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特表2023-535059セルロース含有材料用結合剤及びそれを含有する製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-15
(54)【発明の名称】セルロース含有材料用結合剤及びそれを含有する製品
(51)【国際特許分類】
   C09J 189/00 20060101AFI20230807BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20230807BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230807BHJP
   C09J 197/00 20060101ALI20230807BHJP
   B27D 1/04 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
C09J189/00
C09J11/04
C09J11/06
C09J197/00
B27D1/04 K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504505
(86)(22)【出願日】2021-07-22
(85)【翻訳文提出日】2023-03-17
(86)【国際出願番号】 PL2021050056
(87)【国際公開番号】W WO2022019790
(87)【国際公開日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】P.434762
(32)【優先日】2020-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523023926
【氏名又は名称】セステック・ポルスカ・エスペ・ゼット・オ・オ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンナ・シエランク
(72)【発明者】
【氏名】パウラ・コヴァルスカ
(72)【発明者】
【氏名】アンジェイ・ピートリック
(72)【発明者】
【氏名】ハンス・ヨアヒム・エデルマン
【テーマコード(参考)】
2B200
4J040
【Fターム(参考)】
2B200HA20
4J040BA151
4J040BA231
4J040HA146
4J040HB11
4J040JA03
4J040JB02
4J040LA06
4J040MA08
4J040MA09
4J040NA13
(57)【要約】
使用及び保管が容易であり、動物性物質を含まず、環境に優しい、セルロース含有材料用結合剤であって、特に木質複合材の製造での使用に適した結合剤、及びこの結合剤を用いて得られた複合材製品が開示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース含有材料用結合剤であって、前記結合剤が、以下の成分:
- 3~25%の量の、大豆タンパク質、菜種タンパク質、グルテン、エンドウ豆タンパク質、及びトウモロコシグルテンを含む群から好ましくは選択される、植物由来のタンパク質成分、
- 5%~45%の量の、ソルビトール、マルチトール、及びグリセリンを含む群から好ましくは選択される、-OH基を2~10個含有する多価アルコール、特に10%~30%の量のソルビトール、
- 0.05~5%の量の、金属水酸化物又は酸化剤を含む群から選択されるタンパク質改質剤、特に水酸化ナトリウム又は過酸化水素、
- 最大で100%までの水
を含有することを特徴とする、セルロース含有材料用結合剤。
【請求項2】
前記結合剤が、3%~20%の量の、好ましくは7%~15%の量の尿素を更に含有することを特徴とする、請求項1に記載の結合剤。
【請求項3】
前記結合剤が、1%~15%の量の、好ましくは4%~8%の量の過酸化水素を更に含有することを特徴とする、請求項1に記載の結合剤。
【請求項4】
前記結合剤が、0.5%~8%の量の、好ましくは4%~6%の量のカゼインを更に含有することを特徴とする、請求項1に記載の結合剤。
【請求項5】
前記結合剤が、2%~20%の量の、好ましくは5%~10%の量の糖蜜を更に含有することを特徴とする、請求項1に記載の結合剤。
【請求項6】
前記結合剤が、0.5%~30%の量の、好ましくは2%~10%の量の水ガラスを更に含有することを特徴とする、請求項1に記載の結合剤。
【請求項7】
前記結合剤が、1%~10%の量の、好ましくは2%~5%の量のグルテンを更に含有することを特徴とする、請求項1に記載の結合剤。
【請求項8】
前記結合剤が、1%~15%の量の、好ましくは5%~10%の量の改質リグニン、特にスプルース木材由来の改質リグニンを更に含有することを特徴とする、請求項1に記載の結合剤。
【請求項9】
セルロースを含有する出発材料を、請求項1から8のいずれか一項に記載の結合剤と結合させ、それを製品へと形成することによって得られる、複合材製品。
【請求項10】
前記出発材料が、木材、特に木材の繊維若しくは木材の削りくず、穀物由来のわら、米、菜種、ケシ、トウモロコシ、亜麻、ヒマワリ、及び/又は紙であることを特徴とする、請求項9に記載の複合材製品。
【請求項11】
前記複合材製品が、ボード、好ましくはプレスされたボード又は積層体であることを特徴とする、請求項9又は10に記載の複合材製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物性タンパク質を含まず、セルロース含有材料用接着剤組成物の形態であり、木質複合材の製造での使用に適した、環境に優しい結合剤に関する。
【背景技術】
【0002】
動物性タンパク質及びデンプンを主成分とする接着剤は、乾燥状態で長時間、結合を維持できるが、天然成分を主成分とする接着剤の主な問題は、それらの接着剤の強度及び耐水性が限られていることである。カゼイン、血液タンパク質、大豆は、化学変性及び熱処理によって改質されてきた。このことにより、20世紀初頭には、接着特性の大幅な向上を達成することが可能となり、その結果、得られた接着剤の改質を航空機のプロペラの建造に適用することが可能となった。[1]、[2]
【0003】
その後の数年間で、合成ポリマーへの関心が高まったことが、最初の合成樹脂であるフェノール-ホルムアルデヒド接着剤及び尿素-ホルムアルデヒド接着剤の開発につながった。それらの接着剤は、より強度があり、耐水性で、外での用途のための材料を接着することを可能とし、そして何よりも、大量に得ることが効率的であり、繰り返し可能で、容易で、比較的短時間である。天然の接着剤は、関心の対象外とされてきた。その天然の接着剤の使用は、楽器の組立、一部の家具の制作、又は装飾ベニヤ板の作製のみに限られてきた。[2]~[6]
【0004】
しかしながら、近年、ホルムアルデヒドを主成分とする接着剤が大きな論争を引き起こすようになってきた。ホルムアルデヒドは、毒性及び発がん性がある物質であり、非常に高い急性吸入毒性が3.1mg/lで既に観測されている[7]。また、製造プロセスからホルムアルデヒドを排除したその他の接着剤、例えばPMDI等も、ヒトの健康に対する脅威である。PMDIの吸入毒性は、LD50>0.493mg/l/4h(ラット)である[8]。更に、圧倒的多数の合成接着剤の製造は、再生不可能資源である原油資源の使用に基づいており、その製造は、長時間にわたる多数の重縮合プロセスを通じて、大気への二酸化炭素の排出の大幅な増加を引き起こす。
【0005】
動物性タンパク質を結合剤の主成分として含み、ホルムアルデヒドを含まない、セルロース含有材料用の結合剤が、特許の国際公開第2017/157646A1号から公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2017/157646A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、環境に優しく、容易に入手可能で、生物由来の再生可能な成分を主成分とするが、特に動物性タンパク質を含まない、代替のセルロース含有材料用結合剤を提供することである。それと同時に、このようにタンパク質含有量自体を大幅に減らすことにより、尿素-ホルムアルデヒド樹脂を主成分とする製品に該当する要件及び規格を満たすことが可能となるはずである。
【0008】
現在では、その本発明の目的は、重要である。それは、動物性タンパク質の使用は、特に一部の消費者グループにおいて、ますます論争を呼んでいるためである。食品だけでなく、他の製品にも問題を提起する菜食主義者又は完全菜食主義者の期待に我々が応えることがますます多くなっている。
【0009】
本発明の主な目的は、毒性物質及び発がん性物質を使用しないだけでなく、動物性タンパク質も使用せずに、工業用接着剤を調製することである。本発明の更なる目的は、木質系パネル製品の既存の規格を満たす木質系パネルの製造用原材料である砕木の接着を可能とし、最終製品からのホルムアルデヒドの放散を最小限にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このように定めた目的は、予想外にも、本発明で達成された。
【0011】
本発明は、
- 1~25%の量の植物由来のタンパク質成分、好ましくは大豆タンパク質及び/又は菜種タンパク質及び/又はグルテン及び/又はエンドウ豆タンパク質及び/又はトウモロコシグルテン、
- 5%~45%の量の、-OH基を2~10個含む多価アルコール、特にソルビトール、マルチトール、及びグリセリン、好ましくは10%~30%の量のソルビトール、
- 0.05~5%の量のタンパク質改質剤、好ましくは塩又は酸化剤、特に水酸化ナトリウム又は過酸化水素、
- 最大で100%までの量の水
を含む組成物であることを特徴とする、ホルムアルデヒドを含まない、セルロース含有材料用結合剤に関する。
【0012】
好ましくは、本発明による結合剤は、下記の特徴:
- 更に、3%~20%の量、好ましくは7%~15%の量の尿素を含む;
- 更に、1%~15%の量、好ましくは4%~8%の量の過酸化水素を含む;
- 更に、0.5%~8%の量、好ましくは4%~6%の量のカゼインを含む;
- 更に、2%~20%の量、好ましくは5%~10%の量の糖蜜を含む;
- 更に、0.5%~30%の量、好ましくは2%~10%の量の水ガラスを含む;
- 更に、1%~15%の量、好ましくは5%~10%の量のスプルース木材由来の改質リグニンを含む;
- 1%~10%、好ましくは2%~5%の量のグルテンを含む、
のうちの少なくとも1つを特徴とする。
【0013】
本発明の利点
工業プロセス由来の天然の副産物を用いる、生分解性で、ホルムアルデヒドを含まない接着剤を開発することは、経済的、社会的、環境的、及び健康的に多大な利点を有する。農業、工業、及び林業の廃棄物が、例えば動物の飼料等に用いられず、炉で焼却される又は保管される場合、このことは、温室効果ガスの排出による気候温暖化、及び土壌、大気、及び水の汚染による環境汚染を増大させる更なる要因である。樹脂を製造するために食品工業の副産物を使用することは、廃棄物の発生を削減できるという理由だけでない非常に興味深い解決手段である。また、その使用は、新たな用途のおかげで、様々な製造要件に適応し、年々減少している資源である原油の消費に取って代わる再生可能な資源に変化する大きな可能性も有する。
【0014】
接着剤とその基材との間の接着は、それがどのように起こるか等の多くの要因に左右される。接着の現象をより良く理解し、接着の結合の源及び強度を説明するために、多くの研究が展開されてきた。それらの研究は、とりわけ、接着剤及び基材の原子及び分子間の電子の移動又は共有で構成される、接着剤と基材との間の物理化学的な結合を説明する。また、接着剤が基材の表面の細孔に浸透する際の物理的-機械的な現象の助けによっても、接着は起こりうる。その結果、接着剤が硬化する箇所における材料の細孔に液体又は接着剤が浸透することによって、結合強度が確保される。また、接着剤と結合対象の基材との間の結合の形成がファンデルワールス力の存在に基づく場合、吸着によっても、接着は起こりうる。結合強度は、接着剤及び基材の官能基間の直接反応によって決定されると推測される。
【0015】
本発明を具体化するタンパク質接着剤は、分散体接着剤に分類される。分散体接着剤は、木材又は大気中への蒸発により液相が除去されると固定されることを特徴とする。接着剤の調製の段階で既に、分子間相互作用によって重要な機能が果たされており、接着の過程で木質系ボードの特性に影響を与える。木質繊維が多孔質材料であることに起因して、接着剤を繊維に塗布した後、空隙への浸透が起こり、それから、壁細胞へのより一層深い浸透である浸潤が起こる。水素結合を形成する能力がある、接着剤の低分子量の成分のみが浸潤している。このような現象は、望ましい結合の機械的特性を得るために必須である。
【0016】
水素結合は、接着剤を結合させるのに重要な役割を果たす。接着剤の主成分はすべて、水素結合の原理に基づいて相互作用する能力がある。
【0017】
接着の過程全体にとって重要なことは、高温及び加圧の影響下でのボードの形成及びプレスの段階である。この段階で、接着剤の成分と木材との間の接触が大幅に増加する。それは、木材自体が不均質な材料であり、隣接する要素間の接触面積が小さいためである。このような条件下で発生した蒸気の作用は、繊維成分、即ち、ヘミセルロース、リグニン、及び非晶質セルロースの分解を開始する。その結果として、繊維を結合させるのに重要な役割を果たす生成物が形成される。また、高温では、リグニンは、縮合に起因して軟らかくなり、接着剤の成分と反応し、それと同時に結合強度を増加させる。
【0018】
また、温度の上昇は、タンパク質の不可逆的な変性も引き起こすが、変性は添加される成分の影響下でも起こる場合があるため、接着剤組成物の組成を決定する際に考慮されるべきである。本発明による接着剤製剤中に存在するグリセリンは、タンパク質の水和及び熱力学的安定性に良い影響を及ぼす。接着剤中にグリセリンが存在することに起因して、グリセリンが関与することで作製された最終製品は、ホルムアルデヒド接着剤を用いたボードに比べて、より多くの水分量を保持している。
【0019】
化学的要因及び機械的/物理的な要因は両方とも、木材用接着剤の品質を決定する。木質の基材と化学的に相互作用するタンパク質の能力は、「露出した」官能基の数及び種類によって決定される。効果的な機械的結合により、接着剤は、基材の表面に浸透できるが、これは、成分がその担体中、水中にいかによく分散しているかによって左右される。
【0020】
また、タンパク質接着剤の接着は、粘度によって調節される。接着剤製剤の適切な粘度、流動性、及び浸透性を得るためには、上述したタンパク質の変性が重要であり、これが接着特性を高める。混合及び均質化の過程における、タンパク質の変性及び分解の過程は、反応性官能基が露出する結果となり、結合する基材と相互作用するための容易な到達を可能とする。これは、機械的処理及び熱的処理、高温での加水分解、並びにpHを大きくすることによって達成されうる。配合物のpH値をより大きくすることは、金属水酸化物を用いて得られるが、タンパク質を変性させるのに役立つだけでなく、接着剤の接着特性を向上させ、木質の細孔への浸透速度を増加させる。
【0021】
また、一般に用いられる変性剤は、尿素である。尿素は、タンパク質の水酸基との能動的な相互作用に起因して、水素結合を切断し、そのコンパクトな構造を開いて広げる。より多くの疎水性の官能基を露出させることによって、接着剤の耐水性は向上するはずである。
【0022】
本発明による結合剤は、セルロース含有原材料、特にファイバーボード及びパーティクルボードの製造のためのセルロース含有原材料から製品を製造することを可能とする。本発明を用いて製造された製品はすべて、該当する規格に適合した。
【0023】
選択された製品について行われた試験の結果を、PN-EN規格及び個々の製品に関するSestec Polska Sp. z o. o.社規格の内部規格と比較し、下記Table 1(表1)及びTable 2(表2)に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の詳細な説明
セルロース含有材料用結合剤は、下記のものを含む:
a)ポリオール - -OH基を2~10個含む多価アルコール。ソルビトール、マルチトール、及びグリセロールが特に好ましい。70~95%の含有量の溶液を用いることが好ましい。70質量%の含有量のソルビトールを用いることが特に好ましい。本発明による結合剤中のポリオール成分の量は、結合剤100部当たり5~45%部の範囲である。より好ましくは、10~20%が用いられる。用いられるポリオールの最終的な選択は、具体的な用途及び望ましい最終的な接着特性によって決定される。
b)植物性タンパク質 - 植物由来のタンパク質成分、大豆タンパク質及び/又は菜種タンパク質及び/又はエンドウ豆タンパク質及び/又はグルテン及び/又はトウモロコシグルテン。粉末の形態で用いられる。最も好ましくは、タンパク質の含有量が70~95%であり、特に85%である大豆タンパク質である。本発明による結合剤中のタンパク質成分の量は、3~25%の範囲である。一般に、試験したタンパク質はすべて、最終製品に期待される規格を満たしたが、それらの調製、量、又は混合物への混合方法は、最終製品の最終用途によって決定されると言うべきである。
c)タンパク質改質剤 - 好ましくは金属水酸化物又は酸化剤であり、好ましくはI族及びII族の金属水酸化物であり、特に好ましくは水酸化ナトリウム又は水酸化カルシウムで、粉末又はフレーク状である。最も好ましくはNaOHであり、一方、酸化剤は、好ましくは過酸化水素及び/又は過マンガン酸カリウムであり、より好ましくはperhydrolである。
【0027】
タンパク質改質剤の量は、0.05~5%であり、好ましくは0.1~1%であり、最も好ましくは0.5%である。
【0028】
また、適切に選択される用途、主に最終製品を得るために望ましい材料の種類、接着される材料の種類、又は製造プロセス自体を考慮すれば、追加の成分を用いることが有益である場合があり、そのような追加の成分としては、例えば、アミド化合物、特に尿素、カゼイン、糖蜜、水ガラス、改質リグニン、メラミン誘導体、トウモロコシ煮汁等が挙げられる。これらの成分の役割、及びこれらの成分が結合剤特性に及ぼす影響を、以下の実施例でより詳細に説明する。
【実施例
【0029】
I.タンパク質の最適化
適切な植物由来のタンパク質を選択するために、下記のものを用いた。
- 小麦グルテン
- トウモロコシグルテン
- 菜種タンパク質
- 玄米タンパク質
- エンドウ豆タンパク質
- トウモロコシタンパク質
- 大豆タンパク質
【0030】
それらのほとんどは、水-グリセリン混合物に接触するとスラリーを形成し、その後、時間をかけて沈殿した。この現象を解消するために、ナトリウム、カルシウム、マグネシウムの水酸化物、無水マレイン酸、尿素等、多くのタンパク質改質剤が用いられてきた。その結果、水酸化ナトリウム及び尿素の両方の成分を同時に用いることだけではなく、その両方を別々に用いることも最も有利であることが判明した。
【0031】
混合物を調製し、それによって、タンパク質を選択する工程だけでなく、例えば糖蜜、グリセリン、ソルビトール、及び植物油等、接着剤の特性に良い影響を及ぼす適切な液体成分を選択する工程も行った。配合物は、49.5%の水、0.5%の水酸化ナトリウム、12.5%のタンパク質、12.5%の尿素、及び25%の液体添加物を含む。
【0032】
本発明の開発のために、3mmの中密度ファイバーボードを試験用に選択した。結合剤と混合した松材の繊維を、適切な条件下で散布し、マットを形成することによって用いた。結合剤の量は、乾燥木材を基準にして固形物8~13%の接着剤であった。好ましくは、10~12%である。最も好ましくは、11%である。そのマットを、170~230℃、好ましくは180~220℃、最も好ましくは190~210℃の温度で加圧しながら、7~13秒/mmボード厚さ、好ましくは8~11秒/mmボード厚さ、最も好ましくは10秒/mmボード厚さのプレス時間で、プレスした。最適な時間は、マットの湿度及び製造室内の空気湿度によっても左右される。
【0033】
【表3】
【0034】
結果を、Sestec社によって確立された内部規格と比較した(Table 3(表3))。すべてのタンパク質は、強度パラメーターに関してSestec社の最低限度の内部規格を満たした。しかしながら、一部のタンパク質は、規定された膨潤の許容範囲に入らず、それと同時に、規定された水の吸収の許容範囲内に入らなかった。大豆、エンドウ豆、及びグルテンは、最も有利な特性を示し、その結果、標準の欧州規格を満たすことができた。これらのタンパク質は、更なる改質及び既製の配合物候補の作製のために用いた。
【0035】
II.MDFボード
本発明の開発のために、中密度で厚さ3mmのファイバーボードを試験用に選択し、結合剤と混合した松材の繊維を、適切な条件下で散布し、マットを形成することによって用いた。結合剤の量は、乾燥木材を基準にして固形物8~13%の接着剤であった。好ましくは、10~12%である。最も好ましくは、11%である。そのマットを、170~230℃、好ましくは180~220℃、最も好ましくは190~210℃の温度で加圧しながら、7~13秒/mmボード厚さ、好ましくは8~11秒/mmボード厚さ、最も好ましくは10秒/mmボード厚さのプレス時間で、プレスした。最適な時間は、マットの湿度及び製造室内の空気湿度によっても左右される。それと同時に、上記の試験タンパク質の代表として、MDFボード用に、菜種タンパク質、加工デンプン、及び大豆タンパク質を選択した。タンパク質のグループ全体で得られた結果は同等であるが、しかしながら、選択されたタンパク質は、その工業的使用を可能とする量の市販品である。
【0036】
1.菜種タンパク質
【0037】
【表4】
【0038】
2.菜種タンパク質及び食物繊維濃縮物
【0039】
【表5】
【0040】
好ましくは、上記の溶液の混合を、アルカリ性環境において、15~35℃、特に20~25℃の温度で行う。
【0041】
菜種タンパク質濃縮物に含まれる食物繊維は、親水性を有する成分である。接着剤組成物に用いられるこの物質の許容量は、その物質によって吸収される水の量によって制限される。製造において食物繊維を用いると、結果として、最終製品が強く膨潤することとなり、乾式MDFボードのPN-EN 622-5規格に準拠する耐水性の規格に不適合となる場合がある。
【0042】
最も有利な結果は、Table 4(表4)に示す配合物「D」で得られた。その後、配合物「D」を用いて、同じパラメーターで作製した厚さ8mmのMDFボードの特性を試験したところ、得られた内部結合も、規格である0.8MPaを上回った。
【0043】
3.大豆タンパク質
【0044】
【表6】
【0045】
厚さ3mmの中密度ファイバーボードを製造するために、結合剤と混合した松材の繊維を、適切な条件下で散布し、マットを形成することによって用いた。結合剤の量は、乾燥木材を基準にして固形物8~13%の接着剤であった。好ましくは、10~12%である。最も好ましくは、11%である。そのマットを、170~230℃、好ましくは180~220℃、最も好ましくは190~210℃の温度で加圧しながら、7~13秒/mmボード厚さ、好ましくは8~11秒/mmボード厚さ、最も好ましくは10秒/mmボード厚さのプレス時間で、プレスした。最適な時間は、マットの湿度及び製造室内の空気湿度によっても左右される。
【0046】
Table 6(表6)に示す配合物で作製したボードのパラメーターはすべて、乾式MDFボードに関してSestec社によって確立された規格及びPN-EN 622-5規格の両方の要件を満たす。結果をTable 7(表7)に示す。
【0047】
【表7】
【0048】
Table 7(表7)による配合物1、2、3、及び4を用いて、同じパラメーターに従って厚さ6mmのボードを作製した。その結果をTable 8(表8)にまとめる。すべての値は、乾式MDFボードについて、Sestec社によって確立された規格及びPN-EN 622-5規格の両方と整合性が取れている。
【0049】
【表8】
【0050】
III.パーティクルボード
本発明の開発のために、密度660±30kg/m3、厚さ16mmの単層パーティクルボードを、以降の試験用に選択した。結合剤と混合した松材のチップを、適切な条件下で散布し、マットを形成することによって用いた。結合剤の量は、乾燥木材を基準にして固形物7~13%の接着剤であった。好ましくは、9~12%である。最も好ましくは、11%である。そのマットを、170~230℃、好ましくは180~220℃、最も好ましくは190~210℃の温度で加圧しながら、7~15秒/mmボード厚さ、好ましくは8~13秒/mmボード厚さ、最も好ましくは10秒/mmボード厚さのプレス時間で、プレスした。最適な時間は、マットの湿度及び製造室内の空気湿度によっても左右される。
【0051】
1.大豆タンパク質、エンドウ豆タンパク質、及びカゼイン
【0052】
【表9】
【0053】
【表10】
【0054】
好ましくは、上記の溶液の混合を、アルカリ性環境において、15~35℃、特に20~25℃の温度で行う。
【0055】
結果を、Sestec社の内部規格及びPN-EN 312規格と比較した。配合物W0019R、W0019S、及びW0019USによるTable 9(表9)に記載の接着剤接合体は、P1クラスの接着剤の強度の規格を満たし、その一方で、接着剤組成物W0019SW、W0019UG、及びW0019WGは、パーティクルボードのP2クラスの強度の規格を満たす。P1クラス及びP2クラスは、耐水性を要件としない。更に、より良い分析のために、水中へ浸漬した後の膨潤の結果をSestec社の内部規格と比較した(Table 10(表10))。
【0056】
接着剤組成物に大豆タンパク質及び水ガラスを添加した後、ボードの強度パラメーターの有意な向上を観測した。水ガラスを添加することにより、内部結合が0.08~0.2MPa向上し、水中へ浸漬した後の膨潤の結果が5~7%向上した。ボードの耐水性に対するカゼイン及びその使用量の好ましい効果はなかった。
【0057】
最も有利な結果は、配合物W0019SW及びW0019WGで得られた。より要求の厳しいクラスであっても強度の結果を満たした。また、水中へ浸漬した後の厚さの点での非常に良好な膨潤は、P3クラスの規格の要件も満たした。接着剤の配合物はすべて、固形分の最小含有量が40%を超えるというSestec社の規格を満たした。
【0058】
2.大豆タンパク質、グルテン又はエンドウ豆タンパク質
【0059】
【表11】
【0060】
【表12】
【0061】
結果を、Sestec社の内部規格及びPN-EN 312規格と比較した。配合物W0025及びW0025WGによるTable 11(表11)に記載の接着剤接合体は、P1クラスの接着剤の内部結合の規格を満たす。接着剤組成物W0035Aは、PN-EN 312に準拠するパーティクルボードのP2クラスの強度の規格を満たすが、しかしながら、水中への浸漬後の膨潤試験のSestec社の規格を満たさない。P1クラス及びP2クラスは、耐水性を要件としない。従って、より深い分析のために、内部規格(Sestec社規格)を導入し、水中に浸漬した後の厚さの点での膨潤についての結果も、結果の概要に含める(Table 12(表12))。
【0062】
本特許に記載したすべての接着剤接合体を考慮すると、カゼインとグルテンとの間に正の相関関係があることが示され、その結果、ボードの強度パラメーター及び耐水性が向上する。W0035Zの配合表においてカゼインを除くことは、最終製品の強度パラメーターの変化を全く引き起こさなかった。水の一部をトウモロコシ煮汁に置き換えた結果、強度の増加は最小限であった。しかしながら、水の一部をトウモロコシ煮汁に置き換えても、パーティクルボードの耐水性は向上しなかった。
【0063】
最終製品のパラメーターに対するエンドウ豆タンパク質の添加の有意な効果が実証された。グルテンを添加した配合物と比較すると、エンドウ豆タンパク質を用いた場合、更に2.5倍良い結果が得られた。
【0064】
3.大豆タンパク質
【0065】
【表13】
【0066】
【表14】
【0067】
結果を、PN-EN 312規格及びSestec社の内部規格と比較した。配合物W0033A、W0033B、W0033D、W0033K、及びW0033MによるTable 13(表13)に記載の接着剤接合体は、P1クラスの強度の規格を満たし、その一方で、接着剤組成物W0033J、W0033L、及びW0033Wは、パーティクルボードのP2クラスの強度の規格を満たす。P1クラス及びP2クラスは、耐水性を要件としない。より深い分析のために、厚さの点での膨潤についての結果も、結果の概要に含める(Table 14(表14))。このパラメーターを考慮すると、組成物W0033H及びW0033Iの場合には、P3クラスのパラメーターも満たされた。
【0068】
ボードの強度パラメーターに及ぼす好ましい効果は、とりわけ、例えば水ガラス、ソルビトール、デキストリン、及びエマルジョン等の添加物を用いることによって実証された。これらの配合添加物はすべて、内部結合を高める結果をもたらし、それらがP2クラスに分類されることを可能とする。
【0069】
配合物にもよるが、接着剤組成物から糖蜜を除くことも、ボードの強度を高め、ボードの耐水性を50~100%と有意に向上させることに貢献した。製品パラメーターに及ぼすカゼインの好ましい効果は、全く実証されなかった。
【0070】
糖蜜を除くことは、必ずしもボードの強度パラメーターに及ぼす好ましい効果を有するとは限らない。最も良好な強度の結果は、上記添加剤が存在するW0033H接着剤組成物で得られた。
【0071】
IV.ホルムアルデヒド放散試験
PoznanのWood Technology Instituteにおいて、PN-EN 717-1:2006規格に準拠するチャンバー法を用いて、ホルムアルデヒド放散試験を行った。結果をTable 15(表15)に示す。
【0072】
目的は、本発明によって開発された接着剤接合体で松材の繊維を接着することにより、天然木材からのホルムアルデヒドの放散が減少することを実証することであった。
【0073】
参考試料(No.1)として、MDFボードの製造用の松材の繊維のみを用いてボードを作製し、それからマットを作製し、その後、他のボードの製造と同じ条件でプレスした。試料2及び試料3の製造については、結合剤と混合した松材の繊維を、適切な条件下で散布し、マットを形成することによって用いた。結合剤の量は、乾燥木材を基準にして固形物11%の接着剤であった。そのマットを、210℃で加圧しながら、10秒/mmボード厚さのプレス時間で、プレスした。
【0074】
【表15】
【0075】
得られた結果は、開発した配合物にホルムアルデヒドが存在しないことを立証した。得られた結果は、更に、アルデヒド、この場合は木材自体に含まれるホルムアルデヒドとタンパク質との結合も立証した。これにより、毒性のアルデヒドの放散を最大で64~77%まで削減することができる。
【0076】
得られた結果は、更に、接着剤を全く有さない純粋な木製マットと対照して、接着された最終製品からのホルムアルデヒドの放散を制限するという範囲において、本発明の前提を満たすことを立証した。
【0077】
参考文献一覧
【表16】
【国際調査報告】