞タイプも用いることができる。Vero E6細胞の感染は、50 μg/mL DEAE-デキストランおよび2% ウシ胎仔血清(FCS;BODINCO)を含むリン酸緩衝食塩水(PBS)中で実行する。接種液を37℃で1時間かけて細胞に添加した後、細胞をPBSで2回洗浄し、2% FCS、2mM L-グルタミン(PAA)、および抗生物質(SIGMA)を含むイーグル最小必須培地(EMEM;LONZA)中に維持することができる。先に記載されているようにして、Vero E6細胞のプラークアッセイによりウイルス滴定を決定することができる。たとえば、van den Worm, et al. PLOS ONE 7, e32857 (2012)を参照されたい。
【0603】
1. バイオレイヤー干渉法(BLI)を用いた結合の研究。バイオレイヤー干渉法を用いて、アプタマー-スパイクタンパク質および抗体-スパイクタンパク質の結合親和性を研究し、かつ対応する解離定数を計算することができる。アプタマー-スパイクタンパク質の研究では、タンパク質結合部位を含むビオチン化オリゴが用いられ得る(INTEGRATED DNA TECHNOLOGIES, INC.)。結合バッファーを含むウェルに、ストレプトアビジン被覆バイオセンサー先端を浸す。次に、先端はオリゴを含むウェルに移され得、55秒間プローブと結合することができる。プローブはバッファー中に戻され得、再度ベースラインの読み取りが行われる。DNA被覆プローブを、スパイクタンパク質を含むウェルに移して、スパイクタンパク質の結合を試験することができる。
【0604】
この試験では、異なる濃度のタンパク質を含む異なるウェルに複数のプローブを浸す。その後、系が飽和に達すると、プローブはバッファーを含むウェルに移され得る。BLIソフトウェアのオプションを用いて解離定数が計算され得る。
【0605】
同様に、抗体-タンパク質の相互作用の研究では、抗体をBLIプローブに捕捉するのに抗ペンタ-HIS先端を用いる。上記と同様の工程にしたがって抗体-タンパク質の相互作用の結合親和性を計算することができる。この試験を抗体-GOxコンジュゲートで繰り返して、コンジュゲーションがそのエピトープに対する結合親和性に影響するかどうかを調査することができる。アプタマーおよび抗体の理想の選択肢は、対応するタンパク質に対し、<50 nMの解離定数を有するものである。この研究は、バイオセンサーをつくるのに最適な抗体およびアプタマーを選ぶために、アプタマーおよび抗体の種々の選択を査定するものである。
【0606】
2. アプタマー-抗体のペアリングの検証。本明細書では、ウイルスエンベロープに存在するタンパク質に対するアプタマーおよび抗体の相互作用の特異性が査定できることが想定される。この試験は、ウイルスタンパク質に対し結合親和性のないアプタマーを用いて実施され得る。この不結合は、BLIを用いて事前に確認され得る。非特異性アプタマーが固定化され得、次いでウイルス抗原および特異性Ab-GOxが添加され得る。特異的結合部位がないのでウイルス抗原がセンサー表面と結合しないため、電流出力は最低限であり得る。同様に、SARS-CoV-2スパイクタンパク質に対し結合親和性のない抗体が用いられ得る。Ab-GOxを合成し、BLIを用いて試験して選別的な結合のないことを確認した後、感知システムにおいてサンプルを用いて電流出力を測定することができる。この場合も、ウイルスタンパク質に対し結合親和性がないのでAb-GOxがセンサー表面と結合しないため、電流出力は無視できる程度であり得る。
【0607】
3. 固定化戦略。少なくとも2つのアプタマー固定化法が検討され得、1つはニトロセルロース膜への固定化であり、2つめはスクリーンプリント電極に直接固定化するものである。各システムの性能は、これらの条件下でグルコースオキシダーゼを用いたグルコース酸化により発生する電流を測定することにより、査定され得る。
【0608】
固定化法1:電極に直接固定化する場合、チオール化アプタマーが用いられ得、チオール-金の相互作用を利用して該アプタマーが金電極に固定化され得る。アプタマー固定化のために電極がメディエーター層と金とを両方有するために、最初にメディエーター層が電着され得、それから金ナノ粒子が電着され得る。DROPSENS(DRP 510)電極(WE:炭素、CE:Pt、Ref:Ag/AgCl)が用いられ得、電極を0.1 M HCl中2.5 mM FeCl3、2.5 mM カリウムフェリシアン化物に浸し、0.4 Vの電位を40秒間印加することにより、プルシアンブルー層が固着され得る。次いで電極を、0.1 M HCl + 0.1 M KCl溶液中、-0.5 V~0.35 Vのサイクリック電位を25サイクル、50 mV/sで印加することにより、調整することができる。金ナノ粒子は、100 mg/mLのHAuCl4溶液に浸し、-0.2 Vの電位を30秒間印加することにより、電着され得る。電極の調製後、所望の濃度のアプタマーをドロップキャストし、そして湿度チャンバーで16時間インキュベートすることができる。
【0609】
固定化法2:NCへの固定化では、ストレプトアビジン-NCを用いて、最初の固定化セクションに記載された手順が行われ得る。NCへの固定化は、より大きい表面積、ならびに表面に対するより特異的かつ強力なアプタマーの結合を提供するが、結果としてシステムに抵抗を加える。同じ濃度のアプタマー-ビリオン-Ab-GOxの下で電流出力の大きさを比べて、最適な固定化戦略を決定することができる。
【0610】
4. SARS-CoV-2検出用バイオセンサーのアセンブリー。スパイク糖タンパク質を標的とするアプタマー、およびSARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質の受容体結合ドメインに対し特異的なグルコースオキシダーゼ(GOx)標識抗体(たとえば、CR3022/47D11)からなるサンドイッチ式電気化学検出機構が用いられ得る(たとえば、図2参照;たとえば、Song et al. 2020, 前記;Wang et al. 2020, 前記;Yuan et al. 2020, 前記参照)。アプタマーはウイルス抗原を捕捉し、Ab-GOxはウイルス抗原が存在すれば結合する。GOxは、その高い酵素活性および安定性により、グルコースバイオセンサーで広く研究されている酵素である;たとえば、Yoo & Sensors (Basel, Switzerland) 10, 4558-4576 (2010);Ferri et al. Journal of diabetes science and technology 5, 1068-1076 (2011);Lee et al. Science Advances 3, (2017)を参照されたい。定電位を印加すると、GOxはグルコースを酸化し、電子を酸素に移動させ、過酸化水素を生成し、そして過酸化水素と反応する電極を介して電流出力を生じさせる(たとえば、図3参照)。センサーの電極は、メディエーター層(たとえば、プルシアンブルー)を含み、それによって過酸化水素生成プロセスの過電圧を下げ、低めの電位で出力電流を発生させる。
【0611】
図1~3の概略図は、ストレプトアビジン-NC(すなわち、ニトロセルロースに対しより高い親和性を有する変異体ストレプトアビジン)で被覆されたニトロセルロース膜に固定化されたビオチン化アプタマーを示す。ストレプトアビジン-NCを有する膜は、4 mm直径の膜にストレプトアビジン(PBS中1 mg/mL)をドロップキャストすることにより、調製され得る。膜は37℃で乾燥され得、使用前に乾燥条件で一晩保管され得る。10 μLの20 μM ビオチン化アプタマーが30分かけてドロップキャストされ得、次いでPBSバッファーで洗浄され得る。アプタマー固定化後、0.1% BSAが表面に添加されて表面がブロックされ得、次いで洗浄され得る。
【0612】
5 μLのウイルスサンプルが添加され得、15分間インキュベートされ得る。対照溶液がウイルスサンプルを模するために、25 mM HEPES、0.2% BSA、0.1% FBS、および2 μg/mLのTPCK-トリプシンを含むDMEMが用いられ得る。抗体とGOxとをABCAMのLIGHTNING-LINK(GOxコンジュゲートキット、#ab102887)を用いてコンジュゲートさせることができる。PBST中Ab-GOxを膜表面にドロップキャストして広げ、15分間インキュベートすることができる。その後PBSTで洗浄することができる。膜は、スクリーンプリントDROPSENS 710電極(プルシアンブルー層が載った炭素の作用および対電極、Ag/AgClの基準電極)上に丁寧に配置され得る。電極に対し50 μLの100 mM グルコース溶液(PBS中)が添加され得、-0.2 Vで、DROPSENSポテンショスタットを用いてクロノアンペロメトリー測定が実施され得、出力電流が記録され得る。ウイルス抗原が存在すると、Ab-GOxがウイルス分子と特異的に結合するため電流出力が生じ、次いでGOxの存在下で触媒作用によりグルコースが酸化される。ウイルスが存在しないとAb-GOxが膜と結合することはないので、発生する電流応答は無視できる程度から皆無である。
【0613】
5. バイオセンサーの性能の評価および検証。SARS-CoV-2を検出するラボベースのアッセイを開発するために、バイオセンサーを厳しい検証法にかける。最適な固定化戦略およびアプタマー-抗体ペアを用いて、本明細書では、使い切りの測定用のバイオセンサーを作製して査定できることが想定される。バイオセンサーはまず、臨床的に妥当な範囲である103~1011ウイルスコピー/mLの溶液中ウイルス抗原に対し試験され得る。センサーに期待される性能が、電流束の大きさおよび速度、レドックス酵素への適切な依存、特異性、ならびにダイナミックレンジという点で検証され得る。次にセンサーは、分析感度および特異性、交差反応性、ダイナミックレンジ、検出限界、感知のスピードおよび持続時間、反復測定の変動係数、ならびに動作安定性を含めた重要な性能指標について最適化され得る。人工唾液サンプルを用いて、唾液中に存在する各種化合物からのセンサーに対する干渉も試験され得る。次に、既知の濃度のウイルス抗原を添加した購入されたヒト唾液サンプルでデバイスの性能を試験して、較正曲線を構築することができる。これらのサンプルは、唾液サンプルを用いたセンサーのLODおよび感度を決定する。適切な統計学的方法を使って、十分な検定力あるサンプルサイズを設計し、信頼区間を決定し、かつ有意度を評価することができる。最後に、一定範囲の湿度レベル、pH、および温度でのセンサーの性能を評価し較正する試験が実施され得る。
【0614】
抗体とGOxとのコンジュゲーションが抗体とそのエピトープとの結合親和性に影響を及ぼす場合は、GOxとの部位特異的コンジュゲーションのための化学リンカーを用いる代替コンジュゲート戦略が採用され得る。抗体薬物複合体(コンジュゲート)(ADC)の分野では、分子と抗体とのコンジュゲーションのための切断不可能なチオエーテルとペプチドとの連結など、利用可能な技術が大きく進歩している。たとえば、Hasan et al. Current Clinical Pharmacology 13, 236-251 (2018)を参照されたい。
【0615】
したがって、抗体-GOxコンジュゲートに利用可能ないくつかの選択肢がある。試験管内進化法(SELEX)を実施して、ウイルスエンベロープ上のエンベロープタンパク質を標的とするアプタマーを特定することもできる。センサー表面のGOxが低濃度であるせいで低い電流出力が記録される場合、信号処理アプリケーションを用いる、または回路に電子増幅器を組み入れることにより、信号を増幅することができる。単一検査において偽値につながり得るノイズおよびばらつきの効果を減じるためのデータ分析法を用いることができる。
【0616】
B. 本明細書には、検査ストリップを用いてSARS-CoV-2を検出するように商業用グルコメーターを転用することが記載される。市販のOneTouchグルコース検査ストリップを用いて、上記の実験から変換して、SARS-CoV-2を感知するために商業用グルコメーターで使用される、新型CoV-2の検査ストリップを作製することができる。検査ストリップの作製には、レーザーカッターおよびスクリーンプリント法が用いられ得る。電極ストリップは、ヒトサンプルで検査をする前に、人工唾液(PICKERING SOLUTIONS、#1700-0313)中の既知のウイルス濃度を用いて何ラウンドかの最適化工程を経て、設計要件を満たすようにされる。検査ストリップは、まずはラボ用ポテンショスタットを用いて試験され得、そして市販の電極と比べられ得、それからグルコメーターに組み込まれ得る。グルコメーターは、センサー表面に存在するグルコースオキシダーゼ酵素の濃度を反映するグルコース値を読む。固定グルコース濃度に対する異なるGOx濃度は、グルコメーター上で異なるグルコース出力を生じる。グルコメーターに表示されるグルコース値(電流出力に比例)を、存在するウイルス粒子の濃度と対応させることができる。
【0617】
本明細書に記載される検出デバイスは、次のことを実証する:(1)作製された検査ストリップの表面がウイルス抗原を捕捉し、かつAb-GOxと結合してグルコースの存在下で電流を発生させる;および、(2)グルコメーターに表示されるグルコース読取り値は、センサー表面の酵素濃度と正の相関があり、該酵素濃度は存在するウイルス粒子の数と相関がある;および、(3)この酵素増幅検出技術は、現在の関心対象の臨床範囲をはるかに下回る、溶液中わずか1000ウイルスの検出を可能にする。
【0618】
商業用グルコメーターを用いるポイントオブケア検出が、ウイルス感染の感知に用いられ得る。センサー出力は結合した抗体-GOxコンジュゲートの濃度に依存するので、ウイルス抗原濃度に依存することになる。グルコース値とウイルス抗原濃度との関係に関する知識をウイルス感染の診断に用いることができる。
【0619】
(1)検査ストリップの作製。検査ストリップの設計は以下のとおりであり、たとえば、米国特許第7462265号を参照されたく、その内容全体が参照により本明細書に組み入れられる。図5に示すように、センサーストリップは、(下から順に)(A)ベース基体;(B)3電極を含む導電層;(C)検査されるサンプルが滴下される電極の部分のみ露出する絶縁層;(D)電子の交換を容易にするメディエーターを含む試薬層;(E)接着層;(F)親水性ニトロセルロース膜であって、近位膜は抗原を捕捉するアプタマーおよび凍結乾燥グルコースを含み、遠位端は紙シンク(13)である、膜;(G)凍結乾燥Ab-GOx;ならびに(H)上層を含む。ベース基体はポリエステルであり得、インク接着を向上させるためにアクリル被覆が塗布され得る。電極マスクのCADモデルを用いて、マスクをベース基体にレーザー加工する。電極は、ERCON INC製の導電性炭素インク、次いでERCON INC製(INSULAYER INK)の絶縁層を用いてスクリーンプリントされ得る。2つの作用電極はそれぞれ0.6 mm2の表面積を有し、基準電極は1.2 mm2の表面積を有する。試薬層はメディエーター層であり、結合剤、シリカ、およびフェリシアン化物からなり得る。この試薬層は、作用電極に2サイクルでスクリーンプリントされる。その上の接着層はアクリルコポリマーであり得、親水性膜はストレプトアビジン-NCを有するニトロセルロース膜であり得、ウイルス抗原を捕捉するためにビオチン化アプタマーが結合している。上層はPETであり得、ストリップ上のサンプルの動きを見るための小さな透明部分がある。全体的な寸法は、たとえばLIFESCANのリーダーなどのグルコメーターとの適合性が確保されるように、ほかの検査ストリップと同様であり得、または検査ストリップは、ほかの商業用グルコメーターに適合できるように改変することもできる。
【0620】
(2)バッファーおよび人工唾液サンプル中のバイオセンサーの査定。凍結乾燥バイオ試薬の添加およびアプタマーの固定化の前に、GOxを作用電極に直接ドロップキャストして、ストリップの機能を市販のグルコースストリップと比較する。このことは、一定のグルコース濃度でグルコメーターに表示されるグルコース読み取り値を観測することにより行われ得る。比較できる結果を観測した後、実験をSARS-CoV-2の検査に必要な試薬の固定化へと進め、前のセクションで述べたようにしてCoVストリップの作製を完了することができる。そして使い切りの検査ストリップは、ウイルスサンプルを用いて、バッファー中および人工唾液中で検証され得る。溶液中約100 μLのウイルス粒子がサンプルチャンバーに滴下され得、該溶液はAb-GOx層へと進む。ウイルス粒子の存在下、Ab-GOxが結合してビリオン-Ab-GOx複合体が形成する。するとこの複合体は、グルコースおよびアプタマーを含む検査ゾーンへと移動する。検査ゾーンに存在するアプタマーが複合体と結合して、GOxを作用電極および溶液中グルコースに近接させる。検査ストリップをグルコメーターに挿入すると、対応するグルコース値が表示される。バッファー中の異なるウイルスサンプル濃度についてこのプロセスを繰り返して、較正プロットをつくることができる。この検査を人工唾液サンプルでも行って、唾液中の干渉物の影響を試験することができる。ウイルス抗原あり、およびなしの盲検サンプルを検査して、検査ストリップが適切に機能することを確認することができる。
【0621】
(3)検査ストリップの保管および貯蔵寿命。本明細書では、上記の試験に続き、インビトロでより幅広い試験および特徴決定を行って、動作中の安定性、貯蔵寿命、ならびに脱水および凍結乾燥に対する耐性を定めることができることが想定される。具体的には、バイオセンサーの貯蔵寿命を延長するために、保護剤(たとえば、マンニトール)および二糖(たとえば、スクロース、ラクトース、マルトース、およびトレハロース)を用いた凍結乾燥法を適用することができる。ニトロセルロース膜にストレプトアビジン-NCおよびアプタマーを添加する前に、保護剤を添加することができる。サンプルが乾燥空気中減圧下で乾燥され得るが、凍傷を回避するため氷点よりも高い温度に保持され得るという点で従来の凍結乾燥とは異なる乾燥プロトコルに、バイオセンサーを供することができる。バイオセンサーは、冷蔵庫内(4℃)に、および室温(25℃)で保存され得る。1カ月かけて、これらのセンサーの性能を、電流発生という点で、保護剤なしのセンサーと比べて査定することができる。また、ストリップに対し加速劣化を実施して、経時的な検査安定性を決定することができる。標準的な加速劣化プロトコルが行われ得る。加速劣化は、より高温での、パッケージ化デバイスのより短時間のインキュベーションに基づく貯蔵寿命の見積もりを可能にする。この方法は業界標準であり、材料の選択、表面ケミストリーの変更、またはアッセイ安定性に関するあらゆる問題の見通しを提供する。試験を45℃で80日間実施して12カ月間の貯蔵寿命を見積もることができる。
【0622】
(4)POCデバイスとしての使用範囲の探究。ウイルスサンプルの検査に要する時間を最適化するための試験が実施され得る。理想的なPOCデバイスは、結果を2分で提供する。グルコースリーダーを用い、唾液サンプルの添加後異なる時間間隔(t=1分、2分、5分、10分)でグルコース読み取り値を測定して、インキュベーション時間が出力に及ぼす影響を調査することができる。サンプル体積(100 μL、250 μL、500 μL、1000 μL、2000 μL)がグルコース出力に及ぼす影響も試験され得る。
【0623】
抗体ベースの要素は、経時的に必ずしも十分に安定しないことがある。この問題に対処するために、異なるマトリックスでタンパク質を安定させるさまざまな方法が開発されている。それらには、ゾル-ゲル、ヒドロゲル、および高分子フィルムが含まれる。これらの添加剤は、用途によっては、特異性、感度、および応答時間を向上させることがわかっている。これらのセンサー部品の機能およびロバストさを維持するための最適な組成物を特定するために、さまざまな乾燥条件とともに、標準的な一連の添加剤(たとえば、トレハロース、スクラロース、その他)が用いられる。保存条件を標準化して、保存中のチップを(パッケージングの方法により)一定の湿度に保ち、かつ(上記の加速劣化実験により決定される)好適な温度範囲に保つことができる。
【0624】
C. 本明細書には、ヒト唾液サンプルを用いたSARS-CoV-2グルコメーターの検証、ならびに検出限界および感度のRT-PCRとの比較が記載される。デバイスは、ウイルス抗原を添加した購入されたヒト唾液サンプルの分析確度について、RT-PCRならびにラテラルフローアッセイのような現行の商業用アッセイに対し検証され得る。1~1011コピー/mLのウイルスコピーを添加したヒトサンプルが検査され得、95%の信頼区間を用いて検出限界が決定され得る。デバイスの機能に干渉し得るさまざまな微生物、ウイルス、および陰性マトリックスを試験することにより、交差反応性が査定され得る。
【0625】
唾液サンプルからのポイントオブケア(POC)検出は、2分未満で高速かつ簡単にウイルス感染の決定を可能にし得るが、それに比べてRT-PCRアッセイは、約2時間かかり、かつベテランのラボ職員および設備を必要とする。RT-PCRアッセイに用いられる鼻腔スワブは、患者にとっては不快のもとである。唾液サンプル入手の容易さは、この検出技術の利点である。RT-PCRおよびラテラルフローアッセイ検査は、試薬を多用し、かつ高価なスワブを必要とするが、本明細書に記載される検査法では、無菌バイアルに唾液サンプルを収集するので、複数の試薬もスワブも不要である。
【0626】
本明細書では、グルコメーターベースのバイオセンサーが、RT-PCRおよびラテラルフローアッセイのようなSARS-CoV-2ウイルス感染を検出する現行の方法と比べて、分析時間、使いやすさ、検出限界という点で優秀であり得ること、また感度においても少なくとも同等であり得ることが想定される。
【0627】
(1)ヒト唾液サンプルを用いた査定。使い切り使い捨てのポイントオブケア検査ストリップは、ヒト唾液(INNOVATIVE RESEARCH INC.)を用いて、ウイルス粒子を1コピー/mL~1011コピー/mLの濃度で添加することにより、各濃度n=5で、査定され得る。グルコメーターの読み取りとウイルス粒子濃度との関係を決定するために較正曲線がつくられ得る。これらの結果を用いて、デバイスの検出限界が計算され得る。並行して、RT-PCRアッセイを用いて各サンプルを検証して、ゴールドスタンダードのアッセイに対しデバイスのLODを比較することができる。適切な統計学的方法を使って、十分な検定力あるサンプルサイズを設計し、信頼区間を決定し、かつ有意度を評価することができる。95%の最大感度および特異性のための95%の信頼区間を得るために、73の陽性スパイクサンプルおよび73の陰性スパイクサンプルのサンプルセットをつくることができる。これらのサンプルを盲検化して146の異なるストリップで検査することができる。
【0628】
(2)臨床的査定。ほかのウイルスとの交差反応性を決定するために、不活化された、インフルエンザ株、MERS-CoV、SARS-CoV、およびアデノウイルスのような呼吸器関連病原体とともに市販のヒト唾液サンプルが用いられ得、デバイスも、デバイスに干渉し得るマイコプラズマ肺炎、化膿性連鎖球菌その他のような微生物に対し試験され得る。SARS-CoV-2について検査した陽性25名および陰性25名の患者から50のヒト唾液サンプルも得られ得る。サンプルは無作為化され得、盲検標識され得、そして本デバイスおよびゴールドスタンダードのRT-PCRアッセイを用いて検査され得、それによって該2つのアッセイの合致パーセンテージが決定され得る。
【0629】
センサーの特異性は、抗体のエピトープに対する特異性に依存する。SARS CoV-2糖タンパク質に対し特異的な抗体があり、それらはSARS-CoV糖タンパク質に対してもnMレベルの結合親和性を有する。いくつかの態様では、1つの抗体および1つのアプタマーの代わりに、2つのアプタマーが用いられ得る。アプタマーは、試験管内進化法(SELEX)を用いて選択され得、次いでGOxと化学的にコンジュゲートされ得る。アプタマー選択は管理されるので、確たる標的のみと結合するアプタマーを設計することができ、構造的に関連する分子と結合するアプタマー分子は廃棄することができる。また、アプタマーは、独特なバッファー条件でのまたはほかの干渉物の存在下での安定性という付加的な利点を有する。アプタマーを用いることで、検査ストリップの貯蔵寿命と関連づけられる問題も軽減される。
【0630】
D. 本明細書には、新興コロナウイルス株に対するセンサー性能の決定が記載される。今後何年かで現れ得る新興CoVまたはほかの呼吸器ウイルス用のセンサーが開発され得る。ウイルスを標的とするアプタマーおよび抗体を用いて、新規なセンサーが構築され得る。これらのセンサー用に、SELEX戦略を用いてアプタマーを特定することができ、確立されているアッセイを用いて抗体を特定することができる。センサーは、年間数百万人の米国人が罹患するインフルエンザの株を検出するように転用することもできる。
【0631】
予め決定された、かつ適切な統計学的方法を用いて、結果の有意性を決定することができる。ANOVAを用いて実験群と対照群とを比較することができ、有意差が検出されれば、ポストホックのボンフェロニの多重比較検定を実施することができる。検証および較正曲線の研究では、適切な統計学的方法を使って、十分な検定力あるサンプルサイズを設計し、信頼区間を決定し、かつ有意度を評価することができる。95%の最大感度および特異性のための95%の信頼区間を得るために、73の陽性スパイクサンプルおよび73の陰性スパイクサンプルのサンプルセットをつくることができる。これらのサンプルを盲検化して146の異なるストリップで検定することができる。
【0632】
SARS-CoV-2について、最小標的臨床感度は90%であり得、最適標的感度は98%であり得る;最小標的特異性は90%であり得、最適標的は>98%であり得る。SARS-CoV-2の参照標準検査(RT-PCR)に対して95%の感度を想定すると、40の確定陽性唾液サンプルが、その感度推定値の前後±6.8%の信頼区間を提供する。両タイプの唾液サンプルが感度計算で陽性とみなされる場合、80の確定陽性サンプルが±4.8%の信頼区間を提供し得る。95%の特異性を想定すると、特異性推定値前後の同じ信頼区間が40対80の確定陰性唾液サンプルに当てはまる。したがって、各プロトタイプ試験では、トータルで160(陽性が80)のサンプルが検定されることになる。統計学的に有意な結果は、p<0.05と定められる。統計学的分析はすべて、SPSS 24(SPSS)を用いて行われ得る。
【0633】
21歳~50歳(性別間で等しく分散)の独身男女に由来する購入された146のサンプルを用いて実験を実施する。さらに、バイアスを回避するために、白人、アジア人、およびアフリカ系アメリカ人に由来する検査サンプルが検査され得る。
【0634】
本明細書に記載される実験は、次のことを実証する:(1)SARS-Cov-2用ラボベースアッセイ電気化学アッセイ;(2)携帯用の簡単なポイントオブケアのSARS-CoV-2センサー;および(3)ほかのウイルス感染性疾患の検出用に実装されるしっかりと確立された感知機構。検査ストリップは、SARS-CoV-2のポイントオブケア検出用に、一般の人々に入手可能であり得る。
【0635】
本明細書に記載される検査ストリップは、ドラッグストアまたは薬局で購入することができ、人が感染症を検査することを可能にする。関心対象のウイルスとしては、CoV、SARS-CoV-2、季節性インフルエンザ、高病原性インフルエンザ、HIV、エボラウイルス、マールブルグウイルス、ラッサウイルス、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、ヒトメタニューモウイルス、ならびに肺炎関連細菌、マラリア、リケッチア性疾患、肺炎球菌疾患、その他が挙げられる。本明細書にはまた、蚊取りサンプルにおけるアルボウイルス検査、鳥類におけるインフルエンザおよび西ナイルウイルスのサンプリング、ならびにコウモリにおける人畜共通病原体の検査を含め、病原体の環境調査に用いられ得る検査ストリップが記載される。
【0636】
実施例8:標的核酸の検出
図15A~15Fは、本明細書に記載される検出デバイスの代替設計を示す。一態様では、検出デバイスは、標的核酸の検出に用いられ得る。一態様では、サンプルから任意で核酸を抽出した後、標的核酸を、配列特異的エンドヌクレアーゼ(たとえば、Cas酵素)、および標的核酸の少なくとも一部分に対し相補的または実質的に相補的であるガイド核酸と、接触させることができる。一態様では、コラテラル(非標的)核酸が溶液に添加され得、配列特異的エンドヌクレアーゼおよびガイド核酸が標的核酸と結合すると、エンドヌクレアーゼがコラテラル(非標的)核酸を切断する。Cas12a(たとえば、ssDNA標的)およびCas13(たとえば、ssRNA標的)は、標的活性化コラテラル切断を実証する配列特異的エンドヌクレアーゼの非限定例である。一態様では、検査ストリップはその表面に、コラテラル核酸の少なくとも一部分に対し相補的または実質的に相補的である検出核酸を含む。一態様では、コラテラル核酸の切断は、コラテラル核酸が検査ストリップ表面の検出核酸とハイブリダイズすることを可能にする。一態様では、コラテラル核酸は、コラテラル核酸が配列特異的エンドヌクレアーゼおよびガイド核酸によって切断されて(たとえば、エンドヌクレアーゼが検出核酸に対し相補的ではないコラテラル核酸の部分を除去する)、標的核酸により活性化されるまでは、検出核酸(detection nucleic)とハイブリダイズしない。いくつかの態様では、グルコースオキシダーゼがシステムに導入され得、コラテラル核酸または別の検出分子を用いて検査ストリップ表面に近接させられ得る。いくつかの態様では、グルコースがグルコースオキシダーゼと反応して過酸化水素の生成をもたらし、それが本明細書でさらに記載される検出デバイスの電気的要素により検出され得る(たとえば、図15A~15F参照)。
【0637】
一態様では、コラテラル(非標的)核酸は、たとえば、該コラテラル核酸の3’または5’末端と連結されているグルコースオキシダーゼを含む(たとえば、図15A参照)。一態様では、グルコースオキシダーゼと連結されたアプタマーが、検出システムに添加され得る(たとえば、図15B~15C参照)。一態様では、アプタマーは、切断されたコラテラル核酸の少なくとも一部分、たとえば、検出核酸とハイブリダイズしない切断されたコラテラル核酸の一本鎖部分と特異的に結合する(たとえば、図15B参照)。一態様では、アプタマーは、検出核酸とハイブリダイズした切断されたコラテラル核酸の少なくとも一部分、たとえば、検出核酸とハイブリダイズした切断されたコラテラル核酸の二本鎖部分と特異的に結合する(たとえば、図15C参照)。一態様では、グルコースオキシダーゼと連結された抗体が、検出システムに添加され得る。一態様では、抗体は、切断されたコラテラル核酸の少なくとも一部分、たとえば、検出核酸とハイブリダイズした切断されたコラテラル核酸の一本鎖または二本鎖部分と特異的に結合する(たとえば、図15D参照)。一態様では、コラテラル核酸は、グルコースオキシダーゼと特異的に結合する抗体と連結され得る;抗GOx抗体と連結された切断された核酸と検出核酸とのハイブリダイゼーションは、グルコースオキシダーゼを動員して検査ストリップ表面に近接させる(たとえば、図15E参照)。一態様では、コラテラル核酸は、親和性対の一方のメンバー(たとえば、ストレプトアビジン)と連結され得る;親和性対のメンバーと連結された切断された核酸と検出核酸とのハイブリダイゼーションは、親和性対の第2のメンバー(たとえば、ビオチン)と連結されたグルコースオキシダーゼを動員して検査ストリップ表面に近接させることを可能にする(たとえば、図15F参照)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図15F
図16
【配列表】
2023534958000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-05-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
技術分野
本明細書では、標的分析物を検出および観察するためのシステム、方法、デバイス、およびキットが開示される。特定の態様では、標的分析物は病態(たとえば、ウイルス感染症)の結果と関連づけられるが、ほかの態様では、標的分析物は病原体、(たとえウイルス自体である。特定の態様では、高速定量ポイントオブケア(POC)システム、シングルユーザーシステム、または家庭用システム、およびSARS-CoV-2、インフルエンザ、またはほかのウイルスを検出する方法が開示され、該システムおよび方法は、グルコースオキシダーゼベースのアンペロメトリックセンサーを含む。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
標的分析物を検出可能な複合体の一態様では、第1の結合剤は、アプタマー、抗体、またはタンパク質から選択され、かつ第2の結合剤は、オキシダーゼ酵素と連結されたアプタマー、抗体、またはタンパク質から選択される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
標的分析物を検出可能な複合体の特定の態様では、第1の結合剤は、それぞれアプタマー、抗体、またはタンパク質から選択され、かつ第2の結合剤は、グルコースオキシダーゼと連結された、かつ発酵プロセスから生産されたアプタマー、抗体、またはタンパク質から選択される。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
標的分析物を検出可能な複合体の特定の態様では、第1の結合剤は、それぞれアプタマー、抗体、またはタンパク質から選択され、かつ第2の結合剤は、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、D-グルコース:D-フルクトースオキシドレダクターゼ、およびセロビオースオキシダーゼと連結されたアプタマー、抗体、またはタンパク質から選択される。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
標的分析物を検出可能な複合体の一態様では、第1の結合剤は、それぞれアプタマー、抗体、またはタンパク質から選択され、かつ第2の結合剤は、ヒドロゲナーゼ酵素と連結されたアプタマー、抗体、またはタンパク質から選択される。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
標的分析物を検出可能な複合体の特定の態様では、第1の結合剤は、それぞれアプタマー、抗体、またはタンパク質から選択され、かつ第2の結合剤は、グルコースデヒドロゲナーゼ、グルコース6-リン酸デヒドロゲナーゼ、フルクトースデヒドロゲナーゼ、スクロースデヒドロゲナーゼ、グルコシドデヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、ソルビトールデヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、およびリンゴ酸デヒドロゲナーゼと連結されたアプタマー、抗体、またはタンパク質から選択される。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0085
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0085】
別の局面では、生物学的評価に用いられる検査ストリップが開示され、該検査ストリップは、(i)炭素、鉄、パラジウム、白金、または金でできた1つまたは複数の平面または共面電極;(ii)メディエーターとしてのフェロシアン化第一鉄塩などの鉄塩で被覆された電極;(iii)メディエーターとしてのプルシアンブルーで被覆された電極;(iv)電解質溶液と接面する電極が(半)導体固体であるn電極セットアップ;(v)該電極セットアップが、作用電極、基準電極、および対または補助電極を含む;(vi)電流リードとセンスリードとが接続されており、作用リードおよび作用センスリードが作用電極と接続されており、かつ基準リードおよび対リードが第2の補助、対、または擬似/擬基準電極と接続されている、2電極セットアップ;(vii)基準リードが対リードから分離されて、作用および作用センスリードの両方が取りつけられている作用電極の至近点を測定するように大抵配置される第3の電極と接続されている、3電極セットアップ;(viii)該基準リードに加えて、作用センスリードが作用電極から切り離されている、4電極セットアップ;ならびに/あるいは(ix)電気化学セル全体の電圧低下が正味ゼロとなるようにストリップ内で作用電極リードと対電極リードとが短絡される、無抵抗電流計、の少なくとも1つを含む。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0128
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0128】
図1図1は、例示的な転用グルコメーターベースのSARS-CoV-2センサーを示す。
図2図2は、例示的な検査ストリップの設計、および検査ストリップをグルコメーターに入れた際の信号出力を示す。
図3図3は、グルコースバイオセンサーシステムにおいて生じる事象のシーケンスを表す概略図である。GOxによるグルコース酸化により、D-グルコノ-δ-ラクトンが生じる。プルシアンブルー(PB)フィルムでのH2O2の還元が、作用電極から移動した電子により測定される。
図4図4は、異なるビリオン(たとえば、H1N1)濃度についての経時電流を示す線グラフ(左パネル)を示す。棒グラフ(右パネル)は、バッファー中の異なるビリオン濃度についての電流vs.時間プロット(たとえば、左パネル参照)の曲線下面積を示す。
図5図5は、グルコメーター用の本明細書に記載されるCoV検査ストリップの概略図を示す。ラベル(1)~(16)は、ストリップの異なる機能部に対応し、ラベル(A)~(H)は、ストリップの層に対応する。一態様では、センサーストリップは、(下から順に)(A)ベース基体;(B)3電極を含む導電層;(C)検査されるサンプルが滴下される電極の部分のみ露出する絶縁層;(D)電子の交換を容易にするメディエーターを含む試薬層;(E)接着層;(F)親水性ニトロセルロース膜であって、近位膜は抗原を捕捉するアプタマーおよび凍結乾燥グルコースを含み、遠位端は紙シンク(13)である、膜;(G)凍結乾燥Ab-GOx;ならびに(H)上層を含む。
図6図6は、異なるH1N1ビリオン濃度が添加され、かつ10倍に希釈されたヒト唾液についての経時電流を示す線グラフを示す。
図7図7は、検出デバイスにおいて検出可能な化学変化をトリガーするのに使用される、ローカライズド・ソフトウェア・アルゴリズムの概略図を示す。
図8図8A~8Bは、データを処理する、かつ検出デバイスにおいて化学変化をトリガーするのに使用される、外部サーバーのクラウドベースのソフトウェア・アルゴリズムの概略図を示す。
図9図9は、ほかの関連コロナウイルスと整列させたSARS-CoV-2のスパイクタンパク質配列の受容体結合ドメイン(RBD)を示す。SARS-CoV-2、SARS-CoV、およびMERS-CoVの相互作用ドメインの配列アラインメントが具体的に示されている(たとえば、SEQ ID NO:1~9参照)。たとえば、W. Tai, et al., Cellular & Molecular Immunology, (2020) 17:613-620を参照されたく、その内容全体が参照により本明細書に組み入れられる。
図10図10は、H1N1ウイルスとAb-GOxとをプレインキュベートしたアッセイにおける経時電を示す線グラフを示す。
図11図11は、VSV-CoV-2偽型ウイルスに関する経時電流を示す線グラフを示す。
図12図12は、ウサギポリクローナル抗体-GOxコンジュゲート(左パネル)または膜抗体-GOxコンジュゲート(右パネル)を用いた、SARS-CoV-2ウイルスに関する経時電流を示す一連の線グラフを示す。
図13図13は、SARS-CoV-2を標的とするアプタマーおよび抗体のH1N1ウイルスに対する交差反応性を測定する線グラフおよび棒グラフを示す。なお、104のH1N1ビリオンから検出した信号と無ビリオンから検出した信号との有意差はなかった。
図14図14は、1つまたは2つのウイルスの検出を示す概略図である。1つのウイルスを検出するために、検査ストリップは1つのウイルスに対する1つのアプタマー(または抗体)を、その表面に有する。尿、唾液その他をストリップに添加し、そしてストリップをグルコメーターに挿入する。2つのウイルス(たとえば、Sars-CoV-2およびインフルエンザA H1N1)の検出では、検査ストリップの一部分は1つのウイルスに対するアプタマー(または抗体)を有し、他方の部分は第2のウイルスに対するアプタマー(または抗体)を有する。尿、唾液その他をストリップに添加し、ストリップを破線によって2つのストリップに分け、一方のストリップをグルコメーターに挿入し読ませ、次いで該第1のストリップを取り出し、第2のストリップを挿入し読ませる。
図15A図15A~15Fは、本明細書に記載される検出デバイスの代替設計を示す一連の概略図である(たとえば、実施例8参照)。図15Aは、エンドヌクレアーゼによるコラテラル切断を用いる核酸検出を示し、ここでコラテラル核酸はグルコースオキシダーゼと連結されている。
図15B図15A~15Fは、本明細書に記載される検出デバイスの代替設計を示す一連の概略図である(たとえば、実施例8参照)。図15B~15Cは、コラテラル切断核酸検出を示し、ここでコラテラル核酸の一本鎖(図15B)または二本鎖(図15C)領域と結合するアプタマーが、グルコースオキシダーゼと連結されている。
図15C図15A~15Fは、本明細書に記載される検出デバイスの代替設計を示す一連の概略図である(たとえば、実施例8参照)。図15B~15Cは、コラテラル切断核酸検出を示し、ここでコラテラル核酸の一本鎖(図15B)または二本鎖(図15C)領域と結合するアプタマーが、グルコースオキシダーゼと連結されている。
図15D図15A~15Fは、本明細書に記載される検出デバイスの代替設計を示す一連の概略図である(たとえば、実施例8参照)。図15Dは、核酸検出を示し、ここでコラテラル核酸と結合する抗体が、グルコースオキシダーゼと連結されている。
図15E図15A~15Fは、本明細書に記載される検出デバイスの代替設計を示す一連の概略図である(たとえば、実施例8参照)。図15Eは、核酸検出を示し、ここでコラテラル核酸は、グルコースオキシダーゼと特異的に結合する抗体と連結されている。
図15F図15A~15Fは、本明細書に記載される検出デバイスの代替設計を示す一連の概略図である(たとえば、実施例8参照)。図15Fは、核酸検出を示し、ここでコラテラル核酸は、親和性対と連結されており、該対の一方のメンバーがグルコースオキシダーゼと連結されている。
図16図16は、一例のプロセス、および本開示のいくつかの態様のシステムの概要の一例を示す。図16の上半分は、本明細書に記載される検査ストリップおよび検出デバイスを用いてサンプル中の標的分析物を検出する、一例のプロセスを示すフローチャートである。いずれかの局面のいくつかの態様では、検査サンプル110が(たとえば対象100から)受けられる。さらなるサンプルとしては、陰性対照111および陽性対照112が挙げられ得る。いずれかの局面のいくつかの態様では、サンプルは、任意で処理120される(たとえばタンパク質または核酸抽出;たとえば希釈)。次いでグルコース130の存在下で生物学的サンプルを検査ストリップ135に添加する。検査は、本明細書に記載される検出試薬を少なくとも1つは含み得る(たとえば、抗体、アプタマー、検出核酸)。次いで検査ストリップを検出デバイス140(たとえば、グルコメーター)に差し込む。図16の下半分は、本開示のいくつかの態様のシステムの概要の一例を示す。検査ストリップは検出デバイス150にインプットされ、該検出デバイス150は、ネットワーク160、電算デバイス170、ディスプレイ175、サーバー180、および/またはデータベース185を含むシステムの一部である。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0233
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0233】
一局面では、生物学的サンプル中の少なくとも標的分析物を検出するためのシステムが開示され、該システムは、(a)該少なくとも1つの標的分析物とともに検出可能な複合体をつくることができる第1および第2の結合剤を含む、2結合剤アッセイと、(b)該検出可能な複合体を検出するための検出デバイスとを含み、該検出デバイスはグルコメーターであり、該生物学的サンプルは血液ではない。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0234
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0234】
別の局面では、生物学的サンプル中の少なくとも1つの病原体(たとえば、ウイルス)を検出するためのシステムが開示され、該システムは、(a)該少なくとも1つの病原体とともに検出可能な複合体をつくることができる第1および第2の結合剤を含む、2結合剤アッセイと、(b)該検出可能な複合体を検出するための検出デバイスとを含み、該検出デバイスはグルコメーターである。特定の態様では、該生物学的サンプルは唾液である。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0260
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0260】
ある特定の態様では、本明細書に開示されるシステムは、購入されたヒト唾液および鼻腔サンプル、または個人から直接採取したサンプルに対し実施されたRT-PCRアッセイに対し相対的に改善された1つまたは複数の特性を有する。一態様では、本明細書に開示されるシステムは、市販の鼻腔サンプルに対し実施されたRT-PCRよりも低い、具体的には、約20%、約18%、約16%、約14%、約12% 約10%、約8%、約6%、約4%、または約2%、もしくはそれよりも低い偽陽性率を有する。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0277
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0277】
一態様では、生物学的サンプルは、血液ではない。ある特定の態様では、生物学的サンプルは、唾液である。唾液は、細菌および真菌のような微生物、インタクトなヒト細胞、細胞デブリ、ならびに多くの可溶性物質酵素、ホルモン、抗体、およびほかの分子を本質的に含む、粘性の密なねばねばした液体である。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0278
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0278】
唾液検体は、対象から任意の好適なやり方で容易に収集することができ、特定の態様では、専用の道具は使わず、たとえば対象に容器内に吐き出しもらうことにより収集され得、次いで容器の中身を希釈して検査ストリップに添加するか、あるいは検査ストリップに直接吐きかけてもらう。たとえば、Navazesn M (1993). Methods for collecting saliva. Ann N Y Acad Sci 694:72-77を参照されたい。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0485
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0485】
別の局面では、本明細書には、たとえば当技術分野で公知の任意の連結法(たとえば、UV架橋、または、一方のメンバーが検出核酸と連結され、第2のメンバーが検査ストリップと連結された親和性対(たとえば、ストレプトアビジンとビオチン)を用いる)を用いて検出核酸と連結された検査ストリップが記載される。検出核は、その3’末端またはその5’末端で検査ストリップと連結され得る。いずれかの局面のいくつかの態様では、検出核酸は、親水性ニトロセルロース膜(たとえば、図5の層F)と連結される。いずれかの局面のいくつかの態様では、検出核酸は、検査ストリップの近位膜(たとえば、図5の層F)と連結される。いずれかの局面のいくつかの態様では、配列特異的エンドヌクレアーゼ、ガイド核酸、および/またはコラテラル核酸は、検査ストリップ内にあるが、検査ストリップと必ずしも連結されてはいない(たとえば、図5の層G;たとえば、凍結乾燥試薬として)。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0515
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0515】
キットは、標的分析物の検出のための構成要素を含み得る。それに加えて、キットは、標的分析物に結合する1つまたは複数のアプタマーまたは抗体を含み得る。アプタマーまたは抗体は、たとえば凍結乾燥されて乾燥調製物中に、または溶液中に供給され得る。抗体またはほかの検出試薬は、検出に用いられる標識、たとえば、放射、蛍光(たとえば、GFP)、または発色標識と連結され得る。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0521
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0521】
本明細書に記載される技術のいくつかの態様は、以下の付番段落のいずれかに従い定義され得る。
1. 生物学的サンプル中の少なくとも1つの標的分析物を検出するためのシステムであって、
(i)前記少なくとも1つの標的分析物とともに検出可能な複合体をつくることができる第1および第2の結合剤を含む、2結合剤アッセイ;ならびに
(ii)前記検出可能な複合体を検出するための検出デバイス
を含み、
前記検出デバイスは、オキシダーゼベースのアンペロメトリックセンサーであり、前記生物学的サンプルは、汗、唾液、血清、粘液、または血液中に存在している、
システム。
2. 前記アンペロメトリックセンサーは、オキシダーゼベースのアンペロメトリックセンサーである、段落1のシステム。
3. 前記アンペロメトリックセンサーは、ヒドロゲナーゼまたはデヒドロゲナーゼベースのアンペロメトリックである、段落2のシステム。
4. 前記生物学的サンプルは、汗、唾液、血清、粘液、または血液である、先行段落のいずれかのシステム。
5. 前記生物学的サンプルは、唾液である、先行段落のいずれかのシステム。
6. 前記検出デバイスは、グルコースメーターである、先行段落のいずれかのシステム。
7. 前記グルコースメーターは、検査ストリップ上の生物学的サンプル中のグルコースに関するセンサー出力を有するグルコースセンサーを含む、段落6のシステム。
8. 前記生物学的サンプルは、限定ではないがグルコースなどの糖と混合される、先行段落のいずれかのシステム。
9. 前記生物学的サンプルは、限定ではないがグルコースなどの糖と、約0.01 mM~約1 Mの濃度で混合される、段落8のシステム。
10. 前記第1および第2の結合剤は、アプタマー、抗体、タンパク質、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される、先行段落のいずれかのシステム。
11. 前記第1の結合剤がアプタマーであり、かつ前記第2の結合剤が抗体であり、前記抗体はグルコースオキシダーゼと連結されている、先行段落のいずれかのシステム。
12. 前記第1および第2の結合剤は、前記標的分析物上の異なる部位と結合する、先行段落のいずれかのシステム。
13. 前記第1および第2の結合剤は、前記標的分析物に対し、約1:1000~約1000:1のKdを有する、段落12のシステム。
14. 前記第1の結合剤の結合親和性は、前記第2の結合剤の結合親和性よりも弱い、段落12または13のシステム。
15. 前記標的分析物は、全ウイルスまたはその構成要素である、先行段落のいずれかのシステム。
16. 前記ウイルスは、ベータコロナウイルス、インフルエンザウイルス、HIVウイルス、または肝炎ウイルスである、段落15のシステム。
17. 前記標的コロナウイルス分析物は、SARS-CoV-2、またはその構成要素である、段落16のシステム。
18. 前記標的分析物は、スパイクタンパク質、膜タンパク質、ヘマグルチニンタンパク質、またはエンベロープタンパク質からなる群より選択されるSARS-CoV-2の構成要素である、段落17のシステム。
19. 前記標的分析物は、IgG、IgM、およびIgAからなる群より選択される、段落1~14のいずれかのシステム。
20. 生物学的サンプル中の少なくとも1つのウイルスを検出するためのシステムであって、
(i)前記少なくとも1つのウイルスとともに検出可能な複合体をつくることができる第1および第2の結合剤を含む、2結合剤アッセイ;ならびに
(ii)前記検出可能な複合体を検出するための検出デバイス
を含み、
前記検出デバイスはグルコースメーターである、システム。
21. 前記グルコースメーターは、検査ストリップ上の生物学的サンプル中のグルコースに関するセンサー出力を有するグルコースセンサーを含む、段落20のシステム。
22. 前記生物学的サンプルは、限定ではないがグルコースなどの糖と混合される、段落20のシステム。
23. 前記生物学的サンプルは、限定ではないがグルコースなどの糖と、約0.01 mM~約1 Mの濃度で混合される、段落22のシステム。
24. 前記第1および第2の結合剤は、アプタマー、抗体、タンパク質、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される、段落20~23のいずれかのシステム。
25. 前記第1の結合剤がアプタマーであり、かつ前記第2の結合剤が抗体であり、前記抗体はグルコースオキシダーゼと連結されている、段落20~24のいずれかのシステム。
26. 前記第1および第2の結合剤は、前記標的分析物上の異なる部位と結合する、段落20~25のいずれかのシステム。
27. 前記第1および第2の結合剤は、前記標的分析物に対し、約1:1000~約1000:1のKdを有する、段落26のシステム。
28. 前記第1の結合剤の結合親和性は、前記第2の結合剤の結合親和性よりも弱い、段落26または27のシステム。
29. 前記標的分析物は、全ウイルスまたはその構成要素である、段落20~28のいずれかのシステム。
30. 前記ウイルスは、ベータコロナウイルスである、段落29のシステム。
31. 前記標的分析物は、SARS-CoV-2またはその構成要素である、段落30のシステム。
32. 前記標的分析物は、スパイクタンパク質、膜タンパク質、ヘマグルチニンタンパク質、またはエンベロープタンパク質からなる群より選択されるSARS-CoV-2の構成要素である、段落31のシステム。
33. 前記標的分析物は、IgG、IgM、およびIgAからなる群より選択される、段落20~28のいずれかのシステム。
34. 診断的評価のための方法であって、
(i)対象から生物学的サンプルを収集する段階であって、前記生物学的サンプルは血液ではない、段階;
(ii)前記生物学的サンプルをグルコースの存在下で検査ストリップに添加する段階であって、前記検査ストリップが、前記生物学的サンプル中に少なくとも1つの標的分析物が存在する場合はそれとともに検出可能な複合体をつくることができる第1および第2の結合剤を含む、段階;
(iii)前記生物学的サンプルを前記検査ストリップとともにインキュベートする段階、またはインキュベートしない段階;
(iv)前記検査ストリップを検出デバイスに差し込む段階;
(v)検出可能な複合体があればそのレベルを、グルコースとグルコースオキシダーゼとの化学反応を通して検出する段階;ならびに
(vi)検出可能な複合体が生成された場合はそのレベルと、前記少なくとも1つの生物学的サンプル中に標的分析物があればその量とを相関させる段階であって、それによって診断的評価を提供する、段階
を含む、方法。
35. 診断的評価のための方法であって、
(i)対象から生物学的サンプルを収集する段階であって、前記生物学的サンプルは、尿、汗、眼房水を含めた眼性液、血液、糞便、皮脂、呼吸器由来の飛沫、精液、膣粘液、耳垢、表皮細胞、または鼻咽頭検体に由来する、段階;
(ii)前記収集したサンプルを第2の結合剤の存在下で水性の溶液/混合物中1倍~100倍希釈する段階;
(iii)前記生物学的サンプルおよび第2の結合剤を検査ストリップに添加する段階であって、前記検査ストリップが、前記生物学的サンプル中に少なくとも1つの標的分析物が存在する場合はそれとともに検出可能な複合体をつくることができる第1の結合剤を含む、段階;
(iv)前記生物学的サンプルを前記検査ストリップとともにインキュベートする段階、またはインキュベートしない段階;
(v)前記検査ストリップを検出デバイスに差し込む段階;
(vi)検出可能な複合体があればそのレベルを、グルコースとグルコースオキシダーゼとの化学反応を通して検出する段階;ならびに
(vii)検出可能な複合体が生成された場合はそのレベルと、前記少なくとも1つの生物学的サンプル中に標的分析物があればその量とを相関させる段階であって、それによって診断的評価を提供する、段階
を含む、方法。
36. 前記生物学的サンプルは、唾液である、段落34および35の方法。
37. 前記検出デバイスは、グルコースメーターである、段落34および35の方法。
38. (viii)臨床医または訓練された医療提供者によるその後の検討のために、前記診断的評価または結果を電子デバイス、データベース、またはクラウドサーバーに送信する段階;および
(ix)前記診断的評価の方法を実施した個人に、前記診断的評価を提供する段階
をさらに含む、段落34および35の方法。
39. 前記個人は、前記対象である、段落38の方法。
40. (vi、viii)前記診断的評価に応じて前記対象に1つまたは複数の治療レジメンを推奨する、指示する、および/または投与する段階
をさらに含む、段落34~37のいずれかの方法。
41. 診断的評価のための方法であって、
(i)対象から生物学的サンプルを収集する段階であって、前記生物学的サンプルは、尿、汗、眼房水を含めた眼性液、血液、糞便、皮脂、呼吸器由来の飛沫、精液、膣粘液、耳垢、表皮細胞、または鼻咽頭検体に由来する、段階;
(ii)前記生物学的サンプルを検査ストリップに添加する段階であって、前記検査ストリップが、前記生物学的サンプル中に少なくとも1つの標的分析物が存在する場合はそれとともに検出可能な複合体をつくることができる第1および第2の結合剤を含む、段階;
(iii)前記生物学的サンプルを前記検査ストリップとともにインキュベートする段階、またはインキュベートしない段階;
(iv)前記検査ストリップをグルコメーターなどの検出デバイスに差し込む段階;
(v)検出可能な複合体があればそのレベルを、グルコースとグルコースオキシダーゼとの化学反応を通して検出する段階;ならびに
(vi)検出可能な複合体が生成された場合はそのレベルと、前記少なくとも1つの生物学的サンプル中の標的分析物の量とを相関させる段階であって、それによって診断的評価を提供する、段階
を含む、方法。
42. 診断的評価のための方法であって、
(i)対象から生物学的サンプルを収集する段階であって、前記生物学的サンプルは、尿、汗、眼房水を含めた眼性液、血液、糞便、皮脂、呼吸器由来の飛沫、精液、膣粘液、耳垢、表皮細胞、または鼻咽頭検体に由来する、段階;
(ii)前記収集したサンプルを第2の結合剤の存在下で水性の溶液/混合物中1倍~100倍希釈する段階;
(iii)前記生物学的サンプルおよび第2の結合剤を検査ストリップに添加する段階であって、前記検査ストリップが、前記生物学的サンプル中に少なくとも1つの標的分析物が存在する場合はそれとともに検出可能な複合体をつくることができる第1の結合剤を含む、段階;
(iv)前記生物学的サンプルを前記検査ストリップとともにインキュベートする段階、またはインキュベートしない段階;
(v)前記検査ストリップをグルコメーターなどの検出デバイスに差し込む段階;
(vi)検出可能な複合体があればそのレベルを、グルコースとグルコースオキシダーゼとの化学反応を通して検出する段階;ならびに
(vii)検出可能な複合体が生成された場合はそのレベルと、前記少なくとも1つの生物学的サンプル中の標的分析物の量とを相関させる段階であって、それによって診断的評価を提供する、段階
を含む、方法。
43. (viii)前記診断的評価に応じて1つまたは複数の治療レジメンを推奨する、指示する、および/または投与する段階
をさらに含む、段落41および42の方法。
44. 診断的評価のための方法であって、
(i)対象から生物学的サンプルを収集する段階であって、前記生物学的サンプルは、尿、汗、眼房水を含めた眼性液、血液、糞便、皮脂、呼吸器由来の飛沫、精液、膣粘液、耳垢、表皮細胞、または鼻咽頭検体に由来する、段階;
(ii)前記生物学的サンプルを検査ストリップに添加する段階であって、前記検査ストリップが、前記生物学的サンプル中に少なくとも1つの標的分析物が存在する場合はそれとともに検出可能な複合体をつくることができる第1および第2の結合剤を含む、段階;
(iii)前記生物学的サンプルを前記検査ストリップとともにインキュベートする段階;
(iv)前記検査ストリップをグルコメーターなどの検出デバイスに差し込む段階;
(v)検出可能な複合体があればそのレベルを、グルコースとグルコースオキシダーゼとの化学反応を通して検出する段階;
(vi)検出可能な複合体が生成された場合はそのレベルと、前記少なくとも1つの生物学的サンプル中に標的分析物があればその量とを相関させる段階であって、それによって診断的評価を提供する、段階;
(vii)臨床医または訓練された医療提供者によるその後の検討のために、前記診断的評価または結果を電子デバイス、データベース、またはクラウドサーバーに送信する段階;ならびに
(viii)前記診断的評価の方法を実施した個人への、前記診断的評価またはアウトカムの送信
を含む、方法。
45. 診断的評価のための方法であって、
(i)対象から生物学的サンプルを収集する段階であって、前記生物学的サンプルは、尿、汗、眼房水を含めた眼性液、血液、糞便、皮脂、呼吸器由来の飛沫、精液、膣粘液、耳垢、表皮細胞、または鼻咽頭検体に由来する、段階;
(ii)前記収集したサンプルを第2の結合剤の存在下で水性の溶液/混合物中1倍~100倍希釈する段階;
(iii)前記生物学的サンプルを検査ストリップに添加する段階であって、前記検査ストリップが、前記生物学的サンプル中に少なくとも1つの標的分析物が存在する場合はそれとともに検出可能な複合体をつくることができる第1の結合剤を含む、段階;
(iv)前記生物学的サンプルを前記検査ストリップとともにインキュベートする段階;
(v)前記検査ストリップをグルコメーターなどの検出デバイスに差し込む段階;
(vi)検出可能な複合体があればそのレベルを、グルコースとグルコースオキシダーゼとの化学反応を通して検出する段階;
(vii)検出可能な複合体が生成された場合はそのレベルと、前記少なくとも1つの生物学的サンプル中に標的分析物があればその量とを相関させる段階であって、それによって診断的評価を提供する、段階;
(viii)臨床医または訓練された医療提供者によるその後の検討のために、前記診断的評価または結果を電子デバイス、データベース、またはクラウドサーバーに送信する段階;ならびに
(ix)前記診断的評価の方法を実施した個人への、前記診断的評価またはアウトカムの送信
を含む、方法。
46. 前記個人は、前記対象である、段落44および45の方法。
47. (ix、x)前記診断的評価に応じて前記対象に1つまたは複数の治療レジメンを推奨する、指示する、および/または投与する段階
をさらに含む、段落44および45の方法。
48. 1つまたは複数の異なる標的分析物が、同時にまたは連続的に評価される、段落1~33もしくは76~98のいずれかのシステム、または段落34~47もしくは56~75もしくは99~104のいずれかの方法。
49. 段落1~33のいずれかのシステムまたは段落34~47もしくは56~75のいずれかの方法で使用される、検査ストリップであって、
(i)基体、第1および第2の結合剤の少なくとも1つ、ならびに2つもしくはそれ以上の電極;
(ii)基体、第1および第2の結合剤両方、ならびに2つもしくはそれ以上の電極;
(iii)第1および第2の結合剤の少なくとも1つ、ならびに2つもしくはそれ以上の電極;または
(iv)第1および第2の結合剤両方、ならびに2つもしくはそれ以上の電極
の少なくとも1つを含む、検査ストリップ。
50. (i)炭素、鉄、パラジウム、白金、または金でできた1つまたは複数の平面または共面電極;
(ii)メディエーターとしてのフェロシアン化第一鉄塩などの鉄塩で被覆された電極;
(iii)メディエーターとしてのプルシアンブルーで被覆された電極;
(iv)電解質溶液と接面する電極が(半)導体固体であるn電極セットアップ;
(v)前記電極セットアップが、作用電極、基準電極、および対または補助電極を含む;
(vi)電流リードとセンスリードとが接続されており、作用リードおよび作用センスリードが作用電極と接続されており、かつ基準リードおよび対リードが第2の補助、対、または擬似/擬基準電極と接続されている、2電極セットアップ;
(vii)基準リードが、対リードから分離されており、かつ作用および作用センスリードの両方が取りつけられている作用電極の至近点を測定するように大抵配置される第3の電極と接続されている、3電極セットアップ;
(viii)前記基準リードに加えて、作用センスリードが作用電極から切り離されている、4電極セットアップ;ならびに/あるいは
(ix)電気化学セル全体の電圧低下が正味ゼロとなるように、ストリップ内で作用電極リードと対電極リードとが共に短絡される、無抵抗電流計
の少なくとも1つを含む、検査ストリップ。
51. 前記第1の結合剤は、多孔質ポリマー、金属、またはセラミック膜に固定化され、かつ前記膜は電極の上または間に配置される、段落49または50の検査ストリップ。
52. 前記膜はニトロセルロースである、段落51の検査ストリップ。
53. 段落49、50、51、または52のいずれかの検査ストリップを含む、キット。
54. 前記検査ストリップの使用のための説明を含む、段落53のキット。
55. グルコメーターまたはほかの電気化学的検出デバイスをさらに含む、段落53のキット。
56. (i)対象由来の生物学的サンプルを準備する段階、
(ii)前記生物学的サンプル中の標的分析物の存在を、上記段落のシステムを使って検出する段階であって、前記標的分析物は、SARS-CoV-2ウイルスまたはその構成要素である、段階;および
(iii)任意で、前記対象を治療剤で治療する段階
を含む、方法。
57. 前記生物学的サンプルは、唾液である、段落56の方法。
58. 前記標的分析物は、SARS-CoV-2ウイルスである、段落56~57のいずれかの方法。
59. 前記標的分析物は、SARS-CoV-2ウイルスの構成要素である、段落56~57のいずれかの方法。
60. 前記構成要素は、Sタンパク質またはその断片である、段落56~59のいずれかの方法。
61. (i)対象由来の生物学的サンプルを準備する段階、
(ii)前記生物学的サンプル中の標的分析物の存在を、上記段落のシステムを使って検出する段階であって、前記標的分析物は、CoVウイルスまたはその構成要素である、段階、および
(iii)任意で、前記対象を治療剤で治療する段階
を含む、方法。
62. 前記生物学的サンプルは、唾液である、段落61の方法。
63. 前記標的分析物は、CoVウイルスである、段落61または62の方法。
64. (i)対象由来の生物学的サンプルを準備する段階、
(ii)前記生物学的サンプル中の標的分析物の存在を、上記段落のシステムを使って検出する段階であって、前記標的分析物は、インフルエンザウイルスまたはその構成要素である、段階、および
(iii)任意で、前記対象を治療剤で治療する段階
を含む、方法。
65. 前記生物学的サンプルは、唾液である、段落64の方法。
66. 前記標的分析物は、インフルエンザウイルスである、段落64または65の方法。
67. 前記標的分析物は、インフルエンザウイルスの構成要素である、段落64または65の方法。
68. (i)対象由来の生物学的サンプルを準備する段階、
(ii)前記生物学的サンプル中の標的分析物の存在を、上記段落のシステムを使って検出する段階であって、前記標的分析物は、HIVウイルスまたはその構成要素である、段階、および
(iii)任意で、前記対象を治療剤で治療する段階
を含む、方法。
69. 前記生物学的サンプルは、唾液である、段落68の方法。
70. 前記標的分析物は、HIVウイルスである、段落68または69の方法。
71. 前記標的分析物は、HIVウイルスの構成要素である、段落68または69の方法。
72. (i)対象由来の生物学的サンプルを準備する段階、
(ii)前記生物学的サンプル中の標的分析物の存在を、上記段落のシステムを使って検出する段階であって、前記標的分析物は、肝炎ウイルスまたはその構成要素である、段階、および
(iii)任意で、前記対象を治療剤で治療する段階
を含む、方法。
73. 前記生物学的サンプルは、唾液である、段落72の方法。
74. 前記標的分析物は、肝炎ウイルスである、段落72または73の方法。
75. 前記標的分析物は、肝炎ウイルスの構成要素である、段落72または73の方法。
76. 生物学的サンプル中の少なくとも1つの標的核酸を検出するためのシステムであって、
(i)前記標的核酸が配列特異的エンドヌクレアーゼおよびガイド核酸に特異的に結合すると、コラテラル核酸を切断する、配列特異的エンドヌクレアーゼおよびガイド核酸;
(ii)前記切断されたコラテラル核酸とともに検出可能な複合体をつくることができる、検出核酸;ならびに
(iii)前記検出可能な複合体を検出するための検出デバイス
を含み、
前記検出デバイスは、オキシダーゼベースのアンペロメトリックセンサーであり、かつ前記生物学的サンプルは、汗、唾液、血清、粘液、または血液中に存在している、
システム。
77. 前記配列特異的エンドヌクレアーゼは、Cas酵素である、段落76のシステム。
78. 前記配列特異的エンドヌクレアーゼは、Cas12aまたはCas13である、段落76または77のシステム。
79. 前記ガイド核酸は、前記標的核酸の少なくとも一部分に対し相補的または実質的に相補的である、段落76~78のいずれかのシステム。
80. 前記検出核酸は、前記切断されたコラテラル核酸の少なくとも一部分に対し相補的または実質的に相補的である、段落76~79のいずれかのシステム。
81. 前記検出核酸は、前記切断されたコラテラル核酸とハイブリダイズする、段落76~80のいずれかのシステム。
82. 前記検出核酸は、切断されていないコラテラル核酸とはハイブリダイズしない、段落76~81のいずれかのシステム。
83. 前記検出核酸は、検査ストリップと連結されている、段落76~82のいずれかのシステム。
84. 前記コラテラル核酸は、グルコースオキシダーゼと連結されている、段落76~83のいずれかのシステム。
85. グルコースオキシダーゼと連結されたアプタマーをさらに含む、段落76~84のいずれかのシステム。
86. 前記アプタマーは、前記切断されたコラテラル核酸の少なくとも一部分と特異的に結合する、段落85のシステム。
87. 前記アプタマーは、前記切断されたコラテラル核酸の一本鎖部分と結合する、段落86のシステム。
88. 前記アプタマーは、前記検出核酸とハイブリダイズした前記切断されたコラテラル核酸の二本鎖部分と結合する、段落86のシステム。
89. グルコースオキシダーゼと連結された抗体をさらに含む、段落76~88のいずれかのシステム。
90. 前記抗体は、前記切断されたコラテラル核酸の少なくとも一部分と特異的に結合する、段落89のシステム。
91. 前記コラテラル核酸は、グルコースオキシダーゼと特異的に結合する抗体と連結されている、段落76~90のいずれかのシステム。
92. 前記コラテラル核酸は、親和性対の第1のメンバーと連結されている、段落76~91のいずれかのシステム。
93. 親和性対の第2のメンバーと連結されたグルコースオキシダーゼをさらに含む、段落92のシステム。
94. 親和性対の第1のメンバーおよび第2のメンバーが、
ハプテン性または抗原性化合物と、対応する抗体またはその結合部分もしくはその断片との組み合わせ;ジゴキシゲニンおよび抗ジゴキシゲニン;マウス免疫グロブリンおよびヤギ抗マウス免疫グロブリン;非免疫的結合対;ビオチンおよびアビジン;ビオチンおよびストレプトアビジン;ホルモンおよびホルモン結合タンパク質;チロキシンおよびコルチゾールホルモン結合タンパク質;受容体および受容体アゴニスト;受容体および受容体アンタゴニスト;アセチルコリン受容体およびアセチルコリンまたはそのアナログ;IgGおよびプロテインA;レクチンおよび炭水化物;酵素および酵素補因子;酵素および酵素阻害剤;核酸二本鎖を作ることのできる相補的オリゴヌクレオチド対;ならびに負電荷をもつ第1の分子および正電荷をもつ第2の分子
からなる群より選択される、段落92または93のシステム。
95. 親和性対の第1のメンバーおよび第2のメンバーは、ストレプトアビジンおよびビオチンである、段落92または93のシステム。
96. ストレプトアビジンは前記コラテラル核酸と連結され、ビオチンは前記グルコースオキシダーゼと連結されている、段落92~95のいずれかのシステム。
97. ビオチンは前記コラテラル核酸と連結され、ストレプトアビジンは前記グルコースオキシダーゼと連結されている、段落92~95のいずれかのシステム。
98. 前記標的核酸はウイルス核酸である、段落76~97のいずれかのシステム。
99. 段落76~98のいずれかのシステムを用いて標的核酸を検出するための方法であって、
(i)対象から生物学的サンプルを収集し、かつ任意で、前記生物学的サンプルから核酸を抽出する段階;
(ii)前記生物学的サンプルを、配列特異的エンドヌクレアーゼ、ガイド核酸、およびコラテラル核酸と接触させる段階であって、前記標的核酸が存在する場合は、そのように接触させることが前記コラテラル核酸の切断という結果をもたらす、段階;
(iii)前記生物学的サンプルをグルコースの存在下で検査ストリップに添加する段階であって、前記検査ストリップが、前記切断されたコラテラル核酸が存在する場合はそれとともに検出可能な複合体をつくることができる検出核酸を含む、段階;
(iv)前記生物学的サンプルを前記検査ストリップとともにインキュベートする段階、またはインキュベートしない段階;
(v)前記検査ストリップを検出デバイスに差し込む段階;
(vi)検出可能な複合体があればそのレベルを、グルコースとグルコースオキシダーゼとの化学反応を通して検出する段階;ならびに
(vii)検出可能な複合体が生成された場合はそのレベルと、前記少なくとも1つの生物学的サンプル中の標的分析物の量とを相関させる段階であって、それによって診断的評価を提供する、段階
を含む、方法。
100. 前記生物学的サンプルは、唾液である、段落99の方法。
101. 前記検出デバイスは、グルコースメーターである、段落99または100の方法。
102. (viii)臨床医または訓練された医療提供者によるその後の検討のために、前記診断的評価または結果を電子デバイス、データベース、またはクラウドサーバーに送信する段階;および
(ix)前記診断的評価の方法を実施した個人に、前記診断的評価を提供する段階
をさらに含む、段落99~101のいずれかの方法。
103. 前記個人は、前記対象である、段落99~102のいずれかの方法。
104. (viii)前記診断的評価に応じて前記対象に1つまたは複数の治療レジメンを推奨する、指示する、および/または投与する段階
をさらに含む、段落99~103のいずれかの方法。
105. 検出核酸と連結されている、段落49~52のいずれかの検査ストリップ。
106. 段落105の検査ストリップを含む、キット。
107. 生物学的サンプル中の少なくとも1つの標的分析物を検出するためのセンサーであって、
(i)前記少なくとも1つの標的分析物とともに検出可能な複合体をつくることができる第1および第2の結合剤を含む、2結合剤アッセイ;ならびに
(ii)前記検出可能な複合体を検出するための検出デバイス
を含み、
前記検出デバイスは、オキシダーゼベースのアンペロメトリックセンサーであり、前記生物学的サンプルは、汗、唾液、血清、粘液、または血液中に存在している、
センサー。
108. 生物学的サンプル中の少なくとも1つのウイルスを検出するためのセンサーであって、
(i)前記少なくとも1つのウイルスとともに検出可能な複合体をつくることができる第1および第2の結合剤を含む、2結合剤アッセイ;ならびに
(ii)前記検出可能な複合体を検出するための検出デバイス
を含み、
前記検出デバイスは、グルコースメーターである、センサー。
109. 生物学的サンプル中の少なくとも1つの標的核酸を検出するためのセンサーであって、
(i)前記標的核酸が配列特異的エンドヌクレアーゼおよびガイド核酸に特異的に結合すると、コラテラル核酸を切断する、配列特異的エンドヌクレアーゼおよびガイド核酸;
(ii)前記切断されたコラテラル核酸とともに検出可能な複合体をつくることができる、検出核酸;ならびに
(iii)前記検出可能な複合体を検出するための検出デバイス
を含み、
前記検出デバイスは、オキシダーゼベースのアンペロメトリックセンサーであり、前記生物学的サンプルは、汗、唾液、血清、粘液、または血液中に存在している、
センサー。
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0525
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0525】
H1N1検出の較正プロット。10 μLの1 mg/mL ストレプトアビジン-NCに続きH1N1のヘマグルチニンタンパク質を標的とする10 μLの40 μM アプタマーの添加により、センサーを調製した。ブロック剤は5 μLの3% BSAであった。この実験に用いた抗体-GOx濃度は、PBST中0.1 mg/mLであった。105 pfu/mL~10 pfu/mLの異なるウイルス濃度をDMEMバッファーで希釈することにより調製した。対照サンプルとして、ウイルスを含まないDMEMバッファーも査定した。ビリオンを15分間インキュベートし、次いでAb-GOxを添加し、次いでPBST(0.05% TWEEN-20により洗浄した。クロノアンペロメトリー測定を、-0.2 Vで、1500秒間実施した。電流vs.時間グラフの曲線下面積を異なるビリオン濃度についてプロットした。105~102 pfu/mLのウイルス濃度と対照サンプルとの間に統計学的有意差があった(たとえば、図4参照)。
【手続補正18】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0558
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0558】
検査は常に、感染力のある人を特定し隔離して感染拡大を最小限化するための鍵である。症候性および前症候性の人(たとえば、兵士)両方を選別し隔離することが肝要である。検査のゴールドスタンダードである逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)は、高い偽陰性率を有し、かつ感染を検出するのにウイルス核酸を必要とする。そのため、ウイルス核酸を含有しない血清および尿の使用はRT-PCR検査から除外され、鼻咽頭スワブなどの呼吸器系(respiratory track)サンプルしか使えない。それに加えて、RT-PCR法は、ベテラン技師、多量の試薬、スワブ、および設備投資機器を必要とし、かつ結果を得るまで長い所要時間(数日)がかかるため、軍配備基地または戦場での検査の助けにはならない。
【手続補正19】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0596
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0596】
グルコメーターにおいて使用されるSARS-CoV-2検査ストリップが設計されて作製され、グルコメーターの読み取り値とウイルス抗原濃度との関係が評価され得る。CoVストリップは、商業用グルコメーターにおいて動作し得、バッファーおよび人工唾液におけるグルコメーターの読み取り値vs.ウイルス抗原濃度の較正曲線が実施され得(ダイナミックレンジ>4~10ログ)、検査ストリップの貯蔵寿命は>1年であり得、一態様では、検査時間は<5分であり得る。
【国際調査報告】