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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-15
(54)【発明の名称】組織試料処理及びイメージング
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/48 20060101AFI20230807BHJP
   G01N 1/30 20060101ALI20230807BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230807BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
G01N33/48 P
G01N1/30
G01N33/48 M
G01N33/53 Y
G01N33/50 P
G01N33/53 D
G01N33/53 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504070
(86)(22)【出願日】2021-07-20
(85)【翻訳文提出日】2023-03-17
(86)【国際出願番号】 US2021042353
(87)【国際公開番号】W WO2022020340
(87)【国際公開日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】63/054,226
(32)【優先日】2020-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520428650
【氏名又は名称】アコヤ・バイオサイエンシズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・マックレーン
【テーマコード(参考)】
2G045
2G052
【Fターム(参考)】
2G045BB25
2G045FB12
2G052FA09
(57)【要約】
蛍光対比染色剤を含む第1の染色剤組成物を生体試料に適用する工程、第1の染色剤組成物の1つ又は複数の染色剤に相当する情報を測定する工程、生体試料から蛍光対比染色剤を除去する工程、第2の染色剤組成物を生体試料に適用する工程、生体試料における第2の染色剤組成物の1つ又は複数の染色剤に相当する情報を測定する工程であって、1つ又は複数の染色剤は蛍光標識を含む、工程、並びに生体試料の第1の画像を生成する工程であって、第1の画像は、生体試料における疑似ヘマトキシリン染色のパターンに相当する、工程を含む方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の染色剤組成物を生体試料に適用する工程、及び生体試料における第1の染色剤組成物の1つ又は複数の染色剤に相当する情報を測定する工程であって、1つ又は複数の染色剤は蛍光対比染色剤を含む、工程;
生体試料から蛍光対比染色剤を除去する工程;
第2の染色剤組成物を生体試料に適用する工程、及び生体試料における第2の染色剤組成物の1つ又は複数の染色剤に相当する情報を測定する工程であって、1つ又は複数の染色剤は蛍光標識を含む、工程;
生体試料の第1の画像を生成する工程であって、第1の画像は、生体試料における疑似ヘマトキシリン染色のパターンに相当する、工程;並びに
生体試料の第2の画像を生成する工程であって、第2の画像は、生体試料における蛍光標識の局在化に相当する、工程
を含む方法。
【請求項2】
蛍光対比染色剤はクルクミンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
蛍光対比染色剤はカルミンを含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第2の染色剤組成物を生体試料に適用する前に、第3の染色剤組成物を生体試料に適用する工程であって、第3の染色剤組成物はエオシンを含む、工程を更に含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
第2の染色剤組成物を生体試料に適用する前に、第3の染色剤組成物を生体試料に適用する工程であって、第3の染色剤組成物はインジゴカルミンを含む、工程を更に含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
第1の画像は、生体試料における疑似ヘマトキシリン及びエオシン染色のパターンに相当する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
第1の画像は、生体試料における疑似エオシン染色及び疑似ヘマトキシリン染色のパターンに相当する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
蛍光対比染色剤を除去する工程は、生体試料を抗原賦活化剤に曝露する工程を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
生体試料を抗原賦活化剤に曝露することによって、蛍光対比染色剤及びエオシンを除去する工程を更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
生体試料を抗原賦活化剤に曝露することによって、蛍光対比染色剤及びインジゴカルミンを除去する工程を更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
第1の染色剤組成物は固定剤を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
固定剤は硫酸アルミニウムカリウム十二水和物を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第2の染色剤組成物を生体試料に適用する前に、第1の画像を生成する工程を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
生体試料において第1の染色剤組成物の1つ又は複数の染色剤に相当する情報に基づいて第1の画像を生成する工程を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
第1の画像に基づいて第2の染色剤組成物を決定する工程を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
第1の画像に基づいて標的被検化合物を特定するための1つ又は複数の位置の一セットを生体試料において特定する工程を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
第2の染色剤組成物を生体試料に適用する前に、第1の画像にアノテートする工程を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
生体試料への第2の染色剤組成物の適用過程で、第1の画像にアノテートする工程を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
蛍光標識は生体試料内で標的に対するプローブに連結されている、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
標的は、抗原、ペプチド、及びタンパク質のうちの少なくとも1つを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
プローブは抗体又は抗体断片を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
標的はリボ核酸を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
第2の染色剤組成物は、生体試料内で異なる標的に対するプローブにそれぞれ連結された多重の異なる蛍光標識を含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
第2の染色剤組成物は少なくとも3つの異なる蛍光標識を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
第2の染色剤組成物は少なくとも5つの異なる蛍光標識を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
生体試料の1つ又は複数の更なる画像を生成する工程を更に含み、更なる画像のそれぞれは、生体試料における異なる蛍光標識の1つ又は複数の局在化に相当する、請求項23から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
第2の染色剤組成物を試料に適用する工程は:
(a)第1の結合剤を生体試料に適用する工程であって、第1の結合剤は、試料中の標的に結合するプローブ及びプローブに連結された核酸配列を含む、工程;並びに
(b)第1の標識化剤を生体試料に適用する工程であって、第1の標識化剤は、核酸配列及び核酸配列に連結された蛍光標識を含み、第1の標識化剤は第1の結合剤に選択的にハイブリダイズする、工程を含む、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
蛍光標識からの蛍光発光情報を測定する工程を更に含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
複数の異なる第1の結合剤を生体試料に適用する工程であって、異なる第1の結合剤それぞれは、試料における異なる標的に結合しているプローブ及びプローブに連結された異なる核酸配列を含む、工程を、工程(a)において更に含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
蛍光発光情報を測定した後、生体試料から第1の標識化剤を除去する工程を更に含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
第2の標識化剤を生体試料に適用する工程であって、第2の標識化剤は、核酸配列及び核酸配列に連結された第2の蛍光標識を含み、第2の蛍光標識は、第1の標識化剤の蛍光標識とは異なり、且つ第2の標識化剤は、第1の結合剤とは異なる試料における第2の結合剤に選択的にハイブリダイズする、工程を更に含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
第2の蛍光標識からの蛍光発光情報を測定する工程を更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
第1の画像を生成する工程は、生体試料における蛍光対比染色剤の蛍光発光情報を測定する工程を含む、請求項1から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
第1の画像を生成する工程は、生体試料における蛍光対比染色剤の蛍光発光情報を測定する工程、及び、生体試料におけるエオシンによる入射放射線の吸収を測定する工程を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項35】
第1の画像を生成する工程は、生体試料における蛍光対比染色剤の蛍光発光情報を測定する工程、及び、生体試料におけるインジゴカルミンによる入射放射線の吸収を測定する工程を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項36】
クルクミン及びカルミンレーキのうちの少なくとも1つを含む第1の染色剤組成物を生体試料に適用する工程;
エオシン及びインジゴカルミンのうちの少なくとも1つを含む第2の染色剤組成物を生体試料に適用する工程;
生体試料における第1の染色剤組成物及び第2の染色剤組成物に相当する画像情報を測定する工程;
生体試料を少なくとも1つの抗原賦活化剤に曝露して、クルクミン及びカルミンレーキのうちの少なくとも1つ並びにエオシン及びインジゴカルミンのうちの少なくとも1つを生体試料から除去する工程;
第3の染色剤組成物を生体試料に適用する工程であって、第3の染色剤組成物は蛍光標識を含む、工程;
生体試料における第3の染色剤組成物に相当する画像情報を測定する工程;並びに
生体試料においてヘマトキシリン及びエオシンの染色分布を表す、生体試料における第1の染色剤組成物及び第2の染色剤組成物に相当する画像情報に基づいて第1の画像を生成する工程
を含む方法。
【請求項37】
第1の染色剤組成物を生体試料に適用する工程、及び生体試料における第1の染色剤組成物の1つ又は複数の染色剤に相当する情報を測定する工程であって、1つ又は複数の染色剤は蛍光対比染色剤を含む、工程;
生体試料の第1の画像を生成する工程であって、第1の画像は、生体試料における疑似ヘマトキシリン染色のパターンに相当する、工程;
生体試料から蛍光対比染色剤を除去する工程;並びに
生体試料を1つ又は複数の試薬に曝露すること及び生体試料における少なくとも1つの被検化合物を特定することによって、生体試料の更なる解析を実施する工程
を含む方法。
【請求項38】
少なくとも1つの被検化合物は、タンパク質、ペプチド、抗体、及び抗原からなる群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
少なくとも1つの被検化合物は、リボ核酸及びデオキシリボ核酸からなる群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
少なくとも1つの被検化合物は炭水化物である、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
蛍光対比染色剤は、クルクミン及びカルミンレーキのうちの少なくとも1つを含む、請求項37から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
蛍光対比染色剤を除去する工程は、生体試料を少なくとも1つの抗原賦活化剤に曝露する工程を含む、請求項37から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
蛍光対比染色剤を除去する工程は、生体試料を過酸化物に曝露する工程を含む、請求項37から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
蛍光対比染色剤を含む第1の染色剤組成物;
蛍光対比染色剤除去剤;
蛍光標識を含む第2の染色剤組成物;及び
請求項1から43のいずれか一項に記載の方法を実施するための取扱説明書の一セット
を含む試薬キット。
【請求項45】
蛍光対比染色剤は、クルクミン及びカルミンレーキのうちの少なくとも1つを含む、請求項44に記載のキット。
【請求項46】
除去剤は、抗原賦活化剤及び過酸化物のうちの少なくとも1つを含む、請求項44に記載のキット。
【請求項47】
吸収性染色剤を含む第3の染色剤組成物を更に含む、請求項44に記載のキット。
【請求項48】
吸収性染色剤は、エオシン及びインジゴカルミンのうちの少なくとも1つを含む、請求項47に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、2020年7月20日出願の米国仮特許出願第63/054,226号の優先権を主張するものである。
【0002】
本開示は、病理学及び他の用途のための組織試料の評価に関する。
【背景技術】
【0003】
組織試料の病理学的評価では、従来の方法では、試料(例えば、組織ブロック)からカットした第1の組織切片を1つ又は複数の免疫組織化学試薬で染色する工程、及び同じ試料からカットした第2の組織切片をヘマトキシリンとエオシン(H&E)の染色剤の組合せで染色する工程を伴うことが多い。第2の組織切片のH&E画像により、第1の組織切片における免疫組織化学試薬の画像の解釈に有用である形態学的情報及び他の情報を病理医にもたらすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,555,155号
【特許文献2】米国特許第8,462,981号
【特許文献3】米国特許第8,330,087号
【特許文献4】米国特許第9,541,504号
【特許文献5】米国特許第10,126,242号
【特許文献6】米国特許出願公開第2019/0339203号
【特許文献7】9,909,167
【特許文献8】10,370,698
【特許文献9】国際公開第2021/067475号
【特許文献10】国際公開第2020/163397号
【特許文献11】国際公開第2021/127637号
【特許文献12】米国仮特許出願第63/171,297号
【特許文献13】米国仮特許出願第63/189,056号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書に記載の方法、システム、試薬、及びキットを使用して、ヘマトキシリン及びエオシンの両方を組織試料に適用することなく、組織試料の疑似ヘマトキシリン及びエオシンの観察を提供することができる。具体的には、本明細書に記載の作業フローによれば、クルクミン及び/又はカルミン等の試薬を使用して組織試料を染色することができる。これらの試薬で染色された組織試料の画像を使用して、組織試料におけるヘマトキシリンの局在化及び出現を近似することができる。本明細書に記載の作業フローによればまた、又は代替的に、エオシン及び/又はインジゴカルミン等の試薬を使用して、組織試料を染色することができる。これらの試薬で染色された組織試料の画像によれば、組織試料におけるエオシンの局在化及び出現が明らかとなるか又は近似される。次いで、2つの画像をコンピュータ処理で組み合わせて、組織試料の疑似H&E画像を得ることができる。疑似画像は、組織試料の病理学的評価に使用することができるが、これには、更なる染色工程及びイメージング工程に進むかどうか判定すること、並びに組織試料における更なる染色剤(例えば免疫組織化学染色、蛍光標識)に関して観察された局在化について解釈することが含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
全体として、一態様では、本開示は:第1の染色剤組成物を生体試料に適用する工程、及び生体試料における第1の染色剤組成物の1つ又は複数の染色剤に相当する情報を測定する工程であって、1つ又は複数の染色剤は蛍光対比染色剤を含む、工程;生体試料から蛍光対比染色剤を除去する工程;第2の染色剤組成物を生体試料に適用する工程、及び生体試料における第2の染色剤組成物の1つ又は複数の染色剤に相当する情報を測定する工程であって、1つ又は複数の染色剤は蛍光標識を含む、工程;生体試料の第1の画像を生成する工程であって、第1の画像は、生体試料における疑似ヘマトキシリン染色のパターンに相当する、工程;並びに生体試料の第2の画像を生成する工程であって、第2の画像は、生体試料における蛍光標識の局在化に相当する、工程を含む方法を特徴とする。
【0007】
方法の実施形態は、以下の特徴のいずれか1つ又は複数を含むことができる。
【0008】
蛍光対比染色剤は、クルクミンを含むことができる。蛍光対比染色剤は、カルミンを含むことができる。方法は、第2の染色剤組成物を生体試料に適用する前に、第3の染色剤組成物を生体試料に適用する工程を含むことができ、第3の染色剤組成物はエオシンを含む。方法は、第2の染色剤組成物を生体試料に適用する前に、第3の染色剤組成物を生体試料に適用する工程を含むことができ、第3の染色剤組成物はインジゴカルミンを含む。
【0009】
第1の画像は、生体試料における疑似ヘマトキシリン及びエオシン染色のパターンに相当することができる。第1の画像は、生体試料における疑似エオシン染色及び疑似ヘマトキシリン染色のパターンに相当することができる。
【0010】
蛍光対比染色剤を除去する工程は、生体試料を抗原賦活化剤に曝露する工程を含むことができる。方法は、生体試料を抗原賦活化剤に曝露することによって、蛍光対比染色剤及びエオシンを除去する工程を含むことができる。方法は、生体試料を抗原賦活化剤に曝露することによって、蛍光対比染色剤及びインジゴカルミンを除去する工程を含むことができる。
【0011】
第1の染色剤組成物は固定剤を含むことができる。固定剤は、硫酸アルミニウムカリウム十二水和物を含むことができる。
【0012】
方法は、第2の染色剤組成物を生体試料に適用する前に、第1の画像を生成する工程を含むことができる。方法は、生体試料において第1の染色剤組成物の1つ又は複数の染色剤に相当する情報に基づいて第1の画像を生成する工程を含むことができる。方法は、第1の画像に基づいて第2の染色剤組成物を決定する工程を含むことができる。方法は、第1の画像に基づいて標的被検化合物を特定するための1つ又は複数の位置の一セットを生体試料において特定する工程を含むことができる。
【0013】
方法は、第2の染色剤組成物を生体試料に適用する前に、第1の画像にアノテートする工程を含むことができる。方法は、生体試料への第2の染色剤組成物の適用過程で、第1の画像にアノテートする工程を含むことができる。
【0014】
蛍光標識は、生体試料内で標的に対するプローブに連結されうる。標的は、抗原、ペプチド、及びタンパク質のうちの少なくとも1つを含むことができる。プローブは、抗体又は抗体断片を含むことができる。標的は、リボ核酸又はデオキシリボ核酸を含むことができる。
【0015】
第2の染色剤組成物は、生体試料内で異なる標的に対するプローブにそれぞれ連結された多重の異なる蛍光標識を含むことができる。第2の染色剤組成物は、少なくとも3つの異なる蛍光標識(例えば、少なくとも5つの異なる蛍光標識)を含むことができる。
【0016】
方法は、生体試料の1つ又は複数の更なる画像を生成する工程を含むことができ、更なる画像のそれぞれは、生体試料における異なる蛍光標識の1つ又は複数の局在化に相当する。
【0017】
第2の染色剤組成物を試料に適用する工程は:(a)第1の結合剤を生体試料に適用する工程であって、第1の結合剤は、試料中の標的に結合するプローブ及びプローブに連結された核酸配列を含む、工程;並びに(b)第1の標識化剤を生体試料に適用する工程であって、第1の標識化剤は、核酸配列及び核酸配列に連結された蛍光標識を含み、第1の標識化剤は第1の結合剤に選択的にハイブリダイズする、工程を含むことができる。方法は、蛍光標識からの蛍光発光情報を測定する工程を含むことができる。
【0018】
方法は、複数の異なる第1の結合剤を生体試料に適用する工程を、工程(a)において含むことができ、異なる第1の結合剤それぞれは、試料における異なる標的に結合しているプローブ及びプローブに連結された異なる核酸配列を含む。方法は、蛍光発光情報を測定した後、生体試料から第1の標識化剤を除去する工程を含むことができる。方法は、第2の標識化剤を生体試料に適用する工程を含むことができ、第2の標識化剤は、核酸配列及び核酸配列に連結された第2の蛍光標識を含み、第2の蛍光標識は第1の標識化剤の蛍光標識とは異なり、且つ第2の標識化剤は、第1の結合剤とは異なる試料における第2の結合剤に選択的にハイブリダイズする。方法は、第2の蛍光標識からの蛍光発光情報を測定する工程を含むことができる。
【0019】
第1の画像を生成する工程は、生体試料における蛍光対比染色剤の蛍光発光情報を測定する工程を含むことができる。第1の画像を生成する工程は、生体試料における蛍光対比染色剤の蛍光発光情報を測定する工程、及び、生体試料におけるエオシンによる入射放射線の吸収を測定する工程を含むことができる。第1の画像を生成する工程は、生体試料における蛍光対比染色剤の蛍光発光情報を測定する工程、及び、生体試料におけるインジゴカルミンによる入射放射線の吸収を測定する工程を含むことができる。
【0020】
方法の実施形態はまた、そうでないことが明示されている場合を除き、任意の順序又は組合せで、異なる実施形態と関連して個々に記載されている特徴の組合せを含めて、本明細書に開示されている他の特徴のうちのいずれかを含むことができる。
【0021】
別の態様では、本開示は:クルクミン及びカルミンレーキのうちの少なくとも1つを含む第1の染色剤組成物を生体試料に適用する工程;エオシン及びインジゴカルミンのうちの少なくとも1つを含む第2の染色剤組成物を生体試料に適用する工程;生体試料における第1の染色剤組成物及び第2の染色剤組成物に相当する画像情報を測定する工程;生体試料を少なくとも1つの抗原賦活化剤に曝露して、クルクミン及びカルミンレーキのうちの少なくとも1つ並びにエオシン及びインジゴカルミンのうちの少なくとも1つを生体試料から除去する工程;第3の染色剤組成物を生体試料に適用する工程であって、第3の染色剤組成物は蛍光標識を含む、工程;生体試料における第3の染色剤組成物に相当する画像情報を測定する工程;並びに生体試料においてヘマトキシリン及びエオシンの染色分布を表す、生体試料における第1の染色剤組成物及び第2の染色剤組成物に相当する画像情報に基づいて第1の画像を生成する工程を含む方法を特徴とする。
【0022】
方法の実施形態は、そうでないことが明示されている場合を除き、任意の順序又は組合せで、異なる実施形態と関連して個々に記載されている特徴の組合せを含めて、本明細書に開示されている特徴のいずれかを含むことができる。
【0023】
別の態様では、本開示は:第1の染色剤組成物を生体試料に適用する工程、及び生体試料における第1の染色剤組成物の1つ又は複数の染色剤に相当する情報を測定する工程であって、1つ又は複数の染色剤は蛍光対比染色剤を含む、工程;生体試料の第1の画像を生成する工程であって、第1の画像は、生体試料における疑似ヘマトキシリン染色のパターンに相当する、工程;生体試料から蛍光対比染色剤を除去する工程;並びに生体試料を1つ又は複数の試薬に曝露すること及び生体試料における少なくとも1つの被検化合物を特定することによって、生体試料の更なる解析を実施する工程を含む方法を特徴とする。
【0024】
方法の実施形態は、以下の特徴のいずれか1つ又は複数を含むことができる。
【0025】
少なくとも1つの被検化合物は、タンパク質、ペプチド、抗体、及び抗原からなる群から選択することができる。少なくとも1つの被検化合物は、リボ核酸及びデオキシリボ核酸からなる群から選択することができる。少なくとも1つの被検化合物は炭水化物とすることができる。
【0026】
蛍光対比染色剤は、クルクミン及びカルミンレーキのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0027】
蛍光対比染色剤を除去する工程は、生体試料を少なくとも1つの抗原賦活化剤に曝露する工程を含むことができる。蛍光対比染色剤を除去する工程は、生体試料を過酸化物に曝露する工程を含むことができる。
【0028】
方法の実施形態はまた、そうでないことが明示されている場合を除き、任意の順序又は組合せで、異なる実施形態と関連して個々に記載されている特徴の組合せを含めて、本明細書に開示されている他の特徴のうちのいずれかを含むことができる。
【0029】
別の態様では、本開示は:蛍光対比染色剤を特徴とする第1の染色剤組成物;蛍光対比染色剤除去剤;蛍光標識を特徴とする第2の染色剤組成物;及び本明細書に記載の方法のいずれかを実施するための取扱説明書の一セットを含む試薬キットを特徴とする。
【0030】
キットの実施形態は、以下の特徴の1つ又は複数を含むことができる。
【0031】
蛍光対比染色剤は、クルクミン及びカルミンレーキのうちの少なくとも1つを含むことができる。除去剤は、抗原賦活化剤及び過酸化物のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0032】
キットは、吸収性染色剤を特徴とする第3の染色剤組成物を含むことができる。吸収性染色剤は、エオシン及びインジゴカルミンのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0033】
キットの実施形態はまた、そうでないことが明示されている場合を除き、任意の順序又は組合せで、異なる実施形態と関連して個々に記載されている特徴の組合せを含めて、本明細書に開示されている他の特徴のいずれかを含むことができる。
【0034】
本明細書に記載の一部の実施形態は、様々なコンピュータ実装操作を実行するための命令又はコンピュータコードをその上に有する、非一時的コンピュータ可読媒体(非一時的プロセッサ可読媒体と呼ばれる場合もある)を備えたコンピュータ記憶製品に関する。コンピュータ可読媒体(又はプロセッサ可読媒体)は、それ自体が一時的伝搬シグナル(例えば空間又はケーブル等の伝送媒体上の伝搬性電磁波運搬情報)を含んでいないという意味において非一時的である。媒体及びコンピュータコード(コードと呼ばれる場合もある)は、特定の1つ又は複数の目的のために設計及び構成されたものとすることができる。非一時的コンピュータ可読媒体の例としては、それらに限定されないが、ハードディスク、フロッピーディスク、及び磁気テープ等の磁気記憶媒体;コンパクトディスク/デジタルビデオディスク(CD/DVD)、コンパクトディスク読取専用メモリ(CD-ROM)、及びホログラフィックデバイス等の光学記憶媒体;光ディスク等の磁気光学記憶媒体;搬送波シグナル処理モジュール;並びに特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブル論理デバイス(PLD)、読取専用メモリ(ROM)及びランダムアクセスメモリ(RAM)デバイス等のプログラムコードを記憶し実行するように特に設計されているハードウェアデバイスが挙げられる。本明細書に記載の他の実施形態は、例えば本明細書に論議の命令及び/又はコンピュータコードを含むことができる、コンピュータプログラム製品に関する。
【0035】
本明細書に記載の一部の実施形態及び/又は方法は、ソフトウェア(ハードウェア上で実行される)、ハードウェア、又はそれらの組合せによって実行することができる。ハードウェアモジュールとして、例えば、汎用プロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、及び/又は特定用途向け集積回路(ASIC)を挙げることができる。ソフトウェアモジュール(ハードウェア上で実行される)は様々なソフトウェア言語(例えばコンピュータコード)で表現することができるが、これには、C、C++、Java(商標)、Ruby、Visual Basic(商標)、並びに/又は他のオブジェクト指向、手続き型若しくは他のプログラミング言語及び開発ツールが含まれる。コンピュータコードの例としては、それらに限定されないが、マイクロコード又はマイクロ命令、コンパイラよって生成される等の機械命令、ウェブサービスを生成するのに使用されるコード、及びインタプリタを使用してコンピュータによって実行される高水準命令を含むファイルが挙げられる。例えば、実施形態は、命令プログラミング言語(例えば、C、Fortran等)、機能プログラミング言語(Haskell、Erlang等)、論理プログラミング言語(例えば、Prolog)、オブジェクト指向プログラミング言語(例えば、Java、C++等)、又は他の適切なプログラミング言語及び/若しくは開発ツールを使用して実装することができる。コンピュータコードの更なる例としては、それらに限定されないが、制御シグナル、暗号化コード、及び圧縮コードが挙げられる。
【0036】
定義
本明細書で使用される場合、「染色剤」とは、生体試料に結合し、試料中の測定可能なシグナルであって、染色剤が試料中に位置する場所を判定するのに使用することができる測定可能なシグナルを生成する、化合物である。染色剤は、放射線に曝露された場合に蛍光発光を生成する蛍光化合物又は部分とすることができる。蛍光化合物又は部分はまた、蛍光「標識」と互換的に呼ばれる。染色剤とは、入射放射線のある特定の波長を吸収し、入射放射線の他の波長を吸収しない発色性化合物又は部分とすることができる。染色剤は、非特異的であってもよく、その結果、染色剤は、試料内の特定のタイプの標的分子、構造、又はコンパートメントと結合することはないか又はそれらと共に局在化することはない。このような非特異的染色剤の例は「対比染色剤」である。染色剤は、特異的である場合があり、試料内で特定のタイプの標的分子、構造、又はコンパートメントに結合するか又はそれらと共に局在化することができる。特異的染色剤の例は、DAPI(DNAに結合する)、抗体連結染色剤(例えば、試料における腫瘍マーカー等の特定の抗原に特異的に結合する抗体に直接的又は間接的に連結した蛍光部分)、及び核酸連結染色剤(例えば、試料における特定の核酸標的、例えば異なるRNA種に特異的に結合するオリゴヌクレオチドに直接的又は間接的に連結した蛍光部分)である。
【0037】
本明細書で使用される場合、「ヘマトキシリン」とは、組織学的染色剤としてよく使用される、化学化合物C16H14O6を指す。「ヘマトキシリン」という用語はまた、ヘマトキシリン構造の1つ又は複数の環位置に置換基修飾を含有するヘマトキシリンの化学誘導体であって、その修飾構造が生体試料において局在化する様式を実質的に変化させることはない化学誘導体を包含すると理解されたい。化学誘導体において修飾、付加又は除去することができる置換基には、アルキル基、アルケン基、アルキン基、ヒドロキシル基、ハライド基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、アミド基(第一級、第二級、及び第三級)、アミン基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、チオール基、リン酸基、硫酸基、エステル基、アルデヒド基、ケトン基、及びカルボン酸基が含まれる。
【0038】
本明細書で使用される場合、「エオシン」とは、フルオレセインに由来する蛍光化合物を指し、組織化学的染色剤としてよく使用される。「エオシン」という用語は、(それらに限定されないが)エオシンY(エオシンY ws、エオシンイエロー、アシッドレッド87、ブロモエオシン、ブロモフルオレセイン酸、D&C Red No. 22とも呼ばれる)、及びエオシンB(エオシンブルー、アシッドレッド91、サフロシン、エオシンスカーレット、及びインペリアルレッドとも呼ばれる)を含めて、お互い誘導体であるエオシン化合物すべてを包含すると理解されたい。エオシンYはフルオレセインのテトラブロモ誘導体であり、一方、エオシンBはフルオレセインのジブロモジニトロ誘導体である。誘導体はまた、エオシン構造の1つ又は複数の環位置に置換基修飾を含有するエオシンの化学誘導体であって、その修飾構造が生体試料において局在化する様式を実質的に変化させることはない化学誘導体も包含する。化学誘導体において修飾、付加又は除去することができる置換基には、アルキル基、アルケン基、アルキン基、ヒドロキシル基、ハライド基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、アミド基(第一級、第二級、及び第三級)、アミン基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、チオール基、リン酸基、硫酸基、エステル基、アルデヒド基、ケトン基、及びカルボン酸基が含まれる。
【0039】
本明細書で使用される場合、「ヘマトキシリンアナログ」とは、試料に導入される場合にヘマトキシリンに類似する分布パターンで試料において局在化する、試薬又は試薬組成物である。したがって、ヘマトキシリンアナログに相当する測定されたシグナルは、ヘマトキシリンが試料に導入されそしてヘマトキシリンに相当するシグナルが測定された場合に観察されることになる、分布パターンを表す。
【0040】
本明細書で使用される場合、「エオシンアナログ」とは、試料に導入される場合にエオシンに類似する分布パターンで試料において局在化する、試薬又は試薬組成物である。したがって、エオシンアナログに相当する測定されたシグナルは、エオシンが試料に導入されそしてエオシンに相当するシグナルが測定された場合に観察されることになる、分布パターンを表す。
【0041】
本明細書で使用される場合、「クルクミン」とは、化合物クルクミン、C21H20O6を指す。クルクミンはエノール又はケトの形態で存在することができ、「クルクミン」という用語は両形態を指す。加えて、「クルクミン」という用語は、クルクミン構造の、1つ若しくは複数のフェニル環位置、1つ若しくは複数の二重結合炭素原子、及び/又は1つ若しくは複数の単結合炭素原子に置換基修飾を含有するクルクミンの化学誘導体であって、その修飾構造が生体試料において局在化する様式を実質的に変化させることはない化学誘導体を包含する。化学誘導体において修飾、付加又は除去することができる置換基には、アルキル基、アルケン基、アルキン基、ヒドロキシル基、ハライド基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、アミド基(第一級、第二級、及び第三級)、アミン基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、チオール基、リン酸基、硫酸基、エステル基、アルデヒド基、ケトン基、及びカルボン酸基が含まれる。
【0042】
本明細書で使用される場合、「カルミン」とは、カルミン酸から生成される色素を指す。カルミンはまた、コチニール、コチニール抽出物、クリムゾンレーキ、カルミンレーキ、及びナチュラルレッド4とも呼ばれる。カルミンという用語はまた、カルミン構造の、1つ若しくは複数の環位置及び/又は1つ若しくは複数の脂肪族炭素原子に置換基修飾を含有するカルミン構造の化学誘導体であって、その修飾構造が生体試料において局在化する様式を実質的に変化させることはない化学誘導体も包含する。化学誘導体において修飾、付加又は除去することができる置換基には、アルキル基、アルケン基、アルキン基、ヒドロキシル基、ハライド基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、アミド基(第一級、第二級、及び第三級)、アミン基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、チオール基、リン酸基、硫酸基、エステル基、アルデヒド基、ケトン基、及びカルボン酸基が含まれる。
【0043】
本明細書で使用される場合、「インジゴカルミン」とは、化合物、二ナトリウム[2(2')E]-3,3'-ジオキソ-1,1',3,3'-テトラヒドロ[2,2'-ビインドリリデン]-5,5'-ジスルホン酸を指す。インジゴカルミンという用語はまた、1つ又は複数の環位置に置換基修飾を含有するインジゴカルミン構造の化学誘導体であって、その修飾構造が生体試料において局在化する様式を実質的に変化させることはない化学誘導体も包含する。化学誘導体において修飾、付加又は除去することができる置換基には、アルキル基、アルケン基、アルキン基、ヒドロキシル基、ハライド基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、アミド基(第一級、第二級、及び第三級)、アミン基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、チオール基、リン酸基、硫酸基、エステル基、アルデヒド基、ケトン基、及びカルボン酸基が含まれる。
【0044】
本明細書で使用される場合、生体試料の「H&E画像」とは、ヘマトキシリンとエオシンの両方で染色された試料の画像を指し、試料における両染色剤の局在化を示す。H&E画像では、細胞質は通常にはピンクがかっているオレンジ色に見え、核は通常には青色又は紫色に見える。しかし、より全体として理解すべきこととは、「H&E画像」という用語は、画像の特定の色付けにかかわらず、組織の形態学的特徴と成分特徴との間のコントラストが、試料がヘマトキシリン及びエオシンで染色された場合に観察されることになるコントラストに類似している、画像を指すことである。
【0045】
本明細書で使用される場合、「疑似H&E画像」とは、コンピュータ処理によって生成された試料の画像を指すと共に、試料がヘマトキシリン及びエオシンで染色された場合に試料はどのように見えることになるかを表す、試料の画像を指す。換言すると、疑似H&E画像とは、試料のコンピュータ処理で生成されたH&E画像である。典型的には、疑似H&E画像とは、ヘマトキシリン、エオシン、又はヘマトキシリンとエオシンの両方が適用されていない試料に対して生成されるものである。
【0046】
特に定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載したものと類似の又は等価の方法及び材料が、本明細書の主題の実施又は試験において使用されうるが、適切な方法及び材料について下に記載する。本明細書で言及するすべての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、それらの全体が参照によって組み込まれる。矛盾する場合、定義を含めて本明細書が優先される。加えて、材料、方法、及び例は、例示にすぎず、限定であることを意図していない。
【0047】
1つ又は複数の実施形態の詳細について、添付の図面及び下の説明に記載する。他の特徴及び利点については、その説明、図面、及び特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】組織試料を解析するための一セットの例示的な工程を示すフローチャートの図である。
図2】染色及びイメージング向けにホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織切片を調製するための一セットの例示的な工程を示すフローチャートの図である。
図3】組織試料の疑似H&E画像を生成するための一セットの例示的な工程を示すフローチャートの図である。
図4A】肺がん組織試料におけるクルクミンに相当する蛍光シグナルを示す画像の図である。
図4B】肺がん組織試料におけるエオシンに相当する蛍光シグナルを示す画像の図である。
図4C】肺がん組織試料について生成された疑似H&E画像の図である。
図4D】肺がん組織試料について測定された従来のH&E画像の図である。
図5A図4Cの画像を生成するのに使用された同じ組織切片からの、DNA(DAPI)を選択的に標的とする免疫組織化学的染色剤(例えば、免疫蛍光標識)を示す画像の図である。
図5B図4Cの画像を生成するのに使用された同じ組織切片からの、マーカーパンサイトケラチンを選択的に標的とする免疫組織化学的染色剤(例えば、免疫蛍光標識)を示す画像の図である。
図5C図4Cの画像を生成するのに使用された同じ組織切片からの、マーカーCD68を選択的に標的とする免疫組織化学的染色剤(例えば、免疫蛍光標識)を示す画像の図である。
図5D図4Cの画像を生成するのに使用された同じ組織切片からの、マーカーCD8を選択的に標的とする免疫組織化学的染色剤(例えば、免疫蛍光標識)を示す画像の図である。
図5E図4Cの画像を生成するのに使用された同じ組織切片からの、マーカーPD-1を選択的に標的とする免疫組織化学的染色剤(例えば、免疫蛍光標識)を示す画像の図である。
図5F図4Cの画像を生成するのに使用された同じ組織切片からの、マーカーPDL-1を選択的に標的とする免疫組織化学的染色剤(例えば、免疫蛍光標識)を示す画像の図である。
図5G図4Cの画像を生成するのに使用された同じ組織切片からの、マーカーFoxP3を選択的に標的とする免疫組織化学的染色剤(例えば、免疫蛍光標識)を示す画像の図である。
図6A図5Aの組織切片として肺がん組織試料からカットされた別の組織切片からの、DNA(DAPI)を選択的に標的とする免疫組織化学的染色剤(例えば、免疫蛍光標識)を示す画像の図である。
図6B図5Bの組織切片として肺がん組織試料からカットされた別の組織切片からの、マーカーパンサイトケラチンを選択的に標的とする免疫組織化学的染色剤(例えば、免疫蛍光標識)を示す画像の図である。
図6C図5Cの組織切片として肺がん組織試料からカットされた別の組織切片からの、マーカーCD68を選択的に標的とする免疫組織化学的染色剤(例えば、免疫蛍光標識)を示す画像の図である。
図6D図5Dの組織切片として肺がん組織試料からカットされた別の組織切片からの、マーカーCD8を選択的に標的とする免疫組織化学的染色剤(例えば、免疫蛍光標識)を示す画像の図である。
図6E図5Eの組織切片として肺がん組織試料からカットされた別の組織切片からの、マーカーPD-1を選択的に標的とする免疫組織化学的染色剤(例えば、免疫蛍光標識)を示す画像の図である。
図6F図5Fの組織切片として肺がん組織試料からカットされた別の組織切片からの、マーカーPDL-1を選択的に標的とする免疫組織化学的染色剤(例えば、免疫蛍光標識)を示す画像の図である。
図6G図5Gの組織切片として肺がん組織試料からカットされた別の組織切片からの、マーカーFoxP3を選択的に標的とする免疫組織化学的染色剤(例えば、免疫蛍光標識)を示す画像の図である。
図7図5A図5G及び図6A図6Gの組織切片ごとのDNA及び各種マーカーに相当するシグナルの発現レベルを示すグラフの図である。
図8】組織試料を解析するための一セットの例示的な工程を示すフローチャートの図である。
図9A】肺がん組織切片における、カルミン-ミョウバンと関連する測定された蛍光シグナルの画像の図である。
図9B図9Aの肺がん組織切片における、エオシンY-ミョウバンと関連する測定された蛍光シグナルの画像の図である。
図9C図9A及び図9Bの測定された蛍光シグナルから生成された疑似H&E画像の図である。
図9D】カルミン-ミョウバン及びエオシンYで染色した後の、図9Aの肺がん組織切片の透過光画像の図である。
図9E】カルミン-ミョウバン及びエオシンYと関連する蛍光シグナル並びに図9Dの透過光画像から生成された、図9Aの肺がん組織切片の疑似H&E画像の図である。
図9F図9Aの肺がん組織切片と同じ組織ブロックから得られ、従来のH&Eプロトコルで染色された、別の肺がん組織切片の従来のH&E画像の図である。
図10A】組織試料におけるカルミン及びエオシンの測定されたシグナル強度を示すグラフの図である。
図10B】抗原賦活化工程後の図9Aの組織切片におけるカルミンの測定されたシグナル強度を示すグラフの図である。
図11】抗体連結蛍光標識のパネルで染色した後の図9Aの組織切片におけるカルミンの測定されたシグナル強度を示すグラフの図である。
図12】生体試料を解析するためのシステムの概略図である。
図13】コントローラの概略図である。 様々な図面における同様の参照記号は、同様の要素を指示する。
【発明を実施するための形態】
【0049】
緒言
組織試料のDABベースの免疫組織化学的染色等の方法では、組織試料におけるただ1つの標的被検化合物の観察を提供するので、複数の組織切片を通常には使用して複数の標的を評価する。連続組織切片は様々な個々の細胞を含有するので、このような方法を使用して所与の細胞において多重の標的の状態を判定することは、多くの場合不可能である。
【0050】
多重化免疫蛍光(mIF)イメージングを含めて、最近の多重化イメージング技法によって、単一の組織試料における多くの標的種(例えば、抗原、RNA)の解析が可能となってきた。このような技法は、単一標的法に勝る著しい改善である。単一のイメージング工程において、適切に選択された染色剤と、異なる染色剤に相当する測定された蛍光シグナルを分離するスペクトルアンミキシング等のコンピュータ処理方法との組合せを使用して、最大で8つの標的を同時に測定することができる。このような方法に適している染色剤には、例えば、Akoya Biosciences社(Menlo Park、CA)から入手可能なOpal(登録商標)試薬が含まれる。或いは、適切な染色剤には、UltiMapper I/O PD-L1キット、UltiMapper I/O Immuno8キット、又はInSituPlex染色剤(Ultiview Inc.社、Cambridge MAから入手可能)が含まれる。多重化染色、イメージング及びスペクトルアンミキシングの各方法は、例えば、以下の米国特許及び米国特許出願公開に記載されているが、それらのそれぞれの全内容が参照により本明細書に組み込まれる:米国特許第7,555,155号;米国特許第8,462,981号;米国特許第8,330,087号;米国特許第9,541,504号;米国特許第10,126,242号;及び米国特許出願公開第2019/0339203号。
【0051】
連続イメージングサイクルも実施して、データを得ることができる標的被検化合物の数を更に増やすこともできる。例えば、染色及びイメージングの各サイクルに続いて、試料に適用された染色剤を除去又は不活性化することができ、そして、新しい一セットの染色剤を導入し、新たに導入された染色剤の1つ又は複数の画像が得られるように、染色及びイメージングの新しいサイクルを開始することができる。そのような方法は、多数の標的被検化合物を調査するアッセイに特に有用とすることができる。そのようなアッセイの一例は、組織試料における腫瘍関連マーカーのパネルを標的とする抗原標的アッセイである。そのようなアッセイの別の例は、組織試料の特定の領域又は細胞において転写物を調査するRNAアッセイである。RNAアッセイによれば、特に、数百又は数千もの異なる転写物種を調査することができ、したがって多重のイメージングサイクルから利益を得ることができる。
【0052】
連続イメージングサイクルを実施するための適切な試薬には、例えば、Akoya Biosciences社から入手可能なCODEX(登録商標)試薬が含まれる。生体試料における標的被検化合物のマルチサイクル標識化及びイメージングの態様については、例えば、以下の特許及び特許刊行物に記載されているが、それらのそれぞれの全内容が参照により本明細書に組み込まれる: 9,909,167; 10,370,698;国際公開第2021/067475号;国際公開第2020/163397号;及び国際公開第2021/127637号。
【0053】
医療現場を含めて多くの状況では及び医薬品試験では、組織試料は小さく、このことから、そのような試料からの不十分な生体材料を最も効果的にどう活用するかについてトリアージの決定を余儀なくされる。自動化染色プロセスは、研究及び臨床で広く使用されており、なぜなら、多数の試料を確実に、繰り返して、経済的に処理することを実用的なものとするからである。自動化プロセスによれば、マニュアルの試料操作及び処理に伴う無駄を省くことができる。
【0054】
しかし、自動化試料処理方法が使用されている場合でも、トリアージの決定がなおも必要である場合がある。例えば、試料の完全な調製及び染色/標識化を進めるか否かについての決定を為すことができるが、このことにより、試料が拘束され、他のアッセイに利用可能な生体材料のプールから当該試料が削除される。このような決定は、試料のヘマトキシリン及びエオシン(H&E)画像を参照することによって、有用に誘導することができる。すなわち、試料をH&Eで染色することにより、試料の形態及び構造的特徴を病理医がレビューすることができ、病理医は、更なる解析のために試料の切片の完全な調製及び染色を是認するかどうかを判定することができる。この状態評価によって、不十分な試料材料で行う必要があるトリアージの決定の重大性が排除又は軽減され、そのような解析が不適切であるか又は正当性がない試料に関する費用と時間がかさむマルチスペクトル(例えばmIF)の調製及びイメージングが、回避される。
【0055】
残念なことに、H&Eによる従来の明視野染色は、多くの種類のその後の処理、例えば、mIF、FISH等のゲノム解析、及びRNA解析を妨害する。特に、ヘマトキシリンは、試料の多重化蛍光イメージングを妨害するスペクトル特性を有し、特定の標的被検化合物に相当するシグナルを不明瞭にする。更に、ヘマトキシリンは - 一度試料に適用されると - 除去するのが困難であり、このことによって、取得される後々の蛍光画像においてヘマトキシリン由来の寄与を化学的に不活性化することが困難となる。
【0056】
生体試料のH&Eイメージングと関連する上記の及び他の困難に対処するために、本開示は、生体試料の疑似H&E画像を生成するための方法、システム、試薬、及びキットを特徴とする。試料は、「ヘマトキシリンアナログ」及び/又はエオシン若しくは「エオシンアナログ」に曝露される。ヘマトキシリンアナログとは、試料において局在化し、試料においてヘマトキシリンによって生成されることになるシグナルに類似し且つそれを表す光シグナルを生成する、試薬又は試薬組成物である。エオシンアナログは、存在する場合、試料において局在化し、試料においてエオシンによって生成されることになるシグナルに類似し且つそれを表す光シグナルを生成する、試薬又は試薬組成物である。
【0057】
試料の画像が得られるが、これは、ヘマトキシリンアナログ及び/又はエオシン若しくはエオシンアナログからの寄与を含む。試料の疑似H&E画像は次いで、これらの測定された寄与から生成することができる。後続の試料処理工程は、必要に応じて、抗原賦活化、並びに多重化染色及びイメージングプロトコル(例えば、多重化免疫蛍光組織化学プロトコル、又は多重化RNA標識化及び蛍光検出プロトコル)を含むことができる。
【0058】
試料の疑似H&E画像は、様々な方法で使用することができる。一部の実施形態では、例えば、疑似H&E画像を使用して、疑似H&E画像において観察された試料特徴に基づいて、多重化染色及びイメージングプロトコルを実施するかどうかを判定することができる。ある特定の実施形態では、疑似H&E画像を使用して、多重化染色及びイメージングプロトコルを介する解析向けに試料のある特定の領域を選択すること、更には試料の選択された領域への試薬の送達をガイドすることさえもすることができる。一部の実施形態では、疑似H&E画像を使用して、試料の品質を全体として評価することができる。ある特定の実施形態では、疑似H&E画像を、多重化染色及びイメージングプロトコルからの画像情報と一緒に使用して、試料の特定の領域を様々な形態学的、病理学的、又は疾患状態のクラスに分類することができる。
【0059】
下で更に詳細に論議されるように、一部の実施形態では、疑似H&E画像は、エオシンと、ヘマトキシリンアナログとして機能するクルクミン又はカルミンとの希釈濃度で染色された試料から得られる。クルクミンもカルミンも通常、ヘマトキシリンに類似する分布パターンで試料において局在化し、したがって、クルクミン又はカルミンのいずれかに相当する測定された蛍光シグナルとは、ヘマトキシリンの予想分布パターンを表し、疑似H&E画像を生成するのに使用することができる。
【0060】
本明細書に記載の方法、システム、試薬、及びキットの重要な利点とは、ヘマトキシリンアナログ及びエオシン又はエオシンアナログによる組織試料の染色によって、マルチスペクトル染色/標識化及びmIF等のイメージング技法を使用したその同じ組織切片のその後の処理及び解析が妨害されないことである。後々の染色/標識化及びイメージングの各工程の過程で測定された画像シグナルは、疑似H&E画像を作成することによりまったく影響を受けないか、又はシグナルの強さ若しくはエピトープの可用性への影響は軽微であると共にアッセイの解釈過程に順応することができる。
【0061】
本明細書に記載の方法、システム、試薬、及びキットの別の重要な利点とは、マルチスペクトル染色/標識化及びイメージングプロトコルからの疑似H&E画像及び画像情報が、同じブロックからカットされた連続組織切片からではなく、まったく同じ試料に相当することである。連続組織切片は、取り扱い上で相違の対象となる場合がある。更に、上で説明のように、連続組織切片は異なる細胞を通常には含有するので、このことが、単一細胞の比較をより困難なものとする。同じ組織切片由来の疑似H&E画像及びマルチスペクトル画像情報を生成することで、こういった難題が回避される。
【0062】
一部の実施形態では、疑似H&E画像は、更なる試料処理工程及びイメージング工程を実施する前に生成することができる。ヒト試料に関する臨床実習及び調査研究は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織ブロックで実施することが多い。免疫組織化学的(IHC)染色又はmIFイメージングの場合、IHC染色剤又はIF染色剤を導入する前に、1つ又は複数の抗原賦活化(AR)工程が必要である又は望ましい場合がある。しかし、AR工程によって、組織の構造又は形態が変更されてしまう可能性があり、メラニン等の組織の発色性の特徴が削除されてしまうおそれがある。後続の処理工程の前に試料の疑似H&E画像を生成することにより、試料が抗原賦活化(AR)処置を受ける前と同様に、試料を観察することができる。
【0063】
理論に拘束されることを望むものではないが、AR処置により、疑似H&E画像を生成するのに使用された染色剤が除去されると考えられる。経験的に、AR処置後の蛍光シグナルレベルは、AR処置を受けた未染色試料のものと実質的に同じである。ヘマトキシリンアナログ、エオシン、及びエオシンアナログに起因する残留シグナルは、ほぼ、又は完全に排除される。様々な異なる試薬及び組成物をAR処置に使用することができる。一例として、pH9のtris-EDTA溶液をARに首尾よく使用することができる。一般に、ARは多くの染色作業フローの通常の工程であるので、そのような作業フローで疑似H&E画像を生成するのに使用されるシグナルの除去に、更なる時間又は試料処理工程は不要である。
【0064】
試料染色及びイメージングの方法
図1は、試料を解析するための一セットの例示的な工程を示すフローチャートである。第1の工程102では、試料を第1の染色剤組成物で試料を染色する。第1の染色剤組成物は、ヘマトキシリンアナログ、及びエオシン又はエオシンアナログを含む。上で論議のように、(それらに限定されないが)クルクミン及びカルミンを含めて、様々な異なるヘマトキシリンアナログを使用することができる。(それに限定されないが)インジゴカルミンを含めて、様々な異なるエオシンアナログを使用することができる。
【0065】
次に、工程104では、試料の明視野画像及び蛍光画像を得る。一部の実施形態では、試料の蛍光画像は、ヘマトキシリンアナログからの寄与を表し、ヘマトキシリンが導入されていた場合には生じたと思われる、試料におけるヘマトキシリンの分布パターンを表す。
【0066】
工程106では、下でより詳細に論議するように、試料の疑似H&E画像を生成する。疑似H&E画像を、工程108で、病理医、技術者、又は他の人が必要に応じてレビュー及び/又はアノテートする。レビューに続いて、工程110では、試料の更なる処理/解析が望まれるかどうかについての決定が行われる。この決定は、例えば、疑似H&E画像において観察される試料の形態学的及び/又は構造的特徴に基づくことができる。更なる解析が望まれない場合、手順は工程112で終了する。
【0067】
更なる解析が望まれる場合は、次いで工程114では、第1の組成物由来の1つ又は複数の染色剤を必要に応じて除去又は不活性化することができる。上で論議のように、抗原賦活化を実施して、1つ又は複数の染色剤を除去することができる。試料中の標的被検化合物が抗原(例えば、RNA)ではない場合でも、抗原賦活化(又は同様の手順)を必要に応じて実施することができることに留意されたい。このような状況での抗原賦活化は、単に染色剤除去/不活性化工程とされてもよい。
【0068】
次に、工程116では、多重化染色/標識化及びイメージングアッセイを実施する。このようなアッセイは、例えば、試料における1つ又は複数の異なるタイプの被検化合物を標的とするプローブに試料を曝露する工程、及び試料をイメージングしてプローブの局在化に関する情報を得る工程を含むことができる。
【0069】
様々な異なるタイプのプローブを導入することができる。一部の実施形態では、プローブは、試料における特定のタイプの抗原を標的とし、蛍光部分(例えば、「標識」)に直接的又は間接的に連結された抗体からなる。各タイプの抗体は、異なる、分光光学的に区別可能な標識に連結することができるので、試料のマルチスペクトル画像によれば、試料において異なるタイプの抗体のそれぞれ - したがってそれらの特異的標的抗原 - の位置が、明らかとなる。先のサイクルの標識に関し必要に応じて不活性化/クエンチングを行い、その後に、次のサイクルにおいてプローブの新しいセットを導入しつつ、イメージング及び染色/標識化の多重のサイクルを必要に応じて実施することができる。
【0070】
ある特定の実施形態では、プローブは、オリゴヌクレオチドに連結された抗体からなり、その結果、各タイプの抗体が異なるタイプのオリゴヌクレオチドに直接的又は間接的に連結されている。このようなプローブはすべて、単一の試料標識化工程で導入しても、連続的な標識化工程で導入してもよい。プローブが試料中の標的抗原に結合した後、標識化剤を導入する。各タイプの標識化剤は、プローブのうちの1つのオリゴヌクレオチドに相補的であるオリゴヌクレオチドと、標識化剤のオリゴヌクレオチドに直接的又は間接的に連結された蛍光部分とを含む。プローブのオリゴヌクレオチドと標識化剤がハイブリダイズし、標的被検化合物が位置する試料中の標識化剤を局在化する。試料をイメージングすると、標識化剤の位置により、相当する被検化合物の位置が明らかとなる。標識化及びイメージングの多重のサイクルを実施することができる。サイクルとサイクルの間に、先行技術からの標識化剤は、標識化剤の新しいセットの導入前に、脱ハイブリダイゼーションを介してそれらの相当するプローブから一般には除去される。
【0071】
一部の実施形態では、プローブはオリゴヌクレオチドからなる。プローブオリゴヌクレオチド配列の第1の部分は、試料中の標的核酸(例えば、標的RNA種)に相補的であると共に、これに(ハイブリダイゼーションをとおして)選択的に結合する。プローブオリゴヌクレオチドの第2の部分は、レポーター配列として機能する1つ又は複数の更なる核酸配列を含有する。例えば、ある特定の作業フローでは、プローブオリゴヌクレオチドの第2の部分は、上で論議のように、標識化剤のオリゴヌクレオチドに相補的である「バーコード」配列を含有する。導入されると、標識化剤は、バーコード配列に選択的にハイブリダイズし、標的RNAが位置する試料中において標識化剤が局在化する。標識化剤のオリゴヌクレオチドに連結された標識化部分からの蛍光発光の画像を得ることによって、試料中の標的RNAの位置を決定することができる。標識化及びイメージングの多重のサイクルを実施することができる。サイクルとサイクルの間に、先行技術からの標識化剤は、標識化剤の新しいセットの導入前に、脱ハイブリダイゼーションを介してそれらの相当するプローブから一般には除去される。
【0072】
或いは、一部の作業フローでは、プローブオリゴヌクレオチドの第2の部分は、レポーター部分として機能する多重の核酸配列を含有することができる。各タイプのレポーター部分は、異なる標識化部分に連結された相補的オリゴヌクレオチドを持って、異なるタイプの標識化剤に選択的にハイブリダイズする。染色/標識化及びイメージングの各サイクル過程で、異なる一セットの標識化剤が導入され、各標識化剤は、セットのうちの他の標識化剤と比較して異なるスペクトルバンドで、蛍光発光を生成する。多重の染色/標識化及びイメージングサイクルが実施され、特定の標的被検化合物が、測定される共同配置の蛍光シグナルの組合せに基づいて、試料において特定及び局在化される。効果的に、各タイプのRNA標的は、レポーター部分の異なる組合せに対応し、したがって、蛍光シグナルの異なる組合せに対応する。このようにして、多数の異なるRNA標的を、比較的少数の異なる標識化剤によって組合せ様式でアッセイすることができる。RNA標的検出方法の更なる態様については、米国仮特許出願第63/171,297号及び同第63/189,056号に記載されているが、それらのそれぞれの全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0073】
一部の実施形態では、プローブは、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)等の触媒に連結された抗体又はオリゴヌクレオチドからなる。例は、被検化合物(例えば、抗原、タンパク質、RNA)の1つに選択的に結合するプローブに曝露され、被検化合物と共に試料中の触媒が局在化する。次いで、試料をチラミド連結標識化剤に曝露する。触媒は、チラミドの活性化及び標的被検化合物へ近接して試料において標識化剤の沈着を触媒する。沈着標識化剤は(例えば、蛍光発光を測定することによって)イメージングされ、このことによって試料中の標的被検化合物を特定する。次いで、沈着標識化剤を除去又は不活性化することができ、標識化及びイメージングの別のサイクルを実施して別の標的被検化合物を特定することができる。
【0074】
上で論議のように、工程118では、工程116で得られたマルチスペクトル画像情報を使用して、試料中の標的被検化合物(例えば、抗原、RNA)を特定し、測定された蛍光シグナルの相対強度に基づいて必要に応じて定量化する。手順は工程120で終了する。
【0075】
前述の試料処理工程の一部又はすべては、Leica Bond(Leica Biosystems社、Buffalo Grove ILから入手可能)等の自動染色装置で必要に応じて実施することができる。様々な他の自動ストレーナを使用してもよく、図1の工程のいずれか1つ又は複数をマニュアルで実施してもよい。
【0076】
工程114では、試料をLeica ER2試薬(Leica Biosystems社から入手可能)に曝露することによって、AR処置を実施することができる。或いは、又は加えて、AR処理を、圧力鍋、例えば、Instant Brands社(Kanata、ON)から入手可能な6-quart Instant Pot Duo 7-in-1 Electric Pressure Cooker、又は、Biocare Medical社(Concord CA)から入手可能なDecloaking Chamberで試料を加熱することによって実施することができる。更に、pH概9を有するtris/EDTA溶液を用いてマイクロ波処置(MWT)で、ARを実施することができる。
【0077】
工程116及び/又は118をマニュアルで実施しても、自動染色装置で実施しても、Vectra Polaris(登録商標)システム(Akoya Biosciences社から入手可能)等の自動システムで実施してもよい。
【0078】
工程102では、組織ブロックから組織切片として試料を得た後、試料を第1の染色剤組成物と接触させることができる。図2は、FFPE組織ブロックから組織切片を得るための一セットの例示的な工程を示すフローチャートである。第1の工程202では、FFPE組織ブロックをスライスして(例えば、ミクロトームを使用して)組織切片を得る。次いで、工程204では、組織切片を加熱し、工程206では、組織切片を脱パラフィン剤に曝露して、組織切片から脱ろうする。脱ろう後、脱パラフィン組織切片を工程208で再水和して、染色することができる組織切片を得る。前述の工程は当技術分野で一般によく知られており、従来の方法を図2の工程それぞれに使用することができる。
【0079】
図1に戻るが、工程102では、様々な時間で、ヘマトキシリンアナログ及びエオシン又はエオシンアナログと試料を必要に応じて接触させることができる。例えば、一部の実施形態では、クルクミン及び/又はカルミンの水溶液並びに硫酸アルミニウムカリウム十二水和物等の染料固定剤(例えば、媒染剤)が、試料と最初に接触する。試料を、概30分間溶液と接触させることができる。次いで試料を勾配アルコールをとおして脱水し、次いで希釈エオシン溶液で染色する。一例として、適切な溶液は、0.0001質量%のエオシンY及び0.005質量%の氷酢酸が添加されたエタノールを含む。染色後、試料をキシレンで乾燥させることができ、カバーグラスを載せることができ、試料を蛍光イメージングシステムでイメージングすることができる。試料の1つ又は複数の画像を得るが、これは、ヘマトキシリンアナログ(例えば、クルクミン及び/又はカルミン)及びエオシン又はエオシンアナログ(例えば、インジゴカルミン)に相当するシグナルを含有する。疑似H&E画像を、下でより詳細に論議されるように、測定された蛍光シグナル情報から生成する。
【0080】
ミョウバンを含むエオシンY製剤を、第1の染色剤組成物中の対比染色剤として使用することができる。一部の実施形態では、例えば、ヘマトキシリンアナログ(例えば、カルミン)とエオシンYの両方を、カリウムミョウバンを含む溶液中で80℃に加熱することによって別々に調製することができる。試料乾燥工程を、カバーグラスを貼り付ける前にこの様式において解消することができる。
【0081】
カバーグラスを貼り付けるために、H&E Mount(Innovex Biosciences社、Richmond、CAから入手可能)等の封入剤を使用して、水溶液からカバーグラスを貼り付けることができる。試料をイメージングして疑似H&E画像を得た後、カバーグラスを取り外すことができる。
【0082】
図3は、組織試料の疑似H&E画像を生成するための一セットの例示的な工程を示すフローチャートである。第1の工程302では、ヘマトキシリンアナログを含む第1の組成物で試料を染色する。適切なヘマトキシリンアナログの例としては、それらに限定されないが、クルクミン及びカルミンが挙げられる。次いで、工程304では、例えば、従来の乾燥プロトコルでキシレンを使用して試料を脱水する。
【0083】
次いで、工程306では、エオシン又はエオシンアナログ(例えば、インジゴカルミン)を含む第2の組成物で試料を染色する。工程308では試料にカバーグラスを適用し、工程310では、ヘマトキシリンアナログとエオシン又はエオシンアナログの両方由来のスペクトル寄与を含む試料の1つ又は複数の画像を得る。これらの画像を工程312で使用して、試料の疑似H&E画像を生成し、必要に応じてこれを表示及び/又は記憶する。画像を、本明細書に記載のように観察、アノテート及び使用して、更なるアクションを取ること、例えば、マルチスペクトル染色/標識化及びイメージングプロトコルで試料を更に解析する必要があるかどうかを評価することができる。画像を使用して、試料において目的の特定の領域を特定することもでき、次いで、この領域について、マルチスペクトル染色/標識化及びイメージングプロトコルの後にコンピュータ処理で解析する。抗原賦活化、並びにマルチスペクトル染色/標識化及びイメージングを含めて、本明細書に記載の更なる工程のいずれかを実施することができる。
【0084】
図8は、組織試料の疑似H&E画像を生成するための例示的な工程の別のセットを示すフローチャートである。第1の工程802では、ヘマトキシリンアナログ及びエオシン又はエオシンアナログを含む組成物で、試料を染色する。適切なヘマトキシリンアナログの例としては、それらに限定されないが、クルクミン及びカルミンが挙げられる。適切なエオシンアナログの例はインジゴカルミンである。次いで、工程804では、封入剤及びカバーグラスを試料に適用する。
【0085】
工程806では、ヘマトキシリンアナログの蛍光画像を得る。工程808では、エオシン又はエオシンアナログの明視野画像を必要に応じて得る。次いで、工程810では、疑似ヘマトキシリン画像(工程806の画像から生成された)及び疑似H&E画像(工程806及び808の画像から生成された)のいずれか又は両方を生成し、これらを必要に応じて表示及び/又は記憶する。上記のように、画像を、本明細書に記載のように観察、アノテート及び使用して、更なるアクションを取ること、例えば、マルチスペクトル染色/標識化及びイメージングプロトコルで試料を更に解析する必要があるかどうかを評価することができる。画像を使用して、試料において目的の特定の領域を特定することもでき、次いで、この領域について、マルチスペクトル染色/標識化及びイメージングプロトコルの後にコンピュータ処理で解析する。抗原賦活化、並びにマルチスペクトル染色/標識化及びイメージングを含めて、本明細書に記載の更なる工程のいずれかを実施することができる。
【0086】
全体として、ヘマトキシリンアナログ及び希釈エオシンで染色した後、試料の色は、染色剤の低濃度及び固有の特性に起因して、ほぼ未変化であるように見える。それにもかかわらず、試料は、メラニン、ビリルビン、赤血球、及び他の特徴に起因して、幾分かの固有の吸収を有する可能性がある。
【0087】
上記のように、一部の実施形態では、疑似H&E画像は、試料の蛍光画像と透過光明視野画像の両方に基づいて生成され、疑似H&E画像は、メラニン等の発色性の特徴を含む。試料の明視野画像を蛍光画像と共に登録して、試料の吸収性特徴に関する情報を組み込んだ疑似H&E画像を作成することができる。
【0088】
一部の実施形態では、特にデジタルパソロジーの場合、スライドスキャナを使用して試料画像を得る。スキャナにより、スライド全体の疑似H&E画像を作成する。病理医又はH&E画像に精通した他の人は、画像をレビューすることができ、デジタルパソロジーにアノテーションを行うことを含めて、いくつかのアクションを、例えば、当該試料に関し更なる解析を進めるか若しくは停止するか全体的な決定、及び/又は引き続いて行われる解析に含めるか若しくはそれから除外する領域、及び/又は、腫瘍辺縁若しくは目的の他の構造等の1つ若しくは複数の特徴を構成する試料中の領域の特定、を取ることができる。アノテーションと、レビュー担当者の身元、レビューの時間、又は他の情報等のレビューに関する詳細とのセットを、ラボ情報システムに記録して、全体的な作業フローを容易にすることができる。
【0089】
本明細書に記載の方法及びシステムによれば、試料のマルチスペクトル画像を疑似H&E画像と共に解析する作業フローを実装することができる。例えば、疑似H&E画像とマルチスペクトル試料画像の両方を、細胞の位置、密度マップ、及び共同配置の標的被検化合物等の画像から導出された定量的指標と共に、ユーザに表示すことができる(例えば、こういった画像と画像を隣りどうしで、重ね合わせて、又は交互に)。
【0090】
疑似H&E画像の生成
ヘマトキシリンアナログ及びエオシン又はエオシンアナログに相当する画像情報から疑似H&E画像を生成するために、ヘマトキシリン及びエオシンに標的カラーを選択する。これらは、疑似H&E画像が核クロマチン及び細胞外物質に対して有することになる色相に相当し;標的カラーはそれぞれ深青色又は紫色及び鮮やかな桃色である。各色相はRGBトリプルで表され、その色の赤色、緑色、及び青色の各含量を表す。
【0091】
各ピクセルについて、そのピクセルのヘマトキシリンアナログ(HA)シグナル及びエオシンシグナル又はエオシンアナログ(E/A)シグナルを評価することにより、シグナルが作成される。これらは、露出レベル、全体的な染色強度、及び類似の因子に基づく、そのコンポーネントの強い染色であるものについての画像全体の評価に基づいてスケーリングされて、相対的な(スケーリングされた)HAシグナル及び相対的なE/Aシグナルが得られる。これらを使用して、疑似明視野画像を、白色シグナルから開始し;ヘマトキシリンの色相に基づくHAのスケーリングされた色の寄与を乗じ;更にエオシンの色相に基づくE/Aのスケーリングされた色の寄与を更に乗ずることによって、作成する。
【0092】
コンピュータ処理による画像処理では、RGB値を0~255スケールで表すのが一般的である。白色は{250, 250, 250}のRGBトリプルで表され、ヘマトキシリンの色相は{117, 88, 155}のRGB値で表すことができ、エオシンの色相は{252, 154, 208}で表すことができる。
【0093】
各コンポーネントに対してルックアップテーブルが作成され、これは、そのシグナルの様々なスケーリングの強さsのシグナルと関連した色の寄与を表す。
【0094】
各コンポーネントCはRGB値、Rc、Gc、及びBcを有し、正規化シグナルsの関数として、R、G、及びBの各値を用いてルックアップテーブル(LUT)が計算されるが、これは:
【0095】
【数1】
【0096】
によって与えられる。
【0097】
LUTは画像ごとに1回計算され、HAシグナル及びE/Aシグナルはスケールダウンされ、その結果、所与のコンポーネントで強く染色されたピクセルは、そのコンポーネントに対してスケーリングの強さオーダー1を有する。
【0098】
次いで、選択した白色のカラートリプルに、そのピクセルにてのスケーリングHAシグナルのLUTカラートリプルと、そのピクセルにてのスケーリングE/AシグナルのLUTカラートリプルとを乗じることにより、すべてのピクセルについてRGBカラートリプルが計算される。カラートリプルを乗じるとは、個々のR、G、及びBの各値を乗じ、フルスケール255で除することを意味する:
【0099】
【数2】
【0100】
明視野画像(BF)が取得されると、次いで、画像は、各ピクセルにての試料の外観に相当するR、G、及びBの各値を有する。この明視野画像は、蛍光画像と共に空間的に登録され、その結果、画像アレイ中の同一ピクセルは試料中の同一位置に相当する。画像は、以下の式を使用して計算された各ピクセルにてのR、G、及びBの各値を用いて生成される:
【0101】
【数3】
【0102】
明視野画像は、値255が完全透過率を指示するRGBカラーバンドにおける試料の透過率を表すとすることができ、これは、式2の画像に試料透過率をピクセル単位で乗じたものである。
【0103】
カルミン及びエオシンで染色された試料は、Opal 520チャンネル及びOpal 570チャンネルで強いエオシンY発光を示し、Opal 620チャンネルでは非検出であった。カルミンは、Opal 620チャンネルで強く、自己蛍光(AF)チャンネルで中程度に、Opal 570チャンネル及び690チャンネルで弱く発光し、Opal 520チャンネルでは非検出であった。このことに基づくと、Opal 520シグナルはエオシンYに結び付き、Opal 620シグナルはカルミンに結び付いた。これらのバンドのシグナルを使用して、上記のように疑似H&E画像を生成した。
【0104】
希釈クルクミン及びエオシンYで染色された試料は、Opal 520チャンネル及びOpal 570チャンネルで強いエオシンY発光を示した。クルクミンは、Opal 480チャンネル及びAFチャンネルで強く、Opal 520チャンネル及びDAPIチャンネルで弱く発光したが、Opal 570チャンネルでは実質的ではなかった。このことに基づくと、Opal 520シグナルはエオシンYに結び付き、Opal 480シグナルはクルクミンに結び付いた。これらのバンドのシグナルを使用して、上記のように疑似H&E画像を生成した。
【0105】
他のセットの蛍光イメージングフィルタを使用してもよい。フィルタの選択は、イメージングシステム、並びにエオシン又はエオシンアナログ及びヘマトキシリンアナログの蛍光特性に対する等の、因子に基づいて為すことができる。2つの蛍光イメージングバンドを使用して、疑似H&E画像を構築することができる。3つ以上の蛍光イメージングバンドを使用して、これらのバンドの比率、合計、若しくは差をそれらから計算して;又はスペクトルアンミキシング等のマルチスペクトル技法を用いて;シグナルを分離すること若しくは試料の自己蛍光を除去することもできる。機能的に、それぞれの種(すなわち、ヘマトキシリンアナログ及びエオシン又はエオシンアナログ)に相当するシグナルを区別することができることを条件とするならば、疑似H&E画像を生成することができる。
【0106】
画像の解析
一部の実施形態では、疑似H&E画像及びマルチスペクトル画像は、別々の作業フローを使用して得られる。ある特定の実施形態では、ラボ情報管理システム(LIMS)を使用してそれらを関連付けるが、各画像の解析又は解釈は別々に行われる。一部の実施形態では、作業フローが、下記の方法で2つのタイプの画像を密接に連関させる。
【0107】
疑似H&E観察が生成されると、それをレビューすることができる。このようなレビューには、一般に試料の評価、その後のマルチスペクトル標識化及びイメージング解析へのその適切さ、サンプルエクステント及び目的の構造のタイプ等が含まれうる。レビュー担当者は、続行の承認;その後の解析のための目的の領域又は解析から除外する領域の指示;及びレビュー担当者の身元等の、アノテーションを画像に添付することができる。レビュー及びアノテーションの機能は、スライド全体の観察及びアノテーション用のデジタルパソロジーツールを使用して行うことができる。
【0108】
一部の実施形態では、こういったレビューは、マルチスペクトル試料処理(例えば、染色/標識化及びイメージング)の前に実施され、そのような処理を進めるか否かの評価が為される。このことにより、疑似H&E画像単独に基づいて除かれた試料について、それらの工程を実施する費用と労力が回避される。
【0109】
時には、こういったレビューには、マルチスペクトルイメージングデータの後続の画像解析を方向付けるのに使用されるアノテーション付けが含まれる。その後の評価は、試料の染色/標識化及びイメージングを進めるか否かについての第1の評価とは別の関係者によって為されてもよい。例えば、第1の決定は組織学者によって為されてもよく、第2の決定は病理医によって為されてもよい。デジタルパソロジーツールを使用して、どちらか又は両方をリモートで為すことができる。
【0110】
後続の画像解析をガイドするアノテーションが為されると、ラボは、研究者又は病理医等の試料専門家による更なる介入なしに、試料の染色/標識化、イメージング、画像解析、及びスコアリングの各工程を進めることができる。介入ポイントの全体数を、こういった初期評価、それに次ぐ試料結果の解釈を含めて減少させることができる。
【0111】
画像処理をガイドするアノテーションは、疑似H&E画像上で為されるので、試料が後続する染色/標識化又はマルチスペクトルイメージングを受けている間に行うことができ、そのマルチスペクトルイメージングが完了するとすぐに、試料を画像解析に直接進めることができる。このことにより、マルチスペクトル画像上で同等のアノテーションが実施される作業フローと比較して、時間が節約され、スケジュールが単純化される。
【0112】
試料を更に処理する上で使用するために試料の疑似H&E画像にアノテーションを行う場合、2つの画像の座標系どうしで変換することができることが有用である。このことにより、一方の画像に描かれた領域をもう一方の画像に適切に配置させることができる。
【0113】
これは、組織ブロックからカットした連続切片を処理する場合に起こる等の、類似するがまったく別の試料の画像を登録することに関する問題と同様の技法上の問題である。そういった用途に適した技法も本明細書で使用することができる。画像レジストレーションは一般的により難しい課題ではない。本明細書に記載の画像は、試料がスライド上に固定された後に撮像された、同一試料のものであるからである。AR及び多重のプローブによる試料標識化に起因するわずかな形態学的変化がありうるが、一方、それでもなお2つの画像に記録された特徴どうしの間には高度な類似性がある。多くの目的で、試料をリジッドボディとして処置し、平行移動及び回転等の単純な座標操作を使用して、一方の画像空間から別の画像空間に変換することができる。
【0114】
標的被検化合物の多重化アッセイ
試料を染色及びイメージングして疑似H&E観察を作成し且つAR処置を実施した後、試料を、標的被検化合物の性質に従って、様々な多重化染色/標識化及びマルチスペクトルイメージング技法を使用して処理することができる。標的被検化合物には、それらに限定されないが、抗原、ペプチド、タンパク質、及び他のアミノ酸含有部分、バイオマーカー、RNA、DNA、DNA塩基、RNA塩基、DNA塩基とRNA塩基の両方、及び合成塩基を含有するオリゴヌクレオチドを含めてオリゴヌクレオチド、核酸断片並びに脂質が含まれる。腫瘍組織において、腫瘍微小環境において、及び他の疾患状態を表す組織において発現するバイオマーカーは、特に重要である。そのような標的バイオマーカーの例としては、それらに限定されないが、Sox10、S100、パンサイトケラチン、PAX5、PAX8等の腫瘍マーカー;CD3、CD4、CD8、CD20、FoxP3、CD45RA、CD45LCA、CD68、CD163、CD11c、CD33、HLADR等の免疫細胞識別子;Ki67、グランザイムB等の活性化マーカー;TIM3、LAG3、PD1、PDL1、CTLA4、CD80、CD86、IDO-1、VISTA、CD47、CD26等のチェックポイント関連マーカーが挙げられる。
【0115】
上で論議のように、RNA標的被検化合物を、本明細書に記載の方法を使用して特定することができる。本明細書に記載のように得られた試料の疑似H&E画像を使用して、試料のDNAの遺伝子解析、及び/又は試料のRNAのトランスクリプトーム解析を実施することができる。疑似H&E画像を使用して、RNA及び/又はDNAの解析向けに目的の領域を特定することができる。例えば、疑似H&E画像に基づいて試料内にがん領域を特定することができるが、1つ又は複数の突然変異の存在、腫瘍遺伝子変異量の評価、及び特定のタイプの組織材料を特徴付けることを意図する他の遺伝的解析等の、特定のタイプの解析向けに、そういった領域を選択することができる。
【0116】
本明細書に記載のアッセイを、多重化して、多重の異なる標的被検化合物を特定し、必要に応じて定量化することができる。特定し、必要に応じて定量化することができる被検化合物の数は、5つ以上(例えば、10以上、20以上、30以上、50以上、100以上、200以上、300以上、500以上、700以上、1000以上、2000以上、3000以上、5000以上、10000以上、又はそれ超)、及び5~10000の間の任意の数の被検化合物とすることができる。
【0117】
本明細書に記載の方法を使用して、様々な異なるタイプの生体試料を解析することができる。一部の実施形態では、生体試料は、新鮮であっても、凍結されていても、固定されていてもよい。生体試料は、ヒト、マウス、ラット、ウシ、ブタ、ヒツジ、サル、ウサギ、ショウジョウバエ、カエル、線虫又はウッドチャック由来等の、動物起源とすることができる。生体試料には、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織切片、凍結組織切片、新鮮組織、対象から得られた細胞(例えば、穿刺吸引又は他の技法を介して)、培養細胞、生体組織、生体液、ホモジネート、又は未知の生体試料が含まれうる。
【0118】
ある特定の実施形態では、生体試料を表面に固定化することができる。例えば、表面は、スライド、プレート、ウェル、チューブ、膜、又はフィルムとすることができる。一部の実施形態では、生体試料をスライド上に載せることができる。ある特定の実施形態では、生体試料を、アルデヒド、アルコール、酸化剤、水銀、ピクリン酸、HOPE固定剤、又は別の固定剤等の固定剤を使用して固定することができる。生体試料を、代わりに、又は加えて、熱固定を使用して固定することができる。固定は、浸漬又は灌流を介して行ってもよい。
【0119】
上の論議では、抗原賦活化の単一サイクルが実施される。しかし、より一般的には、本明細書に記載の方法のいずれもが、多重サイクルの抗原賦活化(例えば、2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、7回以上、10回以上、又はそれ超)を含むことができる。抗原賦活化のサイクル数は一般に、特定の標的被検化合物の検出に適当であるように選択することができる。抗原賦活化では、様々な試薬、温度、時間、及び機器を用いてもよい。試料を、0.3%過酸化水素溶液等の試薬に供して内因性ペルオキシダーゼをブロックすることができる。様々な種類のブロッキング緩衝剤を使用してタンパク質の誤検出を低減させることができ、ビオチンベースの検出を用いる場合はビオチンブロッカーを使用することができる。
【0120】
上の論議により主に焦点を合わせているところとは、ヘマトキシリンアナログを使用して試料を染色し、疑似H&E画像を生成することである。しかし、留意すべきこととは、エオシンアナログはまた、本明細書に記載の方法において、ヘマトキシリンと共に及びヘマトキシリンアナログと共に使用することができることである。適切なエオシンアナログの1つは、対比染色剤として機能するインジゴカルミンである。インジゴカルミンとは、深赤色の波長で発光する蛍光性の好酸性染色剤である。本明細書に記載の同じ抗原賦活化技法を使用して、疑似H&E観察を作成するのは、試料がイメージングされた後と、することができる。
【0121】
試薬キット
本明細書に記載の試薬及び組成物のいずれも、生体試料を処理するための試薬キットに一緒にパッケージングすることができる。キットは、ケース(例えば、柔軟なプラスチック又は紙等の包装材料、或いはバイアル、ボトル、チューブ、又は他の密閉及び/若しくは再密閉可能な包装等の硬質包装)内に含めることができる。キットは、本明細書に記載の処理工程のいずれかを記載する取扱説明書を含めて、使用向けの取扱説明書を含むことができる。
【0122】
キットに含めることができる試薬には、限定されないが、ヘマトキシリン、ヘマトキシリンアナログ、エオシン、エオシンアナログ、発色染色剤、蛍光染色剤、蛍光標識及び蛍光種を含有する試薬、抗原賦活化試薬、緩衝剤試薬、染料固定剤、並びにミョウバンが含まれうる。
【0123】
ハードウェアシステム及びソフトウェアシステム
本明細書に記載の方法は、半自動化又は完全自動化の様式で工程の一部又はすべてを実施するシステムを含めて、様々な異なる解析システムにおいて実装することができる。そのようなシステム1200の一例を、図12に概略的に示す。システム1200は、ストレージユニット1202、標識化ステーション1204、イメージングステーション1206、及び平行移動装置1210を含む。これらコンポーネントのそれぞれは、コントローラ1208に接続され、これは、コントローラ1208と関連する制御機能を実施する1つ又は複数の電子プロセッサを含むと共に、本明細書に記載の他の解析機能のいずれかを実施することもできる。
【0124】
平行移動装置1210は、システム中の異なる位置間でスライドを移送するために、密閉チャンバ中で試料を伴う個々のスライドに取り付けられたスライドハンドラ1212を含む。密閉チャンバとチャンバ内の試料を伴うスライドの例を、図12にスライド1250として指示する。スライドハンドラ1212は、いくつかの方法で実装することができる。一部の実施形態では、例えば、スライドハンドラ1212は、把持器であり、スライド1250を持ち上げ移送するために、スライド1250の表面に圧力をかける1つ又は複数のアーム又はフィンガを含む。ある特定の実施形態では、スライドハンドラ1212は、減圧を使用して個々のスライド1250を持ち上げる1つ又は複数の吸気ポートを備える部材を含む。ある特定の実施形態では、スライドハンドラ1212は、スライド1250の下に挿入されてスライドを持ち上げる1つ又は複数の部材を含む。一般に、スライドハンドラ1212によれば、3つの直交軸周りのスライド1250の回転変位と、3つの直交軸に沿った平行移動との両方が可能となりうる。
【0125】
平行移動装置1210はまた、システム1200において位置どうしの間で個々のスライド1250又はスライドのコンテナを運搬するトラック又はコンベヤ1213を含むことができる。一部の実施形態では、トラック1213は、位置どうしの間を単一方向に沿って前後に移動する線形トラックである。ある特定の実施形態では、トラック1213は、システムにおいて位置どうしの内を循環する連続的なトラック(例えば、円形、楕円形、又は別の連続的な形状)である。
【0126】
操作過程で、コントローラ1208は、上で論議のように、適当な制御シグナルを平行移動装置1210に送信して、ストレージユニット1202から1つ又は複数のスライド1250を回収し、1つ又は複数のスライドをストレージユニット1202に置くことができる。更に、コントローラ1208は、制御シグナルを平行移動装置1210に送信して、標識化ステーションを作動させ、流体、試薬、及び組成物をスライド1250のチャンバに送達すると共に、スライド1250のチャンバから流体、試薬、組成物(及びそれらの成分)を除去することができる。標識化ステーション1204は、1つ又は複数のリザーバ1218並びに1つ又は複数のポンプ及び/又は真空ソース1219に接続された流体装置1214を含む。流体装置1214は、スライド1250へ近接のポートに選択的に結合することができる1つ又は複数の流体導管1216(例えばシリンジ、チューブ)を含む。システムの操作過程で、コントローラ1208は、シグナルを平行移動装置1210に送信して、スライド1250を標識化ステーション1204内に配置すると共にシグナルを流体装置1214に送信して、1つ又は複数の流体導管にリザーバ1218から流体、試薬、及び組成物をスライド1250上へと送達させる。そして、流体、試薬、及び組成物(及びそれらの成分)がスライドから除去され、その結果、コントローラ1208が、自動化様式で、本明細書に記載の染色操作及び標識化操作のいずれかを実装することができる。コントローラ1208の制御下で、標識化ステーション1204は、本明細書に記載の試料調製工程のいずれかを実施することができる。
【0127】
イメージングステーション1206は、放射線ソース1220、対物レンズ1224、ビームスプリッタ1222、及び画像検出器1226を含む。放射線ソース1220には、それらに限定されないが、LED、レーザダイオード、金属ハライドソース、白熱光ソース、及び蛍光ソースを含めて、様々な異なるソースのいずれか1つ又は複数が含まれうる。画像検出器1226には、それらに限定されないが、CCD検出器及びCMOS検出器を含めて、1つ又は複数の異なる検出器タイプが含まれうる。システム1200の操作過程で、スライド1250のチャンバ内の試料の画像を得るために、コントローラ1208は平行移動装置1210を作動させてスライド1250をイメージングステーション1206内に配置させる。次いで、コントローラ1208は、制御シグナルをイメージングステーションのコンポーネントに送信し、ソース1220を作動させて、ビームスプリッタ1222及び対物レンズ1224を通過し、試料に入射する、照明放射を試料へと送達する。試料からの放出光は、対物レンズ1224を通過し、ビームスプリッタ1222から反射され、放出光の画像を測定する画像検出器1226に入射する。
【0128】
図12では、イメージングステーションは、試料の蛍光又は反射光画像を得るように構成されている。しかし、一部の実施形態では、検出器1226をソース1220からスライド1250の反対側に配置して、試料の透過光画像を測定することができることを理解されたい。ある特定の実施形態では、イメージングステーション1206は、試料の透過画像も反射又は放出光(例えば、蛍光)画像も両方を測定するための多重の検出器を含む。コントローラ1208の制御下で、イメージングステーション1206では、本明細書に記載の異なるタイプの染色剤、プローブ、及び標識化剤のいずれかに相当する異なるタイプの画像のいずれかを得ることができる。
【0129】
先に論議のように、試料解析の各工程はある特定量の時間を消費するが、システム1200内の多重の位置どうしの内で多重のスライド1250を平行移動させること及び多重の操作を実施することによって効率の向上を得ることができる。例えば、多重のスライド1250の解析過程で、チャンバ中の第1の試料を含有する第1のスライドを標識化ステーションに配置することができ、流体装置によって、1つ又は複数のプローブが試料に送達され、送達されたプローブと共に試料をインキュベートすることができる。同時に、チャンバ中の第2の試料を含有する第2のスライドをイメージングステーションに配置して、試料中の染色剤又は標識化剤の1つ又は複数の画像を得ることができる。チャンバ中の第3の試料を含有する第3のスライドを、標識化ステーションに配置することができるが、この場合、コントローラ1208は、1つ又は複数のポンプ及び/又は真空ソースを作動させて、流体、試薬、及び/又は組成物(及びそれらの成分)を第3のスライドのチャンバから除去する。チャンバ中に第4の試料を含有する第4のスライドを標識化ステーションに配置することができるが、この場合、コントローラ1208は、流体装置1214を作動させて、1つ又は複数の一次抗体を含む組成物をチャンバ内に送達し、第4の試料を抗体組成物と共にインキュベートする。他のスライド1250も同時に - 本明細書で論議の操作のいずれかを受けながら - 処理することができる。
【0130】
各スライドが調製又は解析の作業フローの1つ又は複数の工程の一セットの最後に到達する場合、スライドは平行移動装置1210によって、例えば、システム中の異なる位置に - 異なるステーションに、又は同じステーション内の異なる位置に移送される。このようにして、システム1200によれば、多重の試料を同時に解析することができ、システム1200のコンポーネントのデューティ比が比較的高いままであることが確保され、個々の試料の単純な線形処理と比べて、多重の試料に対するシステムの全体的なスループットが向上する。
【0131】
図13に、本明細書に開示のシステム及び方法と共に使用することができるコントローラ1208の一例を示す。コントローラ1208は、1つ又は複数のプロセッサ402、メモリ404、記憶デバイス406及び相互接続のためのインターフェース408を含むことができる。プロセッサ402によって、メモリ404中に又は記憶デバイス406上に記憶された命令を含めて、コントローラ内で実行するための命令を処理することができる。例えば、命令は、プロセッサ402に、本明細書に開示の解析工程及び制御工程のいずれかを実施するように命令することができる。
【0132】
メモリ404によって、プロセッサ402向けの実行可能な命令、励起波長及び検出波長等のシステムのパラメータに関する情報、並びに測定されたスペクトル画像情報を記憶することができる。記憶デバイス406は、フロッピーディスクデバイス、ハードディスクデバイス、光ディスクデバイス、又はテープデバイス、フラッシュメモリ又は他の類似のソリッドステートメモリデバイス、又はデバイスのアレイ等のコンピュータ可読媒体とすることができるが、これには、記憶エリアネットワークでの又は他の構成でのデバイスが含まれる。記憶デバイス406は、上記のプロセッサ402によって実行することができる命令、及びメモリ404によって記憶することができる他の情報のいずれかを記憶することができる。
【0133】
一部の実施形態では、コントローラ1208は、グラフィック処理ユニットを含んで、ディスプレイ416等の外部入力/出力デバイス上に(例えば、GUI又はテキストインターフェースを使用して)グラフィック情報を表示することができる。グラフィック情報は、本明細書に開示の、情報のいずれかを表示するためのディスプレイデバイス(例えば、CRT(陰極線管)又はLCD(液晶ディスプレイ)モニタ)によって表示することができる。例えば、表示情報には、疑似H&E画像、マルチスペクトル画像、アノテーション及びユーザが入力した他の情報が含まれうる。ユーザは、入力デバイス(例えば、キーボード、ポインティングデバイス、タッチスクリーン、音声認識デバイス)を使用して、コントローラ1208に入力を提供することができる。
【0134】
システム1200のユーザは、入力デバイスを介してコントローラ1208に様々な異なるタイプの命令及び情報を提供することができる。命令及び情報には、例えば、本明細書に記載の染色及び標識化プロトコルのいずれかと関連するパラメータ(例えば、染色剤、標識、プローブ、試薬、条件)のいずれかに関する情報、試料画像の定量的解析向けのキャリブレーション情報、並びに技術者による試料画像のマニュアル解析の後の命令が含まれうる。コントローラ1208によって、これらの様々なタイプの情報のいずれかを使用して、本明細書に記載の方法及び機能を実施することができる。そういったタイプの情報のいずれも、コントローラ1208によって必要に応じて記憶させ(例えば、記憶デバイス406に)、呼び出すことができることにも留意されたい。
【0135】
本明細書に開示の方法は、コントローラ1208によって実行可能及び/又は解釈可能である、1つ又は複数のコンピュータプログラム中の命令を実行することにより、コントローラ1208によって実装することができる。これらのコンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション又はコードとしても知られる)は、プログラマブルプロセッサ用の機械命令を含むと共に、高レベルの手続き型プログラミング言語及び/若しくはオブジェクト指向のプログラミング言語で、並びに/又はアセンブリ/マシン言語で実装することができる。例えば、コンピュータプログラムには、メモリ404中に、ストレージユニット406中に、及び/若しくは有形のコンピュータ可読媒体上に記憶させることができる命令、並びに上記のようにプロセッサ402によって実行させることができる命令を、含有せしめることができる。本明細書で使用される場合、「コンピュータ可読媒体」という用語は、機械命令を受け取る機械可読媒体を含めて、機械命令及び/又はデータをプログラマブルプロセッサに提供するのに使用される、任意のコンピュータプログラム製品、装置及び/又はデバイス(例えば、磁気ディスク、光ディスク、メモリ、プログラマブル論理デバイス(PLD)、ASIC、及び電子回路)を指す。
【実施例
【0136】
(実施例1)
クルクミン及びエオシン染色
本実験では、クルクミン((E,E)-1,7-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン、CAS番号458-37-7、Sigma-Aldrich社)及びミョウバン(硫酸アルミニウムカリウム十二水和物、CAS番号7784-24-9、Sigma-Aldrich社)を使用する。ミョウバン0.5質量%を添加した、再蒸留高圧滅菌水の飽和クルクミン溶液を作ることによって、水性クルクミン-ミョウバン溶液を作製した。次いで、この溶液を80℃へと1時間至らしめた。クルクミン-ミョウバン溶液は、その使用の最大2か月前に調製することができる。
【0137】
本実験では、エオシンY二ナトリウム塩(CAS番号17372-87-1、Sigma-Aldrich社)も使用する。これを使用して、アルコールのエオシンの酸性溶液を調製した。これは、エオシンによる従来の明視野組織学的染色にとっては通常であるものと比較して、極希薄溶液であった。溶液は、0.001質量%以下の少量のエオシンY塩を含有して、組織学グレードのアルコール(試薬グレード、組織学グレード、VWR89370-084)から作製した。実験が指示したところは、0.001%以下(例えば、0.0005%以下、0.0001%以下、0.00005%以下、又はそれ未満)の濃度を試料染色に使用しても、疑似H&E画像を生成することがなおもできることである。0.005容量%の少量の氷酢酸を添加することにより、弱酸性のpHを得た。
【0138】
エオシンY溶液は使用直前に通常には調製されるが、最大2か月前までに0.0001%の作業溶液に希釈することができる。酢酸を使用直前に添加した。酢酸を添加した希釈エオシンY溶液は、使用後廃棄した。
【0139】
3つのFFPEヒト肺がん組織切片を厚さ5ミクロンにカットし、正帯電の25mm×75mmの顕微鏡スライド(Superfrost、Fisher Scientific社)に載せ、65℃で3時間ベーキングし、以下を用いて脱パラフィン及び再水和した:3回の10分間キシレン浴(組織学グレード、VWR89370-088)、1回の10分間100%アルコール浴(試薬グレード、組織学グレード、VWR89370-084)、1回の5分間95%アルコール浴(試薬グレード、組織学グレード、VWR89370-082)、1回の5分間70%アルコール浴(試薬グレード、組織学グレード、VWR89370-078)、及び1回の2分間高圧滅菌再蒸留H2O浴。
【0140】
次いで、それらをクルクミン-ミョウバン溶液で30分間染色した。この後、それらを、1回の5分間70%アルコール浴及び1回の5分間95%アルコール浴で乾燥させ、次いで、エオシン溶液で5分間染色した。次いで、それらを、2回の10分間キシレン浴で脱水し、Cytoseal 60(Richard-Allan Scientific社)封入剤を1滴適用し、#1.5のカバーグラスを貼り付けた。次いで、試料を、8つのイメージングバンド - DAPI、Opal 480、Opal 520、Opal 570、Opal 620、Opal 690、Opal 780、及びSample AF - でスライド全体の蛍光イメージングプロトコルを使用するVectra Polaris(登録商標)(Akoya Biosciences社)イメージングシステムを使用してイメージングした。
【0141】
キシレンを使用してカバーグラスを取り外し、試料を2回の10分間キシレン浴で洗浄して封入剤が残留していないことを確保し、試料を1回の10分間100%アルコール浴、1回の5分間95%アルコール浴、1回の5分間70%アルコール浴、及び1回の2分間高圧滅菌再蒸留H2O浴を介して再水和した。
【0142】
次いで、試料をマイクロ波処置による抗原賦活化に供した。試料を、250mLの1×AR9緩衝剤(PerkinElmer AR900250ML 10×ストックを高圧滅菌再蒸留H2Oで希釈)に浸漬し、Panasonic NN-SA651S電子レンジの中に100%パワー(デフォルトパワー設定)で93秒間、これに続いて、即座に20%パワー(パワー設定「2」)で15分間、置いた。
【0143】
その後、それらを、室温まで冷却し、Leica Bond自動染色装置を使用して、当該キットの製造元取扱説明書に従ってOpal(登録商標)MOTiF Lung Cancerキット(Akoya Biosciences社、P/N OP-000001)を用いて、調製した。脱ろう及び抗原賦活化が既に実施されているので、これらの工程を省略し、スライドをtris緩衝生理食塩水(TBS緩衝剤、20×液体、VWR J640-1L、高圧滅菌再蒸留H2Oで希釈)でマシンに加え、「frozen slide delay」「Preparation」を選択した。染色が完了した場合、それらを、MOTiF FLスキャニングプロトコルを使用してVectra Polaris(登録商標)システムを用いてイメージングした。
【0144】
図4A及び図4Bに、組織試料の1つにおける、それぞれクルクミン及びエオシンに相当する測定された蛍光シグナルを示す。図4Cに、図4A及び図4Bに含有される画像情報から試料について生成された疑似H&E画像を示すが、一方、図4Dに、従来のH&Eプロトコルで染色された別の組織切片から測定された従来のH&E画像を示す。画像どうしの間に密接な質的一致が観察される。
【0145】
図5A図5Gに、Opal(登録商標)MOTiF Lung Cancerキットを用いた、図4A及び図4Bに示した同じ組織試料の抗原賦活化及び染色の後に得られた、測定された蛍光シグナルを示す。画像は、それぞれDAPI並びにパンサイトケラチン、CD68、CD8、PD-1、PDL-1、及びFoxP3の各マーカーに連結された蛍光標識に相当する。図6A図6Gに、クルクミン又はエオシンで染色しなかったが、Opal(登録商標)MOTiF Lung Cancerキットで代わりに直接染色した、異なる組織切片から得られた、測定された蛍光シグナルを示す。画像は、それぞれDAPI並びにパンサイトケラチン、CD68、CD8、PD-1、PDL-1、及びFoxP3の各マーカーに連結された蛍光標識に相当する。図の比較から明らかなように、同一マーカーに相当する画像は質的に酷似しているように見え、このことが指示するところは、クルクミン及びエオシンによる最初の染色がイムノアッセイに強く影響を及ぼさなかったことである。
【0146】
様々なマーカーの発現レベルを図7のグラフに示すが、発現レベルは定量的に互いに類似している。
【0147】
(実施例2)
カルミン及びエオシン染色
本実験では、カルミン-ミョウバン及びエオシンY-ミョウバンの溶液を使用する。ストック溶液を以下のとおりに作製した。
【0148】
撹拌ホットプレート上の脱イオン蒸留水250mLで開始し、KAl(SO4)2(Sigma社、Cat # A6435-100G)1.25gを添加した。温度を30℃へと上昇させた。ミョウバンが溶解したら、カルミン粉末(Sigma社、Cat # C1022-5G)0.25gを添加し、溶液を80℃に加熱した。80℃で10分間撹拌を続けた。溶液をホットプレートから取り出し、室温まで冷却し、次いで濾過し、ガラス瓶に保存した。
【0149】
KAl(SO4)2(Sigma社、Cat # A6435-100G)5gを脱イオン蒸留水500mLに添加し、ミョウバンが溶解するまで断続的に撹拌しながら80℃のオーブン中に置いた。溶液が80℃になった場合、エオシンY二ナトリウム塩(Sigma-Aldrich社、Cat # E4382-25G)0.5gを添加した。断続的に撹拌しながら、溶液をオーブン内に30分間そのままとした。溶液をオーブンから取り出し、室温まで冷却し、次いで、Grade 1 Whatman paper(Sigma-Aldrich社、SKU # WHA1001055)で濾過し、ガラス瓶に保存した。
【0150】
本実験では、カルミン-ミョウバンl×ストック3mLとエオシンY-ミョウバン1×ストック7mLを混合して、試料の染色に使用されるカルミン及びエオシンの作業溶液を形成した。切片を、厚さ5ミクロンで、FFPE肺がん試料ブロックからカットした。各カット切片をVWR Superfrostスライド上に置き、65℃で3時間ベーキングすることにより脱ろうし、以下を用いて脱パラフィン及び再水和した:3回の10分間キシレン浴(組織学グレード、VWR89370-088)、1回の10分間100%アルコール浴(試薬グレード、組織学グレード、VWR89370-084)、1回の5分間95%アルコール浴(試薬グレード、組織学グレード、VWR89370-082)、1回の5分間70%アルコール浴(試薬グレード、組織学グレード、VWR89370-078)、及び1回の2分間高圧滅菌再蒸留H2O浴。
【0151】
試料を、カルミン及びエオシンの作業溶液500μLで5分間カバーし、次いで、高圧滅菌再脱イオンH2Oでリンスし、5分間の70%アルコール浴、5分間の95%アルコール浴、及び10秒間の70%アルコール浴でリンスして、過剰なエオシンを除去し、次いで、高圧滅菌再脱イオンH2O浴に戻し、その後に、H&E Mount(商標)(Innovex Biosciences社、Richmond CA)を2滴適用し、#1.5カバーグラスを貼り付けた。或いは、試料は、カルミン及びエオシン染色の後、5分間の70%アルコール浴、5分間の95%アルコール浴、5分間の100%アルコール浴、2回の10分間キシレン浴(先に列記のVWR試薬)で脱水し、イメージング及び長期保存用に、Cytoseal 60(Richard-Allen Scientific社)一滴と共に封入する場合もあった。
【0152】
試料を、8つのイメージングバンド - DAPI、Opal 480、Opal 520、Opal 570、Opal 620、Opal 690、Opal 780、及びSample AF - でスライド全体の蛍光イメージングプロトコルを使用するVectra Polaris(登録商標)イメージングシステムでイメージングした。1つの試料について、明視野イメージングプロトコルを使用して、同じ装置でイメージングもした。
【0153】
他のベーキング試料を対照として使用したが、これは、脱パラフィン及び再水和、カルミン及びエオシン溶液での染色を行うことも、実験のこの時点でのイメージングを行うことも、なかったものである。
【0154】
染色及びイメージングされた試料は、高圧滅菌再蒸留水を使用してそのカバーグラスが取り除かれ、次いで、高圧滅菌再蒸留H2Oで5分間洗浄して、残留封入剤を除去した。
【0155】
次いで、カルミン及びエオシン処置試料をマイクロ波処置を使用して抗原賦活化に供した。試料を、250mLの1×AR9緩衝剤(PerkinElmer AR900250ML 10×ストックを高圧滅菌再蒸留H2Oで希釈)溶液に浸漬し、Panasonic NN-SA651S電子レンジの中に100%パワー(デフォルトパワー設定)で93秒間、これに続いて、即座に20%パワー(パワー設定「2」)で15分間、置いた。
【0156】
試料を同じ蛍光イメージングプロトコルを使用してイメージングして、非染色対照のシグナルレベルと比較して、カルミン及びエオシン染色剤の残留効果を(この処置を受けた試料について)評価した。
【0157】
その後、それらを、Leica Bond自動染色装置を使用して、当該キットの製造元取扱説明書に従ってOpal(登録商標)MOTiF Lung Cancerキットを用いて、調製した。この場合も、カルミン及びエオシンのスライドについては脱ろうが既に実施されていたので、これらの工程を省略し、これらのスライドを、Bond装置において「frozen slide delay」「Preparation」の工程に供した。対照スライドを、これは65℃で3時間ベーキングしたが脱パラフィンも再水和もしなかったものであるが、Bond Rx上で「Dewax」「Preparation」に供した。これらの異なる「Preparation」処置の下流で、すべてのスライドを同じ試薬調製物を使用して同じHIER及び染色プロトコルに供した。染色プロトコルの開始時間は、「Dewax」「Preparation」の工程に割り当てられた余分な時間に起因して、対照対カルミン及びエオシン処置スライドにわたっておおよそ40分だけ異なった。次いで試料を、MOTiF FLスキャニングプロトコルを使用してVectra Polaris(登録商標)でイメージングした。
【0158】
すべての試料についてmIFシグナルを測定し、このレベルを、当該染色を受けなかった対照試料のレベルと突き合わせて、最初にカルミン及びエオシンで染色された試料に対して比較した。
【0159】
図9A及び図9Bに、それぞれカルミン染色剤及びエオシン染色剤からの測定された蛍光シグナルを示し、図9Cに、図9A及び図9Bの画像情報から得られた疑似H&E画像を示す。図9Dに、同じ組織切片からの透過光画像を示し、図9Eに、カルミン染色剤及びエオシン染色剤の両方と関連する蛍光シグナル(図9A及び図9B)並びに透過光画像(図9D)から生成された疑似H&E画像を示す。図9C及び図9Eの画像は類似しているが、図9Eの画像では、透過光情報が含まれているので、より詳細が示されている。
【0160】
図9Fは、従来のH&Eプロトコルに従って染色された別の組織切片から得られた従来のH&E画像である。図9E及び図9Fに、高度な質的類似性が示されている。
【0161】
図10Aに、カルミン及びエオシンのスペクトルチャンネルにおけるカルミン及びエオシンの測定されたシグナル強度を示し、図10Bに、対照試料と比較した、上記の8つのイメージングバンドに相当する様々なスペクトルチャンネルにおける、抗原賦活化の後のカルミンの測定されたシグナル強度を示す。測定された強度は、カルミンに起因する残留蛍光シグナルが極小であることを指示する。図11に、Opal(登録商標)MOTiF Lung Cancerキットの蛍光標識で染色すると共に蛍光標識の発光バンドに合わせたフィルタを使用してイメージングした後の、カルミンの測定されたシグナル強度を示す。この場合も、カルミンに起因する残留蛍光シグナルは極小である。
【0162】
他の実施形態
本開示では特定の実装について記載するが、これらは、本開示の範囲に対する制限として解釈されるべきではなく、むしろある特定の実施形態における特徴の説明として解釈されるべきである。別々の実施形態の状況下で記載されている特徴はまた、単一の実施形態において組み合わせて全体として実装することができる。逆に、単一の実施形態の状況下で記載されている様々な特徴はまた、複数の実施形態において別々に又は任意の適切な部分的組合せにおいて実装することができる。更に、特徴が、ある特定の組合せにおいて存在しているように上記され、更にそのようなものとして最初に特許請求されている場合があるが、特許請求されている組合せからの1つ又は複数の特徴が、組合せから削除される場合が一般にあり、特許請求されている組合せは部分的組合せ又は部分的組合せの変形形態を対象とすることができる。
【0163】
本明細書に明確に開示された実施形態に加えて、記載された実施形態への様々な改変が、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく為されうることが理解されよう。したがって、他の実施形態は以下の特許請求の範囲の範囲内である。
【符号の説明】
【0164】
102 第1の染色剤組成物で試料を染色する工程
104 試料の明視野画像及び蛍光画像を得る工程
106 試料の疑似H&E画像を生成する工程
108 疑似H&E画像を必要に応じてレビュー/アノテートする工程
110 更なる解析について決定する工程
112 更なる解析が望まれない場合、終了する工程
114 第1の組成物由来の1つ又は複数の染色剤を除去又は不活性化する工程
116 多重化染色/標識化及びイメージングアッセイを実施する工程
118 工程116で得られたマルチスペクトル画像情報を使用して、試料中の標的被検化合物を特定し、定量化する工程
120 終了する工程
202 FFPE組織ブロックをスライスして組織切片を得る工程
204 組織切片を加熱する工程
206 組織切片を脱パラフィン剤に曝露する工程
208 脱パラフィン組織切片を再水和する工程
302 ヘマトキシリンアナログを含む第1の組成物で試料を染色する工程
304 キシレンを使用して試料を脱水する工程
306 エオシン又はエオシンアナログを含む第2の組成物で試料を染色する工程
308 試料にカバーグラスを適用する工程
310 ヘマトキシリンアナログとエオシン又はエオシンアナログの両方由来のスペクトル寄与を含む試料の画像を取得する工程
312 試料の疑似H&E画像を生成し、表示及び/又は記憶する工程
402 プロセッサ
404 メモリ
406 記憶デバイス
408 インターフェース
416 ディスプレイ
802 ヘマトキシリンアナログ及びエオシン又はエオシンアナログを含む組成物で試料を染色する工程
804 封入剤及びカバーグラスを試料に適用する工程
806 ヘマトキシリンアナログの蛍光画像を得る工程
808 エオシン又はエオシンアナログの明視野画像を必要に応じて得る工程
810 疑似ヘマトキシリン画像及び疑似H&E画像のいずれか又は両方を生成し、これらを必要に応じて表示及び/又は記憶する工程
1200 システム
1202 ストレージユニット
1204 標識化ステーション
1206 イメージングステーション
1208 コントローラ
1210 平行移動装置
1212 スライドハンドラ
1213 トラック又はコンベヤ
1214 流体装置
1216 流体導管
1218 リザーバ
1219 ポンプ及び/又は真空ソース
1220 放射線ソース
1222 ビームスプリッタ
1224 対物レンズ
1226 画像検出器
1250 スライド
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図6A
図6B
図6C
図6D
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図6F
図6G
図7
図8
図9A
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図10A
図10B
図11
図12
図13
【国際調査報告】