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特表2023-535010脱炭酸共二量体化プロセスおよびそれから製造される合成燃料
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  • 特表-脱炭酸共二量体化プロセスおよびそれから製造される合成燃料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-15
(54)【発明の名称】脱炭酸共二量体化プロセスおよびそれから製造される合成燃料
(51)【国際特許分類】
   C10G 3/00 20060101AFI20230807BHJP
【FI】
C10G3/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504210
(86)(22)【出願日】2021-07-23
(85)【翻訳文提出日】2023-02-16
(86)【国際出願番号】 US2021043052
(87)【国際公開番号】W WO2022020767
(87)【国際公開日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】63/056,327
(32)【優先日】2020-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515252260
【氏名又は名称】アールイージー シンセティック フューエルス リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】アブハリ ラミン
(72)【発明者】
【氏名】グリーン ネイト
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA01
4H129BA09
4H129BA11
4H129BB05
4H129BB10
4H129BC11
4H129BC15
4H129BC50
4H129NA22
4H129NA23
4H129NA30
4H129NA32
4H129NA43
(57)【要約】
1つの局面において、本願は再生可能炭化水素燃料を製造するための方法を開示する。該方法は、混合物を電気分解して再生可能ディーゼルと任意で再生可能ガソリンとを含む電解生成物を生成する工程を含み、該混合物は、(i)バイオ再生可能原料からの遊離脂肪酸と(ii)末端モノメチル分岐カルボン酸とを含み、該再生可能ディーゼルは、末端モノメチル分岐パラフィンと末端モノメチル分岐アルケンとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能炭化水素燃料を製造するための方法であって、以下の工程を含む、方法:
(i)バイオ再生可能原料からの遊離脂肪酸と(ii)末端モノメチル分岐カルボン酸とを含む混合物を電気分解して、末端モノメチル分岐パラフィンおよび末端モノメチル分岐アルケンを含む再生可能ディーゼルと、任意で再生可能ガソリンとを含む電解生成物を生成する工程。
【請求項2】
再生可能ディーゼルを水素化する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
末端モノメチル分岐カルボン酸がイソ酪酸を含む、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項4】
イソ酪酸が、バイオ再生可能原料からのイソブタノールから生成される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
イソブタノールを脱水素化してイソブチルアルデヒドおよびH2を生成し、イソブチルアルデヒドを酸化してイソ酪酸を生成することによって、イソ酪酸がイソブタノールから生成される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
イソブタノールを脱水素化して生成されるH2がイソブチルアルデヒドから分離される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
イソブタノールを脱水素化することからのH2が水素化反応で用いられる、請求項5または請求項6記載の方法。
【請求項8】
再生可能ガソリンが2,3-ジメチルブタンを含む、請求項1~7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
遊離脂肪酸が、脂肪、油、および/またはグリースの脂肪酸エステルの加水分解から生成される脂肪酸を含む、請求項1~8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
遊離脂肪酸が、トール油からの、および/またはトール油エステルの加水分解から生成される脂肪酸を含む、請求項1~9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
遊離脂肪酸が、ヤシ脂肪酸留出物からの脂肪酸を含む、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
遊離脂肪酸が、脂肪、油、および/またはグリースから留出させた脂肪酸を含む、請求項1~11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
遊離脂肪酸が、ヤシスラッジ油および/または使用済み調理油から留出させた脂肪酸を含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
電気分解が再生可能エネルギーによって電力供給される、請求項1~13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
末端モノメチル分岐イソパラフィンと、
各内部炭素-炭素二重結合がシスである末端モノメチル分岐アルケンと
を含む、再生可能ディーゼル。
【請求項16】
-10℃未満の曇点および60超のセタン価を有する、請求項15記載の再生可能ディーゼル。
【請求項17】
2,3-ジメチルブタンを含む、再生可能ガソリン。
【請求項18】
87以上のオクタン価を有する、請求項17記載の再生可能ガソリン。
【請求項19】
請求項1~14のいずれか一項記載の方法によって製造される、請求項17または請求項18記載の再生可能ガソリン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年7月24日に出願の米国仮特許出願第63/056,327号の恩典および優先権を主張し、該出願の全体があらゆる目的のために参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
分野
本技術は合成燃料およびバイオ燃料、より具体的にはバイオマス系ディーゼル燃料およびガソリンに関する。特に、本発明は、遊離脂肪酸および短鎖カルボン酸の脱炭酸共二量体化を介した再生可能炭化水素ディーゼルの製造に関する。
【発明の概要】
【0003】
概要
1つの局面において、再生可能炭化水素燃料を製造するための方法が提供され、該方法は、混合物を電気分解して再生可能ディーゼルと任意で再生可能ガソリンとを含む電解生成物を生成する工程を含み、該混合物は、(i)バイオ再生可能原料からの遊離脂肪酸と(ii)末端モノメチル分岐カルボン酸とを含み、該再生可能ディーゼルは、末端モノメチル分岐パラフィンと末端モノメチル分岐アルケンとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】本明細書において開示される本技術の例示的な方法の電気分解反応器系の代表的な図面を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
詳細な説明
様々な態様を以下に記載する。具体的な態様は、網羅的な記載として、または本明細書において検討されるより広範な局面に対する限定としては意図されていないことに留意されたい。特定の態様を通じて記載される1つの局面は必ずしもその態様に限定されず、任意の他の態様で実施することができる。
【0006】
本明細書で用いられるように、「約」は、当業者によって理解され、かつそれが用いられる文脈に応じてある程度異なるであろう。該用語の使用が当業者には明確でない場合、それが用いられる文脈を考慮して、「約」は、特定の用語のプラスまたはマイナス10%までを意味し、例えば、「約10重量%」は「9重量%~11重量%」を意味すると理解されるであろう。「約」が用語の前にある際は、該用語は「約」該用語とともに「約」によって修飾されていない該用語とを開示していると解釈され、例えば、「約10wt%」は「9wt%~11wt%」を開示しているとともに「10wt%」と理解される。
【0007】
本開示において用いられる「および/または」という表現は、記載されたメンバーのいずれか1つを個別に、またはそれらのいずれか2つ以上の組み合わせを意味し、例えば、「A、B、および/またはC」は「A、B、C、AおよびB、AおよびC、またはBおよびC」を意味すると理解される。
【0008】
本明細書および添付の請求項で用いられているように、要素を説明する文脈における(特に、以下の請求項の文脈における)「1つの(a)」および「1つの(an)」および「その(the)」などの単数を表す冠詞ならびに同様の指示語は、本明細書において特に示されていないかまたは文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形および複数形の両方を包含すると解釈されたい。本明細書における値の範囲の記載は、本明細書において特に示されていない限り、範囲内に入るそれぞれ別の値を個別に参照する簡便な方法として機能することのみを意図しており、それぞれ別の値はそれが本明細書において個別に記載されているかのように明細書に組み入れられる。本明細書において記載されるすべての方法は、本明細書において特に示されていないかまたは文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施することができる。本明細書において提供されるあらゆる例、または例示的な用語(例えば、「~など」)の使用は態様をよりよく説明することのみを意図しており、特に記載のない限り請求項の範囲に対する限定をもたらすものではない。明細書における文言は、請求項に記載されていない要素が不可欠であることを示していると解釈されるべきではない。
【0009】
本明細書において用いられるように、「アルキル」基は、炭素原子を1~25個有するものなどの、直鎖および分枝アルキル基を含む。直鎖アルキル基の例は、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、およびn-オクチル基を含む。分岐アルキル基の例は、イソプロピル、sec-ブチル、t-ブチル、ネオペンチル、およびイソペンチル基を非限定的に含む。C1~C4アルキルなどの「Cx~Cyアルキル」という表現は、x~yの範囲に入る炭素数を有するアルキル基を意味すると理解されるであろう。
【0010】
シクロアルキル基は環内に炭素原子を3~12個有する単環式、二環式、または三環式アルキル基を含む。シクロアルキル基は1つまたは複数のアルキル基で置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。例示的な単環式シクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチル基を非限定的に含む。いくつかの態様では、シクロアルキル基は環員を3~8個有するが、別の態様では環炭素原子の数は3~5、3~6、または3~7個の範囲である。二および三環式環系は架橋シクロアルキル基および縮合環を両方含み、非限定的にはビシクロ[2.1.1]ヘキサン、アダマンチル、デカリニルなどである。代表的な置換シクロアルキル基はモノ置換であっても、または1回を超えて置換されていてもよく、非限定的には2,2-、2,3-、2,4-、2,5-または2,6-二置換シクロヘキシル基などである。
【0011】
アルケニル基は、2個の炭素原子間に少なくとも1個の二重結合が存在することを除いて、上に定義した直鎖および分枝鎖アルキル基を含む。アルケニル基は、炭素原子を2~25個有する。本明細書における任意の態様のアルケニル基は、炭素-炭素二重結合を1、2、3、または4個有し得る。アルケニル基の例は、とりわけ、ビニル、アリル、-CH=CH(CH3)、-CH=C(CH3)2、-C(CH3)=CH2、-C(CH3)=CH(CH3)、-C(CH2CH3)=CH2を非限定的に含む。
【0012】
シクロアルケニル基は、2個の炭素原子間に少なくとも1個の二重結合を有する、上で定義したシクロアルキル基を含む。シクロアルケニル基は、1つまたは複数のアルキル基で置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。シクロアルケニル基は、二重結合を1、2、または3個有し得るが、芳香族化合物を含まない。シクロアルケニル基は、炭素原子を4~14個、炭素原子を5~14個、炭素原子を5~10個、またはさらには炭素原子を5、6、7、もしくは8個有し得る。シクロアルケニル基の例は、シクロヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキサジエニル、シクロブタジエニル、およびシクロペンタジエニルを含む。
【0013】
本明細書において用いられる「芳香族物質(aromatics)」という用語は「芳香族材料(aromates)」と同義であり、ヘテロ原子を含有しない環状芳香族炭化水素とヘテロ環式芳香族化合物の両方を意味する。該用語は単環式、二環式および多環式環系を含む(集合的には、そのような二環式および多環式環系は本明細書においては「多環式芳香族物質」または「多環式芳香族材料」と呼ばれる)。該用語はアルキル基およびシクロアルキル基を有する芳香族種も含む。よって、芳香族物質は、ベンゼン、アズレン、ヘプタレン、フェニルベンゼン、インダセン、フルオレン、フェナントレン、トリフェニレン、ピレン、ナフタセン、クリセン、アントラセン、インデン、インダン、ペンタレン、およびナフタレン、ならびにこれらの化合物のアルキルおよびシクロアルキル置換バリアントを非限定的に含む。いくつかの態様では、芳香族種は基の環部分に炭素を6~14個、他の態様では炭素原子を6~12個またはさらには6~10個含有する。該表現は、縮合芳香族-脂肪族環系(例えば、インダン、テトラヒドロナフテンなど)などの縮合環を含有する基を含む。
【0014】
本明細書において用いられる「含酸素物質(oxygenate)」は、酸素への共有結合を少なくとも1つ含有する炭素含有化合物を意味する。該用語に包含される官能基の例は、カルボン酸、カルボキシレート、酸無水物、アルデヒド、エステル、エーテル、ケトン、およびアルコール、ならびにリン酸エステルおよびリン酸無水物などのヘテロ原子エステルおよび無水物を非限定的に含む。含酸素物質は本明細書において記載される芳香族物質、シクロパラフィン、およびパラフィンの酸素含有バリアントでもあり得る。
【0015】
本明細書において用いられる「パラフィン」という用語は非環状の分枝または非分枝アルカンを意味する。非分岐パラフィンはn-パラフィンであり、分岐パラフィンはイソ-パラフィン(「イソパラフィン」とも呼ばれる)である。「シクロパラフィン」は環状の分岐または非分岐アルカンである。
【0016】
本明細書において用いられる「パラフィン系」という用語は、上で定義したパラフィンおよびシクロパラフィンの両方、ならびに一または二不飽和(すなわち、二重結合が1または2個)の分枝または非分枝いずれかのアルカンである領域を有する大部分が炭化水素の鎖を意味する。
【0017】
本明細書において用いられる水素化プロセシングは、水素の存在下で起こる様々な種類の触媒反応を非限定的に記載している。最も一般的な水素化プロセシング反応の例は水素化、水素化脱硫(HDS)、水素化脱窒素(HDN)、水素化処理(HT)、水素化分解(HC)、芳香族飽和または水素化脱芳香族化(HDA)、水素化脱酸素(HDO)、脱炭酸(DCO)、水素異性化(HI)、水素化脱ろう(HDW)、水素化脱金属(HDM)、脱カルボニル化、メタン化、および改質を非限定的に含む。触媒の種類、反応器構成、反応器条件、および原料組成に応じて、純粋に熱的なもの(すなわち、触媒を必要としない)から触媒的なものにまで及ぶ様々な反応を行うことができる。特定の水素化プロセシング単位、例えば、HDO反応系、の主な機能を説明する場合では、HDO反応は行われている主な反応のうちの1つに過ぎず、他の反応も行われ得ると理解される。
【0018】
熱分解は、熱化学反応時に二原子酸素または二原子水素がほとんどまたは全く存在しない、炭素質材料の熱化学分解を意味すると理解される。熱分解における触媒の任意の使用は、通常、熱分解という用語に包含される接触分解と呼ばれ、水素化分解と混同してはならない。
【0019】
水素化処理(HT)は、有機化合物からの、周期表の第3、5、6、および/または7族の元素の除去を伴う。水素化処理は水素化脱金属(HDM)反応も含み得る。よって、水素化処理は水素化プロセシングを通じた酸素、窒素、硫黄、およびそれらの任意の2つ以上の組み合わせなどのヘテロ原子の除去を伴う。例えば、水素化脱酸素(HDO)は、副生成物として水を生成する接触水素化プロセシング反応による酸素の除去を意味すると理解され、同様に水素化脱硫(HDS)および水素化脱窒素(HDN)は、水素化プロセシングを通じた、示された元素それぞれの除去を記載している。
【0020】
水素化は、分子をサブユニットまで分解することなく有機分子に水素を付加することを伴う。単結合を生成するための炭素-炭素または炭素-酸素二重結合への水素の付加は水素化の2つの非限定的な例である。部分水素化および選択水素化は、不飽和原料の部分飽和をもたらす水素化反応を指すために用いられる用語である。例えば、多価不飽和脂肪酸(例えば、リノール酸)の割合が高い植物油は、部分水素化を受けて水素化プロセシング生成物をもたらし得、望ましくない飽和脂肪酸(例えば、ステアリン酸)の割合を増加させることなく多価不飽和脂肪酸がモノ不飽和脂肪酸(例えば、オレイン酸)に変換される。水素化は水素化処理、水素異性化、および水素化分解とは明確に区別される一方で、これらの他の反応中に水素化が起こり得る。
【0021】
水素化分解(HC)は、水素の存在下で分子の炭素-炭素結合を切断して少なくとも2個の分子を形成することを意味すると理解される。そのような反応は、通常は、得られた二重結合がその後に水素化を受ける。
【0022】
水素異性化(HI)は、異性体を形成する、水素の存在下での炭素-炭素結合の骨格再編成として定義される。水素化分解はほとんどのHI触媒反応の競合反応であり、マイナーな反応としてHC反応経路がHIという用語の使用に含まれると理解される。水素化脱ろう(HDW)は、炭化水素流体の低温特性を向上させるように設計された水素化分解および水素異性化の具体的な形態である。
【0023】
組成物がC7~C12n-パラフィンなどの「Cx~Cy炭化水素」を含むと記載されている場合、これは組成物がx~yの範囲内の炭素数を有する1つまたは複数のパラフィンを含むことを意味していると理解されるであろう。
【0024】
組成物に関して「~の少なくとも一部」という表現は、組成物のうちの約1%~約100%を意味する。
【0025】
「ディーゼル燃料」は、概して、沸点が約150℃~約360℃の範囲(「ディーゼル沸点範囲」)の燃料を指す。
【0026】
「ガソリン」は、概して、沸点が約30℃~約200℃の範囲の、火花点火エンジン用の燃料を指す。
【0027】
本明細書において用いられる「バイオディーゼル」とは、参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2016/0145536号に記載されるものなどの、C1~C4アルキルアルコールと遊離脂肪酸および/または脂肪酸グリセリドとの間のエステル化および/またはエステル交換反応によって生成される脂肪酸C1~C4アルキルエステルを指す。
【0028】
本明細書において用いられる「石油ディーゼル」とは、原油精製施設などで原油から生成されるディーゼル燃料を指し、水素化処理直留ディーゼル、水素化処理流動接触分解軽質サイクル油、水素化処理コーカー軽質ガス油、水素化分解FCC重質サイクル油、およびそれらの組み合わせを含む。同様に、「石油由来」の化合物または組成物は、原油から直接生成されるか、または原油および非バイオ再生可能原料(バイオ再生可能原料は下に詳しく記載する)から最終的に生成された成分および/もしくは原料から生成される化合物または組成物を指す。
【0029】
組成物中の成分の「体積パーセント」もしくは「vol.%」または組成物中の異なる成分の体積比は、合わせた成分の最終的な体積ではなく、それぞれ個別の成分の初期の体積に基づいて60°Fで決定されると理解されたい。
【0030】
本開示全体にわたって、様々な刊行物、特許、および公開済み特許明細書が引用を特定して参照されている。また、本開示内には参照された引用を指すアラビア数字があり、その完全な書誌的詳細は請求項の前に提供されている。これらの刊行物、特許、および公開済み特許明細書の開示は参照により本開示に組み入れられる。
【0031】
本技術
再生可能ディーゼル(RD)は、油脂の水素化プロセシングによって生成された燃料を含むイソパラフィン系圧縮点火燃料である。油脂の水素化プロセシングは、概して、n-パラフィンに富む炭化水素への脂肪酸/グリセリドからの水素化脱酸素(HDO)と、それに続くイソパラフィンへのn-パラフィンの水素異性化(HI)とを含む。RDの商業生産は2007年に始まり、それ以来世界中で年15億ガロンを超えるまでに成長した。
【0032】
大量の水素がプロセスで消費されるため、現在のRD施設は、通常、水素プラントまたは水素供給パイプラインと隣接する必要がある。その結果、RDプラントは主要な原料供給源から遠く離れた場所に建設されることが多く、供給ロジスティックスが複雑になり、供給地でのバイオ燃料生産というビジョンを困難にしている。
【0033】
電力網における再生可能エネルギー(例えば、風力および太陽光)のシェアは過去10年間で増加している。これが、電気自動車(EV)への移行によって温室効果ガスの排出を削減するという機会を生み出してきた。しかしながら、EV用のリチウムイオン電池技術は、EVの成長を支えるために必要な量では入手可能でない金属であるコバルトに依存している。New Scientist誌(2020年2月)によれば、予測される2030年のEV需要は世界の総コバルト精製能力の1.6倍を必要とする。さらに、使用済みバッテリーからの金属の再利用に伴う廃棄物はバッテリー駆動のEVを持続不可能にする可能性がある。
【0034】
水素を燃料とするEVは、より持続可能な代替手段として検討されている。ここで、水の電気分解によって生成された水素は、搭載された燃料電池を通じて車両に動力を供給する。しかしながら、10,000psigを超える圧力で貯蔵される水素で自動車に燃料供給することには、安全性および保安上の懸念が生じる。水素は点火エネルギーが最も低くかつ空気中では可燃範囲が最も広いことが公知であり、よって火災/爆発の危険性が高くなる。これが水素を燃料とする自動車の実現可能性に関して専門家の間で疑念を生じさせてきた。
【0035】
コルベ電解としても公知のカルボン酸の電解二量体化が先行技術において教示されてきた。コルベ電解時には、2モルのカルボン酸R-COOHが一工程で脱炭酸化しかつ二量体化して1モルの炭化水素R-R(Rはアルキル基である)を形成する。反応の副生成物は二酸化炭素である。米国特許第8,961,775号は遊離脂肪酸(FFA)からの炭化水素の生成のためのコルベ電解の使用を開示しているが、しかしながら、この特許に開示されている電解変換はガソリンおよびディーゼルの沸点範囲外の炭化水素を生成し、翻って重油または潤滑剤基油に好適であると開示されている。
【0036】
出願人の本技術は、エネルギー産業の2つのアンメット・ニーズ、すなわち、(1)水素を用いることなくRDを生成する方法と、(2)運輸のために再生可能エネルギーを持続的に利用する方法とに対処している。本技術に関して検討されるように、これらのニーズは水素の代わりに電力を用いて再生可能ディーゼルを生成することを介する本開示の本技術によって満たされる。
【0037】
さらに、末端メチル分岐イソパラフィン/末端メチル分岐アルケンの濃度が高く、かつ直鎖n-パラフィンを実質的に含まないディーゼル燃料組成物に対するニーズがある。そのようなディーゼル燃料組成物は、従来技術において開示された組成物よりも曇点の低さ(低温流動性の良さ)とセタン価の高さ(着火遅延の短さ)との良好なバランスを有すると予想される。例えば、再生可能ディーゼルの先行技術では、二官能性触媒を用いてディーゼル範囲のn-パラフィンを水素異性化して、ディーゼル生成物中に5wt%~30wt%のn-パラフィンを有する組成物を形成する。先行技術のRD技術を用いてより多くのn-パラフィンを変換しようとする試みはジ/トリ-メチル分岐および分解の形成をもたらすので、ディーゼル収量が低下する。
【0038】
先行技術の参考文献は、高度に分岐したイソパラフィンへと続いて水素化される高度に分岐したアルケンを生成するための、プロピレンおよびブテンなどのC3~C4アルケンのオリゴマー化によって生成されるイソパラフィン系中間留分組成物を記載している。これらの技術は、高度に分岐したイソパラフィン組成物(例えば、2,2-ジメチル-4-エチルオクタン)を生成する。ディーゼル燃料としてこれらの炭化水素は優れた低温特性を有しているが、しかしながら、セタン価が低いために現代の高性能ディーゼルエンジンには適していない。よって、末端モノメチル分枝炭化水素を含み、同時にn-パラフィンを実質的に含まないディーゼル燃料組成物に対するニーズがある。出願人の本技術はこのニーズにも対処している。
【0039】
よって、1つの局面では、本技術は再生可能炭化水素燃料を製造するための方法を提供し、該方法は、電解生成物を生成するための混合物の電気分解(例えば、コルベ電解)を含み、該混合物は、(i)バイオ再生可能原料からの遊離脂肪酸と(ii)末端モノメチル分岐カルボン酸とを含む。電解生成物は、再生可能ディーゼルと任意で再生可能ガソリンとを含み、再生可能ディーゼルは、末端モノメチル分岐パラフィンと末端モノメチル分岐アルケンとを含む。本明細書において開示される任意の態様では、末端モノメチル分枝カルボン酸は、石油由来の末端モノメチル分枝カルボン酸、バイオ再生可能原料からの末端モノメチル分枝カルボン酸、または両方を含み得る。本明細書において開示される任意の態様では、末端モノメチル分岐カルボン酸はイソ酪酸および/またはイソ吉草酸を含み得る。本明細書における任意の態様では、混合物中の唯一の末端モノメチル分岐カルボン酸は、イソ酪酸、イソ吉草酸、またはイソ酪酸とイソ吉草酸の両方であり得る。本明細書において開示される任意の態様では、混合物はアノードおよびカソードを含む電解セル(電解槽とも呼ばれる)に含まれ得る。
【0040】
本技術の方法は「脱炭酸共二量体化」(DCD)を含むと記載され得るが、そのような記載は当業者が本開示を理解するのを補助するためのものにすぎず、本技術はそのような記載によって限定されない。2つの説明的な例が式1aおよび式1bに提供されており、イソ酪酸(2-メチルプロピオン酸とも呼ばれる;式1a)またはイソ吉草酸(3-メチルブタン酸;式1b)と、遊離脂肪酸(式1aにおける「R1-C(O)OH」および式1bにおける「R2-C(O)OH」)は、DCDを受けて、電解生成物としての末端モノメチル分岐炭化水素を生成しかつCO2およびH2を生成する。
式1aおよび式1bにおいて、R1およびR2はそれぞれ独立して非分岐アルキル基または非分岐アルケニル基である。例えば、R1およびR2はそれぞれ独立して非分岐C7~C23アルキル基、非分岐C15~C23モノ不飽和アルケニル基、または非分岐C15~C23ポリ不飽和アルケニル基であってもよい。よって、電解生成物である式1aにおける
および式1bにおける
は、末端モノメチル分岐炭化水素である、すなわち、式1aおよび式1bに示されているように、分岐がなければ直鎖である炭化水素から1個のメチル基が炭化水素の最も末端の可能な位置(IUPAC命名法によるイソパラフィンにおける「2」位置)の1か所のみ分岐している。本技術によって提供される電解生成物の有利な特徴は本開示において下でより詳細に検討されている。電気分解時のH2の生成がさらに有利である。電気分解時に生成されるCO2も回収されて貴重な副生成物として利用され得る。
【0041】
本明細書において開示される任意の態様では、電気分解時の遊離脂肪酸のホモ二量体化から生成される重炭化水素の形成を最小限にするかまたは排除するために、モル過剰の末端モノメチル分岐カルボン酸(遊離脂肪酸に対して過剰)が混合物に含まれ得る。例えば、末端モノメチル分岐カルボン酸としてモル過剰のイソ酪酸を含む、本明細書において開示される任意の態様では、等モル量のイソ酪酸を利用する場合と比較して、遊離脂肪酸の脱炭酸二量体の同時生成(例えば、重油および/またはワックスとして)を最小限にするかまたは完全に排除し得る。同時に、イソ酪酸の脱炭酸二量体、すなわち、2,3-ジメチルブタン[(CH3)2CH-CH(CH3)2]が相対的に増加する。特に、2,3-ジメチルブタンは、モーターオクタン価(MON)が94.4の、アルキレート型ガソリン成分である。さらに、本方法のイソ酪酸がバイオイソブタノールから生成される場合、2,3-ジメチルブタンアルキレート型ガソリンは、火花点火エンジン用の再生可能ガソリン(または再生可能ガソリン成分)である。よって、本開示において先に記載したように、本技術の方法は、再生可能ガソリン、すなわち、電気分解で生成される末端モノメチル分岐カルボン酸の二量体も生成し得る。この高オクタン価の再生可能アルキレート型ガソリンは先行技術の比較的低オクタン価の再生可能ナフサ(例えば、米国特許第8,581,013号に開示)と組み合わされて、オクタン価(オクタン価 = (MON+RON)/2、RONはリサーチオクタン価)が87以上の100%再生可能炭化水素ガソリンを提供し、よって火花点火エンジンを搭載した現在の自動車での使用に好適となり得る。本技術のプロセスの本明細書において開示される任意の態様では、混合物は少なくとも100%モル過剰の末端モノメチル分岐カルボン酸(すなわち、遊離脂肪酸の化学量論量の少なくとも2倍)、少なくとも200%モル過剰の末端モノメチル分岐カルボン酸、または少なくとも300%モル過剰の末端モノメチル分岐カルボン酸を含み得る。
【0042】
電解セルは直流(D.C.)電源に繋がる電極を備えた任意の容器であり得る。容器は、温度制御(例えば、ジャケットを通じた熱伝達循環を介して)および撹拌のための装備をさらに備え得る。容器はまた、電気分解時に生成されるCO2ガスおよびH2ガス(例えば、「テールガス」として)を離間させるための導管との、制御された流体連通状態であり得る。CO2およびH2のそれぞれを分離し、精製し、かつ捕捉するための分離方法、装置、および技術は当業者に周知である。例えば、電解槽からのCO2テールガスは、当業者には周知であるように、金属炭酸塩および/またはアミン溶液と接触させることによって捕捉し得る。前述のように、回収された有機物起源のCO2は貴重な副生成物として(例えば、飲料の炭酸化のために)、または他のプロセスのための供給物として(例えば、合成ガス製造プロセスにおける使用のために)利用し得る。
【0043】
本明細書において開示される任意の態様では、混合物はC1~C3アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、またはそれらの任意の2つ以上の組み合わせ)を含み得、そのようなC1~C3アルコールは溶媒として有益に作用し得る。本明細書において開示される任意の態様では、本方法は、電気分解の前に、混合物に苛性物質(水酸化物塩など、例えば、NaOHおよび/またはKOH)を加える工程を含み得る。そのような添加工程は混合物の酸性度を部分的に中和し得、苛性物質を加える工程を含む本明細書における任意の態様では、苛性物質は、[水酸化物アニオンのモル数]/[遊離脂肪酸と末端モノメチル分岐カルボン酸との合計モル数]×100%基準で、約10%~約80%、好ましくは約30%~約60%の量で加え得る。
【0044】
本方法の電気分解における使用に好適なアノードおよびカソードは、当業者にはよく理解されている。本明細書における任意の態様では、本方法は、白金アノードを含み得る。本明細書における任意の態様では、本方法は、グラファイト、ニッケル、ステンレス鋼、またはこれらの任意の2つ以上の組み合わせを含むカソードを含み得る。様々な電極構成、例えば、プレートまたはホイルが当業者には公知であり、当業者であれば本技術の電気分解に好適な電極構成を容易に理解するであろう。
【0045】
本明細書において開示される任意の態様の電気分解は、約0.05アンペア/cm2(A/cm2)~約1.0A/cm2、好ましくは約0.1A/cm2~約0.3A/cm2の電極電流密度(電極表面積全体にわたる電流の尺度)を含み得る。本明細書において開示される任意の態様の電気分解は、約8ボルト~約35ボルト、好ましくは約10ボルト~約30ボルトのセル電圧を含み得る。本明細書において開示される任意の態様では、電気分解時の混合物は、約25℃~約200℃の温度であり得る。本明細書において開示される任意の態様では、電気分解は、約1気圧~混合物のほぼ蒸気圧の圧力で実施し得る。本明細書において開示される任意の態様の電気分解は、約30分~約240分のサイクル時間を含み得る。電気分解はバッチまたは連続モードで実施し得る。
【0046】
本明細書において開示される任意の態様では、本技術の電気分解は、再生可能電力、例えば、風力タービンおよび/または集光型太陽光発電からの電力によって電力供給され得るので、そのような電力の使用によって生成される再生可能ディーゼルは、水素化プロセシング法で生成されたRDよりも炭素強度が低い。本明細書において開示される任意の態様では、再生可能ディーゼルは約30gCO2e/MJ未満、好ましくは約25gCO2e/MJ未満の、CARB法によって測定される炭素強度を有し得る。再生可能電力が用いられるかどうかに関わらず、本技術の方法はLPGなどの水素化分解副生成物を生成しないことがさらに注目される。
【0047】
混合物がC1~C3アルコールを含む本明細書において開示される任意の態様では、電解流出物は、電解生成物およびC1~C3アルコールを含み得る。電解流出物は、残存量の混合物を含まなくてもよいし、混合物の約30wt%(すなわち、電気分解時に電解生成物に変換されなかったもの)までを含んでもよい。電解流出物は1つまたは複数の処理工程に供されて、電解生成物を電解流出物の残りの成分から分離し得る。当業者であれば、電解流出物の残りの成分からの電解生成物の分離に好適な当業者に公知の様々な方法、技術、および装置を容易に理解するであろう。そのような方法および技術は蒸留および溶媒抽出を含む。本明細書において開示される任意の態様では、C1~C3アルコールの少なくとも一部は電解流出物から回収され得、かつ本技術の方法において任意でリサイクルされ得る。
【0048】
本明細書において開示される任意の態様のバイオ再生可能原料は、遊離脂肪酸、脂肪酸エステル(モノ、ジ、およびトリグリセリドを含む)、またはそれらの組み合わせを含む。例えば、遊離脂肪酸は、トリグリセリドエステル交換原料から遊離脂肪酸をストリッピングすることによって得られる遊離脂肪酸を含み得る。バイオ再生可能原料は、動物脂肪、動物油、植物性脂肪(plant fat)、植物性油(plant oil)、植物脂肪(vegetable fat)、植物油(vegetable oil)、グリース、またはそれらの任意の2つ以上の混合物を含み得る。脂肪酸エステルは、脂肪酸メチルエステル、脂肪酸エチルエステル、脂肪酸プロピルエステル、脂肪酸ブチルエステル、またはそれらの任意の2つ以上の混合物を含み得る。バイオ再生可能原料は、植物油脱臭からの脂肪酸留出物を含み得る。前処理の程度に応じて、脂肪、油、およびグリースは、約1wppm~約1,000wppmのリン、および約1wppm~約500wppmの総金属(主にナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、および銅)を含有し得る。植物性(plant)および/もしくは植物(vegetable)油ならびに/または微生物油は、ババス油、カリナタ油、大豆油、カノーラ油、ココナッツ油、ナタネ油、トール油、トール油脂肪酸、ヤシ油、ヤシ油脂肪酸留出物、ジャトロファ油、ヤシ核油、ヒマワリ油、ヒマシ油、カメリナ油、古細菌油、細菌油、真菌油、原生動物油、藻油、海藻油、好塩菌由来油、およびそれらの任意の2つ以上の混合物を非限定的に含む。これらは前処理の程度と残留するリンおよび金属の含有量とに応じて、粗製、脱ガム、およびRBD(精製、脱色、および脱臭)グレードに分類され得る。しかしながら、これらのグレードのいずれも本技術に用い得る。上で用いられる動物脂肪および/または油は、非食用獣脂、食用獣脂、工業用獣脂、浮遊獣脂、ラード、家禽脂肪、家禽油、魚脂肪、魚油、およびそれらの任意の2つ以上の混合物を非限定的に含む。グリースは、イエローグリース、ブラウングリース、廃植物油、レストラングリース、水処理施設などの自治体からのトラップグリース、工業用包装食品事業からの使用済み油、およびそれらの2つ以上の混合物を非限定的に含む。バイオ再生可能原料は、動物脂肪、家禽油、大豆油、カノーラ油、カリナタ油、ナタネ油、ヤシ油、ジャトロファ油、ヒマシ油、カメリナ油、海藻油、好塩菌油、精製脂肪(rendered fat)、レストラングリース、ブラウングリース、イエローグリース、廃工業用フライ油、魚油、トール油、トール油脂肪酸、またはそれらの2つ以上の混合物を含み得る。バイオ再生可能原料は、動物脂肪、レストラングリース、ブラウングリース、イエローグリース、廃工業用フライ油、またはそれらの任意の2つ以上の混合物を含み得る。
【0049】
先の段落で記載したように、バイオ再生可能原料は前処理し得る。そのような前処理は、脱ガム、中和、脱色、脱臭、またはそれらの任意の2つ以上の組み合わせを非限定的に含む。脱ガムの1つの種類は酸脱ガムであり、これは脂肪/油を濃酸性水溶液と接触させることを含む。例示的な酸は、リン酸、クエン酸、およびマレイン酸である。この前処理工程は、リンに加えてカルシウムおよびマグネシウムなどの金属を除去する。中和は、通常、酸で脱ガムした油脂に苛性物質(NaOH水溶液などの任意の塩基を指す)を加えることによって実施される。酸での脱ガムおよび/または中和に用いられる処理装置は、高せん断ミキサーおよびディスクスタック遠心分離器を含み得る。脱色は、通常、脱ガムした脂肪/油を吸着粘土と接触させること、および圧力リーフフィルターを通じて使用済み粘土をろ過することを含む。粘土の代わりに合成シリカを用いると吸着が向上することが報告されている。脱色工程は、クロロフィルならびにほとんどの残留金属およびリンを除去する。苛性物質中和工程時に(すなわち、遊離脂肪酸との反応によって)形成された可能性のある任意の石鹸も脱色工程時に除去される。前述の処理プロセスは当技術分野では公知であり、米国特許第4,049,686、4,698,185、4,734,226、および5,239,096を非限定的に含む特許文献に記載されている。
【0050】
本明細書において用いられる脱色は、グリセリド油の処理に一般的なろ過プロセスである。多くの種類のプロセシング構成ならびに珪藻土、パーライト、シリカヒドロゲル、セルロース媒体、粘土、漂白土、炭素、ボーキサイト、アルミン酸シリカ、天然繊維およびフレーク、合成繊維およびそれらの混合物などのろ過媒体が当業者には公知である。脱色は、石油や、合成および生物的供給物ならびに生成物のための一般的な工業プロセスである粘土処理などの他の名称で呼ばれることもある。
【0051】
脱ガムおよび/または脱色の前および/または後および/またはそれらの代わりに、バイオ再生可能原料から懸濁固形物を除去するためにさらなる種類のろ過を実施し得る。いくつかの態様では、ロトスクリーンろ過が用いられてバイオ再生可能原料から約1mm超の固形物が除去される。ロトスクリーンろ過は、多量の固形物を連続的に除去する、約1mm以上の開口を有する機械的に振動するワイヤメッシュスクリーンである。1mm超、例えば、約1mm~約20mmの固形物の多量な分離を提供する限り、自浄型および逆洗型フィルターを含む色々な種類のフィルターに収容された約1mm以上の他のワイヤメッシュフィルターも採用し得る。クレーコーティングされた圧力リーフフィルターによる脱色が用いられない態様では、約0.1~約100ミクロン等級のカートリッジまたはバッグフィルターを用いて、可溶化および/または微細に懸濁した(例えば、コロイド相)混和物のみを確実に供給物流中に存在させ得る。ろ過は、通常、供給物流が確実に約0.1~100cPの粘度の液体になるように十分に高い温度で実施される。これは、概して、20℃~90℃(約70°F~約195°F)の温度範囲になる。
【0052】
本明細書において開示される任意の態様では、混合物の遊離脂肪酸は、脂肪、油、および/またはグリースの脂肪酸エステルの加水分解から生成される脂肪酸を含み得る。本明細書において開示される任意の態様では、遊離脂肪酸はトール油からの、および/またはトール油エステルの加水分解から生成される脂肪酸を含み得る。本明細書において開示される任意の態様では、遊離脂肪酸はヤシ脂肪酸留出物からの脂肪酸を含み得る。本明細書において開示される任意の態様では、遊離脂肪酸は、少なくとも約10wt%の遊離脂肪酸を含有するものなどの、脂肪、油、および/またはグリースから留出させた脂肪酸を含み得る。本明細書において開示される任意の態様では、遊離脂肪酸は、ヤシスラッジ油および/または使用済み調理油から留出させた脂肪酸を含み得る。本明細書において開示される任意の態様では、遊離脂肪酸は、オレイン酸、リノール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、またはそれらの任意の2つ以上の組み合わせを含み得る。本明細書において開示される任意の態様では、遊離脂肪酸は、遊離脂肪酸の石鹸形態(例えば、ナトリウム石鹸および/またはカリウム石鹸)を含み得、石鹸形態を含むそのような態様では、遊離脂肪酸は少なくとも200mg/kg、少なくとも500mg/kg、または少なくとも1000mg/kgのアルカリ度を有する。
【0053】
先に検討したように、本技術の方法において生成される再生可能ディーゼルは、末端モノメチル分岐パラフィンと末端モノメチル分岐アルケンとを含む(例えば、各末端モノメチル分枝アルケンは独立して、内部炭素-炭素二重結合を1、2、3個またはそれ以上含む)。本技術の代表的な末端モノメチル分岐パラフィンおよび末端モノメチル分岐アルケンを下のスキーム1に示す。
スキーム1
2-メチルヘプタデカンはNREL Compendium of Experimental Cetane Numbersによるとセタン価が91であり、例えば、混合物がパルミチン酸およびイソ酪酸を含む場合、2-メチルヘプタデカンは本技術の方法によって提供され得る。本技術の末端モノメチル分岐アルケンでは、内部炭素-炭素二重結合は、バイオ再生可能原料に由来する不飽和遊離脂肪酸からの生成によりシス配置、すなわち二重結合の絶対立体化学を説明したIUPAC推奨方法によればZ立体配座、である。特に、本技術の末端モノメチル分岐アルケンは燃料に関して特有の炭化水素構造を提供する。特に、石油由来燃料、例えば、分解ストックまたは部分的に水素化された分解ストックから生成されるもの、に存在する内部炭素-炭素二重結合は、本質的には専らトランスである。シス立体化学を有する本技術の末端モノメチル分岐アルケンは、対応するトランス立体異性体よりも融点が低く、したがって、本技術の末端モノメチル分岐アルケンは、液体燃料としての利用および/または液体燃料への内包に有利である。
【0054】
本技術の新規な再生可能ディーゼルは曇点が比較的低くかつセタン価が比較的高い一方で、極性と水不混和性とのバランスも良好である。本明細書において開示される任意の態様では、本技術の再生可能ディーゼルは約0℃未満、好ましくは約-10℃未満、最も好ましくは約-15℃未満の曇点を有し得、本技術の再生可能ディーゼルはさらに60以上のセタン価を有し得る。よって、本明細書における任意の態様では、再生可能ディーゼルは約0℃、約-2℃、約-4℃、約-6℃、約-8℃、約-10℃、約-12℃、約-14℃、約-16℃、約-18℃、約-20℃、約-22℃、約-24℃、約-26℃、約-28℃、約-30℃、約-32℃、約-34℃、約-36℃、約-38℃、約-40℃、約-42℃、約-44℃、約-46℃、約-48℃、約-50℃、約-52℃、約-54℃、約-56℃、約-58℃、約-60℃、またはこれらの値の任意の2つの間および/もしくはこれらの値の任意の2つを含むかもしくはこれらの値の任意の1つ未満の任意の範囲、の曇点を含み得る。本明細書における任意の態様では、再生可能ディーゼルは、特に航空燃料として好適な本技術の再生可能ディーゼルは、約-40℃未満の凝固点を含み得;よって、再生可能ディーゼルは約-40℃、約-42℃、-約44℃、-約46℃、-約48℃、-約50℃、-約52℃、-約54℃、-約56℃、-約58℃、-約60℃、-約62℃、-約64℃、-約66℃、-約68℃、-約70℃、またはこれらの値の任意の2つの間および/もしくはこれらの値の任意の2つを含むかもしくはこれらの値の任意の1つ未満の任意の範囲、の凝固点を含み得る。
【0055】
再生可能ディーゼルは、本明細書において開示される任意の態様では、ディーゼルエンジン用ドロップイン燃料として用いられ、石油ディーゼルブレンドストックとして用いられ、かつ/またはバイオディーゼルとブレンドされて、100%再生可能燃料を提供し得る。本技術の本明細書における任意の態様の再生可能ディーゼルは、ディーゼル燃料、ディーゼル燃料添加剤、ディーゼル燃料ブレンドストック、タービン燃料、タービン燃料添加剤、タービン燃料ブレンドストック、航空燃料、航空燃料添加剤、航空燃料ブレンドストック、ポータブルヒーター用燃料、ポータブル発電機用燃料、またはそれらの任意の2つ以上の組み合わせとして好適であり得る。再生可能ディーゼルは、ディーゼル燃料、ディーゼル燃料ブレンドストック(例えば、EN590に準拠したウィンターディーゼル、EN590に準拠したアークティックディーゼル燃料)、航空燃料ブレンドストック、またはそれらの任意の2つ以上の組み合わせとしての使用に好適であり得る。例えば、再生可能ディーゼルは、工業規格(例えば、ASTM D 1655)を満たす商用ジェット燃料としての使用に好適であり得る。本明細書における任意の態様では、再生可能ディーゼルは、約100°F(約38℃)~約200°F(約93℃)の引火点を含み得る。よって、再生可能ディーゼルの引火点は、約100°F(約38℃)、約102°F(約39℃)、約104°F(約40℃)、106°F(約41℃)、約108°F(約42℃)、約110°F(約43℃)、約111°F(約44℃)、約113°F(約45℃)、約115°F(約46℃)、約117°F(約47℃)、約118°F(約49℃)、約122°F(約50℃)、約124°F(約51℃)、約126°F(約52℃)、約127°F(約53℃)、約129°F(約54℃)、約131°F(約55℃)、約133°F(約56℃)、約135°F(約57℃)、約136°F(約58℃)、約138°F(約59℃)、約140°F(約60℃)、約149°F(約65℃)、約158°F(約70℃)、約167°F(約75℃)、約176°F(約80℃)、約185°F(約85℃)、約194°F(約90℃)、約196°F(約91℃)、約198°F(約92℃)、約200°F(約93℃)、またはこれらの値の任意の2つを含みかつ/もしくはこれらの値の任意の2つの間の任意の範囲、であり得る。よって、例えば、本明細書における任意の態様では、再生可能ディーゼルは、約100°F(約38℃)~約118°F(約49℃)の引火点を含み得る。
【0056】
再生可能ディーゼルは、本明細書において開示される任意の態様では、約0.1wt%未満の含酸素物質を有し得、約0.09wt%、約0.08wt%、約0.07wt%、約0.05wt%、約0.04wt%、約0.03wt%、約0.02wt%、約0.01wt%、またはこれらの値の任意の2つを含みかつ/もしくはこれらの値の任意の2つの間もしくはこれらの値の任意の1つ未満の任意の範囲、の量の含酸素物質を有し得る。そのような低い値の含酸素物質は、機器中性子放射化分析を非限定的に含む、適切な分析技術を通じて検出することができる。
【0057】
本明細書において開示される任意の態様の再生可能ディーゼルは、約0.1wt%未満の芳香族物質を有し得る。よって、再生可能ディーゼルは、約0.09wt%、約0.08wt%、約0.07wt%、約0.06wt%、約0.05wt%、約0.04wt%、約0.03wt%、約0.02wt%、約0.01wt%、約0.009wt%、約0.008wt%、約0.007wt%、約0.006wt%、約0.005wt%、約0.004wt%、約0.003wt%、約0.002wt%、約0.001wt%、またはこれらの値の任意の2つを含みかつ/もしくはこれらの値の任意の2つの間もしくはこれらの値の任意の1つ未満の任意の範囲、の量の芳香族物質を含有し得る。そこでの任意の態様では、再生可能ディーゼルは、検出可能な芳香族物質を含まない場合がある。本明細書全体を通じて用いられる「検出可能な」とは、2021年7月20日時点での市販の検出機器での検出を意味する。再生可能ディーゼルは約0.01wt%未満のベンゼンを含有し得、約0.008wt%、約0.006wt%、約0.004wt%、約0.002wt%、約0.001wt%、約0.0008wt%、約0.0006wt%、約0.0004wt%、約0.0002wt%、約0.0001wt%、約0.00008wt%、約0.00006wt%、約0.00004wt%、約0.00002wt%、約0.00001wt%、またはこれらの値の任意の2つを含みかつ/もしくはこれらの値の任意の2つの間もしくはこれらの値の任意の1つ未満の任意の範囲、の量のベンゼンを含有し得る。このような低い値のベンゼンは、再生可能ディーゼルの二次元ガスクロマトグラフィーを非限定的に含む、適切な分析技術を通じて決定し得る。そこでの任意の態様では、再生可能ディーゼルは検出可能なベンゼンを含まない場合がある。
【0058】
再生可能ディーゼルは約5wppm未満の硫黄含有量を有し得る。よって、本明細書において開示される任意の態様では、再生可能ディーゼルは、約4wppm、約3wppm、約2wppm、約1wppm、約0.9wppm、約0.8wppm、約0.7wppm、約0.6wppm、約0.5wppm、約0.4wppm、約0.3wppm、約0.2wppm、約0.1wppm、またはこれらの値の任意の2つを含みかつ/もしくはこれらの値の任意の2つの間もしくはこれらの値の任意の1つ未満の任意の範囲、の量の硫黄含有量を有し得る。
【0059】
任意で、所望される場合は、再生可能ディーゼルは水素化されて、不飽和レベルが低減され(例えば、臭素指数<100)、セタン価が70超であり、曇点が0℃未満である本技術の水素化再生可能ディーゼル生成物を提供し得る。
【0060】
本技術において利用されるイソ酪酸は、石油化学的またはバイオ系供給源から取得し得る。石油化学経路は、出発物質としてプロピレンを利用し、プロピレンは、(i)中間体としてのイソブチルアルデヒドを通じてオキソプロセスを介してまたは(ii)コッホ反応を介して直接的に、イソ酪酸に変換することができる(式2)。
【0061】
糖系原料から直接的にイソ酪酸を生成するバイオ系経路が開示されてきた。これらは、通常、真菌および細菌の酵素に依存する。下で検討するように、バイオ系イソ酪酸は、イソブチルアルデヒド中間体を通じてバイオイソブタノールからも誘導し得る。
【0062】
バイオイソブタノールは商業的には発酵槽で製造されている。バイオエタノールプラントをバイオイソブタノールに転用することは、GevoおよびButamaxなどのイソブタノール製造者による公表されたビジネス戦略である。
【0063】
イソブタノールは、2段階変換経路または1段階変換という2つの大まかな経路で、イソブチルアルデヒドに変換され得る。
【0064】
2段階変換経路は、当技術分野ではより熟成された経路であり、(a)イソブタノールからイソブチルアルデヒドへの変換に続いて、(b)イソブチルアルデヒドからイソ酪酸への酸化によって進行する。イソブタノールからイソブチルアルデヒドへの変換は、下の式3および式4にそれぞれ概略的に示されているように、脱水素反応または酸化反応に従って進行し得る。
一例としては、脱水素反応は、米国特許第8,742,187号の実施例1に記載されているように亜クロム酸銅触媒床上で実施し得、開示されたプロセスでは、脱水素触媒は、原料として無水イソブタノールを必要とする。このような無水条件とは対照的に、酸化反応は、当技術分野では周知のプロセスである、ブタノールからブチルアルデヒドへの水相部分空気酸化によって進行し得る(例えば、Ganadarias, et al., Catal. Sci. Technol., 2016, 6, 4201-4209を参照されたい)。しかしながら、脱水素反応の1つの潜在的な利点は、イソブチルアルデヒドに伴うH2の生成であり、本技術の方法における使用のためのイソ酪酸を生成する際に脱水素反応が採用される場合、脱水素反応で得られたH2は本開示において先に検討した本技術の再生可能ディーゼルの任意の水素化などの水素化反応で利用し得る。
【0065】
より熟成された経路の第2工程であるイソブチルアルデヒドからのイソ酪酸の生成は、石油由来のイソ酪酸への主要な石油化学経路における工程である、イソブチルアルデヒドの空気酸化によって進行し得る。反応は下の式5に概略的に示されている。
空気酸化反応は、通常、約20℃~約100℃(好ましくは30℃~60℃)の温度および大気圧~100psigの範囲の圧力にて、気泡塔反応器内で実施される。反応器テールガス中の酸素含有量が燃焼限界を十分に下回るのが確実になるように入念にモニタリングしながら、空気を速度制御して反応器に注入する。酸化触媒は、通常、酢酸マンガンなどの均一な酢酸金属触媒であるが、しかしながら、この商業的変換プロセスを検討すると、この技術では触媒は厳密には必要とされない場合があることに留意されたい。Larkin, D., J. Org. Chem., 1990, 55, 1563-1568。さらに酸化触媒を含めることで、副生成物(CO、CO2、イソプロパノール、アセトン、プロピレン、およびギ酸メチルが例示的な副生成物である)を最小限に抑えながら高い選択性が確実に得られる。パスごとの典型的な変換率は60~70%の範囲であり、反応器流出物中のイソ酪酸の濃度は55~60%の範囲である。
【0066】
上に記載のように、イソブタノールからイソ酪酸への1段階酸化も当業者には周知である(形式的には式4および5を合わせたもの)。二クロム酸カリウム/硫酸系などの酸化試薬はこれに効果的であり、実験室合成に用い得る。商業規模の製造には、酪酸へのブタノールの1段階酸化が研究され、不均一触媒(酸化チタン上の金パラジウム)の使用が実行可能な商業規模の製造をもたらすことをさらに示してきた。Gandarias et al. ChemSusChem, 2015, 8, 473-480。
【0067】
ここまで概略的に記載された本技術は、例示として提供されかつ本技術を限定することを意図していない以下の実施例を参照することによって、より容易に理解されるであろう。
【実施例
【0068】
例示的な方法は下のプロトコルに従って実施され、さらに、例示的な方法の電気分解反応器系の代表的な図面が図1に提供されている。
【0069】
例示的な方法では、機械的撹拌機および加熱ジャケットを備えた、約1リットルの内容積を有する保持容器に、モル比が4:1のイソ酪酸とオレイン酸との混合物(複数モルのイソ酪酸:1モルのオレイン酸)を200mL入れる。保持容器にエタノールを400mLさらに入れ、溶液を液相に維持するために正圧を維持しながら、得られた溶液を60℃まで加熱する。
【0070】
次いで前記溶液を電解セルに循環させ、該溶液は、それぞれ露出表面積が約60cm2である2つの平板電極間を流れる。1~10ボルトの電圧範囲で100アンペアまで供給できる電源が、電解セルに接続される。
【0071】
溶液を10~100mL/分の速度で電解セルに循環させながら電圧およびアンペアを調整して、湿式ガスメーター(図1の「湿式試験メーター」)を通過する気相副生成物(主にCO2およびH2)の発生によって示される溶液の変換を達成し得る。現時点で炭化水素生成物を含む得られた溶液は、気相副生成物が湿式ガスメーターを通じて反応器系を出ていくにつれて、保持容器に戻る。ガスクロマトグラフィー分析のためにサンプリングされたガスの体積流量を測定して、CO2が主成分であることを確認する。
【0072】
保持容器は酸価分析のために定期的にサンプリングされる。溶液の酸価が1mg KOH/g未満の値に低下するまで電解セルを通じた循環を続ける。この時点で保持容器の液体内容物が保持容器から排出され、ガソリンカットとディーゼルカットに分留される。中性子放射化を介してディーゼルカットが酸素について分析され、炭化水素生成物へのオレイン酸およびイソ酪酸の変換(例えば、酸素含有量が0.1重量%未満)を確認する。ディーゼルは、曇点およびセタン価についてさらに試験され、ディーゼルは、-10℃未満の曇点および60セタン超のセタン価を示すと予想される。
【0073】
特定の態様を図示しかつ説明してきたが、以下の請求項で定義されるように、より広い局面における本技術から逸脱することなく、当技術分野における通常の技術に応じて変更および修正を行うことができると理解されるべきである。上に記載される各局面および態様は、他の局面および態様のいずれかまたはすべてに関して開示されたそのような変形または局面を含むかまたは組み込むこともできる。
【0074】
本技術はまた、本技術の個々の局面および/または態様の単なる例示として意図される、本明細書において記載される特定の局面および/または態様に関連して限定されるべきではない。当業者には明らかなように、その精神および範囲から逸脱することなく多くの修正および変形を行うことができる。本明細書において列挙したものに加えて、開示の範囲内の機能的に等価な方法および組成物が前述の説明から当業者には明らかであろう。そのような修正および変形は添付の請求項の範囲内にあることが意図されている。本開示は添付の請求項の文言とともにそのような請求項が該当する均等物の範囲全体によってのみ限定されるべきである。本開示は、当然のことながら変更可能である特定の方法、試薬、化合物 組成物または生物系に限定されないと理解されたい。本明細書において用いられる用語は特定の態様を説明することのみを目的としており、限定することを意図していないことも理解されたい。
【0075】
本明細書において例示的に記載された態様は、本明細書において具体的には開示されていない任意の要素または要素群、限定または限定群の非存在下で好適に実施され得る。よって、例えば、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」などの用語は広くかつ非限定的に読まれるものとする。加えて、本明細書において採用される用語および表現は、限定ではなく説明の用語として用いられており、そのような用語および表現の使用においては、示されたおよび記載された特徴またはその一部分のあらゆる均等物を排除する意図はないが、請求項に係る技術の範囲内で様々な修正が可能であると認識される。さらに、「から本質的になる」という表現は、具体的に記載された要素、ならびに請求項に係る技術の基本的および新規な特徴に実質的に影響を与えない追加の要素を含むと理解されるであろう。「からなる」という表現は特定されていないあらゆる要素を除外する。
【0076】
加えて、開示の特徴または局面がマーカッシュグループによって記載されている場合、当業者であれば、これによって開示はマーカッシュグループの任意の個別のメンバーまたはメンバーのサブグループの点でも記載されていることを認識するであろう。
【0077】
当業者には理解されるように、あらゆる目的で、特に書面による説明を提供するという点で、本明細書において開示されるすべての範囲はあらゆる可能な部分範囲およびその部分範囲の組み合わせも包含する。任意の記載範囲は、同じ範囲が少なくとも半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分割されることが十分に記載されかつ実施可能であると容易に認識することができる。非限定例として、本明細書において検討される各範囲は下位3分の1、中間の3分の1、上位3分の1などに容易に分割することができる。また当業者には理解されるように、「まで」、「少なくとも」、「超」、「未満」などの語句はいずれも記載された数を含み、上に検討したように、続いて部分範囲に分解することができる範囲を指す。最後に、当業者には理解されるように、範囲には個々のメンバーを含む。
【0078】
すべての刊行物、特許出願、発行済み特許、および本明細書において参照される他の文献は、個々の刊行物、特許出願、発行済み特許、および他の参考文献が参照により組み入れられることが具体的にかつ個別に示されたのと同程度にその全体が参照により本明細書に組み入れられる。参照により組み入れられる文書に含まれる定義は、本開示の定義と矛盾している場合には除外される。
【0079】
本技術は以下の文字を付した段落に記載される特徴および特徴の組み合わせを非限定的に含み得、以下の段落は、本明細書に添付される請求項の範囲を限定するか、またはすべてのそのような特徴がそのような請求項に必ず含まれなければならないことを義務付けていると解釈されるべきではないことが理解される。
【0080】
A.
再生可能炭化水素燃料を製造するための方法であって、以下の工程を含む、方法:
(i)バイオ再生可能原料からの遊離脂肪酸と(ii)末端モノメチル分岐カルボン酸とを含む混合物を電気分解して、末端モノメチル分岐パラフィンおよび末端モノメチル分岐アルケンを含む再生可能ディーゼルと、任意で再生可能ガソリンとを含む電解生成物を生成する工程。
【0081】
B.
再生可能ディーゼルを水素化する工程をさらに含む、項Aの方法。
【0082】
C.
末端モノメチル分岐カルボン酸がイソ酪酸を含み、任意で、末端モノメチル分岐カルボン酸が、イソ酪酸、イソ吉草酸、またはイソ酪酸とイソ吉草酸との混合物からなる、項Aまたは項Bの方法。
【0083】
D.
イソ酪酸が、バイオ再生可能原料からのイソブタノールから生成される、項Cの方法。
【0084】
E.
イソブタノールを脱水素化してイソブチルアルデヒドおよびH2を生成し、イソブチルアルデヒドを酸化してイソ酪酸を生成することによって、イソ酪酸がイソブタノールから生成される、項Dの方法。
【0085】
F.
イソブタノールを脱水素化して生成されるH2がイソブチルアルデヒドから分離される、項Eの方法。
【0086】
G.
イソブタノールを脱水素化することからのH2が水素化反応で用いられる、項Eまたは項Fの方法。
【0087】
H.
再生可能ガソリンが2,3-ジメチルブタンを含む、項A~Gのいずれか1つの方法。
【0088】
I.
遊離脂肪酸が、脂肪、油、および/またはグリースの脂肪酸エステルの加水分解から生成される脂肪酸を含む、項A~Hのいずれか1つの方法。
【0089】
J.
遊離脂肪酸が、トール油からの、および/またはトール油エステルの加水分解から生成される脂肪酸を含む、項A~Iのいずれか1つの方法。
【0090】
K.
遊離脂肪酸が、ヤシ脂肪酸留出物からの脂肪酸を含む、項A~Jのいずれか1つの方法。
【0091】
L.
遊離脂肪酸が、脂肪、油、および/またはグリースから留出させた脂肪酸を含む、項A~Kのいずれか1つの方法。
【0092】
M.
遊離脂肪酸が、ヤシスラッジ油および/または使用済み調理油から留出させた脂肪酸を含む、項Lの方法。
【0093】
N.
電気分解が再生可能エネルギーによって電力供給される、項A~Mのいずれか1つの方法。
【0094】
O.
末端モノメチル分岐イソパラフィンと、
各内部炭素-炭素二重結合がシスである末端モノメチル分岐アルケンと
を含む、再生可能ディーゼル。
【0095】
P.
-10℃未満の曇点および60超のセタン価を有する、項Oの再生可能ディーゼル。
【0096】
Q.
2,3-ジメチルブタンを含む、再生可能ガソリン。
【0097】
R.
87以上のオクタン価を有する、項Qの再生可能ガソリン。
【0098】
S.
項A~Nのいずれか1つの方法によって製造される、項Qまたは項Rの再生可能ガソリン。
【0099】
T.
再生可能炭化水素燃料を製造するための方法であって、以下の工程を含む方法:
(a)遊離脂肪酸(FFA)供給物を準備する工程、
(b)メチル分枝カルボン酸を準備する工程、および
(c)FFAおよび分岐メチルカルボン酸をコルベ電解に供して、2-メチル分岐パラフィンおよび末端モノメチル分岐オレフィンを含む再生可能ディーゼルと、再生可能ガソリンとを生成する工程。
【0100】
U.
再生可能ディーゼルが水素化される、項Tの方法。
【0101】
V.
メチル分岐カルボン酸がイソ酪酸である、項Tまたは項Uの方法。
【0102】
W.
イソ酪酸がバイオイソブタノールから生成される、項Vの方法。
【0103】
X.
バイオイソブタノールが脱水素化されてイソブチルアルデヒド中間体および水素副生成物を生成する、項Wの方法。
【0104】
Y.
水素が水素化のために用いられる、項Wの方法。
【0105】
Z.
再生可能ガソリンが2,3-ジメチルブタンを含む、項U~Yのいずれか1つの方法。
【0106】
AA.
FFAが脂肪、油、およびグリース(FOG)の加水分解に由来する遊離脂肪酸を含む、項U~Zのいずれか1つの方法。
【0107】
AB.
FFAが木材パルプ生産のクラフトプロセスに由来するトール油を含む、項U~AAのいずれか1つの方法。
【0108】
AC.
FFAがヤシ脂肪酸留出物を含む、項U~ABのいずれか1つの方法。
【0109】
AD.
FFAが、高FFA含有量を特徴とするFOG原料の蒸留から得られる遊離脂肪酸を含む、項U~ACのいずれか1つの方法。
【0110】
AE.
FOG原料がヤシスラッジ油および使用済み調理油を含む、項ADの方法。
【0111】
AF.
コルベ電解が再生可能エネルギーによって電力供給される、項U~AEのいずれか1つの方法。
【0112】
AG.
末端モノメチル分岐オレフィンと2-メチル分岐パラフィンとを含む再生可能ディーゼル組成物であって、直鎖内部オレフィンがシス立体配座を有する、再生可能ディーゼル組成物。
【0113】
AH.
曇点が-10℃未満であり、セタン価が60超である、項AGの再生可能ディーゼル。
【0114】
AI.
2,3-ジメチルブタンを含む、再生可能炭化水素ガソリン組成物。
【0115】
AJ.
オクタン価が87以上である、項AIの再生可能炭化水素ガソリン。
【0116】
他の態様は以下の請求項に記載されている。
図1
【国際調査報告】