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特表2023-535133電動車両、その制御システム及び電気加熱装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-16
(54)【発明の名称】電動車両、その制御システム及び電気加熱装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 1/00 20060101AFI20230808BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20230808BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20230808BHJP
   B60L 50/70 20190101ALI20230808BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20230808BHJP
   B60W 20/00 20160101ALI20230808BHJP
【FI】
B60L1/00 L ZHV
B60L50/60
B60L3/00 S
B60L50/70
B60L50/16
B60W20/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501313
(86)(22)【出願日】2021-08-19
(85)【翻訳文提出日】2023-01-05
(86)【国際出願番号】 CN2021113414
(87)【国際公開番号】W WO2022166161
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】202110172895.7
(32)【優先日】2021-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523006491
【氏名又は名称】ジェンジャン ヘルムホルツ サーマル アンド トランスミッション システム カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】シェン,ジアン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,シャオリン
(72)【発明者】
【氏名】メン,シャンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ロン
(72)【発明者】
【氏名】サン,シュン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,タオ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,イ
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D202BB22
3D202BB43
3D202CC57
3D202DD46
3D202DD47
3D202EE00
3D202EE03
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC22
5H125BC03
5H125BC25
5H125CD09
5H125DD02
5H125EE23
5H125EE25
5H125EE70
5H125FF27
(57)【要約】
本願は、電動車両、その電気加熱装置及び制御システムを開示し、前記電気加熱装置は、互いに独立して並列に電気的に接続されるn個の抵抗発熱ユニットと、それぞれ各自の抵抗発熱ユニットに直列に電気的に接続され、各自の抵抗発熱ユニットの通電又は遮電を独立して制御することに用いられるn個のスイッチと、前記電動車両の運転状況に応じて前記n個のスイッチのうち少なくともいずれか1つを選択的にオン又はオフにするコントローラと、を含み、その中、nは、2以上の自然数である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両の電気加熱装置であって、
該電気加熱装置は、
互いに独立して並列に電気的に接続されるn個の抵抗発熱ユニット(R1、R2、…、Rn)と、
それぞれ各自の抵抗発熱ユニットに直列に電気的に接続され、各自の抵抗発熱ユニットの通電又は遮電を独立して制御することに用いられるn個のスイッチ(Q1、Q2、…、Qn)と、
前記電動車両の運転状況に応じて、前記n個のスイッチのうち少なくともいずれか1つを選択的にオン又はオフにするコントローラと、を含み、その中、nは、2以上の自然数である。
【請求項2】
前記n個の抵抗発熱ユニットの抵抗値は、いずれも同じであり、又はいずれも異なり、又はその一部が同じであるが、他の部分が異なる、ことを特徴とする請求項1に記載の電動車両の電気加熱装置。
【請求項3】
nは2であり、2つの抵抗発熱ユニットのうち、一方の抵抗発熱ユニットの抵抗値と他方の抵抗発熱ユニットの抵抗値との比は1~2.5であり、好ましくは1.5~2.5である、ことを特徴とする請求項2に記載の電動車両の電気加熱装置。
【請求項4】
前記電気加熱装置は、第1の主回路(21)及び/又は第2の主回路(22)を備え、前記第1の主回路(21)及び第2の主回路(22)は、それぞれ前記n個の抵抗発熱ユニットの両側に位置し、且つ前記n個の抵抗発熱ユニットの並列回路のすべてに直列に電気的に接続され、前記第1の主回路(21)に第1のメインスイッチ(Q主1)が設置され、及び/又は前記第2の主回路(22)に第2のメインスイッチ(Q主2)が設置される、ことを特徴とする請求項1に記載の電動車両の電気加熱装置。
【請求項5】
前記第1の主回路(21)、第2の主回路(22)及び各並列回路のうち少なくとも一方に検出点(A、B、C、D)が設置され、該検出点における電圧値及び/又は電流値を断続的又はリアルタイムに検出することに用いられる、
前記検出点(A、B、C、D)は、各前記スイッチ(Q1、Q2、…、Qn)及びメインスイッチに配置される、
ことを特徴とする請求項4に記載の電動車両の電気加熱装置。
【請求項6】
前記電気加熱装置は、単一抵抗発熱モードと、全部抵抗発熱モードと、組み合わせ抵抗発熱モードと、する作動モードを有し、
前記単一抵抗発熱モードにおいて、前記コントローラは、前記n個のスイッチのうちの選択された1つのスイッチのみをオンにし、それにより前記n個の抵抗発熱ユニットのうちの対応する1つの抵抗発熱ユニットを通電し、
前記全部抵抗発熱モードにおいて、前記コントローラは、全部の前記n個のスイッチをオンにし、それにより全部n個の抵抗発熱ユニットを通電し、
前記組み合わせ抵抗発熱モードにおいて、前記コントローラは、前記n個のスイッチのうちの2~n-1個をオンにするが、他の部分をオフにし、それにより前記n個の抵抗発熱ユニットの対応する一部を通電するが、他の部分を非通電にすることを特徴とする請求項1に記載の電動車両の電気加熱装置。
【請求項7】
前記電気加熱装置が所定の加熱パワーを有する場合、オン状態にある抵抗発熱ユニットの電流値又はその総電流値を所定の電流値以下に制限するように、前記コントローラは、前記電動車両の運転状況に応じて前記作動モードを選択し、及び/又は
前記電気加熱装置が異なる加熱パワーを有し、前記電気加熱装置に対してPWM制御方式を使用する必要がないように、前記コントローラは、異なる運転状況における加熱パワーに対する異なるニーズに応じて作動モードを選択する、ことを特徴とする請求項6に記載の電動車両の電気加熱装置。
【請求項8】
前記n個のスイッチは、いずれも電子スイッチ管であり、前記コントローラは、PWM制御モジュールを含み、該PWM制御モジュールは、それぞれ前記n個のスイッチに独立して電気的に接続され、前記PWM制御モジュールの制御によってオンになるスイッチの作動周波数は、1Hz~100KHzであり、好ましくは100Hz~1KHzであり、より好ましくは200Hz~800Hzであり、さらに好ましくは400Hz~600Hzであり、最も好ましくは500Hzである、
ことを特徴とする請求項1に記載の電動車両の電気加熱装置。
【請求項9】
前記PWM制御モジュールは、パワー誤差補償機能を有し、
1つのスイッチ及びその対応する1つの抵抗発熱ユニットに対して、
該抵抗発熱ユニットの抵抗値がその標準抵抗値の許容誤差範囲の中間区間内であると、前記PWM制御モジュールは、所定のパワーにおいて対応する標準デューティ比の制御信号を前記スイッチに出力し、
該抵抗発熱ユニットの抵抗値がその標準抵抗値の許容誤差範囲の上限区間内であると、前記PWM制御モジュールは、前記所定のパワーにおいてデューティ比が前記標準デューティ比よりも大きい制御信号を前記スイッチに出力し、
該抵抗発熱ユニットの抵抗値がその標準抵抗値の許容誤差範囲の下限区間内であると、前記PWM制御モジュールは、前記所定のパワーにおいてデューティ比が前記標準デューティ比よりも小さい制御信号を前記スイッチに出力する、ことを特徴とする請求項8に記載の電動車両の電気加熱装置。
【請求項10】
前記PWM制御モジュールは、交互制御モードを有し、該交互制御モードにおいて、前記PWM制御モジュールは、複数の異なるスイッチを交互にオン又はオフにすることで、対応する抵抗発熱ユニットを交互に通電又は非通電にし、及び/又は
前記PWM制御モジュールが各スイッチに送信する制御信号のデューティ比は、調整可能である、ことを特徴とする請求項8に記載の電動車両の電気加熱装置。
【請求項11】
前記電動車両の動力電池パック(100)の動作を監視して管理する電池管理システムと、
前記電動車両の動力電池パック(100)に電気的に接続される車載充電器(200)と、
前記電動車両の動力電池パック(100)に電気的に接続される電気加熱装置(300)と、
熱伝達媒体を介して前記電気加熱装置(300)と熱交換を行うことで、作動時に電動車両内の環境を暖房するエアコンシステム(400)であって、前記熱伝達媒体はさらに、前記動力電池パック(100)に対して温度制御を行うことに用いられるエアコンシステム(400)と、を含む電動車両の制御システムであって、
前記電気加熱装置は、請求項1から10のいずれか1つに記載された電気加熱装置であり、前記コントローラは、電動車両のコントローラ及び/又は前記電気加熱装置の専用コントローラである、ことを特徴とする電動車両の制御システム。
【請求項12】
前記電動車両は、正常な温風運転状況と、強充電運転状況と、低温弱充電運転状況と、常温弱充電運転状況と、及び低温始動運転状況のうち少なくとも1つを有し、
前記正常な温風運転状況において、前記動力電池パックは、正常な作動状態にあり、前記電気加熱装置(300)に電気エネルギーを提供し、該電気加熱装置(300)によって前記電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、前記エアコンシステムに加熱後の熱伝達媒体を供給し、
前記強充電運転状況において、車載充電器(200)は、外部充電装置に電気的に接続され、前記電気加熱装置は、前記動力電池パック及び/又は前記車載充電器(200)からの電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、前記エアコンシステム及び/又は動力電池パックに加熱後の熱伝達媒体を供給し、
前記低温弱充電運転状況において、前記動力電池パックの温度が低い第1の温度閾値よりも低く、且つ前記車載充電器(200)が外部充電装置に電気的に接続される場合、前記車載充電器(200)は前記動力電池パックと遮断され、前記電気加熱装置は前記車載充電器(200)からの電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、前記動力電池パックに加熱後の熱伝達媒体を供給し、前記動力電池パックの温度が高い第2の温度閾値よりも高くなった後に、前記車載充電器(200)と前記動力電池パックを電気的に接続し、動力電池パックの充電を実現し、
前記常温弱充電運転状況において、前記電気加熱装置は前記車載充電器(200)からの電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、前記動力電池パックに加熱後の熱伝達媒体を供給し、前記車載充電器(200)と前記動力電池パックを電気的に接続し、動力電池パックの充電を実現し、
前記低温始動運転状況において、前記動力電池パックの温度が低い第3の温度閾値よりも低く、且つ前記電動車両がパワーオンコマンドを受信する場合、前記車載充電器(200)は前記動力電池パックと遮断され、前記電気加熱装置は、前記動力電池パックと電気的に接続し、前記動力電池パックの電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、前記動力電池パックに加熱後の熱伝達媒体を供給し、前記動力電池パックの温度が高い第4の温度閾値よりも高くなった後に、前記電動車両は、前記正常な温風運転状況に入る、ことを特徴とする請求項11に記載の電動車両の制御システム。
【請求項13】
前記正常な温風運転状況と、強充電運転状況及び常温弱充電運転状況のうち少なくとも一方において、前記電気加熱装置のPWM制御モジュールは、選択されたスイッチに制御信号を送信することで、前記電気加熱装置のパワーに対して連続的な調整制御を行うことを特徴とする請求項12に記載の電動車両の制御システム。
【請求項14】
前記低温弱充電運転状況において、前記電気加熱装置の電流値は安定するように維持され且つ所定の電流値I所定以下であり、前記電気加熱装置のパワーの調整は、前記車載充電器(200)の出力電圧に対する調整によって実現され、PWM制御方式を使用せず、及び/又は
前記低温始動の運転状況において、前記電気加熱装置の電流値は安定するように維持され且つ所定の電流値I所定以下であり、前記電気加熱装置のパワーの調整は、前記動力電池パックの出力電圧に対する調整によって実現され、PWM制御方式を使用しない、ことを特徴とする請求項12に記載の電動車両の制御システム。
【請求項15】
前記コントローラは、
前記車載充電器及び/又は前記動力電池パックの出力電圧を検出することに用いられる電圧検出モジュールと、
前記車載充電器及び/又は前記動力電池パックの出力電圧を調整することに用いられる電圧調整モジュールと、
前記車載充電器及び/又は前記動力電池パックの出力電圧と選択された抵抗発熱ユニットの抵抗値との比に基づいて、前記電気加熱装置の計算電流値I計算を取得し、該計算電流値I計算と前記所定の電流値I所定との大きさを比較する判断モジュールと、を含み、
前記コントローラは、前記計算電流値I計算が前記所定の電流値I所定以上であると、該計算電流値I計算を前記所定の電流値I所定以下になるまで、前記車載充電器及び/又は前記動力電池パックの出力電圧を低く調整させ、
前記計算電流値I計算が前記所定の電流値I所定よりも小さいであると、前記抵抗発熱ユニットを通電させる、ことを特徴とする請求項14に記載の電動車両の制御システム。
【請求項16】
前記電気加熱装置は、抵抗値が大きい第1の抵抗発熱ユニット(R1)と、抵抗値が小さい第2の抵抗発熱ユニット(R2)を含み、
前記判断モジュールは、該2つの抵抗発熱ユニットに対して、それぞれ対応するI計算1及びI計算2を取得し、
計算1がI所定よりも大きいであると、前記コントローラは、前記車載充電器及び/又は前記動力電池パックの出力電圧を低く調整し、
計算2がI所定よりも大きい、且つI計算1がI所定よりも小さいであると、前記コントローラは、前記第1の抵抗発熱ユニット(R1)をオンにするが、第2の抵抗発熱ユニット(R2)を遮断し、
計算2がI所定よりも小さいであると、前記コントローラは、前記第1の抵抗発熱ユニット(R1)をオンにするが、第2の抵抗発熱ユニット(R2)を遮断し、或は、第2の抵抗発熱ユニット(R2)をオンにするが、前記第1の抵抗発熱ユニット(R1)を遮断し、或は、前記第1の抵抗発熱ユニット(R1)及び第2の抵抗発熱ユニット(R2)を交互にオンにし、或は、前記車載充電器及び/又は前記動力電池パックの出力電圧を、I計算2がI所定よりも大きい且つI計算1がI所定よりも小さいという範囲を満たすように高く調整した後に、前記第1の抵抗発熱ユニット(R1)をオンにするが、第2の抵抗発熱ユニット(R2)を遮断する、ことを特徴とする請求項14に記載の電動車両の制御システム。
【請求項17】
前記電動車両の第1の動力電池パック(I)及び第2の動力電池パック(II)の動作を監視して管理する電池管理システムであって、前記第1の動力電池パック(I)が燃料電池パック又は充電可能な電池パックであり、前記第2の動力電池パック(II)が充電可能な電池であり、前記第1の動力電池パック(I)に電気的に接続される、前記電池管理システムと、
それぞれ前記電動車両の第1の動力電池パック(I)及び第2の動力電池パック(II)に電気的に接続される、電気加熱装置(300)と、
熱伝達媒体を介して前記電気加熱装置(300)と熱交換を行うことで、作動時に電動車両内の環境を暖房するエアコンシステム(400)であって、前記熱伝達媒体が前記第1の動力電池パック(I)及び/又は第2の動力電池パック(II)に対して温度制御を行うことにも用いられる、前記エアコンシステム(400)と、を含む電動車両の制御システムであって、
前記電気加熱装置は、請求項1から10のいずれか1つに記載された電気加熱装置であり、前記コントローラは、電動車両のコントローラ及び/又は前記電気加熱装置の専用コントローラである、ことを特徴とする電動車両の制御システム。
【請求項18】
前記電動車両は、正常な温風の運転状況及び低温始動の運転状況のうち少なくとも1つを有し、
前記正常な温風の運転状況において、前記動力電池パックは正常な作動状態にあり、前記電気加熱装置(300)に電気エネルギーを供給し、該電気加熱装置(300)により電気エネルギーを熱エネルギーに変換して、前記エアコンシステムに加熱後の熱伝達媒体を供給し、
低温始動の運転状況において、前記動力電池パックの温度が低い第5温度閾値よりも低く、且つ前記電動車両がパワーオンコマンドを受信する場合、前記電気加熱装置は、前記第1の動力電池パック及び/又は第2の動力電池パックからの電気エネルギーを受け取り、熱エネルギーに変換して、前記第1の動力電池パック及び/又は第2の動力電池パックに加熱後の熱伝達媒体を供給し、そして、前記第1の動力電池パック及び/又は第2の動力電池パックの温度が高い第6温度閾値よりも高くなったまで後に、前記電動車両は前記正常な温風の運転状況に入る、ことを特徴とする請求項17に記載の電動車両の制御システム。
【請求項19】
前記低温始動の運転状況において、前記電気加熱装置のパワーは、該電気加熱装置に給電する前記第1の動力電池パック及び/又は第2の動力電池パックのパワーに応答し、且つ前記電気加熱装置のパワーは、該電気加熱装置に給電する前記第1の動力電池パック及び/又は第2の動力電池パックの出力電圧と正の相関を有し、PWM制御方式を使用しない、ことを特徴とする請求項18に記載の電動車両の制御システム。
【請求項20】
電動車両であって、
前記電動車両は、請求項11から19のいずれか1つに記載された電動車両の制御システムを含み、
前記電動車両は、純電動車両、燃料電池車両又はハイブリッド車両である、電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電動車両に用いられる電気加熱装置の分野に関し、より具体的には、電動車両の制御システム、電気加熱装置、及び該電気加熱装置と制御システムを含む電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両(例えば、ハイブリッド車両又は純電動車両)において、通常、車内環境に対する温度制御を実現するための電気加熱装置が設置されている。該電気加熱装置は、電動車両の動力電池パックに電気的に接続され、電気加熱装置の発熱素子は、電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、熱伝達媒体を経由して車内放熱システムによって熱量を車内環境に伝達し、それによって車内環境に対する温度制御を実現し、図1に示すとおりである。電気加熱装置の作動過程で、車両システム全体に潜在的な安全上の危険をもたらさないために、温度が高すぎる等の制御不能な状況の発生を防止する必要がある。
【0003】
電気加熱装置の従来の解決手段において、PTCヒーターを使用することが多いが、そのインピーダンスが温度の影響を大きく受けるため、その作動パワーを正確に制御することができない。従って、現状では、薄膜抵抗ヒーターが提案されている。該薄膜抵抗ヒーターに対するパワー制御は、通常、PWM連続制御の方式を使用する。
【0004】
しかし、ある運転状況において、例えば、電動車両を低温で冷間始動し又は電動車両を弱充電する場合、電気加熱装置を始動すれば、電動車両の電気システムに電気衝撃をもたらし、充電ガンが保護状態になり、又は既に不安定な状態にある電動車両の動力電池パックにさらに悪影響をもたらし、燃料電池が安定した動作を維持しにくくなる。従って、従来の薄膜抵抗ヒーターについては、すべての運転状況において安定した作動状態を維持することができない。
【0005】
従って、薄膜抵抗ヒーターがすべての運転状況において安定した確実な作動状態を維持することを如何に確保するかは、本分野で解決する必要がある技術的課題となっている。
【発明の概要】
【0006】
これに鑑み、本願は、電動車両の電気加熱装置を提案し、該電気加熱装置は、互いに独立して並列に電気的に接続されるn個の抵抗発熱ユニットと、それぞれ各自の抵抗発熱ユニットに直列に電気的に接続され、各自の抵抗発熱ユニットの通電又は遮電を独立して制御することに用いられるn個のスイッチと、前記電動車両の運転状況に応じて前記n個のスイッチのうち少なくともいずれか1つを選択的にオン又はオフにするコントローラと、を含み、その中、nは、2以上の自然数である。
【0007】
好ましくは、前記n個の抵抗発熱ユニットの抵抗値は、いずれも同じであり、又はいずれも異なり、又は一部が同じであるが、一部が異なる。
【0008】
好ましくは、nは2であり、2つの抵抗発熱ユニットのうち、一方の抵抗発熱ユニットの抵抗値と他方の抵抗発熱ユニットの抵抗値との比は1~2.5であり、好ましくは1.5~2.5である。
【0009】
好ましくは、該電気加熱装置は、第1の主回路及び/又は第2の主回路を含み、該第1の主回路及び第2の主回路は、それぞれ前記n個の抵抗発熱ユニットの両側に位置し、且つ該n個の抵抗発熱ユニットの並列回路のすべてに直列に電気的に接続される。
【0010】
好ましくは、前記第1の主回路に第1のメインスイッチが設置され、及び/又は前記第2の主回路に第2のメインスイッチが設置される。
【0011】
好ましくは、前記第1の主回路、第2の主回路及び各並列回路のうち少なくとも一方に検出点が設置され、該検出点箇所での電圧値及び/又は電流値を断続的又はリアルタイムに検出することに用いられる。好ましくは、前記検出点は各前記スイッチ及びメインスイッチ箇所に配置される。
【0012】
好ましくは、該電気加熱装置は、単一抵抗発熱モードと、全部抵抗発熱モードと、組み合わせ抵抗発熱モードと、を有し、
前記単一抵抗発熱モードにおいて、前記コントローラは、前記n個のスイッチのうちの選択された1つのスイッチのみをオンにし、それにより前記n個の抵抗発熱ユニットのうちの対応する1つの抵抗発熱ユニットを通電し、
前記全部抵抗発熱モードにおいて、前記コントローラは、全部の前記n個のスイッチをオンにし、それにより全部n個の抵抗発熱ユニットを通電し、
前記組み合わせ抵抗発熱モードにおいて、前記コントローラは、前記n個のスイッチのうちの2~n-1個をオンにするが、他の一部をオフにし、それにより前記n個の抵抗発熱ユニットの対応する一部を通電するが、他の一部を非通電にする。
【0013】
好ましくは、前記電気加熱装置が所定の加熱パワーを有する場合、オン状態にある抵抗発熱ユニットの電流値又はその総電流値を所定の電流値以下に制限するように、前記コントローラは、前記電動車両の運転状況に応じて前記作動モードを選択し、及び/又は、前記電気加熱装置が異なる加熱パワーを有し、前記電気加熱装置に対してPWM制御方式を使用する必要がないように、前記コントローラは、異なる運転状況における加熱パワーに対する異なるニーズに基づいて作動モードを選択する。
【0014】
好ましくは、前記n個のスイッチはいずれも電子スイッチ管であり、前記コントローラはPWM制御モジュールを含み、該PWM制御モジュールはそれぞれ前記n個のスイッチに独立して電気的に接続される。
【0015】
好ましくは、該PWM制御モジュールの制御によって、オンになるスイッチの作動周波数は1Hz~100KHzであり、好ましくは100Hz~1KHzであり、より好ましくは200Hz~800Hzであり、さらに好ましくは400Hz~600Hzであり、最も好ましくは500Hzである。
【0016】
好ましくは、前記PWM制御モジュールは、パワー誤差補償機能を有し、1つのスイッチ及びその対応する1つの抵抗発熱ユニットに対して、該抵抗発熱ユニットの抵抗値がその標準抵抗値の許容誤差範囲の中間区間内であると、前記PWM制御モジュールは、所定のパワーにおいて対応する標準デューティ比の制御信号を前記スイッチに出力し、該抵抗発熱ユニットの抵抗値がその標準抵抗値の許容誤差範囲の上限区間内であると、前記PWM制御モジュールは、前記所定のパワーにおいてデューティ比が前記標準デューティ比よりも大きい制御信号を前記スイッチに出力し、該抵抗発熱ユニットの抵抗値がその標準抵抗値の許容誤差範囲の下限区間内であると、前記PWM制御モジュールは、前記所定のパワーにおいてデューティ比が前記標準デューティ比よりも小さい制御信号を前記スイッチに出力する。
【0017】
好ましくは、前記PWM制御モジュールは、交互制御モードを有し、該交互制御モードにおいて、前記PWM制御モジュールは、複数の異なるスイッチを交互にオン又はオフにすることで、対応する抵抗発熱ユニットを交互に通電又は非通電にする。
【0018】
好ましくは、前記PWM制御モジュールが各スイッチに送信する制御信号のデューティ比は、調整可能である。
【0019】
本願の別の態様によれば、電動車両の制御システムをさらに提供し、該制御システムは、
前記電動車両の動力電池パックの動作を監視して管理する電池管理システムと、
前記電動車両の動力電池パックに電気的に接続される車載充電器と、
前記電動車両の動力電池パックに電気的に接続される電気加熱装置であって、該電気加熱装置は、上記の電気加熱装置であり、前記コントローラは、電動車両のコントローラ及び/又は前記電気加熱装置の専用コントローラである、電気加熱装置と、
熱伝達媒体を介して前記電気加熱装置と熱交換を行うことで、作動時に電動車両内の環境を暖房するエアコンシステムであって、前記熱伝達媒体はさらに、前記動力電池パックに対して温度制御を行うことに用いられる、エアコンシステムと、を含む。
【0020】
好ましくは、前記電動車両は、正常な温風の運転状況、強充電の運転状況、低温弱充電の運転状況、常温弱充電の運転状況、及び低温始動の運転状況のうち少なくとも1つを有し、
正常な温風の運転状況において、前記動力電池パックは正常な作動状態にあり、前記電気加熱装置に電気エネルギーを提供し、該電気加熱装置は電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、前記エアコンシステムに加熱後の熱伝達媒体を供給し、
強充電の運転状況において、車載充電器は外部充電装置に電気的に接続され、前記電気加熱装置は前記動力電池パック及び/又は前記車載充電器からの電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、前記エアコンシステム及び/又は動力電池パックに加熱後の熱伝達媒体を供給し、
低温弱充電の運転状況において、前記動力電池パックの温度が低い第1の温度閾値よりも低く、且つ前記車載充電器が外部充電装置に電気的に接続される場合、前記車載充電器は前記動力電池パックと遮断され、前記電気加熱装置は前記車載充電器からの電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、前記動力電池パックに加熱後の熱伝達媒体を供給し、前記動力電池パックの温度が高い第2の温度閾値よりも高くなった後に、前記車載充電器と前記動力電池パックを電気的に接続し、動力電池パックの充電を実現し、
常温弱充電の運転状況において、前記電気加熱装置は、前記車載充電器からの電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、前記動力電池パックに加熱後の熱伝達媒体を供給し、前記車載充電器と前記動力電池パックを電気的に接続し、動力電池パックの充電を実現し、
低温始動の運転状況において、前記動力電池パックの温度が低い第3の温度閾値よりも低く、且つ前記電動車両がパワーオンコマンドを受信する場合、前記車載充電器は前記動力電池パックと遮断され、前記電気加熱装置は前記動力電池パックに電気的に接続され、前記動力電池パックの電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、前記動力電池パックに加熱後の熱伝達媒体を供給することに用いられ、そして、前記動力電池パックの温度が高い第4の温度閾値よりも高くなったまで後に、前記電動車両は前記正常な温風の運転状況に入る。
【0021】
好ましくは、前記正常な温風の運転状況、強充電の運転状況及び常温弱充電の運転状況のうち少なくとも一方において、前記電気加熱装置のPWM制御モジュールは、選択されたスイッチに制御信号を送信することにより、前記電気加熱装置のパワーに対して連続的な調整制御を行う。
【0022】
好ましくは、前記低温弱充電の運転状況において、前記電気加熱装置の電流値は、安定するように維持され且つ所定の電流値I所定以下であり、前記電気加熱装置のパワーの調整は、前記車載充電器の出力電圧に対する調整によって実現され、PWM制御方式を使用せず、及び/又は前記低温始動の運転状況において、前記電気加熱装置の電流値は、安定するように維持され且つ所定の電流値I所定以下であり、前記電気加熱装置のパワーの調整は、前記動力電池パックの出力電圧に対する調整によって実現され、PWM制御方式を使用しない。
【0023】
好ましくは、前記コントローラは、前記車載充電器及び/又は前記動力電池パックの出力電圧を検出することに用いられる電圧検出モジュールと、前記車載充電器及び/又は前記動力電池パックの出力電圧を調整することに用いられる電圧調整モジュールと、前記車載充電器及び/又は前記動力電池パックの出力電圧と選択された抵抗発熱ユニットの抵抗値との比に基づいて、前記電気加熱装置の計算電流値I計算を取得し、該計算電流値I計算と前記所定の電流値I所定との大きさを比較する判断モジュールと、を含み、該計算電流値I計算が前記所定の電流値I所定以上であれば、該計算電流値I計算が前記所定の電流値I所定以下になるまで、前記コントローラは前記車載充電器及び/又は前記動力電池パックの出力電圧を低く調整し、該計算電流値I計算が前記所定の電流値I所定よりも小さいであると、前記抵抗発熱ユニットを通電する。
【0024】
好ましくは、前記電気加熱装置は、抵抗値が大きい第1の抵抗発熱ユニット及び抵抗値が小さい第2の抵抗発熱ユニットを含み、前記計算モジュールは該2つの抵抗発熱ユニットに対して、対応するI計算1及びI計算2をそれぞれ取得し、I計算1がI所定よりも大きいであると、前記コントローラは前記車載充電器及び/又は前記動力電池パックの出力電圧を低く調整し、I計算2がI所定よりも大きい且つI計算1がI所定よりも小さいであると、前記コントローラは、前記第1の抵抗発熱ユニットをオンにするが、第2の抵抗発熱ユニットを遮断し、I計算2がI所定よりも小さいであると、前記コントローラは、前記第1の抵抗発熱ユニットをオンにするが、第2の抵抗発熱ユニットを遮断し、又は第2の抵抗発熱ユニットをオンにするが、前記第1の抵抗発熱ユニットを遮断し、又は前記第1の抵抗発熱ユニット及び第2の抵抗発熱ユニットを交互にオンにし、又は前記車載充電器及び/又は前記動力電池パックの出力電圧を、I計算2がI所定よりも大きい且つI計算1がI所定よりも小さいという範囲を満たすように高く調整し、次に前記第1の抵抗発熱ユニットをオンにするが、第2の抵抗発熱ユニットを遮断する。
【0025】
また、本願は、別の電動車両の制御システムをさらに提供し、
該制御システムは、
前記電動車両の第1の動力電池パック及び第2の動力電池パックの動作を監視して管理する電池管理システムであって、前記第1の動力電池パックは、燃料電池パック又は充電可能な電池パックであり、前記第2の動力電池パックは充電可能な電池であり、前記第1の動力電池パックに電気的に接続される電池管理システムと、
それぞれ前記電動車両の第1の動力電池パック及び第2の動力電池パックに電気的に接続される電気加熱装置と、
熱伝達媒体を介して前記電気加熱装置と熱交換を行うことで、作動時に電動車両内の環境を暖房するエアコンシステムであって、前記熱伝達媒体はさらに、前記第1の動力電池パック及び/又は第2の動力電池パックに対して温度制御を行うことに用いられるエアコンシステムと、を含み、
前記電気加熱装置は、本願で提供される上記の電気加熱装置であり、前記コントローラは、電動車両のコントローラ及び/又は前記電気加熱装置の専用コントローラである。
【0026】
好ましくは、前記電動車両は、正常な温風の運転状況及び低温始動の運転状況のうち少なくとも1つを有し、
正常な温風の運転状況において、前記動力電池パックは、正常な作動状態にあり、前記電気加熱装置に電気エネルギーを提供し、該電気加熱装置は電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、前記エアコンシステムに加熱後の熱伝達媒体を供給し、
低温始動の運転状況において、前記動力電池パックの温度が低い第5温度閾値よりも低く、且つ前記電動車両がパワーオンコマンドを受信する場合、前記電気加熱装置は前記第1の動力電池パック及び/又は第2の動力電池パックからの電気エネルギーを受け、熱エネルギーに変換し、前記第1の動力電池パック及び/又は第2の動力電池パックに加熱後の熱伝達媒体を供給し、そして、前記第1の動力電池パック及び/又は第2の動力電池パックの温度が高い第6温度閾値よりも高くなったまで後に、前記電動車両は前記正常な温風の運転状況に入る。
【0027】
好ましくは、前記低温始動の運転状況において、前記電気加熱装置のパワーは、該電気加熱装置に給電する前記第1の動力電池パック及び/又は第2の動力電池パックのパワーに応答し、且つ前記電気加熱装置のパワーは、該電気加熱装置に給電する前記第1の動力電池パック及び/又は第2の動力電池パックの出力電圧と正の相関を有し、PWM制御方式を使用しない。
【0028】
また、本願は電動車両をさらに提供し、該電動車両は上記の制御システムを含み、前記電動車両は純電動車両、燃料電池車両又はハイブリッド車両である。
【0029】
本願の技術的解決手段によれば、n個の抵抗発熱ユニットを互いに独立して並列に電気的に接続し、n個のスイッチを利用して各抵抗発熱ユニットを独立して制御することによって、電気加熱装置に複数の作動方式を実現させ、それによってすべての運転状況において具体的な運転状況に適用でき、さらに安定した確実な作動状態を維持することができる。
【0030】
本願の他の特徴及び利点は後の発明を実施するための形態の部分で詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本願の一部を構成する図面は本願のさらなる理解を提供することに用いられ、本願の例示的な実施形態及びその説明は本願を解釈することに用いられる。
【0032】
図1は本願の好ましい実施形態に係る電気加熱装置の抵抗発熱ユニットの回路構造の模式図である。
図2図4は本願の異なる好ましい実施形態に係る電気加熱装置の抵抗発熱ユニットの回路構造の模式図である。
図5は電気加熱装置のパワー、電流及び電圧を示す模式図である。
図6はパワー誤差補償機能においてPWM制御モジュールから出力された制御信号の異なるデューティ比を示す模式図である。
図7A及び図7Bは交互制御モードにおけるスイッチの作動状態及び電流変化状況を示す模式図である。
図8は本願の好ましい実施形態に係る電動車両の制御システムの原理模式図である。
図9は低温弱充電運転状況における車載充電器と電気加熱装置との電気的接続関係の模式図である。
図10及び図11図9に示される電気加熱装置の異なる分割制御方式における作動を示す模式図である。
図12は低温弱充電の運転状況においてコントローラが車載充電器及び電気発熱装置に対して電流制限の制御を行うプロセスを示す模式図である。
図13は本願に係る別の電動車両の制御システムの原理模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して、実施形態と併せて本願の技術的解決手段を詳細に説明する。
【0034】
電動車両では、エンジンの余熱がないか不足しているため、通常、車両のエアコンシステムに対して熱交換を行う電気加熱装置が設置されており、それにより車両内の環境の温度管理を実現する。該電気加熱装置はPTC電気加熱装置であってもよいが、好ましくは、薄膜抵抗を抵抗発熱ユニットとする電気加熱装置である。
【0035】
電動車両の使用過程において、電動車両は 複数の異なる運転状況を有し、異なる運転状況において、電動車両の動力電池(パック)と様々なパワー消費装置との間のパワー伝送関係も異なる要件を有する。例えば、電動車両の始動時に、動力電池が良好な作動状態にあるか否かは他のパワー消費装置のパワー制御に対して直接影響を与える。本願で提案される電気加熱装置についても、電動車両の重要なパワー消費装置であり、従って、電気加熱装置を研究して異なる電動車両の運転状況でその作動状況に対して対応する管理及び制御を行うことで、システム全体を安全で安定した動作状態に維持する必要もある。従って、以下では、まず、本願の実施形態に係る電気加熱装置の改良の解決手段、特に抵抗発熱ユニットの改良設計を解釈し、次に、本願で提供される電気加熱装置が設置される電動車両において、電動車両と電気加熱装置を含むパワー消費装置との間の動作関係を如何に一致するかを解釈して説明する。
【0036】
一、電動車両の電気加熱装置
【0037】
1.1 電気加熱装置の回路構造
【0038】
図1図4に示すように、本願に係る電気加熱装置は、互いに独立して並列に電気的に接続されるn個の抵抗発熱ユニットR1、R2、…、Rnと、それぞれ各自の抵抗発熱ユニットに直列に電気的に接続され、各自の抵抗発熱ユニットの通電又は遮電を独立して制御することに用いられるn個のスイッチQ1、Q2、…、Qnと、前記電動車両の運転状況に応じて前記n個のスイッチのうち少なくともいずれか1つを選択的にオン又はオフにするコントローラと、を含み、nは2以上の自然数である。
【0039】
上記のように、本願の技術的解決手段において、抵抗発熱ユニットとして薄膜抵抗を使用する。従来の電気加熱装置は単一の抵抗発熱ユニットを含み、それにより変化不能な抵抗値を有し、従って、異なる運転状況における異なるパワーニーズに適応するために、ほとんどは電流及び/又は電圧の調整によってパワーの調整を実現する。特に、電流が制限されたある運転状況において、抵抗発熱ユニットの抵抗が一定であれば、該抵抗発熱ユニットを流れる電流が電流制限要件を満たすようにするために、電気加熱装置のパワーを下げることしかできず、それにより高いパワーにおいて作動できず、さらに、電動車両が環境温度の制御を早く実現することに影響を与える。
【0040】
本願の技術的解決手段において、n個の抵抗発熱ユニットR1、R2、…、Rnを互いに独立して並列に電気的に接続し、n個のスイッチQ1、Q2、…、Qnを利用して各抵抗発熱ユニットを独立して制御することによって、電気加熱装置の作動抵抗値は、異なる抵抗発熱ユニットの作動状態に基づいて調整可能性を有し、複数の作動方式を実現でき、それによって電動車両の様々な運転状況に適用でき、さらに安定した確実な作動状態を維持することができる。言い換えれば、従来方式に比べて、電気加熱装置の発熱抵抗値というパラメータを調整可能に設計することによって、様々な異なる運転状況に適用できる。
【0041】
前記n個の抵抗発熱ユニットR1、R2、…、Rnの抵抗値は、いずれも同じであり、又はいずれも異なり、又は一部が同じであるが、一部が異なる。これは異なる応用場面に基づいて設計して選択することができる。また、各抵抗発熱ユニットR1、R2、…、Rnの抵抗値も具体的な応用場面に基づいて設計して選択することができる。好ましい状況において、図2及び図3に示すように、nは2であり、即ち、電気加熱装置は並列される2つの抵抗発熱ユニットを有し、図4に示すように、n=3であってもよく、電気加熱装置は並列される3つの抵抗発熱ユニットを有する。勿論、本願は上記の具体的な実施形態に限定されず、図1に示すように、nは2以上の自然数であってもよい。抵抗発熱ユニットの具体的な個数は加工コスト、生産製造の難しさ、応用運転状況等の要素に基づいて具体的に選択して設計することができる。
【0042】
本願の好ましい実施形態によれば、2つの抵抗発熱ユニットのうち、一方の抵抗発熱ユニットの抵抗値と他方の抵抗発熱ユニットの抵抗値との比は1~2.5であり、好ましくは1.5~2.5であり、最も好ましくは2である。従って、それぞれ1つの抵抗発熱ユニットを選択してオンにする場合、異なる大きさの抵抗値を取得することができる。当然ながら、これは他の実施形態にも適用する。
【0043】
n個のスイッチQ1、Q2、…、Qnが各抵抗発熱ユニットを独立して制御することによって、本願で提供される電気加熱装置は、単一抵抗発熱モードと、全部抵抗発熱モードと、組み合わせ抵抗発熱モードと、を有し、
該単一抵抗発熱モードでは、前記コントローラは前記n個のスイッチのうちの選択された1つのスイッチのみをオンにし、それにより前記n個の抵抗発熱ユニットのうちの対応する1つの抵抗発熱ユニットを通電し、
該全部抵抗発熱モードでは、前記コントローラは全部の前記n個のスイッチをオンにし、それにより全部n個の抵抗発熱ユニットを通電し、
該組み合わせ抵抗発熱モードにおいて、前記コントローラは 前記n個のスイッチのうちの2~n-1個をオンにするが、他の一部をオフにし、それにより前記n個の抵抗発熱ユニットの対応する一部を通電するが、他の一部を非通電にする。
【0044】
明らかなように、本願の技術的解決手段を利用して、電気加熱装置の作動抵抗値に複数の選択可能性を有させることができ、それによって様々な異なる応用運転状況に適応する。
【0045】
好ましい状況において、図1図4に示すように、本願に係る電気加熱装置は第1の主回路21及び/又は第2の主回路22を含み、該第1の主回路21及び第2の主回路22はそれぞれ前記n個の抵抗発熱ユニットの両側に位置し、且つ該n個の抵抗発熱ユニットの並列回路のすべてに直列に電気的に接続され、前記第1の主回路21に第1のメインスイッチQ主1が設置され、及び/又は前記第2の主回路22に第2のメインスイッチQ主2が設置される。第1のメインスイッチQ主1及び/又は第2のメインスイッチQ主2を設置することによって、各抵抗発熱ユニットの通電状態に対して統合管理及び制御を行うことができ、それにより電気加熱装置全体の安全性を向上させる。好ましい状況において、第1のメインスイッチ及び第2のメインスイッチは並列に配置される複数のものをそれぞれ含んでもよく(図2に示される)、それによりシステムの安全マージンをさらに向上させる。
【0046】
例えば、図2に示すように、第1のメインスイッチQ主1を投入及び開放することによって主回路が通電するか否かを制御する。主回路が通電する状況において、スイッチQ1及びQ2の両者を投入(オン)すれば、両方の同時加熱を実現し、スイッチQ1を投入(オン)するが、Q2を開放(オフ)すれば、抵抗発熱ユニットR1のみは通電して発熱作動を行うが、R2は作動せず、スイッチQ2を投入(オン)するが、Q1を開放(オフ)すれば、抵抗発熱ユニットR2は通電して発熱作動を行うが、R1は作動しない。従って、該具体的な実施形態に基づいて3つの異なる抵抗組み合わせモードを実現することができ、さらに3つの異なる作動モードを実現する。同様に、図4に示される好ましい実施形態では、7つの異なる抵抗組み合わせモードを実現することができ、さらに7つの異なる作動モードを実現する。
【0047】
好ましい状況において、図2に示すように、前記第1の主回路21、第2の主回路22及び各並列回路のうち少なくとも一方に検出点が設置され、該検出点箇所での電圧値及び/又は電流値を断続的又はリアルタイムに検出することに用いられる。通常の場合、前記検出点A、B、C、Dは各前記スイッチQ1、Q2、…、Qn及びメインスイッチ箇所に配置される。
【0048】
検出点の設置によって、各検出点箇所の電流及び/又は電圧値を検出することができ、それにより対応するスイッチ又はシステム全体の作動状態を判断する。例えば、図2に示すように、2つの第1のメインスイッチQ主1、2つのスイッチQ1及びQ2箇所で検出点を設置し、これらのスイッチが投入されて導通状態にある場合、正常な状況において、対応する検出点で対応する合理な電圧値及び/又は電流値を検出できるべきである。合理な電圧値及び/又は電流値を検出しなければ、対応するスイッチに欠陥があると判断できる。これらのスイッチが開放されてオフ状態にある場合、正常な状況において、対応する検出点位置で対応する合理な電圧値及び/又は電流値を検出できるべきであり、合理な電圧値及び/又は電流値を検出しなければ、対応するスイッチに欠陥があると判断できる。上記の電圧値及び/又は電流値は通常の方式で検出して取得でき、例えば、検出対象の検出点箇所の電圧値に対して、分圧方式又は演算増幅方式で検出することができる。検出点で検出された各パラメータは上記コントローラに送信され、さらにコントローラにより判断及び処理され、さらに対応する措置を講じる。例えば、あるスイッチQに故障が発生すると判断する場合、該並列回路をオフにして、作動に参加しないようにすることができる。
【0049】
以上、本願に係る電気加熱装置の抵抗発熱ユニットの回路構造を詳細に説明した。以下、上記の電気加熱装置の制御方式を詳細に説明する。
【0050】
1.2 電気加熱装置の制御の解決手段
【0051】
上記のように、電気加熱装置の抵抗発熱ユニットの回路構造に基づき、前記電気加熱装置は複数の作動モードを有する。従って、作動時に、前記コントローラは前記電動車両の運転状況に応じて前記作動モードを選択でき、それによって前記電気加熱装置が所定の加熱パワーを有する場合、オン状態にある抵抗発熱ユニットの電流値又はその総電流値を所定の電流値以下に制限する。
【0052】
電気加熱装置については、図5に示すように、そのパワーPとその電圧U、電流I及び抵抗rとの間の関係は、P=U*I=U2/r=I2*rである。加熱パワーが一定である状況において、電圧が高いほど、抵抗値が一定であるため、電気加熱装置の駆動電流は大きくなり、駆動電流は大きいほど、システムの安全性に悪影響をもたらす。本願の技術的解決手段を利用することによって、電気加熱装置の抵抗発熱ユニットの抵抗値が選択可能なマージン範囲を有するため、一定の加熱パワーを確保する上で、比較的大きい抵抗値を選択することができ、電気加熱装置の駆動電流を制限し、それによりシステムの安全性を確保する。
【0053】
別の選択可能な作動方式として、前記コントローラは電動車両の異なる運転状況おける加熱パワーに対する異なるニーズに応じて、電気加熱装置の作動モードを選択し、それによって前記電気加熱装置に異なる加熱パワーを有させ、前記電気加熱装置に対してPWM制御方式を使用する必要がない。
【0054】
好ましい状況において、薄膜抵抗形態の抵抗発熱ユニットについては、上記n個のスイッチはいずれも電子スイッチ管であり、前記コントローラはPWM制御モジュールを含み、該PWM制御モジュールはそれぞれ前記n個のスイッチに独立して電気的に接続され、前記PWM制御モジュールが各スイッチに送信する制御信号のデューティ比は調整可能であるため、各抵抗発熱ユニットに対するパワー調整はPWM制御信号のデューティ比の調整のみによって実現される。しかし、本願はこれに限定されず、例えば、上記のスイッチは他のタイプの電気制御素子であってもよく、コントローラはECU、BMS、エアコンコントローラ等の車載コントローラであってもよく、又は電気加熱装置の単独のコントローラ、例えばシングルチップマイクロコンピュータ、ICチップ等であってもよい。また、好ましい状況において、上記の各スイッチQ1、Q2、…、Qnは各自の抵抗発熱ユニットR1、R2、…、Rnの専用スイッチであり(各自の対応する抵抗発熱ユニットのオン又はオフを制御することのみに用いられる)、これらの抵抗発熱ユニットR1、R2、…、Rnの間は並列接続関係のみを有する。このように配置することによって、電気加熱装置の回路構造をより簡略化させることができ、それにより生産製造を容易にし、同時にシステムの故障率を低減させ、安全冗長性を向上させる。
【0055】
従来では、薄膜抵抗形態の抵抗発熱ユニットについては、ほとんどはPWM連続パワー制御方式のみを利用し、その利点としては、デューティ比の正確な調整によって、電気加熱装置のパワーを正確に制御して調整することができる。しかし、ある運転状況において、例えば電動車両の低温弱充電時に、駆動電流が大きく制限されるため、電気加熱装置のパワーを比較的低いレベルに制限することしかできず、電動車両の環境温度の調整を早く実現することができない。本願の技術的解決手段において、抵抗発熱ユニットの抵抗は柔軟な選択肢を有するため、正常な作動状態でPWM制御方式を行うことを満たす上で、駆動電流が制限されたある運転状況に対して、PWM制御方式を使用せず、異なる抵抗値を選択することができ、さらに異なる作動パワーを実現し、且つ駆動電流の上限を超えない。従って、該運転状況の状況において、比較的大きいパワーで作動して、電動車両の環境温度の調整を早く実現することができる。また、電動車両の環境温度を調整するだけでなく、動力電池の温度を制御することもできる。
【0056】
従って、本願の技術的解決手段によれば、電動車両の運転状況に応じて電気加熱装置の制御方式を選択することができ、駆動電流が制限されたある運転状況において、非PWM制御方式を選択し、比較的大きいパワーにおいて作動でき、同時に正常な運転状況において、従来のPWM制御方式で電気加熱装置の作動パワーを正確に制御して調整することができる。
【0057】
従来のPWM制御方式において、他の電気部品と干渉しやすく、振動をもたらし、さらに他の関連電気部品の正常な作動に影響を与える。その理由としては、周波数が高いほど、電流リップルが小さくなるが、電源の損失が高くなる。従って、本願の好ましい実施形態では、上記PWM制御信号の周波数を調整する必要があり、それにより電流リップル要件を満たす状況において、各スイッチに送信するPWM制御信号の周波数を低く調整する。従って、上記のコントローラは電気加熱装置の応用運転状況のニーズに応じて、異なる周波数のPWM制御信号を出力することができ、それにより調整によってPWM制御信号の周波数を変更し、さらに自体の小さな振動を維持し、ヒーターのパワー損失を低減させるとともに、関連電気部品の電気振動を低減させることができる。好ましい状況において、該PWM制御モジュールの制御において、オンになるスイッチの作動周波数は1Hz~100KHzであり、好ましくは100Hz~1KHzであり、より好ましくは200Hz~800Hzであり、さらに好ましくは400Hz~600Hzであり、最も好ましくは500Hzである。
【0058】
また、抵抗発熱ユニットの抵抗値は理論的に正確であるが、生産製造時の偏差により、抵抗発熱ユニットの抵抗値には誤差が必然的に存在する。実際の応用では、抵抗値の誤差が許可範囲内であると、合格品と見なすことができ、許容誤差範囲外であると、不合格品と見なす。しかし、電気加熱装置については、抵抗発熱ユニットの抵抗値に存在する誤差は、その作動パワーに直接影響を与える。時間の経過に伴って、該パワー誤差は電気加熱装置の作動状況に直接影響を与える。パワー誤差の問題を解決するために、好ましい状況において、PWM制御信号のデューティ比を調整する方式で該抵抗発熱ユニットのパワーの補償を実現する。
【0059】
具体的には、好ましい状況において、前記PWM制御モジュールはパワー誤差補償機能を有し、1つのスイッチ及びその対応する1つの抵抗発熱ユニットに対して、該抵抗発熱ユニットの抵抗値がその標準抵抗値の許容誤差範囲の中間区間内であると、前記PWM制御モジュールは所定のパワーにおいて対応する標準デューティ比の制御信号を前記スイッチに出力する。例えば、図6に示されるデューティ比が50%のPWM制御信号である。
【0060】
該抵抗発熱ユニットの抵抗値がその標準抵抗値の許容誤差範囲の上限区間内であると(即ち、その実際の抵抗値は標準抵抗値よりも大きい)、前記PWM制御モジュールは前記所定のパワーにおいてデューティ比が前記標準デューティ比よりも大きい制御信号を前記スイッチに出力する。例えば、図6に示されるデューティ比が75%のPWM制御信号である。
【0061】
該抵抗発熱ユニットの抵抗値がその標準抵抗値の許容誤差範囲の下限区間内であると(即ち、その実際の抵抗値は標準抵抗値よりも小さい)、前記PWM制御モジュールは前記所定のパワーにおいてデューティ比が前記標準デューティ比よりも小さい制御信号を前記スイッチに出力する。例えば、図6に示されるデューティ比が25%のPWM制御信号である。
【0062】
電気加熱装置の駆動電流(及びその対応する作動パワー)はPWM制御信号のデューティ比と必然的な関係を有し、デューティ比が大きいほど、PWM制御信号の作動出力時間が長くなり、対応するスイッチ、例えばQ3及びQ4の導通時間も長くなり、従って、電気加熱装置の駆動電流も大きくなり、作動パワーも大きくなる。逆に、PWM制御信号のデューティ比が小さいほど、電気加熱装置の駆動電流(及びその対応する作動パワー)は小さくなる。従って、PWM制御信号のデューティ比を調整することによって、制御する抵抗発熱ユニットの作動パワーを調整することができ、さらに電気加熱装置全体の作動パワーを調整する。さらに、上記のように抵抗発熱ユニットのパワー誤差を補償することができる。なお、本願で挙げられたPWM制御信号のデューティ比の例(例えば、25%、50%、75%等)は、いずれも例示的なものであり、本願を制限するものではなく、当業者は実際の運転状況に応じて異なるデューティ比を選択することができる。例えば、0~100%の範囲内でPWM制御信号のデューティ比に対して1%~5%を調整単位とする調整制御を行うことができる。
【0063】
好ましい状況において、本願の技術的解決手段によれば、前記PWM制御モジュールは交互制御モードを有し、該交互制御モードにおいて、前記PWM制御モジュールは複数の異なるスイッチを交互にオン又はオフにすることで、対応する抵抗発熱ユニットを交互に通電又は非通電にする。
【0064】
図7A及び図7Bは、図3の抵抗発熱ユニットに基づくPWM交互制御の作動状況を例示的に示す模式図であり、横座標はスイッチを投入する時間配列であり、単位はミリ秒msである。図7Aに示すように、前記PWM制御モジュールはそれぞれスイッチQ1及びQ2に制御信号を送信し(Qnの破線は図1の実施形態にも適用できることを示し、具体的な運転状況に応じてスイッチQnのPWM制御信号のデューティ比を選択することができる)、それによって異なるスイッチを交互にオン又はオフにする。具体的には、PWM制御信号のデューティ比を50%よりも小さくすることができ、Q1が導通するとともにQ2が開放され、Q2がオンになるときにQ1が開放され、Q1及びQ2の両者は交互に導通及び開放する状態にある。なお、コントローラは電気加熱装置の加熱パワーに基づいてPWM制御信号のデューティ比を調整することができ、さらに電気加熱装置の駆動電流及び作動パワーの調整を実現する。例えば、図7Bに示すように、PWM制御信号のデューティ比を50%よりも大きくすることができ、Q1及びQ2は交互にオン又はオフになり、両者の間は、それぞれ独立して作動する区間及び/又は重なる同時作動区間を有する。該状況において、電流波形(重ね合わせ波形)I1は2つの抵抗発熱ユニットが並列して作動する時の電流値を示し、電流波形I2は単一の抵抗発熱ユニットが単独で作動する時の電流値を示す。なお、図7A及び図7Bと併せて行う上記の解釈及び説明は例示的なものであり、本願を制限するものではない。例えば、PWM制御信号のデューティ比は他の比率を有してもよく、それによって異なる応用運転状況に適応する。
【0065】
従って、該好ましい実施形態によれば、PWM制御信号のデューティ比及び/又は複数の抵抗発熱ユニットの加熱部材のPWM制御切替方式を調整することによって、PWM制御信号が制御するスイッチの導通期間の電気加熱装置の駆動電流を低減させることができ、それにより、PWM信号が制御するスイッチにより形成される負荷電流乱れによる他の電気部品(例えば動力電池)の安定した動作に対する悪影響を減らす。
【0066】
以上、電気加熱装置の様々な好ましい制御方式を詳細に説明した。以下、電動車両システムにおける電気加熱装置の応用の解決手段を詳細に説明する。
【0067】
二、電動車両の制御システム
【0068】
図8に示すように、前記電動車両の制御システムは、前記電動車両の動力電池パック100の動作を監視して管理する電池管理システムと、前記電動車両の動力電池パック100に電気的に接続される車載充電器200と、前記電動車両の動力電池パック100に電気的に接続される電気加熱装置300であって、該電気加熱装置は本願で提供される上記の電気加熱装置であり、前記コントローラは電動車両のコントローラ及び/又は前記電気加熱装置の専用コントローラである電気加熱装置300と、熱伝達媒体を介して前記電気加熱装置300と熱交換を行うことで、作動時に電動車両内の環境を暖房するエアコンシステム400であって、前記熱伝達媒体はさらに、前記動力電池パック100に対して温度制御を行うことに用いられるエアコンシステム400と、を含む。
【0069】
上記のように、本願で提供される上記の電気加熱装置の技術的解決手段によれば、電動車両の様々な運転状況において、正常な作動状態においてPWM制御方式を行って電気加熱装置の作動パワーを正確に調整することができるだけでなく、駆動電流が制限されたある運転状況に対してPWM制御方式を使用せず、異なる抵抗値における異なるパワーを選択することができる。
【0070】
前記電動車両は、正常な温風の運転状況、強充電の運転状況、低温弱充電の運転状況、常温弱充電の運転状況、及び低温始動の運転状況のうち少なくとも1つを有する。
【0071】
正常な温風の運転状況では、前記動力電池パックは正常な作動状態にあり、前記電気加熱装置300に電気エネルギーを提供し、該電気加熱装置300は電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、前記エアコンシステムに加熱後の熱伝達媒体を供給し、それによりエアコンシステムが電動車両内に温風を提供することを許可する。
【0072】
強充電の運転状況において、車載充電器200は外部充電装置(例えば、充電ガン)に電気的に接続され、前記電気加熱装置は前記動力電池パック及び/又は前記車載充電器200からの電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、前記エアコンシステム及び/又は動力電池パックに加熱後の熱伝達媒体を供給し、それにより、エアコンシステムが電動車両内に温風を提供し、及び/又は動力電池パックに熱量を提供することを許可し、それによって動力電池パックを良好な作動状態にする。
【0073】
低温弱充電の運転状況において、前記動力電池パックの温度が低い第1の温度閾値(該第1の温度閾値は、例えば、-40℃~0℃である)よりも低く、且つ前記車載充電器200が外部充電装置に電気的に接続される場合、前記車載充電器200は前記動力電池パックと遮断され、前記電気加熱装置は前記車載充電器200からの電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、前記動力電池パックに加熱後の熱伝達媒体を供給し、前記動力電池パックの温度が高い第2の温度閾値(該第2の温度閾値は、例えば、-10℃~5℃である)よりも高くなった後に、前記車載充電器200と前記動力電池パックを電気的に接続し、動力電池パックの充電を実現する。
【0074】
常温弱充電の運転状況において、前記電気加熱装置は前記車載充電器200からの電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、前記動力電池パックに加熱後の熱伝達媒体を供給し、前記車載充電器200と前記動力電池パックを電気的に接続し、動力電池パックの充電を実現する。
【0075】
低温始動の運転状況において、前記動力電池パックの温度が低い第3の温度閾値(該第3の温度閾値は、例えば、-40℃~-10℃である)よりも低く、且つ前記電動車両がパワーオンコマンドを受信する場合、前記車載充電器200は前記動力電池パックと遮断され、前記電気加熱装置は前記動力電池パックに電気的に接続され、前記動力電池パックの電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、前記動力電池パックに加熱後の熱伝達媒体を供給することに用いられ、前記動力電池パックの温度が高い第4の温度閾値(該第4の温度閾値は、例えば、-20℃~5℃である)よりも高くなった後に、前記電動車両は前記正常な温風の運転状況に入る。
【0076】
電動車両の上記の運転状況は 電気加熱装置と関連電気装置との一致関係に基づいて分けられるが、本願を制限するものではなく、他の標準に基づいて電動車両の運転状況を他の様々な異なる運転状況に分けることを排除しない。本願で挙げられた上記の電動車両の運転状況は、電気加熱装置の駆動電流が制限される運転状況(例えば、低温弱充電の運転状況及び低温始動の運転状況等)及び電気加熱装置の駆動電流が制限されない運転状況(例えば、正常な温風の運転状況、強充電の運転状況、常温弱充電の運転状況等)に大別される。理由としては、温度は電動車両の動力電池パックの作動状態に直接影響を与え、温度が高すぎる又は低すぎるであると、動力電池の機能及び安全動作に影響を与え、深刻な場合、ひいては熱暴走、電池容量の深刻な減衰等の欠陥が発生する。
【0077】
従って、駆動電流が制限されない運転状況、例えば、前記正常な温風の運転状況、強充電の運転状況及び常温弱充電の運転状況のうち少なくとも一方に対して、PWM制御方式を使用して各スイッチQ1、…、Qnに対してPWM制御を行うことができる。即ち、前記電気加熱装置のPWM制御モジュールは選択されたスイッチに制御信号を送信することで、前記電気加熱装置のパワーに対して連続的な調整制御を行い、図7A及び図7Bを参照できる。
【0078】
駆動電流が制限される運転状況に対して、例えば、前記低温弱充電の運転状況及び低温始動の運転状況において、PWM制御方式を使用しない。具体的には、低温弱充電の運転状況において、前記電気加熱装置の電流値は安定するように維持され且つ所定の電流値I所定以下であり、前記電気加熱装置のパワーの調整は前記車載充電器200の出力電圧に対する調整によって実現され、PWM制御方式を使用せず、前記低温始動の運転状況において、前記電気加熱装置の電流値は安定するように維持され且つ所定の電流値I所定以下であり、前記電気加熱装置のパワーの調整は前記動力電池パックの出力電圧に対する調整によって実現され、PWM制御方式を使用しない。
【0079】
例えば、図9に示すように、低温弱充電の運転状況において、コントローラは前記動力電池パックの温度が低い第1の温度閾値よりも低いことを知り、且つ車載充電器200が外部充電装置(例えば、充電ガン)に電気的に接続されることを知る場合、前記車載充電器200と前記動力電池パックを遮断し、前記電気加熱装置が車載充電器200に電気的に接続され、それにより抵抗発熱ユニットR1及びR2を利用して、前記車載充電器200からの電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、前記動力電池パックに加熱後の熱伝達媒体を供給し、前記動力電池パックの温度が高い第2の温度閾値(該第2の温度閾値は、例えば、-10℃~5℃である)よりも高くなるまで続け、それにより動力電池パックの使用状態を正常な状態に回復させる。その後、前記車載充電器200と前記動力電池パックを電気的に接続し、動力電池パックの充電を実現する。
【0080】
該低温弱充電の運転状況において、図9図10及び図11に示すように、本願に係る電気加熱装置はPWM制御方式を使用せず、分割制御方法を使用する。具体的には、電気加熱装置の負荷抵抗を、第1のインピーダンスセグメント(単一の抵抗が発熱作動を行い、スイッチQ1及びQ2は交互にオン又はオフになり、又はQ1又はQ2のみを選択的にオンにしてもよい)又は第2のインピーダンスセグメント(2つの並列抵抗は同時に発熱作動を行い、スイッチQ1及びQ2は同時にオンになる)で安定して維持することができ、車載充電器の出力電圧(即ち、電気加熱装置の抵抗発熱ユニットに印加される電圧)が変わらない状況において、電気加熱装置全体の抵抗インピーダンスは安定して変わらないように維持されるため、電気加熱装置の駆動電流は安定するように維持される。電気加熱装置の作動パワーを調整する必要がある場合、コントローラ(例えば、車全体コントローラ又はエアコンコントローラ)は車載充電器に電圧コマンド及び電流制限コマンドを送信し、車載充電器は駆動電流を制限する方式で出力電圧を調整し、さらに電気加熱装置の加熱パワーを調整する。図9図11の図示及び上記のテキスト説明は低温弱充電の運転状況を例に説明したが、当業者は理解すべきであるように、低温始動の運転状況に対しても、同様に適用できる。
【0081】
上記の解決手段によって、特に、電気加熱装置の駆動電流値を安定するように維持し且つ所定の電流値I所定以下にし、それにより、まず電気加熱装置の駆動電流が上限を超えないことを確保することができ、それによって動力電池パック又は車載充電器が電気加熱装置に電気的に接続して給電する時に駆動電流が大きすぎることを防止し、一方では、システムの安全性を確保し、他方では、動力電池パック又は車載充電器が良好な作動状態にあることを確保し、それによって過電流保護等の問題の発生を防止する。所定の電流値I所定は異なる運転状況に応じて異なる電流値を設計して選択することができ、例えば、nの整数倍であってもよく、nは抵抗発熱ユニットの個数であり、整数倍は1桁又は2桁であってもよく、例えば、20である。
【0082】
上記の解決手段を実現するために、好ましい状況において、前記コントローラは、前記車載充電器及び/又は前記動力電池パックの出力電圧を検出することに用いられる電圧検出モジュールと、前記車載充電器及び/又は前記動力電池パックの出力電圧を調整することに用いられる電圧調整モジュールと、前記車載充電器及び/又は前記動力電池パックの出力電圧と選択された抵抗発熱ユニットの抵抗値との比に基づいて、前記電気加熱装置の計算電流値I計算を取得し、該計算電流値I計算と前記所定の電流値I所定との大きさを比較する判断モジュールと、を含み、図12に示すように、該計算電流値I計算が前記所定の電流値I所定以上であれば、該計算電流値I計算が前記所定の電流値I所定以下になるまで、前記コントローラは前記車載充電器及び/又は前記動力電池パックの出力電圧を低く調整し、該計算電流値I計算が前記所定の電流値I所定よりも小さいであると、抵抗発熱ユニットに直接給電し、前記抵抗発熱ユニットを発熱して作動させる。この方式によって、電気加熱装置の駆動電流が電流の制限要件を超えないことを確保することができ、それによりシステムの安全安定性を確保する。
【0083】
上記の電流制限解決手段は図1図4に示される電気加熱装置の複数の並列抵抗の解決手段に適用できる。以下、2つの抵抗R1及びR2を例に具体的に説明する。
【0084】
好ましい状況において、前記電気加熱装置は抵抗値が大きい第1の抵抗発熱ユニットR1及び抵抗値が小さい第2の抵抗発熱ユニットR2を含む。該状況において、前記計算モジュールは該2つの抵抗発熱ユニットに対して、対応するI計算1及びI計算2をそれぞれ取得し、
計算1がI所定よりも大きいであると、前記コントローラは前記車載充電器及び/又は前記動力電池パックの出力電圧を低く調整し、
計算2がI所定よりも大きい且つI計算1がI所定よりも小さいであると、前記コントローラは、前記第1の抵抗発熱ユニットR1をオンにするが、第2の抵抗発熱ユニットR2を遮断し、
計算2がI所定よりも小さいであると、前記コントローラは、前記第1の抵抗発熱ユニットR1をオンにするが、第2の抵抗発熱ユニットR2を遮断し、又は第2の抵抗発熱ユニットR2をオンにするが、前記第1の抵抗発熱ユニットR1を遮断し、又は前記第1の抵抗発熱ユニットR1及び第2の抵抗発熱ユニットR2を交互にオンにし、又は前記車載充電器及び/又は前記動力電池パックの出力電圧を、I計算2がI所定よりも大きい且つI計算1がI所定よりも小さいという範囲を満たすように高く調整し、次に前記第1の抵抗発熱ユニットR1をオンにするが、第2の抵抗発熱ユニットR2を遮断する。
【0085】
概言すれば、複数の並列される抵抗発熱ユニットについては、各抵抗発熱ユニットに印加された電圧がいずれも同じであるため、まず該電圧において各抵抗発熱ユニットの各自の電流を計算することができ、所定の電流I所定と比較し、それにより比較結果に基づいて対応する処理を行う。上記の解決手段では2つの抵抗を例に説明したが、当業者は理解すべきであるように、上記の解決手段は同様により多くの抵抗の状況に適用でき、その技術的解決手段の精神は合致し又は類似する。
【0086】
また、本願は別の実施形態の電動車両の制御システムをさらに提供し、例えば、図13に示すように、電動車両の制御システムは、前記電動車両の第1の動力電池パックI及び第2の動力電池パックIIの動作を監視して管理する電池管理システムであって、前記第1の動力電池パックIは燃料電池パック又は充電可能な電池パックであり、前記第2の動力電池パックIIは充電可能な電池であり、前記第1の動力電池パックIに電気的に接続される電池管理システムと、それぞれ前記電動車両の第1の動力電池パックI及び第2の動力電池パックIIに電気的に接続される電気加熱装置300と、熱伝達媒体を介して前記電気加熱装置300と熱交換を行うことで、作動時に電動車両内の環境を暖房するエアコンシステム400であって、前記熱伝達媒体はさらに、前記第1の動力電池パックI及び/又は第2の動力電池パックIIに対して温度制御を行うことに用いられるエアコンシステム400と、を含み、該電気加熱装置は本願で提供される上記の電気加熱装置であり、前記コントローラは電動車両のコントローラ及び/又は前記電気加熱装置の専用コントローラである。
【0087】
前の実施形態とは異なり、図13に例示的に示される形態では、動力電池パックは、第1の動力電池パックI及び第2の動力電池パックIIを有し、第1の動力電池パックIは燃料電池パック又は充電可能な電池パック(例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、蓄電池等)であってもよく、第2の動力電池パックIIは充電可能な電池(例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、蓄電池等)である。該実施形態では、2グループの動力電池パックを設置することによって、1グループの動力電池パックは始動して作動を開始する場合、他の1グループの動力電池パックは補充として給電することができ、それにより、特に燃料電池パック又は低温始動の場合、動力電池パックの安定した始動に有益である。従って、上記の電気加熱装置300を組み合わせた後に、電気加熱装置300を利用して第1の動力電池パックI及び/又は第2の動力電池パックIIに加熱後の熱伝達媒体を提供することができ、それによりそれに対して温度制御を行い、動力電池パックの安定状態の作動に有益である。
【0088】
前記電動車両は、正常な温風の運転状況及び低温始動の運転状況のうち少なくとも1つを有し、正常な温風の運転状況では、前記動力電池パックは正常な作動状態にあり、前記電気加熱装置300に電気エネルギーを提供し、該電気加熱装置300は電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、前記エアコンシステムに加熱後の熱伝達媒体を供給し、低温始動の運転状況では、前記動力電池パックの温度が低い第5温度閾値(該第5温度閾値は、例えば、-40℃~-10℃である)よりも低く、且つ前記電動車両がパワーオンコマンドを受信する場合、前記電気加熱装置は前記第1の動力電池パック及び/又は第2の動力電池パックからの電気エネルギーを受け、熱エネルギーに変換し、さらに前記第1の動力電池パック及び/又は第2の動力電池パックに加熱後の熱伝達媒体を供給し、前記第1の動力電池パック及び/又は第2の動力電池パックの温度が高い第6温度閾値(該第6温度閾値は、例えば、-20℃~5℃である)よりも高くなった後に、前記電動車両は前記正常な温風の運転状況に入る。なお、電動車両の上記の運転状況は電気加熱装置と関連電気装置との一致関係に基づいて分けられるが、本願を制限するものではなく、他の標準に基づいて電動車両の運転状況を他の様々な異なる運転状況に分けることを排除しない。例えば、電動車両の制御システムの前の実施形態に記載の運転状況を有してもよい。
【0089】
正常な温風の運転状況において、車両は正常な動作状態にあり、上記のように、PWM制御方式で各スイッチQ1、…、Qnに対してPWM制御を行うことができる。即ち、前記電気加熱装置のPWM制御モジュールは選択されたスイッチに制御信号を送信することで、前記電気加熱装置のパワーに対して連続的な調整制御を行う。
【0090】
前記低温始動の運転状況において、本願の該技術的解決手段によれば、前記電気加熱装置のパワーは該電気加熱装置に給電する前記第1の動力電池パック及び/又は第2の動力電池パックのパワーに応答し、且つ前記電気加熱装置のパワーは該電気加熱装置に給電する前記第1の動力電池パック及び/又は第2の動力電池パックの出力電圧と正の相関を有し、PWM制御方式を使用しない。このように設置する理由としては、特に低温始動の運転状況において、動力電池パック(特に燃料電池パックの場合)が始動したばかりの作動状態は悪く、低パワー出力のレベルにしかならず、且つその出力パワーをフルパワーのレベルにするために、長い時間の調整を必要とし、従って、車両動力ニーズの迅速な変化を満たすことができず、本願の技術的解決手段において、別の動力電池パックを利用して補充電気エネルギーを提供する以外に、上記の電気加熱装置の制御はPWM制御方式を使用せず、電気加熱装置に1つの安定した負荷を提供させ、それにより、電気加熱装置のパワーは該電気加熱装置に給電する前記第1の動力電池パック及び/又は第2の動力電池パックのパワーに応答し、該電気加熱装置に給電する前記第1の動力電池パック及び/又は第2の動力電池パックの出力電圧を調整することによって、前記電気加熱装置のパワーを調整する。従って、低温始動過程で、電気加熱装置は抵抗値が安定するように維持される負荷として加熱作動を開始し、また、そのパワーは動力電池パックの出力電圧と直接正の相関を有し、従って、電気加熱装置が動力電池パックに加熱後の熱伝達媒体を提供することに伴って、動力電池パックの温度は徐々に上昇し、その出力パワーも徐々に増加し、さらに電気加熱装置のパワーを対応して徐々に増加させ、それにより動力電池パックの迅速な始動の目的を実現する。そして、動力電池パックの迅速な始動過程で、電流を制限することができ(上記のように)、電気加熱装置と動力電池パックとの間のパワー衝突を回避し、始動失敗を回避することができる。なお、該実施形態の制御方式及び上記の実施形態の制御方式は相互に参考して組み合わせることができる。
【0091】
また、本願の技術的解決手段において、上記のように、コントローラはECU、BMS、エアコンコントローラ等の車載コントローラであってもよく、又は電気加熱装置の単独のコントローラ、例えばシングルチップマイクロコンピュータ、ICチップ等であってもよい。従って、コントローラは広く理解されるべきであり、その意味は、単独した、組み合わせされた、統合された、借用された、ロジック判断及び/又は演算機能を有する様々な制御ユニットを含む。
【0092】
以上、本願の電動車両の制御システムの様々な実施形態を詳細に説明した。
【0093】
三、電動車両
【0094】
本願の上記の技術的解決手段は、複数の運転状況の応用、例えば、様々な輸送手段、特に電動車両に用いることができる。本願で提供される電動車両は上記電動車両の制御システムを含み、前記電動車両は純電動車両、燃料電池車両又はハイブリッド車両である。
【0095】
以上、本願の好ましい実施形態を詳細に説明したが、本願は上記の実施形態の具体的な細部に限定されず、本願の技術的発想の範囲内に、本願の技術的解決手段に対して複数の簡単な変更を行うことができ、これらの簡単な変更はいずれも本願の保護範囲に属する。
【0096】
なお、矛盾しない限り、上記の具体的な実施形態で説明された各具体的な技術的特徴をいずれか適切な方式で組み合わせることができ、不必要な繰り返しを回避するために、本願では様々な可能な組み合わせ方式については説明しない。
【0097】
また、本願の様々な異なる実施形態を任意に組み合わせることもでき、本願の趣旨に反しない限り、それらも本発明で開示されている内容と見なされるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2023-01-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両の電気加熱装置であって、
該電気加熱装置は、
互いに独立して並列に電気的に接続されるn個の抵抗発熱ユニット(R1、R2、…、Rn)と、
それぞれ各自の抵抗発熱ユニットに直列に電気的に接続され、各自の抵抗発熱ユニットの通電又は遮電を独立して制御することに用いられるn個のスイッチ(Q1、Q2、…、Qn)と、
前記電動車両の運転状況に応じて、前記n個のスイッチのうち少なくともいずれか1つを選択的にオン又はオフにするコントローラと、を含み、その中、nは、2以上の自然数であり、
前記n個のスイッチは、いずれも電子スイッチ管であり、前記コントローラは、PWM制御モジュールを含み、該PWM制御モジュールは、それぞれ前記n個のスイッチに独立して電気的に接続され、前記PWM制御モジュールは、パワー誤差補償機能を有し、
1つのスイッチ及びその対応する1つの抵抗発熱ユニットに対して、
該抵抗発熱ユニットの抵抗値がその標準抵抗値の許容誤差範囲の中間区間内であると、前記PWM制御モジュールは、所定のパワーにおいて対応する標準デューティ比の制御信号を前記スイッチに出力し、
該抵抗発熱ユニットの抵抗値がその標準抵抗値の許容誤差範囲の上限区間内であると、前記PWM制御モジュールは、前記所定のパワーにおいてデューティ比が前記標準デューティ比よりも大きい制御信号を前記スイッチに出力し、
該抵抗発熱ユニットの抵抗値がその標準抵抗値の許容誤差範囲の下限区間内であると、前記PWM制御モジュールは、前記所定のパワーにおいてデューティ比が前記標準デューティ比よりも小さい制御信号を前記スイッチに出力することを特徴とする電動車両の電気加熱装置
【請求項2】
前記n個の抵抗発熱ユニットの抵抗値は、いずれも同じであり、又はいずれも異なり、又はその一部が同じであるが、他の部分が異なる、ことを特徴とする請求項1に記載の電動車両の電気加熱装置。
【請求項3】
nは2であり、2つの抵抗発熱ユニットのうち、一方の抵抗発熱ユニットの抵抗値と他方の抵抗発熱ユニットの抵抗値との比は1~2.5である、ことを特徴とする請求項2に記載の電動車両の電気加熱装置。
【請求項4】
前記電気加熱装置は、第1の主回路(21)及び/又は第2の主回路(22)を備え、前記第1の主回路(21)及び第2の主回路(22)は、それぞれ前記n個の抵抗発熱ユニットの両側に位置し、且つ前記n個の抵抗発熱ユニットの並列回路のすべてに直列に電気的に接続され、前記第1の主回路(21)に第1のメインスイッチ(Q主1)が設置され、及び/又は前記第2の主回路(22)に第2のメインスイッチ(Q主2)が設置される、ことを特徴とする請求項1に記載の電動車両の電気加熱装置。
【請求項5】
前記第1の主回路(21)、第2の主回路(22)及び各並列回路のうち少なくとも一方に検出点(A、B、C、D)が設置され、該検出点における電圧値及び/又は電流値を断続的又はリアルタイムに検出することに用いられる、
ことを特徴とする請求項4に記載の電動車両の電気加熱装置。
【請求項6】
前記検出点(A、B、C、D)は、各前記スイッチ(Q1、Q2、…、Qn)及びメインスイッチに配置される、ことを特徴とする請求項5に記載の電動車両の電気加熱装置
【請求項7】
前記電気加熱装置は、単一抵抗発熱モードと、全部抵抗発熱モードと、組み合わせ抵抗発熱モードと、する作動モードを有し、
前記単一抵抗発熱モードにおいて、前記コントローラは、前記n個のスイッチのうちの選択された1つのスイッチのみをオンにし、それにより前記n個の抵抗発熱ユニットのうちの対応する1つの抵抗発熱ユニットを通電し、
前記全部抵抗発熱モードにおいて、前記コントローラは、全部の前記n個のスイッチをオンにし、それにより全部n個の抵抗発熱ユニットを通電し、
前記組み合わせ抵抗発熱モードにおいて、前記コントローラは、前記n個のスイッチのうちの2~n-1個をオンにするが、他の部分をオフにし、それにより前記n個の抵抗発熱ユニットの対応する一部を通電するが、他の部分を非通電にすることを特徴とする請求項1に記載の電動車両の電気加熱装置。
【請求項8】
前記電気加熱装置が所定の加熱パワーを有する場合、オン状態にある抵抗発熱ユニットの電流値又はその総電流値を所定の電流値以下に制限するように、前記コントローラは、前記電動車両の運転状況に応じて前記作動モードを選択し、及び/又は
前記電気加熱装置が異なる加熱パワーを有し、前記電気加熱装置に対してPWM制御方式を使用する必要がないように、前記コントローラは、異なる運転状況における加熱パワーに対する異なるニーズに応じて作動モードを選択する、ことを特徴とする請求項に記載の電動車両の電気加熱装置。
【請求項9】
前記PWM制御モジュールの制御によってオンになるスイッチの作動周波数は、1Hz~100KHzである、
ことを特徴とする請求項1に記載の電動車両の電気加熱装置。
【請求項10】
前記PWM制御モジュールは、交互制御モードを有し、該交互制御モードにおいて、前記PWM制御モジュールは、複数の異なるスイッチを交互にオン又はオフにすることで、対応する抵抗発熱ユニットを交互に通電又は非通電にし、及び/又は
前記PWM制御モジュールが各スイッチに送信する制御信号のデューティ比は、調整可能である、ことを特徴とする請求項に記載の電動車両の電気加熱装置。
【請求項11】
前記電動車両の動力電池パック(100)の動作を監視して管理する電池管理システムと、
前記電動車両の動力電池パック(100)に電気的に接続される車載充電器(200)と、
前記電動車両の動力電池パック(100)に電気的に接続される電気加熱装置(300)と、
熱伝達媒体を介して前記電気加熱装置(300)と熱交換を行うことで、作動時に電動車両内の環境を暖房するエアコンシステム(400)であって、前記熱伝達媒体はさらに、前記動力電池パック(100)に対して温度制御を行うことに用いられるエアコンシステム(400)と、を含む電動車両の制御システムであって、
前記電気加熱装置は、請求項1に記載された電気加熱装置であり、前記コントローラは、電動車両のコントローラ及び/又は前記電気加熱装置の専用コントローラである、ことを特徴とする電動車両の制御システム。
【請求項12】
前記電動車両は、正常な温風運転状況と、強充電運転状況と、低温弱充電運転状況と、常温弱充電運転状況と、及び低温始動運転状況のうち少なくとも1つを有し、
前記正常な温風運転状況において、前記動力電池パックは、正常な作動状態にあり、前記電気加熱装置(300)に電気エネルギーを提供し、該電気加熱装置(300)によって前記電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、前記エアコンシステムに加熱後の熱伝達媒体を供給し、
前記強充電運転状況において、車載充電器(200)は、外部充電装置に電気的に接続され、前記電気加熱装置は、前記動力電池パック及び/又は前記車載充電器(200)からの電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、前記エアコンシステム及び/又は動力電池パックに加熱後の熱伝達媒体を供給し、
前記低温弱充電運転状況において、前記動力電池パックの温度が低い第1の温度閾値よりも低く、且つ前記車載充電器(200)が外部充電装置に電気的に接続される場合、前記車載充電器(200)は前記動力電池パックと遮断され、前記電気加熱装置は前記車載充電器(200)からの電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、前記動力電池パックに加熱後の熱伝達媒体を供給し、前記動力電池パックの温度が高い第2の温度閾値よりも高くなった後に、前記車載充電器(200)と前記動力電池パックを電気的に接続し、動力電池パックの充電を実現し、
前記常温弱充電運転状況において、前記電気加熱装置は前記車載充電器(200)からの電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、前記動力電池パックに加熱後の熱伝達媒体を供給し、前記車載充電器(200)と前記動力電池パックを電気的に接続し、動力電池パックの充電を実現し、
前記低温始動運転状況において、前記動力電池パックの温度が低い第3の温度閾値よりも低く、且つ前記電動車両がパワーオンコマンドを受信する場合、前記車載充電器(200)は前記動力電池パックと遮断され、前記電気加熱装置は、前記動力電池パックと電気的に接続し、前記動力電池パックの電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、前記動力電池パックに加熱後の熱伝達媒体を供給し、前記動力電池パックの温度が高い第4の温度閾値よりも高くなった後に、前記電動車両は、前記正常な温風運転状況に入る、ことを特徴とする請求項11に記載の電動車両の制御システム。
【請求項13】
前記正常な温風運転状況と、強充電運転状況及び常温弱充電運転状況のうち少なくとも一方において、前記電気加熱装置のPWM制御モジュールは、選択されたスイッチに制御信号を送信することで、前記電気加熱装置のパワーに対して連続的な調整制御を行うことを特徴とする請求項12に記載の電動車両の制御システム。
【請求項14】
前記低温弱充電運転状況において、前記電気加熱装置の電流値は安定するように維持され且つ所定の電流値I所定以下であり、前記電気加熱装置のパワーの調整は、前記車載充電器(200)の出力電圧に対する調整によって実現され、PWM制御方式を使用せず、及び/又は
前記低温始動の運転状況において、前記電気加熱装置の電流値は安定するように維持され且つ所定の電流値I所定以下であり、前記電気加熱装置のパワーの調整は、前記動力電池パックの出力電圧に対する調整によって実現され、PWM制御方式を使用しない、ことを特徴とする請求項12に記載の電動車両の制御システム。
【請求項15】
前記コントローラは、
前記車載充電器及び/又は前記動力電池パックの出力電圧を検出することに用いられる電圧検出モジュールと、
前記車載充電器及び/又は前記動力電池パックの出力電圧を調整することに用いられる電圧調整モジュールと、
前記車載充電器及び/又は前記動力電池パックの出力電圧と選択された抵抗発熱ユニットの抵抗値との比に基づいて、前記電気加熱装置の計算電流値I計算を取得し、該計算電流値I計算と前記所定の電流値I所定との大きさを比較する判断モジュールと、を含み、
前記コントローラは、前記計算電流値I計算が前記所定の電流値I所定以上であると、該計算電流値I計算を前記所定の電流値I所定以下になるまで、前記車載充電器及び/又は前記動力電池パックの出力電圧を低く調整させ、
前記計算電流値I計算が前記所定の電流値I所定よりも小さいであると、前記抵抗発熱ユニットを通電させる、ことを特徴とする請求項14に記載の電動車両の制御システム。
【請求項16】
前記電気加熱装置は、抵抗値が大きい第1の抵抗発熱ユニット(R1)と、抵抗値が小さい第2の抵抗発熱ユニット(R2)を含み、
前記判断モジュールは、該2つの抵抗発熱ユニットに対して、それぞれ対応するI計算1及びI計算2を取得し、
計算1がI所定よりも大きいであると、前記コントローラは、前記車載充電器及び/又は前記動力電池パックの出力電圧を低く調整し、
計算2がI所定よりも大きい、且つI計算1がI所定よりも小さいであると、前記コントローラは、前記第1の抵抗発熱ユニット(R1)をオンにするが、第2の抵抗発熱ユニット(R2)を遮断し、
計算2がI所定よりも小さいであると、前記コントローラは、前記第1の抵抗発熱ユニット(R1)をオンにするが、第2の抵抗発熱ユニット(R2)を遮断し、或は、第2の抵抗発熱ユニット(R2)をオンにするが、前記第1の抵抗発熱ユニット(R1)を遮断し、或は、前記第1の抵抗発熱ユニット(R1)及び第2の抵抗発熱ユニット(R2)を交互にオンにし、或は、前記車載充電器及び/又は前記動力電池パックの出力電圧を、I計算2がI所定よりも大きい且つI計算1がI所定よりも小さいという範囲を満たすように高く調整した後に、前記第1の抵抗発熱ユニット(R1)をオンにするが、第2の抵抗発熱ユニット(R2)を遮断する、ことを特徴とする請求項15に記載の電動車両の制御システム。
【請求項17】
前記電動車両の第1の動力電池パック(I)及び第2の動力電池パック(II)の動作を監視して管理する電池管理システムであって、前記第1の動力電池パック(I)が燃料電池パック又は充電可能な電池パックであり、前記第2の動力電池パック(II)が充電可能な電池であり、前記第1の動力電池パック(I)に電気的に接続される、前記電池管理システムと、
それぞれ前記電動車両の第1の動力電池パック(I)及び第2の動力電池パック(II)に電気的に接続される、電気加熱装置(300)と、
熱伝達媒体を介して前記電気加熱装置(300)と熱交換を行うことで、作動時に電動車両内の環境を暖房するエアコンシステム(400)であって、前記熱伝達媒体が前記第1の動力電池パック(I)及び/又は第2の動力電池パック(II)に対して温度制御を行うことにも用いられる、前記エアコンシステム(400)と、を含む電動車両の制御システムであって、
前記電気加熱装置は、請求項1に記載された電気加熱装置であり、前記コントローラは、電動車両のコントローラ及び/又は前記電気加熱装置の専用コントローラである、ことを特徴とする電動車両の制御システム。
【請求項18】
前記電動車両は、正常な温風の運転状況及び低温始動の運転状況のうち少なくとも1つを有し、
前記正常な温風の運転状況において、前記動力電池パックは正常な作動状態にあり、前記電気加熱装置(300)に電気エネルギーを供給し、該電気加熱装置(300)により電気エネルギーを熱エネルギーに変換して、前記エアコンシステムに加熱後の熱伝達媒体を供給し、
低温始動の運転状況において、前記動力電池パックの温度が低い第5温度閾値よりも低く、且つ前記電動車両がパワーオンコマンドを受信する場合、前記電気加熱装置は、前記第1の動力電池パック及び/又は第2の動力電池パックからの電気エネルギーを受け取り、熱エネルギーに変換して、前記第1の動力電池パック及び/又は第2の動力電池パックに加熱後の熱伝達媒体を供給し、そして、前記第1の動力電池パック及び/又は第2の動力電池パックの温度が高い第6温度閾値よりも高くなったまで後に、前記電動車両は前記正常な温風の運転状況に入る、ことを特徴とする請求項17に記載の電動車両の制御システム。
【請求項19】
前記低温始動の運転状況において、前記電気加熱装置のパワーは、該電気加熱装置に給電する前記第1の動力電池パック及び/又は第2の動力電池パックのパワーに応答し、且つ前記電気加熱装置のパワーは、該電気加熱装置に給電する前記第1の動力電池パック及び/又は第2の動力電池パックの出力電圧と正の相関を有し、PWM制御方式を使用しない、ことを特徴とする請求項18に記載の電動車両の制御システム。
【請求項20】
電動車両であって、
前記電動車両は、請求項11に記載された電動車両の制御システムを含み、
前記電動車両は、純電動車両、燃料電池車両又はハイブリッド車両である、電動車両。
【国際調査報告】