(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-15
(54)【発明の名称】ソフト菓子の製造方法および製造システム
(51)【国際特許分類】
A23G 3/34 20060101AFI20230807BHJP
A23L 29/231 20160101ALI20230807BHJP
A23L 29/281 20160101ALI20230807BHJP
A23L 29/30 20160101ALI20230807BHJP
【FI】
A23G3/34 101
A23L29/231
A23L29/281
A23L29/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504480
(86)(22)【出願日】2021-07-23
(85)【翻訳文提出日】2023-03-13
(86)【国際出願番号】 NL2021050473
(87)【国際公開番号】W WO2022019767
(87)【国際公開日】2022-01-27
(32)【優先日】2020-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523023203
【氏名又は名称】タニス コンフェクショナリー ベー.フェー.
【氏名又は名称原語表記】Tanis Confectionery B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タニス,レオナルト ヨハンネス
【テーマコード(参考)】
4B014
4B041
【Fターム(参考)】
4B014GB07
4B014GG12
4B014GK08
4B014GL11
4B014GP12
4B014GP14
4B014GP23
4B014GQ06
4B041LD02
4B041LH02
4B041LH05
4B041LK17
4B041LP01
4B041LP07
4B041LP13
4B041LP16
(57)【要約】
【解決手段】 ソフト菓子の製造方法および製造システムであって、デンプンなどの成形用粉末に形成される1つ以上の成型キャビティをトレイに設ける。成形用粉末は初期水分含有量を有している。1つまたは複数の成型キャビティ内に液状菓子を堆積させることにより、成形用粉末の水分含有量が増加する。トレイは、堆積された菓子を乾燥させるように構成された調整室内に提供される。調整室の調整パラメータは、成形用粉末を所望の水分含有量まで乾燥させるように適合され、所望の水分含有量とは、後続の菓子製造において成形用粉末を即時再使用するに適する水分含有量である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
初期水分含有量を有するデンプンなどの成形用粉末に形成される1つ以上の成型キャビティをトレイに設ける工程と、
前記1つまたは複数の成型キャビティ内に液状菓子を堆積させ、これにより前記成形用粉末の前記水分含有量が増加する工程と、
前記トレイを、前記堆積された菓子を乾燥させるように構成された調整室内に提供する工程と、を含むソフト菓子の製造方法であって、
前記調整室の調整パラメータは、前記菓子をゲル化および所望の程度まで乾燥させると同時に、前記成形用粉末を所望の水分含有量まで乾燥させるように適合され、前記所望の水分含有量とは、後続の菓子製造において前記成形用粉末を即時再使用するに適する水分含有量であり、
前記ソフト菓子の製造方法はさらに、
前記調整室において、前記菓子をゲル化および前記所望の程度まで乾燥させ、前記成形用粉末を前記所望の水分レベルまで乾燥させた後、前記菓子を前記トレイから取り出す工程、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記所望の水分含有量が、前記初期水分含有量と実質的に等しいか、または前記初期水分含有量よりも低いことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所望の水分含有量と、前記初期水分含有量とは、実質的に同じであることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記調整室において、前記成形用粉末を4~14w/w%の範囲、より好ましくは6~10w/w%の範囲の水分含有量まで乾燥させることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記調整室において、前記菓子を、前記菓子の前記水分含有量が3~20%減少するように乾燥させることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記調整パラメータは、温度、湿度、空気流量、または照射のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記調整室の空気温度を10~80℃の範囲、好ましくは20~60℃の範囲とし、前記調整室の絶対湿度を0.05~240g/kg(DA)、好ましくは0.15~85g/kg(DA)の範囲とし、前記トレイを、前記調整室内に6~72時間保持することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ゲル化剤としてゼラチンを含有する菓子では、前記調整室内において、気流を0.2~1.5m/sの間、温度を20~35℃の間、絶対湿度を2~13.5g/kg(DA)の間とし、前記調整室において、前記トレイを8~36時間保持し、
ゲル化剤としてペクチンを含有する菓子では、前記調整室内において、気流を0.2~1.5m/sの間、温度を28~55℃の間、絶対湿度を2~30g/kg(DA)の間とし、前記調整室において、前記トレイを6~48時間保持し、
ゲル化剤としてゼラチンとペクチンの組み合わせを含有する菓子では、前記調整室において、気流を0.2~1.5m/sの間、温度を20~35度の間、絶対湿度を2~16g/kg(DA)の間とし、前記調整室において、前記トレイを8~48時間保持し、
ゲル化剤としてデンプンを含有する菓子では、前記調整室において、気流を0.2~1.5m/sの間、温度を45~75℃の間、絶対湿度を2~130g/kg(DA)の間とし、前記調整室において、前記トレイを30~65時間保持することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記菓子を前記トレイから取り出す前に、前記ソフト菓子を冷却し、冷却は前記調整室内で行うことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
複数のトレイを、連続プロセスまたはバッチプロセスにおいて連続して取り扱うことを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
初期水分含有量を有するデンプンなどの成形用粉末を容れるトレイと、
前記成形用粉末に1つ以上の成型キャビティを形成する成形部材と、
前記1つまたは複数の成型キャビティ内に液状菓子を堆積させ、これにより前記成形用粉末の前記水分含有量が増加する堆積部と、
前記ソフト菓子を乾燥させるように構成された調整室と、を備えたソフト菓子の製造システムであって、
前記システムは、前記トレイを前記調整室内に提供するように構成され、
前記調整室の調整パラメータは、前記菓子をゲル化および所望の程度まで乾燥させると同時に、前記成形用粉末を所望の水分含有量まで乾燥させるように適合され、前記所望の水分含有量とは、後続の菓子製造において前記成形用粉末を即時再使用するに適する水分含有量であること、
を特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法を実行するための手段を含むシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形用粉末内に形成される1つ以上の成型キャビティを含むトレイを用いてソフト菓子を製造するための方法および製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ワインガム、グミ菓子、グミゼリー、スイーツ、キャンディなどの菓子類の構造は、ゼラチン、デンプン、ペクチン系ゲルまたはその他を加えることにより、柔らかさと噛みごたえとを含むものとなる。このような菓子類には、ゲル化剤、糖類、水、および種々に由来するデンプンシロップのような他の成分が含まれる。
【0003】
一般的に、菓子製造用の成形剤および乾燥剤としては、デンプンなどの成形用粉末が使用される。上述のような菓子製品は、トレイ上の成形用粉末層に所望の形状を打ち抜き、次いで、成形用粉末層に形成されたキャビティに液状菓子の塊を注いで成型した後、所望の菓子製品の特性に一致する一貫した固体マトリックスを得るために、任意に選択される空気対流トンネルまたはチャンバによって、硬化および乾燥させることで製造される。トレイ上に成形用粉末を設けることで、形成された菓子のトレイの表面へのこびりつきが回避され、容易に取り出すことが可能となる。形成された菓子では、ゲル化、および水分含有量の減少、すなわち乾燥により、時間と共に噛み応えが増していく。使用する乾燥条件は、製造によって得られる菓子製品のサイズ、組成物、種別(例えば、クラストの有無)などによって異なる。
【0004】
典型的には、菓子の塊が堆積された状態の成形用粉末が充填されたトレイは、約18~72時間、調整室に載置される。キャンディの望ましい形状と製品特性とを得るために、調整室では、設定された温度と湿度を維持しながら特定の気流が送られる。調整室において、菓子中のゲル化剤がゲル化し、このゲル化により、菓子の硬さがいくらか増す。しかし、ゲル化しただけで追加的に乾燥していない状態、すなわち、水分が失われていない状態の菓子は、一般に、さらなる加工には適していないと考えられている。乾燥により水分活性レベルが低下すると、保存性が生じる。また、菓子を乾燥させることで、変形や破損のリスクが回避されるなど、その後の取り扱いにおいて十分な強度を持たせることができる。
【0005】
調整室で菓子を乾燥させる工程では、堆積された菓子を、成形用粉末の吸湿作用によって乾燥させ、さらに、温度および(相対)湿度が管理されたプロセス(循環)エアの作用によって乾燥させる。調整室での菓子の調整・乾燥工程において、成形用粉末は、静止状態では、典型的には0.5~5w/w%の間、典型的には1~3w/w%の間で水分を吸収する。調整室での乾燥工程の終わりに、菓子を成形用粉末から分離する。このような菓子の乾燥工程では、成形用粉末の水分レベルは、直接的な再利用に適さないレベルまで上昇する。ここで用いられる「適さないレベル」とは、成形剤としての成形用粉末の機能、およびキャビティに流し込まれる菓子の脱水粉体としての成形用粉末の機能が失われるか、または、少なくとも望ましくない程度に低下することを意味する。また、成形用粉末の頻繁な交換には、コストや時間がかかる。
【0006】
典型的には、菓子を脱型した後、乾燥装置を使用して、水分含有量が増した成形用粉末を乾燥させる。一般に、成形用粉末の乾燥は、フィルター、乾燥機、冷却器、バッファーを含む別個の連続設備で行われ、これらはすべて搬送スクリューまたは所定に設計されたデンプン乾燥装置の専用システムによって接続される。乾燥機を通過した成形用粉末の水分含有量は必要なレベルまで低下し、これにより、キャンディの成形および乾燥工程において再利用できる状態となる。
【0007】
専用の成形用粉末乾燥装置の動作乾燥パラメータは、多くの場合、成形用粉末の水分含有量を所望の水分含有量に下げる際の効率を最大化するように選択される。よって、成形用粉末を集中的に乾燥させるために、大型でかさばる乾燥装置が使用されることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上述の欠点の少なくとも1つを解消するための方法およびシステムを提供することである。
【0009】
あるいは、本発明の目的は、菓子の製造プロセスの効率を改善することである。
【0010】
あるいは、本発明の目的は、菓子の製造に使用される成形用粉末の乾燥を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、初期水分含有量を有するデンプンなどの成形用粉末に形成される1つ以上の成型キャビティをトレイに設ける工程と、1つまたは複数の成型キャビティ内に液状菓子を堆積させ、これにより成形用粉末の水分含有量が増加する工程と、トレイを、堆積された菓子を乾燥させるように構成された調整室内に提供する工程と、を含むソフト菓子の製造方法であって、調整室の調整パラメータは、成形用粉末を所望の水分含有量まで乾燥させるように適合され、所望の水分含有量とは、後続の菓子製造において成形用粉末を即時再使用するに適する水分含有量である、方法を提供する。調整室の調整パラメータは、同時に、菓子がゲル化および所望の程度まで乾燥するように適合される。ここで用いられる「適する」とは、次の菓子製品を成形するためのトレイにおいて、成形用粉末を即時に、例えば、乾燥工程や乾燥時間を挟むことなく、再使用可能であることを意味する。
【0012】
本願発明者は、一般に、調整室の調整パラメータを適合させることにより、成形用粉末中に堆積された菓子をゲル化させるだけでなく、包装のための取り扱いなど、さらなる処理に適するように乾燥させることが可能であることを見出した。菓子製品にとって乾燥は重要である。乾燥が少なすぎると、貯蔵寿命が損なわれる。乾燥が多すぎると、製品が硬くなってしまい、一般的には望ましいとはいえない。したがって、調整室における乾燥の程度は、菓子製品に応じて決定される。調整室において成形用粉末にある程度の乾燥がもたらされることは、これまでは副次的な効果に過ぎなかった。また、調整パラメータが菓子製品を最適にゲル化して乾燥させるために設定された調整室において、成形用粉末を即時の再使用に適した水分含有量まで同時に乾燥させるには常に不十分であった。これについて、本願発明者は、調整室の調整パラメータを、菓子をゲル化および所望の程度まで乾燥させると同時に、成形用粉末を所望の水分含有量まで乾燥させるように適合させることが可能であり、その所望の水分含有量とは、後続の菓子製造において成形用粉末を即時再使用するに適する水分含有量であることを見出した。
【0013】
調整室の調整パラメータは、成形用粉末を、別個や専用のさらなる乾燥工程を設けることなく、次の菓子製造において直接再使用可能なレベルまで乾燥させるように選択することができる。調整室の調整パラメータを、菓子の処理と成形用粉末の乾燥が同時にされるように適合させ、調整室において、ソフト菓子の処理中に成形用粉末の水分レベルも制御されるようにする。成形用粉末を乾燥させるための工程は、菓子の調整工程に統合することができる。このように、菓子製造の全プロセスの効率改善と共に、製造コストの低減を実現することが可能となる。
【0014】
菓子製造中に使用される成形用粉末を、成形用粉末専用の別個の調整室または乾燥室ではなく、調整室において所望の水分含有量まで乾燥させることができる点が有利である。成形用粉末専用の調整室は必要ないか、あるいは、例えば、より小型の成形用粉末専用の調整装置(例えば、調整室)を使用して、調整室で所望の水分含有量に達した成形用粉末をさらに乾燥させることもできる。成形用粉末の乾燥を、菓子の調整に使用する調整室に統合することで、菓子製造プロセスを大幅に単純化することができる。また、成形用粉末を乾燥させるための別の専用の乾燥室の設置の省略を、任意に選択することができる。
【0015】
任意選択として、所望の水分含有量は、初期水分含有量と実質的に等しいか、または初期水分含有量よりも低い。これにより、再使用される成形用粉末の水分含有量は、最初の成形用粉末の水分含有量より高くなることはない。したがって、再使用された成形用粉末を使用して製造された菓子は、最初の成形用粉末を使用して製造された菓子の特性と同じの特性を有することになる。
【0016】
菓子と成形用粉末の両方を同じ調整室で同時に乾燥させ、水分含有量の低減を図ることができる。調整パラメータを、成形用粉末も乾燥させるように選択することができる。堆積した菓子を載せたトレイは、所定の時間、調整室に保持される。その際、調整室での処理時間を、成形用粉末が十分に乾燥するように選択する。成形用粉末を専用の乾燥装置で処理後に(例えば2~30分間)集中的に乾燥させる代わりに、調整室で乾燥させることで、成形用粉末の乾燥機として、より小型の乾燥機の採用が可能となり、または、成形用粉末の乾燥機を菓子製造工程において省略することもできる。
【0017】
堆積された菓子および成形用デンプンを同時に乾燥させるための調整パラメータは、菓子中のゲル化剤の種類に応じて適合させてもよい。一般的なゲル化剤は、ゼラチン、ペクチン、デンプン、その他、またはそれらの組み合わせからなる。
【0018】
菓子製品を、菓子中の水分含有量が3~20%程度減少するように乾燥させることが好ましい。より具体的には、ゼラチン、ペクチン、またはこれらの組み合わせをゲル化剤として含有する菓子類では、水分含有量を3~17%程度減少させることが好ましい。ゲル化剤としてデンプンを含有する菓子類では、好ましくは、水分含有量を8~20%減少させる。
【0019】
標準的なゼラチン菓子の塊を用いた試験および測定により、調整室における調整工程の開始から、一般的には堆積してから4~8時間の第1期間に、成形用粉末の水分レベルが最初に上昇することがわかっている。これは、成形用粉末において、菓子の塊を乾燥させる作用により、その水分含有量が上昇したためである。したがって、菓子の水分含有量は、同じ期間の比率内で成形用粉末の水分含有量が増加するのと同時に減少する。一般に、成形用粉末の水分含有量は、一定時間(例えば4~8時間以内)が経過した後、最大値に達する。その後の第2期間では、菓子と成形用粉末の水分含有量は共に減少する。第二の時間の終わりまでに菓子が所望の程度まで乾燥し、成形用粉末の水分含有量が元の値まで、またはそれに近い値まで減少し、専用の成形用粉末乾燥機を通さずに直接再使用可能になるように、調整室の調整パラメータを選択する。
【0020】
好ましくは、調整パラメータを、調整室内において、気流が0.2~1.5m/sの間、温度が20~75℃の間、絶対湿度が2~130g/kg(DA)(即ち、gr H2O/kg air)の間となるよう選択する。菓子および成形用粉末を載置したトレイを調整室に保持する時間は、6~65時間の間とすること好ましい。より具体的には、ゲル化剤としてゼラチンを含有する菓子では、調整パラメータを、調整室内において、気流が0.2~1.5m/sの間、温度が20~35℃の間、絶対湿度が2~13.5g/kg(DA)の間となるよう選択し、菓子および成形用粉末を載置したトレイは、調整室において8~36時間の間保持することが好ましい。ゲル化剤としてペクチンを含有する菓子では、調整パラメータを、調整室内において、気流が0.2~1.5m/sの間、調整室内の温度が28~55℃の間、絶対湿度が2~30g/kg(DA)の間となるよう選択し、菓子および成形用粉末を載置したトレイは、調整室において6~48時間の間で保持することが好ましい。ゲル化剤としてゼラチンとペクチンの組み合わせを含有する菓子では、調整パラメータを、調整室内において、気流が0.2~1.5m/sの間、温度が20~35度の間、絶対湿度が2~16g/kg(DA)の間となるよう選択し、菓子および成形用粉末を載置したトレイは、調整室において8~48時間の間で保持することが好ましい。ゲル化剤としてデンプンを含有する菓子では、調整パラメータを、調整室内において、気流が0.2~1.5m/sの間、温度が45~75℃の間、絶対湿度が2~130g/kg(DA)の間となるよう選択し、菓子および成形用粉末を載置したトレイは、調整室において、30~65時間の間で保持することが好ましい。
【0021】
任意選択として、所望の水分含有量と、初期水分含有量とは実質的に同じである。このように、成形用粉末を乾燥させるための別個の専用乾燥機を設ける必要がなくなる場合もある。代わりに、堆積された液状菓子からの水分によって水分含有量が上昇した成形用粉末を、初期水分含有量に実質的に等しい所望の水分含有量となるよう乾燥させる。これにより、乾燥した成形用粉末を、後続の菓子製造プロセスにおいて直接的再使用に適した状態とすることができる。
【0022】
ある実施例では、水分含有量が実質的に最初の水分含有量まで減少することが保証されている。また、最初の水分含有量と所望の水分含有量との間の差が最小限となるよう、プロセスパラメータや調整パラメータを調整してもよい。
【0023】
任意選択として、本発明にかかる方法は、後続の菓子製造プロセスにおいて調整室内で乾燥された成形用粉末を使用することをさらに含む。また、任意選択として、本発明にかかる方法は、中間的な乾燥工程を追加することなく、後続の菓子製造プロセスにおいて調整室で乾燥させた成形用粉末を使用することをさらに含む。
【0024】
任意選択として、調整室において、成形用粉末を4~14w/w%の範囲、より好ましくは6~10w/w%の範囲の水分含有量まで乾燥させる。
【0025】
任意選択として、0.05~240g/kg(DA)の範囲、好ましくは0.15~85g/kg(DA)の範囲の絶対湿度(例えば、混合比、g/kg(DA))を採用してもよい。
【0026】
任意選択として、トレイからソフト菓子を取り出す前に、調整室において、成形用粉末は所望の水分レベルまで乾燥させる。このように、離型に向けてソフト菓子を調整している間に、成形用粉末を、後続の菓子製造において即時の再使用に適した所望の水分含有量まで乾燥させる。
【0027】
ソフト菓子は、調整室内で調整されてもよい。さらに、ソフト菓子の堆積によって上昇した成形用粉末の含有水分量を、例えば、ソフト菓子をトレイから除去することなく、最初の含有水分量まで積極的に低減させることができる。
【0028】
成形用粉末を、ソフト菓子を製造するための連続プロセスにおいて直接的に使用可能である点が有利である。
【0029】
任意選択として、調整パラメータは、温度、湿度、空気流量、または照射のうちの少なくとも1つを含む。
【0030】
任意選択として、調整室の空気温度を10~80℃の範囲、好ましくは20~60℃の範囲とし、また、調整室の絶対湿度(例えば、混合比、g/kg(DA))を0.05~240g/kg(DA)、好ましくは0.15~85g/kg(DA)の範囲とする。また、任意選択として、トレイを調整室内に6~72時間、例えば、8~72時間保持する。
【0031】
任意選択として、ソフト菓子をトレイから取り出す前に、ソフト菓子を冷却し、冷却は調整室内で行う。任意選択として、冷却は、菓子製品や成形用粉末の水分吸収を防ぐ調整パラメータを適用することによって実施される。
【0032】
任意選択として、複数のトレイを、連続プロセスまたはバッチプロセスにおいて連続して取り扱う。
【0033】
本発明では、本発明による方法を実行するための手段を含むシステムが提供される。
【0034】
形成した菓子製品を取り出した後、残った成形用粉末を、成形用粉末を乾燥させるための専用の乾燥機に導入しなくてもよくなる点が有利である。代わりに、成形用粉末を、調整室内において、さらなるソフト菓子製造プロセスで再使用するのに適した所望の水分含有量まで乾燥させる。あるいは、例えば、より小型の成形用粉末乾燥機を用いて、調整室で所望の水分含有量にした後の成形用粉末をさらに乾燥させてもよい。このように、必要な床面積や総投資を低減することができる点が有利である。さらに、本発明による方法を用いることで、より短い投資収益率(ROI)を得ることが可能となる。
【0035】
本発明では、初期水分含有量を有するデンプンなどの成形用粉末を容れるトレイと、成形用粉末に1つ以上の成型キャビティを形成する成型部材と、1つまたは複数の成型キャビティ内に液状菓子を堆積させ、これにより成形用粉末の水分含有量が増加する堆積部と、ソフト菓子を乾燥させるように構成された調整室と、を備えたソフト菓子の製造システムであって、製造システムはトレイを調整室内に提供するよう構成され、調整室の調整パラメータは、成形用粉末を所望の水分含有量まで乾燥させるように適合され、所望の水分含有量とは、後続の菓子製造において成形用粉末を即時再使用するに適する水分含有量であるシステム、が提供される。
【0036】
本発明では、初期水分含有量を有するデンプンなどのこのような成形用粉末に形成される1つ以上の成型キャビティをトレイに設ける工程と、1つまたは複数の成型キャビティ内に液状菓子を堆積させ、これにより成形用粉末の水分含有量が増加する工程と、トレイを、堆積された菓子を乾燥させるように構成された調整室内に提供する工程と、を含むソフト菓子の製造方法であって、調整室の調整パラメータは、成形用粉末を所望の水分含有量まで乾燥させるように適合され、所望の水分含有量が、初期水分含有量と実質的に等しいか、または初期水分含有量よりも低い方法、が提供される。
【0037】
本発明では、初期水分含有量を有するデンプンなどのこのような成形用粉末に形成される1つ以上の成型キャビティをトレイに設ける工程と、1つまたは複数の成型キャビティ内に液状菓子を堆積させる工程と、トレイを、ソフト菓子を処理するように構成された調整室内に提供する工程と、を含むソフト菓子の製造方法であって、調整室の調整パラメータは、成形用粉末を、後続の菓子製造プロセスにおいて即時再使用するに適する水分含有量になるよう適合される方法、が提供される。
【0038】
なお、方法について説明される態様、特徴、オプションのいずれもシステムに等しく適用され、逆もまた同様である。また、上記の態様、特徴、オプションのうちの任意の1つまたは複数を組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【発明を実施するための形態】
【0040】
図面に示す例示的な実施形態に基づき、本発明についてさらに説明する。図示された例示的な実施形態は限定を意図するものではなく、本発明の実施形態を概略的に表現しているに過ぎない点に留意されたい。
【0041】
図1は、ソフト菓子を製造する方法100を示す模式図である。第1ステップ101では、デンプンなどの成形用粉末に形成される1つ以上の成型キャビティがトレイに設けられ、このような成形用粉末は初期水分含有量を有している。第2ステップ102では、1つまたは複数の成型キャビティ内に液状菓子が堆積され、これにより、成形用粉末、例えば成型キャビティ付近、の水分含有量が増加する。第3ステップ103では、トレイを、堆積された菓子を乾燥させるように構成された調整室内に提供する。
【0042】
調整室の調整パラメータは、成形用粉末を所望の水分含有量まで乾燥させるように適合され、所望の水分含有量とは、次の菓子製造において成形用粉末を即時再使用するに適する水分含有量である。
【0043】
調整室において十分に乾燥した成形用粉末は、後続の菓子製造プロセスにおいて再使用することができる。成形用粉末は、ソフト菓子を調整するために使用される部屋と同じ部屋で、所望の水分レベルまで乾燥させることができる。この目的のために、ソフト菓子の調整を適合させる。
【0044】
図2は、ソフト菓子の製造システム1を示す模式図である。この製造システムには、初期水分含有量を有するデンプンなどの成形用粉末5を容れるトレイ3が設けられる。さらに、製造システムには、成形用粉末5に1つ以上の成型キャビティ7を形成する成形部材(図示せず)が設けられる。さらに、製造システムには、成形用粉末5に形成された1つまたは複数の成型キャビティ7内に、矢印Aで示す液状菓子を堆積させる堆積部(図示せず)が設けられる。液状菓子を成型キャビティ内に堆積させると、成形用粉末の水分含有量が、成型キャビティを起点として増加する。さらに、製造システムには、ソフト菓子を乾燥させるように構成された調整室10が設けられる。製造システム1において、トレイ3は調整室10内に提供される。調整室の調整パラメータは、ソフト菓子を乾燥させるように適合される。また、調整室の調整パラメータは、成形用粉末5を所望の、例えば低い水分含有量まで乾燥させるように適合され、この所望の水分含有量とは、後続の菓子製造において成形用粉末5を即時再使用するに適する水分含有量である。本例では、Fで達成される所望の水分含有量は、Bにおける初期水分含有量に実質的に等しい。調整室では、堆積されたソフト菓子が乾燥しつつ、成形用粉末5も所望の水分含有量まで乾燥している。ソフト菓子は、乾燥後にトレイ3から取り出される。成形用粉末5は、例えば、トレイ3からソフト菓子を取り出すのと同時に、トレイ3をひっくり返すなどにより取り除かれる。このように、乾燥後のソフト菓子を脱型する際には、成形用粉末は、その後の菓子製造において即時の再使用に適する所望の水分含有量まで乾燥している。
【0045】
このように、成形用粉末に形成された成型キャビティで局所的に増加した水分含有量の影響を、調整室10において低減させることで、ソフト菓子の製造過程をより効率化することができる。成形用粉末5を後続のソフト菓子の製造プロセスで再使用するために、その水分含有量の低減処理を、例えば別個のユニットで別個に行う必要がない。例えば、成型キャビティ7内における堆積後のソフト菓子の水分含有量は、初期の水分含有量まで減少させることができる。
【0046】
調整室10の調整パラメータを、空気温度が10~80℃の範囲、好ましくは20~60℃の範囲、絶対湿度が0.05~240g/kg(DA)、好ましくは0.15~85g/kg(DA)の範囲になるように適合してもよく、トレイを、この調整室内に6~72時間保持するようにしてもよい。
【0047】
図3は、水分含有量Mを時間tの関数で表したグラフ20の概略図である。この水分含有量は、成形用粉末5の平均水分含有量を示すものであってもよいが、成形用粉末5に形成された成型キャビティ7またはその付近の水分含有量を表すものであってもよい。ソフト菓子が成型用キャビティ7に堆積していない状態では、水分含有量は一定である(B参照)。成型用キャビティ7にソフト菓子を堆積させると、水分含有量は増加する(C参照)。ここで水分含有量が増加したのは、成形用粉末が、堆積したソフト菓子から水分を吸収するため、すなわち、菓子が乾燥したためである。堆積したことで、水分含有量はピークに達するまで増加する(D参照)。ピークへ到達するのは、一般に6~8時間後である。Dのピークに達した後、菓子と成形用粉末は共に乾燥していく(E-F参照)。
【0048】
トレイは、堆積されたソフト菓子を乾燥させるために構成された調整室10に、通常は、堆積後すぐに(Cの時点で)提供される。調整室10の調整パラメータは、菓子がゲル化および所望の程度まで乾燥し(C-F参照)、同時に成形用粉末5が所望の水分含有量まで乾燥するように選択される(E-F参照)。調整室10に保持されている間、成形されたソフト菓子は、成形用粉末に接触していない上面が乾燥する。しかし、成形用粉末は、最初に吸湿した後乾燥するので、乾燥成形用粉末と接触している成形された菓子の底面および側面は、成形用粉末により継続的に乾燥の作用を受ける。このようにして、成形されたソフト菓子は効率よく乾燥する。成形用粉末を乾燥させるための所望の水分含有量(F参照)は、成形用粉末5が後続の菓子製造において直ちに再使用するのに適するように、すなわち、追加の乾燥工程または乾燥時間なしで使用できるように選択される。なお、デンプンなどの成形用粉末ではさらなる乾燥は必要ないが、後続の菓子製造工程における再使用の前に、例えば、ふるいにかけたり、混ぜたりするなど、さらなる作業を行ってもよい。
【0049】
堆積された菓子および成型用デンプンを同時に乾燥させるための調整パラメータは、菓子中のゲル化剤の種類に応じて適合させることができる。一般的なゲル化剤は、ゼラチン、ペクチン、デンプン、その他、またはそれらの組み合わせからなる。以下の表は、菓子の塊の調整と、デンプン成形用粉末の乾燥とを同時に行うための典型的な値を示している。
【0050】
【0051】
本明細書に記載される、例えば、方法およびプロセスの手順は、説明を容易にするために特定の順序で記載されるが、別段の指定がない限り、これらの手順は、様々な実施形態に応じて、並べ替えられたり、追加されたり、省略されたりしてもよい。さらに、ある方法またはプロセスに関して説明した手順を、他の方法またはプロセス内に組み込んでもよい。同様に、特定の構造アーキテクチャや、あるシステムに関して説明した構成要素を、別の構造アーキテクチャにおいて編成したり、他のシステム内に組み込んだりしてもよい。様々な実施形態について、説明を容易にするために、特定の特徴を説明したり、例示的な態様を図示したりしているが、ある実施形態に関して本明細書で説明した様々な構成要素や特徴は、別段の指定がない限り、他の実施形態の構成要素や特徴との間で、置換、追加、省略がされ得る。したがって、本明細書では例示的な実施形態を説明したが、本発明では、以下の特許請求の範囲内において、あらゆる変形例および均等物を包含することが意図されている。
【0052】
本発明にかかる方法は、コンピュータによる工程を含んでもよい。
【0053】
本明細書では、本発明の説明について、実施形態の具体例を参照したが、本発明の要旨から逸脱しない範囲で、様々な修正、変形、代替、変更を行うことができる。明確且つ簡潔に説明するために、本明細書において、同じまたは別の実施形態の一部として特徴を記載した場合であっても、これらの特徴のすべてまたは一部の組合せについての別の実施形態についても、特許請求の範囲に記載された本発明の枠組み内に入ることが想定される。したがって、明細書、図面、実施形態は、限定を意図するのではなく、例示を意図するものである。本発明は、添付の特許請求の範囲の要旨および範囲内にある全ての代替、修正、変形を包含する。さらに、説明した構成要素の多くは、離散的または分散的な構成要素として、あるいは他の構成要素と組み合わせて、任意の適切な組み合わせと位置で実装することができる機能的なエンティティである。
【0054】
特許請求の範囲において、括弧内に配置された参照符号は、特許請求の範囲を限定するものではない。「含む(comprising)」という用語は、請求項に列挙されたもの以外の他の特徴または工程の存在を排除するものではない。さらに、「a」および「an」は、「1つのみ(only one)」を限定するものではなく、「少なくとも1つ」を意味し、複数を排除するものではない。ある手段が相互に異なる請求項に記載されたとしても、これらの手段を組み合わせて有利に使用することができないことを示すことにはならない。
【国際調査報告】