IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ レイセオン カンパニーの特許一覧

特表2023-534984調整可能なモノリシックIII族-窒化物フィルタバンク
<>
  • 特表-調整可能なモノリシックIII族-窒化物フィルタバンク 図1
  • 特表-調整可能なモノリシックIII族-窒化物フィルタバンク 図2
  • 特表-調整可能なモノリシックIII族-窒化物フィルタバンク 図3
  • 特表-調整可能なモノリシックIII族-窒化物フィルタバンク 図4A
  • 特表-調整可能なモノリシックIII族-窒化物フィルタバンク 図4B
  • 特表-調整可能なモノリシックIII族-窒化物フィルタバンク 図5A
  • 特表-調整可能なモノリシックIII族-窒化物フィルタバンク 図5B
  • 特表-調整可能なモノリシックIII族-窒化物フィルタバンク 図5C
  • 特表-調整可能なモノリシックIII族-窒化物フィルタバンク 図5D
  • 特表-調整可能なモノリシックIII族-窒化物フィルタバンク 図6
  • 特表-調整可能なモノリシックIII族-窒化物フィルタバンク 図7
  • 特表-調整可能なモノリシックIII族-窒化物フィルタバンク 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-15
(54)【発明の名称】調整可能なモノリシックIII族-窒化物フィルタバンク
(51)【国際特許分類】
   H03H 7/01 20060101AFI20230807BHJP
   H01P 1/209 20060101ALI20230807BHJP
   H01P 1/15 20060101ALI20230807BHJP
   H03H 9/17 20060101ALI20230807BHJP
   H03H 9/54 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
H03H7/01 C
H01P1/209
H01P1/15
H03H9/17 F
H03H9/54 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504010
(86)(22)【出願日】2021-09-09
(85)【翻訳文提出日】2023-01-19
(86)【国際出願番号】 US2021049679
(87)【国際公開番号】W WO2022056138
(87)【国際公開日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】17/018,897
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ソリック,ジェイソン シー.
(72)【発明者】
【氏名】ラロシュ,ジェフリー アール.
(72)【発明者】
【氏名】チュンベス,エドゥアルド エム.
(72)【発明者】
【氏名】ペチャルスキ,アダム イー.
【テーマコード(参考)】
5J006
5J024
5J108
【Fターム(参考)】
5J006JA05
5J006LA21
5J024AA03
5J024BA11
5J024CA08
5J108AA07
5J108BB08
5J108JJ04
(57)【要約】
単チップのScAlNの調整可能なフィルタバンクの実施形態は、モノリシックプラットフォーム上に集積された、複数のスイッチング素子と、複数のチャネルフィルタと、を有する。モノリシックプラットフォームは、単結晶ベースを有し、スイッチング素子の各々は、単結晶ベース上に製造された、スカンジウムアルミニウム窒化物(ScAlN)または他のIII族-窒化物のトランジスタ構造の少なくとも1つを有してもよい。これらの実施形態では、各チャネルフィルタは、単結晶ベース上に製造された単結晶エピタキシャルScAlN層を1つ以上含むマルチレイヤScAlN構造を有する。各チャネルフィルタのScAlN層は、RFチャネルの関連付けられた1つの所望の周波数特性に基づいてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単チップのScAlNの調整可能なフィルタバンクであって、
複数のスイッチング素子と、
複数のチャネルフィルタであって、前記スイッチング素子および前記チャネルフィルタは、モノリシックプラットフォーム上に集積され、当該調整可能なフィルタバンクは、複数のRFチャネルを選択的にフィルタリングするように構成される、複数のチャネルフィルタと、
を有し、
各チャネルフィルタは、前記複数のRFチャネルの1つに関連付けられ、一組の前記スイッチング素子の間にRF信号経路を提供するように構成され、
前記モノリシックプラットフォームは、単結晶ベースを有し、
前記スイッチング素子の各々は、前記単結晶ベース上に製造された、スカンジウムアルミニウム窒化物(ScAlN)または他のIII族-窒化物のトランジスタ構造の少なくとも1つを有し、
各チャネルフィルタは、前記単結晶ベース上に製造された単結晶エピタキシャルScAlN層を1つ以上含む、マルチレイヤのScAlN構造を有し、
前記ScAlN層の数は、前記チャネルフィルタの関連付けられた1つの所望の周波数特性に基づく、単チップのScAlNの調整可能なフィルタバンク。
【請求項2】
各ScAlN層は、スカンジウムドープ窒化アルミニウム薄膜を有し、
前記単結晶ベースは、シリコン-炭素(SiC)、シリコン(Si)、窒化ガリウム(GaN)、および窒化アルミニウム(AlN)の1つを含む、請求項1に記載の単チップのScAlNの調整可能なフィルタバンク。
【請求項3】
前記ScAlN層は、スカンジウム(Sc)の変化する濃度を有し、
層の数および層当たりのScの濃度は、前記所望の周波数特性に基づいて選択される、請求項2に記載の単チップのScAlNの調整可能なフィルタバンク。
【請求項4】
前記ScAlN層は、高濃度のScと低濃度のScの交互のScAlN層を有する、請求項3に記載の単チップのScAlNの調整可能なフィルタバンク。
【請求項5】
前記低濃度のScは、0~25%の範囲であり、前記高濃度のScは、25~50%の範囲である、請求項4に記載の単チップのScAlNの調整可能なフィルタバンク。
【請求項6】
前記マルチレイヤScAlN構造の全ての層の成長の後、前記ScAlN層の一部は、製造の間、関連するチャネルに対する所望の周波数特性に基づいて、選択的にエッチングされる、請求項5に記載の単チップのScAlNの調整可能なフィルタバンク。
【請求項7】
前記マルチレイヤScAlN構造の前記層は、エピタキシャル再成長を有する、請求項6に記載の単チップのScAlNの調整可能なフィルタバンク。
【請求項8】
前記マルチレイヤScAlN構造の前記層は、バルク音響波(BAW)共振器の一部であり、
各ScAlN層は、圧電薄膜を有し、
前記所望の周波数特性において、各チャネルフィルタは、前記圧電薄膜の強誘電効果のいずれかを用いて、DCバイアスにより個別に調整可能である、請求項7に記載の単チップのScAlNの調整可能なフィルタバンク。
【請求項9】
前記チャネルフィルタの1または2以上は、1または2以上のモノリシックに集積されたScAlNまたはIII族-窒化物ベースのバラクタを有し、該バラクタは、前記チャネルフィルタの前記所望の周波数特性を調整するように構成される、請求項8に記載の単チップのScAlNの調整可能なフィルタバンク。
【請求項10】
前記モノリシックプラットフォームは、単一のモノリシックプラットフォームを有し、
前記スイッチング素子および前記チャネルフィルタは、前記単一のモノリシックプラットフォーム上に集積される、請求項9に記載の単チップのScAlNの調整可能なフィルタバンク。
【請求項11】
単チップ構造であって、
活性素子と、
フィルタであって、前記活性素子および前記フィルタは、モノリシックプラットフォーム上に集積され、前記モノリシックプラットフォームは、単結晶ベースを有する、フィルタと、
を有し、
前記活性素子は、前記単結晶ベース上に製造された、スカンジウムアルミニウム窒化物(ScAlN)、または他のIII族-窒化物のトランジスタ構造の少なくとも1つを有し、
前記フィルタは、前記単結晶ベース上に製造された単結晶エピタキシャルScAlN層を含む、マルチレイヤScAlN構造を有し、
前記ScAlN層の数は、前記フィルタの所望の周波数特性に基づく、単チップ構造。
【請求項12】
前記活性素子は、低ノイズ増幅器(LNA)を有する、請求項11に記載の単チップ構造。
【請求項13】
前記活性素子は、スイッチング素子を有する、請求項11に記載の単チップ構造。
【請求項14】
各ScAlN層は、スカンジウムドープされた窒化アルミニウム薄膜を有し、
前記単結晶ベースは、シリコン-炭素(SiC)、シリコン(Si)、窒化ガリウム(GaN)、および窒化アルミニウム(AlN)の1つを含む、請求項11に記載の単チップ構造。
【請求項15】
前記ScAlN層は、高濃度のScと低濃度のScの交互のScAlN層を有する、請求項14に記載の単チップ構造。
【請求項16】
前記マルチレイヤScAlN構造の全ての層の成長の後、前記ScAlN層の一部は、製造の間、前記フィルタの所望の周波数特性に基づいて、選択的にエッチングされる、請求項15に記載の単チップ構造。
【請求項17】
前記マルチレイヤScAlN構造の前記層は、エピタキシャル再成長を有する、請求項16に記載の単チップ構造。
【請求項18】
前記フィルタは、前記モノリシックプラットフォーム上に集積された複数のフィルタの1つであり、
各フィルタのScAlN層の数は、関連するフィルタの所望の周波数特性に基づく、請求項17に記載の単チップ構造。
【請求項19】
RFフロントエンドの機器であって、
複数のチャネルからRF信号を受信するように構成された低ノイズ増幅器(LNA)と、
受信された前記RF信号からの画像信号を拒絶するように構成された画像拒絶ミキサーと、
前記画像拒絶ミキサーからの出力信号をLO信号と混合して、IF信号を生成するように構成されたミキサーと、
を有し、
前記LNAおよび前記画像拒絶ミキサーは、モノリシックプラットフォーム上に集積された単チップ構造を有し、
前記モノリシックプラットフォームは、単結晶ベースを有し、
前記LNAは、前記単結晶ベース上に製造されたスカンジウムアルミニウム窒化物(ScAlN)または他のIII族-窒化物のトランジスタ構造の少なくとも1つを有し、
前記画像拒絶フィルタは、前記単結晶ベース上に製造された単結晶エピタキシャルScAlN層を含む、マルチレイヤScAlN構造を有し、
前記ScAlN層の数は、前記画像拒絶フィルタの所望の周波数特性に基づく、機器。
【請求項20】
各ScAlN層は、スカンジウムドープ窒化アルミニウム薄膜を有し、
前記単結晶ベースは、シリコン-炭素(SiC)、シリコン(Si)、窒化ガリウム(GaN)、および窒化アルミニウム(AlN)の1つを含み、
前記ScAlN層は、スカンジウム(Sc)の変化する濃度を有し、
層の数および層当たりのScの濃度は、前記所望の周波数特性に基づいて選択される、請求項19に記載の機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2020年9月11日に出願された米国特許出願第17/018,897号に対する優先権の利益を主張するものであり、この出願は、その全体が参照により本願明細書に組み込まれている。
【0002】
本実施形態は、スカンジウムアルミニウム窒化物(ScAlN)と、他のIII族-窒化物回路素子およびフィルタとのモノリシック集積化に関する。いくつかの実施形態は、調整可能なフィルタバンクに関する。
【背景技術】
【0003】
従来のフィルタバンクは、サイズ、機能、および調整可能性の問題に悩まされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常のアプローチでは、個別のBAW装置およびスイッチの集積が必要となり、あるいは大きく機械的に調整される必要がある。従って、全般に、従来のフィルタおよびフィルタバンクのサイズ、機能、および調整可能性を克服した、調整可能なフィルタおよびフィルタバンクに対してニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
単チップのスカンジウムアルミニウム窒化物(ScAlN)の調整可能なフィルタバンクは、モノリシックプラットフォーム上に集積された、複数のスイッチング素子と、複数のチャネルフィルタと、を有する。モノリシックプラットフォームは、単結晶ベースを有し、スイッチング素子の各々は、単結晶ベース上に製造され、スカンジウアルミニウム窒化物(ScAlN)、または他のIII族-窒化物のトランジスタ構造を有し得る。これらの実施形態では、各チャネルフィルタは、単結晶ベース上に製造された1または2以上の単結晶エピタキシャルScAlN層を含む、マルチレイヤScAlN構造を有する。各チャネルフィルタのScAlN層は、RFチャネルの関連付けられた1つの所望の周波数特性に基づいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】ある実施形態による複数のチャネルフィルタを有するモノリシックフィルタバンクである。
図2】ある実施形態によるモノリシック装置の一部の断面図である。
図3】ある実施形態による層状ScAlN構造を示す図である。
図4A】ある実施形態による一例としての製造フローを示した図である。
図4B】ある実施形態による一例としての製造フローを示した図である。
図5A】ある実施形態による図4の製造フローにおける各種ステップを示した図である。
図5B】ある実施形態による図4の製造フローにおける各種ステップを示した図である。
図5C】ある実施形態による図4の製造フローにおける各種ステップを示した図である。
図5D】ある実施形態による図4の製造フローにおける各種ステップを示した図である。
図6】ある実施形態によるフィルタの機能回路図を示した図である。
図7】ある実施形態によるフィルタバンク/マルチプレクサの機能回路図を示した図である。
図8】ある実施形態によるフロントエンドモジュールの機能図を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の説明および図面には、当業者が実施することができるように、特定の実施形態が十分に記載される。他の実施形態では、構造、論理、電気的、プロセス、および他の変更が組み入れられてもよい。いくつかの実施形態の一部および特徴は、他の実施形態のそれらに含まれてもよく、またはそれらと代替されてもよい。特許請求の範囲に記載された実施形態は、これらの特許請求の範囲の全ての利用可能な等価物を包含する。
【0008】
本願に開示のいくつかの実施形態では、異なるまたは同じ周波数で、複数のバルク音響波(BAW)フィルタを、同じチップ上のスイッチ、増幅器、ミキサー、または他のScAlNおよびIII族-窒化物装置と集積化させることにより、従来のフィルタバンクのサイズ、機能、および調整性の問題が克服され得る。さらに、各BAWフィルタの周波数調整は、ScAlNの固有の巨大強誘電効果、またはバラクタ(varactor)のような他の装置技術により、達成されてもよい。これらは全て、同じチップ上に集積される。ScAlNでは、これまでにない周波数帯域幅が可能となる。また、この材料の成長は、損失を低減し、単一のチップ上に他の電子装置を集積することが可能となる。以下、これらの実施形態がより詳細に記載される。いくつかの実施形態では、チップスケールレベルで、調整可能で超小型のフィルタバンクが提供される。
【0009】
図1は、ある実施形態による、複数のチャネルフィルタを有するモノリシックフィルタバンクである。単チップのScAlN調整可能フィルタバンク102は、複数のRFチャネルを選択的にフィルタリングするように構成され得る。単チップのScAlN調整可能フィルタバンク102は、複数のスイッチング素子104および複数のチャネルフィルタ106を含んでもよい。スイッチング素子104およびチャネルフィルタ106は、モノリシックプラットフォーム202(図2)上に集積されてもよい。各チャネルフィルタ106は、複数のRFチャネルの1つと関連付けられ、一組のスイッチング素子104の間にRF信号経路が提供されるように構成されてもよい。
【0010】
図2は、ある実施形態によるモノリシック装置の一部の断面図である。モノリシックプラットフォーム202は、単結晶ベースを有し、スイッチング素子104の各々は、単結晶ベース202上に製造された、ScAlNまたは他のIII族-窒化物トランジスタ構造204を有してもよい。これらの実施形態では、各チャネルフィルタ106は、マルチレイヤ化ScAlN構造206を有し、この構造は、単結晶ベース202上に製造された、1または2以上の単結晶エピタキシャルScAlN層216(図3参照)を含む。いくつかの実施形態では、各チャネルフィルタ106のScAlN層216は、RFチャネルの関連する1つの所望の周波数特性(例えば、中心周波数および帯域幅)に基づく。ただし、実施形態の範囲は、これに限定されない。
【0011】
いくつかの実施形態では、モノリシックプラットフォーム202は、単結晶ベースを有し、スイッチング素子104の少なくとも一部は、単結晶ベース202上に製造された、スカンジウムアルミニウム窒化物(ScAlN)高電子移動度トランジスタ(HEMT)構造204のいずれかを有してもよい。ただし、実施形態の範囲は、これに限定されない。いくつかの実施形態では、モノリシックプラットフォーム202は、単結晶ベースを有し、スイッチング素子104の少なくとも一部は、単結晶ベース202上に製造された、窒化ガリウム(GaN)高電子移動度トランジスタ(HEMT)構造204を有してもよい。ただし、実施形態の範囲は、これに限定されない。
【0012】
いくつかの実施形態では、トランジスタ構造204の素子は、III族-窒化物装置の不均質な混合物を含んでもよい。これらの実施形態では、III族-窒化物装置は、例えば、ScAIN、GaN、InGaN、AlGaN、および他のIII族-窒化物装置を有してもよい。いくつかの実施形態では、トランジスタは、HEMT、MOSFET、MISFET、および他のトランジスタ構造を含んでもよい。
【0013】
これらの実施形態では、層の数、および特定の層におけるスカンジウム(Sc)の濃度は、各チャネルフィルタ106の周波数特性を決定してもよい。いくつかの実施形態では、単一のScAlN層を用いて、最大周波数が設定され得る。追加のエッチング停止層により、より低い共振周波数用のより厚いScAlN膜が可能となる。
【0014】
図3には、ある実施形態による層状ScAlN構造を示す。いくつかの実施態様では、各ScAlN層216は、スカンジウムドープされた窒化アルミニウム薄膜を有する。いくつかの実施態様では、単結晶ベース202は、シリコン-炭素(SiC)、シリコン(Si)、窒化ガリウム(GaN)、または窒化アルミニウム(AlN)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、単結晶ベース202は、III族-窒化物材料の不均質混合物を含んでもよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、ScAlN層216は、各種濃度のスカンジウム(Sc)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、図3に示すように、ScAlN層216は、Scの濃度が高いScAlN層と、Scの濃度が低いScAlN層との交互ScAlN層を有する。いくつかの実施形態では、低い濃度は、0~25%Scの範囲であってもよく、高い濃度は、25~50%Scの範囲であってもよい。ただし、実施形態の範囲はこの点に限定されない。いくつかの実施例では、高い%Sc濃度の層は、エッチング停止として使用されてもよい。%Sc組成の増加とともに、その選択性は、顕著に増加するためである。いくつかの実施形態では、Scの低い濃度は、0~25%の範囲であり、Scの高い濃度は、25~50%の範囲である。
【0016】
いくつかの実施形態では、マルチレイヤScAlN構造206の全ての層の成長の後、製造中に、関連するチャネルの所望の周波数特性に基づいて、ScAlN層216の一部が選択的にエッチングされてもよい。これらの実施形態では、Sc濃度の低い材料が選択的にエッチングされ、ピエゾの厚さが制御され、ウェハにわたって、周波数およびカップリング調整が可能になる。ある実施形態では、27%を超えるSc濃度により、強誘電特性(すなわち、強誘電効果)が提供される。この濃度は、所望の周波数特性に基づいて選択されてもよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、マルチレイヤScAlN構造206の層は、エピタキシャル再成長を含んでもよい。これらの実施形態では、HEMT構造の元の成長は、Si3N4でパターン化され、ScAlN再成長の窓が開けられてもよい。ただし、本実施形態の範囲は、これに限定されない。これにより、同じモノリシックプラットフォーム202上に、高帯域幅フィルタと高性能指標(FOM)スイッチを集積させることが可能となる。ただし、実施形態の範囲は、これに限定されない。
【0018】
いくつかの実施形態では、マルチレイヤScAlN構造206の層は、バルク音響波(BAW)共振器の一部であってもよい。これらの実施形態では、各ScAlN層216は、圧電薄膜を含んでもよい。いくつかの実施形態では、マルチレイヤScAlN構造206の層は、例えば、表面音響波(SAW)共振器、Lamb波共振器、および輪郭モード共振器を含む、他の音響装置種として作動されてもよい。ただし、実施形態の範囲は、これに限定されない。
【0019】
いくつかの実施形態では、各チャネルフィルタの所望の周波数特性は、DCバイアスで個々に調整可能であってもよい。これらの実施形態では、選択されたRFチャネルのチャネルフィルタ104に、DCバイアスが印加されてもよい。追加のDCバイアスが印加され、チャネルフィルタ106の所望の周波数特性(例えば、帯域幅および/または中心周波数)が変化してもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、モノリシックプラットフォーム202は、スイッチング素子104の代わりに、またはこれに加えて、1または2以上の増幅器を有してもよい。いくつかの実施形態では、1または2以上の増幅器は、チャネルフィルタ106の前または後のいずれかのRF信号経路に設けられた、低ノイズ増幅器(LNA)を有してもよい。ただし、実施形態の範囲は、これに限定されない。
【0021】
いくつかの実施形態では、1または2以上のチャネルフィルタ106は、チャネルフィルタ106の所望の周波数特性を調整するように構成された、1または2以上のモノリシックに集積されたScAlNおよびIII族-窒化物系のバラクタ(varactor)を含んでもよい。
【0022】
いくつかの実施形態は、活性素子104およびフィルタ106を有する、単チップ構造に関する。活性素子104およびフィルタ106は、モノリシックプラットフォーム202上に集積され、該モノリシックプラットフォーム202は、単結晶ベースを有する。これらの実施形態では、活性素子104は、スカンジウムアルミニウム窒化物(ScAlN)、窒化ガリウム(GaN)、または単結晶ベース202上に製造されたHEMT構造204のような、他のIII族-窒化物トランジスタのいずれかを有してもよい。フィルタ106は、マルチレイヤScAlN構造206を有し、これは、単結晶ベース202上に製造された単結晶エピタキシャルScAlN層216(図3)を含んでもよい。ScAlN層216の数は、フィルタ106の所望の周波数特性(例えば、中心周波数および帯域幅)に基づいてもよい。いくつかの実施形態では、活性素子は、低ノイズ増幅器(LNA)を有する。いくつかの他の実施形態では、活性素子は、スイッチング素子を含む。
【0023】
図4には、ある実施形態による一例としての製造フローを示す。製造フローは、エピタキシャル再成長を有する。これらの実施形態では、HEMT構造の元の成長は、Si3N4によりパターン化され、ScAlN再成長用の窓が開かれてもよい。これにより、同一装置上に、高帯域幅フィルタと高FOMスイッチを集積させることが可能となる。また、製造フローは、各種ScAlN層の選択的エッチングを含む。これらの実施形態では、希土類材料(例えば、Sc)の濃度が変化する層が使用されてもよい。この場合、ウェハにわたって周波数およびカップリングの調整が可能となり、よりSc濃度の高い材料のエッチング選択性を利用して、ピエゾ厚さを制御することができる。
【0024】
図5A乃至5Dには、ある実施形態による、図4の製造フローにおける各種ステップを示す。図5Aには、再成長窓を示す。図5Bには、誘電体内の開放コンタクト窓を示す。図5Cには、SiCの選択的エッチングを示す。図5Dには、裏面金属パターン処理を示す。
【0025】
図6には、ある実施形態によるフィルタの機能回路図を示す。図6に示す機能回路図は、チャネルフィルタ106(図1)を表してもよい。
【0026】
図7には、ある実施形態によるフィルタバンクおよびマルチプレクサの機能回路図を示す。フィルタバンクおよびマルチプレクサは、プラットフォーム202(図2)のようなモノリシックプラットフォーム上に集積されてもよい。
【0027】
図8には、ある実施形態によるフロントエンドモジュールの機能図を示す。図8に示した素子は、プラットフォーム202(図2)のようなモノリシックプラットフォーム上に集積されてもよい。これらの実施形態では、調整可能な単チップのGaNまたはScAlNプラットフォーム上に、増幅器およびミキサーとともに、超小型、超高品質因子(Q)のBAWフィルタが集積され、単一の局部発振器(LO)入力を有する装置の数が低減されてもよい。
【0028】
図8に示すいくつかの実施形態では、RFフロントエンドは、RF信号を受信するように構成された低ノイズ増幅器(LNA)、受信したRF信号からの画像信号を拒絶するように構成された画像拒絶ミキサー、および画像拒絶ミキサーからの出力信号をLO信号と混合し、IF信号を生成するように構成されたミキサーを有する。LNAおよび画像拒絶ミキサーは、モノリシックプラットフォーム上に集積された単チップ構造を有してもよい。モノリシックプラットフォームは、単結晶ベースを有してもよい。LNAは、単結晶ベース上に製造された、スカンジウムアルミニウム窒化物(ScAlN)、窒化ガリウム(GaN)、または他のIII族-窒化物系のトランジスタ構造のいずれかを含んでもよい。画像拒絶フィルタは、単結晶ベース上に製造された単結晶エピタキシャルScAlN層を含むマルチレイヤScAlN構造を有してもよい。ScAlN層の数および層当たりのSc濃度は、画像拒絶フィルタの所望の周波数特性に基づいてもよい。
【0029】
本要約は、読者が技術的開示の性質および要旨を把握するために提供される。これは、請求項の範囲または意味を限定したり解釈したりするために使用されないことを把握した上で、提出される。従って、以下の特許請求の範囲は、詳細な説明に組み込まれ、各請求項は、それ自体が別個の実施形態として存在する。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8
【国際調査報告】