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特表2023-535119サウンドフォーカシングを通じて音響装備なしにも音の増幅と最適な残響音を作り出す音響空間建築構造物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-16
(54)【発明の名称】サウンドフォーカシングを通じて音響装備なしにも音の増幅と最適な残響音を作り出す音響空間建築構造物
(51)【国際特許分類】
   G10K 15/08 20060101AFI20230808BHJP
【FI】
G10K15/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570326
(86)(22)【出願日】2020-05-21
(85)【翻訳文提出日】2023-01-11
(86)【国際出願番号】 KR2020006668
(87)【国際公開番号】W WO2021235573
(87)【国際公開日】2021-11-25
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522449237
【氏名又は名称】イ ヒョンホ
(74)【代理人】
【識別番号】110003801
【氏名又は名称】KEY弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】イ ヒョンホ
【テーマコード(参考)】
5D208
【Fターム(参考)】
5D208AB13
5D208AB14
(57)【要約】
本発明の音響空間建築構造物は、基準床面の上に所定の間隔をあけて立てられて設置され、全体的に平面上において曲線フレーム状を呈する多数枚の音響誘導羽根板と、前記音響誘導羽根板と連結されて平面上に同一の曲線状を有し、壁面の内側により取り囲まれた音響空間を形成する音響反射壁体と、前記音響誘導羽根板及び音響反射壁体の上部の一定の高さにおいて外側の向きに延設されるルーフトップ観覧フロアと、を備えてなり、前記音響誘導羽根板は、基準床面において平面上の中心点を円弧の中心として放射状のレイアウトをなすように設置され、音響反射壁体の壁面から一定の長さだけ内側に向かって突出することを特徴とする。
上記のような本発明によれば、野外舞台から発せられた音がサウンドフォーカシング及び共鳴現象により自体的に増幅が起こることにより、別途の音響装備なしにも満足のいく音量にて純粋な原音の聞き取りが可能になり、音響の反射及び吸音、干渉が適切なハーモニーをなすことにより、澄んだ透明感をもった最適な残響を作り出すことができるという効果がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準床面の上に施工・設置される上部開放型の建築構造物であって、
前記基準床面上の一点を平面上の中心点とし、
前記基準床面の上部に所定の間隔をあけて立てられ、前記基準床面上の中心点から距離を隔てて放射状に配置されて全体的に前記平面上において、上部から見下ろしたとき、曲線状を呈するように設置される多数枚の音響誘導羽根板と、
前記基準床面の上に立てられて設置される壁体構造物であって、前記音響誘導羽根板と連結されて前記音響誘導羽根板と前記平面上に同一の曲線状を有し、内側に一定の音響空間を形成するように設置される音響反射壁体と、
前記基準床面から一定の高さだけ離れて設置され、前記音響反射壁体の上部において、前記基準床面の平面上の中心点に対して反対の方向に延設されるルーフトップ観覧フロアと、
を備えてなり、
前記音響誘導羽根板は、全体的に長辺と短辺を有する断面の形状が上下につながった柱状の部材であって、前記音響誘導羽根板は、その断面の長辺方向がそれぞれ前記基準床面の平面上の中心点を向くようにして放射状のレイアウトをなすように設置されるとともに、前記音響誘導羽根板の断面の全部または一部が前記音響反射壁体の表面から前記平面上の中心点を向いた方向に一定の長さだけ突出するように設置されたことを特徴とする音響空間建築構造物。
【請求項2】
前記基準床面の中心点の上部には、音源舞台部がさらに設置されることを特徴とする請求項1に記載の音響空間建築構造物。
【請求項3】
前記音響誘導羽根板は、前記基準床面の中心点からそれぞれ等距離に設置されることにより、上部から見下ろしたとき、前記平面上において正円状、または一方の側が部分的に開かれた円弧状を呈するように設置されたことを特徴とする請求項1に記載の音響空間建築構造物。
【請求項4】
前記音響誘導羽根板は、前記音響反射壁体に比べてさらに高い吸音率(absorption coefficient)を有する材質から作製されることを特徴とする請求項1に記載の音響空間建築構造物。
【請求項5】
前記音響誘導羽根板の表面には、前記音響反射壁体に比べてさらに高い吸音率(absorption coefficient)を有する材質から作製された吸音仕上げ層がさらに形成されたことを特徴とする請求項1に記載の音響空間建築構造物。
【請求項6】
前記音響誘導羽根板は、全体的に木の材質であるか、あるいは、表面に木の材質の板材を取り付けてなり、前記音響反射壁体は、ガラスパネルを備えてなることを特徴とする請求項1に記載の音響空間建築構造物。
【請求項7】
前記音響誘導羽根板同士の間には、前記音響誘導羽根板と同一の断面状を呈する水平音響誘導羽根板が水平方向にさらに設置されることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の音響空間建築構造物。
【請求項8】
前記音響誘導羽根板の断面の一部が前記音響反射壁体の表面に対して突出する長さは、8~30cmであることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の音響空間建築構造物。
【請求項9】
前記音響誘導羽根板が、上部から見下ろしたとき、前記平面上において一方の側が部分的に開かれた円弧状を呈する場合に、前記開かれた角度の範囲は、円弧の中心から0°~120°の範囲内となるように設置されることを特徴とする請求項3に記載の音響空間建築構造物。
【請求項10】
前記音源舞台部の中心から前記音響反射壁体までの距離は15~30mであり、前記音響誘導羽根板の高さは3~8mであり、前記音響誘導羽根板の断面の一部が前記音響反射壁体の前記平面に対して突出する長さは8~30cmであることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の音響空間建築構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築平面上の中央部に上部が開放された空間を備える上部開放型の建築構造物に係り、さらに詳しくは、前記開放空間において音楽公演、演説、結婚式などの野外イベント・催しを開く場合、中央舞台から発せられた音が建築物の構造的な特性により引き起こされるサウンドフォーカシング及び共鳴現象により自体的に増幅が起こることにより、別途のスピーカーやアンプなどといった拡声装備なしにも聴衆または観客が満足のいく音量にて純粋な原音を聞き取ることが可能であり、これと併せて、音の質的な面からみても、音響の反射及び吸音、干渉が適切なハーモニーをなすように誘導することにより、澄んだ透明感を持った最適な残響を作り出すことのできる建築構造物の構造的な特徴に関する。
【背景技術】
【0002】
近頃、既存に屋内公演場において開かれることが普通であった色々な種類のイベント・催し、例えば、音楽コンサート、結婚式、文化・芸術イベント、講演、演説などといったイベント・催しを開くに当たって、開放感、ユニーク感、自由な雰囲気などを追い求めるために、屋内から脱して、野外イベント・催しとして開かれることが急激に増えつつある傾向にある。このように、野外において開かれる公演イベントの場合、観客の挙動や行動が拘束されないことから、自由な雰囲気を作り出しながら、観客に個性のあるフレッシュな気持ちを与えることができるなどといったメリットがあるものの、基本的に、天気及び気候の影響に非常に敏感であり、これと併せて、空間的に密閉された屋内とは異なり、音が開放された外部の空間にそのまま広がっていくが故に、音響の損失が甚だしく、しかも、観客に音が上手く届き難いという欠点がある。
【0003】
特に、このような野外公演に際して問題視される音響的な側面からみた欠点についてさらに詳しく述べると、屋内において開かれる演奏や公演などの場合、舞台から発せられた音が壁体、天井及び床面により反射され、このような反射音が密閉された屋内空間において響き渡って残響音を作り出すことにより、音響的に充満する感じと空間感が感じられるものの、これに比べて、屋外公演の場合、舞台から発せられた音が反射されることなくそのまま開放された外部に広がるが故に、音響の損失が甚だしくて十分な音量にて鑑賞することが困難であるだけではなく、音の響き渡りがないが故に、観客に貧弱かつドライな感じの音として届いてしまうという欠点があった。なお、演奏者にとっても、公演の最中に自分の演奏音を聞きながら公演しなければならないにも拘わらず、屋外公演においては、自分の演奏または歌唱音が公演者に反射音を通して届かないが故に、このような演奏のモニターリングが非常に行い難く、逆に、周りの騒音は演奏者にそのまま散漫な状態で聞き取られてしまう結果、演奏者の集中力が低下し、レベルの高い公演を行うことが困難になるという不都合があった。
【0004】
したがって、このような野外公演などのイベント・催しにおいて、従来には、別途のスピーカー、アンプなどといった音響装備が、観客が舞台公演音を十分な音量にて聞き取る上で欠かせない必要不可欠なアイテムとされていたが、これにより、上記のような音響装備の事前設置及び公演後の回収に多くの時間、コスト及び手間が必要になり、これと併せて、観客にとっては、舞台公演音を純粋な原音のそのままで鑑賞するわけではなく、スピーカーを介して流れてくる音響を聞き取るわけであるため、観客の満足度が低下してしまうという欠点があった。
【0005】
また、屋内公演の場合、舞台原音とともに、壁、床面、天井などにおける反射音及び残響音を一緒に聞き取りながら、鑑賞が行われるので、音響的に立体的かつ豊富な感じを受けることができるが、上記のように音響装備を用いて公演を鑑賞する場合、一定の位置に設置されたスピーカーを介して流れてくる音を鑑賞するわけであるため、上記の如き屋内公演に比べて音が平面的であり、しかも、ドライな感じの音として届かざるを得ないという限界があった。このような欠点を克服すべく、従来にも、メインスピーカーの他に、公演場の外側の周りに別途のサラウンドスピーカーを多数台配置して、屋内公演に際しての反射音及び残響音と略同一の効果を人為的に創出しており、このような従来の技術に関する代表例として、大韓民国登録実用新案第20-0295451号公報及び第20-0316692号公報が挙げられる。
【0006】
上記の先登録実用新案は、野外残響付加用システム及びスピーカー装置に関する考案であって、図6に示すように、前記先登録実用新案においては、直接音を出力するメインスピーカーに加えて、初期反射音スピーカーと残響音スピーカーを多数台備え、これらのスピーカーを野外公演場を囲繞する形状に配置することにより、野外公演に際して人為的に公演場の周りに反射壁を設置した場合と略同一の効果を創出しながら、屋内公演場における反射音と残響音により感じられる空間感が得られるように構成している。
【0007】
しかしながら、上記の如き従来の技術によれば、このようなスピーカーの追加設置により公演にかかるコストが大幅に高騰してしまい、しかも、野外公演を開く度に熟練した技術者による音響装備の設置及び撤去の作業が必要になるが故に、公演の事前準備と後片づけに多大な時間と努力を要することはもとより、何よりも音響的な面からみて、付加的なスピーカーの設置などをして間接的に反射音と残響音の効果を創出しようとしても、このようなスピーカーを用いた人為的な効果を通しては、屋内公演のような立体感と余韻を感じるのに限界があるという欠点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明は、音楽公演、演説、結婚式などのイベント・催しを野外において開く場合、中央舞台から発せられた音が建築物の構造的な特性により自体的に拡声作用が起こることにより、聴衆または観客が屋内公演に匹敵するほど鮮明であり、しかも、満足のいく音量にて聞き取れることから、別途のスピーカーやアンプなどといった音響装備なしにも野外公演などのイベント・催しを開ける建築構造物を提供することをその解決しようとする課題とする。
【0009】
また、本発明は、上記の如き野外イベント・催しに際して、観客が音響装備を介さない純粋な原音にて公演などを鑑賞することができることから、観客の満足度を大幅に高めることができ、特に、音の質的な面からみて、音響の反射及び吸音、干渉が適切にハーモニーをなすことにより、澄んだ透明感を持った最適な残響を作り出せる建築構造物を提供することを別の技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の如き技術的課題を解決するために、本発明において提供する音響空間建築構造物は、基準床面の上に施工・設置される上部開放型の建築構造物であって、前記基準床面上の一点を平面上の中心点とし、前記基準床面の上部に所定の間隔をあけて立てられ、前記基準床面上の中心点から距離を隔てて放射状に配置されて全体的に平面上において曲線フレーム状を呈するように設置される多数枚の音響誘導羽根板と、前記基準床面の上に立てられて設置される壁体構造物であって、前記音響誘導羽根板と連結されて前記音響誘導羽根板と平面上に同一の曲線状を有し、内側に一定の音響空間を形成するように設置される音響反射壁体と、前記基準床面から一定の高さだけ離れて設置され、前記音響反射壁体の上部において、前記基準床面の平面上の中心点に対して反対の方向に延設されるルーフトップ観覧フロアと、を備えてなる。
【0011】
ここで、前記音響誘導羽根板は、全体的に長辺と短辺を有する断面の形状が上下につながった柱状の部材であって、前記音響誘導羽根板は、その断面の長辺方向がそれぞれ前記基準床面の平面上の中心点を向くようにして放射状のレイアウトをなすように設置されるとともに、前記音響誘導羽根板の断面の全部または一部が前記音響反射壁体の表面から前記平面上の中心点を向いた方向に一定の長さだけ突出するように設置される。
【0012】
このとき、前記音響誘導羽根板は、前記基準床面の中心点からそれぞれ等距離に設置されることにより、上部から見下ろしたとき、平面上において正円状、または一方の側が部分的に開かれた円弧状を呈するように設置されることが好ましい。
【0013】
また、上記の如き本発明の音響空間建築構造物に関するさらに好適な構成要素であって、前記音響誘導羽根板は、前記音響反射壁体に比べてさらに高い吸音率(absorption coefficient)を有する材質から作製されてもよく、前記音響誘導羽根板の表面に音響反射壁体に比べてさらに高い吸音率(absorption coefficient)を有する材質から作製された吸音仕上げ層をさらに形成してもよい。
【0014】
さらに、本発明の音響空間建築構造物によれば、前記音響誘導羽根板同士の間には、前記音響誘導羽根板と同一の断面状を呈する水平音響誘導羽根板が水平方向にさらに設置されてもよい。
【発明の効果】
【0015】
以上のような本発明の音響空間建築構造物によれば、音楽公演、演説、結婚式などのイベント・催しを野外において開く場合、中央舞台から発せられた音が建築物の構造的な特性により引き起こされるサウンドフォーカシング及び共鳴現象により自体的に拡声作用が起こることにより、聴衆または観客が屋内公演に匹敵するほど鮮明であり、しかも、満足のいく音量にて聞き取ることが可能であり、これにより、野外公演を開くに際して、別途のスピーカーやアンプなどといった音響装備なしにも観客が舞台公演音を純粋な原音のままで鑑賞することができるので、観客の満足度を大幅に高めることができるという効果がある。
【0016】
また、上記の本発明の音響空間建築構造物によれば、音の質的な面からみて、舞台原音と共鳴音及び残響音を一緒に聞き取ることができるので、野外公演の欠点として指摘されていた、音がドライかつ貧弱な音として聞き取られてしまうということを克服して、屋内公演でのように立体的であり、かつ、響き及び余韻のある豊富な感じの音響にて鑑賞することができ、これと併せて、本発明の好適な構成によれば、音響の反射及び吸音、干渉が適切なハーモニーをなすことにより、適切な響きと澄んだ透明感を持った最適な残響音を作り出すことができるというメリットがある。
【0017】
さらに、中央舞台部の演奏者にとって、通常の野外公演においては、開放された外部に公演音がそのまま広がっていくことにより、自分の演奏に対するモニターリングが行い難かったのに対し、上記の本発明の音響空間建築構造物によれば、反射音を通じて自分の公演音を聞きながら公演を行うことができるので、演奏のモニターリングを行うことが可能になり、これと併せて、公演が開かれる舞台部と観覧フロアとの間のレベル差により公演者に届く周りの騒音を遮断することができるので、演奏者の集中力の維持に有利であり、しかも、レベルの高い公演パフォーマンスを維持することが可能になるという効果もまた期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の音響空間建築構造物に対する上部平面図である。
図2】本発明の音響空間建築構造物に対する立断面図であって、図1のA-A’線に沿って切り取った図である。
図3】本発明の音響空間建築構造物に対して一方の側面から眺めた斜視図である。
図4】本発明の音響空間建築構造物に対して別の側面から眺めた斜視図である。
図5】本発明に係る音響空間建築構造物における音響効果を図式化して示す図である。
図6】従来の野外公演残響付加システムに関するスピーカーのレイアウト図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面に基づいて、本発明についてさらに詳しく説明する。
【0020】
本発明は、地上に建築構造物を立てて施工するが、建築平面上の中央部分には天井を設けないことから、上部がオープン・開放されており、周りに構造物により取り囲まれるようにした形状の空間を有する中庭型の建築構造物に関する発明であって、特に、本発明は、上記の如き中庭部に相当する上部開放空間において野外演奏、公演などを開く場合に、別途の音響装備なしにも演奏を聴く観客が屋内空間における演奏に匹敵するほどの空間感と残響音を感じられるようにする音響空間を構造的に構成して実現しようとするものである。
【0021】
図1は、上記の如き本発明の音響空間建築構造物に対する上部平面図であり、図2は、同立面図であって、図1及び図2に示すように、本発明の音響空間建築構造物は、全体的に基準床面100の上に所定の間隔をあけて立てられて設置され、全体的に平面上において曲線フレーム状を呈する多数枚の音響誘導羽根板10と、前記音響誘導羽根板10と連設されて平面上において同一の曲線状を有し、壁面の内側により取り囲まれた音響空間200を形成する音響反射壁体20と、上記のように立てられた音響誘導羽根板10及び音響反射壁体20の上部の一定の高さにおいて円弧の中心点CPの外側の向きに延設されるルーフトップ観覧フロア30と、を基本的な構成要素として備え、これらに加えて、基準床面100上の中心部に設置される音源舞台部50をさらに備えてなるものであることが分かる。
【0022】
また、図1及び図2に示す実施形態によれば、上記の如き本発明の音響空間建築構造物において、前記音響誘導羽根板10は、基準床面100上において平面上の中心点CPを円弧の中心として一定の距離をあけて放射状のレイアウトをなすように設置され、このとき、前記音響誘導羽根板10は、前記音響反射壁体20と連設されるに当たって、前記音響反射壁体20の壁面から一定の長さに見合う分だけ内側(すなわち、円弧の中心方向)に向かって突出する形状に設置されることを構成上の特徴とする。
【0023】
上記の如き構成による本発明の音響空間建築構造物を構成する各構成要素について、添付図面に基づいてさらに詳しく説明すれば、下記の通りである。
【0024】
まず、前記音響誘導羽根板10は、前記基準床面100の上に立てられて設置される柱状の部材であって、本発明の音響空間建築構造物において、前記音響誘導羽根板10は、図1及び図2に示すように、多数枚が互いに一定の間隔をあけて基準床面100の上に設置され、このとき、前記多数枚の音響誘導羽根板10は、基準床面100上の一点を中心点CPとして、この中心点CPから一定の距離を隔てて放射状に配置されることにより、図1に示すように、平面上において曲線状を呈するフレーム構造をなすように設置される。
【0025】
また、図1及び図2に示すように、前記音響誘導羽根板10は、全体的に一定の断面の形状が上下に長尺状につながった柱状の部材であり、ここで、前記音響誘導羽根板10の断面の形状は、全体的に長辺と短辺を有する長方形の柱状であって、その長辺の方向が内側空間の方向に、すなわち、基準床面の平面上の中心点CPを向くように方向を合わせてそれぞれ設置される。すなわち、後述する本発明の作用効果の欄においてさらに詳しく説明されるように、本発明は、中央の音源舞台部50から発せられた音響が音響反射壁体20により反射され、この反射音が中央部に一緒に集中しながら共鳴現象が起こるようにすることで(本発明においては、このような音響の集中による増幅効果をサウンドフォーカシング(Sound Focusing)作用と命名している)、音響装備なしに大きな音量が得られるようにするものであるため、本発明においては、上記のように、それぞれの音響誘導羽根板10が中心点CPを向くように配置することにより、乱反射される反射音を一定に揃え、反射音が中央部に集中するように導いて、上記の如きサウンドフォーカシング現象が円滑に起こるように特に考慮している。
【0026】
一方、図1及び図2に示す実施形態によれば、上記の如き音響誘導羽根板10は、基準床面100の上に設置されるに当たって、前記基準床面の平面上の中心点CPからそれぞれ等距離を隔てて設置されることにより、上部から見下ろしたとき、一方の側が開放された円弧の形状を呈するように設置されることができる。すなわち、本発明の主な技術的特徴によれば、後述するように、前記音響誘導羽根板10には音響反射壁体20が連結されて、音響空間200の内部から発せられた音が音源舞台部50の向きに反射されて戻っていくようになっているが、もし、図1に示す実施形態とは異なり、前記音響誘導羽根板10の平面上の中心点CPからの距離がいずれも等距離ではなく、一部に違いがあるように実施される場合には、音響反射壁体20からの反射音が中心点CPに届く時間に差が出てしまう結果、同一の内容の反射音が別の方向から連続して視差をおいてリレイ式にて届くことにより、音源舞台部50において公演をする演奏者にとってはまるでエコーの響きのような形で聞き取られてしまう虞がある。
【0027】
したがって、上記の如き反射音の視差による演奏者の混乱などを防ぐために、図1に示す実施形態でのように、前記音響誘導羽根板10の円弧の中心点CPに対する距離を実質的に等距離にすることにより、円形状のレイアウトとすることが特に好ましいものといえる筈であり、但し、上記の如き欠点をある程度考慮に入れてから実施する場合には、正円状または円弧状ではなく、楕円状など他の曲線状やうねり曲線状などにも構成することもできるが、このような実施形態もまた、基本的に、本発明の技術思想を逸脱しないものであって、本発明の技術的範囲に属するものと理解されるべきである。
【0028】
一方、図1においては、上記の如き音響誘導羽根板10を実施するに当たって、円形状のうちの一部分が開かれた円弧状に構成した例として、図中の下部側に約90°の範囲内において開かれた形態を示している。このとき、図1に示すように、平面上において一方の側が部分的に開かれた円弧状に音響誘導羽根板10を配置・施工する場合、この開かれた角度の範囲は、円弧の中心から120°の範囲を超えないようにすることが好ましく、この範囲を超えて開かれる場合(例えば、半円形の平面)には、本発明の主な技術的特徴に相当するサウンドフォーカシング効果が十分に得られ難いため好ましくない。
【0029】
これと併せて、本発明の構成上の特徴により、前記音響誘導羽根板10を実施するに当たって、前記音響誘導羽根板10は、後述する音響反射壁体20と比較して、吸音能の側面からみてさらに高い吸音率(absorption coefficient)または吸音係数を有する材質から作製することがさらに好ましい。すなわち、上記のように、本発明において、前記音響誘導羽根板10は、音響反射壁体20において反射された音を中心部の向きに集中させてサウンドフォーカシング現象を誘起するための構成要素であるが、このとき、反射音があまりにも過剰になると、音質の面からみて、やや響きが激しく、粗悪になる感じがする虞がある。したがって、このような問題について、本発明は、上記のように、音響誘導羽根板10が音響反射壁体20に比べてさらに高い吸音率を有するように構成することにより、原音に対する一部の吸音が行われるようにして、反射音のレベルを調節するように構成することができ、このような本発明の好適な構成形態により、本発明は、音の吸音と反射とが適切にハーモニーをなすようにして、最適な残響音を発することが可能になるという効果を期待することができる。一方、上記の如き構成の他にも、前記音響誘導羽根板10の表面に高い吸音率を有する材質をさらに取り付けたりコーティングしたりするの方法により吸音仕上げ層(図示せず)を形成する方法にて実施することもまた実質的に同一の効果が得られるので、このような形態にて実施することも十分に可能である。
【0030】
上記のごとき本発明の好適な構成による場合、前記音響誘導羽根板10は、ある程度吸音能を有する木の材質から作製してもよく、基本的に、木の材質の柱を使用したり、金属製の角パイプなど他の材質の柱部材の表面に木材パネルを取り付けて仕上げたりする方式により実施してもよい。また、木材の場合、周波数によって異なってくるものの、吸音率が約5~10%であって、基本的に吸音率が高くはないものの、部材の内部に空いたスペースが多ければ多いほど、吸音率が大幅に上がるので、木材部材の内部の空間占有率を調整することにより、吸音率(または、吸音係数)を必要に応じて適宜に調節することができる。
【0031】
このとき、上記の如き木柱または木材パネルの場合、野外に設置されるものであるため、防腐処理が施され、変形済みの木材を用いることがさらに好ましい。また、本発明において、前記音響誘導羽根板10は、上記の如き木系の材質の他にも、当業者の選択に応じて、例えば、金属製の角パイプの表面に吸音性材料の付着、塗色または吹付塗り施工を行ったり、合成樹脂部材、プレキャストコンクリート部材など他の材質の部材を用いたり、コンクリート打設成形などの別の施工を行ったりする方式によっても実施可能である。
【0032】
一方、図1に示すように、本発明によれば、前記音響誘導羽根板10は、前記音響反射壁体20の表面から一定の長さに見合う分だけ内側に(すなわち、平面上の中心点CPを向いた方向)に向かって突出するように構成され、これは、本発明の主な技術的効果であるサウンドフォーカシング現象を誘起するために本発明において考慮した構成上の特徴の一つである。すなわち、前記音響反射壁体20の表面において音響が反射されるに当たって、実質的に音響の一定の部分は、音響反射壁体20の表面において乱反射され、これにより、反射音が分散されて舞台の中心の向きに十分に戻れなくなるため、本発明においては、上記のように、音響誘導羽根板10を設置・構成するに当たって、音響反射壁体20の表面から舞台の中心の向きに一定の長さだけ突出するようにすることで、音響反射壁体20において反射される音響を中心の向きに導いて集中させるという特徴を有する(サウンドフォーカシング作用)。このような本発明の技術的な特徴により、前記音響誘導羽根板10は、上記の如きサウンドフォーカシング作用が円滑に起こるように十分な長さだけ突出しなければならないものであって、このような突出長さは、基本的に、最小限に8cm以上にならなければならず、好ましくは、15~30cmが適当である。但し、前記音響誘導羽根板10の突出長さは、8cm以下になる場合、サウンドフォーカシング作用が期待し難いため好ましくないが、30cmを超えてやや長めの長さだけ突出するように実施する場合には、空間設計及び施工上の問題がない範囲においてある程度調節可能である。
【0033】
さらに、図1及び図2に示す好適な実施形態でのように、本発明の音響空間建築物には、上記の如き垂直方向の音響誘導羽根板10に加えて、水平音響誘導羽根板15がさらに設置されてもよい。前記水平音響誘導羽根板15は、基本的に、上記の音響誘導羽根板10と同一の断面の形状に基準床面100と並ぶように水平に設置されてもよい。
【0034】
このとき、前記水平音響誘導羽根板15もまた、本発明においてサウンドフォーカシング作用がなお一層円滑に行われるようにする主な構成要素であって、前記水平音響誘導羽根板15を付加する場合、音響が上部に広がって分散されることを有効に抑えることができるので、本発明のサウンドフォーカシング作用をなお一層強化させることが可能になる。また、中央の音源舞台部50において演奏する演奏者にとっても、上記の如き水平音響誘導羽根板15の作用により上部の向きに上がっていく反射音が下側の舞台の中央部に導かれて戻されるので、自分の演奏音を聞きながらモニタリングをする上で非常に有利な効果が得られるというメリットがある。このような水平音響誘導羽根板15の垂直位置は、前記音響誘導羽根板10の全体の高さの概ね中央部の高さの程度であることが好適であり、この設置位置は、音響誘導羽根板10及び音響反射壁体20の全体の高さ及び円弧の中心からの距離に応じて多少なりとも変更可能である。
【0035】
次いで、前記音響反射壁体20は、一定の厚さを有する壁体状の構造物であって、前記音響反射壁体20は、図1及び図2に示すように、上記の音響誘導羽根板10の外側に連結されて基準床面100の上に立てられて設置される。図1に示すように、前記音響反射壁体20は、平面視で、上記の音響誘導羽根板10と同様に、円弧状の曲線状を呈するように実施することができ、これにより、前記音響反射壁体20の表面は、円弧の中心点CPを向いた方向に対して垂直をなすことにより、中央部の円弧の中心点CPから入射した音響を反射して元の方向に戻せるように設置される。
【0036】
以上述べたように、本発明において、前記音響反射壁体20は、音響を反射して共鳴現象を用いて音響の自体的な増幅を引き起こす構成要素であって、上記の音響誘導羽根板10とともに、本発明のサウンドフォーカシング作用を生じさせる核心的な構成要素に相当するものである。
【0037】
上記の如き音響反射壁体20は、入射した音をそのまま反射して戻せるように滑らかな表面を有し、かつ、音響反射率の高い部材から作製することができ、このような材質としては、ガラスパネルが最も好適に使用可能である。この他にも、前記音響反射壁体20の材質としては、アルミニウムなどの金属パネル、合成樹脂パネル、平滑に表面加工された代理石、平滑な露出コンクリートなどの他の材質もまた採用可能であり、上記の材料部材のうちの一つ以上の組み合わせ、例えば、ガラスパネルとアルミニウムパネルとの組み合わせなどによっても実施可能である。
【0038】
一方、図1及び図2に示す実施形態によれば、上記の音響誘導羽根板10と音響反射壁体20とが組み合わせられる態様において、前記音響反射壁体20を一体化した壁体として施工し、この音響反射壁体20の内側面(すなわち、円弧の中心の向き)に音響誘導羽根板10を別途の部材として密着して連結・施工した例を示しているが、このような実施形態の他にも、前記音響誘導羽根板10から窓戸フレームを構成し、これらの音響誘導羽根板10同士の間に別途のガラスパネルを挟み込んで固定するなどの方式により施工しても構わない。
【0039】
上記のようにして組み合わせられた音響誘導羽根板10と音響反射壁体20は、図1及び図2に示す実施形態でのように、全体的に円形の壁体構造物の形状を呈し、かつ、その内側に中庭型の空間部であって、一定の音響空間200を形成することになる。なお、図示の実施形態でのように、前記音響空間200内の平面上の中央部には、音源舞台部50が設置されてもよく、この音源舞台部50の上において公演/演奏などにより発生した音響は、上記の音響反射壁体20及び音響誘導羽根板10における音響の反射及び集中誘導により自体的な増幅が起こることにより、別途の音響装備なしにもルーフトップ観覧フロア30の上部において観覧する観覧客が鑑賞するのに十分な音量を生じさせることになる。
【0040】
前記ルーフトップ観覧フロア30は、図1及び図2に示すように、前記音響反射壁体20の上部側から外側に向かって水平に延設される天井構造物であって、その下部には、図1及び図2に示す実施形態でのように、室内空間を形成して使用し、上部は、あたかも屋上のような形態であって、観覧客が登って上記の音源舞台部50付き音響空間200において開かれる公演などを鑑賞できるように構成してもよい。図示の実施形態によれば、前記ルーフトップ観覧フロア30は、前記音響反射壁体20の最上端から僅かに下がっている高さにおいて水平に設置されることにより、音響反射壁体20と音響誘導羽根板10の高さを最大限に高めるようにした例を示しているが、前記音響反射壁体20の最上端の高さにおいてルーフトップ観覧フロア30を設置し、安全手すり(図示せず)などの安全施設物を設置して施工することも可能である。なお、図2によれば、前記ルーフトップ観覧フロア30は、地面と水平をなす形態として示されているが、具体的な実施設計に応じて、やや傾斜した形状に施工しても構わない。
【0041】
図3及び図4は、上記の如き構成による本発明の音響空間建築構造物の全体的な形状を立体的に示す図であって、図3及び図4に示すように、本発明に係る音響空間建築構造物は、全体的に円弧の中心から一定の距離に建築構造物を配置して建築平面上の中央部に上部が開放された円形平面の中庭型の空間が形成されるようにした形状を呈するものであることが分かる。このとき、以上述べたように、本発明の音響空間建築構造物において前記中庭空間をなす面は、多数枚の音響誘導羽根板及び音響反射壁体の組み合わせによる壁面構造物を立ててなり、このような音響誘導羽根板及び音響反射壁体により平面の中央部に上部が開放された円形の音響空間が形成されるようになっている。一方、図3及び図4においては、図中の混雑さを防ぐために、別途の識別符号の表記は省略している。
【0042】
このような本発明の音響空間建築構造物の具体的な実施に当たって、円弧の中心から前記音響誘導羽根板と音響反射壁体までの距離、すなわち、円弧の半径は、概ね15~35mの範囲になるように実施することが好ましい。この範囲は、中央の音源舞台部からルーフトップ観覧フロアの上部の観客までの距離と、音響が前記音響反射壁体にぶつかって中心部に戻ってくる時差及び原音と反射音とのハーモニーによる共鳴現象が円滑に起こり得る距離などを総合的に考慮に入れたものであり、上記の如き視点からみて、最適な残響音を作り出すには、15~25mの距離が最も好適であると認められる。
【0043】
また、前記音響誘導羽根板と音響反射壁体構造物の高さは、上記の円弧の中心から音響反射壁体までの距離に比例して定められることができ、概ね3~8mの高さに実施可能である。
【0044】
以下では、添付図面に基づいて、上記の如き本発明の音響空間建築構造物において起こるサウンドフォーカシング現象による音響効果についてさらに詳しく説明する。図5は、本発明に係る音響空間建築構造物における音響効果を図式化して示す図であって、図5に基づいて、本発明の音響効果と関わる作用について説明すれば、下記の通りである。
【0045】
上述したように、本発明は、音響反射壁体20と音響誘導羽根板10とにより取り囲まれた形状に建築平面上の中央部に音響空間200を形成し、前記音響空間200内において音楽公演などの野外イベント・催しを開く場合、中央舞台部から発せられた音に、上記の音響誘導羽根板10と音響反射壁体20の構成により引き起こされるサウンドフォーカシング及び共鳴現象により自体的に増幅が起こることにより、別途のスピーカーやアンプといった拡声装備なしにもルーフトップ観覧フロア30の上部にいる聴衆が満足のいく音量にて純粋な原音の聞き取りが可能なようにすることを主な技術的特徴とする発明である。
【0046】
これについてさらに詳しく説明すれば、前記音響誘導羽根板10と音響反射壁体20とにより取り囲まれて形成された音響空間200内において公演などにより音響が発生すると、この公演による原音S0は広がって、前記音響反射壁体20にぶつかって反射され、これに伴う反射音S1を発生させる。ここで、前記音響反射壁体20は、図1に示すように、基準床面100上の中心点CPを円弧の中心として平面上において円形状を呈するように設置されているため、前記反射音S1は、基本的に、原音S0が発生した舞台の中心の向きに戻っていくことになる。
【0047】
ところが、上記のように、舞台原音S0が音響反射壁体20により反射されるに当たって、たとえ前記音響反射壁体20が音響の反射に適するように平滑面からなるとしても、反射音S1のすべてが正確に舞台の中心の向きに戻っていくわけではなく、実際には、一定の部分だけ音響反射壁体20の表面において乱反射が起こることにより、反射音の分散が起こることになる。これに対し、本発明においては、以上述べたように、音響反射壁体20の内側に一定の長さに見合う分だけ突出する形状に音響誘導羽根板10を設置する構成を備えているので、上記のように音響反射壁体20の表面において乱反射されて散らかる反射音が前記音響誘導羽根板10により突出方向に導かれることにより、反射音S1の分散を抑えながら、舞台の中心部に向かって集中させるという特徴を有することになる(本発明においては、特に、このように反射音を中央に導いて集中させる作用をサウンドフォーカシング作用と命名して使用している)。
【0048】
このような本発明の主な技術的特徴であるサウンドフォーカシング作用により、上記のように舞台の中央部に集中して反射されて戻っていく反射音S1は、舞台原音S0及び他の方向から戻ってくる反射音と出会って干渉及び共鳴を引き起こしながら、共鳴音S2を発生させることになり、この共鳴音S2は、音響空間200の上部に抜け出て音響反射壁体20の上部の外側に延びたルーフトップ観覧フロア30において観覧する観客に届いて聞き取られることになる。したがって、ルーフトップ観覧フロア30上の観客は、直接的な舞台原音S0とともに、音響空間200の内部の音響の反射と共鳴作用により生成された共鳴音S2及び残響音(reverberation sound)が一緒に聞き取れるので、まるで屋内公演でのように、立体的であり、かつ、響き及び余韻のある豊富な感じの音響にて公演を鑑賞することが可能になるという効果を奏することになる。
【0049】
また、上記の如き本発明によれば、既存の野外公演において、舞台原音がそのまま外部に広がって音量の損失が甚大であったことに起因して別途の拡声装置を必要としていたこととは異なり、本発明は、舞台原音S0が直ちに外部に広がることなく、音響反射壁体20を介して反射されながら一定の音響空間200の内部において共鳴音S2を生成して観客に届けるので、損失される音のエネルギーを大幅に低減することができ、これにより、本発明の音響空間建築構造物によれば、スピーカーの如き音響装備なしにも十分な音量を得ることができて、観客が舞台公演音を純粋な原音のままで鑑賞することができるというメリットがある。
【0050】
すなわち、上記の如き図2及び図5に示すように、本発明の音響空間建築構造物によれば、聴衆の観覧が行われるルーフトップ観覧フロア30よりも低い高さに音響反射壁体20により取り囲まれた音響空間200を形成しており、このような本発明における音響空間200は、まるで楽器の共鳴胴(響胴)のような機能をすることにより、舞台原音を大きな音に増幅して、上にあるルーフトップ観覧フロア30において聞き取れるようにするのである。したがって、中央の音源舞台部50から公演音が発せられると、この公演音は、上記の音響空間200内に閉じ込められて直ちに抜け出ることなく、音響反射壁体20において複数回反射されながら、音の干渉及び重なり合い現象により大きな音に増幅された後、音響空間200の上部に抜け出てルーフトップ観覧フロア30上の聴衆に聞き取られることになり、これとともに、繰り返し行われた音響の反射に伴う残響音が途切れることなくまるでつながっているかのように次から次へと聞き取られることにより、音響的に澄んだ立体感をもった音響を音響装備を経ていない純粋な原音のままで聞き取ることが可能になるのである。
【0051】
一方、上記の如き残響音と関わり、一般に、音響の反射に際して、原音の吸収がほとんどなく、残響音が反射音のみからなる場合、非常に響きが激しく、残響時間が長引くことにより、まるでエコーがかかっているかのように音がスローになる現象(洞窟効果)があり得る。したがって、本発明は、このような不都合に対して、上記のように音響の反射が行われる音響反射壁体20と連結された音響誘導羽根板10に対して一定のレベルの吸音性能を与えることにより、吸音と反射を調節して最適な残響音を作り出せるようにすることを本発明に関わるさらに好適な構成として提示する。
【0052】
すなわち、上記の如き本発明の好適な構成によれば、前記音響誘導羽根板10は、音響反射壁体20に比べてさらに高い吸音率を有する材質から作製したり、表面に吸音性の仕上げ材を取り付けて(または、コーティングなどして)吸音仕上げ層を形成したりすることにより、舞台原音S0が音響反射壁体20にぶつかって反射されるとき、前記音響誘導羽根板10により一部が吸音されて戻っていけるようにしており、このような音響誘導羽根板10の吸音性能を調節することで、反射音S1の強さを適度に調節して、残響音を最適な状態にすることが可能になる。
【0053】
したがって、上記の如き本発明の技術的特徴によれば、開放された屋外空間において開かれる音楽公演などのイベント・催しにおいて、中央舞台部から発せられた音に、サウンドフォーカシング及び共鳴現象により自体的に増幅が起こることにより、別途のスピーカーやアンプの如き拡声装備なしにも聴衆が満足のいく音量にて純粋な原音を聞き取ることが可能になり、これと併せて、音の質的な面からみても、野外公演の欠点として指摘されていた、音がドライかつ貧弱な音として聞き取られてしまうということを克服して、屋内公演でのように立体的であり、かつ、豊富な感じをもって鑑賞することができる他、音響の反射及び吸音、干渉が適切なハーモニーをなすことにより、適切な響きと澄んだ透明感を持った最適な残響音を作り出すことが可能になるというメリットを有する。
【0054】
以上において、本発明は、記載の実施形態を参照して詳しく説明されたが、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、以上において述べられた技術的思想を逸脱しない範囲内において色々な置換、付加及び転用が可能であるということはいうまでもなく、このような変形された実施形態もまた、特許請求の範囲により定められる本発明の保護範囲に属するものと理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、建築及び建設分野に関わる技術であって、建築構造物の設計及び施工に適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
10:音響誘導羽根板
15:水平音響誘導羽根板
20:音響反射壁体
30:ルーフトップ観覧フロア
50:音源舞台部
100:基準床面
200:音響空間
S0:舞台原音
S1:反射音
S2:共鳴音
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】